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Rat embryonic stem cells

阅读:758发布:2024-01-02

专利汇可以提供Rat embryonic stem cells专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且The present invention provides a rat embryonic stem cell characterized by having the following properties of (a) expressing Oct3/4 gene and Nanog gene, (b) positive for alkaline phosphatase activity, (c) having an embryoid body forming ability, (d) expressing SSEA (Stage-Specific Embryonic Antigen)-1 and SSEA-4, (e) having the same number of chromosomes as does a normal rat cell, (f) capable of being subcultured and holding the undifferentiated state, (g) having in vitro pluripotency, (h) having a potential to differentiate for cells of three embryonic germ lineages, (i) having teratoma formation ability, and (j) having an ability to produce a chimeric rat, a method of establishing the aforementioned rat embryonic stem cell and the like.,下面是Rat embryonic stem cells专利的具体信息内容。

  • 以下の(a)〜(j)の性質を有することを特徴とするラット胚性幹細胞:
    (a)Oct3/4遺伝子およびNanog遺伝子を発現する、
    (b)アルカリホスファターゼ活性陽性である、
    (c)胚様体形成能を有する、
    (d)SSEA(胎児ステージ特異的抗原)−1およびSSEA−4を発現する、
    (e)正常ラット細胞と同じ染色体数を有する、
    (f)未分化状態を維持したまま継代培養が可能である、
    (g)インビトロで多分化能を有する、
    (h)三胚葉系列の細胞へと分化する能力を有する、
    (i)奇形腫形成能を有する、
    (j)キメララット作製能を有する。
  • 血清濃度が2%以下である培養液を用いた培養条件下で以下の(A)〜(D)の工程を含むプロセスを行い、工程(B)〜(D)においてrLIFを含有する培養液を用いることを特徴とする製造方法により得られるラット胚性幹細胞:
    (A)ラット胚盤胞をrLIFを含有しない培養液を用いて培養することにより形成させた内部細胞塊を、細胞集塊を保持した状態で解離する工程、
    (B)解離した内部細胞塊を培養することにより出現した初代胚性幹細胞を、継代可能となるまで培養する工程、
    (C)継代可能となった初代胚性幹細胞を、細胞集塊を保持した状態で解離し、継代・培養する工程、
    (D)さらに継代・培養を行うことにより胚性幹細胞を樹立する工程。
  • 培養液が血清代替試薬を含有する、請求項2記載のラット胚性幹細胞。
  • 工程(A)が物理的に内部細胞塊を解離する工程を含む、請求項2または3記載のラット胚性幹細胞。
  • 工程(C)が物理的に胚性幹細胞を解離する工程を含む、請求項2〜4いずれか記載のラット胚性幹細胞。
  • 血清代替試薬、rLIF、および請求項1〜5いずれか記載のラット胚性幹細胞を成分として含有するラット胚性幹細胞培養キット。
  • さらにフィーダー細胞を成分として含有する、請求項6記載の培養キット。
  • フィーダー細胞が胎児由来正常繊維芽細胞である、請求項7記載の培養キット。
  • 請求項1〜5いずれか記載のラット胚性幹細胞を分化誘導剤で刺激することを特徴とする、ラット胚性幹細胞の分化誘導方法。
  • 分化誘導剤がレチノイン酸、増殖因子、グルココルチコイドまたは細胞外基質である、請求項9記載の分化誘導方法。
  • 以下の(i)〜(iii)の工程を含む、組織または細胞の分化誘導剤のスクリーニング方法:
    (i)被験物質を請求項1〜5いずれか記載のラット胚性幹細胞に接触させる工程、
    (ii)ラット胚性幹細胞の分化の有無や程度を評価する工程、
    (iii)上記(ii)の評価結果に基づいて、被験物質が分化誘導に関連する物質であるか否かを判断する工程。
  • 以下の(I)〜(III)の工程を含む、組織または細胞の分化誘導に作用する物質のスクリーニング方法:
    (I)被験物質を請求項1〜5いずれか記載のラット胚性幹細胞に接触させる工程、
    (II)胚性幹細胞の分化誘導条件下で前記(I)のラット胚性幹細胞を培養し、分化の有無や程度を評価する工程、
    (III)上記(II)の評価結果に基づいて、被験物質が分化誘導に作用する物質であるか否かを判断する工程。
  • 請求項1〜5いずれか記載のラット胚性幹細胞の、遺伝子改変ラットの作製における使用。
  • 以下の(X)〜(Z)の工程を含むプロセスを行うことによる遺伝子改変ラットの製造方法:
    (X)請求項1〜5いずれか記載のラット胚性幹細胞に所望の遺伝子を導入する工程、
    (Y)遺伝子導入されたラット胚性幹細胞を含有する移植用卵を調製する工程、
    (Z)移植用卵を偽妊娠させたメスのラットに導入し、仔ラットを産出する工程。
  • 請求項 14記載の製造方法により製造された遺伝子改変ラット。
  • 说明书全文

    本発明は、ラット胚性幹細胞(以下ES細胞)に関する。 より詳細には、本発明は、ラットES細胞、ラットES細胞の製造方法、ラットES細胞の継代培養方法、ラットES細胞を用いた分化誘導関連物質のスクリーニング方法、および遺伝子改変ラットの作製における前記ラットES細胞の使用などに関する。

    ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊より樹立された細胞株で、白血病阻害因子(leukemia inhibitory factor;LIF)の存在下で自己複製することができる細胞である。 培養条件を変えることにより、ES細胞をあらゆる種類の細胞(神経細胞、筋肉細胞、血管内皮細胞、赤血球、白血球、血小板、骨、軟骨、腎臓、腸、肝臓、膵臓、など)に分化させることができる。 ゲノムプロジェクトにより多くの動物種のゲノムが解読され、ヒトとの相同性に関する情報が蓄積されてきた。 これらの情報に基づきES細胞の段階で特定の遺伝子を破壊し、その遺伝子が細胞の分化あるいは個体の成育、恒常性の維持などに果たす役割(機能)を知ることができる。 具体的には特定の遺伝子を破壊したES細胞を正常な宿主の胚盤胞に注入して宿主胚の細胞と混ぜ子宮に戻すとキメラ動物を作ることができ、得られたキメラ動物を交配させることにより特定の遺伝子が破壊された動物(ノックアウト動物)を作製することができる。 また、ES細胞に化合物を作用させることで、様々な細胞(臓器)中の遺伝子に与える影響を評価することができる。 一方、ES細胞を分化させて得られた正常な細胞を用いることで、細胞療法、再生医療が可能となる。 以上のようにES細胞は生理学、薬理学や再生医療等の研究において幅広く応用することができる。 しかしながら、実験動物においてはこれまでマウス(非特許文献1)、アカゲザル(非特許文献2)、マーモセット(非特許文献3)およびカニクイザル(非特許文献4)のES細胞が樹立されたのみであり、ラットES細胞は未だ樹立されていない。

    ラットはマウスに比べて約10倍という実験上適当な大きさを有する哺乳動物であり、(1)細部の血管に容易に薬物投与可能である、(2)外科・移植実験が可能である、そして(3)組織を大量に採取可能である、といった利点を有する。 これまで多くのヒト疾患モデルラットが開発・発見されており、ラットは医学をはじめとする各分野で広範に利用される最も有用な実験動物の一つである。 ラットは過去100年以来、現在も、がん、脳神経系、移植およびヒト多因子疾患などのモデルとして機能研究等に利用され、機能に関する膨大な研究資産の蓄積がある。 特に脳地図の解析が進んでおり、かつ心理生理学における行動の研究においても情報が豊富である。 マウスに比べて最大の弱点であった遺伝子解析についても、ラットゲノムの解析が進んでいることから、ヒトとの遺伝子レベルでの比較が可能となり、ポストゲノムを担う格好の実験動物として着目されている。 実際、平成14年3月に開催された科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会 ライフサイエンス委員会バイオリソース領域小委員会も、ラットが今後我が国で充実すべきバイオリソースの一つであり、ノックアウトラットの産生を目的としたES細胞の樹立が必要であると報告されている。

    このようなラットの有用性とその周辺の遺伝子情報などの充実にもかかわらず、遺伝子改変ラット作製に欠くことの出来ないラットES細胞の樹立は困難を極めていた。 例えば非特許文献5およびその対応の特許出願(特許文献1)には、ラットPVG株よりES細胞を樹立し、キメララットを作製したことが記載されている。 しかしながらその後、非特許文献6において、前記Developmental Biology 1994, 163: 288-292(非特許文献5)で作製したキメララットはマウスES細胞の混入により作製されたとの記載がなされている。 すなわちラットES細胞の樹立およびキメララットの作製には成功しなかったことが示されている。 また、他にもラットES細胞の樹立を試みた例はあるが(特許文献2及び特許文献3を参照)、いずれもその樹立には到っていない。
    このように、これまでに複数の研究グループがラットES細胞株の樹立を試みているが、樹立には到っておらず、2004年1月に米国キーストンにて開催されたSTEM CELL国際会議においてもラットES細胞の樹立は世界中で報告は無いとの認識であった。 ラットES細胞の樹立の成功の鍵を握るのはES細胞作製の培養条件の設定である。 これまでマウスES細胞の樹立および培養条件を基本にして樹立が試みられてきたが、ラットES細胞の樹立には到っていない。 このような背景から、ラットES細胞の作出には培養条件の工夫が必要不可欠であると考えられている。

    Evans MJ et al., Nature 1981, 292: 154-156 Thomson JA et al., Proc.Natl.Acad.Sci. USA 1995, 92: 7844-7848) Thomson JA, et al., Cur. Top. Dev. Biol. 1998, 38: 133-165 Suemori H, et al., Methods Enzymol. 2003, 365: 419-429 Iannaccone PM et al., Developmental Biology 1994, 163: 288-292 Brenin D., et al., Developmental Biology 1997, 185: 124-125

    WO 95/06716号公報

    WO 99/27076号公報

    特開2002-176973号公報

    本発明の目的は、従来得ることのできなかったラットES細胞を提供することにある。 またラットES細胞の樹立方法、製造方法、ラットES細胞の継代培養方法、ラットES細胞を用いた分化誘導関連物質のスクリーニング方法、および遺伝子改変ラットの作製における前記ラットES細胞の使用などを提供することにある。

