HIV感染のRNAガイド処置のための方法および組成物

申请号 JP2016537900 申请日 2014-08-29 公开(公告)号 JP2016534125A 公开(公告)日 2016-11-04
申请人 テンプル ユニヴァーシティ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション; テンプル ユニヴァーシティ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション; 发明人 ハリリ、カメル; ヒュ、ウェンウイ;
摘要 本発明は、免疫不全ウイルス感染の処置のための方法および組成物を特徴とする。その組成物は単離された核酸配列から構成され、その核酸配列は1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼおよび1つのガイドRNAを含み、ここでそのガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の1つの標的配列に対し相補的である。【選択図】なし
权利要求

哺乳類の細胞中のレトロウイルスを不活性化する方法であって、 1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つ以上のガイドRNAからなる1つの遺伝子編集複合体をコードする1つの単離核酸を含む1つの組成物に、前記細胞を暴露するステップを有し、ここにおいて前記ガイドRNAは前記レトロウイルス内の標的核酸配列に相補的である、ことを特徴とする方法。前記レトロウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス;サル免疫不全ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス;およびウシ免疫不全ウイルスからなるグループから選択されるレンチウイルスである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。前記ヒト免疫不全ウイルスはHIV−1またはHIV−2である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。前記ヒト免疫不全ウイルスは組み込まれたプロウイルスDNAを有する、ことを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の方法。前記細胞は潜伏感染した細胞である、ことを特徴とする請求項1−4のいずれかに記載の方法。前記潜伏感染した細胞はCD4+T細胞、マクロファージ、単球、腸管関連リンパ細胞、ミクログリア細胞またはアストロサイトである、ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の方法。前記不活性化は生体内で行われる、ことを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載の方法。前記不活性化は生体外で行われる、ことを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載の方法。前記細胞はヒト免疫不全ウイルス感染を有する被験者からの1つの培養細胞、1つの体外移植組織または1つの細胞株を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。前記被験者からの前記培養細胞は、前記暴露ステップの後に前記被験者に再導入される、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。前記遺伝子編集複合体は前記プロウイルスDNA中に1つ以上の変異を導入し、ここにおいて前記変異はウイルスの複製またはウイルスの遺伝子発現を不活性化する、ことを特徴とする請求項1−10のいずれかに記載の方法。前記ウイルスDNA内の前記変異は前記ガイドRNA配列に相補的な1つの配列の中にある、ことを特徴とする請求項1−11のいずれかに記載の方法。前記変異は、欠失、挿入、または点変異からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項1−12のいずれかに記載の方法。前記変異は、欠失である、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。前記欠失はプロウイルスDNAの約1−約10,000個のヌクレオチドを含む、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。前記欠失は前記プロウイルスDNAの全てまたは実質的に全てを含む、ことを特徴とする請求項1−15のいずれかに記載の方法。前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9である、ことを特徴とする請求項1−16のいずれかに記載の方法。前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼはヒト細胞における発現に対し最適化される、ことを特徴とする請求項1−17のいずれかに記載の方法。前記標的配列は前記ヒト免疫不全ウイルスのコーディング領域内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項1−18のいずれかに記載の方法。前記標的配列は前記ヒト免疫不全ウイルスの非コーディング領域内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項1−18のいずれかに記載の方法。前記非コーディング領域は前記ヒト免疫不全ウイルスの1つの長い末端反復を含む、ことを特徴とする請求項1−18または20のいずれかに記載の方法。前記標的配列は前記ヒト免疫不全ウイルスの前記長い末端反復内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項1−18または20−21のいずれかに記載の方法。前記ヒト免疫不全ウイルスの前記長い末端反復内の前記配列は、U3,R、またはU5領域内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項1−18または20−22のいずれかに記載の方法。前記長い末端反復内の前記配列は、LTR A(配列ID番号:96)、LTR B(配列ID番号:121)、LTR C(配列ID番号:87)、LTR D(配列ID番号:110)、またはそれらの組み合わせからなるグループから選択される1つの配列に95%一致する1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項1−18または20−23のいずれかに記載の方法。前記長い末端反復内の前記配列は、LTR A(配列ID番号:96)、LTR B(配列ID番号:121)、LTR C(配列ID番号:87)、LTR D(配列ID番号:110)、またはそれらの組み合わせからなるグループから選択される1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項1−18または20−24のいずれかに記載の方法。前記遺伝子編集複合体はさらに、トランス活性化スモールRNA(tracrRNA)をコードする1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項1−25のいずれかに記載の方法。前記トランス活性化スモールRNA(tracrRNA)配列は前記ガイドRNAをコードする配列に融合される、ことを特徴とする請求項1−26のいずれかに記載の方法。前記遺伝子編集複合体をコードする前記核酸はさらに核酸配置信号を含む、ことを特徴とする請求項1−27のいずれかに記載の方法。前記遺伝子編集複合体をコードする前記核酸は1つの発現ベクターに動作可能に結合している、ことを特徴とする請求項1−28のいずれかに記載の方法。前記発現ベクターは1つのレンチウイルスベクター、1つのアデノウイルスベクター、または1つのアデノ−関連ウイルスベクターである、ことを特徴とする請求項1−29のいずれかに記載の方法。哺乳類の細胞中のレトロウイルスを不活性化する方法であって、 1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼポリペプチドと1つ以上のガイドRNAからなる1つの組成物に、前記細胞を接触させるステップを有し、ここにおいて前記ガイドRNAは前記レトロウイルス内の標的核酸配列に相補的である、ことを特徴とする方法。前記組成物は医薬的に受容可能な担体を含む、ことを特徴とする請求項1−31のいずれかに記載の方法。前記医薬的に受容可能な担体は、脂質ベースまたはポリマーベースのコロイドを含む、ことを特徴とする請求項1−32のいずれかに記載の方法。前記コロイドは、リポソーム、ヒドロゲル、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはブロック共重合体ミセルである、ことを特徴とする請求項33に記載の方法。前記組成物は局所適用のために処方される、ことを特徴とする請求項1−34のいずれかに記載の方法。哺乳類の細胞中のレトロウイルスを不活性化する方法であって、 a)少なくとも1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする1つの単離核酸と;そして b)少なくとも1つ以上のガイドRNAと1つのガイドRNAをコードする単離核酸と; からなる1つの組成物に、前記細胞を暴露するステップを有し、 ここにおいて前記ガイドRNAは前記レトロウイルス内の1つの標的核酸配列に相補的である、ことを特徴とする方法。単離核酸配列であって、1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つ以上のガイドRNAをコードする1つの配列を含み、ここにおいて前記ガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の1つの標的核酸配列に相補的である、ことを特徴とする単離核酸配列。前記レトロウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス;サル免疫不全ウイルス;ネコ免疫不全ウイルス;およびウシ免疫不全ウイルスからなるグループから選択されるレンチウイルスである、ことを特徴とする請求項37に記載の単離核酸配列。前記ヒト免疫不全ウイルスはHIV−1またはHIV−2である、ことを特徴とする請求項37または38に記載の単離核酸配列。前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9である、ことを特徴とする請求項37−39のいずれかに記載の単離核酸配列。前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼはヒト細胞における発現に対し最適化される、ことを特徴とする請求項37−40のいずれかに記載の単離核酸配列。前記標的配列は前記ヒト免疫不全ウイルスのコーディング領域内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項37−41のいずれかに記載の単離核酸配列。前記標的配列は前記ヒト免疫不全ウイルスの非コーディング領域内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項37−41のいずれかに記載の単離核酸配列。前記非コーディング領域は前記ヒト免疫不全ウイルスの1つの長い末端反復を含む、ことを特徴とする請求項37−41または43のいずれかに記載の単離核酸配列。前記標的配列は前記ヒト免疫不全ウイルスの前記長い末端反復内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項37−41または43−44のいずれかに記載の単離核酸配列。前記ヒト免疫不全ウイルスの前記長い末端反復内の前記配列は、U3,R、またはU5領域内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項37−41または43−45のいずれかに記載の単離核酸配列。前記長い末端反復内の前記配列は、LTR A(配列ID番号:96)、LTR B(配列ID番号:121)、LTR C(配列ID番号:87)、LTR D(配列ID番号:110)、またはそれらの組み合わせからなるグループから選択される1つの配列に95%一致する1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項37−41または43−46のいずれかに記載の単離核酸配列。前記長い末端反復内の前記配列は、LTR A(配列ID番号:96)、LTR B(配列ID番号:121)、LTR C(配列ID番号:87)、LTR D(配列ID番号:110)、またはそれらの組み合わせからなるグループから選択される1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項36−41または43−46のいずれかに記載の単離核酸配列。前記遺伝子編集複合体はさらに、トランス活性化スモールRNA(tracrRNA)をコードする1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項37−41または43−46のいずれかに記載の単離核酸配列。前記トランス活性化スモールRNA(tracrRNA)配列は前記ガイドRNAをコードする配列に融合される、ことを特徴とする請求項49に記載の単離核酸配列。前記遺伝子編集複合体をコードする前記核酸はさらに核酸配置信号を含む、ことを特徴とする請求項37−50のいずれかに記載の単離核酸配列。請求項37−51のいずれかに記載の前記核酸配列を含む、ことを特徴とする発現ベクター。前記発現ベクターはレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはアデノ−関連ウイルスベクターである、ことを特徴とする請求項52に記載の発現ベクター。請求項52—53のいずれかに記載の発現ベクターを含む宿主細胞。請求項36−51のいずれかに記載の核酸配列、請求項52−53のいずれかに記載の発現ベクター、または請求項54に記載の宿主細胞を含む、ことを特徴とする医薬組成物。前記組成物は医薬的に受容可能な担体を含む、ことを特徴とする請求項37−55のいずれかに記載の医薬組成物。前記医薬的に受容可能な担体は、脂質ベースまたはポリマーベースのコロイドを含む、ことを特徴とする請求項37−56のいずれかに記載の医薬組成物。前記コロイドは、リポソーム、ヒドロゲル、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはブロック共重合体ミセルである、ことを特徴とする請求項57に記載の医薬組成物。前記組成物は局所に適用するために処方される、ことを特徴とする請求項37−58のいずれかに記載の医薬組成物。前記組成物はコンドーム内に含まれる、ことを特徴とする請求項59に記載の医薬組成物。ヒト免疫不全ウイルス感染を有する被験者を処置する方法であって、前記被験者に処置的に有効な量の請求項37−59のいずれかに記載の組成物を投与するステップを有する、ことを特徴とする方法。ヒト免疫不全ウイルス感染を有する被験者を識別するステップをさらに有する、ことを特徴とする請求項61に記載の方法。前記ガイドRNAは前記被験者に感染するヒト免疫不全ウイルス内の1つの標的配列に対して相補的である、ことを特徴とする請求項61に記載の方法。前記ヒト免疫不全ウイルス感染は潜伏感染である、ことを特徴とする請求項61に記載の方法。前記組成物は局所または非経口で投与される、ことを特徴とする請求項61に記載の方法。抗レトロウイルス薬を投与するステップをさらに有する、ことを特徴とする請求項61に記載の方法。前記抗レトロウイルス薬は非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、および侵入阻害剤からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項66に記載の方法。前記抗レトロウイルス薬は高度に活性な抗レトロウイルス療法を含む、ことを特徴とする請求項67に記載の方法。ヒト免疫不全ウイルスを感染するリスクのある被験者において、ヒト免疫不全ウイルス感染のリスクを減少させる方法であって、前記被験者に治療的に有効な量の請求項36−59のいずれかに記載の組成物を投与するステップを有する、ことを特徴とする方法。前記被験者は性的に活発である、ことを特徴とする請求項69に記載の方法。前記被験者は医療従事者または救命救急従事者である、ことを特徴とする請求項69に記載の方法。ヒト免疫不全ウイルスに感染している妊娠中または授乳中の母親から彼女の出生児にヒト免疫不全ウイルスを伝染させる可能性を低減する方法であって、前記母親に治療的に有効な量の請求項37−59のいずれかに記載の組成物を投与するステップを有する、ことを特徴とする方法。前記組成物は出産前、出産時、出産後またはそれらの組み合わせにおいて投与される、ことを特徴とする請求項72に記載の方法。抗レトロウイルス薬を投与するステップをさらに有する、ことを特徴とする請求項72に記載の方法。前記抗レトロウイルス薬は非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、および侵入阻害剤からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項74に記載の方法。前記抗レトロウイルス薬は高度に活性な抗レトロウイルス療法を含む、ことを特徴とする請求項75に記載の方法。前記出生児に治療的に有効な量の請求項37−59のいずれかに記載の組成物を投与するステップを有する、ことを特徴とする請求項72に記載の方法。ヒト免疫不全ウイルス感染を有する被験者を処置する方法であって、 a)前記ヒト免疫不全ウイルスの核酸配列を決定するステップと;および b)前記被験者に、1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つ以上のガイドRNAをコードする1つの核酸を含む医薬組成物を投与するステップと; を有し、ここにおいて前記ガイドRNAは前記ヒト免疫不全ウイルス内の標的配列に相補的である、ことを特徴とする方法。前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9である、ことを特徴とする請求項78に記載の方法。前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼはヒト細胞における発現に対し最適化される、ことを特徴とする請求項78または79に記載の方法。前記標的配列は前記ヒト免疫不全ウイルスの長い末端反復内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項78−80のいずれかに記載の方法。前記ヒト免疫不全ウイルスの前記長い末端反復内の前記配列は、U3,R、またはU5領域内の1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項78−81のいずれかに記載の方法。前記長い末端反復内の前記配列は、LTR A(配列ID番号:96)、LTR B(配列ID番号:121)、LTR C(配列ID番号:87)、LTR D(配列ID番号:110)、またはそれらの組み合わせからなるグループから選択される1つの配列に95%一致する1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項78−82のいずれかに記載の方法。前記長い末端反復内の前記配列は、LTR A(配列ID番号:96)、LTR B(配列ID番号:121)、LTR C(配列ID番号:87)、LTR D(配列ID番号:110)、またはそれらの組み合わせからなるグループから選択される1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項78−83のいずれかに記載の方法。前記遺伝子編集複合体はさらに、トランス活性化スモールRNA(tracrRNA)をコードする1つの配列を含む、ことを特徴とする請求項78−84のいずれかに記載の方法。前記トランス活性化スモールRNA(tracrRNA)配列は前記ガイドRNAをコードする配列に融合される、ことを特徴とする請求項85に記載の方法。ヒト免疫不全ウイルス感染を処置するための薬剤を生産するために、単離核酸配列を使用する方法であって、 前記単離核酸配列は、 1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つ以上のガイドRNAをコードする1つの配列を含み、ここにおいて前記ガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の1つの標的核酸配列に相補的である;または、 1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つのガイドRNAをコードする1つの配列を含み、ここにおいて前記ガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の1つの標的核酸配列に相補的である; ことを特徴とする方法。ヒト免疫不全ウイルス感染のリスクを減少させるための薬剤を生産するために、単離核酸配列を使用する方法であって、 前記単離核酸配列は、 1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つ以上のガイドRNAをコードする1つの配列を含み、ここにおいて前記ガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の1つの標的核酸配列に相補的である;または、 1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つのガイドRNAをコードする1つの配列を含み、ここにおいて前記ガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の1つの標的核酸配列に相補的である; ことを特徴とする方法。キットであって、測定された量の1つの組成物を有し、 前記組成物は、単離核酸配列であって、1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つ以上のガイドRNAをコードする1つの配列を含み、ここにおいて前記ガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の1つの標的核酸配列に相補的である、1つの単離核酸配列、または、前記核酸をコードする1つのベクターを有し、 前記キットはまた、包装材料、使用説明書を含む装入物、無菌液、シリンジ、および無菌容器からなるグループから選択される1つ以上のアイテムを有する、 ことを特徴とするキット。前記組成物はさらに医薬的に許容可能な担体を含む、ことを特徴とする請求項89に記載のキット。

说明书全文

本発明は、レトロウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)内の標的配列を特異的に切断する組成物に関するものである。クリスパー(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸、およびHIV内の標的配列に相補的なガイドRNA配列を含みうるこのような組成物は、HIV感染症を罹患するまたは罹患のリスクのある被験者に投与されうる。

(関連出願に対する相互参照) 本出願は2013年8月29日出願の米国暫定出願61/871,626(特許文献1)、2014年6月27日出願の米国暫定出願62/018,441(特許文献2)および2014年7月18日出願の米国暫定出願62/026,103(特許文献3)の出願日の恩恵を主張する。米国暫定出願61/871,626、米国暫定出願62/018,441および米国暫定出願62/026,103の恩恵を主張するため、これら出願の内容はその全てがここに参照として採り入れられる。

(配列リスト) 本願はASCIIフォーマットで電子的に提出された配列リストを含み、それはその全てにおいてここに参照として採り入れられる。そのASCIIコピーは2014年8月26日に作成され、その名称はF5129−00031 SL.txtであり、そのサイズは74,547バイトである。

(連邦政府補助研究に関する宣言) 本発明は、国立保健局により授与された補助番号R01MH093271,R01NS087971およびP30MH092177の下での米国政府の補助により行われた。米国政府が本発明に対し一定の権利を有する可能性がある。

HIV−1の発見以来30年以上にわたって、AIDSは公衆衛生上の重要課題として存在しつづけ、世界中で35.5百万人以上の人に影響を及ぼしている。AIDSはHIV−1の宿主ゲノムへの永久的組み込みに起因して、不治の病でありつづけている。HIV−1感染を制御しその進行を遅らせる近年の処置法(高活性抗レトロウイルス療法、またはHAART)はHIV−1感染をサポートする細胞内のウイルス複製を減少させ、そしてプラズマ・ウイルス血症を最低レベルに減少させる。しかしHAARTは組織内の低レベルのウイルスゲノム発現および複製を抑制することに失敗し、そして、HIV−1の保管場所として機能する、潜伏感染した細胞、例えば休止中のメモリT細胞、脳内マクロファージ、ミクログリア、およびアストロサイト、腸管関連リンパ細胞、を標的とすることに失敗している。持続性HIV−1感染は心臓および腎臓疾患、骨減少症および神経疾患、を含む合併症にも関連している。持続性ウイルス保管庫を標的とする根処置法的戦略に対する永続的な必要性が存在する。

米国暫定出願61/871,626

米国暫定出願62/018,441

米国暫定出願62/026,103

本明細書ではレトロウイルス感染の処置および防止に関する組成物および方法が提供される。レトロウイルスはレンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、またはウシ免疫不全ウイルスでありうる。ヒト免疫不全ウイルスはHIV−1またはHIV−2でありうる。1つの実施形態では、組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼと1つ以上のガイドRNAをコードする1つの配列を含む核酸配列を有し、そのガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の標的配列に対し相補的である。いくつかの実施形態では、その核酸は発現ベクターの中に含まれる。1つの実施形態では、組成物はCRISPR関連エンドヌクレアーゼポリペプチド、および1つ以上のガイドRNAを含み、ここでそのガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の標的配列に対し相補的である。また、本明細書に開示される核酸、発現ベクターまたはポリペプチドを含む医薬組成物が提供される。また、本明細書ではHIV感染症を罹患するまたは罹患のリスクのある被験者の処置の方法が提供され、ここで処置の方法は被験者に処置的に有効な量のCRISPR関連エンドヌクレアーゼおよび1つ以上のガイドRNAをコードするベクターを含む組成物を投与するステップを含み、ここでガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の標的配列に対し相補的である。また細胞を、1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼおよび1つ以上のガイドRNAからなる遺伝子編集複合体をコードする単離核酸からなる組成物に露出させることによるヒト細胞内のレトロウイルスを不活性化する方法が提供され、ここでガイドRNAはヒト免疫不全ウイルス内の標的配列に対し相補的である。その遺伝子編集複合体は1つ以上の変異をプロウイルスDNAに導入する。いくつかの実施形態では、その変異は欠失を含み、それは全てのまたは実質的に全てのプロウイルスDNA配列を含んでもよい。もう1つ別の側面では、測定された量の本明細書に記載される組成物を含むキットがまた提供される。

1つまたはそれ以上の本発明の実施形態の詳細がそれに付随する図面および以下の記述により示される。本発明の他の特徴、目的および利点はそれら図面、記述および請求項により明確になるであろう。

