車両の制御装置

申请号 JP2015173987 申请日 2015-09-03 公开(公告)号 JP6350458B2 公开(公告)日 2018-07-04
申请人 トヨタ自動車株式会社; 发明人 熊崎 健太; 椎葉 一之; 松原 亨; 野原 英治; 馬場 正幸;
摘要
权利要求

駆動源と変速機とを備えた車両に適用され、タイヤスリップが発生したと判定した場合に前記変速機の変速を禁止するタイヤスリップ時変速禁止制御と、タイヤロックが発生したと判定した場合に車体速に応じて前記変速機の上限変速比を制限するタイヤロック時上限変速比ガード制御とが実行可能な制御装置であって、 タイヤスリップが発生したと判定して前記タイヤスリップ時変速禁止制御を開始した後、当該タイヤスリップ時変速禁止制御を解除する条件が成立する前にタイヤロックが発生したと判定した場合、または、タイヤロックが発生したと判定して前記タイヤロック時上限変速比ガード制御を開始した後、当該タイヤロック時上限変速比ガード制御を解除する条件が成立する前にタイヤスリップが発生したと判定した場合には、前記タイヤロック時上限変速比ガード制御を優先して実行するようになっており、 前記タイヤスリップ時変速禁止制御を解除する条件は、タイヤスリップが所定範囲内に収束した時点から所定時間が経過したときに成立し、前記タイヤロック時上限変速比ガード制御を解除する条件は、タイヤロックが所定範囲内に収束した時点から所定時間が経過したときに成立することを特徴とする車両の制御装置。

说明书全文

本発明は、駆動源及び変速機を備えた車両の制御装置に関する。

エンジン(駆動力源)及び自動変速機を備えた車両において、タイヤスリップに関する制御として、タイヤスリップが発生しやすい状況の走行モードに切り替えた場合には、自動変速機の変速を禁止する制御を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。

特開2005−076846号公報

自動変速機を備えた車両にあっては、タイヤスリップ判定時には意図しないタイミングで変速が行われないように変速を禁止する制御(タイヤスリップ時変速禁止制御)が行われている。また、タイヤロックに関する技術として、タイヤロック中においてタイヤがグリップした場合に変速機の入力軸回転数が急上昇しないように、車体速によって下限ギヤ段をガードする制御(タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御)がある。

このようなタイヤスリップ時変速禁止制御とタイヤロック時下限ギヤ段(上限変速比)ガード制御とが実行可能な車両において、例えば、変速機のギヤ段が最Lo(1st)でのタイヤスリップ時に、変速禁止制御により変速が禁止された状態(ギヤ段が1stに固定された状態)で、ブレーキONによりタイヤがロックした後、変速禁止継続中にブレーキOFFになった場合、変速禁止によりギヤ段が1stに保持(継続)されているため、ブレーキOFFでタイヤがグリップすると、車輪速(変速機の出力軸回転数)が急上昇して変速機の入力軸の過回転が発生する可能性がある。

本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、タイヤスリップ時変速禁止制御とタイヤロック時上限変速比ガード制御とが実行可能な車両の制御装置において、タイヤロックが発生した後にタイヤグリップが発生したときの、変速機の入力軸の過回転を抑制することが可能な制御を実現することを目的とする。

本発明は、駆動力源と変速機とを備えた車両に適用され、タイヤスリップが発生したと判定した場合に前記変速機の変速を禁止するタイヤスリップ時変速禁止制御と、タイヤロックが発生したと判定した場合に車体速に応じて前記変速機の上限変速比を制限するタイヤロック時上限変速比ガード制御とが実行可能な制御装置において、タイヤスリップが発生したと判定して前記タイヤスリップ時変速禁止制御を開始した後、当該タイヤスリップ時変速禁止制御を解除する条件が成立する前にタイヤロックが発生したと判定した場合、または、タイヤロックが発生したと判定して前記タイヤロック時上限変速比ガード制御を開始した後、当該タイヤロック時上限変速比ガード制御を解除する条件が成立する前にタイヤスリップが発生したと判定した場合には、前記タイヤロック時上限変速比ガード制御を優先して実行するようになっており、前記タイヤスリップ時変速禁止制御を解除する条件は、タイヤスリップが所定範囲内に収束した時点から所定時間が経過したときに成立し、前記タイヤロック時上限変速比ガード制御を解除する条件は、タイヤロックが所定範囲内に収束した時点から所定時間が経過したときに成立することを特徴とする。

本発明では、タイヤスリップが発生したと判定してタイヤスリップ時変速禁止制御を開始した後、当該タイヤスリップ時変速禁止制御を解除する条件が成立する前にタイヤロックが発生したと判定した場合、つまり、タイヤスリップ時変速禁止制御の実行要求(タイヤスリップ判定ON)とタイヤロック時上限変速比ガード制御の実行要求(タイヤロック判定ON)とが重複する場合には、タイヤロック時上限変速比ガード制御を優先して実行する。

このような制御により、タイヤスリップ時変速禁止制御による変速禁止中に、タイヤロックが発生した場合には、そのタイヤロック中の車体速に応じた上限変速比にて変速機の変速比をガードすることができる。具体的には、タイヤスリップ中の変速機の変速比が最Lo(1st)であり、タイヤロック中の車体速が、最Loでは過回転が懸念される車体速である場合には、タイヤロック時上限変速比ガード制御により、最Loよりも低い変速比(2nd)にガードすることができる。そして、タイヤロック後、ブレーキOFFでタイヤがグリップしたときには、変速機の変速比が最Lo(1st)よりも低い変速比(2nd)となっているので、車輪速(変速機の出力軸回転数)が急上昇しても変速機の入力軸の過回転を抑制することができる。