    本発明者らは、種々の系統のラットに由来する胚盤胞からラットES細胞の樹立を試みた結果、マウスES細胞とは全く異なる培養条件・継代条件を確立することにより、ラットES細胞株を樹立することに成功した。 具体的には、実質的に血清を含有しない培養液を用い、内部細胞塊の単離及びES細胞の継代において物理的手法により樹立を試みるなど種々の工夫をこらすことにより、安定的かつES細胞の条件を全て満たしたラットES細胞を樹立・供給することに初めて成功した。
    本発明はこのような知見に基づき完成するに至ったものである。
    すなわち本発明は、下記に掲げるものである:
    (1) 以下の(a)〜(j)の性質を有することを特徴とするラット胚性幹細胞:
    (a) Oct3/4遺伝子およびNanog遺伝子を発現する、
    (b) アルカリホスファターゼ活性陽性である、
    (c) 胚様体形成能を有する、
    (d) SSEA(胎児ステージ特異的抗原)-1およびSSEA-4を発現する、
    (e) 正常ラット細胞と同じ染色体数を有する、
    (f) 未分化状態を維持したまま継代培養が可能である、
    (g) インビトロで多分化能を有する、
    (h) 三胚葉系列の細胞へと分化する能を有する、
    (i) 奇形腫形成能を有する、
    (j) キメララット作製能を有する、
    (2) さらに(k) 20%血清存在下での培養により分化する、という性質を有する、前記(1)記載のラット胚性幹細胞、
    (3) 実質的に血清を含有しない培養液を用いた培養条件下で以下の(A)〜(D)の工程を含むプロセスを行うことにより得られる、ラット胚性幹細胞:
    (A) ラット胚盤胞を培養することにより形成させた内部細胞塊を、細胞集塊を保持した状態で解離する工程、
    (B) 解離した内部細胞塊を培養することにより出現した初代胚性幹細胞を、継代可能となるまで培養する工程、
    (C) 継代可能となった初代胚性幹細胞を、細胞集塊を保持した状態で解離し、継代・培養する工程、
    (D) さらに継代・培養を行うことにより胚性幹細胞を樹立する工程、
    (4) 培養液が血清代替試薬を含有する、前記(3)記載の胚性幹細胞、
    (5) 工程(A)が物理的に内部細胞塊を解離する工程を含む、前記(3)または(4)記載の胚性幹細胞、
    (6) 工程(C)が物理的に胚性幹細胞を解離する工程を含む、前記(3)〜(5)いずれか記載の胚性幹細胞、
    (7) 工程(A)においてラット由来白血病阻害因子(rLIF)を含有しない培養液を用いる、前記(3)〜(6)いずれか記載の胚性幹細胞、
    (8) 工程(B)〜(D)においてrLIFを含有する培養液を用いる、前記(3)〜(7)いずれか記載の胚性幹細胞、
    (9) 培養においてフィーダー細胞を用いる、前記(3)〜(8)いずれか記載の胚性幹細胞、
    (10) フィーダー細胞が胎児由来正常繊維芽細胞である、前記(9)記載の胚性幹細胞、
    (11) ウイスターキョウト株(WKY)、ウイスターハノーバーギャラス株(WHG)及びブラウンノルウエー株(BN)のいずれかの系統に由来する、前記(1)〜(10)いずれか記載の胚性幹細胞、
    (12) 実質的に血清を含有しない培養液を用いた培養条件下で以下の(A)〜(D)の工程を含むプロセスを行うことを特徴とする、マウス以外の胚性幹細胞の製造方法:
    (A) ラット胚盤胞を培養することにより形成させた内部細胞塊を、細胞集塊を保持した状態で解離する工程、
    (B) 解離した内部細胞塊を培養することにより出現した初代胚性幹細胞を、継代可能となるまで培養する工程、
    (C) 継代可能となった初代胚性幹細胞を、細胞集塊を保持した状態で解離し、継代・培養する工程、
    (D) さらに継代・培養を行うことにより胚性幹細胞を樹立する工程、
    (13) マウス以外の胚性幹細胞がラット胚性幹細胞である、前記(12)記載の製造方法、
    (14) 培養液が血清代替試薬を含有する、前記(12)または(13)記載の製造方法、
    (15) 工程(A)が物理的に内部細胞塊を解離する工程を含む、前記(12)〜(14)いずれか記載の製造方法、
    (16) 工程(C)が物理的に胚性幹細胞を解離する工程を含む、前記(12)〜(15)いずれか記載の製造方法、
    (17) 工程(A)においてrLIFを含有しない培養液を用いる、前記(12)〜(16)いずれか記載の製造方法、
    (18) 工程(B)〜(D)においてrLIFを含有する培養液を用いる、前記(12)〜(17)いずれか記載の製造方法、
    (19) 培養においてフィーダー細胞を用いる、前記(12)〜(18)いずれか記載の製造方法、
    (20) フィーダー細胞が胎児由来正常繊維芽細胞である、前記(19)記載の製造方法、
    (21) ラット胚性幹細胞がウイスターキョウト株(WKY)、ウイスターハノーバーギャラス株(WHG)及びブラウンノルウエー株(BN)のいずれかの系統に由来する、前記(13)〜(20)いずれか記載の製造方法、
    (22) 細胞集塊を保持した状態で解離し継代することを特徴とする、マウス以外の胚性幹細胞の継代培養方法、
    (23) マウス以外の胚性幹細胞がラット胚性幹細胞である、前記(22)記載の継代培養方法、
    (24) 物理的に細胞を解離する工程を含む、前記(22)または(23)記載の継代培養方法、
    (25) 実質的に血清を含有しない培養液を用いて培養することを特徴とする、前記(22)〜(24)いずれか記載の継代培養方法、
    (26) 培養液が血清代替試薬を含有するものである、前記(25)記載の継代培養方法、
    (27) 培養液がrLIFを含有するものである、前記(25)または(26)記載の継代培養方法、
    (28) 血清代替試薬およびrLIFを含有する、マウス以外の胚性幹細胞用培養液、
    (29) マウス以外の胚性幹細胞がラット胚性幹細胞である、前記(28)記載の培養液、
    (30) 血清代替試薬およびrLIFを成分として含有する、マウス以外の胚性幹細胞培養キット、
    (31) マウス以外の胚性幹細胞がラット胚性幹細胞である、前記(30)記載の培養キット、
    (32) さらに前記(1)〜(11)いずれか記載のラット胚性幹細胞を成分として含有する、前記(31)記載の培養キット、
    (33) さらにフィーダー細胞を含有する、前記(30)〜(32)いずれか記載の培養キット、
    (34) フィーダー細胞が胎児由来正常繊維芽細胞である、前記(33)記載の培養キット、
    (35) 前記(1)〜(11)いずれか記載のラット胚性幹細胞を分化誘導剤で刺激することを特徴とする、ラット胚性幹細胞の分化誘導方法、
    (36) 分化誘導剤がレチノイン酸、増殖因子、グルココルチコイドまたは細胞外基質である、前記(35)記載の分化誘導方法、
    (37) 前記(1)〜(11)いずれか記載のラット胚性幹細胞を分化誘導して得られた細胞、
    (38) 前記(1)〜(11)いずれか記載のラット胚性幹細胞に由来するcDNAライブラリー、ゲノムライブラリーまたは細胞抽出物、
    (39) 以下の (i)〜(iii)の工程を含む、組織または細胞の分化誘導剤のスクリーニング方法:
    (i) 被験物質を前記(1)〜(11)いずれか記載のラット胚性幹細胞に接触させる工程、
    (ii) ラット胚性幹細胞の分化の有無や程度を評価する工程、
    (iii) 上記(ii)の評価結果に基づいて、被験物質が分化誘導に関連する物質であるか否かを判断する工程、
    (40) 以下の (I)〜(III)の工程を含む、組織または細胞の分化誘導に作用する物質のスクリーニング方法:
    (I) 被験物質を前記(1)〜(11)いずれか記載のラット胚性幹細胞に接触させる工程、
    (II) 胚性幹細胞の分化誘導条件下で前記(I)のラット胚性幹細胞を培養し、分化の有無や程度を評価する工程、
    (III) 上記(II)の評価結果に基づいて、被験物質が分化誘導に作用する物質であるか否かを判断する工程、
    (41) 前記(1)〜(11)いずれか記載のラット胚性幹細胞の、遺伝子改変ラットの作製における使用、
    (42) 遺伝子改変ラットがキメララット、ノックアウトラット、ノックインラット、トランスジェニックラットおよびノックダウンラットのいずれかである、前記(41)記載の使用、
    (43) 以下の(X)〜(Z)の工程を含むプロセスを行うことによる遺伝子改変ラットの製造方法:
    (X) 前記(1)〜(11)いずれか記載のラット胚性幹細胞に所望の遺伝子を導入する工程、
    (Y) 遺伝子導入されたラット胚性幹細胞を含有する移植用卵を調製する工程、
    (Z) 移植用卵を偽妊娠させたメスのラットに導入し、仔ラットを産出する工程、
    (44) 前記(43)記載の製造方法により製造された遺伝子改変ラット、
    (45) 遺伝子改変ラットがキメララット、ノックアウトラット、ノックインラット、トランスジェニックラットおよびノックダウンラットのいずれかである、前記(44)記載のラット、
    (46) 実質的に血清を含有しない培養液を用いた培養条件下で以下の(A)〜(D):
    (A) ラット胚盤胞を培養することにより形成させた内部細胞塊を、細胞集塊を保持した状態で解離する工程、
    (B) 解離した内部細胞塊を培養することにより出現した初代胚性幹細胞を、継代可能となるまで培養する工程、
    (C) 継代可能となった初代胚性幹細胞を、細胞集塊を保持した状態で解離し、継代・培養する工程、
    (D) さらに継代・培養を行うことにより胚性幹細胞を樹立する工程、
    の工程を含むプロセスを行うことにより得られ、かつ以下の(a)〜(j):
    (a) Oct3/4遺伝子およびNanog遺伝子を発現する、
    (b) アルカリホスファターゼ活性陽性である、
    (c) 胚様体形成能を有する、
    (d) SSEA(胎児ステージ特異的抗原)-1およびSSEA-4を発現する、
    (e) 正常ラット細胞と同じ染色体数を有する、
    (f) 未分化状態を維持したまま継代培養が可能である、
    (g) インビトロで多分化能を有する、
    (h) 三胚葉系列の細胞へと分化する能力を有する、
    (i) 奇形腫形成能を有する、
    (j) キメララット作製能を有する、
    の性質を有することを特徴とするラット胚性幹細胞、
    (47) さらに(k) 20%血清存在下での培養により分化する、という性質を有する、前記(46)記載のラット胚性幹細胞、ならびに(48) ウイスターキョウト株(WKY)、ウイスターハノーバーギャラス株(WHG)及びブラウンノルウエー株(BN)のいずれかの系統に由来する、前記(46)または(47)記載の胚性幹細胞。

    図1は、ラットES細胞樹立に用いたラット胚盤胞(後期)の写真である。

    図2は、ラットES細胞樹立に用いたマイトマイシンC処理を施した正常マウス胎児繊維芽細胞(フィーダー細胞)の写真である。

    図3は、ラットES細胞樹立後におけるラットLIFの添加の必要性について検討した結果を示す図である。 開始時は継代5代目で、同一培養皿から各濃度のrLIFを添加した培養液にて3回継代した時のアルカリホスファターゼ活性陽性率を調べた結果を示している。

    図4は、培養液における血清の有無の検討結果を示す写真である。 それぞれ、(A)20% 血清代替試薬(KSR)を用いたラット由来内部細胞塊の形成写真、(B)20% ウシ胎仔血清を用いたラット由来内部細胞塊の形成写真、(C)20% 血清代替試薬(KSR)を用いて作製したラット由来内部細胞塊を、20% 血清代替試薬(KSR)を添加したラットES細胞用培養液とフィーダー細胞とを用いて培養した場合の形態写真、(D)20% ウシ胎仔血清を用いて作製したラット由来内部細胞塊を、20% ウシ胎仔血清を添加したラットES細胞用培養液とフィーダー細胞とを用いて培養した場合の形態写真である。

    図5は、5〜20個の細胞集塊状態でラットES細胞を継代した場合(a))と、トリプシン・EDTA溶液で完全に単一細胞化して継代した場合(b))とを比較した結果を示す写真である。 単一細胞化することにより自発的分化が発生する。

    図6は、ラットES細胞樹立法の概略を示す図である。

    図7は、フィーダー細胞とラットES細胞樹立用培養液とを用いて、透明帯を除去したラット胚盤胞を培養し、内部細胞塊を形成させた写真である。 矢印は形成させた内部細胞塊を示している。

    図8は、ラット由来内部細胞塊をラットES細胞用培養液とフィーダー細胞を用いて培養し、出現した初代ラットES細胞の写真である。

    図9は、ES細胞コロニー出現から7日目の、継代可能となった状態のラットES細胞の写真である。

    図10は、ラットES細胞用培養液とフィーダー細胞を用いて、安定的に増殖および継代可能となったラットES細胞(樹立ラットES細胞)の細胞群を示す写真である。 図中矢印はラットES細胞塊を示す。

    図11は、樹立したラットES細胞の形態を示した写真である。 a)は100倍、b)は200倍、c)は400倍の写真である。

    図12は、樹立したラットES細胞が未分化マーカー遺伝子を発現していることを示すRT-PCRの写真である。 ES細胞の代表的な未分化マーカー遺伝子であるOct 3/4遺伝子およびNanog遺伝子の発現の有無を調べた。 コントロールとしてβアクチンの遺伝子発現も分析した。

    図13は、樹立したラットES細胞が未分化能を有していることを証明する代表的な指標の一つであるアルカリホスファターゼ活性を示す写真である。

    図14は、樹立したラットES細胞の胚様体形成能を分析した結果を示す写真である。 約20日目に心筋様に鼓動(矢印)する胚様体が多数確認された。

    図15は、樹立した細胞がES細胞であることを示す指標マーカー抗体4種類((A): SSEA-1、(B): SSEA-4、(C): TRA-1-60、(D): TRA-1-81)を用いて免疫染色を行った結果を示す写真である。

    図16は、樹立したラットES細胞をGバンド法にて染色体数を解析した写真である。 正常ラット細胞の染色体数(2n=42)を示している。

    図17は、樹立したラットES細胞の継代回数と未分化維持能力(アルカリホスファターゼ活性)の関係を示すグラフである。 開始は継代回数5代目からで、以後、5代目毎にアルカリホスファターゼ活性染色を行った。 縦軸は陽性ES細胞コロニー数を全ES細胞コロニー数で割った値を百分率にして示しており、横軸は継代回数を示している。

    図18は、樹立したラットES細胞がインビトロ系において多分化能を有していることを示す写真である。 胚様体形成開始7日後に、ゼラチンコート培養皿に胚様体を移し、自発的分化誘導を行った。 (a)ラットES細胞由来神経様細胞の写真、(b)図(a)の四で囲った領域を拡大した写真、(c)ラットES細胞由来脂肪様細胞の写真、(d)ラットES細胞由来上皮様細胞の写真。

    図19は、樹立したラットES細胞に対する血清・LIF添加の影響を調べた結果を示す写真である。 図中「ラットLIF+20%FBS」はラットLIF(rLIF)含有、20%血清含有条件下で培養した結果を、「無血清」はLIF無添加、無血清(20%KSR含有)条件下で培養した結果を、「マウスLIF+無血清」はマウスLIF(mLIF)含有、無血清(20%KSR含有)条件下で培養した結果を、また「ラットLIF+無血清」はラットLIF(rLIF)含有、無血清(20%KSR含有)条件下で培養した結果を、それぞれ示す。

    図20は、各ラット(WKY、WHG及びBN)からES細胞を樹立した結果を示す写真である。 上図:各ラットの胚盤胞から形成させた内部細胞塊の写真。 図中、矢印は形成させた内部細胞塊を示している。 下図:継代5代目の樹立ES細胞の写真。 図中、WKYrESはWKYラットから樹立したES細胞を、WHGrESはWHGラットから樹立したES細胞を、またBNrESはBNラットから樹立したES細胞を、それぞれ示す。

