炎症および/または心血管疾患における新規診断および治療標的

申请号 JP2016025430 申请日 2016-02-15 公开(公告)号 JP2016136149A 公开(公告)日 2016-07-28
申请人 ユニバーシティ・オブ・チューリッヒ; UNIVERSITY OF ZURICH; 发明人 ブロコップ,チャド; ホエルストラップ,シモン;
摘要 【課題】 炎症 性および/または心血管の疾患および病態の存在、発症または進行を判定するための、ならびに炎症性および/または心血管疾患の診断または処置の新規標的を同定するための方法を提供する。 【解決手段】体液中の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現を試料、好ましくは、血液、血栓もしくはプラークの試料または血液、血栓もしくはプラーク由来の試料を、免疫ベースのおよび核酸ベースのアッセイを利用して診断する、により炎症性および/または心血管疾患を診断する。 【選択図】なし
权利要求

患者における心血管の疾患または病態の存在を判定するためのアッセイ方法であって、 (i)前記患者から採取した血液の試料を線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の発現についてアッセイすることであって、該FAPの発現、もしくは対照試料と比較した該FAPの発現増加が、前記患者における前記疾患もしくは前記病態についての指標となるもの、および/または (ii)前記患者から採取した血栓の試料をFAPの発現についてアッセイすることであって、前記患者から採取した血液試料におけるその発現と比較したFAPの発現増加が、前記疾患もしくは前記病態の指標となるもの、 を含み、 前記疾患が、卒中、急性冠症候群及びアテローム血栓症からなる群より選択され、 前記試料をFAPのタンパク質についてアッセイすることを含む、 アッセイ方法。前記疾患が、心筋梗塞、心臓発作、大脳静脈血栓症、深在性静脈血栓症又は塞栓症である、請求項1に記載のアッセイ方法。前記アッセイが、イムノアッセイである、請求項1又は2に記載のアッセイ方法。前記アッセイが、免疫組織化学的アッセイである、請求項3に記載のアッセイ方法。前記アッセイが、蛍光励起サイトメトリー(FACS)、間接的ELISA、サンドイッチELISAまたは細胞培養ELISAを含む、請求項3に記載のアッセイ方法。前記イムノアッセイが、前記試料と、FAPに特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体とを接触させることを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のアッセイ方法。前記モノクローナル抗体が、マウス抗ヒト抗体である、請求項6に記載のアッセイ方法。請求項1から7のいずれか一項に記載のアッセイ方法に使用するための、FAPの存在もしくは活性を検出できる薬剤と、場合により、前記薬剤のおよび/もしくはFAPの検出に適する手段を含む診断用組成物。請求項1又は2に記載の疾患または病態の処置に使用するための、FAPの活性もしくはその発現を阻害できる薬剤と、医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物であって、 処置される患者が、請求項1から7のいずれか一項に記載のアッセイ方法に従って診断されている、医薬組成物。前記活性が、酵素的活性である、請求項8または9に記載の組成物。血液凝固の阻害に使用するための、請求項10に記載の組成物。前記薬剤が、FAPに結合できる、またはFAPをコードする核酸分子に結合できる、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。前記薬剤が、FAPに特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項12に記載の組成物。前記モノクローナル抗体が、ヒト抗体である、請求項13に記載の組成物。前記薬剤が、FAPアンタゴニストである、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。前記アンタゴニストが、ペプチドまたはペプチド類似体である、請求項14に記載の組物。

说明书全文

本発明は、被験者における炎症性疾患または病態を同定、診断、評価または処置するための方法および組成物に関する。加えて、本発明は、心血管疾患における新規治療および診断標的に関する。

心血管疾患および炎症性疾患は、工業先進国での死因のトップであり、開発途上国でも主要な死因になりつつある。現行臨床技術、例えば、これらに限定されないが、診断用冠動脈造影図、ドプラ、心エコー法、および血液ベースのバイオマーカー分析が、血管疾患の診断に用いられているが、これらの技術は、多くの場合、安定した心血管疾患と治療的介入を是認できる臨床的に有意な心血管疾患とを区別することができない。実際、心血管疾患は、殆どの場合、臨床的介入または死亡前に診断されない。さらに、これらの診断および治療技術の多くは、負担しきれない費用および高度の技術を要する介入手技のため、世界人口の大半にとって利用できないものである。したがって、心血管疾患に関して、治療結果および費用を改善するための、より正確な、対費用効果の高い、技術的に容易な診断および治療技術に対する臨床的アンメットニーズが依然として存在する。

冠動脈疾患などの慢性炎症性疾患は、冠動脈内でのアテローム性動脈硬化性プラークの形成で始まる。主として血栓に起因するこれらのアテローム性動脈硬化症動脈の途絶は、冠動脈心疾患:不安定狭心症、急性心筋梗塞および突然死につながる。冠動脈疾患は、幾つかのリスク因子の疾患であり、それらのリスク因子の中でも最も特筆すべきは、高脂血症、高血圧、糖尿病およびタバコ喫煙である。多数の病原因子、例えば、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化増進ならびに単球由来マクロファージおよび平滑筋細胞(SMC)の増殖が、細胞レベルで働いていることは公知である。アテローム形成は、数ある中でも、リポタンパク質に対する内皮透過性増加などの内皮細胞機能不全を伴う、複雑なプロセスである。アテローム性動脈硬化症性心血管疾患のすべての病期についての起点または原因は、炎症に関係づけられており、アテローム形成についての病態生理の基礎の主要部分であるとみなされている。アテローム性動脈硬化症は、動脈壁に影響を及ぼす変性炎症プロセスである。適切な診断マーカーがないため、冠動脈疾患を有する患者の半数より多くについての最初の臨床所見は、心筋梗塞または死亡のいずれかである。

いわゆる「易損性アテローム性動脈硬化性プラーク」における線維性キャップの破裂は、心筋梗塞および卒中の決定的な引き金である。それにより、破裂解放によって、または血液凝固を促進して冠動脈血流を閉塞させる血栓形成促進物質の発現によって、易損性アテローム性動脈硬化性プラークは血栓形成性になる。アテローム血栓症は、いわゆる閉塞性「冠血栓」を形成するようなアテローム性動脈硬化性プラークに由来する血液凝固を記述する用語である。プラーク不安定性の促進に関与する重要イベントの一つは、線維性キャップの分解であり、この分解は、下にある血栓形成性プラークのコアを血流に露出させ、その結果、血栓症およびその後の血管閉塞を引き起こす1−3。易損性プラークの破裂は、コラーゲン(線維性キャップにおける主要負荷分子)を切断するプロテアーゼによって助長される4−7

冠血栓形成は、無数のプロテアーゼによって編成され、これらのプロテアーゼの酵素活性が血液凝固により血栓症を促進する。それぞれの細胞集団で発現される特異的タンパク質を理解することにより、心筋梗塞に対する新規バイオマーカーおよび治療標的の同定が可能になるだろう。さらに、心筋梗塞は、多くの場合、再発するので、個人の血栓についての完全なタンパク質/細胞の記述は、再発イベントに対する個人別予防的処置の動機になるだろう。残念なことに、冠血栓の特異的細胞集団によって発現されるタンパク質は、依然として不明である。

それ故、線維性キャップを分解する活性化プロテアーゼは、潜在的診断および治療標的として注目を集めている。候補標的としては、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)−2および9ならびにシステインプロテアーゼカテプシンKが挙げられ、これらのそれぞれが、安定した病変においても不安定な病変においても上昇される8−11。MMP−2およびカテプシンK染色は、プラーク全体にわたるびまん性局在を明示し、これに対してMMP−9は、線維性キャップの下にマクロファージと共局在する12−14

MMPおよびシステインプロテアーゼは、アテローム性動脈硬化性プラークのマーカーとしての可能性を見せたが、すべての病変におけるそれらのびまん性発現は、それらが臨床的に意義のある不安定なプラークを標的にする可能性の慎重な評定を是認する。理想的標的は、破裂しやすい線維性キャップ(おそらく、静脈内注射された標的化剤がより容易に出入りできる部位)に特異的であるだろう。

したがって、被験者における炎症性および/または心血管疾患を診断および処置するための、新規治療用および診断用マーカーならびに非侵襲的方法が、必要とされている。本請求項に特徴が規定され、以下でさらに説明される実施形態を提供することにより、上述の技術的問題が解決される。

本発明の目的は、炎症性および/または心血管の疾患および病態の存在、発症または進行を判定するための、ならびに炎症性および/または心血管疾患、例えば関節リウマチ、急性冠症候群およびアテローム血栓症、の診断または処置の新規標的を同定するための方法である。

本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)が、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)におけるマクロファージ由来腫瘍壊死アルファ(TNF−α)によって誘導され、易損性ヒトプラークと関連づけられ、そして破裂しやすい線維性キャップにおけるコラーゲン破壊の一因となるという新規の驚くべき知見に基づく。本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)が、そのコラゲナーゼ活性により、関節炎および腫瘍形成に関与するという証拠も提供する。さらに、本発明は、FAPの発現または活性を抗FAP抗体などの遮断薬により中和できることを実証する。

詳細には、本発明は、FAPタンパク質が、炎症性疾患および/または心血管疾患に罹患している患者の試料において発現される、または健常対照試料におけるFAP発現と比較して増加発現されるという驚くべき知見を利用する。言い換えると、患者における炎症性疾患および/または心血管疾患または病態の存在を判定する方法を提供し、この方法は、FAP発現について前記患者から採取した試料をアッセイすることを含み、前記FAPの発現、または対照試料と比較したFAPの発現増加が、前記患者における疾患または病態の指標となる。好ましくは、前記試料は、体液、最も好ましくは血液である。

より具体的には、本発明は、試料、好ましくは、血液、血栓もしくはプラークの試料または血液、血栓もしくはプラーク由来の試料を、免疫ベースのおよび核酸ベースのアッセイを利用して、例えば、抗体および/またはRT−PCRを使用して診断する、易損性アテローム性動脈硬化性プラークまたはアテローム血栓症の存在を判定するための方法に関する。

本発明は、FAP発現について判定された哺乳動物における炎症性および/または心血管の疾患を診断および/または処置するための組成物にも関する。詳細には、本発明は、疾患または病態の診断または処置に使用するための、(i)FAPの存在もしくは活性を検出でき、および/または(ii)FAPの活性もしくはその発現を阻害できる、化合物を含む組成物に関する。本発明の組成物は、(i)医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であってもよく、或いは(ii)場合によって前記化合物のおよび/もしくはFAPの検出に適する手段を含む診断用組成物であってもよい。

より具体的には、前記組成物は、FAPタンパク質の酵素活性を阻害、低減または低下させることができ、特に、凝固、すなわち血液凝固、を阻害することができる。さらに、本発明による組成物の化合物は、FAPタンパク質もしくはそのフラグメントとの会合又は、FAPもしくはそのフラグメントをコードする核酸分子との会合により、FAPと会合し得る。したがって、前記化合物は、例えば、小分子、抗体またはアンタゴニストであり、好ましくは、ペプチドまたはペプチド類似体であることもあり、またはないこともある。さらなる態様において、本発明は、本発明による組成物によって処置される患者を特定および診断するために上記方法を利用する。

さらなる態様において、本発明は、凝固障害、特に血友病の予防または処置に使用するためのFAPを含む組成物に関する。本発明は、凝固、特にex vivoでの血液凝固を増進するための試薬としてのFAPの使用も提供する。

FAP発現は、ヒトアテローム性動脈硬化症性大動脈プラークにおいて増進される。A、MovatおよびFAP染色は、プラークのない大動脈および線維性アテロームの代表断面を示す(L=内腔、M=中膜、P=アテローム性動脈硬化性プラーク、バー=400μm)。点線の枠は、高倍率の隣接セクションにおける対象となる領域を示す(バー=50μm)。B、プラークのない大動脈、タイプII−IIIプラークおよびタイプVプラークの代表組織切片における免疫蛍光染色は、FAP発現を赤色で示す(青色がDAPI、バー=50μm)。C、このグラフは、プラークのない大動脈(n=8)と比較してタイプII−III大動脈プラーク(n=9)およびタイプIV−Vプラーク(n=12)におけるFAP発現の有意な増加を明示している。

ヒト大動脈プラークにおけるFAP発現は、平滑筋細胞と共局在するが、マクロファージまたは内皮細胞とはしない。A、代表切片におけるFAP(赤色)およびDAPI(青色)の共焦点画像とαSMA、CD68およびvWF(緑色)の細胞特異的染色のオーバーレイは、平滑筋細胞細胞とFAPの共局在(矢印)を示す(バー=20μm)。B、このグラフは、タイプVアテローム性動脈硬化性プラーク(n=10)におけるFAPと内皮細胞(vWF)およびマクロファージ(CD68)と比較して平滑筋細胞(αSMA)との共局在増加を定量するものである。

FAPは、培養ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)および内皮細胞(HAEC)において構成的に発現されるが、末梢血由来単球(PBM)、マクロファージ(MΦ)および泡沫細胞では構成的に発現されない。FACS分析およびオイルレッドO染色は、細胞集団(上のパネル)およびそれらのそれぞれのFAP発現(下のパネル)の特徴を明らかにする。

FAP発現は、「安定した」厚いキャップのヒト冠動脈線維性アテロームに対して「不安定な」薄いキャップのヒト冠動脈線維性アテロームでのほうが増進される。A、Masson染色は、高コラーゲンの「安定した」厚い(658μm)線維性キャップを「不安定な」薄い(45μm)線維性キャップに対して示す(L=内腔、FC=線維性キャップ、NC=壊死性コア、バー=1mm)。FAP免疫組織化学および免疫蛍光(強度スケール、バー=50μm)は、代表の薄いキャップでのFAP発現を厚いキャップでのFAP発現に対して示す。点線の枠は、高倍率の隣接セクションにおける対象となる領域を示す。B、このグラフは、厚い線維性キャップに対して薄い線維性キャップ(それぞれ、n=12)でのFAP発現の有意な増加を明示している。

