【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えばガスセンサのハウジングなどに用いられるフランジ付き筒状金具の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】例えば、自動車などのエンジンやボイラなどの燃焼機器の燃焼効率を最適状態に制御するため、 エンジンなどから排出される排気ガス中の酸素などの被検出成分を検出するガスセンサが用いられている。 かかるガスセンサは、内部にセンサ素子など内蔵し且つこれらの外側を包囲するフランジ付き筒状金具(ハウジング) を有する。 かかる筒状金具は、フェライト系ステンレス鋼からなり且つ全体がほぼ円筒形を呈し、軸心方向に沿って貫通する中空部および外側に突出する六角形のフランジを一体に有する。 【0003】上記フランジ付き筒状金具については、図6に示すような冷間鍛造方法により製造することが提案されている。 予め、図6(a),(A)に示すように、ステンレス鋼からなり且つ全体が円柱形を呈する金属ブランク120を用意すると共に、これに焼鈍および潤滑処理を施しておく。 先ず、図示しないダイス、複動式パンチ、およびカウンタパンチを用いることにより、図6 (b),(B)に示すように、上記ブランク120の一方の端面121からその軸心方向に沿った深穴124を内設する筒部125と、外周面123から外側に六角形で突出するフランジ(ボルト頭部)126とを同時に形成する。 【0004】次いで、図示しないダイス、パンチ、およびカウンタパンチを用いることにより、図6(c),(C) に示すように、筒部125内において深化した深穴12 7と、他方の端面122に開口する浅穴128とを形成する。 最後に、深穴127と浅穴128との間を、図示しないパンチなどを用いる打ち抜き加工により、図6 (d),(D)に示すように、端面121,122間を貫通する中空部129を形成する。 これにより、図示のようなフランジ付き筒状金具130を得ることができる(特開平8−52530号公報参照)。 【0005】 【発明が解決すべき課題】しかしながら、図6(b), (B)に示したように、深穴124とフランジ126とを同時に形成する際、深穴124の底面における周縁(入隅部)に円周方向に沿った材料引けやクラックkを生じる場合がある。 かかるクラックkなどは、次工程以降における破損の原因となったり、あるいは最終的に前記筒状金具130が形成できても、強度の確保ができない、 などの問題があった。 かかる原因は、深穴124を形成する際、金属素材の塑性流動によりフランジ126を形成するための成形型内に当該素材を充満させるときに生じる。 【0006】即ち、フランジ126を形成するための成形型内のキャビティの出隅部に金属素材が充満しにくく、空間を生じ易い。 また、ダイスにより深穴124を更に深く形成し、フランジ126の端面121寄りの後方側面を越えた際に、上記空間に金属素材が流動すると同時に、かかる素材は筒部125へも流動するため、フランジ126の後方側面に対応する深穴124の内周面の入隅部付近に引けやクラックkが生じるものである。 本発明は、以上に説明した従来の技術における問題点を解決し、冷間鍛造によりクラックや材料引けを生じることなく確実に製造できるフランジ付き筒状金具の製造方法を提供することを課題とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、フランジを突出させる際に金属素材の塑性流動をスムースに成さしめることに着想して達成されたものである。 即ち、本発明のフランジ付き筒状金具の製造方法(請求項1)は、軸心方向に沿って貫通する中空部と外側に突出するフランジとを有するフランジ付き筒状金具を冷間鍛造により成形する製造方法であって、円柱形を呈するフェライト系ステンレス鋼製のブランクに、 その軸心方向に沿った凹部を形成する凹部形成工程と、 上記凹部を軸心方向に沿って深化させつつ上記ブランクの外周面に放射状にフランジを突出させるフランジ形成工程と、を含み、かかるフランジ形成工程は、インナーパンチと、該インナーパンチの外周に同軸心で所定間隔を隔てて位置し且つ上記インナーパンチとは別個に移動するアウターパンチと、該アウターパンチの外周を包囲する円柱孔を有するダイスと、上記インナーパンチと対向して上記ダイスおよび上記アウターパンチと共に上記フランジが突出されるキャビティを形成するカウンターパンチと、により構成されるフランジ形成型を用いて、 上記インナーパンチの加工進行方向をフランジの前方側とし、上記インナーパンチにより上記凹部を軸心方向に沿って、該インナーパンチの先端を上記フランジの後方側面よりも深化させることにより、該フランジの後方に所定長さの筒部を形成すると共に、上記アウターパンチによって上記キャビティ内で形成途中の上記フランジの後方側面に軸心方向の付勢力が付与される、ことを特徴とする。 