ホイール取付構造

申请号 JP2017081752 申请日 2017-04-18 公开(公告)号 JP2018177078A 公开(公告)日 2018-11-15
申请人 トヨタ自動車株式会社; 发明人 中川 健治;
摘要 【課題】ホイール交換時のホイールの脱落及び/又は部品の損傷を防止し、作業効率を向上することが可能なホイール取付構造を提供する。 【解決手段】ハブ軸部21からフランジ部22よりも車体外側に突設する、略円筒形状を有するインロー部23を備えるホイールハブ20に対する取付構造である。インロー部23には、回転軸線90と平行な円筒外周面が形成され、インロー部23に圧入固定されインロー部23の端部から所定距離離間した 位置 に径方向外向きに突設する鍔部がある鍔付き部材70が備えられる。中心孔52の内周面であってホイール50のハブ取付面51a側にホイールの中心に向かって円環状突起部54が突設し、ハブボルト60を用いてホイール50をフランジ部22に固定している状態においては、嵌合部と円環状突起部54との間においてインロー嵌合し、ハブボルト60が取り外された状態においては、円環状突起部54が鍔部に係止される。 【選択図】図1
权利要求

車両のホイールハブにホイールを取り付ける構造であって、 前記ホイールハブには、 ハブ軸部と、 前記ホイールハブの回転軸線に対して垂直な面と平行に前記ハブ軸部から延出する円板形状の部分であって複数のハブボルトを用いて前記ホイールを固定するための固定面を前記車両の車体外側に有するフランジ部と、 前記回転軸線をその中心軸線とする円筒形状の部分であって前記ハブ軸部から前記フランジ部よりも前記車体外側に突設するインロー部と、 が備えられ、 前記インロー部には、前記回転軸線を中心軸線とする円筒外周面及び同回転軸線を中心軸線とする円筒内周面が形成され、 前記円筒内周面には、円筒形状の部材であって径方向外向きに突設する鍔部が形成された鍔付き部材が前記車体外側から挿入固定され、前記鍔付き部材が前記インロー部に挿入固定されたとき、前記鍔部は前記インロー部の端部から所定距離離間した位置に設けられ、 前記ホイールには、 前記ホイールの中心に前記インロー部を挿通可能な中心孔が形成されるとともに前記中心孔の周囲に前記複数のハブボルトを挿通可能な複数のボルト孔が形成され、 前記中心孔の内周面の前記ホイールのハブ取付面側に、前記ホイールの中心に向かって突設する円環状突起部が形成され、 前記複数のハブボルトを用いて前記ホイールを前記フランジ部に固定している状態においては、前記円筒外周面が形成される嵌合部と前記円環状突起部とがインロー嵌合し、 前記複数のハブボルトを用いた前記ホイールの固定が解除された状態においては、前記円環状突起部が前記鍔部に係止される、 ホイール取付構造。請求項1に記載のホイール取付構造において、 前記所定距離は、前記円環状突起部の前記回転軸線方向の長さに一致するように設定される、 ホイール取付構造。請求項1又は請求項2に記載のホイール取付構造において、 前記円筒内周面の車体内側端に段付き部が形成され、前記形成された段付き部に前記鍔付き部材を当接させることにより前記所定距離が設定される、 ホイール取付構造。請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のホイール取付構造において、 前記鍔付き部材が前記円筒内周面に圧入固定される、 ホイール取付構造。請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のホイール取付構造において、 前記鍔付き部材がグリースキャップである、 ホイール取付構造。

说明书全文

本発明は、車両のホイールがホイールハブにインロー嵌合して取り付けられるホイール取付構造に関する。

従来から、ホイールハブに、ホイール取り付け用の複数のボルトが設けられ、締め付け用ナット(ハブナット)と各ボルトとを締結することによりホイールをホイールハブに固定する構造を有する車輪転がり軸受装置(以下、「従来装置」とも称呼される。)が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。これに対して、ホイールハブに、ホイール取り付け用の複数のボルト孔(タップ孔)が形成され、各ボルト孔に締め付け用ボルト(ハブボルト)を締結することによりホイールをホイールハブに固定する構造を有する車輪転がり軸受装置は、従来装置に比べて軽量であるというメリットがある。

特開2012−148643号公報(図1)

