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Antimicrobial solid, and production and utilization thereof

阅读:0发布:2022-08-11

专利汇可以提供Antimicrobial solid, and production and utilization thereof专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且PROBLEM TO BE SOLVED: To obtain an antimicrobial solid capable of sustaining its antimicrobial activity for extended periods for various types of foul water, e.g. whether it is circulating, stationary or flowing, even at the contact point, by including a base, antimicrobial metallic ion layer, ion elution-controlling layer and surface antimicrobial metallic ion layer. SOLUTION: This solid includes (A) a base (e.g. of porous ceramic), (B) an antimicrobial metallic ion layer of at least one of silver, copper and zinc ions, fixed on the base A, (C) an ion elution-controlling layer composed of a metal of metallic state and fixed on the layer B for controlling elution of the above ion(s), which is fixed on the photocatalyst particles and part of the gaps between these particles, and can pass the antimicrobial metallic ion(s), and (D) a surface antimicrobial metallic ion layer fixed on the ion elution- controlling layer. For example, the base 1 is coated with a mixed layer of slow-acting antimicrobial agent (bacteria-controlling component 2) and fast-acting antimicrobial agent (highly bactericidal component 3).,下面是Antimicrobial solid, and production and utilization thereof专利的具体信息内容。

【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 基材と、 上記基材に固定された銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうち少なくとも一つを含む抗菌金属イオン層と、 上記抗菌金属イオン層の上に固定された上記イオンの溶出を抑制する層であって、光触媒の粒子及び該粒子間の隙間の一部に固定された該抗菌金属イオンの通過可能な金属状態の金属からなるイオン溶出抑制層と、 該イオン溶出抑制層の上に固定された表層抗菌金属イオン層と、 を具備することを特徴とする抗菌性固形物。
  • 【請求項2】 基材と、 上記基材に固定された銀イオン及び銅イオンを含む抗菌金属イオン層と、 上記抗菌金属イオン層の上に固定された上記イオンの溶出を抑制する層であって、光触媒粒子及び該粒子間の隙間の一部に固定された該抗菌金属イオンの通過可能な金属状態の金属からなるイオン溶出抑制層と、 を具備することを特徴とする抗菌性固形物。
  • 【請求項3】 基材表面に抗菌金属イオンとしての銀イオン、銅イオン及び亜鉛イオンのうちの少なくとも一つを適用するイオン適用工程と、 該抗菌金属イオンの一部を金属状態の抗菌金属に還元する還元工程と、 を含むことを特徴とする抗菌性固形物の製造方法。
  • 【請求項4】 多孔質基材に抗菌金属イオンを含浸することにより抗菌金属イオンを適用する請求項3記載の抗菌性固形物の製造方法。
  • 【請求項5】 上記還元工程において、光照射、犠牲酸化剤又は熱処理による還元方法を用いる請求項3記載の抗菌性固形物の製造方法。
  • 【請求項6】 多孔質基材表面に多孔質の光触媒層を形成する光触媒層形成工程と、 該光触媒層の形成された基材に抗菌金属イオンを含浸する含浸工程と、 抗菌金属イオンを含む光触媒層に光を照射して、光触媒層内に金属状態の抗菌金属を析出させる照射工程と、 を含むことを特徴とする抗菌性固形物の製造方法。
  • 【請求項7】 無機多孔質基材を準備する工程と、 該基材に酸化チタンゾルを塗布後焼成して、TiO 2からなる多孔質光触媒層を該基材上に形成する工程と、 光触媒層の形成された基材を抗菌金属イオンを含む溶液中に浸漬する工程と、 抗菌金属イオンを含む光触媒層に光を照射して、光触媒層内に金属状態の抗菌金属を析出させる照射工程と、 を含むことを特徴とする抗菌性固形物の製造方法。
  • 【請求項8】 基材と、基材に固定された抗菌金属イオン層と、該抗菌金属イオン層の上に固定された金属状態の金属を含むイオン溶出抑制層と、を具備する抗菌性固形物を被処理液中に置き、 該抗菌性固形物に紫外線を含む光を照射して抗菌性固形物表面における金属状態の金属の析出を制御することにより、抗菌金属イオンの被処理液中への放出量を制御することを特徴とする液体の抗菌処理方法。
  • 【請求項9】 上記金属状態の金属は抗菌金属であることを特徴とする請求項8記載の液体の抗菌処理方法。
  • 【請求項10】 上記紫外線の照度を変化させることにより、抗菌金属イオンの被処理液中への放出量を制御することを特徴とする請求項8記載の液体の抗菌処理方法。
  • 【請求項11】 上記抗菌金属イオンが銀イオン、銅イオン又は亜鉛イオンであることを特徴とする請求項8〜
    10のいずれか1項記載の液体の抗菌処理方法。
  • 【請求項12】 基材表面に、光触媒機能を有する物質からなる層(光触媒層)を介して、初効性抗菌剤と、長効性抗菌剤が固定されていることを特徴とする抗菌性固形物。
  • 【請求項13】 基材と、 上記基材表面に固定された初効性抗菌剤と、 上記初効性抗菌剤の上に固定された長効性抗菌剤及び光触媒機能を有する物質からなる層と、 を具備することを特徴とする抗菌性固形物。
  • 【請求項14】 抗菌成分の貯蔵部分と、 上記貯蔵部分からの抗菌成分の溶出を抑制する、光触媒機能を有する物質を含む抑制層と、 を具備することを特徴とする抗菌性固形物。
  • 【請求項15】 基材と、 上記基材に固定された、抗菌成分の貯蔵部分及び該貯蔵部分からの抗菌成分の溶出を抑制する部分からなる層と、 この層の上に固定された抗菌成分を放出する表面層と、 を具備することを特徴とする抗菌性固形物。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】

    【発明の属する技術分野】本発明は、汚等の液体の滅菌(減菌)や汚水の接触する部材表面における抗菌に用いられて好適な抗菌性固形物及びその製造方法等に関する。

    【0002】

    【従来技術】抗菌作用に対するニーズの高い汚水等の液体及びそのような液体の接触部の形態は以下の3つに分解できる。 (1)循環水型:フルタイム・バス、人工滝、プール、
    冷却水等の循環設備内循環水及びその接触部。 (2)静水型:採尿バッグ、ドレナージなどの医療用器具、貯水層、浴槽水等の長時間留置される静水及びその接触部。 (3)流水型:便器の洗浄水、台所、洗面器、風呂場などの洗い場において発生する流水及びその接触部。

    【0003】近年、抗菌技術の分野においては、有機抗菌剤と比較して安全性、耐熱性及び永続性に優れることから、銀イオンを抗菌成分の主体とした無機抗菌剤が注目されている。 そして、その抗菌剤の具体的形態としては、銀イオンの抗菌性能を有効に発揮させることができると同時に、使用しやすい形態であることから、多孔性セラミックに銀イオンを保持させた構造が一般的になっている。 その際、担持体である多孔性セラミックとしては、ゼオライト(特開平3−255010号)、層状ケイ酸塩(特開平2−19308号)、リン酸カルシウム(特開平4−243908号)、リン酸ジルコニウム(特開平3−83905号)、リン酸アルミニウム(特開平5−229911号)、溶解性ガラス(特開平3−
    7201号)、酸化チタン(特開平6−65012号、
    特開平5−4816、特開平6−298532号)などが利用されている。

    【0004】銀の抗菌性能を充分に発揮させるためには、金属状態の安定化した銀を保持させるよりも、反応性に富んだイオン状態の銀を保持させるほうが望ましい、とされている(防菌防黴誌、22巻、3号(199
    4))。 上記提案も、なるべく銀イオンとして銀を担持体に固定するか、あるいは銀イオンとして担持体から銀を徐放しようと工夫している。 ただし、金属状態の銀にも、銀イオンよりは劣るけれども、一定の殺菌は認められている(「無機化学(上巻)」、産業図書(195
    9))。

    【0005】

    【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように銀イオンを担持体に固定する方法や、銀イオンとして被処理液中に徐放する方法、あるいは従来より行われてきた金属銀粉末を直接被処理液中に投与する方法では、上記3形態(循環水、静水、流水)のいずれについても、抗菌を長期にわたって行うには充分ではなかった。

    【0006】銀イオンとして系内に徐放する方法には、
    例えば特開平2−19308号がある。 特開平2−19
    308号では、層状ケイ酸塩に含有されるイオン交換可能な金属の少なくとも1部を、銀、銅および亜鉛の中から選ばれた少なくとも1種の金属で置換してなり、被膜形成能を有する抗菌性ケイ酸塩、具体的には銀モンモリロナイトが開示されている。 この銀モンモリロナイトは、銀イオンを溶出することから、確かに初期に優れた抗菌力を有する。 しかし、対象が循環水、静水等の場合や、尿のようにNa、K等のアルカリ金属イオンを多量に含む液体が対象の場合は比較的短期に効力を失ってしまう。

    【0007】ここで対象が循環水や静水の場合に比較的短期に抗菌効力がなくなるのは、抗菌性金属がイオンの型で溶出するが、この金属イオンは被処理液中に存在する塩素イオン等と反応しやすく、そのため、金属イオンが抗菌性のほとんどない塩や錯イオンとなりやすいためである。 また、通常負の電荷を有する細胞膜に金属イオンが付着されて消費されやすいためである。

    【0008】一方、尿のようにNa、K等のアルカリ金属イオンを多量に含む液体が対象の場合に比較的短期に抗菌効力がなくなるのは、イオン交換法で抗菌性金属イオンを固定しているために、アルカリ金属イオンとの抗菌金属イオンとの交換が一気に生じ、抗菌金属イオンの溶出があまりに加速されるためと考えられる。

    【0009】金属状態の銀粉末を使用した場合には、対象が流水の場合の接触部や、ブイヨン等の栄養源が豊富に存在する循環水、静水の場合には抗菌効果が充分でなかった。 この場合において、対象が流水のときに抗菌効果が充分でないのは以下の理由によると考えられる。 すなわち、金属状態の銀粉末は絶対的な抗菌力が銀イオンより弱いために、充分な抗菌を行うには比較的長時間にわたり銀と抗菌対象物とが反応することを要する。 しかし、対象物が流水では、そのような長い時間水と抗菌剤が接触することがないため抗菌効果が不充分にとどまるものと解される。

