【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ハウジング内に配置され、飛行装置の重量を越える揚力を発生することのできる少なくとも1つの駆動されるロータと、主飛行方向に推進力を発生させる推進手段とを有する飛行装置に関する。 この場合、ハウジングは大体においてラウンドエーロフォイル(丸型の翼)として形成され、かつロータの領域にロータの噴流を調節して、飛行装置の浮遊飛行における高度と位置とを制御可能にする空気案内手段を有し、そしてラウンドエーロフォイルは、空気流が到着すると動的な揚力を発生する。 【0002】 【従来の技術】この種の飛行装置は欧州特許公開公報第0393410号に記載されている。 実験によって、この種の飛行装置では、主飛行方向における飛行速度が比較的低い値に制限されていることが明らかにされている。 飛行速度が高くなると、ロータ流とハウジングによって形成されたラウンドエーロフォイルの到着流とがマイナスの影響を受けて、所定の速度から飛行装置が不安定な飛行高度になる場合がある。 ラウンドエーロフォイルにおける流れ特性は今日でも余り知られていない。 このことは、ラウンドエーロフォイルの中心をロータ流が貫流する場合に、より一層言えることである。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、冒頭に述べた種類の飛行装置において、制御された浮遊飛行に加え、ラウンドエーロフォイルの動的揚力を利用して高速度で駆動される滑空飛行を可能にする飛行装置を提供することにある。 本発明の他の目的は、上記の飛行装置の制御方法を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、ハウジング内に配置され、飛行装置の重量を越える揚力を発生可能な少なくとも1つの駆動されるロータと、主飛行方向の推進力を発生する推進手段とを有し、ハウジングはおおむねラウンドエーロフォイルとして形成され、かつロータの領域にロータの噴流を調節して、浮遊飛行における高度と位置を制御可能にする空気案内手段を有し、ラウンドエーロフォイルは空気流が到着すると動的な揚力を発生するように構成される飛行装置において、主飛行方向における飛行装置の縦の傾斜を調節する制御力を動的に発生させるために、ロータ噴流の外側に尾翼手段を配置したことを特徴とする飛行装置を提供する。 【0005】さらに本発明によれば、浮遊飛行モードと滑空飛行モードと移行モードとを備えた上記の飛行装置を制御する方法において、浮遊飛行モードにおいては、 浮揚はロータによって発生され、高度及び移動は大体において空気案内手段によるロータ噴流の操舵によって行われ、滑空飛行モードにおいては、推進は推進手段によって、浮揚はラウンドエーロフォイル状のハウジングの到着流によって、かつ制御は尾翼手段によって行われ、 移行モードにおいては、制御は空気案内手段と尾翼手段とによって重畳して行われることを特徴とする飛行装置の制御方法が提供される。 【0006】 【作用】貫流されるラウンドエーロフォイルを用いる本願出願人の試みによって、ロータ流によって動的な揚力が影響を受けて、所定の速度から揚力が飛行方向前方領域において著しく増加し、かつラウンドエーロフォイルの後方領域において著しく減少することが明らかにされた。 ロータ噴流を適当に方向転換させることによってこの効果を補償することは、この速度からはもはや不可能である。 また、浮遊飛行における制御に使用できるのはロータ噴流のこの方向転換のみである。 【0007】驚くべきことに、ロータ噴流の方向転換による制御と浮揚及び推進が主としてロータによって行われる速度領域が、尾翼の到着流によって、貫流されるラウンドエーロフォイルへの上述の効果を補償するのに充分な動的制御力を発生させることができる速度領域と交差することが明らかにされた。 この移行領域によって、 ラウンドエーロフォイルだけで充分な動的揚力を発生するより大きな速度領域へ進入することが可能になったので、ロータの寄与が不必要になり、それによってラウンドエーロフォイルの貫流を行わなくて済む。 【0008】低い速度領域においては浮揚と推進及び制御はロータ噴流によってのみ行われ、高い速度領域においては浮揚は閉鎖されたラウンドエーロフォイルの到着流によって動的に行われるが、移行領域においては「混合された」状態が存在し、そこではロータ噴流も尾翼ないしラウンドエーロフォイルの到着流も制御と揚力発生に寄与する。 【0009】 【実施例】以下、本発明を2つの実施例を用いて説明する。 