    図21は、樹立したラットES細胞(WKYラットES細胞)がES細胞マーカー遺伝子を発現していることを示すRT-PCRの写真である。 ES細胞の代表的なマーカー遺伝子であるOct3/4、Rex-1、NanogおよびERasの各因子の遺伝子発現を解析した。 コントロールとしてβアクチン遺伝子の発現も解析した。 レーン1: 未分化ラットES細胞、レーン2:マウス繊維芽細胞、レーン3:鋳型DNA無添加(コントロール)。 各々からRNAを抽出し、RT-PCRを行った。

    図22は、樹立したラットES細胞(WHGラットES細胞)から形成させた胚様体が三胚葉系列の細胞へ分化していることを示すRT-PCRの写真である。 図中、左側は各マーカー遺伝子の名称を示しており、TUJ1は beta3-tublinを、MSI-1は musashi-1を、GFAPは glial fibrillary acidic proteins alphaを、CCCは cardiac dihydropyridine-sensitive calcium channel proteinを、ANFは atrial natriuretic factorを、ALBは albuminを、TDOは tryptophan 2,3-dioxygenaseを、TATは tyrosine aminotransferaseを、G6Pは glucose-6-phospataseを、そしてACTはβアクチンを、それぞれ示す。 レーン1:未分化ラットES細胞、レーン2:ラットES細胞由来胚様体、レーン3:コントロール(鋳型DNA無添加)、レーン4:WHG個体由来の各臓器(脳、心臓、肝臓)。 各々からRNAを抽出し、RT-PCRを行った。

    図23は、樹立したラットES細胞(WHGラットES細胞)のマウス皮下への移植によりテラトーマが形成されたこと、及びこのテラトーマが三胚葉構造を有することを示した写真である。 a):WHGラットES細胞を免疫不全マウス皮下に移植し、テラトーマが形成されたマウスの写真。 首元のコブがテラトーマである。 b):摘出したテラトーマの写真。 図中サイズバーは1cmである。 c):テラトーマを切片化し、ヘマトキシリン・エオジン染色した組織像。 左上は腺構造、右上は血管内皮様構造、左下は腸管様構造、右下は骨細胞様構造を、それぞれ示す。

    図24は、樹立した遺伝子導入ラットES細胞(pCAG-EGFP/WHGrES細胞)を用いて作製したキメララットにおいて、殆どの組織でEGFPが発現していることを示したゲノムPCRの写真である。 上図はpCAG-EGFP/WHGrES細胞を用いて作製したキメララットの結果を示し、下図は野生型ラットの結果を示す。 レーン1:脳、レーン2:胸腺、レーン3:心臓、レーン4:食道、レーン5:肺、レーン6:胃、レーン7:膵臓、レーン8:小腸、レーン9:大腸、レーン10:肝臓、レーン11:脾臓、レーン12:腎臓、レーン13:精巣、レーン14:血管、レーン15:筋肉。 各々の組織から染色体DNAを抽出し、ゲノムPCRを行った。

    図25は、GFPキメララットの各組織(腎臓、骨格筋および胃)を切片化し、GFP抗体を用いて免疫染色を行った写真である。

    本発明は、従来の手法では得ることのできなかったラットES細胞を初めて提供するものである。
    本発明のラットES細胞は、実質的に血清を含有しない培養液を用いた培養条件下において、以下の(A)〜(D)の工程:
    (A) ラット胚盤胞を培養することにより形成させた内部細胞塊を、細胞集塊を保持した状態で解離する工程、
    (B) 解離した内部細胞塊を培養することにより出現した初代ES細胞を、継代可能となるまで培養する工程、
    (C) 継代可能となった初代ES細胞を、細胞集塊を保持した状態で解離し、継代・培養する工程、
    (D) さらに継代・培養を行うことによりES細胞を樹立する工程、
    を含むプロセスを行うことにより、樹立、製造することができる。
    本発明のラットES細胞の樹立方法の特徴は、(1)胚盤胞、内部細胞塊およびES細胞の培養全般において実質的に血清を含有しない培養液を用いる点と、(2)内部細胞塊やES細胞の解離(剥離)を行うステップにおいて、細胞を単一化することなく、ある程度の細胞集塊を保持した状態で解離(剥離)を行う点である。
    以下、本発明のラットES細胞の樹立方法、樹立ラットES細胞の性質分析法、ならびにラットES細胞の継代培養方法等につき説明する。

    1.ラット 本発明のラットES細胞の由来となるラットは、前記本発明の樹立方法の特徴に基づきES細胞を樹立できるものであれば、如何なる系統のラットであっても良い。 例えば Wistar Kyoto株(WKY)、Brown Norway株(BN)、Goto-Kakizaki株(GK)、SD株、F344/Du株(Fischer)、Wister株, Wister Hannover株、ACI株などの系統のラットから選択される。

    2.フィーダー細胞 本発明のラットES細胞の樹立および樹立後の培養においてはフィーダー細胞を用いることが好ましい。 フィーダー細胞としては当業者に入手可能な如何なる種由来のフィーダー細胞であっても良いが、ライン化されたフィーダー細胞よりも正常繊維芽細胞を用いることが好ましい。 具体的にはマウス胎児の正常繊維芽細胞が挙げられる。 より具体的には、妊娠12日〜16日目のマウス胎児繊維芽細胞の初代培養細胞(正常繊維芽細胞)が挙げられ、当該正常繊維芽細胞としては、例えばマウスICRの胎児12.5日目の正常繊維芽細胞が例示される。 当該フィーダー細胞は常法により調製することもできれば、市販品(マウス繊維芽細胞、旭テクノグラス株式会社等)を利用することもできる。 当該フィーダー細胞は、マイトマイシンC等で処理して不活性化して用いることが好ましい。

    3.培養液 本発明のラットES細胞の製造(樹立・培養)においては、実質的に血清を含有しない培養液を用いる。 ここで「実質的に血清を含有しない」とは、血清の影響によりラットES細胞がES細胞としての性質を示さなくなる(例えばアルカリホスファターゼ活性が陰性となる)程の血清を含有しないことを意味し、具体的には血清濃度が10%以下であること、好ましくは5%以下であること、より好ましくは2%以下であることを意味する。 さらに好ましくは血清を含有しない無血清培地を用いる。 この場合、血清の代わりとなる試薬を添加する必要があり、具体的には、血清代替試薬(KSR:ギブコBRL)などが用いられる。 当該血清代替試薬は20%程度の濃度で用いることが好ましい。
    またラット由来白血病阻害因子(rLIF)に関しては、胚盤胞から内部細胞塊を形成・分離するまでの段階では、ラットLIF(rLIF)を含有しない培養液を用いることが好ましい。 一方、内部細胞塊形成以降の段階(樹立したラットES細胞の培養、継代も含む)においては、rLIFを含有する培養液を用いることが好ましい。 濃度としては培養液1mlあたり rLIFを100単位以上添加することが好ましく、1000単位程度、若しくはそれ以上添加することがより好ましい。 当該rLIFは市販品(ケミコン社)を利用することができる。
    培養液中のその他の成分に関しては、ES細胞の培養に通常用いられる成分を、当業者の常識の範囲で組み合わせ培養液中に適宜含有させる。
    以下に、培養液の具体的組成を例示する。

    1)ラットES細胞樹立用培養液 胚盤胞から内部細胞塊を形成するまでの段階で使用する培養液を、「ラットES細胞樹立用培養液」と称する。
    (組成の具体例)
    ダルベッコ改変イーグル培地/F12 (旭テクノグラス、東京、日本) 380 ml
    0.2M L-グルタミン 5 ml
    血清代替試薬(KSR: ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本) 100 ml
    非必須アミノ酸(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本)5 ml
    生物質-抗菌物質溶液(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本)5 ml
    100 mM Na-Pyruvate 5 ml
    0.1M βメルカプトエタノール 0.5 ml

    2)ラットES細胞用培養液 内部細胞塊形成以降の培養(樹立ラットES細胞の培養も含む)において使用する培養液を、「ラットES細胞用培養液」と称する。
    (組成の具体例)
    ダルベッコ改変イーグル培地/F12 (旭テクノグラス、東京、日本) 375 ml
    0.2M L-グルタミン 5 ml
    血清代替試薬(KSR: ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本) 100 ml
    非必須アミノ酸(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本) 5 ml
    100倍ヌクレオシド保存液 5 ml
    (アデノシン 4 mg、グアノシン 4.25 mg、シチジン 3.65 mg、ウリジン 3.65 mg、チミジン 1.2 mg)
    抗生物質-抗菌物質溶液(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本) 5 ml
    100 mM Na-Pyruvate 5 ml
    0.1M βメルカプトエタノール 0.5 ml
    1000U ラット由来白血病阻害因子(rLIF)
    このうちラット由来白血病阻害因子(rLIF)は、要時に添加して混合するのが好ましい。

    4.培養条件 本発明のラットES細胞の製造(樹立・培養)における細胞の培養温度は、35℃〜37.5℃の範囲内であれば良く、好ましくは37℃である。 培養は、通常の培養に用いられる5% CO 2培養装置中で行われる。

    5.ラットES細胞の樹立方法 以下本発明のラットES細胞の樹立方法につき具体例を示す。

    1)卵(胚盤胞期胚)の採取 卵採取用のラットとしては、前記したWistar Kyoto株(WKY)、Brown Norway株(BN)、Goto-Kakizaki株(GK)、SD株、F344/Du株(Fischer)、Wister株、 Wister Hannover株、ACI株といった系統のラットから選択される。 週齢は8週齢〜40週齢の範囲内であれば使用可能であるが、好ましくは10週齢〜20週齢のラットが用いられ、より好ましくは10週齢〜12週齢のラットが用いられる。
    卵の採取は当業者に知られた常法により行えば良い。 具体的にはラットを自然交配させ、膣栓確認3日目頃に採卵用メスラットをと殺し子宮を摘出する。 この子宮を適当な培地で灌流することにより、受精卵(胚)を回収する。 ここで灌流に用いる培養液としては、例えばmw培地(NaCl 640.0 mg/100 ml, KCl 35.6 mg/100 ml, KH 2 PO 4 16.2 mg/100 ml, MgSO 4 -7H 2 O 29.4 mg/100 ml, NaHCO 3 190.0 mg/ 100 ml, Glucose 100.0 mg/ 100 ml, Na-Pyruvate 2.5 mg/ 100 ml, Ca-lactate 46.0 mg/ 100 ml, Streptomycin 5.0 mg/ 100 ml, Penicillin 7.5 mg/ 100 ml, 0.5% phenrol red 0.2 ml, 20mM beta-ME 10 μl, 100mM EDTA-2Na 10 μl, BSA 300.0 mg/ 100 ml)やM2培地(Calcium Chloride-2H20 0.251 g/ L, Magnesium Sulfate 0.143 g/L Potassium Chloride 0.356 g/ L, Potassium Phosphate 0.162 g/ L, Sodium Chloride 5.532 g/ L, Albumin 4.0 g/ L, D-glucose 1.0 g/ L, HEPES 4.969 g/ L, Phenol Red-Na 0.01 g/ L, Pyruvic Acid-Na 0.036 g/ L, Sodium Bicarbonate 0.35 g/ L, Penicillin G 0.06 g/ L, Streptomycin Sulfate 0.05 g/ L, DL-Lactic Acid 4.349 g/ L)などが挙げられる。
    回収された胚は、mw培地、M2、M16等の培養液中で培養を行う。
    培養により受精卵(胚)から桑実胚を経て胚盤胞(胚盤胞期胚)まで発生を進める。 この段階まで発生を進めるためには通常、37℃、5% CO 2培養装置内にて一晩培養を行う。 胚盤胞まで発生が進んだことは、顕微鏡で観察することにより確認することができる。 好ましくは、胚盤胞後期段階まで発生を進める。

    2)内部細胞塊の形成・分離 前記1)で得られた胚盤胞を顕微鏡下にて確認した後、透明帯を除去する。 透明帯の除去は、酸性タイロイド(pH2.5)、ヒアルロニダーゼ、プロナーゼ等を用いて行う。 その後、マイトマイシンC処理を施したフィーダー細胞をゼラチンコート培養皿に播種し、透明帯を除去したラット胚盤胞を5〜10個ずつ移し、ラットES細胞樹立用培養液にて培養を開始する。
    培養から1〜4日目にフィーダー細胞上に透明帯を除去したラット胚盤胞(後期段階)が接着する。 接着後5〜10日目に胚盤胞から出現した内部細胞塊を200μlのピペットなどを用いて物理的に分離する。 この分離した内部細胞塊をラットES細胞樹立用培養液を含有する滅菌チューブ等に移し、5個〜20個程度の細胞からなる細胞集塊になるまで解離する。 その際、トリプシン・EDTAなどの蛋白分解酵素を用いた解離は行わず、ピペット等を用いて物理的に内部細胞塊を解離する。 また細胞が単一化されるまで解離を行うことは避け、前記のように5個〜20個程度の細胞からなる細胞集塊を保持する程度に解離を行う。 ここで細胞集塊を保持した状態であることは顕微鏡下で確認することができる。