これらの装置のホイールハブ及びホイールハブに取り付けられるホイールの多くには、相互の位置合わせを容易にするため、インロー嵌合構造が採用されている。このインロー嵌合構造は、ホイールハブの車両外側からホイールハブと同軸に車両外側に向かって突設する円筒状の突起部の外周面と、ホイールの中央に形成された孔の内周面と、が当接する構造である。このような構造を有するインロー嵌合部において、ホイールハブ及び/又はホイールが腐食した場合にはお互いが固着し易い。そのため、ホイールハブとホイールとの嵌合部分はホイールハブの回転軸線方向において突起部の先端側に形成され、且つ嵌合部分の回転軸線方向の長さは短くされる。これにより、ホイールをホイールハブから比較的容易に取り外すことができるようになっている。

ところで、複数のハブナットにより締結する構造を有する車輪用転がり軸受装置のホイールハブにおいて、全てのハブナットを外した場合には、インロー嵌合部の嵌合が外れてもホイールはホイールハブから突出するボルトに支えられるので、ホイールが脱落する可能性は低い。一方、複数のハブボルトにより締結する構造を有する車輪用転がり軸受装置のホイールハブにおいて、全てのハブボルトを外した場合、ホイールはインロー嵌合部により支持される。しかし、インロー嵌合部の嵌合が外れるとホイールが脱落してしまう。

ところで、ホイールハブへの雨の浸入を防止するため、インロー嵌合構造が形成される円筒状の突起部にグリースキャップが取り付けられている車両がある。このような車両において用いられるホイールハブが、複数のハブボルトを締結することによりホイールを固定する構造を有するホイールハブの場合には、インロー嵌合部の嵌合が外れ、ホイールがインロー嵌合部から脱落しても、一旦はグリースキャップに支持される。しかし、通常のホイール及びグリースキャップには互いを係止する構造が設けられていないので、グリースキャップに一旦支持されたホイールは、その後グリースキャップから脱落する。この際、ホイールが破損する虞がある。更に、ホイールが脱落する際に、ホイールとブレーキ部品とが衝突してブレーキ部品が破損する虞もある。その結果、ホイール交換作業の工数が増加する虞がある。このように、複数のハブボルトを締結することによりホイールを固定する構造を有するホイールハブにおいては、ホイール交換作業の効率及び信頼性が低下する可能性があるという問題がある。

本発明は上記課題に対処するために為されたものである。即ち、本発明の目的の一つは、ハブボルトを締結することによりホイールを固定する構造を有するとともにグリースキャップが取付けられたホイールハブにおいて、ホイール交換時のホイールの脱落及び/又は部品の損傷を防止し、ホイール交換における作業効率を向上することが可能なホイール取付構造を提供することにある。

本発明のホイール取付構造(以下、「本発明装置」とも称呼する。)は、車両のホイールハブ(20)にホイール(50)を取り付けるための構造に関する。

前記ホイールハブには、ハブ軸部(21)と、前記ホイールハブの回転軸線(90)に対して垂直な面と平行に前記ハブ軸部から延出する円板形状の部分であって複数のハブボルト(60)を用いて前記ホイールを固定するための固定面(22a)を前記車両の車体外側に有するフランジ部(22)と、前記回転軸線をその中心軸線とする円筒形状の部分であって前記ハブ軸部から前記フランジ部よりも前記車体外側に突設するインロー部(23)と、が備えられる。

前記インロー部には、前記回転軸線を中心軸線とする円筒外周面(23b)及び同回転軸線を中心軸線とする円筒内周面(23f)が形成され、前記円筒内周面には、円筒形状の部材であって径方向外向きに突設する鍔部(72)が形成された鍔付き部材(70)が前記車体外側から挿入固定され、前記鍔付き部材が前記インロー部に挿入固定されたとき、前記鍔部は前記インロー部の端部(23d)から所定距離(Wg1)離間した位置に設けられる。

前記ホイールには、前記ホイールの中心に前記インロー部を挿通可能な中心孔(52)が形成されるとともに前記中心孔の周囲に前記複数のハブボルトを挿通可能な複数のボルト孔(53)が形成され、前記中心孔の内周面の前記ホイールのハブ取付面(51a)側に、前記ホイールの中心に向かって突設する円環状突起部(54)が形成されている。

更に、前記複数のハブボルトを用いて前記ホイールを前記フランジ部に固定している状態においては、前記円筒外周面が形成される嵌合部(24)と前記円環状突起部(54)とがインロー嵌合し、前記複数のハブボルトを用いた前記ホイールの固定が解除された状態においては、前記円環状突起部(54)が前記鍔部(72)に係止される。