Cas9/LTR−gRNAがHIV−1に潜伏感染したCHME5ミクログリア細胞におけるHIV−1レポーターウイルス産生を抑制することを示す図である。(A)EGFPフローサイトメトリーの代表的なゲーティング図は、安定的に発現されるCas9プラスLTR−Aまたは−Bによる、潜伏pNL4−3−ΔGag−d2EGFPのレポーターウイルスのトリコスタチンA(TSA)誘発性再活性化の劇的な減少を、空U6−駆動gRNA発現ベクター(U6−CAG)に対して示す図である。(B)選択されたLTR−A−または−Bを発現する安定的クローンからのPCR産物(LTR内−453から+43まで)のSURVEYOR Cel−Iヌクレアーゼ検定は、劇的なインデル変異パターン(矢印)を示す。(C、D)PCR断片分析は、LTR AとBの切断部位の間の190bp領域の正確な欠失を示し(図Dの矢頭および矢印)、306bpの断片(図Cの矢印)を残し、それらはTAクローニングおよび配列決定の結果によって検証された。図1Dは、出現順に、それぞれ、配列番号1−3を開示する。

(E−G)LTR−A/B安定クローンのサブクローニングは、EGFPのフローサイトメトリーによって決定されるレポーター活性化の完全な喪失(E)とEGFPおよびHIV−1のRev応答配列(RRE)のためのゲノムDNAの標準(F)およびリアルタイム(G)PCR増幅によって検出されたpNL4−3−ΔGag−d2EGFPプロウイルスゲノムの除去、を明らかにする;βアクチンは、DNA精製および負荷に対する対照である。(H)HIV−1 LTR U3/R/U5領域(−411から+129まで)をカバーするDNA断片を増幅するためのプライマーを用いた、LTR−A/Bのサブクローン(#8、13)のPCR遺伝子型判定は、インデル(a、欠失;c、挿入)および「無処置」または組み合わせLTR(b)を示す。

Cas9/LTR−gRNAが効率的にU1単球細胞から潜伏HIV−1ウイルスを根絶することを示す。(A)右、染色体のXp11.4におけるHIV−1ゲノム全体の切除を示す図である。HIV−1の組込み部位は、ゲノムウォーカーリンクPCRキットを用いて同定された。左、X染色体組込み部位隣接配列を標的とするプライマー対(P1/P2)を使用したPCR増幅産物の長さ分析は、2つの断片(833および670bp)を残した、HIV−1ゲノム全体(9709bp)の消失を明らかにした。

(B)LTR断片(833bp)のTAクローニングおよび配列決定であり、宿主ゲノム配列(小文字、226bp)および、LTR−A標的部位周辺の27−bpの欠失(2番目の実線下線を引いた部分)を有する5´−LTR(破線下線部分)及び、3´−LTR(最初の実線下線部分)の部分配列(634−27=607bp)を示す。下部、15個の配列決定されたクローンの増幅産物から識別される2つのインデル対立遺伝子。670bp断片は、宿主配列(226bp)及びLTR−AとBの標的部位での同時切断による190bpの切除後の残りのLTR配列(634−190=444bp)からなる。下線付きの強調表示された配列はgRNA LTR−A標的部位とプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を示す。図2Bは、出現順に、それぞれ、配列番号4−13を開示する。(C)は、LTR−A/B誘導HIV−1ゲノム根絶の機能解析であり、トリコスタチンA(TSA)/ホルボールミリステートアセテート(PMA)再活性化誘導p24ウイルス粒子放出の実質的な阻害を示す。U1細胞はpX260−LTR−A、−B、または−A/Bを遺伝子導入された。2週間のピューロマイシン選択後、細胞はTSA(250nMの)/PMAで2日間処理され、その後P24のGag ELISAが実施された。

Cas9プラスLTR−A/Bの安定な発現が、TZM−bl細胞を新たなHIV−1ウイルス感染に対してワクチン接種することを示している。(A)抗Flag抗体を用いた免疫細胞化学(ICC)およびウエスタンブロット(WB)分析は、2週間ピューロマイシン(2μg/ml)選択された、TZM−bl安定クローンにおけるFlag−Cas9の発現を確認した。(B)Cas9/LTR−A/B安定クローン(c1−c7)のPCR遺伝子型決定は、LTR切除とLTRルシフェラーゼレポーター活性化の抑制との間の密接な相関関係を明らかにした。倍数変化は、対応する非誘発レベルに対するTSA/PMA誘発レベルを表す。(C)安定的にCas9/LTR−A/Bを発現する細胞(c4)は、示される感染多重度(MOI)で偽−pNL4−3−Nef−EGFPレンチウイルスを感染させられ、感染多重度はEGFPフローサイトメトリーにより感染2日後に測定された。(D)代表的位相コントラスト/蛍光顕微鏡写真は、LTR−A/B安定細胞が、pNL4−3−AE−EGFP HIV−1レポーターウイルス(グレー)による新たな感染に抵抗性を示す(右パネル)が、対照細胞(U6−CAG;黒)ではそうではない、ことを示す。

ヒトゲノム上のCas9/LTR−A/Bのオフターゲット効果を示す図である。(A)SURVEYOR検定は、ヒトのTZM−blとU1細胞における予測される/潜在的なオフターゲット領域にはインデル変異がないことを示す。LTR−A標的領域(A)はポジティブ対照として使用され、空U6−CAGベクター(U6)はネガティブ対照として使用された。(B−D):LTR−A/B安定的TZM−blサブクローンの全ゲノム配列決定であり、U6−CAG対照およびLTR−A/Bサンプルにおける、コールされたインデルの数(B)、両方のサンプルにおけるgRNA標的部位の近くの10個のコールされたインデルの詳細情報(C)、およびオフターゲットのコールされたインデルの分布(D)を示す。図4Cは、出現順に、それぞれ、配列ID番号14−15が開示されている。

TAクローニング及びヒトTZM−bl細胞のゲノムDNAからのPCR産物(−411から−10)の配列決定により同定された、組み込みレンチウイルスLTR−ホタルルシフェラーゼレポーターのLTR U3配列を示す図である。4つのgRNA(LTR−AからD)のプロトスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM(NGG))配列、および示されている転写因子の予測結合部位が強調されている。正確な切断部位は、はさみで標識付けされている。+1は、転写開始部位を示す。図5は、配列ID番号16が開示されている。

LTR−C及びLTR−Dが、CHME5ミクログリア細胞において潜伏pNL4−3−ΔGag−d2EGFPウイルスのTSA誘発性再活性化を著しく抑制することを示す図である。(A)図は模式的にレポーター遺伝子d2EGFPと共に、Tat、Rev、Env、Vpu、およびNefを含むpNL4−3−ΔGag−d2EGFPベクターを示す。(B)Cas9/LTR−Dの標的LTRゲノム内のインデル変異を示すが、Cas9/LTR−Cではインデル変異を示さない、ことを示すSURVEYOR検定である。(C)EGFPのフローサイトメトリーの代表的なゲーティング図であって、空のU6駆動gRNA発現ベクター(U6−CAG)と比較して、Cas9/LTR−CまたはLTR−Dの安定発現により、潜伏pNL4−3−ΔGag−d2EGFPレポーターウイルスのTSA誘発性再活性化が劇的に減少することを示す。

HIV−1 LTR−ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に組み込んだTZM−bl細胞において、LTR−C及びLTR−Dの両方がインデル変異を誘発し、そして構成的およびTSA/PMA誘導ルシフェラーゼ活性を有意に減少させたことを示す図である。(A)機能的ルシフェラーゼレポーター検定がLTR−C、LTR−Dまたはその両方によってLTRの再活性化が有意に減少することを明らかにした。(B)SURVEYOR検定であり、LTR−C及びLTR−Dによって誘発されるLTR DNA(−453から+43)中のインデル変異を示す(上矢印)。LTR−CおよびLTR−Dの組み合わせは、LTR−CおよびLTR−Dとの間の302bpの領域の欠失に起因する194bp断片(下部矢印)を生成する。(C、D)30個のクローンのサンガー配列決定は、LTR−Cに対するインデル効率を23%、そしてLTR−Dに対するインデル効率を13%と評価し、そして例示的クロマトグラムは挿入/削除を示す。図7Cは、出現順に、それぞれ、配列ID番号17−25を開示する。図7Dは、出現順に、それぞれ、配列ID番号26−30を開示する。(E)LTRの−453から+43までをカバーするPCR産物の5部位(96、102、372、386、482)を切断するためにBsaJを用いた、PCR−制限酵素断片長多型(RFLP)分析は、U6−CAG対照試料中に2つの主要なバンドを示し(96bp、270bp)、しかし96/102部位におけるLTR−C誘発インデル変異後の372bpバンド(上の矢印)、372部位におけるLTR−D誘発インデル変異後の290bpバンド(中央の矢印)、およびLTR−C/D誘導切除後の180bp断片(下の矢印)を追加で示した。(F)事例的クロマトグラムであり、LTR−C及びLTR−Dの間の302bp断片の欠失(上)と、追加の17bpの欠失(底部)を示す。赤い矢印は、接合部位を示す。* P <0.05はU6−CAG対照と比較してLTR−CまたはLTR−D媒介ルシフェラーゼ活性の有意な減少を示す。図7Fは、出現順に、それぞれ、配列ID番号31−32を開示する。

HIV−1 LTR U3/R/U5領域(−411から+129まで)をカバーするプライマーを用いてLTR−A/Bと空U6−CAG対照のCHME5サブクローンからのPCR産物のTAクローニングとサンガー配列決定を示す図である。(A)5´および3´両方のLTR上のLTR−A及びLTR−Bカットの可能な組み合わせが、示されるようにa−cの潜在的断片を生成する。(B)断片a(351bp)のブラスト図であり、LTR−AとLTR−B切断部位の間の190bpの欠失を示す。(C)断片c(682bp)のブラスト図であり、LTR−A切断部位での175bpの挿入及びLTR−B切断部位での27bpの欠失を示す。図8Cは、出現順にそれぞれ、配列ID番号33−34を開示する。

Cas9/LTR−gRNAが効率的にU1単球細胞から潜伏HIV−1ウイルスを根絶することを示す図である。(A)2番染色体の組み込み部位−隣接配列(小文字、467bp)を標的とするプライマーペア(T492/T493)を使用した、ロングレンジPCRからの1.1kb断片のサンガー配列決定は、HIV−1ゲノム(9709bp)全体を除去し、PAM(TGG)LTR−A標的サイト(下線部分)から正確に3番目のヌクレオチドにおける6bpの挿入(箱入り)、および4bpの欠失(nnnn)を有する5´LTR(破線の下線部分)と3´LTRの組み合わせを残す、ことを明らかにした。図9Aは、配列ID番号35を開示する。(B)代表的なDNAゲル画像であり、HIV−1ゲノムの特異的根絶を示す。NSは非特異的バンドを意味する。(C,D)Gag遺伝子を標的とするプライマー対(T457/T458)を用いた定量的PCR分析であり、Cas9/LTR−A/B発現U1細胞における全HIV−1ゲノム根絶の85%の効率を示す。U1細胞はpX260空ベクター(U6−CAG)またはLTR−A/Bコード化ベクターで遺伝子導入された。2週間のピューロマイシン選択後に、細胞のゲノムDNAは、標準としてスパイクpNL4−3−ΔE−EGFPヒトゲノムDNAを用いた、絶対定量PCR分析のために使用された。 **P<0.01は、U6−CAG対照と比較して有意の減少を示した。

Cas9/LTR gRNAが効果的にJ−Lat潜伏感染T細胞におけるHIV−1プロウイルスを根絶することを示す図である。(A)EGFPフローサイトメトリーによる機能解析は、EGFPレポーターウイルスのPMAおよびTNFα誘発性再活性化の約50%の減少を明らかにする。(B)SURVEYOR検定はCas9/LTR−A/B遺伝子導入細胞の標的LTRゲノム中のインデル変異(矢印)を示す。J−Lat細胞はpX260空ベクターまたはLTR−Aおよび−Bで遺伝子導入された。2週間のピューロマイシン選択後、細胞はPMAまたはTNFαで24時間処理された。ゲノムDNAは、HIV−1 LTR U3/R/U5領域(−411から+129)をカバーするプライマーを用いたPCRに供され、そしてSURVEYOR検定が行われた。 **P<0.01はU6−CAG対照と比較して有意な減少を示す。(C)HIV−1 LTR(−374から+43)をカバーするプライマーを使用したPCRフラグメント分析であって、227bpの断片(矢印)を残した、LTR AとBの切断部位の間の190bpの領域の正確な欠失を示す。ハウスキーピング遺伝子βアクチンは、DNA精製および負荷対照として機能する。

ゲノム編集効率がCas9とgRNAsの存在に依存することを示す図である。(A、B)PCR遺伝子型決定は、ゲノム編集の徴候のないピューロマイシン選択TZM−BLサブクローンにおいて、U6駆動LTR−AまたはLTR−B発現カセットの不存在(A)、およびCMV駆動Cas9 DNAの不存在/減少(B)を明らかにした。示されたサブクローンからのゲノムDNAは、U6プロモーター(T351)およびLTR−A(T354)または−B(T356)をカバーし、そしてCas9を標的とするプライマー対(T477/T491)を使用する、従来型(A)またはリアルタイム(B)のPCR分析に供された。(C、D)Cas9タンパク質発現は無効性TZM−blサブクローンには存在しない。Flag標識付きCas9融合タンパク質が、抗FLAGモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロット(WB)および免疫細胞化学(ICC)によって検出された。フラグ−Cas9を安定的に発現するHEK293T細胞株が、WB(C)のためのポジティブ対照として使用された。GAPDHは、タンパク質負荷対照として機能する。クローンc6はCas9のDNAを含むが、Cas9タンパク質発現を有しない、そのことは、ピューロマイシン選択後のエピジェネティックな抑圧の潜在的なメカニズムを示唆した。クローンc5、c3は切り詰め型フラッグCas9(tCas9)を表してもよい。核はヘキスト33258で染色された(D)。

TZM−bl細胞におけるCas9/LTR−A/B gRNAの安定的発現が、偽型または天然のHIV−1ウイルスに対してワクチン接種することを示す図である。(A)フローサイトメトリーであって、Cas9/LTR−A/B発現TZM−blサブクローンにおいて、天然pNL4−3−ΔE−EGFPレポーターウイルス感染効率の有意な減少を示す。(B、C)リアルタイムPCR分析であって、Cas9/LTR−A/B gRNAsによるウイルスRNA(B)及びDNA(C)の抑制または除去を明らかにする。(D)ホタルルシフェラーゼ発光検定であって、Cas9/LTR−A/B gRNAsによるウイルス感染−刺激LTRプロモーター活性の劇的な阻害を示す。安定的にCas9/LTR−A/B gRNAを発現するTZM−bl細胞は、示された天然HIV−1ウイルスで2時間感染させられ、そしてPBSで2回洗浄された。感染後2日目に、細胞は回収され、固定され、そしてEGFP発現のためのフローサイトメトリーによって分析され(A)、または総RNA抽出及びRT−qPCRのために溶解され(B)、定量PCRのためにゲノムDNA精製され(C)、そして、発光測定された(D)。*P<0.05および**P<0.01は、U6−CAG対照と比較して有意な減少を示す。

予測されるLTR gRNAとそのオフターゲット数(100%一致)を示す。pHR´−CMV−LacZのレンチウイルスベクター(AF105229)の5´−LTRセンス配列およびアンチセンス配列(それぞれ配列ID番号79−111および112から141)(634bp)が、Jack LinのCRISPR/Cas9 gRNAファインダーツール(http://spot.colorado.edu/〜slin/cas9.html)を使用して、20bpのガイド配列(プロトスペーサー)プラスプロトスペーサー隣接モチーフ配列(NGG)を含むCas9/gRNA標的部位を検索するために使用された。それぞれのgRNAプラスNGG(AGG、TGG、GGG、CGG)が表示されている1000個の整列された配列を有する利用可能なヒトゲノムと転写産物配列に対してブラストされた。コントロール+Fを押した後、標的配列(1−23から9−23まで)をコピー/ペーストし、そして100%一致するゲノム標的の数を見つける。それぞれの検索に対するオフターゲットの数は、繰り返されたゲノムライブラリーに起因して3で除した。示した数は4回の検索(NGG)の合計を示す。トップの数値(例えば、gRNA配列(センス)に対して:20、19、19、17、16、15、14、13、12)はNGGから最も遠いgRNA標的配列を示す。選択されたLTR−A/B及びLTR−C/Dのための配列およびオフターゲット数はそれぞれ赤と緑で強調表示されている。

PCRと配列決定のために使用されるgRNA標的部位用のオリゴヌクレオチドおよびプライマー(出現順に、それぞれ、配列ID番号36−78)を示す図である。

LTR−A及びLTR−Bの予測されるgRNA標的部位の位置を示し、そして「query Seq」配列を配列ID番号142−252として、「ref Seq」を配列ID番号253−363として、出現順にそれぞれ開示する図である。

図15−1の続きである。

HIV−1 LTRホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に組み込まれたTZMBI細胞において、LTR−C及びLTR−Dの両方が、構成的およびTSA/PMA誘導ルシフェラーゼ活性を減少させ、そしてLTR−C及びLTR−Dの組み合わせが正確なゲノムの切除を誘発したことを示す図である。6つのgRNA標的が、HIV−LTRのプロモーター領域に対して設計された(図16A)。図16Aは、配列ID番号16を開示する。TZM細胞はリポフェクタミン2000によりCas9−EGFPおよびキメラgRNA発現カセット(PCR産物)を共導入された。3日後、EGFPポジティブ細胞がFACSを通して選別され、グループあたり2000個の細胞がルシフェラーゼ検定用に収集された(図16B)。図16Bは、配列ID番号31を開示する。選別された細胞集団は2日間培養され、そしてTSA/PMAで1日間処理され、その後ルシフェラーゼ検定に供された(図16C)。単一細胞は96ウェルプレートにソートされ、TSA/PMAの不存在下(図16D)または存在下(図IE)で、ルシフェラーゼ検定のために集密まで1日間培養された。集団ソートされた細胞からのPCR産物はサーベイヤCel−Iヌクレアーゼ検定で分析され(図16F)、制限断片長多型がBsajIで分析され(図16G)、変異(図16F)、または未切断(図16G)バンド(赤矢印)を示す。予想されたLTR−CとLTR−Dとの間の321bp領域の欠失(図16A、赤い矢頭)の結果から生じる200bp断片(図16F、16G、黒い矢印)が、正確なゲノム切除を示すTAクローニングおよび配列決定により検証された(図16H)。個々のLTR−Cおよび−DからのPCR産物のサンガー配列決定は、それぞれ%および%インデル変異効率を同定した(図16)。*p<0.05は、対応するU6−CAG対照と比較して、スチューデントのt検定を用いて統計学的に有意な減少を示す。プロトスペース(E)、プロトスペース(C)、プロトスペース(A)、プロトスペース(B)、プロトスペース(D)、及びプロトスペース(F)は、それぞれ、出現順に配列ID番号365、367、369、371、373、及び375に対応する。

Cas9/LTR−gRNAが、HIV−1潜伏感染CHME5ミクログリア細胞株において、EGFPのフローサイトメトリーによって測定されるHIV−1ウイルスの構成的および誘導的産生を抑制することを示す図である。レポーター遺伝子d2EGFPを有する、Tat、Rev、Env、Vpu、およびNefを含むpHR´レンチウイルスベクターは、ヒト胎児ミクログリア細胞株CHME5の中へ形質導入され、そして3´−LTRのU3領域内の400bpの欠失が示される(図17A)。Cas9/gRNAの一過性遺伝子導入の後、ヒトHIV−1 LTR−A、B、C、Dは、単独で、または組み合わせで強度を減少させたが、しかしEGFP細胞の割合はLTRプロモーター活性の抑制に起因して減少しなかった(図17B、17C)。1−2週間の構成物質選択の後、EGFP細胞の割合も減少した(図17D、17E)。

