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有機電界発光素子用充填材料及び有機電界発光素子の封止方法

阅读:883发布:2024-01-24

专利汇可以提供有機電界発光素子用充填材料及び有機電界発光素子の封止方法专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且【課題】OLED素子を 水 分から保護し、硬化収縮によってOLED素子を破壊するリスクもなく、かつ絶縁性保護層の表面に欠陥なく塗布、充填できる充填材料及びこれを用いたOLEDの封止方法を提供することを課題とする。【解決手段】数平均分子量が300以上32000未満の炭化水素系ポリマー、及び、式:M−Ln(Mは金属 原子 を表す。Lは炭素原子数が9以上で酸素原子数が1以上の有機基であり、n個のLはいずれも同一の有機基を表す。nは金属原子Mの価数を表す。)で表される有機 金属化 合物を含有する25℃で液状の樹脂組成物からなる有機電界発光素子用充填材料であって、窒化ケイ素に対する 接触 角 が10〜40?であり、85℃に1時間加熱したときの水分以外のアウトガス量がトルエン換算値で500ppm以下である有機電界発光素子用充填材料、及び、これを用いたOLEDの封止方法。【選択図】図1,下面是有機電界発光素子用充填材料及び有機電界発光素子の封止方法专利的具体信息内容。

  • 数平均分子量が300以上32000未満の炭化水素系ポリマー及び下記式(1)で表される有機金属化合物を含有し、25℃で液状の樹脂組成物からなる有機電界発光素子用充填材料であって、 該樹脂組成物中に含有するポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン−1、ポリイソブチレン、イソプレン−イソブチレン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエン、部分水素化ポリブタジエン、水素化ポリブテン−1、(末端)水素化ポリイソブチレン、シクロオレフィンホモポリマー、シクロオレフィンコポリマー、テルペン樹脂、水素化シクロオレフィンホモポリマー、水素化シクロオレフィンコポリマー、水素化テルペン樹脂、およびC5留分を主原料とするジシクロペンタジエン成分とC9留分である芳香族成分との共重合石油樹脂の水素化物から選択される、数平均分子量が300以上32000未満の炭化水素系ポリマーのみであって、かつ水素化ポリイソブチレン、水素化テルペン樹脂またはC5留分を主原料とするジシクロペンタジエン成分とC9留分である芳香族成分との共重合石油樹脂の水素化物を含み、窒化ケイ素に対する接触角が10〜40°であり、85℃に1時間加熱したときの水分以外のアウトガス量がトルエン換算値で500ppm以下である有機電界発光素子用充填材料。
    式(1): M−L
    (式(1)中、Mは金属原子を表す。Lは炭素原子数が9以上で酸素原子数が1以上の有機基であり、n個のLはいずれも同一の有機基を表す。nは、金属原子Mの価数を表す。)
  • 前記有機基Lが、脂肪族アルコールに由来する有機基である請求項1に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記有機基Lが、β−ジケトン、β−ケトエステル又はマロン酸ジエステルに由来する有機基である請求項1に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記金属原子Mが、元素の長周期表における第2族〜第4族及び第11族〜第14族のいずれかの族に属する金属原子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記式(1)で表される有機金属化合物において、前記Mがマグネシウム、カルシウム、バリウムまたはアルミニウムであって、かつ前記有機基Lが、脂肪族アルコールに由来する有機基である請求項1、2または4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記炭化水素系ポリマーの少なくとも一種が、 水素化ポリイソブチレンである請求項1〜 のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記炭化水素系ポリマーの少なくとも一種が、数平均分子量が300以上1000未満の環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物である請求項1〜 のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記有機金属化合物の含有量が、充填材料全体に対して5〜40質量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 25℃で、せん断速度が0.1〜1000S −1の領域において、非ニュートン流体である請求項1〜 のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 350〜800nmの波長領域における全光線透過率が、経路長25μmで90%以上である請求項1〜 のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 60℃、90%RHの環境下に100時間保管後の350〜800nmの波長領域における全光線透過率が、経路長25μmで80%以上である請求項 10に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記樹脂組成物が、平均粒径10〜60nmの無機粒子を1〜20質量%含む請求項1〜 11のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記無機粒子の1粒子辺りの投影像の輪郭線のフラクタル次元が、1より大きい請求項 12に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 前記樹脂組成物が、松脂留分由来有機酸の水素化物のアルキルエステルを含む請求項1〜 13のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
  • 少なくとも、絶縁性保護層で覆われた発光部を封止する気密容器内に請求項1〜 14のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料を充填する工程を含む有機電界発光素子の封止方法。
  • 前記絶縁性保護層が、少なくともケイ素原子と窒素原子を含む化合物よりなる無機薄層を少なくとも1層含む単層構造又は多層構造よりなる請求項 15に記載の有機電界発光素子の封止方法。
  • 说明书全文

    本発明は、有機電界発光ダイオード(Organic Light−Emitting Diode)等の有機電界発光素子(OLED又はOLED素子ともいう。)を湿気から保護し、塗布時の作業性に優れ、アウトガス成分が少なく、ディスプレイの視認性に悪影響を与えることなく使用できる液状充填材料及びそれを用いたOLEDの封止方法に関する。

    近年、有機電界発光素子のディスプレイや照明等への展開が進みつつある。
    OLEDは、その優れた発色性及び省エネルギー性が魅的である一方で、最大の課題として耐久性の弱さが挙げられる。 特に、分に起因するダークスポットと呼ばれる非発光部の発生が問題となっている。

    そこで、水分をOLEDに侵入させない方法として、例えば特許文献1において、中空の気密容器中にOLEDを封止し、この気密容器内の空間を不活性ガス雰囲気で満たす方式が提案されている。
    また、例えば特許文献2及び3において、窒化ケイ素に代表される水分透過性の小さな無機物よりなる保護層等をOLEDのOLED層又は発光部等に設ける方法も提案されている。

    ところが、気密容器内に不活性ガスを満たす方式では、放熱性が十分でないため、OLEDの寿命に却って悪影響を与えてしまう。 そのため、十分に長寿命化できないという問題があった。
    また、無機物よりなる保護層を微小欠陥なしに成膜することは現行の技術では極めて困難であり、高温高湿環境下ではやはりダークスポットが発生する問題があった。 これを解決するために、例えば欠陥平坦化層を無機物よりなる保護層の上に形成した上に、さらに無機物よりなる別の保護層を重ねるといった方法を何度も繰り返して多層構造の保護層を設けることも考えうる。 しかし、一般家庭向けのディスプレイや照明への適用には、手間やコストの面での大きな問題があった。

    そこで、特許文献4及び5において、不活性ガスではなく、シリコン油等の防湿油や硬化性樹脂を充填剤として用いる技術が提案されている。
    しかし、防湿油や硬化性樹脂を充填する方法では、防湿油や硬化性樹脂に含まれる低分子量の有機成分及び溶媒等が揮発したアウトガスによって、気密容器内に気泡が生じてディスプレイの美観(視認性ともいう)を損なうなどの問題があった。 また、OLED層を形成する有機分子にアウトガスが浸透してダークスポットが発生するリスクが高くなるなどの問題も生じている。
    そのうえ、防湿油や硬化性樹脂を保護層と併用したとしても、水分の影響を完全に排除することはできず、特に長期に亘る高温高湿環境下ではやはりダークスポットが発生する。

    そのため、例えば特許文献6や7では、硬化性樹脂等に酸化カルシウムや酸化マグネシウム等の吸湿性金属酸化物等を添加することで、充填剤に乾燥能力を付与する方法も提案されている。
    しかし、充填剤に硬化性樹脂等を用いた場合は、硬化性樹脂等の硬化収縮によりOLED素子が破壊されやすく、硬化時の破壊リスクが問題となっている。

    ところで、乾燥能力を付与した充填剤が無色透明であれば、OLED素子で発生した光をTFT基板側ではなく、封止基板(対向基板)側から取り出す、所謂「トップエミッション型」のOLED素子への適用も可能となる。 トップエミッション型のOLED素子は、取り出し光をTFTが遮らないために、所謂「ボトムエミッション型」のものに比べて、発光効率が良く、例えば画像表示装置に用いるとより高輝度な画像が得られる点で有利である。
    このような無色透明かつ乾燥能力を有する充填剤として、例えば特許文献8〜11に、アルミニウムオキシドアルコキシド等の有機金属化合物、それらと樹脂の混合物等が提案されている。

    特開2002−33187号公報

    特開2005−11648号公報

    特開2011−159629号公報

    実開昭58−147191号公報

    特開2013−048115号公報

    国際公開第2011/62167号パンフレット

    特許第5144041号公報

    特開2012−38659号公報

    特許第4628210号公報

    特開2012−38660号公報

    特開2013−502312号公報

    特許文献8〜11に記載された有機金属化合物等は、いずれも、充填時には液状充填剤として用いるものである。 しかし、無機物よりなる保護層の表面に十分に濡れ拡がらないため、又は充填剤中に含まれる低分子量の有機成分の一部がアウトガス化することによって、気泡状の欠陥が一部に生じる場合があった。 このような欠陥は、OLEDの美観を損なわせ、OLEDを用いたデバイス、例えば、フラットパネル等の画像表示装置の製造歩留まりの悪化要因の一つとなっていた。

    そこで、本発明は、上記問題点を解決し、OLED素子を水分から保護し、硬化収縮によってOLED素子を破壊するリスクもなく、かつ絶縁性保護層の表面に欠陥なく塗布、充填できる充填材料及びこれを用いたOLEDの封止方法を提供することを課題とする。

