マイクロリアクターを用いた接触反応方法

申请号 JP2005517562 申请日 2005-01-26 公开(公告)号 JPWO2005073151A1 公开(公告)日 2007-09-13
申请人 独立行政法人科学技術振興機構; 发明人 小林 修; 修 小林; 雄一朗 森; 雄一朗 森; 北森 武彦; 武彦 北森; 雅晴 上野; 雅晴 上野; 訓明 岡本; 訓明 岡本;
摘要 流路(4)の内壁(4c)に固相となる金属触媒(5)又は金属錯体触媒(5)を担持したマイクロリアクター(1)を用いる 接触 反応方法であって、液相となる被反応物質を溶解した溶液(7)及び気相となる 水 素(9)を、流路(4)にパイプフロー状態で流し、溶液(7)と気体(9)との反応を金属触媒(5)又は金属錯体触媒(5)により促進される固相−液相−気相の3相系接触反応で行う。金属触媒(5)又は金属錯体触媒(5)は高分子に取り込まれており、被還元物質の3相系接触還元反応による水素化反応を短時間で収率よく行うことができる。不飽和有機物の水素化反応には、パラジウム触媒を用いると反応時間が早く収率が高く、また、水素の代わりに一 酸化 水素を用いれば、カルボニル化反応とすることができる。
权利要求
  • 流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持したマイクロリアクターを用いた接触反応方法であって、
    液相となる被反応物質を溶解した溶液及び気相となる気体を、上記流路にパイプフロー状態で流し、上記溶液と上記気体との反応を上記金属触媒又は金属錯体触媒により促進される固相−液相−気相の3相系接触反応で行うことを特徴とする、マイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属触媒又は金属錯体触媒が、高分子に取り込まれていることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属触媒は、パラジウムであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属触媒は、クロ厶、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウ厶、ロジウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金のいずれかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属錯体触媒は、パラジウム錯体触媒であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属錯体触媒は、クロ厶、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金のいずれかの金属錯体触媒であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記気相が水素又は一酸化炭素からなることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持したマイクロリアクターを用いた接触反応方法であって、
    液相となる被還元物質を溶解した溶液及び気相となる水素を、上記流路にパイプフロー状態で流し、上記溶液と上記気体との反応を上記金属触媒又は金属錯体触媒により促進される固相−液相−気相の3相系接触還元反応で行うことを特徴とする、マイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属触媒又は金属錯体触媒が、高分子に取り込まれていることを特徴とする、請求項8に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属触媒は、パラジウムであることを特徴とする、請求項8又は9に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属触媒は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、タングステン、オスミウム、イリジウ厶、白金のいずれかであることを特徴とする、請求項8又は9に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属錯体触媒は、パラジウム錯体触媒であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 前記金属錯体触媒は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウ厶、ロジウム、タングステン、オスミウ厶、イリジウ厶、白金のいずれかの金属錯体触媒であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のマイクロリアクターを用いた接触反応方法。
  • 说明书全文

