Method for producing nucleoside 5'-triphosphate and its applications

申请号 JP51551698 申请日 1997-11-14 公开(公告)号 JP3545424B2 公开(公告)日 2004-07-21
申请人 ヤマサ醤油株式会社; 发明人 肇一 柴; 利忠 野口;
摘要
权利要求
  • アデノシン5′−ジリン酸以外のヌクレオシド5′−ジリン酸(NDP)からヌクレオシド5′−トリリン酸(NTP)を製造する方法であって、酵素としてポリリン酸キナーゼを使用し、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用いることを特徴とするNDPからNTPを製造する方法。
  • 他の酵素反応で生成したアデノシン5′−ジリン酸以外のDNPをNTPに再生する方法であって、酵素としてポリリン酸キナーゼを使用し、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用いることを特徴とするNDPからNTPを再生する方法。
  • グリコシルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のグリコシル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したヌクレオシド5′−モノリン酸(NMP)またはNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のグリコシル化化合物の製造法において、アデノシン5′−ジリン酸以外のNDPからNTPへの変換を、酵素としてポリリン酸キナーゼを用い、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用いて行うことを特徴とするアクセプター糖類のグリコシル化化合物の製造法。
  • グリコシルトランスフェラーゼが、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼまたはN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼであり;アクセプター糖類のグリコシル化化合物が、アクセプター糖類にガラクトース、グルコース、フコース、マンノース、グルクロン酸、シアル酸、N−アセチルガラクトサミンまたはN−アセチルグルコサミンが付加した化合物である請求項3記載の製造法。
  • NTPから糖ヌクレオチドへの変換が、NTPにNDP−グリコシルピロホスホリラーゼ及び糖1−リン酸を作用させ、必要によりさらにエピメラーゼ、デヒドロゲナーゼまたはシンセターゼを作用させることにより行われるものである請求項3または4記載の製造法。
  • 说明书全文

