マイクロ微粒子の製造方法

申请号 JP2014559033 申请日 2014-08-20 公开(公告)号 JPWO2015025979A1 公开(公告)日 2017-03-02
申请人 株式会社Nrlファーマ; 发明人 英文 桑田;
摘要 本発明は平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子を提供することを目的とする。本発明は、平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子及びその製造方法を提供する。また、本発明は、平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子を含む医薬、食品及び飼料を提供する。
权利要求

有効成分、マトリックス形成成分A、及びマトリックス形成成分Aに結合可能なマトリックス形成成分Bを同時に噴霧する工程、及び 前記成分A及びBが結合して形成されたポリマー構造中に前記有効成分が担持されたマイクロ微粒子を回収する工程、 を含む、直径100μm以下のマイクロ微粒子の製造方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Aが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bがそれぞれ第1〜第3の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。各溶液がそれぞれ個別のノズルから噴霧される、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。前記有効成分がタンパク質又はペプチドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。前記有効成分は以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法: ウシラクトフェリン、ヒトラクトフェリン、組換え型ウシラクトフェリン、組換え型ヒトラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、TGFβ、アンジオジェニン、インターフェロン類、インターロイキン類、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、ラクトフェリシン、インシュリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP−1、GLP−1アナログ、GLP−1誘導体、グルカゴン黄体形成ホルモン放出ホルモン、リュープロレリン、カルシトニン、バソプレシン又はそれらの活性断片。前記マトリックス形成成分Aはカチオン性解離基を持つ化合物を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。前記マトリックス形成成分Bはアニオン性解離基を持つ化合物を含む、請求項2〜9のいずれか一項に記載の方法。前記マトリックス形成成分Aは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法: キトサン、キトサンオリゴ糖、ポリリジン、ポリアルギニン、スペルミジン、プトレシン、リジン、アルギニン、塩化カルシウム及び乳酸カルシウム前記マトリックス形成成分Aの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、請求項11に記載の方法。前記マトリックス形成成分Bは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法: イノシトール−6−リン酸、クエン酸、アルギン酸、低分子アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アスパラギン酸、グルタミン酸、デオキシリボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸及びポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸前記マトリックス形成成分Bの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、請求項13に記載の方法。請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により製造された、直径100μm以下のマイクロ微粒子。請求項15に記載のマイクロ微粒子を含む医薬、飼料又は食品。

有効成分、マトリックス形成成分A、及び架橋を形成することによりマトリックス形成成分Aに結合可能なマトリックス形成成分Bを同時に噴霧する工程、及び 前記成分A及びBが結合して形成されたポリマー構造中に前記有効成分が担持されたマイクロ微粒子を回収する工程、 を含み、 前記マトリックス形成成分Aはカチオン性解離基を持つ化合物を含み、前記マトリックス形成成分Bはアニオン性解離基を持つ化合物を含む、直径100μm以下のマイクロ微粒子の製造方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Aが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bがそれぞれ第1〜第3の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。各溶液がそれぞれ個別のノズルから噴霧される、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。前記有効成分がタンパク質又はペプチドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。前記有効成分は以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法: ウシラクトフェリン、ヒトラクトフェリン、組換え型ウシラクトフェリン、組換え型ヒトラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、TGFβ、アンジオジェニン、インターフェロン類、インターロイキン類、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、ラクトフェリシン、インシュリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン黄体形成ホルモン放出ホルモン、リュープロレリン、カルシトニン、バソプレシン又はそれらの活性断片。前記マトリックス形成成分Aは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法: キトサン、キトサンオリゴ糖、ポリリジン、ポリアルギニン、スペルミジン、プトレシン、リジン、アルギニン、塩化カルシウム及び乳酸カルシウム前記マトリックス形成成分Aの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、請求項9に記載の方法。前記マトリックス形成成分Bは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法: イノシトール-6-リン酸、クエン酸、アルギン酸、低分子アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アスパラギン酸、グルタミン酸、デオキシリボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸及びポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸前記マトリックス形成成分Bの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、請求項11に記載の方法。請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により製造された、直径100μm以下のマイクロ微粒子。請求項13に記載のマイクロ微粒子を含む医薬、飼料又は食品。有効成分、マトリックス形成成分A、及び架橋を形成することによりマトリックス形成成分Aに結合可能なマトリックス形成成分Bを同時に噴霧する工程、及び 前記成分A及びBが結合して形成されたポリマー構造中に前記有効成分が担持されたマイクロ微粒子を回収する工程、 を含み、 前記マトリックス形成成分Aはカチオン性解離基を持つ化合物を含み、前記マトリックス形成成分Bはアニオン性解離基を持つ化合物を含む、直径100μm以下のマイクロ微粒子の製造方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Aが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bがそれぞれ第1〜第3の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。各溶液がそれぞれ個別のノズルから噴霧される、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。前記有効成分がタンパク質又はペプチドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。前記有効成分は以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法: ウシラクトフェリン、ヒトラクトフェリン、組換え型ウシラクトフェリン、組換え型ヒトラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、TGFβ、アンジオジェニン、インターフェロン類、インターロイキン類、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、ラクトフェリシン、インシュリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン黄体形成ホルモン放出ホルモン、リュープロレリン、カルシトニン、バソプレシン又はそれらの活性断片。前記マトリックス形成成分Aは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法: キトサン、キトサンオリゴ糖、ポリリジン、ポリアルギニン、スペルミジン、プトレシン、リジン、アルギニン、塩化カルシウム及び乳酸カルシウム前記マトリックス形成成分Aの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、請求項9に記載の方法。前記マトリックス形成成分Bは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法: イノシトール-6-リン酸、クエン酸、アルギン酸、低分子アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アスパラギン酸、グルタミン酸、デオキシリボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸及びポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸前記マトリックス形成成分Bの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、請求項11に記載の方法。マトリックス形成成分Aと、架橋を形成することによりマトリックス形成成分Aに結合可能なマトリックス形成成分Bとが結合して形成されたポリマー構造中に前記有効成分が担持されたマイクロ微粒子であって、 前記マトリックス形成成分Aはカチオン性解離基を持つ化合物を含み、前記マトリックス形成成分Bはアニオン性解離基を持つ化合物を含む、 直径100μm以下のマイクロ微粒子。請求項13に記載のマイクロ微粒子を含む医薬、飼料又は食品。有効成分、マトリックス形成成分A、及び架橋を形成することによりマトリックス形成成分Aに結合可能なマトリックス形成成分Bを同時に噴霧する工程、及び 前記成分A及びBが結合して形成されたポリマー構造中に前記有効成分が担持されたマイクロ微粒子を回収する工程、 を含み、 前記マトリックス形成成分Aはカチオン性解離基を持つ化合物を含み、前記マトリックス形成成分Bはアニオン性解離基を持つ化合物を含み、 前記マトリックス形成成分Aと前記マトリックス形成成分Bとが別々の溶液に含まれ、前記有効成分は、前記マトリックス形成成分Aを含む溶液にのみ、前記マトリックス形成成分Bを含む溶液にのみ、前記マトリックス形成成分A及びBを含まない溶液にのみ、又は前記マトリックス形成成分Aを含む溶液と前記マトリックス形成成分Bを含む溶液とに含まれ、 各溶液がそれぞれ個別のノズルから噴霧される、 直径100μm以下のマイクロ微粒子の製造方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Aが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bがそれぞれ第1〜第3の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、請求項1に記載の方法。前記有効成分がタンパク質又はペプチドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。前記有効成分は以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法: ウシラクトフェリン、ヒトラクトフェリン、組換え型ウシラクトフェリン、組換え型ヒトラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、TGFβ、アンジオジェニン、インターフェロン類、インターロイキン類、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、ラクトフェリシン、インシュリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン黄体形成ホルモン放出ホルモン、リュープロレリン、カルシトニン、バソプレシン又はそれらの活性断片。前記マトリックス形成成分Aは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法: キトサン、キトサンオリゴ糖、ポリリジン、ポリアルギニン、スペルミジン、プトレシン、リジン、アルギニン、塩化カルシウム及び乳酸カルシウム前記マトリックス形成成分Aの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、請求項8に記載の方法。前記マトリックス形成成分Bは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法: イノシトール-6-リン酸、クエン酸、アルギン酸、低分子アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アスパラギン酸、グルタミン酸、デオキシリボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸及びポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸前記マトリックス形成成分Bの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、請求項10に記載の方法。