また、本発明では、タイヤロックが発生したと判定してタイヤロック時上限変速比ガード制御を開始した後、当該タイヤロック時上限変速比ガード制御を解除する条件が成立する前にタイヤスリップが発生したと判定した場合、つまり、タイヤロック時上限変速比ガード制御の実行要求(タイヤロック判定ON)とタイヤスリップ時変速禁止制御の実行要求(タイヤスリップ判定ON)とが重複する場合には、タイヤロック時上限変速比ガード制御を優先して実行する。

このような制御により、タイヤロックが発生した後にタイヤスリップが発生したと判定した場合であっても、タイヤロック時上限変速比ガード制御を優先して実行することができ、タイヤロック中の車体速に応じた上限変速比にて変速機の変速比をガードすること(例えば2ndにガードすること)が可能になる。これによって、タイヤロック後、ブレーキOFFでタイヤがグリップして車輪速(変速機の出力軸回転数)が急上昇しても、変速機の入力軸の過回転を抑制することができる。

また、タイヤスリップ時変速禁止制御を解除する条件は、タイヤスリップが所定範囲内に収束した時点(例えば、スリップ速度(車輪車速−車体速)が所定値以下となった時点)から所定時間が経過したときに成立し、また、タイヤロック時上限変速比ガード制御を解除する条件は、タイヤロックが所定範囲内に収束した時点から所定時間が経過したときに成立するようにしている。このような条件設定により、タイヤスリップ時変速禁止制御とタイヤロック時上限変速比ガード制御とが確実に解除されたことを適正に判定することができる。

本発明によれば、タイヤスリップ時変速禁止制御とタイヤロック時上限変速比ガード制御とが実行可能な車両の制御装置において、タイヤロックが発生した後にタイヤグリップが発生したときの、変速機の入力軸の過回転を抑制することが可能になる。

本発明の制御装置を適用する車両の一例の概略構成を示すスケルトン図である。

ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。

図3(a)は動力分割機構の各回転要素の回転速度の相対的関係を示す共線図、図3(b)は変速機の各回転要素の回転速度の相対的関係を示す共線図である。

図1に示す変速機における各クラッチ、各ブレーキ及びワンウェイクラッチの変速段ごとの係合状態を示す係合表である。

変速線マップを示す図である。

タイヤスリップ時変速禁止制御の一例を示すタイミングチャートである。

タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御の一例を示すタイミングチャートである。

タイヤスリップ時変速禁止制御を優先する制御の一例を示すタイミングチャートである。

タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先する制御の一例を示すフローチャート

タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先する制御の一例を示すタイミングチャートである。

タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先する制御の他の例を示すタイミングチャートである。

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

まず、本発明を適用する車両の一例について図1を参照して説明する。

この例の車両は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式のハイブリッド車両HVであって、車両走行用の駆動力を発生するエンジン1、主に発電機として機能する第1モータジェネレータMG1、主に電動機として機能する第2モータジェネレータMG2、動力分割機構2、変速機3、プロペラシャフト4、デファレンシャル装置5、駆動輪(後輪)6、及び、従動輪(前輪:図示せず)などを備えている。制御系として、HV_ECU(Electronic Control Unit)100、エンジンECU200、MG_ECU300、及び、ブレーキECU400などを備えている。これら、HV_ECU100と、エンジンECU200と、MG_ECU300と、ブレーキECU400とは互いに通信可能に接続されている(図2参照)。

なお、上記モータジェネレータMG1,MG2、動力分割機構2、及び、変速機3については、軸心に対して略対称的に構成されているので、図1のスケルトン図では下側半分を省略している。

次に、エンジン1、モータジェネレータMG1,MG2、動力分割機構2、変速機3、トランスファ4、及び、ECU100,200,300,400などの各部について以下に説明する。

−エンジン− エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する公知の動力装置であって、例えば、吸気通路に設けられたスロットルバルブ(図示せず)のスロットル開度(吸気空気量)、燃料噴射量、点火時期などの運転状態を制御できるように構成されている。エンジン1の運転状態はエンジンECU200によって制御される。エンジンECU200はHV_ECU100からの出力要求に応じて、上記した吸入空気量制御、燃料噴射量制御、及び、点火時期制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。エンジン1の出力は、クランクシャフト11及びダンパ(図示せず)を介して動力分割機構2の入力軸2Aに伝達される。

−モータジェネレータ− 第1モータジェネレータMG1は、交流同期発電機であって、発電機(ジェネレータ)として機能するとともに電動機(電動モータ)としても機能する。また、第2モータジェネレータMG2も同様に、交流同期発電機であって、電動機(電動モータ)として機能するとともに発電機(ジェネレータ)としても機能する。

これらの第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2には、それぞれ、ロータの回転度(電動機回転軸の回転角度)を検出するMG1回転数センサ(レゾルバ)106及びMG2回転数センサ(レゾルバ)107(図2参照)が設けられている。これら回転数センサ106,107の出力信号(回転角度検出値)は、HV_ECU100に入力され、各モータジェネレータMG1,MG2の駆動制御などに用いられる。

図2に示すように、第1モータジェネレータMG1、及び、第2モータジェネレータMG2は、それぞれ、インバータ301を介してバッテリ(蓄電装置)302に接続されている。インバータ301はMG_ECU300によって制御される。MG_ECU300は、HV_ECU100からの出力要求に応じてインバータ301を制御して、各モータジェネレータMG1,MG2の力行または回生を制御する。