安定した選択されたクローンからのPCR産物は、サーベイヤCel−Iヌクレアーゼ検定を用いて分析され(図17F)、その結果はLTR−A及びLTR−Bにおける劇的なインデル変異を示したが、しかし、LTR−A/Bの組み合わせでは弱かった(赤矢印)。予測されたLTR−A及びLTR−B間の190bp領域の欠失(図17H、赤い矢印)に起因する331bp断片(図17F、17G、黒い矢印)は、正確なゲノム切除を示すTAクローニングおよび配列決定により検証された(図17H)。図17Hは、出現順に、それぞれ、配列ID番号1−3を開示する。

代表的HIV−1配列(配列ID番号:376)のLTRを示す図である。U3領域はヌクレオチド1からヌクレオチド432まで延び(配列ID番号:377)、R領域はヌクレオチド432からヌクレオチド559まで延び(配列ID番号:378)、そしてU5領域はヌクレオチド560からヌクレオチド644まで延びる(配列ID番号:379)。

代表的SIV配列(配列ID番号:380)のLTRを示す図である。U3領域はヌクレオチド1からヌクレオチド517まで延び(配列ID番号:381)、R領域はヌクレオチド518からヌクレオチド693まで延び(配列ID番号:382)、そしてU5領域はヌクレオチド694からヌクレオチド818まで延びる(配列ID番号:383)。

本発明は部分的に、我々がRNAガイドCRISPR−Cas9ヌクレアーゼシステム(Cas9/gRNA)を単一または多重の構成において使用して、HIV−1感染細胞からの組み込みHIV−1ゲノムを除去することができたという我々の発見に基づいている。我々はHIV−1のLTR U3領域において高度に特異的な標的を識別し、その標的はCas9/gRNAにより効率的に編集され、潜伏感染したミクログリア、前単球およびT細胞においてウイルスの遺伝子発現および複製を不活性化した。Cas9/gRNAは宿主細胞に対して遺伝子毒性も標的外編集も引き起こさず、そして5´から3´LTRにおよぶ組み込みプロウイルスDNAの9709bpフラグメントを完全に切除した。さらにCas9発現細胞内の多重gRNAの存在はHIV−1感染を防止した。われわれの結果はCas9/gRNAが、AIDSに対する特異的、効果的、予防的そして処置的なアプローチを提供するように設計できることを示唆した。

従って、本発明はCRISPR関連エンドヌクレアーゼおよび、レトロウイルス例えばHIV内の標的配列に対し相補的である1つのガイドRNAをコードする1つの核酸配列を有する組成物、およびCRISPR関連エンドヌクレアーゼおよびHIV内の標的配列に対し相補的である1つのガイドRNAをコードする1つの核酸配列を有する医薬製剤を特徴とする。またCRISPR関連エンドヌクレアーゼポリペプチドおよびHIV内の標的配列に対し相補的である1つのガイドRNAを有する組成物、およびCRISPR関連エンドヌクレアーゼポリペプチドおよびHIV内の標的配列に対し相補的である1つのガイドRNAを有する医薬製剤も特徴とする。

またレトロウイルス感染、例えばHIV感染を処置するためにその組成物を投与する方法、ウイルス複製を根絶する方法、およびHIV感染を防止する方法も特徴とする。本明細書に記載される処置的方法は他の抗レトロウイルス処置法(例えば、高活性抗レトロウイルス療法HAART)に関連して実施可能である。

HIV感染の臨床経過は被験者の遺伝的背景、年齢、全般的健康状態、栄養状態、処置履歴、およびHIVサブタイプを含む多くの要因によって変化しうる。一般的にほとんどの個人は感染から2−3週間または数カ月のうちに風邪に似た徴候を発症する。徴候は、熱、頭痛、筋肉痛、発疹、寒気、のどの痛み、口内炎または陰部潰瘍、リンパ腺腫大、関節痛、寝汗、および下痢を含むことができる。徴候の強さは個人によってマイルドからシビアまで変化し得る。急性期の間HIVウイルス粒子は適切なCD4受容体分子を発現する細胞に引き寄せられそして侵入する。一度ウイルスが宿主細胞に入ってしまうと、HIVコード化逆転写酵素がHIV RNAのプロウイルスDNAのコピーを生成し、そしてそのプロウイルスDNAはその宿主細胞の遺伝子DNAに組み込まれる。宿主細胞により複製されるのはこのHIVプロウイルスであり、その結果新しいHIVウイルス粒子の放出となり、その新しいウイルス粒子はその後他の細胞に感染できる。本発明の方法および組成物は組み込まれたHIVプロウイルスDNAの切除に全般的にそして種々に有用であるが、しかし本発明はそれだけに限定されず、そして組成物は任意の感染期の被験者に、またはHIV感染のリスクを有する未感染被験者に投与されてもよい。

最初のHIV感染は2−3週間から2−3カ月の間に沈静し、そしてその後一般的に長い臨床的「潜伏」期に繋がり、それは長ければ10年におよぶ。潜伏期はまた無症候性HIV感染または慢性HIV感染とも呼ばれる。被験者のCD4リンパ数はリバウンドするが、しかし感染前のレベルには至らず、そして殆どの被験者は感染から2−4週間以内に抗体陽転となる、即ち血液内に検知可能レベルの抗HIV抗体を持つ。この潜伏期の間、末梢血単核細胞内では検知可能なウイルスの複製はありえず、そして末梢血内には殆どまたは全く培養可能なウイルスが存在しえない。臨床潜伏ステージとも呼ばれる潜伏期の間、HIVに感染した人々はHIV関連の徴候を経験しないか、してもマイルドな徴候のみ経験する。しかし、HIVウイルスは非常に低レベルで再生産し続ける。抗レトロウイルス処置を受けた被験者では。この潜伏期は数十年間またはそれ以上に延長する。しかしこの潜伏期の被験者は、たとえ抗レトロウイルス処置を受けていても、抗レトロウイルス処置が伝染のリスクを減少させるものの、他人にHIVを伝染させる能がある。上記のように抗レトロウイルス処置は低レベルのウイルスゲノム発現を抑制せず、また休止中のメモリT細胞、脳内マクロファージ、ミクログリア、アストロサイト、および腸管関連リンパ細胞などの潜伏感染した細胞を効率的に標的としない。

後天性免疫不全症候群(AIDS)の臨床的徴候および症状は、CD4リンパ数の減少として現れ、それは結果的に免疫システムに不可逆的損傷を与える。多くの患者がエイズ関連合併症を示し、それらは例えば、結核、サルモネラ症、サイトメガロウイルス、カンジダ症、クリプトコッカス髄膜炎、トキソプラズマ症およびクリプトスポリジウム症などの日和見感染;および例えばカポジ肉腫およびリンパ腫を含むある種の癌;および消耗症候群、神経性合併症およびHIV関連腎障害を含む。

(組成物) 本発明の組成物はCRISPR関連エンドヌクレアーゼ例えばCas9およびレトロウイルス、例えばHIV内の標的配列に対し相補的である1つのガイドRNAをコードする1つの核酸配列を有する。バクテリアでは、CRISPR/Cas遺伝子座は、可動遺伝要素(ウイルス、転位因子および接合性プラスミド)に対するRNAガイド適応性免疫システムをコードする。CRISPRシステムの3つのタイプ(I−III)はすでに識別されている。CRISPRクラスターはスペーサーを有し、その配列は前駆可動要素に相補的である。CRISPRクラスターは転写されそして成熟CRISPR RNA(crRNA)にプロセスされる。CRISPR関連エンドヌクレアーゼのCas9はタイプII CRISPR/Casシステムに属し、そして標的DNAを切断する強いエンドヌクレアーゼ活性を有する。Cas9は、約20塩基対(bp)のユニークな標的配列(スペーサーと呼ばれる)および、crRNA前駆体のリボヌクレアーゼIII補助プロセシングに対するガイドとして機能する、トランス活性化低分子RNA(tracrRNA)を含む、成熟crRNAによりガイドされる。crRNA:tracrRNA二重鎖は、crRNA上のスペーサーと標的DNA上の相補的配列(プロトスペーサーと呼ばれる)の間の相補的対形成を介して、Cas9を標的DNAに向ける。Cas9は切断部位(PAMから3番目のヌクレオチド)を特定するためにトリヌクレオチド(NGG)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識する。crRNAおよびtracrRNAは別々に発現され、または天然crRNA/tracrRNA二重鎖を模倣するため合成ステムループを介して人工的融合小分子量ガイドRNA(sgRNA)に操作されてもよい。sgRNAは低分子ヘアピン型RNA(shRNA)のように、直接RNA遺伝子導入のために合成され、またはin vitroで転写され、またはU6またはH1プロモートRNA発現ベクターから発現される。しかし人工的sgRNAの切断効率はcrRNAとtracrRNAが別々に発現されるシステムの効率に比べて低い。

本発明の組成物はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼでありうる。Cas9ヌクレアーゼは野生型化膿連鎖球菌配列と同一のヌクレオチド配列を持ち得る。いくつかの実施形態では、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは他の種類からの配列、例えば、緑膿菌、大腸菌、または他の配列決定された細菌のゲノムと古細菌、または他の原核生物などの他の連鎖球菌種からの配列でありうる。あるいは、野生型膿連鎖球菌Cas9配列は修飾されることができる。核酸配列は、哺乳動物細胞における効率的な発現のためにコドン最適化、すなわち「ヒト化」することができる。ヒトCas9ヌクレアーゼ配列は、例えばGenbankアクセス番号KM099231.1 GL669193757;またはKM099232.1 GL669193761;またはKM099233.1 GL669193765に記載される発現ベクターのいずれかによりコードされるCas9ヌクレアーゼ配列であり得る。あるいは、Cas9ヌクレアーゼ配列は、例えばAddgene(ケンブリッジ、MA)からのPX330またはPX260など商業的に入手可能なベクター内に含まれる配列でありうる。

いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、Genbankアクセス番号KM099231.1 GL669193757;またはKM099232.1 GL669193761;またはKM099233.1 GL669193765の任意のCas9エンドヌクレアーゼ配列の変異体またはフラグメント、またはPX330またはPX260(Addgene、マサチューセッツ州ケンブリッジ)のCas9アミノ酸配列でありうる。Cas9ヌクレオチド配列はCas9の生物学的に活性な変異体をコードするように修飾されることができ、これらの変異体は一つまたはそれ以上の変異(例えば、付加、欠失、置換変異またはそれら変異の組合せ)を含むことに起因して、例えば野生型Cas9と異なるアミノ酸配列を持つことができ、または含むことができる。1つまたはそれ以上の置換変異は、1つの置換(例えば、保存的アミノ酸置換)でありうる。例えば、Cas9ポリペプチドの生物学的に活性な変異体は、野生型Cas9ポリペプチドに対して少なくともまたは約50%の配列相同性(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列相同性)を有するアミノ酸配列を有することができる。

保存的アミノ酸置換は、典型的には、以下のグループ内の置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリンとスレオニン;リジン、ヒスチジンおよびアルギニン;およびフェニルアラニンおよびチロシン。Cas9アミノ酸配列中のアミノ酸残基は、非天然起源アミノ酸残基であることができる。天然起源アミノ酸残基は、遺伝子コードにより自然にコードされるもの、ならびに非標準アミノ酸を含む(例えば、L−配置の代わりにD−配置を有するアミノ酸)。本発明のペプチドはまた、標準的な残基の修飾バージョンのアミノ酸残基(例えば、ピロロリジンは、リジンの代わりに使用することができ、そしてセレノシステインはシステインの代わりに使用することができる)を含みうる。非天然起源アミノ酸残基は、天然に見出されていないものであるが、それは、アミノ酸の基本式に適合し、そしてペプチドに組み込まれうる。これらは、D−アロイソロイシン(2R、3S)−2−アミノ−3−メチルペンタン酸およびL−シクロペンチルグリシン(S)−2−アミノ−2−シクロペンチル酢酸を含む。他の例については、教科書またはワールドワイドウェブ(1つのサイトが現在、カリフォルニア工科大学によって維持され、成功裏に機能性タンパク質に組み込まれている非天然起源アミノ酸の構造を表示している)を参照することができる。

Cas9ヌクレアーゼ配列は変異配列でありうる。例えばCas9ヌクレアーゼは、ストランド特異的切断に関与している保存されたHNHとRuvCドメインにおいて変異可能である。例えば、RuvC触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニン(D10A)への変異は、Cas9ニッカーゼ変異体(Cas9n)が、一本鎖切断を得るためにDNAを切断するよりも切れ目を入れることを許容し、そしてその後のHDRを通じた優先的修理は、標的外の二本鎖の切断からの不要なインデル変異の頻度を潜在的に減らすことができる。

いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、上記の任意の核酸配列によってコードされるCRISPR関連エンドヌクレアーゼポリペプチドを含むことができる。典型的には様々な大きさのペプチド配列を指すが、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用される。我々は、本発明のアミノ酸ベースの組成物を、アミノ酸残基の線状ポリマーであることを伝えるために、そして完全長タンパク質と区別するために、「ポリペプチド」と呼ぶことがある。本発明のポリペプチドは、CRISPR関連エンドヌクレアーゼの断片を「構成し」または「含む」ことができ、そして本発明はCRISPR関連エンドヌクレアーゼの生物学的に活性な変異体を構成し、または含むポリペプチドに及ぶ。したがってポリペプチドがCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(またはその生物学的に活性な変異体)の1つの断片のみを含むことができ、しかし追加の残基を含むかもしれないことは理解されるであろう。生物学的に活性な変異体は、標的DNAを切断するために十分な活性を保持する。

アミノ酸残基間の結合は、従来のペプチド結合、または別の共有結合(例えば、エステル又はエーテル結合など)でありえ、そしてポリペプチドはアミド化、リン酸化またはグリコシル化によって修飾されうる。修飾は、ポリペプチド骨格および/または1つ以上の側鎖に影響を与えうる。化学修飾は、ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳後にインビボで行われる天然起源の修飾(例えば細菌宿主における、グリコシル化)、またはインビボで行われる合成修飾でありうる。CRISPR関連エンドヌクレアーゼの生物学的に活性な変異体は、天然起源(すなわち、インビボで自然に行われる)および合成修飾(すなわち、インビトロで行われた天然または非天然の修飾)の任意の組み合わせからから生じる1つまたはそれ以上の構造的修飾を含むことができる。修飾の例としては、これらに限定されないが、アミド化(例えば、アミノ基によるC末端の遊離カルボキシル基の置換);ビオチン化(例えば、ビオチン分子によるリジンまたは他の反応性アミノ酸残基のアシル化);グリコシル化(例えば、糖タンパク質または糖ペプチドを生成するための、アスパラギン、ヒドロキシリジン、セリンまたはトレオニン残基のいずれかに対するグリコシル基の付加);アセチル化(例えば、アセチル基の付加、通常はポリペプチドのN末端に);アルキル化(例えば、アルキル基の付加);イソプレニル化(例えば、イソプレノイド基の付加);リポイル化(例えば、リポ酸塩部分の付加);およびリン酸化(例えば、セリン、チロシン、トレオニン又はヒスチジンへのリン酸基の付加)を含む。

生物学的に活性な変異体中の1つ以上のアミノ酸残基は、非天然起源のアミノ酸残基でありうる。天然起源のアミノ酸残基には、遺伝子コードにより自然にコードされたもの、ならびに非標準アミノ酸(例えばL−配置の、代わりにD配置を有するアミノ酸)を含む。本発明のペプチドはまた、標準的な残基の修飾バージョンのアミノ酸残基(例えば、ピロロリジンは、リジンの代わりに使用することができ、そしてセレノシステインはシステインの代わりに使用することができる)を含むことができる。非天然起源アミノ酸残基は、天然に見出されていないものであるが、それは、アミノ酸の基本式に適合し、そしてペプチドに組み込まれうる。これらは、D−アロイソロイシン(2R、3S)−2−アミノ−3−メチルペンタン酸およびL−シクロペンチルグリシン(S)−2−アミノ−2−シクロペンチル酢酸を含む。他の例については、教科書またはワールドワイドウェブ(1つのサイトが現在、カリフォルニア工科大学によって維持され、正常に機能性タンパク質に組み込まれている非天然起源アミノ酸の構造を表示している)を参照することができる。

あるいはまたはそれに加えて、生物学的に活性な変異体における一つ以上のアミノ酸残基は、野生型配列中の対応する位置に見出される天然起源残基とは異なる、天然起源残基でありうる。換言すれば、生物学的に活性な変異体は、一つ以上のアミノ酸置換を含みうる。我々は、アミノ酸残基の置換、付加、または欠失を野生型配列の変異と呼ぶことがある。上述のように、置換は、天然起源アミノ酸残基を非天然起源残基または単に異なる天然起源アミノ酸残基と置換することができる。さらに置換は、保存的または非保存的置換から構成されうる。保存的アミノ酸置換は、典型的には、以下のグループ内の置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリンとスレオニン;リジン、ヒスチジンおよびアルギニン;およびフェニルアラニンおよびチロシン。

CRISPR関連エンドヌクレアーゼの生物学的に活性な変異体であるポリペプチドは、その配列が、対応する野生型ポリペプチドと類似または同一である程度の観点から特徴付けることができる。例えば、生物学的に活性な変異体の配列は、野生型ポリペプチド中の対応する残基の少なくとも又は約80%同一でありうる。例えば、CRISPR関連エンドヌクレアーゼの生物学的に活性な変異体は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼまたはそのホモログまたはオルソログに対して、少なくとも約80%の配列相同性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列相同性)を有することができる。

CRISPR関連酵素ポリペプチドの生物学的に活性な変異体は、本発明の方法において有用であるために十分な生物学的活性を保持する。生物学的に活性な変異体は、標的DNAの切断において機能するために十分な活性を保持する。生物学的活性は、当業者に公知の方法で評価され、そしてそれは、限定されないがインビトロ切断検定または機能検定を含むことができる。

ポリペプチドは、例えば、組換え技術または化学合成を含む種々の方法によって生成されうる。一旦生成されると、ポリペプチドは当技術分野で周知の手段によって任意の所望の程度まで単離しそして精製することができる。例えば、逆相(好ましくは)または順相HPLCなどの後に凍結乾燥を使用することができ、または、セファデックスG−25のような多糖類ゲル培地上でのサイズ排除または分配クロマトグラフィーを使用することが出来る。最終的なポリペプチドの組成は、標準的な手段によるペプチドの分解後のアミノ酸分析によって、アミノ酸配列決定により、またはFAB−MS技術によって確認してもよい。ポリペプチドのアミノ基の酸の塩、エステル、アミド、およびN−アシル誘導体を含む塩は、当技術分野で公知の方法を用いて調製することができ、そしてそのようなペプチドは、本発明の文脈において有用である。

本発明の組成物は、ガイドRNA(gRNA)をコードする配列を含み、それはレトロウイルス中の標的配列に相補的な配列を含む。レトロウイルスは、レンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、またはウシ免疫不全ウイルスでありえる。ヒト免疫不全ウイルスは、HIV−1またはHIV−2でありうる。標的配列は、任意のHIV、例えばHIV−1及びHIV−2からの配列、およびそれらの任意の循環組換え型を含むことができる。HIVの遺伝的多様性は上述の多重のグループおよびサブタイプに反映されている。HIV配列のコレクションはロスアラモスHIVデータベースと一覧(すなわち、配列データベースのWebサイトはhttp://www.hiv.lanl.gov/)に編集されている。本発明の方法および組成物は、任意のこれらの様々なグループ、サブタイプのからのHIV、および循環組換え型に適用することができる。これらは、例えば、HIV−1の主要なグループ(多くの場合、グループMと呼ばれる)と、マイナーグループ、グループN、O、およびP、ならびに、限定されないが、任意の次のサブタイプ、A、B、C、D、F、G、H、J及びK、またはHIVのグループ(例えば、しかし限定されないが、任意の以下の群;N、O及びP)を含む。本発明の方法および組成物はまた、HIV−2及び任意のA、B、C、FまたはGクレード(また、「サブタイプ」または「グループ」と呼ばれる)およびHIV−2の任意の循環組換え型にも適用することができる。

