专利汇可以提供酸化物の前駆体、酸化物層、半導体素子、及び電子デバイス、並びに酸化物層の製造方法及び半導体素子の製造方法专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且,下面是酸化物の前駆体、酸化物層、半導体素子、及び電子デバイス、並びに酸化物層の製造方法及び半導体素子の製造方法专利的具体信息内容。
分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上である、前記脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた、 酸化物の前駆体。ティー・エイ・インスツルメント社製レオメーター(AR−2000EX)を用いて測定したゼロせん断粘度ηの脂肪族ポリカーボネートの溜まり中に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)製の直径がDである円柱棒を沈めた後に、前記円柱棒を速度vで引き上げたときの、前記脂肪族ポリカーボネートの溜まりの最表面からの曳糸長Lが測定された場合に、L/(D×v×η)の値が0.25mm−1Pa−1以上である前記脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた、 酸化物の前駆体。前記溶液が基材上に配置されてから30秒後に、前記溶液の基材に対する接触角が、30°以上36°以下であるか、あるいは、前記溶液が基材上に配置されてから120秒後に、前記溶液の基材に対する接触角が、26°以上32°以下である、 請求項1又は請求項2に記載の酸化物の前駆体。前記溶液は、ティー・エイ・インスツルメント社製レオメーター(AR−2000EX)を用いて測定したゼロせん断粘度ηの脂肪族ポリカーボネートの溜まり中に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)製の直径がDである円柱棒を沈めた後に、前記円柱棒を速度vで引き上げたときの、前記脂肪族ポリカーボネートの溜まりの最表面からの曳糸長Lが測定された場合に、 L/(D×v×η)の値が0.25mm−1Pa−1以上である前記脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む、 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の酸化物の前駆体。前記脂肪族ポリカーボネートが、エポキシドと二酸化炭素とを重合させた脂肪族ポリカーボネートである、 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の酸化物の前駆体。前記脂肪族ポリカーボネートが、ポリエチレンカーボネート及びポリプロピレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の酸化物の前駆体。分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上である、前記脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた酸化物の前駆体の層を備える、 半導体素子の中間体。ティー・エイ・インスツルメント社製レオメーター(AR−2000EX)を用いて測定したゼロせん断粘度ηの脂肪族ポリカーボネートの溜まり中に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)製の直径がDである円柱棒を沈めた後に、前記円柱棒を速度vで引き上げたときの、前記脂肪族ポリカーボネートの溜まりの最表面からの曳糸長Lが測定された場合に、L/(D×v×η)の値が0.25mm−1Pa−1以上である前記脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、 酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた、酸化物の前駆体の層を備える、 半導体素子の中間体。前記溶液が基材上に配置されてから30秒後に、前記溶液の基材に対する接触角が、30°以上36°以下であるか、あるいは、前記溶液が基材上に配置されてから120秒後に、前記溶液の基材に対する接触角が、26°以上32°以下である、 請求項7又は請求項8に記載の半導体素子の中間体。請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の半導体素子の中間体を備えた、 電子デバイスの中間体。分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上である、前記脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた酸化物の前駆体の層を、印刷法によって形成する前駆体層形成工程と、 前記前駆体の層を焼成する焼成工程と、を含む、 酸化物層の製造方法。ティー・エイ・インスツルメント社製レオメーター(AR−2000EX)を用いて測定したゼロせん断粘度ηの脂肪族ポリカーボネートの溜まり中に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)製の直径がDである円柱棒を沈めた後に、前記円柱棒を速度vで引き上げたときの、前記脂肪族ポリカーボネートの溜まりの最表面からの曳糸長Lが測定された場合に、 L/(D×v×η)の値が0.25mm−1Pa−1以上である前記脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、 酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた酸化物の前駆体の層を、印刷法によって形成する前駆体層形成工程と、 前記前駆体の層を焼成する焼成工程と、を含む、 酸化物層の製造方法。請求項11又は請求項12に記載の前記前駆体層形成工程と、 請求項11又は請求項12に記載の前記焼成工程と、を含む、 半導体素子の製造方法。
本発明は、酸化物の前駆体、酸化物層、半導体素子、及び電子デバイス、並びに酸化物層の製造方法及び半導体素子の製造方法に関する。
従来、電子デバイスの一例である、薄膜トランジスタのチャネル層として、主に、多結晶シリコン膜、又は非晶質シリコン膜が用いられてきた。しかしながら、多結晶シリコン膜の場合、多結晶粒子界面で起こる電子の散乱により、電子移動度が制限され、結果としてトランジスタ特性にばらつきが生じていた。また、非晶質シリコン膜の場合、電子移動度が極めて低く、時間による素子の劣化が発生し、素子の信頼性が極めて低くなるという問題がある。そこで、電子移動度が非晶質シリコン膜より高く、且つ多結晶シリコン膜よりトランジスタ特性のばらつきが少ない、酸化物半導体に関心が集まっている。また、酸化物半導体のみならず、酸化物からなる酸化物導電体又は酸化物絶縁体は、例えば、酸化物のみによる電子デバイスの実現のためには不可欠な技術要素であるため、それらに対する産業界の関心も非常に高い。
最近では、フレキシブルな樹脂基板上に電子デバイスを、印刷法等の低エネルギー製造プロセスで作製しようという試みが盛んになされている。印刷法等を用いることにより、直接、基板上に半導体層をパターニングできる結果、パターニングのためのエッチング処理工程を省くことができるという利点がある。
例えば、特許文献1〜3にあるように、導電性高分子や有機半導体を用いて塗布フレキシブル電子デバイスを作製する試みが行われている。
特開2007−134547号公報
特開2007−165900号公報
特開2007−201056号公報
SID 2015 DIGEST,p.1135
様々な形態の情報端末や情報家電が産業界及び消費者に求められる中、半導体は、より高速に動作し、長期間安定であり、且つ低環境負荷であることが必要となる。しかしながら、従来技術では、例えば、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセスといった比較的長時間、及び/又は高価な設備を要するプロセスを採用するのが一般的であるため、原材料や製造エネルギーの使用効率が非常に悪くなる。これは、工業性ないし量産性の観点から好ましくない。一方、現状では、これまで主流として用いられているシリコン半導体又はその他の半導体に対して、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法による層を形成することは極めて困難である。また、特許文献1〜3に記載された導電性高分子や有機半導体を採用した場合であっても、その電気物性や安定性は未だ不十分である。なお、本願における「層」は、層のみならず膜をも含む概念である。逆に、本願における「膜」は、膜のみならず層をも含む概念である。
ところで、上述の各種の印刷法による層の形成と、機能性溶液ないし機能性ペーストを用いて製造される各種の半導体素子及び電子デバイスは、該電子デバイスのフレキシブル化、及び上述の工業性ないし量産性の観点から、現在、産業界において非常に注目を集めている。
しかしながら、例えば、印刷法(特に、スクリーン印刷法)によって形成される層の厚さと半導体素子に要求される層の厚さとは違いがある。具体的には、印刷法を用いたパターニングの際には比較的厚い層が形成されるが、半導体素子に要求される層の厚さは一般的に非常に薄い。また、印刷法に用いられるペースト又は溶液(例えば、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を、バインダーを含む溶液中に分散させた酸化物の前駆体)には、パターニングを行うための好適な粘度が存在することから、バインダーを添加することによってその粘度が調整されている。本願発明者らは、特に、半導体素子を構成する薄い層(代表的には、酸化物半導体層、酸化物導電体層、又は酸化物絶縁体層)を、バインダーを添加したペースト又は溶液を用いて例えば印刷法による層を形成するときに、そのバインダーの曳糸性を適切に制御できないという状況が生じ得ることを確認した。そのような場合、半導体素子に使用に耐え得る、又は半導体素子の製造に適した良好なパターンを形成することができないという問題が生じる。より具体的な例で言えば、印刷法によって酸化物の前駆体の層を形成する過程において、基板上においてあるパターンが形成された前駆体の層から、一部の前駆体が糸状に曳かれることにより、所望のパターンを崩してしまうという問題が生じ得る。
また、例えば印刷法によって、上述の酸化物の前駆体のパターンを形成する際には、一旦形成されたパターンの形状が維持される必要がある。従って、経時変化が生じにくいパターンの形成も、特に印刷法においては求められる課題の1つといえる。
