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材料及び発光装置

阅读:824发布:2020-05-08

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第1の有機化合物と第2の有機化合物とを含み、 前記第1の有機化合物及び前記第2の有機化合物は、励起錯体を形成しうる組み合わせであり、 前記第2の有機化合物は、カルバゾール環を有する芳香族アミン化合物であり、 前記第2の有機化合物のHOMO準位は、−5.42eV以上−5.08eV以下である、材料。前記第1の有機化合物及び前記第2の有機化合物の少なくとも一方が、蛍光性化合物である、 請求項1に記載の材料。前記第1の有機化合物が複素芳香族化合物である、 請求項1または請求項2に記載の材料。燐光性化合物をゲスト材料とする発光層において、ホスト材料として用いられる請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の材料。請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の材料をホスト材料とし、 燐光性化合物をゲスト材料とした発光層を備えた発光装置。

说明书全文

有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)現象 を利用した発光素子(以下、有機EL素子とも記す)に関する。

有機EL素子の研究開発が盛んに行われている。有機EL素子の基本的な構成は、一対の 電極間に発光性の有機化合物を含む層(以下、発光層とも記す)を挟んだものであり、薄 型軽量化できる、入信号に高速に応答できる、直流低電圧駆動が可能であるなどの特性 から、次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、このよう な発光素子を用いたディスプレイは、コントラストや画質に優れ、視野が広いという特 徴も有している。さらに、有機EL素子は面光源であるため、液晶ディスプレイのバック ライトや照明等の光源としての応用も考えられている。

有機EL素子の発光機構は、キャリア注入型である。すなわち、電極間に発光層を挟んで 電圧を印加することにより、電極から注入された電子およびホール(正孔)が再結合して 発光物質が励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。そして、励起 状態の種類としては、一重項励起状態(S*)と三重項励起状態(T*)が可能である。 また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、S*:T*=1:3であると考えられ ている。

発光性の有機化合物は通常、基底状態が一重項状態である。したがって、一重項励起状態 (S*)からの発光は、同じスピン多重度間の電子遷移であるため蛍光と呼ばれる。一方 、三重項励起状態(T*)からの発光は、異なるスピン多重度間の電子遷移であるため燐 光と呼ばれる。ここで、蛍光を発する化合物(以下、蛍光性化合物と記す)は室温におい て、通常、燐光は観測されず蛍光のみが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた 発光素子における内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の 理論的限界は、S*:T*=1:3であることを根拠に25%とされている。

一方、燐光を発する化合物(以下、燐光性化合物と記す)を用いれば、内部量子効率は1 00%にまで理論上は可能となる。つまり、蛍光性化合物に比べて高い発光効率を得るこ とが可能になる。このような理由から、高効率な発光素子を実現するために、燐光性化合 物を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。特に、燐光性化合物としては、そ の燐光量子収率の高さゆえに、イリジウム等を中心金属とする有機金属錯体が注目されて おり、例えば、特許文献1には、イリジウムを中心金属とする有機金属錯体が燐光材料と して開示されている。

上述した燐光性化合物を用いて発光素子の発光層を形成する場合、燐光性化合物の濃度消 光や三重項−三重項消滅による消光を抑制するために、他の化合物からなるマトリクス中 に該燐光性化合物が分散するようにして形成することが多い。この時、マトリクスとなる 化合物はホスト材料、燐光性化合物のようにマトリクス中に分散される化合物はゲスト材 料と呼ばれる。

国際公開第00/70655号パンフレット

しかし、一般に、有機EL素子における光取り出し効率は20%〜30%程度と言われて いる。したがって、反射電極や透明電極による光の吸収を考慮すると、燐光性化合物を用 いた発光素子の外部量子効率の限界は、25%程度と考えられている。

また、前述の通り、有機EL素子は、ディスプレイや照明への応用が考えられている。こ のとき、課題の一つとして、消費電力の低減が挙げられる。消費電力を低くするためには 、有機EL素子の駆動電圧を低くすることが重要である。

そこで、本発明の一態様は、外部量子効率が高い発光素子を提供することを課題の一とす る。また、本発明の一態様は、駆動電圧の低い発光素子を提供することを課題の一とする 。

なお、以下に開示する発明は、上記課題の少なくともいずれか一つを解決することを目的 とする。

本発明の一態様は、燐光性化合物、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物を含む発光 層を一対の電極間に有し、第1の有機化合物及び第2の有機化合物が、励起錯体を形成す る組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物の吸収スペクトルの最 も長波長側に位置する吸収帯と重なり、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が、燐光 性化合物の吸収スペクトルの最も長波長側に位置する吸収帯のピーク波長以上である発光 素子である。

また、本発明の一態様は、燐光性化合物、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物を含 む発光層を一対の電極間に有し、第1の有機化合物及び第2の有機化合物が、励起錯体を 形成する組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物の吸収スペクト ルの最も長波長側に位置する吸収帯と重なり、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長と 、燐光性化合物の発光スペクトルのピーク波長との差が30nm以下である発光素子であ る。

また、本発明の一態様は、燐光性化合物、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物を含 む発光層を一対の電極間に有し、第1の有機化合物及び第2の有機化合物が、励起錯体を 形成する組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物の吸収スペクト ルの最も長波長側に位置する吸収帯と重なり、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が 、燐光性化合物の吸収スペクトルの最も長波長側に位置する吸収帯のピーク波長以上、燐 光性化合物の発光スペクトルのピーク波長以下である発光素子である。さらに、励起錯体 の発光スペクトルのピーク波長と、燐光性化合物の発光スペクトルのピーク波長との差が 30nm以下であることが好ましい。

また、本発明の一態様は、第1の有機化合物の一重項励起子から、励起錯体が形成される 上記発光素子である。

また、本発明の一態様は、第1の有機化合物のアニオン及び第2の有機化合物のカチオン から、励起錯体が形成される上記発光素子である。

上記発光素子において、励起錯体の励起エネルギーが燐光性化合物に移動して、該燐光性 化合物が燐光を発することが好ましい。

上記発光素子において、第1の有機化合物及び第2の有機化合物の少なくとも一方が蛍光 性化合物であることが好ましい。

上記発光素子において、燐光性化合物は、有機金属錯体であることが好ましい。

本発明の一態様の発光素子は、発光装置、電子機器、及び照明装置に適用することができ る。

本発明の一態様では、外部量子効率が高い発光素子を提供することができる。また、本発 明の一態様では、駆動電圧の低い発光素子を提供することができる。

実施例1に係る吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。

実施例1に係る吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。

実施例1に係る吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。

実施例1に係る吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。

本発明の一態様の概念を説明する図。

本発明の一態様で適用する励起錯体のエネルギー準位を説明する図。

本発明の一態様の発光素子を示す図。

実施例2の発光素子の構成を示す図。

実施例2の発光素子の電圧−輝度特性を示す図。

実施例2の発光素子の電圧−電流特性を示す図。

実施例2の発光素子の輝度−電力効率特性を示す図。

実施例2の発光素子の輝度−外部量子効率特性を示す図。

実施例2の発光素子の発光スペクトルを示す図。

実施例2の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。

実施例3に係る励起錯体の発光スペクトルのピーク波長と物質XのHOMO準位の関係を示す図。

実施例3に係る励起錯体の発光スペクトルのピーク波長と発光素子の外部量子効率の関係を示す図。

本発明の一態様に係る計算結果を示す図。

本発明の一態様に係る計算結果を示す図。

実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定さ れず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し 得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の 記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において 、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、 その繰り返しの説明は省略する。

(実施の形態1) 本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について説明する。

本実施の形態の発光素子は、発光物質であるゲスト材料と、第1の有機化合物と、第2の 有機化合物とを発光層に有する。具体的には、ゲスト材料として燐光性化合物を用いる。 なお、本明細書においては、第1の有機化合物及び第2の有機化合物のうち、発光層に含 まれる割合が多い材料をホスト材料と言う。

ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層の結晶化を抑制する ことができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制し、発光素子の 発光効率を高くすることができる。

なお、本実施の形態において、第1の有機化合物及び第2の有機化合物のそれぞれの三重 項励起エネルギーの準位(T1準位)は、ゲスト材料のT1準位よりも高いことが好まし い。第1の有機化合物(又は第2の有機化合物)のT1準位がゲスト材料のT1準位より も低いと、発光に寄与するゲスト材料の三重項励起エネルギーを第1の有機化合物(又は 第2の有機化合物)が消光(クエンチ)してしまい、発光効率の低下を招くためである。

<発光の素過程> まず、燐光性化合物をゲスト材料として用いる発光素子における発光の一般的な素過程を 説明する。

(1)電子及びホールがゲスト分子において再結合し、ゲスト分子が励起状態となる場合 (直接再結合過程)。 (1−1)ゲスト分子の励起状態が三重項励起状態のとき ゲスト分子は燐光を発する。 (1−2)ゲスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき 一重項励起状態のゲスト分子は三重項励起状態に項間交差し、燐光を発する。

つまり、上記(1)の直接再結合過程においては、ゲスト分子の項間交差効率、及び燐光 量子収率さえ高ければ、高い発光効率が得られることになる。なお、上述した通り、ホス ト分子のT1準位はゲスト分子のT1準位よりも高いことが好ましい。

(2)電子及びホールがホスト分子において再結合し、ホスト分子が励起状態となる場合 (エネルギー移動過程)。 (2−1)ホスト分子の励起状態が三重項励起状態のとき ホスト分子のT1準位がゲスト分子のT1準位よりも高い場合、ホスト分子からゲスト 分子に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が三重項励起状態となる。三重項励起状態と なったゲスト分子は燐光を発する。なお、ゲスト分子の一重項励起エネルギーの準位(S 1準位)へのエネルギー移動も形式上あり得るが、多くの場合ゲスト分子のS1準位の方 がホスト分子のT1準位よりも高エネルギー側に位置しており、主たるエネルギー移動過 程になりにくいため、ここでは割愛する。 (2−2)ホスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき ホスト分子のS1準位がゲスト分子のS1準位およびT1準位よりも高い場合、ホスト 分子からゲスト分子に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が一重項励起状態又は三重項 励起状態となる。三重項励起状態となったゲスト分子は燐光を発する。また、一重項励起 状態となったゲスト分子は、三重項励起状態に項間交差し、燐光を発する。

つまり、上記(2)のエネルギー移動過程においては、ホスト分子の三重項励起エネルギ ー及び一重項励起エネルギーの双方が、いかにゲスト分子に効率良く移動できるかが重要 となる。