    【0010】一方、対象物が栄養源の豊富に存在する循環水等であって初期菌数が比較的多い場合に抗菌効果が充分でないのは、菌の旺盛な繁殖を充分に抑えうるほどに銀粉末の抗菌力が強くないためと考えられる。

    【0011】本発明は、上記事情に鑑み、循環水、静水、流水のいずれの態様の汚水及びその接触部でも充分な抗菌性を長期にわたって有する抗菌性固形物並びにその製造方法及びその利用方法を提供することを目的とする。

    【0012】

    【課題を解決するための手段】本発明の一態様の抗菌性固形物は、抗菌金属イオン及び金属状態の抗菌金属の双方を含むことを特徴とする。 一般的に、抗菌金属イオンは、ある濃度以上被処理液に存在する場合には抗菌効果は強いが、被処理液中に速やかに放出されて消耗されるので、その抗菌効果は長続きしないとされている。 一方、金属状態の抗菌金属は、速効性はないが、一定程度の制菌効果を長い期間継続して発揮するとされている。
    したがって、抗菌金属イオンと金属状態の抗菌金属の双方を含む抗菌性固形物は、初期の強い抗菌性と長期間続く制菌性とを併せ持つ。

    【0013】本発明の他の一態様の抗菌性固形物は、基材に抗菌金属イオン及び金属状態の抗菌金属の双方が固定されていることを特徴とする。 好ましい基材の1つとして、多孔質セラミックスを挙げることができる。 金属イオンを含む溶液を多孔質セラミックス中に含浸させることにより、多量の金属イオンを基材に固定することができる。

    【0014】本発明の他の一態様の抗菌性固形物は、基材と、基材に固定された抗菌金属イオン層と、該抗菌金属イオン層の上に固定された、該抗菌金属イオンの通過可能な金属状態の抗菌金属層と、を具備することを特徴とする。 このような抗菌性固形物は、表面に存在する金属状態の抗菌金属による抗菌作用と、内部からしみ出してくる抗菌金属イオンによる抗菌作用の双方を発揮する。

    【0015】この態様においては、上記金属状態の抗菌金属層がイオン溶出抑制層であることが好ましい。 抗菌金属イオンを含む抗菌性固形物を被処理液中に入れた場合、抗菌金属イオンの溶出速度が速すぎて短期間に抗菌金属イオンが溶出して消耗することが多い。 この態様の抗菌性固形物においては、抗菌金属イオン層上に固定された金属状態の抗菌金属を含む層がイオン溶出への障害物となって抗菌金属イオンの溶出速度を低下させ、該イオンの抗菌効果を長持ちさせる。

    【0016】この態様においては、上記イオン溶出抑制層がさらに光触媒を含むことがさらに好ましい。 光触媒の光還元触媒作用を利用して、金属状態の抗菌金属を抗菌金属イオン層上に能率よく固定することができる。 また、光触媒作用そのものに基づく抗菌作用も期待できる。

    【0017】この態様においては、上記イオン溶出抑制層が、上記抗菌金属イオンの析出反応に基づく、被処理液中の抗菌金属イオン濃度を自動調整する機能を有することとしてもよい。 この機能の詳細は、実施例中において説明する。

    【0018】本発明の他の一態様の抗菌性固形物は、基材と、基材に固定された深層抗菌金属イオン層と、該抗菌金属イオン層の上に固定された金属状態の抗菌金属を含むイオン溶出抑制層と、該イオン溶出抑制層の上に固定された表層抗菌金属イオン層と、を具備することを特徴とする。

    【0019】この態様の抗菌性固形物には、表層抗菌金属イオン層が追加されている。 この層は、抗菌性固形物が被処理液に投入された後に速やかに被処理液中に溶出して強い抗菌作用を発揮する。 そして、その後は、深層抗菌金属イオン層からイオン溶出抑制層を通って徐々にしみ出てくる抗菌金属イオンが長期的な抗菌作用を発揮する。

    【0020】本発明の抗菌性固形物における抗菌金属は、銀、銅及び亜鉛の中から、1種又は複数種を選択できる。 これらは、抗菌作用を有するとともに、人体に対する安全性が認定されている。 これらのうちで、銅は真菌に対する優れた抗菌作用を有し、銀は細菌に対する優れた抗菌作用を有する。 したがって、銅と銀の双方を含む抗菌性固形物は、ほとんど全種の生物に対して有効である。

    【0021】本発明の抗菌性固形物の製造方法は、基材表面に抗菌金属イオンを適用するイオン適用工程と、該抗菌金属イオンの一部を金属状態の抗菌金属に還元する還元工程と、を含むことを特徴とする。 抗菌金属イオンの適用方法としては、多孔質基材に抗菌金属イオンを含浸することにより抗菌金属イオンを適用することが好ましい。 その他、塗布、吹き付け、フィルム貼り等様々な方法を採用できる。

    【0022】 上記還元工程においては、光照射、犠牲酸化剤又は熱処理による還元方法を用いることができる。 これら三方法の中では、光照射による方法が最も好ましい。 光還元法により固定すると以下に示す3つの利点があるからである。 第一に、光還元の程度を変化させるだけで、初期に殺菌性の強い抗菌成分である抗菌性金属イオンと、長期にわたり制菌性を有する抗菌成分である金属状態の抗菌性金属の双方を所定の割合で固定できる。 光触媒上に抗菌性金属イオンを含む物質(塩等)を塗布した後の、光照射によって抗菌性金属イオンを還元する反応は、光触媒の活性点から徐々に進行するからである。 第二に、光還元により、適度な強度での固定状態が実現できる。 そのため、抗菌成分の溶出速度を、充分な抗菌性と長期にわたる使用を考慮したときに、双方の調和のとれる速度に維持できる。 第三に、10nm程度の微粒の抗菌性金属を固定できるので、かかる微粒の状態で抗菌性金属が液体中に徐放されることになる。 そのため、処理液が循環水や静水の場合には、徐放された抗菌性金属が液体中に均一に分散されることになるので、
    充分な制菌性を発揮することになる。

    【0023】本発明の一態様の抗菌性固形物の製造方法は、多孔質基材表面に多孔質の光触媒層を形成する光触媒層形成工程と、該光触媒層の形成された基材に抗菌金属イオンを含浸する含浸工程と、抗菌金属イオンを含む光触媒層に光を照射して、光触媒層内に金属状態の抗菌金属を析出させる照射工程と、を含むことを特徴とする。 この方法により、優れた抗菌性能を有する抗菌性固形物を比較的簡単に製造できる。

    【0024】本発明の一態様の液体の抗菌処理方法は、
    基材と、基材に固定された抗菌金属イオン層と、該抗菌金属イオン層の上に固定された金属状態の抗菌金属を含むイオン溶出抑制層と、を具備する抗菌性固形物を被処理液中に置き、該抗菌性固形物に紫外線を含む光を照射して抗菌性固形物表面における金属状態の抗菌金属の析出を制御することにより、抗菌金属イオンの被処理液中への放出量を制御することを特徴とする。 光の照射を強くすれば金属状態の抗菌金属が多く析出して抗菌金属イオンの生成及び通過(抗菌金属イオン層から被処理液への)を阻害する。 光の照射を弱くすればその逆となる。
    このように光照射強度を変えることによって、被処理液中への抗菌金属イオンの放出量を制御することができる。

    【0025】上記処理方法の具体例として、基材と、基材に固定された銀イオン及び/又は銅イオン層と、該イオン層の上に固定されたイオン溶出抑制層と、を具備する抗菌性固形物を被処理液中に置き、該イオンを被処理液中へ徐々に放出する方法がある。

    【0026】本発明の水処理装置は、本発明の各種抗菌性固形物の充填された充填層を有することを特徴とする。 この充填層内で、長期間安定して水の滅菌・減菌が行われる。

    【0027】本発明のトラップ又はサナの汚れの防止方法は、本発明の各種抗菌性固形物を排水トラップ又はサナに配置することを特徴とする。 トラップ等に触れる汚水及びトラップ等の表面を滅菌することにより、トラップ等の汚れ及び臭気発生を抑制できる。

    【0028】本発明の他の一態様の抗菌性固形物は、初期に殺菌生の強い抗菌成分を放出する抗菌剤(初効性抗菌剤)と、長期にわたり制菌性を有する抗菌成分を放出する抗菌剤(長効性抗菌剤)を有することを特徴とする。 本発明においては、初効性抗菌剤として、抗菌性金属イオンまたは抗菌性金属イオンを放出する物質を用いると、対象となる液体全体に充分な抗菌力を有する抗菌性金属イオンが行き渡るようになるので好ましい。

    【0029】長効性抗菌剤としては、金属状態の抗菌性金属または金属状態で放出される抗菌性金属を含む物質が以下の理由により好ましい。 液体中に徐放された金属状態の抗菌性金属は、抗菌性金属イオンと比較して、液体中で負電荷を有する菌の細胞膜に吸着しにくく、かつ菌体内のDNA等にも吸収されにくい。 また、抗菌性金属イオンとの間に難溶性塩を形成しやすい陰イオン(例えば、抗菌性金属が銀の場合のハロゲンイオン)が液体中に存在する場合でも、金属状態の抗菌金属は抗菌性金属イオンよりも反応しにくく難溶性塩を形成しにくいため、抗菌性が衰えることもない。 さらに、液体中にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等の陽イオンが存在していても、これらイオンとのイオン交換により抗菌性金属の溶出が起きることはないので、短期で抗菌性が衰えることもない。

    【0030】したがって、循環水、静水中で抗菌性固形物を使用した場合には、金属状態の抗菌性金属が溶液中に安定した状態で存在して、長期にわたり制菌作用を発揮することができる。 換言すれば、抗菌性金属イオン等の抗菌成分の、殺菌性は強いが、周囲の環境に左右されやすい欠点を、金属状態の抗菌金属が補うのである。

