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多環芳香族化合物

阅读:1040发布:2020-05-13

专利汇可以提供多環芳香族化合物专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且ホウ素 原子 と窒素原子などで複数の芳香族環を連結した新規な多環 芳香族化合物 を提供することで、有機EL素子用材料の選択肢を増やす。また、新規な多環芳香族化合物を有機電界発光素子用材料として用いることで、優れた有機EL素子を提供する。,下面是多環芳香族化合物专利的具体信息内容。

下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物。 (上記式(1)中、 A環、B環、C環およびD環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの素は置換されていてもよく、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環、C環および/またはD環と結合していてもよく、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオまたは置換されていてもよいヘテロアリールチオであり、Z1は連結基または単結合で前記A環と結合してもよく、Z2は連結基または単結合で前記C環と結合してもよく、そして、 式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)A環、B環、C環およびD環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、A環およびB環はY、X1およびX2から構成される上記式左の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、C環およびD環はY、X3およびX4から構成される上記式右の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、Rにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記A環、B環、C環および/またはD環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素またはアルキルであり、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオまたはヘテロアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、Z1は、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記A環と結合していてもよく、Z2は、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記C環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素またはアルキルであり、そして、 式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、 請求項1に記載する多環芳香族化合物。下記一般式(2)で表される、請求項1に記載する多環芳香族化合物。 (上記式(2)中、 R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、R5〜R7およびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環および/またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたは炭素数1〜6のアルキルであり、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環、b環、c環および/またはd環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素または炭素数1〜6のアルキルであり、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオまたはヘテロアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、Z1は、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環と結合してもよく、Z2は、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記c環と結合してもよく、前記−C(−R)2−のRは水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、そして、 式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリールオキシまたは炭素数6〜12のアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、また、R5〜R7およびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環および/またはd環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>Oまたは>N−Rであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜4のアルキルであり、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリールオキシ、炭素数2〜30のヘテロアリールオキシ、炭素数6〜30のアリールチオまたは炭素数2〜30のヘテロアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数1〜12のアルキルまたはトリアルキル置換シリル(ただしアルキルは炭素数1〜6のアルキル)で置換されていてもよく、そして、 式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、 請求項3に記載する多環芳香族化合物。R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルであり、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>Oまたは>N−Rであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜4のアルキルであり、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、炭素数6〜16のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールオキシまたは炭素数6〜12のアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、そして、 式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、 請求項3に記載する多環芳香族化合物。下記いずれかの式で表される、請求項1に記載の多環芳香族化合物。 (上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜10のアリール、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、式中のRはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、R100は、それぞれ独立して、炭素数6〜10のアリール、カルバゾリル、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜10のシクロアルキル、または、炭素数6〜10のアリールオキシであり、前記アリールは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、前記カルバゾリルは炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい。)請求項1〜6のいずれかに記載する多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。前記有機デバイス用材料は、有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料である、請求項7に記載する有機デバイス用材料。前記有機電界発光素子用材料が発光層用材料である、請求項8に記載する有機デバイス用材料。有機電界発光素子の発光層を塗布形成するための発光層形成用組成物であって、 第1成分として、少なくとも1種の請求項1〜6のいずれかに記載する多環芳香族化合物と、 第2成分として、少なくとも1種のホスト材料と、 第3成分として、少なくとも1種の有機溶媒と、 を含む発光層形成用組成物。陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、請求項9に記載する発光層用材料を含有する発光層とを有する、有機電界発光素子。陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、請求項10に記載する発光層形成用組成物を塗布・乾燥して形成した発光層とを有する、有機電界発光素子。前記発光層はさらに下記一般式(3)で表される化合物および/または下記一般式(4)で表される化合物を含有する、請求項11または12に記載の有機電界発光素子。 (上記式(3)中、L1は炭素数6〜24のアリーレンであり、 上記式(4)中、L2およびL3は、それぞれ独立して、炭素数6〜30のアリールまたは炭素数2〜30のヘテロアリールであり、 上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)前記発光層はさらに下記一般式(5)で表される化合物を含有する、請求項11〜13のいずれかに記載の有機電界発光素子。 (上記式(5)において、 R1〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノまたはアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、 R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、 式(5)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、ハロゲンまたは重水素で置換されてもよい。前記陰極と該発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体およびキノリノール系金属錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項11〜14のいずれかに記載する有機電界発光素子。前記電子輸送層および/または電子注入層が、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項15に記載の有機電界発光素子。請求項11〜16のいずれかに記載する有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。

说明书全文

本発明は、多環芳香族化合物と、これを用いた有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタおよび有機薄膜太陽電池などの有機デバイス、並びに、表示装置および照明装置に関する。

従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料からなる有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の1つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。

有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。

発光層用材料としては、例えばベンゾフルオレン系化合物などが開発されている(国際公開第2004/061047号公報)。また、正孔輸送材料としては、例えばトリフェニルアミン系化合物などが開発されている(特開2001-172232号公報)。また、電子輸送材料としては、例えばアントラセン系化合物などが開発されている(特開2005-170911号公報)。

また、近年では有機EL素子や有機薄膜太陽電池に使用する材料としてトリフェニルアミン誘導体を改良した材料も報告されている(国際公開第2012/118164号公報)。この材料は既に実用化されていたN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)を参考にして、トリフェニルアミンを構成する芳香族環同士を連結することでその平面性を高めたことを特徴とする材料である。この文献では例えばNO連結系化合物(63頁の化合物1)の電荷輸送特性が評価されているが、NO連結系化合物以外の材料の製造方法については記載されておらず、また、連結する元素が異なれば化合物全体の電子状態が異なるため、NO連結系化合物以外の材料から得られる特性も未だ知られていない。このような化合物の例は他にも見られる(国際公開第2011/107186号公報)。例えば、三重項励起子のエネルギー(T1)が大きい共役構造を有する化合物は、より短い波長の燐光を発することができるため、青色の発光層用材料として有益である。また、発光層を挟む電子輸送材料や正孔輸送材料としてもT1が大きい新規共役構造を有する化合物が求められている。

有機EL素子のホスト材料は、一般に、ベンゼンやカルバゾールなどの既存の芳香族環を単結合やリン原子やケイ素原子で複数連結した分子である。これは、比較的共役系の小さな芳香族環を多数連結することで、ホスト材料に必要とされる大きなHOMO−LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)が担保されるからである。さらに、燐光材料や熱活性型遅延蛍光(TADF)材料を用いた有機EL素子のホスト材料には、高い三重項励起エネルギー(ET)も必要となるが、分子にドナーあるいはアクセプター性の芳香族環や置換基を連結することで、三重項励起状態(T1)のSOMO1およびSOMO2を局在化させ、両軌道間の交換相互作用を小さくすることで、三重項励起エネルギー(ET)を向上させることが可能となる。しかし、共役系の小さな芳香族環はレドックス安定性が十分ではなく、既存の芳香族環を連結していった分子をホスト材料として用いた素子は寿命が十分ではない。一方、拡張π共役系を有する多環芳香族化合物は、一般に、レドックス安定性は優れているが、HOMO−LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)や三重項励起エネルギー(ET)が低いため、ホスト材料に不向きと考えられてきた。

また、近年ではホウ素などを中心原子として複数の芳香族環を縮合した化合物も報告されている(国際公開第2015/102118号公報)。この文献では発光層のドーパント材料として当該複数の芳香族環を縮合した化合物を用いた有機EL素子評価が実施されているが、当該文献には極めて多数の化合物が開示されており、これらの中でも特に発光特性などの有機EL特性に優れた化合物を検討することは有益である。

また、有機EL素子を構成する有機層の形成方法としては、真空蒸着法の他に湿式成膜法が用いられる。湿式成膜法用の材料開発に対しては、特に、正孔注入層、正孔輸送層および発光層を形成するためのインクの開発が積極的に行われている。この中で、正孔注入層と正孔輸送層用のインクに関しては、これらのインクを用いて湿式成膜法で形成された各層の特性は実用レベルに達している。また、発光層を形成するためのインクに関しては、赤発光層と緑発光層用のインクの開発は特性改善に向けて進んでいるが、青発光層用のインクは、一般的にアントラセンなどの芳香環を有する多環芳香族化合物等やスチリル誘導体等を用いた組成物の開発は行われているものの、実用的な特性には至っていない。特に、色純度の高い青発光層用インクに関しては開発ができていないのが現状である。

国際公開第2004/061047号公報

特開2001-172232号公報

特開2005-170911号公報

国際公開第2012/118164号公報

国際公開第2011/107186号公報

国際公開第2015/102118号公報

国際公開第2001/072673号公報

国際公開第2012/102333号公報

特開2006-045503号公報

特開2013-168411号公報

特開2013-247179号公報

米国出願公開第2013/214259号公報

上述するように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、発光特性などの有機EL特性を更に高めたり、発光層用材料などの有機EL材料の選択肢を増やすために、従来具体的には知られていなかった化合物の開発が望まれている。

本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ホウ素原子と窒素原子または酸素原子などで複数の芳香族環を連結した多環芳香族化合物の中でも特定の構造を有する化合物を用いることにより、優れた有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のような多環芳香族化合物、さらには以下のような多環芳香族化合物を含む有機デバイス材料などを提供する。

項1. 下記一般式(1)で表される多環芳香族化合物。

(上記式(1)中、 A環、B環、C環およびD環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの素は置換されていてもよく、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環、C環および/またはD環と結合していてもよく、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオまたは置換されていてもよいヘテロアリールチオであり、Z1は連結基または単結合で前記A環と結合してもよく、Z2は連結基または単結合で前記C環と結合してもよく、そして、 式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)

項2. A環、B環、C環およびD環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、A環およびB環はY、X1およびX2から構成される上記式左の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、C環およびD環はY、X3およびX4から構成される上記式右の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、Rにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記A環、B環、C環および/またはD環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素またはアルキルであり、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオまたはヘテロアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、Z1は、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記A環と結合していてもよく、Z2は、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記C環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素またはアルキルであり、そして、 式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、 項1に記載する多環芳香族化合物。

項3. 下記一般式(2)で表される、項1に記載する多環芳香族化合物。

(上記式(2)中、 R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、R5〜R7およびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環および/またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたは炭素数1〜6のアルキルであり、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環、b環、c環および/またはd環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素または炭素数1〜6のアルキルであり、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオまたはヘテロアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、Z1は、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環と結合してもよく、Z2は、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記c環と結合してもよく、前記−C(−R)2−のRは水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、そして、 式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)

項4. R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリールオキシまたは炭素数6〜12のアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、また、R5〜R7およびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環および/またはd環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>Oまたは>N−Rであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜4のアルキルであり、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリールオキシ、炭素数2〜30のヘテロアリールオキシ、炭素数6〜30のアリールチオまたは炭素数2〜30のヘテロアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数1〜12のアルキルまたはトリアルキル置換シリル(ただしアルキルは炭素数1〜6のアルキル)で置換されていてもよく、そして、 式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、 項3に記載する多環芳香族化合物。

項5. R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルであり、 YはB(ホウ素)であり、 X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>Oまたは>N−Rであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜4のアルキルであり、 R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、 Z1およびZ2は、それぞれ独立して、炭素数6〜16のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールオキシまたは炭素数6〜12のアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、そして、 式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、 項3に記載する多環芳香族化合物。

項6. 下記いずれかの式で表される、項1に記載の多環芳香族化合物。

(上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜10のアリール、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、式中のRはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、R100は、それぞれ独立して、炭素数6〜10のアリール、カルバゾリル、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜10のシクロアルキル、または、炭素数6〜10のアリールオキシであり、前記アリールは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、前記カルバゾリルは炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい。)

項7. 項1ないし6のいずれかに記載する多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。

項8. 前記有機デバイス用材料は、有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料である、項7に記載する有機デバイス用材料。

項9. 前記有機電界発光素子用材料が発光層用材料である、項8に記載する有機デバイス用材料。

項10. 有機電界発光素子の発光層を塗布形成するための発光層形成用組成物であって、 第1成分として、少なくとも1種の項1〜6のいずれかに記載する多環芳香族化合物と、 第2成分として、少なくとも1種のホスト材料と、 第3成分として、少なくとも1種の有機溶媒と、 を含む発光層形成用組成物。

項11. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、項9に記載する発光層用材料を含有する発光層とを有する、有機電界発光素子。

項12. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置され、項10に記載する発光層形成用組成物を塗布・乾燥して形成した発光層とを有する、有機電界発光素子。

項13. 前記発光層はさらに下記一般式(3)で表される化合物および/または下記一般式(4)で表される化合物を含有する、項11または12に記載の有機電界発光素子。

(上記式(3)中、L1は炭素数6〜24のアリーレンであり、 上記式(4)中、L2およびL3は、それぞれ独立して、炭素数6〜30のアリールまたは炭素数2〜30のヘテロアリールであり、 上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)

項14. 前記発光層はさらに下記一般式(5)で表される化合物を含有する、項11〜13のいずれかに記載の有機電界発光素子。

(上記式(5)において、 R1〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノまたはアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、 R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキルで置換されていてもよく、 式(5)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、ハロゲンまたは重水素で置換されてもよい。

項15. 前記陰極と該発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体およびキノリノール系金属錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、項11〜14のいずれかに記載する有機電界発光素子。

項16. 前記電子輸送層および/または電子注入層が、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、項15に記載の有機電界発光素子。

項17. 項11〜16のいずれかに記載する有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。

本発明の好ましい態様によれば、式(1)で表される従来具体的には知られていなかった多環芳香族化合物により、発光特性などの有機EL特性を更に高めたり、発光層用材料などの有機EL材料の選択肢を増やすことができる。

本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。

化合物(1−1)の吸収・蛍光・燐光スペクトルである。

化合物(1−201)の吸収・蛍光・燐光スペクトルである。

化合物(1−101)の吸収・蛍光・燐光スペクトルである。

化合物(1−9)の吸収・蛍光・燐光スペクトルである。

化合物(1−1)の有機EL特性(輝度)を示す図である。

化合物(1−1)の有機EL特性(外部量子効率)を示す図である。

化合物(1−1)の有機EL特性(発光スペクトル)を示す図である。

バンクを有する基板にインクジェット法を用いて有機EL素子を作製する方法を説明する図である。

1.式(1)で表される多環芳香族化合物 一般式(1)で表される多環芳香族化合物は、好ましくは、下記一般式(2)で表される多環芳香族化合物である。

例えば有機ELディスプレイ用の発光材料としては、蛍光材料、りん光材料、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料の3種類が利用されているが、蛍光材料は、発光効率が低く、およそ25〜62.5%程度である。一方、りん光材料とTADF材料は、発光効率が100%に達する場合もあるが、いずれも色純度が低い(発光スペクトルの幅が広い)という問題がある。ディスプレイでは、光の三原色である赤・緑・青色の発光を混合することによりさまざまな色を表現しているが、それぞれの色純度が低いと、再現できない色ができてしまい、ディスプレイの画質が大きく低下する。そこで、市販のディスプレイでは、発光スペクトルから不必要な色を光学フィルターで除去することにより、色純度を高めてから(スペクトル幅を狭くしてから)使用している。したがって、元々のスペクトル幅が広いと除去する割合が増えるために、発光効率が高い場合でも、実質的な効率は大きく低下する。例えば、市販のスマートフォンの青色の発光スペクトルの半値幅は、およそ20〜25nm程度であるが、一般的な蛍光材料の半値幅は40〜60nm程度、りん光材料は60〜90nm程度、TADF材料だと70〜100nm程度である。蛍光材料を用いた場合は半値幅が比較的狭いため不要な色を一部除去するだけで足りるが、りん光材料やTADF材料を用いた場合は半分以上除去する必要がある。このような背景から、発光効率と色純度の両方を兼ね備えた発光材料の開発が望まれていた。

一般にTADF材料は、ドナーと呼ばれる電子供与性の置換基とアクセプターと呼ばれる電子受容性の置換基を用いて分子内のHOMOとLUMOを局在化させて、効率的な逆項間交差(reverse intersystem crossing)が起きるようにデザインされているが、ドナーやアクセプターを用いると励起状態での構造緩和が大きくなり(ある分子においては、基底状態と励起状態では安定構造が異なるため、外部刺激により基底状態から励起状態への変換が起きると、その後、励起状態における安定構造へと構造が変化する)、色純度が低い幅広な発光スペクトルを与えることになる。