上記の構成によれば、複数のハブボルトを用いてホイールをフランジ部に固定している状態において、円環状突起部と嵌合部は「インロー嵌合部」として機能している。複数のハブボルトを用いたホイールの固定が解除された状態、即ち、全てのハブボルトが取り外された状態においては、ホイールはインロー嵌合部によって支持される。しかし、前述したように、インロー嵌合部は取り外し易く設計されているので、インロー嵌合部による支持のみではホイールを支持することは難しい。よって、全てのハブボルトが取り外されると、ホイールが傾倒して円環状突起部は嵌合部から離脱し、鍔付き部材の鍔部に係止される。これにより、「円環状突起部」及び「鍔部が形成された鍔付き部材」は「ホイール脱落防止部」として機能する。従って、本発明構造によれば、ホイール交換時のホイールの脱落及び/又は部品の損傷を防止し、ホイール交換における作業効率を向上することができる。

本発明の一態様に係るホイール取付構造において、前記所定距離は、前記円環状突起部(54)の前記回転軸線方向の長さ(Lb、La及びLcの和Lt)に一致するように設定され得る。

この態様によれば、全てのハブボルトが取り外されたとき、円環状突起部が鍔付き部材の円筒面上及び鍔部に当接する(図6を参照。)。これにより、円環状突起部は鍔部に確実に係止され、効果的にホイールの脱落を防止することができる。

本発明の一態様に係るホイール取付構造において、前記円筒内周面の車体内側端に段付き部(23h)が形成され、前記形成された段付き部に前記鍔付き部材の端部(74)を当接させることにより前記所定距離が設定され得る。

この態様によれば、段付き部に鍔付き部材の端部を当接させることにより、鍔付き部材がインロー部に挿入される深さが規制され、インロー部の端部から鍔部までの上記所定距離が決定される。これにより、ホイールハブの組立時及び整備時等において、上記所定距離を確実に再現することができる。

本発明の一態様に係るホイール取付構造において、前記鍔付き部材が前記円筒内周面に圧入固定され得る。

この態様によれば、鍔付き部材をインロー部に容易に取付けることが可能である。

更に、本発明の一態様に係るホイール取付構造において、前記鍔付き部材がグリースキャップであり得る。

上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。

図1は、本発明の第1実施形態に係るホイール取付構造(第1構造)を説明するための断面図である。

図2は、図1に示した円環状突起部の拡大断面図である。

図3は、図1に示したインロー部の拡大断面図である。

図4は、図1に示したインロー部、円環状突起部及びグリースキャップの拡大断面図である。

図5は、図1に示したホイール取付構造において、全てのハブボルトを取り外した状態を説明するための断面図である。

図6は、図5に示したインロー部、円環状突起部及びグリースキャップの拡大断面図である。

図7は、図1に示したホイール取付構造において、全てのハブボルトを取り外したときのディスクロータ及びグリースキャップに作用する反力を示した図である。

図8は、本発明の第2実施形態に係るホイール取付構造(第2構造)を説明するための断面図である。

図9は、図8に示したホイール取付構造において、全てのハブナットを取り外した状態を説明するための断面図である。

図10は、本発明の変形例に係る鍔部を2つ有するグリースキャップを説明するための断面図である。

<第1実施形態> (構成) 本発明の第1実施形態に係るホイール取付構造(以下、「第1構造」とも称呼される。)について以下、図面を参照しながら説明する。

図1には、車輪用転がり軸受装置10、ホイールハブ20、ドライブシャフト30、ディスクロータ40、ホイール50、ハブボルト60及びグリースキャップ70等が示される。図1は、ホイール50が車輪用転がり軸受装置10のホイールハブ20に取り付けられた状態において、ホイールハブ20の回転軸線90に沿って切断した断面図である。なお、以下の説明において、アウトボード側とは、回転軸線90の方向において車両の外に向かう側(図1において右側)をいい、インボード側とは、回転軸線90の方向において車両の中央に向かう側(図1において左側)をいう。

車輪用転がり軸受装置10は、内輪11、複列の転動体12及び13、外輪14及びホイールハブ20を含んでいる。この車輪用転がり軸受装置10の構造は周知であり、特開2008−56122号公報及び特開2008−247274号公報等に記載されている。これらは、参照することにより本願明細書に組み込まれる。

ホイールハブ20は、ハブ軸部21、フランジ部22及びインロー部23を含み、これらを一体成型することにより形成されている。

ハブ軸部21は、その内周面21aにスプラインが形成され(図示せず。)、ドライブシャフト30とスプライン結合している。ハブ軸部21は、ドライブシャフト締め付けナット31によりドライブシャフト30に締め付けられ、ドライブシャフト30と一体回転可能に固定されている。