    本発明者らは、水分の乾燥能力をもつ充填材料について、ベースとなる種々の樹脂と乾燥剤との組み合わせを検討するなかで、特定の炭化水素系ポリマーと特定の有機金属化合物とを用い、しかも接触及びアウトガス量を特定の範囲に制御することによって、充填材料を塗布、充填しやすく、液状のままでも初期の乾燥能力を保持し、しかも充填後の硬化を不要として破壊リスクをも回避できることを、見出した。 本発明は、この知見に基づきなされたものである。

    すなわち、上記課題は以下の手段により解決された。
    [1]数平均分子量が300以上32000未満の炭化水素系ポリマー及び下記式(1)で表される有機金属化合物を含有し、25℃で液状の樹脂組成物からなる有機電界発光素子用充填材料であって、 該樹脂組成物中に含有するポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン−1、ポリイソブチレン、イソプレン−イソブチレン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエン、部分水素化ポリブタジエン、水素化ポリブテン−1、(末端)水素化ポリイソブチレン、シクロオレフィンホモポリマー、シクロオレフィンコポリマー、テルペン樹脂、水素化シクロオレフィンホモポリマー、水素化シクロオレフィンコポリマー、水素化テルペン樹脂、およびC5留分を主原料とするジシクロペンタジエン成分とC9留分である芳香族成分との共重合石油樹脂の水素化物から選択される、数平均分子量が300以上32000未満の炭化水素系ポリマーのみであって、かつ水素化ポリイソブチレン、水素化テルペン樹脂またはC5留分を主原料とするジシクロペンタジエン成分とC9留分である芳香族成分との共重合石油樹脂の水素化物を含み、窒化ケイ素に対する接触角が10〜40°であり、85℃に1時間加熱したときの水分以外のアウトガス量がトルエン換算値で500ppm以下である有機電界発光素子用充填材料。
    式(1): M−L
    (式(1)中、Mは金属原子を表す。Lは炭素原子数が9以上で酸素原子数が1以上の有機基であり、n個のLはいずれも同一の有機基を表す。nは金属原子Mの価数を表す。)
    [2]前記有機基Lが、脂肪族アルコールに由来する有機基である[1]に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    [3]前記有機基Lが、β−ジケトン、β−ケトエステル又はマロン酸ジエステルに由来する有機基である[1]に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    [4]前記金属原子Mが、元素の長周期表における第2族〜第4族及び第11族〜第14族のいずれかの族に属する金属原子である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    [5]前記式(1)で表される有機金属化合物において、前記Mがマグネシウム、カルシウム、バリウムまたはアルミニウムであって、かつ前記有機基Lが、脂肪族アルコールに由来する有機基である[1]、[2]または[4]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    ]前記炭化水素系ポリマーの少なくとも一種が、 水素化ポリイソブチレンである[1]〜[ ]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    ]前記炭化水素系ポリマーの少なくとも一種が、数平均分子量が300以上1000未満の環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物である[1]〜[ ]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    [8]前記有機金属化合物の含有量が、充填材料全体に対して5〜40質量%である[1]〜[7]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    ]25℃で、せん断速度が0.1〜1000S −1の領域において、非ニュートン流体である[1]〜[ ]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    10 ]350〜800nmの波長領域における全光線透過率が、経路長25μmで90%以上である[1]〜[ ]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    11 ]60℃、90%RHの環境下に100時間保管後の350〜800nmの波長領域における全光線透過率が、経路長25μmで80%以上である[ 10 ]に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    12 ]前記樹脂組成物が、平均粒径10〜60nmの無機粒子を1〜20質量%含む[1]〜[ 11 ]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    13 ]前記無機粒子の1粒子辺りの投影像の輪郭線のフラクタル次元が、1より大きい[ 12 ]に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    14 ]前記樹脂組成物が、松脂留分由来有機酸の水素化物のアルキルエステルを含む[1]〜[ 13 ]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料。
    15 ]少なくとも、絶縁性保護層で覆われた発光部を封止する気密容器内に[1]〜[ 14 ]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用充填材料を充填する工程を含む有機電界発光素子の封止方法。
    16 ]前記絶縁性保護層が、少なくともケイ素原子と窒素原子を含む化合物よりなる無機薄層を少なくとも1層含む単層構造又は多層構造よりなる[ 15 ]に記載の有機電界発光素子の封止方法。

    本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。

    本発明により、OLED素子を水分から保護し、硬化収縮によってOLED素子を破壊するリスクなく、かつ発光部等を覆う絶縁性保護層の無機物よりなる表面に欠陥なく塗布、充填できる充填材料、及びこれを用いたOLEDの封止方法を提供することが可能となった。

    図1は、本発明の有機電界発光素子用充填材料を用いたOLED素子の概略を示す断面概略図である。

    図2は、実施例及び比較例において充填材料の塗布態様を示す上面図である。

    以下、本発明を実施するための形態について説明する。
    なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれる。
    また、本発明で石油樹脂とは、石油化学工業で行われるナフサ分解の副生油の一部を重合反応した樹脂を意味する。

    <<有機電界発光素子用充填材料>>
    本発明の有機電界発光素子用充填材料(本発明の充填材料ともいう)は、後述する炭化水素系ポリマー及び有機金属化合物を必須成分として含有する、25℃(以後、本願明細書では、25℃を室温ともいう)で液状の樹脂組成物からなる。
    ここで、液状とは、樹脂組成物が全体として液体状態にあることをいい、固体分散物を含む懸濁液又は分散液である場合も含む。
    本発明の充填材料は、水分の乾燥能力を有し、後述するOLEDを湿気から保護する液状充填材料として用いられる。 これにより、簡便な作業にてOLED素子のダークスポット発生を好適に抑止できる。

    本発明に用いる炭化水素系ポリマーは、数平均分子量が300以上32000未満のポリマーである。 このような炭化水素系ポリマーは、後述する有機金属化合物とよく相溶することで、本発明の充填材料に、疎水性を付与し、かつ後述する絶縁性保護膜が設けられた発光部に室温で塗布する際の良好な作業性を担保するための流動特性及び小さな接触角をも付与する。

    炭化水素系ポリマーは、不飽和炭化水素の重合体又はそれらの水素化物であり、例えば、非環状不飽和炭化水素の重合体若しくはその水素化物、又は、環状不飽和炭化水素の重合体若しくはその水素化物等が挙げられる。
    なお、水素化物の水素化の程度は、特に限定されず、後述するヨウ素価によって定義される。
    本発明において、重合体には単独重合体及び共重合体を含む。

    非環状不飽和炭化水素としては、非環状不飽和脂肪族炭化水素が好ましく、非環状オレフィンがさらに好ましい。
    非環状オレフィンの重合体である非環状ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン−1、ポリイソブチレン、イソプレン−イソブチレン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。 非環状ポリオレフィンの水素化物としては、例えば、水素化ポリイソプレン、部分水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエン、部分水素化ポリブタジエン、水素化ポリブテン−1、(末端)水素化ポリイソブチレン等が挙げられる。
    特に、表面エネルギーを小さくして疎水性と小さな接触角を付与でき、かつ流動性にも優れる点で、ポリイソブチレン及び水素化ポリイソブチレンが好ましく、ポリイソブチレンがさらに好ましい。

    環状不飽和炭化水素としては、環状不飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。 環状不飽和脂肪族炭化水素は環状ポリオレフィンが好ましい。
    環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物としては、環状不飽和炭化水素の単独重合体、環状不飽和炭化水素と他の共重合成分との共重合体、又は、これらの水素化物であり、例えば、スチレン−イソブチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、シクロオレフィンホモポリマー、シクロオレフィンコポリマー及び石油樹脂、ポリピネンやポリリモネンといったテルペン樹脂、又は、これらの水素化物等が挙げられる。
    他の共重合成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、イソブチレン、ブタジエン等の上記非環状不飽和炭化水素の他に、ピペリレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、シクロペンタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等のエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。

    環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物は、石油樹脂の水素化物(水素化石油樹脂という)が好ましく、C5留分を主原料とするジシクロペンタジエン(DCPD)成分とC9留分である芳香族成分との共重合石油樹脂の水素化物(水素化C5/C9石油樹脂という)、C9留分である芳香族成分からなる石油樹脂の水素化物(水素化C9石油樹脂という)及びテルペン樹脂の水素化物(水素化テルペン樹脂という)がより好ましく、水素化C5/C9石油樹脂がさらに好ましい。

    炭化水素系ポリマーとしては、本発明の充填材料が液状となる限り、上記のもののうち1種単独で、又は2種以上を併用することができる。
    1種単独で用いる場合には、室温で液状の、非環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物が好ましい。

    2種以上を併用する場合、その組み合わせは特に限定されない。 この場合、少なくとも1種は、非環状不飽和炭化水素の重合体若しくはその水素化物、又は、環状不飽和炭化水素の重合体若しくはその水素化物が好ましい。
    炭化水素系ポリマーが室温で固体である場合には、他の液状材料に溶解又は分散させることで、混合物として室温にて液状となるように、組み合わせて用いるのが好ましい。 このような室温で固体の炭化水素系ポリマーは、より好ましくは、室温で液状の非環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物と併用される。