【0008】これによれば、ブランクの端面に凹部を形成した後、この凹部をインナーパンチのガイド穴とし、 このインナーパンチにより上記凹部が更に深化させられる。 そして、上記インナーパンチの前進により、ダイス、インナーパンチ、およびカウンターパンチにより形成されたキャビティ内に、金属素材の一部が押し出される。 更に、アウターパンチが上記押し出された金属素材による形成途中のフランジの後方側面に付勢力を付与する。 上記金属素材の一部が押し出され始める段階では、 上記キャビティの厚み(高さ)を小さく設定し、その容積を小さくできるため、インナーパンチの前進に伴う金属素材の塑性流動による充填が容易に行われ、該キャビティの出隅部(角部)に空間(隙間)を生じにくくできる。 更にインナーパンチが前進するに伴い、上記キャビティ内への素材の充填が始まり、バネや油圧などによりフランジに付勢力を与えていたアウターパンチが、キャビティ内に塑性流動した金属素材に押されて後退することになる。 しかし、インナーパンチの先端がキャビティ内に形成途中のフランジの後方側面のレベルを越える前に、当該キャビティにおける後方側の出隅部への金属素材の充填が終了する。 しかも、アウターパンチの後退により、 上記フランジの厚みを厚くすることができる。 【0009】この結果、体積の大きなフランジが形成され、且つ筒部が後方押出されると共に、軸心方向においてフランジの後方側面のレベルを越えて、深化した深い凹部が形成されても、上記フランジの後方側面に対応 (隣接)する当該凹部の底面付近にはクラックや引けが生じにくくなる。 従って、比較的脆いフェライト系ステンレス鋼からなるフランジ付き筒状金具を確実且つ高い生産性により製造可能となる。 尚、上記ブランクの素材には、耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼であるS US430,SUS434(JIS G4303)などが適用される。 【0010】また、本発明には、前記フランジ形成工程は、前記カウンターパンチが、インナーカウンタパンチと、その外周に同軸心で位置し且つインナーカウンタパンチとは別個に移動するアウターカウンタパンチと、により構成されると共に、アウターカウンタパンチにより、前記キャビティ内で形成途中の前記フランジの前方側面に軸心方向の付勢力が付与される、フランジ付き筒状金具の製造方法(請求項2)も含まれる。 これによれば、フランジ形成型のキャビティを小さくすることができ、その出隅部に空間(隙間)を生じにくくすることができる。 そして、更にインナーパンチの前進に伴って、上記キャビティ内のへの金属素材の充填が終了した後、バネなどにより形成したフランジに付勢力を与えていたアウターカウンタパンチが前方寄りに移動する。 これにより、フランジの厚みを厚くすることができるので、体積の大きなフランジを形成する場合であっても、上記キャビティ内に金属素材の塑性流動させて充填させた後で、 その厚み(高さ)を厚(高)くすることができる。 従って、 体積の大きなフランジが形成でき且つ後方に筒部が後方押出されると共に、軸心方向においてフランジの後方側面のレベルを越えて、深化した深い凹部が形成されても、その底面付近におけるクラックなどの発生を抑制できる。 仮に、前記キャビティの出隅部に空間が残ったまま凹部を深化させても、材料引けやクラックを生じにくくできる。 これは、アウターパンチの後退により、インナーパンチの先端がフランジの後方側面のレベルを越える際に、上記空間への金属素材の塑性流動が少なくなることによる。 【0011】更に、本発明には、前記フランジ形成工程は、前記フランジの後方側面に当接する先端面が中心寄りから周縁寄りに向かって前方側に傾斜する傾斜面である前記アウターパンチを用いる、フランジ付き筒状金具の製造方法(請求項3)も含まれる。 これによれば、アウターパンチの先端面は、金属素材が塑性流動する方向に近似した傾斜面となる。 このため、インナーパンチの前進に伴うキャビティ内への金属素材の塑性流動による充填が容易に行われ、当該キャビティの出隅部に空間(隙間)を生じ難くすることができる。 