Food comprising the proline-specific protease, their preparation, and their use for degrading toxic or allergenic gluten peptides

申请号 JP2008552750 申请日 2007-01-30 公开(公告)号 JP2009525033A 公开(公告)日 2009-07-09
申请人 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.; 发明人 ルッポー エデンス,; デケル, エミリー デ;
摘要 本発明は、少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85の 水 分活性を有し、プロリン特異的プロテアーゼを含有する低温殺菌食品に関する。
【選択図】なし
权利要求
  • 少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85の水分活性を有し、プロリン特異的プロテアーゼを含んでなる低温殺菌食品。
  • 少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85の水分活性を有し、プロリン特異的プロテアーゼを含んでなり、それによって1w/w%未満のタンパク質またはペプチドを含んでなる食品。
  • 無グルテン食品である、請求項1または2に記載の食品。
  • 調味料、トッピング、サンドイッチの具、ソース、飲料、またはスプレッドなどのエマルジョンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の食品。
  • 低脂肪スプレッドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の食品。
  • 前記プロリン特異的プロテアーゼが1〜7のpH値、好ましくは2〜6のpH値で最適活性を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の食品。
  • 前記プロリン特異的プロテアーゼがアスペルギルス(Aspergillus)に由来する、またはセリンプロテアーゼのS28ファミリーに属する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の食品。
  • 前記プロリン特異的プロテアーゼが前記食品に添加されてから前記食品に低温殺菌が施される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の食品を調製する方法。
  • プロリン特異的プロテアーゼが低温殺菌食品に添加される、請求項1または2〜6のいずれか一項に記載の食品を調製する方法。
  • 無菌のプロリン特異的プロテアーゼが低温殺菌食品に添加される、請求項8または9に記載の方法。
  • 請求項の1〜7のいずれか一項に記載の低温殺菌食品の製造におけるプロリン特異的プロテアーゼの使用。
  • プロリンに富む食物によって引き起こされるあらゆる有害な効果を防止する、請求項11に記載のプロリン特異的プロテアーゼの使用。
  • セリアック病またはそれと関連した障害の臨床症状を予防するための請求項11に記載のプロリン特異的プロテアーゼの使用。
  • 前記食品がグルテン含有食物と組み合わせた消費に向けたものである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の使用。
  • 前記有害な効果または障害が、特にI型糖尿病、疱疹状皮膚炎、腸癌、腸非ホジキンリンパ腫、過敏性腸症候群、自己免疫甲状腺炎、膠原病、自己免疫脱毛症、および自己免疫肝炎などの自己免疫障害と、自閉症、統合失調症、ADHD、双極性気分障害、およびうつ病を含む精神障害とを含んでなるセリアック病に関連する、請求項12または13に記載の使用。
  • 無菌のプロリン特異的プロテアーゼ。
  • 说明书全文

    発明の詳細な説明

    [発明の分野]
    本発明は、プロリン特異的プロテアーゼを含んでなる食品、その調製、および毒性またはアレルゲン性グルテンペプチドを分解するためのその使用に関する。

    [技術背景]
    小麦、大麦、ライ麦、スペルト小麦、およびライ小麦中に存在する一般的な食餌性タンパク質であるグルテンの摂取が、人によっては疾患を引き起こすことが知られている。 グルテンはグルタミンとプロリンに富むグリアジンおよびグルテニンの複合混合物であり、いくつかの疾患を誘発する原因であると考えられる。 それらのアミノ酸組成のために、これらのグルテンの特異的部分はヒト胃腸管内におけるタンパク質分解に抵抗する。 その結果、特異的なプロリンに富むペプチドが蓄積でき、多様なこのようなグルテン由来ペプチドに対する不耐性などの望ましくない効果をもたらすかもしれない。 例えばセリアック病を患っている患者において、グルテンの観察される毒性の原因であるペプチドのアミノ酸配列について記載されている(Arentz−Hansenら、J.Exp.Med.、2000年;6:337〜342頁;Vaderら、Gastroenterology、2002年;122:1729〜1737頁)。

    セリアック病は広く蔓延している小腸の自己免疫疾患である。 セリアック患者のなかでは、様々な自己免疫障害、特にI型糖尿病、疱疹状皮膚炎、自己免疫甲状腺炎、膠原病、自己免疫脱毛症、および自己免疫肝炎の高い有病率が観察されている。 セリアック病には、精神医学的および神経学的症状が伴う場合もまたあり、プロリンに富むペプチドの乱された代謝が、広範囲に及ぶ帰結をもたらすかもしれないことが説明される。

    これまでのところ生涯にわたる無グルテン食餌のみが、セリアック病患者における臨床症状を効果的に予防できた。 これらの患者にとって不運なことに、グルテンは安価なタンパク質であり、興味深い応用可能性があるので、市販のスープ、醤油、ソース、アイスクリーム、ポテトチップ、およびホットドッグを含む多種多様な食材に利用される。 したがってグルテン不耐性患者は問題のあるグルテン分子の摂取を防止するために、詳細な食材一覧を必要とする。 結局のところ、50mg/日程度の少量のグルテン摂取が臨床症状の再来を招くかもしれない。

    現今では、本発明者らは、グルテン中に存在する問題のプロリンに富むペプチドが、ペプシン、トリプシン、キモトリプシンなどの胃および膵臓のペプチダーゼによる開裂に対して高度に抵抗性であることを理解する。 プロリンが関与するペプチド結合を加分解できる特異的酵素だけがプロリンに富む配列を広範に加水分解し、それによってセリアック病と関係のあるエピトープを破壊できる。 プロリルオリゴペプチダーゼ(EC3.4.21.26;Shanら、Science 297、2275〜2279頁)およびジペプチジルペプチダーゼIV(EC3.4.14.5;米国特許出願公開第2002/0041871号明細書)などの様々な酵素が、プロリンに富むペプチドの毒性の不活性化において有益な用途を有することが報告されている。 また国際公開第2002/45523号パンフレットにあるように、グルテン含有食材の抗原性低下におけるプロリン特異的プロテアーゼの可能なかかわりあいについて、ならびに例えば国際公開第03068170号パンフレットおよび国際公開第2005/027953号パンフレットのように、セリアックおよび関連疾患の臨床症状予防におけるこのような酵素の使用について言及する、いくつかの特許出願が公開されている。 ごく最近、十二指腸抽出物を使用することで、セリアック患者の治療における酵素治療法の有効性が実証された(Cornellら、Scandinavian Journal of Gastroenterology、2005年;40:1304〜1312頁)。