このエネルギー移動過程を鑑みれば、ホスト分子からゲスト分子に励起エネルギーが移動 する前に、ホスト分子自体がその励起エネルギーを光又は熱として放出して失活してしま うと、発光効率が低下することになる。ここで本発明者等は、ホスト分子が一重項励起状 態である場合(上記(2−2))は、三重項励起状態である場合(上記(2−1))に比 べて、燐光性化合物であるゲスト分子へのエネルギー移動が起こりにくく、発光効率が低 下しやすいことを見出し、課題として着目した。その理由は、以下の通り、より詳細にエ ネルギー移動過程を考慮することで導き出された。

<エネルギー移動過程> 以下では、分子間のエネルギー移動過程について詳述する。

まず、分子間のエネルギー移動の機構として、以下の2つの機構が提唱されている。ここ で、励起エネルギーを与える側の分子をホスト分子、励起エネルギーを受け取る側の分子 をゲスト分子と記す。

≪フェルスター機構(双極子−双極子相互作用)≫ フェルスター機構は、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要としない。ホスト分 子及びゲスト分子間の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。双極子振 動の共鳴現象によってホスト分子がゲスト分子にエネルギーを受け渡し、ホスト分子が基 底状態になり、ゲスト分子が励起状態になる。フェルスター機構の速度定数kh*→gを 数式(1)に示す。

数式(1)において、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト分子の規格化された 発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、 三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、εg(ν )は、ゲスト分子のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の屈折 率を表し、Rは、ホスト分子とゲスト分子の分子間距離を表し、τは、実測される励起状 態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率(一重 項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエ ネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、K2は、ホスト分子とゲスト分子の 遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0〜4)である。なお、ランダム配向の場合は K2=2/3である。

≪デクスター機構(電子交換相互作用)≫ デクスター機構では、ホスト分子とゲスト分子が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近 づき、励起状態のホスト分子の電子と基底状態のゲスト分子の電子の交換を通じてエネル ギー移動が起こる。デクスター機構の速度定数kh*→gを数式(2)に示す。

数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数で あり、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、ホスト分子の規格化された発光スペクトル (一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態 からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’g(ν)は、ゲスト 分子の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、ホスト分 子とゲスト分子の分子間距離を表す。

ここで、ホスト分子からゲスト分子へのエネルギー移動効率ΦETは、数式(3)で表さ れると考えられる。krは、ホスト分子の発光過程(一重項励起状態からのエネルギー移 動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光)の速 度定数を表し、knは、ホスト分子の非発光過程(熱失活や項間交差)の速度定数を表し 、τは、実測されるホスト分子の励起状態の寿命を表す。

まず、数式(3)より、エネルギー移動効率ΦETを高くするためには、エネルギー移動 の速度定数kh*→gを、他の競合する速度定数kr+kn(=1/τ)に比べて遙かに 大きくすれば良いことがわかる。そして、そのエネルギー移動の速度定数kh*→gを大 きくするためには、数式(1)及び数式(2)より、フェルスター機構、デクスター機構 のどちらの機構においても、ホスト分子の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネル ギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる 場合は燐光スペクトル)とゲスト分子の吸収スペクトルとの重なりが大きい方が良いこと がわかる。

ここで、本発明者等は、ホスト分子の発光スペクトルとゲスト分子の吸収スペクトルとの 重なりを考える上で、ゲスト分子の吸収スペクトルにおける最も長波長(低エネルギー) 側の吸収帯が重要であると考えた。

本実施の形態では、ゲスト材料として燐光性化合物を用いる。燐光性化合物の吸収スペク トルにおいて、最も発光に強く寄与すると考えられている吸収帯は、一重項基底状態から 三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収波長とその近傍であり、それは最も長波長側 に現れる吸収帯である。このことから、ホスト材料の発光スペクトル(蛍光スペクトル及 び燐光スペクトル)は、燐光性化合物の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なる ことが好ましいと考えられる。

例えば、有機金属錯体、特に発光性のイリジウム錯体において、最も長波長側の吸収帯は 、500〜600nm付近にブロードな吸収帯が現れる場合が多い(無論、発光波長によ っては、より短波長側やより長波長側に現れる場合もある)。この吸収帯は、主として、 三重項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer) 遷移に由来する。ただし、該吸収帯には三重項π−π*遷移や一重項MLCT遷移に由来 する吸収も一部含まれ、これらが重なって、吸収スペクトルの最も長波長側にブロードな 吸収帯を形成していると考えられる。換言すれば、最低一重項励起状態と最低三重項励起 状態の差は小さく、これらに由来する吸収が重なって、吸収スペクトルの最も長波長側に ブロードな吸収帯を形成していると考えられる。したがって、ゲスト材料に、有機金属錯 体(特にイリジウム錯体)を用いるときは、このように最も長波長側に存在するブロード な吸収帯と、ホスト材料の発光スペクトルが大きく重なる状態が好ましい。

ここでまず、ホスト材料の三重項励起状態からのエネルギー移動を考えてみる。上述の議 論から、三重項励起状態からのエネルギー移動においては、ホスト材料の燐光スペクトル とゲスト材料の最も長波長側の吸収帯との重なりが大きくなればよい。

なお、通常、ホスト材料には蛍光性化合物を用いるため、燐光寿命(τ)はミリ秒以上と 非常に長い(kr+knが小さい)。これは、三重項励起状態から基底状態(一重項)へ の遷移が禁制遷移だからである。数式(3)から、このことはエネルギー移動効率ΦET に対して有利に働く。このことも考慮すると、ホスト材料の三重項励起状態からゲスト材 料の三重項励起状態へのエネルギー移動は、総じて起こりやすい傾向にある。

しかしながら、このとき問題となるのは、ホスト材料の一重項励起状態からのエネルギー 移動である。三重項励起状態からのエネルギー移動に加え、一重項励起状態からのエネル ギー移動も効率よく行おうとすると、上述の議論から、ホスト材料の燐光スペクトルだけ でなく、蛍光スペクトルをもゲスト材料の最も長波長側の吸収帯と重ねるように設計しな ければならない。換言すれば、ホスト材料の蛍光スペクトルが、燐光スペクトルと同じよ うな位置に来るようにホスト材料を設計しなければ、ホスト材料の一重項励起状態及び三 重項励起状態の双方からのエネルギー移動を効率よく行うことはできないということにな る。

ところが、一般に、S1準位とT1準位は大きく異なる(S1準位>T1準位)ため、蛍 光の発光波長と燐光の発光波長も大きく異なる(蛍光の発光波長<燐光の発光波長)。例 えば、燐光性化合物を用いた発光素子において、ホスト材料として良く用いられる4,4 ’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)は、500nm付近に燐光スペ クトルを有するが、一方で蛍光スペクトルは400nm付近であり、100nmもの隔た りがある。この例から考えてみても、ホスト材料の蛍光スペクトルが燐光スペクトルと同 じような位置に来るようにホスト材料を設計することは、極めて困難である。したがって 、ホスト材料の一重項励起状態からのゲスト材料へのエネルギー移動効率の向上は、大き な課題であると本発明者等は考えた。

なお、ホスト材料として用いられる蛍光性化合物の蛍光寿命(τ)はナノ秒レベルと非常 に短い(kr+knが大きい)。これは、一重項励起状態から基底状態(一重項)への遷 移が許容遷移だからである。数式(3)から、このことはエネルギー移動効率ΦETに対 して不利に働く。このことも考慮すると、ホスト材料の一重項励起状態からゲスト材料へ のエネルギー移動は、総じて起こりにくい傾向にある。

本発明の一態様は、このようなホスト材料の一重項励起状態からのゲスト材料へのエネル ギー移動効率に関する問題点を克服できる、有用な手法である。

なおこれまで、燐光性化合物は、項間交差を利用すれば、一重項励起状態及び三重項励起 状態の双方を発光に変換できるため(上述の「(1)直接再結合過程」参照)、燐光性化 合物を用いた発光素子の内部量子効率は、理論的に100%が可能であるとされてきた。 そして、光取り出し効率が20%という仮定の下に、外部量子効率が20%に達する発光 素子は、内部量子効率もほぼ100%が達成できているという議論がなされてきた経緯が ある。しかし、これら従来の発光素子においては、上述したホスト材料の一重項励起状態 からのエネルギー移動が看過されてきたため、実は内部量子効率100%には達していな いと考えられる。なぜならば、以下で述べる本発明の一態様を実施することにより、本発 明者等は外部量子効率27%以上が達成できているためである(図12、実施例2参照) 。これは外部量子効率の従来の理論限界と同等以上の値であると言える。つまり、少なく とも外部量子効率27%以上が内部量子効率100%に相当するのであり、本発明の一態 様は、それを達成するのに有用な手法である。なお、このことから、従来の外部量子効率 20%というのは、内部量子効率にして75%以下に相当すると見積もられる。

このように、本発明の一態様を適用することで、外部量子効率の高い発光素子を実現する ことができる。

<本発明の一態様> 本発明の一態様は、燐光性化合物、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物を含む発光 層を一対の電極間に有し、第1の有機化合物及び第2の有機化合物が、励起錯体を形成す る組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物の吸収スペクトルの最 も長波長側の吸収帯と重なり、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が、燐光性化合物 の吸収スペクトルの最も長波長側に位置する吸収帯のピーク波長以上である発光素子であ る。

第1の有機化合物と第2の有機化合物は、キャリア(電子及びホール)の再結合(又は一 重項励起子)によって、励起錯体(エキサイプレックスとも言う)が形成される。形成さ れた励起錯体が発光する場合、その発光波長は、第1の有機化合物と第2の有機化合物の それぞれの発光波長(蛍光波長)に比べて、長波長側に存在する。換言すれば、励起錯体 を形成することで、第1の有機化合物の蛍光スペクトルや第2の有機化合物の蛍光スペク トルを、より長波長側に位置する発光スペクトルに変換することができる。

したがって、図5に示すように、第1の有機化合物(又は第2の有機化合物)の蛍光スペ クトルが、たとえ燐光性化合物の最も長波長側に位置する吸収帯に比べて短波長側に位置 し、該吸収帯との重なりがなかったとしても、励起錯体を形成することで、長波長の発光 スペクトルが得られ、該吸収帯との重なりを大きくすることができる。本発明の一態様の 発光素子は、この励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルとの重なり を利用して、エネルギー移動をするため、エネルギー移動効率が高い。したがって、本発 明の一態様では、外部量子効率が高い発光素子を実現することができる。