−動力分割機構− 動力分割機構2は、図1に示すように、外歯歯車のサンギヤS0と、このサンギヤS0に対して同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤR0と、これらサンギヤS0とリングギヤR0とに噛み合う複数のピニオンギヤP0と、この複数のピニオンギヤP0を自転かつ公転自在に保持するプラネタリキャリアCA0とを備え、これらプラネタリキャリアCA0(第1回転要素)、サンギヤS0(第2回転要素)、及び、リングギヤR0(第3回転要素)を回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構である。

図1の動力分割機構において、プラネタリキャリアCA0は入力要素であって、このプラネタリキャリアCA0は入力軸2A及び上記ダンパを介してエンジン1のクランクシャフト11に連結されている。また、サンギヤS0は反力要素であり、このサンギヤS0には第1モータジェネレータMG1のロータ(回転軸)が回転一体に連結されている。そして、リングギヤR0が出力要素となっており、このリングギヤR0にリングギヤ軸2Bが連結されている。リングギヤ軸2Bは、変速機3の入力軸3Aに回転一体に連結されている。

図3(a)に動力分割機構2の共線図を示す。この図3(a)の共線図において、各縦軸(3本)は、図中左から順に、それぞれ、サンギヤS0(MG1)の回転速度、プラネタリキャリアCA0(エンジン1)の回転速度、リングギヤR0(出力)の回転速度を表す軸であり、そのS0軸とCA0軸との間隔を「1」としたとき、CA0軸とR0軸との間隔がギヤ比ρ0(サンギヤS0の歯数ZS0/リングギヤR0の歯数ZR0)となるように設定されている。

−変速機− 変速機3は、自動変速機であって、図1に示すように、エンジン1と駆動輪6との間の動力伝達経路に設けられている。変速機3は、動力分割機構2から入力軸3Aに入力される回転動力を変速して出力軸3Bに出力する。変速機3の出力軸3Bはプロペラシャフト4及びデファレンシャル装置5等を介して駆動輪6に連結されている。プロペラシャフト4の回転数(以下、ペラ軸回転数ともいう)はペラ軸回転数センサ102によって検出される。このペラ軸回転数センサ102の各出力信号はHV_ECU100(図2参照)に入力される。

変速機3は、第1遊星歯車機構31、第2遊星歯車機構32、第1〜第3クラッチC1〜C3、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2、ワンウェイクラッチF1などによって構成されている。

第1遊星歯車機構31は、シングルピニオン型の歯車式遊星機構であって、サンギヤS1、互いに噛み合う複数のピニオンギヤP1、これら複数のピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するプラネタリキャリアCA1、及び、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。

第2遊星歯車機構32も同様に、シングルピニオン型の歯車式遊星機構であって、サンギヤS2、互いに噛み合う複数のピニオンギヤP2、これら複数のピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するプラネタリキャリアCA2、及び、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。

第1遊星歯車機構31のプラネタリキャリアCA1は第2遊星歯車機構32のリングギヤR2に連結されている。リングギヤR1は第2遊星歯車機構32のプラネタリキャリアCA2に連結されている。第1遊星歯車機構31のサンギヤS1は第3クラッチC3介して上記動力分割機構2のリングギヤ軸2B(入力軸3A)に選択的に連結される。サンギヤS1は、第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース30に選択的に連結される。

第1遊星歯車機構31のプラネタリキャリアCA1は第2クラッチC2を介して上記動力分割機構のリングギヤ軸2B(入力軸3A)に選択的に連結される。第2遊星歯車機構32のサンギヤS2は、第1クラッチC1介して上記動力分割機構のリングギヤ軸2B(入力軸3A)に選択的に連結される。

第2遊星歯車機構32のリングギヤR2は、第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース30に選択的に連結される。リングギヤR2及び第1遊星歯車機構31のプラネタリキャリアCA1はワンウェイクラッチF1を介してトランスミッションケース30に連結されている。さらに、第2遊星歯車機構32のプラネタリキャリアCA2が出力軸3Bに連結されている。

以上の第1〜第3クラッチC1〜C3、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の係合または解放は、油圧回路(図示せず)及びHV_ECU100(図2参照)によって制御される。

図4は、第1〜第3クラッチC1〜C3、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2、ワンウェイクラッチF1における係合状態または解放状態と各変速段(1st〜4th,Rev,N)との関係を示す係合表である。図4の係合表において、○印は「係合状態」を示し、空白は「解放状態」を示している。

この図4の係合表及び図3(b)の共線図を参照して変速機3の各変速段について説明する。なお、図3(b)の共線図において、各縦軸(4本)は、図中左から順に、それぞれ、サンギヤS2(入力)の回転速度、プラネタリキャリアCA2とリングギヤR1(出力)の回転速度、プラネタリキャリアCA1(入力)の回転速度、リングギヤR2とサンギヤS1の回転速度を表す軸である。

・第1変速段(1st) 第1変速段(前進1速)においては、第1クラッチC1及びワンウェイクラッチF1のみが係合状態とされる。このような係合により、サンギヤS2からの入力回転が減速されて、プラネタリキャリアCA2の回転として出力される。

・第2変速段(2nd) 第2変速段(前進2速)においては、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1のみが係合状態とされ、この係合状態における減速比は、上記第1変速段より小さくなる。

・第3変速段(3rd) 第3変速段(前進3速)においては、第1クラッチC1及び第2クラッチC2のみが係合状態とされる。この第3変速段では、動力分割機構のリングギヤ軸2B(入力軸3A)の回転がそのまま出力軸3Bに伝達される、いわゆる直結状態となる。

・第4変速段(4th) 第4変速段(前進4段)においては、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1のみが係合状態とされる。このような係合により、プラネタリキャリアCA1からの入力回転が増速されて、リングギヤR1の回転として出力される。

・リバース段(Rev) リバース段(後進段)においては、第3クラッチC3及び第2ブレーキB2のみが係合状態とされる。このような係合により、サンギヤS1からの入力回転が逆回転されて、リングギヤR1の回転として出力される。