    国際公開第2002/45523号パンフレットは、プロリンに富むペプチドを含むポリペプチドのタンパク質分解で使用するためのプロリン特異的エンドプロテアーゼを特定する。 これは苦さを抑えるか、またはアレルゲン性を低下させるためのタンパク様食品中へのエンドプロテアーゼの組み込みについて記載している。 国際公開第2005/027953号パンフレットでは、この特定のエンドプロテアーゼが口内、食道内、胃内で酵素を活性化して、十二指腸内でその活性を持続させる広範な最適pHを示すので、それは食餌性グルテンの消化過程を支援する栄養補助食品として、理想的に適切であることが認められている。

    国際公開第2005/027953号パンフレットは、摂取に先だって食物から毒性のプロリンに富むペプチドを除去することで、毒性のプロリンに富むペプチドに対する身体の曝露を防止または最小化することを目指す。 これはまた、消化剤としての安定化酵素製剤の使用を教示する。 このアプローチでは、食材のプロリンに富むおよび/またはグルタミンに富むタンパク質配列を胃腸管通過中に分解するため、酵素が食材と共に摂取される。 しかし国際公開第2005/027953号パンフレットによれば、酵素を十分に活性に保つため、酵素製剤は、水分活性が0.85未満であるプロリンに富むおよび/またはグルタミンに富む食材にのみ組み込んでもよい。 食品を長期間保存する場合、水分または湿気との接触は避けるべきであり、したがって乾燥食品の使用が示唆される。 この想定は、エンドプロテアーゼと組み合わせることができる食材の選択数に制限を課す。

    マーガリンまたは類似したスプレッドなどの水分含有食材中での酵素製剤の使用は、一般に広く当該技術分野で知られている。 しかしほとんどの場合、酵素は加工助剤として添加され、長期に渡る酵素活性、すなわち製品の包装後に持続する活性は意図されない。 例えば独国特許出願公開第10104945A号明細書は、乳化剤または安定剤を使用しない、リン脂質と、例えばトランスグルタミナーゼなどの酵素とを含有する低脂肪スプレッドを教示する。 製品の生産段階における短時間のインキュベーション期間の後、95℃で2〜3分間加熱してトランスグルタミナーゼが不活性化される。

    国際公開第95/28092号パンフレットは、食物に適した油中水エマルジョンを安定化するためのポリオールなどの安定剤の使用に関し、エマルジョンは酵素などの熱に不安定な化合物を含んでなる。 前述の2件の出願に反して、国際公開第95/28092号パンフレットは、酵素活性の長期安定化を目指す。 そのために、水相中の40および50%のグリセロールの量が例示される。 しかしこのような大量のポリオールの食品への組み込みは、認められないか、または官能的に許容できないかのどちらかである。

    [発明の説明]
    現在、高水分活性を示し、大量の酵素安定剤を欠く食品中の成分として、プロリン特異的プロテアーゼを使用してもよいことが分かっている。 このような製品は、関連酵素活性の劇的な損失なしに、低温殺菌して適切な貯蔵性を保証することさえできる。 本出願では、サンドイッチの具と、トッピングと、調味料と、ソースと、様々な飲料と、低脂肪スプレッドなどのエマルジョンなどの食品中で、プロリン特異的プロテアーゼが十分に活性のままであり、胃においてプロリンに富むグルテン配列の適切な加水分解が達成されることが実証される。 一般に、食品の味は酵素の存在によって影響または改変されない。

    当該技術分野では、高水分活性条件下において、大部分の酵素は低温殺菌条件を乗り切れないと考えられているので、酵素が低温殺菌処理を乗り切るという事実は意外なことである。 同様に高水分活性を有する製品中で保存すると、酵素の大部分は1週間以内に不活性になることが予期される。 したがって高水分活性を有する食品が冷蔵条件下で貯蔵されるならば、本発明に係る酵素が1年までの期間にわたりその活性を維持することもまた、意外なことである。 冷蔵条件下とは、10℃未満、好ましくは0〜10℃、より好ましくは2〜8℃の温度を意味する。

    したがって本発明は、少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85の水分活性を有し、プロリンに富むタンパク質配列を解毒するのに十分高いプロリン特異的タンパク質分解活性を含有する、低温殺菌された保存安定性食品に関する。 毒性量のプロリンに富んだタンパク質配列は、1mgよりも高いグルテン量中に存在すると見なされる。

    本発明のその他の態様に従って、少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85の水分活性を有し、プロリンに富むタンパク質配列を解毒できるプロリン特異的タンパク質分解活性を含有する保存安定性食品が開示され、食品は1w/w%よりも少ないタンパク質またはペプチドを含んでなり、好ましくは食品は無グルテンである。

    本発明はまた、無菌のプロリン特異的プロテアーゼにもに関する。 無菌とは生物を含まないことを意味し、好ましくはまた微生物胞子を含まないことも意味する。 プロリン特異的プロテアーゼは、好ましくは微生物を含まないように濾過され、好ましくはまた微生物胞子を含まない。

    穀物タンパクは、アルブミン、グロブリン、プロラミン、およびグルテリンに細分できる。 グルテンは、デンプンおよび水溶性構成要素を除去するための洗浄後に残る、小麦、ライ麦、スペルト小麦、オート麦、大麦、トウモロコシ、および米のような穀物の水不溶性タンパク質画分である。 それはグリアジンおよびグルテニンに細分できる。 グルテニンは、高および低分子量サブユニットに細分できる。 グルテンタンパク質のさらに詳しい考察は、「小麦グルテン(Wheat Gluten)」(P.R.ShewyおよびA.S.Tatham編、Cambridge:Royal Society of Chemistry、2000年)、またはWieser(1996年)Acta. Paediatr. Suppl. 412:3〜9頁によるレビューを参照されたい。

    IUMBからの全ての酵素の国際的に認められる分類および命名法スキームに従って、オリゴペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、およびエンドプロテアーゼは、内部ペプチド結合を加水分解する酵素であり、それは次にそれらの触媒機序に基づいてサブ−サブクラスに分割される。 本発明の目的に適した好ましいプロリン特異的プロテアーゼは、国際公開第02/45524A号パンフレットおよび国際公開第2005/027953A号パンフレットで開示されるようなA. ニガー(niger)からの酸安定およびペプシン安定エンドプロテアーゼであり、それはまたプロリン残基のカルボキシル側でペプチドおよび無傷のタンパク質を切断でき、非常に低いpH条件およびペプシン存在下でペプチドおよび無傷のタンパク質を切断することもできる。 このエンドプロテアーゼは酸性条件下で酵素ペプシンの存在を乗り切り、十二指腸全体においてその活性を持続する可能性が高い。 最も好ましいエンドプロテアーゼは、食品等級の真菌アスペルギルス(Aspergillus)に由来するプロリン特異的エンドプロテアーゼ、またはS28ファミリーのセリンプロテアーゼに属するプロリン特異的エンドプロテアーゼである。