【0012】また、本発明には、前記フランジ形成工程は、前記フランジの前方側面に当接する先端面が周縁寄りから中心寄りに向かい上記フランジの前方側に傾斜する傾斜面である前記アウターカウンタパンチを用いる、 フランジ付き筒状金具の製造方法(請求項4)も含まれる。 形成途中における前記フランジの前方側面寄りは、 金属素材の塑性流動が比較的容易であるため、キャビティの前方側の出隅部には空間が生じ難くなる。 しかし、 流動性の低い金属素材を用いた場合、上記出隅部に空間が生じる場合がある。 かかる場合であっても、上記アウターカウンタパンチの先端面は、金属素材が塑性流動する方向に近似した傾斜面であるため、キャビティ内に空間を一層生じにくくすることができる。 【0013】更に、本発明には、前記フランジ形成工程は、前記フランジを放射状に突出させると共に該フランジを軸心方向の視覚において正多角形に成形する、フランジ付き筒状金具の製造方法(請求項5)も含まれる。 これによれば、フランジは、フランジ形成工程において同時に六角形などの正多角形に成形される。 この結果、フランジにはその成形と同時にボルト機能が付与されるため、後述するトリミング工程を省略することが可能となる。 尚、上記正多角形には、六角形の他、八角形、正方形、または十角形などが含まれる。 【0014】また、本発明には、前記フランジ形成工程の後に、前記成形途中の中間部品における前記凹部を軸心方向に沿って更に深化させ且つ径方向に拡径させる凹部仕上げ工程と、前記成形途中の中間部品における前記凹部の底部を押圧し、該中間部品の軸心方向に沿って貫通する中空部を形成する中空部形成工程と、前記フランジを軸心方向の視覚において正多角形に成形するトリミング工程と、を含む、フランジ付き筒状金具の製造方法 (請求項6)も含まれる。 これによれば、深い凹部およびフランジを有する成形途中の中間部品に対し、上記凹部を更に深化させ且つ当該中間部品を軸心方向に伸長させ、両端面の間を貫通する中空部を形成すると共に、更に、フランジを六角形などのボルト頭部の形状に成形できる。 このため、前述したガスセンサなどのハウジングとして活用できるフランジ付き筒状金具を確実に製造することができる。 尚、凹部仕上げ工程、中空部形成工程、およびトリミング工程は、かかる順序で行うに限らず、任意の順序で行っても良い。 また、前記フランジ形成工程において、予めフランジが六角形などの正多角形に成形されている場合には、上記トリミング工程を省略することができる。 【0015】加えて、本発明には、前記各工程の前に、 前記ブランクが予め加熱されている、フランジ付き筒状金具の製造方法(請求項7)も含まれる。 これによれば、 ブランクの素材であるフェライト系ステンレス鋼は室温で比較的脆弱なため、鍛造の初期段階でクラックを生じ易い。 しかし、例えば+50〜60℃に予熱すると、シャルピー衝撃値が急激に向上するため、前記鍛造の前にブランクを加熱することにより、上記クラックを予防することができる。 尚、かかる加熱は、棒状の金属素材を所定の長さで切断したブランクの状態で行っても良いが、特に上記金属素材の状態で加熱すると、切断時に切断端面に生じ易いクラックを防止できるので好ましい。 また、鍛造工程が進むと、加工に伴う変形熱によってブランクや中間部品自体の温度が上昇するため、シャルピー衝撃値が向上する。 このため、各工程において、前記パンチがブランクや中間部品に当接する際に、クラックは生じ難くなる。 【0016】 【発明の実施の形態】以下において、本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。 図1(A),(B)は、自動車用酸素(ガス)センサに用いるハウジング1の外観図およびその断面を含む上記酸素センサ10の概略図である。 ハウジング1は、図1(A),(B)に示すように、太径部4および細径部5を含む基端部3と、これに隣接し且つ平面視でボルト頭部(ナット)と同様の六角形を呈するフランジ6と、かかるフランジ6に隣接し且つ段部7 を挟んで位置する筒部8a,8bと、これに隣接する先端部9と、これらを軸心方向に沿って貫通する中空部2 と、を有する。 かかる中空部2は、傾斜した段部2a, 2bにより先端寄りほど細径となっている。 【0017】酸素センサ10は、図1(B)に示すように、ハウジング1の内側にヒータ14および検出素子1 6を内蔵し、先端部9に孔付き保護キャップ12を被着すると共に、ハウジング1の基端部3に金属ケーシング18の先端を固定している。 酸素センサ10は、ハウジング1を介して図示しない自動車の排気管に配置され、 上記キャップ12で保護された検出素子16の先端が、 排気管内に突出され且つ排気ガスに晒される。 