    技術分野本発明は、アデノシン5'−ジリン酸(ADP)以外のヌクレオシド5'−ジリン酸(NDP)からヌクレオシド5'−トリリン酸(NTP)の製造法または再生法、及び当該方法のオリゴ糖合成などへの応用に関するものである。
    背景技術核酸発酵あるいは核酸分解などの核酸工業の発展によりヌクレオシドあるいはヌクレオシド5'−モノリン酸(NMP)が安価に製造できるようになり、それらの一部は医薬品またはその原料として製造販売されている。 また、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはその誘導体の医薬としての開発も活発に行われている。 さらに、近年の糖鎖工学の発展に伴い、糖鎖の酵素合成基質である糖ヌクレオチドの合成に関する研究も活発に行われている。
    このように、NMPは安価に製造供給されうるのに対し、NTPは化学的合成法あるいは生物もしくは酵素を用いた合成法が種々報告されているものの、アデノシン5′−トリリン酸をはじめとするNTPの安価な製造法は現時点において確立されておらず、市販されているNTPは極めて高価である。
    最近、糖ヌクレオチドを基質とした糖転移酵素によるオリゴ糖の合成技術開発が盛んに行われており、その中でも注目される技術として米国スクリプス研究所が提案した糖ヌクレオチドリサイクル法(特表平7−500248号、特開平7−79792号参照)を挙げることができる。 この方法は、NTP及び糖1−リン酸を基質として糖ヌクレオチドピロホスホリラーゼと糖転移酵素を用い、糖ヌクレオチドを合成しながら同時に合成された糖ヌクレオチドをモノサッカライドドナーとし、オリゴ糖への糖転移反応を効率的に行わせようとする方法である。 この方法の特徴は、糖転移反応により生成するNDPをホスホエノールピルビン酸とピルベートキナーゼの組み合わせによりNTPに再生し、再び糖ヌクレオチドの合成用基質とならしめることにより、高価なNTPの添加量を少なくでき、かつ糖転移反応を効率化させ、もってオリゴ糖の製造コストを低減化できることが大いに期待できるところにある。
    しかしながら、上記リサイクル法は高価なNTPを大量に使用しない利点はあるものの、その代わりNTPの再生のために効果なホスホエノールピルビン酸を大量に必要とし、必ずしも実用的に満足できる方法とはなっていない。
    また、NDPからNTPへの変換反応としては、ピルビン酸キナーゼの代わりにヌクレオシドジリン酸キナーゼなどの他の酵素を用いても可能であるものの、依然として高価なアデノシン5'−トリリン酸(ATP)がリン酸ドナーとして必要であり、根本的な解決策とはなっていない。
    したがって、本発明は、高価なホスホエノールピルビン酸あるいはATPを使用しない、より実用的なNDPからのNTPの合成または再生法を提供するとともに、その方法のオリゴ糖合成などへの応用方法を提供するものである。
    本発明者らは、上記目的を達成すべく研究を重ねた結果、従来公知のポリリン酸キナーゼ(Biochim.Biophys.Acta.,26,294−300(1957))が、ADP以外のNDPをもポリリン酸をリン酸ドナーとしてリン酸化し、NTPを合成する活性を有することを見出した。 次に、この方法のオリゴ糖合成への応用に関し研究したところ、従来の上記糖ヌクレオチドリサイクル法よりも実用的なものであることを確認し、本発明を完成させた。
    発明の開示すなわち、本発明は、ADP以外のNDPからNTPを製造する方法であって、酵素としてポリリン酸キナーゼを使用し、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用いることを特徴とするNDPからNTPを製造する方法に係るものである。
    また、本発明は、他の酵素反応で生成したADP以外のDNPをNTPに再生する方法であって、酵素としてポリリン酸キナーゼを使用し、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用いることを特徴とするNDPからNTPを再生する方法に係るものである。
    さらに、本発明は、グリコシルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のグリコシル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNMPまたはNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のグリコシル化化合物の製造法において、ADP以外のNDPからNTPへの変換を、酵素としてポリリン酸キナーゼを用い、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用いて行うことを特徴とするアクセプター糖類のグリコシル化化合物の製造法に係るものである。
    【図面の簡単な説明】
    図1及び図2は、アクセプター糖類のガラクトシル化化合物製造のための反応スキームを示す。 図3は、アクセプター糖類のグルクロニル化化合物製造のための反応スキームを示す。 図4は、アクセプター糖類のグルコシル化化合物製造のための反応スキームを示す。 図5及び6は、アクセプター糖類のフコシル化化合物製造のための反応スキームを示す。 図7は、アクセプター糖類のマンノシル化化合物製造のための反応スキームを示す。 図8はアクセプター糖類のN−アセチルグルコサミニル化化合物製造のための反応スキームを示す。 図9はアクセプター糖類のN−アセチルガラクトサミニル化化合物製造のための反応スキームを示す。 図10はアクセプター糖類のシアリル化化合物製造のための反応スキームを示す。 図11は、ラクトース製造のための反応スキームを示す。 図12は、N−アセチルラクトサミン製造のための反応スキームを示す。
    発明を実施するための最良の形態本発明の特徴はNDPからNTPの製造にあたり、酵素としてポリリン酸キナーゼを用い、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用いることにある。 ここで、NDP及びNTPを構成するヌクレオシドとしては、グアノシン、イノシン、キサントシン、シチジン、ウリジン、リボチミジン等が挙げられる。