図1〜図3は、第1実施例による6人乗り飛行装置のハウジング及び尾翼の外側形状を示す。 ロータハウジング2の中央にはキャビン1が配置され、キャビンの上方及び下方はロータハウジングを越えて突出する。 キャビン内には、2つのパイロット席を含む6人用の座席と、駆動タービン3とが配置される(図5も参照)。 【0010】駆動タービン3は、横たわって配置されたロータ4(図4及び図5を参照)、又は垂直に作用するプロペラ5を選択的に駆動する。 ロータハウジング2には、浮遊飛行においてロータ噴流が貫通する環状の空気案内領域6と、その外側に連続するハウジング部分7とが設けられ、ハウジング部分7は、揚力発生プロフィールを有する楕円形のラウンドエーロフォイルを形成する。 「ラウンドエーロフォイル(丸型の翼)」という概念は羽根の形状にも関するものであって、その翼幅は大体においてその長さに相当する。 ハウジング部分7の外側には、分割された後方の尾翼8,8′が配置される。 これらの尾翼は、浮遊飛行においてラウンドエーロフォイルを貫通し、かつ前方へ移動する場合にラウンドエーロフォイルを覆うロータ噴流の作用の外側に位置する。 後方の尾翼8,8′は、昇降舵9,9′と横方向舵1 0,10′とを有し、これらは後述するように滑空飛行並びに浮遊飛行と滑空飛行間の移行領域において飛行装置の制御に用いられる。 さらに前方の安定翼11,1 1′を設けることもできる。 尾翼は、(拡大された)ラウンドエーロフォイルに内蔵することもできる。 【0011】ハウジングはさらに、折畳み収容可能な走行輪12を備える。 本実施例のロータとその駆動装置との機械的構造を、図4及び図5に示す。 環状のボックスプロフィール20の外側にはロータブレード21が固定され、ロータブレードの制御用の迎え角は固定的に調節される。 それぞれブレードの配置とロータの回転数とに従って、さらに多くの、又は場合によりさらに少ないロータブレードを設けることも可能である。 ボックスプロフィールには内歯を有するころ軸受22が配置され、ころ軸受内に、差動歯車装置26の従動軸25上に取り付けられた駆動ピニオン23が嵌入する。 差動歯車装置2 6の他の従動軸(図示せず)は、水平に作用するプロペラ5を駆動する。 ロータ用の従動軸25の制動によって、ロータ回転数を静止状態まで減少させることができ、それによって駆動装置のトルクの一部又は全部を差動歯車装置を介してプロペラ5へ伝達し、かつその逆を遂行することができる。 浮遊飛行において、駆動タービン3は専らロータ4に作用するが、ロータは駆動される滑空飛行において停止され、駆動トルクは全てプロペラ5に伝達される。 【0012】ロータ4の下方の第1平面には、静的な流れ案内システムのやや傾斜された案内羽根14が配置される。 案内羽根14は、キャビン1とロータハウジングの外側ハウジング部分7との間に半径方向に延設される。 案内羽根の機能は、ロータ噴流の回転する成分を吸収して、圧力の高い領域を構成することにあり、この領域はその下に揺動可能な薄板15を配置することによって解消される。 案内羽根14はさらに、支持を行うハウジング構造の一部でもある。 本実施例においては全体で36個のこの種の案内羽根14が設けられており、それによってラウンドエーロフォイルが良好に支持される。 【0013】ロータ4の下方の第2平面には、ロータ噴流の排出方向と排出速度とを制御するために揺動可能な薄板15が配置される。 本実施例において、この薄板は大部分が主飛行方向に対して横に向けられる。 後述するように、薄板配置は個々の区画に分割され、その区画内で薄板が、サーボ駆動される操作ロッド16によって集団的に平行に、又は対で反対方向に揺動することができる(図6参照)。 【0014】ロータ4の上側は、主飛行方向に平行に延びる支柱17を有するカバー格子によって支持される。 既に冒頭で述べたように、本発明の飛行装置は区別すべき多数の飛行状態を有し、これら飛行状態は互いに重なり合って移行し合う。 このことは、より確実な駆動にとって不可欠である。 【0015】第1の飛行状態を構成するのは浮遊飛行である。 浮揚、移動及び高度制御は、ロータ噴流、すなわち薄板配置の個々の区画内でロータ噴流を絞り又は方向転換することによってもたらされる。 図6は、薄板配置の第1の実施例を概略的に示す。 ここでは各区画をギリシャ数字で示す。 【0016】区画内で薄板が垂直位置から集団的に平行に揺動される場合は、それによってロータ噴流の一部が非常に強く、又は余り強くなく方向転換される。 対応する反動ベクトルによって水平の力成分が発生し、それを推進力又は制御力として使用することができる。 