そこで、特許文献6(国際公開第2015/102118号公報)では、TADF材料の色純度を飛躍的に向上させる新たな分子設計を提案している。当該文献に開示された例えば化合物(1−401)では、ホウ素(電子供与性)と窒素(電子吸引性)の多重共鳴効果を利用することで、6つの炭素からなるベンゼン環上の3つの炭素(黒丸)にHOMOを、残りの3つの炭素(白丸)にLUMOを局在化させることに成功している。この効率的な逆項間交差により、当該化合物の発光効率は最大で100%に達する。さらに、化合物(1−401)のホウ素と窒素はHOMOとLUMOを局在化させるだけではなく、3つのベンゼン環を縮環させることにより堅牢な平面構造を維持し、励起状態での構造緩和を抑制するという役割も担っており、結果として吸収および発光のピークのストークスシフトが小さい、色純度の高い発光スペクトルを得ることにも成功している。その発光スペクトルの半値幅は28nmであり、実用化されている高色純度の蛍光材料をも凌駕するレベルの色純度を示している。また、式(1−422)のような二量体化合物では、2つのホウ素と2つの窒素が中央のベンゼン環に結合することで、中央のベンゼン環においてさらに多重共鳴効果を増強させており、その結果、極めて狭い発光ピーク幅を有する発光が可能となっている。

一方で、式(1−422)のような二量体化合物では、分子の平面性が高く共鳴が広くなったため発光波長が長くなり、実用的な青色の波長からは離れ、また、高い平面性のため分子間スタッキングが誘起されたためか、発光素子における効率も十分満足できるほどではないという課題も生まれた。

そこで我々は鋭意研究の結果、多重共鳴効果を調節する置換基を適切な位置に導入することで、発光波長の短波長化および高い素子効率を実現した。具体的には、本発明の一般式(1)で表される多環芳香族化合物は、2つのZ(Z1およびZ2)を有する。Zとしての電子吸引性または電子供与性の官能基により、A環およびC環の共鳴を通じて分子全体の共鳴構造および/または多重共鳴効果に影響を及ぼす。例えば、電子吸引性基を導入すればLUMOの電子密度を減じて発光波長を短くできる。また、電子吸引性または電子供与性にかかわらず、Zへの置換基の導入により分子全体における同一平面上に存在する構造の割合が低下するため、分子間のスタッキングを減ずることができる。その結果、発光波長を大幅に短くし、加えて、置換基を導入して分子間スタッキングを低下させたことにより素子効率も増加させることが可能となった。ただし、本願発明の多環芳香族化合物の効果は、上記原理に拘束されるわけではない。

一般式(1)におけるA環、B環、C環およびD環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよい。この置換基は、置換または無置換のアリール、置換または無置換のヘテロアリール、置換または無置換のジアリールアミノ、置換または無置換のジヘテロアリールアミノ、置換または無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換または無置換のアルキル、置換または無置換のシクロアルキル、置換または無置換のアルコキシ、置換または無置換のアリールオキシ、置換または無置換のヘテロアリールオキシ、置換または無置換のアリールチオ、置換または無置換のヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルが好ましい。これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルが挙げられる。

また、A環およびB環は「Y」、「X1」および「X2」から構成される上記式(1)左の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、C環およびD環は「Y」、「X3」および「X4」から構成される上記式(1)右の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。

ここで、「縮合2環構造」とは、一般式(1)の左部分に示した、「Y」、「X1」および「X2」を含んで構成される2つの飽和炭化水素環が縮合した構造を意味する。また、一般式(1)の右部分の縮合2環構造についても同様である。また、「縮合2環構造と結合を共有する6員環」とは、例えば上記一般式(2)で示すように縮合2環構造に縮合したa環(ベンゼン環(6員環))を意味する。また、「(A環である)アリール環またはヘテロアリール環がこの6員環を有する」とは、この6員環だけでA環が形成されるか、または、この6員環を含むようにこの6員環にさらに他の環などが縮合してA環が形成されることを意味する。言い換えれば、ここで言う「6員環を有する(A環である)アリール環またはヘテロアリール環」とは、A環の全部または一部を構成する6員環が、縮合2環構造に縮合していることを意味する。「B環(b環)」、「C環(c環)」、「D環(d環)」、また「5員環」についても同様の説明が当てはまる。

一般式(1)におけるA環(またはB環、C環、D環)は、一般式(2)におけるa環とその置換基R3およびR4(またはb環とその置換基R5〜R7、c環とその置換基R8およびR9、d環とその置換基R10〜R12)に対応する。すなわち、一般式(2)は、一般式(1)のA〜D環として「6員環を有するA〜D環」が選択された式に対応する。その意味で、一般式(2)の各環を小文字のa〜dで表した。

一般式(2)におけるR3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。

一般式(2)では、b環の置換基R5〜R7および/またはd環の置換基R10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環および/またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。したがって、一般式(2)で表される化合物は、b環およびd環における置換基の相互の結合形態によって、下記式(2−1)に示すように、化合物を構成する環構造が変化する。式(2−1)中のB’環およびD’環は、一般式(1)におけるそれぞれB環およびD環に対応する。また、式(2−1)中の各符号の定義は一般式(2)における符号と同じである。

上記式(2−1)中のB’環およびD’環は、一般式(2)で説明すれば、置換基R5〜R7およびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれb環およびd環と共に形成したアリール環またはヘテロアリール環を示す(b環またはd環に他の環構造が縮合してできた縮合環ともいえる)。また、上記式(2−1)から分かるように、b環のR7とd環のR12は「隣接する基同士」には該当せず、これらが結合することはない。すなわち、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。なお、Z1は連結基または単結合でA環(a環)と結合してもよく、また、Z2は連結基または単結合でC環(c環)と結合してもよく、結合した場合には上記B’環およびD’環と同様に環構造が変化することになる。

上記式(2−1)で表される化合物は、例えば後述する具体的化合物として列挙した式(1−5)で表されるような化合物に対応する。すなわち、例えばb環(またはd環)であるベンゼン環に対してベンゼン環、その他にはインドール環、ピロール環、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環などが縮合して形成されるB’環(またはD’環)を有する化合物であり、形成されてできた縮合環B’(または縮合環D’)はナフタレン環、その他にはカルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環などである。

YはB(ホウ素)である。

一般式(1)におけるX1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環、C環および/またはD環と結合していてもよく、連結基としては、−O−、−S−または−C(−R)2−が好ましい。なお、前記「−C(−R)2−」のRは水素またはアルキルである。この説明は一般式(2)におけるX1、X2、X3およびX4でも同じである。

ここで、一般式(1)における「>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環、C環および/またはD環と結合している」との規定は、一般式(2)では「>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環、b環、c環および/またはd環と結合している」との規定に対応する。

この規定は、下記式(2−3)で表される、X1やX3が縮合環B’および縮合環D’に取り込まれた環構造を有する化合物で表現できる。すなわち、例えば一般式(2)におけるb環(またはd環)であるベンゼン環に対してX1(またはX3)を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるB’環(またはD’環)を有する化合物である。この化合物は、例えば後述する具体的化合物として列挙した、式(1−11)で表されるような化合物に対応し、形成されてできた縮合環B’(または縮合環D’)は例えばカルバゾール環、その他にはフェノキサジン環、フェノチアジン環またはアクリジン環などである。なお、式(2−3)中の各符号の定義は一般式(2)における符号と同じである。

式(2−3)ではX1やX3が縮合環B’および縮合環D’に取り込まれた環構造を示したが、X2やX4としての>N−RのRも同様にa環やc環と結合することができ、結合した場合には上記B’環およびD’環と同様に環構造が変化することになる。

また、一般式(2)における置換基Z1およびZ2の置換位置は、a環およびc環におけるY(ホウ素)が結合する位置のパラ位に限定されている。一般式(1)のA環およびC環はベンゼン環に限定されず、種々のアリール環やヘテロアリール環であり、これらの環への置換基Z1およびZ2の置換位置は限定されないが、一般式(2)と同様にYが結合する位置から比較的離れた位置に置換することが好ましく、最も離れた位置に置換することがより好ましい。例えばA環がナフタレン環やフルオレン環などである場合について、このZ1(およびZ2)の好ましい置換位置を以下に例示する。各構造中の符号は一般式(2)における符号と同じ定義である。またAは、>CR2、>NR2、>Oまたは>Sであり、Rは水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜4のアルキル)またはフェニルである。

一般式(1)または一般式(2)におけるR1およびR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)である。

一般式(1)または一般式(2)におけるZ1およびZ2は、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオまたはヘテロアリールチオであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、Z1は連結基または単結合で前記A環(a環)と結合してもよく、Z2は連結基または単結合で前記C環(c環)と結合してもよい。連結基としては、例えば−O−、−S−、−C(−R)2−などが挙げられ、前記−C(−R)2−のRは水素またはアルキルである。

一般式(1)のA環、B環、C環およびD環である「アリール環」としては、例えば、炭素数6〜30のアリール環が挙げられ、炭素数6〜16のアリール環が好ましく、炭素数6〜12のアリール環がより好ましく、炭素数6〜10のアリール環が特に好ましい。なお、この「アリール環」は、一般式(2)で規定された「R5〜R7およびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環および/またはd環と共に形成されたアリール環」に対応し、また、b環(またはd環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数9が下限の炭素数となる。また、Z1が連結基または単結合でA環(a環)と結合して形成されたアリール環や、Z2が連結基または単結合でC環(c環)と結合して形成されたアリール環も同様である。

具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、三環系であるテルフェニル環(m−テルフェニル、o−テルフェニル、p−テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などが挙げられる。

一般式(1)のA環、B環、C環およびD環である「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリール環が挙げられ、炭素数2〜25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。なお、この「ヘテロアリール環」は、一般式(2)で規定された「R5〜R7およびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環および/またはd環と共に形成されたヘテロアリール環」に対応し、また、b環(またはd環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数6が下限の炭素数となる。また、Z1が連結基または単結合でA環(a環)と結合して形成されたヘテロアリール環やZ2が連結基または単結合でC環(c環)と結合して形成されたヘテロアリール環も同様である。

具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環、チアントレン環などが挙げられる。

上記「アリール環」または「ヘテロアリール環」における少なくとも1つの水素は、第1の置換基である、置換または無置換の「アリール」、置換または無置換の「ヘテロアリール」、置換または無置換の「ジアリールアミノ」、置換または無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「アルキル」、置換または無置換の「シクロアルキル」、置換または無置換の「アルコキシ」、置換または無置換の「アリールオキシ」、置換または無置換の「ヘテロアリールオキシ」、置換または無置換の「アリールチオ」、置換または無置換の「ヘテロアリールチオ」またはアルキル置換シリルで置換されていてもよいが、この第1の置換基としての「アリール」、「ヘテロアリール」、「ジアリールアミノ」のアリール、「ジヘテロアリールアミノ」のヘテロアリール、「アリールヘテロアリールアミノ」のアリールとヘテロアリール、「アリールオキシ」のアリール、「ヘテロアリールオキシ」のヘテロアリール、「アリールチオ」のアリール、「ヘテロアリールチオ」のヘテロアリールとしては上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基が挙げられる。

また第1の置換基としての「アルキル」としては、直鎖および分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分枝鎖アルキルが挙げられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分枝鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分枝鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分枝鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分枝鎖アルキル)が特に好ましい。

具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどが挙げられる。

また第1の置換基としての「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルが挙げられる。好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましいシクロアルキルは、炭素数3〜6のシクロアルキルである。

具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、ジメチルシクロヘキシルまたはアダマンチルなどが挙げられる。

また第1の置換基としての「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分枝鎖のアルコキシが挙げられる。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分枝鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分枝鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分枝鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ(炭素数3〜4の分枝鎖のアルコキシ)が特に好ましい。

具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。

また第1の置換基としての「アルキル置換シリル」としては、トリアルキル置換シリルが好ましい。置換するアルキルについては上述した第1の置換基としての「アルキル」の説明を参照することができる。

第1の置換基である、置換または無置換の「アリール」、置換または無置換の「ヘテロアリール」、置換または無置換の「ジアリールアミノ」、置換または無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換または無置換の「アルキル」、置換または無置換の「シクロアルキル」、置換または無置換の「アルコキシ」、置換または無置換の「アリールオキシ」、置換または無置換の「ヘテロアリールオキシ」、置換または無置換の「アリールチオ」、置換または無置換の「ヘテロアリールチオ」は、置換または無置換と説明されているとおり、それらにおける少なくとも1つの水素が第2の置換基で置換されていてもよい。この第2の置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルが挙げられ、それらの具体例は、上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基、また第1の置換基としての「アルキル」の説明を参照することができる。また、第2の置換基としてのアリールやヘテロアリールには、それらにおける少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリール(具体例は上述した基)やメチルなどのアルキル(具体例は上述した基)で置換された基も第2の置換基としてのアリールやヘテロアリールに含まれる。その一例としては、第2の置換基がカルバゾリル基の場合には、9位における少なくとも1つの水素がフェニルなどのアリールやメチルなどのアルキルで置換されたカルバゾリル基も第2の置換基としてのヘテロアリールに含まれる。

一般式(2)のR3〜R12における、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノのアリール、ジヘテロアリールアミノのヘテロアリール、アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリール、アリールオキシのアリール、ヘテロアリールオキシのヘテロアリール、アリールチオのアリール、ヘテロアリールチオのヘテロアリールとしては、一般式(1)で説明した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基が挙げられる。また、R3〜R12におけるアルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアルキル置換シリルとしては、上述した一般式(1)の説明における第1の置換基としての「アルキル」、「シクロアルキル」、「アルコキシ」または「アルキル置換シリル」の説明を参照することができる。さらに、これらの基への置換基としてのアリール、ヘテロアリールまたはアルキルも同様である。また、R5〜R7およびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成した場合の、これらの環への置換基であるアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリル、および、さらなる置換基であるアリール、ヘテロアリールまたはアルキルについても同様である。

一般式(1)のX1、X2、X3およびX4におけるN−RのRは、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよい。これらの基やそれに置換する置換基としては上述する例が挙げられる。特に炭素数6〜10のアリール(例えばフェニル、ナフチルなど)、炭素数2〜15のヘテロアリール(例えばカルバゾリルなど)、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)が好ましい。この説明は一般式(2)におけるX1、X2、X3およびX4でも同じである。

一般式(1)における連結基である「−C(−R)2−」のRは水素またはアルキルであるが、このアルキルとしては上述する基が挙げられる。特に炭素数1〜6、さらには炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)が好ましい。この説明は一般式(2)における連結基である「−C(−R)2−」でも同じである。

一般式(1)または一般式(2)のR1およびR2における、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)のさらに詳細な説明についても、上述した「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」または「ジアリールアミノ」の説明を参照することができる。

一般式(1)または一般式(2)のZ1およびZ2における、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオまたはヘテロアリールチオ、さらにこれらへの置換基としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキル置換シリルについても、上述した「アリール」、「ヘテロアリール」、「ジアリールアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」、「アリールヘテロアリールアミノ」、「アリールオキシ」、「ヘテロアリールオキシ」、「アリールチオ」、「ヘテロアリールチオ」、「アルキル」、「シクロアルキル」、「アルコキシ」または「アルキル置換シリル」の説明を参照することができる。好ましいZ1およびZ2は、例えば、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アリールオキシ、カルバゾールなどのヘテロアリールである。

また、一般式(1)または(2)で表される化合物中の水素は、その全てまたは一部がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。例えば、式(1)においては、A環、B環、C環、D環(A〜D環はアリール環またはヘテロアリール環)、A〜D環への置換基、X1〜X4であるN−RにおけるR(=アリール、ヘテロアリール、アルキル)、R1、R2、Z1およびZ2における水素がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されうるが、これらの中でもアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部の水素がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換された態様が挙げられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくは塩素である。

式(1)で表される多環芳香族化合物の具体的な例としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。

(上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜10のアリール、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、式中のRはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、好ましくはフェニル、メチルまたはt−ブチルである。)

式(1)で表される多環芳香族化合物のさらなる具体的な例としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。

