【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は牛乳タンパク質加水分解産物および、牛乳アレルギーに罹患しやすい幼児における免疫学的耐性を誘導するためのその使用に関する。 【0002】 【従来の技術】EPA第421309号(サンド・ニュートリション・リミテッド(Sandoz Nutrition Ltd.)) は、高い加水分解率を有するが低い遊離アミノ酸含量を有する非アレルギー源性牛乳タンパク質加水分解産物を記載してる。 EPA第421309号に記載の非アレルギー源性牛乳タンパク質加水分解産物は牛乳タンパク質のような食物タンパク質に対する非寛容性を有する幼児に対するタンパク質供給代替物としての使用を示唆する。 【0003】本明細書で使用の「非アレルギー源性加水分解産物」および「アレルギー源性タンパク質を実質的に含まない加水分解産物」の語は置き換え可能である。 それらは、食物性タンパク質、更に具体的には牛乳タンパク質に対する非寛容性を有する幼児に、アレルギー反応を起こさずに供給できるタンパク質加水分解産物を意味する。 【0004】 【発明の構成】アレルギー性疾患において、アレルギーの典型は、食物アレルギーが幼児で最も起こるように、 子供の年令と関係がある。 牛乳アレルギーは幼児おいて一般的な食物アレルギーであり、本疾患は全子供の2〜 7.5%の範囲で広がっている。 種々の症状が起こり得る。 症状は半分の患者で起こる急性(例えばアナフィラキシーおよびじんましん)または他の半分の患者における遅延臨床反応を意味するあまり特異的でないもの(例えば嘔吐または下痢)であり得る。 診断方法は、ヨーロッパ・ソサイエティー・フォー・ピーディアトリック・ ガストロエンテロロジー・アンド・ニュートリション・ ウォーキング・グループ(European Societyfor Paediat ric Gastroenterology and Nutrition Working Group) (ESPGAN、ジャーナル・オブ・ピーディアトリック・カストロエンテロロジー・アンド・ニュートリション(ESPGAN J.Pediatr.Gastroenterol.Nutr.)、1992 年;14:108−12)により示された基準により、 よく標準化されている。 牛乳タンパク質の完全な排除および加水分解調剤の食事はこの状態の選りすぐった処置法を意味する。 牛乳アレルギーは自然に消滅する。 牛乳耐性は2〜4才で現れ始めるが、安全性の理由から牛乳アレルギーに罹患した子供は6〜7才になるまでは牛乳タンパク質の摂取を避けることが示唆されている。 【0005】本発明により、驚くべきことに、非アレルギー源性乳漿(whey)タンパク質加水分解産物が、牛乳アレルギーが自然な(即ち本来の)後天的耐性により通常期待されるよりも実質的に早く牛乳アレルギーが消滅するように、牛乳タンパク質耐性を誘導する能力を有することが発見された。 【0006】本発明は、従って、処置が必要な子供に実質的にアレルギー源性タンパク質を含まない乳漿タンパク質加水分解産物を投与することを含む、牛乳アレルギーに罹患しやすい子供に牛乳タンパク質耐性を誘導する方法を提供する。 【0007】アレルギー源性タンパク質を含まない乳漿タンパク質加水分解産物は、簡便には完全な調合食の形で投与する。 【0008】本発明の他の態様は、実質的にアレルギー源性タンパク質を含まない乳漿タンパク質加水分解産物の、牛乳タンパク質耐性の誘導用食事用組成物の製造のための使用である。 【0009】本発明の方法に好適な非アレルギー源性乳漿タンパク質加水分解産物の例は、カチオン性セリンエンドプロテアーゼ型エラスターゼ2の存在下、例えば3 5℃〜50℃の温度で、7.0〜9.0のpHで、トリプシン−キモトリプシンによる乳漿タンパク質の酵素的加水分解により得られる得る加水分解産物である。 【0010】出発物質として用いる乳漿タンパク質画分は、とりわけ酵素的加水分解を容易にするために、好ましくは、実質的に巨大脂質(macrolipids)を含まないものである。 【0011】乳漿タンパク質は、例えば微小濾過/超濾過をして、分子量60,000ダルトン以上の大きなタンパク質の殆どを除去するために、前処理をし得る。 