【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、アンチロックブレーキシステム(ABS)に関連して用いられる自動車用ホイールハブアセンブリに関する。 【0002】 【従来の技術】自動車用のABSには各種の構成のものが知られている。 一般にABSでは、車速を連続的に計測するセンサを設け、センサから車速に対応する信号を発信するようにしている。 連続的に計測される車速からホイールの加速度または減速度が測定され、ホイールのロック状態やスキッド状態を予知する。 スキッド状態が切迫しているとき、ABSは、ホイールロックを起こさずに最大限のブレーキ力を与えるようにブレーキ液圧を制御する。 車速センサはまた、ホイールスピンを防止して牽引力を増大させるための装置すなわちトラクションコントロールシステム(TCS)にも用いられている。 【0003】従来のABSでは、励磁リング(エキサイターリング)の運動を検知するセンサを用いている。 励磁リングは概して環状をなしており、径方向外側に突出する有歯突起を備えている。 励磁リングは、自動車のホイールと共に回転するハブに取り付けられる。 センサは、たとえば可変リラクタンス型ピックアップよりなり、励磁リングの近くにおいて、車軸支持体やハウジング等の非回転構造体上に装着される。 励磁リングの突起の歯がセンサを通過するごとに電気パルスが発生する。 この電気パルスを論理回路で分析することにより、回転するホイールの加速度または減速度を測定するように構成されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ABSを適正に稼働させるためには、センサと励磁リングとの間に規定間隔を維持することが必要である。 この間隔が規定される許容誤差を越えることになると、通過する励磁リングの歯をセンサが感知することができなくなったりあるいは不正確な感知結果を示すことになり、ABSの作動に支障をきたす。 【0005】ある従来法によれば、ハブの加工表面に励磁リングを圧入し嵌着することによって、励磁リングをハブに取り付けている。 この方法によるときは、ハブの外径と励磁リングの内径とを精密に加工して、励磁リングの歯とセンサとの間の間隔を適正に保持しなければならない。 【0006】このような圧入嵌着法により取り付けられたホイールハブアセンブリは広く用いられており、概ね満足すべき性能を示すものの、若干の問題を有している。 一つの問題は、励磁リングがハブから緩む可能性があることである。 また、圧入嵌着による取付の際に励磁リングに亀裂が生じたり、励磁リングまたはハブに歪みが生じたりするおそれがある。 【0007】励磁リングとハブを異種材料で形成する場合、たとえば励磁リングを鉄材料で形成しハブを非鉄材料で形成する場合、これらの間の分子間結合が期待できないため、ハブと励磁リングとを結合して取付後に緩みが生じないようにするための特別の手段を講ずる必要がある。 この手段は、たとえば、ハブの内部に向けて突入する結合突起を励磁リングに設けることによって達成されるが、励磁リングの重量、複雑性およびコストを増大させることになる。 【0008】ハブ表面の上方において励磁リングの径方向外側に突出するように歯が設けられることは、ごみ、 石、泥、砂等の夾雑物が歯に付着する可能性を与えている。 このような夾雑物の付着はABSの適切な運転を妨げるおそれがある。 これら夾雑物の付着を防ぐために、 様々な種類のシール手段、防止手段ないしシールド手段が開発され提供されているが、これらを用いることはホイールハブアセンブリの容積、重量および複雑性を増大させることになる。 【0009】 【課題を解決するための手段】したがって、本発明は、 従来技術の不利欠点を解消し、構成が簡単で、軽量化および小型化を達成することのできる新規なABS用のホイールハブアセンブリを提供することを目的とする。 【0010】本発明の別の目的は、感知手段と被感知部材との間の間隔を許容誤差範囲内に容易に維持することができ、被感知部材がハブから緩む危険性を回避することのできるホイールハブアセンブリを提供することにある。 【0011】本発明の更に別の目的は、ごみや石、泥、 砂等の夾雑物が被感知部材に付着あるいは堆積することを有効に防止することのできるホイールハブアセンブリを提供することにある。 