FAP発現は、ヒト大動脈プラークのマクロファージ負荷量と相関する。A、代表大動脈脂肪線条の共焦点免疫蛍光顕微鏡写真は、マクロファージ(CD68、緑色)に隣接したFAP発現(赤色)を、低倍率(白色が位相差:バー=100μm)でおよび高倍率(バー=25μm)で明示する。B、プラークのない大動脈、タイプIIおよびタイプVアテローム性動脈硬化性プラークにおけるFAPまたはマクロファージ(CD68)免疫蛍光染色のグレースケール顕微鏡写真は、マクロファージ負荷量の増加に伴って増進されるFAP発現を示す(バー=50μm)。C、大動脈プラークの連続隣接切片におけるFAP発現とマクロファージ(CD68)発現の比較は、有意な正の相関関係の証拠となる(R

2=0.763、n=12、p<0.05):AUは任意単位を示す。

マクロファージ由来TNFαは、HASMCにおいてFAP発現を誘導する。A、マクロファージ調整上清は、48時間曝露後、HASMCにおいて濃度依存的にFAPを誘導する(n=6)。B、同じマクロファージ調整培地を使用して、TNFα遮断抗体(Ab6671)は、HASMCにおけるFAP発現をアイソタイプ対照抗体(n=6)と比較して40%減少させる。C、組換えヒトTNFαは、48時間インキュベーション後、HASMCにおいて用量依存的にFAPを誘導する(n=6)。D、組換えヒトTNFαは、HASMCにおいて時間依存的にFAPを誘導する(30ng/mL)。AUは、任意単位を示す(*=p<0.05、**=p<0.01、NS=有意でない)。

ゼラチナーゼ活性は、ヒト大動脈線維性キャップにおいて、FAP遮断抗体A246により阻害される。A、ヒト大動脈線維性キャップの代表線維性キャップのMovat染色。対象となる領域(黒枠)を、FAP(赤色)、I型コラーゲン(緑色)およびオーバレイ(DAPI=青色、バー=150μm)について染色して、より高倍率で隣接セクションに示す。B、このグラフは、A246(n=6/群)によるrhuFAPゼラチナーゼ活性の用量依存的阻害を明示している。C、in situザイモグラフィーの共焦点画像は、対照IgG抗体またはA246で処置した大動脈プラークの線維性キャップにおけるFAP(赤色)および切断I型コラーゲン(緑色)を示す(バー=10μm)。D、このグラフは、FAP発現と共局在している切断コラーゲンの有意な低減を明示している(n=10/群)。

ヒト末梢血中の可溶性FAPを定量するためのサンドイッチELISAを確立した。この標準曲線は、FAPタンパク質濃度と蛍光シグナルの間の比例関係を明示している。

FAPは、ヒト血液凝固速度を加速する。漸増濃度の組換えヒトFAPで処置したNATEMアッセイからの代表ROTEMリードアウトを示す。漸増インキュベーション時間で処置した。健常ボランティアからの末梢血をクエン酸塩のチューブ(Citrate tube)に採取し、示されている投薬量および時間について、組換えヒトFAPで調整する。

FAPは、凝固時間および血餅形成時間を加速し、アルファおよび最大血餅硬度を増す。20ng/mL未満の血漿FAPレベルを有する6名の健常ボランティアから血液を採取し、示されている用量およびインキュベーション時間で組換えヒトFAPで調整した。未調整対照と比較して平均値および標準偏差を示す(*、p<0.05、**、p<0.01、スチューデントt検定)。最大血餅硬度の変化は有意でない。

NATEMにより、FAPは、凝固時間および血餅形成時間を加速し、アルファ角と最大血餅硬度の両方を増す。5時間のインキュベーションで1.75ug/mLのFAPで調整したとき、ビークル処置対照と比較して、絶対凝固時間および血餅形成時間は、5/6発端者において減少し、アルファ角は、5/6患者において増加し、および最大血餅厚は、4/6発端者において増加した。

FAP発現は、ApoE

−/−マウスの大動脈アテローム性動脈硬化性プラークにおいて増進される。A、野生型およびアテローム性動脈硬化症ApoE

−/−マウスからの大動脈根横断切片のH&E染色(バー=300μm)を、対象となる領域(黒枠)について、より高倍率(はめ込み)で示す(バー=50μm)。隣接した免疫蛍光染色は、野生型対照と比較してプラークを有する大動脈根でのほうが増進されたFAP発現(赤色)および増大されたマクロファージ負荷量(CD68、緑色)を明示する(青色がDAPI)。B、定量的画像解析は、野生型(n=4)対照と比較してプラーク(n=5)におけるほうが増加されたFAPシグナル強度を明示する(

*p<0.002、マン・ホイットニーU検定)。AUは、任意単位を示す。

FAPは、薄いキャップのヒト冠動脈線維性アテロームの内皮において発現される。H&E染色は、内胸動脈および薄いキャップの冠動脈線維性アテロームを示す(L=内腔、FC=線維性キャップ、NC=壊死性コア、バー=1mm)。FAPおよびCD31免疫組織化学(バー=50μm)は、内皮におけるFAP発現(矢印)を示す。点線の枠は、高倍率の隣接セクションにおける対象となる領域を示し、アイソタイプ対照抗体での染色を示す。

FAP発現は、末梢血と比較してヒト冠血栓でのほうが増進される。FAPは、STEMI患者において、末梢血に対してヒト冠血栓中でのほうが増進される。代表免疫組織染色は、末梢血に対して冠血栓中でのほうが増進されるFAPを示す。

FAPは、末梢血と比較してヒト冠血栓顆粒球中でのほうが増される。単球(A)、T−リンパ球(B)および顆粒球(C)のフローサイトメトリーによる代表ゲーティングを示す。冠血栓(TH)細胞集団に対する末梢血(PB)細胞集団の分析は、単球(D)およびT−リンパ球(E)における低いFAP発現レベル、ならびに顆粒球におけるFAP発現の有意な増加を明示する(F、n=11、対応のあるスチューデントt検定)。

顆粒球FAP発現は、急性血栓症では増進されるが、慢性血栓症では増進されない。顆粒球FAP発現は、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)を有する患者(n=4)と比較して心筋梗塞(MI)を有する患者(n=11)からの末梢血(白色バー)および閉塞性血栓(灰色バー)でのほうが増進される(平均、+/−標準偏差、スチューデントt検定)。血漿FAPレベルは、急性冠症候群を有する患者において上昇される。FAPレベルは、CADを有さない患者と比較して安定したCADを有する患者でのほうが有意に上昇した。FAPレベルは、CADを有さないまたは安定したCADを有する患者と比較して不安定狭心症を有する患者およびSTEMIを有する患者でのほうがさらに上昇された(値は、平均+/−標準偏差を表す、マン・ホイットニーU検定)。

血漿FAPレベルは、急性冠症候群を有する患者において上昇する。FAPレベルは、CADを有さない患者と比較して安定したCADを有する患者でのほうが有意に上昇した。FAPレベルは、CADを有さないまたは安定したCADを有する患者と比較して不安定狭心症を有する患者およびSTEMIを有する患者でのほうがさらに上昇した(値は、平均+/−標準偏差を表す、アンペアードスチューデントt検定)。

定義および一般技術 別の言明がない限り、2000年に改訂され、2003年に再販された、Oxford dictionary of biochemistry and molecular biology、Oxford University Press、1997年、ISBN 0 19 850673 2に提供されている定義を、本明細書において用いる用語に与える。

本発明の実施に有用な一般技術のさらなる詳細について、実施者は、細胞生物学および組織培養に関する標準的教科書および総説を参照することができる。実施例において引用する参考文献も参照のこと。分子および細胞生化学に関する一般的方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Sambrookら、Harbor Laboratory Press 2001年)、Short Protocols in Molecular Biology、第4版(Ausubelら編集、John Wiley & Sons 1999年)、Protein Methods(Bollagら、John Wiley & Sons 1996年)、Non−viral Vectors for Gene Therapy(Wagnerら編集、Academic Press 1999年)、Viral Vectors(Kaplitt & Loewy編集、Academic Press 1995年)、Immunology Methods Manual(Lefkovits編集、Academic Press 1997年)、およびCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths、John Wiley & Sons 1998年)のような標準的教科書において見出すことができる。本開示において言及する遺伝子操作のための試薬、クローニングベクターおよびキットは、供給業者、例えばBioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma−Aldrich、およびClonTech、から入手できる。

「薬剤」、「試薬」または「化合物」は、本明細書において用いる用語であり、一般に、細胞、組織、体液に対してまたは任意の生体系もしくは試験する任意のアッセイ系に関連して正または負の生物学的効果を及ぼす任意の物質、化学組成物または抽出物を指す。それらは、標的のアンタゴニスト、アゴニスト、部分アゴニストまたは逆アゴニストである場合がある。そのような薬剤、試薬または化合物は、核酸、天然もしくは合成ペプチドもしくはタンパク質複合体、または融合タンパク質であるだろう。それらは、抗体、有機または無機分子または組成物、小分子、薬物ならびに前述の薬剤のうちのいずれのもののいずれの組み合わせであってもよい。それらは、試験のために使用されることもあり、診断のために使用されることもあり、または治療のために使用されることもある。

別の言明がない限り、用語「組成物」は、本明細書では、治療薬(または潜在的治療薬)、食品添加物および機能性食品と、交換可能に用いており、また、これらを含むが、これらに限定されるものではない。それらは、動物用治療薬または潜在的動物用治療薬である場合もある。

「処置」、「処置すること」およびこれらに類する用語は、本明細書では、一般に、所望の薬理および/または生理効果を得ることを意味するように用いている。前記効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に防止する点から予防的であることもあり、ならびに/または疾患および/もしくはその疾患に起因する有害効果を部分的にもしくは完全に治癒する点から治療的であることもある。

「阻害剤」は、化学または生理的反応または応答を遅延するまたは妨げる任意の物質である。

用語「誘導する」、「阻害する」、「増加させる」、「減少させる」、「低下させる」またはこれらに類する用語、例えば、二状態間の量的差異を示す該用語は、該二状態間の少なくとも統計的有意差を指す。例えば「FAPの活性または発現を阻害できる化合物」は、処置済み試料におけるFAPの活性または発現レベルが、未処置の細胞におけるFAP活性または発現レベルと統計的に有意に異なるであろうことを意味する。本明細書において用いる場合、FAPの「発現または活性を阻害すること」は、発現または活性、例えば酵素活性、の低減または遮断を指すが、必ずしもFAP発現または活性の完全除去を示すわけではない。そのような用語は、本明細書では、例えば発現レベルおよび活性レベルに適用される。

「標準発現」は、比較のための定量的または定性的測定値である。これは、統計的に適切な数の正常試料に基づくものであり、診断アッセイを実施する際、臨床試験を実行する際、または患者処置プロファイルを決定する際に比較の基礎として用いるために作成される。

「被験者」は、本明細書において用いる場合、ヒト、家庭用の種(例えば、ネコ、イヌなど)、農耕用の種(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジなど)または試験用の種(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)を含むように定義されるだろう。

用語「試料」は、本明細書において用いる場合、ex vivoまたはin vitro評価を目的として得られる生体試料を指す。患者試料および対照試料は、後に廃棄されることもあり、またはさらに使用するまで適切な条件下で保管されることもある。それにより、保管試料をさらなる分析または比較手段のために使用することができる。患者試料は、本発明のin vitro診断方法のためだけに使用され、患者試料の材料は、患者の体内に戻されない。

本明細書において、用語「体液」は、例えば、血液、唾液、尿、腹、胸膜液、脊髄液、リンパ液、血清、粘液、唾液、精液、眼内液、鼻、咽頭または生殖器スワブの抽出物を指し、細胞またはタンパク質ならびにそれらのそれぞれのフラグメント、触媒生成物および前駆体は、この流体に溶解して体内を循環する。一つの実施形態において、循環しない流体および細胞、すなわち、どちらかと言えば動かずに体内に位置するもの、例えば筋線維芽細胞様滑膜細胞は、好ましくは、本発明の方法から除外される。

「炎症性疾患」は、炎症プロセスから生ずる。炎症は、任意のタイプの身体損傷に反応して起こる自然免疫反応の一部である。炎症は、急性であろうと慢性であろうと、非常に特異的な特徴を有し、自然免疫系は、最初の反応を媒介するので、中心的役割を果たす。自然免疫系細胞、特に好中球およびマクロファージ、の浸潤は、急性炎症を特徴づけるが、Tリンパ球および形質細胞の浸潤は、慢性炎症の特徴である。単球/マクロファージは、両方とも、線維化に起因する組織機能の喪失によって代表される慢性炎症の最終帰結への寄与に中心的役割を果たす。一部の障害では、正常な状態のもとでは自己制御性である炎症プロセスが継続的になり、その後、慢性炎症性疾患が発症するだろう。炎症性疾患は、本明細書では、好ましくは、慢性炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患、冠動脈疾患、関節リウマチ、強直性脊椎炎および変形性関節症をはじめとする、関節炎の形態、炎または腱鞘炎、炎症性ミオパチー、炎症性ニューロパチー、多発性硬化症、癲癇、炎症部位浮腫、卒中および脊髄損傷をはじめとする急性中枢神経系外傷の結果として生ずるイベント後虚血および再灌流症状、腎虚血および再灌流のイベント後の帰結、尋常性座瘡、喘息、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、骨盤内炎症性疾患、移植拒絶反応、脈管炎、ならびに心筋梗塞後の再灌流のイベント後の帰結と解される。これに関連して、用語「炎症性疾患」は、上で言及したものなどの炎症性病態を随伴する病態、例えばアテローム性動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化性プラーク、ならびに別様に心血管疾患とみなすことができる病態も含む。したがって、本発明によると、本明細書では、炎症性疾患を、心血管疾患および関節リウマチをはじめとする慢性炎症性疾患に関係づけて用いている。さらなる解釈については、Stitzinger「Lipids,inflammation and atherosclerosis」(pdf).The digital repository of Leiden University.https://openaccess.leidenuniv.nl/dspace/bitstream/1887年/9729/11/01.pdf.(2007年)を参照のこと。

