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複合部材、放熱部材、及び半導体装置

阅读:1035发布:2020-10-02

专利汇可以提供複合部材、放熱部材、及び半導体装置专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且金属と非金属とを含む複合材料から構成される 基板 を備え、前記基板の一面には、 曲率 半径Rが5000mm以上35000mm以下の球面状の反りを有し、前記基板における反り部分の輪郭を測定した複数の測定点と前記複数の測定点から求めた近似円弧との平均距離を球面誤差とし、前記球面誤差が10.0μm以下であり、前記基板の熱伝導率が150W/m・K以上であり、前記基板の線膨張係数が10ppm/K以下である複合部材。,下面是複合部材、放熱部材、及び半導体装置专利的具体信息内容。

金属と非金属とを含む複合材料から構成される基板を備え、 前記基板の一面には、曲率半径Rが5000mm以上35000mm以下の球面状の反りを有し、 前記基板における反り部分の輪郭を測定した複数の測定点と前記複数の測定点から求めた近似円弧との平均距離を球面誤差とし、前記球面誤差が10.0μm以下であり、 前記基板の熱伝導率が150W/m・K以上であり、 前記基板の線膨張係数が10ppm/K以下である複合部材。前記非金属の含有量が55体積%以上である請求項1に記載の複合部材。−60℃から175℃の冷熱サイクルを10サイクル、100サイクル、1000サイクルそれぞれ負荷した前後の前記曲率半径Rの変化率がいずれも20%以下である請求項1又は請求項2に記載の複合部材。300℃×1時間の熱処理を行った前後の前記曲率半径Rの変化率が20%以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合部材。前記基板の一面に凸の前記球面状の反りを有し、対向する他面に凹の反りを有し、 前記基板の凸側面における重心箇所の残留応をX1(MPa)、前記基板の凹側面における重心箇所の残留応力をX2(MPa)、前記基板の外縁を内包する長方形の対線の長さをL(mm)、前記基板の厚さをH(mm)とし、前記残留応力の差の絶対値|X1−X2|が105×(H/L2)(MPa)未満である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の複合部材。前記基板の凸側面における重心箇所の残留応力と前記基板の凹側面における重心箇所の残留応力との双方が圧縮応力である、又は双方が引張応力である請求項5に記載の複合部材。前記金属はマグネシウム又はマグネシウム合金であり、 前記非金属はSiCを含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の複合部材。前記金属はアルミニウム又はアルミニウム合金であり、 前記非金属はSiCを含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の複合部材。請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の複合部材を備える放熱部材。請求項9に記載の放熱部材と、 前記放熱部材に搭載される半導体素子とを備える半導体装置。

说明书全文

本発明は、複合部材、放熱部材、半導体装置、及び複合部材の製造方法に関するものである。 本出願は、2016年12月06日付の日本国出願の特願2016−236959に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。

特許文献1は、半導体素子の放熱部材(ヒートスプレッダ)などに適した材料として、マグネシウム(Mg)やその合金と炭化けい素(SiC)とが複合されたマグネシウム基複合材料(以下、Mg−SiCと呼ぶことがある)を開示する。

半導体素子の放熱部材は、代表的には平板状であり、一面を半導体素子などの実装面とし、他面を冷却装置といった設置対象に固定する設置面とする。特許文献1は、Mg−SiCの放熱部材の設置面が凸となる反りを設け、この反りを押し潰すように放熱部材を設置対象に押し付け、この状態でボルトなどによって固定して、放熱部材を設置対象に加圧状態で接触させることで、密着させることを開示する。

特開2012−197496号公報

本開示に係る複合部材は、 金属と非金属とを含む複合材料から構成される基板を備え、 前記基板の一面には、曲率半径Rが5000mm以上35000mm以下の球面状の反りを有し、 前記基板における反り部分の輪郭を測定した複数の測定点と前記複数の測定点から求めた近似円弧との平均距離を球面誤差とし、前記球面誤差が10.0μm以下であり、 前記基板の熱伝導率が150W/m・K以上であり、 前記基板の線膨張係数が10ppm/K以下である。

本開示に係る複合部材の製造方法は、 金属と非金属とを含む複合材料から構成される基板素材に加工を施して、前記加工後の基板を備える複合部材を製造する複合部材の製造方法であって、 前記基板素材を曲率半径が5000mm以上35000mm以下である成形型に収納して熱プレスを行うプレス工程を備え、 前記プレス工程は、 加熱温度を200℃超とし、印加圧を10kPa以上として所定時間保持する保持工程と、 前記印加圧力の80%以上の加圧状態を保持したまま前記加熱温度から100℃以下まで冷却する冷却工程とを備える。

実施形態の複合部材の概略斜視図である。

実施形態の複合部材において、基板の中央近傍について、図1に示す(II)−(II)切断線で切断した部分縦断面図である。

実施形態の複合部材において、基板の中央近傍について、図1に示す(III)−(III)切断線で切断した部分横断面図である。

実施形態の複合部材の表面形状を三次元測定装置で解析し、二次元に変換した解析結果を示す説明図である。

実施形態の複合部材における冷熱サイクル前後の表面形状を三次元測定装置で解析し、二次元に変換した解析結果を示す説明図である。

球面誤差の測定方法を説明する説明図であり、基板から測定領域、輪郭抽出直線Lnを抽出する過程などを示す。

球面誤差の測定方法を説明する説明図であり、輪郭抽出直線Lnに沿って抽出した輪郭を描く各測定点、近似円弧、測定点と近似円弧間の距離dを示す。

実施形態の半導体装置の要素を模式的に示す概略断面図である。

[本開示が解決しようとする課題] 電子機器の高出力化に伴い、電子機器に備える半導体素子の作動時の発熱量がますます増加する傾向にある。従って、半導体素子の放熱部材に代表される各種の放熱部材、及びその素材には、使用初期から長期に亘り、放熱性に優れることが望まれる。

特許文献1は、球面状の湾曲金型でMg−SiCの基板素材を挟み、加熱及び荷重負荷状態で所定時間保持することで、設置面が凸、実装面が凸に対応した凹となる反りを有する基板が得られることを開示する。しかし、本発明者らが検討した結果、湾曲金型の曲率半径を制御していても、製造条件などによっては成形精度に劣り、反りを付与した基板の表面形状を調べると、球面からのずれが大きい場合があるとの知見を得た。球面からのずれが大きく、不適切な反りを有する基板を設置対象に押し付けても密着できなかったり、密着状態が不安定になったりするなどして、適切な球面状の反りを有する基板に比較して、設置対象への熱伝導性に劣る傾向にある(後述の試験例3参照)。

また、上述のように湾曲金型の曲率半径を制御していても、製造条件などによっては、熱履歴によって変形することがあるとの知見を得た。例えば、この基板を、半導体素子の放熱部材などに利用する場合、この基板は、半導体素子とこの基板とを絶縁する絶縁基板が半田付けされたり、使用時に冷熱サイクルを受けたりするなどの熱履歴を受ける。この熱履歴によって基板が変形し、基板の形状が安定しなかったり、変形により初期の反り形状(設計形状)からずれたりすることなどによっても、基板と設置対象との密着状態が不安定になり、設置対象への熱伝導性の低下を招く。

そこで、設置対象との密着性に優れる複合部材を提供することを目的の一つとする。また、設置対象との密着性に優れる複合部材を製造できる複合部材の製造方法を提供することを別の目的の一つとする。

更に、設置対象との密着性に優れる放熱部材、及び半導体装置を提供することを別の目的の一つとする。

[本開示の効果] 上記の本開示の複合部材は、設置対象との密着性に優れる。上記の本開示の複合部材の製造方法は、設置対象との密着性に優れる複合部材を製造できる。

[本願発明の実施形態の説明] 本発明者らは、Mg−SiCなどの金属と非金属とを複合した複合材料の基板に種々の条件で球面状の反りを設け、設置対象との密着状態が安定しており、設置対象への熱伝導性に優れる基板を検討した。特許文献1では、反り量の指標として、長方形の基板の対線上に沿った表面変位の差を開示する。しかし、反り量を指標としても、球面状態を適切に把握できず、上述のような球面からのずれが大きい基板を認識することが困難であると考えられる。そこで、球面状態をより的確にかつ簡便に示す指標として、後述の球面誤差を用いる。また、本発明者らは、上述の球面状の湾曲金型などの成形型を用いて加熱及び加圧状態で球面状の反りを成形する場合には、成形型の曲率半径Rd、加熱温度、印加圧力を特定の範囲とすると共に、特定の条件で冷却することで、後述の球面誤差が特定の範囲を満たし、設置対象との密着状態が安定していて、設置対象への熱伝導性に優れる複合材料の基板が得られるとの知見を得た。本願発明はこれらの知見に基づくものである。

最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。 (1)本開示の一態様に係る複合部材は、 金属と非金属とを含む複合材料から構成される基板を備え、 前記基板の一面には、曲率半径Rが5000mm以上35000mm以下の球面状の反りを有し、 前記基板における反り部分の輪郭を測定した複数の測定点と前記複数の測定点から求めた近似円弧との平均距離を球面誤差とし、前記球面誤差が10.0μm以下であり、 前記基板の熱伝導率が150W/m・K以上であり、 前記基板の線膨張係数が10ppm/K以下である。 前記反りとは凸の反りとし、この凸の反りにおける球面誤差が10.0μm以下を満たす。この複合部材には、基板の一面に球面状の凸の反り、対向する他面に凹の反りを備える形態、基板の一面に球面状の凸の反りを備え、他面が平坦な形態(球欠形態)などが挙げられる。

上記の複合部材は、曲率半径Rが特定の範囲である球面状の反りを基板の一面に有し、かつこの反り部分の球面誤差が10.0μm以下と小さい。このような反り部分の表面形状は、真球面の一部(球冠)に近いといえる(詳細は後述する)。上記の複合部材は、反り部分が球冠に近い球面状であるため、反り部分を設置対象に均一的に押し付けて密着させられ、安定した密着状態を確保できる上に、熱伝導率が高いため、設置対象への熱伝導性に優れる。反り部分が球冠に近い球面状である上に線膨張係数も小さいことで、上記の複合部材は、半田付けといった一時的な熱処理などの熱履歴を受けても変形し難い。詳しくは、半田付け時に不均一な熱伸縮などが生じ難く、反りが戻ったり、球面状態が変化したりするなどの変化が生じ難い。変形し難いことで、上記の複合部材は、上述の密着状態をより維持し易い。更に、上記の複合部材は、代表的には残留応力が小さく、また複合部材と線膨張係数が異なる表面被覆を備える場合にこの表面被覆の厚さを一定の範囲内に規定することで(後述の金属被覆の項参照)、冷熱サイクル時の熱応力に起因した反り量の経時的な変動(熱ラチェット現象等)も生じ難い。このような上記の複合部材を例えば半導体素子の放熱部材の素材に用いることで、使用初期から長期に亘り放熱部材と設置対象などとの密着状態を維持して、放熱性に優れる半導体装置などを構築できる。半導体素子やその周辺部品との線膨張係数差が小さいことからも密着状態を維持し易い。

