組換えエラスターゼタンパク質ならびにその製造方法および使用

申请号 JP2017011160 申请日 2017-01-25 公开(公告)号 JP2017104114A 公开(公告)日 2017-06-15
申请人 プロテオン セラピューティクス,インコーポレイテッド; 发明人 フラナノ,エフ.ニコラス; ブランド,キンバリー; ウォン,マルコ ディー.; ディン,ビー シー.;
摘要 【課題】 生物 学的に活性な組換えエラスターゼタンパク質の製造、精製、製剤化、および使用のための方法。 【解決手段】エラスターゼタンパク質を含む医薬組成物と同様に治療的に有用なエラスターゼを作製する組換え法。新規の組換えエラスターゼタンパク質およびタンパク質調製物。エラスターゼタンパク質を含有する医薬組成物を用いて生体導管疾患を治療および予防する方法。 【選択図】なし
权利要求

(i)エラスターゼ認識配列を含むエラスターゼ活性化配列が(ii)成熟エラスター ゼのアミノ酸配列に作動的に連結されているタンパク質。

说明书全文

本出願は、その内容がそれらの全体において参照により本明細書に組み込まれる、20 07年12月4日に出願された米国仮出願第60/992,319号の優先権を主張する 。

1.発明の分野 本発明は、生体導管疾患を治療および予防するのに用いられるエラスターゼタンパク質 を製造および製剤化する組換え法に関する。本発明は、新規の組換えエラスターゼタンパ ク質およびこのようなタンパク質を含有する医薬組成物にさらに関する。さらにまた、本 発明は、生体導管疾患に対する治療および予防のための組換えエラスターゼタンパク質を 含む医薬組成物の使用にも関する。

2.発明の背景 エラスチンは、伸ばされた後における自発的な反跳が可能なタンパク質である。架橋さ れたエラスチンは、組織弾性をもたらす弾性繊維の主要な構造成分である。プロテイナー ゼが、架橋された成熟エラスチンに対する溶解能を有する場合、これをエラスターゼと称 する(Bieth,JG、「Elastases:catalytic and bio logical properties」、217〜320頁(Mecham編、「Re gulation of Matrix Accumulation」、New Yor k、Academic Press、1986))。公開された複数の特許出願(WO2 001/21574、WO2004/073504、およびWO2006/036804 )は、エラスターゼが、単独または他の作用物質との組合せで、閉塞および血管攣縮を受 けつつあるか、またはこれを受けやすい生体導管を含む生体導管の疾患を治療するのに有 益であることを示している。ヒト対象に対するエラスターゼ療法の場合、非ヒトエラスタ ーゼに対する免疫反応の危険性を低下させるのにヒトエラスターゼの使用が望ましい。

しかし、現在のところ、臨床的適用に十分に純粋な形態および十分な量で、生物学的に 活性なエラスターゼを作製する市販可能な手段は知られていない。エラスターゼはエラス チン以外の多数のタンパク質を加分解しうる強なプロテアーゼであるため、エラスタ ーゼのタンパク質分解活性が、その組換え作製の潜在的な障害を提示している。例えば、 成熟エラスターゼの活性は、エラスターゼを発現させる宿主細胞を損傷することもあり、 エラスターゼ自体を分解することもあり、エラスターゼの作製または特徴づけを補助する のに用いられる作用物質を分解することもある。

エラスターゼは、シグナルペプチド、活性化ペプチド、および活性な成熟部分を含有す るプレプロタンパク質として発現することが多い。分泌時におけるシグナル配列の切断に より、酵素活性をほとんどまたはまったく有しえず、そのアミノ酸配列が活性化ペプチド および成熟タンパク質のアミノ酸配列を含有するプロタンパク質がもたらされる。一般に 、組換え発現の場合、活性な成熟酵素の代わりに不活性な前駆体を発現させて、それを発 現させる細胞に対する損傷を回避することができる。例えば、米国特許第5,212,0 68号は、ヒト膵臓エラスターゼのcDNA(該明細書では、エラスターゼ「IIA」、 「IIB」、「IIIA」、および「IIIB」と称する)のクローニングについて説明 している。哺乳動物のCOS−1細胞において、各種のエラスターゼが、天然のシグナル 配列を含む全長cDNAとして発現した。加えて、枯草菌(B.subtilis)のシ グナル配列およびβ−ガラクトシダーゼのシグナル配列を含有するエラスターゼの改変形 もまた、それぞれ、枯草菌および大腸菌(E.coli)において発現した。米国特許第 5,212,068号はまた、出芽酵母(S.cerevisiae)内におけるエラス ターゼの発現も示唆している。一般に、米国特許第5,212,068号におけるエラス ターゼ発現の実施例は、回収されたエラスターゼの活性が低いか、または活性エラスター ゼの生成に、トリプシンによる処理を伴う活性化ステップを必要とする。加えて、大腸菌 内で発現した場合、エラスターゼは大半が封入体内に存在し、可溶性および活性なのは発 現したエラスターゼのごくわずかな部分であった。米国特許第5,212,068号にお いて説明されるエラスターゼ調製物のいずれもが、医薬グレードまで精製されていなかっ た。

したがって、当技術分野では、治療量の、生物学的に活性な、医薬グレードのエラスタ ーゼの生成を可能とし、大規模調製に費用がかかり、最終生成物のトリプシン汚染を結果 としてもたらしうる、トリプシンによる活性化ステップを回避することが好ましい、組換 え製造方法が必要とされている。トリプシンを含有するエラスターゼを患者に投与すると 、プロテアーゼ活性化受容体1および2の活性化を結果としてもたらす可能性があり、こ れにより、エラスターゼ治療の有益な効果の一部が減殺される恐れがある。

本出願の第2節または他の任意の節における任意の参考文献の引用または同定は、この ような参考文献が、本発明に対する先行技術として用いられることの容認としては解釈さ れないものとする。

3.発明の概要 本発明は、組換えエラスターゼタンパク質の新規で効率的な作製方法、および組成物、 例えば、生体導管疾患に対する治療および予防のための医薬組成物、エラスターゼ製剤、 または単位用量中における組換えタンパク質の使用を提供する。

本発明は、自己活性化プロエラスターゼタンパク質、自己活性化プロエラスターゼタン パク質をコードする核酸、前記核酸を含む宿主細胞、自己活性化プロエラスターゼタンパ ク質を作製する方法、および、例えば、医薬製剤中において用いられる生物学的に活性な 成熟エラスターゼタンパク質の製造における自己活性化プロエラスターゼタンパク質の使 用を目的とする。本明細書において、「自己活性化(auto−activated)」 (または「自己活性化(autoactivated)」)という用語は、「自己活性化 (auto−activating)」、「自己活性化(self−activatin g)」、および「自己活性化(self−activated)」という用語と互換的に 用いられ、活性化ステップが生じることの示唆を意図しない。本明細書において、「活性 化」という用語は、「転換」という用語と互換的に用いられ、「活性化」から生じるタン パク質が、必ずしも酵素活性を有することの示唆を意図しない。

別段に示さない限り、以下の本明細書において用いられる「エラスターゼ」という用語 は一般に、エラスターゼ活性を有する成熟エラスターゼタンパク質のほか、未成熟プロエ ラスターゼタンパク質(本明細書では、エラスターゼプロタンパク質とも称する)および 未成熟プレプロエラスターゼタンパク質(本明細書では、エラスターゼプレプロタンパク 質とも称する)を含む未成熟エラスターゼタンパク質を指す。

本発明の好ましいエラスターゼは、I型膵臓エラスターゼ、例えば、ヒトI型膵臓エラ スターゼおよびブタI型膵臓エラスターゼである。本明細書において、I型膵臓エラスタ ーゼは、場合によって、「エラスターゼ−1」、「エラスターゼI」、「エラスターゼ1 型」、「1型エラスターゼ」、または「ELA−1」とも称する。本明細書において、ヒ トI型膵臓エラスターゼはまた、hELA−1またはヒトELA−1とも称し、ブタI型 膵臓エラスターゼはまた、pELA−1またはブタELA−1とも称する。

本発明の成熟エラスターゼタンパク質は、天然のエラスターゼ遺伝子によりコードされ るアミノ酸配列またはこのような配列の変異体を有することが典型的である。本明細書で は、アミノ酸置換を含有する変異体を含む好ましい配列変異体が説明される。プロエラス ターゼタンパク質は、大半が成熟エラスターゼタンパク質の不活性な前駆体であり、プレ プロエラスターゼタンパク質は、タンパク質分泌のためのシグナル配列をさらに含有する 。本発明のエラスターゼタンパク質のプレ配列およびプロ配列は、本発明の成熟エラスタ ーゼタンパク質をコードするエラスターゼ遺伝子にとって天然のものではないことが典型 的である。したがって、ある意味で、本発明の未成熟エラスターゼタンパク質は「キメラ 」タンパク質であり、それらの成熟部分は天然のエラスターゼ遺伝子によりコードされ、 それらの未成熟部分はエラスターゼ遺伝子以外の配列によりコードされる。

言及を容易にするため、本発明のエラスターゼタンパク質およびそれらの配列のコア構 成要素を図2に示す。図2に示す通り、本明細書では、切断結合(すなわち、切断されて 成熟エラスターゼタンパク質をもたらす結合)に対してN末端側にあるプロエラスターゼ 配列内のアミノ酸残基をPX、・・・P5、P4、P3、P2、およびP1と表示する( 切断結合に対してすぐのN末端側をP1とする)一方で、成熟エラスターゼタンパク質の 切断結合に対して(および該N末端に対して)C末端に位置するアミノ酸残基をP1’、 P2’、P3’、・・・PX’と表示して(切断結合に対してすぐのC末端側をP1’と する)該成熟タンパク質のN末端のアミノ酸残基を表す。図2はまた、以下の構成要素も 示す:

(1)シグナル配列:細胞から分泌される発現分子の比率を増大させる配列。例示的な 配列は、配列番号50および51のアミノ酸1〜22である。

(2)プロペプチド+スペーサー:エラスターゼ以外であることが好ましい任意選択の プロペプチド配列(酵母α因子のプロペプチドなど)であり、これは場合によって、1つ または複数のスペーサー配列(酵母α因子のプロペプチド配列ならびにKex2およびS TE13スペーサー配列を図1Bに示す)をさらに含みうる。具体的な実施形態において 、該プロペプチド配列は、スペーサーを含まない。

(3)エラスターゼプロペプチド:エラスターゼのN末端に存在すると、該分子を不活 性にするか、または対応する成熟エラスターゼタンパク質と比較してより低活性にするペ プチド。エラスターゼプロペプチドは、活性化ペプチドと隣接する場合もあり、活性化ペ プチドに対して付加的なアミノ酸を含有する場合もある。例示的なエラスターゼプロペプ チド配列は、配列番号64または69のアミノ酸1〜10である。

(4)活性化ペプチド:本明細書では「活性化配列」と互換的に用いられる活性化ペプ チドは、エラスターゼプロペプチドの構成要素であり、これと隣接することがある。図2 に示す通り、活性化ペプチドは、アミノ酸残基P10〜P1を含有する。例示的な活性化 ペプチドのコンセンサス配列は配列番号80であり、活性化ペプチド配列の他の例は配列 番号23、72、および73である。

(5)認識配列:認識配列は、エラスターゼプロペプチドの構成要素である。図2に示 す通り、認識配列は、アミノ酸残基P3〜P1を含有する。例示的な認識配列のコンセン サス配列は配列番号11〜13および93であり、例示的な認識配列は配列番号20であ る。

(6)切断ドメイン:切断結合の範囲にわたるプロエラスターゼタンパク質内の領域。 図2に示す通り、切断ドメインは、アミノ酸残基P5〜P3’を含有する。例示的な切断 ドメイン配列は、配列番号42、43、48、49、53、53、54、および55であ る。

(7)切断部位:これもまた切断結合の範囲にわたるプロエラスターゼタンパク質内の 別の領域。図2に示す通り、切断部位は、アミノ酸残基P4〜P4’を含有する。例示的 な切断部位配列は、配列番号27である。

(8)プレプロエラスターゼタンパク質:構成要素のすべての部分を含みうるタンパク 質。例示的なプレプロエラスターゼタンパク質は、作動的に連結された配列番号64また は配列番号69のタンパク質を後続させる配列番号50、51、96、または97のペプ チドを含みうる。

(9)プロエラスターゼタンパク質:成熟エラスターゼタンパク質、エラスターゼプロ ペプチド、ならびに任意選択のプロペプチド配列およびスペーサー配列を含むタンパク質 。例示的なプロエラスターゼ配列は、配列番号64および69である。

(10)成熟エラスターゼタンパク質:正確にプロセシングされるとエラスターゼ活性 を示すタンパク質。例示的な成熟配列は、配列番号1(ヒト)および配列番号39(ブタ )である。

エラスターゼタンパク質の構成要素は、エラスターゼタンパク質、プロエラスターゼタ ンパク質、およびプレプロエラスターゼタンパク質のモジュール式構成単位と考えること ができる。例えば、本発明は、エラスターゼプロペプチドおよび成熟エラスターゼタンパ ク質の配列を含むプロエラスターゼタンパク質を提供する。エラスターゼプロペプチドは 、活性化ペプチドを含有しうる。エラスターゼプロペプチドはまた、エラスターゼ認識配 列も含有しうる。本発明はまた、エラスターゼプロペプチドと成熟エラスターゼタンパク 質との間の結合部分の範囲にわたる領域内における切断ドメインまたは切断部位を含むプ ロエラスターゼタンパク質も提供する。プロエラスターゼタンパク質は、分泌のためのシ グナル配列をさらに含みうる。このようなタンパク質は、プレプロエラスターゼタンパク 質と考えられる。プレプロエラスターゼタンパク質は、酵母α因子のプロペプチド、また 場合によって、該シグナル配列とエラスターゼプロペプチドとの間のスペーサー配列をさ らに含む場合がある。本発明のエラスターゼタンパク質はまた、図2に示したモジュール 式のコア構成要素に加えた構成要素も含有しうる。例えば、エラスターゼタンパク質は、 精製のためのエピトープタグまたはヒスチジンタグを含有しうる。本発明のエラスターゼ タンパク質は、図2に示したすべての構成要素を含有する必要がなく、一般に、図2に示 した少なくとも1つの構成要素(限定ではなく例として述べると、成熟エラスターゼ配列 またはプロエラスターゼ配列を含む)を含有する。本発明の例示的なエラスターゼタンパ ク質は、後出の第8節における実施形態1〜12、28〜39、および68〜69に記載 され、後出の第8節における実施形態13〜27に記載の例示的なI型プロエラスターゼ タンパク質を含む。

本明細書では、本発明のエラスターゼタンパク質をコードする核酸、該タンパク質を作 製および精製する方法、組換え細胞および細胞培養物上清、エラスターゼタンパク質を含 む組成物(例えば、医薬組成物、単位用量、製剤)、治療を目的とする該タンパク質の使 用、ならびに該タンパク質を含むキット、製剤、医薬組成物、および単位用量が対象とさ れる。本発明のエラスターゼタンパク質をコードする核酸は、後出の第8節における実施 形態40〜67で例示され、ベクター(例えば、実施形態70〜72を参照されたい)を 含む。また、第8節では、組換え細胞(例えば、実施形態73〜84を参照されたい)、 エラスターゼタンパク質を含有する細胞上清(例えば、実施形態88を参照されたい)も 例示される。エラスターゼタンパク質を作製する方法は、第8節の実施形態89〜224 、261〜276、および347〜373において例示される。エラスターゼ製剤を作製 する方法は、第8節の実施形態225〜260において例示される。医薬組成物を作製す る方法は、第8節の実施形態374〜385において例示される。エラスターゼタンパク 質を含む医薬組成物は第8節の実施形態277〜313、および386において例示され 、単位用量は第8節の実施形態415〜420において例示される。エラスターゼタンパ ク質の製剤は、第8節の実施形態324〜346において例示される。治療を目的とする エラスターゼタンパク質の使用は、第8節の実施形態387〜414において例示される 。該タンパク質を含むキットは、第8節において、実施形態421〜424により例示さ れる。

配列番号64および69による医薬組成物および/またはプロエラスターゼタンパク質 に関する本発明の各種の態様は、後出の第8節における実施形態425〜472として例 示されるが、このような実施形態は、本明細書で開示される他のエラスターゼタンパク質 の配列および組成物に適用可能である。

本明細書で説明される作製方法は、活性化ペプチドをプロエラスターゼ配列から除去し /成熟エラスターゼ配列から分離し、これにより、成熟エラスターゼタンパク質を生成さ せる活性化ステップを含むことが多い。本明細書で説明される活性化ステップは、自己活 性化ステップでありうる、すなわち、エラスターゼ活性により実行される場合もあり、非 自己活性化ステップの場合もある、すなわちエラスターゼ以外に媒介される、例えば、ト リプシンにより実行される場合もある。

ある態様において、本発明は、(i)エラスターゼ認識配列を含む活性化ペプチド配列 を含むエラスターゼプロペプチドが(ii)エラスターゼ活性を有するタンパク質のアミ ノ酸配列に作動的に連結されているエラスターゼタンパク質(配列番号6〜9、64〜6 9、88〜91、または98〜103のいずれか1つのタンパク質を含むがこれに限定さ れない)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。このタンパク質は、 前記エラスターゼプロペプチドに作動的に連結された、酵母α因子シグナルペプチドなど の、配列番号34のアミノ酸配列によって例示されるシグナル配列を場合によってさらに 含む。本明細書では、α因子を「アルファ因子」、または「アルファ接合因子」または「 α接合因子」とも称する。ある具体的な実施形態において、このタンパク質は、酵母α因 子プロペプチドなど、エラスターゼ以外のプロペプチドを含む。ある具体的な実施形態に おいて、該タンパク質は、1つまたは複数のスペーサー配列を含みうる。スペーサー配列 は、Kex2およびSTE13プロテアーゼ切断部位を含むがこれらに限定されない。具 体的な実施形態では、Kex2スペーサーを用いることができる。別の実施形態では、図 1Bで示す通り、Kex2スペーサーをSTE13スペーサーに作動的に連結することが できる。シグナルペプチド配列およびエラスターゼ以外のプロペプチド配列は、配列番号 51または97のアミノ酸配列により例示される。シグナルペプチド配列、エラスターゼ 以外のプロペプチド配列、およびスペーサー配列を含有するペプチドは、配列番号50ま たは96のアミノ酸配列により例示される。

他の具体的な実施形態において、シグナル配列は、ブタまたはヒトのI型エラスターゼ (I型膵臓エラスターゼと互換的に用いられる)のシグナル配列など、哺乳動物の分泌シ グナル配列である。

エラスターゼ認識配列は、I型膵臓エラスターゼ認識配列であることが好ましい。

具体的な実施形態において、I型エラスターゼ活性を有するタンパク質は、成熟ヒトI 型エラスターゼ、例えば、配列番号1、4、5、84、または87のアミノ酸配列による タンパク質である。

本発明はまた、(i)メタノール資化酵母(Pichia pastoris)におい て作動的であるシグナル配列が(ii)プロテアーゼ認識配列(配列番号11〜23およ び93のいずれかのアミノ酸配列を含むがこれらに限定されない)を含む活性化配列(配 列番号23、72、73、または80のアミノ酸配列を含むがこれらに限定されない)に 作動的に連結されており、さらに(ii)が(iii)成熟ヒトI型エラスターゼのアミ ノ酸配列に作動的に連結されているタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸 分子も提供する。好ましい実施形態において、プロテアーゼ認識配列は、ヒトI型エラス ターゼ認識配列であり、最も好ましくは配列番号20のエラスターゼ認識配列である。

前記成熟エラスターゼタンパク質を含む組成物(例えば、医薬組成物、製剤、および単 位用量)と同様、本発明の核酸によりコードされるプロエラスターゼタンパク質(場合に よって、シグナル配列を含み、したがって、プレプロエラスターゼタンパク質を表す)お よび成熟エラスターゼタンパク質もまた提供される。

好ましい実施形態において、プロエラスターゼタンパク質または成熟エラスターゼタン パク質は、N末端のメチオニン残基を有さない。しかし、別の実施形態において、プロエ ラスターゼタンパク質または成熟エラスターゼタンパク質は、N末端のメチオニン残基を 有する。

以下の表1では、本明細書で用いられる配列識別子がまとめられる。本発明の好ましい タンパク質は、以下の表1に列挙する配列番号1〜32、34、37〜73、77、78 、82〜92、および98〜105のいずれかを含むかもしくはこれからなるか、または 配列番号33および配列番号81のヌクレオチド配列により部分的もしくは全体的にコー ドされる。

表1:アミノ酸およびヌクレオチドの配列番号の概要

ヒトI型エラスターゼタンパク質では、位置10(QまたはH)、44(WまたはR) 、59(MまたはV)、220(VまたはL)、および243(QまたはR)において、 少なくとも5種の多型が確認されている。全長(プレプロエラスターゼ)タンパク質は、 258の長さのアミノ酸である。最初の8アミノ酸が、切断されて不活性のプロタンパク 質を生成するシグナル配列または「プレ」ペプチド配列に対応し、さらなる「プロ」ペプ チド配列(活性化ペプチドに対応する10アミノ酸を含むかまたはこれからなる)が切断 されて活性な成熟タンパク質を生成する。したがって、位置10における多型は、プロタ ンパク質には存在するが、成熟タンパク質には存在しない。

したがって、以下の表2に、ヒトI型エラスターゼの5種の多型の可能なすべての組合 せを示す。本発明は、以下の表2に記載される多型の組合せのいずれかを含む、第8節に おける実施形態1〜39および68〜69で例示されるタンパク質、または同実施形態8 9〜224、261〜276、および347〜373に記載のいずれか1つの方法により 得られるかもしくは得ることができるタンパク質などのプレプロエラスターゼタンパク質 およびプロエラスターゼタンパク質(本明細書で説明される変異体のプレプロエラスター ゼタンパク質およびプロエラスターゼタンパク質を含むがこれらに限定されない)を提供 する。

表2:ヒトI型未成熟エラスターゼ(プレプロ)タンパク質およびプロエラスターゼタンパ ク質の変異体。位置の番号付けは、天然ヒトI型エラスターゼのプレプロタンパク質の状 況での位置を指す。

さらに、以下の表3に、成熟エラスターゼタンパク質に存在しうるヒトI型エラスター ゼの4種の多型の可能なすべての組合せを示す。本発明は、以下の表3に記載される多型 の組合せのいずれかを含む、第8節における実施形態89〜224、261〜276、お よび347〜373のいずれか1つの方法により得られるかまたは得ることができる成熟 エラスターゼタンパク質などの成熟エラスターゼタンパク質(本明細書で説明される変異 体の成熟エラスターゼタンパク質を含むがこれらに限定されない)を提供する。

表3:成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質の変異体。位置の番号付けは、天然ヒトI型エ ラスターゼのプレプロタンパク質の状況での位置を指す。

本発明の成熟I型エラスターゼは精製して、例えば、医薬組成物中において用いること ができる。具体的な実施形態において、該エラスターゼは、少なくとも70%、80%、 90%、95%、98%、または99%の純度にある。

本発明の成熟I型エラスターゼは、エラスターゼの添加により触媒される小型のペプチ ド基質であるN−スクシニル−Ala−Ala−Ala−pニトロアリニド(SLAP) の加水分解速度を測定することにより決定される通り、1U/タンパク質mgを超える、 5U/タンパク質mgを超える、10U/タンパク質mgを超える、20U/タンパク質 mgを超える、25U/タンパク質mgを超える、または30U/タンパク質mgを超え る比活性を有することが好ましい。1単位の活性は、30℃で1分間当たりに1マイクロ モルの基質に対する加水分解を触媒するエラスターゼ量として定義され、比活性は、エラ スターゼタンパク質mg当たりの活性(U/mg)として定義される。成熟ヒトI型エラ スターゼは、下限が1、2、3、4、5、7、10、15、または20U/タンパク質m gであり、これとは独立に、上限が5、10、15、20、25、30、35、40、ま たは50U/タンパク質mgの範囲内にある比活性を有することが好ましい。例示的な実 施形態において、比活性は、1〜40U/タンパク質mg、1〜5U/タンパク質mg、 2〜10U/タンパク質mg、4〜15U/タンパク質mg、5〜30U/タンパク質m g、10〜20U/タンパク質mg、20〜40U/タンパク質mgの範囲、またはその 上限および下限が前出の値のいずれかから選択される任意の範囲にある。成熟ブタI型エ ラスターゼは、下限が1、2、3、4、5、7、10、15、20、30、40、50、 60、または75U/タンパク質mgであり、これとは独立に、上限が5、10、15、 20、25、30、35、40、50、60、75、90、95、または100U/タン パク質mgの範囲内にある比活性を有することが好ましい。例示的な実施形態において、 ブタエラスターゼの比活性は、10〜50U/タンパク質mg、20〜60U/タンパク 質mg、30〜75U/タンパク質mg、30〜40U/タンパク質mg、20〜35U /タンパク質mg、50〜95U/タンパク質mg、25〜100U/タンパク質mgの 範囲、またはその上限および下限が前出の値のいずれかから選択される任意の範囲にある 。

したがって、本発明のある態様は、後出の第8節における実施形態277〜314、3 46、386、および415〜420で例示される医薬組成物、エラスターゼ製剤、およ び単位用量、または同実施形態261〜276および374〜385のいずれか1つの方 法により得られるかもしくは得ることができる医薬組成物、エラスターゼ製剤、および単 位用量などの組成物に関する。

ある実施形態において、本発明の組成物は、トリプシン活性化エラスターゼタンパク質 、例えば、本明細書で開示される方法のいずれかにより作製されるトリプシン活性化タン パク質を含む。他の実施形態において、この組成物は、自己活性化エラスターゼタンパク 質、例えば、本明細書で開示される方法のいずれかにより作製される自己活性化エラスタ ーゼタンパク質を含む。ある態様において、本発明の組成物は、以下の特性:(a)組成 物はトリプシンを含まないこと;(b)組成物はトリプシンを実質的に含まないこと;( c)組成物は配列番号70および71からなる任意のタンパク質を含まないこと;(d) 組成物は配列番号2および3からなる任意のタンパク質を実質的に含まないこと;(e) 組成物は細菌タンパク質を含まないこと;(f)組成物は細菌タンパク質を実質的に含ま ないこと;(g)組成物は前記成熟エラスターゼタンパク質以外の哺乳動物タンパク質を 含まないこと;(h)組成物は前記成熟エラスターゼタンパク質以外の哺乳動物タンパク 質を実質的に含まないこと;(i)組成物は配列番号85、86、94、および95から なる1つ、2つ、3つ、または4つすべてのタンパク質を含まないかまたは実質的に含ま ないこと;(j)組成物は配列番号106、107、および108からなる1つ、2つ、 または3つすべてのタンパク質を含まないかまたは実質的に含まないこと;(k)組成物 は薬学的に許容されるレベルのエンドトキシン(例えば、10EU/エラスターゼmg以 下、または5EU/エラスターゼmg以下)を含むこと;(l)組成物中の成熟エラスタ ーゼタンパク質は、1〜40U/タンパク質mgの比活性または本明細書で開示される他 の任意の範囲の比活性を特徴とすること;(m)前記組成物中のトリプシン活性は、成熟 エラスターゼタンパク質1mg当たり4ng未満、または本明細書で開示される他の任意 の範囲のトリプシン活性に相当すること;(n)組成物はポリソルベート−80を含むこ と;(o)組成物はデキストランを含むこと;(p)組成物はナトリウムイオン、カリウ ムイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、およびポリソルベート−80を含むこと;(q )組成物はナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、およびデ キストランを含むこと;(r)組成物はナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオ ン、塩化物イオン、ポリソルベート−80、およびデキストランを含むこと;(s)前記 組成物中における成熟エラスターゼタンパク質は、本明細書で開示されるある量の安定性 を示す、例えば、4℃で少なくとも1週間の保存後、4℃で少なくとも1カ月間の保存後 、4℃で少なくとも2カ月間の保存後、4℃で少なくとも3カ月間の保存後、または4℃ で少なくとも6カ月間の保存後においてその比活性の60%〜100%を維持すること; ならびに(t)組成物は、単位用量0.0033mg〜200mgの前記成熟エラスター ゼタンパク質、または本明細書で開示される他の任意の単位用量の成熟エラスターゼタン パク質を含むことの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ 、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つを特徴とする。

ある態様において、組成物は、以下の群(i)〜(v): (i)(a)、(b)、または(m) (ii)(e)または(f) (iii)(g)または(h) (iv)(k) (v)(l) から独立に選択される少なくとも3つの特性、少なくとも4つの特性、または少なくとも 5つの特性を特徴とする。

具体的な実施形態では、前記少なくとも3つの特性または前記少なくとも4つの特性の うちの2つが、群(i)および(iv)または(v)から選択される。他の実施形態では 、前記少なくとも4つの特性のうちの3つが、群(i)、(iv)、および(v)から選 択される。

具体的な実施形態において、本発明は、(i)トリプシンを含まない治療有効量のヒト I型エラスターゼと、(ii)薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物、エラスタ ーゼ製剤、または単位用量を含むがこれらに限定されない組成物を提供する。代替的に、 本発明は、(i)トリプシンを実質的に含まない治療有効量のヒトI型エラスターゼと、 (ii)薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。具体的な実施形態において 、ヒトI型エラスターゼおよび/または該組成物は、5ng/ml未満のトリプシン活性 、4ng/ml未満のトリプシン活性、3ng/ml未満のトリプシン活性、2ng/m l未満のトリプシン活性、または1.56ng/ml未満のトリプシン活性を含む。前出 の例において、ng/ml単位のトリプシン活性は、1mg/mlのヒトI型エラスター ゼタンパク質を含有する液体によるヒトI型エラスターゼの組成物または調製物中におい てアッセイすることができる。したがって、トリプシン活性はまた、例えば、3ng/エ ラスターゼタンパク質mg未満のトリプシン活性、1.56ng/エラスターゼタンパク 質mg未満のトリプシン活性など、ミリグラム単位のエラスターゼタンパク質との関係に おいても記載することができる。本発明は、(i)治療有効量のヒトI型エラスターゼと 、(ii)薬学的に許容される担体とを含み、エラスターゼmg当たり5ng未満のトリ プシン活性、エラスターゼmg当たり4ng未満のトリプシン活性、エラスターゼmg当 たり3ng未満のトリプシン活性、エラスターゼmg当たり2ng未満のトリプシン活性 、またはエラスターゼmg当たり1.56ng未満のトリプシン活性を含む組成物をさら に提供する。

本発明は、トリプシン活性化法により作製される成熟エラスターゼタンパク質の品質を 改善する方法(例えば、後出の第8節における実施形態145に記載の方法)であって、 Macro−Prep High S樹脂カラム上において成熟エラスターゼタンパク質 を精製するステップを含む方法をさらに提供する。本発明者らは、Macro−Prep High S樹脂カラム上で精製された成熟エラスターゼタンパク質が、約1000n g/エラスターゼタンパク質mgのトリプシン活性に相当するトリプシン活性レベルを有 するエラスターゼ組成物をもたらすPoros(ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)) カラム上における精製と比較して、20〜25ng/エラスターゼタンパク質mgのトリ プシン活性に相当するトリプシン活性レベルを有するエラスターゼ組成物をもたらすこと を見出した。本発明は、Macro−Prep High S樹脂カラム上においてトリ プシン活性化エラスターゼタンパク質を精製することにより作製される成熟エラスターゼ タンパク質を含むエラスターゼ組成物をさらに提供する。Macro−Prep Hig h S樹脂はBiorad社(Hercules、CA)から市販されており、同社によ れば、収縮および膨張がほとんどない剛性のメタクリレート製支持体によるカラムである 。他のメタクリレートカラムなど、同じクラスで、かつ/またはビーズサイズが同じ(約 50μm)である他の類似の陽イオン交換カラムも適切に用いることができる。

本発明の他の態様は、ブタI型膵臓エラスターゼを含む、医薬組成物、エラスターゼ製 剤、または単位用量を含むがこれらに限定されない組成物に関する。具体的な実施形態に おいて、本発明は、(i)トリプシンを含まない治療有効量のブタI型膵臓エラスターゼ と、(ii)薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。代替的に、本発明は、 (i)トリプシンを実質的に含まない治療有効量のブタI型膵臓エラスターゼと、(ii )薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。具体的な実施形態において、ブタ I型膵臓エラスターゼおよび/または組成物は、100ng/ml未満のトリプシン活性 、75ng/ml未満のトリプシン活性、50ng/ml未満のトリプシン活性、25n g/ml未満のトリプシン活性、15ng/ml未満のトリプシン活性、10ng/ml 未満のトリプシン活性、5ng/ml未満のトリプシン活性、4ng/ml未満のトリプ シン活性、3ng/ml未満のトリプシン活性、2ng/ml未満のトリプシン活性、ま たは1.56ng/ml未満のトリプシン活性を含む。前出の例において、ng/ml単 位のトリプシン活性は、1mg/mlのブタI型膵臓エラスターゼを含有する液体による ブタI型膵臓エラスターゼの組成物または調製物中においてアッセイすることができる。 したがって、トリプシン活性はまた、例えば、25ng/エラスターゼタンパク質mg未 満のトリプシン活性、5ng/エラスターゼタンパク質mg未満のトリプシン活性など、 ミリグラム単位のエラスターゼタンパク質との関係においても記載することができる。本 発明は、(i)治療有効量のブタI型エラスターゼと、(ii)薬学的に許容される担体 とを含み、エラスターゼmg当たり100ng未満のトリプシン活性、エラスターゼmg 当たり75ng未満のトリプシン活性、エラスターゼmg当たり50ng未満のトリプシ ン活性、エラスターゼmg当たり25ng未満のトリプシン活性、エラスターゼmg当た り15ng未満のトリプシン活性、エラスターゼmg当たり10ng未満のトリプシン活 性、エラスターゼmg当たり5ng未満のトリプシン活性、エラスターゼmg当たり4n g未満のトリプシン活性、エラスターゼmg当たり3ng未満のトリプシン活性、エラス ターゼmg当たり2ng未満のトリプシン活性、またはエラスターゼmg当たり1.56 ng未満のトリプシン活性を含む組成物をさらに提供する。

他の実施形態において、本発明は、配列番号70、71、104、105の1つ、2つ 、3つ、または4つすべてに対応するN末端変異体を含まない、医薬組成物、エラスター ゼ製剤、または単位用量を含むがこれらに限定されない成熟エラスターゼタンパク質など のエラスターゼタンパク質組成物を提供する。ある実施形態において、本発明は、(i) 治療有効量の成熟ヒトI型エラスターゼと、(ii)薬学的に許容される担体とを含み、 配列番号70、71、104、105による任意のタンパク質を含まない医薬組成物を提 供する。

他の実施形態において、本発明は、(i)成熟エラスターゼタンパク質のN末端上にお いてさらなる特異的なアミノ酸を含有する変異体タンパク質(配列番号37、38、70 、71、94、95、104、105)を含まないかまたは実質的に含まない治療有効量 のヒトI型エラスターゼと、(ii)薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物、エ ラスターゼ製剤、または単位用量を含むがこれらに限定されない組成物を提供する。他の 実施形態において、本発明は、(i)成熟エラスターゼタンパク質のN末端アミノ酸を欠 く変異体タンパク質(配列番号2、3、37、38、70、71、85、86、94、9 5、104、105、106、107、108)を含まないかまたは実質的に含まない治 療有効量のヒトI型エラスターゼと、(ii)薬学的に許容される担体とを含む組成物を 提供する。具体的な実施形態において、ヒトI型エラスターゼおよび/または該組成物は 、25%未満のN末端変異体、20%未満のN末端変異体、15%未満のN末端変異体、 10%未満のN末端変異体、5%未満のN末端変異体、4%未満のN末端変異体、3%未 満のN末端変異体、2%未満のN末端変異体、1%未満のN末端変異体、0.5%未満の N末端変異体、0%のN末端変異体を含むか、または前出の百分率のいずれか2つの間の 範囲の量でN末端変異体を含む(例えば、2%〜25%のN末端変異体、0.5%〜10 %のN末端変異体、5%〜15%のN末端変異体、0%〜2%のN末端変異体)。本明細 書で用いられる「X%未満のN末端変異体」という用語は、総エラスターゼタンパク質に 対する百分率としてのN末端変異体の量を指す。

他の実施形態において、本発明は、(i)治療有効量のヒトI型エラスターゼと、(i i)薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物、エラスターゼ製剤、または単位用量 を含むがこれらに限定されない組成物であって、細菌タンパク質を実質的に含まず、かつ /または前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質を実質的に含まない医 薬組成物を提供する。具体的な実施形態において、ヒトI型エラスターゼおよび/または 該組成物は、25%未満の細菌タンパク質および/もしくは前記成熟ヒトI型エラスター ゼ以外の哺乳動物タンパク質、20%未満の細菌タンパク質および/もしくは前記成熟ヒ トI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質、15%未満の細菌タンパク質および/も しくは前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質、10%未満の細菌タン パク質および/もしくは前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質、5% 未満の細菌タンパク質および/もしくは前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タ ンパク質、4%未満の細菌タンパク質および/もしくは前記成熟ヒトI型エラスターゼ以 外の哺乳動物タンパク質、3%未満の細菌タンパク質および/もしくは前記成熟ヒトI型 エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質、2%未満の細菌タンパク質および/もしくは前 記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質、1%未満の細菌タンパク質およ び/もしくは前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質、0.5%未満の 細菌タンパク質および/もしくは前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク 質、0%の細菌タンパク質および/もしくは前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動 物タンパク質を含むか、または前出の百分率のいずれか2つの間の範囲の量で細菌タンパ ク質および/もしくは前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質を含む( 例えば、2%〜25%の細菌タンパク質および/または前記成熟ヒトI型エラスターゼ以 外の哺乳動物タンパク質、0.5%〜10%の細菌タンパク質および/または前記成熟ヒ トI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質、5%〜15%の細菌タンパク質および/ または前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質、0%〜2%の細菌タン パク質および/または前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質)。本明 細書で用いられる「X%未満の細菌タンパク質および/または前記成熟ヒトI型エラスタ ーゼ以外の哺乳動物タンパク質」という用語は、エラスターゼ調製物または前記組成物中 における総タンパク質に対する百分率としてのこのようなタンパク質の量を指す。ある実 施形態において、エラスターゼは、このような組成物または調製物中における総タンパク 質の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少な くとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%を占める。

生体導管疾患に対する治療および予防の方法であって、それを必要とする患者に対する 、本発明の精製された成熟ヒトI型エラスターゼを含む組成物(例えば、医薬組成物、エ ラスターゼ製剤、または単位用量)の投与を含む方法もまた提供される。

本発明のエラスターゼタンパク質のいずれかをコードする核酸(「本発明の核酸」)を 含むベクター、本発明の核酸を発現するように改変された宿主細胞がさらに提供される。 具体的な実施形態において、ベクターは、エラスターゼタンパク質の発現を調節するヌク レオチド配列をさらに含む。例えば、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列 は、メタノール誘導性プロモーターに作動的に連結することができる。他の適切なプロモ ーターは、後出の第5.3節において例示される。

具体的な実施形態において、本発明は、ヒトI型エラスターゼプロタンパク質配列に作 動的に連結された酵母α因子シグナルペプチドまたはI型エラスターゼシグナルペプチド (例えば、ブタエラスターゼシグナルペプチド)を含むオープンリーディングフレームを コードする核酸配列を含むベクターを提供する。場合によって、ベクターは、該オープン リーディングフレームに作動的に連結されたメタノール誘導性プロモーターをさらに含む 。

本発明の核酸およびベクターを含む宿主細胞もまた提供される。ある実施形態では、ベ クターまたは核酸が宿主細胞ゲノム内に組み込まれ、他の実施形態では、ベクターまたは 核酸が染色体外にある。好ましい宿主細胞は、メタノール資化酵母細胞である。他の適切 な宿主細胞は、後出の第5.3節で例示される。

具体的な実施形態において、本発明は、ヒトI型エラスターゼプロ酵素配列に作動的に 連結された酵母α因子シグナルペプチドまたはブタエラスターゼシグナルペプチドを含む オープンリーディングフレームをコードするように遺伝子改変されたメタノール資化酵母 宿主細胞を提供する。場合によって、該オープンリーディングフレームは、メタノール誘 導性プロモーターの制御下にある。

本発明は、本発明の未成熟または成熟のエラスターゼタンパク質を作製する方法であっ て、本発明の核酸を発現するように改変された宿主細胞をプロエラスターゼタンパク質が 生成される条件下で培養するステップを含む方法をさらに提供する。ある実施形態では、 成熟エラスターゼタンパク質もまた作製される。

本発明のプロエラスターゼタンパク質および成熟タンパク質を作製するのに好ましい培 養条件は、特に宿主細胞がメタノール資化酵母の場合、低度のpHにおける増殖時間を含 む。低度のpHは、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5 、6.0、または前出の値のいずれかの対の間にある任意の範囲であることが典型的であ る。具体的な実施形態において、低度のpHは、2.0〜6.0、2.0〜5.0、3. 0〜6.0、3.0〜5.0、4.0〜6.0、または3.0〜4.0の範囲のpHであ る。培養時間の終了時には、成熟エラスターゼタンパク質から活性化配列を分離または除 去する目的で、培養物のpHを、好ましくはpH7.0、7.5、8.0、8.5、9. 0、9.5、10.0、10.5、11.0、または前出の値のいずれか2つの間の範囲 のpHまで上昇させることができる。具体的な実施形態において、培養物のpHは、7. 5〜10.0または8.0〜9.0の範囲のpH、また最も好ましくはpH8.0まで上 昇させることができる。

本発明のプロエラスターゼタンパク質の発現がメタノール誘導性プロモーターの制御下 にある場合、本発明の未成熟または成熟のエラスターゼタンパク質を作製するための条件 はまた、メタノール誘導時間も含む。

本発明のエラスターゼ作製方法は、宿主細胞により発現するタンパク質を回収するステ ップをさらに含みうる。ある場合において、回収されるタンパク質は、活性化配列を含む プロエラスターゼである。他の場合において、回収されるタンパク質は、活性化配列を欠 く成熟エラスターゼである。ある条件下では、プロエラスターゼタンパク質および成熟エ ラスターゼタンパク質の両方が回収される。

特に自己活性化プロエラスターゼの自己活性化を回避することが望ましい場合、プロエ ラスターゼ発現のための培養条件は、低度のpHにおける増殖時間および誘導時間を含む ことが好ましい。低度のpHは、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5 .0、5.5、6.0、または前出の値のいずれかの対の間にある任意の範囲であること が典型的である。具体的な実施形態において、低度のpHは、2.0〜3.0、4.0〜 5.0、5.0〜6.0、または6.0〜7.0の範囲のpHである。具体的な実施形態 において、pHは、4.0〜6.0の範囲にあり、また最も好ましくはpH5.5である 。