说明书全文

本発明は、有効成分を含む平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子及びその製造方法に関する。また、本発明は、有効成分を含む平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子を含む医薬、食品及び飼料に関する。

生理活性成分を含む多様な医薬品や食品が市販されている。生理活性成分は製造過程や製品の保存過程、更には体内へ投与後に、分解や変性によりその活性を失うものがある。例えば、タンパク質やポリペプチドなどの生理活性物質は、胃内において胃酸とペプシンの作用により分解され、失活し、殆どがその生物活性を失う。生理活性物質の多くは、腸管で吸収された後に機能を発揮するか、あるいは、腸管で作用するため、生理活性成分を腸管まで分解や変性させずに到達させることが必要とされる。

医薬用途での腸溶性コーティング剤、腸溶性カプセル素材、マトリックス素材として、アクリル酸系ポリマー(EUDRAGIT/オイドラギット(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)などの腸溶性高分子が使われている。このような腸溶性コーティング剤は有機溶媒に溶解させて使用するため、微量の有機溶媒で失活するタンパク質やポリペプチド等の生理活性物質には適用できないことが多い。これらのコーティング剤、腸溶性カプセル素材、及びマトリックス素材は、医薬用途に限定されるため、食品や飼料の用途では、天然物由来のシェラックやツェイン等が使用されている。このような、天然由来の素材を使った例として、腸溶性フィルムで被覆あるいは腸溶性カプセルに充填してタンパク質やポリペプチドを保護する方法(特許文献1)、マトリックス型腸溶性・徐放性組成物(特許文献2)、ドロップワイズ(drop−wise)での製造法(非特許文献1、2)、液中で硬化する方法(特許文献3、非特許文献3)などが開示されている。

天然物を使ったこれらの方法は、錠剤、あるいは顆粒状の医薬品やサプリメントには適用できるが、その他の形状の多くの食品や医薬品には粒径が大きすぎて添加することができない。例えば、食品では、粒径が大きな粒子を加えると、食べる際に異物感を与える。より汎用性を持たせる為に、マイクロメーターオーダーの大きさの粒子(マイクロ微粒子)を製造し、これを医薬品、飼料、食品に添加する試みもこれまでに行われている。しかしながら、腸溶性コーティング剤、マトリックス型徐放性製剤、液中硬化法をマイクロ微粒子に適用することは困難とされており、ほとんど報告がない。これらの方法は、シェル材といわれる錠剤やカプセルを保護している物質で生理活性成分をマトリックス化したり、あるいは成分を覆ったりしているが、粒子の粒径が小さくなると、これらの保護成分の効果が大きく低下する。たとえば、粒子が完全な球体であることを仮定し、直径が1ミリの粒子と、10μメートルの粒子を比べると1ミリの粒子は、10μメートルの粒子に比べ直径が1/100であるに対して、体積あたりの表面積は逆に100倍も大きい。マイクロ微粒子や微粒体は完全な球体ではないから、更に表面積が大きくなる。このような理由で、対象の生理活性成分に対してコーティング剤、マトリックス材、及び腸溶性素材を多量に使用する必要があり、しかも桁違いに体積あたりの表面積が大きくなる為にコーティングやカプセル剤による成分の保護効果が得られにくいという問題がある。これらの問題は、医薬品用の腸溶コーティング剤と天然由来の成分のどちらでも共通する問題である。

シームレスカプセルと、オイドラギット等のアクリル系ポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、硬化油等の油脂類によって構成されるマトリックスとを含むマルチユニット錠剤が報告されている(特許文献4)。マトリックスを含むマルチユニット錠剤であるため、錠剤にコーティングを施す従来の方法に比べて製造法の汎用性が高いが、錠剤のみに適用できる方法で、顆粒剤や液剤等の医薬品には直接適用できないという問題がある。また、ここで使用しているオイドラギット等のアクリル系ポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類は、医薬用途のみに用途が限定されているため、一般の食品や飼料の用途にも使用ができないという問題がある。また、冷却オイル中に活性物質とゼラチン液を放出して製造するために、最終製品であるマルチユニット錠剤にはオイルを含有せざるを得ず、さもなくばオイルを除去し洗浄する工程を新たに追加する必要があった。

マトリックス型徐放性製剤として、魚類の成長ホルモン(分子量約2〜3万のポリペプチド)と腸溶性高分子とからなるマトリックス製剤が報告されている(特許文献5)。この方法では、錠剤よりも小さなミリメーターサイズの粒子を製造できるが、アンモニア中で魚類の成長ホルモンと腸溶性高分子溶液とを溶解した後、凍結乾燥させて製造するため、製造工程が複雑でコストが高いという問題がある。凍結乾燥の後に更に粉砕する必要があるが、粉砕したとしても、マイクロメーターからナノオーダーサイズのマイクロ微粒子や微粒体を低コストに製造するには、困難であった。また、腸溶性を保持させる為には、魚類の成長ホルモンと腸溶性高分子との配合割合は魚類の成長ホルモンに対して腸溶性高分子が5倍以上も必要となるという問題もあった。また使用されている腸溶性高分子は薬事法により医薬用途のみに使用が限定されているため、一般の食品や飼料の用途には使用ができない。製造過程で使用するアンモニア水は、日本では医薬部外劇物・危険物に指定されており、他の国でもほとんどすべての食品や飼料の用途の制限があり、使用できない。

アルギン酸ゲルマトリックス、ゲルマトリックスにからみついたタンパク質、及びからみついたタンパク質に結合することができる生理活性成分を包含する組成物であって、この組成物がタンパク質分解酵素を含む条件下で反応するときにタンパク質が分解され、薬物が放出されるようにした放出制御医薬組成物が報告されている(特許文献6)。ここで使用できる薬剤の要件は、ゲルマトリックスにからみついたタンパク質に結合できることが必要であるため、適用可能な薬剤は無機化合物および抗生物質や化学療法剤等の比較的低分子の有機化合物に限定され、生理活性成分がタンパク質やポリペプチド等である場合には適用できないという問題がある。この方法により作られるビーズ又はペレットの直径は0.5〜4mmであり、マイクロメーターからナノオーダーサイズのマイクロ微粒子や微粒体に適用することは困難という問題もあった。

低分子量ゲル化剤(LMWG)に対象生理活性物質と重合体を加え、濃化またはゲル化を行った後に、乾燥させることで制御型送達システムを含む組成物を作る方法が報告されている(特許文献7)。しかし、ここで使用されているゲル化剤は、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、芳香族または複素環式芳香族部分とアミノ基を分子構造内に持つ化学合成物質で、一般の食品や飼料の用途には使用ができない。また、濃化またはゲル化を行った後に乾燥させる別工程が必要で、工程が複雑で製造コストが高いという課題があった。

生理活性物質をカプセル化剤と混合し液体混合物を製造し、その後液体混合物を乾燥させて、哺乳類新生児用の配合物を製造する方法が報告されている(特許文献8)。この方法は、食品に汎用されるカプセル化剤を使うことができ、タンパク質やポリペプチド等の生理活性物質にも適用できる方法である。しかしながら、液体混合物を作ってから乾燥させる別工程が必要で、工程が複雑で製造コストが高いという問題がある。サイズの小さなカプセルや微粒体を作る為には、乾燥させた液体混合物を小さく粉砕する必要があるが、乾燥物を粉砕しても直径数百マイクロメーターの大きな粒子は製造できても、マイクロメーターオーダーからナノメーターオーダーの小さな粒子の製造は困難であった。小さく粉砕する過程で、ペプチドやタンパク質が熱による変性する問題もあった。また、乾燥方法が凍結乾燥、低温真空乾燥、又は低温噴霧乾燥といった、低温での乾燥法に限られ、製造工程に長時間を要するという問題がある。