    3)ES細胞の樹立 フィーダー細胞を播種したゼラチンコート培養皿において、前記2)で解離した内部細胞塊をラットES細胞用培養液で培養する。 通常、培養から2〜4日目に初代ES細胞コロニーが出現する。 初代ES細胞コロニーの出現は顕微鏡下で観察することにより確認することができる(出現したES細胞を「初代ES細胞」と称する)。 その後 5〜10日程度培養を続行することにより、初代ES細胞コロニーが継代可能な状態となる。 ここで「継代可能な状態」とは、形成された初代ES細胞コロニーを構成している細胞数が200〜600個前後に達し、かつ各細胞間が緊密になった状態を指す。 このような形態となったことを顕微鏡下にて確認しながら、200μlのピペット等を用いて当該ES細胞コロニーを分離する。 この分離したES細胞コロニーをラットES細胞用培養液を含有する滅菌チューブ等に移し、5個〜20個程度の細胞からなる細胞集塊になるまで解離する。 この段階においても細胞が単一化されるまで解離を行うことは避け、前記のように細胞集塊を保持する程度に解離を行う。 またこの段階においても、トリプシン・EDTA等の蛋白分解酵素を用いた細胞解離は行わず、物理的に解離することが望ましい。 解離したES細胞コロニーは、フィーダー細胞を播種したゼラチンコート培養皿においてラットES細胞用培養液で初代培養を行う(継代1代目の細胞)。 培養から2〜4日程度でES細胞コロニーが出現し、5〜10日程度で継代可能な状態となる。
    以降の細胞継代は、細胞が単一化されない状態、すなわち5個〜20個程度の細胞からなる細胞集塊を維持した状態を保てば、当業者の常識の範囲内で継代を行うことができるが、トリプシン・EDTA等の蛋白分解酵素による処理は最低限にとどめ、物理的手段により細胞解離を行うことが望ましい。 以下に具体例を示す。
    前記において継代可能となったES細胞コロニーから培養液を除去し、室温に戻したPBS(-)にて洗浄し、予め37℃に保温した2.5% トリプシンを全面に塗り広げる。 トリプシンの量としては60mmディッシュあたり500μl程度、若しくはそれ以下であることが好ましい。 トリプシンを全面に塗り広げた後は、ただちに溶液を除去する。 顕微鏡下にて全体の7割以上のES細胞コロニーがフィーダー細胞から剥離してくる状態を確認し、ただちにトリプシン処理を停止させる。 ここでトリプシン処理を停止させるためには、例えば10% ウシ胎仔血清を含む培養液を添加することが容易であるが、大量の無血清培養液等を加えてトリプシンの濃度を希釈することにより停止させても良い。 その後、5mlピペット等を用いて更に物理的にES細胞コロニーを剥離させ、細胞懸濁溶液を遠心(室温で1000rpm、3分程度)にて細胞と培養液とに分離し、細胞のみを回収する。 ラットES細胞用培養液で細胞を懸濁し、完全に単一化するのでは無く、顕微鏡下にて5〜20個の細胞塊を形成している状態を確認し、フィーダー細胞を播種したゼラチンコート培養皿に移し培養を行う(継代2代目の細胞)。
    その後は、約5〜10日毎に継代可能な状態となるため、前記継代1代目の細胞の継代(継代2代目の細胞への継代)と同様の継代方法により継代・培養を続行することができる。
    細胞集塊の数や細胞集塊を構成する細胞数が安定化した段階をもって、ES細胞が樹立されたと判断する。 具体的には、継代3代目以降、望ましくは継代5代目以降の細胞を、樹立したラットES細胞と判断することができる。 樹立ラットES細胞を商品として供給する場合は、1系統における安定した供給量を保持するために、継代3代目以降、好ましくは継代5代目以降、より好ましくは継代10代目以降の細胞を商品化の対象とする。

    6.本発明のラットES細胞 本発明のラットES細胞は、以下の(a)〜(j)の性質:
    (a) Oct3/4遺伝子およびNanog遺伝子を発現する、
    (b) アルカリホスファターゼ活性陽性である、
    (c) 胚様体形成能を有する、
    (d) SSEA(胎児ステージ特異的抗原)-1およびSSEA-4を発現する、
    (e) 正常ラット細胞と同じ染色体数を有する、
    (f) 未分化状態を維持したまま継代培養が可能である、
    (g) インビトロで多分化能を有する、
    (h) 三胚葉系列の細胞へと分化する能力を有する、
    (i) 奇形腫形成能を有する、
    (j) キメララット作製能を有する、
    を含有することを特徴とする。
    本発明は、前記(a)〜(j)に示したES細胞としての性質を全て保持したラットES細胞をはじめて提供するものである。 樹立したラットES細胞がES細胞としての性質を保持していること、すなわち未分化状態(全能性)を維持したES細胞としての性質を保持していることは、以下の手法により解析することができる。

    1) 未分化マーカーの発現
    ES細胞であることを特徴づける決定的な因子として、Oct3/4(Okamoto,K. et al., Cell,60: 461-472(1990)、Scholer,HR et al., EMBO J. 9: 2185-2195(1990))およびNanog(Mitsui,K., et al., Cell,113: 631-642(2003)、Chambers I.,et al., Cell,113: 643-655(2003))が知られている。 これらの遺伝子の発現は、ラット Oct3/4およびNanog特異的なプライマーを用いたRT-PCRを行うことにより確認することができる。 ここで用いられるラットOct3/4およびNanog特異的なプライマーとしては、実施例に記載のプライマー(Oct 3/4:5'-ATGGACTACCCAGAACCCCAG-3'(配列番号:3)、5'-TTACAGGAGCTGCAGTTATAC-3'(配列番号:4)、Nanog:5'-TAGCCCTGATTCTTCTAGCA-3'(配列番号:5)、5'-TTTGCTGCAACGGCACATAA-3'(配列番号:6))を例示することができる。

    2)アルカリホスファターゼ活性 未分化ES細胞ではアルカリホスファターゼが大量に発現している。 当該アルカリホスファターゼの発現は、市販の種々のアルカリホスファターゼ検出キットを用いることにより容易に測定することができる。 当該検出キットとしては、例えばALP組織染色キット(Sigma社)やベクターレッドアルカリホスファターゼ基質キットI(フナコシ)などが挙げられる。

    3) 胚様体形成能
    ES細胞をフィーダー細胞やLIFの存在しない条件下で非コート培養皿を用いて培養することにより、胚様体が形成されることが知られている(Roy. S. et al., Mol. Cell. Biol., 18: 3947-3955 (1998))。 胚様体の形成は、ラットES細胞を非コート培養皿にてLIFを除いたラットES細胞用培養液を用いて7日間〜14日間程度培養し、顕微鏡下で細胞が凝集して形成される球状体の出現を観察することにより確認することができる。

    4) 細胞表面抗原の発現
    ES細胞をはじめとする多能性幹細胞の分化を同定する指標の一つとして、分化段階特異的に発現量が変化する細胞表面抗原の検出が挙げられる。 本発明のラットES細胞は SSEA(胎児ステージ特異的抗原)-1およびSSEA-4を発現している。 当該細胞表面マーカーの発現は、ES細胞キャラクタライゼイションキット(フナコシ)を用いた免疫染色により、評価することができる。

    5)染色体数 樹立されたラットES細胞が起源となるラットの染色体数(2n=42)を保持した正常ES細胞であることは、G-バンド法(Sumner AT Cancer Genet Cytogenet. 6: 59-87 (1982))によって染色体数を分析することにより確認することができる。

    6) 未分化状態の維持 樹立されたES細胞は、未分化状態を維持したまま継代培養を行うことができる。 本発明で樹立したラットES細胞は、少なくとも35継代目まで継代培養を行うことができるという優れた特徴を有する。 未分化状態の維持は、本発明のラットES細胞の継代培養方法(後述の7.)により継代培養を行い、前記アルカリホスファターゼ活性等を測定することにより確認することができる。

    7) 多分化能
    ES細胞をフィーダー細胞やLIFの存在しない条件下で培養することにより、胚様体を経て種々の細胞へと自発的に分化する。 このES細胞の性質は、まず前記3)に記載の方法により胚様体を形成させ、その後ゼラチンコート培養皿に胚様体を移し、7日間〜14日間程度培養を行うことにより観察することができる。 各細胞の特徴的な形態から、神経様細胞、脂肪様細胞、または上皮系細胞などの出現を確認することができる。

    8) 三胚葉系列の細胞への分化能
    ES細胞は三胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)系列の細胞へ分化する能力を有する。 このES細胞の性質は、前記3)に記載の方法で形成させた胚様体(心筋様細胞の出現した胚様体)からRNAを抽出し、外胚葉系列の細胞(例えば神経細胞)、中胚葉系列の細胞(例えば心筋細胞)、内胚葉系列の細胞(例えば肝細胞)の各マーカー遺伝子の発現をRT-PCRで解析することにより確認することができる。
    ここで神経細胞マーカーとしては Nestin、TUJ1(beta3-tublin)、MSI-1(musashi-1)、GFAP(glial fibrillary acidic proteins alpha)などが挙げられる。 また心筋細胞マーカーとしては CCC(cardiac dihydropyridine-sensitive calcium channel protein)、ANF(atrial natriuretic factor)、KvLQT1などが挙げられる。 また肝細胞マーカーとしては ALB(albumin)、TDO(tryptophan 2,3-dioxygenase)、TAT(tyrosine aminotransferase)、G6P(glucose-6-phospatase)などが挙げられる。

    9)奇形腫(テラトーマ)形成能
    ES細胞を同種若しくは先天的に免疫不全である異種動物に移植することにより、奇形腫(テラトーマ)を形成させることができる。 ここでテラトーマとは、内胚葉、中胚葉、外胚葉の三胚葉から出来る諸組織を雑然と一腫瘍中に存する混合腫瘍の称である。 当該テラトーマの形成は、同種または先天的に免疫不全である異種動物の皮下等にラットES細胞を移植し、数ヶ月後にコブ状の物体の存在を肉眼で観察することにより確認することができる。 形成されたテラトーマが三胚葉構造を有していることは、摘出したテラトーマを切片化し、ヘマトキシリン・エオジンで染色し、顕微鏡下で組織や細胞の形態を観察することにより、確認することができる。

    10)キメララット作製能
    ES細胞を同種または異種ラットに導入することによりキメララットを産生することができる。 キメララットの作製は、例えば以下の手法により行うことができる。
    キメララットが作製されたことを容易に確認するために、あらかじめマーカー遺伝子(例えばGFP、βgal、ルシフェラーゼ等)を本発明のラットES細胞に導入しておくと良い。 具体的にはこのようなマーカー遺伝子を含むベクターをエレクトロポレーション法等によってラットES細胞の染色体上に組込み、培養液中に薬剤を添加してセレクションすることにより、ES細胞染色体に前記ベクターが組み込まれた組換えラットES細胞を樹立する。 この組換えラットES細胞を、例えば、顕微操作でラット胚盤胞の胚盤腔内や桑実胚期または16細胞期に移植して内部細胞塊と一緒にまた内部細胞塊の一部として発生させるか(マイクロインジェクション法:Gordon JW et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 77: 7380-7384 (1980))、若しくは2個の8細胞期胚の透明帯を取り除き前記組換えラットES細胞と共培養して凝集塊を作らせる。 この凝集塊を培養すると1個の胚盤胞となる(細胞凝集法:Dvorak P. et al., Int. J. Dev. Biol., 39: 645-652 (1995))。 以上のようにして得られた胚(移植用卵)を、精管結紮処置を施した雄ラットと自然交配を行い準備した偽妊娠させた雌ラットの子宮内に移植し発生させることにより、キメララットを産出させることができる。
    得られたキメララットがES細胞に由来する細胞・組織を有していること、すなわち樹立したラットES細胞がキメララット作製能を有していることは、当業者に知られた一般的な手法により確認することができる。 例えばキメララットの種々の組織から抽出したゲノムDNAを鋳型として用い、マーカー遺伝子(ES細胞に導入したマーカー遺伝子)特異的プライマーを用いたゲノムPCRを行うことにより、確認することができる。 さらに、ES細胞が各組織系列の細胞へ分化していることは、例えばキメララットの各組織を切片化し、マーカー遺伝子発現産物(マーカータンパク)の存在を、用いたマーカータンパクの性質に基づき検出することにより、確認することができる。

    11)血清存在下での培養による分化 さらに本発明のラットES細胞は、20%血清存在下での培養により分化するという性質を有する。 好ましくは、本発明のラットES細胞は、10%血清存在下での培養により分化するものであり、さらに好ましくは5%血清存在下での培養により分化するものである。 ラットES細胞の分化は、アルカリホスファターゼ活性の消失や、Oct3/4やNanog等のES細胞マーカー遺伝子の発現消失により、確認することができる。

