【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ＰＷＲ燃料集合体の支持格子に燃料棒等を挿入する際に使用するキー部材の抜き取りに用いて好適な、支持格子におけるキー部材の自動取り外し装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図７に示すように、原子燃料集合体（２
５）には、多数の燃料棒（２６）同士を所定の間隔を隔て、上部ノズル（２７）と、下部ノズル（２８）間で確実に保持し、原子炉運転中何等支障なく充分に性能を発揮できるように支持格子（Ｓ）…（Ｓ）が燃料棒長手方向に複数個設けられている。 この支持格子は通常、格子によって仕切られた多数のセル内に、夫々多数の燃料棒および一部所要位置に制御棒案内シンブル管などを平行に整列させ、発熱する燃料棒表面から除熱するため燃料棒間に必要なギャップを保持して冷却材の流れを保障する働きをするものであり、一般に鉄−クロム−ニッケル系超合金のインコネルの薄板をプレス加工で所定形状に成型すると共に、図５（Ａ），（Ｂ）に示すように燃料棒（図示せず）をセル（２９）内で弾性的に保持する弾性突起（３０）や固定突起（３１）を設け、スリットを付した格子板を縦横格子状に組み立ててその交わる部分の上下を各種溶接やロー付等の冶金的接合手段で結合一体化することによって製作されている。

【０００３】一方、上記多数の燃料棒は、上述の如く支持格子の各セル内で前記弾性突起と固定突起とにより弾性的に保持されているが、この燃料棒の挿入または抜き取りに際しては、上記両突起によって燃料棒が傷つけられることがないように、弾性突起の方を引っ込ませておくことが望ましい。 そこで、従来は、特公昭５４−４４
３６０号公報に記載のように、この燃料棒の支持格子への挿入あるいは抜き取りに際し、図６（Ａ），（Ｂ）に示す如く、セル（２９）コーナー部のスリット孔（Ｓ ₁ ) …（Ｓ ₁ ) の間隔に合わせ複数の突出部（３
２）…（３２）を設けたキー部材（Ｋ）を、上記スリット孔（Ｓ ₁ )…（Ｓ ₁ ) に突出部を縦にして挿入した後に、キー部材を９０度回転させ、突出部（３２）…（３
２）を図示の如く溝縁部（３３）…（３３）に圧接することによってキー部材（Ｋ）の背で前記弾性突起（３
０）…（３０）を押圧し、燃料棒が非接触状態で入る空間部をセル（２９）内に形成せしめていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記キー部材は、正方行列に形成される上記セルを通り、前記支持格子を直交する２方向に貫通して上記行列の数だけ挿入される。 そして、このキー部材を回転させる際には、該キー部材が折れないように、その両側に作業者が１人ずつ立って両端からこのキー部材を回転させねばならない。 即ち、キー部材の挿入時に際しては、支持格子は個々が固定されていないので上記回転作業が行えるとしても、抜き取り時には、上記支持格子は燃料棒挿入のために集合体固定治具にて固定されることから、水平方向に挿入されているキー部材は両側から回転させて取り外せても、上下方向のキー部材の抜き取りは上記固定治具が邪魔になって両側からの回転作業が行えず、これによって取り外しが非常に困難であるとの問題を有している。
またさらに、上記キー部材は、支持格子１個に対し通常２６〜３４本挿入されているが、１体あたり上記支持格子が７〜９個使用される燃料集合体に対し、上記の如く人手によって取り外し作業を行う場合は、非常に手間がかかるばかりでなく、作業時間が長く、しかも燃料集合体の真近での作業となるため、被曝量が多くなって将来のＭＯＸ燃料の組立ての大きな問題となっている。

【０００５】本発明は、叙上の如き実状に対処し、支持格子におけるキー部材の自動取り外し装置を開発することにより、キー部材抜き取り作業の自動化と効率化を図ると共に、作業員の被曝を低減せしめ、将来のＭＯＸ燃料の組立てにも対応することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】しかして、上記目的に適合する本発明キー部材の自動取り外し装置の特徴は、燃料集合体支持格子の外周面を該外周面に設けたスリット孔を露出せしめて着脱自在に保持する複数のドラムを、
各ドラムが保持する支持格子が燃料集合体の規定位置となるよう支持棒にて連結せしめた組立ドラムと、該組立ドラムを横設して、上記支持格子の並び方向を軸に回動可能ならしめた回転支持機構と、支持格子を貫通したキー部材の両端を把持する１対または複数対のチャックを、互いの対向方向に進退自在で且つ把持したキー部材を軸に回動可能ならしめるキー部材抜き取り機構と、該抜き取り機構を上下に移動させる上下移動機構と、該上下移動機構及び上記抜き取り機構を組立ドラムに沿い支持格子の並び方向に移動させる水平移動機構、を備えたところにある。