また、励起錯体は励起状態でのみ存在するため、エネルギーを吸収できる基底状態が存在 しない。したがって、燐光性化合物の一重項励起状態及び三重項励起状態が該励起錯体に 逆エネルギー移動してしまい、燐光性化合物が発光する前に失活する(すなわち発光効率 を損なう)という現象は、原理的に生じないと考えられる。このことも、外部量子効率を 高くできる一因である。

また、励起錯体は一重項励起エネルギーと三重項励起エネルギーの差が極めて小さいと考 えられる。換言すれば、励起錯体の一重項状態からの発光スペクトルと三重項状態からの 発光スペクトルは、極めて近接することになる。したがって、上述したように励起錯体の 発光スペクトル(一般には、励起錯体の一重項状態からの発光スペクトル)を燐光性化合 物の最も長波長側に位置する吸収帯に重ねるよう設計した場合、励起錯体の三重項状態か らの発光スペクトル(常温では観測されず、低温でも観測されない場合が多い)も、燐光 性化合物の最も長波長側に位置する吸収帯に重なることになる。このことはすなわち、励 起錯体の一重項状態、及び三重項状態の双方から、燐光性化合物に対して効率よくエネル ギー移動できることを意味する。

実際に励起錯体がこのような特性を有しているかどうかに関し、以下では、分子軌道計算 を用いて検証した。一般に、複素芳香族化合物と芳香族アミンとの組み合わせは、芳香族 アミンの最低空分子軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molec ular Orbital)準位に比べて深い複素芳香族化合物のLUMO準位(電子が 入りやすい性質)と複素芳香族化合物の最高被占有軌道(HOMO:Hightest Occupied Molecular Orbital)準位に比べて浅い芳香族アミ ンのHOMO準位(ホールが入りやすい性質)の影響で、励起錯体を形成することが多い 。そこで、複素芳香族化合物のLUMOを構成する代表的な骨格のジベンゾ[f,h]キ ノキサリン(略称:DBq)と、芳香族アミンのHOMOを構成する代表的な骨格のトリ フェニルアミン(略称:TPA)との組み合わせを用いて計算した。

まず、DBq単体とTPA単体の最低励起一重項状態(S1)と最低励起三重項状態(T 1)における最適分子構造及び励起エネルギーを、時間依存密度汎関数法(TD−DFT )を用いて計算した。さらに、DBqとTPAの二量体についても励起エネルギーを計算 した。DFTの全エネルギーはポテンシャルエネルギー、電子間静電エネルギー、電子の 運動エネルギー、及び、複雑な電子間の相互作用を全て含む交換相関エネルギーの和で表 される。DFTでは、交換相関相互作用を電子密度で表現された一電子ポテンシャルの汎 関数(関数の関数の意)で近似しているため、計算は高速かつ高精度である。ここでは、 混合汎関数であるB3LYPを用いて、交換と相関エネルギーに係る各パラメータの重み を規定した。また、基底関数として、6−311(それぞれの原子価軌道に三つの短縮関 数を用いたtriple split valence基底系の基底関数)を全ての原子 に適用した。上述の基底関数により、例えば、素原子であれば、1s〜3sの軌道が考 慮され、また、炭素原子であれば、1s〜4s、2p〜4pの軌道が考慮されることにな る。さらに、計算精度向上のため、分極基底系として、水素原子にはp関数を、水素原子 以外にはd関数を加えた。

なお、量子化学計算プログラムとしては、Gaussian 09を使用した。計算は、 ハイパフォーマンスコンピュータ(SGI社製、Altix4700)を用いて行った。

まず、DBq単体、TPA単体、及びDBqとTPAの二量体に関し、HOMO準位及び LUMO準位を算出した。HOMO準位及びLUMO準位を図17に、HOMO及びLU MOの分布を図18に、それぞれ示す。

図18(A1)に、DBq単体のLUMOの分布を示し、図18(A2)に、DBq単体 のHOMOの分布を示し、図18(B1)に、TPA単体のLUMOの分布を示し、図1 8(B2)に、TPA単体のHOMOの分布を示し、図18(C1)に、DBqとTPA の二量体のLUMOの分布を示し、図18(C2)に、DBqとTPAの二量体のHOM Oの分布を示す。

図17に示すように、DBqとTPAの二量体は、TPAのLUMO準位に比べて深い( 低い)DBqのLUMO準位(−1.99eV)とDBqのHOMO準位に比べて浅い( 高い)TPAのHOMO準位(−5.21eV)の影響で、DBqとTPAの励起錯体を 形成することが示唆される。実際、図18からわかるように、DBqとTPAの二量体の LUMOはDBq側に、HOMOはTPA側に分布している。

次に、DBq単体のS1とT1における最適分子構造から得られた励起エネルギーを示す 。ここで、S1とT1の励起エネルギーは、DBq単体が発する蛍光と燐光の波長にそれ ぞれ相当する。DBq単体のS1の励起エネルギーは、3.294eVであり、蛍光波長 は、376.4nmであった。また、DBq単体のT1の励起エネルギーは、2.460 eVであり、燐光波長は、504.1nmであった。

また、TPA単体のS1とT1における最適分子構造から得られた励起エネルギーを示す 。ここで、S1とT1の励起エネルギーは、TPA単体が発する蛍光と燐光の波長にそれ ぞれ相当する。TPA単体のS1の励起エネルギーは、3.508eVであり、蛍光波長 は、353.4nmであった。また、TPA単体のT1の励起エネルギーは、2.610 eVであり、燐光波長は、474.7nmであった。

さらに、DBqとTPAの二量体のS1とT1における最適分子構造から得られた励起エ ネルギーを示す。S1とT1の励起エネルギーは、DBqとTPAの二量体が発する蛍光 と燐光の波長にそれぞれ相当する。DBqとTPAの二量体のS1の励起エネルギーは、 2.036eVであり、蛍光波長は、609.1nmであった。また、DBqとTPAの 二量体のT1の励起エネルギーは、2.030eVであり、燐光波長は、610.0nm であった。

以上のことから、DBq単体、TPA単体のいずれにおいても、蛍光波長に比べて燐光波 長が100nm近く長波長シフトしていることがわかる。これは、上述したCBP(実測 値)と同様の傾向であり、計算の妥当性を支持する結果である。

一方、DBqとTPAの二量体の蛍光波長は、DBq単体やTPA単体の蛍光波長に比べ 、より長波長側に存在することがわかる。これは、後述する実施例(実測値)でも同様の 傾向であり、計算の妥当性を支持する結果である。そして、DBqとTPAの二量体の蛍 光波長と燐光波長の差はわずか0.9nmであり、ほぼ同じ波長であることがわかる。

この結果から、励起錯体は一重項励起エネルギーと三重項励起エネルギーをほぼ同じエネ ルギーに集約することができると言える。したがって、上述したように、励起錯体はその 一重項状態、及び三重項状態の双方から、燐光性化合物に対して効率よくエネルギー移動 できることが示唆された。

このような効果は、励起錯体をエネルギー移動の媒体に用いることによる特異な効果であ る。一般的には、ホスト材料の一重項励起状態あるいは三重項励起状態から、燐光性化合 物へのエネルギー移動が考慮されている。一方、本発明の一態様では、ホスト材料と他の 材料との励起錯体(第1の有機化合物と第2の有機化合物との励起錯体)をまず形成させ 、その励起錯体からのエネルギー移動を用いている点で従来と大きく異なる。そして、こ の相違点により、従来にない高い発光効率が得られているのである。

なお、一般に、励起錯体を発光素子の発光層に用いると、発光色を制御できるなどの利用 価値はあるものの、発光効率は大きく低下するのが常である。したがって、励起錯体を用 いた発光素子は、高効率な発光素子を得るには適さないと従来は考えられてきた。しかし ながら、本発明の一態様で示すように、励起錯体を燐光性化合物へのエネルギー移動の媒 体に用いることで、逆に極限まで発光効率を高めることができることを本発明者等は見出 した。これは、従来の固定概念とは相反する技術思想である。

また、本発明の一態様の発光素子において、キャリアの再結合(又は一重項励起子)によ って励起錯体が形成される電圧のしきい値は、該励起錯体の発光スペクトルのピークのエ ネルギーによって決まる。例えば、励起錯体の発光スペクトルのピークが620nm(2 .0eV)であれば、その励起錯体を電気エネルギーで形成するのに必要な電圧のしきい 値も2.0V程度である。

ここで、励起錯体の発光スペクトルのピークのエネルギーが高すぎる(波長が短すぎる) と、励起錯体が形成される電圧のしきい値も増大してしまう。この場合、励起錯体から燐 光性化合物にエネルギー移動して燐光性化合物を発光させるために、より大きな電圧を要 することになり、余分なエネルギーを消費してしまうため、好ましくない。

この観点から、励起錯体の発光スペクトルのピークのエネルギーが低い(波長が長い)ほ ど、該電圧のしきい値は小さくなり好ましい。すなわち、本発明の一態様の発光素子は、 励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が、燐光性化合物の吸収スペクトルの最も長波長 側に位置する吸収帯のピーク波長以上であるため、駆動電圧の低い発光素子を得ることが できる。しかも、本発明の一態様の発光素子は、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長 が、燐光性化合物の吸収スペクトルのピーク波長以上であっても、励起錯体の発光スペク トルと燐光性化合物の吸収スペクトルの最も長波長側に位置する吸収帯との重なりを利用 してエネルギー移動が可能であるため、高い発光効率を得ることができる。このように、 駆動電圧を低減しつつ、高い発光効率(外部量子効率)が得られることにより、高い電力 効率が実現できる。

上記発光素子は、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が特に長波長であるため、より 駆動電圧の低い発光素子を得ることができる。これは以下のように説明できる。

本発明の一態様には、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が、燐光性化合物の吸収ス ペクトルの最も長波長側に位置する吸収帯のピーク波長以上(すなわち、励起錯体の発光 のピークのエネルギーが、燐光性化合物の吸収のピークのエネルギー以下)である発光素 子が含まれる。したがって、該発光素子は、キャリアの再結合によって燐光性化合物が発 光を始める電圧の値よりも、キャリアの再結合によって励起錯体が形成される電圧の値の 方が小さい。

つまり、発光素子に印加される電圧が、燐光性化合物が発光を始める値未満であっても、 キャリアが再結合し励起錯体を形成することで、発光素子に再結合電流が流れ始める。し たがって、より駆動電圧の低い(電圧−電流特性の良い)発光素子を実現することができ る。

