塩基変異判別用プローブセットおよび塩基変異の判別方法

申请号 JP2011510354 申请日 2010-04-22 公开(公告)号 JPWO2010123058A1 公开(公告)日 2012-10-25
申请人 田辺三菱製薬株式会社; 发明人 安宏 岸; 安宏 岸; 直洋 神谷; 直洋 神谷;
摘要 標的核酸上の変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に目的の塩基を含む塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列を有し、5'末端に蛍光物質が、3'末端に消光物質が付加され、さらにプローブの融解 温度 がカウンタープローブの融解温度よりも3℃以上高くなるような修飾が導入されたオリゴヌクレオチドからなる検出用プローブと、変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に前記目的の塩基とは異なる塩基を含む塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるカウンタープローブと、を含むプローブセットを用いて蛍光リアルタイムPCRを行い、標的核酸の変異部位における塩基の種類を特定する。
权利要求
  • 蛍光リアルタイムPCRによって標的核酸の変異部位における塩基の種類を判別するために使用されるプローブセットであって、
    標的核酸上の変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に目的の塩基を含む塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列を有し、5'末端に蛍光物質が、3'末端に消光物質が付加され、さらにプローブの融解温度がカウンタープローブの融解温度よりも3℃以上高くなるような修飾が導入されたオリゴヌクレオチドからなる検出用プローブと、
    変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に前記目的の塩基とは異なる塩基を含む塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるカウンタープローブと、を含むプローブセット。
  • 前記修飾がロックド核酸による修飾である、請求項1に記載のプローブセット。
  • 標的核酸がウイルス由来である、請求項1または2に記載のプローブセット。
  • ウイルスがC型肝炎ウイルスである、請求項3に記載のプローブセット。
  • C型肝炎ウイルスが1b型である、請求項4に記載のプローブセット。
  • 変異がウイルスの薬剤耐性に関与する変異である、請求項5に記載のプローブセット。
  • 薬剤がプロテアーゼ阻害剤である、請求項6に記載のプローブセット。
  • 薬剤がTelaprevir(テラプレビル)である、請求項6に記載のプローブセット。
  • プロテアーゼがC型肝炎ウイルスのNS3プロテアーゼである、請求項7または8に記載のプローブセット。
  • 前記変異が野生型NS3プロテアーゼの以下のいずれかのアミノ酸を置換する変異である、請求項9に記載のプローブセット。
    (i)156位のAla
    (ii)155位のArg
    (iii)156位のAlaと158位のVal
    (iv)54位のThr
    (v)132位のValまたはIle
  • 請求項1〜10のいずれか一項に記載のプローブセットを用いて蛍光リアルタイムPCRを行うことにより、標的核酸の変異部位における塩基の種類を判別する方法。
  • 請求項7〜10のいずれか一項に記載のプローブセットを用いて蛍光リアルタイムPCRを行うことにより、C型肝炎ウイルス1b型のプロテアーゼ阻害剤耐性に関与する変異部位における塩基の種類を特定し、該塩基の種類に基づいて該ウイルスがプロテアーゼ阻害剤耐性ウイルスか否かを決定することにより、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測する方法。
  • 請求項12に記載の方法によってC型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測し、プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されないC型肝炎患者にプロテアーゼ阻害剤を投与し、プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されたC型肝炎患者にはプロテアーゼ阻害剤を投与しないまたは投与を中止する、C型肝炎の治療方法。
  • 請求項7〜10のいずれか一項に記載のプローブセットを含む、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測するための診断キット。
  • (i)プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されない場合にはプロテアーゼ阻害剤を投与してもよい、(ii)プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出された場合にはプロテアーゼ阻害剤の投与を中止するまたは行わないという治療指針が記載されたインストラクションを含む、請求項14に記載の診断キット。
  • 請求項7〜10のいずれか一項に記載のプローブセットの、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測するための使用。
  • 請求項7〜10のいずれか一項に記載のプローブセットの、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測し、プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されないC型肝炎患者にプロテアーゼ阻害剤を投与し、プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されたC型肝炎患者にはプロテアーゼ阻害剤を投与しないまたは投与を中止するという方針に基づいてC型肝炎を治療するための使用。
  • C型肝炎ウイルス1b型において、NS3プロテアーゼの下記a. 〜d. のいずれかの変異を蛍光リアルタイムPCRにより検出する方法。
    a. 156位のAlaがPheへ置換される変異 b. 156位のAlaがTyrへ置換される変異 c. 158位のValがIleへ置換される変異 d. 132位のVal又はIleがLeuへ置換される変異
  • 说明书全文

    本発明は、塩基変異部位における塩基の種類を判別するために使用されるプローブセットおよび塩基変異の判別方法に関する。 本発明はまた、ウイルスの薬剤耐性などに関与する変異を判別するためのプローブセットおよび変異の判別方法に関する。

    塩基変異(塩基多型を含む)は生物の表現型に多大な影響を与える因子であり、変異の種類を調べることでその表現型を予測したり、薬剤の効果を予測したりすることが頻繁に行われている。 変異塩基の種類を判別する方法としては、直接シークエンス法、インベーダー法、多型特異的プローブを固定化したDNAチップを用いる方法、アレル特異的PCR法などが知られているが、判別にかかる手間や検出感度の点で十分ではなく、より簡便に高感度で変異塩基の種類を判別できる方法の開発が望まれている。
    また、非特許文献1にはロックド核酸(LNA)を用いた塩基のミスマッチの判別方法が開示されているが、これは標的配列にハイブリダイズさせて検出するものであった。