【0012】本発明は更に、鉄材料と非鉄材料とからなる複合ホイールハブアセンブリを提供することを目的とする。 【0013】上記目的を解決するために創案された本発明は、センサと、第一の材料で形成されるハブとを有し、ハブは内側端と、外側端と、中央ボアと、概して円筒状の外周面とを有する概して円筒状の本体と、本体から径方向外側に突出するホイール取付フランジとを有してなる、アンチロックブレーキシステムに関連して用いられる自動車用ホイールハブアセンブリであって、第二の材料よりなる複数の部材がハブと一体的に鋳造され且つハブ内に間隔をおいて埋設固定されている。 ハブの一部は部材の間から外方に突出しており、部材の外周面とハブの外周面とは一致して凹凸のない複合的円筒面を形成している。 かかる構成により、ホイールハブアセンブリの回転中に、部材間に突出して複合的円筒面に露出しているハブの第一の材料と部材の第二の材料とが交互にセンサによって感知される。 【0014】 【作用】概して円筒状をなすハブの外周面に間隔をおいて部材が複数配置され、これらハブと部材とが異なる材料で形成されていることから、ホイールハブアセンブリの回転中に異なる材料の磁気特性がセンサによって感知され、車両の加速度または減速度が高精度に測定される。 【0015】 【実施例】本発明の一実施例によるホイールハブアセンブリが図1に符号10として示されている。 このホイールハブアセンブリ10におけるハブ12は、その外周面と面一に間隔をおいて設けられる部材47を複数有する。 【0016】ハブ12の本体ないし筒体16の内部を貫通するボア32は、内側端34と外側端36とを有する。 ボア32には公知のように自動車の駆動軸または非駆動軸(図示せず)が装着される。 【0017】ホイール取付フランジ14がハブ本体16 から径方向外側に向けて突出しており、該フランジにはホイール取付用のスタッド20を受け入れるための挿通穴18が複数設けられる。 スタッド20は、符号21で示される地点において図示されるようにぎざぎざ状部分を有するものとして形成することができる。 該ぎざぎざ状部分あるいはその他の形状の部分を設けることにより、スタッドを挿通穴18に圧入嵌着させることができる。 ホイール取付フランジ14およびスタッド20は、 上記のようにしてホイール自体の取付に用いられるだけでなく、場合によっては他の部材、たとえばブレーキロータを取り付けるためにも共用される。 ハブ12は、ホイール取付フランジ14の外側にある外側筒体部分24 と内側にある内側筒体部分26とに区画され、各部分は概して円筒状の外周面28、30を有している。 【0018】図1に示されるような構成のホイールハブアセンブリを製造するには、まず、非鉄材料による励磁リング40を鋳型41に配置する。 すなわち、図2に示されるように、外型部材42内に励磁リング40を配置した後、内型部材43を配置して、リング40をこれら型部材42、43間のキャビティ内に閉じ込める。 【0019】図2および図3に示される実施例における励磁リング40は、概してリング状のバンド44に複数の突起ないし歯46が形成されてなる。 歯46はバンド44から径方向内側に向けて突出している。 励磁リング40を鋳型41内に適切に配置した後、ハブ12のための鉄材料を溶融状態として鋳型41に注入し更に硬化させることにより、励磁リング40の歯46が埋設固定されてなるホイールハブアセンブリ10の未加工鋳造物が得られる。 図2に示されるように、歯46はハブ12の内部に埋設されており、ハブ12の厚さ方向ないし径方向の外方には突出していない。 【0020】未加工鋳造物を型41から取り出した後、 その外筒面28、30を所定径寸法に切削加工する。 これら表面28、30の加工は、ホイールハブアセンブリ10の回転中心52を基準として行われる。 加工により、励磁リング40のバンド44の部分は完全に除去され、歯46の部分のみが残され、内側筒体部分26のまわりに間隔をおいてハブ12内に埋設固定される部材4 7とされる。 図3に示されるように、この部材47の外周面48は、内側筒体部分26の内側端における外周面30に一致している。 図示の部材47はハブ12の内側端34の近くに配置されており、これが好適な態様ではあるものの、他の位置に部材47を配置させることも可能であり容易である。 