また、これにより、燐光性化合物が発光を始める値に電圧が達した頃には、発光層中に十 分な数のキャリアが存在し、燐光性化合物の発光に寄与できるキャリアの再結合が円滑に 、かつ数多く行われる。よって、燐光性化合物のしきい値電圧(発光開始電圧)付近にお いて、輝度は急激に高くなる。つまり、電圧−輝度特性の発光開始電圧付近の立ち上がり を急峻にすることができるため、所望の輝度に要する駆動電圧も低くすることができる。 また、実用的な輝度を得るためには、燐光性化合物のしきい値電圧(発光開始電圧)以上 の電圧で駆動するため、燐光性化合物の発光が支配的であり、発光素子は高い電流効率を 実現することもできる。

なお、本発明の一態様で用いる燐光性化合物は、一重項吸収スペクトルと三重項吸収スペ クトルが近い位置に存在する。また、本発明の一態様で形成する励起錯体は、一重項状態 からの発光スペクトルのピークと、三重項状態からの発光スペクトルのピークが近い位置 に存在すると考えられる。したがって、励起錯体の発光スペクトル(通常は一重項状態か らの発光スペクトル)のピークが、燐光性化合物の発光スペクトルのピークに近い位置に 存在しても、三重項状態の励起錯体が、燐光性化合物の三重項励起エネルギーを消光する ことが抑制することができる。また、そもそも、励起錯体には吸収スペクトルが存在しな いので、燐光性化合物の三重項励起エネルギーが励起錯体にエネルギー移動し、消光する という現象自体が起こりにくい。このことからも、本発明の一態様の発光素子は外部量子 効率が高い値を示すと言える。これも、励起錯体を用いる利点の一つである。

また、本発明の一態様は、燐光性化合物、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物を含 む発光層を一対の電極間に有し、第1の有機化合物及び第2の有機化合物が、励起錯体を 形成する組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物の吸収スペクト ルの最も長波長側に位置する吸収帯と重なり、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長と 、燐光性化合物の発光スペクトルのピーク波長との差が30nm以下である発光素子であ る。

上述した通り、励起錯体の発光スペクトル(通常は一重項状態からの発光スペクトル)の ピークが、燐光性化合物の発光スペクトルのピークに近い位置に存在することで、駆動電 圧が低く、発光効率も十分に高い発光素子が得られる。低電圧化の効果は、励起錯体の発 光スペクトルのピークが、燐光性化合物の発光スペクトルのピーク+30nm以内の領域 で顕著に見られる。また、励起錯体の発光スペクトルのピークが、燐光性化合物の発光ス ペクトルのピーク−30nm以内の領域であれば、比較的高い発光効率も保てる。

しかし、励起錯体の発光スペクトルのピークが、燐光性化合物の発光スペクトルのピーク よりも長波長側に存在すると、発光素子の外部量子効率が低下することがある。この条件 下においては、励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルの最も長波長 側に位置する吸収帯との重なりが小さくなってくるため、励起錯体から燐光性化合物への 励起エネルギーの移動が起こりにくく、励起錯体自体がその励起エネルギーを光又は熱と して放出して失活してしまいやすくなるからである。

したがって、極めて高い発光効率を得ることを考慮すると、本発明の別の態様は、燐光性 化合物、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物を含む発光層を一対の電極間に有し、 第1の有機化合物及び第2の有機化合物が、励起錯体を形成する組み合わせであり、励起 錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物の吸収スペクトルの最も長波長側に位置する吸収 帯と重なり、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が、燐光性化合物の吸収スペクトル の最も長波長側に位置する吸収帯のピーク波長以上、燐光性化合物の発光スペクトルのピ ーク波長以下である発光素子である。

上記発光素子は、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が、燐光性化合物の発光スペク トルのピーク波長以下であるため、励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペ クトルの最も長波長側に位置する吸収帯との重なりが大きくなってくる。したがって、励 起錯体から励起エネルギーを燐光性化合物に効率よく移動させることができる。よって、 エネルギーの失活を抑制することができる。よって、駆動電圧が低く、外部量子効率が高 い発光素子を実現することができる。

特に、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長と、燐光性化合物の発光スペクトルのピー ク波長の差が30nm以内であると好ましい。

また、本発明の一態様において、第1の有機化合物又は第2の有機化合物の一重項励起子 から、励起錯体が形成される。

本発明の一態様の発光素子では、第1の有機化合物及び第2の有機化合物の一方が一重項 励起子を形成した後、基底状態の他方と相互作用することで励起錯体を形成する素過程が 考えられる。上述した通り、励起錯体の発光スペクトルと、燐光性化合物の吸収スペクト ルを大きく重ねることができるため、エネルギー移動効率を高くすることができる。よっ て、外部量子効率が高い発光素子を実現することができる。

また、一重項励起子は先に述べた通り、励起寿命が短い(τが小さい)ため、一重項励起 子からゲスト材料に励起エネルギーが移動する前に、励起エネルギーの一部は失活(発光 または熱失活)するという問題がある(数式(3)におけるΦETが小さくなりがちな傾 向にある)。しかしながら、本発明の一態様では、一重項励起子が速やかに励起錯体を形 成するため、このような励起エネルギーの失活を抑制することができる。しかも、励起錯 体の励起寿命は比較的長いため、エネルギー移動効率ΦETに有利であると考えられる。 したがって、素子の効率だけでなく寿命にも影響すると考えられるホスト材料の一重項励 起エネルギーの失活を、本発明の一態様を適用することにより抑制することができ、寿命 の長い発光素子を実現することができる。

また、本発明の一態様の発光素子において、励起錯体の励起エネルギーは燐光性化合物に 十分にエネルギー移動し、励起錯体からの発光は実質的に観察されないことが好ましい。 したがって、励起錯体を介して燐光性化合物にエネルギーを移動して、該燐光性化合物が 、燐光を発することが好ましい。

また、上述したエネルギー移動の概念から、第1の有機化合物および第2の有機化合物の 少なくとも一方が蛍光性化合物(すなわち、一重項励起状態から発光や熱失活が起こりや すい化合物)である場合に、本発明の一態様が有効となる。したがって、第1の有機化合 物および第2の有機化合物の少なくとも一方が蛍光性化合物であることが好ましい。

なお、ホスト材料に用いる有機化合物に燐光性化合物を用いると、該有機化合物自体が発 光しやすくなり、ゲスト材料にエネルギー移動されにくくなる。この場合、該有機化合物 が効率よく発光すればよいが、ホスト材料である該有機化合物は濃度消光の問題が発生す るため、高い発光効率を達成するのは困難である。したがって、該有機化合物は、蛍光性 化合物であり、上述の構成によりエネルギー移動することが好ましい。

また、本発明の一態様において、燐光性化合物が、有機金属錯体であることが好ましい。

以下に、本発明の一態様で利用する励起錯体に関して詳説する。

<励起錯体> 励起錯体(エキサイプレックス、exciplex)は、励起状態における異種分子間の 相互作用によって形成される。励起錯体は、比較的深いLUMO準位をもつ材料と、浅い HOMO準位をもつ材料との間で形成しやすいことが一般に知られている。

発光波長は、HOMO準位とLUMO準位間のエネルギー差に依存する。エネルギー差が 大きいと発光波長は短くなり、エネルギー差が小さいと発光波長は長くなる。

ここで、本発明の一態様で適用する第1の有機化合物と第2の有機化合物のHOMO準位 及びLUMO準位は異なる。具体的には、エネルギー準位は、第1の有機化合物のHOM O準位<第2の有機化合物のHOMO準位<第1の有機化合物のLUMO準位<第2の有 機化合物のLUMO準位という順で高い(図6参照)。

そして、この2つの有機化合物により励起錯体が形成された場合、励起錯体のLUMO準 位は、第1の有機化合物に由来し、HOMO準位は、第2の有機化合物に由来する(図6 参照)。したがって、励起錯体のエネルギー差は、第1の有機化合物のエネルギー差、及 び第2の有機化合物のエネルギー差よりも小さくなる。つまり、第1の有機化合物と第2 の有機化合物のそれぞれの発光波長に比べて、励起錯体の発光波長は長波長となる。

本発明の一態様で利用する励起錯体の形成過程は大きく分けて2つの過程が考えられる。

≪エレクトロプレックス(electroplex)≫ 本明細書において、エレクトロプレックスとは、基底状態の第1の有機化合物及び基底状 態の第2の有機化合物から、直接、励起錯体が形成されることを指す。

前述の通り、一般には、電子及びホールがホスト材料中で再結合した場合、励起状態のホ スト材料からゲスト材料に励起エネルギーが移動し、ゲスト材料が励起状態に至り、発光 する。

ここで、ホスト材料からゲスト材料に励起エネルギーが移動する前に、ホスト材料自体が 発光する、又は励起エネルギーが熱エネルギーとなることで、励起エネルギーの一部を失 活する。特に、ホスト材料が一重項励起状態である場合は、三重項励起状態である場合に 比べて励起寿命が短いため、一重項励起エネルギーの失活が起こりやすい。励起エネルギ ーの失活は、発光素子の寿命の低下につながる要因の一つである。

しかし、本発明の一態様では、第1の有機化合物及び第2の有機化合物がキャリアを持っ た状態(カチオン又はアニオン)から、エレクトロプレックスを形成するため、励起寿命 の短い一重項励起子の形成を抑制することができる。つまり、一重項励起子を形成するこ となく、直接励起錯体を形成する過程が存在しうる。これにより、上記一重項励起エネル ギーの失活も抑制することができる。したがって、寿命が長い発光素子を実現することが できる。

例えば、第1の有機化合物が電子トラップ性の化合物であり、第2の有機化合物がホール トラップ性の化合物である場合、第1の有機化合物のアニオンと第2の有機化合物のカチ オンから、直接エレクトロプレックスが形成されることになる。このようにしてホスト材 料の一重項励起状態の発生を抑制し、エレクトロプレックスからゲスト材料にエネルギー 移動を行って発光効率が高い発光素子を得る概念は、従前にない。なお、ホスト材料の三 重項励起状態の発生も同様に抑制され、直接エレクトロプレックスが形成されるため、該 エレクトロプレックスからゲスト材料にエネルギー移動すると考えられる。この機構も従 前にはない。

また、形成されたエレクトロプレックスの発光スペクトルは、第1の有機化合物と第2の 有機化合物のそれぞれの発光波長に比べて、長波長側に存在する。

第1の有機化合物(又は第2の有機化合物)の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペ クトルとの重なりよりも、エレクトロプレックスの発光スペクトルと燐光性化合物の吸収 スペクトルとの重なりは大きくなる。本発明の一態様の発光素子は、エレクトロプレック スの発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルとの重なりを利用して、エネルギー 移動をするため、エネルギー移動効率が高い。したがって、本発明の一態様では、外部量 子効率が高い発光素子を実現することができる。