生理活性物質を含む供給物を、液滴の形で噴霧塔内に分散すると同時に粉化剤を噴霧塔内に導入し、噴霧された供給物の滴上へ粉化剤の被覆を行い−20℃〜500℃の範囲の気体で乾燥させる方法が報告されている(特許文献9)。この方法は噴霧された液滴の表面に雲状の粉化剤が張り付き乾燥されることがカプセル生成のメカニズムである為、100〜2000μmの平均直径のカプセルを製造できるが、100μm以下の平均直径のカプセルを製造することはできなかった。また、製造されたカプセルが弱い為に、香料や甘味料の溶解性を遅らせることはできるが、生理活性物質の投与後の体内での安定性、体内への送達(デリバリー)、及び体内への吸収の改善に適用するとはできなかった。

抗てんかん薬であるフェニトインを、オイドラギッド等と混合した後に噴霧凍結乾燥(spray freeze−drying)することで、シングルミクロンサイズの多孔質マイクロカプセルを製造する方法が報告されている(非特許文献4)。この方法は、シングルミクロンサイズの小さなマイクロカプセルを噴霧凍結乾燥法で製造できるが、噴霧溶液の固形分の濃度が1−3%と低い為に、凍結乾燥のプロセスの生産性が低いという問題がある。また、この報告で使われているカプセル素材は、オイドラギッドとヒドロキシメチルプロピルセルロースの2種類であるが、いずれも医薬用途に限定される為、食品や飼料の用途では使用できないという問題がある。更に、用いられる薬剤はフェニトインという分子量252.27の低分子化合物であり、ペプチドやタンパク質のように、分子量数千〜数万以上という高分子化合物には適用できなかった。

高分子電解質との複合体を形成する方法(特許文献10)が開示されている。この方法はタンパク質を内包できるが、動物やヒトの胃液と同等のpH条件下(pH1.0−1.5)では、内包されたタンパク質の分解を抑制できていないという問題がある。また、製造過程については例えば、ラクトフェリンを含有する水性溶液と高分子酸の溶液とを混合し、続いて得られた複合体を回収し、更に乾燥工程が必要となるなど製造工程が複雑で製造コストが高いという問題がある。

酸性ポリマーのゲルを塩基性ポリマーの水溶液で処理することで、徐放性ラクトフェリン微粒子の製造法(非特許文献5)が開示されている。この方法は、セスキオレイン酸ソルビタン含有流動パラフィンを用いた液中乾燥法によりラクトフェリンをアルギン酸カルシウム等のゲルに封じ込めた後にさらに塩基性のポリマーで処理する方法であるが、用いられている流動パラフィンは食品製造には用いることができず、製造された微粒子は医薬品用途に限られるという問題があった。ここでは、液中乾燥法において減圧乾燥により水分を除去し、回収した微粒子を洗浄し再度塩基性のポリマーで処理するという複雑な工程を経て微粒子を製造しているため、製造コストが高いという問題もあった。また、製造された微粒子は徐放性を示すが、腸溶性は示さないため、すなわち酸性の模擬胃液の方が中性の模擬腸液よりも内容物であるラクトフェリンを放出しやすく、粒体中のラクトフェリンの胃での分解を抑制できないという問題がある

特許公開2002−161050

WO2006/082824

特許公開平11−130697

特開平9−52847

特開平5−85941

特許第3264948号

特公2009−520814

特公2007−520202

特公2009−537322

WO2006/016595

Bhopatkar et al Journal of Micro encapsulation,2005;22:91−100

Kanwar JR et al Nanomedicine(Lond).2012 7:1521−50

Lee et al.Bio−Medical Materials and Engineering 21(2011)25−36

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Expert Opin Drug Deliv.2011 Nov;8(11):1469−79 Drug Dev Ind Pharm.2010 Aug;36(8):879−84

上記の通り、平均粒径が十分に小さなマイクロ微粒子を、簡便かつ安価に製造する方法の開発が待たれている。

本発明者らは鋭意研究を遂行した結果、有効成分と2種以上のマトリックス形成成分とを同時に噴霧して空中で接触させることにより、平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子を容易に製造することができることを見出した。また、本発明者らはこのようにして製造されたマイクロ微粒子が、優れた腸溶性を示すことを見出し、本発明を完成させた。

即ち、本発明は、以下のとおりである。 [1] 有効成分、マトリックス形成成分A、及びマトリックス形成成分Aに結合可能なマトリックス形成成分Bを同時に噴霧する工程、及び 前記成分A及びBが結合して形成されたポリマー構造中に前記有効成分が担持されたマイクロ微粒子を回収する工程、 を含む、直径100μm以下のマイクロ微粒子の製造方法。 [2] 前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、前記[1]に記載の方法。 [3] 前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第1の溶液に含まれ、前記マトリックス形成成分Aが第2の溶液に含まれる、前記[1]に記載の方法。 [4] 前記有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bがそれぞれ第1〜第3の溶液に含まれる、前記[1]に記載の方法。 [5] 前記有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、前記有効成分及びマトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる、前記[1]に記載の方法。 [6] 各溶液がそれぞれ個別のノズルから噴霧される、前記[2]〜[5]のいずれか一つに記載の方法。 [7] 前記有効成分がタンパク質又はペプチドである、前記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の方法。 [8] 前記有効成分は以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、前記[1]〜[6]のいずれか一つに記載の方法。 ウシラクトフェリン、ヒトラクトフェリン、組換え型ウシラクトフェリン、組換え型ヒトラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、TGFβ、アンジオジェニン、インターフェロン類、インターロイキン類、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、ラクトフェリシン、インシュリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP−1、GLP−1アナログ、GLP−1誘導体、グルカゴン黄体形成ホルモン放出ホルモン、リュープロレリン、カルシトニン、バソプレシン又はそれらの活性断片 [9] 前記マトリックス形成成分Aはカチオン性解離基を持つ化合物を含む、前記[1]〜[8]のいずれか一つに記載の方法。 [10] 前記マトリックス形成成分Bはアニオン性解離基を持つ化合物を含む、前記[2]〜[9]のいずれか一つに記載の方法。 [11] 前記マトリックス形成成分Aは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、前記[1]〜[10]のいずれか一つに記載の方法。 キトサン、キトサンオリゴ糖、ポリリジン、ポリアルギニン、スペルミジン、プトレシン、リジン、アルギニン、塩化カルシウム及び乳酸カルシウム [12] 前記マトリックス形成成分Aの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、前記[11]に記載の方法。 [13] 前記マトリックス形成成分Bは以下よりなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、前記[1]〜[12]のいずれか一つに記載の方法。 イノシトール−6−リン酸、クエン酸、アルギン酸、低分子アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アスパラギン酸、グルタミン酸、デオキシリボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸及びポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸 [14] 前記マトリックス形成成分Bの成分が、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にある、前記[13]に記載の方法。 [15] 前記[1]〜[14]のいずれか一つに記載の方法により製造された、平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子。 [16] 前記[15]に記載のマイクロ微粒子を含む医薬、飼料又は食品。 [17] 形成されたマイクロ微粒子を乾燥させる工程をさらに含む、前記[1]に記載の方法。 [18] 前記乾燥工程は、−197℃〜+250℃、0〜大気圧の条件で行われる、前記[17]に記載の方法。

上記方法により、平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子を簡便かつ安価に製造することができる。また、上記方法により製造された平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子を用いて、これまでにはない性質を有する医薬、飼料又は食品を製造することができる。

従来技術に係る方法に沿って製造したマクロ粒子(実線)及び本発明の方法に沿って製造したマイクロ微粒子(破線)の溶出試験結果を示すグラフである。

本発明のマイクロ微粒子の粒径分布を示すグラフである。

従来技術に係る方法に沿って製造したマクロ粒子の粒径分布を示すグラフである。

ラットモデルから回収した小腸内容物のSDS−PAGE分析結果を示す図である。

本発明のマイクロ微粒子の粒径分布を示すグラフである。

以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。 なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、2013年8月21日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2013−171688号)の明細書及び図面に記載の内容を包含する。

1.マイクロ微粒子の製造方法 本発明者らは、有効成分、マトリックス形成成分A、及びマトリックス形成成分Aに結合可能なマトリックス形成成分Bを同時に噴霧させると、平均粒径が100μm以下の極めて微小なマイクロ微粒子が形成されることを見出した。 そこで、本発明は、 有効成分、マトリックス形成成分A、及びマトリックス形成成分Aに結合可能なマトリックス形成成分Bを同時に噴霧する工程、及び 前記成分A及びBが結合して形成されたポリマー構造中に前記有効成分が担持されたマイクロ微粒子を回収する工程、 を含む、直径100μm以下のマイクロ微粒子の製造方法(以下、「本発明の方法」という)を提供する。