    環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物、例えば、シクロオレフィンホモポリマー、シクロオレフィンコポリマー及び水素化石油樹脂等は、単体としては、特に分子量が小さいものでも、室温で固体のものもある。 したがって、室温で固体である場合には、上述のように、好ましくは室温で液状の非環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物と組み合わせて用いる。 これにより、水分透過率が非常に小さくなって防湿性に優れ、表面エネルギーが小さくなって接触角も小さく、かつ非ニュートン的な流動特性を持った流体を得ることができる。
    環状不飽和炭化水素の重合体と非環状不飽和炭化水素の重合体とを併用する場合、ポリイソブチレンと水素化石油樹脂の組み合わせが好ましい。

    本発明に用いる炭化水素系ポリマーは、数平均分子量が32000以上であると、本発明の充填材料に流動性を付与できない場合等がある。 流動性付与等の観点から、数平均分子量は20000以下が好ましく、10000以下がより好ましい。 一方、数平均分子量が300未満であると、アウトガスの発生リスクがあり、またOLEDを破壊する場合等がある。 アウトガスの発生及びOLED破壊の防止等の点で、数平均分子量は、400以上が好ましい。
    環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物は、数平均分子量が1000未満のものが特に好ましい。
    数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography))によるポリスチレン換算で求めた値である。

    本発明に用いる炭化水素系ポリマーは、水分透過性を小さくできる点等で、ヨウ素価が100g/100g以下であるのが好ましい。 特に後述する特定の有機金属化合物と併用すると、水分透過性を小さくでき、有機金属化合物の失活を防止できる点等で、ヨウ素価は、80g/100g以下が好ましく、60g/100g以下がさらに好ましい。
    一方、ヨウ素価は、流動性付与等の点で、30g/100gを越える値が好ましく、特にポリマーの数平均分子量が20000以上の場合は、40g/100g以上がより好ましく、50g/100g以上が更に好ましい。

    炭化水素系ポリマーのヨウ素価は、不飽和炭化水素の種類、数平均分子量、及び、水素化の程度によって、適宜に調整できる。
    なお、ヨウ素価は、基質、この場合は炭化水素系ポリマー、100gに付加しうるヨウ素(I )のグラム数である。 ヨウ素価の測定方法は、例えば、ウィイス法又はハヌス法等の呈色反応を利用した滴定法が挙げられる。

    具体的には、測定試料を正確に秤量し、シクロヘキサン等の、ヨウ素と反応しない有機溶媒を加えて希釈する。 次にウィイス試薬(一塩化ヨウ素の酢酸溶液)又はハヌス試薬(臭化ヨウ素の酢酸溶液)を加え、30分〜1時間程度放置して反応を進行させる。 次に過剰量のヨウ化カリウム水溶液を加えると、未反応のヨウ素が遊離して三ヨウ化物イオンを形成し水相へ移動する。 微量のデンプンを加えてヨウ素デンプン反応によって藍色に呈色させ、チオ硫酸ナトリウム水溶液をゆっくりと滴下し、藍色が消失した時点で当量点とする。 当量点に達するまでに使用したチオ硫酸ナトリウムの量から、反応に使われなかったヨウ素量を算出する。 同様にして、試料が無い系で対照実験を行ってウィイス試薬又はハヌス試薬に元々含まれていたヨウ素量を求める。 このようにして求めた、試料の有無によるヨウ素量の差分から反応に使われたヨウ素量を求め、このヨウ素量を、炭化水素系ポリマー100g当りに換算して、ヨウ素価とする。

    炭化水素系ポリマーは、少なくとも末端に極性基を有していないのが好ましく、より好ましくは極性基を有していない。 少なくとも末端に極性基を有しない炭化水素系ポリマーは、その末端に、水素原子、メチル基やメチレン基等のアルキル基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基等の環状アルキル基等の非極性基を有する。 このような非極性基は、上記各基のように炭素原子と水素原子のみからなる基であり、本発明の充填材料の表面エネルギーを小さくし、小さな接触角を付与する。 したがって、非極性基を多く含む炭化水素系ポリマーは塗布性が良好な本発明の充填材料を得る点で好適である。
    極性基としては、炭素原子と水素原子のみからなる基よりも強い極性を有する基であり、例えば、へテロ原子を含む基が挙げられ、より具体的には、水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、環状エーテル骨格を持つ基等が挙げられる。

    炭化水素系ポリマーの、本発明の充填材料全体に占める割合(含有率)は、絶縁性保護層への濡れ性(流動性とも関係する)を良好にしつつ、水分透過性を抑制する点で、50〜90質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
    環状不飽和炭化水素の重合体又はその水素化物を含有する場合、その、本発明の充填材料中の含有率は50質量%以下が好ましい。

    また、炭化水素系ポリマーを2種以上併用する場合、各炭化水素系ポリマーの含有率は、本発明の充填材料が液状となる限り、上記範囲内において適宜に設定され、特に限定されない。
    非環状不飽和炭化水素の重合体と環状不飽和炭化水素の重合体、特に水素化石油樹脂とを併用する場合、ポリイソブチレン等の非環状不飽和炭化水素の重合体の方が環状ポリオレフィン等の環状不飽和炭化水素の重合体より含有量が多いことが流動性の点でさらに好ましい。
    ただし、本発明では、有機電界発光素子用充填材料の樹脂組成物中に含有するポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン−1、ポリイソブチレン、イソプレン−イソブチレン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエン、部分水素化ポリブタジエン、水素化ポリブテン−1、(末端)水素化ポリイソブチレン、シクロオレフィンホモポリマー、シクロオレフィンコポリマー、テルペン樹脂、水素化シクロオレフィンホモポリマー、水素化シクロオレフィンコポリマー、水素化テルペン樹脂、およびC5留分を主原料とするジシクロペンタジエン成分とC9留分である芳香族成分との共重合石油樹脂の水素化物から選択される、数平均分子量が300以上32000未満の炭化水素系ポリマーのみであり、かつ水素化ポリイソブチレン、水素化テルペン樹脂またはC5留分を主原料とするジシクロペンタジエン成分とC9留分である芳香族成分との共重合石油樹脂の水素化物を含む。

    本発明に用いる有機金属化合物は、本発明の充填材料において乾燥成分として機能するものである。 すなわち、この有機金属化合物は、外部から浸入してきた水分を捕捉することで、ダークスポット発生を、高度にまたは長期にわたって、抑止できる。
    有機金属化合物は、水分を捕捉可能な化合物であって、下記式(1)で表される化合物又は錯体である。 この有機金属化合物は、中心金属Mのイオンと、炭素原子数が9以上で酸素原子数が1以上の原子からなる、同一の有機基Lとを有する。

    式(1): M−L
    式(1)中、Mは金属原子を表す。 Lは炭素原子数が9以上で酸素原子数が1以上の有機基であり、n個のLはいずれも同一の有機基を表す。 nは金属原子Mの価数を表す。

    中心金属原子Mは、元素の長周期表における第2族〜第4族及び第11族〜第14族のいずれかの族に属する金属元素の原子が、透明性の観点から好ましい。 具体的には、カルシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、バリウムが好ましく、その中でも、アルミニウム又はカルシウムがより好ましく、特にアルミニウムが乾燥能力及び濡れ性を両立できる点で、好ましい。 また、アルミニウム等は、無色透明な充填材料を得ることもでき、トップエミッション型のデバイスにも適用可能である。

    有機基Lは、金属原子Mと化学結合して錯体又は化合物を形成する配位子又は陰イオン等であって、炭素原子数が9以上かつ酸素原子数が1以上の有機分子に由来する。
    有機基Lの炭素原子数が9以上であると、水分透過性を抑制でき、特に環状飽和炭化水素構造を有しているとより良い。 また、酸素原子数が1以上であると、金属原子Mに化学結合し、また系中に水分が侵入した場合は良くこれを捕捉する。
    有機基Lは、表面エネルギーを小さくして濡れ性を良くする観点等から、1分子中の炭素原子数の合計が10以上であり、酸素原子数が1以上であるのものが好ましく、炭素原子数が10以上で、かつ酸素原子数が4以下のものがさらに好ましい。 一方、炭素原子数が18を越えると結晶化しやすくなり、流動性の不足や白濁といった問題が生じ易くなるため、炭素原子数は10〜18の範囲が最も好ましい。 また、酸素原子数は、4を超えると親水性が過剰となって水分がかえって透過し易くなってしまうため、1〜4の範囲が好ましい。

    このような有機基Lとしては、炭化水素系ポリマーとの相互溶解性及び濡れ性の観点から、脂肪族アルコール、ポリオール、β−ジケトン、β−ケトエステル又はマロン酸エステル等に由来するものが好ましい。 この中でも、脂肪族アルコール、β−ジケトン、β−ケトエステルに由来するものがさらに好ましい。

    有機金属化合物一分子中のn個の有機基Lは、すべて同じである。 有機基Lがすべて同じて、しかも炭素数が9以上であると、炭化水素系ポリマーとの相溶性が良好となり、特に、炭化水素系ポリマーが環状不飽和脂肪族炭化水素を含有する場合は、該環状不飽和脂肪族炭化水素との相溶性が良好となる。 その結果、透明性が優れた充填材が得られるので、OLEDデバイスに適用した際の美観が優れる。
    また、n個の有機基Lは、すべてが上記好ましいものであるのが好ましい。 例えば、すべての有機基Lが、炭素原子数9〜18で酸素原子数1〜4の配位子又は陰イオンであるのが、性能のバランスがよい点で優れており、好ましい。

