新規組換えファクターC、その製造法、およびエンドトキシンの測定法

申请号 JP2014552048 申请日 2013-12-10 公开(公告)号 JPWO2014092079A1 公开(公告)日 2017-01-12
申请人 生化学工業株式会社; 发明人 光 水村; 光 水村; 俊男 小田; 俊男 小田; 俊一郎 川畑; 俊一郎 川畑;
摘要 カブトガニの組換えファクターCを製造する方法を提供する。CHO DG44およびHEK293等の哺乳類細胞を宿主細胞として用いてカブトガニのファクターCを発現することにより、カブトガニの組換えファクターCを製造する。
权利要求

ファクターCの活性を有する、カブトガニのファクターC。組換えタンパク質である、請求項1に記載のファクターC。(α−2,3)結合の末端シアル酸を有する、請求項1または2に記載のファクターC。天然ファクターCに比べて(α−2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、請求項3に記載のファクターC。Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターCに比べて(α−2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、請求項3または4に記載のファクターC。21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、10%以上の残存活性を示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載のファクターC。非還元SDS−PAGEで測定される分子量が115kDa〜140kDaである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のファクターC。非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±5kDaである、請求項7に記載のファクターC。下記(A)、(B)、(C)、または(D)に示すタンパク質である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のファクターC: (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質; (C)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (D)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質。下記(A)または(B)に示すタンパク質である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のファクターC: (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質。溶性である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のファクターC。カブトガニのファクターCを製造する方法であって、哺乳類細胞を宿主細胞として用いてカブトガニのファクターCを発現することを含む、方法。前記哺乳類細胞が、COS−1以外の哺乳類細胞である、請求項12に記載の方法。前記哺乳類細胞が、サルを除く霊長類およびげっ歯類からなる群より選択される哺乳動物の細胞である、請求項12に記載の方法。前記哺乳類細胞が、チャイニーズハムスターの細胞またはヒトの細胞である、請求項12に記載の方法。前記哺乳類細胞が、CHOまたはHEKである、請求項12に記載の方法。前記哺乳類細胞が、CHO DG44またはHEK293である、請求項12に記載の方法。前記ファクターCが下記(A)、(B)、(C)、または(D)に示すタンパク質である、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法: (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質; (C)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (D)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質。前記ファクターCが下記(A)または(B)に示すタンパク質である、請求項12〜17のいずれか1項に記載の方法: (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質。請求項12〜19のいずれか1項に記載の方法により製造され得る、カブトガニのファクターC。ファクターCの活性を有する、請求項20に記載のファクターC。(α−2,3)結合の末端シアル酸を有する、請求項20または21に記載のファクターC。天然ファクターCに比べて(α−2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、請求項22に記載のファクターC。Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターCに比べて(α−2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、請求項22または23に記載のファクターC。21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、10%以上の残存活性を示す、請求項20〜24のいずれか1項に記載のファクターC。非還元SDS−PAGEで測定される分子量が115kDa〜140kDaである、請求項20〜25のいずれか1項に記載のファクターC。非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±5kDaである、請求項26に記載のファクターC。水溶性である、請求項20〜27のいずれか1項に記載のファクターC。請求項1〜11および20〜28のいずれか1項に記載のファクターCを含む、エンドトキシン測定剤。さらに、カブトガニのファクターBおよびカブトガニのプロクロッティングエンザイムを含む、請求項29に記載の測定剤。前記ファクターBが下記(E)または(F)に示すタンパク質であり、前記プロクロッティングエンザイムが下記(G)または(H)に示すタンパク質である、請求項30に記載の測定剤: (E)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (F)配列番号6に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターBの活性を有するタンパク質; (G)配列番号8に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (H)配列番号8に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、プロクロッティングエンザイムの活性を有するタンパク質。請求項29〜31のいずれか1項に記載の測定剤を含む、エンドトキシン測定用キット。請求項29〜31のいずれか1項に記載の測定剤と被験試料とを混合する工程、およびカスケード反応の進行を測定する工程を含む、被験試料中のエンドトキシンを測定する方法。前記被験試料が、イオンを含有する、請求項33に記載の方法。前記被験試料が、カチオンを含有する、請求項33に記載の方法。前記被験試料が、金属イオンを含有する、請求項33に記載の方法。前記被験試料が、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを含有する、請求項33に記載の方法。前記被験試料が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、およびマグネシウムイオンからなる群より選択される1種またはそれ以上のイオンを含有する、請求項33に記載の方法。前記被験試料におけるイオンの含有量が、該被験試料に由来するカチオンの濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、1mM以上となるような量である、請求項34〜38のいずれか1項に記載の方法。前記被験試料が、注射剤である、請求項33〜39のいずれか1項に記載の方法。カスケード反応の進行を検出するための基質を反応系に添加する工程を含む、請求項33〜40のいずれか1項に記載の方法。さらに、被験試料中のエンドトキシン量を算出する工程を含む、請求項33〜41のいずれか1項に記載の方法。

说明书全文

本発明は、新規組換えファクターC、その製造法、およびエンドトキシンの測定法に関する。

エンドトキシンは、グラム陰性細菌の細胞壁外膜に存在するリポ多糖であり、強い発熱性物質として知られている。また、エンドトキシンは、発熱以外にも、マクロファージの活性化に伴う炎症性サイトカインの遊離やエンドトキシンショックの誘発等、微量でも細菌感染による様々な病態を惹き起こすことが知られている。このため、注射用医薬品を始めとする医薬品、、医療器具等におけるエンドトキシンの検出は重要である。また、エンドトキシンはグラム陰性細菌感染症におけるショックの主な原因と考えられており、血液中のエンドトキシンを測定することで、感染の有無や治療効果を判定することができる。

また、アメリカカブトガニ(リムルス・ポリフェムス;Limulus polyphemus)にグラム陰性細菌が感染すると、血液凝固を引き起こすことが知られており、この現象はエンドトキシンの検出に利用されてきた。

すなわち、カブトガニ血球抽出液(カブトガニ・アメボサイト・ライセート。以下「ライセート」ともいう。)を使用して、エンドトキシンを測定する方法が知られている(例えば、非特許文献1)。この方法は、リムルステストと呼ばれ、エンドトキシンがライセートに接触することによって起きる、ライセート中に存在する種々のタンパク質のカスケード反応を利用するものである。カスケード反応の模式図を図1に示す。

エンドトキシンがライセートに接触すると、ライセート中に存在するセリンプロテアーゼ前駆体であるファクターCが活性化されて活性型ファクターCが生成する。この活性型ファクターCによって、ライセート中に存在するファクターBが活性化されて活性型ファクターBが生成する。この活性型ファクターBによって、ライセート中に存在するプロクロッティングエンザイムが活性化されてクロッティングエンザイムが生成する。

このクロッティングエンザイムは、ライセート中に存在するコアギュローゲンの分子中の特定の箇所を加水分解する。これによって、コアギュリンゲルが生成してライセートが凝固する。したがって、ライセートの凝固反応を測定することで、エンドトキシンを測定することができる。

また、クロッティングエンザイムを合成基質に作用させることで発色反応を進行させ、エンドトキシンを測定することもできる。例えば、クロッティングエンザイムは、合成基質であるt−ブトキシカルボニル−ロイシル−グリシル−アルギニル−pNA(Boc−Leu−Gly−Arg−pNA)に作用し、そのアミド結合を加水分解してpNAを遊離する。よって、前記合成基質を反応系に存在させておくことで、発色物質(pNA)の吸光度(405nm)を測定することによりエンドトキシンを定量することができる。

また、日本産カブトガニのライセートから精製したファクターC、ファクターB、およびプロクロッティングエンザイムを用いてカスケード反応系を再構成できることが知られている(非特許文献2)。

しかしながら、ライセート、またはそれから精製したファクターC、ファクターB、およびプロクロッティングエンザイムを利用するには、カブトガニを捕獲して血液を採取する必要があり、生物資源の保護の観点から、これらの成分を無尽蔵に供給することは困難である。そのため、遺伝子工学的にこれらの成分を生産し、カスケード反応系を再構成する技術が求められていた。

例えば、昆虫細胞を宿主細胞として用いてファクターC、ファクターB、およびプロクロッティングエンザイムを発現させ、カスケード反応系を再構成した例が知られている(特許文献1、2)。しかしながら、当該再構成系においては、反応系に塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、または塩化カルシウムが存在することにより、カスケード反応が抑制されたと報告されている(特許文献1)。

一方、哺乳類細胞を宿主細胞として用いた例としては、アフリカミドリザルの腎細胞由来細胞株であるCOS-1を宿主細胞として用いて、シンガポール産カブトガニ(Carcinoscorpius rotundicauda)由来のファクターCを発現させた例が知られている。しかしながら、COS-1を宿主細胞として用いた場合、発現したファクターCは不溶性であったと報告されている(非特許文献3、4)。すなわち、哺乳類細胞を宿主細胞として用いて、機能的なファクターCを生産した例は知られていない。

国際公開第2008/004674号パンフレット

国際公開第2012/118226号パンフレット

Iwanaga S., Curr. Opin. Immunol. Feb; 5(1): 74-82 (1993)

Nakamura T., et al., J. Biochem. Mar; 99(3): 847-57 (1986)

Roopashree S. Dwarakanath, et al., Biotechnology letters 19(4): 357-361 (1997)

Jing Wang, Bow Ho and Jeak L. Ding, Biotechnology letters 23: 71-76 (2001)

本発明は、カブトガニの新規組換えファクターC、およびこれを製造する方法を提供することを課題とする。

また、生体内に注射する注射剤の多くは、各種の塩(イオン)を含有している。一方で、これらの製造においては、エンドトキシンの確認が各国薬局方で義務付けられている。そこで、本発明は、その一態様において、塩(イオン)の存在下で反応阻害を受けにくいカスケード反応の再構成系を提供することを課題とする。

本発明者は、ヒト細胞またはチャイニーズハムスター細胞を宿主細胞として用いることによりカブトガニの組換えファクターCを製造できること、およびそのようにして製造された組換えファクターCを用いることにより塩(イオン)の存在下で反応阻害を低減してエンドトキシンを測定できることを見出し、本発明を完成させた。