≪励起子による励起錯体の形成≫ もう一つの過程としては、第1の有機化合物及び第2の有機化合物の一方が一重項励起子 を形成した後、基底状態の他方と相互作用して励起錯体を形成する素過程が考えられる。 エレクトロプレックスとは異なり、この場合は一旦、第1の有機化合物又は第2の有機化 合物の一重項励起状態が生成してしまうが、これは速やかに励起錯体に変換されるため、 やはり一重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。したがって、第1の有機化 合物又は第2の有機化合物が励起エネルギーを失活することを抑制することができる。こ のため、本発明の一態様では、寿命の長い発光素子を実現することができる。なお、ホス ト材料の三重項励起状態についても、速やかに励起錯体に変換され、該励起錯体からゲス ト材料にエネルギー移動すると考えられる。

また、形成された励起錯体の発光スペクトルは、第1の有機化合物と第2の有機化合物の それぞれの発光波長に比べて、長波長側に存在する。

第1の有機化合物(又は第2の有機化合物)の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペ クトルとの重なりよりも、励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルと の重なりは大きくなる。本発明の一態様の発光素子は、励起錯体の発光スペクトルと燐光 性化合物の吸収スペクトルとの重なりを利用して、エネルギー移動をするため、エネルギ ー移動効率が高い。したがって、本発明の一態様では、外部量子効率が高い発光素子を実 現することができる。

例えば、第1の有機化合物が電子トラップ性の化合物であり、一方で第2の有機化合物が ホールトラップ性の化合物であり、これら化合物のHOMO準位の差、及びLUMO準位 の差が大きい場合(具体的には差が0.3eV以上)、電子は選択的に第1の有機化合物 に入り、ホールは選択的に第2の有機化合物に入る。この場合、一重項励起子を経て励起 錯体が形成される過程よりも、エレクトロプレックスが形成される過程の方が優先される と考えられる。

本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。

(実施の形態2) 本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について図7を用いて説明する。

図7(A)は、第1の電極103と第2の電極108との間にEL層102を有する発光 素子を示した図である。図7(A)における発光素子は、第1の電極103の上に順に積 層した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注 入層705と、さらにその上に設けられた第2の電極108から構成されている。

第1の電極103としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金 、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば 、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素又は 酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indiu m Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム (IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法に より成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化イン ジウム−酸化亜鉛膜は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲ ットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、IWZO膜は、酸化 インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含 有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、グラ フェン、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、 パラジウム、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。

但し、EL層102のうち、第1の電極103に接して形成される層が、後述する有機化 合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合に は、第1の電極103に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、 電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニ ウム、銀、アルミニウムを含む合金(例えば、Al−Si)等も用いることもできる。

第1の電極103は、例えばスパッタリング法や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形 成することができる。

第2の電極108は、仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、電気 伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、 元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウムやセシウム等のアルカ リ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム、およびこれ らを含む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム、イッテルビウム等の 希土類金属およびこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。

但し、EL層102のうち、第2の電極108に接して形成される層が、後述する有機化 合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大 小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム− 酸化スズ等様々な導電性材料を用いることができる。

なお、第2の電極108を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いるこ とができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを 用いることができる。

EL層102は、少なくとも発光層703を有する。EL層102の一部には公知の物質 を用いることもでき、低分子系化合物および高分子系化合物のいずれを用いることもでき る。なお、EL層102を形成する物質には、有機化合物のみからなるものだけでなく、 無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。

EL層102は、発光層703の他、図7(A)に示すように正孔注入性の高い物質を含 んでなる正孔注入層701、正孔輸送性の高い物質を含んでなる正孔輸送層702、電子 輸送性の高い物質を含んでなる電子輸送層704、電子注入性の高い物質を含んでなる電 子注入層705などを適宜組み合わせて積層することにより形成される。

正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質とし ては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウ ム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀 酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。ま た、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc) 等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。

また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ )トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メ チルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4 ,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニ ル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)− N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTP D)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミ ノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル )−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3, 6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9− フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−( 9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:P CzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。

さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる 。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフ ェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニ ルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド] (略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビ ス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられ る。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸) (PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PS S)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。

また、正孔注入層701として、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合して なる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体によって有機化合物に 正孔が発生するため、正孔注入性および正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物 としては、発生した正孔の輸送に優れた材料(正孔輸送性の高い物質)であることが好ま しい。

複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香 族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合 物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高 い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動 度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれ ば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化 合物を具体的に列挙する。

複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA 、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN 1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称: NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェ ニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル −4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFL P)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称: CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称: TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン (略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フ ェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバ ゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体 を用いることができる。

また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t− BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9 ,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−t ert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−B uDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10− ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン( 略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン (略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert −ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン 、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香 族炭化水素化合物を用いることができる。

さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、 9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10, 10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス [(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アン トラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブ チル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル) ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル) フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることが できる。

また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフ ルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属 酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属 の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタ ル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電 子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸 湿性が低く、扱いやすいため好ましい。

なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物 と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層701に用いてもよい。

正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質とし ては、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオ レン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4 ’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N—フェニルアミノ] ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに 述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、 電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、 正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以 上積層したものとしてもよい。

また、正孔輸送層702には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導 体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良 い。

また、正孔輸送層702には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDな どの高分子化合物を用いることもできる。

発光層703は、発光物質を含む層である。本実施の形態の発光層703は、燐光性化合 物と、第1の有機化合物と、第2の有機化合物とを有する。燐光性化合物は、発光物質( ゲスト材料)である。第1の有機化合物及び第2の有機化合物のうち、発光層703に含 まれる量が多い方が、ホスト材料である。具体的には実施の形態1を参照することができ る。

燐光性化合物としては、有機金属錯体が好ましく、イリジウム錯体が特に好ましい。なお 、上述のフェルスター機構によるエネルギー移動を考慮すると、燐光性化合物の最も長波 長側に位置する吸収帯のモル吸光係数は、2000M−1・cm−1以上が好ましく、5 000M−1・cm−1以上が特に好ましい。このような大きなモル吸光係数を有する化 合物としては、例えば、ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)(ジピバロ イルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)2(dpm)] )や、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(I II)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])などが挙げられる。

第1の有機化合物及び第2の有機化合物としては、電子を受け取りやすい化合物(電子ト ラップ性化合物)と、ホールを受け取りやすい化合物(正孔トラップ性化合物)とを組み 合わせることが好ましい。このような構成とすることで、励起錯体からのエネルギー移動 による発光効率及び寿命の向上の効果だけでなく、発光層内でのホール輸送と電子輸送の キャリアバランスを整えることによる発光効率及び寿命の向上の効果も得られる。

電子を受け取りやすい化合物としては、代表的には、複素芳香族化合物が挙げられ、例え ば、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキ サリン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[4−(3,6−ジフェニル−9H− カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzP DBq−III)、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[ f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq−II)、及び、6−[3−(ジベン ゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDB TPDBq−II)が挙げられる。

ホールを受け取りやすい化合物としては、代表的には、芳香族アミン化合物やカルバゾー ル化合物が挙げられ、例えば、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾー ル−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、3−[N−(1−ナフチ ル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾー ル(略称:PCzPCN1)、4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N− フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’−TNATA、もしくは1−TNAT A)、2,7−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]− スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N,N’−ビス(9−フェニ ルカルバゾール−3−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(略称 :PCA2B)、N−(9,9−ジメチル−2−N’,N’−ジフェニルアミノ−9H− フルオレン−7−イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、N,N’,N’’−トリ フェニル−N,N’,N’’−トリス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)ベンゼン −1,3,5−トリアミン(略称:PCA3B)、2−[N−(9−フェニルカルバゾー ル−3−イル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:PCA SF)、2−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]スピロ− 9,9’−ビフルオレン(略称:DPASF)、N,N’−ビス[4−(カルバゾール− 9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニル−9,9−ジメチルフルオレン−2,7− ジアミン(略称:YGA2F)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジ フェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’ −ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略 称:DPAB)、N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−N−{9, 9−ジメチル−2−[N’−フェニル−N’−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン− 2−イル)アミノ]−9H−フルオレン−7−イル}フェニルアミン(略称:DFLAD FL)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]− 9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3−[N−(4−ジフェニルアミ ノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA 1)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]− 9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、4,4’−ビス(N−{4−[N ’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ )ビフェニル(略称:DNTPD)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニ ル)−N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN 2)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミ ノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)が挙げられる。

ただし、第1の有機化合物及び第2の有機化合物は、これらに限定されることなく、励起 錯体を形成できる組み合わせであり、該励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物の吸 収スペクトルと重なり、該励起錯体の発光スペクトルのピークが、燐光性化合物の吸収ス ペクトルのピークよりも長波長であればよい。

なお、電子を受け取りやすい化合物とホールを受け取りやすい化合物で第1の有機化合物 と第2の有機化合物を構成する場合、その混合比によってキャリアバランスを制御するこ とができる。つまり、その混合比によって、発光層内の正孔と電子の再結合確率を高め、 発光効率を高める最適なバランスを設計することができる点も、本発明の一態様の特徴の 一つである。このキャリアバランスの観点と、励起錯体を形成させる観点から、第1の有 機化合物と第2の有機化合物の割合は極端に違わないことが好ましい。具体的には、第1 の有機化合物:第2の有機化合物=1:9〜9:1の範囲が好ましい。

また、励起錯体は、二層の界面において形成されていても良い。例えば、第2の有機化合 物を含む層と第1の有機化合物を含む層を積層すれば、その界面近傍では励起錯体が形成 されるが、この二層をもって本発明の一態様における発光層としても良い。この場合、燐 光性化合物は、該界面近傍に添加されていれば良い。また、二層のうち、少なくともいず れか一方、または双方に添加されていれば良い。

電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質とし ては、Alq3、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alm q3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq 2)、BAlq、Zn(BOX)2、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチア ゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などの金属錯体が挙げられる。また、2−(4 −ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ ール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3 ,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ter t−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリア ゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフ ェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTA Z)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP) 、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:Bz Os)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5−ピリジン− ジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル) −co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオ クチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイ ル)](略称:PF−BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べ た物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔 よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよ い。

また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したも のとしてもよい。

電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リ チウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、 リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用 いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることがで きる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。

あるいは、電子注入層705に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複 合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が 発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物として は、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述し た電子輸送層704を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることがで きる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体 的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム 、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アル カリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化 物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用い ることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いる こともできる。

なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704 、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗 布法等の方法で形成することができる。