    水分活性は物質内の水の相対的な利用可能性である。 これは当該技術分野で、水蒸気圧を同一温度における純水のそれで除したものと定義される。 したがって純粋蒸留水は、正確に1の水分活性を有する。 水分活性は食品中の水分含量(水の%)とは異なる。 水分含量が総水分、すなわちサンプル中に存在する結合水と遊離水とを足した量であるのに対し、水分活性は、遊離水分の測定のみを提供し、通常a または平衡相対湿度百分率(%ERH)として表現される。 食品の水分活性は、食品と周囲空気との間に平衡状態が確立された際の食品近辺の空気の定常相対湿度である。 次にこの定常相対湿度は、百分率(0〜100%)で表現される場合は「%ERH」と称され、または0〜1.0の値として表現される場合は「水分活性」と称される。 水分活性判定方法は、AOACインターナショナル分析公定法(1995年)の方法978.18で詳述される。

    熱処理とは、本明細書中で、少なくとも65℃、好ましくは少なくとも70℃で、少なくとも2秒間、好ましくは少なくとも20秒間の熱処理を意味する。 このような熱処理の例は、ミルクに応用されるような低温殺菌、すなわち72℃で15秒間の加熱である。 低温殺菌は、当業者に知られている概念である。 このようにして得られた食品は、改善された貯蔵寿命を有する微生物的に安全な製品である。

    食品とは、ベーキング、フライまたは調理などの事前の熱処理なしでの消費を意図する製品または食物成分を意味する。 延長されたまたは改善された貯蔵寿命を有する食品は、その間の製品の官能特性ならびに微生物安全性が保証される、少なくとも1週間から1年以上の貯蔵寿命を有するものと理解される。 明らかに許容可能な貯蔵寿命は、食品の実際の保存条件に強く依存する。 多くの生鮮食品は、それらの貯蔵寿命を最大化するために冷所に保存しなくてはならない。

    安定剤、特にグリセロール、ソルビトール、スクロース、ポリプロピレングリコール、トレハロース、マルトデキストリン、乳糖、およびグルコースなどのポリオールが本発明の食品中で使用される場合、その量は一般に食品の10重量%未満、好ましくは5重量%未満である。 好ましくは本発明に係る食品は1%w/w未満のカゼインを含有し、より好ましくは本発明に係る食品はカゼインを含有しない。

    丸薬または錠剤形態のプロリン特異的プロテアーゼの摂取は、グルテン不耐性患者がこのようなグルテン含有食品を安全に摂取できるようにするかもしれない。 しかし現在、プロテアーゼはまた、それ自体はグルテンを含まないか、または少量のグルテンを含有してもよいが、一般にグルテン含有食材と組み合わされる食品に、好都合に組み込んでもよいことが分かっている。 より好ましくはエンドプロテアーゼを含有する本発明に係る食品は、当該技術分野で「無グルテン」と見なされる食物成分である。 食品規格(Codex Alimentarius)の「無グルテン食物のコーデックス基準(Standard for Gluten−Free Foods)」(Codex Stan 118−198)に従って、グルテン含有穀物に由来する食物成分の窒素含量は、それらが無グルテン食物中で使用される場合、乾燥ベースで100gの製品あたり0.05g(50mg)を超えてはならない。

    本発明に従って、1食当たり0.5PPUよりも高いプロリン特異的タンパク質分解活性を含んでなる食品が開示され、すなわち1食分に存在する酵素活性は25mgのグルテンを加水分解できる。 1食分は1回の食事中、すなわち一般に1時間以内、好ましくは40分以内に摂取される食物の量である。

    プロリン特異的プロテアーゼのためのキャリアとして好ましい食品は、冷蔵保存される食品である。 プロテアーゼを含有する食品が、調味料、すなわちその他の食物、特にグルテン含有食物の風味を増強するのに使用される食材であることが特に好ましい。 調味料は、家庭およびレストラン、軽食堂、およびスーパーマーケットに豊富に存在し、典型的に長期貯蔵寿命を有するという利点を有する。 調味料の好ましい例は、トマトソースまたはトマトケチャップである。 このような製品は典型的に4.2未満、より好ましくは4.0未満のpHを有し、これはそれらが限定的低温殺菌処理のみを必要とすることを意味する。 限定的低温殺菌処理を必要とし、活性プロリン特異的プロテアーゼのためのキャリアとして非常に適切なその他の酸性製品の例は、果汁および果実濃縮物である。 実際には、ボトル入り酸性化水または炭酸水でさえも酵素のための優れたキャリアを提供する。 野菜または果実濃縮物のような「ショット」もまた、このカテゴリーの範囲内である。 同様にベンゾエートまたはソルベートのような食品等級保存料を含有する酸性製品は、酵素のための優れたキャリアを提供する。 例えばトッピングまたはサンドイッチの具は、典型的に0.85を超える水分活性値を有するパンなどのグルテン含有食物と組み合わせて摂取される。 またコーラなどの低温殺菌を全く必要としない非常に酸性の製品は、プロリン特異的プロテアーゼがこれらの条件下で顕著に安定していることから、優れたキャリアを提供する。 さらに酵素は、高濃度の生きたプロバイオティクスを含有する製剤とかなりの適合性を有する。 通常このようなプロバイオティクス製品は0.95よりも高い水分活性を有し、4.0未満のpHによって安定化する。

    さらに本発明は、食品に低温殺菌処理を施した後に、プロリン特異的プロテアーゼが食品に添加される、本発明の酵素製剤を含有する食品を調製する方法に関する。 このアプローチでは、酵素は既に低温殺菌された製品に無菌で添加できる。 このようなアプローチのための実現技術の例は、例えばテトラパック(TetraPak)によって販売されるような無菌注入技術(Tetra Aldose(商標)S;例えばhttp://www.tetrapak−processing.de/produkte/pdf/aldose.pdfを参照)である。

    さらに別の本発明の実施態様は、油中水または水中油エマルジョン、スプレッド、好ましくはマーガリンまたは低脂肪スプレッドである。 グルテン含有食材と一緒の摂取を意図する広く使用される低脂肪スプレッドは、酵素的消化剤のためのキャリアとして非常に適切である。 これらの製品の高含水量は大量の酵素の組み込みを可能にし、製品は典型的に冷蔵条件で、慣例的に7℃以下の温度で保存される。 酵素が水相に拘束されるので、このようなエマルジョンはまた、少なくとも0.85の水分活性を有する製品のカテゴリーの範囲内である。