このような前処理された乳漿タンパク質混合物は以後「選択された乳漿タンパク質」と呼ぶ。 それはまだ分子量約66.000Daを有するある牛血清アルブミン(BSA) を含有する。 【0012】エラスターゼ2の使用は、アレルギー源性エピトープの除去をし、高い有効な加水分解の割合(1 9%またはそれ以上)、ジ−〜デカペプチド、特にテトラ−〜デカペプチドは高い含量であるが低い遊離アミノ酸含量である生産物を提供する。 【0013】好ましくは乳漿タンパク質、さらに好ましくは選択された乳漿タンパク質は、最初に例えば(選択された)乳漿タンパク質水溶液を43±4℃まで熱し、 本溶液をペプシンでpH2.0〜3.0で処理することによる、胃予備加水分解段階の対象とする。 【0014】BSAのペプシン加水分解は、例えば非常に小さなペプチドとなるが、他の酵素の処理による高分子量(30,000〜40,000Da)のペプチド断片の連続した溶出による変性により、容易になる。 エラスターゼ2は、とりわけ中間サイズ(約10,000Da)を有するペプチドの還元をし、低分子量ペプチドの有利になるようにペプチドプロフィールの移動を誘発する。 【0015】従って、特に本発明で使用するのが好ましい非アレルギー源性乳漿タンパク質加水分解産物は、選択された乳漿タンパク質の生理学的加水分解により得られ得る。 上記生理学的加水分解は胃段階、すなわちpH 2.0〜3.0の間のペプシン予備加水分解、続いて、予備加水分解産物のトリプシン−キモトリプシンおよびカチオン性セリンエンドプロテアーゼ型エラスターゼ2の混合物による酵素的処理を含む。 このような生理学的加水分解に好ましい条件はEPA第421309号に記載されている。 【0016】生理学的加水分解により得られ得る非アレルギー源性タンパク質加水分解産物の有効な加水分解の割合は、簡便には20%〜32%の範囲である。 本発明の方法で使用するのに好適な乳漿タンパク質加水分解産物の遊離アミノ酸含量は、好ましくは15重量%以下、 さらに好ましくは1〜13重量%の範囲である。 【0017】有効な加水分解の割合は式: 【数1】 により決定される。 【0018】本発明の方法で使用するのに好適な、生理学的加水分解により得られる非アレルギー源性乳漿タンパク質加水分解産物の典型的な分子量分布は下記の通りである(215nmのUV検出により決定); 【表1】 重量% 範囲 さらに好ましくは 例えば MW>5000 0.5〜4.0 2.8〜3.8 3.3 5000>MW>3000 2〜10 5〜10 5.2 3000>MW>1000 29〜36 33.5〜35.5 33.9 1000>MW>500 26〜31 29〜31 30.9 500>MW>300 14.6〜29.6 15〜21 20.6 300>MW 5.9〜12.9 5.7〜7.7 6.1 【0019】このような非アレルギー源性乳漿タンパク質加水分解産物は、好ましくは非アレルギー源性カゼイン加水分解産物と、組成物における加水分解産物100 g当たりのアミノ酸gが母乳と同じであるように、重量比で、乳漿タンパク質加水分解産物:カゼイン加水分解産物50:50〜70:30、好ましくは60:40で投与される。 【0020】非アレルギー源性カゼインタンパク質加水分解産物は、トリプシン−キモトリプシンおよびカチオン性セリンエンドプロテアーゼ型エラスターゼ2の混合物による酵素的処理により得られ得る。 カゼイン加水分解産物は、一般にアレルギー源性の観点から、乳漿タンパク質加水分解産物より問題とならない。 したがって、 一般的に−上記酵素的処理に加えて−胃加水分解段階を行う必要はない。 【0021】一般に、本発明で使用するのに好適なカゼイン加水分解産物を製造するためのカゼイン出発物質は、実質的に糖タンパク質画分を含まないカゼインである;用いるカゼインは、簡便にはレンネットカゼイン、 すなわち、例えば牛ペプシンのようなペプシンとの凝固により得られるものである。 