【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は車両、特に鉄道車両の空気力学特性を変化させる装置、つまり車両前進時に車両の外部表面および扉にある空洞によって生じる抵抗を変化させる装置、特に空気流路に存在する空洞の空気力学的抵抗を減少させる装置とこの装置を使用する車両、特に鉄道車両に関する。 【0002】 【従来の技術】 輸送車両、特に鉄道車両では牽引装置のサイズを小さくしてエネルギー消費量を制限するために車両前進時の抵抗を減少させる必要がある。 【0003】 従って、できるだけ空気力学的な形状が必要となる。 にもかかわらず列車の外部表面には様々な空洞が存在する。 例えば車両の連結部、パンタグラフの収納部、車体下の台車部の収納部は列車の前進の際に障害となりまた騒音の程度を増加させる。 【0004】 速度が高い場合には、車両の空気力学的抵抗によって、車両前進時の抵抗の大部分が生じる。 【0005】 この抵抗は1つには車両の外部の流れるような輪郭に何らかの変化が起きた場合、特に空洞が形成されている場合に生じる。 このような列車の場合、列車車両の連結部と台車部の空洞によって空気力学特性に変化が生じる。 【0006】 従来技術ではこの問題を解決するために、空気力学的連続性を保証するように車両間にゴム製フラップを設けている。 この解決法には機器に近づきにくいという欠点がある。 さらに従来の装置は経年変化が著しくメンテナンスに要する時間が長い。 流線形にするために用いられる固定または可動のシステムが空洞を被覆している、台車部の収納部とパンタグラフの収納部についても同様である。 この流線化によって機器がおおわれ、安全性が損なわれる。 【0007】 従ってこの種の空洞によって生じる問題を満足に解決する方法はない。 【0008】 フランス特許出願公開第805960号(FR−A−805960)に車両の連結部または何らかの遮断によって生じる車両前進時の抵抗を減少させる装置が開示されている。 【0009】 従来技術による装置は、車両の遮断部分、特に貨車の端部または連結可能な他の車両の端部に少なくとも1つの偏向面を設けている。 【0010】 一般に乱流ゾーンを生じさせる遮断部分に侵入しがちな相対的な空気の流れを一定にするように、偏向面は、相対的な空気の流れがすべりこむ車両表面の延長部分に設けられている。 【0011】 フランス特許出願公開第805960号(FR−A−805960)に開示された技術では、偏向面は相対的な空気の流れの面、つまり車両の壁の延長部分に設けられている。 偏向面は僅かに後退して配されているが原則として壁の外方に突出してはならない。 【0012】 上記特許に開示されているように、偏向面は気流を外側に偏向させるように設けられる。 また同特許では偏向面は偏向装置のような作用を果たしているが、空洞内の大気の流れに対しては何らの技術的効果を持たないことが分かる。 【0013】 ベルギー特許出願公開第417270号(BE−A−417270)には移動体の流線化に関する装置について開示されている。 その移動体には偏向面が設けられている。 この偏向面は可動で振動軸の周囲に連結される部品で構成されている。 この部品は振動軸の周囲に連結されているため多様な方向に向けることができ、移動体が前進する際に抵抗を減少させる場合もあるが反対に増大させる場合もある。 【0014】 上記特許に開示されているように、偏向面は気流を横方向に偏向させるように設けられている。 またこの特許では偏向面は偏向装置のような作用を果たしているが、空洞内の大気の流れに対しては何らの技術的効果を与えないことが分かる。 【0015】 つまり、この種の空洞によって生じる問題は以下に述べる理由から十分に解決されているとはいえない。 【0016】 空洞の空気力学抵抗は空洞の幅lと深さPとの比率αによって強く影響を受けることが知られている。 【0017】 図1に示すように所定の空洞幅lにおいて抵抗の値は、比率αが1に近い時に最小となる。 比率αが2に近づいた時、抵抗の値は突然倍となって、比率αが10に等しくなるまでほとんど一定となり、比率αが10を超えると徐々に抵抗の値は減少する。 【0018】 例えば上記特許では、従来技術の空洞では比率が2乃至10であり、従って抵抗の大きい場合に相当する。 