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ガスバリアー性フィルムとそのガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイス

阅读:350发布:2024-01-15

专利汇可以提供ガスバリアー性フィルムとそのガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイス专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且【課題】本発明のガスバリアー性フィルムは、電子デバイス用途に必要なガスバリアー性を有し、かつフレキシブル性(密着性、屈曲性)に優れたガスバリアー性フィルム及びそのガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイスを提供することである。 【解決手段】本発明のガスバリアー性フィルムは、 水 吸着性樹脂と5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物とを含有する樹脂 基板 上に、ガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物が、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環のいずれかを少なくとも三つ有し、かつ特定の構造を有する化合物であることを特徴とする。 【選択図】なし,下面是ガスバリアー性フィルムとそのガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイス专利的具体信息内容。

吸着性樹脂と5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物とを含有する樹脂基板上に、ガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物が、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環のいずれかを少なくとも三つ有し、そのうちの少なくとも一つはベンゼン環よりNICS値が小さく、かつ、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が、相互に単結合又は2個以下の原子を介して連結された化合物であることを特徴とするガスバリアー性フィルム。前記水吸着性樹脂が、セルロースエステルであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアー性フィルム。前記ガスバリアー層が、磁場を印加したローラー間の放電空間における放電プラズマ化学気相成長法により形成されたガスバリアー層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリアー性フィルム。前記樹脂基板とガスバリアー層の間に、ペンタエリスリトールアクリレートを含有するハードコート層を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。前記ガスバリアー層の上に、ポリシラザン含有液を塗布、乾燥し、形成された塗膜に波長200nm以下の真空紫外光を照射して改質処理して形成した第2のガスバリアー層を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイス。

说明书全文

本発明は、ガスバリアー性フィルムとそのガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイスに関し、より詳しくは、主に有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子等の電子デバイスに用いられるガスバリアー性フィルムと、そのガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイスに関する。

従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を含む複数の層を積層して形成したガスバリアー性フィルムは、蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。

包装用途以外にも、フレキシブル性を有する太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等のフレキシブル電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。しかし、これらフレキシブル電子デバイスにおいては、ガラス基板レベルの非常に高いガスバリアー性が要求されるため、現状では十分な性能を有するガスバリアー性フィルムはいまだ得られていないのが現状である。

このようなガスバリアー性フィルムを形成する方法としては、テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機ケイ素化合物を用いて、減圧下、酸素プラズマで酸化しながら基板上に成膜する化学堆積法(プラズマCVD法:Chemical Vapor Deposition)や、半導体レーザーを用いて金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基板上に堆積する物理堆積法(真空蒸着法やスパッタ法)といった気相法が知られている。

特許文献1には、図1に示す装置でプラズマCVDを利用しながらロール・to・ロール方式で10−4g/m2/dayレベルのバリアー層を形成する製造方法が記載されている。上記で製造されたガスバリアー性フィルムは、炭素原子を基板周辺に多く配置することができるCVD法により、基板との密着性、屈曲性を向上させているが、屋外使用のような高温高湿の使用環境下では、有機EL素子を始めとする電子デバイス用途のガスバリアー性、密着性、屈曲性として不十分であることが分かった。

一方、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリイミドなどの樹脂は、透明性が高く、無機ガラスに比べて軽く、成形が容易であることから、太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等のフレキシブル電子デバイス用の光学フィルムに広く用いられている。

これらの樹脂には、水素結合供与性部位(例えば、ヒドロキシ基の水素原子やアミド基の水素原子など)や水素結合受容性部位(例えば、エステル基のカルボニル酸素原子や芳香族複素環に含まれる窒素原子など)が存在するために、水と水素結合して水を吸着するという性質を有する(以下、水吸着性樹脂という。)。そのため、経時又は外部の湿度環境の変化に応じて、水を吸収し、寸法変化や、剛性、強度等の機械的特性、抵抗率等の電気的特性、屈折率等の光学的特性など、さまざまな特性の変化が生じるという問題がある。

上記のような基板でガスバリアーフィルムを作製すると、上記基板に吸着した水分が減圧や真空下で蒸発、揮発し、ガスバリアー素材が基板上に堆積する時に不純物として作用し、フレキシブル電子デバイスに要望されるガスバリアー性が得られないことが分かった。

この問題に対して、光学フィルムに特定の添加剤を含有させることによって環境湿度に依存した光学性能の変動を低減させる方法が検討されている。

特許文献2では、ポリエステルと多価アルコールエステル又は芳香族末端エステルを含有するセルロースエステルフィルムを用いる方法が開示されている。特許文献3では、分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が特定の範囲にある化合物を含有するセルロースエステルフィルムを用いる方法が開示されている。

本発明者らが上記特許文献1〜3記載の方法で基板を作製し、その基板でガスバリアーフィルムを作製したが、一定の効果は認められるものの、フレキシブル電子デバイスに要望されるガスバリアー性が十分でなく、さらなる改善が必要であることが分かった。

国際公開第2012/046767号

特開2006−342227号公報

特開2011−94114号公報

本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、電子デバイス用途に必要なガスバリアー性を有し、かつフレキシブル性(密着性、屈曲性)に優れたガスバリアー性フィルム及びそのガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイスを提供することである。

本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、水分子と親和性の高い水吸着性樹脂に特定の有機化合物を添加剤として共存させることにより、気相法でのガスバリアー作製時に、樹脂基板からの水分の揮発・蒸発を抑制し、電子デバイス用途に必要な非常に優れたガスバリアー性能とフレキシブル性(密着性、屈曲性)を有するガスバリアー性フィルムを得られることを見いだし、本発明に至った。

すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。

1.水吸着性樹脂と5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物とを含有する樹脂基板上に、ガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物が、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環のいずれかを少なくとも三つ有し、そのうちの少なくとも一つはベンゼン環よりNICS値が小さく、かつ、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が、相互に単結合又は2個以下の原子を介して連結された化合物であることを特徴とするガスバリアー性フィルム。

2.前記水吸着性樹脂が、セルロースエステルであることを特徴とする第1項に記載のガスバリアー性フィルム。

3.前記ガスバリアー層が、磁場を印加したローラー間の放電空間における放電プラズマ化学気相成長法により形成されたガスバリアー層であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のガスバリアー性フィルム。

4.前記樹脂基板とガスバリアー層の間に、ペンタエリスリトールアクリレートを含有するハードコート層を有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。

5.前記ガスバリアー層の上に、ポリシラザン含有液を塗布、乾燥し、形成された塗膜に波長200nm以下の真空紫外光を照射して改質処理して形成した第2のガスバリアー層を有することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルム。

6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載のガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイス。

本発明の上記手段により、電子デバイス用途に必要なガスバリアー性を有し、かつフレキシブル性(密着性、屈曲性)に優れたガスバリアー性フィルム及びそのガスバリアー性フィルムを用いた電子デバイスを提供することができる。

本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。

水吸着性樹脂の主鎖又は側鎖に存在するCH部分と、特定の有機化合物有する芳香族化合物のπ電子との間にいわゆる「CH/π相互作用」が働き、これを積極的に活用することにより樹脂との相互作用よりも添加剤と樹脂の相互作用の方が強くなり、結果として樹脂基板からの水分の揮発・蒸発を抑制し、基板上に堆積する不純物の影響を受けにくくなるものと推察される。

本発明に係る磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置を用いたガスバリアー性フィルムの製造方法の一例を示す概略図

本発明に係るガスバリアー層のケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線の一例を示すグラフ

他のガスバリアー層のケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線の一例を示すグラフ

ガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスの模式図

本発明のガスバリアー性フィルムは、水吸着性樹脂と5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物とを含有する樹脂基板上に、ガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物が、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環のいずれかを少なくとも三つ有し、そのうちの少なくとも一つはベンゼン環よりNICS値が小さく、かつ、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が、相互に単結合又は2個以下の原子を介して連結された化合物であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。

本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記水吸着性樹脂が、セルロースエステルであることが好ましい。また、前記ガスバリアー層が、磁場を印加したローラー間の放電空間における放電プラズマ化学気相成長法により形成されたガスバリアー層であることが、本発明の効果発現の観点から好ましい。

さらに、本発明においては、前記樹脂基板とガスバリアー層の間に、ペンタエリスリトールアクリレートを含有するハードコート層を有することが好ましい。これにより、ガスバリアー性と屈曲性をさらに向上することができる。

本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記ガスバリアー層の上に、ポリシラザン含有液の塗布、乾燥し、形成された塗膜に波長200nm以下の真空紫外光を照射して改質処理して形成した第2のガスバリアー層を有することが好ましい。

本発明のガスバリアー性フィルムは、電子デバイスに好適に具備され得る。

なお、本発明でいう「ガスバリアー性」とは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(温度:60±0.5℃、相対湿度(RH):90±2%)が3×10−3g/(m2・24h)以下であることを意味する。

また、本発明において、「真空紫外線」、「真空紫外光」、「VUV」、「VUV光」とは、具体的には波長が100〜200nmの光を意味する。

なお、前記「磁場を印加したローラー間の放電空間における放電プラズマ化学気相成長法」を、本願では簡単に「磁場を印加したローラー間放電プラズマ化学気相成長法」、又は「ローラー間放電プラズマ化学気相成長法」と呼称する。

以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。

≪ガスバリアーフィルムの概要≫ 本発明のガスバリアー性フィルムは、水吸着性樹脂と5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物とを含有する樹脂基板上に、ガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムであって、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物が、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環のいずれかを少なくとも三つ有し、そのうちの少なくとも一つはベンゼン環よりNICS値が小さく、かつ、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が、相互に単結合又は2個以下の原子を介して連結された化合物であることを特徴とする。

従来、樹脂との主要な相互作用としては想定されていなかった水吸着性樹脂に存在するCH部分と、π電子とによる、いわゆる「CH/π相互作用」を特別な相互作用と捉え、これを複数個併用することにより、ガスバリアー層作製時の減圧や真空下での樹脂基板からの水分子の揮発・蒸発を抑制できたと考えている。

特にローラー間放電プラズマ化学気相成長法により形成されたガスバリアー層を作製する際、樹脂基板が親和性の高い水吸着性樹脂に有機化合物が疎水的な表面を形成するため、炭素成分を含有するガスバリアー層との密着性が向上し、電デバイスに必要な非常に良好なガスバリアー性と屈曲性を十分に発揮させることができるものと思われる。

《CH/π結合》 本発明者らは、水吸着性樹脂と添加剤の相互作用形式に着目し、水素結合性や双極子相互作用性の低い疎水的な芳香族化合物が意外にもよく水吸着性樹脂と相溶することから、水吸着性樹脂の主鎖又は側鎖に存在するCH部分と、添加剤の芳香族化合物のπ電子との間にいわゆる「CH/π相互作用」が機能していると考えた。CH/π相互作用は、ロンドン分散の寄与が大きい非極性の相互作用であるため、水などの誘電率の高い極性溶媒中においても有効に働く。この/π相互作用を積極的に活用することにより樹脂との相互作用よりも添加剤と樹脂の相互作用の方が強くなり、結果として樹脂基板からの水分の揮発・蒸発を抑制し、基板上に堆積する不純物の影響を受けにくくなるため、電子デバイス用途に必要な非常に優れたガスバリアー性能とフレキシブル性(密着性、屈曲性)を有するガスバリアー性フィルムを製造することができると考えられる。