    本発明で使用するポリリン酸キナーゼは、ポリリン酸をリン酸供与体とし、NDPをリン酸化してNTPを合成する活性を有するポリリン酸キナーゼ(EC2.7.4.1)であれば特に制限されず、動物由来、植物由来、微生物由来など特定の由来のものに限定されない。 その中でも酵素調製の簡便さなどの点から微生物由来、特に大腸菌由来のポリリン酸キナーゼを使用するのが好都合である。 また、近年の遺伝子組換え技術を利用してポリリン酸キナーゼ遺伝子をクローン化し、大腸菌などを宿主としてポリリン酸キナーゼを大量生産させ、当該組換え体より酵素を調製することも可能である(J.Biol.Chem.,267,22556−22561(1992))。
    反応系に添加するポリリン酸キナーゼは、前記の活性を有する限りどのような形態であってもよい。 具体的には、微生物の菌体、該菌体の処理物または該処理物から得られる酵素調製物などを例示することができる。
    微生物の菌体の調製は、当該微生物が生育可能な培地を用い、常法により培養後、遠心分離等で集菌する方法で行うことができる。 具体的に、バラシス属または大腸菌類に属する細菌を例に挙げ説明すれば、培地としてはブイヨン培地、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、1%食塩)または2×YT培地(1.6%トリプトン、1%イーストエキストラクト、0.5%食塩)などを使用することができ、当該培地に種菌を接種後、30〜50℃で10〜50時間程度必要により撹拌しながら培養し、得られた培養液を遠心分離して微生物菌体を集菌することによりポリリン酸キナーゼ活性を有する微生物菌体を調製することができる。
    微生物の菌体処理物としては、上記微生物菌体を機械的破壊(ワーリングブレンダー、フレンチプレス、ホモジナイザー、乳鉢などによる)、凍結融解、自己消化、乾燥(凍結乾燥、風乾などによる)、酵素処理(リゾチームなどによる)、超音波処理、化学処理(酸、アルカリ処理などによる)などの一般的な処理法に従って処理して得られる菌体の破壊物または菌体の細胞壁もしくは細胞膜の変性物を例示することができる。
    酵素調製物としては、上記菌体処理物からポリリン酸キナーゼ活性を有する画分を通常の酵素の精製手段(塩析処理、等電点沈澱処理、有機溶媒沈澱処理、透析処理、各種クロマトグラフィー処理など)を施して得られる粗酵素または精製酵素を例示することができる。
    反応液に添加するNDPとしては、市販のものを使用することできる。 使用濃度としては、例えば1〜200mM、好ましくは10〜100mMの範囲から適宜設定することができる。 また、添加するポリリン酸も市販のものが使用できる。 使用濃度としては、無機リン酸に換算して1〜1000mM、好ましくは10〜200mMの範囲から適宜設定することができる。
    NDPからNTPへの変換は、pH4〜9の範囲の適当な緩衝液中にNDP及びポリリン酸を添加し、さらに0.001ユニット/ml以上、好ましくは0.001〜1.0ユニット/mlのポリリン酸キナーゼを添加し、30℃以上、好ましくは32〜37℃で1〜50時間程、必要により撹拌しながら反応させることにより実施できる。
    なお、他の酵素反応で生成したNDPをNTPに再生する場合には、上記反応条件においてNDPを添加する以外は同様にして行われる。
    このようにして合成または再生されたNTPは、必要によりヌクレオチド類の通常の単離精製手法(イオン交換カラムクロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、塩析など)により単離精製することもできる。 また、たとえば、以下に示すように糖ヌクレオチド合成酵素などが存在する系ではNTPは基質として有効に利用され、もってオリゴ糖合成などへ応用することができる。
    すなわち、グリコシルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のグリコシル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNMPまたはNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のグリコシル化化合物の製造法において、NDPからNTPへの変換を、酵素としてポリリン酸キナーゼを用い、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用いて行うことにより実用的なアクセプター糖類のグリコシル化化合物の合成系を構築することができる。
    この合成系の特徴は、グリコシルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドのグリコシル残基をアクセプター糖類に転移させてアクセプター糖類のグリコシル化化合物を合成するとともに、転移反応により生成するNMPまたはNDPをポリリン酸とポリリン酸キナーゼを用いてNTPに再生し、再度利用することにある。
    また、別の見方をすれば、糖ヌクレオチド中のグリコシル残基をグリコシルトランスフェラーゼを用いてアクセプター糖類へ転移させてアクセプター糖類のグリコシル化化合物を合成する反応系と転移反応により生成するNMPまたはNDPをポリリン酸とポリリン酸キナーゼを用いてNTPに再生する反応系が共存するところにある。
    この合成系におけるグリコシルトランスフェラーゼとしては、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ等が挙げられる。
    従って、この酵素を用いて得られるアクセプター糖類のグリコシル化化合物としては、アクセプター糖類にガラクトース、グルコース、フコース、マンノース、グルクロン酸、シアル酸、N−アセチルガラクトサミンまたはN−アセチルグルコサミンが付加した化合物が挙げられる。
    また、アクセプター糖類としては、上記グリコシルトランスフェラーゼが基質として認識し得る糖鎖を有する化合物であれば特に制限されず、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖タンパク、糖脂質などが挙げられる。 また、これらの糖類を構成する糖としては、通常の糖に限定されず、デオキシ糖、アミノ酸、ウロン酸、糖類、糖アルコールも含まれうる。
    上記合成系においてNTPから糖ヌクレオチドへの変換は、NTPにNDP−グリコシルピロホスホリラーゼ及び糖1−リン酸を作用させることにより行われる。 また、この反応で得られる糖ヌクレオチドが所望のグリコシル残基と異なるグリコシル残基を保有する場合には、これにエピメラーゼ、デヒドロゲナーゼ、シンセターゼ等を作用させることにより、所望の糖ヌクレオチドに変換することができる。
    上記合成系の適用範囲は極めて広範なものであり、目的とするグリコシル化生成物に応じて上記合成系を構成する要素である基質及び酵素を公知のものから適宜選択して使用すればよく、前述の例示に限定されるものではない。