    本発明のこの実施態様の別の重要な利点は、パンおよびスプレッドが口内で完全に混合され、それによってプロリン特異的プロテアーゼによるグルテン分子の分解が開始されることである。 さらに脂肪族化合物の存在は、口感覚性(orosensory)機序を通じて胃内容物の排出を阻害することが知られている。 どちらの機序も、酵素およびグルテン間により強でより長い相互作用期間をもたらすので、糜粥が十二指腸に到達する前に酵素およびグルテンは最大に相互作用できる。 十二指腸は、プロリンに富んだグルテン分子の病原性反応を誘発できる胃腸管の最上流部分であることが知られているので、これは重要である。 プロリン特異的プロテアーゼ、特に国際公開第2002/45523A号パンフレットに従ったA. ニガー(niger)からの酸安定プロリン特異的エンドプロテアーゼは、それが口、食道、胃、および十二指腸内で活性であるようにする広範な最適pHを有することが分かった。 プロリン特異的エンドプロテアーゼをエマルジョンに組み込むと、このように高い残効性を示すという事実はかなり意外である。 既存の文献は、乳化剤との接触、および引き続くエマルジョン内への組み込みが、酵素に顕著なストレスを与えて、容易に酵素不活性化をもたらすというそれらの結論において、かなり一致している(例えばGatoraeら、酵素の安定性および安定化「(Stability and Stabilisation of Enzymes)」、Elsevier Sci.Publish.1993年、329頁、またはDeRoosおよびWalstra、「コロイドおよび界面B:バイオ界面6(Colloids and Interfaces B;Biointerfaces 6)(1996年)201〜208頁を参照されたい)。したがって本発明に特に適するのは、次のような酵素である。
    ・プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性を有し、
    ・国際公開第2002/45523号パンフレットの配列番号2と同一のアミノ酸配列を有するか、または国際公開第2002/45523号パンフレットの配列番号2の1〜526のアミノ酸と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有する。 アミノ酸配列間の同一性レベルは、国際公開第2002/45523号パンフレットの15頁で言及される方法によって判定される。

    本発明に係る酵素製剤は、消化するタンパク質総量に対応する量で食品に組み込まなくてはならない。 例えば低脂肪スプレッドは、典型的にスライスパンに塗布される。 18グラムのパン1切れあたり、典型的に5グラムのスプレッドが塗布される。 パンは典型的に8%のタンパク質を含有し、その内7%がグルテンであり、すなわちパン1切れは1.5グラムのタンパク質を含有する。 国際公開第2002/45523号パンフレットに記載される酵素を使用して、存在する全ての、すなわちグルテン画分を含むタンパク質の胃腸消化中に適切な加水分解を達成するために、存在するタンパク質1グラムあたりおよそ20PPUが必要である(定義については材料と方法セクションを参照されたい)。 したがって1.5グラムのタンパク質の消化には1.5倍の20PPUが必要であり、30PPUに相当する。 これらの30PPUは、5グラムの低脂肪スプレッドによって提供されなくてはならず、これは6000PPU/kg低脂肪スプレッドの酵素活性を意味する。 本発明に係る酵素製剤の組み込みは、低脂肪スプレッドの調製および特性にほとんど影響しない。 しかしタンパク質分解活性を有する酵素での処理に際して、ミルク製品で報告されることが多い苦さの影響を避けるために、本発明に係るスプレッドは、好ましくはカゼインなどの疎水性タンパク質を欠いている。 したがってスプレッドの味は、発酵乳清タンパク質を組み込んで、典型的なバター香を提供することにより改善してもよい。 本発明者らは、発酵乳清中に存在する残留タンパク質がプロリン特異的酵素によって加水分解されるが、これがネガティブな官能効果を有さないことを発見した。 プロリン特異的プロテアーゼは、好ましくはエマルジョンを形成する前に水相に添加され、最も好ましくはプロリン特異的プロテアーゼは水相の低温殺菌後であるが、エマルジョン形成前に無菌で添加される。 効率的な低脂肪スプレッド生産のためのいくつかの方法が存在する。 一方法によれば、乳化剤、香料、ビタミン、および色素を含有する油相を中程度に加熱したまま、油の質に悪影響を与えないように穏やかに撹拌する。 次に水相および油相を混合してボテーターに供給する。 エマルジョン調製に関するより詳細な説明は、次の文献にある。 David R. Erickson編、「ダイズ加工および使用の実用的ハンドブック(Practical handbook of Soybean Processing and Utilization)」より、Moustafa、AOCS Pressおよびアメリカ大豆協会による共同出版。 現今では、植物ステロール/スタノールまたはアラキドン酸などの健康促進化合物を組み込んだスプレッドは、人気が上昇中である。 これらは油可溶性化合物であるため、水相中の酵素の安定性はこのような化合物によって影響されない。

    したがって本発明は、本発明の酵素製剤を含有する食品を調製する方法に関し、プロリン特異的プロテアーゼが、食品に低温殺菌を施す前または後のどちらかで食品に添加される。

    原則として、プロリルオリゴペプチダーゼ(EC3.4.21.26)またはジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV、EC3.4.14.5)またはジペプチジルペプチダーゼIIl(DPPII、EC3.4.14.2)のような、プロリン残基が関与するペプチド結合を加水分解できるその他の酵素もまた適用できる。 これらのプロテアーゼは、Augustynsら(Current Medicinal Chemistry、2005年、12、971〜998頁)によって記載されている。 しかしプロリン特異的プロテアーゼが、グルテン含有食物、またはグルテン含有食物と組み合わせた使用を意図する食品のどちらかである食品中において、消化剤として適切であるためには、プロリン特異的プロテアーゼは、i)胃で一般的な酸性pH値、好ましくはpH5未満の下で適切な活性を可能にする最適pHを示し、ii)これらの酸性条件下で胃腸タンパク質分解酵素ペプシンの存在を乗り切り、iii)少なくとも食品の貯蔵寿命にわたって、水含有環境内で活性を保たなくてはならない。 さらに補酵素を含めて、グルテンタンパク質の加水分解に向けた相乗作用を得ることも可能である。 明らかに、補酵素は食品中でプロリン特異的酵素と同じ安定性要件を満たさなくてならない。 本発明はまた、セリアック病またはそれと関連した障害の臨床症状の予防のために、上述のように少なくとも0.85の水分活性を有する低温殺菌食品の製造における、消化剤として使用するためのプロリン特異的プロテアーゼの使用にも関する。 好ましくは、食品はグルテン含有食品と組み合わせた摂取を意図する。

