衝突エネルギ吸収柱及び該衝突エネルギ吸収柱を備えた鉄道車両

申请号 JP2012133890 申请日 2012-06-13 公开(公告)号 JP6074168B2 公开(公告)日 2017-02-01
申请人 川崎重工業株式会社; 发明人 平嶋 利行; 林 清一; 永原 斉;
摘要
权利要求

鉄道車両の妻部に設けられ、端梁から屋根構体に向けて延在する衝突エネルギ吸収柱であって、 横断面の枠が凹状断面または中空断面である金属製の外側部材と、 前記外側部材の内周に沿って前記外側部材に対して接着されないように直接嵌められ、前記外側部材と平行に延びる強化プラスチック製の内側部材とを備える、衝突エネルギ吸収柱。鉄道車両の妻部に設けられ、端梁から屋根構体に向けて延在する衝突エネルギ吸収柱であって、 外側部材と、 前記外側部材の内周に沿って前記外側部材に対して接着されないように内包され、前記外側部材よりも柱長手方向の引張強度が高く、軽量であり、延性の小さな内側部材とを備える、衝突エネルギ吸収柱。前記外側部材は、柱長手方向端部であって前記屋根構体と結合される第1領域と、台枠と結合される第2領域とを有する、請求項1又は2に記載の衝突エネルギ吸収柱。前記屋根構体と前記第1領域および前記台枠と前記第2領域とは、それぞれ機械締結により結合される、請求項3に記載の衝突エネルギ吸収柱。前記内側部材は、前記第1領域及び前記第2領域を除いて、前記台枠上部から前記屋根構体下部の間に延在する、請求項3に記載の衝突エネルギ吸収柱。前記外側部材は、夫々柱軸に沿って延びた2つの柱半体を外側部材の柱軸に直交する方向に並べて接合して構成され、両柱半体の接合部分は前記柱軸に沿って延びている、請求項1乃至5に記載の衝突エネルギ吸収柱。各柱半体は前記柱軸に沿って延びた第1板状部と、該第1板状部の両側から第1板状部に直交して延びた互いに平行な第2板状部を備えて、両柱半体は衝突荷重の荷重方向に沿って互いに逆向きに配置されて第2板状部の先端どうしを接合して構成され、第1板状部の板面は衝突荷重を受ける方向に対向している、請求項6に記載の衝突エネルギ吸収柱。前記強化プラスチックは、繊維を含有したプラスチックであり、該繊維は体積率が60%以上である、請求項1乃至7の何れかに記載の衝突エネルギ吸収柱。前記強化プラスチックは、CFRP又はGFRPを含むFRPである、請求項1に記載の衝突エネルギ吸収柱。請求項1乃至9の何れかに記載の衝突エネルギ吸収柱が、台枠から立設された衝突柱である鉄道車両。側梁と端梁との間に立設された隅柱をさらに備え、前記隅柱は請求項1乃至9の何れかに記載の衝突エネルギ吸収柱を含む、鉄道車両。

说明书全文

本発明は、鉄道車両の先頭車両に設けられる衝突エネルギ吸収柱及び該衝突エネルギ吸収柱を備えた鉄道車両に関する。

従来から鉄道車両において、自動車や鉄道車両等との衝突から乗務員や乗客を保護するために、衝突によるエネルギを吸収するための構造が種々提案されている。例えば、特許文献1には、車両端部に垂直に延びる強度部材と、車両長手方向に延びる骨部材とを設けた軌条車両が提案されている。この構成により、ある程度以上の荷重が作用した場合には積極的に変形してエネルギを吸収し、ある程度以下の荷重が作用した場合には構造が変形しないようにすることができるとしている。