    上記合成系の具体的な要素の組み合わせに関して既にいくつか報告されており、これらの記載を本明細書では援用することができる(特開平7−79792、特表平6−505638、特表平7−500248、特表平8−509619、米国特許5409817など参照)。 ただし、既知の報告において、NDPからNTPへの変換に使用するリン酸ドナーとキナーゼの組み合わせはアセチルリン酸とアセテートキナーゼまたはホスホエノールピルビン酸とピルビン酸キナーゼしか例示されておらず、本発明においては、これらの組み合わせとは異なり、リン酸ドナーとしてポリリン酸を用い、キナーゼとしてポリリン酸キナーゼを使用することを特徴としている。
    次に、上記合成系の適用例を示す。
    (1)ガラクトシルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のガラクトシル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のガラクトシル化化合物の製造法(図1及び2)。
    (2)グルクロニルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のグルクロニル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のグルクロニル化化合物の製造法(図3)。
    (3)グルコシルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のグルコシル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のグルコシル化化合物の製造法(図4)。
    (4)フコシルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のフコシル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNDPをNTPとし、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のフコシル化化合物の製造法(図5及び6)。
    (5)マンノシルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のマンノシル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のマンノシル化化合物の製造法(図7)。
    (6)N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のN−アセチルグルコサミニル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のN−アセチルグルコサミニル化化合物の製造法(図8)。
    (7)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とから該アクセプター糖類のN−アセチルガラクトサミニル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNDPをNTP、次いで糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のN−アセチルガラクトサミニル化化合物の製造法(図9)。
    また、上記(6)と(7)の合成系は、NDP−GalNAcにNDP−GalNAc4−エピメラーゼを作用させることによりNDP−GlcNAcを生成させて、両反応系を同時に行ってもよい(図8及び図9参照)。
    (8)シアリルトランスフェラーゼにより糖ヌクレオチドとアクセプター糖類とからアクセプター糖類のシアリル化化合物を製造するとともに、該反応において生成したNMPをNDP、次いでNTP、さらに糖ヌクレオチドに変換してリサイクルするアクセプター糖類のシアリル化化合物の製造法(図10)。
    上記合成系において、酵素の使用形態は、上記ポリリン酸キナーゼと同様に微生物菌体、酵素調製物等を使用することができる。 また、本発明の合成系における最良の反応条件は、公知の範囲から最終産物であるグリコシル化生成物に応じて適宜小規模試験にて決定すればよい。
    具体的には、NDP−糖ピロホスホリラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ポリリン酸キナーゼなどの各酵素は、0.0001〜100.0ユニット/ml、好ましくは0.001〜10.0ユニット/mlの範囲から適宜選択することができる。 また、NTP、糖1−リン酸、アクセプター糖類、ポリリン酸などの基質は、0.01〜1000mM、好ましくは1〜200mMの範囲から適宜設定することができる。 合成反応は、pH3〜10の範囲の適当な緩衝液に各酵素及び基質を添加し、30℃以上、好ましくは32〜37℃で1〜100時間程、必要により撹拌しながら反応させることにより実施できる。
    上記反応によって得られたグリコシル化生成物は、公知の方法(各種カラムクロマトグラフィー法)にて単離精製することができる。
    実施例以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 実施例におけるDNAの調製、制限酵素による切断、T4DNAリガーゼによるDNA連結、並びに大腸菌の形質転換法は全て「Molecular cloning」(Maniatisら編、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York(1982))に従って行った。 また、制限酵素、AmpliTaqDNAポリメラーゼ、T4DNAリガーゼは宝酒造(株)より入手した。 さらに、反応液中のヌクレオチド類の定量にはHPLC法により行った。 具体的には、分離にはYMC社製のODS−AQ312カラムを用い、溶出液として0.5Mリン酸一カリウム溶液を用いた。
    実施例1:ポリリン酸キナーゼによるNTPの合成(1)大腸菌ポリリン酸キナーゼ遺伝子のクローニング大腸菌K12株JM109菌(宝酒造(株)より入手)の染色体DNAを斉藤と三浦の方法(Biochim.Biophys.Acta.,72,619(1963))で調製した。 このDNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により大腸菌ポリリン酸キナーゼ(ppk)遺伝子を増幅した。