    【0031】上記金属状態の抗菌性金属は、平均粒径が100nm以下であると、液中に均一に分散しやすく、
    また、イオンとして溶出しやすいので好ましい。

    【0032】本発明の抗菌性固形物においては、初効性抗菌剤と長効性抗菌剤を、基材表面に固定することが好ましい。 このような抗菌性固形物は、複数回の使用に耐え得る。

    【0033】本発明の抗菌性固形物においては、基材表面に、初効性抗菌剤と長効性抗菌剤とが固定されており、かつ前記基材は多孔質であり、多孔質の基材中には少なくとも前記初効性抗菌剤が含浸されているようにすることが好ましい。 基材表面に固定された初効性抗菌剤が消費された後も、長効性抗菌剤に存在する開気孔を通って、基材の気孔中に含浸固定された初効性抗菌剤が遅延して徐放されてくるので、長期にわたり優れた殺菌性を有するようになる。 したがって、静水中での複数回の使用における性能も向上する。

    【0034】本発明の抗菌性固形物においては、基材表面に、光触媒機能を有する物質からなる層(光触媒層)
    を介して、初効性抗菌剤と、長効性抗菌剤が固定されているようにするのが、以下に示す理由により好ましい。
    第一に、光触媒機能を有する物質を介すると、光還元反応が加速されるので、比較的短時間で抗菌性金属イオンと、金属状態の抗菌性金属の双方を基材に固定できる。
    第二に、該物質自体の光触媒機能による殺菌も期待できる。

    【発明の実施の形態】

    【0035】以下に本発明の具体的な実施例について図に基づいて説明する。 図1(a)及び(b)は、本発明の一実施態様を示す模式図である。 この図の抗菌性固形物は、基材1表面上に、初効性抗菌剤(殺菌性の強い成分3)と、長効性抗菌剤(制菌性成分2)との混合層を形成してなる。 図2(a)及び(b)は、本発明の他の実施態様を示す模式図である。 この図の抗菌性固形物は、基材1表面上に、長効性抗菌剤2からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤3からなる層を形成してなる。 図3(a)及び(b)は、本発明の他の実施態様を示す模式図である。 この図の抗菌性固形物は、多孔質の基材1に初効性抗菌剤3を含浸させ、さらに基材1
    表面上に、初効性抗菌剤3と、長効性抗菌剤2との混合層を形成してなる。

    【0036】図4(a)及び(b)は、本発明の他の実施態様を示す模式図である。 この図の抗菌性固形物は、
    多孔質の基材1に初効性抗菌剤3を含浸させ、基材1表面上に、長効性抗菌剤2からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤3からなる層を形成してなる。 図5
    (a)及び(b)は、本発明の他の実施態様を示す模式図である。 この図の抗菌性固形物は、基材1表面上に、
    光触媒機能を有する物質からなる層4を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤3と、長効性抗菌剤2との混合層を形成してなる。

    【0037】図6(a)及び(b)は、本発明の他の実施態様を示す模式図である。 この図の抗菌性固形物は、
    基材1表面上に、光触媒機能を有する物質からなる層4
    を形成し、その上に長効性抗菌剤2からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤3からなる層を形成してなる。 図7(a)及び(b)は、本発明の他の実施態様を示す模式図である。 この図の抗菌性固形物は、多孔質の基材1に初効性抗菌剤3を含浸させ、その上に光触媒機能を有する物質からなる層4を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤3と、長効性抗菌剤2との混合層を形成してなる。 図8(a)及び(b)は、本発明の他の実施態様を示す模式図である。 この図の抗菌性固形物は、
    多孔質の基材1に初効性抗菌剤3を含浸させ、その上に光触媒機能を有する物質からなる層4を形成し、その上に長効性抗菌剤2からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤3からなる層を形成してなる。

    【0038】ここで初効性抗菌剤とは、処理液体中へ放出された直後において大きな殺菌効果を有する抗菌成分を含む抗菌剤のことである。 ここでいう初期とは、抗菌成分が液体中に徐放されてからの比較的短い期間をいう。 このような性質を有する抗菌成分の例としては、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンなどの抗菌性金属イオン、次亜塩素酸、オゾン、オゾン含有水、酸性水等を挙げることができる。 それぞれ抗菌成分が液体に徐放されてから比較的短い期間には大きな抗菌性を発揮する。 しかし、特に留置した液体中においては、これらの抗菌成分を含む抗菌剤は、時間の経過とともに抗菌性が低下する性質を有する。 その原因は、抗菌性金属イオンの場合には、銀イオンにおけるハロゲンイオン等のように、難溶性塩や殺菌効果の小さな錯塩、錯イオンを形成しやすい溶液中に存在する物質との反応や、負電荷を有する細菌の細胞膜等への付着などによると考えられる。 また、
    次亜塩素酸、オゾン等は溶液中の有機成分と結合、反応しやすいことによると考えられる。 さらに、抗菌成分が抗菌剤から溶出しやすいことにもよると考えられる。

    【0039】本発明では、それを補うために、抗菌性固形物中に、長期にわたり制菌性を有する抗菌成分を放出する抗菌剤(長効性抗菌剤)を混入する。 ここで、長期とは、処理液体中への放出後に、抗菌成分が制菌性を安定に保持しうる期間が長いことを示す。 制菌性とは、菌が増殖しない程度の抗菌性のことをいう。 このような性質を有する抗菌成分には、金属状態の銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属、酸化第一銅等の抗菌性を有する難溶性の金属化合物などが挙げられる。 ここで挙げた抗菌成分は、
    上記の初期に強い殺菌性を発揮する抗菌成分と比較して、殺菌性では劣るものの、細菌、有機成分、イオン等との反応性に乏しく、処理液体中で化学的に安定であるという性質を有する。 したがって、このような抗菌成分の並存により、初効性抗菌剤のみの作用では、長期にわたり抗菌性を維持できない場合においても、長期にわたり制菌性を維持できるようになる。

    【0040】初効性抗菌剤中の抗菌成分としては、抗菌性金属イオンが特に好ましい。 抗菌金属イオンは、次亜塩素酸、オゾン等と比較して、固形物内に保存固定しやすいからである。 また、抗菌金属イオンは、該イオンを保存固定した固形物から、イオン溶出速度の制御により、必要な量だけ取り出せるので、より長期の使用に耐えやすいからである。 抗菌性金属イオンには、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等がある。 このうち、銀イオンは他と比較して細菌類に対する効果に優れており、また、銅イオンは他と比較して真菌に対する効果が優れているので、両イオンを適宜選択するか、双方併存させて使用するのが望ましい。

    【0041】抗菌性金属イオンを放出する抗菌剤としては、抗菌性金属イオンを含む物質が使用できる。 抗菌性金属イオンを含む物質とは、具体的には、乳酸銀、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、酢酸第一銅、酢酸第二銅、硝酸銅、硫酸第一銅、硫酸第二銅、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等の溶解性の抗菌性金属元素を含む化合物や、抗菌性金属イオンを担持したアパタイト、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、チタニア、層状ケイ酸塩、層状アルミノケイ酸塩、
    ゼオライト等が挙げられる。

    【0042】基材の材質は、セラミック、陶磁器材料、
    金属、ガラス、プラスチックあるいはそれらの複合物等、基本的に何でもよい。 ただし、光触媒機能を有する物質からなる粒子を介して上記2種の抗菌剤を固定する場合には、一般に300℃以上の高温で熱処理する必要があることから、熱的安定性に優れるセラミックあるいは陶磁器材料が好ましい。 また、特にセラミック、陶磁器材料、金属の場合は軽量化の観点から多孔質であることが好ましい。

    【0043】多孔質基材を準備する工程の具体例は、基材が陶磁器材料またはセラミックの場合には、以下のとうりである。 所定粒径を有する焼成により分解される成分(例えば有機バインダー)を所定量、基材を構成する成分からなる原料粉末に添加してから焼成し、基材の気孔径および気孔率を、添加した分解成分の粒径及び量でコントロールする。 基材を構成する成分の出発原料に緻密化しにくい原料を用いて気孔率を増加し、かつ微粒を用いて気孔径をコントロールする(例えば微粒の活性アルミナ(γ−Al
    2 O 3 、ベーマイト等)を用いる)。 基材を構成する成分のうちの液相を形成する成分(シリカ、アルカリ土類金属成分等)の量を調節して気孔率をコントロールする。 この方法では気孔径は成形体の充填の仕方によりコントロールする。

    【0044】基材の形状は、球状、円柱状、円筒状、柱状、中空の角柱状、棒状、板状、粉状、塊状などのいずれでもよい。 寸法的には、取扱いやすさの点で、1つずつ指で掴める程度の大きさを有するほうが好ましい。
    また、コーナー及びエッジ部は尖っていないほうがよい。 その理由は、コーナー及びエッジ部が存在すると、
    その部分への上記2種の抗菌剤の付着具合が変化しやすいこと、およびその部分が機械的に弱く優先的に剥離や溶出が生じやすいので、不均一な溶出が生じることが挙げられる。 また、球状、円柱状、円筒状、角柱状、棒状、板状等の対称な中実形状は、上記2種の抗菌剤を容易に均一に付着しやすい点で優れており、一方、円筒状、中空の角柱状では、部材を軽量化できる利点がある。

    【0045】抗菌剤または光触媒機能を有する物質の基材への担持は直接担持であってもよいし、接着層を介する間接担持でもよい。 ここで接着層の材質は、釉薬等の無機質の熱可塑性材料、シリコーン樹脂等の無機質の熱硬化性材料、アクリル樹脂等の有機質の熱可塑性材料、
    エポキシ樹脂等の有機質の熱硬化性材料のいずれでもよい。

    【0046】光触媒機能を有する物質からなる層とは、
    主として光触媒機能を有する粒子からなる層である。 この層は、他に少量の光触媒機能を有しない粒子を含んでいてもよい。 このような粒子としては、同層の強度を向上させるために加える焼結助剤等が挙げられる。 光触媒機能を有する物質からなる層は、基材の全面に形成してもよいし、一部に形成してもよい。 ただし、全面形成のほうが、基材に担持される抗菌剤の量を増加させることができ、また終端が存在しないのでその部分から優先的に剥離や溶出が生じることがないので好ましい。