用語「心血管疾患」または「障害」は、心臓障害はもちろん、例えば血管中の脂質の異常に高い濃度によって引き起こされる、循環系の血管の障害も含む。

本明細書において用いる場合、用語「アテローム性動脈硬化症」は、その臨床的意味を有することを意図したものである。この用語は、動脈壁内での病変(例えば、プラークまたは線条)形成の結果として起こる心血管の病態を指す。プラークまたは線条の形成は、結果として、動脈の内膜のサイズを低減させる。これらのプラークは、変性低密度リポタンパク質が詰まっている泡沫細胞、酸化LDL、崩壊性平滑筋細胞、線維性組織、血小板、コレステロールおよび時としてカルシウムから成る。プラークは、血液の流れが妨げられた領域で形成する傾向があり、殆どの場合、血流中のコレステロール濃度が高い人々に認められる。プラークの数および重症度は、加齢に伴って増加し、それによって、血栓(血餅)形成が促進される。

本明細書において用いる場合、「アテローム性動脈硬化性プラーク」は、蓄積された細胞内および細胞外脂質、平滑筋細胞、結合組織、およびグリコサミノグリカンから成る。アテローム性動脈硬化症の最初期検出可能病変は、脂質が沈着した泡沫細胞を含む、脂肪線条病変であり、該泡沫細胞は、単球として循環から内膜の内皮下層に移動したマクロファージであり、該内皮下層は、その後、結合(cognitive)組織によって包囲された内膜平滑筋細胞と細胞内および細胞外脂質とから成る線維性プラークに含まれる。プラークが発生すると、カルシウムが沈着される。急性冠動脈イベントは、アテローム性動脈硬化性プラークが破壊して、血液が該プラークの血栓形成促進性コアと接触したときに顕在化する。

「易損性アテローム性動脈硬化性プラーク」は、血栓プロセスを被りやすいアテローム性動脈硬化性プラークである。破壊しやすい易損性プラークの特徴は、薄い線維性キャップによって覆われた脂質コア、および炎症性細胞である。薄い、多くの場合50μmより薄い厚さの、線維性キャップを有するプラークは、それらの安定性を失い、円周方向、半径方向および/または剪断方向の血行学的応力に耐えることができなくなり、その後、破裂して血管腔に血栓形成促進物質が漏出することとなる。脂質の量および脂質プールの組成も、プラーク不安定性を促進する。炎症は、プラーク易損性に影響を及ぼす第三の要因である。マクロファージは、血管壁に浸潤し、細胞外マトリックスを分解できるプロテアーゼを放出する。したがって、アテローム性動脈硬化性プラーク破裂の根底には線維性キャップの薄化がある。

本発明は、概して、炎症性および/または心血管の疾患または病態、例えば易損性アテローム性動脈硬化性プラークおよび/またはアテローム血栓症、の調査、予防および処置のための手段および方法および組成物に関し、これらの手段および方法および組成物では、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現または活性を判定し、それが患者における前記疾患または病態の指標となる。実施例において実証するように、驚くべきことに、本発明に従って、FAP酵素の発現および/または増加した発現もしくは活性、例えば体液試料中のFAPタンパク質および/または該タンパク質のフラグメントもしくは触媒生成物の酵素活性、の判定により、炎症性および/または心血管の疾患の判定が可能であることを発見した。加えて、健常ボランティアから得たものなどの対照と比較して、試料中のFAPタンパク質またはそのフラグメントの発現増加および/または活性増加は、前記疾患のリスクまたは進行の指標となることを発見した。

線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)は、上皮性腫瘍間質、関節炎、および創傷治癒の際に活性化された線維芽細胞によって発現されるが、健常組織では依然として殆ど検出できない、膜結合型構成的活性セリンプロテアーゼである15−17。FAPは、ジペプチジルペプチダーゼIV活性、プロリルエンドペプチダーゼ活性、およびI型コラーゲン特異的活性を呈示する酵素である17−19。ヒトFAPのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当該技術分野において公知であり、公的データベース、例えば、PubMed Centralによって入手できる。例えば、対応する参考文献も列挙しているNIH遺伝子配列データベースGenebankをはじめとする、米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Centre for Biotechnology Information:NCBI)が提供しているインターネットページ経由で得ることができる。例えば、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)のヒトヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、アクセッション番号NM_004460およびAAB_496652.1で入手できる。下に記載する実験データに従って、本発明の一つの目的は、ヒトアテローム性動脈硬化症の際のFAP発現の特徴を明らかにし、プラーク不安定性とのその関連性を検査して、FAP関連炎症性疾患および/または心血管疾患に罹患している被験者を診断および処置するための方法および組成物を提供することである。

易損性アテローム性動脈硬化性プラークにおけるコラーゲン分解は、該プラークをより破壊しやすくさせる。線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)は、そのコラゲナーゼ活性により、腫瘍形成に関与する。しかし、易損性ヒトプラークにおけるFAPの意義は、今までのところ依然として不明である。

したがって、本発明の一つの目的は、ヒトアテローム性動脈硬化症の際のFAP発現の特徴を明らかにし、プラーク不安定性とのその関連性を調べ、前記疾患に罹患している被験者を診断および処置できる方法を提供することである。さらに、本発明のもう一つの目的は、FAPの誘導機序、その下流効果、ならびにFAP発現および活性に対する抗体の中和能力を判定することである。

特に、FAPが、急性冠症候群(ACS)を有する患者の破裂しやすい冠動脈プラークおよび内皮細胞において発現されることを、驚くべきことに、証明することができた。本発明は、FAP介在コラーゲン分解が炎症性シグナル伝達によって誘導され、それをFAPタンパク質の阻害剤またはアンタゴニストによって中和できるという観察に基づく。本発明は、FAPが、HASMCにおけるマクロファージ由来TNFαによって誘導され、易損性ヒトプラークと関連し、破裂しやすい線維性キャップのコラーゲン破壊の一因となる、という驚くべき知見も提供する。

本発明によって、初めて、炎症性および/または心血管の疾患の特徴を、それぞれ、より早期に、すなわち該疾患がまだ臨床的に無症状である間に、明らかにするための方法を提供することができる。したがって、本発明は、アテローム性動脈硬化症関連疾患に罹患している被験者におけるアテローム性動脈硬化性プラークの進行および易損性のグレードを診断するためのバイオマーカーとしてFAPを提供する。

さらに、本発明は、心筋梗塞、卒中のリスクを有する、または心筋梗塞、卒中に罹患している、または心血管の病態を経験した患者の処置のための薬剤を提供する。

より具体的には、本発明は、患者における炎症性疾患および/または心血管疾患或いは病態の存在を判定する方法に関し、この方法は、(i)患者から採取した第一の試料を線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の発現についてアッセイすること(この場合、該FAPの発現、もしくは典型的には健常被験者から採取した第二の、すなわち対照試料と比較した該FAPの発現増加が、前記患者における前記疾患もしくは前記病態についての指標となる)、および/または(ii)前記患者から採取した血栓もしくはプラークの第一の試料をFAPの発現についてアッセイすること(この場合、前記患者から採取した体液の第二の試料におけるその発現と比較したFAPの発現増加が、前記疾患もしくは前記病態の指標となる)を含む。好ましい実施形態において、前記体液試料は、血液から得られる。

FAPが急性心不全を有する患者の血漿において増されることを実証することにより、本発明の方法の汎用性をさらに証明することができた。例えば、急性心不全および有意なプラーク(冠動脈造影図により冠動脈の>30%の閉塞)を経験している患者から採取した末梢血血漿におけるFAP発現は、有意なアテローム性動脈硬化症のリスク因子または徴候を有さない健常患者からの試料と比較して有意に増加される。本発明の範囲内で行われる実験に従って、FAP血漿レベルが、急性冠症候群(ACS)を有する患者において上昇されることを明らかにすることができた。詳細には、FAPレベルは、安定した冠動脈疾患(CAD)を有する患者において上昇される。さらに、不安定狭心症を有する患者およびST上昇型心筋疾患(STEMI)を有する患者において、CADを呈示していないCAD患者と比較して上昇されたFAPレベルを検出することができた。実施例13および図17参照。さらに、実施例11および対応する図15において詳細に概説するように、フローサイトメトリー分析は、血栓顆粒球ではFAP発現増進を認めるが、心筋梗塞に罹患している患者から吸引した冠動脈からの血栓の他の分析細胞集団ではFAP発現増進を認めないことが、驚くべきことに、本発明により判明した。本発明の方法の第一の選択肢(i)の一つの実施形態では、前記第一の試料を冠動脈から、および前記第二の試料を末梢静脈または大動脈洞から採取することができる。この実施形態では、冠循環のFAPレベル上昇それ自体が、本発明に従ってプラーク易損性の指標となり得る。

加えて、本発明に従って実施される実験により、FAPが、心筋梗塞を有する患者から得た閉塞している血栓において発現される(実施例12および図16参照)ことはもちろん、実施例9および図13にて説明するように、心筋梗塞後に死亡した患者から得た破裂しやすいヒト冠動脈においても発現されることが明らかになった。

本発明の方法の第二の選択肢(ii)の一つの実施形態では、前記第一の試料を、好ましくは、冠血栓、腸骨動脈、頸動脈および/もしくは冠動脈における血栓、冠ステント由来血栓、冠血栓白血球、冠血栓血小板、冠動脈アテローム性動脈硬化性プラーク内皮、冠動脈アテローム性動脈硬化性プラーク線維性キャップ、冠動脈アテローム性動脈硬化性プラーク脂質および/もしくは壊死性コア、冠動脈プラーク外膜、または頸動脈プラークから得る。白血球は、単球、顆粒球(好塩基球、好中球および好酸球を含む)、B細胞、T細胞(ヘルパー、細胞傷害性、記憶、調節、ナチュラルキラー(NK)およびガンマデルタT細胞サブセットを含む)を含む。

本発明の第二の実施形態は、FAP発現が、急性心筋梗塞を有する患者では末梢血と比較して冠血栓におけるほうが増進されるという観察に基づく、図14および実施例10参照。さらに、より詳細なフローサイトメトリー分析によって、FAPが、ヒト冠血栓において顆粒球(CD66b陽性)により発現されるが、単球(CD14陽性)ではされないことが明らかになった。実施例11および図15参照。最後に、本発明の実験により、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)(冠動脈血栓)および末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)(大腿動脈血栓)に罹患している患者からの末梢血および閉塞している血栓の試料を分析すると、慢性血栓ではなく急性血栓において、増進されたFAP発現が認められた。実施例12および図16参照。

以前に、国際公開第2006/010517号パンフレットにおいて、FAPは、発現プロフィールのみに基づいて、癌、呼吸器疾患、皮膚科的疾患、代謝性疾患、炎症、胃腸系疾患、血液学的疾患、筋骨格疾患、神経疾患、泌尿器疾患、内分泌疾患およびまた心血管疾患を含む、様々な疾患と関連づけられている。しかし、炎症性疾患および病態へのFAP発現の信頼できる関連づけはなされていない。さらに、様々なヒト組織において測定された相対発現レベルのいずれかが、有意なものであるという証拠、ましてや疾患または病態を予測する上で決め手となり、信頼できるという証拠を提供できる臨床データは、まったく開示されていない。加えて、凝固およびアテローム血栓症におけるFAPの役割は説明されていない。しかし、所与の標的が、臨床評価の際にバイオマーカーとして役立つことができる可能性を秘めていると推断するためには、その発現が特定の病態に明確に起因しなければならない。でなければ、偽陽性または他の人為的結果を生ずるリスクが生ずる。それ故、国際公開第2006/010517号パンフレットの教示によるFAPの発現レベルの測定では、特定の病態の存在または発症リスクについて、たとえあるとしても、決定的なことを導き出せない。

逆に、本発明に従って実施した実験は、FAPが、アテローム性動脈硬化症およびアテローム血栓症と関連づけられること、ならびにアテローム性動脈硬化症およびアテローム血栓症において直接的且つ病理学的役割を有することを初めて明らかにした。臨床的に、FAPは、プラーク破裂および心筋梗塞の明確な臨床イベントと関連づけられる。詳細には、FAP発現がヒト大動脈アテロームにおいて、および破裂しやすい冠動脈の線維性キャップにおいて増進されること、ならびに炎症性マクロファージ負荷量と相関することを発見した。FAPがアテローム性動脈硬化性プラークのコラーゲンを分解することを初めて証明することができた。さらに、FAPが血液凝固を加速し、その結果、より安定した血餅形成を生じさせることを初めて証明する。したがって、FAPは、動脈の炎症に関連した様々な疾患についてのマーカーであり得、治療標的でもあり得る。本発明によると、炎症性疾患および/または心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、卒中または急性冠症候群、例えば心筋梗塞心臓発作、慢性肝疾患、大脳静脈血栓症、深在静脈血栓症及び塞栓症からなる群から選択される。本発明の方法で処置、予防または診断することができる炎症性疾患、例えば心血管疾患、のさらなる例としては、血栓動脈瘤、心不全、虚血性心疾患、狭心症、突然心臓死、高血圧性心疾患、非冠血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、小血管疾患、血管性認知症、腎症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、高脂血症、黄色腫症、喘息、高血圧、気腫および慢性肺疾患、または介入手技(血管外傷に対する手技)に関連した心血管の病態、例えば、血管形成術、ステントテント留置、合成もしくは中性延長グラフト後の再狭窄、が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、前記病態は、易損性アテローム性動脈硬化性プラークまたはアテローム血栓症である。