すなわち、本発明は以下の態様を包含する。 [1] ファクターCの活性を有する、カブトガニのファクターC。 [1.1.1] シアル酸を有する、前記ファクターC。 [1.1.2] (α−2,3)結合の末端シアル酸を有する、前記ファクターC。 [1.1.3] 天然ファクターCに比べて(α−2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、前記ファクターC。 [1.1.4] Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターCに比べて(α−2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、前記ファクターC。 [1.1.5] Maackia amurensis Agglutininでレクチンブロットした際に、天然ファクターCに比べて高い反応性を示す、前記ファクターC。 [1.1.6] Maackia amurensis Agglutininでレクチンブロットした際に、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターCに比べて高い反応性を示す、前記ファクターC。 [1.2.1] 21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、10%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.2] 21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、20%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.3] 52mMの炭酸水素ナトリウムの存在下で、25%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.4] 52mMの炭酸水素ナトリウムの存在下で、35%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.5] 214mMの塩化ナトリウムの存在下で、25%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.6] 214mMの塩化ナトリウムの存在下で、35%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.7] 16mMの硫酸マグネシウムの存在下で、15%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.8] 16mMの硫酸マグネシウムの存在下で、25%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.9] 2.5mMの塩化カルシウムの存在下で、35%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.10] 2.5mMの塩化カルシウムの存在下で、45%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.11] 21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.12] 52mMの炭酸水素ナトリウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.13] 214mMの塩化ナトリウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.14] 16mMの硫酸マグネシウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.2.15] 2.5mMの塩化カルシウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [1.3.1] 下記(A)、(B)、(C)、または(D)に示すタンパク質である、前記ファクターC: (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質; (C)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (D)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質。 [1.3.2] 下記(A)、または(B)に示すタンパク質である、前記ファクターC: (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質。 [1.4] 組換えタンパク質である、前記ファクターC。 [1.5.1] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が115kDa〜140kDaである、前記ファクターC。 [1.5.2] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が115kDa〜130kDaである、前記ファクターC。 [1.5.3] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が120kDa〜130kDaである、前記ファクターC。 [1.5.4] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が120kDa〜128kDaである、前記ファクターC。 [1.5.5] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±5kDaである、前記ファクターC。 [1.5.6] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が128kDa±2kDaである、前記ファクターC。 [1.5.7] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±2kDaである、前記ファクターC。 [1.5.8] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が126kDa±2kDaである、前記ファクターC。 [1.5.9] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±1kDaである、前記ファクターC。 [1.6] 水溶性である、前記ファクターC。 [1.7] ファクターCを含む培養上清である、前記ファクターC。 [1.8] 下記(1)〜(3)に示す性質を有する、前記ファクターC: (1)ファクターCの活性を有する; (2)非還元SDS−PAGEで測定される分子量が115kDa〜130kDaである;および (3)21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、10%以上の残存活性を示す。 [2] カブトガニのファクターCを製造する方法であって、哺乳類細胞を宿主細胞として用いてカブトガニのファクターCを発現することを含む、方法。 [2.1.1] 前記哺乳類細胞が、COS−1以外の哺乳類細胞である、前記方法。 [2.1.2] 前記哺乳類細胞が、霊長類およびげっ歯類からなる群より選択される哺乳動物の細胞である、前記方法。 [2.1.3] 前記哺乳類細胞が、霊長類の細胞である、前記方法。 [2.1.4] 前記哺乳類細胞が、げっ歯類の細胞である、前記方法。 [2.1.5] 前記哺乳類細胞が、サルを除く霊長類およびげっ歯類からなる群より選択される哺乳動物の細胞である、前記方法。 [2.1.6] 前記哺乳類細胞が、チャイニーズハムスターの細胞またはヒトの細胞である、前記方法。 [2.1.7] 前記哺乳類細胞が、チャイニーズハムスターの細胞である、前記方法。 [2.1.8] 前記哺乳類細胞が、ヒトの細胞である、前記方法。 [2.1.9] 前記哺乳類細胞が、CHOまたはHEKである、前記方法。 [2.1.10] 前記哺乳類細胞が、CHOである、前記方法。 [2.1.11] 前記哺乳類細胞が、HEKである、前記方法。 [2.1.12] 前記哺乳類細胞が、CHO DG44またはHEK293である、前記方法。 [2.1.13] 前記哺乳類細胞が、CHO DG44である、前記方法。 [2.1.14] 前記哺乳類細胞が、HEK293である、前記方法。 [2.2.1] 前記ファクターCが下記(A)、(B)、(C)、または(D)に示すタンパク質である、前記方法: (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質; (C)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (D)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質。 [2.2.2] 前記ファクターCが下記(A)または(B)に示すタンパク質である、前記方法: (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質。 [3] 前記方法により製造され得る、カブトガニのファクターC。 [3.1] ファクターCの活性を有する、前記ファクターC。 [3.2.1] シアル酸を有する、前記ファクターC。 [3.2.2] (α−2,3)結合の末端シアル酸を有する、前記ファクターC。 [3.2.3] 天然ファクターCに比べて(α−2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、前記ファクターC。 [3.2.4] Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターCに比べて(α−2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、前記ファクターC。 [3.2.5] Maackia amurensis Agglutininでレクチンブロットした際、天然ファクターCに比べて高い反応性を示す、前記ファクターC。 [3.2.6] Maackia amurensis Agglutininでレクチンブロットした際、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターCに比べて高い反応性を示す、前記ファクターC。 [3.3.1] 21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、10%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.2] 21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、20%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.3] 52mMの炭酸水素ナトリウムの存在下で、25%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.4] 52mMの炭酸水素ナトリウムの存在下で、35%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.5] 214mMの塩化ナトリウムの存在下で、25%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.6] 214mMの塩化ナトリウムの存在下で、35%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.7] 16mMの硫酸マグネシウムの存在下で、15%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.8] 16mMの硫酸マグネシウムの存在下で、25%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.9] 2.5mMの塩化カルシウムの存在下で、35%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.10] 2.5mMの塩化カルシウムの存在下で、45%以上の残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.11] 21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.12] 52mMの炭酸水素ナトリウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.13] 214mMの塩化ナトリウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.14] 16mMの硫酸マグネシウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.3.15] 2.5mMの塩化カルシウムの存在下で、Sf9を宿主細胞として用いて発現させたカブトガニのファクターC、および/または、天然ファクターCよりも高い残存活性を示す、前記ファクターC。 [3.4] 組換えタンパク質である、前記ファクターC。 [3.5.1] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が115kDa〜140kDaである、前記ファクターC。 [3.5.2] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が115kDa〜130kDaである、前記ファクターC。 [3.5.3] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が120kDa〜130kDaである、前記ファクターC。 [3.5.4] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が120kDa〜128kDaである、前記ファクターC。 [3.5.5] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±5kDaである、前記ファクターC。 [3.5.6] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が128kDa±2kDaである、前記ファクターC。 [3.5.7] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±2kDaである、前記ファクターC。 [3.5.8] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が126kDa±2kDaである、前記ファクターC。 [3.5.9] 非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±1kDaである、前記ファクターC。 [3.6] 水溶性である、前記ファクターC。 [3.7] ファクターCを含む培養上清である、前記ファクターC。 [4] 前記ファクターCを含む、エンドトキシン測定剤。 [4.1] さらに、カブトガニのファクターBおよびカブトガニのプロクロッティングエンザイムを含む、前記測定剤。 [4.2] 前記ファクターBが下記(E)または(F)に示すタンパク質であり、前記プロクロッティングエンザイムが下記(G)または(H)に示すタンパク質である、前記測定剤: (E)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (F)配列番号6に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、ファクターBの活性を有するタンパク質; (G)配列番号8に示すアミノ酸配列を含むタンパク質; (H)配列番号8に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、かつ、プロクロッティングエンザイムの活性を有するタンパク質。 [5] 前記測定剤を含む、エンドトキシン測定用キット。 [6] 前記測定剤と被験試料とを混合する工程、およびカスケード反応の進行を測定する工程を含む、被験試料中のエンドトキシンを測定する方法。 [6.1.1] 前記被験試料が、イオンを含有する、前記方法。 [6.1.2] 前記被験試料が、カチオンを含有する、前記方法。 [6.1.3] 前記被験試料が、金属イオンを含有する、前記方法。 [6.1.4] 前記被験試料が、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを含有する、前記方法。 [6.1.5] 前記被験試料が、アルカリ金属イオンを含有する、前記方法。 [6.1.6] 前記被験試料が、アルカリ土類金属イオンを含有する、前記方法。 [6.2.1] 前記被験試料が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、およびマグネシウムイオンからなる群より選択される1種またはそれ以上のイオンを含有する、前記方法。 [6.2.2] 前記被験試料が、ナトリウムイオンを含有する、前記方法。 [6.2.3] 前記被験試料が、カリウムイオンを含有する、前記方法。 [6.2.4] 前記被験試料が、カルシウムイオンを含有する、前記方法。 [6.2.5] 前記被験試料が、マグネシウムイオンを含有する、前記方法。 [6.3.1] 前記被験試料におけるイオンの含有量が、該被験試料に由来するカチオンの濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、1mM以上となるような量である、前記方法。 [6.3.2] 前記被験試料におけるイオンの含有量が、該被験試料に由来するカチオンの濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、2mM以上となるような量である、前記方法。 [6.3.3] 前記被験試料におけるイオンの含有量が、該被験試料に由来するカチオンの濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、5mM以上となるような量である、前記方法。 [6.3.4] 前記被験試料におけるイオンの含有量が、該被験試料に由来するカチオンの濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、10mM以上となるような量である、前記方法。 [6.3.5] 前記被験試料におけるイオンの含有量が、該被験試料に由来するカチオンの濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、20mM以上となるような量である、前記方法。 [6.3.6] 前記被験試料におけるイオンの含有量が、該被験試料に由来するカチオンの濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、50mM以上となるような量である、前記方法。 [6.3.7] 前記被験試料におけるイオンの含有量が、該被験試料に由来するカチオンの濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、100mM以上となるような量である、前記方法。 [6.4] 前記被験試料が、注射剤である、前記方法。 [6.5.1] 前記被験試料が、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、イオタラム酸ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、およびリン酸二水素ナトリウムからなる群より選択される1種またはそれ以上の塩を含有する、前記方法。 [6.5.2] 前記被験試料が、塩化ナトリウムを含有する、前記方法。 [6.5.3] 前記被験試料が、硫酸マグネシウムを含有する、前記方法。 [6.5.4] 前記被験試料が、炭酸水素ナトリウムを含有する、前記方法。 [6.5.5] 前記被験試料が、クエン酸ナトリウムを含有する、前記方法。 [6.5.6] 前記被験試料が、塩化カルシウムを含有する、前記方法。 [6.5.7] 前記被験試料が、塩化カリウムを含有する、前記方法。 [6.5.8] 前記被験試料が、イオタラム酸ナトリウムを含有する、前記方法。 [6.5.9] 前記被験試料が、エデト酸カルシウム二ナトリウムを含有する、前記方法。 [6.5.10] 前記被験試料が、リン酸二水素ナトリウムを含有する、前記方法。 [6.6.1] 前記被験試料における塩の含有量が、該被験試料に由来する塩の濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、1mM以上となるような量である、前記方法。 [6.6.2] 前記被験試料における塩の含有量が、該被験試料に由来する塩の濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、2mM以上となるような量である、前記方法。 [6.6.3] 前記被験試料における塩の含有量が、該被験試料に由来する塩の濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、5mM以上となるような量である、前記方法。 [6.6.4] 前記被験試料における塩の含有量が、該被験試料に由来する塩の濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、10mM以上となるような量である、前記方法。 [6.6.5] 前記被験試料における塩の含有量が、該被験試料に由来する塩の濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、20mM以上となるような量である、前記方法。 [6.6.6] 前記被験試料における塩の含有量が、該被験試料に由来する塩の濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、50mM以上となるような量である、前記方法。 [6.6.7] 前記被験試料における塩の含有量が、該被験試料に由来する塩の濃度が、該被験試料と前記測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、100mM以上となるような量である、前記方法。 [6.7] カスケード反応の進行を検出するための基質を反応系に添加する工程を含む、前記方法。 [6.8] さらに、被験試料中のエンドトキシン量を算出する工程を含む、前記方法。

リムルステストのカスケード反応系を示す図。

日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の4種類のファクターC(Sf9、CHO、HEK、TAL)の非還元条件下ウエスタンブロッティングの結果を示す写真。

日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の天然ファクターC(TAL)および組換えファクターC(CHO)の分子量を示す写真(SDS-PAGE)。

ファクターCの活性測定のスキームを示す図。

再構成カスケード反応系を示す図。

日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の4種類のファクターC(Sf9、CHO、HEK、TAL)の活性を示す図。

日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の4種類のファクターC(Sf9、CHO、HEK、TAL)の、各種注射剤による活性阻害を示す図。

タキプレウス・トリデンタツスのファクターC(TtFC)とカルシノスコルピウス・ロツンディカウダのファクターC(834CrID4)のアラインメントを示す図(図9に続く)。下線は、N型糖鎖修飾の起こり得るコンセンサス配列を示す。

タキプレウス・トリデンタツスのファクターC(TtFC)とカルシノスコルピウス・ロツンディカウダのファクターC(834CrID4)のアラインメントを示す図(図8の続き)。下線は、N型糖鎖修飾の起こり得るコンセンサス配列を示す。

還元条件下および非還元条件下でのファクターCと特異的抗体との反応部位を示す模式図。

日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の4種類の精製ファクターCの分子量を示す写真(SDS-PAGE)。

日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の4種類の精製ファクターCの分子量を示す写真(ウエスタンブロット)。

日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の4種類の精製ファクターCのグライコペプチダーゼFによるN型糖鎖の除去の結果を示す写真(ウエスタンブロット)。

(a)日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の4種類の精製ファクターCのレクチンブロットによるN型糖鎖の検出結果を示す写真;(b)レクチンの結合特異性を示す図;(c)実験結果と文献報告から予想される組換えファクターCのN型糖鎖の構造を示す模式図。

(1)本発明のファクターC 本発明のファクターCは、カブトガニ由来のファクターCである。本発明のファクターCは、組換えタンパク質である。「組換えタンパク質」とは、タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞に導入し異種発現させることにより得られたタンパク質をいう。本発明のファクターCは、ファクターCの活性を有する。

