VH−VLドメイン間度に基づく抗体ヒト化の方法

申请号 JP2017522101 申请日 2015-10-21 公开(公告)号 JP2017531443A 公开(公告)日 2017-10-26
申请人 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーF. Hoffmann−La Roche Aktiengesellschaft; エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーF. Hoffmann−La Roche Aktiengesellschaft; 发明人 アレクサンダー ブヨッツェク; アレクサンダー ブヨッツェク; ガイ ゲオルゲス; ガイ ゲオルゲス; フロリアン リプスマイヤー; フロリアン リプスマイヤー;
摘要 本明細書においては、親 抗体 Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択するための方法であって、i)親抗体Fvフラグメント由来の1つまたは複数の特異性決定残基をアクセプター抗体Fvフラグメントに移植する/移行させることによって多数の変異抗体Fvフラグメントを作製する段階であって、多数の変異抗体Fvフラグメントの各変異抗体Fvフラグメントが、他の変異抗体Fvフラグメントとは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、ii)親Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体Fvフラグメントの変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、抗体Fvフラグメントの配列フィンガープリントに基づきVH-VL 配向 を決定する段階、ならびに、iii)親抗体のVH-VL配向と比較してVH-VL配向において最小の差を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階を含み、1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントが親抗体Fvフラグメントと同じ 抗原 に結合する、方法を報告する。
权利要求

アミノ酸位置H26〜H32、H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H53〜H55、H56、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96〜H101、H102、H103、H105、L26〜L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50〜L52、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91〜L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)にドナー非ヒト抗体由来のアミノ酸残基を含み、かつ軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインにおける残りの位置に、アクセプターヒト抗体もしくはヒト化抗体またはアクセプターヒト生殖細胞系列アミノ酸配列由来の残基を含む、ヒト化抗体。親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択するための方法であって、以下の段階: ‐親抗体Fvフラグメント由来の1つまたは複数の特異性決定残基をアクセプター抗体Fvフラグメントに移植する/移行させることによって多数の変異抗体Fvフラグメントを作製する段階であって、多数の変異抗体Fvフラグメントの各変異抗体Fvフラグメントが、他の変異抗体Fvフラグメントとは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐親Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体Fvフラグメントの変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、抗体Fvフラグメントの配列フィンガープリントに基づきVH-VL配向を決定する段階、 ‐親抗体のVH-VL配向と比較してVH-VL配向において最小の差(smallest difference)を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階 を含み、1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントが親抗体Fvフラグメントと同じ抗原に結合する、方法。‐親抗体のVH-VLドメイン間度と比較してVH-VLドメイン間角度において最大の類似性(highest similarity)を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階 を含む、請求項2記載の方法。親抗体Fvフラグメントが非ヒト抗体Fvフラグメントである、請求項2〜3のいずれか一項記載の方法。アクセプター抗体Fvフラグメントが、ヒト抗体Fvフラグメントもしくはヒト化抗体Fvフラグメントまたはヒト抗体Fvフラグメント生殖細胞系列アミノ酸配列である、請求項2〜4のいずれか一項記載の方法。配列フィンガープリントがVH-VL境界面残基のセットである、請求項2〜5のいずれか一項記載の方法。VH-VL境界面残基のセットが、残基L44、L46、L87、H45、H62(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む、請求項6記載の方法。VH-VL境界面残基のセットが、残基H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H55、H56、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96、H98、H99、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94/L95x-1、L95x、L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む、請求項6〜7のいずれか一項記載の方法。VH-VL配向が、6つのABangle VH-VL配向パラメーターを計算することによって決定される、請求項2〜8のいずれか一項記載の方法。VH-VL配向が、各ABangleに関して1つのランダムフォレスト法を用いてABangle VH-VL配向パラメーターを計算することによって決定される、請求項2〜9のいずれか一項記載の方法。VH-VL配向が、VHおよびVLの回転軸のねじれ角、4つの屈曲角(可変ドメイン当たり2つ)および長さ(HL、HC1、LC1、HC2、LC2、dc)をランダムフォレストモデルを用いて計算することによって決定される、請求項2〜10のいずれか一項記載の方法。ランダムフォレストモデルが複合体抗体構造データのみを用いて訓練される、請求項10〜11のいずれか一項記載の方法。最小の差が最大のQ2値である、請求項2〜12のいずれか一項記載の方法。最大の類似性が最小平均の二乗平均平方根偏差(RMSD)である、請求項2〜13のいずれか一項記載の方法。コンセンサスVHフレームワークまたはVLフレームワークのいずれかに対してアライメントが行われたテンプレート構造から構築され、その後に類似性に基づいて選択されたVH-VL配向テンプレート構造に対するVH-VL再配向が行われたモデルが、VH-VL配向を決定するために用いられる、請求項2〜14のいずれか一項記載の方法。‐1つまたは複数の抗体または抗体Fvフラグメントを選択する段階であって、以下の段階: ‐非ヒト抗体由来の1つまたは複数の特異性決定残基をヒトアクセプター抗体もしくはヒト化アクセプター抗体または生殖細胞系列抗体配列に移植する/移行させることによって多数の変異抗体を作製する段階であって、多数の変異抗体の各変異抗体が、他の変異抗体とは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐VHおよびVLの回転軸の、習慣的に使用されるねじれ角、4つの屈曲角(可変ドメイン当たり2つ)および長さ(HL、HC1、LC1、HC2、LC2、dc)を、抗体Fvフラグメントの残基H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H55、H56、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96、H98、H99、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94/L95x-1、L95x、L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)からなるVH-VL境界面残基のセットに基づくランダムフォレストモデルを用いて計算することによって、非ヒト抗体Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体の変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、VH-VL配向を決定する段階、 ‐非ヒト抗体Fvフラグメントおよび変異抗体Fvフラグメントの対応するCα原子のすべての対に関して決定された最小の平均二乗平均平方根偏差(RMSD)を有する変異抗体Fvフラグメントを選択する段階 を含む、段階、 ‐1つまたは複数の抗体から、単一の抗体をその結合特性に基づいて選択する段階、 ‐そのVHおよびVLをコードする核酸を1つまたは複数の発現ベクター中にクローニングする段階、 ‐細胞に、前記段階で得られた発現ベクターをトランスフェクトする段階、 ‐トランスフェクトされた細胞を培養し、それによって抗体を産生させる段階 を含む、抗体を作製するための方法。

说明书全文

本発明は、抗体ヒト化の分野にある。本明細書においては、抗体ヒト化のための方法であって、ドナー残基をアクセプターフレームワークに移植する段階を含み、アクセプターフレームワークの選択がヒト化抗体およびドナー抗体のVH-VLドメイン間度に応じて行われる方法を報告する。

背景 抗体の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメイン、すなわちVHとVLとの境界面に形成され、このためVH-VLドメイン配向は、抗体の特異性および親和性に影響を及ぼす要因となる。抗体の操作およびヒト化の過程においてVH-VLドメイン配向を保持することは、ドナー抗体特性を保つ目的に有利であると考えられる。正確なVH-VL配向の予測が、抗体相同性モデリングにおける要因の1つであることは認識されている。

WO 2011/021009号(特許文献1)には、ある特定の重要な位置において免疫グロブリン分子のアミノ酸配列を改変することが、製造性の改善、特に凝集傾向の減少および/または生産レベルの増大につながるという知見に関連する、製造性が改善された変異免疫グロブリンがある。

WO 2008/003931号(特許文献2)には、抗体をヒト化するためのフレームワーク選択のための方法が報告されており、それによると、最も適切な可変領域フレームワークはヒトアクセプターフレームワークとドナー配列との相同性を考慮に入れることによって選択しうるが、より重要なことは、必須のドナー残基である特定の残基を考慮に入れた、すなわちそれらに重み付けが与えられた可変領域フレームワークを選択することである。すなわち、相同なヒトフレームワーク中に既に存在するこれらの重み付けされた(重要な)ドナー残基がより多いほど、重み付けされた残基がより少数しか一致しない別のフレームワークよりも、全体的な相同性が幾分低いにもかかわらず、ヒトフレームワークはより適切になる。

WO 2001/027160号(EP 1 224 224号)(特許文献3)には、モノクローナル抗体の作製の方法、具体的には、モノクローナル抗体の可変領域の複数の異なるドメインの同時インビトロ親和性最適化の方法が報告されている。移植は、CDRが移植された可変領域フラグメントの多様なライブラリーを作製し、続いてそのライブラリーを、ドナーの結合活性と類似しているかまたはそれよりも優れる結合活性に関してスクリーニングすることによって実現される。ドナーフレームワークと比較して対応する位置に違いのあるアクセプターフレームワーク位置を選択して、そのような位置のそれぞれに可能性のあるすべてのアミノ酸残基変化を含み、併せて可変領域のCDR内の各位置にも可能性のあるすべてのアミノ酸残基変化を含むライブラリー集団を作製することによって、多様なライブラリーが作製される。

Dunbar, J., et al.(Prot. Eng. Des. Sel. 26 (2013) 611-620)(非特許文献1)は、抗体におけるVH-VL配向を特徴付けるものとしてABangleを報告している。抗体可変ドメインモデリングのためのVH-VLドメイン配向の予測は、Bujotzek, A., et al.(Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics 83 (2015) 681-695)(非特許文献2)によって報告されている。

WO 2011/021009号

WO 2008/003931号

WO 2001/027160号(EP 1 224 224号)

Dunbar, J., et al.(Prot. Eng. Des. Sel. 26 (2013) 611-620)

Bujotzek, A., et al.(Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics 83 (2015) 681-695)

本明細書においては、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの配向であるVH-VLドメイン間配向(角度)の決定に基づいて抗体をヒト化するための迅速な配列ベースの方法を報告する。改善された、すなわちより迅速で、より経済的で、資源需要がより少なく、かつより効率的な方法を用いることにより、非ヒト抗体の最も適したヒト化変異体の選択がもたらされる。

より詳細には、本明細書において報告される方法では、VH-VLドメイン間配向を予測する迅速な配列ベースの予測変数(predictor)を用いる。VH-VL配向は、VH-VL配向の種々の自由度を明確に区別するために、6つの絶対的なABangleパラメーターに関して記載される。本明細書において報告される方法を用いると、親(非ヒト)抗体に対する変異(ヒト化)抗体のVH-VL配向の偏差に関して、ヒト化抗体の選択の改善を達成しうることが見いだされた。このことは、親(非ヒト)抗体と変異(ヒト化)抗体との間のVH-VLドメイン間角度の類似性に関する改善を示している。本明細書において報告される方法(移植手順を含む)は、異なる方法を用いて得られるヒト化抗体と比較して、より優れた結合特性を持つ変異(ヒト化)抗体を与える。抗体の生物物理学的特性を変化させる目的で、フレームワークシャフリングなどの他の操作方法を、ヒトフレームワークを別のものと交換した場合に変異抗体の結合性の改善をもたらす本明細書において報告される方法と組み合わせることができる。

本明細書において報告される1つの局面は、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択するための方法であって、以下の段階: ‐親抗体Fvフラグメント由来の1つまたは複数の特異性決定残基をアクセプター抗体Fvフラグメントに移植する/移行させることによって多数の変異抗体Fvフラグメントを作製する段階であって、多数の変異抗体Fvフラグメントの各変異抗体Fvフラグメントが、他の変異抗体Fvフラグメントとは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐親Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体Fvフラグメントの変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、抗体Fvフラグメントの配列フィンガープリントに基づきVH-VL配向を決定する段階、 ‐親抗体のVH-VL配向と比較してVH-VL配向において最小の差(smallest difference)を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階 を含み、1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントが親抗体Fvフラグメントと同じ抗原に結合する、方法である。

1つの態様において、本方法は以下の段階を含む: ‐親抗体のVH-VLドメイン間角度と比較してVH-VLドメイン間角度において最大の(構造的)類似性を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階。

1つの局面は、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択するための方法であって、以下の段階: ‐親抗体Fvフラグメント由来の1つまたは複数の特異性決定残基をアクセプター抗体Fvフラグメントに移植する/移行させることによって多数の変異抗体Fvフラグメントを作製する段階であって、多数の変異抗体Fvフラグメントの各変異抗体Fvフラグメントが、他の変異抗体Fvフラグメントとは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐親Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体Fvフラグメントの変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、抗体Fvフラグメントの配列フィンガープリントに基づきVH-VL配向を決定する段階、 ‐親抗体のVH-VLドメイン間角度と比較してVH-VLドメイン間角度において最大の(構造的)類似性を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階 を含み、1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントが親抗体Fvフラグメントと同じ抗原に結合する、方法である。

1つの態様において、親抗体Fvフラグメントは非ヒト抗体Fvフラグメントである。

1つの態様において、アクセプター抗体Fvフラグメントは、ヒト抗体もしくはヒト化抗体のFvフラグメント、またはヒト抗体Fvフラグメント生殖細胞系列アミノ酸配列である。

本明細書において報告される1つの局面は、非ヒト抗体をヒト化するための方法であって、以下の段階: ‐抗原と特異的に結合する非ヒト抗体を用意する段階、 ‐非ヒト抗体由来の1つまたは複数の特異性決定残基をヒトアクセプター抗体もしくはヒト化アクセプター抗体または生殖細胞系列抗体配列に移植する/移行させることによって多数の変異抗体を作製する段階であって、多数の変異抗体の各変異抗体が、他の変異抗体とは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐非ヒト抗体Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体の変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、抗体Fvフラグメントの配列フィンガープリントに基づきVH-VL配向を決定する段階、 ‐親抗体のVH-VL配向と比較してVH-VL配向において最小の差を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、非ヒト由来の1つまたは複数のヒト化抗体を選択する段階 を含み、1つまたは複数のヒト化抗体が非ヒト抗体と同じ抗原に結合する方法である。

1つの態様において、本方法は、以下の段階を含む: ‐親抗体のVH-VLドメイン間角度と比較してVH-VLドメイン間角度において最大の(構造的)類似性を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、非ヒト抗体に由来する1つまたは複数のヒト化抗体を選択する段階。

