RNA依存性標的DNA修飾およびRNA依存性転写調節のための方法および組成物

申请号 JP2018097369 申请日 2018-05-21 公开(公告)号 JP2018138054A 公开(公告)日 2018-09-06
申请人 ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア; ユニバーシティ オブ ヴィエナ; チヤーペンテイエ,エマニユエル; 发明人 ジネク,マーテイン; チヤーペンテイエ,エマニユエル; チリンスキー,クシシユトフ; ドウドナ・ケイト,ジエイムズ・ハリソン; リム,ウエンデル; キイ,レイ; ドウドナ,ジエニフアー・エー;
摘要 【課題】それぞれの新たな標的配列のために新たなタンパク質を設計する必要がない形で、ヌクレアーゼ活性、または他のタンパク質活性を、標的DNA内の異なる場所へ正確にターゲティングすることを可能にする技術を提供する。 【解決手段】(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;および(ii)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメントを含む、DNA標的化RNA。前記第一セグメントは標的DNA内の配列に対し100%の相補性を有する8個のヌクレオチドを含むことが出来る。 【選択図】なし
权利要求

(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;およ び (ii)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含む、DNA標的化RNA。前記第一セグメントが標的DNA内の配列に対し100%の相補性を有する8個のヌク レオチドを含む、請求項1に記載のDNA標的化RNA。前記第二セグメントが、配列番号563〜682に記載のヌクレオチド配列のうちのい ずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも6 0%の同一性を有するヌクレオチド配列、またはその相補体を含む、請求項1に記載のD NA標的化RNA。前記第二セグメントが、配列番号431〜562に記載のヌクレオチド配列のうちのい ずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも6 0%の同一性を有するヌクレオチド配列、またはその相補体を含む、請求項1に記載のD NA標的化RNA。前記部位特異的修飾ポリペプチドが、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列 のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または配列番号1〜256およ び795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分に 対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項 1に記載のDNA標的化RNA。請求項1に記載のDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む、DNAポ リヌクレオチド。請求項6に記載のDNAポリヌクレオチドを含む、組み換え発現ベクター。前記DNA標的化RNAをコードする前記ヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能 に連結している、請求項7に記載の組み換え発現ベクター。前記プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項8に記載の組み換え発現ベクタ ー。請求項1に記載のDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列が複数のクローニ ング部位をさらに含む、請求項7に記載の組み換え発現ベクター。請求項6に記載のDNAポリヌクレオチドを含む、インビトロ遺伝子改変宿主細胞。(i) (a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;お よび (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位が前記DNA標的 化RNAによって決定される、活性部位 を含む前記部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列 を含む、組み換え発現ベクター。(i) (a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;お よび (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)前記標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、前記標的DNA内の転写 が調節される部位が前記DNA標的化RNAによって決定される、活性部位 を含む、前記部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列 を含む、組み換え発現ベクター。(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化RNAと 相互作用するRNA結合部位;および (ii)低減された部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位が前記 DNA標的化RNAによって決定される、活性部位 を含む、変異型部位特異的修飾ポリペプチド。S.ピオゲネス(S. pyogenes)配列(配列番号8)のH840A変異、ま たは配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のいずれ かにおける対応する変異を含む、請求項14に記載の変異型部位特異的修飾ポリペプチド 。S.ピオゲネス配列(配列番号8)のD10A変異、または配列番号1〜256および 795〜1346として記載されるアミノ酸配列のいずれかにおける対応する変異を含む 、請求項14に記載の変異型部位特異的修飾ポリペプチド。(i)S.ピオゲネス配列(配列番号8)のD10A変異、または配列番号1〜256 および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のいずれかにおける対応する変異 ;並びに(ii)S.ピオゲネス配列(配列番号8)のH840A変異、または配列番号 1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のいずれかにおける対 応する変異を両方含む、請求項14に記載の変異型部位特異的修飾ポリペプチド。(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化RNAと 相互作用するRNA結合部位;および (ii)部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位が前記DNA標的 化RNAによって決定される、活性部位 を含む、キメラ部位特異的修飾ポリペプチド。図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166もしくは731 〜1003に対して、または配列番号1〜256および795〜1346として記載され るアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%のアミ ノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項18に記載のキメラ部位特異的修飾 ポリペプチド前記DNA標的化RNAが、配列番号563〜682に記載のヌクレオチド配列のうち のいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくと も60%の同一性を有するヌクレオチド配列をさらに含む、請求項18に記載のキメラ部 位特異的修飾ポリペプチド。前記DNA標的化RNAが、配列番号431〜562に記載のヌクレオチド配列のうち のいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくと も60%の同一性を有するヌクレオチド配列をさらに含む、請求項18に記載のキメラ部 位特異的修飾ポリペプチド。前記酵素活性が前記標的DNAを修飾する、請求項18に記載のキメラ部位特異的修飾 ポリペプチド。前記酵素活性が、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素 活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル 化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラーゼ活性、 トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカ ーゼ活性、光回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性である、請求項22に記載のキメラ 部位特異的修飾ポリペプチド。前記酵素活性がヌクレアーゼ活性である、請求項23に記載のキメラ部位特異的修飾ポ リペプチド。前記ヌクレアーゼ活性が前記標的DNA内で二重鎖切断を引き起こす、請求項24に記 載のキメラ部位特異的修飾ポリペプチド。前記酵素活性が前記標的DNAと結合した標的ポリペプチドを修飾する、請求項18に 記載のキメラ部位特異的修飾ポリペプチド。前記酵素活性が、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトラ ンスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビ キチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUM O化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性 または脱ミリストイル化活性である、請求項26に記載のキメラ部位特異的修飾ポリペプ チド。前記標的ポリペプチドがヒストンであり、前記酵素活性がメチルトランスフェラーゼ活 性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キ ナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性または脱ユビキチン化活性で ある、請求項26に記載のキメラ部位特異的修飾ポリペプチド。請求項18に記載のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列 を含む、RNAポリヌクレオチド。請求項18に記載のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列 を含む、DNAポリヌクレオチド。請求項30に記載のポリヌクレオチドを含む、組み換え発現ベクター。前記ポリヌクレオチドがプロモーターに作動可能に連結している、請求項31に記載の 組み換え発現ベクター。前記プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項32に記載の組み換え発現ベク ター。請求項30に記載のポリヌクレオチドを含む、インビトロ遺伝子改変宿主細胞。(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化RNAと 相互作用するRNA結合部位;および (ii)前記標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、前記標的DNA内の転写 が調節される部位が前記DNA標的化RNAによって決定される、活性部位 を含む、キメラ部位特異的修飾ポリペプチド。前記活性部位が前記標的DNA内の転写を増加させる、請求項35に記載のキメラ部位 特異的修飾ポリペプチド。前記活性部位が前記標的DNA内の転写を減少させる、請求項35に記載のキメラ部位 特異的修飾ポリペプチド。DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および部位特異的酵素活性を示す 活性部位であって、酵素活性の部位が前記DNA標的化RNAによって決定される、活性 部位を含む組換え部位特異的修飾ポリペプチドを含む、遺伝子改変細胞。前記部位特異的修飾ポリペプチドが、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列 のアミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、または配列番号1〜256お よび795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分 に対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求 項38に記載の遺伝子改変細胞。前記細胞が、古細菌細胞、細菌細胞、真核細胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、 幹細胞、植物細胞、藻細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、カエ ル細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、ブタ細胞、雌ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞、げっ歯 類細胞、ラット細胞、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞、およびヒト細胞からなる群から選 択される、請求項38に記載の遺伝子改変細胞。ゲノムが、(i)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(ii) 部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位が前記DNA標的化RNA によって決定される、活性部位を含む組換え部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌ クレオチド配列を含む導入遺伝子を含んでいる、遺伝子導入非ヒト生物前記部位特異的修飾ポリペプチドが、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列 のアミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、または配列番号1〜256お よび795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分 に対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求 項41に記載の遺伝子導入生物。前記生物が、古細菌、細菌、真核単細胞生物、藻、植物、動物、無脊椎動物、ハエ、虫 、刺胞動物、脊椎動物、魚、カエル、鳥、哺乳動物、有動物、げっ歯類動物、ラット、 マウス、および非ヒト霊長類動物からなる群から選択される、請求項41に記載の遺伝子 導入生物。(i) (a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;お よび (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位が前記DNA標的 化RNAによって決定される、活性部位 を含む前記部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド を含む、組成物。前記DNA標的化RNAの前記第一セグメントが、前記標的DNA内の配列に対して少 なくとも100%の相補性を有する8個のヌクレオチドを含む、請求項44に記載の組成 物。前記DNA標的化RNAの前記第二セグメントが、配列番号563〜682に記載のヌ クレオチド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチ ドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項44に 記載の組成物。前記DNA標的化RNAの前記第二セグメントが、配列番号431〜562に記載のヌ クレオチド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチ ドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項44に 記載の組成物。前記部位特異的修飾ポリペプチドが、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列 のアミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、または配列番号1〜256お よび795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分 に対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求 項44に記載の組成物。前記酵素活性が前記標的DNAを修飾する、請求項44に記載の組成物。前記酵素活性が、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素 活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル 化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラーゼ活性、 トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカ ーゼ活性、光回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性である、請求項49に記載の組成物 。前記酵素活性がヌクレアーゼ活性である、請求項50に記載の組成物。前記ヌクレアーゼ活性が前記標的DNA内で二重鎖切断を引き起こす、請求項51に記 載の組成物。前記酵素活性が前記標的DNAと結合した標的ポリペプチドを修飾する、請求項44に 記載の組成物。前記酵素活性が、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトラ ンスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビ キチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUM O化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性 または脱ミリストイル化活性である、請求項53に記載の組成物。前記標的ポリペプチドがヒストンであり、前記酵素活性がメチルトランスフェラーゼ活 性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キ ナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性または脱ユビキチン化活性で ある、請求項53に記載の組成物。前記DNA標的化RNAが二重分子DNA標的化RNAであり、前記組成物が標的化R NAおよび活性化RNAの両方を含み、その二本鎖形成セグメントは相補的であり、ハイ ブリダイズして前記DNA標的化RNAの前記第二セグメントを形成する、請求項44に 記載の組成物。前記活性化RNAの前記二本鎖形成セグメントが、配列番号431〜682に記載のヌ クレオチド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチ ドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項56に 記載の組成物。(i)請求項44に記載のDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌク レオチド;および (ii)核酸を安定化させるための緩衝液 を含む、組成物。(i)請求項44に記載の部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌ クレオチド;並びに (ii)核酸および/またはタンパク質を安定化させるための緩衝液 を含む、組成物。(i) (a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;お よび (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)前記標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、前記標的DNA内の転写 が調節される部位が前記DNA標的化RNAによって決定される、活性部位 を含む前記部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド を含む、組成物。前記活性部位が前記標的DNA内の転写を増加させる、請求項60に記載の組成物。前記活性部位が前記標的DNA内の転写を減少させる、請求項60に記載の組成物。(i)請求項60に記載の部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌ クレオチド;並びに (ii)核酸および/またはタンパク質を安定化させるための緩衝液 を含む、組成物。標的DNAの部位特異的修飾の方法であって、 前記標的DNAを、 (i) (a)前記標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント ;および (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)部位特異的酵素活性を示す活性部位 を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド と接触させることを含む、上記方法。前記標的DNAが染色体外に存在する、請求項64に記載の方法。前記標的DNAが5’−CCY−3’である相補鎖のPAM配列を含み、ここでYはあ らゆるDNAヌクレオチドであり、Yは前記標的DNAの相補鎖の標的配列のすぐ5’側 である、請求項64に記載の方法。前記標的DNAがインビトロにおける染色体の一部である、請求項64に記載の方法。前記標的DNAがインビボにおける染色体の一部である、請求項64に記載の方法。前記標的DNAが細胞内の染色体の一部である、請求項64に記載の方法。前記細胞が、古細菌細胞、細菌細胞、真核細胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、 幹細胞、植物細胞、藻細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、カエ ル細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、ブタ細胞、雌ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞、げっ歯 類細胞、ラット細胞、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞、およびヒト細胞からなる群から選 択される、請求項69に記載の方法。前記DNA標的化RNAが、配列番号563〜682に記載のヌクレオチド配列のうち のいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくと も60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項64に記載の方法。前記DNA標的化RNAが、配列番号431〜562に記載のヌクレオチド配列のうち のいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくと も60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項64に記載の方法。前記DNA修飾ポリペプチドが、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列のア ミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、または配列番号1〜256および 795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分に対 して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項6 4に記載の方法。前記酵素活性が前記標的DNAを修飾する、請求項64に記載の方法。前記酵素活性がヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活 性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化 活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラーゼ活性、ト ランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカー ゼ活性、光回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性である、請求項74に記載の方法。前記DNA修飾酵素活性がヌクレアーゼ活性である、請求項75に記載の方法。前記ヌクレアーゼ活性が前記標的DNA内で二重鎖切断を引き起こす、請求項76に記 載の方法。前記接触が非相同末端結合または相同組換え修復に許容的な条件下で起こる、請求項7 7に記載の方法。前記標的DNAをドナーポリヌクレオチドと接触させることをさらに含み、前記ドナー ポリヌクレオチド、前記ドナーポリヌクレオチドの一部、前記ドナーポリヌクレオチドの コピー、または前記ドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が前記標的DNAに組み込ま れる、請求項78に記載の方法。細胞をドナーポリヌクレオチドと接触させることを含まず、前記標的DNA内のヌクレ オチドが欠失されるように前記標的DNAが修飾される、請求項78に記載の方法。前記酵素活性が前記標的DNAと結合した標的ポリペプチドを修飾する、請求項64に 記載の方法。前記酵素活性が、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトラ ンスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビ キチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUM O化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性 または脱ミリストイル化活性である、請求項81に記載の方法。前記標的ポリペプチドがヒストンであり、前記酵素活性がメチルトランスフェラーゼ活 性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キ ナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性または脱ユビキチン化活性で ある、請求項81に記載の方法。複合体が活性化RNAをさらに含む、請求項64に記載の方法。前記活性化RNAが、配列番号431〜682に記載のヌクレオチド配列のうちのいず れか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60 %の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項84に記載の方法。標的DNA内の部位特異的転写を調節する方法であって、前記標的DNAを、 (i) (a)前記標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント ;および (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)転写を調節する活性部位 を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド と接触させることを含み、前記接触により前記標的DNA内の転写の調節がもたらされる 、上記方法。前記標的DNA内の転写が増加する、請求項86に記載の方法。前記標的DNA内の転写が減少する、請求項86に記載の方法。標的DNAにおける部位特異的修飾の方法であって、 前記標的DNAを、 (i) (a)前記標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント ;および (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)前記標的DNA内の転写を調節する活性部位 を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド と接触させることを含む、上記方法。前記部位特異的修飾ポリペプチドが前記標的DNA内の転写を増加させる、請求項86 に記載の方法。前記部位特異的修飾ポリペプチドが前記標的DNA内の転写を減少させる、請求項86 に記載の方法。細胞内の標的DNAの部位特異的切断および修飾を促進する方法であって、 前記細胞に、 (i) (a)前記標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント ;および (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)前記標的DNA内に二重鎖切断を生成するヌクレアーゼ活性を示す活性部位 を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド; を導入することを含み、 前記二重鎖切断の部位は前記DNA標的化RNAによって決定され、前記接触は非相同末 端結合または相同組換え修復に許容的な条件下で起こり、前記標的DNAが切断および再 結合されることで修飾されたDNA配列が生成される、 上記方法。前記標的DNAをドナーポリヌクレオチドと接触させることをさらに含み、前記ドナー ポリヌクレオチド、前記ドナーポリヌクレオチドの一部、前記ドナーポリヌクレオチドの コピー、または前記ドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が標的DNAに組み込まれる 、請求項92に記載の方法。前記細胞をドナーポリヌクレオチドと接触させることを含まず、前記標的DNA内のヌ クレオチドが欠失されるように前記標的DNAが修飾される、請求項92に記載の方法。前記細胞が、古細菌細胞、細菌細胞、真核細胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、 幹細胞、植物細胞、藻細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、カエ ル細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、ブタ細胞、雌ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞、げっ歯 類細胞、ラット細胞、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞、およびヒト細胞からなる群から選 択される、請求項92に記載の方法。前記細胞がインビトロに存在する、請求項92に記載の方法。前記細胞がインビボに存在する、請求項92に記載の方法。対象において遺伝子改変細胞を生産する方法であって、 (I)細胞に、 (i) (a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;お よび (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)前記標的DNA内に二重鎖切断を生成するヌクレアーゼ活性を示す活性部位 を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチドを導入し ; ここで、前記二重鎖切断の部位は前記DNA標的化RNAによって決定され、前記接触は 非相同末端結合または相同組換え修復に許容的な条件下で起こり、前記標的DNAが切断 および再結合されることで修飾されたDNA配列が生成され; これにより前記遺伝子改変細胞を生産すること;並びに (II)前記遺伝子改変細胞を前記対象に移植すること を含む、上記方法。前記細胞をドナーポリヌクレオチドと接触させることをさらに含み、前記ドナーポリヌ クレオチド、前記ドナーポリヌクレオチドの一部、前記ドナーポリヌクレオチドのコピー 、または前記ドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が前記標的DNAに組み込まれる、 請求項98に記載の方法。前記細胞をドナーポリヌクレオチドと接触させることを含まず、前記標的DNA内のヌ クレオチドが欠失されるように前記標的DNAが修飾される、請求項98に記載の方法。前記細胞が、古細菌細胞、細菌細胞、真核細胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、 幹細胞、植物細胞、藻細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、両生 類細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、有蹄動物細胞、げっ歯類細胞、非ヒト霊長類細胞、およ びヒト細胞からなる群から選択される、請求項98に記載の方法。外来性部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子改変細 胞内の標的DNAを修飾する方法であって、 前記遺伝子改変細胞に、DNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレ オチドを導入することを含み、 (i)前記DNA標的化RNAが、 (a)前記標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント ;および (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメントを含み; (ii)前記部位特異的修飾ポリペプチドが、 (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)ヌクレアーゼ活性を示す活性部位を含む、 上記方法。前記部位特異的修飾ポリペプチドが、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列 のアミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、または配列番号1〜256お よび795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分 に対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求 項102に記載の方法。前記細胞が、古細菌細胞、細菌細胞、真核細胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、 幹細胞、植物細胞、藻細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、両生 類細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、有蹄動物細胞、げっ歯類細胞、非ヒト霊長類細胞、およ びヒト細胞からなる群から選択される、請求項102に記載の方法。前記細胞がインビボに存在する、請求項102に記載の方法。前記細胞がインビトロに存在する、請求項102に記載の方法。前記部位特異的修飾ポリペプチドの発現が誘導性プロモーターの制御下にある、請求項 102に記載の方法。前記部位特異的修飾ポリペプチドの発現が細胞型特異的プロモーターの制御下にある、 請求項102に記載の方法。(i)請求項1に記載のDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレ オチド;並びに (ii)再構成および/または希釈のための試薬 を含む、キット。細胞に前記DNA標的化RNAを導入するための緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照 発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド、DNAからDNA標的化RNAを転写する ための試薬、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬をさらに含む、請 求項109に記載のキット。(i)請求項44に記載の部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌ クレオチド;並びに (ii)再構成および/または希釈のための試薬 を含む、キット。細胞に前記部位特異的修飾ポリペプチドを導入するための緩衝液、洗浄緩衝液、対照試 薬、対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド、DNAから前記部位特異的修飾ポ リペプチドをインビトロ生成するための試薬、およびそれらの組み合わせからなる群から 選択される試薬をさらに含む、請求項111に記載のキット。(i)請求項60に記載の部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌ クレオチド;並びに (ii)再構成および/または希釈のための試薬 を含む、キット。(i) (a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;お よび (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位が前記DNA標的 化RNAによって決定される、活性部位 を含む前記部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド を含む、キット。(i) (a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;お よび (b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii) (a)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)前記標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、前記標的DNA内の転写 が調節される部位が前記DNA標的化RNAによって決定される、活性部位 を含む前記部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド を含む、キット。(i)請求項12に記載の組み換え発現ベクター;および (ii)再構成および/または希釈のための試薬 を含む、キット。(i)請求項13に記載の組み換え発現ベクター;および (ii)再構成および/または希釈のための試薬 を含む、キット。(i)請求項7に記載の組み換え発現ベクター;および (ii)再構成および/または希釈のための試薬 を含む、キット。(i)請求項7に記載の組み換え発現ベクター;並びに (ii) (a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位が前記DNA標的 化RNAによって決定される、活性部位 を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベ クター を含む、キット。(i)請求項7に記載の組み換え発現ベクター;並びに (ii) (a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、前記標的DNA内の転写が調 節される部位が前記DNA標的化RNAによって決定される、活性部位 を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベ クター を含む、キット。請求項1に記載の2つ以上のDNA標的化RNA、またはそれらをコードするDNAポ リヌクレオチドを含む標的DNAを標的とするためのキットであって、前記2つ以上のD NA標的化RNAのうちの少なくとも1つの第一セグメントが、前記2つ以上のDNA標 的化RNAのうちの少なくとも別の1つの第一セグメントと、少なくとも1つのヌクレオ チドだけ異なる、上記キット。宿主細胞において標的DNAの転写を選択的に調節する方法であって、前記宿主細胞に 、 a) i)前記標的DNA内の標的配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメン ト; ii)部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメント;および iii)安定性制御配列 を含むDNA標的化RNA、または前記DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配 列を含む核酸;並びに b) i)前記DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および ii)低減されたエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す活性部位 を含む変異型Cas9部位特異的ポリペプチド、または前記変異型Cas9部位特異的ポ リペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸 を導入することを含み、 前記DNA標的化RNAおよび前記変異型Cas9ポリペプチドが前記細胞内で複合体を 形成し、前記複合体が前記細胞内の標的DNAの転写を選択的に調節する、上記方法。前記変異型Cas9部位特異的ポリペプチドが、前記標的DNAの非相補鎖を切断する ことはできるが、前記標的DNAの相補鎖を切断する低減された能を有する、請求項1 22に記載の方法。前記変異型部位特異的ポリペプチドが、図39Aに示されるアミノ酸配列のH840A 変異、または配列番号1〜256および795〜1346に記載されるアミノ酸配列のう ちのいずれかにおける対応する変異を含む、請求項123に記載の方法。前記変異型部位特異的ポリペプチドが、前記標的DNAの相補鎖を切断することはでき るが、前記標的DNAの非相補鎖を切断する低減された能力を有する、請求項122に記 載の方法。前記変異型部位特異的ポリペプチドが、図39Aに示されるアミノ酸配列のD10A変 異、または配列番号1〜256および795〜1346に記載されるアミノ酸配列のうち のいずれかにおける対応する変異を含む、請求項125に記載の方法。前記変異型部位特異的ポリペプチドが、前記標的DNAの相補鎖を切断する低減された 能力、および前記標的DNAの非相補鎖を切断する低減された能力を有する、請求項12 2に記載の方法。前記変異型部位特異的ポリペプチドが、(i)図41に示されるアミノ酸配列のD10 A変異、または配列番号1〜256および795〜1346に記載されるアミノ酸配列の うちのいずれかにおける対応する変異;並びに(ii)配列番号8のH840A変異、ま たは配列番号1〜256および795〜1346に記載されるアミノ酸配列のうちのいず れかにおける対応する変異、の両方を含む、請求項127に記載の方法前記宿主細胞が原核細胞である、請求項122に記載の方法。前記宿主細胞が真核細胞である、請求項122に記載の方法。前記真核細胞が哺乳類細胞である、請求項130に記載の方法。前記標的DNAの転写が前記複合体非存在下における前記標的DNAの転写と比較して 少なくとも約10%だけ阻害される、請求項122に記載の方法。前記変異型Cas9部位特異的ポリペプチドが異種ポリペプチドを含む、請求項122 に記載の方法。前記異種ポリペプチドが、細胞内局在配列、検出可能な標識、安定性制御ペプチド、転 写調節配列、タンパク質結合配列、またはそれらの組み合わせを含む、請求項133に記 載の方法。前記異種ポリペプチドが安定性制御ペプチドを含む、請求項134に記載の方法。前記安定性制御ペプチドがデグロン配列を含む、請求項135に記載の方法。前記異種ポリペプチドが、転写活性化因子、転写抑制因子、ヒストンリジンメチルトラ ンスフェラーゼ、ヒストンリジン脱メチル化酵素、ヒストンリジンアセチルトランスフェ ラーゼ、ヒストンリジン脱アセチル化酵素、DNAメチラーゼ、DNA脱メチル化酵素、 境界エレメント、周辺リクルートメントエレメント、タンパク質ドッキングエレメント、 およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項133に記載の方法。前記標的DNAの転写が、前記複合体非存在下における前記標的DNAの転写と比較し て少なくとも約1.2倍だけ増加される、請求項133に記載の方法。前記異種ポリペプチドが、転写活性化因子、ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ 、ヒストンリジン脱メチル化酵素、ヒストンリジンアセチルトランスフェラーゼ、DNA 脱メチル化酵素、タンパク質ドッキングエレメント、およびそれらの組み合わせからなる 群から選択される、請求項138に記載の方法。前記DNA標的化RNAが単一分子DNA標的化RNAである、請求項122に記載の 方法。前記DNA標的化RNAが二分子DNA標的化RNAである、請求項122に記載の方 法。請求項122に記載の方法であって、前記宿主細胞に、第二のDNA標的化RNA、ま たは前記第二のDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を導入する ことをさらに含み、前記第二のDNA標的化RNAが、 前記標的DNA内の第二の標的配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメン ト; 部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメント;および 安定性制御配列 を含む、上記方法。前記第二セグメントが、約30ヌクレオチド〜約60ヌクレオチドの長さを有し、 1)5’−GUUUUAGAGCUA−(リンカー)−UAGCAAGUUAAAA−3 ’; 2)5’−GUUUAGAGCUG−(リンカー)−CAGCAAGUUAAA−3’; 3)5’−GUUUUAGAGCUG−(リンカー)−CAGCGAGUUAAA−3’ ; 4)5’−GUUUUUGUACUCU−(リンカー)−AGAAGCUACAAAGA U−3’; 5)5’−GUUGUAGCUCC−(リンカー)−GUUGCUACAAU−3’;お よび 6)5’−GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGC UAGUCCG−3’ から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも約95%のヌクレオチド配列同一性 を有するヌクレオチド配列を含む、請求項122に記載の方法。a)標的DNA内の標的配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント; b)部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメント;および c)安定性制御配列 を含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸。前記DNA標的化RNAをコードする前記ヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能 に連結している、請求項144に記載の単離核酸。前記核酸が、野生型Cas9と比較して低減されたエンドデオキシリボヌクレアーゼ活 性を示す変異型Cas9部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに 含む、請求項144に記載の単離核酸。前記変異型Cas9部位特異的ポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列がプロ モーターに作動可能に連結している、請求項146に記載の単離核酸。請求項24に記載の核酸を含む、組み換え発現ベクター。請求項24に記載の単離核酸、または請求項28に記載の組み換え発現ベクターを含む 、遺伝子改変宿主細胞。複数のメンバーを含む核酸のライブラリーであって、各核酸メンバーが、 a)標的DNA内の標的配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント; b)部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメント;および c)安定性制御配列 を含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含み、 各メンバーが前記第一セグメントの前記ヌクレオチド配列においてライブラリーの他のメ ンバーと異なる、上記ライブラリー。前記DNA標的化RNAをコードする前記ヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能 に連結している、請求項150に記載のライブラリー。a) i)標的DNA内の標的配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント; ii)部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメント;および iii)安定性制御配列 を含むDNA標的化RNA、または前記DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配 列を含む核酸;並びに b)緩衝液 を含む、キット。野生型Cas9と比較して低減されたエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す変異 型Cas9部位特異的ポリペプチドをさらに含む、請求項152に記載のキット。前記DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む前記核酸が、野生型Ca s9と比較して低減されたエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す変異型Cas9部 位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項152に記載 のキット。野生型Cas9と比較して低減されたエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す変異 型Cas9部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸をさらに含 む、請求項152に記載のキット。

明細書に記載された発明。

说明书全文

相互参照 本出願は、2012年5月25日に出願された米国仮特許出願第61/652,086 号、2012年10月19日に出願された同第61/716,256号、2013年1月 28日に出願された同第61/757,640号、および2013年2月15日に出願さ れた同第61/765,576号の利益を主張するものであり、それぞれの米国仮特許出 願はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。

連邦政府による資金提供を受けた研究の記載 本発明は、アメリカ国立衛生研究所によって与えられた助成金番号GM081879を 基に、政府援助を得てなされたものである。米国政府は本発明において一定の権利を有す る。

テキストファイルとして提供される配列表の参照による組み込み 配列表は、2013年3月13日に作成され7645KBのサイズを有するテキストフ ァイル「BERK−187WO−SeqList_ST25.txt」として、本明細書 に提供される。テキストファイルの内容は、それらの全体が参照によって本明細書に組み 込まれる。

細菌の約60%および古細菌の90%が、外来DNAエレメントに対し耐性を付与する ためのCRISPR(clustered regularly interspace d short palindromic repeats)/CRISPR関連(Ca s)系を有している。ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のII型CRISPR系は、RNAによって誘導される外来DN Aサイレンシングに必要充分な、Cas9タンパク質をコードする単一の遺伝子のみと、 2種のRNA(成熟CRISPR RNA(crRNA)および部分的に相補的なトラン ス作動性RNA(tracrRNA))を含む。

近年、特定のDNA配列を標的とするよう設計された改変ヌクレアーゼ酵素が、標的化 された遺伝子欠失、遺伝子置換および遺伝子修復、並びに外来性配列(導入遺伝子)のゲ ノムへの挿入を可能にする、細胞および生物全体を遺伝子操作するための強なツールと して、かなりの関心を集めている。部位特異的DNAヌクレアーゼを改変するための2つ の主な技術が登場しており、それらは共に、配列非特異的DNAエンドヌクレアーゼドメ インが改変DNA結合ドメインに融合されたキメラエンドヌクレアーゼ酵素の構築に基づ いている。しかし、それぞれの新たなゲノム遺伝子座を標的とするには新規のヌクレアー ゼ酵素の設計が必要であるが、このことから、これらのアプローチは多大な時間を要し且 つ高価なものとなっている。さらに、これら2つの技術は正確性が限定されているという 欠点を有しており、それにより予測不可能な非特異的作用がもたらされる可能性がある。

細胞のゲノムおよび遺伝子再プログラミングの系統的照合は、発現または抑制のために 一連の遺伝子を標的とすることを含む。近年の、任意遺伝子を調節のために標的とする最 も一般的なアプローチは、RNA干渉(RNAi)を使用することである。このアプロー チには限界があり、例えば、RNAiは有意な非特異的作用および毒性を示し得る。

それぞれの新たな標的配列のために新たなタンパク質を設計する必要がない形で、ヌク レアーゼ活性(または他のタンパク質活性)を標的DNA内の異なる場所へ正確にターゲ ティングすることを可能にする技術が、この分野で必要とされている。さらに、非特異的 な作用を最小限にして遺伝子発現を調節する方法が、当該技術分野において必要とされて いる。

本開示は、ターゲティング配列を含み、修飾ポリペプチドと共に、標的DNAおよび/ または標的DNAと結合したポリペプチドの部位特異的修飾を与える、DNA標的化RN Aを提供する。本開示はさらに、部位特異的修飾ポリペプチドを提供する。本開示はさら に、標的DNAおよび/または標的DNAと結合したポリペプチドの部位特異的修飾の方 法を提供する。本開示は、標的核酸を酵素的に不活性なCas9ポリペプチドおよびDN A標的化RNAと接触させることを一般的に含む、標的細胞内の標的核酸の転写を調節す る方法を提供する。該方法を実行するためのキットおよび組成物も提供される。本開示は 、Cas9を産生する遺伝子改変細胞;およびCas9遺伝子導入非ヒト多細胞生物を提 供する。

特徴 本開示の特徴には、(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む 第一セグメント;および(ii)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメ ントを含むDNA標的化RNAが含まれる。いくつかの例において、第一セグメントは、 標的DNA内の配列に対して100%の相補性を有する8個のヌクレオチドを含む。いく つかの例において、第二セグメントは、配列番号431〜682(例えば、431〜56 2)に記載のヌクレオチド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の 連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む 。いくつかの例において、第二セグメントは、配列番号563〜682に記載のヌクレオ チド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわ たって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの例におい て、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列の アミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、または配列番号1〜256およ び795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分に 対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

本開示の特徴には、DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含むDNAポ リヌクレオチドが含まれる。いくつかの例において、組み換え発現ベクターは、DNAポ リヌクレオチドを含む。いくつかの例において、DNA標的化RNAをコードするヌクレ オチド配列は、プロモーターに作動可能に連結している。いくつかの例において、プロモ ーターは、誘導性プロモーターである。いくつかの例において、DNA標的化RNAをコ ードするヌクレオチド配列は、複数のクローニング部位をさらに含む。本開示の特徴には 、DNAポリヌクレオチドを含むインビトロ遺伝子改変宿主細胞が含まれる。

本開示の特徴には、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列 を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セ グメントを含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列;並びに(ii)(a )DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)部位特異的酵素活性 を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決定される、活 性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む組み換 え発現ベクターが含まれる。

本開示の特徴には、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列 を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セ グメントを含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列;並びに(ii)(a )DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)標的DNA内の転写 を調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調節される部位がDNA標的化RN Aによって決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレ オチド配列、を含む組み換え発現ベクターが含まれる。

本開示の特徴には、(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(ii)低減された部位特異 的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決定 される、活性部位を含む変異型部位特異的修飾ポリペプチドが含まれる。いくつかの例に おいて、変異型部位特異的修飾ポリペプチドは、S.ピオゲネス(S. pyogene s)配列(配列番号8)のH840A変異、または配列番号1〜256および795〜1 346として記載されるアミノ酸配列のいずれかにおける対応する変異を含む。いくつか の例において、変異型部位特異的修飾ポリペプチドは、S.ピオゲネス配列(配列番号8 )のD10A変異、または配列番号1〜256および795〜1346として記載される アミノ酸配列のいずれかにおける対応する変異を含む。いくつかの例において、変異型部 位特異的修飾ポリペプチドは、(i)S.ピオゲネス配列(配列番号8)のD10A変異 、または配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のい ずれかにおける対応する変異;並びに(ii)S.ピオゲネス配列(配列番号8)のH8 40A変異、または配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ 酸配列のいずれかにおける対応する変異を両方含む。

本開示の特徴には、(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(ii)部位特異的酵素活性 を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決定される、活 性部位を含むキメラ部位特異的修飾ポリペプチドが含まれる。いくつかの例において、キ メラ部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列の アミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、または配列番号1〜256およ び795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分に 対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつ かの例において、DNA標的化RNAは、配列番号431〜682(例えば、配列番号5 63〜682)に記載のヌクレオチド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なく とも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド 配列をさらに含む。いくつかの例において、DNA標的化RNAは、配列番号431〜5 62に記載のヌクレオチド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の 連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列をさら に含む。いくつかの例において、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドの酵素活性は、標的 DNAを修飾する。いくつかの例において、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドの酵素活 性は、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、DNA 修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プ リン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポサ ーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、光 回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性である。いくつかの例において、キメラ部位特異 的修飾ポリペプチドの酵素活性は、ヌクレアーゼ活性である。いくつかの例において、ヌ クレアーゼ活性は、標的DNA内で二重鎖切断を引き起こす。いくつかの例において、キ メラ部位特異的修飾ポリペプチドの酵素活性は、標的DNAと結合した標的ポリペプチド を修飾する。いくつかの例において、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドの酵素活性は、 メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性 、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性 、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUM O化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイ ル化活性である。

本開示の特徴には、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列 を含むポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの例において、該ポリヌクレオチドは、R NAポリヌクレオチドである。いくつかの例において、該ポリヌクレオチドは、DNAポ リヌクレオチドである。本開示の特徴には、該ポリヌクレオチドを含む組み換え発現ベク ターが含まれる。いくつかの例において、該ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可 能に連結している。いくつかの例において、プロモーターは誘導性プロモーターである。 本開示の特徴には、該ポリヌクレオチドを含むインビトロ遺伝子改変宿主細胞が含まれる 。

本開示の特徴には、(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(ii)標的DNA内の転写 を調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調節される部位がDNA標的化RN Aによって決定される、活性部位を含むキメラ部位特異的修飾ポリペプチドが含まれる。 いくつかの例において、活性部位は標的DNA内の転写を増加させる。いくつかの例にお いて、活性部位は標的DNA内の転写を減少させる。

本開示の特徴には、DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および部位特 異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決 定される、活性部位を含む組換え部位特異的修飾ポリペプチド、を含む遺伝子改変細胞が 含まれる。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCa s9/Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、 または配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうち のいずれかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有す るアミノ酸配列を含む。いくつかの例において、細胞は、古細菌細胞、細菌細胞、真核細 胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、幹細胞、植物細胞、藻細胞、動物細胞、無脊椎 動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、カエル細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、ブタ細胞、雌 ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞、げっ歯類細胞、ラット細胞、マウス細胞、非ヒト霊長 類細胞、およびヒト細胞からなる群から選択される。

本開示の特徴には、ゲノムが、(i)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部 位;および(ii)部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDN A標的化RNAによって決定される、活性部位を含む、組換え部位特異的修飾ポリペプチ ドをコードするヌクレオチド配列を含む、導入遺伝子を含む、遺伝子導入非ヒト生物が含 まれる。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas 9/Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、ま たは配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちの いずれかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有する アミノ酸配列を含む。いくつかの例において、該生物は、古細菌、細菌、真核単細胞生物 、藻、植物、動物、無脊椎動物、ハエ、虫、刺胞動物、脊椎動物、魚、カエル、鳥、哺乳 動物、有動物、げっ歯類動物、ラット、マウス、および非ヒト霊長類動物からなる群か ら選択される。

本開示の特徴には、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列 を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セ グメントを含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド; 並びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b) 部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによ って決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードする ポリヌクレオチド、を含む組成物が含まれる。いくつかの例において、DNA標的化RN Aの第一セグメントは、標的DNA内の配列に対して少なくとも100%の相補性を有す る8個のヌクレオチドを含む。いくつかの例において、DNA標的化RNAの第二セグメ ントは、配列番号431〜682(例えば、配列番号563〜682)に記載のヌクレオ チド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわ たって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの例におい て、DNA標的化RNAの第二セグメントは、配列番号431〜562に記載のヌクレオ チド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわ たって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの例におい て、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/Csn1アミノ酸配列の アミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して、または配列番号1〜256およ び795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分に 対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつ かの例において、酵素活性は標的DNAを修飾する。いくつかの例において、酵素活性は 、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、DNA修復 活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン 活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポサーゼ 活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、光回復 酵素活性またはグリコシラーゼ活性である。いくつかの例において、酵素活性はヌクレア ーゼ活性である。いくつかの例において、ヌクレアーゼ活性は標的DNA内で二重鎖切断 を引き起こす。いくつかの例において、酵素活性は標的DNAと結合した標的ポリペプチ ドを修飾する。いくつかの例において、酵素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、脱 メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ 活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化 活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボ シル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性である。いくつかの例にお いて、標的ポリペプチドはヒストンであり、酵素活性はメチルトランスフェラーゼ活性、 脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナー ゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性または脱ユビキチン化活性である 。いくつかの例において、DNA標的化RNAは二重分子DNA標的化RNAであり、組 成物は標的化RNAおよび活性化RNAの両方を含み、その二本鎖形成セグメントは相補 的でありハイブリダイズしてDNA標的化RNAの第二セグメントを形成する。いくつか の例において、活性化RNAの二本鎖形成セグメントは、配列番号431〜682に記載 のヌクレオチド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレ オチドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。

本開示の特徴には、(i)本開示のDNA標的化RNA、またはそれをコードするDN Aポリヌクレオチド;および(ii)核酸を安定化させるための緩衝液を含む組成物が含 まれる。本開示の特徴には、(i)本開示の部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれを コードするポリヌクレオチド;並びに(ii)核酸および/またはタンパク質を安定化さ せるための緩衝液を含む組成物が含まれる。本開示の特徴には、(i)(a)標的DNA 内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異 的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメントを含むDNA標的化RNA、またはそ れをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相 互作用するRNA結合部位;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部位であっ て、標的DNA内の転写が調節される部位がDNA標的化RNAによって決定される、活 性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド、 を含む組成物が含まれる。いくつかの例において、活性部位は、標的DNA内の転写を増 加させる。いくつかの例において、活性部位は、標的DNA内の転写を減少させる。本開 示の特徴には、(i)部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレ オチド;並びに(ii)核酸および/またはタンパク質を安定化させるための緩衝液、を 含む組成物が含まれる。

本開示の特徴には、標的DNAを部位特異的修飾する方法が含まれ、該方法は、標的D NAを、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セ グメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメントを含 むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに(ii )(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)部位特異的酵 素活性を示す活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリ ヌクレオチド、と接触させることを含む。いくつかの例において、標的DNAは染色体外 に存在する。いくつかの例において、標的DNAは、5’−CCY−3’である相補鎖の PAM配列を含み、ここでYはあらゆるDNAヌクレオチドであり、Yは標的DNAの相 補鎖の標的配列のすぐ5’側である。いくつかの例において、標的DNAはインビトロに おける染色体の一部である。いくつかの例において、標的DNAはインビボにおける染色 体の一部である。いくつかの例において、標的DNAは細胞内の染色体の一部である。い くつかの例において、細胞は、古細菌細胞、細菌細胞、真核細胞、真核単細胞生物、体細 胞、生殖細胞、幹細胞、植物細胞、藻細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、 魚類細胞、カエル細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、ブタ細胞、雌ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツ ジ細胞、げっ歯類細胞、ラット細胞、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞、およびヒト細胞か らなる群から選択される。いくつかの例において、DNA標的化RNAは、配列番号43 1〜682(例えば、配列番号563〜682)に記載のヌクレオチド配列のうちのいず れか1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60 %の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの例において、DNA標的化RN Aは、配列番号431〜562に記載のヌクレオチド配列のいずれかに対して、一連の少 なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオ チド配列を含む。いくつかの例において、DNA修飾ポリペプチドは、図3に示されるC as9/Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して 、または配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のう ちのいずれかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有 するアミノ酸配列を含む。いくつかの例において、酵素活性は標的DNAを修飾する。い くつかの例において、酵素活性は、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、 脱メチル化酵素活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ 活性、アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテ グラーゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガー ゼ活性、ヘリカーゼ活性、光回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性である。いくつかの 例において、DNA修飾酵素活性はヌクレアーゼ活性である。いくつかの例において、ヌ クレアーゼ活性は標的DNA内で二重鎖切断を引き起こす。いくつかの例において、接触 は、非相同末端結合または相同組換え修復に許容的な条件下で起こる。いくつかの例にお いて、該方法は、標的DNAをドナーポリヌクレオチドと接触させることをさらに含み、 ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコ ピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部は標的DNAに組み込まれる。いく つかの例において、該方法は、細胞をドナーポリヌクレオチドと接触させることを含まず 、標的DNA内のヌクレオチドが欠失されるように標的DNAが修飾される。いくつかの 例において、酵素活性は標的DNAと結合した標的ポリペプチドを修飾する。いくつかの 例において、酵素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチ ルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性 、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、 SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル 化活性または脱ミリストイル化活性である。いくつかの例において、標的ポリペプチドは ヒストンであり、酵素活性はメチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセ チルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活 性、ユビキチンリガーゼ活性または脱ユビキチン化活性である。いくつかの例において、 複合体は活性化RNAをさらに含む。いくつかの例において、活性化RNAは、配列番号 431〜682に記載のヌクレオチド配列のうちのいずれか1つに対して、一連の少なく とも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%の同一性を有するヌクレオチド 配列を含む。

本開示の特徴には、標的DNA内の部位特異的転写を調節する方法が含まれ、該方法は 、標的DNAを、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含 む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメ ントを含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並び に(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)転写 を調節する活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌ クレオチドと接触させることを含み、該接触により標的DNA内の転写の調節がもたらさ れる。いくつかの例において、標的DNA内の転写は増加される。いくつかの例において 、標的DNA内の転写は減少される。

本開示の特徴には、標的DNAにおける部位特異的修飾の方法が含まれ、該方法は、標 的DNAを、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第 一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに( ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)標的DN A内の転写を調節する活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコード するポリヌクレオチドと接触させることを含む。いくつかの例において、部位特異的修飾 ポリペプチドは、標的DNA内の転写を増加させる。いくつかの例において、部位特異的 修飾ポリペプチドは、標的DNA内の転写を減少させる。

本開示の特徴には、細胞内の標的DNAの部位特異的切断および修飾を促進する方法が 含まれ、該方法は、細胞に、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチ ド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する 第二セグメントを含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオ チド;並びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および (b)標的DNA内に二重鎖切断を生成するヌクレアーゼ活性を示す活性部位を含む部位 特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチドを導入することを含 み;二重鎖切断の部位はDNA標的化RNAによって決定され、接触は非相同末端結合ま たは相同組換え修復に許容的な条件下で起こり、標的DNAが切断および再結合されるこ とで修飾されたDNA配列が生成される。いくつかの例において、該方法は標的DNAを ドナーポリヌクレオチドと接触させることをさらに含み、ドナーポリヌクレオチド、ドナ ーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレ オチドのコピーの一部が標的DNA内に組み込まれる。いくつかの例において、該方法は 、細胞をドナーポリヌクレオチドと接触させることを含まず、標的DNA内のヌクレオチ ドが欠失されるように標的DNAが修飾される。いくつかの例において、該細胞は、古細 菌細胞、細菌細胞、真核細胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、幹細胞、植物細胞、 藻細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、カエル細胞、鳥類細胞、 哺乳類細胞、ブタ細胞、雌ウシ細胞、ヤギ細胞、ヒツジ細胞、げっ歯類細胞、ラット細胞 、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞、およびヒト細胞からなる群から選択される。いくつか の例において、該細胞はインビトロに存在する。いくつかの例において、該細胞はインビ ボに存在する。

本開示の特徴には、対象において遺伝子改変細胞を生産する方法が含まれ、該方法は、 (I)細胞に、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む 第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメン トを含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)標的D NA内に二重鎖切断を生成するヌクレアーゼ活性を示す活性部位を含む部位特異的修飾ポ リペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチドを導入すること(ここで、二重鎖 切断の部位はDNA標的化RNAによって決定され、接触は非相同末端結合または相同組 換え修復に許容的な条件下で起こり、標的DNAが切断および再結合されることで修飾さ れたDNA配列が生成され;それによって遺伝子改変細胞が生産される)、並びに(II )遺伝子改変細胞を対象に移植することを含む。いくつかの例において、該方法は細胞を ドナーポリヌクレオチドと接触させることをさらに含み、ドナーポリヌクレオチド、ドナ ーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレ オチドのコピーの一部が標的DNAに組み込まれる。いくつかの例において、該方法は、 細胞をドナーポリヌクレオチドと接触させることを含まず、標的DNA内のヌクレオチド が欠失されるように標的DNAが修飾される。いくつかの例において、該細胞は、古細菌 細胞、細菌細胞、真核細胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、幹細胞、植物細胞、藻 細胞、動物細胞、無脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、両生類細胞、鳥類細胞、哺 乳類細胞、有蹄動物細胞、げっ歯類細胞、非ヒト霊長類細胞、およびヒト細胞からなる群 から選択される。

本開示の特徴には、外来性部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列 を含む遺伝子改変細胞内の標的DNAを修飾する方法が含まれ、該方法は、遺伝子改変細 胞にDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチドを導入するこ とを含み、(i)該DNA標的化RNAは(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌク レオチド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作 用する第二セグメントを含み;(ii)該部位特異的修飾ポリペプチドは、(a)DNA 標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)ヌクレアーゼ活性を示す活性 部位を含む。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるC as9/Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166もしくは731〜1003に対して 、または配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のう ちのいずれかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性を有 するアミノ酸配列を含む。いくつかの例において、該細胞は、古細菌細胞、細菌細胞、真 核細胞、真核単細胞生物、体細胞、生殖細胞、幹細胞、植物細胞、藻細胞、動物細胞、無 脊椎動物細胞、脊椎動物細胞、魚類細胞、両生類細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、有蹄動物 細胞、げっ歯類細胞、非ヒト霊長類細胞、およびヒト細胞からなる群から選択される。い くつかの例において、該細胞はインビボに存在する。いくつかの例において、該細胞はイ ンビトロに存在する。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドの発現は誘導 性プロモーターの制御下にある。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドの 発現は細胞型特異的プロモーターの制御下にある。

本開示の特徴には、DNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオ チド;並びに再構成および/または希釈のための試薬を含むキットが含まれる。いくつか の例において、キットは、細胞にDNA標的化RNAを導入するための緩衝液、洗浄緩衝 液、対照試薬、対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド、DNAからDNA標的 化RNAを転写するための試薬、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される試 薬をさらに含む。

本開示の特徴には、本開示の部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポ リヌクレオチド;並びに再構成および/または希釈のための試薬を含むキットが含まれる 。いくつかの例において、キットは、細胞に部位特異的修飾ポリペプチドを導入するため の緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド、D NAから部位特異的修飾ポリペプチドをインビトロ生成するための試薬、およびそれらの 組み合わせからなる群から選択される試薬をさらに含む。

本開示の特徴には、本開示の部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポ リヌクレオチド;並びに再構成および/または希釈のための試薬を含むキットが含まれる 。本開示の特徴には、(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む 第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメン トを含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに (ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)部位特 異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決 定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌ クレオチドを含むキットが含まれる。

本開示の特徴には、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列 を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セ グメントを含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド; 並びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b) 標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調節される部位 がDNA標的化RNAによって決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド 、またはそれをコードするポリヌクレオチドを含むキットが含まれる。

本開示の特徴には、(i)上記の組み換え発現ベクターのいずれか;並びに(ii)再 構成および/または希釈のための試薬を含むキットが含まれる。本開示の特徴には、(i )上記の組み換え発現ベクターのいずれか;並びに(ii)(a)DNA標的化RNAと 相互作用するRNA結合部位;および(b)部位特異的酵素活性を示す活性部位であって 、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決定される、活性部位を含む部位特異的 修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクター、を含むキ ットが含まれる。本開示の特徴には、(i)上記の組み換え発現ベクターのいずれか;並 びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)標 的DNA内の転写を調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調節される部位が DNA標的化RNAによって決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチドを コードするヌクレオチド配列を含む組み換え発現ベクター、を含むキットが含まれる。

本開示の特徴には、2つ以上のDNA標的化RNA、またはそれらをコードするDNA ポリヌクレオチドを含む、標的DNAをターゲティングするためのキットが含まれ、2つ 以上のDNA標的化RNAのうちの少なくとも1つの第一セグメントは、2つ以上のDN A標的化RNAのうちの少なくとも別の1つの第一セグメントと、少なくとも1つのヌク レオチドだけ異なる。

図1A〜Bは、二つの例示的な対象DNA標的化RNAの略図を提供し、それぞれ、部位特異的修飾ポリペプチドおよび標的DNAに関連する。

Cas9/Csn1部位特異的修飾ポリペプチドおよびDNAターゲティングRNAを使用して導入された二重鎖DNA切断による標的DNA編集を描写する。

ストレプトコッカス・ピオゲネス(配列番号8)のCas9/Csn1タンパク質のアミノ酸配列を示す。Cas9は、HNHおよびRuvCエンドヌクレアーゼの双方と相同であるドメインを有する。モチーフ1〜4に上線が引かれる。

ストレプトコッカス・ピオゲネス(配列番号8)のCas9/Csn1タンパク質のアミノ酸配列を示す。Cas9は、HNHおよびRuvCエンドヌクレアーゼの双方と相同であるドメインを有する。ドメイン1および2に上線が引かれる。

図4A〜Bは、複数の種からのCas9/Csn1タンパク質間のパーセント同一性を示す。(A)ストレプトコッカス・ピオゲネスに関する配列同一性。たとえば、図3Bで示される通り、ドメイン1はストレプトコッカス・ピオゲネスのCas9/Csn1のアミノ酸7〜166、ドメイン2はストレプトコッカス・ピオゲネスのCas9/Csn1のアミノ酸731〜1003である。(B)ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)に関する配列相同性である。たとえば、ドメイン1はナイセリア・メニンギティディス(配列番号79)のCas9/Csn1のアミノ酸13〜139、ドメイン2はナイセリア・メニンギティディス(配列番号79)のCas9/Csn1のアミノ酸475〜750である。

図32の系統表から選択された様々な多種多様の種からのCas9/Csn1タンパク質のモチーフ1〜4の多重配列アラインメントを示す。(図32、図3Aおよび表1を参照)(ストレプトコッカス・ピオゲネス(配列番号8)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(配列番号17)、ガンマ・プロテオバクテリウム(Gamma proteobacterium)(配列番号107)、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)(配列番号3)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)(配列番号152)、ユーバクテリウム・レクタレ(Eubacterium rectale)(配列番号99)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)(配列番号185)、マイコプラズマ・シノビエ(Mycoplasma synoviae)(配列番号22)、マイコプラズマ・モービレ(Mycoplasma mobile)(配列番号16)、ウォリネラ・サクシノゲネス(Wolinella succinogenes)(配列番号10)、フラボバクテリウム・コラムナレ(Flavobacterium columnare)(配列番号235)、フィブロバクター・サクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)(配列番号121)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)(配列番号21)、アシドサーマス・セルロリティカス(Acidothermus cellulolyticus)(配列番号42)およびビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)(配列番号131))。

図6A〜Bは、様々な種からの天然tracrRNA(「活性化RNA」)配列のアラインメントを提供する(L.イノキュア(L. innocua)(配列番号268);S.ピオゲネス(配列番号267);S.ミュータンス(S.mutans)(配列番号269);S.サーモフィラス(S.thermophilus)1(配列番号270);M.モービレ(M. mobile)(配列番号274);N.メニンギティデス(N. meningitides)(配列番号272);P.マルトシダ(P.multocida)(配列番号273);S.サーモフィラス2(配列番号271);およびS.ピオゲネス(配列番号267))。(A)類似した構造および大変類似したCas9/Csn1配列のCRISPR/Cas座位に関連する、選択されたtracrRNAオルソログ(AlignX、VectorNTIパッケージ、インビトロジェン社(Invitrogen))の多重配列アラインメントである。黒色の枠は共有されるヌクレオチドを示す。(B)異なる構造および非近縁種であるCas9/Csn1配列のCRISPR/Cas座位に関連する、選択されたtracrRNAオルソログ(AlignX、VectorNTIパッケージ、インビトロジェン社)の多重配列アラインメントである。N.メニンギティディス(N. meningitidis)およびP.マルトシダのtracrRNAオルソログの配列類似性に留意されたい。黒色の枠は共有されるヌクレオチドを示す。より多くの例示的活性化RNA配列に関しては、配列番号431〜562を参照されたい。

図7A〜Bは、様々な種からのcrRNA(「標的化RNA」)配列の天然二本鎖形成セグメントのアラインメントを提供する(L.イノキュア(配列番号//);S.ピオゲネス(配列番号//);S.ミュータンス(配列番号//);S.サーモフィラス1(配列番号//);C.ジェジュニ(C.jejuni)(配列番号//);S.ピオゲネス(配列番号//);F.ノビシダ(F.novicida)(配列番号//);M.モービレ(配列番号//);N.メニンギティデス(配列番号//);P.マルトシダ(配列番号//);およびS.サーモフィラス2(配列番号//)。(A)類似した構造および大変類似したCas9/Csn1配列の座位に関連する、標的化RNA配列の例示的二本鎖形成セグメントの多重配列アラインメント(AlignX、VectorNTIパッケージ、インビトロジェン社)である。(B)異なる構造および多種多様のCas9配列の座位に関連する、標的化RNA配列の例示的二本鎖形成セグメントの多重配列アラインメント(AlignX、VectorNTIパッケージ、インビトロジェン社)である。黒色の枠は共有されるヌクレオチドを示す。より多くの例示的二本鎖形成セグメント標的化RNA配列に関しては、配列番号563〜679を参照されたい。

crRNA(「標的化RNA」)の天然二本鎖形成セグメントと、対応するtracrRNAオルソログ(「活性化RNA」)の二本鎖形成セグメントとのハイブリダイゼーションの概略を提供する。上の配列が標的化RNAであり;下の配列が、対応する活性化RNAの二本鎖形成セグメントである。CRISPR座位はII型(Nmeni/CASS4)CRISPR/Casシステムに属する。命名法は、CRISPRデータベース(CRISPR DB)に従う。S.ピオゲネス(配列番号//および//);S.ミュータンス(配列番号//および//);S.サーモフィラス1(配列番号//および//);S.サーモフィラス2(配列番号//および//);L.イノキュア(配列番号//および//);T.デンティコラ(T.denticola)(配列番号//および//);N.メニンギティデス(配列番号//および//);S.ゴルドニ(S.gordonii)(配列番号//および//);B.ビフィダム(B.bifidum)(配列番号//および//);L.サリバリウス(L.salivarius)(配列番号//および//);F.ツラレンシス(F.tularensis)(配列番号//および//);およびL.ニューモフィラ(L. pneumophila)(配列番号//および//)。いくつかの種にはそれぞれ二つのII型CRISPR座位が含まれていることに留意されたい。より多くの例示的活性化RNA配列に関しては、配列番号431〜562を参照されたい。より多くの例示的二本鎖形成セグメント標的化RNA配列に関しては、配列番号563〜679を参照されたい。

二つの種からの例示tracrRNA(活性化RNA)およびcrRNA(標的化RNA)配列を示す。ある程度の互換性が存在する;たとえば、S.ピオゲネスCas9/Csn1タンパク質はL.イノキュア由来のtracrRNAおよびcrRNAと機能する。「|」は、標準的なワトソン−クリック塩基対を表し、一方で、「・」はG−Uゆらぎ塩基対を表す。「可変20nt」または「20nt」は標的DNAに相補的なDNA標的断片を意味する(この領域は長さが最大約100ntであり得る)。また、標的化RNAおよび活性化RNAの特色を組み込む単一分子DNA標的化RNAの設計も示される(幅広い種類の種からのCas9/Csn1タンパク質配列が図3で示され、配列番号1〜256および795〜1346として示される)。ストレプトコッカス・ピオゲネス:上から下:(配列番号//、//、//);リステリア・イノキュア:上から下:(配列番号//、//、//)。提供される配列は、非制限的な例であり、単一分子DNA標的化RNAおよび二分子DNA標的化RNAが、幅広い種類の種からの天然に存在する配列を基に、どのように設計され得るかを図示することを目的とする。幅広い種類の種からの適切な配列の様々な例が次のように示される(Cas9タンパク質:配列番号1〜259;tracrRNA:配列番号431〜562、またはそれらの補体;crRNA:配列番号563〜679、またはそれらの補体;および例示単一分子DNA標的化RNA:配列番号680〜682)。

Cas9が、二つのRNA分子によって誘導されたDNAエンドヌクレアーゼであることを示す。

同上。

同上。

同上。

Cas9が、二つのRNA分子によって誘導されたDNAエンドヌクレアーゼであることを示す。(上から下で、配列番号278〜280および//)。

図11A〜Bは、Cas9が二つのヌクレアーゼドメインを用いて標的DNAの二つの鎖を切断することを示す。

標的DNAのCas9触媒性切断が、tracrRNAの活性化ドメインを必要とし、crRNAのシード配列によって支配されることを図示する。

同上。

標的DNAのCas9触媒性切断が、tracrRNAの活性化ドメインを必要とし、crRNAのシード配列によって支配されることを図示する。(上から下で、配列番号278〜280および//)。

標的DNAのCas9触媒性切断が、tracrRNAの活性化ドメインを必要とし、crRNAのシード配列によって支配されることを図示する。(上から下で、配列番号281〜290)。

標的DNAのCas9触媒性切断が、tracrRNAの活性化ドメインを必要とし、crRNAのシード配列によって支配されることを示す。(上から下で、配列番号291〜292、283、293〜298)。

PAMがCas9−tracrRNA:crRNA複合体による標的DNA切断を認可するために必要であることを示す。

同上。

同上。

tracrRNAおよびcrRNAの特色を組み合わせる単一の操作RNA分子を用いて、Cas9をプログラムすることができることを図示する。キメラA(配列番号299);キメラB(配列番号300)。

同上。

同上。

II型RNA媒介性CRISPR/Cas免疫経路を示す。

図16A〜Bは、Cas9ヌクレアーゼの精製を示す。

二重tracrRNA:crRNAに誘導されるCas9がプロトスペーサープラスミドおよびオリゴヌクレオチドDNAを切断することを示す。

二重tracrRNA:crRNAに誘導されるCas9がプロトスペーサープラスミドおよびオリゴヌクレオチドDNAを切断することを示す。(上から下で、配列番号301〜303および//)。

二重tracrRNA:crRNAに誘導されるCas9がプロトスペーサープラスミドおよびオリゴヌクレオチドDNAを切断することを示す。(上から下で、配列番号304〜306および//)。

Cas9が3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を伴うMg2+依存エンドヌクレアーゼであることを示す。

同上。

標的DNAの二重tracrRNA:crRNA指示性Cas9切断は部位特異的であることを図示する。

同上。

標的DNAの二重tracrRNA:crRNA指示性Cas9切断は部位特異的であることを図示する。(上から下で、配列番号307〜309、//、337〜339および//)。

標的DNAの二重tracrRNA:crRNA指示性Cas9切断が速く効率的であることを示す。

同上。

図21A〜Bは、Cas9のHNHおよびRuvC様ドメインがそれぞれ相補DNAおよび非相補DNA鎖の切断を指示することを示す。

tracrRNAが標的DNA認識のために必要であることを示す。

tracrRNAの最小領域が標的DNAの二重tracrRNA:crRNA指示性切断を誘導することが可能であることを示す。

同上。

Cas9による二重tracrRNA:crRNA誘導標的DNA切断が種特異的であることを示す。

同上。

同上。

同上。

crRNAのシード配列がCas9による標的DNAの二重tracrRNA:crRNA指示性切断を支配することを示す。標的DNAプローブ1(配列番号310);スペーサー4 crRNA(1〜42)(配列番号311);tracrRNA(15〜89)(配列番号//)。

crRNAのシード配列がCas9による標的DNAの二重tracrRNA:crRNA指示性切断を支配することを示す。パネル左(配列番号310)。

crRNAのシード配列がCas9による標的DNAの二重tracrRNA:crRNA指示性切断を支配することを示す。

PAM配列がCas9−tracrRNA:crRNAによるプロトスペーサープラスミドDNA切断および細菌細胞内でのCas9媒介性プラスミドDNA干渉に必要不可欠であることを示す。

PAM配列がCas9−tracrRNA:crRNAによるプロトスペーサープラスミドDNA切断および細菌細胞内でのCas9媒介性プラスミドDNA干渉に必要不可欠であることを示す。(上から下で、配列番号312〜314)。

PAM配列がCas9−tracrRNA:crRNAによるプロトスペーサープラスミドDNA切断および細菌細胞内でのCas9媒介性プラスミドDNA干渉に必要不可欠であることを示す。(上から下で、配列番号315〜320)。

二重tracrRNA:crRNAを模倣する単一のキメラRNAに誘導されるCas9がプロトスペーサーDNAを切断することを示す。

同上。

二重tracrRNA:crRNAを模倣する単一のキメラRNAに誘導されるCas9がプロトスペーサーDNAを切断することを示す。(上から下で、配列番号321〜324)。

緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子配列を標的とするキメラRNAの新規の設計を示す。

緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子配列を標的とするキメラRNAの新規の設計を示す。(上から下で、配列番号325〜326)。

緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子配列を標的とするキメラRNAの新規の設計を示す。GFP1標的配列(配列番号327);GFP2標的配列(配列番号328);GFP3標的配列(配列番号329);GFP4標的配列(配列番号330);GFP5標的配列(配列番号331);GFP1キメラRNA(配列番号332);GFP2キメラRNA(配列番号333);GFP3キメラRNA(配列番号334);GFP4キメラRNA(配列番号335);GFP5キメラRNA(配列番号336)。

緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子配列を標的とするキメラRNAの新規の設計を示す。

ヒト細胞内のCas9および誘導RNAの同時発現が標的座位において二重鎖DNAの切断をもたらすことを示す。

同上。

ヒト細胞内のCas9および誘導RNAの同時発現が標的座位において二重鎖DNAの切断をもたらすことを示す。(上から下で、配列番号425〜428)。

ヒト細胞内のCas9および誘導RNAの同時発現が標的座位において二重鎖DNAの切断をもたらすことを示す。

同上。

図30A〜Bは、細胞可溶化物が活性Cas9:sgRNAを含み、部位特異的DNA切断を支援することを示す。

sgRNA構築物の3’伸展が部位特異的NHEJ媒介性変異誘発を強化することを示す。(上から下で、配列番号428〜430)。

sgRNA構築物の3’伸展が部位特異的NHEJ媒介性変異誘発を強化することを示す。

様々な有機体からの代表Cas9配列の系統樹を示す。

様々な有機体からの代表Cas9配列の系統樹の主要グループに関するCas9座位構造を示す。

選択された細菌種からのII型CRISPR−Casの構造を示す。

同上。

同上。

同上。

同上。

選択されたII型CRISPR CasシステムのtracrRNAおよびpre−crRNAの同時プロセシングを示す。(上から下で、配列番号//、//、//、//、//、//、//、//)。

選択されたII型CRISPR CasシステムのtracrRNAおよびpre−crRNAの同時プロセシングを示す。(上から下で、配列番号//、//、//、//)。

tracrRNA配列の多様性を示すtracrRNAオルソログの配列アラインメントを示す。

ディープRNAシークエンシングによって明らかになった細菌tracrRNAオルソログおよびcrRNAの発現を示す。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

座標(対象の領域)および対応するcDNA配列(5’から3’)を含む、研究される細菌種のシークエンシングによって回収されるtracrRNAオルソログおよび成熟crRNAを全て列挙する。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

シグネチャー遺伝子cas9の存在を特徴とするII型CRISPR−Cas座位を含む細菌種の表を示す。これらの配列を系統発生分析のために使用した。

同上。

図39A〜Bは、CRISPR干渉(CRISPRi)システムの設計を示す。

CRISPRiが転写伸長および開始を効果的にサイレンシングすることを示す。

同上。

同上。

同上。

同上。

図41A〜Bは、CRISPRiが転写伸長を遮断することで機能することを示す。

CRISPRiシステムの標的特異性を示す。

同上。

同上。

サイレンシング効果に影響を及ぼす因子の特徴を示す。

同上。

同上。

同上。

同上。

同上。

CRISPRi遺伝子ノックダウンを使用した複合体制御ネットワークの機能性プロファイリングを示す。

同上。

同上。

哺乳動物細胞でCRISPRiを用いた遺伝子サイレンシングを示す。

同上。

S.ピオゲネスのII型CRISPRシステムのメカニズムを示す。

図47A〜Bは、dCas9およびsgRNAで同時形質転換された大腸菌(E.coli)細胞培養の成長曲線を示す。

CRISPRiが複数コピープラスミド上のレポーター遺伝子の発現をサイレンシングできることを示す。

異なる遺伝子を標的とするsgRNAを伴う細胞のRNA−seqデータを示す。

同上。

同上。

近接する二重ミスマッチを伴うsgRNAのサイレンシング効果を示す。

同上。

同上。

同上。

同上。

図51A〜Cは、二つのsgRNAを用いて単一の遺伝子を制御することの組み合わせサイレンシング効果を示す。

sgRNA抑制は標的座位および転写開始からの相対的な距離に依存することを示す。

図53A〜Cは、変異形Cas9部位特異的ポリペプチド(dCas9)が、dCas9がRuvC1ドメインのみ(たとえば、D10A)、HNHドメインのみ(たとえば、H840A)、または双方のドメイン(たとえば、D10AおよびH840A)で活性を低下させる場合、対象方法のための機構であることを示す実験結果である。

対象変異形Cas9部位特異的ポリペプチドのための適切な融合パートナー(またはそれらの断片)の例を列挙する。例には列挙されたものが含まれるが、これらに限定されない。

同上。

同上。

キメラ部位特異的ポリペプチドがヒト細胞の転写を活性化(増加)するために使用され得ることを示す。

同上。

同上。

同上。

キメラ部位特異的ポリペプチドがヒト細胞の転写を抑制(低下)するために使用され得ることを示す。

天然tracrRNAおよびcrRNAとおよそ50%の同一性を共有する人工配列が、DNA標的化RNAのタンパク質結合ドメインの構造が保存される限り、Cas9と一緒に機能して標的DNAを切断し得ることを示す。