カブトガニとしては、日本産カブトガニであるタキプレウス・トリデンタツス(Tachypleus tridentatus)、アメリカ産カブトガニであるリムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)、東南アジア産(シンガポール産)カブトガニであるカルシノスコルピウス・ロツンディカウダ(Carcinoscorpius rotundicauda)、東南アジア産カブトガニであるタキプレウス・ギガス(Tachypleus gigas)が挙げられる。これらの中では、日本産カブトガニであるタキプレウス・トリデンタツス、または東南アジア産(シンガポール産)カブトガニであるカルシノスコルピウス・ロツンディカウダ由来であるのが好ましい。また、これらの中では、日本産カブトガニであるタキプレウス・トリデンタツス由来であるのがより好ましい。タキプレウス・トリデンタツスのファクターCのアミノ酸配列を配列番号2に示す。また、タキプレウス・トリデンタツスのファクターCをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。カルシノスコルピウス・ロツンディカウダのファクターCのアミノ酸配列を配列番号4に示す。また、カルシノスコルピウス・ロツンディカウダのファクターCをコードする遺伝子の塩基配列を配列番号3に示す。

本発明のファクターCは、N型糖鎖修飾されていてよい。N型糖鎖とは、タンパク質のアスパラギン残基に結合した糖鎖をいう。タキプレウス・トリデンタツスのファクターCとカルシノスコルピウス・ロツンディカウダのファクターCとでは、N型糖鎖修飾の起こり得るアミノ酸残基が保存されている。両ファクターCのアラインメントとN型糖鎖修飾の起こり得るコンセンサス配列(Asn-Xaa-Ser/Thr(Xaaは任意のアミノ酸残基を示す))を図8、9に示す。よって、特に、カルシノスコルピウス・ロツンディカウダのファクターCは、タキプレウス・トリデンタツスのファクターCと同様に好適なファクターCであると考えられる。

本発明のファクターCは、シアル酸を有していてよい。シアル酸としては、例えば、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)やN−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)が挙げられる。「シアル酸を有する」とは、本発明のファクターCにシアル酸が結合していることをいう。シアル酸は、ファクターCに直接結合していてもよく、間接的に結合していてもよい。例えば、シアル酸は、シアル酸を含む糖鎖がファクターCに結合することにより、間接的にファクターCに結合していてよい。シアル酸は、例えば、(α-2,3)結合のシアル酸であってよく、より具体的には(α-2,3)結合の末端シアル酸であってよい。「(α-2,3)結合のシアル酸」とは、(α-2,3)グリコシド結合で糖に結合したシアル酸をいう。「(α-2,3)結合の末端シアル酸」とは、(α-2,3)グリコシド結合で糖に結合し、且つ、糖鎖の末端に位置するシアル酸をいう。糖鎖としては、例えば、N型糖鎖が挙げられる。シアル酸は、例えば、翻訳後修飾によりシアル酸を含む糖鎖をタンパク質に付加できる宿主細胞でファクターCを発現することにより、ファクターCに付加することができる。そのような宿主細胞としては、哺乳類細胞が挙げられる。シアル酸は、例えば、糖鎖解析により検出することができる。糖鎖解析は、公知の手法により行うことができる。例えば、レクチンや糖鎖抗体を利用して糖鎖解析を行うことができる。具体的には、例えば、Maackia amurensis Agglutinin(MAM)を利用してレクチンブロットを行うことにより、(α-2,3)結合の末端シアル酸を特異的に検出することができる。

本発明のファクターCは、対照のファクターCと比較して、シアル酸を多く有していてよい。「対照のファクターCと比較して、シアル酸を多く有する」とは、本発明のファクターCに結合したシアル酸の量が、ファクターCの分子当たりのシアル酸の分子数に換算して、対照のファクターCに結合したシアル酸の量よりも大きいことをいう。例えば、本発明のファクターCに結合したシアル酸の量は、ファクターCの分子当たりのシアル酸の分子数に換算して、対照のファクターCに結合したシアル酸の量の、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、または3.0倍以上であってよい。

対照のファクターCとしては、昆虫細胞Sf9で発現させた組換えファクターCや天然のファクターCが挙げられる。「Sf9を宿主細胞として発現させたファクターC」とは、本発明のファクターCと同一のアミノ酸配列からなるファクターCをコードする遺伝子をSf9を宿主細胞として発現させることにより得られるファクターCをいう。「天然のファクターC」とは、カブトガニのライセートから分離精製されたファクターCをいう。天然のファクターCは、本発明のファクターCが由来するカブトガニのライセートから分離精製されたファクターCであってよい。すなわち、具体的には、例えば、本発明のファクターCがタキプレウス・トリデンタツスの組換えファクターCまたはそのバリアントである場合、天然のファクターCはタキプレウス・トリデンタツスのライセートから分離精製されたファクターCであってよい。

「対照のファクターCと比較して、シアル酸を多く有する」かどうかは、本発明のファクターCと対照のファクターCとでシアル酸の量を比較することにより確認できる。シアル酸の量は、例えば、糖鎖解析により決定することができる。糖鎖解析は、公知の手法により行うことができる。例えば、レクチンや糖鎖抗体を利用して糖鎖解析を行うことができる。具体的には、例えば、Maackia amurensis Agglutinin(MAM)を利用してレクチンブロットを行うことにより、(α-2,3)結合の末端シアル酸を特異的に定量することができる。MAMでレクチンブロットを行った際に高い反応性を示す程、(α-2,3)結合の末端シアル酸の量が大きい、すなわち、(α-2,3)結合の末端シアル酸を多く有する、と決定できる。すなわち、本発明のファクターCは、対照のファクターCと比較して、MAMでレクチンブロットを行った際に高い反応性を示してよい。「対照のファクターCと比較して、MAMでレクチンブロットを行った際に高い反応性を示す」とは、等量の本発明のファクターCと対照のファクターCに対してそれぞれMAMでレクチンブロットを行った際に、本発明のファクターCのスポットの検出強度(発色の程度等)が、対照のファクターCのスポットの検出強度よりも高いことをいう。

本発明のファクターCは、C末端にHisタグが付加されていないものであってよい。また、本発明のファクターCは、C末端にV5タグが付加されていないものであってよい。また、本発明のファクターCは、C末端にペプチドが一切付加されていないものであってよい。また、本発明のファクターCは、N末端にペプチドが一切付加されていないものであってよい。また、本発明のファクターCは、両末端とも、ペプチドが一切付加されていないものであってよい。

本発明のファクターCは、ファクターCの活性を有する限り、上記各種カブトガニのファクターC、例えば配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、のバリアントであってもよい。バリアントには、例えば、上記ファクターCのホモログや人為的な改変体が含まれる。なお、バリアントのアミノ酸配列は、実際にカブトガニにおいて見出されることを要しない。すなわち、「カブトガニの/カブトガニ由来の」ファクターCには、カブトガニにおいて見出されるファクターCのバリアントであって、カブトガニにおいては見出されないアミノ酸配列を有するものも含まれる。

ファクターCの活性とは、エンドトキシンの存在下で活性型となり、ファクターBを活性型に変化させる活性をいう。「ファクターCの活性を有する」ことは、例えば、本発明のファクターCを、好適なファクターBおよび好適なプロクロッティングエンザイムと組み合わせた際に、エンドトキシンの存在下でカスケード反応の進行を検出することにより確認できる。具体的には、例えば、好適なファクターBとして配列番号6のタンパク質を、好適なプロクロッティングエンザイムとして配列番号8のタンパク質を使用できる。カスケード反応の進行は、後述する検出用基質を用いて測定できる。

本発明のファクターCは、ファクターCの活性を有する限り、上記のようなファクターCのアミノ酸配列、例えば配列番号2または4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加等を含む配列を有するタンパク質であってもよい。前記「1若しくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、例えば、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加等には、遺伝子が由来するカブトガニの個体差、株、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異も含まれる。

また、本発明のファクターCは、上記のようなファクターCのアミノ酸配列全体、例えば配列番号2または4に示すアミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性または同一性を有し、かつ、ファクターCの活性を有するタンパク質であってもよい。

本発明のファクターCをコードする遺伝子は、上記のような本発明のファクターCをコードする限り特に制限されない。本発明のファクターCをコードする遺伝子は、公知の遺伝子配列から調製され得るプローブ、例えば配列番号1または3に示す塩基配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、ファクターCの活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは、60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、さらに好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度、温度で、1回、より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。

また、本発明のファクターCをコードする遺伝子は、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。例えば、本発明のファクターCをコードする遺伝子は、コドンの組み合わせを哺乳類細胞での発現に最適化するよう変更してもよい。最適化は、例えば一般の受託サービスを利用して行うことができる。なお、本発明のファクターCをコードする遺伝子は、コドンの組み合わせが哺乳類細胞での発現に最適化されたDNAのバリアントであってもよい。

なお、上記の遺伝子やタンパク質のバリアントに関する記載は、ファクターBおよびプロクロッティングエンザイム、並びにそれらをコードする遺伝子に準用できる。

本発明のファクターCは、非還元SDS−PAGEで測定される分子量が115kDa〜140kDa、115kDa〜130kDa、120kDa〜130kDa、または120kDa〜128kDaであってよい。また、本発明のファクターCは、非還元SDS−PAGEで測定される分子量が127kDa±5kDa、128kDa±2kDa、127kDa±2kDa、126kDa±2kDa、または127kDa±1kDaであってよい。また、本発明のファクターCは、非還元SDS−PAGEで測定される分子量が128kDaまたは126kDaであってよい。

また、本発明のファクターCは、イオンによる活性阻害を受けにくい性質を有していてもよい。「イオンによる活性阻害を受けにくい性質を有する」とは、本発明のファクターCが、対照のファクターCと比較して、イオンの存在下で高い残存活性を示すことをいう。対照のファクターCとしては、昆虫細胞Sf9で発現させた組換えファクターCや天然のファクターCが挙げられる。「高い残存活性を示す」とは、本発明のファクターCの残存活性が対照のファクターCの残存活性より高い限り特に制限されないが、例えば、本発明のファクターCの残存活性が対照のファクターCの残存活性の1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、または3.0倍以上であることを意味してよい。「イオンによる活性阻害を受けにくい性質」として、具体的には、例えば、対照のファクターCと比較して、21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で高い残存活性を示す性質、52mMの炭酸水素ナトリウムの存在下で高い残存活性を示す性質、214mMの塩化ナトリウムの存在下で高い残存活性を示す性質、16mMの硫酸マグネシウムの存在下で高い残存活性を示す性質、2.5mMの塩化カルシウムの存在下で高い残存活性を示す性質が挙げられる。また、「イオンによる活性阻害を受けにくい性質」として、具体的には、例えば、21mMのクエン酸ナトリウムの存在下で10%以上または20%以上の残存活性を示す性質、52mMの炭酸水素ナトリウムの存在下で25%以上または35%以上の残存活性を示す性質、214mMの塩化ナトリウムの存在下で25%以上または35%以上の残存活性を示す性質、16mMの硫酸マグネシウムの存在下で15%以上または25%以上の残存活性を示す性質、2.5mMの塩化カルシウムの存在下で35%以上または45%以上の残存活性を示す性質も挙げられる。本発明のファクターCは、これらの性質の1つを有していてもよく、これらの性質の2つまたはそれ以上を有していてもよい。なお、「残存活性」は、図4に示すアッセイ系において、注射用水にエンドトキシンを添加したもの(エンドトキシン濃度0.05EU/mL)を測定検体とした際の反応性を100%とした場合の、イオンを含む被験試料にエンドトキシンを添加したもの(エンドトキシン濃度0.05EU/mL)を測定検体とした際の反応性の相対値(%)として示される。

また、本発明のファクターCは、水溶性であってよい。ここでいう「水溶性」とは、本発明のファクターCを適当な宿主細胞で発現させた際に、発現したファクターCが可溶性画分に検出されるこという。「可溶性画分に検出される」とは、発現したファクターCの20%以上、50%以上、80%以上、90%以上、または95%以上が可溶性画分に検出されることであってよい。

(2)本発明のファクターCの製造法 本発明のファクターCは、例えば、哺乳類細胞を宿主細胞として用いて発現させることにより製造できる。すなわち、本発明は、哺乳類細胞を宿主細胞として用いてカブトガニのファクターCを発現することを含む、カブトガニのファクターCを製造する方法、を提供する。同方法を、「本発明の製造法」ともいう。本発明の製造法により製造され得るファクターCは、本発明のファクターCの一態様である。