1つの局面は、非ヒト抗体をヒト化するための方法であって、以下の段階: ‐抗原と特異的に結合する非ヒト抗体を用意する段階、 ‐非ヒト抗体由来の1つまたは複数の特異性決定残基をヒトアクセプター抗体もしくはヒト化アクセプター抗体または生殖細胞系列抗体配列に移植する/移行させることによって多数の変異抗体を作製する段階であって、多数の変異抗体の各変異抗体が、他の変異抗体とは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐非ヒト抗体Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体の変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、抗体Fvフラグメントの配列フィンガープリントに基づきVH-VL配向を決定する段階、 ‐親抗体のVH-VLドメイン間角度と比較してVH-VLドメイン間角度において最大の(構造的)類似性を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、非ヒト抗体に由来する1つまたは複数のヒト化抗体を選択する段階 を含み、1つまたは複数のヒト化抗体が非ヒト抗体と同じ抗原に結合する方法である。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、配列フィンガープリントはVH-VL境界面残基のセットである。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基は、(重ね合わされたすべてのFv構造の少なくとも90%において)その側鎖原子が4Å未満またはそれと等しい距離で対向鎖の近接原子を有するアミノ酸残基である。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基L44、L46、L87、H45、H62(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基H35、H37、H39、H45、H47、H50、H58、H60、H61、H91、H95、H96、H98、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L43、L44、L46、L49、L50、L55、L87、L89、L91、L95x-1、L95x、L96(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基H33、H35、H43、H44、H46、H50、H55、H56、H58、H61、H62、H89、H99、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94/L95x-1、L95x、L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの好ましい態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H55、H56、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96、H98、H99、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94/L95x-1、L95x、L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基H35、H37、H39、H45、H47、H50、H58、H60、H61、H91、H95、H96、H98、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L43、L44、L46、L49、L50、L55、L87、L89、L91、L95x-1、L95x、L96、L98(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96、H98、H99、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94、L95x-1、L95x、L96、L97、L98、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基210、296、610、612、733(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基199、202、204、210、212、251、292、294、295、329、351、352、354、395、396、397、398、399、401、403、597、599、602、604、609、610、612、615、651、698、733、751、753、796、797、798(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基197、199、208、209、211、251、289、290、292、295、296、327、355、599、602、604、607、608、609、610、611、612、615、651、696、698、699、731、733、751、753、755、796、797、798、799、803(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基197、199、202、204、208、209、210、211、212、251、292、294、295、296、327、329、351、352、354、355、395、396、397、398、399、401、403、597、599、602、604、607、608、609、610、611、612、615、651、696、698、699、731、733、751、753、755、796、796、797、798、799、801、803(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基199、202、204、210、212、251、292、294、295、329、351、352、354、395、396、397、398、399、401、403、597、599、602、604、609、610、612、615、651、698、733、751、753、796、797、798、801(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL境界面残基のセットは、残基197、199、202、204、208、209、210、211、212、251、292、294、295、296、327、329、351、352、354、355、395、396、397、398、399、401、403、597、599、602、604、607、608、609、610、611、612、615、651、696、698、699、731、733、751、753、755、796、797、798、799、801、803(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、選択すること/選択は、VH-VL配向に関して上位80%の変異抗体Fvフラグメントに基づく。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、選択すること/選択は、VH-VL配向に関して上位20%の変異抗体Fvフラグメントに基づく。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、選択することは、VH-VL配向に関して下位20%の変異抗体Fvフラグメントを除外することである。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL配向は、6つのABangle VH-VL配向パラメーターを計算することによって決定される、

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL配向は、ABangle VH-VL配向パラメーターをランダムフォレスト法を用いて計算することによって決定される。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL配向は、各ABangleに関して1つのランダムフォレスト法を用いてABangle VH-VL配向パラメーターを計算することによって決定される。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、VH-VL配向は、VHおよびVLの回転軸の、習慣的に使用されるねじれ角、4つの屈曲角(可変ドメイン当たり2つ)および長さ(HL、HC1、LC1、HC2、LC2、dc)をランダムフォレストモデルを用いて計算することによって決定される。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、ランダムフォレストモデルは複合体抗体構造データのみを用いて訓練される。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、最小の差とは、最大のQ2値に関する実際の角度値と予測される角度値との間の最小の差である。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、最小の差とは、最大のQ2値に関する親抗体角度パラメーターとヒト化変異抗体角度パラメーター値との間の最小の差である。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、最大の構造的類似性は最小平均の二乗平均平方根偏差(RMSD)である。1つの態様において、RMSDは、非ヒト抗体または親抗体のアミノ酸残基のすべてのCα原子(またはカルボニル原子)に関して変異抗体の対応するCα原子との間で決定されたRMSDである。

一般に、 は、VH-VL予測変数を用いることによって、構造の参照物に対して改善された。VH-VL再配向による の減少は、特にフレームワーク領域に関しては、より優れたRMSD値に一般に変換される。平均すると、Fv全体に関して、 の顕著な改善、およびカルボニルRMSDの改善が認められた。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、コンセンサスVHフレームワークまたはVLフレームワークのいずれかに対してアライメントが行われたテンプレート構造から構築され、その後にコンセンサスFvフレームワークに対するVH-VL再配向が行われたモデルが、VH-VL配向を決定する段階のために用いられる。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、完全Fvのβシートコアに対して(VHおよびVLに同時に)アライメントが行われたモデルが、VH-VL配向を決定する段階のために用いられる。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、抗体FvフラグメントがコンセンサスFvフレームワークに対して再配向されたモデルが、VH-VL配向を決定する段階のために用いられる。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、共通のコンセンサスFvフレームワークに対してアライメントが行われたテンプレート構造が用いられ、VH-VL配向を決定するためにいずれの形態においてもVH-VL配向が調整されていないモデルが用いられる。

本明細書において報告されるすべての局面の1つの態様において、コンセンサスVHフレームワークまたはVLフレームワークのいずれかに対してアライメントが行われたテンプレート構造から構築され、その後に類似性に基づいて選択されたVH-VL配向テンプレート構造に対するVH-VL再配向が行われたモデルが、VH-VL配向を決定するために用いられる。

本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、抗体を作製するための方法である: ‐1つまたは複数の抗体または抗体Fvフラグメントを、本明細書において報告される方法に従って選択する段階、 ‐1つまたは複数の抗体または抗体Fvフラグメントから、単一の抗体または抗体Fvフラグメントをその結合特性に基づいて選択する段階、 ‐そのVHおよびVLをコードする核酸を、1つまたは複数の発現ベクター中にクローニングする段階、 ‐細胞に、前記段階で得られた発現ベクターをトランスフェクトする段階、 ‐トランスフェクトされた細胞を培養し、それによって抗体を産生させる段階。

本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、抗体を作製するための方法である: ‐1つまたは複数の抗体または抗体Fvフラグメントを選択する段階であって、以下の段階: ‐非ヒト抗体由来の1つまたは複数の特異性決定残基をヒトアクセプター抗体もしくはヒト化アクセプター抗体または生殖細胞系列抗体配列に移植する/移行させることによって多数の変異抗体を作製する段階であって、多数の変異抗体の各変異抗体が、他の変異抗体とは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐VHおよびVLの回転軸の、習慣的に使用されるねじれ角、4つの屈曲角(可変ドメイン当たり2つ)および長さ(HL、HC1、LC1、HC2、LC2、dc)を、抗体Fvフラグメントの残基H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H55、H56、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96、H98、H99、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94/L95x-1、L95x、L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)からなるVH-VL境界面残基のセットに基づくランダムフォレストモデルを用いて計算することによって、非ヒト抗体Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体の変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、VH-VL配向を決定する段階、 ‐非ヒト抗体Fvフラグメントおよび変異抗体Fvフラグメントの対応するCα原子のすべての対に関して決定された、最小平均の二乗平均平方根偏差(RMSD)を有する変異抗体Fvフラグメントを選択する段階 を含む、段階、 ‐1つまたは複数の抗体から、単一の抗体をその結合特性に基づいて選択する段階、 ‐そのVHおよびVLをコードする核酸を、1つまたは複数の発現ベクター中にクローニングする段階、 ‐細胞に、前記段階で得られた発現ベクターをトランスフェクトする段階、 ‐トランスフェクトされた細胞を培養し、それによって抗体を産生させる段階。

本明細書において報告される1つの局面は、アミノ酸位置L26〜L32、L44、L46、L50〜L52、L87、L91〜L96、H26〜H32、H45、H53〜H55、H62およびH96〜H101(Chothiaインデックスによる番号付け)にドナー非ヒト抗体由来のアミノ酸残基を含み、かつ軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインにおける残りの位置に、アクセプターヒト抗体もしくはヒト化抗体またはアクセプターヒト生殖細胞系列アミノ酸配列由来の残基を含む、ヒト化抗体である。

本明細書において報告される1つの局面は、アミノ酸位置H26〜H32、H35、H37、H39、H45、H47、H50、H53〜H55、H58、H60、H61、H91、H95、H96〜H101、H102、H103、H105、L26〜L32、L34、L36、L38、L43、L44、L46、L49、L50〜L52、L55、L87、L89、L91〜L96(Chothiaインデックスによる番号付け)にドナー非ヒト抗体由来のアミノ酸残基を含み、かつ軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインにおける残りの位置に、アクセプターヒト抗体もしくはヒト化抗体またはアクセプターヒト生殖細胞系列アミノ酸配列由来の残基を含む、ヒト化抗体である。

本明細書において報告される1つの局面は、アミノ酸位置H26〜H32、H33、H35、H43、H44、H46、H50、H53〜H55、H56、H58、H61、H62、H89、H96〜H101、L26〜L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50〜L52、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91〜L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)にドナー非ヒト抗体由来のアミノ酸残基を含み、かつ軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインにおける残りの位置に、アクセプターヒト抗体もしくはヒト化抗体またはアクセプターヒト生殖細胞系列アミノ酸配列由来の残基を含む、ヒト化抗体である。

本明細書において報告される1つの局面は、アミノ酸位置H26〜H32、H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H53〜H55、H56、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96〜H101、H102、H103 H105、L26〜L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50〜L52、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91〜L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)にドナー非ヒト抗体由来のアミノ酸残基を含み、かつ軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインにおける残りの位置に、アクセプターヒト抗体もしくはヒト化抗体またはアクセプターヒト生殖細胞系列アミノ酸配列由来の残基を含む、ヒト化抗体である。

本明細書において報告される1つの局面は、アミノ酸位置H26〜H32、H35、H37、H39、H45、H47、H50、H53〜H55、H58、H60、H61、H91、H95、H96〜H101、H102、H103、H105、L26〜L32、L34、L36、L38、L43、L44、L46、L49、L50〜L52、L55、L87、L89、L91〜L96、L98(Chothiaインデックスによる番号付け)にドナー非ヒト抗体由来のアミノ酸残基を含み、かつ軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインにおける残りの位置に、アクセプターヒト抗体もしくはヒト化抗体またはアクセプターヒト生殖細胞系列アミノ酸配列由来の残基を含む、ヒト化抗体である。

本明細書において報告される1つの局面は、アミノ酸位置H26〜H32、H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H53〜H55、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96〜H101、H102、H103、H105、L26〜L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50〜L52、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91〜L96、L97、L98、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)にドナー非ヒト抗体由来のアミノ酸残基を含み、かつ軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインにおける残りの位置に、アクセプターヒト抗体もしくはヒト化抗体またはアクセプターヒト生殖細胞系列アミノ酸配列由来の残基を含む、ヒト化抗体である。

それぞれPDB ID 1N7M、1DLFおよび3HZMとの結晶構造から求めた、長さが5、10および15アミノ酸である3種の例示的なCDR-H3ループの重ね合わせ図。 a)Chothia/Kabat番号付けは、3種の代表的なCDR-H3ループにおける残基97の広い空間分布を示している; b)Wolfguy番号付けは、残基97の密な空間的局在を示しているが、これは、それが常に、CDR-H3の末端の最後から3つ目の残基(Wolfguyインデックスにより397と命名される)であるからである; c)CDRからの数個のアミノ酸は鎖間接触を有しており、特にこれらはCDR-H3およびCDR-L3の末端に位置していた(Wolfguyインデックスによる残基797は明らかに共局在化しており、VHと接触をなしている)。

複合体構造のみの試験データセットに対する例示的な試行に関する、予測されるABangle配向パラメーター(垂直軸)と実際のABangle配向パラメーター(平軸)の対比(複合体構造の2/3を訓練セットとして用い、1/3を試験セットとして用いた)。完璧な予測であれば対角線上に位置する。

予測変数訓練中の選択頻度パーセントの点での、6つのABangleパラメーターに関する上位25の重要なフィンガープリント3の位置。値は、ランダムに選択した訓練セット(複合体構造のみ)を変えて行った10回の試行の平均である。エラーバーは1標準偏差に対応する。フレームワークおよびCDR分類はWolfguyの命名法による。

図3−1の続きを示す図である。

図3−2の続きを示す図である。

拘束下での最小化の代わりに非拘束下での最小化を用いた場合の、フレームワーク(FW)、CDR(CDR)およびすべてのFv残基(すべて)に関するカルボニルRMSDの平均変化、ならびにdist

ABangleの平均変化(3種の変異体1、II、IIIと1、2、3とを比較して示している)。

元のモデルと再配向モデルとの間での、フレームワーク(FW)、CDR(CDR)およびすべてのFv残基(すべて)に関するカルボニルRMSDの平均変化、ならびにAMAII抗体当たりのdist

ABangleの平均変化。

元のモデルと再配向モデルとの間での、フレームワーク(FW)、CDR(CDR)およびすべてのFv残基(すべて)に関するカルボニルRMSDの平均変化、ならびにAMAII被験体当たりのdist

ABangleの平均変化。

HC(行列の列、左)およびLC(行列の行、右)を、それらの平均角度-距離によってソートしている。これらの描出を、「不良な(bad)」HC/LCを選び出すために用いる。

種々のHC/LCの組み合わせに関するELISA測定による行列。種々の方法によって選択から除外された抗体には陰影を付している;1:不良なHC/LCの組み合わせ;2:不合格としたHC/LCの全体;3:下位20%。

「不良なHC/LCの組み合わせ」(左)、「HCおよびLCの全体」(中)および「下位20%」(右)という3種の選択方法のすべてに関する、ELISA測定値の積み上げヒストグラム。ヒストグラムバーのライトグレーの領域は、不合格とした抗体を指し示している。

HC(行列の列、左)およびLC(行列の行、右)を、それらの平均角度-距離によってソートしている。これらの描出を、「不良な(bad)」HC/LCを選び出すために用いる。

種々のHC/LCの組み合わせに関するELISA測定による行列。種々の方法によって選択から除外された抗体には陰影を付している;1:不良なHC/LCの組み合わせ;2:不合格としたHC/LCの全体;3:下位20%。

「不良なHC/LCの組み合わせ」(左)、「HCおよびLCの全体」(中)および「下位20%」(右)という3種の選択方法のすべてに関する、ELISA測定値の積み上げヒストグラム。ヒストグラムバーのライトグレーの領域は、不合格とした抗体を指し示している。

HC(行列の列、左)およびLC(行列の行、右)を、それらの平均角度-距離によってソートしている。これらの描出を、「不良な(bad)」HC/LCを選び出すために用いる。

種々のHC/LCの組み合わせに関してBL測定値による行列を示している;種々の方法によって選択から除外された抗体には陰影を付している;1:不良なHC/LCの組み合わせ。