フランジ部22は、ハブ軸部21の回転軸線90に対して垂直な面と平行にハブ軸部21から延出する略円板形状の部分である。フランジ部22には、ディスクロータ40の取り付け面41と当接する円形の固定面22aが形成されている。更に、フランジ部22には、ハブボルト60を締結するための複数のボルト孔(タップ孔)25が形成されている。図1には、複数のボルト孔25のうち一つのみが示されている。

インロー部23は、回転軸線90をその中心軸とし、ハブ軸部21からフランジ部22よりもアウトボード側に突設する、略円筒形状を有する部分である。インロー部23は、後述するように、ホイール50の中心に形成された孔(センターボア52)とインロー嵌合するようになっている。

ディスクロータ40は車両制動用の部材であり、フランジ部22とホイール50とにより挟持される。ディスクロータ40には、フランジ部22の固定面22aと当接する取付面41、ホイール50と当接する当接面42及びディスクロータ40の中心にインロー部23を挿通するハブ取付用孔43が形成されている。更に、ハブ取付用孔43の周囲であって、ハブ取付用孔43と同心の円上に等間隔にハブボルト60を挿通するための孔であるボルト孔44が開口している。

ホイール50には、ハブ取付部51が設けられ、その中心にインロー部23を挿通するための孔である中心孔(以下、「センターボア」とも称呼される。)52が開口している。更に、ハブ取付部51には、センターボア52の周囲であってセンターボア52と同心の円上に等間隔にハブボルト60を挿通するための孔である複数のボルト孔53が開口している。

更に、ハブ取付部51には、インボード側にディスクロータ40の当接面42と当接するハブ取付面51aが形成され、センターボア52の内周面であってハブ取付面51a側からホイール50の中心に向かって円環状突起部54が突設する。

ハブボルト60は、フランジ部22に形成された複数のボルト孔25と締結することにより、ディスクロータ40及びホイール50をホイールハブ20に固定する。

図2に示したように、ホイール50のハブ取付部51から突設した円環状突起部54の頂部は回転軸線90と平行な平坦部54aが形成されている。この平坦部(以下、「突起部内周面」とも称呼される。)54aの回転軸線90方向の長さLaは(厚み)は、例えば3mmである。円環状突起部54の突起部内周面54aのインボード側端からインボード側に向かってテーパ状に面取りがなされている。この面取り部分(以下、「第1側面」とも称呼される。)54bの傾斜(回転軸線90と平行な線91とのなす角)φ1は、例えば、45°である。円環状突起部54の突起部内周面54aのアウトボード側端からアウトボード側に向かってテーパ状に面取りがなされている。この面取り部分(以下、「第2側面」とも称呼される。)54cの傾斜角(回転軸線90と平行な線91とのなす角)φ2は、例えば、65°である。

<インロー嵌合部の構造> 次に、インロー嵌合部の構造について説明する。 図3に示したように、インロー部23には、径の異なる2つの円筒外周面(以下、単に「外周面」とも称呼される。)23a及び23bが形成されている。これらの2つの外周面の直径はインボード側が大きくアウトボード側が小さい。インボード側、即ち、フランジ部22に近い外周面23aは、ディスクロータ40の取り付け面となっており、「ディスクロータ取付外周面23a」とも称呼される。

ディスクロータ取付外周面23aはディスクロータ40の中心に開口するハブ取付用孔43の内周面43aと当接するようになっている(図4参照)。

アウトボード側の外周面は「円筒外周面23b」と称呼される。円筒外周面23bは、円環状突起部54の突起部内周面54aと当接するようになっている(図4参照)。つまり、円筒外周面23bと突起部内周面54aとはインロー嵌合する。円筒外周面23bの回転軸線90方向の長さL1は、例えば4mmである。前述したように、突起部内周面54aの回転軸線90方向の長さLaは例えば3mmである。図4から理解されるように、円筒外周面23bの回転軸線90方向の長さL1は完全に突起部内周面54aの回転軸線90方向の長さLaをオーバラップしている。従って、円筒外周面23bと突起部内周面54aとの当接部分の回転軸線90方向の長さ(以下、「当接部分長さ」とも称呼される。)は突起部内周面54aの回転軸線90方向の長さLaと同じ3mmである。この当接部分長さが長いほど、ホイール50は安定して保持されるが、一方において、ホイールハブ20及び/又はホイール50の表面が腐食した際にホイールハブ20とホイール50とが固着し易くなってしまう。上記安定保持性及び取り外し容易性を考慮すると、当接部分長さは2mm乃至3mmが適当である。

