【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は種なしスイカの作出方法に係り、より詳しくは２倍体スイカの雌花に倍数体の花粉を受粉させて種なしスイカを作出する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】韓国のスイカ栽培面積は約３４，５００
ｈａであり、そのうち露地の栽培面積が３８．５％、施設栽培面積が６１．７％を占めており、施設栽培面積が益々増加しつつある。 このような施設栽培の増加に伴い、一般消費者は年中いつでもスイカの甘く涼しい味を楽しめるようになった。

【０００３】種なしスイカは、日本の木原博士が１９５
１年最初に作って以来、韓国ではウ・ジャング・チュン博士がこれを試作することにより一般に広く知られはじめた。

【０００４】種なしスイカの作出方法としては現在まで３つの方法が知られている。 第１の方法は前述の木原博士の方法であり、普通のスイカにコルヒチン処理して４
倍体を作出した後、該４倍体の雌花に２倍体の花粉を受粉させて種なしスイカの種を作出する方法である（Kiha
ra,Ｈ． １９５１．３倍体のスイカ（Triploid watermel
ons）． Proc. Amer. Soc. Hort. Sci. ５０：２１７〜
２３０）。

【０００５】第２の方法は、普通のスイカを植物生育調節剤としての１−（２−クロロ−４−ピリジル）−３−
フェニルウレア（ＣＰＰＵ）で処理することにより、前記ホルモンの影響を受け、種子がうまく形成されない状態で果実が育って、種なしスイカとなることである（オム・ヨング・チョルら、１９９５．施設栽培スイカの単位結実及び品質に及ぶホルクロルフェヌロン（Forchlor
fenuron）処理の影響）。

【０００６】第３の方法は、放射線を照射した花粉を交配に用いることにより種なしスイカを作出する方法である（日本農業新聞。新しい２倍体の種なしスイカ作出技術開発。１９９９．６．２２）。

【０００７】ところが、木原の方法は果皮が厚くなり、
果実が中空状になる空洞果の発生がはなはだしい、さらに果実が奇形になりやすいなど、果実品質が不良になるという問題があり、且つ低温期生育が遅れるという問題があった。

【０００８】ホルモン処理方法の場合は処理ホルモンの残留問題があり、放射線処理方法の場合は人体に対しての放射線の無害性がまだ立証されていないという問題があった。

【０００９】かかる問題があるので、前述の方法を利用するには限界があった。 特に、韓国国内では種なしスイカに対する認識が普及しているにもかかわらず、かかる問題のため品種の開発、作出及び販売は行われていないのが現状である。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、２倍体のスイカの雌花に倍数体の花粉を受粉させることにより、２倍体の特性をそのまま受け継ぐことのできる種なしのスイカの作出方法を提供することにある。

【００１１】本発明の他の目的は、倍数体の花粉親を用いることにより、低温期の生育が遅れることなく一年中容易に種なしスイカを作出することのできる方法を提供することにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための本発明に係る種なしスイカの作出方法は、２倍体のスイカの種をコルヒチン水溶液で処理して４倍体のスイカの種を得る段階；前記４倍体のスイカの種を栽培して成長させた雌花に２倍体の花粉を受粉させて３倍体のスイカの種を得る段階；前記４倍体のスイカの種をコルヒチン水溶液で処理して８倍体のスイカの種を得る段階；前記８倍体のスイカの種を栽培して成長させた雌花に２倍体の花粉を受粉させて５倍体のスイカの種を得る段階;
前記８倍体のスイカの種を栽培して成長させた雌花に前記４倍体の花粉を受粉させて６倍体のスイカの種を得る段階；２倍体のスイカの種を栽培して成長させた雌花と、前記３，４，５，６または８倍体のスイカの種を栽培して成長させた雄花の花粉とを密封することにより、
他の花粉からの汚染を防止する段階；及び、前記２倍体の雌花に前記３，４，５，６または８倍体の花粉を受粉させ栽培して種なしのスイカの種を作出する段階；を含むことを特徴とする。