種々のHC/LCの組み合わせに関してBL測定値による行列を示している;種々の方法によって選択から除外された抗体には陰影を付している;2:不合格としたHC/LCの全体。

種々のHC/LCの組み合わせに関してBL測定値による行列を示している;種々の方法によって選択から除外された抗体には陰影を付している;3:下位20%。

「不良なHC/LCの組み合わせ」(左)、「HCおよびLCの全体」(中)および「下位20%」(右)という3種の選択方法のすべてに関する、ELISA測定値の積み上げヒストグラム。ヒストグラムバーのライトグレーの領域は、選択から除外された抗体を指し示している。

種々のHC/LCの組み合わせに関してt1/2測定値による行列を示している;種々の方法によって選択から除外された抗体には陰影を付している;1:不良なHC/LCの組み合わせ。

種々のHC/LCの組み合わせに関してt1/2測定値による行列を示している;種々の方法によって選択から除外された抗体には陰影を付している;2:不合格としたHC/LCの全体。

種々のHC/LCの組み合わせに関してt1/2測定値による行列を示している;種々の方法によって選択から除外された抗体には陰影を付している;3:下位20%。

「不良なHC/LCの組み合わせ」(左)、「HCおよびLCの全体」(中)および「下位20%」(右)という3種の選択方法のすべてに関する、t1/2測定値の積み上げヒストグラム。ヒストグラムバーのライトグレーの領域は、選択から除外された抗体を指し示している。

定義 Wolfguy番号付けスキーム Wolfguy番号付けは、CDR領域をKabatおよびChothiaの定義の合併セットとして定義する。その上、この番号付けスキームは、CDRループ先端に対して、CDR位置のインデックスがあるCDR残基が上向きループまたは下向きループの一部であることを指し示すように、CDRの長さに基づいて(かつ一部には配列に基づいて)アノテーションを行う。確立された番号付けスキームとの比較を表1に示す。

(表1)Chothia/Kabat(Ch-Kb)、HoneggerおよびWolfguy番号付けスキームを用いた、CDR-L3およびCDR-H3の番号付け。後者ではN末端に基づいてCDRピークに向けて番号が増加し、かつC末端側のCDR端を起点として番号が減少する。Kabatスキームでは最後の2つのCDR残基を固定し、CDRの長さに順応するように文字を導入する。Kabat命名法とは対照的に、Honegger番号付けでは文字を用いず、VHおよびVLについて共通である。

Wolfguyは、構造的に等価な残基(すなわち、Fv構造における空間的局在の保存という点で非常に類似している残基)には、できる限り等しいインデックスによる番号付けを行うように設計されている。このことは図1に説明されている。Wolfguyによる番号付けが行われた完全長VH配列およびVL配列の一例は表2に見ることができる。

(表2)Wolfguy、KabatおよびChothiaによる番号付けが行われた、PDB ID 3PP4(21)との結晶構造のVH配列(左)およびVL配列(右)。Wolfguyでは、CDR-H1〜H3、CDR-L2およびCDR-L3は長さのみに応じて番号付けが行われ、一方、CDR-L1はループの長さおよびカノニカルクラスター構成要素数に応じて番号付けが行われる。後者は異なるコンセンサス配列に対する配列類似性を計算することによって求められる。本明細書において、本発明者らはCDR-L1番号付けの一例のみを提示しているが、これはそのことが本発明者らのVH-VL配向配列フィンガープリントを作製する上で重要ではないためである。

ABangleの概念(7) アミノ酸をベースとする2つの任意の構造間で比較を行う場合には、一般に、等価な分子の距離に基づく測定基準、例えば二乗平均平方根偏差(RMSD)などが用いられる。

2つの任意の三次元対象物間の配向を特徴付けるためには、以下のものを定義することが必要である: ‐各対象物に対する基準系 ‐配向パラメーターを測定するための軸 ‐これらのパラメーターの記述および定量のための用語。

ABangleの概念は、5つの角度(HL、HC1、LC1、HC2およびLC2)ならびに距離(dc)を用いて、VH-VL配向を一貫性のある絶対的な意味で十分に特徴付けるという方法である。抗体の一対の可変ドメイン、すなわちVHおよびVLを、抗体Fvフラグメントと総称して表す。

第1の段階では、抗体構造をデータバンク(例えば、タンパク質データバンク、PDB)から抽出した。Chothia抗体の番号付け(Chothia and Lesk, 1987)を、抗体鎖のそれぞれに対して適用した。首尾良く番号付けが行われた鎖を対にしてFv領域を形成させた。これは、重鎖のH37位置Cα座標(重鎖可変ドメイン位置37にあるアミノ酸残基のα炭素原子)が、軽鎖のL87位置Cα座標の20Å以内になければならないという制約条件を課すことによって行った。CDHIT(Li, W. and Godzik, A. Bioinformatics, 22 (2006) 1658-1659)を用い、Fv領域のフレームワークにわたって配列同一性カットオフを99%に適用することによって、抗体の非冗長セットを作り出した。

重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインにおける最も構造的に保存されている残基位置を、ドメインの場所を定めるために用いた。これらの位置をVHおよびVLコアセットと表す。これらの位置は主としてフレームワークのβ-ストランド上に位置し、各ドメインのコアを形成する。コアセット位置は以下の表3に提示されている:

コアセット位置を用いて、参照物のフレームを抗体Fv領域ドメインに対して登録した。

非冗長データセットにおけるVHドメインは、CDHITを用いて、ドメイン内のフレームワーク位置にわたって配列同一性カットオフ80%を適用してクラスター化させた。30個の最大のクラスターのそれぞれから、1つの構造を無作為に選択した。このドメインセットを、Mammoth-mult(Lupyan, D., et al., Bioinf. 21 (2005) 3255-3263)を用いて、VHコアセット位置に対してアライメントを行った。このアライメントから、βシート境界面における構造的に保存されている8つの位置H36、H37、H38、H39、H89、H90、H91およびH92に対応するCα座標を抽出した。結果的に得られた240の座標から平面のフィッティングを行った。VLドメインについては、位置L35、L36、L37、L38、L85、L86、L87およびL88を用いて平面のフィッティングを行った。

上記の手順により、2つの参照フレーム平面を任意のFv構造に対してマッピングすることが可能になる。このため、VH-VL配向の測定は、2つの平面間の配向を測定することと等しいように行うことができる。これを十分に、かつ絶対的な意味で行うためには、少なくとも6つのパラメーターが必要である:距離、ねじれ角度、および4つの屈曲角。これらのパラメーターは、平面を結び付ける一貫性をもって定義されたベクトルの周りで測定されなければならない。このベクトルは、以下においてCと表される。Cを特定するために、参照フレーム平面を、上記のように非冗長セット内の構造のそれぞれに対して登録し、各平面上にメッシュを配置した。各構造はそのため等価なメッシュ点を有し、それ故に等価なVH-VLメッシュ点の対を有していた。各構造におけるメッシュ点の各対についてユークリッド距離を求めた。それらの分離距離に関する分散が最小である点の対を同定した。これらの点をつなぐベクトルをCと定義する。

座標系は、各平面内にあってCに対応する点を中心とするベクトルを用いて十分に定義される。H1はVH平面の第1の主成分と平行するベクトルであり、一方、H2は第2の主成分と平行する。L1およびL2はVLドメインに対して同様に定義される。HL角度は、この2つのドメイン間のねじれ角度である。HC1屈曲角およびLC1屈曲角は、一方のドメインのもう一方のドメインに対する傾斜様変形物(tilting-like variation)と等価である。HC2屈曲角およびLC2屈曲角は、一方のドメインの他のドメインに対するねじれ様変形物(twisting-like variation)を記述している。

VH-VL配向を記述するためには、6つの尺度、すなわち1つの距離および5つの角度が用いられる。これらは座標系において以下の通りに定義される: ‐Cの長さ、dc、 ‐Cの周りにH1からL1まで測定されるねじれ角、HL、 ‐H1とCとの間の屈曲角、HC1、 ‐H2とCとの間の屈曲角、HC2、 ‐L1とCとの間の屈曲角、LC1、および ‐L2とCとの間の屈曲角、LC2。

「VH-VL配向」という用語は、当業者によって理解されているであろう、当技術分野におけるその一般的な意味に従って用いられる(例えば、Dunbar et al., Prot. Eng. Des. Sel. 26 (2013) 611-620;およびBujotzek, A., et al., Proteins, Struct. Funct. Bioinf., 83 (2015) 681-695を参照)。これは、VHドメインとVLドメインが互いに対してどのように配向しているかを表す。

すなわち、VH-VL配向は、 ‐Cの長さ、dc、 ‐Cの周りにH1からL1まで測定されるねじれ角、HL、 ‐H1とCとの間の屈曲角、HC1、 ‐H2とCとの間の屈曲角、HC2、 ‐L1とCとの間の屈曲角、LC1、および ‐L2とCとの間の屈曲角、LC2 によって定義され、ここで参照フレーム平面は、i)VHの8つの位置H36、H37、H38、H39、H89、H90、H91およびH92に対応するCα座標のアライメントを行い、平面をそれらを通るようにフィッティングする段階、ならびにii)VLの8つの位置L35、L36、L37、L38、L85、L86、L87およびL88に対応するCα座標のアライメントを行い、平面をそれらを通るようにフィッティングする段階、iii)各平面に配置されたもの(a placed)を配置する段階であって、各構造が等価なメッシュ点および等価なVH-VLメッシュ点の対を有する段階、ならびにiv)各構造におけるメッシュ点の各対に関してユークリッド距離を測定する段階によって登録され、ここでベクトルCは点の対をそれらの分離距離が最小分散となるようにつなぎ、 ここでH1はVH平面の第1の主成分と平行するベクトルであり、H2はVH平面の第2の主成分と平行するベクトルであり、L1はVL平面の第1の主成分と平行するベクトルであり、L2はVL平面の第2の主成分と平行するベクトルであり、HL角度はこの2つのドメイン間のねじれ角度であり、HC1およびLC1は一方のドメインのもう一方のドメインに対する傾斜様変形物と等価な屈曲角であり、HC2屈曲角およびLC2屈曲角は一方のドメインの他のドメインに対するねじれ様変形物と等価である。

これらの位置は、Chothiaインデックスに従って決定される。

ベクトルCは、構造の非冗長セットにわたって元も保存された長さを有するように選択した。距離dcはこの長さである。この平均値は16.2Åであり、標準偏差はわずか0.3Åである。

表4は、VH-VL配向の角度のそれぞれを決定する上で重要なランダムフォレストアルゴリズムによって同定された上位10の位置および残基を列記している。

(表4)Xは変数L36Va/L38Eb/L42Ha/L43La/L44Fa,b/L45T/L46Gb/L49G/L95Hを表している a:Chailyan et al.によって影響性があることが同じく見いだされた位置を表している。 b:Abhinandan and Martinによって影響性があることが同じく見いだされた位置を表している。 (さらに詳細な情報については、参考文献7およびBujotzek, A., et al., Prot. Struct. Funct. Bioinf. 83 (2015) 681-695を参照のこと。これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。

さらなる定義: 「アクセプターヒトフレームワーク」は、本明細書において、以下に定義するように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークのことである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それと同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれがアミノ酸配列変化を含んでもよい。いくつかの態様において、アミノ酸変化の数は10個もしくはそれ未満、9個もしくはそれ未満、8個もしくはそれ未満、7個もしくはそれ未満、6個もしくはそれ未満、5個もしくはそれ未満、4個もしくはそれ未満、3個もしくはそれ未満、または2個もしくはそれ未満である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。

「親和性」とは、ある分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強さのことを指す。別に指示する場合を除き、本明細書で用いる場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性のことを指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野において公知の一般的方法によって測定することができる。結合親和性の測定に関して、説明的かつ例示的な具体的態様を、以下に記載する。

「抗体」という用語は、本明細書において最も広い意味で用いられ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、およびそれらが所望の抗原結合活性を示す限り、抗体フラグメントを非限定的に含む、さまざまな抗体構造を範囲に含む。

「抗体フラグメント」とは、インタクト抗体が結合する抗原と結合するインタクト抗体の部分を含む、インタクト抗体以外の分子のことを指す。抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が非限定的に含まれる。

「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部分はある特定の供給源または種に由来するが、重鎖および/または軽鎖の残りの部分は異なる供給源または種に由来する、抗体のことを指す。

抗体の「クラス」とは、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプのことを指す。抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。

本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含む抗体重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、ネイティブ性配列のFc領域および変異Fc領域を含む。1つの態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226から、またはPro230からカルボキシル末端まで及ぶ。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在することもあれば存在しないこともある。本明細書において別に指定する場合を除き、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付け体系に従い、これはKabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242に記載されている。

「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基のことを指す。可変ドメインのFRは、一般に4つのFRドメイン、すなわちFR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、HVR配列およびFR配列は、VH(またはVL)中に一般に以下の順序で見いだされる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。

「完全長抗体」、「インタクト抗体」および「全長抗体」という用語は、ネイティブ性抗体の構造と実質的に類似する構造を有するかまたは本明細書において定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指すために、本明細書において互換的に用いられる。

「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体に対応するアミノ酸配列を有するもののことである。ヒト抗体のこの定義からは、非ヒト抗原結合性残基を含むヒト化抗体は特に除外される。

「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択に際して最もよく見いだされるアミノ酸残基に相当するフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL配列またはVH配列の選択は可変ドメイン配列のサブグループから行われる。一般に、配列のサブグループは、Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Bethesda MD (1991), NIH Publication 91-3242, Vols. 1-3に記載されたサブグループである。1つの態様において、VLについては、サブグループはKabat et al., 前記に記載されたサブグループκIである。1つの態様において、VHについては、サブグループはKabat et al., 前記に記載されたサブグループIIIである。

「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基とを含むキメラ抗体のことを指す。ある態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、そのHVR(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含みうる。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化型」とは、ヒト化を受けた抗体のことを指す。

「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で用いる場合、配列が超可変的であるか(「相補性決定領域」または「CDR」)、かつ/または構造的に定められたループを形成するか(「超可変ループ」)、かつ/または抗原接触性残基を含む(「抗原接触部」)、抗体可変ドメインの領域のそれぞれのことを指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み、3つはVH(H1、H2、H3)中にあり、3つはVL(L1、L2、L3)中にある。

本明細書におけるHVRには、以下が含まれる。 (a)アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917); (b)アミノ酸残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、31〜35b(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3)に存在するCDR(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242); (c)アミノ酸残基27c〜36(L1)、46〜55(L2)、89〜96(L3)、30〜35b(H1)、47〜58(H2)、および93〜101(H3)に存在する抗原接触部(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに (d)HVRアミノ酸残基46〜56(L2)、47〜56(L2)、48〜56(L2)、49〜56(L2)、26〜35(H1)、26〜35b(H1)、49〜65(H2)、93〜102(H3)、および94〜102(H3)を含む、(a)、(b)および/または(c)の組み合わせ。