特に自己活性化プロエラスターゼの自己活性化を回避することが望ましい場合、プロエ ラスターゼ発現のための培養条件は、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または 酢酸ナトリウム中における増殖時間および誘導時間を含むことが好ましい。具体的な実施 形態では、5〜50mM、7.5〜100mM、10〜15mM、50〜200mM、7 5〜175mM、100〜150mM、75〜125mM、またはその上限および下限が 前出の値のいずれかから選択される任意の範囲(例えば、50〜75mM、75〜100 mMなど)の濃度が用いられる。好ましい実施形態において、クエン酸ナトリウム、コハ ク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムの濃度は、90〜110mMであり、最も好まし くは100mMである。

加えて、特に自己活性化プロエラスターゼの自己活性化または成熟エラスターゼによる 自己分解を回避することが望ましい場合、未成熟エラスターゼタンパク質の発現のための 培養条件は、対象の宿主細胞に適する温度範囲の最下端における増殖時間および誘導時間 を含みうる。例えば、宿主細胞がメタノール資化酵母による宿主細胞である場合、好まし い範囲は約22〜28℃である。具体的な実施形態において、メタノール資化酵母による 宿主細胞は、28℃で培養される。

加えて、特に宿主細胞のプロテアーゼによるタンパク質分解を回避することが望ましい 場合、未成熟エラスターゼタンパク質の発現のための培養条件は、対象の宿主細胞に適す る温度範囲の最下端における増殖時間および誘導時間を含みうる。例えば、宿主細胞がメ タノール資化酵母による宿主細胞である場合、好ましい範囲は約22〜28℃である。具 体的な実施形態において、メタノール資化酵母による宿主細胞は、28℃で培養される。

本発明の自己活性化プロエラスターゼタンパク質の活性化は、少(触媒)量の外因性エ ラスターゼの添加により誘発されうる。ある実施形態において、触媒量の外因性エラスタ ーゼは、触媒エラスターゼが添加される試料中におけるエラスターゼのモル重量ベースま たは分子量ベースで10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、または 0.1%未満を占める。

代替的に、または同時に、自己活性化プロエラスターゼをpH7〜11(最も好ましく はpH8)下に置くことができ、このとき、自己活性化プロエラスターゼの活性化ペプチ ドはトリプシンを必要とすることなく除去され、結果として、活性な成熟エラスターゼが もたらされる。具体的な実施形態では、活性化ステップの間において、50〜200mM 、75〜175mM、100〜150mM、75〜125mM、またはその上限もしくは 下限が前出の値のいずれかから選択される任意の範囲の濃度(例えば、50〜75mM、 75〜100mMなど)までトリス塩基を添加する。好ましい実施形態において、トリス 塩基は、90〜110 mM、最も好ましくは100mMの濃度まで添加される。トリス 塩基のpHは7〜11であることが好ましく、具体的な実施形態において、トリス塩基は 、pH7.0〜11.0、7〜9、7.5〜9.5、7.5〜10、8〜10、8〜9、 またはその上限もしくは下限が前出の値のいずれかから選択される任意の範囲にある。好 ましい実施形態において、トリス塩基は、pH7.5〜8.5、最も好ましくはpH8. 0である。

未成熟エラスターゼ配列の発現は、場合によって、プロエラスターゼタンパク質および 成熟エラスターゼタンパク質のほか、N末端変異体のエラスターゼタンパク質の混合物を もたらす。したがって、本発明は、(1)プロエラスターゼタンパク質、(2)成熟エラ スターゼタンパク質、および(3)N末端変異体のエラスターゼタンパク質のうちの少な くとも2つを含む組成物を提供する。

成熟エラスターゼが作製されると、例えば、医薬製剤用にこれを凍結乾燥させることが できる。例示的な実施形態において、本発明は、凍結乾燥した成熟I型エラスターゼを単 離する方法であって、 (a)プレプロエラスターゼのオープンリーディングフレームをコードする核酸分子を 発現するように改変されたメタノール資化酵母による宿主細胞などの宿主細胞を、該オー プンリーディングフレームが発現する条件下で培養するステップであって、具体的な実施 形態では、前記オープンリーディングフレームが、5’から3’の方向において、(i) シグナルペプチド、例えば、メタノール資化酵母内おいて作動的であるシグナルペプチド と、(ii)エラスターゼ認識配列を含む活性化配列と、(iii)成熟I型エラスター ゼタンパク質の配列とをコードするヌクレオチド配列を含み、これによりプロエラスター ゼタンパク質を作製するステップと; (b)プロエラスターゼタンパク質を自己活性化条件下に置き、これにより、成熟I型 エラスターゼを作製するステップであって、自己活性化条件が、 (i)プロテアーゼタンパク質を含有する溶液(細胞培養物上清でありうる)のpH を、例えば、pH6.5〜11、好ましくはpH8〜9まで変化させること; (ii)例えば、イオン交換クロマトグラフィーによりプロエラスターゼタンパク質 を精製し、該溶液を延長転換にかけてN末端変異体を除去し、これにより、成熟ヒトI型 エラスターゼを作製すること; (iii)プロエラスターゼタンパク質を濃縮(例えば、2倍、3倍、5倍、8倍、 10倍、12倍、またはその上限もしくは下限が前出の濃度レベルから独立に選択される 範囲)すること; (iv)プロエラスターゼタンパク質を高温(例えば、29℃、30℃、32℃、3 5℃、40℃、45℃、または40℃、またはその上限もしくは下限が前出の温度から独 立に選択される範囲)下に置くこと; (v)細胞培養物上清からプロエラスターゼタンパク質を精製(例えば、Macro −Prep High S樹脂を用いて)し、精製されたプロエラスターゼタンパク質を 含む溶液を、少なくとも1日間(例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、ま たは6日間、またはその上限もしくは下限が前出の値から独立に選択される範囲の日数) (これは、溶液中におけるクエン酸/酢酸の存在、濃度、温度、およびpHによる影響を 受けるが、当業者による容易な決定が可能である)にわたり、周囲温度(例えば、22℃ 〜26℃)においてインキュベートすること の1つまたはこれらの組合せを含むステップと; (c)場合によって、成熟ヒトI型エラスターゼを精製するステップ、例えば、仕上げ のクロマトグラフィーのためのイオン交換クロマトグラフィーステップと; (d)成熟I型エラスターゼを凍結乾燥させ、これにより、凍結乾燥した成熟ヒトI型 エラスターゼを単離するステップと を含む方法を提供する。成熟I型エラスターゼは、ヒトI型エラスターゼであることが好 ましい。ある態様において、凍結乾燥した成熟I型エラスターゼは、95%を超えた純度 にあることが好ましく、具体的な実施形態において、凍結乾燥した成熟I型エラスターゼ は、98%を超えるかまたは99%を超えた純度にある。

本発明の成熟エラスターゼタンパク質は、医薬組成物に製剤化することができる。した がって、例示的な実施形態において、本発明は、成熟ヒトI型エラスターゼを含む医薬組 成物を作製する方法であって、(i)上記で説明した方法により、乾燥凍結した成熟ヒト I型エラスターゼを単離するステップと、(ii)乾燥凍結した成熟ヒトI型エラスター ゼを、薬学的に許容される担体中において再溶解するステップとを含む方法を提供する。 本発明の成熟ヒトI型エラスターゼは、エラスターゼの添加により触媒される小型のペプ チド基質であるN−スクシニル−Ala−Ala−Ala−pニトロアリニド(SLAP )の加水分解速度を測定することにより決定される通り、1U/タンパク質mgを超える 、5U/タンパク質mgを超える、10U/タンパク質mgを超える、20U/タンパク 質mgを超える、25U/タンパク質mgを超える、または30U/タンパク質mgを超 える比活性を有することが好ましい。1単位の活性は、30℃で1分間当たりに1マイク ロモルの基質に対する加水分解を触媒するエラスターゼ量として定義され、比活性は、エ ラスターゼタンパク質mg当たりの活性(U/mg)として定義される。成熟ヒトI型エ ラスターゼは、下限が1、2、3、4、5、7、10、15、または20U/タンパク質 mgであり、これとは独立に、上限が5、10、15、20、25、30、35、40、 または50U/タンパク質mgの範囲内にある比活性を有することが好ましい。例示的な 実施形態において、比活性は、1〜40U/タンパク質mg、1〜5U/タンパク質mg 、2〜10U/タンパク質mg、4〜15U/タンパク質mg、5〜30U/タンパク質 mg、10〜20U/タンパク質mg、20〜40U/タンパク質mgの範囲、またはそ の上限および下限が前出の値のいずれかから選択される任意の範囲(例えば、1〜10U /mg、5〜40U/mgなど)にある。

本発明の医薬組成物は、安定であることが好ましい。具体的な実施形態において、医薬 組成物(例えば、上記で説明した通り、凍結乾燥および再溶解により調製される医薬組成 物)は、4℃で1週間の保存後において、その比活性の少なくとも50%、より好ましく は少なくとも60%、また最も好ましくは少なくとも70%を維持する。具体的な実施形 態において、医薬組成物は、再溶解および4℃で1週間の保存後において、その比活性の 少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも95%を維 持する。

本発明はまた、エラスターゼの切断ドメイン配列を含有するI型エラスターゼプロタン パク質のアミノ酸配列を含むタンパク質も提供する。本発明において用いうる他の切断ド メインは、コンセンサス切断ドメイン配列(配列番号74)であるXaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8により記載される配列の いずれかである[ここで、Xaa1=P5、Xaa2=P4、Xaa3=P3、Xaa4 =P2、Xaa5=P1、Xaa6=P’1、Xaa7=P’2、およびXaa8=P’ 3であり、また、 ・Xaa1は、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、グリシン、アスパラギン、リシン 、もしくはアラニン、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa2は、トレオニン、アラニン、プロリン、もしくはヒスチジン、または場合に よってこれらの類似体であり; ・Xaa3は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リシン、アスパラギ ン、もしくはバリン、または場合によってこれらの類似体であるが、グリシンもしくはプ ロリンではないことが好ましく; ・Xaa4は、プロリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、バリン、も しくはトレオニン、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa5は、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、もしくはセリンであるが 、グリシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、アルギニン、グルタミン酸、もし くはリシンではないか、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa6は、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、もしくはセリン、または 場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa7は、グリシン、アラニン、もしくはバリン、または場合によってこれらの類 似体であり; ・Xaa8は、バリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプト ファン、または場合によってこれらの類似体である]。

本発明はまた、成熟ヒトI型エラスターゼを単離する方法であって、(a)pH2〜6 での増殖時間または誘導時間を含む培養条件下で、(i)トリプシン認識配列を含む活性 化配列が(ii)前記培養条件下でエラスターゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸配列 に作動的に連結されているプロタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞 を培養するステップと;(b)発現したプロタンパク質を回収するステップと;(c)ト リプシンが活性なpH条件下において、回収されたタンパク質を触媒量のトリプシンと接 触させるステップと;(d)成熟ヒトI型エラスターゼを単離するステップとを含む方法 も提供する。この方法において、成熟ヒトI型エラスターゼは、配列番号1、4、5、8 4、または87から本質的になることが可能である。ある実施形態において、該条件は、 (a)pH4〜6における増殖時間もしくは誘導時間;(b)22℃〜28℃における増 殖時間もしくは誘導時間;あるいは(c)前記宿主細胞の培地中における約50mM〜約 200mMのクエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、もしくは酢酸ナトリウムの濃度 、または90mM〜約11mMのクエン酸ナトリウム濃度を含みうる。

特許出願において一般的であるのと同様、本出願においても、不定冠詞「a」および「 an」ならびに定冠詞「the」は、文脈により別段に指示されない限り、1つまたは複 数を意味するのに用いられることに注意されたい。さらに、特許出願において一般的であ るのと同様、本出願においても、「または」という用語は、選言的な「または」または連 言的な「および」を意味するのに用いられる。

本明細書において言及されるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。 本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、製品などについての任意の議論は 、本発明の文脈を提供することだけを目的とする。これらの事物のいずれかまたはすべて は、本出願の優先年月日以前においてそれがどこかに存在していたために、先行技術の基 板の一部を形成するか、または本発明と関連する分野内における共通の一般的な知識であ ったことの容認として理解されるべきではない。

本発明の特徴および利点は、それらの実施形態についての以下の詳細な説明からさらに 明らかとなるであろう。

図1A:合成の(すなわち、組換え)ヒトELA−1.2A配列を示す図である。組換えヒトエラスターゼ−1(すなわち、ヒトI型膵臓エラスターゼ)配列は750塩基対のコード領域を含む。選択された制限酵素部位に下線を引く。塩基置換は二重下線の太字のテキストであり、それらを含むコドンに二重下線を引く。終止コドンを囲む。プロペプチド配列をイタリック体にする。コード領域は250個のアミノ酸のタンパク質となる。10個のアミノ酸のプロペプチドの切断後、得られる成熟酵素は240個のアミノ酸である。図1B:pPROT24翻訳融合領域を示す図である。ベクターとELA−1コード領域の翻訳融合を示す。ELA−1配列のPCR増幅は、Kex2およびSTE13シグナル切断ドメインを組み込むために施され、活性化配列(イタリック体)の第1のアミノ酸(太字のテキスト)の予期されたN末端を有する分泌された生成物を得た。

本発明のエラスターゼタンパク質の(重複している)コア構成要素のN末端からC末端の略図である。ここで、番号を付された構成要素は以下を示す:(1)シグナル配列(縦縞);(2)任意のプロペプチド/スペーサー配列(レンガ);(3)エラスターゼプロペプチド(斜めの縞、陰影なし、および菱形パターンの組合せ);(4)活性化ペプチド(陰影なし、および菱形パターンの組合せ);(5)認識配列(菱形パターン);(6)切断ドメイン(陰影なし、菱形パターン、および横縞の左部分);(7)切断部位(陰影なし、菱形パターン、および横縞の左部分);(8)プレプロエラスターゼタンパク質(略図全体);(9)プロエラスターゼタンパク質(斜めの縞、陰影なし、菱形パターン、および横縞の組合せ);ならびに成熟エラスターゼタンパク質(横縞)。表は、矢印によって展開された略図における領域のアミノ酸記号表示を示す。原寸に比例して描かれていない。命名は参照の目的のためだけであり、特定の機能、活性または機構を暗示することを意図していない。

pPROT24−Vベクターの図である。「α因子分泌」は、酵母α因子シグナルペプチドおよびプロペプチド、続くKex2およびSTE13リピートを含むカセットを指す。

トリプシン活性化プロPRT−201を含む201−24−266−VU培養物の捕捉クロマトグラフィーからの分画のSDS−PAGE解析を示す図である。レーン番号は分画番号に対応する。分割6〜18は、主にグリコシル化プロ酵素(上部バンド)および非グリコシル化プロ酵素(下部バンド)からなる。分画19〜35は、主に非グリコシル化プロ酵素からなる。M=分子量マーカー。FT=カラムフロースルー(column flow through)。

自己活性化プロタンパク質データ表である。プロペプチド配列を第1列に列挙する。誘導の1、2および3日後(それぞれレーン1、2および3)の上清のSDS−PAGEを第2列に示す。SDS−PAGEに基づく相対的なプロタンパク質収量を第3列に列挙する。SDS−PAGEに基づく誘導の3日間のプロタンパク質の相対的な安定性を第4列に列挙する。42および48のプロペプチド配列を有するプロタンパク質は、誘導中の成熟タンパク質の存在のために低い安定性を有するプロタンパク質として位置づけられる(42変異体については1、2および3日後、ならびに48変異体については2および3日後に観察される)。最大SLAP反応速度を達成するための時間によって決定されるプロタンパク質の相対的な変換速度を第5列に列挙される。成熟エラスターゼタンパク質のN末端変異体を含む変換されたタンパク質の推定されるパーセンテージを第6列に列挙する。

図5B:プロペプチド配列24についての変換速度データを示す図である。図5C:プロペプチド配列42についての変換速度データを示す図である。図5D:プロペプチド配列48についての変換速度データを示す図である。

図5E:プロペプチド配列49についての変換速度データを示す図である。図5F:プロペプチド配列55についての変換速度データを示す図である。

pPROT55M3−Vクローニングスキームである。pPROT55M3−Vは、4.3kbのpPROT55−Vベクター骨格への2つの追加の発現カセットのインビトロライゲーションによって改変され、合計3つのタンデムな発現カセットを得た。2.3kbの発現カセット断片は、BglIIおよびBamHI制限消化によりpPROT55−Vから放出され、ならびに精製され、BamHIで線状化されたpPROT55−Vに2コピーの発現カセットをライゲートした。

クローン201−55M3−006−VUの振とうフラスコ最適化を示す図である。標準誘導培地であるBKMEを調製し、クエン酸ナトリウムを補足し、最終濃度0、12.5、25および50mMのクエン酸ナトリウム、pH5.5を達成した。この培地を用いて、10mLの誘導培地に対して1gの湿潤細胞重量を用いて増殖相の細胞ペレットを再懸濁させた。25mLの細胞懸濁液を各々、250mLの非バッフルフラスコに入れ、22℃または25℃で3日間、275rpmで振とうしながらインキュベートした。メタノールを1日2回添加し、最終濃度を0.5体積%にした。上清の一定分量を3日間採取し、SDS−PAGEおよびクーマシー染色によってタンパク質発現を解析した。パネルAは22℃で誘導された試料を示し、パネルBは25℃で誘導された試料を示す。両方のパネルにおいて、レーン1〜3は、それぞれ誘導の1、2および3日後の上清であり、0%クエン酸ナトリウムを含む;レーン4〜6は、12.5%クエン酸ナトリウムを用いることを除いて類似している;レーン7〜9は、25%クエン酸ナトリウムを用いることを除いて類似している;ならびにレーン10〜12は、50mMクエン酸ナトリウムを用いることを除いて類似している。

201−55−001−VUおよび201−55M3−003−VU発酵上清のSDS−PAGE解析を示す図である。レーン1、2:201−55−001−VU上清;レーン3、4:201−55M3−003−VU上清;レーン5;空;レーン6;分子量マーカー。

pPROT55M3−Vプロタンパク質捕捉クロマトグラフィーからの分画のSDS−PAGE解析を示す図である。各溶出分画から合計30μlは、ベータ−メルカプトエタノールで補足された、10μlの4×Laemmli試料添加緩衝液と混合された。8〜16%の直線勾配ゲル上でタンパク質を電気泳動し、その後、クーマシー染色した。PRT−201の2つの主な形態が観察された:プロタンパク質(分画15〜43)および自然に変換された成熟PRT−201(分画15〜44)。レーン番号は分画番号に対応する。M、分子量マーカー。BC、カラム前(添加前)試料。

精製されたプロタンパク質変換のHIC−HPLC解析を示す図である。精製されたプロPRT−201−55M3−003−VUは26℃で変換に供された。グラフは、変換中に生成された成熟(全長)PRT−201およびN末端変異体の相対量を示す。

接線フロー(tangential flow)ろ過によって達成された発酵上清のプロタンパク質変換のHIC−HPLC解析を示す図である。清澄化された201−55M3−003−VU発酵上清は、再生されたセルロースメンブレンを使用した、周囲温度での一定体積の透析ろ過を用いて、100mMのTris、pH8.0を用いた接線フローろ過に供された。グラフは、変換中の種々の時間点でのプロタンパク質、成熟(全長)PRT−201およびN末端変異体の相対量を示す。

pPROT55M3−V変換捕捉クロマトグラフィーからの分画のSDS−PAGE解析を示す図である。各溶出分画からの合計30μlは、ベータ−メルカプトエタノールで補足された、10μlの4×Laemmli試料添加緩衝液と混合された。8〜16%の直線勾配ゲル上でタンパク質を電気泳動し、次にクーマシー染色した。PRT−201の2つの主な形態が観察された:グリコシル化成熟形態(分画35〜70)、および非グリコシル化成熟形態(分画75〜160)。レーン番号は分画番号に対応する。M、分子量マーカー。BC、カラム前(添加前)試料。

プロ変換の濃度依存性を示す図である。201−55M3−003−VUクローンから精製されたプロPRT−201形態(プロPRT−201−55M3−003−VU)は、濃度0.2、1.0、1.6、および1.8mg/mLで変換に供された。変換反応は、プロタンパク質が総タンパク質の≦1%になるまでリアルタイムでHIC−HPLCによって監視された。グラフは、変換中に生成された成熟(全長)PRT−201(陰影なしのバー)およびN末端変異体(斜めの黒塗りバー)の相対量を示す。

合成の(すなわち、組換え)ブタ膵臓エラスターゼI型のDNA配列を示す図である。組換え配列は750塩基対のコード領域を含む。下線を引いたSacIIおよびXba1制限部位は、クローニングを促進するために組み込まれた。終止コドンを囲む。プロペプチド配列は太字体である。

合成の(すなわち、組換え)ブタI型膵臓エラスターゼのアミノ酸配列を示す図である。プロペプチド領域は太字体であり、トリプシン切断部位は囲まれている。10個のアミノ酸のプロペプチドの切断後、得られる成熟酵素は240個のアミノ酸である。

ブタI型膵臓エラスターゼのPV−1ベクターへのクローニングスキームである。ブタI型膵臓エラスターゼプロタンパク質クローニング領域の合成後、Blue Heron pUCベクターにクローニングした。ブタI型膵臓エラスターゼのコード配列の増幅に加えて、PCRを用いて、PV−1ベクターにクローニングするためのXhoIおよびSacII制限部位を組み込んだ。PCR産物を消化し、ゲル精製し、ならびにXhoIおよびSacIIで消化されたPV−1ベクターとライゲートし、このようにして、トリプシン活性化ブタI型膵臓エラスターゼプロタンパク質をコードするpPROT101−24−V発現ベクターをもたらした。

メタノール誘導中の自己活性化pPROT101−42−Vおよびトリプシン活性化pPROT101−24−VクローンのSDS−PAGEによる発現解析を示す図である。誘導1日後の振とうフラスコ上清は、8〜16%勾配ゲル上で解析され、クーマシー染色で染色された。レーン1〜10は、pPROT101−42−Vで形質転換された10種のクローン由来の上清を含む。レーン11〜12は、pPROT101−24−Vで形質転換された2種のクローン由来の上清を含む。M、分子量マーカー。

メタノール誘導中の自己活性化pPROT101−49−VおよびpPROT101−55L−VクローンのSDS−PAGEによる発現解析を示す図である。誘導の1および2日後の振とうフラスコ上清は、8〜16%勾配ゲル上で解析され、クーマシー染色された。レーン1〜2は、それぞれ誘導の1および2日後のpPROT101−49−Vクローン由来の上清を含む。レーン3〜4は、それぞれ誘導の1および2日後のpPROT101−55L−Vクローン由来の上清を含む。M、分子量マーカー。

SLAPエラスターゼ活性によって決定された、小スケール変換アッセイによるpPROT101−49−VおよびpPROT101−55L−Vタンパク質の経時的活性化を示す図である。誤差バーは平均の±SDを表す(n=4)。

小スケール変換アッセイ前後のpPROT101−49−VおよびpPROT101−55L−V上清のSDS−PAGE解析を示す図である。電気泳動前に、試料をクエン酸、還元剤TCEP、およびLDS試料緩衝液(Invitrogen、A)と混合した。試料を70℃で10分間加熱した。レーン1〜2:それぞれpPROT101−49−Vの変換前後のアッセイ上清;レーン3〜4:それぞれpPROT101−55L−Vの変換前後のアッセイ上清。M、分子量マーカー。

TrypZean標準曲線である。

5.9節に記載された医療デバイスの一実施形態の側面、部分的な断面図である。

医療デバイスのアクチュエータの動作を説明する、図22に類似した図である。

図22におけるレーン2−2の平面の端面図である。

図22におけるレーン3−3の平面の端面図である。

流体送達導管を通じたルアーハブからリザーバ、次に組織貫通器に伸長した、図22の医療デバイスの流体経路の図である。

制約された構造のアクチュエータを示す、本発明の医療デバイスの第2の実施態様の側面、部分的な断面図である。

図27に類似した図であるが、制約されていない構造のアクチュエータを示す。

図27におけるライン3’−3’に沿った組立体の端斜視図である。

組織貫通器を示す図29のライン4’−4’に沿った組立体の端斜視図である。

デバイスの近接端部の詳細を示す側面図であり、図27および28の右に示される。

制約された位置にある図22の医療デバイスの外観の部分図である。

本発明は、生物学的に活性な成熟エラスターゼタンパク質の組換えによる発現および作 製の方法を目的とする。本発明は、プロエラスターゼタンパク質およびプレプロエラスタ ーゼタンパク質をコードする核酸を含む、好ましい宿主細胞であるメタノール資化酵母を 含む宿主細胞を培養することにより、組換えエラスターゼタンパク質を作製する新規の効 率的な方法を提供する。生体導管(動脈または静脈を含む)疾患を治療および予防する医 薬組成物を製造するための組換えタンパク質の使用もまた提供される。

ある態様において、本発明は、組換え自己活性化プロエラスターゼタンパク質、ならび に関連する核酸、宿主細胞、および製造方法を目的とする。このような自己活性化プロエ ラスターゼタンパク質は、成熟エラスターゼタンパク質の第1の残基に対してすぐのN末 端側にあるエラスターゼ認識部位を含有するように改変される。後出の第6節において説 明される条件などの指定された培養条件下においては、活性化が所望されるまで、自己活 性化を抑制することができる。また、細胞培養物からプロエラスターゼが除去されるまで 、自己活性化を抑制することもできる。

本発明は、医薬グレードのエラスターゼタンパク質を作製するのに効率的な発現工程お よび精製工程を提供する。本発明はまた、本発明のエラスターゼタンパク質を用いて、生 体導管疾患を治療または予防する方法も提供する。

本明細書の第5節における説明は、第8節の実施形態に適用可能である。したがって、 例えば、本発明のエラスターゼタンパク質に対する言及は、実施形態1〜39および68 〜69のいずれか1つによるエラスターゼタンパク質、または実施形態89〜224、2 61〜276、および347〜373のいずれか1つに記載の方法により得られるかもし くは得ることができるエラスターゼタンパク質に対する言及を含むがこれに限定されない 。同様に、本発明の核酸に対する言及は、とりわけ、実施形態40〜67のいずれか1つ による核酸を指し;本発明のベクターに対する言及は、とりわけ、実施形態70〜72の いずれか1つによるベクターを指し;本発明の細胞に対する言及は、とりわけ、実施形態 73〜87のいずれか1つによる細胞を指し;本発明の細胞培養物上清に対する言及は、 とりわけ、実施形態88による細胞培養物上清を指し;医薬組成物、エラスターゼ製剤、 および単位用量などの組成物に対する言及は、例えば、実施形態277〜314、346 、386、および415〜420で例示される組成物、または実施形態261〜276お よび374〜385のいずれか1つの方法により得られるかもしくは得ることができる組 成物を含み;治療法に対する言及はまた、実施形態387〜414のいずれか1つによる 治療法に値する言及も含み;キットに対する言及は、とりわけ、第8節の実施形態421 〜425に記載のキットに対する言及を含む。

5.1 エラスターゼタンパク質 本発明は、とりわけ、生物学的に活性な成熟エラスターゼタンパク質の組換えによる発 現および作製の方法を目的とする。エラスターゼタンパク質は一般に、数ある配列の中で も、シグナルペプチド、活性化ペプチド、および生物学的活性を有する成熟部分を含有す るプレプロタンパク質として発現する。適切な成熟エラスターゼタンパク質の配列は、後 出の第5.1.1節に記載される。適切な活性化ペプチドの配列は、後出の第5.1.2 節に記載される。適切なシグナル配列は、後出の第5.1.3節に記載される。

したがって、ある態様において、本発明のエラスターゼタンパク質は、プレプロエラス ターゼタンパク質である。分泌時における該プレプロタンパク質からのシグナル配列の除 去は一般に、活性化ペプチドおよび成熟タンパク質を含有する不活性なプロタンパク質を もたらす。本明細書において、「活性化配列」および「活性化ペプチド」という表現は互 換的に用いられる。したがって、他の態様において、本発明のエラスターゼタンパク質は 、成熟エラスターゼタンパク質に作動的に連結された活性化ペプチドを含むプロエラスタ ーゼタンパク質である。例示的な実施形態において、野生型ヒトI型膵臓エラスターゼの 活性化ペプチドまたは活性化配列は、ヒトI型エラスターゼタンパク質の最初の10のN 末端アミノ酸(配列番号22)を含む。ある実施形態において、活性化ペプチドは、配列 番号80のペプチドである。本発明の実施において有用な活性化ペプチドまたは活性化配 列はまた、配列番号23、72、および73も含むがこれらに限定されない。本発明の実 施において有用なさらに他の活性化配列は、配列番号64〜69および98〜103のN 末端残基1〜10から得ることができる。

プロエラスターゼ配列からの活性化ペプチドの除去により、成熟エラスターゼタンパク 質が生成される。活性化ペプチドがプロエラスターゼ配列から除去され/成熟エラスター ゼ配列から分離されて成熟エラスターゼタンパク質が生成されるステップを、本明細書で は活性化ステップと称する。したがって、さらに他の態様において、本発明のエラスター ゼタンパク質は、成熟エラスターゼタンパク質である。

切断結合を挟む活性化ペプチドのC末端(すなわち、カルボキシ末端)および成熟タン パク質のN末端(すなわち、アミノ末端)を含むアミノ酸残基を図2に示し、また、本明 細書では以下の通りに識別する。まず、活性化ペプチドのC末端に位置する残基をPX、 ・・・P5、P4、P3、P2、および P1と表示する(活性化ペプチドのC末端残基 をP1とする)。成熟タンパク質のN末端に位置する残基をP1’、P2’、P3’、・ ・・PX’と表示する(成熟タンパク質のN末端アミノ酸残基をP1’とする)。タンパ ク質分解によって切断される切断可能な結合(図2では、「切断結合」と称する)は、活 性化ペプチドのP1残基と、成熟タンパク質のP1’残基との間におけるペプチド結合で ある。

本明細書では、活性化ペプチドC末端の4つのアミノ酸(残基P4〜P1)から成熟タ ンパク質N末端の最初の4つのアミノ酸(残基P1’〜P4’)の範囲にわたる領域を、 「切断部位」と称する。

本明細書では、活性化ペプチドC末端の約5つのアミノ酸(すなわち、残基P5〜P1 )から成熟タンパク質N末端の最初の約3つのアミノ酸(すなわち、残基P1’〜P3’ )の範囲にわたる領域を、「切断ドメイン」と称する。本発明の文脈において用いうる切 断ドメインの例は、配列番号42、43、48、49、52、53、54、または55を 含むがこれらに限定されない。本発明において用いうる他の切断ドメインは、コンセンサ ス切断ドメイン配列Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 X aa7 Xaa8により記載される配列のいずれかである[ここで、Xaa1=P5、X aa2=P4、Xaa3=P3、Xaa4=P2、Xaa5=P1、Xaa6=P1’、 Xaa7=P2’、およびXaa8=P3’であり、また、 ・Xaa1は、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、グリシン、アスパラギン、リシン 、もしくはアラニン、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa2は、トレオニン、アラニン、プロリン、もしくはヒスチジン、または場合に よってこれらの類似体であり; ・Xaa3は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リシン、アスパラギ ン、もしくはバリン、または場合によってこれらの類似体であるが、グリシンもしくはプ ロリンではないことが好ましく; ・Xaa4は、プロリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、バリン、も しくはトレオニン、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa5は、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、もしくはセリンであるが 、グリシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、アルギニン、グルタミン酸、もし くはリシンではないか、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa6は、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、もしくはセリン、または 場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa7は、グリシン、アラニン、もしくはバリン、または場合によってこれらの類 似体であり; ・Xaa8は、バリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプト ファン、または場合によってこれらの類似体である]。

本明細書では、活性化ペプチドの残基P3、P2、およびP1の範囲にわたる3アミノ 酸の領域を、「エラスターゼ認識部位」と称する。本発明の文脈において用いうる認識部 位の例は、配列番号14〜16および18〜21を含むがこれらに限定されない。本発明 により意図される他の認識部位は、配列番号11、12、13、または93によるコンセ ンサス認識部位により記載される任意の認識部位を含む。配列番号11によるコンセンサ スエラスターゼ認識配列1は、ペプチド配列Xaa1 Xaa2 Xaa3により表され る[ここで、Xaa1=P3、Xaa2=P2、Xaa3=P1であり、また、 ・Xaa1は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リシン、アスパラギ ン、もしくはバリン、または場合によってこれらの類似体であるが、グリシンもしくはプ ロリンではないことが好ましく; ・Xaa2は、プロリン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、バリン、も しくはトレオニン、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa3は、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、もしくはセリン、または 場合によってこれらの類似体であるが、グリシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリ ン、アルギニン、グルタミン酸、もしくはリシンではないことが好ましい]。

配列番号12によるコンセンサスエラスターゼ認識配列2は、配列Xaa1 Pro Xaa2により表される[ここで、 ・Xaa1は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リシン、もしくはバ リン、または場合によってこれらの類似体であるが、グリシンもしくはプロリンではない ことが好ましく; ・Proは、プロリン、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa2は、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、もしくはセリン、または 場合によってこれらの類似体であるが、グリシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリ ン、アルギニン、グルタミン酸、もしくはリシンではないことが好ましい]。

配列番号13によるコンセンサスエラスターゼ認識配列3は、ペプチド配列Xaa1 Xaa2 Xaa3により表される[ここで、Xaa1=P3、Xaa2=P2、Xaa 3=P1であり、また、Xaa1は、アスパラギンもしくはアラニン、または場合によっ てこれらの類似体であり;Xaa2は、プロリンもしくはアラニン、または場合によって これらの類似体であり;Xaa3は、アラニン、ロイシン、もしくはバリン、または場合 によってこれらの類似体である]。

配列番号93によるコンセンサスエラスターゼ認識配列4は、配列Xaa1 Pro Xaa2により表される[ここで、 ・Xaa1は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リシン、アスパラギ ン、もしくはバリン、または場合によってこれらの類似体であるが、グリシンもしくはプ ロリンではないことが好ましく; ・Proは、プロリン、または場合によってこれらの類似体であり; ・Xaa2は、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、もしくはセリン、または 場合によってこれらの類似体であるが、グリシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリ ン、アルギニン、グルタミン酸、もしくはリシンではないことが好ましい]。

「切断配列」、「切断ドメイン」、「活性化配列」、「エラスターゼ認識配列」などと しての配列への言及は、言及を容易にするためだけのものであり、該配列の任意の機能、 または該配列が認識もしくはプロセシングされる機構の示唆を意図するものではない。

本発明のタンパク質は、一般にアミノ酸からなり、加えて、1つまたは複数の(例えば 、最大2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、12、または15の) アミノ酸類似体を含みうる。一般に、本明細書で用いられるアミノ酸とは、天然のL型立 体異性体を指す。アミノ酸類似体とは、D型立体異性体、化学修飾されたアミノ酸、また は他の非天然アミノ酸を指す。例えば、非天然アミノ酸は、アゼチジンカルボン酸、2− アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、アミノプロピオン酸、2−ア ミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノ イソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、第三ブチルグリシン、2,4− ジアミノイソ酪酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロ ピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリ シン、アロ−ヒドロキシリシン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イ ソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルアラニン、N−メチルグリシン、N−メ チルイソロイシン、N−メチルペンチルグリシン、N−メチルバリン、ナフタアラニン、 ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、ペンチルグリシン、ピペコール酸、およびチオ プロリンを含むがこれらに限定されない。化学修飾されたアミノ酸は、可逆的もしくは不 可逆的な形で化学的に遮断され、かつ/またはその側基、α炭素原子、末端アミノ基、も しくは末端カルボン酸基の1つもしくは複数において修飾されたアミノ酸を含む。化学修 飾は、化学的部分の付加、新たな結合の創出、および化学的部分の除去を含む。化学修飾 されたアミノ酸の例は、例えば、硫酸メチオニン、メチオニンスルホン、S−(カルボキ シメチル)−システイン、S−(カルボキシメチル)−システインスルホキシド、および S−(カルボキシメチル)−システインスルホンを含む。アミノ酸側基における修飾は、 リシンのε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリシンのN−アルキ ル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミ ンまたはアスパラギンの脱アミド化を含む。末端アミノ基の修飾は、デス−アミノ修飾、 N−低級アルキル修飾、N−ジ−低級アルキル修飾、およびN−アシル修飾を含む。末端 カルボキシル基の修飾は、アミド修飾、低級アルキルアミド修飾、ジアルキルアミド修飾 、および低級アルキルエステル修飾を含む。低級アルキルとはC1〜C4のアルキルであ る。さらに、当技術分野におけるタンパク質化学者に知られる保護基により、1つまたは 複数の側基または末端基を保護することもできる。アミノ酸のα炭素は、モノメチル化さ れる場合もあり、ジメチル化される場合もある。

本発明のタンパク質は、リン酸化もしくはグリコシル化による修飾、または例えば、脂 質もしくは別のタンパク質(例えば、標的化または安定化のための)などへのコンジュゲ ーションによる誘導体化など、修飾または誘導体化することができる。

本発明は、多くの場合、「単離」または「精製」されたエラスターゼタンパク質に関す る。単離されたエラスターゼタンパク質とは、その細胞環境から取り出されたタンパク質 である。精製されたエラスターゼタンパク質は、該エラスターゼタンパク質が由来する細 胞もしくは組織の供給源に由来する細胞物質もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含ま ないか、または化学合成される場合、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含ま ない。「細胞物質を実質的に含まない」という表現は、エラスターゼタンパク質がそこか ら組換えにより作製される細胞の細胞成分から該タンパク質が分離される、該タンパク質 の調製物を含む。したがって、細胞物質を実質的に含まないエラスターゼタンパク質は、 約30%、20%、10%、または5%(乾燥重量による)未満の異種タンパク質(本明 細書では、「夾雑タンパク質」とも称する)を有するエラスターゼタンパク質の調製物を 含む。それが培地内に分泌される工程によりエラスターゼタンパク質が作製される場合、 それはまた、培地も実質的に含まないこと、すわなち、培地がエラスターゼタンパク質の 調製物容量の約20%、10%、または5%未満を占めることも好ましい。

加えて、ある実施形態において、単離または精製されたエラスターゼは、細胞DNAも 含まないか、またはこれも実質的に含まない。具体的な実施形態において、宿主細胞のゲ ノムDNAは、単離もしくは精製されたエラスターゼタンパク質の調製物中、または単離 もしくは精製されたエラスターゼタンパク質を含む組成物中において、エラスターゼタン パク質ミリグラム当たり10ピコグラム未満、5ピコグラム未満、3ピコグラム未満、2 ピコグラム未満、または1ピコグラム未満のDNA量で存在する。一実施形態において、 宿主細胞のDNAは、メタノール資化酵母のDNAである。

有用なエラスターゼタンパク質の配列を表1に記載する。具体的な実施形態において、 本発明は、(i)エラスターゼ認識配列を含む活性化配列が(ii)I型エラスターゼ活 性を有するタンパク質のアミノ酸配列に作動的に連結されているプロエラスターゼタンパ ク質(配列番号6〜9、64〜69、88〜91、および98〜103のいずれか1つに よるタンパク質を含むがこれに限定されない)を提供する。ヒトI型エラスターゼについ ては、複数の多型が知られている。本発明のプロエラスターゼタンパク質の配列では、表 2に記載された多型の組合せを含むがこれらに限定されない任意の多型の組合せが意図さ れている。場合によって、タンパク質は、前記活性化配列に作動的に連結されたシグナル 配列をさらに含む。ある具体的な実施形態において、シグナル配列は、配列番号34のア ミノ酸配列により例示される酵母α因子シグナルペプチドなど、メタノール資化酵母にお いて作動的である。シグナルペプチドを含有する代替的な配列は、配列番号50および9 6(シグナルペプチド、エラスターゼ以外のプロペプチド、およびスペーサー配列を含有 する)ならびに配列番号51および97(シグナルペプチドおよびエラスターゼ以外のプ ロペプチドを含有する)において例示される。他の具体的な実施形態において、シグナル 配列は、ブタエラスターゼのシグナル配列など、哺乳動物の分泌シグナル配列である。エ ラスターゼ認識配列は、I型エラスターゼ認識配列であることが好ましく、ヒトI型エラ スターゼ認識配列であることが最も好ましい。

本発明は、本発明のエラスターゼタンパク質の変異体をさらに対象とする。変異体は、 推定される1つまたは複数の非必須アミノ酸残基におけるアミノ酸置換を含有しうる。変 異体は、天然の成熟エラスターゼと比べて15カ所以下、12カ所以下、10カ所以下、 9カ所以下、8カ所以下、7カ所以下、6カ所以下、5カ所以下、4カ所以下、3カ所以 下、2カ所以下、または1カ所以下の保存的アミノ酸置換、および/あるいは天然の成熟 エラスターゼと比べて5カ所以下、4カ所以下、3カ所以下、もしくは2カ所以下の非保 存的アミノ酸置換、または1カ所以下の非保存的アミノ酸置換を含むことが好ましい。

具体的な実施形態において、変異体は、配列番号1もしくは配列番号84の成熟エラス ターゼ、または配列番号6〜9、64〜69、88〜91、および98〜103のプロエ ラスターゼタンパク質など、本発明の成熟エラスターゼ、プロエラスターゼ、またはプレ プロエラスターゼと比べて、10カ所以下、または好ましくは5カ所以下の保存的アミノ 酸置換を有する。配列番号1および84のアミノ酸配列は、位置44(WまたはR)、5 9(MまたはV)、220(VまたはL)、および243(QまたはR)(位置はプレプ ロタンパク質を指す)において、成熟エラスターゼ配列内の潜在的な多型に対応する1つ または複数の位置を含有する。したがって、本発明は、配列番号84において同定される 4つの多型の任意の組合せを有する成熟エラスターゼタンパク質を対象とする。このよう な組合せの各々は、前出の表3に概括されている。配列番号88〜91および98〜10 3の配列は、位置10(QまたはH)において、プロペプチド配列内の潜在的な多型をさ らに含有する。したがって、本発明は、配列番号88〜91および98〜103において 同定される5つの多型の任意の組合せを含有するプレプロエラスターゼ配列およびプロエ ラスターゼ配列を対象とする。このような組合せの各々は、前出の表2に概括されている 。

「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基によ り置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術 分野において規定されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例 えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパ ラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、ア スパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を 有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェ ニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分枝側鎖を有するアミノ酸(例 えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香環側鎖を有するアミノ酸(例え ば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)を含む。

本明細書で説明する通り、本発明の変異体エラスターゼタンパク質は、アミノ酸による アミノ酸置換ほか、アミノ酸類似体によるアミノ酸置換も含みうる。

具体的な実施形態において、本発明のタンパク質は、成熟ヒトI型エラスターゼの変異 体、例えば、配列番号6〜9、64〜69、88〜91、および98〜103のエラスタ ーゼプロタンパク質などであるがこれらに限定されない、表1に列挙されるエラスターゼ プロタンパク質または成熟エラスターゼタンパク質と少なくとも約75%、85%、90 %、93%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の変異体を含むかまた はこれから本質的になり、配列番号1、4、5、84、または87の成熟エラスターゼタ ンパク質を生成するように発現する場合にエラスターゼ活性を保持する。

