かゆみの抑制

申请号 JP2016524895 申请日 2014-07-09 公开(公告)号 JP2016528889A 公开(公告)日 2016-09-23
申请人 イプセン バイオイノベーション リミテッド; イプセン バイオイノベーション リミテッド; 发明人 キース・フォスター;
摘要 かゆみの抑制本発明は、かゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチドを提供し、該ポリペプチドは次のものを含む:非細胞毒性プロテアーゼ、ここで、該プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体においてSNAREタンパク質を切断することができる;該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上の結合部位に結合することのできる標的化部分(TM)、ここで、該結合部位は、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体内にあるエンドソームに組み込まれるようにエンドサイトーシスを受けることができ、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体は、該SNAREタンパク質を発現し;及びエンドソーム内からエンドソーム膜を横切って該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルにプロテアーゼを転位することのできる転位ドメイン;ただし、該ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒(ホロトキシン)分子ではないものとする。
权利要求

かゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチドであって、該ポリペプチドは次のものを含み: (i)非細胞毒性プロテアーゼ、ここで、該プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体においてSNAREタンパク質を切断することができる; (ii)該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上の結合部位に結合することのできる標的化部分(TM)、ここで、該結合部位は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体内にあるエンドソームに組み込まれるようにエンドサイトーシスを受けることができ、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体は、該SNAREタンパク質を発現し;及び (iii)エンドソーム内からエンドソーム膜を横切って該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルにプロテアーゼを転位することのできる転位ドメイン; ただし、該ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒(ホロトキシン)分子ではないものとする。前記TMがMas関連Gタンパク質共役受容体(Mrgpr)に結合する、請求項1に記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMがMrgprX、MrgprA若しくはMrgprC又はその受容体アナログよりなる群から選択される受容体に結合する、請求項1又は2に記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMが、ウシ副腎髄質(BAM)ペプチド、メラニン細胞刺激ホルモンペプチド(MSH)、Y−G/Y−アミドで終端する神経ペプチド、クロロキン(CQ)、SLIGRL−NH2を含むペプチド、ヒスタミン、セロトニン、カプサイシン、コルチスタチン又はその短縮型若しくはペプチドアナログよりなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMが、BAM8-22、γ2−MSH、SLIGRL、NPAF、NPFF、クロロキン(CQ)、ヒスタミン若しくはセロトニン、カプサイシン、コルチスタチン又はそれらの短縮型及びペプチドアナログから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMがMrgprX1受容体に結合する、請求項1〜5のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMは、BAM8-22ペプチド若しくはその短縮型及びペプチドアナログである、請求項1〜6のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記非細胞毒性プロテアーゼがクロストリジウム神経毒素L鎖又はIgAプロテアーゼを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記転位ドメインがクロストリジウム神経毒転位ドメインを含む、請求項1〜8のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。請求項1〜9のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチドをコードする核酸。請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチド又は核酸の有効量を患者に投与することを含む、患者におけるかゆみを抑制又は治療する方法。次のものを含むポリペプチド: (i)非細胞毒性プロテアーゼ、ここで、該プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体においてSNAREタンパク質を切断することができる; (ii)該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上の結合部位に結合することのできる標的化部分(TM)、ここで、該結合部位は、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体内にあるエンドソームに組み込まれるようにエンドサイトーシスを受けることができ、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体は、該SNAREタンパク質を発現し;及び (iii)エンドソーム内からエンドソーム膜を横切って該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルにプロテアーゼを転位することのできる転位ドメイン; ただし、該ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒(ホロトキシン)分子ではないものとし、該TMは、ウシ副腎髄質(BAM)ペプチド、メラニン細胞刺激ホルモンペプチド(MSH)、Y−G/Y−アミドで終端する神経ペプチド、クロロキン(CQ)、SLIGRL−NH2を含むペプチド、ヒスタミン、セロトニン、カプサイシン、コルチスタチン又はその短縮型若しくはペプチドアナログよりなる群から選択される。

かゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチドであって、該ポリペプチドは次のものを含み: (i)非細胞毒性プロテアーゼ、ここで、該プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体においてSNAREタンパク質を切断することができる; (ii)該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上のMas関連Gタンパク質共役受容体(Mrgpr)に結合することのできる標的化部分(TM)、ここで、該Mas関連Gタンパク質共役受容体(Mrgpr)は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体内にあるエンドソームに組み込まれるようにエンドサイトーシスを受けることができ、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体は、該SNAREタンパク質を発現し;及び (iii)エンドソーム内からエンドソーム膜を横切って該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルにプロテアーゼを転位することのできる転位ドメイン; ただし、該ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒(ホロトキシン)分子ではないものとする。前記TMがMrgprX、MrgprA若しくはMrgprC又はその受容体アナログよりなる群から選択される受容体に結合する、請求項1に記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMが、ウシ副腎髄質(BAM)ペプチド、メラニン細胞刺激ホルモンペプチド(MSH)、Y−G又はY−アミドで終端する神経ペプチド、クロロキン(CQ)、SLIGRLNH2を含むペプチド、ヒスタミン、セロトニン、カプサイシン、コルチスタチン又はその短縮型若しくはペプチドアナログよりなる群から選択される、請求項1〜2のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMが、BAM8-22、γ2−MSH、SLIGRL、NPAF、NPFF、クロロキン(CQ)、ヒスタミン若しくはセロトニン、カプサイシン、コルチスタチン又はそれらの短縮型及びペプチドアナログから選択される、請求項1〜3のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMがMrgprX1受容体に結合する、請求項1〜4のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記TMは、BAM8-22ペプチド若しくはその短縮型及びペプチドアナログである、請求項1〜5のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記非細胞毒性プロテアーゼがクロストリジウム神経毒素L鎖又はIgAプロテアーゼを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。前記転位ドメインがクロストリジウム神経毒転位ドメインを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のかゆみの抑制又は治療に使用するためのポリペプチド。かゆみの抑制又は治療に使用するための請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸。請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチド又は核酸の有効量を患者に投与することを含む、患者におけるかゆみを抑制又は治療する方法。次のものを含むポリペプチド: (i)非細胞毒性プロテアーゼ、ここで、該プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体においてSNAREタンパク質を切断することができる; (ii)該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上のMas関連Gタンパク質共役受容体(Mrgpr)に結合することのできる標的化部分(TM)、ここで、該Mas関連Gタンパク質共役受容体(Mrgpr)は、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体内にあるエンドソームに組み込まれるようにエンドサイトーシスを受けることができ、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体は、該SNAREタンパク質を発現し;及び (iii)エンドソーム内からエンドソーム膜を横切って該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルにプロテアーゼを転位することのできる転位ドメイン; ただし、該ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒(ホロトキシン)分子ではないものとし、該TMは、メラニン細胞刺激ホルモンペプチド(MSH)、Y−G又はY−アミドで終端する神経ペプチド、クロロキン(CQ)、SLIGRL−NH2を含むペプチド、ヒスタミン、セロトニン又はその短縮型若しくはペプチドアナログよりなる群から選択される。請求項11に記載のポリペプチドをコードする核酸。

说明书全文

本発明は、かゆみを抑制し又は治療するための方法及び組成物を提供する。

医学的には掻痒症として知られているかゆみは、「引掻きに対する欲求又は反射を誘発する不快な皮膚感覚」であると定義されている。重度のかゆみを有する患者は、それに伴う不快感及び心理的障害、例えばうつ病や睡眠不足などのため、普通の生活を過ごすのが困難な場合が多いことが分かっている。また、かゆみは、多数の皮膚、全身及び神経系障害を伴う衰弱状態の場合もある。

かゆみは、痛みの知覚に関連する逃避反応によっては効果的に除去されないであろう昆虫及び植物の棘といった小さな取り付きの脅威から動物を保護するために進化したと仮定されている。かゆみニューロンと痛みニューロンと間における重複には近い進化的関係が明白である:両方とも、無髄C型神経線維(侵害受容体)の自由神経終末を介して仲介される。生体アミン、アルカロイド、プロテアーゼ及びペプチドといった、これらの神経を刺激することができる無数のメディエーターが存在する。侵害受容体は、それらの周辺軸索を介してメディエーターを検出し、脊髄にシグナルを送って、例えば、脳内にかゆみの知覚を生じさせる。臨床医にとって、かゆみと痛みとの重複は、神経因性疼痛を引き起こす可能性のある同じ神経疾患が神経障害性のかゆみも引き起こす可能性があることを意味する。しかしながら相違がある。痛みに効果的なほとんどの治療は、かゆみには有効ではない。注目すべきことに、オピオイド鎮痛剤(例えば、モルヒネ)などのいくつかの鎮痛剤はかゆみを引き起こし又は悪化させる。

最近の研究は、痛みとは別のかゆみ回路の特性を示し始めている。かゆみは、真皮表皮接合部及び表皮内に位置する「掻痒受容体(pruriceptor)」又はかゆみ特異的神経線維と呼ばれる侵害受容体のサブセットによって中継されることを特徴とすることが示唆されている。後根神経節(DRG)又は三叉神経内における感覚ニューロンで特異的に発現する所定のGタンパク質共役受容体(GPCR)は、かゆみに固有の感覚に重要な役割を果たしていると考えられる。近年、この受容体群は、かゆみに固有なものとして同定され(すなわち、これらは痛み回路には関与していない)、かゆみを抑えることへの潜在的な治療標的となっている。

2000年に実施された世界疾病負担(GBD)研究によれば、人口の4%(約2.8億人)がかゆみに関連する症状に苦しめられている。現在、抗ヒスタミン剤及びコルチコステロイド剤が急性のかゆみのいくつかのタイプ及び慢性のかゆみのタイプの小さな割合を緩和することができる。しかし、これらのものは、腎疾患及び肝疾患、癌並びにアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に起因する慢性のかゆみのほとんどを治療しない。さらに、抗ヒスタミン剤は、ヒスタミン依存性のかゆみ(通常はアレルギー性刺激により誘発される)のみを打ち消す。しかし、ヒスタミン非依存性のかゆみがかゆみの大部分を占めている。