本願発明者らは、液体材料から種々の金属酸化物を形成する研究を行う中で、特に、上述のペースト又は溶液から得られるゲル状の層(以下、「ゲル層」ともいう)がパターンを形成する過程について詳細に分析を行った。その結果、ゲル層から固化状態ないし焼結状態の層に至る前、すなわち本焼成としての加熱処理が行われる前の段階においては、バインダー自身又はバインダーを添加したペースト又は溶液の特性が、ゲル層のパターンを形成する際に、少なからず影響しているという知見が得られた。
多くの試行錯誤と分析の結果、本願発明者らは、脂肪族ポリカーボネートからなる、特定の範囲の分子量のバインダー、又は特定の曳糸性を有するバインダーを活用することが、電子デバイス又は半導体素子に採用することができる程度の薄さを備えたゲル層の所望のパターンの実現に寄与し得ることを確認した。
さらに、本願発明者らは、別の視点からも該ゲル層の所望のパターンの実現について検討を重ねた。具体的には、上述のバインダーは、一旦パターンが形成された後においては、最終的に得られる金属酸化物から見れば不純物であり、分解又は除去される対象となる。従って、該バインダーを必要とする時間は、いわば一時的に過ぎない。そこで、本願発明者らは、従来開発されてきたような、一旦形成されたパターンの形状を相当長い時間、維持するための工夫ではなく、むしろパターンが形成されてから分解又は除去されるまでの間の、短い時間、そのパターンを維持すればよいとの考えに基づいて研究と分析を行った。その結果、上述のペースト又は溶液における溶媒を工夫することによって、さらに、上述のゲル層の所望のパターンの実現に寄与し得ることが明らかとなった。
加えて、酸化物の前駆体である該ゲル層を加熱処理することによって得られる酸化物層も、印刷法に代表される低エネルギー製造プロセスによって容易に形成することができることも確認された。すなわち、上述の各視点及び工夫は、低エネルギー製造プロセスを用いて形成した所望の薄い層の金属酸化物を備える半導体素子及び電子デバイスの性能、並びにそれらの製造技術のより一層の向上に貢献し得る。
本発明は、上述の各視点と数多くの分析に基づいて創出された。
なお、本願発明者らは、上述の金属酸化物を形成するための焼成によってバインダーを確度高く分解ないし除去するとともに、酸化物半導体層を得る設備又は方法を過去に実現している(例えば、国際公開公報WO/2015/019771号)ことから、本願においても、そのような設備又は方法の少なくとも一部を活用することができる。必ずしも、本願において、これまでの研究又は開発された技術及び技術思想を活用する必要はない。但し、その技術及び技術思想を活用することは、上述の技術課題の少なくとも一部を解決することと相俟って、上述の半導体素子及び電子デバイスの性能、並びにそれらの製造技術のより一層の向上に貢献し得る。
また、本願においては、「液体からゲル状態に至る過程」は、代表的な例で言えば、熱処理によってバインダーと溶媒を除去するが、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物(例えば、配位子)が分解されていない状況をいう。また、「ゲル状態から固化状態ないし焼結状態に至る過程」は、代表的な例で言えば、前述の配位子が分解し、酸化されたときに金属酸化物となる金属と酸素との結合がほぼ出来上がる状況をいう。
本発明の1つの酸化物の前駆体は、分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上である、その脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させたものである。
この酸化物の前駆体によれば、ペーストとしての役割を果たす脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上を占める分子量の範囲が6千以上40万以下であるため、例えば印刷法によって形成される層について、そのバインダーの曳糸性を適切に制御することが可能となる。その結果、酸化物の前駆体について良好なパターンを得ることができる。
また、本発明のもう1つの酸化物の前駆体は、ティー・エイ・インスツルメント社製レオメーター(型式、AR−2000EX)を用いて測定したゼロせん断粘度ηの脂肪族ポリカーボネートの溜まり中に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)製の直径がDである円柱棒を沈めた後に、その円柱棒を速度vで引き上げたときの、その脂肪族ポリカーボネートの溜まりの最表面からの曳糸長Lが測定された場合に、L/(D×v×η)の値が0.25mm−1Pa−1以上である前述の脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させたものである。
本願発明者らの研究と分析によれば、酸化物の前駆体について、ペーストとしての役割を果たす脂肪族ポリカーボネートが上述の計算式(すなわち、L/(D×v×η))に基づく数値範囲を満足することにより、例えば印刷法によって形成される層について、そのバインダーの曳糸性を適切に制御し得るという知見が得られた。従って、上述の数値範囲を満たせば、酸化物の前駆体について良好なパターンを得ることができる。
また、本発明の1つの酸化物層は、分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上である、その脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた酸化物の前駆体の層を焼成することにより形成される。
この酸化物層によれば、該酸化物層の前駆体中のペーストとしての役割を果たす脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上を占める分子量の範囲が6千以上40万以下であるため、例えば印刷法によって形成される層について、そのバインダーの曳糸性を適切に制御することが可能となる。その結果、酸化物の前駆体について良好なパターンを形成することができるため、良好なパターンの酸化物層を得ることができる。
また、本発明のもう1つの酸化物層は、ティー・エイ・インスツルメント社製レオメーター(型式、AR−2000EX)を用いて測定したゼロせん断粘度ηの脂肪族ポリカーボネートの溜まり中に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)製の直径がDである円柱棒を沈めた後に、その円柱棒を速度vで引き上げたときの、その脂肪族ポリカーボネートの溜まりの最表面からの曳糸長Lが測定された場合に、L/(D×v×η)の値が0.25mm−1Pa−1以上である前述の脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた酸化物の前駆体の層を焼成することにより形成される。
この酸化物層によれば、該酸化物層の前駆体中のペーストとしての役割を果たす脂肪族ポリカーボネートが、上述の計算式に基づく数値範囲を満足することにより、例えば印刷法によって形成される層について、そのバインダーの曳糸性を適切に制御し得るという知見が得られた。従って、上述の数値範囲を満たせば、酸化物の前駆体層の良好なパターンを形成することができるため、良好なパターンの酸化物層を得ることができる。
また、本発明の1つの酸化物層の製造方法は、分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上である、その脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた酸化物の前駆体の層を、印刷法によって形成する前駆体層形成工程と、その前駆体の層を焼成する焼成工程と、を含む。
この酸化物層の製造方法によれば、ペーストとしての役割を果たす脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上を占める分子量の範囲が6千以上40万以下であるため、例えば印刷法によって形成される層について、そのバインダーの曳糸性を適切に制御することが可能となる。その結果、酸化物の前駆体について良好なパターンを形成することができる。
また、本発明のもう1つの酸化物層の製造方法は、ティー・エイ・インスツルメント社製レオメーター(AR−2000EX)を用いて測定したゼロせん断粘度ηの脂肪族ポリカーボネートの溜まり中に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)製の直径がDである円柱棒を沈めた後に、その円柱棒を速度vで引き上げたときの、前述の脂肪族ポリカーボネートの溜まりの最表面からの曳糸長Lが測定された場合に、L/(D×v×η)の値が0.25mm−1Pa−1以上であるその脂肪族ポリカーボネートからなるバインダー(不可避不純物を含み得る)を含む溶液中に、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を分散させた酸化物の前駆体の層を、印刷法によって形成する前駆体層形成工程と、その前駆体の層を焼成する焼成工程と、を含む。
本願発明者らの研究と分析によれば、酸化物の前駆体について、ペーストとしての役割を果たす脂肪族ポリカーボネートが上述の計算式に基づく数値範囲を満足することにより、例えば印刷法によって形成される層について、そのバインダーの曳糸性を適切に制御し得るという知見が得られた。従って、上述の数値範囲を満たせば、酸化物の前駆体層の良好なパターンを形成することができる。
ところで、本出願における「金属酸化物」は、酸化物半導体、酸化物導電体、又は酸化物絶縁体を含む概念である。なお、酸化物半導体、酸化物導電体、及び酸化物絶縁体のそれぞれは、電気伝導性の観点から言えば相対的な概念であるため、厳格な区別を要求されない。仮に同種の金属酸化物であっても、各種デバイスの要求によって、場合によっては酸化物半導体として当業者に認識されることもあれば、酸化物導電体又は酸化物絶縁体として当業者に認識される場合も有り得る。また、本願における「基板」とは、板状体の基礎に限らず、その他の形態の基礎ないし母材を含む。加えて、本願の後述する各実施形態においては、「塗布」とは、低エネルギー製造プロセス、代表的には印刷法によってある基板上に層を形成することをいう。
本発明の1つの酸化物の前駆体によれば、例えば印刷法によって形成される層について、脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーの曳糸性を適切に制御することが可能となるため、酸化物の前駆体について良好なパターンを得ることができる。また、本発明の1つの酸化物層によれば、例えば印刷法によって形成される層について、脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーの曳糸性を適切に制御することが可能となる。その結果、酸化物の前駆体について良好なパターンを形成することができるため、良好なパターンの酸化物層を得ることができる。
また、本発明の1つの酸化物層の製造方法によれば、脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーの曳糸性を適切に制御することが可能となるため、酸化物の前駆体について良好なパターンを形成することができる。