    セリアック病は、特定のプロリン−およびグルタミンに富んだペプチドへの不耐性によって引き起こされる。 これらのペプチドの不完全な分解は、セリアック病の発生および重篤性に寄与する。 セリアック病は、ときとして精神医学的および神経学的症状を伴う。 1979年に既にPanksepp(Trends in Neuroscience、1979年、2:174〜177頁)はオピオイド過剰説を提案し、その中で乱されたオピオイド代謝が、自閉症発病機序の一部であると提言した。 したがって本発明のエンドプロテアーゼを含有する食品はまた、全てプロリンに富む食餌性タンパク質の摂取と関連している、自閉症、統合失調症、ADHD、双極性気分障害、およびうつ病を含む精神障害を患っている患者にも使用できる。 セリアック病に関連したその他の障害は、特にI型糖尿病、疱疹状皮膚炎、腸癌、腸非ホジキンリンパ腫、自己免疫甲状腺炎、膠原病、自己免疫脱毛症、および自己免疫肝炎などの自己免疫障害を含んでなる。 さらに過敏性腸症候群(IBS)は、難消化性のプロリンに富むタンパク質配列と結びつけられている。 本発明から恩恵を被ることができる患者は、これらの前述の障害のいずれかを患っていてもよい。 このような患者はあらゆる年齢であってもよく、成人および子供を含む。 特に子供は、毒性グルテンペプチドへの初期曝露の防止が疾患の初期発生を予防できることから、予防的利点の恩恵を被る。 このグループでは、調味料、特にマヨネーズおよびケチャップの人気が高いので、プロリン特異的エンドプロテアーゼ製剤の組み込みは、このカテゴリーの患者に特に有利である。 予防法に適格の子供は、例えばHLAタイピングなどの素因に関する遺伝的試験、家族歴、T細胞アッセイ、またはその他の医学的手段によって同定できる。

    [材料と方法]
    [酵素活性試験]
    37℃でpH4.6のクエン酸/二リン酸ナトリウム緩衝液中において、スイス国ブーベンドルフ(Bubendorf,Switserland)のBachemからのCBZ−Gly−Pro−pNAを基質として使用し、A. ニガー(niger)プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性を試験した。 反応生成物を405nMで分光光度的にモニターした。 405nmにおける時間内の吸光度増大が、酵素活性の尺度である。 プロリンプロテアーゼ単位(PPU)は、規定条件下、基質濃度0.37mMのZ−Gly−Pro−pNAで、1分あたり1μmolのp−ニトロアニリドを放出する酵素量と定義される。

    [T細胞刺激性エピトープの定量的検出]
    モノクローナル抗体ベース(mAB)競合アッセイを使用して、動的胃腸生体外モデルの可溶性画分中のグリアジンおよびグルテニン双方のT細胞刺激性エピトープの濃度を判定した。 そのために50mMのpH7.0のNa HPO /NaH PO 、150mMのNaCl、0.1%のトウィーン(Tween)−20、およびドイツ国ペンツベルクのロシェ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics GmbH(Penzberg,Germany))からのプロテアーゼ阻害剤カクテル(完全)を含有する緩衝液中でサンプルを希釈した。 アッセイを、以前に記載されたように(Spaenij−Dekkingら、(2004年)Gut 53、1267〜1273頁)、2回実施した。

    [1D SDS−PAGEおよびウエスタンブロットによるタンパク質分析]
    動的胃腸生体外モデルの異なるサンプルの固体(沈殿物)画分中に存在するT細胞刺激性エピトープのレベルを判定するために、1D SDS−PAGE実験を実施した。 固体画分を6×タンパク質サンプル緩衝液(60%グリセロール、pH6.8の300mMトリス、pH8.0の12mM EDTA、12%SDS、864mM 2−メルカプトエタノール、0.05%ブロモフェノールブルー)中で可溶化し、12.5%SDS−PAGEゲル上で泳動した。 タンパク質を米国イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce(Rockford,IL,USA))からのインペリアルプロテインステイン(Imperial Protein Stain)を使用して直接視覚化し、またはα−およびγ−グリアジン(Spaenij−Dekkingら、(2004年)Gut 53、1267〜1273頁)、およびHMWおよびLMW−グルテニン(Spaenij−Dekkingら、Gastroenterology 2005年、797〜806頁)からの刺激性T細胞エピトープに特異的なmAbsを用いた、PVDF膜へのウエスタンブロット後に視覚化した。

    [抗体ベースの競合アッセイ]
    抗体ベースのアッセイを作り出すために、Balb Cマウス中で既知のT細胞刺激性α−、γ−グリアジン、およびLMWグルテニンペプチドに対して、モノクローナル抗体を産生させた。 マウス脾臓とマウス骨髄腫細胞系との融合後、抗体産生ハイブリドーマを得た。 これらを限界希釈によってクローンし、これらの細胞によって分泌されたmAbsについて、mAb競合アッセイにおけるそれらの効用を試験した。 各特異性毎に1つまたは2つの適切なmAbを選択し、異なるmAbによって認識されたエピトープを判定した(表1)。

    mAbsを用いて、無傷のタンパク質、および約11個のアミノ酸のサイズの小型ペプチド(T細胞エピトープのサイズ)の双方に存在するT細胞刺激性エピトープを低レベルで定量的に検出できる、競合アッセイが開発された。

    競合アッセイでは、異なる希釈のサンプルを固定濃度のビオチン化指標ペプチド(T細胞エピトープをコードする)と混合した。 グリアジンアッセイの定量化のために、10μg/mL〜10ng/mLの濃度範囲で、ヨーロッパグリアジン基準IRMM−480を使用して標準曲線を作成した。 LMWグルテニンのアッセイは、T細胞刺激性エピトープをコードする合成ペプチドを1μg/mL〜1ng/mLの範囲で使用して定量化した。 一方HMWグルテニンのアッセイは、組み換えHMWグルテニンタンパク質のペプシン/トリプシン消化物を1μg/mL〜1ng/mLの範囲で使用して定量化した。 抗体結合ビオチン化ペプチドの存在は、標識ストレプトアビジンを用いて視覚化した。

    [実施例1]
    [プロリン特異的エンドプロテアーゼの濾過滅菌]
    濾過は、滅菌酵素に好ましい選択肢を提供する。 滅菌する酵素溶液は、クロマトグラフィーでの純化後に得てもよく、酵素溶液は1種以上の溶剤またはその他の添加剤を含んでなって酵素活性を調節し、酵素をさらに安定化してもよい。 適切な安定剤は、例えばソルビトールおよびグリセロールである。 グリセロール溶剤は、酵素溶液の10〜70w/w%、またはより好ましくは30〜60%w/wの濃度で添加してもよい。