    なお、炭素原子数3以下(炭素原子数0の場合を含む)の有機基を配位子又は陰イオンとする有機金属化合物は、表面エネルギーを高くし、接触角を大きくしてしまうことがある。 したがって、濡れ性の観点から、炭素原子数3以下の有機分子を含む有機金属化合物は、充填材料に添加しないのが好ましい。

    nは、金属原子Mの価数であり、アルミニウムの場合、3であり、カルシウムの場合、2である。

    本発明に用いる有機金属化合物は、好ましくは、下記式(2)〜(5)で表される。

    式(2)〜(5)において、Mは金属原子を表し、上記式(1)のMと同義である。 このMは、アルミニウム又はカルシウムが好ましい。
    n1〜n4は、それぞれ、金属原子Mの価数を表し、上記式(1)のnと同義である。

    式(2)で表される有機金属化合物は、脂肪族アルコール、好ましくは脂肪族モノアルコールの残基を有機基Lとする金属化合物である。 したがって、式(2)中、R は、好ましくは、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
    アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、炭素原子数9以上、好ましくは10〜18であり、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよく、分岐鎖が好ましい。
    このようなアルキル基として、例えば、直鎖、分岐鎖又は環状の、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
    アルケニル基及びアルキニル基としては、例えば、ミリストレイル基、パルミトレイル基、等が挙げられる。

    上記脂肪族モノアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ノルマルノニルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ノルマルドデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、イソミリスチルアルコール等が挙げられる。

    式(3)で表される有機金属化合物は、β−ジケトンの残基を有機基Lとする金属錯体である。
    式(3)中、R 及びR は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、アルキル基が好ましい。 R は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、水素原子が好ましい。

    及びR の炭素原子数は、それぞれ、少なくとも1以上であって、かつ、R 〜R を構成する全炭素原子数が6以上であり、好ましくは7〜15である。
    アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、それぞれ、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよく、直鎖が好ましい。 例えば、アルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖、分岐鎖又は環状の、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、テトラデシル基、シクロへキシル基等が挙げられる。 アルケニル基及びアルキニル基としては、例えば、ミリストレイル基、パルミトレイル基、等が挙げられる。
    アラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェネチル基、等が挙げられる。
    アリール基は、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基等が挙げられる。

    上記β−ジケトンとしては、特に限定されないが、例えば、4,6−ノナンジオン、4,6−デカンジオン、5,8−ドデカンジオン、1,2−シクロドデカンジオン,2,2−ジメチル-6−エチル−3,5−デカンジオン等が挙げられる。

    式(4)で表される有機金属化合物は、β−ケトエステルの残基を有機基Lとする金属錯体である。
    式(4)中、R 及びR は、各々独立に、上記式(3)のR 及びR と同義であり、好ましいものも同じである。 R は上記式(3)R と同義であり、好ましいものも同じである。

    上記β−ケトエステルとしては、特に限定されないが、例えば、アセト酢酸ペンチル、アセト酢酸ネオペンチル、アセト酢酸へキシル、アセト酢酸2−エチルへキシル、ブチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられる。

    式(5)で表される有機金属化合物は、マロン酸ジエステルの残基を有機基Lとする金属錯体である。
    式(5)中、R は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、アルキル基が好ましい。 R の炭素原子数は、それぞれ、少なくとも1以上であって、かつ2つのR を構成する全炭素原子数が6以上であり、好ましくは7〜15である。 2つのR は同一でも異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。 これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基は、炭素原子数が異なること以外は上記式(3)のR 及びR のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基と同じである。

    上記マロン酸ジエステルとしては、特に限定されないが、例えば、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジターシャリーブチル等が挙げられる。

    有機金属化合物の、本発明の充填材料中の含有率は、接触角と流動性の点で、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。

    樹脂組成物は、無機粒子を含有するのが好ましい。 これにより、本発明の充填材料に非ニュートン性、とりわけチクソ性を付与できる。
    無機粒子としては、無機化合物の粒子であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、スメクタイト、タルク、マイカ、チタニア、ゼオライト等が挙げられる。 中でも、シリカ、スメクタイト、タルクが好ましい。

    本発明に用いる無機粒子は、その形状が球形や方形よりも、より複雑な形状であるのが好ましい。 無機粒子の形状が複雑であるほど、添加量に対するチクソ性付与の効果が大きくなる。
    無機粒子の形状の複雑性は、例えば、無機粒子1個当りの投影像から評価する場合、平面上に描かれた投影像の輪郭線のフラクタル次元により、評価できる。 フラクタル次元は、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)等の画像を元にボックスカウント法等を適用して計算することができ、上記の様な輪郭線などに例示される平面上の線や図形に関して計算された場合は、1.0〜2.0の値をとる。 フラクタル次元の詳細な算出方法は後述する。
    本発明において、無機粒子のフラクタル次元は、チクソ性の観点から、1より大きいものが好ましく、より好ましくは1.1以上であり、さらに好ましくは1.3以上である。 上限は特に限定されるものでないが、上記のように2.0未満が現実的である。
    上記範囲のフルクタル次元をもつ複雑な粒子形状を有するものとしては、例えば、数nmのシリカがSi−O共有結合によって互いに強固に結びついた集合体を形成したフュームドシリカ類の中から見出すことができる。

    無機粒子は、透明性の観点から、平均粒径は60nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。 一方、平均粒径は、チクソ性付与の観点から10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。 平均粒径は、1次粒子の平均粒径であり、例えば複数の平均粒径が数nm以下の粒子を高温で融着させることで互いに共有結合により結びつけて60nm以下の複雑な形状の1次粒子を作製しても良い。 1次粒子がファンデルワールス力、水素結合などの共有結合以外の相互作用で互いに結びついたものは2次凝集体として、上記の1次粒子とは区別される。 この様な2次凝集体は脆く、不安定なため、2次凝集体が仮にフラクタル次元が大きかったとしても、先に述べた効果は期待し難い。
    ここで、平均粒径は、JIS Z 8825−1で規定するレーザー回折・散乱法によって1群の粒子集団について測定された粒子径の粒子数当たりの平均をいう。
    上記のレーザー回折・散乱法を実施できる測定装置は様々なものがあるが、HORIBA社のLA−960シリーズや、島津製作所のIG−1000シリーズなどが好適である。

    無機粒子は、分散性向上のために、親油性表面処理が施されていてもよい。 例えば、アルキル基を有するシランカップリング剤、長鎖カルボン酸やその塩、長鎖チオールやアルキルアミン等により表面処理されていてもよい。 これらにより表面処理されると分散性が向上する。
    なお、無機粒子として、親油性表面処理を施されたスメクタイトを用いる場合、環状ポリオレフィン又はその水素化物、特に水素化石油樹脂との併用時は着色(透明度)に留意する必要がある。 例えば、スメクタイトの分散性が悪いと透明度が低下することがあるので、後述する松脂留分由来有機酸の水素化物のアルキルエステル等により分散性を向上させるのが好ましい。

    無機粒子の、本発明の充填材料中の含有率は、0〜20質量%が好ましく、チクソ性付与の点で0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。
    無機粒子は1種単独で、又は2種以上を併用できる。

    樹脂組成物は、松脂留分由来有機酸の水素化物のアルキルエステルを含有するのが好ましい。 これにより、炭化水素系ポリマーと有機金属化合物の相溶性を高めることができる。 また、無機粒子を含有する場合は無機粒子の分散性を向上させることもできる。

    松脂留分由来有機酸は、松科の植物の樹液である松脂を蒸留して得られる有機酸であればよく、例えば、ロジン酸及びロジン酸を構成する各種酸が挙げられる。 ロジン酸を構成する酸としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸が挙げられる。 この中でも、アビエチン酸、ネオアビエチン酸が好ましい。
    松脂留分由来有機酸の水素化物をアルキルエステル化するアルコールは、特に限定されないが、脂肪族アルコールが好ましく、脂肪族多価アルコールが好ましい。 脂肪族多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。

    松脂留分由来有機酸の水素化物のアルキルエステルとしては、具体的には、トリ(テトラヒドロアビエチン酸)グリセリル、トリ(テトラヒドロネオアビエチン酸)グリセリル等が挙げられる。
    松脂留分由来有機酸の水素化物のアルキルエステルの、本発明の充填材料中の含有率は、0〜20質量%が好ましく、チクソ性付与剤の分散性を良くする等の点で0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。
    これらは1種単独で、又は2種以上を併用できる。

    樹脂組成物は、炭化水素系ポリマー以外の樹脂、可塑剤、シランカップリング剤、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、タック調整剤や樹脂安定剤、溶媒等を含有してもよい。
    なお、上記炭化水素系ポリマー以外の樹脂は、数平均分子量が300以上20000未満、かつヨウ素価が40g/100g未満であって極性基を有しない本発明の炭化水素系ポリマーとは異なるものである。

    <有機電界発光素子用充填材料の特性>
    上記樹脂組成物からなる本発明の充填材料は、以下の特性を有するか、又は有するのが好ましい。

    (窒化ケイ素に対する接触角)
    本発明の充填材料は、窒化ケイ素に対する接触角が10〜40°である。 この接触角が40°以下であると、OLED層又は発光部等に設けられた、窒化ケイ素やそれに類似した無機物を含む絶縁性保護層に塗布する際に本発明の充填材料が絶縁性保護層の表面に自然に濡れ拡がり、ハジキ等の欠陥なく、塗布することができる。 一方、接触角が10°未満であると、濡れ拡がりが過剰となり、ダム材を越えてOLED基板の外面などを汚染するリスクがある。
    接触角は、炭化水素系ポリマーの種類(不飽和炭化水素の種類、数平均分子量、ヨウ素価及び極性基の有無)、並びに、有機金属錯体の構造及び配合量によって、調整できる。 接触角の測定方法は、実施例で具体的に示す。

