セラミックス回路基板の製造方法及びセラミックス回路基板

申请号 JP2014551478 申请日 2013-08-15 公开(公告)号 JP5720861B1 公开(公告)日 2015-05-20
申请人 日立金属株式会社; 发明人 手島 博幸; 今村 寿之; 渡辺 純一;
摘要 セラミックス 基板 に、ろう材粉末と有機バインダとを含むろう材領域を形成するろう材領域形成工程と、前記セラミックス基板に、前記形成したろう材領域を介して金属基板を載置し、前記セラミックス基板、前記ろう材領域、及び前記金属基板を加熱し、前記セラミックス基板と前記金属基板とを、前記ろう材からなるろう材層を介して接合して接合体を形成する接合工程と、前記接合体を、次亜塩素酸塩を含む薬剤で洗浄する洗浄工程とを有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
权利要求

セラミックス基板に、ろう材粉末と有機バインダとを含むろう材領域を形成するろう材領域形成工程と、 前記セラミックス基板に、前記形成したろう材領域を介して金属基板を載置し、前記セラミックス基板、前記ろう材領域、及び前記金属基板を加熱し、前記セラミックス基板と前記金属基板とを、前記ろう材からなるろう材層を介して接合して接合体を形成する接合工程と、 前記接合体を、次亜塩素酸塩を含む薬剤で洗浄する洗浄工程と を有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。請求項1に記載のセラミックス回路基板の製造方法において、前記接合工程後及び前記洗浄工程前に、前記金属基板の表面にレジスト膜を形成した後、前記金属基板をエッチングして回路パターンを形成する回路パターン形成工程と、前記回路パターン形成工程の後に、不要な前記ろう材層を除去するろう材層除去工程とを有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。請求項1又は2に記載のセラミックス回路基板の製造方法において、次亜塩素酸塩の濃度が、次亜塩素酸ナトリウム換算で2.5〜13.5質量%であることを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス回路基板の製造方法において、前記薬剤のpH値が9以上であることを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス回路基板の製造方法において、前記洗浄は、30℃以上で5分以上行うことを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。

说明书全文

本発明は、セラミックス基板と、セラミックス基板に形成されたろう材層と、前記ろう材層を介し接合された金属基板とを有するセラミックス回路基板の製造方法及び前記構成を有するセラミックス回路基板に関する。

ろう材接合法を用いたセラミックス回路基板(以下、単に回路基板と言う場合がある。)の製造方法が、例えば、特開2003-110222号に開示されている。特開2003-110222号に記載の回路基板の製造方法は、セラミックス基板の少なくとも一方の面にろう材を介して金属板を接合し、前記金属板の表面の所定の部分にレジストを塗布して金属板の不要部分をエッチングすることにより金属回路部を形成し、レジストを維持したまま、不要なろう材及びろう材とセラミックス基板との反応生成物を除去し、その後、レジストを剥離することにより回路パターンを形成する方法である。

特開2003-110222号に開示された回路基板の製造方法は、より具体的には、Ag・Cu等を所定の組成で含む金属粉、有機バインダ及び有機溶剤を含むペースト状のろう材をセラミックス基板の両面にスクリーン印刷で塗布し、塗布されたろう材に接するようにCu板を配置し、所定の温度で加熱してろう材を介しセラミックス基板とCu板を接合し、その後、金属板の表面の所定の部分にUV硬化アルカリ剥離型レジストを塗布し、塩化銅、過酸化素水及び塩酸からなるエッチング液でCu板の不要部分をエッチングすることにより金属回路部を形成し、上記レジストを維持したまま、30%チオ硫酸ナトリウム水溶液に浸漬した後、EDTA及び過酸化水素水を含むろう材除去液に所定時間浸漬し、不要なろう材及びろう材とセラミックス基板との反応生成物を除去し、その後、レジストを剥離するという方法である。

前述したように、ろう材接合法を用いて回路基板を製造するにあたっては、ろう材粉末と有機バインダとを含むろう材ペーストをセラミックス基板に塗布し、塗布されたろう材ペーストに接するように金属基板を配置してセラミックス基板、ろう材ペースト及び金属基板からなる被接合体を形成し、真空又は非酸化状態においてろう材が溶融する温度で被接合体を加熱し、ろう材を介して金属基板をセラミックス基板に接合する接合工程を含む方法が汎用的に行われている。ここで、ろう材ペーストに含まれる有機バインダは、被接合体の加熱過程において分解し、ガス化してろう材ペーストから除去されるが、ガス化した有機バインダの一部が、セラミックス基板の金属基板で覆われていない表面、すなわち露出した表面に炭素を主成分とする付着物として再付着する場合がある。また、接合体を加熱する際に、加熱炉の雰囲気等から接合体に付着物が付着する場合もある。

セラミックス基板の表面に付着したこのような付着物は、黒色又は灰色であり、セラミックス基板と明らかに色調が異なるため外観的な不良となる。また前記付着物の多くは良導体であるため、金属回路板を構成する二の金属基板の間隙に露出するセラミックス基板の表面に多量の付着物が付着すると、二の金属基板の間の電気的絶縁性が確保できず、回路基板が絶縁抵抗の面で不良となる場合がある。セラミックス基板の表面に強固に付着した前記絶縁抵抗を低下させる付着物は、特開2003-110222号に開示されたエッチング液やろう材除去液で除去することが極めて困難であり、付着物を完全に除去するためこれらに長時間浸漬した場合には、レジストや金属基板を侵食し、その結果、金属基板を腐食して損傷を与える場合がある。セラミックス基板が窒化珪素質セラミックスからなる場合は、基板表面の表面形態が、窒化珪素柱状粒子の影響により基板表面の凹凸が大きくなりやすいため、付着物の除去がさらに難しい。