特開2008—62817号公報

従来の衝突エネルギ吸収構造は、各部材は金属製であるから非常に重く、鉄道車両全体の軽量化を妨げる一因となっている。その一方、乗務員や乗客を保護するとともに、各部材が車体との取付部から脱落することを防止するために、一定の曲げ変形量以内で衝突時のエネルギを十分に吸収する必要がある。 しかし、特許文献1には、上記2つの要求を満たすような衝突エネルギ吸収構造を備えた鉄道車両については提案されていない。 本発明の目的は、軽量化と一定の曲げ変形量以内での十分な衝突エネルギ吸収の両方を達成することができる衝突エネルギ吸収柱を提供することにある。

本発明に係る衝突エネルギ吸収柱は、鉄道車両の妻側に設けられ、端梁から屋根構体に向けて延在するものであって、横断面が凹状断面または中空断面である金属製の外側部材と、前記外側部材の内周に沿って設けられ、前記外側部材と平行に延びる強化プラスチック製の内側部材とを備える。 前記構成によれば、強化プラスチック製の内側部材は、衝突物と直接的には接触しないので、衝突直後の応集中の程度が小さい。つまり、衝突後の亀裂発生を遅らせることができ、より大きな衝突エネルギを蓄積することができる。その後、衝突エネルギが限界まで蓄積されると、結局はこの内側部材は破断するが、その時点ではまだ金属製の外側部材は破断せずに、衝突エネルギを吸収し続ける。これにより、一部を樹脂で構成しているにも拘わらず、大きな衝突エネルギを吸収することができる。また、衝突エネルギ吸収柱全体を金属で形成する場合に比べて、柱全体の軽量化を図ることができる。

更に、少なくとも外側部材の横断面を凹状断面または中空断面に形成することにより、外側部材が例えば平板状である場合に比して、断面係数が大きくなる。これにより、許容される曲げ応力が大きくなるから、衝突エネルギ吸収柱は大きな衝突荷重を受けることができ、大きな衝突エネルギを吸収することができる。 更に、前記外側部材と、前記端梁及び前記屋根構体とは締結手段により締結され、前記内側部材は、前記締結された部分を除く、前記端梁上部から前記屋根構体下部の間に延在してもよい。 前記構成によれば、衝突エネルギ吸収柱は、金属製の外側部材を介して端梁及び屋根構体と締結されるので、プラスチック製の内側部材を端梁及び屋根構体と締結する必要はない。これにより、内側部材は拘束が少なく変形し易くなるので、破断するまでにより大きな衝突エネルギを吸収することができる。また、内側部材は締結手段により締結される部分まで延在させる必要がなくなるので、コスト低減を図ることができる。

更に、前記外側部材は、夫々柱軸に沿って延びた2つの柱半体を外側部材の柱軸に直交する方向に並べて接合して構成され、両柱半体の接合部分は前記柱軸に沿って延びていてもよい。 前記構成によれば、両柱半体の接合部分は、柱軸に沿って延びている。これにより、接合部分が柱軸に直交する方向に沿って設けられた場合に比べて、柱軸と直交する方向からの衝突荷重を受けたとき、該接合部分が亀裂の起点になりにくくなる。 更に、各柱半体は前記柱軸に沿って延びた第1板状部と、該第1板状部の両側から第1板状部に直交して延びた互いに平行な第2板状部を備えて、両柱半体は衝突荷重の荷重方向に沿って互いに逆向きに配置されて第2板状部の先端どうしを接合して構成され、第1板状部の板面は衝突荷重を受ける方向に対向していてもよい。 前記構成によれば、2つの柱半体は第2板状部の先端どうしで接合されるので、両柱半体の継ぎ目の位置は第2板状部上になる。衝突荷重は、接合継ぎ目が無い第1板状部に加わる。これにより、衝突荷重は衝突エネルギ吸収柱の破断の起点となり易い、継ぎ目の部分に直接的に加わらないから、容易に破断することが防止される。これにより、衝突エネルギ吸収効果を高めることができる。 更に、前記強化プラスチックは、繊維を含有したプラスチックであり、該繊維は体積率が60%以上であってもよい。 前記構成によれば、強化プラスチック内の繊維量を所定量以上とすることにより、強化プラスチック製の部材の衝突荷重に対する強度を高めることができ、樹脂柱が破断しにくくなる。