    (アウトガス量)
    本発明の充填材料は、85℃に1時間加熱したときの水分以外のアウトガス量がトルエン換算値で500ppm以下である。 このアウトガス量が500ppmを越えると、本発明の充填材料の塗布性がよくてもアウトガスに由来する気泡が発生して気泡状の欠陥が生じ、これによりOLEDの視認性が低下する。 この点はOLEDが温暖な条件下に長期間おかれた場合に顕著になる。 アウトガス量は、気泡状の欠陥防止及び視認性の点で、200ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。 なお、アウトガス量は、理想的には0ppmであるが、現実的には、0ppmにはならず、例えば10ppm程度である。

    このアウトガス量は、少なくとも使用時(塗布時)に上記範囲内にあればよい。
    上記条件で発生するガスは、水(水蒸気)、炭化水素系ポリマーの低分子量成分や溶媒等あるが、水分以外は有機金属化合物で捕獲されない。

    アウトガス量を上記の範囲に低減するため、以下の手段をとることができる。 例えば、本発明の充填材料を調製する際に必要により使用する溶媒の残留量を低減することが挙げられる。 また、上記成分を混合した後に低分子量成分等を除去する方法が挙げられる。 これらの方法として、例えば、加熱処理、減圧処理又は加熱減圧処理が挙げられる。 加熱条件及び減圧条件は、例えば用いる溶媒、成分等によって、適宜に設定される。
    好ましくは加熱減圧処理であり、例えば、減圧下、60〜90℃で30分〜3時間処理するのがより好ましい。
    なお、アウトガス量が上記範囲内にある場合には、さらに低減するための手段を行わなくてもよい。
    アウトガス量の測定方法は、実施例で具体的に示す。

    (粘性)
    本発明の充填材料は、25℃で、せん断速度が0.1〜1000S −1の領域において非ニュートン性を有する非ニュートン流体であるのが好ましい。 ここで、温度25℃は本発明の充填材料の塗布時の代表的な温度を想定している。 同様に、せん断速度0.1〜1000S −1は、本発明の充填材料の塗布工程において、高速に作用するせん断速度を想定している。 例えば、せん断速度1000S −1は、本発明の充填材料の塗布工程においてディスペンサー等を用いて塗布する際の動的な状態を想定している。 また、せん断速度0.1S −1は、本発明の充填材料を複数のデバイスに塗布する際、デバイス毎に塗布する間の、塗布作業をしない時間、及び充填済みデバイスが次の対向基板貼り合せ行程に搬送される際の静的な状態を想定している。

    動的な状態では濡れ拡がりの観点から低粘度であることが好ましく、静的な状態では漏れやはみ出しを抑制する観点から高粘度であることが好ましい。 したがって、上記領域において、非ニュートン流体とりわけチクソ性流体であると、塗布時の作業性がより向上し、しかも気泡状の欠陥をほとんど発生させることなく塗布できる。

    非ニュートン性とは、流れのせん断応力と流れの速度勾配の関係が線形ではない粘性の性質をいい、この性質を持つ流体を非ニュートン流体という。 非ニュートン流体は、ビンガム流体、チクソ性流体、擬塑性流体及びダイラタント流体に大別されるが、本発明においては、チクソ性流体又は擬塑性流体であるのが好ましく、特にチクソ性流体がより好ましい。 このチクソ性流体は、流れが強くなるほど、又は流れる時間が長くなるほど、流動しやすくなる流体であり、せん断力がかかった際に粘度が下がる流体である。

    本発明の充填材料を非ニュートン流体、好ましくはチクソ性流体とするには、炭化水素系ポリマーの種類(数平均分子量、ヨウ素価及び極性基の有無)を選定する方法が挙げられる。 また、無機粒子を用いる方法、好ましくは松脂留分由来有機酸の水素化物のアルキルエステルとともに無機粒子を用いる方法が挙げられる。 他には、互いに相溶しにくい材料同士を混ぜ合わせた後に乳化するといった方法等が挙げられる。

    本発明の充填材料の粘性の判断は、実施例で具体的に示す。

    (全光線透過率)
    本発明の充填材料は、可視領域(350nm〜800nm)で透明であるのが好ましく、少なくとも、350〜800nmの波長領域における全光線透過率が経路長25μmで90%以上であるのが好ましい。 この全光線透過率が90%以上であると、OLED素子の発光をほとんど妨げることがなくOLED素子外に放光でき、特にトップエミッション型のOLED用充填材料として好適である。 この全光線透過率は、95%以上がより好ましく、97%以上がさらに好ましい。
    全光線透過率は、有機金属化合物、無機粒子の種類及び含有率等により変動することがあるので、これらを適宜に選定することにより、また炭化水素系ポリマーの種類及び含有率等により、調整できる。

    (吸湿後の全光線透過率)
    本発明の充填材料は、60℃、90%RHの環境下に100時間保管後の、350〜800nmの波長領域における全光線透過率(吸湿後の全光線透過率ともいう)が、経路長25μmで80%以上であるのが好ましい。 吸湿後の全光線透過率が80%以上であると、たとえ高温高湿環境下におかれても、OLED素子の発光を大きく妨げることがなく素子外に放光でき、特にトップエミッション型のOLED用充填材料として好適である。 吸湿後の全光線透過率は、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。 吸湿後の全光線透過率の上限は、現実的には94%程度である。
    吸湿後の全光線透過率の測定方法は、実施例で具体的に示す。

    本発明の充填材料は、上記の各成分を必要により溶媒に溶解又は分散させ、これらを混合することにより、樹脂組成物として、調製できる。 このとき、混合方法及び混合順等の混合条件、並びに、温度、湿度及び圧力等の環境条件等は、特に限定されない。
    なお、溶媒を用いる場合には、混合後に溶媒を上記アウトガス量以下になるまで除去する。

    <<OLED素子>>
    本発明の充填材料は、OLEDの封止構造の一部として適用される。
    以下に、本発明の充填材が適用されるOLED素子について説明する。
    OLED素子は、一対の対向した電極、すなわち陽極及び陰極と、それらの電極の間に配置されたOLED層を有する発光部と、OLED素子の内部に充填される本発明の充填材料とを備えている。

    OLED層は、少なくとも発光層を有していればよく、発光層のみの単層構成であってもよく、例えば、発光層/電子輸送層、正孔輸送層/発光層、正孔輸送層/発光層/電子輸送層、発光層/電子輸送層/電子注入層、正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層等の多層構造であってもよい。
    OLED層は、通常、絶縁性を有する、例えば矩形状のガラス板等からなる素子基板上に設けられる。

    2つの電極とそれらの電極の間に配置されたOLED層とからなる発光部は、例えばOLED層が1つの場合もあれば2個以上のOLED層が組み合わさって組み込まれたものもであってもよく、種々の層構成を有することができる。

    OLED素子の一例を、図1を参照して、説明する。
    OLED素子1は、素子基板2と、素子基板2上に設けられた発光部3と、素子基板2に対向する対向基板4と、発光部3の外周を囲うダム材5と、これらで密閉された空間に無気泡状態に充填された本発明の充填材料(単に充填材料ともいう)6とを備えている。
    発光部3は、後述するように、陽極11及び陰極13と、それらの電極の間に配置されたOLED層12とを有している。 発光部3の表面には絶縁性保護層14が設けられている。
    このように、発光部3は、素子基板2、対向基板4及びダム材5で密閉された空間に内包され、充填材料6により封止されている。

    素子基板2は、硬質の材料、例えばジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス、金属等の無機材料、又は、例えばポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等の樹脂材料からなる。 基板は、その形状、構造、寸法等に制限はなく、目的とするOLED素子の構成に応じて最適なものを選択することができる。 一般的な素子基板2は、プレートの形状である。 また、素子基板2は、無色透明であってもよく、半透明であってもよく、不透明であってもよい。 また、素子基板2には、必要に応じて、透湿防止層(ガスバリア層)等を設けてもよく、TFT等からなる駆動回路を設けてもよい。

    素子基板2上には、発光部3が形成されている。
    具体的には、素子基板2上に酸化インジウム錫(ITO)膜等の導電材料の薄膜よりなる陽極11が形成されている。 ITO膜は、例えば真空蒸着法、スパッタ法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法により成膜できる。 その後、フォトレジスト法の手段によるエッチング等で所定パターン形状にパターニングされ、形成される。 陽極11の一部は、素子基板2の端部まで引き出されて駆動回路に接続される。
    導電材料としては、ITOの他に、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム等の半導電性金属酸化物、例えば金、銀、クロム、ニッケル等の金属、例えばポリアニリン、ポリチオフェン等の有機導電性材料が挙げられる。

    陽極11の上面には、例えば、真空蒸着法、抵抗加熱法等のPVD法により、有機化合物材料の薄膜によるOLED層12が積層されている。 このOLED層12は、陽極11の上に成膜されたホール注入層21と、ホール注入層21の上面に成膜されたホール輸送層22と、ホール輸送層22の上面に成膜される発光層23と、発光層23の上面に成膜される電子輸送層24との4層構造として、形成されている。