    7.ラットES細胞の継代培養方法 本発明のラットES細胞は、未分化状態を維持した状態で継代培養を行うことができる。 本発明のラットES細胞の継代は、細胞が単一化されない状態、すなわち5個〜20個程度の細胞からなる細胞集塊を維持した状態を保てば、当業者の常識の範囲内で継代を行うことができるが、トリプシン・EDTA等の蛋白分解酵素による処理は最低限にとどめ、物理的手段により細胞解離を行うことが望ましい。 以下に具体例を示す。
    樹立されたラットES細胞が継代可能な状態となった段階で、培養液を除去し、室温に戻したPBS(-)にて洗浄し、予め37℃に保温した2.5% トリプシンを全面に塗り広げる。 トリプシンの量としては60mmディッシュあたり500μl程度、若しくはそれ以下であることが好ましい。 トリプシンを全面に塗り広げた後は、ただちに溶液を除去する。 顕微鏡下にて全体の7割以上のES細胞コロニーがフィーダー細胞から剥離してくる状態を確認し、ただちにトリプシン処理を停止させる。 ここでトリプシン処理を停止させるためには、例えば10% ウシ胎仔血清を含む培養液を添加することが容易であるが、大量の無血清培地等を添加してトリプシン濃度を希釈することにより停止させても良い。 その後、5mlピペット等を用いて更に物理的にES細胞コロニーを剥離させ、細胞懸濁溶液を遠心(室温で1000rpm、3分程度)にて細胞と培養液とに分離し、細胞のみを回収する。 培養液で細胞を懸濁し、完全に単一化するのでは無く、顕微鏡下にて5〜20個の細胞塊を形成している状態を確認し、フィーダー細胞を播種したゼラチンコート培養皿に移し培養を行う。 その後も同様に、約5〜10日毎に継代可能な状態となるため、同様の継代培養を行う。
    継代細胞の培養には、実質的に血清を含有しない培養液を用いる。 ここで「実質的に血清を含有しない」とは、血清の影響によりラットES細胞がES細胞としての性質を示さなくなる(例えばアルカリホスファターゼ活性が陰性となる)程の血清を含有しないことを意味し、具体的には血清濃度が10%以下であること、好ましくは5%以下であること、より好ましくは2%以下であることを意味する。 さらに血清を含有しない無血清培地を用いることがより好ましい。 この場合、血清の代わりとなる試薬を添加する必要があり、具体的には、血清代替試薬(KSR:ギブコBRL)などを含有する培養液を用いる。 当該血清代替試薬は20%程度の濃度で使用することが好ましい。
    また前記継代細胞の培養に用いる培養液は、rLIFを含有していることが望ましい。 rLIFの濃度としては培養液1mlあたりrLIFを100単位以上添加することが好ましく、1000単位程度、若しくはそれ以上添加することがより好ましい。
    以上のように、本発明のラットES細胞の継代培養用の培養液は、血清代替試薬およびrLIFを含有することが好ましく、前記3.-2)に記載のラットES細胞用培養液が有効に用いられる。

    8.ラットES細胞培養キット 本発明は、本発明のラットES細胞を培養するための培養キットを提供する。 具体的には、血清代替試薬(KSR)およびrLIFを成分として含有する、ラットES細胞培養キットを提供する。 血清代替試薬およびrLIFは、混合して1つの容器中に封入されていても良いが、それぞれ別々の容器に封入されていることが好ましい。 ここでKSRとしてはギブコ BRL社製のものを用いることができ、また rLIFとしてはケミコン社製のものを用いることができる。
    前記キットは、さらに、本発明のラットES細胞を成分として含有することができる。 本発明のラットES細胞を商品として供給する場合は、継代3代目以降、好ましくは継代5代目以降、より好ましくは継代10代目以降の細胞を商品化の対象とする。 当該ラットES細胞は、それ単独で商品化されても良いが、前記のように本発明の培養キットの1成分として商品化されても良い。
    前記キットは、さらにフィーダー細胞を成分として含有することができる。 フィーダー細胞としては当業者に入手可能な如何なる種由来のフィーダー細胞であっても良いが、ライン化されたフィーダー細胞よりも正常繊維芽細胞を用いることが好ましい。 具体的には、妊娠12日〜16日目のマウス胎児の繊維芽細胞の初代培養細胞(正常繊維芽細胞)が挙げられ、当該正常繊維芽細胞としては、例えばマウスICRの胎児12.5日目の正常繊維芽細胞が例示される。 当該フィーダー細胞は常法により調製することもできれば、マウス胎児繊維芽細胞(旭テクノグラス株式会社)等を利用することもできる。
    以上に述べたES細胞の製造方法(樹立方法、継代培養方法)、およびES細胞の培養液や培養キットは、ラットES細胞のみならず、他の動物種にも適用可能である(ただしマウスは除く)。
    マウスES細胞はコロニーがドーム状に盛り上がり、全体的に隣接する細胞同士の境界が不明瞭である。 また光沢を有している。 一方、霊長類ES細胞のコロニーは扁平状に広がり、マウスES細胞のような光沢は観察されない。 さらに細胞同士の境界がマウスES細胞と比べて明瞭である。 本発明において樹立されたラットES細胞は扁平状のコロニーを形成し、マウスES細胞のような強い光沢が観察されず、マウスよりも霊長類ES細胞に近い形態を示すことが明らかとなった。 よって、本発明のES細胞の製造方法(樹立方法、継代培養方法)およびES細胞の培養液や培養キットは、霊長類のES細胞にも適用可能である。

    9.ラットES細胞を分化誘導して得られた細胞 本発明は、本発明のラットES細胞の分化誘導方法、および分化誘導して得られた細胞を提供する。
    マウスやヒトES細胞で知られているように、ES細胞をフィーダー細胞やLIFの存在しない条件下で培養することにより種々の細胞に分化誘導させることができる(Roy. S. et al., Mol. Cell. Biol., 18: 3947-3955 (1998))。 またレチノイン酸、細胞増殖因子、グルココルチコイド等の作用により種々の細胞に分化誘導させることができる(Kawamorita M. et al., Hum. Cell., 15: 178-182 (2002))。 さらに細胞外基質により分化誘導させることもできる。 従って本発明のラットES細胞を前記のような条件下で培養することにより、同様に分化誘導することができる。 ここでES細胞から分化誘導して得られる細胞としては、例えば神経細胞、血球系細胞、肝細胞、血管内皮細胞、または心筋細胞などが挙げられる。
    これらES細胞から分化誘導して得られた細胞は、例えば移植治療の実験モデルにおける移植用細胞として有用である。 また当該分化細胞は、核酸、タンパク質または発がん物質、環境変異原物質などに細胞を暴露した際の影響を調べるためにも有効に用いられる。 具体的には前記物質の添加による細胞のgeneticあるいはepigeneticな変化、細胞のトランスフォーメーション、軟寒天培地中でのコロニー形成能、浸潤能を含むがん化の指標の変化、代謝機能の変化、生理機能の変化、生化学的変化などの生物学的指標に基づき細胞への影響を調べることができる。

    10.ラットES細胞由来の物質 本発明においてラットES細胞を樹立したことにより、ラットES細胞のみならず、それに由来する種々の物質(例えば樹立ラットES細胞由来のmRNAより調製されたcDNAライブラリーやゲノムライブラリー、あるいはラットES細胞の細胞抽出物など)を提供することが可能となった。 本発明のES細胞由来の種々の物質は、再生医療における研究や発生学における分子レベルでの発現解析の研究、動物個体に代わる創薬研究や安全性評価試験などにおいて有効に用いることができる。
    ここでcDNAライブラリーは、本発明のラットES細胞より抽出したRNAを鋳型として用い、市販のcDNAライブラリー作製キット(例えばクローンマイナーcDNAライブラリー作製キット(Invitrogen)や Creator SMART cDNAライブラリー作製キット(BD Biosciences)等)などを用いて作製することができる。 またゲノムライブラリーはMolecular Cloning, A Laboratory Manual., T.Maniatis ら編、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory 等の基本書を参考にして常法により作製することができる。 またES細胞由来の細胞抽出物は、常法により細胞を破砕し、プロテアーゼ阻害剤の存在下にて遠心分離することなどにより調製することができる。

    11.組織または細胞の分化誘導剤のスクリーニング方法 本発明は、以下の (i)〜(iii):
    (i) 被験物質を本発明のラットES細胞に接触させる工程、
    (ii) ラットES細胞の分化の有無や程度を評価する工程、
    (iii) 上記(ii)の評価結果に基づいて、被験物質が分化誘導に関連する物質であるか否かを判断する工程、
    を含む、組織または細胞の分化誘導剤のスクリーニング方法を提供する。
    前記工程(i)においてスクリーングに供される被験物質は、制限されないが、核酸、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物などであり、前記スクリーニングは、具体的にはこれらの被験物質またはこれらを含む試料(被験試料)をラットES細胞に接触させることにより行われる。 かかる被験試料としては、細胞抽出液、遺伝子(ゲノム、cDNA)ライブラリー、RNAiライブラリー、アンチセンス核酸、合成低分子化合物、合成ペプチド、天然化合物などが挙げられる。 これら被験試料又は被験物質は、ラットES細胞への取り込み可能な形態で接触させる。 例えば被験試料が核酸の場合は、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランや遺伝子導入用リピッドを用いてES細胞に導入する。
    ラットES細胞と被験物質とを接触させる条件は、該細胞が死滅せず且つ被験物質が取り込まれるのに適した培養条件(温度、pH、培養液の組成など)であれば特に制限はない。 好ましくは分化誘導に適した条件、すなわちフィーダー細胞やLIFの存在しない条件下で培養されたラットES細胞に対して前記被験物質を添加する。
    続く工程(ii)においてはラットES細胞の分化の有無や程度を評価し、(iii)においては当該評価結果に基づき被験物質が分化誘導に関連する物質であるか否かを判断する。 ラットES細胞から所望の組織または細胞への分化は、例えば、所望の組織または細胞で発現するマーカーを指標として評価することができる。 所望の組織又は細胞のマーカーとては、組織または細胞特異的抗原が挙げられる。 当該マーカーとして具体的には、例えば神経系細胞のマーカーとしてニューロン特異的エノラーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、ネスチン等が挙げられ、軟骨のマーカーとしてS-100タンパク質、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ等が挙げられる。 また筋肉のマーカーとしてデスミン、筋特異的アクチン等が挙げられる。 このような組織・細胞特異的マーカーは、該マーカーに対する抗体を用い、ELISAや免疫染色などにより検出することができる。 またこれらのマーカー遺伝子の発現をRT-PCR等の手法により検出することもできる。

    12.組織または細胞の分化誘導に作用する物質のスクリーニング方法 本発明は、以下の (I)〜(III)の工程:
    (I) 被験物質を本発明のラットES細胞に接触させる工程、
    (II) ES細胞の分化誘導条件下で前記(I)のラットES細胞を培養し、分化の有無や程度を評価する工程、
    (III) 上記(II)の評価結果に基づいて、被験物質が分化誘導に作用する物質であるか否かを判断する工程、
    を含む、組織または細胞の分化誘導に作用する物質のスクリーニング方法を提供する。
    ES細胞は、前記のようにフィーダー細胞やLIFの存在しない条件下で培養することにより種々の細胞に分化誘導させることができる(Roy. S. et al., Mol. Cell. Biol., 18: 3947-3955 (1998))。 またレチノイン酸、増殖因子、グルココルチコイド等の作用により種々の細胞に分化誘導させることもできる(Kawamorita M. et al., Hum. Cell., 15: 178-182 (2002))。 さらに細胞外基質により分化誘導させることもできる。 この培養系に被験化合物(例えば抗癌剤等の医薬品や環境変異物質など)を加えて培養することにより、被験物質が正常な分化にどのような影響を及ぼすかを評価することができる。 当該スクリーニングは、例えば開発中の医薬品の副作用研究などに応用することができる。
    工程(I)においてスクリーニングに供される被験物質としては、前記11.と同様の物質が挙げられる。 被験物質とラットES細胞との接触については、被験物質を本発明のラットES細胞に接触させた後にES細胞の分化誘導条件下で培養しても良く、またラットES細胞を分化誘導条件下で培養開始し、その後被験物質を接触させても良い。
    分化誘導条件下での培養とは、前記したようなフィーダー細胞やLIFの存在しない培養条件下や、レチノイン酸、増殖因子、グルココルチコイドまたは細胞外基質等を培養液中に添加した培養条件などが挙げられる。 分化誘導条件下での培養過程若しくは培養後に、被験物質がラットES細胞の分化に及ぼす影響を評価する。 当該評価は、被験物質を作用させない対象細胞における分化の程度との比較に基づき行われることが望ましい。 具体的には、例えば肝細胞分化誘導因子(特願2004-59705)を培養液に添加することにより機能を有した成熟肝細胞へと分化誘導を行い、肝細胞特異的発現遺伝子(アルブミンやトリプトファン2,3ジオキシゲナーゼ等)などを指標として評価することができる。