【0019】 空洞をふさぐことは非現実的な解決法である。 【0020】 他の解決法は比率αを1に近づける方法である。 これもまた非現実的な解決法である。 というのもこの解決法は一般にクリアランスによって決まる幅lを減少させるかまたは空洞の体積を増加させるため、車両内を整備するのに不都合となるからである。 【0021】 他の解決法は本出願人によるフランス特許出願番号第9113510号(FR9113510)に開示されている。 【0022】 上記特許出願(FR9113510)には空洞が原因で生じる車両前進時の抵抗を減少させる手段が開示されている。 1つの空洞には空洞に対向せずに空洞に近接して設けられる異形材を少なくとも1つ有する。 この異形材は列車の外部表面から所定の距離を保持しており、この距離は前記車両前進時の抵抗を減少させるように決定される。 【0023】 【発明が解決しようとする課題】 この解決法には異形材が空洞から比較的遠い距離、また車両壁から比較的遠い高さに設けられるという欠点がある。 またこの解決法には車両の全体寸法と車両外部の規格の問題が付随する。 【0024】 【課題を解決するための手段】 本発明の目的は、空洞の大きさと車両の規格を考慮に入れて空気流路に存在する空洞の空気力学抵抗を減少させる装置を提供することである。 【0025】 換言すれば、本発明による空気力学抵抗を減少させる装置では空洞の大きさを変える必要も車両の規格を大幅に大型化させる必要もない。 【0026】 本発明によれば、空気流路に存在する空洞の空気力学抵抗を減少させる装置は、空洞の少なくとも1つの端部とこの端部に対応する車両の対応する壁との上にまたがり壁のすぐ近くに設けられるブレードを有することを特徴とする。 【0027】 本発明は、ブレードが車両の壁に平行に設けられているか、又は、 符号lは空洞の幅を示し、 符号aは空洞を超えるブレード部分の長さを示し、 符号cはブレードの幅を示し、 符号dはブレードの厚さを示し、 符号eは車両壁とブレード間の距離を示し、 符号Eは空洞より上流の流れの境界層の厚さを示すものとして、 ブレードが、 0≦a/c≦1 0.05≦c/l≦0.5 0≦d/E≦0.1 0.03≦e/E≦0.07であるか、又は、 ブレードが、 a/cは0.33に等しく、 c/lは0.21に等しく、 d/Eは0.028に等しく、 e/Eは0.043に等しいかのいずれかの条件を満足する空気力学抵抗を減少させる装置を提供する。 【0028】 また本発明は、空洞の空気力学抵抗を減少させる装置を少なくとも1つ有する車両、特に鉄道車両に関する。 【0029】 さらに本発明は、空洞の空気力学抵抗を減少させる2つの装置を1つは空洞に対して流れの上流に、もう1つは下流に空洞の両側に左右対称に設ける車両に関する。 【0030】 本発明のその他の目的、特性、利点は、以下の添付図を参照して空気流路に存在する空洞の空気力学抵抗を減少させる装置に関する説明を読めば明らかになろう。 【0031】 【実施例】 図1は、従来技術による空洞の幅lおよび比率αの値に応じて変化する空気抵抗Tの値を表す曲線C1を示す。 【0032】 図2は本発明による空気流路に存在する空洞の空気力学抵抗を減少させる装置の上面図である。 【0033】 空洞lは、車両8の第1の壁2と車両9の第2の壁3とによってその範囲が規定され、空洞の第1の端部4および第2の端部5を形成している。 【0034】 図2では符号lは空洞の幅を表し、符号Pは空洞の深さを表す。 【0035】 本発明によれば、流れ6における空洞1の空気力学抵抗を減少させる装置は空洞1の上流にブレード7を有し、このブレードは端部4、5の少なくとも1つと対応する車両8、9の対応する壁2、3との上にまたがり、前記壁2、3に近接している。 【0036】 ブレード7は車両8、9の壁2、3に平行に設けることが好ましい。 【0037】 図2で符号a、c、d、eは以下のものを示す。 【0038】 符号aは、空洞内に入り込むブレード部分の長さを示す。 【0039】 符号cは、ブレードの幅を示す。 【0040】 符号dは、ブレードの厚さを示す。 【0041】 符号eは、車両の壁とブレード間の距離を示す。 【0042】 符号Eは、空洞の上流の流れの境界層の厚さを示す。 【0043】 『境界層理論』(BOUNDARY LAYER THEORY、Schlichting著、1968年、McGRAW−HILL刊、New York)に、空気流路に存在する境界層が定義されている。 【0044】 本発明では、ブレードのサイズによって異なる多数の比率のなかから適する比率が選択される。 【0045】 以下に示す表1は、比率αが2以上または2に等しい値の時と比率αが20以下または20に等しい値の時の、ブレードのサイズの変化に応じて異なる比率の最適な値を表している。 【0046】
