【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、調整可能な羽根ピッチを備えたプロペラと、特にスポーツボートのためのプロペラとに関する。 【0002】 【従来の技術】船舶のための可変ピッチプロペラは、ハブと、このハブに固定された複数の羽根とから成っていることができるが、この可変ピッチプロペラは、羽根のピッチの選択を可能にするために羽根軸線を中心にした各羽根の調整を許容する。 【0003】ドイツ連邦共和国特許出願公告19213 37号明細書には、このようなプロペラが記載されており、この場合、各羽根は、ハブの座部においてセンタリングされるディスク状のベースを有しており、羽根の軸線に対する羽根の角位置が、座部から下方へ延びた位置決めピンが羽根ベースの選択された位置決め外殻に係合することによって選択される。 【0004】センタリングピン又は突出部、ひいては個々の羽根の軸線を中心にした羽根の角位置の選択を許容するために、羽根のベースは、同心円状に又は円のセグメント状にほぼ分配された多数の位置合わせボアを有している。 位置決めピンが、特定の羽根ピッチを確定するために整合した又は位置合わせされたボアに挿入されることができるように、各位置決めボアは、座部のボア又は外殻と位置合わせされることができる。 次いで、ハブへの羽根のベースの取付けは、羽根のベースに設けられた細長い孔又はスロットを貫通することができかつハブ又は座部の雌ねじ山付きボアにねじ込まれることができるねじ又はボルトによって行うことができる。 【0005】このようなタイプの船用プロペラは、通常、種々異なる運転条件を提供するための羽根のピッチ調整のための可能性が制限されている。 【0006】しかしながら、モータ駆動装置を利用する、以下ではスポーツボートと呼称するような多くのタイプのスポーツ船舶、ヨット及び同様のもののためには、特定のプロペラピッチが駆動モータに適合しなければならないことが分かった。 このことは、特にプロペラがピッチ調整のための制限された能力しか有していない場合には著しい問題を生ぜしめるおそれがある。 実際には、例えば各羽根の約1゜の角方向の変化に相当することができる約1mmのピッチ変化が200回転毎分(R PM)までの機関速度変化を生じることができるように、プロペラのピッチは機関速度に著しい影響を有することができることが分かった。 【0007】したがって、ハブと、ハブの回転軸線に対して横方向の個々の軸線を中心にしてハブの個々の座部において角方向で調整可能なプロペラ羽根とを利用しながら、広範囲の様々な機関速度及びスポーツボート要求のために用いられることができる、標準化されたボートプロペラを構成したいならば、各羽根ベースとハブの個々の座部とには、プロペラのための全ての可能な所望の羽根ピッチを網羅するために約30の位置合わせボアが設けられなければならない。 【0008】さらに、位置合わせボアが多数設けられているので、常に、ピッチ調整のために正しくないボアが選択され、ひいては、プロペラの羽根が互いに適切に合致させられなかったり、正しくないピッチが選択されたりする危険性がある。 さらに、必要とされるボアが多数設けられかつこれらのボアがプロペラのベースに正確に配置される必要があるので、羽根の製造が複雑となる。 多くの使用例では、羽根ベースは、必要とされる多数のボアを単純に提供することはできない。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の主な課題は、羽根ピッチの調整及び設定を許容するスポーツボート及びその他の船舶のための改良されたプロペラを提供することであり、これにより従来装置の欠点が排除される。 【0010】本発明の別の課題は、プロペラの羽根の製造の複雑さと羽根の誤調整の危険性を低減し、それにも拘わらず全ての可能な所望のピッチを提供させることができる、前記目的のための改良されたプロペラを提供することである。 【0011】本発明のさらに別の課題は、非熟練者に対してさえも改良された羽根及びハブを使用することにより正確なピッチ調整が可能となるように、必要とされる特定のプロペラピッチに拘わらないプロペラハブの経済的な製造とプロペラ羽根の標準化された製造とを可能な特にスポーツボートのためのプロペラを提供することである。 【0012】 【課題を解決するための手段】この課題を解決するために本発明による構成では、少なくとも1つの座部が形成されたハブと、前記座部に収容可能でかつ切欠きが形成されたベースを有するプロペラ羽根と、前記切欠きに収容可能でかつボアが形成された少なくとも1つのキーと、前記座部から外向きに突出していて、前記キーによって決定されたピッチに対応する角位置において前記座部に対して前記プロペラ羽根を位置決めするために前記ボアに係合可能なピンとが設けられているようにした。 