本発明に係る衝突エネルギ吸収柱にあっては、軽量化と一定の曲げ変形量以内での十分な衝突エネルギ吸収の両方を達成することができる。

本発明の実施形態に係る衝突エネルギ吸収柱を備えた鉄道車両の概略構造を示す斜視図である。

本発明の実施形態に係る衝突エネルギ吸収柱の斜視図である。

衝突エネルギ吸収柱の柱長手方向中央部に衝突荷重が加わった場合の変形ストロークを示す図である。

(a)は、衝突エネルギ吸収柱の変形ストロークと該衝突エネルギ吸収柱が受ける衝突荷重、即ち反力との関係について予想される概念を示すグラフである。(b)は、衝突エネルギ吸収柱の変形ストロークと吸収するエネルギとの関係について予想される概念を示すグラフである。

解析用柱の斜視図である。

解析用柱に衝突荷重を加えた際の反力と変位との関係を解析した結果を示すグラフである。

解析用柱に衝突荷重を加えた際の吸収エネルギと変位との関係を解析した結果を示すグラフである。

(a)は別の解析用柱の斜視図であり、(b)はその断面形状の変形例を示す図である。

図8の解析用柱に衝突荷重を加えた際の反力と変位との関係を解析した結果を示すグラフである。

図8の解析用柱に衝突荷重を加えた際の吸収エネルギと変位との関係を解析した結果を示すグラフである。

以下、本発明の実施形態に係る衝突エネルギ吸収柱を、図を参照しながら説明する。なお、以下では、全ての図を通じて同一又は相当する要素には、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。実施形態における方向の概念は、鉄道車両の進行方向を前方とし、前方を向いたときの方向の概念と一致している。即ち、車両長手方向が前後方向に対応し、車両幅方向が左右方向に対応している。

[衝突エネルギ吸収柱を備えた鉄道車両の構成] 図1は、本発明の実施形態に係る衝突エネルギ吸収柱1を備えた鉄道車両構体の概略構造を示す斜視図である。鉄道車両構体2は、周知の如く、台枠7上に側構体10と妻構体8を備え、説明の便宜上、前側の妻構体8を示すものとする。該側構体10と妻構体8に屋根構体20が被さる。台枠7は、互いに離間した一対の側梁70と、該側梁70の後端部どうしを連結する枕梁71を備えている。側梁70間の前端部どうしは、端梁72にて連結される。端梁72と前記の枕梁71は、前後に延びた2本の中梁73にて連結される。 妻構体8は、端梁72の両側に立てられた一対の隅柱80と、該隅柱80間にて端梁72上に立てられた2本の衝突エネルギ吸収柱1を備えている。屋根構体20は前端部に位置して車両の幅方向に延びたアーチけた21と、該アーチけた21の両側から後方に向けて延在した軒けた22を備えている。隅柱80と衝突エネルギ吸収柱1の上端部は、アーチけた21に接続される。即ち、衝突エネルギ吸収柱1は、鉄道車両構体2の妻部に設けられ、端梁72から屋根構体20に向けて延在する。衝突エネルギ吸収柱1は、踏切における自動車等との衝突や鉄道車両どうしの衝突時に該衝突によるエネルギを一定の曲げ変形量以内で柱の破断及び脱落を防ぐとともに、乗務員や乗客を保護する。

[衝突エネルギ吸収柱の構成] 図2は、本実施形態に係る衝突エネルギ吸収柱1の斜視図である。該衝突エネルギ吸収柱1は、鉛直方向に延在する柱状である金属製の外側部材3と、鉛直方向に延在する柱状である強化プラスチック製の内側部材4を備えている。外側部材3と内側部材4はともに横断面が矩形且つ中空であって、外側部材3の内周に内側部材4の外周が沿うように嵌まる。内側部材4を形成する強化プラスチックは具体的には、繊維を含有したカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)又はガラス繊維強化プラスチック(GFRP)である。本実施形態では、CFRP又はGFRPにおける繊維の体積率は60%以上である。 なお、内側部材4は、外側部材3よりも柱長手方向の引張強度が高く、軽量であり、また、延性が小さい材料を用いればよく、同様の特性を有するような内側部材4及び外側部材3を適用可能である。