上記球面誤差は、以下のように測定する(より詳細な説明は後述する)。前記基板の外縁及びその近傍を含む周縁領域を除いて、前記基板の重心を中心とする長方形の測定領域をとる。前記長方形の長辺を含み、前記長辺に平行な直線(以下、輪郭抽出直線と呼ぶ)を合計10本とる。各輪郭抽出直線に沿って、前記基板における反り部分の輪郭を描く複数の測定点をとる。前記複数の測定点を最小二乗法で近似して、10本の近似円弧を求める。各測定点と近似円弧との距離を求め、この距離の平均を球面誤差とする。球面誤差が小さいほど、反り部分の輪郭と近似円弧とが一致し、各輪郭は円弧を描くといえる。各輪郭が円弧であれば、これらの輪郭を集めてできる表面形状は真球面の一部(球冠)といえる。従って、球面誤差が上述のように小さい上記の複合部材は、反り部分の表面形状が真球面の一部に近い球面状になっているといえる。球面誤差は、反り部分の球面状態の度合いを示す指標に適すると考えられる。

(2)上記の複合部材の一例として、 前記非金属の含有量が55体積%以上である形態が挙げられる。

上記形態は、非金属の含有量が多いため、熱伝導率がより高く、かつ線膨張係数がより小さい傾向にある。従って、上記形態は、設置対象との密着性に優れる上に、絶縁基板などを接合した際などで変形し難い。

(3)上記の複合部材の一例として、 −60℃から175℃の冷熱サイクルを10サイクル、100サイクル、1000サイクルそれぞれ負荷した前後の前記曲率半径Rの変化率がいずれも20%以下である形態が挙げられる。

上記形態は、冷熱サイクルを受けても変形し難く、長期に亘り、上述の特定の球面状の反りを維持し易いといえる。従って、上記形態は、冷熱サイクルを受けても変形し難く、設置対象との密着性に優れる。

(4)上記の複合部材の一例として、 300℃×1時間の熱処理を行った前後の前記曲率半径Rの変化率が20%以下である形態が挙げられる。

上記形態は、上記熱処理を受けても変形し難く、上述の特定の球面状の反りを維持し易いといえる。この熱処理の条件は、上述の半田付け条件の一例といえる。従って、上記形態は、半導体素子の放熱部材などに利用されて半田付けなどの熱履歴を受けても変形し難く、設置対象との密着性に優れる。後述する基板の表裏における残留応力の差が小さい形態(5)は、上記変化率が20%以下という特性を有し易い。

(5)上記の複合部材の一例として、 前記基板の一面に凸の前記球面状の反りを有し、対向する他面に凹の反りを有し、 前記基板の凸側面における重心箇所の残留応力をX1(MPa)、前記基板の凹側面における重心箇所の残留応力をX2(MPa)、前記基板の外縁を内包する長方形の対角線の長さをL(mm)、前記基板の厚さをH(mm)とし、前記残留応力の差の絶対値|X1−X2|が105×(H/L2)(MPa)未満である形態が挙げられる。 前記基板が例えば長方形であれば、前記基板の外縁を内包する長方形とは基板の外形に相当する。内包する長方形は最小の長方形とする。

上記形態は、基板の反り部分において凸側面と凹側面間の残留応力差が小さい。そのため、半田付けや冷熱サイクルなどの熱履歴を受けて残留応力が解放された場合に、上記残留応力差に基づく変形が生じ難い。従って、上記形態は、半田付けによる熱や、冷熱サイクルなどを受けてもより変形し難く、設置対象との密着性に優れる。なお、曲率半径Rが5000mm以上という緩やかな反り形状では、基板の表面近傍における塑性変形域に対して弾性変形域が大きくなる。この点から、本開示の一態様に係る複合部材は、上述の熱履歴によって残留応力が解放されると、形状変化が生じ易い形状といえる。そのため、上記(5)の形態のように基板における残留応力差が特定の範囲を満たすことは、変形低減に効果的であるといえる。上記(5)の複合部材の一例として、基板表面を覆う金属被覆を実質的に有していない形態、又は金属被覆を有する場合には金属被覆の厚さが100μm以下、更に50μm未満、特に20μm以下である形態が挙げられる。

(6)凸側面と凹側面との残留応力差が特定の範囲である上記(5)の複合部材の一例として、 前記基板の凸側面における重心箇所の残留応力と前記基板の凹側面における重心箇所の残留応力との双方が圧縮応力である、又は双方が引張応力である形態が挙げられる。

上記形態は、残留応力差がより小さくなり易く、残留応力差に基づく変形がより生じ難い。従って、上記形態は、半田付けによる熱や冷熱サイクルなどを受けてもより変形し難く、設置対象との密着性に優れる。

(7)上記の複合部材の一例として、 前記金属はマグネシウム又はマグネシウム合金であり、 前記非金属はSiCを含む形態が挙げられる。

上記形態は、Mg−SiCの基板を備えるため、アルミニウム(Al)やその合金とSiCとの複合材料(以下、Al−SiCと呼ぶことがある)の基板を備える場合よりも軽い上に、熱伝導率が高く、放熱性により優れる。また、Mgやその合金はAlやその合金に比較して応力緩和し易い。そのため、上記形態は、上述の残留応力が小さかったり、凸側面と凹側面間の残留応力差が小さくなったりし易い上に、残留応力を除去し易い。従って、上記形態は、冷熱サイクルや半田付けなどの熱履歴を受けてもより変形し難く、設置対象との密着性に特に優れる。

(8)上記の複合部材の一例として、 前記金属はアルミニウム又はアルミニウム合金であり、 前記非金属はSiCを含む形態が挙げられる。

上記形態は、Al−SiCの基板を備えるため、銅や銀、これらの合金を含む複合材料の基板を備える場合よりも軽い。従って、上記形態は、設置対象との密着性に優れる上に軽量である。

(9)本開示の一態様に係る放熱部材は、 上記(1)から上記(8)のいずれか一つに記載の複合部材を備える。

上記の放熱部材は、熱伝導率が高く、線膨張係数が小さく、かつ上述の特定の球面状の反りを有する上記の複合部材を備える。そのため、上記の放熱部材は、上述のように設置対象に密着できて、密着状態を安定して維持できる。また、上記の放熱部材は、半田付けなどの熱履歴を受けた場合でも変形し難い。好ましくは、上記の複合部材は、冷熱サイクルを受けても変形し難い。従って、上記の放熱部材は、使用初期から長期に亘り、設置対象との密着状態を維持して、半導体素子から放熱部材を介して設置対象への熱伝達を良好に行えて放熱性に優れる。このような上記の放熱部材は、半導体素子の放熱部材、半導体装置の構成部品などに好適に利用できる。

(10)本開示の一態様に係る半導体装置は、 上記の本開示の一態様に係る放熱部材と、 前記放熱部材に搭載される半導体素子とを備える。

上記の半導体装置は、熱伝導率が高く、線膨張係数が小さく、かつ上述の特定の球面状の反りを有する上記の複合部材を放熱部材として備える。上記の半導体装置は、この放熱部材を上述のように冷却装置などの設置対象に密着できて、密着状態を安定して維持できる。また、上記放熱部材が半田付けなどの熱履歴を受けた場合でも変形し難い。好ましくは、上記放熱部材が冷熱サイクルを受けても変形し難い。従って、上記の半導体装置は、半導体素子から放熱部材を介して設置対象への熱伝達を良好に行えて、使用初期から長期に亘り放熱性に優れる。上記の半導体装置は、例えば、パワーモジュールといった半導体モジュールが挙げられる。

(11)本開示の一態様に係る複合部材の製造方法は、 金属と非金属とを含む複合材料から構成される基板素材に加工を施して、前記加工後の基板を備える複合部材を製造する複合部材の製造方法であって、 前記基板素材を曲率半径が5000mm以上35000mm以下である成形型に収納して熱プレスを行うプレス工程を備え、 前記プレス工程は、 加熱温度を200℃超とし、印加圧力を10kPa以上として所定時間保持する保持工程と、 前記印加圧力の80%以上の加圧状態を保持したまま前記加熱温度から100℃以下まで冷却する冷却工程とを備える。

上記の複合部材の製造方法は、曲率半径Rdが特定の大きさである成形型を用いて熱プレスするにあたり、加熱温度及び印加圧力を特定の範囲とすると共に、加熱温度から特定の温度までの冷却を加圧状態で行うという特定の冷却を行う。熱プレス時の加熱温度及び印加圧力が上記特定の範囲を満たして比較的高いことで、塑性変形が促進され、基板素材に成形型の球面形状を精度よく転写できる。また、上述のように冷却過程を加圧状態とするため、残留応力を解放することができる上に、無加圧状態での冷却で生じ得る形状変化や形状の乱れなどを抑制でき、基板素材に、成形型と同様な球面度合いが高い反り形状を付与することができる。好ましくは、基板素材に成形型の曲率半径Rdを実質的に転写できる。無加圧状態での冷却では、例えば、基板素材の表面から内部に向かって不均一に冷却されることに伴う局所的な熱収縮に起因する応力などが生じ、上述の転写した形状から変形し得ると考えられる。また、この応力の一部が残留応力として残ると、上述の冷熱サイクルや半田付けなどの熱履歴を受けることで変形し易くなる。従って、上記の複合部材の製造方法は、基板の曲率半径Rが成形型の曲率半径Rdに近く、好ましくは実質的に等しく、かつ一面に球面状の凸の反り、対向する他面に凸の反りに対応した凹の反りを有する基板を備える複合部材を製造できる。また、例えば、成形型として、凸面を有する第一型の曲率と凹面を有する第二型の曲率とがそれぞれ異なるものを用いると、凸面の曲率と凹面の曲率とが異なる基板を備える複合部材が得られる。又は、例えば、成形型として、凸面を有する第一型と、成形面が平坦な面である第二型とを有するものを用いると、一方の面に凸の反りを有し、他方の面が平坦な基板を備える球欠状の複合部材が得られる。この際、凸面の曲率半径が小さい場合には、必要に応じて、複数の成形型を用いて繰り返しプレスを行って、曲率半径を段階的に変形させることもできる。上記の複合部材の製造方法は、上述の本開示の一態様に係る複合部材の製造に利用できる。

[本願発明の実施形態の詳細] 以下、本願発明の実施形態を具体的に説明する。図1から図7を参照して実施形態の複合部材1、図8を参照して実施形態の放熱部材3、実施形態の半導体装置5を順に説明し、その後に実施形態の複合部材の製造方法を説明する。図1では、分かり易いように非金属22を誇張して示す。図8では、半導体装置5に備える放熱部材3及び半導体素子50の近傍のみを示し、ボンディングワイヤやパッケージ、冷却装置(設置対象)などを省略している。