本発明の第1の実施形態における良好なパターンを実現し得た代表的な光学顕微鏡写真の例である。
本発明の第1の実施形態における好ましくないパターンが形成された代表的な光学顕微鏡写真の例である。
本発明の第1の実施形態における良好なパターンが形成された代表的な光学顕微鏡写真の例である。
本発明の第1の実施形態における各試料と曳糸性を示す評価パラメータとの関係を示すグラフである。
本発明の第1の実施形態における各試料と曳糸性を示す評価パラメータとの関係を示すグラフである。
本発明の第1の実施形態における、基材上に脂肪族ポリカーボネートを含む溶液を配置してから30秒後の、2−ニトロプロパンの濃度の変化に対する、基材と該溶液との接触角、及び基材上の該溶液の広がり率を示すグラフである。
本発明の第1の実施形態における、基材上に脂肪族ポリカーボネートを含む溶液を配置してから120秒後の、2−ニトロプロパンの濃度の変化に対する、基材と該溶液との接触角、及び基材上の該溶液の広がり率を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態の薄膜トランジスタのチャネルを形成するための酸化物半導体の前駆体の構成材の一例である、インジウム含有溶液のTG−DTA特性を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態の薄膜トランジスタの構成要素を形成するためのバインダーのみを溶質とする溶液の一例であるポリプロピレンカーボネート溶液のTG−DTA特性を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態の薄膜トランジスタの構成要素を形成するための、酸化物半導体の前駆体のTG−DTA特性を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態の薄膜トランジスタの構成要素を形成するための、酸化物半導体の前駆体の他のTG−DTA特性を示すグラフである。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの全体構成及びその製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の第2の実施形態の変形例(2)における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
本発明の実施形態である脂肪族ポリカーボネート、酸化物の前駆体、酸化物層、半導体素子、及び電子デバイス並びにそれらの製造方法を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
<第1の実施形態> 1.酸化物の前駆体、及び酸化物層の構成、並びにそれらの製造方法 本実施形態においては、脂肪族ポリカーボネートと、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物とを混在させる代表的な態様が、「酸化物の前駆体」である。従って、この酸化物の前駆体の代表的な例は、酸化されたときに金属酸化物となる金属の化合物を、バインダー(不可避不純物を含み得る。以下、同じ)の役割を果たすと考えられる脂肪族ポリカーボネートを含む溶液中に分散させたものである。なお、バインダーとしての脂肪族ポリカーボネートは、例えば印刷法によって一旦パターンが形成された後においては、最終的に得られる金属酸化物から見れば不純物であるため、主として加熱処理によって分解又は除去される対象となる。
また、本実施形態においては、分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が、該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上である。また、本実施形態の金属酸化物の例は、酸化物半導体、酸化物導電体、又は酸化物絶縁体である。
(バインダー及び該バインダーを含む溶液について) 次に、本実施形態におけるバインダーに着目し、該バインダー及び該バインダーを含む溶液について詳述する。
本実施形態においては、バインダーとして、熱分解性の良い吸熱分解型の脂肪族ポリカーボネートが用いられる。なお、バインダーの熱分解反応が吸熱反応であることは、示差熱測定法(DTA)によって確認することができる。このような脂肪族ポリカーボネートは、酸素含有量が高く、比較的低温で低分子化合物に分解することが可能であるため、金属酸化物中の炭素不純物に代表される不純物の残存量を低減させることに積極的に寄与する。
また、本実施形態において、バインダーを含む溶液に採用され得る有機溶媒は、脂肪族ポリカーボネートを溶解可能な有機溶媒であれば特に限定されない。有機溶媒の具体例は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(Diethylene-Glycol-Monoethyl Ether Acetate(以下、「DEGMEA」ともいう。))、α−ターピネオール、β−ターピネオール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ニトロプロパン、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トルエン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどである。これらの有機溶媒の中でも、沸点が適度に高く、室温での蒸発が少なく、酸化物の前駆体を焼成する際に均一に有機溶媒が除去できる観点から、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、α−ターピネオール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ニトロプロパン及びプロピレンカーボネートが好適に用いられる。なお、本実施形態においては、形成されたパターン中のバインダーが最終的には不純物として分解又は除去される対象となる。従って、パターンが形成されてから分解又は除去されるまでの比較的短い時間だけ、そのパターンを維持すれば足りるという観点から、DEGMEAと2−ニトロプロパンとの混合溶媒を採用することが好ましい。
本実施形態の酸化物の前駆体の製造方法は、特に限定されない。例えば、金属酸化物、バインダー、及び有機溶媒の各成分を、従来公知の攪拌方法を用いて攪拌して均一に分散、溶解する方法が採用され得る。また、金属酸化物を含む有機溶媒とバインダーを有機溶媒に溶解した溶液とを、従来公知の攪拌方法を用いて攪拌して前駆体を得る方法も採用され得る一態様である。
上述の公知の攪拌方法には、例えば、攪拌機を用いて混合する方法、あるいはセラミックスボールが充填されたミル等の装置を用いて、回転及び/又は振動させることにより混練する方法が含まれる。
また、金属酸化物の分散性を向上させる観点から、バインダーを含む溶液には、所望により分散剤、可塑剤等をさらに添加することができる。
上述の分散剤の具体例は、 グリセリン、ソルビタン等の多価アルコールエステル; ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール;ポリエチレンイミン等のアミン; ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の(メタ)アクリル樹脂; イソブチレンまたはスチレンと無水マレイン酸との共重合体、及びそのアミン塩など である。
上述の可塑剤の具体例は、ポリエーテルポリオール、フタル酸エステルなどである。
また、本実施形態の酸化物の前駆体層を形成する方法は、特に限定されない。低エネルギー製造プロセスによる層の形成は、好適な一態様である。より具体的には、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法は、本実施形態における特に好適な低エネルギー製造プロセスである。また、その他の低エネルギー製造プロセスとして、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコートなどの塗工法などを用いることができる。なお、上述の中でも、特に簡便な方法であるスクリーン印刷により基板に塗布することにより、酸化物の前駆体層を形成することが好ましい。
(脂肪族ポリカーボネートについて) なお、後述する各実験例においては、脂肪族ポリカーボネートの例として、ポリプロピレンカーボネートが採用されているが、本実施形態で用いられる脂肪族ポリカーボネートの種類は特に限定されない。例えば、エポキシドと二酸化炭素とを重合反応させた脂肪族ポリカーボネートも、本実施形態において採用し得る好適な一態様である。このようなエポキシドと二酸化炭素とを重合反応させた脂肪族ポリカーボネートを用いることにより、脂肪族ポリカーボネートの構造を制御することで吸熱分解性を向上させられる、所望の分子量を有する脂肪族ポリカーボネートが得られるという効果が奏される。とりわけ、脂肪族ポリカーボネートの中でも酸素含有量が高く、比較的低温で低分子化合物に分解する観点から言えば、脂肪族ポリカーボネートは、ポリエチレンカーボネート、及びポリプロピレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。上述のいずれの脂肪族ポリカーボネートにおいても、その分子量が上述の数値範囲内であれば、本実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。
また、上述のエポキシドは、二酸化炭素と重合反応して主鎖に脂肪族を含む構造を有する脂肪族ポリカーボネートとなるエポキシドであれば特に限定されない。例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ペンテンオキシド、2−ペンテンオキシド、1−ヘキセンオキシド、1−オクテンオキシド、1−デセンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、3−フェニルプロピレンオキシド、3,3,3−トリフルオロプロピレンオキシド、3−ナフチルプロピレンオキシド、3−フェノキシプロピレンオキシド、3−ナフトキシプロピレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、3−ビニルオキシプロピレンオキシド、及び3−トリメチルシリルオキシプロピレンオキシド等のエポキシドは、本実施形態において採用し得る一例である。これらのエポキシドの中でも、二酸化炭素との高い重合反応性を有する観点から、エチレンオキシド、及びプロピレンオキシドが好適に用いられる。なお、上述の各エポキシドは、それぞれ単独で使用されてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられることもできる。