重度の引掻き行動は、皮膚を傷つけ、感染しやすくなり、免疫不全患者に深刻な合併症をもたらす場合がある(その際に、かゆみは、状態又は薬物反応に対して副次的なものである場合がある)。さらに、かゆみのため損傷しかつ感染した皮膚は、「かゆみ−引掻き−かゆみサイクル」(かゆみが引掻きを要求し、その引掻きがかゆみをさらに深めるサイクル)を強める場合が多い。医師が推奨するかゆみを緩和させる他の技術としては次のものが挙げられる:光線療法、緩い綿の服を身に着けること;温の風呂に短時間に頻繁に入浴すること及び30%〜40%の湿度レベルの冷涼な環境を維持すること。しかし、これらの予防措置を常に維持することが可能であるとは限らない。したがって、当該技術分野には、かゆみを抑制又は治療するための新たな薬剤に対する要望が依然として存在する。

この要望は、上記の課題の一つ以上を解決する本発明によって対処される。

発明の概要 本発明は、被験体(例えば、患者)においてかゆみを抑制し又は治療するのに使用するための融合タンパク質を提供することによって上記の課題の一つ以上に対処し、該融合タンパク質は次のものを含み: (i)非細胞毒性プロテアーゼ、該プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体においてSNARE(可溶性N−エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体)タンパク質を切断することができる; (ii)かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上の結合部位に結合することのできる標的化部分(TM)、該結合部位は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体内にあるエンドソームに組み込まれるようにエンドサイトーシスを受けることができ、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体は、該SNAREタンパク質を発現し;及び (iii)エンドソーム内からエンドソーム膜を横切ってかゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルにプロテアーゼを転位することのできる転位ドメイン; ただし、該ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒(ホロトキシン)分子ではないものとする。

また、第1の態様は、かゆみを抑制又は治療するための対応する方法を包含し、該方法は、患者に本発明のポリペプチドの治療上有効量を投与することを含む。

発明の詳細な説明 本発明のポリペプチドは、天然に存在するクロストリジウム神経毒分子(クロストリジウムホロトキシンとしても知られている)ではない。クロストリジウムホロトキシンは、当業者に知られている最も致死性のある神経毒の一つであり、それ自体、治療用分子としてかなりの制限がある。また、かゆみを抑制する文脈において、クロストリジウムホロトキシンは、望ましくないオフサイト標的化、すなわち、かゆみ経路の神経細胞以外の細胞の標的化に関連する。

使用時に、本発明のポリペプチドは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上の受容体に結合する。転位成分は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルへのプロテアーゼ成分の輸送をもたらす。最終的に、内部に入ったら、プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルに存在するSNAREタンパク質を切断することによって、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞外融合プロセスを阻害する。したがって、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞外融合器官を不活性化することにより、本発明のポリペプチドは、そこからの神経伝達物質の分泌を阻害する。したがって、本発明のポリペプチドは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体から脊髄に送られる神経伝達物質のレベルを減少させ、それによってかゆみを抑制又は治療することができる。一実施形態では、神経伝達物質はアセチルコリンである。好ましい実施形態では、神経伝達物質はグルタメートである。別の好ましい実施形態では、神経伝達物質はガストリン放出タンパク質(GRP)である。

本発明のポリペプチドは、それらが特定の標的細胞、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体からの分泌を阻害する能を有する点で、他の治療を超える明確な利点を提供する。これに対し、他の提案された治療剤は、その効果を仲介する受容体に対する拮抗薬を使用することを試みることによってかゆみを軽減しようとするものである。しかしながら、本発明は、生成部位からの神経伝達物質の分泌を特異的に阻害する手段を提供する。

本発明の主要な標的細胞は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体である。DRG細胞は、脊柱付近の脊椎に沿って位置し、かゆみ特異的受容体として同定されているMrgprX1、MrgprA3又はMrgprC11などのGPCRの発現部位である。

本発明の融合タンパク質は、一般に、対応する「遊離」TM(すなわち、単離されたTM自体)と比較したときに、標的細胞に対する結合親和性の低下(最大10〜100倍の範囲で)を示す。しかしながら、この観察結果にもかかわらず、本発明の融合タンパク質は、驚くべきことに、良好な有効性を示す。これは、2つの主要な特徴に起因し得る。第1に、非細胞毒性プロテアーゼ成分は触媒的である、すなわち、このような分子のいくつかの治療効果が標的細胞内で迅速に増幅される。第2に、標的細胞上に存在する受容体は、治療剤が入るためのゲートウェイとしてのみ作用する必要があり、かつ、必ずしもリガンド−受容体仲介薬理学的応答を達成するために必要なレベルまで刺激される必要はない。したがって、本発明の融合タンパク質は、典型的には高マイクログラムからミリグラム(さらには数百ミリグラムまで)量で投与される他の種類の治療用分子のために使用されるよりも低い用量で投与できる。対照的に、本発明の融合タンパク質は、非常に低い用量、典型的には少なくとも10倍低い、より典型的には100倍低い用量で投与できる。

非細胞毒性プロテアーゼ 本発明のTSIポリペプチドの生物学的に活性な成分は、非細胞毒性プロテアーゼである。したがって、標的細胞の細胞質ゾルに供給されると、非細胞毒性プロテアーゼ成分は、所望の標的細胞内でSNARE切断をもたらす。SNAREタンパク質は、哺乳動物細胞内の分泌プロセスの必須成分であり、そのタンパク質分解不活性化は、該細胞からの分泌を抑制/阻害する。

非細胞毒性プロテアーゼは、細胞を死滅させない分子の個別的な部類である;その代わりに、これらのものは、タンパク質合成以外の細胞プロセスを阻害することによって作用する。非細胞毒性タンパク質は、様々な高等生物(例えば、植物及び動物)により産生される。このような高等生物の例は、ブラジルサソリである。さらに、非細胞毒性プロテアーゼは、様々な微生物、特にクロストリジウム属及びナイセリア属などの細菌により産生される。

クロストリジウム神経毒は、非細胞毒性毒素分子の主要な群を代表し、ジスルフィド結合によって互いに結合した2個のポリペプチド鎖を有する。これら2つの鎖は、約100kDaの分子量を有する重鎖(H鎖)及び約50kDaの分子量を有する軽鎖(L鎖)と呼ばれている。プロテアーゼ機能を有し、かつ、細胞外プロセスに関与する小胞又は形質膜会合SNAREタンパク質(例えば、シンタキシン、SNAP及びシナプトブレビン(又はVAMP))に対する高い基質特異性を示すのはL鎖である。これらの基質は、細胞の分泌機構の必須成分である。

ナイセリア属、最も顕著にはN.gonorrhoeaeは、機能的に類似する非細胞毒性毒素分子を生成する。このような非細胞毒性プロテアーゼの例は、IgAプロテアーゼである(WO99/58571を参照)。類似のIgAプロテアーゼは、Streptococcus pneumoniaeなどの連鎖球菌により産生される。

したがって、一実施形態では、本発明の非細胞毒性プロテアーゼは、クロストリジウム神経毒素プロテアーゼ又はIgAプロテアーゼとすることができる(例えばWO99/032272参照)。非細胞毒性プロテアーゼの他の例は、サソリ毒プロテアーゼ、例えばブラジルサソリTityus serrulatusの毒液、又はプロテアーゼのアンタレアーゼ(例えばWO2011/022357号を参照)からのものである。

標的化部分(TM) 本発明の標的化部分(TM)成分を参照すると、この成分は、本発明のポリペプチドをかゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体に結合させるものである。このTMは、好ましくはペプチドである。

使用時には、本発明のポリペプチドは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体に結合する。その後、ポリペプチドの転位成分は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルへのプロテアーゼ成分の輸送をもたらす。最終的には、一度内部に入ると、プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルに存在するSNAREタンパク質を切断することによってかゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞外融合プロセスを阻害する。したがって、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞外融合器官を不活性化することにより、本発明のポリペプチドは、そこからの神経伝達物質の分泌を阻害する。したがって、本発明のポリペプチドは、脊髄を介したかゆみ知覚シグナルの脳への伝達を減少させ、それによってかゆみを抑制又は治療することができる。

このTMは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上の結合部位に結合し、これにより、他の細胞を超えるこの種の標的細胞に対するポリペプチドの選択性を与える。この点に関し、本発明の好ましいTMの実施形態としては、抗体(例えば、モノクローナル抗体、Fab、F(ab)’2、Fv、ScFvなどの抗体断片及び抗体ドメインペプチド)並びに以下に示す受容体に結合する結合骨格が挙げられる。したがって、本発明のポリペプチドは、問題の標的細胞又は受容体への特異的な結合を達成するように設計された市販の抗体又は結合骨格を含むことができる。あるいは、好ましいTMとしては、生体アミン、アルカロイド、プロテアーゼ、ペプチドリガンド及び神経ペプチドが挙げられる。

本発明のTMは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体に結合する。一例として、本発明のポリペプチドのTMは、Mas関連Gタンパク質受容体(例えばMrgprX1、MrgprA3又はMrgprC11)よりなる群から選択される、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上のGタンパク質共役受容体(GPCR)に結合する。

一実施形態では、TMは、ウシ副腎髄質ペプチド(例えばBAM8-22)、メラノサイト刺激ホルモンペプチド(例えば、γ2−MSH)、RF/Y−G又はRF/Y−アミドで終端する神経ペプチド(例えば、NPFF又はNPAF)、SLIGRL−NH2を含むペプチド、アルカロイド(例えばクロロキン)、生体アミン(カプサイシン、ヒスタミン、セロトニン、コルチスタチン)並びにそれらの短縮物及びペプチドアナログから選択される。

一実施形態では、本発明のポリペプチドのTMは、MrgprX1、MrgprA3、又はMrgprC11から選択されるかゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上の受容体に結合する。これらの受容体の全ては、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上で発現する。

一実施形態では、TMは、BAM8-22、γ2−MSH、NPFF、NPAF、SLIGRL−NH2、クロロキン、カプサイシン、ヒスタミン、セロトニン、コルチスタチン並びにそれらの短縮型及びペプチドアナログから選択される。

一実施形態では、本発明のポリペプチドのTMは、Mrgpr受容体、好ましくはMrgprX、MrgprA又はMrgprCに結合する。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、MrgprX1又はMrgprA3又はMrgprC11に結合する。一例として、好適なTMとしては、BAM8-22、クロロキン、γ2−MSH、RF/Y−G又はRF/Y−アミドで終端する神経ペプチド(例えばNPFF又はNPAF)、カプサイシン、ヒスタミン、セロトニン又はコルチスタチンが挙げられる。これらのTMは、Mrgprへの結合のために好ましい。