EL層は、図7(B)に示すように、第1の電極103と第2の電極108との間に複数 積層されていても良い。この場合、積層された第1のEL層800と第2のEL層801 との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合 材料で形成することができる。また、電荷発生層803は複合材料からなる層と他の材料 からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性 物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることがで きる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり 難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とす ることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易 である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。

また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望 の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1 のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素 子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。また、3つ以上のEL層を 有する発光素子の場合でも同様である。

EL層102は、図7(C)に示すように、第1の電極103と第2の電極108との間 に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入 バッファー層706、電子リレー層707、及び第2の電極108と接する複合材料層7 08を有していても良い。

第2の電極108と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用 いて第2の電極108を形成する際に、EL層102が受けるダメージを低減することが できるため、好ましい。複合材料層708は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にア クセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。

さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層7 04との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電 子輸送層704に容易に注入することができる。

電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およ びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸 リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲ ン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を 含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。

また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形 成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下 の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカ リ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物( 酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む )、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金 属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略 称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもで きる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同 様の材料を用いて形成することができる。

さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707 を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子 輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を 速やかに送ることが可能となる。

複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた 構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層70 6に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造で ある。したがって、駆動電圧の上昇を防ぐことができる。

電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUM O準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送 層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。 また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準 位も複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層70 4に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエ ネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のL UMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とすると よい。

電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又 は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。

電子リレー層707に含まれるフタロシアニン系材料としては、具体的にはCuPc、S nPc(Phthalocyanine tin(II) complex)、ZnPc (Phthalocyanine zinc complex)、CoPc(Cobal t(II)phthalocyanine, β−form)、FePc(Phthal ocyanine Iron)及びPhO−VOPc(Vanadyl 2,9,16, 23−tetraphenoxy−29H,31H−phthalocyanine)の いずれかを用いることが好ましい。

電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては 、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結 合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がよ り容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる 。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低 電圧でより安定に駆動することが可能になる。

金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好まし い。具体的には、VOPc(Vanadyl phthalocyanine)、SnO Pc(Phthalocyanine tin(IV) oxide complex) 及びTiOPc(Phthalocyanine titanium oxide co mplex)のいずれかは、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用 しやすく、アクセプター性が高いため好ましい。

なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。 具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好 ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、 発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、 成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。

電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいても良い。ドナー性物質としては、 アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物 (酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩 を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土 類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン (略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いるこ とができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の 移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。

電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記 した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より 高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては 、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準 位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導 体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安 定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料であ る。

ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水 物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベン ゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリ レンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル− 3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙 げられる。

また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10] フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,1 0,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称 :HAT(CN)6)、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2P YPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称 :F2PYPR)等が挙げられる。

その他にも、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4, 5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペン タセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビ ス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオ ロオクチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCD I−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5 ’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(略称:DCMT)、メタ ノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を用いるこ とができる。

なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナ ー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すれば良い。

正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、及び電子輸送層704は前述の材 料を用いてそれぞれ形成すれば良い。

以上により、本実施の形態のEL層102を作製することができる。

上述した発光素子は、第1の電極103と第2の電極108との間に生じた電位差により 電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そし て、この発光は、第1の電極103または第2の電極108のいずれか一方または両方を 通って外部に取り出される。従って、第1の電極103または第2の電極108のいずれ か一方、または両方が可視光に対する透光性を有する電極となる。

なお、第1の電極103と第2の電極108との間に設けられる層の構成は、上記のもの に限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、第 1の電極103及び第2の電極108から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領 域を設けた構成であれば上記以外のものでもよい。

つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質、正孔輸送性の 高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性の物質(電子及 び正孔の輸送性の高い物質)、又は正孔ブロック材料等から成る層を、発光層と自由に組 み合わせて構成すればよい。

以上のように、本発明の一態様の発光素子を作製することができる。

本実施の形態で示した発光素子を用いて、パッシブマトリクス型の発光装置や、トランジ スタによって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製する ことができる。また、該発光装置を電子機器又は照明装置等に適用することができる。

本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。

本実施例では、本発明の一態様の発光素子に適用することができる、第1の有機化合物、 第2の有機化合物、及び燐光性化合物の組み合わせの一例について図1乃至図4を用いて 説明する。

本実施例の構成例1乃至4で用いる燐光性化合物は、(アセチルアセトナト)ビス(4, 6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(a cac)])である。また、本実施例の構成例1乃至4で用いる第1の有機化合物は、2 −[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン (略称:2mDBTPDBq−II)である。また、本実施例で用いる第2の有機化合物 は、構成例1が、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル )トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、構成例2が、3−[N−(1−ナフチ ル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾー ル(略称:PCzPCN1)、構成例3が、4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフ チル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’−TNATA、もしくは 1−TNATA)、構成例4が、2,7−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル) −N−フェニルアミノ]−スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPA2SF)であ る。

本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。

(構成例1) 図1に、第1の有機化合物である2mDBTPDBq−IIの薄膜の発光スペクトル(発 光スペクトル1a)、第2の有機化合物であるPCBA1BPの薄膜の発光スペクトル( 発光スペクトル2a)、及び2mDBTPDBq−IIとPCBA1BPの混合材料の薄 膜の発光スペクトル(発光スペクトル3a)を示す。また、燐光性化合物である[Ir( dppm)2(acac)]のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単 に吸収スペクトルと記す)及び発光スペクトル(発光スペクトル4a)を示す。

なお、本実施例において、[Ir(dppm)2(acac)]の吸収スペクトルの測定 には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶 液(0.093mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。

図1において、横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、モル吸光係数ε(M−1・cm 1)及び発光強度(任意単位)を示す。

図1の吸収スペクトルから、[Ir(dppm)2(acac)]が、510nm付近に ブロードな吸収帯を有することがわかる。この吸収帯が、発光に強く寄与する吸収帯であ ると考えられる。

発光スペクトル3aは、発光スペクトル1a、2aよりも長波長側にピークを有する。そ して、発光スペクトル3aのピークは、発光スペクトル1a、2aのピークに比べて、該 吸収帯と近い位置に存在する。図1より、吸収スペクトルの発光に強く寄与する吸収帯と 最も重なりが大きい発光スペクトルは、発光スペクトル3aであることがわかった。

2mDBTPDBq−II及びPCBA1BPの混合材料の発光スペクトルは、単体の発 光スペクトルよりも長波長側にピークを有することがわかった。このことから、2mDB TPDBq−IIとPCBA1BPを混合することで、励起錯体が形成されることが示唆 された。

発光スペクトル3aのピークは、吸収スペクトルにおいて発光に強く寄与すると考えられ る吸収帯と重なりが大きいことがわかった。よって、2mDBTPDBq−IIとPCB A1BPの混合材料、及び[Ir(dppm)2(acac)]を用いた発光素子は、該 混合材料の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルとの大きな重なりを利用して 、エネルギー移動をするため、エネルギー移動効率が特に高いことが示唆された。したが って、外部量子効率が特に高い発光素子を得られることが示唆された。

また、発光スペクトル3aのピークは、吸収スペクトルのピークより長波長、かつ、発光 スペクトル4aのピークより短波長の位置にある。

混合材料の発光スペクトルのピークが長波長側にあることから、該混合材料を用いること で、駆動電圧が低い発光素子を得られることが示唆された。

(構成例2) 図2に、第1の有機化合物である2mDBTPDBq−IIの薄膜の発光スペクトル(発 光スペクトル1b)、第2の有機化合物であるPCzPCN1の薄膜の発光スペクトル( 発光スペクトル2b)、及び2mDBTPDBq−IIとPCzPCN1の混合材料の薄 膜の発光スペクトル(発光スペクトル3b)を示す。また、燐光性化合物である[Ir( dppm)2(acac)]のジクロロメタン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトル (発光スペクトル4b)を示す。

図2において、横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、モル吸光係数ε(M−1・cm 1)及び発光強度(任意単位)を示す。

図2の吸収スペクトルから、[Ir(dppm)2(acac)]が、510nm付近に ブロードな吸収帯を有することがわかる。この吸収帯が、発光に強く寄与する吸収帯であ ると考えられる。

発光スペクトル3bは、発光スペクトル1b、2bよりも長波長側にピークを有する。つ まり、2mDBTPDBq−II及びPCzPCN1の混合材料の発光スペクトルは、単 体の発光スペクトルよりも長波長側にピークを有することがわかった。このことから、2 mDBTPDBq−IIとPCzPCN1を混合することで、励起錯体が形成されること が示唆された。

また、発光スペクトル3bのピークは、吸収スペクトルと重なりを有する。よって、2m DBTPDBq−IIとPCzPCN1の混合材料、及び[Ir(dppm)2(aca c)]を用いた発光素子は、該混合材料の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクト ルとの重なりを利用して、エネルギー移動をするため、エネルギー移動効率が高いことが 示唆された。したがって、外部量子効率が高い発光素子を得られることが示唆された。

また、発光スペクトル3bのピークは、吸収スペクトルのピークより長波長、かつ、発光 スペクトル4bのピークより短波長の位置にある。また、発光スペクトル3bのピークは 、発光スペクトル4bのピークとの差が21nmであり、とても小さい。

混合材料の発光スペクトルのピークが特に長波長側にあることから、該混合材料を用いる ことで、特に駆動電圧が低い発光素子を得られることが示唆された。

(構成例3) 図3に、第1の有機化合物である2mDBTPDBq−IIの薄膜の発光スペクトル(発 光スペクトル1c)、第2の有機化合物である1’−TNATAの薄膜の発光スペクトル (発光スペクトル2c)、及び2mDBTPDBq−IIと1’−TNATAの混合材料 の薄膜の発光スペクトル(発光スペクトル3c)を示す。また、燐光性化合物である[I r(dppm)2(acac)]のジクロロメタン溶液の吸収スペクトル及び発光スペク トル(発光スペクトル4c)を示す。

図3において、横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、モル吸光係数ε(M−1・cm 1)及び発光強度(任意単位)を示す。

図3の吸収スペクトルから、[Ir(dppm)2(acac)]が、510nm付近に ブロードな吸収帯を有することがわかる。この吸収帯が、発光に強く寄与する吸収帯であ ると考えられる。

発光スペクトル3cは、発光スペクトル1c、2cよりも長波長側にピークを有する。つ まり、2mDBTPDBq−II及び1’−TNATAの混合材料の発光スペクトルは、 単体の発光スペクトルよりも長波長側にピークを有することがわかった。このことから、 2mDBTPDBq−IIと1’−TNATAを混合することで、励起錯体が形成される ことが示唆された。