内側部材4は、外側部材3よりも鉛直方向に短く形成されている。該外側部材3の上端部と下端部に、夫々内側部材4が存在しない第1締結領域30と第2締結領域31が設けられている。第1締結領域30にて、外側部材3には複数の第1貫通孔32が設けられている。リベット又はボルトの如き締結手段が、該第1貫通孔32に挿入されて、アーチけた21と衝突エネルギ吸収柱1の上端部とが締結される。また、該第2締結領域31にて、外側部材3には複数の第2貫通孔33が設けられている。第2締結領域31の内側には、金属製あるいは強化プラスチック製の中空の補強部材34が設けられている。 補強部材34の周面には、前記第2貫通孔33に重なるように、複数の透孔35が開設されている。リベット又はボルトの如き締結手段が、第2貫通孔33及び透孔35に挿入されて、端梁72と衝突エネルギ吸収柱1の下端部とが締結される。衝突エネルギ吸収柱1の下端部を補強部材34で補強しているのは、衝突エネルギ吸収柱1の下部を中心に衝突荷重が加わった際に、該衝突エネルギ吸収柱1がせん断したり、台枠から完全に外れたりしないようにする為である。

図2に示すように、外側部材3は、夫々柱軸に沿って延びた2つの柱半体6を前後方向に並べて構成される。各柱半体6は、柱軸に沿って延びた第1板状部60と、該第1板状部60の両側から第1板状部60に直交して延びた一対の第2板状部61を備えている。両第2板状部61は、互いに平行である。両柱半体6は衝突荷重の荷重方向、即ち前後方向に沿って互いに逆向きに配置される。両柱半体6は第2板状部61の先端どうしを溶接にて接合して構成され、該接合部分は柱軸に沿って延びた溶接ライン62を形成している。第1板状部60の板面は衝突荷重を受ける方向に対向している。 これにより、鉄道車両が前方から衝突荷重を受けた場合は、該衝突荷重は接合継ぎ目が無い第1板状部60にて受けられる。これにより、衝突エネルギ吸収柱1は衝突荷重を受けた際に、継ぎ目から破断することが起こりにくい。従って、衝突エネルギ吸収柱1は容易に破断することが防止され、衝突エネルギ吸収効果を高めることができる。

また、溶接ライン62は鉛直方向に延びている。これにより、溶接ライン62が鉛直方向に直交する方向に沿って設けられた場合に比べて、鉛直方向と直交する方向からの衝突荷重を受けたとき、該溶接ライン62が亀裂の起点になりにくくなる。 ここで、鉄道車両全体の軽量化のためには、衝突エネルギ吸収柱を例えば樹脂で形成することもできる。しかし、このような樹脂材料は延性が小さい。よって、樹脂製の衝突エネルギ吸収柱では、塑性変形することによるエネルギ吸収は難しい問題がある。即ち、樹脂製の衝突エネルギ吸収柱は大きく塑性変形することなく破断するので、エネルギを十分に吸収できない。 また、衝突エネルギ吸収柱を樹脂製とし、必要な部分だけ金属で補強することにより軽量化を図ることもできる。この場合、金属補強を接合するのに溶接を用いるのが一般的である。しかし、かかる衝突エネルギ吸収柱にあっては、衝突エネルギが加わった際に、該溶接接合部分から不安定的に破断し易くなる。故に、衝突エネルギ吸収柱として十分に衝突エネルギを吸収できない虞がある。また、衝突時に補強が施されていない箇所に衝突荷重が加わると、想定した性能を発揮できない虞もある。 本実施形態の衝突エネルギ吸収柱1では、外側部材3と、該外側部材3よりも柱長手方向の引張強度が高く、軽量であり、延性の小さな内側部材4との二重構造を採用することにより、軽量化と十分な衝突エネルギ吸収の両方を達成することができる。