同上。

定義(第一部) 本明細書で同義的に使用される用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、あらゆる 長さのヌクレオチドの重合体形態を指し、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオ チドを指す。従って、この用語には、限定はされないが、一本鎖、二本鎖、または多鎖の DNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA−RNAハイブリッド、またはプ リンおよびピリミジン塩基もしくは他の天然の、化学的もしくは生化学的に修飾された、 非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む重合体が含まれる。「オリゴ ヌクレオチド」は、一般的には、約5〜約100ヌクレオチドのポリヌクレオチドである 一本鎖または二本鎖DNAを指す。しかし、本開示の目的上、オリゴヌクレオチドの長さ には上限は無い。オリゴヌクレオチドは、「オリゴマー」または「オリゴ」としても知ら れており、当該技術分野において公知の方法によって、遺伝子から単離、または化学合成 することができる。用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、記載されている実施形 態に適用可能な場合、一本鎖ポリヌクレオチド(センスまたはアンチセンス等)および二 本鎖ポリヌクレオチドを含むものと理解すべきである。

「ステムループ構造」とは、主に一本鎖のヌクレオチド(ループ部分)の領域によって 一方の端で連結されている二本鎖(ステップ部分(step portion))を形成 することが知られている、または予想されるヌクレオチド領域を含む二次構造を有する核 酸を指す。用語「ヘアピン」および「フォールドバック」構造も、ステムループ構造を指 して、本明細書では使用される。そのような構造は、当該技術分野において周知であり、 これらの用語は当該技術分野において公知のそれらの意味と共に、一貫して使用される。 当該技術分野で知られているように、ステムループ構造は正確な塩基対形成を必要としな い。従って、ステムは一つまたは複数の塩基ミスマッチを含む場合がある。あるいは、そ の塩基対形成は正確である、すなわち、いかなるミスマッチも含まない場合がある。

「ハイブリッド可能な」または「相補的な」または「実質的に相補的な」とは、核酸( 例えばRNA)が、温度および溶液イオン強度が適切なインビトロおよび/またはインビ ボ条件下で、配列特異的、逆平行的に、別の核酸に、非共有結合することを可能にする、 すなわち、ワトソン・クリック塩基対形成および/もしくはG/U塩基対形成、「アニー ル」、または「ハイブリダイズ」することを可能にするヌクレオチド配列を含む(すなわ ち、核酸が相補的核酸に特異的に結合する)ことを意味する。当該技術分野で知られてい るように、標準的なワトソン・クリック塩基対形成には、アデニン(A)とチミジン(T )の対合、アデニン(A)とウラシル(U)の対合、およびグアニン(G)とシトシン( C)の対合[DNA、RNA]が含まれる。さらに、2つのRNA分子間の(例えば、d sRNA)ハイブリダイゼーションにおいては、グアニン(G)がウラシル(U)と塩基 対合することも当該技術分野において周知である。例えば、G/U塩基対形成は、mRN A内のコドンとtRNAのアンチコドン塩基対形成との関係において、遺伝暗号の縮重( すなわち、重複性)に部分的に関与している。本開示に照らして、主題のDNA標的化R NA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二本鎖)のグアニン(G)は、ウラシ ル(U)に対し相補的であるとみなされ、逆の場合も同じである。従って、G/U塩基対 が主題のDNA標的化RNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二本鎖)の所 与のヌクレオチド位置で形成可能である場合、その位置は非相補的であるとはみなさず、 代わりに、相補的であるとみなされる。

ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は周知であり、Sambrook, J., Fritsch, E . F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Co ld Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (1989)、特にその第11章お よび表11.1;およびSambrook, J. and Russell, W., Molecular Cloning: A Laborato ry Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbo r (2001)に例示されている。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの 「ストリンジェンシー」を決定する。

ハイブリダイゼーションは2本の核酸が相補的な配列を含有することを必要とするが、 塩基間のミスマッチは可能である。2本の核酸間のハイブリダイゼーションに適した条件 は、当該技術分野において周知の可変要素であるそれらの核酸の長さおよび相補性の程度 に依存する。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が高い程、それらの配列を有する 核酸から成るハイブリッドの融解温度(Tm)値はより高くなる。短い相補性(例えば、 35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、または18以下のヌクレオチドに わたる相補性)を有する核酸間のハイブリダイゼーションにおいては、ミスマッチの位置 が重要となる(Sambrook et al.、上記、11.7〜11.8を参照)。典型的に、ハイブリッド 可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。ハイブリッド可能な核酸の 最小の長さの例は、少なくとも約15ヌクレオチド;少なくとも約20ヌクレオチド;少 なくとも約22ヌクレオチド;少なくとも約25ヌクレオチド;および少なくとも約30 ヌクレオチドである。さらに、温度および洗浄液の塩濃度が、相補的な領域の長さおよび 相補性の程度等の要素に応じ、必要に応じて調整されてもよいことは当業者に認識される 。

ポリヌクレオチド配列が、特異的にハイブリッド可能であるために、またはハイブリッ ド可能であるために、その標的核酸のポリヌクレオチド配列に対し100%相補的である 必要は無いことは、当該技術分野において理解される。さらに、ポリヌクレオチドは、介 在セグメントまたは隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に含まれないように( 例えば、ループ構造またはヘアピン構造)、一つまたは複数のセグメントにわたってハイ ブリダイズし得る。ポリヌクレオチドは、標的とする標的核酸配列内の標的領域に対して 、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なく とも99%、または100%の配列相補性を含み得る。例えば、アンチセンス化合物の2 0中18のヌクレオチドが標的領域に対し相補的であり、従って特異的にハイブリダイズ するアンチセンス核酸は、90%の相補性を示すであろう。この例において、残りの非相 補的ヌクレオチドは、クラスター化しているか、または相補的ヌクレオチドと共に散在し ている場合があり、互いに、または相補的ヌクレオチドに近接している必要は無い。核酸 内の特定の一続きの核酸配列間の相補性パーセントは、当該技術分野において公知のBL ASTプログラム(基本的な局所的アライメント検索ツール)およびPowerBLAS Tプログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol., 1990, 215, 403-410; Zhang and Madde n, Genome Res., 1997, 7, 649-656)を用いて、またはGapプログラム(Wiscon sin配列解析パッケージ、Unix(登録商標)用バージョン8、Genetics Computer Group, University Research Park , Madison Wis.)を用いて、Smith and Waterman(Adv . Appl. Math., 1981, 2, 482-489)のアルゴリズムを使用する初期設定を用いて、通常の 方法で決定することができる。

用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書で同義的に 使用され、コードされたアミノ酸およびコードされていないアミノ酸、化学的または生化 学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、並びに修飾ペプチド骨格を有するポリペプチ ドを含み得る、あらゆる長さのアミノ酸重合体形態を指す。

「結合」とは、本明細書で使用される場合(例えばポリペプチドのRNA結合ドメイン に関連して)、高分子間(例えば、タンパク質および核酸間)の非共有結合性相互作用を 指す。非共有結合性相互作用の状態において、高分子は、「会合」または「相互作用」ま たは「結合」していると言われる(例えば、分子Xが分子Yと相互作用すると言われる場 合、分子Xが非共有結合的に分子Yに結合することを意味する)。結合性相互作用の全て の成分が配列特異的である必要は無いが(例えば、DNA骨格内のリン酸塩残基との接触 )、結合性相互作用のいつくかの部分は配列特異的である場合がある。結合性相互作用は 、一般的には、10−6M未満、10−7M未満、10−8M未満、10−9M未満、1 0−10M未満、10−11M未満、10−12M未満、10−13M未満、10−14 M未満、または10−15M未満の解離定数(Kd)を特徴とする。「親和性」は結合の 強さを指し、結合親和性の増加はより低いKdと相関する。

「結合ドメイン」とは、別の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質ド メインを意味する。結合ドメインは、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、R NA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タン パク質)に結合し得る。タンパク質ドメイン結合タンパク質の場合、それ自体に結合する ことができ(ホモ二量体、ホモ三量体等を形成)、および/または一つもしくは複数の異 なるタンパク質から成る一つもしくは複数の分子に結合することができる。

用語「保存的アミノ酸置換」とは、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のタンパク質にお ける互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バ リン、ロイシン、およびイソロイシンから成る;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ 酸群はセリンおよびスレオニンから成る;アミド含有側鎖を有するアミノ酸群はアスパラ ギンおよびグルタミンから成る;芳香族側鎖を有するアミノ酸群はフェニルアラニン、チ ロシン、およびトリプトファンから成る;塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリジン、アル ギニン、およびヒスチジンから成る;酸性側鎖を有するアミノ酸群はグルタミン酸塩およ びアスパラギン酸から成る;並びに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群はシステインおよび メチオニンから成る。例示的な保存的アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシ ン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアス パラギン−グルタミンである。

ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、別のポリヌクレオチドまたはポリペプチドに 対してある特定の「配列同一性」パーセントを有し、このことは、アライメントされた場 合にそのパーセンテージの塩基またはアミノ酸が同一であること、および、2つの配列を 比較する場合には同一の相対位置にあることを意味する。配列同一性は、いくつかの異な る方法で決定することができる。配列同一性を決定するために、様々な方法およびncb i.nlm.nili.gov/BLAST、ebi.ac.uk/Tools/msa /tcoffee/、ebi.ac.uk/Tools/msa/muscle/、ma fft.cbrc.jp/alignment/software/を含むサイトにおい てワールドワイドウェブ上で利用可能なコンピュータプログラム(例えば、BLAST、 T−COFFEE、MUSCLE、MAFFT等)を用いて、配列をアライメントするこ とができる。例えば、Altschul et al. (1990), J. Mol. Bioi. 215:403-10を参照された い。

特定のRNAを「コードする」DNA配列は、RNAに転写されるDNA核酸配列であ る。DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されるRNA(mRNA)をコードす る場合もあるし、あるいは、DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRN A(例えばtRNA、rRNA、またはDNA標的化RNA;「非コード」RNAまたは 「ncRNA」とも称される)をコードする場合もある。

「タンパク質コード配列」または特定のタンパク質もしくはポリペプチドをコードして いる配列は、適切な制御配列の制御下に置かれた場合、インビトロまたはインビボにおい て、(DNAの場合)mRNAに転写され、(mRNAの場合)ポリペプチドに翻訳され る、核酸配列である。コード配列の境界は、5’末端(N末端)の開始コドンおよび3’ 末端(C末端)の翻訳終止ナンセンスコドンによって決定される。コード配列には、限定 はされないが、原核生物または真核生物のmRNAから得られるcDNA、原核生物また は真核生物のDNAから得られるゲノムDNA配列、および合成核酸が含まれ得る。転写 終結配列は通常、コード配列の3’側に位置している。

本明細書で使用される場合、「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼと結合する ことができ、下流(3’方向)のコード配列または非コード配列の転写を開始することが できるDNA調節領域である。本発明を定義する目的において、プロモーター配列は、転 写開始点によってその3’末端に結合しており、上流(5’方向)に伸びて、バックグラ ウンドを超えた検出可能なレベルで転写を開始させるのに必要な最小数の塩基またはエレ メントを含む。プロモーター配列内には、転写開始点、およびRNAポリメラーゼの結合 に関与するタンパク質結合ドメインが存在する。真核生物のプロモーターはしばしば(常 にではないが)、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有する。誘導性プ ロモーターを含む種々のプロモーターを使用して、本発明の種々のベクターを駆動させる ことができる。

プロモーターは、恒常的活性型プロモーター(すなわち、恒常的に活性/「ON」状態 であるプロモーター)であってもよく、誘導性プロモーター(すなわち、活性/「ON」 または不活性/「OFF」状態が、外部刺激、例えば、特定の温度、化合物、またはタン パク質の存在によって制御されるプロモーター)であってもよく、空間限定的(spat ially restricted)プロモーター(すなわち、転写調節領域、エンハン サー等)(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター等)であっても よく、時間限定的(temporally restricted)プロモーター(すな わち、プロモーターが、胚発生の特定の段階の間、または生物学的プロセス特定の段階、 例えば、マウスにおける毛包周期の間に、「ON」状態または「OFF」状態にある)で あってもよい。

適切なプロモーターはウイルス由来であってもよく、従ってウイルス性プロモーターと 称されてもよく、あるいは、適切なプロモーターは原核生物または真核生物を含むあらゆ る生物に由来していてもよい。適切なプロモーターを用いることで、いかなるRNAポリ メラーゼ(例えば、polI、polII、polIII)によっても発現を駆動するこ とができる。プロモーターの例としては、限定はされないが、SV40初期プロモーター 、マウス乳癌ウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プ ロモーター(AdMLP);単純疱疹ウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウ イルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター領域(CMVIE) 、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6 )(Miyagishi et al. , Nature Biotechnology 20, 497 - 500 (2002))、高感度U6プ ロモーター(例えば、Xia et al., Nucleic Acids Res. 2003 Sep 1;31(17))、ヒトH1 プロモーター(H1)等が挙げられる。

誘導性プロモーターの例としては、限定はされないが、T7RNAポリメラーゼプロモ ーター、T3RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル−β−D−チオガラクトピ ラノシド(IPTG)調節性プロモーター、ラクトース誘導性プロモーター、熱ショック プロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、 金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーター等が挙げられる。従っ て誘導性プロモーターは、ドキシサイクリン;RNAポリメラーゼ、例えば、T7RNA ポリメラーゼ;エストロゲン受容体;エストロゲン受容体融合物;等を含むがこれらに限 定はされない分子によって調節され得る。

いくつかの実施形態において、プロモーターは、多細胞生物においてプロモーターが一 部の特定の細胞内で活性(すなわち、「ON」)であるような、空間限定的プロモーター (すなわち、細胞型特異的プロモーター、組織特異的プロモーター等)である。空間限定 的プロモーターは、エンハンサー、転写調節領域、制御配列等とも称され得る。いかなる 好都合な空間限定的プロモーターも使用することができ、適切なプロモーター(例えば、 脳特異的プロモーター、一部のニューロンにおける発現を駆動するプロモーター、生殖細 胞系列における発現を駆動するプロモーター、における発現を駆動するプロモーター、 筋肉における発現を駆動するプロモーター、膵臓の島細胞における発現を駆動するプロモ ーター等)の選択は、生物によって異なる。例えば、植物、ハエ、虫、哺乳動物、マウス 等において、種々の空間限定的プロモーターが知られている。従って、空間限定的プロモ ーターを用いることで、生物に応じて、種々様々な異なる組織および細胞型において主題 の部位特異的修飾ポリペプチドをコードする核酸の発現を制御することがでる。また、い くつかの空間限定的プロモーターは、プロモーターが、胚発生の特定の段階の間、または 生物学的プロセスの特定の段階(例えば、マウスにおける毛包周期)の間に、「ON」状 態または「OFF」状態にあるように、時間限定的である。

例示を目的として、空間限定的プロモーターの例としては、限定はされないが、ニュー ロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、 平滑筋特異的プロモーター、光受容体特異的プロモーター等が挙げられる。ニューロン特 異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、ニューロン特異的エノラーゼ (NSE)プロモーター(例えば、EMBL HSENO2、X51956を参照);芳 香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)プロモーター;神経フィラメントプロモーター(例 えば、GenBank HUMNFL、L04147を参照);シナプシンプロモーター (例えば、GenBank HUMSYNIB、M55301を参照);thy−1プロ モーター(例えば、Chen et al. (1987) Cell 51:7-19;およびLlewellyn, et al. (2010) Nat. Med. 16(10):1161-1166を参照);セロトニン受容体プロモーター(例えば、Ge nBank S62283を参照);チロシン酸化酵素プロモーター(TH)(例えば 、Oh et al. (2009) Gene Ther 16:437; Sasaoka et al. (1992) Mol. Brain Res. 16:27 4; Boundy et al. (1998) J. Neurosci. 18:9989;およびKaneda et al. (1991) Neuron 6 :583-594を参照);GnRHプロモーター(例えば、Radovick et al. (1991) Proc. Nat l. Acad. Sci. USA 88:3402-3406を参照);L7プロモーター(例えば、Oberdick et al . (1990) Science 248:223-226を参照);DNMTプロモーター(例えば、Bartge et al . (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3648-3652を参照);エンケファリンプロモー ター(例えば、Comb et al. (1988) EMBO J. 17:3793-3805を参照);ミエリン塩基性タ ンパク質(MBP)プロモーター;Ca2+−カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ II−α(CamKIIα)プロモーター(例えば、Mayford et al. (1996) Proc. Natl . Acad. Sci. USA 93:13250;およびCasanova et al. (2001) Genesis 31:37を参照);C MVエンハンサー/血小板由来増殖因子−βプロモーター(例えば、Liu et al. (2004) Gene Therapy 11:52-60を参照);等が挙げられる。

脂肪細胞特異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、aP2遺伝子プ ロモーター/エンハンサー、例えば、ヒトaP2遺伝子の−5.4kb〜+21bpの領 域(例えば、Tozzo et al. (1997) Endocrinol. 138:1604; Ross et al. (1990) Proc. N atl. Acad. Sci. USA 87:9590;およびPavjani et al. (2005) Nat. Med. 11:797を参照) ;グルコーストランスポーター−4(GLUT4)プロモーター(例えば、Knight et al . (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:14725を参照);脂肪酸トランスロカーゼ( FAT/CD36)プロモーター(例えば、Kuriki et al. (2002) Biol. Pharm. Bull. 25:1476;およびSato et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:15703を参照);ステアロイル CoA不飽和酵素−1(SCD1)プロモーター(Tabor et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:20603);レプチンプロモーター(例えば、Mason et al. (1998) Endocrinol. 139: 1013;およびChen et al. (1999) Biochem. Biophys. Res. Comm. 262:187を参照);アデ ィポネクチンプロモーター(例えば、Kita et al. (2005) Biochem. Biophys. Res. Comm . 331:484;およびChakrabarti (2010) Endocrinol. 151:2408を参照);アディプシンプ ロモーター(例えば、Platt et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7490を参照 );レジスチンプロモーター(例えば、Seo et al. (2003) Molec. Endocrinol. 17:1522 を参照);等が挙げられる。

心筋細胞特異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、以下の遺伝子に 由来する制御配列が挙げられる:ミオシン軽鎖−2、α−ミオシン重鎖、AE3、心筋ト ロポニンC、心筋アクチン等が挙げられる。Franz et al. (1997) Cardiovasc. Res. 35: 560-566; Robbins et al. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 752:492-505; Linn et al. (19 95) Circ. Res. 76:584-591; Parmacek et al. (1994) Mol. Cell. Biol. 14:1870-1885; Hunter et al. (1993) Hypertension 22:608-617;およびSartorelli et al. (1992) Pro c. Natl. Acad. Sci. USA 89:4047-4051。

平滑筋特異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、SM22αプロモ ーター(例えば、Akyurek et al. (2000) Mol. Med. 6:983;および米国特許第7,16 9,874号を参照);スムーセリン(smoothelin)プロモーター(例えば、 国際公開第2001/018048号);α−平滑筋アクチンプロモーター;等が挙げら れる。例えば、SM22αプロモーターの0.4kb領域は、その中に2つのCArGエ レメントが存在しており、血管平滑筋細胞特異的な発現を媒介することが示されている( 例えば、Kim, et al. (1997) Mol. Cell. Biol. 17, 2266-2278; Li, et al., (1996) J. Cell Biol. 132, 849-859;およびMoessler, et al. (1996) Development 122, 2415-242 5を参照)。

光受容体特異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、ロドプシンプロ モーター;ロドプシンキナーゼプロモーター(Young et al. (2003) Ophthalmol. Vis. S ci. 44:4076);βホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007) J. Gene Med. 9:1015);網膜色素変性症遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007)、上 記);光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(Nicoud e t al. (2007)、上記);IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyama et al. (1992) Exp Eye Res. 55:225);等が挙げられる。

本明細書で同義的に使用される用語「DNA制御配列」、「調節領域」、および「調節 エレメント」は、非コード配列(例えば、DNA標的化RNA)もしくはコード配列(例 えば、部位特異的修飾ポリペプチド、またはCas9/Csn1ポリペプチド)の転写を もたらすおよび/もしくは調節する、並びに/またはコードされるポリペプチドの翻訳を 調節する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タ ンパク質分解シグナル等の、転写および翻訳の調節配列を指す。

核酸、ポリペプチド、細胞、または生物に適用されて本明細書で使用される用語「自然 発生的な」または「無修飾の」は、天然に存在する核酸、ポリペプチド、細胞、または生 物を指す。例えば、天然源から単離することができ、実験室でヒトによって意図的に修飾 されていない、生物(ウイルスを含む)内に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチ ド配列は、自然発生的である。

核酸またはポリペプチドに適用されて本明細書で使用される用語「キメラ」とは、異な る供給源に由来する構造によって定義される2つの成分を指す。例えば、「キメラ」がキ メラポリペプチド(例えば、キメラCas9/Csn1タンパク質)に関連して使用され る場合、そのキメラポリペプチドは、異なるポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む 。キメラポリペプチドは、修飾された、または自然発生的なポリペプチド配列のいずれか を含んでいてもよい(例えば、修飾または無修飾Cas9/Csn1タンパク質由来の第 一アミノ酸配列;およびCas9/Csn1タンパク質以外の第二アミノ酸配列)。同様 に、キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関連した「キメラ」は、異なる コード領域に由来するヌクレオチド配列を含む(例えば、修飾または無修飾Cas9/C sn1タンパク質をコードする第一ヌクレオチド配列;およびCas9/Csn1タンパ ク質以外のポリペプチドをコードする第二ヌクレオチド配列)。

用語「キメラポリペプチド」は、アミノ配列の2つの組み合わされていなければ離れて いるセグメントの組み合わせ(すなわち、「融合」)によって、通常は人の介在によって 作製される、ポリペプチドを指す。キメラアミノ酸配列を含むポリペプチドはキメラポリ ペプチドである。いくつかのキメラポリペプチドは「融合変異体」と称され得る。

「異種」とは、本明細書で使用される場合、天然の核酸またはタンパク質にそれぞれ存 在していないヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を意味する。例えば、キメラCa s9/Csn1タンパク質では、自然発生的な細菌性Cas9/Csn1ポリペプチド( またはその変異体)のRNA結合ドメインは、異種ポリペプチド配列(すなわち、Cas 9/Csn1以外のタンパク質に由来するポリペプチド配列または別の生物由来のポリペ プチド配列)に融合されている場合がある。異種ポリペプチド配列は、キメラCas9/ Csn1タンパク質によっても示される活性(例えば、酵素活性)を示し得る(例えば、 メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性、ユビ キチン化活性等)。異種核酸配列が自然発生的な核酸配列(またはその変異体)に(例え ば、遺伝子操作によって)連結されることで、キメラポリペプチドをコードするキメラヌ クレオチド配列が作製され得る。別の例として、融合変異型Cas9部位特異的ポリペプ チドでは、変異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、異種ポリペプチド(すなわち、C as9以外のポリペプチド)に融合されている場合があり、融合変異型Cas9部位特異 的ポリペプチドによっても示される活性を示す。異種核酸配列が変異型Cas9部位特異 的ポリペプチドに(例えば、遺伝子操作)によって連結されることで、融合変異型Cas 9部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が作製され得る。

「組換え型」とは、本明細書で使用される場合、特定の核酸(DNAまたはRNA)が 、天然系に存在する内在性核酸と区別可能な構造コード配列または構造非コード配列を有 する構築物をもたらす、クローニング、制限処理(restriction)、ポリメラ ーゼ連鎖反応(PCR)および/またはライゲーションステップの種々の組換えの産物で あることを意味する。ポリペプチドをコードするDNA配列をcDNA断片から、または 一連の合成オリゴヌクレオチドから構築することで、細胞内または無細胞の転写系および 翻訳系内に含有される組換え型転写単位からの発現が可能な合成核酸を作製することがで きる。関連配列を含むゲノムDNAは、組換え型の遺伝子または転写単位の形成にも使用 することができる。非翻訳DNAの配列はオープンリーディングフレームの5’側または 3’側に存在し得、そこで、係る配列は、コード領域の操作または発現に干渉せず、実際 には、種々の機構による所望の生成物の産生を調節するように作用し得る(下記の「DN A制御配列」を参照)。あるいは、翻訳されないRNA(例えば、DNA標的化RNA) をコードするDNA配列も、組換え型と見なされ得る。従って、例えば、用語「組換え型 」核酸は、自然発生的でない、例えば、通常は人の介在により、配列の2つの組み合わさ れていなければ離れているセグメントの人為的な組み合わせによって作製される、核酸を 指す。この人工的な組み合わせは、多くの場合、化学合成手段によって、または核酸の単 離セグメントの人為的操作、例えば、遺伝子工学技術によって達成される。そのような人 工的組み合わせは、通常は、コドンを、同一のアミノ酸、保存的アミノ酸、または非保存 的アミノ酸をコードするコドンと置換するために行われる。あるいは、所望の機能を有す る核酸セグメントを結合して、所望の機能的組み合わせを生み出すために行われる。この 人工的な組み合わせは、多くの場合、化学合成手段によって、または核酸の単離セグメン トの人為的操作、例えば、遺伝子工学技術によって達成される。組換え型ポリヌクレオチ ドがポリペプチドをコードする場合、コードされるポリペプチドの配列は、自然発生的( 「野生型」)であってもよいし、あるいは自然発生的配列の異型(例えば、変異体)であ ってもよい。従って、用語「組換え型」ポリペプチドは、必ずしも、配列が自然発生的で ないポリペプチドを指すわけではない。実際には、「組換え型」ポリペプチドは組換えD NA配列によってコードされているが、該ポリペプチド配列は、自然発生的(「野生型」 )であってもよいし、あるいは非自然発生的(例えば、異型、変異体等)であってもよい 。従って、「組換え型」ポリペプチドは人の介在の産物であるが、自然発生的なアミノ酸 配列であり得る。

「ベクター」または「発現ベクター」は、別のDNAセグメント、すなわち「インサー ト」が結合されるていることで、細胞内で結合されたセグメントの複製を引き起こすこと ができる、プラスミド、ファージ、ウイルス、またはコスミド等のレプリコンである。

「発現カセット」は、プロモーターに作動可能に連結しているDNAコード配列を含む 。「作動可能に連結された」とは、そのように記載された成分が、それらの意図される様 式で機能することを可能とする関係にある並列を指す。例えば、プロモーターがコード配 列の転写または発現に影響を与えている場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連 結している。

用語「組み換え発現ベクター」、または「DNA構築物」は、本明細書で同義的に使用 されて、ベクターおよび少なくとも1つのインサートを含むDNA分子を指す。組み換え 発現ベクターは通常、インサート(複数可)を発現および/もしくは増幅(propag ate)させるため、または他の組換えヌクレオチド配列の構築のために、作製される。 インサート(複数可)は、プロモーター配列に作動可能に連結していてもしていなくても よく、DNA制御配列に作動可能に連結していてもしていなくてもよい。

細胞は、外来性DNA(例えば、組み換え発現ベクター)が細胞内に導入されている場 合、係るDNAによって「遺伝子改変」または「形質転換」または「形質移入」されてい る。外来性DNAの存在は、永続的または一過性の遺伝的変化をもたらす。形質転換DN Aは、細胞のゲノムに組み込まれても組み込まれなくてもよい(共有結合的に連結してい てもしていなくてもよい)。例えば、原核生物、酵母、および哺乳類細胞では、形質転換 DNAはプラスミド等のエピソームエレメント上に維持されている場合がある。真核細胞 について、安定に形質転換された細胞は、染色体複製を通じて娘細胞に遺伝されるように 形質転換DNAが染色体内に組み込まれた細胞である。この安定性は、真核細胞が、形質 転換DNAを含有する娘細胞集団を含む細胞株またはクローンを樹立する能力によって説 明される。「クローン」とは、有糸分裂によって単一細胞または共通の祖先に由来する細 胞集団である。「細胞株」とは、何世代にもわたってインビトロにおいて安定な増殖が可 能な初代細胞のクローンである。

遺伝子改変(「形質転換」とも称される)の適切な方法としては、例えば、ウイルス感 染またはバクテリオファージ感染、トランスフェクション、接合(conjugatio n)、原形質融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿 、ポリエチレンイミン(PEI)介在性トランスフェクション、DEAE−デキストラン 介在性トランスフェクション、リポソーム介在性トランスフェクション、パーティクルガ ン法、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入、ナノ粒子介在性核酸送達(例えば、Panyam et., al Adv Drug Deliv Rev. 2012 Sep 13. pii: S0169-409X(12)00283-9. doi: 10.10 16/j.addr.2012.09.023を参照)等が挙げられる。

遺伝子改変の方法の選択は、一般的には形質転換される細胞の種類および形質転換が起 こる環境(例えば、インビトロ、エキソビボ、またはインビボ)に依存する。これらの方 法の総括的な考察は、Ausubel, et al., Short Protocols in Molecular Biology, 3rd e d., Wiley & Sons, 1995に見出すことができる。

本明細書で使用される「標的DNA」は、「標的部位」または「標的配列」を含むDN Aポリヌクレオチドである。用語「標的部位」または「標的配列」または「標的プロトス ペーサー(protospacer)DNA」は、本明細書では同義的に使用され、結合 に十分な条件が存在する場合に主題のDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントが結 合する(図1および図39を参照)標的DNA内に存在する核酸配列を指す。例えば、標 的DNA内の標的部位(または標的配列)5’−GAGCATATC−3’(配列番号/ /)は、RNA配列5’−GAUAUGCUC−3’(配列番号//)の標的とされる( またはそれと結合する、またはそれにハイブリダイズする、またはそれに対し相補的であ る)。適切なDNA/RNA結合条件には、細胞内に通常存在する生理的条件が含まれる 。他の適切なDNA/RNA結合条件(例えば、無細胞系における条件)は、当該技術分 野において公知である(例えば、Sambrook、上記参照)。DNA標的化RNAに対し相補 的でそれとハイブリダイズする標的DNA鎖は「相補鎖」と称され、「相補鎖」に対し相 補的な(従ってDNA標的化RNAに対し相補的でない)標的DNA鎖は「非相補鎖(n oncomplementary strand)」または「非相補鎖(non−com plementary strand)」と称される(図12を参照)。

「部位特異的修飾ポリペプチド」または「RNA結合部位特異的ポリペプチド」または 「RNA結合部位特異的修飾ポリペプチド」または「部位特異的ポリペプチド」とは、R NAと結合し特定のDNA配列に標的化されるポリペプチドを意味する。本明細書に記載 される部位特異的修飾ポリペプチドは、それが結合しているRNA分子によって特定のD NA配列に標的化される。RNA分子は、標的DNA内の標的配列に対し相補的であるこ とから、結合したポリペプチドを標的DNA(標的配列)内の特定の位置に標的化する配 列を含む。

「切断(cleavage)」とは、DNA分子の共有結合性骨格の切断(break age)を意味する。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的な加水分解を 含むがこれらに限定はされない種々の方法によって開始され得る。一本鎖切断および二本 鎖切断は共に可能であり、二本鎖切断は2つの別々の一本鎖切断事象の結果として起こる 可能性がある。DNA切断は平滑末端または付着末端の生成をもたらす可能性がある。あ る特定の実施形態では、DNA標的化RNAおよび部位特異的修飾ポリペプチドを含む複 合体が標的二本鎖DNAの切断のために使用される。

「ヌクレアーゼ」および「エンドヌクレアーゼ」は、本明細書で同義的に使用され、D NA切断の触媒活性を有する酵素を意味する。

ヌクレアーゼの「切断ドメイン」または「活性ドメイン」または「ヌクレアーゼドメイ ン」とは、DNA切断の触媒活性を有するヌクレアーゼ内のポリペプチド配列またはポリ ペプチドドメインを意味する。切断ドメインが1本鎖ポリペプチド内に含まれている場合 もあるし、あるいは、切断活性が2つの(またはそれ以上の)ポリペプチドの結合によっ てもたらされる場合もある。単一のヌクレアーゼドメインは、所与のポリペプチド内の2 つ以上の単離されたアミノ酸鎖から成り得る。

部位特異的修飾ポリペプチドに結合し該ポリペプチドを標的DNA内の特定の位置に標 的化するRNA分子は、「DNA標的化RNA」または「DNA標的化RNAポリヌクレ オチド」と称される(「誘導RNA」または「gRNA」とも称される)。主題のDNA 標的化RNAは、「DNA標的化セグメント」および「タンパク質結合セグメント」の2 つのセグメントを含む。「セグメント」とは、分子のセグメント/セクション/領域(例 えば、RNA内の連続するヌクレオチド鎖)を意味する。セグメントは、セグメントが2 つ以上の分子の領域を含み得るような、複合体の領域/セクションを意味する場合もある 。例えば、いくつかの例においては、DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメント( 下記)は1つのRNA分子であり、そのため、タンパク質結合セグメントは、そのRNA 分子の領域を含む。他の場合においては、DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメン ト(下記)は、相補的領域に沿ってハイブリダイズしている2つの別々の分子を含む。例 としては、限定はされないが、2つの別々の分子を含むDNA標的化RNAのタンパク質 結合セグメントは、(i)100塩基対長の第一RNA分子の塩基対40〜75;および (ii)50塩基対長の第二RNA分子の塩基対10〜25を含み得る。「セグメント」 の定義は、特定の文脈において特に定義されていない限り、特定の全塩基対数に限定され ず、いかなる特定の、所与のRNA分子由来の任意の特定の塩基対数にも限定されず、複 合体内の特定の数の別々の分子に限定されず、任意の全長であるRNA分子の領域を含ん でいてもよく、他の分子に対し相補性を有する領域を含んでいても含んでいなくてもよい 。

DNA標的化セグメント(または「DNA標的化配列」)は、標的DNA内の特定の配 列に対し相補的なヌクレオチド配列(標的DNAの相補鎖)を含む。タンパク質結合セグ メント(または「タンパク質結合配列」)は、部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用す る。部位特異的修飾ポリペプチドがCas9またはCas9関連ポリペプチド(以下によ り詳細に記載)である場合、標的DNAの部位特異的切断は、(i)DNA標的化RNA と標的DNAの間の塩基対形成の相補性;および(ii)標的DNA内のショートモチー フ(short motif)(プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称される) の両方によって決定される位置で起こる。

主題のDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントは、互いにハイブリダイズして 二本鎖RNA二本鎖(double stranded RNA duplex)(ds RNA二本鎖)を形成する、2本の相補的なヌクレオチド鎖を含む。

いくつかの実施形態において、主題の核酸(例えば、DNA標的化RNA、DNA標的 化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;部位特異的ポリペプチドをコードす る核酸;等)は、追加の所望の特徴(例えば、修飾または調節された安定性;細胞内標的 化;追跡(例えば、蛍光標識);タンパク質またはタンパク質複合体に対する結合部位; 等)を与える修飾または配列を含む。例としては、限定はされないが、5’キャップ(例 えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化尾部(すなわち 、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節、並びに/またはタ ンパク質および/もしくはタンパク質複合体による接触のし易さの調節を可能にする); 安定性制御配列;dsRNA二本鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン));RNAを 細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体等)に標的化する修飾または配列;追 跡(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を促進する部分、蛍光検出を可能にする配 列への結合等)をもたらす修飾または配列;タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写 抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化酵素、ヒストンアセチル トランスフェラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素等を含むDNAに作用するタンパク質) に対する結合部位を与える修飾または配列;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAは、上記の特徴のうちのいずれかを 与える追加のセグメントを5’末端または3’末端のいずれかに含む。例えば、適切な第 三セグメントは、5’キャップ(例えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7G)); 3’ポリアデニル化尾部(すなわち、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば 、安定性の調節、並びに/またはタンパク質およびタンパク質複合体による接触のし易さ の調節を可能にする);安定性制御配列;dsRNA二本鎖を形成する配列(すなわち、 ヘアピン));RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体等)に標的化 する配列;追跡(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を促進する部分、蛍光検出を 可能にする配列への結合等)をもたらす修飾または配列;タンパク質(例えば、転写活性 化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化酵素、ヒス トンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素等を含むDNAに作用する タンパク質)に対する結合部位を与える修飾または配列;並びにそれらの組み合わせを含 み得る。

主題のDNA標的化RNAおよび主題の部位特異的修飾ポリペプチド(すなわち、部位 特異的ポリペプチド)は、複合体を形成する(すなわち、非共有結合性相互作用によって 結合する)。DNA標的化RNAは、標的DNAの配列に対し相補的なヌクレオチド配列 を含むことによって、標的特異性を複合体に与える。複合体の部位特異的修飾ポリペプチ ドは部位特異的活性を与える。言い換えれば、部位特異的修飾ポリペプチドは、それ自体 がDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントと結合することによって、標的DNA 配列(例えば、染色体核酸内の標的配列;染色体外核酸(例えば、エピソーム核酸、ミニ サークル等)内の標的配列;ミトコンドリア核酸内の標的配列;葉緑体核酸内の標的配列 ;プラスミド内の標的配列;等)に誘導される。

いくつかの実施形態において、主題のDNA標的化RNAは、2つの別々のRNA分子 (RNAポリヌクレオチド:「活性化RNA」および「標的化RNA」、以下を参照)を 含み、「二重分子DNA標的化RNA」または「二分子DNA標的化RNA」と称される 。他の実施形態では、主題のDNA標的化RNAは単一RNA分子(単一RNAポリヌク レオチド)であり、「単一分子DNA標的化RNA」、「単一誘導RNA」、または「s gRNA」と称される。用語「DNA標的化RNA」または「gRNA」は、二重分子D NA標的化RNAおよび単一分子DNA標的化RNA(すなわち、sgRNA)の両方を 包括的に指す。

例示的な二分子DNA標的化RNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」また は「標的化RNA」または「crRNA」または「crRNAリピート」)分子および対 応するtracrRNA様(「トランス作動性CRISPR RNA」または「活性化R NA」または「tracrRNA」)分子を含む。crRNA様分子(標的化RNA)は 、DNA標的化RNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)およびDNA標的化RNAの タンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖の半分を形成するヌクレオチド鎖(「二本 鎖形成セグメント」)の両方を含む。対応するtracrRNA様分子(活性化RNA) は、DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖のもう半分を形 成するヌクレオチド鎖(二本鎖形成セグメント)を含む。言い換えれば、crRNA様分 子のヌクレオチド鎖は、tracrRNA様分子のヌクレオチド鎖に対し相補的でそれと ハイブリダイズして、DNA標的化RNAのタンパク質結合ドメインのdsRNA二本鎖 を形成する。従って、それぞれのcrRNA様分子は、対応するtracrRNA様分子 を有すると言うことができる。crRNA様分子はさらに、一本鎖DNA標的化セグメン トを与える。従って、crRNA様分子およびtracrRNA様分子は(対応する対と して)ハイブリダイズしてDNA標的化RNAを形成する。所与のcrRNA分子または tracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が存在する種類に特有である。様々な crRNAおよびtracrRNAが図8の対応する相補的対合に示されている。主題の 二重分子DNA標的化RNAは、いかなる対応するcrRNAおよびtracrRNA対 を含んでいてもよい。主題の二重分子DNA標的化RNAは、いかなる対応するcrRN AおよびtracrRNA対を含んでいてもよい。

用語「活性化RNA」は、二重分子DNA標的化RNAのtracrRNA様分子を意 味して、本明細書では使用される。用語「標的化RNA」は、二重分子DNA標的化RN AのcrRNA様分子を意味して、本明細書では使用される。用語「二本鎖形成セグメン ト」は、対応する活性化RNA分子または標的化RNA分子のヌクレオチド鎖にハイブリ ダイズすることでdsRNA二本鎖の形成に寄与する、活性化RNAまたは標的化RNA のヌクレオチド鎖を意味して、本明細書では使用される。言い換えれば、活性化RNAは 、対応する標的化RNAの二本鎖形成セグメントに対し相補的な二本鎖形成セグメントを 含む。従って、活性化RNAは二本鎖形成セグメントを含み、一方、標的化RNAは二本 鎖形成セグメントおよびDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントの両方を含む。従 って、主題の二重分子DNA標的化RNAは、いかなる対応する活性化RNAおよび標的 化RNA対から成っていてもよい。

「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、インビボまたはインビトロにおける真核 細胞、原核細胞(例えば、細菌細胞または古細菌細胞)、または単細胞の独立体として培 養される多細胞生物由来の細胞(例えば、細胞株)を示し、真核細胞または原核細胞は核 酸のレシピエントとして使用され得る、もしくは使用されており、核酸によって形質転換 された原細胞の子孫が含まれる。単一細胞の子孫は、自然変異、偶発的変異、または意図 的な変異があるために、形態において、またはゲノムもしくは全DNAの相補体(com plement)において、元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解され る。「組換え宿主細胞」(「遺伝子改変宿主細胞」とも称される)は、異種核酸(例えば 、発現ベクター)を導入された宿主細胞である。例えば、主題の細菌宿主細胞は、適切な 細菌宿主細胞への外来性核酸(例えば、プラスミドまたは組み換え発現ベクター)の導入 による遺伝子改変された細菌性宿主細胞であり、主題の真核生物宿主細胞は、適切な真核 生物性宿主細胞への外来性核酸の導入による遺伝子改変された真核生物性宿主細胞(例え ば、哺乳類生殖細胞)である。

用語「幹細胞」は、自己複製し、且つ分化細胞型を生み出す能力を有する細胞(例えば 、植物幹細胞、脊椎動物幹細胞)を指して本明細書で使用される(Morrison et al. (199 7) Cell 88:287-298を参照)。細胞の個体発生に関連して、形容詞「分化型の」、または 「分化中の」は、相対語である。「分化細胞」は、比較されている細胞よりも発生経路を さらに進行した細胞である。従って、多能性幹細胞(下記)は、系統が限定された前駆細 胞(例えば、中胚葉幹細胞)に分化可能であり、系統が限定された前駆細胞はその後、さ らに限定された細胞(例えば、ニューロン前駆細胞)に分化可能であり、さらに限定され た細胞は最終段階の細胞(すなわち、高分化型細胞、例えば、ニューロン、心筋細胞等) に分化可能であり、最終段階の細胞はある特定の組織型において特徴的な役割を果たし、 さらに増殖する能力は保持していても保持していなくてもよい。幹細胞は、特定のマーカ ー(例えば、タンパク質、RNA等)の存在および特定のマーカーの非存在の両方を特徴 とし得る。また幹細胞は、インビトロおよびインビボの両方における機能分析、特に、幹 細胞が複数の分化した子孫を生じさせる能力に関したアッセイによって同定され得る。

目的とする幹細胞には多能性幹細胞(PSC)が含まれる。用語「多能性幹細胞」また は「PSC」は、その生物の全ての細胞型を生み出すことが可能な幹細胞を意味して、本 明細書では使用される。従って、PSCは、その生物の全ての胚葉(例えば、脊椎動物の 内胚葉、中胚葉、および外胚葉)の細胞を生じることができる。多能性細胞は、生体にお いて、奇形腫を形成することができ、外胚葉、中胚葉、または内胚葉組織に寄与すること が可能である。植物の多能性幹細胞は、その植物の全ての細胞型(例えば、根、茎、葉等 の細胞)を生じることができる。

動物のPSCはいくつかの異なる方法で得ることができる。例えば、胚性幹細胞(ES C)は胚の内部細胞塊から得られ(Thomson et. al, Science. 1998 Nov 6;282(5391):11 45-7)、一方、誘導多能性幹細胞(iPSC)は体細胞から得られる(Takahashi et. al , Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-72; Takahashi et. al, Nat Protoc. 2007;2(12):3081 -9; Yu et. al, Science. 2007 Dec 21;318(5858):1917-20. Epub 2007 Nov 20)。用語 PSCは多能性幹細胞をそれらの由来にかかわらず指すため、用語PSCは用語ESCお よび用語iPSC、並びにPSCの別の例である用語胚性生殖幹細胞(EGSC)を包含 する。PSCは株化細胞系形態であってもよいし、一次胚組織から直接得てもよいし、あ るいは、体細胞に由来していてもよい。PSCは本明細書に記載の方法の標的細胞であり 得る。

「胚性幹細胞」(ESC)とは、胚から、典型的には胚盤胞の内部細胞塊から単離され たPSCを意味する。ESC系はNIH Human Embryonic Stem Cell Registryに記載されており、例えば、hESBGN−01、hESB GN−02、hESBGN−03、hESBGN−04(ブレサジェン社(BresaG en, Inc.);HES−1、HES−2、HES−3、HES−4、HES−5、 HES−6(ECセル・インターナショナル社(ES Cell Internatio nal));Miz−hES1(ミズメディ病院−ソウル大学校(MizMedi Ho spital−Seoul National University));HSF−1 、HSF−6(カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California at San Francisco));およびH1、H7、H 9、H13、H14(ウイスコンシン同窓研究基金(Wisconsin Alumni Research Foundation)(ウィセル・リサーチ・インスティテュー ト社(WiCell Research Institute)))等である。目的とす る幹細胞には、アカゲザル幹細胞およびマーモセット幹細胞等の他の霊長類由来の胚性幹 細胞も含まれる。該幹細胞は、あらゆる哺乳類種、例えば、ヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イ ヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、霊長類等から得られてい てもよい(Thomson et al. (1998) Science 282:1145; Thomson et al. (1995) Proc. Na tl. Acad. Sci USA 92:7844; Thomson et al. (1996) Biol. Reprod. 55:254; Shamblott et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13726, 1998)。培養において、ESCは典型 的に、大きな核−細胞質比、明確な境界および顕著な核小体を有する平坦なコロニーとし て増殖する。さらに、ESCは、SSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60、TR A−1−81、およびアルカリホスファターゼを発現するが、SSEA−1は発現しない 。ESCを作製および特徴付けする方法の例は、例えば、米国特許第7,029,913 号、同第5,843,780号、および同第6,200,806号に見出すことができ、 これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。未分化型のhESCを増殖させる ための方法は、国際公開第99/20741号、同第01/51616号、および同第0 3/020920号に記載される。

「胚性生殖幹細胞」(EGSC)または「胚性生殖細胞」または「EG細胞」とは、生 殖細胞および/または生殖細胞前駆細胞、例えば始原生殖細胞(すなわち精子および卵子 になるであろう細胞)に由来するPSCを意味する。胚性生殖細胞(EG細胞)は、上記 の胚性幹細胞と類似した特性を有すると考えられている。EG細胞を作製および特徴付け する方法の例は、例えば、米国特許第7,153,684号;Matsui, Y., et al., (1992 ) Cell 70:841; Shamblott, M., et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 113; Shamblott, M., et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:13726;およびKoshimiz u, U., et al. (1996) Development, 122:1235に見出すことができ、これらの開示は参照 によって本明細書に組み込まれる。

「誘導多能性幹細胞」または「iPSC」とは、PSCではない細胞(すなわち、PS Cよりも分化した細胞)に由来するPSCを意味する。iPSCは、複数の異なる細胞型 (例えば、高分化型細胞)から得ることができる。iPSCはES細胞様形態を有し、大 きな核−細胞質比、明確な境界および顕著な核を有する平坦なコロニーとして増殖する。 さらに、iPSCは、当業者に公知の、一つまたは複数の重要な多能性マーカーを発現し 、例えば、限定はされないが、アルカリホスファターゼ、SSEA3、SSEA4、So x2、Oct3/4、Nanog、TRA160、TRA181、TDGF1、Dnmt 3b、FoxD3、GDF3、Cyp26a1、TERT、およびzfp42等である。 iPSCを作製および特徴付けする方法の例は、例えば、米国特許出願公開第US200 90047263号、同第US20090068742号、同第US200901911 59号、同第US20090227032号、同第US20090246875号、およ び同第US20090304646号に見出すことができ、これらの開示は参照によって 本明細書に組み込まれる。一般的に、iPSCを作製するために、多能性幹細胞になるよ うに体細胞を再プログラムするための、当該技術分野において公知の再プログラム因子( 例えば、Oct4、SOX2、KLF4、MYC、Nanog、Lin28等)が体細胞 に与えられる。

「体細胞」とは、実験的操作の非存在下では、生物における全細胞型を通常生じない、 生物におけるあらゆる細胞を意味する。言い換えれば、体細胞は、生体の3種の全胚葉( すなわち、外胚葉、中胚葉および内胚葉)の細胞を自然には生じない程十分に分化した細 胞である。例えば、体細胞にはニューロンおよび神経前駆細胞の両方が含まれ、その後者 は、中枢神経系の全てまたはいくつかの細胞型を自然に生じることができ得るが、中胚葉 または内胚葉系統の細胞を生じることはできない。

「有糸分裂細胞」とは、有糸分裂を行っている細胞を意味する。有糸分裂は、真核細胞 がその核に含まれる染色体を2つの別々の核の2つの同一のセットに分離するプロセスで ある。通常、その直後に細胞質分裂が起こり、核、細胞質、細胞小器官および細胞膜が、 これらの細胞成分をおおよそ等しい割合で含有する2つの細胞に分割される。

「分裂終了細胞」とは、有糸分裂から脱出した、すなわち、「静止状態」にある、すな わち、それ以上分裂を行わない細胞を意味する。この静止状態は一時的、すなわち可逆的 な場合もあるし、あるいは永続的な場合もある。

「減数分裂細胞」とは、減数分裂を行っている細胞を意味する。減数分裂は、細胞が配 偶子または胞子をつくることを目的としてその核内物質を分割するプロセスである。有糸 分裂と異なり、減数分裂では、染色体は染色体間で遺伝物質を組み換える組換えステップ を行う。さらに、有糸分裂から生み出される2つの(遺伝的に同一の)二倍体細胞に対し て、減数分裂は4つの(遺伝的に特有の)一倍体細胞をもたらす。

「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のプロセスを意味する。 本明細書で使用される場合、「相同組換え修復(HDR)」は、例えば、細胞における二 重鎖切断の修復中に起こる、特殊な形態のDNA修復を指す。このプロセスはヌクレオチ ド配列相同性を必要とし、「ドナー」分子を「標的」分子(すなわち、二重鎖切断を受け た分子)の鋳型修復に用い、ドナーから標的への遺伝情報の移動をもたらす。相同組換え 修復は、ドナーポリヌクレオチドが標的分子と異なり、ドナーポリヌクレオチド配列の一 部または全てが標的DNA内に組み込まれた場合に、標的分子配列の変化(例えば、挿入 、欠失、変異)をもたらし得る。いくつかの実施形態において、ドナーポリヌクレオチド 、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリ ヌクレオチドのコピーの一部は、標的DNAに組み込まれる。

「非相同末端結合(NHEJ)」とは、相同的鋳型を必要とせずに(修復を導くために 相同配列を必要とする相同組換え修復とは対照的)、切断末端を互いに直接ライゲーショ ンすることによる、DNA内の二重鎖切断の修復を意味する。NHEJは多くの場合、二 重鎖切断部位の近くのヌクレオチド配列の損失(欠失)をもたらす。

用語「処置」、「処置すること」等は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を 得ることを通常意味して、本明細書では使用される。効果は、疾患もしくはその症状を完 全にまたは部分的に予防するという点から予防的なものであってもよいし、および/また は、疾患および/もしくはその疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒とい う点から治療的なものであってもよい。本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物にお ける疾患または症状のあらゆる処置を包含し、(a)疾患または症状にかかる傾向がある が、まだそれを有しているとは診断されていない対象において、疾患または症状が発症す ることを予防すること;(b)疾患または症状を抑制すること、すなわち、その発達を止 めること;あるいは(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の後退を引き起こすこと 、を含む。治療薬は、病気または傷害の発生の前に投与されてもよいし、発生中に投与さ れてもよいし、発生後に投与されてもよい。進行中の疾患の処置であって、患者の望まし くない臨床症状を安定化または低減する処置は、特に重要である。そのような処置は、患 部組織における完全な機能喪失の前に行われることが望ましい。主題の治療は、疾患の対 症段階の間、および場合によっては疾患の対症段階の後に、投与されることが望ましい。

用語「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」は、本明細書で同義的に使用され 、診断、処置、または治療が望ましいあらゆる哺乳類対象、特にヒトを指す。

分子生化学および細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning: A Laborat ory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., HaRBor Laboratory Press 2001); Short Proto cols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons 1999) ; Protein Methods (Bollag et al., John Wiley & Sons 1996); Nonviral Vectors for Gene Therapy (Wagner et al. eds., Academic Press 1999); Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds., Academic Press 1995); Immunology Methods Manual (I. Lefkovits ed., Academic Press 1997);およびCell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Bio technology (Doyle & Griffiths, John Wiley & Sons 1998)等の標準的な教科書に見出す ことができ、これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。

本発明をさらに説明する前に、本発明が記載される特定の実施形態に限定されず、従っ て、当然のことながら、変更され得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用 語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明の範囲は添付の特許請 求の範囲によってのみ限定されるため、限定を意図するものではないことも理解されたい 。

数値の範囲が与えられた場合、その範囲の上限値と下限値の間の、文脈によって特に明 示されない限りは下限値の単位の10分の1までの、間に挟まれた各値、およびその記載 の範囲内のあらゆる他の記載された、または間に挟まれた数値は、本発明に包含されるこ とを理解されたい。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、そのより小さな範 囲内に独立して含まれてもよく、これもまた本発明に包含されるが、記載範囲の具体的に 除外される境界値が適用される。記載範囲が一方または両方の境界値を含む場合、それら の含まれる境界値の一方または両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。

ある特定の範囲は、「約」という用語に先行された数値を用いて、本明細書で提供され る。本明細書において「約」という用語は、それに続くまさにその数値、およびその用語 に続く数値に近いまたは近似した数値のための字義通りのサポートを提供するのに使用さ れる。ある数値が具体的に記載された数値に近いまたは近似しているかどうかを決定する 際、近いまたは近似している未記載の数値は、それが提示された文脈において、具体的に 記載された数値の実質的な等価物を提供する数値であり得る。

別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本発 明が属する技術分野において当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。 本明細書に記載されるものと同様または等価であるいかなる方法および材料も本発明の実 施または試験に使用可能ではあるが、ここで、好ましい方法および材料が記載される。本 明細書で言及される全ての刊行物は、引用された刊行物と関連した方法および/または材 料を開示および説明するために、参照によって本明細書に組み込まれる。

本明細書において引用した全ての刊行物および特許は、あたかも個々の刊行物または特 許がそれぞれ、具体的かつ個々に、本明細書に参照によって組み込まれることが示される ように、本明細書に参照によって組み込まれており、関連して刊行物が引用される方法お よび/または材料を開示および説明するために、本明細書に参照によって組み込まれる。 いかなる出版物の引用も、出願日よりも前のその開示に対するものであり、先願発明によ りそのような刊行物に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。さ らに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、別に確認される 必要があり得る。

本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、お よび「the」は、文脈によって特に明示されない限り、複数の指示対象を含むことに注 意されたい。従って、例えば、「ポリヌクレオチド」への言及には、複数のそのようなポ リヌクレオチドが含まれ、「ポリペプチド」への言及には、一つまたは複数のポリペプチ ドおよび当業者に公知のその等価物への言及が含まれる、等である。さらに、特許請求の 範囲は、いかなる任意の要素も除外するように起案することができることを注意されたい 。従って、この記載は、請求項の要素の列挙に関連して、「単に(solely)」、「 のみ(only)」等の排他的な用語の使用、または「否定的な」制限の使用に先立つ基 準としての役割を果たすことが意図される。

明確化のために別々の実施形態に関して記載される本発明のある特定の特徴は、単一の 実施形態において組み合わされて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのた めに単一の実施形態に関して記載される本発明の種々の特徴は、別々に提供されてもよい し、あるいは任意の適切な副組合せで提供されてもよい。本発明に関連する全ての実施形 態の組み合わせは、それぞれおよび全ての組み合わせがあたかも個々に且つ明示的に開示 されたかの如く、本発明に具体的に包含され、本明細書で開示される。さらに、種々の実 施形態およびその要素の全ての副組合せも、それぞれおよび全てのそのような副組み合わ せがあたかも個々に且つ明示的に本明細書で開示されたかの如く、本発明に具体的に包含 され、本明細書で開示される。

本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日よりも前のその開示のみに対して提供 される。本明細書に記載のものはいずれも、本発明が、先願発明によりそのような刊行物 に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊 行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、別に確認される必要があり得る。

発明を実施するための形態(第一部) 本開示は、ターゲティング配列を含み、修飾ポリペプチドと共に、標的DNAおよび/ または標的DNAと結合したポリペプチドの部位特異的修飾を与える、DNA標的化RN Aを提供する。本開示はさらに、部位特異的修飾ポリペプチドを提供する。本開示はさら に、標的DNAおよび/または標的DNAと結合したポリペプチドの部位特異的修飾の方 法を提供する。本開示は、標的核酸を酵素的に不活性なCas9ポリペプチドおよびDN A標的化RNAと接触させることを一般的に含む、標的細胞内の標的核酸の転写を調節す る方法を提供する。該方法を実行するためのキットおよび組成物も提供される。本開示は 、Cas9を産生する遺伝子改変細胞;およびCas9遺伝子導入非ヒト多細胞生物を提 供する。

核酸 DNA標的化RNA 本開示は、標的DNA内の特定の標的配列に対し、結合したポリペプチド(例えば、部 位特異的修飾ポリペプチド)の活性を向ける、DNA標的化RNAを提供する。主題のD NA標的化RNAは、第一セグメント(本明細書では「DNA標的化セグメント」または 「DNA標的化配列」とも称される)および第二セグメント(本明細書では「タンパク質 結合セグメント」または「タンパク質結合配列」とも称される)を含む。

DNA標的化RNAのDNA標的化セグメント 主題のDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内の配列に対し相 補的なヌクレオチド配列を含む。言い換えれば、主題のDNA標的化RNAのDNA標的 化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的 に標的DNAと相互作用する。従って、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は変 動してもよく、DNA標的化RNAおよび標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置 を決定する。主題のDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内のい かなる所望の配列にもハイブリダイズするように、(例えば、遺伝子操作によって)修飾 することができる。

DNA標的化セグメントは、約12ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有し 得る。例えば、DNA標的化セグメントは、約12ヌクレオチド(nt)〜約80nt、 約12nt〜約50nt、約12nt〜約40nt、約12nt〜約30nt、約12n t〜約25nt、約12nt〜約20nt、または約12nt〜約19ntの長さを有し 得る。例えば、DNA標的化セグメントは、約19nt〜約20nt、約19nt〜約2 5nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、 約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約19n t〜約70nt、約19nt〜約80nt、約19nt〜約90nt、約19nt〜約1 00nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt 、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、約20 nt〜約60nt、約20nt〜約70nt、約20nt〜約80nt、約20nt〜約 90nt、または約20nt〜約100ntの長さを有し得る。標的DNAのヌクレオチ ド配列(標的配列)に対し相補的なDNA標的化セグメントのヌクレオチド配列(DNA 標的化配列)は、少なくとも約12ntの長さを有し得る。例えば、標的DNAの標的配 列に対し相補的なDNA標的化セグメントのDNA標的化配列は、少なくとも約12nt 、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約 20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35ntまたは 少なくとも約40ntの長さを有し得る。例えば、標的DNAの標的配列に対し相補的な DNA標的化セグメントのDNA標的化配列は、約12ヌクレオチド(nt)〜約80n t、約12nt〜約50nt、約12nt〜約45nt、約12nt〜約40nt、約1 2nt〜約35nt、約12nt〜約30nt、約12nt〜約25nt、約12nt〜 約20nt、約12nt〜約19nt、約19nt〜約20nt、約19nt〜約25n t、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、約1 9nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約20nt〜 約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt、約20nt〜約40n t、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、または約20nt〜約60nt の長さを有し得る。標的DNAのヌクレオチド配列(標的配列)に対し相補的なDNA標 的化セグメントのヌクレオチド配列(DNA標的化配列)は、少なくとも約12ntの長 さを有し得る。

いくつかの例において、標的DNAの標的配列に対し相補的なDNA標的化セグメント のDNA標的化配列は、20ヌクレオチド長である。いくつかの例において、標的DNA の標的配列に対し相補的なDNA標的化セグメントのDNA標的化配列は、19ヌクレオ チド長である。

DNA標的化セグメントのDNA標的化配列および標的DNAの標的配列の間の相補性 パーセントは、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少な くとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも9 5%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)であ り得る。いくつかの例において、DNA標的化セグメントのDNA標的化配列および標的 DNAの標的配列の間の相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の標的配列の7個の連 続する5’末端ヌクレオチドにわたって100%である。いくつかの例において、DNA 標的化セグメントのDNA標的化配列および標的DNAの標的配列の間の相補性パーセン トは、約20個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%である。いくつかの例に おいて、DNA標的化セグメントのDNA標的化配列および標的DNAの標的配列の間の 相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の標的配列の14個の連続する5’末端ヌクレ オチドにわたって100%であり、残りの配列にわたっては0%という低さである。その ような場合、DNA標的化配列は、14ヌクレオチド長であるとみなすことができる(図 12D〜Eを参照)。いくつかの例において、DNA標的化セグメントのDNA標的化配 列および標的DNAの標的配列の間の相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の標的配 列の7個の連続する5’末端ヌクレオチドにわたって100%であり、残りの配列にわた っては0%という低さである。そのような場合、DNA標的化配列は7ヌクレオチド長で あるとみなすことができる。

DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメント 主題のDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントは、部位特異的修飾ポリペプチ ドと相互作用する。主題のDNA標的化RNAは、結合したポリペプチドを上記のDNA 標的化セグメントを介して標的DNA内の特定のヌクレオチド配列に導く。主題のDNA 標的化RNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的な2本のヌクレオチド鎖を含 む。タンパク質結合セグメントの相補的ヌクレオチドは、ハイブリダイズして二本鎖RN A二本鎖(dsRNA)を形成する(図1Aおよび図1Bを参照)。

主題の二重分子DNA標的化RNAは、2つの別々のRNA分子を含む。主題の二重分 子DNA標的化RNAの2つの各RNA分子は、それら2つのRNA分子の相補的なヌク レオチドがハイブリダイズしてタンパク質結合セグメントの二本鎖RNA二本鎖を形成す るような、互いに相補的なヌクレオチド鎖を含む(図1A)。

いくつかの実施形態において、活性化RNAの二本鎖形成セグメントは、配列番号43 1〜562に記載の活性化RNA(tracrRNA)分子の1つ、またはその相補体に 対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも約60%同一で ある。例えば、活性化RNAの二本鎖形成セグメント(または活性化RNAの二本鎖形成 セグメントをコードするDNA)は、配列番号431〜562に記載のtracrRNA 配列の1つ、またはその相補体に対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわ たって、少なくとも約60%同一、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、 少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくと も約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99 %同一、または100%同一である。

いくつかの実施形態において、標的化RNAの二本鎖形成セグメントは、配列番号56 3〜679に記載の標的化RNA(crRNA)配列の1つ、またはその相補体に対して 、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも約60%同一である。 例えば、標的化RNAの二本鎖形成セグメント(または標的化RNAの二本鎖形成セグメ ントをコードするDNA)は、配列番号563〜679に記載のcrRNA配列の1つ、 またはその相補体に対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって、少な くとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約 80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同 一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、または100%同一である。

二分子DNA標的化RNAは、標的化RNAの活性化RNAとの調節された(すなわち 、条件的な)結合を可能にするように設計することができる。二分子DNA標的化RNA は活性化RNAおよび標的化RNAの両方が機能的な複合体の形態でdCas9と結合し ない限り機能的にならないため、活性化RNAおよび標的化RNAの結合を誘導性とする ことによって、二分子DNA標的化RNAを、誘導性(例えば、薬剤誘導性)にすること ができる。1つの非限定例として、RNAアプタマーを用いることで、活性化RNAの標 的化RNAとの結合を制御(すなわち、調節)することができる。従って、活性化RNA および/または標的化RNAは、RNAアプタマー配列を含み得る。

RNAアプタマーは当該技術分野において公知であり、一般的にリボスイッチの合成バ ージョンである。用語「RNAアプタマー」および「リボスイッチ」は本明細書で同義的 に使用されて、合成核酸配列および天然核酸配列であって、それらが一部として含まれる RNA分子の構造(および、従って、特定の配列の利用能)の誘導性調節を与える合成核 酸配列および天然核酸配列の両方を包含する。RNAアプタマーは通常、特定の構造(例 えば、ヘアピン)に折り畳まれる配列を含み、その配列が特定の薬剤(例えば、小分子) と特異的に結合する。薬剤の結合はRNAの折り畳みにおける構造変化をもらたし、それ によって、アプタマーが一部として含まれる核酸の特徴が変化される。非限定例として、 (i)アプタマーを有する活性化RNAは、アプタマーが適切な薬剤と結合しない限り、 同種の(cognate)標的化RNAに結合することができず;(ii)アプタマーを 有する標的化RNAは、アプタマーが適切な薬剤と結合しない限り、同種の活性化RNA に結合することができず;(iii)異なる薬剤と結合する異なるアプタマーをそれぞれ 含む標的化RNAおよび活性化RNAは、両方の薬剤が存在しない限り、互いに結合する ことができない。これらの例によって説明される通り、二分子DNA標的化RNAは誘導 性となるように設計することができる。

アプタマーおよびリボスイッチの例は、例えば、Nakamura et al., Genes Cells. 2012 May;17(5):344-64; Vavalle et al., Future Cardiol. 2012 May;8(3):371-82; Citarta n et al., Biosens Bioelectron. 2012 Apr 15;34(1):1-11;およびLiberman et al., Wil ey Interdiscip Rev RNA. 2012 May-Jun;3(3):369-84に見出すことができ、これらは全て それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。

二分子DNA標的化RNAに含まれ得るヌクレオチド配列の非限定例としては、配列番 号431〜562に記載される配列のいずれか、またはその相補体が、ハイブリダイズし てタンパク質結合セグメントを形成することができる、配列番号563〜679に記載さ れるいずれかの配列、またはその相補体と対合して、挙げられる。

主題の単一分子DNA標的化RNAは、互いに相補的であり、介在ヌクレオチド(「リ ンカー」または「リンカーヌクレオチド」)によって共有結合的に連結しており、ハイブ リダイズしてタンパク質結合セグメントの二本鎖RNA二本鎖(dsRNA二本鎖)を形 成し、それによってステムループ構造をもたらす、2本のヌクレオチド鎖(標的化RNA および活性化RNA)を含む(図1B)。標的化RNAおよび活性化RNAは、標的化R NAの3’末端および活性化RNAの5’末端を介して共有結合的に連結し得る。あるい は、標的化RNAおよび活性化RNAは、標的化RNAの5’末端および活性化RNAの 3’末端を介して共有結合的に連結し得る。

単一分子DNA標的化RNAのリンカーは、約3ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド の長さを有し得る。例えば、リンカーは、約3ヌクレオチド(nt)〜約90nt、約3 ヌクレオチド(nt)〜約80nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約70nt、約3ヌク レオチド(nt)〜約60nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約3ヌクレオ チド(nt)〜約40nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約30nt、約3ヌクレオチド (nt)〜約20ntまたは約3ヌクレオチド(nt)〜約10ntの長さを有し得る。 例えば、リンカーは、約3nt〜約5nt、約5nt〜約10nt、約10nt〜約15 nt、約15nt〜約20nt、約20nt〜約25nt、約25nt〜約30nt、約 30nt〜約35nt、約35nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt 〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90 nt、または約90nt〜約100ntの長さを有し得る。いくつかの実施形態において 、単一分子DNA標的化RNAのリンカーは4ntである。

例示的な単一分子DNA標的化RNAは、ハイブリダイズしてdsRNA二本鎖を形成 する2本の相補的なヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、単一分子DN A標的化RNAの2本の相補的なヌクレオチド鎖の一方(またはその配列をコードするD NA)は、配列番号431〜562に記載される活性化RNA(tracrRNA)分子 のうちの1つ、またはその相補体に対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドに わたって少なくとも約60%同一である。例えば、単一分子DNA標的化RNAの2本の 相補的なヌクレオチド鎖の一方(またはその配列をコードするDNA)は、配列番号43 1〜562に記載されるtracrRNA配列のうちの1つ、またはその相補体に対して 、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって、少なくとも約65%同一、少な くとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約 85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同 一、少なくとも約99%同一または100%同一である。

いくつかの実施形態において、単一分子DNA標的化RNAの2本の相補的なヌクレオ チド鎖の一方(またはその配列をコードするDNA)は、配列番号563〜679に記載 される標的化RNA(crRNA)配列のうちの1つ、またはその相補体に対して、一連 の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも約60%同一である。例えば 、単一分子DNA標的化RNAの2本の相補的なヌクレオチド鎖の一方(またはその配列 をコードするDNA)は、配列番号563〜679に記載されるcrRNA配列のうちの 1つ、またはその相補体に対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって 、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なく とも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約9 5%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一または100%同一である 。

crRNAおよびtracrRNAの適切な自然発生的な同種対は、適切な同種対を決 定する場合に、種の名前および塩基対形成(タンパク質結合ドメインのdsRNA二本鎖 のための)を考慮することにより、配列番号431〜679について通常の方法によって 決定することができる(非限定例として図8を参照)。