    本発明は、マイクロリアクターを用いた接触反応方法に関する。

    不均一系触媒を用いる接触素化反応、所謂接触還元反応は化学工業の最も重要なプロセスの一つであり、芳香族ニトロ化合物や不飽和結合の水素化や水素化分解による脱ベンジル化反応など広く利用されているが、しばしば収率の低下や反応の進行の遅れなどが認められる。 これらの問題点は、触媒表面(固相)−溶液(液相)−水素ガス(気相)(以下、固相−液相−気相反応又は3相系接触還元反応と呼ぶ。)の各層間の接触面積を増大させることにより改善されるため、激しく攪拌したり、水素ガスを細かい泡として吹き込むなどの工夫が試みられてきた。
    通常の反応容器(以下、適宜、フラスコ反応と呼ぶ。)による接触水素化反応では、系内に水素ガス、溶媒蒸気、高活性な金属触媒が共存するため発火や爆発が生じる可能性がある。
    一方、近年、マイクロリアクターを用いる有機合成が急速に発展しつつある。 マイクロリアクターは、ガラスなどの不活性材料にその大きさが数〜数百μmのマイクロ流路(以下、適宜マイクロチャンネルと呼ぶ。)を有する微小反応器の総称である。 マイクロリアクターの反応器は小さいので、厳密な温度コントロールを容易に行うことができる。 したがって、マイクロリアクターを用いる合成反応では、単位体積あたりの表面積が大きいため、(1)界面での反応効率が高い、(2)分子拡散による混合が効率的、(3)温度制御が容易、などの利点を有している。
    このように、マイクロリアクターによる合成反応は通常の反応容器による合成反応よりも反応時間が早く、取り扱う薬液も微少量で済むためにコストが低く、新規な化合物や薬品のために開発用反応器として注目されている。
    下記一覧に示す文献1においては、マイクロリアクターを用いた水素添加反応が記載されているが、マイクロチャンネルの内壁部に触媒を固定化した気相−固相の2系反応である。
    マイクロリアクターのマイクロチャンネルに反応物としての液体及び気体を通過させる形態としては、スラグフロー及びパイプフローが知られている。 図8は従来のマイクロチャンネル中の(a)スラグフロー及び(b)パイプフローを模式的に示す断面図である。 図8(a)に示すように、スラグフローにおいては、ガラス基板に配設されたマイクロチャンネル51中を、液体52と気体53が交互に通過する状態である。 また、図8(b)に示すように、パイプフローにおいては、気体53がマイクロチャンネル51の中心部を通過し、液体52は気体53とマイクロチャンネルの内壁部51aとの間を通過する。 マイクロチャンネル内の流体がスラグフロー及びパイプフローのいずれの形態をとるかは、マイクロチャンネル51を通過する液体52と気体53の流量などを調節することにより制御できる。
    マイクロチャンネル51のスラグフローによる反応としては、以下の文献が挙げられる。 下記文献2には、気相−液相からなる2相反応によるフッ素化反応が記載されている。 マイクロリアクターのパイプフローによる反応としては、以下の文献が挙げられる。 下記文献3には、気相−液相の2系反応であるフッ素化反応が記載されている。 また、下記文献4には、固体に担持された触媒をマイクロチャンネルに詰めた、パイプフロー類似の水素化反応が記載されている。
    また、一酸化炭素挿入反応は、フラスコ内での反応が報告されているが(下記文献6参照)、マイクロチャンネルリアクターを用いる一酸化炭素挿入反応は、これまで文献例がない。
    文献1: R. S. Besser,他2名,Chem. Eng. Sci. ,Vol. 58,p. l9(2003)
    文献2: K. Jahnisch他,J. Fluorine Chem. ,Vol. 105,p. 117(2000)
    文献3: R. D. Chambers and R. C. H. Spink,Chem. Commun. 883(1999)
    文献4: M. W. Losey,他2名,Ind. Eng. Chem. Res. ,Vol. 40,p. 2555(2001)
    文献5: R. Akiyama and S. Kobayashi,J. Am. Chem. Soc. ,Vol. 125,pp. 3412−3413(2003)
    文献6: J. Kiji,T. Okano,Y. Higashimae and Y. Fukui,Bull. Chem Soc. Jpn. ,Vol. 69,pp. 1029−1031(1996)
    しかしながら、これまでに不均一系触媒を用いた固相−液相−気相の3相系接触還元反応などの3相系接触反応をマイクロリアクターにより効果的に実現できた例はない。