上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜10のアリール、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、式中のR100は、それぞれ独立して、炭素数6〜10のアリール、カルバゾリル、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜10のシクロアルキル、または、炭素数6〜10のアリールオキシであり、前記「アリール」、「ジアリールアミノ」中の「アリール」、「アリールオキシ」中の「アリール」は炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、前記カルバゾリルは炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい。

R100の構造の立体障害性、電子供与性および電子吸引性により発光波長を調整することができ、好ましくは以下の式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t−ブチル、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリル、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t−ブチル、フェニル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t−ブチル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルが好ましい。

合成の難易度の観点からは、対称性が高い構造および/またはNの結合部位に対してp位に置換基を有する構造が好ましく、具体的には、式(1-5000-R100)、式(1-5010-R100)、式(1-5020-R100)、式(1-5100-R100)、式(1-5110-R100)、式(1-5120-R100)、式(1-7000-R100)、式(1-7010-R100)、式(1-7020-R100)、式(1-7100-R100)、式(1-7110-R100)、式(1-7120-R100)、式(1-7200-R100)、式(1-7210-R100)、式(1-7220-R100)、式(1-7400-R100)、式(1-7410-R100)、式(1-7420-R100)および式(1-9000-R100)が好ましく、式(1-5000-R100)、式(1-5010-R100)、式(1-5020-R100)、式(1-5100-R100)、式(1-5110-R100)および式(1-5120-R100)がより好ましい。

また、青色の発光および/または高い発光効率の観点からは、N−アリール基を多く有する構造および/またはカルバゾリル構造を多く有する構造が好ましく、具体的には、式(1-5000-R100)、式(1-5010-R100)、式(1-5020-R100)、式(1-5100-R100)、式(1-5110-R100)、式(1-5120-R100)、式(1-6000-R100)、式(1-6010-R100)、式(1-6020-R100)、式(1-6200-R100)、式(1-6210-R100)、式(1-6220-R100)、式(1-7400-R100)、式(1-7410-R100)および式(1-7420-R100)が好ましい。

また、多重共鳴効果の増強の観点からは、中央の芳香環にNがより多く結合している方が好ましく、具体的には、式(1-5000-R100)、式(1-5010-R100)、式(1-5020-R100)、式(1-5100-R100)、式(1-5110-R100)、式(1-5120-R100)、式(1-6100-R100)、式(1-6110-R100)、式(1-6120-R100)、式(1-6500-R100)、式(1-6510-R100)、式(1-6520-R100)、式(1-7100-R100)、式(1-7110-R100)および式(1-7120-R100)が好ましい。

式(1)で表される多環芳香族化合物のさらに具体的な例としては、例えば、下記(1−1)から始まる構造式で表される化合物が挙げられるほか、下記式(1−1)から始まる構造式において、t−ブチル基がメチル基に置換された構造式の化合物も含まれ、また、一般式(1)のR1およびR2に相当する部位がフェニル基である構造式において、R1およびR2のフェニル基が共にメチル基に置換された構造式の化合物、R1のフェニル基が水素に置換されR2だけがフェニル基である構造式の化合物、R2のフェニル基が水素に置換されR1だけがフェニル基である構造式の化合物、R1のフェニル基がメチル基に置換されR2のフェニル基が水素に置換された構造式の化合物、および、R1のフェニル基が水素に置換されR2のフェニル基がメチル基に置換された構造式の化合物も含まれる。例えば、式(1−2)の構造式や式(1−6)の構造式を例にすると以下のとおりになる。なお、各式中の「Me」はメチル基、「tBu」はt−ブチル基、「Ph」はフェニル基である。

2.多環芳香族化合物の製造方法 一般式(1)や(2)で表される多環芳香族化合物は、基本的には、それぞれの環構造同士で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、それぞれの環構造をホウ素原子で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的なエーテル化反応や、ブッフバルト−ハートウィッグ反応といった一般的なアミノ化反応などが利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。なお、以下の各スキームにける構造式中の符号は、一般式(1)または一般式(2)のそれらと同じ定義である。

第2反応は、下記スキーム(1)に示すように、それぞれの環構造を結合するホウ素原子を導入する反応である。まず、X1とX2の間およびX3とX4の間の水素原子をn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウムなどでオルトメタル化する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素などを加え、リチウム−ホウ素の金属交換を行った後、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどのブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウムなどのルイス酸を加えてもよい。

スキーム(1)においては、オルトメタル化により所望の位置へリチウムを導入したが、下記スキーム(2)のようにリチウムを導入したい位置に予めハロゲン原子(Hal)を導入し、ハロゲン−メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる。この方法によれば、置換基の影響でオルトメタル化ができないようなケースでも目的物を合成することができ有用である。

上述の合成法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有し、Yがホウ素、X1、X2、X3およびX4が、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seである多環芳香族化合物を合成することができる。

なお、中間体における例えばアミノ基の回転によりタンデムボラフリーデルクラフツ反応が起こる箇所が異なる場合があるため、副生物が生成する可能性もある。このような場合には、クロマトグラフィーや再結晶等により、これらの混合物から目的の多環芳香族化合物を単離することができる。

上記スキームで使用するオルトメタル化試薬としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなどの有機アルカリ化合物が挙げられる。

上記スキームで使用するメタル−Y(ホウ素)の金属交換試薬としては、ホウ素の三フッ化物、三塩化物、三臭化物、三ヨウ化物などのホウ素ハロゲン化物、CIPN(NEt2)2などのYのアミノ化ハロゲン化物、Yのアルコキシ化物、Yのアリールオキシ化物などが挙げられる。

上記スキームで使用するブレンステッド塩基としては、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、2,6−ルチジン、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、トリフェニルボラン、テトラフェニルシラン、Ar4BNa、Ar4BK、Ar3B、Ar4Si(なお、Arはフェニルなどのアリール)などが挙げられる。

上記スキームで使用するルイス酸としては、AlCl3、AlBr3、AlF3、BF3・OEt2、BCl3、BBr3、GaCl3、GaBr3、InCl3、InBr3、In(OTf)3、SnCl4、SnBr4、AgOTf、ScCl3、Sc(OTf)3、ZnCl2、ZnBr2、Zn(OTf)2、MgCl2、MgBr2、Mg(OTf)2、LiOTf、NaOTf、KOTf、Me3SiOTf、Cu(OTf)2、CuCl2、YCl3、Y(OTf)3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、ZrBr4、FeCl3、FeBr3、CoCl3、CoBr3などが挙げられる。

上記スキームでは、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、ホウ素の三フッ化物、三塩化物、三臭化物、三ヨウ化物などのホウ素ハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を捕捉するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、ホウ素のアミノ化ハロゲン化物、ホウ素のアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノ基やアルコキシ基の脱離能が低いために、その脱離を促進するルイス酸の使用が効果的である。

また、一般式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されている化合物も含まれるが、このような化合物などは所望の箇所がシアノ化、ハロゲン化、重水素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。

3.有機デバイス 本発明に係る多環芳香族化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などが挙げられる。

3−1.有機電界発光素子 本発明に係る多環芳香族化合物は、例えば、有機電界発光素子の材料として用いることができる。以下に、本実施形態に係る有機EL素子について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。

<有機電界発光素子の構造> 図1に示された有機電界発光素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。

なお、有機電界発光素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。

上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。

有機電界発光素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。

<有機電界発光素子における基板> 基板101は、有機電界発光素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。

<有機電界発光素子における陽極> 陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。

陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物が挙げられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどが挙げられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。その他、有機電界発光素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。

透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100〜5Ω/□、好ましくは50〜5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。

<有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層> 正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。

正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。

正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機電界発光素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。

それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N4,N4’−ジフェニル−N4,N4’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、N4,N4,N4’,N4’−テトラ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。

また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pheiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)または特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。

<有機電界発光素子における発光層> 発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であるのが好ましい。本発明では、発光層用の材料として、上記一般式(1)で表される多環芳香族化合物を用いることができる。

発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着したり、有機溶媒と共にホスト材料と予め混合してから湿式成膜法により製膜したりしてもよい。

ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50〜99.999重量%であり、より好ましくは80〜99.95重量%であり、さらに好ましくは90〜99.9重量%である。

ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜50重量%であり、より好ましくは0.05〜20重量%であり、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。

一方、熱活性化遅延蛍光ドーパント材料を用いた有機電界発光素子においては、ドーパント材料の使用量は低濃度である方が濃度消光現象を防止できるという点で好ましいが、ドーパント材料の使用量が高濃度である方が熱活性化遅延蛍光機構の効率の点からは好ましい。さらには、熱活性化遅延蛍光アシストドーパント材料を用いた有機電界発光素子においては、アシストドーパント材料の熱活性化遅延蛍光機構の効率の点からは、アシストドーパント材料の使用量に比べてドーパント材料の使用量が低濃度である方が好ましい。

アシストドーパント材料が使用される場合における、ホスト材料、アシストドーパント材料およびドーパント材料の使用量の目安は、それぞれ、発光層用材料全体の40〜99.999重量%、59〜1重量%および20〜0.001重量%であり、好ましくは、それぞれ、60〜99.99重量、39〜5重量%および10〜0.01重量%であり、より好ましくは、70〜99.95重量、29〜10重量%および5〜0.05重量%である。本発明に係る化合物およびその高分子化合物はアシストドーパント材料としても使用することもできる。

ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体などが挙げられる。

ホスト材料のT1エネルギーは、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高いT1エネルギーを有するドーパントまたはアシストドーパントのT1エネルギーに比べて高い方が好ましく、具体的には、ホストのT1エネルギーは、0.01eV以上が好ましく、0.03eV以上がより好ましく、0.1eV以上がさらに好ましい。また、ホスト材料にTADF活性な化合物を用いてもよい。

ホスト材料としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。

上記式(3)中、L1は炭素数6〜24のアリーレンであり、炭素数6〜16のアリーレンが好ましく、炭素数6〜12のアリーレンがより好ましく、炭素数6〜10のアリーレンが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、テルフェニル環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ペリレン環およびペンタセン環などの二価の基が挙げられる。 上記式(4)中、L2およびL3は、それぞれ独立して、炭素数6〜30のアリールまたは炭素数2〜30のヘテロアリールである。アリールとしては、炭素数6〜24のアリールが好ましく、炭素数6〜16のアリールがより好ましく、炭素数6〜12のアリールがさらに好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、テルフェニル環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ペリレン環およびペンタセン環などの一価の基が挙げられる。ヘテロアリールとしては、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環およびチアントレン環などの一価の基が挙げられる。 式(3)または式(4)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。

また、ホスト材料としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。

(上記式(5)において、 R1〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノまたはアルキル(以上、第1置換基)であり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、 R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアルキル(以上、第1置換基)で置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノまたはアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、 式(5)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、それぞれ独立して、ハロゲンまたは重水素で置換されてもよい。

好ましくは、上記式(5)において、 R1〜R11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)または炭素数1〜12のアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらに炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)または炭素数1〜12のアルキルで置換されていてもよく、 R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9〜16のアリール環または炭素数6〜15のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)または炭素数1〜12のアルキルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらに炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)または炭素数1〜12のアルキルで置換されていてもよい。

さらに好ましくは、上記式(5)において、 R1〜R11は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜16のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)または炭素数1〜6のアルキルであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらに炭素数6〜16のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)または炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、 R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共に炭素数9〜12のアリール環または炭素数6〜12のヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、炭素数6〜16のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)または炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらに炭素数6〜16のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)または炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい。

上記第1置換基および第2置換基において、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールへテロアリールアミノにおける「アリール」や「ヘテロアリール」としては、以下の例が挙げられる。

具体的な「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールが挙げられ、炭素数6〜24のアリールが好ましく、炭素数6〜20のアリールがより好ましく、炭素数6〜16のアリールがさらに好ましく、炭素数6〜12のアリールが特に好ましく、炭素数6〜10のアリールが最も好ましい。例えば、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどが挙げられる。

具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。

上記第1置換基および第2置換基において、「アルキル」としては、直鎖および分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分枝鎖アルキルが挙げられ、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分枝鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分枝鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分枝鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分枝鎖アルキル)が特に好ましく、メチルが最も好ましい。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどが挙げられる。

第1置換基がアリールの場合の置換位置は、R1、R3、R4、R5、R10およびR11が好ましく、例えば、R1およびR3への置換、R5およびR10への置換、R4およびR11への置換がより好ましく、アリールはフェニル基が好ましい。

第1置換基がヘテロアリールの場合の置換位置は、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R9、R10およびR11が好ましく、例えば、R1への置換、R2への置換、R3への置換、R1およびR3への置換、R4およびR11への置換、R5およびR10への置換、R6およびR9への置換がより好ましく、ヘテロアリールはカルバゾリル基が好ましい。このヘテロアリール(例えばカルバゾリル)はフェニレン基を介して上記位置へ置換していてもよい。

式(5)で表される化合物の具体的な例としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。なお、式中の「Me」はメチル基である。

式(5)で表される化合物は、まずa〜c環を結合基(−O−)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、a〜c環をB(ホウ素)で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えば求核置換反応やウルマン反応といった一般的エーテル化反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応)が利用できる。第1および第2反応の詳細は、国際公開第2015/102118号公報に記載された説明を参考にすることができる。

また、ホスト材料に関して、別の例としては、例えば、Advanced Materials,2017,29,1605444、Journal of Material Chemistry C,2016,4,11355-11381、Chemical Science, 2016, 7, 3355-3363、Thin Solid Films, 2016, 619, 120-124などに記載のホスト材料を用いることができる。また、TADF有機EL素子は発光層のホスト材料に高いT1エネルギーを必要とするために、Chemistry Society Reviews,2011,40,2943-2970に記載のリン光有機EL素子向けのホスト材料もTADF有機EL素子用のホスト材料として用いることができる。

より具体的には、ホスト化合物は、下記式で表される部分構造(H−A)群から選択される少なくとも1つの構造を有する化合物であって、部分構造(H−A)群中の各構造における少なくとも1つの水素原子は、部分構造(H−A)群または部分構造(H−B)群中のいずれかの構造で置換されていてもよく、これらの構造における少なくとも1つの水素は、重水素、ハロゲン、シアノ、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチルやt−ブチル)、トリメチルシリルまたはフェニルで置換されていてもよい。

ホスト化合物としては、好ましくは以下に列挙したいずれかの構造式で表される化合物であり、これらの中でも、より好ましくは上記部分構造(H−A)群から選択される構造を1〜3つ、および、上記部分構造(H−B)群から選択される構造を1つ有する化合物であり、さらに好ましくは上記部分構造(H−A)群としてカルバゾール基を有する化合物であり、特に好ましくは下記式(3−201)、式(3−202)、式(3−203)、式(3−204)、式(3−212)、式(3−221)、式(3−222)、式(3−261)または式(3−262)で表される化合物である。なお、以下に列挙した構造式においては、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、シアノ、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチルやt−ブチル)、フェニルまたはナフチルなどで置換されていてもよい。

また、以下の高分子ホスト材料を用いることもできる。

式(B−6)において、MUは、それぞれ独立して、一般式(B−1)〜式(B−5)で表される化合物の2価の基からなる群から選択される少なくとも1つであり、MU中の2つの水素がECまたはMUと置換され、ECは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、kは2〜50000の整数である。kは100〜40000の整数であることが好ましく、500〜25000の整数であることがより好ましい。

ここで、一般式(B−1)〜式(B−5)で表される化合物は以下の化合物である。

式(B−1)〜式(B−4)において、Arは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、Arのうちの隣接する基同士が結合して、それぞれアントラセン環、ピレン環、フルオレン環またはカルバゾール環の母骨格と共に、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよい。各基の具体的な説明は、上述した一般式(1)や一般式(2)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。各式中のnは1〜6の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数、特に好ましくは1である。

式(B−1)〜式(B−4)において、「Ar」の具体的なものとしては、例えば、以下に挙げる構造式の一価の基、または、下記構造の組み合わせの基が例示できる。

式(B−5)において、R1〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよく、 R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリールまたはジアリールアミノで置換されていてもよい。 各基の具体的な説明は、上述した一般式(1)や一般式(2)の多環芳香族化合物における説明を引用することができる。