CH/π結合について始めに説明する。芳香族化合物にはπ電子に由来する環電流が存在する。その結果、誘導磁場が発生する。このような誘導磁場が働く領域内に水素原子(通常はC−H)が存在すると引力を受け、該CHとπ平面は近接する力が働く。このような力が「CH/π相互作用」と称されている。

このCH/π相互作用は、水分子が吸着しようがしまいが、基本的にその強さはπ電子の回転によるものであるため不変である。

次に、環電流効果の大きさについて考えてみる。

例えば、水吸着性樹脂のCHと添加剤のπを用いてCH/π相互作用を形成する場合、当然、添加剤のπ性は強い方が良い。このπ性の強さを端的に表す例としてNICS(nucleus−independent chemical shift)値という指標がある。

このNICS値は、磁気的性質による芳香族性の定量化に用いられる指標であり、環が芳香族であれば、その環電流効果によって環の中心が強く遮蔽化され、反芳香族なら逆に反遮蔽化される(J.Am.Chem.Soc.1996、118、6317)。NICS値の大小により、環電流の強さ、つまり環の芳香族性へのπ電子の寄与度を判断することができる。具体的には、環内部中心に直接配置した仮想リチウムイオンの化学シフト(計算値)を表し、この値が負に大きいほどπ性が強い。

NICS値の測定値に関していくつか報告されている。例えば、Canadian Journal of Chemistry.,2004,82,50−69(文献A)やThe Journal of Organic Chemistry.,2000,67,1333−1338(文献B)に測定値が報告されている。

本発明において、NICS値はGaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社ソフトウェア)を用いて算出する。具体的には、計算法にB3LYP(密度汎関数法)を、基底関数には6−31+G(スプリットバレンス基底系に拡散ガウス関数を追加した関数)を用いて最適化した構造から、NMR遮蔽定数計算法(GIAO)により計算したものである。

この方法を用いて計算した、代表的な環構造におけるNICS値を、下記表1に示す。

上記表1に記載したように、ベンゼン環やナフタレン環のような芳香族炭化水素よりも、ピロール環、チオフェン環又はフラン環などの5員の芳香族複素環の方が、NICS値が負に大きくなり、このような芳香族5員環を用いることで、CH/π相互作用を強めることができるものと予測される。

π電子が寄与する分子間力としては、CH/π相互作用の他にπ/π相互作用がある。π/π相互作用とは、二つの芳香環の間に働く分子間力であり、芳香環は分極率が大きいため分散力(ロンドン分散力)の寄与が大きい分子間力である。このため、π共役系の広い芳香環は分極率がより大きくなり、π/π相互作用しやすくなる。6π電子系であるベンゼンは、一つのベンゼン環にもう一つのベンゼン環が垂直に配置し、ベンゼン環と水素原子がCH/π相互作用する場合が最も安定な構造であるのに対し、π共役系の広いナフタレン(10π電子)やアントラセン(14π電子)は芳香環同士がπ/π相互作用によって積み重なった場合が最も安定であることからも、π共役系の広い芳香環のπ/π相互作用が強いことが分かる。

水吸着性樹脂のCHと添加剤のπを用いてCH/π相互作用を形成させる場合、添加剤のπ同士の相互作用を考慮しなくてはならない。なぜならば、添加剤同士のπ/π相互作用が水吸着性樹脂と添加剤間のCH/π相互作用よりも強ければ、樹脂と添加剤間の相互作用よりも添加剤同士の相互作用が支配的になってしまうからである。よって、ベンゼンとナフタレンの再安定化構造の違いからも分かるように、π共役系が広い芳香環(14π電子、10π電子)よりも、π共役系が狭い芳香環(6π電子)を用いた方が、CH/π相互作用を形成するにあたって有利である。

しかしながら、CH/π相互作用力は水素結合等に比べると弱い分子間力であるため、この分子間力一つだけでは樹脂に対して強く配位させることは難しいが、複数個の芳香環を近接させることによって、樹脂とのCH/π相互作用を高めることができること考えられる。本発明者らが検討を進めた結果、5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物が、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環のいずれかを少なくとも三つ有し、そのうちの少なくとも一つはベンゼン環よりNICS値が小さいこと、及び前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が、相互に単結合又は2個以下の原子を介して連結された化合物を用いることが効果的であることが確認された。

以上に説明したように、本発明は本来水と吸着してしまうような樹脂に対し、水分子とは全く関係ない、又は水分子が吸着してもその強さが変わらないCH/π相互作用という、樹脂と添加剤の共存手段としてこれまで使われてこなかった相互作用を複数用いることにより、水吸着性樹脂を含む樹脂基板の水分変動を減少させることができる。

≪5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物≫ 本発明に係る5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物は、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環のいずれかを少なくとも三つ有し、そのうちの少なくとも一つはベンゼン環よりNICS値が小さく、かつ、前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が、相互に単結合又は2個以下の原子を介して連結された化合物(以下添加剤Nともいう。)であることを特徴とする。

このような添加剤は、水吸着性樹脂に対して該添加剤が複数のCH/π相互作用力によって配位するため、水吸着性樹脂と添加剤の間に水分子が浸入することを抑制する。このため基板に吸着した水分が減圧や真空下で蒸発、揮発し、ガスバリアー素材が基板上に堆積し不純物として作用する影響が少なくなる。

ベンゼン環以下のNICS値である5員又は6員の芳香環は、6π電子系であることが好ましい。ナフタレン環(10π)、ベンゾオキサゾール環(10π)、アントラセン環(14π)等のπ共役系の広い芳香環に比べて、前記のようにπ/π相互作用が弱くなるため、水吸着性樹脂と添加剤のCH/π相互作用が、添加剤同士のπ/π相互作用より支配的になり、水吸着性樹脂に対する相溶性が向上し、継時でのブリードアウトが発生しにくくなり、また、相溶している場合においても、水吸着性樹脂と添加剤の距離が近くなるため、基板上の不純物の影響が出にくい。

ベンゼン環よりNICS値が小さい芳香環としては、NICS値がベンゼン環より小さければ芳香環の構造に制限はないが例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジアゾール環、イソオキサジアゾール環、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、イソチアジアゾール環等が挙げる。これらの中でも、芳香環を形成する炭素原子以外のヘテロ原子として窒素原子のみを含む芳香環は、NICS値がより小さいため、ガスバリアー素材が基板上に堆積し不純物として作用する影響が少なく好ましい。

また、芳香環を形成する炭素原子以外のヘテロ原子として窒素原子のみを含む芳香環は、水吸着性樹脂との共存下において、反応や分解等を起こしにくく、耐久性に優れた樹脂基板が得られ、好ましい。具体的には、ベンゼン環よりNICS値が小さい芳香環が、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環であることが好ましい。

少なくとも三つのベンゼン環以下のNICS値である5員又は6員の芳香環が、相互に単結合又は2個以下の原子を介して連結されることにより、水吸着性樹脂と添加剤のCH/π相互作用が強くなり好ましい。2個以下の原子を介して連結されるとは、連結基を構成する原子のうち連結される置換基間に存在する最小の原子数が2個以下を表す。具体的には、エーテル基(−O−)の連結原子数は1、エステル基(−CO−O−)の連結原子数は2、カーボネート基(−O−CO−O−)の連結原子数は3である。単結合であることがより好ましい。

少なくとも三つのベンゼン環以下のNICS値である5員又は6員の芳香環をA、B、Cとし、AとB及びBとCが連結されている場合、AとB及びBとCの二面が小さい方が、それぞれの芳香環が同時にCH/π相互作用を形成することができるため好ましい。二面角が小さすぎるとπ/π相互作用が支配的になりやすい。このため、AとB及びBとCの二面角はそれぞれ0°以上45°以下であることが好ましく、5°以上40°以下であることがより好ましく、10°以上35°以下であることが好ましい。

<一般式(1)で表される化合物> 本発明に係る樹脂基板においては、添加剤Nが、さらに下記一般式(1)で表される構造の化合物であることが特に好ましい。

前記一般式(1)において、A1、A2及びBは、それぞれ独立に、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。さらに、分子に含まれるA1、A2、B、T1及びT2のうち、いずれか少なくとも三つは、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、そのうちの少なくとも一つはベンゼン環よりNICS値が小さい芳香族環を表す。

NICS値がベンゼン環より小さい又は等しければ5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環の構造に制限はないが、例えば、ベンゼン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジアゾール環、イソオキサジアゾール環、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、イソチアジアゾール環等が挙げられる。

A1、A2及びBで表されるベンゼン環以下のNICS値である5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(2−ピロール基、2−フリル基、2−チエニル基、ピロール基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、ピラゾリノン基、ピリジル基、ピリジノン基、2−ピリミジニル基、トリアジン基、ピラゾール基、1,2,3−トリアゾール基、1,2,4−トリアゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、1,2,4−オキサジアゾール基、1,3,4−オキサジアゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、1,2,4−チオジアゾール基、1,3,4−チアジアゾール基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N′−フェニル カルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)等の各基が挙げられる。

前記一般式(1)において、A1、A2及びBは、ベンゼン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環を表すことが、好ましい。

前記一般式(1)において、T1及びT2は、それぞれ独立に、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環を表すことが好ましい。これらの中で、ピラゾール環又は1,2,4−トリアゾール環であることが、耐久性に特に優れた樹脂組成物が得られるために好ましく、ピラゾール環であることが特に好ましい。T1及びT2で表されるピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環は、互変異性体であってもよい。ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環の具体的な構造を下記に示す。

式中、※はL1、L2、L3又はL4との結合位置を表す。R5は水素原子又は非芳香族置換基を表す。R5で表される非芳香族置換基としては、前記一般式(1)におけるA1が有してもよい置換基のうちの非芳香族置換基と同様の基を挙げることができる。R5で表される置換基が芳香族基を有する置換基の場合、A1とT1又はBとT1がねじれやすくなり、A1、B及びT1が水吸着性樹脂と同時にCH/π相互作用を形成できなくなるため、水吸着樹脂との相互作用が弱くなる。相互作用を高めるためには、R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアシル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。

前記一般式(1)において、T1及びT2は置換基を有してもよく、該置換基としては、前記一般式(1)におけるA1及びA2が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。

前記一般式(1)において、L1、L2、L3及びL4は、それぞれ独立に、単結合又は、2価の連結基を表し、2個以下の原子を介して、5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が連結されている。2個以下の原子を介してとは、連結基を構成する原子のうち連結される置換基間に存在する最小の原子数を表す。連結原子数2個以下の2価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、O、(C=O)、NR、S、(O=S=O)からなる群より選ばれる2価の連結基であるか、それらを2個組み合わせた連結基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基の例には、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、芳香族炭化水素環基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)、シアノ基等が含まれる。L1、L2、L3及びL4で表される2価の連結基は置換基を有してもよく、置換基としては特に制限はないが、例えば、前記一般式(1)におけるA1及びA2が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。

前記一般式(1)において、L1、L2、L3及びL4は、前記一般式(1)で表される化合物の平面性が高くなることで水吸着性樹脂とのCH/π相互作用が強くなるため、単結合又は、O、(C=O)−O、O−(C=O)、(C=O)−NR又はNR−(C=O)であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。