    本発明は、上記課題に鑑み、固相−液相−気相の3相系接触反応を短時間で収率良く行うことができる、マイクロリアクターを用いた接触反応方法を提供することを目的としている。
    上記目的を達成するため、本発明の接触反応方法は、流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持したマイクロリアクターを用いた接触反応方法であって、液相となる被反応物質を溶解した溶液及び気相となる気体を、流路にパイプフロー状態で流し、溶液と気体との反応を金属触媒又は金属錯体触媒により促進される固相−液相−気相の3相系接触反応で行うことを特徴とする。
    上記構成において、好ましくは、気相が水素又は一酸化炭素からなる。
    また、本発明のマイクロリアクターを用いた接触反応方法は、流路の内壁に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持したマイクロリアクターを用いた接触還元反応方法であって、液相となる被還元物質を溶解した溶液及び気相となる水素を、流路にパイプフロー状態で流し、溶液と気体との反応を金属触媒又は金属錯体触媒により促進される固相−液相−気相の3相系接触還元反応で行うことを特徴とする。
    上記構成によれば、各種物質の3相系接触反応による、水素化反応、水素分解反応又は又は一酸化炭素挿入反応を短時間で収率よく行うことができる。
    上記構成において、金属触媒又は金属錯体触媒は、好ましくは高分子に取り込まれている。 金属触媒媒は、好ましくはパラジウムである。 金属錯体触媒は、好ましくはパラジウム錯体触媒である。
    金属触媒は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金のいずれかであってもよい。 金属錯体触媒は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウ厶、ロジウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金のいずれかの金属錯体触媒であってもよい。
    本発明によれば、マイクロリアクターのマイクロチャンネルの内壁部に触媒、特に固相となる金属触媒又は金属錯体触媒を担持して、3相系接触還元反応などを短時間で行うことができる。 さらに、生成物と触媒との分離や触媒の回収などの煩雑な操作も不要となるので、長時間の連続運転が可能である。

    図1は、本発明の実施の形態に用いるマイクロリアクターの構成を模式的に示し、(a)は平面図、(b)は(a)のY−Y線に沿う断面図を示している。
    図2は、本発明に用いるマイクロリアクターのマイクロチャンネルを通過する溶液及び水素の状態を示す断面図である。
    図3は、PI触媒をマイクロチャンネルに担持する反応を模式的に示す図である。
    図4は、実施例1で用いたPIパラジウム触媒の作製方法を示す図である。
    図5は、実施例1のベンザルアセトンの水素化反応による反応生成物を示す図である。
    図6は、実施例2〜8の水素化反応の収率を示す図である。
    図7は、実施例9のカルボニル化反応の収率を示す図である。
    図8は、従来のマイクロチャンネル中の、(a)スラグフロー及び(b)パイプフローを模式的に示す断面図である。