ガイドRNAは、コーディング配列または非コーディング配列に相補的な配列でありうる。例えば、ガイドRNAは、長い末端反復(LTR)配列、タンパク質コーディング配列、または制御配列などのHIV配列とすることができる。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、HIVの長い末端反復(LTR)領域に相補的な配列を有する。HIV−1 LTRは、長さ約640bpである。代表的なHIV−1 LTRは、配列番号:376の配列である。代表的なSIV LTRは、配列番号:380の配列である。HIV−1の長い末端反復(LTR)は、U3、RおよびU5領域に分割されている。代表的なHIV−1 LTRのU3、RおよびU5領域は、それぞれ配列番号:377、378および379である。代表的なSIV LTRのU3、RおよびU5領域は、それぞれ配列番号:381、382、および383である。代表的なHIV−1およびSIV配列のU1、R、U5領域の構成はそれぞれ図18及び19に示される。LTRは、遺伝子発現のために必要な信号のすべてを含み、そしてプロウイルスの宿主細胞のゲノムへの組み込みに関与している。例えば、基本またはコアプロモーター、コアエンハンサーおよび修飾領域はU3内に見出され、一方トランス活性化応答要素はR内に見出される。HIV−1では、U5領域は複数のサブ領域、例えば、転写活性化に関与しているTARまたはトランス作用応答因子;二量体化およびゲノムパッケージングに関与しているPoly A;PBSまたはプライマー結合部位;Psiまたはパッケージング信号;DISまたは二量体開始部位、を含む。

有用なガイド配列は、LTRのU3、R、またはU5領域に相補的である。HIV−1のU3領域を標的とする代表的なガイドRNA配列は、図13に示される。ガイドRNA配列は例えば、以下の配列を含むことができる: LTR A:ATCAGATATCCACTGACCTTTGG(配列番号:96)、 LTR B:CAGCAGTTCTTGAAGTACTCCGG(配列番号:121)、 LTR C:GATTGGCAGAACTACACACCAGG(配列番号:87)、または LTR D:GCGTGGCCTGGGCGGGACTGGGG(配列番号:110)。

U3(配列番号:16)内のLTR A(配列番号::96)、LTR B(配列番号:121)、LTR C(配列番号:87)およびLTR D(配列番号:110)の位置は図5に示される。U3領域を標的とする追加の代表的なガイドRNA配列は図13の表に示され、そして配列番号:79−111及び配列番号:111から141の任意の配列を有しうる。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、配列番号:79−111及び配列番号:111−141の任意の配列と95%の相同性を有する配列を含むことができる。従って、ガイドRNA配列は、例えば、以下の配列と95%の相同性を有する配列を含むことができる: LTR A:ATCAGATATCCACTGACCTTTGG(配列番号:96)、 LTR B:CAGCAGTTCTTGAAGTACTCCGG(配列番号:121)、 LTR C GATTGGCAGAACTACACACCAGG(配列番号:87)、または LTR D:GCGTGGCCTGGGCGGGACTGGGG(配列番号:110)。 ガイドRNA配列はプロトスペーサーと呼ばれることがある、例えば、プロトスペース(A)、プロトスペース(B)、プロトスペース(C)、及びプロトスペース(D)。

ガイドRNA配列はHIV−1 U3、R、またはU5領域の基準配列またはコンセンサス配列内に見出される配列でありうる。しかし本発明はそのように限定されず、そしてガイドRNA配列は、任意の変異体または突然変異体HIV配列を標的とするように選択されうる。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、変異配列または疑似種配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、処置中の被験者により保有されるウイルスのゲノム中の配列に対応する配列でありうる。従って、例えば、被験者に保有されるHIVウイルスの特定のU3、R、またはU5領域の配列を得ることができ、そして患者の特定の配列に相補的なガイドRNAを使用することができる。

いくつかの実施形態では、ガイドRNAはタンパク質コーディング配列、例えば、一つ以上のウイルス構造タンパク質をコードする配列(例えば、gag、pol、envおよびtat)に相補的な配列でありうる。したがって、その配列は、gagポリタンパク質、例えば、MA(マトリックスタンパク質、p17);CA(カプシド蛋白質、p24);SP1(スペーサーペプチド1、p2);NC(ヌクレオカプシド蛋白質、p7);SP2(スペーサーペプチド2、p1)およびP6タンパク質:pol、例えば、逆転写酵素(RT)およびRNase H、インテグラーゼ(IN)、およびHIVプロテアーゼ(PR):env、例えば、gp160、またはgp160の切断産物、例えば、gp120やSU、およびgp41またはTM:またはtat、例えば、72個のアミノ酸と1−エクソンのTatまたは86−101アミノ酸と2−エクソンのTat、内の配列に相補的でありうる。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、例えばvif、n willef(マイナス因子)、vpu(ウイルスタンパク質U)およびtevなどのアクセサリータンパク質をコードする配列に相補的な配列でありうる。

いくつかの実施形態では、配列は、構造的または制御的要素に相補的な配列、例えば、上記の長い末端反復(LTR);TAR(ウイルスのトランス活性化のための標的配列)、Tatタンパク質および細胞タンパク質の結合部位、HIV−1ではウイルスmRNAの最初の約45ヌクレオチドからなり(HIV−2では最初の100ヌクレオチド)、ヘアピンステムループ構造を形成する;RRE(Rev応答エレメント)、HIV−1のenv領域内でコードされるRNAエレメント、約200ヌクレオチドからなり(HIV−1において転写の開始点から7710−8061に位置し、gp120およびgp41の境界に及ぶ);PE(Psiエレメント)、Gag開始コドンに先行しそして重なる1組の4つのステム−ループ構造;SLIP、TTTTTT「滑りやすいサイト」、そのあとにループ構造が続く;CRS(Cis−作用抑制配列);INS(阻害性/不安定性RNA配列)、例えばHIV−1のgag領域の414−631ヌクレオチドに見出される;でありうる。

ガイドRNA配列は、センスまたはアンチセンス配列でよい。ガイドRNA配列は、一般的にプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む。PAMの配列は使用されるCRISPRエンドヌクレアーゼの特異性要求に依存して変化しうる。化膿連鎖球菌由来CRISPR−CASシステムでは、標的DNAは、典型的には、5´−NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の直前に位置する。したがって、化膿連鎖球菌Cas9に対し、PAMシーケンスはAGG、TGG、CGGまたはGGGでありうる。他のCas9オルソログは、異なるPAMの特異性を有してもよい。例えば、高温性連鎖球菌からのCas9は、CRISPR1に対して5´−NNAGAAが必要であり、そしてCRISPR3に対して5´−NGGNGが必要であり、そして髄膜炎菌は5´−NNNNGATTが必要である。ガイドRNAの特定配列は変化しうるが、しかし配列に関係なく、有用なガイドRNA配列は、高効率およびゲノム組み込みHIV−1プロウイルスの完全な除去を達成しながらオフターゲット効果を最小化する配列であろう。ガイドRNA配列の長さは、約20から約60以上のヌクレオチドまで変化することができ、例えば、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29 、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約45、約50、約55、約60またはそれ以上のヌクレオチドである。有用な選択方法は、外来性のウイルスゲノムと内在性レトロウイルスDNAを含む宿主細胞ゲノムの間の極めて低い相同性を有する領域を同定し、オフターゲットヒトトランスクリプトームまたは(まれに)非翻訳ゲノムサイトを除外するために、12bpの+NGG標的選択基準を使用する、バイオインフォマティクススクリーニング;HIV−1 LTRプロモーター(潜在的に宿主ゲノム中に保存される)内の転写因子結合部位を回避;20bpのgRNA−、キメラcrRNA−tracRNAベースのシステムに対して特異性/効率性を高めるため、LTR−Aと−Bに向かう、30bpのgRNAおよび元の細菌性免疫機構を反映するプレcrRNAシステムの選択;そして潜在的なオフターゲット効果を識別し排除するため、全ゲノム配列決定(WGS)、サンガー配列決定とSURVEYOR検定;を含む。

ガイドRNA配列は、単一の配列として、または一つ以上の異なる配列の組み合わせ、例えば、多重化構成として構成されうる。多重構成は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ以上の異なるガイドRNAの組み合わせ、例えばU3、RまたはU5内の配列の任意の組み合わせを含みうる。いくつかの実施形態においては、LTR A、LTR B、LTR C及びLTR Dの組み合わせを使用しうる。いくつかの実施形態においては、任意の配列LTR A(:96)、LTR B(配列番号:121)、LTR C(配列番号:87)、およびLTR D(配列番号:110)の組み合わせが使用しうる。いくつかの実施形態においては、配列番号79−111及び配列番号:111−141の配列を有する配列の任意の組み合わせが使用しうる。組成物が1つの発現ベクターにおいて投与される場合、ガイドRNAは、単一のベクターによってコードされうる。あるいは、複数のベクターが、それぞれに2つ以上の異なるガイドRNAを含むように設計することができる。有用な構成は切断部位間のウイルス配列の切除をもたらし、その結果HIVゲノム又はHIVタンパク質発現の切除となる。したがって、2つ以上の異なるガイドRNAの使用は、CRISPRエンドヌクレアーゼによって認識される切断部位の間のウイルス配列の切除を促進する。切除された領域の寸法は、単一ヌクレオチドから数千ヌクレオチドまで変化しうる。代表的な切除領域は、実施例に記載されている。

組成物が核酸として投与されるか、または発現ベクター内に含まれている場合、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA配列に対するものと同じ核酸またはベクターによってコードされうる。あるいは、またはさらに、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA配列から物理的に離れた1つの核酸内で、または別個のベクター内でコードされ得る。

いくつかの実施形態では、RNA分子、例えば、crRNA、tracrRNA、gRNAは1つ以上の修飾核酸塩基を含むように設計される。 例えば、RNA分子の既知の修飾は、例えば、遺伝子VI、第9章(「遺伝コードの解釈」)、ルイス、エド(1997年、オックスフォード大学出版、ニューヨーク)およびGrosjeanおよびBenne著RNAの修飾と編集(1998、ASMプレス、ワシントンDC)に記載されている。 修飾されたRNAの構成要素は、次のものがある:2´−O−メチルシチジン;N4−メチルシチジン;N4−2´−O−ジメチルシチジン;N4−アセチルシチジン;5−メチルシチジン;5,2´−O−ジメチルシチジン;5−ヒドロキシジメチルシチジン; 5−フォルミルシチジン;2´−O−メチル−5−フォルミルシチジン;3−メチルシチジン;2−チオシチジン;ライシジン;2´−O−メチルウリジン;2−チオウリジン;2−チオ−2´−O−メチルウリジン;3,2´−O−ジメチルウリジン;3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン;4−チオウリジン;リボシルチミン; 5,2´−O−ジメチルウリジン;5−メチル−2−チオウリジン;5−ヒドロキシウリジン;5−メトキシウリジン;ウリジン5−オキシ酢酸;ウリジン−5−オキシ酢酸メチルエステル;5−カルボキシメチルウリジン;5−メトキシカルボニルメチルウリジン;5−メトキシカルボニルメチル−2´−O−メチルウリジン;5−メトキシカルボニルメチル−2´−チオウリジン;5−カルバモイルメチルウリジン;5−カルバモイルメチル−2´−O−メチルウリジン;5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン;5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル;5−アミノメチル−2−チオウリジン;5−メチルアミノメチルウリジン;5−メチルアミノメチル−2−チオウリジン;5−メチルアミノメチル−2−セレノウリジン;5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン;5−カルボキシメチルアミノメチル−2´−O−メチル−ウリジン;5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン;ジヒドロウリジン;ジヒドロリボシルチミン;2´−メチルアデノシン;2−メチルアデノシン;N.sup.6N−メチルアデノシン;N6、N6−ジメチルアデノシン;N6,2´−O−トリメチルアデノシン;2−メチルチオ−N6N−イソペンテニルアデノシン;N6−(シスヒドロキシイソペンテニル)−アデノシン;2−メチルチオ−N6−(シスヒドロキシイソペンテニル)−アデノシン;N6−グリシニルカルバモイル)アデノシン;N6−トレオニルカルバモイルアデノシン;N6−メチル−N6−トレオニルカルバモイルアデノシン;2−メチルチオ−N6−メチル−N6−トレオニルカルバモイルアデノシン;N6−ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン;2−メチルチオ−N6−ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン;2´−O−リボシルアデノシン(リン酸塩);イノシン;2´−O−メチルイノシン;1−メチルイノシン;1,2´−O−ジメチルイノシン;2´−O−メチルグアノシン;1−メチルグアノシン;N2−メチルグアノシン;N2,N2−ジメチルグアノシン;N2,2´−O−ジメチルグアノシン;N2,N2,2´−O−トリメチルグアノシン;2´−O−リボシルグアノシン(リン酸塩);7−メチルグアノシン;N2,7−ジメチルグアノシン;N2,N2,7−トリメチルグアノシン;ワイオシン;メチルワイオシン;未修飾ヒドロキシワイブトシン;ワイブトシン;ヒドロキシワイブトシン;ペルオキシワイブトシン;キューオシン;エポキシキューオシン;ガラクトシル−キューオシン;マンノシル−キューオシン;7−シアノ−7−デアザグアノシン;アルカエオシン(arachaeosine)[7−ホルムアミド−7−デアザグアノシンとも呼ばれる];そして7‐アミノメチル−7−デアザグアノシン。

我々は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、およびDNA(またはRNA)含有核酸アナログを含むRNAとDNAの両方を指して用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」を互換的に使用することがあり、それらのいずれも本発明のポリペプチドをコードすることができ、そしてそれら全ては本発明に包含される。ポリヌクレオチドは、本質的に任意の三次元構造を有しうる。核酸は、二本鎖または一本鎖であり得る(すなわち、センス鎖またはアンチセンス鎖)。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)およびその一部、トランスファーRNA、リボソームRNA、siRNA、マイクロRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー、ならびに核酸類似体を含む。本発明の文脈において、核酸は、天然起源Cas9の断片またはその生物学的に活性な変異体およびガイドRNAをコードすることができ、ここでガイドRNAはHIV中の配列に相補的である。

「単離された」核酸は、天然起源ゲノムにおいてそのDNA分子のすぐ隣に通常見出される核酸配列の少なくとも一つが、除去されまたは非存在であるかぎり、例えば、天然起源DNA分子またはその断片でありうる。したがって、単離された核酸は、限定されないが、他の配列とは独立の別個の分子(例えば、化学的に合成された核酸、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生されたcDNAまたはゲノムDNA断片)として存在するDNA分子を含む。単離された核酸はまた、ベクター、自律複製プラスミド、ウイルスの中に、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAの中に組み込まれるDNA分子を指す。さらに、単離された核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸の一部であるDNA分子のような遺伝子操作された核酸を含みうる。例えば、cDNAライブラリまたはゲノムライブラリー、またはゲノムDNA制限消化物を含むゲルスライス、内の他の多く(百万例えば、数十、あるいは数百)の核酸の間に存在する1つの核酸は、単離された核酸ではない。

単離された核酸分子は、標準的な技術によって製造することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術は、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含む単離された核酸を得るために使用することができる。PCRは、全ゲノムDNAまたは全細胞RNAからの配列を含む、DNAならびにRNAからの特定の配列を増幅するために使用することができる。種々のPCR法は、例えば、PCRプライマー:実験室マニュアル、DieffenbachとDveksler著、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、1995年に記載されている。一般的に、対象領域の末端またはその向こうからの配列情報は、増幅されるべきテンプレートの反対側の鎖に配列が同一または類似である、オリゴヌクレオチドプライマーを設計するために使用される。様々なPCR戦略が利用可能であri,それにより部位特異的ヌクレオチド配列の修飾が、テンプレート核酸に導入されうる。

単離された核酸はまた、単一の核酸分子として(例えば、ホラミダイト技術を使用して3´から5´方向での自動DNA合成を用いて)または一連のオリゴヌクレオチドとして、化学的に合成することができる。例えば、所望の配列を含有する長いオリゴヌクレオチド(例えば、>50‐100ヌクレオチド)の一つ以上の対が合成可能であり、それぞれの対は相補性の短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含み、それによりオリゴヌクレオチド対がアニールされたときに二本鎖が形成される。DNAポリメラーゼは、オリゴヌクレオチドを伸長するために使用され、それは結果的にオリゴヌクレオチド対ごとに単一の二本鎖核酸分子となり、それはその後ベクター内に結合されうる。本発明の単離された核酸はまた、例えばCas9コーディングDNA(例えば上記の処方による)の天然起源部分の変異誘発によって得ることができる。

2つの核酸またはそれらがコードするポリペプチドは、互いに一定の相同性を有するものとして説明することができる。例えば、Cas9タンパク質およびその生物学的に活性な変異体は、一定の程度の相同性を示すものとして説明することができる。配列比較は、短いCas9配列をタンパク質情報研究(PIR)サイト(http://pir.georgetown.edu)に置くことにより構築され、その後NCBIウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast)上の「短いほぼ同一の配列」基本的ローカル配列検索ツール(BLAST)アルゴリズムでの分析が行われてもよい。

本明細書で使用する場合、用語「パーセント配列相同性」は、任意の所与の問い合わせ配列と対象配列間の相同性の程度を指す。例えば、天然起源Cas9が問い合わせ配列となり、Cas9タンパク質の断片が対象配列となりうる。同様に、Cas9タンパク質の断片が問い合わせ配列となり、その生物学的に活性な変異体が対象配列となりうる。

配列相同性を決定するために、核酸配列またはタンパク質配列のアライメントをそれらの全長(グローバルアライメント)に亘って実行可能にする、コンピュータプログラムClustalW(バージョン1.83、デフォルトパラメータ)を用いて、1つの問い合わせ核酸配列またはアミノ酸配列が、それぞれ一つ以上の対象核酸配列またはアミノ酸配列にアライメントされうる。Chennaら著、Nucleic Acids Res.31:3497‐3500、2003参照。

ClustalWは、1つの問い合わせ配列と1つまたは複数の対象配列との間の最良の一致を計算し、相同性、類似性と相違性を決定することができるようにそれらをアライメントします。1つ以上の残基のギャップが、配列アラインメントを最大にするために、問い合わせ配列、対象配列、又はその両方に挿入することができる。核酸配列の高速ペアワイズアライメントに対しては、以下のデフォルトパラメータが使用されている:ワードサイズ:2;ウィンドウサイズ:4;採点方法:パーセント;トップ対線の数:4;およびギャップペナルティ:5。核酸配列の多重アラインメントに対しては、次のパラメータが使用されている:ギャップオープニングペナルティ:10.0;ギャップ伸長ペナルティ:5.0;そして重み遷移:はい。タンパク質配列の高速ペアワイズアライメントに対しては、次のパラメータが使用されている:ワードサイズ:1;ウィンドウサイズ:5;採点方法:パーセント;トップ対角線の数:5;ギャップペナルティ:3。タンパク質配列のマルチプルアライメントに対しては、次のパラメータが使用されている:重み行列:blosum;ギャップオープニングペナルティ:10.0;ギャップ伸長ペナルティ:0.05;親性ギャップ:オン;親水性残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)及びリシン(Lys);残基特異的ギャップペナルティ:オン。出力は、配列間の関係を反映する配列比較である。ClustalWは、例えば、ベイラー大学医学部の検索ランチャーサイト(searchlauncher.bcm.tmc.edu/multi−align/multi−align.html)およびWorld Wide Web上の欧州バイオインフォマティクス研究所のサイト(ebi.ac.uk/clustalw)で実行することができる。

問い合わせ配列と対象配列間のパーセント相同性を決定するために、ClustalWは最良のアラインメント内の相同数を比較される残基の数で除し(ギャップ位置は除外されている)、そしてその数値に100を乗ずる。出力は、問い合わせ配列に対する対象配列のパーセント相同である。パーセント相同性値は、小数点以下第1位に四捨五入することができることに留意されたい。たとえば、78.11、78.12、78.13、および78.14は、切り捨てられて78.1となり、78.15、78.16、78.17、78.18、および78.19は切り上げて78.2となる。

本明細書に記載の核酸およびポリペプチドは、「外因性」と呼ばれてもよい。用語「外因性」は、核酸またはポリペプチドが組換え核酸構築物の一部である、またはそれによってコードされる、またはその天然の環境にはないことを示している。例えば、外因性核酸は、別の種に導入された1つの種からの配列、すなわち、異種核酸でありうる。典型的には、例えば、外因性核酸は、組換え核酸構築物を介して、他の種に導入される。外因性核酸は、ある生物にネイティブであり、それが、その生物の細胞に再度導入された配列でありうる。ネイティブ配列を含む外因性核酸は、多くの場合、外因性核酸に関係する非天然配列、例えば、組換え核酸構築物中のネイティブ配列に隣接する非ネイティブ制御配列、の存在により、区別することができる。加えて、安定的に形質転換された外因性核酸は、一般的には、ネイティブ配列が検出された位置以外の位置に組み込まれる。