本発明は、上述の疾患のマーカーとしてのヒト線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の使用を開示する。FAPの測定を、前記疾患の早期検出に利用することができ、または前記疾患に罹患しており治療的処置を受けている患者の調査に利用することができる。したがって、FAP発現は、被験者の治療法の成功の指標にもなり得る、すなわち、例えば血栓およびプラークの、それぞれ、再発または寛解の指標にもなり得る。

本発明の方法は、様々な方法でのFAP発現アッセイを含む。例えば、FAPタンパク質、FAPの触媒生成物または基質、下流および上流シグナル伝達化合物、ならびにFAPのmRNAレベルおよび遺伝子発現を分析して、上述の疾患の一つに罹患しているまたは罹患が疑われる患者におけるFAPの存在の判定に十分なデータを得ることができる。本発明の好ましい実施形態において、上述の方法は、前記試料をFAPタンパク質またはmRNAについてアッセイすることを含む。それにより、FAPタンパク質発現のアッセイは、疾患の存在を示し、およびさらなる候補バイオマーカーもアッセイするときには対照としても役立ち得る。加えて、FAPの発現レベルを用いて、アテローム性動脈硬化性プラークの進行および易損性のグレードを判定することができ、この場合、強い発現は、高い易損性グレードと相関し、弱いFAP発現レベルは、炎症性疾患の発症の指標(すなわち低い易損性グレード)となる。この情報を前記患者の処置または診断にさらに利用することができる。

FAP発現は、炎症性刺激によって誘発され、易損性ヒト冠動脈プラークにおいて増進される。FAPのコラーゲン分解活性の抗体ベースの阻害は、易損性アテローム性動脈硬化性プラークについての標的治療および分子イメージングの機会をもたらす。さらにもう一つの態様において、本発明は、FAP介在コラーゲン分解の治療的阻害を研究するためのin vivo系を提供する。図12に図示し、実施例6においてさらに説明するように、FAP発現は、ApoE−/−マウスの大動脈アテローム性動脈硬化性プラークにおいて増進される。アポリポタンパク質Eノックアウトマウス(ApoE−/−)は、アテローム形成を研究するための確立したモデルである。さらなる解釈については、Steinberg N Engl J Med 320(1989年)、915−924およびZhang Science 258(1992年)、468−471を参照のこと(該参考文献の開示内容は、参照により本明細書に援用されている)。ApoE−/−マウスは、減少した血清アポリポタンパク質Eを有し、低コレステロール食を用いたときでさえ脂質異常およびアテローム性動脈硬化症を呈示する。本発明によると、ApoE−/−マウスモデルは、FAP介在コラーゲン分解の治療的阻害に用いることができ、また、マウス抗FAP遮断抗体を適用することにより、アテローム性動脈硬化症マウスにおけるプラーク安定性に対するFAP阻害の効果の同定に寄与することができる。さらに、FAPは、ApoE−/−マウスモデルのアテローム性動脈硬化性プラークにおいて発現されるので、このモデルを、陽性対照として用いるため、FAP二重ノックアウトマウスモデル(FAP−/−)と交雑させて、FAP阻害の最大効果を判定することができた。

当業者には理解されるように、FAPを、炎症性疾患、例えば心血管疾患、の評価に有用であるマーカーとして同定した。FAPの同定および評価を様々な免疫診断手順またはアッセイによって達成することができ、また、FAPの同定および評価を用いて、本発明の成果に匹敵する結果に至ることができる。本発明の好ましい実施形態において、前記アッセイは、イムノアッセイである。適するイムノアッセイを、例えば、免疫沈降法、粒子イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素(EIA)イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ(FIA)または化学発光イムノアッセイのように、直接形式または間接形式のいずれで利用してもよい。FAPの発現を、該ポリペプチドに特異的なポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはそれらのフラグメントを使用して、検出および測定するための様々なプロトコルが、当該技術分野において公知である。好ましい実施形態において、前記イムノアッセイは、前記試料とFAPに特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体とを接触させることを含む。

FAPに対する抗体は、例えば、様々な販売元(Abcam、AbD Serotec、Abnova Corporationなど)から市販されている。好ましい実施形態において、前記アッセイに使用される抗体は、モノクローナル抗体である。適するモノクローナル抗体は、マウス、ラット、モルモット、ウマ、ブタ、イヌ、ネコにおいて産生されるか、または任意の他の動物起源であり得、好ましくは、上記方法による抗体は、マウス抗ヒト抗体および/またはウサギ抗ヒト抗体である。FAPの検出に適する抗体および方法は、国際公開第2007/111657号パンフレットにおけるページ6ffの実施例IIおよびページ9ffの実施例IVにも詳細に記載されており、該参考文献のそれぞれの開示内容は、参照により本明細書に援用されている。この国際出願には、関節リウマチに関連した静止期細胞におけるFAP発現が記載されている。本発明とは対照的に、前記国際出願は、排他的に滑膜組織、すなわち滑膜細胞においてFAPを検出する方法を用いている。しかし、そのような静止期細胞は、好ましくは本発明の方法には含まれず、本発明の方法では、好ましくは、血液などの循環体液試料の試料を使用し、これらの試料のほうが、被験者から簡便に得ることができ、容易にアッセイすることもできる。したがって、本発明は、国際公開2007/111657号パンフレットにおいて特許請求され、開示されているような筋線維芽細胞様滑膜細胞をFAPについてアッセイすることによる関節リウマチの診断方法を含まない。

FAPのエピトープに特異的に結合する抗体はもちろん、免疫組織化学的アッセイ、例えば、ウエスタンブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降法、細胞蛍光励起サイトメトリーおよび/もしくは細胞分取法(FACS)、磁気励起細胞分取法(MACS)または当該技術分野において公知の他の免疫化学的アッセイも、診断的におよび治療的に使用することができる。一般情報およびプロトコルは、Raem,Arnold M.、Immunoassays、第1版、Munich、Heidelberg:Elsevier、Spektrum Akademischer Verlag.、2007年、David Wild(編集):The Immunoassay Handbook、第3版、Elsevier Science Publishing Company、Amsterdam、Boston、Oxford 2005年に開示されている。好ましい実施形態での上述の方法における前記アッセイは、免疫組織化学的アッセイである。

直接的または間接的、サンドイッチおよび細胞培養酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、サンドイッチ型アッセイを含む実施例を、FAPの同じエピトープに指向される捕捉および標識用抗体を用いて行うことができる。典型的なフォワードサンドイッチアッセイでは、FAPに対する特異性を有する第一の抗体を固体または半固体支持体に共有結合させるか、または受動的に結合させる。前記支持体は、典型的にはガラスまたはポリマーであり、最も一般的に用いられているポリマーは、ニトロセルロース、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンまたはこれらの混合物もしくは誘導体である。前記固体支持体は、チューブ、ビーズ、ディスクもしくはマイクロプレートの形態であってもよいし、またはイムノアッセイの実施に適するいずれの他の表面であってもよい。結合プロセスは、当該技術分野において周知である。

様々な形式のELISAの実施のための一般的な形式およびプロトコルは、当該技術分野において開示されており、診断分野の当業者に公知である。例えば、Ausubel(編集)、Current Protocols in Molecular Biology、第5版、John Wiley & Sons,Inc,NY,2002のChapter 11を参照することができる。

FACSおよび/またはフローサイトメトリーは、自動装置を使用して細胞亜集団を分析する方法である。これは、医学研究所ならびに生物医学的および生化学的調査に広く用いられており、様々な本および論文、例えば、Flow Cytometry and Sorting、M.R.Melamedら(編集)Wiley and Liss、1990年において、ならびにジャーナル、例えば、Cytometryおよびthe American Journal of Clinical Pathologyにおいて論じられている。FACS分析は、蛍光励起細胞分取法ばかりでなくフローサイトメトリーも含む場合があり、この場合、従来のフローサイトメトリーが、固定および透過性細胞の分析を可能にし、それらの細胞は、分析後に廃棄される。蛍光励起細胞分取法は、蛍光をはじめとする光学的特性に基づいて個々の細胞を分取するために用いられる。これを用いて、比較的短期間に細胞の大集団をスクリーニングし、それによって分取された細胞を、適する手段によってさらに処理または分析することができる。他のスクリーニング法としては、Gaines(1999年)Biotechniques 26(4):683−688に記載されているような、磁気励起細胞分取法MACSが挙げられる。プロトコル、手段および方法についてのさらなる参考は、当該技術Ormerod,M.G.(編集)(2000年)Flow Cytometry−A practical approach、第3版、Oxford University Press、Oxford、UK ISBN 0199638241、Handbook of Flow Cytometry Methods by J.Paul Robinson ISBN 0471596345ら、Current Protocols in Cytometry、Wiley−Liss Pubから得ることができる。好ましい実施形態において、本発明による方法は、試料をFAPタンパク質についてアッセイすることを含み、前記アッセイは、蛍光励起サイトメトリー(FACS)、間接的ELISA、サンドイッチ−ELISAまたは細胞培養ELISAを含む。

しかし、本発明は、抗体に限定されない。FAPタンパク質に結合する作用因子、例えば、相互作用するタンパク質またはペプチドまたは抗体由来分子、例えば特にFab、FvもしくはscFvフラグメントなども使用することができる。抗体またはそれらのフラグメントは、例えば、HarlowおよびLane、「Antibodies,A Laboratory Manual」、CSH Press、Cold Spring Harbor、1988または欧州特許出願公開第0451216号明細書およびそれらに引用されている参考文献に記載されている方法を用いることによって得ることができる。当業者には理解されるように、特定の結合剤FAP複合体の量を測定するためのそれらの非常に多数の方法は、すべて、関連教科書(例えば、Tijssen P.またはDiamandis,E.P.およびChristopoulos,T.K.、Immunoassay、Academic Press.、Boston、1996年)に詳細に記載されている。

あるいは、特に、本発明の方法の第二の選択肢(ii)では、核酸ベースの手段をFAPのアッセイに用いる、すなわち、FAPのmRNAまたはタンパク質の発現を判定することによりFAPをアッセイする。生体試料からの細胞におけるRNA発現レベルの判定に適する技術(例えば、ノーザンブロット分析、RT−PCR、in situハイブリダイゼーション)は、当業者には周知である。例えば、核酸抽出バッファーの存在下での均質化、その後の遠心分離によって、細胞から全細胞RNAを精製することができる。核酸を沈降させ、DNaseでの処置および沈殿によってDNAを除去する。次いで、標準的な技術に従ってアガロースゲルでのゲル電気泳動によりRNA分子を分離し、ニトロセルロースフィルタに転写する。次いで、加熱によって、そのRNAをそのフィルタに固定させる。特定のRNAの検出および定量を、当該RNAに相補的な適切に標識されたDNAまたはRNAプローブを使用し行う。例えば、Molecular Cloning:A Laboratorv Manual、J.Sambrookら編集、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年、Chapter 7参照(該参考文献の全開示が参照により援用されている)。

ノーザンブロットハイブリダイゼーションに適するプローブは、FAPの核酸配列から作成することができる。標識DNAおよびRNAプローブの調製方法、ならびに標的ヌクレオチド配列へのそれらのハイブリダイゼーションのための条件は、Molecular Cloning:A Laboratorv Manual、J.Sambrookら編集、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年、Chapters 10および11に記載されており、該参考文献の開示は、参照により本明細書に援用されている。

例えば、核酸プローブを、例えば、放射性核種、例えば3H、32P、33P、14Cもしくは35S、重金属、または標識リガンドための特異的結合対メンバーとして機能することができるリガンド(例えば、ビオチン、アビジンもしくは抗体)、蛍光分子、化学発光分子、酵素、またはこれらに類するもので標識することができる。Rigbyら、J.Mol.Biol.113(1977年)、237−251のニックトランスレーション法またはFeinbergら、Anal.Biochem.132(1983年)、6−13のランダムプライミング法のいずれかによって、プローブを高特異的活性に標識することができ、前記参考文献の全開示は、参照により本明細書に援用されている。後者は、一本鎖DNAからまたはRNAテンプレートから高特異的活性の32P標識プローブを合成するために選ばれる方法である。例えば、ニックトランスレーション法に従って高放射活性ヌクレオチドで既存のヌクレオチドを置換することにより、108cpm/マイクログラムより十分高い特異的活性を有する32P標識核酸プローブを調製することが可能である。

その後、ハイブリダイズしたフィルタを写真フィルムに露出させることによって、ハイブリダイゼーションのオートラジオグラフィー検出を行うことができる。ハイブリダイズしたフィルタにより露出された写真フィルムの比重走査によって、FAP mRNA遺伝子転写レベルの正確な測定値が得られる。もう一つのアプローチとして、ニュージャージー州ピスカタウェイのAmersham Biosciencesから入手できるMolecular Dynamics 400−B 2D Phosphorimagerなどのコンピュータ画像処理システムにより、FAP mRNA遺伝子転写レベルを定量することができる。

DNAまたはRNAプローブの放射性核種標識が実際的でない場合、ランダム−プライマー法を用いて、類似体、例えばdTTP類似体5−(N−(N−ビオチニル−イプシロン−アミノカプロイル)−3−アミノアリル)デオキシウリジン三リン酸、をプローブ分子に組み込むことができる。このビオチン化プローブオリゴヌクレオチドは、蛍光色素にまたは呈色反応を生じさせる酵素に連結されたビオチン結合タンパク質、例えばアビジン、ストレプトアビジンおよび抗体(例えば、抗ビオチン抗体)、との反応によって、検出することができる。