    13.遺伝子改変ラット 本発明のラットES細胞は、遺伝子改変ラットの作製において使用することができる。
    ラットはマウスに比べて約10倍という実験上適当な大きさの哺乳動物であり、(1)細胞の血管に容易に薬物投与可能である、(2)外科・移植実験が可能である、(3)組織を大量に採取可能である、といった利点を有する。 従来から多くのヒト疾患モデルラットが開発・発見されてきたが、ラットES細胞が樹立されていなかったがために、遺伝子改変ラット、特にノックアウトラットやノックインラットといったジーンターゲッティングを要する遺伝子改変ラットの作製は事実上不可能であった。 本発明のラットES細胞は、そのような遺伝子改変ラットの作製を初めて可能とするものである。 本発明のラットES細胞の提供により、当業者に周知の技術にて当該遺伝子改変ラットを作製することができる。
    ここで「遺伝子改変ラット」とは、キメララット、ノックアウトラット、ノックインラット、トランスジェニックラットおよびノックダウンラットといった当業者に知られた全ての遺伝子改変ラットを意味する。
    前記遺伝子改変ラットは、以下の(X)〜(Z)の工程:
    (X) 本発明のラットES細胞に所望の遺伝子を導入する工程、
    (Y) 遺伝子導入されたラットES細胞を含有する移植用卵を調製する工程、
    (Z) 移植用卵を偽妊娠させたメスのラットに導入し、仔ラットを産出する工程、
    を含むプロセスを行うことにより製造することができる。
    ノックアウトラットとは人為的に標的とする遺伝子を破壊した変異ラットを意味し、遺伝子ターゲッティングラットとも呼ぶことができる。 ノックアウトラットの作製は、例えば Donehower AL et al. Nature, 356: 215-221 (1992)等に記載のノックアウトマウスの作製法に準じて行うことができる。 簡単に述べると、まず標的とする遺伝子のゲノムDNA配列をもとに、相同組換えのためのベクター(ターゲッティングベクター)を構築する。 この時組換えクローンの選別のために、マーカー遺伝子としてG418耐性遺伝子やハイグロマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子を組み込む。 この構築したターゲッティングベクターをエレクトロポレーション法等によってラットES細胞に導入する。 得られた導入細胞の中から相同組換えを起こしたコロニーを選別する。 このようにして得られた相同組換えラットES細胞を、例えば、顕微操作でラット胚盤胞の胚盤腔内や桑実胚期または16細胞期に移植して内部細胞塊と一緒にまた内部細胞塊の一部として発生させるか(マイクロインジェクション法:Gordon JW et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 77: 7380-7384 (1980))、若しくは2個の8細胞期胚の透明帯を取り除き前記相同組換えラットES細胞と共培養して凝集塊を作らせる。 この凝集塊を培養すると1個の胚盤胞となる(細胞凝集法:Dvorak P. et al., Int. J. Dev. Biol., 39: 645-652 (1995))。 以上のようにして得られた胚(移植用卵)を、精管結紮処置を施した雄ラットと自然交配を行い準備した偽妊娠させた雌ラットの子宮内に移植し発生させることにより、キメララットを産出させる。 当該キメララットを野生型ラットと交配させることにより、ヘテロノックアウトラットを産出させることができ、このヘテロノックアウトラット同士を交配させることによりホモノックアウトラットを産出させることができる。
    前記ノックアウトラットの範疇には、コンディショナル・ノックアウトラットも含まれる。 ここでコンディショナル・ノックアウトとは、Cre/loxPシステムまたはFLP/FRTシステムを利用して、部位特異的・時期特異的に遺伝子をノックアウトするシステムである。 具体的にはターゲッティングしたい遺伝子をloxP配列またはFRT配列で挟んだものに置き換えておき、CreまたはFLPタンパクの供給により前記loxP配列またはFRT配列で挟んだ遺伝子を切り取るシステムである(Sternberg N., et al., J. Mol. Biol., 150: 487-507 (1981))。

    ノックインラットとは、標的とする遺伝子の位置に、人為的に作製した相同性を有する外来性遺伝子を導入した変異ラットを意味する。 標的遺伝子は破壊される場合もあれば破壊されない場合もある。 例えば遺伝子の発現をモニターするためにlacZ遺伝子やGFP遺伝子などのマーカー遺伝子を導入したり、遺伝子に変異を導入して入れ替えることも可能である。
    当該ノックインラットは、例えばPewzner-Jung Y. et al., J. Immunol., 161: 4634-4645 (1998)等に記載のノックインマウスの作製法に準じて作製することができる。 基本的には前記ノックアウトラットの作製と全く同じ原理を利用して作製することができる。
    トランスジェニックラットとは、人為的に外来遺伝子を導入したラットを意味する。 トランスジェニック動物の作製は従来より顕微操作によって受精卵の雄性前核に所望の遺伝子を注入する方法が一般化されている。 そのため前記ノックアウトラットやノックインラットほど本発明のラットES細胞の必要性は高くない。 しかしながら導入効率や個体の作製効率を上昇させるためには、本発明のラットES細胞が有効に用いられる。
    当該トランスジェニックラットは、例えばYamamoto H. et al., Cancer Res., 62: 1641-1647 (2002)等に記載のトランスジェニックマウスの作製法に準じて作製することができる。 すなわち、ES細胞をガラスピペットで吸い付けて固定し、他端から先端2μm以下の鋭く細いガラスピペットを使って核の中に直接外来性標的遺伝子溶液を注入する。 溶液を注入したES細胞を培養系に移行し、遺伝子が組み込まれた株を樹立し、マウスの受精卵(モルラ胚またはブラスト胚)をガラスピペットで吸い付けて固定し、樹立したES細胞をガラスピペットを使って受精卵に注入し、試験管内で培養し、ある程度発生させた後に、偽妊娠雌マウスの卵管または子宮に戻して仔マウスを得る技法である。
    前記トランスジェニックラットの範疇には、コンディショナル・トランスジェニックラットも含まれる。 ここでコンディショナル・トランスジェニックとは、Cre/loxPまたはFLP/FRTを利用して、部位特異的・時期特異的に遺伝子を発現させるシステムである。 具体的には薬剤耐性遺伝子などをloxP配列またはFRT配列で挟んでおき、CreまたはFLPタンパクの供給により前記loxP配列またはFRT配列で挟んだ遺伝子を切り取ることにより、目的遺伝子を発現させるシステムである(Sternberg N., et al., J. Mol. Biol., 150: 487-507 (1981))。
    ノックダウンラットとは、RNAiの中間物質である短い2本鎖RNA(siRNA)やアンチセンス核酸を人為的に導入・発現させ、当該siRNAやアンチセンス核酸の作用により標的遺伝子の発現を抑制させたラットを意味する。 このようなノックダウン動物は、ベクター系によるsiRNAの発現システムが確立したことに基づき、作製可能となった(Science 296: 550-553(2002)、Nature Biotech.20:500-505(2002)等)。
    当該ノックダウンラットは、例えばTiscornia G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 100: 1844-1848 (2003)等に記載の方法に準じて作製することができる。 基本的には前記トランスジェニックラットの作製と全く同じ原理を利用して作製することができる。
    本発明は、以上のような操作により製造された遺伝子改変ラットをも提供する。 ここで「遺伝子改変ラット」とは、前記のようにキメララット、ノックアウトラット、ノックインラット、トランスジェニックラット若しくはノックダウンラットといった当業者に知られた全ての遺伝子改変ラットを意味する。

    以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。

    実施例1
    ラットES細胞の樹立
    1)卵の採取
    Wistar Kyoto株であるWKY/Nのメス(日本チャールズ・リバー、10週齢以上)を自然交配し、膣栓確認3日目に採卵用雌ラットをと殺し子宮を摘出した。 mw培地(NaCl 640.0 mg/100 ml, KCl 35.6 mg/100 ml, KH 2 PO 4 16.2 mg/100 ml, MgSO 4 -7H 2 O 29.4 mg/100 ml, NaHCO 3 190.0 mg/ 100 ml, Glucose 100.0 mg/ 100 ml, Na-Pyruvate 2.5 mg/ 100 ml, Ca-lactate 46.0 mg/ 100 ml, Streptomycin 5.0 mg/ 100 ml, Penicillin 7.5 mg/ 100 ml, 0.5% phenrol red 0.2 ml, 20mM beta-ME 10 μl, 100mM EDTA-2Na 10 μl, BSA 300.0 mg/ 100 ml)で潅流して胚を回収し、5% CO 2培養装置にて胚盤胞(後期段階)まで発生を進めた(図1)。 なおラットES細胞の樹立において、胚盤胞後期段階の卵が最も樹立(内部細胞塊形成)効率が高かったため、前記のように胚盤胞後期段階の卵を使用することとした。
    2)フィーダー細胞の調製 ラットES細胞の樹立および培養の際に使用するフィーダー細胞として、マウスICRの胎児12.5日目の正常繊維芽細胞をマイトマイシンCで処理したものを使用した(図2)。 使用に際し、凍結保存したフィーダー細胞を使用前日に解凍し、STO培地(DMEM 450 ml, FBS 50 ml, Antibiotic-Antimicrotics solution 5 ml)とゼラチンコート培養皿(イワキ、東京、日本)を用いて培養した。
    3)ラットES細胞樹立用培養液およびラットES細胞用培養液の検討(1)LIF添加の検討 前記1)で調製されたラット胚盤胞から内部細胞塊を形成させ、この内部細胞塊からES細胞コロニーを形成させ、最終的に安定化したラットES細胞を樹立する。 これら一連のステップにおいて用いる培養液の検討を行った。
    まずラット胚盤胞から内部細胞塊を形成させる段階における、ラット由来白血病阻害因子 (rLIF)の培養液中への添加の必要性につき検討を行った。 ラット胚盤胞から内部細胞塊を形成させる段階で、種々の濃度(0〜5000単位)の rLIF (ケミコン社)を添加して培養し、その後形成された内部細胞塊の数および初代ES細胞の数を観察した。 その結果、rLIFを除いた方が効率良く内部細胞塊が形成され、rLIFの添加濃度に依存して変化する事が示された。 この結果から内部細胞塊形成までの段階ではLIF無添加の培養液を用いることとした。
    次に内部細胞塊形成後〜ラットES細胞樹立までの段階におけるrLIFの添加の有無につき検討を行った。 内部細胞塊形成・分離後にrLIFを添加(1000 単位)した培養液で培養を行った結果、内部細胞塊から約50%以上の割合でES細胞を樹立することができた。 さらに、ラットES細胞樹立後におけるrLIFの添加の必要性についても検討した。 ラットES細胞を5継代目まで rLIFを1000単位添加した培養液で培養し、継代5代目のラットES細胞に種々の濃度のrLIFを添加し、さらに3代継代した。 この細胞に対して未分可能を維持しているか否かを、アルカリホスファターゼ陽性率(%)を測定することにより行った(アルカリホスファターゼ活性測定法については実施例2に記載)。 その結果、未分化能を維持するためには、培養液1mlあたり rLIFを100 単位以上添加することが好ましく、1000 単位程度、若しくはそれ以上添加することがより好ましいことが明らかとなった(図3)。 これらの結果から、内部細胞塊形成後はrLIF添加培養液を用いることとした。
    (2)血清添加の検討 従来、ES細胞の培養にはウシ胎仔血清(FBS)が用いられている。 ラットES細胞の樹立におけるFBSの添加の有無につき検討を行った。
    具体的には、ラット胚盤胞から内部細胞塊を形成する段階において、20%FBSを添加した場合としない場合(血清代替試薬を用いた場合)における内部細胞塊形成能および形成率を調べた。 また初代培養した継代1代目のES細胞における未分化能維持の有無についても調べた。 未分化能維持の有無は、アルカリホスファターゼ活性および胚様体形成能の有無により判定した。 その結果、FBSを添加した場合は大部分が内部細胞塊を形成せずに(形成されても栄養芽細胞と分離可能な大きさまで成長しない)、多核の細胞に分化した。 また初代培養したES細胞では未分化指標であるアルカリホスファターゼ活性は陰性で、コロニーや胚様体も形成されなかった。 一方、血清の代わりに血清代替試薬(KSR)を用いた場合は、ラット胚盤胞からピックアップ可能な内部細胞塊が形成され、また初代培養したES細胞においてもアルカリホスファターゼ活性が陽性で、コロニーや胚様体が形成された(図4)。 この結果から、ラットES細胞樹立においてFBSよりもKSRの方が優れている事が明らかとなった。 なおFBS濃度が5%、10%の場合も前記20%FBSの場合と同様の結果であった。
    (3)培養液の組成 以上の(1)および(2)の検討結果に基づき、ラットES細胞の樹立には以下の組成の培養液を用いることとした。
    ラットES細胞樹立用培養液
    胚盤胞から内部細胞塊を形成するまでの段階で使用する培養液である。
    ダルベッコ改変イーグル培地/F12 (旭テクノグラス、東京、日本) 380 ml
    0.2M L-グルタミン 5 ml
    血清代替試薬(KSR: ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本) 100 ml
    非必須アミノ酸(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本)5 ml
    抗生物質-抗菌物質溶液(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本)5 ml
    100 mM Na-Pyruvate 5 ml
    0.1M βメルカプトエタノール 0.5 ml
    ラットES細胞用培養液
    内部細胞塊形成以降の培養において使用する培養液である。
    ダルベッコ改変イーグル培地/F12 (旭テクノグラス、東京、日本) 375 ml
    0.2M L-グルタミン 5 ml
    血清代替試薬(KSR: ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本) 100 ml
    非必須アミノ酸(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本) 5 ml
    100倍ヌクレオシド保存液 5 ml
    (アデノシン 4 mg、グアノシン 4.25 mg、シチジン 3.65 mg、ウリジン 3.65 mg、チミジン 1.2 mg)
    抗生物質-抗菌物質溶液(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本) 5 ml
    100 mM Na-Pyruvate 5 ml
    0.1M βメルカプトエタノール 0.5 ml
    1000U ラット由来白血病阻害因子
    4)ラットES細胞の単離方法の検討 細胞を単離する際のトリプシン処理の影響を調べた。 まず、内部細胞塊を単離してフィーダー細胞上に撒く段階で通常のトリプシン・EDTA処理を行った結果、大部分のES細胞が分化してしまった。 一方、ピペットを用いて物理的に細胞塊を解離した結果、未分化状態を維持できることが分かった。 また、初代ラットES細胞コロニー(細胞塊)を継代する際にも、トリプシン・EDTA処理して継代した場合には細胞は単一化され分化してしまうが、前記と同様に物理的手法により細胞クランプを解離させて継代した場合は未分化状態を維持できることが明らかとなった。
    次に、2回目以降の継代におけるトリプシンの影響について調べた。 すなわち2回目の継代においてトリプシン・EDTAを用いて完全に単一細胞化した場合と、トリプシン・EDTAによる処理を最小限にとどめ、最終的には物理的操作により5〜20個の細胞塊として継代した場合とで未分化状態維持に差があるかどうか検討を行った。 その結果、単一細胞状態で継代すると自発的に分化してしまうのに対し、物理的にES細胞コロニーを剥離し、5〜20個の細胞塊として継代した場合は、未分化状態を維持できることが明らかとなった(図5)。
    以上の結果から、マウスES細胞の場合はトリプシン・EDTA溶液で完全に単一細胞化し、継代する事が望ましいが、ラットES細胞の場合、マウスES細胞の方法を適用すると自発的分化が発生するため、物理的にES細胞コロニーを剥離し、5〜20個の細胞塊として継代するのが望ましいことが分かった。
    5)ラットES細胞の樹立 以上の検討結果に基づきラットES細胞を樹立した。 樹立法の概略を図6に示す。
    ラット胚盤胞(後期段階)を顕微鏡下にて確認した後、タイロイド酸(pH2.5)を用いて透明帯を除去した。 マイトマイシンC処理を施した正常マウス胎児繊維芽細胞(フィーダー細胞)を60 mmゼラチンコート培養皿(イワキ、東京、日本)に播種し、透明帯を除去したラット胚盤胞(後期段階)を5〜10個ずつ移し、ラットES細胞樹立用培養液にて培養を開始した。 1〜4日目に正常マウス胎児繊維芽細胞上に透明帯を除去したラット胚盤胞(後期段階)が接着し、接着後5〜10日目に内部細胞塊(図7)のみを200μlのピペットを用いて分離した。 200μlのラットES細胞樹立用培養液を1.5 ml 滅菌チューブに分注し、分離した内部細胞塊を移し、ビペットを用いて物理的に細胞塊を解離した。 使用前日にフィーダー細胞を播種した6穴ゼラチンコート培養皿(イワキ、東京、日本)において、解離した内部細胞塊をラットES細胞用培養液で培養した。 培養から2〜4日目にES細胞コロニーが出現し(図8、また図6中「初代ES細胞」)、コロニーの出現から5〜10日目のES細胞コロニー(図9)を顕微鏡下にて形態を確認しながら200μlのピペットを用いて分離した。 使用前日にフィーダー細胞を播種した6穴ゼラチンコート培養皿(イワキ、東京、日本)において、物理的に解離したES細胞コロニーをラットES細胞用培養液で培養した(図6中「継代1代目」)。 培養から2〜4日目にES細胞コロニーが出現し、5〜10日目に継代可能となった。
    次に培養液を除去し、室温に戻したPBS(-)にて2回洗浄し、予め37℃に保温した2.5% トリプシン(ギブコ BRL、フナコシ、東京、日本)を60mmディッシュあたり500μl加えて全面に塗り広げ、ただちに溶液を除去した。 顕微鏡下にて全体の7割以上のES細胞コロニーがフィーダー細胞から剥離してくる状態を確認し、10% ウシ胎仔血清を含む培養液を2ml加えてトリプシン処理を停止させた。 5mlピペットを用いて更に物理的にES細胞コロニーを剥離させ、細胞懸濁溶液を遠心(1000rpmで3分、室温)にて細胞と培養液とに分離し、細胞のみを回収した。 ラットES細胞用培養液で細胞を懸濁し、完全に単離化するのでは無く、顕微鏡下にて5〜20個の細胞塊を形成している状態を確認し(図5のa))、使用前日にフィーダー細胞を播種した60 mmゼラチンコート培養皿(イワキ、東京、日本)に移し培養した(図6中「継代2代目」)。 その後5〜10日目に継代可能な状態へと安定化した細胞を、前記と同様の手法にて継代して得られた継代3代目の細胞以降の細胞を、樹立ラットES細胞とした(図10)。 この樹立したラットES細胞の形態は、これまでに報告されている各種ES細胞と非常に良く似たES細胞の典型的な形態であった(図11)。 なお、樹立以降も前記と同様の手法にて5〜10日毎に継代を行い、細胞を維持した。