哺乳類細胞は、カブトガニのファクターCを機能的に(functionally)発現することができる限り、特に制限されない。「機能的に発現する」とは、発現されたファクターCが、ファクターCの活性を示すことをいう。具体的には、哺乳類細胞は、COS−1細胞以外の哺乳類細胞であってよい。哺乳類細胞は、げっ歯類および霊長類からなる群より選択される哺乳動物の細胞であるのが好ましい。げっ歯類としては、特に制限されないが、チャイニーズハムスター、ハムスター、マウス、ラット、モルモットが挙げられる。これらの中では、チャイニーズハムスターが好ましい。チャイニーズハムスターの細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株(CHO)が挙げられる。CHOとしては、CHO DG44やCHO K1が挙げられる。霊長類としては、特に制限されないが、ヒト、サル、チンパンジーが挙げられる。霊長類は、サル以外の霊長類であってもよい。これらの中では、ヒトが好ましい。ヒトの細胞としては、ヒト胎児腎細胞由来細胞株(HEK)が挙げられる。HEKとしては、HEK293が挙げられる。

哺乳類細胞は、ファクターCをコードする遺伝子を保持することにより、ファクターCを発現できる。哺乳類細胞において、ファクターCをコードする遺伝子は、同細胞で機能するプロモーターの制御下で発現可能に保持されていればよい。哺乳類細胞において、ファクターCをコードする遺伝子は、例えば、プラスミドのように染色体外で自律複製するベクター上に存在していてもよく、染色体上に導入されていてもよい。ファクターCをコードする遺伝子を哺乳類細胞に導入する手法は特に制限されない。染色体外で自律複製するベクターとしては、例えば、pCA7 (Makoto Takeda, et al., J. Viol. 79(22): 14346-54 (2005)) が挙げられる。また、例えば、pCI-neoベクター(Promega社)を用いて、ファクターCをコードする遺伝子を哺乳類細胞の染色体上に導入できる。哺乳類細胞は、ファクターCをコードする遺伝子を、1コピーのみ有していてもよく、2コピーまたはそれ以上有していてもよい。

哺乳類細胞を培養する際の培養条件は、哺乳類細胞が増殖できる限り特に制限されず、哺乳類細胞の培養に通常用いられる条件を、必要により適宜修正して用いることができる。培地としては、例えば、哺乳類細胞の培養に通常用いられる培地を用いることができる。具体的には、例えば、RPMI1640培地(Sigma社)やDMEM培地(Sigma社)を用いることができる。培養は、例えば、36℃〜38℃で、5%CO2供給下で静置培養により行うことができる。

機能的なファクターCが発現したことは、ファクターCの活性を測定することにより確認できる。また、ファクターCが発現したことは、ファクターCをコードする遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することや、抗体を用いてウエスタンブロットによりファクターCを検出することでも確認できる。

発現したファクターCは、ファクターCを含有する溶液として回収し、本発明のエンドトキシン測定剤の成分として利用できる。ファクターCを含有する溶液とは、例えば、培養液、培養上清、細胞破砕抽出物、またはそれらの混合物等でありうる。ファクターCは、所望の程度に精製して用いてもよく、精製せずに用いてもよい。本発明では、ファクターCを精製することなく、発現されたファクターCを含有する細胞培養上清液をそのまま用いても、十分なエンドトキシン測定能が得られる。ファクターCの精製は、例えばタンパク質の精製に用いられる公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等が挙げられる。また、ファクターCに、Hisタグ等のタグを付加している場合には、当該タグに対する親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーによりファクターCを精製することもできる。また、ファクターCを含有する溶液は、例えば、フィルターろ過して用いてもよい。フィルターとしては、例えば、0.22μmのフィルターを用いることができる。

(3)本発明のエンドトキシン測定剤 本発明のファクターCは、エンドトキシンの測定に利用できる。すなわち、本発明は、本発明のファクターCを含むエンドトキシン測定剤を提供する。同エンドトキシン測定剤を、「本発明のエンドトキシン測定剤」ともいう。本発明のエンドトキシン測定剤は、エンドトキシンの測定態様に応じて、さらに、ファクターC以外の因子を含んでいてもよい。

例えば、本発明のファクターCは、ファクターBおよびプロクロッティングエンザイムと組み合わせて、エンドトキシンの測定に利用できる。すなわち、本発明のエンドトキシン測定剤の一態様は、本発明のファクターC、ファクターB、およびプロクロッティングエンザイムを含む、エンドトキシン測定剤である。この場合、カスケード反応の最終産物であるクロッティングエンザイムを検出することにより、エンドトキシンを測定できる。本発明のエンドトキシン測定剤の一態様に含まれるファクターBおよびプロクロッティングエンザイムを、それぞれ本発明のファクターBおよび本発明のプロクロッティングエンザイムともいう。

一方、カスケード反応の途中段階を検出することにより、エンドトキシンを測定することもできる。この場合、本発明のエンドトキシン測定剤は、当該途中段階までに関与する因子を含んでいればよい。具体的には、例えば、カスケード反応の中間産物である活性型ファクターCを検出することによりエンドトキシンを測定する場合、本発明のエンドトキシン測定剤は、ファクターCを含んでいればよい。

本発明のファクターBは、カブトガニ由来のファクターBである。また、本発明のプロクロッティングエンザイムは、カブトガニ由来のプロクロッティングエンザイムである。カブトガニとしては、日本産カブトガニであるタキプレウス・トリデンタツス(Tachypleus tridentatus)、アメリカ産カブトガニであるリムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)、東南アジア産(シンガポール産)カブトガニであるカルシノスコルピウス・ロツンディカウダ(Carcinoscorpius rotundicauda)、東南アジア産カブトガニであるタキプレウス・ギガス(Tachypleus gigas)が挙げられる。これらの中では、日本産カブトガニであるタキプレウス・トリデンタツス由来であるのが好ましい。

タキプレウス・トリデンタツスのファクターB、プロクロッティングエンザイムのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号6、8に示す。また、タキプレウス・トリデンタツスのファクターB、プロクロッティングエンザイムをコードする遺伝子の塩基配列をそれぞれ配列番号5、7に示す。

本発明のファクターBは、ファクターBの活性を有する限り、上記各種カブトガニのファクターB、例えば配列番号6に示すアミノ酸配列を有するタンパク質のバリアントであってもよい。バリアントには、例えば、上記ファクターBのホモログや人為的な改変体が含まれる。また、本発明のファクターBをコードする遺伝子は、上記のような本発明のファクターBをコードする限り特に制限されない。ファクターBやそれをコードする遺伝子のバリアントについては、上述のファクターCやそれをコードする遺伝子のバリアントに関する記載を準用できる。

ファクターBの活性とは、活性型ファクターCの存在下で活性型となり、プロクロッティングエンザイムを活性型であるクロッティングエンザイムに変化させる活性をいう。「ファクターBの活性を有する」ことは、例えば、本発明のファクターBを、好適なファクターCおよび好適なプロクロッティングエンザイムと組み合わせた際に、エンドトキシンの存在下でカスケード反応の進行を検出することにより確認できる。具体的には、好適なファクターCとして配列番号2のタンパク質を、好適なプロクロッティングエンザイムとして配列番号8のタンパク質を使用できる。カスケード反応の進行は、後述する検出用基質を用いて測定できる。

本発明のプロクロッティングエンザイムは、プロクロッティングエンザイムの活性を有する限り、上記各種カブトガニのプロクロッティングエンザイム、例えば配列番号8に示すアミノ酸配列を有するタンパク質のバリアントであってもよい。バリアントには、例えば、上記プロクロッティングエンザイムのホモログや人為的な改変体が含まれる。また、本発明のプロクロッティングエンザイムをコードする遺伝子は、上記のような本発明のプロクロッティングエンザイムをコードする限り特に制限されない。プロクロッティングエンザイムやそれをコードする遺伝子のバリアントについては、上述のファクターCやそれをコードする遺伝子のバリアントに関する記載を準用できる。

プロクロッティングエンザイムの活性とは、活性型ファクターBの存在下で活性型であるクロッティングエンザイムとなり、後述する検出用基質と反応する活性をいう。検出用基質と反応する活性とは、例えば、コアギュローゲンと反応し凝固を引き起こす活性や、後述する一般式X−Y−Z(式中、Xは保護基、Yはペプチド、ZはYとアミド結合した色素である)で表される基質と反応し色素Zを遊離させる活性(例えば、Boc−Leu−Gly−Arg−pNAと反応しpNAを遊離させる活性)をいう。「プロクロッティングエンザイムの活性を有する」ことは、例えば、本発明のプロクロッティングエンザイムを、好適なファクターCおよび好適なファクターBと組み合わせた際に、エンドトキシンの存在下でカスケード反応の進行を検出することにより確認できる。具体的には、好適なファクターCとして配列番号2のタンパク質を、好適なファクターBとして配列番号6のタンパク質を使用できる。カスケード反応の進行は、後述する検出用基質を用いて測定できる。

本発明のファクターBおよび/または本発明のプロクロッティングエンザイムは、それぞれファクターBの活性、プロクロッティングエンザイムの活性を有する限り、任意のペプチド等が付加されていてもよい。そのようなペプチドとしては、HisタグやV5タグ等のタグ配列が挙げられる。また、本発明のファクターBおよび/または本発明のプロクロッティングエンザイムは、本発明のファクターCと同様に、C末端にHisタグが付加されていないもの、C末端にV5タグが付加されていないもの、C末端にペプチドが一切付加されていないもの、N末端にペプチドが一切付加されていないもの、または両末端ともペプチドが一切付加されていないものであってもよい。

また、本発明のファクターBをコードする遺伝子および/または本発明のプロクロッティングエンザイムをコードする遺伝子は、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。例えば、本発明のファクターBをコードする遺伝子および/または本発明のプロクロッティングエンザイムをコードする遺伝子は、コドンの組み合わせを宿主細胞での発現に最適化するよう変更してもよい。配列番号6のファクターBをコードし、且つコドンの組み合わせが昆虫細胞での発現に最適化されたDNAとしては、配列番号9のDNAが挙げられる。なお、本発明のファクターBをコードする遺伝子および/または本発明のプロクロッティングエンザイムをコードする遺伝子は、コドンの組み合わせが宿主細胞での発現に最適化されたDNAのバリアントであってもよい。

本発明のファクターBおよび本発明のプロクロッティングエンザイムは、それぞれ、天然に得られるものであってもよく、組換えタンパク質であってもよい。

天然のファクターBおよび天然のプロクロッティングエンザイムは、それぞれ、上記各種カブトガニの血球抽出液から取得することができる。これらの因子は、所望の程度に精製して用いることができる。精製は、例えば、公知の手法(Nakamura T. et al., J Biochem. 1986 Mar; 99(3): 847-57.)により行うことができる。

また、組換えファクターBおよび組換えプロクロッティングエンザイムは、それぞれ、宿主細胞に発現させることで取得できる。宿主細胞は、各因子を発現できる限り特に制限されない。宿主細胞としては、例えば、異種タンパク質の発現に通常用いられるものを利用できる。宿主細胞としては、例えば、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞、酵母細胞、細菌細胞が挙げられる。これらの中では、翻訳後修飾の観点から真核細胞が好ましく、具体的には、昆虫細胞や動物細胞がより好ましい。

動物細胞としては、例えば、哺乳類細胞が挙げられる。哺乳類細胞等の動物細胞を用いる場合、上述した本発明のファクターCの製造についての記載を、ファクターBおよびプロクロッティングエンザイムの製造にも準用できる。

昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21、SF+、High-Fiveが挙げられる。昆虫細胞としては、Sf9が好ましい。

昆虫細胞を宿主細胞として用いて各因子を発現する手法は、各因子を発現できる限り特に制限されず、異種タンパク質の発現に通常用いられる手法を好適に利用できる。例えば、各因子をコードする遺伝子を組み込んだウイルスを昆虫細胞に感染させることで各因子を発現させることができる(「ウイルス法」ともいう)。また、各因子をコードする遺伝子を組み込んだベクターを昆虫細胞に導入し、宿主細胞の染色体上に当該遺伝子を組み込むことで各因子を発現させることができる(「安定発現細胞株法」ともいう)。

<ウイルス法> ウイルス法に用いるウイルスは、昆虫細胞に感染し各因子を発現させることができる限り特に制限されず、昆虫細胞でのタンパク質の発現に通常用いられるものを好適に利用できる。そのようなウイルスとしては、バキュロウイルス(Baculovirus)が挙げられる。バキュロウイルスとしては、核多体病ウイルス(Nucleopolyhedrovirus;NPV)が好ましい。NPVとしては、AcNPV(Autographa californica NPV)、BmNPV(Bombyx mori NPV)が挙げられる。NPVとしては、AcNPVが好ましい。