そして、 排気ガス中の被検出成分である酸素を検出し、これに対応してエンジンの燃焼効率を最適状態に制御するために活用される。 【0018】図1(C)は、前記ハウジング1に仕上げ加工する直前のフランジ付き筒状金具20の断面を含む斜視図である。 かかる金具20は、後述するステンレス鋼からなり且つ全体がほぼ円筒形を呈し、基端面21を含む厚肉の基筒部24と、これに隣接し外側に突出する平面視が六角形のフランジ26と、これに隣接する中筒部27および先筒部28とを一体に有する。 基端面21と先端面23との間には、段部25,29を介して先端寄りほど細径となる中空部22が貫通している。 かかるフランジ付き筒状金具20を、後述する円柱形の金属ブランク30から冷間鍛造により形成する工程が本発明の製造方法である。 また、かかる金具20を切削などで仕上げ加工することにより、前記ハウジング1が形成される。 【0019】以下に、本発明のフランジ付き筒状金具2 0の製造方法について説明する。 図2(A)は、本発明に用いるブランク30を示す。 このブランク30は、図示のように、全体が円柱形を呈し円周面32と両端面3 1,33とを有する。 該ブランク30は、例えばJIS G4303:SUS430(Fe−18wt%Cr)、SU S434(Fe−18wt%Cr−1wt%Mo)などの耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼からなる棒鋼材を所定長さに切断したものである。 【0020】予め、ブランク30は、例えば図示しない誘導加熱装置により+50〜60℃に予め加熱された後、直ちに次述する冷間鍛造ステーション40に送られる。 先ず、ブランク30は、図2(B)に示す第1冷間鍛造ステーション40において、その端面31にほぼ円柱形の凹部36を形成される(第1凹部形成工程)。 第1冷間鍛造ステーション40は、図2(B)に示すように、ダイス41、パンチ45、およびカウンタパンチ48を含む。 ダイス41は、太い円柱孔42、テーパ部43、およびやや細い円柱孔44を有し、円柱孔42内にはほぼ同径のパンチ45が進入可能であり、円柱孔44内にはほぼ同径のカウンタパンチ48が反対側から予め挿入されている。 尚、円柱孔44の内径は、金属ブランク30 の外径とほぼ一致している。 また、パンチ45などは工具鋼などから形成される。 金属ブランク30は、予め表面を潤滑処理された後、ダイス41の円柱孔42,44 内に挿入され、カウンタパンチ48の先端面49上に載置される。 かかる状態で、図2(B)中の矢印で示すように、パンチ45をダイス41の円柱孔42内に進入(前進)させる。 【0021】その結果、図2(C)に示すように、パンチ45の先端面45aがブランク30の端面31を押圧し且つかかる先端面45a中央のほぼ円柱形の凸部46が端面31から内部に食い込む。 この結果、ブランク30 の端面31の中央には、凹部36が形成される。 この凹部36は、次工程以降で用いるパンチのガイド穴となる。 同時に、ブランク30の端面31の切断痕がほぼ平らに均される。 また、ブランク30の端面31寄りの部分は、据え込まれて円柱孔42に倣った太径部35となる。 一方、ブランク30の端面33は、カウンタパンチ48の先端面49に当接し、その切断痕がほぼ平らに均される。 従って、図2(C)に示すように、端面31の中央にほぼ円柱状の凹部36を形成した成形途中のブランク34が形成される。 その後、図2(C)において、パンチ45を上昇(後退)させ且つカウンタパンチ48を上昇 (前進)させることにより、ブランク34をダイス41から外部に取り出す。 【0022】次に、ブランク34を、図2(D)に示す第2冷間鍛造ステーション50によって、端面31側の凹部36を更に深化させる(第2凹部形成工程)。 第2冷間鍛造ステーション50も、図2(D)に示すように、ダイス51、パンチ55、およびカウンタパンチ58を含む。 ダイス51は、太い円柱孔52、テーパ部53、およびやや細い円柱孔54を有し、円柱孔52内にはこれによりも細径のパンチ55が進入可能であり、且つ円柱孔54内にはこれとほぼ同径のカウンタパンチ58が反対側から予め挿入されている。 尚、ダイス51の太い円柱孔52の内径は、成形途中の金属ブランク34の太径部35とほぼ一致し、細い円柱孔54の内径は、ブランク34の端面33寄り部分の外径とほぼ一致している。 また、パンチ55の先端面56はほぼ円柱形状であり、 且つ前記パンチ45の凸部46の外径とほぼ一致している。 【0023】図2(D)に示すように、成形途中のブランク34をダイス51の円柱孔52,54内に挿入し、その端面33をカウンタパンチ58の先端面59の上に載置する。 