再び図3を参照すると、円筒外周面23bが形成された部分(以下、「嵌合部24」とも称呼される。)の直径D1は、ディスクロータ取付外周面23aが形成された部分の直径D0よりも小さい。直径D0は例えば、68.6mmであり、直径D1は例えば、66.5mmである。従って、円筒外周面23bとインロー嵌合する円環状突起部54の突起部内周面54aの内径は略66.5mmであり、より正確には例えば、直径D1よりもわずかに大きい66.6mmである。このように、突起部内周面54aの内径は直径D0よりも小さいので、ホイール50はディスクロータ取付外周面23aまで嵌まり込むことがない。

ディスクロータ取付外周面23aと円筒外周面23bとをつなぐ斜面(以下、「第1斜面」とも称呼される。)23cの傾斜角(回転軸線90と平行な線92とのなす角)θ1は、例えば、第1側面54bの傾斜角φ1と同じ45°である。

円筒外周面23bとインロー部23の端部23d(以下、「インロー部端23d」とも称呼される。)とをつなぐ斜面(以下、「第2斜面」とも称呼される。)23eの傾斜角(回転軸線90と平行な線92とのなす角)θ2は、例えば、40°である。

インロー部23の内周には、回転軸線90を中心軸線とする円筒内周面23fが形成されている。この円筒内周面23fはインロー部23のアウトボード側に形成される。円筒内周面23fのインボード側端には回転軸線90に対して垂直な面23gが形成される。この回転軸線90に対して垂直な面23gは、グリースキャップ70が圧入されたとき、グリースキャップ70と当接するので、以下、「当接面23g」とも称呼される。円筒内周面23fの回転軸線90方向の長さ、即ち、インロー部端23dから当接面23gまでの長さL2は、例えば、5mmである。円筒内周面23fと当接面23gとにより画成される段付き部分は、以下、「段付き部23h」とも称呼される。円筒内周面23fの内径D2は、例えば、60mmである。

図4に示したように、グリースキャップ70は円筒形状の部材であって、円筒部71、鍔部72及び蓋部73を備えている。グリースキャップ70は溶融亜鉛メッキ鋼板でできており、プレス加工により成型される。更に、グリースキャップ70は、エポキシ樹脂系塗料により塗装される。グリースキャップ70には、円筒部71の外周面(以下、「キャップ外周面」とも称呼される。)71aから円筒部71の径方向外向きに突設する鍔部72が形成されている。グリースキャップ70の直径D3は、円筒内周面23fの内径D2と略等しい(例えば、60mm)。グリースキャップ70のアウトボード側には、蓋部73が円筒部71と一体に成型されることにより形成される。鍔部72の高さH1(キャップ外周面71aから鍔部72の頂部72aまでの径方向に沿った長さ)は、2.5mmである。

図4において、グリースキャップ70は、インロー部23の円筒内周面23fに沿って圧入固定されている。グリースキャップ70が圧入されると、グリースキャップ70のインボード側端部74(以下、「キャップ端74」とも称呼される。)は、インロー部23の当接面23gに当接する。キャップ端74が当接面23gと当接することにより、即ち、段付き部23hにより、グリースキャップ70の圧入深さ(回転軸線90方向の長さ)が規制される。グリースキャップ70の圧入深さは、円筒内周面23fの長さL2と等しい5mmとなる。

グリースキャップ70をインロー部23に圧入固定したとき、ドライブシャフト締め付けナット31を含むインロー部23内側の空間SPはグリースキャップ70により密閉される。これにより、空間SPへの雨水の浸入を防止することができる。

なお、上記の各寸法(長さL1乃至L3及びLa、当接部分長さ、直径D0乃至D3及び突起部内周面54aの直径)及び角度(傾斜角φ1及びφ2、第1傾斜角θ1及び第2傾斜角θ2)等についての数値は、あくまで本発明の理解を助けるための例示であって、本発明を限定するものではない。これらの数値は、本発明の範囲内において適宜変更されてもよい。