前記一般式(1)において、nは0〜5の整数を表す。nが2以上の整数を表すとき、前記一般式(1)における複数のA2、T2、L3、L4は同じであってもよく、異なっていてもよい。nが大きい程、前記一般式(1)で表される化合物と水吸着性樹脂とのCH/π相互作用が強くなるため、nが小さいほど、水吸着性樹脂との相溶性が優れる。このため、nは1〜3の整数であることが好ましく、1〜2の整数であることがより好ましい。

<一般式(2)で表される化合物> 一般式(1)で表される化合物は一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。

(式中、A1、A2、T1、T2、L1、L2、L3及びL4は、それぞれ前記一般式(1)におけるA1、A2、T1、T2、L1、L2、L3及びL4と同義である。A3及びT3は、それぞれ一般式(1)におけるA1及びT1と同様の基を表す。L5及びL6は、前記一般式(1)におけるL1と同様の基を表す。mは0〜4の整数を表す。

さらに、分子に含まれるA1、A2、A3、T1、T2及びT3のうち、いずれか少なくとも二つは、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、そのうちの少なくとも一つはベンゼン環よりNICS値が小さい芳香族環を表す。) mが小さい方がセルロースエステルとの相溶性に優れるため、mは0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましい。

<一般式(1.1)で表される構造を有する化合物> 一般式(1)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(1.1)で表される構造を有するトリアゾール化合物であることが好ましい。

(式中、A1、B、L1及びL2は、上記一般式(1)におけるA1、B、L1及びL2と同様の基を表す。kは、1〜4の整数を表す。T1は、1,2,4−トリアゾール環を表す。さらに、分子に含まれるA1、Bのうち、いずれか少なくとも二つは、ベンゼン環よりNICS値が小さい又は等しい5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。) さらに、上記一般式(1.1)で表される構造を有するトリアゾール化合物は、下記一般式(1.2)で表される構造を有するトリアゾール化合物であることが好ましい。

(式中、Zは、下記一般式(1.2a)の構造を表す。qは、2〜3の整数を表す。少なくとも二つのZは、ベンゼン環に置換された少なくとも一つのZに対してオルト位又はメタ位に結合する。)

(式中、R10は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。pは1〜5の整数を表す。*はベンゼン環との結合位置を表す。T1は1,2,4−トリアゾール環を表す。) 前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される化合物は、水和物、溶媒和物若しくは塩を形成してもよい。なお、本発明において、水和物は有機溶媒を含んでいてもよく、また溶媒和物は水を含んでいてもよい。即ち、「水和物」及び「溶媒和物」には、水と有機溶媒のいずれも含む混合溶媒和物が含まれる。塩としては、無機又は有機酸で形成された酸付加塩が含まれる。無機酸の例として、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸など)、硫酸、リン酸などが含まれ、またこれらに限定されない。また、有機酸の例には、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、アルキルスルホン酸(メタンスルホン酸など)、アリルスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸など)などが挙げられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくは、塩酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩である。

なお、前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される化合物を、水や溶媒、塩を含まない形態で添加しても、本発明における樹脂基板において、水和物、溶媒和物又は塩を形成してもよい。

前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される化合物の分子量は特に制限はないが、小さいほど樹脂との相溶性に優れ、大きいほど環境湿度の変化に対する依存性が小さくなるので、150〜2000であることが好ましく、200〜1500であることがより好ましく、300〜1000であることがより好ましい。

以下に、本発明に係る5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物の具体例を例示する。中でも前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される化合物が好ましい。本発明で用いることができる前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物は、以下の具体例によって何ら限定されることはない。なお、前述のように、以下の具体例は互変異性体であってもよく、水和物、溶媒和物又は塩を形成していてもよい。

≪樹脂基板≫ 本発明に係る樹脂基板は、水吸着性樹脂と添加剤Nとを含有し、ガスバリアー性を有するガスバリアー層を保持する。

水吸着性樹脂とは、経時又は外部の湿度環境の変化に応じて、水を吸収する樹脂であり、そのため、寸法変化や、剛性、強度等の機械的特性、抵抗率等の電気的特性、屈折率等の光学的特性などの特性の変化が生じる問題を有する樹脂である。

水吸着性樹脂としては、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート等)、ポリアミド(ナイロン等)、ポリカーボネート、セロハン、セルロース誘導体(セルロースアセテート、エチルセルロース等)、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリイミド、ユリア樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。

本発明における水吸着性樹脂とは、吸水率が0.1%以上である。このような樹脂に対して、添加剤Nを添加することによって基板上に堆積する不純物の影響を抑えることができ好ましい。一方、吸水率が高すぎると、基板上に堆積する不純物の影響の抑制効果が低下する場合がある。このため、吸水率が0.5〜10%であることがより好ましい。

本発明において水吸着性樹脂は、セルロース誘導体であることが基板上に堆積する不純物の影響の抑制効果に優れるため、好ましい。特に、アシル基を有するセルロースエステルであることが好ましい。

本発明における吸水率とは、23℃の水中に24時間水吸着性樹脂を浸漬した後の質量増加率を表す。

本発明に係る吸水率の具体的な求め方を次に説明する。

水吸着性樹脂から作製したフィルムを23℃、55%RHに調湿された部屋に4時間以上放置した後の該フィルムの質量を測定し、これをW1とする。次に、該フィルムを23℃の蒸留水に24時間浸漬させた後、取り出したフィルムの質量を測定し、これをW2とする。吸水率を以下の式に基づいて算出する。

吸水率(%)=(W2−W1)÷W1×100 (セルロース誘導体) セルロース誘導体は、セルロースを原料とする化合物(セルロース骨格を有する化合物)である。セルロース誘導体の例には、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルセルロース等)、セルロースエステル(詳細は後述)、セルロースエーテルエステル(例えば、アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルヒドロキシエチルセルロース、ベンゾイルヒドロキシプロピルセルロース等)、セルロースカーボネート(例えば、セルロースエチルカーボネート等)、セルロースカルバメート(例えば、セルロースフェニルカルバメート等が挙げられる)等の樹脂が含まれ、好ましくはセルロースエステルである。セルロース誘導体は、1種類であってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。

セルロースエステルは、セルロースと、炭素数2〜22程度の脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の少なくとも一方とをエステル化反応させて得られる化合物であり、好ましくはセルロースと、炭素数6以下の低級脂肪酸とをエステル化反応させて得られる化合物である。

セルロースエステルに含まれるアシル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また環を形成していてもよく、さらに別の置換基を有していてもよい。アシル基の炭素数は2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。

セルロースエステルの具体例には、セルロースアセテートのほか、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート又はセルロースアセテートフタレートなどの混合脂肪酸エステルを用いることができる。好ましくはセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート又はセルロースアセテートプロピオネートである。セルロースエステルに含まれうるブチリル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。

セルロースエステルのアシル基の総置換度は、1.0〜3.0程度としうる。アシル基の総置換度は、透湿性を低くする観点からは、2.0〜2.95の範囲内であることが好ましい。

セルロースエステルのアシル基の置換度は、ASTM D817−96に規定の方法で測定することができる。

セルロース誘導体の数平均分子量は、得られるフィルムの機械的強度を高めるためには、6×104〜3×105の範囲であることが好ましく分子量、7×104〜2×105の範囲であることがより好ましい。

セルロース誘導体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。測定条件は以下のとおりである。

溶媒:メチレンクロライド; カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工株式会社製)を3本接続して使用する; カラム温度:25℃; 試料濃度:0.1質量%; 検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製); ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製); 流量:1.0ml/min 校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー株式会社製) Mw=500〜1000000の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。

セルロース誘導体は、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。セルロース誘導体の原料のセルロースは、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどでありうる。原料の異なるセルロース誘導体を混合して用いてもよい。

((メタ)アクリル樹脂) 本発明に用いることができる(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体であるか、又は(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体であり得る。(メタ)アクリル樹脂は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくはメチルメタクリレートである。共重合体におけるメチルメタクリレート由来の構成単位の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。

メチルメタクリレートと共重合体を成す共重合モノマーの例には、アルキル部分の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート;アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート;後述のラクトン環構造を形成し得る、ヒドロキシ基を有するアルキル部分の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有2価カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル;無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物、アクリロイルモルホリン(ACMO)等のアクリルアミド誘導体;N−ビニルピロリドン(VP)等が含まれる。これらは、1種類で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

なかでも、共重合体の耐熱分解性や流動性を高めるためには、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル等のヒドロキシ基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。セルロースエステルとの相溶性を高めるためには、アクリロイルモルホリン等が好ましい。

樹脂基板の厚さは、5〜500μmの範囲内が好ましく、更に好ましくは25〜250μmの範囲内である。

また、本発明に係る樹脂基板は、透明であることが好ましい。樹脂基板が透明であり、当該樹脂基板上に形成する層も透明であると、透明なガスバリアー性フィルムとなるため、電子デバイス(例えば、有機EL等)等の透明基板として用いることも可能である。

また、上記樹脂等を用いた樹脂基板は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。また、延伸により位相差等を調整することもできる。

本発明に係る樹脂基板は、従来公知の一般的なフィルム成膜方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の樹脂基板を製造することができる。また、材料となる樹脂を溶剤に溶解し、無端の金属樹脂支持体上に流延(キャスト)して乾燥、剥離することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸のフィルム状の樹脂基板を製造することもができる。

未延伸の樹脂基板を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、樹脂基板の流れ(縦軸、MD)方向、又は樹脂基板の流れ方向と直角(横軸、TD)方向に延伸することにより、延伸樹脂基板を製造することができる。この場合の延伸倍率は、樹脂基板の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、MD方向及びTD方向にそれぞれ2〜10倍の範囲内が好ましい。

また、本発明に係る樹脂基板は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は、前述の成膜方法における延伸成膜工程中の熱固定した後、TD方向への延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は、処理温度が80〜200℃の範囲内で行われることが好ましく、より好ましくは、処理温度が100〜180℃の範囲内である。オフライン熱処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、複数のローラー群によるローラー搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送などにより搬送させる方法(複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、フィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻き取る等の搬送方法等を挙げることができる。熱処理の搬送張力は、できるだけ低くして熱収縮を促進することで、良好な寸法安定性の樹脂基板となる。処理温度としては(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度範囲が好ましい。ここでいうTgとは、樹脂基板のガラス転移温度をいう。

本発明に係る樹脂基板は、フィルム成膜の過程で、片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することができる。本発明において、このような成膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることができ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記下引層は、ローラーコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知のコーティング方法を用いて形成することができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m2(乾燥状態)の範囲内が好ましい。

(他の添加剤) 本発明に係る樹脂基板は、添加剤として例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、フッ素系界面活性剤、剥離剤、マット剤、劣化防止剤、光学異方性制御剤、赤外線吸収剤等必要に応じ適宜使用することができる。

(糖エステル) 本発明に係る樹脂基板は、ガスバリアー性フィルムの可塑性を向上させる観点から、前述したセルロースエステル以外の糖エステルを含有することができる。

本発明に用いることのできる糖エステルは、フラノース構造若しくはピラノース構造を1〜12個有する化合物であって、該化合物中のヒドロキシ基の全部又は一部がエステル化された化合物をいう。

そのような糖エステルの好ましい例には、下記一般式(FA)で表されるスクロースエステルが含まれる。

一般式(FA)のR1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表す。R1〜R8は、互いに同じであっても、異なってもよい。