組換え構築物はまた、本明細書に提供され、そしてCas9および/またはHIV中の標的配列に相補的なガイドRNAを発現させるために細胞を形質転換するために使用できる。組換え核酸構築物は、Cas9および/または本明細書に記載のようなHIV中の標的配列に相補的なガイドRNAをコードする1つの核酸を有し、その核酸はCas9および/またはHIV中の標的配列に相補的なガイドRNAを発現するのに適したその細胞内の制御領域に作動可能に連結する。多くの核酸が、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードできることが理解されるであろう。遺伝コードの縮重は、当技術分野でよく知られている。多くのアミノ酸に対し、そのアミノ酸のためのコドンとして機能する1つ以上のヌクレオチドトリプレットが存在する。例えば、Cas9のコーディング配列中のコドンは、その生物のための適切なコドンバイアス表を使用して、特定の生物における最適な発現が得られるように修飾することができる。

本明細書にも記載されているような核酸を含むベクターが提供される。「ベクター」は、挿入されるセグメントの複製をもたらすためにそのDNAセグメントを挿入することができる、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどのレプリコンである。一般的にベクターは適切な制御エレメントを伴うとき複製することができる。適切なベクターの骨格は、例えば、プラスミド、ウイルス、人工染色体、BAC、YACまたはPACのような当該技術分野で日常的に使用されるものを含む。「ベクター」という用語は、クローニングベクターおよび発現ベクター、ならびにウイルスベクターおよび組み込みベクターを含む。「発現ベクター」は、制御領域を含むベクターである。広範囲の宿主/発現ベクターの組み合わせが本明細書に記載の核酸配列を発現するために使用することができる。適切な発現ベクターは、限定されないが、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、およびレトロウイルス由来のプラスミドおよびウイルスベクターを含む。多数のベクターおよび発現系がNovagen社(マジソン、WI)、Clontech社(カリフォルニア州パロアルト)、ストラタジーン(ラホヤ、カリフォルニア州)、およびInvitrogen社/ライフテクノロジーズ(カールスバッド、カリフォルニア州)などの企業から市販されている。

本明細書で提供されるベクターは、例えば、複製起点、足場付着領域(SAR)、および/またはマーカーを含みうる。マーカー遺伝子は、宿主細胞に選択可能な表現型を付与することができる。例えば、マーカーは、抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、またはハイグロマイシン)に対する耐性などの殺生物剤耐性を付与することができる。上述したように、発現ベクターは、発現されたポリペプチドの操作または検出(例えば、精製または局在化)を促進するように設計されたタグ配列を含むことができる。例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、赤血球凝集素、またはフラッグ(登録商標)タグ(コダック社、ニューヘブン、CT)などのタグ配列は、一般的に、コードされたポリペプチドとの融合体として発現される。そのようなタグは、カルボキシルまたはアミノ末端のいずれかを含む、ポリペプチド内の任意の場所に挿入することができる。

追加の発現ベクターには、例えば、染色体、非染色体および合成DNA配列のセグメントも含むことができる。適切なベクターには、SV40の誘導体および既知の細菌性プラスミド、例えば、大腸菌プラスミドのcolE1、pCR1、pBR322、pMal−C2、pET、pGEX、pMB9およびその誘導体、RP4のようなプラスミド;ファージDNA、例えば、ファージ1の多数の誘導体、例えば、NM989、および他のファージDNA、例えば、M13および糸状一本鎖ファージDNA;2μプラスミド又はそれらの誘導体のような酵母プラスミド、昆虫または哺乳動物細胞において有用なベクターのような真核生物細胞において有用なベクター;ファージDNAまたは他の発現制御配列を使用するように修飾されたプラスミドのような、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、を含む。

酵母発現系も使用することができる。例えば、2つだけを挙げると、非融合pYES2ベクター(XbaI、SphI、ShoI、NotI、GstXI、EcoRI、BstXI、BamHI、SacI、KpnI、およびHindIIIクローニング部位;Invitrogen社)または融合pYESHisA、B、C(XbaI、SphI、Shol、NotI、のBstXI、EcoRI、BamHI、SacI、KpnI、およびHindIIIクローニング部位、ProBond樹脂で精製され、エンテロキナーゼで切断されたN末端ペプチド;Invitrogen社)は、本発明にしたがって使用することができる。酵母2−ハイブリッド発現系も、本発明に従って調製することができる。

ベクターは、制御領域を含むことができる。用語「制御領域」とは、転写または翻訳の開始および速度、そして転写または翻訳産物の安定性および/または移動度に影響を与えるヌクレオチド配列を意味する。制御領域としては、限定されないが、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、タンパク質結合配列、5´および3´非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、核局在化信号、およびイントロン、を含む。

本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、転写される配列の転写または翻訳に影響を与えるような、核酸内における制御領域と転写される配列の配置を言う。例えば、コーディング配列をプロモーターの制御下にもたらすために、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、典型的には、プロモーターの下流の1ヌクレオチドと約50ヌクレオチドとの間に配置される。しかし、プロモーターは、翻訳開始部位の約5,000ヌクレオチド上流まで、または転写開始部位の約2,000ヌクレオチド上流までに配置することができる。プロモーターは、典型的には、少なくともコア(基礎)プロモーターを含む。プロモーターはまた、少なくとも1つの制御エレメント、例えばエンハンサー配列、上流エレメントまたは上流活性化領域(UAR)を含むことができる。含めるべきプロモーターの選択は、限定されないが、効率、選択性、誘導性、所望の発現レベル、および細胞または組織優先的発現、を含むいくつかの要因に依存する。コーディング配列に対してプロモーターおよび他の制御領域を適切に選択し、配置することによって、コーディング配列の発現を修飾することは、当業者にとって日常的事項である。

ベクターは、例えば、(例えば、アデノウイルス(Ad)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、および水疱性口内炎ウイルス(VSV)、およびレトロウイルスのような)ウイルスベクター、リポソームおよび他の脂質含有複合体、および宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介することが可能な他の高分子複合体を含む。ベクターはまた、遺伝子送達および/または遺伝子発現をさらに修飾するか、そうでなければ標的細胞に有益な特性を提供する、他の構成要素または機能を含むことができる。以下でより詳細に説明され、図示されるように、そのような他の構成要素は、例えば、細胞への結合または標的化に影響を与える構成要素(細胞タイプまたは組織特異的結合を媒介する構成要素を含む);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を及ぼす構成要素;取り込み後の細胞内でポリヌクレオチドの局在化に影響を及ぼす構成要素(例えば、核局在化を媒介する薬剤);およびポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼす構成要素、を含む。このような構成要素はまた、ベクターによって送達される核酸が取り込まれ、そしてそれを発現している細胞を検出または選択するために使用されうる、検出可能および/または選択可能マーカーなどのマーカーを含みうる。このような構成要素は、ベクターの天然由来の特徴として提供することができ(例えば、結合および取り込みを仲介する構成要素または機能を有する特定のウイルスベクターの使用など)、またはベクターは、このような機能を提供するように修飾されうる。他のベクターは、Chenら著;バイオ技術、34:167−171(2003)に記載されたものを含む。このような多種多様ベクターは当技術分野で公知であり、そして一般に入手可能である。

「組換えウイルスベクター」は、1つ以上の異種遺伝子産物または配列を有するウイルスベクター意味する。多くのウイルスベクターは、パッケージングに関係するサイズの制約を示すので、異種遺伝子産物または配列は、典型的には、ウイルスゲノムの1つ以上の部分を置換することによって導入される。このようなウイルスは、複製欠損になることがあり、それは削除された機能がウイルス複製およびキャプシド形成の間にトランスで提供される(例えば、ヘルパーウイルス、または複製および/またはキャプシド形成に必要な遺伝子産物を担持するパッケージング細胞株を使用することによって)必要がある。その中で送達されるべきポリヌクレオチドがウイルス粒子の外側に担持される、修飾ウイルスベクターもまた開示されてきた(例えば、Curiel、DTら著、PNAS88:.8850‐8854、1991参照)。

適切な核酸送達系は、組換えウイルスベクター、典型的には少なくとも一つの、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存型アデノウイルス、レトロウイルス、またはセンダイウイルス(HVJ)‐リポソーム複合体からの配列を含む。このようなケースでは、ウイルスベクターはポリヌクレオチドに作動可能に連結した、強力な真核生物プロモーター例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。組換えウイルスベクターは、その中に一つ以上、好ましくは約1つのポリヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用されるウイルスベクターは、約108から約5×1010 のpfu(プラーク形成単位)を有する。ポリヌクレオチドが非ウイルスベクターを用いて投与される実施形態では、約0.1ナノグラム−約4000マイクログラムの間、例えば約1ナノグラム−約100マイクログラムの使用が多くの場合有用である。

付加的なベクターには、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学的複合体を含む。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスおよびHIVベースのウイルスを含む。1つのHIVベースのウイルスベクターは、少なくとも2つのベクターを有し、ここでgagおよびpol遺伝子が1つのHIVゲノムからのものであり、env遺伝子は、別のウイルスからのものである。DNAウイルスベクターは、オルトポックスまたはアビポックスベクターのようなポックスベクター、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクターのようなヘルペスウイルスベクター(Geller,A.Iら著、J.Neurochem、64:487(1995);Lim,Fら著、DNAクローニング:哺乳動物系、D.Glover編(オックスフォード大学出版、オックスフォード、イングランド)(1995);Geller,A.Iら著、Proc Natl Acad.Sci.:U.S.A.:90 7603(1993);Geller,A.Iら著、Proc Natl Acad.Sci.:U.S.A.:87:1149(1990))、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalleら著、Science、259:988(1993);Davidsonら著、Nat.Genet.3:219(1993);Yangら著、J.Virol.69:2004(1995)),およびアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt、M.G.ら著、Nat.Gnet.8:148(1994))を含む。

ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞の細胞質に導入する。アビポックスウイルスベクターは短期間だけの核酸の発現をもたらす。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、本発明のいくつかの実施形態を示している可能性がある。アデノウイルスベクターはアデノ随伴ウイルスより短期(例えば、約1カ月短い)の発現結果となり、いくつかの実施形態では、はるかに長い発現を示すかもしれない。選択される特定のベクターは標的細胞および処置される条件に依存する。適切なプロモーターの選択は容易に達成しうる。適切なプロモーターの例は、763塩基対サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。遺伝子発現のために使用され得る他の適切なプロモーターとしては、限定されないが、ラウス肉腫ウイルス(RSV)(Davisら著、Hum Gene Ther4:151(1993))、SV40初期プロモーター領域、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン(MMT)の制御配列遺伝子、βラクタマーゼプロモーター、tacプロモーターのような原核生物の発現ベクター、Gal4プロモーターのような酵母または他の真菌由来のプロモーターエレメント、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター;および動物転写制御領域、それは組織特異性を示し、遺伝子組み換え動物において利用されてきた:膵臓腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域、膵臓β細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域、リンパ系細胞で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域、精巣、乳房、リンパ系およびマスト細胞において活性なマウス乳腺腫瘍ウイルス制御領域、肝臓で活性なアルブミン遺伝子制御領域、α−フェトプロテイン遺伝子制御領域、肝臓で活性なアルファ1アンチトリプシン遺伝子制御領域、骨髄細胞で活性なβ−グロビン遺伝子制御領域、脳内のオリゴデンドロサイト細胞で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域、骨格筋において活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域、および視床下部で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域、を含む。

一定のタンパク質は、それらのネイティブプロモーターを使用して発現されうる。発現を増強することができる他の要素は、高レベルの発現をもたらすエンハンサーまたはシステム、例えばtat遺伝子およびtar要素を含めることができる。このカセットは、次いで、ベクター、例えば、pUC19、pUC18、pBR322のようなプラスミドベクター、または大腸菌複製起点を含む他の公知のプラスミドベクターに挿入することができる。Sambrook他著、分子クローニング:実験室マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、(1989)参照。プラスミドベクターはまた、マーカーポリペプチドが処置されている生物の代謝に悪影響を与えない限り、アンピシリン耐性に対するβラクタマーゼ遺伝子のような選択可能マーカーを含んでよい。カセットはまた、WO95/22618で開示されるような、非天然送達システムにおける核酸結合部分に結合されうる。

所望であれば、本発明のポリヌクレオチドはカチオン性リポソームおよびアデノウイルスベクターなどのマイクロ送達媒体と共に使用されうる。リポソーム製剤、標的化および内容物の送達に関しては、ManninoとグGould−Fogerite、バイオ技術6:682(1988)を参照。また、FelgnerおよびHolm著、Bethesda Res.Lab.Focus,11(2):21(1989)およびMaurer,R.A.著,Bethesda Res.Lab.Focus,11(2):25(1989)参照。

複製欠損組換えアデノウイルスベクターは、公知の技術に従って製造することができる。Quantinら著、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:2581−2584(1992年);Stratford−Perricadetら著、J.Clin.Invest.,90:626−630(1992);およびRosenfeldら著、Cell,68:143−155(1992)参照。

別の送達方法は、細胞内で発現生成物を生成できる、一本鎖DNA生成ベクターを使用することである。例えば、Chenら著、バイオ技術、34:167−171(2003)参照。その全体は、参照により、本明細書に組み込まれる。

(医薬組成物) 上述したように、本発明の組成物は、当業者に公知の種々の方法で調製することができる。それらの元のソースまたはそれらが得られた態様に関係なく、本発明の組成物は、それらの使用方法に従って処方できる。例えば、上述の核酸およびベクターは、組織培養中細胞への適用、または患者または被験者への投与のために組成物内に処方されうる。任意の本発明の医薬組成物は医薬品の調製における使用のために処方することができ、そして特定の使用は、処置、例えば、HIV感染を有するまたはHIV感染のリスクのある被験者の処置、の文脈で以下に示される。医薬品として使用する場合、任意の核酸およびベクターは、医薬組成物の形態で投与されうる。

これらの組成物は、医薬分野において周知の態様で調製することができ、そして局所または全身処置が望ましいかによって、そして処置の領域に応じて、様々な経路によって投与することができる。投与は、局所(点眼用及び、鼻腔内、膣および直腸送達を含む粘膜送達を含む)、性(例えば粉末またはエアロゾルの吸入またはガス注入による、ネブライザーによるものを含み:気管内、鼻腔内、上皮および経皮)、点眼、経口または非経口である。眼送達の方法は、局所(点眼剤)、結膜下、眼球周囲または硝子体内への注射またはバルーンカテーテルや結膜嚢に外科的に置かれた眼科用インサートによる導入を含むことができる。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または注入;または頭蓋内、例えば、くも膜下腔内または脳室内投与を含む。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であることができ、または、例えば、連続灌流ポンプによるものであってもよい。局所投与用の医薬組成物および製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、粉末、等を含むことができる。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤およびそれらに類似するものが必要または望ましいかもしれない。

本発明はまた、1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わされた、活性成分として本明細書で記載の核酸およびベクターを含有する、医薬組成物を含む。「医薬的に許容される」(または「薬理学的に許容される」)という用語は、動物またはヒトに適切に投与したとき、副作用、アレルギーまたは他の有害反応を生じない分子性実体および組成物を指すため使用する。本明細書で使用される用語「医薬的に許容される担体」は、医薬的に許容される物質のための媒体として使用され得る、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、等張および吸収遅延剤、緩衝剤、賦形剤、結合剤、潤滑剤、ゲル剤、界面活性剤などを含む。本発明の組成物の製造において、活性成分は、典型的には、賦形剤と混合され、賦形剤で希釈され、または、例えば、カプセル、錠剤、小袋、紙、または他の容器の形態でのこのような担体内に封入される。

賦形剤が希釈剤として働く場合、それは活性成分のためのビヒクル、担体または媒体として作用する、固体、半固体、または液体材料(例えば、通常生理食塩水)でありうる。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳液、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体中)、ローション、クリーム、軟膏、ゲル剤、軟質および硬質ゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射溶液、および滅菌包装粉末の形態でありうる。当技術分野で知られているように、希釈剤のタイプは、意図した投与経路に依存して変化しうる。結果としての組成物は、防腐剤のような追加の薬剤を含めることができる。いくつかの実施形態では、担体は、脂質ベースのまたはポリマーベースのコロイドである、または、それを含むことができる。いくつかの実施形態において、担体材料は、リポソーム、ヒドロゲル、マイクロ粒子、ナノ粒子、またはブロック共重合体ミセルとして処方されたコロイドでありうる。上述のように、キャリア材料は、カプセルを形成することができ、そして材料はポリマーベースのコロイドでもよい。

本発明の核酸配列は、被験者の適切な細胞に送達されうる。これは、例えば、マクロファージのような食細胞による食作用を最適化するように寸法採りされた、ポリマーの、生分解性マイクロ粒子またはマイクロカプセル送達媒体の使用により達成することができる。例えば、直径約1−10μmのPLGA(ポリ乳酸コグリコリド)マイクロ粒子を使用することができる。ポリヌクレオチドは、それらマイクロ粒子内にカプセル封入され、それはマクロファージによって取り込まれ、そして徐々に細胞内で分解され、それによりポリヌクレオチドを放出する。一度放出されると、DNAは細胞内で発現される。マイクロ粒子の第二のタイプは、細胞によって直接取り込まれず、むしろ主として核酸の徐放性リザーバとして機能することを意図され、核酸は生分解を介してマイクロ粒子からの放出の際に細胞によって取り込まれる。したがってこれらのポリマー粒子は、食作用を排除するのに十分なほど大きい必要がある(すなわち、5μmより大きく、好適には20μmよりも大きい)。

核酸の取り込みを達成する別の方法は、標準的な方法によって調製されたリポソームを使用することである。核酸は、送達ビヒクルに単独で組み込まれ、または、組織特異的抗体、例えばHIV感染症の共通潜伏感染リザーバである細胞型を標的とする抗体、例えば脳マクロファージ、ミクログリア、星状細胞、および腸関連リンパ細胞、と共に組み込まれうる。代替的に、静電気または共有結合力によってポリ−L−リジンに結合したプラスミドまたは他のベクターからなる分子複合体を調製することができる。ポリ−L−リジンは、標的細胞上の受容体に結合し得るリガンドに結合する。筋肉内、皮内、または皮下部位への「裸のDNA」(すなわち、送達ビヒクルなし)の送達は、インビボ発現を達成するための別の手段である。関連するポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼおよびガイドRNAをコードする1つの配列を有する1つの単離核酸配列をコードする核酸配列は、プロモーターまたはエンハンサー−プロモーターの組み合わせに作動可能に連結されている。プロモーターおよびエンハンサーは、上記に記載されている。

いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ナノ粒子、例えば、DNAと複合され、ポリエチレングリコール修飾(PEG化)低分子量線状ポリエチレンイミン(LPEI)のシェルに取り囲まれた高分子量ポリエチレンイミン(LPEI)のコアからなるナノ粒子、として処方されうる。

核酸およびベクターはデバイス(例えば、カテーテル)の表面に適用され、またはポンプ、パッチまたは他の薬物送達装置内に含まれてもよい。本発明の核酸およびベクターは、薬学的に許容される賦形剤または担体(例えば、生理食塩水)の存在下で、単独または混合物中で投与されうる。賦形剤または担体は、投与の様式および経路に基づいて選択される。適切な医薬担体、ならびに、医薬処方での使用のための医薬的必要性は、この分野でよく知られている参照テキストであるレミントンの薬学(EWマーティン)、およびUSP/NF(米国薬局方および国民医薬品)に記載されている。

いくつかの実施形態において、組成物は、HIVの性行為による感染を阻止するための局所ゲルとして処方されうる。局所ゲルは、性行為の前に皮膚や男性または女性の生殖器部分の粘膜に直接適用することができる。あるいは、またはさらに、局所ゲルは男性用コンドームまたは女性用ペッサリーの表面に適用され、またはその中に収容されうる。