また、発光スペクトル3cのピークは、吸収スペクトルと重なりを有する。よって、2m DBTPDBq−IIと1’−TNATAの混合材料、及び[Ir(dppm)2(ac ac)]を用いた発光素子は、該混合材料の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペク トルとの重なりを利用して、エネルギー移動をするため、エネルギー移動効率が高いこと が示唆された。したがって、外部量子効率が高い発光素子を得られることが示唆された。

また、発光スペクトル3cのピークは、吸収スペクトルのピークより長波長の位置にある 。また、発光スペクトル3cのピークは、発光スペクトル4cのピークとの差が24nm であり、とても小さい。

該混合材料を用いた発光素子では、キャリアの再結合によって燐光性化合物が発光を始め る電圧の値よりも、キャリアの再結合によって励起錯体が形成される電圧の値の方が小さ いと考えられる。つまり、発光素子に印加される電圧が、燐光性化合物が発光を始める値 未満であっても、キャリアが再結合し励起錯体を形成することで、発光素子に電流が流れ 始める。したがって、特に駆動電圧が低い発光素子を得られることが示唆された。

(構成例4) 図4に、第1の有機化合物である2mDBTPDBq−IIの薄膜の発光スペクトル(発 光スペクトル1d)、第2の有機化合物であるDPA2SFの薄膜の発光スペクトル(発 光スペクトル2d)、及び2mDBTPDBq−IIとDPA2SFの混合材料の薄膜の 発光スペクトル(発光スペクトル3d)を示す。また、燐光性化合物である[Ir(dp pm)2(acac)]のジクロロメタン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトル(発 光スペクトル4d)を示す。

図4において、横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、モル吸光係数ε(M−1・cm 1)及び発光強度(任意単位)を示す。

図4の吸収スペクトルから、[Ir(dppm)2(acac)]が、510nm付近に ブロードな吸収帯を有することがわかる。この吸収帯が、発光に強く寄与する吸収帯であ ると考えられる。

発光スペクトル3dは、発光スペクトル1d、2dよりも長波長側にピークを有する。つ まり、2mDBTPDBq−II及びDPA2SFの混合材料の発光スペクトルは、単体 の発光スペクトルよりも長波長側にピークを有することがわかった。このことから、2m DBTPDBq−IIとDPA2SFを混合することで、励起錯体が形成されることが示 唆された。

また、発光スペクトル3dのピークは、吸収スペクトルと重なりを有する。よって、2m DBTPDBq−IIとDPA2SFの混合材料、及び[Ir(dppm)2(acac )]を用いた発光素子は、該混合材料の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトル との重なりを利用して、エネルギー移動をするため、エネルギー移動効率が高いことが示 唆された。したがって、外部量子効率が高い発光素子を得られることが示唆された。

また、発光スペクトル3dのピークは、吸収スペクトルのピークより長波長の位置にある 。また、発光スペクトル3dのピークと、発光スペクトル4dのピークとの差が13nm であり、とても小さい。

混合材料の発光スペクトルのピークが特に長波長側にあることから、該混合材料を用いる ことで、特に駆動電圧が低い発光素子を得られることが示唆された。

本実施例では、本発明の一態様の発光素子について図8を用いて説明する。本実施例で用 いた材料の化学式を以下に示す。なお、先の実施例で用いた材料の化学式は省略する。

以下に、本実施例の発光素子1乃至発光素子4の作製方法を示す。

(発光素子1) まず、ガラス基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパ ッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、そ の膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。

次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し 、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。

その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着 装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を3 0分程度放冷した。

次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形 成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4P a程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’,4’’−(1,3,5−ベ ンゼントリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)と酸化モリブ デン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、40n mとし、DBT3P−IIと酸化モリブデンの比率は、質量比で1:0.5(=DBT3 P−II:酸化モリブデン)となるように調節した。

次に、正孔注入層1111上に、PCBA1BPを20nmの膜厚となるように成膜し、 正孔輸送層1112を形成した。

さらに、2mDBTPDBq−II、PCBA1BP、及び[Ir(dppm)2(ac ac)]を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、2m DBTPDBq−II、PCBA1BP及び[Ir(dppm)2(acac)]の重量 比は、0.7:0.3:0.05(=2mDBTPDBq−II:PCBA1BP:[I r(dppm)2(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚 は40nmとした。

次に、発光層1113上に2mDBTPDBq−IIを膜厚10nmとなるよう成膜し、 第1の電子輸送層1114aを形成した。

次に、第1の電子輸送層1114a上に、バソフェナントロリン(略称:BPhen)を 膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。

さらに、第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で 蒸着し、電子注入層1115を形成した。

最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜 厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。

(発光素子2) 発光素子2の正孔輸送層1112は、PCzPCN1を膜厚20nmとなるように成膜す ることで形成した。

また、発光素子2の発光層1113は、2mDBTPDBq−II、PCzPCN1及び [Ir(dppm)2(acac)]を共蒸着することで形成した。ここで、2mDBT PDBq−II、PCzPCN1及び[Ir(dppm)2(acac)]の重量比は、 0.7:0.3:0.05(=2mDBTPDBq−II:PCzPCN1:[Ir(d ppm)2(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40 nmとした。発光層1113以外は、発光素子1と同様に作製した。

(発光素子3) 発光素子3の正孔輸送層1112は、1’−TNATAを膜厚20nmとなるように成膜 することで形成した。

また、発光素子3の発光層1113は、2mDBTPDBq−II、1’−TNATA及 び[Ir(dppm)2(acac)]を共蒸着することで形成した。ここで、2mDB TPDBq−II、1’−TNATA及び[Ir(dppm)2(acac)]の重量比 は、0.7:0.3:0.05(=2mDBTPDBq−II:1’−TNATA:[I r(dppm)2(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚 は40nmとした。発光層1113以外は、発光素子1と同様に作製した。

(発光素子4) 発光素子4の正孔輸送層1112は、DPA2SFを膜厚20nmとなるように成膜する ことで形成した。

また、発光素子4の発光層1113は、2mDBTPDBq−II、DPA2SF及び[ Ir(dppm)2(acac)]を共蒸着することで形成した。ここで、2mDBTP DBq−II、DPA2SF及び[Ir(dppm)2(acac)]の重量比は、0. 7:0.3:0.05(=2mDBTPDBq−II:DPA2SF:[Ir(dppm )2(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmと した。発光層1113以外は、発光素子1と同様に作製した。

なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。

以上により得られた発光素子1乃至発光素子4の素子構造を表1に示す。

これらの発光素子を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝さ れないように封止する作業を行った後、発光素子の動作特性について測定を行った。なお 、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。

発光素子1乃至発光素子4の電圧−輝度特性を図9に示す。図9において、横軸は電圧( V)を、縦軸は輝度(cd/m2)を表す。また、電圧−電流特性を図10に示す。図1 0において、横軸は、電圧(V)を、縦軸は電流(mA)を表す。また、輝度−電力効率 特性を図11に示す。図11において、横軸は輝度(cd/m2)を、縦軸は電力効率( lm/W)を表す。また、輝度−外部量子効率特性を図12に示す。図12において、横 軸は、輝度(cd/m2)を、縦軸は外部量子効率(%)を示す。

また、発光素子1乃至発光素子4における輝度1000cd/m2付近のときの電圧(V )、電流密度(mA/cm2)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、電 力効率(lm/W)、外部量子効率(%)を表2に示す。

また、発光素子1乃至発光素子4に0.1mAの電流を流した際の発光スペクトルを、図 13に示す。図13において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す 。また、表2に示す通り、1000cd/m2の輝度の時の発光素子1のCIE色度座標 は(x,y)=(0.56,0.44)であり、1000cd/m2の輝度の時の発光素 子2のCIE色度座標は(x,y)=(0.56,0.43)であり、780cd/m2 の輝度の時の発光素子3のCIE色度座標は(x,y)=(0.56,0.43)であり 、800cd/m2の輝度の時の発光素子4のCIE色度座標は(x,y)=(0.56 ,0.43)であった。この結果から、発光素子1乃至発光素子4は、[Ir(dppm )2(acac)]に由来する橙色発光が得られたことがわかった。

表2、図11、及び図12からわかるように、発光素子1乃至発光素子4は、電流効率、 電力効率、外部量子効率がそれぞれ高い値を示した。

本実施例の発光素子では、実施例1に示した第1の有機化合物、第2の有機化合物及びゲ スト材料を発光層に用いた。実施例1より、2mDBTPDBq−IIと第2の有機化合 物の混合材料の発光スペクトル(励起錯体の発光スペクトル)は、[Ir(dppm)2 (acac)]の吸収スペクトルと重なる。本実施例の発光素子は、該重なりを利用して エネルギー移動をするため、エネルギー移動効率が高く、外部量子効率が高いと考えられ る。

本実施例において、発光素子1、2、4は、発光素子3に比べて外部量子効率が高かった (図12参照)。これは、発光素子1、2、4は、発光素子3に比べて、励起錯体の発光 スペクトルと[Ir(dppm)2(acac)]の吸収スペクトルの重なりが大きいた めであると考えられる(図1乃至図4、実施例1参照)。

図9及び図10からわかるように、発光素子1乃至発光素子4は、発光開始電圧が低い。 橙色の有機EL素子の発光開始電圧の理論値は2.1V程度と言われているが、本発明の 一態様の発光素子は、それに極めて近い値を示すことがわかった。

本実施例において、発光素子2乃至発光素子4は、発光素子1に比べて発光開始電圧が低 かった(図10及び図11参照)。これは、発光素子2乃至発光素子4は、発光素子1に 比べて、励起錯体の発光スペクトルのピークが長波長側に存在するためであると考えられ る(図1乃至図4、実施例1参照)。

以上の結果から、本発明の一態様を適用することで、外部量子効率の高い素子を実現でき ることが示された。また、本発明の一態様を適用することで、駆動電圧の低い素子を実現 することが示された。

次に、発光素子4の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図14に示す。図14にお いて、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動 時間(h)を示す。

信頼性試験は、初期輝度を5000cd/m2に設定し、電流密度一定の条件で発光素子 4を駆動した。

発光素子4は、260時間後の輝度が、初期輝度の93%であった。この結果から、発光 素子4は、寿命の長い素子であることがわかった。

以上の結果から、本発明の一態様を適用することで、駆動電圧が低く、信頼性の高い素子 を実現できることが示された。

本実施例では、本発明の一態様の発光素子について説明する。本実施例で用いた材料の化 学式を以下に示す。なお、先の実施例で用いた材料の化学式は省略する。

本実施例で作製した発光素子は、構成例a乃至構成例sである。構成例a乃至構成例sの 素子構造を表3に示す。なお、構成例a乃至構成例sの違いは、正孔輸送層と、発光層に 用いる物質Xである。以下に、それぞれの構成例における物質Xの材料名を記す。さらに 、それぞれの構成例に用いた物質XのHOMO準位(eV)、及びそれぞれの構成例で形 成される励起錯体の発光ピーク波長(nm)を表4に記す。なお、本実施例において、H OMO準位の測定には、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いた。