    【0047】光触媒機能を有する物質(粒子)は、基本的に、光照射時に抗菌性金属元素を含む塩の溶液から抗菌性金属を還元析出しうる程度のバンド・ギャップを有すれば足りる。 このような物質としては、酸化チタン、
    酸化亜鉛、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウム、三酸化二ビスマス、酸化スズ、炭化ケイ素、リン化ガリウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、シリコン、ガリウムヒ素、リン化インジウム、
    テルル化カドミウム、三硫化モリブデン等が挙げられる。

    【0048】また光触媒機能を有する物質自体が抗菌作用を有してもよい。 光触媒機能を有する半導体が抗菌作用を有する理由は、所定以上の電圧が印加され感電死するという説(特公平4−29393号)もあるが、一般には光照射時に生じる活性酸素が抗菌作用を生むと考えられている。 この説によると、抗菌性を有する、すなわち活性酸素を生成するためには、半導体の伝導帯の位置がバンドモデルで表すとき水素発生電位より上方にあり、かつ価電子帯の上端が酸素発生電位より下方にあることを要する。 この条件を満たす半導体には、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、炭化ケイ素、
    リン化ガリウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等がある。 また微粒化すると伝導帯の位置は上方に移行するので、1〜10nm程度の微粒子で層を構成できれば、三酸化タングステン、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、酸化スズ等も抗菌性を有する可能性がある。 なお、
    光触媒機能を有する物質からなる粒子は1種の物質から構成してもよいし、2種以上の物質で構成してもよい。

    【0049】次に図1〜8に示した抗菌性固形物の製法について説明する。 まず図1(a)及び(b)に示した、基材表面上に、初効性抗菌剤と、長効性抗菌剤との混合層を形成してなる抗菌性固形物の製法について、基材をアルミナ、初効性抗菌剤を硝酸銀、長効性抗菌剤を金属状態の銀とした場合を例にとり説明する。 1つの方法は、硝酸銀溶液をアルミナ基材上に塗布し、所定時間光を照射する方法である。 この方法によれば光照射により、硝酸銀中の銀イオンが徐々に還元される。 したがって、光照射時間を適正に選べば、アルミナ基材の表面に、初期に殺菌性の強い抗菌成分である銀イオンを放出する硝酸銀と、長効性抗菌剤である金属状態の銀とが並存することになり、図1に示す固形物が得られる。

    【0050】他の方法としては、硝酸銀溶液をアルミナ基材上に塗布し、その後、アルコ−ル、アルデヒド、還元糖類等の犠牲酸化剤を適量添加する方法がある。 この方法によれば、上記犠牲酸化剤が酸化された分、硝酸銀中の銀イオンが還元される。 したがって、犠牲酸化剤の添加量を調節することにより、アルミナ基材の表面に、
    初期に殺菌性の強い抗菌成分である銀イオンを放出する硝酸銀と、長効性抗菌剤である金属状態の銀とが並存することになり、図1に示す固形物が得られる。

    【0051】他の方法としては、硝酸銀溶液をアルミナ基材上に塗布し、その後、熱処理することにより還元する方法がある。 この方法によれば、熱処理により硝酸銀中の銀イオンが還元される。 したがって、熱処理時間を適正に選べば、アルミナ基材の表面に、初期に殺菌性の強い抗菌成分である銀イオンを放出する硝酸銀と、長効性抗菌剤である金属状態の銀とが並存することになり、
    図1に示す固形物が得られる。 さらに他の方法として電気メッキによる還元が考えられる。

    【0052】次に、図2(a)及び(b)に示した、基材表面上に、長効性抗菌剤からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤からなる層を形成してなる抗菌性固形物の製法について、基材をアルミナ、初効性抗菌剤を硝酸銀、長効性抗菌剤を金属状態の銀とした場合を例にとり説明する。 この場合の製法は、例えば、硝酸銀溶液をアルミナ基材上に塗布し、上記3つの方法(光照射による還元、犠牲酸化剤を用いた還元、熱処理による還元)等により還元した後、さらに硝酸銀溶液を塗布し、
    乾燥すると、その上に未還元の硝酸銀層が形成され、図2に示す固形物が得られる。

    【0053】次に図3(a)及び(b)に示した、多孔質の基材に初効性抗菌剤を含浸させ、さらに基材表面上に、初効性抗菌剤と、長効性抗菌剤との混合層を形成してなる抗菌性固形物の製法について、基材をアルミナ、
    初効性抗菌剤を硝酸銀、長効性抗菌剤を金属状態の銀とした場合を例にとり説明する。 この場合の製法は、次のとおりである。 例えば、硝酸銀溶液中に多孔質のアルミナ基材を浸漬させ、必要に応じて真空脱気処理を施しながら硝酸銀を基材中に含浸させる。 このとき、基材上にも硝酸銀が付着する。 さらに試料を引上げ、乾燥させた後、基材表面に露出している付着した硝酸銀に光を所定時間照射すれば、その部分の硝酸銀中の銀イオンの一部が還元され、図3に示す固形物が得られる。

    【0054】図4(a)及び(b)に示した、多孔質の基材に初効性抗菌剤を含浸させ、基材表面上に、長効性抗菌剤からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤からなる層を形成してなる抗菌性固形物の製法について、基材をアルミナ、初効性抗菌剤を硝酸銀、長効性抗菌剤を金属状態の銀とした場合を例にとり説明する。 この場合の製法は、例えば、硝酸銀溶液中に多孔質のアルミナ基材を浸漬させ、必要に応じて真空脱気処理を施しながら硝酸銀を基材中に含浸させる。 このとき、基材上にも硝酸銀が付着する。 さらに試料を引上げ、乾燥させた後、基材表面に露出している付着した硝酸銀に光を充分に照射し、硝酸銀中の銀イオンを還元する。 その後、
    さらに硝酸銀溶液を塗布し、乾燥すると、その上に未還元の硝酸銀層が形成され、図4に示す固形物が得られる。

    【0055】図5(a)及び(b)に示した、基材表面上に、光触媒機能を有する物質からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤と、長効性抗菌剤との混合層を形成してなる抗菌性固形物の製法について、基材をアルミナ、光触媒機能を有する物質をアナターゼ型酸化チタン、初効性抗菌剤を硝酸銀、長効性抗菌剤を金属状態の銀とした場合を例にとり説明する。 この場合の製法は以下のとおりである。 まず基材表面上に、光触媒機能を有する物質またはその前駆体を塗布する。 ここで前駆体とは、光触媒機能を有する物質のゾル、または反応により光触媒機能を有する物質に変化する物質、例えば、光触媒機能を有する物質中の金属元素を含むアルコキシド、有機酸塩、無機酸塩等を言う。 例えば、酸化チタンゾル懸濁液を塗布する。 その後300〜900℃で焼成して酸化チタン層を形成した後、硝酸銀溶液をこの酸化チタン層上に塗布し、所定時間光を照射する。 この方法によれば光照射により、酸化チタン層がない場合と比較して短時間で硝酸銀中の銀イオンが還元され、図5に示す固形物が得られる。

    【0056】図6(a)及び(b)に示した、基材表面上に、光触媒機能を有する物質からなる層を形成し、その上に長効性抗菌剤からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤からなる層を形成してなる抗菌性固形物について、基材をアルミナ、光触媒機能を有する物質をアナタ−ゼ型酸化チタン、初効性抗菌剤を硝酸銀、長効性抗菌剤を金属状態の銀とした場合を例にとり説明する。 この場合の製法は以下のとおりである。 例えば、基材表面上に、酸化チタンゾル懸濁液を塗布後、300〜
    900℃で焼成して酸化チタン層を形成した後、硝酸銀溶液をこの酸化チタン層上に塗布し、充分光を照射して硝酸銀中の銀イオンを還元させる。 その後、さらに硝酸銀溶液を還元銀層上に塗布し、乾燥すると、還元銀層上に未還元の硝酸銀層が形成され、図6に示す固形物が得られる。

    【0057】図7(a)及び(b)に示した、多孔質の基材に初効性抗菌剤を含浸させ、その上に光触媒機能を有する物質からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤と、長効性抗菌剤との混合層を形成してなる抗菌性固形物について、基材をアルミナ、光触媒機能を有する物質をアナターゼ型酸化チタン、初効性抗菌剤を硝酸銀、長効性抗菌剤を金属状態の銀とした場合を例にとり説明する。 この場合の製法は以下のとおりである。 例えば、多孔質のアルミナ基材表面上に、酸化チタンゾル懸濁液を塗布後、300〜900℃で焼成固定する。 その後、硝酸銀溶液中に試料を浸漬させ、必要に応じて真空脱気処理を施しながら硝酸銀を基材中に含浸させる。 このとき、基材上にも硝酸銀が付着する。 このとき、同時に、基材表面に露出している付着した硝酸銀に光を充分に照射し、硝酸銀中の銀イオンの一部を還元するか、またはその後、試料を引き上げた後に、試料表面に光を充分に照射し、硝酸銀中の銀イオンの一部を還元すれば、
    図7に示す固形物が得られる。 ここで、酸化チタンゾルを塗布する前に基材に銀イオンを含浸させるようにしてもよい。 その具体的方法は基材を硝酸銀に含浸させる。

    【0058】図8(a)及び(b)に示した、多孔質の基材に初効性抗菌剤を含浸させ、その上に光触媒機能を有する物質からなる層を形成し、その上に長効性抗菌剤からなる層を形成し、さらにその上に初効性抗菌剤からなる層を形成してなる抗菌性固形物について、基材をアルミナ、光触媒機能を有する物質をアナターゼ型酸化チタン、初効性抗菌剤を硝酸銀、長効性抗菌剤を金属状態の銀とした場合を例にとり説明する。 この場合の製法は以下のとおりである。 例えば、多孔質のアルミナ基材表面上に、酸化チタンゾル懸濁液を塗布後、300〜90
    0℃で焼成固定する。 その後、硝酸銀溶液中に多孔質のアルミナ基材を浸漬させ、必要に応じて真空脱気処理を施しながら硝酸銀を基材中に含浸させる。 このとき、基材上にも硝酸銀が付着する。 この状態で容器上面から光を所定時間照射すれば、基材上に付着した硝酸銀の一部が還元される。 その後、光を照射せずに、または紫外線領域の照度の弱い光に切り換えて、さらに硝酸銀溶液中に浸漬させれば、未還元の硝酸銀が付着し、図8に示す固形物が得られる。