また、部材47は概して方形状の断面形状を有するものとして示されているが、ハブ12 内に埋設固定することのできる形状であれば他のいかなる形状のものとしてもよい。 【0021】図4および図5は本発明の別の実施例を示し、非鉄材料による励磁リング140が外型部材142 に密接して鋳型141内に配置されている。 この実施例における励磁リング140は、概してリング状のバンド144と、該バンドから径方向外側に向けて突出する突起ないし歯146とを有する。 次いで、内型部材ないしコア143を配置してリング140を鋳型141内に封じ込める。 リング140の配置に関しては、これを外型部材142に密接させる代わりに、内型部材143に密接させて配置してもよい。 【0022】励磁リング140を型141内に配置した後、溶融状態の鉄材料を型141に注入して、ホイールハブアセンブリ10の未加工鋳造物を得る。 この未加工鋳造物においては、励磁リング140の歯146がハブ12の内部に埋設固定されている。 バンド144の部分もハブ12の内部に埋設されている。 【0023】得られた未加工鋳造物を型141から取り出し、回転中心52を基準として円筒面28、30を規定径寸法に切削加工する。 加工において、内側筒体部分の外筒面30を歯146の一部を露出するに十分な量だけ切削する。 これにより、高さを減じられた歯146が部材147として残され、内側筒体部分26のまわりに間隔をおいてハブ12内に埋設固定される。 部材147 の外周面は加工後の内側筒体面30に一致している。 【0024】部材47、147は非鉄材料よりなるので、その存在によって、高リラクタンス領域が均等間隔で形成される。 したがって、内側筒体部分の外周面30 の近くに設けられる可変リラクタンスセンサまたは誘導ピックアップにより、隣接する2つの非鉄部材47または147の間に存在する鉄材料領域50または150が検知され、対応する電気パルス信号が発せられ、ホイールの加速度または減速度が測定される。 【0025】 【発明の効果】本発明によれば、非鉄部材47、147 の外周面48、148がハブ12の内側筒体部分の外周面30と一致するように形成されており、これによって多くの利点がもたらされる。 第一に、従来の歯付きホイールハブアセンブリにおいては不可避の問題であった、 歯46、146の間に小石、砂、埃、泥等が堆積されることが回避され、したがってこの堆積を防止するために特別の手段を設ける必要がない。 更に、これら外周面の加工中においてホイールハブアセンブリ10の回転中心52が基準とされるので、寸法精度を著しく向上させ、 外周面30とセンサとの間に規定間隔を与えることが可能となる。 【0026】ハブ表面30からセンサが規定間隔で配置されることは、特に低速における加速度または減速度の測定精度を向上させる。 従来の設計においてはこの間隔に誤差があるため、低速における加速度/減速度の測定が困難であった。 【0027】本発明によるホイールハブアセンブリの製造には従来技術に比べてもコストアップが要求されない。 未加工鋳造物の円筒状外周面30を加工することは、励磁リングの有無にかかわらず、ハブの製造において従来より行われている。 【0028】本発明によるホイールハブアセンブリは小型かつ軽量である。 第一の実施例においてはバンド44 の部分が切削加工により除去されているので、特に軽量化のメリットが顕著である。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例によるホイールハブアセンブリを示す長さ方向断面図である。 【図2】図1のホイールハブアセンブリを製造するための鋳型を示す断面図である。 【図3】図1の3−3線による断面図である。 【図4】本発明の別の実施例によるホイールハブアセンブリを製造するための鋳型を示す断面図である。 【図5】図4の鋳型で成形される鋳造物を切削加工して得られるホイールハブアセンブリを示す断面図である。 【符号の説明】 10 ホイールハブアセンブリ 12 ハブ 24 外側筒体部分 26 内側筒体部分 28 外側筒体部分の外周面 30 内側筒体部分の外周面 40 励磁リング 41、141 鋳型 44、144 バンド 46、146 突起ないし歯 47、147 非鉄部材 48、148 非鉄部材の外周面 52 回転中心 |