ノーザンおよび他のRNAハイブリダイゼーション技術に加えて、in situハイブリダイゼーション技術を用いてRNA転写レベルの判定を行うことができる。この技術は、ノーザンブロッティング技術より要する細胞が少なく、ならびに顕微鏡カバーガラス上に全細胞を堆積させること、および該細胞の核酸含量を、放射性または別様に標識された核酸(例えば、cDNAまたはRNA)プローブを含有する溶液で探索することを含む。この技術は、被験者からの組織生検試料の分析に特によく適している。in situハイブリダイゼーション技術の実施は、米国特許第5,427,916号明細書に詳細に記載されており、該参考文献の全開示が参照により本明細書に援用されている。FAP mRNAのin situハイブリダイゼーションに適するプローブは、その核酸配列から作成することができる。

細胞内のFAP mRNA遺伝子転写産物の相対数は、FAP mRNA遺伝子転写産物の逆転写、続いての該逆転写産物のポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)による増幅によって判定することもできる。FAP mRNA遺伝子転写産物のレベルは、内部標準、例えば、同じ試料内に存在する「ハウスキーピング」遺伝子からのmRNAのレベル、との比較で定量することができる。内部標準としての使用に適する「ハウスキーピング」遺伝子としては、例えば、5S rRNA、U6 snRNAまたはtRNAが挙げられる。定量的RT−PCRのための方法およびその変法は、当業者の技術常識の範囲内である。

上述の疾患または病態を同定、診断または処置するために、本発明は、FAP分子の活性または発現に影響を及ぼすことによって、炎症性疾患を抑制、低減、低下または遅延できる小分子を含む組成物を提供する。FAPの阻害または低減は、特定の分子をFAPのDNAもしくはRNAもしくはポリペプチドにターゲッティングすることによって、またはFAPの阻害剤の活性化或いはFAPの活性化因子の不安定化によって達成することができる。一つの実施形態において、本発明は、上で定義したとおりの疾患または病態の診断または処置に使用するための、(i)FAPの存在もしくは活性を検出できる、および/または(ii)FAPの活性もしくは発現を阻害できる、化合物を含む組成物に関する。

さらに、本発明は、上で説明したような相互作用分子または化合物と、場合により、医薬的に許容される担体とを含む、炎症性および/または心血管の疾患を処置または診断するための組成物に関する。言い換えると、本発明による組成物は、(i)医薬組成物であり得、医薬的に許容される担体を含む。または、(ii)診断用組成物であり得、場合により、FAPの直接的もしくは間接的検出に適する手段を含む。

本発明の組成物の第二の選択肢(ii)、すなわち診断用組成物、に関して、前記化合物は、本明細書において上でFAP発現の判定について説明したもののうちのいずれか一つ、例えば抗FAP抗体ならびにFAP特異的核酸プローブおよびプライマー、であることがある。好ましくは、前記診断用組成物を、本明細書において前に説明した本発明の方法に使用する。さらに、抗FAP抗体および等価なFAP結合分子を(例えば、蛍光、放射性、酵素、核磁気、重金属)標識すること、およびそれらを使用して、核医学画像診断技術に類似した様式でin vivoでFAPを検出して、組織、細胞、またはFAPを発現する他の材料、例えば血栓およびプラーク、を検出することができる。MRIまたはPETにより検出可能な画像診断用プローブをFAPおよびプラークにターゲッティングさせることによって、例えば心筋梗塞のより明確な生前診断のための生物学的マーカー、治療の効力をモニターするための手段、を得ることができる。

したがって、本発明のさらなる実施形態は、FAP、例えば血栓およびプラーク内のFAP、をインビボで検出するための組成物、治療および/もしくは診断薬をFAPにターゲッティングさせる組成物、血栓およびプラーク形成を抑制する組成物、または体液からのFAPのもしくは病的FAP発現細胞の体外抽出のための組成物、を調製するための、FAP結合分子、例えば抗FAP抗体またはその結合フラグメント、の使用に関する。

本発明の組成物、の第一の選択肢(i)、すなわち医薬組成物に関して、医薬的に許容される担体および投与経路は、当業者に公知の対応する文献から得ることができる。本発明の医薬組成物は、当該技術分野において周知の方法に従って調合することができる。例えば、the University of Science in PhiladelphiaによるRemington:Science and practice of pharmacy(2000年)、ISBN−0−683−306472参照。適する医薬用担体の例も当該技術分野において公知であり、それらとしては、リン酸緩衝液、食塩溶液、水エマルジョン、エマルジョン、例えば油/水型エマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。そのような担体を含む組成物を周知の従来の方法によって調合することができる。前記医薬組成物を適する用量で被験者に投与することができる。それらの適する組成物の投与を様々な方法で行うことができる。例としては、経口的、鼻腔内的、直腸的、局所的、腹腔内的、静脈内的、筋肉内的、皮下的、真皮下的、経皮的、経腱鞘的および経頭蓋的方法による、医薬的に許容される担体を含有する組成物の投与が挙げられる。鼻内噴霧製剤などのエーロゾル製剤は、保存薬および等張剤を伴う活性薬剤の精製水溶液または精製された他の溶液を含む。そのような製剤は、好ましくは、鼻粘膜と適合性のpHおよび等張状態に調整される。直腸内または膣内投与用の製剤は、適する担体を用いて坐剤として提供することができる。様々なタイプの投与に適している製剤に関するさらなるガイダンスは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985年)および対応する最新版において見出すことができる。薬物送達法の寸評については、Langer、Science 249(1990年)、1527−1533を参照のこと。

医学分野では周知であるように、いずれの一患者のための投薬量も、その患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与回数および経路、全身の健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物をはじめとする、多くの要因に依存する。加えて、他の薬剤の共投与または逐次投与が望ましいことがある。治療有効用量または量は、症状または病態の改善に十分な活性成分の量を指す。上記の化合物の治療効力および毒性、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効な量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)は、細胞培養物または実験動物での標準薬学的手順によって判定することができる。治療効果と毒性効果との用量比が治療指数であり、それを比率、LD50/ED50、として表すことができる。

本発明の組成物中の化合物は、FAPの活性、発現またはプロセッシングを直接阻害し得る。例えば、前記化合物は、FAPタンパク質またはそのフラグメントと相互作用し(例えば結合し)、そのFAP活性、例えばコラゲナーゼ活性および(血液)凝固活性、を遮断するまたは低減させることができる。さらに好ましい実施形態において、前記組成物は、酵素活性である活性を有する化合物を含む。さらにもう一つの実施形態において、前記組成物は、FAPのプロセッシングを阻止することができ、例えば、前記化合物は、次のうちの一つ以上を阻害することができる:前駆体から活性形態へのFAPの変換、またはFAPの活性形態もしくは潜在形態の放出もしくは分泌。あるいは、前記組成物または化合物は、活性、例えば酵素活性、または上流活性化因子の発現もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)の発現もしくはトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)の発現、潜在形態から活性形態へのFAPの変換に関与する酵素、または下流FAP活性化標的、を阻害することによりFAPを間接的に阻害することができ、あるいはFAP阻害剤の活性もしくは発現、または下流FAP阻害剤標的を増加させることができる。

本発明のさらなる局面は、実施例8におよび図9から図11に示すように、FAPがヒト血液凝固速度を加速するという驚くべき発見に基づく。血液凝固または血餅は、身体の治癒過程の自然な部分である。損傷領域周辺の血液密集は、保護バリアを形成するが、最終的には自然に消滅する。しかし、血餅は、循環系に干渉すると危険になる。血栓(血餅)は、死亡および能力障害の主原因である。血栓は、卒中、心臓発作、肺塞栓症、および癌の合併症をはじめとする、健康問題の原因である。好ましい実施形態において、本発明による組成物は、血液凝固の阻害に関する使用に適している。

本発明のもう一つの実施形態において、前記医薬組成物中の化合物は、例えば、FAP mRNAの転写もしくは翻訳を低減させることにより、またはFAP mRNAもしくはタンパク質の安定性を低減させることにより、FAPの発現を阻止するまたは低減させることができる。そのために、前記化合物は、FAP核酸、例えば二本鎖RNA(dsRNA)分子、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンス分子、リボザイム、三重らせん分子またはこれらの任意の組み合わせ、の発現または翻訳の阻害剤である。本発明の一つの好ましい実施形態において、前記化合物は、FAPまたはそれをコードする核酸分子に結合できる。

本発明のさらなる好ましい実施形態において、前記化合物は、小分子、例えば化学薬剤、小有機分子、例えば天然生成物ライブラリの生成物もしくは組み合わせ、ポリペプチド、例えば抗体、例えばFAP特異的抗体、ペプチド、ペプチドフラグメント、例えば基質フラグメント、例えばI型コラーゲンのフラグメント、ペプチドミメティック(peptidometic)またはモジュレーターである作用因子である。好ましくは、前記化合物は、FAP特異的抗体であり、そのような抗体を産生させる手段および方法は、上で説明した。本発明によるさらなる好ましい実施形態において、前記化合物は、FAPに特異的に結合する抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体および合成抗体、である。好ましくは、前記モノクローナル抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体の産生に適する方法およびガイダンスは、国際公開第2008/081008号パンフレットに詳細に記載されており、該参考文献の開示内容は、参照により本明細書に援用されている。本明細書において用いる場合の抗体は、インタクト免疫グロブリン分子はもちろん、FAPのエピトープを結合することができるそれらのフラグメント、例えばFab、F(ab’)2およびFv、も含む。

前記化合物は、FAPポリペプチドのアンタゴニストまたはアゴニストである場合もあり、それらは、酵素活性、発現、翻訳後修飾によりまたは他の手段によってFAP活性に対して効果を発揮する化合物である。FAPのアゴニストは、FAPに結合したときにFAPの活性を増加させるまたは延長する分子である。FAPのアゴニストとしては、FAPを活性化する、タンパク質、核酸、炭水化物、小分子または任意の他の分子が挙げられる。

一つの実施形態において、本発明は、前記化合物がFAPアンタゴニストである組成物に関する。FAPアンタゴニストは、例えば、FAPに結合した時にFAPの活性の継続期間の量を減少させる分子である。阻害剤またはアンタゴニストは、FAPポリペプチドの活性、mRNAまたはDNAのレベルまたはその発現を阻害することでき、この阻害は、酵素活性の減少による、あるいはFAPの翻訳または転写、FAPの結合特性または任意の他の生物学的、機能的もしくは免疫学的特性に影響を及ぼすことによる、FAPの活性の変化を指す。アンタゴニストは、ペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、抗体、小有機化合物、ペプチド様物質、アプタマーまたはPNAであり得る(Milner、Nature Medicine 1(1995年)、879−880、Hupp、Cell 83(1995年)、237−245、Gibbs、Cell 79(1994年)、193−198、Gold、Ann.Rev.Biochem.64(1995年),736−797)。そのような上述の化合物の調製および利用のために、当業者は、当該技術分野において公知の方法、例えば引用文献の中で言及されているものを用いることができる。前記アンタゴニストがペプチドまたはペプチド類似体である組成物が、本発明では好ましい。FAP活性の阻害に使用するためのペプチドまたはペプチド類似体を得るために適する方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、国際公開第2006/125227号パンフレットに詳細に記載されており、該参考文献のFAP阻害剤に関する開示内容は、参照により本明細書に援用されている。この出願には、N末端がブロックされたペプチドプロリンボロナート化合物の使用が、FAPタンパク質を阻害するために用いられて、癌などの高増殖性障害の処置に用いられる方法が記載されている。

本発明による医薬組成物または診断用組成物を提供するためのさらなる手段および方法は当業者に公知であり、例えば、国際公開第2006/010517号に記載されている、上記のものも参照(該参考文献の開示内容は、参照により本明細書に援用されている)。

好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物を、本明細書に記載の本発明の方法に従って診断された患者の処置に使用する。一つの実施形態では、関連障害、例えばアテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、卒中、血栓症、心不全、狭心症、突然心臓死または心血管の病態、を処置するために使用されている抗炎症薬と併用で被験者に投与するために、本発明の化合物または医薬組成物を設計する。好ましい心血管障害としては、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、急性症候群、動脈瘤および卒中が挙げられる。

好ましい実施形態において、処置および/または診断される被験者は、FAP介在/関連障害もしくは疾患、例えば本明細書に記載するような炎症性疾患および/もしくは心血管疾患、に罹患している、または該障害もしくは疾患のリスクがあるヒトである。最も好ましくは、前記被験者は、アテローム性動脈硬化症に罹患している、またはアテローム性動脈硬化症の罹患リスクのあるヒトである。例えば、前記被験者は、早期、中間型もしくは進行アテローム性動脈硬化症を有するヒト、またはアテローム性動脈硬化性プラーク破裂のリスクのあるヒトである。前記方法は、FAPの活性、発現、翻訳またはプロセッシングを阻害する薬剤、例えば、本明細書に記載するような化合物、をFAPおよび/またはFAP介在血液凝固の低減または阻害に有効な量で被験者に投与する段階を含む。好ましい実施形態において、前記方法は、投与段階の前または後に被験者におけるFAPの核酸またはタンパク質発現レベルまたは活性を評価する段階をさらに含む。例えば、被験者、例えばアテローム性動脈硬化性プラーク破裂のリスクのある患者、を前記化合物を投与する前または投与した後に評価することができる。被験者が、所定のレベルより上のFAPレベルを有する場合、治療を開始または継続することができる。