[複合部材] (概要) 実施形態の複合部材1は、図1に示すように金属20と非金属22とを含む複合材料から構成される基板10を備える。基板10は、その一面に曲率半径Rが5000mm以上35000mm以下の球面状の反りを有し(図2,図3)、後述する球面誤差が10.0μm以下であるという特定の形状である。また、基板10の熱伝導率が150W/m・K以上、かつ基板10の線膨張係数が10ppm/K以下である。熱伝導性に優れる上に熱伸縮量が小さく、上述の特定の形状である基板10を備える複合部材1は、各種の放熱部材に利用でき、特に半導体素子50の放熱部材3に好適に利用できる(図8)。基板10の反り部分を放熱部材3の設置対象(図示せず)に押し付けた状態でボルトなどの締結部材によって、基板10を設置対象に固定すると、放熱部材3を設置対象に密着できる上に、密着状態が安定しており、半導体素子50からの熱を、放熱部材3を介して設置対象に良好に伝達できるからである。また、実施形態の複合部材1は、絶縁基板52などが半田付けされるなどしても変形し難く、上記の密着状態をより維持し易いからである。好ましくは、実施形態の複合部材1は、冷熱サイクルを受けても変形し難い。球冠に近い反りを有すること、変形し難いこと、設置対象への熱伝達性に優れることについては、後述の試験例で具体的に説明する。

(基板) 以下、基板10を中心に詳細に説明する。 基板10は、複合部材1の主要素であり、金属20と非金属22とを含む複合材料から構成される成形体である。

<金属> 基板10中の金属20は、例えば、Mg,Al,Ag,及びCuの群から選択される1種であるいわゆる純金属、又は上記群から選択される1種の金属元素を基とする合金などが挙げられる。マグネシウム合金、アルミニウム合金、銀合金、銅合金は公知の組成のものが利用できる。

<非金属> 基板10中の非金属22は、例えば、金属元素又は非金属元素の炭化物、酸化物、窒化物、化物、珪素化物、塩化物などのセラミクス、珪素(Si)などの非金属元素、ダイヤモンドやグラファイトなどの炭素材といった無機材料が挙げられる。具体的なセラミクスは、SiC,AlN,h−BN,c−BN,B4Cなどが挙げられる。複数種の非金属22を組み合わせて含むことができる。

基板10中の非金属22は、代表的には原料に用いた組成、形状、大きさなどが実質的に維持されて存在する。例えば、原料に粉末を用いれば粉末粒子として存在し、原料に網目状の多孔体などの成形体を用いれば、成形体として存在する。粉末が分散する基板10は、靭性に優れる。多孔体が存在する基板10は、基板10中に非金属22が網目状に連続して放熱経路を構築するため、放熱性により優れる。

基板10中の非金属22の含有量は、適宜選択できる。上記含有量は、多いほど熱伝導率が高くかつ線膨張係数が小さくなる傾向や、機械的特性(例、剛性など)が高くなる傾向を有することが多く、特性向上が期待できる。特性向上の観点から、上記含有量は55体積%以上とすることが挙げられる。この場合、金属20や非金属22の組成にもよるが、例えばMg−SiC,Al−SiC,ダイヤモンド複合材料などでは熱伝導率が150W/m・K以上(ダイヤモンド複合材料ではより高い)、線膨張係数が10ppm/K以下を満たし易い。上記含有量は、上述の特性向上などの観点から、60体積%以上、更に70体積%以上とすることができる。一方、上記含有量がある程度少なければ、例えば成形型に原料を充填したり、非金属22の隙間に溶融状態の金属20を充填したりし易く、製造性に優れる。製造性などの観点から、上記含有量は、90体積%以下、更に85体積%以下、80体積%以下とすることができる。

<複合材料の具体例> 複合材料の具体例として、純マグネシウム又はマグネシウム合金(以下、まとめてMg等と呼ぶことがある)とSiCとが主として複合されたMg−SiC、純アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、まとめてAl等と呼ぶことがある)とSiCとが主として複合されたAl−SiCなどが挙げられる。また、ダイヤモンド複合材料として、銀又は銀合金とダイヤモンドとが主として複合されたもの、Mg等とダイヤモンドとが主として複合されたもの、Al等とダイヤモンドとが主として複合されたもの、銅又は銅合金とダイヤモンドとが主として複合されたものなどが挙げられる。

金属20がMg等であり、非金属22がSiCを含むMg−SiCは、Al−SiCに比較して、軽量な上に熱伝導率が高く放熱性により優れる。また、Mg−SiCは、Al−SiCに比較して、金属20が応力緩和し易いため、より低い温度、かつより短時間で残留応力を小さくすることができ、一面に凸の反り、他面に凹の反りを有する場合に凸側面と凹側面との残留応力差が小さい傾向にある。そのため、Mg−SiCの基板10を備える複合部材1は、冷熱サイクルや半田付けなどの熱履歴を受けてもより変形し難い。Al−SiCは、金属20として銀や銅、これらの合金を含む場合よりも軽量であり、Mg等よりも耐食性に優れる。ダイヤモンド複合材料は、熱伝導率が非常に高く、放熱性に更に優れる。

<外形> 基板10の外形(ここでは基板10の外縁が描く平面形状)は、代表的には長方形が挙げられる。長方形の基板10は、(1)容易に形成できて製造性に優れる、(2)半導体素子50の放熱部材3などに利用される場合、半導体素子50などの実装部品の設置面積を十分に確保できる、といった利点を有する。基板10の外形は、用途、上記実装部品の形状・数や設置対象などに応じて変更できる。例えば、基板10の外形として、六角形等の多角形、円形や楕円形などが挙げられる。

<大きさ> 基板10の大きさは、用途や、上述の実装部品の実装面積などに応じて適宜選択できる。例えば、基板10の外縁が描く平面形状を内包する長方形(基板10が長方形なら基板10の外形に相当)をとり、この長方形の長辺の長さが100mm以上であり、かつ短辺の長さが50mm以上であれば、上記実装面積が大きく、大型の放熱部材3を構築できる。更に長辺の長さ150mm×短辺の長さ120mm以上などとすることができる。このような大型の基板10であっても特定の球面状の反りを有するため、複合部材1を設置対象に密着させられる。また、大型の基板10であっても、上述の半田付け時などの熱履歴を受けて変形し難い。

基板10の厚さは適宜選択できる。複合部材1を半導体素子50の放熱部材3などの放熱部材に利用する場合、薄いほど、設置対象への熱伝導を良好に行え、厚いほど、構造材料としての強度が増すことに加えて、熱を横方向(厚さ方向と直交方向)に広げられて放熱し易い。厚過ぎると熱抵抗が増すため、基板10の厚さは、10mm以下、更に6mm以下、5mm以下が好ましい。

<反り> ・曲率半径R 実施形態の複合部材1は、基板10の一面に曲率半径Rが5000mm(5m)以上35000mm(35m)以下の球面状の反りを有する。具体的な形態として、(a)基板10の一面に球面状の凸の反り、対向する他面に凸に対応した凹の反りを有する形態、(b)基板10の一面に球面状の凸の反りを有し、他面が平坦面である形態が挙げられる。いずれの形態も基板10における凸の反りについて、曲率半径R及び後述の球面誤差が特定の範囲を満たす。複合部材1が半導体素子50の放熱部材3などに利用される場合、形態(a)では、代表的には凸側面を設置対象への設置面、凹側面を半導体素子50などの実装部品の実装面とすることが挙げられる。形態(b)では反りを有する面を設置面、平坦面を実装面とすることが挙げられる。

曲率半径Rが上記範囲を満たすと、反り部分の突出量が適切であり、反り部分の全域を設置対象に均一的に押し付けられる。また、上述の球面状の反りの中心が、基板10の外縁が描く平面形状における重心(長方形の基板10であれば対角線の交点)近傍であれば、基板10の表裏面全体に圧力がより均等に加わり易い。これらのことから、基板10における反りを有する面全体を設置対象に密着させられる上に、複合部材1を設置対象にボルトなどで固定することで、適切な加圧状態とすることができる。このように曲率半径Rが上記範囲内であると、設置対象に適切な加圧状態で密着させられ、使用初期から長期に亘り放熱性に優れる。また、冷熱サイクルなどの熱履歴を受けた場合にも変形し難い。これらの観点から、曲率半径Rは、6000mm以上、更に7000mm以上、8000mm以上としたり、34000mm以下、更に33000mm以下、32000mm以下、25000mm以下としたりすることができる。曲率半径Rの測定方法は後述する。

曲率半径Rが上記範囲を満たす複合部材1を製造するには、例えば、曲率半径Rdが上記範囲を満たす球面状の成形型を用いることが挙げられる。特に、後述する実施形態の複合部材の製造方法を利用すれば、基板10の曲率半径Rを成形型の曲率半径Rdに近い値にすることができ、好ましくは実質的に等しくできる。

・球面誤差 実施形態の複合部材1は、球面誤差を10.0μm以下とする。球面誤差とは、複合部材1における反り部分の球面状態の度合いを示す指標であり、以下の(1)から(5)の手順で測定する。以下、図6,図7を参照して、具体的に説明する。概要を述べると、基板10の外周面(表裏面、側面)のうち、最も面積が大きく、凸の反りを有する面(代表的には表面又は裏面)を主面とし、この主面から測定領域10αをとり、測定領域10αにおける反り部分の輪郭から測定点を抽出し、この測定点を用いて球面誤差を求める。 (1)測定領域10αの抽出 (2)輪郭抽出直線Lnの抽出(n=1から10、以下同様) (3)反り部分の輪郭を描く複数の測定点の抽出 (4)測定点の集合10βnから近似円弧10γnの抽出 (5)各測定点と近似円弧10γn間の距離dの平均の算出

工程(1)では、図6の上図に示すように、基板10の主面において、基板10の外縁10e及びその近傍を含む周縁領域10cを除いて、基板10の重心Gを中心とする最大の長方形の測定領域10αをとる。ここでの重心Gとは、基板10の外縁10eが描く平面形状の中心に対応するものとする。この例のように上記平面形状が長方形であれば、重心Gは、この長方形の対角線(図6では一点鎖線で示す)の交点である。ここでの周縁領域10cとは、基板10の外縁10eから内側に向かって10mmまでの領域、即ち、幅10mmの環状の領域とする。この例では、基板10をつくる長方形の短辺の長さをM(mm)、長辺の長さをN(mm)、重心Gを原点、短辺方向をX軸方向、長辺方向をY軸方向とする。原点からX軸方向に{(−M/2)−10}の点を通りY軸方向に平行な直線(図6の上図では二点鎖線で示す縦線)、{(+M/2)−10}の点を通りY軸方向に平行な直線(同)、原点からY軸方向に{(−N/2)−10}の点を通りX軸方向に平行な直線(図6の上図では二点鎖線で示す横線)、{(+N/2)−10}の点を通りX軸方向に平行な直線(同)、という4つの直線で囲まれる長方形をとる。この長方形の領域を測定領域10αとする。基板10から周縁領域10cを除く理由は、基板10が半導体装置5の放熱部材3などに利用される場合、外縁10e近くの領域に締結用の孔などが設けられていたり、周縁領域10cに反りが設けられていなかったりすることがあるからである。周縁領域10cを除いた領域から上述のようにして採取した長方形の領域内に上記締結用の孔の少なくとも一部が含まれる場合には、この孔を除いた領域を測定領域10αとする。