    PCRによるppk遺伝子の増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、テンペレートDNA0.1μg、プライマーDNA(A)及び(B)各々0.2μM、AmpliTaqDNAポリメラーゼ2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、1.5分)のステップを25回繰り返すことにより行った。


    遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、溶性画分に2倍容のエタノールを添加しDNAを沈殿させた。 沈殿回収したDNAを文献(Molecular cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.9kb相当のDNA断片を精製した。 該DNAを制限酵素Nco I及びBamH Iで切断し、同じく制限酵素Nco I及びBamH Iで消化したプラスミドpTrc99A(Pharmacia Biotech.社より入手)とT4DNAリガーゼを用いて連結した。 連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−PPKを単離した。 pTrc−PPKは、pTrc99Aのtrcプロモーター下流のNco I−BamH I切断部位に大腸菌ppk遺伝子を含有するNco I−BamH I DNA断片が挿入されたものである。


    (2)大腸菌ポリリン酸キナーゼの調製プラスミドpTrc−PPKを保持する大腸菌JM109菌を、100μg/mlのアンピシリンを含有する2×YT培地300mlに植菌し、37℃で振とう培養した。 4×10

    8菌/mlに達した時点で、培養液に終濃度1mMになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で5時間振とう培養を続けた。 培養終了後、遠心分離(9,000×g,10分)により菌体を回収し、60mlの緩衝液(50mMトリス塩酸(pH7.5)、5mM EDTA、0.1%トライトンX−100、0.2mg/mlリゾチーム)に懸濁した。 37℃で1時間保温した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、さらに遠心分離(20,000×g、10分)により菌体残さを除去した。


    このように得られた上清画分を5mM塩化マグネシウム及び1mM 2−メルカプトエタノールを含有する50mMトリス塩酸(pH7.8)に対して透析を行い、粗酵素標品とした。 粗酵素標品におけるポリリン酸キナーゼ比活性は、0.19ユニット/mg蛋白質であり、対照菌(pTrc99Aを保持する大腸菌JM109株)の比活性(0.00018ユニット/mg蛋白質)の約1000倍であった。 さらに、秋山らの方法(J.Biol.Chem.,267,22556−22561(1992))に従い、ポリリン酸キナーゼを電気泳動的に均一にまで精製し、これを精製酵素標品とした。 なお、精製酵素標品の比活性は、0.7ユニット/mg蛋白質であった。


    なお、本発明におけるポリリン酸キナーゼ活性の単位(ユニット)は、以下に示す方法で測定、算出した。


    5mM塩化マグネシウム、100mM硫酸アンモニウム、5mM ADP、及びポリリン酸(無機リン酸として150mM)を含有する25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)に酵素標品を添加して、37℃で保温することで反応を行い、100℃、1分間の熱処理により反応を停止させる。 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて反応液中のATPを定量し、37℃で1分間に1μmoleのATPを生成する活性を1単位(ユニット)とする。


    (3)NTPの合成I


    10mM塩化マグネシウム、100mM硫酸アンモニウム、ポリリン酸(無機リン酸として50mM)、5mM NDP(ADP,CDP,GDP,UDP,IDP)を含有する25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)にポリリン酸キナーゼの精製酵素標品を0.01ユニット/ml添加し、37℃で18時間反応した。 その結果を表1に示す。


    (4)NTPの合成II


    10mM塩化マグネシウム、100mM硫酸アンモニウム、ポリリン酸(無機リン酸として50mM)、25mM NDP(ADP,CDP,GDP,UDP)を含有する100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)にポリリン酸キナーゼの粗酵素標品を0.17ユニット/ml添加し、37℃で16時間反応した。 その結果を表2に示す。


    (5)大腸菌ポリリン酸キナーゼのポリリン酸合成(NDP生成)活性上記実施例の逆反応であるNTPを基質とするポリリン酸の合成活性をNDPの生成を指標として解析した。 すなわち、10mM塩化マグネシウム、100mM硫酸アンモニウム、5mM NTP(ATP,CTP,GTP,UTP)を含有する25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)にポリリン酸キナーゼの粗酵素標品を0.01ユニット/ml添加し、37℃で18時間インキュベートした。