・ニュートラルレンジ(N) ニュートラルレンジでは、クラッチC1〜第3クラッチC3及びブレーキB1,B2の全てが解放状態とされる。

−ECU− HV_ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びバックアップRAMなどを備えている。

ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMはエンジン1の停止時などにおいて保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。

また、エンジンECU200、MG_ECU300及びブレーキECU400においても、CPU、ROM、RAM及びバックアップRAMなどを備えている。なお、ブレーキECU400は、左右の駆動輪6,6及び左右の従動輪(図示せず)の4つの車輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速センサ(図示せず)の出力信号から、各車輪の車輪速を算出する。

図2に示すように、HV_ECU100には、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)を検出するエンジン回転数センサ101、ペラ軸回転数センサ102、エンジン1のスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ103、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ104、シフトポジションセンサ105、MG1回転数センサ106、MG2回転数センサ107、ブレーキペダルに対する踏力(ブレーキ踏力)を検出するブレーキペダルセンサ108などが接続されている。さらに、HV_ECU100には、エンジン冷却温を検出する水温センサ、吸入空気量を検出するエアフロメータなどのエンジン1の運転状態を示すセンサなどが接続されており、これらの各センサからの信号がHV_ECU100に入力される。

そして、HV_ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジンECU200、MG_ECU300、及び、ブレーキECU400に指令信号を送信して駆動力を制御する。

また、HV_ECU100は変速機3の変速制御を実行する。具体的には、例えば、ペラ軸回転数センサ102の出力信号から得られるペラ軸回転数(車速V)と、アクセル開度センサ104の出力信号から得られるアクセル開度Acc(出力トルクTout)とに基づいて、図5に示す変速マップを参照して目標変速段を求め、その目標変速段と現状変速段(シフトポジションセンサ105にて検出)とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。その判定結果により、変速の必要がない場合(目標変速段と現状変速段とが同じで、変速段が適切に設定されている場合)には、変速機3の油圧回路に変速指令を出力せずに現状変速段を維持する。一方、目標変速段と現状変速段とが異なる場合には、目標変速段となるように変速機3の油圧回路に変速指令を出力して変速を行う。

図5に示す変速マップは、ペラ軸回転数及びアクセル開度Accをパラメータとし、それらペラ軸回転数及びアクセル開度Accに応じて、適正な変速段(最適な効率となる変速段1st〜4th)を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、HV_ECU100のROM内に記憶されている。変速マップには、各領域を区画するための複数の変速線(1st〜4thの各変速領域を区画するためのアップシフト変速線及びダウンシフト変速線)が設定されている。

さらに、HV_ECU100は、以下に説明する[タイヤスリップ時変速禁止制御]及び[タイヤロック時変速制限制御]を実行することが可能である。

なお、本発明の車両の制御装置は、アクセル開度センサ104、ブレーキペダルセンサ108、ペラ軸回転数センサ102、ブレーキECU400及びHV_ECU100などによって構成される。

−タイヤスリップ時変速禁止制御− 次に、HV_ECU100が実行するタイヤスリップ時変速禁止制御について以下に説明する。

まず、タイヤスリップ判定について説明する。

[タイヤスリップ判定(ON側)] HV_ECU100はタイヤスリップの判定を行う。タイヤスリップの判定は、車輪車速(車輪速に基づいて換算される車体速度)と車体速とを用いて行う。

具体的には、ペラ軸回転数センサ102の出力信号から得られるペラ軸回転数と、デファレンシャル装置5のデフ比とを用いて車輪速(車輪速[rpm]=ペラ軸回転数÷デフ比)を算出し、その車輪速[rpm]を車輪車速[km/h]に換算する(車輪車速=車輪速×2π×(タイヤ半径[m]/1000)×60)。

また、車体速については、ブレーキECU400にて算出される4輪(左右の駆動輪及び左右の従動輪)の車輪速のうち、最も回転数が低い、または2番目に低い車輪速(rpm)を用いて、車体速(車体速=車輪速×2π×(タイヤ半径[m]/1000)×60)[km/h]を算出する。ただし、急ブレーキにより車輪がロックした場合、車輪速は急にゼロになるが、車体速については、所定以上車体速度が急低下しないようにカード値(実験・シミュレーション等により予め設定した値)で制限しているので、車体速は急にゼロとはならない。

そして、このようにして算出した車輪車速が車体速よりも大きくて、その車輪車速と車体速との差(車輪車速−車体速=スリップ速度)が所定値Tha1以上である場合にタイヤスリップ判定ONとする(タイヤスリップが発生したと判定する)。

[タイヤスリップ判定(OFF側)] 次に、タイヤスリップ判定(OFF側)について説明する。

タイヤスリップ判定(OFF側)においても車輪車速「km/h」と車体速[km/h]とを用いて行う。具体的には、上記した処理と同様にして、車輪車速と車体速とを算出してゆき、その算出した車輪車速が車体速よりも大きくて、車輪車速と車体速との差(車輪速−車体速=スリップ速度)が所定値Tha2以下となった時点(タイヤスリップが所定範囲内に収束した時点)から所定時間が経過したときに、タイヤスリップ判定OFF(タイヤスリップ時変速禁止制御の解除条件成立)とする。

ここで、OFF側のタイヤスリップ判定に用いる所定値Tha2と、上記ON側のタイヤスリップ判定に用いる所定値Tha1とは同じ値であってもよいが、タイヤスリップ判定のON/OFFのハンチングを回避するために、OFF側のタイヤスリップ判定に用いる所定値Tha2をON側のタイヤスリップ判定に用いる所定値Tha1よりも小さい値(THa1>Tha2)にすることが好ましい。