【0022】本発明の方法で非アレルギー源性乳漿タンパク質加水分解産物との混合物として使用するのに好適な非アレルギー源性カゼイン加水分解産物の典型的な分子量分布は以下の通りである(215nmのUV検出により決定); 【表2】 重量% 範囲 例えば MW>5000 0〜1 0 5000>MW>3000 0〜1 0.1 3000>MW>1000 17〜26 18.6 1000>MW>500 33〜40 37.4 500>MW>300 26〜31 29.2 300>MW 11〜16 14.7 【0023】特に好ましいカゼイン加水分解産物系の有効な加水分解の割合は20〜30%の範囲である。 本発明で使用するのに好ましいカゼイン加水分解産物の遊離アミノ酸含量は、好ましくは15%以下、さらに好ましくは8〜13%の範囲である。 【0024】乳漿タンパク質加水分解産物およびカゼインタンパク質加水分解産物は、味覚を改善するために真菌アスペルギルス・オリザエ由来のタンパク質融解性酵素または膵臓プロテイナーゼ抽出物で処理し得る。 このような酵素は商業的に利用可能である。 これらの典型的な例は、COROLASE 7092およびCOROL ASE PP(レーム(Rohm))を含む。 【0025】牛乳タンパク質のCOROLASE 70 92型タンパク質融解性酵素による処理は、簡便にはp H約8で、約1.0〜1.5%酵素/約2000mUHb/mg 酵素(以下の実施例4参照)を有するタンパク質基質で、 約11/4〜13/4時間用いる。 【0026】アスペルギルス・オリザエ由来のタンパク質融解性酵素は、簡便には有効な量の膵臓酵素(トリプシン−キモトリプシンおよび所望によりエラスターゼ2)を含むタンパク質混合物に、好ましくは膵臓酵素で41〜47℃で1時間から11/2時間処理した後に加える。 【0027】1.0〜1.5%COROLASE PP型酵素/タンパク質基質のpH約8での11/4から13/4時間の41から47℃での処理は、同様の味覚改良を可能にする。 【0028】出発物質の製造、加水分解条件および任意の低温殺菌法、超濾過、濃縮および乾燥工程を含む後処理は、それ自身既知の方法で、例えばEPA第4213 09号に記載の方法または以下に例示してある方法と同様にして行い得る。 【0029】牛乳タンパク質または牛乳タンパク質画分加水分解により得られた加水分解産物の組成は加水分解条件に依存することは認識されよう。 【0030】好ましくは、この条件は加水分解産物が有効な加水分解率を有し、遊離アミノ酸含量が本明細書に具体化してある範囲内になるように選択される。 【0031】一般に、好ましくは非アレルギー源性乳漿タンパク質加水分解産物、更に好ましくは乳漿タンパク質加水分解産物:カゼイン加水分解産物の重量比5:1 〜1:1、最も好ましくは1.5:1の混合物を使用する。 【0032】使用する乳漿タンパク質加水分解産物画分は、215nmのUVで測定した場合、簡便には35重量%以下、好ましくは22〜33重量%の2〜5アミノ酸を含むペプチドおよび/または35〜60重量%の4〜 10アミノ酸を含むペプチドを含む。 (値が出発物質の組成の自然な違いだけでなく、用いる検出法(UV21 5nmによるクロマトグラフィー的検出およびレフラクション・インデックス(Refraction Index)検出法は異なった結果となるであろう)によって上記範囲内である程度変化するであろうことは認識されよう。 ) 【0033】牛乳タンパク質加水分解産物の牛乳タンパク質耐性を誘発する能力は、リンパ球刺激試験(Lymphoc yte stimulation test)(LST)を用いて得られた結果から示唆される。 【0034】 【背景】リンパ球刺激試験(LST)は、3カ月の排除食前および後の罪を犯すタンパク質に対する細胞性反応を研究するために、牛乳アレルギーの子供の滅菌血液で行う。 子供は、DAMIRA(商標)(サンド・ニュートリション・リミテッド)による処置の間に、より高濃度の罪を犯すタンパク質でしか細胞刺激されないことにより示される細胞性耐性が発達した。 【0035】試験混合物で使用した緩和なタンパク質加水分解産物は、DAMIRA(商標)(サンド・ニュートリション・リミテッド)と呼ばれる、商業的に入手可能な産物である。 【0036】DAMIRA(商標)は、60%乳漿タンパク質および40%レンネットカゼイン加水分解産物を含む。 