特開2003-110222号公報

従って本発明の目的は、セラミックス基板が露出した表面に付着した絶縁抵抗を低下させる付着物が除去又は低減されたセラミックス回路基板の製造方法、及びそのようなセラミックス回路基板を提供することにある。

上記目的に鑑み鋭意研究の結果、セラミックス基板と金属基板とをろう材を介して加熱接合した後、次亜塩素酸塩を含む薬剤で前記接合体を洗浄することにより、ろう材ペースト等に起因する絶縁抵抗を低下させる付着物が除去又は低減されたセラミックス回路基板が得られることを見出し、本発明に想到した。

すなわち、本発明のセラミックス回路基板の製造方法は、 セラミックス基板に、ろう材粉末と有機バインダとを含むろう材領域を形成するろう材領域形成工程と、 前記セラミックス基板に、前記形成したろう材領域を介して金属基板を載置し、前記セラミックス基板、前記ろう材領域、及び前記金属基板を加熱し、前記セラミックス基板と前記金属基板とを、前記ろう材からなるろう材層を介して接合して接合体を形成する接合工程と、 前記接合体を、次亜塩素酸塩を含む薬剤で洗浄する洗浄工程と を有することを特徴とする。

前記接合工程後及び前記洗浄工程前に、前記金属基板の表面にレジスト膜を形成した後、前記金属基板をエッチングして回路パターンを形成する回路パターン形成工程と、前記回路パターン形成工程の後に、不要な前記ろう材層を除去するろう材層除去工程とを有するのが好ましい。

前記薬剤の次亜塩素酸塩の濃度は、次亜塩素酸ナトリウム換算で2.5〜13.5質量%であるのが好ましい。前記薬剤のpH値は9以上であるのが好ましい。

前記洗浄は、30℃以上で5分以上行うのが好ましい。

本発明のセラミックス回路基板は、セラミックス基板と、前記セラミックス基板に形成された二のろう材層と、前記二のろう材層を介し各々接合された二の金属基板とを有するセラミックス回路基板であって、前記二の金属基板間の絶縁抵抗が、500 MΩ/mm以上であり、前記二の金属基板間の間隙に露出したセラミックス基板の表面に存在する絶縁抵抗を低下させる付着物の面積率が15%以下であることを特徴とする。

前記二の金属基板間の間隙に露出したセラミックス基板の表面において、最大径が50μm以上の前記付着物の密度が、50個/mm2以下であるのが好ましい。

前記セラミックス基板は、窒化珪素又は窒化アルミニウムを主体とした粒子からなる主相と前記粒子の間に存在する焼結助剤を主体とした粒界相とを含む窒化物セラミックス焼結体であり、前記二の金属基板間の間隙に露出したセラミックス基板の表面に存在する空孔の最大径が2〜15μmであるのが好ましい。

次亜塩素酸塩を含む薬剤で接合体を洗浄することにより、ろう材ペースト等に起因する付着物が除去又は低減されるので、外観的な不良がなく、金属基板の間の電気的絶縁性に優れたセラミックス回路基板を提供することができる。

セラミックス回路基板を模式的に示す正面図である。

図1(a)の平面図である。

図1(a)のセラミックス回路基板の製造方法を説明する第1の平面図である。

図1(a)のセラミックス回路基板の製造方法を説明する第2の平面図である。

図1(a)のセラミックス回路基板の製造方法を説明する第3の平面図である。

図1(a)のセラミックス回路基板の製造方法を説明する第4の平面図である。

図1(a)のセラミックス回路基板の製造方法を説明する第5の平面図である。

図1(a)のセラミックス回路基板の製造方法を説明する第6の平面図である。

図2(f)のE部拡大図である。

回路基板の間隙に存在する炭素質付着物の光学顕微鏡写真である。

図3(a)の画像から求めた炭素質付着物の明暗の濃度分布を示すグラフ(ヒストグラム)である。

図3(a)の画像の最大濃度の1/2の濃度を閾値として2値化処理した画像である。

接合工程における温度プロファイルを示すグラフである。

実施例9のセラミックス基板の断面写真である。

比較例2のセラミックス基板の断面写真である。

[1] セラミックス回路基板の製造方法 本発明のセラミックス回路基板の製造方法は、(a)セラミックス基板に、ろう材粉末と有機バインダとを含むろう材領域を形成するろう材領域形成工程と、(b)前記セラミックス基板に、前記形成したろう材領域を介して金属基板を載置し、前記セラミックス基板、前記ろう材領域、及び前記金属基板を加熱し、前記セラミックス基板と前記金属基板とを、前記ろう材からなるろう材層を介して接合して接合体を形成する接合工程と、(c)前記接合体を、次亜塩素酸塩を含む薬剤で洗浄する洗浄工程とを有することを特徴とする。

(a) ろう材領域形成工程 セラミックス基板に、ろう材粉末と有機バインダとを含むろう材領域を形成する。前記ろう材としては、Ag・Cu等を所定の組成で含む金属粉が挙げられ、前記有機バインダとしては、様々な有機系樹脂を使用することができる。ろう材領域の形成は、ろう材粉末と有機バインダとを含むペースト状ろう材を、スクリーン印刷等の方法でセラミックス基板上に塗布し行う。