    C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus;以下、HCVとも呼ぶ)は、ヒト肝臓疾患の原因となる感染因子であり、日本における非A非B肝炎の大部分がHCVによることが明らかになっている。 HCVに感染した慢性肝炎患者で病変が進行して肝硬変又は肝細胞癌に至ることも明らかになっており、輸血による感染も問題となっている。
    HCVの治療薬としてはインターフェロンとリバビリンなどが使用されているが、近年ではプロテアーゼ阻害剤の開発も進められている。 しかしながら、ウイルスの種類によってはプロテアーゼ阻害剤が効かない変異型ウイルスの存在も報告されてきており、治療を有効に進めるためには変異型をあらかじめ検出し、その結果に基づいて投薬方針を決定することが重要である。
    しかしながら、従来の検査方法では低コピー数のウイルスを検出することは困難で、より正確に高感度で検出できる方法が求められている。
    HCVのプロテアーゼ阻害剤耐性変異を検出する方法としてTaqMan Mismatch Amplification Mutation Assay法が報告されている(非特許文献2)が、この方法はプライマーにミスマッチを入れて目的配列変異の場合のみに増幅シグナルが検出される方法であり、陰性の場合には該部位の変異の同定には別のアッセイが必要となるなどの点で十分ではなかった。

    Nucleic Acid Research, 2006, Vol. 34, No. 8, e60 Journal of Virological Methods, 2008, Vol. 153, p156-162

    本発明は、塩基変異をより簡便に感度よく判別できる方法を提供すること及びそのための試薬を提供することを課題とする。 本発明はまた、ウイルスゲノムにおける薬剤耐性などに関与する変異を判別するための方法及びそれに用いる試薬を提供すること、より具体的には、個体のプロテアーゼ阻害剤に対する応答予測において有用な、HCV-1b型ウイルスの NS3プロテアーゼ遺伝子における塩基変異を決定するための方法、および、それに用いる試薬を提供することを課題としている。

    本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。 その結果、変異部位を含む塩基配列であって、該変異部位に目的の塩基を含む塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列を有し、5'末端に蛍光物質が、3'末端に消光物質が付加され、さらにプローブの融解温度がカウンタープローブの融解温度よりも3℃以上高くなるような修飾が導入されたオリゴヌクレオチドからなる検出用プローブと、変異部位を含む塩基配列であって、該変異部位に前記目的の塩基とは異なる塩基を含む塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるカウンタープローブとを含むプローブセットを用いてリアルタイムPCRを行うことで、簡便かつ高感度に目的変異を判別できることを見出した。 さらに、該プローブセットを変異型ウイルスの判別用に設計することで、薬剤耐性変異などの変異を有するウイルスを同定することができ、それにより、抗ウイルス薬の投与方針の決定などが可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。

    すなわち、本発明は以下を提供する。
    (1)蛍光リアルタイムPCRによって標的核酸の変異部位における塩基の種類を判別するために使用されるプローブセットであって、
    標的核酸上の変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に目的の塩基を含む塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列を有し、5'末端に蛍光物質が、3'末端に消光物質が付加され、さらにプローブの融解温度がカウンタープローブの融解温度よりも3℃以上高くなるような修飾が導入されたオリゴヌクレオチドからなる検出用プローブと、
    変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に前記目的の塩基とは異なる塩基を含む塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるカウンタープローブと、を含むプローブセット。
    (2)前記修飾がロックド核酸による修飾である、(1)のプローブセット。
    (3)標的核酸がウイルス由来である、(1)または(2)のプローブセット。
    (4)ウイルスがC型肝炎ウイルスである、(3)のプローブセット。
    (5)C型肝炎ウイルスが1b型である、(4)のプローブセット。
    (6)変異がウイルスの薬剤耐性に関与する変異である、(5)のプローブセット。
    (7)薬剤がプロテアーゼ阻害剤である、(6)のプローブセット。
    (8)薬剤がTelaprevir(テラプレビル)である、(6)のプローブセット。
    (9)プロテアーゼがC型肝炎ウイルスのNS3プロテアーゼである、(7)または(8)のプローブセット。
    (10)前記変異が野生型NS3プロテアーゼの以下のいずれかのアミノ酸を置換する変異である、(9)のプローブセット。
    (i)156位のAla
    (ii)155位のArg
    (iii)156位のAlaと158位のVal
    (iv)54位のThr
    (v)132位のValまたはIle
    (11)(1)〜(10)のいずれかのプローブセットを用いて蛍光リアルタイムPCRを行うことにより、標的核酸の変異部位における塩基の種類を判別する方法。
    (12)(7)〜(10)のいずれかのプローブセットを用いて蛍光リアルタイムPCRを行うことにより、C型肝炎ウイルス1b型のプロテアーゼ阻害剤耐性に関与する変異部位における塩基の種類を特定し、該塩基の種類に基づいて該ウイルスがプロテアーゼ阻害剤耐性ウイルスか否かを決定することにより、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測する方法。
    (13)(12)の方法によってC型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測し、プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されないC型肝炎患者にプロテアーゼ阻害剤を投与し、プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されたC型肝炎患者にはプロテアーゼ阻害剤を投与しないまたは投与を中止する、C型肝炎の治療方法。
    (14)(7)〜(10)のいずれかのプローブセットを含む、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測するための診断キット。
    (15)(i)プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されない場合にはプロテアーゼ阻害剤を投与してもよい、(ii)プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出された場合にはプロテアーゼ阻害剤の投与を中止するまたは行わないという治療指針が記載されたインストラクションを含む、(14)に記載の診断キット。
    (16)(7)〜(10)のいずれかのプローブセットの、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測するための使用。
    (17)(7)〜(10)のいずれかのプローブセットの、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測し、プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されないC型肝炎患者にプロテアーゼ阻害剤を投与し、プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されたC型肝炎患者にはプロテアーゼ阻害剤を投与しないまたは投与を中止するという方針に基づいてC型肝炎を治療するための使用。
    (18)C型肝炎ウイルス1b型において、NS3プロテアーゼの下記a. 〜d. のいずれかの変異を蛍光リアルタイムPCRにより検出する方法。
    a. 156位のAlaがPheへ置換される変異 b. 156位のAlaがTyrへ置換される変異 c. 158位のValがIleへ置換される変異 d. 132位のVal又はIleがLeuへ置換される変異