乳漿タンパク質加水分解産物は、実質的に巨大脂質およびラクトースを含まない乳漿タンパク質の生理学的加水分解、即ち胃段階(ペプシン加水分解)および膵臓加水分解(トリプシン/キモトリプシンおよびエラスターゼ2による)を含む、本質的に以下の実施例1に記載したようにして得られる。 レンネットカゼイン加水分解産物は、本質的に、以下の実施例7に記載の方法で得られる。 DAMIRA(商標)組成物は実施例8に記載する。 【0037】 【試験の記載】 リンパ球刺激試験 本試験は、滅菌ヘパリン化血液から、フィコール(Ficol l)(ファルマシア)遠心後単離されたリンパ球画分で行う。 細胞を緩衝液(TC 199 ハンクス)に懸濁し、 遠心し、3回洗浄する。 それを次に培養培地(RPMI 1640)中のABひと血清(20%濃度)溶液に加える。 10 6細胞/mlを、96ウェルプレートで4個ずつ、異なった濃度の抗原とともにインキュベーションする。 6種の異なった対数濃度(10 -8から10 -3 mg/ml の全乳、カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリンおよび牛乳タンパク質加水分解産物)が研究される。 7日間インキュベーションの後、細胞DNAをメチル−H3チミジンで標識する;濾紙の上に回収し、 シンチレーション液と混合する。 細胞増殖を示す放射活性をベータカウンターで測定する。 結果は1分当たりの全計数(cpm)または刺激指数(SI): 【数2】 の何れかで示す。 【0038】指数>3は陽性と判断する。 抗原無しの陰性対照;フィトヘマグルチニンおよび破傷風毒素を陽性対照として使用する。 【0039】 【結果】図1は、全牛乳に対するおよび3種の主要な抗原に対する診断時(試験1)およびDAMIRA(商標)で処置3カ月後(試験2)の細胞性反応を示す。 図1aは、 全牛乳濃度、図1bはα−ラクトアルブミン濃度、図1 cはβ−ラクトグロブリン濃度および図1dはカゼイン濃度に対する刺激指数(SI)を示す。 【0040】刺激指数は、全牛乳濃度に対して試験期間中、試験1のほうが試験2と比べて高い。 この傾向はα −ラクトアルブミンおよびβ−ラクトグロブリンに対してもまた観察される。 この指標は、試験1において10 −5mg/mlまで陽性であり、試験2においては、全牛乳に対してすべての濃度で陰性であった。 両方の試験でβ −ラクトグロブリンに対して10−4mg/mlで陰性であった:α−ラクトグロブリンに対しては試験1では10 −4mg/mlで陽性、試験2ではすべての濃度で陰性であり、カゼインでは試験2では10−4mg/mlで陽性、試験1では同じ濃度で陰性であった。 【0041】図2は3カ月後の全牛乳(図2a)およびD AMIRA(商標)(図2b)の比較である。 刺激指数は、 試験1の牛乳試験では10−5mg/mlで陽性に上昇し、 一方DAMIRAの刺激指数は試験1のすべての濃度で陰性であった。 試験2において、刺激指数は両方のすべての濃度で陰性であった。 比較して、リンパ球増殖は試験したすべての濃度で、全牛乳の方がDAMIRA(商標)と比較して少なかった。 これらの結果は、食事療法の間に免疫学的耐性が現れることを示唆する。 DAMI RAにおける陽性の結果は別の試験で確認される。 【0042】その耐性誘発の観点から、タンパク質加水分解産物はまた1型糖尿病の遺伝的素養を有する幼児および子供における予防または治療を示唆する。 【0043】牛血清アルブミン(BSA)は免疫系の引金を引くことが実際に示唆されている。 抗−BSA抗体、 特に膵臓β細胞表面に存在しBSAペプチドの一部に似た構造を有する内因性抗原p69に結合したIgG抗− BSA抗体はアレルギー性反応の引金を引く。 このような免疫性攻撃は、1型糖尿病の発症を導くβ−細胞集団を減少させる。 【0044】本明細書に記載の牛乳タンパク質加水分解産物の投与は、感受性の強いひとにおける膵臓β細胞の破壊を防止する。 1型糖尿病の遺伝的素養の時を得た診断は、したがって感受性の強い幼児および子供の1型糖尿病の、タンパク質加水分解産物処置による予防および治療を可能にする。 この処置は、簡便には子供が牛乳耐性を獲得するまで続ける。 【0045】本発明の方法に使用するために、本発明のタンパク質加水分解産物は簡便には栄養学的に許容可能な組成物形で投与する。 