ろう材ペーストに含まれるバインダとしてアクリル樹脂を使用した場合、ろう材を介して金属基板をセラミックス基板に接合する加熱過程において、ガス化したアクリル樹脂に起因する付着物がセラミックス基板表面に特に付着しやすい。従って、前記バインダとしてアクリル樹脂を使用した場合に、本発明の方法によって得られる、付着物の除去又は低減効果をより発揮することができる。アクリル樹脂としては、たとえばポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルが挙げられる。

(b) 接合工程 (i)セラミックス基板、(ii)前記セラミックス基板に形成された、ろう材粉末と有機バインダとを含むろう材領域、及び(iii)前記ろう材領域を介して載置された金属基板を加熱することで、セラミックス基板と金属基板とがろう材層を介して接合される。加熱は、真空中又は還元雰囲気中で行うのが好ましく、昇温過程でろう材ペースト中の有機成分の分解除去のため、バインダの分解温度近傍(たとえば400℃付近)で一旦保持し、その後ろう付け温度で10分以上保持して行う。ろう付け温度とは、適切にろう材層を形成できる温度、すなわちろう材の融点以上の温度である必要がある。ろう付け温度は、通常は前記昇温過程の最高温度である。

バインダを分解除去するための保持温度が低いと、カーボンが十分に除去されずに残る恐れがある。従って、バインダを分解除去するための保持温度は300℃以上とするのが好ましい。例えばアクリル樹脂を含むバインダの場合、この保持温度は360℃以上とするのが好ましい。バインダ中の樹脂等に含まれる酸素によってろう材中の活性金属が酸化されることを避けるために、バインダを分解除去するための保持温度は500℃以下とするのが好ましく、480℃以下とするのがより好ましい。

ろう材としては、たとえば770〜880℃の融点を有するAg-Cu系ろう材を使用し、ろう付け温度を770〜880℃とするのが好ましい。770℃以上にするとろう材の溶融が十分になり、ボイドの形成を抑える。より好ましくは790℃以上にする。880℃以下にすると、ろう材が濡れ広がり過ぎることがない。さらに好ましくはろう付け温度を830〜870℃とする。ろう付け温度での保持時間は、接合用加熱炉に投入する量に依存するが、通常の生産性を考慮すると5時間以内であるのが好ましく、2時間以内であるのさらに好ましい。ろう付け温度での保持時間は、投入する試料の枚数によって、また例えば真空雰囲気にする場合には接合用加熱炉の容積や真空ポンプの排気量に応じて適宜調節して設定する。金属板とセラミックスとがボイドなしで接合できるように、荷重印加して加熱するのが好ましい。

(c) 洗浄工程 前記接合工程において、分解したろう材中に含まれる有機バインダが、セラミックス基板の金属基板で覆われていない表面、即ち、セラミックス基板が露出した表面に付着する場合がある。この有機バインダに起因すると考えられる付着物を除去するために、次亜塩素酸塩を含む薬剤で洗浄する。

次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等が挙げられ、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム又は次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸カルシウムとの混合物がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。

次亜塩素酸塩を含む薬剤は、次亜塩素酸塩の水(純水)溶液、有機溶剤溶液、又は水と有機溶剤の混合溶液である。次亜塩素酸塩を使用する代わりに、次亜塩素酸の水溶液に塩基(水酸化ナトリウム等)を添加して、pHを9以上にして次亜塩素酸を加水分解して用いてもよい。通常は、次亜塩素酸塩の水(純水)溶液が使用される。これらの溶液は、必要に応じて防食剤、安定剤、添加剤、pH調整剤等を含んでもよい。

付着物を除去する効果は、薬剤中の次亜塩素酸イオン(ClO-)の濃度が高いほど大きいので、次亜塩素酸が十分に加水分解(解離)している必要がある。このため、前記薬剤のpH値は、次亜塩素酸のカリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ塩を使用する場合には、9〜13であるのが好ましい。前記薬剤のpH値が9未満の場合には、次亜塩素酸の加水分解が不十分のため次亜塩素酸イオン(ClO-)濃度が低く、セラミックス基板の表面に付着した付着物の除去能が低いので時間がかかる。pHが高いほど付着物除去の反応を早く進められるが、安定した均一な反応を得るにはpH13程度までが好ましい。またpHが13を超えると危険性が著しく増加するため取り扱い上あまり好ましくない。すなわち、薬剤のpH値のより好ましい範囲は9.5〜13、最も好ましい範囲は10〜13である。なお、例えば次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合に、pH値を9〜13にするためには、次亜塩素酸ナトリウムの濃度で調節することもできるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のアルカリをpH調整剤として添加することによって調整するのが好ましい。また必要に応じて緩衝剤を使用しても良い。

薬剤中の次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩の濃度は、次亜塩素酸ナトリウム換算で2.5〜13.5質量%であるのが好ましく、8〜13質量%であるのがより好ましい。次亜塩素酸ナトリウム換算とは、当量濃度が同じになるように次亜塩素酸イオンの対塩(K+、Ca2+、Na+等)をナトリウム(Na+)に置き換えたときの濃度であり、例えば、5質量%の次亜塩素酸カルシウム[Ca(ClO)2、分子量:142.98、グラム当量:71.49]の場合、次亜塩素酸ナトリウム[NaClO、分子量:77.44、グラム当量:77.44]に換算すると、5質量%×77.44/71.49=5.42質量%となる。