いくつかの実施形態では、組成物は、Cas9または変異体Cas9および標的HIVに相補的なガイドRNA配列をコードする核酸、またはCas9および標的HIVに相補的なガイドRNA配列をコードする核酸を有するベクター、をカプセル封入するナノ粒子として処方されうる。あるいは、組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼポリペプチド、例えば、Cas9または変異体Cas9および標的に相補的なガイドRNA配列、を封入したナノ粒子として処方されうる。

本発明の処方は、Cas9およびターゲットHIVに相補的なガイドRNA配列をコードするベクターにおよぶことが出来る。ガイドRNA配列は、単一の領域に相補的な配列、例えば長い末端反復(LTR)A、B、C、またはDを含むことができ、またはそれはLTR A、B、C、またはDに対して相補的な配列の任意の組み合わせを含むことができる。あるいはCas9をコードする配列とガイドRNA配列をコードする配列は別々のベクター上にあってもよい。

(処置の方法) ここで開示された組成物は、レトロウイルス感染、例えば、HIV感染を有する被験者の処置にとって全般的にそして様々に有用である。我々は、被験者、患者、または個人を交換可能に言う。本発明の方法は、任意のHIV、例えばHIV−1、HIV−2およびそれらの任意の循環組換え形態を標的とするために有用である。被験者は、臨床的に有益な結果が起こる場合は常に有効に処置されている。これは、例えば、疾患の症状の完全な回復、疾患の症状の重症度の減少、または疾患の進行の遅延を意味してもよい。これらの方法はさらに、a)HIV感染を有する被験者(例えば、患者、より具体的には、ヒト患者)の識別;およびb)CRISPR関連ヌクレアーゼ、例えば、Cas9およびHIVの標的配列に相補的なガイドRNA、例えばHIV LTRをコードする1つの核酸を含む組成物を被験者に提供するステップ、を含みうる。被験者は、標準的な臨床試験、例えば、被験者の血清中のHIV抗体、またはHIVのp24のポリペプチドを検出するための免疫検定法を使用して、またはHIV核酸増幅検定法を介して識別しうる。疾患の症状の完全な回復、疾患の症状の重症度の減少、または疾患の進行の遅延をもたらす、被験者に提供されるこれら組成物の量が処置上有効な量とみなされる。

本発明の方法は、投薬およびスケジューリングの最適化だけでなく、予後の予測を補助するための監視ステップを含むことができる。本発明のいくつかの方法においては、まず、患者が潜伏HIV−1感染を有するかどうかを決定し、その後、一つ以上の本明細書に記載の組成物で患者を処置するか否かの決定をする。モニタリングはまた、薬剤耐性の発現を検出し、そして迅速に応答性患者を非応答性患者から区別するために使用できる。いくつかの実施形態では、本発明の方法はさらに、患者が有する特定のHIVの核酸配列を決定し、その後それらの特定の配列に相補的であるように、ガイドRNAを設計するステップを含むことができる。例えば、被験者のLTRのU3、RまたはU5領域の核酸配列を決定し、その後、患者の配列に正確に相補的であるように1つ以上のガイドRNAを設計することができる。

組成物は、例えば、レトロウイルス感染症例えばHIV感染症に罹患しているリスクのある被験者の予防的処置として、処置に有用である。これらの方法はさらに、a)HIV感染症に罹患しているリスクを有する被験者を識別し、b)CRISPR関連ヌクレアーゼ例えば、Cas9およびHIVの標的配列、例えばHIV LTRに相補的なガイドRNAをコードする1つの核酸を含む組成物を被験者に提供する、ステップを有する。HIV感染症に罹患しているリスクのある被験者は、例えば、任意の性的に活発な個人で無防備な性行為を行う人、即ち、コンドームを使用せずに性行為を行う人;性的に活発な個人で、他の伝染された性感染症に罹患している人;静脈内薬物使用者;または包皮未切除の男性、でありうる。HIV感染症に罹患しているリスクのある被験者は、例えば、職業がHIV感染集団との接触をもたらす個人、例えば、医療従事者や救命救急従事者でありうる。HIV感染症に罹患しているリスクのある被験者は、例えば、矯正施設の収容者やセックスワーカー、即ち、所得、雇用や食品、医薬品、または避難所などの非貨幣項目のために性行為を行う個人、でありうる。

組成物は、母親から彼女の出生児にHIVを伝染させる可能性を低減するために、HIV感染症に罹患している妊娠中または授乳中の女性に投与されうる。HIVに感染した妊婦は、子宮内で胎盤を経由して、出産時に産道を介して、または出産後母乳を介して、出生児にウイルスを伝染させる可能性がある。本明細書に開示された組成物は、HIVに感染した母親に出産前、出産時や出産後の授乳期間中に、または出産前、出産時や出産後の投与の任意の組み合わせで投与されうる。組成物は、以下に記載されるように、標準的な抗レトロウイルス療法と共に母親に投与されうる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物はまた、出産後すぐに乳児に投与されてもよく、そしていくつかの実施形態では、その後間を置いて投与されてもよい。幼児も標準的な抗レトロウイルス療法を受けることができる。

本明細書に開示される方法および組成物は、レトロウイルス感染症の処置に有用である。代表的なレトロウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV−1、HIV−2;サル免疫不全ウイルス(SIV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIV);および、ヤギ関節炎/脳炎ウイルス(CAEV)を含む。本明細書に開示される方法は、広範囲の種、例えば、ヒト、非ヒト霊長類{例えば、サル)、ウマ、または他の家畜、イヌ、ネコ、フェレット、またはペットとして飼われる他の哺乳動物、ラット、マウス、または他の実験動物に適用されうる。

本発明の方法は、医薬品の調製という言葉で表現されうる。従って、本発明は、薬物の調製における、本明細書に記載の薬剤及び組成物の使用を包含する。本明細書に記載の化合物は、治療用組成物及び治療計画において有用であり、または本明細書に記載の疾患または病状の処置に使用される医薬の製造のために有用である。

本明細書に記載の任意の組成物は、その後の標的細胞への送達のために宿主の身体の任意の部分に投与することができる。組成物は、限定されないが、哺乳動物の脳、脳脊髄液、関節、鼻粘膜、血液、肺、腸、筋肉組織、皮膚、または腹腔に送達されうる。送達経路の観点では、本組成物は、静脈内、頭蓋内、腹腔内、筋肉内、皮下、筋肉内、直腸内、膣内、髄腔内、気管内、皮内、または経皮の注射によって、経口または経鼻投与によって、または時間をかけたゆっくりとした灌流によって投与されうる。さらなる例では、組成物のエアロゾル調製物が吸入によって宿主に与えられてもよい。

必要な投与量は、投与経路、製剤の性質、患者の病気の性質、患者の身長、体重、表面積、年齢、性別、投与される他の薬物、および担当臨床医の判断に依存するであろう。必要な投与量の広い変動が、細胞性標的の多様性および種々の投与経路の異なる効率の観点から予想される。これら投与量レベルの変動は、当技術分野でよく理解されているように、最適化のための標準的な経験的ルーチンを用いて調整することができる。投与は、単一または多重(例えば、2−または3−、4−、6−、8−、10−、20−、50−、100−、150−倍、またはそれ以上の倍数)でありうる。適切な送達ベヒクル中への組成物のカプセル封入(例えば、ポリマーマイクロ粒子または埋め込み型装置)は送達の効率を増加させうる。

本明細書で提供される任意の組成物による処置期間は、一日という短い期間から宿主の寿命までという長い期間(例えば、多くの年数)までの任意の長さでありうる。例えば、ある化合物は、週1回(例えば、4週間から多くの月数または年数の期間に対し);月1回(例えば、3ヶ月から12ヶ月、または多くの年数に対して);または5年、10年またはそれ以上の期間に対し、5年に1回投与されうる。処置の頻度を可変であることにも留意されたい。例えば、本発明の化合物は、毎日、毎週、毎月、または毎年一回(または2回、3回、他)投与されうる。

本明細書で提供される任意の組成物の有効量を、処置を必要とする個人に投与することができる。本明細書で使用される用語「有効」とは、患者に対し有意の毒性を誘導しないで所望の応答を誘導する任意の量を意味する。このような量は、特定の組成物の既知の量を投与した後の患者の応答を評価することにより決定することができる。また、毒性のレベルは、もしあれば、特定の組成物の既知の量を投与した前と後の患者の臨床症状を評価することによって決定することができる。一人の患者に投与される特定の組成物の有効量は、所望の結果並びに患者の応答および毒性のレベルに従って調整することができることに留意されたい。有意な毒性は、それぞれの特定の患者に対して変化しえて、そして限定されないが、患者の病状、年齢、および副作用に対する耐性を含む、多重の要素に依存する。

当業者に公知の任意の方法が、特定の応答が誘導されるか否かを決定するために使用することができる。特定の病状の程度を評価することができる臨床的方法を応答が誘導されるかどうかを決定するために用いることがでる。応答を評価するために使用される特定の方法は、患者の疾患の性格、患者の年齢、性別、投与されている他の薬物、ならびに担当臨床医の判断に依存する。

組成物は、他の治療薬、例えば、HAARTで使用される抗レトロウイルス薬、と共に投与することができる。代表的な抗レトロウイルス剤は、逆転写酵素阻害剤(例えば、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、ジドブジン、エムトリシタビン、ラミブジン及びテノホビル;及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えばエファビレンツ、ネビラピン、リルピビリン);プロテアーゼ阻害剤、例えば、tipiravir、ダルナビル、インジナビル;侵入阻害剤、例えば、マラビロック;融合阻害剤、例えば、エンフビルチド;またはインテグラーゼ阻害剤、例えば、ラルテグラビル、ドルテグラビル、を含む。代表的な抗レトロウイルス薬はまた、マルチクラスの組合せ剤、例えば、エムトリシタビン、エファビレンツ、及びテノホビルの組み合わせ;エムトリシタビン、リルピビリン、およびテノホビルの組み合わせ;またはエルビテグラビル、コビシスタット、エムトリシタビンとテノホビルの組み合わせ;を含みうる。

二つ以上の治療薬の同時投与は、薬剤がその治療効果を発揮している時間期間に重複があれば、同じ時間にまたは同じ経路で投与されることを必要としない。同時または、異なる日または週における投与のような連続投与が企図される。治療薬はメトロノームレジメンの下で投与、例えば、連続的な低用量の下で投与されてもよい。

このような組成物の投与量、毒性、および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(人口の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数であり、それは比LD50/ED50として表現できる。

細胞培養検定および動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための用量範囲を処方するために使用することができる。そのような組成物の投与量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性のないED50を含む1つの循環濃度の範囲内にある。用量は、用いられる剤形および使用される投与経路に応じてこの範囲内で変動しうる。本発明の方法において使用される任意の組成物について、治療有効用量は、細胞培養検定から最初に推定されうる。用量は、細胞培養において決定されるIC50(すなわち、症状の最大半量阻害を達成する、試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて処方されうる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより、測定することができる。

上述のように、治療的有効量の組成物(すなわち、有効用量)は、治療的(例えば、臨床的に)望ましい結果を生成するのに十分な量を意味する。組成物は、一日一回またはそれ以上から1週間に1回またはそれ以上まで;一日おきに一度を含み、投与することができる。当業者は、限定されないが、疾患または障害の重症度、以前の処置、被験体の全体的健康状態および/または年齢、および他の現在罹患している疾病、を含む特定の要因が効果的に被験者を処置するために必要な投薬量およびタイミングに影響を与えうることを理解しよう。さらに、本発明の組成物の治療的有効量による対象の処置は、一回の処置または一連の処置を含みうる。

本明細書に記載の組成物は、上記の種々の薬物送達システムにおける使用に適している。さらに、投与される化合物のインビボ血清半減期を高めるために、組成物は、カプセル化され、リポソームの内腔に導入され、コロイドとして調製されてもよく、または化合物の延長された血清半減期を提供する他の従来技術が用いられてもよい。例えば、Szokaら著、米国特許番号4235871、4501728および4837028で記載されているように、様々な方法がリポソームを調製するために使用可能であり、それらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。更に、標的化薬物送達システム例えば、組織特異的抗体で被覆されたリポソームで薬物を投与してもよい。リポソームは、その器官に対し標的化され、そしてその期間により選択的に取り込まれる。

また哺乳動物細胞におけるヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、またはウシ免疫不全ウイルスなどの、レトロウイルスを不活性化する方法も提供される。ヒト免疫不全ウイルスは、HIV−1またはHIV−2でありうる。 ヒト免疫不全ウイルスは、染色体に組み込まれたプロウイルスでありうる。哺乳動物細胞は、限定されないが、CD4+リンパ球、マクロファージ、線維芽細胞、単球、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、ランゲルハンス細胞および濾胞樹状細胞のような樹状細胞、造血幹細胞、内皮細胞、脳の小膠細胞および胃腸上皮細胞を含む、HIVに感染された任意の細胞型でありうる。このような細胞型は一般的に、一次感染時に感染した細胞型、例えば、CD4+リンパ球、マクロファージ、またはランゲルハンス細胞、ならびに潜伏HIV貯蔵庫を構成するこれら細胞型、即ち、潜伏感染細胞を含む。

方法は、1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼ、およびレトロウイルス中の標的核酸配列に対して相補的である1つまたは複数のガイドRNA、を含む1つの遺伝子編集複合体、をコードする1つの単離核酸を有する1つの組成物に細胞を暴露させるステップを含みうる。接触ステップはin vivoで起こることができ、即ち、その組成物はHIV感染を有する被験者に直接投与されうる。しかし方法はそのように限定されず、接触ステップは、ex vivoで行いうる。例えば、1つの細胞または複数の細胞、または組織外植片は、HIV感染を有する被験者から除去され、培養物中に入れられ、そしてその後、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ,およびヒトHIV中の標的核酸配列に対して相補的であるガイドRNA,を含む組成物に接触されうる。上述したように、組成物は、1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼ、およびヒトHIV中の標的核酸配列に対して相補的である1つのガイドRNA、をコードする1つの核酸;その核酸配列を有する1つの発現ベクター;または1つのCRISPR関連エンドヌクレアーゼ、およびHIV中の核酸配列に対して相補的な1つのガイドRNAをコードする1つの核酸を有する1つの医薬組成物;またはその核酸配列を含む1つの発現ベクター;でありうる。

組成物が核酸またはポリペプチドとして投与されるかどうかにかかわらず、それらは哺乳動物細胞による取り込みを促進するように処方される。有用なベクター系および処方は、上記に記載されている。いくつかの実施形態では、ベクターは、特定の細胞型に組成物を送達することができる。しかし本発明はそのように限定されるものではなく、例えば、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、リポソーム、リポプレックス、界面活性剤、及びペルフルオロ薬液を用いた化学的トランスフェクションのような他のDNA送達方法もまた、電気穿孔、マイクロインジェクション、弾道粒子、および「遺伝子銃」システムのような物理的な送達方法と同様に、考慮される。

標準的な方法、例えば、CRISPR関連エンドヌクレアーゼを検出するための免疫検定法、gRNAを検出するためのPCRのような核酸ベース検定法は、複合体が導入された細胞によって複合体が取り上げられ、そして発現されたことを確認するために使用することができる。その後遺伝子操作された細胞は、以下に説明するように、それらの細胞が由来する被検者に再導入されうる。

遺伝子編集複合体は、1つのCRISPR関連ヌクレアーゼ、例えば、Cas9、および、標的レトロウイルス配列、例えばHIV標的配列に相補的な1つのガイドRNA、を含む。遺伝子編集複合体は、プロウイルスDNAに様々な変異を導入することができる。このような変異がウイルスを不活性化するメカニズムは様々であり、例えば、変異は、プロウイルス複製、ウイルス遺伝子発現またはプロウイルス切除に影響を与えうる。変異は、制御配列または構造遺伝子配列に位置し、HIVの不良生成の結果となる。変異は遺伝子欠失を含みうる。欠失のサイズは単一ヌクレオチド塩基対から約10,000塩基対まで変化しうる。いくつかの実施形態では、欠失は、全てまたは実質的に全てのプロウイルス配列を含みうる。いくつかの実施形態では、欠失は、プロウイルス配列の全体を含みうる。変異は挿入を含みうる。それはプロウイルス配列への1つ以上のヌクレオチド塩基対の付加である。挿入された配列のサイズも、例えば、約1塩基対から約300ヌクレオチド塩基対まで変化しうる。変異は点変異を含み、それは単一のヌクレオチドの別のヌクレオチドとの置換である。有用な点変異は、機能的結果を有する点変異であり、例えば、アミノ酸コドンの終止コドンへの変換をもたらす変異、または非機能性タンパク質の産生をもたらす変異である。

他の実施形態では、組成物は1つ以上のCas/gRNAベクターで形質転換または形質導入された1つの細胞からなる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ex vivoで適用することができる。すなわち、被験者の細胞を身体から除去し、そしてHIV配列を切除するために培養中の組成物で処置され、そして処置された細胞は被験者の体内に戻されうる。細胞は、被験者の細胞またはハプロタイプ適合または1つの細胞株であってよい。細胞は複製を防止するため照射されてもよい。いくつかの実施形態において、細胞は、ヒト白血球抗原(HLA)適合、自己由来、細胞株、またはそれらの組み合わせであってよい。他の実施形態においては、細胞は幹細胞でありうる。例えば、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞(誘導多能性幹細胞(iPS細胞))。胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(誘導多能性幹細胞、iPS細胞)は、ヒトを含む多くの動物種から確立されている。細胞が分化することができるので多能性幹細胞のこれらのタイプは、再生医学のための最も有用な細胞源であろう、なぜならば、これらの細胞は適切な分化の誘導によって殆ど全ての臓器に分化することができ、一方で多能性を維持しながら活発に分裂する能力を保持する。iPS細胞は、特に、自己由来の体細胞から確立されることができ、そしてしたがって、胚を破壊することによって生成されるES細胞と比較して、倫理的及び社会問題を引き起こす可能性が少ない。さらに、自己由来細胞であるiPS細胞は、再生医療や移植処置にとって最大の障害である拒絶反応を回避することを可能にする。

gRNA発現カセットは容易に、例えば、当技術分野において公知の方法、例えばsiRNAを送達する方法、によって被験者に送達することができる。いくつかの態様では、Casは1つの断片であってもよく、ここでCas分子の活性ドメインは含まれ、これにより、分子の大きさを減らしている。したがって、Cas9/gRNA分子は、現在の遺伝子処置に採用される手法に類似して臨床的に使用することができる。具体的には、細胞移植療法並びにHIV−1ワクチン接種のためのCas9/多重gRNA安定発現幹細胞またはiPS細胞が、被験者における使用のために開発されるであろう。

形質導入された細胞が再注入のために確立された方法で調製される。培養物中で約2〜4週間の期間の後、細胞の数は1×106と1010の間である。これに関して、細胞の増殖特性は、患者と患者の間および細胞型と細胞型の間で異なる。形質導入された細胞の再注入の約72時間前に、1つのアリコートが表現型および処置薬を発現する細胞の割合を分析するために採取される。投与のため、本発明の細胞は、種々の濃度における、細胞型のLD50および細胞型の副作用により決定される、体重および患者の全体的な健康に適用される、速度で投与されうる。投与は、単回または分割用量を介して達成されうる。成体幹細胞も、かれらの生産を刺激し、限定されないが骨髄や脂肪組織を含む組織またはスペースから放出される、外来投与される要素を使用して動員することができる。

(製造品) 本明細書に記載の組成物は、例えば、レトロウイルス感染、例えばHIV感染を有する被験者、またはレトロウイルス感染、例えばHIV感染を罹患するリスクのある被験者を処置するための治療薬として使用するために標識化された適切な容器に収容されうる。容器は、例えば、CRISPR−関連エンドヌクレアーゼ、例えばCas9エンドヌクレアーゼ、およびヒト免疫不全ウイルスに相補的なガイドRNA、またはその核酸、をコードする1つの核酸、またはその核酸をコードする1つのベクター、および1つ以上の適切な安定剤、担体分子、香味料、および/または意図される用途のために適切な類似のものを有する、1つの組成物を含みうる。したがって、パッケージ製品(例えば、1つ以上の本明細書に記載の組成物を含み、濃縮またはすぐに使用できる濃度で貯蔵、出荷、または販売用に包装された滅菌容器)および、少なくとも一つの本発明の組成物、例えば、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼおよびヒト免疫不全ウイルス内の標的配列に対して相補的なガイドRNAをコードする1つの核酸配列、またはその核酸をコードする1つのベクター、および使用説明書、を含むキットは、本発明の範囲に含まれる。製品は、一つまたはそれ以上の本発明の組成物を含む容器(例えば、バイアル、ジャー、ボトル、バッグ、等)を含みうる。さらに製造品は、例えば、包装材料、使用説明書、シリンジ、送達装置、予防または処置が必要とされる病状を処置またはモニターするためのバッファまたは他の対照試薬を含んでよい。

いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の抗レトロウイルス薬、例えば、逆転写阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、または導入阻害薬、を含みうる。追加の薬剤は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ、およびヒト免疫不全ウイルス内の標的配列に対して相補的なガイドRNA、をコードする核酸配列、またはその核酸をコードするベクター、と同じ容器内に一緒にパッケージされても、あるいは別々にパッケージされてもよい。CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、例えばCas9エンドヌクレアーゼおよびヒト免疫不全ウイルス内の標的配列に対して相補的なガイドRNA、をコードする核酸配列、またはその核酸をコードするベクター、とその追加の薬剤は使用の直前に組み合わされても、あるいは別々に投与されてもよい。

製品はまた、レジェンド(例えば、製品の使用方法を記載した印刷ラベルまたはインサートまたは他の媒体(例えば、オーディオまたはビデオテープ))を含んでよい。レジェンドは容器に付随(例えば容器の付属品)していてもよく、そしてその中に含まれる組成物の投与の態様(例えば、投与の頻度および経路)、そのための指示、および他の用途を記載してもよい。組成物はすぐに投与可能であってもよく(例えば容量が適切なユニットになっている)、そして1つ以上の医薬的に許容可能な免疫賦活剤、担体、または他の希釈剤、および/または追加の処置剤を含んでもよい。あるいは、組成物は濃縮された形態で希釈剤および希釈の指示書と共に提供されてもよい。

(例) (事例1:材料と方法) プラスミドの調製:ヒトCas9とgRNA発現カセットを含むベクター、pX260およびpX330(Addgene)が、種々の構築物LTR−A、B、C、およびDを作成するために利用された。 細胞培養および安定な細胞株:TZM−blレポーターおよびU1細胞株は、NIH AIDS試薬プログラムから得られ、CHME5ミクログリア細胞は、当技術分野で知られている。 免疫組織化学およびウエスタンブロット:細胞の免疫細胞化学観察のための標準的な方法、およびウエスタンブロットによるタンパク質発現の評価が使用された。 ホタルルシフェラーゼ検定:細胞は、処置後24時間後に受動溶解緩衝液(Promega)を使用して溶解され、そしてルシフェラーゼレポーター遺伝子検定キット(Promega)を用いて製造業者のプロトコルに従って検定された。ルシフェラーゼ活性は、平行MTT検定(Vybrant、Invitrogen社)によって測定された細胞数に対して正規化された。 p24 ELISA:感染または再活性化後、上清中のHIV−1ウイルス負荷のレベルが、p24Gag ELISA(アドバンスド・バイオサイエンス・ラボラトリーズ社)により、製造業者のプロトコルに従って定量化された。処置時の細胞生存率を評価するため、MTT検定が平行で、製造業者の取扱説明書(Vybrant、Invitrogen社)に従って、実施された。 EGFPフローサイトメトリー:細胞はトリプシン処理され、PBSで洗浄され、そして室温で10分間、2%パラホルムアルデヒド中で固定され、次いで、PBSで2回洗浄され、そしてGuava EasyCyteミニフローサイトメータ(グアバテクノロジーズ)を用いて解析された。

HIV−1レポーターウイルス調製及び感染:HEK293T細胞は、pNL4−3−AE−EGFP(NIHエイズ研究および対照試薬プログラム)で、リポフェクタミン2000試薬(Invitrogen)を用いて遺伝子導入された。48時間後、上清が収集され、0.45μmで濾過され、感染マーカーとしてEGFPを用いてヒーラー細胞内でタイターされた。ウイルス感染のために、安定したCas9/gRNA TZM−bl細胞が、希釈ウイルスストックで2時間インキュベートされ、その後PBSで2回洗浄された。感染後2日および4日に、細胞が回収され、固定され、EGFP発現についてフローサイトメトリーによって分析され、またはPCRおよび全ゲノム配列決定のためゲノムDNAの精製が実施された。 ゲノムDNAの増幅、PCR、TAクローニング、およびサンガー配列決定、ゲノムウォーカーリンクPCR:クローニングおよび配列決定のためのDNA操作に対する標準的な方法が使用された。HIV−1の組み込み部位の同定のため、我々は、レンチX(登録商標)組込み部位分析キットを使用した。

サーベイヤ検定:PCR産物における変異の存在は、サーベイヤ変異検出キット(Transgenomic)を用いて製造業者のプロトコルに従って検査された。簡潔には異種起源のPCR産物は、95℃で10分間で変性し、サーモサイクラーを用いて徐冷することによりハイブリダイズされた。次に、300ngのハイブリダイズされたDNA(9μl)が、0.25μlのSURVEYORエンハンサーSと15mMのMgClの存在下で、0.25μlのSURVEYORヌクレアーゼで42℃で4時間消化を受けた。その後停止溶液が添加され、そして等量の未消化PCR産物の対照と共に2%アガロースゲル内で分離された。いくつかのPCR産物は、制限断片長多型解析に使用された。等量のPCR産物がBsaJIで消化された。消化されたDNAは、臭化エチジウム含有アガロースゲル(2%)上で分離された。配列決定のために、PCR産物を、TA クローニング(登録商標)キット二重プロモーターを用いてpCR(登録商標)IIベクター(Invitrogen)でクローニングした。インサートをEcoRIで消化することにより確認し、ポジティブクローンをサンガー配列決定のためジーンウィズ社に送った。

LTR標的部位の選択、全ゲノム配列決定とバイオインフォマティクスと統計分析: LTR内の潜在的な標的部位の最初の同定のため、ジャック・リンのCRISPR/Cas9 gRNAファインダーツールを使用した。 プラスミド調製:LTR−AまたはLTR−Bを発現するcrRNA前駆体のためのDNAセグメントが、ピューロマイシン選択遺伝子を含むpX260ベクター(Addgene社、プラスミド#42229)の中にクローニングされた。LTR−CまたはLTR−Dを発現するキメラcrRNA−tracrRNAのためのDNAセグメントが、pX330ベクター(Addgene社、プラスミド#42230)の中にクローニングされた。両ベクター共に、CAGプロモーターによって駆動されるヒト化Cas9コーディング配列、およびヒトU6プロモーターによって駆動されるgRNA発現カセットを含む。ベクターは、BbsIで消化され、そしてアンタークティックホスファターゼで処理され、そして直線化ベクターは、クイックヌクレオチド除去キット(Qiagen)で精製された。各標的部位(図14、アルファDNA)に対する一対のオリゴヌクレオチドが、徐冷され、リン酸化され、そして直線化ベクターに連結された。gRNA発現カセットは、U6配列決定プライマー(図14)でジーンウィズ社において配列決定された。pX330ベクターに対し、我々は直接遺伝子導入または他のベクターへのサブクローニングのため、gRNA発現カセット(U6−gRNA−crRNA−ステム−tracrRNA)を開裂することができる、オーバーハング消化部位を持つ1対のユニバーサルPCRプライマー(図14)を設計した。

細胞培養 John C.Kappes博士、Xiaoyun Wu博士およびTranzyme社からのTZM−blレポーター細胞株,およびThomas Folks博士からのU1/HIV−1細胞株、およびEric Verdin博士からのJ−Lat全長クローンが、NIH AIDS試薬プログラム、エイズ部門、NIAID、NIHを通じて得られた。CHME5/HIV胎児ミクログリア細胞株は、以前に記載のように作製された。TZM−blおよびCHME5細胞は、10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたダルベッコ基礎培地高グルコ−ス中で培養された。U1およびJ−Lat細胞は、2.0mMのL−グルタミン、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI1640培地中で培養された。 安定な細胞株およびサブクローニング TZM−blまたはCHME5/HIV細胞は 1.5×105細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種され、そしてリポフェクタミン2000試薬(Invitrogen)を用いて1μgのpX260(LTR−A及びBの場合)または1μg/0.1μgのpX330/pX260プラスミド(LTR−CおよびDの場合)で遺伝子導入された。翌日、細胞は100mmディッシュに移され、1μg/mlのピューロマイシンを含む増殖培地(Sigma)でインキュベートされた。二週間後、生存細胞コロニーがクローニングシリンダー(Corning社)を用いて単離された。U1細胞(1.5x105)は1μgのDNAで、10μlチップ、3×10ms1400Vのインパルスを使用してネオン(登録商標)トランスフェクションシステム(Invitrogen社)においてエレクトロポレーションされた。細胞は、0.5μg/mlのピューロマイシンで2週間に亘って選択された。安定したクローンが限界希釈法を使用して96ウェルプレート内で継代培養され、そして単一細胞由来のサブクローンがさらなる研究のために維持された。

免疫細胞化学およびウエスタンブロット Cas9/gRNA安定発現TZM−bl細胞は、8ウェルチャンバースライド内で2日間培養され、そして4%パラホルムアルデヒド/PBS中で10分間固定された。3回洗浄後、細胞は0.5%トリトンX−100/PBSで20分間処理され、そして、10%ロバ血清中で1時間ブロックされた。 細胞は、マウス抗フラッグM2一次抗体(1:500、シグマ社)と共に4℃で一晩インキュベートされた。3回洗浄後、細胞はロバ抗マウスアレクサ・フルーア−594二次抗体で1時間インキュベートされ、そしてヘキスト33258とともに5分間インキュベートされた。PBSで3回洗浄後、細胞は抗退色水性マウント培地(Biomeda社)でカバースリップされ、そしてライカDMI6000B蛍光顕微鏡下で分析された。

6ウェルプレート中で培養されたTZM−bl細胞は、20mMトリス−HCl(pH7.4)、1%トリトンX−100、5mMのエチレンジアミン四酢酸,5mMのジチオトレイトール,150mMのNaCl、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド、1x核抽出プロテアーゼインヒビターカクテル(Cayman Chemical,Ann Arbor,MI),1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、および30mMのNaFを含有する、200μlのトリトンX−100ベース溶解緩衝液中で可溶化された。細胞溶解物は4℃で30分間回転された。細胞核および細胞の破片が4℃で20分間20,000gで遠心分離することによって除去された。等量の溶解物タンパク質(20μg)がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)サンプル緩衝液中で5分間煮沸することにより変性され、トリス−グリシン緩衝液中のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分画され、そしてニトロセルロース膜(BioRad社製)に移された。SeeBlue予備染色標準(Invitrogen)を分子量の基準として使用した。ブロットは1時間5%BSA/トリス緩衝生理食塩液(pH7.6)および0.1%Tween−20(TBS−T)でブロッキングされ、そしてその後、マウス抗フラッグM2モノクローナル抗体(1:1000、Sigma社)またはマウス抗GAPDHモノクローナル抗体(1:3000、Santa Cruz Biotechnology社)を用いて4℃で一晩インキュベートされた。TBS−Tで洗浄後、ブロットは室温で1時間IRDye680LT結合抗マウス抗体とインキュベートされた。膜は、スキャンされ、そしてオデッセイ赤外線イメージングシステム(LI−COR Biosciences)を用いて分析された。

ホタルルシフェラーゼ検定 細胞は、受動溶解緩衝液(Promega社)を使用して処理後24時間後に溶解され、製造業者のプロトコルに従って、ルシフェラーゼレポーター遺伝子検定キット(Promega)を用いて検定された。ルシフェラーゼ活性は、平行MTT検定(Vybrant、Invitrogen社)で測定された細胞数に対して正規化された。 p24ELISA 感染または再活性化した後、上清中のHIV−1ウイルス負荷レベルは、製造業者のプロトコルに従ってp24 Gag ELISA(アドバンスト・バイオサイエンスラボラトリーズ社)によって定量された。処置の際の細胞の生存率を評価するために、製造業者のプロトコルに従ってMTT検定(Vybrant、Invitrogen社)が平行で行われた。 EGFPフローサイトメトリー 細胞はトリプシン処理され、PBSで洗浄され、そして2%パラホルムアルデヒドで室温で10分間固定され、その後、PBSで2回洗浄され、そしてグアバEasyCyteミニフローサイトメータ(Guava Technologies社)を用いて分析された。

HIV−1レポーターウイルス調製及び感染 HEK293T細胞が、リポフェクタミン2000試薬(Invitrogen)を用いて、pNL4−3−ΔE−EGFP、SF162とJRFL(NIHエイズ研究および標準試薬プログラム)で遺伝子導入された。偽型pNL4−3−ΔE−EGFPのために、VSVGベクターが共導入された。 48時間後、上清が回収され、0.45μmで濾過され、そして感染マーカーとして発現EGFPを用いてヒーラー細胞内で滴定された。ウイルス感染のために、安定したCas9/gRNA TZM−Bl細胞は、希釈されたウイルスストックで2時間インキュベートされ、そしてPBSで2回洗浄された。感染後2日目および4日目に、細胞は回収され、固定され、そしてEGFP発現についてフローサイトメトリーによって分析され、またはPCRおよび全ゲノム配列決定のためにゲノムDNAの精製が実施された。 ゲノムDNA精製、PCR、TAクローニングおよびサンガー配列決定 ゲノムDNAは、製造業者が推奨するプロトコルに従ってArchivePure DNA細胞/組織精製キット(5PRIME社)を用いて細胞から単離された。抽出されたDNAの100ngが、図14に記載のプライマーを用いた高忠実度のFailSafe PCRキット(Epicentre社)を用いてPCRを受けた。標準的PCRの3つのステップが55℃のアニーリングと72℃の伸長の30サイクルに亘って実行された。産物は2%アガロースゲル内に溶解された。対象バンドはゲル精製され、そしてpCRIIT−Aベクター(Invitrogen)内にクローニングされ、そして個々のクローンのヌクレオチド配列は、ユニバーサルT7および/またはSP6プライマーを用いてジーンウィズで配列決定により決定された。

従来型およびリアルタイム逆転写(RT)−PCR 全RNA抽出のために、細胞が、製造者の指示に従ってRNeasyミニキット(Qiagen社)を用いて処理された。潜在的残留ゲノムDNAは、RNaseフリーDNaseセット(Qiagen社)を用いてカラム上でのDNase消化を介して取り除かれた。各サンプルの1μgのRNAは、ランダムヘキサヌクレオチドプライマーを用いて高容量cDNA逆転写キット(Invitrogen社、Grand Island,NY)でcDNAに逆転写された。従来型PCRは、標準的プロトコルを用いて実施された。定量的PCR(qPCR)分析は、SYBR(登録商標)グリーンPCRマスターミックスキット(Applied Biosystems社)を用いて、ライトサイクラー480(Roche社)で行われた。逆転写反応は反応物1マイクロリットル当たり5ngの全RNAに希釈され、そして2μlが20−μlPCR反応に使用された。HIV−1プロウイルスのqPCR分析のために、50ngのゲノムDNAが使用された。プライマーはAlphaDNAにおいて合成され、図14に示される。ヒトハウスキーピング遺伝子GAPDHとRPL13Aためのプライマーは、リアルタイムプライマー社(Elkins Park、PA)から入手した。各サンプルは3回試験された。サイクル閾値(Ct)が、標的遺伝子及びハウスキーピング遺伝子についてグラフから得られた。ハウスキーピング遺伝子と標的遺伝子との間のCt値の差は、ΔCt値として示された。ΔΔCT値は、対照試料のΔCt値を実験試料のΔCt値から差し引くことにより得られた。相対的な倍数またはパーセント変化は、2−ΔΔCtとして計算された。いくつかの場合には、絶対的定量化が、ヒトゲノムDNAに標準としてスパイクされたpNL4−3−ΔE−EGFPプラスミドを用いて実施された。HIV−1ウイルスのコピー数は、ハウスキーピング遺伝子での正規化後の標準曲線に基づいて計算された。

ゲノムウォーカーリンクPCRとロングレンジPCR 宿主細胞におけるHIV−1の組込み部位は、製造業者の指示に従ってレンチX(登録商標)組込部位分析キット(Clontech社)を用いて同定した。簡潔には、高品質ゲノムDNAがNucleoSpin組織キット(Clontech社)を用いて、U1細胞から抽出された。ウイルス組み込みライブラリを構築するために、各ゲノムDNAサンプルは、平滑末端生成消化酵素DraI、SspIまたはHpaIで別々に37℃で一晩消化された。消化効率は、0.6%アガロース上での電気泳動によって確認された。消化したDNAはNucleoSpinゲルおよびPCRクリーンアップキットを用いて精製され、その後消化されたゲノムDNA断片はゲノムウォーカー(登録商標)アダプターに16℃で一晩かけて結合された。結合反応は、5分間70℃でインキュベートすることによって停止され、そしてTE緩衝液で5倍に希釈された。一次PCRは、アダプタープライマー1(API)およびLTR特異的プライマー1(LSP1)でアドバンテージ2ポリメラーゼミックスを使用して実施され、その後AP2とLSP2プライマー(図14)を用いた二次(ネスト)PCRが実施された。二次PCR産物は1.5%臭化エチジウムを含有するアガロースゲル上で分離された。主要なバンドはゲル精製され、そしてpCRII−T−Aベクター(Invitrogen社)にクローニングされ、そして個々のクローンのヌクレオチド配列は、ユニバーサルT7およびSP6プライマーを用いてジーンウィズにおいて配列決定により決定された。配列読み出しは、NCBI BLAST検索により分析された。U1細胞内のHIV−1の2つの組込み部位が、染色体Xおよび染色体2において同定された。各組込み部位(図14)をカバーする1対のプライマーがAlphaDNA内で合成された。U1ゲノムDNAを用いたロングレンジPCRが、製造業者のプロトコルに従ってPhusion高忠実度PCRキット(New England Biolabs社)を用いて実施された。PCR産物は1%アガロースゲル上で可視化され、サンガー配列決定により検証された。

サーベイヤー検定 PCR産物中の変異の存在が、製造業者のプロトコルに従ってSURVEYOR変異検出キット(Transgenomic社)を用いて試験された。簡潔には異種起源のPCR産物は、95℃で10分間変性され、そしてサーモサイクラーを用いて徐々に冷却することによりハイブリダイズされた。次に300ngのハイブリダイズしたDNA(9UL)は、42℃で4時間、0.25μlのSURVEYORエンハンサーSと15mMのMgClの存在下で0.25μlのSURVEYORヌクレアーゼで消化を受けた。その後停止溶液が添加され、そしてサンプルは等量の未消化PCR産物と共に2%アガロースゲルの中に溶解された。いくつかのPCR産物が、制限断片長多型解析に使用された。等量のPCR産物がBsaJlで消化された。消化されたDNAは、臭化エチジウム含有アガロースゲル(2%)上で分離された。配列決定のために、PCR産物は、pCR(登録商標)IIベクター(Invitrogen社)でTAクローニング(登録商標)キット二重プロモーターを用いてクローニングされた。挿入物は、EcoRIでの消化により確認され、そしてポジティブクローンはサンガー配列決定のためジーンウィズに送られた。

LTR標的部位の選択と潜在的オフターゲット部位の予測 最初の研究のために、我々は継代中のLTRの潜在的な変異に起因して、ヒトTZM−bl細胞のゲノムから、PCR産物のTAクローニング配列決定により、組み込みレンチウイルスLTRルシフェラーゼレポーターのLTRプロモーター配列(−411から−10まで)を得た。このプロモーター配列は、pHR´−CMV−LacZレンチウイルスベクター(AF105229)の5´−LTRに対して100%の一致を有する。このように、完全長のpHR´5´−LTR(634bp)のセンス配列およびアンチセンス配列が、ジャック・リンのCRISPR/Cas9gRNAファイダーツール(http://spot.colorado.edu/〜slin/cas9.html)を使用して、20bpの標的配列とPAMシーケンス(NRG)を含むCas9/gRNA標的部位を探索するために使用された。完全一致の潜在的なオフターゲットの数は、各gRNA標的配列とNRG(AGG、TGG、GGGとCGG;AAG、TAG、GAG、CAG)を、利用可能なすべてのヒトゲノム配列と転写配列に対し、NCBI/blastnスイートをE値カットオフ1,000そしてワードサイズ7で用いて、ブラストすることにより予測された。コントロール+Fを押した後、標的配列(1−23から9−23ヌクレオチドまで)をコピー/ペーストし、それにより標的配列に100%一致するゲノム標的の数がわかる。各検索に対するオフターゲットの数は、繰り返しゲノムライブラリーのため3で除された。