ウイルスへの核酸の導入は常法により行うことができ、例えば、トランスファーベクターを用いた相同的組換えにより行うことができる。トランスファーベクターとしては、pPSC8(プロテインサイエンス(Protein Sciences)社)、pFastBac(Life technologies corporation)、pVL1393(ファーミンジェン(Pharmingen)社)が挙げられる。トランスファーベクターとしては、pPSC8が好ましい。

各因子をコードする遺伝子を組み込んだウイルスを常法により昆虫細胞に感染させることで、当該ウイルスを保持し、各因子を発現する昆虫細胞が得られる。

<安定発現細胞株法> 各因子をコードする遺伝子を昆虫細胞の染色体上に組み込むことで、各因子を安定に発現する安定発現細胞株が得られる。安定発現細胞株の構築手法は、特に制限されず、常法により行うことができる。例えば、pIZ-V5(Life Technologies Corporation)を用いて、マニュアルに従って安定発現細胞株を構築することができる。

昆虫細胞を培養する際の培養条件は、昆虫細胞が増殖できる限り特に制限されず、昆虫細胞の培養に通常用いられる条件を、必要により適宜修正して用いることができる。例えば、培地としては昆虫細胞の培養に通常用いられる培地を用いることができる。そのような培地としては、例えば市販の昆虫細胞用の無血清培地が挙げられる。具体的には、Sf900III無血清培地(Life Technologies Corporation)等を好適に用いることができる。培養は、例えば、27℃〜28℃で、振とう培養により行うことができる。

各因子が発現しているかどうかは、各因子の活性を測定することにより確認できる。また、各因子が発現しているかどうかは、各因子をコードする遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することや、抗体を用いてウエスタンブロットにより各因子を検出することでも確認できる。

発現した各因子は、当該各因子を含有する溶液として回収し、本発明のエンドトキシン測定剤の成分として利用できる。各因子を含有する溶液とは、例えば、培養液、培養上清、細胞破砕抽出物、またはそれらの混合物等でありうる。各因子は、所望の程度に精製して用いてもよく、精製せずに用いてもよい。本発明では、各因子を精製することなく、発現された各因子を含有する細胞培養上清液をそのまま用いても、十分なエンドトキシン測定能が得られる。各因子を精製する場合には、各因子の精製は、例えばタンパク質の精製に用いられる公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等が挙げられる。また、各因子に、Hisタグ等のタグを付加している場合には、当該タグに対する親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーにより各因子を精製することもできる。また、各因子を含有する溶液は、例えば、フィルターろ過して用いてもよい。フィルターとしては、例えば、0.22μmのフィルターを用いることができる。

なお、各因子がウイルス法により製造された場合には、ウイルスの除去を行うことが好ましい。ウイルスを除去する手法は特に制限されず常法により行うことができる。例えば、ポアサイズ500kDaの中空糸濾過膜によりウイルスを除去することができる。

本発明において、本発明のファクターC、本発明のファクターB、および本発明のプロクロッティングエンザイムは、因子毎に発現細胞を構築しそれぞれ別個に発現させてよい。

本発明のエンドトキシン測定剤は、例えば、本発明のファクターCのみを含有していてもよく、本発明のファクターC、本発明のファクターB、および本発明のプロクロッティングエンザイムのみを含有していてもよい。

本発明のエンドトキシン測定剤は、カスケード反応の進行を検出するための基質を含有してもよい。本発明において、そのような基質を検出用基質という場合がある。

検出用基質としては、コアギュローゲンが挙げられる。コアギュローゲンは、カスケード反応の最終産物であるクロッティングエンザイムの検出基質である。コアギュローゲンとクロッティングエンザイムが接触することで、コアギュリンとして凝固する。凝固反応の進行は反応液の濁度を測定することで測定することができる。コアギュローゲンはカブトガニ血球抽出液(ライセート)から回収することができる。また、コアギュローゲンをコードする遺伝子の塩基配列は明らかになっており(宮田ら、蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.29; P30-43; 1986)、常法に従い遺伝子工学的に生産することもできる。

また、検出用基質としては、合成基質を用いてもよい。合成基質は、カスケード反応の検出に好適な性質を有する限り特に制限されない。「カスケード反応の検出に好適な性質」としては、クロッティングエンザイムの存在を検出するための性質や、カスケード反応の途中段階を検出するための性質が挙げられる。「クロッティングエンザイムの存在を検出するための性質」としては、クロッティングエンザイムの触媒反応により発色する性質や、クロッティングエンザイムの触媒反応により蛍光を発する性質が挙げられる。「カスケード反応の途中段階を検出するための性質」としては、活性型ファクターC等のカスケード反応の中間産物の触媒反応により発色する性質や、活性型ファクターC等のカスケード反応の中間産物の触媒反応により蛍光を発する性質が挙げられる。合成基質としては、例えば、一般式X−Y−Z(式中、Xは保護基、Yはペプチド、ZはYとアミド結合した色素である)で表される基質が挙げられる。反応系にエンドトキシンが存在する場合には、カスケード反応の結果として生ずるクロッティングエンザイムまたは中間産物の触媒反応によりY−Z間のアミド結合が切断され、色素Zが遊離して発色する、あるいは蛍光を発する。保護基Xとしては、特に制限されず、ペプチドの公知の保護基を好適に用いることができる。そのような保護基としては、t−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基が挙げられる。色素Zは、特に制限されず、例えば、可視光下で検出される色素であってもよく、蛍光色素であってもよい。色素Zとしては、pNA(パラニトロアニリン)、MCA(7−メトキシクマリン−4−酢酸)、DNP(2,4−ジニトロアニリン)、Dansyl(ダンシル)系色素が挙げられる。ペプチドYとしては、Leu−Gly−Arg(LGR)、Ile−Glu−Gly−Arg(IEGR)(配列番号10)、Val−Pro−Arg(VPR)、Asp−Pro−Arg(DPR)が挙げられる。合成基質としては、エンドトキシンの測定態様に応じて、クロッティングエンザイムまたは中間産物と反応するものを適宜選択して利用することができる。例えば、基質特異性の点からは、ペプチドYとしてLGRを含む基質はクロッティングエンザイムの検出に好適に用いることができ、ペプチドYとしてVPRまたはDPRを含む基質は活性型ファクターCの検出に好適に用いることができる。遊離した色素Zは、色素の性質に応じた手法により測定すればよい。

また、本発明のエンドトキシン測定剤は、エンドトキシンの測定に用いることができる限り、各因子や検出用基質以外の成分を含有していてもよい。そのような成分は、保存性、取扱い易さ、各因子や検出用基質の安定性などを考慮して選定すればよく、特に限定されるものではない。

また、本発明のエンドトキシン測定剤は、固体状、液体状、ゲル状等の任意の形態で製剤化されていてもよい。製剤化にあたっては、製剤担体として通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、希釈剤、又は溶剤等の添加剤などを使用することができる。本発明のエンドトキシン測定剤は、そのまま、あるいは水、生理食塩水、または緩衝液等を用いて希釈、分散、又は溶解し、エンドトキシンの測定に利用できる。このように希釈、分散、又は溶解等した場合にも、本発明のエンドトキシン測定剤の範囲に含まれることは言うまでもない。

本発明のエンドトキシン測定剤において、各因子やその他の成分は、混合して存在していてもよく、それぞれ別個に存在していてもよい。例えば、各因子は、任意の比率で混合され製剤化されていてもよく、それぞれ別個に製剤化されていてもよい。

本発明のエンドトキシン測定剤における各因子やその他の成分の濃度は特に制限されないが、エンドトキシンを測定する際に、後述する好ましい濃度範囲に収まるよう調整されるのが好ましい。本発明のエンドトキシン測定剤(被験試料に接触させる前に溶液にしたもの)における各因子の濃度は、例えば、5〜200μg/mLであってよく、20〜100μg/mLであるのが好ましく、40〜80μg/mLであるのがより好ましく、約60μg/mLであるのが特に好ましい。また、各因子の製造方法に応じて、本発明のエンドトキシン測定剤における各因子の濃度を設定してもよい。例えば、本発明のエンドトキシン測定剤(被験試料に接触させる前に溶液にしたもの)における、げっ歯類の細胞を宿主細胞として用いて製造したファクターCの濃度は、例えば、5〜200μg/mL、10〜50μg/mL、または15〜40μg/mLであってもよい。また、例えば、本発明のエンドトキシン測定剤(被験試料に接触させる前に溶液にしたもの)における、霊長類の細胞を宿主細胞として用いて製造したファクターCの濃度は、例えば、5〜200μg/mL、50〜150μg/mL、または80〜120μg/mLであってもよい。なお、上記例示した濃度は、例えば、上記例示したような手法により各因子を発現させて得られた培養上清をフィルター濾過して得られたろ液中のタンパク質が全て目的の因子であると仮定して算出したものであってもよい。

本発明のエンドトキシン測定剤は、エンドトキシン測定用キットとして提供することができる。エンドトキシン測定用キットは、本発明のエンドトキシン測定剤を含む限り特に制限されない。エンドトキシン測定用キットは、例えば、エンドトキシン標品、反応用容器(例えば、チューブやマイクロプレート)、マニュアル等から選択される1またはそれ以上の構成要素を含んでいてよい。

(4)本発明のエンドトキシン測定法 本発明のエンドトキシン測定剤を被験試料と混合することにより、被験試料にエンドトキシンが含まれる場合にはカスケード反応が進行する。カスケード反応の進行を測定することにより、被験試料中のエンドトキシンを測定することができる。すなわち、本発明は、本発明のエンドトキシン測定剤と被験試料とを混合する工程、およびカスケード反応の進行を測定する工程を含む、被験試料中のエンドトキシンを測定する方法を提供する。同方法を、「本発明のエンドトキシン測定法」ともいう。

本発明のエンドトキシン測定法の一態様(以下、「第1の態様」ともいう)においては、全ての因子が被験試料と混合される。第1の態様において、本発明のエンドトキシン測定剤に含まれる各因子は、本発明のエンドトキシン測定剤を被験試料と混合する工程の当初から反応系に含まれていてもよく、逐次反応系に添加されてもよい。

例えば、本発明のエンドトキシン測定剤を被験試料と混合する工程は、以下の工程(A)〜(C)を含んでいてもよい。 (A)本発明のファクターCを反応系に添加する工程。 (B)本発明のファクターBを反応系に添加する工程。 (C)本発明のプロクロッティングエンザイムを反応系に添加する工程。

工程(A)〜(C)は別個に行われてもよく、一部同時に行われてもよく、全て同時に行われてもよい。工程(A)〜(C)は任意の順番で行われてよい。例えば、工程(A)の後に工程(B)が行われ、工程(B)の後に工程(C)が行われてもよい。

第1の態様において、カスケード反応の進行は、検出用基質を反応系に添加し、当該基質の反応(発色や凝固等)を測定することで測定できる。検出用基質は、本発明のエンドトキシン測定剤を被験試料と混合する工程の当初から反応系に含まれていてもよく、当該工程の進行中または完了後に反応系に添加されてもよい。本発明のエンドトキシン測定剤として、検出用基質を予め含有しているものを用いる場合も、当然、第1の態様に包含される。

なお、本発明のエンドトキシン測定法において、被験試料にエンドトキシンが含まれる場合にカスケード反応が進行する限り、本発明のファクターBおよびプロクロッティングエンザイム自体は、被験試料と接触しなくともよい。すなわち、本発明のエンドトキシン測定法の別の態様(以下、第2の態様ともいう)は、以下の工程(A)〜(D)を含む被験試料中のエンドトキシン測定法である。 (A)本発明のファクターCと被験試料とを混合する工程。 (B)本発明のファクターBと、工程Aの混合後のファクターCとを混合する工程。 (C)本発明のプロクロッティングエンザイムと、工程Bの混合後のファクターBとを混合する工程。 (D)カスケード反応の進行を測定する工程。

第2の態様において、工程(A)〜(D)は別個に進行してもよく、一部同時に進行してもよく、全て同時に進行してもよい。例えば、工程Aを開始し、当該工程の進行中または完了後にファクターBやプロクロッティングエンザイムを反応系に添加してもよい。また、工程Bを開始し、当該工程の進行中または完了後にプロクロッティングエンザイムを反応系に添加してもよい。また、工程Aの当初から3種の因子全てが反応系に含まれていてもよい。また、例えば、工程Aの接触後のファクターCを回収して工程Bに用いてもよく、工程Bの接触後のファクターBを回収して工程Cに用いてもよい。