本発明の方法において、有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bは、好ましくは、溶液又は懸濁液(以下、「溶液又は懸濁液」を総称して「溶液」と呼ぶ。つまり、本願において、用語「溶液」には、溶液と懸濁液の両者が含まれ得る。)に含まれている。ただし、マトリックス形成成分Aとマトリックス形成成分Bとは互いに結合する性質を有するため、それぞれ別の溶液に含まれている必要がある。 有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが溶液に含まれる例としては以下のケースが挙げられる。 (1)有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、マトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる場合 (2)有効成分及びマトリックス形成成分Bが第1の溶液に含まれ、マトリックス形成成分Aが第2の溶液に含まれる場合 (3)有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bがそれぞれ第1〜第3の溶液に含まれる場合 (4)有効成分及びマトリックス形成成分Aが第1の溶液に含まれ、有効成分及びマトリックス形成成分Bが第2の溶液に含まれる場合

前記(1)〜(4)の場合において、有効成分は1種類であってもよく、複数種類のものであってもよい。特に前記(4)の場合、第1の溶液に含まれる有効成分と、第2の溶液に含まれる有効成分とは、同一のものであってもよく、あるいは異なるものであってもよい。

噴霧は、通常の噴霧器を用いて行うことができる。 ここで、「同時に噴霧する」とは、必ずしも物理的に同時である必要はなく、有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bを含む混合物の噴霧が形成される限り、多少のタイムラグが生じても構わない。 すなわち、「同時に噴霧する」工程には、 (i)有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが噴霧器のノズルから排出された後に混合される態様(以下、「噴霧後混合プロセス」という)、 および (ii)噴霧の前に有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bを混合し、得られた混合物を直ちに噴霧する態様(以下、「混合後噴霧プロセス」という) が存在する。

(i)噴霧後混合プロセス 噴霧後混合プロセスの例として、上記(1)〜(4)のケースに基づいて以下に説明するが、これに限定されるものではない。第1の溶液の噴霧が空気中に滞留している間に、第2の溶液(及び第3の溶液)を噴霧し、両溶液(又はすべての溶液)が空中で噴霧として接触することができれば、それは「同時に噴霧する」という条件を満足する。 ここで、「接触」は、必ずしも噴霧の全てが接触しあう必要はない。したがって、噴霧の一部が接触することができれば、本発明にいう「接触」は達成されたものと言える。一部が接触するだけでも本発明のマイクロ微粒子が形成され得るからである。 また、「空中で」とは、噴霧の液滴が噴射によって上昇又は下降している状態及び重力によって自由落下している状態にあることを意味する。すなわち、噴霧の液滴が容器や床などによってその重量を支えられていない状態を意味する。 なお、噴霧後混合プロセスにおいては、各成分は噴霧の液滴に含まれた状態で混合されるが、当該混合は各溶液の噴霧が接触することにより瞬時に達成される。

噴霧から接触までは、1秒以内、好ましくは900ミリ秒以内、800ミリ秒以内、700ミリ秒以内、600ミリ秒以内又は500ミリ秒以内に行われる。 接触により有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが混合され、瞬時にマトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが相互に反応して架橋が形成される。この架橋構造に有効成分が保持されることによって本発明のマイクロ微粒子が形成される。すなわち、本発明のマイクロ微粒子は、有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが接触しさえすれば、瞬時に形成される。

(ii)混合後噴霧プロセス 混合後噴霧プロセスでは、噴霧前に有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが混合されるため、噴霧時にはすでにマトリックス形成成分Aとマトリックス形成成分Bとが結合反応を開始している可能性がある。 しかしながら、混合から噴霧までの時間が十分に短ければ、成分AとBとの結合反応が完結していない段階で混合物が噴霧されることになり、結合反応が完結するのは噴霧後となる。 このように、混合から噴霧までの時間が十分に短ければ、混合後噴霧プロセスであっても本発明のマイクロ微粒子を形成することができる。 従って、混合後噴霧プロセスにおいても、前記成分A及びBが結合して形成されたポリマー構造中に前記有効成分が担持されたマイクロ微粒子が形成される限り、「同時に噴霧する」という条件を満足する。 混合から噴霧までの時間は、100ms以下、90ms以下、80ms以下、70ms以下、60ms以下、50ms以下、40ms以下、30ms以下、20ms以下、10ms以下、5ms以下である。

マトリックス形成成分Aとマトリックス形成成分Bとが混合されると、瞬時にマトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが相互に反応して架橋が形成される。この架橋構造に有効成分が保持されることによって本発明のマイクロ微粒子が形成される。すなわち、本発明のマイクロ微粒子は、有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが接触しさえすれば、瞬時に形成される。

さらに本発明のマイクロ微粒子の(微細)構造を具体的に述べる。本発明のマイクロ微粒子の構造の特徴として、その大きさが挙げられる。赤外散乱あるいは電子顕微鏡観察で得られる平均粒径として、100μm以下の粒子である。なお、ここでの平均粒径は顕微鏡又は赤外散乱法による球相当径による積算値50%での粒径を意味する。粒子の形状は、球体、楕円体、両凸レンズ形状、半球形状、一部が開口した球体、半球状、又はこれらの形状の多孔質体等、種々の形状を作製することができるが、同一の製法と同一のロットで作製されたマイクロ微粒子は、90%以上が同一の形状をしている。 また、本発明のマイクロ微粒子は、マトリックス形成成分A及びBが反応して形成されたマトリックス構造内に有効成分が担持されることを特徴とする。

好ましくは、本発明の方法は、噴霧後混合プロセスによって行われる。 また、上記(1)〜(4)のいずれのケースにおいても、各溶液はそれぞれが個別のノズルから噴霧されることが望ましい。 好ましくは、各溶液は、近接して配置された複数のノズルを有する噴霧器によって同時に噴霧される。これによって、各溶液は噴霧の状態で互いに接触する。 近接して配置された複数のノズルを有する噴霧器の例としては、3流体噴霧口を備えた噴霧乾燥機(Buchi社製のB290装置に型番46555のノズルを装着した装置)が挙げられる。この噴霧乾燥器は、圧縮気体に加え2種類の液体の噴霧口を有する。 また、特許第2797080号(6頁、5−47行)に記載される4流体噴霧口(例えば、図3、4、及び5)を用いることもできる。この4流体噴霧口は、2種類の液体を2口のノズルから噴霧し、残り2口からは気体を噴出することができる。 さらに、特開2003−117442号(5頁19−8頁47行)には、2種類の溶液のジェットを45〜150°の衝突度で対向衝突させる接触方法があり記載されており(図1及び2)、この方法によっても本発明の「接触」を達成することができる。 本発明における「同時に噴霧する」を達成することのできる噴霧器の例としては、日本ビュッヒ社の型番46555のノズルを装着したB−290のほか、3流体及び4流体ノズルを装着したMDL−050B及び050C(藤崎電機社)、ツインジェットノズルRJ10TLM1を装着したNL−5(大川原化工機社)、ツインジェットノズルRJ−10を装着したRL−5(大川原化工機社)等などが挙げられる。 特にNL−5(大川原化工機社)及びRL−5(大川原化工機社)を用いれば、混合後噴霧プロセスを容易に実施することができる。

形成されたマイクロ微粒子はそのまま回収してもよく、または、乾燥処理した後に回収してもよい。 乾燥処理は、噴霧と同時又は並行して行っていてもよい。すなわち、乾燥処理を噴霧と同時又は並行して行う場合、マイクロ微粒子を乾燥させる条件下で噴霧工程が行われる。例えば、先に挙げた噴霧器を用いれば、噴霧と同時に乾燥処理を行うことができる。 乾燥処理の条件としては、−197℃〜+250℃が適宜選択される。ある実施態様では、噴霧乾燥機の入口温度が100−300℃、好ましくは120−250℃、より好ましくは150−220℃に調節される。出口温度は30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上に調節される。このとき、気圧は、0〜1atmに調整される。通常大気圧条件下(1atm)で噴霧乾燥されるが、減圧噴霧乾燥では真空ポンプにより減圧した条件下で噴霧乾燥されるからである。