2つのアミノ酸配列または2つの核酸の百分率による同一性を決定するためには、最適 比較を目的として配列を整列する(例えば、第1のアミノ酸配列または核酸配列中にギャ ップを導入して、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適アライメントを得る)。次 いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置において、アミノ酸残基またはヌク レオチドを比較する。第1の配列中における位置が、第2の配列中における対応する位置 と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、該分子はその位置 において同一である。2つの配列間における百分率による同一性は、該配列により共有さ れる同一な位置の数の関数である(%同一性=(同一な位置の数/重複する位置の総数) ×100)。一実施形態において、2つの配列は同じ長さである。他の実施形態において 、2つの配列は、その長い方の配列の長さの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7% 、8%、9%、または10%以下だけ長さが異なる。

2つの配列の間における百分率による同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達 成することができる。2つの配列の比較に用いられる数学的なアルゴリズムの好ましく非 限定的な例は、KarlinおよびAltschul(1993)、Proc.Natl .Acad.Sci.USA、90:5873〜5877に記載の通りに改変されたKa rlinおよびAltschul(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci .USA、87:2264〜2268に記載のアルゴリズムである。このようなアルゴリ ズムは、Altschulら(1990)、J.Mol.Biol.、215:403〜 410に記載のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラムに組み込まれてい る。BLASTによるヌクレオチドの検索は、スコア=100、ワード長=12のNBL ASTプログラムにより実行され、これにより、本発明の核酸分子と相同的なヌクレオチ ド配列を得ることができる。BLASTによるタンパク質の検索は、スコア=50、ワー ド長=3のXBLASTプログラムにより実行され、これにより、本発明のタンパク質分 子と相同的なアミノ酸配列を得ることができる。比較を目的としてギャップを伴うアライ メントを得るためには、Altschulら(1997)、Nucleic Acids Res.、25:3389〜3402で説明される通りに、Gapped BLAST を用いることができる。代替的に、PSI−BLASTを用いて反復検索を実行し、これ により、分子間における遠隔の類縁性を検出することもできる(同上)。BLASTプロ グラム、Gapped BLASTプログラム、およびPSI−BLASTプログラムを 用いる場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトの パラメータを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih. govを参照されたい。

配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの好ましく非限定的な別の例は、Myer sおよびMiller、CABIOS(1989)に記載のアルゴリズムである。このよ うなアルゴリズムはCGC配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALI GNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するのに ALIGNプログラムを用いる場合、PAM120ウェイト残基表、ギャップ長ペナルテ ィー12、およびギャップペナルティー4を用いることができる。当技術分野では、配列 解析のためのさらなるアルゴリズムが知られており、TorellisおよびRobot ti、1994、Comput.Appl.Biosci.10:3〜5において説明さ れるADVANCEおよびADAM;ならびにPearsonおよびLipman、19 88、Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444〜8において説明される FASTAを含む。FASTAにおいては、ktupが、検索の感度および速度を設定す る制御オプションである。ktup=2の場合は、整列された残基の対を見比べることに よって、比較される2つの配列内における類似の領域を見出し、ktup=1の場合は、 整列された単一のアミノ酸を検討する。タンパク質配列の場合はktupを2または1に 設定することもでき、DNA配列の場合は1〜6に設定することもできる。ktupが指 定されない場合のデフォルトは、タンパク質の場合が2であり、DNAの場合が6である 。FASTAパラメータのさらなる説明については、その内容が参照により本明細書に組 み込まれるhttp://bioweb.pasteur.fr/does/man/m an/fasta.I.html#sect2を参照されたい。

2つの配列の間における百分率による同一性は、ギャップを許容する場合であれ、許容 しない場合であれ、上記で説明した技法と同様の技法を用いて決定することができる。百 分率による同一性の計算においては、正確なマッチをカウントすることが典型的である。

本発明のエラスターゼタンパク質は、グリコシル化(例えば、N−結合型グリコシル化 またはO−結合型グリコシル化)、ミリスチル化、パルミチル化、アセチル化、およびリ ン酸化(例えば、セリン/トレオニンまたはチロシン)を含むがこれらに限定されない翻 訳後修飾を示しうる。一実施形態において、本発明のエラスターゼタンパク質は、内因的 に発現するエラスターゼタンパク質と比べて、O−結合型グリコシル化および/またはN −結合型グリコシル化のレベルが低下する。別の実施形態において、本発明のエラスター ゼタンパク質は、O−結合型グリコシル化またはN−結合型グリコシル化を示さない。

5.1.1 成熟エラスターゼ配列 本発明の成熟エラスターゼ配列は、哺乳動物エラスターゼ配列であることが好ましく、 ヒトエラスターゼ配列であることが最も好ましい。他の実施形態において、成熟哺乳動物 エラスターゼ配列は、マウス、ラット、ブタ、ウシ、またはウマなど、他の哺乳動物に由 来する。

本発明の方法および組成物において、用いられる成熟エラスターゼ配列は、好ましくは アラニンなど、小型の疎水性残基のカルボキシ側において、優先的に疎水性タンパク質配 列を切断する、I型膵臓エラスターゼの配列であることが好ましい。I型膵臓エラスター ゼの例は、皮膚において発現するヒトエラスターゼI酵素(NCBI受託番号:NP_0 01962)、および膵臓において発現するブタ膵臓エラスターゼI酵素(NCBI受託 番号:CAA27670)を含む。配列番号1および配列番号84は、成熟ヒトI型エラ スターゼ配列の例である。

代替的に、好ましくは中型〜大型の疎水性アミノ酸残基のカルボキシ側において疎水性 タンパク質配列を切断しうるII型エラスターゼも用いることができる。II型エラスタ ーゼの例は、いずれも膵臓において発現する、ヒトエラスターゼIIA酵素(NCBI受 託番号:NP254275)、およびブタエラスターゼII酵素(NCBI受託番号:A 26823)を含む。

本発明の成熟エラスターゼタンパク質の変異体もまた対象となる。変異体は、本発明の 成熟エラスターゼタンパク質のアミノ酸配列と十分に同一であるか、またはこれに由来す るアミノ酸配列を含むタンパク質を含み、エラスターゼの生物学的活性を示す。本発明の 成熟エラスターゼタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、少なくとも150、1 60、175、180、185、190、200、210、220、230、231、2 32、233、234、235、236、237、238、または239の長さのアミノ 酸である。さらに、組換え法により、タンパク質の他の領域が欠失する生物学的に活性な 他の部分を調製し、本発明の成熟エラスターゼタンパク質の天然形態の1つまたは複数の 機能的活性について評価することもできる。

加えて、4つのヒトI型エラスターゼ多型の任意の組合せを含む成熟エラスターゼタン パク質を、配列番号84によって表す。可能な組合せは、前出の表3に記載されている。

5.1.2 プロエラスターゼ活性化配列 エラスターゼ活性化配列とは、それをプロエラスターゼタンパク質から除去する結果と して、生物学的に活性な成熟エラスターゼタンパク質がもたらさられる任意の配列である 。

活性化配列は一般に、プロタンパク質が切断されて、生物学的に活性な成熟タンパク質 が生成される位置に隣接するプロテアーゼ認識部位を含有する。活性化配列を改変してプ ロテアーゼ認識部位またはエラスターゼ認識部位を付加することもでき、これを改変して 既存のプロテアーゼ認識部位を別のプロテアーゼ認識部位により置き換えることもできる 。本発明の実施において有用な活性化ペプチドまたは活性化配列は、配列番号23、72 、および73を含むがこれらに限定されない。本発明の実施において有用なさらに他の活 性化配列は、配列番号64〜68のN末端残基1〜10から得ることができる。好ましい 態様では、I型エラスターゼまたはII型エラスターゼに対する認識配列を含有するよう に、プロエラスターゼ活性化配列を改変する。エラスターゼ認識配列は、それが作動的に 連結される成熟エラスターゼにより認識されることが最も好ましい。したがって、II型 エラスターゼを目的とする実施形態において、認識配列は、II型エラスターゼ認識配列 であることが最も好ましい。逆に、I型エラスターゼを目的とする実施形態において、認 識配列は、I型エラスターゼ認識配列であることが最も好ましい。好ましい実施形態にお いて、認識配列は、ヒトI型エラスターゼ認識配列である。例示的なI型認識配列は、配 列番号14〜16および18〜21のアミノ酸配列を含む。本発明により意図される他の 認識部位は、配列番号11、12、または13のコンセンサス認識部位により記載される 任意の認識部位を含む。

5.1.3 シグナル配列 本発明のプロエラスターゼタンパク質は、それが発現する宿主細胞の培地内へのプロエ ラスターゼタンパク質の分泌を増大させるシグナル配列をさらに含有しうる。

特に、哺乳動物の宿主細胞における発現には、エラスターゼタンパク質の天然のシグナ ル配列を用いることができる。他の実施形態では、本発明のエラスターゼタンパク質の天 然のシグナル配列を除去し、ブタI型エラスターゼのシグナル配列、ヒトI型エラスター ゼのシグナル配列、または酵母α因子のシグナル配列など、別のタンパク質に由来するシ グナル配列で置き換えることができる。ある具体的な実施形態において、酵母α因子シグ ナルペプチドは、各々がそれぞれ、配列番号50および96または配列番号51および9 7のアミノ酸配列により例示される、(1)酵母α因子のプロペプチド、または(2)酵 母α因子のプロペプチドおよびスペーサー配列をさらに含みうる。代替的に、バキュロウ イルスのエンベロープタンパク質のgp67分泌配列を、異種シグナル配列として用いる こともできる(「Current Protocols in Molecular B iology」(Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992 ))。真核生物の異種シグナル配列の他の例は、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスフ ァターゼ(Stratagene;La Jolla、California)の分泌配 列を含む。さらに別の例において、有用な原核生物の異種シグナル配列は、phoA分泌 シグナル(Sambrookら、前出)およびプロテインA分泌シグナル(Pharma cia Biotech;Piscataway、New Jersey)を含む。

5.2 エラスターゼの核酸 本発明の一態様は、本発明の組換えエラスターゼタンパク質をコードする組換え核酸分 子に関連する。本明細書で用いられる「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えばc DNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオ チド類似体を用いて作製されるDNAまたはRNAの類似体を含むことを意図する。核酸 分子は、一本鎖DNAの場合もあり、二本鎖DNAの場合もあるが、二本鎖DNAである ことが好ましい。

本発明は、本発明のエラスターゼタンパク質をコードする核酸を目的とする。したがっ て、ある実施形態において、本発明は、(i)エラスターゼ認識配列を含む活性化配列が (ii)I型エラスターゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸配列に作動的に連結されて いるプロエラスターゼタンパク質(配列番号6〜9、64〜69、88〜91、および9 8〜103のいずれか1つのタンパク質を含むがこれらに限定されない)をコードするヌ クレオチド配列を含む核酸分子を提供する。他の実施形態において、本発明はまた、(i )メタノール資化酵母内で作動的なシグナル配列が(ii)プロテアーゼの認識部位を含 む活性化配列(配列番号23、72、および73のいずれか1つのアミノ酸配列を含むが これらに限定されない)に作動的に連結されており、さらに(ii)が(iii)成熟ヒ トI型エラスターゼのアミノ酸配列に作動的に連結されているタンパク質をコードするヌ クレオチド配列を含む核酸分子も提供する。

本発明の核酸は、精製が可能である。cDNA分子などの「精製」された核酸分子は、 組換え法により作製される場合に他の細胞物質または培地を実質的に含まないことも可能 であり、化学合成される場合に化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないこと も可能である。

核酸分子がcDNA分子またはRNA分子、例えば、mRNA分子である場合において 、このような分子は、ポリA「テール」を含む場合もあり、代替的に、このような3’側 テールを欠く場合もある。

本発明の核酸分子は、標準的なPCR増幅法による鋳型としてのcDNA、mRNA、 またはゲノムDNAと、適切なオリゴヌクレオチドプライマーとを用いて増幅することが できる。このようにして増幅された核酸は、適切なベクター内でクローニングし、DNA 配列解析により特徴づけすることができる。さらに、標準的な合成法により、例えば、自 動式DNA合成器を用いて、本発明の核酸分子の全部または一部に対応するオリゴヌクレ オチドを調製することができる。

5.3 組換え発現ベクターおよび宿主細胞 本発明の核酸のいずれかを含むベクター、または本発明の核酸を発現するように改変さ れた宿主細胞がさらに提供される。具体的な実施形態において、ベクターは、本発明の核 酸によりコードされるタンパク質の発現を調節するヌクレオチド配列を含む。例えば、本 発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、メタノール誘導性プロモーターに作 動的に連結することができる。

本発明の核酸およびベクターを含む宿主細胞もまた提供される。ある実施形態では、ベ クターまたは核酸が宿主細胞ゲノム内に組み込まれ、他の実施形態では、ベクターまたは 核酸が染色体外にある。好ましい宿主細胞は、メタノール資化酵母細胞である。

本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸の移送が 可能な核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは、その中 に付加的なDNAセグメントをライゲーションしうる環状の二本鎖DNAループを指す。 別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ここでは、付加的なDNAセグメントを ウイルスゲノム内にライゲーションすることができる。あるベクターは、それらが導入さ れる宿主細胞内における自律的複製が可能である(例えば、細菌による複製起点を有する 細菌ベクターおよび哺乳動物のエピソームベクター)。他のベクター(例えば、哺乳動物 の非エピソームベクター)は、宿主細胞内への導入時において宿主細胞のゲノム内に組み 込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、あるベクター、発現ベクタ ーは、それらが作動的に連結されるコード配列の発現の方向付けが可能である。一般に、 組換えDNA法において有用な発現ベクターは、プラスミド(ベクター)の形態であるこ とが多い。

本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内における発現に適する形態にある本発明の 成熟エラスターゼ、プロエラスターゼ、またはプレプロエラスターゼをコードするヌクレ オチド配列を含む。これは、組換え発現ベクターが、発現に用いられる宿主細胞に基づい て選択され、発現する核酸配列に作動的に連結される、1つまたは複数の調節配列を含む ことを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「作動的に連結される」とは、対象のヌ クレオチド配列が、該ヌクレオチド配列の発現を可能とする形で、(1つまたは複数の) 調節配列に連結される(例えば、in vitroにおける転写/翻訳系において、また は宿主細胞内にベクターを導入する場合の宿主細胞において)ことを意味すると意図する 。「調節配列」とは、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例 えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような調節配列は、例えば 、Goeddel、「Gene Expression Technology:Met hods in Enzymology」、185(Academic Press、S an Diego、California、1990)において説明されている。調節配 列は、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を方向付ける配列と 、特定の宿主細胞だけにおいてヌクレオチド配列の発現を方向付ける配列(例えば、組織 特異的な調節配列)とを含む。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、 エラスターゼタンパク質の所望される発現レベルなどの因子に依存する場合があることを 、当業者は理解するであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞内に導入し、これにより 、本明細書で説明される核酸によりコードされるエラスターゼタンパク質を作製すること ができる。

本発明の組換え発現ベクターは、本発明のエラスターゼタンパク質の原核細胞(例えば 、大腸菌)における発現にも、真核細胞(例えば、昆虫細胞(バキュロウイルスによる発 現ベクターを用いる)、酵母細胞、または哺乳動物細胞)における発現にも用いることが できる。適切な宿主細胞は、Goeddel、前出においてさらに論じられている。代替 的に、例えば、T7プロモーターの調節配列およびT7ポリメラーゼを用い、in vi troにおいて、組換え発現ベクターを転写および翻訳することもできる。

原核生物におけるタンパク質の発現は、ベクターが、融合タンパク質または非融合タン パク質の発現を方向付ける構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターを含有する、大 腸菌において実施されることが最も多い。融合ベクターは、その中でコードされるタンパ ク質、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に、多数のアミノ酸を付加する。このような 融合ベクターは、3つの目的:1)組換えエラスターゼタンパク質の発現を増大させる目 的と、2)組換えエラスターゼタンパク質の溶解性を増大させる目的と、3)アフィニテ ィー精製においてリガンドとして作用することにより、組換えエラスターゼタンパク質の 精製を補助する目的に資することが典型的である。融合発現ベクターにおいては、融合部 分と組換えタンパク質との接合部にタンパク質分解性の切断ドメインを導入することで、 融合タンパク質の精製後における、融合部分からの組換えタンパク質の分離が可能となる 。したがって、融合部分およびタンパク質分解性の切断ドメインは、エラスターゼタンパ ク質の組換え発現のための、プロテアーゼ認識部位を含む活性化配列として共に作用しう る。このような融合タンパク質の活性化が可能な酵素、およびそれらと同種の認識配列は 、因子Xa、トロンビン、およびエンテロキナーゼを含む。典型的な融合発現ベクターは 、標的の組換えタンパク質に、それぞれ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST )、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを融合させる、pGEX(Pha rmacia Biotech Inc.;SmithおよびJohnson、1988 、Gene、67:31〜40)、pMAL(New England Biolabs 、Beverly、MA)、およびpRIT5(Pharmacia、Piscataw ay、New Jersey)を含む。

適切な誘導型非融合大腸菌発現ベクターの例は、pTrc(Amannら、1988、 Gene、69:301〜315)およびpET−11d(Studierら、1990 、「Gene Expression Technology:Methods in Enzymology」、185、Academic Press、San Diego 、California、185:60〜89)を含む。pTrcベクターからの標的遺 伝子の発現は、ハイブリッド体のtrp−lac融合プロモーターからの宿主RNAポリ メラーゼの転写に依拠する。pET−11dベクターからの標的遺伝子の発現は、共発現 するウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)を介する、T7 gn10−lac融 合プロモーターからの転写に依拠する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プ ロモーターの転写制御下において、T7 gn1遺伝子を保有するレジデントλプロファ ージに由来する宿主菌株であるBL2I(DE3)またはHMS174(DE3)により 供給される。

大腸菌内における組換えエラスターゼタンパク質の発現を最大化するための1つの戦略 は、タンパク質分解により組換えタンパク質を切断する能力が損なわれた宿主細菌におい て、該タンパク質を発現させることである(Gottesman、1990、「Gene Expression Technology:Methods in Enzymo logy」、185、Academic Press、San Diego、Calif ornia、185:119〜129)。別の戦略は、各アミノ酸に対応する個々のコド ンが大腸菌において優先的に用いられるコドンであるように、発現ベクター内に挿入され る核酸の核酸配列を変更することである(Wadaら、1992、Nucleic Ac ids Res.、20:2111〜2118)。本発明の核酸配列のこのような変更は 、標準的なDNA合成法により実施することができる。

別の実施形態において、発現ベクターは、酵母発現ベクターである。出芽酵母またはメ タノール資化酵母などの酵母内における発現のためのベクターの例は、pYepSec1 (Baldariら、1987、EMBO J.、6:229〜234)、pMFa(K urjanおよびHerskowitz、1982、Cell、30:933〜943) 、pJRY88(Schultzら、1987、Gene、54:113〜123)、p YES2(Invitrogen Corporation、San Diego、CA )、およびpPicZ(Invitrogen Corp、San Diego、CA) を含む。酵母内における発現の場合、メタノール誘導性プロモーターを用いることが好ま しい。本明細書では、各アミノ酸に対応する個々のコドンがメタノール資化酵母において 優先的に用いられるコドンであるような、発現ベクター内に挿入される核酸の核酸配列の 変更もまた意図する。より具体的に述べると、配列番号33または配列番号81のコドン を、メタノール資化酵母において優先的に用いられるコドンに置換することができる。

代替的に、発現ベクターは、バキュロウイルスによる発現ベクターでもある。培養昆虫 細胞(例えば、Sf9細胞)内におけるタンパク質の発現に用いられるバキュロウイルス ベクターは、pAc系列(Smithら、1983、Mol.Cell Biol.、3 :2156〜2165)、およびpVL系列(LucklowおよびSummers、1 989、Virology、170:31〜39)を含む。別の戦略は、各アミノ酸に対 応する個々のコドンが昆虫細胞において優先的に用いられるコドンであるように、発現ベ クター内に挿入される核酸の核酸配列を変更することである。

さらに別の実施形態において、エラスターゼタンパク質は、哺乳動物による発現ベクタ ーを用いる哺乳動物細胞において発現する。哺乳動物による発現ベクターの例は、pCD M8(Seed、1987、Nature、329(6142):840〜2)、および pMT2PC(Kaufmanら、1987、EMBO J.、6:187〜195)を 含む。哺乳動物細胞内で用いられる場合、発現ベクターの制御機能は、ウイルスの調節エ レメントによりもたらされることが多い。例えば、一般的に用いられるプロモーターは、 ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびサルウイルス40に由来 する。原核細胞および真核細胞の両方に適する他の発現系については、Sambrook ら、前出の第16および17章を参照されたい。

別の実施形態において、哺乳動物による組換え発現ベクターは、特定の細胞型における 核酸発現の優先的な方向付けが可能である(例えば、組織特異的な調節エレメントを用い て核酸を発現させる)。組織特異的な調節エレメントは、当技術分野で知られている。適 切な組織特異的プロモーターの非限定的な例は、アルブミンプロモーター(肝臓特異的; Pinkertら、1987、Genes Dev.、1:268〜277)、リンパ球 特異的プロモーター(CalameおよびEaton、1988、Adv.Immuno l.、43:235〜275)、特に、T細胞受容体(WinotoおよびBaltim ore、1989、EMBO J.、8:729〜733)および免疫グロブリン(Ba nerjiら、1983、Cell、33:729〜740;QueenおよびBalt imore、1983、Cell、33:741〜748)のプロモーター、ニューロン 特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;ByrneおよびR uddle、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:547 3〜5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlundら、1985、Science 、230:912〜916)、ならびに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモー ター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開第EP264166号)を含 む。例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss、1990、S cience、249:374〜379)およびベータ−フェトプロテインプロモーター (CampesおよびTilghman、1989、Genes Dev.、3:537 〜546)など、発達学的に調節されるプロモーターもまた対象とされる。

本発明のある態様において、本発明のタンパク質の発現は、対応する遺伝子の用量を増 大させることにより、例えば、高コピーの発現ベクターまたは遺伝子増幅を用いて増大さ せることができる。dhfr遺伝子による対象遺伝子の共トランスフェクション、および メトトレキサート濃度を段階的に増大させる選択培地への曝露により、ジヒドロ葉酸レダ クターゼ(「dhfr」)欠損CHO細胞において遺伝子増幅を達成することができる。 例えば、Ausubelら、「Current Protocols in Molec ular Biology」、Unit 16.14(John Wiley & So ns、New York、1996)を参照されたい。遺伝子コピー数を増大させる代替 的な方法は、宿主細胞内にベクターを導入する前に、ベクターにおいて対象のエラスター ゼタンパク質をコードする発現カセット(例えば、コード配列を伴うプロモーター)を多 量体化することである。発現カセットの多量体化を達成する方法およびベクターは、酵母 および哺乳動物の宿主細胞系において知られている(例えば、Monaco、「Meth ods in Biotechnology 8:Animal Cell Biote chnology」、39〜348頁(Humana press、1999);Vas silevaら、2001、Protein Expression and Puri fication、21:71〜80;Mansurら、2005、Biotechno logy Letter、27(5):339〜45を参照されたい)。加えて、マルチ コピー遺伝子発現のためのキットが市販されている。例えば、メタノール資化酵母による マルチコピー発現キットは、Invitrogen社(Carlsbad、Califo rnia)から購入することができる。発現カセットの多量体化は、前出の実施例6にお いて例示されている。

したがって、本発明の他の態様は、その中に本発明の組換え発現ベクターが導入される 宿主細胞に関連する。本明細書において、「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という 用語は互換的に用いられる。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような 細胞の子孫細胞または潜在的な子孫細胞も指すことが理解される。突然変異または環境の 影響により、後続世代においては何らかの変化が発生しうるため、実のところ、このよう な子孫細胞は親細胞と同一ではないが、本明細書では、やはり該用語の範囲内に含める。

宿主細胞は、任意の原核細胞(例えば、大腸菌細胞)でもありえ、真核細胞(例えば、 昆虫細胞、酵母細胞、または哺乳動物細胞)でもありうる。

ベクターDNAは、従来の形質転換法またはトランスフェクション法を介して、原核細 胞にも真核細胞にも導入することができる。本明細書で用いられる「形質転換」および「 トランスフェクション」という用語は、宿主細胞内に外来核酸を導入する、当技術分野で 認められた各種の技法を指すことを意図し、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウムに よる共沈殿、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、また は電気穿孔を含む。宿主細胞を形質転換するか、またはこれにトランスフェクトするのに 適する方法は、Sambrookら(前出)および他の実験室マニュアルにおいて見出す ことができる。

哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションを行う場合、用いられる発現ベクターお よびトランスフェクション法にもよるが、それらのゲノム内に外来のDNAを組み込みう る細胞はごく一部であることが知られている。これらの組込み体を同定し選択するには、 一般に、対象のオープンリーディングフレームと共に、選択マーカー(例えば、抗生剤に 対する耐性マーカー)のコード配列を宿主細胞内に導入する。好ましい選択マーカーは、 G418、ハイグロマイシン、ゼオシン、およびメトトレキサートなど、薬剤に対する耐 性を賦与するマーカーを含む。導入される核酸を安定的にトランスフェクトした細胞は、 薬剤の選択により同定することができる(例えば、選択マーカーのコード配列を組み込ん だ細胞が生存するのに対し、他の細胞は死滅する)。

別の実施形態では、細胞、安定的な細胞系、またはクローニングされた微生物のゲノム 内に内因性エラスターゼのコード配列に対して異種のDNA調節エレメントを挿入するこ とにより、挿入された調節エレメントが該内因性遺伝子と作動的に連結されるように、細 胞、細胞系、または微生物内における該エラスターゼのコード配列の発現特性を改変する ことができる。

当業者によく知られ、例えば、Chappel、米国特許第5,272,071号;1 991年5月16日に公開されたPCT公開番号WO91/06667において説明され る、相同組換えの標的化などの技法を用いて、内因性エラスターゼ遺伝子と作動的に連結 され、その発現を活性化するように、安定的な細胞系またはクローニングされた微生物内 に、調節エレメントを含有する異種配列を挿入することができる。異種配列は、本発明の シグナルペプチド、切断配列、および/または活性化配列をさらに含むことができる。

5.4 成熟エラスターゼタンパク質の製造方法 培養物中における原核生物または真核生物の宿主細胞など、本発明の宿主細胞を用いて 、本発明のエラスターゼタンパク質を作製することができる。したがって、本発明は、本 発明の宿主細胞を用いて本発明のエラスターゼタンパク質を作製する方法をさらに提供す る。一実施形態において、該方法は、該エラスターゼタンパク質が作製されるように、適 切な培地において本発明の宿主細胞(この中に、本発明のエラスターゼタンパク質をコー ドする組換え発現ベクターが導入されている)を培養するステップを含む。別の実施形態 において、該方法は、培地または宿主細胞からエラスターゼタンパク質を単離するステッ プをさらに含む。

本発明は、本発明の未成熟エラスターゼタンパク質を作製する方法であって、プロエラ スターゼタンパク質が生成される条件下において、本発明の核酸を発現するように改変さ れた宿主細胞を培養するステップを含む方法をさらに提供する。ある実施形態では、プレ プロエラスターゼタンパク質もまた作製される。本発明は、本発明の成熟エラスターゼタ ンパク質を作製する方法であって、プロエラスターゼタンパク質が生成される条件下にお いて、本発明の核酸を発現するように改変された宿主細胞を培養するステップと、該成熟 エラスターゼタンパク質が生成されるような活性化条件下に該プロエラスターゼタンパク 質を置くステップとを含む方法をさらに提供する。

特にメタノール資化酵母による宿主細胞の場合、本発明の未成熟タンパク質および成熟 タンパク質を作製するのに好ましい培養条件は、低度のpHにおける増殖時間を含む。具 体的な実施形態において、低度のpHとは、pH2〜6、pH2〜5、pH3〜6、pH 3〜5、pH4〜6、pH3〜4であるか、またはその上限および下限が前出の値のいず れかから選択される任意の範囲である。培養時間の終了時において、培養物のpHは、好 ましくはpH7〜11、最も好ましくはpH8.0まで上昇させることができる。

本発明のプロエラスターゼタンパク質の発現がメタノール誘導性プロモーターの制御下 にある場合、本発明の未成熟エラスターゼタンパク質および成熟エラスターゼタンパク質 を作製するための条件はまた、メタノールによる誘導時間も含む。

本発明のエラスターゼ作製方法は、宿主細胞により発現するタンパク質を回収するステ ップをさらに含む。ある場合において、回収されるタンパク質は、活性化配列を含有する プロエラスターゼである。他の場合において、回収されるタンパク質は、活性化配列を欠 く成熟エラスターゼである。ある条件下では、プロエラスターゼタンパク質および成熟エ ラスターゼタンパク質の両方が回収される。他の場合には、プレプロエラスターゼが作製 される。

特に自己活性化プロエラスターゼの自己活性化を回避することが望ましい場合、プロエ ラスターゼ発現のための培養条件は、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または 酢酸ナトリウム中における増殖時間を含むことが好ましい。具体的な実施形態では、5〜 50mM、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、75〜175m M、100〜150mM、75〜125mM、またはその上限および下限が前出の値のい ずれかから選択される任意の範囲の濃度が用いられる。好ましい実施形態において、クエ ン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムの濃度は90〜110mM であり、最も好ましくは100mMである。

加えて、タンパク質の分解を回避することが望ましい場合、プロエラスターゼ発現のた めの培養条件は、対象の宿主細胞に適する温度範囲の最下端における増殖時間および誘導 時間を含みうる。例えば、宿主細胞がメタノール資化酵母による宿主細胞である場合、好 ましい範囲は約22〜28℃である。具体的な実施形態において、メタノール資化酵母に よる宿主細胞は、約28℃の温度で培養される。増殖および誘導を同じ温度で実施する必 要はなく、例えば、宿主細胞としてメタノール資化酵母を用いる実施形態では、28℃で 増殖を実施しうる一方、誘導は22℃で実施することができる。

本発明の自己活性化プロエラスターゼタンパク質の活性化は、少(触媒)量の外因性エ ラスターゼの添加により誘発されうる。代替的に、または同時に、自己活性化プロエラス ターゼタンパク質を含有する溶液のpHを上昇させることにより、本発明の自己活性化プ ロエラスターゼタンパク質の活性化を誘発することができる。pHは7〜11であること が好ましく、具体的な実施形態において、溶液は、pH7〜10、7〜9、8〜10、8 〜9、またはその上限および下限が前出の値のいずれかから選択される任意の範囲にある 。好ましい実施形態において、溶液のpHは7〜9であり、8であることが最も好ましい 。

具体的な実施形態では、活性化ステップの間において、自己活性化プロエラスターゼを トリス塩基下に置くことができる。具体的な実施形態では、5〜50mM、7.5〜10 0mM、10〜15mM、50〜200mM、75〜175mM、100〜150mM、 75〜125mM、またはその上限もしくは下限が前出の値のいずれかから選択される任 意の範囲の濃度までトリス塩基を添加する。好ましい実施形態において、トリス塩基は、 90〜110mM、最も好ましくは100mMの濃度まで添加される。トリス塩基のpH は7〜11であることが好ましく、具体的な実施形態において、トリス塩基は、pH7〜 10、7〜9、8〜10、8〜9、またはその上限もしくは下限が前出の値のいずれかか ら選択される任意の範囲にある。好ましい実施形態において、トリス塩基は、pH7〜9 、最も好ましくはpH8である。

本発明のある態様において、エラスターゼの自己活性化温度は周囲温度、例えば、22 ℃〜26℃の範囲の温度である。ある実施形態において、エラスターゼの活性化ステップ は、切断反応の精度を最適化し、N末端変異体の形成を最小化するため、低度の初期濃度 、例えば、0.1〜0.3mg/mlのプロエラスターゼにより実施することが好ましい 。

本発明のある実施形態では、プロエラスターゼが自己タンパク質分解を受ける可能性が あるため、自己活性化プロエラスターゼを成熟エラスターゼへと転換するのに、触媒量の エラスターゼの添加は必要とされない。ある実施形態において、自己タンパク質分解の速 度は、濃度に依存しない。理論に制約されることは望まないが、ある種の自己活性化プロ エラスターゼタンパク質の濃度に依存しない自己タンパク質分解は、プロエラスターゼ分 子が分子内反応により自身を切断する分子内過程を介すると考えられる。しかし、他の実 施形態において、自己活性化プロエラスターゼの活性化は、濃度依存的である。理論に制 約されることは望まないが、ある種の自己活性化プロエラスターゼタンパク質の濃度依存 的な自己タンパク質分解は、プロエラスターゼが、別のプロエラスターゼにより、かつ/ または成熟エラスターゼにより切断される分子間反応を介すると考えられる。さらに他の 実施形態において、ある種の自己活性化エラスターゼタンパク質は、濃度依存的な活性化 と、濃度に依存しない活性化との組合せを示す。自己活性化が濃度依存的である場合、所 望なら、プロタンパク質を一層の希釈形態に維持することで活性化を低下させることがで きる。配列番号69のプロタンパク質を含むがこれに限定されない配列番号55のエラス ターゼプロペプチドの切断ドメインを含むエラスターゼプロタンパク質の活性化は、この ようなプロタンパク質を希釈形態に維持することにより制御することができる。

本発明の成熟エラスターゼタンパク質を作製する過程ではまた、成熟エラスターゼのあ る種の望ましくないN末端配列変異体が蓄積されうることも認められている。より具体的 に述べると、配列番号6のプロタンパク質を含む配列番号42のエラスターゼプロペプチ ドの切断ドメインを含有するプロエラスターゼタンパク質は、位置P3またはP2におけ るいずれかの残基に対してC末端側にあるペプチド結合において切断が生じたN末端配列 の変異体をもたらす可能性がある。しかし、活性化配列内の特定の位置に特定のアミノ酸 を配置することにより、このような望ましくないN末端変異体を減少させることができる 。例えば、プロリンが位置P2に存在する場合、1つまたは2つのさらなるN末端アミノ 酸を有するN末端変異体の生成が減少するかまたはこれが生成されなくなる。また、トリ プシンが活性化に必要でなくなることにより、9つのN末端残基を欠く変異体の生成が減 少するかまたはこれが生成されなくなる。加えて、ある条件下において活性化反応を実行 することにより、望ましくないN末端変異体を減少させるかまたは除去することができる 。

より具体的に述べると、ある実施形態において、活性化条件は、転換反応の初期部分に おいて生成されたN末端変異体がその後選択的に分解される「延長転換」ステップを含む 。「延長転換」時におけるタンパク質分子種の相対量は、HIC−HPLCにより、リア ルタイムでモニタリングすることができる。望ましくないN末端変異体の選択的な分解に より、転換反応における全長の成熟PRT−201の比率が増大し、N末端変異体の比率 が低下する。配列番号55のエラスターゼプロペプチドの切断ドメインを含有するプロエ ラスターゼタンパク質の場合、延長転換ステップは4〜8時間にわたり実施され、約6時 間であることが好ましい。他のプロエラスターゼタンパク質の場合、延長転換ステップは 、すべてのプロエラスターゼが転換された直後において、(全長の)成熟エラスターゼと 比べたN末端変異体の比率に応じて延長される場合もあり、短縮される場合もある。転換 が発酵培養液などの複合培地において生じる場合、成熟エラスターゼの活性部位における 、溶液内における他のタンパク質およびペプチドによる競合のために、延長転換の時間は 延長される場合がある。代替的に、延長転換ステップの前に複合培地から成熟エラスター ゼおよびN末端変異体エラスターゼの混合物を回収し、これにより活性部位の競合を低下 させ、N末端変異体分子種を除去するのに必要とされる時間を短縮することができる。

上述の通り、プロPRT−201−55M3−003−VUの転換反応時には、N末端 変異体の生成をもたらす副反応が生じる。具体的なプロPRT−201−55M3−00 3−VUの場合、これらのN末端変異体は、最初の2つのバリンを欠いており、エラスタ ーゼ活性をほとんどまたはまったく有さない。他の変異プロタンパク質の場合、ある場合 は付加を有し、他の場合は異なる欠失を有する、さらなるN末端変異体が生成される。N 末端変異体を0〜2%の範囲に減少させるN末端除去ステップが開発されている。この除 去ステップの開発は、各種の実験および観察から進展した。既に述べた通り、プロPRT −201−42に関する転換条件を最適化する実験において、転換反応を延長すると、多 くの場合、N末端変異体の百分率がきわめて低下することが観察された。その後、転換反 応を延長すると、成熟PRT−201によるN末変異体の選択的な分解が可能となること が決定された。ある条件下においてN末端変異体を選択的に分解するPRT−201の能 力の発見は、より少ないN末端変異体を伴うより多くの精製されたPRT−201生成物 を作製する一助となることで、多大な利益をもたらした。プロPRT−201の成熟PR T−201への転換を可能とし、次いで、該PRT−201によるN末端変異体の分解を 可能とする条件を確立することで、このN末端変異体の除去ステップは大規模作製工程へ と実装された。

HIC−HPLCによりリアルタイムでモニタリングされた、このようなステップの代 表例を図10に示す。約50分間後において、100%のプロPRT−201−55M3 が、約86%の成熟PRT−201と14%のN末端変異体とに完全に転換された。成熟 PRT−201によるN末端変異体の選択的な分解を可能とする転換反応が延長された結 果、変異体は14%から2%へと減少した。インキュベーションを延長すると、N末端変 異体を検出不可能なレベルまで選択的に分解することができる。N末端変異体のレベルが 十分に低下したら、クエン酸ナトリウムによりPRT−201の活性を抑制し、反応pH を5.0へと調整する。

精製された成熟エラスターゼが得られたら、該活性酵素を、該エラスターゼタンパク質 が比較的不活性となる溶液中に入れ、さらなるカラムクロマトグラフィー、例えば、陽イ オン交換クロマトグラフィーによる精製ステップのための緩衝液中に入れることができる 。一般に、エラスターゼタンパク質は、濃度が約5〜25mMであり、pHが約2〜5の クエン酸ナトリウム中に入れることができる。具体的な実施形態では、pH5で20mM のクエン酸ナトリウム中にエラスターゼを入れる。次いで、場合によって、以下の方法: (1)濃度を決定する吸光度280nmでの分光光度分析、(2)純度を評価するSDS −PAGE、(3)エラスターゼの比活性を評価する活性アッセイ、例えば、SLAPア ッセイ、および(4)成熟エラスターゼおよびN末端変異体を検出するHIC−HPLC の1つ、複数、またはすべてにより溶出した画分を解析し、適切な特性(例えば、許容さ れる比活性、許容される程度に低レベル(不在が好ましい)の検出可能なグリコフォーム 、および許容される程度に低レベル(不在が好ましい)の検出可能なN末端変異体)を有 する画分をプールした。

精製された成熟エラスターゼが得られたら、該活性酵素を、凍結乾燥に適する溶液中に 入れることができる。一般には、凍結乾燥前に、エラスターゼタンパク質を1×リン酸緩 衝生理食塩水(「PBS」)(pH7.4の137mM塩化ナトリウム、10mMリン酸 ナトリウム、2.7mMリン酸カリウム)中に入れることができる。ある実施形態では、 凍結乾燥前に、エラスターゼタンパク質を0.1×PBS(pH7.4の13.7mM 塩化ナトリウム、1.0mMリン酸ナトリウム、0.27mMリン酸カリウム)中に入れ ることができる。

場合によって、プロエラスターゼ配列の発現は、プロエラスターゼタンパク質および成 熟エラスターゼタンパク質の混合物をもたらす。したがって、本発明は、プロエラスター ゼタンパク質および成熟エラスターゼタンパク質の両方を含む組成物を提供する。

5.5 医薬組成物 本発明の成熟エラスターゼタンパク質は、投与に適した医薬組成物中に取り込ませるこ とが可能である。このような組成物は、エラスターゼタンパク質および薬学的に不活性な 成分、例えば薬学的に許容される担体を典型的には含む。本明細書で使用する用語「薬学 的に許容される担体」は、医薬投与と適合性がある、任意およびすべての溶媒、分散媒、 コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むものとする。 従来の賦形剤、ビヒクル、充填剤、結合剤、崩壊剤、溶媒、可溶化剤、および着色剤も、 薬学的に不活性な成分として企図される。薬学的に活性がある物質に関するこのような媒 体および作用物質の使用は、当技術分野でよく知られている。任意の従来の媒体または作 用物質が成熟エラスターゼタンパク質と不適合である場合を除いて、組成物におけるそれ らの使用は企図される。補助的活性化合物を組成物中に取り込ませることも可能である。

したがって、本発明の特定の態様は医薬組成物に関する。具体的な実施形態において、 本発明は、(i)治療有効量の成熟ヒトI型エラスターゼおよび(ii)薬学的に許容さ れる担体を含む組成物を提供する。組成物中に使用することができる成熟ヒトI型エラス ターゼには、配列番号1、4、5、84、87のタンパク質があるが、これらだけには限 られない。成熟ヒトI型エラスターゼは、前述の表3中に述べた多型の組合せのいずれか を含有することができる。

他の実施形態において、本発明は、(i)治療有効量の成熟ヒトI型エラスターゼと、 (ii)薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供し、この医薬組成物はトリプ シン、またはトリプシンの断片を含まない。他の実施形態において、医薬組成物は、トリ プシンまたはトリプシンの断片を実質的に含まない。本明細書で使用する語句「トリプシ ンを含まない」は、製造工程の任意の部分でトリプシンが使用されない組成物を指す。本 明細書で使用する語句「トリプシンを実質的に含まない」は、重量/重量ベースにおいて 約0.0025%を超えない、またはより好ましくは約0.001%未満の最終率(すな わち、トリプシンの重量/組成物全体の重量)でトリプシンが存在する組成物を指す。本 明細書で使用する語句トリプシンを「含まない」は、例えば酵素アッセイまたはELIS Aによって変異体が検出不能である組成物を指す。

特定の態様では、本発明の組成物は、BENZアッセイにより測定してトリプシンの3 ng/mlの当量未満のトリプシン活性、好ましくはBENZアッセイにより測定して2 .5ng/トリプシンmlの当量未満のトリプシン活性、さらにより好ましくはBENZ アッセイにより測定して2ng/トリプシンmlの当量未満のトリプシン活性を有する。 具体的な実施形態において、本発明は、トリプシン活性がBENZアッセイにより測定し て1.6ng/トリプシンml未満の当量である、治療有効量のエラスターゼタンパク質 を含む組成物を提供する。BENZアッセイにより測定して1.6ng/トリプシンml 当量未満のトリプシン活性を有するエラスターゼ組成物の例は、以下の実施例8中に提供 する。特定の実施形態では、ng/トリプシンml活性を、液状ヒトI型エラスターゼ組 成物または1mg/ヒトI型エラスターゼタンパク質mlを含有する調製物においてアッ セイすることができる。したがって、トリプシン活性は、エラスターゼタンパク質のミリ グラムの点で、例えば3ngトリプシン活性/エラスターゼタンパク質mg未満、1.5 6ngトリプシン活性/エラスターゼタンパク質mg未満などで記載することもできる。