また、OFF側のタイヤスリップ判定において、車輪速と車体速との差(スリップ速度)が所定値Tha2以下となった時点から所定時間が経過したときにタイヤスリップOFFとしている。その理由は次のとおりである。

すなわち、タイヤスリップ中の車体速は精度がよくないため、スリップ速度が所定値Tha2以下となった時点でタイヤスリップ判定OFFとすると、タイヤスリップが完全に解消していない状態のときにタイヤスリップ判定OFFとなってしまい、誤判定する可能性がある。このような点を解消するために、スリップ速度が所定値Tha2以下となった時点から所定時間(タイヤスリップが完全に解消される時間に相当)が経過したときにタイヤスリップ判定OFF(タイヤスリップ時変速禁止制御の解除条件成立)としている。このような条件設定により、タイヤスリップ時変速禁止制御解除が確実に解除されたことを適正に判定することができる。上記所定時間については、実験・シミュレーション等によって決定する。

なお、タイヤスリップ時変速禁止制御の解除条件を、「スリップ速度が所定値Tha2以下となった時点(タイヤスリップが所定範囲内に収束した時点)から所定時間が経過したとき」という条件としている場合、タイヤスリップ時変速禁止制御の実行要求とタイヤロック時変速禁止制御の実行要求とが重複する可能性が大きくなる。

[タイヤスリップ時変速禁止制御の例] 次に、タイヤスリップ時変速禁止制御の具体的な例について、図6のタイミングチャートを参照して説明する。

まず、低μ路において、変速機3のギヤ段が1stの状態(発進時)でアクセルONとなり駆動力(駆動トルク)が出力されると、タイヤスリップが発生し、そのスリップ速度(車輪車速−車体速)が所定値Tha1以上になるとタイヤスリップ判定ONとなる。このタイヤスリップ中(タイヤスリップ判定ON中)にペラ軸回転数(車輪車速)が急上昇し、図5に示す変速マップの1→2アップシフト変速線を交差して変速機3のギヤ段が2ndに変速されると(図6の破線の場合)、その変速中のトルクはタイヤスリップ制限後要求駆動トルク(過回転防止用の制限トルク)から乖離してしまう(狙い通りのトルク制御ができなくなる:図6のA1)。こうした状況になると、スリップ速度を狙い通りに制御できなくなる(図6のB1)。

このような点を考慮し、本実施形態では、タイヤスリップ中(タイヤスリップ判定ON中)に変速要求があっても変速機3の変速を禁止する(タイヤスリップ時変速禁止制御を実行する)ことにより(図6のC1)、狙い通りのトルク制御を実施し(図6のD1)、スリップ速度の制御を可能とする(図6のE1)。

−タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御− 次に、HV_ECU100が実行するタイヤロック時下限ギヤ段ガード制御について説明する。

まず、タイヤロック判定について説明する。

[タイヤロック判定(ON側)] HV_ECU100はタイヤロックの判定を行う。そのタイヤロックの判定について説明する。

まず、上記したように、急ブレーキにより車輪がロックした場合、車輪速は急にゼロになるが、車体速については、所定以上車体速度が急低下しないようにカード値で制限しているので、車体速は急にゼロとはならない。このような点を利用し、車輪車速(車輪速)が低下し、その車輪速度と上記した車体速のガード値(ロック時車体速ガード値)との速度差(負値)が所定値Thb1以下(速度差(負値)の絶対値が所定値Thb1以上)である場合にタイヤロック判定ON(タイヤロックが発生した)とする。なお、車輪速度については上記した処理と同様にして算出する。

[タイヤロック判定(OFF側)] 次に、タイヤロック判定(OFF側)について説明する。タイヤロック判定(OFF側)では、上記タイヤロック判定ONの後に、車輪車速(車輪速)が上昇し、車輪速度と上記ロック時車体速ガード値との速度差(負値)が所定値Thb2以上(速度差(負値)の絶対値が所定値Thb2以下)となった時点から所定時間が経過したときに、タイヤロック判定OFF(タイヤロック時変速禁止制御の解除条件成立)とする。

ここで、OFF側のタイヤロック判定に用いる所定値Thb2と、上記ON側のタイヤロック判定に用いる所定値Thb1とは同じ値であってもよいが、タイヤロック判定のON/OFFのハンチングを回避するために、OFF側のタイヤロック判定に用いる所定値Thb2をON側のタイヤロック判定に用いる所定値Thb1よりも小さい値(THb1>Thb2)にすることが好ましい。

また、OFF側のタイヤロック判定において、上記車輪車速とロック時車体速ガード値との速度差(負値)が所定値Thb2以上(速度差(負値)の絶対値が所定値Thb2以下)となった時点から所定時間が経過したときにタイヤロックOFFとしている。その理由は次のとおりである。

すなわち、上記車輪車速とロック時車体速ガード値との速度差(負値)が所定値Thb2以上(速度差(負値)の絶対値が所定値Thb2以下)となった時点でタイヤロック判定OFFとすると、タイヤロックが完全に解消していない状態のときにタイヤロック判定OFFとなってしまい、誤判定する可能性がある。このような点を解消するために、上記速度差(負値)が所定値Thb2以上(速度差(負値)の絶対値が所定値Thb2以下)となった時点から所定時間(タイヤロックが完全に解消される時間に相当)が経過したときにタイヤロック判定OFF(タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御の解除条件成立)としている。このような条件設定により、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御が確実に解除されたことを適正に判定することができる。上記所定時間については、実験・シミュレーション等によって決定する。