【0013】本発明による別の構成では、羽根支持座部が形成されたハブと、前記羽根支持座部に取り付けられる羽根部材とが設けられており、前記羽根支持座部が、 第1の構造を有しており、前記羽根部材が、前記第1の構造と係合する第2の構造を有しており、前記構造のうちの一方が、前記羽根部材が角方向で調整される場合に中心となる個々の半径方向軸線に対して内向きに延びかつ角方向で間隔を置いて配置された少なくとも2つの爪から成っており、前記構造のうちの他方には、前記軸線に対して外向きに延びたており、前記座部に対する前記羽根部材の角変位に基づき前記第1の構造の前記爪と差込み結合で係合可能な少なくとも2つの爪が設けられており、さらに、前記構造のうちの一方に形成された切欠きと、この切欠きに収容されかつねじ山付きボアが設けられたキーと、前記ねじ山付きボアにねじ込まれかつ前記構造のうちの他方に設けられた孔に係合させられるピンとが設けられているようにした。 【0014】 【発明の効果】これらの課題及び以下で明らかにするその他の課題は、本発明に基づき、切欠きを備えた各羽根ベースを提供することにより達成される。 前記切欠きには、調整軸線を中心にした羽根の角位置を確立するために位置決めキーが収容されることができる。 この位置決めキーは、前に説明した位置合わせボア又は外殻を有する小さなプレートとして形成されている。 前記位置合わせボアには位置決めピンが係合することができる。 羽根ベースは、プレートが正確に切欠きに係合しかつ羽根のピッチひいては調整軸線を中心にした羽根の角方向の方向付けを確定することができるように座部に収容される。 小さなプレート又はキーによって決定されたピッチを有しながら、羽根のベースがねじによってハブに固定されることができると有利である。 【0015】したがって、本発明によれば、ハブには、 ハブに設けられた座部に個々の羽根キャリヤが設けられており、各羽根キャリヤは座部において角方向で調整可能でありかつ座部にピンによって固定されており、ピン自体は、小さなプレートとして形成されたキーに収容される。 小さなプレートの長さ、形状又はサイズは、座部における羽根キャリヤの向きを決定する。 羽根キャリヤは、ねじ又は同様のものによって羽根ベースに取り付けられている。 羽根キャリヤ自体は、雄ねじ山を有するロックリングによって座部に保持されることができ、前記雄ねじ山は、個々の座部の雌ねじ山に係合する。 【0016】本発明の別の特徴によれば、羽根のベースは突出部又はピンを有しており、この突出部又はピンは、中心ボア又は切欠きを有する羽根キャリヤに対して羽根をセンタリングする。 中心ボア又は切欠きには突出部又はピンが収容される。 もちろん、望ましいならば、 羽根キャリヤに突出部又はピンを設け、羽根のベースが、前記突出部又はピンにおいて羽根をセンタリングする切欠きを有していることができる。 【0017】座部に対する羽根の種々異なる角度調整のためには、種々異なるキー又はプレートを使用することができる。 このような各プレート又はキーには、キー又はプレートに応じて決定される羽根の角度設定を表示する印が、文字又は数字による上方の組として設けられていることができる。 所定のプレート又はキーを選択することにより、熟練していない作業者でさえも、所要又は所望の羽根ピッチを正確に設定することができる。 【0018】羽根ベースの切欠きとプレート又はキーとは対称的な外形を有していることができると有利である。 この場合、各プレート又はキーは2つの異なるプレートピッチを提供することができる。 しかしながら、実用上の点からは、羽根ベースの切欠きとプレート又はキーとが円弧セグメントの輪郭を有しているようにこれらの羽根ベースの切欠きとプレート又はキーとを提供し、 また、有利には外方へ開放しているように羽根ベースの縁部に沿って切欠きを提供することが望ましいことが分かった。 このことは、羽根ベースの機械加工を容易にする。 【0019】前に説明したように、羽根ベースの直接的な機械加工は、ピッチキー又はプレートが収容される切欠きが設けられた羽根キャリヤに羽根ベースを取り付けることによって回避することができる。 【0020】本発明の別の特徴によれば、羽根キャリヤは羽根キャリヤリングによって座部に取り付けられており、前記羽根キャリヤリングの雄ねじ山は、座部の壁の雌ねじ山に係合する。 択一的に、羽根キャリヤは、座部の壁に設けられた溝に係合するばねリングによって所定の位置に保持されていてよい。 