式(B−1)〜式(B−5)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、後述する式(FG−1)で表される基、後述する式(FG−2)で表される基、または炭素数1〜24のアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−または−Si(CH3)2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける上記式(B−1)〜式(B−5)で表される化合物に直結している−CH2−を除く任意の−CH2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。

式(B−6)中のECにおける少なくとも1つの水素は、下記一般式(FG−1)で表される基、下記一般式(FG−2)で表される基、炭素数1〜24のアルキル、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、さらに、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−または−Si(CH3)2−で置換されていてもよく、前記アルキルにおける式(B−6)中のECに直結している−CH2−を除く任意の−CH2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記アルキルにおける任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。

(上記式(FG−1)において、 Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数3〜24のシクロアルキルであり、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH2−を除く任意の−CH2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、 隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、 mはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、nは0〜5の整数であり、pは1〜5の整数である。)

(上記式(FG−2)において、 Rは、それぞれ独立して、フッ素、トリメチルシリル、トリフルオロメチル、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜24のシクロアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであり、前記アルキルにおける任意の−CH2−は−O−で置換されていてもよく、前記アルキルにおけるフェニルまたはフェニレンに直結している−CH2−を除く任意の−CH2−は炭素数6〜24のアリーレンで置換されていてもよく、前記シクロアルキルにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよく、前記アリールにおける少なくとも1つの水素は炭素数1〜24のアルキルで置換されていてもよく、 隣接する2つのRがアルキルまたはシクロアルキルであるとき、これらは結合して環を形成していてもよく、 mは0〜4の整数であり、nはそれぞれ独立して0〜5の整数である。)

MUとしては、例えば、下記一般式(MU−1−1)〜式(MU−1−12)、下記一般式(MU−2−1)〜式(MU−2−202)、下記一般式(MU−3−1)〜式(MU−3−201)、下記一般式(MU−4−1)〜式(MU−4−122)および下記一般式(MU−5−1)〜一般式(MU−5−12)で表される2価の基が挙げられる。また、ECとしては、例えば、下記一般式(EC−1)〜式(EC−29)で表される基が挙げられる。これらにおいて、MUは*においてMUまたはECと結合し、ECは*においてMUと結合する。

さらに、式(B−6)で表される化合物は、電荷輸送の観点から、分子内に式(B−6−X1)で表される2価の基を少なくとも1つを有することが好ましく、式(B−6−X1)で表される2価の基を式(B−6)で表される化合物の分子量に対して10%以上有することがより好ましい。ここで、式(B−6−X1)で表される2価の基は*においてMUまたはECと結合する。

式(B−6)で表される化合物は、溶解性および塗布製膜性の観点から、分子中のMU総数(n)の10〜100%のMUが炭素数1〜24のアルキルを有することが好ましく、分子中のMU総数(n)の30〜100%のMUが炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分枝鎖アルキル)を有することがより好ましく、分子内のMU総数(n)の50〜100%のMUが炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分枝鎖アルキル)を有することがさらに好ましい。一方、面内配向性および電荷輸送の観点からは、分子中のMU総数(n)の10〜100%のMUが炭素数7〜24のアルキルを有することが好ましく、分子中のMU総数(n)の30〜100%のMUが炭素数7〜24のアルキル(炭素数7〜24の分枝鎖アルキル)を有することがより好ましい。

また、ドーパント材料としては、特に限定されず、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1−245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2−メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2−トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7−ジアルキルアミノクマリン誘導体、7−ピペリジノクマリン誘導体、7−ヒドロキシクマリン誘導体、7−メトキシクマリン誘導体、7−アセトキシクマリン誘導体、3−ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3−ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3−ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアンスラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5−チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などが挙げられる。

発色光ごとに例示すると、青〜青緑色ドーパント材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデン、クリセンなどの芳香族炭化水素化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどの芳香族複素環化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などが挙げられる。

また、緑〜黄色ドーパント材料としては、クマリン誘導体、フタルイミド誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体およびルブレンなどのナフタセン誘導体などが挙げられ、さらに上記青〜青緑色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例として挙げられる。

さらに、橙〜赤色ドーパント材料としては、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、アセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体などの希土類錯体、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランやその類縁体、マグネシウムフタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体、ローダミン化合物、デアザフラビン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサジン誘導体、オキサジン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、フェノキサゾン誘導体およびチアジアゾロピレン誘導体など挙げられ、さらに上記青〜青緑色および緑〜黄色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例として挙げられる。

その他、ドーパントとしては、化学工業2004年6月号13頁、および、それに挙げられた参考文献などに記載された化合物などの中から適宜選択して用いることができる。

上述するドーパント材料の中でも、特にスチルベン構造を有するアミン、ペリレン誘導体、ボラン誘導体、芳香族アミン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体またはピレン誘導体が好ましい。

スチルベン構造を有するアミンは、例えば、下記式で表される。

当該式中、Ar1は炭素数6〜30のアリールに由来するm価の基であり、Ar2およびAr3は、それぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであるが、Ar1〜Ar3の少なくとも1つはスチルベン構造を有し、Ar1〜Ar3は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、トリ置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、mは1〜4の整数である。

スチルベン構造を有するアミンは、下記式で表されるジアミノスチルベンがより好ましい。

当該式中、Ar2およびAr3は、それぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar2およびAr3は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、トリ置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよい。

炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、スチルベニル、ジスチリルフェニル、ジスチリルビフェニリル、ジスチリルフルオレニルなどが挙げられる。

スチルベン構造を有するアミンの具体例は、N,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニリル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’−テトラ(1−ナフチル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N’−ジ(9−フェナントリル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ビス[4”−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−ビフェニル、1,4−ビス[4’−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−ベンゼン、2,7−ビス[4’−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−ジメチルフルオレン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−ビフェニル、4,4’−ビス(9−フェニル−3−カルバゾビニレン)−ビフェニルなどが挙げられる。 また、特開2003-347056号公報、および特開2001-307884号公報などに記載されたスチルベン構造を有するアミンを用いてもよい。

ペリレン誘導体としては、例えば、3,10−ビス(2,6−ジメチルフェニル)ペリレン、3,10−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ペリレン、3,10−ジフェニルペリレン、3,4−ジフェニルペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、3,4,9,10−テトラフェニルペリレン、3−(1’−ピレニル)−8,11−ジ(t−ブチル)ペリレン、3−(9’−アントリル)−8,11−ジ(t−ブチル)ペリレン、3,3’−ビス(8,11−ジ(t−ブチル)ペリレニル)などが挙げられる。 また、特開平11-97178号公報、特開2000-133457号公報、特開2000-26324号公報、特開2001-267079号公報、特開2001-267078号公報、特開2001-267076号公報、特開2000-34234号公報、特開2001-267075号公報、および特開2001-217077号公報などに記載されたペリレン誘導体を用いてもよい。

ボラン誘導体としては、例えば、1,8−ジフェニル−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−フェニル−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、4−(9’−アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、4−(10’−フェニル−9’−アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、9−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−(4’−ビフェニリル)−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−(4’−(N−カルバゾリル)フェニル)−10−(ジメシチルボリル)アントラセンなどが挙げられる。 また、国際公開第2000/40586号パンフレットなどに記載されたボラン誘導体を用いてもよい。

芳香族アミン誘導体は、例えば、下記式で表される。

当該式中、Ar4は炭素数6〜30のアリールに由来するn価の基であり、Ar5およびAr6はそれぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar4〜Ar6は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、トリ置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、nは1〜4の整数である。

特に、Ar4がアントラセン、クリセン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはピレンに由来する2価の基であり、Ar5およびAr6がそれぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar4〜Ar6は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、トリ置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、nは2である、芳香族アミン誘導体がより好ましい。

炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどが挙げられる。

芳香族アミン誘導体としては、クリセン系としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルクリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(ナフタレン−2−イル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミンなどが挙げられる。

また、ピレン系としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3,4−ジメチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3,4−ジメチルフェニル)−3,8−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン、N,N,N,N−テトラフェニルピレン−1,8−ジアミン、N,N’−ビス(ビフェニル−4−イル)−N,N’−ジフェニルピレン−1,8−ジアミン、N1,N6−ジフェニル−N1,N6−ビス−(4−トリメチルシラニル−フェニル)−1H,8H−ピレン−1,6−ジアミンなどが挙げられる。

また、アントラセン系としては、例えば、N,N,N,N−テトラフェニルアントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジシクロヘキシル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジシクロヘキシル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、9,10−ビス(4−ジフェニルアミノ−フェニル)アントラセン、9,10−ビス(4−ジ(1−ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、9,10−ビス(4−ジ(2−ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、10−ジ−p−トリルアミノ−9−(4−ジ−p−トリルアミノ−1−ナフチル)アントラセン、10−ジフェニルアミノ−9−(4−ジフェニルアミノ−1−ナフチル)アントラセン、10−ジフェニルアミノ−9−(6−ジフェニルアミノ−2−ナフチル)アントラセンなどが挙げられる。

また、他には、[4−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)ナフタレン−1−イル]−ジフェニルアミン、[6−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)ナフタレン−2−イル]−ジフェニルアミン、4,4’−ビス[4−ジフェニルアミノナフタレン−1−イル]ビフェニル、4,4’−ビス[6−ジフェニルアミノナフタレン−2−イル]ビフェニル、4,4”−ビス[4−ジフェニルアミノナフタレン−1−イル]−p−テルフェニル、4,4”−ビス[6−ジフェニルアミノナフタレン−2−イル]−p−テルフェニルなどが挙げられる。 また、特開2006-156888号公報などに記載された芳香族アミン誘導体を用いてもよい。

クマリン誘導体としては、クマリン−6、クマリン−334などが挙げられる。 また、特開2004-43646号公報、特開2001-76876号公報、および特開平6-298758号公報などに記載されたクマリン誘導体を用いてもよい。

ピラン誘導体としては、下記のDCM、DCJTBなどが挙げられる。

また、特開2005-126399号公報、特開2005-097283号公報、特開2002-234892号公報、特開2001-220577号公報、特開2001-081090号公報、および特開2001-052869号公報などに記載されたピラン誘導体を用いてもよい。

一般式(1)で表される多環芳香族化合物は、有機溶媒と共に発光層形成用組成物として使用することもできる。該組成物は、第1成分として少なくとも1種の多環芳香族化合物と、第2成分として少なくとも1種のホスト材料と、第3成分として少なくとも1種の有機溶媒とを含有する。第1成分は、該組成物から得られる発光層のドーパント成分として機能し、第2成分は発光層のホスト成分として機能する。第3成分は、組成物中の第1成分と第2成分を溶解する溶媒として機能し、塗布時には第3成分自身の制御された蒸発速度により平滑で均一な表面形状を与える。

<有機溶媒> 上記発光層形成用組成物は、第3成分として、少なくとも一種の有機溶媒を含む。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該発光層形成用組成物より得られる発光層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。

(1)有機溶媒の物性 第3成分において、少なくとも1種の有機溶媒の沸点は、130℃〜300℃であり、140℃〜270℃がより好ましく、150℃〜250℃がさらに好ましい。沸点が130℃より高い場合、インクジェットの吐出性の観点から好ましい。また、沸点が300℃より低い場合、塗膜の欠陥、表面粗さ、残留溶媒および平滑性の観点から好ましい。第3成分は、良好なインクジェットの吐出性、製膜性、平滑性および低い残留溶媒の観点から、2種以上の有機溶媒を含む構成がより好ましい。一方で、場合によっては、運搬性などを考慮し、発光層形成用組成物中から溶媒を除去することで固形状態とした組成物であってもよい。

さらに、第3成分が第2成分のホスト材料に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低い、構成が特に好ましい。 高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。

溶解度の差(SGS−SPS)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。沸点の差(BPPS−BPGS)は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。

有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布製膜性改善の観点からは、第1成分のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、第1成分のガラス転移点(Tg)−30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。

(2)有機溶媒の具体例 発光層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などが挙げられ、具体例として、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサン−2−オール、ヘプタン−2−オール、オクタン−2−オール、デカン−2−オール、ドデカン−2−オール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、テルピネオール(混合物)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、2,6−ルチジン、2−フルオロ−m−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、2−クロロベンゾ三フッ化物、クメン、トルエン、2−クロロ−6−フルオロトルエン、2−フルオロアニソール、アニソール、2,3−ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、3−トリフルオロメチルアニソール、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、2−メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4−メチルアニソール、s−ブチルベンゼン、3−メチルアニソール、4−フルオロ−3−メチルアニソール、シメン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベラトロール、2,6−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、3−フルオロベンゾニトリル、デカリン(デカヒドロナフタレン)、ネオペンチルベンゼン、2,5−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、1−フルオロ−3,5−ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、イソペンチルベンゼン、3,4−ジメチルアニソール、o−トルニトリル、n−アミルベンゼン、ベラトロール、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、n−ヘキシルベンゼン、安息香酸プロピル、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、安息香酸ブチル、2−メチルビフェニル、3−フェノキシトルエン、2,2’−ビトリル、ドデシルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、トリメトキシトルエン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、1-メチル-4-(プロポキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ブチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ペンチルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘキシルオキシメチル)ベンゼン、1-メチル-4-(ヘプチルオキシメチル)ベンゼンベンジルブチルエーテル、ベンジルペンチルエーテル、ベンジルヘキシルエーテル、ベンジルヘプチルエーテル、ベンジルオクチルエーテルなどが挙げられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。

<任意成分> 発光層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等が挙げられる。

(1)バインダー 発光層形成用組成物は、バインダーを含有していてもよい。バインダーは、成膜時には膜を形成するとともに、得られた膜を基板と接合する。また、該発光層形成用組成物中で他の成分を溶解および分散および結着させる役割を果たす。

発光層形成用組成物に用いられるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)樹脂、アイオノマー、塩素化ポリエーテル、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、および、上記樹脂およびポリマーの共重合体、が挙げられるが、それだけに限定されない。

発光層形成用組成物に用いられるバインダーは、1種のみであってもよく複数種を混合して用いてもよい。

(2)界面活性剤 発光層形成用組成物は、例えば、発光層形成用組成物の膜面均一性、膜表面の親溶媒性および撥液性の制御のために界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、親水性基の構造からイオン性および非イオン性に分類され、さらに、疎水性基の構造からアルキル系およびシリコン系およびフッ素系に分類される。また、分子の構造から、分子量が比較的小さく単純な構造を有する単分子系および分子量が大きく側鎖や枝分かれを有する高分子系に分類される。また、組成から、単一系、二種以上の界面活性剤および基材を混合した混合系に分類される。該発光層形成用組成物に用いることのできる界面活性剤としては、全ての種類の界面活性剤を用いることができる。

界面活性剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名、共栄社化学工業(株)製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK344、BYK346(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(商品名、信越化学工業(株)製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(商品名、セイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(商品名、(株)ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(商品名、三菱マテリアル(株)製)、メガファックF−470、メガファックF−471、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックF−477、メガファックF−479、メガファックF−553、メガファックF−554(商品名、DIC(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩を挙げることができる。

また、界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

<発光層形成用組成物の組成および物性> 発光層形成用組成物における各成分の含有量は、発光層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該発光層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された発光層を有する有機EL素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点から、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.0001重量%〜2.0重量%、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.0999重量%〜8.0重量%、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、90.0重量%〜99.9重量%が好ましい。

より好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.005重量%〜1.0重量%、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.095重量%〜4.0重量%、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、95.0重量%〜99.9重量%である。さらに好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.05重量%〜0.5重量%、第2成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、0.25重量%〜2.5重量%、第3成分が発光層形成用組成物の全重量に対して、97.0重量%〜99.7重量%である。

発光層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。

発光層形成用組成物の粘度としては、高粘度である方が、良好な成膜性とインクジェット法を用いた場合の良好な吐出性が得られる。一方、低粘度である方が薄い膜を作りやすい。このことから、該発光層形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が0.3mPa・s〜3mPa・sであることが好ましく、1mPa・s〜3mPa・sであることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。

発光層形成用組成物の表面張力としては、低い方が良好な成膜性および欠陥のない塗膜が得られる。一方、高い方が良好なインクジェット吐出性を得られる。このことから、該発光層形成用組成物の粘度は、25℃における表面張力が20mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜30mN/mであることがより好ましい。本発明において、表面張力は懸滴法を用いて測定した値である。