【０００７】

【作用】上記構成を有する本発明装置の使用方法を説明すると、キー部材を前記の如く挿入して弾性突起を押圧せしめた所要数の支持格子を、先ず各ドラムに保持せしめ、次に、各支持格子において２方向に直交するキー部材の一方が水平になるよう回転支持機構を作動させる。
そして、キー部材抜き取り機構の１対または複数対のチャックによって、例えば、端部側の支持格子の上記水平にしたキー部材の下段のものからその両端を把持し、これを回転させて弾性突起との係合から外し、次に、上記チャックの一方の把持力をフリーにすると共に、他方を退かせてキー部材を支持格子から引き抜く。 この引き抜いたキー部材は、該引き抜き側のチャックをフリーにすることで、下方に設置する等した容器に落下させる。

【０００８】かくして、上記キー部材抜き取り機構の動作を、上記移動機構によって該抜き取り機構を移動させることにより、順次上段のキー部材に対し行ってゆき、
以下、水平移動機構によって抜き取り機構と上下移動機構とを移動させながら、これを隣合う支持格子に対しても同様に繰り返し行う。 そして、全部の支持格子に対し、上記水平のキー部材の抜き取りが終了すると、回転支持機構によって組立ドラムを９０°回転させて残りのキー部材を水平となし、上述した通りの抜き取りをもう一度行う。 なお、上記キー部材抜き取りの順序は、これに限られるものではなく、１つの支持格子について全部キー部材を抜いた後、次の支持格子へ移るようにしてもよい。

【０００９】

【実施例】以下、さらに添付図面を参照し、本発明の実施例を説明する。 図１は本発明実施例のキー部材自動取り外し装置を示す正面図、図２は同装置の部分側面図、
図３は同装置の組立ドラムと回転支持機構を示す斜視図、図４はドラムの拡大斜視図であり、各図におけるドラムには、前記したキー部材が既に取着されている。

【００１０】本発明実施例の装置は、図３に示すように、燃料集合体の支持格子（Ｓ）の外周面を多数のスリット孔（Ｓ ₁ ) を露出させて着脱自在に保持する、図４
に示す如きドラム（１）を複数、各ドラム（１）…
（１）が保持する支持格子（Ｓ）…（Ｓ）が図７に示す如き燃料集合体の規定位置となるよう３本の支持棒（２）…（２）にて連結せしめた組立ドラム（３）と、
横設したこの組立ドラム（３）を、支持格子（Ｓ）…
（Ｓ）の並び方向を軸として回動自在に支持する回転支持機構（４）とを具備している。 そして、本発明実施例の装置は、上記構成に加えて、支持格子（Ｓ）を貫通した前記キー部材（Ｋ）の両端を把持する１対のチャック（５），（５）を、互いの対向方向に進退自在で且つ上記把持したキー部材（Ｋ）を軸に回動可能ならしめるキー部材抜き取り機構（６）と、この抜き取り機構（６）
を上下に移動せしめる上下移動機構（７）と、抜き取り機構（６）ならびに上下移動機構（７）を前記組立ドラム（３）に沿い支持格子（Ｓ）…（Ｓ）の並び方向に移動せしめる水平移動機構（８）とを具備している（上記チャックは複数対設けてもよい）。

【００１１】ドラム（１）は、図４に示すように中心に支持格子（Ｓ）を嵌合する嵌合口（１ｄ）を有する円盤状に形成されると共に、その１部（１ａ）が、支持格子（Ｓ）を挿入または引き抜き可能なように、ボルト（１
ｂ）によって着脱自在に分割されている。 上記嵌合口（１ｄ）は上述したように、支持格子（Ｓ）の外周面に設けられている多数のスリット孔（Ｓ ₁ ) …（Ｓ ₁ ) が露出するように、支持格子（Ｓ）を浅く保持するよう形成されている。