(作用) 次にハブボルト60を取り外したときの状態を示した図面を参照しながら、本発明に係る実施形態の作用について説明する。

全てのハブボルト60を取り外すと、ホイール50は、図5に示したように、ホイール50及びホイール50に装着された図示しないタイヤ(以下、「ホイールアセンブリ」とも称呼する。)の重みによりインロー嵌合部24の嵌合が外れて傾倒する。ホイール50が傾倒すると、ディスクロータ40との当接面(ハブ取付面)51aがディスクロータ40の当接面42から離間し、円環状突起部54がインロー部23から脱落し、キャップ外周面71a上に乗り上げる。そして、円環状突起部54は、グリースキャップ70に突設した鍔部72に係止される。

より詳細に説明すると、本実施形態に係るホイール50は所謂インセット(プラスオフセット)のホイールである。従って、図1に示したように、タイヤの重心Gtyreは、ホイール50のディスクロータ40との当接面(ハブ取付面)51aよりもインボード側に位置している。更に、ホイールアセンブリの重心Gassyもハブ取付面51aよりもインボード側に位置している。

従って、全てのハブボルト60を取り外した結果、インロー嵌合部24の嵌合が外れると、時計と反対回り(左回り)のモーメントが発生して、図5に示したように、ホイール50が時計と反対回りに傾倒する。ハブ取付部51は、点P1においてディスクロータ40の当接面42と接触しながら回転軸線90に向かって摺動する。同時に、円環状突起部54は、点P2においてインロー部23と接触しながらアウトボード側に向かって摺動し、更に第2斜面23eを滑落し、グリースキャップ70の外周面71aの上に乗り上げる。

このとき、円環状突起部54は、図6に示したように、インロー部端23d、キャップ外周面71a及び鍔部72のインボード側の斜面72b(以下、「第3斜面72b」とも称呼される。)により画成される溝Gr1の中に完全に嵌まり込む。つまり、点P2にてホイール50はグリースキャップ70に支持され、ホイール50(即ち、ホイールアセンブリ)の脱落が防止される。このように、「円環状突起部54」及び「鍔部72が形成されたグリースキャップ70」はホイール脱落防止機構を構成する。溝Gr1の幅Wg1は、インロー部端23dと鍔部72の頂部72aとの間の回転軸線90と平行な方向の距離、と定義される。溝Gr1の幅Wg1は、図2に示した円環状突起部54の第1側面54b、突起部内周面54a及び第2側面54cの回転軸線90と平行な方向のそれぞれの長さLb、La及びLcの和Ltと一致するように(略等しく)設定される。この溝Gr1の幅Wg1は、グリースキャップ70の圧入深さがインロー部23の段付き部23hによって規制されることにより決定される。従って、溝Gr1の幅Wg1は、ホイールハブ20の組立時及び整備時等において容易に再現される。

次に、全てのハブボルト60を取り外したとき、点P1及び点P2に作用する反力について図7を参照して説明する。点P1において、ホイール50がディスクロータ40に対して作用する反力の回転軸線90方向の成分(インボード側に向かう成分)F1と、点P2においてホイール50の円環状突起部54がグリースキャップ70に対して作用する反力の回転軸線90方向の成分(アウトボード側に向かう成分)F2と、はつり合っている。

円環状突起部54の第2側面54cと鍔部72の第3斜面72bとの当接部分、即ち、点P2において円環状突起部54と鍔部72とはお互いが噛み合っている。しかし、仮にこの噛み合いによる力の回転軸線90方向の成分(インボード側に向かう成分)F3よりも反力F2が大きくなると、円環状突起部54は第3斜面72bを乗り越えて、キャップ外周面71a上をアウトボード側に向かって摺動し、ついにはグリースキャップ70から脱落してしまう。

より具体的に述べると、点P2における噛み合いによる力F3は第3斜面72bに働く垂直抗力FNの回転軸線90方向の成分である。以下、噛み合いによる力F3は、抗力F3とも称呼される。抗力F3は主としてホイールアセンブリ重量及び第3斜面72bの傾斜角(回転軸線90と平行な線93とのなす角)である第3傾斜角θ3により定まる。垂直抗力FNは、ホイールアセンブリ重量に比例し、抗力F3は、第3傾斜角θ3が大きいほど大きくなる。本実施形態においては、第3傾斜角θ3を60°に設定した。これにより、一般的なホイールアセンブリが脱落することを防ぐことができる。なお、第2側面54cの角度φ2の角度(65°)よりも小さい値に設定される。

上述したように、溝Gr1の幅Wg1は円環状突起部54の底面の回転軸線90と平行な方向の長さLtと一致するように(略等しく)設定される。これにより、ホイールがインロー部23から滑落すると、円環状突起部54はただちに、グリースキャップ70の鍔部72に係止される。