【００１３】前記２倍体のスイカの種は互いに異なる品種のスイカを交配して得られることが好ましい。

【００１４】前記品種はＧＣＡ品種、ＴＧＮ品種、ＭＫ
Ｗ品種、ＳＰＢ品種及びＭＤＳ品種、から構成されたグループから選ばれた２種であると好ましい。

【００１５】本発明は普通のスイカ（２倍体）の雌花に３倍体、４倍体、５倍体、６倍体または８倍体の花粉を受粉させて種なしスイカを作出する方法に関する。

【００１６】従って、３倍体、４倍体、５倍体、６倍体または８倍体のスイカ個体を必要とし、雌花が完全開花される時点で、これら個体の中の１つの花粉を種子親の雌花に受粉させることにより種なしスイカを作出することができる。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、本発明についてより詳しく説明する。

【００１８】本発明の初期段階で２倍体品種と花粉親として用いる品種をそれぞれ選択する。 まず、２倍体品種の選択に際しては、遺伝的に互いに異なる数十個のスイカ系統を定植した後、適切な特性を有する一部を選択してそれぞれの特性を調査して札をつけて表示する。 次に、花粉親の選択に際しては、前記２倍体品種の選択と同一の方法で数十系統を定植した後、そのうちから適切な一部を選択し、それをコルヒチン処理して倍数体を作り、それを花粉親として用いる。

【００１９】次に、選ばれた２倍体系統間の交配を通じて雑種植物を獲得するが、交配の目的は所望の果実の形態と質の特性を有するスイカを得るためである。 この時に選ばれた２倍体の一部系統を用いて、てきれば多くの交配を行い、これらから作られた雑種の種を播種し、果実の重さ、大きさ、模様、果皮の色、質感、糖度等の特性を観察し、適切な雑種の種を得る。

【００２０】前記各倍数体の作出及び維持方法は通常知られている方法であり、以下詳細に説明する。

【００２１】まず、各倍数体は公知のコルヒチン処理方法を用いて得ることができる。 ２倍体のスイカの種を２
５℃、０．１２５％コルヒチン水溶液で４８時間沈漬積することにより、種の成長点が４倍体（この植物体の種を作出した後、顕微鏡で染色体検鏡を通じて確認）となるが、このような種を播種箱に播種し、２８℃程度を維持すると７〜１０日後に発芽し始める。

【００２２】発芽後高温管理（昼間約３０℃、夜間約２
０℃）することにより生育が旺盛になり、本葉が３〜４
枚になった時点で圃場に定植する。 定植してから約３０
日たって雌花（４倍体）が出てくると、所望の普通のスイカ（２倍体）の花粉を受粉させることによりその種子が３倍体となる。

【００２３】５倍体は、４倍体のスイカを前述の方法でもう一度コルヒチン処理して８倍体を作出し、その雌花に２倍体の花粉を受粉させることにより得ることができる。

【００２４】６倍体は、前記８倍体の雌花に４倍体の花粉を受粉させることにより得ることができ、その反対の組合せも可能である。

【００２５】花粉親として用いる３倍体、４倍体、５倍体、６倍体または８倍体植物体の維持は、３つの方法に大別される。

【００２６】最も一般的な方法としては接ぎ木がある。
倍数性個体を接ぎ木する時、主にユウガオを台木として用いるが、接ぎ木予定日の約一週間前に播種して２５〜
２８℃で管理すると、接ぎ木予定日にはユウガオの子葉（双葉）が出てくる状態となる。 接ぎ木は倍数性個体の成長点が含まれた幼い幹を切り、幹の両面を約２０°の斜めに切る。 台木の胚軸を約１ｃｍ程度の長さに切り、
用意された接ぎ木を形成層（cambium）組織が接合されるように嵌め込み、クリップで固定する。 接ぎ木の完了した個体は、植木鉢に植えて遮光膜で直射光線を遮光し２５℃、飽和湿度状態で約１０日程度たつと、台木と接ぎ穂が結合し、接ぎ穂の生育が始まる。 前記のような方法で接ぎ木し続けると、遺伝形質の変化なしで同一の花粉を持続的に供給することができる。