好ましい実施形態では、TMは、MrgprX受容体、好ましくMrgprX1に結合する;また、TMは、BAM8-22又はその短縮型若しくはペプチドアナログであることが好ましい。

転位ドメイン 本発明の転位成分は、標的細胞への非細胞毒性プロテアーゼ(又はその断片)の転位を可能にし、それにより、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞の細胞質内で生じる。転位成分は、好ましくは、低pH条件下で脂質膜(例えば、エンドソーム膜)内にイオン透過孔を形成できる。転位成分は、微生物タンパク質源、例えば、細菌又はウイルスタンパク源から得ることができる。したがって、一実施形態では、転位成分は、細菌毒素などの酵素の転位ドメインを含む又はそれからなる。別の実施形態では、転位ドメインは、ウイルスタンパク質の転位ドメインを含む又はそれからなる。一実施形態では、本発明の転位成分は、クロストリジウム神経毒のHNドメイン(又はその転位性断片)などのクロストリジウム神経毒素H鎖又はその断片を含む又はそれからなる。

ポリペプチド製剤 本発明のポリペプチドは、次の3つの主成分を含む:「生理活性」(すなわち非細胞毒性プロテアーゼ);TM;及び転位ドメイン。このような融合タンパク質の調製に関連した一般的な技術は、再標的化毒素技術と呼ばれる場合が多い。例えば、WO94/21300号;WO96/33273号;WO98/07864号;WO00/10598号;WO01/21213号;WO06/059093号;WO00/62814号;WO00/04926号;WO93/15766号;WO00/61192号;及びWO99/58571号を参照されたい。これらの刊行物の全ては、本明細書中において引用により援用される。

より詳細には、本発明のTM成分は、本発明のプロテアーゼ成分又は転位成分のいずれかに融合できる。該融合は、好ましくは、共有結合、例えば直接共有結合による又はスペーサー/リンカー分子を介する。プロテアーゼ成分及び転位成分は、好ましくは、共有結合、例えば、直接共有結合を介して又はスペーサー/リンカー分子を介して互いに結合する。好適なスペーサー/リンカー分子は、当該技術分野において周知であり、典型的には5〜40のアミノ酸ベース配列、好ましくは10〜30アミノ酸残基長を有する。

使用中に、ポリペプチドは、プロテアーゼ成分と転位成分とが好ましくはジスルフィド結合を介して互いに結合した二本鎖コンフォメーションを有する。

本発明のポリペプチドは、当業者に周知の従来の化学的コンジュゲーション技術によって調製できる。一例として、Hermanson,G.T.(1996),Bioconjugate techniques,Academic Press、及びWong,S.S.(1991),Chemistry of protein conjugation and cross−linking,CRC Press、Nagy外,PNAS 95 p1794−99(1998)を参照されたい。本発明のポリペプチドに合成TMを結合させるためのさらに詳細な方法は、例えばEP0257742号に提供されている。上記コンジュゲーションの刊行物は、本明細書において参照により援用される。

あるいは、ポリペプチドは、単一ポリペプチド融合タンパク質の組換え調製によって調製できる(例えばWO98/07864号参照)。この技術は、天然クロストリジウム神経毒(すなわちホロトキシン)を準備し、そして次の「単純化された」構造配置を有する融合タンパク質を得る生体内細菌メカニズムに基づく: NH2−[プロテアーゼ成分]−[転位成分]−[TM]−COOH。

WO98/07864号によれば、TMは、融合タンパク質のC末端の方に位置する。その後、この融合タンパク質は、プロテアーゼ成分と転位成分との間の部位で切断するプロテアーゼによる処理によって活性化される。このようにして、単一のポリペプチド鎖としてのプロテアーゼ成分が転位成分+TMを含有する別の単一のポリペプチド鎖に共有結合(ジスルフィド架橋を介して)してなる二本鎖タンパク質が生成される。

あるいは、WO06/059093によれば、融合タンパク質のTM成分は、プロテアーゼ切断部位と転位成分との間において、直鎖融合タンパク質配列の中央の方に位置する。これは、TMが転位ドメインに結合することを確実にする(すなわち天然クロストリジウムホロトキシンで生じるように)が、この場合には、これら2つの成分は、天然ホロトキシンに対して順番に反転する。プロテアーゼ切断部位でのその後の切断により、TMのN末端部分が露出し、二本鎖ポリペプチド融合タンパク質が得られる。

さらなる変形例は、融合タンパク質のTM成分の「スプリットリガンド」提示である。ここで、リガンドとして作用するTM成分は、遊離N末端ドメイン及び遊離C末端ドメインの両方を有する。したがって、TMは、標的化部分のN末端部分と結合部位のドメインとの相互作用により標的細胞上の結合部位(例えば、受容体又はアクセプター)と相互作用することができる。あるいは、TMは、標的化部分のC末端部分と結合部位のドメインとの相互作用が可能である。又は、TMは、標的化部分のN末端部分が結合部位のドメインと相互作用し、標的化部分のC末端部分が結合部位のドメインと相互作用する二重相互作用が可能である。この後者の実施形態では、TMのN末端及びC末端部分は、結合部位の同一又は異なるドメインに結合でき、及び/又は異なる結合部位のドメインに結合できる。この構成に関するさらなる情報は、WO2012156743号に見出すことができる。この文献は、本明細書において引用により援用される。

上記のプロテアーゼ切断配列は、従来の手段、例えば部位特異的変異誘発によってDNAレベルで導入できる(及び/又は任意の固有切断配列を除去)。切断配列の存在を確認するためのスクリーニングは、手作業で又はコンピュータソフトウェア(例えばDNASTAR社のMapDrawプログラム)の助けを借りて実行できる。任意のプロテアーゼ切断部位を使用することができる(すなわち、クロストリジウム又は非クロストリジウム)が、次のものが好ましい: エンテロキナーゼ (DDDDK↓)(配列番号1) 因子Xa (IEGR↓/IDGR↓)(配列番号2及び3) TEV(タバコエッチウイルス)(ENLYFQ↓G)(配列番号4) トロンビン (LVPR↓GS)(配列番号5) PreScission (LEVLFQ↓GP)(配列番号6)

追加のプロテアーゼ切断部位としては、非細胞毒性プロテアーゼ、例えばクロストリジウム神経毒によって切断される認識配列が挙げられる。これらのものとしては、クロストリジウム神経毒のような非細胞毒性プロテアーゼによって切断されるSNARE(例えば、SNAP−25、シンタキシン、VAMP)タンパク質認識配列が挙げられる。特定の例がUS2007/0166332号に提供されている。この文献は、本明細書において引用によりその全体が援用される。

また、用語「プロテアーゼ切断部位」に包含されるのは、自己切断配列であるインテインである。自己スプライシング反応は、例えば、存在する還元剤の濃度を変化させることによって制御可能である。また、「破壊的」切断部位(以下で説明)を本発明のポリペプチドに組み込むべき場合には、上記「活性化」切断部位を使用することもできる。

好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質は、N末端及び/又はC末端に位置する1個以上の精製タグを含むことができる。任意の精製タグを使用することができるが、次のものが好ましい: 好ましくはC末端及び/又はN末端タグとしてHisタグ(例えば6×ヒスチジン)(配列番号7) 好ましくはN末端タグとしてMBPタグ(マルトース結合タンパク質) 好ましくはN末端タグとしてGSTタグ(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ) 好ましくはN末端タグとしてHis−MBPタグ 好ましくはN末端タグとしてGST−MBPタグ 好ましくはN末端タグとしてチオレドキシンタグ 好ましくはN末端タグとしてCBD−タグ(キチン結合ドメイン)。

1個以上のペプチドスペーサー/リンカー分子を融合タンパク質に含めることができる。例えば、精製タグと融合タンパク質分子の残部との間にペプチドスペーサーを使用することができる。

また、本発明は、上記融合タンパク質をコードするDNA配列も提供する。本発明の好ましい態様では、DNA配列は、DNAベクターの一部として調製され、該ベクターは、プロモーター及びターミネーターを含む。

好ましい実施形態では、ベクターは、次のものから選択されたプロモーターを有する: プロモーター 誘導剤 典型的な誘導条件 Tac(ハイブリッド) IPTG 0.2mM(0.05−2.0mM) AraBAD L−アラビノース 0.2%(0.002−0.4%) T7−lacオペレーター IPTG 0.2mM(0.05−2.0mM)

本発明のDNA構築は、好ましくはin silicoで設計され、次いで、従来のDNA合成技術によって合成される。

上記DNA配列情報は、使用されるべき最終的な宿主細胞(例えば、大腸菌)発現系に応じたコドンバイアスのために任意に修飾される。

DNA骨格は、好ましくは、転写及び翻訳されると第2ペプチドコード配列によりコードされるプロテアーゼ切断部位に相当するアミノ酸配列を生成するであろう任意の固有の核酸配列に対してスクリーニングされる。このスクリーニングは、手作業で又はコンピュータソフトウェア(例えばDNASTAR社によるMapDrawプログラム)の助けを借りて実行できる。

ここで使用するときに「抑制」及び「治療」への言及は、被験体に治療上の利益を提供することを意味する。これは、例えば、本明細書において定義される融合タンパク質を投与してかゆみのつらさを防ぎ又は軽減することを含む。

本発明のさらなる態様は、かゆみを防ぐ又は抑制する方法を提供し、該方法は、被検体に次のものを含む融合タンパク質の治療上有効量を投与することを含み: (i)非細胞毒性プロテアーゼ、該プロテアーゼは、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体においてSNAREタンパク質を切断することができる; (ii)かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体上の結合部位に結合することのできる標的化部分(TM)、該結合部位は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体内にあるエンドソームに組み込まれるようにエンドサイトーシスを受けることができ、該かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体は、該SNAREタンパク質を発現し;及び (iii)エンドソーム内からエンドソーム膜を横切ってかゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の細胞質ゾルにプロテアーゼを転位することのできる転位ドメイン; ただし、該ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒(ホロトキシン)分子ではないものとする。