置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基は、炭素原子数2以上の置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル基(アセチル基)が含まれる。アルキル基が有する置換基の例には、フェニル基等の芳香族炭化水素環基が含まれる。

置換又は無置換のアリールカルボニル基は、炭素原子数7以上の置換又は無置換のアリールカルボニル基であることが好ましい。アリールカルボニル基の例には、フェニルカルボニル基が含まれる。芳香族炭化水素環基が有する置換基の例には、メチル基等のアルキル基や、メトキシ基等のアルコキシル基等が含まれる。

スクロースエステルのアシル基の平均置換度は、3.0〜7.5の範囲内であることが好ましい。アシル基の平均置換度がこの範囲内であると、セルロースエステルとの十分な相溶性が得られやすい。

一般式(FA)で表されるスクロースエステルの具体例には、下記例示化合物FA−1〜FA−24が含まれる。下記表は、例示化合物FA−1〜FA−24の一般式(FA)におけるR1〜R8と、アシル基の平均置換度を示している。

その他の糖エステルの例には、特開昭62−42996号公報及び特開平10−237084号公報に記載の化合物が含まれる。

糖エステルの含有量は、セルロースエステルに対して0.5〜35.0質量%の範囲内であることが好ましく、5.0〜30.0質量%の範囲内であることがより好ましい。

(他の可塑剤) 本発明のガスバリアー性フィルムは、フィルム製造時の組成物の流動性や、フィルムの柔軟性を向上するために、樹脂基板に糖エステル以外の可塑剤を含有していていもよい。可塑剤の例には、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤を含む)、グリコレート系可塑剤、エステル系可塑剤(クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤等を含む)等が含まれる。これらは、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

(マット剤) ガスバリアー性フィルムは、ハンドリングされる際の耐傷性やスムーズな搬送性を付与する観点から、微粒子を添加することができる。それらは、一般に、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて、従来から利用されている。それらは、前述の機能を発現する素材であれば特に限定されず、マット剤としては、無機化合物から構成される無機マット剤であっても、有機化合物から構成される有機マット剤であってもよい。

≪ガスバリアー層≫ 本発明のガスバリアー性フィルムは、水吸収性樹脂と添加剤Nを含有する樹脂基板上にガスバリアー層を有している。ガスバリアー層は、テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機ケイ素化合物を用いて、減圧下、酸素プラズマで酸化しながら基板上に成膜する化学堆積法や、半導体レーザーを用いて金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基板上に堆積する物理堆積法(真空蒸着法やスパッタ法)といった気相法が好ましく用いられる。この中でも、磁場を印加したローラー間の放電空間における放電プラズマ化学気相成長法により形成されたガスバリアー層であることが好ましい。

〔ローラー間放電プラズマ化学気相成長法〕 本発明に係るガスバリアー層は、磁場を印加したローラー間放電プラズマ化学気相成長法により、ガスバリアー層の成膜ガスとして、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて樹脂基板上に形成され、ガスバリアー層の構成元素としては、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有することが好ましい。

具体的には、樹脂基板のバリアー層を設ける面とは反対側の面を、一対の成膜ローラー(ローラー電極)間に接触させながら搬送し、当該一対の成膜ローラー間に磁場を印加しながら成膜ガスを供給して、プラズマ放電を行うプラズマ化学気相成長法によって、樹脂基板上にガスバリアー層を形成する方法である。

本発明に係るガスバリアー層は、成膜ガスとして有機ケイ素化合物を含有する原料ガスと酸素ガスを用い、ガスバリアー層の構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含むとともに、下記に示す条件(1)〜(4)で規定する炭素原子分布プロファイルの全ての条件を満たすことが、より好ましい態様である。

(1)前記ガスバリアー層の炭素原子比率が、層厚方向において、前記ガスバリアー層の表面から垂直方向に層厚の89%までの距離範囲内では、前記表面からの距離に対応して連続的に変化する。

(2)ガスバリアー層の炭素原子比率の最大値が、層厚方向において、前記ガスバリアー層の表面から垂直方向に層厚の89%までの距離範囲内では、20at%未満である。

(3)ガスバリアー層の炭素原子比率が、層厚方向において、前記ガスバリアー層の表面から垂直方向に層厚の90〜95%の距離範囲内では、連続的に増加する。

(4)ガスバリアー層の炭素原子比率の最大値が、層厚方向において、前記ガスバリアー層の表面から垂直方向に層厚の90〜95%の距離範囲内では、20at%以上である。

本発明において、本発明に係るガスバリアー層内における炭素原子の含有比率の平均値や炭素原子分布プロファイルは、後述するXPSデプスプロファイルの測定によって求めることができる。

以下、本発明に係るガスバリアー層の詳細について更に説明する。

〈ガスバリアー層における炭素原子プロファイル〉 本発明に係るガスバリアー層は、ガスバリアー層の構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含み、かつガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線において、炭素原子含有量プロファイルが、上記(1)項〜(4)項の全ての条件を満たすことが、より一層フレキシブル性(屈曲性)及び密着性に優れたガスバリアー性フィルムを得ることができる観点から好ましい。

また、炭素原子比率がガスバリアー層の特定の領域において、濃度勾配を有して連続的に変化する構成を有することが、ガスバリアー性と屈曲性を両立する観点から好ましい態様である。

このような炭素原子分布プロファイルを有する本発明に係るガスバリアー層においては、層内における炭素分布曲線が少なくとも一つの極値を有することが好ましい。更に、少なくとも二つの極値を有することがより好ましく、少なくとも三つの極値を有することが特に好ましい。前記炭素分布曲線が極値を有さない場合には、得られるガスバリアー性フィルムのフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリアー性が不十分となる。また、このように少なくとも二つ又は三つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線が有する一つの極値及び当該極値に隣接する極値における前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。

なお、本発明において極値とは、各元素の原子比率の極大値又は極小値のことをいう。

(極大値及び極小値) 本発明において極大値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比率の値よりも、該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が3at%以上減少する点のことをいう。

さらに、本発明において極小値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比率の値よりも、該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が3at%以上増加する点のことをいう。

本発明に係るガスバリアー層においては、(1)表面(樹脂基板に接する面とは反対側の面)から垂直方向に89%までの距離範囲内における炭素原子比率の最大値が20at%未満であること、及び(3)表面に対し、垂直方向の90〜95%の距離範囲内(樹脂基板に隣接する面から5〜10%の距離範囲内)における炭素原子比率の最大値が、20at%以上であること、が好ましい態様である。

(濃度勾配の連続的変化) 本発明においては、ガスバリアー層が、(2)表面から垂直方向に89%までの距離範囲内において、炭素原子比率が濃度勾配を有し、かつ濃度が連続的に変化する領域を有すること、及び(4)表面から垂直方向に90〜95%の範囲内、言い換えれば、樹脂基板に隣接する面から表面部に向かって、垂直方向に層厚方向で5〜10%の範囲内における炭素原子比率が連続的に増加することが、好ましい態様である。

本発明でいう「炭素原子比率の濃度勾配が連続的に変化するとは、炭素分布曲線における炭素原子比率が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される本発明に係るガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素原子比率(C、単位:at%)との関係において、下記式(F1)で表される条件を満たすことをいう。

式(F1) (dC/dx)≦ 0.5 〈ガスバリアー層における各元素プロファイル〉 ローラー間放電プラズマ化学気相成長法により形成されたガスバリアー層においては、構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有することを特徴とするが、それぞれの原子の比率と、最大値及び最小値についての好ましい態様を、以下に説明する。

(炭素原子比率の最大値と最小値の関係) 本発明に係るガスバリアー層では、更には、炭素分布曲線における炭素原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であることが好ましい。また、このようなガスバリアー層においては、炭素原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。炭素原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上とすることにより、作製したガスバリアー性フィルムを屈曲させた際のガスバリアー性が十分となる。

(酸素原子比率の最大値と最小値の関係) 本発明に係るガスバリアー層においては、酸素分布曲線における最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であることが好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%以上では、得られるガスバリアー性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリアー性が十分となる。

(ケイ素原子比率の最大値と最小値の関係) 本発明に係るガスバリアー層においては、ケイ素分布曲線における最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリアー性フィルムのガスバリアー性及び機械的強度が十分となる。

(酸素原子+炭素原子の合計量の比率) 本発明に係るガスバリアー層においては、層厚方向における当該層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子及び炭素原子の合計量の比率(酸素−炭素合計の原子比率という。)である酸素−炭素合計の分布曲線(酸素炭素分布曲線ともいう。)において、前記酸素−炭素合計の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリアー性フィルムのガスバリアー性が十分となる。

なお、図2及び図3に示すような炭素原子分布プロファイル(ケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線)に関する上記説明において、「ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量」とは、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計原子数を意味し、「炭素原子の量」とは、炭素原子数を意味する。本発明でいうat%とは、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の総原子数を100at%としたときの各原子の原子数比率を意味する。また、図2及び図3に示すようなケイ素分布曲線、及び酸素炭素分布曲線についての「ケイ素原子の量」及び「酸素原子の量」についても同様である。

〈XPSによる層厚方向の元素組成分布分析(デプスプロファイル)について〉 ガスバリアー層の層厚方向におけるケイ素分布曲線、酸素分布曲線、及び炭素分布曲線、並びに酸素−炭素合計の分布曲線等は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は、前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離におおむね相関することから、「ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar+)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO2熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。

また、本発明においては、層表面全体において均一で、かつ優れたガスバリアー性を有するガスバリアー層を形成するという観点から、ガスバリアー層が層表面方向(ガスバリアー層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。本発明において、ガスバリアー層が層表面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリアー層の層表面の任意の2か所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素−炭素合計の分布曲線を作成した場合に、その任意の2か所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるか若しくは5at%以内の差であることをいう。

本発明のガスバリアー性フィルムは、本発明で規定する前記条件(1)〜(4)を全て満たすガスバリアー層を少なくとも1層備えることが好ましいが、そのような条件を満たす層を、2層以上を備えていてもよい。さらに、このようなガスバリアー層を2層以上備える場合には、複数のガスバリアー層の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、このようなガスバリアー層を2層以上備える場合には、このようなガスバリアー層は前記基板の一方の表面上に形成されていてもよく、前記基板の両方の表面上に形成されていてもよい。また、このような複数のガスバリアー層としては、ガスバリアー性を必ずしも有しないガスバリアー層を含んでいてもよい。

また、前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線において、ケイ素原子比率、酸素原子比率及び炭素原子比率が、前記ガスバリアー層の表面から層厚の89%までの距離範囲内の領域において、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子比率の最大値は、19〜40at%の範囲であることが好ましく、25〜35at%の範囲であることがより好ましい。また、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子比率の最大値は、33〜67at%の範囲であることが好ましく、41〜62at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子比率の最大値は、1〜19at%の範囲であることが好ましく、3〜19at%の範囲であることがより好ましい。

〈ガスバリアー層の厚さ〉 本発明に係るガスバリアー層の厚さは、5〜3000nmの範囲内であることが好ましく、10〜2000nmの範囲内であることより好ましく、100〜1000nmの範囲内であることが特に好ましい。ガスバリアー層の厚さが前記範囲内であれば、酸素ガスバリアー性、水蒸気バリアー性等のガスバリアー性に優れ、屈曲によるガスバリアー性の低下が見られない。