ところで、仮に、溝の幅Wgが上記幅Wg1よりも長く設定された場合、言い換えると、鍔部72が上述した位置よりもアウトボード側に設けられた場合、以下の問題が生じる虞がある。上記仮定における溝の幅Wgは以下、「Wg2」と称呼される。幅Wg2は幅Wg1よりも大きい。ホイールアセンブリの傾きが大きくなるほど、回転軸線90と平行な方向の反力の成分は大きくなる。従って、溝の幅Wgが幅Wg2に設定された場合におけるホイールに作用する反力の回転軸線90と平行な方向の成分の大きさは、溝の幅Wgが幅Wg1に設定された場合におけるホイールに作用する反力の回転軸線90と平行な方向の成分の大きさより大きい。

従って、溝の幅Wgが幅Wg2に設定された場合に発生するグリースキャップ70をこじる力は、溝の幅Wgが幅Wg1に設定された場合に発生するグリースキャップ70をこじる力よりも大きい。この「こじる力」とは、図5に示される点P3(即ち、図4に示された当接面23g上においてキャップ端74と接触する点)を支点として、グリースキャップ70を時計回りに回転させようとする力である。溝の幅Wgが幅Wg2に設定された場合、この「こじる力」により、グリースキャップ70がインロー部23から脱落する可能性が高くなる。以上より、溝の幅Wgはできるだけ短く設定することが好ましい。即ち、鍔部72はできるだけインロー部端23dに近い方が好ましい。上述したように、円環状突起部54が溝Gr1に確実に係止されるべきことを考慮すると、溝Gr1の幅WgがWg1となるような鍔部72の位置が好適な位置であると言える。

以上、説明したように、第1構造によれば、ホイールハブ20のハブ軸部21から車体外側(アウトボード側)に突設するインロー部23には、回転軸線90を中心軸線とする円筒外周面23b及び同回転軸線90を中心軸線とする円筒内周面23fが形成される。円筒内周面23fには、円筒形状の部材であって径方向外向きに突設する鍔部72が形成された鍔付き部材70が車体外側から挿入固定され、鍔付き部材70がインロー部23に挿入固定されたとき、鍔部72はインロー部端23dから所定距離Wg1離間した位置に設けられる。

ホイール50には、ホイール50の中心にインロー部23を挿通可能な中心孔52が形成されるとともに中心孔52の周囲に複数のハブボルト60を挿通可能な複数のボルト孔53が形成される。更に、中心孔52の内周面の前記ホイールのハブ取付面側に、前記ホイールの中心に向かって突設する円環状突起部54が形成される。加えて、複数のハブボルト60を用いてホイール50をフランジ部22に固定している状態においては、円筒外周面23bが形成される嵌合部24と円環状突起部54とがインロー嵌合し、複数のハブボルト60を用いたホイール50の固定が解除された状態においては、円環状突起部54が鍔部72に係止される。

以上より、第1構造によれば、複数のハブボルトを締結することによりホイールを固定する構造を有するホイールハブにおいて、ホイール交換時のホイールの脱落及び/又は部品の損傷を防止し、ホイール交換における作業効率を向上することが可能である。

<第2実施形態> 本発明の第2実施形態に係るホイール取付構造(以下、「第2構造」とも称呼される。)は、鍔付き部材として、グリースキャップ70に代えて、グリースキャップ70の蓋部73を除いた円筒状の部材を採用する点において、第1構造と異なっている。

図8に示したように、リング70Aは、円筒状の部材であって、円筒部71A及び鍔部72Aを備えている。この円筒状の部材70Aは、以下、「ホイール脱落防止リング」70A又は単に「リング」70Aとも称呼される。鍔部72Aはリング70Aの円筒部71Aの外周面(以下、「リング外周面」とも称呼される。)71Aaから円筒部71Aの径方向外側に突設して形成されている。リング70Aは、溶融亜鉛メッキ鋼板でできており、プレス加工により成型される。更に、リング70Aは、エポキシ系塗料により塗装される。リング70Aには、円筒部71Aの外周面(以下、「リング外周面」とも称呼される。)71Aaから円筒部71Aの径方向外向きに突設する鍔部72Aが形成されている。リング70Aの直径D4は、円筒内周面23fの内径D2と略等しい(例えば、60mm)。鍔部72Aの高さH2(リング外周面71Aaから鍔部72Aの頂部72Aaまでの径方向に沿った長さ)は、2.5mmである。