<有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層> 電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。

電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することを司る層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。

電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。

電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環もしくは複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳族香環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体などが挙げられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などが挙げられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。

また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などが挙げられる。

また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などが挙げられる。

上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。

上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。

<ボラン誘導体> ボラン誘導体は、例えば下記一般式(ETM−1)で表される化合物であり、詳細には特開2007-27587号公報に開示されている。

上記式(ETM−1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよいアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数16以下のアリール、置換されているボリル、または置換されていてもよいカルバゾリルであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。

上記一般式(ETM−1)で表される化合物の中でも、下記一般式(ETM−1−1)で表される化合物や下記一般式(ETM−1−2)で表される化合物が好ましい。

式(ETM−1−1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、X1は、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、そして、mはそれぞれ独立して0〜4の整数である。

式(ETM−1−2)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、X1は、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。

X1の具体的な例としては、下記式(X−1)〜式(X−9)で表される2価の基が挙げられる。

(各式中、Raは、それぞれ独立してアルキル基または置換されていてもよいフェニル基である。)

このボラン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

このボラン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<ピリジン誘導体> ピリジン誘導体は、例えば下記式(ETM−2)で表される化合物であり、好ましくは式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)で表される化合物である。

φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数である。

上記式(ETM−2−1)において、R11〜R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)である。

上記式(ETM−2−2)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)であり、R11およびR12は結合して環を形成していてもよい。

各式において、「ピリジン系置換基」は、下記式(Py−1)〜式(Py−15)のいずれかであり、ピリジン系置換基はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよい。また、ピリジン系置換基はフェニレン基やナフチレン基を介して各式におけるφ、アントラセン環またはフルオレン環に結合していてもよい。

ピリジン系置換基は、上記式(Py−1)〜式(Py−15)のいずれかであるが、これらの中でも、下記式(Py−21)〜式(Py−44)のいずれかであることが好ましい。

各ピリジン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよく、また、上記式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における2つの「ピリジン系置換基」のうちの一方はアリールで置き換えられていてもよい。

R11〜R18における「アルキル」としては、直鎖および分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分枝鎖アルキルが挙げられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分枝鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分枝鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分枝鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分枝鎖アルキル)である。

具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどが挙げられる。

ピリジン系置換基に置換する炭素数1〜4のアルキルとしては、上記アルキルの説明を引用することができる。

R11〜R18における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルが挙げられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜6のシクロアルキルである。 具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。

R11〜R18における「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6〜30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6〜18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6〜14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールである。

具体的な「炭素数6〜30のアリール」としては、単環系アリールであるフェニル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどが挙げられる。

好ましい「炭素数6〜30のアリール」は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、クリセニルまたはトリフェニレニルなどが挙げられ、さらに好ましくはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはフェナントリルが挙げられ、特に好ましくはフェニル、1−ナフチルまたは2−ナフチルが挙げられる。

上記式(ETM−2−2)におけるR11およびR12は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。

このピリジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

このピリジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<フルオランテン誘導体> フルオランテン誘導体は、例えば下記一般式(ETM−3)で表される化合物であり、詳細には国際公開第2010/134352号公報に開示されている。

上記式(ETM−3)中、X12〜X21は水素、ハロゲン、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、直鎖、分岐もしくは環状のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、または置換もしくは無置換のヘテロアリールを表す。

このフルオランテン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

BO系誘導体は、例えば下記式(ETM−4)で表される多環芳香族化合物、または下記式(ETM−4)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。

R1〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。

また、R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよい。

また、式(ETM−4)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素がハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。

式(ETM−4)における置換基や環形成の形態、また式(ETM−4)の構造が複数合わさってできる多量体の説明については、上記一般式(1)や式(1’)で表される化合物やその多量体の説明を引用することができる。

このBO系誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

このBO系誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<アントラセン誘導体> アントラセン誘導体の1つは、例えば下記式(ETM−5−1)で表される化合物である。

Arは、それぞれ独立して、2価のベンゼンまたはナフタレンであり、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6〜20のアリールである。

Arは、それぞれ独立して、2価のベンゼンまたはナフタレンから適宜選択することができ、2つのArが異なっていても同じであってもよいが、アントラセン誘導体の合成の容易さの観点からは同じであることが好ましい。Arはピリジンと結合して、「Arおよびピリジンからなる部位」を形成しており、この部位は例えば下記式(Py−1)〜式(Py−12)のいずれかで表される基としてアントラセンに結合している。

これらの基の中でも、上記式(Py−1)〜式(Py−9)のいずれかで表される基が好ましく、上記式(Py−1)〜式(Py−6)のいずれかで表される基がより好ましい。アントラセンに結合する2つの「Arおよびピリジンからなる部位」は、その構造が同じであっても異なっていてもよいが、アントラセン誘導体の合成の容易さの観点からは同じ構造であることが好ましい。ただし、素子特性の観点からは、2つの「Arおよびピリジンからなる部位」の構造が同じであっても異なっていても好ましい。

R1〜R4における炭素数1〜6のアルキルについては直鎖および分枝鎖のいずれでもよい。すなわち、炭素数1〜6の直鎖アルキルまたは炭素数3〜6の分枝鎖アルキルである。より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分枝鎖アルキル)である。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、または2−エチルブチルなどが挙げられ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、またはt−ブチルが好ましく、メチル、エチル、またはt−ブチルがより好ましい。

R1〜R4における炭素数3〜6のシクロアルキルの具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。

R1〜R4における炭素数6〜20のアリールについては、炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。

「炭素数6〜20のアリール」の具体例としては、単環系アリールであるフェニル、(o−,m−,p−)トリル、(2,3−,2,4−,2,5−,2,6−,3,4−,3,5−)キシリル、メシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)、(o−,m−,p−)クメニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アントラセン−(1−,2−,9−)イル、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、テトラセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イルなどが挙げられる。

好ましい「炭素数6〜20のアリール」は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリルまたはナフチルであり、より好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはm−テルフェニル−5’−イルであり、さらに好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1−ナフチルまたは2−ナフチルであり、最も好ましくはフェニルである。

アントラセン誘導体の1つは、例えば下記式(ETM−5−2)で表される化合物である。

Ar1は、それぞれ独立して、単結合、2価のベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、またはフェナレンである。

Ar2は、それぞれ独立して、炭素数6〜20のアリールであり、上記式(ETM−5−1)における「炭素数6〜20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどが挙げられる。

R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6〜20のアリールであり、上記式(ETM−5−1)における説明を引用することができる。

これらのアントラセン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

これらのアントラセン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<ベンゾフルオレン誘導体> ベンゾフルオレン誘導体は、例えば下記式(ETM−6)で表される化合物である。

Ar1は、それぞれ独立して、炭素数6〜20のアリールであり、上記式(ETM−5−1)における「炭素数6〜20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどが挙げられる。

Ar2は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)であり、2つのAr2は結合して環を形成していてもよい。

Ar2における「アルキル」としては、直鎖および分枝鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分枝鎖アルキルが挙げられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分枝鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分枝鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分枝鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分枝鎖アルキル)である。具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシルなどが挙げられる。

Ar2における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルが挙げられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜6のシクロアルキルである。具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。

Ar2における「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6〜30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6〜18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6〜14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールである。

具体的な「炭素数6〜30のアリール」としては、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどが挙げられる。

2つのAr2は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。

このベンゾフルオレン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

このベンゾフルオレン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<ホスフィンオキサイド誘導体> ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM−7−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2013/079217号公報にも記載されている。

R5は、置換または無置換の、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数5〜20のヘテロアリールであり、 R6は、CN、置換または無置換の、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のヘテロアルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数5〜20のヘテロアリール、炭素数1〜20のアルコキシまたは炭素数6〜20のアリールオキシであり、 R7およびR8は、それぞれ独立して、置換または無置換の、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数5〜20のヘテロアリールであり、 R9は酸素または硫黄であり、 jは0または1であり、kは0または1であり、rは0〜4の整数であり、qは1〜3の整数である。

ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM−7−2)で表される化合物でもよい。

R1〜R3は、同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、複素環基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。

Ar1は、同じでも異なっていてもよく、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、Ar2は、同じでも異なっていてもよく、アリール基またはヘテロアリール基である。ただし、Ar1およびAr2のうち少なくとも一方は置換基を有しているか、または隣接置換基との間に縮合環を形成している。nは0〜3の整数であり、nが0のとき不飽和構造部分は存在せず、nが3のときR1は存在しない。

これらの置換基の内、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。置換されている場合の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、複素環基などを挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常、1〜20の範囲である。

また、シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。

また、アラルキル基とは、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などの脂肪族炭化水素を介した芳香族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素はいずれも無置換でも置換されていてもかまわない。脂肪族部分の炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20の範囲である。

また、アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。

また、シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセン基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。

また、アルキニル基とは、例えば、アセチレニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。

また、アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基などのエーテル結合を介した脂肪族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20の範囲である。

また、アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。

また、アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基などのエーテル結合を介した芳香族炭化水素基を示し、芳香族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。

また、アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。

また、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フェナントリル基、テルフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、無置換でも置換されていてもかまわない。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。

また、複素環基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を有する環状構造基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜30の範囲である。

ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。

アルデヒド基、カルボニル基、アミノ基には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環などで置換された基も含むことができる。

また、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環は無置換でも置換されていてもかまわない。

シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリル基の炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1〜6である。

隣接置換基との間に形成される縮合環とは、例えば、Ar1とR2、Ar1とR3、Ar2とR2、Ar2とR3、R2とR3、Ar1とAr2などの間で形成された共役または非共役の縮合環である。ここで、nが1の場合、2つのR1同士で共役または非共役の縮合環を形成してもよい。これら縮合環は、環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。

このホスフィンオキサイド誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

このホスフィンオキサイド誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<ピリミジン誘導体> ピリミジン誘導体は、例えば下記式(ETM−8)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM−8−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2011/021689号公報にも記載されている。

Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは2または3である。

「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールが挙げられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。

具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどが挙げられる。

「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。

具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。

また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。

このピリミジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

このピリミジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<カルバゾール誘導体> カルバゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−9)で表される化合物、またはそれが単結合などで複数結合した多量体である。詳細は米国公開公報2014/0197386号公報に記載されている。

Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは独立して0〜4の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0または1である。

「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールが挙げられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。

具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどが挙げられる。

「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。

具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。

また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。

カルバゾール誘導体は、上記式(ETM−9)で表される化合物が単結合などで複数結合した多量体であってもよい。この場合、単結合以外に、アリール環(好ましくは多価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)で結合されていてもよい。

このカルバゾール誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

このカルバゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<トリアジン誘導体> トリアジン誘導体は、例えば下記式(ETM−10)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM−10−1)で表される化合物である。詳細は米国公開公報2011/0156013号公報に記載されている。

Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは2または3である。

「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールが挙げられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。

具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどが挙げられる。

「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。

具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。

また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。

このトリアジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。

このトリアジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<ベンゾイミダゾール誘導体> ベンゾイミダゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−11)で表される化合物である。

φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数であり、「ベンゾイミダゾール系置換基」は、上記式(ETM−2)、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジル基がベンゾイミダゾール基に置き換わった置換基であり、ベンゾイミダゾール誘導体における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。

上記ベンゾイミダゾール基におけるR11は、水素、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数6〜30のアリールであり、上記式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)におけるR11の説明を引用することができる。

φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は上記式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができ、各式中のR11〜R18は上記式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができる。また、上記式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをベンゾイミダゾール系置換基に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11〜R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば上記式(ETM−2−1)におけるR11〜R18の少なくとも1つをベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11〜R18で置き換えてもよい。

このベンゾイミダゾール誘導体の具体例としては、例えば1−フェニル−2−(4−(10−フェニルアントラセン−9−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(3−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾールなどが挙げられる。

このベンゾイミダゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<フェナントロリン誘導体> フェナントロリン誘導体は、例えば下記式(ETM−12)または式(ETM−12−1)で表される化合物である。詳細は国際公開2006/021982号公報に記載されている。

φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数である。

各式のR11〜R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)である。また、上記式(ETM−12−1)においてはR11〜R18のいずれかがアリール環であるφと結合する。

各フェナントロリン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。

R11〜R18におけるアルキル、シクロアルキルおよびアリールとしては、上記式(ETM−2)におけるR11〜R18の説明を引用することができる。また、φは上記した例のほかに、例えば、以下の構造式が挙げられる。なお、下記構造式中のRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリルまたはテルフェニリルである。

このフェナントロリン誘導体の具体例としては、例えば4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、9,9’−ジフルオル−ビス(1,10−フェナントロリン−5−イル)、バソクプロインや1,3−ビス(2−フェニル−1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどが挙げられる。

このフェナントロリン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<キノリノール系金属錯体> キノリノール系金属錯体は、例えば下記一般式(ETM−13)で表される化合物である。

式中、R1〜R6は水素または置換基であり、MはLi、Al、Ga、BeまたはZnであり、nは1〜3の整数である。

キノリノール系金属錯体の具体例としては、8−キノリノールリチウム、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウムなどが挙げられる。

このキノリノール系金属錯体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

<チアゾール誘導体およびベンゾチアゾール誘導体> チアゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−14−1)で表される化合物である。

ベンゾチアゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−14−2)で表される化合物である。

各式のφは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数であり、「チアゾール系置換基」や「ベンゾチアゾール系置換基」は、上記式(ETM−2)、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジル基がチアゾール基やベンゾチアゾール基に置き換わった置換基であり、チアゾール誘導体およびベンゾチアゾール誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。

φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は上記式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができ、各式中のR11〜R18は上記式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができる。また、上記式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11〜R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば上記式(ETM−2−1)におけるR11〜R18の少なくとも1つをチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11〜R18で置き換えてもよい。

これらのチアゾール誘導体またはベンゾチアゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。

電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。

好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0〜2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。

<有機電界発光素子における陰極> 陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。

陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の物質を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム−リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率を上げて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。

さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例として挙げられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。

<各層で用いてもよい結着剤> 以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。

<有機電界発光素子の作製方法> 有機電界発光素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、蒸着用ルツボの加熱温度+50〜+400℃、真空度10−6〜10−3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚2nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。

次に、有機電界発光素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機電界発光素子の作製法について説明する。

<蒸着法> 適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機電界発光素子が得られる。なお、上述の有機電界発光素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。

<湿式成膜法> 発光層形成用組成物の場合は、湿式成膜法を用いることによって成膜される。

湿式成膜法は、一般的には、基板に発光層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された発光層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる手法をスピンコート法、スリットコーターを用いるスリットコート法、版を用いるグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる手法をインクジェット法、霧状に吹付ける手法をスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。

湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。

一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。

そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。

例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。 (手順1)陽極の真空蒸着法による成膜 (手順2)正孔注入層の湿式成膜法による成膜 (手順3)正孔輸送層の湿式成膜法による成膜 (手順4)ホスト材料とドーパント材料を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜 (手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜 (手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜 (手順7)陰極の真空蒸着法による成膜 この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。

<その他の成膜法> 発光層形成用組成物の成膜化には、レーザー加熱描画法(LITI)を用いることができる。LITIとは基材に付着させた化合物をレーザーで加熱蒸着する方法で、基材へ塗布される材料に発光層形成用組成物を用いることができる。

<任意の工程> 成膜の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、露光処理、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等が挙げられる。さらには、バンクを作製する一連の工程も挙げられる。

バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。

バンクに用いられる材料としては、多糖類およびその誘導体、ヒドロキシルを有するエチレン性モノマーの単独重合体および共重合体、生体高分子化合物、ポリアクリロイル化合物、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ポリマー(ABS)、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、ポリフルオロビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ化ポリマー、フルオロオレフィン−ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマーが挙げられるが、それだけに限定されない。

図9を参考にして、バンクを有する基板にインクジェット法を用いて有機EL素子を作製する方法を説明する。まず、バンク(200)は基板(110)上の電極(120)の上に設けられている。この場合、インクジェットヘッド(300)より、バンク(200)間にインクの液滴(310)を滴下し、乾燥させることで塗膜(130)を作製することができる。これを繰り返し、次の塗膜(140)、さらに発光層(150)まで作製し、真空蒸着法を用い電子輸送層、電子注入層および電極を成膜すれば、バンク材で発光部位が区切られた有機EL素子を作製することができる。

このようにして得られた有機電界発光素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機電界発光素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。

<有機電界発光素子の応用例> また、本発明は、有機電界発光素子を備えた表示装置または有機電界発光素子を備えた照明装置などにも応用することができる。 有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機電界発光素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。

表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどが挙げられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などが挙げられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。

マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。

セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。

照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどが挙げられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。

3−2.その他の有機デバイス 本発明に係る多環芳香族化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。

有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(あるいはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。

有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明に係る多環芳香族化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造が挙げられる。 (1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層 (2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極 (3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極 (4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極 このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。

有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明に係る多環芳香族化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。

以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されない。以下は実施例で合成した化合物である。

合成例(1) 化合物(1−1):N7,N7,N13,N13,5,9,11,15−オクタフェニル−5,9,11,15−テトラヒドロ−5,9,11,15−テトラアザ−19b,20b−ジボラジナフト[3,2,1−de:1’,2’,3’−jk]ペンタセン−7,13−ジアミンの合成

[第1段] 窒素雰囲気下、1,3−ジブロモベンゼン(25.0g、106mmol)、アニリン(20.3ml、223mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd2(dba)3)(971mg、1.06mmol)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP:1.98g、3.18mmol)、NaOtBu(25.5g、265mmol)およびトルエン(400ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、18時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンに溶解させた後、適当量を減圧留去し、ヘキサンを加え再沈殿させることで、N1,N3−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(16.5g、収率60%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=5.63(s,2H)、6.60(dd,2H)、6.74(t,1H)、6.90(t,2H)、7.06(d,4H)、7.12(t,1H)、7.24(dt,4H).