本発明は、成熟エラスターゼの望ましくないN末端変異体を含まないかまたは実質的に 含まないかのいずれかである医薬組成物をさらに提供する。望ましくないN末端変異体に は、P5、P4、P3、P2、P’1、P’2、P’3、P’4、P’6、および/また はP’9位置における残基のいずれかに対するC末端であるペプチド結合での切断によっ て生成する変異体があるが、これらだけには限られない。特定の望ましくないN末端変異 体はトリプシン活性化によって生成され、他の変異体は最適活性化配列を含有しないプロ エラスターゼ配列の自己活性化によって生成される。

特定の実施形態では、医薬組成物は、配列番号2、3、37、38、70、71、85 、86、94、95、104、105、106、107、108だけには限られないがこ れらを含む、成熟エラスターゼの1個、2個以上またはすべてのN末端変異体を含まない かまたは実質的に含まない。特定の実施形態では、本発明は、(i)治療有効量の成熟ヒ トI型エラスターゼと、(ii)薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供し、 この医薬組成物は配列番号2、3、37、38、70、71、85、86、94、95、 104、105、106、107、または108を有する任意のタンパク質を含まないか または実質的に含まない。他の実施形態では、医薬組成物は、配列番号2、3、37、3 8、70、71、85、86、94、95、104、105、106、107、または1 08だけには限られないがこれらを含む成熟エラスターゼのN末端変異体を実質的に含ま ない。本明細書で使用する語句特定の変異体を「含まない」は、例えばカチオン交換HP LCアッセイ、疎水性相互作用HPLCアッセイ、または液体クロマトグラフィーと組み 合わせた質量分析によって変異体が検出不能である組成物を指す。本明細書で使用する語 句「実質的に含まない」は、少なくとも約0.5%未満の最終率(すなわち、N末端変異 体の重量/組成物全体の重量)でN末端変異体が存在する組成物を指す。特定の好ましい 実施形態では、N末端変異体を実質的に含まない組成物は、N末端変異体の濃度が重量/ 重量ベースにおいて約0.1%未満または約0.01%未満または、より好ましくは、さ らに約0.001%未満である組成物である。特定の態様では、N末端変異体の存在を、 カチオン交換HPLCアッセイ、疎水性相互作用HPLCアッセイ、または液体クロマト グラフィーと組み合わせた質量分析によって検出する。

特定の具体的実施形態では、配列番号70、71、104および105のN末端変異体 を含まない医薬組成物は、P1位置中にアルギニンおよび/またはP2位置中にアラニン を含有しないプロエラスターゼの活性化によって生成する。

他の実施形態では、本発明は、(i)治療有効量の成熟ヒトI型エラスターゼ(ii) 薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供し、この医薬組成物は細菌タンパク質を 実質的に含まない、および/または前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパ ク質を実質的に含まない。本明細書で使用する語句「哺乳動物タンパク質を実質的に含ま ない」または「細菌タンパク質を実質的に含まない」は、少なくとも約0.5%未満の最 終率(すなわち、哺乳動物タンパク質(エラスターゼ以外および、場合によっては、アル ブミンなどの担体タンパク質)または細菌タンパク質の重量/組成物全体の重量)で、こ のようなタンパク質が存在する組成物を指す。特定の好ましい実施形態では、このような タンパク質を実質的に含まない組成物は、望ましくないタンパク質の濃度が重量/重量ベ ースにおいて約0.1%未満または約0.01%未満、または、より好ましくは、さらに 約0.001%未満である組成物である。

特定の態様では、(エラスターゼ以外の)「哺乳動物タンパク質を含まない」医薬組成 物は、哺乳動物細胞ではない組換え細胞系から生成されるエラスターゼを含有し、この場 合、哺乳動物配列を有するかまたは哺乳動物配列を実質的に有するタンパク質は、製造工 程の任意の部分で存在しない。特定の態様では、「細菌タンパク質を含まない」医薬組成 物は、細菌細胞ではない組換え細胞系から生成されるエラスターゼを含有し、この場合、 細菌配列を有するかまたは細菌配列を実質的に有するタンパク質は、製造工程の任意の部 分で存在しない。

本発明の成熟ヒトI型エラスターゼ(変異体を含む)は、医薬組成物中で使用するため に精製することが最も好ましい。具体的な実施形態において、エラスターゼは少なくとも 70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の純度にある。 他の具体的な実施形態において、エラスターゼは98%、98.5%、99%、99.2 %、99.5%または99.8%までの純度にある。

医薬組成物に製剤化するために、本発明の成熟ヒトI型エラスターゼは、エラスターゼ の添加によって触媒される小分子ペプチド基質N−スクシニル−Ala−Ala−Ala −pニトロアニリド(SLAP)の加水分解率を測定することにより決定して、1U/タ ンパク質1mgを超える超える、5U/タンパク質1mgを超える、10U/タンパク質 1mgを超える、20U/タンパク質1mgを超える、25U/タンパク質1mgを超え る、または30U/タンパク質1mgを超える比活性度を有することが好ましい。活性の 1単位は30℃において1分間当たりで1マイクロモルの基質の加水分解を触媒するエラ スターゼの量として定義し、かつ比活性度はエラスターゼタンパク質1mg当たりの活性 (U/mg)として定義する。医薬組成物は、下限が1、2、3、4、5、7、10、1 5または20U/タンパク質1mgであり、かつ上限が独立に5、10、15、20、2 5、30、35、40または50U/タンパク質1mgである範囲内で比活性度を有する 、成熟ヒトI型エラスターゼを含むことが好ましい。例示的な実施形態では、比活性度は 、1〜40U/タンパク質1mg、1〜5U/タンパク質1mg、2〜10U/タンパク 質1mg、4〜15U/タンパク質1mg、5〜30U/タンパク質1mg、10〜20 U/タンパク質1mg、20〜40U/タンパク質1mgの範囲、またはその上限および 下限が前述の値のいずれかから選択される任意の範囲の範囲内である。

本発明の医薬組成物は安定状態であることが好ましい。具体的な実施形態において、医 薬組成物(例えば前述の凍結乾燥によって調製した医薬組成物)は、4℃での保存の1週 間後、より好ましくは1カ月後、さらにより好ましくは3カ月後、最も好ましくは6カ月 後に、その比活性度の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、最も好まし くは少なくとも70%を維持する。具体的な実施形態において、医薬組成物は、4℃での 保存の1週間後、より好ましくは1カ月後、さらにより好ましくは3カ月後、最も好まし くは6カ月後に、その比活性度の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85 %、少なくとも90%または少なくとも95%を維持する。

本発明の医薬組成物は、その目的とする投与の経路と適合するように製剤化する。生体 導管の疾患を治療または予防するためにエラスターゼを投与するための方法は、WO20 01/21574;WO2004/073504;およびWO2006/036804中 に記載される。最も好ましい投与の経路は、手術により露出した血管の外側外膜表面への 局所投与および薬剤送達用カテーテルを使用した血管壁への局所投与を含めた、非経口投 与、例えば血管壁への直接投与である。非経口投与に使用する溶液または懸濁液は、以下 の構成要素:注射用水などの滅菌希釈液、生理食塩水溶液、リン酸緩衝生理食塩水溶液、 スクロースまたはデキストランなどの糖、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン 、プロピレングリコール、ポリソルベート−80(tween−80としても知られる) 、または他の合成溶媒;メチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素 ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン4酢酸などのキレート剤;リン酸などのバ ッファー、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張の調節用の作用物質を 含むことができる。塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて、pHは調 節することができる。非経口調製物はアンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしく はプラスチックでできた単回もしくは反復投与用バイアル中に密閉することができる。非 経口調製物は、薬剤送達用カテーテル中に密閉することもできる。すべての場合において 、組成物は滅菌状態でなければならない。

具体的な実施形態において、本発明の医薬組成物は、以下の賦形剤:デキストロース( 例えば、2〜10%w/v);ラクトース(例えば、2〜10%w/v);マンニトール (例えば、2〜10%w/v);スクロース(例えば、2〜10%w/v);トレハロー ス(例えば、2〜10%w/v);アスコルビン酸(例えば、2〜10mM);塩化カル シウム(例えば、4〜20mM);デキストラン−70(例えば、2〜10%w/v); ポロキサマー188(例えば、0.2〜1%w/v);ポリソルベート−80(例えば、 0.001〜5%w/v、より好ましくは0.1〜5%);グリセリン(例えば、0.2 〜5%w/v);アルギニン(例えば、2〜10%w/v);グリシン(例えば、2〜1 0%w/v);デキストラン−44(例えば、2〜10%w/v);およびデキストラン −18(例えば、2〜10%w/v)の1つまたは複数を含む液体製剤である。特定の実 施形態では、デキストロース、ラクトース、マンニトール、スクロース、トレハロース、 デキストラン−70、グリシン、アルギニン、グリシン、デキストラン−44またはデキ ストラン−18の単独または凝集体での濃度は、下限が2.5、4、5、または7%w/ vであり、かつ上限が独立に4、5、6、8、または10%w/vである範囲内である。

成熟エラスターゼタンパク質、1つまたは複数のバッファー試薬および/または1つま たは複数の賦形剤を含有する乾燥製剤に水を加えることによって、液体製剤を作製するこ とができる。乾燥製剤は、成熟エラスターゼタンパク質、1つまたは複数のバッファー試 薬および/または、1つまたは複数の賦形剤を含む溶液を凍結乾燥させることによって作 製することができる。

例えば、滅菌水またはバッファー溶液で本発明の凍結乾燥エラスターゼタンパク質を戻 すことによって、液体製剤を作製することができる。バッファー溶液の例には、生理食塩 水の滅菌溶液またはリン酸緩衝生理食塩水がある。具体的な実施形態では、望ましいタン パク質濃度への成熟エラスターゼタンパク質を含む乾燥製剤の再溶解後、溶液は約137 mMの塩化ナトリウム、2.7mMのリン酸カリウム、10mMのリン酸ナトリウム(1 ×と考えられるリン酸緩衝生理食塩水濃度)を含有し、かつ溶液のpIIは約7.4であ る。特定の態様では、成熟エラスターゼタンパク質を含む乾燥製剤は、再溶解に水のみが 必要とされるような量で、ナトリウム、塩化物、およびリン酸イオンも含有する。

例えば、1つまたは複数の賦形剤を含有するバッファー溶液で、凍結乾燥エラスターゼ タンパク質を戻すことによって、液体製剤を作製することもできる。賦形剤の例には、ポ リソルベート−80およびデキストランがある。具体的な実施形態では、望ましいタンパ ク質濃度への成熟エラスターゼタンパク質を含む乾燥製剤の再溶解後、生成する溶液は約 137mMの塩化ナトリウム、2.7mMのリン酸カリウム、10mMのリン酸ナトリウ ム、0.01%のポリソルベート−80を含有し、かつ溶液のpHは約7.4である。凍 結乾燥前または凍結乾燥後ただし再溶解の前に、1つまたは複数の賦形剤を成熟エラスタ ーゼタンパク質と混合することができる。したがって、特定の態様では、成熟エラスター ゼタンパク質を含む乾燥製剤は、ポリソルベート−80またはデキストランなどの賦形剤 も含有する。

特定の態様では、本発明は、137mMの塩化ナトリウム、2.7mMのリン酸カリウ ム、10mMのリン酸ナトリウムの溶液中に0.001〜50mg/mlの成熟エラスタ ーゼタンパク質を含み、かつデキストロース、ラクトース、マンニトール、スクロース、 トレハロース、デキストラン−70、グリセリン、アルギニン、グリシン、デキストラン −44またはデキストラン−18から選択される5〜10%、より好ましくは6〜9%の 賦形剤を含む液体製剤を提供する。

具体的な実施形態において、本発明は、7.4のpHを有する、137mMの塩化ナト リウム、2.7mMのリン酸カリウム、10mMのリン酸ナトリウムの溶液中に0.00 1〜50mg/mlの成熟エラスターゼタンパク質を含む液体製剤を提供する。

別の具体的な実施形態において、本発明は、7.4のpHを有する、137mMの塩化 ナトリウム、2.7mMのリン酸カリウム、10mMのリン酸ナトリウムの溶液中に0. 001〜50mg/mlの成熟エラスターゼタンパク質を含み、かつ0.01%のポリソ ルベート−80を含む液体製剤を提供する。

別の具体的な実施形態において、本発明は、7.4のpHを有する、137mMの塩化 ナトリウム、2.7mMのリン酸カリウム、10mMのリン酸ナトリウムの溶液中に0. 001〜50mg/mlの成熟エラスターゼタンパク質を含み、かつ0.01%のポリソ ルベート−80および8%のデキストラン−18を含む液体製剤を提供する。

別の具体的な実施形態において、本発明は、7.4のpHを有する、137mMの塩化 ナトリウム、2.7mMのリン酸カリウム、10mMのリン酸ナトリウムの溶液中に0. 001〜50mg/mlの成熟エラスターゼタンパク質を含み、かつ8%のデキストラン −18を含む液体製剤を提供する。

本発明の液体製剤は、下限が0.1、0.5、1、2.5、5、10、15または20 mg/mlであり、かつ上限が独立に0.5、1、2.5、5、10、25、50、10 0、250、500、1000、または1500mg/mlである範囲内で、最終濃度の 成熟エラスターゼタンパク質を含有することが好ましい。

特定の態様では、本発明はデキストロース、ラクトース、マンニトール、スクロース、 トレハロース、デキストラン−70、グリセリン、アルギニン、グリシン、デキストラン −44またはデキストラン−18から選択される5〜10%(より好ましくは6〜9%) の賦形剤を含み、6.5〜8.5のpHを有する、0.5×PBS〜1.5×PBS(よ り好ましくは1×PBS)の溶液中に、0.0001〜500mg/ml(より好ましく は1〜100mg/ml、さらにより好ましくは0.5〜20mg/ml)の成熟エラス ターゼタンパク質を含む液体製剤を提供する。具体的な実施形態において液体製剤は、1 ×PBS、pH7.4中に0.5mg/mlの成熟エラスターゼタンパク質および8%デ キストラン−18を含む。具体的な実施形態において液体製剤は、1×PBS、pH7. 4中に5mg/mlの成熟エラスターゼタンパク質および8%デキストラン−18を含む 。

本発明の液体製剤は、下限が100、125、150、175、200、250または 275mOsm/kgであり、かつ上限が独立に500、450、400、350、32 5、300、275または250mOsm/kgである範囲内でオスモル濃度を有するこ とが好ましい。具体的な実施形態では、本発明の液体製剤のオスモル濃度は、例えば凝固 点降下法により測定して、約125〜500mOsm/kg、より好ましくは約275〜 325mOsm/kgのオスモル濃度を有することが好ましい。

投与の容易性および用量の均一性のための単位剤形の、本発明の液体製剤に作製するこ とができる組成物などの、非経口組成物を製剤化することは非常に有利である。本明細書 で使用する単位剤形は、治療対象の単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、そ れぞれの単位は、必要とされる医薬担体と共に望ましい治療効果をもたらすと計算された 所定量の成熟エラスターゼタンパク質を含有する。

本明細書で定義するように、治療有効量の成熟エラスターゼタンパク質(すなわち、有 効用量)は約0.0033mg〜200mgの範囲である。皮下動静脈フィステル中の血 管などの、小さな直径および薄い壁を有する血管に関しては、小用量(0.0033mg 〜2.0mgなど)が好ましい。大腿動脈などの大きな直径および厚い壁を有する血管に 関しては、大用量(2.05〜100mgなど)が好ましい。

特定の実施形態では、医薬組成物は容器、パック、ディスペンサー、またはカテーテル 中に含めることが可能である。さらに他の実施形態では、医薬組成物は、投与に関する説 明書と共に、容器、パック、ディスペンサー、またはカテーテル中に含めることが可能で ある。投与に関する説明書は、容器、パック、ディスペンサー、またはカテーテルの内部 または表面のいずれかに印刷された形で含めることが可能である。あるいは、投与に関す る説明書は、説明を与える別の印刷文書またはインターネットでアクセス可能な文書に対 する参照の形で、容器、パック、ディスペンサー、またはカテーテルの内部または表面の いずれかに含めることが可能である。

特定の実施形態では、医薬組成物は容器、パック、またはディスペンサー中に含めるこ とが可能である。さらに他の実施形態では、医薬組成物は、投与に関する説明書と共に、 容器、パック、またはディスペンサー中に含めることが可能である。投与に関する説明書 は、容器、パック、またはディスペンサーの内部または表面のいずれかに印刷された形で 含めることが可能である。あるいは、投与に関する説明書は、説明を与える別の印刷文書 またはインターネットでアクセス可能な文書に対する参照の形で、容器、パック、または ディスペンサーの内部または表面のいずれかに含めることが可能である。

本発明は、医薬組成物を調製するための方法を含む。本発明に従い成熟エラスターゼを 生成した後、それを凍結乾燥し、それを投与に適した医薬製剤に戻すまで保存することが できる。例示的な実施形態では、本発明は、(a)オープンリーディングフレームが発現 され、前記オープンリーディングフレームが5’から3’方向に(i)メタノール資化酵 母において作動的なシグナルペプチド(ii)エラスターゼ認識配列を含む活性化配列お よび(iii)成熟I型エラスターゼタンパク質の配列をコードするヌクレオチド配列を 含む条件下で、プレプロエラスターゼのオープンリーディングフレームをコードする核酸 分子を発現するように改変された、メタノール資化酵母宿主細胞などの宿主細胞を培養し 、それによりプロエラスターゼタンパク質を作製すること、(b)プロエラスターゼタン パク質を、例えば(i)例えば6.5〜11、好ましくは8〜9のpHへのプロエラスタ ーゼタンパク質を含有する溶液のpHの変更、または(ii)例えばイオン交換クロマト グラフィーによるプロエラスターゼタンパク質の精製を含む自己活性化条件に施すことで あって、それにより成熟I型エラスターゼを作製すること、および溶液を長期変換に施し てN末端変異体を除去し、それにより成熟ヒトI型エラスターゼを作製すること、(c) 場合によっては、成熟ヒトI型エラスターゼを精製すること、例えば、クロマトグラフィ ーを向上させるためのイオン交換クロマトグラフィーステップ、および(d)成熟I型エ ラスターゼを凍結乾燥させ、それにより凍結乾燥成熟ヒトI型エラスターゼを単離するこ とを含む、凍結乾燥成熟ヒトI型エラスターゼを単離する方法を提供する。成熟I型エラ スターゼは、ヒトI型エラスターゼであることが好ましい。特定の態様では、凍結乾燥成 熟I型エラスターゼは95%を超えた純度にあることがより好ましく、具体的な実施形態 では、凍結乾燥成熟I型エラスターゼは98%を超えた純度または99%を超えた純度に ある。

本発明の成熟エラスターゼタンパク質は、医薬組成物に製剤化することができる。した がって、例示的な実施形態において本発明は、成熟ヒトI型エラスターゼを含む医薬組成 物を作製する方法を提供し、前記方法は(i)(例えばセクション5.4中に)前に記載 した方法により凍結乾燥成熟ヒトI型エラスターゼを単離すること、および(ii)薬学 的に許容される担体に凍結乾燥成熟ヒトI型エラスターゼを再溶解することを含む。

5.6 有効用量 本発明は概して、生体導管中の疾患を治療または予防するための、単独または他の作用 物質と組み合わせた、組換えエラスターゼタンパク質の非経口、好ましくは局所投与の利 点を提供する。

特定の実施形態では、非経口投与の代替として、生体導管中の疾患を治療または予防す るための作用物質の経口投与を使用することができる。

本発明の方法の実施において利用するエラスターゼタンパク質の毒性および治療効果は 、例えばLD50(集団の50%に致命的な用量)およびED50(集団の50%におい て治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な医薬 手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり 、かつそれは比LD50/ED50として表すことができる。このような情報を使用して 、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。

5.7 投与の方法 本発明は、新規なエラスターゼタンパク質を含む医薬組成物、および生体導管中の疾患 を予防または治療するためのそれらの使用法に関する。このような医薬組成物は、セクシ ョン5.5中に記載したのと同様に従来の方法で製剤化することができる。

本発明のエラスターゼ組成物は、動脈または静脈の壁への溶液の送達に許容可能である ことが当業者に知られているデバイス、例えばシリンジ、薬剤送達用カテーテル、薬剤送 達用ニードル、埋め込み型薬剤送達用ポリマー、シートまたはミクロスフェア調製物など 、埋め込み型カテーテル、またはポリマーコーティング血管ステント、好ましくは自己拡 張型ステントによって、治療する生体導管の望ましい部分に投与することができる。

特定の実施形態では、望ましい部分への投与は、直接可視化、超音波、CT、蛍光透視 鏡誘導、MRIまたは内視鏡誘導によって誘導することができる。

本発明の特定の態様では、生体導管へのエラスターゼの投与は、手術により露出した動 脈または静脈の外側外膜表面へのエラスターゼの液体製剤の直接施用を含む。本発明の具 体的な態様では、シリンジを用いて投与を実施する。

本発明の特定の態様では、生体導管へのエラスターゼの投与は、治療する生体導管の部 分の非常に近くに送達用装置を局所的に配置することを含む。いくつかの実施形態では、 送達用装置によるエラスターゼタンパク質の送達中に、送達用装置の一部分を生体導管の 壁に挿入することができる。いくつかの実施形態では、エラスターゼタンパク質を生体導 管の加圧部分に送達しながら、生体導管の内腔を加圧することができる。いくつかの実施 形態では、機械的作用によって生体導管の内腔を加圧する。いくつかの実施形態では、バ ルーンカテーテルを用いて生体導管の内腔を加圧する。いくつかの実施形態では、カテー テルまたはデバイスの一部分である自己拡張型部材によって生体導管の内壁に圧力を加え る。いくつかの実施形態では、エラスターゼタンパク質を投与し、同じデバイスによって 加圧を実施する。いくつかの実施形態では、生体導管を手術により露出させ、エラスター ゼタンパク質を内腔に送達し、またはin vivoで生体導管の外部表面に施用する。 内腔送達に関する実施形態では、血管中の血流をクランプで止め、またはエラスターゼを 長時間の間血管壁に接触させて、血清によるエラスターゼの阻害を妨げることができる。 いくつかの実施形態では、生体導管を手術により除去し、エラスターゼは内腔表面および /またはin vitroで導管の外部表面に送達する。特定の実施形態では、治療する 導管を次いで身体に戻すことができる。

本発明の他の態様では、生体導管へのエラスターゼの投与は、治療する血管内にステン トとして置かれるポリマー製剤、生体導管の外部表面に施用するクランプまたはストリッ プ、または治療する血管上もしくは周辺のラップ、または治療する血管中、周辺もしくは 近辺の他のデバイスの使用を伴う。

本発明のさらに他の態様では、側副動脈を含めたその領域内の動脈および/または静脈 を拡張させる目的で、エラスターゼを組織領域に経皮注射する。他の態様では、血管の特 定部分を拡張させる目的で、エラスターゼを動脈もしくは静脈または周辺組織の壁に直接 経皮注射する。心臓血管の治療を目的とする実施形態では、エラスターゼタンパク質は心 膜腔に経皮送達すること、または手術により露出した冠状血管に直接施用することのいず れかが可能である。

本発明のエラスターゼタンパク質を血管に投与するために使用することができる医療デ バイスは、以下のセクション5.9中に記載する。

5.8 キット 本発明は、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。本発明の「治療用」キッ トは、1つまたは複数の容器中に、場合によってはその送達を容易にする任意の作用物質 と共に、生体導管中の疾患を治療または予防するのに有用な本明細書に記載するような作 用物質の1つまたは複数を含む。本発明の別のキット、「製造」キットは、1つまたは複 数の容器中に、組換えエラスターゼタンパク質を作製するのに有用な本明細書に記載する ような作用物質の1つまたは複数を含む。

本発明の治療用キットは、本発明の方法を実施するのに有用な追加的な構成要素を場合 によっては含むことができる。例えば、治療用キットは、本発明の作用物質を製剤化する のに有用である医薬担体を含むことができる。治療用キットは、本発明の治療法を実施す るためのデバイスまたはデバイスの構成要素、例えばシリンジまたはニードルも含むこと ができる。治療用キット中への、壁内または心膜腔注射用カテーテルまたは腔内注射用カ テーテルなどのデバイスの封入も企図される。特定の実施形態では、単位剤形で本発明の 作用物質を提供することができる。追加的または代替的に、本発明のキットは、1つまた は複数の本発明の方法の実施を記載する説明書、または製造機関による承認を表す、医薬 品または生物製品の製造、使用または販売、ヒト投与に関する使用または販売を管理する 行政機関によって規定された形の通知書を提供することができる。キットの1つまたは複 数の容器内または上のいずれかに、印刷された形で説明書を含めることが可能である。あ るいは、キットの1つまたは複数の容器内または上のいずれかに、説明書を与える別の印 刷文書またはインターネットでアクセス可能な文書に対する参照の形で、説明書を含める ことが可能である。

特定の実施形態では、本発明のキットは、以下のセクション5.9中に記載する医療デ バイスを含む。

本発明の製造キットは、本発明の方法を実施するのに有用な追加的な構成要素を場合に よっては含むことができる。

5.9エラスターゼタンパク質の投与に有用な医療デバイス 本明細書では、動脈または静脈などの生体導管に本発明のエラスターゼタンパク質を投 与するために使用され得る医療デバイスが提供される。そのようなデバイスは、以下にお いて、また、その各々が参照によって全体的に本明細書に組み込まれる、2008年1月 31日出願の仮出願第61/025,084号、2008年2月1日出願の仮出願第61 /025,463号、および2008年6月25日出願の仮出願第61/075,710 号において説明される。本発明のエラスターゼタンパク質はまた、従来のカテーテルを介 して生体導管に投与することもできる。

1つの実施形態では、エラスターゼタンパク質の投与に有用な医療デバイスは、中央の 長手方向軸を有し、1つまたは複数のアクチュエータを備え、この場合、1つまたは複数 のアクチュエータは、前記1つまたは複数のアクチュエータの長手部分が前記医療デバイ スの長手方向軸にほぼ平行に向けられる拘束形状、および前記1つまたは複数のアクチュ エータの長手部分の少なくとも一部分がデバイスの中央の長手方向軸にほぼ非平行に向け られる非拘束形状で存在することができる。デバイスが、生体導管の壁に隣接して標的部 位に配置された後、1つまたは複数のアクチュエータ(所望であればアクチュエータのす べて)は、拘束形状から解放され、非拘束形状をとることが可能にされ、それにより生体 導管の壁と接触することができる。1つまたは複数のアクチュエータは、任意の形状のも のでよく、好ましい実施形態では、1つまたは複数のアクチュエータの拘束形状から非拘 束形状への移動は、デバイス操作者が、デバイスまたは標的組織にいかなる変形力を与え ることなく拘束力を解放した際に行われる。

図22に示す第1の特有の実施形態では、デバイスは、1対の細長いスプライン12、 14として形成された1つまたは複数のアクチュエータを備える流体送達カテーテル10 であり、スプラインの中間領域は、カテーテル組立体の中央の長手方向軸15にほぼ平行 に向けられる拘束形状と、スプラインの対の少なくとも一部分が前記中央の長手方向軸に ほぼ非平行に向けられる非拘束形状の間で移動可能である(図23のスプラインの長手部 分の左Lおよび右R部分を参照)。1つまたは複数のスプライン12、14は、向かい合 わせの近位および遠位の端部を各々が有する細長いバンドまたはワイヤとして構築されて よい。好ましい実施形態では、スプラインは、平坦な、向かい合う内面24、26と、平 坦な、反対側に向いている外面28、30とを有する。この実施形態では、スプライン1 2、14は、図22および23にそれぞれ示すように、拘束位置と非拘束位置の間を平行 移動することができる。1つの実施形態では、スプラインの対は、図22に示すようにそ の拘束形状で背中合わせに配置される。

カテーテル10は、さらに、1つまたは複数のスプライン12、14の1つまたは複数 の表面に固定された1つまたは複数の組織貫通器16、18と、細長い長手部分を有する 中央カテーテル構成要素20と、生体導管内でのカテーテルの移動中、1つの組織貫通器 または複数の貫通器を遮蔽することができる外側カテーテル構成要素22とを備える。

組織貫通器16、18は、任意の適切な材料から構築されてよい。そのような材料の好 ましい例としては、それだけに限定されないが、ニッケル、アルミニウム、鋼およびそれ らの合金が挙げられる。特有の実施形態では、組織貫通器は、ニチノールから構築される 。

中央カテーテル構成要素20および外側カテーテル構成要素22は、カテーテルを構築 するのに一般的に使用される材料から構築されてよい。そのような材料の例としては、そ れだけに限定されないが、シリコーン、ポリウレタン、ナイロン、ダクロン、およびPE BAX(商標)が挙げられる。

アクチュエータは、好ましくは、可撓性の弾性材料から構築される。好ましい実施形態 では、可撓性の弾性材料は、拘束力がかけられた際、例えばアクチュエータが拘束形状に あるときに拘束されることが可能であり、拘束力が除去されたとき、例えばアクチュエー タが非拘束形状にあるときにその元の非拘束の形をとる。それだけに限定されないが、外 科用鋼、アルミニウム、ポリプロピレン、オレフィン材料、ポリウレタン、および他の合 成ゴムまたはプラスチック材料を含む任意のそのような可撓性の弾性材料が使用され得る 。1つまたは複数のアクチュエータは、最も好ましくは、形状記憶材料から構築される。 そのような形状記憶材料の例としては、それだけに限定されないが、銅−亜鉛−アルミニ ウム−ニッケル合金、銅−アルミニウム−ニッケル合金、およびニッケル−チタン(Ni Ti)合金が挙げられる。好ましい実施形態では、形状記憶材料はニチノールである。好 ましい実施形態では、スプラインの対が非拘束形状をとるとき、各々のスプラインが形成 される材料の形状記憶特性により、スプラインは、いかなる外側からの変形力をかけるこ となく、図23に示すように単一の平面において径方向に曲がって互いから離れる。

スプラインの1つまたは複数(好ましくはスプラインの各々)は、図24に示すように 、スプラインの長手部分に沿ってまたはスプライン内を延びる可撓性の流体送達導管32 、34を有する。スプライン12、14がその真っすぐな拘束形状からその曲がった非拘 束形状に移動するとき、流体送達導管32、34もまた、真っすぐな形状から曲がった形 状に移動する。1つの実施形態では、流体送達導管32、34は、スプライン12、14 の対の長手部分に沿って固定された別個の管状の導管である。別の実施形態では、流体送 達導管は、スプラインの材料中にまたはその内部に形成される導管である。

スプラインの1つまたは複数(好ましくはスプライン12、14の各々)はまた、スプ ラインの長手部分に沿って延びるジッパレール36、38を有して形成される(図24) 。ジッパレール36、38は、スプライン12、14と同じ材料またはスプライン12、 14と共に可撓する材料から形成される。

組織貫通器16、18の1つまたは複数は、スプライン12、14の対の外面28、3 0に固定される(図24)。組織貫通器16、18は、スプライン12、14の長手部分 に沿って延びる流体送達導管32、34に連結され、これと連通する。組織貫通器16、 18は、スプライン12、14の外面28、30からほぼ垂直に突出するように配置され る。組織貫通器16、18は、スプラインの流体送達導管32、34と連通する中空の内 部孔を有する。組織貫通器の遠位端部は、組織貫通器の内部孔と連通する流体送達ポート を有する。

デバイスは、生体導管の壁、例えば血管壁の1つまたは複数の異なった層内へのまたは それを貫通する流体の送達を可能にする。血管壁は、内皮層および基底膜層(まとめて内 膜層)、内弾性板、内側層、および外膜層を含む、数多くの構造および層を含む。これら の層は、米国特許出願公開第2006/0189941A1号に記載されるように、内皮 が血管腔に曝され、基底膜、内弾性板、内側および外膜がそれぞれ、内皮の上方に次々と 重ねられるように構成されている。本発明の医療デバイスの場合、組織貫通器16、18 が貫通することができる深さは、各組織貫通器16、18の長さによって決定される。例 えば、標的層が外膜層である場合、デバイスの展開時に外膜層の深さまで貫通するのに十 分な規定された長さを有する組織貫通器16、18が、使用される。同様に、標的層が内 側層である場合、デバイスの展開時に内膜層の深さまで貫通するのに十分な規定された長 さを有する組織貫通器16、18が、使用される。

特有の実施形態では、組織貫通器16、18の長さは、血管用途では約0.3mm〜約 5mm、他の生体空間または導管を含む用途、例えば結腸用途では約20mmまたはさら には30mmまでの範囲になり得る。組織貫通器16、18は、好ましくは、約0.2m m(33ゲージ)〜約3.4mm(10ゲージ)、より好ましくは0.2mm〜1.3m m(約33〜21ゲージ)の直径を有する。組織貫通器の遠位先端部は、標準的な面取部 、短い面取部、または真に短い面取部を有することができる。代替の実施形態では、スプ ラインの任意の1つに取り付けられた組織貫通器は、同一の長さのものではないが、医療 デバイスが、例えば使用中などに非拘束位置にあるとき、それらの遠位端部が生体導管の 壁から等距離になるように揃うように構成されてよい。

中央カテーテル構成要素20は、図22の左および右それぞれに示す向かい合わせの近 位および遠位の端部を備えた細長い長手部分を有する。1つの実施形態では、中央カテー テル構成要素20は、その細長い長手部分に沿って延びる円筒状の外面を有する。スプラ イン12、14の近位端部は、中央カテーテル構成要素20の遠位端部に取り付けられ、 例えばはんだ付けされ、または接着され、一方でスプライン12、14の遠位端部は、カ テーテルのガイド先端部40に取り付けられ、例えばはんだ付けされ、または接着される 。先端部40は、生体導管内で容易に移動するように設計された滑らかな外面を有する。 ガイドワイヤ孔48が、中央カテーテル20および先端部40の長手部分を通って延びる 。ガイドワイヤ孔は、ガイドワイヤを孔内に滑動係合状態で受け入れるように寸法設定さ れる。

1対の流体送達管腔44、46が、中央カテーテル構成要素20の内部を通ってカテー テル構成要素の長手部分全体を延びる(図25)。中央カテーテル構成要素20の遠位端 部では、流体送達管腔44、46の対は、スプライン12、14の長手部分に沿って組織 貫通器16、18まで延びる流体送達導管32、34の対と連通する。ガイドワイヤ孔4 8もまた、中央カテーテル構成要素20の内部を通って中央カテーテル構成要素の近位端 部から遠位端部まで延びる(図25)。中央カテーテル構成要素20の近位端部には、1 対のルアーハブ50、52が設けられる(図22)。1つの実施形態では、各ルアーハブ 50、52は、中央カテーテルの長手部分を通って延びる流体送達管腔44、46の1つ と連通する。各ルアーハブ50、52は、流体を、各ルアーハブ50、52を通り、次い で中央カテーテル構成要素20を通って延びる各流体送達管腔44、46を通り、次いで スプライン12、14の対の長手部分に沿って延びる各流体送達導管32、34を通り、 次いでスプラインの対の各々に固定された組織貫通器16、18を通るように連通させる ために、流体送達源と連結されるように設計される。別の実施形態では、各ルアーハブ5 0、52は、中央カテーテル構成要素の長手部分を通って延びる流体送達管腔44、46 の両方と独立して連通する。この構成では、第1の流体が、第1のルアーハブを通って両 方の組織貫通器16、18へと送達可能であり、第2の流体が、第2のルアーハブを通っ て両方の組織貫通器16、18へと送達可能である。各ルアーハブから両方の組織貫通器 への流体の送達は、図32に示すように、各ルアーハブから遠位の共通のリザーバ61ま で延びる独立した導管によって達成することができる。このリザーバは、両方の組織貫通 器16、18と連通する。代替的に、別の実施形態では、本発明の医療デバイスは、中央 カテーテルを通って延びる単一流体送達管腔に連結された単一のルアーハブのみを備え、 このルアーハブは、次いで、遠位の共通のリザーバに取り付けられて、両方の組織貫通器 16、18への単一の流体の送達を可能する。

外側カテーテル構成要素22は、スプライン12、14の対および中央カテーテル20 の大部分を取り囲む管状形状を有する(図22)。カテーテル構成要素22は、図22に おいて左および右にそれぞれ示す、カテーテル構成要素の向かい合わせの近位端部と遠位 端部の間を延びる細長い長手部分を有する。カテーテル構成要素の遠位端部は、ガイド先 端部40と固定係合状態で係合するように寸法設定され、ここでは、先端部40の外面は 、カテーテル構成要素の遠位端が先端部と係合されたときにカテーテル構成要素22の外 面と同化する。カテーテル構成要素22の管状形状は、カテーテル構成要素22の内面が 、スプラインの対の拘束位置においてスプライン12、14の対上の複数の組織貫通器1 6、18から外方向に離間されるように寸法設定される。中央カテーテル20の近位端部 は、カテーテル構成要素の遠位端部がカテーテルガイド先端部40と係合するとき、カテ ーテル構成要素22の近位端部を超えて延びる。

外側カテーテル構成要素22の近位端部と中央カテーテル構成要素20の近位端部の間 には、機械的連結部54が設けられ、この機械的連結部54は、外側カテーテル構成要素 を、スプライン12、14の対および中央カテーテル構成要素20の長手部分に沿って後 方向に移動させることを可能にして、外側カテーテル構成要素22の遠位端部をガイド先 端部40から離してスプライン12、14の対の上を通過させ、また、中央カテーテル構 成要素20の長手部分にわたっておよびスプライン12、14の対の長手部分にわたって 前方向に移動させて外側カテーテル構成要素22の遠位端部を先端部40に係合させる( 図22)。機械的連結部54は、手動で外側カテーテル構成要素22を中央カテーテル構 成要素20にわたって滑動させるハンドルまたはボタンによって設けることができる。連 結部54はまた、サムホイールまたはトリガ機構によって提供することができる。さらに 、連結部54にはまた、中央カテーテル構成要素20に対する外側カテーテル構成要素2 2の増分的移動の可聴式または触覚式のインジケータ(クリッキングなど)を設けること ができる。

1つの実施形態では、外側カテーテル構成要素22には、外側カテーテル構成要素の内 面上で、外側カテーテル構成要素22の片側の長手部分全体に沿って延びる単一のジッパ トラック56が設けられる(図24)。外側カテーテル構成要素22の内部のジッパトラ ック56は、スプライン12、14の各々の片側にあるジッパレール36、38と滑動係 合状態で係合する。外側カテーテル構成要素22を中央カテーテル構成要素20およびス プライン12、14の対の長手部分に沿って、カテーテル組立体のガイド先端部40に向 かって前方向に進めることにより、外側カテーテル構成要素のジッパトラック56はスプ ライン12、14の対のレール36、38に沿って滑動する。このため、スプライン12 、14の対は、図23に示すその曲がった非拘束形状から図22に示すその背中合わせの 拘束形状に向かって移動する。スプラインレール36、38が外側カテーテル構成要素2 2のジッパトラック56内に係合することにより、スプライン12、14の対は、図22 に示すその背中合わせの相対位置に保持される。外側カテーテル構成要素22を中央カテ ーテル構成要素20およびスプライン12、14の対にわたって、外側カテーテル構成要 素22の遠位端部がガイド先端部40と係合するところまで前方に押し出すと、組織貫通 器16、18は覆われ、本発明のカテーテル組立体は、生体導管内で前方または逆方向に 安全に移動することができる。外側カテーテル構成要素22は、スプライン12、14の 対から突出する組織貫通器16、18を覆い、外側カテーテル構成要素22と遠位ガイド 先端部40が係合することにより、カテーテル組立体には滑らかな外面がもたらされ、こ の外面は、カテーテル組立体が血管などの生体導管に入りそこを通って挿入されることを 容易にする。別の実施形態では、外側カテーテル構成要素22には、内面上で外側カテー テル構成要素22の長手部分全体に沿って延びる、互いから180°のところにある2本 のジッパトラックが設けられ、スプラインは、両側にレールを有する。

ガイドワイヤ58が、カテーテル組立体と共に使用される(図22)。ガイドワイヤ5 8は、中央カテーテル構成要素のガイドワイヤ孔48を通り、スプライン12、14に沿 ってガイド先端部の出口42を通って延びる。特定の実施形態では、ガイドワイヤ58は 、例えばステンレス鋼または超弾性ニチノールなどのソリッドコアを有する。ガイドワイ ヤは、その全体またはその遠位部分(例えば最遠位1mm〜25mmまたは最遠位3mm 〜10mm)をX線不透過性材料から構築してよい。ガイドワイヤ58は、任意選択で、 TEFLON(登録商標)などの医学的に不活性なコーティング剤でコーティングされて よい。

本デバイスの使用時、ガイドワイヤ58は、当技術分野で良く知られている方法によっ て生体導管内に配置される。ガイドワイヤ58は、生体導管から、組立体の先端部40内 のガイドワイヤ出口42を通り、外側遮蔽カテーテル22を通って組織貫通器16、18 を過ぎ、中央カテーテル20のガイドワイヤ孔48を通って延びる。他の実施形態では、 カテーテル組立体は、迅速交換カテーテル組立体であり、この場合、ガイドワイヤ管腔は 、カテーテルのガイド先端部40の遠位端部内に存在しているが、医療デバイスの長手部 分全体を通り抜けて延びてはいない。

ガイドワイヤの配置後、デバイスは、事前に配置されたガイドワイヤ58に沿って生体 導管内に入るように進められる。任意選択で、生体導管内でデバイスの位置を監視するた めに、1つまたは複数のX線不透過性マーカーをデバイス上に設けることができる。電磁 波放射の通過を防止するものであればどのような材料も、X線不透過性として考慮され、 使用することができる。好ましいX線不透過性材料としては、それだけに限定されないが 、白金、金または銀が挙げられる。X線不透過性材料は、先端部40のすべてまたは一部 の表面上、スプライン12、14または他のアクチュエータのすべてまたは一部上、ガイ ドワイヤ58上、または上述の構造の何らかの組合せ上にコーティングすることができる 。代替的に、X線不透過性材料のリングを、先端部40に取り付けることができる。デバ イスには、任意選択で、血管内超音波または光学コヒーレンストモグラフィーなどの内蔵 の画像処理を設けることができる。デバイスの先端部には、任意選択で、デバイスの位置 または周囲の生体導管の特徴を決定するために使用される光学素子を設けることができる 。

デバイスが生体導管内でその所望の位置にあるとき、操作者は、機械的連結部54を使 用して外側カテーテル構成要素22を後方向に後退させてガイド先端部40から離す。好 ましい実施形態では、外側カテーテル構成要素22が組織貫通器16、18からそれにわ たって引っ込められるとき、外側カテーテル構成要素22のジッパトラック56は、スプ ライン12、14の対のレール36、38にわたって引っ込められる。この移動は、スプ ライン12、14の対を、図22に示すその拘束の背中合わせの形状から解放し、スプラ イン12、14の形状記憶材料が、図23に示すその非拘束の曲がった形状をとることを 可能にする。スプライン12、14がその非拘束の曲がった形状に移動するとき、スプラ インは、生体導管の(1つまたは複数の)壁の内側表面と接触するようになり、スプライ ン12、14の外面28、30上の組織貫通器16、18は、デバイスの位置にある生体 導管の内面に押し込まれる。