本発明の融合タンパク質は、融合タンパク質がオフサイト位置に移行するかもしれない場合に切断に影響を受けやすい(局所的なプロテアーゼにより)破壊的プロテアーゼ切断部位を含むことができる。このアプローチは、オフサイト標的化の危険性を最小限に抑えることができる。したがって、本発明の融合タンパク質は、例えばWO2010/094905号及びWO2002/44199号に記載されるように、1個以上の破壊的切断部位を含むように設計できる。これらの文献のそれぞれは、本明細書において引用によりその全体が援用される。

ポリペプチド送達 使用の際に、本発明は、ポリペプチドを、薬学的に許容されるキャリア、賦形剤、補助剤、推進剤及び/又は塩から選択される少なくとも1種の成分と共に含む医薬組成物を使用する。

本発明のポリペプチドは、経口、非経口、連続注入、移植、吸入又は局所適用のために処方できる。注射に適した組成物は、溶液、懸濁液若しくはエマルジョン又は使用前に適切なビヒクル中に溶解若しくは懸濁される乾燥粉末の形態にあることができる。

局所送達手段としては、経口又は胃送達を挙げることができる。この点に関して、例えば、腸溶性カプセル又はミクロスフェアなどの他の微粒子系における製剤を使用することができる。また、腹腔鏡手術による十二指腸への局所投与も可能である。局所送達の他の例としては、経皮送達(接着パッチによる)を挙げることができる。

好ましい投与経路は、全身、経口、腹腔鏡及び/又は局所注射から選択される。

注射用製剤の場合には、投与部位での保持を補助する又は投与部位からのポリペプチドの除去を減少させるように薬学的に活性な物質を含むことは任意である。このような薬学的に活性な物質の一例は、アドレナリンなどの血管収縮剤である。このような製剤は、投与後のポリペプチドの残留時間を増加させ、それによってその効果を増大及び/又は向上させるという利点を与える。

本発明のポリペプチドの投与のための用量範囲は、所望の治療効果を生じさせるためのものである。必要な用量範囲は、ポリペプチド又は組成物の正確な性質、投与経路、製剤の性質、患者の年齢、患者の状態の性質、程度又は重症度、もしあれば禁忌及び主治医の判断に依存することが分かるであろう。これらの用量レベルの変化は、最適化のために標準的な経験的ルーチンを用いて調節できる。

好適な一日用量(患者の体重1kgあたり)は、0.0001〜1mg/kg、好ましくは0.0001〜0.5mg/kg、より好ましくは0.002〜0.5mg/kg、特に好ましくは0.004〜0.5mg/kgの範囲にある。単位用量は、用量当たり1μg未満から30mgまで変更できるが、典型的には0.01〜1mgの範囲であり、これは、毎日又は好ましくはそれほど頻繁でなく、例えば1週間毎又は6ヶ月毎に投与できる。

特に好ましい投与計画は、1×用量として2.5ngのポリペプチドに基づく。この点に関して、好ましい用量範囲は、1×〜100×(すなわち、2.5〜250ng)の範囲である。

液体剤形は、典型的には、ポリペプチドと発熱物質を含まない滅菌ビヒクルとを利用して調製される。ポリペプチドは、使用されるビヒクル及び濃度に応じて、ビヒクルに溶解又は懸濁できる。溶液の調製の際に、ポリペプチドは、ビヒクルに溶解でき、ここで、この溶液を、必要に応じて塩化ナトリウムの添加によって等張にし、そして無菌技術を使用して滅菌フィルターを介して濾過により滅菌してから、好適な滅菌バイアル又はアンプルに充填し密閉する。或いは、溶液の安定性が十分な場合には、その密閉容器内の溶液をオートクレーブによって滅菌してもよい。有利には、緩衝剤、可溶化剤、安定化剤、防腐剤又は殺菌剤、懸濁剤又は乳化剤及び/又は局所麻酔剤などの添加剤をビヒクルに溶解できる。

使用前に好適なビヒクルに溶解又は懸濁される乾燥粉末は、滅菌領域内で無菌技術を使用して滅菌容器に予め滅菌された成分を充填することにより調製できる。或いは、これらの成分は、滅菌領域で無菌技術を使用して適切な容器内で溶解できる。次いで、生成物を凍結乾燥し、容器を無菌的に密閉する。

筋肉内、皮下又は皮内注射に適した非経口懸濁液も実質的に同じ方法で調製されるが、ただし、滅菌を濾過によって達成できない場合には無菌成分を滅菌ビヒクルに溶解させる代わりに懸濁させる。これらの成分は、滅菌状態で単離してよく、或いは単離後に例えばガンマ線照射により滅菌してもよい。

有利には、懸濁剤、例えばポリビニルピロリドンが成分の均一な分布を容易にするために組成物中に含まれる。

本発明による投与は、微粒子カプセル化、ウイルス送達系又は高圧エアロゾル衝突を含めた様々な送達技術の利益を得ることができる。

定義の節 標的化部分(TM)とは、結合部位と機能的に相互作用して、本発明のポリペプチドと標的細胞の表面との間に物理的会合を生じさせる任意の化学構造を意味する。本発明において、標的細胞は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体である。用語TMは、標的細胞上の結合部位に結合することができ、その結合部位が内部移行(例えば、エンドソーム形成)(受容体仲介エンドサイトーシスともいう)可能である任意の分子(すなわち、天然型分子又はその化学的/物理的に修飾された変異体)を包含する。TMは、エンドソーム膜転位機能を有することができ、その場合には、別々のTM及び転位ドメインの構成要素は、本発明の薬剤中に存在する必要はない。上記説明を通して、特定のTMが記載されている。該TMに対する言及は単なる例示であり、本発明は、例示したTMの基本的な結合(すなわち標的化)能力を保持するその変異体及び誘導体の全てを包含する。

本発明に係るTMは、抗体(例えば、抗体断片)及び結合骨格;特に標的細胞への結合(例えば特異的に)のために設計された市販の抗体/断片及び骨格を含む。

タンパク質骨格は、それぞれ本発明のTMとして使用できるscFv、Fab分子、dAb(単一ドメイン抗体)、ラクダ抗体、二重特異性抗体及び低分子化抗体などの治療用モノクローナル抗体及び誘導体の拡大レパートリーを補完するために、一般的な結合フレームワークの新世代を代表する。骨格系は、新規の骨格の作製又は既知のタンパク質結合ドメインの修飾により、既知のタンパク質認識ドメインを生じさせる又は修飾する。このような骨格としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない: (i)プロテインA系の骨格−アフィボディ(Nord,K外,1997,「Binding proteins selected from combinatorial libraries of an alpha−helical bacterial receptor domain」,Nat Biotechnol 15,772−777)。 (ii)リポカリン系の骨格−アンチカリン(Skerra 2008「Alternative binding proteins:anticalins − harnessing the structural plasticity of the lipocalin ligand pocket to engineer novel binding activities」,FEBS J.275:2677−83); (iii)フィブロネクチン系の骨格−アドネクチン(Dineen外,2008,「The Adnectin CT−322 is a novel VEGF receptor 2 inhibitor that decreases tumour burden in an orthotropic mouse model of pancreatic cancer」,BMC Cancer 8:352); (iv)アビマー(Silverman外,2005,「Multivalent avimer proteins evolved by exon shuffling of a family of human receptor domains」,Nat Biotechnol 23:1556−61); (v)アンキリン系の骨格−ダルピン(Zahnd外,2006,「Selection and characterization of Her2 binding−designed ankyrin repeat proteins」,J Biol Chem.281:35167−75);及び (vi)センチリン骨格−CDRに類似するループを有するIgドメインとの有意な構造的相同性を有するタンパク質の折り畳みに基づく。Igドメインは、ヒトタンパク質における共通の基本単位であり、代わりの骨格タンパク質として広く応用されている。上記「骨格」の刊行物のそれぞれは、引用により(その全体が)援用される。

結合性骨格を使用して、特定の細胞表面タンパク質、受容体又は糖基などの他の細胞表面エピトープとの相互作用により特定の細胞型を標的化することができる。このような修飾された骨格は、本発明の組換え非細胞毒性プロテアーゼ系ポリペプチドに設計できる。

本発明のTMは、問題のかゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体標的細胞に結合する(好ましくは特異的に結合する)。用語「特異的に結合する」とは、好ましくは、所定のTMが、106M-1以上、好ましくは107M-1以上、より好ましくは108M-1以上、最も好ましくは109M-1以上の結合親和性(Ka)で標的細胞に結合することを意味する。また、用語「特異的に結合する」とは、所定のTMが106M-1以上、好ましくは107M-1以上、より好ましくは108M-1以上、最も好ましくは109M-1以上の結合親和性(Ka)で所定の受容体、Mas関連Gタンパク質共役受容体(例えばMrgprX1又はMrgprA1-3又はMrgprC11)に結合することも意味することができる。

本願明細書におけるTMへの言及は、問題の標的細胞に結合する能力を保持するその断片及び変異体を包含する。例えば、変異体は、基準TM(リファレンスTM)(例えば、TMを定義する、本明細書に与えた任意の配列番号)と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%又は少なくとも99%のアミノ酸配列相同性を有することができる。したがって、変異体は、アミノ酸(例えば非天然アミノ酸)の1種以上のアナログ又は置換結合を含むことができる。また、例として、TMに関連して使用される用語「断片」とは、基準TMの少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30、最も好ましくは少なくとも40個のアミノ酸残基を有するペプチドを意味する。また、用語「断片」は、上記の変異体にも関する。したがって、例として、本発明の断片は、少なくとも10、20、30又は40個のアミノ酸を有するペプチド配列を含むことができ、該ペプチド配列は、基準ペプチドのアミノ酸の対応するペプチド配列(連続した)に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。

TMが選択された標的細胞に結合することを確認することはルーチンである。例えば、単純な放射性置換実験を使用することができ、その際に、問題の標的細胞を代表する組織又は細胞を過剰の非標識TMの存在下で標識(例えばトリチウム化)TMに曝露する。このような実験では、非特異的及び特異的結合の相対的割合を評価し、それによってTMが標的細胞に結合することを確認することを可能にすることができる。任意に、このアッセイは、1種以上の結合アンタゴニストを含むことができ、このアッセイは、TM結合の欠失を観察することをさらに含むことができる。この種の実験の例は、Hulme,E.C.(1990),Receptor−binding studies,a brief outline,pp.303−311,In Receptor biochemistry,A Practical Approach,E.C.Hulme著,Oxford University Pressに記載されている。