また、本発明のガスバリアー性フィルムが複数のガスバリアー層を備える場合には、それらのガスバリアー層の厚さのトータルの値は、通常10〜10000nmの範囲であり、10〜5000nmの範囲であることが好ましく、100〜3000nmの範囲であることより好ましく、200〜2000nmの範囲であることが特に好ましい。ガスバリアー層の厚さの合計値が前記範囲内であると、酸素ガスバリアー性、水蒸気バリアー性等のガスバリアー性が十分であり、屈曲によりガスバリアー性も低下しにくい傾向にある。

〈ガスバリアー層の形成方法〉 本発明に係るガスバリアー層は、磁場を印加したローラー間放電プラズマ化学気相成長法により、樹脂基板上に形成することが好ましい。

より詳しくは、本発明に係るガスバリアー層は、磁場を印加したローラー間放電プラズマ処理装置を用い、樹脂基板を一対の成膜ローラーに接触させながら搬送し、一対の成膜ローラー間に磁場を印加しながら成膜ガスを供給してプラズマ放電を行い、プラズマ化学気相成長法により形成される層である。また、このように一対の成膜ローラー間に磁場を印加しながら放電する際には、一対の成膜ローラー間の極性を交互に反転させることが好ましい。更に、このようなプラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用い、その成膜ガス中の酸素ガスの含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。また、本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、ガスバリアー層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。

すなわち、本発明のガスバリアー性フィルムは、磁場を印加したローラー間放電プラズマ処理装置を用い、樹脂基板上に、ガスバリアー層を形成することにより製造することが好ましい。

本発明に係るガスバリアー層においては、炭素原子比率が濃度勾配を有し、かつ層内で連続的に変化する層を形成するため、磁場を印加したローラー間放電プラズマ化学気相成長法を用いることが好ましい。

本発明に係る磁場を印加したローラー間放電プラズマ化学気相成長法(以下、さらに簡単にローラーCVD法ともいう。)においては、プラズマを発生させる際に、複数の成膜ローラー間に磁場を印加しながら、形成した放電空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、本発明では一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに樹脂基板を接触させながら搬送して、当該一対の成膜ローラー間に、磁場を印加した状態で放電してプラズマを発生させることが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に樹脂基板を接触させながら搬送して、かかる一対の成膜ローラー間にプラズマ放電することにより、樹脂基板と成膜ローラーとの間の距離が変化することによって、前記炭素原子比率が濃度勾配を有し、かつ層内で連続的に変化するようなガスバリアー層を形成することが可能となる。

また、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する樹脂基板の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する樹脂基板の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記条件(1)〜(4)を全て満たす層を形成することが可能となる。

また、本発明のガスバリアー性フィルムは、生産性の観点から、ロール・to・ロール方式で前記基板の表面上に前記ガスバリアー層を形成させることが好ましい。

また、このようなプラズマ化学気相成長法によりガスバリアー性フィルムを製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の磁場を印加する装置を具備した成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図1に示す製造装置を用いた場合には、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロール・to・ロール方式で、ガスバリアー性フィルムを製造することができる。

以下、図1を参照しながら、本発明のガスバリアー性フィルムの好ましい製造方法についてより詳細に説明する。なお、図1は、本発明のガスバリアー性フィルムを製造するのに好適に利用することが可能な磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。

図1に示す磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、簡単にローラーCVD装置ともいう。)は、主には、送り出しローラー11と、搬送ローラー21、22、23及び24と、成膜ローラー31及び成膜ローラー32と、成膜ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部に設置された磁場発生装置61及び62と、巻取りローラー71とを備えている。また、このようなローラーCVD製造装置においては、少なくとも成膜ローラー31及び成膜ローラー32と、成膜ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、磁場発生装置61及び62とが、図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。更に、このようなローラーCVD装置において、真空チャンバー(不図示)は、真空ポンプ(不図示)に接続されており、この真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。

このようなローラーCVD装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)に、プラズマ発生用電源51より電力を供給することにより、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間に放電することが可能となり、これにより成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間(放電空間ともいう。)にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー31と成膜ローラー32を電極として利用することになるため、電極として利用可能な材質や設計を適宜変更すればよい。また、このようなローラーCVD装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び成膜ローラー32)は、その中心軸が同一平面上においてほぼ平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び成膜ローラー32)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。

また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられていることが特徴である。磁場発生装置は通常の永久磁石を用いることが好ましい。

さらに、成膜ローラー31及び成膜ローラー32としては、適宜公知のローラーを用いることができる。成膜ローラー31及び成膜ローラー32としては、より効率よく薄膜を形成することができる観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が100〜1000mmφの範囲、特に100〜700mmφの範囲が好ましい。直径が100mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量がフィルムにかかることを回避でき、残留応力が大きくなりにくく好ましい。一方、直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。

また、このようなローラーCVD装置に用いる送り出しローラー11及び搬送ローラー21、22、23及び24としては、公知のローラーを適宜選択して用いることができる。また、巻取りローラー71としても、ガスバリアー層を形成した樹脂基板2を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。

成膜ガス供給管41としては、原料ガス及び酸素ガスを所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源51としては、従来公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ローラー31と成膜ローラー32に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくローラーCVD法を実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくローラーCVD法を実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61及び62としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。

図1に示すようなローラーCVD装置を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、磁場発生装置の強度、真空チャンバー内の圧力、成膜ローラーの直径、並びに、樹脂基板の搬送速度を適宜調整することにより、本発明のガスバリアー性フィルムを好ましく製造することができる。すなわち、図1に示すローラーCVD装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び成膜ローラー32)間に、磁場を印加しながらプラズマ放電を発生させることにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー31上の樹脂基板2の表面上並びに成膜ローラー32上の樹脂基板2の表面上に、本発明に係るガスバリアー層がローラーCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、樹脂基板2が送り出しローラー11や成膜ローラー31等により、それぞれ搬送されることにより、ロール・to・ロール方式の連続的な成膜プロセスにより樹脂基板2の表面上に前記ガスバリアー層が形成される。

(原料ガス) ガスバリアー層の形成に用いる成膜ガスを構成する原料ガスは、少なくともケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。

適用可能な有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取扱い及び得られるガスバリアー層のガスバリアー性等の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。

また、前記成膜ガスは、原料ガスの他に反応ガスとして、酸素ガスを含有することを特徴とする。酸素ガスは、前記原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスである。

前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガスを用いることができる。

このような成膜ガスが、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスを含有する場合、原料ガスと酸素ガスの比率としては、原料ガスと酸素ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる酸素ガスの量の比率よりも、酸素ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。酸素ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、本発明で目的とするガスバリアー層が得られにくい。よって、所望したガスバリアー性フィルムとしての性能を得る上では、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下とすることが好ましい。

以下代表例として、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物:HMDSO:(CH3)6Si2O:)と、反応ガスである酸素(O2)の系について説明する。

原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CH3)6Si2O)と、反応ガスである酸素(O2)とを含有する成膜ガスを、ローラーCVD法により反応させてケイ素−酸素系の薄膜を形成する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で示される反応が起こり、二酸化ケイ素SiO2からなる薄膜が形成される。

反応式(1) (CH3)6Si2O+12O2→6CO2+9H2O+2SiO2 このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対し、酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまうため、原料のガス流量比を理論比である完全反応の原料比以下の流量に制御して、非完全反応を遂行させる。すなわち、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なく設定する必要がある。

なお、実際のローラーCVD装置のチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスである酸素は、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる。例えば、CVD法により完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に取り込まれ、所望したガスバリアー層を形成することが可能となって、得られるガスバリアー性フィルムに優れたガスバリアー性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。

なお、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)が少なすぎると、酸化されなかった炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に過剰に取り込まれることになる。この場合、バリアー膜の透明性が低下して、ガスバリアーフィルムは、電子デバイス、例えば、有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板には利用できなくなってしまう。このような観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。

(真空度) 真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜100Paの範囲とすることが好ましい。

(ローラー成膜) 図1に示すようなローラーCVD装置等を用いたローラーCVD法においては、成膜ローラー31及び成膜ローラー32間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラム(図1においては、成膜ローラー31及び成膜ローラー32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概にいえるものでないが、0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクル(不正粒子)の発生も見られず、成膜時に発生する熱量も制御範囲内であるため、成膜時の基板表面温度の上昇による、樹脂基板の熱変形、熱による性能劣化や成膜時の皺の発生もない。また、熱で樹脂基板が溶けて、裸の成膜ローラー間に大電流の放電が発生することによる成膜ローラーに対する損傷等を防止することができる。

樹脂基板2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が前記範囲内であれば、樹脂基板の熱に起因する皺も発生し難く、形成されるガスバリアー層の厚さも十分に制御可能となる。

以上のようにして形成される本発明に係るガスバリアー層のXPSデプスプロファイルによる層の厚さ方向の各元素プロファイルの一例を図2に示す。

図2は、本発明に係るガスバリアー層のケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線の一例を示すグラフである。

図2において、符号A〜Dは、Aが炭素分布曲線、Bがケイ素分布曲線、Cが酸素分布曲線、Dが酸素−炭素分布曲線を表す。図2に示すグラフであるように、本発明に係るガスバリアー層が、当該ガスバリアー層の炭素原子比率として、表面から垂直方向に89%までの距離範囲内における炭素原子比率の最大値が20at%未満であり、かつ表面から垂直方向に89%までの距離範囲内における炭素原子比率が濃度勾配を有し、かつ濃度が連続的に変化する構造を有していることが分かる((1)項及び(2)項に該当する。)。

また、当該ガスバリアー層の炭素原子比率として、表面に対し、垂直方向の90〜95%の距離範囲内(樹脂基板に隣接する面から垂直方向に5〜10%の距離範囲内)において、炭素原子比率の最大値が、20at%以上であり、かつ炭素原子比率が連続的に増加する特性を有していることが分かる((3)項及び(4)項に該当する。)。

図3は、他のガスバリアー層の炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線の一例を示すグラフである。

当該ガスバリアー層は、平型電極(水平搬送)タイプの放電プラズマCVD法で形成したガスバリアー層における炭素原子分布曲線A、ケイ素原子分布曲線B及び酸素原子分布曲線Cを示したものであるが、特に、炭素原子成分の濃度勾配の連続的な変化が起こらない構成であることが分かる。

〔第2のガスバリアー層〕 本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、本発明に係るガスバリアー層の上に、ポリシラザン含有液を湿式塗布方式により塗布及び乾燥し、形成された塗膜に波長200nm以下の真空紫外光(VUV光)を照射して、形成した塗膜に改質処理を施して、第2のガスバリアー層を形成することが好ましい。

本発明において、第2のガスバリアー層を、本発明に係る磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD法で設けたガスバリアー層上に形成することにより、既に形成されているガスバリアー層の形成時に生じた微小な欠陥部分を、上部から付与するポリシラザンより構成される第2のガスバリアー層成分で埋めることができ、ガスパージ等を効率的に防止し、更なるガスバリアー性と屈曲性を向上できる観点で好ましい。

第2のガスバリアー層の厚さは、1〜500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜300nmの範囲内である。第2のガスバリアー層の厚さが1nm以上であれば、所望のガスバリアー性能を発揮することができ、500nm以下であれば、緻密な酸窒化ケイ素膜でのクラックの発生等の膜質劣化を防止することができる。