    実施例2
    樹立したラットES細胞の解析
    継代5代目のラットES細胞を用いて、ES細胞としての特性を有することを確認した。 具体的には以下の各性質について検討した。
    1)RT-PCR分析による未分化マーカー遺伝子の発現解析 樹立したラットES細胞における、代表的な未分化マーカーであるOct3/4およびNanog 遺伝子の発現の有無を検討した。 まず樹立したラットES細胞から総RNAをISOGEN(ニッポンジーン、東京、日本)を用いて抽出した。 一本鎖cDNAは、総RNA 2μg、オリゴ(dT) 18プライマー 0.5μl、dNTPs 10pmol、RAV-2 RT アーゼ 5単位、および一本鎖合成緩衝液(タカラ、京都、日本)を含む全量20μlにおいて合成した。 合成は、37℃で10分間、42℃で1時間、56℃で10分間、および99℃で5分間行った。 また、以下のプライマーを合成した(オリゴヌクレオチド配列は、センス、アンチセンスプライマーの順に括弧内に記載し、その後にアニーリング温度、PCRに用いたサイクル、および増幅した断片の長さを示す):β-アクチン(5'-AGAGCAAGAGAGGTATCCTG-3' (配列番号:1)、5'-AGAGCATAGCCCTCGTAGAT-3'(配列番号:2);55℃;25サイクル;339bp)、Oct 3/4(5'-ATGGACTACCCAGAACCCCAG-3' (配列番号:3)、5'- TTACAGGAGCTGCAGTTATAC-3'(配列番号:4);56℃;35サイクル;448bp)、Nanog (5'-TAGCCCTGATTCTTCTAGCA-3' (配列番号:5)、(5'-TTTGCTGCAACGGCACATAA-3' (配列番号:6); 54℃; 35 サイクル; 617bp)。なおラット Oct 3/4のプライマーは、マウスOct 3/4遺伝子のCDS配列をGenBankより入手し、さらに、その塩基配列をBLASTにて検索してラット Oct 3/4遺伝子配列を得、マウスとラットの相同性を検索し、マウスES細胞は増幅しない領域を選んで、これをラット特異的Oct 3/4プライマーとして設計した。NanogについてもマウスおよびヒトNanog遺伝子のCDS配列をもとにしてプライマーを設計した。
    増幅は、鋳型cDNA 4μl、100μM dNTPs、プライマー 10pmol、Ex-Taq 1.0単位およびEx-Taq緩衝液(タカラ、京都、日本)を含む全量50μlにおいて行った。 PCR後、少量を3.0%アガロースゲル上で泳動させて、エチジウムブロマイド(EtBr)によって染色した後、UV照射下で写真を撮影した。 結果を図12に示す。 図12より明らかなように、ラットES細胞のcDNAでのみ、ラット特異的Oct3/4およびNanog遺伝子断片の増幅を示すバンドが確認された。
    2)アルカリホスファターゼ活性の分析 細胞が未分化能を有していることを証明する代表的な指標の一つであるアルカリホスファターゼ活性の有無を分析した。 まずラットES細胞用培養液およびフィーダー細胞存在下にて培養を行った樹立ラットES細胞を直接、4% パラホルムアルデヒドを用いて10分間固定して、その後100% EtOHで10分間固定した。 H 2 Oによって30分間洗浄した。 アルカリホスファターゼ活性は、説明書に従って、ベクターレッドアルカリホスファターゼ基質キットI(フナコシ、東京、日本)によって検出した。 結果を図13に示す。 樹立したラットES細胞はアルカリホスファターゼ活性陽性であることが示された。
    3)胚様体形成能の分析
    ES細胞をフィーダー細胞やLIFの存在しない条件下で非コート培養皿を用いて培養することにより、胚様体が形成されることが知られている(Roy. S., et al., Mol. Cell. Biol., 18: 3947-3955 (1998))。 そこで樹立ラットES細胞1.0×10 7個を非コート培養皿にてrLIFを除いたラットES細胞用培養液を用いて播種し、37℃で3日間置きに培養液を交換し、20日間インキュベートした。 結果を図14に示す。 図14より明らかなように胚様体が形成され、心筋様に鼓動する胚様体が多数確認できた。
    4)ES細胞マーカー染色の分析 未分化マーカーの発現の有無につき検討した。 ラットES細胞用培養液およびフィーダー細胞存在下にて培養を行った樹立ラットES細胞を直接、4% パラホルムアルデヒドを用いて10分間固定して、その後0.02% トライトンX-100で15分間静置し、3% 過酸化素水/メタノールにて15分間静置した。 5% 血清/PBSにて15分間ブロッキングした後、ES細胞の代表的な膜タンパク質であり、未分化マーカーの一種であるSSEA (胎児ステージ特異的抗原; stage-specific embryonic antigen)-1、 SSEA-4、TRA-1-60およびTRA-1-81を、説明書に従って、ES細胞キャラクタライゼイションキット(フナコシ、東京、日本)と二次抗体(抗マウスIgG抗体-ビオチン標識(フナコシ、東京、日本))、DAB染色キット(コウワ、東京、日本)によって検出した。 結果を図15に示す。 SSEA-1およびSSEA-4は陽性であり、これら未分化マーカーが発現していることが示された。 TRA-1-60およびTRA-1-81については本抗体染色結果では発現は検出できなかった。
    5)染色体数の分析 樹立したラットES細胞が正常な染色体数を保持しているかどうか確認した。 樹立ラットES細胞をフィーダー細胞非存在下のゼラチンコート培養皿(イワキ、東京、日本)ラットES細胞用培養液を用いて培養を行い、G-バンド法(Sumner AT Cancer Genet Cytogenet. 6: 59-87 (1982))によって染色体数を分析した。 結果を図16に示す。 正常ラット細胞の染色体数(2n=42)を保持していることが示された。
    6)継代回数の分析 樹立したラットES細胞の継代回数と未分化能維持率について検討した。 ラットES細胞をフィーダー細胞存在下のゼラチンコート培養皿(イワキ、東京、日本)においてラットES細胞用培養液を用いて培養し、継代回数と未分化能力の保持性についてアルカリホスファターゼ活性を指標に検討した。 開始は継代回数5代目からで、以後、5代目毎にアルカリホスファターゼ活性染色を行った。 アルカリホスファターゼ活性は、説明書に従って、ベクターレッドアルカリホスファターゼ基質キットI(フナコシ、東京、日本)によって検出した。 結果を図17に示す。 ラットES細胞用培養液を用いることにより少なくとも継代25代目まで安定的に未分化能を維持した状態で培養が可能であることが明らかとなった。 なおその後、継代35代目まで安定的に培養できることが明らかとなっている。
    7)インビトロ系における多分化能の分析 樹立したラットES細胞の自発的分化能につき検討した。 樹立ラットES細胞1.0×10 7個を非コート培養皿(イワキ、東京、日本)において、ラット由来白血病阻害因子(rLIF)を除いたラットES細胞用培養液で培養することにより胚様体形成を開始した。 形成開始7日目にゼラチンコート培養皿(イワキ、東京、日本)に胚様体を移し、さらに7日間培養を行った。 結果を図18に示す。
    図18(a)に示されるように、胚様体から神経様細胞が出現した。 この神経様細胞の拡大図(b)においては2細胞間で神経突起を伸ばし、また連結しているような像が確認された。 脂肪様細胞は細胞質内に多数の透明顆粒を含んでいるのが特徴であるが、図18(c)に示すように多数の透明顆粒を含む脂肪様細胞像が確認された。 また図18(d)に示すように上皮系細胞も多数確認された。 このように樹立したラットES細胞は自発的に様々な細胞へと分化する能力を有していることが確認された。
    8)血清およびLIF添加のラットES細胞への影響 樹立したラットES細胞に対するLIFと血清が及ぼす未分化能維持や増殖能への影響について検討した。 継代5代目のラットES細胞を以下の4種類の培養条件にて1代継代した。 (1)ラットLIF(rLIF)含有、無血清(20%KSR含有)、(2)LIF無添加、無血清(20%KSR含有)、(3)マウスLIF(mLIF)含有、無血清(20%KSR含有)、及び(4)ラットLIF(rLIF)含有、20%血清含有。
    未分化能を維持しているか否かは、ES細胞の未分化マーカー遺伝子であるOct3/4、Nanog、Rex-1の各遺伝子の発現の有無を解析することにより調べた。 またES細胞の特徴である奇形腫瘍形成に重要なERas遺伝子の発現の有無も解析した。 用いたプライマーの配列、アニーリング温度およびPCRに用いたサイクルは以下の通りである:
    Oct 3/4:5'-ATGGACTACCCAGAACCCCAG-3'(配列番号:3)、5'-TTACAGGAGCTGCAGTTATAC-3'(配列番号:4)、56℃、40サイクル、
    Nanog:5'-TAGCCCTGATTCTTCTAGCA-3'(配列番号:5)、5'-TTTGCTGCAACGGCACATAA-3'(配列番号:6)、60℃、40サイクル、
    Rex-1:5'-AAATCATGACGAGGCAAGGC-3'(配列番号:7)、5'-TGAGTTCGCTCCAACAGTCT-3'(配列番号:8)、60℃、40サイクル、
    ERas:5'-ACCTGAGCCCCGGCACACAG-3'(配列番号:9)、5'-CAGCTGCAGCGGTGTGGGCG-3'(配列番号:10)、64℃、40サイクル。
    さらに形態学的な観察も行った。 結果を図19に示す。
    rLIFと20%KSRでラットES細胞を培養(前記(1))すると、形態的に安定であり(図19)、またES細胞マーカー遺伝子の発現が観察されたことにより、未分化能を維持した状態で増殖出来ることが確認された。 一方、残りの3条件(前記(2)〜(4))で培養すると、特徴的なES細胞マーカー類の発現は消失し、形態的にも分化状態に移行した(図19)。 以上の結果より、ラットES細胞の培養にはラットLIFと血清代替試薬(KSR)の両者が重要であることが明らかとなった。
    9)奇形腫形成能の分析 樹立したラットES細胞をPBSにて1.0×10 7個/200μlに懸濁調整し、同系雄ラット(15週齢)の精巣内部および皮下内部に細胞移植を行う。 ラットをと殺し、形成された奇形腫を摘出した後、4% パラホルムアルデヒドにて固定する。 組織切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジンで染色し、顕微鏡下にて三胚葉(内胚葉、中胚葉および外胚葉)への分化誘導を確認する。
    10)キメララット作製能の分析
    pEGFP-1ベクター(クローンテック社)のEGFP遺伝子上流にニワトリのアルブミンプロモーターを組み込み、EGFP遺伝子が安定的に細胞内で発現するベクターとして構築した。 本作製したベクターをエレクトロポレーション法を用いてラットES細胞内部に導入し、ラットES細胞内部の染色体遺伝子内に組み込まれた細胞株をG418を用いて薬剤選別を行い、樹立した(RESC/EGFP株)。
    一方、ES細胞と同系のラットを用いて自然交配し、膣栓確認3日目に採卵用雌ラットをと殺し子宮を摘出し、mw培地で潅流して卵を回収した。 その後5% CO 2培養装置にて40個の採卵を8細胞期胚まで発生を進める。 オイルドロップ内でタイロイド酸(pH2.5)を用いて透明帯を除去し、フィーダー細胞を除去し、前記で樹立したラットES細胞株(RESC/EGFP細胞)の細胞塊1個(5から20個)を、同系ラットの受精卵にマイクロインジェクション法を用いて導入する。 5% CO 2培養装置内で一晩培養を行う(移植用卵)。 一方、予め輸精管結紮手術を施した雄ラットと採卵用雌ラットを交配させ、翌日に雌ラットの膣栓を確認し、偽妊娠雌ラットを作製する。 麻酔を掛けた偽妊娠雌ラットを開腹し、子宮内に移植用卵をそれぞれ10個注入する。 自然分娩や、特に必要とされた場合には帝王切開にて仔を摘出し、仔ラットに蛍光を照射して体が蛍光色を呈する事によりキメララットの誕生を確認する。