    本発明のプローブセットを用いてリアルタイムPCRを行うことで、簡便かつ高感度に目的変異を特異的に判別できる。 本発明のプローブセットを用いてSNP解析を行うことにより、個体の疾患への罹患性や薬剤の効果や副作用などを簡便に調べることができる。 また、本発明プローブセットを用いてウイルスの変異型の判別を行うことにより、薬剤耐性ウイルスや病原性ウイルスの存在を簡便に調べることができる。

    本発明のプローブセットを用いたNS3プロテアーゼA156V変異の検出結果を示す図(中間調画像)。 (A)鋳型にA156V変異型NS3プロテアーゼcDNAを用いた場合の結果を示す。 鋳型量は左からそれぞれ、10

    6 、10

    5 、10

    4 、10

    3 、10

    2コピーである。 (B)鋳型にA156V変異型NS3プロテアーゼcDNAと過剰量(10

    5コピー)の野生型NS3プロテアーゼcDNAを用いた場合の結果を示す。 A156V変異型NS3プロテアーゼcDNAの鋳型量は左からそれぞれ、10

    6 、10

    5 、10

    4 、10

    3コピーである。

    本発明のプローブセットを用いたNS3プロテアーゼ各変異型の検出結果を示す図(中間調画像)。 (A)A156T変異型、(B)A156F変異型、(C) A156V変異型。 鋳型量は左からそれぞれ、10

    6 、10

    5 、10

    4 、10

    3 、10

    2 、10

    1コピーである。

    本発明のプローブセットは、蛍光リアルタイムPCRによって塩基変異部位における塩基の種類を特定するために使用されるヌクレオチドプローブセットであって、
    変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に目的の塩基を含む塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列を有し、5'末端に蛍光物質が、3'末端に消光物質が付加され、さらにプローブの融解温度を高める修飾が導入されたオリゴヌクレオチドからなる検出用プローブと、
    変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に前記目的の塩基とは異なる塩基を含む塩基配列または該塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドからなるカウンタープローブと、を含むセットである。
    ここで、変異は塩基置換が好ましい。

    <検出用プローブ>
    本発明において、蛍光リアルタイムPCRとは、5'末端を蛍光物質で、3'末端を消光物質で標識したオリゴヌクレオチドプローブを標的とする鋳型核酸配列にハイブリダイズさせ、熱安定性DNAポリメラーゼの作用によりプライマーから相補鎖が伸長する際に、該プローブが分解されて蛍光を発し、その蛍光強度に基づいて目的配列を検出、定量する方法である(米国特許第6,214,979号、同5,804,375号、同5,487,972号及び同第5,210,015号など)。 すなわち、上記プローブは、アニーリングステップで鋳型DNAに特異的にハイブリダイズするが、プローブ上に消光物質が存在するため、通常は励起光を照射しても蛍光の発生は抑制されている(FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)現象)が、その後の伸長反応ステップで、DNA ポリメラーゼのもつ5'→3'エキソヌクレアーゼ活性により、鋳型にハイブリダイズしたプローブが分解されると、蛍光色素がプローブから遊離し、消光物質による抑制が解除されて蛍光を発するようになる。 このようなプローブとして、例えば、TaqMan (登録商標)プローブが使用されている。

    本発明のプローブセットに含まれる検出用プローブにおいて、5'および3'末端の標識は、フルオレセインファミリーの色素のような負の電荷を有する蛍光色素、又はローダミンファミリーの色素のような中性の電荷を有する蛍光色素、又はシアニンファミリーの色素のような正の電荷を有する蛍光色素を用いて行うことができる。 フルオレセインファミリーの色素には、例えば、FAM、HEX、TET、JOE、NAN、及びZOEが含まれる。 ローダミンファミリーの色素には、テキサスレッド(Texas Red)、ROX、R110、R6G、及びTAMRAが含まれる。 FAM、HEX、TET、JOE、NAN、ZOE、ROX、R110、R6G、及びTAMRAは、パーキンエルマー(Perkin-Elmer)(Foster City, Calif.)より市販されており、テキサスレッドは、モレキュラープローブ社(Molecular Probes, Inc.)(Eugene, OR)より市販されている。 シアニンファミリーの色素には、Cy2, Cy3, Cy5、及びCy7が含まれ、これらは、アマシャム(Amersham)(Amersham Place, LittleChalfont, Buckinghamshire, England)より市販されている。 また、Iwoa、DABCYL、及び、EDANSなども使用できる。
    これらの物質の中から、FRETを起こしうる蛍光物質と消光物質の組み合わせを適宜選択して用いることができる。 例えば、FAMは、488nmの波長を有する光によって最も効率的に励起され、500〜650nmのスペクトル、及び、525nmの放射極大を有する光を放射する。 FAMは、例えば、励起極大514nmを有する消光剤としてのTAMRAと共に使用するための適当なドナー標識である。
    また、FAMとIowaの組み合わせも使用できる。
    また、蛍光色素から吸収されたエネルギーを放散させる例示的な非蛍光性消光剤には、バイオサーチ・テクノロジーズ社(Biosearch Technologies, Inc.)(Novato, Calif.)より市販されているブラック・ホール・クエンチャーズ(BlackHole Quenchers)(登録商標)も含まれる。

    検出用プローブは、変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に目的の塩基を含む塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列を有する。 ここで目的の変異とは、検出したい塩基のことをいい、例えば、変異箇所の塩基の種類がAまたはGであるときに、Aを特異的に検出したい場合に、検出用プローブはこの変異箇所の塩基がAである(相補鎖の場合はT)ことを意味する。 検出用プローブの長さは標的配列に特異的にハイブリダイズできる長さであればよいが、変異部位を含む15〜18塩基の配列であることが好ましい。 なお、目的の塩基がプローブの末端にならないようにすることが好ましい。

    検出用プローブは、融解温度(Tm)が後述のカウンタープローブと比べて3℃以上高くなるように修飾されている。 なお、カウンタープローブを複数使用するときは、最もTmが高いものと比べて3℃以上高くなるようにする。 そのような修飾としては糖−リン酸骨格における修飾が好ましく、ロックド核酸(LNA:登録商標)やペプチド核酸(PNA)を用いた修飾が挙げられる。