この際、ブランク34の太径部35は、ダイス51の円柱孔52内に隙間なく挿入される。 この状態で、図2(D)中の矢印で示すように、パンチ55をダイス51の円柱孔52内に進入(前進)させる。 その結果、 図2(D)に示すように、端面31にパンチ55とその先端面56とに倣ったやや深い凹部39を有する成形途中のブランク38が成形される。 尚、ブランク38の太径部35は、軸心方向に沿って端面31側に後方押出されてやや伸長する。 その後、図2(D)において、パンチ5 5を上昇(後退)させ且つカウンタパンチ58を上昇させることにより、ブランク38をダイス51から外部に取り出す。 尚、当初のブランク30を上記ステーション5 0に直接適用して上記のようなブランク38を直に成形することも可能である(単一の凹孔形成工程)。 【0024】次いで、本発明の製造方法におけるフランジ形成工程を図3にて説明する。 フランジ形成工程には、図3(A)に示す第3冷間鍛造ステーション60を用いる。 かかる鍛造ステーション60は、ダイス61、インナーパンチ63、当該パンチ63の外側に同軸心で所定間隔を隔てて位置し且つ別個に移動するアウターパンチ65、インナーカウンタパンチ66、および当該パンチ66の外側に同軸心で位置し且つダイス61内で移動するアウターカウンタパンチ69を備えている。 これらは、本発明のフランジ形成型を構成し、上記パンチ6 6,69がカウンタパンチを構成する。 尚、本工程では、インナーパンチ63の加工進行方向、即ち図3(A) で下向きの方向きを、本工程で形成するフランジの前方側とする。 図3(A)に示すように、ダイス61は、上方の長く細径の円柱孔62a、下方の太径で短い円柱孔6 2b、および段部62cをそれぞれ同軸心で内設する。 【0025】ダイス61の円柱孔62aおよび円柱孔6 2b内には、全体が円筒形で且つリング状のアウターカウンタパンチ69が同軸心にて挿入されている。 当該パンチ69は、先端(上端)に周縁寄りから中心寄りに向かって低くなる、即ち後述するフランジの前方側に傾斜する先端面69aを、後端(下端)側に太径の後端部69b を有し、図示しないバネにより下方側から支持されている。 かかるパンチ69の先端面69aは、円柱孔62a 内を昇降し、その後端部69bは円柱孔62b内を昇降する。 また、かかるアウターカウンタパンチ69の内側には、その後端部69b側からインナーカウンタパンチ66が貫通可能にして進入する。 【0026】図3(A)に示すように、インナーパンチ6 3は、ダイス61の円柱孔62a内の中央付近に図示しない昇降手段により進入可能とされ、且つその外径は細径の円柱孔62aよりも細径であって、前記パンチ55 の外径とほぼ一致している。 当該インナーパンチ63の外側には、一定の間隔を置いて、同軸心で位置し且つインナーパンチ63と別個に昇降(移動)するアウターパンチ65が、図示しないバネを介して上方側から支持されつつ配置される。 該アウターパンチ65は、先端(下端) に中心寄りから周縁寄りに向かって前方側に傾斜した先端面(先端)65aを有し、後端(上端)側に太径の後端部65bを有すると共に、先端面65a寄りの部分がダイス61の円柱孔62aの内周面に沿って昇降する。 【0027】予め、インナパンチ63およびアウターパンチ65は、ダイス61の上方に待機している。 ダイス61の円柱孔62a内に、インナーカウンタパンチ66 の先端面68よりも後方側にアウターカウンタパンチ6 9の先端面69aが位置する状態で、凹部39側を後方側に向けた前記ブランク38を、ダイス61の円柱孔6 2aに挿入し且つカウンタパンチ66の先端面68の上に載置する。 尚、アウターパンチ65の内径は、成形途中のブランク38の太径部35の外径とほぼ同径に設定されている。 そして、図3(A)に示すように、ブランク38の太径部35とダイス61の円柱孔62aとの間に、アウターパンチ65を下降(前進)させ、且つダイス61の円柱孔62a内に進入させる。 【0028】次に、図3(A)に示すように、ブランク3 8の軸心方向に沿って、インナーパンチ63の先端面 (先端)64よりもアウターパンチ65を下降(前進)させた状態で、インナーパンチ63およびアウターパンチ6 5をほぼ平行して前進させる。 そして、アウターパンチ65の先端面65aをブランク38の中間付近に位置させ且つアウターカウンタパンチ69の先端面69aに接近して対向させる。 