本発明は、血栓塞栓性疾患、好ましくは、凝固障害、例えば血液凝固障害、恒常性または凝固障害を伴う様々な血液疾患の予防または処置にも関する。血液凝固障害の典型的な例としては、凝固障害、例えば、血友病A、血友病B、ヴィレブランド病、播種性血管内凝固(DIC)、重症肝疾患、およびビタミンK欠乏症、ならびに任意の他の原因が挙げられる。実施例8および図9から図11におけるトロボエラストグラフィー分析によって示すように、本発明に従って実施した実験により、FAPタンパク質が血液凝固を増進し得ることが明らかになった。詳細には、漸増インキュベーション期間、漸増濃度の組換えヒトFAPで処置したNATEMアッセイからの代表ROTEM読出しを示した。該読出しは、FAPが、ヒト血液凝固の速度を加速することを明示している。ROTEM(登録商標)は、回転トロンボエラストメトリーを表し、古典的トロンボエラストグラフィーの強化版である。トロンボエラストグラフィー(ROTEM(登録商標))は、血餅形成およびその後の分解のグラフ表示をもたらす、当業者には周知の技術である。加熱されたカップの中で血液がインキュベートされる。光学検波器である検出器系に接続されたピンをそのカップの中に吊るす。カップおよびピンを互いに対して4_45¢の角度に振動させる。この運動をピンから始める。カップとピンの間に線維素が形成すると、伝達された回転がピンで検出され、トレースが生成される。試料が凝固したときの弾性喪失が、軸の回転の変化をもたらす。その後、これらの得られたデータがトロンボエラストグラムで視覚化される。詳細はLuddingtonら、Clin.Lab.Haem.27(2005年)、81−90参照(該参考文献の開示内容は、参照により本明細書に援用されている)。好ましい実施形態において、本発明は、潜在的組換え凝固因子またはその阻害剤をスクリーニングするための、ここでおよび実施例8において説明するようなROTEM/NATEMの使用に関する。有利には、本発明は、患者におけるFAP遮断薬の治療効果および/または効力を試験するためのROTEM/NATEMの使用に関する。

ここで、本発明は、組換えタンパク質、すなわちFAP、の凝固促進活性を検査するためのROTEM/NATEM技術の使用を初めて提供する。本発明に従って、このアプローチを用いて、ヒト血液におけるFAP遮断の治療効果(凝固を遅らせること)および/またはFAP適用の治療的効果(血液凝固を加速すること)を試験することができる。本発明のもう一つの実施形態では、この方法を用いて、FAP遮断薬の効力を試験することができ、そのような遮断薬の有効用量を決定することもできる。したがって、さらなる態様において、本発明は、組換えタンパク質またはそれらの阻害剤の凝固活性を同定および分析するための、上述のROTEM/NATEMシステムの使用に関する。

既に述べたように、本発明は凝固障害の診断方法も提供する。当該システムでは血液凝固をin vivoで増進するための試薬としてのFAPが使用され得る。好ましい実施形態において、本発明は、前記使用および凝固障害の予防または処置のための、FAPを含む医薬組成物に関する。好ましい実施形態において、前記凝固障害は、血友病である。したがって、本発明に従えば、血液凝固を増進させるための試薬としてFAPをin vitroで使用することができよう。したがって、本発明は、個人の血液凝固障害の診断のための、または個人が該血液コンジュゲーション障害を獲得するリスクの判定のための、in vitro法を提供する。

上の開示は、本発明を一般に説明するものである。本明細書の本文全体を通して幾つかの文献を引用している。さらなる引用文献は、特許請求の範囲の直前の本明細書末尾にて見出すことができる。すべての引用参考文献(本出願全体を通して引用されている参考文献、発行特許、公開特許出願、および製造業者の仕様書、指示書などを含む)の内容は、参照により本明細書に特に援用されているが、さらに言えば、引用されているいずれの文献も、本発明に関する先行技術であることを認めるものではない。

単に例示を目的として本明細書に提供するものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない以下の詳細な説明および実験を参照することによって、より完全な理解を得ることができる。

下記の実施例は、本発明のさらなる説明となるが、いかなる点においても本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。ここで利用するものなどの従来の方法の詳細な説明は、引用文献の中で見出すことができる。「The Merck Manual of Diagnosis and Therapy」、第17版、BeersおよびBerkow編集(Merck & Co.,Inc.2003年)も参照のこと。

本発明の実施は、別の指示がない限り、当業者の技術常識の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来の技術を利用することとなる。

分子遺伝学および遺伝子工学に関する方法は、一般に、以下の参考文献に記載されている:Molecular Cloning:A Laboratory Manual、(Sambrookら、(1989年)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press)、DNA Cloning、第IおよびII巻(Glover編集、1985年)、Oligonucleotide Synthesis(Gait編集、1984年)、Nucleic Acid Hybridization(HamesおよびHiggins編集、1984年)、Transcription And Translation(HamesおよびHiggins編集、1984年)、Culture Of Animal Cells(FreshneyおよびAlan、Liss,Inc.、1987年)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(MillerおよびCalos編集)、Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology、第3版(Ausubelら編集)、およびRecombinant DNA Methodology(Wu編集、Academic Press)の現行版に記載されている。Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(Miller and Calos編集、1987年、Cold Spring Harbor Laboratory)、Methods In Enzymology、第154および155巻(Wuら編集)、Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986)、Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984年)、論文、Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.、N.Y.)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerおよびWalker編集、Academic Press、London、1987年)、Handbook Of Experimental Immunology、第I−IV巻(WeirおよびBlackwell編集、1986年)。本開示において言及する遺伝子操作のための試薬、クローニングベクターおよびキットは、供給業者、例えばBioRad、Stratagene、Invitrogen、およびClonTech、から入手できる。細胞培養および培地回収に関する一般技術は、Large Scale Mammalian Cell Culture(Huら、Curr.Opin.Biotechnol.8(1997年)、148)、Serum−free Media(Kitano、Biotechnology 17(1991年)、73)、Large Scale Mammalian Cell Culture(Curr.Opin.Biotechnol.2(1991)、375)、およびSuspension Culture of Mammalian Cells(Birchら、Bioprocess Technol.19(1990年)、251)、Extracting information from cDNA arrays、Herzelら、CHAOS 11、(2001年)、98−107に概説されている。サイトメトリーにおいて使用するための標識抗体および他の薬剤の設計および構築のための材料および技術は、当該技術分野において公知であり、例えば、Baileyら(2002年)Biotech.Bioeng.80(6)、670−676、CarrollおよびAl−Rubeai(2004年)Expt.Opin.Biol.Therapy 4:1821−1829、Yoshikawaら(2001年)Biotech.Bioeng.74:435−442、Mengら(2000年)Gene 242:201−207、Borthら(2001年)Biotechnol.Bioeng.71(4):266−273、Zeydaら(1999年)Biotechnol.Prog.15:953−957、Klucherら(1997年)Nucleic Acids Res.25(23):4853−4860、およびBrezinskyら(2003年)J.Imumunol.Methods 277:141−155に記載されている。

実験手順 アテローム性動脈硬化症性プラークの特性評価 大動脈狭窄のための手術または大動脈弁置換術を受けた患者から上行大動脈プラーク生検材料を得る。大動脈プラークを切片にし、Movatペンタクローム、オイルレッドO、抗CD68およびvon Kossa染色を用いて、米国心臓協会(American Heart Association:AHA)基準20、21に従ってグレード分類する。急性心筋梗塞後に死亡した患者から冠動脈を得、切片作製のためにパラフィンに包埋する。組織切片中のコラーゲンに対するMasson染色により、易損性冠動脈プラークの特徴を明らかにする。線維性キャップを、内腔と壊死性コアを隔てる高コラーゲン組織として識別する2。50μm未満の最小線維性キャップ厚を有するプラークを不安定なものとして分類し、これに対して65μmより厚い線維性キャップ厚を有するプラークを安定したものとして分類する2

免疫蛍光および免疫組織化学 ヒト上行大動脈からの横断切片(10μm厚)および冠動脈プラークのパラフィン包埋切片(4μm厚)をスライドガラスにマウントする。CD68、フォン・ヴィレブランド因子、アルファ平滑筋アクチンまたはI型コラーゲンに対して指向された購入抗体を用いてFAPおよび細胞特異的マーカーに対して組織切片を標識し、ジアミノベンジジン用のABC染色キット(カリフォルニア州バーリンゲームのVector Labs)を使用して蛍光標識二次抗体または免疫染色用のビオチン標識二次抗体で視覚化。

免疫蛍光 パラフィン包埋冠動脈切片をA246で標識し、その後、Cy5標識二次ヤギ抗マウスIgG(115−175−146、Jackson ImmunoResearch)で標識する。免疫蛍光の詳細な方法については、各生検検体の3隣接切片で、CD68(SC−9139、カリフォルニア州サンタクルーズのSanta Cruz)、フォン・ヴィレブランド因子(vWF、F3520、カリフォルニア州カールズバッドのSigma−Aldrich)、アルファ−平滑筋アクチン(αSMA、Ab5694、Abcam)またはI型コラーゲン(Ab292、Abcam)に対して指向されたウサギ抗体を使用して、マクロファージ、内皮細胞および平滑筋細胞とのFPAの共局在を判定し、その後、Cy3標識抗ウサギIgG(111−165−144、Jackson ImmunoResearch)を使用して蛍光標識を行う。DAPI(D9542、Sigma−Aldrich)を核の蛍光対比染色に使用する。アイソタイプ対照抗体を使用して、抗原結合特異性に対処する。Tris緩衝グリセロール(50mg/mLのn−プロピルガレートが補足された、pH9.5の0.1M Tris−HClとグリセロールとの3:7混合物)を用いて、染色試料にカバーガラスをかぶせる。

免疫組織化学 95℃賦活化用バッファー(2mMクエン酸ナトリウム、pH7.6)中での20分のインキュベーション後、冠動脈プラークのパラフィン包埋切片における抗原性賦活化処理を行う。FAPの触媒インサートに対して産生されたウサギポリクローナル抗体(A246、Ab28246、マサチューセッツ州ケンブリッジのAbcam)およびウサギアイソタイプ対照(Ab37415、Abcam)を使用して、FAPを染色する。大動脈プラークの凍結切片を氷冷アセトン中で5分間固定し、FAPに対するマウスモノクローナル(F19、ニューヨーク州ニューヨークのSloan−Kettering Instituteによって提供されたもの)と適切なマウスアイソタイプ対照(401401、カリフォルニア州サンディエゴのBioLegend)を染色する。一次抗体をビオチン標識ヤギ抗マウス(115−066−003、ペンシルバニア州ウエストグローヴのJackson ImmunoResearch)およびビオチン標識ヤギ抗ウサギ(111−066−003、Jackson ImmunoResearch)で標識し、ジアミノベンジジン用のABC染色キット(カリフォルニア州バーリンゲームのVector Labs)を使用して染色する。

画像解析 1μm/画素より上の空間分解能での省電力撮像に、蛍光カメラ(DFC350 FX、Leica)を装着した蛍光顕微鏡(DM60000B、ドイツ、WetzlarのLeica)を使用する。

単一光学面で多チャネル共焦点顕微鏡(TCS SP2、Leica)を使用してより高倍率で共局在分析を行う。詳細な画像解析法は、すぐ下の定量的画像解析セクションで説明する。

定量的画像解析 大動脈組織切片の単一チャネル蛍光画像(3隣接切片の1切片につき9画像)を、タグ付き画像ファイル形式(tagged image file format:TIFF)で0〜255の間のバイナリ画素強度での定常カメラ設定で撮る。群ごとに、追加の隣接組織切片をアイソタイプ対照抗体で染色して、バックグラウンド閾値を決定する。各チャネルについてのバックグラウンド強度閾値を、対照染色において画素の95%が出した強度に設定する。バックグラウンド強度閾値未満の画素は、定量から除外する25。Matlab(ミシガン州ノヴァイのMathworks)による画像解析ソフトウェアを使用して、残りの画素を合計し、画素の総数で割って平均画素強度を算出し、および陽性画素を合計して、陽性面積を算出する26

単一平面で高分解能の共焦点顕微鏡を使用して、定量的共局在分析を行う。各組織切片に関して2つのTIFF画像を別個の蛍光チャネルから取り込み、前に説明したようにバックグラウンドシグナルを引く。細胞特異的マーカーについて陽性の画素と共局在したFAP陽性画素の合計として、共局在係数を算出する27、28

細胞 ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)は、弁修復のための手術を受けた患者から得た肉眼病変のない上行大動脈の生検材料から単離し、ヒト大動脈平滑筋細胞は購入し(HASMC、Promocell)、末梢血単球、マクロファージ、および泡沫細胞は、健常発端者(proband)の末梢血から単離する。細胞単離、増殖および純度検証の詳細な方法については、下記を参照されたい。

細胞単離、増殖および評価 内皮細胞単離のために、大動脈内腔をPBSで洗浄し、2型コラゲナーゼを含有するDMEM(350U/mL、ニュージャージー州レークウッドのWorthington)中で30分間インキュベートし、穏やかに撹拌して血管壁から内皮を解離させる。CD34に対する磁気ビーズ分離(130−046−702、ドイツGladbachのMiltenyi Biotech)によって内皮細胞をさらに精製する。

HAECを内皮細胞増殖培地(EGM2、Gibco)で増殖させ、FACS分析によってvWF発現(>98%)の特徴を明らかにする。貪食単球を単離するために、健常発端者から50mLの末梢静脈血をEDTA入り採血管に採集し、ハンクス緩衝塩溶液で2倍希釈し、Ficoll勾配で回転させる(20分、400G、24℃)。CD14についての磁気ビーズ分取(130−050−201、Miltenyi Biotec)によりバッフィーコートから単球を選択して、94%(CD64に対するFACS)を超える最終純度を得る。ポリスチレン6ウエルプレートにおいて、10%熱不活化、低内毒素ウシ胎児血清(Gibco)と50nM 組換えヒトマクロファージコロニー刺激因子(AF−300−03、ニュージャージー州ロッキーヒルのPeprotech)とを含有するRPMI−1640(Gibco)中で、48時間ごとに培地を交換しながら7日にわたって単球をマクロファージに分化させる。抗CD68 FACS分析を用いて、マクロファージ分化を評価する。未固定細胞中のF19、およびFACS分析のためのCy5コンジュゲート二次抗体、および適切なマウスIgGアイソタイプ対照抗体を使用して、すべての細胞タイプに関してFAPを測定する。無血清マクロファージ培地(SFM、Gibco)中で48時間、マクロファージを100μg/mLの酸化低密度リポタンパク質(BT−910、スイスAllschwilのBioConcept)で刺激することにより、泡沫細胞を産生させる。脂質取り込みをオイルレッドO染色(O0624、Sigma−Aldrich)によって評価する。