上述の脂肪族ポリカーボネートの質量平均分子量は、好ましくは5000〜1000000であり、より好ましくは10000〜500000である。脂肪族ポリカーボネートの質量平均分子量が5000未満の場合、例えば、粘度の低下による影響等により、バインダーとしての効果が十分に得られなくなるおそれがある。また、脂肪族ポリカーボネートの質量平均分子量が1000000を超える場合、脂肪族ポリカーボネートの有機溶媒への溶解性が低下するために取り扱いが難しくなるおそれがある。なお、前述の質量平均分子量の数値は、次の方法によって算出することができる。
具体的には、上述の脂肪族ポリカーボネート濃度が0.5質量%のクロロホルム溶液を調製し、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定する。測定後、同一条件で測定した質量平均分子量が既知のポリスチレンと比較することにより、分子量を算出する。また、測定条件は、以下の通りである。 機種:HLC−8020(東ソー株式会社製) カラム:GPCカラム(東ソー株式会社の商品名:TSK GEL Multipore HXL−M) カラム温度:40℃ 溶出液:クロロホルム 流速:1mL/分
また、上述の脂肪族ポリカーボネートの製造方法の一例として、上述のエポキシドと二酸化炭素とを金属触媒の存在下で重合反応させる方法等が採用され得る。
ここで、脂肪族ポリカーボネートの製造例は、次のとおりである。 攪拌機、ガス導入管、温度計を備えた1L容のオートクレーブの系内をあらかじめ窒素雰囲気に置換した後、有機亜鉛触媒を含む反応液、ヘキサン、及びプロピレンオキシドを仕込んだ。次に、攪拌しながら二酸化炭素を加えることによって反応系内を二酸化炭素雰囲気に置換し、反応系内が約1.5MPaとなるまで二酸化炭素を充填した。その後、そのオートクレーブを60℃に昇温し、反応により消費される二酸化炭素を補給しながら数時間重合反応を行った。反応終了後、オートクレーブを冷却して脱圧し、ろ過した。その後、減圧乾燥することによりポリプロピレンカーボネートを得た。
また、上述の金属触媒の具体例は、アルミニウム触媒、又は亜鉛触媒である。これらの中でも、エポキシドと二酸化炭素との重合反応において高い重合活性を有することから、亜鉛触媒が好ましく用いられる。また、亜鉛触媒の中でも有機亜鉛触媒が特に好ましく用いられる。
また、上述の有機亜鉛触媒の具体例は、 酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛等の有機亜鉛触媒;あるいは、 一級アミン、2価のフェノール、2価の芳香族カルボン酸、芳香族ヒドロキシ酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸等の化合物と亜鉛化合物とを反応させることにより得られる有機亜鉛触媒など である。 これらの有機亜鉛触媒の中でも、より高い重合活性を有することから、亜鉛化合物と、脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族モノカルボン酸とを反応させて得られる有機亜鉛触媒を採用することは好適な一態様である。
ここで、有機亜鉛触媒の製造例は、次のとおりである。 まず、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管を備えた四つ口フラスコに、酸化亜鉛、グルタル酸、酢酸、及びトルエンを仕込んだ。次に、反応系内を窒素雰囲気に置換した後、そのフラスコを55℃まで昇温し、同温度で4時間攪拌することにより、前述の各材料の反応処理を行った。その後、110℃まで昇温し、さらに同温度で4時間攪拌して共沸脱水させ、水分のみを除去した。その後、そのフラスコを室温まで冷却することにより、有機亜鉛触媒を含む反応液を得た。なお、この反応液の一部を分取し、ろ過して得た有機亜鉛触媒について、IRを測定(サーモニコレージャパン株式会社製、商品名:AVATAR360)した。その結果、カルボン酸基に基づくピークは認められなかった。
また、重合反応に用いられる上述の金属触媒の使用量は、エポキシド100質量部に対して、0.001〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。金属触媒の使用量が0.001質量部未満の場合、重合反応が進行しにくくなるおそれがある。また、金属触媒の使用量が20質量部を超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でなくなるおそれがある。
上述の重合反応において必要に応じて用いられる反応溶媒は、特に限定されるものではない。この反応溶媒は、種々の有機溶媒が適用し得る。この有機溶媒の具体例は、 ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒; ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒; クロロメタン、メチレンジクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、エチルクロリド、トリクロロエタン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、クロルベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒; ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒など である。
また、上述の反応溶媒の使用量は、反応を円滑にさせる観点から、エポキシド100質量部に対して、500質量部以上10000質量部以下であることが好ましい。
また、上述の重合反応において、エポキシドと二酸化炭素とを金属触媒の存在下で反応させる方法としては、特に限定されるものではない。例えば、オートクレーブに、上述のエポキシド、金属触媒、及び必要により反応溶媒を仕込み、混合した後、二酸化炭素を圧入して、反応させる方法が採用され得る。
加えて、上述の重合反応において用いられる二酸化炭素の使用圧力は、特に限定されない。代表的には、0.1MPa〜20MPaであることが好ましく、0.1MPa〜10MPaであることがより好ましく、0.1MPa〜5MPaであることがさらに好ましい。二酸化炭素の使用圧力が20MPaを超える場合、使用圧力に見合う効果がなく経済的でなくなるおそれがある。
さらに、上述の重合反応における重合反応温度は、特に限定されない。代表的には、30〜100℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。重合反応温度が30℃未満の場合、重合反応に長時間を要するおそれがある。また、重合反応温度が100℃を超える場合、副反応が起こり、収率が低下するおそれがある。重合反応時間は、重合反応温度により異なるために一概には言えないが、代表的には、2時間〜40時間であることが好ましい。
重合反応終了後は、ろ過等によりろ別し、必要により溶媒等で洗浄後、乾燥させることにより、脂肪族ポリカーボネートを得ることができる。
[脂肪族ポリカーボネートの分子量と、曳糸性及びパターン形状との相関性] 本願発明者らは、代表的には以下の実験を行うことにより、脂肪族ポリカーボネートの分子量と、曳糸性及びパターン形状との相関性に関する分析及び検討を入念に行った。その結果、脂肪族ポリカーボネートの分子量の代表的な例として、6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が、該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上であれば、酸化物の前駆体の曳糸性を制御し、良好なパターンを形成することができることを本願発明者らは確認した。なお、以下の各実験例において採用される脂肪族ポリカーボネートは、ポリプロピレンカーボネート(以下、「PPC」ともいう。)である。
(各実験の準備工程) なお、酸化物の前駆体の製造例は、次のとおりである。なお、下記の各実験例においては、代表的に、酸化されたときに酸化物半導体となる前駆体、すなわち、酸化物半導体の前駆体を採用する。
まず、50mL容のフラスコに、インジウムアセチルアセトナート及びプロピオン酸を撹拌しながら徐々に混合することにより、最終的にインジウム酸化物となる、インジウム含有溶液を得た。
次に、50mL容のナス型フラスコに、ポリプロピレンカーボネートを、DEGMEAと2−ニトロプロパンの混合溶媒中に溶解し、25wt%のポリプロピレンカーボネート溶液を得た。
その後、そのポリプロピレンカーボネートの溶液中に、上述のインジウム含有溶液を徐々に加え、酸化物半導体の前駆体を得た。
[実験例1] 以下の(1)〜(10)に示す、質量平均分子量が異なる4種類のPPCの単体を溶解させた試料、又はそれらのうちの2種類を組み合わせたものを溶解させた試料を調製した。 (1)質量平均分子量が3万のPPC(以下、「試料A」ともいう。)のみ (2)質量平均分子量が9万のPPC(以下、「試料B」ともいう。)のみ (3)試料Aと試料Bとを1:1の比率で混合したもの(以下、「試料AB」ともいう。) (4)質量平均分子量が23万のPPC(以下、「試料C」ともいう)のみ (5)質量平均分子量が59万のPPC(以下、「試料D」ともいう)のみ (6)試料Cと試料Dとを1:1の比率で混合したもの(以下、「試料CD」ともいう。) (7)試料Aと試料Cとを1:1の比率で混合したもの(以下、「試料AC」ともいう。) (8)試料Bと試料Cとを1:1の比率で混合したもの(以下、「試料BC」ともいう。) (9)試料Aと試料Dとを1:1の比率で混合したもの(以下、「試料AD」ともいう。) (10)試料Bと試料Dとを1:1の比率で混合したもの(以下、「試料BD」ともいう。)
上述の試料について、分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの、脂肪族ポリカーボネート全体に対する比率を以下のようにして求めた。すなわち、脂肪族ポリカーボネート濃度が0.5質量%のクロロホルム溶液を調製し、高速液体クロマトグラフィーを用いて以下の測定条件で、分子量が既知のポリスチレンと比較することにより、分子量分布を測定する。 機種:HLC−8020(東ソー株式会社製) カラム:GPCカラム(東ソー株式会社の商品名:TSK GEL Multipore HXL−M) カラム温度:40℃ 溶出液:クロロホルム 流速:1mL/分 上記の方法で得られる、横軸を分子量(Log分子量)、縦軸を溶出割合(dwt/d(log分子量))とするクロマトグラムから、クロマトグラム全領域の面積と分子量が6千以上40万以下の分子量範囲の面積との比率を算出した。得られた結果を表1に示した。