[エネルギ吸収効果] 次に、本実施の形態の衝突エネルギ吸収柱1のエネルギ吸収効果を確認するため、強化プラスチックのみで形成された衝突エネルギ吸収柱(以下、単に強化プラスチック製衝突エネルギ吸収柱という)、金属のみで形成された衝突エネルギ吸収柱(以下、単に金属製衝突エネルギ吸収柱という)、本実施形態の衝突エネルギ吸収柱との比較結果について説明する。具体的には、図3に示すように衝突エネルギ吸収柱1の柱長手方向中央部に衝突荷重Pが加わった場合の変形ストロークδ(曲げ変形量)について比較検討を行った。 図4(a)は、変形ストロークと衝突エネルギ吸収柱が受ける衝突荷重、即ち反力との関係を示すグラフ、図4(b)は、衝突エネルギ吸収柱1の変形ストロークと吸収するエネルギとの関係を示すグラフである。 図4(a)、(b)にて、(1)のラインが強化プラスチック製の衝突エネルギ吸収柱、(2)のラインが金属製の衝突エネルギ吸収柱、(3)のラインが本実施形態の衝突エネルギ吸収柱を夫々示す。強化プラスチック製の衝突エネルギ吸収柱と、金属製の衝突エネルギ吸収柱は同質量である。 また、荷重Psは、衝突エネルギ吸収柱1と台枠あるいは屋根構体との結合部が破断せずに耐えうる限界荷重を指す。ストロ−クδsは、衝突エネルギ吸収柱1に許容される規定の最大撓み、吸収エネルギEsは、衝突エネルギ吸収柱1が吸収すべき規定の衝突エネルギ量である。

強化プラスチック製の衝突エネルギ吸収柱は、厚板にしても比較的軽量であり、(1)のラインが示すように、短いストロークで一定の衝突荷重を支持することができる。しかし、ストロークが短いうちに荷重Psに達するから、規定の衝突エネルギを吸収する前に、強化プラスチック製の衝突エネルギ吸収柱が車両構体から脱落してしまう。また、強化プラスチック製の衝突エネルギ吸収柱は、塑性変形しないから、この点でも衝突荷重を吸収する効果が弱い。 これに対し(2)のラインが示すように、上記(1)の強化プラスチック製の衝突エネルギ吸収柱と同質量の金属製の衝突エネルギ吸収柱では、比較的小さな荷重で塑性変形を起こす。しかし、ストロークの変化に比して上昇する荷重、即ち吸収するエネルギの上昇率が小さい。故に、ストロ−クδsで規定の衝突エネルギ量Esを吸収するには、塑性変形しにくい可成りの厚板で衝突エネルギ吸収柱を構成することが必要となる。これでは、衝突エネルギ吸収柱の重量が大幅に増加する。

上記(1)(2)のラインに比して、(3)のラインが示すように、本実施形態の衝突エネルギ吸収柱1が衝突荷重を受けると、金属製の外側部材3は比較的早期に局部的な塑性変形を始めるが、強化プラスチック製の内側部材4が先に破断する(図4(a)の点B)。しかし、金属製の外側部材3は塑性変形はするものの、未だ破断せず、衝突エネルギを吸収し続ける。これにより、全体を樹脂或いは金属で構成した衝突エネルギ吸収柱に比して、同質量あたり大きな衝突エネルギを吸収することができると予想される。 このように、本実施形態の衝突エネルギ吸収柱は、軽量化および一定の曲げ変形量以内での十分な衝突エネルギを吸収することができる。 更に、少なくとも外側部材3を中空に形成することにより、外側部材3が例えば平板状である場合に比して、断面係数が大きくなる。これにより、許容される曲げ応力が大きくなるから、大きな衝突荷重を受けることができ、大きな衝突エネルギを吸収することができる。 また、例えば、外側部材3が強化プラスチック製であると、衝突エネルギ吸収柱1が鋭利な障害物に衝突した場合は、外側部材3に直ぐに亀裂が生じて破断する。故に、衝突エネルギを吸収することができなくなる。しかし、外側部材3が金属製であるから、衝突エネルギ吸収柱1が鋭利な障害物に衝突しても、外側部材3は直ぐには破断しない。故に、衝突エネルギを効率的に吸収することができる。