主題の単一分子DNA標的化RNAおよび主題の二重分子DNA標的化RNAについて 、図57は、自然発生的なtracrRNAおよびcrRNAとほとんど共通していない (およそ50%の同一性)人工配列であっても、DNA標的化RNAのタンパク質結合ド メインの構造が保存されていさえすれば、Cas9と一緒に機能して標的DNAを切断す ることができることを示す。従って、DNA標的化RNAの自然発生的なタンパク質結合 ドメインのRNA折り畳み構造が、人工タンパク質結合ドメイン(二分子または単一分子 バージョンのいずれか)を設計するために、考慮され得る。非限定例として、図57の機 能的人工DNA標的化RNAは、自然発生的なDNA標的のタンパク質結合セグメントの 構造に基づいて設計された(例えば、RNA二本鎖に沿った同じ数の塩基対を含み、自然 発生的なRNA内に存在するものと同じ「バルジ(buldge)」領域を含む)。構造 は、当業者によって、いかなる種からもいかなる自然発生的なcrRNA:tracrR NA対について容易に生み出すことができるため(種々様々な種由来のcrRNA配列お よびtracrRNA配列については配列番号431〜679を参照)、人工的DNA標 的化RNAは、所与の種に由来するCas9(または関連Cas9、図32Aを参照)を 用いた場合その種の天然構造を模倣するように設計することができる。(図24Dおよび 実施例1における関連の詳細を参照)。従って、適切なDNA標的化RNAは、自然発生 的なDNA標的化RNAのタンパク質結合ドメインの構造を模倣するように設計されたタ ンパク質結合ドメインを含む、人工的に設計されたRNA(非自然発生的な)であっても よい。(配列番号431〜679を参照、適切な同種対を決定する場合は種の名称を考慮 )。

タンパク質結合セグメントは、約10ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有 し得る。例えば、タンパク質結合セグメントは、約15ヌクレオチド(nt)〜約80n t、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30ntまたは 約15nt〜約25ntの長さを有し得る。

また、主題の単一分子DNA標的化RNAおよび主題の二重分子DNA標的化RNAに 関して、タンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖は、約6塩基対(bp)〜約50 bpの長さを有し得る。例えば、タンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖は、約6 bp〜約40bp、約6bp〜約30bp、約6bp〜約25bp、約6bp〜約20b p、約6bp〜約15bp、約8bp〜約40bp、約8bp〜約30bp、約8bp〜 約25bp、約8bp〜約20bpまたは約8bp〜約15bpの長さを有し得る。例え ば、タンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖は、約8bp〜約10bp、約10b p〜約15bp、約15bp〜約18bp、約18bp〜約20bp、約20bp〜約2 5bp、約25bp〜約30bp、約30bp〜約35bp、約35bp〜約40bp、 または約40bp〜約50bpの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、タンパ ク質結合セグメントのdsRNA二本鎖は、36塩基対の長さを有する。ハイブリダイズ してタンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補 性パーセントは少なくとも約60%であり得る。例えば、ハイブリダイズしてタンパク質 結合セグメントのdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補性パーセントは 、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80% 、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98% 、または少なくとも約99%であり得る。いくつかの例において、ハイブリダイズしてタ ンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補性パー セントは100%である。

部位特異的修飾ポリペプチド 主題のDNA標的化RNAおよび主題の部位特異的修飾ポリペプチドは複合体を形成す る。DNA標的化RNAは、(上記で言及したように)標的DNAの配列に対し相補的な ヌクレオチド配列を含むことにより複合体に標的特異性を与える。複合体の部位特異的修 飾ポリペプチドは部位特異的活性を与える。言い換えれば、部位特異的修飾ポリペプチド は、それがDNA標的化RNAの少なくともタンパク質結合セグメントと結合することに より、DNA配列(例えば、染色体配列または染色体外配列、例えば、エピソーム配列、 ミニサークル配列、ミトコンドリア配列、葉緑体配列等)に誘導される(上記)。

主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、標的DNAを修飾し(例えば、標的DNAの切 断またはメチル化)、および/または標的DNAと結合したポリペプチドを修飾する(例 えば、ヒストン尾部のメチル化またはアセチル化)。部位特異的修飾ポリペプチドは、本 明細書において「部位特異的ポリペプチド」または「RNA結合部位特異的修飾ポリペプ チド」とも称される。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、自然発生的な修飾ポリペプチ ドである。他の場合においては、部位特異的修飾ポリペプチドは自然発生的なポリペプチ ドではない(例えば、下記のキメラポリペプチドまたは改変(例えば、変異、欠失、挿入 )された自然発生的ポリペプチド)。

例示的な自然発生的な部位特異的修飾ポリペプチドは、自然発生的なCas9/Csn 1エンドヌクレアーゼの非限定的且つ非網羅的な列挙として配列番号1〜255に記載さ れる。本明細書に記載されるこれらの自然発生的なポリペプチドは、DNA標的化RNA と結合し、それによって標的DNA内の特定の配列に向けられ、標的DNAを切断して二 重鎖切断を起こす。主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、2つの部分、RNA結合部位 および活性部位を含む。いくつかの実施形態において、主題の部位特異的修飾ポリペプチ ドは、(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化R NAと相互作用するRNA結合部位;および(ii)部位特異的酵素活性を示す活性部位 (例えば、DNAメチル化活性、DNA切断活性、ヒストンアセチル化活性、ヒストンメ チル化活性等)を含み、酵素活性の部位はDNA標的化RNAによって決定される。

他の実施形態では、主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、(i)標的DNA内の配列 に対し相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部 位;および(ii)標的DNA内の転写を調節する活性部位(例えば、転写を増加または 減少させるための)を含み、標的DNA内の調節される転写の部位はDNA標的化RNA によって決定される。

いくつかの例において、主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、標的DNAを修飾する 酵素活性を有する(例えば、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチ ル化酵素活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、 アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラー ゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性 、ヘリカーゼ活性、光回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性)。

他の場合においては、主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、標的DNAと結合したポ リペプチド(例えば、ヒストン)を修飾する酵素活性を有する(例えば、メチルトランス フェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化 酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン 化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボ シル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性)。

例示的な部位特異的修飾ポリペプチド いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/C sn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または配列 番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれか における対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約8 5%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100% のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

核酸修飾 いくつかの実施形態において、主題の核酸(例えば、DNA標的化RNA)は、新規の または増強された特徴(例えば、向上された安定性)を有する核酸を与えるための、一つ または複数の修飾(例えば、塩基修飾、骨格修飾等)を含む。当該技術分野で知られてい るように、ヌクレオシドは、塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は通 常、ヘテロ環式塩基である。そのようなヘテロ環式塩基の2つの最も一般的なクラスは、 プリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合的に 連結されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むそれら のヌクレオシドにおいて、リン酸基は、糖の2’、3’、または5’ヒドロキシル部分に 連結している可能性がある。オリゴヌクレオチド形成において、リン酸基は隣接するヌク レオシドを互いに共有結合的に連結させて、直鎖状の高分子化合物を形成する。次に、こ の直鎖状高分子化合物のそれぞれの末端がさらに連結して環状化合物を形成し得るが、直 鎖状化合物が一般的には適切である。さらに、直鎖状化合物は内部のヌクレオチド塩基相 補性を有する場合があり、従って完全または部分的に二本鎖の化合物を形成するように折 り畳まれる場合がある。オリゴヌクレオチド内で、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのヌ クレオシド間骨格を形成するものと一般的に称される。RNAおよびDNAの通常の連結 または骨格は、3’から5’のホスホジエステル結合である。

修飾された骨格および修飾されたヌクレオシド間連結 修飾を含む適切な核酸の例としては、修飾された骨格または非天然ヌクレオシド間連結 を含有する核酸が挙げられる。修飾された骨格を有する核酸には、骨格内にリン原子を保 持している核酸および骨格内にリン原子を有していない核酸が含まれる。

内部にリン原子を含有する適切な修飾されたオリゴヌクレオチド骨格としては、例えば 、通常の3’−5’連結を有する、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホ スホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル および他のアルキルのホスホン酸エステル、例えば、3’−アルキレンホスホネート、5 ’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホルアミ ダート、例えば、3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダ ート、ホスホロジアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート 、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェートおよびボラノホスフェート、 これらの2’−5’連結類似体、並びに一つまたは複数のヌクレオチド間連結が3’から 3’、5’から5’または2’から2’連結である逆の極性を有するものが挙げられる。 逆の極性を有する適切なオリゴヌクレオチドは、3’末端ヌクレオチド間連結における単 一の3’から3’の連結、すなわち、単一の逆のヌクレオシド残基を含み、当該ヌクレオ シド残基は脱塩基性(核酸塩基が失われているか、その位置にヒドロキシル基を有する) であってもよい。種々の塩(例えば、カリウムまたはナトリウム等)、混合塩および遊離 酸形態も含まれる。

いくつかの実施形態において、主題の核酸は、一つまたは複数のホスホロチオエートお よび/またはヘテロ原子ヌクレオシド間連結、具体的には、−CH2−NH−O−CH2 −、−CH2−N(CH3)−O−CH2−(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨 格として知られている)、−CH2−O−N(CH3)−CH2−、−CH2−N(CH 3)−N(CH3)−CH2−および−O−N(CH3)−CH2−CH2−(ここで、 元のリン酸ジエステルヌクレオチド間連結は−O−P(=O)(OH)−O−CH2−と して表される)を含む。MMI型ヌクレオシド間連結は、上記で参照した米国特許第5, 489,677号に開示される。適切なアミドヌクレオシド間連結は、米国特許第5,6 02,240号に開示される。

例えば、米国特許第5,034,506号に記載されるモルホリノ骨格構造を有する核 酸も適切である。例えば、いくつかの実施形態において、主題の核酸は、リボース環の位 置に6員モルホリノ環を含む。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ホスホロジ アミダートまたは他の非リン酸ジエステルヌクレオシド間連結は、ホスホジエステル結合 を置換する。

内部にリン原子を含まない適切な修飾ポリヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくは シクロアルキルヌクレオシド間連結、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアル キルヌクレオシド間連結、または一つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環式 ヌクレオシド間連結によって形成された骨格を有する。これらには、モルホリノ連結(ヌ クレオシドの糖部分から部分的に形成);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドお よびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセ チルおよびチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメ ート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホン アミド骨格;アミド骨格;並びに混合されたN、O、SおよびCH2成分部分を有する他 の骨格を有するものが含まれる。

模倣体 主題の核酸は核酸模倣体であり得る。用語「模倣体」には、ポリヌクレオチドに適用さ れる場合、フラノース環のみまたはフラノース環およびヌクレオチド間連結の両方が非フ ラノース基で置換されているポリヌクレオチドが含まれることが意図され、フラノース環 のみの置換も当該技術分野においては糖代替物であるとされる。ヘテロ環式塩基部分また は修飾されたヘテロ環式塩基部分は、適切な標的核酸とのハイブリダイゼーションのため に維持される。1つのそのような核酸、優れたハイブリダイゼーション特性を有すること が示されているポリヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA において、ポリヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、具体的にはアミノエチルグリ シン骨格で置換されている。ヌクレオチドは保持されており、骨格のアミド部分のアザ窒 素原子に直接または間接的に結合している。

優れたハイブリダイゼーション特性を有することが報告されている1つのポリヌクレオ チド模倣体はペプチド核酸(PNA)である。PNA化合物内の骨格は、PNAにアミド 含有骨格を与える、2つ以上の連結されたアミノエチルグリシン単位である。ヘテロ環式 塩基部分は、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合している。PN A化合物の調製を記載している代表的な米国特許としては、限定はされないが:米国特許 第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号 が挙げられる。

研究されているポリヌクレオチド模倣体の別のクラスは、モルホリノ環に結合したヘテ ロ環式塩基を有する連結したモルホリノ単位(モルホリノ核酸)に基づいている。モルホ リノ核酸内のモルホリノ単量体単位を連結するいくつかの連結基が報告されている。連結 基の1つのクラスが、非イオン性オリゴマー化合物を得るために選択されている。非イオ ン性モルホリノ系オリゴマー化合物は、細胞タンパク質との望ましくない相互作用を有す る可能性が小さい。モルホリノ系ポリヌクレオチドは、細胞タンパク質との望ましくない 相互作用を形成する可能性が小さいオリゴヌクレオチドの非イオン性模倣体である(Dwai ne A. Braasch and David R. Corey, Biochemistry, 2002, 41(14), 4503-4510)。モル ホリノ系ポリヌクレオチドは、米国特許第5,034,506号で開示される。ポリヌク レオチドのモルホリノクラス内で、単量体サブユニットを連結する種々の異なる連結基を 有する種々の化合物が調製されている。

ポリヌクレオチド模倣体のさらなるクラスは、シクロヘキセニル核酸(CeNA)と称 される。DNA/RNA分子内に通常存在するフラノース環がシクロヘキセニル環と置換 されている。CeNA DMT保護ホスホラミダイト単量体が調製され、古典的なホスホ ラミダイト化学作用に従うオリゴマー化合物合成に使用されている。完全に修飾されたC eNAオリゴマー化合物およびCeNAで修飾された特定の部分を有するオリゴヌクレオ チドが調製され研究されている(Wang et al., J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 8595-86 02を参照)。一般的に、DNA鎖へのCeNA単量体の組込みは、DNA/RNAハイブ リッドのその安定性を増加させる。CeNAオリゴアデニル酸は、元の複合体に類似した 安定性を有する、RNAおよびDNA相補体との複合体を形成した。天然の核酸構造にC eNA構造を組み込む研究は、容易な高次構造適合を開始するようNMRおよび円二色性 によって示された。

さらなる修飾には、2’−ヒドロキシル基が糖環の4’炭素原子に連結されることによ り2’−C,4’−C−オキシメチレン結合を形成して二環式糖部分を形成しているLo cked核酸(LNA)が含まれる。該連結は、nが1または2である、2’酸素原子お よび4’炭素原子を架橋する基であるメチレン(−CH2−)であり得る(Singh et al. , Chem. Commun., 1998, 4, 455-456)。LNAおよびLNA類似体は、相補DNAおよ びRNAとの非常に高い二本鎖熱安定性(Tm=+3〜+10℃)、3’−エキソヌクレ アーゼ分解に対する安定性および良好な溶解性特性を示す。LNAを含有する強力且つ無 毒性のアンチセンスオリゴヌクレオチドが記載されている(Wahlestedt et al., Proc. N atl. Acad. Sci. U.S.A., 2000, 97, 5633-5638)。

LNA単量体アデニン、シトシン、グアニン、5−メチル−シトシン、チミンおよびウ ラシルの合成および調製は、それらのオリゴマー化、並びに核酸認識特性と共に記載され ている(Koshkin et al., Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630)。LNAおよびその調製 は、国際公開第98/39352号および同第99/14226号にも記載される。

修飾された糖部分 主題の核酸は、一つまたは複数の置換された糖部分も含み得る。適切なポリヌクレオチ ドは、アルキル、アルケニルおよびアルキニルが置換または非置換のC1〜C10アルキ ルまたはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルであってもよい、OH;F;O−、S −、もしくはN−アルキル;O−、S−、もしくはN−アルケニル;O−、S−もしくは N−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキルから選択される糖置換基を含む。n およびmが1〜約10であるO((CH2)nO)mCH3、O(CH2)nOCH3、 O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(C H2)nON((CH2)nCH3)2は、特に適切である。他の適切なポリヌクレオチ ドは、C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカ リル、アラルキル、O−アルカリルもしくはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、 Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、 N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ 、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、干渉物質、オリゴヌ クレオチドの薬物動態特性を向上させるための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的 特性を向上させるための基、および類似の特性を有する他の置換基から選択される糖置換 基を含む。適切な修飾には、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2CH2OCH3 、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られている)(Mart in et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、すなわち、アルコキシアルコキシ 基が含まれる。さらなる適切な修飾には、下記の実施例に記載される、2’−DMAOE としても知られている、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、O(CH2) 2ON(CH3)2基、および2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野に おいて2’−O−ジメチル−アミノ−エトキシ−エチルまたは2’−DMAEOEとして も知られている)、すなわち、2’−O−CH2−O−CH2−N(CH3)2が含まれ る。

他の適切な糖置換基には、メトキシ(−O−CH3)、アミノプロポキシ(−−OCH 2CH2CH2NH2)、アリル(−CH2−CH=CH2)、−O−アリル(−−O− −CH2−CH=CH2)およびフルオロ(F)が含まれる。2’−糖置換基は、アラビ ノ(arabino)(上)位置であってもリボ(ribo)(下)位置であってもよい 。適切な2’−アラビノ修飾は2’−Fである。類似の修飾は、オリゴマー化合物上の他 の位置、特に3’末端ヌクレオシド上または2’−5’連結オリゴヌクレオチド内の糖の 3’位置、および5’末端ヌクレオチドの5’位置にも起こり得る。オリゴマー化合物は 、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分等の糖模倣体も有し得る。

塩基の修飾および置換 主題の核酸は、核酸塩基(しばしば、当該技術分野において単に「塩基」と称される) の修飾または置換を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「無修飾の」または 「天然の」核酸塩基には、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、並びにピ リミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾さ れた核酸塩基には、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒロドキシメチルシトシ ン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル並びにアデニンおよ びグアニンの他のアルキル誘導体、2−プロピル並びにアデニンおよびグアニンの他のア ルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウ ラシルおよびシトシン、5−プロピニル(−C=C−CH3)ウラシルおよびシトシン並 びにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン 、5−ウラシル(偽ウラシル(pseudouracil)、4−チオウラシル、8−ハ ロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシル並びに他の8−置 換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチル並びに 他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、 2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、 7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デア ザアデニン等の、他の合成核酸塩基および天然核酸塩基が含まれる。さらなる修飾された 核酸塩基には、フェノキサジンシチジン(1H−ピリミド(5,4−b)(1,4)ベン ゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド(5,4− b)(1,4)ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、G形クランプ、例えば、置換フェ ノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド(5,4−( b)(1,4)ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピ リミド(4,5−b)インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド (3’,2’:4,5)ピロロ(2,3−d)ピリミジン−2−オン)等の三環式ピリミ ジンが含まれる。

ヘテロ環式塩基部分は、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環、例えば、7−デア ザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジンおよび2−ピリドンで置換さ れているものを含んでいてもよい。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,80 8号に記載される核酸塩基、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engine ering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示される 核酸塩基、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 6 13により開示される核酸塩基、およびSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, 1993に開示される核酸塩基が含まれる。ある特定のこれらの核酸塩基は、オリゴマー化合 物の結合親和性を増加させるのに有用である。これらには、5−置換ピリミジン、6−ア ザピリミジン並びにN−2、N−6およびO−6置換プリン、例えば、2−アミノプロピ ルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンが含まれる。5−メ チルシトシン置換は、核酸の二本鎖安定性を0.6〜1.2℃増加させ(Sanghvi et al. , eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 27 6-278)、例えば、2’−O−メトキシエチル糖修飾を組み合わせる場合に、適切な塩基 置換であることが示されている。

結合体 主題の核酸の別の可能な修飾には、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取 り込みを増強する、ポリヌクレオチドへの一つまたは複数の部分または結合体の化学的連 結が含まれる。これらの部分または結合体は、一級または二級ヒドロキシル基等の官能基 に共有結合した結合基が含まれる。結合基としては、限定はされないが、干渉物質、レポ ーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴ マーの薬力学的特性を増強する基、およびオリゴマーの薬物動態特性を増強する基が挙げ られる。適切な結合基としては、限定はされないが、コレステロール、脂質、リン脂質、 ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオ レセイン、ローダミン、クマリン、および色素が挙げられる。薬力学的特性を増強する基 には、取り込みを増強する基、分解への耐性を増強する基、および/または標的核酸との 配列特異的なハイブリダイゼーションを強化する基が含まれる。薬物動態特性を増強する 基には、主題の核酸の取り込み、分布、代謝または排出を向上させる基が含まれる。

結合部分としては、限定はされないが、コレステロール部分等の脂質部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan e t al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053-1060)、チオエーテル、例えば、ヘキ シル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 3 06-309; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコ レステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族鎖 、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 1111-1118; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327-330; Svinarc huk et al., Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えば、ジ−ヘキサデシル−r ac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−r ac−グリセロ−3−H−ホスホン酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 3 6, 3651-3654; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミンも しくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 199 5, 14, 969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1 995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 199 5, 1264, 229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル− オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp.Ther., 1996, 277, 923 -937)が挙げられる。

結合体は「タンパク質形質導入ドメイン」またはPTD(CPP:細胞浸透性ペプチド としても知られている)を含んでいてもよく、これは、脂質二重層、ミセル、細胞膜、細 胞小器官膜、またはベシクル膜の横断を促進するポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水 化物、または有機もしくは無機化合物を指し得る。低分子極性分子から巨大な高分子およ び/またはナノ粒子まで及び得る別の分子に結合したPTDは、その分子が膜を横切るこ と、例えば細胞外間隙から細胞内空間、または細胞基質から細胞小器官内への移行を促進 する。いくつかの実施形態において、PTDは、外来性ポリペプチド(例えば、部位特異 的修飾ポリペプチド)のアミノ末端に共有結合的に連結される。いくつかの実施形態にお いて、PTDは、外来性ポリペプチド(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド)のカルボ キシル末端に共有結合的に連結される。いくつかの実施形態において、PTDは、核酸( 例えば、DNA標的化RNA、DNA標的化RNAをコードするポリヌクレオチド、部位 特異的修飾ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド等)に共有結合的に連結される。 PTDの例としては、限定はされないが、最小ウンデカペプチドタンパク質形質導入ドメ イン(YGRKKRRQRRR(配列番号264)を含むHIV−1 TATの残基47 〜57に対応);細胞への侵入を方向付けるのに充分ないくつかのアルギニン(例えば、 3、4、5、6、7、8、9、10、または10〜50個のアルギニン)を含むポリアル ギニン配列;VP22ドメイン(Zender et al. (2002) Cancer Gene Ther. 9(6):489-96 );ドロソフィラ・アンテナペディア(Drosophila Antennapedi a)タンパク質形質導入ドメイン(Noguchi et al. (2003) Diabetes 52(7):1732-1737) ;切断型ヒトカルシトニンペプチド(Trehin et al. (2004) Pharm. Research 21:1248-1 256);ポリリジン(Wender et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13003-1300 8);RRQRRTSKLMKR(配列番号265);トランスポータン(Transp ortan)GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号26 6);KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番 号267);およびRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号268)が挙げられる 。PTDの例としては、限定はされないが、YGRKKRRQRRR(配列番号264) 、RKKRRQRRR(配列番号269);3個のアルギニン残基〜50個のアルギニン 残基のアルギニンホモポリマーが挙げられ;PTDドメインアミノ酸配列の例としては、 、限定はされないが、以下:YGRKKRRQRRR(配列番号264);RKKRRQ RR(配列番号270);YARAAARQARA(配列番号271);THRLPRR RRRR(配列番号272);およびGGRRARRRRRR(配列番号273)のいず れかが挙げられる。いくつかの実施形態において、PTDは、活性化可能CPP(ACP P)である(Aguilera et al. (2009) Integr Biol (Camb) June; 1(5-6): 371-381)。 ACPPは、切断可能なリンカーを介して適合するポリアニオン(例えば、Glu9また は「E9」)に連結されたポリカチオンCPP(例えば、Arg9または「R9」)を含 み、これは、実効電荷をほぼゼロに減少させることで、細胞への接着および取り込みを阻 害する。リンカーを切断すると、ポリアニオンが放出され、ポリアルギニンおよびその固 有の接着性が局所的に暴露され、それによってACPPの膜横断が「活性化」される。

例示的なDNA標的化RNA いくつかの実施形態において、適切なDNA標的化RNAは、2つの別々のRNAポリ ヌクレオチド分子を含む。2つの別々のRNAポリヌクレオチド分子の1つ目(活性化R NA)は、配列番号431〜562に記載されるヌクレオチド配列のうちのいずれか一つ 、またはその相補体に対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって、少 なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少 なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少 なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のヌクレオチド配列同一性を有 するヌクレオチド配列を含む。2つの別々のRNAポリヌクレオチド分子の2つ目(標的 化RNA)は、配列番号563〜679に記載されるヌクレオチド配列のうちのいずれか 一つ、またはその相補体に対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって 、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75% 、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95% 、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のヌクレオチド配列同一性 を有するヌクレオチド配列を含む。

いくつかの実施形態において、適切なDNA標的化RNAは、単一のRNAポリヌクレ オチドであり、配列番号431〜562に記載されるヌクレオチド配列のうちのいずれか 1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって、少なくとも約60 %、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80 %、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98 %、少なくとも約99%、または100%のヌクレオチド配列同一性を有する第一ヌクレ オチド配列、および配列番号463〜679に記載されるヌクレオチド配列のいずれか1 つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって、少なくとも約60% 、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80% 、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98% 、少なくとも約99%、または100%のヌクレオチド配列同一性を有する第二ヌクレオ チド配列を含む。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAは二重分子DNA標的化RNAであ り、標的化RNAは、標的DNAに対し相補的なヌクレオチド鎖にその5’末端で連結さ れた配列5’GUUUUAGAGCUA−3’(配列番号679)を含む。いくつかの実 施形態において、DNA標的化RNAは二重分子DNA標的化RNAであり、活性化RN Aは、配列5’UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCG−3’(配列番 号//)を含む。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAは単一分子DNA標的化RNAであ り、標的DNAに対し相補的なヌクレオチド鎖にその5’末端で連結された配列5’−G UUUUAGAGCUA−リンカー−UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGU CCG−3’を含む(ここで、「リンカー」は、いかなるヌクレオチド配列も含み得るい かなるリンカーヌクレオチド配列をも表す)(配列番号//)。他の例示的な単一分子D NA標的化RNAには、配列番号680〜682に記載されるものが含まれる。

主題のDNA標的化RNAおよび/または主題の部位特異的修飾ポリペプチドをコードす る核酸 本開示は、主題のDNA標的化RNAおよび/または主題の部位特異的修飾ポリペプチ ドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。いくつかの実施形態において、 主題のDNA標的化RNAをコードする核酸は、発現ベクター、例えば、組み換え発現ベ クターである。

いくつかの実施形態において、主題の方法には、標的DNAをDNA標的化RNAおよ び/もしくは部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む一つもし くは複数の核酸と接触させること、または細胞(または細胞集団)にDNA標的化RNA および/もしくは部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む一つ もしくは複数の核酸を導入すること、が含まれる。いくつかの実施形態において、標的D NAを含む細胞はインビトロに存在する。いくつかの実施形態において、標的DNAを含 む細胞はインビボに存在する。DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペ プチドをコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸には発現ベクターが含まれ、ここ で、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレ オチド配列を含む発現ベクターは「組み換え発現ベクター」である。

いくつかの実施形態において、組み換え発現ベクターは、ウイルス性構築物、例えば、 組換えアデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号を参照)、 組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物、組換えレトロウイルス構築 物等である。

適切な発現ベクターとしては、限定はされないが、ウイルスベクター(例えば、ワクシ ニアウイルスに基づくウイルスベクター;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994; Borras et al., Gene Ther 6 :515 524, 1999; Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995; Sakamoto et al., H Gen e Ther 5:1088 1097, 1999;国際公開第94/12649号、同第93/03769号; 同第93/19191号;同第94/28938号;同第95/11984号および同第 95/00655号を参照);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene The r 9:81 86, 1998, Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997; Bennett et al., Inves t Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997; Jomary et al., Gene Ther 4:683 690, 1997 , Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999; Ali et al., Hum Mol Genet 5:59 1 594, 1996;国際公開第93/09239号のSrivastava, Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822−3828; Mendelson et al., Virol. (1988) 166:154−165;およびFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613−10617を参照);SV40;単純疱疹ウイルス;ヒト免 疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., PNAS 94:10319 23, 1997; Takahashi et al. , J Virol 73:7812 7816, 1999を参照);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血 病ウイルス、脾壊死ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ 白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス(m yeloproliferative sarcoma virus)、および乳癌ウイ ルス等のレトロウイルス由来のベクター);等が挙げられる。

多数の適切な発現ベクターが当業者に知られており、多くは市販されている。例として 以下のベクターを記載する;真核生物宿主細胞:pXT1、pSG5(ストラタジーン社 (Stratagene))、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV4 0(ファルマシア社(Pharmacia))。しかし、宿主細胞に適合している限り、 いかなる他のベクターを使用してもよい。

使用される宿主/ベクター系に応じて、いくつかの適切な転写調節領域および翻訳調節 領域のいずれか、例えば、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーター、転写エンハン サーエレメント、転写ターミネーター等を発現ベクターに用いてもよい(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544を参照)。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリ ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節領域、例えば、プロモーター等の転写調 節領域に作動可能に連結している。転写調節領域は、真核細胞、例えば、哺乳類細胞;ま たは原核細胞(例えば、細菌細胞または古細菌細胞)において機能的であり得る。いくつ かの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチド をコードするヌクレオチド配列は、原核細胞および真核細胞の両方におけるDNA標的化 RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現 を可能にする複数の調節領域に作動可能に連結している。

適切な真核生物プロモーター(真核細胞において機能的なプロモーター)の例としては 、限定はされないが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期、単純疱疹ウイルス(HS V)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来の末端反復配列( LTR)、並びにマウスメタロチオネイン−Iに由来する真核生物プロモーターが挙げら れる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、当該技術分野において十分に通常の 技術の範囲内である。また発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および 転写ターミネーターを含有していてもよい。また発現ベクターは、発現を増幅するための 適切な配列を含んでいてもよい。また発現ベクターは、部位特異的修飾ポリペプチドに融 合したタンパク質タグ(例えば、6xHisタグ、赤血球凝集素タグ、緑色蛍光タンパク 質等)をコードし、それ故キメラポリペプチドをもたらす、ヌクレオチド配列を含んでい てもよい。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリ ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、誘導性プロモーターに作動可能に連結してい る。いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポ リペプチドをコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに作動可能に連結して いる。

核酸を宿主細胞に導入する方法は当該技術分野において公知であり、いかなる公知の方 法を使用しても核酸(例えば、発現構築物)を細胞に導入することができる。適切な方法 としては、例えば、ウイルス感染またはバクテリオファージ感染、トランスフェクション 、接合(conjugation)、原形質融合、リポフェクション、エレクトロポレー ション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)介在性トランスフェクシ ョン、DEAE−デキストラン介在性トランスフェクション、リポソーム介在性トランス フェクション、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入、ナノ粒子介 在性核酸送達(例えば、Panyam et., al Adv Drug Deliv Rev. 2012 Sep 13. pii: S0169 -409X(12)00283-9. doi: 10.1016/j.addr.2012.09.023を参照)等が挙げられる。

キメラポリペプチド 本開示はキメラ部位特異的修飾ポリペプチドを提供する。主題のキメラ部位特異的修飾 ポリペプチドは、主題のDNA標的化RNA(上記)と相互作用(例えば、結合)する。 DNA標的化RNAは、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドを、標的DNA(例えば、染 色体配列または染色体外配列、例えば、エピソーム配列、ミニサークル配列、ミトコンド リア配列、葉緑体配列等)内の標的配列に誘導する。主題のキメラ部位特異的修飾ポリペ プチドは、標的DNAを修飾し(例えば、標的DNAの切断またはメチル化)、および/ または標的DNAと結合したポリペプチドを修飾する(例えば、ヒストン尾部のメチル化 またはアセチル化)。

主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチド 標的DNAを修飾し(例えば、標的DNA の切断またはメチル化)、および/または標的DNAと結合したポリペプチドを修飾する (例えば、ヒストン尾部のメチル化またはアセチル化)。キメラ部位特異的修飾ポリペプ チドは、「キメラ部位特異的ポリペプチド」または「キメラRNA結合部位特異的修飾ポ リペプチド」とも称される。

主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、2つの部分、RNA結合部位および活性 部位を含む。主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、少なくとも2つの異なるポリ ペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、 修飾されたおよび/または自然発生的なポリペプチド配列(例えば、修飾されたまたは無 修飾のCas9/Csn1タンパク質由来の第一アミノ酸配列;およびCas9/Csn 1タンパク質以外の第二アミノ酸配列)を含み得る。

RNA結合部位 いくつかの例において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドのRNA結合部位は 、自然発生的なポリペプチドである。他の例においては、主題のキメラ部位特異的修飾ポ リペプチドのRNA結合部位は、自然発生的な分子ではない(修飾されている、例えば、 変異、欠失、挿入)。目的の自然発生的なRNA結合部位は、当該技術分野において公知 の部位特異的修飾ポリペプチドに由来する。例えば、配列番号1〜256および795〜 1346は、部位特異的修飾ポリペプチドとして用いることができる自然発生的なCas 9/Csn1エンドヌクレアーゼの非限定的且つ非網羅的な列挙を提供する。いくつかの 例において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドのRNA結合部位は、配列番号1 〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のいずれかを有するポリ ペプチドのRNA結合部位に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なく とも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なく とも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/C sn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または配列 番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれか における対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約8 5%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100% のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

活性部位 RNA結合部位に加えて、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドは「活性部位」を含む。 いくつかの実施形態において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は、 部位特異的修飾ポリペプチド(例えば、Cas9/Csn1エンドヌクレアーゼ)の自然 発生的な活性部位を含む。他の実施形態では、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチド の活性部位は、部位特異的修飾ポリペプチドの自然発生的な活性部位の修飾されたアミノ 酸配列(例えば、置換、欠失、挿入)を含む。目的の自然発生的な活性部位は、当該技術 分野において公知の部位特異的修飾ポリペプチドに由来する。例えば、配列番号1〜25 6および795〜1346は、部位特異的修飾ポリペプチドとして用いることができる自 然発生的なCas9/Csn1エンドヌクレアーゼの非限定的且つ非網羅的な列挙を提供 する。主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は可変であり、本明細書で開 示される方法に有用であり得るいずれの異種ポリペプチド配列を含んでいてもよい。

いくつかの実施形態において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、(i)標 的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化RNAと相互作用 するRNA結合部位;および(ii)部位特異的酵素活性を示す活性部位(例えば、DN Aメチル化活性、DNA切断活性、ヒストンアセチル化活性、ヒストンメチル化活性等) を含み、酵素活性の部位はDNA標的化RNAによって決定される。

他の実施形態では、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、(i)標的DNA内 の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むDNA標的化RNAと相互作用するRNA 結合部位;および(ii)標的DNA内の転写を調節する活性部位(例えば、転写を増加 または減少させるための)を含み、標的DNA内の調節される転写の部位はDNA標的化 RNAによって決定される。

いくつかの例において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は、標的 DNAを修飾する酵素活性(例えば、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性 、脱メチル化酵素活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムター ゼ活性、アルキル化活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、イン テグラーゼ活性、トランスポサーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガ ーゼ活性、ヘリカーゼ活性、光回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性)を有する。

他の例において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は、標的DNA と結合したポリペプチド(例えば、ヒストン)を修飾する酵素活性(例えば、メチルトラ ンスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチ ル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキ チン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、 リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性) を有する。

いくつかの例において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は、酵素 活性を示す(上記)。他の例において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドの活性 部位は、標的DNAの転写を調節する(上記)。主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチ ドの活性部位は可変であり、本明細書で開示される方法に有用であり得るいずれの異種ポ リペプチド配列を含んでいてもよい。

例示的なキメラ部位特異的修飾ポリペプチド いくつかの実施形態において、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は、Ca s9/Csn1タンパク質の修飾形態を含む。いくつかの例において、Cas9/Csn 1タンパク質の修飾形態は、Cas9/Csn1タンパク質の自然発生的なヌクレアーゼ 活性を低減させるアミノ酸変化(例えば、欠失、挿入、または置換)を含む。例えば、い くつかの例において、Cas9/Csn1タンパク質の修飾形態は、対応する野生型Ca s9/Csn1ポリペプチドの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10 %未満、5%未満、または1%未満のヌクレアーゼ活性を有する。いくつかの例において 、Cas9/Csn1ポリペプチドの修飾形態は、実質的なヌクレアーゼ活性を有さない 。

いくつかの実施例において、Cas9/Csn1ポリペプチドの修飾形態は、標的DN Aの相補鎖を切断することができるが、標的DNAの非相補鎖を切断する能力が低減して いる、D10A(配列番号8のアミノ酸位置10におけるアスパラギン酸からアラニン) 変異(または配列番号1〜256および795〜1346に示されるタンパク質のうちの いずれかの対応する変異)である(図11を参照)。いくつかの実施例において、Cas 9/Csn1ポリペプチドの修飾形態は、標的DNAの非相補鎖を切断することができる が、標的DNAの相補鎖を切断する能力が低減している、H840A(アミノ酸位置84 0におけるヒスチジンからアラニン)変異(または配列番号1〜256および795〜1 346として記載されるタンパク質のうちのいずれかの対応する変異)である(図11を 参照)。いくつかの実施例において、Cas9/Csn1ポリペプチドの修飾形態は、ポ リペプチドが標的DNAの相補鎖および非相補鎖の両方を切断する能力が低減しているよ うな、D10AおよびH840A変異(または配列番号1〜256および795〜134 6として記載されるタンパク質のうちのいずれかの対応する変異)の両方を有する。他の 残基を変異させることで、上記の効果(すなわち、1つまたはその他のヌクレアーゼ部分 を失活させる)を得ることができる。非限定例として、残基D10、G12、G17、E 762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、お よび/またはA987(または配列番号1〜256および795〜1346として記載さ れるタンパク質のうちのいずれかの対応する変異)を、変化(すなわち、置換)させるこ とができる(Cas9アミノ酸残基の保存に関するさらなる情報については図3、図5、 図11A、および表1を参照)。また、アラニン置換以外の変異も適切である。

目的のさらなる情報について 表1. 表1は種々の種に由来するCas9配列内に存在する4つのモチーフを列挙し ている(図3および図5も参照)。表に列挙されるアミノ酸は、S.ピオゲネス由来のC as9のものである(配列番号8)。

いくつかの例において、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas 9/Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、また は配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのい ずれかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくと も約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または10 0%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例において、キメラ 部位特異的修飾ポリペプチドは、4つのモチーフ(表4に列挙され、図3Aおよび図5に 示される)を含み、それぞれは、表1に列挙される4つのモチーフ(配列番号260〜2 63)のそれぞれに対して、または、配列番号1〜256および795〜1346として 記載されるアミノ酸配列のいずれかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%、少 なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少 なくとも約99%または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。 いくつかの例において、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9 /Csn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または 配列番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいず れかにおける対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも 約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100 %のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

いくつかの実施形態において、部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は、DNA修飾 活性および/または転写因子活性および/またはDNA結合ポリペプチド修飾活性を有す る異種ポリペプチドを含む。いくつかの例において、異種ポリペプチドは、ヌクレアーゼ 活性を与えるCas9/Csn1ポリペプチドの位置と置換されている。他の実施形態で は、主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性を正常に与えるCas9/ Csn1ポリペプチドの部分(および十分に活性な、または代わりに、対応する野生型活 性の100%未満を有するよう修飾されていてもよいCas9/Csn1ポリペプチドの 部分)、および異種ポリペプチドの両方を含む。言い換えれば、いくつかの例において、 主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性を正常に与えるCas9 /Csn1ポリペプチドの部分および異種ポリペプチドの両方を含む融合ポリペプチドで ある。他の例において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、Cas9/Csn 1ポリペプチドの活性部位の修飾変異体(例えば、アミノ酸変化、欠失、挿入)および異 種ポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。さらに別の例では、主題のキメラ部位特 異的修飾ポリペプチドは、異種ポリペプチドおよび自然発生的なまたは修飾された部位特 異的修飾ポリペプチドのRNA結合部位を含む融合ポリペプチドである。

例えば、キメラCas9/Csn1タンパク質において、自然発生的な(または修飾( 例えば、変異、欠失、挿入)された)細菌Cas9/Csn1ポリペプチドは、異種ポリ ペプチド配列(すなわち、Cas9/Csn1以外のタンパク質由来のポリペプチド配列 または別の生物由来のポリペプチド配列)に融合されていてもよい。異種ポリペプチド配 列は、キメラCas9/Csn1タンパク質によっても示される活性(例えば、酵素活性 )を示し得る(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活 性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性等)。異種核酸配列を別の核酸配列に連結して(例 えば、遺伝子操作によって)、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列 を作製してもよい。いくつかの実施形態において、キメラCas9/Csn1ポリペプチ ドは、Cas9/Csn1ポリペプチド(例えば、野生型Cas9またはCas9変異型 、例えば、ヌクレアーゼ活性が低減または不活性化されたCas9)を、細胞内局在を与 える異種配列(例えば、核に標的化するための核局在化シグナル(NLS);ミトコンド リアに標的化するためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体に標的化するための葉緑 体局在化シグナル;ER保留シグナル;等)と融合することにより作製される。いくつか の実施形態において、異種配列は、追跡または精製を容易にするためのタグを与え得る( 例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、C FP、mCherry、tdTomato等;Hisタグ、例えば、6XHisタグ;赤 血球凝集素(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグ;等)。いくつかの実施形態におい て、異種配列は、安定性の増加または減少を与え得る。いくつかの実施形態において、異 種配列は、(例えば、キメラCas9ポリペプチドが別の目的タンパク質、例えば、DN Aまたはヒストン修飾タンパク質、転写因子または転写抑制因子、動員(recruit ing)タンパク質等に結合する能力を与えるための)結合ドメインを与え得る。

主題の変異型Cas9部位特異的ポリペプチドの、種々のさらなる適切な融合パートナ ー(またはその断片)の例には、限定はされないが、図54に列挙されるものが含まれる 。

主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードする核酸 本開示は、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を 含む核酸を提供する。いくつかの実施形態において、主題のキメラ部位特異的修飾ポリペ プチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、発現ベクター、例えば、組み換え発 現ベクターである。

いくつかの実施形態において、主題の方法は、標的DNAをキメラ部位特異的修飾ポリ ペプチドを含む一つまたは複数の核酸と接触させること、または細胞(または細胞集団) にキメラ部位特異的修飾ポリペプチドを含む一つまたは複数の核酸を導入すること、を含 む。キメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸 には発現ベクターが含まれ、ここで、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌ クレオチド配列を含む発現ベクターは「組み換え発現ベクター」である。

いくつかの実施形態において、組み換え発現ベクターは、ウイルス性構築物、例えば、 組換え型アデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号を参照) 、組換え型アデノウイルス構築物、組換え型レンチウイルス構築物等である。

適切な発現ベクターとしては、限定はされないが、ウイルスベクター(例えば、ワクシ ニアウイルスに基づくウイルスベクター;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994; Borras et al., Gene Ther 6 :515 524, 1999; Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995; Sakamoto et al., H Gen e Ther 5:1088 1097, 1999;国際公開第94/12649号、同第93/03769号; 同第93/19191号;同第94/28938号;同第95/11984号および同第 95/00655号を参照);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene The r 9:81 86, 1998, Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997; Bennett et al., Inves t Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997; Jomary et al., Gene Ther 4:683 690, 1997 , Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999; Ali et al., Hum Mol Genet 5:59 1 594, 1996;国際公開第93/09239号のSrivastava, Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822−3828; Mendelson et al., Virol. (1988) 166:154−165;およびFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613−10617を参照);SV40;単純疱疹ウイルス;ヒト免 疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., PNAS 94:10319 23, 1997; Takahashi et al. , J Virol 73:7812 7816, 1999を参照);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血 病ウイルス、脾壊死ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ 白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス(m yeloproliferative sarcoma virus)、および乳癌ウイ ルス等のレトロウイルス由来のベクター);等が挙げられる。

多数の適切な発現ベクターが当業者に知られており、多くは市販されている。例として 以下のベクターを記載する;真核生物宿主細胞:pXT1、pSG5(ストラタジーン社 )、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(ファルマシア社)。し かし、宿主細胞に適合している限り、いかなる他のベクターを使用してもよい。

使用される宿主/ベクター系に応じて、いくつかの適切な転写調節領域および翻訳調節 領域のいずれか、例えば、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーター、転写エンハン サーエレメント、転写ターミネーター等を発現ベクターに用いてもよい(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544を参照)。

いくつかの実施形態において、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレ オチド配列は、調節領域、例えば、プロモーター等の転写調節領域に作動可能に連結して いる。転写調節領域は、真核細胞、例えば、哺乳類細胞;または原核細胞(例えば、細菌 細胞または古細菌細胞)において機能的であり得る。いくつかの実施形態において、キメ ラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核細胞および真核細 胞の両方におけるキメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発 現を可能にする複数の調節領域に作動可能に連結している。

適切な真核生物プロモーター(真核細胞において機能的なプロモーター)の例としては 、限定はされないが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期、単純疱疹ウイルス(HS V)チミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来の末端反復配列( LTR)、並びにマウスメタロチオネイン−Iに由来する真核生物プロモーターが挙げら れる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、当該技術分野において十分に通常の 技術の範囲内である。また発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および 転写ターミネーターを含有していてもよい。また発現ベクターは、発現を増幅するための 適切な配列を含んでいてもよい。また発現ベクターは、キメラ部位特異的修飾ポリペプチ ドに融合したタンパク質タグ(例えば、6xHisタグ、赤血球凝集素(HA)タグ、蛍光 タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質;黄色蛍光タンパク質等)等)をコードするヌ クレオチド配列を含んでいてもよい。

いくつかの実施形態において、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレ オチド配列は、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリ ン調節プロモーター、ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、エストロゲ ン受容体調節プロモーター等)に作動可能に連結している。いくつかの実施形態において 、キメラ部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、空間限定的およ び/または時間限定的プロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プ ロモーター等)に作動可能に連結している。いくつかの実施形態において、キメラ部位特 異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに作動可能 に連結している。

核酸を宿主細胞に導入する方法は当該技術分野において公知であり、いかなる公知の方 法も、核酸(例えば、発現構築物)を幹細胞または前駆細胞に導入するために使用するこ とができる。適切な方法としては、例えば、ウイルス感染またはバクテリオファージ感染 、トランスフェクション、接合(conjugation)、原形質融合、リポフェクシ ョン、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI) 介在性トランスフェクション、DEAE−デキストラン介在性トランスフェクション、リ ポソーム介在性トランスフェクション、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿、直 接微量注入、ナノ粒子介在性核酸送達(例えば、Panyam et., al Adv Drug Deliv Rev. 2 012 Sep 13. pii: S0169-409X(12)00283-9. doi: 10.1016/j.addr.2012.09.023を参照) 等が挙げられる。

方法 本開示は、標的DNAおよび/または標的DNA結合ポリペプチドを修飾する方法を提 供する。一般的に、主題の方法は、標的DNAを、DNA標的化RNAおよび部位特異的 修飾ポリペプチドを含む複合体(「ターゲティング複合体」)と接触させることを含む。

前述の通り、主題のDNA標的化RNAおよび主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、 複合体を形成する。DNA標的化RNAは、標的DNAの配列に対し相補的なヌクレオチ ド配列を含むことにより、複合体に標的特異性を与える。複合体の部位特異的修飾ポリペ プチドは、部位特異的活性を与える。いくつかの実施形態において、主題の複合体は標的 DNAを修飾し、例えば、DNA切断、DNAメチル化、DNA損傷、DNA修復等をも たらす。他の実施形態では、主題の複合体は標的DNAと結合した標的ポリペプチド(例 えば、ヒストン、DNA結合タンパク質等)を修飾し、例えば、ヒストンメチル化、ヒス トンアセチル化、ヒストンユビキチン化等をもたらす。標的DNAは、例えば、インビト ロにおける裸のDNA、インビトロにおける細胞内の染色体DNA、インビボにおける細 胞内の染色体DNA等であり得る。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、DNA標的化RNAおよび標 的DNAの間の相補的領域によって決定される標的DNA配列において標的DNAを切断 するヌクレアーゼ活性を示す。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドがC as9またはCas9関連ポリペプチドである場合、標的DNAの部位特異的切断は、( i)DNA標的化RNAおよび標的DNA間の塩基対形成相補性;並びに(ii)標的D NA内のショートモチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と称される)の両 方によって決定される位置で起こる。いくつかの実施形態において(例えば、S.ピオゲ ネス由来のCas9、または近縁Cas9が用いられる場合(配列番号1〜256および 795〜1346を参照))、非相補鎖のPAM配列は5’−XGG−3’であり、ここ で、XはあらゆるDNAヌクレオチドであり、Xは標的DNAの非相補鎖の標的配列のす ぐ3’側である(図10を参照)。従って、相補鎖のPAM配列は5’−CCY−3’で あり、ここでYはあらゆるDNAヌクレオチドであり、Yは標的DNAの相補鎖の標的配 列のすぐ5’側である(非相補鎖のPAMが5’−GGG−3’であり相補鎖のPAMが 5’−CCC−3’である、図10を参照)。いくつかのそのような実施形態において、 XおよびYは相補的であり得、X−Y塩基対はいかなる塩基対でもあり得る(例えば、X =CおよびY=G;X=GおよびY=C;X=AおよびY=T、X=TおよびY=A)。

いくつかの例において、異なるCas9タンパク質(すなわち、様々な種に由来するC as9タンパク質)は、異なるCas9タンパク質の種々の酵素的特徴を十分に利用する ために、種々の提供される方法において使用するのに有利であり得る(例えば、異なるP AM配列優先度のため;酵素活性の増加または減少のため;細胞毒性レベルの増加または 減少のため;NHEJ、相同組換え修復、一本鎖切断、二本鎖切断等の間のバランスを変 化させるため)。様々な種に由来するCas9タンパク質(配列番号1〜256および7 95〜1346を参照)は、標的DNA内に異なるPAM配列を必要とし得る。従って、 特定の最適なCas9タンパク質において、PAM配列の要求は上記の5’−XGG−3 ’配列とは異なり得る。

種々様々な種に由来する多くのCas9オルソログが本明細書において特定されたが、 それらのタンパク質は同一のアミノ酸をわずかしか共有していない。特定された全てのC as9オルソログは、中心のHNHエンドヌクレアーゼドメインおよび分割されたRuv C/RNaseHドメインを有する同一のドメイン構造を有する(図3A、3B、図5、 および表1を参照)。Cas9タンパク質は保存された構造と4つの重要なモチーフを共 有している。モチーフ1、2、および4はRuvC様モチーフであり、一方、モチーフ3 はHNHモチーフである。いくつかの例において、適切な部位特異的修飾ポリペプチドは 4つのモチーフを有するアミノ酸配列を含み、モチーフ1〜4のそれぞれは、図3Aに示 されるCas9/Csn1アミノ酸配列のモチーフ1〜4(それぞれ、配列番号260〜 263、表1に示される)に対して、または、配列番号1〜256および795〜134 6に記載のアミノ酸配列のうちのいずれかにおける対応部分(多岐にわたるCas9配列 由来のモチーフ1〜4のアライメントについては図5を参照)に対して、少なくとも約7 5%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約9 5%、少なくとも約99%または100%のアミノ酸配列同一性を有している。いくつか の例において、適切な部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/Csn 1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または配列番号 1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれかにお ける対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85% 、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または100%のアミ ノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。上記のいかなるCas9タンパク質も、部 位特異的修飾ポリペプチドとして、または主題の方法のキメラ部位特異的修飾ポリペプチ ドの一部として、使用することができる。

ヌクレアーゼ活性は標的DNAを切断して二重鎖切断を生成する。これらの切断は次に 、非相同末端結合および相同組換え修復という2つの方法のうちの1つで、細胞によって 修復される(図2)。非相同末端結合(NHEJ)において、二重鎖切断は切断末端の互 いへの直接的ライゲーションによって修復される。従って、新規の核酸物質はその部位に 挿入されないが、ただし、いくらかの核酸物質が失われて欠失をもたらし得る。相同組換 え修復においては、切断された標的DNA配列に対し相同性を有するドナーポリヌクレオ チドが切断された標的DNA配列を修復するための鋳型として使用され、ドナーポリヌク レオチドから標的DNAへの遺伝情報の移動をもたらす。従って、新規の核酸物質がその 部位に挿入/複製され得る。いくつかの例において、標的DNAは主題のドナーポリヌク レオチドと接触される。いくつかの例において、主題のドナーポリヌクレオチドは主題の 細胞に導入される。NHEJおよび/または相同組換え修復による標的DNAの修飾は、 例えば、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子標識、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺 伝子破壊、遺伝子変異等をもたらす。

従って、部位特異的修飾ポリペプチドによるDNAの切断を用いることで、標的DNA 配列を切断し、外因的に供給したドナーポリヌクレオチドの非存在下において細胞にその 配列を修復させることにより、標的DNA配列から核酸物質を除去(例えば、細胞を感染 し易くする遺伝子(例えば、T細胞をHIVに感染し易くさせるCCR5またはCXCR 4遺伝子)を破壊するように、ニューロンにおける疾患を引き起こす三塩基反復配列を除 去するように、研究において疾病モデルとして遺伝子ノックアウトおよび遺伝子変異を起 こすように、等)することができる。従って、主題の方法を用いることで、遺伝子をノッ クアウト(転写の完全な欠如または改変された転写をもたらす)、または標的DNA内の 最適な遺伝子座に遺伝物質をノックインすることができる。

あるいは、DNA標的化RNAおよび部位特異的修飾ポリペプチドが、標的DNA配列 に対し相同性を有する少なくとも1つのセグメントを含むドナーポリヌクレオチド配列と 共に細胞に同時投与される場合、主題の方法を用いることで、標的DNA配列に核酸物質 を付加(すなわち挿入または置換)(例えば、タンパク質、siRNA、miRNA等を コードする核酸を「ノックイン」)、タグ(例えば、6xHis、蛍光タンパク質(例え ば、緑色蛍光タンパク質;黄色蛍光タンパク質等)、赤血球凝集素(HA)、FLAG等 )を付加、遺伝子に制御配列を付加(例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、 内部リボソーム侵入配列(IRES)、2Aペプチド、開始コドン、終止コドン、スプラ イスシグナル、局在化シグナル等)、核酸配列を修飾(例えば、変異を導入)する等が可 能となる。従って、DNA標的化RNAおよび部位特異的修飾ポリペプチドを含む複合体 は、例えば、遺伝子治療(例えば、疾患を治療するために、または抗ウイルス治療、抗病 原治療、もしくは抗がん治療として)、農業における遺伝子改変生物の作製、治療、診断 、または研究を目的とした細胞によるタンパク質の大規模生産、iPS細胞の誘導、生物 学的研究、病原体の遺伝子の欠失または置換の標的化等において用いられる、部位特異的 、すなわち「標的化された」方法(例えば、遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、遺 伝子編集、遺伝子標識等)でDNAを修飾することが望ましい、いかなるインビトロまた はインビボ適用においても有用である。

いくつかの実施形態において、部位特異的修飾ポリペプチドは、Cas9/Csn1タ ンパク質の修飾形態を含む。いくつかの例において、Cas9/Csn1タンパク質の修 飾形態は、Cas9/Csn1タンパク質の自然発生的なヌクレアーゼ活性を低減させる アミノ酸変化(例えば、欠失、挿入、または置換)を含む。例えば、いくつかの例におい て、Cas9/Csn1タンパク質の修飾形態は、対応する野生型Cas9/Csn1ポ リペプチドの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満 、または1%未満のヌクレアーゼ活性を有する。いくつかの例において、Cas9/Cs n1ポリペプチドの修飾形態は、実質的なヌクレアーゼ活性を有さない。主題の部位特異 的修飾ポリペプチドは、実質的なヌクレアーゼ活性を有さないCas9/Csn1ポリペ プチドの修飾形態である場合、「dCas9」と称され得る。

いくつかの実施形態において、Cas9/Csn1ポリペプチドの修飾形態は、標的D NAの相補鎖を切断することができるが、標的DNAの非相補鎖を切断する能力が低減し ている(従って、DSBではなく一本鎖切断(SSB)をもたらす;図11を参照)、D 10A(配列番号8のアミノ酸位置10におけるアスパラギン酸からアラニン)変異(ま たは配列番号1〜256および795〜1346として記載されるタンパク質のうちのい ずれかの対応する変異)である。いくつかの実施形態において、Cas9/Csn1ポリ ペプチドの修飾形態は、標的DNAの非相補鎖を切断することができるが、標的DNAの 相補鎖を切断する能力が低減している(従って、DSBではなく一本鎖切断(SSB)を もたらす;図11を参照)、H840A(配列番号8のアミノ酸位置840におけるヒス チジンからアラニン)変異(または配列番号1〜256および795〜1346として記 載されるタンパク質のうちのいずれかの対応する変異)である。Cas9のD10Aまた はH840A変異体(または配列番号1〜256および795〜1346として記載され るタンパク質のいずれかにおける対応する変異)を用いることで、SSBとは対照的に、 DSBが存在する場合、非相同末端結合(NHEJ)が起こる可能性がさらにより大きい ために、期待される生物学的結果を変化させることができる。従って、DSBの可能性を 減少させる(および、従って、NHEJの可能性を減少させる)ことが望ましいいくつか の例においては、Cas9のD10AまたはH840A変異体を用いることができる。他 の残基を変異させて、同一の効果を得る(すなわち、1つまたはその他のヌクレアーゼ部 分を失活させる)ことができる。非限定例として、残基D10、G12、G17、E76 2、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、および /またはA987(または配列番号1〜256および795〜1346として記載される タンパク質のうちのいずれかの対応する変異)を、変化(すなわち、置換)させることが できる(Cas9アミノ酸残基の保存に関するさらなる情報については図3、図5、図1 1A、および表1を参照)。また、アラニン置換以外の変異も適切である。部位特異的ポ リペプチド(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド)が低減された触媒活性を有する場合 (例えば、Cas9タンパク質がD10、G12、G17、E762、H840、N85 4、N863、H982、H983、A984、D986、および/またはA987変異 、例えば、D10A、G12A、G17A、E762A、H840A、N854A、N8 63A、H982A、H983A、A984A、および/またはD986Aを有する場合 )のいくつかの実施形態において、該ポリペプチドは、該ポリペプチドがDNA標的化R NAと相互作用する能力を保持している限り、部位特異的に標的DNAになお結合するこ とができる(該ポリペプチドはDNA標的化RNAによって標的DNA配列になお誘導さ れるため)。

いくつかの実施形態において、Cas9/Csn1ポリペプチドの修飾形態は、該ポリ ペプチドが標的DNAの相補鎖および非相補鎖の両方を切断する能力が低減しているよう な(すなわち、該変異体が実質的なヌクレアーゼ活性を有さない可能性がある)、D10 A変異およびH840A変異の両方(または配列番号1〜256および795〜1346 として記載されるタンパク質のうちのいずれかの対応する変異)を有する。他の残基を変 異させて、同一の効果を得る(すなわち、1つまたはその他のヌクレアーゼ部分を失活さ せる)ことができる。非限定例として、残基D10、G12、G17、E762、H84 0、N854、N863、H982、H983、A984、D986、および/またはA 987(または配列番号1〜256および795〜1346として記載されるタンパク質 のうちのいずれかの対応する変異)を、変化(すなわち、置換)させることができる(C as9アミノ酸残基の保存に関するさらなる情報については図3、図5、図11A、およ び表1を参照)。また、アラニン置換以外の変異も適切である。

いくつかの実施形態において、部位特異的修飾ポリペプチドは、異種配列を含む(例え ば、融合)。いくつかの実施形態において、異種配列は部位特異的修飾ポリペプチドの細 胞内局在化を与え得る(例えば、核に標的化するための核局在化シグナル(NLS);ミ トコンドリアに標的化するためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体に標的化するた めの葉緑体局在化シグナル;ER保留シグナル;等)。いくつかの実施形態において、異 種配列は、追跡または精製を容易にするためのタグを与え得る(例えば、蛍光タンパク質 、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCherry、 tdTomato等;Hisタグ、例えば、6XHisタグ;赤血球凝集素(HA)タグ ;FLAGタグ;Mycタグ;等)。いくつかの実施形態において、異種配列は、安定性 の増加または減少を与え得る。

いくつかの実施形態において、主題の部位特異的修飾ポリペプチドはコドン最適化され 得る。この種の最適化は当該技術分野において公知であり、同一のタンパク質をコードし たまま目的の宿主生物または細胞のコドン選択を模倣するために、外来性DNAの変異を 必要とする。従って、コドンは変化されるが、コードされるタンパク質は変化されないま まである。例えば、目的の標的細胞がヒト細胞である場合、ヒトコドン最適化Cas9( または変異体、例えば、酵素的に不活性な変異体)が適切な部位特異的修飾ポリペプチド であるだろう(例として配列番号256を参照)。いかなる適切な部位特異的修飾ポリペ プチドも(例えば、配列番号1〜256および795〜1346に記載される配列のいず れか等のいかなるCas9も)、コドン最適化することができる。別の非限定例として、 目的の宿主細胞がマウス細胞である場合、マウスコドン最適化Cas9(または変異体、 例えば、酵素的に不活性な変異体)が適切な部位特異的修飾ポリペプチドであるだろう。 コドン最適化は必要なものではないが、ある特定の場合においては受け入れられるもので あり、好ましい場合がある。

いくつかの実施形態において、主題のDNA標的化RNAおよび主題の部位特異的修飾 ポリペプチドは、細菌細胞における遺伝子発現を停止させるための誘導可能な系として用 いられる。いくつかの例において、適切なDNA標的化RNAおよび/または適切な部位 特異的ポリペプチドをコードする核酸は、標的細胞の染色体に組み込まれ、誘導性プロモ ーターの制御下にある。DNA標的化RNAおよび/または部位特異的ポリペプチドが誘 導された場合、標的DNAは、DNA標的化RNAおよび部位特異的修飾ポリペプチドの 両方が存在し複合体を形成した場合に、目的の位置(例えば、別々のプラスミド上の標的 遺伝子)において切断(または修飾)される。従って、いくつかの例において、細菌発現 株は、細菌ゲノム内の適切な部位特異的修飾ポリペプチドをコードする核酸配列、および /またはプラスミド上の(例えば、誘導性プロモーターの制御下にある)適切なDNA標 的化RNAを含むように、操作され、(その株に導入された別々のプラスミドから発現さ れる)いかなる標的化された遺伝子の発現もDNA標的化RNAおよび部位特異的ポリペ プチドの発現を誘導することにより制御することができる実験を可能にする。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、二重鎖切断を導入する以外の 方法で標的DNAを修飾する酵素活性を有する。標的DNAを(例えば、酵素活性を有す る異種ポリペプチドを部位特異的修飾ポリペプチドに融合することにより、キメラ部位特 異的修飾ポリペプチドを作製することによって)修飾するのに用いられ得る目的の酵素活 性には、限定はされないが、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、DN A修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱 プリン活性、酸化活性、ピリミジンダイマー形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポ サーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、 光回復酵素活性またはグリコシラーゼ活性)が含まれる。DNAの損傷および修復の活性 が環境ストレスに応答した細胞生存および適切なゲノム維持のために必須である一方で、 メチル化および脱メチル化は、当該技術分野において、後成的遺伝子制御の重要な方法と して認識されている。

従って、本明細書における方法は、標的DNAの後成的修飾において有用であり、DN A標的化RNAのDNA標的化セグメントに所望の相補的核酸配列を遺伝子導入すること によって、標的DNA内のあらゆる位置における標的DNAの後成的修飾を制御するため に用いることができる。本明細書における方法はまた、標的DNA内のあらゆる所望の位 置における、DNAの意図的および制御された損傷において有用である。本明細書におけ る方法はまた、標的DNA内のあらゆる所望の位置における、DNAの配列特異的および 制御された修復において有用である。DNA修飾酵素活性を標的DNA内の特定の位置に 標的化する方法は、研究および臨床応用の両方で有用である。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、(例えば、キメラ部位特異的 修飾ポリペプチド等の場合)標的DNAの転写を調節する活性を有する。いくつかの例に おいて、転写を増加または減少させる能力を示す異種ポリペプチド(例えば、転写活性化 因子または転写抑制因子ポリペプチド)を含むキメラ部位特異的修飾ポリペプチドは、D NA標的化RNAのDNA標的化セグメントによって誘導される、標的DNA内の特定の 位置において標的DNAの転写を増加または減少させるために用いられる。キメラ部位特 異的修飾ポリペプチドに転写調節活性を与える、供給源ポリペプチドの例としては、限定 はされないが、光誘導性転写制御因子、小分子/薬剤反応性転写制御因子、転写因子、転 写抑制因子等が挙げられる。いくつかの例において、主題の方法は、標的化されたコード RNA(タンパク質コード遺伝子)および/または標的化された非コードRNA(例えば 、tRNA、rRNA、snoRNA、siRNA、miRNA、長鎖ncRNA等)の 発現を制御するために用いられる。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、DNAに結合したポリペプチ ド(例えば、ヒストン)を修飾する酵素活性を有する。いくつかの実施形態において、該 酵素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフ ェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチン リガーゼ活性(すなわち、ユビキチン化活性)、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、 脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化 活性、ミリストイル化活性、脱ミリストイル化活性、グリコシル化活性(例えば、O−G lcNAcトランスフェラーゼから)または脱グリコシル化活性である。本明細書に列挙 される酵素活性はタンパク質に対する共有結合的修飾を触媒する。そのような修飾は、標 的タンパク質の安定性または活性を変化させることが、当該技術分野において公知である (例えば、キナーゼ活性によるリン酸化は、標的タンパク質に応じてタンパク質活性を刺 激または抑制し得る)。ヒストンはタンパク質標的として特に重要である。ヒストンタン パク質は、DNAと結合しヌクレオソームとして知られる複合体を形成することが、当該 技術分野において知られている。ヒストンを修飾(例えば、メチル化、アセチル化、ユビ キチン化、リン酸化)することで、周囲のDNAに構造変化を誘発し、それにより、転写 因子、ポリメラーゼ等の相互作用因子に対する、DNAの潜在的に大きな部分の接触性を 制御することができる。単一のヒストンは、多くの異なる方法で、および多くの異なる組 み合わせで、修飾することができる(例えば、ヒストン3のリジン27(H3K27)の トリメチル化は、転写抑制されたDNA領域と関連しており、一方、ヒストン3のリジン 4(H3K4)のトリメチル化は、転写活性型のDNA領域と関連している)。従って、 ヒストン修飾活性を有する部位特異的修飾ポリペプチドは、DNA構造の部位特異的制御 において有用であり、標的DNAの選択された領域においてヒストン修飾パターンを変化 させるために用いることができる。そのような方法は研究および臨床応用の両方において 有用である。

いくつかの実施形態において、複数のDNA標的化RNAが、同一の標的DNAまたは 異なる標的DNA上の異なる位置を同時に修飾するために、同時に用いられる。いくつか の実施形態において、2つ以上のDNA標的化RNAが、同一の遺伝子または転写物また は遺伝子座を標的とする。いくつかの実施形態において、2つ以上のDNA標的化RNA が、異なる無関連の遺伝子座を標的とする。いくつかの実施形態において、2つ以上のD NA標的化RNAが、異なるが関連した遺伝子座を標的とする。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドはタンパク質として直接的に提供 される。1つの非限定例として、真菌(例えば、酵母)は、スフェロプラスト形質転換を 用いて、外来性タンパク質および/または核酸によって形質転換され得る(Kawai et al. , Bioeng Bugs. 2010 Nov-Dec;1(6):395-403 : “Transformation of Saccharomyces cer evisiae and other fungi: methods and possible underlying mechanism”;およびTank a et al., Nature. 2004 Mar 18;428(6980):323-8: “Conformational variations in an infectious protein determine prion strain differences”を参照されたい(これらは 共に、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる))。従って、部位特異的修 飾ポリペプチド(例えば、Cas9)は、スフェロプラストに組み入れることができ(D NA標的化RNAをコードする核酸の有無、およびドナーポリヌクレオチドの有無にかか わらず)、スフェロプラストを用いることで、内容物を酵母細胞に導入することができる 。部位特異的修飾ポリペプチドは、いかなる好都合な方法によっても細胞に導入すること ができ(細胞に与えることができ);そのような方法は当業者に公知である。別の非限定 例として、部位特異的修飾ポリペプチドは、細胞(例えば、ゼブラフィッシュ胚の細胞、 受精したマウス卵母細胞の前核等)に直接的に注入することができる(例えば、DNA標 的化RNAをコードする核酸の有無、およびドナーポリヌクレオチドの有無にかかわらず )。

目的の標的細胞 上記応用のいくつかにおいて、主題の方法を用いることで、インビボおよび/またはエ キソビボおよび/またはインビトロにおいて、有糸分裂細胞または分裂終了細胞における DNA切断、DNA修飾、および/または転写調節を誘導することができる(例えば、個 体に再導入することができる遺伝子改変細胞を作製することができる)。DNA標的化R NAは標的DNAにハイブリダイズすることにより特異性を与えるため、本開示の方法に おける目的の有糸分裂細胞および/または分裂終了細胞には、いかなる生物由来の細胞も 含まれ得る(例えば、細菌細胞、古細菌細胞、単細胞真核生物の細胞、植物細胞、藻細胞 、例えば、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii )、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、ナンノ クロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、ク ロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、ヤツマタモク (Sargassum patens)、C.アガルド(C. Agardh)等、真菌 細胞(例えば、酵母細胞)、動物細胞、無脊椎動物(例えばショウジョウバエ、刺胞動物 、棘皮動物、線虫等)由来の細胞、脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺 乳動物)由来の細胞、哺乳動物由来の細胞、げっ歯類動物由来の細胞、ヒト由来の細胞等 )。