上記の試料を用いてバインダーの曳糸性を評価した。具体的には、ガラス基板「イーグルXG」(200×150×0.7tmm3)上に、スクリーン印刷法を用いて、上述のバインダーによる矩形のパターンを形成した。
その後、大気雰囲気中にて150℃で30分間の該パターンに対する予備的な焼成をした後、該パターンに対する曳糸性の評価を光学顕微鏡、及び原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行った。
上述の実験結果をまとめた表を、表2に示す。
表2における「パターン形状」は、印刷法を用いて形成されたパターンの忠実性を示している。従って、「パターン形状」における「不良」という記載は、デバイスの製造に利用できない程度にパターンが形成されていない状況を意味する。逆に、「パターン形状」における「良好」という記載は、デバイスの製造に利用可能な程度にパターンが再現されていることを意味している。また、表2における「曳糸性」における「不良」とは、印刷法を用いてパターンが形成されたバインダーの層から、一部のバインダーが糸状に曳かれることにより、所望のパターンが崩されている状態を意味する。また、「曳糸性」における「良好」とは、曳糸性がほとんど又は全く見られない状態を意味する。加えて、表2における「パターン高さ」は、原子間力顕微鏡(AFM)によるパターン最高点の測定値である。なお、試料(6)の「パターン高さ」における「測定不能」との記載は、パターン自身が実質的に形成されていない状況であったことを意味している。
上述の表2に加えて、良好なパターンを実現し得た代表的な光学顕微鏡写真の例として、上記の(1)、(7)、及び(8)の結果を図1に示す。また、曳糸性を制御することができずに、好ましくないパターンが形成された代表的な光学顕微鏡写真の例として、上記の(5)、(9)、及び(10)の結果を図2Aに示す。
表2、図1、及び図2Aに示すように、比較的低分子量の脂肪族ポリカーボネートである、(1)「試料A」、(2)「試料B」、及び(3)「試料AB」、並びに中程度の分子量である脂肪族ポリカーボネートの(7)「試料AC」については、「パターン形状」及び「曳糸性」について良好な結果が得られた。なお、特に、試料C(表中の(4))は、表2において曳糸性が「不良」と記載されているが、一部のパターンのみに曳糸性が見られたに過ぎない点を付言する。
また、「パターニング形状」又は「曳糸性」が悪化する要因は、分子量の増加にあると考えられる結果が得られた。一方、例えば、スクリーン印刷法においては、形成されたパターンが一定以上の「高さ」を有することが好ましい。従って、良好な「パターン形状」及び「曳糸性」を維持しつつ、一定以上の「パターン高さ」を得るためには、著しく低分子量の脂肪族ポリカーボネートを採用することは好ましくないとの知見も得られている。
なお、本願発明者らは、(9)「試料AD」及び(10)「試料BD」について、それぞれの「パターニング形状」及び「曳糸性」が「不良」となった原因を次のように考察する。
表2の「パターン高さ」が示すように、(9)「試料AD」及び(10)「試料BD」の各パターン高さ(5.3μm)は、「試料A」のパターン高さ(1.4μm)と「試料D」のパターン高さ(4μm)との和、あるいは、「試料A」のパターン高さ(1.5μm)と「試料D」のパターン高さ(4μm)との和とほぼ同じである。従って、PPCの単体をバインダーとして溶解させた試料を用いた場合は、一定程度の分子量差を越えると、高分子量の脂肪族ポリカーボネートと低分子量の脂肪族ポリカーボネートとが、いわば相分離することによって混ざらない状況が形成されると考えられる。敢えて積極的に言及すれば、低分子量の脂肪族ポリカーボネート上に高分子量の脂肪族ポリカーボネートが乗っている状況か、あるいはその逆の状態が形成されている可能性がある。一方、分子量の差が比較的小さい、(7)「試料AC」又は(8)「試料BC」は、高分子量の脂肪族ポリカーボネートと低分子量の脂肪族ポリカーボネートとが、いわば相分離せずに適度に混ざっている状態であると考えられるため、良好な「パターニング形状」及び「曳糸性」が得られると考えられる。
従って、たとえ同じ種類の材料であっても、それぞれ異なった質量平均分子量を有する脂肪族ポリカーボネートを複数用いた場合、単純に、各脂肪族ポリカーボネートの質量平均分子量を平均させることによって、良好な「パターニング形状」及び「曳糸性」を得るための適切な分子量を導出できる訳ではないことを、上述の実験結果は示しているといえる。
上述の各結果と、本願発明者らがその他の分子量について調査、分析した結果とを合わせると、分子量が6千以上40万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が該脂肪族ポリカーボネート全体の80質量%以上である脂肪族ポリカーボネートを採用することにより、良好な「パターン形状」及び「曳糸性」を実現し得る。
また、上述の(1)〜(10)に示す結果が、質量平均分子量が異なる4種類のPPCの単体をバインダーとして溶解させた、「各実験の準備工程」において説明した酸化物半導体の前駆体の試料、又はそれらのPPCのうちの2種類を組み合わせたものをバインダーとして溶解させた該酸化物半導体の前駆体の試料を調製した場合にも、データの傾向として当て嵌まることが確認されている。なお、該酸化物半導体の前駆体の試料は、0.2mol/kgのインジウム含有溶液を、5質量%含む。また、表3の各試料番号は、表1の(1)〜(10)との対応関係を分かりやすくするために、同じ番号を使用している。
具体的には、表3に示すように、比較的低分子量の脂肪族ポリカーボネートである、(1)「試料A」、(2)「試料B」、及び(3)「試料AB」、並びに中程度の分子量である脂肪族ポリカーボネートの(7)「試料AC」については、「パターン形状」及び「曳糸性」について良好な結果が得られた。加えて、興味深いことに、分子量が比較的大きい(9)及び(10)の各試料のパターン形状及び曳糸性も、良好であることが確認された。図2Bは、曳糸性を制御することができた結果、良好なパターンが形成された、(9)及び(10)の結果を示す光学顕微鏡写真である。(9)及び(10)の各試料のパターン形状及び曳糸性が良好であったのは、おそらく、表2において採用した試料にインジウム含有溶液が追加されたために、全体としてのPPCの濃度が若干低下したことが原因と考えられる。
[実験例2] 次に、本願発明者らは、実験例1において採用した(1)〜(10)に示す試料について、以下の実験により、平均曳糸長(mm)及びゼロせん断粘度(Pa・s)を測定した。
本実験では、まず、平均曳糸長(mm)については、各試料を用いて形成した、収容器内の脂肪族ポリカーボネートの溜まり中に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)製であって直径Dが2.9mmの円柱棒を沈めた。その後、その円柱棒を速度vが5mm/秒で引き上げたときの、脂肪族ポリカーボネートの溜まりの最表面からの曳糸長L(mm)を測定した。また、各試料のゼロせん断粘度ηは、ティー・エイ・インスツルメント社製レオメーター(AR−2000EX)を用いて測定した。そして、評価パラメータとして、上述の各値を次の式に代入して算出した。 <計算式> 「評価パラメータ」(mm−1・Pa−1)=L/(D×v×η)
表4は、本実験例における各試料と、平均曳糸長(mm)及びゼロせん断粘度(Pa・s)との関係を示している。また、図3Aは、本実験例における各試料と、曳糸性を示す評価パラメータとの関係を示すグラフである。
表4及び図3Aに示すように、PPCの単体をバインダーとして溶解させた試料を用いた場合は、上述の計算式によって算出される「評価パラメータ」(mm−1・Pa−1)の値が、少なくとも、0.4mm−1Pa−1以上であれば、良好な「パターニング形状」及び「曳糸性」を得ることができるとの知見が得られた。
ところで、以下の表5に示すように、上述の(1)〜(10)に示す結果が、質量平均分子量が異なる4種類のPPCの単体をバインダーとして溶解させた、「各実験の準備工程」において説明した酸化物半導体の前駆体の試料、又はそれらのうちの2種類を組み合わせたものをバインダーとして溶解させた該酸化物半導体の前駆体の試料、を調製した場合も、データの傾向として当て嵌まることが確認されている。なお、以下の表5の各試料番号は、表1の(1)〜(10)との対応関係を分かりやすくするために、同じ番号を使用している。
表4、表5、図3A、及び図3Bに示すように、PPCの単体をバインダーとして溶解させた試料を用いた結果よりも、上述の酸化物半導体の前駆体の試料を用いた結果の方が、該「評価パラメータ」の値が全体的に大きくなっていることが分かる。従って、(9)及び(10)の結果も踏まえた上で、表3乃至5、及び図3B、並びに図2Bの結果を合わせて検討すると、該「評価パラメータ」(mm−1・Pa−1)の値が、0.25mm−1Pa−1以上(より狭義には0.29mm−1Pa−1以上)であれば、良好な「パターニング形状」及び「曳糸性」を得ることができるとの知見が得られた。なお、良好な「パターニング形状」及び「曳糸性」を得るための、該「評価パラメータ」の上限値は特に限定されないが、より確度高くパターンの高さを得る観点から言えば、該「評価パラメータ」の値が1.2以下(より狭義には、0.9以下)であることは好適である。
(他の好適な脂肪族ポリカーボネートの分子量の範囲) なお、本実施形態の脂肪族ポリカーボネートの分子量の範囲は、上述の各実験例において開示された数値範囲に限定されない。本願発明者らの分析によれば、例えば、分子量が6千以上30万以下の脂肪族ポリカーボネートの比率が、該脂肪族ポリカーボネート全体の75質量%以上であることは、より確度高く曳糸性を制御し、良好なパターンを形成する観点から言えば、さらに好ましい一態様である。
[実験例3] (接触角及び広がり率の評価) 既に述べたとおり、バインダーとしての機能を発揮し得ると考えられる脂肪族ポリカーボネートは、一旦パターンが形成された後においては、最終的に得られる金属酸化物から見れば不純物であり、分解又は除去される対象となる。従って、該バインダーを必要とする時間は、いわば一時的に過ぎない。しかしながら、その一時的な時間を維持するためのパターンの形成作用(換言すれば、バランスの取れた粘度又は塗れ性)を、脂肪族ポリカーボネートを含む溶液が有するか否かは、基材上に該溶液を配置したときの、該溶液とその基材との接触角を評価することが好適な指標になると発明者らは考えた。そこで、発明者らは、ポリプロピレンカーボネート(25wt%)を、DEGMEAと2−ニトロプロパンの混合溶媒中に溶解することによって得られたポリプロピレンカーボネート溶液を、基材(この実験例においては、ガラス基板)上に配置してから30秒後、及び120秒後に、基材と該溶液との接触角、及び基材上の該溶液の広がり率がどのように変化するかを調査した。なお、接触角の変化を調べやすいように、脂肪族ポリカーボネートの好適な溶媒である2−ニトロプロパンの濃度(wt%)を変化させた上で、上述の各評価が行われた。また、上述の「広がり率」は、設計値に対する実際のパターン寸法に基づいて算出された。