    【0059】以下、本発明の他の一態様の抗菌性固形物について説明する。 従来より知られていたように、金属状態の銀粉末を使用した場合には、対象が流水環境の場合の設備接触部や、ブイヨン等の栄養源が豊富に存在する循環水、静水の場合には抗菌効果が十分でなかった。

    【0060】ここで対象が流水環境の場合に設備接触部に抗菌効果が十分でないのは、金属状態の銀粉末は絶対的な抗菌力が銀イオンより弱いために、十分な抗菌を行うには比較的長時間を要すると考えられるが、流水では設備接触部の1か所に留置されないためと解される。 また対象がブイヨン等の栄養源が豊富に存在する循環水、
    静水の場合に抗菌効果が十分でないのは、特に初期菌数が比較的多い場合に、菌の繁殖を十分に抑え得るほどに銀粉末の抗菌力が強くないためと考えられる。

    【0061】本発明は、上記事情に鑑み、循環水、静水、流水の様々な態様の汚水及びその接触部でも十分な抗菌性を長期にわたって有する固形物を提供することを目的とした。

    【0062】本発明の一態様の抗菌性固形物は、抗菌成分の貯蔵部分と、該貯蔵部分からの抗菌成分の溶出を抑制する抑制層を有することを特徴とする。 この抗菌性固形物は、さらに、抗菌成分を放出する表面層を有してもよい。

    【0063】本発明においては、殺菌性の強い抗菌成分の貯蔵部分と、該貯蔵部分からの殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層を有する。 したがって、殺菌性の強い抗菌成分の貯蔵部分に、殺菌性の強い抗菌成分を多量に貯蔵しうるとともに、抗菌成分の溶出を抑制する層により、殺菌性の強い抗菌成分の外部拡散を抑制しうるようになるので、流水、静水、循環水それぞれについて十分かつ長期にわたり抗菌性を有するようになる。 さらに、殺菌性の強い抗菌成分の貯蔵部分と、該貯蔵部分からの殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層以外に、
    殺菌性の強い抗菌成分を放出する表面層を有するようにすると、初期の抗菌力を強化でき、特に初期に菌の繁殖のひどい部位等の抗菌に対応できるようになるので好ましい。

    【0064】以下に図に基づいて説明する。 図17は、
    本発明の一実施態様を示す図である。 図17(a)の抗菌性固形物は、多孔質の基材23に殺菌性の強い抗菌成分24が貯蔵され、その表面に殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層22が形成されている。 図17(b)
    の抗菌性固形物は、緻密質の基材23'の上に、殺菌性の強い抗菌成分24の層が形成されており、さらにその表面に殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層22が形成されている。

    【0065】図18は、本発明の他の実施態様を示す図である。 この図の抗菌性固形物は、多孔質の基材26に殺菌性の強い抗菌成分24が貯蔵され、その表面に殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層22が形成され、
    さらにその表面に殺菌性の強い抗菌成分を放出する表面層24を有する。 ここで殺菌性の強い抗菌成分とは、処理液体中へ徐放したときに、少なくとも徐放直後においては大きな殺菌効果を有する抗菌成分をいう。 このような抗菌成分には、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンなどの抗菌性金属イオン、次亜塩素酸、オゾン、オゾン含有水、酸性水等がある。 抗菌性金属イオンは、抗菌性金属イオンとして貯蔵されていてもよいし、抗菌性金属イオンを含む物質として貯蔵されていてもよい。

    【0066】殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層は、多孔質の基材の開気孔に固定されている殺菌性の強い抗菌成分の外部拡散の速度を遅延化させる構造であれば基本的にどのようなものでもよい。 例えば、微小な気孔が存在する層、殺菌性の強い抗菌成分を吸着しやすい層等が挙げられる。 殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層の材質も基本的にどのようなものでもよく、例えば、光触媒機能を有する物質、金属状態の抗菌性金属、
    それらの複合層等が挙げられる。

    【0067】ここで光触媒機能を有する物質とは、一定波長以下の光の照射により電子と正孔を生成し、その結果として活性酸素の生成、金属の還元、ハロゲン化物の分解等を促進する物質をいう。 このような物質としては、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、
    三酸化タングステン、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、
    酸化スズ等が挙げられる。 光触媒機能を有する物質には、その活性を高めるために、電子捕捉効果を有する金属が添加されていてもよい。 ここで電子捕捉効果を有する金属とは、白金、銅、銀、パラジウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛等の光触媒物質の有する伝導帯下端のエネルギー準位よりも、正側に伝導帯下端のエネルギー準位を有する金属をいう。

    【0068】殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層の材質も基本的にどのようなものでもよく、例えば、光触媒機能を有する物質、金属状態の抗菌性金属、それらの複合層等が挙げられる。 ここで光触媒機能を有する物質とは、一定波長以下の光の照射により電子と正孔を生成し、その結果として活性酸素の生成、金属の還元、ハロゲン化物の分解等を促進する物質をいう。 このような物質としては、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、三酸化タングステン、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、酸化スズ等が挙げられる。 光触媒機能を有する物質には、その活性を高めるために、電子捕捉効果を有する金属が添加されていてもよい。 ここで電子捕捉効果を有する金属とは、白金、銅、銀、パラジウム、金、
    鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛等の光触媒物質の有する伝導帯下端のエネルギー準位よりも、正側に伝導帯下端のエネルギー準位を有する金属をいう。

    【0069】以下、具体的な評価実験を説明する。 (評価実験1)試料の基材として、直径5mmのボール状の開気孔率62体積%の多孔質のアルミナ基材を準備した。 この基材に、平均粒径0.01μm のアンモニア解膠型酸化チタンゾルをスプレー・コーティング法により全面塗布した。 このチタンゾルを塗布した基材を700
    ℃で1時間焼成する工程を2回繰返した。 その後、焼成した試料を1重量%硝酸銀水溶液に浸漬して、試料中に銀イオンを含浸した。 次いで試料を浸漬させたままの状態で、振とう法により試料を回転させながら、BLBランプを2時間照射して銀イオンを還元して金属状態の銀を基材表面に固定した。 銀固定化の後で、超音波洗浄により、過剰の銀を取除き、その後、試料をよく水洗し、
    乾燥することにより固形物試料Aを得た。

    【0070】得られた固形物の上に固定された酸化チタンの結晶型はアナターゼであった。 銀粒子の大きさは数
    nm〜10nmであった。 固形物には平均10nm程度の細孔がポロシメータにより多数観察された。 固定された銀は0価及び1価の双方が存在することが確認された。

    【0071】また比較のため、以下に示す4つの試料を用意した。 1つは、直径5mmのボール状の銀顆粒試料B
    であり、1つはアパタイトに金属銀を固定した試料Cであり、1つはゼオライトにイオン交換法で銀イオンを固定させた試料Dであり、もう1つはシリカゲルに銀錯イオンを固定させた試料Eである。

    【0072】これらの試料について初期抗菌性、及び、
    長期使用後の抗菌性を評価した。 初期抗菌性は以下のようにして評価した。 まず固形物試料を80体積%エタノールに2時間浸漬し、その後50℃で乾燥させて表面を洗浄した。 同時に、大腸菌( E. coli)の菌液を人工尿(組成は表1)200mlに10 5 CFU採取して試験液を作成した。 この試験液に各種固形物試料を10個ずつ入れ、試験液を30℃ふらん器中で24時間放置した後、試験液中の菌数を調べた。

    【表1】

    【0073】長期使用後の抗菌性は以下のようにして評価した。 まず固形物試料を80体積%エタノールに2時間浸漬し、次いで50℃で乾燥させ、表面を洗浄した。
    次に滅菌したビーカーに人工尿2リットルと各種固形物試料を10個ずつ入れ、1か月放置して長期使用状態を模擬的に実施した。 その後、固形物試料を取出し、オートクレーブ中121℃で20分滅菌した。 次いで、80
    体積%エタノールに2時間浸漬し、50℃で乾燥させ、
    表面を洗浄した。 次いで上述の試験液に各種固形物試料を10個ずつ入れ、試験液を30℃ふらん器で24時間放置した後の試験液中の菌数を調べた。

    【0074】抗菌性評価の結果を表2に示す。

    【表2】

    【0075】初期抗菌性は、銀イオンを有する試料A、
    D、Eでは、生菌数が10CFU以下まで減少し、優れた殺菌性を示した。 それに対して、金属銀粒子からなる試料B、Cでは10 2 〜10 4 CFU程度までしか減少せず、ある程度の制菌性を示すが充分な殺菌力は有しないことが判明した。

    【0076】長期使用後の抗菌性は、金属銀等の長期にわたり制菌性を有する抗菌成分を有さない試料D、Eでは全く抗菌性を示さず、かえって菌数は初期菌数に対して1,000〜10,000倍に増加した。 また金属銀粒子からなる試料B、Cでは、試料D、Eよりは菌数が少なく、若干の長期的な制菌作用が観察されるものの、
    やはり菌数は初期菌数に対して100〜1,000倍増加した。 それに対し、固形物試料Aでは、生菌数が初期菌数に対して1/100〜1/1,000程度にまで減少し、優れた抗菌性が長期にわたり維持された。 試料B
    〜Eとの比較の結果より、試料Aが、初期及び長期使用後の優れた抗菌性を有していることが判明した。 その理由は、固形物試料Aが初期に強い殺菌性を有する銀イオンと、長期にわたり制菌性を有する金属銀の双方を有しているためと解される。 また、光照射固定された金属銀の層が、基材中に含浸された銀イオンの溶出抑制層となって、銀イオンを適当な速度で徐放するのに役立ったためと解される。

    【0077】(評価実験2)以下の2形態の多孔質アルミナ基材を準備した。 チョーク:直径10mm×長さ74mm、開気孔率55体積%、 ボール:直径5mm、開気孔率62%体積%、 チョークはα−Al 2 O 3粉末に、粒土、炭酸カルシウム等の焼結助剤を添加し、焼成して得た。 開気孔率のコントロールは焼結助剤の量を変化させて行った。 ボールは活性アルミナ(γ−Al 2 O 3 )を出発原料の主成分として作製することで多孔質基材を得た。 得られた焼成体は粉末X線回析により、チョークでは大部分がコランダム(α
    −Al 2 O 3 )であり、微量のムライト及びアノーサイトも生成していた。 ボールでは結晶性の悪いγ−Al 2 O 3石英から構成されていた。