あるいは、有効成分が熱に不安定な物質である場合は、マイクロ微粒子は、噴霧冷却(Spray Chilling)又は噴霧凍結乾燥という方法で、噴霧直後に冷却し、凝結させた状態で回収してもよい。あるいは、冷却は、噴霧と同時又は並行して行っていてもよい。すなわち、冷却処理を噴霧と同時又は並行して行う場合、マイクロ微粒子を冷却させる条件下で噴霧工程が行われる。 冷却工程の条件としては、噴霧冷却においては温度が30−70℃、噴霧凍結乾燥では液体窒素や冷却装置、あるいは水の蒸発による自己凍結現象により−196〜0℃の温度で冷却又は凍結される。気圧は、0〜1atmに調整される。気圧は噴霧冷却では大気圧(1atm)が、噴霧凍結乾燥では真空から大気圧が用いられるからである。

本発明のマイクロ微粒子は、有効成分の持つ生理活性に応じて様々な用途に用いることができる。 本発明の方法に使用される有効成分は、生理活性を有する化合物であれば特に限定されないが、好ましくはタンパク質又はペプチドである。 本発明の方法に使用されるペプチドの例としては、ウシラクトフェリン、ヒトラクトフェリン、組換え型ウシラクトフェリン、組換え型ヒトラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、TGFβ、アンジオジェニン、インターフェロン類、インターロイキン類、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、ラクトフェリシン、インシュリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP−1、GLP−1アナログ、GLP−1誘導体、グルカゴン黄体形成ホルモン放出ホルモン、リュープロレリン、カルシトニン、バソプレシン又はそれらの活性断片が挙げられる。 また、有効成分は複数種類の活性物質を含む組成物であってもよい。

本発明の方法に使用されるマトリックス形成成分Aは、特に限定されないが、好ましくは、カチオン性解離基を持つ化合物を1つ以上含む。 このような化合物の例としては、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、キトサン、低分子キトサン、キトサンオリゴ糖、ポリリジン、ポリアルギニン、スペルミン、スペルミジン、プトレッシン、リジン及びアルギニンが挙げられる。 また、これらの化合物は、それぞれナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にあってもよい。

また、マトリックス形成成分Bは、前記マトリックス形成成分Aに結合することができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、アニオン性解離基を持つ化合物を含む。 このような化合物の例としては、イノシトール−6−リン酸、クエン酸、アルギン酸、低分子アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アスパラギン酸、グルタミン酸、デオキシリボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸及びポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸が挙げられる。 また、これらの化合物は、それぞれナトリウム塩、マグネシウム塩又はカルシウム塩の形態にあってもよい。

マトリックス形成成分Aとマトリックス形成成分Bの組み合わせ及び配合量は、当業者であればマイクロ微粒子に求められる粒径サイズと有効成分の種類に応じて適宜決定することができる。 以下にマトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bの組み合わせを例示するが、これに限定されるものではない。 マトリックス形成成分Aの成分としてキトサンが含まれる場合、マトリックス形成成分Bは分子内にアニオン性解離基を持つ化合物を成分として含むものであり、更に好ましくは、マトリックス形成成分Bは、イノシトール6リン酸、クエン酸、アルギン酸、低分子アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アスパラギン酸、グルタミン酸、デオキシリボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸、ポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸並びにこれらの化合物のナトリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩からなる群より選択される少なくとも1つ以上を成分として含む。

マトリックス形成成分Aの成分としてポリリジンが含まれる場合、マトリックス形成成分Bは分子内にアニオン性解離基を持つ化合物を成分として含むものであり、更に好ましくは、マトリックス形成成分Bは、イノシトール6リン酸、クエン酸、アルギン酸、低分子アルギン酸、ヒアルロン酸、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸、デオキシリボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ピロリン酸、トリポリリン酸、メタリン酸、ポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸並びにこれらの化合物のナトリウム塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩からなる群より選択される少なくとも1つ以上を成分として含む。

マトリックス形成成分Bの成分としてアルギン酸が含まれる場合、マトリックス形成成分Aは分子内にカチオン性解離基を持つ化合物を成分として含むものであり、更に好ましくは、マトリックス形成成分Aは、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、キトサン、低分子キトサン、キトサンオリゴ糖、ポリリジン、ポリアルギニン、スペルミン、スペルミジン、プトレッシン、リジン及びアルギニンからなる群より選択される少なくとも1つ以上を成分として含む。

マトリックス形成成分Bの成分としてペクチンが含まれる場合、マトリックス形成成分Aは分子内にカチオン性解離基を持つ化合物を成分として含むものであり、更に好ましくは、マトリックス形成成分Aは、キトサン、低分子キトサン、キトサンオリゴ糖、ポリリジン、ポリアルギニン、スペルミン、スペルミジン、プトレッシン、リジン及びアルギニンからなる群より選択される少なくとも1つ以上を成分として含む。

マトリックス形成成分A及びBは、それぞれ1種類の化合物を成分とするものであっても良く、あるいは複数の化合物を成分とする混合物であっても良い。例えば、マトリックス形成成分Aが、キトサン及び乳酸カルシウムを成分として含み、マトリックス形成成分Bがアルギン酸ナトリウム及びイノシトール6リン酸を成分として含む場合のように、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが、2成分と2成分の組み合わせにあってもよい。 あるいは、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが、1成分と複数成分の組み合わせにあってもよい。このような組み合わせとしては、例えば、マトリックス形成成分Aがキトサンを成分として含み、マトリックス形成成分Bがアルギン酸ナトリウム、イノシトール6リン酸及びオリゴデオキシヌクレオチドを含むようなケースが挙げられる。

また、各マトリックス形成成分は、同類の化合物のうち分子量の違うものを成分として含んでもよい。このようなケースとしては、マトリックス形成成分Aが乳酸カルシウムを成分として含み、マトリックス形成成分Bがアルギン酸及び低分子アルギン酸を含む場合、又はマトリックス形成成分Aがキトサン及び低分子キトサンを含み、マトリックス形成成分Bがイノシトール6リン酸を含む場合などが例として挙げられる。

マトリックス形成成分Aとマトリックス形成成分Bの配合比(マトリックス形成成分が混合物である場合は、混合物全体の比率)は、モル比で例えば1:1000〜100:1の範囲にあればよく、好ましくは、マトリックス形成成分Aとマトリックス形成成分Bのそれぞれの解離基のモル合計比で1:100〜10:1、最も好ましくは、解離基のモル合計比で1:10〜5:1である。

有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bが溶液に含まれる場合、使用する溶媒は、有効成分を変性又は失活させないものであれば特に限定されず、水性溶媒又は有機溶媒のいずれであってもよい。好ましい溶媒の例としては、水、酢酸、エタノール、又はこれらを任意の割合で含む混合溶液が挙げられる。

溶液に含まれる場合、有効成分の濃度は、0.01〜50%(w/v)、0.01〜50%(w/v)、0.1〜50%(w/v)、0.5〜50%(w/v)、1.0〜50%(w/v)、2.0〜50%(w/v)3.0〜50%(w/v)、4.0〜50%(w/v)、5.0〜50%(w/v)、6.0〜50%(w/v)、7.0〜50%(w/v)、8.0〜50%(w/v)、9.0〜50%(w/v)、10〜50%(w/v)である。

溶液に含まれる場合、マトリックス形成成分Aの濃度は、0.01〜50%(w/v)、0.1〜45%(w/v)、0.5〜40%(w/v)である。

溶液に含まれる場合、マトリックス形成成分Bの濃度は、0.01〜50%(w/v)、0.1〜45%(w/v)、0.5〜40%(w/v)である。

本発明のマイクロ微粒子を製造する際、有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bに加え、安定剤などの添加剤を加えてもよい。添加剤の例としては、アミノ酸(例えば、アルギニン、リジン、フェニルアラニンなど)、グルコース、ソルビトール、グリセロール、マニトール、リン酸ナトリウム、プロピレングリコール、デキストラン(例えば18〜82kD)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヘパリン、ゼラチン(タイプAおよびタイプB)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、デキストランサルフェート、ポリリン酸、、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリ乳酸、こんにゃく、グルコマンナン、プルラン、ゼラチン、シェラック、ツェイン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒロロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、水溶性大豆多糖類、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、Eudragit(登録商標)、Carbopol(登録商標)、ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。これらの添加物は、有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bと同時に噴霧して添加してもよく、あるいは、噴霧する前に有効成分、マトリックス形成成分A又はマトリックス形成成分Bを含む溶液に添加してもよい。