工程(2)では、図6の下図に示すように、基板10の主面において、測定領域10αをつくる長方形の長辺を含み、長辺に平行な輪郭抽出直線Lnを合計10本とる。輪郭抽出直線L1,L10をそれぞれ、一方の長辺をなす直線、即ち{(−M/2)−10}の点を通る直線,他方の長辺をなす直線、即ち{(+M/2)−10}の点を通る直線とする。このL1,L10を含む輪郭抽出直線L1からL10は、上記長方形を短辺方向に均等分割する直線とする。

工程(3)では、各輪郭抽出直線Lnに沿って、基板10の主面における反り部分の輪郭を測定して複数の測定点をとり、輪郭抽出直線Lnごとに測定点の集合10βnを抽出する。輪郭の測定は、市販の三次元測定装置(例、株式会社キーエンス製非接触3D測定機、VR3000)を用いることが挙げられる。一つの輪郭抽出直線Lnについて、1mm間隔で測定点をとる。各測定点の値は、以下の平均値とする。図6の破線円内に拡大して示すように輪郭抽出直線Ln(図6ではL2)から、1mmごとに点Pをとり、点Pを基準として、点P及びその近傍の平均値をとる。詳しくは、点Pの座標(X,Y)を(0,0)とし、X=0mm,±1mm、Y=0mm,±1mmとする合計9点の値、即ち、(X,Y)=(0,0)、(−1,0)、(+1,0)、(0,−1)、(0,+1)、(−1,+1)、(+1,+1)、(−1,−1)、(+1,−1)における値(代表的には変位量)をとる。これら9点の値の平均をこの点P(測定点)の値とする。各測定点の値を平均値とすることで、点Pの値をそのまま利用する場合よりも平滑化されて、より滑らか形状を抽出し易いと考えられる。この測定点に関する平滑化処理は、例えば上述の三次元測定装置に条件を設定して行わせると、各測定点の値を容易に取得できる。図7は、市販の三次元測定装置で求めた解析結果を模式的に示すグラフである。図7では分かり易いように、測定点を20点とする。図7のグラフにおいて、横軸は、輪郭抽出直線Lnに平行な直線上の点の位置、縦軸は、上述の重心Gを通り、輪郭抽出直線Ln(長辺方向)及び短辺方向の双方に直交する直線上の点の位置を示す。横軸の各点は、輪郭抽出直線Ln上の各点の位置に概ね一致し、縦軸の各点は、このグラフの原点を基準とする輪郭の変位量を示す。図7では、20点の測定点(凡例●)の集合が、輪郭抽出直線Lnに基づいて抽出した測定点の集合10βnである。

工程(4)では、測定点の集合10βnごとに、複数の測定点を最小二乗法で近似して、10本の近似円弧10γnを求める。即ち、集合10βnのうちの各測定点と集合10βnに対応した近似円弧10γn間の距離dが最小となるように近似円弧10γnをとる。求めた全ての距離dの平均を球面誤差Eとする。また、10本の近似円弧10γnの半径Rnの平均を基板の反り部分の曲率半径Rとする。近似円弧10γnや距離dは、エクセルなどの市販の分析ソフトなどを利用することで容易に求められる。

球面誤差が小さいほど、曲率半径Rの真球面状の反りを有するといえる。例えば、長方形状の基板10について、縦断面(図2)及び横断面(図3)を取った場合、いずれも実質的に同様な断面形状を有する。また、例えば、基板10の反り部分の表面形状を上述の三次元測定装置によって求め、三次元の解析結果を取得する。基板10を平面視して、この三次元の解析結果における高さ情報を等高線として二次元で表現すると(二次元に変換すると)、等高線は同心円を描く。図4は、実施形態の複合部材1における二次元変換像の一例(後述の試験例1、試料No.1−15、Mg−SiC)であり、外縁近傍の領域を除去したもの(ここでは170mm×120mm程度)を解析試料としている。この二次元変換像は、長方形状の基板10における角部の変位を基準(0μm)とし、基準からの変位量(μm)を色別で示す。図4では、変位量が小さい順に、濃紺、青、色、黄緑、緑、黄色、橙で示し、図4の左側にカラースケールに示す(カラースケールの下方が濃紺、上方が橙)。図4に示すようにこの複合部材1の二次元変換像は、長方形状の基板10の中心(ここでは外縁の平面形状の重心=対角線の交点)を中心とする同心円を描く。このことから、この複合部材1は、反り部分が曲率半径Rの真球面に近い面で構成されていることが分かる。

球面誤差が小さいほど、複合部材1を設置対象に均一的に密着したり、不均一な熱伸縮による変形などを防止したりできる。このような複合部材1を例えば半導体素子50の放熱部材3に利用する場合に、基板10の任意の位置に半導体素子50などを実装しても、半導体素子50から基板10を介して冷却装置などの設置対象に良好に熱伝導を行える。密着性、熱伝導性などの観点から、球面誤差を10.0μm以下、更に7.0μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下とすることができ、理想的には0μmである。工業的生産性などを考慮すると、球面誤差を1.0μm以上程度とすることができる。

球面誤差が上記範囲を満たす複合部材1を製造するには、例えば、曲率半径Rdが上記範囲を満たす球面状の成形型を用いて、後述する実施形態の複合部材の製造方法を利用することが挙げられる。

・反り量 実施形態の複合部材1は、曲率半径Rに応じた反り量を有する。反り量は、例えば、基板10の反り部分の表面形状を上述の三次元測定装置によって解析し、この解析結果を利用して求めた最大変位量(μm)とすることが挙げられる。端的に言うと、反り量は、基板10の反り部分を側面視した場合に最低位置を高さの基準として、最低位置と最高位置との高さの差である。具体的な反り量(mm)は、複合部材1の大きさなどにもよるが、例えば、長さが130mm×幅が70mmから長さが200mm×幅が150mmの長方形状の基板10では、50μm以上600μm以下、更に400μm以下程度が挙げられる。

<残留応力> 実施形態の複合部材1は、一面に凸の反り、他面に凹の反りを有する場合に基板10の反り部分において凸側面の残留応力と凹側面の残留応力との差が小さいことが好ましい。この残留応力差が小さいほど、冷熱サイクルや半田付けなどの熱履歴を受けた場合に残留応力の解放に起因する変形を抑制し易いからである。定量的には、基板10の凸側面における上述の重心箇所の残留応力をX1(MPa)、凹側面における上述の重心箇所の残留応力をX2(MPa)、基板10の外縁を内包する長方形の対角線の長さをL(mm)、基板10の厚さをH(mm)とし、凸側面の残留応力と凹側面の残留応力との差の絶対値|X1−X2|が105×(H/L2)(MPa)未満であることが挙げられる。ここで、梁の公式に基づくと、基板10の厚さ方向に荷重Pが加えられた場合に基板10の長辺方向に加わる張力Tは、基板10のヤング率Ε、たわみ量δ、基板10の長辺長さl、基板10の厚さHを用いて、T=6E×δ×(H/l2)と表される。たわみ量δを反り戻り量とし、張力Tを上述の残留応力の差|X1−X2|に基づく力とすると、105×(H/l2)(MPa)未満であれば、反り戻り量を小さくできるといえる。本発明者らが検討した結果、基板10の対角線の長さLを用いて、105×(H/L2)(MPa)未満であれば反り戻り量をより確実に小さくできるとの知見を得た(後述の試験例2参照)。例えば、長辺の長さLが190mm程度、厚さHが5mmの基板10では、残留応力の解放に起因する反り戻り量δを100μm以下とすることができる。残留応力の差|X1−X2|(MPa)が小さいほど、残留応力に起因する反り戻りが小さく変形し難いため、8×104×(H/L2)(MPa)以下、更に6×104×(H/L2)(MPa)以下、5×104×(H/L2)(MPa)以下が好ましい。

なお、基板10の重心近傍、代表的には反りの頂点近傍が最も残留応力を有し易いと考えられる。従って、上述の残留応力は、上記重心箇所について測定する。

上述の残留応力の差|X1−X2|が小さいことに加えて、基板10における凸側面の残留応力と凹側面の残留応力とが同じ方向性の応力(符号が同じ応力)であることが好ましい。具体的には、基板10の凸側面における上述の重心箇所の残留応力と凹側面における上述の重心箇所の残留応力との双方が圧縮応力である、又は双方が引張応力であることが好ましい。この場合、残留応力が解放されても更に変形し難い。

上述の残留応力の差|X1−X2|や残留応力の方向性(符号)は、代表的には製造条件によって調整することが挙げられる。通常、板材をパンチで挟んでプレス加工によって反りを付与した場合、一般に、凸側面の残留応力の符号と凹側面の残留応力の符号とは逆となる。代表的には凸側面に引張応力、凹側面に圧縮応力が残存する。基板10の表裏の残留応力を同符号にするためには、熱や圧力などを利用して内部応力を調整して、応力緩和、クリープ現象などによる変形を制御することが望まれる。後述する実施形態の複合部材の製造方法のように、特定の条件で熱プレスを行うことで、上記の残留応力の差を小さくしたり、更には凸側面及び凹側面の残留応力の符号を等しくしたりできる。その他、残留応力の調整方法として、上記熱プレス後に別途熱処理を施すことが挙げられる。

特に、基板10を構成する複合材料がMg−SiCである場合、Al−SiCに比較すると応力緩和し易く、より低温、短時間で残留応力を除去し易いため、上述の残留応力の差|X1−X2|が小さくなり易く、残留応力に起因する変形を低減し易い傾向にある。

<熱特性> ・熱伝導率及び線膨張係数 基板10は、熱伝導率が150W/m・K以上であり、かつ線膨張係数が10ppm/K以下である。金属20の組成、非金属22の組成、含有量などを調整することで、熱伝導率がより高いもの、線膨張係数がより小さいものとすることができる。基板10の熱伝導率は、例えば180W/m・K以上、更に200W/m・K以上、特に220W/m・K以上とすることができる。ダイヤモンド複合材料から構成される基板10では、例えば、熱伝導率を500W/m・K以上、更に520W/m・K以上、550W/m・K以上、600W/m・K以上とすることができる。基板10の線膨張係数は、例えば9ppm/W以下、更に8ppm/W以下とすることができる。基板10の線膨張係数がより小さいことで、後述する金属被覆を備える場合でも、基板10と金属被覆とを含めた複合部材1の線膨張係数を小さくでき、好ましくは10ppm/K以下を満たすことができる。熱伝導率がより高く、かつ線膨張係数が3ppm/K以上10ppm/K以下程度である基板10を備える複合部材1は、半導体素子50及びその周辺部品との線膨張係数の整合性に優れるため、半導体素子50の放熱部材3の素材に好適に利用できる。半導体素子50などの整合性に優れる範囲で、基板10の線膨張係数は、例えば3ppm/K以上、4ppm/K以上、4.5ppm/K以上とすることができる。