    ここで、LNAとは、糖−リン酸骨格においてリボースの2'位の酸素原子と4'位の炭素原子間がメチレン架橋された構造を持ったRNAアナログをいう。 通常のヌクレオチドの代わりにLNAを含む核酸誘導体を導入することにより、標的核酸とハイブリダイズして二本鎖を形成した時に二本鎖のスタッキングがよくなり安定性が上昇する。

    また、ペプチド核酸とは以下のような構造をいう。

    Tmがカウンタープローブと比べて3℃以上高くなるように修飾するためには、以下の計算式に基づいてLNAやPNAなどの修飾物質を導入すればよい。
    基本となるオリゴヌクレオチドのTm(単位K、塩濃度1M NaCl)のnearest-neighbor法に拠る計算式は以下の通りである。 Tm(DNA/LNA)=ΔH°/(ΔS°+R・ln[oligo])
    ここでRは気体定数(1.987 cal/K・mol)、[oligo]はオリゴヌクレオチドのモル濃度である。
    DNAオリゴヌクレオチドの場合におけるnearest-neighborパラメーターΔH°及びΔS°はSantaLucia、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998, Vol. 95, p1460-1465のTable 2に示される数値を用いた。

    LNAを含むオリゴヌクレオチドのnearest-neighborパラメーターはMcTigueら、Biochemistry, 2004, Vol. 43, p5388-5405のTable 4に示される数値を用いた。

    PNAを含むオリゴヌクレオチドのTmはGiesenら、Nucleic Acid Research, 1998, Vol. 26, No. 21, p5004-5006に以下のとおり示された計算式に基づいて計算される。 Tm(PNA)=20.79+0.83・Tm(DNA)−26.13・f pyr +0.44・L
    ここでf pyrはピリミジン塩基の割合を示し、LはPNAの塩基長である。

    これらのTmは、マグネシウムイオン並びに一価陽イオン存在下ではOwczaryzyら、Biochemistry, 2008, Vol. 47, p5336-5353のp5339式4に従って、補正値を得ることが出来る。 例えば、PCR条件の塩濃度(150 mM Na + , 1.5 mM Mg 2+ , 0.3 mM dNTP)における補正式は以下の通りである。
    1/Tm(PCR)=1/Tm(1M NaCl)+(4.29・f GC −3.95)×10 -5・ln[Na + ]+9.40×10 -6・(ln[Na + ]) 2
    ここでf GCはプリン塩基の割合、[Na + ]は一価陽イオンのモル濃度である。

    15〜18塩基の検出用プローブであれば、2〜5個の修飾物質を導入することが好ましい。
    なお、LNAやPNAで修飾する場合、修飾される塩基は、5'末端や3'末端以外の塩基であることが好ましく、連続しないことが好ましい。 そして、少なくとも変異部位の塩基はLNAやPNAなどの修飾核酸であることが好ましい。

    nearest-neighbor法によって計算された予測値と実測値には各論文で2℃程度の差異が存在するため、検出用プローブのTm予測値は、カウンタープローブより十分に高いことが好ましいが、高すぎるとPCRの実用的温度の上限を超えることを考慮して決定する必要がある。 従って、検出用プローブのTm予測値は、カウンタープローブより9〜11℃高いことが好ましく、予測値として70〜80℃が適しており、特に70〜76℃、より好ましくは74〜76℃である。

    反応温度及びアニーリング温度はカウンタープローブDNAのTm予測値と同等(60-65℃)、プライマーDNAのTmは、その中間に位置(+5℃,65-70℃)することが好ましい。

    上記のような検出用プローブはIntegrated DNA Technologies (Coralville, IA)などの受託合成サービスにより入手可能である。

    <カウンタープローブ>
    カウンタープローブは変異部位を含む塩基配列であって該変異部位に目的の塩基とは異なる塩基を含む塩基配列、または該塩基配列に相補的な塩基配列を有するが、LNAやPNAなどで修飾されていないものをいう。
    例えば、検出用プローブがアデニン(A)を目的塩基とする場合、カウンタープローブは該当塩基がグアニン(G)、シトシン(C)またはチミン(T)であるオリゴヌクレオチドの1または複数種を用いることができる。 なお、カウンタープローブは5'と3'末端が蛍光物質と消光物質で標識されたものであってもよい。
    カウンタープローブの長さも標的配列に特異的にハイブリダイズできる長さであればよいが、15〜18塩基が好ましい。
    カウンタープローブを検出用プローブと共に用いることで非特異的増幅による誤検出を防ぐことができる。 カウンタープローブの添加量は検出用プローブと同じかそれ以上が好ましい。

    <プライマー>
    プライマーは、標的核酸においてプローブがハイブリダイズする領域の5'側にハイブリダイズする5'側プライマー(センスプライマー)と3'側にハイブリダイズする3'側プライマー(アンチセンスプライマー)の2種類が用いられる。 一方が標的遺伝子のセンス鎖に、他方がアンチセンス鎖にハイブリダイズし、PCRにより両プライマー間の領域を増幅できるものである。 プライマーは標的核酸において保存されている領域に設定することが好ましい。 そして、100〜250ヌクレオチド長の領域を増幅できるような位置に設定することが好ましい。
    プライマーの長さは15〜25塩基が好ましく、前記したオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチドの計算式を用いて予測するTmは検出用プローブのTmより低く、カウンタープローブのTm予測値より高くすることが実用的であり、具体的なTm予測値としては60〜69℃が好ましく、特に65〜69℃が好ましい。 目的とするTm予測値のプライマーはPrimer Express(Applied Biosystems)などのソフトウェアを用いて設計することができる。