2.マイクロ微粒子及びその用途 本発明のマイクロ微粒子は、少なくとも有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bを含み、その平均粒径が100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下であることを特徴とする。 有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bについては、すでに述べたとおりである。また、有効成分、マトリックス形成成分A及びマトリックス形成成分Bに加え、添加剤を含んでいてもよい。添加剤についてもすでに述べたとおりである。

本発明のマイクロ微粒子は、有効成分の種類に応じて様々な用途に使用することができる。 例えば、本発明のマイクロ微粒子は医薬として用いることもでき、あるいは、食品添加物又は飼料添加物として使用することもできる。

本発明のマイクロ微粒子を医薬として用いる場合、同マイクロ微粒子に他の成分(担体や賦形剤など)を添加して医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」)の形態にしてもよい。 本発明の医薬組成物の投与形態は、医薬的に許容可能な投与形態であれば特に制限されず、治療方法に応じて選択することができるが、経口、舌下、経鼻、経、経消化管、経皮、点眼、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、局所注射、外科的移植等が好ましく、特に経口投与が好ましい。

本発明の医薬組成物は、顆粒剤、カプセル、錠剤、粉末等の固形剤であってもよく、溶液、懸濁液若しくは乳液等の液剤、又は軟膏、クリーム若しくはペースト等の半液体製剤であってもよい。あるいは、吸入剤、貼付剤、スプレー剤、外用剤、薬用歯磨き剤であってもよい。

本発明の医薬組成物には、本発明のマイクロ微粒子と上述した担体以外に、任意に医薬的に許容可能な他の成分を配合することができる。薬理学的に許容可能な他の成分の例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、抗酸化剤、保存剤、補助剤、滑沢剤、甘味剤、香料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。医薬的に許容可能な他の成分として、例えば、乳化補助剤(例えば、炭素数6〜22の脂肪酸やその医薬的に許容可能な塩、アルブミン、デキストラン)、安定化剤(例えば、コレステロール、ホスファチジン酸)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース)、pH調整剤(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン)を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。本発明の組成物中の当該添加剤の含有量は、90重量%以下が適当であり、70重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。

本発明の医薬組成物は、担体の分散液に本発明のマイクロ微粒子を加え、適当に攪拌することにより調製することができる。また、添加剤は、本発明のマイクロ微粒子の添加前でも添加後でも適当な工程で添加することができる。本発明の医薬組成物を調製する際に用い得る水性溶媒としては、医薬的に許容可能なものであれば特に制限されず、例えば、注射用水、注射用蒸留水、生理食塩水等の電解質液、ブドウ糖液、マルトース液等の糖液を挙げることができる。また、かかる場合のpH及び温度等の条件は、当業者が適宜選択することができる。

本発明の組成物は、例えば、液剤やその凍結乾燥製剤とすることができる。当該凍結乾燥製剤は、常法により、液剤の形態を有している本発明の組成物を凍結乾燥処理することにより調製することができる。例えば、液剤の形態を有している本発明の組成物を適当な滅菌を行った後、所定量をバイアル瓶に分注し、約−40〜−20℃の条件で予備凍結を2時間程度行い、約0〜10℃で減圧下に一次乾燥を行い、次いで、約15〜25℃で減圧下に二次乾燥して凍結乾燥することができる。そして、一般的にはバイアル内部を窒素ガスで置換し、打栓して本発明の組成物の凍結乾燥製剤を得ることができる。

本発明の組成物の凍結乾燥製剤は、一般には任意の適当な溶液(再溶解液)の添加によって再溶解し使用することができる。このような再溶解液としては、注射用水、生理食塩水、その他一般輸液を挙げることができる。この再溶解液の液量は、用途等によって異なり特に制限されないが、凍結乾燥前の液量の0.5〜2倍量、又は500mL以下が適当である。

本発明の医薬組成物を投与する際の投与量としては、含有される本発明のマイクロ微粒子の種類、剤型、年齢や体重等の患者の状態、投与経路、疾患の性質と程度を考慮した上で調製することが望ましいが、成人に対して本発明のマイクロ微粒子の有効成分の量として、1日当たり0.1mg〜20g/ヒトの範囲内が、好ましくは1mg〜1gの範囲内が一般的である。この数値は、有効成分の種類、標的とする疾患の種類、投与形態、標的分子によっても異なる場合がある。従って、場合によってはこれ以下でも十分であるし、また逆にこれ以上の用量を必要とするときもある。

例えば、ウシラクトフェリン又はヒトラクトフェリンを有効成分とするマイクロ微粒子を体重60kgの成人に経口投与する場合、毎日1〜4回、好ましくは1又は2回投与してもよく、1回あたりの投与量は、0.1〜500mgであり、好ましくは1〜300mgである。

また、本発明のマイクロ微粒子は、優れた腸溶性を示す。特に、ラクトフェリンなど、腸から吸収される成分は、胃酸で破壊されずに腸に送達されたほうが高い効果が得られることが期待できる。したがって、本発明のマイクロ微粒子は、腸内で作用する物質又は腸で吸収されて作用する物質を有効成分とする医薬の調製に有用である。

本発明のマイクロ微粒子は、医薬以外にもサプリメント、化粧品、食品及び飼料の原料又は添加物として用いることができる。原材料あるいは添加物として使う際には、他の材料とこの粒子を直接混合してもよく、あるいは加熱殺菌処理を経てから混合しても良い。 例えば、ウシラクトフェリンを有効成分とするマイクロ微粒子を医薬、サプリメント又は食品原料として用いた場合、抗菌、抗ウイルス、免疫増強、感染予防、抗がん、血圧調節、オピオイド様作用、不眠改善、抗不安、認知症状改善、記憶障害改善、脂質代謝改善、抗酸化、アンチエイジング、抗炎症、鉄吸収促進、ドライアイ改善、鎮痛などの効能が得られる。飼料として用いた場合、前述の医薬、サプリメント、食品原料の効能に加え、成長促進、発育促進、歩留り改善、肉質改善、呈味改善、風味改善、色調改善の効能が得られる。 サプリメントの形態の例としては、加硫剤、錠剤、カプセル剤、貼付剤、パウダー、液剤などが挙げられる。 化粧品の例として、スプレー剤、クリーム剤、パウダー剤、パック剤、貼付剤、乳液、化粧水、石鹸、シャンプー、ボディーシャンプー、歯磨き剤、洗浄剤などが挙げられる。 食品の例として、プリン、ゼリー、こんにゃくゼリー、クリーム、クリームポーション、バター、油脂、香辛料、流動食、栄養固形食、清涼飲料、アルコール飲料、スポーツ飲料、ミネラルウォーター、飲料水、栄養ドリンク、乳飲料、育児用調製乳、育児用調製粉乳、クリーミングパウダー、発酵乳、果汁飲料、野菜ジュース、炭酸飲料、ヨーグルト、マヨネーズ、ドレッシング、トマトケチャップ、調味料、酢、ソース、醤油、みりん、みりん風調味料、アイスクリーム、アイスクリームミックス、ソフトクリームミックス、ホイップクリーム、氷菓、かき氷、かき氷シロップ、ジェラート、フローズンヨーグルト、キャラメル、キャンディー、グミ、ビスケット、煎餅、餅、パン、パンミックス粉、ケーキ、ドーナツ、ワッフル、ベーグル、ポテトチップス、チョコレート、缶詰、瓶詰、練り製品、加工肉、ソーセージ、魚肉ソーセージ、練り製品、ハム、ジャム、ピーナツバター、豆腐、味噌、こんにゃく、こんにゃく麺、人工米、寒天、乾麺、生麺、半生麺、インスタントラーメン、インスタントスープ、レトルト食品、ゲル化剤、嚥下障害者用増粘剤、嚥下障害者用食品、ベビーフード、インスタントコーヒー、ティーパック紅茶、ティーパック緑茶、炊飯添加剤、冷凍食品、サンドイッチ、弁当、おにぎり、ふりかけ、漬物、納豆、またはマーガリンなどが挙げられる。 飼料の例として、愛玩動物用飼料、家畜用飼料、競争馬用飼料、魚用飼料、昆虫飼料、爬虫類飼料、両生類飼料、実験動物用飼料、動物園用飼料、または鳥類用飼料などが挙げられる。