いかなる種類の細胞も対象になり得る(例えば、幹細胞、例えば、胚性幹(ES)細胞 、誘導多能性幹(iPS)細胞、生殖細胞;体細胞、例えば、線維芽細胞、造血細胞、ニ ューロン、筋細胞、骨細胞、肝細胞、膵臓細胞;インビトロまたはインビボにおける、あ らゆる段階の胚の胚細胞、例えば、1細胞、2細胞、4細胞、8細胞等の段階のゼブラフ ィッシュ胚;等)。細胞は株化細胞系から得てもよいし、あるいは初代細胞であってもよ く、ここで、「初代細胞」、「初代細胞系」、および「初代培養物」は、本明細書で同義 的に使用されて、対象から得られ、培養物の、限定された回数の継代(すなわち、分裂) だけインビトロにおいて増殖した、細胞および細胞培養物を指す。例えば、初代培養物は 、0回、1回、2回、4回、5回、10回、または15回継代されている場合があるが、 危機期(crisis stage)を起こすには十分な回数継代されていない、培養物 である。典型的に、本発明の初代細胞系はインビトロにおいて10継代未満維持される。 標的細胞は、多くの実施形態では、単細胞生物であるか、または培養下で増殖する。

細胞は、初代細胞である場合、あらゆる好都合な方法によって個体から採取することが できる。例えば、白血球は、アフェレーシス、白血球アフェレーシス、密度勾配分離等に よって採取することが好都合であり得、一方、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺 、腸、胃等の組織由来の細胞は、生検によって採取することが最も好都合である。適切な 溶液を、採取した細胞を分散または懸濁させるために用いてもよい。そのような溶液は、 一般的には、低濃度の、一般的には5〜25mMの許容可能な緩衝液と共に、ウシ胎仔血 清または他の自然発生的な因子を添加されていることが好都合である、平衡塩類溶液、例 えば、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液等である。好都 合な緩衝液には、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液等が含まれる。細胞は直ちに使 用してもよいし、あるいは、長期間保存、凍結して、解凍および再使用可能にしてもよい 。そのような場合、細胞は通常、10%DMSO、50%血清、40%緩衝培地、または 、細胞をそのような凍結温度において保存するために当該技術分野において一般的に用い られるいくつかの他の溶液中で凍結され、凍結培養細胞を解凍するための当該技術分野に おいて周知の方法で解凍される。

主題のDNA標的化RNAおよび/または主題の部位特異的修飾ポリペプチドをコードす る核酸 いくつかの実施形態において、主題の方法には、標的DNAをDNA標的化RNAおよ び/もしくは部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコー ドするヌクレオチド配列を含む一つもしくは複数の核酸と接触させること、または細胞( または細胞集団)にDNA標的化RNAおよび/もしくは部位特異的修飾ポリペプチドお よび/またはドナーポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列を含む一つもしくは 複数の核酸を導入すること、が含まれる。DNA標的化RNAおよび/または部位特異的 修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸には発現ベクターが含 まれ、ここで、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドをコード するヌクレオチド配列を含む発現ベクターは「組み換え発現ベクター」である。

いくつかの実施形態において、組み換え発現ベクターは、ウイルス性構築物、例えば、 組換え型アデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号を参照) 、組換え型アデノウイルス構築物、組換え型レンチウイルス構築物等である。

適切な発現ベクターとしては、限定はされないが、ウイルスベクター(例えば、ワクシ ニアウイルスに基づくウイルスベクター;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994; Borras et al., Gene Ther 6 :515 524, 1999; Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995; Sakamoto et al., H Gen e Ther 5:1088 1097, 1999;国際公開第94/12649号、同第93/03769号; 同第93/19191号;同第94/28938号;同第95/11984号および同第 95/00655号を参照);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene The r 9:81 86, 1998, Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997; Bennett et al., Inves t Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997; Jomary et al., Gene Ther 4:683 690, 1997 , Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999; Ali et al., Hum Mol Genet 5:59 1 594, 1996;国際公開第93/09239号のSrivastava, Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822−3828; Mendelson et al., Virol. (1988) 166:154−165;およびFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613−10617を参照);SV40;単純疱疹ウイルス;ヒト免 疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., PNAS 94:10319 23, 1997; Takahashi et al. , J Virol 73:7812 7816, 1999を参照);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血 病ウイルス、脾壊死ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ 白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス(m yeloproliferative sarcoma virus)、および乳癌ウイ ルス等のレトロウイルス由来のベクター);等が挙げられる。

多数の適切な発現ベクターが当業者に知られており、多くは市販されている。例として 以下のベクターを記載する;真核生物宿主細胞:pXT1、pSG5(ストラタジーン社 )、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(ファルマシア社)。し かし、宿主細胞に適合している限り、いかなる他のベクターを使用してもよい。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリ ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節領域、例えば、プロモーター等の転写調 節領域に作動可能に連結している。転写調節領域は、真核細胞(例えば、哺乳類細胞)、 または原核細胞(例えば、細菌細胞または古細菌細胞)において機能的であり得る。いく つかの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチ ドをコードするヌクレオチド配列は、原核細胞および真核細胞の両方においてDNA標的 化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発 現を可能にする複数の調節領域に作動可能に連結している。

使用される宿主/ベクター系に応じて、いくつかの適切な転写調節領域および翻訳調節 領域のいずれか、例えば、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーター、転写エンハン サーエレメント、転写ターミネーター等を発現ベクターに用いてもよい(例えば、U6プ ロモーター、H1プロモーター等;上記参照)(例えば、Bitter et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544を参照)。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリ ペプチドはRNAとして提供され得る。そのような例において、DNA標的化RNAおよ び/または部位特異的修飾ポリペプチドをコードするRNAは、直接的な化学合成によっ て生成することができ、またはDNA標的化RNAをコードするDNAからインビトロで 転写されてもよい。鋳型DNAからRNAを合成する方法は、当該技術分野において周知 である。いくつかの例において、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリ ペプチドをコードするRNAは、RNAポリメラーゼ酵素(例えば、T7ポリメラーゼ、 T3ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ等)を用いてインビトロで合成される。合成され た後、RNAは標的DNAに直接的に接触させてもよいし、あるいは核酸を細胞に導入す るための周知の技術(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、ト ランスフェクション等)のいずれかによって、細胞に導入してもよい。

DNA標的化RNA(DNAまたはRNAとして導入)および/または部位特異的修飾 ポリペプチド(DNAまたはRNAとして導入)および/またはドナーポリヌクレオチド をコードするヌクレオチドは、充分に開発されたトランスフェクション技術(例えば、An gel and Yanik (2010) PLoS ONE 5(7): e11756を参照)、並びにキアゲン社(Qiage n)から販売されるTransMessenger(登録商標)試薬、ステムジェント社 (Stemgent)から販売されるStemfect(商標)RNAトランスフェクシ ョンキット、およびミルス・バイオLLC社(Mirus Bio LLC)から販売さ れるTransIT(登録商標)−mRNAトランスフェクションキットを用いて、細胞 に与えることができる。Beumer et al. (2008) Efficient gene targeting in Drosophil a by direct embryo injection with zinc-finger nucleases. PNAS 105(50):19821-1982 6も参照されたい。あるいは、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペ プチドおよび/またはキメラ部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌク レオチドをコードする核酸は、DNAベクター上で提供されてもよい。核酸を標的細胞に 導入するのに有用な多くのベクター、例えばプラスミド、コスミド、ミニサークル、ファ ージ、ウイルス等が利用可能である。核酸(複数可)を含むベクターは、例えば、プラス ミド、ミニサークルDNA、ウイルス、例えば、サイトメガロウイルス、アデノウイルス 等としてエピソームに保持されていてもよいし、あるいは、相同組換えまたはランダムイ ンテグレーション、例えば、MMLV、HIV−1、ALV等のレトロウイルス由来ベク ターによって、標的細胞ゲノム内に組み込まれてもよい。

ベクターは、主題の細胞に直接的に与えてもよい。言い換えれば、細胞は、ベクターが 細胞に取り込まれるように、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプ チドおよび/またはキメラ部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレ オチドをコードする核酸を含むベクターと接触される。細胞をプラスミドである核酸ベク ターと接触させるための方法、例えば、エレクトロポレーション、塩化カルシウムトラン スフェクション(calcium chloride transfection)、マ イクロインジェクション、およびリポフェクションは、当該技術分野において周知である 。ウイルスベクター送達において、細胞は、DNA標的化RNAおよび/または部位特異 的修飾ポリペプチドおよび/またはキメラ部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはド ナーポリヌクレオチドをコードする核酸を含むウイルス粒子と接触される。レトロウイル ス(例えば、レンチウイルス)は、本発明の方法に特に適している。一般的に用いられる レトロウイルスベクターは、「欠陥」を有する、すなわち、増殖性感染に必要なウイルス タンパク質を産生することができない。むしろ、ベクターの複製は、パッケージング細胞 系内での増殖を必要とする。目的の核酸を含むウイルス粒子を生成するために、該核酸を 含むレトロウイルス核酸は、パッケージング細胞系によってウイルスカプシド内にパッケ ージングされる。異なるパッケージング細胞系は、カプシド内に取り込まれる異なるエン ベロープタンパク質(同種志向性、両種指向性または異種指向性)を与え、このエンベロ ープタンパク質が、細胞に対するウイルス粒子の特異性を決定する(マウスおよびラット に対する同種志向性;ヒト、イヌおよびマウスを含むほとんどの哺乳類細胞種に対する両 種指向性;並びにマウス細胞以外のほとんどの哺乳類細胞種に対する異種指向性)。適切 なパッケージング細胞系を用いることで、細胞がパッケージングされたウイルス粒子の標 的となることを確実にすることができる。再プログラム因子をコードする核酸を含むレト ロウイルスベクターをパッケージング細胞系に導入する方法、およびパッケージング系に よって生成されたウイルス粒子を収集する方法は、当該技術分野において周知である。核 酸は、直接的微量注入によって導入することもできる(例えば、RNAのゼブラフィッシ ュ胚への注入)。

DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはキメラ 部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコードする核酸を 主題の細胞に与えるために用いられるベクターは、典型的に、目的の核酸の発現(すなわ ち、転写活性化)を駆動するのに適したプロモーターを含む。言い換えれば、目的の核酸 は、プロモーターに作動可能に連結している。これには、偏在的作用性(ubiquit ously acting)プロモーター(例えば、CMV−β−アクチンプロモーター )、または誘導性プロモーター(例えば、特定の細胞集団において活性がある、またはテ トラサイクリン等の薬剤の存在に応答するプロモーター)が含まれ得る。転写活性化によ り、転写は少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、より一般的には少なくとも約1 000倍、標的細胞における基底レベルを超えて増加することが意図される。さらに、D NA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはキメラ部位 特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドを主題の細胞に与えるた めに用いられるベクターは、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプ チドおよび/またはキメラ部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレ オチドを取り込んだ細胞を特定するために、標的細胞内の選択マーカーをコードする核酸 配列を含んでいてもよい。

主題のDNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/または キメラ部位特異的修飾ポリペプチドを、代わりに、DNAと接触させるのに使用、または RNAとして細胞に導入してもよい。細胞にRNAを導入する方法は当該技術分野におい て公知であり、例えば、直接注入、トランスフェクション、またはDNAの導入に用いら れる他のあらゆる方法が含まれ得る。

主題の部位特異的修飾ポリペプチドを、代わりに、ポリペプチドとして細胞に与えても よい。そのようなポリペプチドを、所望により、産物の溶解性を増加させるポリペプチド ドメインに融合してもよい。該ドメインは、TEVプロテアーゼによって切断される、規 定のプロテアーゼ切断部位(例えば、TEV配列)を介してポリペプチドに連結されてい てもよい。リンカーは、一つまたは複数の可動性配列、例えば1〜10個のグリシン残基 を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、融合タンパク質の切断は、産物の溶 解性を維持する緩衝液中、例えば、0.5〜2M尿素の存在下、溶解性を増加させるポリ ペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの存在下等で、行われる。目的のドメインには 、エンドソーム溶解性(endosomolytic)ドメイン、例えば、インフルエン ザHAドメイン;および生成を助ける他のポリペプチド、例えば、IF2ドメイン、GS Tドメイン、GRPEドメイン等が含まれる。本ポリペプチドは、安定性を向上させるた めに製剤化されてもよい。例えば、本ペプチドは、PEG化されていてもよく、ポリエチ レンオキシ基によって血流中の寿命が延長される。

さらに、または、あるいは、主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、細胞による取り込 みを促進するために、ポリペプチド浸透性ドメインに融合されていてもよい。いくつかの 浸透性ドメインが当該技術分野において公知であり、本発明の非組込み(non−int egrating)ポリペプチドに用いられてもよく、これにはペプチド、ペプチド模倣 薬、および非ペプチド担体が含まれる。例えば、浸透性ペプチドは、アミノ酸配列RQI KIWFQNRRMKWKK(配列番号//)を含む、ペネトラチンと称される、キイロ ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)転写因子アンテ ナペディア(Antennapaedia)の第三αヘリックスに由来し得る。別の例と して、浸透性ペプチドは、例えば、自然発生的なtatタンパク質のアミノ酸49〜57 を含み得る、HIV−1 tat基本領域アミノ酸配列を含む。他の浸透性ドメインには 、ポリ−アルギニンモチーフ、例えば、HIV−1 revタンパク質のアミノ酸34〜 56の領域、ノナ−アルギニン、オクタ−アルギニン等が含まれる。(例えば、Futaki e t al. (2003) Curr Protein Pept Sci. 2003 Apr; 4(2): 87-9 and 446;およびWender et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 2000 Nov. 21; 97(24):13003-8;米国特許 出願公開第20030220334号;同第20030083256号;同第20030 032593号;および同第20030022831号(これらは、移行ペプチドおよび 移行ペプトイドの教示のために参照によって本明細書に明確に組み込まれる)を参照され たい)。ノナ−アルギニン(R9)配列は、特徴付けされたより効率的なPTDの1つで ある(Wender et al. 2000; Uemura et al. 2002)。融合が起こる該部位は、本ポリペプ チドの生物活性、分泌または結合の特徴を最適化するために、選択されてもよい。最適な 部位は通例の実験法により決定される。

主題の部位特異的修飾ポリペプチドは、インビトロで、または真核細胞によって、また は原核細胞によって生成され得、アンフォールディング、例えば、熱変性、DTT還元等 によってさらに処理されてもよく、当該技術分野において公知の方法を用いてリフォール ディングをさらに受けてもよい。

一次配列を変化させない目的の修飾には、ポリペプチドの化学誘導体化、例えば、アシ ル化、アセチル化、カルボキシル化、アミド化等が含まれる。グリコシル化の修飾、例え ば、ポリペプチドの合成中およびプロセシング中またはさらなるプロセシング段階中に、 例えば、ポリペプチドを哺乳類グリコシル化酵素または脱グリコシル化酵素等のグリコシ ル化に影響を与える酵素に暴露することにより、ポリペプチドのグリコシル化パターンを 改変することにより成されるもの、も含まれる。リン酸化したアミノ酸残基、例えば、ホ スホチロシン、ホスホセリン、またはホスホトレオニンを有する配列も含まれる。

通常の分子生物学的手法および合成化学を用いて修飾されたDNA標的化RNAおよび 部位特異的修飾ポリペプチドも、タンパク質分解に対するそれらの耐性を向上させるため 、標的配列特異性を変化させるため、溶解特性を最適化するため、タンパク質活性(例え ば、転写調節活性、酵素活性等)を変化させるため、またはそれらを治療薬としてより適 切にするために、主題の発明に含まれる。そのようなポリペプチドの類似体としては、自 然発生的なL−アミノ酸以外の残基、例えば、D−アミノ酸または非自然発生的な合成ア ミノ酸を含有するものが含まれる。アミノ酸残基のいくつかまたは全てがD−アミノ酸で 置換されていてもよい。

部位特異的修飾ポリペプチドは、当該技術分野において公知の常法を用いるインビトロ 合成によって、作製することができる。種々の市販の装置が利用可能であり、例えば、ア プライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems, Inc.)製 、ベックマン社(Beckman)製等の自動合成装置である。合成装置を用いることに より、自然発生的なアミノ酸は、非天然アミノ酸と置換することができる。特定の配列お よび作製法は、利便性、経済性、要求される純度等によって決定される。

所望であれば、他の分子または表面への連結を可能にする種々の基を合成中または発現 中にペプチドに導入してもよい。従って、システインを、金属イオン錯体に連結するため のチオエーテル、ヒスチジン、アミドまたはエステルを形成するためのカルボキシル基、 アミドを形成するためのアミノ基等をつくるために用いてもよい。

部位特異的修飾ポリペプチドは、組み換え合成の常法に従って単離および精製してもよ い。発現宿主の可溶化液を作製して、HPLC、排除クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、 アフィニティークロマトグラフィー、または他の精製法を用いて、その可溶化液を精製し てもよい。通例、用いられる組成物は、生成物の調製法およびその精製に関連した混入物 との関連で、少なくとも20重量%の所望の生成物、より一般的には少なくとも約75重 量%、好ましくは少なくとも約95重量%の所望の生成物を含み、治療目的には、一般的 には少なくとも約99.5重量%の所望の生成物を含む。一般的には、該パーセンテージ は総タンパク質量に依存する。

DNAの切断および組換えを誘導するために、または標的DNAへの任意の所望の修飾 のために、または標的DNAと結合したポリペプチドへの任意の所望の修飾のために、D NA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリ ヌクレオチドは、核酸として導入されるかまたはポリペプチドとして導入されるかにかか わらず、約30分間〜約24時間、例えば、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、 3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、16時間、 18時間、20時間、または約30分間〜約24時間の任意の他の期間、細胞に与えられ 、それをおよそ毎日〜およそ4日毎、例えば、1.5日毎、2日毎、3日毎の頻度、また はおよそ毎日〜およそ4日毎の任意の他の頻度で繰り返される。該作用剤(複数可)は、 1回または複数回、例えば1回、2回、3回、または3回より多い回数、主題の細胞に与 えられてもよく、細胞は、それぞれの接触事象後にいくらかの時間(例えば、16〜24 時間)該作用剤(複数可)と一緒にインキュベートされ、その時間の後、培地は新鮮な培 地と交換され、細胞はさらに培養される。

2つ以上の異なるターゲティング複合体(例えば、同一または異なる標的DNA内の異 なる配列に対し相補的な2つの異なるDNA標的化RNA)が細胞に与えられる場合、そ れらの複合体は、同時に(例えば2つのポリペプチドおよび/または核酸として)与えら れてもよいし、あるいは同時に送達されてもよい。あるいは、2つ以上の異なるターゲテ ィング複合体は連続的に与えられてもよい(例えば、最初にターゲティング複合体が与え られ、その後、第二のターゲティング複合体が与えられる等またはその逆)。

典型的に、有効量のDNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドお よび/またはドナーポリヌクレオチドは、切断を誘導するために標的DNAまたは細胞に 与えられる。DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/ま たはドナーポリヌクレオチドの有効量は、2つの相同配列間で観察される標的修飾の量に おいて、負の対照(例えば、空ベクターまたは無関係なポリペプチドと接触された細胞) と比較して2倍以上の増加を誘導するための量である。すなわち、DNA標的化RNAお よび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの有効 量または有効用量は、標的DNA領域において観察される標的修飾の量において、2倍の 増加、3倍の増加、4倍の増加またはそれ以上の増加を誘導し、いくつかの例においては 、観察される組換えの量において5倍の増加、6倍の増加またはそれ以上の増加、時に、 7倍または8倍の増加またはそれ以上の増加、例えば、10倍、50倍、または100倍 以上の増加を誘導し、いくつかの例においては、観察される組換えの量において200倍 、500倍、700倍、または1000倍以上、例えば、5000倍、または10,00 0倍の増加を誘導する。標的修飾の量は、いかなる従来の方法によっても測定することが できる。例えば、組み換えられた場合に活性レポーターをコードする核酸を再構築する、 反復配列に隣接したDNA標的化RNAのターゲティングセグメント(ターゲティング配 列)に相補的な配列を含むサイレントなレポーター構築物を、細胞に同時トランスフェク トしてもよく、レポータータンパク質の量は、DNA標的化RNAおよび/または部位特 異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドとの接触の後に、例えば、 DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポ リヌクレオチドとの接触から2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、36時間、 48時間、72時間またはそれ以上の時間の後に、評価される。別の、さらなる感度アッ セイとして、例えば、標的DNA配列を含む目的のゲノムDNA領域における組換えの程 度は、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはド ナーポリヌクレオチドとの接触の後に、例えば、DNA標的化RNAおよび/または部位 特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドとの接触から2時間、4 時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間またはそれ以上の時 間の後に、該領域のPCRまたはサザンハイブリダイゼーションによって、評価すること ができる。

細胞とDNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/または ドナーポリヌクレオチドの接触は、細胞の生存を促進する、いかなる培地中でも、および いかなる培養条件下でも、起こすことができる。例えば、細胞は、ウシ胎仔血清または熱 不活化したヤギ血清(約5〜10%)、L−グルタミン、チオール、特に、2−メルカプ トエタノール、および抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加し たイスコフ改変DMEMまたはRPMI1640等の、いかなる好都合な適切な栄養培地 中にも懸濁することができる。培地は、細胞が応答性である増殖因子を含有していてもよ い。本明細書で定義される増殖因子は、膜貫通受容体に対する特異的な効果を介して、培 地中で、または無傷組織内で、細胞の生存、増殖および/または分化を促進することがで きる分子である。増殖因子には、ポリペプチド因子および非ポリペプチド因子が含まれる 。細胞の生存を促進する条件は、典型的には、非相同末端結合および相同組換え修復を許 容する。

ポリヌクレオチド配列を標的DNA配列に挿入することが望ましい適用において、挿入 されるドナー配列を含むポリヌクレオチドも細胞に与えられる。「ドナー配列」または「 ドナーポリヌクレオチド」とは、部位特異的修飾ポリペプチドによって誘導された切断部 位に挿入される核酸配列を意味する。ドナーポリヌクレオチドは、ドナーポリヌクレオチ ドおよびそれが相同性を有するゲノム配列の間の相同組換え修復を支援するために、切断 部位におけるゲノム配列に対して充分な相同性を有し、例えば、切断部位に隣接した、例 えば、切断部位の約50塩基以内の、例えば、約30塩基以内、約15塩基以内、約10 塩基以内、約5塩基以内の、または切断部位に直接隣接した、ヌクレオチド配列と70% 、80%、85%、90%、95%、または100%の相同性を有する。ドナー配列およ びゲノム配列の間で配列相同性を有するおよそ25、50、100、または200個のヌ クレオチド、または200個より多いヌクレオチド(または10〜200のあらゆる整数 値のヌクレオチド、またはそれ以上のヌクレオチド)が、相同組換え修復を支援する。ド ナー配列は、いかなる長さであってもよく、例えば、10ヌクレオチド以上、50ヌクレ オチド以上、100ヌクレオチド以上、250ヌクレオチド以上、500ヌクレオチド以 上、1000ヌクレオチド以上、5000ヌクレオチド以上等の長さであってもよい。

ドナー配列は、典型的には、置換されるゲノム配列と同一ではない。それどころか、ド ナー配列は、相同組換え修復を支援するのに充分な相同性が存在してさえいれば、ゲノム 配列に対して少なくとも一つまたは複数の一塩基変化、挿入、欠失、逆位または再編成を 含有していてもよい。いくつかの実施形態において、ドナー配列は、標的DNA領域およ び2つの隣接配列の間の相同組換え修復が標的領域における非相同配列の挿入をもたらす ように、2つの相同領域に挟まれた非相同配列を含む。ドナー配列は、目的のDNA領域 に対し相同でなく、目的のDNA領域への挿入が意図されていない配列を含有するベクタ ー骨格を含んでいてもよい。一般的に、ドナー配列の相同領域(複数可)は、組換えが望 まれるゲノム配列に対し少なくとも50%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態で は、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または99.9%の配 列同一性が存在する。ドナーポリヌクレオチドの長さに応じて、1%〜100%の間のい かなる数値の配列同一性も存在し得る。

ドナー配列は、ゲノム配列と比較してある特定の配列差異を含んでいてもよく、例えば 、切断部位におけるドナー配列の挿入の成功を評価するために用いられ得る、または、い くつかの例においては、他の目的のために(例えば、標的ゲノム遺伝子座における発現を 示すために)用いられ得る、制限酵素認識部位、ヌクレオチド多型、選択マーカー(例え ば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質、酵素等)等を含んでいてもよい。いくつかの例に おいて、コード領域内に位置する場合、そのようなヌクレオチド配列差異はアミノ酸配列 を変化させないか、またはサイレントなアミノ酸変化を起こす(すなわち、タンパク質の 構造または機能に影響を与えない変化)。あるいは、これらの配列差異は、マーカー配列 の除去のために後に活性化され得る、FLP、loxP配列等の隣接組換え配列を含んで いてもよい。

ドナー配列は、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖DNA、または二本鎖RNAとし て細胞に与えられてもよい。ドナー配列は、直鎖状または環状の形態で細胞に導入されて もよい。直鎖状で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に既知の方法によって( 例えば、エキソヌクレアーゼ分解によって)保護されてもよい。例えば、一つまたは複数 のジデオキシヌクレオチド残基が、直鎖状分子の3’末端に付加され、および/または、 自己相補的オリゴヌクレオチドが一方または両方の末端に連結される。例えば、Chang et al. (1987) Proc. Natl. Acad Sci USA 84:4959-4963; Nehls et al. (1996) Science 2 72:886-889を参照されたい。外来性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる 方法としては、限定はされないが、末端アミノ基(複数可)の付加、並びに修飾されたヌ クレオチド間連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホルアミダートおよびO−メチル リボース残基またはデオキシリボース残基等)、の使用が挙げられる。直鎖状ドナー配列 の末端を保護するための代替物として、組換えに影響を与えることなく分解可能な追加の 配列長を相同領域の外側に含んでいてもよい。ドナー配列は、例えば、複製開始点、プロ モーターおよび抗生物質耐性をコードする遺伝子等の追加の配列を有するベクター分子の 一部として、細胞に導入することができる。さらに、ドナー配列は、DNA標的化RNA および/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドをコ ードする核酸についての上記のように、裸の核酸として、リポソームまたはポロキサマー 等の作用剤と複合体化した核酸として、導入することができ、あるいは、ウイルス(例え ば、アデノウイルス、AAV)によって送達することができる。

上記の方法に従って、目的のDNA領域をエキソビボで切断および改変、すなわち「遺 伝子改変」してもよい。選択マーカーが目的のDNA領域内に挿入された場合のいくつか の実施形態において、細胞集団は、遺伝子改変細胞を残りの集団から分離することにより 、遺伝子改変を含む細胞について富化することができる。富化に先立ち、「遺伝子改変」 細胞は、細胞集団の約1%以上(例えば、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6 %以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、または20%以上) のみを構成し得る。「遺伝子改変」細胞の分離は、使用される選択マーカーに適したいか なる好都合の分離技術によっても達成することができる。例えば、蛍光性マーカーが挿入 された場合、細胞は蛍光標識細胞分取により分離することができ、一方、細胞表面マーカ ーが挿入された場合、細胞は、アフィニティー分離技術、例えば、磁気分離、アフィニテ ィークロマトグラフィー、固体マトリクスに付着した親和性試薬での「パニング」、また は他の好都合な技術によって、異種集団から分離することができる。正確な分離を提供す る技術には蛍光標示式細胞分取器が含まれ、蛍光標示式細胞分取器は、複数のカラーチャ ネル、低度および鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネル等の様々な精巧度 を有し得る。細胞は、死細胞に結合した色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)を利用する ことにより、死細胞から選び分けてもよい。遺伝子改変細胞の生存率に対して過度に有害 でない、いかなる技術も利用することができる。改変DNAを含む細胞について高度に富 化された細胞組成物は、このようにして達成される。「高度に富化された」とは、細胞組 成物の遺伝子改変細胞が70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上 であること、例えば、細胞組成物の約95%以上、または98%以上であること、を意味 する。言い換えれば、組成は、実質的に純粋な遺伝子改変細胞組成物であり得る。

本明細書に記載の方法によって作製される遺伝子改変細胞は、即時に用いることができ る。あるいは、該細胞は、液体窒素温度で凍結し長期間保存してもよく、解凍し再使用す ることができる。そのような場合、細胞は通常、10%ジメチルスルホキシド(DMSO )、50%血清、40%緩衝培地、または、細胞をそのような凍結温度において保存する ために当該技術分野において一般的に用いられるいくつかの他の溶液中で凍結され、凍結 培養細胞を解凍するための当該技術分野において周知の方法で解凍される。

本遺伝子改変細胞は、種々の培養条件下でインビトロで培養することができる。本遺伝 子改変細胞は、培地中で増殖、すなわち、それらの増殖を促進する条件下で増殖させるこ とができる。培地は、例えば寒天、メチルセルロース等を含有する液体であっても半固体 であってもよい。細胞集団は、ウシ胎仔血清(約5〜10%)、L−グルタミン、チオー ル、特に、2−メルカプトエタノール、および抗生物質、例えば、ペニシリンおよびスト レプトマイシンを通常は添加したイスコフ改変DMEMまたはRPMI1640等の、適 切な栄養培地中に懸濁することができる。培地は、調節性T細胞が応答性である増殖因子 を含有していてもよい。本明細書で定義される増殖因子は、膜貫通受容体に対する特異的 な効果を介して、培地中で、または無傷組織内で、細胞の生存、増殖および/または分化 を促進することができる分子である。増殖因子には、ポリペプチド因子および非ポリペプ チド因子が含まれる。

このように遺伝子改変された細胞を、例えば、疾患を治療するための、または抗ウイル ス治療剤、抗病原体治療剤、もしくは抗がん治療剤としての、遺伝子治療等の目的のため に、農業における遺伝子改変生物の生産のために、または生物学的研究のために、対象に 移植してもよい。対象は、新生児、若年、または成人であってもよい。哺乳類対象が特に 重要である。本発明の方法を用いて治療され得る哺乳類種には、イヌおよびネコ;ウマ; ウシ;ヒツジ;等、並びに霊長類、特にヒトが含まれる。動物モデル、特に小型哺乳動物 (例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ目(例えば、ウサギ)等) を、実験的調査に用いてもよい。

細胞は、単独で、または、例えば、移植される組織におけるそれらの増殖および/もし くは組織化を支援するための適切な基質もしくはマトリクスと一緒に、対象に与えること ができる。通常、少なくとも1×103個の細胞、例えば、5×103個の細胞、1×1 04個の細胞、5×104個の細胞、1×105個の細胞、1×106個の細胞またはそ れ以上の細胞が投与される。細胞は、以下の経路のいずれかを介して対象に導入すること ができる:非経口、皮下、静脈内、頭蓋内、脊髄内、眼内、または髄液内。細胞は、注射 、カテーテル等によって導入することができる。局所送達、すなわち、損傷部位への送達 のための方法の例としては、例えば、例えばくも膜下腔内送達用のオマヤレザバー(例え ば、米国特許第5,222,982号および同第5385582号参照(参照によって本 明細書に組み込まれる));例えば注射器による、例えば間節へのボーラス投与;例えば カニューレ挿入による、例えば対流を用いた、持続点滴(例えば、米国特許出願公開第2 0070254842号(参照によって本明細書に組み込まれる));または細胞が可逆 的に付着された装置の埋め込み(例えば、米国特許出願公開第20080081064号 および同第20090196903号参照(参照によって本明細書に組み込まれる))が 挙げられる。細胞は、遺伝子導入動物(例えば、トランスジェニックマウス)を作製する 目的で、胚(例えば、胚盤胞)に導入することもできる。

対象に対する治療的投与の回数は変動し得る。対象への遺伝子改変細胞の導入は、1回 の事象であり得るが;ある特定の状況においては、そのような治療は、限定された期間だ けの改善をもたらし、継続的な一連の反復的治療を必要とし得る。他の状況において、効 果が観察されるまでに、遺伝子改変細胞の複数回投与が必要となり得る。正確なプロトコ ルは、疾患または状態、疾患の段階および治療される個々の対象のパラメーターによって 異なる。

本発明の他の態様では、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチ ドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、繰り返しになるが、例えば、遺伝子治療( 例えば、疾患を治療するために、または抗ウイルス治療、抗病原治療、もしくは抗がん治 療として)、農業における遺伝子改変生物の作製、または生物学的研究のために、インビ ボで細胞DNAを改変するのに使用される。これらのインビボでの実施形態において、D NA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリ ヌクレオチドは、個体に直接投与される。DNA標的化RNAおよび/または部位特異的 修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、対象へのペプチド、小分子 および核酸の投与のための、当該技術分野におけるいくつかの周知の方法のいずれかによ って投与されてもよい。DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチド および/またはドナーポリヌクレオチドは、種々の製剤に組み入れることができる。より 具体的には、本発明のDNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドお よび/またはドナーポリヌクレオチドは、適切な薬剤的に許容できる担体または希釈剤と 組み合わせることにより、医薬組成物に製剤化することができる。

医薬品は、薬剤的に許容できるビヒクル中に存在する一つまたは複数のDNA標的化R NAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチド を含む組成物である。「薬剤的に許容できるビヒクル」は、連邦政府または州政府の規制 当局に承認された、またはヒト等の哺乳動物における使用のための米国薬局方もしくは他 の一般的に認知された薬局方に記載された、ビヒクルであり得る。用語「ビヒクル」は、 本発明の化合物が哺乳動物への投与用にそれを用いて製剤化される、希釈剤、アジュバン ト、賦形剤、または担体を指す。そのような医薬品ビヒクルは、脂質、例えばリポソーム 、例えばリポソームデンドリマー;水および油等の液体、例えば、石油、動物、野菜また は合成起源のもの、例えば、落花生油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油等、食塩水; アラビアゴム、ゼラチン、デンプンのり、滑石、ケラチン、コロイドシリカ、尿素等であ り得る。さらに、助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤および着色料を用いてもよい。医薬組 成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤 、ミクロスフェア、およびエアロゾル等の固体、半固体、液体またはガス状形態の調製物 に製剤化されてもよい。従って、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリ ペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの投与は、経口的、頬側、直腸、非経口 、腹腔内、皮内、経皮、気管内、眼内投与等を含む種々の方法で、達成することができる 。本活性薬剤は、投与後に全身性であってもよいし、あるいは、領域投与(region al administration)、壁内投与の使用、または植え込み部位において 活性用量を保持するように作用する植込錠の使用によって、局在化されてもよい。本活性 薬剤は、速効的な活性のために製剤化されてもよいし、あるいは、徐放用に製剤化されて もよい。

いくつかの条件、特に、中枢神経系条件において、血液脳関門(BBB)を通過するよ うに作用剤を製剤化することが必要となり得る。血液脳関門(BBB)を通過する薬物送 達のための1つの戦略は、マンニトールもしくはロイコトリエン等の浸透圧的手段による 、または、生化学的な、ブラジキニン等の血管作動性物質の使用による、BBBの混乱を 必要とする。特定の薬剤を脳腫瘍に標的化するためにBBB開口を利用する可能性も、1 つの選択肢である。BBB崩壊剤は、本発明の治療用組成物が血管内注射によって投与さ れる際に、本組成物と同時に投与することができる。BBBを通過するための他の戦略は 、カベオリン1を介したトランスサイトーシス、グルコース担体およびアミノ酸担体等の 担体による輸送体、インスリンまたはトランスフェリンのための受容体を介したトランス サイトーシス、並びにp−糖タンパク質等の能動拡散輸送体を含む、内在性輸送系の利用 を伴い得る。能動輸送部分は、血管の内皮壁を通過する輸送を促進するために、本発明に おける使用のために治療化合物に結合されてもよい。あるいは、BBBの向こう側への治 療剤の薬物送達は、局所送達によるものであり得、例えば、例えばオマヤレザバーによる 、くも膜下腔内送達によるもの(例えば、米国特許第5,222,982号および同第5 385582号参照(参照によって本明細書に組み込まれる));例えば硝子体内へのま たは頭蓋内への、例えば注射器による、ボーラス投与によるもの;例えば対流による、例 えばカニューレ挿入による、持続点滴によるもの(例えば、米国特許出願公開第2007 0254842号参照(参照によって本明細書に組み込まれる));または作用剤が可逆 的に付着された装置の埋め込みによるもの(例えば、米国特許出願公開第2008008 1064号および同第20090196903号参照(参照によって本明細書に組み込ま れる))である。

典型的に、有効量のDNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドお よび/またはドナーポリヌクレオチドが与えられる。エキソビボでの方法に関しての前述 の通り、インビボにおけるDNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチ ドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの有効量または有効用量は、2つの相同配列間 で観察される組換えの量において、負の対照(例えば、空ベクターまたは無関係なポリペ プチドと接触された細胞)と比較して2倍以上の増加を誘導するための量である。組換え の量は、いかなる好都合な方法によっても、例えば、上記の方法および当該技術分野にお いて公知の方法によって、測定することができる。投与されるDNA標的化RNAおよび /または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの有効量ま たは有効用量の算出は、当業者の技術の範囲内であり、これらの当業者にとっては通例の ものである。投与される最終的な量は、投与経路および治療される障害または状態の性質 によって異なる。

特定の患者に与えられる有効量は、種々の要因によって異なり、そのいくつかは患者間 で異なる。適任である臨床医は、患者に投与して必要に応じて病状の進行を止めるまたは 逆行させるための治療薬の有効量を決定することができる。LD50動物データ、および 臨床医が使用可能である薬剤についての他の情報を利用して、臨床医は、投与経路に応じ て、個人に対する最大安全用量を決定することができる。例えば、静脈内に投与される用 量は、治療用組成物が投与されている流体がより大きいことを鑑みて、くも膜下腔内に投 与される用量よりも多い場合がある。同様に、身体から迅速にクリアランスされる組成物 は、治療的濃度を維持するために、より高用量で、または反復投与で投与されてもよい。 通常の技術を用いて、適任である臨床医は、通例の臨床試験の間に、特定の治療剤の投与 量を最適化することができる。

薬剤に含ませるために、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチ ドおよび/またはドナーポリヌクレオチドを、適切な商業的供給源から得てもよい。一般 的な規則として、投与毎の非経口的に投与されるDNA標的化RNAおよび/または部位 特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの薬剤的有効量の総量は 、用量反応曲線によって測定することができる範囲内である。

DNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナー ポリヌクレオチドに基づく治療剤、すなわち、治療的投与に用いられるDNA標的化RN Aおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドの 調製物は、無菌でなければならない。無菌性は、無菌ろ過膜(例えば、0.2μm膜)を 通す濾過によって容易に達成される。治療用組成物は、一般的には、無菌のアクセスポー トを有する容器、例えば、皮下注射針によって突き刺し可能なストッパーを有する静脈注 射用溶液バッグまたはバイアル中に入れられる。DNA標的化RNAおよび/または部位 特異的修飾ポリペプチドおよび/またはドナーポリヌクレオチドに基づく治療剤は、単回 または多回投与用容器(例えば、密閉したアンプルまたはバイアル)内に、水溶液として 、または再構成用の凍結乾燥製剤として、保存され得る。凍結乾燥製剤の一例として、1 0mLバイアルは5mlの滅菌濾過された1%(w/v)化合物水溶液を充填され、得ら れた混合物は凍結乾燥される。輸液は、静菌的注射用蒸留水を用い凍結乾燥化合物を再構 成することによって調製される。

医薬組成物は、所望の製剤に応じて、動物またはヒトへの投与用の医薬組成物を製剤化 するために一般的に用いられるビヒクルとして定義される、薬剤的に許容できる、無毒の 希釈剤の担体(carriers of diluents)を含むことができる。希釈 剤は、その組み合わせの生物活性に影響を与えないように選択される。そのような希釈剤 の例は、蒸留水、緩衝化水、生理食塩水、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、お よびハンクス液である。さらに、医薬組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、ま たは無毒の、非治療的な、非免疫原性の安定剤、賦形剤等を含むことができる。本組成物 は、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤および界面活性剤等の生理的条件に近 づくための追加の物質も含むことができる。

本組成物は、例えば抗酸化剤等の、種々の安定化剤のいずれも含むことができる。本医 薬組成物がポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは、ポリペプチドのインビボ安定性を 増強する、あるいはそれ以外にその薬理学的特性を増強する(例えば、ポリペプチドの半 減期を延長する、その毒性を減少させる、溶解性または取り込みを増強する)種々の周知 の化合物と複合体化することができる。そのような修飾剤または錯化剤の例としては、硫 酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩が挙げられる。組成物の核酸またはポリ ペプチドは、インビボにおけるその特性を増強する分子と複合体化することもできる。そ のような分子としては、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオ ン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、および脂 質が挙げられる。

様々なタイプの投与に適した製剤についてのさらなる手引きは、Remington's Pharmace utical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed. (1985)に見 出すことができる。薬物送達法の簡潔な概略については、Langer, Science 249:1527-153 3 (1990)を参照されたい。

本医薬組成物は、予防的および/または治療的な処置のために投与することができる。 本活性成分の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量) およびED50(集団の50%において治療効果のある用量)を決定することを含む、細 胞培養液および/または実験動物における、標準的な薬学的手法に従って決定することが できる。毒性効果および治療効果間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比と して表すことができる。大きな治療指数を示す治療が好ましい。

細胞培養および/または動物試験から得られたデータは、ヒトに対するある範囲の投与 量を処方する際に用いることができる。本活性成分の投与量は、典型的には、毒性が低い ED50を含む血中濃度の範囲内に並ぶ。投与量は、使用される剤形および利用される投 与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。

本医薬組成物を製剤化するのに使用される成分は、高純度であることが好ましく、潜在 的に有害な混入物を実質的に含まない(例えば、少なくとも、米国食品(Nationa l Food)(NF)グレード、一般的には、少なくとも分析用グレード、より典型的 には、少なくとも医薬品グレード)。さらに、インビボでの使用を意図される組成物は、 通常、無菌である。所与の化合物が使用前に合成されなければならない限りにおいて、得 られる産物は、典型的に、合成または精製の過程の間に存在し得る、いかなる潜在的に有 毒な作用剤も、特にいかなる内毒素も、実質的に含まない。非経口的(parental )投与用の組成物も、無菌で、実質的に等張性であり、GMP条件下で作製される。

特定の患者に与えられる治療用組成物の有効量は、種々の要因によって異なり、そのい くつかは患者間で異なる。適任である臨床医は、患者に投与して必要に応じて病状の進行 を止めるまたは逆行させるための治療薬の有効量を決定することができる。LD50動物 データ、および臨床医が使用可能である薬剤についての他の情報を利用して、臨床医は、 投与経路に応じて、個人に対する最大安全用量を決定することができる。例えば、静脈内 に投与される用量は、治療用組成物が投与されている流体がより大きいことを鑑みて、く も膜下腔内に投与される用量よりも多い場合がある。同様に、身体から迅速にクリアラン スされる組成物は、治療的濃度を維持するために、より高用量で、または反復投与で投与 されてもよい。通常の技術を用いて、適任である臨床医は、通例の臨床試験の間に、特定 の治療剤の投与量を最適化することができる。

遺伝子改変宿主細胞 本開示は、単離された遺伝子改変宿主細胞を含む、遺伝子改変宿主細胞を提供し、主題 の遺伝子改変宿主細胞は、1)外来性DNA標的化RNA;2)DNA標的化RNAをコ ードするヌクレオチド配列を含む外来性核酸;3)外来性部位特異的修飾ポリペプチド( 例えば、自然発生的Cas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異型のCas9; キメラCas9;等);4)部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列 を含む外来性核酸;または5)上記のあらゆる組み合わせ、を含む(それで遺伝子改変さ れている)。主題の遺伝子改変細胞は、宿主細胞を、例えば:1)外来性DNA標的化R NA;2)DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む外来性核酸;3)外 来性部位特異的修飾ポリペプチド;4)部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレ オチド配列を含む外来性核酸;または5)上記のあらゆる組み合わせ、で遺伝子改変する ことによって、作製される。

標的細胞となるのに適した細胞は全て、遺伝子改変宿主細胞となるのにも適している。 例えば、目的の遺伝子改変宿主細胞は、あらゆる細胞由来の細胞であり得る(例えば、細 菌細胞、古細菌細胞、単細胞真核生物の細胞、植物細胞、藻細胞、例えば、ボツリオコッ カス・ブラウニー、コナミドリムシ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、クロレラ・ピレ ノイドサ、ヤツマタモク、C.アガルド等、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、動物細胞、 無脊椎動物(例えばショウジョウバエ、刺胞動物、棘皮動物、線虫等)由来の細胞、脊椎 動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物)由来の細胞、哺乳動物(例えば 、ブタ、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯類動物、ラット、マウス、非ヒト霊長類動物、ヒ ト等)由来の細胞等)。

いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞は、部位特異的修飾ポリペプチド( 例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異型のCas9 ;キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外来性核酸で遺伝子改変さ れている。遺伝子改変宿主細胞のDNAは、細胞に、DNA標的化RNA(または修飾さ れる遺伝子位置/配列を決定する、DNA標的化RNAをコードするDNA)および所望 によりドナー核酸を導入することにより、修飾の標的とすることができる。いくつかの実 施形態において、部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、誘導性 プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター、 ステロイド調節プロモーター、金属調節プロモーター、エストロゲン受容体調節プロモー ター等)に作動可能に連結している。いくつかの実施形態において、部位特異的修飾ポリ ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、空間限定的および/または時間限定的プロモ ーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター等)に作動可能に 連結している。いくつかの実施形態において、部位特異的修飾ポリペプチドをコードする ヌクレオチド配列は、構成的プロモーターに作動可能に連結している。

いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞はインビトロに存在する。い くつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞はインビボに存在する。いくつか の実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、原核細胞であるか、または原核細胞 由来である。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、細菌細胞であ るか、または細菌細胞由来である。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主 細胞は、古細菌細胞であるか、または古細菌細胞由来である。いくつかの実施形態におい て、主題の遺伝子改変宿主細胞は、真核細胞であるか、または真核細胞由来である。いく つかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、植物細胞であるか、または植物 細胞由来である。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、動物細胞 であるか、または動物細胞由来である。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変 宿主細胞は、無脊椎動物細胞であるか、または無脊椎動物細胞由来である。いくつかの実 施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、脊椎動物細胞であるか、または脊椎動物 細胞由来である。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、哺乳類細 胞であるか、または哺乳類細胞由来である。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子 改変宿主細胞は、げっ歯類細胞であるか、またはげっ歯類細胞由来である。いくつかの実 施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、ヒト細胞であるか、またはヒト細胞由来 である。

本開示はさらに、主題の遺伝子改変細胞の子孫を提供し、子孫はそれが由来する主題の 遺伝子改変細胞と同じ外来性核酸またはポリペプチドを含み得る。本開示はさらに、主題 の遺伝子改変宿主細胞を含む組成物を提供する。

遺伝子改変幹細胞および遺伝子改変前駆細胞 いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は遺伝子改変幹細胞または前 駆細胞である。適切な宿主細胞には、例えば、幹細胞(成体幹細胞、胚性幹細胞、iPS 細胞等)および前駆細胞(例えば、心筋前駆細胞、神経前駆細胞等)が含まれる。適切な 宿主細胞には、例えば、げっ歯類幹細胞、げっ歯類前駆細胞、ヒト幹細胞、ヒト前駆細胞 等を含む、哺乳類の幹細胞および前駆細胞が含まれる。適切な宿主細胞には、インビトロ の宿主細胞、例えば、単離された宿主細胞が含まれる。

いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、外来性DNA標的化RN ADNA標的化RNA核酸を含む。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主 細胞は、DNA標的化RNADNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む外 来性核酸を含む。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細胞は、外来性部 位特異的修飾ポリペプチド(例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変 異型もしくは異型のCas9;キメラCas9;等)を含む。いくつかの実施形態におい て、主題の遺伝子改変宿主細胞は、部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチ ド配列を含む外来性核酸を含む。いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変宿主細 胞は、1)DNA標的化RNAおよび2)部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌク レオチド配列を含む外来性核酸を含む。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/C sn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または配列 番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれか における対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約8 5%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100% のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

組成物 本発明は、主題のDNA標的化RNAおよび/または部位特異的修飾ポリペプチドを含 む組成物を提供する。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、主題のキ メラポリペプチドである。主題の組成物は、本開示の方法、例えば、標的DNAの部位特 異的修飾の方法;標的DNAと結合したポリペプチドの部位特異的修飾の方法;等を実行 するのに有用である。

DNA標的化RNAを含む組成物 本発明は、主題のDNA標的化RNAを含む組成物を提供する。本組成物は、DNA標 的化RNAに加えて、塩、例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4等;緩衝 剤、例えば、トリス緩衝液、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エ タンスルホン酸)(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES) 、MESナトリウム塩、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N− トリス[ヒロドキシメチル]メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)等;可 溶化剤;界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、例えばトウィーン−20等;ヌク レアーゼ阻害剤;等のうちの一つまたは複数を含み得る。例えば、いくつかの例において 、主題の組成物は、主題のDNA標的化RNAおよび核酸を安定化させるための緩衝液を 含む。

いくつかの実施形態において、主題の組成物中に存在するDNA標的化RNAは、純粋 であり、例えば、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少な くとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、また は99%超純粋であり、ここで、「%純粋」とは、DNA標的化RNAが、他の高分子、 またはDNA標的化RNAを製造する間に存在し得る混入物を記載されたパーセントだけ 含まないことを意味する。

主題のキメラポリペプチドを含む組成物 本発明は、主題のキメラポリペプチド組成物を提供する。本組成物は、DNA標的化R NAに加えて、塩、例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4等.;緩衝剤、 例えば、トリス緩衝液、HEPES、MES、MESナトリウム塩、MOPS、TAPS 等;可溶化剤;界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、トウィーン−20 等;プロテアーゼ阻害剤;還元剤(例えば、ジチオスレイトール);等のうちの一つまた は複数を含み得る。

いくつかの実施形態において、主題の組成物中に存在する主題のキメラポリペプチドは 、純粋であり、例えば、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85% 、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99% 、または99%超純粋であり、ここで、「%純粋」とは、部位特異的修飾ポリペプチドが 、他のタンパク質、他の高分子、またはキメラポリペプチドを製造する間に存在し得る混 入物を記載されたパーセントだけ含まないことを意味する。

DNA標的化RNAおよび部位特異的修飾ポリペプチドを含む組成物 本発明は、(i)DNA標的化RNAまたはそれをコードするDNAポリヌクレオチド ;およびii)部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド を含む組成物を提供する。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、主題 のキメラ部位特異的修飾ポリペプチドである。他の例において、部位特異的修飾ポリペプ チドは、自然発生的な部位特異的修飾ポリペプチドである。いくつかの例において、部位 特異的修飾ポリペプチドは、標的DNAを修飾する酵素活性を示す。他の例において、部 位特異的修飾ポリペプチドは、標的DNAと結合したポリペプチドを修飾する酵素活性を 示す。さらに他の例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、標的DNAの転写を調節 する。

本発明は、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第 一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含む上記のDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並 びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)部 位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによっ て決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポ リヌクレオチド、を含む、組成物を提供する。

いくつかの例において、主題の組成物は、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補 的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチド と相互作用する第二セグメントを含む主題のDNA標的化RNA;並びに(ii)(a) DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)部位特異的酵素活性を 示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決定される、活性 部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、を含む、組成物を提供する。

他の実施形態では、主題の組成物は、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的な ヌクレオチド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相 互作用する第二セグメントを含む主題のDNA標的化RNAをコードするポリヌクレオチ ド;並びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および( b)部位特異的酵素活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNA によって決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするポリヌク レオチド、を含む。

いくつかの実施形態において、主題の組成物は、二重分子DNA標的化RNAのRNA 分子の両方を含む。従って、いくつかの実施形態において、主題の組成物は、標的化RN Aの二本鎖形成セグメントに対し相補的な二本鎖形成セグメントを含む活性化RNAを含 む(図1Aを参照)。活性化RNAおよび標的化RNAの二本鎖形成セグメントは、ハイ ブリダイズしてDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖を形 成する。標的化RNAはさらに、DNA標的化RNAのDNA標的化セグメント(一本鎖 )を与えることで、標的DNA内の特定の配列に対してDNA標的化RNAを標的化する 。1つの非限定例として、活性化RNAの二本鎖形成セグメントは、配列5’−UAGC AAGUUAAAAU−3’(配列番号562)と少なくとも約70%、少なくとも約8 0%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または100% の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。別の非限定例として、標的化RNAの二本鎖 形成セグメントは、配列5’−GUUUUAGAGCUA−3’(配列番号679)と少 なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少 なくとも約98%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。

本開示は、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第 一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメント を含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに( ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)標的DN A内の転写を調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調節される部位がDNA 標的化RNAによって決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、または それをコードするポリヌクレオチド、を含む組成物を提供する。

例えば、いくつかの例において、主題の組成物は、(i)(a)標的DNA内の配列に 対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリ ペプチドと相互作用する第二セグメントを含むDNA標的化RNA;並びに(ii)(a )DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)標的DNA内の転写 を調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調節される部位がDNA標的化RN Aによって決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、を含む。

別の例として、いくつかの例において、主題の組成物は、(i)(a)標的DNA内の 配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修 飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメントを含むDNA標的化RNAをコードするD NAポリヌクレオチド;並びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA 結合部位;および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、標的DNA内 の転写が調節される部位がDNA標的化RNAによって決定される、活性部位を含む部位 特異的修飾ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。

主題の組成物は、i)主題のDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリ ヌクレオチド;およびii)部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリ ヌクレオチドに加えて、塩、例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4等;緩 衝剤、例えば、トリス緩衝液、HEPES、MES、MESナトリウム塩、MOPS、T APS等;可溶化剤;界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、トウィーン −20等;プロテアーゼ阻害剤;還元剤(例えば、ジチオスレイトール);等のうちの一 つまたは複数を含み得る。

いくつかの例において、本組成物の成分は、それぞれ純粋であり、例えば、各成分は、 少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、 少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも99%純粋である。いくつ かの例において、主題の組成物のそれぞれの成分は、該組成物に加えられる前に、純粋で ある。

例えば、いくつかの実施形態において、主題の組成物中に存在する部位特異的修飾ポリ ペプチドは、純粋であり、例えば、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくと も約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくと も約99%、または99%超純粋であり、ここで、「%純粋」とは、部位特異的修飾ポリ ペプチドが、他のタンパク質(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド以外のタンパク質) 、他の高分子、または部位特異的修飾ポリペプチドを製造する間に存在し得る混入物を記 載のパーセントだけ含まないことを意味する。

キット 本開示は主題の方法を実行するためのキットを提供する。主題のキットは、部位特異的 修飾ポリペプチド;部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む核酸; DNA標的化RNA;DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;活 性化RNA;活性化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;標的化RNA;お よび標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸のうちの一つまたは複数を含 み得る。部位特異的修飾ポリペプチド;部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレ オチドを含む核酸;DNA標的化RNA;DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド 配列を含む核酸;活性化RNA;活性化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸 ;標的化RNA;および標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、上記 において詳細に説明されている。キットは、部位特異的修飾ポリペプチド;部位特異的修 飾ポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む核酸;DNA標的化RNA;DNA標的 化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;活性化RNA;活性化RNAをコー ドするヌクレオチド配列を含む核酸;標的化RNA;および標的化RNAをコードするヌ クレオチド配列を含む核酸のうちの2つ以上を含む複合体を含み得る。

いくつかの実施形態において、主題のキットは、部位特異的修飾ポリペプチド、または それをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、部位特異的修 飾ポリペプチドは、(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および( b)標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調節される 部位がDNA標的化RNAによって決定される、活性部位を含む。いくつかの例において 、部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は、低減された、または不活性化されたヌクレ アーゼ活性を示す。いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、キメラ部位 特異的修飾ポリペプチドである。

いくつかの実施形態において、主題のキットは、部位特異的修飾ポリペプチド、または それをコードするポリヌクレオチド、並びに部位特異的修飾ポリペプチドを再構成および /または希釈するための試薬を含む。他の実施形態では、主題のキットは、部位特異的修 飾ポリペプチドをコードするヌクレオチドを含む核酸(例えば、DNA、RNA)を含む 。いくつかの実施形態において、主題のキットは、部位特異的修飾ポリペプチドをコード するヌクレオチドを含む核酸(例えば、DNA、RNA);並びに部位特異的修飾ポリペ プチドを再構成および/または希釈するための試薬を含む。

部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む主題の キットはさらに、一つまたは複数の追加の試薬を含む場合があり、そのような追加の試薬 は、細胞に部位特異的修飾ポリペプチドを導入させるための緩衝液;洗浄緩衝液;対照試 薬;対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド;DNAから部位特異的修飾ポリペ プチドをインビトロ生成するための試薬等から選択され得る。いくつかの例において、主 題のキットに含まれる部位特異的修飾ポリペプチドは、上記のキメラ部位特異的修飾ポリ ペプチドである。

いくつかの実施形態において、主題のキットは、(a)標的DNA内の配列に対し相補 的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチド と相互作用する第二セグメントを含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDN Aポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAはさらに 、第三のセグメント(上記)を含む。いくつかの実施形態において、主題のキットは、( i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント; および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメントを含むDNA標 的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌクレオチド;並びに(ii)(a)D NA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)部位特異的酵素活性を示 す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決定される、活性部 位を含む部位特異的修飾ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチド、を含 む。いくつかの実施形態において、部位特異的修飾ポリペプチドの活性部位は、酵素活性 を示さない(例えば変異により、不活性化されたヌクレアーゼを含む)。いくつかの例に おいて、本キットは、DNA標的化RNAおよび部位特異的修飾ポリペプチドを含む。他 の例において、本キットは、(i)DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を 含む核酸;および(ii)部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を 含む核酸を含む。

別の例として、主題のキットは、(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌク レオチド配列を含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作 用する第二セグメントを含むDNA標的化RNA、またはそれをコードするDNAポリヌ クレオチド;並びに(ii)(a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位; および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調 節される部位がDNA標的化RNAによって決定される、活性部位を含む部位特異的修飾 ポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの例にお いて、本キットは、(i)DNA標的化RNA;および部位特異的修飾ポリペプチドを含 む。他の例において、本キットは、(i)DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド 配列を含む核酸;および(ii)部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド 配列を含む核酸を含む。

本開示は、(1)(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を 含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグ メントを含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列;並びに(ii)(a) DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)部位特異的酵素活性を 示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決定される、活性 部位を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む組み換え 発現ベクター;並びに(2)発現ベクターの再構成および/または希釈のための試薬、を 含むキットを提供する。

本開示は、(1)(i)(a)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を 含む第一セグメント;および(b)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグ メントを含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列;並びに(ii)(a) DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)標的DNA内の転写を 調節する活性部位であって、標的DNA内の転写が調節される部位がDNA標的化RNA によって決定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオ チド配列、を含む組み換え発現ベクター;並びに(2)組み換え発現ベクターの再構成お よび/または希釈のための試薬、を含むキットを提供する。

本開示は、(1)(i)標的DNA内の配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第 一セグメント;および(ii)部位特異的修飾ポリペプチドと相互作用する第二セグメン ト、を含むDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組み換え 発現ベクター;並びに(2)組み換え発現ベクターの再構成および/または希釈のための 試薬、を含むキットを提供する。本キットのいくつかの実施形態において、本キットは、 (a)DNA標的化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)部位特異的酵素 活性を示す活性部位であって、酵素活性の部位がDNA標的化RNAによって決定される 、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組み 換え発現ベクターを含む。本キットの他の実施形態では、本キットは、(a)DNA標的 化RNAと相互作用するRNA結合部位;および(b)標的DNA内の転写を調節する活 性部位であって、標的DNA内の転写が調節される部位がDNA標的化RNAによって決 定される、活性部位を含む部位特異的修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を 含む組み換え発現ベクターを含む。

上記のキットのいずれかのいくつかの実施形態において、本キットは、活性化RNAま たは標的化RNAを含む。上記のキットのいずれかのいくつかの実施形態において、本キ ットは、単一分子DNA標的化RNAを含む。上記のキットのいずれかのいくつかの実施 形態において、本キットは、2つ以上の二重分子または単一分子DNA標的化RNAを含 む。上記のキットのいずれかのいくつかの実施形態において、(例えば、2つ以上のDN A標的化RNAを含む)DNA標的化RNAは、アレイ(例えば、RNA分子のアレイ、 DNA標的化RNA(複数可)をコードするDNA分子のアレイ等)として提供され得る 。そのようなキットは、例えば、主題の部位特異的修飾ポリペプチドを含む上記の遺伝子 改変宿主細胞と併せた使用において有用であり得る。上記のキットのいずれかのいくつか の実施形態において、本キットはさらに、所望の遺伝子改変をもたらすドナーポリヌクレ オチドを含む。主題のキットの構成要素は、別々の容器中に存在していてもよいし;ある いは単一の容器中で混合されていてもよい。

前述のキットのいずれかは、一つまたは複数の追加の試薬をさらに含む場合があり、そ のような追加の試薬は、希釈緩衝液;再構成溶液;洗浄緩衝液;対照試薬;対照発現ベク ターまたはRNAポリヌクレオチド;DNAから部位特異的修飾ポリペプチドをインビト ロ生成するための試薬等から選択され得る。

上記構成要素に加えて、主題のキットは、キットの構成要素を用いて主題の方法を実施 するための説明書をさらに含み得る。主題の方法を実施するための説明書は、一般的には 、適切な記録媒体上に記録される。例えば、説明書は、紙またはプラスチック等の基体上 に印刷されていてもよい。従って、説明書は、添付文書としてキット内に、キットまたは その構成要素の容器の標識中(すなわち、パッケージまたはサブパッケージに付随して) 等、存在していてもよい。他の実施形態では、説明書は、適切なコンピューター可読の記 憶媒体、例えばCD−ROM、ディスケット、フラッシュドライブ等上に存在する電子記 憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態においては、実際の説明書がキッ ト内に存在しないが、例えばインターネットを介して、遠隔の供給源から説明書を得るた めの手段が提供される。この実施形態の一例は、説明書を閲覧することができる、および /または説明書をダウンロードすることができる、ウェブアドレスを含むキットである。 説明書と同様、説明書を得るためのこの手段は、適切な基体上に記録される。

非ヒト遺伝子改変生物 いくつかの実施形態において、遺伝子改変宿主細胞は、部位特異的修飾ポリペプチド( 例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異型のCas9 ;キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外来性核酸で遺伝子改変さ れている。そのような細胞が真核単細胞生物である場合、修飾された細胞は遺伝子改変生 物とみなすことができる。いくつかの実施形態において、主題の非ヒト遺伝子改変生物は 、Cas9遺伝子導入多細胞生物である。

いくつかの実施形態において、主題の遺伝子改変非ヒト宿主細胞(例えば、部位特異的 修飾ポリペプチド、例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もし くは異型のCas9;キメラCas9;等をコードするヌクレオチド配列を含む外来性核 酸で遺伝子改変された細胞)は、主題の遺伝子改変非ヒト生物(例えば、マウス、魚、カ エル、ハエ、虫等)を作製することができる。例えば、遺伝子改変宿主細胞が多能性幹細 胞(すなわち、PSC)または生殖細胞(例えば、精子、卵子等)である場合、遺伝子改 変生物の全体は、その遺伝子改変宿主細胞に由来し得る。いくつかの実施形態において、 遺伝子改変宿主細胞は、遺伝子改変生物を生じることができる、インビボまたはインビト ロのいずれかの、多能性幹細胞(例えば、ESC、iPSC、多能性植物幹細胞等)また は生殖細胞(例えば、精子細胞、卵子等)である。いくつかの実施形態において、遺伝子 改変宿主細胞は、脊椎動物PSC(例えば、ESC、iPSC等)であり、(例えば、P SCを胚盤胞に注入してキメラ/モザイク動物を作製し、次に交配させて非キメラ/非モ ザイク遺伝子改変生物を作製することによって;植物の場合は接木することによって;等 )遺伝子改変生物を作製するのに用いられる。本明細書に記載の方法を含む、遺伝子改変 生物を作製するためのいかなる好都合な方法/プロトコルも、部位特異的修飾ポリペプチ ド(例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異型のCa s9;キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外来性核酸を含む遺伝 子改変宿主細胞を作製するのに適している。遺伝子改変生物を作製する方法は、当該技術 分野において公知である。例えば、Cho et al., Curr Protoc Cell Biol. 2009 Mar;Chap ter 19:Unit 19.11: Generation of transgenic mice; Gama et al., Brain Struct Func t. 2010 Mar;214(2-3):91-109. Epub 2009 Nov 25: Animal transgenesis: an overview; Husaini et al., GM Crops. 2011 Jun-Dec;2(3):150-62. Epub 2011 Jun 1: Approaches for gene targeting and targeted gene expression in plantsを参照されたい。

いくつかの実施形態において、遺伝子改変生物は、本発明の方法のための標的細胞を含 み、従って、標的細胞の供給源とみなすことができる。例えば、部位特異的修飾ポリペプ チド(例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異型のC as9;キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外来性核酸を含む遺 伝子改変細胞が遺伝子改変生物を作製するために用いられる場合、遺伝子改変生物の細胞 は、部位特異的修飾ポリペプチド(例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわ ち、変異型もしくは異型のCas9;キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配 列を含む外来性核酸を含む。いくつかのそのような実施形態において、遺伝子改変生物の 1つまたは複数の細胞のDNAは、1つまたは複数の細胞に、DNA標的化RNA(また はDNA標的化RNAをコードするDNA)および所望によりドナー核酸を導入すること により、修飾の標的とすることができる。例えば、DNA標的化RNA(またはDNA標 的化RNAをコードするDNA)の、遺伝子改変生物の一部の細胞(例えば、脳細胞、腸 細胞、腎細胞、肺細胞、血液細胞等)への導入は、そのような細胞のDNAを修飾の標的 にすることができ、修飾の遺伝子位置は導入されたDNA標的化RNAのDNA標的配列 に依存する。

いくつかの実施形態において、遺伝子改変生物は、本発明の方法のための標的細胞の供 給源である。例えば、部位特異的修飾ポリペプチド(例えば、自然発生的なCas9;修 飾された、すなわち、変異型もしくは異型のCas9;キメラCas9;等)をコードす るヌクレオチド配列を含む外来性核酸で遺伝子改変された細胞を含む遺伝子改変生物は、 遺伝子改変細胞、例えばPSC(例えば、ESC、iPSC、精子、卵子、等)、ニュー ロン、前駆細胞、心筋細胞等の供給源を提供し得る。

いくつかの実施形態において、遺伝子改変細胞は、部位特異的修飾ポリペプチド(例え ば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異型のCas9;キ メラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外来性核酸を含むPSCである 。従って、PSCは、PSCのDNAが、PSCにDNA標的化RNA(またはDNA標 的化RNAをコードするDNA)および所望によりドナー核酸を導入することにより、修 飾の標的となることができ、修飾の遺伝子位置が、導入されたDNA標的化RNAのDN A標的配列に依存するような、標的細胞であり得る。従って、いくつかの実施形態におい て、本明細書に記載の方法を用いることで、主題の遺伝子改変生物に由来するPSCのD NAを修飾(例えば、あらゆる所望の遺伝子位置を欠失および/または置換)することが できる。そのような修飾されたPSCは、次に、(i)部位特異的修飾ポリペプチド(例 えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異型のCas9; キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列を含む外来性核酸および(ii)P SCに導入されたDNA修飾の両方を有する生物を作製するために用いることができる。

部位特異的修飾ポリペプチド(例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち 、変異型もしくは異型のCas9;キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列 を含む外来性核酸は、未知のプロモーターの制御下にあり得(すなわち、それに作動可能 に連結している)(例えば、核酸が宿主細胞ゲノムに無作為に組み込まれた場合)、また は、公知のプロモーターの制御下にあり得る(すなわち、それに作動可能に連結している )。適切な公知のプロモーターは、いかなる公知のプロモーターであってもよく、恒常的 活性型プロモーター(例えば、CMVプロモーター)、誘導性プロモーター(例えば、熱 ショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター、ステロイド調節プロモータ ー、金属調節プロモーター、エストロゲン受容体調節プロモーター等)、空間限定的およ び/または時間限定的プロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プ ロモーター等)等が含まれる。