・耐熱変形性 実施形態の複合部材1は、上述のように特定の曲率半径R及び特定の球面誤差を満たす球面状の反りを備えるため、冷熱サイクルを受けても変形し難い。定量的には、−60℃から175℃の冷熱サイクルを10サイクル、100サイクル、1000サイクルそれぞれ負荷した前後の曲率半径Rの変化率がいずれも20%以下であることが挙げられる。曲率半径Rの変化率(%)は、[1−(所定数の冷熱サイクル後の基板10の曲率半径R)/(冷熱サイクル前の基板10の曲率半径R)]×100とする。曲率半径Rの測定方法は上述の通りである。この複合部材1は、冷熱サイクル数が少ない場合は勿論多くても変形し難いといえる。このような複合部材1を半導体素子50の放熱部材3などに利用して冷熱サイクルを受けた場合でも、使用初期から長期に亘り変形し難く、設置対象との密着状態を維持できる。曲率半径Rの変化率は、小さいほど、上述のように放熱部材などとして使用した場合に使用初期から長期に亘り変形し難いため、18%以下、更に15%以下、10%以下が好ましい。

図5は、実施形態の複合部材1(後述の試験例1、試料No.1−15、Mg−SiC)において、上述のように基板10の反り部分の表面形状を三次元測定装置によって求め、三次元の解析結果を二次元に変換した二次元変換像である。この二次元変換像は、上述の−60℃から175℃の冷熱サイクルにおいて、室温(RT)、100℃、125℃、150℃、175℃のときの像である。温度ごとの二次元変換像は、上述の図4と同様に長方形状の基板10における角部の変位を基準(0μm)とし、基準からの変位量(μm)を色別で示し、左側にカラースケールに示す。図5に示すように、この複合部材1の二次元変換像は、いずれの温度においても、長方形状の基板10のほぼ中心(ここでは外縁の平面形状における重心=対角線の交点)を中心とする同心円を描く。このことから、この複合部材1は、冷熱サイクルを受けても、反り部分が曲率半径Rの真球面に近い面を維持し易く、変形し難いことが分かる。

実施形態の複合部材1は、上述のように特定の曲率半径R及び特定の球面誤差を満たす球面状の反りを備えるため、熱処理を受けても変形し難い。定量的には、300℃×1時間の熱処理を行った前後の曲率半径Rの変化率が20%以下であることが挙げられる。曲率半径Rの変化率(%)は、[1−(上記の熱処理後の基板10の曲率半径R)/(上記の熱処理前の基板10の曲率半径R)]×100とする。曲率半径Rの測定方法は上述の通りである。この熱処理は、絶縁基板52(図8)などの半田付け条件の一例を模擬するといえる。この熱処理を受けても曲率半径Rの変化率が小さい複合部材1は、半導体素子50の放熱部材3などに利用して、上述の半田付けされた場合でも、変形し難く、上記特定の球面状の反りを維持でき、この反りを利用して冷却装置などの設置対象に密着させられる。曲率半径Rの変化率は、小さいほど、上述のように半田付けなどの熱処理によって変形し難いため、18%以下、更に15%以下、10%以下が好ましい。

複合部材1が金属被覆を有さず実質的に基板10のみの場合、金属被覆を有するが金属被覆の厚さが薄い場合(好ましくは上記厚さが20μm以下)、基板10の構成材料がMg−SiCである場合、上述の残留応力の差|X1−X2|が小さい場合、更には残留応力の方向性(符号)が同じである場合などでは、上述の複数回の冷熱サイクルを受けた場合の曲率半径Rの変化率や、上述の特定の熱処理を受けた場合の曲率半径Rの変化率がより小さい傾向にある。

<その他> ・金属被覆 複合部材1は、基板10の表面の少なくとも一部に金属被覆(図示せず)を備えることができる。金属被覆は、構成する金属種にもよるが、半田との濡れ性、耐食性、意匠性などを高める機能を有するものが挙げられる。複合部材1を半導体素子50の放熱部材3に利用する場合、金属被覆には半田との濡れ性を高められる半田下地層を含むことが好ましい。半田下地層は、基板10の表面において半田付けされる領域に備えるとよく、基板10の一面の少なくとも一部、又は両面の少なくとも一部のいずれに備えてもよい。

金属被覆の構成金属は、基板10を構成する複合材料の金属20と同種の金属、又は金属20が合金である場合にはベース金属が同じ合金、その他、純ニッケル又はニッケル合金、亜鉛又は亜鉛合金、純金又は金合金などの異種の金属が挙げられる。半田下地層の構成金属には、純ニッケル、ニッケル合金、純銅、銅合金、純金、金合金、純銀、銀合金などが挙げられる。金属被覆は、単層構造の他、構成金属が異なる複数の金属層を備える多層構造とすることができる。

基板10の一面に金属被覆を備える場合、金属被覆の厚さ(多層構造の場合には合計厚さ、以下、金属被覆の厚さにおいて同様)が均一的であって、比較的薄いことが好ましい。基板10の両面に金属被覆を備える場合、各面の金属被覆の厚さが実質的に等しく、かつ比較的薄いことが好ましい。金属被覆が厚過ぎたり、基板10の表裏で金属被覆の厚さが不均一であったりする場合、冷熱サイクルを受けると、金属被覆が高温でのクリープと低温での塑性変形とを繰り返し、冷熱サイクルごとに変形が進行する現象(熱ラチェット現象)が生じ易いからである。基板10の一面あたりの金属被覆の厚さは、100μm以下、更に80μm以下、50μm以下、特に20μm以下、18μm以下、15μm以下が好ましい。金属被覆が薄いことで、金属被覆に起因する複合部材1の線膨張係数の増大も低減できる。

・取付部 複合部材1は、設置対象への取付部を備えることができる。取付部は、基板10自体に設けられ、ボルトなどの締結部材が挿通されるボルト孔などが挙げられる。又は、基板10に非金属22を含まない金属領域を設け、この金属領域にボルト孔や、ボルト孔を有するボス部などを備えることができる。金属領域は、例えば、溶融状態の金属20と非金属22とを複合するときなどに同時に成形することができる。取付部は、基板10において球面状の反りを有する領域から離れた箇所、例えば基板10の角部や外縁10e近傍などに備えると、球面状の反りの変動に影響を与え難いと考えられる。取付部の形成方法は、公知の方法などを参照できる。

<用途> 実施形態の複合部材1は、上述のように熱伝導率が高く、線膨張係数が小さく、特定の球面状の反りを有して設置対象に密着でき、この密着状態を使用初期から長期に亘って維持できることから、放熱部材に好適に利用できる。特に、複合部材1は、半導体素子50やその周辺部品(図示せず)などの線膨張係数との整合性にも優れることから、半導体素子50の放熱部材3に好適に利用できる。その他、実施形態の複合部材1は、熱伝導性に優れ、熱伸縮量が小さいことが望まれる適宜な構造材料等としての利用が期待できる。

[放熱部材] 実施形態の放熱部材3(図8参照)は、実施形態の複合部材1を備える。放熱部材3の形状、大きさは発熱対象を載置可能な範囲で適宜選択できる。代表的には、放熱部材3の形状、大きさは基板10の形状、大きさを実質的に維持するため、基板10の形状、大きさを調整するとよい。実施形態の放熱部材3は、熱伝導率が高く、線膨張係数が小さく、特定の球面状の反りを有して設置対象に密着でき、この密着状態を使用初期から長期に亘って維持できる実施形態の複合部材1を備えるため、半導体素子50の放熱部材や半導体装置5の構成要素に好適に利用できる。

[半導体装置] 実施形態の半導体装置5は、図8に示すように実施形態の放熱部材3と、放熱部材3に搭載される半導体素子50とを備える。放熱部材3の一面は、代表的には、AlN(窒化アルミニウム)などの非金属無機材料から構成される絶縁基板52と半田54とを介して半導体素子50が半田付けされる実装面であり、他面は冷却装置(図示せず)との設置面である。放熱部材3の実装面のうち、少なくとも半導体素子50などの実装部品が取り付けられる領域には、上述の金属からなるめっき層などの半田下地層を備えることが好ましい。実施形態の半導体装置5は、各種の電子機器、特に高周波パワーデバイス(例、LDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor))、半導体レーザ装置、発光ダイオード装置、その他、各種のコンピュータの中央処理装置(CPU)、グラフィックス プロセッシング ユニット(GPU)、高電子移動形トランジスタ(HEMT)、チップセット、メモリーチップなどに利用できる。

[複合部材の製造方法] 実施形態の複合部材1を製造する方法として、例えば、以下の特定の条件で熱プレスといった加工を行う実施形態の複合部材の製造方法を利用できる。実施形態の複合部材の製造方法は、金属20と非金属22とを含む複合材料から構成される基板素材に加工を施して、加工後の基板を備える複合部材を製造するものであり、基板素材を曲率半径が5000mm以上35000mm以下である成形型に収納して熱プレスを行うプレス工程を備える。この熱プレス工程は、以下の保持工程と冷却工程とを備える。その他、実施形態の複合部材の製造方法は、基板素材を準備する準備工程、金属被覆を形成する被覆工程、取付部を形成したり、表面粗さを調整するためなどの軽微な表面研磨などを施したりする加工工程などを備えることができる。 (保持工程)加熱温度を200℃超とし、印加圧力を10kPa以上として所定時間保持する工程 (冷却工程)基板素材に対する印加圧力の80%以上の加圧状態を保持したまま、加熱温度から100℃以下まで冷却する工程

以下、工程ごとに説明する。 (準備工程) この工程では、熱プレスに供する基板素材を準備する。基板素材は、金属20と非金属22とを含む複合材料を板状に製造する公知の製造方法が利用できる。例えば、成形型に非金属22の粉末や成形体を充填などし、溶融状態の金属20を溶浸する溶浸法(特許文献1参照)、高圧で溶浸する加圧溶浸法、その他、粉末冶金法、溶融法などが挙げられる。金属20と非金属22とを含む複合材料から構成される市販の基板を素材として利用することもできる。