薄板を対で反対方向に揺動させる場合は、この種の水平の力成分は発生しないが、該当する区画における浮揚力が減少される。 【0017】この原則に従って、浮遊飛行においては然るべく薄板を調節することによって飛行装置の高度と移動とを調節することができる。 その場合、平行に揺動する薄板を有する区画XII 及び区画VIは、主飛行方向に、 又は主飛行方向と反対に推進力を発生するために用いられる。 それぞれ異なる方向に平行に揺動される薄板を有する区画III 及び区画IXは、垂直軸を中心とする回転のために設けられており、かつ薄板が同一方向に平行に揺動される場合には同様に推進を発生する際に一緒に作用する。 【0018】8つの区画I, II, IV, V, VII, VIII, X, XIは、飛行装置の垂直移動を制御するために集合的に用いられ、そのために薄板は対で反対方向に揺動されるので、水平成分なしの浮揚力が調節される。 その場合、横軸を中心にして傾斜を重ね合わせるために、区画I及び区画XI、並びに区画V及び区画VII が対立するように共働する。 例えば区画I及び区画XIにおいて薄板が閉鎖される場合には、飛行装置は揚力が減少するので横軸を中心として前へ傾斜する。 縦軸を中心とする傾斜の制御を重ね合わせるために、区画II及び区画IV、並びに区画X及び区画VIIIが対立するように制御される。 【0019】さらに区画XIV 及び区画XIIIは、薄板が平行に揺動される場合に、横方向のスライド移動を発生させるのに用いられる。 原則的に薄板の制御方向転換は開放された位置から行われ、その場合に高度制御が垂直及び水平移動の制御に重ねられる。 それによってロータ噴流は全周面にわたって有効であり、ロータブレードへの衝撃をもたらす激しい局部的な圧力変動は発生しない。 【0020】浮遊飛行においては、このようにして約5 5km/hまでの速度が得られる。 既に説明したように、ロータ噴流に貫通されるラウンドエーロフォイルの到着流が増加し、その場合にラウンドエーロフォイルの前側における浮揚はその後ろ側における浮揚よりずっと大幅に増大する。 約35km/hからは、このモーメントを補償するために尾翼8,8′が有効になる。 【0021】約55km/hと約90km/hとの間において移行状態が発生する。 遅くともこの速度領域において、推進の少なくとも一部はプロペラ5によって行われ、プロペラはロータ噴流とは無関係の推進手段を形成する。 この飛行状態において薄板の制御調節は減少し、徐々に尾翼の作用にとって代わられる。 尾翼はロータ噴流の外側の側方に配置されており、したがって流出するロータ噴流による影響を受けない。 それにより、ロータ噴流及びラウンドエーロフォイルの到着流とは無関係に、ラウンドエーロフォイルに不均一に分配された揚力を補償する制御力が得られる。 【0022】約90km/hから約400km/hの最大速度(SLSC、すなわち海抜標準状態での)まで、推進は完全にプロペラ5によって発生され、揚力はラウンドエーロフォイル2によって発生される。 薄板は閉鎖され、 ロータは無効になる。 それによってラウンドエーロフォイルはもはや貫流されない。 制御は尾翼8,8′によって従来のように引き継がれる。 推進力は、プロペラ5による代わりに他の方法で発生させることもできる。 駆動装置としていわゆるコンバーティブルなタービンが使用される場合には、タービンは滑空飛行において直接逆推進駆動装置として作用することができる。 【0023】尾翼8,8′又は安定翼11,11′によって、既に冒頭で説明したように、浮遊飛行においてラウンドエーロフォイルが貫流される際に増加する横軸を中心とするトルクを補償して、ロータ噴流の作用なしで充分に動的な駆動が存在することが可能になり、その後、最適な方法で高い飛行速度が得られる駆動滑空飛行への移行が行われる。 【0024】飛行装置は、滑空飛行においては最も小さい駆動出力しか必要としないので、装置に過負荷がかかると場合によっては「浮遊飛行」と「移行飛行」という種類の駆動を利用できなくなることがあるが、滑空飛行とプロペラ力による従来の始動とは常に可能である。 すなわち、満タンに給油され重い荷物を積んだ飛行装置をいつでも滑空飛行で始動させることができ、かつ比較的長く飛行した後に、燃料の重量が充分に減少した後では浮遊飛行へ移行することができる。 【0025】図7〜図11は、飛行装置の第2の好ましい実施例を示す。 図1〜図6に示す第1実施例と比較して、本第2実施例は若干の相違を有し、それが特に図7 〜図10に明らかにされている。 