主題の遺伝子改変生物(例えば、細胞が、部位特異的修飾ポリペプチド、例えば、自然 発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異型のCas9;キメラCa s9;等をコードするヌクレオチド配列を含む生物)は、いかなる生物であってもよく、 例えば、植物;藻類;無脊椎動物(例えば、刺胞動物、棘皮動物、虫、ハエ等);脊椎動 物(例えば、魚(例えば、ゼブラフィッシュ、フグ、キンギョ等)、両生類動物(例えば 、サンショウウオ、カエル等)、爬虫類動物、鳥、哺乳動物等);有蹄動物(例えば、ヤ ギ、ブタ、ヒツジ、雌ウシ等);げっ歯類動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、 モルモット);ウサギ目(例えば、ウサギ);等が含まれる。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/C sn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または配列 番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれか における対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約8 5%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100% のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

遺伝子導入非ヒト動物 上記のように、いくつかの実施形態において、主題の核酸(例えば、部位特異的修飾ポ リペプチド、例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異 型のCas9;キメラCas9;等をコードするヌクレオチド配列)または主題の組み換 え発現ベクターは、部位特異的修飾ポリペプチドを産生する遺伝子導入動物を作製するた めの導入遺伝子として用いられる。従って、本発明はさらに、上記の、部位特異的修飾ポ リペプチド、例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異 型のCas9;キメラCas9;等をコードするヌクレオチド配列を含む主題の核酸を含 む導入遺伝子を含む、遺伝子導入非ヒト動物を提供する。いくつかの実施形態において、 遺伝子導入非ヒト動物のゲノムは、部位特異的修飾ポリペプチドをコードする主題のヌク レオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子導入非ヒト動物は、遺伝子改 変にとってホモ接合性である。いくつかの実施形態において、遺伝子導入非ヒト動物は、 遺伝子改変にとってヘテロ接合性である。いくつかの実施形態において、遺伝子導入非ヒ ト動物は、脊椎動物、例えば、魚(例えば、ゼブラフィッシュ、キンギョ、フグ、洞窟魚 等)、両生類動物(カエル、サンショウウオ等)、鳥(例えば、ニワトリ、シチメンチョ ウ等)、爬虫類動物(例えば、ヘビ、トカゲ等)、哺乳動物(例えば、有蹄動物、例えば 、ブタ、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ等;ウサギ(例えば、ウサギ);げっ歯類動物(例えば、 ラット、マウス);非ヒト霊長類;等)等である。

部位特異的修飾ポリペプチド(例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち 、変異型もしくは異型のCas9;キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列 を含む外来性核酸は、未知のプロモーターの制御下にあり得(すなわち、それに作動可能 に連結している)(例えば、核酸が宿主細胞ゲノムに無作為に組み込まれた場合)、また は、公知のプロモーターの制御下にあり得る(すなわち、それに作動可能に連結している )。適切な公知のプロモーターは、いかなる公知のプロモーターであってもよく、恒常的 活性型プロモーター(例えば、CMVプロモーター)、誘導性プロモーター(例えば、熱 ショックプロモーター、テトラサイクリン調節プロモーター、ステロイド調節プロモータ ー、金属調節プロモーター、エストロゲン受容体調節プロモーター等)、空間限定的およ び/または時間限定的プロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プ ロモーター等)等が含まれる。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/C sn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または配列 番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれか における対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約8 5%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100% のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

遺伝子導入植物 上記のように、いくつかの実施形態において、主題の核酸(例えば、部位特異的修飾ポ リペプチド、例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異 型のCas9;キメラCas9;等をコードするヌクレオチド配列)または主題の組み換 え発現ベクターは、部位特異的修飾ポリペプチドを産生する遺伝子導入植物を作製するた めの導入遺伝子として用いられる。従って、本発明はさらに、上記の、部位特異的修飾ポ リペプチド、例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異 型のCas9;キメラCas9;等をコードするヌクレオチド配列を含む主題の核酸を含 む導入遺伝子を含む、遺伝子導入植物を提供する。いくつかの実施形態において、遺伝子 導入植物のゲノムは主題の核酸を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子導入植物は 、遺伝子改変にとってホモ接合性である。いくつかの実施形態において、遺伝子導入植物 は、遺伝子改変にとってヘテロ接合性である。

外来性核酸を植物細胞に導入する方法は当該技術分野において周知である。そのような 植物細胞は、上記で定義されたように、「形質転換されている」とみなされる。適切な方 法には、ウイルス感染(二本鎖DNAウイルス等)、トランスフェクション、接合(co njugation)、原形質融合、エレクトロポレーション、パーティクルガン技術、 リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、シリコンカーバイドウィスカー 技術、アグロバクテリウム属介在性形質転換等が含まれる。方法の選択は、一般的には、 形質転換される細胞の種類および形質転換が起こる環境(すなわち、インビトロ、エキソ ビボ、またはインビボ)に依存する。

土壌細菌アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tu mefaciens)に基づく形質転換法は、外来性核酸分子を維管束植物に導入するの に特に有用である。アグロバクテリウム属の野生型は、宿主植物における腫瘍形成性クラ ウンゴール成長の生成を指示するTi(腫瘍誘導性)プラスミドを含有する。植物ゲノム へのTiプラスミドの腫瘍誘導性T−DNA領域の導入は、Tiプラスミドにコードされ た病原性遺伝子および導入される領域を表す一連の直接DNA反復であるT−DNAボー ダーを必要とする。アグロバクテリウム属に基づくベクターは、腫瘍誘導性機能が植物宿 主に導入される目的の核酸配列によって置換されている、Tiプラスミドの修飾形態であ る。

アグロバクテリウム属介在性形質転換は、一般的に、Tiプラスミドの成分が、アグロ バクテリウム属宿主内に恒久的に存在し病原性遺伝子を保有するヘルパーベクター、およ びT−DNA配列が結合した目的の遺伝子を含有するシャトルベクターの間で分割されて いる、共統合ベクターまたは二成分ベクター系を用いる。種々の二成分ベクターは当該技 術分野において周知であり、例えば、クロンテック社(Clontech)(カリフォル ニア州パロアルト)から市販されている。例えば、アグロバクテリウム属を、培養植物細 胞または葉組織、根外植片、子葉下部(hypocotyledon)、茎断片もしくは 塊茎等の損傷組織と共に共培養する方法も、当該技術分野において周知である。例えば、 Glick and Thompson, (eds.), Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology , Boca Raton, Fla.: CRC Press (1993)を参照されたい。

マイクロ射出(microprojectile)による形質転換も、主題の遺伝子導 入植物を作製するために用いることができる。Klein et al. (Nature 327:70-73 (1987)) に最初に報告されたこの方法は、塩化カルシウム、スペルミジンまたはポリエチレングリ コールを用いた沈殿により所望の核酸分子で被膜された金またはタングステン等のマイク ロ射出に依存している。マイクロ射出粒子は、BIOLISTIC PD−1000(バ イオラド社(Biorad);カリフォルニア州ハーキュリーズ)等の装置を用いて、被 子植物組織内に高速で加速される。

主題の核酸は、核酸が植物細胞(複数可)に侵入できるような方法、例えば、インビボ またはエキソビボのプロトコルで、植物に導入することができる。「インビボ」とは、核 酸が、生きている状態の植物に、例えば浸透によって導入されることを意味する。「エキ ソビボ」とは、細胞または外植片が植物の外側で改変され、係る細胞または生物が植物に 再生することを意味する。植物細胞の安定な形質転換または遺伝子導入植物の確立に適し たいくつかのベクターが記載されており、例えば、Weissbach and Weissbach, (1989) Me thods for Plant Molecular Biology Academic Press、およびGelvin et al., (1990) Pl ant Molecular Biology Manual, Kluwer Academic Publishersに記載されるものである。 具体例としては、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミドに由来するベ クター、およびHerrera-Estrella et al. (1983) Nature 303: 209, Bevan (1984) Nucl Acid Res. 12: 8711-8721, Klee (1985) Bio/Technolo 3: 637-642に開示されるベクター が挙げられる。あるいは、非Tiベクターを用いて、遊離DNA送達法(free DNA deliv ery technique)で、DNAを植物および細胞に導入することができる。これらの方法を 用いることによって、コムギ、イネ(Christou (1991) Bio/Technology 9:957-9 and 446 2)およびトウモロコシ(Gordon-Kamm (1990) Plant Cell 2: 603-618)等の遺伝子導入 植物を作製することができる。未成熟の胚は、単子葉植物に対する、パーティクルガン( Weeks et al. (1993) Plant Physiol 102: 1077-1084; Vasil (1993) Bio/Technolo 10: 667-674; Wan and Lemeaux (1994) Plant Physiol 104: 37-48)を使用する直接DNA送 達法に、およびアグロバクテリウムによるDNA輸送(Ishida et al. (1996) Nature Bi otech 14: 745-750)に良好な標的組織にもなり得る。葉緑体にDNAを導入するための 例示的な方法は、遺伝子銃法(biolistic bombardment)、ポリエ チレングリコールによるプロトプラストの形質転換、およびマイクロインジェクションで ある(Danieli et al Nat. Biotechnol 16:345-348, 1998; Staub et al Nat. Biotechno l 18: 333-338, 2000; O’Neill et al Plant J. 3:729-738, 1993; Knoblauch et al Na t. Biotechnol 17: 906-909;米国特許第5,451,513号、同第5,545,81 7号、同第5,545,818号、および同第5,576,198号;国際公開第95/ 16783号;並びにBoynton et al., Methods in Enzymology 217: 510-536 (1993), S vab et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 913-917 (1993)、およびMcBride et al., Proc. Nati. Acad. Sci. USA 91: 7301-7305 (1994))。遺伝子銃法、ポリエチレングリ コールによるプロトプラストの形質転換、およびマイクロインジェクションの方法に適し たいかなるベクターも、葉緑体の形質転換のためのターゲッティングベクターとして適切 である。いかなる2本鎖DNAベクターも、特に導入法がアグロバクテリウムを使用しな い場合は、形質転換用ベクターとして使用することができる。

遺伝子改変可能な植物には、穀物類、飼料作物、果物、野菜類、油料種子作物、パーム ヤシ、樹木(forestry)、およびツル植物が含まれる。改変可能な植物の具体例 を以下に挙げる:トウモロコシ、バナナ、ピーナツ、フィールドピー、ヒマワリ、トマト 、アブラナ、タバコ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ジャガイモ、ダイズ、ワタ、カー ネーション、モロコシ、ルピナス、およびイネ。

本発明は、形質転換された植物細胞、組織、植物体、および形質転換された植物細胞を 含有する製品も提供する。これらを含む、主題の形質転換細胞およびそれを含む組織なら びに製品の特徴は、ゲノムに組み混まれた主題の核酸の存在、ならびに部位特異的修飾ポ リペプチド、例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち、変異型もしくは異 型Cas9;キメラCas9;等の、植物細胞による産生である。本発明の組換え植物細 胞は、組換え細胞の集団として、または組織、種子、全植物体、茎、果実、葉、根、花、 茎、塊茎、穀粒、動物飼料、植物の畑(field of plants)などとして有用 である。

部位特異的修飾ポリペプチド(例えば、自然発生的なCas9;修飾された、すなわち 、変異型もしくは異型のCas9;キメラCas9;等)をコードするヌクレオチド配列 を含む核酸は、未知のプロモーターの制御下にあり得(すなわち、それに作動可能に連結 している)(例えば、核酸が宿主細胞ゲノムに無作為に組み込まれた場合)、または、公 知のプロモーターの制御下にあり得る(すなわち、それに作動可能に連結している)。適 切な公知のプロモーターは、いかなる公知のプロモーターであってもよく、恒常的活性型 プロモーター、誘導性プロモーター、空間限定的および/または時間限定的プロモーター 等が含まれる。

いくつかの例において、部位特異的修飾ポリペプチドは、図3に示されるCas9/C sn1アミノ酸配列のアミノ酸7〜166または731〜1003に対して、または配列 番号1〜256および795〜1346として記載されるアミノ酸配列のうちのいずれか における対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約8 5%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100% のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

種子、子孫植物およびクローン物質を含む、主題の遺伝子導入植物の生殖物質も、主題 の発明によって提供される。

定義(第II部) 核酸、ポリペプチド、細胞、または生物に適用されて本明細書で使用される用語「自然 発生的な」または「無修飾の」は、天然に存在する核酸、ポリペプチド、細胞、または生 物を指す。例えば、天然源から単離することができ、実験室でヒトによって意図的に改変 されていない、生物(ウイルスを含む)内に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチ ド配列は、自然発生的である。

「異種」とは、本明細書で使用される場合、天然の核酸またはタンパク質にそれぞれ存 在していないヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を意味する。例えば、融合変異型 Cas9部位特異的ポリペプチドにおいて、変異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、 異種ポリペプチド(すなわちCas9以外のポリペプチド)に融合され得る。異種ポリペ プチドは、融合変異型Cas9部位特異的ポリペプチドによっても示される活性(例えば 、酵素活性)を示し得る。異種核酸配列を、(例えば、遺伝子操作によって)変異型Ca s9部位特異的ポリペプチドに連結して、融合変異型Cas9部位特異的ポリペプチドを コードするヌクレオチド配列を作製してもよい。

用語「キメラポリペプチド」は、自然発生的でない、例えば、人の介在によって、アミ ノ配列の2つの組み合わされていなければ離れているセグメントの人為的な組み合わせに よって作製される、ポリペプチドを指す。従って、キメラポリペプチドは人の介在の産物 でもある。従って、キメラアミノ酸配列を含むポリペプチドはキメラポリペプチドである 。

「部位特異的ポリペプチド」または「RNA結合部位特異的ポリペプチド」または「R NA結合部位特異的ポリペプチド」とは、RNAと結合し特定のDNA配列に標的化され るポリペプチドを意味する。本明細書に記載される部位特異的ポリペプチドは、それが結 合しているRNA分子によって特定のDNA配列に標的化される。RNA分子は、標的D NA内の標的配列に対し相補的であることから結合したポリペプチドを標的DNA(標的 配列)内の特定の位置に標的化する配列を含む。

いくつかの実施形態において、主題の核酸(例えば、DNA標的化RNA、DNA標的 化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸;部位特異的ポリペプチドをコードす る核酸;等)は、追加の所望の特徴(例えば、改変または調節された安定性;細胞内標的 化;追跡(例えば、蛍光標識);タンパク質またはタンパク質複合体に対する結合部位; 等)を与える修飾または配列を含む。例としては、限定はされないが、5’キャップ(例 えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化尾部(すなわち 、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節、並びに/またはタ ンパク質および/もしくはタンパク質複合体による接触のし易さの調節を可能にする); RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体等)に標的化する修飾または 配列;追跡(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を促進する部分、蛍光検出を可能 にする配列への結合等)をもたらす修飾または配列;タンパク質(例えば、転写活性化因 子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化酵素、ヒストン アセチルトランスフェラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素等を含むDNAに作用するタン パク質)に対する結合部位を与える修飾または配列;並びにそれらの組み合わせが挙げら れる。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAは、上記の特徴のうちのいずれかを 与える追加のセグメントを5’末端または3’末端のいずれかに含む。例えば、適切な第 三セグメントは、5’キャップ(例えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7G)); 3’ポリアデニル化尾部(すなわち、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば 、安定性の調節、並びに/またはタンパク質およびタンパク質複合体による接触のし易さ の調節を可能にする);RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体等) に標的化する配列;追跡(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を促進する部分、蛍 光検出を可能にする配列への結合等)をもたらす修飾または配列;タンパク質(例えば、 転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化酵 素、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素等を含むDNAに 作用するタンパク質)に対する結合部位を与える修飾または配列;並びにそれらの組み合 わせを含み得る。

主題のDNA標的化RNAおよび主題の部位特異的ポリペプチドは、複合体を形成する (すなわち、非共有結合性相互作用によって結合する)。DNA標的化RNAは、標的D NAの配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含むことによって、標的特異性を複合体に 与える。複合体の部位特異的ポリペプチドは部位特異的活性を与える。言い換えれば、部 位特異的ポリペプチドは、それ自体がDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントと 結合することによって、標的DNA配列(例えば、染色体核酸内の標的配列;染色体外核 酸(例えば、エピソーム核酸、ミニサークル等)内の標的配列;ミトコンドリア核酸内の 標的配列;葉緑体核酸内の標的配列;プラスミド内の標的配列;等)に誘導される。

いくつかの実施形態において、主題のDNA標的化RNAは、2つの別々のRNA分子 (RNAポリヌクレオチド)を含み、「二重分子DNA標的化RNA」または「二分子D NA標的化RNA」と称される。他の実施形態では、主題のDNA標的化RNAは単一R NA分子(単一RNAポリヌクレオチド)であり、本明細書では「単一分子DNA標的化 RNA」と称される。特に断りがなければ、用語「DNA標的化RNA」は、単一分子D NA標的化RNAおよび二重分子DNA標的化RNAの両方を包括的に指す。

主題の二分子DNA標的化RNAは、2つの別々のRNA分子(「標的化RNA」およ び「活性化RNA」)を含む。主題の二分子DNA標的化RNAの2つのRNA分子はそ れぞれ、互いに対し相補的なヌクレオチド鎖を含み、その結果、2つのRNA分子の相補 的ヌクレオチドはハイブリダイズしてタンパク質結合セグメントの二本鎖RNA二本鎖を 形成する。

主題の単一分子DNA標的化RNAは、互いに対し相補的であり、介在ヌクレオチド( 「リンカー」または「リンカーヌクレオチド」)によって共有結合的に連結し、ハイブリ ダイズしてタンパク質結合セグメントの二本鎖RNA二本鎖(dsRNA二本鎖)を形成 し、それによりステムループ構造をもたらす、2本のヌクレオチド鎖(標的化RNAおよ び活性化RNA)を含む。標的化RNAおよび活性化RNAは、標的化RNAの3’末端 および活性化RNAの5’末端を介して共有結合的に連結し得る。あるいは、標的化RN Aおよび活性化RNAは、標的化RNAの5’末端および活性化RNAの3’末端を介し て共有結合的に連結し得る。

例示的な二分子DNA標的化RNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」また は「標的化RNA」または「crRNA」または「crRNAリピート」)分子および対 応するtracrRNA様(「トランス作動性CRISPR RNA」または「活性化R NA」または「tracrRNA」)分子を含む。crRNA様分子(標的化RNA)は 、DNA標的化RNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)およびDNA標的化RNAの タンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖の半分を形成するヌクレオチド鎖(「二本 鎖形成セグメント」)の両方を含む。対応するtracrRNA様分子(活性化RNA) は、DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖のもう半分を形 成するヌクレオチド鎖(二本鎖形成セグメント)を含む。言い換えれば、crRNA様分 子のヌクレオチド鎖は、tracrRNA様分子のヌクレオチド鎖に対し相補的でそれと ハイブリダイズして、DNA標的化RNAのタンパク質結合ドメインのdsRNA二本鎖 を形成する。従って、それぞれのcrRNA様分子は、対応するtracrRNA様分子 を有すると言うことができる。crRNA様分子はさらに、一本鎖DNA標的化セグメン トを与える。従って、crRNA様分子およびtracrRNA様分子は(対応する対と して)ハイブリダイズしてDNA標的化RNAを形成する。所与のcrRNA分子または tracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が存在する種類に特有である。

用語「活性化RNA」は、二重分子DNA標的化RNAのtracrRNA様分子を意 味して、本明細書では使用される。用語「標的化RNA」は、二重分子DNA標的化RN AのcrRNA様分子を意味して、本明細書では使用される。用語「二本鎖形成セグメン ト」は、対応する活性化RNA分子または標的化RNA分子のヌクレオチド鎖にハイブリ ダイズすることでdsRNA二本鎖の形成に寄与する、活性化RNAまたは標的化RNA のヌクレオチド鎖を意味して、本明細書では使用される。言い換えれば、活性化RNAは 、対応する標的化RNAの二本鎖形成セグメントに対し相補的な二本鎖形成セグメントを 含む。従って、活性化RNAは二本鎖形成セグメントを含み、一方、標的化RNAは二本 鎖形成セグメントおよびDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントの両方を含む。従 って、主題の二重分子DNA標的化RNAは、いかなる対応する活性化RNAおよび標的 化RNA対から成っていてもよい。

二分子DNA標的化RNAは、標的化RNAの活性化RNAとの調節された(すなわち 、条件的な)結合を可能にするように設計することができる。二分子DNA標的化RNA は活性化RNAおよび標的化RNAの両方が機能的な複合体の形態でdCas9と結合し ない限り機能的にならないため、活性化RNAおよび標的化RNAの結合を誘導性とする ことによって、二分子DNA標的化RNAを、誘導性(例えば、薬剤誘導性)にすること ができる。1つの非限定例として、RNAアプタマーを用いることで、活性化RNAの標 的化RNAとの結合を制御(すなわち、調節)することができる。従って、活性化RNA および/または標的化RNAは、RNAアプタマー配列を含み得る。

RNAアプタマーは当該技術分野において公知であり、一般的にリボスイッチの合成バ ージョンである。用語「RNAアプタマー」および「リボスイッチ」は本明細書で同義的 に使用されて、合成核酸配列および天然核酸配列であって、それらが一部として含まれる RNA分子の構造(および、従って、特定の配列の利用能)の誘導性調節を与える合成核 酸配列および天然核酸配列の両方を包含する。RNAアプタマーは通常、特定の構造(例 えば、ヘアピン)に折り畳まれる配列を含み、その配列が特定の薬剤(例えば、小分子) と特異的に結合する。薬剤の結合はRNAの折り畳みにおける構造変化をもらたし、それ によって、アプタマーが一部として含まれる核酸の特徴が変化される。非限定例として、 (i)アプタマーを有する活性化RNAは、アプタマーが適切な薬剤と結合しない限り、 同種の(cognate)標的化RNAに結合することができず;(ii)アプタマーを 有する標的化RNAは、アプタマーが適切な薬剤と結合しない限り、同種の活性化RNA に結合することができず;(iii)異なる薬剤と結合する異なるアプタマーをそれぞれ 含む標的化RNAおよび活性化RNAは、両方の薬剤が存在しない限り、互いに結合する ことができない。これらの例によって説明される通り、二分子DNA標的化RNAは誘導 性となるように設計することができる。

アプタマーおよびリボスイッチの例は、例えば、Nakamura et al., Genes Cells. 2012 May;17(5):344-64; Vavalle et al., Future Cardiol. 2012 May;8(3):371-82; Citarta n et al., Biosens Bioelectron. 2012 Apr 15;34(1):1-11、およびLiberman et al., Wi ley Interdiscip Rev RNA. 2012 May-Jun;3(3):369-84に見出すことができ、これらは全 てそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。

二分子DNA標的化RNAに含まれ得るヌクレオチド配列の非限定例としては、配列番 号671〜678に記載の活性化RNAのいずれか1つの二本鎖形成セグメント(seq ment)と対合することができる標的化RNA(例えば、配列番号566〜567)が 挙げられる。

例示的な単一分子DNA標的化RNAは、ハイブリダイズしてdsRNA二本鎖を形成 する2本の相補的ヌクレオチド鎖を含む。いくつかの実施形態において、単一分子DNA 標的化RNA(またはその鎖をコードするDNA)の2本の相補的ヌクレオチド鎖の一方 は、配列番号431〜562に記載される活性化RNA(tracrRNA)配列の1つ に対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも約60%同一 である。例えば、単一分子DNA標的化RNA(またはその鎖をコードするDNA)の2 本の相補的ヌクレオチド鎖の一方は、配列番号431〜562に記載されるtracrR NA配列の1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレオチドにわたって、少なく とも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約8 0%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一 、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一または100%同一である。

いくつかの実施形態において、単一分子DNA標的化RNA(またはその鎖をコードす るDNA)の2本の相補的ヌクレオチド鎖の一方は、配列番号563〜679に記載され る標的化RNA(crRNA)配列の1つに対して、一連の少なくとも8個の連続ヌクレ オチドにわたって少なくとも約60%同一である。例えば、単一分子DNA標的化RNA (またはその鎖をコードするDNA)の2本の相補的ヌクレオチド鎖の一方は、配列番号 563〜679に記載されるcrRNA配列の1つに対して、一連の少なくとも8個の連 続ヌクレオチドにわたって、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なく とも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約9 0%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一 または100%同一である。

上記のように、「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、インビボまたはインビト ロにおける真核細胞、原核細胞(例えば、細菌細胞または古細菌細胞)、または単細胞の 独立体として培養される多細胞生物由来の細胞(例えば、細胞株)を示し、真核細胞また は原核細胞は核酸のレシピエントとして使用され得る、もしくは使用されており、核酸に よって形質転換された原細胞の子孫も含まれる。単一細胞の子孫は、自然変異、偶発的変 異、または意図的な変異があるために、形態において、またはゲノムもしくは全DNAの 相補体(complement)において、元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよい ことが理解される。「組換え宿主細胞」(「遺伝子改変宿主細胞」とも称される)は、異 種核酸(例えば、発現ベクター)を導入された宿主細胞である。例えば、主題の細菌宿主 細胞は、適切な細菌宿主細胞への外来性核酸(例えば、プラスミドまたは組み換え発現ベ クター)の導入による遺伝子改変された細菌性宿主細胞であり、主題の真核生物宿主細胞 は、適切な真核生物性宿主細胞への外来性核酸の導入による遺伝子改変された真核生物性 宿主細胞(例えば、哺乳類生殖細胞)である。

「定義(第一部)」に記載された定義は、本セクションにも適用可能である;さらなる 用語説明は、「定義(第一部)」を参照されたい。

本発明をさらに説明する前に、本発明が記載される特定の実施形態に限定されず、従っ て、当然のことながら、変更され得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用 語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明の範囲は添付の特許請 求の範囲によってのみ限定されるため、限定を意図するものではないことも理解されたい 。

数値の範囲が与えられた場合、その範囲の上限値と下限値の間の、文脈によって特に明 示されない限りは下限値の単位の10分の1までの、間に挟まれた各値、およびその記載 の範囲内のあらゆる他の記載された、または間に挟まれた数値は、本発明に包含されるこ とを理解されたい。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、そのより小さな範 囲内に独立して含まれてもよく、これもまた本発明に包含されるが、記載範囲の具体的に 除外される境界値が適用される。記載範囲が一方または両方の境界値を含む場合、それら の含まれる境界値の一方または両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。

別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本発 明が属する技術分野において当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。 本明細書に記載されるものと同様または等価であるいかなる方法および材料も本発明の実 施または試験に使用可能ではあるが、ここで、本明細書には、好ましい方法および材料が 記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、引用された刊行物と関連した方法お よび/または材料を開示および説明するために、参照によって本明細書に組み込まれる。

本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、お よび「the」は、文脈によって特に明示されない限り、複数の指示対象を含むことに注 意されたい。従って、例えば、「酵素的に不活性なCas9ポリペプチド」への言及には 、複数のそのようなポリペプチドが含まれ、「標的核酸」への言及には、一つまたは複数 の標的核酸および当業者に公知のその等価物への言及が含まれる、等である。さらに、特 許請求の範囲は、いかなる任意の要素も除外するように起案することができることを注意 されたい。従って、この記載は、請求項の要素の列挙に関連して、「単に(solely )」、「のみ(only)」等の排他的な用語の使用、または「否定的な」制限の使用に 先立つ基準としての役割を果たすことが意図される。

明確化のために別々の実施形態に関して記載される本発明のある特定の特徴は、単一の 実施形態において組み合わされて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのた めに単一の実施形態に関して記載される本発明の種々の特徴は、別々に提供されてもよい し、あるいは任意の適切な副組合せで提供されてもよい。本発明に関連する全ての実施形 態の組み合わせは、それぞれおよび全ての組み合わせがあたかも個々に且つ明示的に開示 されたかの如く、本発明に具体的に包含され、本明細書で開示される。さらに、種々の実 施形態およびその要素の全ての副組合せも、それぞれおよび全てのそのような副組み合わ せがあたかも個々に且つ明示的に本明細書で開示されたかの如く、本発明に具体的に包含 され、本明細書で開示される。

本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日よりも前のその開示のみに対して提供 される。本明細書に記載のものはいずれも、本発明が、先願発明によりそのような刊行物 に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊 行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、別に確認される必要があり得る。

発明を実施するための形態(第二部) 本開示は、宿主細胞内の標的核酸の転写を調節する方法を提供する。本方法は、概して 、標的核酸を、酵素的に不活性なCas9ポリペプチドおよび単一誘導RNAと接触させ ることを含む。本方法は、種々の用途において有用であり、それもまた提供される。

本開示の転写調節法により、RNAiが関与する方法の欠点のいくつかが克服される。 本開示の転写調節法は、研究用途、創薬(例えば、ハイスループットスクリーニング)、 ターゲットバリデーション、工業的用途(例えば、作物操作;微生物操作等)、診断用途 、治療用途、および画像処理技術を含む、種々様々な適用において有用である。

転写を調節する方法 本開示は、宿主細胞内の標的DNAの転写を選択的に調節する方法を提供する。本方法 は、概して、a)宿主細胞に、i)DNA標的化RNA、またはDNA標的化RNAをコ ードするヌクレオチド配列を含む核酸;およびii)低減されたエンドデオキシリボヌク レアーゼ活性を示す異型Cas9部位特異的ポリペプチド(「異型Cas9ポリペプチド 」)、または該異型Cas9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を導 入することを含む。

DNA標的化RNA(「crRNA」;または「誘導RNA」;または「gRNA」と も称される)は、i)標的DNA内の標的配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第 一セグメント;ii)部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメント;およびi ii)転写ターミネーターを含む。標的DNA内の標的配列に対し相補的なヌクレオチド 配列を含む第一セグメントは、本明細書において「ターゲティングセグメント」と称され る。部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメントは、本明細書において「タン パク質結合配列」または「dCas9結合ヘアピン」、または「dCas9ハンドル」と も称される。「セグメント」とは、分子のセグメント/セクション/領域(例えば、RN A内の連続するヌクレオチド鎖)を意味する。「セグメント」の定義は、特定の文脈にお いて特に定義されていない限り、特定の全塩基対数に限定されず、任意の全長であるRN A分子の領域を含んでいてもよく、他の分子に対し相補性を有する領域を含んでいても含 んでいなくてもよい。本開示によるDNA標的化RNAは、「単一分子DNA標的化RN A」、「単一誘導RNA」、または「sgRNA」と本明細書において称され得る、単一 RNA分子(単一RNAポリヌクレオチド)であり得る。本開示によるDNA標的化RN Aは、2つのRNA分子を含み得る。用語「DNA標的化RNA」または「gRNA」は 、二分子DNA標的化RNAおよび単一分子DNA標的化RNA(すなわち、sgRNA )の両方を包括的に指す。

異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、i)DNA標的化RNAと相互作用するRN A結合部位;およびii)低減されたエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す活性部 位を含む。

DNA標的化RNAおよび異型Cas9ポリペプチドは宿主細胞内で複合体を形成し; その複合体は宿主細胞内の標的DNAの転写を選択的に調節する。

いくつかの例において、本開示の転写調節法は、宿主細胞内の標的核酸の選択的調節( 例えば、低減または増加)を与える。例えば、標的核酸の転写の「選択的」低減によって 、標的核酸の転写は、DNA標的化RNA/異型Cas9ポリペプチド複合体の非存在下 における標的核酸の転写レベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、 少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、 少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、低減 される。標的核酸の転写の選択的低減は標的核酸の転写を低減させるが、非標的核酸の転 写を実質的に低減させず、例えば、非標的核酸の転写は、仮に低減されたとしても、DN A標的化RNA/異型Cas9ポリペプチド複合体の非存在下における非標的核酸の転写 レベルと比較して、10%未満低減される。

転写の増加 標的DNAの「選択的」に増加された転写は、DNA標的化RNA/異型Cas9ポリ ペプチド複合体の非存在下における標的DNAの転写レベルと比較して、少なくとも約1 .1倍(例えば、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍 、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約 1.8倍、少なくとも約1.9倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくと も約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくと も約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍 、少なくとも約10倍、少なくとも約12倍、少なくとも約15倍、または少なくとも約 20倍)、標的DNAの転写を増加し得る。標的DNAの転写の選択的増加は、標的DN Aの転写を増加させるが、非標的DNAの転写は実質的に増加させず、例えば、非標的D NAの転写は、仮に増加されたとしても、DNA標的化RNA/異型Cas9ポリペプチ ド複合体の非存在下における非標的DNAの転写レベルと比較して、約5倍未満(例えば 、約4倍未満、約3倍未満、約2倍未満、約1.8倍未満、約1.6倍未満、約1.4倍 未満、約1.2倍未満、または約1.1倍未満)、増加される。

非限定例として、増加(increased)は、dCas9を異種配列に融合するこ とにより達成され得る。適切な融合パートナーとしては、限定はされないが、標的DNA に直接作用することにより、または標的DNAと結合したポリペプチド(例えば、ヒスト ンまたは他のDNA結合タンパク質)に作用することにより、転写を間接的に増加させる 活性を提供するポリペプチドが挙げられる。適切な融合パートナーとしては、限定はされ ないが、メチルトランスフェラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラ ーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガ ーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、 脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミ リストイル化活性を与えるポリペプチドが挙げられる。

追加の適切な融合パートナーとしては、限定はされないが、標的核酸の転写の増加を直 接与えるポリペプチド(例えば、転写活性化因子またはその断片、転写活性化因子をリク ルートするタンパク質またはその断片、小分子/薬剤応答性転写制御因子等)が挙げられ る。

dCas9融合タンパク質を用いて原核生物における転写を増加させる主題の方法の非 限定例には、細菌のワンハイブリッド(B1H)系またはツーハイブリッド(B2H)系 の改変が含まれる。B1H系において、DNA結合ドメイン(BD)は、細菌性転写活性 化ドメイン(AD、例えば、大腸菌(Escherichia coli)RNAポリメ ラーゼのαサブユニット(RNAPα))に融合される。従って、主題のdCas9は、 ADを含む異種配列に融合され得る。主題のdCas9融合タンパク質がプロモーターの 上流領域に到着すると(DNA標的化RNAによってそこに標的化されている)、dCa s9融合タンパク質のAD(例えば、RNAPα)は、RNAPホロ酵素をリクルートし 、転写活性化をもたらす。B2H系において、BDはADに直接融合されず;代わりに、 それらの相互作用はタンパク質間相互作用(例えば、GAL11P−GAL4相互作用) によって仲介される。主題の方法で使用するのにそのような系を改変するために、dCa s9は、タンパク質間相互作用を与える第一のタンパク質配列(例えば、酵母GAL11 Pおよび/またはGAL4タンパク質)に融合され得、RNAαは、タンパク質間相互作 用を完成させる第二のタンパク質配列に融合され得る(例えば、GAL11PがdCas 9に融合される場合はGAL4、GAL4がdCas9に融合される場合はGAL11P 、等)。GAL11PおよびGAL4の間の結合親和性は、結合および転写発生速度の効 率を増加させる。

dCas9融合タンパク質を用いて真核生物における転写を増加させる主題の方法の非 限定例には、dCas9の、活性化ドメイン(AD)(例えば、GAL4、ヘルペスウイ ルス活性化タンパク質VP16またはVP64、ヒト核内因子NF−κB p65サブユ ニット等)への融合が含まれる。系を誘導可能にするために、dCas9融合タンパク質 の発現は、誘導性プロモーター(例えば、Tet−ON、Tet−OFF等)によって制 御され得る。DNA標的化RNAは、既知の転写応答エレメント(例えば、プロモーター 、エンハンサー等)、既知の上流活性化配列(UAS)、標的DNAの発現を調節可能で あると推測される未知または既知の機能の配列等を標的とするように設計され得る。

追加の融合パートナー 転写の増加または減少を達成するための融合パートナーの非限定例は、図54に列挙さ れており、転写活性化因子ドメインおよび転写抑制因子ドメイン(例えば、クルッペル結 合ボックス(Kruppel associated box)(KRABまたはSKD );Mad mSIN3相互作用ドメイン(SID);ERF抑制因子ドメイン(ERD )等)が含まれる。いくつかのそのような例において、dCas9融合タンパク質は、D NA標的化RNAによって、標的DNA内の特定の位置(すなわち、配列)に標的化され 、RNAポリメラーゼのプロモーターへの結合の阻止(転写活性化因子機能を選択的に阻 害)、および/または局所的なクロマチン状態の修飾(例えば、標的DNAを修飾するま たは標的DNAと結合したポリペプチドを修飾する融合配列が用いられた場合)等の遺伝 子座特異的調節を及ぼす。いくつかの例において、変化は一過性である(例えば、転写の 抑制または活性化)。いくつかの例において、変化は遺伝性である(例えば、後成的修飾 が標的DNAまたは標的DNAと結合したタンパク質(例えば、ヌクレオソームヒストン )に起こった場合)。

いくつかの実施形態において、異種配列はdCas9ポリペプチドのC末端に融合され 得る。いくつかの実施形態において、異種配列はdCas9ポリペプチドのN末端に融合 され得る。いくつかの実施形態において、異種配列はdCas9ポリペプチドの内部部分 (すなわち、N末端またはC末端以外の部分)に融合され得る。

主題のdCas9融合タンパク質を用いる方法の生物学的効果は、いかなる従来の方法 (例えば、遺伝子発現アッセイ;クロマチンに基づくアッセイ、例えば、クロマチン免疫 沈降(ChiP)、クロマチンインビボアッセイ(CiA)等;等)によっても検出する ことができる。

いくつかの例において、主題の方法は、2つ以上の異なるDNA標的化RNAの使用を 含む。例えば、同一の標的核酸内の2つの異なる標的配列を標的にする、2つの異なるD NA標的化RNAを単一の宿主細胞に用いることができる。

従って、例えば、主題の転写調節法は、宿主細胞に、i)標的DNA内の第二の標的配 列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;ii)部位特異的ポリペプチ ドと相互作用する第二セグメント;およびiii)転写ターミネーターを含む第二のDN A標的化RNA、または該第二のDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含 む核酸を導入することをさらに含み得る。いくつかの例において、同一の標的核酸内の2 つの異なるターゲティング配列を標的とする2つの異なるDNA標的化RNAの使用は、 標的核酸の転写における調節(例えば、減少または増加)の増加を与える。

別の例として、2つの異なる標的配列を標的にする、2つの異なるDNA標的化RNA を単一の宿主細胞に用いることができる。従って、例えば、主題の転写調節法は、宿主細 胞に、i)少なくとも第二の標的DNA内の標的配列に対し相補的なヌクレオチド配列を 含む第一セグメント;ii)部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメント;お よびiii)転写ターミネーターを含む第二のDNA標的化RNA、または該第二のDN A標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を導入することをさらに含み得 る。

いくつかの実施形態において、主題の核酸(例えば、DNA標的化RNA、例えば、単 一分子DNA標的化RNA、活性化RNA、標的化RNA等;ドナーポリヌクレオチド; 部位特異的修飾ポリペプチドをコードする核酸;等)は、追加の所望の特徴(例えば、改 変または調節された安定性;細胞内標的化;追跡(例えば、蛍光標識);タンパク質また はタンパク質複合体に対する結合部位;等)を与える修飾または配列を含む。例としては 、限定はされないが、5’キャップ(例えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7G) );3’ポリアデニル化尾部(すなわち、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列また はアプタマー配列(例えば、安定性の調節、並びに/またはタンパク質および/もしくは タンパク質複合体による接触のし易さの調節を可能にする);ターミネーター配列;ds RNA二本鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン));RNAを細胞内位置(例えば、 核、ミトコンドリア、葉緑体等)に標的化する修飾または配列;追跡(例えば、蛍光分子 への直接結合、蛍光検出を促進する部分、蛍光検出を可能にする配列への結合等)をもた らす修飾または配列;タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチ ルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化酵素、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、 ヒストン脱アセチル化酵素等を含むDNAに作用するタンパク質)に対する結合部位を与 える修飾または配列;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。

DNA標的化セグメント DNA標的化RNA(「crRNA」)のDNA標的化セグメント(または「DNA標 的化配列」)は、標的DNA内の特定の配列に対し相補的なヌクレオチド配列(標的DN Aの相補鎖)を含む。

言い換えれば、主題のDNA標的化RNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼ ーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的に標的DNAと相互作用する。従 って、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は変動してもよく、DNA標的化RN Aおよび標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置を決定する。主題のDNA標的化 RNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内のいかなる所望の配列にもハイブリダ イズするように、(例えば、遺伝子操作によって)改変することができる。

DNA標的化セグメントは、約12ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有し 得る。例えば、DNA標的化セグメントは、約12ヌクレオチド(nt)〜約80nt、 約12nt〜約50nt、約12nt〜約40nt、約12nt〜約30nt、約12n t〜約25nt、約12nt〜約20nt、または約12nt〜約19ntの長さを有し 得る。例えば、DNA標的化セグメントは、約19nt〜約20nt、約19nt〜約2 5nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約19nt〜約40nt、 約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜約60nt、約19n t〜約70nt、約19nt〜約80nt、約19nt〜約90nt、約19nt〜約1 00nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35nt 、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、約20 nt〜約60nt、約20nt〜約70nt、約20nt〜約80nt、約20nt〜約 90nt、または約20nt〜約100ntの長さを有し得る。

標的DNAのヌクレオチド配列(標的配列)に対し相補的なDNA標的化セグメントの ヌクレオチド配列(DNA標的化配列)は、少なくとも約12ntの長さを有し得る。例 えば、標的DNAの標的配列に対し相補的なDNA標的化セグメントのDNA標的化配列 は、少なくとも約12nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも 約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少 なくとも約35ntまたは少なくとも約40ntの長さを有し得る。例えば、標的DNA の標的配列に対し相補的なDNA標的化セグメントのDNA標的化配列は、約12ヌクレ オチド(nt)〜約80nt、約12nt〜約50nt、約12nt〜約45nt、約1 2nt〜約40nt、約12nt〜約35nt、約12nt〜約30nt、約12nt〜 約25nt、約12nt〜約20nt、約12nt〜約19nt、約19nt〜約20n t、約19nt〜約25nt、約19nt〜約30nt、約19nt〜約35nt、約1 9nt〜約40nt、約19nt〜約45nt、約19nt〜約50nt、約19nt〜 約60nt、約20nt〜約25nt、約20nt〜約30nt、約20nt〜約35n t、約20nt〜約40nt、約20nt〜約45nt、約20nt〜約50nt、また は約20nt〜約60ntの長さを有し得る。標的DNAのヌクレオチド配列(標的配列 )に対し相補的なDNA標的化セグメントのヌクレオチド配列(DNA標的化配列)は、 少なくとも約12ntの長さを有し得る。

いくつかの例において、標的DNAの標的配列に対し相補的なDNA標的化セグメント のDNA標的化配列は、20ヌクレオチド長である。いくつかの例において、標的DNA の標的配列に対し相補的なDNA標的化セグメントのDNA標的化配列は、19ヌクレオ チド長である。

DNA標的化セグメントのDNA標的化配列および標的DNAの標的配列の間の相補性 パーセントは、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少な くとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも9 5%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)であ り得る。いくつかの例において、DNA標的化セグメントのDNA標的化配列および標的 DNAの標的配列の間の相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の標的配列の7個の連 続する5’末端ヌクレオチドにわたって100%である。いくつかの例において、DNA 標的化セグメントのDNA標的化配列および標的DNAの標的配列の間の相補性パーセン トは、約20個の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%である。いくつかの例に おいて、DNA標的化セグメントのDNA標的化配列および標的DNAの標的配列の間の 相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の標的配列の14個の連続する5’末端ヌクレ オチドにわたって100%であり、残りの配列にわたっては0%という低さである。その ような場合、DNA標的化配列は、14ヌクレオチド長であるとみなすことができる。い くつかの例において、DNA標的化セグメントのDNA標的化配列および標的DNAの標 的配列の間の相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の標的配列の7個の連続する5’ 末端ヌクレオチドにわたって100%であり、残りの配列にわたっては0%という低さで ある。そのような場合、DNA標的化配列は7ヌクレオチド長であるとみなすことができ る。

タンパク質結合セグメント DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメント(すなわち、「タンパク質結合配列」 )は、変異型部位特異的ポリペプチドと相互作用する。異型Cas9部位特異的ポリペプ チドが、DNA標的化RNAと一緒に、標的DNAに結合した場合、標的DNAの転写は 低減される。

DNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントは、互いにハイブリダイズして二本鎖 RNA二本鎖(dsRNA二本鎖)を形成する2本の相補的ヌクレオチド鎖を含む。

本開示のDNA標的化RNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的であり、介 在ヌクレオチド(例えば、単一分子DNA標的化RNAの場合)(「リンカー」または「 リンカーヌクレオチド」)によって共有結合的に連結しており、ハイブリダイズしてタン パク質結合セグメントの二本鎖RNA二本鎖(dsRNA二本鎖または「dCas9結合 ヘアピン」)を形成し、それによってステムループ構造をもたらす、2本のヌクレオチド 鎖(標的化RNAおよび活性化RNA)を含む。このステムループ構造は、図39Aに模 式的に示される。標的化RNAおよび活性化RNAは、標的化RNAの3’末端および活 性化RNAの5’末端を介して共有結合的に連結し得る。あるいは、標的化RNAおよび 活性化RNAは、標的化RNAの5’末端および活性化RNAの3’末端を介して共有結 合的に連結し得る。

タンパク質結合セグメントは、約10ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド、例えば、 約10ヌクレオチド(nt)〜約20nt、約20nt〜約30nt、約30nt〜約4 0nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、 約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、または約90nt〜約100ntの 長さを有し得る。例えば、タンパク質結合セグメントは、約15ヌクレオチド(nt)〜 約80nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30n tまたは約15nt〜約25ntの長さを有し得る。

タンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖は、約6塩基対(bp)〜約50bpの 長さを有し得る。例えば、タンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖は、約6bp〜 約40bp、約6bp〜約30bp、約6bp〜約25bp、約6bp〜約20bp、約 6bp〜約15bp、約8bp〜約40bp、約8bp〜約30bp、約8bp〜約25 bp、約8bp〜約20bpまたは約8bp〜約15bpの長さを有し得る。例えば、タ ンパク質結合セグメントのdsRNA二本鎖は、約8bp〜約10bp、約10bp〜約 15bp、約15bp〜約18bp、約18bp〜約20bp、約20bp〜約25bp 、約25bp〜約30bp、約30bp〜約35bp、約35bp〜約40bp、または 約40bp〜約50bpの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、タンパク質結 合セグメントのdsRNA二本鎖は36塩基対の長さを有する。ハイブリダイズしてタン パク質結合セグメントのdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補性パーセ ントは、少なくとも約60%であり得る。例えば、ハイブリダイズしてタンパク質結合セ グメントのdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補性パーセントは、少な くとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少な くとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、また は少なくとも約99%であり得る。いくつかの例において、ハイブリダイズしてタンパク 質結合セグメントのdsRNA二本鎖を形成するヌクレオチド配列間の相補性パーセント は、100%である。

リンカーは、約3ヌクレオチド〜約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、リ ンカーは、約3ヌクレオチド(nt)〜約90nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約80 nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約70nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約60nt 、約3ヌクレオチド(nt)〜約50nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約40nt、約 3ヌクレオチド(nt)〜約30nt、約3ヌクレオチド(nt)〜約20ntまたは約 3ヌクレオチド(nt)〜約10ntの長さを有し得る。例えば、リンカーは、約3nt 〜約5nt、約5nt〜約10nt、約10nt〜約15nt、約15nt〜約20nt 、約20nt〜約25nt、約25nt〜約30nt、約30nt〜約35nt、約35 nt〜約40nt、約40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約 70nt、約70nt〜約80nt、約80nt〜約90nt、または約90nt〜約1 00ntの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAのリンカ ーは4ntである。

適切なタンパク質結合セグメント(すなわち、dCas9ハンドル)内に含まれ得るヌ クレオチド配列の非限定例は、配列番号563〜682に記載される(例えば、図8およ び図9を参照)。

いくつかの例において、適切なタンパク質結合セグメントは、上記配列のいずれか1つ と1、2、3、4、または5ヌクレオチド異なるヌクレオチド配列を含む。

安定性制御配列(例えば、転写ターミネーターセグメント) 安定性制御配列は、RNA(例えば、DNA標的化RNA、標的化RNA、活性化RN A等)の安定性に影響を与える。適切な安定性制御配列の一例は、転写ターミネーターセ グメント(すなわち、転写終結配列)である。主題のDNA標的化RNAの転写ターミネ ーターセグメントは、約10ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド、例えば、約10ヌク レオチド(nt)〜約20nt、約20nt〜約30nt、約30nt〜約40nt、約 40nt〜約50nt、約50nt〜約60nt、約60nt〜約70nt、約70nt 〜約80nt、約80nt〜約90nt、または約90nt〜約100ntの全長を有し 得る。例えば、転写ターミネーターセグメントは、約15ヌクレオチド(nt)〜約80 nt、約15nt〜約50nt、約15nt〜約40nt、約15nt〜約30ntまた は約15nt〜約25ntの長さを有し得る。

いくつかの例において、転写終結配列は、真核細胞内で機能的なものである。いくつか の例において、転写終結配列は、原核細胞内で機能的なものである。

安定性制御配列(例えば、転写終結セグメント、または安定性の増加を与えるためのD NA標的化RNAの任意のセグメント)内に含まれ得るヌクレオチド配列の非限定例は、 配列番号683〜696に記載される配列を含み、例えば、5’−UAAUCCCACA GCCGCCAGUUCCGCUGGCGGCAUUUU−5’(配列番号795)(R ho非依存的trp終結部位)である。

追加の配列 いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAは、5’末端または3’末端に少な くとも1つの追加のセグメントを含む。例えば、適切な追加のセグメントは、5’キャッ プ(例えば、7−メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化尾部(す なわち、3’ポリ(A)尾部);リボスイッチ配列(例えば、安定性の調節、並びに/ま たはタンパク質およびタンパク質複合体による接触のし易さの調節を可能にする);ds RNA二本鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン));RNAを細胞内位置(例えば、 核、ミトコンドリア、葉緑体等)に標的化する配列;追跡(例えば、蛍光分子への直接結 合、蛍光検出を促進する部分、蛍光検出を可能にする配列への結合等)をもたらす修飾ま たは配列;タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランス フェラーゼ、DNA脱メチル化酵素、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストン脱 アセチル化酵素等を含むDNAに作用するタンパク質)に対する結合部位を与える修飾ま たは配列;増加した、低減した、および/または制御可能な安定性を与える修飾または配 列;並びにそれらの組み合わせを含み得る。

同時に存在する複数のDNA標的化RNA いくつかの実施形態において、複数のDNA標的化RNAが、同一の標的DNAまたは 異なる標的DNA上の異なる位置における転写を同時に調節するために、同一の細胞にお いて同時に用いられる。いくつかの実施形態において、2つ以上のDNA標的化RNAは 、同一の遺伝子または転写物または遺伝子座を標的とする。いくつかの実施形態において 、2つ以上のDNA標的化RNAは、異なる無関係の遺伝子座を標的とする。いくつかの 実施形態において、2つ以上のDNA標的化RNAは、異なるが関連している遺伝子座を 標的とする。

DNA標的化RNAは、小さく頑強(robust)であるため、同一の発現ベクター 上に同時に存在することができ、同一の転写調節下にあることさえ、そのように所望され る場合は、できる。いくつかの実施形態において、2つ以上(例えば、3以上、4以上、 5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、4 5以上、または50以上)のDNA標的化RNAは、(同一または異なるベクターから) 標的細胞内で同時に発現される。発現したDNA標的化RNAは、S.ピオゲネス、スト レプトコッカス・サーモフィラス、L.イノキュア、およびN.メニンギティディス等の 異なる細菌に由来するdCas9タンパク質によって別々に認識され得る。

複数のDNA標的化RNAを発現するために、Csy4エンドリボヌクレアーゼに仲介 される人工的なRNAプロセシング系を用いることができる。複数のDNA標的化RNA は、(例えば、U6プロモーターから発現された)前駆転写物上で直列の並びに連鎖され 、Csy4特異的RNA配列によって分離され得る。共発現したCsy4タンパク質は、 前駆転写物を複数のDNA標的化RNAに切断する。RNAプロセシング系を用いる利点 には、第一に、複数のプロモーターを用いる必要がないこと;第二に、全てのDNA標的 化RNAが前駆転写物からプロセシングされるため、それらの濃度が同様のdCas9結 合に対して正規化されること、が含まれる。

Csy4は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)細菌に由来す る小分子エンドリボヌクレアーゼ(RNase)タンパク質である。Csy4は最小の1 7bpRNAヘアピンを特異的に認識し、迅速(1分未満)且つ高い効果(99.9%超 )のRNA切断を示す。大部分のRNaseと異なり、切断されたRNA断片は安定で機 能的に活性のままである。Csy4に基づくRNA切断は、人工的RNAプロセシング系 に再利用され得る。この系において、17bpRNAヘアピンは、単一のプロモーターか ら前駆転写物として転写される複数のRNA断片の間に挿入される。Csy4の共発現は 個々のRNA断片を作製するのに効果的である。

部位特異的ポリペプチド 上記で言及したように、主題のDNA標的化RNAおよび異型Cas9部位特異的ポリ ペプチドは複合体を形成する。DNA標的化RNAは、標的DNAの配列に対し相補的な ヌクレオチド配列を含むことにより、複合体に対する標的特異性を与える。

異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、低減されたエンドデオキシリボヌクレアーゼ 活性を有する。例えば、本開示の転写調節法で用いるのに適した異型Cas9部位特異的 ポリペプチドは、野生型Cas9ポリペプチド、例えば、図3に示されるアミノ酸配列( 配列番号8)を含む野生型Cas9ポリペプチドのエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性 の約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、または約0. 1%未満を示す。いくつかの実施形態において、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは 、検出可能なエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を実質的に有さない。部位特異的ポリ ペプチドが低減された触媒活性を有する場合(例えば、Cas9タンパク質がD10、G 12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A98 4、D986、および/またはA987変異、例えば、D10A、G12A、G17A、 E762A、H840A、N854A、N863A、H982A、H983A、A984 A、および/またはD986Aを有する場合)のいくつかの実施形態において、該ポリペ プチドは、該ポリペプチドがDNA標的化RNAと相互作用する能力を保持している限り 、部位特異的に標的DNAになお結合することができる(該ポリペプチドはDNA標的化 RNAによって標的DNA配列になお誘導されるため)。

いくつかの例において、適切な異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、図3に示され るCas9/Csn1アミノ酸配列(配列番号8)のアミノ酸7〜166または731〜 1003に対して、または配列番号1〜256および795〜1346のアミノ酸配列の いずれか1つにおける対応部分に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少 なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%また は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。

いくつかの例において、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、標的DNAの相補鎖 を切断することができるが、標的DNAの非相補鎖を切断する能力が低下している。例え ば、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、RuvCドメイン(例えば、図3の「ドメ イン1」)の機能を低減する変異(アミノ酸置換)を有し得る。非限定例として、いくつ かの例において、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、図3に示されるアミノ酸配列 のD10A(アスパラギン酸からアラニン)変異(または、配列番号1〜256および7 95〜1346に記載されるアミノ酸配列のいずれかの対応する変異)である。

いくつかの例において、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、標的DNAの非相補 鎖を切断することができるが、標的DNAの相補鎖を切断する能力が低下している。例え ば、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、HNHドメイン(RuvC/HNH/Ru vCドメインモチーフ、図3の「ドメイン2」)の機能を低減する変異(アミノ酸置換) を有し得る。非限定例として、いくつかの例において、異型Cas9部位特異的ポリペプ チドは、H840A(配列番号8のアミノ酸位置840におけるヒスチジンからアラニン )または配列番号1〜256および795〜1346に記載されるアミノ酸配列のいずれ かの対応する変異である。

いくつかの例において、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、標的DNAの相補鎖 および非相補鎖の両方を切断する能力が低下している。非限定例として、いくつかの例に おいて、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、図3に示されるアミノ酸配列のD10 A変異およびH840A変異の両方(または、配列番号1〜256および795〜134 6に記載されるアミノ酸配列のいずれかの対応する変異)を有する。

他の残基を変異させて、同一の効果を得る(すなわち、1つまたはその他のヌクレアー ゼ部分を失活させる)ことができる。非限定例として、残基D10、G12、G17、E 762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、お よび/またはA987(または配列番号1〜256および795〜1346として記載さ れるタンパク質のうちのいずれかの対応する変異)を、変化(すなわち、置換)させるこ とができる(Cas9アミノ酸残基の保存に関するさらなる情報については図3、図5、 図11A、および表1を参照)。また、アラニン置換以外の変異も適切である。

いくつかの例において、異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、融合ポリペプチド( 「異型Cas9融合ポリペプチド」)、すなわち、i)異型Cas9部位特異的ポリペプ チド;およびb)共有結合的に連結された異種ポリペプチド(「融合パートナー」とも称 される)を含む融合ポリペプチドである。

異種ポリペプチドは、異型Cas9融合ポリペプチドによっても示される活性(例えば 、酵素活性)(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活 性、キナーゼ活性、ユビキチン化活性等)を示し得る。異種核酸配列を別の核酸配列に連 結して(例えば、遺伝子操作によって)、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレ オチド配列を作製してもよい。いくつかの実施形態において、異型Cas9融合ポリペプ チドは、異型Cas9ポリペプチドを細胞内局在を与える異種配列(すなわち、異種配列 は細胞内局在配列、例えば、核に標的化するための核局在化シグナル(NLS);ミトコ ンドリアに標的化するためのミトコンドリア局在化シグナル;葉緑体に標的化するための 葉緑体局在化シグナル;ER保留シグナル;等である)と融合することによって作製され る。いくつかの実施形態において、異種配列は、追跡および/または精製を容易にするた めのタグ(すなわち、異種配列は検出可能な標識である)を与え得る(例えば、蛍光タン パク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFP、mCher ry、tdTomato等;ヒスチジンタグ、例えば、6XHisタグ;赤血球凝集素( HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグ;等)。いくつかの実施形態において、異種配列 は、安定性の増加または低減を与え得る(すなわち、異種配列は安定性制御ペプチド、例 えば、いくつかの例において制御可能なデグロン(例えば、温度感受性または薬剤により 制御可能なデグロン配列、下記参照)である)。いくつかの実施形態において、異種配列 は、標的DNAからの転写の増加または減少を与え得る(すなわち、異種配列は、転写調 節配列、例えば、転写因子/活性化因子またはその断片、転写因子/活性化因子をリクル ートするタンパク質またはその断片、転写抑制因子またはその断片、転写抑制因子をリク ルートするタンパク質またはその断片、小分子/薬剤応答性転写制御因子等である)。い くつかの実施形態において、異種配列は、結合ドメインを与え得る(すなわち、異種配列 は、例えば、キメラdCas9ポリペプチドを目的の別のタンパク質(例えば、DNAま たはヒストン修飾タンパク質、転写因子または転写抑制因子、リクルートタンパク質等) に結合する能力を与えるタンパク質結合配列である)。

安定性の増加または低減を与える適切な融合パートナーには、限定はされないが、デグ ロン配列が含まれる。デグロンは、それらが一部となるタンパク質の安定性を制御するア ミノ酸配列となることが、当業者に容易に理解される。例えば、デグロン配列を含むタン パク質の安定性は、デグロン配列によって少なくとも部分的に制御される。いくつかの例 において、適切なデグロンは、デグロンが実験的制御に関係なくタンパク質安定性にその 影響を及ぼすように、恒常的である(すなわち、デグロンは薬剤誘導性、温度誘導性等で はない)。いくつかの例において、デグロンは、異型Cas9ポリペプチドが所望の条件 に依存して「オン」(すなわち、安定な)または「オフ」(すなわち、不安定な、分解さ れた)を切り替えることができるように、異型Cas9ポリペプチドに制御可能な安定性 を与える。例えば、デグロンが温度感受性デグロンである場合、異型Cas9ポリペプチ ドは、閾値温度(例えば、42℃、41℃、40℃、39℃、38℃、37℃、36℃、 35℃、34℃、33℃、32℃、31℃、30℃等)未満において機能的(すなわち、 「オン」、安定)であるが、閾値温度を超えた温度では非機能的(すなわち、「オフ」、 分解された)であり得る。別の例として、デグロンが薬剤誘導性デグロンである場合、薬 剤の存在または非存在は、該タンパク質を「オフ」(すなわち、不安定な)状態から「オ ン」(すなわち、安定な)状態、またはその逆に切り替えることができる。例示的な薬剤 誘導性デグロンはFKBP12タンパク質に由来する。デグロンの安定性はデグロンに結 合する小分子の存在または非存在によって制御される。

適切なデグロンの例としては、限定はされないが、Shield−1、DHFR、オー キシン、および/または温度によって制御されるデグロンが挙げられる。適切なデグロン の非限定例は当該技術分野において公知である(例えば、Dohmen et al., Science, 1994 . 263(5151): p. 1273-1276: Heat-inducible degron: a method for constructing temp erature-sensitive mutants; Schoeber et al., Am J Physiol Renal Physiol. 2009 Jan ;296(1):F204-11 : Conditional fast expression and function of multimeric TRPV5 c hannels using Shield-1 ; Chu et al., Bioorg Med Chem Lett. 2008 Nov 15;18(22):59 41-4: Recent progress with FKBP-derived destabilizing domains ; Kanemaki, Pfluge rs Arch. 2012 Dec 28: Frontiers of protein expression control with conditional d egrons; Yang et al., Mol Cell. 2012 Nov 30;48(4):487-8: Titivated for destructio n: the methyl degron; Barbour et al., Biosci Rep. 2013 Jan 18;33(1).: Characteri zation of the bipartite degron that regulates ubiquitin-independent degradation of thymidylate synthase;およびGreussing et al., J Vis Exp. 2012 Nov 10;(69): Mon itoring of ubiquitin-proteasome activity in living cells using a Degr on (dgn)-destabilized green fluorescent protein (GFP)-based reporter protein(こ れらは全て、これらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる))。

例示的なデグロン配列は、細胞および動物の両方において十分に特徴付けされ、試験さ れている。従って、dCas9をデグロン配列に融合することにより、「調節可能」且つ 「誘導性」のdCas9ポリペプチドが作製される。本明細書に記載の融合パートナーの いずれも、あらゆる望ましい組み合わせで用いることができる。この点を説明するための 1つの非限定例として、dCas9融合タンパク質は、検出のためのYFP配列、安定性 のためのデグロン配列、および標的DNAの転写を増加させるための転写活性化因子配列 を含み得る。さらに、dCas9融合タンパク質内に用いることができる融合パートナー の数は限定されている。いくつかの例において、dCas9融合タンパク質は、一つまた は複数(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上)の異種配列を含む。

適切な融合パートナーとしては、限定はされないが、メチルトランスフェラーゼ活性、 脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナー ゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル 化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リ ボシル化活性、ミリストイル化活性または脱ミリストイル化活性を与えるポリペプチドが 挙げられ、これらの活性はいずれも、DNAの直接修飾(例えば、DNAのメチル化)に 、またはDNA結合ポリペプチドの修飾(例えば、ヒストンまたはDNA結合タンパク質 )に向けられることができる。さらに、適切な融合パートナーとしては、限定はされない が、境界エレメント(例えば、CTCF)、末梢動員(periphery recru itment)を与えるタンパク質およびその断片(例えば、ラミンA、ラミンB等)、 並びにタンパク質ドッキングエレメント(例えば、FKBP/FRB、Pil1/Aby 1等)が挙げられる。

主題の異型Cas9部位特異的ポリペプチドの、種々の追加の適切な融合パートナー( またはその断片)の例としては、限定はされないが、図54に列挙されるものが挙げられ る。

いくつかの実施形態において、主題の部位特異的修飾ポリペプチドはコドン最適化され 得る。この種の最適化は当該技術分野において公知であり、同一のタンパク質をコードし たまま目的の宿主生物または細胞のコドン選択を模倣するために、外来性DNAの変異を 必要とする。従って、コドンは変化されるが、コードされるタンパク質は変化されないま まである。例えば、目的の標的細胞がヒト細胞である場合、ヒトコドン最適化dCas9 (またはdCas9変異体)が適切な部位特異的修飾ポリペプチドであるだろう。別の非 限定例として、目的の宿主細胞がマウス細胞である場合、マウスコドン最適化Cas9( または変異体、例えば、酵素的に不活性な変異体)が適切なCas9部位特異的ポリペプ チドであるだろう。コドン最適化は必要なものではないが、ある特定の場合においては受 け入れられるものであり、好ましい場合がある。

宿主細胞 転写を調節するための本開示の方法は、インビボおよび/またはエキソビボおよび/ま たはインビトロにおいて有糸分裂または分裂終了細胞内の転写調節を誘導するために用い ることができる。DNA標的化RNAは標的DNAにハイブリダイズすることにより特異 性を与えるため、有糸分裂細胞および/または分裂終了細胞は、種々の宿主細胞のいずれ であってもよく、適切な宿主細胞としては、限定はされないが、細菌細胞;古細菌細胞; 単細胞真核生物;植物細胞;藻細胞、例えば、ボツリオコッカス・ブラウニー、コナミド リムシ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、クロレラ・ピレノイドサ、ヤツマタモク、C .アガルド等;真菌細胞;動物細胞;無脊椎動物(例えば、昆虫、刺胞動物、棘皮動物、 線虫等)由来の細胞;真核生物の原虫(例えば、マラリア原虫、例えば、熱帯熱マラリア 原虫(Plasmodium falciparum);蠕虫;等);脊椎動物(例えば 、魚、両生類、爬虫類動物、鳥、哺乳動物)由来の細胞;哺乳類細胞、例えば、げっ歯類 細胞、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞等が挙げられる。適切な宿主細胞としては、自然発生 的な細胞;遺伝子改変細胞(例えば、実験室で、例えば、「ヒトの手」によって遺伝子改 変された細胞);および任意の方法でインビトロで操作された細胞が挙げられる。いくつ かの例において、宿主細胞は単離されている。

いかなる種類の細胞も対象になり得る(例えば、幹細胞、例えば、胚性幹(ES)細胞 、誘導多能性幹(iPS)細胞、生殖細胞;体細胞、例えば、線維芽細胞、造血細胞、ニ ューロン、筋細胞、骨細胞、肝細胞、膵臓細胞;インビトロまたはインビボにおける、あ らゆる段階の胚の胚細胞、例えば、1細胞、2細胞、4細胞、8細胞等の段階のゼブラフ ィッシュ胚;等)。細胞は株化細胞系から得てもよいし、あるいは初代細胞であってもよ く、ここで、「初代細胞」、「初代細胞系」、および「初代培養物」は、本明細書で同義 的に使用されて、対象から得られ、培養物の、限定された回数の継代(すなわち、分裂) だけインビトロにおいて増殖した、細胞および細胞培養物を指す。例えば、初代培養物に は、0回、1回、2回、4回、5回、10回、または15回継代されている場合があるが 、危機期(crisis stage)を起こすには十分な回数継代されていない、培養 物が含まれる。初代細胞系はインビトロにおいて10継代未満維持することができる。標 的細胞は、多くの実施形態では、単細胞生物であるか、または培養下で増殖する。

細胞は、初代細胞である場合、あらゆる好都合な方法によって個体から採取することが できる。例えば、白血球は、アフェレーシス、白血球アフェレーシス、密度勾配分離等に よって採取することが好都合であり得、一方、皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺 、腸、胃等の組織由来の細胞は、生検によって採取することが最も好都合である。適切な 溶液を、採取した細胞を分散または懸濁させるために用いてもよい。そのような溶液は、 一般的には、低濃度(例えば、5〜25mM)の許容可能な緩衝液と共に、ウシ胎仔血清 または他の自然発生的な因子を添加されていることが好都合である、平衡塩類溶液、例え ば、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液等である。好都合 な緩衝液には、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液等が含まれる。細胞は直ちに使用 してもよいし、あるいは、長期間保存、凍結して、解凍および再使用可能にしてもよい。 そのような場合、細胞は通常、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、50%血清、 40%緩衝培地、または、細胞をそのような凍結温度において保存するために当該技術分 野において一般的に用いられるいくつかの他の溶液中で凍結され、凍結培養細胞を解凍す るための当該技術分野において周知の方法で解凍される。

宿主細胞への核酸の導入 DNA標的化RNA、またはそれをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、種々の 周知の方法のいずれによっても宿主細胞に導入することができる。同様に、主題の方法が 、異型Cas9部位特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を宿主 細胞に導入することを含む場合、そのような核酸は、種々の周知の方法のいずれによって も宿主細胞に導入することができる。