代表的には、金属20の組成、非金属22の組成・含有量・形態(粉末、成形体など)などの仕様を調整することで、基板素材から最終的に得られる基板10の熱伝導率、線膨張係数を所望の値にすることができる。実施形態の複合部材1を製造する場合には、熱伝導率が150W/m・K以上かつ線膨張係数が10ppm/K以下を満たすように、上記の仕様を適宜調整するとよい。金属20の組成、非金属22の組成にもよるが、基板素材中の非金属22の含有量を55体積%以上とすると、上述のように熱伝導率が高く、線膨張係数が小さい実施形態の複合部材1を得易い。

金属被覆を有する複合部材を製造する場合、金属被覆の形成には、例えば、めっき法、クラッド圧延、その他公知の方法を適宜利用できる(特許文献1参照)。金属被覆は、以下の熱プレス(プレス工程)前でも熱プレス後でも形成できる(被覆工程の一例)。熱プレス前に金属被覆を有する基板素材を用意し、熱プレスに供する場合には、金属被覆を上述のように薄くし、好ましくは均一的な厚さとすると、金属被覆の具備に起因する熱プレス時の反りの変動を低減して、所定の反りを高精度に形成できて好ましい。この場合、金属被覆は、例えば、基板10の製造時、溶融状態の金属20と非金属22とを複合するときに同時に形成することが挙げられる(特許文献1参照)。得られた基板素材は、基板10の直上に基板10の金属20と同種の金属から構成され、基板10の金属20に連続する組織を有する金属被覆を有する。上述のめっき法などを利用すれば、金属20と非金属22との複合工程とは別に金属被覆を形成することもできる。一方、熱プレス後に金属被覆を形成すれば、熱プレス時における金属被覆の具備に起因する反りの変動を防止でき、所定の反りを高精度に形成できて好ましい。この場合、金属被覆の形成には、上記反りを実質的に変化させない形成方法、例えばめっき法などが好適に利用できる。いずれにしても、得られた複合部材が上述のように冷熱サイクルなどの熱履歴を受けて変形し難いように、金属被覆は薄いこと、更に均一的な厚さであることが好ましい(20μm以下)。めっき法であれば、金属被覆を薄く形成し易い上に、原理的に均一的な厚さにし易く好適に利用できると考えられる。

(プレス工程) この工程では、代表的には、曲率半径Rdが上述の特定の範囲を満たす球面状の凸面を有する第一型及び球面状の凹面を有する第二型を備える成形型を用いて熱プレスを行う。第一型と第二型とで基板素材を挟んで加熱状態で加圧して、基板素材に曲率半径Rdの球面を転写し、曲率半径Rd≒Rの球面状の反り、理想的には曲率半径Rd=Rの球面状の反りを有する基板を製造する。第一型及び第二型における曲率半径Rdについては、上述の曲率半径Rの項を参照するとよい。

例えば、長方形の基板素材を用いる場合、第一型及び第二型における球面の中心に基板素材の中心(対角線の交点=外縁の表面形状における重心)が一致するように基板素材を成形型に収納することが挙げられる。こうすることで、最終的に、曲率半径R≒Rd(理想的にはR=Rd)を有し、長方形状の基板における外縁の表面形状の重心(≒基板素材の中心)を中心とする球面状の反りを有する複合部材が得られる。

・保持工程 熱プレス時の加熱温度(ここでは成形型の加熱温度)を200℃超かつ印加圧力を10kPa以上とすることで、非金属22を含む基板素材であっても塑性変形でき、上記特定の球面状の反りを付与可能になる。加熱温度が高いほど、塑性変形し易いことから、加熱温度を250℃超、更に280℃以上、300℃以上とすることができる。印加圧力が大きいほど、塑性変形し易いことから、印加圧力を100kPa以上、更に500kPa以上、700kPa以上とすることができる。加熱温度がより高くかつ印加圧力がより大きいと、残留応力を小さくし易い。その結果、上記特定の球面状の反りを有する複合部材であって、上述のように冷熱サイクルなどの熱履歴を受けても変形し難いものを製造できる。残留応力や変形の低減などの観点から、加熱温度を350℃以上、更に380℃以上、400℃以上、かつ印加圧力を800kPa以上、更に900kPa以上、1MPa以上とすることができる。基板素材の組成によっては、加熱温度を500℃以上、印加圧力を10MPa以上、20MPa以上とすることができる。比較的高温かつ比較的高圧で十分に保持することで(後述の保持時間、冷却速度も参照)、上記特定の球面状の反りをより精度よく設けられる。加熱温度の上限は、基板素材を構成する金属20の液相線温度未満であって、金属20や非金属22が熱劣化し難い範囲で選択できる。印加圧力の上限は、基板素材に割れなどが生じない範囲で選択できる。

成形型を上述の加熱温度に加熱しておくことに加えて、基板素材も加熱する(予熱する)ことが好ましい。基板素材が均一的に加熱された状態であるため均一的に塑性変形し易く高精度に成形できる、成形型と基板素材との温度差による割れなどが生じ難いといった効果が期待できるからである。上記効果の観点から、成形型の加熱温度±20℃以内、更に成形型の加熱温度±10℃以内、好ましくは成形型の加熱温度と同等に加熱した状態の基板素材を成形型に収納することが好ましい。

上述の加熱及び加圧状態の保持時間は、基板素材の組成などに応じて適宜選択でき、例えば10秒以上180分以下の範囲から選択することができる。より具体的な例として、Mg−SiCでは1分以上5分以下程度、Al−SiCでは1分以上100分以下程度が挙げられる。Mg−SiCの基板素材を用いると、Al−SiCに比較して熱プレスの保持時間が短くても上述の特定の球面状の反りを形成できる場合があり、製造性に優れる。

・冷却工程 上述の保持時間が経過したら、上述の加熱温度から室温(例、10℃から20℃程度)まで冷却する。冷却過程における上記加熱温度から100℃までの範囲では、加圧状態で冷却する。冷却過程の印加圧力は、上述の熱プレス時の印加圧力の80%以上とする。このような特定の加圧状態で冷却することで、不均一な冷却に伴う局所的な熱収縮に起因する変形などを抑制して、上述の特定の球面状の反りを高精度に設けられる。また、不均一な冷却に伴う局所的な熱収縮を抑制することで、残留応力が存在することも防止し易い。冷却過程での印加圧力は、高過ぎると、割れが生じたり、冷却中に生じた新たな変形に伴って内部応力が増加したりする可能性があることから、熱プレス時の印加圧力と同等以下(熱プレス時の印加圧力の100%以下)の範囲で調整することが好ましい。冷却過程において100℃未満の温度から室温までの範囲では、除荷して無加圧状態で冷却してもよい。

上述の冷却過程において上述の特定の加圧状態で冷却を行う範囲では、徐冷することが好ましい。上述の冷却過程での加圧状態を十分に確保でき、上述の特定の球面状の反りを精度よく設けられるからである(後述の試験例も参照)。急冷(代表的には冷却速度が10℃/min以上)とすると、成形型と基板素材とにおける熱容量の差や熱伝導率の差によって基板素材全体を均一に冷却することが難しい。そのため、局所的に冷却されて熱応力が生じ、結果として内部応力や変形を生じさせる。ここでの徐冷とは、冷却速度が3℃/min以下を満たすこととする。冷却速度は、1℃/min以下、更に0.5℃/min以下とすることができる。冷却速度が上記の範囲を満たすように、成形型の周囲温度などを調整したり、強制冷却機構による冷却状態を調整したりすることなどが挙げられる。非金属22の含有量が多い基板素材、例えば55体積%以上、更に60体積%以上、65体積%以上であり、剛性が比較的高い基板素材を用いる場合には、徐冷することが好ましいと考えられる。

上述のプレス工程を経ることで、基板素材を用いて、曲率半径Rが5000mm以上35000mm以下の球面状の反りを有すると共に、上述の球面誤差が10.0μm以下を満たす複合部材が得られる。基板素材として、熱伝導率及び線膨張係数が上述の特定の範囲を満たすものを利用すれば、実施形態の複合部材1が得られる。

その他、実施形態の複合部材1を製造する方法として、上述の基板素材に切削や研磨などを行うことが考えられる。但し、SiCやダイヤモンドを50体積%以上含む複合材料の基板素材に対して上述の特定の球面状の反りを設ける場合には、切削や研磨などよりも上述の熱プレスを利用することが好ましい。SiCやダイヤモンドを50体積%以上含む複合材料の基板素材は、一般に非常に硬いため、切削可能な刃物が実質的に存在しないからである。また、仮にダイヤモンド砥石を用いたとしても、長時間の研磨が必要である上に、砥石と基板素材間に高い圧力を印加する必要があり、この高圧の印加によって基板素材にスプリングバックや残留応力の蓄積が生じ、精密な三次元形状への加工も難しいからである。更に、ダイヤモンド砥石は非常に高価であるため工業的生産には適用されていないからである。

(その他の工程) <熱プレス前の熱処理> 上述のプレス工程前に熱処理を行うことができる。この熱処理によって、複合時に生じた残留応力を低減、除去することができる場合がある。基板素材の組成にもよるが、熱処理条件は、例えば、加熱温度が350℃以上550℃以下程度(例、400℃程度)、保持時間が30分以上720分以下程度(例、60分程度)が挙げられる。 <熱プレス後の熱処理> 上述のプレス工程後に熱処理を行うことができる。熱処理条件を調整することで、上述のプレス工程によって基板に付与された残留応力を調整したり、低減したり、除去したりすることができる場合がある。基板素材の組成にもよるが、例えば、加熱温度が100℃以上200℃以下、保持時間が100時間以上1000時間以下の条件で熱処理を施すと、残留応力を除去し易い。但し、プレス工程後に残留応力を除去した場合、除去と同時に変形が生じることがあるため、プレス条件を調整して、プレス工程では残留応力を実質的に発生させないことが望ましい。

[試験例1] Mg−SiCから構成される基板素材、Al−SiCから構成される基板素材に種々の条件で熱プレスを施して、反りを有する複合部材を作製し、反り状態を調べた。

各試料の複合部材は、金属被覆を設けず、実質的に複合材料から構成される基板とし、以下のようにして作製する。

(Mg−SiCを用いた試料) Mg−SiCを用いた試料は、特許文献1などに記載される溶浸法で作製する。概略は以下の通りである。 原料の金属は、99.8質量%以上がMgであり、残部が不可避不純物からなる純マグネシウムのインゴットである。原料のSiC粉末は、平均粒径が90μmであり、酸化処理を施した被覆粉末である。原料はいずれも市販品である。 用意した上記被覆粉末を成形型(ここでは黒鉛鋳型)に充填した後(キャビティに対するSiC粉末の充填率は70体積%)、上記インゴットを溶融して、成形型に充填した被覆粉末に溶浸する。溶浸条件は、溶浸温度:875℃、Ar雰囲気、雰囲気圧力:大気圧である。溶浸後冷却して純マグネシウムを凝固した後、成形型から成形物を取り出す。この成形物は、長さ190mm×幅140mm×厚さ5mmの板材であり、この長方形状の成形物を基板素材とする。基板素材の組成は、用いた原料に実質的に等しく、基板素材におけるSiCの含有量は、成形型への充填率(70体積%)に実質的に等しい(これらの点は、Al−SiCを用いた試料についても同様)。