    本発明は、以下の詳細な発明及び本発明の幾つかの実施の形態を示す添付図面に基づいて、より良く理解されるものとなろう。 なお、添付図面に示す種々の実施例は本発明を特定または限定することを意図するものではなく、単に本発明の説明及び理解を容易とするためだけのものである。
    以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
    図1は本発明の実施の形態に用いるマイクロリアクターの構成を模式的に示しており、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のY−Y線に沿う部分断面図である。 マイクロリアクター1は、不活性材料であるガラスなどからなる基板2,3と、基板2に蛇行して設けられるマイクロチャンネル(流路)4と、マイクロチャンネル4の表面に固定すなわち担持された触媒5と、送液ポンプ6を介して供給される被反応物質を溶解した溶液7と、ガスバルブ8を介して供給される気体9を供給する気体ガスボンベ9aと、回収容器10と、を備えている。 ここで、ガスバルブ8を介して供給されるガスは、水素や一酸化炭素(CO)が挙げられる。 以下、気体9は、水素として説明する。
    マイクロチャンネル4は、エンドミルなどの工具による研削やマスクを用いたエッチングにより、その断面が矩形や半円形状に刻設される。 図1(b)に示すように、マイクロチャンネル4が設けられた基板2は、同じ大きさのマイクロチャンネルを刻設しない基板3と対向するようにして溶液7及び水素9が漏れないように密着固定されている。 マイクロチャンネル4を刻設する基板2及び対向させる基板3は、被反応物質や有機溶媒に侵されない材料であればよく、ガラスの他には樹脂や金属などの材料でもよい。
    溶液7は送液ポンプ6とテフロン(登録商標)チューブなどにより接続され、図示しないシリンジポンプなどを用いた流量調整部によりその供給量が制御される。 同様に、水素ガスボンベ9aはガスバルブ8とテフロン(登録商標)チューブなどにより接続され、図示しないマスフローコントローラーなどを用いた流量調整部によりその供給量が制御される。 溶液7及び水素9は、マイクロチャンネルの入部4aにおいて合流する。 回収容器10は、マイクロチャンネルの出力部4bにテフロン(登録商標)チューブなどにより接続されている。
    図2は、本発明のマイクロチャンネルを通過する溶液及び水素の状態を示す断面図である。 図示するように、マイクロチャンネルを通過する水素14は、マイクロチャンネル4の中心部を通過する。 マイクロチャンネルを通過する溶液12は、マイクロチャンネルを通過する水素14とマイクロチャンネルの内壁部4cに担持された触媒5との間を通過し、所謂、パイプフロー状態となり、マイクロチャンネルの入力部4aから出力部4bまでを通過する。 この際、図示しない溶液7及び水素9の流量調整部により、溶液7及び水素9の流量が上記のパイプフロー状態となるように制御される。
    このようなマイクロリアクター1を用いて固相−液相−気相反応を行うには、送液ポンプ6から液相反応液7を、ガスバルブ8から水素9をマイクロチャンネル4にパイプフローとなるように注入する。 マイクロチャンネル4を通過中に、その内壁4cに担持した触媒5の作用により、マイクロチャンネルを通過する反応溶液12及び水素14を反応させる。 反応により生成した目的物を含む反応混合物は、回収容器10に集められ、必要に応じて外部に取り出される。
    ここで、固相−液相−気相反応において、気相が水素の場合には被反応物質の水素化、すなわち、接触還元反応が、また、気相が一酸化炭素の場合には被反応物質の一酸化炭素挿入反応、例えば、カルボニル化反応などの接触反応を生起することができる。
    固相−液相−気相反応に用いる固相の触媒5としては、パラジウ厶(Pd)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)のいずれかの金属触媒又は金属錯体触媒を用いることができる。
    上記触媒5は、上記の金属触媒又は金属錯体触媒を高分子又はポリマー内に固定化したポリマー封入触媒(以下、PI触媒と呼ぶ。)5が好適である(上記文献5参照)。 PI触媒5は、マイクロチャンネルの内壁4cから脱離しないように強固な接合とするために、共有結合で固定化、すなわち担持することが好ましい。 そのためには、マイクロチャンネルの内壁4cがガラスの場合には、後述するPI触媒5のスペーサー4dの一端をトリアルコキシシラン構造で修飾して、マイクロチャンネルの内壁4cとなるガラス表面のシラノール基と結合させる。 スペーサー4dの他端をアミノ酸基等の官能基で修飾しておくことにより直接PI触媒5の高分子表面の例えばエポキシ基と結合させることができる。 マイクロチャンネルの内壁4cが樹脂の場合には、樹脂表面をアミノ酸基等の官能基で修飾すれば、同様に上記のエポキシ基と結合させることができる。
    これにより、PI触媒5をマイクロチャンネルの内壁4cに強固に担持できるので、マイクロチャンネルの内壁4cからの脱離が生じなくなり、繰り返し使用ができる。
    次に、PI触媒5の担持方法の一例を説明する。
    図3は、PI触媒5をマイクロチャンネル4に担持する反応を模式的に示す図である。 図示するように、ポリマーが適当な溶媒に溶解され、さらに触媒を含む材料が添加されることで、触媒がマイクロカプセル化される(図3(a)参照)。 このマイクロカプセル化された触媒5aにおいては、金属あるいは金属錯体はカプセル内部だけでなく表面や表面近くに存在する。
    次に、マイクロカプセル化した触媒5を含む溶液をマイクロチャンネル内に通し、加熱することにより、アミノ基を有するスペーサーで修飾された内壁4cと結合させる(図3(b)参照)。 図3(c)は、このようにして得られたPI触媒5が担持されたマイクロチャンネルの内壁を模式的に示す図であり、4dはマイクロチャンネルの表面基と触媒とのスペーサーを示している。
    本発明の3相系接触反応方法によれば、被反応物質を含む溶液7を触媒が担持されたマイクロチャンネルの内壁4cに接するように流し、水素9がマイクロチャンネル4の中央部を流れる、所謂パイプフロー状態で3相系接触還元反応による水素化反応を短時間に行うことができる。
    気体9が一酸化炭素である場合には、一酸化炭素9がマイクロチャンネル4の中央部を流れる、所謂パイプフロー状態で3相系接触反応による、一酸化炭素挿入反応を短時間に行うことができる。 このような一酸化炭素挿入反応としては、有機物のカルボニル化反応などが挙げられる。 この際、マイクロチャンネル内壁4cに金属触媒5が担持されているので、例えば高価なパラジウム触媒の回収再生の手間が不要となり、さらに、マイクロリアクター1による反応であるので、反応に使用する被還元物質、溶媒、水素9の使用量も激減することから、低コストである。
    また、多数のマイクロリアクター1を平行に並べるだけで、反応装置のスケールアップは容易であるので、望ましい生成物を容易に迅速に、且つ必要量だけ得られ、原料消費量、所要時間、空間が少なく、分離精製のような処理を要しないほど純粋な形で生成物を得ることができる。
    したがって、本発明の3相系接触反応方法によれば、医薬とその製造工程開発用の極めて好適な反応方法となる。 また、グリーン化学(環境適合化学)にも好適である。
    次に、本発明の実施例について説明する。