次亜塩素酸塩を用いる際に、十分な洗浄効果を得るために、pH調整剤としてKOH、NH3及びNaOHの1種又は2種以上を添加して上記のpH範囲に調整して用いるのが好ましい。例えば、次亜塩素酸ナトリウムの希釈液(pH8〜10)中における次亜塩素酸は主に解離型のOClとして存在する。一方、強酸性(pH≦2.7)及び微酸性次亜塩素酸水(pH5.0〜6.5)のpH領域では、非解離型のHOClとして存在する比率が著しく高くなる。基板表面に存在する炭素質等の付着物の洗浄効果を発揮するには、非解離型のHOClを塩基で加水分解し解離型のOCl-として存在させる必要がある。

前述のように調整された薬剤を洗浄工程で使用する場合、30℃以上かつ5分以上の条件で接合体を洗浄することが、セラミックス基板の表面に付着した付着物の除去能をより高くするため望ましい。一方で、洗浄温度が60℃を超えると次亜塩素酸ナトリウムが塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムに分解し液寿命が短くなるとともに、薬剤が強アルカリとなり、金属基板を腐食するとともに露出したセラミックス基板表面の粒界相も腐食するので、洗浄温度は60℃以下とするのが好ましい。また金属基板の腐食を抑制する点からは洗浄時間は好ましくは60分間以下が好ましい。

有機溶剤としては特に制限はないが、水溶性の有機溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール類、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、2-ピロリドン、N-メチルピロリドンなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、スルホランなどがあげられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。

前記防食剤としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの糖類又は、糖アルコール類、フェノール、クレゾール、カテコール、レゾルシン、2,3-ピリジンジオール、ピロガロール、サリチル酸、没食子酸などの芳香族ヒドロキシ化合物、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-ブチン-1,4-ジオールなどのアルキンアルコール類、ベンゾトリアゾール、o-トリルトリアゾール、m-トリルトリアゾール、p-トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類などをあげることができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。

前記添加剤としては、各種の界面活性剤、キレート剤、消泡剤などを挙げることができる。これらは単独で添加してもよいし、2種以上を組み合わせて添加してもよい。界面活性剤として、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。キレート剤として、たとえばエチレンジアミンなどが挙げられる。消泡剤として、たとえばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンエーテルおよびシリコーン系剤などが挙げられる。

(d) その他の工程 前記接合工程後及び洗浄工程前に、さらに、(d1)接合工程で形成されたろう材層の外縁に沿うパターンで金属基板の表面にレジスト膜を形成し、エッチングして金属基板を分割し、回路パターンを形成する回路パターン形成工程と、(d2)回路パターン形成工程の後に、不要なろう材層を除去するろう材層除去工程とを有するのが好ましい。回路パターン形成工程及びろう材除去工程の後に前記洗浄工程を設けることで、回路パターン形成工程及び/又はろう材層除去工程でセラミックス基板表面に発生する付着物を、前記洗浄工程で併せて除去することができる。このように前記洗浄工程を回路パターン形成工程及びろう材除去工程の後で実施することにより、付着物の発生を考慮せずに、回路パターン形成及びろう材除去の処理を最適な条件で実施することができるため、レジスト膜及び金属基板が両工程で受ける損傷をより低減することが可能となる。前記レジスト膜は、前記接合工程で形成された前記ろう材層の外縁に沿うパターンで形成することが好ましい。

このような理由により回路パターン形成工程で形成するレジスト膜は、その厚みを10〜80μm、好ましくは30〜70μmと比較的薄くすることができる。

前記レジスト膜は紫外線硬化型レジスト剤で形成するのが望ましい。紫外線硬化型レジスト剤は、共重合系アクリレート・オリゴマー、アクリル酸エステル・モノマー、充填剤、光重合開始剤、色素調整剤、及び消泡・レベリング剤を含む。前記紫外線硬化型レジスト剤の主成分である共重合系アクリレート・オリゴマーは、縮合・重合反応して硬化する高粘性ポリマーである。主成分である共重合系アクリレート・オリゴマーは、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、その他の共重合樹脂である。アクリル酸エステル・モノマーは、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、エトキシージーエチレングリコールアクリレート、2ヒドロキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等である。

紫外線硬化型レジストは、光重合開始剤のラジカル反応により、アクリル酸エステル・モノマーを伴って高分子ポリマー化するが、共重合系アクリレート・オリゴマーの重合度によりエッチング液、ろう材除去液への薬液耐性を向上させることができる。アクリル酸エステル・モノマーは、高分子ポリマーとして硬化後のレジスト膜の骨格を形成してレジスト膜の可撓性及び回路板への密着性を高めるとともに、硬化前のペースト状の紫外線硬化型レジスト剤においては、流動性を与えるための粘度調整剤として作用する。

例えばろう材除去液として過酸化水素と酸性フッ化アンモニウムとを含む薬液を使用する場合には、10〜40質量%の過酸化水素と、1〜8質量%の酸性フッ化アンモニウムとを含むろう材除去液を使用することができる。過酸化水素が10質量%未満の場合には、ろう材を除去する能が不十分であり、40質量%超の場合には金属基板が過度に腐食され、金属基板の寸法精度が悪化する。酸性フッ化アンモニウムが1質量%未満の場合には、ろう材層とセラミックス基板の接合界面に生じる活性金属を含む反応層の除去能が低下し、一方で8質量%を超える場合には、セラミックス基板を構成する結晶粒子を溶解し、セラミックス基板に求められる電気的な絶縁性や強度を低下させる。

金属基板の表面に、Ni、Au等のメッキ層を形成するメッキ工程をさらに有していても良い。例えはNiメッキを施す場合、ニッケル(Ni)を主成分としリン(P)の濃度が8質量%に調整された無電解メッキ液(85℃)中に20〜30分間浸漬することにより、金属基板の表面に厚みが5μm程度のNiメッキ層を形成することができる。なお、メッキ工程の前に、必要に応じて、金属基板の表面を化学研磨する化学研磨工程を配置してもよい。