    【0078】それぞれの基材を、硝酸銀水溶液に2時間浸漬させ、その後引上げて光を照射しながら乾燥させた。 この工程により銀イオンを含有するとともに金属銀(還元)を有する試料F(チョーク)及びG(ボール)
    を作製した。

    【0079】さらに、別のチョーク状基材、ボール状基材のそれぞれに、平均粒径0.01μm のアンモニア解膠型酸化チタンゾルをスプレー・コーティング法により塗布し、750℃で2時間焼成して、基材上にアナターゼ型酸化チタンを固定した。 その後、それらの基材を硝酸銀水溶液に2時間浸漬させながら、水溶液容器上方からBLBランプを照射して還元銀及び銀イオンを固定させた後、乾燥させて試料H(チョーク)、I(ボール)
    を作製した。

    【0080】試料F〜Iについて、ポロシメータにより開気孔径及びその分布を調べた結果を表3に示す。 F、
    Hは平均開気孔径が大きく、G、Iは、平均径が小さい。

    【表3】

    【0081】これらの試料を用いて以下に示す抗菌試験を行い、併せて銀イオンの溶出量も調べた。 抗菌試験は次のように行った。 まず表1に示す組成を有する人工尿200mlに、上記試料を、F、Hでは2個、G、Iでは10個入れ、さらに大腸菌( E. coli) 10 4 CFU/ml
    入れて、24時間浸漬試験を5回繰り返した。 浸漬後、
    試料F〜Iを取り除いた試験液について生存する菌数と銀イオン濃度を調べた。 生存する菌数に関する結果を表4に、銀イオン濃度に関する結果を表5に示す。 ここで銀イオン濃度は原子吸光法にて調べた。

    【表4】

    【表5】

    【0082】上記結果から以下のことが判明した。 各試料は、抗菌成分である銀イオンを消費する塩素イオン、
    及び、ブイヨン等の菌の栄養源、を豊富に含む人工尿中であって、さらに初期菌数10 4 CFU/mlという比較的高濃度の菌に対しても、長期にわたり制菌性を示した。 各試験液中の銀イオン濃度は、24時間浸漬を繰り返すに従って徐々に減少する傾向にあるが、急激な低下はみられない。

    【0083】(評価実験3:銅)上記と同じボール状アルミナ基材に、平均粒径0.01μm のアンモニア解膠型酸化チタンゾルをスプレー・コーティング法により全面塗布し、700℃で1時間焼成した。 次いで、1重量%酢酸銅水溶液に浸漬させ、振とう法により試料を回転させながら、紫外線照度0.5mW/cm 2のBLBランプを4時間照射する工程により、銅イオン及び金属銅を固定させた。 次いで、超音波洗浄により過剰の銅を取除いた。 その後、よく水洗して固形物試料を得た。 得られた試料の上に固定された酸化チタンの結晶型はアナターゼであった。 銅粒子の大きさは数nm〜10nmであった。 ポロシメータによる観察の結果、試料表面には、平均径1
    0nm程度の細孔が多数観察された。

    【0084】これら試料について初期抗菌性、及び、繰返し使用時の抗菌性を評価した。 ここで、初期抗菌性は以下のようにして評価した。 試験液として、大腸菌( E.
    coli)又は黄色ブドウ球菌( S. aureus)の菌液を人工尿培地で10 6 〜10 1 CFU/mlに調製したものを1ml
    試験管に採取した。 この試験液に、試料を1個入れ、3
    0℃で18時間放置し、このときの菌の生存状況を評価した。 評価の指標を下記に示す。 3+:抗菌剤をいれないときと、菌の懸濁、沈殿状態が変わらない。 2+:培地の懸濁は少なく管底に沈殿を認める。 1+:培地の懸濁はなく、管底に沈殿を認める。 − :沈殿もなく、菌はないと断定できる。 ただし、−を示した試料では、菌の生残は不明なので、
    反応残液10μl を新たな人工尿培地5mlに再接種し、
    残存する菌による増殖の有無を確認した。 この評価指標を下記に示す。 *印=残存する生菌はない。 無印=残存する菌あり。

    【0085】繰返し使用時の抗菌性は以下のようにして評価した。 初期抗菌性の評価に用いたのと同じ試験液を1ml試験管に採取した。 その試験液中に、初期抗菌性評価で使用した後に洗浄、オートクレーブ(121℃、2
    0分)滅菌した試料を入れ、再び30℃で18時間放置した。 このときの菌の生存状況を評価した。 評価の指標は初期抗菌性評価のときと同様である。

    【0086】大腸菌( E. coli)及び黄色ブドウ球菌( S.
    aureus)に対する初期抗菌性及び繰返し使用時の抗菌性の評価結果を表6に示す。 その結果、銅イオン及び銅を担持した固形物試料においても、充分な初期抗菌性及び繰返し使用時の抗菌性を有することが判明した。

    【表6】

    【0087】(評価実験4:風呂水)上記と同じボール状基材に、平均粒径0.01μm のアンモニア解膠型酸化チタンゾルをスプレー・コーティング法により全面塗布し、700℃で1時間焼成する工程を2回繰り返した。 次いで、試料を1重量%硝酸銀水溶液に浸漬させ、
    振とう法により試料を回転させながら、BLBランプを2時間照射する工程により、銀イオン及び金属銀を固定した。 次いで、超音波洗浄することにより過剰の銀を取除いた。 その後、よく水洗して固形物試料を得た。 得られた試料の上に固定された酸化チタンの結晶型はアナターゼであった。 また固定された銀は0価及び1価の双方が存在することが確認された。

    【0088】この試料(抗菌性固形物)20個を、図1
    0に示すような公衆浴場の浴槽水の循環装置中に配置し、14日間連続で水を循環させた。 そのときの風呂水の変化を観察した。 その結果、抗菌性固形物を循環装置中に配置しなかった場合の風呂水と比較して濁り具合には特異な差が認められなかったが、下記2つの違いが観察された。 (1)抗菌性固形物を配置しなかった場合の風呂水の場合は、水槽中にスライム状のぬめり、並びに、菌と思われる有機系の沈殿物が観察された。 それに対し、抗菌性固形物を配置した場合は、ぬめりも沈殿物も認められなかった。 (2)抗菌性固形物を配置しなかった場合の風呂水の場合は、かなり強いどぶ水臭がしたが、抗菌性固形物を配置した場合はどぶ水臭はなかった。 以上の模擬実験の結果から、この固形物を、浴槽、プール、人工噴水等の貯水槽などの循環路に配置することで、これらの水を有効に浄化できると考えられる。

    【0089】(評価実験5:トラップ)上記と同じボール状基材に、平均粒径0.01μm のアンモニア解膠型酸化チタンゾルをスプレー・コーティング法により全面塗布し、700℃で1時間焼成する工程を2回繰返した。 次いで、試料を1重量%硝酸銀水溶液に浸漬させ、
    振とう法により試料を回転させながら、BLBランプを2時間照射して銀イオン及び銀を固定した。 次いで、超音波洗浄することにより過剰の銀を取除いた。 その後、
    よく水洗して固形物試料を得た。 得られた試料の上に固定された酸化チタンの結晶型はアナターゼであった。 また固定された銀は0価及び1価の双方が存在することが確認された。

    【0090】実際に使用している小便器のトラップ部(図11参照)に上記固形物試料(抗菌性固形物)を1
    0個載せ、1か月放置することにより、トラップ部内壁及びサナの汚れ具合を調べた。 図11中で、11は小便器、12はサナ、13はトラップ、14は便器滞留水である。 その結果、抗菌性固形物を載せない小便器のトラップ部内壁及びサナは山吹色に変色していたが、抗菌性固形物を載せた小便器のトラップ部内壁及びサナはわずかに黄色味がかった程度に止まり、この抗菌性固形物が、小便器のトラップ部内壁及びサナの汚れ防止に顕著な効果を有することが判明した。

    【0091】(評価実験6:銀溶出濃度)評価実験1で用いた固形物試料Aについて銀の溶出量の時間的変化を調べた。 銀の溶出量は以下の方法により評価した。 試料Aを、80体積%エタノールに2時間浸漬後、50℃で2時間乾燥した。 この試料Aを、人工尿培地200mlとともに滅菌ビーカーに10個入れ、30℃ふらん器で所定時間放置した。 次いで、人工尿培地を0.45μm のメンブランフィルタで濾過した後に蒸留水中に溶出した。 この蒸留水中に溶出した銀溶出量を、原子吸光(日立6000フレーム式)により定量分析した。 銀の溶出量は蒸留水中の銀重量濃度の変化として算出した。

    【0092】銀濃度の変化を図12に示す。 図より銀の溶出量(濃度ラインの傾き)は初期に特に多いことがわかる。 その後、銀溶出濃度は、1日程度経過後に、0.
    6〜0.7mg/リットルでほぼ一定になった。 したがって、溶液中に銀イオンが一定量放出すると、銀イオンの放出が抑制される機構が働くことがわかる。 評価実験1
    において本試料は1か月間にわたり抗菌性が維持されたことから、静水においては、この程度の銀溶出濃度を維持することができれば、かなり長期にわたり抗菌効果を維持できるものと考えられる。

    【0093】次に、上記試験を1度行った試料を回収し、再び80体積%エタノールに2時間浸漬後、50℃
    で2時間乾燥した。 この固形物試料Aを人工尿培地20
    0mlとともに滅菌ビーカーに10個入れ、30℃ふらん器で所定時間放置する試験を数回繰り返した。

    【0094】結果を図13に示す。 図より1回目のみはやや他より銀溶出量が多いようであるが、これは固形物試料表面に付着した銀イオンの影響であると考えられる。 その後は、2回目〜6回目までいずれも銀溶出濃度の時間的変化を示す曲線は同様の傾向を示し、初期に特に濃度増が多く、1日程度経過後に濃度が0.4〜0.
    6mg/リットルでほぼ一定になる傾向が繰返されることが判明した。 したがって、溶液中の銀イオン濃度が0になると、再び溶液中に銀イオンが一定量放出し、一定量放出すると銀イオンの放出が抑制される機構が働くことがわかる。 この機構は、銀溶出濃度を自動調整する機構あるいは銀イオンの放出量を自動的に制御する機構ともいえる。