    図1のマイクロリアクター1を用い、被還元物質としてベンザルアセトンの水素化を行った。 マイクロリアクターとして、大きさが3cm×7cmのガラス板2に長さが45cmのマイクロチャンネル4を有するものを用いた。 マイクロチャンネル4の断面形状は、幅200μm、深さが100μmの半円形状である。 そして、マイクロチャンネルの内壁4cには、パラジウムをポリマー上に固定化したポリマー封入パラジウ厶(以下、PIパラジウム触媒と呼ぶ。)を、150℃で固定化した(図3(b)及び(c)参照)。
    図4は、実施例1で用いたPIパラジウム触媒の作製方法を示す図である。 図示するように、マイクロカプセル化したPIパラジウム触媒5aは、3種類のモノマー(単量体)を用い、その比が91:5:4の比で構成されるポリマー(高分子)を、塩化メチレン及びアミルアルコールの混合溶媒中でテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムと混合し、約150℃で加熱し、架橋反応させて作製した。
    マイクロチャンネル4には、被還元物質としてベンザルアセトンのTHF(テトラハイドロフラン)溶液(濃度0.1モル%/1000cm )7及び水素ガスを、それぞれ0.1cm /時間及び1cm /分の流量で供給し、被還元物質及び水素9をパイプフロー状態でマイクロチャンネル4を通過させ、ベンザルアセトンの水素化反応を行った。 反応は室温で行った。
    次に、反応生成物をプロトンを用いたNMR(核磁気共鳴装置、以下、 H−NMRと呼ぶ。)により分析した。 図5は実施例1のベンザルアセトンの水素化反応による反応生成物を示す図である。 図から明らかなように、反応時間として5分以内にベンザルアセトンの水素化により、4−フェニル−2−ブタノン及び4−フェニル−2−ブタノールが、それぞれ97%、3%の収率で得られた。
    本実施例1の水素化反応時間は、マイクロチャンネル4の全容積と液相の容積流速から計算したところ約5分であり、実測値は2分であった。 この反応時間の値は、通常のフラスコ反応の場合の約1時間と比較すると約1/30である。