(Al−SiCを用いた試料) Al−SiCを用いた試料は、加圧溶浸法で作製する。ここでは、原料の金属を、99.8質量%以上がAlであり、残部が不可避不純物からなる純アルミニウムのインゴットに変更した点、成形型を金属型とした点、溶浸条件を変更した点(溶浸温度:750℃、Ar雰囲気、加圧圧力:15MPa以上30MPa以下から選択)を除いて、Mg−SiCを用いた試料と同様に作製する(SiC粉末の充填率は70体積%)。得られた長方形状の成形物、ここでは長さ190mm×幅140mm×厚さ5mmの板材を基板素材とする。

(熱プレス) 各試料の基板素材を球面状の成形型(球状の凸面を有する第一型、球状の凹面を有する第二型)に収納して熱プレスを施す。表1に熱プレスの条件(成形型の曲率半径Rd(mm)、成形型の加熱温度(℃)、印加圧力(kPa又はMPa)、保持時間(min))を示す。

ここでは、成形型に加えて、基板素材も表1に示す加熱温度に予熱して熱プレスを行う。予熱した基板素材の中心(長方形の対角線の交点=外縁の表面形状における重心)が、第一型及び第二型における球面の中心に一致するように基板素材を成形型に収納する。保持時間経過後、上記加熱温度から室温(ここでは20℃程度)まで冷却する。得られた熱プレス加工物を各試料の複合部材(基板)とする。各試料の放熱部材(基板)はいずれも、一面に凸の反り、他面に凹の反りを有する。試料ごとに複数の複合部材(基板)を用意し、後述の測定、評価に用いる(この点は後述の試験例2,3も同様である)。

冷却過程のうち、上記加熱温度から100℃までの範囲において、熱プレス時の印加圧力の80%以上の加圧状態を保持したまま冷却を行う試料を「冷却時加圧 あり」、保持時間経過後に加圧状態を解除し、無加圧状態で冷却を行う試料を「冷却時加圧 無し」として表1に示す。ここでは、冷却時の印加圧力は、熱プレス時の印加圧力の80%以上100%以下の範囲で選択する。

冷却過程のうち、上記加熱温度から100℃までの範囲において、冷却速度を3℃/min以下とする試料を「冷却速度 徐冷」、冷却速度を10℃/min超とする試料を「冷却速度 急冷」として表1に示す。ここでは、冷却速度が上記の大きさとなるように、周囲温度や強制冷却機構などを調整する。

(測定、評価) 各試料の複合部材(基板)について、曲率半径R(mm)、球面誤差E(μm)、反り量(μm)を表1に示す。

球面誤差E、曲率半径Rの測定方法の詳細は、上述の通りであり、以下に概略を述べる。各試料の複合部材は、平面視した場合に概ね190mm×140mmの長方形の板材である。各試料の複合部材(基板)において、凸の反りを有する主面から、重心(ここでは上記長方形の対角線の交点に実質的に一致する)をとり、長辺の長さが170mm×短辺の長さが120mmの長方形の測定領域10αを抽出する。測定領域10αから、この長方形の長辺に平行な輪郭抽出直線L1からL10をとる。輪郭抽出直線L1、L10は、各長辺をなす直線、輪郭抽出直線L2からL9は、短辺を9等分し、長辺に平行な直線である。各輪郭抽出直線Lnに沿って、市販の三次元測定装置を用いて輪郭を描く複数の測定点を求める。各測定点の値は、上述の平均値とする。この測定は、代表的には、凸の反りを有する主面が上向きになるように台などの上に各試料の複合部材を配置して行う。測定点の集合10βnごとに、複数の測定点を最小二乗法で近似して近似円弧10γnを求める。集合10βnの各測定点と近似円弧10γn間の距離dの平均を球面誤差Eとする。10個の近似円弧10γnの半径Rnの平均を複合部材(基板)の曲率半径Rとする。なお、n=1から10とする。 反り量は、各試料の複合部材(基板)の表面形状を市販の三次元測定装置によって解析し、この解析結果における最大変位量(μm)とする。ここでは、基板の長手方向(長辺方向)に沿って変位量を調べ、その最大変位量とする。

各試料の複合部材(基板)について、熱伝導率及び線膨張係数を測定した。ここでは、各試料の複合部材から測定用試験片を切り出し、市販の測定器を用いて測定した。熱伝導率は室温(ここでは20℃程度)で測定する。線膨張係数は、30℃から150℃の範囲について測定する。

各試料の複合部材(基板)について、冷熱サイクルによる変形状態を調べた。ここでは、−60℃から175℃の冷熱サイクルを10サイクル、100サイクル、1000サイクルそれぞれ負荷した前後の曲率半径Rの変化率(%)を調べた。冷熱サイクル負荷前の曲率半径をR0とし、10サイクル経過後の曲率半径をR10とし、10サイクル経過後の曲率半径の変化率を|1−(R10/R0)|×100とする。100サイクル経過後の曲率半径をR100とし、100サイクル経過後の曲率半径の変化率を|1−(R100/R0)|×100とする。1000サイクル経過後の曲率半径をR1000とし、1000サイクル経過後の曲率半径の変化率を|1−(R1000/R0)|×100とする。これら3種類の曲率半径の変化率のいずれもが20%以下である場合、変形し難い基板と評価して、表1に「G」と示す。上述の3種類の曲率半径の変化率のうち、一つ以上が20%超である場合、変形し易い基板として評価して、表1に「B」と示す。各サイクル後の曲率半径Rの測定方法は、上述の測定方法と同様にして求める。

各試料の複合部材(基板)について、300℃×1時間の熱処理を行い、この熱処理による変形状態を調べた。ここでは、熱処理前後の曲率半径Rの変化率(%)を調べ、変化率の大小によって変形状態を評価する。熱処理前後の変化率が20%以下である場合を変形し難い基板として評価し、表1に「G」と示し、20%超である場合を変形し易い基板として評価し、表1に「B」と示す。

Al−SiCの試料No.1−1からNo.1−7の複合部材では、基板の熱伝導率が180W/m・K、基板の線膨張係数が7.5ppm/Kである。Mg−SiCの試料No.1−11からNo.1−20の複合部材では、基板の熱伝導率が220W/m・Kであり、Al−SiCの試料よりも高く、基板の線膨張係数が7.5ppm/Kである。

また、表1に示すように、試料No.1−1からNo.1−7,No.1−11からNo.1−20の複合部材は、基板に、曲率半径Rが5000mm以上である球面状の反りであって、球面誤差Eが10.0μm以下と小さく、球面度合いが高い反りを有することが分かる。球面誤差が5.0μm以下、更に3.0μm以下の試料も多数ある。このような反り部分の表面形状は、球面の一部(球冠)に近い形状といえる。このように球面度合いが高い反りを有するこれらの試料の複合部材は、半導体素子の放熱部材などに利用した場合、設置対象との密着状態を安定して維持できると期待される。

更に、表1に示すように、曲率半径R及び球面誤差Eが上述の特定の範囲を満たす特定の球面状の反りを有する複合部材は、特定の加熱温度及び特定の印加圧力で成形する熱プレスを行うと共に、特定の加圧状態で冷却することで製造できることが分かる(例、試料No.1−1と試料No.1−102とを比較参照、試料No.1−13,No.1−16と試料No.1−113,No.1−114とを比較参照)。この試験では、加圧状態の冷却を徐冷とし、冷却過程での加圧状態の保持時間を比較的長く確保すること(例、試料No.1−1と試料No.1−101とを比較参照、試料No.1−13,No.1−16と試料No.1−111,No.1−112とを比較参照)、基板素材を予熱することからも、球面誤差Eが10.0μm以下と小さく、球面度合いが高い反りを高精度に設けられたと考えられる(この点は後述の試験例2,3も同様である)。

その他、この試験では、以下のことがいえる。 (a)熱プレス時の加熱温度をより高く、印加圧力をより大きくとすると(ここでは300℃超、10kPa超)、球面誤差がより小さくなり易い(例、試料No.1−11と、No.1−12からNo.1−16とを比較参照)。 (b)Mg−SiCは、Al−SiCに比較して、加熱温度をより低くしたり、印加圧力をより小さくしたり、保持時間をより短めにしたりするなどしても、球面誤差Eがより小さくなり易い(例、試料No.1−12からNo.1−14と試料No.1−1からNo.1−3とを比較参照)。 (c)熱プレス時の印加圧力が大きくても冷却過程で特定の加圧状態としないと(無加圧で冷却すると)、上述の特定の球面状の反りを精度よく設けられない(試料No.1−114参照)。 (d)Mg−SiCは、Al−SiCに比較して、熱処理や冷熱サイクルを受けても変形し難い(試料No.1−11からNo.1−20と、試料No.1−1,No.1−2,No.1−4からNo.1−7とを比較参照)。ここでは、Mg−SiCの試料は、10サイクル経過後の曲率半径の変化率、100サイクル経過後の曲率半径の変化率、1000サイクル経過後の曲率半径の変化率がいずれも20%以下である。 (e)曲率半径が小さい基板では、反り量が大きくなり易い傾向にある(試料No.1−115、No.1−5,No.1−17参照)。

[試験例2] 試験例1と同様にして反りを有する複合部材を作製し、反り状態、残留応力を調べた。

(基板素材の準備) この試験では、金属被覆を有する複合部材と、試験例1と同様に金属被覆を有さない複合部材とを作製する。 金属被覆を有さない複合部材に用いる基板素材は、試験例1と同様に作製して、同様の形状とする(長さ190mm×幅140mm×厚さ5mmの長方形板)。 金属被覆を有する複合部材に用いる被覆付き基板素材は、以下のように作製する。市販の板状のSiC焼結体(相対密度が80%の多孔体)に875℃×2時間の酸化処理を施した被覆成形体を用意し、成形型に被覆成形体と所定の厚さを有するスペーサ(特許文献1参照)とを収納し、溶融状態の金属と被覆成形体との複合時に同時に金属被覆を形成する。ここでは、金属と被覆成形体とを複合した複合材料の板の表裏面に、実質的に同一の厚さの金属被覆を有するものを作製する。この複合材料の板の各面における金属被覆の厚さ(μm、スペーサの厚さに等しい)を表2に示す。金属被覆は、複合材料の金属と同じ金属から構成され、複合材料の板の金属に連続する組織を有する。被覆付き基板素材の形状、大きさは、金属被覆を有さない基板素材と同様である(長さ190mm×幅140mm×厚さ5mmの長方形板)。金属被覆と複合材料の板との合計厚さが5mmとなるように、SiC焼結体の厚さを調整する。