(解析結果 その1) 出願人は上記のエネルギ吸収効果を確認すべく、図5に示す形状を呈する解析用柱5を想定した。該解析用柱5は、金属製の第1半体50と、該第1半体50の内側に位置する強化プラスチック製で断面凹状の第2半体51を備える。また、図示はしないが第1半体50のみの解析用柱5も想定した。第1半体50は厚みが9mmのものと11.7mmのものを用意した。第2半体51の厚みは20mmである。 そして、これらについて、解析用柱5の変形ストロークと吸収する荷重、即ち反力との関係、及び該変形ストロークと吸収するエネルギとの関係について、シミュレーションを行って解析した。図5に示す解析用柱5にて、奥行きL1は304.8mm(12インチ)、幅L2は152.4mm(6インチ)、高さHは、2000mmである。解析用柱5の両端部を固定(拘束)した状態で、高さ762mm(30インチ)の地点Sに矩形状の押し部材54にて400mm/sの速度で衝突荷重が加わるとする。第2半体51は互いに対向する一対の側壁52を備え、両側壁52間にて地点Sの高さ位置には、リブ53が掛け渡されている。これにより、両側壁52が同様に変形するようにした。 また、第1半体50の材質はステンレスとし、第2半体51の材質は、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)とした。第1半体50と第2半体51は互いに接触しているが接着されていない。両半体50、51間の摩擦係数は0.2である。第2半体51の材質であるCFRPは、UD材0°方向、即ち強化繊維の方向が、衝突エネルギ吸収柱1の長手方向に沿っているとした。

解析に当たっては、厚み9mmの第1半体50のみの解析用柱5をCASE1、厚み11.7mmの第1半体50のみの解析用柱5をCASE2、厚み9mmの第1半体50と厚み20mmのCFRP製の第2半体51を備えた解析用柱5をCASE3、厚み9mmの第1半体50と厚み20mmのCFRP製の第2半体51を備えた解析用柱5をCASE3´とした。なお、CASE2、3及び3´において、解析用柱5の質量は等価である。 CASE3´とCASE3とでは、CASE3´が解析用柱5の第2半体51の両端部を拘束していていないのに対し、CASE3では解析用柱5の両端部を拘束している。尚、CASE1とCASE2では、解析用柱5の第2半体51の両端部を拘束している。 また、第2半体51を形成するCFRPの材料特性、具体的にはヤング率E1、E2、ポアソン比ν、せん断係数G12、引張り強度N1t、N2t、圧縮強度N1C、N2C、せん断強度S12の値は表1に示す通りである。

ここで、上記記号の添え字1、2は、添え字1が解析用柱5の長手方向に沿う値であることを、添え字2が解析用柱5の長手方向に直交する方向に沿う値であることを意味する。また、第2半体51を形成するCFRPは、破壊を考慮した直交異方性材料である。 解析用柱5に衝突荷重を加えた際の反力と変位との関係を解析した結果を、図6のグラフに、吸収エネルギと変位との関係を解析した結果を、図7に夫々示す。変位の単位はmm、反力の単位はkN、エネルギの単位はMJである。