本発明において、ペプチドTMに対する言及には、そのペプチドアナログが含まれるが、ただし、該アナログが対応する「基準」TMと同じ受容体に結合する場合に限る。

本発明の融合タンパク質(ポリペプチドともいう)は、クロストリジウム神経毒の機能性HC又はHCCドメインを欠失していてよい。一実施形態では、ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒ホロトキシンの最後の50個のC末端アミノ酸を欠失する。別の実施形態では、ポリペプチドは、クロストリジウム神経毒ホロトキシンの最後の100、150、200、250又は300個のC末端アミノ酸残基を欠失する。あるいは、HC結合活性は、突然変異誘発により打ち消す/低減することができる。例として、便宜上BoNT/Aを参照すると、ガングリオシド結合ポケット内における1又は2個のアミノ酸残基変異の修飾(W1266をLに及びY1267をFに)により、HC領域がその受容体結合機能を失う。同様の変異を、非血清型Aクロストリジウムペプチド成分、例えば変異(W1262からL及びY1263からF)を有するボツリヌスB又はボツリヌスE(W1224からL及びY1225からF)に基づく構築物に対して行うことができる。活性部位への他の変異は、HC受容体結合活性の同じアブレーション、例えばA型ボツリヌス毒素におけるY1267S及び他のクロストリジウム神経毒における対応する高度保存残基を達成する。この及び他の変異の詳細は、Rummel外(2004)(Molecular Microbiol.51:631−634)に記載されている。この文献を本明細書において引用により援用する。

天然クロストリジウム神経毒のHCペプチドは、約400〜440個のアミノ酸残基を含み、かつ、それぞれ約25kDaの2つの機能的に異なるドメイン、すなわち、N末端領域(一般にHCNペプチド又はドメインと呼ばれる)及びC末端領域(一般にHCCペプチド又はドメインと呼ばれる)からなる。さらに、C末端の160〜200個のアミノ酸残基を構成するC末端領域(HCC)がクロストリジウム菌神経毒素のその天然細胞受容体、すなわち神経筋接合部における神経終末への結合の原因であることがよく実証されている。このように、本明細書を通じて、重鎖が、天然クロストリジウム神経毒が結合する細胞表面受容体に結合することができないように機能性重鎖HCペプチド(又はドメイン)を欠失するクロストリジウム重鎖に対する言及は、クロストリジウム重鎖が単に機能性HCCペプチドを欠失していることを意味する。言い換えれば、HCCペプチド領域は、神経筋接合部での神経終末のためのその天然の結合能力を不活性化させるために、部分的又は完全に欠失し、又はそうでなければ修飾される(例えば、従来の化学的又はタンパク質分解処理によって)。

したがって、一実施形態では、本発明のクロストリジウムHNペプチドは、クロストリジウム神経毒のC末端ペプチド部分(HCC)の一部を欠失しているため、天然クロストリジウム神経毒のHC結合機能を喪失している。例として、一実施形態では、C末端延長クロストリジウムHNペプチドは、クロストリジウム神経毒重鎖のC末端の40個のアミノ酸残基、又はC末端の60個のアミノ酸残基、又はC末端の80個のアミノ酸残基、又はC末端の100個のアミノ酸残基、又はC末端の120個のアミノ酸残基、又はC末端の140個のアミノ酸残基、又はC末端の150個のアミノ酸残基、又はC末端の160個のアミノ酸残基を欠失している。別の実施形態では、本発明のクロストリジウムHNペプチドは、クロストリジウム神経毒の全C末端ペプチド部分(HCC)を欠失しているため、天然クロストリジウム神経毒のHC結合機能を喪失している。例として、一実施形態では、クロストリジウムHNペプチドは、クロストリジウム菌神経毒素重鎖のC末端の165個アミノ酸残基、又はC末端の170個のアミノ酸残基、又はC末端の175個のアミノ酸残基、又はC末端の180個のアミノ酸残基、又はC末端の185個のアミノ酸残基、又はC末端の190個のアミノ酸残基、又はC末端の195個のアミノ酸残基を欠失する。さらなる例として、本発明のクロストリジウムHNペプチドは、次のものよりなる群から選択されるクロストリジウムHCC基準配列を欠失する: A型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(Y1111−L1296) B型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(Y1098−E1291) C型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(Y1112−E1291) D型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(Y1099−E1276) E型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(Y1086−K1252) F型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(Y1106−E1274) G型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(Y1106−E1297) 破傷風神経毒−アミノ酸残基(Y1128−D1315)。

上記特定の基準配列は、ガイドと見なすべきである。亜血清型に応じてわずかな変化が生じることがあるからである。

本発明のプロテアーゼは、真核細胞における細胞外融合器官の1種以上のタンパク質を切断することのできる全ての非細胞毒性プロテアーゼを包含する。

本発明のプロテアーゼは、好ましくは、細菌プロテアーゼ(又はその断片)である。より好ましくは、細菌プロテアーゼは、クロストリジウム属又はナイセリア/ストレプトコッカス属(例えば、クロストリジウムL鎖又は好ましくはN.gonorrhoeae又はS.pneumoniaeからのナイセリアIgAプロテアーゼ)から選択される。非細胞毒性プロテアーゼの他の例としては、サソリ毒プロテアーゼ、例えば、ブラジルサソリTityus serrulatusの毒からのもの又はプロテアーゼアンタレアーゼが挙げられる。

また、本発明は、変異型非細胞毒性タンパク質(すなわち、天然型プロテアーゼ分子の変異体)を包含するが、ただし、該変異型プロテアーゼが依然として必要なプロテアーゼ活性を示す場合に限る。例えば、変異体は、基準プロテアーゼ配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸配列相同性を有することができる。したがって、用語「変異体」には、エンドペプチダーゼ活性が強化された(又は減少した)非細胞毒性プロテアーゼが含まれる。ここで、特に、BoNT/A変異体Q161A、E54A及びK165LのKcat/Kmの増加に言及しておく。Ahmed,S.A.(2008)Protein J.DOI 10.1007/s10930−007−9118−8を参照されたい。この文献は、引用により援用される。プロテアーゼに関連して使用されるときに、用語「断片」とは、典型的には、基準プロテアーゼの少なくとも150個、好ましくは少なくとも200個、より好ましくは少なくとも250個、最も好ましくは少なくとも300個のアミノ酸残基を有するペプチドを意味する。TM「断片」成分(上で議論した)と同様に、本発明のプロテアーゼ「断片」は、基準配列に基づく変異型プロテアーゼの断片を包含する。

本発明のプロテアーゼは、好ましくはセリン又はメタロプロテアーゼ活性(例えば、エンドペプチダーゼ活性)を示す。プロテアーゼは、好ましくはSNAREタンパク質(例えば、SNAP−25、シナプトブレビン/VAMP、又はシンタキシン)に特異的である。

特に、神経毒のプロテアーゼドメイン、例えば細菌神経毒のプロテアーゼドメインが挙げられる。したがって、本発明は、自然界に存在する神経毒ドメイン並びに天然型神経毒の組換えにより調製されたバージョンの使用を包含する。

代表的な神経毒はクロストリジウムによって産生され、用語「クロストリジウム神経毒」には、C.tetani(TeNT)及びC.botulinum(BoNT)血清型A〜Gによって産生される神経毒並びにC.baratii及びC.butyricumによって産生される密接に関連するBoNT様神経毒が包含される。上記略語を、本明細書を通して使用する。例えば、BoNT/Aの命名は、BoNT(血清型A)としての神経毒源を示す。対応する命名法が他のBoNT血清型にも当てはまる。

BoNTは、知られている最も強力な毒素であり、マウスについての50%致死量(LD50)値は、血清型に応じて0.5〜5ng/kgの範囲である。BoNTは、胃腸管に吸着され、そして体循環に入った後に、コリン作動性神経末端のシナプス前膜に結合し、それらの神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害する。BoNT/B、BoNT/D、BoNT/F及びBoNT/Gはシナプトブレビン/小胞関連膜タンパク質(VAMP)を切断し;BoNT/C、BoNT/A及びBoNT/Eは、25kDaのシナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)を切断し;BoNT/Cはシンタキシン切断する。

BoNT類は、共通の構造を共有し、〜150kDaの二本鎖タンパク質であり、〜50kDaの軽鎖(L鎖)への単一のジスルフィド結合によって共有結合された〜100kDaの重鎖(H鎖)からなる。H鎖は、それぞれ〜50kDaの2個のドメインからなる。C末端ドメイン(HC)は、高親和性結合ニューロン結合のために必要とされるのに対し、N末端ドメイン(HN)は、膜転位に関与することが提案されている。L鎖は、基質SNAREタンパク質の切断に関与する亜鉛依存性メタロプロテアーゼである。

用語「L鎖断片」とは、その断片がメタロプロテアーゼ活性を示し、かつ、細胞エキソサイトーシスに関与する小胞及び/又は細胞膜関連タンパク質をタンパク質分解により切断することのできる神経毒のL鎖の構成要素を意味する。

好適なプロテアーゼ(基準)配列としては、次のものが挙げられる: A型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(1−448) B型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(1−440) C型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(1−441) D型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(1−445) E型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(1−422) F型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(1−439) G型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(1−441) 破傷風神経毒−アミノ酸残基(1−457) IgAプロテアーゼ−アミノ酸残基(1−959)* *Pohlner,J.外(1987).Nature 325,pp.458−462。この文献をその参照により援用する。

上記基準配列は、わずかな変化が亜血清型に応じて生じることがあるためガイドと見なすべきである。例として、US2007/0166332号(ここに参照により援用される)は、わずかに異なるクロストリジウム配列を引用する: A型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(M1−K448) B型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(M1−K441) C型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(M1−K449) D型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(M1−R445) E型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(M1−R422) F型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(M1−K439) G型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(M1−K446) 破傷風神経毒−アミノ酸残基(M1−A457)。