第2の態様において、カスケード反応の進行は、検出用基質を反応系に添加し、当該基質の反応(発色や凝固等)を測定することで測定できる。検出用基質は、工程Aの当初から反応系に含まれていてもよく、各工程の進行中または完了後に反応系に添加されてもよい。

また、カスケード反応の途中段階を検出することにより、エンドトキシンを測定することもできる。具体的には、例えば、カスケード反応の中間産物である活性型ファクターCを検出することにより、エンドトキシンを測定することができる。すなわち、本発明のエンドトキシン測定法の別の態様(以下、第3の態様ともいう)は、例えば、本発明のファクターCと被験試料とを混合する工程、および活性型ファクターCを検出する工程を含む、被験試料中のエンドトキシン測定法であってよい。第3の態様において、活性型ファクターCの検出は、検出用基質を反応系に添加し、当該基質の反応(発色等)を測定することで行うことができる。検出用基質は、本発明のファクターCを被験試料と混合する工程の当初から反応系に含まれていてもよく、当該工程の進行中または完了後に反応系に添加されてもよい。

本発明のエンドトキシン測定法は、被験試料にエンドトキシンが含まれる場合にカスケード反応が進行する限り、その他の任意の工程を含んでいてよい。例えば、本発明のエンドトキシン測定法は、反応系に検出用基質を添加する工程、あるいは、カスケード反応により生じたクロッティングエンザイムまたは中間産物と検出用基質とを混合する工程を含んでいてもよい。また、例えば、本発明のエンドトキシン測定法は、検出用基質の反応に基づき、被験試料中のエンドトキシン量を算出する工程を含んでいてもよい。

本発明のエンドトキシン測定法において、反応は水あるいは緩衝液等の水性溶媒中で行われるのが好ましい。

本発明のエンドトキシン測定法において、反応液中での各因子の濃度は、被験試料にエンドトキシンが含まれる場合にカスケード反応が進行する限り特に限定されず、各因子の性質等に応じて適宜設定することができる。例えば、各因子の濃度は、終濃度で、例えば、2.5〜100μg/mLであってよく、10〜50μg/mLであるのが好ましく、20〜40μg/mLであるのがより好ましく、約30μg/mLであるのが特に好ましい。また、各因子の製造方法に応じて、反応液中での各因子の濃度を設定してもよい。例えば、げっ歯類の細胞を宿主細胞として用いて製造したファクターCの濃度は、終濃度で、例えば、2.5〜100μg/mL、5〜25μg/mL、または7.5〜20μg/mLであってもよい。また、例えば、霊長類の細胞を宿主細胞として用いて製造したファクターCの濃度は、終濃度で、例えば、2.5〜100μg/mL、25〜75μg/mL、または40〜60μg/mLであってもよい。なお、上記例示した濃度は、例えば、上記例示したような手法により各因子を発現させて得られた培養上清をフィルター濾過して得られたろ液中のタンパク質が全て目的の因子であると仮定して算出したものであってもよい。

本発明のエンドトキシン測定法において、反応液中での検出用基質の濃度は、被験試料にエンドトキシンが含まれる場合にカスケード反応が進行する限り特に限定されず、検出用基質の性質等に応じて適宜設定することができる。例えば、検出用基質が合成基質である場合には、検出用基質の濃度は、終濃度で、例えば通常0.001mM〜100mMであり、0.01mM〜10mMであるのが好ましい。

いずれの態様においても、被験試料にエンドトキシンが含まれる場合にカスケード反応が進行する限り、反応系には、各因子、検出用基質、および被験試料以外に、任意の成分が含まれていてもよい。

反応液のpHは、被験試料にエンドトキシンが含まれる場合にカスケード反応が進行する限り特に限定されず、各因子の性質に応じて適宜設定することができる。反応液のpHは、例えば、通常pH5〜10であり、好ましくは7〜8.5である。

反応温度は、被験試料にエンドトキシンが含まれる場合にカスケード反応が進行する限り特に限定されず、各因子の性質に応じて適宜設定することができる。反応温度は例えば通常10℃〜80℃であり、好ましくは20℃〜50℃である。例えば、反応温度は37℃であってもよい。

反応時間は特に限定されず、各因子の性質や反応温度等の諸条件に応じて適宜設定すればよい。反応時間は例えば通常5分〜2時間であり、好ましくは15分〜90分である。例えば、反応時間は30分〜40分であってもよい。

いずれの態様においても、反応の過程において、被験試料、各因子、およびその他の成分を単独で、あるいは任意の組み合わせで追加的に反応系に添加してもよい。これらの成分は1回または複数回添加されてもよく、連続的に添加されてもよい。また、反応開始から反応終了まで均一の条件を用いてもよく、反応の過程において条件を変化させてもよい。

検出用基質の反応(発色や凝固等)を測定することで、エンドトキシンの存在に基づくカスケード反応の進行を測定することができ、被験試料中のエンドトキシンを測定することができる。検出用基質の反応(発色や凝固等)は、用いた検出用基質に応じた手法により測定すればよい。

エンドトキシンの測定を定量的に行う場合には、濃度既知のエンドトキシン標準試料を用いてエンドトキシン量と検出用基質の反応の程度(発色や凝固等の程度)との間の相関データを取得し、当該相関データに基づき被験試料に存在するエンドトキシンを定量すればよい。相関データとは、例えば検量線である。定量はカイネティック法により行ってもよく、エンドポイント法によって行ってもよい。

エンドトキシンの測定を行うことのできる被験試料としては、特に制限されず、医療用水、医薬品、輸液、血液製剤、医療機器、医療器具、化粧品、飲食品、環境試料(例えば、空気、河川、土壌)、生体成分(例えば、血液、体液、組織)、天然のタンパク質、組換えタンパク質、核酸、糖質等が挙げられる。被験試料は、例えば、注射剤であってよい。注射剤とは、生体内に注射によって投与され得るものをいう。注射剤は、市場流通時に液体である必要はなく、凍結乾燥品であってもよい。被験試料は、それ自体を、あるいはその抽出物や洗浄液を反応系に混合、分散、又は溶解し、エンドトキシンの測定に供することができる。

また、上述の通り、本発明のファクターCは、イオンによる活性阻害を受けにくい性質を有していてもよい。よって、本発明の一態様においては、イオンを含有する被験試料中のエンドトキシンの測定を好適に行うことができる。

すなわち、被験試料は、イオンを含有する被験試料であってよい。「イオンを含有する」とは、被験試料が、エンドトキシンの測定時にイオンとして存在する物質を含有していることをいう。すなわち、ここでいう「イオン」とは、もともとイオン化した状態で被験試料中に含有されているものであってもよく、もともとは塩の状態で被験試料中に含有されているがエンドトキシンの測定時にはイオン化しているものであってもよい。イオンの種類は特に制限されない。イオンとしては、例えば、カチオンが挙げられる。カチオンとしては、例えば、金属イオンが挙げられる。金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンが挙げられる。アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンとして、具体的には、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが挙げられる。被験試料におけるイオンの含有量は、例えば、被験試料に由来するカチオンの濃度が、被験試料とエンドトキシン測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、1mM以上、2mM以上、5mM以上、10mM以上、20mM以上、50mM以上、または100mM以上となるような量であってよい。塩として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、イオタラム酸ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムが挙げられる。被験試料における塩の含有量は、例えば、被験試料に由来する塩の濃度が、被験試料とエンドトキシン測定剤とを混合した後の反応系における終濃度として、1mM以上、2mM以上、5mM以上、10mM以上、20mM以上、50mM以上、または100mM以上となるような量であってよい。被験試料は、1種のイオン(または塩)を含有していてもよく、2種またはそれ以上のイオン(または塩)を含有していてもよい。

以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の例示であり、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。

1.ファクターCタンパク質の調製 (1)昆虫細胞(Sf9)によるファクターCの発現 本項では、昆虫細胞であるSf9を宿主細胞として用いて、以下の手順により、ファクターCを調製した。

日本産カブトガニTachypleus tridentatusのファクターCをコードするDNAを、昆虫細胞用の発現ベクターであるpIZ-V5(Life Technologies Corporation)のEcoRVとMluI認識部位の間に挿入し、ファクターC発現プラスミドを作製した。同DNAの塩基配列を配列番号1に、同DNAにコードされるファクターCのアミノ酸配列を配列番号2に示す(以下、本実施例において同じ)。

ファクターC発現プラスミドを、セルフェクチン試薬(Life Technologies Corporation)を使ったトランスフェクションにより、Sf9培養細胞に導入した。Sf9を、300-600 μg/mLのZeocin(Life Technologies Corporation)を含むSf900III無血清培地(Life Technologies Corporation)で、28℃で静置培養し、発現プラスミドがゲノム上に導入されたSf9を選択した。

ファクターC遺伝子を安定発現しているSf9の候補をクローニングシリンダー法で単離し、複数のSf9細胞株をクローン化した。得られたクローンをそれぞれ培養し、培養上清を得た。培養上清中への組換えファクターCタンパク質の分泌を、抗ファクターC抗体(2C12抗体;Yoshiki Miura, et al., J. Biochem. 112: 476-481 (1992))を用いたウエスタンブロット法により確認した。また、培養上清のファクターC活性(エンドトキシンによる活性化能)を合成基質Boc-LGR-pNAを用いた活性測定により確認した。なお、活性測定の手順は、「4.活性測定」に後述する通りである(以下、本実施例において同じ)。ウエスタンブロット及び活性測定の結果に基づき、ファクターC高発現Sf9細胞株を選抜した。

ファクターC高発現Sf9細胞株を、1xペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies Corporation)と50μg/mLゼオシンを含んだSf900III培地で対数増殖期後半(6-8x10^6 cells/mL)まで浮遊培養(28℃)し、遠心分離(3,000xg、30分、4℃)により培養上清を得た。培養上清を0.22μmのフィルターでろ過し、得られた画分(ろ液)を組換えファクターC(Sf9)とした。

(2)哺乳類細胞(CHO DG44)によるファクターCの発現 本項では、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株であるCHO DG44を宿主細胞として用いて、以下の手順により、ファクターCを調製した。

日本産カブトガニTachypleus tridentatusのファクターCをコードするDNAを、哺乳類細胞用の発現ベクターであるpCI-neo (Promega) のEcoRIとXbaI認識部位の間に挿入し、ファクターC発現プラスミドを作製した。この際、ファクターCの開始コドンの直前にkozak配列(GCCACC)を付加した。

ファクターC発現プラスミドとdhfr発現プラスミドを、リポフェクション試薬(Lipofectamine LTX)(Life Technologies Corporation)を使った同時トランスフェクションにより、CHO DG44培養細胞に導入した。CHO DG44を1mg/mL Geneticin(Life Technologies Corporation)を加えたRPMI1640培地(5% 透析血清、1xペニシリン/ストレプトマイシンを含む)(Sigma)で、37℃、5% CO2供給下で静置培養し、発現プラスミドがゲノム上に導入されたCHO DG44を選択した。

同時トランスフェクション15日後から、培地にMTX(メトトレキセート)(和光純薬工業)を添加し、50nMから5,000nMまで3ヶ月かけて段階的にMTX濃度を上げて、ファクターC高発現CHO DG44細胞株をポリクローンで取得した。導入したファクターC遺伝子がMTXの効果で増幅されていることは、2C12抗体を用いたウエスタンブロット法による培養上清中のファクターCの検出とリアルタイムPCRによるファクターCのmRNA転写量の定量を行うことにより確認した。

ポリクローンのファクターC高発現CHO DG44細胞群を、0.5 cell/wellになるように培地で希釈し、96 wellプレートに播種した。播種後10-20日頃より、形成された細胞コロニーを順次、拡大培養し、ファクターC高発現CHO DG44細胞株のクローン化をおこなった。ファクターCのmRNA転写量をリアルタイムPCRで、ファクターCタンパク質の培地への分泌量を2C12抗体を用いたウエスタンブロット法で、培養上清のファクターC活性(エンドトキシンによる活性化能)を合成基質Boc-LGR-pNAを用いた活性測定で、それぞれ確認し、モノクローンのファクターC高発現CHO DG44細胞株を選抜した。

ファクターC高発現CHO DG44細胞株(モノクローン)を、5μM MTXを含む無血清完全合成培地への馴化を経て浮遊化させた。同株を、37℃、5%CO2供給下、対数増殖後期まで生育させ、浮遊培養液を遠心分離(3,000xg、30分、4℃)して培養上清を得た。培養上清を0.22μmのフィルターでろ過し、得られた画分(ろ液)を組換えファクターC(CHO)とした。