このような組成物は炭水化物および脂肪酸源、ビタミン類、ミネラルおよび微量元素を含み得る。 【0046】上記組成物は、好ましくは、単一の栄養源として使用した場合、本質的に一日のカロリー、窒素、 脂肪酸、ビタミン、ミネラルおよび微量元素のすべての必要条件に合うような完全な調合食(液体または粉末形) である。 【0047】幼児において、一日の供給すべきカロリー量は一般に体重Kg当たり100〜180Kcalである。 一日に寄与される窒素源(すなわち本発明の乳漿/カゼイン加水分解産物)、炭水化物源および脂質源は広範囲で変化し得る。 本発明の一般的な組成物は、組成物の全エネルギー供給量中、炭水化物源が45〜68%、脂肪酸源が25〜50%および本発明のタンパク質加水分解産物が7〜15%提供される。 【0048】幼児用の完全な調合食として使用するのに特に好適な炭水化物の例は、幼児が低ラクロース量を有する食物を必要としない限り(この場合、炭水化物源は簡便にはラクトースを半ば排除する(<1%ラクトース))、マルトデキストリン(10〜25%)およびラクトース(90〜75%)を基本にした混合物を含む。 好ましい脂肪酸源の例はトリグリセリド油およびリン脂質を含む。 【0049】成人用組成物に使用する炭水化物は、好ましくは最初は低モノおよびジサッカライド(全炭水化物量中<5重量%)、および非常に低い食物繊維および半ば除外したラクトース含量を元にした混合物である。 好ましくはこのような組成物において、全ラクトース含量は製剤中に存在するタンパク質加水分解産物の1重量% 以下である。 【0050】本発明の組成物に含むのに好適なビタミンの例は、生理学的に許容可能な形のビタミンA、ビタミンD 3 、ビタミンE、ビタミンK 1 、ビタミンC、葉酸、 チアミン、リボフラビン、ビタミンB 6 、ビタミンB 12 、ナイアシンアミド、ビオチン、l−カルニチン、 クロリンおよびパントテン酸を含む。 期待される使用に依存して、それぞれタウリンおよび/またはヒポタウリン、L−システインの包含、スレオニンの補給は有用であり得る。 本発明の組成物に加えるアミノ酸の量は、遊離アミノ酸または小さなペプチドの形では、例えば遊離アミノ酸含量、有効な加水分解率、4〜10アミノ酸からなるペプチド等に関して、好ましくは本発明の方法に使用される非アレルギー源性加水分解産物の組成物に実質的に影響をおよぼさないようなものである。 【0051】本発明の組成物に含むのに好適なミネラルおよび微量元素の例は、生理学的に許容可能な形のナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、 マンガン、銅、亜鉛、鉄、セレン、クロムおよびモリブデンである。 【0052】ビタミン、ミネラルおよび微量元素の一日必要最少量は処置されるひとに依存することは認識されよう。 一般に一日必要最少量は政府当局により決定される:従って、それらは、国によって違い得る。 【0053】以下の本発明を説明する実施例において、 %および部は特記しない限り重量であり、温度は摂氏である。 【0054】 【実施例】 実施例1:選択された乳漿タンパク質加水分解産物 1.1 タンパク質溶液の製造 12,000のタンクに、7500lの脱塩水を25± 2℃で入れる。 900kgの脱脂質脱ラクトースラクトシーラム(lactoserum)を徐々にその中に溶解する。 混合物を、温度25±2°の600lの脱塩水で処理し、容量を11500lに合わせる。 水酸化の時間は1時間である。 【0055】1.2 熱処理 調整したクエン酸および乳酸(混合物A:下記実施例2. 1参照)混合物を使用して溶液のpHを4.6±0.1に調節する。 混合物をpH4.6で、1分間の80℃瞬間熱処理により低温殺菌を行う。 混合物の温度を次に43 ±2℃に上げ、pHをpH2.6±0.1に33%塩酸溶液を使用して調整する。 【0056】1.3 ペプシン加水分解 牛ペプシン(BOVIPEP;ラボラトリー・プレシュール・グランデイ(Lab. Presure Granday))0.2g/kgを次に加え、反応容器を1時間温度を43℃に維持しながら往復させる。 