核酸を宿主細胞に導入する方法は当該技術分野において公知であり、いかなる公知の方 法を用いても、核酸(例えば、発現構築物)を幹細胞または前駆細胞に導入することがで きる。適切な方法としては、例えば、ウイルス感染またはバクテリオファージ感染、トラ ンスフェクション、接合(conjugation)、原形質融合、リポフェクション、 エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)介在性 トランスフェクション、DEAE−デキストラン介在性トランスフェクション、リポソー ム介在性トランスフェクション、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿、直接微量 注入、ナノ粒子介在性核酸送達(例えば、Panyam et., al Adv Drug Deliv Rev. 2012 Se p 13. pii: S0169-409X(12)00283-9. doi: 10.1016/j.addr.2012.09.023を参照)等が挙 げられる。

核酸 本開示は、主題のDNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸を 提供する。いくつかの例において、主題の核酸は、異型Cas9部位特異的ポリペプチド をコードするヌクレオチド配列も含む。

いくつかの実施形態において、主題の方法は、宿主細胞(または宿主細胞集団)に、D NA標的化RNAおよび/または異型Cas9部位特異的ポリペプチドをコードするヌク レオチド配列を含む一つまたは複数の核酸を導入することを含む。いくつかの実施形態に おいて、標的DNAを含む細胞はインビトロに存在する。いくつかの実施形態において、 標的DNAを含む細胞はインビボに存在する。DNA標的化RNAおよび/または部位特 異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸には発現ベクターが含 まれ、ここで、DNA標的化RNAおよび/または部位特異的ポリペプチドをコードする ヌクレオチド配列を含む発現ベクターは「組み換え発現ベクター」である。

いくつかの実施形態において、組み換え発現ベクターは、ウイルス性構築物、例えば、 組換え型アデノ随伴ウイルス構築物(例えば、米国特許第7,078,387号を参照) 、組換え型アデノウイルス構築物、組換え型レンチウイルス構築物、組換え型レトロウイ ルス構築物等である。

適切な発現ベクターとしては、限定はされないが、ウイルスベクター(例えば、ワクシ ニアウイルスに基づくウイルスベクター;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549, 1994; Borras et al., Gene Ther 6 :515 524, 1999; Li and Davidson, PNAS 92:7700 7704, 1995; Sakamoto et al., H Gen e Ther 5:1088 1097, 1999;国際公開第94/12649号、同第93/03769号; 同第93/19191号;同第94/28938号;同第95/11984号および同第 95/00655号を参照);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum Gene The r 9:81 86, 1998, Flannery et al., PNAS 94:6916 6921, 1997; Bennett et al., Inves t Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863, 1997; Jomary et al., Gene Ther 4:683 690, 1997 , Rolling et al., Hum Gene Ther 10:641 648, 1999; Ali et al., Hum Mol Genet 5:59 1 594, 1996;国際公開第93/09239号のSrivastava, Samulski et al., J. Vir. (1989) 63:3822−3828; Mendelson et al., Virol. (1988) 166:154−165;およびFlotte et al., PNAS (1993) 90:10613−10617を参照);SV40;単純疱疹ウイルス;ヒト免 疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., PNAS 94:10319 23, 1997; Takahashi et al. , J Virol 73:7812 7816, 1999を参照);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血 病ウイルス、脾壊死ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ 白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス(m yeloproliferative sarcoma virus)、および乳癌ウイ ルス等のレトロウイルス由来のベクター);等が挙げられる。

多数の適切な発現ベクターが当業者に知られており、多くは市販されている。例として 以下のベクターを記載する;真核生物宿主細胞:pXT1、pSG5(ストラタジーン社 )、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40(ファルマシア社)。し かし、宿主細胞に適合している限り、いかなる他のベクターを使用してもよい。

使用される宿主/ベクター系に応じて、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーター 、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含む、いくつかの適切な転写調 節領域および翻訳調節領域のいずれかを、発現ベクター内に用いてもよい(例えば、Bitt er et al. (1987) Methods in Enzymology, 153:516-544を参照)。

いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または異型Cas9部位特 異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節領域、例えば、プロモーター等 の転写調節領域に作動可能に連結している。転写調節領域は、真核細胞、例えば、哺乳類 細胞;または原核細胞(例えば、細菌細胞または古細菌細胞)において機能的であり得る 。いくつかの実施形態において、DNA標的化RNAおよび/または異型Cas9部位特 異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核細胞および真核細胞の両方にお いてDNA標的化RNAおよび/または異型Cas9部位特異的ポリペプチドをコードす るヌクレオチド配列の発現を可能にする、複数の調節領域に作動可能に連結している。

プロモーターは、恒常的活性型プロモーター(すなわち、恒常的に活性/「ON」状態 であるプロモーター)であってもよく、誘導性プロモーター(すなわち、活性/「ON」 または不活性/「OFF」状態が、外部刺激、例えば、特定の温度、化合物、またはタン パク質の存在によって制御されるプロモーター)であってもよく、空間限定的(spat ially restricted)プロモーター(すなわち、転写調節領域、エンハン サー等)(例えば、組織特異的プロモーター、細胞型特異的プロモーター等)であっても よく、時間限定的(temporally restricted)プロモーター(すな わち、プロモーターが、胚発生の特定の段階の間、または生物学的プロセスの特定の段階 、例えば、マウスにおける毛包周期の間に、「ON」状態または「OFF」状態にある) であってもよい。

適切なプロモーターはウイルス由来であってもよく、従ってウイルス性プロモーターと 称されてもよく、あるいは、適切なプロモーターは原核生物または真核生物を含むあらゆ る生物に由来していてもよい。適切なプロモーターを用いることで、いかなるRNAポリ メラーゼ(例えば、polI、polII、polIII)によっても発現を駆動するこ とができる。プロモーターの例としては、限定はされないが、SV40初期プロモーター 、マウス乳癌ウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プ ロモーター(AdMLP);単純疱疹ウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウ イルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター領域(CMVIE) 、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(U6 )(Miyagishi et al. , Nature Biotechnology 20, 497 - 500 (2002))、高感度U6プ ロモーター(例えば、Xia et al., Nucleic Acids Res. 2003 Sep 1;31(17))、ヒトH1 プロモーター(H1)等が挙げられる。

誘導性プロモーターの例としては、限定はされないが、T7RNAポリメラーゼプロモ ーター、T3RNAポリメラーゼプロモーター、イソプロピル−β−D−チオガラクトピ ラノシド(IPTG)調節性プロモーター、ラクトース誘導性プロモーター、熱ショック プロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター(例えば、Tet−ON、Tet− OFF等)、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受 容体調節性プロモーター等が挙げられる。従って誘導性プロモーターは、ドキシサイクリ ン;RNAポリメラーゼ、例えば、T7RNAポリメラーゼ;エストロゲン受容体;エス トロゲン受容体融合物;等を含むがこれらに限定はされない分子によって調節され得る。

いくつかの実施形態において、プロモーターは、多細胞生物においてプロモーターが一 部の特定の細胞内で活性(すなわち、「ON」)であるような、空間限定的プロモーター (すなわち、細胞型特異的プロモーター、組織特異的プロモーター等)である。空間限定 的プロモーターは、エンハンサー、転写調節領域、制御配列等とも称され得る。いかなる 好都合な空間限定的プロモーターも使用することができ、適切なプロモーター(例えば、 脳特異的プロモーター、一部のニューロンにおける発現を駆動するプロモーター、生殖細 胞系列における発現を駆動するプロモーター、肺における発現を駆動するプロモーター、 筋肉における発現を駆動するプロモーター、膵臓の島細胞における発現を駆動するプロモ ーター等)の選択は、生物によって異なる。例えば、植物、ハエ、虫、哺乳動物、マウス 等において、種々の空間限定的プロモーターが知られている。従って、空間限定的プロモ ーターを用いることで、生物に応じて、種々様々な異なる組織および細胞型において主題 の部位特異的ポリペプチドをコードする核酸の発現を制御することがでる。また、いくつ かの空間限定的プロモーターは、プロモーターが、胚発生の特定の段階の間、または生物 学的プロセスの特定の段階(例えば、マウスにおける毛包周期)の間に、「ON」状態ま たは「OFF」状態にあるように、時間限定的である。

例示を目的として、空間限定的プロモーターの例としては、限定はされないが、ニュー ロン特異的プロモーター、脂肪細胞特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、 平滑筋特異的プロモーター、光受容体特異的プロモーター等が挙げられる。ニューロン特 異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、ニューロン特異的エノラーゼ (NSE)プロモーター(例えば、EMBL HSENO2、X51956を参照);芳 香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)プロモーター;神経フィラメントプロモーター(例 えば、GenBank HUMNFL、L04147を参照);シナプシンプロモーター (例えば、GenBank HUMSYNIB、M55301を参照);thy−1プロ モーター(例えば、Chen et al. (1987) Cell 51:7-19;およびLlewellyn, et al. (2010) Nat. Med. 16(10):1161-1166を参照);セロトニン受容体プロモーター(例えば、Ge nBank S62283を参照);チロシン水酸化酵素プロモーター(TH)(例えば 、Oh et al. (2009) Gene Ther 16:437; Sasaoka et al. (1992) Mol. Brain Res. 16:27 4; Boundy et al. (1998) J. Neurosci. 18:9989;およびKaneda et al. (1991) Neuron 6 :583-594を参照);GnRHプロモーター(例えば、Radovick et al. (1991) Proc. Nat l. Acad. Sci. USA 88:3402-3406を参照);L7プロモーター(例えば、Oberdick et al . (1990) Science 248:223-226を参照);DNMTプロモーター(例えば、Bartge et al . (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3648-3652を参照);エンケファリンプロモー ター(例えば、Comb et al. (1988) EMBO J. 17:3793-3805を参照);ミエリン塩基性タ ンパク質(MBP)プロモーター;Ca2+−カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ II−α(CamKIIα)プロモーター(例えば、Mayford et al. (1996) Proc. Natl . Acad. Sci. USA 93:13250;およびCasanova et al. (2001) Genesis 31:37を参照);C MVエンハンサー/血小板由来増殖因子−βプロモーター(例えば、Liu et al. (2004) Gene Therapy 11:52-60を参照);等が挙げられる。

脂肪細胞特異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、aP2遺伝子プ ロモーター/エンハンサー、例えば、ヒトaP2遺伝子の−5.4kb〜+21bpの領 域(例えば、Tozzo et al. (1997) Endocrinol. 138:1604; Ross et al. (1990) Proc. N atl. Acad. Sci. USA 87:9590;およびPavjani et al. (2005) Nat. Med. 11:797を参照) ;グルコーストランスポーター−4(GLUT4)プロモーター(例えば、Knight et al . (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:14725を参照);脂肪酸トランスロカーゼ( FAT/CD36)プロモーター(例えば、Kuriki et al. (2002) Biol. Pharm. Bull. 25:1476;およびSato et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:15703を参照);ステアロイル CoA不飽和酵素−1(SCD1)プロモーター(Tabor et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:20603);レプチンプロモーター(例えば、Mason et al. (1998) Endocrinol. 139: 1013;およびChen et al. (1999) Biochem. Biophys. Res. Comm. 262:187を参照);アデ ィポネクチンプロモーター(例えば、Kita et al. (2005) Biochem. Biophys. Res. Comm . 331:484;およびChakrabarti (2010) Endocrinol. 151:2408を参照);アディプシンプ ロモーター(例えば、Platt et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7490を参照 );レジスチンプロモーター(例えば、Seo et al. (2003) Molec. Endocrinol. 17:1522 を参照);等が挙げられる。

心筋細胞特異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、以下の遺伝子に 由来する制御配列が挙げられる:ミオシン軽鎖−2、α−ミオシン重鎖、AE3、心筋ト ロポニンC、心筋アクチン等が挙げられる。Franz et al. (1997) Cardiovasc. Res. 35: 560-566; Robbins et al. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 752:492-505; Linn et al. (19 95) Circ. Res. 76:584-591; Parmacek et al. (1994) Mol. Cell. Biol. 14:1870-1885; Hunter et al. (1993) Hypertension 22:608-617;およびSartorelli et al. (1992) Pro c. Natl. Acad. Sci. USA 89:4047-4051。

平滑筋特異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、SM22αプロモ ーター(例えば、Akyurek et al. (2000) Mol. Med. 6:983;および米国特許第7,16 9,874号を参照);スムーセリン(smoothelin)プロモーター(例えば、 国際公開第2001/018048号);α−平滑筋アクチンプロモーター;等が挙げら れる。例えば、SM22αプロモーターの0.4kb領域は、その中に2つのCArGエ レメントが存在しており、血管平滑筋細胞特異的な発現を媒介することが示されている( 例えば、Kim, et al. (1997) Mol. Cell. Biol. 17, 2266-2278; Li, et al., (1996) J. Cell Biol. 132, 849-859、およびMoessler, et al. (1996) Development 122, 2415-24 25を参照)。

光受容体特異的空間限定的プロモーターとしては、限定はされないが、ロドプシンプロ モーター;ロドプシンキナーゼプロモーター(Young et al. (2003) Ophthalmol. Vis. S ci. 44:4076);βホスホジエステラーゼ遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007) J. Gene Med. 9:1015);網膜色素変性症遺伝子プロモーター(Nicoud et al. (2007)、上 記);光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子エンハンサー(Nicoud e t al. (2007)、上記);IRBP遺伝子プロモーター(Yokoyama et al. (1992) Exp Eye Res. 55:225);等が挙げられる。

ライブラリー 本開示はDNA標的化RNAのライブラリーを提供する。本開示は、DNA標的化RN Aをコードするヌクレオチドを含む核酸のライブラリーを提供する。主題の、DNA標的 化RNAをコードするヌクレオチドを含む核酸のライブラリーは、DNA標的化RNAを コードするヌクレオチドを含む組み換え発現ベクターのライブラリーを含み得る。

主題のライブラリーは、約10個の個々の構成要素〜約1012個の個々の構成要素を 含み得;例えば、主題のライブラリーは、約10個の個々の構成要素〜約102個の個々 の構成要素、約102個の個々の構成要素〜約103個の個々の構成要素、約103個の 個々の構成要素〜約105個の個々の構成要素、約105個の個々の構成要素〜約107 個の個々の構成要素、約107個の個々の構成要素〜約109個の個々の構成要素、また は約109個の個々の構成要素〜約1012個の個々の構成要素を含み得る。

主題のライブラリーの「個々の構成要素」は、DNA標的化RNAのDNAターゲティ ングセグメントのヌクレオチド配列において、ライブラリーの他の構成要素と異なる。従 って、例えば、主題のライブラリーの個々の構成要素のそれぞれは、ライブラリーの他の 全ての構成要素と同一または実質的に同一のタンパク質結合セグメントのヌクレオチド配 列を含み得;ライブラリーの他の全ての構成要素と同一または実質的に同一の転写終結セ グメントのヌクレオチド配列を含み得るが;DNA標的化RNAのDNAターゲティング セグメントのヌクレオチド配列においてライブラリーの他の構成要素と異なる。このよう に、本ライブラリーは、異なる標的核酸に結合する構成要素を含み得る。

有用性 本開示による転写を調節するための方法は、種々の用途において有用であり、それもま た提供される。用途には、研究用途;診断用途;産業的用途;および治療用途が含まれる 。

研究用途には、例えば、例えば、発達、代謝、下流遺伝子の発現等に対する、標的核酸 の転写を低減または増加することの影響の決定が含まれる。

ハイスループットゲノム解析は、DNA標的化RNAのDNA標的化セグメントのみが 変化される必要があるが、タンパク質結合セグメントおよび転写終結セグメントは(いく つかの例において)一定に保たれ得る、主題の転写調節法を用いて、実行することができ る。ゲノム解析に用いられる複数の核酸を含むライブラリー(例えば、主題のライブラリ ー)は、DNA標的化RNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結しているプ ロモーターを含み、ここで、それぞれの核酸は異なるDNA標的化セグメント、共通のタ ンパク質結合セグメント、および共通の転写終結セグメントを含む。チップは5×104 個超の独特なDNA標的化RNAを含有し得る。応用には、大規模表現型検査、遺伝子− 機能マッピング、およびメタゲノム解析が含まれる。

本明細書で開示される主題の方法は、代謝工学の分野において有用である。転写レベル は、本明細書に記載されるような、適切なDNA標的化RNAを設計することによって効 率的且つ予想通りに制御することができるため、代謝経路(例えば、生合成経路)の活性 は、目的の代謝経路内の特定の酵素のレベルを(例えば、転写の増加または減少によって )制御することによって、正確に制御および調節することができる。目的の代謝経路には 、化学製品製造(精製化学製品、燃料、抗生物質、毒素、作動薬、拮抗薬等)および/ま たは薬剤製造に用いられる経路が含まれる。

目的の生合成経路には、限定はされないが、(1)メバロン酸経路(例えば、HMG− CoA還元酵素経路)(アセチル−CoAがジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)お よびイソペンテニルピロリン酸(IPP)に変換され、それらがテルペノイド/イソプレ ノイドを含む種々様々な生体分子の生合成に用いられる)、(2)非メバロン酸経路(す なわち、「2−C−メチル−D−エリスリトール4−リン酸/1−デオキシ−D−キシル ロース5−リン酸経路」または「MEP/DOXP経路」または「DXP経路」)(これ も、メバロン酸経路の代替経路によって、ピルビン酸およびグリセルアルデヒド3−リン 酸がDMAPPおよびIPPに変換されることにより、DMAPPおよびIPPが生成さ れる)、(3)ポリケチド合成経路(種々のポリケチド合成酵素により種々のポリケチド が生成される)(ポリケチドには、化学療法に用いられる自然発生的な小分子(例えば、 テトラサイクリン、およびマクロライド系抗生物質)が含まれ、産業上重要なポリケチド としては、ラパマイシン(免疫抑制剤)、エリスロマイシン(抗生物質)、ロバスタチン (抗コレステロール剤)、およびエポシロンB(抗がん剤)が挙げられる)、(4)脂肪 酸合成経路、(5)DAHP(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン酸7−リン酸) 合成経路、(6)有望なバイオ燃料(例えば、短鎖アルコールおよびアルカン、脂肪酸メ チルエステルおよび脂肪アルコール、イソプレノイド等)を生成する経路等が含まれる。

ネットワークおよびカスケード 本明細書で開示される方法は、制御の統合ネットワーク(すなわち、1つまたは複数の カスケード)を設計するために用いることができる。例えば、主題のDNA標的化RNA /異型Cas9部位特異的ポリペプチドは、別のDNA標的化RNAまたは別の主題の異 型Cas9部位特異的ポリペプチドの発現を制御(すなわち、調節、例えば、増加、低減 )するために用いることができる。例えば、第一のDNA標的化RNAは、第一の異型C as9部位特異的ポリペプチドと異なる機能(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、 脱メチル化酵素活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性等)を有 する第二のキメラdCas9ポリペプチドの転写の調節を標的とするように設計すること ができる。さらに、異なるdCas9タンパク質(例えば、異なる種に由来する)は異な るCas9ハンドル(すなわち、タンパク質結合セグメント)を必要とし得るため、第二 のキメラdCas9ポリペプチドは、上記の第一のdCas9ポリペプチドとは異なる種 に由来し得る。従って、いくつかの例において、第二のキメラdCas9ポリペプチドは 、第一のDNA標的化RNAと相互作用できないように、選択され得る。他の例において 、第二のキメラdCas9ポリペプチドは、第一のDNA標的化RNAと相互作用するよ うに、選択され得る。いくつかのそのような例において、2つ(またはそれ以上の)dC as9タンパク質の活性は、競合し得る(例えば、それらのポリペプチドが逆の活性を有 する場合)か、または相乗的に作用し得る(例えば、それらのポリペプチドが類似の、ま たは相乗的な活性を有する場合)。同様に、上記で言及したように、ネットワーク内の複 合体(すなわち、DNA標的化RNA/dCas9ポリペプチド)のいずれも、他のDN A標的化RNAまたはdCas9ポリペプチドを制御するように設計することができる。 主題のDNA標的化RNAおよび主題の異型Cas9部位特異的ポリペプチドはいかなる 所望のDNA配列にも標的化することができるため、本明細書に記載の方法は、いかなる 所望の標的の発現をも調節および制御するために用いることができる。設計することがで きる統合ネットワーク(すなわち、相互作用のカスケード)は、非常に単純なものから非 常に複雑なものまで幅があり、限定されない。

2つ以上の構成要素(例えば、DNA標的化RNA、活性化RNA、標的化RNA、ま たはdCas9ポリペプチド)がそれぞれ別のDNA標的化RNA/dCas9ポリペプ チド複合体の調節管理下にあるネットワークにおいて、ネットワークの1つの構成要素の 発現レベルは、ネットワークの別の構成要素の発現レベルに影響を与え得る(例えば、発 現を増加または減少させ得る)。この機構によって、1つの構成要素の発現は、同一ネッ トワーク内の異なる構成要素の発現に影響を与える場合があり、そのネットワークは、他 の構成要素の発現を増加させる構成要素および他の構成要素の発現を減少させる構成要素 の混成物を含み得る。当業者には容易に理解されることであるが、1つの構成要素の発現 レベルが一つまたは複数の異なる構成要素の発現レベルに影響を与え得ることによる上記 の例は、説明を目的としたものであって、限定するものではない。一つまたは複数の構成 要素が操作可能となるように(すなわち、実験制御下で、例えば、温度制御下;薬剤制御 下、すなわち、薬剤誘導性制御下;光制御下;等で)、(上記のように)改変される場合 、さらなる複雑さの層を所望によりネットワークに導入することができる。

1つの非限定例として、第一のDNA標的化RNAは、標的の治療/代謝関連遺伝子の 発現を制御する、第二のDNA標的化RNAのプロモーターに結合することができる。そ のような例において、第一のDNA標的化RNAの条件的発現は、治療/代謝関連遺伝子 を間接的に活性化する。このタイプのRNAカスケードは、例えば、抑制因子を活性化因 子に容易に変換する上で有用であり、標的遺伝子の発現の論理または動態(logics or dynamics)を制御するために用いることができる。

主題の転写調節法は、創薬およびターゲットバリデーションに用いることもできる。

キット 本開示は主題の方法を実行するためのキットを提供する。主題のキットは、a)i)) 標的DNA内の標的配列に対し相補的なヌクレオチド配列を含む第一セグメント;ii) )部位特異的ポリペプチドと相互作用する第二セグメント;およびiii)転写ターミネ ーターを含む本開示のDNA標的化RNA、またはDNA標的化RNAをコードするヌク レオチド配列を含む核酸;並びにb)緩衝液を含む。いくつかの例において、DNA標的 化RNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、野生型Cas9と比較して低減さ れたエンドデオキシリボヌクレアーゼ活性を示す異型Cas9部位特異的ポリペプチドを コードするヌクレオチド配列をさらに含む。

いくつかの例において、主題のキットは、野生型Cas9と比較して低減されたエンド デオキシリボヌクレアーゼ活性を示す異型Cas9部位特異的ポリペプチドをさらに含む 。

いくつかの例において、主題のキットは、野生型Cas9と比較して低減されたエンド デオキシリボヌクレアーゼ活性を示す異型Cas9部位特異的ポリペプチドをコードする ヌクレオチド配列を含む核酸をさらに含む。

主題はさらに、一つまたは複数の追加の試薬を含む場合があり、そのような追加の試薬 は、緩衝液;洗浄緩衝液;対照試薬;対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド; DNAから異型Cas9部位特異的ポリペプチドをインビトロ生成するための試薬;等か ら選択され得る。いくつかの例において、主題のキットに含まれる異型Cas9部位特異 的ポリペプチドは、上記の融合異型Cas9部位特異的ポリペプチドである。

主題のキットの構成要素は別々の容器内に存在していてもよいし;あるいは単一の容器 内で混合されていてもよい。

上記構成要素に加えて、主題のキットは、キットの構成要素を用いて主題の方法を実施 するための説明書をさらに含み得る。主題の方法を実施するための説明書は、一般的には 、適切な記録媒体上に記録される。例えば、説明書は、紙またはプラスチック等の基体上 に印刷されていてもよい。従って、説明書は、添付文書としてキット内に、キットまたは その構成要素の容器の標識中(すなわち、パッケージまたはサブパッケージに付随して) 等、存在していてもよい。他の実施形態では、説明書は、適切なコンピューター可読の記 憶媒体、例えばCD−ROM、ディスケット、フラッシュドライブ等上に存在する電子記 憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態においては、実際の説明書がキッ ト内に存在しないが、例えばインターネットを介して、遠隔の供給源から説明書を得るた めの手段が提供される。この実施形態の一例は、説明書を閲覧することができる、および /または説明書をダウンロードすることができる、ウェブアドレスを含むキットである。 説明書と同様、説明書を得るためのこの手段は、適切な基体上に記録される。

次の実施例は、当業者に本発明の作成および使用方法の完全な開示および説明を提供す るために記載され、発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定する意図はなく、下 記の実験が実行される全てまたは唯一の実験であると示すようにも意図されていない。使 用される数(たとえば、量、温度など)に関して正確性を確実にするよう尽力したが、実 験の誤差および偏差は多少考慮されるべきである。別で指示されない限り、部は重量部で あり、分子量は平均的な分子量の重量であり、温度は摂氏の温度であり、圧力は大気圧ま たは大気圧付近である。標準的な省略が使用され得、たとえば、bp、塩基対(複数可) ;kb、キロベース(複数可);pl、ピコリットル(複数可);sまたはsec、秒( 複数可);min、分(複数可);hまたはhr、時間(複数可);aa、アミノ酸(複 数可);kb、キロベース(複数可);bp、塩基対(複数可);nt、ヌクレオチド( 複数可);i.m.、筋肉内の(に);i.p.、腹腔内の(に);s.c.、皮下の( に);などである。

実施例1:標的DNAに修飾を作成するためのCas9の使用 材料および方法 菌株および培養条件 0.2%酵母エキス(オキソイド社(Oxoid))を添加したTHY培地(トッド・ ヒューイット培地(THB、Bacto、ベクトンディッキンソン社(Becton D ickinson))内で、または、3%羊血液を添加したTSA(トリプチケースソイ 寒天、BBL、ベクトンディッキンソン社)上で培養されたストレプトコッカス・ピオゲ ネスを、5%CO2が添加された37℃の大気中で振ることなくインキュベートした。ル リア−ベルターニ(LB)培地および寒天内で培養された大腸菌を振りながら37℃でイ ンキュベートした。必要な際は、適切な抗生物質を次の最終濃度で培地に添加した:アン ピシリン、大腸菌に100μg/ml;クロラムフェニコール、大腸菌に33μg/ml ;カナマイシン、大腸菌に25μg/mlおよびS.ピオゲネスに300μg/ml。マ イクロプレートリーダー(SLT Spectra Reader)を使用して620n mの培養一定分量の光学濃度を観測することで、細菌細胞の成長を定期的にモニターした 。

細菌細胞の形質転換 大腸菌へのプラスミドDNAの形質転換を、標準的な熱ショックプロトコルに従って実 施した。S.ピオゲネスの形質転換を、いくつかの修正を伴い、前述したとおりに実施し た。プラスミド維持に対するインビボCRISPR/Cas活性をモニターするべく実施 された形質転換アッセイを、以前に記載された通り基本的に実行した。手短に、S.ピオ ゲネスのエレクトロコンピテンスセルを同じ細胞密度に均一にし、500ngのプラスミ ドDNAで電気穿孔した。全ての形質転換を2〜3回プレート化し、統計分析のために異 なるバッチのコンピテントセルでそれぞれ独立して3回実験を行った。形質転換効率をD NAのμgあたりのCFU(コロニー形成単位)として算出した。対照形質転換を、減菌 水および主鎖ベクターpEC85で実施した。

DNA操作 DNA調製、増幅、消化、ライゲーション、精製、アガロースゲル電気泳動を含むDN A操作を小さな修正を伴って標準的な技術に従って実施した。インビトロ切断のためのプ ロトスペーサープラスミドおよびS.ピオゲネス形質転換アッセイを以前に記載されたと おりに作成した(4)。インビトロ切断アッセイのための追加のpUC19ベースプロト スペーサープラスミドを、アニールしたオリゴヌクレオチドをpUC19の消化されたE coRIとBamHI部位との間でライゲーションすることで、作成した。GFP遺伝子 含有プラスミドは以前に記載されている(41)。DNA精製およびプラスミド調製のた めにキット(キアゲン社)を使用した。QuikChange(登録商標)II XLキ ット(ストラタジーン社)またはQuikChange部位特異的変異誘発キット(アジ レント社(Agilent))を使用して、プラスミド変異誘発を実施した。VBC−バ イオテックサービス社(VBC−Biotech Services)、シグマ・アルド リッチ社(Sigma−Aldrich)およびインテグレーテッドDNAテクノロジー 社(Integrated DNA Technologies)が合成オリゴヌクレオ チドおよびRNAを供給した。

インビトロ転写鋳型のためのオリゴヌクレオチド インビトロで転写されたS.ピオゲネスのCRISPR II−A型tracrRNAお よびcrRNAのための鋳型(tracrRNAに関してはchr.DNA SF370 上でのPCR;crRNAに関しては二つのオリゴヌクレオチドをアニール) T7−tracrRNA(75nt) OLEC1521(F5’tracrRNA):配列番号340 OLEC1522(R3’tracrRNA):配列番号341 T7−crRNA(鋳型) OLEC2176(F crRNA−sp1):配列番号342 OLEC2178(R crRNA−sp1):配列番号343 OLEC2177(F crRNA−sp2):配列番号344 OLEC2179(R crRNA−sp2):配列番号345 インビトロで転写されたN.メニンギティディスのtracrRNAおよび操作されたc rRNA−sp2のための鋳型(tracrRNAに関してはchr.DNA Z249 1上でのPCR;crRNAに関しては二つのオリゴヌクレオチドをアニール) T7−tracrRNA OLEC2205(F 予想5’):配列番号346 OLEC2206(R 予想3’):配列番号347 T7−crRNA(鋳型) OLEC2209(F sp2(speM)+N.m.リピート):配列番号348 OLEC2214(R sp2(speM)+N.m.リピート):配列番号349 インビトロで転写されたL.イノキュアのtracrRNAおよび操作されたcrRNA −sp2のための鋳型(tracrRNAに関してはchr.DNA Clip1126 2上でのPCR;crRNAに関しては二つのオリゴヌクレオチドをアニール) T7−tracrRNA OLEC2203(F 予想5’):配列番号350 OLEC2204(R 予想3’):配列番号351 T7−crRNA(鋳型) OLEC2207(F sp2(speM)+L.in.リピート):配列番号352 OLEC2212(R sp2(speM)+L.in.リピート):配列番号353 インビトロおよびインビボでの実験のためのプロトスペーサーを伴うプラスミドを作成す るためのオリゴヌクレオチド インビトロおよびS.ピオゲネスでのspeM(スペーサー2(CRISPR II−A 型、SF370;MGAS8232のプロトスペーサープロファージφ8232.3)分 析のためのプラスミド(鋳型:chr.DNA MGAS8232またはspeM断片を 含有するプラスミド) pEC287 OLEC1555(F speM):配列番号354 OLEC1556(R speM):配列番号355 pEC488 OLEC2145(F speM):配列番号356 OLEC2146(R speM):配列番号357 pEC370 OLEC1593(F pEC488プロトスペーサー2 A22G):配列番号358 OLEC1594(R pEC488プロトスペーサー2 A22G):配列番号359 pEC371 OLEC1595(F pEC488プロトスペーサー2 T10C):配列番号360 OLEC1596(R pEC488プロトスペーサー2 T10C):配列番号361 pEC372 OLEC2185(F pEC488プロトスペーサー2 T7A):配列番号362 OLEC2186(R pEC488プロトスペーサー2 T7A):配列番号363 pEC373 OLEC2187(F pEC488プロトスペーサー2 A6T):配列番号364 OLEC2188(R pEC488プロトスペーサー2 A6T):配列番号365 pEC374 OLEC2235(F pEC488プロトスペーサー2 A5T):配列番号366 OLEC2236(R pEC488プロトスペーサー2 A5T):配列番号367 pEC375 OLEC2233(F pEC488プロトスペーサー2 A4T):配列番号368 OLEC2234(R pEC488プロトスペーサー2 A4T):配列番号369 pEC376 OLEC2189(F pEC488プロトスペーサー2 A3T):配列番号370 OLEC2190(R pEC488プロトスペーサー2 A3T):配列番号371 pEC377 OLEC2191(F pEC488プロトスペーサー2 PAM G1C):配列番号 372 OLEC2192(R pEC488プロトスペーサー2 PAM G1C):配列番号 373 pEC378 OLEC2237(F pEC488プロトスペーサー2 PAM GG1,2CC): 配列番号374 OLEC2238(R pEC488プロトスペーサー2 PAM GG1,2CC): 配列番号375 インビトロおよびS.ピオゲネスでのSPy_0700(スペーサー1(CRISPR II−A型、SF370;SF370のプロトスペーサープロファージφ370.1)分 析のためのプラスミド(鋳型:chr.DNA SF370またはSPy_0700断片 を含有するプラスミド) pEC489 OLEC2106(F Spy_0700):配列番号376 OLEC2107(R Spy_0700):配列番号377 pEC573 OLEC2941(F PAM TG1、2GG):配列番号378 OLEC2942(R PAM TG1、2GG):配列番号379 シークエンシング解析によるプラスミド構築物および切断部位の検証のためのオリゴヌク レオチド ColE1(pEC85) oliRN228(R シークエンシング):配列番号380 speM(pEC287) OLEC1557(F シークエンシング):配列番号381 OLEC1556(R シークエンシング):配列番号382 repDEG−pAMベータ1(pEC85) OLEC787(F シークエンシング):配列番号383 インビトロ切断アッセイのためのオリゴヌクレオチド crRNA スペーサー1 crRNA(1−42):配列番号384 スペーサー2 crRNA(1−42):配列番号385 スペーサー4 crRNA(1−42):配列番号386 スペーサー2 crRNA(1−36):配列番号387 スペーサー2 crRNA(1−32):配列番号388 スペーサー2 crRNA(11−42):配列番号389 tracrRNA (4−89):配列番号390 (15−89):配列番号391 (23−89):配列番号392 (15−53):配列番号393 (15−44):配列番号394 (15−36):配列番号395 (23−53):配列番号396 (23−48):配列番号397 (23−44):配列番号398 (1−26):配列番号399 キメラRNA スペーサー1−キメラA:配列番号400 スペーサー1−キメラB:配列番号401 スペーサー2−キメラA:配列番号402 スペーサー2−キメラB:配列番号403 スペーサー4−キメラA:配列番号404 スペーサー4−キメラB:配列番号405 GFP1:配列番号406 GFP2:配列番号407 GFP3:配列番号408 GFP4:配列番号409 GFP5:配列番号410 切断アッセイのための基質としてのDNAオリゴヌクレオチド(プロトスペーサーは太文 字、PAMは下線が引かれてある。) プロトスペーサー1−相補性−WT:配列番号411 プロトスペーサー1−非相補性−WT:配列番号412 プロトスペーサー2−相補性−WT:配列番号413 プロトスペーサー2−非相補性−WT:配列番号414 プロトスペーサー4−相補性−WT:配列番号415 プロトスペーサー4−非相補性−WT:配列番号416 プロトスペーサー2−相補性−PAM1:配列番号417 プロトスペーサー2−非相補性−PAM1:配列番号418 プロトスペーサー2−相補性−PAM2:配列番号419 プロトスペーサー2−非相補性−PAM2:配列番号420 プロトスペーサー4−相補性−PAM1:配列番号421 プロトスペーサー4−非相補性−PAM1:配列番号422 プロトスペーサー4−相補性−PAM2:配列番号423 プロトスペーサー4−非相補性−PAM2:配列番号424 RNAのインビトロ転写および精製 インビトロ転写キットのT7 Flash(エピセンター社(Epicentre)、 イルミナ社(Illumina))およびT7プロモーター配列を保有するPCRで作成 したDNA鋳型を使用してインビトロでRNAを転写した。使用前に、RNAをゲルで精 製し、品質を確認した。S.ピオゲネスSF370、リステリア・イノキュア Clip 11262およびナイセリア・メニンギティディスA Z2491のRNA鋳型の調製の ために使用されたプライマーは上に記載される。

タンパク質精製 S.ピオゲネスSF370のゲノムDNAからのCas9(残基1〜1368)をコー ドする配列をPCRで増幅し、ライゲーション独立クローニング(LIC)を使用してカ スタムpETベース発現ベクター内に挿入した。得られた融合構築物はN末端ヘキサヒス チジン−マルトース結合タンパク質(His6−MBP)タグを有し、該タグにタバコエ ッチ病ウィルス(TEV)プロテアーゼ切断部位を含有するペプチド配列が続く。タンパ ク質を大腸菌株BL21ロゼッタ2(DE3)(EMDバイオサイエンス社(EMD B iosciences))内で発現させ、18℃の2倍TY培地内で16時間成長させ、 続いて0.2mMのIPTGで誘導を行った。アフィニティー、イオン交換およびサイズ 排除クロマトグラフィー工程の組み合わせによってタンパク質を精製した。手短に、ホモ ジナイザー(アベスチン社(Avestin))で、細胞を20mMのTris pH8 .0、500mMのNaCl、1mMのTCEP(プロテアーゼ阻害カクテル(ロシュ社 (Roche))が添加されている)に溶解した。透明にした可溶化物をバッチ内でNi −NTAアガロース(キアゲン社)に結合させた。この樹脂を20mMのTris pH 8.0、500mMのNaClでさらに洗浄し、結合したタンパク質を20mMのTri s pH8.0、250mMのNaCl、10%グリセロール内で溶離した。His6− MBPアフィニティータグをTEVプロテアーゼとの切断によって取り除き、一方で、タ ンパク質を20mMのHEPES pH7.5、150mMのKCl、1mMのTCEP 、10%グリセロールに対して一晩透析した。100mM〜1MのKClの直線勾配で溶 離し、5mlのSPセファロースHiTrapカラム(GEライフサイエンス社(GE Life Sciences))上での精製によって、切断Cas9タンパク質を融合タ グから分離した。20mMのHEPES pH7.5、150mMのKClおよび1mM のTCEP内Superdex 200 16/60カラム上でのサイズ排除クロマトグ ラフィーによってタンパク質をさらに精製した。溶離したタンパク質を約8mg/mlま で濃縮し、液体窒素内で急速冷凍し、−80℃で保管した。QuikChange部位特 異的変異誘発キット(アジレント社)を用いて、Cas9 D10A、H840Aおよび D10A/H840Aの点変異体を作成し、DNAシークエンシングによって確認した。 野生型Cas9タンパク質に関する同じ手法に従ってタンパク質を精製した。

ストレプトコッカス・サーモフィラス(LMD−9、YP_820832.1)、L.イ ノキュア(Clip11262、NP_472073.1)、カンピロバクター・ジェジ ュニ(Campylobacter jejuni)(亜種ジェジュニNCTC 111 68、YP_002344900.1)およびN.メニンギティディス(Z2491、Y P_002342100.1)のCas9オルソログを、BL21ロゼッタ(DE3)p LysS細胞(ノバジェン(Novagen))内で、His6−MBP(N.メニンギ ティディスおよびC.ジェジュニ)、His6−チオレドキシン(L.イノキュア)およ びHis6−GST(S.サーモフィラス)融合タンパク質として発現させ、S.ピオゲ ネスのCas9に関するように次の修正を伴って実質的に精製した。同時精製核酸の量が 多大であるため、四つのCas9タンパク質を全て、ゲル濾過の前に、結合したタンパク 質を100mM〜2MのKClの直線勾配で溶離し、追加のヘパリンセファロース工程に よって精製した。これによってC.ジェジュニ、N.メニンギティディスおよびL.イノ キュアタンパク質からの核酸混入が無事に取り除かれたが、S.サーモフィラスのCas 9調製からの同時精製核酸は取り除けなかった。タンパク質を全て、20mMのHEPE S pH7.5、150mMのKClおよび1mMのTCEP中1〜8mg/mlまで濃 縮し、液体N2内で急速冷凍し、−80℃で保管した。

プラスミドDNA切断アッセイ 合成またはインビトロ転写tracrRNAおよびcrRNAを、反応前に、95℃ま で加熱し、ゆっくり室温まで下げることで、プレアニールした。天然または制限消化直線 化プラスミドDNA(300ng(約8nM))を、37℃で60分間、10mMのMg Cl2有りまたは無しのCas9プラスミド切断緩衝液(20mMのHEPES pH7 .5、150mMのKCl、0.5mMのDTT、0.1mMのEDTA)内で、精製C as9タンパク質(50〜500nM)およびtracrRNA:crRNA二重鎖(5 0〜500nM、1:1)でインキュベートした。反応を250mMのEDTAを含む5 倍DNA添加緩衝液で停止し、0.8または1%アガロースゲル電気泳動で分離し、エチ ジウムブロマイド染色で可視化した。Cas9変異体切断アッセイのために、アガロース ゲルに添加する前に、反応を5倍SDS添加緩衝液(30%グリセロール、1.2%SD S、250mMのEDTA)で停止した。

金属依存切断アッセイ プロトスペーサー2プラスミドDNA(5nM)を、1、5または10mMのMgCl 2、1または10mMのMnCl2、CaCl2、ZnCl2、CoCl2、NiSO4 またはCuSO4が添加された切断緩衝液(20mMのHEPES pH7.5、150 mMのKCl、0.5mMのDTT、0.1mMのEDTA)内で、50nMのtrac rRNA:crRNA−sp2でプレインキュベートしたCas9(50nM)で、37 ℃にて1時間、インキュベートした。5倍SDS添加緩衝液(30%グリセロール、1. 2%SDS、250mMのEDTA)を添加することで反応を停止し、1%アガロースゲ ル電気泳動で分離し、エチジウムブロマイド染色で可視化した。

シングルターンオーバーアッセイ 切断緩衝液(20mMのHEPES pH7.5、150mMのKCl、10mMのM gCl2、0.5mMのDTT、0.1mMのEDTA)内で、二重鎖tracrRNA :crRNA−sp2(25nM、1:1)、または、プレアニールされていない双方の RNA(25nM)でCas9(25nM)を37℃で15分間プレインキュベートし、 プロトスペーサー2プラスミドDNA(5nM)を添加することで反応を開始した。反応 混合物を37℃でインキュベートした。決められた時間間隔で、試料を反応から取り出し 、5倍SDS添加緩衝液(30%グリセロール、1.2%SDS、250mMのEDTA )を添加して反応を停止し、切断を1%アガロースゲル電気泳動およびエチジウムブロマ イド染色でモニターした。シングルターンオーバー動態のために、同じことをCas9お よびRNAのプレインキュベーション無しで行い、ここで、プロトスペーサー2プラスミ ドDNA(5nM)を二重鎖tracrRNA:crRNA−sp2(25nM)または プレアニールされていない双方のRNA(25nM)を伴う切断緩衝液内で混合し、Ca s9(25nM)を添加することで反応を開始した。切断のパーセンテージをデンシトメ トリーで分析し、三つの独立した実験の平均を時間に対してプロットした。データは、非 線形回帰分析によってあてはめを行い、切断速度(kobs[毎分−1])を算出した。

複数ターンオーバーアッセイ 切断緩衝液(20mMのHEPES pH7.5、150mMのKCl、10mMのM gCl2、0.5mMのDTT、0.1mMのEDTA)内で、37℃にて15分間、C as9(1nM)をプレアニールしたtracrRNA:crRNA−sp2(1nM、 1:1)でプレインキュベートした。プロトスペーサー2プラスミドDNA(5nM)を 添加することで、反応を開始した。決められた時間間隔で試料を取り出し、5倍SDS添 加緩衝液(30%グリセロール、1.2%SDS、250mMのEDTA)を添加するこ とで反応を停止した。切断反応を1%アガロースゲル電気泳動で分離し、エチジウムブロ マイドで染色し、切断のパーセンテージをデンシトメトリーで分析した。四つの独立した 実験の結果を時間(分)に対してプロットした。

オリゴヌクレオチドDNA切断アッセイ DNAオリゴヌクレオチド(10pmol)を、50μL反応内で、1倍T4ポリヌク レオチドキナーゼ反応緩衝液中5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼ(ニュー・イング ランド・バイオラボ社(New England Biolabs))および約3〜6p mol(約20〜40mCi)[γ−32P]−ATP(プロメガ社(Promega) )で37℃にて30分間インキュベートすることで、放射標識した。熱失活(65℃で2 0分間)後、反応をIllustra MicroSpin G−25カラム(GEヘル スケア社(GEHealthcare))を通して精製し、組み込まれていない標識を取 り除いた。標識オリゴヌクレオチドを等モル量の未標識相補オリゴヌクレオチドと一緒に 95℃にて3分間アニールすることで二重鎖基質(100nM)を作成し、続いて、室温 までゆっくり冷やした。切断アッセイのために、tracrRNAおよびcrRNAを3 0秒間95℃まで加熱し、続いて、室温までゆっくり冷やすことでアニールした。合計体 積が9μlの切断アッセイ緩衝液(20mMのHEPES pH7.5、100mMのK Cl、5mMのMgCl2、1mMのDTT、5%グリセロール)内で、アニールされた tracrRNA:crRNA二重鎖(500nM)でCas9(500nM最終濃度) をプレインキュベートした。1μlの標的DNA(10nM)の添加によって反応を開始 し、37℃にて1時間インキュベートした。20μlの添加色素(ホルムアミド中5mM のEDTA、0.025%SDS、5%グリセロール)の添加によって反応をクエンチし 、5分間95℃まで加熱した。切断産物を7Mウレア含有の12%変性ポリアクリルアミ ドゲル上で分離し、ホスフォイメージャー(Storm、GEライフサイエンス社)によ って可視化した。プレアニールし、8%天然アクリルアミドゲル上で精製し、続いて双方 の5’末端で放射標識しておいたDNA二重鎖基質を用いて、PAM必要条件を試験する 切断アッセイ(図13B)を実行した。反応を上記の通り準備し、分析した。

電気泳動移動度シフトアッセイ 各鎖(10nmol)をイオン除去水内で混合し、95℃まで3分間加熱して、室温ま で冷やすことで、標的DNA二重鎖を形成した。DNAを全て1倍TBE含有8%天然ゲ ル上で精製した。DNAバンドをUVシャドーイングによって可視化し、切断し、ゲル小 片をDEPCで処理したH2O内に浸漬することによって溶離した。溶離したDNAをエ タノールで沈殿させ、DEPCで処理したH2Oに溶解した。T4ポリヌクレオチドキナ ーゼ(ニュー・イングランド・バイオラボ社)を30分間37℃にて使用して、DNA試 料を[γ−32P]−ATPで5’末端を標識した。PNKを65℃で20分間熱変性し 、組み込まれていない放射標識を、Illustra MicroSpin G−25カ ラム(GEヘルスケア社)を使用して除去した。合計体積が10μlである、20mMの HEPES pH7.5、100mMのKCl、5mMのMgCl2、1mMのDTTお よび10%グリセロールを含む緩衝液内で結合アッセイを実施した。Cas9 D10A /H840Aの二重変異体を等モル量のプレアニールしたtracrRNA:crRNA 二重鎖でプログラムし、100pMから1μMに滴定した。放射標識DNAを20pMの 最終濃度に添加した。試料を1時間37℃でインキュベートし、1倍TBEおよび5mM のMgCl2を含む8%天然ポリアクリルアミドゲル上で、4℃で分離した。ゲルを乾燥 させ、DNAをホスフォイメージャーによって可視化した。

DNAおよびタンパク質配列のインシリコ分析 Vector NTIパッケージ(インビトロジェン社)を、DNA配列分析(Vec tor NTI)およびタンパク質の比較配列分析(AlignX)のために使用した。

RNA構造および同時折り畳みのインシリコモデリング Vienna RNAパッケージアルゴリズム(42、43)を使用して、インシリコ 予想を実施した。RNAの二次構造および同時折り畳みモデルをそれぞれRNAfold およびRNAcofoldで予想し、VARNA(44)で可視化した。

結果 細菌および古細菌は、クラスター化され、等間隔にスペーサーが入った、短回文型リピ ート配列(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)と呼ばれる、RNA媒介性適応 防御システムを発達させ、該システムは、侵入するウィルスおよびプラスミドから有機体 を保護する(1〜3)。これらシステムの一部で、トランス活性化crRNA(trac rRNA)と塩基対である成熟crRNAが、CRISPR関連タンパク質Cas9に標 的DNAの二重鎖(ds)切断を引き起こすように指示する、二つのRNAからなる構造 を形成することを示す。crRNA誘導配列に相補的である部位では、Cas9 HNH ヌクレアーゼドメインは相補鎖を切断する一方で、Cas9 RuvC様ドメインは非相 補鎖を切断する。二重tracrRNA:crRNAは、単一のRNAキメラとして設計 される場合、配列特異性Cas9 dsDNA切断も指示する。これらの研究は、二重R NAを部位特異的DNA切断のために使用するエンドヌクレアーゼのファミリーを明らか にし、RNAプログラム可能ゲノム編集のためにそのシステムを利用する能力を強調する 。

CRISPR/Cas防御システムは、外来性の核酸の配列特異性検知およびサイレン シングのために、小さいRNAに依存している。CRISPR/Casシステムは、オペ ロン(複数可)に組織化されるcas遺伝子、および、同一のリピートが散在するゲノム 標的配列(スペーサーと呼ばれる)から成るCRISPRアレイ(複数可)から構成され る(1〜3)。CRISPR/Cas媒介性免疫は三つの工程で生じる。適応段階では、 一つまたは複数のCRISPR座位を保有する細菌および古細菌は、外来性配列の短断片 (プロトスペーサー)を宿主染色体内のCRISPR配列の近位末端に組み込むことで、 ウィルス性またはプラスミド攻撃に応答する(1〜3)。発現および干渉段階では、リピ ートスペーサー要素の前駆体CRISPR RNA(pre−crRNA)分子への転写 、続いて酵素的な切断が、侵入ウィルス性またはプラスミド標的の相補プロトスペーサー 配列と対になることができる短いcrRNAをもたらす(4〜11)。crRNAによる 標的認識は、crRNAと複合して機能するCasタンパク質を利用して外来性配列のサ イレンシングを指示する(10、12〜20)。

CRISPR/Casシステムには三つの種類がある(21〜23)。I型およびII I型システムはいくつかの包括的な特色を共有する:特定Casエンドヌクレアーゼがp re−crRNAをプロセシングし、一度成熟すると、各crRNAは、crRNAに相 補的である核酸を認識および切断できる大型の多Casタンパク質複合体を形成する。対 照的に、II型システムは、pre−crRNAのリピート配列に相補的であるトランス 活性化crRNA(tracrRNA)が、Cas9(かつてのCsn1)タンパク質存 在下での二重鎖(ds)RNA特異的リボヌクレアーゼRNase IIIによってプロ セシングを誘発するという異なるメカニズムでprecrRNAを処理する(図15)( 4、24)。Cas9は外来性DNAのcrRNA誘導サイレンシングに関与する唯一の タンパク質であると考えられている(25〜27)。

II型システムでは、Cas9タンパク質は、標的dsDNAを切断するために活性化 tracrRNAと標的crRNAとの間に形成される塩基対構造を必要とする酵素のフ ァミリーを構成する。部位特異的切断は、crRNAと標的プロトスペーサーDNAとの 間の塩基対形成相補性および標的DNA内の相補領域に隣接する短いモチーフ(プロトス ペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる)の双方によって決定される位置で起こる。 我々の実験は、Cas9エンドヌクレアーゼファミリーは単一のRNA分子とプログラム されて特定のDNA部位を切断できることを更に実証し、それによって、ゲノム標的およ び編集のためにdsDNA切断を引き起こす単純かつ融通の利くRNA依存性システムの 発達を助長する。

Cas9は二つのRNAに誘導されるDNAエンドヌクレアーゼである II型システムの特徴タンパク質でありCas9は、crRNA成熟およびcrRNA 誘導DNA干渉の双方に関与していると仮定されてきた(図15)(4、25〜27)。 Cas9はcrRNA成熟に関与するが(4)、その標的DNA破壊への直接的関与は調 査されていない。Cas9が標的DNAを切断し得るかどうか、および、どのように標的 DNAを切断し得るのかを試験するために、我々は、過剰発現システムを使用して病原菌 ストレプトコッカス・ピオゲネス由来のCas9タンパク質を精製(図16、補足の材料 および方法を参照)し、成熟crRNAと相補的であるプロトスペーサー配列および本物 のPAMを保有するプラスミドDNAまたはオリゴヌクレオチド二重鎖を切断するその能 力を試験した。我々は、成熟crRNA単独ではCas9触媒性プラスミドDNA切断を 指示することはできないことを発見した(図10Aおよび図17A)。しかし、crRN Aのリピート配列と対をなし得、このシステム内でcrRNA成熟に必要不可欠であるt racrRNAの添加が、Cas9がプラスミドDNAを切断するように誘発した(図1 0Aおよび図17A)。切断反応は、マグネシウムおよびDNAに相補的であるcrRN A配列の存在の双方が必要であった;tracrRNA塩基対形成が可能ではあるが、非 同種標的DNA結合配列を有するcrRNAはCas9触媒性プラスミド切断を支援しな かった(図10A;図17A、crRNA−sp2とcrRNA−sp1を比較;および 図18A)。短い線状dsDNA基質でも同様の結果を得た(図10Bおよび図17、B およびC)。このように、トランス活性化tracrRNAは二つの重要な機能を伴う小 さな非コードRNAである:酵素RNase III(4)によってpre−crRNA プロセシングを誘発すること、および、引き続きCas9によるcrRNA誘導DNA切 断を活性化させること。

tracrRNA:crRNAに誘導されたCas9によるプラスミドおよび短い線状 dsDNAの双方の切断は部位特異的である(図10、C〜E、および図19、Aおよび B)。プラスミドDNA切断は、PAM配列の塩基対三つ上流の位置で、平滑末端をもた らした(図10、CおよびE、並びに図19、AおよびC)(26)。同様に、短いds DNA二重鎖内で、crRNAの標的結合配列に相補的であるDNA鎖(相補鎖)は、P AMの塩基対三つ上流の位置で切断される(図10、DおよびE、並びに図19、Bおよ びC)。非相補DNA鎖は、PAMの塩基対3〜8個上流内の一つまたは複数部位で切断 される。さらなる調査によって、非相補鎖はまず始めにヌクレオチド鎖切断的に切断され 、その後、3′−5′エキソヌクレアーゼ活性によって調節されることが明らかになった (図18B)。シングルターンオーバー条件下でのCas9による切断速度は制限エンド ヌクレアーゼに匹敵する毎分0.3〜1の範囲に及び(図20A)、一方で、5倍モル過 剰である基質DNAを伴う野生型(WT)Cas9−tracrRNA:crRNA複合 体のインキュベーションは、二重RNA誘導Cas9は複数ターンオーバー酵素である証 拠を提供した(図20B)。CRISPR I型カスケード複合体とは対照的に(18) 、Cas9は直線化およびスーパーコイルプラスミドの双方を切断する(図10Aおよび 11A)。従って、侵入プラスミドは、基本的に、異なるcrRNAでプログラムされた Cas9タンパク質によって複数回切断され得る。

図10(A) Cas9を、75−ヌクレオチドtracrRNAの存在または不在下 で、42−ヌクレオチドcrRNA−sp2(スペーサー2配列を含むcrRNA)でプ ログラムした。複合体を、スペーサー2および機能性PAMに相補的である配列を保有す る環状またはXhoI直線化プラスミドDNAに添加した。crRNA−sp1、特異性 制御;M、DNAマーカー;kbp、キロ塩基対。図17Aを参照。(B)Cas9をc rRNA−sp2およびtracrRNA(ヌクレオチド4〜89)でプログラムした。 複合体を、スペーサー2および機能性PAMに相補的である配列を保有する二重または単 鎖DNAでインキュベートした(4)。DNAの相補または非相補鎖の5’を放射標識し 、非標識パートナー鎖でアニールした。nt、ヌクレオチド。図17、BおよびCを参照 。(C)図10Aの切断産物のシークエンシング分析。シークエンシング反応のプライマ ー伸長の終結は、切断部位の位置を示す。3’末端Aオーバーハング(アスタリスク)は 、シークエンシング反応の人為産物である。図19、AおよびCを参照。(D)図10B の切断産物を、標識DNA二重鎖の相補および非相補鎖由来の5’が標識されたサイズマ ーカーと一緒に分析した。M、マーカー;P、切断産物。図19、BおよびCを参照。( E)tracrRNA、crRNA−sp2およびプロトスペーサー2DNA配列の概略 図である。crRNA(上線)およびプロトスペーサーDNA(下線)と相補性を有する tracrRNAの領域を示す。PAM配列は標識される;(C)および(D)にマッピ ングされる切断部位は白色矢印(C)、黒色矢印[(D)、相補鎖]、および黒色棒線[ (D)、非相補鎖]で表される。

図15はII型RNA媒介性CRISPR/Cas免疫経路を示す。発現および干渉工 程が図に示される。II型CRISPR/Cas座位はタンパク質Cas9、Cas1、 Cas2およびCsn2をコードする四つの遺伝子のオペロン、および、特有のゲノム標 的スペーサー(菱形)が散在した同一のリピート(黒色長方形)が続くリーダー配列から 成るCRISPRアレイ、およびトランス活性化tracrRNAをコードする配列から 構成される。ここに示されるのは、S.ピオゲネスSF370(受託番号NC_0027 37)のII型CRISPR/Cas座位である(4)。この座位で実験的に確認された プロモーターおよび転写ターミネーターが示される(4)。CRISPRアレイは、II 型システムに特異的な成熟プロセスを行う前駆体CRISPR RNA(pre−crR NA)分子として転写される(4)。S.ピオゲネスSF370では、tracrRNA は、pre−crRNAの各リピートと相補性を有する、長さ171および89ntであ る二つの一次転写物として転写される。第1のプロセシング現象はtracrRNAとp re−crRNAの対形成に関わり、Cas9タンパク質の存在下でハウスキーピングエ ンドリボヌクレアーゼRNase IIIによって認識および切断される二重鎖RNAを 形成する。二重鎖RNAのRNase III媒介性切断は、75ntのプロセシングさ れたtracrRNA、および、リピート配列の一部が隣接する一つのスペーサーの配列 を含む中央領域から成る66ntの中間体crRNAを作成する。第2のプロセシング現 象は、未知のリボヌクレアーゼ(複数可)によって媒介され、5’末端スペーサー由来の 誘導配列およびリピート由来の3’末端配列から成る長さ39〜42ntの成熟crRN Aの形成につながる。第1および第2のプロセシング現象に続いて、成熟tracrRN Aは成熟crRNAと対形成し、Cas9タンパク質と結合した状態を維持する。この3 元複合体では、二重tracrRNA:crRNA構造は、エンドヌクレアーゼCas9 を同種標的DNAに誘導する誘導RNAとして作用する。Cas9−tracrRNA: crRNA複合体による標的認識は、標的DNAのプロトスペーサー配列とcrRNAの スペーサー由来配列との間の相同性に関して侵入DNA分子を走査することで開始される 。DNAプロトスペーサー−crRNAスペーサーの相補性に加え、DNA標的はプロト スペーサーに隣接する短いモチーフ(NGG、ここで、Nは任意のヌクレオチドであり得 る)(プロトスペーサー隣接モチーフ−PAM)の存在を必要とする。二重RNAとプロ トスペーサー配列との間の対形成に続いて、Rループが形成され、Cas9は続いてDN A内に二重鎖切断(DSB)をもたらす。Cas9による標的DNAの切断は、タンパク 質内に二つの触媒性ドメインを必要とする。PAMに対する特定の部位では、HNHドメ インはDNAの相補鎖を切断する一方で、RuvC様ドメインは非相補鎖を切断する。

図16(A)S.ピオゲネスCas9を大腸菌内にN末端His6−MBPタグを含む 融合タンパク質として発現させ、アフィニティー、イオン交換およびサイズ排除クロマト グラフィー工程の組み合わせによって精製した。アフィニティー精製工程に続くTEVプ ロテアーゼ切断によって、アフィニティータグを除去した。示されるのは、Superd ex 200(16/60)カラム上の最終サイズ排除クロマトグラフィー工程のクロマ トグラムである。280および260nmの吸着率で判別される通り、混入核酸のない単 一の単量体ピークとしてCas9を溶離する。挿入図;溶離した画分を10%ポリアクリ ルアミドゲル上のSDS−PAGEで分離し、SimplyBlue Safe Sta in(インビトロジェン社)で染色した。(B)精製Cas9オルソログのSDS−PA GE分析。Cas9オルソログを、補足の材料および方法で記載した通り精製した。2. 5μgの各精製Cas9を、4〜20%勾配ポリアクリルアミドゲル上で分析し、Sim plyBlue Safe Stainで染色した。

図17(図10も参照)。プロトスペーサー1配列は、S.ピオゲネスSF370cr RNAsp1の標的である、S.ピオゲネスSF370(M1)SPy_0700由来で ある(4)。ここで、プロトスペーサー1配列を、PAMを非機能性配列(TTG)から 機能性配列(TGG)に変えることで、操作した。プロトスペーサー4配列は、S.ピオ ゲネスSF370crRNA−sp4の標的である、S.ピオゲネスMGAS10750 (M4)MGAS10750_Spy1285由来である(4)。(A)同種tracr RNA:crRNA二重鎖によって誘導されるプロトスペーサー1プラスミドDNA切断 。切断産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、エチジウムブロマイド染色で可視化した 。M、DNAマーカー;塩基対数で断片サイズが示される。(B)同種tracrRNA :crRNA−sp1二重鎖によって誘導されるプロトスペーサー1オリゴヌクレオチド DNA切断。切断産物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ホスフォ イメージャーによって可視化した。ヌクレオチド数で断片サイズが示される。(C)同種 tracrRNA:crRNA−sp4二重鎖によって誘導されるプロトスペーサー4オ リゴヌクレオチドDNA切断。切断産物を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって 分離し、ホスフォイメージャーによって可視化した。ヌクレオチド数で断片サイズが示さ れる。(A、B、C)(A)の実験は図10Aの通り実行され;(B)および(C)の実 験は図10Bの通りである。(B、C)tracrRNA:crRNA標的DNA相互作 用の概略が下に示される。tracrRNAとのcrRNA相補性およびプロトスペーサ ーDNAの領域にそれぞれ上線および下線が引かれている。PAM配列は標識される。

図18(図10も参照)。(A)プロトスペーサー2プラスミドDNAを、異なる濃度 のMg2+、Mn2+、Ca2+、Zn2+、Co2+、Ni2+またはCu2+の存在 下でtracrRNA:crRNA−sp2と複合体化したCas9でインキュベートし た。切断産物をアガロースゲル電気泳動で分離し、エチジウムブロマイド染色で可視化し た。プラスミド形態が示される。(B)PAMモチーフを含むプロトスペーサー4オリゴ ヌクレオチドDNA二重鎖をアニールし、双方の5’末端を放射標識する前にゲルで精製 した。二重鎖(10nM最終濃度)を、tracrRNA(ヌクレオチド23〜89)お よびcrRNAsp4(500nM最終濃度、1:1)でプログラムしたCas9でイン キュベートした。指定された時間点(分)で、10μlの一定分量の切断反応物を0.0 25%SDSおよび5mMのEDTAを含むホルムアミド緩衝液でクエンチし、変性ポリ アクリルアミドゲル電気泳動で図10Bの通り分析した。ヌクレオチド数でサイズが示さ れる。

図19(A)プロトスペーサー1プラスミドDNA切断のマッピング。図17Aの切断 産物を図10Cの通りシークエンシングによって分析した。3’末端Aオーバーハング( アスタリスク)はシークエンシング反応の人為産物であることに留意する。(B)プロト スペーサー4オリゴヌクレオチドDNA切断のマッピング。図17Cの切断産物を、変性 ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、プロトスペーサー4二重鎖DNAの相補およ び非相補鎖由来の5’末端標識オリゴヌクレオチドサイズマーカーと一緒に分析した。M 、マーカー;P、切断産物。レーン1〜2:相補鎖。レーン3〜4:非相補鎖。ヌクレオ チド数で断片サイズが示される。(C)tracrRNA、crRNA−sp1およびプ ロトスペーサー1DNA配列(上)並びにtracrRNA、crRNAsp4およびプ ロトスペーサー4DNA配列(下)の模式図である。tracrRNA:crRNAは、 crRNA−プロトスペーサーDNA対形成を通して相補プロトスペーサーDNAに誘導 される二重RNA構造を形成する。tracrRNAに相補的であるcrRNAおよびプ ロトスペーサーDNAの領域はそれぞれ下線および上線が引かれている。(A)(上)お よび(B)(下)にマッピングされる相補および非相補DNA鎖における切断部位は、そ れぞれ配列の上で、矢印(AおよびB、相補鎖)および黒色棒線(B、非相補鎖)によっ て表される。

図20(A) 異なるRNAプレアニールおよびタンパク質−RNAプレインキュベー ション条件下でのCas9のシングルターンオーバー動態。プロトスペーサー2プラスミ ドDNAを、プレアニールしたtracrRNA:crRNA−sp2でプレインキュベ ートしたCas9(○)、プレアニールしたtracrRNA:crRNA−sp2でプ レインキュベートしていないCas9(●)、プレアニールしていないtracrRNA およびcrRNA−sp2でプレインキュベートしたCas9(□)またはプレアニール していないRNAでプレインキュベートしていないCas9(■)のいずれかでインキュ ベートした。切断活性を時間に依存した方法でモニターし、アガロースゲル電気泳動、続 いてエチジウムブロマイド染色で分析した。三つの独立した実験からの切断の平均パーセ ンテージを時間(分)に対してプロットし、非線形回帰分析であてはめを行った。算出し た切断速度(kobs)を表に示す。結果は、Cas9のRNAへの結合は、試験した条 件下では速度を制限しないことを示す。プラスミド形態を示す。得られたkobs値は、 一般的に1分あたり1〜10とほぼ同程度の制限エンドヌクレアーゼの値に匹敵する(4 5〜47)。(B)Cas9は複数ターンオーバーエンドヌクレアーゼである。二重鎖t racrRNA:crRNA−sp2を添加したCas9(1nM、1:1:1−グラフ 上では灰色の線で示される)を、5倍過剰の天然プロトスペーサー2プラスミドDNAで インキュベートした。決められた時間間隔(0〜120分)で反応から試料を取り出すこ とで、切断をモニターし、続いてアガロースゲル電気泳動分析(上)および切断産物量( nM)の決定(下)を行った。三つの独立した実験の標準偏差を示す。調査した時間間隔 では、1nMのCas9は約2.5nMプラスミドDNAを切断できた。

各Cas9ヌクレアーゼドメインは一つのDNA鎖を切断する Cas9は、HNHおよびRuvCエンドヌクレアーゼの双方に相似のドメインを含む (図11Aおよび図3)(21〜23、27、28)。我々は、HNHまたはRuvC様 ドメインのいずれかの触媒残基で不活性化点変異を含むCas9変異形を設計および精製 した(図11Aおよび図3)(23、27)。天然プラスミドDNAとのこれら変異形C as9タンパク質のインキュベーションは、二重RNA誘導変異体Cas9タンパク質は ニックの入った開環状のプラスミドをもたらし、一方で、WT Cas9タンパク質−t racrRNA:crRNA複合体は線状DNA産物(図10Aおよび11A並びに図1 7Aおよび25A)を生成した。この結果は、Cas9HNHおよびRuvC様ドメイン はそれぞれ一つのプラスミドDNA鎖を切断することを示す。標的DNAのどの鎖が各C as9触媒ドメインによって切断されるかを決定するために、相補または非相補鎖のいず れかがその5’末端で放射標識された短いdsDNA基質で変異体Cas9−tracr RNA:crRNA複合体をインキュベートした。得られた切断産物は、Cas9HNH ドメインが相補DNA鎖を切断する一方で、Cas9RuvC様ドメインは非相補DNA 鎖を切断することを示した(図11Bおよび図21B)。

図11(A)(上)ドメイン変異の位置を示す、Cas9ドメイン構造の模式図。D1 0A、Asp10→Ala10;H840A;His840→Ala840。tracr RNA:crRNA−sp2とのWTまたはヌクレアーゼ変異体Cas9タンパク質の複 合体を、図10Aの通り、エンドヌクレアーゼ活性に関してアッセイを行った。(B)t racrRNAおよびcrRNA−sp2とのWT Cas9またはヌクレアーゼドメイ ン変異体の複合体を、図10Bの通り、活性に関して試験した。

図3 S.ピオゲネス(配列番号8)由来のCas9のアミノ酸配列を表す。様々な多 種多様の種由来のCas9/Csn1タンパク質は、HNHおよびRuvCエンドヌクレ アーゼの双方に類似するモチーフを含む二つのドメインを含む。(A)S.ピオゲネスC as9/Csn1に関して、モチーフ1〜4(モチーフ番号を配列の左側にマークしてい る)が示される。三つの予想RuvC様モチーフ(1、2、4)および予想HNHモチー フ(3)に上線が引かれている。本実験においてAlaで置換された残基Asp10およ びHis840は、配列上部のアスタリスクによって強調される。下線が引かれた残基は 、異なる種由来のCas9タンパク質の中で高度に保存されている。下線付き残基におけ る変異はCas9活性に機能的な影響をもたらす可能性が高い。本実験では、二つのヌク レアーゼ様活性の共役が実験的に示されることを留意されたい(図11および図21)。 (B)S.ピオゲネスCas9/Csn1に関して、モチーフ1〜4を含む、ドメイン1 (アミノ酸7〜166)および2(アミノ酸731〜1003)が示される。さらなる情 報のために表1および図5を参照されたい。