別に指示する場合を除き、HVR残基および可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al., 前記に従って番号付けが行われる。

「特異性決定残基」という用語は、当技術分野におけるその意味に従って用いられる。これは、抗原との相互作用に直接関与する、抗体の残基を定めている(例えば、Padlan, E.A., et al., FASEB J. 9 (1995) 133-139を参照)。

「単離された」抗体とは、その天然環境の構成要素から分離された抗体のことである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって測定した場合に95%または99%を上回る純度まで精製される。抗体純度を評価するための方法に関する概要については、例えば、Flatman, S. et al., J. Chromatogr. B 848 (2007) 79-87を参照されたい。

「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体のことを指す。すなわち、この集団を構成する個々の抗体は、考えうる変異抗体、例えば、天然の突然変異を含有するもの、またはモノクローナル抗体調製物の生産中に生じる一般に微量に存在する変異体などを除いて、同一であり、かつ/または同じエピトープと結合する。典型的には異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基を対象とする。このため、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示しているのであって、何らかの特定の方法による抗体の生産を要求していると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全体または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法などを非限定的に含む、さまざまな手法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的方法は本明細書において記載される。

「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体が抗原と結合するのに関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインのことを指す。ネイティブ性抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は一般に、類似した構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt, T.J. et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), page 91を参照されたい。単一のVHドメインまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分なこともある。さらに、特定の抗原と結合する抗体を、その抗原と結合する抗体に由来するVHドメインまたはVLドメインを用いて、相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングして単離することもできる。例えば、Portolano, S. et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887;Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628)を参照されたい。

発明の詳細な説明 VH-VLドメイン間配向を予測する、迅速な配列ベースの予測変数が、本明細書において報告される。0.67〜0.80の範囲にわたるQ2値が達成される。VH-VL配向は、VH-VL配向の種々の自由度を明確に区別するために、6つの絶対的ABangleパラメーターに関して記載される。VH-VL配向の影響を種々の抗体構造に関して評価した。本明細書において報告する方法を用いると、親(非ヒト)抗体に対する変異(ヒト化)抗体のVH-VL配向の偏差に関して改善を達成しうることが見いだされた。これはアミノ酸骨格のカルボニル原子の平均の二乗平均平方根偏差(RMSD)によって示される。これは、親(非ヒト)抗体と変異(ヒト化)抗体との間のVH-VLドメイン間角度の類似性に関する改善を示している。本明細書において報告される方法(移植手順を含む)は、変異(ヒト化)抗体のより優れた結合特性を与える。抗体の生物物理学的特性を変化させる目的で、フレームワークシャフリングなどの他の操作方法を、ヒトフレームワークを別のものと交換した場合に変異抗体の結合性の改善をもたらす本明細書において報告される方法と組み合わせることができる。これは、親抗体に由来する多数の変異抗体からより優れたヒト化抗体を選択するための方法の提供をもたらす。

治療学および臨床診断学における抗体の使用は、結晶構造が得られない場合に常に合理的な抗体操作を可能にする、抗体構造の正確な相同性モデルに対する需要を生み出した。このため、コンピュータ支援抗体設計のための多数の計算方法(1)が開発されており、それらの中には、ブラインド下モデル研究(8、2)によって通常は評価されているいくつかの相同性モデリングアプローチがある。

実験的に導き出された抗体構造の数が理由で(構造的抗体データベースSAbDab3には2014年5月時点で1841の項目がある)、抗体相同性モデルの質は他の生体分子の相同性モデルと比較して優れている。2つの抗体可変フラグメント(Fv)の6つの抗原結合ループは、配列の点で超可変的である(超可変領域、HVR)。それらのうち5つはカノニカル的な立体構造をとる傾向があり、それらは既存のテンプレート構造に基づいて配列から予測することができる。しかし、このことは重鎖の可変領域上にある第3のループ、HVR-H3については成り立たない。HVR-H3は配列および長さの点で最も可変性の高いループであり、典型的には主要な抗原相互作用特異性決定部位である。

抗体の抗原結合部位は、2つのFv(重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)の境界面に形成される。各可変ドメインは3つのHVRを含む。VHドメインとVLドメインの相対的配向が、抗原結合部位のトポロジーに加えられる。

最近のAntibody Modeling Assessment study 2(AMAII)において、Teplyakov et al.(2)は、単一の角度を用いて、VH-VL配向を記述した。参照構造に対するVH-VL傾き角の違いは、構造的に保存されたβシートコア位置のセットを用いてVLドメインおよびVHドメインの逐次的重ね合わせによって達成される座標変換の球面角座標系(spherical angular system)(ω、φ、κ)において、κ角として計算される。Narayanan et al.(6)は、RMSD(二乗平均平方根偏差)に基づく測定基準を用いて、VH-VL配向のエネルギーに基づく予測変数の訓練および評価を行った。Chailyanら(5)は、類似したVH-VL配向を持つFv構造のクラスターを同定した上で、ある特定の保存された残基のCα重ね合わせRMSDを測定することによって、影響のある配列位置を決定した。他の諸研究では、1つの結晶構造のVHまたはVLを別のものに再配向させるために必要な回転の量を与えることによって、RMSD値を補強している(10〜12)。

Abhinandan and Martin(4)は、VH-VL配向を比較するための絶対的な測定基準の1つであるVH-VLパッキング角度を定義した。VH-VLパッキング角度は、2つのドメインのそれぞれにおけるCα位置の高度に保存されたセットの主軸を通るようにフィッティングされたベクトルにかかるねじれ角度である。相対的RMSD値とは対照的に、VH-VLパッキング角度は、個々の各Fv構造を、構造空間におけるそのVH-VL配向の点で記述することを可能にする。この著者らはVH-VLパッキング角度の定義とともに、影響力のある位置のセットを同定し、ニューラルネットワークを用いて学習したVH-VLパッキングの配列ベースの予測変数を提示している。

VH-VL配向に影響があるように思われるFv配列の位置に関して少なくとも一部に食い違いがある、これまでの観察所見に基づき(4、5)、Dunbarら(7)は、VH-VL配向が複数の自由度にさらされること、および各自由度が影響力のある配列位置の異なるセットによって決定されることを示唆した。その結果、この著者らは、習慣的に使用されるねじれ角に加えて、4つの屈曲角(可変ドメイン当たり2つ)、さらにVHおよびVLの回転軸の長さを定義し、ランダムフォレストモデルを用いて、5つの角度パラメーター(ABangle)のそれぞれについて、さらにはVHとVLとの間の回転軸の長さについて、最も影響力のある配列位置を同定した。

本明細書においては、抗体のヒト化に際してのVH-VL配向の特性決定および利用のための、ABangleに基づく方法を報告する。本明細書においては、6つのABangle尺度のそれぞれに関するVH-VL配向の配列ベースの予測変数が報告される。また、実際の抗体相同性モデルにおいてVH-VL配向を調整する方法も報告される。

本明細書においては、ドナー抗体由来の結合決定残基のアクセプター抗体フレームワークへの移行に際しての、VH-VL配向の特性決定および利用のための、ABangleに基づく方法を報告する。

本明細書においては、抗体のフレームワーク領域の一部または全体の交換(フレームワークシャフリング)に際してのVH-VL配向の特性決定および利用のための、ABangleに基づく方法を報告する。

VH-VL配向の予測変数 (表5)50回の試行を平均した6つのABangleパラメーターの予測に関するQ2値およびRMSE値。ランダムフォレストモデル当たりの決定木の数は、Q2が最大になるように手作業で微調整した。括弧内の値は標準偏差を明記している。

このランダムフォレストモデルを、apo構造および複合体構造の完全データセットに対して1回訓練させ(表5、中央の列)、複合体構造のみに対して1回訓練させた(表5、右の列)。訓練セットはほぼ550近くの構造に減少したが、Q2値およびRMSE値は複合体構造を用いた場合にのみ改善した。HL、LC2およびdcについてはQ2値は約0.68であり、一方、HC1、LC1およびLC2のQ2値は0.75およびそれ以上であった(複合体構造を考慮した場合)。

訓練セットに異なる配向フィンガープリントの最大の多様性を確実に含めることの代わりに、CD-HITを用いて、配向フィンガープリントを100%同一性にクラスター化することができ、かつ各クラスターに関して、利用可能な構造の3分の2が訓練セットに割り当てられるまで、少なくとも1つの代表物を訓練セットに加えることができる。残りの3分の1を試験のために用いることができる。その後は試験セットは訓練セットにも含まれる配向フィンガープリントからなるという事実のため、その結果得られる、例えば、各々のABangleパラメーターの現行のデータセットに応じて0.71〜0.88の範囲となるQ2値は、未知の配向フィンガープリントに直面した場合に、予測変数の実際の能力を強調すると考えられる。その場合には、およそ、0.54〜0.73の範囲にわたるQ2値が、現行のデータセットに対して見いだされると考えられる。

図2は、複合体構造のみデータセットに対する予測されるABangleパラメーターと実際のABangleパラメーターに関する例示的な回帰プロットを示している。

相関は、例えば、Abhinandan and Martin(4)によって報告されたものに比較して改善している。この理論に拘束されることは望まないが、改善は、6つのABangleパラメーターの点でVH-VL配向の自由度のより微細な記述、およびHVR残基番号付けにおける曖昧さを減らすかまたはさらにはなくすというWolfguy番号付けスキームの使用に原因を求めることができる。

種々のABangleパラメーターに関する記述子としてのフィンガープリント位置の重要性ランク付けが、図3に描写されている。

フィンガープリント位置の重要性ランク付けの知見に基づき、各ABangleパラメーターは、VHおよびVLのいずれに対しても境界面位置の大きく異なるセットによって影響されることが見いだされた。HC2を除くすべてのパラメーターについては、フレームワーク位置が最も重要な記述子であった。しかしながら、それぞれのケースで、少なくとも2つのHVR-H3残基は最も重要な記述子の中にあった。当初のABangle刊行物(7)において上位10位の重要な入力変数にランク付けされた位置を、本明細書において提示するランク付けにおいても追跡した。しかし、Dunbar et al.(7)は、HC1はもっぱら重鎖上の残基によって決定され、LC1はもっぱら軽鎖上の残基によって決定されることを見いだしたが、HC1およびLC1に関して本明細書において報告される方法によって決定されるような上位10の記述子は、両方の鎖にフィンガープリント位置を含む。本明細書において、フィンガープリント位置はアミノ酸特異性とは無関係にランク付けされる。

上位25にランク付けされたフィンガープリント位置は、Chailyan et al.(5)によって同定されたVH-VL配向決定位置(L41、L42、L43、L44)およびAbhinandan and Martin(4)によって同定されたVH-VL配向決定位置(L41、L44、L46、L87、H33、H45、H60、H62、H91、H105)のセットのいくつかのメンバーも含む。L87はHLに関する、L46はHC1に関する、H45はLC1に関する、H62はHC2に関する、そしてL44はLC2に関する最上位の記述子であることが見いだされている。

VH-VL再配向による抗体相同性モデリング MoFvAbモデル MoFvAb(抗体に対するFvのモデリング)手順の詳細な説明は、Bujotzek, A., et al.(mAbs 7 (2015) 838-852)によって発表されている。変異体1(コンセンサスVHフレームワークまたはVLフレームワークのいずれかに対してアライメントを行い、その後にコンセンサスFvフレームワーク上にVH-VL再配向が行われた、テンプレート構造から構築されたモデル)のモデル構築に関して得られた結果を、表6に示している。

(表6)MoFvAb変異体1を用いて構築されたAMAIIモデル。値は、βシートコアに対する鎖毎(chain-wise)アライメント後の、Teplyakov et al.(7)によって定義された通りの、フラグメントに関するカルボニルRMSDを示している。

VH-VL配向における偏差によって引き起こされるカルボニル変位を考慮に入れる目的で、同じモデルを完全Fvのβシートコアに対してアライメントを行って(VHおよびVLを同時に)、値を再計算した。結果は表7に示されている。

(表7)MoFvAb変異体1を用いて構築したAMAIIモデル。値は、完全Fvのβシートコアに対するアライメント後の、Teplyakov et al.(7)によって定義された通りの、フラグメントに関するカルボニルRMSDを示している。一番右の3つの列は、Wolfguyフラグメント定義およびKabat CDR定義に基づく、フレームワーク(FW)、HVR(CDR)およびすべてのFv残基(すべて)に関するカルボニルRMSDを明記している。

表6と表7との比較により、完全なFv構造を考慮すると、RMSD値がいかに直ちに悪化するかが明らかである。βシートコアに関する平均カルボニルRMSDはVLについては0.37Åから0.57Åに増加し、VHについては0.47Åから0.69Åに増加した。この傾向はフレームワークには限定されず、HVRにも及んだ。例えば、HVR-L3に関する平均カルボニルRMSDは1.02Åから1.45Åに増加し、HVR-H3については3.20Åから3.32Åに増加した。6つのABangleパラメーターを直接見ることによるVH-VL配向の偏差、および参照構造に対する違いは表8に示されている。

(表8)MoFvAb変異体1を用いて構築したAMAIIモデルに関する、6つのABangleパラメーターの点での、参照構造に対するVH-VL配向の偏差

表8に列記されたモデルは、同じコンセンサスFvフレームワークに対して再配向させており、それ故に、およそ という本質的に同じABangle配向を共通に有する。AMAII構造に固有のVH-VL配向の大きな多様性が示されている。最大の偏差はパラメーターHLおよびHC2に関して生じ、それは異なる構造間だけではなく、同じ非対称単位由来の配列同一構造についても生じた:4MA3_B_Aおよび4MA3_H_Lに関するパラメーターHLには5.87度の偏差があった。このことは、VH-VL配向は、一方ではある特定の配列特徴によってガイドされるが(図3参照)、方向性のない(undirected)固有の変動性にもさらされることを裏付けている。これは非結合形態にあるタンパク質結合抗体で特に顕著である(7)。

モデルはすべて、テンプレート構造に関して同じ選択を用いて、モデル構築用変異体2を用いて再構築した(コンセンサスVHフレームワークまたはVLフレームワークのいずれかに対してアライメントが行われ、その後に予測されるABangleパラメーターに対する類似性に基づいて選択されたVH-VL配向テンプレート構造に対するVH-VL再配向が行われた、テンプレート構造から構築されたモデル)。結果は表9に示されている(値は、完全Fvのβシートコアに対してアライメントが行われたモデル参照対のことを指す)。

(表9)MoFvAb変異体2を用いて構築したAMAIIモデル

VH-VL配向最適化変異体2モデルに関して計算したフラグメント当たりの平均カルボニルRMSD値は、一般的なVH-VL配向を用いるモデルと比較して、およそ0.05Åの改善を示した(表7参照)。これらのABangle偏差により、変異体2モデルは、参照構造の実際のVH-VL配向により近い方に動いたことが明らかになった(表10参照)。