    濾過滅菌は、無菌濾過器を通して酵素溶液をポンピングすることで達成できる。 好ましくは、濾過滅菌は前濾過とそれに続く0.22nmカートリッジ濾過器を通じた第2の濾過によって実施される。 このように滅菌された酵素溶液は、無菌の供給装置を経由して、あらかじめ低温殺菌されたまたは滅菌された水性食品または食物成分を含有する保持容器に入れることができる。 酵素含有製品または食物成分は、直接、包装できる。 酵素溶液を脂肪スプレッドまたは低脂肪スプレッドに組み込まなくてはならない場合、滅菌酵素溶液を低温殺菌水相と混合して、次にそれを適切な高温で脂肪または油と共に乳化できる。

    実験室規模で使用するための滅菌酵素溶液を得るために、A. ニガー(niger)から得られたプロリン特異的エンドプロテアーゼの溶液を次の手順によって濾過滅菌した。 シリンジを1mL酵素濃縮物で充填し、ミリポア(Millipore)からの無菌濾過器である表面積4.91cm のミレックス(Millex)GV 0.22μmをシリンジ上部に入れた。 手で圧力を加えると、酵素溶液は0.22μmミリポア濾過器を通して押し出され、それにより無菌の濾過前の酵素溶液の活性に相当する酵素活性のある滅菌溶液が得られる。

    [実施例2]
    [プロリン特異的エンドプロテアーゼの不存在および存在下での動的胃腸生体外モデルにおけるパンの消化]
    胃腸管を経由する食物の通過は非常に動的な過程であり、静的生体外モデルではシミュレートできない。 オランダ国ザイスト(Zeist,The Netherlands)のTNOによって開発されたような動的胃腸生体外モデルは、胃および小腸内の連続動的過程を高度にシミュレートする実証された消化モデルである(Minekusら、ATLA、1995年、23、197〜209頁;Larssonら、J.Sci.Food.Agic.1997年、74、99〜106頁)。 これらのモデルにおいて得られた結果は、ヒトおよび動物での研究において得られた結果と非常に良く似ていることが示されている。

    A. ニガー(niger)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの不存在および存在下における精白パンの消化を試験するために、この動的胃腸モデルで実験を実施した。 これらの実験は、半固体食物摂取後に、若年成人において表されるような胃腸管の平均的生理学的条件下で実施された。 パンは最初に、A. ニガー(niger)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの不存在(基準)および存在下で「かみ砕かれ」、すなわち5分間唾液酵素と注意深く混合された。 実際の実験では、100PPUプロリン特異的エンドプロテアーゼの不存在または存在下で、70グラムの精白パン(5gのグルテンを含有する)を11mLの胃液と共に均質化した。 均質化後、25%の混合物を生体外消化システムに入れた。 胃の区画内で、pHは胃酸の分泌によって徐々に低下した。 「飲み込まれた」唾液酵素(アミラーゼ)が即時に存在したのに対し、胃の酵素(ペプシンおよび胃のリパーゼ)は徐々に分泌された。 ペプシンは5.0未満のpHで活性化した。 胃内容物は2.5時間中に幽門弁を経由して、小腸に徐々に送達された。 十二指腸区画において、pHは炭酸水素塩の分泌によってpH6.5に制御された。 アミラーゼ、リパーゼ、およびタンパク質分解酵素(例えばトリプシンおよびキモトリプシン)、および胆汁を含有する膵液が、十二指腸区画内に徐々に分泌された。 分泌産物はぜん動混合によって胃から来る食物と混合され、徐々に空腸および回腸区画に移される。

    4〜5時間後、およそ80%の小腸内容物が、「回盲弁」を経由して「大腸」(試料採取瓶)に徐々に送達された。 半透性の中空繊維膜システムを通じて、モデルの空腸および回腸区画からの消化済み化合物を連続的に透析した。 透析瓶は2時間毎に取り替えた。

    動的システムの区画を経由するグルテンタンパク質(および食物)の通過中に、t=0、15、30、45、60、90、120、150、180、および240分の時点で、胃、十二指腸、および空腸区画から、およそ2mLの少量のサンプルを採取した。 採取直後に酵素活性を停止するため、サンプルをドライアイス中で凍結させた。 各実験の終わりに、様々な区画内の残留物をドライアイス上に採取して、各10mLの2本の試験管内に零下20℃で保存した。

    [実施例3]
    [毒性グルテンエピトープの存在に関する生体外消化されたパンの試験]
    食物サンプル中のグルテンペプチドの存在を測定するために使用できる、次の2つのタイプの試薬が利用できる。 セリアック病患者の小腸から単離されたT細胞クローン、および様々なグルテンペプチドに特異的なモノクローナル抗体。 T細胞クローンは、グルテンペプチドが疾患の素因をつくるHLA−DQ2またはHLA−DQ8分子と結合すると、これらに反応する。 これらの炎症性T細胞応答は、セリアック病の根本原因と考えられる。 α、γ−グリアジン、LMW−グルテニン、およびHMW−グルテニン中のペプチドに特異的なT細胞クローンは入手できる(Wal van de,Y.ら、Eur.J.Immunol.29、3133〜3139頁(1999年)およびVaderら、Gastroenterology、122;1729〜1737頁(2002年)参照)。 T細胞刺激性α−グリアジン、γ−グリアジン、および低分子量(LMW)および高分子量(HMW)−グルテニンペプチドに特異的なモノクローナル抗体もまた入手でき、食物サンプル中のこれらのペプチドを検出するための競合アッセイに組み込まれている(Spaenij−Dekkingら、Gut:53、1267〜1273頁(2004年))。

    プロリン特異的エンドプロテアーゼ添加ありまたは添加なしで調製され、t=0、15、30、45、60、90、および120分の時点で採取された胃および十二指腸画分を、プロリン特異的エンドプロテアーゼの不活性化を意図する次のプロトコルに従って前処理した。 最初に1M NaOHを使用してサンプルのpHを11〜12に上昇させ、次に即座に1M HCLを使用して中和した。 14,000rpmで10分間の遠心分離後、様々なサンプルの上清ならびにペレットを採取して85℃で10分間加熱し、あらゆる残留酵素活性を停止した。 pH7の20mMリン酸緩衝液、150mM NaCl、0.1%トウィーン−20、EDTAなしの2×プロテアーゼ阻害剤ミックス中で、上清の1:40、1:200、1:1000、および1:5000の希釈物を調製した。 これらの希釈物ならびにペレット画分を翌日の測定まで−20℃で保存した。