更に、図3(B)中央の矢印で示すように、インナーパンチ63の先端面64をブランク38 の凹部39内に押し込むと、インナーパンチ63により端面33側に押圧されたブランク38の金属素材は、アウターパンチ65の先端面65aとアウターカウンタパンチ69の先端面69aとダイス61とに囲まれたリング形状のキャビティcv内に、断面ほぼ半円形のフランジ76aとして放射状に張り出す。 【0029】引き続き、図3(C)中央の矢印のように、 インナーパンチ63を前進(下降)させると、アウターカウンタパンチ69は、図示しないバネにより、フランジ76の前方側面に付勢力を付与した状態で、当該フランジ76の前方側に後退(移動)する。 この間において、アウターパンチ65は、同様な図示しないバネにより、フランジ76の後方側面に付勢力を付与した状態で、フランジ76の後方側に後退して停止する。 一方、インナーパンチ63は、その先端面64がフランジ76の後方側面(アウターパンチ65の先端面65a)のレベルを越えた前方側の位置で停止する。 【0030】その際に、図3(C)に示すように、インナーパンチ63に押された上記素材は、キャビティcvの出隅部に空間(隙間)を残すことなく、インナーパンチ6 3を更に前進させることができる。 これにより、深化した凹部72の底面付近、即ちフランジ76の後方側面に対応する位置(レベル)付近において、周方向に沿ったクラックや材料引けが発生しなくなる。 従って、図3(C) に示すように、深い凹部72を内設する筒部74が後方押出により形成されると共に、円盤状のフランジ76を形成した中間部品70が形成される。 その後、図3(C) において、インナーパンチ63およびアウターパンチ6 5を上昇(後退)させ且つインナーカウンタパンチ66を上昇(前進)させることにより、中間部品70をダイス6 1から外部に取り出す。 【0031】図4(A)は、中間部品70に施す凹部仕上げ工程と、これに用いる第4冷間鍛造ステーション80 とを示す。 かかるステーション80は、ダイス81、インナーパンチ85、アウターガイド88、およびカウンタパンチ89を備えている。 ダイス81には、図4(A) に示すように、上方から下方に円柱形の太径部82、中径部83、および細径部84が同軸心で貫通している。 インナーパンチ85は、テーパ部85aを挟んだ太径の基端部86と細径の先端部87とからなり、先端部87 はダイス81の太径部82および中径部83内に進入する。 また、円筒形のアウターガイド88は、インナーパンチ85の外側に間隔sを介して同軸心で配置され且つインナーパンチ85と別個に昇降する。 更に、円柱形のカウンタパンチ89は、同径であるダイス81の細径部84内に同軸心で昇降する。 【0032】予め、インナーパンチ85とアウターガイド88とをダイス81の上方に位置させ、前記中間部品70をダイス81の太径部82および中径部83内に挿入する。 この際、中間部品70の前記端面33は、ダイス81の中径部83と細径部84間の段部83a上に接触する。 また、カウンタパンチ89は、ダイス81の細径部84内に位置し且つその先端面は中間部品70の端面33に対向する。 かかる状態で、図4(A)に示すように、アウターガイド88を下降(前進)させ、その先端面を中間部品70のフランジ76の後方側面に当接させる。 次に、インナーパンチ85を下降(前進)させ、その先端部87を中間部品70の深い凹部72内に押し込む。 尚、インナーパンチ85の基端部86の外径は、中間部品70の凹部72の内径とほぼ同一である。 【0033】更に、インナーパンチ85の先端部87 は、ダイス81内の段部83aの直前付近まで下降(前進)し且つ中間部品70中に深く進入する。 同時に、インナーパンチ85により押圧された中間部品70の金属素材は、ダイス81の細径部84内に塑性流動し且つカウンタパンチ89によりその流動を阻止される。 その結果、図4(A)に示すように、傾斜した段部25を挟んだ太径部93と細径部94とからなる深い凹部92を内側に有すると共に、基筒部91、フランジ96、先筒部9 7、段部98、および円盤状の先端部99を含む中間部品90が形成される。 尚、中間部品90における凹部9 2の底面には、傾斜した段部29が形成される。 この中間部品90は、図4(A)において、インナーパンチ85 およびアウターガイド88を上昇(後退)させ且つカウンタパンチ89を上昇(前進)させることにより、ダイス8 1から外部に取り出される。 【0034】図4(B)は、中間部品90に施す中空部形成工程と、これに用いる第5冷間鍛造ステーション10 0とを示す。 かかるステーション100は、ダイス10 1、パンチ105、およびカウンタパンチ109を備えている。 