[第2段] 窒素雰囲気下、1,3−ジブロモ−5−クロロベンゼン(8.11g、30mmol)、ジフェニルアミン(10.1g、60mmol)、Pd2(dba)3(550mg、0.6mmol)、2−ジシクロヘキシルフェニルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシジフェニル(SPhos:0.493g、1.2mmol)、NaOtBu(8.60g、90mmol)およびトルエン(300ml)の入ったフラスコを80℃に加熱し、15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンに溶解させた後、減圧留去することで飽和溶液を調製し、ヘキサンを加え再沈殿させることで、5−クロロ−N1,N1,N3,N3−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(5.66g、収率43%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.56(d,2H)、6.64(t,1H)、7.00(t,4H)、7.05(d,8H)、7.21(dd,8H).

[第3段] 窒素雰囲気下、第1段で合成したN1,N3−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(1.34g、5.1mmol)、第2段で合成した5−クロロ−N1,N1,N3,N3−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(4.80g、11mmol)、Pd2(dba)3(0.140g、0.15mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(60.7mg、0.30mmol)、NaOtBu(1.47g、15mmol)およびトルエン(200ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、8時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサン、メタノールの順に洗浄することで、N1,N1’−(1,3−フェニレン)ビス(N1,N3,N3,N5,N5−ペンタフェニルベンゼン−1,3,5−トリアミン(4.80g、収率87%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.38(d,4H)、6.41(t,2H)、6.58(dd,2H)、6.70(t,1H)、6.88−6.90(m,14H)、6.85(t,1H)、6.99(d,16H)、7.08−7.15(m,20H).

[第4段] N1,N1’−(1,3−フェニレン)ビス(N1,N3,N3,N5,N5−ペンタフェニルベンゼン−1,3,5−トリアミン(3.24g、3.0mmol)およびオルトジクロロベンゼン(400ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、室温で、三臭化ホウ素(1.13ml、12mmol)を加えた。滴下終了後、180℃まで昇温して20時間撹拌した。その後、再び室温まで冷却して、N−ジイソプロピルエチルアミン(7.70ml、45mmol)を加え、発熱が収まるまで撹拌した。その後、60℃で減圧下、反応溶液を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をアセトニトリル、メタノール、トルエンの順に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)で精製後粗体をo−ジクロロベンゼンで2回再結晶を行い、その後1×10−4mmHgの減圧下、440℃にて昇華精製を行うことで、化合物(1−1)を1.17g得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=5.72(s,2H)、5.74(s,2H)、5.86(s,1H)、6.83(d,2H)、6.88−6.93(m,12H)、7.05(t,8H)、7.12−7.19(m,6H)、7.24−7.26(m,4H)、7.05(d,4H)、7.12(dd,8H)、7.12−7.19(m,6H)、7.32(d,4H)、7.38(dd,2H)、7.42(t,2H)、7.46(dd,2H)、7.47(dd,4H)、9.30(d,2H)、10.5(s,1H).

13C−NMR(101MHz,CDCl3):99.5(2C+2C)、103.4(1C)、116.8(2C)、120.0(2C)、123.1(4C)、125.3(8C)、127.1(2C)、127.6(2C)、128.5(8C)、129.6(4C)、129.8(4C)、130.2(4C+2C)、130.3(4C)、135.0(2C)、142.1(2C)、142.5(2C)、143.3(1C)、146.8(4C)、147.9(2C+2C)、148.0(2C)、150.1(2C)、151.1(2C).

合成例(2) 化合物(1−201):N7,N7,N13,N13,5,15−ヘキサフェニル−5,15−ジヒドロ−5,15−ジアザ−9,11−ジオキ−19b,20b−ジボラジナフト[3,2,1−de:1’,2’,3’−jk]ペンタセン−7,13−ジアミンの合成

[第1段] 窒素雰囲気下、1,3−ジブロモ−5−フルオロベンゼン(15.5g、61mmol)、レゾルシノール(3.10g、29mmol)、炭酸カリウム(10.0g、73mmol)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP:300ml)の入ったフラスコを140℃に加熱し、13時間撹拌した。反応液を室温まで冷却して、NMPを減圧留去した後、水およびトルエンを加え分液した。次いで、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄することで、1,3−ビス(3,5−ジブロモフェノキシ)ベンゼン(14.9g、収率89%)を得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.41(t,2H)、7.37(t,1H)、7.10(d,4H)、6.82(dd,2H)、6.70(t,1H).

[第2段] 窒素雰囲気下、1,3−ビス(3,5−ジブロモフェノキシ)ベンゼン(8.00g、14mmol)、ジフェニルアミン(10.0g、59mmol)、Pd2(dba)3(0.256g、0.28mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.113g、0.56mmol)、NaOtBu(6.70g、70mmol)およびトルエン(300ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、6時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄することで、5,5’−(1,3−フェニレンビス(オキシ))ビス(N1,N1,N3,N3−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(11.2g、収率86%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.24−7.28(m,1H)、7.18(dd,16H)、7.05(d,16H)、6.94(t,8H)、6.57(t,2H)、6.54(d,1H)、6.51(d,2H)、6.29(d,4H).

[第3段] 5,5’−(1,3−フェニレンビス(オキシ))ビス(N1,N1,N3,N3−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(2.03g、2.2mmol)およびオルトキシレン(500ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、室温で、三臭化ホウ素(0.832ml、8.8mmol)を加えた。滴下終了後、150℃まで昇温して24時間撹拌した。その後、再び室温まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.60ml、33mmol)を加え、発熱が収まるまで撹拌した。その後、反応溶液を留去した。次いで、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/ヘキサン=1/2(容量比))を用いて濾過し、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。トルエンで洗浄することで、化合物(1−201)を得た(50.0mg、収率2.4%)。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=5.79(d,2H)、6.70(d,2H)、6.80(d,2H)、7.07(t,4H)、7.12(t,8H)、7.21−7.28(m,12H)、7.31(s,1H)、7.35(dd,2H)、7.40(t,2H)、7.44−7.51(m,6H)、9.12(d,2H)、10.2(s,1H).

13C−NMR(101MHz,CDCl3):98.6(2C)、100.8(2C)、104.9(1C)、117.4(2C)、120.1(2C)、124.1(4C)、126.0(8C)、128.4(2C)、129.2(8C)、130.0(4C)、130.7(4C)、131.3(2C)、134.9(2C)、141.6(2C)、142.3(1C)、146.6(4C)、147.1(2C)、148.1(2C)、152.6(2C)、159.1(2C)、163.0(2C).

合成例(3) 化合物(1−9):2,18−ジメチル−N7,N7,N13,N13,9,11−ヘキサパラトリル−5,9,11,15−テトラヒドロ−5,9,11,15−テトラアザ−19b,20b−ジボラジナフト[3,2,1−de:1',2',3'−jk]ペンタセン−7,13−ジアミンの合成

[第1段] 窒素雰囲気下、1,3−ジブロモベンゼン(10.8g、l.9mmol)、パラトルイジン(20.3g、190mmol)、Pd2(dba)3(1.60g、1.8mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.728g、3.6mmol)、NaOtBu(25.9g、270mmol)およびトルエン(500ml)の入ったフラスコを室温で、10時間撹拌した。反応液シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をメタノールで洗浄することで、N1,N3−ジパラトリルベンゼン−1,3−ジアミン(19.3g、収率74%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.06−7.11(m,5H)、6.99(d,4H)、6.64(t,1H)、6.52(dd,2H)、5.54(s,2H)、2.29(s,6H).

[第2段] 窒素雰囲気下、1,3−ジブロモ−5−クロロベンゼン(13.5g、50mmol)、パラジトリルアミン(19.7g、0.10mol)、Pd2(dba)3(1.15g、2.0mmol)、2−ジシクロヘキシルフェニルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシジフェニル(0.986g、2.4mmol)、NaOtBu(14.5g、0.15mol)およびトルエン(200ml)の入ったフラスコを80℃に加熱し、15時間撹拌した。反応液はシリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をメタノール、ヘキサンの順に洗浄することで、5−クロロ−N1,N1,N3,N3−テトラパラトリルベンゼン−1,3−ジアミン(21.7g、収率86%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.01(d,8H)、6.92(d,8H)、7.00(t,4H)、6.51(t,1H)、6.45(sd,2H)、2.28(s,12H).

[第3段] 窒素雰囲気下、第1段で合成したN1,N3−ジパラトリルベンゼン−1,3−ジアミン(3.1g、11mmol)、第2段で合成した5−クロロ−N1,N1,N3,N3−テトラパラトリルベンゼン−1,3−ジアミン(11.2g、22mmol)、Pd2(dba)3(0.503g、0.55mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.223g、1.1mmol)、NaOtBu(3.20g、33mmol)およびトルエン(300ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、18時間撹拌した。反応液はシリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をメタノール、トルエンの順に洗浄することで、N1,N1’−(1,3−フェニレン)ビス(N1,N3,N3,N5,N5−ペンタパラトリルベンゼン−1,3,5−トリアミン(11.4g、収率85%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.86−6.93(m,37H)、6.80(d,4H)、6.74(t,1H)、6.44(dd,2H)、6.30(d,4H)、6.29(t,2H)、2.23(s,6H)、2.20(s,24H).

[第4段] N1,N1’−(1,3−フェニレン)ビス(N1,N3,N3,N5,N5−ペンタパラトリルベンゼン−1,3,5−トリアミン(0.661g、0.5mmol)およびオルトジクロロベンゼン(10ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、室温で、三臭化ホウ素(0.819ml、2.0mmol)を加えた。滴下終了後、180℃まで昇温して24時間撹拌した。その後、再び室温まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.28ml、7.5mmol)を加え、発熱が収まるまで撹拌した。その後、60℃で減圧下、反応溶液を留去した。次いで、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンで洗浄することで、化合物(1−9)を得た(0.365g、収率59%)。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=δ=2.32(s,12H)、2.39(s,6H)、2.47(s,6H)、2.59(s,6H)、5.47−5.51(m,4H)、5.97(s,1H)、6.80(d,2H)、6.87−6.94(m,20H)、7.05(d,4H)、7.18(d,4H)、7.27(d,2H)、7.31(d,4H)、9.00(s,2H)、10.5(s,1H).

13C−NMR(126MHz,(CDCl2)2):=20.4(4C)、20.6(2C)、20.7(2C)、21.0(2C)、97.8(2C)、97.9(2C)、103.5(1C)、116.7(2C)、125.7(8C)、128.1(2C)、129.0(8C)、129.5(4C)、130.0(4C)、130.1(4C)、130.7(4C)、131.2(2C)、132.6(4C)、134.7(2C)、136.5(2C)、137.3(2C)、139.6(2C)、140.1(2C)、143.0(1C)、144.1(4C)、146.1(2C)、147.9(2C+2C)、150.1(2C)、151.1(2C).

合成例(4) 化合物(1−101):7,13−ジフェノキシ−5,9,11,15−テトラフェニル−5,9,11,15−テトラヒドロ−5,9,11,15−テトラアザ−19b,20b−ジボラジナフト[3,2,1−de:1',2',3'−jk]ペンタセンの合成

[第1段] 窒素雰囲気下、1−ブロモ−3−クロロ−5−フルオロベンゼン(5.50ml、45mmol)、フェノール(4.40g、47mmol)、炭酸カリウム(9.30g、68mmol)およびNMP(300ml)の入ったフラスコを150℃に加熱し、17時間撹拌した。反応液を室温まで冷却して、NMPを減圧留去した後、水およびトルエンを加え分液した。次いで、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去後、1−ブロモ−3−クロロ−5−フェノキシベンゼン(12.2g、収率98%)を得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.37(m,2H)、7.16−7.21(m,2H)、7.00−7.03(m,3H)、6.90(t,1H).

[第2段] 窒素雰囲気下、1−ブロモ−3−クロロ−5−フェノキシベンゼン(5.30ml、27mmol)、ジフェニルアミン(4.80g、28mmol)、Pd2(dba)3(0.247g、0.27mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(109mg、0.54mmol)、NaOtBu(3.90g、41mmol)およびトルエン(300ml)の入ったフラスコを80℃に加熱し、14時間撹拌した。反応液はシリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去することで、3−クロロ−5−フェノキシ−N,N−ジフェニルアニリン(8.30g、収率83%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.24−7.28(m,1H)、7.18(dd,16H)、7.05(d,16H)、6.94(t,8H)、6.57(t,2H)、6.54(d,1H)、6.51(d,2H)、6.29(d,4H).

[第3段] 窒素雰囲気下、N1,N3−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(1.56g、6.0mmol)、3−クロロ−5−フェノキシ−N,N−ジフェニルアニリン(4.69g、13mmol)、Pd2(dba)3(0.110g、0.12mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(49.0mg、0.24mmol)、NaOtBu(1.44g、15mmol)およびトルエン(200ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、18時間撹拌した。反応液はシリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をメタノールで洗浄することで、N1,N1’−(1,3−フェニレン)ビス(5−フェノキシ−N1,N3,N3−トリフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(4.9g、収率87%)を白色固体として得た。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.88−7.27(m,41H)、6.79(t,1H)、6.65(dd,2H)、6.51(t,1H)、6.30−6.32(m,4H).

[第4段] N1,N1’−(1,3−フェニレン)ビス(5−フェノキシ−N1,N3,N3−トリフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(0.559g、0.60mmol)およびオルトジクロロベンゼン(10ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、室温で、三臭化ホウ素(0.227ml、2.4mmol)を加えた。滴下終了後、180℃まで昇温して24時間撹拌した。その後、再び室温まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.5ml、9mmol)を加え、発熱が収まるまで撹拌した。その後、60℃で減圧下、反応溶液を留去した。次いで、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/ヘキサン=1/2(容量比))を用いて濾過し、溶媒を減圧留去することで、化合物(1−101)を得た(57.3mg、収率10%)。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=5.71−5.74(m,5H)、6.79(d,2H)、6.82(d,4H)、6.96(t,2H)、7.09(d,4H)、7.15(dd,4H)、7.28−7.38(m,12H)、7.45−7.52(m,4H)、7.61(t,4H)、9.24(d,2H)、10.5(s,1H).

13C−NMR(101MHz,CDCl3):δ=96.1(2C)、96.2(2C)、103.4(1C)、117.1(2C)、119.1(4C)、120.3(2C)、123.2(2C)、128.0(2C)、128.5(8C)、129.3(4C)、129.8(4C)、130.3(4C)、130.6(4C)、130.8(2C)、131.0(4C)、135.2(2C)、141.6(2C)、142.0(2C)、143.8(1C)、147.7(2C)、148.4(2C)、148.6(2C)、150.0(2C)、156.0(2C)、160.6(2C).