    実施例2では、被還元物質としてシクロヘキセン−2−オンを使用し、被還元物質のTHF希釈液濃度及びその流量、水素9の流量を実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。 反応時間は5分以内であった。 反応生成物 H−NMRで分析した。
    図6は、実施例2の水素化反応の収率を示す図である。 図から明らかなように、反応生成物を H−NMRで分析したところ、シクロヘキセン−2−オンがほぼ完全に水素化され、収率約100%でシクロヘキサノンが得られた。

    実施例3では、被還元物質として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを使用し、被還元物質のTHF希釈液濃度及びその流量、水素9の流量を実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。 反応時間は5分以内であった。 反応生成物を H−NMRで分析したところ、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンがほぼ完全に水素化され、収率約100%で2,4−ジフェニル−2−メチル−ペンタンが得られた(図6参照)。

    実施例4では、被還元物質として1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンを使用し、被還元物質のTHF希釈液濃度及びその流量、水素9の流量を実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。 反応時間は5分以内であった。 反応生成物を H−NMRで分析したところ、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンがほぼ完全に水素化され、収率約100%で1,4−ジフェニルブタンが得られた(図6参照)。

    実施例5では、被還元物質として1,2−ジフェニルアセチレンを使用し、被還元物質のTHF希釈液濃度及びその流量、水素9の流量を実施例1と同じ条件で、水素化反応を行った。 反応時間は5分以内であった。 反応生成物を H−NMRで分析したところ、1,2−ジフェニルアセチレンがほぼ完全に水素化され、収率約100%で1,2−ジフェニルエタンが得られた(図6参照)。

    実施例6では、被還元物質として3−フェニル−2−プロピン−1−オールを使用し、被還元物質のTHF希釈液濃度及びその流量、水素9の流量を実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。 反応時間は5分以内であった。 反応生成物を H−NMRで分析したところ、3−フェニル−2−プロピン−1−オールがほぼ完全に水素化され、収率約100%で3−フェニル−1−プロパノールが得られた(図6参照)。

    実施例7では、被還元物質として1−フェニルシクロヘキセンを使用し、被還元物質のTHF希釈液濃度及びその流量、水素9の流量を実施例1と同じ条件で水素化反応を行った。 反応時間は5分以内であった。 反応生成物を H−NMRで分析したところ、1−フェニルシクロヘキセンがほぼ完全に水素化され、収率99%でフェニルシクロヘキサンが得られた(図6参照)。

    実施例8では、被還元物質としてニトロベンゼンを使用した。 被還元物質のエタノール希釈液溶液(濃度は、0.1モル%/1000cm )7及び水素ガスを、それぞれ0.1cm /時間及び1cm /分の流量で供給し、被還元物質及び水素9をパイプフロー状態でマイクロチャンネル4を通過させ、ニトロベンゼンの水素化反応を行った。 他は実施例1と同じ条件で、あり、反応時間は5分以内であった。 反応は室温で行った。 反応生成物をガスクロマトグラフィー装置で分析で分析したところ、ニトロベンゼンが水素化され、収率82%でアニリンが得られた(図6参照)。