    <反応条件>
    本発明のプローブを用いたリアルタイムPCRは、前記プローブセットと、プライマーと、鋳型である標的核酸と、デオキシリボヌクレオチド混合物(dNTP)と、熱安定性DNAポリメラーゼを含む緩衝液中で、通常のPCRに準じた条件により行うことができる。
    本発明の効果を奏するためにPCR反応におけるアニーリング温度は60〜69℃が好ましく、プローブのTmより低く、カウンタープローブのTmと同じかそれ以上であることが好ましい。 通常、伸長反応はアニーリング温度より高い温度で行うが、アニーリングと伸長反応を同じ温度で行ってもよい。
    PCRの温度サイクルを目的配列が検出できるのに十分なサイクル数繰り返し、蛍光検出器で増幅に基づく蛍光を検出することで、目的変異の存在を検出することができる。

    本明細書において、「熱安定性DNAポリメラーゼ」という用語は、例えば、PCRの反応条件において安定であり、プライマーにデオキシリボヌクレオチドを重合させてDNAの相補鎖を伸長させる反応を触媒するとともに、その5'→3'ヌクレアーゼ活性により、プライマー間に介在するアニーリングしたプローブを加分解できるものをいう。 代表的な熱安定性DNAポリメラーゼとして、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus;Taq) より単離されたDNAポリメラーゼが米国特許第4,889,818号に記載されており、PCRにおいてそれを使用するための基本的な方法は、Saikiら、1988, Science 239 : 487-91に記載されている。

    本明細書において、「標的核酸」は、PCR反応において増幅させることができ、かつ1個又は複数個の塩基変異部位を含有している、DNAやRNAなどの核酸をいう。
    ヒトもしくは非ヒト哺乳動物、細菌、酵母、ウイルス、ウイロイド、カビ、真菌植物、又はその他の任意の生物に由来するものであってもよいし、又は任意の組換え起源に由来しても、インビトロでもしくは化学合成によって合成されたものであってもよい。
    また、標的核酸を含む試料を用いて反応を行ってもよい。
    ここで「試料」とは、個体から単離された組織または体液などの試料をいい、特に制限されないが、例えば、組織生検材料、血漿、血清、全血、髄液、リンパ液、皮膚の外側切片、気道、腸管、尿生殖管、涙、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、器官などを含む。
    また、土壌や排水などから得られる試料を用いてもよい。
    ウイルスの変異を検出する場合は、ウイルスのRNAゲノムをもとに逆転写酵素を使用してcDNAを合成し、得られたcDNAまたはcDNAの増幅産物を標的核酸として用いることができる。

    本明細書において、「塩基変異」という用語は、特定の遺伝子の参照塩基配列におけるある位置での1個または複数個のヌクレオチドの変化を意味し、「変異」は天然に生じるものでも、人工的に生じたものでもいずれでもよい。 一塩基多型(SNP)も当然に塩基変異の概念に含まれる。
    塩基変異が疾患になりやすい変異である場合、本発明の方法により当該塩基変異を判別することで疾患への罹患性の予測をすることができる。 また、塩基変異が薬剤の副作用に関係する変異である場合、本発明の方法により当該塩基変異を判別することで薬剤の副作用の予測をすることができる。
    塩基変異が種または株に特異的な変異である場合、本発明の方法により当該塩基変異を判別することで種や株の特定を行うことができる。 そして、特定しようとする種や株が病原を有する種や株、あるいは薬剤耐性を有する種や株であれば、病原菌、病原ウイルスの検出や薬剤耐性株の検出を行うことができる。

    変異型ウイルスを検出する場合、ウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)などが例示される。
    HCVとしては、HCV1型が例示され、その中でも本発明はHCV-1b型における変異の検出に好適に用いられる。
    現在、HCVに対してはプロテアーゼ阻害剤であるTelaprevir(テラプレビル)などの薬剤の臨床開発が進められているが、薬剤が効かない変異型ウイルスが存在することが明らかになっており、薬剤投与前並びに治療期間中にウイルスの変異の有無を調べておくことは重要である。
    なお、上記Telaprevirのほか、Boceprevir(ボセプレビル)、Narlaprevir(ナラプレビル)、Donaprevir(ドナプレビル、R7227/ITMN-191)、MK-7009、TMC435、BMS65082、BI201335、MK-5172、GS9256、ABT450等のプロテアーゼ阻害剤も、本発明と同様の効果を奏する限り、本発明で意図するプロテアーゼ阻害剤に含まれる。
    本発明の方法によって、HCV患者において、該患者に感染したHCVの薬剤耐性に関与する変異の有無を調べることは投薬方針の決定に非常に有用である。

    Telaprevirの作用メカニズムとしては、HCVのNS3プロテアーゼ活性を阻害してHCVの増殖を抑制するというメカニズムが提唱されている。 しかしながら、NS3プロテアーゼをコードする領域(配列番号1)における変異が生じるとTelaprevirが効かなくなる場合(Telaprevir耐性)がある。

    <156位の変異>
    このような変異としては、NS3プロテアーゼ(配列番号2)の156位のアミノ酸(野生型ではAla)をVal、Thr、Ser、Phe、Tyrなどの他のアミノ酸に置換する変異が挙げられる。
    野生型のNS3プロテアーゼコード配列においては、配列番号1の466〜468がGCTであり、コードされるアミノ酸はAlaである。

    一方、A156Vでは、配列番号1の467位の変異によりコドンがGTTに変わっており、コードされるアミノ酸はValに変化する。
    A156Vの検出用プローブの例を以下に示す。 なお、(+)の塩基は、糖−リン酸骨格にLNAを使用していることを示す(以下同様)。 また、蛍光物質としてFAMを、消光物質としてIowaを例示しているが、他の組み合わせももちろん使用可能である。
    5'(FAM)-G(+G)CA(+T)CT(+T)C(+C)GGG(+T)TG-3'(Iowa) (配列番号6)
    16塩基 Tm 74.4 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは61.1℃である。
    5'(FAM)-TC(+C)GGG(+T)TG(+C)TG(+T)GT-3'(Iowa) (配列番号22)
    15塩基 Tm 74.4 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは61.9℃である。