    ホール注入層21及びホール輸送層22は、それぞれ、ホール輸送材料から形成することができる。 ホール輸送材料は、陽極11からホール(正孔)を注入する機能、ホールを輸送する機能又は陰極13から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有している。 ホール輸送材料としては、銅フタロシアニン(CuPc)、ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(m−トリル)ベンジジン、N,N,N',N'−テトラキス(m−トリル)−1,3−フェニレンジアミン、1,1−ビス〔4−〔N,N−ジ(p−トリル)アミノ〕フェニル〕シクロヘキサン、4,4',4”−トリス〔N,N'、N”−トリフェニル−N,N',N”−トリ(m−トリル)〕アミノ〕−フェニレン等が挙げられる。
    これらの層の厚さは、特に限定されないが、通常、5〜100nmであり、好ましくは数10nmである。

    発光層23は、少なくとも1種類の発光材料を含み、必要に応じてホール輸送材料、電子輸送材料等を含んでいてもよい。 発光材料は、特に限定されるものではない。
    発光材料は、金属錯体、低分子蛍光色素もしくは蛍光性高分子化合物が挙げられる。
    金属錯体としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体、ビス(8−キノリノラト)亜鉛錯体、フェナントロリン系ユウロピウム錯体が挙げられる。 低分子蛍光色素としては、ペリレン、キナクリドン、クマリン、2−チオフェンカルボン酸等が挙げられ、蛍光性高分子化合物としては、ポリ(p−フェニレンビニレン)、9−クロロメチルアントラセン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
    発光層23の厚さは、特に限定されないが、通常、5〜100nmであり、好ましくは数10nmである。

    電子輸送層24は、電子輸送材料から形成することができる。 電子輸送材料は、電子を輸送する機能又は陽極11から注入されたホールを障壁する機能のいずれかを有している。 電子輸送材料としては、フッ化リチウム(LiF)、2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニル)−1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
    電子輸送層24の厚さは、特に限定されないが、通常、5〜100nmであり、好ましくは数nmである。

    陰極13は、OLED層12の電子輸送層24の上面に導電材料の薄膜として形成されている。 金属薄膜の材料としては、例えばAl、Li、Mg、Inの金属が挙げられる。 陰極13の一部は、素子基板2の端部まで引き出されて駆動回路に接続される。

    陽極11、OLED層12及び陰極13は、水分及び酸素からこれを保護するために絶縁性保護層14で覆われている。 絶縁性保護層14は、絶縁性無機物よりなる無機薄層を有する。 絶縁性無機物としては、特に限定されないが、少なくともケイ素原子と窒素原子を含む化合物、金属窒化物及び金属酸化物等が挙げられ、少なくともケイ素原子と窒素原子を含む化合物が好ましく、窒化ケイ素又はオキシ窒化ケイ素が特に防湿性と透明性のバランスに優れている点で好ましい。
    無機薄層は、プラズマCVT、イオンビームアシスト蒸着、反応スパッタ法等から選択される方法により、設けることができる。

    絶縁性保護層14は、無機薄層を少なくとも1層有しており、1層の無機薄層からなる単層構造であっても、少なくとも2層の無機薄層からなる多層構造であってもよい。
    多層構造である場合は、隣接する2つの無機薄層14A と無機薄層14A X+1の間に平坦化層14Bを設けることが、無機薄層内に生じる微小欠陥を通じた水分透過の悪影響を小さくする上で好ましい。 平坦化層14Bは、絶縁性を有する無機物又は有機物からなり、各種蒸着法やスピンコート法、噴霧法等から選択される方法により、成膜できる。 この平坦化層14Bに用いる材料は、無機薄層と異なる物質であればよく、無機物であれば酸化ケイ素又は炭化ケイ素オキシドや酸化アルミニウム等を、有機物であればフッ素樹脂又はアクリル樹脂や、ポリイミド等を好適に用いることができる。

    無機薄層14A と平坦化層14Bの積層構造は、多層であるほど微小欠陥の悪影響を抑えて水分や酸素に対するバリア性を高めることができるが、一般向けの製品に適応し得るのは、コスト面から見て無機薄層14A /平坦化層14B/無機薄層14A の3層構造が現実的である。

    このようにして、陽極11、OLED層12及び陰極13の積層構造からなる発光部3と絶縁性保護層14とにより、積層体が形成されている。

    絶縁性保護層14で覆われた発光部3を搭載した素子基板2と、矩形の対向基板4及びダム材5により、積層体を内包する形の気密容器が素子基板2上に形成されている。

    対向基板4の材料としては、特に金属やガラス、ポリマーよりなるフィルム等から選択された材料を用いることができる。 なかでも、例えば、ガラスやPET、PEN、脂肪族ポリイミドといった無色透明な材料であれば、OLED素子1上面から対向基板4を通じて光を取り出すトップエミッション型を採ることができる。 トップエミッション型の場合は、対向基板4にカラーフィルタが貼り合わされていてもよい。 対向基板4には水分や酸素の透過を抑制するために、窒化ケイ素等よりなる無機層が蒸着等の方法により設けられていてもよい。

    ダム材5は、特に限定しないが、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂及び無機粒子の混合物等よりなる接着剤をディスペンサー等により基板外周部を囲うように両基板2及び4に塗布して硬化する方法や、ダム材5としての窓枠型ガラスを両基板2及び4にレーザー融着する等の方法を用いることで形成できる。 このように形成されたダム材5は、対向基板4が発光部3に接触するのを防ぐと共に、発光部3を内包して、気密容器の気密性を保持し、後述する液状充填材6が外に漏れ出すのを防ぐ役割を有する。

    このようにして形成された気密容器内部は、本発明の充填材料6で満たされている。

    本発明の充填材料を有するOLED素子は、本発明の封止方法により発光部を封止して、製造される。 したがって、本発明の封止方法は、OLED素子の製造方法でもある。
    本発明の封止方法、及び、これを含むOLED素子の製造方法について具体的に説明する。 なお、下記説明は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に照らし合わせて設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。

    本発明の封止方法は、少なくとも、絶縁性保護層で覆われた発光部を封止、包囲する気密容器内に本発明の有機電界発光素子用充填材料を充填する工程からなる。
    本発明の封止方法において、素子基板、対向基板及びダム材からなる気密容器、並びに、発光部3を含む積層体は、上記のようにして設けることができる。

    本発明の封止方法においては、対向基板をダム材に接着する前に、積層体上又は積層体とダム材との空間に本発明の充填材料を充填する。
    本発明の充填材料は、水分の混入を防ぐため、室温で、不活性ガス、例えば窒素ガス雰囲気下において、充填される。
    塗布量は、通常、気密容器内の空間容積と等しい容量、又は、これよりも僅かに多い量である。

    本発明の液状材料の充填は、ディスペンサー、スリットダイ、スクリーン印刷等により塗布して行われるが、特にディスペンサーが機械や冶具等の仕様を特に変更しなくても様々なサイズや形状のデバイスに塗布できる点で、優れている。 ディスペンサー等で塗布する際、シリンジから押し出し易い点で、本発明の充填材料の粘度は、小さいほど好ましく、より好ましくは1000Pa・sec未満であり、更に好ましくは100Pa・sec未満である。 1000Pa・secより高粘度であるほど濡れ拡がりの点で不利になる。

    しかしその一方で、複数のデバイスに塗布する際、デバイス毎に塗布する間の、塗布作業をしない時間に、粘度が低いと意図せずディスペンサーのシリンジから充填材が漏れ、塗布したくない部分に充填材が滴下してしまうエラーが起きるため、シリンジから押し出さない静的な状態においては、充填材料の粘度が100Pa・sec未満であると作業が難しい。 このため、粘度は、大きいほど好ましく、より好ましくは1000Pa・sec以上である。
    また、静的な粘度が高い方が、塗布工程から次工程に本発明の充填材料塗布済みのデバイスを搬送する際に本発明の充填材料が零れたりはみ出したりするエラーを抑制する点でも有利である。 なお、次工程はダム材と対向基板との貼合わせ工程である。

    シリンジから本発明の充填材料を押し出す際の動的な粘度と、押し出さない際の静的な粘度への技術的要求は矛盾しており、ニュートン流体の充填材ではこの矛盾を解決できない場合がある。 非ニュートン流体の充填材を使用することで、せん断流速によって粘度が変化し、上記矛盾を解決することができる本発明では、該非ニュートン流体の充填材料を使用することで、動的な状態において低粘度、静的な状態において高粘度という矛盾した流動特性を両立し、ディスペンサー等による塗布工程を含むOLED封止工程における優れた作業性を実現することが可能となった。 とりわけ、粘度に時間・速度依存性があるチクソ性液体が、絶縁性保護層上に欠陥なく濡れ拡がり易い点で特に好ましい。

    本発明の充填材料を充填した後、上記温度及び雰囲気下で充填材料が濡れ拡がるまで放置する。 このとき、静置してもよいし、振動等を与えてもよい。 これにより、本発明の充填材料は絶縁性保護層の表面に欠陥なく流延することができる。
    放置後、本発明の充填材料を流延させ、発光部を含む積層体とダム材との空間に充填材料を充填する。

    本発明の充填材料を充填した後に、対向基板をダム材に接着して、積層体を封止する工程を行なう。 このようにして、OLED素子を封止し、OLED素子を製造する。
    このように、本発明の充填材料を用いると、高い製造歩留まりでOLED素子を製造できる。

    以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

    [実施例1]
    室温で液状のポリイソブチレン(「015N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:600、ヨウ素価40g/100g)と、水素化C5/C9系石油樹脂(「アイマーブP100」(商品名)、出光興産社製、数平均分子量:900、ヨウ素価<10g/100g)のトルエン50%溶液と、アルミニウムトリイソノニロキシドのトルエン50%溶液を、質量比2:3:1で、混和した後、エバポレーターを用いて80℃で1時間の減圧乾燥を行った。
    このようにして本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。