【００１２】一方、燃料集合体には、通常７〜９個の支持格子（Ｓ）…（Ｓ）が用いられているが、これら支持格子間の寸法は種々の理由により非常に厳密に守られる必要がある。 そのため、ドラム（１）…（１）には、前記した３本の支持棒（２）…（２）が、図４に示すドラム（１）の支持棒用穴（１ｃ）…（１ｃ）に夫々挿通して固定され、全体として剛性を有する組立ドラム（３）
を形成している。 上記支持棒は、好ましくは２本以上あった方が組立ドラム（３）の剛性を保ち易く、上記支持格子（Ｓ）…（Ｓ）の間隔を正確に保持する上で好適である。 また、上記ドラム（１）は、所要とする支持格子（Ｓ）の数だけ設けることが望ましい。

【００１３】他方、前記回転支持機構（４）は、図３に示すように、組立ドラム（３）の円盤状ドラム（１）…
（１）の下部を支持する、該ドラム（１）の軸と平行に設けた２本のローラ（９），（９）によって構成され、
このローラ（９），（９）は、基台（１０）上にベアリング（Ｂ）…（Ｂ）を介して回動自在に設けられている。 即ち、上記組立ドラム（３）は、このローラ（９），（９）をブレーキ付サーボモータ等によって回すことにより、前記各支持格子（Ｓ）〜（Ｓ）の中心同士を結ぶ線を中心に回動し、かつ任意の位置で固定することができる。 また、前記キー部材抜き取り機構（６）
は、前記した如くチャック（５），（５）を互いの対向方向に進退自在かつ回動可能に設けた構成であるが、チャックの回動は、図１に示す回動モータ（１１），（１
１）によって行われ、進退はＬＭガイド（１２），（１
２）に沿い引き抜きモータ（１３），（１３）によって行われる。 そして、チャック（５），（５）の開閉は、
図示しないエア圧，モータまたはアクチエーターによって行われる。 この場合、キー部材（Ｋ）の引き抜き側の端部は、上記チャック（５）によって把持し易いように偏平かつ表面に凹凸を設けるようにしてもよい。

【００１４】さらに、上下移動機構（７）は上下駆動モータ（１４）によって、上記抜き取り機構（６）をガイド棒（Ｇ）…（Ｇ）に沿い上下に移動せしめ、また、水平移動機構（８）は長手駆動モータ（１５）によって、
抜き取り機構（６）ならびに上下移動機構（７）とを、
リニアボールベアリング（１７）を介してリニアガイド（１６）に沿い、図２にも示すように支持格子の並び方向に移動させることができる。 なお、図１における（１
８）は装置全体を覆う遮蔽体であり、その側壁には窓（１９），（１９）が密閉状態に設けられている。

【００１５】ところで、図１，図２に示すように実施例の装置には、外周キー取り外し機構（２０）が、前記水平移動機構（８）から延設された枠体（２１）の上部に付設されている。 外周キーとは、本願出願人に係る特開平３−１９９９９８号公報にも記載されるように、前記した通常のキー部材（Ｋ）では押圧できない支持格子外周面の弾性突起を引込ませるものであり、支持格子の外周面に凹部を内側にして当てられる断面コ字状の当て板と、該当て板に複数設けられ、かつ支持格子外周面の弾性突起のスリット孔に係合可能な外周キーとの組み合わせで使用される。 即ち、当て板で支持格子の外周面を押さえながら、上記弾性突起のスリット孔に係合させた外周キーを引っ張り、該突起を外側に引っ込ませるもので、外周キーは通常、回転させることにより上記突起との係合から離脱する。

【００１６】しかして、上記外周キー取り外し機構（２
０）は、両側のシリンダー（２２ａ），（２２ａ）によって上下に摺動可能に設けた当て板用チャック（２
２），（２２）にて前記当て板の両端を把持または固定すると共に、中央のシリンダー（２３）によって上下に摺動可能、かつ図示しないモータ等によって回動可能に設けた外周キー用チャック（２４）にて外周キーを回転させ取り外すことが可能である。 なお、上記外周キー用チャック（２４）は、モータ等によって支持格子（Ｓ）
の外周に沿って図１に示す左右方向に摺動可能であり、
また、この外周キー取り外し機構（２０）は、前記水平移動機構（８）によって枠体（２１）を介し支持格子（Ｓ）…（Ｓ）の並び方向に移動しうる。