[2] セラミックス回路基板 (1) 構成 本発明の回路基板は、セラミックス基板と、前記セラミックス基板に間隙を介して形成された二のろう材層と、前記二のろう材層を介し各々接合された二の金属基板とを有するセラミックス回路基板であって、前記二の金属基板間の絶縁抵抗が、500 MΩ/mm以上であることを特徴とする。ろう材層及び接合する金属基板の数はに2つに限定されず、3つ以上設けることもでき、その場合、接合する金属基板も3つ以上設けることができる。前記二の金属基板間の絶縁抵抗が500 MΩ/mm以上であるので、前記二の金属基板に半導体素子が搭載されたセラミックス回路基板を構成した場合に、二の金属基板間の絶縁が破壊され過大な電流が半導体素子に流れるようなトラブルの発生を防止することが可能となる。本発明のセラミックス回路基板は、好ましくは前述の本発明のセラミックス回路基板の製造方法により形成される。

前述のような高い絶縁抵抗を有するセラミックス回路基板は、例えば、二の金属基板間の間隙に露出したセラミックス基板の表面に存在する付着物の面積率を15%以下とすることで具現することができ、さらに好ましくは10%以下とする。さらに、二の金属基板間の間隙に露出したセラミックス基板の表面において、良導体である付着物がネットワークを形成して絶縁破壊をもたらす場合を考慮すると、最大径が50μm以上の付着物の密度を50個/mm2以下とすることにより、前記付着物によるネットワークの形成を抑制することができる。

セラミックス基板が、窒化珪素又は窒化アルミニウムを主体とした粒子からなる主相と、前記粒子の間に存在する焼結助剤を主体とした粒界相とを含む窒化物セラミックス焼結体である場合には、前記間隙に存在するセラミックス基板の表面に存在する空孔の最大径を2〜15μmとするのが好ましい。前記空孔の最大径が2μm未満の場合、洗浄工程における薬剤による付着物の除去が十分に行われない場合がある。一方で、前記空孔の最大径が15μmを超える場合、セラミックス基板の強度が低下し、例えば冷熱サイクル下におけるセラミックス回路基板の信頼性を劣化させる。

図1(a)及び図1(b)は、それぞれ本発明のセラミックス回路基板の一例を示す正面図、及び図1(a)を上方から見た平面図を示す。セラミックス回路基板Wは、セラミックス基板Sと、セラミックス基板Sの上面(一面)に間隙Gを介して形成された二のろう材層C1,C2(以下、第1のろう材層C1及び第2のろう材層C2と言う場合がある。)と、セラミックス基板Sの上面側に前記二のろう材層C1,C2を介し各々接合された、半導体素子等が搭載される回路板として機能する二の金属基板M1,M2(以下、第1の金属基板M1及び第2の金属基板M2と言う場合がある。)とを基本的な構成として有している。前記二の金属基板M1,M2の表面には、Ni、Au等のメッキ層が必要に応じ形成される。図1(a)及び図1(b)に示すセラミックス回路基板Wは、セラミックス基板Sの下面(他面)にろう材層C3を介し接合された、放熱板として機能する金属基板M3を有する。

(2) セラミックス基板 セラミックス基板Sの露出した表面に付着した付着物を除去することをその要旨とする本発明においては、前記セラミックス回路基板Wに使用するセラミックス基板Sの材質は特に限定されず、基本的に電気絶縁材料からなる焼結体で構成することができる。しかしながら、セラミックス回路基板Wに実装される半導体素子は、近年、発熱量が増大しかつその動作速度も高速化しているため、前記セラミックス基板Sとしては、高い熱伝導率を有する窒化物セラミックスが特に好ましい。具体的には窒化アルミニウムを主体とした粒子からなる主相と前記粒子の間に存在する焼結助剤を主体とした粒界相とを含む窒化アルミニウム焼結体、又は窒化珪素を主体とした粒子からなる主相と前記粒子の間に存在する焼結助剤を主体とした粒界相とを含む窒化珪素質焼結体でセラミックス基板Sを構成するのが好ましく、特に強度及び破壊靭性など機械的強度の面で優れた窒化珪素質焼結体でセラミックス基板Sを構成するのがより好ましい。

窒化珪素質焼結体からなるセラミックス基板Sは柱状粒子の影響により基板表面の凹凸が大きくなりやすいので、ろう材粉末と有機バインダとを含むろう材ペーストをセラミックス基板に塗布し、ろう材を介して金属基板をセラミックス基板に接合する加熱過程において、ガス化した有機バインダに起因する付着物が前記セラミックス基板表面の凹凸部に付着しやすい。従って、窒化珪素質焼結体からなるセラミックス基板Sを用いた場合に、本発明のセラミックス回路基板の製造方法によって得られる、付着物の除去又は低減効果をより発揮することができる。

窒化珪素質焼結体でセラミックス基板Sを構成する場合には、例えば90〜97質量%の窒化珪素、及び3〜10質量%の焼結助剤(Mg又はY及びその他希土類元素を含む)を含む原料粉末に、適量の有機バインダ、可塑剤、分散剤及び有機溶剤を添加し、ボールミル等で混合し、スラリーを形成し、このスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法で薄板状に成形し、セラミックスグリーンシートを得る。得られたセラミックスグリーンシートを、所望の形状となるよう打ち抜き又は裁断し、1700〜1900℃の温度で焼成することにより、セラミックス基板Sを得ることができる。