なお、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御の解除条件を、「車輪車速とロック時車体速ガード値との速度差(負値)が所定値Thb2以上となった時点(タイヤロックが所定範囲内に収束した時点)から所定時間が経過したとき」という条件としている場合、タイヤロック時変速禁止制御の実行要求とタイヤスリップ時変速禁止制御の実行要求とが重複する可能性が大きくなる。

[タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御の例] タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御の具体的な例について、図7のタイミングチャートを参照して説明する。

まず、変速機3のギヤ段が2ndで低μ路を走行しているときに、ブレーキONにより大きなブレーキ制動トルク(負トルク)が発生すると、タイヤロックが発生する(タイヤロック判定ON)。このタイヤロック中(タイヤロック判定ON中)に、ペラ軸回転数(車輪車速)が急低下し(車体速は一定)、図5に示す変速マップの2→1ダウンシフト変速線を交差してギヤ段が1stに変速された後(図7に示す破線参照)、ブレーキOFF(ブレーキ制動トルク=0Nm)となりタイヤグリップが発生すると、ペラ軸回転数(車輪車速)が急上昇して図5に示す変速マップの1→2アップシフト変速線を交差する(図7のA2)。このとき、実際には変速判断(1→2アップシフト変速線の交差)から変速出力までのタイマ遅延や油圧応答遅れにより、ギヤ段形成は1stのままであるため、変速機3の入力軸回転数(MG2回転数)が急上昇して過回転が発生する可能性がある。

このような点を解消するためにタイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を実行する。つまり、タイヤロック中(タイヤロック判定ON中)は、下限ギヤ段をガード(2ndにガード)することにより(図7のB2)、タイヤグリップ時における変速機3の入力軸3Aの過回転を防止することが可能になる。

ここで、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御にあっては、下限ガードを行う下限ギヤ段は車体速に応じて設定される。具体的には、ブレーキOFFによるタイヤグリップ時の車体速が、変速機3のギヤ段が1stであると上記過回転が発生するような車体速である場合は、下限ギヤ段は2nd設定される。また、ブレーキOFFによるタイヤグリップ時の車体速が高くて、変速機3のギヤ段が2ndであると上記過回転が発生するような車体速である場合は、下限ギヤ段は3rdに設定される。さらに、ブレーキOFFによるタイヤグリップ時の車体速が高速であって、変速機3のギヤ段が3rdであると上記過回転が発生するような車体速である場合は、下限ギヤ段は4thに設定される。

−タイヤスリップ時変速禁止制御を優先する制御− 次に、タイヤスリップ時変速禁止制御及びタイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を実行する制御において、タイヤスリップ時変速禁止制御を優先する場合の例について、図8のタイミングチャートを参照して説明する。

まず、変速機3のギヤ段が1stでの走行中(アクセル開度一定)に、アクセルペダルが大きく踏み込まれると、車輪車速(ペラ軸回転数)が急上昇してタイヤスリップが発生する。そのスリップ速度(車輪車速−車体速)が所定値Tha1以上になるとタイヤスリップ判定ONとなる。このタイヤスリップ中(タイヤスリップ判定ON中)にペラ軸回転数(車輪車速)が図5に示す変速マップの1→2アップシフト変速線を交差すると、本来は変速機3のギヤ段が2ndに変速されるが(図8の破線参照)、タイヤスリップ時変速禁止制御が優先されると、タイヤスリップ中は変速が禁止されるので、変速機3のギヤ段は1stのままが維持される(図8のA3)。

この後、タイヤスリップ判定OFFとなるまでに(スリップ速度が所定値Tha2以下になってから所定時間が経過するまでに)、ブレーキONにより大きなブレーキ制動トルク(負トルク)が発生してタイヤロック(車輪車速=0km/h)が発生すると、車輪車速(ペラ軸回転数)が急低下する(図8のB3)。このブレーキONの後に、ブレーキOFF(ブレーキ制動トルク=0Nm)となりタイヤグリップが発生すると、車輪車速(ペラ軸回転数)が急上昇する(図8のC3)。このとき、タイヤスリップ時変速禁止制御の継続により変速機3のギヤ段が1stのままであると、変速機3の入力軸3Aの過回転が発生するおそれがある。このような過回転を防止するには、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先して実行し、タイヤブリップの際の変速機3のギヤ段を大きくした方がよい(ギヤ段を2ndに制限した方がよい)。

−タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先する制御− 次に、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先して実行する制御の具体的な例について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。この図9に示す制御ルーチンはHV_ECU100において、所定時間ごとに繰り返して実行される。

図9の制御ルーチンが開始されると、ステップST101において、上記したタイヤスリップ判定処理により、タイヤスリップ判定ONであるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定(YES)である場合(タイヤスリップが発生したと判定した場合)はステップST102に進む。

ステップST102では、タイヤスリップ時変速禁止制御を実行(開始)する。

ステップST103では、上記したタイヤロック判定処理により、タイヤロック判定ONであるか否かを判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合はステップST104に進む。

ステップST104では、上記したタイヤスリップ判定処理により、タイヤスリップ判定OFFであるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定(YES)である場合(タイヤスリップ時変速禁止制御の解除条件が成立した場合)はステップST105に進む。ステップST104の判定結果が否定判定(NO)である場合は、ステップST102に戻ってタイヤスリップ時変速禁止制御を継続する。このタイヤスリップ時変速禁止制御は、ステップST103の判定結果が肯定判定(YES)になるか、または、ステップST104の判定結果が肯定判定(YES)になると終了する。

そして、ステップST104の判定結果が肯定判定(YES)となった時点で、ステップST105に進んで通常時制御を実行(タイヤスリップ時変速禁止制御から通常時制御に移行)し、その後にステップST108に進む。なお、通常時制御とは、ペラ軸回転数センサ102の出力信号から得られるペラ軸回転数に基づいて図5の変速マップを参照して変速機3の変速を行う制御のことである。