(3)哺乳類細胞(HEK293)によるファクターCの発現 本項では、ヒト胎児腎細胞由来細胞株であるHEK293を宿主細胞として用いて、以下の手順により、ファクターCを調製した。

日本産カブトガニTachypleus tridentatusのファクターCをコードするDNAを、哺乳類細胞用の発現ベクターであるpCA7 (Makoto Takeda, et al., J. Viol. 79(22): 14346-54 (2005)) のEcoRIとXhoI認識部位に挿入し、ファクターC発現プラスミドを得た。この際、ファクターCの開始コドンの直前にkozak配列(GCCACC)を付加した。

ファクターC発現プラスミドを、ポリエチレンイミン(Sigma)を使ったトランスフェクション法(橋口ら, ヒト培養細胞を用いた組換え蛋白質の発現 -293系統細胞によるスタンダードプロトコール-, 蛋白質科学会アーカイブ, 1, e017 (2008), http://www.pssj.jp/archives/Protocol/Expression/293_01/293_01_01.html)により、HEK293培養細胞に導入した。HEK293を、DMEM培地(10% 胎児血清、2mM L-グルタミンを含む)(Sigma)で、培地交換せずに、37℃、5%CO2供給下で静置培養した。トランスフェクションから4日後、培養液を回収し、遠心分離(3,300xg、30分、4℃)により培養上清を得た。培養上清を0.22μmのフィルターでろ過し、得られた画分(ろ液)を組換えファクターC(HEK)とした。

(4)天然ファクターC(Tachypleus tridentatus血球細胞由来)の調製 日本産カブトガニTachypleus tridentatusの血球細胞抽出液から、ファクターBとファクターCを含む画分を、デキストランサルフェート樹脂によるカラムクロマトグラフィー(Takanori Nakamura, et al., Eur. J. Biochem. 154: 511-521 (1986))により得た。この画分5 mLを、Sepharose CL6Bゲル(GEヘルスケア)を充填したカラム(φ2.2 cmx 97cm)を用いてゲルろ過に供した。ゲルろ過は、公知の手法(Jeak Ling Ding and Bow Ho, US5,712,144; Jeak L. Ding, et al., Biochem. Biophys. Acta 1202: 149-156)とほぼ同一の条件で行った。流速は15 mL/時間とし、溶媒には154 mM NaCl、1 mM EDTA、5% DMSOを含む50 mM Trisバッファー(pH8.0)を使用した。

ゲルろ過の溶出画分(3.7mL/本、150本)を、SDS-PAGEとCBB染色、2C12抗体を用いたウエスタンブロット法、及び合成基質Boc-LGR-pNAを用いた活性測定に供し、ファクターCタンパク質を含む画分を同定した。この精製ファクターCタンパク質を含む画分を天然ファクターC(TAL)とした。

2.組換えファクターBと組換えプロクロッティングエンザイムの調製 日本産カブトガニTachypleus tridentatusのファクターBをコードするDNAを、昆虫細胞用の発現ベクターであるpIZ-V5(Life Technologies Corporation)のEcoRVとMluI認識部位の間に挿入し、ファクターB発現プラスミドを作製した。同DNAの塩基配列を配列番号9に、同DNAにコードされるファクターBのアミノ酸配列を配列番号6に示す。なお、配列番号9に示す塩基配列は、昆虫細胞での発現に最適化された塩基配列である。

日本産カブトガニTachypleus tridentatusのプロクロッティングエンザイムをコードするDNAを、昆虫細胞用の発現ベクターであるpIZ-V5(Life Technologies Corporation)のEcoRVとMluI認識部位の間に挿入し、プロクロッティングエンザイム発現プラスミドを作製した。同DNAの塩基配列を配列番号7に、同DNAにコードされるプロクロッティングエンザイムのアミノ酸配列を配列番号8に示す。

ファクターCの場合と同様の方法で、発現プラスミドをそれぞれSf9細胞に導入、高発現クローンを選択し、培養上清を調製した。各培養上清を0.22μmのフィルターでろ過し、得られた画分(ろ液)をそれぞれ組換えファクターBおよび組換えプロクロッティングエンザイムとした。各因子が得られたことは、各因子に対する特異的な抗体を用いたウエスタンブロット法と活性測定によりそれぞれ確認した。

3.ファクターCタンパク質の分子量の比較(1) 上記で調製した4種類のファクターCタンパク質について、SDS-PAGEおよびウエスタンブロット法により分子量を比較した。

まず、それぞれ図2に示す量のファクターCを、5-20%グラジエントゲルを用いた非還元SDS-PAGEに供した。図中、Sf9、CHO、HEKは、それぞれSf9、CHO DG44、HEK293に発現させたファクターCを意味し、TALは、天然ファクターCを意味する(以下、同じ)。なお、ファクターCは還元条件下でH鎖とL鎖に切断および分離される。本実施例では、インタクト(intact)なファクターCの分子量を比較するため、非還元条件でSDS-PAGEをおこなった。

SDS-PAGEの後、PVDF膜(Bio RAD)へセミドライブロッターでタンパク質を転写した。PVDF膜を回収し、5%スキムミルクでブロッキングした後、一次抗体(2C12抗体)、二次抗体(HRP-標識抗マウス-ヤギ抗体)(Dako)の順で処理した。次いで、検出試薬 SuperSignal West Dura(Thermo Scientific)でファクターCのバンドを発光させ、CCDカメラで記録した。

4種類のファクターCはそれぞれ分子量が異なり、CHO、TAL、HEK、Sf9の順に大きかった(図2)。

シンガポール産カブトガニ(Carcinoscorpius rotundicauda)について、血球細胞抽出液から精製した天然ファクターCタンパク質、昆虫細胞であるSf9、S2、およびアフリカミドリザルの腎細胞由来細胞株であるCOS-1のそれぞれを宿主細胞として用いて作製した組換えファクターCタンパク質の分子量は、全て132 kDaであると報告されている(天然ファクターCタンパク質についてJeak Ling Ding and Bow Ho, US5,712,144; Jeak L. Ding, et al., Biochem. Biophys. Acta 1202: 149-156 (1993)、Sf9およびS2についてJing Wang, et al., J. Biol. Chem. 277(39): 36363-72 (2002)、COS-1についてRoopashree S. Dwarakanath, et al., Biotechnology letters 19(4): 357-361 (1997))。

そこで、上記で調製した4種類のファクターCの内、CHOおよびTALについて、分子量の正確な測定を行った。まず、天然ファクターC(TAL)と同じ手法で、組換えファクターC(CHO)を精製した。次いで、公知の手法(Jeak Ling Ding and Bow Ho, US5,712,144; Jeak L. Ding, et al., Biochem. Biophys. Acta 1202: 149-156)と同一の条件で電気泳動(15%ゲル、LMW Marker kit(GEヘルスケア))を行い、Ferguson plotにより各ファクターCの分子量を決定した。その結果、組換えファクターC(CHO)の分子量は126 kDa、天然ファクターC(TAL)の分子量は123 kDaであった(図3)。すなわち、日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の天然ファクターC(TAL)および組換えファクターC(CHO)の分子量は、いずれも、シンガポール産カブトガニCarcinoscorpius rotundicauda由来のファクターCの分子量(132 kDa)よりも小さいことが判明した。

なお、上記で調製した4種類のファクターCの分子量の違いは、宿主細胞の種類に応じた翻訳後修飾(糖鎖修飾)の差によるものと考えられる。例えば、哺乳類細胞では翻訳後のN型糖鎖にシアル酸が結合するため、哺乳類細胞で作製した組換えタンパク質は、昆虫細胞で作製した組換えタンパク質よりもサイズが大きくなることが知られており(Robert L. Harrison and Donald L. Jarvis, Methods in Molecular Biology 338: 341-356 (2007))、このことは本実施例の結果(図2)と一致する。

4.活性測定 上記で調製した4種類のファクターCのそれぞれを、他の因子と組み合わせて、以下の手順で活性測定を行った。活性測定のスキームを図4に示す。

図4に示すように、ファクターC以外の共通材料(組換えファクターB、組換えプロクロッティングエンザイム、合成基質Boc-LGR-pNA、トリスバッファー)を混合し、共通混液を調製した。共通混液にそれぞれ図6に示す量のファクターCを加えて50μLとして、検体50μL(米国薬局方標準エンドトキシン(USP-RSE)(生化学工業)を含む水)と混合し、37℃で30分間加温した。このアッセイ系では、エンドトキシンによりファクターCが活性化されて活性型ファクターCが生成し、活性型ファクターCによりファクターBが活性化されて活性型ファクターBが生成し、活性型ファクターBによりプロクロッティングエンザイムが活性化されてクロッティングエンザイムが生成し、クロッティングエンザイムが合成基質Boc-LGR-pNAを切断して、パラニトロアニリンが遊離する(図5)。パラニトロアニリンの生成に基づく吸光度(A405nm)変化を経時的に測定し、単位時間当たりの吸光度変化率(mAbs/min)としてファクターC活性を算出した。測定はn=3で行った。

なお、上記アッセイ系における各因子の終濃度は以下の通りであった。組換えファクターB:30μg/mL、組換えプロクロッティングエンザイム:30μg/mL、組換えファクターC(Sf9):11.3μg/mL、組換えファクターC(CHO):12μg/mL、組換えファクターC(HEK):51.5μg/mL、ファクターC(TAL):0.25μg/mL。なお、上記濃度(TAL以外)は、各因子を発現させて調製したサンプル(ろ液)中のタンパク質が全て目的の因子であると仮定して算出したものである。また、ファクターC(TAL)濃度は、精製後のファクターC(TAL)の濃度である。

上記で調製した4種類のファクターCのそれぞれについて同等の活性を示す再構成系を構築することができた(図6)。また、いずれの再構成系も、検体中に含まれるエンドトキシン濃度(0.05及び0.1EU/mL)の増大に応じて活性が増大した。

哺乳類細胞COS-1で作製したCarcinoscorpius rotundicauda由来の組換えファクターC(132 kDa)は不溶性画分に回収されることが報告されている(Roopashree S. Dwarakanath, et al., Biotechnology letters 19(4): 357-361 (1997); Jing Wang, Bow Ho and Jeak L. Ding, Biotechnology letters 23: 71-76 (2001))。また、昆虫細胞S2で作製したCarcinoscorpius rotundicauda由来の組換えファクターC(132 kDa)は、エンドトキシンに依存したプロテアーゼの活性を示さないと報告されている(Jing Wang, et al., J. Biol. Chem. 277(39): 36363-72 (2002))。後者(S2で作製したファクターC)については、レクチンへの反応性の違いから、糖鎖構造がCarcinoscorpius rotundicauda由来の天然ファクターCや昆虫細胞Sf9で作製した組換えファクターCと異なるので活性がない、と推測されている。

一方、本実施例の結果より、Tachypleus tridentatus由来の組換えファクターC(Sf9、CHO、HEK)は、分子量が天然のファクターC(TAL)と異なっていても、すなわち糖鎖構造が天然のファクターC(TAL)と異なっていても、エンドトキシンに依存した活性を示すことが明らかとなった。

5.注射剤による活性阻害 エンドトキシンは強な免疫反応誘起物質であるため、エンドトキシンに汚染された注射剤を体内に入れた場合には、重大な副作用が起こる。そのため、注射剤の製造においては、カブトガニ・アメボサイト・ライセート試薬を用いたエンドトキシン試験を行い、エンドトキシン汚染がないことを確認するよう、各国薬局方で義務付けられている。