上記ダイス101は、図4(B)に示すように、 段部103を挟んで上方の太径部102と下方の細径部104とを有する。 パンチ105は、長い基端部106 とその先端側にテーパ部108を介して垂下するやや細径の先端部107とからなり、ダイス101の太径部1 02および細径部104内に進入可能とされている。 一方、上記カウンタパンチ109は、ダイス101の細径部104内に隙間sを介して同軸心で且つ昇降可能に配置される。 尚、ダイス101の太径部102の内径は、 前記中間部品90の先筒部97の外径とほぼ一致し、ダイス101の細径部104の内径は、中間部品90の先端部99の外径とほぼ同じとされている。 【0035】予め、パンチ105をダイス101の上方に位置させ、中間部品90の先筒部97と先端部99とを、ダイス101の太径部102と細径部104内に挿入する。 この状態で、図4(B)中の矢印で示すように、 パンチ105を下降(前進)させ、その先端部107を中間部品90の先端部99に当接させ且つこれを下向きに押圧する。 同時に、パンチ105の基端部106は、中間部品90の凹部92内に進入する。 その結果、図4 (B)に示すように、パンチ105の先端部107は、中間部品90の先端部99を貫通して、カウンタパンチ1 09と当接する。 【0036】これによって、中間部品90の先端部99 は、細径部104とカウンタパンチ109とに挟まれた隙間s内を下向きに伸長され、薄肉で円筒形の先筒部2 8となる。 また、上下の段部25,29を含めて端面2 1,23間を貫通する中空部22が形成される。 更に、 パンチ105とダイス101との間に挟まれた前記先筒部97は、中筒部27となる。 この結果、図4(B)に示すように、内側に中空部22を有し、且つ基筒部24、 フランジ96、中筒部27、および先筒部28からなる筒状部品20′が形成される。 かかる筒状部品20′ は、図4(B)において、パンチ105を上昇(後退)させ且つカウンタパンチ109を上昇させることにより、ダイス101から外部に取り出される。 【0037】図4(C)は、筒状部品20′に施すトリミング工程と、これに用いるトリミングステーション11 0とを示す。 かかるステーション110は、ダイス11 1、スライダ115、およびカッタ117を含んでいる。 図4(C)に示すように、ダイス111は、筒状部品20′の中筒部27や先筒部28を収容する太径部11 2、細径部114、および段部113を内設し、太径部112の上方の開口部の周辺には緩い傾斜面111aを有している。 スライダ115は図示しない昇降手段に昇降可能に支持され、その底面の開口部116には、カッタ117が挿入され且つ固定される。 カッタ117は、 周辺から中心寄りに傾斜し且つ先端に刃先hを有する先端面118と、平面視で正六角形を呈し且つ先端の刃先h寄りほど僅かに狭くなる中空部119と、を有する。 【0038】予め、スライダ115およびカッタ117 を上昇させ、ダイス111の太径部112と細径部11 4とに筒状部品20′の中筒部27と先筒部28とを収容する。 この際、筒状部品20′のフランジ96は、ダイス111の傾斜面111aの上方に位置している。 かかる状態で、図4(C)に示すように、スライダ115を下降(前進)させて、カッタ117の刃先hを含むその先端面118を上記フランジ96の外側部分に垂直に沿って押し込む。 その結果、図4(C)に示すように、フランジ96の外側部分を切除または押し潰し且つカッタ11 7の中空部119内に収容して、平面視で六角形(正多角形)を呈するフランジ26となる。 これにより、前記図1(C)にも示したフランジ付き筒状金具20を得ることができる。 【0039】以上のようなフランジ付き筒状金具20の製造方法によれば、引けやクラックを生じず、且つ高い生産性により確実に当該金具20を製造することができる。 尚、前記中間部品70に対し、図4(A)に示した凹部仕上げ工程、図4(B)に示した中空部形成工程、および図4(C)に示したトリミング工程を、前述した順序以外のプロセスにより施すこともできる。 例えば、先にトリミング工程を行った後に凹部仕上げ工程と中空部形成工程とを行うことも可能である。 また、以上の各工程の間は、ブランク30,34,38や中間部品70,90 や筒状部品20′を、図示しないマニプレータのような搬送手段で搬送する。 更に、以上の各工程の間において、ブランク38や中間部品70などに対し、焼鈍および潤滑処理は施されず、当初のブランク30の状態で連続して冷間鍛造の各工程が施される。 従って、上記金具20を効率良く製造可能となる。 