図4Aは、基材上に脂肪族ポリカーボネートを含む溶液を配置してから30秒後における、2−ニトロプロパンの濃度の変化に対する、基材と該溶液との接触角、及び基材上の該溶液の広がり率を示すグラフである。また、図4Bは、基材上に脂肪族ポリカーボネートを含む溶液を配置してから120秒後における、2−ニトロプロパンの濃度の変化に対する、基材と該溶液との接触角、及び基材上の該溶液の広がり率を示すグラフである。
図4A及び図4Bに示すように、基材と該溶液との接触角と、基材上の該溶液の広がり率とは互いに逆の相関性が認められる。すなわち、2−ニトロプロパンの濃度が上昇するに従って、接触角は増加する一方、広がり率は減少することが明らかとなった。但し、図4Bに示すように、2−ニトロプロパンの濃度が高い場合(例えば、75%)であっても、接触角が増加しない場合も存在していることが分かった。加えて、特に接触角については、図4A及び図4Bのいずれにおいても、2−ニトロプロパンの濃度がある値(代表的には、55%以上60%以下)になると急激に上昇する傾向が見られることも明らかとなった。
本願発明者らのさらなる研究と分析によれば、30秒後の段階において接触角が36°を超える場合、又は、120秒後の段階において接触角が32°を超える場合は、脂肪族ポリカーボネートを含む溶液が基材に対して弾かれる状況となるため、一時的な時間を維持するために十分なパターンが形成され難いという知見が得られている。従って、脂肪族ポリカーボネートを含む溶液は、前述の各接触角以下の角度となるように調製されることが好ましい。
他方、30秒後の段階において接触角が30°未満となる場合、又は、120秒後の段階において接触角が26°未満となる場合は、パターンの再現性が悪くなるため、この場合も、一時的な時間を維持するために十分なパターンが形成され難いという知見が得られている。従って、脂肪族ポリカーボネートを含む溶液は、前述の各接触角以上の角度となるように調製されることが好ましい。
また、上述の図4A及び図4Bに示す結果が、質量平均分子量が異なる4種類のPPCの単体をバインダーとして溶解させた、「各実験の準備工程」において説明した酸化物半導体の前駆体の試料、又はそれらのうちの2種類を組み合わせたものをバインダーとして溶解させた該酸化物半導体の前駆体の試料、を調製した場合にも当て嵌まることが確認されている。
上述のとおり、脂肪族ポリカーボネートを含む溶液中に酸化物の前駆体が含有されていない実験例の結果と脂肪族ポリカーボネートを含む溶液中に酸化物の前駆体が含有されている実施例の結果とが略同等であることを確認することができる。
<第2の実施形態> 2.本実施形態の薄膜トランジスタの全体構成 図5乃至図10、及び図13乃至図16は、それぞれ、半導体素子の一例である薄膜トランジスタ100の製造方法の一過程を示す断面模式図である。また、図16は、本実施形態における薄膜トランジスタ100の製造方法の一過程及び全体構成を示す断面模式図である。図16に示すように、本実施形態における薄膜トランジスタ100においては、基板10上に、下層から、ゲート電極24、ゲート絶縁体34、チャネル44、ソース電極58及びドレイン電極56の順序で積層されている。なお、この半導体素子を備える電子デバイス(例えば、携帯端末や情報家電、あるいはその他の公知の電化製品)の提供ないし実現は、本実施形態の半導体素子を理解する当業者であれば特に説明を要せず十分に理解され得る。また、後述する、各種の酸化物の前駆体の層を形成するための工程は、本願における「前駆体層形成工程」に含まれる。
薄膜トランジスタ100は、いわゆるボトムゲート構造を採用しているが、本実施形態はこの構造に限定されない。従って、当業者であれば、通常の技術常識を以って本実施形態の説明を参照することにより、工程の順序を変更することにより、トップゲート構造を形成することができる。また、本出願における温度の表示は、基板と接触するヒーターの加熱面の表面温度を表している。また、図面を簡略化するため、各電極からの引き出し電極のパターニングについての記載は省略する。
本実施形態の基板10は、特に限定されず、一般的に半導体素子に用いられる基板が用いられる。例えば、高耐熱ガラス、SiO2/Si基板(すなわち、シリコン基板上に酸化シリコン膜を形成した基板)、アルミナ(Al2O3)基板、STO(SrTiO)基板、Si基板の表面にSiO2層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板等、半導体基板(例えば、Si基板、SiC基板、Ge基板等)を含む、種々の絶縁性基材が適用できる。なお、絶縁性基板には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、アラミド、芳香族ポリアミドなどの材料からなる、フィルム又はシートが含まれる。また、基板の厚さは特に限定されないが、例えば3μm以上300μm以下である。また、基板は、硬質であってもよく、フレキシブルであってもよい。
(1)ゲート電極の形成 本実施形態においては、ゲート電極24の材料として、酸化されたときに酸化物導電体となる金属の化合物(以下、単に「酸化物導電体」ともいう)を採用することができる。この場合、本実施形態のゲート電極24は、酸化物導電体(但し、不可避不純物を含み得る。以下、この材料の酸化物に限らず他の材料の酸化物についても同じ。)を脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーを含む溶液中に分散させた酸化物導電体の前駆体の層(以下、「酸化物導電体の前駆体層」ともいう)を焼成することによって形成される。本実施形態では、図5に示すように、基材であるSiO2/Si基板(以下、単に「基板」ともいう)10上に低エネルギー製造プロセス(例えば、印刷法又はスピンコート法)を用いて出発材であるゲート電極用前駆体溶液を塗布することにより、ゲート電極用前駆体層22を形成することができる。
その後、ゲート電極用前駆体層22を、例えば、大気中において、所定時間(例えば、10分間〜1時間)、450℃〜550℃で加熱する焼成工程が行われる。その結果、図6に示すように、基板10上に、ゲート電極24が形成される。なお、本実施形態のゲート電極24の層の厚みは、例えば、約100nmである。
ここで、上述の酸化物導電体の一例は、酸化されたときに酸化物導電体となる金属に、配位子が配位した構造(代表的には錯体構造)を有する材料である。例えば、金属有機酸塩、金属無機酸塩、金属ハロゲン化物、又は各種の金属アルコキシドも本実施形態の酸化物導電体に含まれ得る。なお、酸化されたときに酸化物導電体となる金属の例は、ルテニウム(Ru)である。本実施形態においては、ニトロシル酢酸ルテニウム(III)を、脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーを含むプロピオン酸と2−アミノエタノールとの混合溶媒に溶解した溶液を出発材とするゲート電極用前駆体溶液を、例えば、上述の照射工程の後、大気中において、所定時間(例えば、10分間〜1時間)、約450℃〜約550℃で加熱する焼成工程を行うことにより、酸化物導電体であるルテニウム酸化物が形成されるため、ゲート電極24を形成することができる。
本実施形態においては、特に、第1の実施形態の脂肪族ポリカーボネートを採用したゲート電極用前駆体溶液を用いれば、印刷法を用いてゲート電極用前駆体層22のパターンを形成した場合に良好なパターンを形成することができる。より具体的には、ゲート電極用前駆体溶液におけるバインダーとしての役割を果たし得る脂肪族ポリカーボネートの曳糸性を適切に制御することが可能となるため、良好なゲート電極用前駆体層22のパターンを形成することができる。
なお、本実施形態においては、上述のゲート電極24の代わりに、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、モリブデン、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、タングステン、などの高融点金属、又はその合金等の金属材料、あるいはp+−シリコン層やn+−シリコン層を適用することができる。その場合、ゲート電極24を、公知のスパッタリング法やCVD法により基板10上に形成することができる。
(2)ゲート絶縁体の形成 また、本実施形態においては、ゲート絶縁体34の材料として、酸化されたときに酸化物絶縁体となる金属の化合物(以下、単に「酸化物絶縁体」ともいう)を脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーを含む溶液中に分散させた酸化物絶縁体の前駆体の層(以下、「酸化物絶縁体の前駆体層」ともいう)を焼成することによって形成される。
具体的には、図7に示すように、ゲート電極24上に低エネルギー製造プロセス(例えば、印刷法又はスピンコート法)を用いて上述の酸化物絶縁体の前駆体を塗布することにより、ゲート絶縁体用前駆体層32が形成される。
その後、ゲル状態となったゲート絶縁体用前駆体層32を、例えば、大気中において、所定時間(例えば、10分間〜1時間)、約450℃〜約550℃で加熱する焼成(本焼成)工程が行われることにより、例えば、酸化物絶縁体であるランタン(La)とジルコニウム(Zr)とからなる酸化物が形成される。その結果、図8に示すように、ゲート絶縁体34を形成することができる。なお、本実施形態のゲート絶縁体34の層の厚みは、例えば、約100nm〜約250nmである。
ここで、上述の酸化物絶縁体の一例は、酸化されたときに酸化物絶縁体となる金属に、配位子が配位した構造(代表的には錯体構造)を有する材料である。例えば、金属有機酸塩、金属無機酸塩、金属ハロゲン化物、又は各種の金属アルコキシド、あるいは、その他の有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、又は各種のアルコキシドも、本実施形態の酸化物絶縁体に含まれ得る。
なお、代表的な酸化物絶縁体の例は、ランタン(La)とジルコニウム(Zr)とからなる酸化物である。この酸化物をゲート絶縁体34として採用し得る。本実施形態においては、酢酸ランタン(III)を、脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーを含むプロピオン酸(溶媒)に溶解した第1溶液、並びにジルコニウムブトキシドを、脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーを含むプロピオン酸(溶媒)に溶解した第2溶液を準備する。第1溶液と第2溶液との混合した、出発材としてのゲート絶縁体用前駆体溶液を、例えば、上述の照射工程の後、大気中において、所定時間(例えば、10分間〜1時間)、約450℃〜約550℃で加熱する焼成工程を行うことにより、酸化物絶縁体を形成することができる。