(3) 金属基板 前記セラミックス回路基板Wを構成する金属基板M1〜M3についても、その材質は特に限定されず、ろう材で接合できかつ融点がろう材よりも高ければ特に制約はない。例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケルメッキを施したモリブデン、ニッケルメッキを施したタングステン、ニッケルメッキを施した鉄合金を前記金属基板として用いることが可能である。これらの中でも銅又は銅を含む合金が、電気的抵抗及び延伸性、高熱伝導性(低熱抵抗性)、マイグレーションが少ない等の点から最も好ましい。アルミニウム又はアルミニウムを含む合金は、電気的抵抗、高熱伝導性(低熱抵抗性)は、銅に劣るものの、その塑性変形性を利用して、冷熱サイクルに対する実装信頼性を有する点で好ましい。

(4) ろう材層 セラミックス基板Sと金属基板M1〜M3を接合するろう材層C1〜C3の材質は特段限定されないが、代表的には、高強度・高封着性等が得られる、共晶組成であるAg及びCuを主体としTi・Zr・Hf等の活性金属を添加したAg-Cu系活性ろう材が好ましい。さらにセラミックス基板Sと金属基板M1〜M3の接合強度の観点から、前記Ag-Cu系活性ろう材にInが添加された三元系のAg-Cu-In系活性ろう材がより好ましい。セラミックス基板Sと金属基板との接合は、前述したように、前記ろう材成分の粉末と有機バインダとを含むろう材ペーストを用いて行う。

実施例 本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

(1) セラミックス回路基板の作製 (a)実施例1 図1(a)及び図1(b)に示すような、セラミックス基板Sと、セラミックス基板Sの上面(一面)に間隙Gを介して形成された二のろう材層C1,C2(以下、第1のろう材層C1及び第2のろう材層C2と言う場合がある。)と、前記セラミックス基板Sの上面側に前記二のろう材層C1,C2を介し各々接合された二の金属基板M1,M2(以下、第1の金属基板M1及び第2の金属基板M2と言う場合がある。)と、前記二の金属基板M1,M2の表面に形成したNiメッキ層と、セラミックス基板Sの下面(他面)に、ろう材層C3を介し接合された金属基板M3とを有するセラミックス回路基板Wを以下に記載する方法に従って作製した。

前記セラミックス基板Sとしては、全原料粉100質量部においてSi3N4を93質量%、Mgを酸化物換算で4質量%、Yを酸化物換算で3質量%含む窒化珪素基板(図1(b)に示す紙面において縦横の大きさがそれぞれ30 mm及び40 mm、並びに厚みが0.32 mm)を使用した。

以下、セラミックス回路基板Sの製造方法について、その各工程を示す平面図である図2(a)〜図2(f)を参照しつつ説明する。なお、以下述べるセラミックス回路基板Sの製造工程において、回路板である金属基板M1,M2及び放熱板である金属基板M3を形成するための各工程の内容は基本的に同一であるので、金属基板M1,M2についてのみ詳述し、金属基板M3については省略する。

[ろう材領域形成工程] 70.6質量%のAg、2.9質量%のIn、1.9質量%のTi、残部Cu及び微量の不純物の構成となるよう調整されたろう材粉末100質量部に対し、有機バインダとして5.3質量部のポリアクリル酸エステル、有機溶剤として19.1質量部のα-テルピネオール、分散剤として0.5質量部のポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びアルキルベンゼンスルホンサン塩を混合してなるろう材ペーストを使用して、図2(a)に示すように、セラミックス基板Sの上面(一面)に、厚みがいずれも40μmの二のろう材領域c1,c2を、平面方向において間隙Gを介してスクリーン印刷法で形成した。図2(a)に示す紙面において、第1のろう材領域c1の大きさは縦横が各々27.6 mm及び11.6 mm、第2のろう材領域c2の大きさは縦横が各々27.6 mm及び23.6 mmであり、間隙Gのろう材領域c1,c2間の距離は1.0 mmであった。

[接合工程] 前記ろう材領域形成工程の後、図2(b)に示す接合工程において、ろう材領域c1,c2にろう材領域c1,c2を覆う大きさの厚みが0.5 mmの無酸素銅基板C1020H材(JIS規格 H3100)からなる一枚の金属基板Mを配置した後、セラミックス基板S、ろう材領域c1,c2及び金属基板Mを一組とした被接合体を加熱炉に挿入し、真空雰囲気下で加熱し、ろう材層C1,C2を介しセラミックス基板Sと金属基板Mとを接合して接合体を形成した。なお、接合工程における金属基板Mの熱膨張を考慮し、図2(b)に示す紙面における金属基板Mの縦横の大きさは、各々29.5 mm及び39.5 mmであり、セラミックス基板Sの大きさより小さいものを使用した。

前記被接合体の加熱は、図4に示すように、有機バインダであるアクリル系樹脂の分解温度である400℃で10時間保持する第1の保持帯P1と、第1の保持帯P1から一定の昇温速度で加熱する昇温部P2を経た後に配置される、ろう材の溶融温度である765℃で1時間保持する第2の保持帯P3とを有する温度パターンで行った。