組織貫通器16、18が生体導管の壁の所望の層に入った後、流体を、中央カテーテル 構成要素20内の流体送達管腔44、46を通り、スプライン12、14の対上の流体送 達導管32、34を通り、組織貫通器16、18を通って送達することができる。流体の 送達が完了すると、操作者は、機械的連結部54を使用して(遮蔽構成要素とも称され得 る)外側カテーテル構成要素22を、中央カテーテル構成要素20にわたって、およびス プライン12、14の対にわたってガイド先端部40に向かって前方に移動させる。外側 カテーテル構成要素22がスプライン12、14の対にわたって前方に移動するとき、外 側カテーテル構成要素22の内部のジッパトラック56は、スプライン12、14の対上 のレール36、38を通過して、スプライン12、14を移動させてその非拘束の曲がっ た形状からその拘束形状に戻す。外側カテーテル構成要素22が対のスプライン12、1 4にわたって完全に進められ、ガイド先端部40と再度係合するとき、外側カテーテル構 成要素22内のジッパトラック56は、スプライン12、14をその拘束形状に保持する 。デバイスは、次いで、その生体導管または別の生体導管の別の場所における解放のため に再配置する、あるいは体内から引っ込めることができる。

スプライン12、14の形状および長さは、デバイスの様々な実施形態を、様々なサイ ズまたは直径を有する生体空間または生体導管内で使用することができるように選択され る。特定の実施形態では、スプラインは平坦または円形でよい。平坦なスプラインは、個 々の用途に応じて、好ましくは、約0.2mm〜約20mmの範囲の幅、約0.2mm〜 約5mmの範囲の高さ、および約10mm〜約200mmの範囲の長さを有する。円形の スプラインは、個々の用途に応じて、好ましくは、約0.2mm〜約20mmの範囲の直 径および約10mm〜約200mmの範囲の長さを有する。特有の実施形態では、平坦な スプラインは、幅3.5mm〜5mm、5mm〜10mm、10mm〜15mm、15m m〜20mmまたはその中の任意の範囲(例えば3.5mm〜10mm)、高さ3.5m m〜5mm、5mm〜10mm、10mm〜15mm、15mm〜20mmまたはその中 の任意の範囲(例えば3.5mm〜10mm)、および長さ10mm〜20mm、20m m〜40mm、40mm〜80mm、80mm〜120mm、120mm〜150mmも しくは150〜200mmまたはその中の任意の範囲(例えば10mm〜40mm)のも のであり、あるいは前述の任意の順列(例えば5mm〜10mmの幅、3.5〜5mmの 高さ、および20〜40mmの長さ)である。他の実施形態では、円形スプラインは、直 径3.5mm〜5mm、5mm〜10mm、10mm〜15mm、15mm〜20mmま たはその中の任意の範囲(例えば3.5mm〜10mm)、および長さ10mm〜20m m、20mm〜40mm、40mm〜80mm、80mm〜120mm、120mm〜1 50mmもしくは150〜200mm、またはその中の任意の範囲(例えば10mm〜4 0mm)のものであり、あるいは前述の任意の順列(例えば5mm〜10mmの直径およ び20〜40mmの長さ)である。

図27に示す第2の特有の実施形態では、本発明のデバイスは、長手方向軸113を備 えた細長い長手部分を有する中央カテーテル構成要素112と、この特有の実施形態では 、中央カテーテル構成要素112の遠位部分から延びる組織貫通器の先進(presen tation)チューブ114、116として形成される1つまたは複数(好ましくは2 つ)の可撓性の弾性アクチュエータとを備える流体送達カテーテル110である。組織先 進チューブ114、116の少なくとも一部分は、カテーテル組立体の中央の長手方向軸 113にほぼ平行に向けられる拘束形状と、カテーテルの中央の長手方向軸113にほぼ 非平行に向けられる非拘束形状との間で移動可能である。

カテーテルは、さらに、2本の組織貫通器の先進チューブ114、116を通って延び る1つまたは複数(好ましくは2つ)の可撓性の細長い組織貫通器118、120と、中 央カテーテル構成要素112、組織貫通器の先進チューブ114、116、および中間レ ール132の長手部分にわたって延びる外側展開チューブ122とを備える。

中央カテーテル構成要素112および外側展開チューブ122は、カテーテルを構築す るのに適した任意の材料から構築されてよい。そのような材料の例としては、それだけに 限定されないが、シリコーン、ポリウレタン、ナイロン、ダクロン、およびPEBAX( 商標)が挙げられる。

組織貫通器118、120は、それぞれのハブ166、168に連結する(図31)。 組織貫通器118、120の対の1つまたは複数は、好ましくは、約0.2mm(33ゲ ージ)〜約3.4mm(10ゲージ)、より好ましくは0.8mm〜1.3mm(約18 〜21ゲージ)の直径を有する。組織貫通器の対の1つまたは複数は、標準的な面取部、 短い面取部、または真に短い面取部を有することができる。組織貫通器118、120の 対は、好ましくは、組織貫通器がその長手部分に沿って可撓することを可能にする材料か ら構築される。そのような材料の例としては、それだけに限定されないが、ニッケル、ア ルミニウム、鋼、およびそれらの合金が挙げられる。特有の実施形態では、組織貫通器は 、ニチノールから構築される。組織貫通器118、120の全長は、単一の材料から構築 することができ、あるいは組織貫通器118、120の、先端部156、158を含む遠 位端部(例えば遠位1mm〜遠位20mm)を1つの材料から構築し、異なる材料、例え ばプラスチックなどから構築されたチュービングを介してそれぞれのハブ166、168 に連結させてよい。

組織貫通器の先進チューブ114、116の対の1つまたは複数は、好ましくは、可撓 性の弾性材料から構築される。そのような可撓性の弾性材料は、例えば組織貫通器の先進 チューブ114、116が、図27の真っすぐな拘束形状にあるときに変形することがで きるが、変形力が除去されたとき、例えば組織貫通器の先進チューブ114、116が、 図28に示す湾曲した非拘束形状にあるときにその元の形に戻る。それだけに限定されな いが、外科用鋼、アルミニウム、ポリプロピレン、オレフィン材料、ポリウレタンおよび 他の合成ゴムまたはプラスチック材料を含む、任意のそのような可撓性の弾性材料が使用 され得る。組織貫通器の先進チューブ114、116の対は、最も好ましくは形状記憶材 料から構築される。そのような形状記憶材料の例としては、それだけに限定されないが、 銅−亜鉛−アルミニウム−ニッケル合金、銅−アルミニウム−ニッケル合金、およびニッ ケル−チタン(NiTi)合金が挙げられる。好ましい実施形態では、形状記憶材料はニ チノールである。

中央カテーテル構成要素112は、向かい合わせの近位端部124および遠位端部12 6を備えた可撓性の細長い長手部分を有する(図27)。中央カテーテル構成要素の遠位 端部126は、遠位端部126を生体導管内で誘導する外形の形状を有するガイド先端部 として形成される。中間レール132内のガイドワイヤ孔128が、中央カテーテル11 2の中心を通って近位端部124から遠位端部126まで延びる。ガイドワイヤ孔128 は、可撓性の細長いガイドワイヤ130を受け入れて、孔128をそのワイヤにわたって 滑動移動させるようにする(図29)。ガイドワイヤ130は、カテーテル組立体を生体 導管内で誘導するために使用される。特定の実施形態では、ガイドワイヤ130は、例え ばステンレス鋼または超弾性ニチノールなどのソリッドコアを有する。ガイドワイヤは、 任意選択で、その全体またはその遠位部分(例えば最遠位1mm〜25mmまたは最遠位 1mm〜3mm)をX線不透過性材料から構築してよい。ガイドワイヤ130は、任意選 択で、TEFLON(登録商標)などの医学的に不活性なコーティング剤でコーティング されてよい。他の実施形態では、カテーテル組立体は、迅速交換カテーテル組立体であり 、この場合、ガイドワイヤは、ガイド先端部126の遠位端部上に配置され、そこから延 びている。

ガイドワイヤ孔128を取り囲む狭小の中間レール132は、カテーテル遠位端部12 6のガイド先端部からカテーテル近位端部124に向かって延びる。中間レール132は 、ガイド先端部126を中央カテーテル構成要素の基部部分138に連結する。

中央カテーテル構成要素の基部部分138は、基部部分の長手部分全体に沿って延びる 円筒状の外面を有する。基部部分138は、中央カテーテル構成要素112の総長さの大 部分に沿って延びる。図29に示すように、ガイドワイヤ孔128は、中央カテーテル構 成要素の基部部分138の中心を通って延びる。加えて、1対の組織貫通器の管腔140 、142もまた、中央カテーテル構成要素の基部部分138の長手部分を通ってガイドワ イヤ孔128と平行に延びる。中央カテーテル構成要素の近位端部124においては、1 対のポート144、146が、管腔140、142の対を中央カテーテル構成要素112 の外側と連通させる(図27)。

代替の実施形態では、図27の医療デバイスはまた、組織貫通器の先進チューブとして 形成された単一の可撓性の弾性アクチュエータと、組織貫通器の先進チューブを通って延 び、ハブに連結する単一の可撓性の細長い組織貫通器と、中央カテーテル構成要素、組織 貫通器の先進チューブ、および中間レールの長手部分にわたって延びる外側展開チューブ とを備えることもできる。

第1および第2の組織貫通器の先進チューブ114、116の対は、カテーテルの中央 構成要素の基部部分138からカテーテル遠位端部126に向かって突出する。組織貫通 器の先進チューブの各々は、中央カテーテル構成要素の基部部分138に固定された近位 端部と、反対側の遠位端部148、150とを有する狭小の細長いチューブとして形成さ れる。第1および第2の組織貫通器の先進チューブ114、116の各々は、中央カテー テル構成要素の基部部分138内の第1の組織貫通器の管腔140および第2の組織貫通 器の管腔142それぞれと連通する内部孔152、154を有する。

図29および30に示すように、組織貫通器の先進チューブ114、116の外側形状 は、組織貫通器の先進チューブ114、116の長手部分が中間レール132の両側に隣 り合って配置され得るように中間レール132に合わせられている。組織貫通器のチュー ブの遠位端部148、150は、カテーテルが血管系を通って通過することも容易にする ガイド先端面として形成することができる。組織貫通器のチューブの遠位端部148、1 50は、好ましくは、組織貫通器の先進チューブ114、116より大きい直径のもので ある。特有の実施形態では、組織貫通器チューブの遠位先端部148、150は、円形の 球根状の先端部である。そのような先端部は無傷のものであり、チューブが生体導管の壁 を不注意に刺すことはない。先端部148、150は、露出されており、ガイド先端部1 26の直径を超えて外方向に延びてはいない。

組織貫通器チューブ114、116の各々は、好ましくは、ニチノールなどの形状記憶 材料から構築される。チューブ114、116は、図28に示す湾曲した非拘束形状を有 して形成される。チューブ114、116は、チューブに対して拘束力がかけられていな いとき、図28に示す湾曲した非拘束形状に移動する。先進チューブ114、116が中 間レール132に沿って真っすぐな拘束形状に位置するには、チューブを図27に示すそ の真っすぐな拘束位置に保つために、チューブに拘束力をかけなければならない。チュー ブ114、116の各々が、図28に示すその真っすぐな拘束形状から図28に示すその 湾曲した非拘束形状に移動するとき、チューブを通って延びる組織貫通器孔152、15 4もまた、真っすぐな形状から湾曲した形状に移動する。

組織貫通器118、120の対のその遠位先端部からハブ166、168までは、中央 カテーテルの基部部分138を通って延びる組織貫通器の管腔140、142の長さおよ び組織貫通器の先進チューブ114、116を通って延びる組織貫通器孔152、154 の長さの組合せよりもわずかに長い長さを有する。組織貫通器118、120の先端部1 56、158は、組織貫通器の先進チューブ114、116の遠位端部148、150に 隣接して配置され、チューブの孔152、154内側で図27の拘束形状で配置される。 組織貫通器118、120の反対側の近位端部は、中央カテーテル112の側部ポート1 44、146を貫通して外に突出する。組織貫通器118、120の対は、中央カテーテ ル構成要素112の組織貫通器の管腔140、142および組織貫通器の先進チューブ1 14、116の組織貫通器孔152、154を通って容易に滑動するように寸法設定され る。中央カテーテル構成要素112の側部ポート144、146は、好ましくは、中央カ テーテルの近位端部124に対して20°〜90°の度にあり、最も好ましくは中央カ テーテル近位端部124に対して30°〜60°の角度にある。

手動による操作者の運動を線形運動にする1対の制御器162、164が、組織貫通器 118、120の近位端部に連結され、中央カテーテルポート144、146に固定され 得る(図31)。制御器162、164は、操作者の運動を、中央カテーテル組織貫通器 の管腔140、142を通り、組織貫通器の先進チューブ孔152、154を通って組織 貫通器118、120の制御された線形運動に変換するように構築することができる。1 つの実施形態では、一方方向に手動で移動させることができる回転式制御器162、16 4が存在し、その結果、組織貫通器の遠位端部にある組織貫通器の注入先端部156、1 58は、組織貫通器のチューブの遠位端部148、150にある組織貫通器のチューブ孔 152、154から出て所望の長さだけ延びるように調整可能に配置させることができる 。制御器を反対方向に回転させることにより、組織貫通器118、120は、後退して組 織貫通器チューブ孔152、154内に戻ることができる。操作者の運動を線形運動にす る制御器162、164の各々には、組織貫通器118、120を通って延びる内部孔と 連通し、診断用または治療用の作用物質の溶液を含有する注射器またはチュービングを連 結するために使用され得るハブ166、168を設けることができる。

外側展開チューブ122は、中央カテーテル112、組織貫通器の先進チューブ114 、116、および中間レール132を取り囲む管状の長手部分を有する。展開チューブ1 22は、図27に示すように、展開チューブの開放遠位端部172が組織貫通器の先進チ ューブ114、116の遠位端部148、150に隣接して配置される展開チューブ12 2の前方位置、および図28に示すように、チューブ遠位端部172が組織貫通器の先進 チューブ114、116と中央カテーテル構成要素112の連結部に隣接して配置される 、展開チューブ122の後方位置へと滑動移動するように、中央カテーテル構成要素11 2および組織貫通器の先進チューブ114、116の対上に装着することができる。展開 チューブ122の反対側の近位端部174には、中央カテーテル112との機械的連結部 176を設けることができる。機械的連結部176は、展開チューブ122を中央カテー テル112および組織貫通器の先進チューブ114、116に対してその前方位置と後方 位置の間を移動させることを可能にする(図27および28)。そのような連結は、展開 チューブ122を中央カテーテル112および先進チューブ114、116に対して移動 させるように手動で作動可能である、サムホイール、滑動連結、トリガまたはプッシュボ タン、あるいは何らかの他の連結部によって提供することができる。展開チューブ122 が、図27に示すその前方位置に移動されたとき、チューブ遠位端部172は、組織貫通 器の先進チューブ114、116の長手部分を通過し、先進チューブを中央カテーテルの 中間レール132の両側に沿って延びるその拘束位置まで移動させる。展開チューブ12 2が図28に示すその後方位置に移動されたとき、展開チューブの遠位端部172は、組 織貫通器の先進チューブ114、116の長手部分にわたって後退し、先進チューブ11 4、116が、その拘束エネルギーを解放し、図28に示すその湾曲した非拘束形状に移 動することを除々に可能にする。

カテーテル110の使用時、展開チューブ122は、図27に示す前方位置にある。ガ イドワイヤ130は、知られた方法で(動脈または静脈などの)生体導管内に配置される 。カテーテルは、次いで、ガイドワイヤにわたって生体導管内に進められる。ガイドワイ ヤ130は、生体導管から延び、中央カテーテル構成要素の遠位端部126に入ってガイ ドワイヤ管腔128を通る。ワイヤ130は、中央カテーテル112の長手部分を通って 通過し、カテーテルポート144、146に隣接する中央カテーテル構成要素の近位端部 に現れ、ここでは、ガイドワイヤ130を手動で操作することができる。

カテーテル110は、生体導管を通って進められ、ガイドワイヤ130によって誘導さ れ得る。任意選択で、生体導管内の組立体の位置を監視するために、X線不透過性マーカ ーを組立体上に設けることができる。電磁波放射の通過を防止するものであればどのよう な材料も、X線不透過性として考慮され、使用することができる。有用なX線不透過性材 料としては、それだけに限定されないが、白金、金または銀が挙げられる。X線不透過性 材料は、先端部126のすべてまたは一部の表面上、先進チューブ114、116のすべ てまたは一部上、組織貫通器118、120のすべてまたは一部上、ガイドワイヤ130 上、または上述の構造の任意の組合せ上にコーティングすることができる。代替的に、X 線不透過性材料のリングを、先端部126に取り付けることができる。組立体には、任意 選択で、血管内超音波または光学コヒーレンストモグラフィーなどの内蔵の画像処理を設 けることができる。組立体の先端部には、任意選択で、組立体の位置または周囲の生体導 管の特徴を決定するのに有用である光学素子を設けることができる。組立体が所望の位置 にあるとき、外側展開チューブ122は、機械的連結部176の手動操作によって、図2 7に示すその前方位置から図28に示すその後方位置に向かって移動させることができる 。

展開チューブ122が組織貫通器の先進チューブ114、116の対からそれにわたっ て引っ込められるとき、組織貫通器の先進チューブ114、116の拘束エネルギーが解 放され、チューブは、図28に示すその非拘束の湾曲した形状に向かって移動する。この 移動により、組織貫通器チューブの遠位端部148、150にある組織貫通器孔152、 154が、組立体110が中に挿入された生体導管の内面に押し付けられて配置される。

次いで、組織貫通器の遠位端部156、158を、組織貫通器の先進チューブの遠位端 部148、150にある組織貫通器孔152、154から延ばすために、操作者の運動を 線形運動にする制御器162、164を手動で作動させることができる。操作者の運動を 線形運動にする制御器162、164の各々には、制御器162、164が回転するとき 、組織貫通器のチューブ端部148、150からの組織貫通器の先端部156、158の 突出度を視覚的に表示するゲージを設けることができる。制御器はまた、組織貫通器の移 動の増分的な距離段階を表示するためのクリッキングなどの可聴音または触覚的感触を提 供することもできる。このため、組織貫通器の先端部156、158は、所望の距離だけ 生体導管の壁内へと展開される。

第3の特有の実施形態では、本発明の医療デバイスは、可撓性の弾性材料から構築され た1つまたは複数の組織貫通器を備える流体送達カテーテルである。特定の態様では、本 発明の医療デバイスは、中央の長手方向軸を有し、1つまたは複数の組織貫通器を備え、 この場合、1つまたは複数の組織貫通器は、前記1つまたは複数の組織貫通器の長手部分 が前記医療デバイスの長手方向軸にほぼ平行に向けられる拘束形状、および前記1つまた は複数の組織貫通器の長手部分の少なくとも一部分が、デバイスの中央の長手方向軸にほ ぼ非平行に向けられる非拘束形状で存在することができる。デバイスが生体導管の壁に隣 接して標的部位に配置された後、1つまたは複数の組織貫通器(所望であれば、組織貫通 器のすべて)は、拘束形状から解放され、非拘束形状をとることが可能になり、それによ り生体導管の壁と接触することができる。1つまたは複数の組織貫通器は、任意の形状の ものでよく、好ましい実施形態では、1つまたは複数の組織貫通器の拘束形状から非拘束 形状の移動は、デバイス操作者が、デバイスまたは標的組織にいかなる変形力を与えるこ となく拘束力を解放した際に行われる。

好ましい実施形態では、組織貫通器は、可撓性の弾性材料から構築され、この材料は、 拘束力をかけた際、例えば組織貫通器が拘束形状にあるときに拘束されることが可能であ り、拘束力が除去されたとき、例えば組織貫通器が非拘束形状にあるときにその元の非拘 束の形をとる。それだけに限定されないが、外科用鋼、アルミニウム、ポリプロピレン、 オレフィン材料、ポリウレタン、および他の合成ゴムまたはプラスチック材料を含む任意 のそのような可撓性の弾性材料が使用され得る。1つまたは複数の組織貫通器は、最も好 ましくは形状記憶材料から構築される。そのような形状記憶材料の例としては、それだけ に限定されないが、銅−亜鉛−アルミニウム−ニッケル合金、銅−アルミニウム−ニッケ ル合金、およびニッケル−チタン(NiTi)合金が挙げられる。好ましい実施形態では 、形状記憶材料はニチノールである。好ましい実施形態では、組織貫通器が非拘束形状を とるとき、各組織貫通器が形成される材料の形状記憶特性により、組織貫通器は、いかな る外側からの変形力をかけることなく、医療デバイスの長手方向軸にほぼ平行な位置から 医療デバイスの長手方向軸にほぼ垂直な位置へと移動する。

好ましい実施形態では、組織貫通器は、組織貫通器を取り囲む管状形状を有する外側カ テーテル構成要素によって拘束形状に維持される。外側カテーテル構成要素と、組織貫通 器が取り付けられる中央カテーテル構成要素との間には、機械的連結部が設けられる。機 械的連結部は、外側カテーテル構成要素を中央カテーテル構成要素の長手部分に沿って後 方向に移動させることを可能にし、それにより拘束された1つまたは複数の組織貫通器を 露出させ、1つまたは複数の組織貫通器が、それらが標的送達部位と接触する、非拘束形 状をとることを可能にする。この特有の実施形態は、デバイスの配置を容易にするための X線不透過性マーカー、あるいはデバイスの使用を容易にするための迅速交換特徴を組み 込むように簡単に適合され得ることを当業者は理解するはずである。

本発明の医療デバイスは、その様々な実施形態では、血管壁の異なる層内への流体の送 達を可能にする。血管壁は、数多くの構造および層からなり、その構造および層は、内皮 層および基底膜層(まとめて内膜層)、内弾性板、内側層、および外膜層を含む。これら の層は、米国特許出願公報第2006/0189941A1号に記載されるように、内皮 が血管腔に曝され、基底膜、内膜、内弾性板、内側および外膜がそれぞれ、内皮の上方に 次々と重ねられるように構成されている。本発明の医療デバイスの場合、組織貫通器の先 端部156、158が標的部位内に貫通することができる深さは、制御器162、164 を回転させることによって制御することができる。例えば標的層が外膜層である場合、チ ューブ114、116の拘束エネルギーは解放され、チューブは、図28に示すその非拘 束の湾曲した形状をとり、組織貫通器の先端部156、158は、制御器によって外膜層 の深さまで貫通するのに十分な長さまで進められる。同様に、標的部位が内側層である場 合、チューブ114、116の拘束エネルギーは解放され、チューブは、図28に示すそ の非拘束の湾曲した形状をとり、組織貫通器の先端部156、158は、制御器によって 内側層の深さまで貫通するのに十分な長さまで進められる。

組織貫通器が生体導管の壁の所望の層に埋め込まれると、次いで、流体を組織貫通器1 18、120を通して送達することができる。流体の送達が完了すると、制御器162、 164を作動させて組織貫通器の先端部156、158を引っ込めて組織貫通器の先進チ ューブ114、116の内部孔152、154内に戻すことができる。展開チューブ12 2は、次いで、展開チューブの遠位端部172が組織貫通器の先進チューブ114、11 6を移動させて図27に示すその拘束位置に戻すその前方位置まで移動することができる 。展開チューブ122が図27に示すその完全な前方位置に移動されると、次いで、組立 体を再配置させる、または本体から引っ込めることができる。

本発明の医療デバイスはまた、生体導管の壁の内側または生体導管の壁内の血小板沈着 (plaque deposits)への流体の送達も可能にする。

本発明の医療デバイスはまた、生体導管の外壁の外側に配置された細胞外空間または組 織(例えば血管の外面または心筋などの血管の外側表面に対して配置された筋肉)への流 体の送達も可能にする。

本発明のデバイスの1つの有利な利点は、アクチュエータが、その設計により、生体導 管内のその展開後に、生体導管の内壁と、その全周囲未満で接触することである。好まし い実施形態では、アクチュエータは、それらが中で展開される生体導管の内壁と、その周 囲の100%未満で接触する。より好ましくは、アクチュエータは、それらが中で展開さ れる生体導管の内壁と、その周囲の75%、50%、または25%未満で接触する。最も 好ましくは、アクチュエータは、それらが中で展開される生体導管の内壁と、その周囲の 10%、5%、2.5%、1%、0.5%または0.1%未満で接触する。

デバイスは、様々な治療用および/または診断用の作用物質を含む流体を生体導管の壁 に送達するために使用することができる。治療用作用物質としては、それだけに限定され ないが、タンパク質、化学物質、小分子、細胞および核酸が挙げられる。デバイスによっ て送達される治療用作用物質は、微小粒子またはナノ粒子を含む、微小粒子またはナノ粒 子と錯体を形成する、あるいは微小粒子またはナノ粒子と結合させることができる。タン パク質作用物質は、エラスターゼ、抗増殖剤、および血管攣縮を阻害する作用物質を含む 。デバイスを使用したエラスターゼの送達が、詳細に企図される。いくつかの公開された 特許出願(WO2001/21574、WO2004/073504、およびWO200 6/036804)では、エラスターゼは、単独および他の作用物質と組み合わせて、生 体導管の閉塞および血管攣縮を含む生体導管の疾患の治療に有益であることを教示してい る。診断用作用物質としては、それだけに限定されないが、コントラスト、微小粒子、ナ ノ粒子または他の造影剤が挙げられる。

様々な異なる流体送達方法を、本デバイスによって実践することができる。特定の用途 では、異なる流体を、同時にまたは連続してデバイスの各組織貫通器を通して送達するこ とができる。他の用途では、同じ流体を、同時にまたは連続して両方の組織貫通器を通し て送達することができる。第1の流体を両方の組織貫通器を通して送達し、その後第2の 流体を両方の組織貫通器を通して送達する実施形態および/または方法もまた、企図され る。

デバイスを使用して流体を生体導管の壁内にまたはそこを貫通させて送達する方法もま た、詳細に企図される。これらの方法は、デバイスを生体導管内に導入するステップと、 デバイスを導管内の標的部位まで進めるステップと、アクチュエータをその拘束位置から 解放するステップと、任意選択で、生体導管の壁内に所望の深さだけ貫通するように組織 貫通器をアクチュエータ内の管腔を通して進めるステップと、少なくとも1つの流体を壁 内にまたはそこを貫通させて送達するステップと、任意選択で、組織貫通器をアクチュエ ータの管腔内に戻すステップと、アクチュエータをその拘束位置まで後退させるステップ と、所望の場合の追加の流体の送達のためにデバイスを同じまたは異なる導管に再配置す るステップと、デバイスを導管から取り除くステップとを含む。

6.実施例 本節は、例えば血管の径を拡張し、それにより血管の内腔を拡張するための作用物質と して、臨床使用のための組換えI型エラスターゼを作製する方法を記載する。ヒトI型膵 臓エラスターゼは、ブタI型膵臓エラスターゼの全長と89%のアミノ酸同一性を示し、 「触媒トライアッド(triad)」と基質特異性決定残基は完全に保存されている。ブタI 型エラスターゼは、4つの内部ジスルフィド結合を含み、およびグリコシル化がない成熟 酵素を生じさせるために、トリプシンによって活性化される酵素的に不活性なプロ酵素と して初期には合成される(Shotton、1970、Methods Enzymol 19:113−140、Elastase;ならびに、HartleyおよびShot ton、1971、Biochem.J.124(2):289−299、Pancre atic Elastase.The Enzymes 3:323−373およびそれ に含まれる参考資料を参照されたい)。

以下の実施例は、非臨床研究および臨床研究用、ならびに市販の製薬的使用のこれらの 酵素のcGMP製造に適した、効果的であり、測定可能な組換えブタおよびヒトI型エラ スターゼ発現および精製スキームの開発を示す。成熟ブタエラスターゼは、名称PRT− 102が付けられている。成熟ヒトI型エラスターゼは、名称PRT−201が付けられ ている。

6.1 用語および省略形 本明細書中で使用するとき、用語PRT−101、PRT−102、PRT−201、 およびプロPRT−201は下記を意味する: PRT−101:ブタ膵臓エラスターゼ。他に指示がない限り、本実施例で使用される ブタ膵臓エラスターゼは、Elastin Products Company,Inc 、ミズーリ州オーエンズビルからカタログ#EC134として購入される高度に精製され たブタ膵臓エラスターゼである。 PRT−102:成熟組換えI型ブタ膵臓エラスターゼ。記号表示「pPROT101 −XXX」のベクターはPRT−102をコードすることに留意されたい。 PRT−201:成熟組換えI型ヒト膵臓エラスターゼ。 プロPRT−201:プロペプチド配列を含む組換えヒトI型膵臓エラスターゼのプロ 酵素形態。

以下の省略形は、本明細書の第6節で使用される: BKGY:緩衝化されたグリセロール複合体培地 BKME:緩衝化されたメタノール複合体培地 CHO:チャイニーズハムスター卵巣 E.coli:Escherichia coli ELA−1:I型膵臓エラスターゼ HEK:ヒト胎児腎臓 hELA−1:ヒトELA−1 HIC:疎水性相互作用クロマトグラフィー MBP:マルトース結合タンパク質 pELA−1:ブタELA−1 P.pastoris:Pichia pastoris PCR:ポリメラーゼ連鎖反応 PMSF:フッ化フェニルメチルスルホニル RP:逆相 S.cerevisiae:Saccharomyces cerevisiae SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動 SEC:サイズ排除クロマトグラフィー USP:米国薬局方 YPDS:酵母抽出ペプトンデキストロースソルビトール培地

6.2 エラスターゼDNA合成 ヒトエラスターゼ−1コード配列を米国特許第5,162,205号(Takigui chiら、1992)から得た。いくつかの配列変化は、発現ベクターへのクローニング を促進するために行われた(図1A)。アミノ酸残基が変化しないように、塩基変化は遺 伝子コードの縮重の範囲であった。第2の終止コドンは、潜在的なリボソームの読み終わ りを最小にするため天然の停止コドンの直後に付与された。

修飾されたコード配列は、Blue Heron Biotechnology(ワシ ントン州ボセル)によって、Amgen(カリフォルニア州サウザンドオークス)から許 可を受けた非PCR「長鎖オリゴ」技術を用いて合成された。組換えDNAはELA−1 .2A(配列番号81)と命名され、pUC119由来のベクターBlue Heron pUCにクローニングされ、得られたプラスミドをpPROT1と命名した。pPRO T1は両鎖について配列決定され、正しい配列であることを確かめた。両鎖の広範な重複 のある高品質の配列決定データは、各鎖に対して少なくとも1つの反応を有する最低4つ の配列決定反応によってカバーされる全配列の全体で明確な塩基の帰属を可能にした。

6.3 大腸菌におけるPRT−201の発現 可溶性であり、酵素的に活性なヒトエラスターゼを大腸菌において得ようとして、種々 の発現戦略を試みた。

1セットの大腸菌発現ベクターは、読み枠で、ヒトI型膵臓エラスターゼ(ELA−1 )と、順にN末端の分泌ペプチドに融合されているマルトース結合タンパク質(MBP) のカルボキシ末端の融合を含む。ヒトELA−1成熟およびプロ酵素のコード配列は共に 、プラスミドpMAL−p2G(New England Biolabs,Inc.、 マサチューセッツ州ベバリー)のMBPコード配列への読み枠のC末端融合としてクロー ニングされ、pPROT3(成熟ELA−1)またはpPROT5(ELA−1プロ酵素 )を生じさせた。pPROT3の構築は、成熟ELA−1のN末端バリンコドンのSna BI部位、および成熟ELA−1終止コドンに対して3’に位置したHindIII部位 を有する6.6kbの成熟ヒトELA−1をコードする断片をPCR突然変異誘発によっ て最初に得ることによって達成された。このPCR突然変異誘発は、ELA−1.2Aコ ード配列(配列番号81)を含むpPROT1鋳型と、2つのオリゴヌクレオチドプライ マー(5’ATC TAC GTA GTC GGA GGG ACT GAG GCC 、配列番号75;および5’gtc gac aag ctt atc agt tgg agg cga t、配列番号76)を使用した。得られた6.6kbのPCR断片を 単離し、SnaBIおよびHindIIIで消化し、その後、XmaI/HindIII 消化したpMAL−p2Gベクターにクローニングし、pPROT3を生じさせた。pP ROT5の構築は、pPROT1からのScaI/HindIII断片をクローニングし 、SnaBIおよびHindIIIで消化されたpMAL p2Gベクターにライゲート することによって達成された。得られる融合物は、pPROT5におけるpMAL−p2 GのMBPのC末端にヒトELA−1プロ酵素コード領域のN末端に作動的に連結してい る。ヒトELA−1プロタンパク質のトリプシン切断ドメインはpPROT5に保存され ている。

大腸菌株TB1をpPROT3およびpPROT5で形質転換し、その後、IPTGで 誘導し、融合タンパク質または酵素的に活性なヒトELA−1のいずれかを生成すること ができたかどうかを決定した。pPROT3の場合、生成されたMBP−ELA−1融合 タンパク質のすべてが不溶性であった。誘導されたpPROT3含有の大腸菌の浸透圧衝 撃によって得られたペリプラスム(periplasmic)材料において、可溶性およ び酵素的に活性なMBP−ELA−1融合タンパク質は検出されなかった。pPROT5 の場合、低レベルの可溶性組換えMBP−プロELA−1タンパク質は、SDS−PAG Eおよびクーマシー染色の使用、またはウェスタンブロットにおける抗MBP抗体の使用 (New England Biolabs,Inc.、マサチューセッツ州ベバリー) を通じて、誘導されたpPROT5含有の大腸菌の浸透圧衝撃によって得られたペリプラ スム材料において検出することができた。可溶性組換えMBP−プロELA−1タンパク 質をトリプシンで消化し、MBPおよび成熟ヒトELA−1を共に生じさせることができ た。その後、pPROT5の誘導から得られた成熟ヒトELA−1は、SLAPペプチド 基質を用いてエラスターゼ活性についてアッセイした。エラスターゼ活性は、pPROT 5ペリプラスム抽出物において観察された。このエラスターゼ酵素活性は、トリプシン活 性化に依存していた(すなわち、トリプシンが存在しない場合には活性は観察されず、お よび活性量はトリプシン活性化の時間増加によって増加される)。さらに、エラスターゼ 活性はpPROT5に依存していたけれども、並行してトリプシンで処理されたpMAL −p2Gベクター対照抽出物において活性が観察されなかった。最後に、pPROT5エ ラスターゼ活性は、PMSF(既知のセリンプロテアーゼ阻害剤)によって阻害された。

その後、組換えMBP−プロELA−1融合タンパク質を精製し、トリプシンで切断し 、酵素的に活性なpPROT5由来の成熟ヒトELA−1を得た。融合タンパク質は、最 初に、アミロースアフィニティークロマトグラフィー上で精製され、次にマルトースで溶 出された。次に、精製されたMBP−プロELA−1を固定化トリプシンで処理した。ト リプシン活性化工程後、切断されたMBP−プロELA−1を陽イオン系SPセファロー スクロマトグラフィーによって精製した。しかしながら、アフィニティー精製されたpP ROT5由来の成熟ヒトELA−1を用いたその後の実験によって、非常に限定された量 の可溶性であり、酵素的に活性なエラスターゼだけがpPROT5を含む大腸菌から得る ことができたことが示された。さらに、アフィニティー精製されたpPROT5由来の成 熟ヒトELA−1の比活性は非常に低く、0.27〜0.38U/mg(U=1分間当た りに加水分解されたSLAP基質のμmol)の範囲であった。

また、大腸菌において可溶性であり、酵素的に活性なELA−1を得る代替の戦略を続 ける。簡潔には、大腸菌のlacZアルファサブユニットの最初の8個のアミノ酸残基+ ポリリンカーをコードした残基の5個のアミノ酸を含むタンパク質融合、その後のヒトE LA−1のN末端プロ酵素をコードするpPROT8ベクターを構築した。このベクター は、BamHI/NcoIで消化されたpBlueHeron pUC(Blue He ron Biotechnology、ワシントン州ボセル、米国)に、pPROT1か らヒトELA−1コード配列を含むBamHI/NcoI断片をライゲートすることによ って構築された(すなわち、ELA−1.2A配列;配列番号81を含むベクター)。

大腸菌株EC100(EPICENTRE Biotechnologies、ウィス コンシン州マディソン)をpPROT8で形質転換し、その後、IPTGで誘導し、融合 タンパク質または酵素的に活性なヒトELA−1のいずれかを生成することができたかど うかを決定した。EC100形質転換細胞の場合、生成されたpPROT8由来のLac Z−proELA−1融合タンパク質のすべてが不溶性であった(すなわち、封入体に見 られた)。その後、trxBおよびgor遺伝子において突然変異を含む大腸菌株(Or igami(商標)菌株、Takara Mints Bio,Inc.、ウィスコンシ ン州マディソン)をpPROT8で形質転換し、これは、これらのコード配列において突 然変異を有する大腸菌株は、可溶性であり、酵素的に活性な組換えタンパク質の回復を促 進することで知られているためである。いくつかのtrxB/gor大腸菌株におけるあ る種の可溶性pPROT8由来のLacZ−proELA−1融合タンパク質がIPTG による誘導に基づいて回復されたが、トリプシンによって酵素的に活性なヒトELA−1 に変換することができなかった。

6.4 哺乳動物細胞株におけるPRT−201の発現 哺乳動物細胞株において可溶性であり、酵素的に活性なヒトI型膵臓エラスターゼ(E LA−1)を得ようとして、いくつかの発現戦略を試みた。CMVプロモーターを含む高 コピーの哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)は、2つのヒ トELA−1エラスターゼ発現ベクターであるpPROT30およびpPROT31に対 する基幹として使用された。pPROT30を構築するために、ヒトELA−1プロ酵素 配列をPCRによって増幅し、フォワードPCRプライマーに組み込まれたブタ膵臓エラ スターゼシグナル配列に融合した。PCRプライマーに組み込まれた制限部位を用いて、 PCR産物を消化し、pcDNA3.1ベクターにおける対応する制限部位を用いてライ ゲートした。成熟酵素の直接的な発現の試みにおいてプロ酵素コード配列の代わりにヒト ELA−1成熟コード配列を使用したことを除いて、pPROT31を同じように構築し た。大腸菌をライゲーション反応物で形質転換し、クローンをミニプレップスクリーニン グのために選択した。各発現ベクターの1つのクローンは、正しい挿入について期待され た制限消化パターンに基づいて選択された。プラスミドDNAは各クローンについて調製 され、発現ベクターのコード配列をDNA配列決定によって確認した。

哺乳動物細胞株CHO、COS、HEK293およびHEK293Tは、pPROT3 0およびpPROT31を用いて別々に一過性にトランスフェクトされた。数日後、細胞 培養上清を回収し、ウェスタンブロットによって、ヒトELA−1プロタンパク質(pP ROT30)または成熟タンパク質(pPROT31)発現について解析した。抗ブタ膵 臓エラスターゼポリクローナル抗体は、pPROT30上清中のヒトELA−1プロタン パク質、およびpPROT31上清中の成熟ヒトELA−1タンパク質に対して予測され た分子量のバンドと交差反応した。

pPROT30およびpPROT31上清は、SLAPアッセイによってエラスターゼ 活性について解析された。pPROT30については、上清を最初にトリプシンで処理し 、プロ酵素を成熟PRT−201に変換した。SLAPアッセイを用いていずれかのベク ターに対する上清のいずれにおいてもエラスターゼ活性は検出されなかった。

6.5 P.pastorisにおけるトリプシン活性化PRT−201の発現 P.pastoris分泌発現用のベクターであるPV−1は、Blue Heron によって合成され、最初に野生型ヒトELA−1コード配列をクローニングするために用 いられた。PV−1ベクターは、組換えタンパク質の容易なクローニング、選択および高 レベルの発現のために設計された。ベクターは、多コピー成分の直接的な選択のためにZ eocin(商標)耐性遺伝子を含む。図1Bに示されるように、エラスターゼプロペプ チドのN末端の、酵母分泌シグナル、プロペプチドおよびスペーサー配列を含む酵母α接 合型配列への融合は、培地中に発現タンパク質の分泌を可能にする。分泌されたエラスタ ーゼプロタンパク質は、細胞ペレットから容易に分離することができ、精製に向けた実質 的な第1の工程である。さらに、組換え酵素を発現する細胞にタンパク質の誤ったフォー ルディングまたは毒性をもたらす可能性がある成熟の活性化酵素が直接的に発現するのを 避けるために、トリプシン切断部位を含むヒトELA−1のプロ酵素形態が発現のために 選択された。

ELA−1プロ酵素の発現を指向するための発現構築物pPROT24−Vのクローニ ングは以下のように達成された。ヒトELA−1をコードする領域(配列番号81)は、 PCR(Expand High Fidelity PCR System、Roch e、インディアナ州インディアナポリス)によって、Blue Heron pUC E LA−1から増幅された。20Fフォワードプライマーは、XhoI部位(5’−ggc tcgagaaaagagaggctgaagctactcaggaccttccgga aaccaatgcccgg−3;配列番号35)を組み込んだ。24Rプライマーは、 SacII部位(5’−gggccgcggcttatcagttggaggcgatg acat−3’;配列番号36)を組み込んだ。得られたPCR産物はゲル精製され、p CR2.1−TOPO(Invitrogen)にクローニングされた。ELA−1クロ ーニング配列は、XhoIおよびSacIIを用いて単離され、ゲル精製され、ならびに それらの部位でPV−1ベクターにクローニングされ、pPROT24−Vを得た(図3 )。

pPROT24−Vライゲートされた産物を大腸菌株TOP10において増幅した。細 胞混合物は、25μg/mLのZeocinで補足された低塩LBプレートに配置された 。DNAプラスミドを調製し(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)、ヒトEL A−1挿入物を制限消化によって同定した。pPROT24コード配列は、複数の重複反 応により精製されたマキシプレップDNAの両鎖を配列決定することによって確認された 。高品質の配列決定データは明確な塩基の帰属を可能にし、正しいコード配列を確認した 。pPROT24−V/TOP10のグリセロールストックを作製し、−80℃で保存し た。

米国農務省(USDA、イリノイ州ピオリア、米国)から得た野生型NRRL Y−1 1430P.pastoris菌株を形質転換に使用した。pPROT24−Vのプラス ミドDNAをSacIで線状にし、完全消化はアガロースゲル上で少量の反応物を流すこ とによって確認された。エレクトロポレーションを用いて、pPROT24−Vプラスミ ドDNAでP.pastorisを形質転換した。細胞混合物は、100μg/mLのZ eocinを含むYPDSプレートに配置された。3日後、コロニーが形成し始め、新鮮 なプレート上で再ストリーキング(re-streaking)のためにもう数日の間、選択された。