本実施形態においては、特に、第1の実施形態の脂肪族ポリカーボネートを採用した酸化物絶縁体の前駆体を用いれば、印刷法を用いてゲート絶縁体用前駆体層32のパターンを形成した場合に良好なパターンを形成することができる。より具体的には、酸化物絶縁体の前駆体におけるバインダーとしての役割を果たし得る脂肪族ポリカーボネートの曳糸性を適切に制御することが可能となるため、良好なゲート絶縁体用前駆体層32のパターンを形成することができる。
なお、本実施形態においては、上述のゲート絶縁体34の代わりに、例えば、酸化シリコン又は酸窒化シリコンを適用することができる。その場合、ゲート絶縁体34を、公知のCVD法等によりゲート電極24上に形成することができる。
(3)チャネルの形成 また、本実施形態においては、チャネル44の材料として、酸化されたときに酸化物半導体となる金属の化合物(以下、単に「酸化物半導体」ともいう)を脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーを含む溶液中に分散させた酸化物半導体の前駆体の層(以下、「酸化物半導体の前駆体層」ともいう)を焼成することによって形成される。本実施形態では、図9に示すように、ゲート絶縁体34上に低エネルギー製造プロセス(例えば、印刷法又はスピンコート法)を用いて出発材であるチャネル用前駆体溶液を塗布することにより、チャネル用前駆体層42を形成することができる。
その後、チャネル用前駆体層22を、後述する焼成工程を行うことにより、図10に示すようにチャネル44が形成される。
ここで、上述の酸化物半導体の一例は、酸化されたときに酸化物半導体となる金属に、配位子が配位した構造(代表的には錯体構造)を有する材料である。例えば、金属有機酸塩、金属無機酸塩、金属ハロゲン化物、又は各種の金属アルコキシドも本実施形態の酸化物半導体を形成するための材料に含まれ得る。なお、代表的な酸化物半導体の例は、インジウム酸化物(以下、「InO」ともいう)である。例えば、インジウムアセチルアセトナートをプロピオン酸に溶解した溶液(「In溶液」ともいう)を、大気中において、所定時間(例えば、10分間〜1時間)、450℃〜550℃で加熱する焼成工程を行うことにより、酸化物半導体であるインジウム酸化物(以下、「InO」ともいう)を形成することができる。その結果、チャネル44を形成することができる。
なお、酸化されたときに酸化物半導体となる金属の例は、インジウム、スズ、亜鉛、カドミウム、チタン、銀、銅、タングステン、ニッケル、インジウム−亜鉛、インジウム−スズ、インジウム−ガリウム−亜鉛、アンチモン−スズ、ガリウム−亜鉛の群から選択される1種又は2種以上である。但し、素子性能や安定性等の観点から言えば、インジウム−亜鉛が、酸化されたときに酸化物半導体となる金属として採用されることが好ましい。
本実施形態においては、特に、第1の実施形態の脂肪族ポリカーボネートを採用したチャネル用前駆体溶液を用いれば、印刷法を用いてチャネル用前駆体層42のパターンを形成した場合に良好なパターンを形成することができる。より具体的には、チャネル用前駆体溶液におけるバインダーとしての役割を果たし得る脂肪族ポリカーボネートの曳糸性を適切に制御することが可能となるため、良好なチャネル用前駆体層42のパターンを形成することができる。
また、本実施形態においては、特に、酸化物半導体の層であるチャネル44を形成する際に、本願発明者らがこれまでに創出した、例えば、国際公開公報WO/2015/019771号に開示される金属酸化物の製造方法に係る発明を、好適な例として採用することができる。
代表的なチャネル44の形成方法は、酸化されたときに酸化物半導体となる金属の化合物を脂肪族ポリカーボネートからなるバインダーを含む溶液中に分散させた酸化物半導体の前駆体を、基板上又はその上方に層状に形成する前駆体層の形成工程と、該前駆体層を、該バインダーを90wt%以上分解させる第1温度によって加熱した後、その第1温度よりも高く、かつ該金属と酸素とが結合する温度であって、前述の前駆体又は前述の金属の化合物の示差熱分析法(DTA)における発熱ピーク値である第2温度以上の温度によって該前駆体層を焼成する焼成工程と、を含む。
より具体的に説明すると、図11は、第1の実施形態の薄膜トランジスタのチャネルを形成するための酸化物半導体の前駆体の構成材の一例である、インジウム含有溶液(In溶液)のTG−DTA特性の一例を示すグラフである。また、図12Aは、薄膜トランジスタの構成要素(例えば、チャネル)を形成するためのバインダーのみを溶質とする溶液の一例であるポリプロピレンカーボネート溶液のTG−DTA特性の一例を示すグラフである。なお、図11及び図12Aに示す各TG−DTA特性は、大気雰囲気中、温度上昇3℃/minで測定された。また、図11及び図12Aに示すように、図11の破線及び図12Aにおける太線は、熱重量(TG)測定結果であり、図11の実線及び図12Aにおける細線は示差熱(DTA)測定結果である。
図11における熱重量測定の結果から、120℃〜130℃付近には、溶媒の蒸発と考えられる、重量の顕著な減少が見られた。また、図11に示すように、In溶液の示差熱測定のグラフにおける発熱ピークが350℃付近に確認された。従って、350℃付近でインジウムが酸素と結合している状態であることが確認される。従って、この350℃が、上述の第2温度に対応する。
一方、図12Aにおける熱重量測定の結果から、120℃付近から170℃付近にかけて、ポリプロピレンカーボネート溶液の溶媒の消失とともに、バインダーであるポリプロピレンカーボネート自身の一部の分解ないし消失による重量の顕著な減少が見られた。なお、この分解により、ポリプロピレンカーボネートは、二酸化炭素と水に変化していると考えられる。また、図12Aに示す結果から、255℃付近において、該バインダーが90wt%以上分解され、除去されていることが確認された。従って、この255℃が、第1の実施形態における第1温度に対応する。なお、さらに詳しく見ると、260℃付近において、該バインダーが95wt%以上分解され、270℃付近において、該バインダーがほぼ全て(99wt%以上)分解されていることが分かる。
なお、酸化物半導体を構成する上述の金属と酸素とが結合する温度であって、示差熱測定法(DTA)における発熱ピーク値である温度(第2温度)が、バインダーを分解させる温度に比べて十分に高いこと、あるいは、その発熱ピーク値である温度(第2温度)よりもバインダーを分解させる温度が十分に低いことが好ましい。そのような場合は、より確度高くバインダーを90wt%以上(より好ましくは95wt%以上であり、さらに好ましくは99wt%以上、最も好ましくは、99.9wt%以上)分解できる。なお、本願発明者らの研究と分析によれば、第1温度と第2温度との差が10℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上であることによって、酸化物層中の炭素不純物に代表される不純物の残存が抑えられることになる。
また、酸化物半導体の相状態は、特に限定されない。例えば、結晶状又は多結晶状、あるいはアモルファス状のいずれであってもよい。また、結晶成長の結果として、樹枝状又は鱗片状の結晶の場合も、本実施形態において採用し得る一つの相状態である。加えて、パターニングされた形状(例えば、球状、楕円状、矩形状)にも特定されないことは言うまでもない。
なお、参考までに、インジウム含有溶液とポリプロピレンカーボネート溶液とを混合した試料(酸化物半導体の前駆体)に関するTG−DTA特性の一例を、図12B及び図12Cに示す。なお、図12Cは、図12Bの試料に対して当初(すなわち、該特性測定前)の段階から溶媒成分の量を低減させておくことによって、該特性測定時において検出される幾つかのピークをより先鋭化させるために作製されたものである。
図12B及び図12Cに示すように、(A)及び(B)に示されるピークが観察される。ここで、本願発明者らの研究と分析によれば、255℃〜270℃付近におけるピーク(A)は、ポリプロピレンカーボネートの一部が二酸化炭素(CO2)となって脱離するとともに、ポリプロピレンカーボネート内、あるいはポリプロピレンカーボネートが分解した状態の物質内に残存する炭素成分が、燃焼反応を生じさせているために生じているピークであると考えられる。従って、このピーク(A)は、図12Aに示す255℃〜270℃付近における発熱ピークと一致する。一方、350℃付近に観察されるピーク(B)は、インジウムが酸素と結合している状態であると考えられる。
従って、酸化物半導体の前駆体のTG−DTA特性においては、インジウム含有溶液のTG−DTA特性と、ポリプロピレンカーボネート溶液のTG−DTA特性とが、それぞれ別々の特性として共存し得ることが分かる。従って、酸化物半導体の前駆体を準備しなくても、実質的に、第1温度及び/又は第2温度を知ることが可能となる。
(チャネル用前駆体層の焼成工程) 次に、具体的なチャネル44の形成方法について説明する。なお、このチャネル44の形成方法の一部又はほぼ全部は、上述の酸化物導電体又は酸化物絶縁体の製造にも適用し得る。
既に述べたとおり、本実施形態では、図9に示すように、ゲート絶縁体34上に低エネルギー製造プロセス(例えば、印刷法又はスピンコート法)を用いてチャネル用前駆体溶液を塗布することにより、チャネル用前駆体層42が形成される。なお、酸化物半導体の前駆体層であるチャネル用前駆体層42の厚さ(wet)は特に限定されない。
その後、予備焼成(「第1予備焼成」ともいう)工程として、所定時間(例えば、3分間)、例えば150℃で加熱することにより、厚みが約600nmのチャネル用前駆体層42を形成する。この第1予備焼成工程は、主にゲート絶縁体34上のチャネル用前駆体層42の定着を目的とするものであるため、後述する第2予備焼成工程を行う場合は、第1予備焼成工程を省略することもできる。
本実施形態では、その後、チャネル用前駆体層42中のバインダーを分解させるために、所定の温度(第1温度)により第2予備焼成工程(乾燥工程)が行われる。本実施形態の第2予備焼成工程では、バインダーを90wt%以上分解させる第1温度によって加熱する。この第2予備焼成工程と、後述する本焼成(焼成工程)とが相俟って、最終的にチャネル用前駆体層42中の、特にバインダーに起因する炭素不純物に代表される不純物をほぼ消失させることができる。なお、チャネル44中の特にバインダーに起因する炭素不純物に代表される不純物の残存をより確度高く抑える観点から言えば、第1温度は、上述のバインダーを95wt%以上分解させる温度であることが好ましく、そのバインダーを99wt%以上分解させる温度であることはさらに好ましい。
ここで、第2予備焼成工程は、常温常圧乾燥に限られない。例えば、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥など、基板やゲート絶縁体などに悪影響を与えない限り、加熱や減圧などの処理を行ってもよい。なお、第2予備焼成工程は、酸化物半導体層の表面粗さの増減に影響を与え得る工程であるが、溶媒によって乾燥中の挙動が異なるため、溶媒の種類によって、適宜、第2予備焼成工程の温度(第1温度)等の条件が選定される。