以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されない。

[実施例1](有効成分が溶液かつ混合前噴霧プロセス) キトサン(甲陽ケミカル社製)を1%酢酸に溶解し、1.5%キトサン667gを用意した。この溶液に10%ウシラクトフェリン(森永乳業社製)を333ml加え、噴霧原液を調製した。50%フィチン酸溶液(築野食品工業)に水酸化ナトリウムを添加し、pH6に調整し、フィチン酸最終濃度6%の別の噴霧原液667gを用意した。大川原化工機株式会社製NL−6にRJ10−TLM1ノズルを装着し、これら2つの溶液を、別々の送液により噴霧塔内へ導入した。送風量は87m3/h、ノズル微粒化エアー量 9m3/h、入口温度200℃にて運転した。ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末約5gを得た。

[実施例2](有効成分が溶液かつ混合前噴霧プロセス) キトサン(甲陽ケミカル社製)を1%酢酸に溶解し、0.15%キトサン667gを用意した。この溶液に1%ウシラクトフェリン(森永乳業社製)333mlを加え、噴霧原液を調製した。50%フィチン酸溶液(築野食品工業)に水酸化ナトリウムを添加し、pH6に調整し、フィチン酸最終濃度0.6%の別の噴霧原液667gを用意した。その他の条件は実施例1と同様に行い、ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末約1gを得た。

[実施例3](有効成分が溶液かつ混合前噴霧プロセス) 10gアルギン酸ナトリウム(ナカライテスク社製 型番31130−95)を水500mlに溶解した。この溶液に4.6%ウシラクトフェリン500mlを加え、噴霧原液を調製した。2.5%乳酸カルシウム溶液1000mlの別の噴霧原液として用意した。その他の条件は実施例1と同様に行い、ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む乾燥微粉末約5gを得た。

[実施例4](有効成分が溶液かつ噴霧後混合プロセス) キトサン(甲陽ケミカル社製)を1%酢酸に溶解し、1.5%キトサン50mlを用意した。この溶液に1%ウシラクトフェリン(森永乳業社製)25mlを加え、噴霧原液を調製した。50%フィチン酸溶液(築野食品工業)に水酸化ナトリウムを添加し、pH6に調整し、フィチン酸最終濃度6%の別の噴霧原液75gを用意した。日本ビュッヒ社製B−290に3流体ノズルを装着し、これら2つの溶液を別々の送液により噴霧塔内へ導入した。入り口温度150℃の条件下で、噴霧を行った。ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む乾燥微粉末1gを得た。

[実施例5](有効成分が溶液かつ噴霧後混合プロセス) 8gアルギン酸ナトリウム(ナカライテスク社製 型番31130−95)を水400mlに溶解した。この溶液に1.7%ウシラクトフェリン400mlを加え、噴霧原液を調製した。2.5%乳酸カルシウム溶液800mlの別の噴霧原液として用意した。藤崎電機社製MDL−050Mに4流体ストレートエッジノズルSE4003を装着し、これら2つの溶液を、別々の送液により15ml/分のスピードで噴霧塔内へ導入した。入口温度200℃、吸気風量1m3/分、ノズルエアー45NL/分で噴霧乾燥した。ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末約10gを得た。

[実施例6](有効成分が溶液かつ噴霧後混合プロセス) 8gアルギン酸ナトリウム(ナカライテスク社製 型番31130−95)を水400mlに溶解した。この溶液にフィチン酸最終濃度6%500gと、10%ウシラクトエリン100mlを溶解し噴霧乾燥原液約1000mlを調製した。2.5%乳酸カルシウム溶液及び1.5%キトサンの別の噴霧原液として1000ml用意した。藤崎電機社製MDL−050Mに4流体ストレートエッジノズルSE4003を装着し、これら2つの溶液を、別々の送液により15ml/分のスピードで噴霧塔内へ導入した。その他の条件は実施例4と同様に行い、ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末約10gを得た。

[実施例7](有効成分が溶液かつ噴霧後混合プロセス) 5%キトサン溶液4Lに10%ウシラクトフェリン2Lを加え、噴霧乾燥原液約6Lを調製した。4%フィチンン酸6Lを用意した。藤崎電機社製MDL−050Mに4流体ストレートエッジノズルSE4003を装着し、これら2つの溶液を、別々の送液により15ml/分のスピードで噴霧塔内へ導入した。その他の条件は実施例4と同様に行い、ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末約500gを得た。

[実施例8] 実施例6と同様の方法により製造した、ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末200gに、乳糖456g、結晶セルロース(商品名:アビセル)160g、カルボキシメチルセルロース・カルシウム塩16g、ショ糖脂肪酸エステル8gを加え、得られた混合物をミキサーで粉砕し、100メッシュを通過する粉末とした。この混合粉末を打錠機により打錠し錠剤を製造した。

[実施例9] 実施例6と同様の方法により製造した、ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む乾燥微粉末200gに水50g、エタノール50gを加え、乳ばちで練った後に、料理用のステンレス製ざるに移し、乳棒で押し込み、得られた粒子を空気乾燥させ、顆粒剤約150gを製造した。

[実施例10] 実施例6と同様の方法により製造された、ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末200gと、乳ホエー濃縮粉末1kgを混合し、ホエータンパク質ベースの筋肉増強栄養剤1.2kgを製造した。

[実施例11](有効成分が溶液かつ噴霧後混合プロセス) 1%ウシラクトフェリン(森永乳業社製)25mlに最終濃度0.02%になるようブタペプシン(シグマアルドリッチ社製)を加え37℃で2時間加温したのち、68℃で30分加熱した。この懸濁液に1%酢酸に溶解した1.5%キトサン(甲陽ケミカル社製)50mlを添加し、噴霧原液を調製した。50%フィチン酸溶液(築野食品工業)に水酸化ナトリウムを添加し、pH6に調整し、フィチン酸最終濃度6%の別の噴霧原液75gを用意した。日本ビュッヒ社製B−290に3流体ノズルを装着し、これら2つの溶液を別々の送液により噴霧塔内へ導入した。入り口温度150℃の条件下で、噴霧を行った。ウシラクトフェリン分解ペプチドを生理活性成分として含む乾燥微粉末約1gを得た。

[実施例12](有効成分が溶液かつ噴霧後混合プロセス) 1%組み換え型ヒトラクトフェリン(米国ベントリア社製)25mlに、1%酢酸に溶解した1.5%キトサン(甲陽ケミカル社製)50mlを添加し、噴霧原液を調製した。50%フィチン酸溶液(築野食品工業)に水酸化ナトリウムを添加し、pH6に調整し、フィチン酸最終濃度6%の別の噴霧原液75gを用意した。日本ビュッヒ社製B−290に3流体ノズルを装着し、これら2つの溶液を別々の送液により噴霧塔内へ導入した。入り口温度150℃の条件下で、噴霧を行った。組み換え型ヒトラクトフェリンを生理活性成分として含む乾燥微粉末約1gを得た。

[実施例13](有効成分が溶液かつ噴霧後混合プロセス) 1%ヒトインシュリン(シグマアルドリッチ社製)25mlに、1%酢酸に溶解した1.5%キトサン(甲陽ケミカル社製)50mlを添加し、噴霧原液を調製した。50%フィチン酸溶液(築野食品工業)に水酸化ナトリウムを添加し、pH6に調整し、フィチン酸最終濃度6%の別の噴霧原液75gを用意した。日本ビュッヒ社製B−290に3流体ノズルを装着し、これら2つの溶液を別々の送液により噴霧塔内へ導入した。入り口温度150℃の条件下で、噴霧を行った。ヒトインシュリンを生理活性成分として含む乾燥微粉末約1gを得た。