一般に、薬物耐性形質転換体は、1Lのバッフル(buffled)フラスコにおいて発現の ためにスクリーニングされた。単一コロニーを用いて、200mLのBKGY培地に植菌 した。BKGY溶液の組成は以下の通りであった:0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH 5.0)中の10g/Lグリセロール、硫酸アンモニウムを含み、アミノ酸を含まない1 3.4g/L酵母窒素塩基(Invitrogen)、20g/L大豆ペプトン、10g /L酵母抽出物、0.4mg/Lビオチン。275rpmで振とうしながら2日間28℃ で培養物を増殖した。650×g、10分間、室温で遠心分離により培養物をペレットに した。BKMEインキュベーション培地、pH5.0で細胞ペレットを再懸濁し、5mL のインキュベーション培地に対して1gの湿潤細胞の比率でペレットを再懸濁した。50 mLの細胞懸濁液を500mLの非バッフルフラスコに入れ、細胞懸濁液とフラスコ体積 を1:10の比率で得た。細胞は、22℃、275rpmで振とうしながら1〜3日間イ ンキュベートされた。誘導の最中に毎日2回、最終濃度が0.5%となるように誘導培地 中のメタノールを補充した。

発現についてスクリーニングするために、1mlの一定分量を採取し、1.5mLの微 量遠心チューブに移し、微量遠心分離機で5分間、20,000×gで遠心分離した。懸 濁物を新鮮なチューブに移し、−80℃で保存した。SDS−PAGE解析のために、上 清の一定量を解凍し、還元剤ベータ−メルカプトエタノールで5体積%に補足された4× Laemmli緩衝液と混合した。試料を5分間煮沸し、穏やかに遠心分離し、Crit erion電気泳動システム(Bio−Rad)中の8〜16%勾配のTris−HCl プレキャストゲルに添加した。電気泳動後、ゲルをクーマシーで染色し、ヒトELA−1 プロ酵素発現について解析した。さらなる評価のために高収率クローンとしてクローン2 01−24−266−VUを選択した。201−24−266−VUグリセロールストッ クからなる開発細胞バンクを調製し、−80℃で保存した。

クローン201−24−266−VUを用いたヒトELA−1プロ酵素のスケールアッ プ生産のために、一般には後述される方法に従う複数の生産工程を行った。適用可能であ る場合、この方法におけるラン−ツー−ラン(run-to-run)変更が留意される。

細胞培養について、500mLのBKGY増殖培地を含む一連の2Lバッフル振とうフ ラスコ(典型的には20〜40個の範囲のフラスコ)は、250μlの解凍した201− 24−266−VUグリセロールストックで植菌された。培養物は、250〜300rp mの振とうインキュベーター中で28℃で2日間増殖させた。2日後、遠心分離により細 胞をペレットにし、上清を廃棄した。5mLの培地に対して1重量gの細胞の比率でBK MEインキュベーション培地、pH5.0に細胞を再懸濁した。200〜400mLの細 胞懸濁液の体積を2Lの非バッフルフラスコに入れ、振とうインキュベーター(250〜 300rpm)中、22℃で3日間培養した。誘導の最中に1日2回、0.5体積%にな るように培地中のメタノールを補充した。誘導の終わりに、振とうフラスコ培養物を遠心 分離し、細胞をペレットにした。上清を除去し、すぐに、1Lの真空ろ過ユニットを用い て、0.22μmのポリエーテルスルホンメンブレンを通して室温でろ過し、あらゆる残 った細胞残屑を除去した。最大1.5カ月、2〜8℃でろ過物を保存した。HIC−HP LC分析に基づいて、清澄された上清中のクローンのプロPRT−201−24−266 −VUからのヒトELA−1プロ酵素の収量は、典型的には200〜250mg/mLで あった。

上清からのプロPRT−201−24−266−VUからの捕捉は次のように達成され た。最初に、複数回ラウンドの振とうフラスコ培養物(典型的には4〜10ラウンド)か らの上清を合わせ(典型的には総量8〜25L)、水で8倍に希釈し、1MのHClでp H5.0に調整した。次に、希釈された上清は、100mL/分(直線流76cm/時) の速度で、2〜8℃で、平衡化した2Lベッド体積のMacro−Prep High Sイオン交換捕捉カラムに添加された。クロマトグラフィープログラムは以下の工程を含 んでいた:1.10L(5カラム体積[CV])の緩衝液A(20mMクエン酸ナトリウ ム、pH5.0)を用いて100mL/分(76cm/時)でカラムを洗浄する;2.5 0mM塩化ナトリウム;20mMクエン酸ナトリウム、pH5.0の最終緩衝液組成に対 して、90%緩衝液Aと10%緩衝液B(500mM塩化ナトリウム;20mMクエン酸 ナトリウム、pH5.0)の混合物の4L(2CV)を用いて100mL/分(76cm /時)でカラムを洗浄する;3.100mM塩化ナトリウム;20mMクエン酸ナトリウ ム、pH5.0の最終緩衝液組成に対して、80%緩衝液Aと20%緩衝液Bの混合物の 6L(3CV)を用いて100mL/分(76cm/時)でカラムを洗浄する;4.75 %緩衝液Aと25%緩衝液Bから開始して、68%緩衝液Aと32%緩衝液Bまでの直線 勾配の6L(3CV)を用いて100ml/分(153cm/時)でカラムを洗浄する; 5.68%緩衝液Aと32%緩衝液Bから開始して、0%緩衝液Aと100%緩衝液Bま での30L(15CV)の直線勾配を用いて100ml/分(76cm/時)で溶出する 。各々500〜1000mLの分画で溶出物を回収した。

典型的には、2つの主なタンパク質種をSDS−PAGE、次にクーマシー染色によっ て観察した:グリコシル化ヒトELA−1プロ酵素および非グリコシル化ヒトELA−1 プロ酵素であり、その後のLC/MS解析によって決定され、典型的には、図4に示され るように、約320mM塩化ナトリウムで溶出する。いくつかの製造過程では、ヒトEL A−1プロ酵素よりもわずかに小さいタンパク質が少数種として観察された。これらの分 画のその後のLC/MS解析により、大部分のタンパク質は全長のプロ酵素ではないが、 その代わりに、N末端のいくつかのアミノ酸が欠損していることが示された。これらのN 末端変異体を精製し、エラスターゼ活性解析に供し、それらが全長PRT−201よりも 低いエラスターゼ活性を有することが示された。N末端変異体は、細胞培養および捕捉ク ロマトグラフィー操作中に低レベルのエラスターゼ活性を示し、分子内反応を通じてそれ 自体切断するか、または分子間反応を介して別のELA−1プロ酵素分子を切断するヒト ELA−1プロ酵素から生じる。これらの操作中の準最適な切断条件は、無傷の全長PR T−201というよりはむしろ、大部分はN末端の変異体をもたらす、プロ酵素の高レベ ルの不正確な切断(自然発生または未制御の変換とも称することがある)に至る場合があ った。

SDS−PAGE結果の検査後、一部の分画がプールされ、さらなる処理のために精製 された非グリコシル化プロPRT−201を得た。グリコシル化プロ酵素もしくは全長P RT−201および/またはN末端変異体(SDS−PAGE上で同時に移動する)を含 む分画は、典型的にはプールから排除された。典型的には、プールされたプロPRT−2 01は、プロ酵素から成熟酵素に変換する前、数時間から一晩、2〜8℃で5Lのプラス チックビーカーに保存された。

固定化トリプシンによるプロPRT−201から成熟PRT−201への変換は以下の ように達成された。プールされたプロPRT−201分画は、20mMリン酸ナトリウム 、pH5.0中、一晩2〜8℃で透析された。この工程は、トリプシンを阻害するクエン 酸を除去するために設けられる。透析後、20mMリン酸ナトリウム、pH5.0で予め 平衡化されたアガロースビーズに固定化された組換えトリプシン(TrypZean)の カラムにプロPRT−201を通過させた。典型的には、プロPRT−201と固定化T rypZeanの接触時間は3.5〜5分であった。得られた変換後の材料をSDS−P AGEによって解析し、変換を確認し、その後、Macro−Prep High S仕 上げカラム上に添加した。カラムは、5CVの20mMクエン酸ナトリウム、pH5.0 ;2CVの20mMクエン酸ナトリウム、50mM塩化ナトリウム、pH5.0;および 3CVの20mMクエン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、pH5.0で連続し て洗浄された。20mMクエン酸ナトリウム、pH5.0中の125mM塩化ナトリウム から160mM塩化ナトリウムまでの直線勾配でカラムをさらに洗浄した。20mMクエ ン酸ナトリウム、pH5.0中の165mMから500mM塩化ナトリウムまでの直線勾 配においてPRT−201を溶出し、分画にして回収した。分画は、タンパク質について はSDS−PAGE、続くクーマシー染色によって解析され、エステラーゼ活性について はSLAPアッセイによって解析された。典型的には、最大比活性を有する分画の90% 以上の比活性を有する分画をプールした。その後のLC/MS解析では、より低い比活性 を有する遅く溶出する分画は、PRT−201のN末端変異体に富んでいることが分かっ た。

高い比活性を有するプールされた分画は、0.1×PBS(13.7塩化ナトリウム、 1mMリン酸ナトリウム、0.27mMリン酸カリウム)から構成される調製用緩衝液中 、pH5.0で透析ろ過(diafilter)された。PRT−201を1mg/mLに濃縮後 、pHを7.4に調整した。次に、エラストマー栓を有するガラス血清バイアルに溶液を 分注し、凍結乾燥した。典型的には、凍結乾燥は、−30〜−50℃の第1の乾燥サイク ルおよび−15℃の第2の乾燥サイクルで行われた。凍結乾燥後、バイアルは、真空下で 栓をされ、アルミニウムシールで厚着された。次に、典型的には2〜8℃または−80℃ でバイアルを保存した。

バイアル中で凍結乾燥されたPRT−201の安定性を評価するために、無菌GMP製 剤に加工された2つのロットを安定性プログラムに置いた。安定性プログラムは、−15 ℃での製剤の保存、および、以下の安定性を指示する解析方法(仕様を括弧内に示す)に よって試験するための一部のバイアルの定期的な取り出しからなる:凍結乾燥された材料 の出現(ホワイトからオフホワイトの粉末)、再溶解後の出現(粒子を含まない透明な無 色の溶液)、SLAPアッセイによる比活性(24〜45U/mg)、RP−HPLCに よる純度(全純度:93%以上;個々の不純物:2%以下)、還元SDS−PAGEによ る純度(93%以上)、非還元SDS−PAGEによる純度(93%以上)、粒子状物質 の注入(USPに準拠する)、SEC−HPLCによる凝集体(3%以下)、バイアル当 たりの含有量(4.5〜5.5mg)、pH(6.5〜8.5)、湿度(5%を超えない )および無菌性(USPに準拠する)。これまで、両方のロットは、試験されたすべての 時間点で指示された仕様を満たしていた(12カ月を通じてロットC0807117、お よび9カ月を通じてロットC1007132)。これらの結果は、PRT−201が、− 15℃でバイアルに凍結乾燥され、保存された場合、少なくとも12カ月の間は安定であ ることを示す。

プロPRT−201の捕捉クロマトグラフィーおよび変換PRT−201の仕上げクロ マトグラフィーの両方の最中におけるクエン酸ナトリウム、pH5.0の使用は、クエン 酸ナトリウムが精製されたPRT−201のエラスターゼ活性を阻害し、したがって、処 理操作中のプロPRT−201およびPRT−201のエラスターゼ活性も阻害し得るこ とを示すデータに基づいていた。このような阻害は、プロPRT−201からN末端変異 体への自然変換を最小限にし、PRT−201の自己分解を最小限にすることができた。 SLAPアッセイ緩衝液が115mMクエン酸ナトリウム、pH5.0を含む場合の実施 形態では、PRT−201の比活性は91%まで阻害された。

ある場合には、プロPRT−201捕捉カラムから溶出された物質は、上述されるよう にトリプシンによる変換に供されなかったが、その代わりに、種々のタンパク質種におい て富んだ調製物を得た。例えば、自然変換から生じた、主としてグリコシル化プロPRT −201、非グリコシル化プロPRT−201またはタンパク質を含む分画のプールは、 捕捉カラム溶出物から作られた。典型的には、これらの分画プールは、10mMリン酸ナ トリウム、pH5.0に透析ろ過され、凍結乾燥され、−80℃で保存された。

長期にわたる、精製されたプロPRT−201の安定性に対するpHおよび温度の効果 を決定するために研究が行われた。凍結乾燥されたプロPRT−201は、pHが3.0 〜8.4の範囲の10mMリン酸ナトリウム中で再溶解され、続いて4℃または25℃で 7日間、インキュベートされた。7日後、pH4.0〜8.0および25℃の条件下にあ るプロPRT−201試料は、SDS−PAGEおよびクーマシー染色によって示される ように、pHの増加と共に増加する成熟PRT−201に富んでいることを示した。pH 8.4と25℃の条件下、プロPRT−201から成熟PRT−201への完全な変換が 観察された。4℃、pH4.0〜8.4の試料は、ほとんど変換しない〜まったく変換し ないことを示した。pH3.0では、4℃および25℃のいずれでも変換が観察されなか った。ブタ膵臓エラスターゼは、3.0よりも低いpHでの長期保存後、不可逆的に不活 性化することが文献(Hartley and Shotton、1971、Pancr eatic Elastase.Enzymes 3:323−373)において報告さ れている。このようにして、この研究のこれらの結果に基づき、PRT−201を不可逆 的に不活性にすることを避けるために、精製されたプロPRT−201の変換を最小限に するために有用な条件は、4℃、pH3.0〜4.0での保存である。

6.6 P.pastorisにおける自己活性化PRT−201の発現 自己活性化を可能にする変異体プロ酵素を得て、それによりトリプシン活性化の必要性 を排除するために、様々なエラスターゼ切断ドメイン変異体ベクターを構築し、小スケー ル培養および変換実験において解析した。変異体ベクターは、pPROT24−Vベクタ ーおよびその後の誘導ベクターの部位特異的PCR突然変異誘発によって作製された。部 位特異的突然変異誘発は、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratage ne)を用いて行われた。大腸菌XL10−Gold菌株は、得られたプラスミドで形質 転換された。形質転換細胞の混合物は、25μg/mLのZeocinを補足された低塩 LBプレート上に置かれた。薬物耐性クローンを選別し、プラスミドDNAを調製した( Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)。クローンは、複数の重複反応を用いて、 プロペプチド領域におけるプラスミドDNAの両鎖を配列決定することによって予期され たコドン変化について確かめられた。P.pastorisを変異体ベクターで形質転換 し、先行する実施例に記載したようにクローンを選択した。

作製されたエラスターゼ切断ドメイン変異体の概要を以下の表4に与える:

表4:エラスターゼ切断ドメイン変異体

上記表4について、「プロペプチド配列名」の第1列リストは、指示されたエラスター ゼ切断ドメインについての配列番号に対応する。このようにして、24は、配列番号24 の野生型トリプシン切断ドメインに対応する。番号40〜49、52〜63は、配列番号 40〜49、および52〜63の変異体エラスターゼ切断ドメインにそれぞれ対応する。

変異体クローンを培養するために、先行する実施例に記載されたトリプシン活性化20 1−24−266−VUクローンのために開発された振とうフラスコ培養条件は、一般的 には以下の通りであった。振とうフラスコの上清に分泌された変異体プロタンパク質を成 熟PRT−201に変換するいくつかの方法を試験した。第1の変換戦略は、変異体プロ 酵素を最初にクロマトグラフィーにより精製し、特定の変換緩衝液中での制御された切断 からなっていた。変異体プロタンパク質におけるアミノ酸変化が、野生型プロ酵素と比較 して、理論的な等電点においてごく小さな変化をもたらすので、陽イオン交換クロマトグ ラフィーが、一般的には、先行する実施例に記載されるように行われた。変異体クローン 培養物からの上清は、一般的には先行する実施例に記載されるように、水による希釈によ って、または濃縮、続いて接線フローろ過を用いた、カラムローディング緩衝液への上清 の透析ろ過によって、クロマトグラフィー用に調製された。クロマトグラフィー精製後、 溶出分画は、SDS−PAGE、続くクーマシー染色によって解析された。ゲル解析は、 開始上清と比較して、分画中のプロタンパク質に対してより多量の変換された成熟タンパ ク質を示し、かなりの量の自然なプロタンパク質変換が起こったことを指示した。続く精 製に基づいて、自然に変換したタンパク質は、SLAPアッセイにおいてほとんどエラス ターゼ活性がないかまたはエラスターゼ活性がまったくないことを示す、主としてN末端 の変異体からなることをLC/MSによって決定された。

第2の変換戦略は、培養上清から精製する前に変異体プロタンパク質の変換、続いて成 熟酵素のクロマトグラフィー精製からなっていた。この変換戦略は、最初に小スケールア ッセイで試験され、その後、より大きな変換体積を収容するためにスケールアップされた 。小スケール変換に関して、変換クローン培養物から清澄された上清は、典型的には、超 遠心ろ過装置において2〜8℃で遠心分離することによって5倍に濃縮された。遠心分離 後、リテンテートは、Tris緩衝液で5倍に希釈し、典型的には8.0〜9.0のpH 範囲で、最終濃度を100mM Tris−HClにした。試料は、室温、ロッキングプ ラットフォーム上でインキュベートされた。エラスターゼ活性は、典型的には活性反応速 度がプラトーに達するまで、SLAPアッセイによって監視された。いくつかの場合では 、反応速度は非常にゆっくりと増加するので、SLAP監視は、プラトーが達成される前 に停止された。変換された試料は、SDS−PAGEによって、タンパク質種(例えば、 プロタンパク質およびPRT−201/N末端変異体)について解析された。この変換戦 略をスケールアップするために、変異体プロタンパク質を含む上清は、接線フローろ過を 用いて10倍に濃縮され、その後、pHが6.0〜9.0の範囲で100mM Tris −HClを用いて透析ろ過された。変換反応の進行は、HIC−HPLC解析によって長 期に監視され、そこでは、プロタンパク質、PRT−201、およびN末端種が定量され た。透析ろ過のpHが8.0〜9.0である場合、一般には、変換はより高い率であった 。

表5に列挙されたエラスターゼプロタンパク質は、記載されるようにP.pastor isにおいて発現され、上記の第2の変換戦略において記載されるように小スケール変換 解析における自己変換を受けるエラスターゼプロタンパク質の能力について試験された。 それらの研究の結果を以下の表5に概説する:

表5:メタノール資化酵母におけるエラスターゼプロタンパク質の発現結果

上記の表5では、「プロペプチド配列名」の第1列リストは、指示されたエラスターゼ 切断ドメインについての配列番号に対応する。このようにして、24は、配列番号24の 野生型トリプシン活性化エラスターゼ切断ドメインに対応する。番号40〜49、52〜 63は、配列番号40〜49、および52〜63の変異体エラスターゼ切断ドメインにそ れぞれ対応する。「振とうフラスコ収量」と表示された列は、SDS−PAGE解析によ って決定された、誘導の3日間の培養上清中の対応するプロタンパク質の量に対応する。 「振とうフラスコ安定性」と表示された列は、SDS−PAGE解析上で見られたPRT −201/N末端変異体の量によって決定された、誘導の3日間の振とうフラスコ培地の 上清における対応するプロタンパク質の安定性に対応する。「変換速度」と表示された列 は、最大SLAP反応速度を達成するための時間によって指示された、PRT−201に 対するプロタンパク質の変換の相対的速度に対応する(速い:60未満;中くらい:60 〜120分;遅い:120分を超える)。変異体プロタンパク質の変換時間経過は、上述 された小スケール変換アッセイを用いて決定され、固定化トリプシンを用いた活性化によ って決定された24のプロタンパク質の変換時間経過と比較された。「N末端変異体%」 と表示された列は、成熟エラスターゼタンパク質のN末端変異体(すなわち、P1以外の 任意の部位に対してC末端の結合での切断を含む変異体)を含む変換タンパク質のパーセ ンテージを指す。表5において使用された相対的な等級法を説明するために、一部の自己 活性化された変異体のSDS−PAGE、変換率およびN末端変異体解析を図5に示す。

種々の変異体の解析によって、配列番号48または配列番号55の変異体エラスターゼ 切断ドメインを含むエラスターゼプロタンパク質は、変換に基づく、中くらい〜高い振と うフラスコ収量と低いパーセンテージの変異体を含む優れた品質を有する自己活性化され たエラスターゼを提供することが示された。配列番号48または配列番号55の変異体エ ラスターゼ切断ドメインを含むエラスターゼプロタンパク質のさらなる解析によって、対 応するプロタンパク質(すなわち、それぞれ、配列番号64および配列番号69のエラス ターゼプロ酵素)の自己活性化は、P’2残基に対してC末端のペプチド結合での切断を 有する、たった1種類のN末端変異体を生成したことが示された。エラスターゼプロタン パク質のさらなる解析によって、配列番号55変異体エラスターゼ切断ドメインを含むプ ロタンパク質は、配列番号48の変異体エラスターゼ切断ドメインを含むプロタンパク質 より安定であることが示された。

精製されたプロPRT−201の制御された切断についての条件を最適化するための初 期の実験は、42のプロペプチド配列(配列番号6)を有するプロタンパク質を用いて行 われた。この精製されたプロタンパク質は、pH(7.7〜8.9)、緩衝液組成(0. 4〜10mMクエン酸ナトリウム)、タンパク質濃度(0.14〜0.23mg/mL) 、および反応時間(5〜24時間)を含む条件のマトリックスにおける変換に供された。 変換期間の終わりに、pHを3.0に低下させるためにギ酸を添加することによって反応 を停止した。各反応におけるタンパク質種の相対量は、質量分析によって決定された。こ れらの結果に基づいて、N末端変異体の最低のパーセンテージをもたらす変換条件は、p H8.3、100mM Trisおよび1mM未満のクエン酸ナトリウムの緩衝液組成、 0.2mg/mLのタンパク質濃度、ならびに5〜24時間の反応時間を含んだ。この研 究では、反応の評価項目だけを解析した。このようにして、変換の質に関するリアルタイ ムデータは観察されず、最後の結果は、N末端変異体の初期の生成と、分解されたそれら の変異体の実質的な時間量を反映した可能性がある。その後、HIC−HPLCアッセイ は、変換反応のリアルタイムモニタリングを可能にするように開発された。さらなる変換 の最適化研究は、リアルタイムHIC−HPLCモニタリングを使用するものを含み、実 施例6に記載されている。

6.7 多コピー変異体ベクターを用いたP.pastorisにおける自己活性化PR T−201の発現 P.pastorisにおける組換え遺伝子の多コピー組込みは、所望のタンパク質の 発現を増加させるために利用されていた(例えば、Sreekrishnaら、1989 、Biochemistry 28:4117−4125;Clareら、1991、B io/Technology 9:455−460;Romanosら、1991、Va ccine 9:901−906を参照されたい)。しかしながら、特定の場合には、1 コピーベクター組込み体から得られた発現レベルは有効であり、多コピーベクター組込み 体によって改善されなかった(Creggら、1987、Bio/Technology 5:479−485)。自然な多コピープラスミド組込み事象は、インビトロではP. pastorisにおいて低頻度で起こる。遺伝子の多コピーのゲノム組込みを得て、タ ンパク質発現をできる限り増加させるために、インビトロのライゲーション法を用いて、 発現ベクターへの遺伝子のタンデムな挿入を生じさせ、その後、P.pastoris形 質転換する。

pPROT55−V変異体の多コピー組込み体を得るために、インビトロのライゲーシ ョン法を用いて、その後にP.pastoris形質転換用に使用されるpPROT55 −Vの多コピーを含むベクターを構築した。多コピーベクターを作製するために、pPR OT55−Vベクターは、プロPRT−201遺伝子、AOX1プロモーター、およびA OX1転写終止配列をコードする2.3kb発現カセットを放出するようにBglIIお よびBamHIを用いて消化された。次に、発現カセットは、自己ライゲーションを防ぐ ために、BamHIで線状化され、ウシ腸アルカリホスファターゼ(New Engla nd Biolabs、マサチューセッツ州、米国)で処理されたpPROT55−Vベ クターの調製物とライゲートされた。ライゲーション混合物を一晩16℃でインキュベー トした。大腸菌TOP10菌株(Invitrogen、カリフォルニア州、米国)をラ イゲーション反応で形質転換した。形質転換ミックスは、25μg/mLのZeocin の存在下で低塩LB上に播種された。薬物耐性形質転換体を選別し、プラスミドDNAを 調製した。

得られたクローンにおける発現カセットの数を決定するために、プラスミドDNAをB glIIおよびBamHIで消化し、DNAサイズ標準マーカーを用いて、アガロースゲ ル電気泳動によって解析した。3つの2.3kb発現カセットと一致したサイズを有する 単一の明確な挿入バンドを含むクローンを同定し、pPROT55M3−Vと命名した。 制限酵素マッピングを用いて、pPROT55M3−Vベクターについて、線状の頭−尾 多量体形成の配向を確認した。図6は、pPROT55M3−Vクローニングスキームを 示す。

野生型P.pastoris菌株NRRL Y−11430を形質転換のために使用し 、pPROT55M3−Vベクターが形質転換前にSacIの代わりにBglIIで線状 化されることを除いて、実施例4に記載されるように行った。薬物耐性形質転換体を培養 し、実施例4に記載されるようにpPROT55M3プロタンパク質の発現についてスク リーニングした。

振とうフラスコ培養条件の最適化は、誘導中の自然な切断を最小限にするために行われ た。振とうフラスコ最適化は、2つの変数、誘導温度および誘導培地組成に焦点が当てら れた。第1に、25℃と比較して22℃で誘導を行うことにより、試験されるすべての培 地組成について、培養上清中の成熟酵素に対するプロ酵素のより高い比率がもたらされる ことが分かった。第2に、誘導培地の緩衝強度を増加させるためにクエン酸ナトリウムを 添加することによって、試験されたクエン酸ナトリウムの濃度(12.5〜50mM)の 全体を通じて培養上清において自然に変換した成熟酵素が存在しなくなった。長期間の振 とうフラスコ上清におけるプロタンパク質発現収量と安定性に対するこれらの変数の効果 を図7に説明する。

高発現の3コピークローン201−55M3−003−VUは、以下のように記載され る201−55−001−VUクローン用に確立した発酵手法を用いて、スケールアップ した発酵解析のために選択された。201−55−001−VUクローンの発酵は、1つ の細胞バンクバイアルを解凍し、それを使用して、pH5.7の500mlのBKGY増 殖培地を含む振とうフラスコに植菌することによって達成された。湿潤細胞重量が約40 g/Lになるまで、種培養は28℃で振とうしながら24時間増殖させた。pH5.7の BKGY増殖培地を含む発酵槽はオートクレーブで滅菌された。培地を28℃に冷却後、 酵母窒素塩基およびビオチンを含む補足物を添加した。発酵槽は、種培養とBKGY増殖 培地を1:33の比率で植菌された。

発酵手法は、pH5.7、28℃で、グリセロールのフィードバッチ(fed-batch)お よびグリセロールフィード(feed)を用いて開始した。pHは、10%リン酸および30 %硫酸アンモニウムの溶液によって調節された。培養物を給気しながら300〜1000 rpmで激しく撹拌し、溶存酸素を40%に調節した。システムからグリセロールが枯渇 したことを示す、初期のグリセロールバッチが枯渇し、溶存酸素が急増した後、湿潤細胞 重量が好ましくは200g/L〜300g/Lに到達するまで、追加の50%グリセロー ルが131g/時で添加された。湿潤細胞重量が200g/L〜300g/Lに到達した 後、湿潤バイオマス1g当たり0.025mLのメタノールボーラスを用いて、誘導を即 座に開始した。メタノールボーラスが枯渇し、溶存酸素が上昇した後、0.0034gメ タノール/g湿潤細胞重量/時の一定の添加速度で制限量のメタノールを添加することに よって誘導を継続した。一定のメタノール添加の開始時に、発酵ブロスのpHを5.7か ら5.5に変更し、温度を28℃から22℃に変更した。発酵は、誘導の70時間後に回 収された。

単一コピーのpPROT55−Vベクターの1つのゲノム組込み体を含む、単一の3コ ピークローンであるクローン201−55−001−VUの相対的収量を決定するために 、3コピーのpPROT55M3−Vベクターの1つのゲノム組込み体を含む、クローン 201−55M3−003−VUと共に並行して発酵させた。培養のpHが誘導全体で5 .7に維持されたことを除いて、上述されるように発酵を行った。201−55−001 −VUおよび201−55M3−003−VU発酵から回収した上清は、勾配SDS−P AGE、続くコロイダルブルー染色によって解析され(図8)、単一コピーの201−5 5−001−VUクローンと比較して、多コピーの201−55M3−003−VUクロ ーンからより高いプロタンパク質発現が得られたことを示した。SDS−PAGE結果は 、発酵上清のプロタンパク質濃度のHIC−HPLC解析により確認され、201−55 M3−003−VUクローンは、約600mg/Lの分泌されたプロタンパク質を生成し 、201−55−001−VUクローンは約400mg/mLを生産したことを示す。こ のようにして、3つの発現カセットを含む多コピー201−55M3−003−VUクロ ーンは、単一の発現カセットを含む単一コピー201−55−001−VUクローンと比 較して、約50%を超えるプロタンパク質を生成した。

2つの変換戦略は、発酵から生成された201−55M3−003−VU上清を用いて 試験された。これらの戦略は、一般には、それらがラージスケールで行われたことを除い て、実施例5の他のプロタンパク質変異体について記載された戦略に従った。第1の戦略 では、プロタンパク質は、陽イオン交換クロマトグラフィーによって上清から捕捉され、 その後、成熟タンパク質に変換され、仕上げクロマトグラフィーが行われた。第2の戦略 では、プロタンパク質は、精製前に成熟タンパク質に変換され、その後、陽イオン交換ク ロマトグラフィーを用いて捕捉され、N末端変異体を取り除くために延長して変換され、 さらに仕上げクロマトグラフィーが行われた。また、両方の戦略は、N末端変異体の選択 的分解を達成するために変換後、pH8.0の緩衝液で長期のインキュベーション工程を 含んでいた。

第1の戦略を用いて、プロタンパク質の捕捉、その後の変換、およびPRT−201の 仕上げ精製を以下のように達成した。201−55M3−003−VU上清を発酵培養か ら回収し、−80℃で凍結した。約7Lの凍結され、清澄された上清(上述される201 −55M3−003−VU発酵から3.5L、および実施例4と5に記載されるように一 般的に調製された201−55M3−003−VU振とうフラスコ培養からの3.5L) を解凍し、脱イオン水および1Mクエン酸ナトリウム、pH4.3を用いて2〜8℃で8 倍に希釈し、最終濃度が25mMのクエン酸ナトリウムを得た。溶液のpHを4.7に調 整した。2.3LのベッドのMacroprep High S陽イオン交換カラム上に 76cm/時、2〜8℃で溶液を添加した。カラムは、5CVの25mMクエン酸ナトリ ウム、pH4.7、その後、5CVの160mM塩化ナトリウム、25mMクエン酸ナト リウム、pH4.7で洗浄された。25mMクエン酸ナトリウム、pH4.7中の160 mM塩化ナトリウムから開始し、500mM塩化ナトリウムまでの直線勾配の15CVを 用いて87ml/分(67cm/時)でプロタンパク質を溶出した。溶出物を分画にして 回収した。分画は、タンパク質含有量についてSDS−PAGEによって解析された(図 9)。少量の自然に変換したタンパク質がSDS−PAGEによって観察された。プロタ ンパク質を含む分画をさらなる処理のためにプールした。プールされた物質をHIC−H PLC解析に供し、それは92%プロタンパク質および8%成熟PRT−201からなる ことを示した。

変換を開始するために、プールされた物質は、100mM塩化ナトリウム、20mMT ris、pH4.0に接線フローろ過を使用して、10〜12℃で一定体積の透析ろ過を 用いて緩衝液交換された。接線フローろ過は、再生されたセルロースメンブレン、15p siの膜透過圧、20L/分の交差流速度、および800mL/分の流量を用いて行われ た。2〜8℃の3透析体積の緩衝液が、その流量と同じ流速で添加された。その後、周囲 温度で、さらに3体積の緩衝液がその流量と同じ速度で添加され、26℃の目標まで変換 溶液の温度を上昇させた。接線フローろ過は、15psiの膜透過圧、1.2L/分の交 差流速度、および76ml/分の流量の条件を用いて、1.5mg/mLの標的まで変換 溶液を濃縮するために使用された。しかしながら、濃縮手法を開始して約2分後、予期し ない沈殿が観察され、濃縮プロセスを中止した。変換溶液のタンパク質濃度は、570m L中、280nmのUV吸収によって1.1mg/mLであると決定された。さらなる沈 殿を最小限にするために、変換溶液は、100mM塩化ナトリウム、20mMのTris 、pH4.0を用いて1mg/mLに希釈され、0.22ミクロンのメンブレンを通過さ せてろ過された。16mLの3M Tris、pH9.0を変換溶液に添加した。変換溶 液を26℃の水浴に置いた。変換反応をHIC−HPLC解析によって監視した。30分 後、HIC−HPLCによって、大部分のプロタンパク質はPRT−201に変換され、 いくつかはN末端変異体であったことが示された(図10)。1時間後、変換反応は、0 %のプロタンパク質、86%の全長PRT−201、および14%のN末端変異体からな っていた。変換物質をさらに4時間を超えてインキュベートされ、その時間でHIC−H PLC解析によって、変換物質は98%の全長PRT−201および2%のN末端変異体 からなっていたことが示された。

変換物質は、脱イオン水および1Mクエン酸ナトリウム、pH4.3で4倍に希釈し、 最終濃度を25mMクエン酸ナトリウムにした。溶液のpHを5.0に調整し、仕上げカ ラムに添加するために準備した。600mLベッドのMacroprep High S 陽イオン交換カラムに27mL/分(83cm/時)で溶液を添加した。カラムは、5C Vの20mMクエン酸ナトリウム、pH5.0、続く5CVの160mM塩化ナトリウム 、20mMクエン酸ナトリウム、pH5.0で洗浄された。PRT−201は、15CV の25mMクエン酸ナトリウム、pH5.0中の160mMから開始して500mMまで の直線勾配の塩化ナトリウムで87mL/分(67cm/時)で溶出された。溶出物は分 画にして回収された。分画は、タンパク質含有量についてはSDS−PAGEによって、 および比活性についてはSLAPアッセイによって解析された。比活性が≧30U/mg であるPRT−201を含む分画をプールした。プールされたPRT−201分画は、調 製用緩衝液(0.1×PBS、pH5.0)に接線フローろ過によって透析ろ過された。 透析ろ過されたPRT−201のpHをpH7.4に調整し、接線フローろ過によってタ ンパク質濃度を1mg/mLに調整した。実施例4における201−24−266−VU クローンから生成されたPRT−201について記載したように、バイアルを満たし、凍 結乾燥した。

第2の戦略を用いて、プロタンパク質の変換、続くPRT−201の精製を以下のよう に達成した。上述した201−55M3−003−VU発酵由来の約7Lの凍結され、清 澄された上清を解凍し、変換反応は、再生されたセルロースメンブレンを用いた、周囲温 度の一定の体積の透析ろ過を使用して、100mMのTris、pH8.0を含む変換緩 衝液で接線フローろ過によって開始された。100mMのTris−HCl、pH8.0 の2つの透析体積は、リテンテートのpHをpH5.0から8.0に変化させ、変換を達 成するには十分であった。また、実験は、100mMの最終濃度にTris塩基を添加し 、1N水酸化ナトリウムでpHを8.0に調整することによって、清澄された上清のpH を8.0に直接調整することによって行われた。これは、恐らくはブロス成分の沈殿のた めに、望ましくない沈殿物の形成および上清の混濁をもたらしたことによる。接線フロー ろ過を用いた変換の好ましい方法は沈殿を生じさせなかった。

変換反応は、リアルタイムHIC−HPLC解析によって監視された。変換の開始後、 プロPRT−201は、最初の2時間、ゆっくりと成熟PRT−201に変換し、その後 、変換が加速した(図11)。4.5時間で、変換反応は、約4%のプロPRT−201 、75%の成熟PRT−201および21%のN末端変異体からなっていた。6.5時間 で、変換反応は、約1%のプロPRT−201、83%の成熟PRT−201および16 %のN末端変異体からなっていた。4.5時間から6.5時間の21%から16%のN末 端変異体の減少は、全長の活性なPRT−201によるN末端変異体の分解による可能性 があるが、これは完全ではなく、精製されたプロPRT−201の変換中に見られたN末 端変異体の減少ほど急速ではなかった。この第2の戦略では、変換反応を延長することは 、エラスターゼの活性部位と競合する上清中の競合タンパク質に起因して、N末端変異体 を完全に除去しない場合がある。変換反応を改善するために、変換後の物資が捕捉され、 その後、以下に記載されるN末端変異体の選択的分解のためにpH8.0で延長された変 換を開始するための適切な緩衝液に透析ろ過された。

変換物質からのPRT−201の捕捉は以下のように達成された。変換物質は、20m Mクエン酸ナトリウム、pH5.0に緩衝液交換され、Macro−Prep High S陽イオン交換クロマトグラフィーカラム上に添加された。カラムは、5CVの20m Mクエン酸ナトリウム、pH5.0、続く5CVの20mMクエン酸ナトリウム、160 mM塩化ナトリウム、pH5.0で洗浄された。PRT−201は、20mMクエン酸ナ トリウム、pH5.0中の160mMから500mMクエン酸ナトリウムの直線勾配で溶 出された。分画は、タンパク質含有量についてはSDS−PAGE、N末端変異体につい てはHIC−HPLC、タンパク質濃度については280nmのUV吸光度、およびエラ スターゼ活性についてはSLAPアッセイによって解析された。2つの主要なタンパク質 バンドがSDS−PAGEによって検出され、図12に示されるように、PRT−201 およびPRT−201糖形態に対応していた。SDS−PAGEによって決定されたPR T−201糖形態、またはHIC−HPLCによって決定されたN末端変異体を含む分画 はプールから排除された。また、SLAPアッセイによって決定されたように、相対的に 低い比活性(30U/mg未満)を示す分画はプールから排除された。PRT−201を 含む残りの分画は、さらなる処理のためにプールされた。プールされた分画のHIC−H PLC解析は、この物質が約98%の全長PRT−201および1〜2%のN末端変異体 からなることを示した。プールされた物質は2〜8℃で12〜16時間保存された。

N末端変異体が上述される長期の変換期間中に減少するように見えるという従来の観察 を示したので、プールされたPRT−201物質をpH8.0で延長されたインキュベー ション工程に供した。延長されたインキュベーションは、100mM Tris、300 mMクエン酸ナトリウム、pH8.0で、2.5時間、周囲温度で透析ろ過および接線フ ローろ過によって行われた。2.5時間後、変換物質は、HIC−HPLC解析によって 示されるように、100%の成熟PRT−201からなっていた。変換物質は、エラスタ ーゼ活性を抑制し、カラムクロマトグラフィーのために用意するために、20mMクエン 酸ナトリウム、pH5.0への透析ろ過および接線フローろ過に供された。透析ろ過され たPRT−201物質は、約64時間、2〜8℃で保存された。

PRT−201の仕上げクロマトグラフィー精製は以下のように達成された。透析ろ過 されたPRT−201物質は、Macro−Prep High S陽イオン交換カラム 上に添加され、5CVの緩衝液C(20mMクエン酸ナトリウム、pH5.0)、続く5 CVの160mM塩化ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH5.0で洗浄され た。PRT−201の溶出は、15CVの68%緩衝液Cと32%緩衝液D(160mM 塩化ナトリウム、25mMクエン酸ナトリウム、pH5.0)から0%緩衝液Cと100 %緩衝液D(500mM塩化ナトリウム、25mMクエン酸ナトリウム、pH5.0)の 直線勾配で、50ml/分(153cm/時)で行われた。溶出物を分画にして回収した 。PRT−201は、37mS/cmで対称ピークとして溶出した(330mMクエン酸 ナトリウム)。分画は、タンパク質含有量についてはSDS−PAGE解析、タンパク質 濃度については280nmのUV吸光度、および比活性についてはSLAPアッセイによ って解析された。30.1〜38.8U/mgの比活性を有するPRT−201を含む分 画をプールした。プールされたPRT−201分画は、調製用緩衝液(0.1×PBS、 pH5.0)への接線フローろ過によって透析ろ過された。透析ろ過されたPRT−20 1のpHはpH7.4に調整され、タンパク質濃度は接線フローろ過によって1mg/m Lに調整された。実施例4の201−24−266−VUクローンから生成されたPRT −201について記載されるように、バイアルを満たし、凍結乾燥した。

上述される変換手法のための条件は、タンパク質濃度、温度、緩衝液組成、透析体積お よびpHの変数を調べる変換の最適化研究に基づいて選択された。第1の研究では、変換 中のN末端変異体の生成に対するプロタンパク質濃度の効果を解析した。20mMリン酸 ナトリウム、pH5.0中の0.2mg/mLの開始濃度の201−55M3−003− VUクローンからの精製されたプロPRT−201(プロPRT−201−55M3−0 03−VU)を分注し、遠心分離濃縮デバイスを用いて280nmのUV吸光度によって 決定すると、1.0、1.6、および1.8mg/mLに濃縮された。プロタンパク質の 変換は、Trisおよび塩化ナトリウムを100mMの4つの濃度試料の各々に添加し、 pHを5.0〜8.0に調整し、周囲温度で試料をインキュベートすることによって達成 された。変換反応は、プロタンパク質が全タンパク質の≦1%になるまで、リアルタイム でHIC−HPLCによって監視された(図13)。この終点で、0.2mg/mLの試 料は、約8%のN末端変異体からなり、1.0mg/mL、1.6および2.0mg/m Lの試料は、それぞれ、約14%、19%および29%のN末端変異体からなっていた。 各試料における残りのタンパク質は、全長PRT−201からなっていた。これらの結果 は、変換中のプロPRT−201−55−003−VUの濃度上昇がより多くのN末端変 異体および全長未満のPRT−201の形成をもたらすことを示す。他の研究は、プロP RT−201−55M3−003−VU変換が分子内および分子間の反応を通じて起こる ことを示唆していた。このようにして、この変異体プロタンパク質について、分子内反応 は、より低濃度のプロタンパク質溶液が好まれ、精度の高い変換を生じさせ、分子間反応 は、より濃縮されたプロタンパク質溶液が好まれ、精度の低い変化、すなわち、全長PR T−201と比較して、N末端変異体の高いパーセンテージの形成をもたらす。

第2の研究では、変換中のN末端変異体の生成に対する温度の効果が解析された。20 1−55M3−003−VUクローンから精製されたプロPRT−201(プロPRT− 201−55M3−003−VUと命名される)は、1.6mg/mLの濃度で生成され 、15℃または26℃で、上述されるように変換に供された。変換反応は、HIC−HP LCによってリアルタイムで監視され、プロタンパク質が全タンパク質を<1%含むまで 進めさせた。プロタンパク質におけるこの減少を到達するのに必要とされる時間は、26 ℃で約30分であり、15℃で約90分であった。これらの時間で、両温度について、N 末端変異体の類似したパーセンテージ(全タンパク質の約20%)が観察された。このよ うにして、26℃という高温は、本質的な同一の反応生成プロフィーリングを生じさせな がら、15℃の低温と比較してより急速な変換反応をもたらした。