[回路パターン形成工程] 接合工程の後、図2(c)に示すように、前記接合体を構成する金属基板Mの表面に所望のパターンで二のレジスト膜R1,R2を形成し、その後エッチング処理を施して金属基板Mの不要部を除去し、図2(d)に示すように、平面方向において間隙Gを挟む状態で、回路パターンである二の金属基板M1,M2を形成した。具体的には、紫外線硬化型エッチングレジストを、下記の第1の金属基板M1及び第2の金属基板M2の寸法に対応したパターンで金属基板Mの表面にスクリーン印刷法で塗布した接合体を、液温50℃でエッチング液[塩化第2鉄(FeCl3)溶液(46.5Be)]に浸漬し、金属基板M1,M2を形成した。なお、図2(d)に示す紙面において、第1の金属基板M1の縦横の大きさは各々28 mm及び12 mm、及び第2の金属基板M2の縦横の大きさは各々28 mm及び24 mmとした。

[ろう材層除去工程] 図2(d)に示すように、金属基板M1,M2の表面に形成したレジスト膜を除去した後、金属基板M1,M2の外縁からはみ出した不要なろう材層Dを、過酸化水素26質量%及び酸性フッ化アンモニウムを含むろう材除去液で液温40℃及び処理時間40分で除去した。なお、前記回路パターン形成工程及びろう材除去工程は、下記の洗浄工程の後に設けてもよい。しかしながら、金属基板M1,M2の損傷を抑制するためには、接合工程と洗浄工程の間に回路パターン形成工程及びろう材層除去工程を設けるのが好ましい。

[洗浄工程] 前記ろう材層除去工程の後、例えば図2(e)に示すように、セラミックス基板Sの露出した表面に付着物Kが付着した接合体が得られた。この付着物Kは分析の結果、大部分が炭素質のものであった。この接合体を、表1に示す濃度及びpH値の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を洗浄用薬剤として使用し、表1に示す温度及び時間条件で洗浄した。その結果、図2(f)に示すように、セラミックス基板Sの露出した表面に付着した付着物Kの大部分が除去され、前記付着物Kが僅かに残るのみのセラミックス回路基板Wを得た。なお、洗浄工程で使用した次亜塩素酸ナトリウムを含む薬剤は、実施例16で使用した14.0質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を純水で希釈して調節したものであり、特にpH調節は行わなかった。

[Niメッキ工程] 洗浄工程を経た接合体を、ニッケル(Ni)を主成分としリン(P)の濃度が8質量%に調整された無電解メッキ液(85℃)中に20〜30分間浸漬することにより、金属(銅)基板の表面に厚みが5μmのNiメッキ層を形成し、セラミックス回路基板を得た。

(b)実施例2〜30 洗浄用薬剤、洗浄温度及び時間を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてセラミックス回路基板を作製した。

(c)比較例1及び2 比較例1は、洗浄工程を省略した以外は実施例1と同様にしてセラミックス回路基板を作製した例である。比較例2は、洗浄用薬剤として、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の代わりに、3質量%の過酸化水素及び12質量%の硫酸を含む水溶液を使用して、表1に記載した洗浄温度及び時間で洗浄した以外は実施例1と同様にしてセラミックス回路基板を作製した例である。

表1

(2) セラミックス回路基板の評価 得られた実施例及び比較例のセラミックス回路基板の、付着物Kの面積率、絶縁抵抗(最小値)、絶縁破壊電圧、及び平均抗折強度を以下のようにして測定した。結果を表2に示す。

(a) 付着物Kの面積率 100枚のセラミックス回路基板の中から無作為に抽出した20枚のセラミックス回路基板について、セラミックス基板Sの露出した表面(図2(g)の間隙Gの部分)を光学顕微鏡で撮像し、その画像を2値化処理して付着物Kの像を分離した。前記画像の任意の位置に0.8 mm×0.8 mmの矩形領域Fを複数設定し、各矩形領域Fに存在する付着物Kの面積割合を算出し、全矩形領域Fの平均値を求めた。2値化処理の閾値の設定は、モード法を用い、各セラミックス回路基板の画像で求めた明暗の濃度分布から求めた閾値をさらに平均した値を閾値とした。

以下に閾値の求め方の詳細を図3(a)〜図3(c)を使って説明する。前記光学顕微鏡画像から付着物Kの画像をその周囲とともに切り出す(図3(a))。その画像をモノクロ像とするために縦軸を度数、横軸を白と黒の範囲を256階調に分けた濃度とする濃度分布グラフ(図3(b))を求める。濃度分布グラフから度数が最大値となる濃度を濃度分布の平均濃度、最大度数の1/2に相当する濃度のうち低い方の値をこのセラミックス回路基板の閾値とする。他のセラミックス回路基板においても同様に閾値を求め、各セラミックス回路基板の閾値から、それらの平均値を求め、2値化処理に用いる閾値とした。この閾値を用いて図3(a)の付着物Kの画像を2値化処理すると図3(c)の2値化画像が得られる。なお、図2(g)に示す黒色部が炭素質付着物Kであることは、この黒色部を、エネルギー分散形X線分光器(ノーラン社製 UTW型Si(Li)半導体検出器 ビーム径1 nm)により確認した。

(b) 絶縁抵抗 絶縁抵抗は、図1(a)に示すように、第1の金属基板M1の任意の箇所及び第2の金属基板M2の任意の箇所に接するように、それぞれ絶縁抵抗試験用の球形電極A、Bを配置し、第1の金属基板M1と第2の金属基板M2との間に1000 Vの直流電圧を印圧し、30秒後の抵抗値を絶縁抵抗値とした。絶縁抵抗は、各実施例及び比較例ともに100枚のセラミックス回路基板について求めた抵抗値の最小値で評価した。