ブレードのサイズおよび位置は上述の最適な値とは多少異なっても、ブレードによる抵抗値への効果を大幅に損なうことはない。 【0047】
以下に示す表2は、ブレードのサイズによって異なる比率の値の範囲を表す。 この値の範囲ではブレードによる抵抗値への効果を大幅に損なうことはない。
【0048】
ブレードの適切な抵抗を考慮に入れてブレードのサイズに合わせて1つの比率を選ぶと、本発明による空気力学抵抗を減少させる装置によって抵抗を減少させる効果が30〜40%であるという予期しない結果が得られる。
【0049】
空洞の上流に設けられたブレードは空洞上の速度変動量を減少させることが知られている。 これは、ブレードがこのゾーンにおける流れの剪断応力を減少させることによって、空洞内の流体に流れによって伝達されるエネルギー量を減少させることを意味する。
【0050】
エネルギー量はαの値が1.5以下の時には比較的微量であるのに、空洞内に本発明による装置を備えていない場合、αの値が1.5〜20、特に2〜10の時、特にこのエネルギー量は増加する。 従って本発明による装置はαが1.5〜20である場合に効果的である。
【0051】
従って本発明による装置を備えた空洞内の空気力学抵抗は比率αが1に等しい場合の空洞の空気力学抵抗に近いものとなる。
【0052】
驚くべきことに、他の実験によれば、比率αが1に等しい時、ブレード自身の抵抗を考慮に入れたのではあるが、装置は空洞内の抵抗を変更させなかった。
【0053】
図3は、本発明による空気力学抵抗を減少させる装置を空洞に設けている場合に比率αの値に応じて変化する空気力学抵抗Tの値を表す曲線C2を表す。 図1の曲線C1は、本発明による空気力学抵抗を減少させる装置を空洞に設けていない場合に比率αの値に応じて変化する空気力学抵抗Tの値であり、図3にも示してある。
【0054】
ブレードは従来のように支柱(図示せず)によって車両の外部表面に固定される。 支柱はリベット締めまたは溶接によって車両に固定される。
【0055】
ブレードと支柱とは車両の車体と同じ材料で製造することができる。
【0056】
両方向に進行可能な列車において空洞による問題に対処するためには、本発明による空気力学抵抗を減少させる2つの装置は空洞に対して流れの上流と下流との空洞の両側に左右対称に設けられる。
【0057】
また本発明は、空気流路に存在する空洞の空気力学抵抗を減少させる装置を備えた車両、特に鉄道車両に関するものである。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、空洞の端部の少なくとも1つと対応する車両の対応する壁とにまたがって壁に近接してブレードを設けて、空気流路に存在する空洞の空気力学抵抗を減少させる装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】空洞の幅lおよび比率αの値に応じて変化する空気力学抵抗Tの値を表す曲線を示す図である。
【図2】本発明と同形の空気流路に存在する空洞の空気力学抵抗を減少させる装置の水平断面図である。
【図3】本発明による空気力学抵抗を減少させる装置を空洞に設けていない時と設けている時とにおいて比率αの値に応じて変化する空気力学抵抗Tの値を表す2つの曲線を示す図である。
【符号の説明】
1 空洞2 第1の壁3 第2の壁4 空洞の第1の端部5 空洞の第2の端部6 流れ7 ブレード8 車両9 車両a 空洞に入り込むブレード部分の長さc ブレードの長さd ブレードの厚さe 車両の壁とブレードとの間の距離l 空洞の幅P 空洞の深さ
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