軽鎖を含む様々なクロストリジウム毒断片が本発明の態様において有用であり得るが、ただし、これらの軽鎖断片は、神経伝達物質放出体のコア成分を特異的に標的とするため、全体的な細胞メカニズムを実行することに関与し、それによりクロストリジウム毒素が基質をタンパク質分解により切断することを条件とする。クロストリジウム毒素の軽鎖は、約420〜460アミノ酸長であり、かつ、酵素ドメインを含む。研究から、クロストリジウム毒素軽鎖の全長は、酵素ドメインの酵素活性に必要でないことが示されている。非限定的な例として、BoNT/A軽鎖の最初の8個のアミノ酸は、酵素活性に必要ではない。別の非限定的な例として、TeNT軽鎖の最初の8個のアミノ酸は、酵素活性に必要ではない。同様に、軽鎖のカルボキシル末端は活性に必要ではない。非限定的な例として、BoNT/Aの軽鎖の最後の32個のアミノ酸(残基417−448)は、酵素活性に必要ではない。別の非限定的な例として、TeNT軽鎖の最後の31個のアミノ酸(残基427−457)は、酵素活性に必要ではない。したがって、この実施形態の態様は、例えば少なくとも350個のアミノ酸、少なくとも375個のアミノ酸、少なくとも400個のアミノ酸、少なくとも425個のアミノ酸及び少なくとも450個のアミノ酸長を有する酵素ドメインを含むクロストリジウム毒素軽鎖を含むことができる。この実施形態の他の態様は、例えば多くとも350個のアミノ酸、多くとも375アミノ酸、多くとも400個のアミノ酸、多くとも425個のアミノ酸及び多くとも450個のアミノ酸長さを有する酵素ドメインを有するクロストリジウム毒素軽鎖を含むことができる。

好適な非細胞毒性プロテアーゼのさらなる例は、WO2007/106115号に詳細に記載されており、この文献は、本明細書において引用によりその全体が援用される。

一実施形態では、非細胞毒性プロテアーゼは、SNAP−23タンパク質などの非神経SNAREタンパク質を切断する。一実施形態では、非細胞毒性プロテアーゼは、SNAP−23を切断することができる修飾ボツリヌス毒素L鎖である。このような修飾L鎖の例は、Chen及びBarbieri,PNAS,vol.106,no.23,p9180−9184,2009に記載されている。

一実施形態では、非細胞毒性プロテアーゼは、BoNT/A、BoNT/C又はBoNT/Eプロテアーゼであり、好ましいSNAREモチーフは、SNAP(例えばSNAP25)モチーフである。

別の実施形態では、非細胞毒性プロテアーゼは、BoNT/B、BoNT/D、BoNT/F若しくはBoNT/G又は破傷風神経毒素(TeNT)プロテアーゼであり、好ましいSNAREモチーフはVAMPモチーフである。

別の実施形態では、非細胞毒性プロテアーゼはBoNT/C1プロテアーゼであり、好ましいSNAREモチーフはシンタキシンモチーフである。

本発明の非細胞毒性タンパク質は、異なる切断部位配列を認識するため、わずかに異なる切断特異性を有する。

さらなる例として、次の認識配列及び切断部位が挙げられる:

本発明のポリペプチド、特にそのプロテアーゼ成分は、PEG化されていてよい。これは、安定性、例えばプロテアーゼ成分の作用の持続時間を増大させるのに役立つ場合がある。PEG化は、プロテアーゼがBoNT/A、B又はC1プロテアーゼを含む場合に特に好ましい。PEG化は、好ましくは、プロテアーゼ成分のN末端にPEGを付加することを含む。一例として、プロテアーゼのN末端は、同一でも異なってもよい1個以上のアミノ酸(例えば、システイン)残基で伸長できる。該アミノ酸残基の1個以上は、その自身のPEG分子がそれに結合(例えば共有結合)していてもよい。この技術の例は、WO2007/104567号に記載されており、この文献は、引用によりその全体が援用される。

転位ドメインは、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞の細胞質内で生じるようにプロテアーゼの標的細胞への転位を可能にする分子である。任意の分子(例えば、タンパク質又はペプチド)が本発明の必要な転位機能を有するかどうかは、従来の多数のアッセイのいずれかで確認できる。

例えば、Shone C.(1987)には、試験分子で刺激されるリポソームを使用したインビトロアッセイが記載されている。必要な転位機能の存在は、リポソームからのK+及び/又は標識NADの放出によって確認され、これは容易に監視できる[Shone C.(1987)Eur.J.Biochem;vol.167(1):pp.175−180を参照]。

さらなる例がBlaustein R.(1987)に提供されており、これには、平面リン脂質二重膜を用いた単純な試験管内アッセイが記載されている。これらの膜を試験分子でチャレンジし、そして必要な転位機能を、膜を横切るコンダクタンスの増大により確認する[Blaustein(1987)FEBS Letts;vol.226,no.1:pp.115−120参照]。

膜融合の評価を可能にする追加の方法、すなわち本発明での使用に適した転位ドメインの同定がMethods in Enzymology Vol220及び221,Membrane Fusion Techniques,Parts A及びB,Academic Press 1993に提供されている。

また、本発明は、変異転位ドメインも包含するが、ただし、該変異ドメインが依然として必要な転位活性を示す場合に限る。例えば、変異体は、基準転位ドメインと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸配列相同性を有することができる。転位ドメインに関連して使用されるときに、用語「断片」とは、基準転位ドメインの少なくとも20個、好ましくは少なくとも40個、より好ましくは少なくとも80個、最も好ましくは少なくとも100個のアミノ酸残基を有するペプチドを意味する。クロストリジウム転位ドメインの場合には、断片は、基準転位ドメイン(例えばHNドメイン)の少なくとも100個、好ましくは少なくとも150個、より好ましくは少なくとも200個、最も好ましくは少なくとも250個のアミノ酸残基を有する。TM「断片」成分(上記)と同様に、本発明の転位「断片」は、基準配列に基づく変異型転位ドメインの断片を包含する。

転位ドメインは、低pHの条件下で脂質膜内にイオン透過性細孔を形成することができることが好ましい。好ましくは、エンドソーム膜内に細孔形成が可能なタンパク質分子の部分のみを使用することが見出されている。

転位ドメインは、微生物のタンパク質源、特に細菌又はウイルスタンパク質源から得ることができる。したがって、一態様では、転位ドメインは、細菌毒素又はウイルスタンパク質などの酵素の転位性ドメインである。

細菌毒素分子の所定ドメインがこのような孔を形成することができることが記載されている。また、ウイルス発現膜融合タンパク質の所定の転位ドメインがこのような孔を形成することができることも知られている。このようなドメインを本発明で使用することができる。

転位ドメインは、HNドメイン(又はその機能性成分)などのクロストリジウム由来のものであることができる。HNとは、H鎖のアミノ末端の半分、又はそのままのH鎖におけるその断片に想到するドメインとほぼ同等のクロストリジウム神経毒のH鎖の一部又は断片を意味する。この点について、HC細胞結合機能を除去することが望ましいならば、これは、HC又はHCCのアミノ酸配列の欠失によって行うことができる(DNA合成のレベルで、又はヌクレアーゼ若しくはプロテアーゼ処理による合成後のレベルで)。あるいは、HC機能は、化学的又は生物学的処理によって不活性化できる。

好適な(基準)転位ドメインの例としては、次のものが挙げられる: A型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(449−871) B型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(441−858) C型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(442−866) D型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(446−862) E型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(423−845) F型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(440−864) G型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(442−863) 破傷風神経毒−アミノ酸残基(458−879)。

上記基準配列は、わずかな変化が亜血清型に応じて発生することがあるためガイドと見なすべきである。一例として、US2007/0166332号(ここに引用により援用する)は、わずかに異なるクロストリジウム配列を引用している: A型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(A449−K871) B型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(A442−S858) C型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(T450−N866) D型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(D446−N862) E型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(K423−K845) F型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(A440−K864) G型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(S447−S863) 破傷風神経毒−アミノ酸残基(S458−V879)。

好適な転位ドメインのさらなる例は、WO2007/106115号に詳細に記載されており、この文献は、ここに引用によりその全体が援用される。

本発明において、転位ドメインを含む様々なクロストリジウム毒素HN領域が本発明の態様において有用であり得るが、ただし、これらの活性断片が細胞内小胞から標的細胞の細胞質への非細胞毒性プロテアーゼ(例えばクロストリジウムL鎖)の放出を促進し、したがって全体的な細胞メカニズムの実行に関与することができ、それによってクロストリジウム毒素が基質をタンパク質分解により切断することを条件とする。クロストリジウム毒素の重鎖からのHN領域は、約410〜430アミノ酸長であり、かつ、転位ドメインを含む。研究から、クロストリジウム毒素重鎖のHN領域の全長が転位ドメインの転位活性に必要なわけではないことが示されている。したがって、この実施形態の態様は、例えば、少なくとも350個のアミノ酸、少なくとも375個のアミノ酸、少なくとも400個のアミノ酸及び少なくとも425個アミノ酸長を有する転位ドメインを含むクロストリジウム毒素HN領域を含むことができる。この実施形態の他の態様は、例えば、多くとも350個、多くとも375アミノ酸、多くとも400個のアミノ酸及び多くとも425個のアミノ酸長を有する転位ドメインを含むクロストリジウム毒素HN領域を含むことができる。

Clostridium botulinum及びC.tetaniにおける毒素産生の遺伝的基礎の詳細については、Henderson外(1997),The Clostridia:Molecular Biology and Pathogenesis,Academic pressを参照されたい。

用語HNは、天然型神経毒HN部分及び天然には存在しないアミノ酸配列及び/又は合成アミノ酸残基を有する修飾HN部分を包含するが、ただし、該修飾HN部分が依然として上記の転位機能を示す場合に限る。

あるいは、転位ドメインは、非クロストリジウム由来のものであってよい。非クロストリジウム(基準)転位ドメイン由来の例としては、ジフテリア毒素の転位ドメイン[O=Keefe外,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1992)89,6202−6206;Silverman外,J.Biol.Chem.(1993)269,22524−22532;及びLondon,E.(1992)Biochem.Biophys.Acta.,1112,pp.25−51]、A型シュードモナス外毒素の転位ドメイン[Prior外,Biochemistry(1992)31,3555−3559]、炭疽菌毒素の転位ドメイン[Blanke外,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93,8437−8442]、転位機能の様々な融合性又は疎水性ペプチド[Plank外,J.Biol.Chem.(1994)269,12918−12924;及びWagner外(1992)PNAS,89,pp.7934−7938]、及び両親媒性ペプチド[Murata外(1992)Biochem.,31,pp.1986−1992]が挙げられるが、これらに限定されない。転位ドメインは、天然タンパク質中に存在する転位ドメインの鏡像であることができ、又はアミノ酸変異を含むことができるが、ただし、これらの変異が転位ドメインの転位能力を破壊しないことを条件とする。