図8において、リング70Aは、インロー部23の円筒内周面23fに沿って圧入固定されている。リング70Aが圧入されると、リング70Aのインボード側端部74A(以下、「リング端74A」とも称呼される。)は、インロー部23の当接面23gに当接する。リング端74Aが当接面23gと当接することにより、リング70Aの圧入深さが規制される。リング70Aの圧入深さは、円筒内周面23fの長さL2と等しい5mmとなる。

リング70Aをインロー部23に圧入固定したとき、インロー部端23dと、リング外周面71Aaと、鍔部72Aの斜面72Ab(以下、「第4斜面72Ab」とも称呼される。)と、により画成される溝Gr2が形成される。溝Gr2の幅Wg3は、円環状突起部54の幅Ltと一致するように(略等しくなるように)設定される。

従って、図9に示したように、複数のハブボルト60を全て取り外した状態においてインロー嵌合が外れると、円環状突起部54はインロー部23から脱落して、リング70Aに形成された溝Gr2に嵌合するようになっている。

第4斜面72Abと回転軸線90と平行な線94とのなす角度である第4傾斜角θ4は、例えば、90°に設定される。このように、第2構造は、グリースキャップ70を要しない車両においても、インロー部23にリング70Aを圧入固定することにより、容易にホイール脱落防止機構を実現することができる。

以上より、第2構造によれば、複数のハブボルトを締結することによりホイールを固定する構造を有するホイールハブにおいて、グリースキャップを要しないホイールハブであっても、インロー部に鍔付き部材を挿入する固定することにより、ホイール交換時のホイールの脱落及び/又は部品の損傷を防止し、ホイール交換における作業効率を向上することが可能である。

<変形例> 本発明は上記実施形態に限定されることはなく、以下に述べるように、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。

上記実施形態において、円環状突起部54は突起部内周面54a、第1側面54b及び第2側面54cにより画成され、その断面形状は台形であったが、突起部内周面54aと第1側面54bとの間、及び突起部内周面54aと第2側面54cとの間はそれぞれ所定の半径にて面取りされていてもよい。

グリースキャップ70には、図10に示したように、鍔部(以下、「第1鍔部」とも称呼する。)72が設けられていたが、これに加え、インロー部23の円筒内周面23fへの圧入高さ(深さ)を規制するもう一つの鍔部(以下、「第2鍔部」とも称呼する。)75が突設して形成されていてもよい。第1鍔部72及び第2鍔部75を備えるグリースキャップ70Bは、段付き部を有しないインロー部23Bに対して圧入されると、第2鍔部75がインロー部端23Bdに当接することにより、圧入高さが規制される。この例において、第1鍔部72は、複数のハブボルト60が外されて、円環状突起部54がグリースキャップ70上に滑落した場合、第1鍔部72の斜面72b、キャップ外周面71a及び第2鍔部75の斜面75aにて画成される溝Gr3に円環状突起部54が完全に嵌り込むような位置に形成される。従って、この第2鍔部75を設ける構造においては、第1構造及び第2構造においてインロー部23に形成した当接面23g及び段付き部23hを必要としない。

第2構造における第4傾斜角θ4は90°に設定されていたが、第1構造の第3傾斜角θ3と同じ60°に設定されてもよい。

第1構造における鍔部72はプレス加工により形成されていたが、厚みの大きい円筒部を切削加工することにより形成されてもよいし、円筒部の外周面上に円環状の部材を溶接又はろう付けすることにより形成されてもよい。

上記第1構造及び第2構造においては、ディスクロータ40が用いられていたが、ブレーキの形式及び形状は、特に本発明を限定するものではなく、ディスクロータ40に代えて、ドラムが用いられてもよい。

10…車輪用転がり軸受装置、20…ホイールハブ、21…ハブ軸部、22…フランジ部、22a…固定面、23…インロー部、23b…円筒外周面、23c…第1斜面、23d…インロー部端、23e…第2斜面、23f…円筒内周面、23g…当接面、23h…段付き部、24…インロー嵌合部、40…ディスクロータ、50…ホイール、51…ハブ取付部、51a…ハブ取付面、52…中心孔、53…ボルト孔、54…円環状突起部、54a…突起部内周面、54b…第1側面、54c…第2側面、60…ハブボルト、70…グリースキャップ、71…円筒部、71a…キャップ外周面、72…鍔部、73…蓋部、74…キャップ端部、90…回転軸線。

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