【００２７】他の方法としては挿木があるが、倍数性個体の幹を１〜２節を含めて切り砂に挿木し、遮光膜で直射光線を避けて２５℃、飽和湿度で約１５日程度たつと根を張り若芽が出始める。 発根した時点で仮植して苗を馴化させると丈夫な個体が作られる。

【００２８】また他の方法としては器内で栄養繁殖可能な組織培養があるが、無菌状態で発芽してから約５日目の子葉や胚軸を切片体として用いる。 培地はＭＳ培地を用い、植物生育調節剤としてのＮＡＡとＢＡＰをそれぞれ０．１ｍｇ／リットル及び１．０ｍｇ／リットル添加して苗条を形成させ、植物生育調節剤が添加してないＭ
ＳやＢ５培地にそれを継代培養することにより、根の発生を促進させる。 発根が完了すると馴化過程を経て完全な植物体になる。 組織培養による方法は、外部環境からの影響が大きくないと共に、遺伝的に安定した大量増殖が可能なので栄養体の維持及び増殖に有利である。

【００２９】前述の方法を用いることにより、遺伝的に同一の花粉を年中持続的に供給することができる。 栽培過程における倍数体（３、４、５、６または８倍体）
は、２倍体の普通のスイカに比べて低温での生育が遅れるので、低温期栽培時の保温管理に特に注意しなければならない。

【００３０】本発明は雌花で交配された雑種の種を無性的に繁殖する方法として、前記の倍数体を維持する方法としての接ぎ木、挿木または組織培養の方法を用いることができる。

【００３１】用意された２倍体の普通のスイカに３、
４、５、６または８倍体のスイカを交配する時、他の花粉が汚染しないように雌花と雄花に袋をかぶせて交配時に気をつけるべきである。 他の花粉、即ち２倍体の花粉が汚染すると、種子が正常的に発育して種のあるスイカが作られるので留意しなければならない。 交配後約２〜
３日後には袋を剥いてもよい。

【００３２】以下では実施例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例のみに限定されない。

【００３３】（実施例１）２倍体の品種として、遺伝的に互いに異なる５５個のスイカ系統を定植して選ばれた３０系統から、低温期生育が良好なＧＣＡ品種と、果実の肥大がよいＴＧＮ品種とを交配して得られた雑種の種を、室温の水に４時間程度浸漬させた後、２８℃の恒温器に４８時間催芽(germinating forcing)させて２ｃｍ
間隔で播種した。

【００３４】播種してから約５日後、予め播種して発芽させた台木にそれを接ぎ木した後、育苗上をビニールで密封し、３０℃における飽和湿度状態で４〜５日管理してから２５℃で相対湿度を次第に下げながら管理した。
接ぎ木された苗の本葉が４〜５枚程度出ていると定植し、根幹が４〜５節育った時点で摘芽を行い、幹が４０
〜５０ｃｍ程度育った時点で配列して雌花を栽培した。
肥料は定植してから１５日後、活着を確認してから与え、病害虫防除のために、殺菌剤としてつる枯病薬、萎凋病及びアブラムシ用の薬などを定植する前に散布した。

【００３５】花粉親品種として、前記２倍体品種の選抜と同一の方法で２３系統のスイカを定植し、選ばれた１
０系統の種に２５℃、０．１２５％のコルヒチンコルヒチン水溶液で４８時間浸漬処理し、４倍体の種を作出した後、播種してから２８℃を維持し、７〜１０日後に発芽するようにした。 発芽後に高温管理（昼：３０℃、
夜：約２０℃）し、本葉が３〜４枚出ている時に圃場に定植し、前記雌花と同一の方法で４倍体の種を栽培した。