    【0095】この傾向は以下のように説明される。 評価実験1で作製した固形物試料Aは、多孔質のアルミナ基材中に銀イオンが含浸され、その表面にポーラスなアナターゼ型酸化チタン粒子(平均結晶子径10〜40nm)
    層が形成され、その酸化チタン粒子間の隙間には該酸化チタン粒子の光触媒作用により金属状態の銀粒子(平均結晶粒径1〜10nm)が固定されている。 さらにその上には余分に担持された銀イオンが少量存在する。 銀イオンは硝酸イオン等の陰イオンとともに電気的中性を保持しながら固定されている。

    【0096】時間の経過とともに光還元により析出する銀粒子により、試料Aの表面に存在する孔にフタをされるため、基材の多孔質部に蓄えられた銀イオンの溶出が抑制される。 この銀析出反応は、液中の銀イオンの析出反応であり、逆反応である金属銀の液中への溶解反応と平衡関係にある。 そのため液中の銀溶出濃度が0.1〜
    1ppm (抗菌に充分な濃度)に達すると上記平衡が成立し、液中には銀イオンがみかけ上溶出していないような状態になる。 しかし、次回使用時には、液中の銀溶出濃度が初期には0になるので再び溶出が起こり、液中の銀溶出濃度が0.1〜1ppm に達するまで溶出する。 このようにして1回使用当りの銀溶出量が節約され、複数回使用に耐えるようになっていると考えられる。

    【0097】この機構を明らかにするために、後述する評価実験14において、固形物試料浸漬時に固形物に照射される紫外線の照度を変化させて、銀溶出量の浸漬時間に対する傾向の変化を観察した。

    【0098】(評価実験7:銀溶出濃度)硝酸銀を超純水に溶解して銀量換算で100mg/リットルの溶液を調製した。 この溶液を人工尿で希釈することにより銀濃度の異なる何種類かの培地を調製した。 この培地2mlに大腸菌( E. coli)の菌液を0.1ml添加し、菌濃度10 5
    CFU/mlになるようにした。 次いで、培地を30℃ふらん器中で18時間置き、菌に銀を作用させた。 その後、培地に1g/リットルのヨウ化カリウム水溶液を加えて、銀をヨウ化銀として沈殿回収した後、試験後の生菌数を測定した。

    【0099】図14は、銀濃度と生菌数との関係を示すグラフである。 このグラフより、溶液中の銀濃度が0.
    1mg/リットル以上になると、人工尿のような多くの塩素イオン(0.17mol /リットル)を含む溶液系であっても、充分な抗菌効果が発現することが判明した。

    【0100】一方、評価実験1における固形物試料A、
    C、D、Eを、2リットルの人工尿に4週間浸漬させた後に、再び18時間人工尿に浸漬させた際の銀溶出濃度を測定した。 結果を表7に示す。 試料C、D、Eでは銀溶出量は0.1mg/リットルに達していない。 そのため評価実験1において、試料C、D、Eの長期使用後の抗菌効果がなかったものと考えられる。 それに対し、試料Aでは銀溶出濃度が0.1mg/リットル以上となっており、そのためかかる塩素イオン濃度の多い状況(用途)
    でも充分に対応でき、かつ複数回の使用にも耐えられるものになったと考えられる。

    【表7】

    【0101】(評価実験8:焼成温度変化)評価実験2
    で用いたのと同じチョーク状基材を、平均粒径0.01
    μm のアンモニア解膠型酸化チタンゾル中に10分間浸漬させることにより酸化チタンゾルを基材に全面塗布し、次いでこの試料を650℃、700℃、750℃、
    800℃で1時間焼成した。 次いで1重量%硝酸銀水溶液に浸漬させながら、BLBランプを2時間照射して銀イオン及び金属銀を固定させた。 次いで、超音波洗浄により、過剰の銀を取除き、その後、よく水洗し、乾燥して固形物試料O、P、Q、Rを得た。 得られた固形物の上に固定された酸化チタンの結晶型はアナターゼであった。 銀粒子の大きさは数nm〜10nmであった。 ポロシメータを用いた観察において、固形物表面には平均径10
    nm程度の細孔が観察された。

    【0102】得られた試料について、酸化チタンの平均結晶子径及び繰返し使用後の銀溶出溶出量を調べた。 酸化チタンの平均結晶子径は、粉末X線回折により求めた。 繰返し使用後の銀溶出量は、蒸留水100ml中に試料を入れて24時間放置し、その後に試料を再び新しい蒸留水100mlに入れ替え24時間放置する操作を3回繰返し、その3回目の24時間放置後の蒸留水中の銀溶出濃度を原子吸光法により求めた。

    【0103】結果を表8に示す。 表より、酸化チタン焼成温度の上昇に伴い、酸化チタンの平均結晶子径は10
    nmから40nmになるが、銀溶出量はいずれの温度でも0.1〜1mg/リットルの範囲内にあり、良好な結果を示した。

    【表8】

    【0104】(評価実験9:ゾル浸漬時間変化)酸化チタンゾルへの浸漬時間を2秒〜1時間の範囲で操作したのを除いて試料Aと同様の方法で試料を作製し、単位面積当りの酸化チタン担持量及び繰返し使用後の銀溶出量を調べた。 単位面積当りの酸化チタン担持量は、酸化チタンゾル塗布焼成後の試料重量と酸化チタンゾル塗布前の基材の重量との差を求め、この重量差を基材の表面積で除して算出した。 繰返し使用後の銀溶出溶出量は、上述の評価試験8と同様の方法で評価した。

    【0105】結果を表9に示す。 表より、酸化チタンゾル中への基材の浸漬時間の増加に伴い、単位面積当りの酸化チタン担持量は増加するが、そのときの繰返し使用後の銀溶出量(銀溶出濃度)はほとんど影響を受けず、
    15mg/cm 2程度でも0.4〜0.6mg/リットルと充分であった。

    【表9】

    【0106】(評価実験10:硝酸銀濃度変化)硝酸銀水溶液の濃度を下記のように振った以外は試料Aと同様の方法で試料を作製した。 得られた試料について繰返し使用後の銀溶出溶出量を調べた。 繰返し使用後の銀溶出溶出量は、上述の評価試験8と同様の方法で評価した。

    【0107】実験結果のグラフを図15に示す。 このグラフより、硝酸銀水溶液中の銀重量濃度が5重量%までは、銀重量濃度の増加とともに繰返し使用後の銀溶出濃度(銀溶出量)も増加することが分る。 しかし、それ以上銀重量濃度を上げても銀溶出濃度は一定となった。 また繰返し使用後の銀溶出濃度は、硝酸銀水溶液中の銀重量濃度を0.3重量%以上にすれば、0.1mg/リットル以上となり充分な抗菌性を有するようになった。

    【0108】ここで硝酸銀水溶液中の銀重量濃度を0.
    3重量%以上にすると充分な抗菌性を有するだけの銀溶出量となるのは、充分な量の銀溶出が多孔質基材及び光触媒層に含浸されるようになるためと考えられる。

    【0109】(評価実験11:硝酸銀浸漬時間変化)硝酸銀水溶液への浸漬時間を2秒〜1時間の範囲で操作したのを除いて試料Aと同様の方法で試料を作製し、繰返し使用後の銀溶出溶出量を調べた。 繰返し使用後の銀溶出量は、上述の評価試験8と同様の方法で評価した。

    【0110】実験結果のグラフを図16に示す。 このグラフより、浸漬時間の増加とともに繰返し使用後の銀溶出量も増加し、2分をこえると繰返し使用後の銀溶出量は0.1mg/リットル以上となり充分な抗菌性を有するようになることが分る。 ここで浸漬時間2分以上にすると充分な抗菌性を有するだけの銀溶出量となるのは、充分な量の銀溶出が多孔質基材及び光触媒層に含浸されるようになるためと考えられる。

    【0111】(評価実験12:銀、銅比較)試料Aを得たのと同じ方法により銀担持固形物試料Sを得た。 一方、評価実験3と同じ方法により銅担持固形物試料Tを得た。 得られた試料S、Tについて真菌に対する効果、
    及び細菌に対する効果を調べた。

    【0112】真菌に対する高価は以下のように評価した。 真菌のカンジタ( C. albicans)を0.9%グルコースを含むブイヨン培地で10 7 〜10 1 CFU/mlに調製したものを1ml試験管に採取し、そこに抗菌剤試料を1個入れ、30℃で18時間放置した。 このときの菌の生存率について評価した。 評価の指標を下記に示す。 3+:抗菌剤をいれないときと菌の懸濁、沈殿状態が変わらない。 2+:培地の懸濁は少なく管底に沈殿を認める。 1+:培地の懸濁はなく、管底に沈殿を認める。 − :沈殿もなく、真菌はないと断定できる。 ただし、−を示した試料では、菌の生残は不明なので、
    反応残液10μl を新たな人工尿培地5mlに再接種し、
    残存する菌による増殖の有無を確認した。 この評価指標を下記に示す。 *印=残存する生菌はない。 無印=残存する菌あり。

    【0113】細菌に対する公開は以下のようにして評価した。 レイ菌( S.marcescens)の菌液を人工尿培地で1
    7 〜10 1 CFU/mlに調製したものを1ml試験管に採取し、そこに抗菌剤試料を1個入れ、30℃で18時間放置した。 このときの菌の生存率について評価した。
    評価の指標は上記真菌の場合と同じとした。

    【0114】真菌に対する実験結果を表10に示す。 表10より分るように、試料S、Tともに10 3 CFU/
    ml以下の菌濃度では−と優れた抗真菌性を示した。 また試料S、Tを比較すると銅を担持した固形物Tのほうが真菌に対して優れた特性を示した。

    【表10】

    【0115】細菌に対する実験結果を表11に示す。 表11より分るように、試料S、Tともに10 5 CFU/
    ml以下の菌濃度では−と優れた抗菌性を示した。 また試料S、Tを比較すると銀を担持した固形物Sのほうが細菌に対して優れた特性を示した。