一例としての本実施形態の第2予備焼成工程は、チャネル用前駆体層42を所定時間(例えば、30分間)、例えば180℃以上300℃以下の範囲で加熱する。なお、上述の予備焼成は、例えば、酸素雰囲気中又は大気中(以下、総称して、「酸素含有雰囲気」ともいう。)において行われる。なお、窒素雰囲気中で第2予備焼成工程が行われることも採用し得る一態様である。
その後、本焼成、すなわち「焼成工程」として、チャネル用前駆体層42を、例えば、酸素含有雰囲気において、所定時間、200℃以上、より好適には300℃以上、加えて、電気的特性において更に好適には500℃以上の範囲で加熱する。その結果、図10に示すように、ゲート絶縁体34上に、酸化物半導体層であるチャネル44が形成される。なお、本焼成後の酸化物半導体層の最終的な厚さは、代表的には0.01μm以上10μm以下である。特に、0.01μm程度(つまり、10nm程度)の極めて薄い層が形成された場合であっても、クラックが生じにくいことは、特筆に値する。
ここで、この焼成工程における設定温度は、酸化物半導体の形成過程において酸化物半導体の配位子を分解した上でその金属と酸素とが結合する温度であるとともに、後述する示差熱測定法(DTA)における発熱ピーク値の温度以上の温度(第2温度)が選定される。この焼成工程により、チャネル用前駆体層42中のバインダー、分散剤、及び有機溶媒が、確度高く分解及び/又は除去されることになる。なお、第2温度が第1温度に対して10℃以上高いことは、より確度高く、本焼成後の酸化物半導体層中の炭素不純物に代表される不純物の残存を抑える観点から好適な一態様である。加えて、第2温度が第1温度に対して50℃以上高いことにより、さらに確度高くそのような不純物の残存を抑えることが可能となる。そして、最終的な酸化物半導体層の厚みの制御性及び/又は薄層化の実現、及び不純物の残存の低減の観点から言えば、第2温度が第1温度に対して100℃以上高いことは最も好適な例である。他方、第2温度と第1温度との最大差については特に限定されない。
本願出願人らの分析によれば、上述の第1温度での加熱によってバインダーがほぼ分解することにより、その後の第2温度での焼成工程(本焼成)においては、そのバインダーの分解過程はほぼ生じなくなるとともに、金属と酸素との結合にほぼ特化した反応が行われると考えられる。すなわち、理想的には、第1温度と第2温度の役割を異ならせることが、上述のとおり、非常に薄い層であっても、クラックの生成を生じにくくさせていると考えられる。
なお、上述の第1予備焼成工程、第2予備焼成工程、及び本焼成(焼成工程)のいずれにおいても、加熱方法は特に限定されない。例えば、恒温槽や電気炉などを用いる従来の加熱方法でもよいが、特に、基板が熱に弱い場合には、基板に熱が伝わらないように紫外線加熱、電磁波加熱やランプ加熱によって酸化物半導体層のみを加熱する方法を用いることが好ましい。
チャネル44の形成過程において、脂肪族ポリカーボネートは、焼成分解後において酸化物半導体層中に残存する分解生成物を低減、又は消失させることができるだけでなく、緻密な酸化物半導体層の形成に寄与することができる。従って、脂肪族ポリカーボネートを採用することは本実施形態の好適な一態様である。
なお、本実施形態においては、酸化されたときに酸化物半導体となる金属の化合物とバインダーとの重量比を変動させること、あるいは、バインダー又は金属の化合物の濃度を変えることにより、最終的なチャネル44の厚みを制御することが可能であることも、本願発明者らの研究によって確認された。例えば、非常に薄い層といえる、10nm〜50nmの厚みのチャネル44がクラックを発生させることなく形成され得ることが分かった。なお、前述の薄い層のみならず、50nm以上の厚みの層についても、チャネル用前駆体層42の厚みや、前述の重量比などを適宜調整することにより、比較的容易に形成することができる。なお、一般的には、チャネルに用いられる層の厚みは0.01μm(つまり10nm)以上1μm以下であることから、最終的なチャネル44の厚みを制御することが可能な本実施形態の酸化物半導体の前駆体、並びに酸化物半導体層は、薄膜トランジスタを構成する材料として適しているといえる。
加えて、本実施形態の酸化物半導体の前駆体を採用すれば、当初はかなり厚膜(例えば、10μm以上)の酸化物半導体の前駆体層を形成したとしても、その後の焼成工程によってバインダー等が高い確度で分解されることになるため、焼成後の層の厚みは、極めて薄く(例えば、10nm〜100nm)なり得る。さらに、そのような薄い層であっても、クラックの発生が無い、又は確度高く抑制されることになる点は、特筆に値する。従って、当初の厚みを十分に確保できる上、最終的に極めて薄い層を形成することも可能な本実施形態の酸化物半導体の前駆体、並びに酸化物半導体層は、低エネルギー製造プロセスや後述する型押し加工によるプロセスにとって極めて適していることが知見された。また、そのような極めて薄い層であってもクラックの発生が無い、又は確度高く抑制される酸化物半導体層の採用は、本実施形態の薄膜トランジスタ100の安定性を極めて高めることになる。
さらに、本実施形態においては、上述の酸化物半導体の種類や組み合わせ、バインダーと混合させる比率を適宜調節することにより、チャネルを形成する酸化物半導体層の電気的特性や安定性の向上を図ることができる。
(4)ソース電極及びドレイン電極の形成 さらにその後、図13に示すように、チャネル44上に、公知のフォトリソグラフィー法によってパターニングされたレジスト膜90が形成された後、チャネル44及びレジスト膜90上に、公知のスパッタリング法により、ITO層50を形成する。本実施形態のターゲット材は、例えば、5wt%酸化錫(SnO2)を含有するITOであり、室温〜100℃の条件下において形成される。その後、レジスト膜90が除去されると、図14に示すように、チャネル44上に、ITO層50によるドレイン電極56及びソース電極58が形成される。
その後、図15に示すように、ドレイン電極56、ソース電極58、及びチャネル44上に、公知のフォトリソグラフィー法によってパターニングされたレジスト膜90が形成された後、レジスト膜90、ドレイン電極56の一部、及びソース電極58の一部をマスクとして、公知のアルゴン(Ar)プラズマによるドライエッチング法を用いて、露出しているチャネル44を除去する。その結果、図16に示すように、パターニングされたチャネル44が形成されることにより、薄膜トランジスタ100が製造される。
なお、本実施形態においては、上述のドレイン電極56及びソース電極58の代わりに、例えば、印刷法により、ペースト状の銀(Ag)又はペースト状のITO(酸化インジウムスズ)を用いてドレイン電極及びソース電極のパターンを形成する方法は、採用し得る一態様である。また、ドレイン電極56及びソース電極58の代わりに、公知の蒸着法によって形成された金(Au)又はアルミニウム(Al)のドレイン電極及びソース電極のパターンが採用されてもよい。
<第2の実施形態の変形例(1)> 本実施形態の薄膜トランジスタは、第2の実施形態におけるチャネルの焼成工程(本焼成)後に、さらに紫外線を照射する照射工程が行われている点を除き、第2の実施形態の薄膜トランジスタ100の製造工程及び構成と同様である。従って、第2の実施形態と重複する説明は省略する。
本実施形態では、第2の実施形態におけるチャネルの焼成工程(本焼成)後に、公知の低圧水銀ランプ(株式会社SAMCO製UVオゾンクリーナー、型式:UV−300h−E)を用いて、波長185nmと254nmにスペクトルのピークを持つ紫外線が照射された。その後、第2の実施形態の薄膜トランジスタ100の製造方法と同様の工程が行われた。なお、本実施形態においては、紫外線の波長は特に限定されるものではない。185nm又は254nm以外の紫外線であっても同様の効果が奏され得る。
<第2の実施形態の変形例(2)> また、第2の実施形態においては、図15に示すように公知のフォトリソグラフィー法及びドライエッチングによりパターニングされたチャネル44が形成されている。しかしながら、例えばスクリーン印刷法に代表される印刷法が採用される場合は、公知のフォトリソグラフィー法及びドライエッチングを用いることなく、図17に示すように、チャネル用前駆体層42の所望のパターンが形成され得る。従って、印刷法が採用されることは、図15に示すパターンの形成工程が不要となるため、好適な一態様である。なお、図17以降の各工程は、図15に示す公知のフォトリソグラフィー法及びドライエッチングに基づく工程を除き、第2の実施形態の各工程に準じて行われる。同様に、薄膜トランジスタ100におけるチャネル以外の各層(ゲート電極24、ゲート絶縁体34等)においても、例えばスクリーン印刷法に代表される印刷法が採用される場合は、公知のフォトリソグラフィー法及びドライエッチングを用いることなくパターンの形成が可能である。
<その他の実施形態> ところで、上述の各実施形態においては、いわゆる逆スタガ型の構造を有する薄膜トランジスタが説明されているが、上述の各実施形態はその構造に限定されない。例えば、スタガ型の構造を有する薄膜トランジスタのみならず、ソース電極、ドレイン電極、及びチャネルが同一平面上に配置される、いわゆるプレーナ型の構造を有する薄膜トランジスタであっても、上述の各実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。さらに、上述の各実施形態のチャネル(すなわち、酸化物半導体層)が基板上に形成されることも採用し得る他の一態様である。
以上述べたとおり、上述の各実施形態及び実験例の開示は、それらの実施形態及び実験例の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組み合わせを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明は、各種の半導体素子を含む携帯端末、情報家電、センサー、その他の公知の電化製品、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又はNEMS(Nano Electro Mechanical Systems)、及び医療機器等を含む電子デバイス分野等に広く適用され得る。
10 基板 24 ゲート電極 32 ゲート絶縁体用前駆体層 34 ゲート絶縁体 42 チャネル用前駆体層 44 チャネル 50 ITO層 56 ドレイン電極 58 ソース電極 90 レジスト膜 100 薄膜トランジスタ
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チョッパ回路 | 2021-01-11 | 1 |
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