〈ポリシラザン〉 本発明に係るポリシラザンとは、分子構造内にケイ素−窒素結合を有するポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、適用するポリシラザンとしては、特に制限はないが、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。

上記一般式(3)において、R1、R2及びR3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又はアルコキシ基を表す。

本発明では、得られる第2のガスバリアー層としての緻密性の観点からは、R1、R2及びR3の全てが水素原子で構成されているパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。

パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6員環及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されており、その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質である。

ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20などが挙げられる。

第2のガスバリアー層は、磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD法で形成したガスバリアー層上に、ポリシラザンを含む塗布液を塗布及び乾燥した後、真空紫外線を照射することにより形成することができる。

ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは避けることが好ましい。適用可能な有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用でき、具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の目的に合わせて選択し、複数の有機溶媒を混合しても良い。

ポリシラザンを含有する第2のガスバリアー層形成用塗布液中のポリシラザンの濃度は、第2のガスバリアー層の層厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは0.2〜35質量%の範囲内である。

酸窒化ケイ素への変性を促進するために、第2のガスバリアー層形成用塗布液にアミン触媒や、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒を添加することもできる。本発明においては、アミン触媒を用いることが特に好ましい。具体的なアミン触媒としては、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等が挙げられる。

ポリシラザンに対するこれら触媒の添加量は、第2のガスバリアー層形成用塗布液全質量に対して0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2〜5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5〜2質量%の範囲内であることが更に好ましい。触媒添加量を上記で規定する範囲内とすることにより、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大のなどを避けることができる。

ポリシラザンを含有する第2のガスバリアー層形成用塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、例えば、ローラーコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。

塗膜の厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗膜の厚さは、乾燥後の厚さとして50nm〜2μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは70nm〜1.5μmの範囲内にあり、100nm〜1μmの範囲内にあることが更に好ましい。

〈エキシマ処理〉 本発明に係る第2のガスバリアー層は、ポリシラザンを含む層に真空紫外線(VUV)を照射する工程で、ポリシラザンの少なくとも一部が酸窒化ケイ素へと改質される。

ここで、真空紫外線照射工程でポリシラザンを含む塗膜が改質され、SiOxNyの特定組成となる推定メカニズムについて、パーヒドロポリシラザンを一例として説明する。

パーヒドロポリシラザンは「−(SiH2−NH)n−」の組成で示すことができる。SiOxNyで示す場合、x=0、y=1である。x>0となるためには外部の酸素源が必要であるが、これは、 (i)ポリシラザン塗布液に含まれる酸素や水分、 (ii)塗布乾燥過程の雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、 (iii)真空紫外線照射工程での雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、オゾン、一重項酸素、 (iv)真空紫外線照射工程で印加される熱等により基板側からアウトガスとして塗膜中に移動してくる酸素や水分、 (v)真空紫外線照射工程が非酸化性雰囲気で行われる場合には、その非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気へと移動した際に、その雰囲気から塗膜に取り込まれる酸素や水分、などが酸素源となる。

一方、yについては、Siの酸化よりも窒化が進行する条件は非常に特殊であると考えられるため、基本的には1が上限である。

また、Si、O、Nの結合手の関係から、基本的には、x、yは2x+3y≦4の範囲にある。酸化が完全に進んだy=0の状態においては、塗膜中にシラノール基を含有するようになり、2

真空紫外線照射工程でパーヒドロポリシラザンから酸窒化ケイ素、さらには酸化ケイ素が生じると推定される反応機構について、以下に説明する。

(1)脱水素、それに伴うSi−N結合の形成 パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は真空紫外線照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiNy組成として硬化する。この場合はポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は触媒の存在や、加熱によって促進される。切断されたHはH2として膜外に放出される。

(2)加水分解及び脱水縮合によるSi−O−Si結合の形成 パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。二つのSi−OHが脱水縮合してSi−O−Si結合を形成して硬化する。これは大気中でも生じる反応であるが、不活性雰囲気下での真空紫外線照射中では、照射の熱によって樹脂基板からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰になると、脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.1〜SiO2.3の組成で示されるガスバリアー性の低い硬化膜となる。

(3)一重項酸素による直接酸化、Si−O−Si結合の形成 真空紫外線照射中、雰囲気下に適当量の酸素が存在すると、酸化力の非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNは、Oと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えが生じる場合もあると考えられる。

(4)真空紫外線照射及び励起によるSi−N結合切断を伴う酸化 真空紫外線のエネルギーは、パーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーよりも高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素、オゾン、水等の酸素源が存在すると、酸化されてSi−O−Si結合やSi−O−N結合が生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により、結合の組み換えが生じる場合もあると考えられる。

ポリシラザンを含有する層に真空紫外線照射を施した層の酸窒化ケイ素の組成の調整は、上述の(1)〜(4)の酸化機構を適宜組み合わせて酸化状態を制御することで行うことができる。

本発明における真空紫外線照射工程において、ポリシラザン層塗膜が受ける塗膜面での真空紫外線の照度は30〜200mW/cm2の範囲内であることが好ましく、50〜160mW/cm2の範囲内であることがより好ましい。30mW/cm2以上であれば、改質効率の低下の懸念がなく、200mW/cm2以下であれば、塗膜にアブレーションを生じることがなく、基板にダメージを与えないため好ましい。

ポリシラザン層塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量は、200〜10000mJ/cm2の範囲内であることが好ましく、500〜5000mJ/cm2の範囲内であることがより好ましい。200mJ/cm2以上であれば、改質を十分に行うことができ、10000mJ/cm2以下であれば、過剰改質にならずクラック発生や、樹脂基板の熱変形を防止することができる。

真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は、化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。

しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの励起原子は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、 e+Xe→Xe* Xe*+2Xe→Xe2*+Xe Xe2*→Xe+Xe+hν(172nm) となり、励起されたエキシマ分子であるXe2*が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。

エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動及び再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。

エキシマ発光を得るには、誘電体バリアー放電を用いる方法が知られている。誘電体バリアー放電とは、両電極間に透明石英などの誘電体を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じ、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電であり、micro dischargeのストリーマが管壁(誘導体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。

このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため、肉眼でも確認できる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。

効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリアー放電以外に、無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリアー放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキがない長寿命のランプが得られる。

誘電体バリアー放電の場合は、micro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。

このため、細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は、光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。これを防ぐためには、ランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。

二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば、酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。

無電極電界放電を用いた場合には、外部電極を網状にする必要はない。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリアー放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。

細管エキシマランプの最大の特徴は、構造がシンプルなことにある。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。

細管ランプの管の外径は6nm〜12mm程度で、余り太いと始動に高い電圧が必要になる。

放電の形態は、誘電体バリアー放電及び無電極電界放電のいずれも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。

Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。

また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。

したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。

エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。

紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲内であり、更に好ましく1000〜4500ppmの範囲内である。

真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。

〔各機能層〕 本発明のガスバリアー性フィルムにおいては、上記説明した各構成層のほかに、必要に応じて、各機能層を設けることができる。

〈ハードコート層〉 樹脂基板の上に、平滑性と層間の密着性を上げる目的のためにハードコート層(HC層ともいう。)を設けることができる。ハードコート層は、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する活性線硬化樹脂を主たる成分とする層である。

活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が機械的膜強度に優れる点から好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。

紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体等が好ましく挙げられる。

活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、イソシアヌル酸骨格に1個以上のエチレン性不飽和基が結合した構造を有する化合物であればよく、特に制限はないが、同一分子内に3個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のイソシアヌレート環を有する化合物が好ましい。

これらの市販品としては、例えば、アデカオプトマーNシリーズ((株)ADEKA製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(以上、三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060、アロニックスM−215、アロニックスM−315、アロニックスM−313、アロニックスM−327(以上、東亞合成(株)製)、NK−エステルA−TMM−3L、NK−エステルAD−TMP、NK−エステルATM−35E、NK−エステルATM−4E、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E、A−9300、A−9300−1CL(以上、新中村化学工業(株))、ライトアクリレートTMP−A、PE−3A(以上、共栄社化学)などが挙げられる。

また、紫外線硬化型アクリレート系樹脂として、単官能アクリレートを用いてもよい。単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。このような単官能アクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社等から入手できる。

単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=70:30〜98:2の範囲内で含有することが好ましい。

これらの中では、ペンタエリスリトールアクリレートが好ましい。ペンタエリスリトールアクリレートは多官能でも単官能でもよいが、多官能アクリレートの方が、平滑性向上によるガスバリアー性、密着性の観点から好ましい。具体的には、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレートを好ましく用いることができる。

ハードコート層にペンタエリスリトールを用いることにより。より親和性の高い水吸着性樹脂にペンタエリスリトールのヒドロキシ基の相互作用が働き、更にアクリレート部分の疎水成分とガスバリアー層の炭素成分との相互作用により、ハードコート層を介し、樹脂基板とガスバリアー層との密着性が向上し、電子デバイスに必要な非常に良好なガスバリアー性と屈曲性を更に十分に発揮させることができるものと思われる。

また、ハードコート層には活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100の範囲内で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等、及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。

このような光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示化合物として挙げられる。

また、ハードコート層には、帯電防止性を付与するために導電剤や、塗布性を向上させるために界面活性剤が含まれていてもよい。

ハードコート層は、ハードコート層に含まれ得る上記した成分を、溶剤で希釈してなるハードコート層組成物(以下、ハードコート層塗布組成物ともいう。)を、樹脂基板上に塗布し乾燥した後、硬化させて設けることができる。

溶剤としては、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール等)、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン等)、グリコールエーテル類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等)などを好ましく用いることができる。また、これら溶剤の中でもケトン類、エステル類、グリコールエーテル類あるいはアルコール類が好ましく、より好ましくはグリコールエーテル類あるいはアルコール類である。

なお、活性線硬化樹脂100質量部に対して、20〜200質量部の範囲で溶剤を用いることで、ハードコート層塗布組成物を樹脂基板上に塗布後に、ハードコート層塗布組成物の溶剤が蒸発しながらハードコート層を形成していく過程で、樹脂の対流が生じやすくなり、良好なハードコート層を形成することができるので好ましい。

ハードコート層を形成する際の、ハードコート層塗布組成物の塗布量は、ウェット膜厚として0.1〜40μmの範囲が適当で、好ましくは、0.5〜30μmの範囲である。また、ドライ膜厚としては平均膜厚で0.05〜20μmの範囲であり、好ましくは1〜10μmの範囲である。

ハードコート層塗布組成物の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等の公知の湿式塗布方法を用いることができる。これら塗布方法を用いてハードコート層となるハードコート層組成物を塗布し、塗布後に乾燥して、活性線を照射(UV硬化処理ともいう。)し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理することで形成できる。UV硬化後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、膜強度に優れたハードコート層を得ることができる。

UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。

照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm2、好ましくは50〜500mJ/cm2の範囲内である。

〈オーバーコート層〉 本発明に係る第2のガスバリアー層の上には、屈曲性を更に改善する目的で、オーバーコート層を形成しても良い。オーバーコート層の形成に用いられる有機物としては、有機モノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂、有機基を有するシロキサンやシルセスキオキサンのモノマー、オリゴマー、ポリマー等を用いた有機無機複合樹脂層を好ましく用いることができる。これらの有機樹脂若しくは有機無機複合樹脂は、重合性基や架橋性基を有することが好ましく、これらの有機樹脂若しくは有機無機複合樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤や架橋剤等を含有する有機樹脂組成物塗布液から塗布形成した層に、光照射処理や熱処理を加えて硬化させることが好ましい。