(表10)MoFvAb変異体2を用いて構築したAMAIIモデルに関する、6つのABangleパラメーターの点での参照構造に対するVH-VL配向の偏差。予測されるABangleパラメーターに基づいて選び出したVH-VL配向テンプレート構造を、一番右の列に提示している。

平均distABangleは、一般的配向モデルについての5.53から、配向最適化バージョンについては4.78に改善した。一番右の列に示されているのは、予測されるABangleパラメーターの重み付けされた距離 に基づいて選択されたVH-VL配向テンプレートである。VH-VL配向テンプレートの選び出しはフィンガープリント類似性に基づいてではなく、ABangle配向空間における類似性によって行った。

モデルはすべて、モデル構築用変異体3を用い、鎖毎のコンセンサス構造の代わりに共通のコンセンサスFvフレームワークに対してアライメントを行ったテンプレート構造を用いて再構築し、VH-VL配向はいずれの形態においても調整しなかった。テンプレート構造はすべてFv毎にアライメントを行ったという事実に起因して、鎖毎のカルボニルRMSD(表6参照)はVLについては0.37Åから0.43Åに増加し、VHについては0.47Åから0.55Åに増加した(非提示データ)。完全Fvに対してアライメントを行ったモデル-参照対に関するカルボニルRMSD値は、表11に列記されている。

(表11)MoFvAb変異体3を用いて構築したAMAIIモデル

変異体3に関する結果は、他の2つの変異体に関するほど良好ではなかった。変異体3ではFv構造由来のテンプレートフラグメントを全く無関係であるVH-VL配向と混合しているものの、モデルの質に対して特に有害な影響があるようには思われなかった。対応するABangle偏差は表12に示されている。

(表12)MoFvAb変異体3を用いて構築したAMAIIモデルに関する6つのABangleパラメーターの点での参照構造に対するVH-VL配向の偏差

変異体3モデルの平均distABangleは、VH-VL配向最適化モデルに関してはあまり優れてはいなかったが、変異体1によって生成されたコンセンサスFv配向を有するモデルに関してよりも優れていた。この理論に拘束されることは望まないが、共通のコンセンサスFvフレームワークに対してアライメントが行われた構造から導き出されたテンプレートフラグメントは、それ以外であれば失われたであろう、ある種のVH-VL配向情報をコードしている。

以上に示したすべてのデータは、すべての残基に対する位置拘束の存在下で最小化され、ただしリモデリングされるかまたは異なるテンプレート構造から生じる隣接残基を伴うフラグメント縁に位置するモデルについて言及している。それ故に、テンプレート構造および/またはVH-VL再配向によって付与されるVH-VL配向情報は最大限に保たれた。

比較のために、位置拘束を取り除いた上で、モデル構築過程を再度行い、同じ力場およびインプリシットウォーター(implicit water)モデルの組み合わせ(CHARMmおよびGBSW)を用いてすべてのモデルを最小化した。わかりやすくするために、拘束下から完全に柔軟な最小化に切り替えた場合の、カルボニルRMSDおよびdistABangleの平均変化のみを示している(図4参照)。MoFvAb変異体1および2を用いて構築したモデルについては、参照構造に対する平均カルボニルRMSDは幾分大きくなる。変異体3モデルは、それらのテンプレート構造の構成が原因で、立体的不正確さ(steric inaccuracy)による影響をおそらく最も受け、非拘束エネルギー最小化による利益はわずかな幅だけである。この3種のモデル変異体はすべて、参照構造に対してdistABangleの点で改善する。この理論に拘束されることは望まないが、非拘束エネルギー最小化は、異なるモデル構築用変異体(力場/インプリシットウォーター(implicit water)モデルの組み合わせ)に対して、モデルの質の同等化を誘導するように思われる。

元のAMAIIモデル 本明細書において報告しているように、ある所与のFv相同性モデルを、VH-VL配向テンプレート上にそれを再配向させることによって改良するアプローチは、現行の最新式モデリングソフトウェアに組み込まれている。元のAMAIIモデルは、http://www.3dabmod.comから入手し、組み込みを容易にするためにその構造にWolfguy番号付けによるアノテーションを行い、表8に列記された通りにモデルをVH-VL配向テンプレート上に再配向させた。すべてのAMAII被験体の各々のモデルで平均した、再配向後の抗体当たりのカルボニルRMSDおよびdistABangleの変化の平均を、図5に示している。

11セットの抗体モデル(Ab02に従って、acc、ccg、jef、joa、mmt、pigおよびschによって提出されたすべての構造で構成される)のうち8セットについて、異なるFv構造(特に後処理を伴わないもの)上への鎖毎の再配向後に、完全Fv骨格に関するカルボニルRMSDはVH-VL再配向によって改善した。その上、モデルセットAb01、Ab10およびAb11はVH-VL配向およびフレームワークRMSDの点でも改善した。

最後に、本明細書において報告されるVH-VL再配向の方法が、異なるアプローチを用いて構築される抗体モデルとどの程度まで一致するかを評価する目的で、モデルセットを分割した。各々のAMAII被験体のすべてのモデルを平均した、再配向後のカルボニルRMSDおよびdistABangleの変化の平均を図6に示す。

平均distABangleは、すべての被験体のモデルに関する構造の参照に対して改善した。VH-VL再配向によるdistABangleの減少は7例のうち5例でより優れたRMSD値に移行し、特にフレームワーク領域に対してそうであった。

平均すると、Fv全体に関してdistABangleの顕著な改善およびカルボニルRMSDの小規模な改善が見いだされた。

このように、本明細書において報告するように、配列特徴に基づくVH-VL配向の予測という考え方は、単一のVH-VLパッキング角度を、Dunbar et al.(7)によって定義された6つのABangleパラメーターの点でのVH-VL配向のより微細な記述に変えることによって、拡張することができる。

各ABangleパラメーターに関して、ランダムフォレストモデルを、公知のFv構造の最新のセットに対して訓練させた。6つの予測変数に関するQ2値は、複合体構造のみからなるセットに対して訓練させた場合、0.67〜0.80の範囲であった。

本発明者らのランダムフォレストモデルの最上位の記述子の分析により、以前はそうであることが知られていなかったいくつかのHVR-H3残基が明らかになった。本明細書において報告される抗体番号付けスキーム「Wolfguy」は、超可変領域においても(しかも特に)、構造的に等価な残基が等しいインデックスでできる限り番号付けされるように設計されているため、これらの残基を同定するのに貢献した。

VH-VL配向予測および調整を伴わない2つのモデル構築用変異体(変異体1および3)を、6つのABangleパラメーターの点で最も可能性の高いVH-VL配向を予測し、抗体テンプレートデータベースの中にある最も類似した配向を持つFv構造を自動的に見つけ出して、このVH-VL配向テンプレート上に未加工モデルを再配向させ、その後にさらなる処理を行うモデル構築用変異体(変異体2)と比較した。

VHおよびVLの事前配向の改善に起因するHVR-H3ループのモデリングに対する相乗効果が予測される。その上、配列ベースの予測変数に基づくVH-VL配向の最適化、およびテンプレート構造のその後の再配向の計算コストは無視しうる程度である(例えば、合成研究と比較した場合)。

本発明 ある抗原の同じエピトープと結合する2つの(ヒト化)抗体変異体の間のVH-VL配向の、その親非ヒト抗体に比しての違いの総和が、抗体の抗原結合能力の各々の違いと相関することが見いだされた。

VH-VL配向は、本明細書においては、完全Fv配列からではなく、Fv配列位置の(意味のある)サブセット(「配列フィンガープリント」)から予測される。VH-VL配向はVH-VL境界面の箇所またはその近傍にある残基によって司られるという仮定に基づき、境界面残基のセットが同定されており、ここで残基は、その側鎖原子が、データベース、例えばRAB3Dにおける重ね合わされたすべてのFv構造の少なくとも90%において4Åに等しいかまたはそれ未満の距離にある対向鎖の近接原子であるならばVH-VL境界面の一部であると定められる。結果は表29にまとめられており、これはまた、ある配列位置が、VH-VL配向の決定基であることが統計分析に基づいて以前に結び付けられているかどうかも示している(4、5、7)。

(表29)残基がその側鎖原子がRAB3Dにおける重ね合わされたすべてのFv構造の少なくとも90%において4Åに等しいかまたはそれ未満の距離にある対向鎖の近接原子であるならば境界面の一部であると定められる、VH-VL境界面残基 * ループの長さに応じた番号付け + Chothia et al.(13)による定義によるVH-VL境界面の一部

上記の境界面残基のセットには、Dunbar et al.(7)によるVH-VL配向に関する「上位10の重要な入力変数」の中に列記された配列位置のいくつかが入っていない。それらの配列位置は以下の表30に列記されている。

(表30)Dunbar et al.(7)によってVH-VL配向に関する「上位10の重要な入力変数」の中に列記された、そのほかの配列位置 * ループの長さに応じた番号付け + Chothia et al.(13)による定義によるVH-VL境界面の一部

親抗体の適切な(ヒト化)変異抗体を選択する目的で、VH-VL配向を、1つのねじれ角、4つの屈曲角(可変ドメイン当たり2つ)、ならびにVHおよびVLの回転軸の長さからなる6つの「ABangle」配向パラメーターの点で記述する。

VHドメインとVLドメインとの相対的配向(VH-VL配向)を用いることで、最良の結合親和性を有する変異抗体を(事前)選択することができることが見いだされている。これは一群のヒト化抗体の中においても、さらには一群のヒト化抗体と親非ヒト抗体との間に対しても適用可能である。

その上、フレームワーク残基またはフレームワーク全体を変化(交換)させる必要があるたびに、新たな変異体のその抗原に対する結合を、本明細書において報告される方法に基づいて評価することもできる。

本発明を以下に、具体的な抗体によって例示するが、それらは一例として役立てることを意図しており、本発明の範囲をそれに限定するものと見なされるべきではない。本明細書において報告される方法は一般に適用可能な方法である。

この配列フィンガープリントは54アミノ酸からなり、VH領域に29アミノ酸、VL領域に25アミノ酸がある。以下の表13を参照されたい。

(表13)配列フィンガープリント * ループの長さに応じた番号付け + Chothia et al.(13)による定義によるVH-VL境界面の一部

第1の例では、CD81受容体細胞外ドメイン(ECD)の大細胞外ループ(LEL)およびそれらのヒト化変異体と結合する2種のマウス抗体、CD81K04およびCD81K13を、本明細書において報告する方法に従って評価する。

第2の例では、pTauタンパク質(S422リン酸化を含む)由来のペプチドセグメントを認識するウサギ抗体およびそのヒト化変異体を、本明細書において報告する方法に従って評価する。

第3の例では、抗ヘプシン抗体およびそのヒト化変異体を、本明細書において報告する方法に従って評価する。

配列アライメント中で、HVRにはグレーの背景で目印をつけている。用いるHVR定義は、KabatおよびChothia CDR定義の合併セットに対応する。VH-VL配向を予測するために用いた配列フィンガープリントの部分である配列位置には黒の背景で目印をつけている。所与の抗体における非占有のフィンガープリント位置には「X」で目印をつけている。

CD81K04、CD81K13(マウス)およびRb86の元のVH配列:

CD81K04、CD81K13(マウス)およびRb86の元のVL配列:

CD81K04 VHヒト化変異体(元のマウス配列を一番上に示している):

CD81K04 VLヒト化変異体(元のマウス配列を一番上に示している):

CD81K13 VHヒト化変異体(元のマウス配列を一番上に示している):

CD81K13 VLヒト化変異体(元のマウス配列を一番上に示している):

Rb86 VHヒト化変異体(元のウサギ配列を一番上に示している):

Rb86 VLヒト化変異体(元のウサギ配列を一番上に示している):

これらの配列変異体は一般的な移植原理を用いて設計した。移植は一般に、ヒト化抗体を作製するために開発された。加えて、移植を、他の種に対する抗体適合性を得るために、または単に1つの抗体のフレームワークを、この抗体もしくは抗体フラグメントに対する他の生物物理学的特性を得る目的で交換するために用いることもできる。

ヒト定常領域対応物に対するヒト化可変領域のクローニング後に、すべての重鎖プラスミドをすべての軽鎖プラスミドと組み合わせることによって、抗体を「行列」の形で発現させる。すると、第1の行および第1の列は半ヒト化抗体となり、一方、第1のセルはそのキメラ形態にある元のマウス抗体またはウサギ抗体であり、行列の残りは完全ヒト化抗体である。

抗CD81抗体であるCD81K04およびCD81K13について、結合データは、それぞれ以下の表14および表15にまとめた生化学的(細胞結合)ELISAデータである。

(表14)CD81K04ヒト化行列ELISAデータ。参照抗体CD81K04は一番上の行の一番左の列に記されている。

CD81K04のキメラ形態は1.15の値に近く、ヒト化変異体は幾分効果が弱い結合剤である。変異体のいくつかについては、親和性はより劇的に低下する。

(表15)CD81K13ヒト化行列ELISAデータ。参照抗体CD81K13は一番上の行の一番左の列に記されている。

ウサギ抗体Rb86については、上清からの微量精製材料を、それらが元の抗体のものから大きくは逸脱しない会合パラメーターおよび解離パラメーターを有する能力に関する第1のスクリーニングで分析した。結合後期(binding late)(BL)RU(会合相の最後におけるSPR/BIAcore実験での反応単位)を各変異体および参照ウサギ抗体について、さらに抗体のその標的に対する半減期に換算しうる(t1/2=ln2/kd)解離定数kd[1/s]についてまとめた。それぞれ表16および表17を参照されたい。極めてわずかしか会合しなかった(会合相におけるRUがゼロに近いかまたは負である)いくつかの変異体についてはkd値を決定する方法もないことから、半減期の値を0に設定する。

(表16)Rb86ヒト化行列SPR/BIAcore BL値。参照抗体Rb86は一番上の行の一番左の列に記されている。

(表17)Rb86ヒト化行列SPR/BIAcore半減期(t1/2)値。参照抗体Rb86は一番上の行の一番左の列に記されている。

参照抗体に対するヒト化変異体の予測されるABangle距離を、上述したELISAデータおよびSPR/BIAcoreデータの順序通りに(表14〜17)、表19(CD81K04)、表20(CD81K13)および表21(Rb86)に列記している。