    得られた反応液をHPLCを用いて解析した結果を表3に示す。 表3から明かなように、本反応条件下ではATP以外のNTPを基質とするポリリン酸合成は認められなかった。


    実施例2;ポリリン酸キナーゼを用いたUDPからのUDPグルコース(UDPG)の合成(1)大腸菌UDPグルコースピロホスホリラーゼ遺伝子のクローニング大腸菌K12株JM109菌(宝酒造(株)より入手)の染色体DNAを斉藤と三浦の方法(Biochim.Biophys.Acta.,72,619(1963))で調製した。 このDNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により大腸菌UDPグルコースピロホスホリラーゼ(galU)遺伝子(Weissborn et al.,J.Bacteriol.,176,2611(1994))を増幅した。


    PCRによるgalU遺伝子の増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、テンペレートDNA0.1μg、プライマーDNA(C)(D)各々0.2μM、AmpliTaqDNAポリメラーゼ2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製DNAThermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、1.5分)のステップを25回繰り返すことにより行った。


    遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加しDNAを沈殿させた。 沈殿回収したDNAを文献(Molecular cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.0kb相当のDNA断片を精製した。 該DNAを制限酵素EcoR I及びSal Iで切断し、同じく制限酵素EcoR I及びSal Iで消化したプラスミドpTrc99A(Pharmacia Biotech.社より入手)とT4DNAリガーゼを用いて連結した。 連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−galUを単離した。 pTrc−galUは、pTrc99Aのtrcプロモーター下流のEcoR I−Sal I切断部位に大腸菌galU遺伝子を含有するEcoR I−Sal I DNA断片が挿入されたものである。


    (2)大腸菌UDPグルコースピロホスホリラーゼの調製プラスミドpTrc−galUを保持する大腸菌JM109菌を、100μg/mlのアンピシリンを含有する2×YT培地300mlに植菌し、37℃で振とう培養した。 4×10

    8菌/mlに達した時点で、培養液に終濃度1mMになるようにIPTGを添加し、さらに37℃で2.5時間振とう培養を続けた。


    培養終了後、遠心分離(9,000×g,10分)により菌体を回収し、60mlの緩衝液(50mMトリス塩酸(pH7.5)、5mM EDTA、0.1%トライトンX−100、0.2mg/mlリゾチーム)に懸濁した。 37℃で1時間保温した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、さらに遠心分離(20,000×g、10分)により菌体残渣を除去した。 このように得られた上清画分を酵素標品とした。 酵素標品におけるUDPグルコースピロホスホリラーゼ活性を対照菌(pTrc99Aを保持する大腸菌JM109株)と共に下記表に示す。


    なお、UDPグルコースピロホスホリラーゼ活性の単位(ユニット)は、以下に示す方法で測定、算出した。 すなわち、5mM塩化マグネシウム、6mM UTP、6mMグルコース1−リン酸を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に酵素標品を添加して37℃で保温することで反応を行い、100℃、5分間の熱処理により酵素を失活させる。 HPLC法により反応液中のUDPGを定量し、37℃で1分間に1μmoleのUDPGを生成活性を1単位(ユニット)とする。


    (3)UDPGの合成


    100mM硫酸アンモニウム、10mM塩化マグネシウム、20mM UDP、30mMグルコース1−リン酸、ポリリン酸(無機リン酸として50mM)を含有する100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)にそれぞれ0.17ユニット/ml、2.0ユニット/mlとなるように大腸菌ポリリン酸キナーゼ粗酵素標品及び大腸菌UDPGピロホスホリラーゼ酵素標品を添加し、37℃に保温した。 反応7.5時間後にHPLC法により反応液中のUDPGを定量したところ、5.5mMのUDPGの生成が確認された。 また、反応24時間後では、10.1mMのUDPGの生成が確認された。 なお、対照として、上述の反応液よりポリリン酸を添加しなかったものでは、反応7.5及び24時間後ではUDPGの生成はそれぞれ0.23、0.20mMであった。


    実施例3:オリゴ糖の合成(1)大腸菌UDPガラクトース4−エピメラーゼ遺伝子(galE)のクローニング大腸菌K12株JM109菌(宝酒造(株)より入手)の染色体DNAを斉藤と三浦の方法(Biochim.Biophys.Acta.,72,619(1963))で調製した。 このDNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により大腸菌UDPガラクトース4−エピメラーゼ遺伝子(galE)を増幅した。