図6及び図7にて、(1)のラインが、CASE3(厚み9mmのステンレス+厚み20mmのCFRPで両端部を拘束)の解析用柱5の解析結果であり、(2)のラインが、CASE3´(厚み9mmのステンレス+厚み20mmのCFRPで、ステンレス部のみ両端部を拘束せず)の解析用柱5の解析結果である。また、(3)のラインがCASE2(厚み11.7mmのステンレスのみで両端部を拘束)の解析用柱5の解析結果であり、(4)のラインがCASE1(厚み9mmのステンレスのみで両端部を拘束)の解析用柱5の解析結果である。図7及び後記の図10及び図12では、厚みをtにて示す。例えば、厚み9mmをt9として示す。 図6に示すように、上記(4)のラインに比して、(1)(2)のラインが示すように、本実施形態の衝突エネルギ吸収柱1が衝突荷重を受けると、強化プラスチック製の内側部材4が先に破断する(図6の点F1、F2)。しかし、金属製の外側部材3は未だ破断せず、衝突エネルギを吸収し続ける。これにより、全体を樹脂で構成した衝突エネルギ吸収柱に比して、大きな衝突エネルギを吸収することができることが実証された。 また、図7に示すように、(4)のラインと(3)のラインを比較すると(CASE1とCASE2との比較)、金属製のみの解析用柱5にて、より大きな衝突エネルギを吸収するには、該解析用柱5の板厚を厚くしなければならないことが判る。しかし、(1)、(2)のラインと(3)のラインを比較すると(CASE3及びCASE3´とCASE2との比較)、変位に対するエネルギ吸収量は、金属製の第1半体50と強化プラスチック製の第2半体51とを組み合わせた解析用柱5は、厚みを増した金属製のみの解析用柱5と殆ど変わらない。これにより、衝突エネルギ吸収柱1を金属製の外側部材3と強化プラスチック製の内側部材4の二重構造とすることにより、外側部材3の厚みを薄くしつつ、大きな衝突エネルギを吸収することができることが判る。特に、CASE3において、一定の変位以内(例えば90mm程度まで)であればエネルギ吸収効率が高い。

(解析結果 その2) 出願人は更に上記のエネルギ吸収効果を確認すべく、図8(a)に示す解析用柱100を想定した。該解析用柱100の奥行きL5は254mm(10インチ)、幅L6は152.4mm(6インチ)、高さHは、2300mmである。高さ762mm(30インチ)の地点Sに矩形状の押し部材54にて400mm/sの速度で衝突荷重が加わるとする。該解析用柱100は断面矩形状で中空の外柱110と、外面が該外角柱110の内面に接し、断面矩形状で中空の内角柱120を備える。即ち、図5に示す解析用柱5と異なり、外角柱110と内角柱120の断面形状は閉じている。外角柱110はステンレス等の金属製で、その厚みは全周に亘って均一で6mm又は7.8mmである。内角柱120はCFRP製で、その厚みは全周に亘って均一で10mmである。出願人は内角柱120として図8(b)に示すように、厚み16mmの第1壁130と厚み6mmの第2壁140を連ねて設けた断面形状を有するものも用意した。外角柱110と内角柱120は接着されておらず、両者の間の摩擦係数は、0.2である。

解析に当たっては、厚み6mmの外角柱110のみの解析用柱100をCASE1、厚み7.8mmの外角柱110のみの解析用柱100をCASE2、厚み6mmの外角柱110と厚み10mmのCFRP製の内角柱120を備えた解析用柱100をCASE3、厚み6mmの外角柱110と断面形状が図8(b)に示す内角柱120を備えた解析用柱100をCASE4とした。CASE1乃至CASE4の何れも、解析用柱100の両端部を拘束している。CASE2とCASE3とCASE4の解析用柱100は、重量が何れもほぼ等しく形成されており、これは同じ重量の解析用柱100にてエネルギ吸収効果を確認する趣旨である。 解析用柱100に衝突荷重を加えた際の反力と変位との関係を解析した結果を、図9のグラフに、吸収エネルギと変位との関係を解析した結果を、図10に夫々示す。変位の単位はmm、反力の単位はkN、エネルギの単位はMJである。