    サンプル解凍後、α−およびγ−グリアジン、ならびにLMW−およびHMW−グルテニンに特異的なモノクローナル抗体との競合アッセイで、サンプルの水溶性画分を試験した。 この目的で、材料と方法セクションで示したようにサンプルを処理し、いくつかの希釈物を測定した。 これらの水溶性胃サンプルを用いて得られた結果を図1(プロリン特異的エンドプロテアーゼ不存在下で生成)、および図2(プロリン特異的エンドプロテアーゼ存在下で生成)に示す。 HMW−グルテニンを除いて、全てのグルテン構成要素が検出できた。 得られたデータは、A. ニガー(niger)からのプロリン特異的エンドプロテアーゼの添加が、可溶性画分中のこれらのグルテンタンパク質の存在に対して劇的効果を与えることを明らかに示し、t=0(すなわち経口製剤への酵素添加後1分未満)の時点でさえ、グルテンタンパク質/ペプチドの存在の強力な減少が観察できる。

    別の実験では、胃サンプルの水不溶性画分(すなわちペレット)に、SDS−PAGEとそれに続くPVDF−膜上への分離タンパク質の転写を施した。 次にこれらの膜をα−グリアジン特異的抗体(図3)で染色した。 抗体がプロリン特異的エンドプロテアーゼのない全ての画分でグリアジンを検出する一方、プロリン特異的エンドプロテアーゼの添加は45分後の時点で、シグナルの強力な減少を引き起こした。 90分および120分の時点では、プロリン特異的エンドプロテアーゼの存在下で消化された材料から得られた胃サンプル中では、グリアジンはほとんど検出できなかった。

    これらのデータから、プロリン特異的エンドプロテアーゼがひとたび水溶性画分に入ると、それらはグルテン分子の分解において高度に効率的であると結論づけることができる。 このアッセイで使用された抗体は、T細胞刺激に必要とされるよりも短いアミノ酸伸長に対して特異的であるので、これはプロリン特異的エンドプロテアーゼでの処理が、水溶性画分中の潜在的に有害なグルテン様分子の強力な減少をもたらすことを示唆する。 特にこれらの水溶性ペプチドはセリアック病に関係した受容体部位と効率的に反応することが期待できるので、水溶性グルテン画分で得られたこれらのデータは生体内条件と高度に関連する。

    全く意外にも、プロリン特異的エンドプロテアーゼはまた、水不溶性相に存在するグルテン分子も加水分解できる。 90分後、酵素で処理した画分中にグリアジン分子はもはや検出できず、一方、対照サンプル中にはこのような分子がなおも存在した。

    総合してこの実施例に記載される結果は、本発明に係るプロリン特異的エンドプロテアーゼが、ヒト胃内に存在する条件を模倣する条件下で、グルテンを分解できることを示唆する。 さらに酵素はそれを非常に効率的にできるので、実質的に毒性グルテンエピトープが残留しない。

    [実施例4]
    [プロリン特異的エンドプロテアーゼと低脂肪スプレッド生産との適合性]
    プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性が、高温での乳化剤への曝露、および水/油エマルジョン中への組み込みを乗り切るかどうかを試験するために、次の試験を実施した。

    オランダ国ロピック(Lopik,The Netherlands)のWinner Food BVによって生産される低脂肪スプレッド「Halvarine voor op brood」(脂肪分40%)を地元スーパーマーケットで購入した。 記載成分は、乳化剤として脂肪酸モノ−およびジグリセリド(E471)、保存料としてソルビン酸(E200)、クエン酸、植物油および脂肪、水、香料、ビタミンAおよびD、および塩である。 振盪される温度自動調節恒温器内で、低脂肪スプレッドの溶解動態を試験した。 53℃で低脂肪スプレッドは完全に液化し、水性および脂肪層の緩慢な分離が得られた。

    低脂肪スプレッド中に適量のプロリン特異的エンドプロテアーゼを組み込めるように、およそ10PPU/mLを含有する15mLの液体酵素濃縮物(酵素の定義については材料と方法を参照されたい)を50mLのグライナー(Greiner)管内で凍結乾燥した。 乾燥粉末(約2.25グラム)を25グラムの低脂肪スプレッドと混合した後、混合物を振盪される温度自動調節恒温器内で53℃で溶解することで、凍結乾燥酵素粉末を溶解した。 溶解、および自然発生した水と脂肪の分離の直後に、サンプル(300μL)を管内の水層から抜き取って室温に冷却した。 この最初のサンプルの抜き取り後、酵素と共に液化エマルジョンを含有する試験管を10秒間激しく振盪して53℃に保った。 10、70、および100分後、水層から再度300μLのサンプルを抜き取り、引き続きサンプル抜き取り後に激しい振盪が続いた。 最後に水層から得られた全てのサンプルをpH4.2の100mM酢酸緩衝液で1000倍に希釈し、残留酵素活性をマイクロタイタープレート(MTP)アッセイで測定した。 そのためにTECAN Genios MTP読取り装置(ザルツブルグ、ウィーン(Salzburg,Vienna))内における40℃で10分間の反応速度測定を使用して、トリペプチドAla−Ala−Proと着色pNA分子を生じるオランダ国レリスタット(Lelystad,The Netherlands)のPepscanからの合成ペプチド基質Ala−Ala−Pro−pNAの加水分解を405nmで追跡した。 Ala−Ala−Pro−pNAは、はるかに少量の酵素の測定を可能にするので、(Z−Gly−Pro−pNAではなく)基質Ala−Ala−Pro−pNAを使用した。 各ウェルは、250μLの基質溶液、pH4.2の100mM酢酸緩衝液中の3mMのAAP−pNAを含有して、Tecan Genios MTP読取り装置内において40℃で10分間予熱された。 50μLの適切な酵素希釈物(この場合は1000倍)を添加して反応を開始した。 pNA分子の遊離を15分間にわたって追跡した。 Tecanからのマジェラン(Magellan)ソフトウェアを用いて、データ収集を実施した。 405nmにおける光学濃度の増大を記録してエクセル(Excel)でさらに処理し、図4に示す図を得た。 スプレッドを溶解した直後のプロリン特異的エンドプロテアーゼの活性を100%と定義した。 結果によって示されるように、酵素活性は、53℃の低脂肪スプレッド環境によってほとんど影響されない。 乳化工程を模倣するため溶解スプレッドを振盪することでさえ、過剰な気泡が生じたにもかかわらず、影響はほとんどないかまたは皆無であった。

    [実施例5]
    [低脂肪スプレッドの水性相中のプロリン特異的エンドプロテアーゼの貯蔵性]
    低脂肪スプレッドの水相中のプロリン特異的エンドプロテアーゼ貯蔵性を試験するために、pH4.5および水活性0.98を有する乳酸含有水相を調製した。 水相の微生物汚染を防止するために、濃縮安息香酸ナトリウム溶液を濃度が600ppmに達するまで、無菌的に添加した。 次に無菌濾過したプロリン特異的エンドプロテアーゼを酵素活性が15PPU/gに達するまで、無菌的に添加した。 次にこの溶液を多数の小型無菌バイアルに分割した。 これらのバイアルのいくつかを零下20℃に置いて基準とし、その他のバイアルは8℃および30℃に置いた。 数週間毎に、様々なバイアル内で残留プロリン特異的酵素の活性を測定した。 酵素活性は、材料と方法セクションで詳述された手順に従って測定した。