合成例(5): 化合物(1−2001):N7,N7,N13,N13,5,9,15−テトラヒドロ−5,9,15−トリアザ−11−オキサ−19b,20b−ジボラジナフト[3,2,1−de:1’,2’,3’−jk]ペンタセン−7,13−ジアミンの合成

窒素雰囲気下、1,3−ジブロモ−5−フルオロベンゼン(25.4g、0.10mol)、m−クロロフェノール(16.7g、0.13mol)、炭酸セシウム(40.1g、0.12mol)およびN−メチルピペリドン(NMP、300ml)の入ったフラスコを120℃に加熱し、20時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、NMPを減圧留去した後、シリカゲルショートパスカラム(溶離液:ヘキサン)を用いて濾過し、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物を1×10−4mmHgの減圧下、80℃にて昇華精製を行うことで1,3−ジブロモ−5−(3−クロロフェノキシ)ベンゼン(27.7g、収率77%)を得た。

NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.90(d,1H)、7.02(s,1H)、7.07(s,2H)、7.15(d,1H)、7.29(t,1H)、7.41(s,1H).

窒素雰囲気下、1,3−ジブロモ−5−(3−クロロフェノキシ)ベンゼン(10.2g、28mmol)、ジフェニルアミン(10.6g、62mmol)、Pd2(dba)3(131mg、0.14mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(56.7mg、0.28mmol)、NaOtBu(6.37g、70mmol)およびトルエン(300ml)の入ったフラスコを80℃に加熱し、30分撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、フロリジルショートパスカラム(溶離液:トルエン)を用いて濾過し、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をメタノールで洗浄することで、5−(3−クロロフェノキシ)N1,N1,N3,N3−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(12.6g、収率83%)を白色固体として得た。

NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.28(d,2H)、6.56(t,1H)、6.82(dd,1H)、6.91(t,1H)、6.95−6.99(m,5H)7.07(d,8H)、7.15(t,1H)、7.21(t,8H).

窒素雰囲気下、5−(3−クロロフェノキシ)N1,N1,N3,N3−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(10.2g、18mmol)、アニリン(3.35g、36mmol)、Pd2(dba)3(0.330g、0.36mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.296g、0.72mmol)、NaOtBu(5.19g、54mmol)およびトルエン(200ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、2時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、フロリジルショートパスカラム(溶離液:トルエン)を用いて濾過し、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサン、メタノールの順で洗浄することで、N1,N1,N3,N3−テトラフェニル5−(3−(フェニルアミノ)フェノキシ)ベンゼン−1,3−ジアミン(9.49g、収率89%)を白色固体として得た。

NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=5.65(s,1H)、6.34(t,2H)、6.47(d,1H)、6.55(dd,1H)、6.65(dd,2H)、6.94−6.98(m,5H)、7.03−7.08(m,10H)、7.10(t,1H)、7.19(t,8H)、7.27(t,2H).

窒素雰囲気下、N1,N1,N3,N3−テトラフェニル5−(3−(フェニルアミノ)フェノキシ)ベンゼン−1,3−ジアミン(4.29g、7.2mmol)、5−クロロ−N1,N1,N3,N3−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(2.67g、6.0mmol)、Pd2(dba)3(0.165g、0.18mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(72.8mg、0.36mmol)、NaOtBu(1.15g、12mmol)およびトルエン(200ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、20時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却し、フロリジルショートパスカラム(溶離液:トルエン)を用いて濾過し、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をアセトニトリルで洗浄することで、N1−(3−(3,5−ビス)ジフェニルアミノ)フェノキシ)フェノール−(N1,N3,N3,N5,N5−ペンタフェニルベンゼン−1,3,5−トリアミン(4.93g、収率82%)を白色固体として得た。

NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(500MHz,(CDCl2)2):δ=6.28(d,2H)、6.38(d,2H)、6.40−6.42(m,2H)、6.52(s,1H)、6.58−6.60(m,2H)、6.86(t,4H)、6.92−7.07(m,24H)、7.11−7.20(m,18H).

N1−(3−(3,5−ビス)ジフェニルアミノ)フェノキシ)フェノール−(N1,N3,N3,N5,N5−ペンタフェニルベンゼン−1,3,5−トリアミン(1.05g、1.0mmol)およびクロロベンゼン(50ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、室温で、三臭化ホウ素(0.569ml、6.0mmol)を加えた。滴下終了後、140℃まで昇温して24時間撹拌した。その後、再び室温まで冷却して、N−ジイソプロピルエチルアミン(3.13ml、18mmol)を加え、発熱が収まるまで撹拌した。その後、60℃で減圧下、反応溶液を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘプタンで洗浄することで、化合物(1−2001)を得た(0.251g、収率24%)。

NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(500MHz,(CDCl2)2):δ=5.67(s,1H)、5.68(s,1H)、5.75(d,1H)、6.51(d,1H)、6.58(s,1H)、6.77(m,2H)、6.92−7.12(m,18H)、7.18−7.51(m,21H)、9.17(m,2H)、10.3(s,1H). 13C−NMR(126MHz,(CDCl2)2):98.5(1C)、98.9(1C)、99.0(1C)、100.6(1C)、103.3(1C)、117.0(1C)、117.3(1C)、120.0(1C)、120.1(1C)、123.5(2C)、124.0(2C)、124.4(1C)、125.6(4C)、126.0(4C)、128.1(1C)、128.3(2C)、128.8(4C)、129.0(1C)、129.1(4C)、130.0(2C)、130.2(2C)、130.5(1C)、130.6(2C)、130.7(2C)、130.8(2C)、131.2(1C)、135.0(1C)、135.1(1C)、141.7(1C)、141.8(1C)、142.1(1C)、143.0(1C)、146.5(2C)、146.7(2C)、147.1(1C)、146.8(1C)、147.8(1C)、147.9(1C)、148.0(1C)、151.1(1C)、151.2(1C)、152.3(1C)、159.2(1C)、161.9(1C).

合成例(6): 化合物(1−31):2,18−ジメチル−N7,N7,N13,N13,9,11−ヘキサパラトリル−5,9,11,15−テトラヒドロ−5,9,11,15−テトラアザ−19b,20b−ジボラジナフト[3,2,1−de:1',2',3'−jk]ペンタセン−7,13−ジアミンの合成

[第1段] 窒素雰囲気下、1,3−ジブロモ−5−クロロベンゼン(13.7g、51mmol)、メタジトリルアミン(19.8g、0.10mol)、Pd2(dba)3(0.93g、1.0mmol)、2−ジシクロヘキシルフェニルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシジフェニル(SPhos:0.838g、2.0mmol)、NaOtBu(14.6g、0.15mol)およびトルエン(640ml)の入ったフラスコを80℃に加熱し、1.5時間撹拌した。水を加え反応を停止後、トルエンを用いて抽出を行った。溶媒を留去して得られた粗体をシリカゲルカラム(溶離液:ヘプタン:トルエン=6:4(容量比))を用いて精製することで、5−クロロ−N1,N1,N3,N3−テトラメタトリルベンゼン−1,3−ジアミン(27.0g、収率84%)を白色ペーストとして得た。

[第2段] 窒素雰囲気下、N1,N3−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(4.22g、16mmol)、5−クロロ−N1,N1,N3,N3−テトラメタトリルベンゼン−1,3−ジアミン(21.5g、43mmol)、Pd−132(0.12g、0.17mmol)、NaOtBu(3.89g、40mmol)およびトルエン(80ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、2時間撹拌した。水を加え反応を停止後、トルエンを用いて抽出を行った。溶媒を留去して得られた粗体をシリカゲルカラム(溶離液:トルエン)を用いて精製し、得られた粗生成物をヘプタンで再沈殿することで、N1,N1’−(1,3−フェニレン)ビス(N1−フェニル−N3,N3,N5,N5−テトラメタトリルベンゼン−1,3,5−トリアミン(19.9g、収率80%)を白色固体として得た。

[第3段] N1,N1’−(1,3−フェニレン)ビス(N1−フェニル−N3,N3,N5,N5−テトラメタトリルベンゼン−1,3,5−トリアミン(0.661g、0.5mmol)およびオルトジクロロベンゼン(10ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、室温で三臭化ホウ素(0.819ml、2.0mmol)を加えた。滴下終了後、180℃まで昇温して24時間撹拌した。その後、再び室温まで冷却してN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.28ml、7.5mmol)を加え、発熱が収まるまで撹拌した。その後、60℃で減圧下、反応溶液を留去した。次いで、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンで洗浄することで、化合物(1−31)を得た(0.365g、収率59%)。

NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。 1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=2.32(s,12H)、2.39(s,6H)、2.47(s,6H)、2.59(s,6H)、5.47−5.51(m,4H)、5.97(s,1H)、6.80(d,2H)、6.87−6.94(m,20H)、7.05(d,4H)、7.18(d,4H)、7.27(d,2H)、7.31(d,4H)、9.00(s,2H)、10.5(s,1H). 13C−NMR(101MHz,CDCl3):20.4(4C)、20.6(2C)、20.7(1C)、21.0(2C)、97.8(2C)、97.9(2C)、103.5(1C)、116.7(2C)、125.7(8C)、128.1(2C)、129.0(8C)、129.5(4C)、130.0(4C)、130.1(4C)、130.7(4C)、131.2(2C)、132.6(4C)、134.7(2C)、136.5(2C)、137.3(2C)、139.6(2C)、140.1(2C)、143.0(1C)、144.1(4C)、146.1(2C)、147.9(2C+2C)、150.1(2C)、151.1(2C).

原料の化合物を適宜変更することにより、上述した合成例に準じた方法で、本発明の他の化合物を合成することができる。

次に、本発明の化合物の基礎物性の評価と本発明の化合物を用いた有機EL素子の作製と評価について記載する。

<基礎物性の評価> サンプルの準備 評価対象の化合物の吸収特性と発光特性(蛍光と燐光)を評価する場合、評価対象の化合物を溶媒に溶解して溶媒中で評価する場合と薄膜状態で評価する場合がある。さらに、薄膜状態で評価する場合は、評価対象の化合物の有機EL素子における使用の態様に応じて、評価対象の化合物のみを薄膜化し評価する場合と評価対象の化合物を適切なマトリックス材料中に分散して薄膜化して評価する場合がある。

マトリックス材料としては、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)などを用いることができる。PMMAに分散した薄膜サンプルは、例えば、PMMAと評価対象の化合物をトルエン中で溶解させた後、スピンコーティング法により石英製の透明支持基板(10mm×10mm)上に薄膜を形成して作製することができる。

また、マトリックス材料がホスト材料である場合の薄膜サンプルの作製方法を以下に記す。石英製の透明支持基板(10mm×10mm×1.0mm)を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、ホスト材料を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着する。次に、真空槽を5×10−4Paまで減圧し、ホスト材料が入った蒸着用ボートとドーパント材料が入った蒸着用ボートを同時に加熱して適切な膜厚になるように蒸着してホスト材料とドーパント材料の混合薄膜を形成する。ホスト材料とドーパント材料の設定重量比に応じて蒸着速度を制御する。

吸収特性と発光特性の評価 前記サンプルの吸収スペクトルの測定は、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所、UV−2600)を用いて行った。また、前記サンプルの蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルの測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテク(株)製、F−7000)を用いて行った。

蛍光スペクトルの測定に対しては、室温で適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定した。燐光スペクトルの測定に対しては、付属の冷却ユニットを使用して、前記サンプルを液体窒素に浸した状態(温度77K)で測定した。燐光スペクトルを観測するため、光学チョッパを使用して励起光照射から測定開始までの遅れ時間を調整した。サンプルは適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定した。

また、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C9920−02G)を用いて蛍光量子収率を測定する。

蛍光寿命(遅延蛍光)の評価 蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C11367−01)を用いて300Kで蛍光寿命を測定する。適切な励起波長で測定される極大発光波長において蛍光寿命の早い成分と遅い成分を観測する。蛍光を発光する一般的な有機EL材料の室温における蛍光寿命測定では、熱による3重項成分の失活により、燐光に由来する3重項成分が関与する遅い成分が観測されることはほとんどない。評価対象の化合物において遅い成分が観測された場合は、励起寿命の長い3重項エネルギーが熱活性化により1重項エネルギーに移動して遅延蛍光として観測されたことを示すことになる。

エネルギーギャップ(Eg)の算出 前述の方法で得られた吸収スペクトルの長波長末端A(nm)からEg=1240/Aで算出される。

ES、ETおよびΔESTの算出 一重項励起エネルギー(ES)は、蛍光スペクトルの極大発光波長B(nm)からES=1240/Bで算出される。また、三重項励起エネルギー(ET)は、燐光スペクトルの極大発光波長C(nm)からET=1240/Cで算出される。

ΔESTはESとETのエネルギー差であるΔEST=ES−ETで定義される。また、ΔESTは、例えば、"Purely organic electroluminescent material realizing 100% conversion from electricity to light", H. Kaji, H. Suzuki, T. Fukushima, K. Shizu, K. Katsuaki, S. Kubo,T. Komino, H. Oiwa, F. Suzuki, A. Wakamiya, Y. Murata, C. Adachi, Nat. Commun. 2015, 6, 8476.に記載の方法でも算出することができる。

化合物(1−1)の基礎物性の評価 [吸収特性] 化合物(1−1)を1重量%の濃度でPMMAに分散した薄膜形成基板(石英製)を準備し吸収スペクトルの測定を行った(図2)。その結果、可視光領域で極大吸収波長は457nmであった。また、化合物(1−1)のみからなる薄膜形成基板を準備し吸収スペクトルを測定した結果、吸収スペクトルの長波長吸収端は477nmとなり、Eg=2.60eVと算出され、適切なエネルギーギャップを持っていることが分かった。

[発光特性] 蛍光スペクトルの測定は、化合物(1−1)を1重量%の濃度でPMMAに分散した薄膜形成基板(石英製)を準備し、励起波長340nmで励起してフォトルミネッセンスを測定した(図2)。その結果、極大発光波長は467nmであった。これより、ESは2.66eVと算出される。また、同じ基板を準備し、励起波長340nmで励起して蛍光量子収率を測定した結果、92%と高い値であった。

燐光スペクトルの測定は、化合物(1−1)を1重量%の濃度でPMMAに分散した薄膜形成基板(石英製)を準備し、励起波長340nmで励起してフォトルミネッセンスを測定した(図2)。その結果、極大発光波長は470nmであった。これより、ETは2.64eVとなり、高い値を示すことがわかった。

ΔESTを算出すると0.02eVとなった。

以上より、化合物(1−1)は、高効率かつ深い青色を達成可能な材料であることを確認できた。特に、小さいΔESTを有することから熱活性化遅延蛍光材料として期待できる。

比較化合物1 国際公開第2015/102118号公報に開示された式(1−2676)の化合物を比較化合物1とした。本発明の化合物(1−1)を比較化合物1に変更した以外は化合物(1−1)の実施例と同様の方法でΔESTを算出した。蛍光スペクトルの極大発光波長は469nm、燐光スペクトルの極大発光波長は502nmとなり、ΔESTは0.17eVと算出された。このΔESTの値は熱活性化遅延蛍光を得るのに十分小さい値であるが、本発明の化合物(1−1)と比べて大きく、熱活性化遅延蛍光を発現する有機EL素子構成に対しては外部量子効率が化合物(1−1)より低くなることが予想される。

比較化合物2 国際公開第2015/102118号公報に開示された式(1−422)の化合物を比較化合物2とした。本発明の化合物(1−1)を比較化合物2に変更した以外は化合物(1−1)の実施例と同様の方法で評価を行った。その結果、蛍光スペクトルの極大発光波長は477nmとなり、化合物(1−1)と比較して10nmも大きい発光波長であり、深い青色を達成できていない結果であった。

以上より化合物(1−1)は適切なエネルギーギャップおよび高い三重項励起エネルギーを有するため発光層用の材料として最適である。特に、小さいΔESTを有するため発光層用の熱活性化遅延蛍光材料としても期待できる。