    調製したOLED用充填材料を、絶縁性保護層で覆われた発光部を封止する気密容器内に充填して、図1に示されるOLED素子と同様のOLED素子1を製造した。
    素子基板2として、3.6cm×3.6cm及び5.6cm×5.6cmのITO蒸着済みガラス2種類を用いて、これら素子基板2それぞれに、フォトレジスト法によるエッチングを施し所定パターン形状にパターニングして、厚さ100nmの陽極11を形成した。 なお、ITO膜の一部を素子基板2の端部まで引き出し、図示しない駆動回路と接続した。
    次に、陽極11の上面に、抵抗加熱法により70nmの膜厚で銅フタロシアニン(CuPc)からなるホール注入層21を成膜し、このホール注入層21上面に30nmの膜厚でビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)からなるホール輸送層22を成膜し、さらにホール輸送層22の上面に50nmの膜厚でトリス(8−キノリノラト)アルミニウムからなる発光層23を成膜した。
    次いで、発光層23の上面に7nmの膜厚でフッ化リチウムからなる電子輸送層24を成膜し、さらに、電子輸送層24上に150nmの膜厚でアルミニウムを物理蒸着して陰極13を成膜した。 なお、陰極13の一部を素子基板2の端部まで引き出して、図示しない駆動回路に接続した。 このようにして、陽極11、OLED層12及び陰極13からなる発光部3が搭載された素子基板2を得た。
    次いで、この発光部3の表面に以下のようにして、少なくともケイ素原子と窒素原子を含む化合物よりなる無機薄層を含む3層構造の絶縁性保護層14を成膜し、積層体として絶縁性保護層14で覆われた発光部3を形成した。

    無機薄層14A /平坦化層14B/無機薄層14A の3層構造に対応する絶縁性保護層14を成膜した。 まず、発光部3の表面にプラズマCVT法により1nmの厚さの窒化ケイ素よりなる無機薄層14A を形成した後、スピンコートにより2μmの厚みでアクリル酸ブチルに0.1質量%の割合で2,2−ジエトキシアセトフェノンを混合したものを塗布した後、UV照射により硬化させて平坦化層14Bを形成し、その後、再びプラズマCVT法により1nmの厚さの窒化ケイ素よりなる無機薄層14A を形成することで、3層構造の絶縁性保護層14を成膜した。

    ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「RE310S」(商品名)、日本化薬社製)と、シリカ粒子(「SO−C1」(商品名)、アドマテックス社製)と、光カチオン触媒(「アデカオプトマーSP170」(商品名)、アデカ社製)を、質量比100:30:1で、プラネタリーミキサーを用いて混合し、光硬化性のダム材を調製した。

    次いで、露点−76℃以下の窒素ガスで置換されたグローブボックス中で、積層体を搭載した素子基板2の外周部に、積層体を枠状に包囲するように、幅3mm、高さ40μmとなるように、調製したダム材をディスペンサーで塗布した。 次に、素子基板2と未硬化のダム材よりなる気密容器の空間容積に等しい容量分のOLED用充填材料を積層体の表面上にディスペンサーで塗布した。 OLED用充填材料6は、図2に示されるように、絶縁性保護層14の表面に、十字状及び斜め十字状に塗布した。
    その後、グローブボックス中で、2分間放置してOLED用充填材料を濡れ拡がらせた。 次に、対向基板4をダム材5と貼り合わせた後に紫外線を照射して、ダム材5を硬化させた。 ダム材5を硬化させることで、ダム材5、対向基板4及び素子基板2からなり、絶縁性保護層14で覆われた発光部3を封止する気密容器内にOLED用充填材料6を液状のまま充填した。
    このようにして、OLED用充填材料6を液状のまま気密容器内に充填した封止構造を有する、異サイズのOLED素子1を2種類製造した。

    [実施例2]
    室温で液状のポリイソブチレン(「3N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:720、ヨウ素価35g/100g)と、水素化C5/C9系石油樹脂(「アイマーブP100」(商品名)、出光興産社製、数平均分子量:900、ヨウ素価<10g/100g)のトルエン50%溶液と、アルミニウムトリ(4,6−ノナンジオネート)のトルエン50%溶液を、質量比2:3:1で、混和した後、エバポレーターを用いて80℃で1時間の減圧乾燥を行った。 こうして得られた組成物に、3%の質量分率になるように合成スメクタイト粒子(「ルーセンタイトSAN」(商品名)、コープケミカル社製、平均粒径:40nm)を添加し、ホモジェナイザーを用いて分散させた。
    このようにして本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例3]
    ポリイソブチレン(「3N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:720、ヨウ素価35g/100g)と、水素化C5/C9系石油樹脂(「アイマーブP100」(商品名)、出光興産社製、数平均分子量:900、ヨウ素価<10g/100g)のトルエン50%溶液と、アルミニウムトリ(4,6−デカンジオネート)のトルエン50%溶液を、質量比2:3:1で、混和した後、エバポレーターを用いて80℃で1時間の減圧乾燥を行った。 こうして得られた組成物に、3%の質量分率になるようにナノタイプのフュームドシリカ粒子(「アエロジルRX50」(商品名)、日本アエロジル社製、平均粒径:60nm)を添加し、ホモジェナイザーを用いて分散させた。
    このようにして本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例4]
    アルミニウムトリ(4,6−デカンジオネート)に代えてアルミニウムトリ(マロン酸ジイソプロピル)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例5]
    ポリイソブチレン(「3N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:720、ヨウ素価35g/100g)と、水素化C5/C9系石油樹脂(「アイマーブP100」(商品名)、出光興産社製、数平均分子量:900、ヨウ素価<10g/100g)のトルエン50%溶液と、アルミニウムトリステアロキシドのトルエン50%溶液と、トリ(テトラヒドロアビエチン酸)グリセリルのトルエン50%溶液を、質量比4:6:4:1で、混和した後、エバポレーターを用いて80℃で1時間の減圧乾燥を行った。 こうして得られた組成物に、3%の質量分率になるようにナノタイプのフュームドシリカ粒子(「アエロジルRX50」(商品名)、日本アエロジル社製、平均粒径:60nm)を添加し、ホモジェナイザーを用いて分散させた。
    このようにして本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例6]
    アルミニウムトリイソステアロキシドに代えてアルミニウムトリイソデソキシドを用いたこと以外は実施例5と同様にして、本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例7]
    フュームドシリカ粒子に代えてナノタイプの真球シリカ粒子(「ST」(商品名)、日産化学社製、平均粒径:15nm)を用いたこと以外は実施例5と同様にして、本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例8]
    水素化C5/C9系石油樹脂に代えて水素化C9系石油樹脂(「アルコンP90」(商品名)、荒川化学工業社製、数平均分子量:600、ヨウ素価<10g/100g)を、フュームドシリカ粒子に代えて合成スメクタイト粒子(「ルーセンタイトSAN」(商品名)、コープケミカル社製、平均粒径:40nm)を用いたこと以外は実施例6と同様にして、本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例9]
    水素化C5/C9系石油樹脂に代えて水素化テルペン樹脂(「クリアロンP105」(商品名)、ヤスハラケミカル社製、数平均分子量:600、ヨウ素価<10g/100g)を、またトリイソステアリルオキシアルミニウムに代えてカルシウムジイソノニロキシドを用いたこと以外は実施例5と同様にして、本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例10]
    ポリイソブチレンに代えて部分水素化ポリイソプレン(「LIR290」(商品名)、クラレ社製、数平均分子量:31000、ヨウ素価40g/100g)を用いたこと以外は実施例6と同様にして、本発明のOLED用充填材料を調製した。 このOLED用充填材料は、25℃で液状であった。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [実施例11]
    ポリイソブチレン(「015N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:600、ヨウ素価40g/100g)と、水素化C5/C9系石油樹脂(「アイマーブP100」(商品名)、出光興産社製、数平均分子量:900、ヨウ素価<10g/100g)のトルエン50%溶液と、アルミニウムトリイソノニロキシドのトルエン50%溶液を、質量比4:1:3で、混和した後、エバポレーターを用いて80℃で1時間の減圧乾燥を行った。
    このOLED用充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子1を製造した。

    [比較例1]
    ポリイソブチレン(「015N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:600、ヨウ素価40g/100g)をエバポレーターにより80℃で1時間の減圧乾燥を行って、充填材料を調製した。
    この充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子を製造した。

    [比較例2]
    充填材料としてアルミニウムトリイソノニロキシドを用いて、実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子を製造した。

    [比較例3]
    スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体(「LIR310」(商品名)、クラレ社製、数平均分子量:32000)のトルエン50%溶液と、アルミニウムトリイソノニロキシドのトルエン50%溶液を、質量比4:1で混和した後、エバポレーターを用いて80℃で1時間の減圧乾燥を行った。
    このようにして充填材料を調製した。 この充填材料は、25℃で固体であり、アウトガス量以外は評価できなかった。
    したがって、この充填材料を用いては、実施例1と同様の方法でOLED素子を製造することはできなかった。

    [比較例4]
    ポリイソブチレン(「015N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:600、ヨウ素価40g/100g)のトルエン50%溶液と、アルミニウムトリノルマルブトキシドを、質量比3:1で混和した後、エバポレーターを用いて80℃で1時間の減圧乾燥を行った。
    このようにして充填材料を調製した。 この充填材料は、25℃で液状であった。
    この充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子を製造した。