【0057】1.4 超濾過による脱塩 pHをpH8±0.1に、調整したアルカリ混合物B(下記参照)を使用して調整する。 温度は43±2℃に維持する。 混合物を、2500lの浸透物が得られるまで超濾過(IRIS 3038膜−レーン・パウレンク(Rhon e Poulenc);膜表面80m 2 、温度50℃)する。 この段階において、ジアフィルトレーション(diafiltration) を開始する:4800lの浸透物を溶出し、一方保持物の用量は、45±2℃で、脱塩水4800lを加えることにより借りと同じにする。 【0058】保持物中の塩素含量を脱塩する。 それは1.7g/lを越えてはならない。 もし越えれば、超濾過を、塩素含量が望ましい濃度に下がるまで、浸透物の量を捕捉して溶出により超濾過を続行する。 保持物の容量を、45±2℃の脱塩水を用いて12000lに調整する。 温度およびpHは立証されている;もし必要であれは、温度を45±2℃に熱して再調整し、pHをアルカリ性混合物B(下記実施例2.2)を用いてpH8に再調整する。 【0059】1.5 エラスターゼ存在下のトリプシン/キモトリプシン加水分解 PEM(以下の実施例2.3)およびエラスターゼ(以下の実施例2.4)を調整溶液の形で同時に加える:PEMはタンパク質基質1kg当たり3.5g、エラスターゼは、 タンパク質基質1kg当たり1120U 2 、最大3800 U 1の割合である。 pHは1時間15分間、あらかじめ調整したアルカリ中和溶液Bを用いてpH8±0.1に維持する。 加水分解は更に1時間15分、更なるpH調節はせずに続ける。 全PEM/エラスターゼ加水分解時間中、混合物の撹拌を続け、温度を45±2℃に維持する。 【0060】1.6 超濾過/ジアフィルトレーション−濃縮 タンパク質加水分解溶液を、次に50℃で、IRIS 3038膜(レーン・パウレンク)−膜表面80m 2を用いて超濾過をする。 超濾過に続いて、保持物のレフラクション・インデックスが約13%になった場合、ジアフィルトレーションを行う。 用いるジアフィルトレーションの割合は1.5である。 保持物を次いで冷却し、レフラクション・インデックスが35−40%になるまで濃縮する。 残ったタンパク質を、50℃で、80m 2の膜表面を有するIRIS 3038膜(レーン・パウレンク)を使用して超濾過して除去する。 【0061】1.7 滅菌/乾燥 濃縮した残留物を滅菌(130℃で5分)し、次いで噴霧乾燥する(入口温度180℃;出口温度80℃)。 このようにして得た生産物は下記の物理特性を有する: 【表3】 溶解性 100% pH 6 乾燥抽出 97.75g/100g タンパク質(N×6.5) 89.34g/100g 全窒素(TN) 13.74g/100g 灰 7.76g/100g Ca 270mg/100g Na 580mg/100g K 2300mg/100g Cl 2860mg/100g 遊離アミノ基中のN(AN) 2.66g/100g 全N含量(NH 2またはNH)(TAN) 12.80g/100g 加水分解の見掛けの割合(AN/TN) 19.35% 加水分解の有効な割合(AN/TAN) 20.75% 【0062】 【表4】 【0063】このようにして得た加水分解産物のアミノグラム(g/100アミノ酸)は下記の通りである(6個のサンプルの平均): 【表5】 【0064】遊離アミノ酸含量(g/100g生産物)− 3個のサンプルの平均 【表6】 【0065】ペプチド組成(6個のサンプルの平均) 【表7】 UV検出(215nm) 2−5アミノ酸からなるペプチド:28.80±0.65 2−10アミノ酸からなるペプチド:60.83±0.87 4−10アミノ酸からなるペプチド:39.52±1.19 レフラクション・インデックスにより検出 2−5アミノ酸からなるペプチド:27.42±3.78 2−10アミノ酸からなるペプチド:64.77±1.92 4−10アミノ酸からなるペプチド:47.20±2.67 【0066】実施例2 2.1 混合物A 25±2℃の脱塩水に30kgの結晶クエン酸を撹拌しながら加える。 クエン酸が完全に溶解した後、30lの乳酸(純度80%)を加える。 次いで全量130lとなるまで更に脱塩水を加える。 