図7に示すように、本実施例においてプロペラ5′は飛行装置の鼻部分に設けられる。 飛行装置は2つのタービン3′,3″によって駆動される。タービンの駆動力は、トランスミッション27において合体され、プロペラ5′へ与えられる。これは例えば直接に、又は適当な減速トランスミッションを介して行うことができる。本実施例では、11個のロータブレード21を有するロータの駆動装置は駆動軸を介して回転し、駆動軸は例えば適当なクラッチを介してトランスミッション27と結合される。ロータは、タービンによって駆動される滑空飛行において、例えばオイルクラッチ又はマグネットクラッチからなる上記クラッチと減結合される。プロペラ5′の推進を制御するために、例えばプロペラのブレードの迎え角を変化させることができる。したがって、動力伝達のこのような実施例においては、上述の差動歯車装置を省略することができる。 【0026】駆動タービン3′,3″を飛行装置の先端に配置することによって、飛行装置の重心Sが前方へ移動する。それによって図11に示すように、移行モードにおける飛行特性が改良される。既に説明したように、 この飛行モードにおいてロータ噴流が飛行装置の周りを流れる空気と共働することにより、浮揚力はラウンドエーロフォイルの前方領域で増大し、後方領域で減少する。 それにより、図11に矢印Pで示す回転トルク(「ピッチ」)が発生する。 前方安定翼11,11′及び昇降舵9,9′の迎え角を適当にすることにより、この回転トルクに拮抗する。 飛行装置の重心Sが飛行装置の浮揚中心より前にある場合には、操作作用Pに抗して安定翼11,11′又は昇降舵9,9′の作用を支持する他の回転トルクが発生する。 【0027】飛行装置の第2実施例における薄板配置を図10に示す。 第1実施例とは異なり、この実施例においては全ての薄板が半径方向に配置される。 ここでも各薄板は独立した区画(制御区画I′〜 XII′)に分割され、それらは個々に制御される。 全部で12個の区画はほぼ同一に構成される。 このモジュラー構造によって、 構造及び予備部品の保管及び保守が容易になる。 すなわち、例えばある単独の故障した区画を取り除き、正しく機能する区画に交換することができる。 【0028】浮遊飛行における推進の微細な制御は、この実施例においては特に区画 III′及び区画IX′における薄板迎え角の調節によって行われ、側方の移動は主に区画XII′及び区画VI′を介して制御される。 浮揚力を制御するために、第1実施例と同様に薄板を対で互いに反対方向に調節することができる。 推進の大まかな制御は、プロペラ5′のブレードの迎え角の調節を介して行われる。 【0029】上述の2つの実施例は、新しい飛行装置の実施方法のいくつかを示すものである。 しかし、その他の変形例も可能である。 すなわち、例えば安定翼及び尾翼の形状と配置とを、広範な領域で変化させることができる。 その場合に重要なことは、特に移行飛行において良好な制御可能性を保証するために、案内あるいは安定化手段の少なくとも一部をロータ噴流の作用の外側に配置することである。 【0030】飛行装置のすべての実施例において、ヘリコプタの利点が面飛行装置の利点と結び付いており、その場合にこれらの飛行状態間の移行が確実な方法で得られる。 図1、図2及び図5から明らかなように、飛行装置のこの6人乗りの実施例の長さと「翼幅」とは、大体において従来の6人乗りの飛行機の値に相当し、それぞれ例えば10〜15メートルの範囲にある。 達成可能な最高速度は、この飛行機カテゴリーで一般的な値に相当する。 したがってこの飛行装置は、駆動される滑空飛行においては面飛行装置と同様であるが、さらに浮遊飛行の利点を有するので、ヘリコプタに相当する飛行操作を実施することができる。 上述の構造は特に、航路サービスで使用することができる中型の旅客機に適している。 【図面の簡単な説明】 【図1】飛行装置の第1実施例の側面図である。 【図2】図1に示す飛行装置の正面図である。 【図3】図1に示す飛行装置の上面図である。 【図4】ロータ領域と中央キャビンの一部の上面図である。 【図5】該当する領域の中心軸の断面図である。 【図6】薄板区画の概略図である。 【図7】飛行装置の第2実施例の上面図である。 【図8】図7に示す飛行装置の正面図である。 【図9】図8に示す飛行装置の側面図である。 【図10】薄板区画の第2実施例の概略図である。 【図11】移行領域におけるパワー特性の説明図である。 【符号の説明】 2…ハウジング 4…ロータ 5…プロペラ 8,8′…尾翼 11,11′…安定翼 14,15…空気案内手段 |