図21 HNHまたはRuvC様ドメインに変異を含む同種tracrRNA:crR NA指示性Cas9変異体によるプロトスペーサーDNA切断。(A)プロトスペーサー 1プラスミドDNA切断。実験を図11Aの通り実施した。塩基対数でプラスミドDNA 立体構造およびサイズが示される。(B)プロトスペーサー4オリゴヌクレオチドDNA 切断。実験を図11Bの通り実施した。ヌクレオチド数でサイズが示される。

標的DNA結合および切断のための二重RNAの必要性 tracrRNAは、標的認識の下流において、Cas9のヌクレアーゼ活性および/ または標的DNA結合を刺激するために必要であり得る。これらの可能性をそれぞれ識別 するために、電気泳動移動度シフトアッセイを用いて、crRNAおよび/またはtra crRNAの存在または不在下で触媒的に不活性であるCas9による標的DNA結合を モニターした。tracrRNAの添加がCas9による標的DNA結合を実質的に強化 する一方で、Cas9単独またはCas9−crRNAでの特異的DNA結合はほとんど 観察されなかった(図22)。これは、tracrRNAが標的DNA認識のために必要 であることを示し、標的DNAの相補鎖との相互作用のためにcrRNAを適切に方向付 けることによる可能性がある。予想tracrRNA:crRNA二次構造は、crRN Aの3’末端における22個のヌクレオチドと成熟tracrRNAの5’末端付近での 断片との間での塩基対形成を含む(図10E)。この相互作用は、異なるcrRNAで配 列が様々である、crRNAの5’末端の20個のヌクレオチドが標的DNA結合に利用 可能である構造を形成する。crRNA塩基対形成領域の下流の大部分のtracrRN Aは自由にRNA構造(複数可)をさらに形成し、および/または、Cas9もしくは標 的DNA部位と相互作用する。tracrRNAの全長が部位特異的Cas9触媒性DN A切断に必要かどうかを決定するために、全長成熟(42ヌクレオチド)crRNAおよ び5’および3’末端で配列が欠如したtracrRNAの様々な切断形態を使用して再 構成したCas9−tracrRNA:crRNA複合体を試験した。これらの複合体を 、短い標的dsDNAを用いて切断に関して試験した。天然配列のヌクレオチド23〜4 8を維持する実質的に切断されたバージョンのtracrRNAは、頑強な二重RNA誘 導Cas9触媒性DNA切断を支援することができた(図12、AおよびC、および図2 3、AおよびB)。いずれかの末端からのcrRNAの切断は、tracrRNA存在下 でのCas9触媒性切断は3′末端で10個のヌクレオチドを欠如したcrRNAで引き 起こされ得ることを示した(図12、BおよびC)。対照的に、crRNAの5’末端か らの10−ヌクレオチド欠失はCas9によるDNA切断を無効にする(図12B)。ま た、様々な細菌種からのCas9オルソログを、S.ピオゲネスtracrRNA:cr RNA誘導DNA切断を支援するそれらの能力に関して分析した。近縁種S.ピオゲネス Cas9オルソログとは対照的に、さらに遠縁種であるオルソログは切断反応では機能的 ではなかった(図24)。同様に、さらに遠縁システム由来である、tracrRNA: crRNA二重鎖によって誘導されるS.ピオゲネスCas9は、DNAを効率的に切断 できなかった(図24)。DNAの二重RNA誘導切断の種特異性は、Cas9、tra crRNA、およびcrRNAリピートの共進化、並びに、二重RNA内に特定のCas 9オルソログとの三元複合体の形成のために不可欠な未知の構造および/または配列の存 在を示す。

細菌細胞内のII型CRISPR/Cas免疫のためのプロトスペーサー配列必要条件 を調査するために、S.ピオゲネスにおける形質転換に続きその維持のために単一ヌクレ オチド変異を保有する、一連のプロトスペーサー含有プラスミドDNAを分析し、および Cas9によって切断される能力を分析した。プロトスペーサーの5’末端で導入される 点変異とは対照的に、PAMおよびCas9切断部位に近い領域における変異はインビボ では許容されず、およびインビトロでのプラスミド切断効率の低下につながった(図12 D)。我々の結果は、インビボでS.サーモフィラスのII型CRISPRシステムで選 択されたプロトスペーサーエスケープ変異体の以前の報告と合致している(27、29) 。さらに、プラスミド維持および切断の結果は、プロトスペーサー配列の3’末端に位置 される、crRNAとの相互作用およびそれに続くCas9による切断のために必要不可 欠な「シード」領域の存在をほのめかす。この考えを支持するように、Cas9はcrR NAとの相補DNA鎖ハイブリダイゼーションを強化し;この強化はcrRNA標的配列 の3’末端領域で最も強かった(図25A〜C)。この発見を実証するように、crRN AとPAMに近接する標的DNA部位との間の少なくとも一連の13の連続した塩基対が 効率的な標的切断のために必要である一方で、プロトスペーサーの5’末端領域において 最大六つの隣接ミスマッチが許容される(図12E)。これらの発見は、アルゴノートタ ンパク質(30、31)並びにカスケードおよびCsy CRISPR複合体(13、1 4)における標的核酸認識のための以前観察されたシード配列必要条件を連想させる。

図12(A)Cas9−tracrRNA:crRNA複合体を、42ヌクレオチドc rRNA−sp2および切断tracrRNA構築物を用いて再構成し、図10Bの通り 、切断活性に関してアッセイを行った。(B)全長tracrRNAおよびcrRNA− sp2切断でプログラムされたCas9を(A)の通り活性に関してアッセイを行った。 (C)Cas9媒介性DNA切断を誘導できるtracrRNAおよびcrRNAの最小 領域(影領域)。(D)WTまたは変異体プロトスペーサー2配列を指定された点変異で 含むプラスミドを、図10Aの通りプログラムされたCas9で、インビトロで切断し、 WTまたはpre−crRNA欠損S.ピオゲネスの形質転換アッセイのために使用した 。プラスミドDNA1マイクログラムあたりのコロニー形成単位(CFU)として形質転 換効率を算出した。エラーバーは三つの生物学的複製物に関するSDを示す。(E)異な る範囲のcrRNA標的DNAミスマッチを伴ってWTおよび変異体プロトスペーサー2 挿入を含むプラスミド(下)を、インビトロでプログラムされたCas9(上)で切断し た。切断反応をさらにXmnIで消化した。1880および800bp断片はCas9作 成切断産物である。M、DNAマーカー。

図22 プロトスペーサー4標的DNA二重鎖およびCas9(変異D10AおよびH 840を不活性化するヌクレアーゼドメインを含む)を単独、または、crRNA−sp 4、tracrRNA(75nt)もしくは双方の存在下で用いて、電気泳動移動度シフ トアッセイを実施した。標的DNA二重鎖を双方の5’末端で放射標識した。Cas9( D10/H840A)および複合体を1nMから1μMに滴定した。結合を8%天然ポリ アクリルアミドゲル電気泳動で分析し、ホスフォイメージャーで可視化した。Cas9単 独で標的DNAと適度の親和性で結合することに留意されたい。この結合はcrRNAの 添加に影響されず、これはdsDNAとの配列非特異的相互作用を表すことを暗示する。 さらに、この相互作用はcrRNAの不在下でtracrRNA単独で打ち負かされ得る 。crRNAおよびtracrRNA双方の存在下では、標的DNA結合は実質的に強化 され、特定の標的DNA認識を表す、異なる電気泳動移動度を伴う種をもたらす。

図23A crRNA結合領域の一部分および下流領域の一部分を含むtracrRN Aの断片は、Cas9によるプロトスペーサーオリゴヌクレオチドDNAの切断を指示す るのに十分である。(A)プロトスペーサー1オリゴヌクレオチドDNA切断および(B )成熟同種crRNAおよび様々なtracrRNA断片で誘導された、Cas9による プロトスペーサー4オリゴヌクレオチドDNA切断。(A、B)ヌクレオチド数でサイズ が示される。

図24 S.ピオゲネスのCas9のように、グラム陽性の細菌L.イノキュアおよび S.サーモフィラスの近縁Cas9オルソログは、S.ピオゲネスのtracrRNA: crRNAに標的された際、プロトスペーサーDNAを切断する。しかし、同じ条件下で 、より近縁ではない、グラム陰性細菌C.ジェジュニおよびN.メニンギティディスのC as9オルソログによるDNA切断は観察されない。Spy、S.ピオゲネスSF370 (受託番号NC_002737);Sth、S.サーモフィラスLMD−9(STER_ 1477Cas9オルソログ;受託番号NC_008532);Lin、L.イノキュア Clip11262(受託番号NC_003212);Cje、C.ジェジュニNCTC 11168(受託番号NC_002163);Nme、N.メニンギティディスA Z2 491(受託番号NC_003116)。(A)プロトスペーサープラスミドDNAの切 断。プロトスペーサー2プラスミドDNA(300ng)を、異なる種のハイブリッドt racrRNA:crRNA−sp2二重鎖(500nM、1:1)によって誘導された 異なるCas9オルソログ(500nM)による切断に供した。RNA二重鎖を設計する ために、以前公開されたノーザンブロットデータに基づいて、L.イノキュアおよびN. メニンギティディスからのtracrRNA配列を予想した(4)。二重ハイブリッドR NA二重鎖は種特異性tracrRNAおよび異種crRNAから成る。異種crRNA 配列を、3’末端のL.イノキュアまたはN.メニンギティディスtracrRNA結合 リピート配列と融合するS.ピオゲネスDNA標的sp2配列を5’末端に含むように設 計した。N.メニンギティディスまたはC.ジェジュニ由来ではなく、S.サーモフィラ スおよびL.イノキュア由来のCas9オルソログは、少し低下した効率を伴ったが、S .ピオゲネスtracrRNA:crRNA−sp2に誘導されてプロトスペーサー2プ ラスミドDNAを切断し得る。同様にハイブリッドL.イノキュアtracrRNA:c rRNA−sp2はS.ピオゲネスCas9を誘導して、高い効率を伴って標的DNAを 切断し得る一方で、ハイブリッドN.メニンギティディスtracrRNA:crRNA −sp2はS.ピオゲネスCas9によるDNA切断活性をほんの少ししか引き起こさな い。対照として、N.メニンギティディスおよびL.イノキュアCas9オルソログは、 同種ハイブリッドtracrRNA:crRNA−sp2に誘導される際、プロトスペー サー2プラスミドDNAを切断する。上述した通り、N.メニンギティディスのtrac rRNA配列は予想されるだけであり、RNAシークエンシングではまだ確証されていな いことに留意されたい。従って、切断の低効率は、Cas9オルソログの低活性または非 最適に設計されたtracrRNA配列の使用のいずれかの結果であり得る。(B)プロ トスペーサーオリゴヌクレオチドDNAの切断。未標識非相補鎖リゴヌクレオチド(プロ トスペーサー1)(10nM)(左)でプレアニールした5’末端が放射活性的に標識さ れた相補鎖リゴヌクレオチド(10nM)または未標識非相補鎖リゴヌクレオチド(10 nM)(右)(プロトスペーサー1)でプレアニールした5’末端放射活性的に標識され た非相補鎖リゴヌクレオチド(10nM)を、S.ピオゲネスのtracrRNA:cr RNA−sp1二重鎖(500nM、1:1)で誘導された、様々なCas9オルソログ (500nM)による切断に供した。N.メニンギティディスまたはC.ジェジュニ由来 ではなく、S.サーモフィラスおよびL.イノキュア由来のCas9オルソログは、S. ピオゲネス同種二重RNAによって誘導され、効率は低下するが、プロトスペーサーオリ ゴヌクレオチドDNAを切断し得る。相補DNA鎖上の切断部位が全三つのオルソログに 関して同一であることに留意されたい。非相補鎖の切断は別個の場所で生じる。(C)C as9オルソログのアミノ酸配列同一性。S.ピオゲネス、S.サーモフィラスおよびL .イノキュアCas9オルソログは高パーセンテージのアミノ酸同一性を共有する。対照 的に、C.ジェジュニおよびN.メニンギティディスCas9タンパク質は配列および長 さにおいて異なる(約300〜400のアミノ酸だけ、より短い)。(D)S.ピオゲネ ス(実験で確証された(4))、L.イノキュア(予想)またはN.メニンギティディス (予想)の対応tracrRNAオルソログとの、操作された種特異的異種crRNA配 列の同時折り畳み。tracrRNA;crRNAスペーサー2断片;およびcrRNA リピート断片をトレースおよび標識した。L.イノキュアおよびS.ピオゲネスハイブリ ッドtracrRNA:crRNA−sp2二重鎖は、N.メニンギティディスハイブリ ッドtracrRNA:crRNAとは異なるが、非常に類似した構造的な特徴を共有す る。(A)および(B)で上述した切断データと一緒に、同時折り畳み予想は、Cas9 −tracrRNA:crRNAによる標的DNAの種特異的切断が、同種Cas9オル ソログによって特異的に認識されるtracrRNA:crRNA二重鎖の未知の構造的 特色によって指示されることを示すであろう。(A)および(B)で観察される切断の種 特異性はCas9と二重tracrRNA:crRNAの結合の段階で生じることが予想 された。二重RNA誘導である標的DNAのCas9切断は、種特異的であり得る。Ca s9タンパク質およびtracrRNA:crRNA二重鎖間の多様性/進化の度合いに よって、Cas9および二重RNAオルソログは部分的に互換可能である。

図25A DNA標的化領域およびtracrRNA結合領域を含むcrRNAの領域 に相補的である、一連の8ヌクレオチドDNAプローブを、tracrRNA:crRN A二重鎖およびCas9−tracrRNA:crRNA三次複合体と関連して、crR NAとハイブリダイズする能力に関して分析した。(A)アッセイで使用されたDNAプ ローブの配列およびそれらのcrRNA−sp4での結合部位の模式図。(B〜C)tr acrRNA:crRNA−sp4またはCas9−tracrRNA:crRNA−s p4を伴う標的DNAプローブの電気泳動移動シフトアッセイ。tracrRNA(15 〜89)構築物を実験で使用した。二重鎖または複合体の標的オリゴヌクレオチドDNA への結合を16%天然ポリアクリルアミドゲル上で分析し、ホスフォイメージャーで可視 化した。

短い配列モチーフがRループ形成を支配する 複数のCRISPR/Casシステムで、自己対非自己の認識が、PAM(27、29 、32〜34)として称される、外来性ゲノムに保存される短い配列モチーフを含むこと が示されている。PAMモチーフはほんの数個の塩基対の長さであり、それらの正確な配 列および位置はCRISPR/Casシステムの種類によって異なる(32)。S.ピオ ゲネスII型システムでは、PAMはNGGコンセンサス配列に適合し、標的DNA内で 、crRNA結合配列の塩基対一つ下流で生じる二つのG:C塩基対を含む(4)。形質 転換アッセイは、GGモチーフが、細菌細胞内におけるCRISPR/Casによるプロ トスペーサープラスミドDNA除去に必要不可欠であることを示し(図26A)、S.サ ーモフィラスでの前の観察と一貫している(27)。モチーフはまた、tracrRNA :crRNA誘導Cas9によるインビトロプロトスペーサープラスミド切断にも必要不 可欠である(図26B)。Cas9−tracrRNA:crRNA複合体による標的D NAの切断におけるPAMの役割を決定するために、相補もしくは非相補鎖または双方上 のPAM配列で変異を含む一連のdsDNA二重鎖を試験した(図13A)。これらの基 質を用いた切断アッセイは、Cas9触媒性DNA切断が、I型CRISPR/Casシ ステムによる相補鎖PAM認識とは対照的に、DNAの非相補鎖上のPAM配列の変異に 特に感度が高いことを示した(18、34)。標的単鎖DNAの切断はPAMモチーフの 変異によって影響されなかった。この観察は、PAMモチーフは標的dsDNAに関して のみ必要であり、従って、二重鎖巻き戻し、鎖侵入、およびRループ構造の形成を許可す るために必要であり得ることを示唆する。プロトスペーサー2標的DNAに存在しない基 準PAMの存在のために選択された、異なるcrRNA標的DNA対(crRNA−sp 4およびプロトスペーサー4DNA)を使用した場合、PAMの双方のGヌクレオチドが 効率的なCas9触媒性DNA切断のために必要であることを発見した(図13Bおよび 図26C)。Cas9−tracrRNA:crRNA複合体を正しい標的DNA部位に 動員する際にPAMが直接的な役割を果たすかどうかを決定するために、天然ゲル移動度 シフトアッセイによって、標的DNA配列に関する複合体の結合親和性を分析した(図1 3C)。PAM配列のいずれかのGの変異は標的DNAのためのCas9−tracrR NA:crRNAの親和性を実質的に低下させた。この発見は、Cas9による標的DN A結合のPAM配列に関する役割を説明する。

図13(A)二重RNAプログラムCas9を、図10Bの通り、その活性に関して試 験した。標的DNAにおけるWTおよび変異体PAM配列は線で示される。(B)WTお よび変異体PAMモチーフを含むプロトスペーサー4標的DNA二重鎖(双方の5’末端 で標識される)を、tracrRNA:crRNA−sp4(ヌクレオチド23〜89) でプログラムされたCas9でインキュベートした。指定した時間点(分)で、一定分量 の切断反応を取り出し、図10Bの通り、分析した。(C)電気泳動移動度シフトアッセ イを、WTおよび変異させたPAMモチーフを含む、RNAプログラムCas9(D10 A/H840A)およびプロトスペーサー4標的DNA二重鎖[(B)のものと同一]を 使って実施した。Cas9(D10A/H840A)−RNA複合体を100pMから1 mMに滴定した。

図26(A)プロトスペーサー2プラスミドDNAにおけるPAM配列の変異は細菌細 胞内II型CRISPR/Casシステムによるプラスミド維持の干渉を無効にする。機 能性または変異させたPAMを伴う野生型プロトスペーサー2プラスミドを、図12Dの 通り、野生型(株SF370、EC904とも呼ばれる)およびpre−crRNA−欠 陥変異体(EC1479)S.ピオゲネスに形質転換した。PAM変異はインビボのII 型CRISPR/Casシステムには許容されない。三つの生物学的複製物の平均値およ び標準偏差が示される。(B)プロトスペーサープラスミドDNAのPAM配列の変異は 、Cas9−tracrRNA:crRNAによる切断を無効にする。機能性または変異 させたPAMを伴う野生型プロトスペーサー2プラスミドを図10Aの通り、Cas9切 断に供した。PAM変異体プラスミドはCas9−tracrRNA:crRNA複合体 に切断されない。(C)標準PAM配列の変異は細菌細胞内II型CRISPR/Cas システムによるプラスミド維持の干渉を無効にする。機能性または変異させたPAMを伴 う野生型プロトスペーサー4プラスミドを、tracrRNAおよびcrRNA−sp2 でプログラムされたCas9で切断した。切断反応を、XmnI制限エンドヌクレアーゼ の存在下で実行し、Cas9切断産物を二つの断片として可視化した(約1880および 約800bp)。塩基対数で断片サイズが示される。

Cas9は単一キメラRNAでプログラムされ得る tracrRNA:crRNA二重鎖(図10Eおよび12C)の可能性のある二次構 造の試験は、部位特異的Cas9触媒性DNA切断に必要な特色が単一キメラRNA内に 獲得され得ることを示した。tracrRNA:crRNA標的選択メカニズムは自然の 中で効率よく作用するが、単一RNA誘導Cas9の可能性は、プログラムDNA切断お よびゲノム編集(図1A〜B)のための可能性のある利用性のために、魅力的である。5 ′末端に標的認識配列を含み、tracrRNAとthecrRNAとの間に生じる塩基 対形成相互作用を保持するヘアピン構造が続く、キメラRNAの二つのバージョンを設計 した(図14A)。この単一転写は効率的にcrRNAの3’末端をtracrRNAの 5’末端に融合させ、それによって、Cas9による部位特異的DNA切断に誘導するの に必要である二重RNA構造を模倣する。プラスミドDNAを用いる切断アッセイでは、 さらに長いキメラRNAは切断tracrRNA:crRNA二重鎖に関して観察された ものと類似した方法でCas9触媒性DNA切断を誘導できたことを観察した(図14A および図27、AおよびC)。さらに短いキメラRNAはこのアッセイでは効率的に作用 せず、tracrRNA:crRNA塩基対相互作用から5〜12位置先にあるヌクレオ チドが効率的なCas9結合および/または標的認識に重要であることを確証する。短い dsDNAを基質として用いる切断アッセイでも同様の結果を得、標的DNAでの切断部 位が二重tracrRNA:crRNAを誘導として用いて観察されたものに同一である ことを更に示す(図14Bおよび図27、BおよびC)。最終的に、キメラRNAの設計 が普遍的に適用可能かどうかを確立するために、五つの異なるキメラ誘導RNAを、緑色 蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子の一部分を標的とするように操作し(図2 8、A〜C)、インビトロでGFPコード配列を保有するプラスミドに対するそれらの有 効性を試験した。五つの全ての件で、三つのキメラRNAでプログラムされたCas9は 正しい標的部位でプラスミドを効率よく切断し(図14Cおよび図28D)、キメラRN Aの合理的な設計が頑強で、原則的に、標的配列に隣接したGGジヌクレオチドの存在を 超えた制約をほとんど持たない任意の対象DNA配列の標的を可能にし得ることを示す。

図1 DNA標的化RNAは、単鎖の「DNA標的化断片」および一連の二重鎖RNA を含む「タンパク質結合断片」を含む。(A)DNA標的化RNAは二つの異なるRNA 分子(「二重分子」または「2分子」DNA標的化RNAと称される)を含み得る。二重 分子DNA標的化RNAは「標的化RNA」および「活性化RNA」を含む。(B)DN A標的化RNAは単一RNA分子(「単一分子」DNA標的化RNAと称される)を含み 得る。単一分子DNA標的化RNAは「リンカーヌクレオチド」を含む。

図14(A)プロトスペーサー4標的配列およびWT PAMを保有するプラスミドを tracrRNA(4〜89):crRNA−sp4二重鎖またはGAAAテトラループ でcrRNAの3’末端をtracrRNAの5’末端に結合することで構築されたイン ビトロ転写キメラRNAでプログラムされたCas9による切断に供した。切断反応をX mnIでの制限マッピングによって分析した。キメラRNA AおよびBの配列を、DN A標的(下線)、crRNAリピート由来配列(上線)、およびtracrRNA由来( 下部に点線)配列で示す。(B)プロトスペーサー4DNA二重鎖切断反応を図10Bの 通り実施した。(C)GFP遺伝子を標的とするように設計された五つのキメラRNAを 用いて、Cas9がGFP遺伝子含有プラスミドを切断するようにプログラムした。プラ スミド切断反応を、プラスミドDNAがCas9切断後にAvrIIで制限マッピングさ れたという点を除いて、図12Eの通り実施した。

図27(A)単一のキメラRNAは、同種プロトスペーサープラスミドDNA(プロト スペーサー1およびプロトスペーサー2)のCas9触媒性切断を誘導する。切断反応を XmnI制限エンドヌクレアーゼの存在下で実行し、Cas9切断産物を二つの断片(約 1880および約800bp)として可視化した。塩基対数で断片サイズを示す。(B) 単一のキメラRNAは、同種プロトスペーサープラスミドDNA(プロトスペーサー1お よびプロトスペーサー2)のCas9触媒性切断を誘導する。ヌクレオチド数で断片サイ ズを示す。(C)実験で使用したキメラRNAの模式図である。キメラRNA Aおよび Bの配列が、crRNAの5’プロトスペーサーDNA標的配列(下線)、crRNAの tracrRNA結合配列(上線)およびtracrRNA由来配列(下部に点線)と一 緒に示されている。

図28(A)GFP発現プラスミドpCFJ127の模式図である。GFPオープンリ ーディングフレームの標的部分を黒色の矢頭で示す。(B)標的領域の配列の詳細である 。キメラRNAによって標的された配列は灰色傍線で示される。PAMジヌクレオチドは 枠で囲まれている。特有のSalI制限部位は標的座位の60bp上流に位置する。(C )左:標的DNA配列がそれらの隣接PAMモチーフと一緒に示される。右:キメラ誘導 RNAの配列。(D)pCFJ127は、示される通り、キメラRNA GFP1〜5で プログラムされたCas9によって切断された。プラスミドをさらにSalIで消化し、 反応を3%アガロースゲル上の電気泳動で分析し、SYBR Safeで染色することで 可視化した。

結論 Cas9エンドヌクレアーゼが標的DNA内で部位特異的二重鎖切断を導入するように 指示する二重RNA構造を含むDNA干渉メカニズムが確認された。tracrRNA: crRNA誘導Cas9タンパク質は、異なるエンドヌクレアーゼドメイン(HNHおよ びRuvC様ドメイン)を利用して標的DNAの二つの鎖を切断する。Cas9による標 的認識は、crRNAにおけるシード配列およびDNA標的のcrRNA結合領域に隣接 したGGジヌクレオチド含有PAM配列の双方を必要とする。Cas9エンドヌクレアー ゼは、任意の対象dsDNA配列を標的および切断する単一の転写物として設計された誘 導RNAでプログラムされ得ることをさらに示す。本システムは、効率的で、融通が利き 、および誘導キメラRNAにおけるDNA標的化結合配列を変えることでプログラム可能 である。亜鉛フィンガーヌクレアーゼおよび転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ はゲノム(35〜38)を操作するよう設計される人工酵素として著しい興味を引き付け ている。これは、遺伝子標的およびゲノム編集適用を促すRNAプログラムCas9に基 づいた代替方法論を意味する。

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材料および方法 プラスミド設計および構築 HAエピトープ(アミノ酸配列DAYPYDVPDYASL(配列番号274))、核 局在シグナル(アミノ酸配列PKKKRKVEDPKKKRKVD(配列番号275)) と融合した、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9(残基1〜1368)をコードす る配列をヒト発現のためにコドン最適化し、GeneArtで合成した。DNA配列は配 列番号276で、タンパク質配列は配列番号277である。ライゲーション独立クローニ ング(LIC)を使用してこの配列をpcDNA3.1由来GFPおよびmCherry LICベクター(ベクター6Dおよび6BはそれぞれUCバークレー・マクロラボ(UC Berkeley MacroLab)から取得)に挿入し、CMVプロモーターの制 御下で発現されるCas9−HA−NLS−GFPおよびCas9−HA−NLS−mC herry融合をもたらした。誘導sgRNAを、発現ベクターpSilencer2. 1−U6puro(ライフ・テクノロジー社(Life Technologies)) およびpSuper(オリゴエンジン社(Oligoengine))を用いて発現させ た。相補オリゴヌクレオチドをアニールしてRNAコードDNA配列を形成し、pSil encer2.1−U6puroのBamHIおよびHindIII部位とpSuper のBglIIおよびHindIII部位との間でアニールしたDNA断片をライゲーショ ンすることで、RNA発現構築物を作成した。

細胞培養条件およびDNA形質移入 HEK293T細胞を、5%CO2を伴う37℃の加湿インキュベーター内で10%ウ シ胎仔血清(FBS)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で維持した。 推奨プロトコルで、X−tremeGENE DNA Transfection Re agent(ロシュ社)またはTurbofect Transfection Rea gent(サーモ・サイエンティフィック社(ThermoScientific))の いずれかを用いて、細胞を一過性的にプラスミドDNAで形質移入した。手短に、0.5 μgのCas9発現プラスミドおよび2.0μgのRNA発現プラスミドを用いて、6ウ ェルプレート内で、HEK293T細胞を60〜80%培養密度で形質移入した。形質移 入効率は、蛍光顕微鏡で観察されたGFP陽性細胞の割合をもとに、Tubofectに 関しては30〜50%(図29Eおよび37A〜B)、X−tremegeneに関して は80〜90%(図31B)であると予想された。形質移入から48時間後、細胞をリン 酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、250μlの溶解緩衝液(20mMのHepes p H7.5、100mMの塩化カリウム(KCl)、5mMの塩化マグネシウム(MgCl 2)、1mMのジチオスレイトール(DTT)、5%グリセロール、0.1%Trito n X−100、ロシュプロテアーゼインヒビターカクテルが添加されている)を適用す ることで溶解し、次いで、4℃で10分間振動させた。得られた細胞可溶化物をさらなる 分析のために一定分量に分割した。製造業者のプロトコルに従ってDNeasy Blo odおよびTissue Kit(キアゲン社)を使用してゲノムDNAを200μlの 細胞可溶化物から単離した。

Cas9発現のウェスターンブロット分析 Cas9−HA−NLS−GFP発現プラスミドで形質移入したHEK293Tを、上 述の通り形質移入の48時間後に回収および溶解した。5ulの可溶化物を10%SDS ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動、PVDF膜上にブロットし、HRP結合抗HA抗 体(シグマ社(Sigma))、1倍PBS中1:1000希釈)でプローブした。

Surveyorアッセイ Surveyorアッセイを以前に記載された通り実施した[10、12、13]。手 短に、ヒトクラスリン軽鎖A(CLTA)座位を、高忠実度ポリメラーゼ、Hercul ase II Fusion DNA Polymerase(アジレントテクノロジー 社(Agilent Technologies))並びにフォワードプライマー5’− GCAGCAGAAGAAGCCTTTGT−3’(配列番号//)およびリバースプラ イマー5’−TTCCTCCTCTCCCTCCTCTC−3’(配列番号//)を用い て、200ngのゲノムDNAからPCRで増幅した。300ngの360bp単位複製 配列を次いで、95℃まで加熱することで変性し、ヒートブロックを用いてゆっくりプレ アニールし、無作為に野生型および変異体DNA鎖を再びハイブリダズした。試料を次い でCel−1ヌクレアーゼ(Surveyor Kit、トランスジェノミック社(Tr ansgenomic))で42℃にて1時間インキュベートした。Cel−1は、ミス マッチを含むDNAらせん体(野生型:変異体ハイブリダイゼーション)を認識および切 断する。Cel−1ヌクレアーゼ分解産物を10%アクリルアミドゲル上で分離し、SY BR Safe(ライフ・テクノロジー社)で染色することで可視化した。ImageL abソフトウェア(バイオラド社)を用いて切断バンドの定量化を実施した。切断産物の 平均強度(160〜200bp)を非切断PCR産物の強度(360bp)および切断産 物の合計で割ることで、切断パーセントを決定した。

インビトロ転写 組み換えT7 RNAポリメラーゼおよび相補的な合成オリゴヌクレオチドを以前に記 載された通りアニールすることで作成したDNA鋳型を用いて、誘導RNAをインビトロ で転写した[14]。7Mのウレア変性アクリルアミドゲル上での電気泳動によってRN Aを精製し、エタノール沈殿し、DEPC処理水に溶解した。

ノーザンブロット分析 mirVana小RNA単離キット(アンビオン社(Ambion))を用いて、RN AをHEK293T細胞から精製した。各試料のために、RNA添加緩衝液(0.5倍T BE(pH7.5)、0.5mg/mlブロモフェノールブルー、0.5mgキシレンシ アノールおよび47%ホルムアミド)中70℃にて10分間の変性後、800ngのRN Aを10%ウレア−PAGEゲル上で分離した。ブロモフェノールブルー染料がゲルの底 に到達するまで0.5倍TBE緩衝液中10Wで電気泳動した後、試料を、0.5倍TB E中で1.5時間、20ボルトでNytran膜上にエレクトロブロットした。移動した RNAをUV−Crosslinker(ストラテジーン社(Strategene)) 中Nytran膜上で架橋結合させ、40%ホルムアミド、5倍SSC、3倍Dernh ardt’s(フィコール、ポリビニルプロリドンおよびBSAをそれぞれ0.1%)お よび200μg/mlのサケ精子DNAを含む緩衝液中で45℃にて3時間、プレハイブ リダイズした。プレハイブリダイズした膜を、5’−32P標識アンチセンスDNAオリ ゴプローブが100万cpm/mlで添加されたプレハイブリダイゼーション緩衝液中で 一晩インキュベートした。SSC緩衝液中での複数回の洗浄後(最終洗浄は0.2倍SC C中)、膜をホスフォイメージャーで撮像した。

インビトロ切断アッセイ 細胞可溶化物を上述した通りに調製し、CLTA−RFPドナープラスミドでインキュ ベートした[10]。切断反応は20μlの合計体積で実行され、10μl可溶化物、2 μlの5倍切断緩衝液(100mMのHEPES pH7.5、500mMのKCl、2 5mMのMgCl2、5mMのDTT、25%グリセロール)および300ngのプラス ミドを含んでいた。指定された箇所で、反応に10pmolのインビトロで転写されたC LTA1 sgRNAを添加した。反応を37℃で1時間インキュベートし、続いて10 UのXhoI(NEB)でさらに30分間37℃で消化した。反応をProteinas eK(サーモ・サイエンティフィック社)によって停止し、37℃で15分間インキュベ ートした。切断産物を1%アガロースゲル上の電気泳動によって分析し、SYBR Sa feで染色した。約2230および約3100bpの断片の存在がCas9媒介性切断を 示す。

結果 Cas9がゲノムDNAを生細胞内で切断するようにプログラムされ得るのかどうかを 試験するために、Cas9を、ヒトクラスリン軽鎖(CLTA)遺伝子を標的とするよう 設計されたsgRNAと一緒に同時発現させた。CLTAゲノム座位は以前からZFNを 用いて標的および編集されてきた[10]。我々はまずヒトHEK293T細胞内のスト レプトコッカス・ピオゲネスCas9タンパク質およびsgRNAのヒトコドン最適化バ ージョンの発現を試験した。160kDaのCas9タンパク質を、Cas9のC末端に 接合されたHAエピトープ、核局在シグナル(NLS)および緑色蛍光タンパク質(GF P)を有する融合タンパク質として発現した(図29A)。GFP融合Cas9をコード するベクターで形質移入した細胞の分析は、豊富なCas9発現および核局在を示した( 図29B)。Cas9タンパク質はこれらの細胞の抽出物内でほぼ完全に発現されること がウェスターンブロットで確認された(図29A)。Cas9をプログラムするために、 標的DNA配列に相補的である5’末端20ヌクレオチド配列およびCas9結合に必要 な42ヌクレオチドの3’末端ステムループ構造を有するsgRNAを発現した(図29 C)。この3’末端配列はインビトロでCas9をプログラムするために以前から使用さ れる最小ステムループ構造に対応する[8]。このsgRNA発現は、ヒトU6(RNA ポリメラーゼIII)プロモーターによって助長された[11]。U6プロモーター助長 sgRNAプラスミド発現ベクターで形質移入した細胞から抽出したRNAのノーザンブ ロット分析によって、sgRNAは確実に発現されること、および、それらの安定性はC as9の存在によって強化されることが示された(図29D)。

図29は、ヒト細胞のCas9および誘導RNAが標的座位で二重鎖DNA切断をもた らすことを示す。(A)上;Cas9−HA−NLS−GFP発現構築物の模式図。下; Cas9発現プラスミドで形質移入したHEK293T細胞の可溶化物を、抗HA抗体を 用いてウェスターンブロットによって分析した。(B)Cas9−HA−NLS−GFP を発現するHEK293T細胞の蛍光顕微鏡観察。(C)ヒトCLTA座位を標的とする 単一誘導RNA(sgRNA、すなわち、単一分子DNA標的化RNA)の設計。上;ヒ トCLTA遺伝子のエキソン7におけるsgRNA標的部位の模式図。CLTA1 sg RNAの誘導断片にハイブリダイズする標的配列は「CLTA1 sgRNA」として示 される。GGジヌクレオチドプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)は矢印で示される 。黒色の線は対照ZFNタンパク質のDNA結合領域を意味する。CLTAオープンリー ディングフレームの翻訳終結コドンは参照のために点線で示される。中央:sgRNA発 現構築物の模式図。RNAを、U6PolIIIプロモーターおよびPol III転写 ターミネーターシグナルとして作用するポリ(T)トラクトの制御下で発現する。下:C as9による標的DNAのsgRNA誘導切断。sgRNAは、20ntの5’末端誘導 断片、続いて、Cas9結合に必要な42ntのステムループ構造から成る。二つの標的 DNA鎖のCas9媒介性切断は、標的DNAの巻き戻し、および、sgRNAの誘導断 片と標的DNAとの間の二重鎖形成の際に生じる。これは標的DNAの標的配列下流のP AMモチーフ(使用されているCas9に対して適切、例えば、GGジヌクレオチド、上 記実施例1を参照)の存在に依存する。標的配列が上の模式図に対して上下逆であること に留意されたい。(D)HEK239T細胞におけるsgRNA発現のノーザンブロット 分析。(E)Cas9および/またはCLTA sgRNAを発現するHEK293T細 胞から単離したゲノムDNAのSurveyorヌクレアーゼアッセイ。CLTA座位を 標的とするために以前使用されたZFN構築物[10]を、非相同性末端結合によるDS B誘導性DNA修復を検知するための陽性対照として使用した。

次に部位特異的DSBがCas9−HA−NLS−mCherryおよびCLTA1 sgRNAで形質移入されたHEK293T細胞内で生成するのかどうかを調査した。こ れを行うために、Surveyorヌクレアーゼアッセイを用いて、DSB誘導性NHE Jによる不完全修復に起因する座位における小さな挿入および欠失を調べた[12]。C as9:sgRNAに標的されたゲノムDNAの領域をPCRで増幅し、得られる産物を 変性および再度アニールする。再度ハイブリダイズしたPCR産物をミスマッチ認識エン ドヌクレアーゼCel−1でインキュベートし、アクリルアミドゲル上で分離し、Cel −1切断バンドを識別する。NHEJによるDNA修復が一般的にDSBによって誘導さ れる通り、Surveyorアッセイにおける陽性シグナルは、ゲノムDNA切断が生じ たことを示す。このアッセイを用いて、CLTA1 sgRNAによって標的された位置 のCLTA座位の切断を検知した(図29E)。CLTA座位での隣接部位を標的とする 1対のZFNはこれらの実験にて陽性対照を提供した[10]。

Cas9またはsgRNA発現のいずれかが観察したゲノム編集反応において制限因子 かどうかを決定するために、形質移入した細胞から調製した可溶化物を、CLTA1 s gRNAに標的されたCLTA遺伝子の断片を保有するプラスミドDNAでインキュベー トした。Cas9−HA−NLS−GFP発現ベクターのみで形質移入した細胞から調製 した可溶化物とのインキュベーションの際には、プラスミドDNA切断は観察されず、S urveyorアッセイ結果と一貫していた。しかし、可溶化物にインビトロ転写CLT A1 sgRNAが添加された際は、強固なプラスミド切断が検知された(図30A)。 さらに、Cas9およびsgRNA発現ベクターの双方で形質移入した細胞から調製され た可溶化物はプラスミド切断を支援する一方で、sgRNAをコードするベクターのみで 形質移入した細胞からの可溶化物はそうでなかった(図30A)。これらの結果は、ヒト 細胞におけるCas9の機能のための制限因子はsgRNAとの集合であり得ることを暗 示する。添加外来性sgRNAの存在下および不在下で、前述同様に形質移入した細胞か らの可溶化物におけるプラスミド切断を分析することで、この可能性を直接試験した。特 に、外来性sgRNAをCas9およびsgRNA発現ベクターの双方で形質移入した細 胞からの可溶化物に添加した場合、DNA切断活性において実質的な増加が観察された( 図30B)。この結果は、HEK293T細胞におけるCas9機能のための制限因子は sgRNAの発現またはそのCas9への添加であることを示す。

図30は、細胞可溶化物が、活性Cas9:sgRNAを含み、部位特異的DNA切断 を支援することを示す。(A)左に示される、プラスミド(複数可)で形質移入した細胞 からの細胞可溶化物を、PAMおよびCLTA1 sgRNAに相補的である標的配列を 含むプラスミドDNAでインキュベートした;指定された場合、反応に10pmolのイ ンビトロ転写CLTA1 sgRNAを添加した;XhoIとの第2切断は、Cas9媒 介性切断を示す約2230および約3100bp断片の断片を生成した。ZFN発現構築 物で形質移入された細胞からの可溶化物を用いた対照反応は、かすかに異なるサイズの断 片を示し、CLTA1標的部位に対するZFN標的部位のオフセットを反映する。(B) Cas9−GFP発現プラスミド、および、指定された場合、CLTA1 sgRNA発 現プラスミドで形質移入した細胞からの可溶化物を、インビトロで転写されたCLTA1 sgRNAの不在または存在下で、(A)の通りに標的プラスミドDNAでインキュベ ートした。

生細胞内でのCas9:sgRNA集合を強化する手段として、次に、誘導RNAの推 定Cas9結合領域を伸展する効果を試験した。CLTA1 sgRNAの二つの新しい バージョンを、crRNAとtracrRNAとの間の塩基対形成相互作用を模倣する6 または12の塩基対をらせん体にさらに含むように設計した(図31A)。さらに、S. ピオゲネスtracrRNAの天然配列を基に、誘導RNAの3’末端を五つのヌクレオ チドで伸展した[9]。U6またはH1 Pol IIIプロモーターのいずれかの制御 下でこれらの3’伸長sgRNAをコードするベクターを、Cas9−HA−NLS−G FP発現ベクターと一緒に細胞に形質移入し、部位特異的ゲノム切断を、Surveyo rアッセイを用いて試験した(図31B)。結果によって、切断は、Cas9およびCL TA1 sgRNAの双方を必要とするが、Cas9またはsgRNAのいずれかが単独 で発現された場合には起こらなかったことが確認された。さらに、Cel−1ヌクレアー ゼ切断によって検知された通り、NHEJの実質的に増大した頻度を観察し、一方で、対 照ZFN対で得られたNHEJ変異誘発の頻度は大きく変わらなかった。

図31は、sgRNA構築物の3’伸展が部位特異的NHEJ媒介性変異誘発を強化す ることを示す。(A)CLTA1 sgRNA発現のための構築物(上)を、本来のCa s9結合配列(v1.0)または4個の塩基対で伸展されたdsRNA二重鎖(v2.1 )もしくは10個の塩基対で伸展されたdsRNA二重鎖(v2.2)を含む転写物を生 成するように設計した。(B)Cas9および/またはCLTA sgRNA v1.0 、v2.1またはv2.2を発現するHEK293T細胞から単離されたゲノムDNAの Surveyorヌクレアーゼアッセイ。CLTA座位を標的とするために以前使用され たZFN構築物[10]を、非相同性末端結合によるDSB誘導性DNA修復を検知する ための陽性対照として使用した。

こうして、多種多様のゲノム編集適用のための容易な分子ツールとしてCas9を利用 するためのフレームワークが結果によって提供される。このシステムの強力な特色は、単 一座位を標的とする効率を増大すること、または複数の座位を同時に標的とする手段とし てのいずれかのために、同一細胞内でCas9を複数のsgRNAでプログラムする可能 性である。このような戦略は、ゲノム全体での実験、および、多重遺伝子性疾患モデルの 発達といった大規模な研究への尽力において、幅広い適用を見出す。

実施例3:II型CRISPR−Cas免疫システムのtracrRNAおよびCas9 ファミリー II型システムの特徴的なタンパク質であるCas9と相似である配列をスクリーニン グすることで、一般で入手可能な細菌ゲノムに現在存在する全ての推定II型CRISP R−Cas座位を調査した。識別されるCas9オルソログの多重配列アラインメントか ら、系統樹を作成した。CRISPRリピート長および関連II型システムのcasオペ ロンの遺伝子構成を、異なるCas9サブクラスター内で分析した。II型座位の細分類 を提唱し、75個の代表的なCas9オルソログの選択に基づいて、さらに亜群に分割し た。次いで、主に、CRISPRリピート配列を取り出し、選択したII型座位のcas 遺伝子およびCRISPRアレイ内または近辺の抗リピートをスクリーニングすることで 、tracrRNA配列を予想した。選ばれたtracrRNAオルソログの配列および 予想構造の比較分析を実施した。最後に、五つの細菌種からのtracrRNAおよびc rRNAの発現およびプロセシングプロファイルを決定した。

材料および方法 細菌株および培養条件 次にあげる培養地を使用してプレートで細菌を成長させた:S.ミュータンス(UA1 59)に関しては3%羊血液を添加したTSA(トリプチケースソイ寒天、Trypti case(商標)SoyAgar(TSA II)BD BBL、ベクトンディッキンソ ン社)、および、L.イノキュア(Clip11262)に関してはBHI(脳心臓浸出 物、BD Bacto(商標)Brain Heart Infusion、ベクトンデ ィッキンソン社)寒天。液体培養で培養した場合、S.ミュータンスに関してはTHY培 地(0.2%酵母エキス(Servabacter(登録商標))が添加されたトッド・ ヒューイット培地(THB、Bacto、ベクトンディッキンソン社))、L.イノキュ アに関してはBHIブロス、N.メニンギティディス(A Z2491)に関しては1% ビタミン混合VXを含むBHI液体培地(Difco、ベクトンディッキンソン社)、C .ジェジュニ(NCTC11168;ATCC700819)に関しては1%ビタミン混 合VXを含むMH(Mueller Hinton Broth、オキソイド社)ブロス 、および、F.novicida(U112)に関してはTSB(Tryptic So y Broth、BD BBL(商標)Trypticase(商標)Soy Brot h)を使用した。S.ミュータンスを37℃、5%CO2で振動無しでインキュベートし た。L.イノキュア、N.メニンギティディスおよびF.ノビシダの株を、振動を伴って 好気的に37℃で成長させた。キャンピゲン(campygen)(オキソイド社)雰囲 気を用いて、37℃の微好気性菌条件でC.ジェジュニを成長させた。細菌成長に続いて 、マイクロプレートリーダー(BioTek PowerWave(商標))を用いて定 期的な時間間隔で620nm(OD620nm)の培養の光学濃度を観測した。

細菌の小さいRNAライブラリーのシークエンシング C.ジェジュニNCTC11168(ATCC700819)、F.ノビシダU112 、L.イノキュアClip11262、N.メニンギティディスA Z2491およびS .ミュータンスUA159を、半対数成長期まで培養し、全RNAをTRIzol(シグ マ・アルドリッチ社)で抽出した。各株からの10μgの全RNAをTURBO(商標) DNase(アンビオン社)で処理して、いかなる残基ゲノムDNAも除去した。グラム 陽性またはグラム陰性細菌(エピセンター社)のために、製造業者の説明に従い、Rib o−Zero(商標)rRNA Removal Kits(登録商標)を使用すること で、リボソームRNAを除去した。RNA Clean&Concentrator(商 標)5キット(ザイモ・リサーチ社(Zymo Research))での精製に続いて 、製造業者の説明に従ってScriptMiner(商標)Small RNA−Seq Library Preparation Kit(Multiplex、Illum ina(登録商標)適合性)を使用してライブラリーを調製した。RNAをTobacc o Acid Pyrophosphatase(TAP)(エピセンター社)でプロセ シングした。引き続きRNA精製のためにRNA Clean&Concentrato r(商標)5(ザイモ・リサーチ社)のカラムを使用し、PCR増幅のためにPhusi on(登録商標)High−Fidelity DNA Polymerase(ニュー ・イングランド・バイオラボ社)を使用した。特定のユーザー定義バーコードを各ライブ ラリーに付け加え(RNA−Seq Barcode Primers(Illumin a(登録商標)適合性)エピセンター社)、オーストリア、ウィーン、ウィーンバイオセ ンター(ViennaBiocenter)のNext Generation Seq uencing(CSF NGSユニット;「ac.at」が続く、ウェブ「csf.」 上)設備で試料をシークエンシングした(イルミナ単一末端シークエンシング(sing le end sequencing)。

tracrRNAおよびcrRNAシークエンスデータの分析 イルミナ2bamツールを使用してRNAシークエンスリードを分割し、(i)イルミ ナアダプター配列(カットアダプト(cutadapt)1.0)の除去および(ii) 3末端の15ntの除去によって調節してリードの質を向上させた。15ntよりも短い リードを除去した後、Bowtieを使用して、二つのミスマッチを許容することでcD NAリードをそれぞれのゲノムと配列した:C.ジェジュニ(GenBank:NC_0 02163)、F.ノビシダ(GenBank:NC_008601)、N.メニンギテ ィディス(GenBank:NC_003116)、L.イノキュア(GenBank: NC_003212)およびS.ミュータンス(GenBank:NC_004350) 。BEDTools−バージョン2.15.0を使用して、双方のDNA鎖に関して別々 に各ヌクレオチド位置でリードの被覆度を算出した。100万あたりのリード(rpm) の被覆度を含む標準化されたウィグル(wiggle)ファイルを作成し、Integr ative Genomics Viewer(IGV)ツール(“www.”続いて、 “broadinstitute.org/igv/”)(図36)を用いて可視化した 。SAMTools flagstat80を用いて、マッピングされたリードの割合を 、C.ジェジュニに関しては9914184リード、F.ノビシダに関しては48205 リード、N.メニンギティディスに関しては13110087リード、L.イノキュアに 関しては161865リードおよびS.ミュータンスに関しては1542239リードの マッピングされた合計を元に算出した。各単一ヌクレオチド位置に始まり(5’)、終わ る(3’)リードを複数含むファイルを作成し、IGVで可視化した。各tracrRN AオルソログおよびcrRNAに関しては、取り出されたリードの合計を、SAMツール を用いて算出した。

Cas9配列分析、多重配列アラインメントおよび誘導ツリー作成 位置特異的反復(Position−Specific Iterated(PSI) −BLASTプログラムを用いて、NCBI非重複データベースにおけるCas9ファミ リーのホモログを取り出した。800個のアミノ酸よりも短い配列は廃棄した。0.8の 長さ範囲カットオフおよび0.8のスコア範囲閾値(アラインメントの長さで割られるビ ットスコア)でセットアップしたBLASTClustプログラムを使用して、残った配 列をクラスター化した(図38)。この手順で、78個のクラスター(そのうち48個は 1個の配列でしか表されない)を作成した。1個(または、めったにないが数個の代表例 )を各クラスターから選択し、これらの配列のための多重アラインメントを、デフォルト パラメーターのMUSCLEプログラムを用いて作成し、続いてPSI−BLASTおよ びHHpredプログラムを用いて取得された局所アラインメントを基準に手動で校正を 行った。さらに数個の配列はアラインメント不可能であり、また、最終アラインメントか ら除外された。最大の可能性を持つツリー復元のために、デフォルトパラメーターのFa stTreeプログラムを使用して、272個の有益な位置を伴う、確信的に並べられた ブロックを使用した:JTT進化型モデル、20個の速度分類を伴う分離ガンマモデル。 同一のプログラムを使用してブートストラップ値を算出した。

図38は、BLASTclustクラスター化プログラムに従って分類された配列を示 す。800個のアミノ酸よりも長い配列のみがBLASTclust分析のために選択さ れた(材料および方法を参照)。cas9オルソログ遺伝子を保有する代表的な株を使用 した。いくつかの配列はクラスター化しなかったが、それらのすぐ付近にある保存された モチーフおよび/または他のcas遺伝子の存在によりCas9オルソログ配列として確 認された。

CRISPR−Cas座位の分析 CRISPRリピート配列をCRISPRdbデータベースから取り出し、または、C RISPRFinderツール(Grissa Iet al., BMC Bioinformatics 2007; 8: 172; G rissa I et al., Nucleic Acids Res 2007)を用いて予想した。cas遺伝子を、BLA STpアルゴリズムを用いて識別し、および/または、KEGGデータベース(「www .」、続いてkegg.jp/であるウェブ上)で確認した。

tracrRNAオルソログのインシリコ予想および分析 Vector NTI(登録商標)ソフトウェア(インビトロジェン社)を用いて、最 大15個のミスマッチを許容するそれぞれのゲノムの双方の鎖上のリピートスペーサーア レイに属さない、追加の変性リピート配列をスクリーニングすることで、推定抗リピート を識別した。転写プロモーターおよびrho独立ターミネーターを、BDGP Neur al Network Promotor Predictionプログラム(「www .」、続いてfruitfly.org/seq_tools/promoter.ht ml)およびTransTermHPソフトウェアをそれぞれ用いて予想した。デフォル トパラメーターのMUSCLEプログラムを用いて、多重配列アラインメントを実施した 。ウィーンRNAパッケージ2.0のRNAalifoldアルゴリズムを用いて、保さ れた構造モチーフの存在に関してアラインメントを分析した。

結果 II型CRISPR−Casシステムは細菌内で広範囲にわたる。

tracrRNAをコードするDNAおよびリピートスペーサーアレイに加え、II型 CRISPR−Cas座位は一般的に、オペロンで組織化される3〜4個のcas遺伝子 から構成される(図32A〜B)。Cas9はII型に特徴的なシグネチャータンパク質 であり、発現および干渉の工程に関わる。Cas1およびCas2は、全てのCRISP R−Casシステムによって共有され、スペーサー獲得に関係するコアタンパク質である 。Csn2およびCas4は、II型システムのサブセットのみに存在し、適応で役割を 果たすことが提唱された。最大数のtracrRNA含有II型CRISPR−Cas座 位を取り出すために、既に注釈されたCas9タンパク質に相似である配列に関する、一 般で入手可能なゲノムをまず始めにスクリーニングした。235個のCas9オルソログ を203個の細菌種で識別した。全ての取り出されたCas9オルソログを代表する75 個の多種多様の配列のセットをさらなる分析のために選択した(図32、図38、並びに 材料および方法)。

図32は、(A)様々な有機体の代表的なCas9配列の系統樹、並びに、(B)代表 的なCas9座位構造を示す。各節に対して算出されたブーストラップ値が示されている 。同一色の枝は類似Cas9オルソログの選択されたサブクラスターを表す。ヌクレオチ ド数でCRISPRリピート長、アミノ酸(aa)の平均Cas9タンパク質サイズおよ びコンセンサス座位構造が、各サブクラスターに関して示されている。*−gi|116 628213**−gi|116627542†−gi|34557790‡−gi|3 4557932。II−A型はcas9−csx12、cas1、cas2、cas4を 特徴とする。II−B型はcas9、cas1、cas2、続いてcsn2変異形を特徴 とする。II−C型は、保存されたcas9、cas1、cas2オペロンを特徴とする (図38も参照)。

次に、選択されたCas9オルソログの多重配列アラインメントを実施した。比較分析 によって、アミノ酸構成およびタンパク質サイズにおいて高い多様性が明らかになった。 Cas9オルソログは数個の同一アミノ酸のみを共有し、取り出された配列は全て中央H NHエンドヌクレアーゼドメインおよび分割RuvC/RNaseHドメインと同じドメ イン構造を有する。Cas9タンパク質の長さは、約1100または約1400個のアミ ノ酸の一般的なサイズを伴って、984(カンピロバクター・ジェジュニ)から1629 (フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida))個のアミノ 酸に及ぶ。Cas9配列の高い多様性のために、特にドメイン間領域の長さにおいて、調 製したアラインメントの、良く配置された有益な位置のみを選択し、分析した配列の系統 樹を復元した(図32および材料および方法)。Cas9オルソログを、外れ配列をいく つか伴う、三つの主要な単系統制クラスターに分類した。Cas9ツリーの観察されたト ポロジーは、現在のII型座位分類、別個の単系統クラスターを形成する、以前に定義さ れたII−A型およびII−B型と良く一貫している。クラスターをさらに特徴づけるた めに、列挙された株全てのcasオペロン組成およびCRISPRリピート配列を詳細に 検査した。

Cas9サブクラスター化は、II型CRISPR−Cas座位構造の多様性を反映する 選択されたII型座位のより深い分析により、Cas9オルソログ配列のクラスター化 はCRISPRリピート長の多様性と相関していることが明らかになった。ほとんどのI I型CRISPR−Casシステムに関して、二つのCas9ツリーサブクラスターに関 してはばらつきを多少伴って、リピート長は36個のヌクレオチド(nt)である。Cs x12と以前は呼ばれた、長いCas9オルソログをコードする座位を含むII−A型ク ラスター(図32)において、CRISPRリピートは37ntの長さである。バクテロ イデス門(Bacteroidetes phylum)に属する細菌の配列から成る小 さいサブクラスター(図32)は、サイズで最大48ntである、異常に長いCRISP Rリピートを特徴とする。さらに、我々は、図32で示される通り、Cas9配列のサブ クラスター化が別個のcasオペロン構造と互いに関連していることに気が付いた。3番 目に主要であるクラスター(図32)および外れ座位(図32)は、後述されるいくつか の不完全な座位の例外を伴って、cas9、cas1およびcas2遺伝子から構成され る、最小オペロンから主に成る。二つの一番主要なクラスターの他の座位は全て、II− A型またはcsn2様に特異的、II−B型に特異的である、第4の遺伝子、主にcas 4に関連する(図32)。我々は、II−B型S.ピオゲネスCRISPR01およびS .サーモフィラスCRISPR3に類似する座位内で、Csn2タンパク質、Csn2a のより短い変異形をコードする遺伝子を識別した(図32)。Csn2、Csn2bのよ り長い変異形は、II−B型S.サーモフィラスCRISPR1に類似する座位と関連す ることが発見された(図32)。興味深いことに、前述したCsn2変異形とは明らかな 配列相同性を有さないタンパク質をコードする推定cas遺伝子をさらに識別した。これ ら特徴づけされていないタンパク質の一つは、マイコプラズマ種のII−B型座位と排他 的に関連する(図32および図33)。他の二つは、スタフィロコッカス種のII−B型 座位にコードされていることが発見された(図33)。全ての例において、casオペロ ン構造の多様性は、このように、Cas9配列のサブクラスター化に一貫している。三つ の主要な別個の単系統性クラスターに分割されたCas9ツリーの一般的なトポロジーと 一緒に、これらの特徴によって、我々は、II型CRISPR−Casシステムを三つの サブタイプへさらに新しく分類することを提唱した。図32で示される通り、II−A型 はCsx12様Cas9およびCas4に関連し、II−B型はCsn2様に関連し、お よび、II−C型のみが最小セットのcas9、cas1およびcas2遺伝子を有する 。

図33は、選択した細菌種のII型CRISPR−Casの構造を示す。縦線は、同じ ツリーのサブクラスターに属するCas9オルソログをコードする座位を分類する(図3 2と比較されたい)。黒色横線、リーダー配列;黒色長方形および菱形、リピートスペー サーアレイ。予想される抗リピートは推定tracrRNAオルソログ転写の方向を示す 矢印によって表される。実験で確認されなかった座位に関して、CRISPRリピートス ペーサーアレイはここではcasオペロンと同一鎖から転写されると見なされることに留 意されたい。推定tracrRNAオルソログの転写方向も同様に示される。

新規のtracrRNAオルソログのインシリコ予想 75個の代表的なCas9オルソログに基づいてすでに選択されたII型座位を、推定 tracrRNAオルソログの存在のためにスクリーニングした。制限された数のtra crRNA配列で実施された我々の以前の分析によると、tracrRNAの配列および それらのCRISPR−Cas座位内の局在性はいずれも保存されていない様子であるこ とが明らかになった。しかし、前述した通り、tracrRNAは、各pre−crRN Aリピートと塩基対を形成して、Cas9の存在下でRNaseIIIによって切断され るtracrRNA:precrRNAリピート二重鎖を形成することが可能な抗リピー ト配列も特徴とする。新規tracrRNAを予想するために、この特徴を利用し、次に 挙げる作業の流れを行った:(i)CRISPR−Cas座位内で、可能性のある抗リピ ート(CRISPRリピートと塩基対形成する配列)をスクリーニングする、(ii)遺 伝子間領域に位置する抗リピートを選択する、(iii)CRISPR抗リピート:リピ ート塩基対形成を確認する、および(iv)識別されたtracrRNAに関連するプロ モーターおよびRho独立転写ターミネーターを予想する。

推定抗リピートをスクリーニングするために、CRISPRdbデータベースからリピ ート配列を取り出し、または、その情報が利用可能でなかった場合は、CRISPRfi nderソフトウェアを用いて、リピート配列を予想した。我々の前回の実験で、リピー トスペーサーアレイの転写方向はcasオペロンの転写方向と比較して座位の中で異なる ことを、我々は実験的に示した。ここで、RNAシークエンシング分析がこの観察を確実 なものとした。分析した座位のいくつかで、すなわち、F.ノビシダ、N.メニンギティ ディスおよびC.ジェジュニにおいて、リピートスペーサーアレイはcasオペロンとは 反対方向に転写される(パラグラフ「ディープRNAシークエンシングで新規tracr RNAオルソログの発現を確証する」並びに図33および34を参照)一方で、S.ピオ ゲネス、S.ミュータンス、S.サーモフィラスおよびL.イノキュアにおいては、その アレイおよびcasオペロンは同一方向に転写される。これらが、今までで入手可能な唯 一のII型リピートスペーサーアレイ発現データである。他のリピートスペーサーアレイ の転写方向を予想するために、アレイの最後のリピートは通常どちらに変異するかに従っ て、前回の観察を考慮した。この所見は、通常アレイの最初のリピートは適応段階の間ス ペーサー配列の挿入後に複製されるという現在のスペーサー獲得モデルと一致する。37 個のリピートスペーサーアレイに関して、アレイの推定末端で変異したリピートを識別す ることができた。N.メニンギティディスおよびC.ジェジュニリピートスペーサーアレ イの予想された転写方向は実験的に決定された方向(RNAシークエンシングおよびノー ザンブロット分析)とは反対になるだろうと観察した。予想された方向はクラスター内で 一貫せず、ほとんどの例においてアレイの双方の末端上で可能性のあるプロモーターを検 知できたため、我々は、リピートスペーサーアレイの転写は、そうでないと確証されない 限り、casオペロンの転写と同一の方向であると見なした。

図34は、選択したII型CRISPR CasシステムにおけるtracrRNAお よびpre−crRNA同時プロセシングを示す。tracrRNAおよびpre−cr RNA転写の確認された位置および方向と一緒に、CRISPR座位構造を示す。上部配 列、pre−crRNAリピート;下部配列、crRNAリピートと塩基対を形成するt racrRNA配列。RNAシークエンシングで明らかになった推定RNAプロセシング 部位を矢頭で表す。各座位に関して、矢頭サイズは取り出された5’および3’末端の相 対量を示す(図37も参照されたい)。

図37は、座標(coordinates)(対象領域)および対応するcDNA配列 (5’〜3’)を含む、実験された細菌種をシークエンシングすることで取り出した全て のtracrRNAオルソログおよび成熟crRNAを列挙する。矢印は転写方向(鎖) を示す。cDNAリードの数(SAMツールを利用して算出)、被覆度(マッピングされ たリードのパーセンテージ)および各転写に関連する優勢な末端が示される。各転写物の 5’および3’末端周辺の各ヌクレオチド位置で始まる、または停止するリードの数が表 示される。各crRNA成熟形態のサイズが示される。各crRNA種に割り当てられる 数は、CRISPRdbに従って、pre−crRNA内のスペーサー配列位置に対応す る。各tracrRNA種に割り当てられる数は、同じ転写物の異なる形態に対応する。

次いで、双方の鎖状の1kb上流および下流に位置する配列を含む選択されたCRIS PR−Cas座位を、最大15個のミスマッチを許容して、リピートスペーサーアレイに 属さない、可能性のあるリピート配列のためにスクリーニングした。平均して、trac rRNAオルソログの抗リピートに対応するであろう変性リピート配列を、座位1個あた り1〜3個発見し、遺伝子間領域内に位置するその配列を選択した。推定抗リピートを四 つの典型的な局在で発見した:cas9遺伝子の上流、cas9とcas1との間の領域 、およびリピートスペーサーアレイの上流または下流(図33)。取り出した各配列に関 して、可能性のあるRNA:RNA相互作用を予想し、RNase IIIプロセシング のために最適な二重鎖構造を形成するより長く完璧な相補領域を伴う候補に特に焦点を当 てることで、リピートと抗リピートとの間に形成された塩基対形成の範囲(図44)を確 認した。抗リピートに隣接するプロモーターおよび転写ターミネーターを予想するために 、我々の以前の観察26に基づいて、抗リピート配列の最大200nt上流および100 nt下流にそれぞれ位置する領域内に含まれる推定転写開始および終結部位を設定した。 上述した通り、II型システムの多くのリピートスペーサーアレイの転写方向に関する実 験的な情報は不足している。インシリコプロモーター予想アルゴリズムは、しばしば間違 った陽性結果を提供し、双方の鎖からのリピートスペーサーアレイの転写につながり得る 推定プロモーターを指摘する。いくつかの例において、C.ジェジュニ座位(パラグラフ 「ディープRNAシークエンシングで新規tracrRNAオルソログの発現を確証する 」を参照)で例証される、tracrRNAオルソログ発現を実験的に確証できても、転 写ターミネーターを予想はできなかった。プロモーターおよび転写ターミネーター予想は 、上述の誘導ラインの必須ではなく支持的なだけである工程として見なされるべきだと我 々は提唱する。

図44は、選択された細菌種内における予想pre−crRNAリピート:tracr RNA抗リピートの塩基対形成を示す。bCRISPR座位はII型(Nmeni/CA SS4)CRISPR−Casシステムに所属する。命名法はCRISPRデータベース (CRISPRdb)に従う。S.サーモフィラスLMD−9およびW.サクシノゲネス は二つのII型座位を含む。c上部配列、pre−crRNAリピートコンセンサス配列 (5’から3’);下部配列、リピートにアニールしているtracrRNAホモログ配 列(抗リピート;3’から5’)。所与のリピート配列は、CRISPRリピートスペー サーアレイがcasオペロンと同一の鎖から転写されるという仮定に基づいていることに 留意されたい。本実験で実験的に確認した配列に関して、RNAシークエンシングデータ を考慮して塩基対決定を決定した。図33を参照されたい。d二つの可能な抗リピートを F.ツラレンシス亜種ノビシダ、W.サクシノゲネスおよびガンマ・プロテオバクテリウ ムHTCC5015 II−A型座位で識別した。上部配列対形成、推定リーダー配列内 の抗リピート;下部配列対形成、リピートスペーサーアレイ下流の抗リピート。図33を 参照されたい。e二つの可能な抗リピートをS.ワドスヲルテンシスII−A型座位で識 別した。上部配列対形成、抗リピート;下部配列対形成、推定リーダー配列内の抗リピー ト。図33を参照されたい。f二つの可能な抗リピートをL.ガセリII−B型座位で識 別した。上部配列対形成、cas9上流の抗リピート;下部配列対形成、cas9とca s1遺伝子との間の抗リピート。図33を参照されたい。g二つの可能な抗リピートをC .ジェジュニII−C型座位で識別した。上部配列対形成、cas9上流の抗リピート; 下部配列対形成、リピートスペーサーアレイ下流の抗リピート。図33を参照されたい。 h二つの可能な抗リピートをR.ラブラムII−C型座位で識別した。上部配列対形成、 リピートスペーサーアレイ下流の抗リピート;下部配列対形成、cas1上流の抗リピー ト。図33を参照されたい。

tracrRNAオルソログの過多 すでに選択した75個の座位のうち56個に関して推定tracrRNAオルソログを 予想した。予想の結果が図33に示される。すでに述べた通り、この図で示されるtra crRNA転写の方向は仮定であり、リピートスペーサーアレイ転写の指定された方向に 基づいている。前述の通り、推定tracrRNAオルソログをコードする配列はcas オペロンの上流、内および下流、並びに、推定リーダー配列を含む、通常II−A型座位 で見つかるリピートスペーサーアレイの下流で識別された(図33)。しかし、CRIS PR−Cas座位内の類似した局在の抗リピートは異なる方向で転写され得ることを我々 は観察した(たとえば、ラクトバチルス・ラムノサスおよびユーバクテリウム・レクタレ またはマイコプラズマ・モービレおよびS.ピオゲネスまたはN.メニンギティディスと 比較する際に観察される通り)(図33)。特に、Cas9誘導ツリーの同一サブクラス ター内に分類される座位は、tracrRNAをコードする遺伝子に関して、共通の構造 を共有する。II−B型の三つの異なるサブクラスターのcas9とcas1との間に位 置する推定tracrRNAの顕著な例外を複数伴うが、我々は、II−A型座位のリピ ートスペーサーアレイ周辺に、並びに、ほとんどはII−B型およびII−C型のcas 9遺伝子上流で、抗リピートを識別した。