    [比較例5]
    ポリイソブチレン(「015N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:600、ヨウ素価40g/100g)のトルエン50%溶液と、アルミニムモノ(ジプロピルマロネート)ジノルマルブチレートを、質量比3:1で混和した後、エバポレーターを用いて80℃で1時間の減圧乾燥を行った。
    このようにして充填材料を調製した。 この充填材料は、25℃で液状であった。
    この充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子を製造した。

    [比較例6]
    ポリイソブチレン(「015N」(商品名)、日油社製、数平均分子量:600、ヨウ素価40g/100g)のトルエン50%溶液と、アルミニウムオキサイドオクチレート3量体のトルエン50%溶液を、質量比3:2で混和した後、エバポレーターを用いて40℃で1時間の減圧乾燥を行った。
    このようにして充填材料を調製した。 この充填材料は、25℃で液状であった。
    この充填材料を用いて実施例1と同様にして、サイズが異なる2種類のOLED素子を製造した。

    (無機粒子のフラクタル次元)
    実施例に用いた各無機粒子について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて無機粒子の投影画像を得た後、ランダムに選らんだ無機粒子10個を標本として抽出し、それぞれの投影像の輪郭線から、ボックスカウント法により、下記式によりフラクタル次元を求めた。

    式:log(輪郭線長さ)=(1−D)log(分解能)+log(定数)

    式中、Dはフラクタル次元を表し、定数は輪郭線の形や大きさによって決まる固有値を表し、輪郭線を最も単純な形に近似した際の長さに相当する。 複雑性はフラクタル次元Dの大小でのみ評価でき、定数の大小は複雑性とは関係がない。
    無機粒子のフラクタル次元は、平均値、又は、10個それぞれの値を含む範囲とした。
    各無機粒子のTEM画像、平均粒径及び輪郭線のフラクタル次元を表1に示す。

    実施例及び比較例で調製又は使用した充填材料それぞれについて、以下のようにして、下記項目を評価した。

    (接触角)
    真空蒸着により表面に窒化ケイ素膜を形成した平滑なウェハ上に、実施例及び比較例の充填材料それぞれを滴下し、滴下液と窒化ケイ素膜表面との接触角を、JIS R 3257に規定された静滴法の蒸留水を充填材料に代えた方法で、測定した。

    (アウトガス量)
    実施例及び比較例の充填材料それぞれについて、JIS K 0114で規定されるガスクロマトグラフ分析法で、アウトガス量の測定を行った。 各充填材料を85℃で1時間加熱した際に揮発した成分をヘッドスペースサンプリング装置によって捕集して分析した。 アウトガス量は、水分を除く揮発成分の量をトルエン換算で求めた。

    (全光線透過率)
    実施例及び比較例の充填材料それぞれを、厚さ25μmの枠型セパレータとともに2mm厚のポリメタクリル酸メチルエステル樹脂(PMMA)板2枚で挟み込み(経路長25μm)、可視・紫外光分光計「UV−3600」(島津製作所製)を用いて、PMMA板2枚のみで測定した分をバックグラウンド(リファレンス)として、350〜800nmの波長領域における透過率を測定し、これを平均して全光線透過率(表2及び表3において初期と表記する。)とした。

    (吸湿後の全光線透過率)
    実施例及び比較例の充填材料それぞれをシャーレ上で、60℃、相対湿度90%で100時間保管した。 この吸湿後の充填材料それぞれについて、上記「全光線透過率」と同様にして全光線透過率(表2及び表3において吸湿後と表記する。)を求めた。
    なお、60℃、90%RHでの100時間の保管は、恒温恒湿槽(エスペック株式会社製のPR−1J)を使用した。

    (粘性)
    実施例及び比較例の充填材料それぞれを、E型粘度計を用いて、0.1S −1 、10S −1及び1000S −1の各せん断速度で、25℃における粘度を測定した。
    粘性の判断は、せん断速度毎に測定された粘度が異なっている場合を非ニュートン性と判断し、特にせん断速度を大きくするに従って粘度が小さくなった場合を充填材料がチクソ性である(表2及び表3において「非ニュートンチクソ性」と表記する。)と判断した。
    また、3種のせん断速度において測定された3種の粘度が一定(同値)である、つまり、せん断速度とせん断応力とが線形関係を有していた場合を、ニュートン性と判断した。

    (充填材料のはみ出し・漏れの評価)
    充填材料の気密容器外へのはみ出し、漏れ等がみられるか否かを評価した。
    具体的には、実施例及び比較例それぞれにおいて製造した2種類のOLED素子それぞれを外部から肉眼で観察し、はみ出し及び漏れの有無を確認した。
    評価基準は、3.6cm×3.6cmの素子基板を有するOLED素子(小型OLED素子という)及び5.6cm×5.6cmの素子基板を有するOLED素子(大型OLED素子という)の両素子とも、はみ出し及び漏れを確認できなかったものを「◎」とし、小型OLED素子ではみ出し及び漏れを確認できなかったものの、大型OLED素子ではみ出し及び漏れを確認できたものを「○」とし、小型OLED素子ではみ出し及び漏れを確認できたものを「×」とした。

    はみ出し及び漏れの評価は、充填材料の汚染性を評価する試験であり、後述するように、大型OLED素子での評価はテストピースとしては過酷試験である。
    したがって、評価は、評価基準が「○」である場合が合格レベルであり、「◎」である場合はOLED用充填材料として望ましいレベルである。

    (気泡状欠陥及び未充填部分の評価)
    製造したOLED素子それぞれを、相対湿度0.003%の乾燥雰囲気下にて、60℃で24時間放置した後、気密容器内に、気泡又は充填材料で濡れていない部分(未充填部分)が存在するか否かを、顕微鏡で観察した。
    評価基準は、小型OLED素子及び大型OLED素子の両素子とも気泡状欠陥及び未充填部分を確認できなかったものを「◎」とし、小型OLED素子で気泡状欠陥及び未充填部分を確認できなかったものの、大型OLED素子で気泡状欠陥及び未充填部分を確認できたものを「○」とし、小型OLED素子で気泡状欠陥及び未充填部分を確認できたものを「×」とした。

    気泡状欠陥及び未充填部分の評価は、充填材料の濡れ性及びディスプレイの美観への影響を評価する試験である。
    なお、例えばデジタル時計や携帯音楽プレーヤー等のディスプレイとして用いられるOLED素子の場合は、5.6×5.6cmサイズ以上の大型のものを採用するとは限らないが、大型のものを製造する可能性、及び、その他の用途に使用するOLED素子の場合等を考慮して、過酷試験として、実施した。
    したがって、評価は、評価基準が「○」である場合が合格レベルであり、「◎」である場合はOLED用充填材料として望ましいレベルである。

    (ダークスポットの発生)
    実施例及び比較例で製造した2種類のOLED素子のうち、小型OLED素子それぞれを、温度60℃、相対湿度90%の環境に500〜1000時間放置する高温高湿放置試験を行った。 放置時間が500時間経過後、750時間経過後及び1000時間経過後に、小型OLED素子それぞれを発光させて、発光状態を顕微鏡で観察した。
    各経過時間において、ダークスポットが見られなかったものを「○」とし、見られたものを「×」とした。

    ダークスポットの発生試験において、経過時間が750時間及び1000時間での評価は、例えばデジタル時計や携帯音楽プレーヤー等の各種携帯機器に用いられるOLED素子の場合は、使用者が1ケ月以上に亘って連続的に温度60℃、湿度90%の高温高湿環境下で使用・保管することは通常の条件では可能性が低いと思われるため、過酷試験(促進試験)である。
    したがって、経過時間が500時間での評価が「○」である場合が合格レベルである。 経過時間が500時間及び750時間での評価がともに「○」である場合はOLED素子として望ましいレベルであり、経過時間が500時間、750時間及び1000時間での評価がいずれも「○」である場合はOLED素子として特に望ましいレベルである。

    得られた結果をまとめて、下記表2及び表3に示す。

    表2から明らかなように、実施例のOLED用充填材料は、いずれも、25℃で液状であり、充填材料のはみ出し・漏れの評価、気泡状欠陥及び未充填部分の評価並びにダークスポットの発生が合格レベルであった。
    なお、実施例のOLED用充填材料は、いずれも硬化性を有しておらず、ダム材の硬化時にも硬化せず、液状のまま充填されている。 したがって、OLED素子の製造において、硬化収縮によりOLED素子が破壊するリスクを回避できる。
    このように、実施例のOLED用充填材料は、OLED素子を水分から保護し、硬化収縮によってOLED素子を破壊するリスクなく、塗布、充填できることが分かった。 また、発光部等を覆う絶縁性保護層の無機物よりなる表面に、気泡状欠陥及び未充填部分がなく、しかも漏れやはみ出しもなく塗布、充填できることが分かった。

    特に、実施例1〜8は、高温高湿下に750時間及び1000時間もの長期間にわたって放置してもダークスポットの発生が見られないことも分かった。
    また、ダークスポットが高度に発生しにくく、視認性に優れたOLEDを製造時の破損リスクも小さく製造歩留まりよく製造できることも分かった。

    表3から明らかなように、比較例のOLED用充填材料は、いずれも、充填材料のはみ出し・漏れの評価、気泡状欠陥及び未充填部分の評価、並びに、ダークスポットの発生の少なくとも一つが、不合格であった。

    1 OLED素子2 素子基板3 発光部4 対向基板5 ダム材6 充填材料11 陽極12 OLED層13 陰極14 絶縁性保護層 14A 、14A 無機薄層 14B 平坦化層21 ホール注入層22 ホール輸送層23 発光層24 電子輸送層

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