第3の研究は、変換反応中のプロタンパク質の溶解性に対する緩衝液組成の効果を調べ た。1.0mg/mLの濃度で精製されたプロPRT−201(プロPRT−201−5 5M3−003−VU)は、表6に列挙された条件下で変換に供された。変換反応は、2 〜8℃で行われた反応(20mM Tris−HCl、100mM塩化ナトリウム、pH 4.0の緩衝液組成)を除いて、周囲温度で行われた。変換反応は、沈殿について視覚的 に検査された。表6に示されるように、沈殿を生じさせなかった緩衝液組成は、100m M Tris−HCl、pH8.0;100mM Tris−HCl、100mM塩化ナ トリウム、pH5.0;および100mM Tris−HCl、300mM塩化ナトリウ ム、pH8.0を含んでいた。低濃度のTrisを含むか、または低pH(すなわち、p H5.0)の塩化ナトリウムを含まない緩衝液組成は沈殿を示した。

表6:変換中の沈殿に対する緩衝液組成の効果。

第4の研究では、プロタンパク質(プロPRT−201−55M3−003−VU)を 含む上清の変換中の沈殿に対する接線フローろ過の透析体積数の効果を解析した。緩衝液 交換に使用される溶液は、100mM Tris−HCl、100mM塩化ナトリウム、 pH8.0であった。さらに、接線フローろ過なしに、pH5.0〜8.0の上清の直接 的なpH調整を試験した。表7に示されるように、上清の直接的なpH調整は、多量の沈 殿を生じさせた。1透析体積の交換を用いると、幾分の沈殿が観察された。2〜5透析体 積を用いた場合には、沈殿は観察されなかった。

表7:緩衝液交換中の沈殿に対する透析体積数の効果。

第5の研究では、成熟PRT−201のエラスターゼ活性に対するpHの効果を解析し た。この研究では、成熟PRT−201変換生成物のエラスターゼ活性の不可逆的な喪失 を生じない変換の有用なpH範囲を同定するために設計された。20mM Tris−H Cl、20mMリン酸カリウム中の1mg/mLのPRT−201の溶液は、pH1〜1 4で調製された。溶液は、0.5、2、24および48時間、周囲温度で保持された。指 示された時間点で、溶液は、SLAPアッセイにおいてエラスターゼ活性について試験さ れた。エラスターゼ活性は、すべての時間点でpH3〜8で大部分は安定であった。3未 満のpHおよび8を超えるpHでは、エラスターゼ活性はすべての時間点で減少し、より 長い時間点とより低いエラスターゼ活性の間で補正された。これらの結果は、3〜8のp H範囲外で行われる変換反応は、PRT−201変換生成物のエラスターゼ活性に負の影 響を与え得ることを指示した。

6.8 自己活性化組換えブタI型膵臓エラスターゼの生成 自己活性化ブタELA−1プロ酵素をコードするベクターがP.pastorisで発 現された。得られた自己活性化されたブタELA−1は、トリプシンで活性化された野生 型プロタンパク質として発現されたブタELA−1タンパク質と比較された。

トリプシン活性化ブタELA−1ベクターを構築するために、ブタELA−1コード領 域は、Amgen(カリフォルニア州サウザンドオークス)から許可を受けたBlue Heron Biotechnology(ワシントン州ボセル)によって、非PCR「 長鎖オリゴ」技術を用いて合成された。組換え遺伝子は、pUC119由来のベクターB lue Heron pUCにクローニングされた。ブタELA−1遺伝子は両鎖につい て配列決定され、正しい配列であることを確かめた。SacIIおよびXbaI制限部位 は、図14に示されるように、ブタELA−1遺伝子に隣接する潜在的なクローニング部 位として組み込まれた。第2の終止コドンは、潜在的なリボソームの読み終わりを最小に するため天然の停止コドンの直後に添加された。図15は、トリプシン活性化部位を含む 、ブタELA−1プロ酵素の天然の同一アミノ酸配列を示す。

ブタELA−1のコード領域は、クローニングを促進するためのXhoIおよびSac II制限部位を含むオリゴヌクレオチド対を用いたPCRによって増幅された。PCR産 物は、XhoIおよびSacIIで消化され、アガロースゲル電気泳動によって精製され た。ブタELA−1断片をXhoIおよびSacII制限部位でPV−1ベクターにクロ ーニングした。大腸菌TOP10菌株は、ライゲーション混合物で形質転換された。細胞 混合物は、25mg/mLのZeocinで補足された低塩LBプレート上に置かれた。 薬物耐性クローンを選別し、プラスミドDNAを調製した(Qiagen、CA)。制限 解析に基づいて、ブタELA−1遺伝子挿入物を含むクローンを同定し、ベクターをpP ROT101−24−Vと命名した。このベクターのコード配列は、DNA配列決定によ って確認された。pPROT101−24−Vのためのクローニングスキームを図16に 示す。

トリプシン活性化pPROT101−24−Vベクターを用いて、3種の自己活性化ク ローンは、ブタELA−1のプロペプチド領域のトリプシン切断部位をエラスターゼ切断 部位に変更することによって改変された。部位特異的突然変異誘発は、一般には、実施例 4に記載されるように行い、表8に記載される所望の突然変異を含む合成オリゴヌクレオ チドプライマーを用いた。プロペプチド領域の突然変異のすべては、二本鎖DNA配列決 定によって確認された。

表8.トリプシンで活性化され、自己活性化されたブタELA-1ベクターの切断ドメイン配 列。突然変異を誘発したコドンに陰影を付ける。切断結合はP1とP'1の間である。

野生型NRRL Y−11430のP.pastoris菌株を形質転換し、薬物耐性 形質転換体を培養し、実施例3に記載されるように、ブタELA−1プロタンパク質の発 現についてスクリーニングした。SDS−PAGEおよびクーマシー染色による解析に基 づいて(図17および図18を参照されたい)、野生型トリプシン活性化pPROT10 1−24−Vクローンは、自己活性化クローンと比較して、最高レベルの発現を有してい た。自己活性化クローンのうち、pPROT101−49−Vクローンは、最高レベルの 発現を有し、続いてpPROT101−55L−Vクローン、次にpPROT101−4 9−Vクローンであった。自己活性化pPROT101−42−VおよびpPROT10 1−55L−Vプロタンパク質は、誘導中にかなりの自然な変換を示し、トリプシン活性 化pPROT101−24−Vおよび自己活性化されたpPROT101−49−Vプロ タンパク質は、誘導培地でより大きな安定性を示した。

pPROT1101−24−Vから発現されたプロエラスターゼタンパク質のトリプシ ン活性化によって生成されたPRT−102のエラスターゼ活性化についての研究は、以 下の表9に示されるように、PRT−201よりも高い比活性を示した。

表9:成熟ヒトI型膵臓エラスターゼと比較した、成熟ブタI型膵臓エラスターゼ(トリプ シン活性化)の3種の異なる試料のエラスターゼ活性

小スケールの変換実験を用いて、pPROT101−55L−VおよびpPROT10 1−49−Vプロタンパク質がエラスターゼ活性を示す成熟酵素に変換され得るかどうか を決定した。pPROT101−55L−VおよびpPROT101−49−Vの振とう フラスコの上清は、遠心ろ過ユニットを用いて10倍に濃縮され、100mM Tris −HCl、pH9.0で5倍に希釈された。変換は室温で進行するようにし、エラスター ゼ活性はSLAPアッセイによって経時的に監視された。1分当たりの吸光度の平均的な 変化は各時間点から決定され、標準化されていない反応速度として報告された(図19) 。pPROT101−49−VおよびpPROT101−55L−Vの上清の変換は共に 、エラスターゼ活性の増加をもたらした。各クローンからの最終の時間点の試料は、SD S−PAGEによって、続くクーマシー染色によって解析され、変換前の試料と比較され た(図20)。SDS−PAGEの結果によって、ほぼすべてのpPROT101−49 −Vプロタンパク質が変換アッセイの終わりまでに成熟タンパク質に変換されたことが確 認された。また、SDS−PAGEの結果は、ほぼすべてのpPROT101−55L− Vが変換アッセイの前に成熟タンパク質に自然に変換されたことを示した。

pPROT101−24−VおよびpPROT101−49−Vプロタンパク質および 成熟酵素の精製調製物は、そのまま分子量解析を行うために、Danforth Pla nt Science Center、ミズーリ州に供された。プロタンパク質は、陽イ オン交換クロマトグラフィー(Macroprep High S、Bio−Rad)に よって精製された。成熟酵素解析について、両方のクローンからのプロタンパク質を最初 に処理し、成熟酵素を生成し、次に陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。 トリプシン活性化プロタンパク質はトリプシンで処理され、自己活性化プロタンパク質は 、100mM Tris−HCl、pH9.0の存在下で変換され、続いて陽イオン交換 クロマトグラフィーにかけられた。質量分析解析から得られた主要ピークを表10に列挙 する。

表10:ブタELA-1タンパク質の予測分子量および測定分子量

SDS−PAGE、エラスターゼ活性および質量分析の結果は、I型ブタ膵臓エラスタ ーゼの自己活性化形態が、トリプシン切断部位をエラスターゼ切断部位で置換するように プロペプチド配列を操作することによって生成し得ることを示した。I型ブタ膵臓エラス ターゼのこれらの自己活性化形態の発現レベルは、野生型トリプシン活性化形態よりも低 い。試験された自動活性化クローンのうち、pPROT101−49−Vプロペプチド配 列を有するクローンは、最高レベルの発現、および少なくとも自然な変換の変換を示した 。pPROT101−49−VおよびpPROT101−55L−Vクローンの変換は、 実質的なエラスターゼ活性を有する成熟タンパク質の生成をもたらした。質量分析解析は 、pPROT101−49−Vプロタンパク質、および成熟ブタI型の分子量が予測され た質量に相当することを明らかにした。

6.9 BENZ比色ペプチド基質アッセイによる成熟組換えヒトエラスターゼ−1のト リプシン活性解析 低分子ペプチド基質N−ベンゾイル−Phe−Val−Arg−pニトロアニリド(B ENZ)を用いた比色加水分解アッセイを行って、自己活性化クローン201−55M3 −003−VUによって生成された、精製された成熟エラスターゼタンパク質がトリプシ ン活性を有するかどうかを決定した。クローン201−55M3−003−VUから精製 された、凍結乾燥されたPRT−201の3つのバイアルを−80℃保存から回復し、水 で再構築し、0.1×PBS、pH7.4中の1mg/mLのPRT−201を得た。2 80nmのUV吸光度を測定することによって、タンパク質濃度を確認した。TrypZ eanストック溶液(10mg/mL)を用いて、トリプシン活性について標準曲線を作 成した。以前に試験されたトリプシン活性化PRT−201試料を正の対照として含めた 。さらに、いくつかの実験試料および対照試料は、TrypZeanでスパイクされ、P RT−201の存在下でトリプシン活性回復を決定した。スパイクされた試料およびスパ イクされていない試料の一部は、大豆トリプシン阻害剤(SBTI)で処理され、任意の 固有のトリプシン活性またはスパイクされたトリプシン活性を阻害するSBTIの能力に ついて決定した。また、TrypZean標準をSBTIで処理し、阻害剤の有効性を確 認した。この研究に含まれる試料の概要については以下の表11を参照されたい。

表11:標準曲線のためのTrypZean希釈物はアッセイ緩衝液(0.1M Tris、pH8.3)を用いて 調製された。TrypZean溶液についての標準曲線を図21に示す。

基質溶液(0.1M Tris、pH8.3中の0.4mg/mL N−ベンゾイル− Phe−Val−Arg−pニトロアニリド ロット7733)を調製し、水浴中で30 ℃に予熱した。3点測定にして、100μlの各試料を96ウェルマイクロプレートにピ ペッティングした。マルチチャンネルのピペッターを用いて、200μlの基質溶液を各 ウェルにピペッティングし、予め30℃に加熱されたマイクロプレリーダーにマイクロプ レートを即座に置いた。マイクロプレリーダーは、60分間、1分当たり1回、各ウェル について405nmの吸光度を記録した。

また、PRT−201試料は、SLAPアッセイにおいてエラスターゼ活性について試 験された。SLAP基質溶液(0.1M Tris、pH8.3中の4.5mg/mL SLAP)を調製し、水浴中で30℃に予熱した。1mg/mLのPRT−201試料を 水で20倍に希釈し、0.05mg/mLとした。3点測定にして、10μlの各試料希 釈物を96ウェルマイクロプレートにピペッティングした。マルチチャンネルピペッター を用いて、300μlのSLAP基質溶液を各ウェルにピペッティングし、予め30℃に 加熱されたマイクロプレリーダーにマイクロプレートを即座に置いた。マイクロプレート リーダーは、5分間、1分当たり1回、各ウェルについて405nmの吸光度を記録した 。

BENZおよびSLAP活性アッセイの結果をそれぞれ下記の表12および13に示す 。

表12.平均トリプシン活性、TrypZean濃度同等物(ng/mL)として報告される。[a]回帰係 数<0.8。

表13.平均SLAP活性、U/mgとして報告される。

クローン201−55M3−003−VU由来のPRT−201のトリプシン活性のレ ベルは、トリプシン活性アッセイにおける標準曲線の範囲を下回っていた(<1.56n g/mL)。加えて、3点測定の加水分解反応物の回帰係数は小さく(<0.8)、さら に、この自己活性化成熟エラスターゼタンパク質におけるトリプシン活性の不存在を指示 した。対照的に、対照のトリプシン活性試料のトリプシン活性のレベルは8.7ng/m Lであると決定された。