【００３６】交配は栽培された２倍体雑種の種の３番めに開花した雌花を用い、開花前に雌花と花粉親としての４倍体の種の雄花に袋（小型の紙袋）をかぶせた。 その翌日、４倍体の種の雄花を２倍体の種の雌花に受粉させた後、通常の方法で一般管理を行い、約４５日後に収穫した。

【００３７】（実施例２）２倍体雑種の種として、果実の形態が球形のＭＫＷ品種と楕円形のＳＰＢ品種を交配して得られたことを除いては、実施例１と同一の花粉親を用いて同一の方法で受粉させて収穫した。

【００３８】（実施例３）２倍体雑種の種として、ＮＯ
Ａ品種とＭＤＳ品種とを交配して得られたことを除いては実施例１と同一の花粉親を用いて同一の方法で受粉させて収穫した。

【００３９】（比較例１）２倍体品種としては既存の２
倍体市販品種を用いた。 花粉親品種には３倍体スイカの台湾ノンウ産のクウォリティー(Quality)を用い、クウォリティー２０個体をビニールハウスに定植して栽培してから、３番めで開花した花に２倍体花粉親の花粉を付けて受粉を行った。 受粉後は慣行的な方法で一般管理して、約４５日後に収穫した。

【００４０】（比較例２）花粉親として３倍体のスイカとしての日本国ナント種苗のサンバ(Samba)を用いて、
比較例１と同一の方法で受粉させて収穫した。

【００４１】実施例と比較例に従って栽培した種なしスイカの果実の重さ、大きさ、模様、糖度等の特性は表１
に示されている。

【００４２】

【表１】表１：正常時期の播種

【００４３】上記表１示すように、本発明の実施例に従って作出された種なしスイカは、果皮が薄く耐病性が強く、糖度もまた非常に高いので、本願発明によれば、既存の２倍体スイカが有する特性をそのまま受け継いだ種なしスイカを作出することができる。

【００４４】本発明の種なしスイカの低温期の生育に対する程度を調べるために、実施例１〜３と同一品種及び条件で、一ヶ月前の低温時期に播種して受粉させて収穫した。

【００４５】

【表２】表２：低温時期の播種

【００４６】低温期に播種した前記表２の結果を正常播種した前記表１と比較すると、果形や糖度等においては一般の２倍体スイカとの差異が現れない程度で、低温期生育の遅延がほぼなく、果実の形態や糖度に優れたスイカを作出することができることがわかる。 これは花粉親に利用する花粉親個体は、種子親個体の１／１０乃至１
／２０程度だけあっても充分に受粉することができるからであり、これを適切に加温して栽培することにより、
従来の種なしスイカが有する低温期生育の遅延という問題点を解消して、冬季にも種なしスイカを栽培することができる。

【００４７】また本発明で花粉親に利用する３倍体や５
倍体の個体を２倍体の正常花粉で受粉させると花粉親でも種なしスイカを作出することができることは当業者によって明らかなことである。

【００４８】

【発明の効果】本発明によれば、既存の２倍体スイカの雌花に倍数性花粉を受粉させることにより、２倍体の特性をそのまま受け継ぎ、スイカの果皮が厚くなるか空洞果の発生や、果実が奇形になることがない、さらに種子が形成されないことにより、その品質が大きく向上した種なしスイカを作出することができる。

【００４９】また、倍数体を花粉親に使用することにより、低温期の生育が遅れる問題を解決して、冬季にも容易に優れた品質のスイカを栽培できるようになり、従来の種なしスイカが有するホルモンまたは放射線処理による人体有害性の問題を一掃させることができる効果がある。

【００５０】一方、本発明の詳細な説明では本発明を一実施例を中心に説明したが、本発明の技術的思想と添付された請求範囲から外れない限度内で多様な変形及び修正が可能であることは、当該分野で通常の知識を有する者には明らかなことである。