≪電子デバイス≫ 本発明のガスバリアー性フィルムは、電子デバイス用のフィルムとして具備されることが好ましい。

本発明の電子デバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスパネル(有機ELパネル)、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、有機光電変換素子、液晶表示素子等が挙げられる。

〈電子デバイスとしての有機ELパネル〉 本発明のガスバリアー性フィルムは、例えば、太陽電池、液晶表示素子、有機EL素子等を封止する封止フィルムとして用いることができる。

このガスバリアー性フィルム1を封止フィルムとして用いた電子デバイスである有機ELパネルPの一例を図4に示す。

有機ELパネルPは、図4に示すように、ガスバリアー性フィルム1と、ガスバリアー性フィルム1上に形成されたITOなどの透明電極6と、透明電極6を介してガスバリアー性フィルム1上に形成された電子デバイス本体である有機EL素子7と、その有機EL素子7を覆うように接着剤層8を介して配設された対向フィルム9等を備えている。なお、透明電極6は、有機EL素子7の一部を成すこともある。

このガスバリアー性フィルム1におけるガスバリアー層4及び第2のガスバリアー層5側の表面には、透明電極6と有機EL素子7が形成されるようになっている。

そして、有機ELパネルPにおいて、有機EL素子7は水蒸気に晒されないように好適に封止されており、有機EL素子7は劣化し難くなっているので、有機ELパネルPを長く使用することが可能になり、有機ELパネルPの寿命が延びる。

なお、対向フィルム9は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明に係るガスバリアー性フィルムを用いてもよい。対向フィルム9としてガスバリアー性フィルムを用いる場合、ガスバリアー層4が形成された面側を有機EL素子7に向けて、接着剤層8によって貼付するようにすればよい。

〈有機EL素子〉 有機ELパネルPにおいて、ガスバリアー性フィルム1で封止される有機EL素子7について説明する。

以下に、有機EL素子7の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。

(1)陽極/発光層/陰極 (2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極 (3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極 (4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極 (5)陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極 (陽極) 有機EL素子7における陽極(透明電極6)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜の作製が可能な材料を用いてもよい。

陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜として形成し、その薄膜をフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンに形成してもよく、あるいはパターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。

この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。

(陰極) 有機EL素子7を構成する陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第2金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が陰極として好適である。

陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陰極の膜厚は、通常10nm〜5μmの範囲内であり、好ましくは50〜200nmの範囲内で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子7の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば、発光輝度が向上し好都合である。

また、陰極の説明で挙げた上記金属を1〜20nmの範囲の膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。

(注入層) 注入層には電子注入層と正孔注入層があり、電子注入層と正孔注入層を必要に応じて設け、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させる。

注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。

陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、特開平9−260062号公報、特開平8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。

陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、特開平9−17574号公報、特開平10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。

(発光層) 有機EL素子7における発光層は、電極(陰極、陽極)又は電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。

有機EL素子7の発光層には、以下に示す発光ドーパントとホスト化合物(発光ホスト)が含有されることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。

〈発光ドーパント〉 発光ドーパントは、大きく分けて蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。

蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。

リン光性ドーパントの代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。

発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよい。

〈発光ホスト〉 発光ホスト(単にホストともいう)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパントであり、化合物Bがホスト化合物である。更に発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパントであり、化合物Cがホスト化合物である。

発光ホストとしては構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、又はカルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。中でも、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。本発明においては、発光ドーパント及びホスト化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。

そして、発光層は、上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア・ブロジェット(Langmuir Blodgett法)、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。発光層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲内であり、好ましくは5〜200nmの範囲内で設定される。この発光層は、ドーパントやホスト化合物が1種又は2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。

(正孔輸送層) 正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。

正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。

正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲内であり、好ましくは5〜200nmの範囲内である。この正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。

(電子輸送層) 電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は、単層又は複数層設けることができる。

電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。

電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲内であり、好ましくは5〜200nmの範囲内である。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。

以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。

〔実施例1〕 〔ガスバリアー性フィルム1の作製〕 (微粒子分散液1) 微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部 エタノール 89質量部 以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。

(微粒子添加液1) メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分撹拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、アトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。

メチレンクロライド 99質量部 微粒子分散液1 5質量部 (主ドープの調整) 下記組成の主ドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルAを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。

(主ドープの組成) メチレンクロライド 340質量部 エタノール 64質量部 セルロースエステルA:アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(アシル基総置換度2.88、表中「TAC」と記載)数平均分子量87000 例示化合物1 4質量部 糖エステル化合物(例示化合物FA−4) 5質量部 微粒子添加液1 1質量部 以上を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解してドープを調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。

ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。

剥離した光学フィルムを、145℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に30%(1.30倍に)延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は14質量%であった。

次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。

上記のように作製したセルローストリアセテートフィルム上にガスバリアー層1を形成した。

<ガスバリアー層1の形成> セルローストリアセテートフィルムを、それぞれロール接触面、ロール非接触面になるように装置に装着して、下記成膜条件(プラズマCVD条件)にてセルローストリアセテートフィルム上にガスバリアー層を300nmの厚さになるように形成し、ガスバリアーフィルムをローラー間放電プラズマ化学気相成長法により(表ではローラーCVDと記載した。)作製した。

〈成膜条件〉 原料ガス(ヘキサメチルジシロキサンHMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute) 酸素ガス(O2)の供給量:500sccm 真空チャンバー内の真空度:3Pa プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW プラズマ発生用電源の周波数:70kHz フィルムの搬送速度;0.8m/min 成膜ローラー直径:300mmφ 以上のようにして、乾燥膜厚50μmのガスバリアー性フィルム1を得た。

〔ガスバリアー性フィルム2〜15の作製〕 ガスバリアー性フィルム1の作製において、樹脂の種類、本発明に係る添加剤N及びHC層、ハードコート層、ガスバリアー層を表2のように変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム2〜15を作製した。

以下、実施例1で使用した使用した素材の詳細を下記に示す。

樹脂の種類は下記のとおりである。

セルロースエステルB:アセチル置換度1.56、プロピオニル置換度0.90のセル ロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度2.46、表中「CAP」と記載した。)数平均分子量64000 セルロースエステルC:アセチル置換度2.42の数平均分子量が75000であるセルロースジアセテート(アシル基総置換度2.42、表中「DAC」と記載した。) シクロオレフィン:日本ゼオン製ゼオネックス480R(表中「COP」と記載した。) アクリル:三菱レイヨン製アクリペットTF8 用いた化合物を以下に示した。

化合物1 例示化合物 No.1 化合物2 例示化合物 No.5 化合物3 例示化合物 No.54 化合物4 ポリエステルA1(比較の化合物) (ポリエステルA1の合成) コハク酸を用いたポリエステルA1は、以下のようにして合成した。

冷却凝縮器を装着した反応器に、236質量部のエチレングリコール、683質量部の1,4−ブチレングリコール、1180質量部のコハク酸、0.03質量部のテトラブチルチタネートを投入し、140℃で2時間、220℃で2時間、冷却凝縮器を外して220℃でさらに20時間、脱水縮合反応を行って、数平均分子量2000のポリエステル(A1)を得た。これに使用したグリコール(a)の炭素数の平均は3.33、二塩基酸(b)の炭素数は4であった。

化合物5(比較の化合物) 層の形成は、表2のように樹脂フィルム、ハードコート層、ガスバリアー層の順で以下のようにして行った。

ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、M−306) 10質量部 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社製、M−405) 28質量部 ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製、U−6HA) 10質量部 シリカ微粒子(日産化学工業(株)製:MEK−AC−4101) 50質量部 開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア184) 2質量部 上記混合物をPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)で固形分30質量%となるように調整して、光学フィルムの片面に、塗布、80℃3分乾燥し、乾燥膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;0.5J/cm

2空気下、高圧水銀ランプ使用で硬化を行い、HC層1を形成した。

ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、M−306) 30質量部 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社製、M−405) 38質量部 ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製、U−6HA) 30質量部 開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア184) 2質量部 上記混合物をPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)で固形分30質量%となるようにPGMEで調整し、HC層1と同様にして、HC層2を形成した。

<ガスバリアー層1の形成> 樹脂基板又はHC層を設けたフィルムを、それぞれロール接触面、ロール非接触面になるように装置に装着して、下記成膜条件(プラズマCVD条件)にてフィルム上にガスバリアー層を300nmの厚さになるように形成し、ガスバリアー性フィルムを作製した。

〈成膜条件〉 原料ガス(ヘキサメチルジシロキサンHMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute) 酸素ガス(O2)の供給量:500sccm 真空チャンバー内の真空度:3Pa プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW プラズマ発生用電源の周波数:70kHz フィルムの搬送速度;0.8m/min 成膜ローラー直径:300mmφ <ガスバリアー層2の形成> ガスバリアー性フィルム2についてはスパッタ法で、厚さ300nmのSiO2からなるガスバリアー層を形成した(表ではスパッタと記載した。)。

<ガスバリアー層3の形成> またガスバリアー性フィルム4については、上記ガスバリアー層の上に更に、下記ポリシラザン層を設置した。

(ポリシラザンより酸化ケイ素膜形成) パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液を、塗布液とした。

〈ポリシラザン層の形成〉 上記ポリシラザン層塗布液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が300nmとなるように塗布し、温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間処理して乾燥させ、更に温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン層を形成した。

(ガスバリアー層の形成:紫外光によるポリシラザン層のシリカ転化処理) 次いで、上記形成したポリシラザン層に対し、下記紫外線装置を真空チャンバー内に設置して、下記の条件で、シリカ転化処理を実施した。

〈紫外線照射装置〉 装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200 照射波長:172nm ランプ封入ガス:Xe 〈改質処理条件〉 稼動ステージ上に固定したポリシラザン層を形成した基板に対し、以下の条件で改質処理を行って、ガスバリアー層(第2のガスバリアー層:表ではポリシラザンと記載した。)を形成した。

エキシマランプ光強度:130mW/cm2(172nm) 試料と光源の距離:1mm ステージ加熱温度:70℃ 照射装置内の酸素濃度:1.0% エキシマランプ照射時間:5秒 以上作製したガスバリアー性フィルムの構成を表2に記した。

≪ガスバリアー性フィルムの評価≫ 作製したガスバリアー性フィルムを用いて、水蒸気バリアー性の評価、屈曲性評価、密着性の評価を行った。

〔評価条件〕 <水蒸気透過度(WVTR)> ガスバリアーフィルムの水蒸気透過度は以下の方法により測定した。

(1)水蒸気透過度の測定(評価A、評価B) 温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件において、水蒸気透過度測定機(GTRテック社製、機種名「GTRテック−30XASC」)を用いて、ガスバリアーフィルムの水蒸気透過度(評価A)を測定した。また、温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件において、水蒸気透過度測定機(Lyssy社製、機種名「Lyssy−L80−5000」)を用いて、ガスバリアーフィルムの水蒸気透過度(評価B)を測定した。