(c) 絶縁破壊電圧 絶縁破壊電圧は、セラミックス回路基板の表裏間に交流電圧を印加したときの絶縁破壊電圧である。図1(a)に記載したように、第1の金属基板M1及び第2の金属基板M2に球形電極A及びBを配置し(A及びBは電気的に短絡)、さらにセラミックス回路基板の裏面の金属基板M3に同様にして電極C(図示せず)を配置し、このセラミックス回路基板をシリコーン絶縁油中(室温)にセットし、菊水電子工業製の耐電圧試験器TOS5101で回路基板の表裏間に交流電圧を0〜10 kVまで昇圧速度0.1 kV/secで徐々に上げながら印加し、漏れ電流の上限を超える電流が流れたときの電圧値を絶縁破壊電圧とした。この測定を、5個の試料について行いそれらの平均値で評価した。

(d) 平均抗折強度 抗折強度は、薬液で処理を施したセラミックス基板から切り出した、長さ20 mm、幅4 mm、厚さ0.32 mmの試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所製AG−50KNG)によりクロスヘッド速度0.5 mm/minで3点曲げ試験(2点の間隔は7 mm)により求めた。この試験片のセラミックス基板は、回路パターンを形成しない窒化珪素基板を準備し、銅接合せずに、セラミックス回路基板と同等の化学工程を施したものである。すなわち、試験片で抗折強度を測定することで、窒化珪素基板の強度変化を求めた。センサーとしてロードセル(型式SBL-1kN)を使用した。なお平均抗折強度は10個の試験片によって求めた値の平均値である。

(e) 沿面での絶縁破壊 前記(c)の絶縁破壊試験結果において、表裏間で絶縁破壊した試料には、セラミックス基板内部で放電が生じる貫通破壊と、セラミックス基板外表面に沿って放電が生じる沿面破壊の二種類の絶縁破壊モードが認められる。このセラミックス基板Sの縁の面(表面から裏面にわたる領域)を沿面と呼び、この部分に導電性異物などが付着すると、沿面での絶縁破壊が生じやすいことから、絶縁破壊の有無を分類して評価した。

表2 注(1):沿面での絶縁破壊の発生が見られた。 注(2):沿面での絶縁破壊の発生が多数見られた。 注(3):粒界ガラス相溶出が見られた。

(3) 結果 実施例1〜30のセラミックス回路基板は、いずれも二の金属基板M1,M2の間隙Gに露出したセラミックス基板表面に存在する付着物Kの面積率が10%以下であり、金属基板M1,M2間の絶縁抵抗の最小値は500 MΩ/mm以上であった。これに対して、洗浄工程を設けない比較例1のセラミックス回路基板は、付着物Kの面積率が17.6%と大きく、絶縁抵抗の最小値は0.4×103 MΩ/mmと極めて低く、絶縁破壊電圧が6.2 kVと低かった。比較例1のセラミックス回路基板は、絶縁抵抗の測定ごとのばらつきが大きく、付着物Kの面積率が大きいためと考えられる。さらに沿面での破壊が多数見られた。洗浄用薬剤として、過酸化水素と硫酸との混合水溶液を使用した比較例2のセラミックス回路基板は、付着物Kの面積率が0.17%と低い値であり、絶縁抵抗の最小値も92×103 MΩ/mmと比較的高かったが、絶縁破壊電圧が4.9 kVと非常に低かった。実施例9及び比較例2のセラミックス基板の断面写真(それぞれ図5(a)及び図5(b))の比較から、比較例2(図5(b))の絶縁破壊電圧の低下は、表面付近の粒界ガラス相(図中で白い部分)が溶出し、ガラスよりも誘電率の低い気孔(図中で黒く抜けた部分)になったことによるものと推定される。さらに平均抗折強度が659 MPaと低く、セラミックス基板の劣化が起こっていることが分かる。

洗浄時の処理時間及び温度は一定で、洗浄用の薬剤(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)の濃度を2.0〜14.0質量%(pH9.2〜13.2)まで変化させた実施例1〜9及び14〜16の比較から、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度(pH)が高いほど付着物Kの面積率が低くなり、絶縁抵抗(最小値)が大きくなることが分かる。実施例1及び2のセラミックス回路基板は、付着物Kの面積率がそれぞれ0.82%及び0.77%と他の実施例3〜9及び14〜16に比べやや高く、さらに沿面で絶縁破壊が見られた。これは洗浄用の薬剤(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)のpHがそれぞれ9.2及び9.5と比較的低かったためだと考えられる。一方、pH13.1の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用した実施例15及びpH13.2の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用した実施例16のセラミックス回路基板は、付着物Kの面積率がそれぞれ0.05%及び0.04%と低く、絶縁抵抗(最小値)もそれぞれ210×103 MΩ/mm及び250×103 MΩ/mmと大きな値であった。なお、実施例1〜30の洗浄工程によって、各試料の金属基板M1,M2は電極としての機能を損なうような損傷を受けなかった。

薬剤及び洗浄時の処理時間は一定で、処理温度のみを30〜57℃まで変化させた実施例3及び17〜21の比較から、処理温度が高いほど付着物Kの面積率が低くなり、絶縁抵抗(最小値)が大きくなることが分かる。

薬剤及び洗浄時の処理温度は一定で、処理時間のみを10〜50分まで変化させた実施例3及び24〜27の比較から、処理時間が長いほど付着物Kの面積率が低くなり、絶縁抵抗(最小値)が大きくなることが分かる。例えば、実施例1及び2で処理時間を20分に変更すると、沿面での絶縁破壊は生じなくなった。しかしながら、比較例2で処理時間を20分に変更すると、粒界ガラス相溶出がさらに進展してしまった。従って、過酸化水素と硫酸の混用溶液を洗浄用薬剤として使用した場合、処理時間が長くなることは好ましくない。

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