【0040】図5(A),(B)は、前記フランジ形成工程と異なる形態のフランジ形成工程およびこれに用いる第3冷間鍛造ステーション60′を示す。 このステーション60′において、ダイス61は、図5(A),(B)に示すように、平面視が正六角形の細径部62dと円柱形の太径部62bとを同軸心で貫通させている。 また、アウターパンチ65′は、その外形65cが六角柱を呈し且つ内側に円柱の貫通孔65dを有している。 従って、第3冷間鍛造ステーション60′を用いて、前記ブランク38に対し前記同様のフランジ形成工程を施すと、図5 (B)に示すように、平面視が正六角形(正多角形)のフランジ26を有する中間部品77が形成される。 この中間部品77によれば、前記トリミング工程を省略することが可能となり、前記金具20の生産性を一層高めることが可能となる。 尚、図5(C)に示すように、ダイス61 内に正八角形の細径部62eを設け且つアウターパンチ65′の外形65cを八角柱とするとにて、平面視で正八角形(正多角形)のフランジ79を有する中間部品78 を形成することも可能である。 【0041】本発明は、以上において説明した各形態に限定されるものではない。 前記フランジの形状は、平面視で正多角形を呈するものであれば、正方形、正五角形、正七角形、正九角形、正十角形などにすることも可能である。 更に、前記各工程は、連続する複数の工程または全ての工程を施すことが可能な複動構造のパンチ、 カウンタパンチ、およびダイスなどを含む冷間鍛造ステーションなどにより、少ない工程数または1つの連続した成形工程により行ったが、専用の冷間鍛造装置やトリミング装置を用いることも可能である。 尚、本発明によって得られるフランジ付き筒状金具の用途は、前記酸素センサ10などのガスセンサに限らず、例えばエンジン用スパークプラグのハウジングや各種の電子機器におけるホルダなどにも適用可能である。 【0042】 【発明の効果】本発明によるフランジ付き筒状金具の製造方法(請求項1)によれば、成形途中のブランクや中間部品の外周面から放射状にフランジが形成され、平行して形成される凹部を深化した深い凹部の底面付近で且つフランジの後方側面に対応する位に置はクラックや材料引けが生じないため、フランジ付き筒状金具を確実且つ高い生産性により製造可能となる。 また、請求項2〜 4,7の製造方法によれば、前記フランジ付き筒状金具を一層確実に製造することができる。 更に、請求項5のフランジ付き筒状金具の製造方法によれば、フランジは、フランジ形成工程において同時に六角形などの正多角形に成形されるため、製造に要する工程数を少なくすることができる。 加えて、請求項6の製造方法によれば、ガスセンサなどのハウジングとなるフランジ付き筒状金具を確実に製造することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】(A)はハウジングの外観図、(B)はかかるハウジングを用いたガスセンサを示す概略図、(C)は上記ハウジングに仕上げ加工する直前のもので且つ本発明により得られるフランジ付き筒状金具を示す断面を含む斜視図。 【図2】(A)は本発明に用いるブランクの斜視図、(B) 〜(D)は本発明における凹部形成工程を示す概略図。 【図3】(A)〜(C)は本発明におけるフランジ形成工程を示す概略図。 【図4】(A)は本発明の凹部仕上げ工程を示す概略図、 (B)は本発明の中空部形成工程を示す概略図、(C)は本発明のトリミング工程を示す概略図。 【図5】(A)は異なる形態のフランジ形成工程を示す概略図、(B)は(A)中のB−B線の矢視に沿った断面図、 (C)は更に異なる形態の上記工程における(B)と同様な断面図。 【図6】(a)〜(d)と(A)〜(D)は従来の製造方法を示す平面図と断面図。 【符号の説明】 20………………………フランジ付き筒状金具22………………………中空部26,76………………フランジ30,34,38………ブランク31,33………………端面36,39,72,92…凹部62a,62b…………円柱孔63………………………インナーパンチ64,65a,69a……先端面(先端) 65………………………アウターパンチ69………………………アウターカウンタパンチ70,90………………中間部品cv………………………キャビティ フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) B21J 13/02 B21J 13/02 B Fターム(参考) 4E087 BA02 CA14 CA24 CA28 CA32 CB03 DB15 DB22 EC13 EC19 HB03 |