図9及び図10にて、(1)のラインが、CASE4(厚み6mmのステンレス+図8(b)に示すCFRP)の解析用柱100の解析結果であり、(2)のラインが、CASE2(厚み7.8mmのステンレス)の解析用柱100の解析結果である。また、(3)のラインがCASE3(厚み6mmのステンレス+厚み10mmのCFRP)の解析用柱100の解析結果であり、(4)のラインがCASE1(厚み6mmのステンレスのみ)の解析用柱100の解析結果である。 図9及び図10に示す(4)のラインと(3)のラインとの比較(CASE1とCASE3との比較)から、同じ厚みの金属製の外角柱110を用いても、内側に強化プラスチック製の内角柱120を挿入した解析用柱100と、内角柱120を挿入しない解析用柱100とではエネルギ吸収量は、変位が90—150mmの範囲にて、約2倍となることが判る。 更に、図10に示すように、(1)のラインからCASE4の解析用柱100にあっては、変位量が110mm以下では、同じ重量のCASE2とCASE3((2)と(3)のライン)の解析用柱100と比較して、エネルギ吸収特性は優れている。即ち、内角柱120の周囲方向の厚みを場所によって変えることによって、エネルギ吸収性能は向上する。しかし、変位量が110mmを超えると、内角柱120の破断が始まったと解され、CASE2の解析用柱100よりもエネルギ吸収特性は稍劣る。

また、図9及び図10について、重量が等しいCASE2の解析用柱100とCASE3の解析用柱100の結果を比較すると((2)のラインと(3)のラインの比較)、金属製の外角柱110と強化プラスチック製の内角柱120を組み合わせた解析用柱100が、金属製のみの外角柱110を用いた解析用柱100よりもエネルギ吸収特性が特段に優れているとの効果は、特に変位の値が大きな場合については得られなかった。しかし、CASE4により、本実施形態に係る衝突エネルギ吸収柱1が、軽量化と一定変位量以内の十分な衝突エネルギを吸収するとの効果が得られることが実証された。 また、金属製の外角柱110と強化プラスチック製の内角柱120を組み合わせた解析用柱100は、金属製のみの外角柱110を用いた解析用柱100と同等以上のエネルギ吸収特性を示すから、衝突エネルギ吸収柱1を金属製の外側部材3と強化プラスチック製の内側部材4の二重構造とすることにより、外側部材3の厚みを薄くしつつ、大きな衝突エネルギを吸収することができることが判る。前記の如く、外側部材3は2つの柱半体6を溶接して形成されるから、各柱半体6を薄く形成することにより、柱半体6の溶接が容易となる、これにより、両柱半体6を溶接する際の熱歪みも小さくなる。

上記実施形態の衝突エネルギ吸収柱1では、外側部材3と内側部材4はともに断面中空であるとした。しかし、これに代えて、外側部材3と内側部材4の断面はともに凹状であってもよい。また、断面は矩形でなくてもよく、円形や楕円等、種々の形状とすることも可能である。 上記実施形態の衝突エネルギ吸収柱1では、外側部材3を半体としたが、これに限られない。例えば、アルミ押出形材によるホロー材を用いてもよい。 上記実施形態の衝突エネルギ吸収柱1は、直線としたが、曲率を有する柱としてもよい。上記実施形態の衝突エネルギ吸収柱1は、屋根構体及び台枠とは締結手段を用いて結合したが、溶接やその他の手段により結合してもよい。 外側部材3と内側部材4とは、同じ長さであってもよい。上記の実施形態では、衝突エネルギ吸収柱1は、鉄道車両構体2の妻側に2本設けられているとしたが、1本でもよく、3本以上でもよい。更に、図1に示す隅柱80を衝突エネルギ吸収柱1にて形成してもよい。 また、内側部材4を形成する強化プラスチックはCFRP又はGFRPに限定されず、他のプラスチック、例えばKFRP(ケブラーを含んだ繊維強化プラスチック)やBFRP(ボロンを含んだ繊維強化プラスチック)であってもよい。 上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する1つの態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。

本発明は、鉄道車両の先頭車両に設けられる衝突エネルギ吸収柱に適用すると有用である。

1 衝突エネルギ吸収柱 2 鉄道車両構体 3 外側部材 4 内側部材 5 解析用柱 6 柱半体 50 第1半体 51 第2半体 100 解析用柱

QQ群二维码
意见反馈