上記ステップST103の判定結果が肯定判定(YES)である場合、つまり、タイヤスリップ判定OFFとなる前(タイヤスリップ時変速禁止制御の解除条件が成立する前)にタイヤロック判定ONとなった場合は、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先して実行する(ステップST106)。このタイヤロック時下限ギヤ段ガード制御は、ステップST107の判定結果が肯定判定(YES)になるまで(上記したタイヤロック判定処理にてタイヤロック判定OFFとなるまで)継続して実行される。そして、ステップST107の判定結果が肯定判定(YES)になった時点で、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を終了してステップ104に戻る。

一方、上記ステップST101の判定結果が否定判定(NO)である場合(タイヤスリップ判定ONでない場合)はステップST108に進む。ステップST108では、上記したタイヤロック判定処理により、タイヤロック判定ONであるか否かを判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合は、ステップST112において通常時制御を実行した後にリターンする。ステップST108の判定結果が肯定判定(YES)である場合(タイヤロックが発生したと判定した場合)はステップST109に進む。

ステップST109では、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を実行(開始)する。

ステップST110では、上記したタイヤスリップ判定処理により、タイヤスリップ判定ONであるか否かを判定し、その判定結果が否定判定(NO)である場合はステップST111に進む。

ステップST111では、上記したタイヤロック判定処理により、タイヤロック判定OFFであるか否かを判定し、その判定結果が肯定判定(YES)である場合(タイヤロック時上限変速比ガード制御の解除条件が成立した場合)はステップST112に進む。ステップST111の判定結果が否定判定(NO)である場合は、ステップST109に戻ってタイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を継続する。このタイヤロック時下限ギヤ段ガード制御は、ステップST111の判定結果が肯定判定(YES)になると終了する。

ここで、上記ステップST110の判定結果が肯定判定(YES)となった場合、つまり、タイヤロック判定OFFになる前(タイヤロック時上限変速比ガード制御の解除条件が成立する前)に、タイヤスリップ判定ONとなった場合であっても、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先して実行する(ステップST106)。

−タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先する制御の具体例(1)− 次に、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先する制御の具体的な例について、図10のタイミングチャート及び図9のフローチャートを参照して説明する。

まず、変速機3のギヤ段が1stでの走行中(アクセル開度一定)に、アクセルペダルが大きく踏み込まれると(アクセル開度が大きくなると)、車輪車速(ペラ軸回転数)が急上昇してタイヤスリップが発生する。そのスリップ速度(車輪車速−車体速)が所定値Tha1以上になると、タイヤスリップ判定ONとなり(図9のステップST101の判定結果がYES)、タイヤスリップ時変速禁止制御が開始され(図9のステップST102)、変速機3の変速が禁止される(ギヤ段は1stに固定される)。

次に、タイヤスリップ中(タイヤスリップ判定ON中)にペラ軸回転数(車輪車速)が図5に示す変速マップの1→2アップシフト変速線を交差しても、タイヤスリップ中は変速機3の変速が禁止されているので、ギヤ段は1stに保持される(図10のA4)。

この後、スリップ判定OFFとなるまでに(スリップ速度が所定値Tha2以下になってから所定時間が経過するまでに)、ブレーキONにより大きなブレーキ制動トルク(負トルク)が発生し、タイヤロック(車輪車速=0km/h)が発生してタイヤロック判定ONになると(図9のステップST103の判定結果がYES)、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御が優先して実行される(図9のステップST106)。このタイヤロック時下限ギヤ段ガード制御により変速機3のギヤ段が2ndに制限される。つまり、タイヤスリップ中の車体速は、変速機3のギヤ段が1stであると変速機3の入力軸3Aの過回転が懸念される車体速であるので、その車体速に応じたギヤ段である2ndで下限ギヤ段がガードされる。

そして、ブレーキONの後に、ブレーキOFF(ブレーキ制動トルク=0Nm)となりタイヤグリップが発生すると、車輪車速(ペラ軸回転数)が急上昇するが(図10のD4)、変速機3のギヤ段は2ndにガードにされているため(図10のE4)、変速機3の入力軸3A(第2モータジェネレータMG2)が過回転となるおそれはない。

−タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先する制御の具体例(2)− 次に、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御を優先する制御の他の具体例について、図11のタイミングチャート及び図9のフローチャートを参照して説明する。

まず、変速機3のギヤ段が2ndでの走行中に、ブレーキONにより大きなブレーキ制動トルク(負トルク)が発生し、タイヤロック(車輪車速=0km/h)が発生してタイヤロック判定ONになると(図9のステップST108の判定結果がYES)、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御が実行される(図9のステップST109)。このタイヤロック時下限ギヤ段ガード制御により変速機3のギヤ段が2ndに制限される(図11のA5)。

次に、タイヤロックによりペラ軸回転数(車輪車速)が急低下し、図5に示す変速マップの2→1ダウンシフト変速線を交差しても、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御により変速機3のギヤ段が2ndに保持される。この後、タイヤロック判定OFFとなるまでに、タイヤスリップ判定ONとなっても(図11のC5:図9のステップST108の判定結果がYES)、タイヤロック時下限ギヤ段ガード制御が優先して実行される(図9のステップST106)。これにより、タイヤロック判定ON後の不要な2→1ダウンシフト変速は出力されなくなるので、ブレーキOFFによる車輪車速(ペラ軸回転数)の急上昇時(図11のB5)における変速機3のギヤ段を2ndにすることができる。これによってタイヤグリップの際に変速機3の入力軸3A(第2モータジェネレータMG2)が過回転となるおそれがなくなる。