ピッチキー又はプレート自体は、内縁部及び外縁部に沿って凹所を有していることができ、これによりピッチキー又はプレートはやっとこ又は同様のものによって係合されることができる。 【0021】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面につきさらに詳しく説明する。 【0022】図3に示したように、プロペラのためのハブ1(より詳細な説明は省略する)はプロペラ軸線を中心にして回転することができ、また、ハブの回転軸線を中心にして角方向に等間隔を置いて配置された複数のプロペラ羽根6(図3には1つのみ図示)を有しており、 それぞれのプロペラ羽根は、ハブの回転軸線に対して垂直なほぼ半径方向の軸線Aを中心にして角方向で調整可能である。 【0023】このような3つの羽根が角方向に等間隔を置いて配置されていると有利であるが、本発明による全てのプロペラは、少なくとも2つのこのような羽根を有していなければならない。 このようなプロペラは、スポーツボートのために使用される。 【0024】ハブ1の縁部に沿ってプロペラ羽根の数に等しい数の座部2が形成されており、ひいてはハブは少なくとも2つのこのような座部を有していなければならない。 座部は、円形の輪郭を有しており、個々の軸線A を中心にしてセンタリングされている。 【0025】図1〜図3の実施例の場合には、それぞれの座部2は調整板を収容しており、この調整板の直径は、座部2の直径に相当し、調整板の厚さは、ほぼ座部2の深さに相当している。 調整板3は、中央のセンタリング開口4を有しており、このセンタリング開口には、 それぞれのプロペラ羽根6のベースに設けられたセンタリングピン5が収容されることができる。 プロペラ羽根のベースは、概略的に符号7で示されている。 【0026】羽根のベース7と調整板3とにはそれぞれ、整合ピンのための整合ボア8が設けられており、前記整合ピンは、これらの整合ボアを貫通することができかつプロペラ羽根のベースを高い位置決め精度で個々の調整板に固定することができる。 整合ピンは、図3に一点鎖線50によって示されている。 さらに、それぞれのプロペラ羽根のベース7はねじ9′によって羽根に取り付けられることができ、ねじ9′は、調整板3の雌ねじ山付きボア9にねじ込まれることができかつプロペラ羽根のベースに設けられた孔を貫通することができる。 【0027】本発明によれば、調整板3は周辺開口すなわち切欠き10を有しており、この切欠き10は、円弧セグメントの輪郭を有している。 切欠き10内には、ピッチ設定キー又はピッチ設定プレート11(以下キーと呼ぶ)が挿入されることができ、キー11は、開口又は切欠きと同じ輪郭を有しており、調整板3と同じ厚さであると有利である。 キー11は、それぞれ整合ボア12 を有しており、この整合ボア12には座部の底面から上方へ延びたピン13が係合し、調整板を座部2に確実に位置決めすることができる。 【0028】図1及び図2が明らかにしているように、 種々異なるキーが切欠き10に挿入されると、整合ボア12が個々のキーの外形に応じて種々異なる位置に配置されるので、調整板3は個々の軸線Aを中心にして種々異なる角位置を占める。 【0029】個々のキーの使用に関連したピッチの設定を示すために、個々のキーは、図5〜図8に符号51で示したような印を有していることができる。 キー11 は、180゜だけ回転させられて種々異なるピッチ設定のために用いられることができるように対称的な外形を有していることができる。 【0030】ユニットの組立て時には、まず調整板3がハブ1の切欠き、すなわち座部2に挿入され、所望のピッチ設定のための個々のキー11が、切欠き10に挿入される。 次いで、調整板3は、座部から上方へ延びたピン13が個々のキーの整合ボア12に係合することができるように移動させられる。 次いで、調整板はねじによって座部に締め付けられることができる。 次いで、雄ねじ山付きのリングが、リングすなわち調整板3の周辺に沿って設けられた周辺ノッチ52において座部2の外壁にねじ込まれることができる。 これによりリング、すなわち調整板3が座部に締め付けられ、軸線Aを中心にした回転がピン13によって妨げられる。 リング14は、 座部2の壁に設けられた雌ねじ山に係合する雄ねじ山を有している。 次いで、プロペラ羽根6のベース7が、センタリングピン5をセンタリング開口4内にセンタリングしかつベース7とリング、すなわち調整板3との整合ボア8を貫通するように整合ピン50を挿入することにより、取り付けられることができる。 【0031】ボルトすなわちねじ9′はプロペラ羽根を調整板3に固定することができる。 