本発明での使用に適したウイルス(基準)転位ドメインの特定の例としては、ウイルス発現膜融合タンパク質の所定の転位ドメインが挙げられる。例えば、Wagner外(1992)及びMurata外(1992)は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素のN末端領域に由来する多数の融合性及び両親媒性ペプチドの転位(すなわち、膜融合及び小胞形成)機能を記載する。所望の転位活性を有することが知られている他のウイルス発現膜融合タンパク質は、セムリキ森林ウイルス(SFV)融合ペプチドの転位ドメイン、水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質Gの転位ドメイン、SERウイルスFタンパク質の転位ドメイン及び泡沫状ウイルスエンベロープ糖タンパク質の転位ドメインである。ウイルスにコードされたAspikeタンパク質、例えば、SFVのE1タンパク質及びVSVのGタンパク質は、本発明において特定の用途を有する。

表(以下)に列挙された(参照)転位ドメインの使用には、その配列変異体の使用が含まれる。変異体は、1個以上の保存的核酸置換及び/又は核酸の欠失若しくは挿入を含むことができるが、ただし、該変異体が必要な転位機能を保持することを条件とする。また、変異体は、1個以上のアミノ酸置換及び/又はアミノ酸の欠失若しくは挿入を含むこともできるが、ただし、該変異体が必要な転位機能を保持する場合に限る。

本発明のポリペプチドは、転位促進ドメインをさらに含むことができる。該ドメインは、非細胞毒性プロテアーゼの標的細胞の細胞質への送達を容易にし、例えばWO08/008803号及びWO08/008805号に記載されている。これらの文献のそれぞれは、本明細書中に引用により援用される。

一例として、好適な転位促進ドメインとしては、エンベロープウイルス融合性ペプチドドメインが挙げられ、例えば、好適な融合性ペプチドドメインとしては、インフルエンザウイルス融合性ペプチドドメイン(例えば、23個のアミノ酸のインフルエンザAウイルス融合性ペプチドドメイン)、アルファウイルス融合性ペプチドドメイン(例えば、26個のアミノ酸のセムリキ森林ウイルス融合性ペプチドドメイン)、ベシクロウイルス融合性ペプチドドメイン(例えば、21個のアミノ酸の水疱性口内炎ウイルス融合性ペプチドドメイン)、レスピロウイルス融合性ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のセンダイウイルス融合性ペプチドドメイン)、モルビリウイルス融合性ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のイヌジステンパーウイルス融合性ペプチドドメイン)、アブラウイルス融合性ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のニューカッスル病ウイルス融合性ペプチドドメイン)、ヘニパウイルス融合性ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のヘンドラウイルス融合性ペプチドドメイン)、メタニューモウイルス融合性ペプチドドメイン(例えば、25個のアミノ酸のヒトメタニューモウイルス融合性ペプチドドメイン)又はサル泡沫状ウイルス融合性ペプチドドメインなどのスプーマウイルス融合性ペプチドドメイン;或いはその断片又は変異体が挙げられる。

別の例として、転位促進ドメインは、クロストリジウム毒素HCNドメイン又はその断片若しくは変異体を含むことができる。より詳細には、クロストリジウム毒素HCN転位促進ドメインは、少なくとも200個のアミノ酸、少なくとも225個のアミノ酸、少なくとも250個のアミノ酸、少なくとも275個のアミノ酸長を有することができる。この点に関して、クロストリジウム毒素HCN転位促進ドメインは、好ましくは多くとも200個のアミノ酸、多くとも225個のアミノ酸、多くとも250個のアミノ酸、又は多くとも275個のアミノ酸長を有する。特定の(参考)例としては、次のものが挙げられる: A型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(872−1110) B型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(859−1097) C型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(867−1111) D型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(863−1098) E型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(846−1085) F型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(865−1105) G型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(864−1105) 破傷風神経毒−アミノ酸残基(880−1127)。

上記の配列位置は、血清型/亜型に応じて少し異なる場合があり、好適な(参考)クロストリジウム毒素HCNドメインのさらなる例としては次のものが挙げられる: A型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(874−1110) B型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(861−1097) C型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(869−1111) D型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(865−1098) E型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(848−1085) F型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(867−1105) G型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(866−1105) 破傷風神経毒−アミノ酸残基(882−1127)。

上記促進ドメインのいずれかを、本発明における使用に適した前記転位ドメインペプチドのいずれかと組み合わせることができる。したがって、一例として、非クロストリジウム促進ドメインを非クロストリジウム転位ドメインペプチド又はクロストリジウム転位ドメインペプチドと組み合わせることができる。或いは、クロストリジウム毒素HCN転位促進ドメインを、非クロストリジウム転位ドメインペプチドと組み合わせることができる。或いは、クロストリジウム毒素HCN促進ドメインをクロストリジウム転位ドメインペプチドと組み合わせることができ、その例としては次のものが挙げられる: A型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(449−1110) B型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(442−1097) C型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(450−1111) D型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(446−1098) E型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(423−1085) F型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(440−1105) G型ボツリヌス神経毒−アミノ酸残基(447−1105) 破傷風神経毒−アミノ酸残基(458−1127)。

配列相同性 様々な配列アラインメントの方法のいずれかを使用して同一性%を決定することができ、例えば、限定されないが、グローバル方法、ローカル方法及びハイブリッド方法、例えばセグメントアプローチ方法が挙げられる。同一性%を決定するためのプロトコルは、当業者の範囲内にある日常的な手順である。グローバル方法は、分子の最初から最後まで配列を整列させ、個々の残基対のスコアを加算し、そしてギャップペナルティを課すことによって最良のアラインメントを決定する。非限定的な方法としては、例えば、CLUSTAL W,Julie D.Thompson外,CLUSTAL W:Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting,Position−Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice,22(22)Nucleic Acids Research 4673−4680(1994);及び反復改良法、例えば、Osamu Gotoh,Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein、Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments,264(4)J.MoI.Biol.823−838(1996)を参照されたい。ローカル方法は、入力配列の全てによって共有される1以上の保存モチーフを同定することにより、配列を整列させる。非限定的な方法としては、例えば次のものが挙げられる:マッチボックス、例えば、Eric Depiereux及びErnest Feytmans,Match−Box:A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences,8(5)CABIOS 501−509(1992)参照;ギブスサンプリング、例えば、C.E.Lawrence外,Detecting Subtle Sequence Signals:A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment,262(5131)Science 208−214(1993)参照;アライン−M、例えば、Ivo Van Walle外,Align−M −A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences,20(9)Bioinformatics:1428−1435(2004)を参照。

このように、配列同一性%は、従来の方法による決定される。例えば、Altschul外,Bull.Math.Bio.48:603−16,1986並びにHenikoff及びHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915−19,1992を参照されたい。簡単に説明すると、2つのアミノ酸配列を、10のギャップオープニングペナルティー、1のギャップ伸長ペナルティ及び以下に示すように(アミノ酸は、標準的な1文字コードで示されている)Henikoff及びHenikoff(前掲)の「blosum 62」スコアマトリックスを使用してアラインメントスコアを最適化させるように配列させる。

配列同一性を決定するためのアラインメントスコア

続いて、同一性%は次のように算出する: 完全一致の総数/[長い配列の長さ+2つの配列を整列させるために該長い配列に導入されたギャップの数]×100。

実質的に相同的なポリペプチドは、1以上のアミノ酸置換、欠失又は付加を有することを特徴とする。これらの変化は、好ましくは、ポリペプチドの折り畳み又は活性に有意には影響を与えない保存的アミノ酸置換(以下参照)及び他の置換;典型的には1個〜約30個のアミノ酸の小さな欠失;及び小さなアミノ末端又はカルボキシル末端伸長、例えばアミノ末端メチオニン残基、約20〜25個残基までの小さなリンカーペプチド、又は親和性タグであるマイナーな性質のものである。

保存的アミノ酸置換 塩基性: アルギニン リジン ヒスチジン 酸性: グルタミン酸 アスパラギン酸 極性: グルタミン アスパラギン 疎水性: ロイシン イソロイシン バリン 芳香族: フェニルアラニン トリプトファン チロシン 小型: グリシン アラニン セリン トレオニン メチオニン

20種の標準的なアミノ酸の他に、非標準的なアミノ酸(4−ヒドロキシプロリン、6−N−メチルリジン、2−アミノイソ酪酸、イソバリン及びα−メチルセリンなど)を本発明のポリペプチドのアミノ酸残基に対して置換することができる。制限された数の非保存的アミノ酸、遺伝子コードによりコードされないアミノ酸、及び非天然アミノ酸を、クロストリジウムポリペプチドのアミノ酸残基に対して置換することができる。また、本発明のポリペプチドは、非天然型アミノ酸残基を含むこともできる。

非天然型アミノ酸としては、例えば、トランス−3−メチルプロリン、2,4−メタノプロリン、シス−4−ヒドロキシプロリン、トランス−4−ヒドロキシプロリン、N−メチルグリシン、アロトレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、t−ロイシン、ノルバリン、2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン及び4−フルオロフェニルアラニンが挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質に非天然型アミノ酸残基を組み込むためのいくつかの方法が当該技術分野において知られている。例えば、ナンセンス変異が化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを使用して抑制されるインビトロ系を使用することができる。アミノ酸及びアミノアシルtRNAを合成するための方法は、当該技術分野において知られている。ナンセンス突然変異を含むプラスミドの転写及び翻訳は、E.coliS30抽出物と市販の酵素と他の試薬とを含む無細胞系で実施される。タンパク質は、クロマトグラフィーによって精製される。例えば、Robertson外,J.Am.Chem.Soc.113:2722,1991;Ellman外,Methods Enzymol.202:301,1991;Chung外,Science 259:806−9,1993;及びChung外,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10145−9,1993)を参照されたい。第2の方法では、翻訳は、突然変異mRNAのマイクロインジェクション及び化学的アミノアシル化サプレッサーtRNAによってアフリカツメガエル卵母細胞において実施される(Turcatti外,J.Biol.Chem.271:19991−8,1996)。第3の方法では、E.coli細胞を、置換されるべき天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の不在下でかつ所望の非天然型アミノ酸(例えば、2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン、又は4−フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養する。非天然型アミノ酸は、その天然の対応物の代わりにポリペプチドに組み込まれる。Koide外,Biochem.33:7470−6,1994を参照されたい。天然型アミノ酸残基は、インビトロ化学修飾によって天然に存在しない種に変換できる。化学的修飾を部位特異的突然変異誘発と組み合わせて置換の範囲をさらに拡大することもできる(Wynn及びRichards,Protein Sci.2:395−403,1993)。