大動脈および冠動脈検体 大動脈狭窄のための手術を受けた患者から、上行大動脈プラーク生検材料を得る。弁欠損を修復するための手術を受けた患者から、プラークのない大動脈生検材料を得る。これらの試料を、4℃に予冷した滅菌ダルベッコ変性イーグル培地(DMEM、カリフォルニア州カールズバッドのGibco)に直接入れ、研究所の氷上に移し、組織ザイモグラフィーのためにOptimal Cutting Temperature Compound(カリフォルニア州トランスのTissue−Tek)中で凍結する。

急性心筋梗塞後に死亡した患者から冠動脈を得、4%パラホルムアルデヒド溶液中に24時間入れておく。

FAP誘導アッセイ 3、5、10、20、40%マクロファージ調整SFMを添加した飢餓培地で48時間、静止期HASMCを処置する。FAP発現に対するTNFαの効果を判定するために、20%マクロファージ調整SFMおよびTNFα中和抗体(Ab6671、Abcam)またはIgGアイソタイプ対照(Ab27478、Abcam)抗体を添加した飢餓培地で静止期HASMCを処置する。組換えヒトTNFα(300−01A、Peprotech)を使用して、静止期HASMCにおいて用量および時間依存的様式でFAP発現を誘導する。下で詳述する細胞膜ELISAによって、すべてのFAPレベルを定量する。末梢血由来マクロファージを48時間、SFM(6ウエルプレートにおいて2mL/ウエル)中でインキュベートし、上清を滅菌濾過し、等分し、−80℃で凍結させる。購入したヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC、Promocell)をFACS分析によってαSMA(純度>96%)について検証し、継代4で、96ウエル黒色細胞培養試験プレートに、10%ウシ胎児血清(3302−P250302、ドイツAidenbachのPAN Biotech)を添加したDMEM(10938、Gibco)中5×104細胞/cm2の密度でプレーティングし、24時間放置して付着させた後、1%ウシ血清アルブミンを添加したAdvanced DMEM(12491−015、カリフォルニア州カールズバッドのInvitrogen)飢餓培地中で一晩、静止状態にする。3、5、10、20、40%マクロファージ調整SFMを添加した飢餓培地で48時間、静止期HASMCを処置する。FAP発現に対するTNFαの効果を判定するために、20%マクロファージ調整SFMおよびTNFα中和抗体(Ab6671、Abcam)またはIgGアイソタイプ対照(Ab27478、Abcam)抗体を添加した飢餓培地で静止期HASMCを処置する。組換えヒトTNFα(300−01A、Peprotech)を使用して、静止期HASMCにおいて用量および時間依存的様式でFAP発現を誘導する。定量のために、細胞をPBSで洗浄し、4%ホルマリン中で30分間固定し、FAPに対してF19で標識する。ホースラディッシュペルオキシダーゼELISAキット(カリフォルニア州フリーモントのAnaspec)を使用して培養物を酵素標識し、酵素反応生成物を蛍光プレートリーダーで定量する。バックグラウンド値を引き、すべての値を未処置/未調整対照群に正規化する。

ザイモグラフィー 直接急冷ブタゼラチン(DQゼラチン、D12054、Invitrogen)を、黒色96ウエルプレートにおいて、反応バッファー(pH7.6の、0.5M Tris−HCl、1.5M NaCl、50mM CaCl2、および2mMアジ化ナトリウム)および0、10、20、40nMの組換えヒトFAP中、100μg/mLの最終濃度に希釈する。切断されたゼラチンを0.5、8および24時間の時点で定量し、バックグラウンド蛍光を引いた。FAPの触媒インサートに対して産生されたA246およびそれに対応するアイソタイプ対照IgG(Ab27478、Abcam)を反応バッファー中の20mM FAPおよび100μg/mL DQゼラチンに添加し、24時間後に分析して遮断効力を判定する。

A246は、FAP特異的ペプチドに対して産生され、免疫原アフィニティー精製されたウサギポリクローナルであり、線維芽細胞活性化タンパク質を特異的に認識するが、他のジペプチジルペプチダーゼファミリーメンバーを認識しない(Abcam、Ab28246)。継代4でのコンフルエントなHASMCをA246または抗体対照で30分間処置し、PBSで洗浄し、その後、反応溶液中の100μg/mL DQゼラチン(100μL)のもとに4時間置いた後、プレートリーダーで蛍光分析した。in situザイモグラフィーは、ヒト大動脈アテローム性動脈硬化性プラークの(5μm)凍結切片を用いて行い、該凍結切片を、非阻害性F19およびCy5標識二次抗体を使用してFAPに対して染色し、その後、50nM濃度のA246またはアイソタイプ対照で一晩処置する17。その後、処置済みおよび未処置の切片を、ウシ皮膚からの10%直接急冷I型コラーゲン(D12060、Invitrogen)を含有する温かいPBS中1%アガロースでマウントし、2時間後、37℃で共焦点顕微鏡によって撮像する。定量のために、バックグラウンドシグナルをアイソタイプ対照画像から引き、両方のFAP切断I型コラーゲンについて陽性である画素を、1生検材料につき3隣接切片からの9画像の平均として定量する。

直接急冷ブタゼラチンを黒色96ウエルプレート内の漸増濃度の組換えヒトFAPに添加する。FAP特異的ペプチドに対して産生されたウサギポリクローナルであって、免疫原アフィニティー精製され、FAPを特異的に認識するが、他のジペプチジルペプチダーゼファミリーメンバーを認識しないものであるA246(Abcam、Ab28246)で、FAP阻害を行う。切断されたゼラチンを0.5、8および24時間の時点で蛍光プレートリーダーによって定量し、バックグラウンド蛍光を引く。

in situザイモグラフィーは、ヒト大動脈アテローム性動脈硬化性プラークの凍結切片(5μm)を用いて行い、該凍結切片を、非阻害性F19およびCy5標識二次抗体を使用してFAPに対して染色し、その後、50nM濃度のA246またはアイソタイプ対照で一晩処置する。その後、処置済みおよび未処置の切片を、ウシ皮膚からの10%直接急冷I型コラーゲン(D12060、Invitrogen)を含有する温かいPBS中1%アガロースでマウントし、2時間後、37℃で共焦点顕微鏡によって撮像し、前に説明したように定量する。

統計解析 一元配置ANOVAを用いて組織学的結果および細胞培養結果を比較し、関連性をピアソン相関係数によって算出する。スチューデントt検定をザイモグラフィーの比較に用いる。MatLab(バージョン、R2007b)を用いて、すべての統計解析を行う。データを平均±SDとして提示する。有意性は、p<0.05のレベルで許容される。

実施例1:FAPは進行したヒト大動脈プラークでは平滑筋細胞により発現されるがマクロファージによっては発現されない 隣接凍結切片におけるFAPについての免疫蛍光染色は、AHAグレード分類基準によって特性評価したとき、プラークのない大動脈に対して線維性アテロームでのほうが増進された発現を示す(図1A)。FAPについての陽性染色は、健常上行大動脈には実質的にみとめられないが、タイプII−IIIおよびタイプIV−Vプラークでは段階的増加が観察される(図1B)。定量的画像解析は、FAPが、進行した大動脈プラークではプラークのない大動脈または早期プラークと比較して有意に増加することを示した(図1C)。

ヒトアテローム性動脈硬化性プラークにおけるFAP発現細胞タイプの特徴を明らかにするために、マクロファージ(CD68陽性細胞として同定)、平滑筋細胞(αSMA陽性細胞)および内皮細胞(vWF陽性細胞)においてFAPの免疫蛍光共染色を行う(図2A)。共焦点画像解析は、平滑筋細胞によるFAP発現を明らかにするが、マクロファージまたは内皮細胞によるFAP発現は示さない(図2B)。

血管細胞によるin vitroでのFAP発現を検証するために、HASMC(αSMA陽性細胞)、HAEC(vWF陽性細胞)、末梢血由来単球(CD64陽性)、マクロファージ(CD68陽性)および泡沫細胞(オイルレッドO陽性マクロファージ)においてFAPのFACS分析を行う。FACS分析は、HASMCにおける高度の構成的FAP発現、HAECにおけるわずかな発現を明らかにするが、末梢血由来単球、マクロファージまたは泡沫細胞による発現は示さない(図3)。

実施例2:FAP発現はヒト冠動脈アテロームの「安定した」厚い線維性キャップに対して「不安定な」薄い線維性キャップでのほうが増進される 臨床的に意義のあるアテローム性動脈硬化症病変におけるプラークの易損度とFAPの関連性を判定するために、急性心筋梗塞後に死亡した患者から得た破裂しやすいヒト冠動脈のMasson法(青色でコラーゲンを染色)を行う。線維性キャップ厚に基づき、これらの検体を「不安定な」薄いキャップ(<50μm)または「安定した」厚いキャップ(>65μm)の線維性アテロームとして特性評価する。隣接切片における免疫組織学的および免疫蛍光染色は、「安定した」厚い線維性キャップに対して「不安定な」薄い線維性キャップでのほうが増進されたFAP発現を示すことを明らかにした(図4A)。共焦点画像解析は、ヒト冠動脈線維性アテロームの「安定した」厚い線維性キャップに対して「不安定な」薄い線維性キャップでのほうがFAP発現の有意な増加を示すことを明らかにした(図4B)。

実施例3:FAP発現はヒト大動脈アテローム性動脈硬化症性プラークにおけるマクロファージ負荷量と関連する 免疫蛍光染色は、代表大動脈脂肪線条においてマクロファージに隣接した内側の細胞でのFAP発現を明らかにする(図5A)。FAPと炎症との関係の特徴を明らかにするために、ヒト大動脈プラークにおけるFAPとマクロファージ免疫蛍光シグナル強度(図5B)を比較する。多数のプラーク進行段階でマクロファージ負荷量とFAP発現との間に正の相関関係を認める(R2=0.763、n=12、図5C)。

実施例4:マクロファージ由来TNFαは培養ヒト大動脈平滑筋細胞においてFAP発現を誘導する マクロファージとFAP発現HASMCの間のシグナル伝達機序を解明するために、HASMCをマクロファージ調整培地に48時間曝露して、プラーク炎症に適用可能な条件をシミュレートする。培養HASMCは、マクロファージ調整培地に応じてFAPの有意な用量依存的増加を示し、最大効果は48時間後に20%培地濃度で観察される(図6A)。この効果は、マクロファージ調整培地をTNFα中和抗体で処置すると消える(図6B)。TNFαによるパラクリン誘導FAP発現を確認するために、組換えヒトTNFαを使用して、HASMCにおけるFAPを用量および時間依存的様式で誘導する。最大応答は、30ng/mLで48時間後に確認される(図6Cおよび6D)。

実施例5:大動脈線維性キャップにおけるゼラチン分解活性はFAP中和抗体によって阻害される 免疫蛍光分析は、大動脈線維性キャップの低I型コラーゲン領域におけるFAP発現増進を明らかにした(図7A)。組換えヒトFAPは、用量および時間依存的にゼラチンを分解する(図7B)。FAPの触媒性部位に対して指向された抗体であるA246は、組換えヒトFAPと活性化HASMCの両方のゼラチン分解活性を低減させる(図7Cおよび7D)。IgG対照抗体で処置した大動脈線維性キャップは、FAPと切断I型コラーゲンとの共局在を示すが、Ab246処置プラークは、I型コラゲナーゼ活性とのFAPの有意に低減された共局在をはっきりと示す(図7E)。共焦点画像解析は、A246処置線維性キャップが、FAP発現部位において切断I型コラーゲンの減少を示すことを明らかにする(図7F)。

実施例6:FAP発現はApoE−/−マウスの大動脈アテローム性動脈硬化性プラークにおいて増進される 8週齢で開始して12週間、高コレステロール食(総コレステロール1.25%、Research DietsからのRD12108)を給餌した雄アテローム性動脈硬化症アポリポタンパク質Eノックアウト(ApoE−/−)マウス(C57BL/6Jバックグラウンド)(n=5)の大動脈根におけるプラークを分析する。同じ期間、正常な食餌を用いた野生型(WT)雄C57BL/6Jマウス(n=4)を健常対照として使用する。イソフルランによって安楽死させたマウスの大動脈根を正常食塩水ですすぎ、切除し、直ちにOCTに包埋し、切片作製のために凍結する。ApoE−/−ノックアウトマウスのアテローム性動脈硬化性プラークにおいて確認されたFAPの存在により、FAP中和抗体の静脈内注射によるin−vivo FAP阻害研究のためのこのモデルの使用の正当性が立証される(図12)。

実施例7:ヒト末梢血中の可溶性FAPを定量するためのサンドイッチELISAを確立した U型透明96ウエルマイクロタイタープレート(抗FAP抗体を被覆してFAPタンパク質を検出することができるプレート)を使用して、標準的なプロトコルを用いて、サンドイッチELISAを行うことができる。3から300ng/mLの濃度の100μLの組換えFAPタンパク質(rhuFAP)溶液をウエルに添加して、1時間、25℃でインキュベートする。試料のインキュベーション後、ウエルを2回洗浄し、1ウエルにつき100μLの第一の検出抗体(mAb FAP)を添加し、プレートをインキュベートする(1時間、25℃)。3回の洗浄段階の後、100μLの第二の蛍光検出抗体(1:3000希釈したもの)を添加し、インキュベートする(25℃で1時間)。インキュベーション後、ウエルを3回洗浄する。すべての試料を三重反復で試験し、結果を標準曲線に対して比較する。3〜300ngの精製ヒトFAPを使用して、アッセイ感度レベルおよび範囲を判定した(図8)。天然バックグラウンドをシミュレートするために、1μgの大腸菌(E.coli)全細胞抽出物を各試料に添加してもよい。この数は、ブランクシグナル標準偏差の3倍のバックグラウンドシグナル平均より上であるシグナルに相当する。FAP量と蛍光シグナルの間で観察される依存性を、現実の試料に関するFAP濃度の推定に用いることができる。結果を図8に示す。