(表19)一番上の行の一番左の列に列記している参照抗体CD81K04に対するCD81K04ヒト化行列ABangle距離

(表20)一番上の行の一番左の列に列記している参照抗体CD81K13に対するCD81K13ヒト化行列ABangle距離

(表21)一番上の行の一番左の列に列記している参照抗体Rb86に対するRb86ヒト化行列ABangle距離

(表22)一番上の行の一番左の列に列記している参照抗体ヘプシン35に対する抗ヘプシン抗体ヒト化行列非重み付けABangle距離

ABangle距離と結合との相関 行列を、RV係数、またはPROTEST法による相関係数などの他の係数を用いて相関付けることができる。これらの方法は本質的には2つのデータセット間の相関を評価し、ここで本発明者らは各試料に関して1つだけではなくいくつかの測定値を有しており、それ故に標準的な単変量相関係数をある程度拡張している。RV係数を以下では用いている。表23には、HCおよびLCの見込みからの3種類の異なるデータセットについてRV係数およびそのp値を示している。

(表23)4つすべてのデータセットに関するRV係数および対応するp値。RV係数を試料としてのHCの見込み、それ故にLCは多変量測定値としての見込みから計算し、逆についても同様である。p値は並べ替え検定によって計算し、RV係数が計算されたものと同じ高さであるかまたはより高いものに達する確率を指し示している。

このデータセットに関するより限定されていない見方は、各mAbを個別のものとして見ることであろう。その場合には、両方の行列をベクトル化してPearson相関を計算することが意味を持つ。表24は、種々のデータセットに関して相関係数およびそれに応じたp値を示している。

(表24)3つすべてのデータセットに関するPearson相関係数および対応するp値。相関は、角度-距離および結合行列のベクトル化バージョンに対して計算している。p値は、相関がないという帰無仮説の下で計算した相関に達する確率を指し示している。

すべてのデータセットが相関を示している。したがって、個々の抗体を角度-距離のみに基づいて除外する方法を、ヒト化抗体変異体を選択するために用いうることが見いだされた。

抗体サブセットの不合格化 抗体サブセットの選択のための3通りの方法を、それらの性能に関して以下の通りに分析した。これらの方法は、本明細書において説明するように、下位20%の選択、不良なHC/LCの組み合わせの選択、およびHCまたはLCの全体の選択である。

これらの異なる選択方法の性能を評価する目的で、異なる統計値を計算した。第1のものは、保留サブセットと除外サブセットとの間の結合の長さの中央値の比である。この比については、並べ替え検定を用いてp値も計算した。さらに、結合の長さの分布について、または1つのデータセットについては2つのサブセットにおけるIC50値についても積み重ねヒストグラムを用いて目視検査を行った。

CD81K04 HC/LC情報を用いる両方の方法については、残りのものよりも成績が不良と予測されるHC/LCを選択する必要がある。図7は、HC(行列の列、左)およびLC(行列の行、右)に関する平均角度距離を描写している。HC 6、7、8、9、12、13および14、ならびにLC 7および9を含む抗体は選択除外している。

図8には、どの抗体が各々の選択方法によって除外され(陰影を付している)、どれが保留されるかを示している。

表25は、抗体のサブセットの、それらの結合の長さに関する比較の結果を示している。両方のセットにおける結合の長さの中央値を計算し、両方の比を生成させた。この表には3つすべての方法に関する結果をp値とともに示されており、これは少なくともこの低い比が得られる確率を指し示している。

(表25)3種類の抗体の除外方法について、除外した抗体と保留した抗体とのELISA測定値の中央値の比を計算した。さらに、並べ替え法によってp値も計算したが、それは見いだされた比の中央値と同じ程度に低いかまたはそれよりも低い値に達する確率を示している。

方法にかかわらず、保留した抗体のサブセットは結合の長さが選択除外された抗体の3〜5倍の長さであった。その上、これらの結果は有意である(p<0.05)。

図9には、3種の選択方法に関してELISA測定値の積み重ねヒストグラムが示されている。このヒストグラムは比の中央値の結果を裏付けている。3種の方法すべてで、低結合性のモノクローナル抗体は不合格となっている。

CD81K13 以上に概要を述べたものと同じアプローチを、抗体CD81K13のヒト化変異体に対して行った。結果は図10〜12および以下の表26に示されている。

HC 3、4および9、ならびにLC 2、5、6、7、10および11を含む抗体は選択除外された。

3種の方法すべてで、選択除外されたサブセットにおける抗体よりも結合が1.6-2倍の長さである1つのサブセットに至った(表26参照)。

(表26)3種類の抗体選択方法について、除外した抗体と保留した抗体とのELISA測定値の中央値の比を計算した。さらに、並べ替え法によってp値も計算したが、それは見いだされた比の中央値と同じ程度に低いかまたはそれよりも低い値に達する確率を示している。

図12は、結合の長さがより短い抗体が主として不合格となったことを示している。

Rb86 以上に概要を述べたものと同じアプローチを、抗体Rb86のヒト化変異体に対して行った。結果は図13〜15および以下の表27に示されている。

HC 9、10および11、ならびにLC 2および8を含む抗体は選択除外された。

抗体Rb86の変異体について、SPRデータを選択/選択除外の段階に用いた。種々の抗体の結合挙動に関して2種類の測定を利用することができる。

BLデータに基づき、種々の抗体が選択除外された(図14参照)。

3種の選択方法すべてで、「BL」に対して平均で結合性が3〜5.5倍優れる抗体が選択されている(表27参照)。p値はこの結果が偶然によるのではなく、種々の方法において抗体を選択する有益なやり方に起因することを指し示している。

(表27)3種類の抗体の除外方法について、除外した抗体と保留した抗体とのBL測定値の中央値の比を計算した。さらに、並べ替え法によってp値も計算したが、それは見いだされた比の中央値と同じ程度に低いかまたはそれよりも低い値に達する確率を示している。

これは、積み重ねヒストグラムは結合の長さが短い抗体を主として選択除外したことを示している図15において強調されている。

代替的なアプローチとして、t1/2データに基づき、抗体を選択除外した(図16参照)。見てとれるように、同じ抗体がBLデータに基づく場合と同じように選択される。

異なる選択方法に関する比の中央値は、選択除外された抗体サブセットは常に保留サブセットよりも不良であることを示している(表28参照)。「不良なHC/LC組み合わせ」法を用いると、少数の抗体のみが選択除外されるが、半減期がない抗体もセット内にいくつかある。これが、この方法についてp値が有意でない理由である。他の方法については、p値は選択除外されたサブセットが適切に選択されたことを指し示している。

(表28)3種類の抗体選択方法ついて、選択除外された抗体と選択された抗体とのt1/2測定値の中央値の比を計算した。さらに、並べ替え法によってp値も計算したが、それは見いだされた比の中央値と同じ程度に低いかまたはそれよりも低い値に達する確率を示している。

このことは図17中の積み重ねヒストグラムにも示されている。すべての方法で、半減期が極めて短い多くの抗体がかなりの量で選択除外された。

まとめ 共通の元の親抗体にすべてが由来するヒト化変異体に対してVH-VL配向(VH-VL角)予測を使用した場合に、親抗体の角度パラメーターにより近いという点で優れたヒト化変異体が得られることが見いだされた。最適に満たないVH-VL配向を有する抗体を不合格とするために用いた3種の方法、すなわち、「下位20%」、またはHC/LCの全体のセット、または不良なHC/LCの組み合わせを不合格とする方法により、類似の抗体サブセットがもたらされた。積み上げヒストグラムおよび相関分析により、角度-距離が結合挙動の優れた指標であることが裏付けられた。本明細書において報告される選択方法を用いることによって、そのように選別されたヒト化行列の質が劇的に高まることが見いだされた。

1つの態様においては、信頼性行列がさらなる段階として組み入れられる。例えば、最初に選択除外されるサブセットを選び、続いて高信頼性サブセットを選ぶ。

1つの態様においては、クラスターを計算するため、および参照物を組み入れたクラスターから最も隔たっている抗体のクラスター同定するために、すべての抗体間の距離情報を用いる。

具体的な態様 1.親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択するための方法であって、以下の段階: ‐親抗体Fvフラグメント由来の1つまたは複数の特異性決定残基をアクセプター抗体Fvフラグメントに移植する/移行させることによって多数の変異抗体Fvフラグメントを作製する段階であって、多数の変異抗体Fvフラグメントの各変異抗体Fvフラグメントが、他の変異抗体Fvフラグメントとは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐親Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体Fvフラグメントの変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、抗体Fvフラグメントの配列フィンガープリントに基づきVH-VL配向を決定する段階、 ‐親抗体のVH-VL配向と比較してVH-VL配向において最小の差を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階 を含み、1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントが親抗体Fvフラグメントと同じ抗原に結合する、方法。 2.非ヒト抗体をヒト化するための方法であって、以下の段階: ‐抗原と特異的に結合する非ヒト抗体を用意する段階、 ‐非ヒト抗体由来の1つまたは複数の特異性決定残基をヒトアクセプター抗体もしくはヒト化アクセプター抗体または生殖細胞系列抗体配列に移植する/移行させることによって多数の変異抗体を作製する段階であって、多数の変異抗体の各変異抗体が、他の変異抗体とは少なくとも1つのアミノ酸残基で異なっている段階、 ‐非ヒト抗体Fvフラグメントに関して、および多数の変異抗体の変異抗体Fvフラグメントのそれぞれに関して、抗体Fvフラグメントの配列フィンガープリントに基づきVH-VL配向を決定する段階、 ‐親抗体のVH-VL配向と比較してVH-VL配向において最小の差を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、非ヒト由来の1つまたは複数のヒト化抗体を選択する段階 を含み、1つまたは複数のヒト化抗体が非ヒト抗体と同じ抗原に結合する方法。 3.以下の段階を含む、態様1記載の方法: ‐親抗体のVH-VLドメイン間角度と比較してVH-VLドメイン間角度において最大の(構造的)類似性を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、親抗体Fvフラグメントに由来する1つまたは複数の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階。 4.以下の段階を含む、態様2記載の方法: ‐親抗体のVH-VLドメイン間角度と比較してVH-VLドメイン間角度において最大の(構造的)類似性を有する変異抗体Fvフラグメントを選択し、それによって、非ヒト抗体に由来する1つまたは複数のヒト化抗体を選択する段階。 5.親抗体Fvフラグメントが非ヒト抗体Fvフラグメントである、態様1および3のいずれか1つに記載の方法。 6.アクセプター抗体Fvフラグメントが、ヒト抗体もしくはヒト化抗体のFvフラグメント、またはヒト抗体Fvフラグメント生殖細胞系列アミノ酸配列である、態様1、3および5のいずれか1つに記載の方法。 7.配列フィンガープリントがVH-VL境界面残基のセットである、態様1〜6のいずれか1つに記載の方法。 8.VH-VL境界面残基が、(重ね合わされたすべてのFv構造の少なくとも90%において)その側鎖原子が4Å未満またはそれと等しい距離で対向鎖の近接原子を有するアミノ酸残基である、態様7記載の方法。 9.VH-VL境界面残基のセットが、残基L44、L46、L87、H45、H62(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜8のいずれか1つに記載の方法。 10.VH-VL境界面残基のセットが、残基H35、H37、H39、H45、H47、H50、H58、H60、H61、H91、H95、H96、H98、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L43、L44、L46、L49、L50、L55、L87、L89、L91、L95x-1、L95x、L96(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜9のいずれか1つに記載の方法。 11.VH-VL境界面残基のセットが、残基H33、H35、H43、H44、H46、H50、H55、H56、H58、H61、H62、H89、H99、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94/L95x-1、L95x、L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜9のいずれか1つに記載の方法。 12.VH-VL境界面残基のセットが、残基H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H55、H56、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96、H98、H99、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94/L95x-1、L95x、L96、L97、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜9のいずれか1つに記載の方法。 13.VH-VL境界面残基のセットが、残基H35、H37、H39、H45、H47、H50、H58、H60、H61、H91、H95、H96、H98、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L43、L44、L46、L49、L50、L55、L87、L89、L91、L95x-1、L95x、L96、L98(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜9のいずれか1つに記載の方法。 14.VH-VL境界面残基のセットが、残基H33、H35、H37、H39、H43、H44、H45、H46、H47、H50、H58、H60、H61、H62、H89、H91、H95、H96、H98、H99、H100x-2、H100x-1、H100x、H101、H102、H103、H105、L32、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94、L95x-1、L95x、L96、L97、L98、L100(Chothiaインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜9のいずれか1つに記載の方法。 15.VH-VL境界面残基のセットが、残基210、296、610、612、733(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜8のいずれか1つに記載の方法。 16.VH-VL境界面残基のセットが、残基199、202、204、210、212、251、292、294、295、329、351、352、354、395、396、397、398、399、401、403、597、599、602、604、609、610、612、615、651、698、733、751、753、796、797、798(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜8および15のいずれか1つに記載の方法。 17.VH-VL境界面残基のセットが、残基197、199、208、209、211、251、289、290、292、295、296、327、355、599、602、604、607、608、609、610、611、612、615、651、696、698、699、731、733、751、753、755、796、797、798、799、803(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜8および15〜16のいずれか1つに記載の方法。 18.VH-VL境界面残基のセットが、残基197、199、202、204、208、209、210、211、212、251、292、294、295、296、327、329、351、352、354、355、395、396、397、398、399、401、403、597、599、602、604、607、608、609、610、611、612、615、651、696、698、699、731、733、751、753、755、796、796、797、798、799、801、803(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜8および15〜17のいずれか1つに記載の方法。 19.VH-VL境界面残基のセットが、残基199、202、204、210、212、251、292、294、295、329、351、352、354、395、396、397、398、399、401、403、597、599、602、604、609、610、612、615、651、698、733、751、753、796、797、798、801(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜8および15〜18のいずれか1つに記載の方法。 20.VH-VL境界面残基のセットが、残基197、199、202、204、208、209、210、211、212、251、292、294、295、296、327、329、351、352、354、355、395、396、397、398、399、401、403、597、599、602、604、607、608、609、610、611、612、615、651、696、698、699、731、733、751、753、755、796、797、798、799、801、803(Wolfguyインデックスによる番号付け)を含む、態様7〜8および15〜19のいずれか1つに記載の方法。 21.上位20%の変異抗体Fvフラグメントを選択する段階を含む、態様1〜20のいずれか1つに記載の方法。 22.VH-VL配向が、6つのABangle VH-VL配向パラメーターを計算することによって決定される、態様1〜21のいずれか1つに記載の方法。 23.VH-VL配向が、ランダムフォレスト法を用いてABangle VH-VL配向パラメーターを計算することによって決定される、態様1〜22のいずれか1つに記載の方法。 24.VH-VL配向が、各ABangleに関して1つのランダムフォレスト法を用いてABangle VH-VL配向パラメーターを計算することによって決定される、態様1〜23のいずれか1つに記載の方法。 25.VH-VL配向が、VHおよびVLの回転軸のねじれ角、4つの屈曲角(可変ドメイン当たり2つ)および長さ(HL、HC1、LC1、HC2、LC2、dc)をランダムフォレストモデルを用いて計算することによって決定される、態様1〜24のいずれか1つに記載の方法。 26.ランダムフォレストモデルが複合体抗体構造データのみを用いて訓練される、態様25記載の方法。 27.最小の差が最大のQ2値である、態様1〜26のいずれか1つに記載の方法。 28.最大の類似性が最小平均の二乗平均平方根偏差(RMSD)である、態様1〜27のいずれか1つに記載の方法。 29.コンセンサスVHフレームワークまたはVLフレームワークのいずれかに対してアライメントが行われたテンプレート構造から構築され、その後にコンセンサスFvフレームワークに対するVH-VL再配向が行われたモデルが、VH-VL配向を決定するために用いられる、態様1〜28のいずれか1つに記載の方法。 30.完全Fvのβシートコアに対して(VHおよびVLに同時に)アライメントが行われたモデルが、VH-VL配向を決定する段階のために用いられる、態様1〜28のいずれか1つに記載の方法。 31.抗体FvフラグメントがコンセンサスFvフレームワークに対して再配向されたモデルが、VH-VL配向を決定する段階のために用いられる、態様1〜30のいずれか1つに記載の方法。 32.共通のコンセンサスFvフレームワークに対してアライメントが行われたテンプレート構造が用いられ、VH-VL配向を決定するためにいずれの形態においてもVH-VL配向が調整されていないモデルが用いられる、態様1〜28および30のいずれか1つに記載の方法。 33.コンセンサスVHフレームワークまたはVLフレームワークのいずれかに対してアライメントが行われたテンプレート構造から構築され、その後に類似性に基づいて選択されたVH-VL配向テンプレート構造に対するVH-VL再配向が行われたモデルが、VH-VL配向を決定するために用いられる、態様1〜28および30のいずれか1つに記載の方法。 34.以下の段階を含む、抗体を作製するための方法: ‐態様1〜33のいずれか1つに記載の方法によって、1つまたは複数の抗体または抗体Fvフラグメントを選択する段階、 ‐1つまたは複数の抗体または抗体Fvフラグメントから、単一の抗体または抗体Fcフラグメントをその結合特性に基づいて選択する段階、 ‐そのVHおよびVLをコードする核酸を1つまたは複数の発現ベクター中にクローニングする段階、 ‐細胞に、前記段階で得られた発現ベクターをトランスフェクトする段階、 ‐トランスフェクトされた細胞を培養し、それによって抗体を産生させる段階。