【0032】図4に示したように、羽根キャリヤ、すなわち調整板3は、座部に位置決めされると、ばねリング16によって所定の位置に保持されることができ、このばねリング16は座部の壁に設けられた内部溝に飛び込むことができる。 図1〜図3について説明したように、 ベース7はねじを介して調整板3に取り付けられることができ、このねじはねじ山付きボア19に挿入される。 【0033】図5〜図8が明らかにしているように、キー11は、調整板3に設けられた切欠き10の輪郭を有することができ、ピッチ調整に応じて種々異なる位置にピンホールすなわち整合ボア12を有することができる。 キーは、キーの挿入又は取出しのために1対のやっとこを使用できるようにするために、ノッチ又は切欠き18を有することもできる。 【0034】図9及び図10には本発明の別の実施例が示されており、この場合、羽根支持板、すなわち調整板3は使用されない。 この場合、ハブ1には、ハブの周辺に沿って設けられた、角方向で等間隔を置かれた3つの座部20が一体的に形成されていることができ、それぞれの座部20は、プロペラ羽根6の個々のベース7と係合可能である。 この場合、それぞれの座部には中心ピン21が一体的に形成されており、各中心ピン21は半径方向外向きに延びた4つの突起すなわちジョー22を有していることができる。 それぞれのジョー22の間には自由空間23が設けられている。 【0035】それぞれのプロペラのベース7は、内方を向いた4つの突出部24を有しており、これらの突出部24は、羽根のベースが中心ピン21へ半径方向に取り付けられるときに、自由空間23に挿入されることができる。 【0036】座部20は中心切欠き55を有していることができ、この中心切欠き55にはベース7のピン56 が係合することができる。 さらに、それぞれの座部の中心ピン21には、切欠きすなわちスロット25が形成されていることができ、このスロット25にはキー26が挿入されることができる。 それぞれのキー26は、スロット25の横断面に類似の横断面を有しておりかつ所定のキーを用いて達成したいピッチの設定に応じて様々に位置決めされたねじ山付きボア27を有している。 キー26の高さは、スロット25の深さに相当することができる。 【0037】センタリングピン28は、ねじ山付きボア27にねじ込まれることができかつプロペラ羽根6のベース7の整合ボア29に収容されることができる。 羽根ピッチの全ての可能な設定のために、キー26の完全な組が提供されることができ、それぞれのキーは、ピッチの設定を表す印50を有していることができる。 【0038】プロペラの羽根のベースが中心ピン21と差込み結合で係合させられると、整合ボア29が、選択されたキーのねじ山付きボア27と整合させられ、センタリングピン28が挿入される。 センタリングピン28 は、座部20、ひいてはハブに対する羽根6の角方向での動きを防止する。 半径方向での解離は、差込み結合により回避される。 したがって、センタリングピン28はせん断力を吸収するだけでよい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明によるプロペラのための調整板すなわち羽根支持板の下側を示す平面図である。 【図2】別の位置を占めた調整板すなわち羽根支持板の図1に類似の図である。 【図3】図2の調整板すなわち羽根支持板の位置におけるプロペラアセンブリを示す横断面図である。 【図4】プロペラのハブの半径方向断面図である。 【図5】本発明に基づき使用されることができるキーを示す平面図である。 【図6】本発明に基づき使用されることができるキーを示す平面図である。 【図7】本発明に基づき使用されることができるキーを示す平面図である。 【図8】本発明に基づき使用されることができるキーを示す平面図である。 【図9】羽根のうちの1つのベースのための座部を示す、図4に類似の図である。 【図10】後者の羽根のベース及びハブに設けられた座部を示す、X−X線に沿って見た断面図である。 【符号の説明】 1 ハブ、 2 座部、 3 調整板、 4 センタリング開口、 5 センタリングピン、 6 プロペラ羽根、 7 ベース、 8 整合ボア、 雌ねじ山付きボア、 9′ ねじ、 10 切欠き、 11 キー、 12 整合ボア、 13 ピン、 14 リング、 1 6 ばねリング、 19 ねじ山付き孔、 20 座部、 21 中心ピン、 22 ジョー、 23 自由空間、 24 突出部、 25 スロット、 26 キー、 27 ねじ山付きボア、 28 センタリングピン、 29 整合ボア、 50 整合ピン、 51 印 |