(構成例a) 構成例aは、実施例2に示した発光素子1である。物質Xとして、PCBA1BPを用い た。

(構成例b) 物質Xとして、N,N’−ビス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N,N’−ジ フェニルベンゼン−1,3−ジアミン(略称:PCA2B)を用いた。

(構成例c) 物質Xとして、N−(9,9−ジメチル−2−N’,N’−ジフェニルアミノ−9H−フ ルオレン−7−イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)を用いた。

(構成例d) 物質Xとして、N,N’,N’’−トリフェニル−N,N’,N’’−トリス(9−フェ ニルカルバゾール−3−イル)ベンゼン−1,3,5−トリアミン(略称:PCA3B) を用いた。

(構成例e) 物質Xとして、2−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミ ノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:PCASF)を用いた。

(構成例f) 物質Xとして、2−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ス ピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPASF)を用いた。

(構成例g) 物質Xとして、N,N’−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’ −ジフェニル−9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジアミン(略称:YGA2F)を 用いた。

(構成例h) 物質Xとして、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1, 1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)を用いた。

(構成例i) 物質Xとして、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル アミノ]ビフェニル(略称:DPAB)を用いた。

(構成例j) 物質Xとして、N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−N−{9,9 −ジメチル−2−[N’−フェニル−N’−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2 −イル)アミノ]−9H−フルオレン−7−イル}フェニルアミン(略称:DFLADF L)を用いた。

(構成例k) 物質Xとして、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミ ノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)を用いた。

(構成例l) 物質Xとして、3−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]− 9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)を用いた。

(構成例m) 物質Xとして、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルア ミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)を用いた。

(構成例n) 構成例nは、実施例2に示した発光素子2である。物質Xとして、PCzPCN1を用い た。

(構成例o) 物質Xとして、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フ ェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)を用 いた。

(構成例p) 物質Xとして、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−(1−ナフ チル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)を用いた。

(構成例q) 構成例qは、実施例2に示した発光素子4である。物質Xとして、DPA2SFを用いた 。

(構成例r) 構成例rは、実施例2に示した発光素子3である。物質Xとして、1’−TNATAを用 いた。

(構成例s) 物質Xとして、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェ ニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)を用いた。

図15に、各構成例における励起錯体の発光スペクトルのピーク波長と、物質XのHOM O準位の関係を示す。図15において、横軸は、ピーク波長(nm)を、縦軸はHOMO 準位(eV)を示す。また、図16に、各構成例における励起錯体の発光スペクトルのピ ーク波長と、相対外部量子効率の関係を示す。図16において、横軸は、ピーク波長(n m)を、縦軸は相対外部量子効率(任意単位)を示す。なお、図16における相対外部量 子効率は、構成例aの発光素子の外部量子効率を1とした相対的な値として示す。ただし 、図16では、構成例e及び構成例hについては示していない。

図15から、物質XのHOMO準位が高いほど、2mDBTPDBq−IIと物質Xから 形成される励起錯体の発光スペクトルのピークは長波長側に存在することが示された。し たがって、物質XのHOMO準位が高いほど、また励起錯体の発光スペクトルのピークが 長波長側に存在するほど、発光素子の発光開始電圧を低くすることができる。これにより 、発光素子の駆動電圧を低くすることができる。

図16から、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長が長すぎると、発光素子の外部量子 効率は低下するということがわかる。したがって、外部量子効率が高く、駆動電圧が低い 発光素子を得るためには、励起錯体の発光スペクトルのピーク波長の好ましい範囲がある ことが示唆された。具体的には、低い駆動電圧と高い外部量子効率を両立するには、励起 錯体の発光スペクトルのピーク波長が、燐光性化合物の吸収スペクトルの最も長波長側に 位置する吸収帯のピーク波長(本実施例の場合、溶液の吸収スペクトルで約510nm) 以上、燐光性化合物の発光スペクトルのピーク波長(本実施例の場合、ELの発光スペク トルで約580nm)以下であることが好ましいことが示唆された。

(参考例1) 上記実施例で用いた有機金属錯体、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピ リミジナト)イリジウム(III)(別名:ビス[2−(6−フェニル−4−ピリミジニ ル−κN3)フェニル−κC](2,4−ペンタンジオナト−κ2O,O’)イリジウム (III))(略称:[Ir(dppm)2(acac)])の合成例を示す。なお、[ Ir(dppm)2(acac)]の構造を以下に示す。

<ステップ1;4,6−ジフェニルピリミジン(略称:Hdppm)の合成> まず、4,6−ジクロロピリミジン5.02g、フェニルボロン酸8.29g、炭酸ナト リウム7.19g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(略 称:Pd(PPh3)2Cl2)0.29g、水20mL、アセトニトリル20mLを、 還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ 波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。ここで更にフェニ ルボロン酸2.08g、炭酸ナトリウム1.79g、Pd(PPh3)2Cl20.07 0g、水5mL、アセトニトリル5mLをフラスコに入れ、再度マイクロ波(2.45G Hz 100W)を60分間照射することで加熱した。その後この溶液に水を加え、ジク ロロメタンにて有機層を抽出した。得られた抽出液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて 乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣 を、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ピ リミジン誘導体Hdppmを得た(黄白色粉末、収率38%)。なお、マイクロ波の照射 は、マイクロ波合成装置(CEM社製 Discover)を用いた。以下にステップ1 の合成スキーム(a−1)を示す。

<ステップ2;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジ ウム(III)](略称:[Ir(dppm)2Cl]2)の合成> 次に、2−エトキシエタノール15mL、水5mL、上記ステップ1で得たHdppm1 .10g、塩化イリジウム水和物(IrCl3・H2O)0.69gを、還流管を付けた ナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.4 5GHz 100W)を1時間照射し、反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣を エタノールで濾過し、次いで洗浄し、複核錯体[Ir(dppm)2Cl]2を得た(赤 褐色粉末、収率88%)。以下にステップ2の合成スキーム(a−2)を示す。

<ステップ3;(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジ ウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])の合成> さらに、2−エトキシエタノール40mL、上記ステップ2で得た[Ir(dppm)2 Cl]21.44g、アセチルアセトン0.30g、炭酸ナトリウム1.07gを、還流 管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ 波(2.45GHz 120W)を60分間照射し、反応させた。溶媒を留去し、得られ た残渣をジクロロメタンに溶解して濾過し、不溶物を除去した。得られた濾液を水、次い で飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した 。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル=50: 1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。その後 、ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶することにより、目的物である橙色粉 末を得た(収率32%)。以下にステップ3の合成スキーム(a−3)を示す。

上記ステップ3で得られた橙色粉末の核磁気共鳴分光法(1H NMR)による分析結果 を下記に示す。この結果から、有機金属錯体[Ir(dppm)2(acac)]が得ら れたことがわかった。

1H NMR.δ(CDCl3):1.83(s,6H),5.29(s,1H),6 .48(d,2H),6.80(t,2H),6.90(t,2H),7.55−7.6 3(m,6H),7.77(d,2H),8.17(s,2H),8.24(d,4H) ,9.17(s,2H).

(参考例2) 上記実施例で用いた2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[ f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成方法について説明する 。

≪2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサ リン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成≫ 2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリ ン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成スキームを(b−1)に示す。

2L三口フラスコに2−クロロジベンゾ[f,h]キノキサリン5.3g(20mmol )、3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニルボロン酸6.1g(20mmol) 、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)460mg(0.4mmol )、トルエン300mL、エタノール20mL、2Mの炭酸カリウム水溶液20mLを加 えた。この混合物を、減圧下で攪拌することで脱気し、三口フラスコ内を窒素置換した。 この混合物を窒素気流下、100℃で7.5時間攪拌した。室温まで冷ました後、得られ た混合物を濾過して白色の濾物を得た。得られた濾物を水、エタノールの順で洗浄した後 、乾燥させた。得られた固体を約600mLの熱トルエンに溶かし、セライト(和光純薬 工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、フロリジール(和光純薬工業株式 会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過し、無色透明の濾液を得た 。得られた濾液を濃縮し、約700mLのシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し た。クロマトグラフィーは、熱トルエンを展開溶媒に用いて行った。ここで得られた固体 にアセトンとエタノールを加えて超音波を照射した後、生じた懸濁物を濾取して乾燥させ たところ、白色粉末を収量7.85g、収率80%で得た。

上記目的物は、熱トルエンには比較的可溶であったが、冷めると析出しやすい材料であっ た。また、アセトン、エタノールなど他の有機溶剤には難溶であった。そのため、この溶 解性の差を利用して、上記の様に、簡便な方法で収率よく合成することができた。具体的 には、反応終了後、室温に戻して析出させた固体を濾取することで、大部分の不純物を簡 便に除くことができた。また、熱トルエンを展開溶媒とした、カラムクロマトグラフィー により、析出しやすい目的物も簡便に精製することができた。

得られた白色粉末4.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製 は、圧力5.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、白色粉末を300℃で加熱 して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を収量3.5g、収率88%で得た。

核磁気共鳴分光法(1H NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジ ベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2m DBTPDBq−II)であることを確認した。

得られた物質の1H NMRデータを以下に示す。 1H NMR(CDCl3,300MHz):δ(ppm)=7.45−7.52(m ,2H)、7.59−7.65(m,2H)、7.71−7.91(m,7H)、8.2 0−8.25(m,2H)、8.41(d,J=7.8Hz,1H)、8.65(d,J =7.5Hz,2H)、8.77−8.78(m,1H)、9.23(dd,J=7.2 Hz,1.5Hz,1H)、9.42(dd,J=7.8Hz,1.5Hz,1H)、9 .48(s,1H)。

102 EL層 103 第1の電極 108 第2の電極 701 正孔注入層 702 正孔輸送層 703 発光層 704 電子輸送層 705 電子注入層 706 電子注入バッファー層 707 電子リレー層 708 複合材料層 800 第1のEL層 801 第2のEL層 803 電荷発生層 1100 基板 1101 第1の電極 1103 第2の電極 1111 正孔注入層 1112 正孔輸送層 1113 発光層 1114a 第1の電子輸送層 1114b 第2の電子輸送層 1115 電子注入層

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