3−ブテン−2−オンの酵素的製造のための方法

申请号 JP2016522608 申请日 2014-07-02 公开(公告)号 JP2016526382A 公开(公告)日 2016-09-05
申请人 グローバル・バイオエナジーズ; サイエンティスト・オブ・フォーチュン・ソシエテ・アノニム; 发明人 マルリエール,フィリップ; アニシオバ,マリア; アラード,マテュー;
摘要 4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱 水 を触媒する酵素を利用することによる4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの酵素的変換を含む、3−ブテン−2−オンの製造のための方法であって、前記4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素が、(a)3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(EC4.2.1.116)、(b)3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(EC4.2.1.55)、(c)エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.17)、(d)3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.59)、(e)クロトニル−[アシルキャリアータンパク質]加水酵素(EC4.2.1.58)、(f)3−ヒドロキシデカノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.60)、(g)3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.61)、(h)長鎖エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.74)、または(i)3−メチルグルタコニルCoA加水酵素(EC4.2.1.18)である、3−ブテン−2−オンの製造のための方法を記載する。製造された3−ブテン−2−オンは、3−ブテン−2−オールに、最終的に1,3−ブタジエンにさらに変換することができる。
权利要求

4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱を触媒する酵素を利用することによる4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの酵素的変換を含む、3−ブテン−2−オンの製造のための方法であって、前記4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素が、 (a)3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(EC4.2.1.116)、 (b)3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(EC4.2.1.55)、 (c)エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.17)、 (d)3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.59)、 (e)クロトニル−[アシルキャリアータンパク質]加水酵素(EC4.2.1.58)、 (f)3−ヒドロキシデカノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.60)、 (g)3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.61)、 (h)長鎖エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.74)、または (i)3−メチルグルタコニルCoA加水酵素(EC4.2.1.18) である、方法。前記4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水酵素が、 (a)M.クプリナ(M. cuprina)の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(配列番号1)、 (b)S.トコダイイ(S. tokodaii)の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(配列番号3)、 (c)M.セヅラ(M. sedula)の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(配列番号2)、 (d)S.アシドカルダリウス(S. acidocaldarius)の3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(配列番号5)、 (e)A.ホスピタリス(A. hospitalis)の3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(配列番号6)、または (f)B.ラテロスポルス(B. laterosporus)の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(配列番号4) である、請求項1に記載の方法。アセトアセチルCoA還元酵素を利用することによるアセトアセチルCoAから前記4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。前記アセトアセチルCoA還元酵素が、 (i)ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(EC1.1.1.34)、または (ii)短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素 である、請求項3に記載の方法。アセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。(a)請求項1から5のいずれか一項に記載の方法に従った3−ブテン−2−オンの製造、および (b)3−ブテン−2−オン還元酵素を利用することによる、このように製造された3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換 を含む、3−ブテン−2−オールの製造のための方法。前記3−ブテン−2−オン還元酵素が、 (i)カルボニル還元酵素(EC1.1.1.184)、 (ii)アルコール脱水素酵素、または (iii)短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素 である、請求項6に記載の方法。(a)請求項6または7に記載の方法に従った3−ブテン−2−オールの製造、および (b)アルケノール脱水酵素の使用により、このように製造された3−ブテン−2−オールを1,3−ブタジエンに酵素的に変換すること を含む、1,3−ブタジエンの製造のための方法。(i)4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する、請求項1または2に記載の酵素、および (ii)3−ブテン−2−オン還元酵素 を発現する、生物または微生物。前記3−ブテン−2−オン還元酵素が、 (a)カルボニル還元酵素(EC1.1.1.184)、 (b)アルコール脱水素酵素、または (c)短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素 である、請求項9に記載の生物または微生物。(i)アルケノール脱水酵素 をさらに発現する、請求項9または10に記載の生物または微生物。(i)アセトアセチルCoA還元酵素、または (ii)アセトアセチルCoA還元酵素およびアセチルCoAをアセトアセチルCoAに変換することが可能である酵素 をさらに発現する、請求項9から11のいずれか一項に記載の生物または微生物。請求項9から12のいずれか一項に記載の生物または微生物、ならびに任意選択で、アセトアセチルCoA、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ブテン−2−オンおよび/または3−ブテン−2−オールを含む組成物。4−ヒドロキシ−2−ブタノンからの3−ブテン−2−オンの製造のための、4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する、請求項1または2に記載の酵素の使用。4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素を利用することによる4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの酵素的変換、および3−ブテン−2−オン還元酵素を利用することによる、このように製造された3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を含む、3−ブテン−2−オールの製造のための方法。