【0067】2.2 混合物B 25±2℃の脱塩水100lにKOH52.97kgを、 完全な溶解溶液になるまで撹拌しながら加える。 次いで純粋な21%アンモニア211.75lを加え、脱塩水を加えて容量を350lに調整する。 【0068】2.3 PEM(酵素3.5g/タンパク質1kg) 用いるタンパク質融解性酵素混合物は、ブタトリプシン、牛トリプシンおよび牛キモトリプシンの塩を含まない粉末形の濃縮混合物である、少なくともトリプシン活性1800USP−u/mgおよびキモトリプシン活性少なくとも350USP−u/mgを有する商品名P.E. M.2500S(ノボ・インダストリエ・エンザイムズ・ ソシエテ・アノニム(NOVO Industrie Enzymes SA)、 パリ)である。 PEM2500Sを25±2℃で脱塩水に溶解して、水性溶液として使用する。 【0069】2.4 エラスターゼ(パンクレオペプチダーゼE) 用いるエラスターゼは豚膵臓由来のものであり、70% 飽和硫酸アンモニウムに懸濁された形で、活性が120 U/タンパク質mg以下ではない、コードE3で、バイオザイム(GB)から市販されているものである。 バイオザイムにより用いられる単位定義は以下の通りである:1 マイクロモルのN−アセチル−トリ−L−アラニンメチルエステルを25℃、pH8.5で1分当たりに加水分解する酵素量(メソッド・オブ・アッセイ(Method of as say):ゲルタ−およびホフマン(1970)、カナディアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Can.J.Bio chem.)、48、384)。 【0070】実施例3:乳漿タンパク質加水分解産物 1時間15分の中和段階(工程1.5)の後、加水分解を更に1時間45分(1時間15分の代わり)続ける以外、 実施例1の方法と同様に行う。 MW配分は以下の通りである:(215nmのUV検出により測定) 【表8】 【0071】実施例4:乳漿タンパク質加水分解産物 1時間15分の中和段階(工程1.5)の後、1%COR OLASE7092を加え、加水分解を1時間15分続ける以外、実施例1の方法と同様に行う。 COROLA SE7092(レーム)は、2000mUHb/mgの活性を有するアスペルギルス・オリザエ培養物から液体形で製造されたタンパク質融解性酵素であり、1UHbは1分間にpH7.5および37℃で、ヘマグロブリン由来の1マイクロモルのTCE−可溶性加水分解産物中のチロシンと同じである。 このようにして得られた産物は、下記の物理化学的特性を有する: 【表9】 乾燥抽出 97.97g/100g 全窒素含量(ケルダール) 13.30g/100g タンパク質含量(×6.5) 85.01g/100g 灰 7.99g/100g Ca 0.33g/100g Na 0.67g/100g K 3.05g/100g Cl 2.72g/100g pH 6.05 溶解性 100% 【0072】 【表10】 【0073】実施例5:乳漿タンパク質加水分解 COROLASE 7092の代わりに膵臓プロテイナーゼ、COROLASE PPを用いる以外、実施例4 の方法と同様に行う。 【0074】実施例6:乳漿タンパク質加水分解産物 出発物質として使用する乳漿タンパク質が、下記の通り巨大タンパク質を除去するために予備処理したものである以外、実施例1〜4に記載の方法と同様に行う。 商業的に入手可能な脱ラクトースラクトシーラムタンパク質粉末を精製し、巨大脂質および分子量60,000ダルトン以上を有する最も大きいタンパク質を、50,00 0以上の動的分離を有する膜上の微小濾過および超濾過技術を用いて除去するために、予備処理する。 状況は、 免疫技術で測定して約95%の免疫グロブリンIgGが0.22ミクロンの膜による微小濾過により溶出されるようおよび産物が1リットル当たり約75gタンパク質を含むように、および1リットル当たりラクトースが2 g以下であるように選択する。 