【００１７】次に、上記構成を有する本発明実施例のキー部材の自動取り外し装置の使用方法を説明する。 先ず、キー部材（Ｋ）を直交する２方向に挿入してセル内の弾性突起を押圧せしめた所要数の支持格子（Ｓ）…
（Ｓ）を、各ドラム（１）…（１）に保持せしめ、次に、各支持格子（Ｓ）…（Ｓ）において上記２方向に直交するキー部材（Ｋ）…（Ｋ）の一方が水平になるよう回転支持機構（４）を作動させる。 そして、キー部材抜き取り機構（６）の１対のチャック（５），（５）によって、例えば端部側の支持格子（Ｓ）の上記水平にしたキー部材（Ｋ）…（Ｋ）の下段のものからその両端を把持し、これを回転させて弾性突起との係合から外し、次に、上記チャック（５）の一方の把持力をフリーにすると共に、他方を退かせてキー部材（Ｋ）を支持格子から引き抜く。 この引き抜いたキー部材（Ｋ）は、該引き抜き側のチャック（５）をフリーにすることで、下方に設置する等した容器に落下させる。 この例では図１の右側にキー部材を引き抜くようになっている。 次いで、上記キー部材抜き取り機構（６）の動作を、上下移動機構（７）によって該抜き取り機構（６）を移動させることにより、順次上段のキー部材（Ｋ）…（Ｋ）に対し行ってゆき、以下、水平移動機構（８）によって抜き取り機構（６）及び上下移動機構（７）を移動させながら、これを隣合う支持格子（Ｓ）に対しても同様に繰り返し行う。 そして、全部の支持格子（Ｓ）…（Ｓ）に対し、上記水平のキー部材（Ｋ）…（Ｋ）の抜き取りが終了すると、前記回転支持機構（４）によって組立ドラム（３）
を９０°回転させて残りのキー部材（Ｋ）…（Ｋ）を水平となし、上述した通りの抜き取りをもう一度行う（これらキー部材の抜き取りは、この順序に限るものではない）。

【００１８】以上の工程により、１体の燃料集合体における支持格子のキー部材の取り外しは完了するが、この作業を行うにあたり下記表１に留意し、自動制御により装置を動かすことが好適である。 以下余白

【００１９】

【表１】

【００２０】以上、本発明の実施例について説明したが、回転支持機構をはじめとする各部機構等の構成は、
本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に設計変更しうることはいうまでもない。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したように、本発明のキー部材の自動抜き取り装置は、所要数の支持格子を所定間隔で保持する組立ドラムと、この組立ドラムを横設して回動自在に支持する回転支持機構と、支持格子に挿入されたキー部材の両端を１対または複数対のチャックにて把持可能に設けると共に、該チャックを対向方向に進退自在、かつ把持したキー部材を軸に回動自在に設けたキー部材抜き取り機構と、この抜き取り機構を上下左右に移動せしめる上下移動機構ならびに水平移動機構とを具備するものであり、支持格子に２方向にクロスして挿入された多数のキー部材を何れも水平状態となし、各方向のキー部材を夫々両側から回転可能ならしめてその取り外しを容易ならしめると共に、上記多数のキー部材の取り外しを機械により自動化して効率的かつ省人化して行うことが可能で、装置の機械化により作業員の被曝を低減せしめて将来のＭＯＸ燃料の組み立てにも充分対応しうるとの顕著な効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明実施例のキー部材自動取り外し装置を示す正面図である。

【図２】同装置の部分側面図である。

【図３】同装置の組立ドラムと回転支持機構を示す斜視図である。

【図４】同装置のドラムの拡大斜視図である。

【図５】（Ａ）支持格子セルの平面図である。 （Ｂ）同正面図である。

【図６】（Ａ）キー部材の使用状態を示す平面図である。 （Ｂ）同正面図である。

【図７】燃料集合体の概要図である。

【符号の説明】

（１） ドラム （２） 支持棒 （３） 組立ドラム （４） 回転支持機構 （５） チャック （６） キー部材抜き取り機構 （７） 上下移動機構 （８） 水平移動機構 （９） ローラ （１０） 基台 （１１） 回動モータ （１２） ＬＭガイド （１３） 引き抜きモータ （１４） 上下駆動モータ （１５) 長手駆動モータ （１６） リニアガイド （１７） リニアボールベアリング （１８） 遮蔽体 （１９） 窓 （２０） 外周キー取り外し機構 （２１） 枠体 （２２） 当て板用チャック （２３） シリンダー （２４） 外周キー用チャック （Ｋ） キー部材 （Ｓ） 支持格子 （Ｓ ₁ ） スリット孔