実施例8:FAPはヒト血液凝固速度を加速する ROTEM/NATEM(ROTEM(登録商標)、ドイツMunichのPentapharm CO)技術を、製造業者の指示書に従って用いる。末梢血試料を健常発端者からクエン酸塩のチューブに採取し、組換えヒトFAP(rhu FAP 0、0.875μg/mL、1.750μg/mLおよび3.5μg/mL)で0から5時間までの間、調整する。対照血液試料は、組換えFAPなしでインキュベートする。NATEMアッセイからの代表ROTEM読出しは、FAPがヒト血液凝固速度を加速することを明らかにした(図9)。加えて、組換えヒトFAPで処置した健常患者血液試料では、凝固時間、血餅形成時間、アルファ角および血餅硬度が増加される。20ng/mL未満の内因性血漿FAPレベルを呈示する6名の健常発端者から血液を採取し、0.175μg/mL、1.75μg/mLおよび3.5μg/mLの用量の組換えヒトFAPで調整し、0、2.5時間および5時間、インキュベートする。それによって、FAPが凝固時間および血餅形成時間を加速し、アルファ角および最大血餅硬度を増すことが、観察される(図10)。これらの結果を、NATEM技術を利用することにより、さらに確認する。上で説明したように試料を処置する。そのようにして、5時間のインキュベーションで1.75ug/mLのFAPで調整したとき、ビークル処置対照と比較して、絶対凝固時間および血餅形成時間は、5/6の発端者において減少し、アルファ角は、5/6の患者において増加し、および最大血餅厚は、4/6の発端者において増加したことが判明した(図11)。

実施例9:FAPは易損性の薄いキャップの冠動脈線維性アテロームの内皮において発現される ヒトパラフィン包埋冠動脈プラークおよび内胸動脈からの横断切片(4μm厚)をスライドガラスにマウントする。95℃賦活化用バッファー(2mMクエン酸ナトリウム、pH7.6)中での20分のインキュベーション後、パラフィン包埋切片における抗原性賦活化処理を行った。FAPの触媒インサートに対して産生されたウサギポリクローナル抗体(A246、Ab28246、マサチューセッツ州ケンブリッジのAbcam)およびウサギアイソタイプ対照(Ab37415、Abcam)を使用して、FAPを染色した。マウスモノクローナル抗体(303108、BioLegend)およびそれに対応するアイソタイプ対照(400123、BioLegend)を使用してCD31を染色した。一次抗体をビオチン標識ヤギ抗マウス(115−066−003、ペンシルバニア州ウエストグローヴのJackson ImmunoResearch)およびビオチン標識ヤギ抗ウサギ(111−066−003、Jackson ImmunoResearch)で検出し、ABC染色キット(カリフォルニア州バーリンゲームのVector Labs)を使用して染色した。

ヒト冠動脈線維性キャップの内皮におけるFAP発現を判定するために、本発明者らは、心筋梗塞後に死亡した患者から得た破壊しやすいヒト冠動脈、および対照としての健常内胸動脈において、H&E染色を行った。免疫組織学的染色は、線維性アテローム内皮におけるFAP発現を明らかにした(図13)。

実施例10:FAP発現は末梢血と比較してヒト冠血栓でのほうが増進される ヒトパラフィン包埋血栓および末梢血切片からの横断切片(4μm厚)をスライドガラスにマウントした。95℃賦活化用バッファー(2mMクエン酸ナトリウム、pH7.6)中での20分のインキュベーション後、冠血栓および末梢血のパラフィン包埋切片における抗原性賦活化処理を行った。FAPの触媒インサートに対して産生されたウサギポリクローナル抗体(A246、Ab28246、マサチューセッツ州ケンブリッジのAbcam)およびウサギアイソタイプ対照抗体(Ab37415、Abcam)を使用してFAPを染色した。一次抗体をビオチン標識ヤギ抗ウサギ(111−066−003、Jackson ImmunoResearch)抗体で検出し、ABC染色キット(カリフォルニア州バーリンゲームのVector Labs)を使用して染色した。隣接パラフィン包埋切片におけるFAPについての免疫組織化学的染色は、末梢血に対してヒト冠血栓でのほうが増進されたFAP発現を明示する(図14)。

実施例11:FAPはヒト冠血栓における顆粒球によって発現される 心筋梗塞に罹患している患者の冠動脈から血栓を吸引した。クエン酸塩が添加されたチューブに各患者から5mLの末梢血を血栓吸引前1分未満に採取した。50μLのActilyseを含有する1mLのAcutaseに末梢血(1mL)および冠血栓材料を入れ、37℃で1時間、穏やかに振盪した。注射器からの軟質ゴムを使用するセルストレーナー(孔径40μm)による取捨により、細胞凝集物をさらに解離させた。次いで、両方の試料を400Gで5分間回転させ、上清を除去した。次いで、1μg/mLのFc受容体用ブロッキング剤を含有するFACSバッファー(1%FCSおよび5mM EDTAを含有するPBS)に細胞ペレットを再浮遊させ、30分間4℃でインキュベートした。その後、FAPに対する蛍光タグ付き抗体(クローンF19)、顆粒球に対する蛍光タグ付き抗体(CD66b、BioLegend 555724)、単球に対する蛍光タグ付き抗体(CD45、BioLegend 345809)およびTリンパ球に対する蛍光タグ付き抗体(CD3、BioLegend 555332)で細胞を標識した。

フローサイトメトリーを用いて、単球、T細胞および顆粒球を含む血栓白血球細胞集団に対するヒト末梢血でのFAP発現を定量する。定量分析は、血栓顆粒球においてFAP発現増進を明らかにした。他の分析した細胞集団ではFAPの発現増進を認めなかった(図15A〜F)。

実施例12:顆粒球におけるFAP発現はSTEMI患者の血栓において増進されるが、PAOD患者の血栓では増進されない 末梢動脈閉塞性疾患に罹患している患者の大腿動脈から血栓を吸引した。クエン酸塩が添加されたチューブに各患者から5mLの末梢血を血栓吸引の数秒前に採取した。血栓および血液検体をリン酸緩衝食塩水に入れ、処理のために研究所に移した。上の実施例11で与えた説明に従って、POAD血栓検体を調製した。

顆粒球特異的FAP発現が、急性アテローム血栓症に関連するかどうかを評価するために、本発明者らは、フローサイトメトリーを用いて、STセグメント上昇型心筋梗塞(STEMI)(冠動脈血栓)および末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)(大腿動脈血栓)に罹患している患者からの末梢血および閉塞性血栓におけるFAP発現を定量した。急性形成された冠血栓は、慢性末梢動脈由来血栓と比較して増加されたFAP発現を示した(図16)。

実施例13:血漿FAPレベルは急性冠症候群(ACS)を有する患者において上昇される 冠動脈疾患(CAD)、安定狭心症、不安定狭心症およびSTEMIを有さない患者から5mLの血液をクエン酸塩のチューブに採取した。血液を10分間、400Gで回転させ、血漿層を抽出し、後の分析まで−80Cで凍結させた。可溶性FAPについてのサンドイッチELISAを次のように行った。FAPの触媒インサートに対して産生されたウサギポリクローナル抗体(A246、Ab28246、マサチューセッツ州ケンブリッジのAbcam)を捕捉抗体として使用し、mAb FAPを検出抗体として使用した。3から5000ng/mL濃度のヒト組換えFAPタンパク質(rhuFAP)溶液をウエルに添加して、標準曲線を確立する。捕捉抗体で被覆した後、プレートを血漿試料および標準物質とともに1時間、25℃でインキュベートした。試料のインキュベーション後、ウエルを1ウエルにつき100μLのPBSで2回洗浄した。検出抗体(mAb FAP)を添加し、プレートをインキュベートした(1時間、25℃)。3回の洗浄段階の後、100μLの第二のHRP標識検出抗体を添加し、インキュベートした(25℃で1時間)。インキュベーション後、ウエルを3回洗浄し、ペルオキシダーゼ基質を添加して検出用シグナルを生じさせた。結果として生じたシグナルを、プレートリーダーを使用して読み取って、血漿試料中のFAP濃度を判定した。ELISA分析は、CADを有さない患者と比較してACSを有する患者でのほうが上昇したFAP血漿レベルをあきらかにした(図17)。

結論 アテローム性動脈硬化性プラークの線維性キャップは、内腔と血栓形成性壊死性コアの離隔に欠くことができない。線維性キャップの機械的強度はコラーゲンによってもたらされるので、コラーゲンを分解するMMPおよびシステインプロテアーゼは、プラーク不安定性および急性血栓イベントの発生と関連づけられる29−33。本研究は、構成的活性セリンプロテアーゼFAPとプラーク進行および易損性を結びつけ、(1)FAP発現が、ヒト大動脈アテロームと破裂しやすい冠動脈の線維性キャップにおいて増進されること、(2)FAPが、HASMCにおいて発現され、炎症性マクロファージ負荷量と相関すること、(3)FAPが、HASMCにおいてパラクリンシグナル伝達によりマクロファージ由来TNFαによって誘導されること、(4)FAPがヒトアテロームの線維性キャップのコラーゲンを切断すること、および(5)FAP介在コラゲナーゼ活性が、ヒト線維性キャップにおいてFAP遮断抗体により阻害されることを証明する。

非常に多くの研究が、マトリックス分解性コラゲナーゼ、例えばMMP1、2および9、ならびにシステインプロテアーゼ、例えばカテプシンSおよびK、を血管再構築およびプラーク破裂に関係づけている13、30、34。ここに提示する知見は、FAPが、ヒトアテローム性動脈硬化症におけるコラーゲン分解に関与する、初めて判明した平滑筋細胞由来セリンプロテアーゼである証拠を提供する。FAP発現は、急性心筋梗塞後に死亡する患者から単離される破裂しやすいヒト冠動脈の線維性キャップにおいて特に増進される。FAPの有害なコラーゲン分解活性は、線維性キャップにおけるFAP介在コラーゲン分解、および低コラーゲン線維性キャップ組織におけるその共局在によって証明される。これらの知見は、破裂しやすいプラークおよび急性冠症候群(ACS)を有する患者に適用することができるものであり、潜在的臨床的意義は高い。

炎症は、アテローム性動脈硬化性プラークにおいてコラゲナーゼを誘導することが証明されている、プラーク易損性のもう一つの重要な特徴である4、35、36。このパラダイムと一致して、本発明者らは、HASMCにおけるFAP発現が、中間型および進行したヒトアテローム性動脈硬化性プラークにおいてマクロファージ負荷量と関連することを証明する。FAPは、マクロファージによって発現されない。しかし、マクロファージ由来TNFαは、培養平滑筋細胞においてFAP発現の用量および時間依存的増加を誘導した。これらの結果は、FAPが、パラクリン媒介炎症経路により平滑筋細胞において誘導されることを示し、それによって、アテローム性動脈硬化症における炎症誘導コラゲナーゼ発現の概念を裏付ける証拠増加に寄与する6、11、29、37。このような知見は、TNFα経路などの重要な抗炎症性機序に対するアテローム保護的介入を調査するためのさらなる研究の動機になり得るだろう。

平滑筋細胞におけるその発現に加えて、構成的FAP発現をヒト大動脈内皮細胞においてもin vitroで検出することができる。内皮細胞活性化は、アテローム形成における重要な段階である38。活性化された内皮細胞は、それ自体が線維性キャップ分解性コラゲナーゼを発現し、線維性キャップ分解性平滑筋細胞と協同的に作用することも証明されている5、32、39。観察された内皮細胞のFAP発現能力は、内皮細胞と平滑筋細胞の両方による線維性キャップの協調リモデリングに関する概念を裏付ける。さらに、プラークへの血液由来炎症性細胞の動員の促進により、活性化内皮細胞もまたマクロファージ由来サイトカイン放出を増進し、平滑筋細胞を活性化し、そしてFAPを誘導し得る。したがって、活性化平滑筋細胞および内皮細胞は、プラーク不安定性を促進する点で「共犯者」として作用し得る。

アテローム形成性プロテアーゼは、易損性アテローム性動脈硬化性プラークのin vivo分子イメージングに活用することができる酵素的挙動を呈示する40。実際、最近の光イメージング研究は、カテプシンK酵素的切断後に増幅シグナルを出し、それによってin vivoイメージングについてのシグナル対ノイズ比を局所的に増加させる、プロテアーゼ特異的蛍光色素標識ペプチドを利用している8、9、41。プロテアーゼは、ヒト冠動脈プラーク易損性と関連づけられているので、FAPは、さらなるin vivo分子イメージング研究の標的としてのこの可能性を共有するだろう。FAP介在ゼラチナーゼ活性をin vitroで検出できるが、FAPに基づく分子イメージングの実現可能性を判定するためにはさらなる研究が必要である。

破裂しやすい冠動脈プラークおよび内皮細胞におけるFAPの発現は、ACSを有する患者へのさらなる調査の拡大の動機となる。本発明の研究は、FAP介在分解が、炎症性シグナル伝達によって誘導されることおよび遮断抗体によって中和され得ることを実証するものであり、それによって、アテローム性動脈硬化症および他のFAP関連炎症性疾患、例えば関節リウマチおよび腫瘍形成、におけるさらなるFAPターゲッティングのフィージビリティースタディーの実施を促すものである。

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