    実施例3
    ES細胞の樹立及び樹立したラットES細胞の解析(2)
    1)ES細胞の樹立 実施例1に示したWister Kyotoラット(WKY)の場合と同様の手法にて、Wister Hannover GALASラット(WHG)およびBrown Norwayラット(BN)についてもES細胞の樹立を行った。 その結果、いずれのラットについてもES細胞を樹立することができた。 各ラット(WKY、WHG及びBN)の胚盤胞から形成された内部細胞塊の写真を図20に示す。 また継代5代目の樹立ES細胞の写真も併せて図20に示す。 WHGラットES細胞、BNラットES細胞いずれについてもWKYラットES細胞と同様に未分化能を維持したまま継代できることが確認できた。
    2)RT-PCR分析によるES細胞マーカー遺伝子の発現解析 樹立したWKYラットES細胞、WHGラットES細胞、BNラットES細胞におけるES細胞マーカー遺伝子の発現の有無を、RT-PCR分析により行った。 実験は実施例2の1)と同様にして行った。 ES細胞の未分化マーカー遺伝子であるOct3/4、Rex-1およびNanog遺伝子の発現を解析した。 またES細胞の特徴である奇形腫瘍形成に重要なERas遺伝子の発現も解析した。 RT-PCRのプライマーは実施例2の1)及び8)に示したものを用いた。 WKYラットES細胞の結果を図21に示す。 Oct3/4、Rex-1、Nanog、ERasのいずれの因子についても発現が示された。 WHGラットES細胞、BNラットES細胞についても同じ結果が得られた。
    3)ES細胞から形成された胚様体の分析 樹立ラットES細胞を非コート培養皿にてrLIFを除いたラットES細胞用培養液を用いて播種し、37℃で3日間置きに培養液を交換し、20日間インキュベートした。 その結果胚様体が形成され、心筋様に鼓動する胚様体が多数確認できた。
    次に、この心筋様細胞の出現した胚様体からRNAを抽出し、神経細胞(外胚葉)、心筋細胞(中胚葉)および肝細胞(内胚葉)の各マーカー遺伝子の発現をRT-PCRで解析した。 各マーカー遺伝子の名称、プライマー配列、アニーリング温度およびPCRに用いたサイクルを以下に示す。
    A)神経細胞マーカー
    Nestin: 5'-GCTCTGACCTATCATCTGAG-3'(配列番号:11)、5'-AGATGCACAGGAGATGCTAC-3'(配列番号:12)、58℃、40サイクル、
    TUJ1: 5'-GGAACGCATCAGTGTCTACT-3'(配列番号:13)、 5'-ACCACGCTGAAGGTGTTCAT-3'(配列番号:14)、60℃、40サイクル、
    MSI-1: 5'-TCTCACTGCTTATGGTCCGA-3'(配列番号:15)、 5'-TCAGTGGTACCCATTGGTGA-3'(配列番号:16)、60℃、40サイクル、
    GFAP: 5'-GGCTCTGAGAGAGATTCGCA-3'(配列番号:17)、5'-ATGTCCAGGGCTAGCTTAAC-3'(配列番号:18)、58℃、40サイクル、
    B)心筋細胞マーカー
    CCC: 5'-TCTGAAGCGGCAGAAGAATC-3'(配列番号:19)、 5'-TGACCTCGATGAACTTGGGA-3'(配列番号:20)、58℃、40サイクル、
    ANF: 5'-ATACAGTGCGGTGTCCAACA-3'(配列番号:21)、 5'-TTATCTTCGGTACCGGAAGC-3'(配列番号:22)、58℃、40サイクル、
    KvLQT1: 5'-TGCGGATGCTGCATGTTGAT-3'(配列番号:23)、 5'-CAAACCCAGAGCCAAGTATG-3'(配列番号:24)、58℃、40サイクル、
    C)肝細胞マーカー
    ALB: 5'-GCTTGCTGTGATAAGCCAGT-3'(配列番号:25)、 5'-TGGCAGACAGATAGTCTTCC-3'(配列番号:26)、58℃、40サイクル、
    TDO: 5'-CGATGAGAAGCGTCATGACT-3'(配列番号:27)、5'-AACCAGGTACGATGAGAGGT-3'(配列番号:28)、58℃、40サイクル、
    TAT: 5'-AATGAGATTCGAGACGGGCT-3'(配列番号:29)、5'-TTCATCACAGTGGTAGTGCT-3'(配列番号:30)、58℃、40サイクル、
    G6P:5'-GTCAACGTATGGATTCCGGT-3'(配列番号:31)、5'-GTTCTCCTTTGCAGCTCTTG-3'(配列番号:32)、58℃、40サイクル。
    RT-PCRの結果を図22に示す。 未分化状態(レーン1)では発現していない遺伝子が、胚葉体(レーン2)では全て陽性に転じていることが明らかとなった。 この結果より、樹立したラットES細胞は三胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)系列の細胞へと分化する能力を有していること、すなわちES細胞としての性質を有していることが明らかとなった。
    4)奇形腫(テラトーマ)形成能の分析 樹立したWKYラットES細胞、WHGラットES細胞、およびBNラットES細胞を、それぞれ免疫不全マウスの皮下に2.5×10 7細胞個移植した。 その後1-2ヶ月後にこれら全てのES細胞移植マウスにおいてテラトーマの形成を確認した。 WHGラットES細胞の結果を図23に示す。 マウスをと殺し、形成されたテラトーマを摘出した後、4% パラホルムアルデヒドにて固定した。 組織切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジンで染色した(図23)。 顕微鏡下での観察により、腺構造(中胚葉系列)、血管内皮様構造(外胚葉系列)、腸管様構造(内胚葉系列)、および骨細胞様構造(中胚葉系列)の各組織が観察された。 以上の結果より、樹立したラットES細胞はテラトーマ形成能を有し、形成されたテラトーマは三胚葉(内胚葉、中胚葉および外胚葉)構造を有することが明らかとなった。
    5)キメララット作製能の分析
    pCAG-EGFP遺伝子をエレクトロポレーション法を用いてラットES細胞(WHGラットES細胞)に導入し、pCAG-EGFP遺伝子を染色体上に組み込んだWHGラットES細胞株(以下、pCAG-EGFP/WHGrES細胞株と称する)を作製した。
    WHGラットES細胞と同系統の雌ラットを用いて自然交配し、翌日の膣栓陽性確認後、4日目に採卵した。 その後5% CO 2培養装置にて胚盤胞期まで発生を進めた受精卵を採取し、1個の卵につき8〜12個のpCAG-EGFP/WHGrES細胞をマイクロインジェクション法にて移植した卵を作製した(以下、ES(+)と称する)。
    一方、精管結紮を施した同系統ラット雄と同系統ラット雌との交配を行い、翌日の膣栓陽性を確認し、偽妊娠雌ラットを作製した。 膣栓陽性確認後4日目に、偽妊娠ラット1匹あたり6個〜10個のES(+)卵を移植した。 その後帝王切開にて仔ラット(GFPキメララット)を摘出した。
    このGFPキメララットから種々の組織を分離し、ゲノムDNAを抽出した。 このゲノムDNAを鋳型として、GFP特異的プライマーを用いて常法にてゲノムPCRを行った。 結果を図24に示す。 結果として、胸腺・血管・脾臓の3つを除く調べた全ての臓器でpCAG-EGFP/WHGrES細胞由来であることを示すGFP遺伝子のバンドが確認された。 一方、コントロール(野生型ラット)のゲノムにはGFP遺伝子のバンドが確認されなかった。 以上のようにラットES細胞(pCAG-EGFP/WHGrES細胞)由来の遺伝子が各組織や細胞中に含まれていたことから、樹立したラットES細胞はキメララット作製能を有していることが明らかとなった。
    6)キメララットの組織解析 前記5)で得られたGFPキメララット、及び同系統の野生型ラットを用いて、それぞれ各組織を切片化し、GFP抗体(CLONTECH)を用いて免疫染色を行った。 結果を図25に示す。 GFPキメララットの組織でのみDAB発色が確認され、確かにES細胞由来のGFP細胞が各組織に存在し、且つGFPを発現していることが明らかとなった。
    またGFPキメララットの肝臓切片をヘキスト(青色)とローダミン(赤色)を用いて蛍光染色したところ、中心静脈近傍にGFP発現細胞であることを示す赤色領域が確認された(データは示さず)。
    以上の結果より、ラットES細胞由来の遺伝子が各組織中に含まれているだけでなく、形態的に観察した結果、各組織系列の細胞へと分化していることが明らかとなった。

    本発明によりラットES細胞が提供される。 本発明の樹立ラットES細胞は、遺伝子改変ラット(ノックアウトラット、ノックインラット等)の作製を初めて可能とするものであり、癌や脳神経系を初めとする様々な領域における薬理研究や生理学における研究、さらには再生医療の研究などに幅広く用いることができる。

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