    A156Fでは、配列番号1の466、467位の変異によりコドンがTTTに変わっており、コードされるアミノ酸はPheに変化する。
    A156Fの検出用プローブの例を以下に示す。
    5'(FAM)-G(+G)CA(+T)CT(+T)C(+C)GGT(+T)TGC-3'(Iowa) (配列番号7)
    17塩基 Tm 74.8 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは62.3℃である。
    5'(FAM)-TC(+C)GG(+T)TTG(+C)TG(+T)ATGCA-3'(Iowa) (配列番号23)
    18塩基 Tm 73.6℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは63.0℃である。

    A156Tでは、配列番号1の466位の変異によりコドンがACTに変わっており、コードされるアミノ酸はThrに変化する。
    A156Tの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-GGCA(+T)CT(+T)C(+C)GG(+A)CTGC-3'(Iowa) (配列番号8)
    17塩基 Tm 74.1 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは63.8℃である。
    5'(FAM)-TC(+C)GG(+A)CTG(+C)TG(+T)GTG-3'(Iowa) (配列番号24)
    18塩基 Tm 73.9℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは62.4℃である。

    A156Sでは、配列番号1の466位の変異によりコドンがTCTに変わっており、コードされるアミノ酸はSerに変化する。
    A156Sの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-GGCA(+T)CT(+T)C(+C)GG(+T)CTGC-3'(Iowa) (配列番号9)
    17塩基 Tm 74.4 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは63.8℃である。

    A156Yでは、配列番号1の466位の変異によりコドンがTATに変わっており、コードされるアミノ酸はTyrに変化する。
    A156Yの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-TC(+C)GG(+T)ATG(+C)TG(+T)ATGCA-3'(Iowa) (配列番号25)
    18塩基 Tm 73.2℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは61.9℃である。

    野生型検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-GCA(+T)CTTC(+C)GGG(+C)TGC-3'(Iowa) (配列番号5)
    16塩基 Tm 73.7 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは64.4℃である。

    したがって、A156Vのアミノ酸置換をもたらす変異を特異的に検出しようとする場合、上記A156Vのプローブを検出用プローブに用い、野生型を含めたそれ以外の変異型のプローブ(LNA修飾されていないもの)の1種類以上をカウンタープローブに用いてリアルタイムPCRを行うとよい。
    他の変異型を特異的に検出しようとする場合も同様である。

    <155位の変異>
    Telaprevir耐性に関与する他の変異としては、NS3プロテアーゼ(配列番号2)の155位のアミノ酸(野生型ではArg)をGly、Leu、Lysなどの他のアミノ酸に置換する変異が挙げられる。
    野生型のNS3プロテアーゼコード配列においては、配列番号1の463〜465に相当する位置がCGGであり、コードされるアミノ酸はArgである。
    一方、R155Gでは、配列番号1の463位の変異によりコドンがGGGに変わっており、コードされるアミノ酸はGlyに変化する。

    R155Gの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-TC(+G)GG(+G)CTG(+C)TG(+T)A(+T)G-3'(Iowa) (配列番号11)
    16塩基 Tm 75.4℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは62.3℃である。

    R155Lでは、配列番号1の464位の変異によりコドンがCTGに変わっており、コードされるアミノ酸はLeuに変化する。
    R155Lの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-TCC(+T)GG(+C)TG(+C)TG(+T)GTG-3'(Iowa) (配列番号12)
    16塩基 Tm 74.3℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは62.9℃である。

    R155Kでは、配列番号1の463、464位の変異によりコドンがAAGに変わっており、コードされるアミノ酸はLysに変化する。
    R155Kの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-TCA(+A)GG(+C)TG(+C)TG(+T)ATGCA-3'(Iowa) (配列番号13)
    18塩基 Tm 74.4℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは62.8℃である。

    野生型検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-TC(+C)GGG(+C)TG(+C)TG(+T)AT-3'(Iowa) (配列番号10)
    15塩基 Tm 75.3℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは61.0℃である。

    したがって、R155Gのアミノ酸置換をもたらす変異を特異的に検出しようとする場合、上記R155Gのプローブを検出用プローブに用い、野生型を含めたそれ以外の変異型プローブ(LNA修飾されていないもの)の1種類以上をカウンタープローブに用いてリアルタイムPCRを行うとよい。
    他の変異型を特異的に検出しようとする場合も同様である。

    <156位と158位の組み合わせ変異>
    また、156位と158位の組み合わせ変異も挙げられる。
    野生型では156位はAlaで158位はValであるが、A156V/V158Iは467位と472位の変異により、コドンがそれぞれGTT,ATAに変わっており、コードされるアミノ酸はそれぞれVal、Ileに変化する。
    A156V/V158Iの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-TC(+C)GGG(+T)TG(+C)T(+A)TA(+T)GCA-3'(Iowa) (配列番号14)
    18塩基 Tm 74.3℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは62.0℃である。

    また、A156T/V158Iは466位と472位の変異により、コドンがそれぞれACT,ATAに変わっており、コードされるアミノ酸はそれぞれThr、Ileに変化する。
    A156V/V158Iの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-TC(+C)GG(+A)CTG(+C)T(+A)TA(+T)GCA-3'(Iowa) (配列番号15)
    18塩基 Tm 73.6℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは61.3℃である。

    <54位の変異>
    Telaprevir耐性に関与する他の変異としては、NS3プロテアーゼ(配列番号2)の54位のアミノ酸(野生型ではThr)をAla、Serなどの他のアミノ酸に置換する変異が挙げられる。
    野生型のNS3プロテアーゼコード配列においては、配列番号1の160〜162がACTであり、コードされるアミノ酸はThrである。

    一方、T54Aでは、配列番号1の160位の変異によりコドンがGCTに変わっており、コードされるアミノ酸はAlaに変化する。
    T54Aの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-G(+T)G(+T)GT(+T)GG(+G)CTG(+T)CT-3'(Iowa) (配列番号17)
    16塩基 Tm 73.1 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは60.2℃である。

    T54Sでは、配列番号1の160位の変異によりコドンがTCTに変わっており、コードされるアミノ酸はSerに変化する。
    T54Sの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-CG(+T)G(+T)GT(+T)GG(+T)CTG(+T)CT-3'(Iowa) (配列番号18)
    17塩基 Tm 72.3 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは60.1℃である。