以下は、本発明の方法および組成物の例である。以上に提供されている一般的な説明が与えられれば、さまざまな他の態様を実施しうることは理解されよう。これらの例は本発明を限定するものと解釈されるべきではない。真の範囲は添付の特許請求の範囲に明記されている。

実施例1 材料および方法 Roche抗体データベース3D(RAB3D) 抗体構造データベースRAB3Dは、ほとんどは公開されているFv構造を含む。Fv構造は処理され、社内の「Wolfguy」番号付けスキーム(次項を参照されたい)によってアノテーションが行われている。アノテーションが行われたすべてのFv構造が、コンセンサスFvフレームワークに対して、コンセンサスVHフレームワークに対して、およびコンセンサスVLフレームワークに対して重ね合わされている。コンセンサス構造は、PDBからの高分解能構造のサブセットを用いて計算されている。アノテーションが行われ、再配向が行われたFv構造は、相同性モデリングのためのテンプレートリポジトリとしての役を果たす。

Wolfguy番号付けスキーム Wolfguy番号付けは、CDR領域を、KabatおよびChothiaの定義の合併セットとして定義する。その上、この番号付けスキームは、CDRループ先端に対して、CDR位置のインデックスがあるCDR残基が上向きループまたは下向きループの一部であることを指し示すように、CDRの長さに基づいて(かつ一部には配列に基づいて)アノテーションを行う。確立された番号付けスキームとの比較を表1に示す。

(表1)Chothia/Kabat(Ch-Kb)、HoneggerおよびWolfguy番号付けスキームを用いた、CDR-L3およびCDR-H3の番号付け。後者ではN末端に基づいてCDRピークに向けて番号が増加し、かつC末端側のCDR端を起点として番号が減少する。Kabatスキームでは最後の2つのCDR残基を固定し、CDRの長さに順応するように文字を導入する。Kabat命名法とは対照的に、Honegger番号付けでは文字を用いず、VHおよびVLについて共通である。

Wolfguyは、構造的に等価な残基(すなわち、Fv構造における空間的局在の保存という点で非常に類似している残基)には、できる限り等しいインデックスによる番号付けを行うように設計されている。このことは図1に説明されている。Wolfguyによる番号付けが行われた完全長VH配列およびVL配列の一例は表2に見ることができる。

(表2)Wolfguy、KabatおよびChothiaによる番号付けが行われた、PDB ID 3PP4(21)との結晶構造のVH配列(左)およびVL配列(右)。Wolfguyでは、CDR-H1〜H3、CDR-L2およびCDR-L3は長さのみに応じて番号付けが行われ、一方、CDR-L1はループの長さおよびカノニカルクラスター構成要素数に応じて番号付けが行われる。後者は異なるコンセンサス配列に対する配列類似性を計算することによって求められる。本明細書において、本発明者らはCDR-L1番号付けの一例のみを提示しているが、これはそのことが本発明者らのVH-VL配向配列フィンガープリントを作製する上で重要ではないためである。

実施例1 VH-VL配向フィンガープリントの選択 VH-VL配向は、本明細書においては、完全Fv配列からではなく、Fv配列位置の(意味のある)サブセット(「配列フィンガープリント」)から予測される。VH-VL配向はVH-VL境界面の箇所またはその近傍にある残基によって司られるという仮定に基づき、境界面残基のセットが同定されており、ここで残基は、その側鎖原子が、データベース、例えばRAB3Dにおける重ね合わされたすべてのFv構造の少なくとも90%において4Åに等しいかまたはそれ未満の距離にある対向鎖の近接原子であるならばVH-VL境界面の一部であると定められる。結果は表29にまとめられており、これはまた、ある配列位置が、VH-VL配向の決定基であることが統計分析に基づいて以前に結び付けられているかどうかも示している(4、5、7)。

(表29)残基はその側鎖原子がRAB3Dにおける重ね合わされたすべてのFv構造の少なくとも90%において4Åに等しいかまたはそれ未満の距離にある対向鎖の近接原子であるならば境界面の一部であると定められる、VH-VL境界面残基。 * ループの長さに応じた番号付け + Chothia et al.(13)による定義によるVH-VL境界面の一部

上記の境界面残基のセットには、Dunbar et al.(7)によるVH-VL配向に関する「上位10の重要な入力変数」の中に列記された配列位置のいくつかが入っていない。それらの配列位置は以下の表30に列記されている。

(表30)Dunbar et al.(7)によってVH-VL配向に関する「上位10の重要な入力変数」の中に列記された、そのほかの配列位置 * ループの長さに応じた番号付け + Chothia et al.(13)による定義によるVH-VL境界面の一部

VH-VL配向決定基配列位置の可能性があるこの集成物から、3種の配列フィンガープリントを統計的評価のために組み立てた: フィンガープリント1は、表29に示されたVH-VL境界面の一部であることが見いだされているすべての配列位置を含む。位置801(L98)はそれらの配列保存性が高度であることから放棄した。 フィンガープリント2は、ABangle「上位10の重要な入力変数」(7)の中に列記されたすべての配列位置、すなわち、197、199、208、209、211、251、292、295、296、327、355、599、602、604、607、608、609、610、611、612、615、651、696、698、699、731、733、751、753、755、796、797、798、799、803(H33、H35、H43、H44、H46、H50、H58、H61、H62、H89、H99、L34、L36、L38、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L49、L50、L53、L55、L56、L85、L87、L89、L91、L93、L94/L95x-1、L95x、L96、L97、L100)、ならびに位置289および290(H55およびH56)を含む。 フィンガープリント3は、フィンガープリント1とフィンガープリント2の合併セットである。

フレームワーク配列のみに基づいてVH-VL配向を予測することがどの程度可能であるかを評価する目的で、本発明者らは、この3つのフィンガープリントそれぞれに関して2種の短縮変異体、すなわち、 a:フレームワークの辺縁にある最も外側のCDR残基のみを有するもの、および b:いかなるCDR残基も含まないもの を作製した。

実施例2 VH-VL配向予測変数の訓練 2013年10月の時点で公開されている抗体Fv結晶構造を、RCSB PDB(www.rcsb.org)(24)から蓄積し、各構造について、本明細書において説明するように、ABangle VH-VL配向パラメーターを計算した(実施例4参照)。その上、各構造について、VH-VL配向配列フィンガープリントを、上記に説明した通りに作製した(配列中、黒で強調)。配列フィンガープリントは54アミノ酸からなり、VH領域に29アミノ酸、VL領域に25アミノ酸を含む。この配列フィンガープリントはまた、ループの長さによっては所与の抗体配列中に存在しないことのある、超可変領域に属する残基も含む。この場合には、一文字記号による通常のアミノ酸記述の代わりに、非占有の配列フィンガープリント位置を「X」で描写している。両方のABangleパラメーターならびに配列フィンガープリントを計算した後に、データセット(n=2249)を複合体構造(n_複合体=1468)とapo構造(n_apo=781)に分類した。

「ランダムフォレスト」法は、ABangle配向パラメーターのそれぞれに関して統計的に有意な最良の予測変数であり、その次が「ニューラルネット」および「決定木」の順であることが明らかになった。「ブーステッド・ツリー(boosted tree)」法は、本発明者らのデータセットに対しては最も不良の成績であった(非提示データ)。

各ABangleパラメーターについて、試験セットのQ2値に関して木の最適数を決定するためにランダムフォレストにおける決定木の数を10から100まで変えながら、それぞれ50回の試行を行った(各試行は訓練相および試験相からなる)。個々の各試行について、入力データセットは70%を訓練セットに、30%を試験セットにランダムに分割した。ランダムフォレストモデルは、Accelrys Pipeline Pilot 8.5(19)を、構成要素「Learn RP(random partitioning)Forest Model」により「Regression」モードで用いて実行した。フォレストモデルパラメーター設定の一覧を表31に列記している。

(表31)Accelrys Pipeline Pilot 8.5における「Learn RP(random partitioning)Forest Model」構成要素を用いる回帰のためのパラメーター設定

表32は、ランダムに選択された訓練セットおよび試験セットを用いる50回の試行を通じて平均した6つのABangleパラメーターの予測のためのQ2値および二乗平均誤差(RMSE)値を示している。

(表32)50回の試行を通じて平均した6つのABangleパラメーターの予測のためのQ2値およびRMSE値。ランダムフォレストモデル当たりの決定木の数は、Q2が最大になるように手作業で微調整した。括弧内の値は標準偏差を明記している。

ランダムフォレストモデルは、apo構造および複合体構造の完全データセットに対して1回訓練させ(表32、中央の列)、複合体構造のみに対して1回訓練させている(上の表32、右の列)。訓練セットがほとんど550個の構造に減らされているという事実にもかかわらず、Q2値およびRMSE値は、複合体構造のみを考慮した場合にも改善する。HL、LC2およびdcについては、Q2値は約0.68であり、一方、HC1、LC1およびLC2は0.75およびそれを上回るQ2値を有する(複合体構造を考慮する場合)。図2は、複合体構造のみのデータセットに対して予測されるABangleパラメーターと実際のABangleパラメーターに関する例示的な回帰プロットを示している。

さらに、検証セットのサイズ(データセットの1/3または1/2のいずれか)がランダムフォレスト予測に影響を及ぼすかどうかについても評価した。すべてのABangleパラメーターについて、R2の違いは、より少ない検証セットおよびより大きい訓練セットを有利とすると予測されることが見いだされた(非提示データ)。

最後に、6つの異なるABangleパラメーターに関して3種のフィンガープリントおよびそれらの短縮変異体の予測性能を、3回の反復を通じて評価した(表33参照)。

(表33)フレームワークの辺縁にある最も外側のCDR残基のみを用いた場合(a)、およびwithout anyいかなるCDR残基も伴わない場合(b)の、3回の反復を通じての、3種の配列フィンガープリントおよびそれらの変異体を用いた、6つのABangleパラメーターHL、HC1、LC1、HC2、LC2およびdcの予測のための平均R2

境界面残基のセットに基づくフィンガープリント1、およびABangleの上位の入力変数の位置に基づくフィンガープリント2は、同等に良好であったが、一方、この2つを組み合わせたもの(フィンガープリント3)は予測力をさらに付与することもなく結果を損なうこともないように思われる。3つすべてのケースで、2種の短縮フィンガープリント変異体はより不良であり、このことはフレームワーク配列情報のみではVH-VLドメイン配向を決定するには不十分であることを裏付けている。

フィンガープリント3をさらなる評価のために選択し、学習のためにランダムフォレストモデルを選択した。相同性モデリングのソリューションに予測用構成要素を組み入れるために、ランダムフォレストモデルを、Accelrys Pipeline Pilot 8.5(19)を、構成要素「Learn RP(random partitioning)Forest Model」により「Regression」モードで用いて実行した。RAB3Dにおいて入手可能であったすべてのFv構造(n=2249)について、ABangle VH-VL配向パラメーターを計算し、さらにフィンガープリント3およびデータセットのメンバーを複合体構造(n=1468)およびapo構造(n=781)に分割した。各ABangleパラメーターについて、試験セットのQ2値に関して木の最適数を決定するためにランダムフォレストにおける決定木の数を10から100まで変えながら、それぞれ50回の試行を行った。個々の各試行について、入力データセットは70%を訓練セット、30%を試験セットにランダムに分割した。

実施例3 VH-VL配向調整を伴う抗体相同性モデリングアルゴリズム 抗体のFv領域のモデリングのためのモデリングソフトウェア(MoFvAb)では、テンプレートリポジトリとして、例えば、RAB3Dデータベースからの、アノテーションおよび再配向が行われた構造を用いる。重鎖および軽鎖の所与の対の入力配列に対してWolfguyによりアノテーションを行い、それぞれVHおよびVLに還元した。続いて、VHおよびVLの両方を、7つの機能的セグメント、すなわち、フレームワーク1、CDR 1、フレームワーク2、CDR 2、フレームワーク3、CDR 3、およびフレームワーク4に分けた(表10参照)。他の相同性モデリングアプローチとは対照的に、共通のフレームワークテンプレートをFv毎または鎖毎に選び出すことはせず、ただしあらゆるフラグメントを配列相同性に基づいて独立に探し出し/アライメントを行い/決定した。例えば、単一のMoFvAbモデルを14種の異なるテンプレート構造、さらに場合によってはさらに多くのものから組み立てることが考えられるが、これは異なるテンプレート構造からもCDRループの上向き部分および下向き部分を再構築することが実行可能であるためである。フラグメントテンプレートのヒットは、 1)配列類似性(BLOSUM62行列スコア)、 2)不完全な側鎖の数、 3)テンプレート構造の分解能、および 4)RAB3Dコンセンサスフレームワークに対するテンプレート構造のアライメントのRMSD によって、後述の順序にランク付けした。