そこで、上記で調製した4種類のファクターCについて、各種注射剤中のエンドトキシンへの反応性を比較した。

対照検体としては、注射用水にエンドトキシンを添加したもの(エンドトキシン濃度0.05EU/mL)を使用した。測定検体としては、10w/v%塩化ナトリウム注射液(10%塩化ナトリウム注射液:大塚製薬株式会社)の4倍希釈液、0.5M硫酸マグネシウム注射液(硫酸Mg補正液1mEq/mL:大塚製薬株式会社)の16倍希釈液、生理食塩液(大塚生食注:大塚製薬株式会社)の原液、7w/v%炭酸水素ナトリウム注射液(メイロン静注7%:大塚製薬株式会社)の8倍希釈液、10w/v%クエン酸ナトリウム注射液(輸液用 クエン酸ナトリウム静注液:扶桑薬品工業株式会社)の8倍希釈液、0.5M塩化カルシウム注射液(塩化Ca補正液1mEq/mL:大塚製薬株式会社)の100倍希釈液、リンゲル液(リンゲル液「フソー」:扶桑薬品工業株式会社)の原液、およびイオタラム酸ナトリウム注射液(コンレイ400注:第一三共株式会社)の16倍希釈液にエンドトキシンを添加したもの(エンドトキシン濃度0.05EU/mL)を使用した。なお、10w/v%クエン酸ナトリウム注射液の8倍希釈液を測定検体とした場合、クエン酸ナトリウムの終濃度は約21mMである。7w/v%炭酸水素ナトリウム注射液の8倍希釈液を測定検体とした場合、炭酸水素ナトリウムの終濃度は約52mMである。10w/v%塩化ナトリウム注射液の4倍希釈液を測定検体とした場合、塩化ナトリウムの終濃度は約214mMである。生理食塩液の原液を測定検体とした場合、塩化ナトリウムの終濃度は約77mMである。0.5M硫酸マグネシウム注射液の16倍希釈液を測定検体とした場合、硫酸マグネシウムの終濃度は約16mMである。0.5M塩化カルシウム注射液の100倍希釈液を測定検体とした場合、塩化カルシウムの終濃度は約2.5mMである。図4に示す手順でファクターCの活性測定を行い、対照検体中のエンドトキシンに対する反応性を100%として、各種注射剤中のエンドトキシンに対する反応性の相対値(%)を残存活性とした。測定はn=4で行った。

結果を図7に示す。代表的な注射剤を測定検体とした場合、注射用水を用いた場合と比較して、エンドトキシンへの反応性が阻害された。また、反応阻害の程度は、注射剤の種類とファクターCを発現する宿主細胞の種類に応じて異なっていた。組換えファクターC(CHO)と組換えファクターC(HEK)は、天然ファクターC(TAL)に比べ、すべての注射剤に対して、反応阻害を受けにくい傾向を示した。特に、組換えファクターC(CHO)は、多くの場合、最も高い残存活性を示した。一方、組換えファクターC(Sf9)は、多くの注射剤(サンプルNo.6以外の7種類)について、最も反応阻害を受けやすかった。

これらの結果から、哺乳類細胞で発現したファクターCは、イオンによる活性阻害を受けにくい性質を有し得ると考えられる。このような性質は、注射剤の製造におけるエンドトキシン汚染の検出に特に有用である。

6.L鎖特異的なファクターCタンパク質抗体の作製 ファクターCタンパク質は、非還元状態では1本鎖(Full)で存在し、還元状態ではH鎖とL鎖の2本に解離することが知られている。抗ファクターCモノクローナル抗体(2C12抗体)は、FullとH鎖を認識することが報告されている(Yoshiki Miura, et al., J. Biochem. 112: 476-481(1992))。そこで、L鎖中に存在するペプチド抗原を作製し、常法によりウサギに免疫して、L鎖とFullを認識するポリクローナル抗体(FCL抗体)を製造した(図10)。

7.組換えファクターCタンパク質の精製 上記「1.ファクターCタンパク質の調製」の「(4)天然ファクターC(Tachypleus tridentatus)の調製」に記述した方法に準じて、哺乳類細胞(CHO DG44、HEK293)と昆虫細胞(Sf9)の培養上清から3種類の組換えファクターCタンパク質を精製した。方法の概要としては、培養上清(100〜300mL)をデキストランサルフェート樹脂によるカラムクロマトグラフィーにかけ、組換えファクターCを含む溶出画分を更にゲルろ過で分離した。各組換えファクターCタンパク質が精製されたことは、SDS-PAGEとCBB染色、2C12抗体を用いたウエスタンブロット法、および活性測定により確認した。

8.ファクターCタンパク質の分子量の比較(2) 4種類の精製ファクターCタンパク質について、SDS-PAGEおよびウエスタンブロット法により改めて分子量を比較した。

天然カブトガニ由来(TAL)、CHO DG44の培養上清由来(CHO)、HEK293の培養上清由来(HEK)、Sf9の培養上清由来(Sf9)の4種類の精製ファクターCタンパク質を同一のゲル(15%ゲル)上でSDS-PAGEに供し、CBB染色をおこなった(図11)。4種類の精製ファクターCタンパク質は、いずれも、非還元状態では一本鎖(Full)であり、還元状態ではH鎖とL鎖の2本に解離した。また、PVDF膜に転写後、2C12抗体とFCL抗体によるウエスタンブロットをおこなった(図12)。抗体の認識部位(図10)に対応して、2C12抗体はFullとH鎖を、FCL抗体はFullとL鎖を、それぞれ特異的に認識した。これにより、図11にみられたCBBのバンドはファクターC由来のバンドであることが確認された。また、ファクターCの分子量は、非還元状態でのFull、還元状態でのH鎖およびL鎖のすべてについて、CHOが一番大きく、TALとHEKがほぼ同じ、Sf9が一番小さいことが確認された。

より詳細に4種類の精製ファクターCの分子量を比較するために、公知の手法(Jeak Ling Ding and Bow Ho, US5,712,144; Jeak L. Ding, et al., Biochem. Biophys. Acta 1202: 149-156)と同じ条件で電気泳動(15%ゲル、LMWマーカー(GEヘルスケア))を行い、CBB染色後、Ferguson plotで分子量を決定した。

結果を表1に示す。非還元条件下において、TALは124 kDaであり、文献報告の123 kDaとよく似た結果になった。一方、CHOはそれよりも大きい128 kDaであり、HEKはTALと同じく124 kDaであった。一方、Sf9は109 kDaであり、TALよりも小さい分子量であった。以上の結果より、昆虫細胞(Sf9)で発現した場合は天然のファクターC(TAL)よりも分子量の小さい組換えファクターCタンパク質が生産され、哺乳類細胞(CHO、HEK)で発現した場合は天然のファクターC(TAL)よりも分子量の大きいまたは同等の組換えファクターCタンパク質が生産されることが判明した。この傾向は還元条件下のH鎖とL鎖においても同様であった。

シンガポール産カブトガニCarcinoscorpius rotundicauda由来の天然ファクターCとその遺伝子を昆虫細胞で発現して得られた組換えファクターCの非還元下での分子量はいずれも132 kDaと報告されているが、本実施例で得られた日本産カブトガニTachypleus tridentatus由来の4種類の精製ファクターCは、いずれも、それよりも分子量が小さいことが判明した(表1)。

9.N型糖鎖修飾の確認 本実施例で組換えファクターCを発現する際に使用した遺伝子は全てTachypleus tridentatus由来の配列で、末端にタグが付加されないように発現プラスミドを設計している。このため、本実施例で得られた4種類のファクターCの翻訳アミノ酸配列は同一と考えられる。更に、組換えファクターC(HEK、Sf9)のN末端アミノ酸の部分配列を決定した所、文献報告にあるTachypleus tridentatusの天然ファクターCの配列と同一であることが確認された(データ示さず)。

一般に、翻訳後修飾はタンパク質の分子量に大きく影響するといわれている。更に、昆虫細胞と哺乳類細胞の間では、翻訳後修飾によりタンパク質に付加されるN型糖鎖の構造に違いがあることが報告されている。本実施例で観察された精製ファクターCの分子量の差がN型糖鎖の違いに由来するのか確かめるために、ファクターCタンパク質をグライコペプチダーゼFで処理した。本酵素はタンパク質に結合したN型糖鎖を切断除去することが知られている。よって、本酵素処理により精製ファクターCが均一の分子量になれば、N型糖鎖がファクターC間の分子量の差の原因であることが示唆される。

添付の説明書に従い、精製ファクターCタンパク質1μgを、SDSと還元剤の存在する変性条件下で、1mUのグライコペプチダーゼF(TaKaRa)で処理した。処理後のサンプルをSDS-PAGEで分離後、ウエスタンブロット法で解析した。結果を図13に示す。H鎖については、4種類のいずれも、グライコペプチダーゼ処理により分子量が減少し、その分子量は均一になることが確認された。一方、L鎖については、4種類のいずれも、グライコペプチダーゼ処理により分子量が減少したが、均一な分子量となったのはCHO、HEK、TALの3種類のみであった。すなわち、4種類のL鎖の内、Sf9由来のファクターCのL鎖は、グライコペプチダーゼ処理後の分子量が他の3つに比べ大きいことが判明した。このことから、Sf9由来のファクターCのL鎖では、N型糖鎖修飾以外に何らかの翻訳後修飾がなされていると考えられた。

以上の解析より、翻訳後のN型糖鎖修飾の差がファクターCの分子量の差の主要因であることが示された。

10.ファクターCのN型糖鎖の解析 タンパク質のN型糖鎖修飾において、哺乳類細胞では、タンパク質のアスパラギン残基上で段階的に糖が付加され、最終的に末端にシアル酸を含む「コンプレックス(COMPLEX)型」の糖鎖が生成する。一方、昆虫細胞では、多くの場合シアル酸は付加されず、末端がマンノースの「パウチマンノース(PAUCIMANNOSE)型」の糖鎖が生成する(Robert L. Harrison and Donald L. Jarvis, Methods in Molecular Biology 338:341-356(2007))。4種類の精製ファクターCタンパク質のN型糖鎖の差を確認する目的で、末端シアル酸特異的レクチン(Maackia amurensis Agglutinin (MAM)、Sambucus sieboldiana Agglutinin (SSA))等の各種レクチンを用いてレクチンブロットを行った。

4種類の精製ファクターCと陽性コントロールの牛Fetuinタンパク質の希釈系列(100、25、6ng)をニトロセルロース膜にドットブロット後、3%BSAでブロッキングした。ビオチン標識したレクチン((株)J-オイルミルズ)、ストレプトアビジン標識したHRP(Thermo Scientific)を順に反応させ、HRP基質(Thermo Scientific)の分解による発光を検出した。コントロールとして、レクチンの代わりに2C12抗ファクターC抗体を使い、4種類のファクターCが同量ブロットされていることを確認した。

レクチンブロットの結果を図14(a)に、用いたレクチンの結合特異性を図14(b)に示す。フコース特異的レクチンであるLens culinaris Agglutinin (LCA)とバイアンテナ型、高マンノース型、およびコンプレックス型の糖鎖特異的レクチンであるCanavalia ensiformis Agglutinin (ConA)は、4種類のファクターCとFetuinの全サンプルに結合した。一方、(α-2,3)結合の末端シアル酸特異的レクチンであるMAMを使用した場合、CHO、HEKの順に強く反応し、TALとFetuinでは同程度の弱い反応がみられたが、Sf9では反応がみられなかった。(α-2,6)結合の末端シアル酸特異的レクチンであるSSAを使用した場合、HEK、TAL、Fetuinでは反応がみられたが、CHOとSf9では反応がみられなかった。

以上の結果、組換えファクターCのN型糖鎖は、哺乳類細胞(CHO、HEK)で発現した場合には(α-2,3)結合の末端シアル酸を含むのに対し、昆虫細胞(Sf9)で発現した場合には(α-2,3)結合の末端シアル酸を含まないことが示唆された。本実験結果と文献報告から予想される組換えファクターCのN型糖鎖の構造模式図を図14(c)に示す。本実験結果も、翻訳後のN型糖鎖修飾の差がファクターCの分子量の差の主要因であることを支持するものである。

本発明によれば、カブトガニの組換えファクターCを効率的に製造できる。また、本発明の一態様においては、イオンを含有する被験試料中のエンドトキシンを、反応阻害を低減して測定することができる。

配列表の説明 配列番号1:日本産カブトガニのファクターC遺伝子のDNA配列 配列番号2:日本産カブトガニのファクターCのアミノ酸配列 配列番号3:東南アジア産(シンガポール産)カブトガニのファクターC遺伝子のDNA配列 配列番号4:東南アジア産(シンガポール産)カブトガニのファクターCのアミノ酸配列 配列番号5:日本産カブトガニのファクターB遺伝子のDNA配列 配列番号6:日本産カブトガニのファクターBのアミノ酸配列 配列番号7:日本産カブトガニのプロクロッティングエンザイム遺伝子のDNA配列 配列番号8:日本産カブトガニのプロクロッティングエンザイムのアミノ酸配列 配列番号9:昆虫細胞での発現にコドンを最適化した、日本産カブトガニのファクターB遺伝子のDNA配列 配列番号10:ペプチド配列

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