    【表11】

    以上のことから上記固形物において銀と銅の双方を固定すれば、抗菌性と抗真菌性を兼ね備えた固形物になると考えられる。

    【0116】(評価実験13)(浴槽水に対する効果) 5mmφのボール状の開気孔率62体積%の多孔質のアルミナ基材に、平均粒径0.01μm のアンモニア解膠型酸化チタンゾルをスプレー・コーティング法により全面塗布し、700℃で1時間焼成する工程を2回繰返した。 次いで、1重量%硝酸銀水溶液に浸漬させ、振とう法により試料を回転させながら、BLBランプを2時間照射する工程により銀を固定させた。 その後、超音波をかけることにより、過剰の銀を取除いた。 そして、よく水洗し、乾燥することにより固形物試料Aを得た。 得られた固形物の上に固定された酸化チタンの結晶型はアナターゼであった。 銀粒子の大きさは数nm〜10nmであった。 固形物には平均10nm程度の細孔がポロシメータにより多数観察された。 固定された銀は0価及び1価の双方が存在することが確認された。

    【0117】これら試料について初期抗菌性及び長期使用後の抗菌性を評価した。 初期抗菌性は以下のようにして評価した。 まず固形物試料を80体積%エタノールに2時間浸漬し、50℃で乾燥させて表面を洗浄した。 次いで大腸菌( E. coli)の菌液を人工尿(組成は表1)2
    00mlに10 5 CFU採取し、そこに固形物試料10個を入れ、30℃ふらん器で24時間放置した後の菌数を調べた。

    【0118】長期使用後の抗菌性は以下のようにして評価した。 まず固形物試料を80体積%エタノールに2時間浸漬し、50℃で乾燥させて表面を洗浄した。 次に滅菌したビーカーに人工尿2リットルと固形物試料10個を入れ、1か月放置した。 その後固形物を取出し、オートクレーブ中121℃で20分滅菌し、80体積%エタノールに2時間浸漬し、50℃で乾燥させて表面を洗浄した。 次いで大腸菌( E. coli)の菌液を人工尿(組成は表1)200mlに10 5 CFU採取し、そこに固形物試料1
    0個を入れ、30℃ふらん器で24時間放置した後の菌数を調べた。

    【0119】初期抗菌性、長期使用後の抗菌性それぞれについての結果を図9に示す。 いずれの評価においても、生菌数が10CFU 以下まで減少し、優れた殺菌性を示した。 したがって本発明の試料は人工尿のような多イオン溶液ばかりでなく、浴槽水に対しても効果があることが判明した。

    【0120】(評価実験14)評価実験6で述べたように、本発明に係る抗菌性固形物は、繰返し使用時において溶液中の銀イオン濃度を0にすると、再び溶液中に銀イオンが必要量放出し、必要量放出すると、殺菌成分の放出が抑制される機構が働く。 そしてその理由は、光還元による銀析出反応と金属銀の液中への溶解反応との平衡が、液中の銀イオン濃度がある一定値に達すると成立するためと考察した。

    【0121】この機構を明らかにするために固形物試料浸漬時に固形物に照射される紫外線の照度を変化させて、銀溶出量の浸漬時間に対する傾向の変化を観察した。 実施例6で用いた試料をビーカー内で純水中に浸漬させながら、紫外線照度の異なる光を上方から照射し、
    そのときの24時間浸漬後の銀溶出量を求めた。 結果を図19に示す。 その結果、紫外線照度0μW/cm 2では銀溶出量が2mg/リットルであるのに対し、1μW/cm 2では1mg/リットル、20μW/cm 2では0.5mg/リットル、500μW/cm 2では0.03mg/リットルとなり、
    紫外線照度が大きい程、溶出量が小さくなる傾向が確認された。 このことは紫外線照度が大きいと、光還元による銀析出反応がより進行して、上記平衡が析出濃度が高い方向、すなわち溶解濃度が低い方向にずれるためと解される。

    【0122】さらに、紫外線の照度を変化させることにより、銀溶出量を変化させることが可能である。 例えば上記結果より室内照明(通常の紫外線照度1〜100μ
    W/cm 2 )程度では、0.1〜1mg/リットルの溶出量となり、人工尿のような多くイオンを含む非処理液においても充分な抗菌性を有し、かつ使用銀量を節約することができる。

    【0123】また、表12に示されているように、超純水中においては溶液中の銀イオン濃度が1μg /リットル程度でも充分な抗菌性を有する。 表12は次のようにして得たものである。 まず、硝酸銀を超純水中に所定濃度溶解後、大腸菌( E. coli)の菌液を添加し、菌濃度2
    ×10 5 CFU/ml になるようにした。 その後、30℃ふらん器中で2時間菌に銀を作用させ、その後、1g/リットルのヨウ化カリウム水溶液を加えて、銀をヨウ化銀として沈殿回収した後、試験後の生菌数を測定したときの溶液中の銀イオン濃度に対する生菌数を測定した。 したがって、純水のように溶液中のイオン量が少ない被処理液においては、より紫外線照度の大きい光源(メタルハライドランプ、BLBランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀灯等)で照射するようにすればさらに使用銀量を節約することができる。

    【表12】

    【0124】また、比較のため、銀イオン担持ゼオライトをPBS(10mmol/リットルのpH7のNa 2 HPO
    4 −NaH 2 PO 4緩衝液に0.8%塩化ナトリウムを添加した溶液)500mlに16時間5g浸漬(銀担持量は300ml/リットル分に相当)させた。 その結果、従来の銀イオン担持固形物である銀イオン担持ゼオライトでは、PBSのような多くイオンを含む被処理液中では264mg/リットルとほとんどの銀イオンが溶出してしまった。 それに対し、本発明の固形物では暗時においても24時間浸漬で2mg/リットル程度しか溶出せず、充分な抗菌性があるにもかかわらず、使用銀量を節約することができることが判明した。

    【0125】(評価実験15:浴槽水浸漬複数回使用試験)三角フラスコに大腸菌( E. coli)の菌液を10 5 CFU
    添加した浴槽水200mlを入れ、その中に評価実験13
    と同様にして作製した固形物試料10個を浸漬させ、3
    0℃ふらん器中で24時間放置した後の抗菌性をまず調べた。 その後、浴槽水を入れ替え、前に浸漬させた試料を再び新たに入れた大腸菌( E. coli)の菌液を10 5 CFU
    添加した浴槽水200mlに浸漬させ、その後の抗菌性を調べる試験を繰返した。

    【0126】また比較のため固形物試料と同体積の種々の銀担持体について同様の試験を行った。 結果を図20
    に示す。 図より銀イオン担持型の銀イオン担持ゼオライト、銀イオン担持シリカゲル、金属銀担持型の銀担持アパタイトでは10日程度で制菌性を失ったのに対し、本発明の固形物では少なくとも15日経過した後も充分な抗菌性を有することが判明した。

    【0127】

    【発明の効果】本発明の抗菌性固形物は、初効性抗菌剤と、長効性抗菌剤の双方を有するので循環水、静水、流水という様々な態様の汚水及びその接触部に対して、充分な抗菌性を長期にわたって維持することができる。

    【図面の簡単な説明】

    【図1】本発明の実施例を示す模式図で、(a)は全体図、(b)は拡大図である。

    【図2】本発明の別実施例を示す模式図で、(a)は全体図、(b)は拡大図である。

    【図3】本発明の別実施例を示す模式図で、(a)は全体図、(b)は拡大図である。

    【図4】本発明の別実施例を示す模式図で、(a)は全体図、(b)は拡大図である。

    【図5】本発明の別実施例を示す模式図で、(a)は全体図、(b)は拡大図である。

    【図6】本発明の別実施例を示す模式図で、(a)は全体図、(b)は拡大図である。

    【図7】本発明の別実施例を示す模式図で、(a)は全体図、(b)は拡大図である。

    【図8】本発明の別実施例を示す模式図で、(a)は全体図、(b)は拡大図である。

    【図9】評価実験13における、1か月浴槽水浸漬前後の時間と菌数との関係を示すグラフである。

    【図10】評価実験4の浴槽水循環装置を示す模式図である。

    【図11】評価実験5の小便器を示す模式図である。

    【図12】評価実験6における、抗菌性固形物の被処理液への浸漬時間と、被処理液の銀イオン濃度との関係を示すグラフである。

    【図13】評価実験6における、繰り返し浸漬試験における図12と同様のグラフである。

    【図14】評価実験7における、培地のAgイオン濃度と18時間後生菌数との関係を示すグラフである。

    【図15】評価実験10における、硝酸銀水溶液中の銀重量濃度と抗菌性固形物を浸漬した被処理液中の銀イオン濃度との関係を示すグラフである。

    【図16】評価実験11における、硝酸銀水溶液中への浸漬時間と抗菌性固形物を浸漬した被処理液中の銀イオン濃度との関係を示すグラフである。

    【図17】本発明の1実施例にかかる抗菌性固形物の表面構造を模式式に示す図である。

    【図18】本発明の1実施例にかかる抗菌性固形物の表面構造を模式式に示す図である。

    【図19】評価実験14における、紫外線照度と銀溶出量との関係を示すグラフである。

    【図20】評価実験15における、抗菌性固形物の被処理液への浸漬日数と、被処理液中における初期菌数に対する生菌率との関係を示すグラフである。

    【符号の説明】

    1 基材 2 制菌性成分 3 殺菌性の強い成分 4 光触媒層 5 貯水槽 6 抗菌性を有する固形物 7 流路 8 ポンプ 11 小便器 12 サナ 13 トラップ 14 便器滞留水 22 殺菌性の強い抗菌成分の溶出を抑制する層 23 基材 24 殺菌性の強い抗菌成分

    ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) C02F 1/50 ZAB C02F 1/50 ZAB 510 510A 520 520K 520L 520Q 531 531E 531F 540 540F 550 550L 560 560C C23C 18/04 C23C 18/04 18/14 18/14 (31)優先権主張番号 特願平7−80647 (32)優先日 平成7年3月1日(1995.3.1) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−278243 (32)優先日 平成6年10月5日(1994.10.5) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 則本 圭一郎 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 渡部 俊也 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 木村 太門 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内

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