[試験例1] 従来法によるマクロ粒子を製造し、その性質を本発明のマイクロ微粒子と比較する為に行った。Bio−Medical Materials 21 25−36 2011に従いインシュリンを生理活性成分として含むマクロ粒子を製造した。すなわち、1%酢酸溶液に溶かした3%キトサン中に3%インシュリンを分散させ、原液1とした。原液1を0.241mmの直径の針を装着した注射器に入れ、マグネティックスターラーでゆっくりとかきまぜながら、6%フィチンン酸溶液(pH6、25℃)中に液滴を落下させた。マクロ粒子は水で洗浄したのちに、凍結乾燥を行った。

[試験例2] この方法はインビトロにおいて、マイクロ微粒子やマクロ粒子からの溶出性を調べる為に行う試験である。Bio−Medical Materials 21 25−36 2011に従い、胃の模倣液と腸の模倣液を調製した。すなわち、胃の模倣液は、2gの塩化ナトリウムと7mlの35%塩酸を溶かし蒸留水で1Lに調整した。腸の模倣液は、250mlの0.2MKH2PO4と118mlの0.2N NaOHを溶解し1Lに調整した(pH6.8)。評価する粒子は胃の模倣液に37℃2時間80rpmで回転させながらインキュベーションし、腸の模倣液に変更し37℃で更に2時間以上インキュベーションした。各模倣溶液中に溶出された薬剤は、0.45μmのフィルターを通したのち、逆相のHPLCにアプライし分析した。

実施例4のマイクロ微粒子と試験例1で製造したマクロ粒子を用い溶出性を調べた。図1に結果を示す。試験例1で製造した従来型のマクロ粒子は、半分以上のインシュリンが胃の模倣液で既に溶出し、その後の腸の模倣液では逆にほとんど溶出されなかった。すなわち、胃液と同等の酸性条件下で内包されたインシュリンの放出を充分に抑えることができていなかった。一方、本発明の実施例4のマイクロ微粒子では、内包するラクトフェリンが胃の模倣液ではほとんど溶出されず、その後の腸の模倣できでほとんどが溶出されている。このように、従来のマクロ粒子と本発明のマイクロ微粒子では、まったく異なった溶出特性を示した。胃の中での安定性は、本発明のマイクロ微粒子がより高いことが分かった。このほか実施例1〜14のマイクロ微粒子あるいは食品を分析したが、ほぼ同等の結果が得られた。

図1は実施例4および試験例1のマイクロ微粒子の溶出試験結果を示す。図1において横軸は溶出時間(分)、縦軸は溶出率(%)、破線は本発明のマイクロ微粒子の溶出を、実線は従来法によるマクロ粒子の溶出を示している。

[試験例3] 実施例4のマイクロ微粒子と試験例1で製造したマクロ粒子の粒度分布を、レーザー回析・散乱粒子径分布測定により調べた。その結果を図2及び3に示す。 図2において、横軸は粒径(μm)、縦軸は頻度(%)、黒線は本発明のマイクロ微粒子の粒度分布を示す。 図3において、横軸は粒径(μm)、縦軸は頻度(%)、黒線は従来法により製造したマクロ粒子の粒度分布を示す。 本発明のマイクロ微粒子の平均粒径は8μmであり、最も大きな粒子の粒径で100μm以下であるのに対し、従来の方法によるマクロ粒子の平均粒径は数百μmの粒径で、最も大きな粒子の粒径は少なくとも1000μmであった。なお、ここでの平均粒径はレーザー回析・散乱粒子径分布測定法での球相当径による積算値50%での粒径を意味する。

[試験例4] 動物に粒子を投与後の生理活性物質の体内での安定性、体内への吸収、及び体内への送達(デリバリー)が改善するかどうかを調べた。 100mM HClに溶解あるいは懸濁させた対照のラクトフェリンあるいは、実施例6で製造したマイクロ微粒子をラットの体重1kgあたり50mgラクトフェリン相当になるように、10週令絶食ラットF344に胃ゾンデを用いて投与し、30分後に小腸内容物を回収した。回収した小腸内容物は、SDS−PAGE用サンプルバッファで2倍に希釈し上清を加熱変性後に、SDS−PAGEに供した。

図4に電気泳動の結果を示す。レーン1にはマイクロ微粒子化したラクトフェリンを、レーン2には対照のラクトフェリンを投与したラットの小腸内容物を泳動した。数字は分子量マーカーの大きさを、矢印は分解していないラクトフェリンの泳動位置を示す。 図4に示すようにマイクロ微粒子を投与した場合にのみ、小腸に分解していないラクトフェリンが観察された。マイクロ微粒子により動物に投与後の生理活性物質の体内での安定性、体内への吸収、及び体内への送達(デリバリー)が改善することが分かった。

[実施例14](有効成分が懸濁液かつ噴霧前混合プロセル) 50%フィチン酸溶液(筑野食品工業社製)に水酸化ナトリウムを添加しpH6に調整し、水で希釈することで12%フィチン酸溶液100mlを作成した。この溶液に100ml100%エタノール(和光純薬工業製)を混合し、原液1を作成した。1000mlの125mMNaClにウシラクトフェリンを最終濃度1%になるように溶解した溶液を作成した。この溶液に1000mlのエタノールを一気に加え、激しく攪拌し、ラクトフェリンの懸濁液を作成した。懸濁液を6000gで遠心し沈殿物を回収し、先に加えた原液1に再懸濁することで、噴霧原液を作成した。キトサン(焼津水産化学工業社製)を1%酢酸に溶解し、1.5%キトサン200mlの噴霧原液を作成した。大川原化工機株式会社製NL−6にRJ10−TLM1ノズルを装着し、これら2つの噴霧原液を別々の送液により噴霧塔内へ導入した。懸濁液はマグネティックスターラーで攪拌し、噴霧中に沈殿が形成しないようにした。送風量は84m3/時間、ノズル微粒化エアー量8m3/h、入口温度200℃にて運転した。ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末約8gを得た。

[実施例15](有効成分が懸濁液かつ噴霧後混合プロセル) 50%フィチン酸溶液(筑野食品工業社製)に水酸化ナトリウムを添加しpH6に調整し、水で希釈することで12%フィチン酸溶液100mlを作成した。この溶液に100ml100%エタノール(和光純薬工業製)を混合し、原液1を作成した。1000mlの125mMNaClにウシラクトフェリンを最終濃度1%になるように溶解した溶液を作成した。この溶液に1000mlのエタノールを一気に加え、激しく攪拌し、ラクトフェリンの懸濁液を作成した。懸濁液を6000gで遠心し沈殿物を回収し、先に加えた原液1に再懸濁することで、噴霧原液を作成した。キトサン(焼津水産化学工業社製)を1%酢酸に溶解し、1.5%キトサン200mlの噴霧原液を作成した。藤崎電機社製MDL−050Mに4流体ストレートエッジノズルSE4003を装着し、これら2つの噴霧原液を別々の送液により10ml/分のスピードで噴霧乾燥機内へ導入した。入口温度150℃、吸気風量1m3/分、ノズルエアー45NL/分で噴霧乾燥した。懸濁液はマグネティックスターラーで攪拌し、噴霧中に沈殿が形成しないようにした。ウシラクトフェリンを生理活性成分として含む、乾燥微粉末約12gを得た。

[試験例5] 実施例15で得られたマイクロ微粒子の粒度分布をレーザー回折・散乱粒子径分布測定法により調べた。その結果を図5に示す。図5において、横軸は粒径(μm)、縦軸は頻度(%)、黒線は粒度分布を示す。実施例15のマイクロ微粒子の平均粒径は60μmであった。実施例15のマイクロ粒子の粒径は実施例4で作製し試験例3で分析したマイクロ微粒子の平均粒径(8μm)よりは大きいが、平均粒径は100μm以下の48μmであり、100μm以下の粒子が粒子全体の89%を占めていた。すなわち実施例15で得られたほとんどの粒子が100μm以下の粒径にあった。実施例14のマイクロ微粒子も分析したが、ほぼ同等の結果が得られた。なお、ここでの平均粒径はレーザー回折・散乱粒子径分布測定法での球相当径による積算値50%での粒径を意味する。

本発明の方法により、平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子を簡便かつ安価に製造することができる。また、上記方法により製造された平均粒径が100μm以下のマイクロ微粒子を用いて、これまでにはない性質を有する医薬、飼料又は食品を製造することができる。

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