说明书全文

本発明は、4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱を触媒する酵素を利用することによる4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの酵素的変換を含む、3−ブテン−2−オンの製造のための方法であって、前記4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素が、(a)3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(EC4.2.1.116)、(b)3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(EC4.2.1.55)、(c)エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.17)、(d)3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.59)、(e)クロトニル−[アシルキャリアータンパク質]加水酵素(EC4.2.1.58)、(f)3−ヒドロキシデカノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.60)、(g)3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.61)、(h)長鎖エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.74)、または(i)3−メチルグルタコニルCoA加水酵素(EC4.2.1.18)である、3−ブテン−2−オンの製造のための方法に関する。製造された3−ブテン−2−オンは、例えば、3−ブテン−2−オールに、最終的に1,3−ブタジエンにさらに変換することができる。

ブタジエン(1,3−ブタジエン)は、式C4H6を有する共役ジエンである。それは、合成ゴムの製造におけるモノマーとして使用される重要な工業用化学物質である。ブタジエンを製造するための種々の可能性がある。ブタジエンは、例えば、エチレンおよび他のオレフィンを製造するために使用される水蒸気分解プロセスの副産物として生成される。このプロセスでは、ブタジエンは、C4流中に生成し、通常、アセトニトリルなどの極性非プロトン溶媒中への抽出によって他の副産物から単離され、次いでアセトニトリルからストリッピングされる。ブタジエンは、ノルマルブタンの接触脱水素によっても製造することができ、またはエタノールから製造することができる。後者の場合、2つの異なるプロセスが使用されている。単一ステッププロセスでは、エタノールを、金属酸化物触媒上で400〜450℃でブタジエン、水素および水に変換する(Kirshenbaum, I. (1978), Butadiene. In M. Grayson (Ed.), Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd ed., Vol. 4, pp. 313-337. New York: John Wiley & Sons)。2ステッププロセスでは、エタノールは、アセトアルデヒドに酸化され、タンタル増強型多孔質シリカ触媒上で325〜350℃でさらなるエタノールと反応してブタジエンをもたらす(Kirshenbaum, I. (1978)、上記引用文中)。ブタジエンは、ノルマルブテンの接触脱水素によっても製造することができる。

この20年間に、遺伝子工学技術は生物の代謝の改変を可能にし、したがって、さもなければ低収率で製造される鍵物質を製造するためにそれらを使用することが可能になった。天然発生の代謝経路を強化することによって、これらの技術は、工業的関連の多数の化合物を生物学的に製造するための新しい道を開く。現在、動物用飼料のためのアミノ酸、生分解性プラスチックまたは紡織繊維などのいくつかの工業的化合物が、遺伝的に改変された生物を使用して日常的に製造されている。たとえ少量であってもブタジエンを天然に製造するものとして知られている微生物はないので、現在、主要な石油化学系誘導分子、特にブタジエンの大規模な製造のために、遺伝的に改変された微生物を使用したバイオプロセスを提供するための試みがある。世界中で製造される大量のゴムおよび増加する環境的懸念および化学的プロセスを使用して1,3−ブタジエンを製造するための限定された資源を考慮すると、1,3−ブタジエンならびにその前駆体分子であるアセトアセチルCoA、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ブテン−2−オールおよび、特に、3−ブテン−2−オンの製造のための、代替の、環境に優しく、かつ持続可能なプロセスを提供することが必要とされている。WO2012/174439には、ブタノールからブタジエンへの変換を触媒することができる酵素によって、ブタノールからブタジエンを製造するための方法を報告している。さらに、WO2010/144746には、1,3−オキソブタノールを脱水してブタノンを形成することが可能である3−オキソブタノール脱水酵素をコードする外来性の核酸を有する非天然発生の微生物を報告している。しかしながら、微生物によって1,3−ブタジエンなどの化合物を製造することができるという重要性を考慮すると、再生可能資源からかかる化合物を製造するための代替の経路または機構を同定することが今なお必要とされている。