    PCRによるgalE遺伝子の増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、テンペレートDNA0.1μg、プライマーDNA(E)及び(F)各々0.2μM、AmpliTaqDNAポリメラーゼ2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製DNAThermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、1.5分)のステップを25回繰り返すことにより行った。


    遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加しDNAを沈殿させた。 沈殿回収したDNAを文献(Molecular cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.0kb相当のDNA断片を精製した。 該DNAを制限酵素EcoR I及びBamH Iで切断し、同じく制限酵素EcoR I及びBamH Iで消化したプラスミドpTrc99A(Pharmacia Biotech.社より入手)とT4DNAリガーゼを用いて連結した。 連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−galEを単離した。 pTrc−galEは、pTrc99Aのtrcプロモーター下流のEcor I−BamH I切断部位に大腸菌galE遺伝子を含有するEcoR I−BamH I DNA断片が挿入されたものである。


    (2)大腸菌UDPガラクトース4−エピメラーゼの調製プラスミドpTrc−galEを保持する大腸菌JM109菌を、100μg/mlのアンピシリンを含有する2×YT培地300mlに植菌し、37℃で振とう培養した。 4×10

    8菌/mlに達した時点で、培養液に終濃度1mMになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で5時間振とう培養を続けた。 培養終了後、遠心分離(9,000×g,10分)により菌体を回収し、60mMの緩衝液(50mMトリス塩酸(pH7.5)、5mM EDTA、0.2mg/mlリゾチーム)に懸濁した。 0℃で20分間保温した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、さらに遠心分離(20,000×g、10分)により菌体残さを除去した。


    このように得られた上清画分を粗酵素標品とした。 粗酵素標品におけるUDPGal4−エピメラーゼ比活性は、26.6ユニット/mg蛋白質であり、対照菌(pTrc99Aを保持する大腸菌JM109菌)の比活性(0.011ユニット/mg蛋白質)の約2400倍であった。


    なお、本発明におけるUDPガラクトース4−エピメラーゼ活性の単位(ユニット)は、以下に示す方法で測定、算出した。 すなわち、10mM UDPグルコースを含む40mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)中、37℃で1分間に1μmoleのUDPガラクトースを生成する活性を1単位(ユニット)とする。


    (3)ラクトース〔Gal(β1−4)Glc〕の合成(図11参照)


    10mM塩化マグネシウム、10mM塩化マンガン、20mMグルコース、4mM UTP、30mMグルコース1−リン酸、0.2mg/mlα−ラクトアルブミンを含む25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)にリン酸として150mMとなるようにポリリン酸を加え、さらに0.5ユニット/mlミルク由来ガラクトシルトランスフェラーゼ(シグマ社より入手)、1.0ユニット/mlUDPガラクトースピロホスホリラーゼ、1.0ユニット/mlUDPガラクトース4−エピメラーゼ、0.1ユニット/mlポリリン酸キナーゼを添加し、37℃で20時間保温した。 反応液を糖分析装置(Dionex社製)で分析したところ、12.4mMのラクトースの生成が確認された。


    (4)N−アセチルラクトサミン〔Gal(β1−4)GlcNAc〕の合成(図12参照)


    10mM塩化マグネシウム、10mM塩化マンガン、20mM N−アセチルグルコサミン、4mM UTP、30mMグルコース1−リン酸を含む25mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)にリン酸として150mMとなるようにポリリン酸を加え、さらに0.5ユニット/ml牛ミルク由来ガラクトシルトランスフェラーゼ(シグマ社より入手)、1.0ユニット/mlUDPガラクトースピロホスホリラーゼ、1.0ユニット/mlUDPガラクトース4−エピメラーゼ、0.1ユニット/mlポリリン酸キナーゼを添加し、37℃で20時間保温した。 反応液を糖分析装置(Dionex社製)で分析したところ、13.6mMのN−アセチルラクトサミンの生成が確認された。


    産業上の利用可能性本発明により、簡便かつ安価なNDPからのNTPの酵素合成が可能となった。 また、糖ヌクレオチド合成などとの組み合わせによるオリゴ糖の酵素合成系における、NDPからのNTPへの再生または変換反応に高価なホスホエノールピルビン酸あるいはATPなどを使用することなく、低コストで糖ヌクレオチドのリサイクル合成、それに伴うたとえばオリゴ糖合成が可能となった。

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