化合物(1−201)の基礎物性の評価 化合物(1−1)と同条件にて化合物(1−201)をPMMAに分散した薄膜形成基板を作製し、吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定を行った(図3)。なお、発光スペクトル測定時の励起波長は375nmである。その結果、蛍光スペクトルの極大発光波長は438nmであった。また、同じ基板を準備し、励起波長375nmで励起し蛍光量子収率を測定した結果、87%と高い値であった。更に、燐光スペクトルの極大発光波長は466nmであった。これより、ETは2.66eVとなり、高い値を示すことがわかった。ΔESTを算出すると0.17eVとなった。

以上より、化合物(1−201)は、高効率かつ深い青色を達成可能な材料であることを確認できた。特に、小さいΔESTを有することから熱活性化遅延蛍光材料として期待できる。

化合物(1−101)の基礎物性の評価 化合物(1−1)と同条件にて化合物(1−101)をPMMAに分散した薄膜形成基板を作製し、吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定を行った(図4)。なお、発光スペクトル測定時の励起波長は407nmである。その結果、蛍光スペクトルの極大発光波長は457nmであった。また、同じ基板を準備し、励起波長407nmで励起し蛍光量子収率を測定した結果、91%と高い値であった。更に、燐光スペクトルの極大発光波長は461nmであった。これより、ETは2.69eVとなり、高い値を示すことがわかった。ΔESTを算出すると0.02eVとなった。

以上より、化合物(1−101)は、高効率かつ深い青色を達成可能な材料であることを確認できた。特に、小さいΔESTを有することから熱活性化遅延蛍光材料として期待できる。

化合物(1−9)の基礎物性の評価 化合物(1−1)と同条件にて化合物(1−9)をPMMAに分散した薄膜形成基板を作製し、吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定を行った(図5)。なお、発光スペクトル測定時の励起波長は374nmである。その結果、蛍光スペクトルの極大発光波長は473nmであった。また、同じ基板を準備し、励起波長374nmで励起し蛍光量子収率を測定した結果、89%と高い値であった。更に、燐光スペクトルの極大発光波長は477nmであった。これより、ETは2.60eVとなり、高い値を示すことがわかった。ΔESTを算出すると0.02eVとなった。

以上より、化合物(1−9)は、高効率かつ深い青色を達成可能な材料であることを確認できた。特に、小さいΔESTを有することから熱活性化遅延蛍光材料として期待できる。

<有機EL素子の評価> 以上のように、本発明の化合物は、適切なエネルギーギャップ(Eg)、高い三重項励起エネルギー(ET)および小さいΔESTを特徴として有しているため、例えば発光層および電荷輸送層への適用が期待でき、特に発光層への適用が期待できる。

評価項目および評価方法 評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)などがある。これらの評価項目は、適切な発光輝度時の値を用いることができる。

発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。

分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、電圧を印加することにより素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR−3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。

有機EL素子の作製 実施例および比較例に係る有機EL素子を作製し、電圧を印加して電流密度、輝度、色度および外部量子効率などを測定した。作製した有機EL素子の構成として、以下の構成A(表1および表3)、構成B(表2)、構成C(表4)および構成D(表5)の4つを選定し評価を行った。構成A、CおよびDは熱活性化型遅延蛍光用材料に適合した構成であり、構成Bはより一般的な構成である。構成Aは文献(Adv. Mater. 2016, 28, 2777-2781)で示された高い効率を期待できる素子構成である。構成Cは文献(Scientific Reports, 6, 2016, 22463)で示された比較的高い効率と長期間の駆動安定性を期待できる素子構成である。構成Dは文献(Thin Solid Films, 619, 2016, 120-124)で示された、構成AおよびCとは異なるホスト材料を適応した素子構成である。ただし、本発明の化合物の適用はこれらの構成に限定されず、各層の膜厚や構成材料は本発明の化合物の基礎物性によって適宜変更することができる。

表1において、「HI」はN,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−4,4’−ジアミノビフェニルであり、「HT」は4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミンであり、「EB」は1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼンであり、「EMH1」は3,3’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニルであり、「ET」はジフェニル[4−(トリフェニルシリル)フェニル]ホスフィンオキシドである。比較化合物1と共に以下に化学構造を示す。

表2において、「HI−1」はN4,N4’−ジフェニル−N4,N4’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンであり、「HAT−CN」は1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであり、「HT−1」はN−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−9,9−ジメチル−N−(4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミンであり、「HT−2」はN,N−ビス(4−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)フェニル)−[1,1’:4’,1”−テルフェニル]−4−アミンであり、「EMH2」は9−フェニル−10−(4−フェニルナフタレン−1−イル)アントラセンであり、「ET−1」は4,6,8,10−テトラフェニル[1,4]ベンゾキサボリニノ[2,3,4−kl]フェノキサボリニンであり、「ET−2」は3,3’−((2−フェニルアントラセン−9,10−ジイル)ビス(4,1−フェニレン))ビス(4−メチルピリジン)であり、「Liq」と共に以下に化学構造を示す。

<実施例1> <構成A:化合物(1−1)をドーパントとした素子> スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、HT、EB、EMH1、化合物(1−1)、ETおよびLiFをそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、アルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。

透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10−4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して正孔注入層を形成した。次に、HTを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成した。次に、EBを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して電子阻止層を形成した。次に、EMH1と化合物(1−1)を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。EMH1と化合物(1−1)の重量比がおよそ99対1になるように蒸着速度を調節した。次に、ETを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。

その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1nm〜10nm/秒になるように調節した。

ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定した。その結果を図6および図7に示す。7V印加時の輝度は591cd/m2と高輝度を達成し、250cd/m2発光時の発光スペクトルは半値幅(FWHM)19nmでピーク波長473nmであり、色度はCIE色度(x,y)=(0.118,0.104)と深い青色発光が得られ、50cd/m2、100cd/m2および250cd/m2発光時の外部量子効率は、それぞれ、16.8%、15.7%および14.3%と高い値を示し、かつロールオフが小さい結果となった。

<比較例1> <構成A:比較化合物1をドーパントとした素子> ドーパントを変更した以外は実施例1と同様の手順および構成にてEL素子を得た。その結果を図6および図7に示す。7V印加時の輝度は322cd/m2となり、250cd/m2発光時の色度はCIE色度(x,y)=(0.126,0.108)となり、50cd/m2、100cd/m2および250cd/m2発光時の外部量子効率は、それぞれ、14.0%、12.0%および9.0%となった。実施例1と比較して達成輝度が低く、外部量子効率が低く、かつロールオフも大きい結果であった。

<実施例2> <構成B:化合物(1−1)をドーパントとした素子> 構成Aと同様の手順で構成BのEL素子を得た。ただし、EMH2と化合物(1−1)の重量比に関してはおよそ98対2になるように蒸着速度を調節した。その結果、1000cd/m2発光時の印加電圧は4.1V、外部量子効率は6.7%、発光スペクトル(図8)は極大発光波長は471nm、半値幅は18nmとなり、CIE色度(x,y)=(0.118,0.106)となった。特に発光スペクトルの半値幅が小さく深い青色を達成できている。このような狭い半値幅によって深い青色の色度と低波長領域のカットを同時に達成することが可能となり、目や生体リズムに優しいデバイス設計にも対応可能となる。

<比較例2> <構成B:比較化合物1をドーパントとした素子> ドーパントを変更した以外は実施例2と同様の手順および構成にてEL素子を得た。その結果、1000cd/m2発光時の印加電圧は4.1V、外部量子効率は6.6%、発光スペクトル(図8)は極大発光波長は468nm、半値幅は26nmとなり、CIE色度(x,y)=(0.124,0.111)となった。化合物(1−1)と比べて印加電圧や外部量子効率は同等であるが、半値幅が広い結果となった。

上記化合物(1−201)、化合物(1−101)および化合物(1−9)は、化合物(1−1)と同様に構成Aおよび構成Bで有機EL素子を作製し評価することができる。

<比較例3> <構成A:比較化合物2をドーパントとした素子> スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、HT、EB、EMH1、比較化合物2、ETおよびLiFをそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、アルミニウムを入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。

透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10−4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して正孔注入層を形成した。次に、HTを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して正孔輸送層1を形成した。次に、EBを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して正孔輸送層2を形成した。次に、EMH1と比較化合物2を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。EMH1と比較化合物2の重量比がおよそ99対1になるように蒸着速度を調節した。次に、ETを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1nm〜10nm/秒になるように調節した。

ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定した。10cd/m2、100cd/m2および250cd/m2発光時の発光スペクトルはいずれも半値幅(FWHM)18nmでピーク波長480nmであり非常に細い発光が見られたが、ピーク波長が長かったため色度はCIE色度(x,y)=(0.092,0.224)となり淡い青色であった。また、100cd/m2発光時の外部量子効率は4.9%であった。

<実施例3> <構成A:化合物(1−9)をドーパントとした素子> ドーパントを変更した以外は比較例3と同様の手順および構成にてEL素子を得た。100cd/m2発光時の発光スペクトルは半値幅(FWHM)21nmでピーク波長473nmであり非常に細い発光が見られ、色度はCIE色度(x,y)=(0.105,0.210)となり比較例3と比べて若干深い青色であった。また、100cd/m2発光時の外部量子効率は19.0%であり、比較例3と比較して外部量子効率が高かった。

<実施例4> <構成A:化合物(1−31)をドーパントとした素子> ドーパントを変更した以外は比較例3と同様の手順および構成にてEL素子を得られる。

<実施例5> <構成A:化合物(1−2001)をドーパントとした素子> ドーパントを変更した以外は比較例3と同様の手順および構成にてEL素子を得た。100cd/m2発光時の発光スペクトルは半値幅(FWHM)22nmでピーク波長464nmであり非常に細い発光が見られ、色度はCIE色度(x,y)=(0.132,0.079)となり比較例3よりも非常に深い青色であった。また、100cd/m2発光時の外部量子効率は14.0%であり、比較例3と比較して外部量子効率は高かった。

表4において、「HAT−CN」は1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであり、「Tris−PCz」は9,9’,9”−トリフェニル−9H,9H’,9H”−3,3’,6’,3”−テルカルバゾールであり、「T2T」は2,4,6−トリ[[1,1’−ビフェニル]−3−イル]−1,3,5−トリアジンであり、「BPy−TP2」は2,7−ジ([2,2’−ビピリジン]−5−イル)トリフェニレンである。以下に化学構造を示す。

<実施例6> <構成C:化合物(1−1)をドーパントに用いた素子> スパッタリングにより製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置((株)長州産業)の基板ホルダーに固定し、HAT−CN、Tris−PCz、EMH1、化合物(1−1)、T2T、BPy−TP2およびLiFをそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ルツボ、およびアルミニウムを入れた窒化アルミニウム製蒸着用ルツボを装着する。

透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を2.0×10−4Paまで減圧し、まず、HAT−CNを加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、次いで、Tris−PCzを加熱して膜厚30nmになるように蒸着することで2層からなる正孔層を形成する。次に、EMH1と化合物(1−1)を同時に加熱して膜厚30nmになるように蒸着して発光層を形成する。EMH1と化合物(1−1)の重量比がおよそ90対10になるように蒸着速度を調節する。次に、T2Tを加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、BPy−TP2を30nmになるように蒸着して2層からなる電子輸送層を形成する。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように0.1nm〜2nm/秒の蒸着速度で蒸着して陰極を形成することで、有機EL素子を得ることができる。

<実施例7> <構成D:化合物(1−1)をドーパントに用いた素子> スパッタリングにより製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置((株)長州産業)の基板ホルダーに固定し、HAT−CN、Tris−PCz、EB、化合物(3−262)、化合物(1−1)、BPy−TP2およびLiFをそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ルツボ、およびアルミニウムを入れた窒化アルミニウム製蒸着用ルツボを装着する。

透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を2.0×10−4Paまで減圧し、まず、HAT−CNを加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、次いで、Tris−PCzを加熱して膜厚25nmになるように蒸着し、次いで、EBを加熱して10nmになるように蒸着することで3層からなる正孔層を形成する。次に、化合物(3−262)と化合物(1−1)を同時に加熱して膜厚30nmになるように蒸着して発光層を形成する。化合部(3−262)と化合物(1−1)の重量比がおよそ90対10になるように蒸着速度を調節する。次に、化合部(3−262)を加熱して膜厚10nmになるように蒸着し、BPy−TP2を40nmになるように蒸着して2層からなる電子輸送層を形成する。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように0.1nm〜2nm/秒の蒸着速度で蒸着して陰極を形成することで、有機EL素子を得ることができる。

表6において、化合物(5−102)は3,11−ジ−o−トリル−5,9−ジオキサ−13b−ボラナフト[3,2,1−de]アントラセン、化合物(5−201)は9−(5,9−ジオキサ−13b−ボラナフト[3,2,1−de]アントラセン−7−イル)−9H−カルバゾールである。以下に化学構造を示す。

<実施例8> <構成A:化合物(1-1)をドーパントに、化合物(5-201)をホストに用いた素子> スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、HT、EB、化合物(5−201)、化合物(1−1)およびETをそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着した。

透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10−4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、HTを加熱して膜厚15nmになるように蒸着し、EBを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して3層からなる正孔層を形成した。次に、化合物(5−201)と化合物(1−1)を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。化合物(5−201)と化合物(1−1)の重量比がおよそ99対1になるように蒸着速度を調節した。次に、ETを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1nm〜10nm/秒になるように調節した。

ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定した。100cd/m2発光時の発光スペクトルは半値幅(FWHM)21nmでピーク波長473nmであり、非常に高い色純度の発光が見られ、色度はCIE色度(x,y)=(0.116,0.199)となり若干深い青色であった。また、100cd/m2発光時の外部量子効率は33.6%であり、非常に高い量子効率が得られた。

<実施例9> <構成A:化合物(1-1)をドーパントに、化合物(5-102)をホストに用いた素子> ホストを化合物(5−102)に変更した以外は実施例8と同様の手順および構成にてEL素子を得た。100cd/m2発光時の発光スペクトルは半値幅(FWHM)21nmでピーク波長471nmであり非常に高い色純度の発光が見られ、色度はCIE色度(x,y)=(0.118,0.137)となり深い青色であった。また、100cd/m2発光時の外部量子効率は28.0%であり、非常に高い量子効率が得られた。

<比較例4> <構成A:比較化合物1をドーパントに、化合物(5-102)をホストに用いた素子> ドーパントを比較化合物1にホストを化合物(5−102)に変更した以外は実施例8と同様の手順および構成にてEL素子を得た。100cd/m2発光時の発光スペクトルは半値幅(FWHM)28nmでピーク波長465nmであり実施例8および9よりも色純度が劣る発光が見られ、色度はCIE色度(x,y)=(0.128,0.124)であった。一方、100cd/m2発光時の外部量子効率は15.4%であり、実施例8および9と比べて低い量子効率であった。

<実施例10> <構成A:化合物(1-1)をドーパントに、化合物(5-102)をホストに用いた素子> スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(長州産業(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、HT、EB、化合物(5−102)、化合物(1−1)およびETをそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着した。

透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10−4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、HTを加熱して膜厚15nmになるように蒸着し、EBを加熱して膜厚15nmになるように蒸着して3層からなる正孔層を形成した。次に、化合物(5−102)と化合物(1−1)を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。化合物(5−102)と化合物(1−1)の重量比がおよそ99対1になるように蒸着速度を調節した。次に、ETを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1nm〜10nm/秒になるように調節した。

ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定した。100cd/m2発光時の発光スペクトルは半値幅(FWHM)17nmでピーク波長470nmであり非常に高い色純度の発光が見られ、色度はCIE色度(x,y)=(0.119,0.122)となり深い青色であった。また、100cd/m2発光時の外部量子効率は30.1%であり、非常に高い量子効率が得られた。

本発明では、新規な多環芳香族化合物を提供することで、有機EL素子用材料の選択肢を増やすことができる。また、新規な多環芳香族化合物を有機電界発光素子用材料として用いることで、優れた有機EL素子、それを備えた表示装置およびそれを備えた照明装置などを提供することができる。

100 有機電界発光素子 101 基板 102 陽極 103 正孔注入層 104 正孔輸送層 105 発光層 106 電子輸送層 107 電子注入層 108 陰極

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