7.配列表

8.具体的な実施形態、参考文献の引用 本発明は、以下の具体的な実施形態により例示される。 1.(i)エラスターゼ認識配列を含むエラスターゼ活性化配列が(ii)成熟エラス ターゼのアミノ酸配列に作動的に連結されているタンパク質。 2.エラスターゼ認識配列が配列番号11を含む、実施形態1のタンパク質。 3.エラスターゼ認識配列が配列番号12を含む、実施形態1のタンパク質。 4.エラスターゼ認識配列が配列番号13を含む、実施形態1のタンパク質。 5.エラスターゼ認識配列が配列番号93を含む、実施形態1のタンパク質。 6.エラスターゼ認識配列が配列番号14、配列番号15、配列番号18、配列番号2 0、または配列番号21のいずれか1つを含む、実施形態1、実施形態2、または実施形 態4のいずれかのタンパク質。 7.活性化配列が配列番号80を含む、実施形態1のタンパク質。 8.活性化配列が配列番号23、配列番号72、または配列番号73のいずれか1つを 含む、実施形態1または実施形態7のタンパク質。 9.配列番号74を含む切断ドメインを含む、実施形態1のタンパク質。 10.切断ドメインが配列番号42、配列番号43、配列番号48、配列番号49、配 列番号52、配列番号53、配列番号54、および配列番号55のいずれか1つを含む、 実施形態1または実施形態9のタンパク質。 11.配列番号64を含む、実施形態1から5および7のいずれか1つのタンパク質。 12.配列番号69を含む、実施形態1から5および7のいずれか1つのタンパク質。 13.配列番号74の切断ドメインを含むI型プロエラスターゼタンパク質。 14.切断ドメインが配列番号42、配列番号43、配列番号48、配列番号49、配 列番号52、配列番号53、配列番号54、または配列番号55のいずれか1つを含む、 実施形態13のI型プロエラスターゼタンパク質。 15.成熟エラスターゼ配列が、配列番号84または配列番号1の位置6(例えば、本 明細書のエラスターゼアミノ酸記号表示によるP’5残基のC末端側)から末端までのア ミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態13または実 施形態14のI型プロエラスターゼタンパク質。 16.配列番号84または配列番号1の位置6(例えば、本明細書のエラスターゼアミ ノ酸記号表示によるP’5残基のC末端側)から末端までのアミノ酸配列と少なくとも9 5%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態13または実施形態14のI型プロエラ スターゼタンパク質。 17.配列番号84または配列番号1の位置6から最後までのアミノ酸配列と少なくと も98%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態13または実施形態14のI型プロ エラスターゼタンパク質。 18.成熟エラスターゼが、配列番号84または配列番号1の位置6から最後までのア ミノ酸配列に対して、最大10カ所の保存的アミノ酸変化を有する配列を含む、実施形態 13または実施形態14のI型プロエラスターゼタンパク質。 19.配列番号84または配列番号1の位置6から最後までのアミノ酸配列に対して、 最大7カ所の保存的アミノ酸変化を有する配列を含む、実施形態13または実施形態14 のI型プロエラスターゼタンパク質。 20.配列番号84または配列番号1の位置6から最後までのアミノ酸配列に対して、 最大5カ所の保存的アミノ酸変化を有する配列を含む、実施形態13または実施形態14 のI型プロエラスターゼタンパク質。 21.配列番号74中の「Xaa1」によって示されるアミノ酸残基がグルタミン酸ま たはヒスチジンである、実施形態13から20のいずれか1つのI型プロエラスターゼタ ンパク質。 22.配列番号74中の「Xaa4」によって示されるアミノ酸残基がプロリンである 、実施形態13から21のいずれか1つのI型プロエラスターゼタンパク質。 23.配列番号74中の「Xaa5」によって示されるアミノ酸残基がアラニンである 、実施形態13から22のいずれか1つのI型プロエラスターゼタンパク質。 24.配列番号74中の「Xaa1」によって示されるアミノ酸残基がヒスチジンであ り、配列番号74中の「Xaa4」によって示されるアミノ酸残基がプロリンであり、配 列番号74中の「Xaa5」によって示されるアミノ酸残基がアラニンである、実施形態 13から23のいずれか1つのI型プロエラスターゼタンパク質。 25.配列番号103のアミノ酸配列を含む、実施形態13から24のいずれか1つの I型プロエラスターゼタンパク質。 26.配列番号64のアミノ酸配列を含む、実施形態25のI型プロエラスターゼタン パク質。 27.配列番号69のアミノ酸配列を含む、実施形態25のI型プロエラスターゼタン パク質。 28.単離された、実施形態1から27のいずれか1つのタンパク質。 29.シグナル配列を含む、実施形態1から27のいずれか1つのタンパク質。 30.(i)シグナル配列と、(ii)エラスターゼ認識配列を含むエラスターゼ活性 化配列と、(iii)成熟エラスターゼのアミノ酸配列とを含むタンパク質。 31.シグナル配列がメタノール資化酵母(Pichia pastoris)におい て作動的である、実施形態30のタンパク質。 32.シグナル配列が酵母α因子シグナルペプチドである、実施形態30のタンパク質 。 33.酵母α因子シグナルペプチドが配列番号34のアミノ酸配列を含む、実施形態3 2のタンパク質。 34.シグナル配列が哺乳動物の分泌シグナル配列である、実施形態30のタンパク質 。 35.哺乳動物の分泌シグナル配列がブタI型エラスターゼシグナル配列である、実施 形態34のタンパク質。 36.哺乳動物の分泌シグナル配列がヒトI型エラスターゼシグナル配列である、実施 形態34のタンパク質。 37.エラスターゼ認識配列がヒトI型エラスターゼ認識配列である、実施形態1また は実施形態30のタンパク質。 38.成熟エラスターゼがヒトI型エラスターゼである、実施形態1または実施形態3 0のタンパク質。 39.成熟エラスターゼがブタI型エラスターゼである、実施形態1または実施形態3 0のタンパク質。 40.実施形態1から39のいずれか1つのタンパク質をコードする核酸。 41.(i)エラスターゼ認識配列を含む活性化配列が(ii)エラスターゼのアミノ 酸配列に作動的に連結されているタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分 子。 42.タンパク質が、前記活性化配列に作動的に連結されたシグナル配列をさらに含む 、実施形態41の核酸分子。 43.シグナル配列がメタノール資化酵母において作動的である、実施形態41または 実施形態42の核酸分子。 44.エラスターゼ認識配列がI型エラスターゼ認識配列である、実施形態41から4 3のいずれか1つの核酸分子。 45.エラスターゼ認識配列がI型ヒトエラスターゼ認識配列である、実施形態41か ら44のいずれか1つの核酸分子。 46.エラスターゼ認識配列が配列番号11を含む、実施形態41から45のいずれか 1つの核酸分子。 47.エラスターゼ認識配列が配列番号12を含む、実施形態41から45のいずれか 1つの核酸分子。 48.エラスターゼ認識配列が配列番号13を含む、実施形態41から45のいずれか 1つの核酸分子。 49.エラスターゼ認識配列が配列番号93を含む、実施形態41から45のいずれか 1つの核酸分子。 50.エラスターゼ認識配列が配列番号14、配列番号15、配列番号18、配列番号 20、または配列番号21のいずれか1つを含む、実施形態41から46および48のい ずれか1つの核酸分子。 51.活性化配列が配列番号80を含む、実施形態41から50のいずれか1つの核酸 分子。 52.活性化配列が配列番号23、配列番号72、または配列番号73を含む、実施形 態41から45および51のいずれか1つの核酸分子。 53.タンパク質が、配列番号74を含む切断ドメインを含む、実施形態41から46 のいずれか1つの核酸分子。 54.切断ドメインが配列番号42、配列番号43、配列番号48、配列番号49、配 列番号52、配列番号53、配列番号54、および配列番号55のいずれか1つを含む、 実施形態41から46および53のいずれか1つの核酸分子。 55.エラスターゼが成熟ヒトI型エラスターゼである、実施形態41から54のいず れか1つの核酸分子。 56.エラスターゼが成熟ブタI型エラスターゼである、実施形態41から54のいず れか1つの核酸分子。 57.エラスターゼが配列番号5、配列番号84、配列番号87、および配列番号39 のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態41から54のいずれか1つの核酸分子 。 58.エラスターゼが配列番号1または配列番号4のアミノ酸配列を含む、実施形態5 7の核酸分子。 59.シグナル配列が酵母α因子シグナルペプチドである、実施形態42から58のい ずれか1つの核酸分子。 60.タンパク質が配列番号34、配列番号50、配列番号51、配列番号96、およ び配列番号97のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態59の核酸分子。 61.シグナル配列が哺乳動物の分泌シグナル配列である、実施形態42および44か ら58のいずれか1つの核酸分子。 62.哺乳動物の分泌シグナル配列がブタI型エラスターゼシグナル配列である、実施 形態61の核酸分子。 63.哺乳動物の分泌シグナル配列がヒトI型エラスターゼシグナル配列である、実施 形態61の核酸分子。 64.タンパク質が、配列番号88から91および98から103のいずれか1つのア ミノ酸配列を含む、実施形態41から63のいずれか1つの核酸分子。 65.タンパク質が、配列番号6から9および64から69のいずれか1つのアミノ酸 配列を含む、実施形態64の核酸分子。 66.タンパク質が、表2に記載されるエラスターゼ多型の組合せのいずれかを含む、 実施形態64の核酸分子。 67.タンパク質が、表3に記載されるエラスターゼ多型の組合せのいずれかを含む、 実施形態64の核酸分子。 68.実施形態41から67のいずれか1つの核酸分子によりコードされるタンパク質 。 69.単離された、実施形態68のタンパク質。 70.実施形態41から67のいずれか1つの核酸分子を含むベクター。 71.前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結された、遺伝子発 現を制御するヌクレオチド配列をさらに含む、実施形態70のベクター。 72.前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列が多量体化される、実施形態70 または実施形態71のベクター。 73.実施形態70から72のいずれか1つのベクターを含む宿主細胞。 74.前記ベクターの少なくとも1コピーが宿主細胞ゲノム内に組み込まれる、実施形 態73の宿主細胞。 75.前記ベクターの1コピーが宿主細胞ゲノム内に組み込まれる、実施形態74の宿 主細胞。 76.前記ベクターの2〜5コピーが宿主細胞ゲノム内に組み込まれる、実施形態74 の宿主細胞。 77.前記ベクターの2コピーが宿主細胞ゲノム内に組み込まれる、実施形態74また は76の宿主細胞。 78.前記ベクターの3コピーが宿主細胞ゲノム内に組み込まれる、実施形態74また は76の宿主細胞。 79.実施形態41から67のいずれか1つの核酸分子の少なくとも1コピーがそのゲ ノム内に組み込まれる宿主細胞。 80.前記核酸分子の1コピーがそのゲノム内に組み込まれる、実施形態79の宿主細 胞。 81.前記核酸分子の2〜5コピーがそのゲノム内に組み込まれる、実施形態79の宿 主細胞。 82.前記核酸分子の2コピーがそのゲノム内に組み込まれる、実施形態79の宿主細 胞。 83.前記核酸分子の3コピーがそのゲノム内に組み込まれる、実施形態79の宿主細 胞。 84.実施形態41から67のいずれか1つの核酸分子を発現するように遺伝子改変さ れた細胞。 85.前記ヌクレオチド配列がメタノール誘導性プロモーターに作動的に連結されてい る、実施形態84の細胞。 86.実施形態41から67のいずれか1つのヌクレオチド配列を発現するように遺伝 子改変されたメタノール資化酵母細胞。 87.前記ヌクレオチド配列がメタノール誘導性プロモーターに作動的に連結されてい る、実施形態87のメタノール資化酵母細胞。 88.実施形態1から27または実施形態68のいずれか1つのタンパク質を含む細胞 培養物上清。 89.実施形態84の宿主細胞をタンパク質が生成される条件下で培養するステップを 含む、エラスターゼタンパク質を作製する方法。 90.実施形態85の宿主細胞をタンパク質が生成される条件下で培養するステップを 含む、エラスターゼタンパク質を作製する方法。 91.実施形態86の宿主細胞をタンパク質が生成される条件下で培養するステップを 含む、エラスターゼタンパク質を作製する方法。 92.実施形態87の宿主細胞をタンパク質が生成される条件下で培養するステップを 含む、エラスターゼタンパク質を作製する方法。 93.前記条件が、pH2〜6での増殖時間または誘導時間を含む、実施形態91また は実施形態92の方法。 94.前記条件が、22℃〜28℃の温度での増殖時間または誘導時間を含む、実施形 態91または実施形態92の方法。 95.宿主細胞が複合培地中で培養される、実施形態89から92のいずれか1つの方 法。 96.複合培地が、緩衝されたメタノール複合培地または緩衝されたグリセロール複合 培地である、実施形態95の方法。 97.宿主細胞がクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の存在下で培養 される、実施形態89から96のいずれか1つの方法。 98.クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、それぞれ、クエン酸ナ トリウム、コハク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムである、実施形態97の方法。 99.1種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、5〜50mM、 7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、100〜150mM、75 〜125mM、または90〜110mMの濃度で前記培養物中に存在する、実施形態97 または実施形態98の方法。 100.複数種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が前記培養物中 に存在し、前記溶液中におけるクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の総 濃度が5〜50mM、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、10 0〜150mM、75〜125mM、または90〜110mMである、実施形態97また は実施形態98の方法。 101.タンパク質を回収するステップをさらに含む、実施形態89から100のいず れか1つの方法。 102.タンパク質が、上清を回収することによって回収される、実施形態95の方法 。 103.タンパク質が上清から回収される、実施形態95の方法。 104.回収されたタンパク質がシグナル配列を欠く、実施形態95から104のいず れか1つの方法。 105.回収されたタンパク質がシグナル配列および活性化配列を欠く、実施形態95 から104のいずれか1つの方法。 106.タンパク質を含有する溶液のpHをpH6〜12まで上昇させるステップをさ らに含む、実施形態89から92および93から105のいずれか1つの方法。 107.タンパク質を触媒量のエラスターゼと接触させるステップをさらに含む、実施 形態89から92および93から106のいずれか1つの方法。 108.タンパク質を自己活性化条件下に置くステップ、タンパク質を触媒量のエラス ターゼと接触させるステップ、またはこれらの両方のステップをさらに含む、実施形態8 9から92および93から106のいずれか1つの方法。 109.タンパク質が自己活性化条件下に置かれる、実施形態108の方法。 110.自己活性化条件下に置かれるとき、タンパク質が上清中にある、実施形態10 9の方法。 111.エラスターゼタンパク質を作製する方法であって、 (a)組換えプロエラスターゼタンパク質の発現が可能な宿主細胞を、第1のクエン酸 化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の存在下で培養するステップと、 (b)前記宿主細胞の培養物から組換えプロエラスターゼタンパク質を回収するステッ プと、 (c)場合によって、前記組換えプロエラスターゼタンパク質を活性化条件に曝露して 、成熟エラスターゼタンパク質を作製するステップと を含み、これらによりエラスターゼタンパク質を作製する方法。 112.組換えプロエラスターゼタンパク質を活性化条件に曝露して、成熟エラスター ゼタンパク質を作製するステップを含む、実施形態111の方法。 113.活性化条件への前記曝露前に組換えプロエラスターゼタンパク質が精製される 、実施形態112の方法。 114.精製されたプロエラスターゼタンパク質と、第2のクエン酸化合物、コハク酸 化合物、または酢酸化合物とを含む溶液が生成されるように、前記組換えプロエラスター ゼタンパク質が、第2のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の存在下で 精製される、実施形態113の方法。 115.前記第1のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、それぞれ 、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムである、実施形態1 11から114のいずれか1つの方法。 116.前記第2のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、それぞれ 、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムである、実施形態1 14または実施形態115の方法。 117.前記第1および第2のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が 同じである、実施形態114から116のいずれか1つの方法。 118.前記第1および第2のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が 異なる、実施形態114から116のいずれか1つの方法。 119.1種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、5〜50mM 、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、100〜150mM、7 5〜125mM、または90〜110mMの濃度で前記培養物中に存在する、実施形態1 14から118のいずれか1つの方法。 120.複数種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が前記培養物中 に存在し、前記培養物中におけるクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の 総濃度が5〜50mM、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、1 00〜150mM、75〜125mM、または90〜110mMである、実施形態114 から118のいずれか1つの方法。 121.1種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、5〜50mM 、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、100〜150mM、7 5〜125mM、または90〜110mMの濃度で前記溶液中に存在する、実施形態11 1から120のいずれか1つの方法。 122.複数種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が前記溶液中に 存在し、前記溶液中におけるクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の総濃 度が5〜50mM、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、100 〜150mM、75〜125mM、または90〜110mMである、実施形態111から 120のいずれか1つの方法。 123.宿主細胞が複合培地中で培養される、実施形態111から122のいずれか1 つの方法。 124.複合培地が、緩衝されたメタノール複合培地または緩衝されたグリセロール複 合培地である、実施形態123の方法。 125.プロエラスターゼタンパク質が、前記宿主細胞の上清から回収される、実施形 態111から124のいずれか1つの方法。 126.前記活性化条件がトリプシンへの曝露を含む、実施形態111から125のい ずれか1つの方法。 127.前記活性化条件が自己活性化条件である、実施形態111から125のいずれ か1つの方法。 128.前記成熟エラスターゼタンパク質を単離するステップをさらに含む、実施形態 111から127のいずれか1つの方法。 129.成熟エラスターゼタンパク質が成熟I型エラスターゼタンパク質である、実施 形態111から128のいずれか1つの方法。 130.成熟I型エラスターゼタンパク質がヒトI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態129の方法。 131.成熟I型エラスターゼタンパク質がブタI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態129の方法。 132.成熟エラスターゼタンパク質を作製する方法であって、 (a)プロエラスターゼタンパク質を凍結乾燥させるステップと、 (b)凍結乾燥したプロエラスターゼタンパク質を保存するステップと、 (c)凍結乾燥したプロエラスターゼタンパク質を再溶解するステップと、 (d)再溶解されたプロエラスターゼタンパク質を活性化するステップと を含み、これらにより成熟エラスターゼタンパク質を作製する方法。 133.プロエラスターゼタンパク質が組換え体である、実施形態132の方法。 134.(i)プロエラスターゼタンパク質を発現させることが可能な宿主細胞をプロ エラスターゼタンパク質が発現する条件下で培養するステップと、(ii)プロエラスタ ーゼタンパク質を回収するステップとを含む工程により、プロエラスターゼタンパク質が 作製されるかまたは得ることができる、実施形態133の方法。 135.宿主細胞が複合培地中で培養される、実施形態134の方法。 136.複合培地が、緩衝されたメタノール複合培地または緩衝されたグリセロール複 合培地である、実施形態135の方法。 137.宿主細胞が、クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の存在下で 培養される、実施形態132から136のいずれか1つの方法。 138.クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、それぞれ、クエン酸 ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムである、実施形態137の方法 。 139.1種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、5〜50mM 、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、100〜150mM、7 5〜125mM、または90〜110mMの濃度で前記培養物中に存在する、実施形態1 37または実施形態138の方法。 140.複数種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が前記培養物中 に存在し、前記溶液中におけるクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の総 濃度が5〜50mM、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、10 0〜150mM、75〜125mM、または90〜110mMである、実施形態137ま たは実施形態138の方法。 141.プロエラスターゼタンパク質が、前記宿主細胞の上清から回収される、実施形 態132から140のいずれか1つの方法。 142.プロエラスターゼタンパク質が、凍結乾燥前に精製される、実施形態132か ら141のいずれか1つの方法。 143.凍結乾燥したプロエラスターゼタンパク質が、少なくとも1日間、少なくとも 1週間、少なくとも1カ月間、または少なくとも3カ月間にわたり保存される、実施形態 132から142のいずれか1つの方法。 144.プロエラスターゼタンパク質が−80℃〜+4℃の温度で保存される、実施形 態132から143のいずれか1つの方法。 145.前記活性化するステップがトリプシン活性化を含む、実施形態132から14 4のいずれか1つの方法。 146.前記活性化するステップが自己活性化を含む、実施形態132から144のい ずれか1つの方法。 147.前記成熟エラスターゼタンパク質を単離するステップをさらに含む、実施形態 132から146のいずれか1つの方法。 148.成熟エラスターゼタンパク質が成熟I型エラスターゼタンパク質である、実施 形態132から147のいずれか1つの方法。 149.成熟I型エラスターゼタンパク質がヒトI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態148の方法。 150.成熟I型エラスターゼタンパク質がブタI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態148の方法。 151.成熟I型エラスターゼタンパク質を作製する方法であって、組換え自己活性化 I型プロエラスターゼタンパク質を自己活性化条件下に置くステップ、組換え自己活性化 I型プロエラスターゼタンパク質を触媒量のエラスターゼと接触させるステップ、または これらの両方のステップを含み、これらにより成熟I型エラスターゼタンパク質を作製す る方法。 152.(a)実施形態84または86の宿主細胞を前記タンパク質が発現する条件下 で培養するステップと、 (b)発現したタンパク質を回収するステップと を含み、これらにより組換え自己活性化I型プロエラスターゼタンパク質を作製する工程 により、前記組換え自己活性化I型プロエラスターゼタンパク質が得られるかまたは得る ことができる、実施形態151の方法。 153.宿主細胞が複合培地中で培養される、実施形態152の方法。 154.複合培地が、緩衝されたメタノール複合培地または緩衝されたグリセロール複 合培地である、実施形態153の方法。 155.宿主細胞が、クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の存在下で 培養される、実施形態152から154のいずれか1つの方法。 156.クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、それぞれ、クエン酸 ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムである、実施形態155の方法 。 157.1種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、5〜50mM 、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、100〜150mM、7 5〜125mM、または90〜110mMの濃度で前記培養物中に存在する、実施形態1 55または実施形態156の方法。 158.複数種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が前記培養物中 に存在し、前記溶液中におけるクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の総 濃度が5〜50mM、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、10 0〜150mM、75〜125mM、または90〜110mMである、実施形態155ま たは実施形態156の方法。 159.発現したタンパク質を回収するステップが、上清を回収することを含む、実施 形態152から158のいずれか1つの方法。 160.前記自己活性化ステップが上清中において実施される、実施形態159の方法 。 161.発現したタンパク質が上清から回収される、実施形態152から154のいず れか1つの方法。 162.前記自己活性化ステップが上清中において実施される、実施形態161の方法 。 163.発現したタンパク質を精製するステップをさらに含む、実施形態161の方法 。 164.組換え自己活性化I型プロエラスターゼタンパク質を自己活性化条件下に置く ステップが、回収されたタンパク質を含有する溶液のpHを上昇させることを含む、実施 形態151から163のいずれか1つの方法。 165.溶液のpHを塩基性pHまで上昇させる、実施形態164の方法。 166.塩基性pHが7〜9の範囲内にある、実施形態165の方法。 167.塩基性pHが8である、実施形態166の方法。 168.回収されたタンパク質が、前記溶液中において10mg/ml以下の濃度であ る、実施形態164から167のいずれか1つの方法。 169.回収されたタンパク質が、前記溶液中において5mg/ml以下の濃度である 、実施形態164から167のいずれか1つの方法。 170.回収されたタンパク質が、前記溶液中において2mg/ml以下の濃度である 、実施形態164から167のいずれか1つの方法。 171.回収されたタンパク質が、前記溶液中において1mg/ml以下の濃度である 、実施形態164から167のいずれか1つの方法。 172.回収されたタンパク質が、前記溶液中において0.5mg/ml以下の濃度で ある、実施形態164から167のいずれか1つの方法。 173.回収されたタンパク質が、前記溶液中において0.25mg/ml以下の濃度 である、実施形態164から167のいずれか1つの方法。 174.回収されたタンパク質が、前記溶液中において少なくとも0.1mg/mlの 濃度である、実施形態165から173のいずれか1つの方法。 175.回収されたタンパク質が、前記溶液中において少なくとも0.2mg/mlの 濃度である、実施形態165から173のいずれか1つの方法。 176.回収されたタンパク質が、0.5〜8時間にわたり塩基性pHに曝露される、 実施形態165から175のいずれか1つの方法。 177.回収されたタンパク質が、2〜7時間にわたり塩基性pHに曝露される、実施 形態174の方法。 178.回収されたタンパク質が、6時間にわたり塩基性pHに曝露される、実施形態 177の方法。 179.前記塩基性pHへの曝露が22℃〜28℃の温度で実施される、実施形態16 5から178のいずれか1つの方法。 180.前記塩基性pHへの曝露が26℃の温度で実施される、実施形態179の方法 。 181.回収されたタンパク質が自己活性化前に保存される、実施形態152から18 0のいずれか1つの方法。 182.回収されたタンパク質が保存前に乾燥凍結される、実施形態181の方法。 183.回収されたタンパク質が乾燥凍結前に精製される、実施形態182の方法。 184.回収されたタンパク質が、少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも 1カ月間、または少なくとも3カ月間にわたり保存される、実施形態181から183の いずれか1つの方法。 185.回収されたタンパク質が80℃〜+4℃の温度で保存される、実施形態184 の方法。 186.組換え自己活性化I型プロエラスターゼが、自己活性化条件下に置かれる前に 精製される、実施形態150から185のいずれか1つの方法(ただし、これらの実施形 態が実施形態160または162に従属しない場合に限る)。 187.前記成熟I型エラスターゼタンパク質を単離するステップをさらに含む、実施 形態150から186のいずれか1つの方法。 188.成熟I型エラスターゼタンパク質がヒトI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態150から187のいずれか1つの方法。 189.成熟I型エラスターゼタンパク質がブタI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態150から187のいずれか1つの方法。 190.成熟I型プロエラスターゼタンパク質を作製する方法であって、 (a)実施形態84または86の宿主細胞を前記タンパク質が発現する条件下で培養す るステップと、 (b)発現したタンパク質を回収するステップと、 (c)回収されたタンパク質を精製するステップと、 (d)前記タンパク質を含有する溶液のpHを上昇させるか、または回収されたタンパ ク質を触媒量のエラスターゼと接触させて、成熟I型エラスターゼタンパク質を作製する ステップと を含み、これらにより成熟I型エラスターゼタンパク質を作製する方法。 191.宿主細胞が複合培地中で培養される、実施形態190の方法。 192.複合培地が、緩衝されたメタノール複合培地または緩衝されたグリセロール複 合培地である、実施形態191の方法。 193.宿主細胞が、クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の存在下で 培養される、実施形態190から192のいずれか1つの方法。 194.クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、それぞれ、クエン酸 ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムである、実施形態193の方法 。 195.1種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、5〜50mM 、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、100〜150mM、7 5〜125mM、または90〜110mMの濃度で前記培養物中に存在する、実施形態1 93または実施形態194の方法。 196.複数種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が前記培養物中 に存在し、前記溶液中におけるクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の総 濃度が5〜50mM、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、10 0〜150mM、75〜125mM、または90〜110mMである、実施形態193ま たは実施形態194の方法。 197.(e)前記成熟I型エラスターゼを精製するステップをさらに含む、実施形態 190から196のいずれか1つの方法。 198.成熟I型エラスターゼタンパク質がヒトI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態190から197のいずれか1つの方法。 199.成熟I型エラスターゼタンパク質がブタI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態190から197のいずれか1つの方法。 200.成熟I型プロエラスターゼタンパク質を作製する方法であって、 (a)実施形態84または86の宿主細胞を前記タンパク質が発現する条件下で培養す るステップと、 (b)発現したタンパク質を回収するステップと、 (c)成熟タンパク質が生成されるまで、回収されたタンパク質を塩基性pHに曝露す るステップと を含み、これらにより成熟I型エラスターゼタンパク質を作製する方法。 201.宿主細胞が複合培地中で培養される、実施形態200の方法。 202.複合培地が、緩衝されたメタノール複合培地または緩衝されたグリセロール複 合培地である、実施形態201の方法。 203.宿主細胞が、クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の存在下で 培養される、実施形態200から202のいずれか1つの方法。 204.クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、それぞれ、クエン酸 ナトリウム、コハク酸ナトリウム、または酢酸ナトリウムである、実施形態203の方法 。 205.1種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が、5〜50mM 、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、100〜150mM、7 5〜125mM、または90〜110mMの濃度で前記培養物中に存在する、実施形態2 03または実施形態204の方法。 206.複数種のクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物が前記培養物中 に存在し、前記溶液中におけるクエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の総 濃度が5〜50mM、7.5〜100mM、10〜150mM、50〜200mM、10 0〜150mM、75〜125mM、または90〜110mMである、実施形態203ま たは実施形態204の方法。 207.塩基性pHが7〜9である、実施形態200から206のいずれか1つの方法 。 208.塩基性pHが8である、実施形態207の方法。 209.回収されたタンパク質が、塩基性pHに曝露したときに10mg/ml以下の 濃度である、実施形態200から208のいずれか1つの方法。 210.回収されたタンパク質が、塩基性pHに曝露したときに5mg/ml以下の濃 度である、実施形態200から208のいずれか1つの方法。 211.回収されたタンパク質が、塩基性pHに曝露したときに2mg/ml以下の濃 度である、実施形態200から208のいずれか1つの方法。 212.回収されたタンパク質が、塩基性pHに曝露したときに1mg/ml以下の濃 度である、実施形態200から208のいずれか1つの方法。 213.回収されたタンパク質が、塩基性pHに曝露したときに0.5mg/ml以下 の濃度である、実施形態200から208のいずれか1つの方法。 214.回収されたタンパク質が、塩基性pHに曝露したときに0.25mg/ml以 下の濃度である、実施形態200から208のいずれか1つの方法。 215.回収されたタンパク質が、塩基性pHに曝露したときに少なくとも0.1mg /mlの濃度である、実施形態209から214のいずれか1つの方法。 216.回収されたタンパク質が、塩基性pHに曝露したときに少なくとも0.2mg /mlの濃度である、実施形態209から214のいずれか1つの方法。 217.回収されたタンパク質が、0.5〜8時間にわたり塩基性pHに曝露される、 実施形態200から214のいずれか1つの方法。 218.回収されたタンパク質が、2〜7時間にわたり塩基性pHに曝露される、実施 形態217の方法。 219.回収されたタンパク質が、6時間にわたり塩基性pHに曝露される、実施形態 218の方法。 220.前記塩基性pHへの曝露が22℃〜28℃の温度で実施される、実施形態20 0から219のいずれか1つの方法。 221.前記塩基性pHへの曝露が26℃の温度で実施される、実施形態220の方法 。 222.(d)前記成熟I型エラスターゼタンパク質を単離するステップをさらに含む 、実施形態200から221のいずれか1つの方法。 223.成熟I型エラスターゼが成熟ブタI型エラスターゼである、実施形態150か ら222のいずれか1つの方法。 224.成熟I型エラスターゼが成熟ヒトI型エラスターゼである、実施形態150か ら222のいずれか1つの方法。 225.成熟エラスターゼタンパク質の製剤を作製する方法であって、 (a)活性化プロエラスターゼタンパク質を自己活性化条件下に置いて成熟エラスター ゼタンパク質を作製するステップと、 (b)成熟エラスターゼタンパク質を製剤化するステップと を含み、これらにより成熟エラスターゼタンパク質の製剤を作製する方法。 226.自己活性化プロエラスターゼタンパク質が組換え体である、実施形態225の 方法。 227.ステップ(a)の前に、プロエラスターゼタンパク質が発現する条件下で増殖 した前記自己活性化プロエラスターゼタンパク質を発現させることが可能な宿主細胞の培 養物からプロエラスターゼタンパク質を回収するステップをさらに含む、実施形態226 の方法。 228.ステップ(b)の前に、前記成熟エラスターゼタンパク質を精製するステップ をさらに含む、実施形態225または実施形態226の方法。 229.前記製剤化するステップが、前記成熟エラスターゼタンパク質を凍結乾燥させ ることを含む、実施形態225から228のいずれか1つの方法。 230.凍結乾燥前に、成熟エラスターゼタンパク質が緩衝液または緩衝成分と混合さ れない、実施形態229の方法。 231.凍結乾燥後に、成熟エラスターゼタンパク質が1種または複数種の緩衝成分と 混合される、実施形態230の方法。 232.凍結乾燥前に、成熟エラスターゼタンパク質が緩衝液または1種もしくは複数 種の緩衝成分と混合される、実施形態229の方法。 233.緩衝液がリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)バッファーであるか、または緩 衝成分がPBS緩衝成分である、実施形態231または232の方法。 234.緩衝液がデキストランを含むか、または緩衝成分がデキストランを含む、実施 形態231から233のいずれか1つの方法。 235.デキストランがデキストラン−18である、実施形態234の方法。 236.緩衝液がポリソルベート80を含む、実施形態230から235のいずれか1 つの方法。 237.前記製剤化するステップが、凍結乾燥した成熟エラスターゼタンパク質を液体 で再溶解することをさらに含む、実施形態229から236のいずれか1つの方法。 238.液体が水である、実施形態237の方法。 239.液体が緩衝液である、実施形態237の方法。 240.緩衝液が、希釈されない緩衝液であるか、濃縮緩衝液であるか、または希釈緩 衝液である、実施形態239の方法。 241.再溶解時において、成熟エラスターゼタンパク質溶液が、希釈されない緩衝剤 、濃縮緩衝液、または希釈緩衝液中において生成される、実施形態237から240のい ずれか1つの方法。 242.緩衝成分が凍結乾燥物中に存在するか、再溶解時に添加されるか、またはその 両方である、実施形態241の方法。 243.希釈されない緩衝液が1×PBSを含む、実施形態240から242のいずれ か1つの方法。 244.希釈緩衝液が0.1×PBS〜0.5×PBSを含む、実施形態240または 実施形態241の方法。 245.希釈緩衝液が0.1×PBSを含む、実施形態244の方法。 246.希釈緩衝液が0.5×PBSを含む、実施形態244の方法。 247.濃縮緩衝液が1.1×PBS〜3×PBSを含む、実施形態240または実施 形態241の方法。 248.濃縮緩衝液が1.5×PBS〜2×PBSを含む、実施形態247の方法。 249.緩衝液がデキストランを含む、実施形態241から248のいずれか1つの方 法。 250.デキストランがデキストラン18である、実施形態249の方法。 251.緩衝液がポリソルベート80を含む、実施形態241から250のいずれか1 つの方法。 252.緩衝液がpH7〜8である、実施形態241から251のいずれか1つの方法 。 253.緩衝液がpH7.4である、実施形態252の方法。 254.成熟エラスターゼタンパク質が0.001mg/ml〜50mg/mlの濃度 で再溶解される、実施形態237から253のいずれか1つの方法。 255.成熟エラスターゼタンパク質が0.1mg/ml〜40mg/mlの濃度で再 溶解される、実施形態254の方法。 256.成熟エラスターゼタンパク質が5mg/ml〜30mg/mlの濃度で再溶解 される、実施形態255の方法。 257.成熟エラスターゼタンパク質が10mg/ml〜20mg/mlの濃度で再溶 解される、実施形態256の方法。 258.前記製剤が、前記成熟エラスターゼタンパク質を含む医薬組成物である、実施 形態225から257のいずれか1つの方法。 259.成熟I型エラスターゼタンパク質がヒトI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態225から258のいずれか1つの方法。 260.成熟I型エラスターゼタンパク質がブタI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態225から258のいずれか1つの方法。 261.凍結乾燥した成熟I型エラスターゼを作製する方法であって、 (a)実施形態151から181のいずれか1つの方法に従って成熟I型エラスターゼ を作製するステップと、 (b)成熟I型エラスターゼを単離するステップと、 (c)前記単離された成熟I型エラスターゼを凍結乾燥させるステップと を含み、これらにより凍結乾燥した成熟I型エラスターゼを作製する方法。 262.凍結乾燥した成熟I型エラスターゼが95%〜100%の純度にある、実施形 態261の方法。 263.凍結乾燥した成熟I型エラスターゼが少なくとも95%の純度にある、実施形 態261または実施形態262の方法。 264.凍結乾燥した成熟I型エラスターゼが少なくとも98%の純度にある、実施形 態261または実施形態262の方法。 265.凍結乾燥した成熟I型エラスターゼが均一になるまで精製される、実施形態2 61から264のいずれか1つの方法。 266.成熟I型エラスターゼタンパク質がヒトI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態261から265のいずれか1つの方法。 267.成熟I型エラスターゼタンパク質がブタI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態261から265のいずれか1つの方法。 268.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号5、配列番号84、または 配列番号87から本質的になる、実施形態130、149、188、198、223、2 59、および267のいずれか1つの方法。 269.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号1または配列番号4から本 質的になる、実施形態268の方法。 270.成熟ブタI型エラスターゼタンパク質が、配列番号39から本質的になる、実 施形態131、150、189、199、224、260、および268のいずれか1つ の方法。 271.プロエラスターゼタンパク質が、実施形態13から27のいずれか1つのタン パク質である、実施形態111から128、132から148、151から197、およ び225から257のいずれか1つの方法。 272.発現されるタンパク質が実施形態13から27のいずれか1つのタンパク質で ある、実施形態200から実施形態222のいずれか1つの方法。 273.実施形態149、188、198、および223のいずれか1つの方法により 作製されるかまたは得ることができる成熟ヒトI型エラスターゼ。 274.1〜40U/タンパク質mgの比活性を有する、実施形態273の成熟ヒトI 型エラスターゼ。 275.実施形態150、189、199、および224のいずれか1つの方法により 作製されるかまたは得ることができる、成熟ブタI型エラスターゼ。 276.10〜100U/タンパク質mgの比活性を有する、実施形態275の成熟ヒ トI型エラスターゼ。 277.治療有効量の(a)実施形態273もしくは実施形態274の成熟ヒトI型エ ラスターゼ、または(b)実施形態259の方法により作製されるかもしくは得ることが できる成熟ヒトI型エラスターゼの製剤を含む医薬組成物。 278.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号5、配列番号84、または 配列番号87から本質的になる、実施形態277の医薬組成物。 279.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号1または配列番号4から本 質的になる、実施形態278の医薬組成物。 280.治療有効量の(a)実施形態275もしくは実施形態276の成熟ブタI型エ ラスターゼ、または(b)実施形態260の方法により作製されるかもしくは得ることが できる成熟ブタI型エラスターゼの製剤を含む医薬組成物。 281.成熟ブタI型エラスターゼタンパク質が、配列番号39から本質的になる、実 施形態280の医薬組成物。 282.(i)治療有効量の成熟ヒトI型エラスターゼと、(ii)薬学的に許容され る担体とを含む医薬組成物であって、以下の特性: (a)組成物がトリプシンを含まないこと、 (b)組成物がトリプシンを実質的に含まないこと、 (c)組成物が配列番号2、3、37、38、70および/または71からなる任意の タンパク質を含まないこと、 (d)組成物が配列番号2、3、37、38、70および/または71からなる任意の タンパク質を実質的に含まないこと、 (e)組成物が細菌タンパク質を含まないこと、 (f)組成物が細菌タンパク質を実質的に含まないこと、 (g)組成物が、前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質を含まない こと、 (h)組成物が、前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質を実質的に 含まないこと の少なくとも1つを特徴とする医薬組成物。 283.(i)治療有効量の成熟ヒトI型エラスターゼと、(ii)薬学的に許容され る担体とを含む医薬組成物であって、以下の特性: (a)組成物がトリプシンを含まないこと、 (b)組成物がトリプシンを実質的に含まないこと、 (c)組成物が配列番号70および71からなる任意のタンパク質を含まないこと、 (d)組成物が配列番号2および3からなる任意のタンパク質を実質的に含まないこと 、 (e)組成物が細菌タンパク質を含まないこと、 (f)組成物が細菌タンパク質を実質的に含まないこと、 (g)組成物が、前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質を含まない こと、 (h)組成物が、前記成熟ヒトI型エラスターゼ以外の哺乳動物タンパク質を実質的に 含まないこと の少なくとも1つを特徴とする医薬組成物。 284.特性(a)〜(h)の少なくとも2つを特徴とする、実施形態282または実 施形態283の医薬組成物。 285.前記少なくとも2つの特性が(a)および(c)を含む、実施形態284の医 薬組成物。 286.前記少なくとも2つの特性が(b)および(d)を含む、実施形態284の医 薬組成物。 287.特性(a)〜(h)の少なくとも3つを特徴とする、実施形態282または実 施形態283の医薬組成物。 288.前記少なくとも3つの特性が(a)、(c)、および(e)を含む、実施形態 284の医薬組成物。 289.前記少なくとも3つの特性が(b)、(d)、および(f)を含む、実施形態 284の医薬組成物。 290.特性(a)〜(h)の少なくとも4つを特徴とする、実施形態282または実 施形態283の医薬組成物。 291.前記少なくとも4つの特性が(a)、(c)、(e)、および(g)を含む、 実施形態284の医薬組成物。 292.前記少なくとも4つの特性が(b)、(d)、(f)、および(h)を含む、 実施形態284の医薬組成物。 293.特性(a)〜(h)の少なくとも5つを特徴とする、実施形態282または実 施形態283の医薬組成物。 294.特性(a)〜(h)の少なくとも6つを特徴とする、実施形態282または実 施形態283の医薬組成物。 295.特性(a)〜(h)の少なくとも7つを特徴とする、実施形態282または実 施形態283の医薬組成物。 296.特性(a)〜(h)のすべてを特徴とする、実施形態282または実施形態2 83の医薬組成物。 297.配列番号85、86、94、および95からなる1つ、2つ、3つ、または4 つすべてのタンパク質を含まないかまたは実質的に含まない、実施形態282から296 のいずれか1つの医薬組成物。 298.配列番号85および配列番号86からなるタンパク質を含まないかまたは実質 的に含まない、実施形態282から297のいずれか1つの医薬組成物。 299.配列番号94および配列番号95からなるタンパク質を含まないかまたは実質 的に含まない、実施形態282から297のいずれか1つの医薬組成物。 300.配列番号106、107、および108からなる1つ、2つ、または3つすべ てのタンパク質を含まないかまたは実質的に含まない、実施形態282から297のいず れか1つの医薬組成物。 301.薬学的に許容されるレベルのエンドトキシンを含有する、実施形態282から 300のいずれか1つの医薬組成物。 302.前記医薬組成物が液体組成物であり、前記薬学的に許容されるレベルのエンド トキシンが8EU/ml以下である、実施形態301の医薬組成物。 303.前記薬学的に許容されるレベルのエンドトキシンが5EU/ml以下である、 実施形態302の医薬組成物。 304.前記医薬組成物が固体組成物であり、前記薬学的に許容されるレベルのエンド トキシンが成熟ヒトI型エラスターゼ1グラム当たり10EU以下である、実施形態30 1の医薬組成物。 305.前記薬学的に許容されるレベルのエンドトキシンが成熟ヒトI型エラスターゼ 1グラム当たり5EU以下である、実施形態304の医薬組成物。 306.成熟ヒトI型エラスターゼが、1〜40U/タンパク質mgの比活性を特徴と する、実施形態282から305のいずれか1つの医薬組成物。 307.成熟ヒトI型エラスターゼが、25〜35U/タンパク質mgの比活性を特徴 とする、実施形態306の医薬組成物。 308.成熟ヒトI型エラスターゼが、10U/タンパク質mgを超える比活性を特徴 とする、実施形態306の医薬組成物。 309.成熟ヒトI型エラスターゼが、20U/タンパク質mgを超える比活性を特徴 とする、実施形態306のいずれか1つの医薬組成物。 310.成熟ヒトI型エラスターゼが、配列番号5、84、または87から本質的にな る、実施形態282から309のいずれか1つの医薬組成物。 311.成熟ヒトI型エラスターゼが、配列番号1または配列番号4から本質的になる 、実施形態310の医薬組成物。 312.トリプシン活性が、成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質1mg当たり4ng 未満に相当する、実施形態282から311のいずれか1つの医薬組成物。 313.トリプシン活性が、成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質1mg当たり2ng 未満に相当する、実施形態312の医薬組成物。 314.1mg/mlの前記タンパク質濃度への再溶解時において、トリプシン活性が 2ng/トリプシンml未満に相当する、配列番号5、84、または87から本質的にな るタンパク質の凍結乾燥製剤。 315.水分含量が5%未満である、実施形態314の凍結乾燥製剤。 316.ナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオン、および塩化物イオンを含 む、実施形態315の凍結乾燥製剤。 317.ポリソルベート80を含む、実施形態315の凍結乾燥製剤。 318.デキストランを含む、実施形態315の凍結乾燥製剤。 319.デキストランがデキストラン−18である、実施形態318の凍結乾燥製剤。 320.ナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、およびポ リソルベート80を含む、実施形態311の凍結乾燥製剤。 321.ナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、およびデ キストランを含む、実施形態314の凍結乾燥製剤。 322.デキストランがデキストラン−18である、実施形態321の凍結乾燥製剤。 323.ナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、ポリソル ベート80、およびデキストランを含む、実施形態314の凍結乾燥製剤。 324.デキストランがデキストラン−18である、実施形態323の凍結乾燥製剤。 325.トリプシン活性が2ng/トリプシンml未満に相当する、配列番号5、84 、または87から本質的になる少なくとも0.1mg/mlのタンパク質溶液を含む液体 製剤。 326.溶液が緩衝液である、実施形態325の液体製剤。 327.溶液がpH7〜8まで緩衝される、実施形態326の液体製剤。 328.溶液がPBSである、実施形態326の液体製剤。 329.溶液が137mMの塩化ナトリウム、2.7mMのリン酸カリウム、および1 0mMのリン酸ナトリウムを含む、実施形態328の液体製剤。 330.1種または複数種の賦形剤をさらに含む、実施形態325から329のいずれ か1つの液体製剤。 331.前記1種または複数種の賦形剤がデキストラン−18を含む、実施形態330 の液体製剤。 332.デキストラン−18が、前記溶液に対する重量/容量比で8%の量である、実 施形態331の液体製剤。 333.前記1種または複数種の賦形剤がポリソルベート80を含む、実施形態330 の液体製剤。 334.ポリソルベート80が、前記溶液に対する重量/容量比で0.01%の量であ る、実施形態333の液体製剤。 335.前記溶液中における前記タンパク質の濃度が0.001mg/ml〜40mg /mlの範囲にある、実施形態325から334のいずれか1つの液体製剤。 336.前記溶液中における前記タンパク質の濃度が0.1mg/ml〜20mg/m lの範囲にある、実施形態335の液体製剤。 337.1種または複数種の防腐剤、溶解剤、および着色剤をさらに含む、実施形態3 25から336のいずれか1つの液体製剤。 338.配列番号5、84、または87の前記タンパク質以外の哺乳動物タンパク質を 実質的に含まない、実施形態325から337のいずれか1つの液体製剤。 339.細菌タンパク質を実質的に含まない、実施形態325から338のいずれか1 つの液体製剤。 340.実施形態225から258のいずれか1つの方法により作製されるかまたは得 ることができる製剤。 341.液体製剤である、実施形態340の製剤。 342.成熟I型エラスターゼタンパク質がヒトI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態340または341の製剤。 343.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号5、配列番号84、または 配列番号87から本質的になる、実施形態342の製剤。 344.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号1または配列番号4から本 質的になる、実施形態342の製剤。 345.成熟I型エラスターゼタンパク質がブタI型成熟エラスターゼタンパク質であ る、実施形態340または341の製剤。 346.成熟ブタI型エラスターゼタンパク質が、配列番号39から本質的になる、実 施形態345の製剤。 347.正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質および不正確にプロセ シングされた成熟エラスターゼタンパク質の混合物から、1種または複数種の不正確にプ ロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質を除去する方法であって、 (a)正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質および不正確にプロセシ ングされた成熟エラスターゼタンパク質の混合物を含む組成物を、正確にプロセシングさ れた成熟酵素が活性となるpH下に置くステップと、 (b)1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質が 分解される時間までこのようなpHを維持するステップと を含み、これらにより、正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質および不 正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質の混合物から、前記1種または複 数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質を除去する方法。 348.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が、正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質と比べて、少なくとも1 つの付加的アミノ酸またはより少数のアミノ酸をN末端において含有する、実施形態34 7の方法。 349.前記pHが5〜12である、実施形態347または348の方法。 350.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が50%〜100%分解される、実施形態347から349のいずれか1つの方法。 351.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が50%〜99%分解される、実施形態348の方法。 352.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が50%〜98%分解される、実施形態348の方法。 353.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が50%〜95%分解される、実施形態348の方法。 354.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が50%〜90%分解される、実施形態348の方法。 355.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が少なくとも50%分解される、実施形態350から354のいずれか1つの方法。 356.混合物中におけるすべての不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタン パク質が少なくとも50%分解される、実施形態355の方法。 357.少なくとも1種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質が 少なくとも75%分解される、実施形態350から354のいずれか1つの方法。 358.複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質が少なくと も75%分解される、実施形態357の方法。 359.混合物中におけるすべての不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタン パク質が少なくとも75%分解される、実施形態357の方法。 360.少なくとも1種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質が 少なくとも90%分解される、実施形態350から354のいずれか1つの方法。 361.複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質が少なくと も90%分解される、実施形態360の方法。 362.混合物中のすべての不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質 が少なくとも90%分解される、実施形態360の方法。 363.組成物が、総エラスターゼタンパク質が10mg/ml以下の濃度である液体 組成物である、実施形態347から362のいずれか1つの方法。 364.組成物が、総エラスターゼタンパク質が5mg/ml以下の濃度である液体組 成物である、実施形態347から362のいずれか1つの方法。 365.組成物が、総エラスターゼタンパク質が2mg/ml以下の濃度である液体組 成物である、実施形態347から362のいずれか1つの方法。 366.組成物が、総エラスターゼタンパク質が1mg/ml以下の濃度である液体組 成物である、実施形態347から362のいずれか1つの方法。 367.組成物が、総エラスターゼタンパク質が0.5mg/ml以下の濃度である液 体組成物である、実施形態347から362のいずれか1つの方法。 368.組成物が、総エラスターゼタンパク質が0.25mg/ml以下の濃度である 液体組成物である、実施形態347から362のいずれか1つの方法。 369.組成物が、総エラスターゼタンパク質が少なくとも0.1mg/mlの濃度で ある液体組成物である、実施形態363から368のいずれか1つの方法。 370.組成物が、総エラスターゼタンパク質が少なくとも0.2mg/mlの濃度で ある液体組成物である、実施形態363から368のいずれか1つの方法。 371.前記組成物中におけるトリプシン活性が、総エラスターゼタンパク質1mg当 たり4ng/トリプシンml未満である、実施形態347から370のいずれか1つの方 法。 372.前記組成物中におけるトリプシン活性が、総エラスターゼタンパク質1mg当 たり2ng/トリプシンml未満である、実施形態347から370のいずれか1つの方 法。 373.組成物が、配列番号104からなるタンパク質を含まないかもしくは実質的に 含まず、かつ/または配列番号105からなるタンパク質を含まないかもしくは実質的に 含まない、実施形態347から372のいずれか1つの方法。 374.成熟I型エラスターゼを含む医薬組成物を作製する方法であって、(i)実施 形態261から265のいずれか1つの方法により凍結乾燥した成熟I型エラスターゼを 作製するステップと、(ii)水または薬学的に許容される担体中において凍結乾燥した 成熟I型エラスターゼを再溶解するステップとを含み、これらにより成熟ヒトI型エラス ターゼを含む医薬組成物を作製する方法。 375.成熟I型エラスターゼを含む医薬組成物を作製する方法であって、水または薬 学的に許容される担体中において実施形態314から324のいずれか1つの乾燥凍結製 剤を再溶解するステップを含み、これにより成熟I型エラスターゼを含む医薬組成物を作 製する方法。 376.医薬組成物がリン酸を含む、実施形態374または375の方法。 377.成熟I型エラスターゼが成熟ヒトI型エラスターゼである、実施形態374か ら376のいずれか1つの方法。 378.1〜40U/タンパク質mgの比活性を特徴とする、実施形態377の方法。 379.成熟I型エラスターゼが25〜35U/タンパク質mgの比活性を特徴とする 、実施形態377の方法。 380.前記医薬組成物中における成熟ヒトI型エラスターゼが、4℃で少なくとも1 週間の保存後、4℃で少なくとも1カ月間の保存後、4℃で少なくとも2カ月間の保存後 、4℃で少なくとも3カ月間の保存後、または4℃で少なくとも6カ月間の保存後におい て、その比活性の60%〜100%を維持する、実施形態377から379のいずれか1 つの方法。 381.前記医薬組成物中における成熟ヒトI型エラスターゼが、4℃で少なくとも1 週間の保存後、4℃で少なくとも1カ月間の保存後、4℃で少なくとも2カ月間の保存後 、4℃で少なくとも3カ月間の保存後、または4℃で少なくとも6カ月間の保存後におい て、その比活性の60%〜98%を維持する、実施形態377から379のいずれか1つ の方法。 382.前記医薬組成物中における成熟ヒトI型エラスターゼが、4℃で少なくとも1 週間の保存後、4℃で少なくとも1カ月間の保存後、4℃で少なくとも2カ月間の保存後 、4℃で少なくとも3カ月間の保存後、または4℃で少なくとも6カ月間の保存後におい て、その比活性の60%〜95%を維持する、実施形態377から379のいずれか1つ の方法。 383.前記医薬組成物中における成熟ヒトI型エラスターゼが、4℃で少なくとも1 週間の保存後、4℃で少なくとも1カ月間の保存後、4℃で少なくとも2カ月間の保存後 、4℃で少なくとも3カ月間の保存後、または4℃で少なくとも6カ月間の保存後におい て、その比活性の60%〜90%を維持する、実施形態377から379のいずれか1つ の方法。 384.前記医薬組成物中における成熟ヒトI型エラスターゼが、4℃で少なくとも1 週間の保存後、4℃で少なくとも1カ月間の保存後、4℃で少なくとも2カ月間の保存後 、4℃で少なくとも3カ月間の保存後、または4℃で少なくとも6カ月間の保存後におい て、その比活性の60%〜80%を維持する、実施形態377から379のいずれか1つ の方法。 385.前記医薬組成物中における成熟ヒトI型エラスターゼが、4℃で少なくとも1 週間の保存後において、その比活性の少なくとも70%を維持する、実施形態377から 384のいずれか1つの方法。 386.実施形態374から385のいずれか1つの方法により作製されるかまたは得 ることができる医薬組成物。 387.それを必要とするヒト対象における動脈または静脈の直径を治療的に増大させ る方法であって、(a)実施形態277から313および386のいずれか1つの医薬組 成物、(b)実施形態325から339のいずれか1つの液体製剤、または(c)実施形 態341の製剤を、前記動脈または静脈の直径を増大させるのに十分な用量で、前記ヒト 対象における動脈壁または静脈壁へと局所投与するステップを含む方法。 388.血管の直径、血管の内腔径、またはこれらの両方が増大する、実施形態387 の方法。 389.それを必要とするヒト対象における動脈または静脈の血管攣縮を予防または治 療する方法であって、(a)実施形態277から313および386のいずれか1つの医 薬組成物、(b)実施形態325から339のいずれか1つの液体製剤、または(c)実 施形態341の製剤を、前記動脈または静脈の血管攣縮を予防または治療するのに十分な 用量で、前記ヒト対象における動脈壁または静脈壁へと局所投与するステップを含む方法 。 390.そのような治療を必要とするヒト対象における動脈または静脈の閉塞を治療す る方法であって、(a)実施形態277から313および386のいずれか1つの医薬組 成物、(b)実施形態325から339のいずれか1つの液体製剤、または(c)実施形 態341の製剤を前記ヒト対象における動脈壁または静脈壁へと局所投与するステップを 含み、前記投与の結果として前記動脈壁または静脈壁内におけるエラスチンのタンパク質 分解をもたらし、前記動脈または静脈の直径を拡張する方法。 391.そのような治療を必要とするヒト対象における動静脈の血液透析グラフトまた は動静脈瘻へと接合される動脈または静脈を治療する方法であって、(a)実施形態27 7から313および386のいずれか1つの医薬組成物、(b)実施形態325から33 9のいずれか1つの液体製剤、または(c)実施形態341の製剤を前記ヒト対象におけ る動脈壁または静脈壁へと局所投与するステップを含み、前記投与の結果として前記動脈 壁または静脈壁内におけるエラスチンのタンパク質分解をもたらし、前記動脈または静脈 の直径を拡張する方法。 392.血液透析において用いられるヒト対象における静脈を治療する方法であって、 (a)実施形態277から313および386のいずれか1つの医薬組成物、(b)実施 形態325から339のいずれか1つの液体製剤、または(c)実施形態341の製剤を 前記ヒト対象における静脈壁へと局所投与するステップを含み、前記投与の結果として前 記静脈壁内におけるエラスチンのタンパク質分解をもたらし、前記静脈の直径を拡張する 方法。 393.動脈壁または静脈壁内に送達装置の一部を挿入し、動脈壁または静脈壁へとエ ラスターゼを送達するステップをさらに含む、実施形態387から392のいずれか1つ の方法。 394.医薬製剤または液体製剤がカテーテルにより投与される、実施形態387から 393のいずれか1つの方法。 395.医薬組成物または液体製剤が、動脈壁または静脈壁内へと直接に投与される、 実施形態387から394のいずれか1つの方法。 396.動脈または静脈が閉塞している、実施形態387から395のいずれか1つの 方法。 397.動脈または静脈が狭窄により閉塞している、実施形態396の方法。 398.治療前において、閉塞により不十分な量の血液しか流過できない、実施形態3 97の方法。 399.閉塞が狭窄である、実施形態398の方法。 400.動脈または静脈が内膜過形成により閉塞している、実施形態399の方法。 401.医薬組成物または液体製剤が、閉塞した冠動脈または末梢動脈に投与される、 実施形態387から400のいずれか1つの方法。 402.動脈または静脈が内膜過形成による閉塞を受けやすい、実施形態387から3 95のいずれか1つの方法。 403.組成物が静脈壁へと投与される、実施形態387から400および402のい ずれか1つの方法。 404.静脈が、動静脈の血液透析グラフトまたは動静脈瘻へと接合される、実施形態 403の方法。 405.静脈が血液透析において用いられる、実施形態404の方法。 406.前記静脈を動脈へと直接に接合するか、またはグラフトを介して前記静脈を動 脈へと接合するステップをさらに含む、実施形態405の方法。 407.組成物が、手術で露出した動脈または静脈の外膜表面へと投与される、実施形 態387から394のいずれか1つの方法。 408.それぞれ、前記医薬組成物、液体製剤、または製剤中における成熟I型エラス ターゼタンパク質が、ヒトI型成熟エラスターゼタンパク質である、実施形態387から 407のいずれか1つの方法。 409.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号5、配列番号84、または 配列番号87から本質的になる、実施形態408の方法。 410.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号1または配列番号4から本 質的になる、実施形態408の方法。 411.それぞれ、前記医薬組成物、液体製剤、または製剤中における成熟I型エラス ターゼタンパク質が、ブタI型成熟エラスターゼタンパク質である、実施形態387から 407のいずれか1つの方法。 412.成熟ブタI型エラスターゼタンパク質が、配列番号39から本質的になる、実 施形態411の方法。 413.0.0033mg〜200mgの(a)実施形態273または274の成熟ヒ トI型エラスターゼ、または(b)実施形態259の方法により作製されるかもしくは得 ることができる成熟ヒトI型エラスターゼの製剤を含む単位用量。 414.成熟ヒトI型エラスターゼタンパク質が、配列番号5、配列番号84、または 配列番号87から本質的になる、実施形態413の単位用量。 415.0.0033mg〜200mgの(a)実施形態275または276の成熟ブ タI型エラスターゼ、または(b)実施形態260の方法により作製されるかもしくは得 ることができる成熟ブタI型エラスターゼの製剤を含む単位用量。 416.成熟ブタI型エラスターゼタンパク質が、配列番号39から本質的になる、実 施形態415の単位用量。 417.0.5mg〜50mgの前記成熟I型エラスターゼを含む、実施形態413か ら416のいずれか1つの単位用量。 418.1mg〜20mgの前記成熟I型エラスターゼを含む、実施形態417の単位 用量。 419.5mg〜10mgの前記成熟I型エラスターゼを含む、実施形態418の単位 用量。 420.容器、パック、分注器、またはカテーテル内にある、実施形態413から41 9のいずれか1つの単位用量。 421.実施形態1から39および68から69のいずれか1つによるエラスターゼタ ンパク質または実施形態89から224、261から276、および347から373の いずれか1つの方法により得られるかもしくは得ることができるエラスターゼタンパク質 、実施形態40から67のいずれか1つによる核酸、実施形態70から72のいずれか1 つによるベクター、実施形態73から87のいずれか1つによる細胞、実施形態88によ る細胞培養物上清、実施形態314から346のいずれか1つによるエラスターゼ製剤ま たは実施形態261から276のいずれか1つの方法により得られるかもしくは得ること ができるエラスターゼ製剤、実施形態277から313および386のいずれか1つの方 法による医薬組成物または実施形態374から385のいずれか1つの方法により得られ るかもしくは得ることができる医薬組成物、あるいは実施形態415から420のいずれ か1つによる単位用量を含むキット。 422.治療用のキットである、実施形態421のキット。 423.容器、パック、分注器、またはカテーテルを含む、実施形態422のキット。 424.製造キットである、実施形態423のキット。

本発明は、配列番号64および配列番号69のプロエラスターゼタンパク質に焦点を絞 るがこれらに限定されない以下の具体的な実施形態によりさらに例示される: 425.配列番号64または配列番号69のアミノ酸配列を含むタンパク質。 426.単離された、実施形態425のタンパク質。 427.実施形態425のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。 428.該タンパク質が、配列番号64または配列番号69の前記アミノ酸配列に作動 的に連結されたシグナル配列を含む、実施形態427の核酸分子。 429.シグナル配列がメタノール資化酵母において作動的である、実施形態428の 核酸分子。 430.シグナル配列が酵母α因子シグナルペプチドである、実施形態429の核酸分 子。 431.実施形態427から430のいずれか1つの核酸分子を含むベクター。 432.ヌクレオチド配列が多量体化される、実施形態431のベクター。 433.実施形態431のベクターを含む宿主細胞。 434.前記ベクターの少なくとも1コピーが宿主細胞ゲノム内に組み込まれる、実施 形態433の宿主細胞。 435.前記ベクターの2〜5コピーが宿主細胞ゲノム内に組み込まれる、実施形態4 34の宿主細胞。 436.ヌクレオチド配列が多量体化される、実施形態433の宿主細胞。 437.該ベクターが、前記ヌクレオチド配列の2〜5コピーを含む、実施形態436 の宿主細胞。 438.実施形態427から430のいずれか1つの核酸分子を発現するように遺伝子 改変された細胞。 439.メタノール資化酵母細胞である、実施形態438の細胞。 440.前記ヌクレオチド配列がメタノール誘導性プロモーターに作動的に連結されて いる、実施形態439の細胞。 441.実施形態425に記載のタンパク質を含む細胞培養物上清。 442.実施形態429の細胞を配列番号64または配列番号69のタンパク質が発現 される条件下で培養するステップを含む、エラスターゼタンパク質を作製する方法。 443.前記条件が、(i)pH2〜6での増殖時間もしくは誘導時間、(ii)22 ℃〜28℃の温度での増殖時間もしくは誘導時間、(iii)複合培地中において培養す ること、または(iv)クエン酸化合物、コハク酸化合物、もしくは酢酸化合物の存在下 で培養することの1つ、2つ、3つ、または4つすべてを含む、実施形態442の方法。 444.タンパク質を回収するステップをさらに含む、実施形態442または実施形態 43の方法。 445.配列番号64または配列番号69の前記タンパク質を活性化条件に曝露して成 熟エラスターゼタンパク質を作製するステップをさらに含む、実施形態442から444 のいずれか1つの方法。 446.前記活性化条件への曝露前に前記タンパク質が精製される、実施形態445の 方法。 447.前記タンパク質が、クエン酸化合物、コハク酸化合物、または酢酸化合物の存 在下で精製される、実施形態446の方法。 448.成熟エラスターゼタンパク質を精製するステップをさらに含む、実施形態44 5から447のいずれか1つの方法。 449.精製された成熟エラスターゼタンパク質を凍結乾燥させるステップをさらに含 む、実施形態448の方法。 450.成熟エラスターゼタンパク質を作製する方法であって、実施形態441による 細胞培養物上清を自己活性化条件下に置くステップを含み、これにより成熟エラスターゼ タンパク質を作製する方法。 451.成熟エラスターゼタンパク質を精製するステップをさらに含む、実施形態45 0の方法。 452.精製された成熟エラスターゼタンパク質を凍結乾燥させるステップをさらに含 む、実施形態451の方法。 453.成熟エラスターゼタンパク質を含む医薬組成物を作製する方法であって、実施 形態449または実施形態452の方法により作製される凍結乾燥したプロエラスターゼ タンパク質を含む凍結乾燥物を再溶解するステップを含む方法。 454.凍結乾燥物が、(a)1種もしくは複数種の緩衝成分を含むか、または(b) 緩衝成分を含まない、実施形態453の方法。 455.凍結乾燥物が水または緩衝液に再溶解される、実施形態454の方法。 456.再溶解時において、成熟エラスターゼタンパク質溶液が、希釈されない緩衝液 、濃縮緩衝液、または希釈緩衝液中において生成される、実施形態455の方法。 457.緩衝液がリン酸緩衝生理食塩液である、実施形態456の方法。 458.成熟エラスターゼタンパク質が0.001mg/ml〜50mg/mlの濃度 へと再溶解される、実施形態453から457のいずれか1つの方法。 459.成熟エラスターゼタンパク質が、1〜40U/タンパク質mgの比活性を有す る、実施形態453から458のいずれか1つの方法。 460.以下の特性: (a)組成物がトリプシンを含まないこと; (b)組成物がトリプシンを実質的に含まないこと; (c)組成物が配列番号70および71からなる任意のタンパク質を含まないこと; (d)組成物が配列番号2および3からなる任意のタンパク質を実質的に含まないこと ; (e)組成物が細菌タンパク質を含まないこと; (f)組成物が細菌タンパク質を実質的に含まないこと; (g)組成物が前記成熟エラスターゼタンパク質以外の哺乳動物タンパク質を含まない こと; (h)組成物が前記成熟エラスターゼタンパク質以外の哺乳動物タンパク質を実質的に 含まないこと; (i)組成物が配列番号85、86、94、および95からなる1つ、2つ、3つ、ま たは4つすべてのタンパク質を含まないかまたは実質的に含まないこと; (j)組成物が配列番号106、107、および108からなる1つ、2つ、または3 つすべてのタンパク質を含まないかまたは実質的に含まないこと; (k)組成物が薬学的に許容されるレベルのエンドトキシンを含むこと; (l)組成物中の成熟エラスターゼタンパク質が、1〜40U/タンパク質mgの比活 性を特徴とすること; (m)前記組成物中のトリプシン活性が、成熟エラスターゼタンパク質1mg当たり4 ng未満に相当すること; (n)組成物がポリソルベート−80を含むこと; (o)組成物がデキストランを含むこと; (p)組成物がナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、お よびポリソルベート−80を含むこと; (q)組成物がナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、お よびデキストランを含むこと; (r)組成物がナトリウムイオン、カリウムイオン、リン酸イオン、塩化物イオン、ポ リソルベート−80、およびデキストランを含むこと; (s)前記組成物中における成熟エラスターゼタンパク質が、4℃で少なくとも1週間 の保存後、4℃で少なくとも1カ月間の保存後、4℃で少なくとも2カ月間の保存後、4 ℃で少なくとも3カ月間の保存後、または4℃で少なくとも6カ月間の保存後においてそ の比活性の60%〜100%を維持すること;ならびに (t)組成物が、単位用量0.0033mg〜200mgの前記成熟エラスターゼタン パク質を含むこと の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ 、少なくとも6つ、少なくとも7つを特徴とする成熟エラスターゼタンパク質を含む医薬 組成物。 461.以下の群(i)〜(v): (i)(a)、(b)、または(m) (ii)(e)または(f) (iii)(g)または(h) (iv)(k) (v)(l) から独立に選択される少なくとも3つの特性、少なくとも4つの特性、または少なくとも 5つの特性を特徴とする、実施形態460の医薬組成物。 462.前記少なくとも3つの特性または前記少なくとも4つの特性のうちの2つが、 群(i)および(iv)または(v)から選択される、実施形態461の医薬組成物。 463.前記少なくとも4つの特性のうちの3つが、群(i)、(iv)、および(v )から選択される、462の医薬組成物。 464.実施形態453から459のいずれか1つの方法により作製される、実施形態 460から463のいずれか1つの医薬組成物。 465.正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質および不正確にプロセ シングされた成熟エラスターゼタンパク質の混合物から、1種または複数種の不正確にプ ロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質を除去する方法であって、 (a)正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質および不正確にプロセシ ングされた成熟エラスターゼタンパク質の混合物を含む組成物を、正確にプロセシングさ れた成熟酵素が活性となるpH下に置くステップと、 (b)1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質が 分解される時間までこのようなpHを維持するステップと を含み、これにより、正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質および不正 確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質の混合物から、前記1種または複数 種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質を除去する方法。 466.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が、正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパク質と比べて、少なくとも1 つの付加的アミノ酸またはより少数のアミノ酸をN末端において含有する、実施形態46 5の方法。 467.前記pHが5〜12である、実施形態465または実施形態466の方法。 468.前記1種または複数種の不正確にプロセシングされた成熟エラスターゼタンパ ク質が50%〜100%分解される、実施形態465から467のいずれか1つの方法。 469.それを必要とするヒト対象における動脈または静脈の直径を治療的に増大させ る方法であって、実施形態460から464のいずれか1つの医薬組成物を、該動脈また は静脈の直径を増大させるのに十分な用量で、該ヒト対象における動脈壁または静脈壁へ と局所投与するステップを含む方法。 470.血管の直径、血管の内腔径、またはこれらの両方が増大する、実施形態469 の方法。 471.それを必要とするヒト対象における動脈または静脈の血管攣縮を予防または治 療する方法であって、実施形態460から464のいずれか1つの医薬組成物を、該動脈 または静脈の血管攣縮を予防または治療するのに十分な用量で、該ヒト対象における動脈 壁または静脈壁へと局所投与するステップを含む方法。 472.そのような治療を必要とするヒト対象における動脈または静脈の閉塞を治療す る方法であって、実施形態460から464のいずれか1つの医薬組成物を該ヒト対象に おける動脈壁または静脈壁へと局所投与するステップを含み、前記投与の結果として前記 動脈壁または静脈壁内におけるエラスチンのタンパク質分解をもたらし、該動脈または静 脈の直径を拡張する方法。 473.そのような治療を必要とするヒト対象における動静脈の血液透析グラフトまた は動静脈瘻へと接合される動脈または静脈を治療する方法であって、実施形態460から 464のいずれか1つの医薬組成物を該ヒト対象における動脈壁または静脈壁へと局所投 与するステップを含み、前記投与の結果として該動脈壁または静脈壁内におけるエラスチ ンのタンパク質分解をもたらし、該動脈または静脈の直径を拡張する方法。 474.血液透析において用いられるヒト対象における静脈を治療する方法であって、 実施形態460から464のいずれか1つの医薬組成物を該ヒト対象における静脈壁へと 局所投与するステップを含み、前記投与の結果として該静脈壁内におけるエラスチンのタ ンパク質分解をもたらし、該静脈の直径を拡張する方法。 475.実施形態460から464のいずれか1つの医薬組成物を含むキット。 476.医薬組成物が容器、パック、分注器、またはカテーテル内にある、実施形態4 75のキット。

2007年12月4日に出願された米国仮出願第60/992,319号の特許請求の 範囲が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれ、このような特許請求の範囲 に記載の各実施形態が、本明細書における具体的な実施形態として、参照により組み込ま れる。

本発明は、本明細書で説明される具体的な実施形態により範囲が限定されるものではな い。実際、本明細書で説明される実施形態に加えた、本発明の各種の改変は、前出の説明 および添付の図面から当業者には明らかとなるであろう。このような改変は、添付の特許 請求の範囲内に収まることが意図される。

本明細書では、特許出願、特許、および科学的刊行物を含む各種の参考文献が引用され 、各々のこのような参考文献の開示は、その全体において、参照により本明細書に組み込 まれる。

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