【0075】実施例7:レンネットカゼインのトリプシン/キモトリプシン/エラスターゼ−型2−加水分解 a)1000kgのレンネットカゼイン(牛乳から、レンネットによる酵素的沈澱により得、少なくとも84重量%のタンパク質−関連物を全乾燥物中に含み、水分含量は10%以下である)を、脱塩水7000lを含む12 m 3の反応容器に、撹拌しながら、5℃に冷却して部分法(portionwise)により加える。 混合物を700lの脱塩水で処理し、混合物の容量を8300lに調製する。 加水分解時間は1時間である。 b)工程a)の溶液のpHを、アンモニアおよび水酸化カリウムのアルカリ溶液[B](実施例2.2)を用いてp H8±0.1に調整する。 c)温度は45℃±2℃に調整する。 d)PEM(実施例2.3参照)およびエラスターゼ(実施例2.4参照)を同時にこのようにして得られた混合物に加える:PEMは1.96g/タンパク質kg、エラスターゼはタンパク質1kg当たり3420U 1の割合である。 アンモニア/水酸化カリウム溶液B(実施例2.2) を用いて溶液を中和することにより1時間15分間、p Hを8±0.1に維持する。 【0076】e)COLOLASE 7092を、次に15g/タンパク質kgの量で加える。 混合物は1時間15 分45±2℃に維持する。 f)加水分解が終了した後(全加水分解時間2時間30 分)、混合物を、膜表面80m 2を有するIRIS 30 38膜(レーン−パウレンク)を用いて超濾過する。 温度は50℃である。 g)超濾過の後、レフラクション・インデックスが約1 3%になった場合、ジアフィルトレーションを行う。 使用するジアフィルトレーションの割合は1.5である。 2時間以上保存する場合、保持物の温度は5℃以下に冷却しなければならない。 h)保持物を、レフラクション・インデックスが35から40%になるまで蒸発濃縮する。 濃縮物を1分間12 5°±2℃で滅菌し、噴霧乾燥する(入口温度180 ℃;出口温度80℃)。 【0077】このようにして得た生産物は下記の物理特性を有する: 【表11】 溶解性 100% pH 7.26 乾燥抽出 97.66g/100g タンパク質(N×6.5) 94.12g/100g 全窒素(TN) 14.45g/100g 灰 4.27g/100g Ca 370mg/100g Na 50mg/100g K 1240mg/100g Cl 90mg/100g 遊離アミノ基中のN(AN) 3.35g/100g 全N含量(NH 2またはNH)(TAN) 12.40g/100g 加水分解の見掛けの割合(AN/TN) 23.2% 加水分解の有効な割合(AN/TAN) 27.0% 【0078】 【表12】 【0079】アミノグラム(g/100アミノ酸) 【表13】 浸透圧モスモル/l 50g/l 119 100g/l 236 残ってるアレルギー源性:なし 【0080】実施例8:幼児用の調剤 【表14】 加水分解したタンパク質* 13.1g 脂肪 20.2g 炭水化物 58.4g ミネラル 2.8g 非熱源有機化合物** 0.7g 湿気 4.8g 総量 100g *(60:40の乳漿タンパク質:カゼイン混合物であり、乳漿タンパク質は実施例6の予備加水分会の後実施例1に従って加水分解されており、レンネットカゼインは実施例7に従って加水分解されている。)加水分解産物は100g最終産物当たり0.055gL−システインおよび0.03gのタウリンと共に最終産物に加える。 **ビタミン画分および調剤におけるある微量元素およびミネラルの有機配位子に関する 【0081】アミノグラムは下記の通りである(g/1 00gアミノ酸) 【表15】 【図面の簡単な説明】 【図1】 全牛乳に対するおよび3種の主要な抗原に対する診断時(試験1)およびDAMIRA(商標)で処置3 カ月後(試験2)の細胞性反応を示すグラフである。 【図2】 3カ月後の全牛乳(図2a)およびDAMIR A(商標)(図2b)の比較を示すグラフである。 フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A23J 3/34 A61K 39/35 C12P 21/06 9282−4B (72)発明者 ジャン−モーリス・カーン スイス、ツェーハー−3011ベルン、ユンケ ルンガッセ25番 (72)発明者 バルバラ・ポーラ スイス、ツェーハー−1201ジュネーヴ、プ ラス・コルナヴァン18−20番 |