任意で、所与のフラグメントについて、利用可能なテンプレート選択を、新規セグメントによって補強すること(またはさらには全体を置き換えること)も可能である。

テンプレート構造はすべて、共通のコンセンサスフレームワークに対してアライメントが行われており、このため、同じ座標系を共通に有する。したがって、テンプレート座標を、さらなる調整を伴わずに未加工モデルファイルに変換した。続いて未加工モデルを処理した:非相同側鎖を交換し、不完全なテンプレート側鎖をリモデリングし、立体衝突部は回転異性体の最適化によって取り除いた。各フラグメントを独立に選び出したという事実が理由で、モデル毎に必要な側鎖交換の数は操作可能である。処理したモデルをCHARMm力場用にパラメーターで表し、Generalized Born with a simple Switching(GBSW)インプリシットウォーターモデルをまずSteepest Descentによって、続いてConjugate Gradient法によって用いて、最小化した。テンプレート構造からの立体構造情報を最大限に保つために、リモデリングされておらず、かつフラグメント縁に位置しない(異なるテンプレート構造に由来する隣接残基を伴う)すべての残基を、最小化の際に拘束した。MoFvAbは、Accelrys Pipeline Pilot 8.5(19)に実装されたプロトコールに基づき、Accelrys Discovery Studio 3.5(20)境界面を用いて、ウェブサービスとして利用可能である。

VH-VLドメイン調整の影響を評価するために、MoFvAbモデル構築の3種の変異体を比較した: 変異体1:鎖毎に、すなわち、それぞれコンセンサスVHフレームワークおよびコンセンサスVLフレームワークに対してアライメントを行ったテンプレート構造からモデルを構築し、モデル処理およびエネルギー最小化の前に、モデルのVH-VL配向をコンセンサスFv構造に対する鎖毎アライメントによって調整した。この変異体では、配列と無関係な一般的で平均的なVH-VL配向を有するモデルが生成される。 変異体2:モデルのVH-VL配向を上記の通りの配列フィンガープリントに基づいて予測し、データベース中でそのABangleパラメーターの点で最も類似しているFvテンプレートを探し出した。続いてモデルのVH-VL配向を、いわゆる配向テンプレートに対する鎖毎アライメントによって調整した。

変異体1および2の両方において、コンセンサスFvまたは配向テンプレートのいずれかの上への鎖毎アライメントは、Dunbar et al.(7)によって定義された35個のABangleコアセット残基のCα重ね合わせによって実現した。 変異体3:このモデルは、鎖毎のコンセンサス構造の代わりに、共通のコンセンサスFvフレームワーク上へのアライメントを行ったテンプレート構造から構築し、VH-VL配向は調整しなかった。

代表的な試験セットを作り出すために、MoFvAbを用いて、AMAIIから11種の抗体Fv構造を構築した。AMAII構造は種に関して多様であり(ウサギ、マウス、ヒト)、抗DNA Fab A52(PDB ID 4M61)を例外として、主としてタンパク質結合性抗体からなる。AMAII参照構造はすべて、非結合形態として結晶化されている。モデル構築の時点で、いくつかのウサギ抗体構造を含め、元のAMAII「コンテスタント」よりも多くのテンプレート構造の入手が可能であった。このため、本明細書に提示したRMSDに関するモデリングの結果を、ブラインド下モデリング研究によって提示された結果と直接比較することはできない。ブラインド下モデリングの筋書きを少なくともシミュレートする目的で、鎖毎のCDR配列同一性が95%に等しいかまたはそれを上回る構造からのテンプレートなしフラグメントを用いたところ、これは明らかにAMAIIの元の結晶構造、さらにはその配列変異体を含んでいた。モデル構築から除外するための配列同一なテンプレート構造の同定は、ソフトウェアCD-HITを用いて行った(15、16)。

実施例4 ABangle距離の計算 ABangle空間における類似性を計算する目的で、ABangleパラメーターのセットを、タプル として定義した。すると、ABangleパラメーターの2つのセット間のユークリッド距離は となる。

ABangleパラメーター の予測されるセットは、標準偏差 を伴うセットとして得られる。

標準偏差 を伴う予測されるABangleパラメーターのセット と、測定されたABangleパラメーターθのセットとの間の距離を計算する際には、重み付けされた距離関数 を用いることによって、予測の不確実性を因子として加えた。

重み付けされた距離関数は、データベース中の、最もよく合致する予測されるABangleパラメーターのセットを配向テンプレートを見つけるために用いた。distABangleおよび は角度尺度(HL、HC1、LC1、HC2、LC2)を直線距離尺度(dc)と混ぜ合わせているため、それらは角度空間における実際の距離と解釈することはできず、理論上の距離尺度のみとしての役を果たす。

ABangle配向パラメーターを計算するためには、http://www.stats.ox.ac.uk/~dunbar/abangle/で入手可能な、Dunbar et al.(7)によって発表されたプログラムコードを、Wolfguyにより番号付けされた構造に対して動作するように若干変更したバージョンとして用いた。

実施例5 相関 Pearson相関係数 Pearson相関係数は、2つの変数XとYとの間の直線的相関を測定する。これは として計算され、ここでcov(X,Y)はXとYとの間の共分散であり、σは標準偏差である。Rにおける標準的な相関検定(cor.test)法(25)を相関係数を計算するために用い、それがゼロと有意に異なる場合にはp値を評価した。

RV係数 EscoufierによるRV係数を、正方対称行列間の類似性を測定するために用いた(26)。この定義は矩形行列に対して容易に拡張することができる(27)。2つの行列XおよびYに関して、RV係数は として計算することができ、ここでS=XXTであり、T=YYTである。

単に偶然による程度の大きさであるか否かについて、RV係数に伴うp値を計算する目的で、Josse et al.(29)に記載された通りの並べ替え検定を実装している、RにおけるFactoMineRパッケージ(28)からのcoeffRV法を用いた。

参照抗体に対する角度距離に基づいて抗体を不合格とするための方法 角度距離の大きさは参照物と比較して抗体の結合挙動が不良であることの指標になるという仮定の下で、抗体を不合格とするための多くの異なる方法を考えることができる。

i)下位20%を不合格とする この場合には、抗体のある特定のパーセンテージを、参照物に対するそれらの角度距離に直接的に基づいて不合格とする。一例として、本発明者らは今回、20%を不合格にすることを選んでいる。そのため、このアルゴリズムは以下となる。 1.角度-距離行列をソートし、インデックスを記憶する 2.角度-距離が最も大きい側の20%のインデックスを用いて、最も不良な抗体を不合格とする。

ii)HC/LCの全体を不合格とする この場合には、HCまたはLCの全体を不合格とし、他のHC/LCの組み合わせを生成する。これを行うために、本発明者らは以下のアルゴリズムを提唱する。 1.各HC/LCについて平均角度-距離を計算する 2.これらの距離を描出し、不合格とするHC/LCのサブセットを選択する

iii)不良なHC/LCの組み合わせを不合格とする 以後の方法の変形物は、単に「不良な」HC/LCの組み合わせを有する抗体を不合格とするためのものである。この方法は、抗体に対する角度-距離の相関が個々の抗体に関してそれほど強くなく、ただしHCおよびLCの全体よりも良好に保たれている場合によい成績を収める。このアルゴリズムは以下である: 1.各HC/LCについて平均角度-距離を計算する 2.これらの距離を描出し、これらの間の可能性のあるすべての組み合わせのみを不合格とするためにHC/LCのサブセットを選択する。

実施例6 カルボニルRMSD AMAIIとの整合性を目的として、カルボニルRMSD、およびTeplyakov et al.(2)によるβシートコアおよびCDRループの定義を用いた。所与のフラグメントに関してカルボニルRMSDを決定するために、Accelrys Discovery Studio 3.5(20)に備わっている重ね合わせ方法により、βシートコアのCα原子を用いて、第1のモデルを結晶構造に重ね合わせた。続いてカルボニルRMSDを、結晶構造に対するその所与のセグメントの骨格カルボニル基原子の偏差として計算した。一般的に用いられるCαまたは全骨格のRMSDと比較して、カルボニルRMSDは骨格立体構造における偏差に対してより感度が高い。AMAIIでは、VHまたはVLのいずれかのみのβシートコアの重ね合わせに基づいてすべてのカルボニルRMSD値が計算されたが、この場合にはさらにVHおよびVLのβシートコアの同時の重ね合わせに基づくカルボニルRMSDが計算された。全Fvに対する重ね合わせは、VH-VL配向における不備を因子として加えるため、不良なRMSD値につながる。

http://www.3dabmod.comからダウンロードした元のAMAIIモデルのRMSDカルボニル値を再計算する際には、元の参照物からの値のすべてを正確に再現することはできなかったが、これは重ね合わせアルゴリズムのわずかな相異または数値の不正確さのいずれかが原因であった。

実施例7 ヒト化抗CD81抗体変異体を用いた結合細胞ELISA 結合細胞ELISAアッセイのために、HuH7-Rluc-H3(CD81を発現する陽性細胞株)およびHuH7-Rluc-L1(陰性対照細胞株)を、10% FCSを含むF-12 DMEM培地中で37℃および5% CO2の下で増殖させた。第1日に、およそ90%の集密度にある細胞をトリプシン処理し、細胞4×105個/mLで再懸濁させた。2×104個/ウェルのHuH7-Rluc-H3およびHuH7-Rluc-L1(陰性対照細胞株)を50μLのDMEM培地中にてプレーティングし、96ウェルのポリ-D-リジンプレート(Greiner、カタログ番号655940)に、37℃および5% CO2の下で24時間おいて付着させた。第2日に、被験抗体試料を、別々のポリプロピレン製丸底プレートに所望の濃度の2倍として最終容積120μlとなるように調製した。アッセイ試料はすべて細胞培養用培地で希釈した。各抗体試料の50μL(ウェル2つずつに)を細胞に添加して最終容積を100μL/ウェルとし、4℃で2時間インキュベートした。一次インキュベーション後に試料を吸引によって取り出し、細胞を0.05%グルタルアルデヒドを含むPBS溶液(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、Germany、カタログ番号1666789)中で室温で10分間かけて固定した。固定後に、各ウェルを200μLのPBS/0.05% Tweenで3回洗浄した。結合した抗CD81抗体の検出のための二次インキュベーション段階は、往復振盪機上にて室温で2時間行った。ヒト化CD81K抗体について、検出はペルオキシダーゼ結合ヒツジ抗ヒトIgG-γ鎖特異抗体(The Binding Site、カタログ番号AP004)を用いて行い、JS81マウス陽性対照抗体(BD Biosciences、カタログ番号555675)に対してはヤギ抗マウスIgG、(H+L)-HRP結合体(BIORAD、カタログ番号170-6516)を、いずれもPBS 10%ブロッキング緩衝液で1:1000に希釈した上で用いた。非結合抗体を除去するために各ウェルを200μLのPBS/0.05% Tweenで3回洗浄した。HRP活性は50μLの使用準備済みTMB溶液(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、Germany、カタログ番号1432559)を用いて検出し、およそ7〜10分後にウェル当たり50μLの1M H2SO4により反応を停止させた。ELISA Tecanリーダーを用い、620nmを参照波長として吸光度を450nmで読み取った。

実施例8 速度論的スクリーニング 速度論的スクリーニングは、Schraeml et al.(Schraeml, M. and M. Biehl, Methods Mol. Biol. 901 (2012) 171-181)に従い、BIAcore CM5センサーを装着したBIAcore 4000装置にて行った。BIAcore 4000装置はソフトウェアバージョンV1.1の制御下にあった。BIAcore CM5シリーズのSチップを装置内に装着し、製造元の指示に従って流体力学的な取り扱いおよびプレコンディショニングを行った。装置用の緩衝液はHBS-EP緩衝液(10mM HEPES(pH 7.4)、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%(w/v)P20)とした。抗体捕捉システムをセンサー表面上に用意した。ヒトIgG-Fc特異性を有するポリクローナルヤギ抗ヒト抗体(Jackson Lab.)を、スポット1、2、4および5については、NHS/EDC化学を用いて10,000RUで、装置のフローセル1、2、3および4に、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5)中にて30μg/mlで固定化した。各フローセルにおける抗体をスポット1およびスポット5で捕捉した。スポット2およびスポット4を参照スポットとして用いた。センサーを1Mエタノールアミン溶液によって失活させた。ヒト化抗体誘導体を、1mg/mlのCMD(カルボキシメチルデキストラン)を加えた装置用緩衝液中にて44nM〜70nMの濃度で適用した。抗体を流速30μl/分で2分間かけて注射した。表面提示抗体の捕捉レベル(CL)を相対的反応単位(RU)として測定した。溶液中の分析物であるリン酸化ヒトタウタンパク質、非リン酸化ヒトタウタンパク質およびリン酸化ヒトタウ突然変異型タンパク質T422Sを300nMで流速30μl/分にて3分間注射した。解離については5分間モニターした。捕捉システムは、すべてのフローセルについて、10mMグリシン緩衝液pH 1.7の30μL/分での1分間の注射によって再生させた。2つの報告時点である、分析物注射の終了直前の記録シグナル、すなわち結合後期(BL)と表されるものと、解離時間の終了直前に記録したシグナル、すなわち安定性後期(SL)を用いて、速度論的スクリーニング性能の特性決定を行った。さらに、解離速度定数kd(1/s)をラングミュアモデルに従って計算し、抗体/抗原複合体の半減期を、式ln(2)/(60*kd)を計算した。モル比(MR)は、式MR=(結合後期(RU))/(捕捉レベル(RU))×(MW(抗体)/(MW(抗原))に従って計算した。センサーが適量の抗体リガンド捕捉レベルに構成されている場合には、各抗体は、モル比MR=1.0によって表される、溶液中の少なくとも1つの分析物と機能的に結合する必要がある。その場合、モル比は分析物結合の結合価様式の指標ともなる。最大結合価は2種の分析物と結合する抗体についてはMR=2となり、各Fabの結合価は1である。

もう1つの態様においては、溶液中の各分析物について0nM(緩衝液)、1.2nM、3.7nM、11.1nM、33.3nM、100nMおよび300nMという複数の濃度系列を用いて、速度論的速度を同じ実験構成を用いて25℃および37℃で決定した。この濃度依存的な結合挙動から、製造元の説明書に従ってBIAcore評価ソフトウェアを用い、Langmuir 1.1モデルをRMAX globalで用いて、速度論的データを計算した。

参考文献

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