    実施例9では、被反応物質として塩化シンナミルを用いて一酸化炭素挿入反応を行った。 使用した触媒は実施例1と同じである。 塩化シンナミルは、塩基(パラニトロフェノールのナトリウム塩)のエタノール希釈液を用いた。 塩化シンナミル及びパラニトロフェノールのナトリウ厶塩の濃度は、それぞれ、0.125モル%/1000cm 、0.188モル%/1000cm とした。
    次に、被反応物質の上記塩化シンナミルを含む溶液7及び一酸化炭素ガス9を、それぞれ0.1cm /時間及び2cm /分の流量で供給した。 被反応物質及び一酸化炭素ガスをパイプフロー状態でマイクロチャンネル4を通過させ、塩化シンナミルの一酸化炭素挿入反応、すなわち、カルボニル化を行い、4−フェニル−3−ブテン酸エチルエステルを得た。 この反応時間は5分以内であった。 反応は室温で行った。
    図7は実施例9のカルボニル化反応の収率を示す図である。 図に示すように、反応生成物をガスクロマトグラフィー装置で分析で分析したところ、塩化シンナミルがカルボニル化され、収率15%で4−フェニル−3−ブテン酸エチルエステルが得られた。 一般に一酸化炭素挿入反応は反応速度が低く、高温高圧を必要とすることが多い。 しかしながら、実施例9の反応において、現時点ではマイクロチャンネルリアクター内での収率は15%と高くないが、室温、常圧において反応時間5分以内という条件下であることを考慮すると、反応の加速は十分に起きているものと思われる。 このため、水素化反応と同様に固相−液相−気相の三相系反応であるため、フラスコ内と比較してマイクロチャンネル内で反応はより効率的に進行すると考えられる。 これにより、反応系がパイプフローになることで反応速度が大幅に向上していると考えられる。

    本発明のマイクロリアクターを用いた接触反応方法によれば、被還元物質の水素化などの反応を短時間にかつ収率よく実施することができる。 また、本発明のマイクロリアクターを用いた接触反応方法においては、被反応物質、気体等の原料とその供給や撹拌などに必要な電気などの動力の消費量が極めて小さいので、従来の反応容器を用いた反応に比べて低コストである。 したがって、薬剤やファインケミカルの探索などに必要な3相系接触還元反応などを低コストで行うことができる。

    【0006】
    に担持された触媒5との間を通過し、所謂、パイプフロー状態となり、マイクロチャンネルの入力部4aから出力部4bまでを通過する。 この際、図示しない溶液7及び水素9の流量調整部により、溶液7及び水素9の流量が上記のパイプフロー状態となるように制御される。
    このようなマイクロリアクター1を用いて固相−液相−気相反応を行うには、送液ポンプ6から液相反応液7を、ガスバルブ8から水素9をマイクロチャンネル4にパイプフローとなるように注入する。 マイクロチャンネル4を通過中に、その内壁4cに担持した触媒5の作用により、マイクロチャンネルを通過する反応溶液12及び水素14を反応させる。 反応により生成した目的物を含む反応混合物は、回収容器10に集められ、必要に応じて外部に取り出される。
    ここで、固相−液相−気相反応において、気相が水素の場合には被反応物質の水素化、すなわち、接触還元反応が、また、気相が一酸化炭素の場合には被反応物質の一酸化炭素挿入反応、例えば、カルボニル化反応などの接触反応を生起することができる。
    固相−液相−気相反応に用いる固相の触媒5としては、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)のいずれかの金属触媒又は金属錯体触媒を用いることができる。
    上記触媒5は、上記の金属触媒又は金属錯体触媒を高分子又はポリマー内に固定化したポリマー封入触媒(以下、PI触媒と呼ぶ。)5が好適である(上記文献5参照)。 PI触媒5は、マイクロチャンネルの内壁4cから脱離しないように強固な接合とするために、共有結合で固定化、すなわち担持することが好ましい。 そのためには、マイクロチャンネルの内壁4cがガラスの場合には、後述するPI触媒5のスペーサー4dの一端をトリアルコキシシラン構造で修飾して、マイクロチャンネルの内壁4cとなるガラス表面のシラノール基と結合させる。 スペーサー4dの他端をアミノ基等の官能基で修飾しておくことにより直接PI触媒5の高分子表面の例えばエポキシ基と結合させることができる。 マイクロチャンネルの内壁4cが樹脂の場合には、樹脂表面をアミノ基等の官能基で修

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