    野生型検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-CG(+T)G(+T)GT(+T)GG(+A)CTG(+T)CT-3'(Iowa) (配列番号16)
    17塩基 Tm 72.1 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは60.1℃である。

    したがって、T54Aのアミノ酸置換をもたらす変異を特異的に検出しようとする場合、上記T54Aのプローブを検出用プローブに用い、野生型を含めたそれ以外の変異型プローブ(LNA修飾されていないもの)の1種類以上をカウンタープローブに用いてリアルタイムPCRを行うとよい。
    他の変異型を特異的に検出しようとする場合も同様である。

    <132位の変異>
    Telaprevir耐性に関与する他の変異としては、NS3プロテアーゼ(配列番号2)の132位のアミノ酸(野生型ではValまたはIle)をLeuなどの他のアミノ酸に置換する変異が挙げられる。
    野生型のNS3プロテアーゼコード配列においては、配列番号1の394〜396に相当する位置がGTCまたはATCであり、コードされるアミノ酸はValまたはIleである。

    V/I132Lでは、配列番号1の394位の変異によりコドンがCTCに変わっており、コードされるアミノ酸はLeuに変化する。
    V/I132Lの検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-CCAGGC(+C)T(+C)TCT(+C)CT(+A)C-3'(Iowa) (配列番号21)
    17塩基 Tm 72.7 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは61.2℃である。

    野生型(V132)検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-CCAGGC(+C)TG(+T)CT(+C)CT(+A)C-3'(Iowa) (配列番号19)
    17塩基 Tm 72.5 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは61.8℃である。

    野生型(I132)検出用プローブの一例を以下に示す。
    5'(FAM)-CCA(+G)GC(+C)TA(+T)CT(+C)CT(+A)C-3'(Iowa) (配列番号20)
    17塩基 Tm 72.0 ℃ (PCRの塩濃度下)
    なお、LNAを導入しない時のTmは58.4℃である。

    したがって、V/I132Lのアミノ酸置換をもたらす変異を特異的に検出しようとする場合、上記V/I132Lのプローブを検出用プローブに用い、野生型を含めたそれ以外の変異型プローブ(LNA修飾されていないもの)の1種類以上をカウンタープローブに用いてリアルタイムPCRを行うとよい。
    他の変異型を特異的に検出しようとする場合も同様である。

    上記の変異の内、次の4種類のウイルス変異体は本発明者らが新たに見出したものであるが、これらも蛍光リアルタイムPCRにより検出することができる。
    a. 156位のAlaがPheへ置換される変異 b. 156位のAlaがTyrへ置換される変異 c. 158位のValがIleへ置換される変異 d. 132位のVal又はIleがLeuへ置換される変異

    <プロテアーゼ阻害剤に対する応答の予測方法>
    本発明は、上記プローブセットを用いてHCV-1bに感染した患者のプロテアーゼ阻害剤に対する応答を予測する方法を提供する。 一つの態様において、その方法は、HCV NS3アミノ酸配列上の156位に相当する塩基配列を含むヒト患者由来HCV-1bポリヌクレオチドを準備すること、および、アミノ酸配列上で156位のAlaに相当する塩基が変異しているか否かを決定し、その際、156位におけるAlaの存在が、プロテアーゼ阻害剤に対する持続的なウイルス学的応答性(薬剤感受性)を決定づけることを含む。
    もう一つの態様において、その方法は、HCV NS3アミノ酸配列上の54位に相当する塩基配列を含むヒト患者由来HCV-1bポリヌクレオチドを準備すること、および、アミノ酸配列上で54位のThrに相当する塩基が変異しているか否を決定し、その際、54位におけるThrの存在が、プロテアーゼ阻害剤に対する持続的なウイルス学的応答性(感受性)を決定づけることを含む。
    もう一つの態様において、その方法は、HCV NS3アミノ酸配列上の132位に相当する塩基配列を含むヒト患者由来HCV-1bポリヌクレオチドを準備すること、および、アミノ酸配列上で132位のVal又はIleに相当する塩基が変異しているか否を決定し、その際、132位におけるVal又はIleの存在が、プロテアーゼ阻害剤に対する持続的なウイルス学的応答性(感受性)を決定づけることを含む。
    もう一つの態様において、その方法は、HCV NS3アミノ酸配列上の155位に相当する塩基配列を含むヒト患者由来HCV-1bポリヌクレオチドを準備すること、および、アミノ酸配列上で155位のArgに相当する塩基が変異しているか否を決定し、その際、155位におけるArgの存在が、プロテアーゼ阻害剤に対する持続的なウイルス学的応答性(感受性)を決定づけることを含む。
    もう一つの態様において、その方法は、HCV NS3アミノ酸配列上の156及び158位に相当する塩基配列を含むヒト患者由来HCV-1bポリヌクレオチドを準備すること、および、アミノ酸配列上で156及び158位のAla及びValに相当する塩基が変異しているか否を決定し、その際、156及び158位におけるAla及びValの存在が、プロテアーゼ阻害剤に対する持続的なウイルス学的応答性(感受性)を決定づけることを含む。