いくつかのII型CRISPR−Cas座位は欠陥リピートスペーサーアレイおよび/ま たはtracrRNAオルソログを有する 六つのII型座位(フソバクテリウム・ヌクレアタム、アミノモナス・パウシボラン、 ヘリコバクター・ムステラエ、アゾスピリルム種、プレボテラ・ルミニコラおよびアッカ ーマンシア・ムシニフィラ)に関して、リピート配列と弱い塩基対形成を有し、または、 オープンリーディングフレーム内に位置する、可能性のある抗リピートを我々は識別した 。特に、これらの座位では、A.パウシボランの推定ATPaseをコードする遺伝子の オープンリーディングフレーム内の弱い抗リピート、アゾスピリルム種B510のcas 9遺伝子の最初の100nt内の強い抗リピート、および、A.ムシニフィラの双方のc as9およびcas1と重複する強い抗リピートが識別された(図33)。12個の追加 座位(ペプトニフィルス・ドゥエルデニイ、コプロコッカス・カタス、アシダミノコッカ ス・インテスティニ、カテニバクテリウム・ミツオカイ、スタフィロコッカス・シュード インターメディウス、イリオバクター・ポリトロプス、エルシミクロビウム・ミヌツム、 バクテロイデス・フラジリス、アシドサーマス・セルロリティカス、コリネバクテリウム ・ジフセリエ、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・デンティ ウム)に関しては、推定抗リピートを検知できなかった。これらのCRISPR−Cas 座位におけるpre−crRNA発現およびプロセシングに関する利用可能な情報は一切 ない。従って、はっきり定義されたtracrRNAオルソログの不在下では、II型シ ステムの機能性を取り上げる必要が引き続きある。7個の分析した座位に関して、リピー トスペーサーアレイを一切識別できず(パラステレラ・エクスクレメンティホミニス、バ チルス・セレウス、ルミノコッカス・アルバス、ロドシュードモナス・パルストリス、ニ トロバクター・ハンブルゲンシス、ブラディリゾビウム種およびプレボテラ・ミカンス) (図33)、また、これらのうち三つにおいては(ブラディリゾビウム種BTAi1、N .ハンブルゲンシスおよびB.セレウス)、我々は、周辺に他のcas遺伝子を一切持た ない単一遺伝子としてcas9を検知した。これら三つの座位に関しては、cas9遺伝 子の上流または下流の小さいRNA配列を一切予想できなかった。R.アルバスおよびP .エクスクレメンティホミニスの例では、cas9含有ゲノムコンティグが短すぎてリピ ートスペーサーアレイの予想は可能ではない。

ディープRNAシークエンシングで新規tracrRNAオルソログの発現を確証する インシリコtracrRNA予想を確証し、tracrRNA:pre−crRNAの 同時プロセシングパターンを決定するために、選択したグラム陽性(S.ミュータンスお よびL.イノキュア)およびグラム陰性(N.メニンギティディス、C.ジェジュニおよ びF.ノビシダ)細菌のRNAを、ディープシークエンシングによって分析した。tra crRNAオルソログおよびプロセスされたcrRNAの配列を取り出した(図36およ び図37)。S.ピオゲネスの以前公開された差次的なtracrRNAシークエンシン グデータに一貫して26、tracrRNAオルソログは、0.08から6.2%のマッ ピングされた合計リードの被覆度で、ライブラリーで非常に良く示された。プロセシング されたtracrRNAも、66%から95%超のtracrRNAリードの合計量の被 覆度で、一次転写物よりもさらに豊富であった(図36および図37)。

図36は、ディープRNAシークエンスによって明らかになった細菌tracrRNA オルソログおよびcrRNAの発現を示す。選択された細菌株のtracrRNAオルソ ログおよびcrRNAの発現プロファイルを、対応するゲノムと一緒に棒グラフで表す( Integrative Genomics Viewer(IGV)ツールでキャプチ ャーした画像)。カンピロバクター・ジェジュニ(GenBank:NC_002163 )、フランシセラ・ノビシダ(GenBank:NC_008601)、ナイセリア・メ ニンギティディス(GenBank:NC_003116)、リステリア・イノキュア( GenBank:NC_003212)およびストレプトコッカス・ミュータンス(Ge nBank:NC_004350)。ゲノム座標が提供される。aBEDTools−バ ージョン−2.15.0(規模は100万あたりのリードで提供される)を用いて算出さ れた配列被覆度。b各ヌクレオチド位置で開始(5’)および終結(3’)するリードの 分布が示される(規模はリードの数で提供される)。上部パネルは陽性鎖の転写物に対応 し、下部パネルは陰性鎖の転写物に対応する。軸の下に示される陰性被覆度値およびピー クは、ゲノムの陰性鎖の転写を示す。リードの優勢である5’および3’末端が全RNA に関してプロットされる。L.イノキュアcDNAライブラリーの低品質を踏まえると、 おそらくRNA変性のために、リードがcrRNAに関しては短くなっており、trac rRNAの3’末端でのリードの蓄積が観察されることに留意されたい。

tracrRNA一次転写物の5’末端を評価するために、tracrRNAの全ての 5’末端リードの存在量を分析し、予想される抗リピート配列の5’末端の上流または周 辺の最も突出したリードを取り出した。プロモーター予想アルゴリズムを用いてtrac rRNAオルソログの5’末端をさらに確認した。S.ミュータンス、L.イノキュアお よびN.メニンギティディスのtracrRNAの識別された5’末端はtracrRN A発現のインシリコ予想およびノーザンブロット分析の双方と互いに関連していた26。 最も突出したC.ジェジュニtracrRNAの5’末端は、抗リピート配列の真ん中で 識別された。5個のヌクレオチド上流で、インシリコ予想と互いに関連し、CRISPR リピート配列との相互作用のより長い配列を提供する追加の推定5’末端を検知した。我 々は、F.ノビシダライブラリーから、ほぼ排他的にプロセシングされた転写物に対応し たリードを比較的少ない量で取り出した。一次転写物のごく少量のリードの分析は、強い インシリコプロモーター予想に対応する5’末端を提供した。F.ノビシダtracrR NAのノーザンブロットプローブは、長さ約90ntの転写物の低存在量を示す予想の有 効性を確証した。結果が表2に列挙される。N.メニンギティディスを除いたすべての検 査された種、一次tracrRNA転写物は長さ75〜100ntの単一の小さいRNA 種として識別された。N.メニンギティディスの例では、約110ntの優勢な一次tr acrRNA形態およびごく少量のリードで表され、ノーザンブロット分析によって弱い バンドとして以前検知された約170ntの推定のより長い転写物を発見した。

aS.サーモフィラス、P.マルトシダ、M.モービレのtracrRNAオルソログを インシリコで予想した。

bRNAシークエンシングによって明らかになったRNA−seq(表S3):第1のリ ード、シークエンシングによって取り出された第1の5’末端位置;最も突出している、 RNA−seqデータによる豊富な5’末端;予想、転写開始部位のインシリコ予想;下 線、アライメントされる一次tracrRNAについて選ばれた5’末端。

cRNA−seqデータおよび転写ターミネーター予想による推定3’末端。

tracrRNAおよびpre−crRNA同時プロセシング部位は、抗リピート:リピ ート領域に存在する。

予想抗リピート配列内の豊富なtracrRNA5’末端および豊富な成熟crRNA 3’末端を分析することで、プロセシングされたtracrRNA転写物を検査した(図 34および45)。全ての種において、RNaseIIIによるtracrRNA:pr e−crRNAリピート二重鎖の同時プロセシングに起因し得るtracrRNAオルソ ログの突出した5’末端を識別した。以前の観察に一貫して、推定トリミングによる第2 成熟現象からおそらく生じるcrRNAのプロセシングされた5’末端も識別した。注目 すべきことは、S.ピオゲネス、S.ミュータンスおよびL.イノキュアの近縁RNAの 対において、抗リピート配列の真ん中のG:C塩基対周辺で同一のプロセシング部位を観 察した。双方のS.ミュータンスおよびL.イノキュアで、突出したtracrRNA5 ’末端およびcrRNA3’末端をさらに検知し、これらは、crRNAの3’末端が、 すでに言及された5’末端トリミングまでさらに短くなった状態である、tracrRN A:crRNA二重鎖のさらなるトリミングを暗示し得、続いてRNaseIII触媒性 第1プロセシング現象を暗示し得る。同様に、C.ジェジュニにおいて、RNase I IIプロセシングパターンに適合する、少量のみのcrRNA3’末端を発見し、プロセ シングされたtracrRNAの対応する5’末端を取り出した。このように、RNas e IIIによる最初の切断後のtracrRNA:crRNA二重鎖の推定トリミング は、成熟crRNAにより短いリピート由来部分をもたらし、エンドヌクレアーゼCas 9との相互作用およびそれに続く標的DNAの切断のために、三つのG:C塩基対によっ て安定化したより短いtracrRNA:crRNA二重鎖を生成する。N.メニンギテ ィディスRNA二重鎖は、二つの一次部位からさらにCRISPRリピートの3’末端で プロセシングされるようであり、二重鎖内の中央バルジにも関わらず、成熟crRNA内 の長いリピート由来部分および安定したRNA:RNA相互作用につながる。興味深いこ とに、F.ノビシダのtracrRNA:pre−crRNA二重鎖は、低い相補性の領 域内で切断されるようであり、取り出された豊富なtracrRNAの5’末端のいくつ かは、付随するcrRNAのトリミングを伴わない、そのさらなるトリミングを示唆する 。一次転写物サイズおよびプロセシング部位の位置における違いは、様々な長さのプロセ シングされたtracrRNAをもたらし、約65〜85ntの範囲に及ぶ。突出した、 プロセシングされたtracrRNA転写物の座標およびサイズが表2および図37に示 される。tracrRNAおよびcrRNAの観察されるプロセシングパターンは、従来 提唱された二つの成熟現象のモデルと良く一致している。tracrRNA5’末端およ びcrRNA3’末端のいくつかのさらなる推定トリミングは第2成熟現象から生じ得、 または、cDNAライブラリー調製またはRNAシークエンシングの人為産物であり得る 。これらプロセシングの性質は、これ以上はまだ調査されていない。

tracrRNAオルソログの配列は非常に多様である 選択されたtracrRNAオルソログの配列相同性も決定した。S.ピオゲネス(8 9nt形態のみ)、S.ミュータンス、L.イノキュアおよびN.メニンギティディス( 110nt形態のみ)、S.サーモフィラス、P.マルトシダおよびM.モービレの一次 tracrRNA転写物の多重配列アラインメントを行った(表2、図35)。trac rRNA配列に高い多様性を観察したが、近縁CRISPR−Cas座位の配列の著しい 保存を観察した。対配列によると、L.イノキュア、S.ピオゲネス、S.ミュータンス およびS.サーモフィラスのtracrRNAは平均77%の同一性を共有し、N.メニ ンギティディスおよびP.マルトシダのtracrRNAは、82%の同一性を共有する 。分析したtracrRNA配列の平均同一性は56%で、無作為のRNA配列の同一性 に匹敵する。この観察によって、配列相同性に基づいたtracrRNAオルソログの予 想は近縁座位の例のみで実施可能であることがさらに確認される。可能なtracrRN A構造の保存も試みたが、一つの共変動および保存された転写ターミネーター構造を除い て、著しい相同性は一切見つけられなかった(図35)。

図35は、tracrRNAオルソログの配列多様性を示す。tracrRNA配列多 重アラインメント。S.サーモフィラスおよびS.サーモフィラス2、相応に配列番号4 1および配列番号40のCas9オルソログに関連するtracrRNA。黒色、高度に 保存されている;濃灰色、保存されている;淡灰色、不十分に保存されている。予想され るコンセンサス構造を、アラインメントの上部に示す。矢印はヌクレオチド共変動を示す 。S.ピオゲネスSF370、S.ミュータンスUA159、L.イノキュアClip1 1262、C.ジェジュニNCTC 11168、F.ノビシダU112およびN.メニ ンギティディスA Z2491のtracrRNAをRNAシークエンシングおよびノー ザンブロット分析によって確認した。S.サーモフィラスLMD−9のtracrRNA をノーザンブロット分析によって確認した。P.マルトシダPm70のtracrRNA を、N.メニンギティディスA Z2491のCRISPR−Cas座位とそのCRIS PR−Cas座位の高い相同性から予想した。M.モービレ163KのtracrRNA を転写プロモーターおよびターミネーターの強予想からインシリコで予想した。

実施例4:RNA誘導プラットフォームとしてのCRISPRを、遺伝子発現の配列特異 的制御用に転用 ゲノム全体規模での標的遺伝子調節は、細胞システムを調べる、乱す、および操作する のに強力な戦略である。発明者らは、II型CRISPRシステムからのRNA誘導DN AエンドヌクレアーゼであるCas9に基づいて、遺伝子発現を制御するための新しい方 法を開発した。この実施例は、エンドヌクレアーゼ活性に欠けた、触媒的に死んだCas 9が、誘導RNAと共に同時発現されると、転写伸長、RNAポリメラーゼ結合または転 写因子結合に特異的に干渉し得るDNA認識複合体を生成するということを示す。CRI SPR干渉(CRISPRi)と呼ばれるこのシステムは、大腸菌の標的遺伝子の発現を 、検知可能なオフターゲット効果を一切もたらさないで、効果的に抑制し得る。CRIS PRiは複数の標的遺伝子を同時に抑制するために使用され得、その効果は可逆性である 。さらに、システムを哺乳動物細胞の遺伝子抑制のために適応することもできる。このR NA誘導DNA認識プラットフォームは、ゲノム全体規模で遺伝子発現を選択的に乱すた めの単純なアプローチを提供する。

材料および方法 株および培地 大腸菌K−12株MG1655を、インビボ蛍光測定のために宿主株として使用した。 3x−FLAGエピトープタグがRpoCサブユニットのC末端に付着した、RNAPの 変異形を内因的に発現する大腸菌MG1655由来株を、全てのシークエンシング実験の ために使用した。EZが豊富な定義された培地(EZ−RDM、テクノカ社(Tekno ka))を、インビボ蛍光アッセイのために、成長培地として使用した。標準的なプロト コルを用いて、AmpR、CmR、またはKanR遺伝子を選択マーカーとして使用して 、遺伝子形質転換および形質転換の確認を行った。

プラスミド構築および大腸菌ゲノムクローニング Cas9およびdCas9遺伝子を、前述したベクターpMJ806およびpMJ84 1からそれぞれクローニングした。遺伝子をPCR増幅し、アンヒドロテトラサイクリン (aTc)誘導性プロモーターPLtetO−1、クロラムフェニコール選択マーカーお よびp15A複製開始点を含むベクターに挿入した。注釈つき転写開始部位、アンピシリ ン選択マーカーおよびColE1複製開始点と一緒に最小合成プロモーター(J2311 9)を含むベクターに、sgRNA鋳型をクローニングした。逆PCRを使用して、新し い20−bp相補領域を伴うsgRNAカセットを作成した。蛍光レポーター遺伝子を大 腸菌ゲノムに挿入するために、蛍光遺伝子をはじめにエントリーベクターにクローニング し、これを次いでPCR増幅して、nsfA5’/3’UTR配列、蛍光遺伝子およびK anR選択マーカーを含む直線化DNA断片を作成した。大腸菌MG1655株を、λ− レッド(Red)組み換えタンパク質(エキソ、ベータおよびガンマ)を含む温度感受性 プラスミドpKD46で形質転換した。細胞培養を30℃で約0.5のOD(600nm )まで成長させ、0.2%アラビノースを添加して、1時間、λ−レッド組み換えタンパ ク質を誘導した。細胞を4℃で回収し、エレクトロポレーションによる直線化DNA断片 の形質転換のために使用した。正しいゲノム挿入を含む細胞を、50μg/mLカナマイ シンを用いて選択した。

フローサイコメトリーおよび分析 2mLの96ウェルのディープウェルプレート(Costar3960)中100μg /mLカルベニシリンおよび34μg/mLクロラムフェニコール含有EZ−RDMで、 37℃にて一晩1200r.p.mで株を培養した。次いで、この一晩培養のうち1μL を、同じ抗生濃度を伴い、2μMのaTcが添加された249μLの新しいEZ−RDM に添加し、dCas9タンパク質の生成を誘導した。細胞が半対数期まで成長した際に( 約4時間)、蛍光タンパク質の量を、高処理サンプラーが設備されたLSRIIフローサ イトメーター(BDバイオサイエンス社(BD Biosciences))を用いて決 定した。少なくとも20、000個の細胞が回収されるまで、低フロー速度で細胞をサン プリングした。前方分散側分散図にて60%の細胞密度を含む多角形領域をゲートする( gating)ことで、FCS Express(デ・ノボ・ソフトウェア社(De N ovo Software))を用いてデータを分析した。各実験に関して、三重で培養 物を測定し、それらの標準偏差をエラーバーとして示した。

Β−ガラクトシダーゼアッセイ β−ガラクトシダーゼアッセイを実行するために、上記の通り調製した1μLの一晩培 養物を、同じ抗生濃度で、2μMのaTcを伴い、1mMのイソプロピルβ−D−1−チ オガラクトピラノシド(IPTG)を伴う、または伴わない249μLの新しいEZ−R DMに添加した。細胞が半対数期まで成長させた。この培養の100uLのLacZ活性 を、説明に従って酵母β−ガラクトシダーゼアッセイキット(ピアス社(Pierce) )を使って測定した。

合計RNAの抽出および精製 各試料に関して、大腸菌のモノクローン培養物を、37℃で500mLのEZ−RDM 中OD(600nm)0.1から初期の対数期(OD0.45±0.05)まで成長させ 、この時点で細胞を0.22μmのニトロセルロース膜(GE)上での濾過によって回収 し、液体窒素で凍結させて同時に全ての転写進行を止めた。10mMのMnCl2および 15μMのTagetin転写インヒビター(エピセンター社)を添加した500μLの 凍結溶解緩衝液(20mMのTris pH8、0.4%Triton X−100、0 .1%NP−40、100mMのNH4Cl、50U/mLSUPERase・In(ア ンビオン社)および1倍プロテアーゼインヒビターカクテル(完全、EDTAフリー、ロ シュ社)の存在下で、凍結細胞(100μg)を、Qiagen TissueLyse r IIミキサーミル上で、15Hzで3分間、6回粉々にした。

可溶化物を、ピペッティングすることで、氷の上に再懸濁した。RQ1 DNase I(110U合計、プロメガ社)を添加し、氷上で20分間インキュベートした。反応を EDTA(25mM最終)でクエンチし、10分間の20、000gの遠心分離によって 、可溶化物を4℃で透明にした。可溶化物をPD MiniTrapG−25カラム(G Eヘルスケア社)上に載せ、1mMのEDTAを添加した溶解緩衝液で溶離した。

全mRNAの精製 miRNeasyキット(キアゲン社)を用いて、全RNAを透明にした可溶化物から 精製した。20μLの10mMのTris pH7中の1μgのRNAを同じ容積の2倍 アルカリ性断片化溶液(2mMのEDTA、10mMのNa2CO3、90mMのNaH CO3、pH9.3)と混合し、約25分間95℃にてインキュベートし、30〜100 ntの範囲である断片を作成した。0.56mLの氷冷沈殿溶液(300mMのNaOA c pH5.5およびGlycoBlue(アンビオン社))を添加することで断片化反 応を停止し、標準イソプロパノール沈殿によって、RNAを精製した。次いで、1倍PN K緩衝液(ATP無し)および0.5U SUPERase・In中25U T4 PN K(NEB)を伴う50μLの反応内で断片化mRNAを脱リン酸化し、標準イソプロパ ノール沈殿方法によってGlycoBlueで沈殿させた。

新生RNA精製 新生RNA精製のために、透明にした可溶化物を前述の通り0.5mL抗FLAG M 2アフィニティーゲル(シグマ・アルドリッチ社)に添加した。4℃で2.5時間回転を 伴う、透明にした可溶化物とのインキュベーション前に、アフィニティーゲルを、1mM のEDTAを添加した溶解緩衝液で2回洗浄した。300mMのKClを添加した溶解緩 衝液で、免疫沈澱を4×10ml洗浄し、結合したRNAPを1mMのEDTAおよび2 mg/mLの3x−FLAGペプチド(シグマ・アルドリッチ社)を添加した溶解緩衝液 で2回溶離した。新生RNAを、miRNeasyキット(キアゲン社)を用いて溶離液 から精製し、以前に確立されたライブラリー作成プロトコルを用いてDNAに転換した。

DNAライブラリー調製およびDNAシークエンシング DNAライブリーはIllumina HiSeq2000上でのシークエンシングで ある。HTSeq PythonパッケージおよびPythonに書かれる他の従来のソ フトウェアを用いて、リードを処理した。シークエンシングされた転写物の3’末端を、 Bowtie(「.sourceforge.net」の前(preceeding)に 「bowtie−bio」)およびMochiView(「.edu/mochi.ht ml」の前に「johnsonlab.ucsf」)で作成されるRNAPプロファイル を用いて、参照ゲノムと配列した。

ヒト細胞におけるCRISPRiのためのプラスミド設計および作成 哺乳動物コドン最適化ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9(DNA2.0)をコ ードする配列を三つのC末端SV40核局在配列(NLS)と、または、二つのNLSが 隣接するtagBFPに融合させた。標準ライゲーション独立クローニングを用いて、こ れら二つの融合タンパク質をMSCV−Puro(クロンテック社)にクローニングした 。CMVプロモーターからmCherryを同時発現するpSico由来であるレンチウ ィルスU6ベース発現ベクターを用いて、誘導sgRNAを発現させた。sgRNA発現 プラスミドを、アニールしたプライマーを、BstXIおよびXhoIで消化したレンチ ウィルスU6ベース発現ベクターに挿入することでクローニングした。

ヒト細胞におけるCRISPRiのための細胞培養、DNA形質移入および蛍光測定 HEK293細胞を、10%FBS、2mMのグルタミン、100単位/mLストレプ トマイシンおよび100μg/mLペニシリン中ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM )で維持した。標準的なプロトコルを用いて、HEK293をGFP発現MSCVレトロ ウィルスで感染させ、安定したGFP発現のためにBD FACS Aria2を用いて フローサイコメトリーによって分類した。0.5μgのdCas9発現プラスミドおよび 0.5μgのRNA発現プラスミド(図45Bに関しては0.25μgのGFPリポータ ープラスミドを伴う)を用いて、24ウェルプレート内で、製造業者の推奨プロトコルで TransIT−LT1形質移入試薬(ミラス社(Mirus))を使用し、GFP発現 HEK293細胞を一過性的に形質移入した。形質移入から72時間後、細胞を単個細胞 浮遊液にトリプシン処理した。U6ベクターは、mCherry遺伝子を誘導する構成的 CMVプロモーターを含む。mCherry陽性群(陰性対照細胞に比べて10倍超さら に明るいmCherry)をゲートすることで、BD LSRII FACS機を用いて GFP発現を分析した。

設計されたRNA 図で使用されたsgRNA設計:20個のヌクレオチドが適合する領域のみ(DNA標 的化断片)が列挙される(別で指示されない限り): 図40Cで使用されたmRFP標的sgRNA(配列番号741〜746); 図40Dで使用されたプロモーター標的sgRNA(配列番号747〜751); 図40Dの標的プロモーター配列(配列番号752); 図43Bで使用されたmRFP標的sgRNA(配列番号753〜760); 図42Bで使用されたsfGFP標的sgRNA(gfp)(配列番号761); 図43Bで使用されたsfGFP標的sgRNA(配列番号762〜769); 図43Fおよび図51の二重sgRNA標的実験(配列番号770〜778); 図44Bで使用されたlacオペロン標的sgRNA(配列番号779〜787);およ び 図45で使用されたEGFP標的sgRNA(配列番号788〜794)。

結果 CRISPR(規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列)システム は、標的遺伝子調節のための新しい可能性のあるプラットフォームを提供する。40%の 細菌のおよび90%の古細菌が、外来性DNA要素に対する耐性を与えるCRISPR/ CRISPR関連(Cas)システムを有する。CRISPRシステムは、小さな塩基対 形成RNAを用いて配列特異的な方法で外来性DNA要素を標的および切断する。異なる 有機体に多種多様のCRISPRシステムが存在し、最も単純なものがストレプトコッカ ス・ピオゲネスのII型CRISPRシステムである:Cas9タンパク質および二つの RNAをコードする単一遺伝子、成熟CRISPR RNA(crRNA)および部分的 に相補的であるtrans作動性RNA(tracrRNA)のみが外来性DNAのRN A誘導サイレンシングには必要および十分である(図46)。crRNAの成熟にはtr acrRNAおよびRNaseIIIが必要である。しかし、この必要条件を、trac rRNA−crRNA複合体を模倣するよう設計されたヘアピンを含む、操作した小さな 誘導RNA(sgRNA)を用いることで避けることができる。sgRNAと標的DNA との間の塩基対形成は、Cas9のエンドヌクレアーゼ活性のために、二重鎖切断(DS B)を引き起こす。結合特異性はsgRNA−DNA塩基対形成、および、DNA相補領 域に隣接する短いDNAモチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ、つまりPAM、配列 :NGG)の双方によって決定される。このように、CRISPRシステムは二分子、C as9タンパク質およびsgRNAの最小セットを必要とするだけであり、従って、宿主 独立遺伝子標的プラットフォームとして使用される可能性を秘める。Cas9/CRIS PRは部位選択的RNA誘導ゲノム編集のために活用され得ることが示されている(図3 9A)。

図46は、S.ピオゲネスのII型CRISPRシステムのメカニズムを示す。システ ムは、CRISPR関連(Cas)タンパク質およびリピートスペーサー配列のアレイを 含むCRISPR座位から成る。全てのリピートは同じであり、全てのスペーサーは異な り、標的DNA配列に相補的である。細胞が外来性DNA要素に感染された場合、CRI SPR座位は、より小さな断片に切断される長い前駆転写物に転写する。切断はトランス 作動性アンチセンスRNA(tracrRNA)および宿主RNase IIIによって 媒介される。切断後、一つの単一タンパク質、Cas9、がcrRNAの切断された形態 を認識し、結合する。Cas9はcrRNAをDNAに誘導し、DNA分子を走査する。 複合体は、crRNAとDNA標的との間で塩基対形成することで安定化される。この場 合、Cas9は、そのヌクレアーゼ活性のために、二重鎖DNA切断を引き起こす。これ は通常同種DNA分子を取り除き、細胞がある特定のDNA群に免疫を与える。

図39は、CRISPR干渉(CRISPRi)システムの設計を示す。(A)最小干 渉システムは、単一タンパク質および設計sgRNAキメラから成る。sgRNAキメラ は三つのドメイン(枠で囲まれた領域)から成る:特異的DNA結合のための20ヌクレ オチド(nt)相補領域、Cas9結合のための42ntヘアピン(Cas9ハンドル) 、およびS.ピオゲネス由来の40nt転写ターミネーター。野生型Cas9タンパク質 はヌクレアーゼ活性を含む。dCas9タンパク質はヌクレアーゼ活性おいて欠陥がある 。(B)野生型Cas9タンパク質はsgRNAに結合し、タンパク質−RNA複合体を 形成する。複合体は、sgRNAとDNA標的との間のワトソン−クリック塩基対形成に よって特定のDNA標的に結合する。野生型Cas9の場合、DNAはCas9タンパク 質のヌクレアーゼ活性のために切断される。ヌクレアーゼ欠陥Cas9の場合、複合体が 適切な転写を破壊する。

最小CRISPRiシステムは、単一タンパク質およびRNAから成り、効果的に転写開 始および伸長をサイレンシングできる。

そのようなCRISPRiプラットフォームを大腸菌で実施するため、野生型S.ピオ ゲネスCas9遺伝子およびsgRNAを細菌ベクターから発現させ、システムが標的座 位で遺伝子発現を乱し得るかどうかを決定した(図40A)。S.ピオゲネスCRISP Rシステムは天然大腸菌システムに対して直交性である。Cas9タンパク質はp15A 複製起点を含むプラスミド上のアンヒドロテトラサイクリン(aTc)誘導性プロモータ ーから発現され、sgRNAはColE1複製起点を含むプラスミド上の最小構成的プロ モーターから発現される。代替戦略として、DNA切断において欠陥がある、触媒的に死 んだCas9変異体(dCas9)を使用して、Cas9のこの形態が単一のRNA誘導 DNA結合複合体として依然作用することを示した。

図40は、CRISPRiが効果的に転写伸長および開始をサイレンシングするのを示 す。(A)CRISPRiシステムは誘導性Cas9タンパク質および設計sgRNAキ メラから成る。dCas9はRuvC1およびHNHヌクレアーゼドメインの変異を含む 。sgRNAキメラは、図1に記載される通り、三つの機能性ドメインを含む。(B)設 計sgRNA(NT1)およびDNA標的の配列。NT1は、mRFPコード領域の非鋳 型DNA鎖を標的とする。塩基対形成モチーフを囲む領域(20nt)のみが示される。 塩基対形成ヌクレオチドには数が振り分けられ、dCas9結合ヘアピンに上線が引かれ ている。PAM配列は下線が引かれている。(C)CRISPRiは鎖特異的な方法で転 写伸長を遮断する。mRFPをコードする遺伝子を含む合成蛍光ベースリポーターシステ ムを大腸菌MG1655ゲノム(nsfA座位)に挿入した。鋳型DNA鎖または非鋳型 DNA鎖のいずれかに結合する6個のsgRNAを、dCas9タンパク質で同時発現さ せ、インビボ蛍光アッセイによって測定される、標的mRFPに対するそれらの効果を伴 った。非鋳型DNA鎖に結合するsgRNAのみがサイレンシングを示した(10〜30 0倍)。対照はdCas9タンパク質を伴うがsgRNAは伴わない細胞の蛍光を示す。 (D)CRISPRiは転写開始を遮断した。五つのsgRNAを、大腸菌プロモーター (J23119)周辺の異なる領域に結合するよう設計した。転写開始部位を+1として 標識した。点線の楕円は−55から+20の75−bp領域を包含する初期RNAP複合 体を示す。初期RNAP複合体内のsgRNA標的領域のみが抑制(P1〜P4)を示し た。転写伸長遮断とは違い、サイレンシングは標的DNA鎖と無関係であった。(E)C RISPRi調節は可逆性であった。dCas9およびsgRNA(NT1)の双方がa Tc誘導性プロモーターの制御下にあった。細胞培養を指数関数期の間維持した。時間T =0の際、1μMのaTcを細胞にOD=0.001で添加した。標的mRFPの抑制が 10分内に開始された。蛍光シグナルは細胞成長に一貫した方法で崩壊し、その崩壊は細 胞分割のためであったことを示唆した。240分後には、蛍光は完全に抑制されたレベル に到達した。T=370分では、aTcは成長培地から洗浄され、細胞をOD=0.00 1まで希釈し直した。蛍光は50分後に増加し始め、陽性対照と同じレベルに上がるまで 300分かかった。陽性対照:常にインデューサー無し;陰性対照:常に1μMのaTc インデューサー有り。2C、2D、および2Eにおける蛍光結果は、平均および少なくと も三つの生物学的複製物のSEMを示す。図47および図48も参照されたい。

Cas9で同時発現したsgRNAはそれぞれ三つの断片から成る:20ヌクレオチド (nt)標的特異的相補領域、42ntのCas9結合ヘアピン(Cas9ハンドル)お よびS.ピオゲネス由来の40nt転写ターミネーター(図40B)。赤色蛍光タンパク 質(mRFP)ベースレポーターシステムを大腸菌MG1655ゲノムに挿入した。

野生型Cas9タンパク質およびmRFPコード配列に標的されたsgRNA(NT1 )の同時発現は、形質転換効率を劇的に減少させ、これは、おそらくゲノム上のCas9 誘導性二重鎖切断のためである(図47A)。数個の生存コロニーのシークエンシングは 、それらはすべてゲノム上の標的mRFP部位周辺で配列再編成を有し、野生型Cas9 および宿主配列に標的されたsgRNAの発現に対して強い選択性があることを示唆した 。RuvC1およびHNHヌクレアーゼドメインの二つのサイレンシング変異を含む(D 10AおよびH841A)dCas9変異体遺伝子(非切断)は、形質転換能率および大 腸菌成長速度によって確認される通り、この致死率を緩和した(図47A&B)。

図47は図40に関連し、dCas9およびsgRNAで同時形質転換した大腸菌細胞 培養の成長曲線を示す。(A)大腸菌細胞を二つのプラスミドで形質転換するための低湿 転換効率。一つのプラスミドは、mRFPのゲノムコピーを標的とするsgRNAを含み 、もう一方のプラスミドは、野生型Cas9またはdCas9を含む。野生型Cas9お よびsgRNAの同時形質転換は非常に有毒であり、これは、dCas9を使用して緩和 され得る。(B)sgRNA(NT1)を、mRFPのコード配列を標的とするように設 計する。dCas9およびsgRNAの同時発現は、細胞成長速度にはほぼ一切効果を示 さず、これは、DNAとのdCas9−sgRNA相互作用は、RNAポリメラーゼを遮 断するには十分強いが、DNAポリメラーゼまたは細胞複製を遮断するほどではないこと を示唆する。結果は平均および少なくとも三つの独立した実験のSEMを示す。

dCas9:sgRNA複合体が遺伝子発現の非常に効率的な抑制を提供し得るかどう かを試験するために、mRFPコード配列の異なる領域に相補的なsgRNAを設計し、 これらは、鋳型DNA鎖または非鋳型DNA鎖のいずれかに結合する。結果は、非鋳型D NA鎖を標的とするsgRNAは、効果的な遺伝子サイレンシングを示す(10から30 0倍の抑制)一方で、鋳型鎖を標的とするものはほとんど効果を示さなかったことを明か した(図40C)。システムは、大腸菌ゲノム内または高コピープラスミド上にある遺伝 子に関しても同様の抑制効果を示した(図48)。さらに、プロモーター領域への標的も 効果的な遺伝子サイレンシングをもたらした(図40D)。sgRNAの−35枠への標 的は、遺伝子発現を著しくノックダウンした(P1、約100倍の抑制)一方で、他の隣 接領域への標的は弱化した効果を示した(P2〜P4)。プロモーターの100bp上流 周辺の配列の標的は一切効果を示さなかった(P5)。コード配列の標的とは違って、プ ロモーターを標的とする場合、サイレンシングの効率はDNA鎖とは無関係である;鋳型 または非鋳型鎖の標的は同じくらい効果的である(P2およびP3)。

図48は、図40Cと関連しており、CRISPRiが複数コピープラスミド上のレポ ーター遺伝子の発現をサイレンシングし得ることを示す。mRFP遺伝子をap15Aプ ラスミドにクローニングした。dCas9およびmRFP特異的sgRNA(NT1)の 存在はmRFPを強く抑制する(約300倍)。抑制効果は、ゲノム内でmRFPを用い て観察されるものに類似している(図40C)。サイレンシングは、sgRNAが鋳型D NA鎖ではなく非鋳型DNA鎖上で作用する時のみ効果的である(T1)。また、GFP 特異的3sgRNA(gfp)がmRFP発現に一切効果を示さない通り、サイレンシン グは非常に特異的である。蛍光結果は、平均および少なくとも三つの生物学的複製物のS EMを示す。

CRISPRi遺伝子ノックダウンは誘導性および可逆性である 遺伝子ノックダウン方法と違って、CRISPRiベースの遺伝子発現ノックダウンを 使用することの一つの利点に、この乱れは可逆性であるはずであるという事実である。C RISPRi調節が誘導され、続いて逆転され得るかどうかを試験するために、dCas 9およびmRFP特異的sgRNA(NT1)の双方をaTc誘導性プロモーターの制御 下に置き、インデューサーに反応するmRFPのCRISPRi媒介性調節の時間経過測 定を実施した(図40E)。時間0で、インデューサー無しで初期対数期まで成長した細 胞培養物に1μMのaTcを添加した。データは、システムはインデューサーの存在に素 早く反応し得ることを示し、蛍光レポータータンパク質シグナルはインデューサー分子の 添加後10分内に減少し始めた。mRFPタンパク質は安定しているため、同様の細胞増 倍時間および蛍光半減時間の損失(双方とも約36分)によって見られるように、蛍光シ グナル減少速度は細胞成長によるタンパク質希釈によって制限される。240分では、全 ての細胞が陰性対照と同じレベルまで均一に抑制された。420分で、インデューサーを 成長培地から洗浄し、細胞をより低いODまで希釈し直した。50分の遅れの後、mRF P蛍光は上昇し始めた。単一細胞蛍光が陽性対照と同じレベルまで上昇するのに合計30 0分かかった。50分の遅れは、細胞成長および分割による希釈によってオフセットされ るdCas9/sgRNAターンオーバー速度によって決定される可能性が一番高い。つ まり、これらの結果は、dCas9−sgRNAのサイレンシング効果は誘導され、逆転 され得ることを示す。

天然伸長転写物シークエンシング(NET−Seq)は、CRISPRiが、転写を遮断 することで機能することを確証する dCas9は転写伸長の間RNAポリメラーゼ(RNAP)結合を遮断し得るRNA誘 導DNA結合複合体として機能しているように見えた。非鋳型DNA鎖は転写mRNAと 同一の配列同一性を共有し、非鋳型DNA鎖に結合するsgRNAのみがサイレンシング を示しため、dCas9:sgRNA複合体はmRNAと相互に作用し、その翻訳または 安定性を変えるという可能性にとどまった。これらの可能性を区別するため、直近に転写 した天然伸長転写物シークエンシング(NET−seq)アプローチを、伸長RNAポリ メラーゼの位置のプロファイルを全体的に作り、転写物に対するdCas9:sgRNA 複合体の効果をモニターするために使用され得る大腸菌に適用した。このNET−seq 方法で、CRISPRiシステムをFLAGでタグしたRNAPを含む大腸菌MG165 5由来株に形質転換した。CRISPRiはmRFPコード領域に結合するsgRNA( NT1)を含んだ。タグされたRNAPのインビトロ免疫精製、続いて伸長RNAPに関 連する新生転写物のシークエンシングによって、RNAPの休止部位の区別を可能にした 。

これらの実験は、sgRNAが、sgRNA標的座位の上流に強力な転写休止を誘導し たことを示した(図41A)。休止部位と標的部位との間の距離は19bpであり、これ は、従来報告された、RNAPのヌクレオチド取り込みとその先端との間の約18bpの 距離に完璧に一致している。この発見は転写遮断が伸長RNAPとdCas9:sgRN A複合体との間の物理的な衝突のためであるというCRISPRiのメカニズムに一致し ている(図41B)。dCas9:sgRNA複合体の鋳型鎖との結合はほとんど抑制効 果を有さず、RNAPはこの特定の配向では複合体をリードスルーできることを示唆した 。この場合、sgRNAはRNAPのヘリカーゼ活性によって開かれ得るRNAPに向く 。これらの実験は、CRISPRiがRNAを使用して転写を直接遮断することを示す。 このメカニズムは、遺伝子発現のノックダウンが翻訳前にすでに転写されたメッセンジャ ーRNAの破壊を必要とするRNAiのメカニズムとは違う。

図41は、CRISPRiが転写伸長を遮断することで機能することを示す。(A)F LAGでタグしたRNAP分子を免疫沈澱し、関連新生mRNA転写物をシークエンシン グした。上部パネルはsgRNA無しの細胞内の新生mRFP転写物のシークエンシング 結果を示し、下部パネルはsgRNA有りの細胞での結果を示す。sgRNAの存在下で は、強力な転写休止が標的部位の19bp上流で観察され、その後、シークエンシングリ ードの数は急激に落ちる。(B)RNAPとdCas9−sgRNAとの間の物理的衝突 に基づく、提唱CRISPRiメカニズムである。RNAPの中央から先端までの距離は 約19bpであり、これは、我々が測定した転写休止部位とsgRNA塩基対形成領域の 3’との距離に良く適合する。休止されたRNAPはdCas9−sgRNA障害物に遭 遇した際に転写伸長に失敗する。

CRISPRi sgRNA誘導遺伝子サイレンシングは非常に特異的である ゲノム全体規模でのCRISPRiの特異性を評価するために、sgRNA同時発現を 伴う、および、伴わない、dCas9で形質転換された細胞の全トランスクリプトームシ ョットガンシークエンシング(RNA−seq)を実施した(図42A)。mRFP(N T1)に標的されたsgRNAの存在下では、mRFP転写物は存在量の低下を示す唯一 の遺伝子であった。他のどの遺伝子も、シークエンシングエラー内で、sgRNAの添加 後に発現に顕著な変化を示さなかった。異なる遺伝子を標的とする異なるsgRNAを伴 う細胞にRNA−seqも実施した。これらの実験はどれも、標的遺伝子の他に遺伝子の 顕著な変化を示さなかった(図49)。このように、sgRNA誘導遺伝子標的および調 節は、非常に特異的であり、顕著なオフターゲット効果を有さない。

図42は、CRISPRiシステムの標的特異性を示す。(A)ゲノム規模のmRNA シークエンシング(RNA−seq)により、CRISPRi標的はオフターゲット効果 を一切有さないことが確認された。mRFPコード領域に結合するsgRNA NT1を 使用した。dCas9、mRFP、およびsfGFP遺伝子はハイライトされている。( B)複数のsgRNAが独立して二つの蛍光タンパク質レポーターを同一細胞内でサイレ ンシングできる。各sgRNAは特にその同種遺伝子を抑制したが、他の遺伝子は抑制し なかった。双方のsgRNAが存在した場合、双方の遺伝子がサイレンシングされた。エ ラーバーは示す少なくとも三つの生物学的複製物のSEMを示す。(C)二つのsgRN Aを使用して二つの蛍光タンパク質を制御するための顕微鏡画像。上部パネルは大腸菌細 胞の明視野画像を示し、真ん中のパネルはRFPチャネルを示し、下部パネルはGFPパ ネルを示す。一つのsgRNAおよびdCas9の同時発現は、同種蛍光タンパク質をサ イレンシングするだけであり、他はサイレンシングしない。ある特定の蛍光タンパク質が サイレンシングされた細胞からほぼ一切蛍光が観察されなかった通り、ノックダウン効果 は強力であった。スケールバー、10μm。対照は任意の蛍光タンパク質レポーターを伴 わない細胞を示す。蛍光結果は平均および少なくとも三つの生物学的複製物のSEMを示 す。図49も参照されたい。

図49は図42Aに関連しており、異なる遺伝子を標的とするsgRNAを伴う細胞の RNA−seqデータを示す。(A)(+/−)大腸菌の内在性lacI遺伝子のプロモ ーターを標的とするsgRNA。同じlacI標的sgRNAを図44Aの通り使用した 。(B)(+/−)自己抑制sgRNA(sgRNAはその自身のプロモーターを抑制し た)を伴わない細胞のための1mMのIPTG。(C)(+/−)大腸菌の内在性lac Z遺伝子を標的とするsgRNA。同じlacZ標的sgRNAを図44Aの通り使用し た。1mMのIPTGもlacZ標的sgRNAを伴う細胞に添加した。

CRISPRiを使用して同時に複数の遺伝子を調節できる CRISPRiシステムは、クロストーク無しで独立して複数の遺伝子の制御を可能に し得る。mRFPおよびsfGFPに基づいた二色蛍光レポーターシステムを作成した。 各遺伝子に相補的である別個の領域を有する二つのsgRNAを設計した。各sgRNA の発現は、同種遺伝子のみをサイレンシングし、他方には一切効果を有さなかった。二つ のsgRNAの同時発現は、双方の遺伝子をノックダウンした(図42B&C)。これら の結果は、sgRNA誘導標的は、特異的であり、その配列同一性によって表される特異 性を伴い、他のsgRNAの存在による影響を受けないことを示す。この挙動は、CRI SPRiによって複数遺伝子の多重制御を同時に可能にするはずである。

CRISPRiサイレンシング効率を決定する因子 CRISPRi標的効率の決定因子を発見するために、長さ、配列相補性および位置の サイレンシング効率に対する役割を調査した(図43A)。図40Cで示される通り、遺 伝子に沿ったsgRNA標的配列の位置が効率に重要である。sgRNAをさらに、mR FPおよびsfGFPの双方のためのコード領域の全長を包含するように設計した(補足 のsgRNA配列のためのデータ)。全ての例において、抑制は転写開始部位からの標的 距離と逆相関した(図43B)。強力な直線相関がmRFPに関して観察された。類似し た、だがかすかに弱い相関が、sfGFPを標的として使用した際に観察され、もしかす ると、この遺伝子の伸長において異なる時点のRNAポリメラーゼの様々な動態を示す。

sgRNAは、標的に相補的である20bp領域を含む。この塩基対形成領域の重要性 を識別するために、sgRNA NT1の長さを変えた(図43C)。5’末端からの領 域の伸展がサイレンシングに影響を与えなかった一方で、領域の切断は抑制を大きく減少 させた。遺伝子サイレンシングに必要な塩基対形成領域の最小の長さは12bpであり、 さらなる切断は機能の完全な喪失につながる。単一の変異をsgRNA NT1の塩基対 形成領域内に導入し、サイレンシングへの全体的な効果を試験した。結果から、三つのサ ブ領域が認識され得、それぞれ全体的な結合およびサイレンシングに別個に寄与する(図 43D)。初めの7個のヌクレオチドの任意の単一変異は抑制を劇的に減少させ、I型お よびII型CRISPRシステムの双方に関して前述された通り、この配列は結合のため の「シード領域」を構成することを示唆する。隣接ヌクレオチドも対で変異させた(図4 3Eおよび図50)。ほとんどの場合で、二重変異による相対的な抑制活性は、単一変異 の効果と比べて乗法的であり、ミスマッチ間の独立した関係を示唆する。さらに、PAM 配列の重要性に関する以前の結果と一致して、間違ったPAMは20bpの完璧な結合領 域を伴ってもサイレンシングに完全に失敗した(図43E)。このように、CRISPR iシステムの特異性はPAM(2bp)および少なくとも12bpのsgRNA−DNA の一続きによって共同で決定され、その間隔は特有の標的部位に関するほとんどの細菌ゲ ノムを含有するのに十分な大きさである。

双方とも同一の遺伝子を標的とする二つのsgRNAを試験した(図43Fおよび図5 1)。複数のsgRNAの相対的な位置づけ次第で、別個の組み合わせ効果が観察された 。それぞれが約300倍の抑制を伴う、二つのsgRNAを組み合わせると、全体のサイ レンシングの最大1000倍の増加が可能になった。二つのさらに弱いsgRNA(約5 倍)を組み合わせると、一緒に使用された場合は乗法効果が示された。その標的が重なっ ている二つのsgRNAを使用した場合、抑圧的な組み合わせ効果が観察された。これは おそらく同一領域への結合のためのsgRNA双方の競合に起因するものであった。

図43は、サイレンシング効率に影響を与える因子の特徴を示す。(A)異なる標的座 位を同一遺伝子上に伴うsgRNA(翻訳開始コドンからの距離)および同一標的座位に 対する塩基対形成領域の異なる距離を伴うsgRNA(NT1に基づいて)のサイレンシ ング効果を測定した。(B)サイレンシング効率は、翻訳開始コドン(オレンジ色−mR FP&緑色−sfGFP)からの標的距離に逆相関した。各sgRNAの抑制を、最も高 い抑制の倍変化を伴うsgRNAの抑制に対して標準化することで、相対抑制活性を算出 した。エラーバーは三つの生物学的複製物のSEMを示す。(C)sgRNAと標的DN Aとの間のワトソン−クリック塩基対形成領域の長さは、抑制効率に影響を与える。塩基 対形成領域の伸展は全て強力なサイレンシング効率効果を示し、切断は抑制を劇的に減少 させた。検知可能な抑制のための塩基対形成領域の最小の長さは12bpである。エラー バーは三つの生物学的複製物のSEMを示す。(D)単一ミスマッチをsgRNA上の各 ヌクレオチドに導入(NT1、図40B)し、これらの単一ミスマッチがどのように抑制 効率に影響を及ぼすのかを測定した。全体的なサイレンシングに異なる重要性を有する三 つのサブ領域が認識される。それらは段階関数を示す。最初の7ヌクレオチド領域はサイ レンシングには必要不可欠であり、DNA標的に結合するsgRNAをプローブするため の「シード」領域を構成する可能性が高い。PAM配列(NGG)はサイレンシングのた めに必須である。エラーバーは三つの生物学的複製物のSEMを示す。(E)隣接二重ミ スマッチを伴うsgRNAのサイレンシング効果。ミスマッチの位置が下部に示された状 態で、単一ミスマッチのsgRNAの相対抑制活性を示す。実験的に測定された、二重ミ スマッチsgRNAの活性を示す。二つの単一ミスマッチsgRNAの効果をかけること で算出された活性は白色で表され「Com」と名付ける。ほとんどの場合で、二重ミスマ ッチsgRNAのサイレンシング活性は単純に、単一ミスマッチsgRNAの活性の掛け 算であり(図50Bを除いて)、単一ミスマッチ間の独立関係を示唆した。エラーバーは 三つの生物学的複製物のSEMを示す。(F)二重sgRNAを用いて単一mRFP遺伝 子を標的とする組み合わせサイレンシング効果。同一の遺伝子を標的とする二つのsgR NAを用いて、全体的なノックダウン効果をほぼ1000倍まで向上し得る。二つのsg RNAが同一遺伝子の重なっていない配列に結合する際、抑制は増大した。二つのsgR NAが重なった領域を標的とする場合、抑制は抑制された。エラーバーは三つの生物学的 複製物のSEMを示す。

図50は図43Eに関連し、隣接二重ミスマッチを伴うsgRNAのサイレンシング効 果を示す。単一ミスマッチsgRNAの相対抑制活性が、ミスマッチの位置が下部に示さ れた状態で提示される。実験的に測定された、二重ミスマッチsgRNAの活性も示す。 二つの単一ミスマッチsgRNAの効果をかけることで算出された活性は白色で表され「 Com」と名付ける。蛍光結果は平均および三つの生物学的複製物のSEMを示す。

図51は図43Fに関連し、二つのsgRNAを使って単一遺伝子を調節する組み合わ せサイレンシング効果を示す。全ての場合で、重なっていないsgRNAは増大したサイ レンシング効果を示し、重なっているsgRNAは抑圧的な効果を示した。組み合わせ効 果はsgRNAが鋳型または非鋳型DNA鎖を標的していたかどうかに無関係であった。 蛍光結果は平均および三つの生物学的複製物のSEMを示す。

CRISPRi遺伝子ノックダウンを用いた内在性制御ネットワークの調査 次に、CRISPRiシステムを遺伝子ノックダウンプラットフォームとして用い、内在 性遺伝子ネットワークを調査した。微生物遺伝子ネットワークを調査する従来の方法は、 コストがかかり、骨の折れるゲノム工学およびノックダウン手順にほとんど依存していた 。対照的に、CRISPRiでの遺伝子ノックダウンは、所望する遺伝子に相補的である 20bp領域を保有する小さなsgRNAの設計および合成しか必要としない。これを実 証するために、良く特徴づけられた大腸菌ラクトース制御経路の一部分である遺伝子を組 織的に乱すようにsgRNAを設計することで、CRISPRiを用いて大腸菌ノックダ ウン株を作成した(図44A)。lac抑制因子(LacI)を阻害する化学物質である イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を伴う、および伴わない 状態で、β−ガラクトシダーゼアッセイを実施してノックダウン株からのLacZ発現を 測定した。野生型細胞で、IPTGの添加がLacZ発現を誘導した。結果は、lacZ 特異的sgRNAはLacZ発現を強力に抑制し得ることを示した(図44B)。逆に、 lacI遺伝子を標的とするsgRNAは、LacZ発現の直接的な抑制因子をサイレン シングすることに関して予想される通り、IPTGが不在下の時でもLacZ発現の活性 化をもたらした。

cAMP−CRPは、プロモーター上流のcis制御部位(A部位)に結合することで 、LacZ発現の必要不可欠な活性化因子であることが知られている。従って、LacZ プロモーターのcrp遺伝子またはA部位に標的されるsgRNAは抑制につながり、C RISPRi実験を用いて、制御因子をそのcis−制御配列に結合させる手段を実証し た。LacZプロモーターでCRPをもっと効果的にするcAMPを生成するのに必要で あるアデニル酸シクラーゼ遺伝子(cya)を標的とすることは、部分的な抑制にしかつ ながらなかった。1mMのcAMPの成長培地への追加は、crpノックダウンのためで はなくcyaノックダウンのための効果を補い、cyaがLacZの間接的な制御因子で あることを示唆した。さらに、LacI cis制御部位(O部位)をsgRNAで標的 とすることは阻害につながり、というのも、おそらく、この部位でのCas9複合体結合 がLacI転写抑制因子の挙動を模倣し、RNAポリメラーゼを立体的に遮断するからで ある。公知のRNAP結合部位(P部位)を標的とすることも発現を遮断した。要するに 、CRISPRiベースの遺伝子ノックダウン方法が、複合体制御ネットワークの遺伝子 およびcis要素の制御機能(活性化または抑制すること)を調査するための迅速かつ効 果的なアプローチを提供することを、これらの実験は実証する(図44C)。

図44はCRISPRi遺伝子ノックダウンを用いた複合体制御ネットワークの機能性 プロファイリングを示す。(A)sgRNAを設計および使用してlac制御経路の遺伝 子(cya、crp、lacI、lacZ、lacY、lacA)をノックダウンまたは 転写オペレーター部位(A/P/O)を遮断した。LacIは転写オペレーター部位(O 部位)に結合することで、lacZYAオペロンの抑制因子である。lacZ遺伝子はラ クトースをグルコースに触媒する酵素をコードする。cyaおよびcrpといった数個の トランス作動性宿主遺伝子がlacZYAシステムの活性化に関連する。cAMP−CR P複合体は転写オペレーター部位(A部位)に結合し、P部位に結合するRNAポリメラ ーゼを動員し、これは、lacZYAの転写を開始する。LacI機能を阻害する化学物 質であるIPTGは、LacZ発現を誘導する。(B)IPTG無し(白色)および有り (灰色)のノックダウン株のβ−ガラクトシダーゼアッセイ。対照はCRISPRiによ る乱れがない野生型細胞は、IPTGの添加によって誘導され得ることを示す。LacZ を標的とするsgRNAは、IPTGの存在下でもLacZ発現を強力に抑制した。La cIが標的される場合、LacZ発現はIPTG無しでも高かった。cyaおよびcrp 遺伝子を標的とすることは、IPTGの存在下でLacZ発現レベルの低下につながった 。1mMのcAMPの存在はcyaノックダウンを救出したが、crpノックダウンは救 出されなかった。転写オペレーター部位の遮断はLacZ抑制につながり、これらがLa cZのために重要なcis作動性制御部位であることを示唆した。乱れの際には、Lac Zの減少した(下矢印)および増加した(上矢印)発現が示される。エラーバーは三つの 生物学的複製物のSEMを示す。(C)ノックダウン実験によって、lac制御回路での 制御因子の役割のプロファイリングが可能になった。データは2Dグラフで示され、x軸 はIPTG無しのLacZ活性、y軸はIPTG有りの活性を示している。各軸に沿った 楕円形の拡散は、標準偏差を示す。β−ガラクトシダーゼアッセイ結果は平均および三つ の生物学的複製物のSEMを示す。LacIおよびLacZ標的に関するRNA−seq データは、図49も参照されたい。

CRISPRiはヒト細胞の標的遺伝子発現をノックダウンし得る。

dCas9−sgRNA複合体を使用して転写を抑制するCRISPRiアプローチの 一般性を試験するために、システムをHEK293哺乳動物細胞内で試験した。dCas 9タンパク質をコドン最適化し、核局在配列(NLS)の三つのコピーに融合させ、マウ ス胚性幹細胞ウィルス(MSCV)レトロウィルスベクターから発現させた。図40Bで 示された同一であるsgRNA設計を用いてRNAポリメラーゼIII U6プロモータ ーから発現させた。SV40プロモーター下でEGFPを発現するレポーターHEK29 3細胞株をウィルス感染によって作成した。EGFPコード領域の非鋳型DNA鎖を標的 したsgRNA(eNT2)を用いると、わずかだが再現可能な遺伝子発現のノックダウ ンが観察された(46%抑制、図45A)。抑制はdCas9タンパク質およびsgRN Aの双方に依存しており、抑制がdCas9−sgRNA複合体およびRNA誘導標的の ためであることを暗示している。同一のsgRNAは、プラスミドから一過性的に発現さ れた場合、同一遺伝子上により良い抑制を示した(63%抑制、図52)。細菌システム に一貫して、非鋳型鎖に標的されたsgRNAのみが抑制を示した。転写開始からの距離 および局所のクロマチン状態といった因子も抑制効率を決定する重要なパラメーターであ り得る(図52)。dCas9およびsgRNA発現の最適化、安定性、核局在および相 互作用は、哺乳動物細胞におけるCRISPRi効率のさらなる改善を可能にするだろう 。

図45は、CRISPRiがヒト細胞で遺伝子発現を抑制できることを実証する。(A )HEK293細胞のCRISPRiシステム。SV40−EGFP発現カセットをレト ロウィルス感染経路でゲノムに挿入した。dCas9タンパク質をコドン最適化し、NL S配列の三つのコピーと融合した。sgRNAをRNAポリメラーゼIII U6ベクタ ーから発現した。dCas9およびEGFPの非鋳型鎖を標的とするsgRNA(eNT 2)の同時形質移入は蛍光を減少させる一方で(約46%)、dCas9またはsgRN A単独のいずれかの発現は一切効果を示さなかった。(B)dCas9:sgRNA媒介 性抑制は、標的座位に依存していた。七つのsgRNAを、鋳型または非鋳型鎖のEGF Pコード配列の異なる領域を標的とするように設計した。eNT2およびeNT5のみが わずかな抑制を示した。7Aおよび7Bからの蛍光結果は平均および二つの生物学的複製 物のエラーを示す。

図52は図45に関連しており、sgRNA抑制が標的座位に依存し、および転写開始 からの距離に比較的依存することを示す。同一のsgRNAを用いて異なるプロモーター を伴う同一のEGFP遺伝子を抑制した。Cas9/sgRNA複合体は、一過性的に形 質移入したプラスミドDNAからの転写を抑制した。転写抑制の量はゲノム遺伝子に関し て観察されたものより少しだけ良く(63%)、GFP陰性細胞のパーセンテージはsg RNAの存在下で上昇した。標的座位は転写開始から異なる距離を有する。SV40−E GFPが抑制を示す一方で、LTR−EGFPは効果を一切有さなかった。蛍光結果は平 均および二つの生物学的複製物のエラーを示す。

CRISPRiは効率的かつ選択的に標的遺伝子の転写を抑制する CRISPRiシステムは標的遺伝子調節のために比較的単純なプラットフォームである 。CRISPRiは複雑な宿主因子の存在に依存せず、その代わりにdCas9タンパク 質および誘導RNAを必要とするだけであり、従って、融通性があり非常に設計しやすい 。システムは細菌内の遺伝子を効果的にサイレンシングできる。サイレンシングは、オフ ターゲット効果が一切検知されなかった通り、大変効率的である。さらに、標的座位およ びsgRNAと標的遺伝子との間の塩基対形成の度合いを変えることで、ノックダウンの 効率を調節することができる。これによって、必須遺伝子の研究に特に有益である特色で ある、対立遺伝子の一連のハイポモルフを作成することが可能になるであろう。システム は、sgRNAを設計することで簡単にプログラムできる方法で転写を直接遮断すること で、機能する。メカニズム的には、これは、すでに転写されたsgRNAの破壊を要する RNAiベースのサイレンシングとは異なる。

さらに、これらdCas9:sgRNA複合体は、それらの同種trans作動性転写 因子の会合を立体的に遮断し、任意のプロモーター内の重要なcis作動性モチーフを標 的とすることで、転写の調節もできる。このように、遺伝子ノックダウンツールとしての それの利用に加え、CRISPRiはプロモーターの機能性マッピングおよび他のゲノム 制御モジュールのために使用され得る。

CRISPRiはゲノム規模の分析および調節に適している。

CRISPRi方法はDNA標的化RNAの使用に基づいており、DNA標的化断片の みが特異的遺伝子標的のために設計される必要がある。大規模DNAオリゴヌクレオチド 合成技術の発達に伴い、ゲノム標的のために特有の20bp領域を含むオリゴヌクレオチ ドの大きなセットを作成することは、迅速かつ費用がかからない。これらオリゴヌクレオ チドライブラリーによって、大量の個々の遺伝子を標的して遺伝子機能を推測し、または 、遺伝子対を標的して遺伝子相互作用をマッピングすることが可能になり得る。さらに、 小さなサイズのsgRNAによって複数の要素を同一発現ベクターに連結することを可能 にするように、CRISPRiを用いて、遺伝子の大きなセットを同時に調節し得る。

CRISPRiは微生物ゲノムを操作するための新しいツールを提供する CRISPRiプラットフォームはコンパクトかつ自給自足型であるため、異なる有機 体に適応させることができる。CRISPRiは、病原菌または産業上有益な有機体を含 む、遺伝子工学方法があまり発達していない非モデル有機体を研究するために強力なツー ルである。ほとんどの真核生物と違い、多くの細菌はRNAi機構に欠ける。その結果、 設計合成配列RNAを用いた内在性遺伝子の調節は現在限られている。CRISPRiは 、微生物内の遺伝子の乱れのためのRNAi様方法を提供し得る。

転写制御ネットワークを操作するためのプラットフォームとしてのCRISPRi CRISPRiを、転写制御ネットワークを操作するための柔軟なフレームワークとし て利用することができる。CRISPRiプラットフォームは、実質的にRNA誘導DN A結合複合体であるため、多種多様な制御機構をゲノム内の特定の部位に誘導するための 柔軟な足場配列も提供する。標的遺伝子の転写を単に遮断することを超え、dCas9タ ンパク質を多くの制御ドメインに結合させて異なる生物学的プロセスを調節する、および 、異なる機能上の結果(たとえば、転写活性化、クロマチン修飾)を引き起こすことが可 能である。

CRISPRiシステムにおいて、複数のsgRNAを、一つの上流sgRNAが別の 下流sgRNAの発現を制御する転写回路内に結びつけることも可能である。微生物内の RNA分子は短命である傾向にあるため、sgRNAによって調節される遺伝子プログラ ムは、タンパク質発現および分解といった遅いプロセスを含む回路とは異なる、素早い動 態を示し得ると我々は考える。つまり、CRISPRiシステムはゲノム規模の機能性プ ロファイリング、微生物代謝工学および細胞リプログラミングを含む、様々な生物学医療 研究および臨床応用に適した一般的な遺伝子プログラミングプラットフォームである。

実施例5:キメラ部位特異的ポリペプチドを使ってヒト細胞の転写を調節(活性化または 抑制)し得る。

ヒト細胞で、触媒的に不活性なCas9および活性化因子ドメインまたは抑制因子ドメ インを含む融合タンパク質が、標的DNAからの転写をそれぞれ増大または減少させ得る ことを我々は実証した。

図55。ヒト化した触媒的に不活性なCas9を転写活性化因子ドメインVP64と融 合した。(A)このシステムを用いた遺伝子活性化の効率を試験するため、GFPを制御 するGAL4 UAS誘導性プロモーターをHEK293(ヒト組織培養細胞)ゲノムに 挿入した。(B)GAL4 UASプロモーターは酵母菌由来のタンパク質GAL4の存 在下で誘導され得る。dCas9−VP64融合は、GAL4 UAS領域に結合する同 種誘導RNAの存在下ではGAL4 UASを20倍効率的に活性化し得る。(C)dC as9−VP64活性化の顕微鏡画像である。(D)dCas9−VP64活性化のため のフローサイコメトリーデータである。

図56 ヒト化した触媒的に不活性なCas9を転写抑制因子ドメインKRABと融合 した。(上部)良く特徴づけされたプロモーターであるSV40初期プロモーターを標的 とする10個の誘導RNAおよびEGFPコード領域を標的とする1個の誘導RNAを設 計した。(下部)非キメラdCas9を用いて、P9およびNT2のgRNAに関して2 〜3倍の抑制を観察した。この効率を、dCas9−KRAB融合を用いて大いに向上さ せた。たとえば、dCas9−KRAB融合で、P9およびNT2はそれぞれ20倍およ び15倍の抑制を示した。さらに、P1〜P6は、融合タンパク質が使用された際、発現 において著しい減少を示したが、非キメラdCas9が使用された際は、限られた抑制を 示した。

実施例6:Cas9は、天然に存在しない人工誘導RNAを使って標的DNAの切断を実 施し得る 人工crRNAおよび人工tracrRNAを、S.ピオゲネスcrRNAおよびtr acrRNAの天然に存在する転写物のタンパク質結合断片に基づいて設計し、S.ピオ ゲネスcrRNA:tracrRNA二重鎖の非対称バルジを模倣するように修飾した( 図57Aに示される人工(上部)および天然(下部)RNA分子双方のタンパク質結合ド メインのバルジを参照されたい)。人工tracrRNA配列は天然tracrRNAと 50%未満の同一性を共有する。crRNA:tracrRNAタンパク質結合二重鎖の 予想される二次構造は、双方のRNA対に関しては同じであるが、残りのRNAの予想さ れた構造はかなり異なる。

図57は、天然に存在するtracrRNAおよびcrRNAとほんの少ししか共有し ない(だいたい50%の同一性)人工配列は、Cas9と機能してDNA標的化RNAの タンパク質結合ドメインの構造が保存される限り、標的DNAを切断し得ることを実証す る。(A)S.ピオゲネスtracrRNAおよびcrRNA並びに人工tracrRN AおよびcrRNAの同時折り畳み。(B)S.ピオゲネスCas9およびtracrR NA:crRNAオルソログの組み合わせを用いてプラスミドDNA切断アッセイを実施 した。Spy−S.ピオゲネス、Lin−L.イノキュア、Nme−N.メニンギティデ ィス、Pmu−P.マルトシダ。S.ピオゲネスCas9はいくつかによっては誘導され 得るが、選択される細胞種に天然に存在する全てのtracrRNA:crRNAオルソ ログによってではない。特に、S.ピオゲネスCas9は、CRISPRシステムに完全 に関連していない配列を用いて、天然に存在するDNA標的化RNAのタンパク質結合断 片の構造に基づいて設計された人工tracrRNA:crRNA対によって誘導され得 る。

使用された人工“tracrRNA”(活性化RNA)は、5’−GUUUUCCCU UUUCAAAGAAAUCUCCUGGGCACCUAUCUUCUUAGGUGCC CUCCCUUGUUUAAACCUGACCAGUUAACCGGCUGGUUAGG UUUUU−3’(配列番号1347)であった。使用された人工“crRNA”(標的 化RNA)は、:5’−GAGAUUUAUGAAAAGGGAAAAC−3’(配列番 号1348)であった。

実施例7:非ヒト遺伝子組み換え体の作成 Cas9を発現する遺伝子組み換えマウス(非改変、減少した酵素活性を有するように 改変された、上記のいずれかの目的のために融合タンパク質として改変された、のいずれ か)を、当該技術分野の当業者には公知の従来の方法を用いて作成する(たとえば、(i )マウス胚幹細胞(ES細胞)の標的座位(たとえばROSA26)での遺伝子ノックイ ンに続く胚盤胞注入およびキメラマウスの作成;(ii)無作為に組み込む導入遺伝子の 受精したマウス卵母細胞の前核への注入に続く偽妊娠雌への卵細胞着床;など)。Cas 9タンパク質は、少なくとも胚幹細胞で発現するプロモーターの制御下にあり、さらに、 一時的または組織特異的な制御下にあり得る(たとえば、薬剤誘導性、Cre/Loxベ ースプロモーターシステムによって制御される、など)。一度導入遺伝子Cas9を発現 するマウスの株を作成すると、胚幹細胞を単離、培養し、いくつかの場合では、ES細胞 を今後の使用のために凍結する。単離されたES細胞はCas9を発現するため(また、 いくつかの場合でその発現は一時的な制御下(たとえば薬剤誘導性)であるため、新しい ノックアウトまたはノックイン細胞(および、従って、マウス)は、特定の選択座位にc as9を標的とする適切に設計されたDNA標的化RNAを導入することで、ゲノム内の いずれかの所望する座位で急速に作成される。そのようなシステム、およびその多くの変 化形を用いて、任意の選択座位において新たな遺伝子組み換え生物を作成する。修飾Ca s9を使用して転写を調節、および/またはDNAを修飾、および/またはDNAに関連 したポリペプチドを修飾する場合、単純に、適切なDNA標的化RNAを所望するCas 9発現細胞に導入することで、任意の選択遺伝子(または、任意の選択発現産物、または 、任意の選択ゲノム座位)の性質を研究するためにES細胞そのもの(または、ES細胞 由来のいずれかの分化細胞(たとえば、マウス全体、分化細胞株など)が使用される。

本発明は、その具体的な実施形態への参照と共に説明されてきたが、一方で、本発明の 真の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得、同等物が置き換えられ 得ることを当業者は理解するべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロ セス、プロセス工程(単数)または工程(複数)を本発明の目的、主旨および範囲に適応 させるために、多くの修正がなされ得る。そのような修正は全てここに付属される特許請 求の範囲内に含まれることが意図される。

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