(熱プレス) 各試料の基板素材、被覆付き基板素材に、試験例1と同様にして熱プレスを施し、得られた熱プレス加工物を各試料の複合部材(基板)とする。熱プレス条件を表2に示す。この試験では、試験例1と同様に、基板素材などの予熱、成形型の中心と基板素材の中心との位置合わせ収納、冷却過程の制御を行う。

(測定、評価) 各試料の複合部材(基板)について、曲率半径R(mm)、球面誤差E(μm)、熱伝導率(W/m・K)、線膨張係数(ppm/K)、凸側面の残留応力X1(MPa)、凹側面の残留応力X2(MPa)、残留応力の差|X1−X2|(MPa)を表2に示す。 曲率半径R、球面誤差E、熱伝導率、線膨張係数は試験例1と同様にして測定する。 残留応力は、長方形状の基板の凸側面について基板の外縁の表面形状における重心箇所、長方形状の基板の凹側面について基板の外縁の表面形状における重心箇所をそれぞれ測定する。また、測定は、代表的には、凸側面が上向きになるように台などの上に各試料の複合部材を配置して行う。残留応力の測定には市販の歪ゲージを利用できる。残留応力を破壊試験で測定する場合、残留応力の測定用の複合部材(基板)は、その他の測定、評価に用いる複合部材(基板)とは別のものとし、後述する冷熱サイクルや熱処理を受けていないものとする。

各試料の複合部材(基板)について、試験例1と同様にして、冷熱サイクル前後の曲率半径Rの変化率、300℃×1時間の熱処理前後における曲率半径Rの変化率を調べて、試験例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。

表2に示すように、試料No.2−1からNo.2−6,No.2−11からNo.2−17の複合部材はいずれも、基板の熱伝導率が150W/m・K以上、ここでは180W/m・K以上であり、基板の線膨張係数が7.5ppm/Kである。特に、Mg−SiCの試料No.2−11からNo.2−17では基板の熱伝導率が200W/m・K以上である。かつ、これらの複合部材はいずれも、基板に、曲率半径Rが5000mm以上である球面状の反りであって、球面誤差Eが10.0μm以下の反り、即ち球面度合いの高い反りを有することが分かる。また、これらの複合部材はいずれも、上記の熱処理を受けても変形し難いことが分かる。更に、これらの複合部材には、1000サイクルという長期に亘り冷熱サイクルを受けても、変形し難いものがあることが分かる。具体的には、曲率半径Rが5000mm以上35000mm以下かつ球面誤差Eが10.0μm以下を満たし、更に金属被覆を有さない又は金属被覆が薄く(ここでは20μm以下/一面)、基板の表裏面における残留応力の差|X1−X2|が小さい試料No.2−1,No.2−6,No.2−11からNo.2−13,試料No.2−16,No.2−17(以下、まとめて球面試料群と呼ぶことがある)は、冷熱サイクルを受けても変形し難い。これらの試料から、残留応力の差|X1−X2|は、基板の対角線の長さ(1902+1402)0.5≒236mmを用いて、105×(5/2362)≒9.0MPa未満であれば、変形し難いといえる。

一方、曲率半径R及び球面誤差E、残留応力の差|X1−X2|が上記の範囲を満たしていても、金属被覆が厚いと(ここでは50μm以上/一面)、上記熱処理では変形し難いものの、上述の長期に亘る冷熱サイクルを受けると変形し得ることが分かる(試料No.2−4、No.2−5,No.2−14,No.2−15)。これら金属被覆が厚い試料は、冷熱サイクル数が少ないと曲率半径Rの変化率が小さく変形が少ないものの、冷熱サイクル数が多くなると上記変化率が大きくなり、変形が多くなることを確認している。金属被覆が厚いと、金属被覆の厚さが不均一になり易かったり、熱ラチェット現象が生じ易くなったりして、変形し易くなると考えられる。

他方、曲率半径R及び球面誤差Eが上記の範囲を満たし、金属被覆が無くても、残留応力の差|X1−X2|が大きい場合(ここでは9.0MPa以上の場合)、上記冷熱サイクルを受けても、上記熱処理を受けても、変形し易いことが分かる(試料No.2−111)。上記冷熱サイクルや上記熱処理を受けると、残留応力が解放されて反り戻りによって変形したと考えられる。これらのことから、熱処理や長期に亘り冷熱サイクルを受ける場合には、上述の曲率半径R及び球面誤差E、残留応力の差|X1−X2|が上記の特定の範囲を満たし、金属被覆を有さない又は金属被覆が薄い上記の球面試料群の複合部材が好ましいといえる。

また、表2に示すように、曲率半径R及び球面誤差Eが上述の特定の範囲を満たす複合部材、更に残留応力の差|X1−X2|が上述の特定の範囲を満たす複合部材は、試験例1と同様に、特定の条件で熱プレスを行うと共に、特定の加圧状態で冷却することで製造できることが分かる(例、試料No.2−1と試料No.2−102とを比較参照、試料No.2−17と試料No.2−113とを比較参照)。この試験では、特に、基板の表裏面で残留応力の方向性が等しく、残留応力の差|X1−X2|が実質的に無い複合部材が得られている。

更に、この試験では、以下のことがいえる。 (e)非加圧で冷却すると、基板の表裏面で残留応力の方向性が変わり、残留応力の差|X1−X2|が大きくなり易い(試料No.1−102,No.2−113参照)。 (f)急冷とすると、基板の表裏面で残留応力の方向性が変わり、残留応力の差|X1−X2|が大きくなり易い(試料No.1−101,No.2−112参照)。 (g)熱プレス時の加熱温度が低く(ここでは200℃以下)、印加圧力が比較的大きいと(ここでは1MPa)、基板の表裏面で残留応力の方向性が変わり、残留応力の差|X1−X2|が大きくなり易い(試料No.2−111)。 これらのことから、加熱温度を200℃超とし、冷却過程を加圧状態とすると共に、徐冷することが好ましいと考えられる。

なお、試験例1の試料No.1−1からNo.1−7,No.1−11からNo.1−20の残留応力の差|X1−X2|は、試験例2の球面試料群と同等程度である。

[試験例3] 試験例1,2で作製した複合部材を半導体素子の放熱部材とし、放熱性を評価した。

この試験では、試験例1,2で作製した複合部材(外縁の平面形状における大きさが約190mm×約140mm×厚さ5mm)について、四隅にボルト孔を設けたものを準備する。この複合部材を用いて、以下のようにして、放熱性の評価部材を作製する。

各複合部材の凹側面における中央(外縁の平面形状における重心箇所)に、絶縁基板を半田で接合し、この絶縁基板上に半導体素子を半田で接合する。ここでは、半導体素子はIGBT素子であり、絶縁基板は、50mm×40mm×0.6mmのDBA基板(Direct Bonded Aluminum)である。半田付け温度はいずれも300℃とする。この半導体素子、絶縁基板、複合部材の積層体を評価部材とする。

30℃に保った水冷式の冷却器に、作製した評価部材をボルトにて締結する。評価部材における複合部材の凸側面を冷却器に押し付け、この状態で複合部材の四隅のボルト孔にボルトを挿通して締め付ける。冷却器に設置した評価部材の半導体素子に通電し、100Wの発熱を生じさせた後、所定時間の通電と非通電とを繰り返す。ここでは、「10分間の通電、10分間非通電で放置」を1サイクルとし、上記の発熱の発生後、2000サイクル繰り返す。1サイクル目の10分間の通電直後の半導体素子の温度(℃)、2000サイクル目の10分間の通電直後の半導体素子の温度(℃)を測定し、その結果を表3に示す。半導体素子の温度の測定は、例えば、半導体素子の内部抵抗の温度依存性から求めることが挙げられる。その他、上記温度の測定には、市販の非接触式温度計や接触式温度計なども利用できる。

更に、試験例1,2と同様にして、冷熱サイクル前後の曲率半径Rの変化率、300℃×1時間の熱処理前後における曲率半径Rの変化率を調べて、試験例1,2と同様に評価した。その結果も表3に示す。

表3に示すように、曲率半径Rが5000mm以上35000mm以下かつ球面誤差Eが10.0μm以下を満たす試料No.3−1,No.3−2,No.3−11からNo.3−16の複合部材は、半導体素子の放熱部材として使用初期から長期に亘り、素子温度が低く、設置対象に良好に熱伝導を行えて、放熱性に優れることが分かる。この試験では、これらの複合部材は、同じ組成の複合部材で比較すると、曲率半径R及び球面誤差Eが上記の範囲外である試料No.3−101,No.3−102,No.3−111,No.3−113,No.3−114と比較して、半導体素子の温度が10℃程度以上低い。このような結果が得られた理由の一つとして、反り部分が球冠に近く(図4,図5も参照)、評価部材を冷却器に均一的に密着できたこと、表3に示すように上記の熱処理や長期に亘り冷熱サイクルを受けても変形し難かったため密着状態を維持できたこと、が考えられる。

また、この試験から、複合部材を構成する複合材料がMg−SiC,Al−SiCのいずれでも、同様な傾向を有すること、Mg−SiCの基板を備える場合の方が半導体素子の温度がより低く、放熱性により優れることが分かる。その他、上記の熱処理時の変形が少ないと(変形率が15%以下、更に10%以下)、半導体素子の温度が低く、放熱性により優れることを確認している。また、上述の冷熱サイクル時の変形が少ないと(変形率が15%以下、更に10%以下)、半導体素子の温度が低く、放熱性により優れることを確認している。

曲率半径R及び球面誤差Eが上述の特定の範囲を満たすものの、金属被覆が厚い試料(No.3−2,No.3−14)は、1サイクル目の半導体素子の温度が低いものの、2000サイクル目の半導体素子の温度が、被覆が無い試料や被覆が薄い試料(No.3−1,No.3−11からNo.3−13,No.3−16)に比較して高い。従って、金属被覆を備える場合には、金属被覆の厚さは50μm未満、更に本例のように20μm以下が好ましいといえる。曲率半径Rが比較的大きい試料(No.3−112)は、曲率半径Rがより小さい試料(例えば、No.3−13)に比較して、半導体素子の温度が高い。この理由の一つとして、曲率半径Rが大きいため、設置対象への加圧を十分に大きくできなかったことが考えられる。更なる良好な密着性、ひいては半導体素子の良好な放熱性などを考慮すると、曲率半径Rは、例えば32000mm以下がより好ましいといえる。

なお、絶縁基板をDBC基板(Direct Bonded Copper)に代えた場合でも、同様の結果となった。

本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。 例えば、上述の試験例1から3において、基板の組成、形状、大きさ(長さ、幅、厚さ)、金属被覆を有する場合にその厚さ、形成方法、複合時の条件などを適宜変更できる。

1 複合部材 10 基板 20 金属 22 非金属 3 放熱部材 5 半導体装置 50 半導体素子 52 絶縁基板 54 半田 10α 測定領域 10c 周縁領域 10e 外縁 G 重心 L1からL10 輪郭抽出直線

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