−他の実施形態− なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。

例えば、上記タイヤスリップ時変速禁止制御において、変速機3の変速中におけるイナーシャ相開始前、イナーシャ相開始から所定時間未満、または、変速前同期回転数が所定値以下であるときに、タイヤスリップ判定ONとなった場合は、変速前のギヤ段に戻すという制御を行うようにしてもよい。

以上の実施形態では、スリップ速度(車輪車速−車体速)が所定値Tha1以上である場合(スリップON判定条件a1が成立した場合)にタイヤスリップ判定ONとしているが、本発明はこれに限定されない。

ON側のタイヤスリップ判定については、MG2回転数センサ107の出力信号から得られるMG2回転数の変化率、または、ペラ軸回転数センサ102の出力信号から得られるペラ軸回転数(車輪車速)の変化率が正であり、その変化率が所定値以上である場合(スリップON判定条件a2が成立した場合)にタイヤスリップ判定ONとしてもよい。また、上記スリップON判定条件a1及びスリップON判定条件a2を組み合わせてON側のタイヤスリップ判定を行うようにしてもよい。

以上の実施形態では、スリップ速度(車輪車速−車体速)が所定値Tha2以下となった時点(タイヤスリップが所定範囲内に収束した時点)から所定時間が経過したときに(スリップOFF判定条件b1が成立したときに)、タイヤスリップ判定OFFとしているが、本発明はこれに限定されない。

OFF側のタイヤスリップ判定についても、MG2回転数センサ107の出力信号から得られるMG2回転数の変化率、または、ペラ軸回転数センサ102の出力信号から得られるペラ軸回転数(車輪車速)の変化率が正であり、その変化率が所定値以下となった時点(タイヤスリップが所定範囲内に収束した時点)から所定時間が経過したときに(スリップOFF判定条件b2が成立したときに)、タイヤスリップ判定OFFとしてもよい。また、上記スリップOFF判定条件b1及びスリップOFF判定条件b2を組み合わせてOFF側のタイヤスリップ判定を行うようにしてもよい。

以上の実施形態では、上記車輪車速とロック時車体速ガード値との速度差(負値)が所定値Thb1以下である場合(ロックON判定条件c1が成立した場合)にタイヤロック判定ONとしているが、本発明はこれに限定されない。

ON側のタイヤロック判定については、MG2回転数センサ107の出力信号から得られるMG2回転数の変化率、または、ペラ軸回転数センサ102の出力信号から得られるペラ軸回転数(車輪車速)の変化率が負であり、その変化率が所定値以下である場合(ロックON判定条件c2が成立した場合)にタイヤスリップ判定ONとしてもよい。また、ブレーキON時(ロックON判定条件c3が成立したとき)にタイヤロック判定ONとしてもよいし、ブレーキ制動トルク(負トルク)が所定値以下である場合(ロックON判定条件c4が成立した場合)にタイヤロック判定ONとしてもよい。

さらに、上記ロックON判定条件c1、ロックON判定条件c2、及びロックON判定条件c3、及び、ロックON判定条件c4を組み合わせてON側のタイヤロック判定を行うようにしてもよい。

以上の実施形態では、上記車輪車速とロック時車体速ガード値との速度差(負値)が所定値Thb2以上となった時点(タイヤロックが所定範囲内に収束した時点)から所定時間が経過したときに(ロックOFF判定条件d1が成立したときに)、タイヤスリップ判定OFFとしているが、本発明はこれに限定されない。

OFF側のタイヤロック判定についても、MG2回転数センサ107の出力信号から得られるMG2回転数の変化率、または、ペラ軸回転数センサ102の出力信号から得られるペラ軸回転数(車輪車速)の変化率が負であり、その変化率が所定値以上(変化率の絶対値が所定値以下)となった時点(タイヤロックが所定範囲内に収束した時点)から所定時間が経過したときに(ロックOFF判定条件d2が成立したときに)、タイヤスリップ判定OFFとしてもよい。また、ブレーキ制動トルク(負トルク)が所定値以上となった時点(タイヤロックが所定範囲内に収束した時点)から所定時間が経過したとき(ロックON判定条件d3が成立したとき)にタイヤロック判定ONとしてもよい。また、ロックOFF判定条件d1、ロックOFF判定条件d2、ロックOFF判定条件d3、及びロックOFF判定条件d4を組み合わせてOFF側のタイヤロック判定を行うようにしてもよい。

以上の実施形態では、変速機3として、クラッチ及びブレーキ等の摩擦係合装置と遊星歯車装置とを用いてギヤ段を設定する有段式(遊星歯車式)の自動変速機を用いているが、本発明はこれに限られることなく、変速比を無段階に調整する無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)を用いてもよい。

以上の実施形態では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両の制御に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式のハイブリッド車両や、4輪駆動方式のハイブリッド車両の制御にも適用できる。

以上の実施形態では、駆動力源としてモータジェネレータとエンジンとが搭載されたハイブリッド車両の制御に、本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、駆動力源として、エンジンのみが搭載されたコンベンショナル車両の制御にも適用することも可能である。

本発明は、車両の制御装置に利用可能であり、さらに詳しくは、タイヤスリップ時変速禁止制御とタイヤロック時上限変速比ガード制御とが実行可能な車両の制御装置に有効に利用することができる。

HV ハイブリッド車両 1 エンジン(駆動力源) MG1 第1モータジェネレータ(駆動力源) MG2 第2モータジェネレータ(駆動力源) 3 変速機 3A 変速機の入力軸 3B 変速機の出力軸 4 プロペラシャフト 5 デファレンシャル装置 6 駆動輪 100 HV_ECU 102 ペラ軸回転数 104 アクセル開度センサ 108 ブレーキペダルセンサ 400 ブレーキECU

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