    これにより、HCV-1bに感染したヒト患者の治療方針を決定することができる。 例えば、HCV NS3アミノ酸配列上の156位のAlaに相当する塩基が変異しているか否かを決定し、その際、156位がAlaであれば、プロテアーゼ阻害剤治療を開始するか、あるいは既に開始している場合は継続し、変異型であればプロテアーゼ阻害剤治療を行わないか、あるいは既に開始している場合は投与を中止することを含む。
    また、HCV NS3アミノ酸配列上の54位のThrに相当する塩基が変異しているか否かを決定し、その際、54位がThrであれば、プロテアーゼ阻害剤治療を開始するか、あるいは既に開始している場合は継続し、変異型であればプロテアーゼ阻害剤治療を行わないか、あるいは既に開始している場合は投与を中止することを含む。
    また、HCV NS3アミノ酸配列上の132位のVal又はIleに相当する塩基が変異しているか否かを決定し、その際、132位がVal又はIleであれば、プロテアーゼ阻害剤治療を開始するか、あるいは既に開始している場合は継続し、変異型であればプロテアーゼ阻害剤治療を行わないか、あるいは既に開始している場合は投与を中止することを含む。
    また、HCV NS3アミノ酸配列上の155位のArgに相当する塩基が変異しているか否かを決定し、その際、155位がArgであれば、プロテアーゼ阻害剤治療を開始するか、あるいは既に開始している場合は継続し、変異型であればプロテアーゼ阻害剤治療を行わないか、あるいは既に開始している場合は投与を中止することを含む。
    また、HCV NS3アミノ酸配列上の156及び158位のAla及びValに相当する塩基が変異しているか否かを決定し、その際、156及び158位がAla及びValであれば、プロテアーゼ阻害剤治療を開始するか、あるいは既に開始している場合は継続し、変異型であればプロテアーゼ阻害剤治療を行わないか、あるいは既に開始している場合は投与を中止することを含む。

    <C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測するための診断キット>
    本発明は、上記プローブセットを含む、C型肝炎患者のプロテアーゼ阻害剤応答性を予測するための診断キットを提供する。 該診断キットは、(i)プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出されない場合にはプロテアーゼ阻害剤を投与してもよい、(ii)プロテアーゼ阻害剤耐性変異が検出された場合にはプロテアーゼ阻害剤の投与を中止するまたは行わないという治療指針が記載されたインストラクション(添付文書)を含むものであってもよい。

    以下に提示される本発明の実施例は、例示のためだけに提供され、本発明の範囲を制限するものではない。 添付の特許請求の範囲に含まれる多数の本発明の態様が、以上の本文、及び、以下の実施例を参照することにより、当業者には明らかであると思われる。

    HCV-1bのNS3プロテアーゼの156位のアミノ酸は野生型ではAlaであるが、変異型ウイルスでは塩基変異の結果、Val、Phe、Thr、Serなどに置換される。 ここでは、156位のアミノ酸の置換をもたらす変異のうち、156位をValに置換する変異、具体的にはNS3プロテアーゼをコードする塩基配列における467位のC→T置換を特異的に検出するための蛍光プローブを用いたリアルタイムPCRを行った。

    <プライマー>
    プライマーは、156番目のアミノ酸をコードする塩基の上流側と、下流側のそれぞれにおいて、Teraprevir臨床試験登録患者、および、公開データベース(The Entrez Nucloetide Database)のHCV NS3プロテアーゼ領域に共通な領域(配列番号1の289〜305位(Fwプライマー)、および487〜503位(Reプライマー))に設定した。
    Fwプライマー 5'-TGCACCTGCGGCAGCTC-3' (配列番号3)Tm=69.2℃(PCRの塩濃度下)
    Reプライマー 5'-TCCACCGCCTTCGCRAC-3' (配列番号4)Tm=66.4/68.4℃(PCRの塩濃度下)
    (RはGまたはAを示す。)

    <検出用プローブ>
    検出用プローブは配列番号1の454〜469の領域に設定し、の5'末端にはFAMを蛍光色素として、3'末端にはIowaを消光剤として結合させた。 そして、2、5、8、10、14番目の塩基にLNAを使用した(Integrated DNA Technologies, Inc.の受託合成サービスを利用した)。 FAM Probe A156V
    5'(FAM)-G(+G)CA(+T)CT(+T)C(+C)GGG(+T)TG-3'(Iowa)(配列番号6)ここで、(+)の塩基は、糖−リン酸骨格にLNAを使用している。 なお、検出用プローブのTmは前述したとおりである。

    <カウンタープローブ>
    カウンタープローブとして、野生型およびA156V以外の変異に対応するオリゴヌクレオチドを用いた。 なお、カウンタープローブのTmは前述したとおりである。
    Probe WT
    5'-GCATCTTCCGGGCTGC-3' (配列番号5)

    Probe A156F
    5'-GGCATCTTCCGGTTTGC-3' (配列番号7)

    Probe A156T
    5'-GGCATCTTCCGGACTGC-3' (配列番号8)

    Probe A156S
    5'-GGCATCTTCCGGTCTGC-3' (配列番号9)

    <定量PCR反応系>
    鋳型にはA156Vの変異を有するNS3プロテアーゼcDNAを含むプラスミドを用い、コピー数を10 6 、10 5 、10 4 、10 3 、または10 2として用いた(図1A)。
    そして、表1の反応液を用い、50℃2分、95℃10分の初期加熱の後、95℃15秒、65℃1分のサイクル(2ステップ)を50サイクル繰り返した。 反応装置はPRISM 7900HT (Applied Biosystems)を用いた。
    また、野生型NS3プロテアーゼcDNAを含むプラスミドを10 5コピー共存させ、同様の条件で反応を行った(図1B)。

    図1Aの結果から、A156V変異が特異的に検出できたことがわかった。
    また、図1Bの結果から、野生型の中に変異型が1%程度しか存在しない場合でも変異型の検出ができることが示された。

    <その他の変異の検出>
    A156FおよびA156Tについても検出を行った。
    A156F検出用プローブは以下のものを用い、野生型およびその他の変異に対応するプローブをカウンタープローブとして用いて、上記と同様に反応を行った。
    5'(FAM)-G(+G)CA(+T)CT(+T)C(+C)GGT(+T)TGC-3'(Iowa) (配列番号7)

    A156T検出用プローブは以下のものを用い、野生型およびその他の変異に対応するプローブをカウンタープローブとして用いて、上記と同様に反応を行った。
    5'(FAM)-GGCA(+T)CT(+T)C(+C)GG(+A)CTGC-3'(Iowa) (配列番号8)

    結果を、A156Vの検出結果とともに図2に示す。
    この結果から、本発明のプローブセットを用いてリアルタイムPCRを行うことにより、10コピーという非常に少ないコピー数でも変異型を検出できることがわかった。

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