(2)(1)の評価方法で検出限界以下の時は、以下の方法で測定を行った。

〈水蒸気バリアー性の評価(Ca評価方法)〉 (水蒸気バリアー性評価試料の作製装置) 蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400 恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M (原材料) 水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状) 水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状) (水蒸気バリアー性評価試料の作製) 真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、作製したガスバリアーフィルムのガスバリアー層表面に、マスクを通して12mm×12mmのサイズで金属カルシウムを蒸着させた。この際、蒸着膜厚は80nmとなるようにした。

その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムを蒸着させて仮封止をした。次いで、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下に移して、アルミニウム蒸着面に封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を介して厚さ0.2mmの石英ガラスを張り合わせ、紫外線を照射して樹脂を硬化接着させて本封止することで、水蒸気バリアー性評価試料を作製した。

得られた試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、保存時間に対して金属カルシウムが腐食して行く様子を観察した。観察は、保存時間6時間までは1時間ごとに、それ以降24時間までは3時間ごとに、それ以降48時間までは6時間ごとに、それ以降は12時間ごとに行い、12mm×12mmの金属カルシウム蒸着面積に対する金属カルシウムが腐食した面積を%表示で算出した。金属カルシウムが腐食した面積が1%となった時間を観察結果から直線で内挿して求め、金属カルシウム蒸着面積と、面積1%分の金属カルシウムを腐食させる水蒸気量と、それに要した時間との関係からそれぞれのガスバリアーフィルムの水蒸気透過度を算出した。

<密着性> 碁盤目密着性の評価は、JIS K 5600の5.6(2004年度版)の記載に準じ、積層体の片側からカッターナイフで、紫外線吸収カット層を貫通し基板に達する1mm角の100個の碁盤目状の切り傷を1mm間隔のカッターガイドを用いて付け、セロハン粘着テープ(ニチバン社製「CT405AP−18」;18mm幅)を切り傷面に貼り付け、消しゴムで上からこすって完全にテープを付着させた後、垂直方向に引き剥がして、紫外線吸収層が基板表面にどのくらい残存しているかを目視で確認して行った。

100個中の剥離数を調べ、下記の基準で評価した。

○ :碁盤目試験にて剥離数が5個以下 ○△:碁盤目試験にて剥離数が5〜10個 △ :碁盤目試験にて剥離数が11〜15個 △×:碁盤目試験にて剥離数が16〜20個 × :碁盤目試験にて剥離数が21〜30個 ××:碁盤目試験にて剥離数が31個以上 <屈曲性評価> 各ガスバリアーフィルムについて、金属製の棒にガスバリアーフィルムを巻き付けた後、1分放置する屈曲試験を施し、その後、ガスバリアーフィルムを平らに戻して、水蒸気透過度の評価を行った。なお、屈曲試験における曲率半径Rは棒の直径の1/2に相当するが、ガスバリアーフィルムの巻き数が多くなる場合は、フィルムを巻き付けた時の直径の1/2を曲率半径Rとした。Rは、8mmにて屈曲性試験を行った。

屈曲性試験をする前の水蒸気透過度と屈曲性試験後の数値の比を調べ、下記の基準で評価した。

○ :比が0.95以上 ○△:比が0.90以上〜0.95未満 △ :比が0.80以上〜0.90未満 △×:比が0.50以上〜0.80未満 × :比が0.30以上〜0.50未満 ××:比が0.30未満 以上の評価結果を表2に記載した。表中、水蒸気バリアー性の評価はWVTR(水蒸気透過度)で示した。

表2に記載したように、本発明のガスバリアー性フィルムは、十分なガスバリアー性を有しており、しかも高温高湿での密着性が良好であることが分かる。さらにフィルムを屈曲させた場合においても、ガスバリアー性の低下を十分に抑制することが可能な耐久性が良好なガスバリアーフィルムを提供することが可能となる。

〔実施例2〕 〔有機EL素子1の作製〕 実施例1で作製したガスバリアー性フィルムを用いて、電子デバイスの一例として、下記の方法に従って、有機EL素子1を作製した。

(第1電極層の形成) 実施例1で作製したガスバリアー性フィルム1のガスバリアー層上に、厚さ150nmのITO膜(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。なお、パターンは、発光面積が50mm平方になるようなパターンとして形成した。

(正孔輸送層の形成) 第1電極層を形成したガスバリアー性フィルム1の第1電極層上に、以下に記載の正孔輸送層形成用塗布液を用い、25℃、相対湿度50%の環境下で、押出し塗布機で塗布し、下記の条件で乾燥及び加熱処理を行って、正孔輸送層を形成した。なお、正孔輸送層形成用塗布液は、乾燥後の厚さが50nとなる条件で塗布した。

正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、ガスバリアー性フィルム1の両面に対し洗浄表面改質処理として、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm2、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用し行った。

〈正孔輸送層形成用塗布液の調製〉 ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を、純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を、正孔輸送層形成用塗布液として準備した。

〈乾燥及び加熱処理条件〉 正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、正孔輸送層形成面に対し、高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去した後、加熱処理装置を用い、温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。

(発光層の形成) 上記で形成した正孔輸送層上に、以下に示す白色発光層形成用塗布液を、下記の条件により押出し塗布機で塗布した後、下記の条件で乾燥及び加熱処理を行い、発光層を形成した。白色発光層形成用塗布液は、乾燥後の厚さが40nmとなる条件で塗布した。

〈白色発光層形成用塗布液の調製〉 ホスト材料として、下記に示す化合物H−Aを1.0gと、第1のドーパント材料として下記化合物D−Aを100mgと、第2のドーパント材料として下記化合物D−Bを0.2mgと、第3のドーパント材料として下記化合物D−Cを0.2mgとを、100gのトルエンに溶解して、白色発光層形成用塗布液を調製した。

〈塗布条件〉 塗布工程としては、窒素ガス濃度99%以上の雰囲気下で、塗布温度を25℃、塗布速度1m/minで行った。

〈乾燥及び加熱処理条件〉 白色発光層形成用塗布液を、正孔輸送層上に塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、温度130℃で加熱処理を行い、発光層を形成した。

(電子輸送層の形成) 上記で形成した発光層上に、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を下記の条件により押出し塗布機で塗布した後、下記の条件で乾燥及び加熱処理し、電子輸送層を形成した。電子輸送層形成用塗布液は、乾燥後の厚さが30nmとなる条件で塗布した。

〈電子輸送層形成用塗布液の調製〉 電子輸送層形成用塗布液は、下記化合物E−Aを、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し、0.5質量%溶液として調製した。

〈塗布条件〉 塗布工程は、窒素ガス濃度99%以上の雰囲気下で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。

〈乾燥及び加熱処理条件〉 電子輸送層形成用塗布液を、発光層上に塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で、温度200℃で加熱処理を行い、電子輸送層を形成した。

(電子注入層の形成) 上記形成した電子輸送層上に、下記の方法に従って、電子注入層を形成した。

電子輸送層まで形成したガスバリアー性フィルム1を減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。あらかじめ、真空チャンバー内のタンタル製蒸着ボートに装填しておいたフッ化セシウムを加熱し、厚さ3nmの電子注入層を形成した。

(第2電極の形成) 上記で形成した電子注入層上であって、第1電極の取り出し電極になる部分を除く部分に、5×10−4Paの真空下で、第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、取り出し電極を有するように蒸着法により、発光面積が50mm平方になるようにマスクパターン成膜し、厚さ100nmの第2電極を積層した。

(裁断) 以上のように、第2電極まで形成した積層体を、再び窒素雰囲気に移動し、規定の大きさに、紫外線レーザーを用いて裁断し、有機EL素子1を作製した。

(電極リード接続) 作製した有機EL素子1に、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製の異方性導電フィルムDP3232S9を用いて、フレキシブルプリント基板(ベースフィルム:ポリイミド12.5μm、圧延銅箔18μm、カバーレイ:ポリイミド12.5μm、表面処理NiAuメッキ)を接続した。

圧着条件:温度170℃(別途熱伝対を用いて測定したACF温度140℃)、圧力2MPa、10秒で圧着を行った。

(封止) 封止部材として、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚さ1.5μm)ものを用意した。

用意した封止部材のアルミニウム面に、熱硬化性接着剤を、ディスペンサーを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布し、接着剤層を形成した。

このとき、熱硬化性接着剤としては、下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。

(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA) (B)ジシアンジアミド(DICY) (C)エポキシアダクト系硬化促進剤 封止部材を、取り出し電極及び電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ローラーを用いて圧着条件、圧着ローラー温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止した。

〔有機EL素子2〜15の作製〕 上記有機EL素子1の作製において、ガスバリアー性フィルム1に代えて、実施例1で作製したガスバリアー性フィルム2〜15を用いた以外は同様にして、有機EL素子2〜15を作製した。

《有機EL素子の評価》 上記作製した有機EL素子1〜15について、下記の方法に従って、耐久性の評価を行った。

〔耐久性の評価〕 (加速劣化処理) 上記作製した各有機EL素子を、60℃、90%RHの環境下で400時間の加速劣化処理を施した後、加速劣化処理を施していない有機EL素子とともに、下記に記載の方法に従って、黒点に関する評価を行った。

(黒点数の測定及び耐久性の判定) 加速劣化処理を施した有機EL素子及び加速劣化処理を施していない有機EL素子(ブランク試料)に対し、それぞれ1mA/cm2の電流を印加し、24時間連続発光させた後、100倍のマイクロスコープ(株式会社モリテックス製MS−804、レンズMP−ZE25−200)でパネルの一部分を拡大し、撮影を行った。撮影画像を2mm四方に分割し、黒点の発生面積比率を求め、下式に従って素子劣化耐性率を算出した。

次いで、求めた素子劣化耐性率を基に、下記の基準に従って耐久性を判定した。評価ランクが、◎及び○であれば、実用上好ましい特性であると判定した。

素子劣化耐性率=(加速劣化処理を施していない素子で発生した黒点の面積/加速劣化処理を施した素子で発生した黒点の面積)×100(%) ◎:素子劣化耐性率が、90%以上である ○:素子劣化耐性率が、75%以上、90%未満である △:素子劣化耐性率が、60%以上、75%未満である △×:素子劣化耐性率が、45%以上、60%未満である ×:素子劣化耐性率が、45%未満である 以上により得られた結果を、表3に示す。

表3に記載の結果より明らかなように、本発明のガスバリアー性フィルムを備えた有機EL素子は、素子劣化耐性率が60%以上であり、良好な耐久性を備えていることが分かる。一方、比較例のガスバリアー性フィルムを備えた素子は、素子劣化耐性率が60%未満であった。

したがって、本発明の実施例のガスバリアー性フィルムは、電子デバイスである有機EL素子の樹脂基板として用いることが可能な非常に優れたガスバリアー性を有していることが分かる。

1 ガスバリアー性フィルム 2 樹脂基材 3 HC層 4 ガスバリアー層 5 第2のガスバリアー層 6 透明電極 7 有機EL素子(電子デバイス本体) 8 接着剤層 9 対向フィルム P 有機ELパネル(電子デバイス) 11 送り出しローラー 21、22、23、24 搬送ローラー 31、32 成膜ローラー 41 ガス供給管 51 プラズマ発生用電源 61、62 磁場発生装置 71 巻取りローラー A 炭素分布曲線 B ケイ素分布曲線 C 酸素分布曲線 D 酸素−炭素分布曲線

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