限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝子コードによりコードされないアミノ酸、天然には生じないアミノ酸及び非天然アミノ酸を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基に対して置換することができる。

本発明のポリペプチドにおける必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発(Cunningham及びWells,Science 244:1081−5,1989)などの当該技術分野において知られている手順に従って同定できる。また、生物学的相互作用の部位を、推定接触部位アミノ酸の変異と組み合わせて、核磁気共鳴、結晶学、電子回折又は光親和性ラベリングなどの技術により決定されるように、構造の物理的解析によっても決定できる。例えば、de Vos外,Science 255:306−12,1992;Smith外,J.Mol.Biol.224:899−904,1992;Wlodaver外,FEBS Lett.309:59−64,1992を参照されたい。必須アミノ酸の同一性は、本発明のポリペプチドの関連する成分(例えば、転位又はプロテアーゼ成分)との相同性の分析から推測できる。

複数のアミノ酸置換は、Reidhaar−Olson及びSauer(Science 241:53−7,1988)又はBowie及びSauer(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152−6,1989)に記載されるような既知の突然変異誘発及びスクリーニングの方法を使用して作製されかつ試験される。簡単に説明すると、これらの著者は、ポリペプチド中における2個以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドについて選択し、その後突然変異誘発ポリペプチドの配列を決定して各位置での許容可能な置換の範囲を決定するための方法を開示する。使用できる他の方法としては、ファージディスプレイ(例えば、Lowman外,Biochem.30:10832−7,1991;Ladner外、米国特許第5223409;Huse、WO92/06204号)及び領域指向性突然変異誘発(Derbyshire外,Gene 46:145,1986;Ner外,DNA 7:127,1988)が挙げられる。

複数のアミノ酸置換は、Reidhaar−Olson及びSauer(Science 241:53−7,1988)又はBowie及びSauer(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152−6,1989)に記載されるような既知の突然変異誘発及びスクリーニングの方法を使用して作製されかつ試験される。簡単に説明すると、これらの著者は、ポリペプチド中における2個以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドについて選択し、その後突然変異誘発ポリペプチドの配列を決定して各位置での許容可能な置換の範囲を決定するための方法を開示する。使用できる他の方法としては、ファージディスプレイ(例えば、Lowman外,Biochem.30:10832−7,1991;Ladner外、米国特許第5223409;Fuse、WO92/06204号)及び領域指向性突然変異誘発(Derbyshire外,Gene 46:145,1986;Ner外,DNA 7:127,1988)が挙げられる。

かゆみに苦しむ患者に投与するためにポリペプチドを調製し、かゆみの抑制又は治療のための方法を提供する。本発明で定義されるように、調製されたポリペプチドの標的化部分(TM)成分は、かゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体に存在するGタンパク質共役受容体に結合する。その後、転位成分は、ポリペプチドの非細胞毒性プロテアーゼ成分の輸送を達成し、このポリペプチドがかゆみ特異的DRGニューロン又は掻痒受容体の内部に入ると、そこからの神経伝達物質の分泌を阻害する。したがって、このポリペプチドは、神経伝達物質のレベルを減少させ、かゆみを抑制又は治療することができる。

例1 35歳の女性乳癌患者は、悪性腫瘍の治療のための薬物反応に起因する消耗性の慢性のかゆみに苦しんでいる。治療は、BAM8-22リガンドを含む本発明のポリペプチドを0.025mg/kg皮下注射(6ヶ月の期間にわたって週1回の注射)することによるものであり、これにより、かゆみ感覚の減少及び顕著な健康の改善に至った。この患者は、効果的なかゆみの緩和を報告した。

例2 60歳の男性患者は、慢性のかゆみを報告し、腎疾患に起因する重症例を示す。SLIGRL−NH2ペプチドを含む本発明のポリペプチドの0.07mg/kgの経口懸濁液を、腹腔鏡下十二指腸注射(6ヶ月毎の注射管理)により投与した。かゆみの減少を含むポジティブな結果が治療の最初の月に報告された。

例3 乾癬の家族歴を有する37歳の男性患者は、身体的健康及び生活の質に大きな影響を及ぼしている慢性的なかゆみに悩まされている。γ2−メラニン細胞刺激ホルモン(γ2−MSH)ペプチドを含む本発明のポリペプチドの0.09mg/kgの毎週用量を静脈内に投与する。乾癬の重症度が低下し、それ以上のかゆみ感覚のないことが治療期間を通して患者によって報告された。

例4 重度の慢性的なかゆみに悩まされる45歳のHIV患者は、最近、帯状疱疹、すなわち極度のかゆみを伴う場合の多い症状を有する疾患と診断された。絶えず続く引掻きで何日も眠れない夜の後、彼女に、クロロキン(CQ)を含む本発明のポリペプチドの0.05mg/kgの毎月の静脈内注射を処方した。この患者は、治療の3ヶ月後に回復率の改善と、さらなるかゆみ感覚がないことを報告した。

例5 アトピー性湿疹を有する6歳の女性患者に、ヒスタミンHT1を含む本発明のポリペプチドのカプセル化製剤の0.1mg/kgの経口用量を毎月処方した。この患者は、治療後に状態の改善と、膝の後ろの皮膚の赤い領域の消失を報告した。

例6 シェーグレン症候群を有する17歳の男性は、眼におけるそう痒症及び四肢における皮膚発疹の症状を報告した。臨床医は、セロトニンを含む本発明のポリペプチドの0.001mg/kgを処方した(8週間毎に局所腹腔鏡下注射)。2ヶ月以内に、この患者は、不快感の有意な減少を報告した。

例7 18歳の女性患者は、アフリカへの休暇後に丘疹蕁麻疹と診断された。彼女は、臨床医に、露出領域、特に下肢のみならず腕、頬及びウエストラインに多数の病変を提示した。丘疹及び炎症後瘢痕は明白であった。診断以来、この患者は、全体的な生活の質の低下を経験した。この患者は、NPFF/Y−G又はRF/Y−アミドで終端する神経ペプチドを含む本発明のポリペプチドの0.07mg/kgの毎月の注射によりかゆみを治療した。6ヶ月の治療プログラム中に、この患者は、さらなるかゆみ感覚がないことを報告した。

例8 皮膚細胞型B細胞リンパ腫を有する59歳の男性患者は、後に、身体の約80%をカバーする重度のかゆみを伴う赤い発疹及び乾燥肌を発症した。この患者の医師は、カプサイシンを含む本発明のポリペプチドの0.1mg/kgを処方し、3ヶ月毎に腹腔鏡下十二指腸注射によって投与した。治療の1回用量後に、この患者は、さらなるかゆみがないことを報告した。

例9 妊娠の多形性発疹(PEP)を有する34歳の女性患者は、下腹部及び手足の皮膚のみみず腫れ及び大きな炎症領域を伴う発疹の形で深刻なかゆみを示した。この患者を、皮膚の表面に、2週間にわたってパッチからゆっくりと拡散することにより、コルチスタチンを含む本発明のポリペプチドを与える接着パッチを投与することによって治療した。この経皮パッチを12週間たってから交換し、その終了時にかゆみ感覚が消失したと報告された。

動物モデルの例 本発明のポリペプチドを、本明細書に記載されたかゆみ誘発性アトピー性皮膚炎(AD)のマウスモデルを使用することにより、かゆみの治療として試験する。以下に例示するように、BALB/c及びC57BL/6マウス株は同様に好適である。

例10 オボアルブミンによるテープ剥がし皮膚の反復経皮(EC)感作によって誘発されるかゆみのBALB/cマウスモデル。マウスの背中の皮膚を剃毛し、テープを3Mテープで6回剥がし、アトピー性皮膚炎(AD)患者での引掻きによって与えられる皮膚損傷を模倣する。通常の生理食塩水100μl中のOVA100μgを、滅菌ガーゼの1×1cmパッチ上に置き、このガーゼを透明な生体閉塞包帯で皮膚に固定する。これにより、抗原が舐められないことが確保される。それぞれのマウスは、2週間の間隔で互いに分離される同じ部位でパッチに対して合計3回の1週間露出を有する。EC感作されたマウスは、引掻き行動が増加し、それらの皮膚は、表皮及び真皮の肥厚によって特徴付けられる病変を発症する。

本発明のポリペプチドを1mg/mlの濃度で1時間間隔で首の後ろに皮内(i.d)投与する。PBSの注射をコントロール(対照)として使用した。

「かゆみ」を、本発明のポリペプチドを用いた治療前に、治療後と比較した引掻きの「発作」の数を計数することによって測定する。引掻きの発作とは、注射部位(すなわち首の後)の周囲の領域に対する後足での3回以上の個々の迅速な引掻き運動であると定義される。結果は、本発明のポリペプチドによる処理後に引掻きの顕著な減少を示す。

例11 BABL/cマウスは、組換えダニアレルゲンDer p8のEC適用を受け、表皮過形成及び海綿状変化を伴う皮膚炎の特徴を示す。本発明のポリペプチドを上記のように投与する。所見は、引掻きの有意な減少が本発明のポリペプチドでの処理後に認められる点で、OVAによるEC感作モデルにおいて観察されたものと同様である。

例12 BABL/cマウスを、ADの症状を悪化させかつ皮膚病変を引き起こすことが知られているS.aureus感染症にさらす。本発明のポリペプチドを投与した結果は、対照マウスと比較して、本発明のポリペプチドで治療した被験体による引掻きのレベルが著しく減少したことを示す。これらの結果は、かゆみの治療における本発明のポリペプチドの使用を実証するものである。

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