    図5に示す結果は、8℃の周囲温度に保てば、酵素はこれらの高a 条件下で、少なくとも50週間の期間にわたって完璧に活性のままであることを例示する。

    [実施例6]
    [酵素含有ラズベリートッピングを用いたトーストの生体外消化]
    食物中の毒性グルテン分子の分解を促進するために、酵素含有トッピングを使用するという概念を例示するために、次の実験を実施した。 最初に250mLの保存安定性ラズベリートッピングを調製した。 204gの量の液体酵素濃縮物(12PPU/mL)に、20.7グラムのスクロース、1.0グラムのクエン酸、ジボーダン(Givaudan)からの0.02%のラズベリー香料(76525−36)、および20.7gの0.5%サッカリン水溶液を添加した。 様々な成分の溶解後、イリノイ州のCP Kelcoからの3.11gのキサンタン(Keltrol RD)を添加して、注意深い撹拌によって溶解した。 粘稠な塊の最終pHは3.7であり、最終酵素濃度は約9.8PPU/gトッピングであり、最終水分活性は約0.99であった。 ベンゾエート濃度を約600ppmに調節した。 同様にして、言及した全成分を含有するが、活性プロリン特異的酵素を含まないプラセボ製品を調製した。 前の実験(実施例2および3参照)に関連して、純粋な非増粘酵素溶液もまた試験に組み込んだ。

    毒性グルテンエピトープの分解におけるこれらの様々な調製品の有効性を試験するために、生体外消化試験を実施して時間内のエピトープ数の消失を追跡した。 そのためにBolletjeからの市販されるトースト精白小麦パン(「Engelse toast」)1切(約10グラム、1.4gのタンパク質を含有する)に、様々な提供形態の酵素を塗布した。 1切れはラズベリー酵素含有トッピングで覆い、1切れはプラセボトッピング(酵素活性存在せず)で覆い、1切れには純粋な液体酵素を添加した。 酵素含有トッピングおよび純粋液体酵素のどちらにおいても、酵素活性用量は存在する1gのタンパク質あたり20PPUに等しかった。 トーストに様々な製品を塗布してから5分後、トーストを刻んで、胃液を模倣するpH5.0の溶液(NaCl(4.8g/L)、KCl(2.2g/L)、CaCl (0.22g/L)、およびNaHCO (1.5g/L))の60mL(対照および酵素の液体変種のため)および62.3mL(ゲル調合物のため)と混合し、シグマ(Sigma)からのブタ胃由来ペプシン(P−7012)を500KU/Lの濃度で含有する2.3mLの同一溶液を各トーストに添加した。

    第1のサンプルは0分(すなわち胃ペプシン溶液添加の5分後)に得た。 次に各混合物のpHを徐々に低下させて、胃内容物の緩慢な酸性化を模倣した。 pHをpH5〜pH4.5に低下させて、第1のサンプルを採取した15分後に第2のサンプルを採取する。 続く15分間にpHをpH4に再度低下させて、実験開始から30分の時点で第3のサンプルを採取する。 続くサンプルをt=45分(pHを3.5に低下させた後)、t=60分(pHを3.0に低下させた後)、t=90分(pHを2.5に低下させた後)で採取し、次にpHを2.0に低下させ、追加的サンプルを120分、および最後に150分で採取した。 全てのサンプルを液体窒素中で即座に凍結し、その後−80℃で保存した。

    様々な調製品中の残留グルテンエピトープレベルのレベルを測定するために、凍結サンプルに最初に完全な酵素不活性化手順を施した。 まだ凍結しているサンプルを摂氏95度で30分間加熱し、次にサンプルのpHを11〜12に上昇させ、次に2に低下させ、最後にpH6に中和した。 次にサンプルを摂氏95度で15分間再度加熱し、その後1mLのアリコートを取ってエッペンドルフ遠心分離内で30分間遠心分離した。 得られた上清は水溶性画分を、ペレットは非水溶性画分を含有した。 Spaenij−Dekkingら、(2004年)Gut 53、1267〜1273頁に従ったモノクローナル抗体ベース競合アッセイを使用して、水溶性画分中の残留T細胞刺激性エピトープのレベルを定量化した(材料と方法セクションもまた参照されたい)。 これらの競合アッセイの結果(2つの独立した測定の測定平均値)を表2に示す。 ペレット画分中のT細胞刺激性エピトープの残留レベルは、ウエスタンブロット後に視覚化した(実施例3参照)。 水溶性画分について得られたデータと同様に、非水溶性画分の実験結果(写真示さず)もまた、双方の酵素含有調製品による様々なT細胞刺激性エピトープの効果的分解を証明した。

    まとめると、得られたデータは明らかに、2種の酵素含有調製品は、それが純粋な遊離酵素の形態であっても、または水分活性の高いゲル化されたジャム様製品の形態であっても、胃様条件下で約30分インキュベートすると、ほとんどのT細胞刺激性グルテンエピトープを効果的に破壊することを示唆する。 LMW(低分子量)画分のみが、本(生体外)実験的構成における酵素的分解に対していくぶん抵抗性であるように見える。

    プロリン特異的エンドプロテアーゼなしの「胃」から回収されたT細胞刺激エピトープのレベル。 条件については実施例3に記載した。 「α」は反応性α−グリアジン分子のレベル、「γ」は反応性γ−グリアジン分子のレベル、「HMW」は反応性HMW−グルテニンのレベル、および「LMW」は反応性LMW−グルテニンのレベルを指す。

    プロリン特異的エンドプロテアーゼを含有する「胃」から回収されたT細胞刺激エピトープのレベル。 条件については実施例3に記載した。 「α」、「γ」、「HMW」、および「LMW」の説明については、図1の説明文を参照されたい。

    プロリン特異的エンドプロテアーゼ添加、および無添加で「胃」から回収され、抗α−グリアジンで処理したウエスタンブロットで試験されたT細胞刺激エピトープペレットのレベル。 条件は実施例3で説明したとおりであった。

    53℃で低脂肪スプレッドを溶解し、プロリン特異的エンドプロテアーゼを水相に添加して、水/脂肪混合物を53℃で10、70、および100分間振盪した後の水相中の残留酵素活性百分率。 条件は実施例4で説明したとおりであった。

    様々な温度に保った低脂肪スプレッドの水性相中のプロリン特異的エンドプロテアーゼの貯蔵性。 条件は実施例5で説明したとおりであった。

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