全ゲノム配列決定とバイオインフォマティクス解析 TZM−BL細胞の対照サブクローンC1と実験サブクローンAB7が、目標カット効率及びLTR−ルシフェラーゼレポーターの機能抑制に関し検証された。ゲノムDNAは、NucleoSpin組織キット(Clontech社製)を用いて単離された。DNAサンプルはテンプル大学フォックスチェイスがんセンターのネクストジェンシークエンシング施設に提出された。2重のゲノムDNAライブラリが、製造業者の指示に従って、イルミナのためのNEBNextウルトラDNAライブラリプレップキット(New England Biolab社)を用いて、各サブクローンから調製された。すべてのライブラリは、HiSeq2500装置(Illumina社)上の2つのイルミナラピッドランフローセルにおける対形成末端141bp読み出しで配列決定された。配列決定されたライブラリからのデマルチプレクスされた読み取りデータは、専門的バイオインフォマティクス解析のためAccuraScience、LLC(http://www.accurascience.com)に送られた。簡単に言えば、生の読み取りデータはBowtie2を使用して、ヒトゲノム(hgl9)とHIV−1ゲノムに対してマッピングされた。ゲノム解析ツールキット(GATK、バージョン2.8.1)が重複読み出しの除去、ローカルアライメント、塩基品質の再較正と挿入欠失呼び出しのために使用された。信頼度スコア10と30は、それぞれ低品質(LowQual)と高信頼性呼出し(PASS)のしきい値であった。様々な不一致を有するLTR−A及びLTR−Bの潜在的なオフターゲット部位が、上記のNCBI/blastnスイートおよびCRISPR設計ツール(http://crispr.mit.edu/)によって予測された。すべての潜在的なgRNA標的部位(図15)はGATKによって識別される各挿入欠失の周りの±300bpの領域をマッピングするために使用された。ヒトゲノムおよびHIV−1ゲノム中の重複領域の位置が対照C1と実験的AB7の間で比較された。

統計分析 定量的データは、3〜5回の独立した実験からの平均±標準偏差を表し、そしてスチューデントt検定またはANOVA及びニューマン−クールズ多重比較検定により評価された。p値<0.05または0.01は、統計的に有意な差異とみなされた。

(事例2:Cas9/LTR−gRNAはHIV−1に潜伏感染したCHME5ミクログリア細胞におけるHIV−1レポーターウイルス産生を抑制する) 我々は、HIV−1指向ガイドRNA(gRNAs)の、LTRの転写活性を阻害し、脳内のHIV−1貯蔵場所として機能し、特に難治性の集団である、潜伏感染骨髄細胞のゲノムからプロウイルスDNAを根絶する能力について評価した。我々の戦略は、HIV−1 LTRプロモーターのU3領域を標的とすることに焦点を当てた。バイオインフォマティクススクリーニングおよび効率/オフターゲット予測により、我々は保存された転写因子結合部位を避け、宿主の遺伝子発現を変化させる可能性を最小限に抑える、4つのgRNA標的(プロトスペーサ;LTR A−D)を同定した(図5および13)。我々は、gRNA A−Dに相補的なDNA断片をヒト化Cas9発現ベクター(pX260でA/B;pX330でC/D)に挿入し、そして、組み込みHIV−1ゲノム活性を変化させるそれらの個々のそして組み合わせた能力を試験した。

我々は最初、5´および3´LTRを含む単一ラウンドHIV−1ベクターの組込まれたコピーを保有するミクログリア細胞株CHME5および、Gag(pNL4−3−ΔGag−d2EGFP)を置換する強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)レポーターをコードする1つの遺伝子を使用した。CHME5細胞をトリコスタチンA(TSA)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤で処理することは、組み込まれたプロウイルスの大部分からの転写を再活性化し、そしてEGFPおよび残りのHIV−1プロテオームの発現をもたらす。gRNAプラスCas9の発現はTSA誘導EGFPポジティブなCHME5細胞の割合を著しく減少させた(図1Aおよび6)。我々は、CelIヌクレアーゼ系ヘテロ二本鎖特異SURVEYOR検定を用いて、LTR A−D(図1Bおよび図6B)に対する挿入/欠失遺伝子変異(インデル)を検出した。同様に、ホタル−ルシフェラーゼレポーター遺伝子を駆動する安定的に組み込まれたHIV−1 LTRコピーを含む、ヒーラー細胞由来のTZM−bl細胞中のLTR CとDを標的とするgRNAsの発現は、ウイルスプロモーター活性を抑制し(図7A)、そしてLTR U3領域(図7B−D)内のインデルを誘発し、それはSURVEYORとサンガー配列決定によって実証された。また、これらの細胞におけるLTR C/Dを標的とするgRNAsの組み合わせ発現は、予測された302bpのウイルスDNA配列の切除、および残留194bpの断片(図7E−F)の出現を引き起こした。

混合クローンCHME5細胞中のLTR−A/B gRNAsの多重発現は、AとBの標的部位の間の190−bpの断片の欠失を引き起こし、そして様々な程度でインデルにつながった(図1C−D)。>20のピューロマイシン選択、安定サブクローンの中で、我々は、EGFP(図IE)用のフローサイトメトリーによって決定された、TSA誘発性HIV−1プロウイルスの再活性化を完全に阻害する細胞集団を発見した。プロウイルスゲノムにおけるEGFPおよびHIV−1のRev応答エレメント(RRE)に対するPCRベースの分析は、HIV−1ゲノムの根絶を検証した(図1F、G)。さらに、PCR産物の配列決定は、5´−3´LTRにまたがるウイルスゲノム全体が削除され、切断部位AとBとの間の190bpの切除を介した351bpの断片(図1Gおよび8)、および、175bpの挿入と27bpの欠失をそれぞれLTR−Aおよび−Bサイトで持つ(図8C)682bpの断片を得た、ことを明らかにした。残留HIV−1ゲノム(図1F−H)は、トレースCas9/gRNAネガティブ細胞の存在を反映する可能性がある。これらの結果は、LTRを標的とするCas9/gRNA A/Bは、潜伏感染ミクログリア細胞においてHIV−1ゲノムを根絶し、そしてその再活性化を阻害する、ことを示している。

(事例3:Cas9/LTR−gRNAが効率的にU1単球細胞から潜伏HIV−1ウイルスを根絶する) 前単球U937細胞のサブクローンU1、感染した血管周囲性マクロファージおよび単球のためのHIV−1の潜伏モデルは、慢性的にHIV−1に感染され、そして低レベルの構成的ウイルス遺伝子の発現および複製を示す。GenomeWalkerマッピングは、U1細胞内の染色体Xp11−4(図2A)および2p21(図9A)で2つの組み込みプロウイルスDNAのコピーを検出した。9709bpのプロウイルスHIV−1DNA全体プラス隣接する226bpのX染色体由来の配列(図2A)を示す9935bpのDNA断片、および9709bpのHIV−1ゲノムプラスその隣接する2染色体由来の467bpを含む10176bpの断片(図9A、B)が、親対照または空ベクター(U6−CAG)U1細胞のロングレンジPCR分析により同定された。226bpおよび467bpの断片はそれぞれ、X染色体と2番染色体の他のコピーからの予測セグメントを表し、それらは組み込まれたプロウイルスDNAを欠いた。LTR−A/B gRNAsとCas9を発現するU1細胞内で、我々はX染色体内に833及び670bpの二つの追加のDNA断片を、そして2番染色体内に1102bpの1つの追加のDNA断片を発見した。したがってgRNA A/Bは、Cas9が両方の染色体においてHIV−1の5´−3´LTRにまたがるウイルスゲノムセグメントを切除することを可能にした。833bpの断片は、宿主ゲノムからの予想される226bpおよびLTR−A部位の周りの約27bpの欠失を有する607bpのウイルスLTR配列を含む(図2A−B)。670bp断片は、両方のLTRにおけるgRNA A/B誘導切断に起因する(図2A)190bpの断片切除後に226bpの宿主配列と残留444bpのウイルスのLTR配列を包含した(図1D)。

追加の断片は、循環型LTR組み込みを介しては出現しなかった、なぜなれば、それは親のU1細胞には存在せず、そしてそのような循環型LTRウイルスゲノム構成は、HIV−1感染の直後に発生するが、短命であり、そして繰り返される継代に不耐性である。これらの細胞は、機能的p24ELISA複製検定(図2C)およびリアルタイムPCR分析(図9C、D)で示されるように、実質的に減少したHIV−1ウイルス負荷を発現した。検出可能であるが低い、残留ウイルス負荷と再活性化は、細胞集団の異種起源性および/または不完全なゲノム編集に起因する可能性がある。我々はまた、組み込みHIV−R7/E−/EGFPを保有する潜伏感染J−Lat T細胞において、Cas9/LTR−A/B gRNAによるHIV−1ゲノムの切除を、フローサイトメトリー分析、SURVEYOR検定およびPCR遺伝子型決定(図10)を使用して検証し、その結果はCas9/gRNAとZFNによるジャーカットT細胞におけるHIV−1プロウイルスの削除に関する以前の報告の結果を支持した。まとめると、我々の結果は、多重LTR−gRNAs/Cas9システムは、ヒトHIV−1潜伏感染に典型的な、HIV−1潜伏感染「貯蔵場所」(ミクログリア、単球およびT)細胞において、そしてHIV−1転写および再活性化の検出に高感度のTZM−bl細胞において、HIV−1複製および再活性化を効率的に抑制することを示唆している。5´−および3´−LTRを標的とする単一または多重gRNAは、HIV−1ゲノム全体を効率的に根絶した。

(事例4:Cas9プラスLTR−A/Bの安定な発現は、TZM−bl細胞を新規HIV−1ウイルス感染に対しワクチン接種する) 次に我々は、安定的にCas9/gRNA−Aおよび−Bを発現するTZM−blベースのクローンを用いて、Cas9/LTR gRNAの組み合わせがHIV−1感染に対して細胞を免疫化することができるかどうかを試験した(図3A)。7つのピューロマイシン選択サブクローンの内の2つが190bpのLTR−A/B部位にまたがるDNA断片(図3B)の効率的な切除を示した。しかし、残りの5サブクローンには、サンガー配列決定によって確認されるように切除もインデル変異も示さなかった(図3B)。Cas9およびU6−LTRを標的とするプライマーを用いたPCR遺伝子型決定は、これらの非有効なサブクローンのいずれもが、Cas9/LTR−A/B gRNA発現カセットの組み込まれたコピーを保持しないことを示した。(図11A、B)。その結果、完全長Cas9の発現は検出されなかった(図11C、D)。Cas9/LTR−A/B gRNAの長期発現は、細胞の増殖や生存率に悪影響を及ぼさなかった。そのことはこのモデルにおいて、宿主ゲノムに対するオフターゲット干渉、またはCas9誘発毒性の低い発生率を示唆した。我々は、HIV−1複製を示すフローサイトメトリーにより、EGFP−ポジティブな、VSVG偽型pNL4−3−ΔE−EGFPレポーターウイルスを細胞に感染させることによって、新規HIV−1複製を評価した。対照U6−CAG細胞とは異なり、Cas9/gRNA LTR−A/Bを安定的に発現する細胞は、感染後2日目においてHIV−1複製をサポートすることに失敗した、それは、それらが効果的に新たなHIV−1感染に対して免疫化したことを示す(図3C−D)。HIV−lに対する同様の免疫性が、ネイティブT−向性X4株pNL4−3−ΔE−EGFPレポーターウイルス(図12A)または、SF162およびJRFL(図12B−D)などのネイティブM向性R5株に感染したCas/LTR−A/B gRNA発現細胞で観察された。

(事例5:ヒトゲノム上のCas9/LTR−A/Bのオフターゲット効果) Cas9/gRNAの介入アプローチとしての魅力は、その高度に特異的なオンターゲットのインデル生成切断にかかっているが、多重gRNAは、潜在的に宿主ゲノム変異誘発および染色体異常、細胞毒性、遺伝子毒性、または腫瘍形成を引き起こす可能性がある。ウイルス−ヒトのかなり低いゲノム相同性は、このリスクを減少させるが、ヒトゲノムは、HIV−1を指向したgRNAsに潜在的に感受性の多数の内在性レトロウイルスゲノムを含む。したがって、我々は、選択されたHIV−1 LTR gRNAsのヒトゲノムに対するオフターゲット効果を評価した。プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)領域(NGG)に最近接の12−14bpのシード配列が切断特異性のために重要であるため、我々は、>14bpのシード+NGGをサーチし、そしてLTR gRNAsのA−Dによってオフターゲット候補部位を全く発見しなかった(図13)。連続的により短いgRNAセグメントが、対応するオンターゲット対応配列に100%一致したオフターゲット切断部位をより多くもたらしたこと(即ち、NGG+13bpは、それぞれ6、0、2、9個のオフターゲット部位をもたらし、一方NGG+12bpは16、5、16、29個をもたらした;図13)ことは驚くべきことではない。ヒトゲノムDNAから、我々は、高忠実度PCRを用いて、予測されたオフターゲット部位の1つをカバーする500−800bpの配列を取得し、潜在的変異をSURVEYORとサンガー配列決定により解析した。我々は変異を全く発見しなかった。(TZM−blとU1細胞中の代表的オフターゲット部位#1、5および6を参照;図4A)

総合的にオフターゲット効果のリスクを評価するために、我々は、安定的にCas9 /gRNA A/Bを発現する細胞と対照U6−CAG TZM−bl細胞を使用して全ゲノム配列決定(WGS)を実施した(図4B−D)。我々は、参照配列としてヒト(hgl9)とHIV−1ゲノムを有するゲノム解析ツールキット(GATK、v.2.8.1)を使用して、676,105個のインデルを同定した。インデルのうち、24%は、U6−CAG対照で、26%はLTR−A/Bのサブクローンで、そして50%はその両方で発生した(図4B)。このような大きなサンプル間インデル−呼び出しの不一致は、オフターゲット効果を可能性として示唆するが、しかし、その限られた信頼度、限られたWGSカバレッジ(15−3OX)、および細胞の異種起源性に起因する可能性が最も高い。GATKは確信を持って識別されたインデルのみを報告した:いくつかはU6−CAG対照で発見されたがLTR−A/Bでは発見されず、そしてそれ以外はLTR−A/Bで発見されたがU6−CAG対照では発見されなかった。私たちは、限られたWGSカバー率に起因して、両方のサンプルに対し多くの欠落したインデル呼び出しを予測した。このような限られたインデル−呼び出し信頼度もまた偽陰性:LTR−A/Bでは発生するが、U6−CAG対照では発生しない、見落とされたインデル:の可能性を示唆した。

細胞の異種起源性はCas9/gRNA編集効率及び継代の効果の変動性に反映しうる。したがって、我々はHIV−1ゲノムのLTR−A/B標的部位、および宿主ゲノムの予測される/潜在的gRNAオフターゲット部位に対して、それぞれのインデルに隣接する±300bpを解析することにより、各インデルがLTR−A/B gRNAに誘導されたものか否かを試験した(図15)。シード(12bp)プラスNRGを含む配列に100%一致した配列について、我々は676,105インデルに対して92の潜在的オフターゲット部位の8つの重複領域だけを同定した:6つのインデルは両方のサンプルで発生し、2つのインデルはU6−CAG対照でのみ発生した(図4C、D)。 我々はまた、LTR−A/Bサブクローンでのみ発生したが、U6−CAG対照では予想した通り発生しなかった、2つのインデルを同定した(図4C)。この結果は、LTR−A/B gRNAが、示された標的上のインデルを誘発するが、オフターゲットインデルを誘発しないことを示し、それは予想される/潜在的なオフターゲットサイトをカバーするPCR産物の深い配列決定を使用した従来技術における発見と一致した。

我々の組み合わせアプローチは、高効率とゲノム的に組み込まれたHIV−1プロウイルスの完全な除去を達成しながら、オフターゲット効果を最小限に抑えた。外来のウイルスゲノムと内在性レトロウイルスDNAを含む宿主細胞ゲノムの間の極めて低い相同性に加えて、我々の研究における重要な設計属性は:オフターゲットヒトトランスクリプトームまたは(まれに)非翻訳ゲノム部位を除外するための、最も厳しい12bp+NGG標的選択基準を使用した、生物情報スクリーニング;HIV−1 LTRプロモーター内の転写因子結合部位(潜在的に宿主ゲノム中に保存)を回避する;20bpのgRNA、キメラcrRNA−tracRNAベースのシステムに対して特異性/効率性を強化するための、LTR−A−及び−B指向、30bpのgRNA、および元の細菌の免疫機構を反映するプレcrRNAシステムの選択;そして、潜在的なオフターゲット効果を識別して除外するためのWGS、サンガー配列決定およびSURVEYOR検定;を含む。確かに、新たに開発されたCas9ダブルニッキングおよびRNA誘導型のFokIヌクレアーゼの使用は、オフターゲット効果を減少させながら、HIV−1の様々な保存領域内の新しい標的の同定を補助することができる。

我々の結果は、HIV−1 Cas9/gRNAシステムが、異なる染色体上に位置している1つ以上のLTRのコピーを標的にする能力を有することを示し、そのことは、このゲノム編集システムが、多重のプロウイルスDNAを保有する潜伏感染患者の細胞内のHIV−1のDNA配列を変化させることができることを示唆した。さらに高い編集有効性と我々の技術の整合性を確保するために、患者サンプル中のHIV−1を根絶するためのターゲットとして、HIV−1ゲノムの最も安定領域を考慮してもよいが、それはHIV−1の唯一の株を保有しないことがある。あるいは、処置用Cas9/gRNA分子を操作する前に、患者由来のウイルスゲノムの深い配列決定からのデータに基づいてパーソナライズされた処置法を開発してもよい。

本発明者らの結果はまた、Cas9/gRNAゲノム編集が、細胞をHIV−1感染に対して免疫化するために使用されうることを示している。ワクチンの予防接種は、システムがウイルスが感染した細胞に入る方法に関係なくゲノム配列を標的とするため、HIV−1株の多様性とは無関係である。Cas9/gRNAシステムの細胞内先在は、新たなHIV−1が宿主ゲノムに組み込まれる前にHIV−1の迅速な排除につながった。HIV−1感染を根絶するため、リスクの高い被験者の免疫化のためのCas9/LTR−gRNAの送達、例えば、遺伝子処置(ウイルスベクターおよびナノ粒子)、および自家Cas9/gRNA修飾骨髄幹/前駆細胞または誘導多能性幹細胞の移植、のための様々なシステムを模索してもよい。

本明細書では、HIV−1標的ゲノムを編集する際のCas9/gRNAの高い特異性を実証した。サブクローンデータからの結果は、ゲノム編集のCas9とgRNA両方の存在に対する厳格な依存性を明らかにした。また、設計されたgRNAターゲットにおけるただ1つのヌクレオチド不一致が編集効力を無効にする。また、我々の設計した4つのLTR gRNA全てが、異なる細胞株でよく機能し、そのことは、編集が宿主細胞ゲノムよりHIV−1ゲノム中においてより効率的であることを示した。ここで全ての設計されたgRNAは機能性を有さず、このことは、おそらく異なるエピジェネティック調節、可変ゲノムアクセシビリティ、または他の理由に起因する。Cas9/gRNAの開発の容易さおよび迅速さを前提とすれば、上記のようにHIV−1変異が1つのCas9/gRNA処置法に対する抵抗性を付与しても、HIV−1変異体は遺伝子型解析されて、個々の患者のためのもう1つの個別化処置を可能にする。

本発明の多数の実施形態が記載されてきた。それにもかかわらず、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されよう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の内にある。

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