本発明は、この必要性に取り組み、3−ブテン−2−オン(メチルビニルケトンとも称される)を、いくつかの酵素を用いることによって、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから出発して酵素的に製造することができるプロセスを提供する。次いで、3−ブテン−2−オンは、3−ブテン−2−オールに酵素的にさらに変換することができ、次いでこれは1,3−ブタジエンに酵素的にさらに変換することができる。4−ヒドロキシ−2−ブタノンは、アセトアセチルCoAから酵素的に製造することができ、一方アセトアセチルCoAは、本明細書に記載の代謝中間体アセチルコエンザイムA(以下でアセチルCoAとも称される)から出発して提供することができる。対応する反応を、図1に模式的に示す。

したがって、本発明は、4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素を利用することによる4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの酵素的変換を含む、3−ブテン−2−オンの製造のための方法に関する。この反応において用いることができる4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素は、全てE.C.4.2.1._(すなわち、ヒドロリアーゼ)に分類される以下の酵素である。4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素は、以下の反応を触媒する酵素である:

「脱水」という用語は、一般にH2Oの除去に関与する反応を指す。

本発明によれば、4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素は、以下の酵素(a)から(i)からなる群から選択される: (a)3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(EC4.2.1.116)、 (b)3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(EC4.2.1.55)、 (c)エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.17)、 (d)3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.59)、 (e)クロトニル−[アシルキャリアータンパク質]加水酵素(EC4.2.1.58)、 (f)3−ヒドロキシデカノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.60)、 (g)3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.61)、 (h)長鎖エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.74)、および (i)3−メチルグルタコニルCoA加水酵素(EC4.2.1.18)。

4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒することが可能であるこれらの全ての酵素は、それらが以下の最小の構造モチーフを有する天然基質を使用するという共通点を有する:

式中、 R1は、水素原子またはアルキル基またはCH2COOであり; R2は、水素原子またはメチル基であり; R3は、コエンザイムAまたはアシルキャリアータンパク質である。

したがって、4−ヒドロキシ−2−ブタノンの脱水を触媒することができる上記の酵素は、以下のように2つの群に分類することができる: I.上で示した式におけるR3が、アシルキャリアータンパク質である この群は、EC4.2.1.58、EC4.2.1.59、EC4.2.1.60およびEC4.2.1.61を含む。この群の酵素は、それらが以下の型の反応を触媒するという共通点を有する:

この群の酵素は、InterProにおいてInterPro IPR013114(http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR013114)として参照される共通の構造モチーフを共有する。Pfamデータベースにおけるこれらの酵素に関する受託番号は、PF 07977(http://pfam.sanger.ac.uk/family/PF07977)である。 II.上で示した式におけるR3が、コエンザイムAである この群は、EC4.2.1.116、EC4.2.1.55、EC4.2.1.17、EC4.2.1.74およびEC4.2.1.18を含む この群の酵素は、InterProデータベースにおいてInterPro IPR001753(http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR001753)およびIPR0018376(http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR018376)として参照される共通の構造モチーフを共有する。Pfamデータベースにおけるこれらの酵素に関する受託番号は、PF00378(http://pfam.sanger.ac.uk/family/PF00378)である。

本発明による方法の一実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(EC4.2.1.116)の使用によって達成される。3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(EC4.2.1.116)は、以下の反応を触媒する:

この酵素は、様々な細菌および古細菌から既知である。したがって、本発明の好ましい実施形態では、細菌の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素(EC4.2.1.116)、好ましくはメタロスファエラ属(Metallosphaera)、スルホロブス属(Sulfolobus)およびブレビバチルス属(Brevibacillus)からなる群から選択される属の細菌または古細菌由来の、最も好ましくはメタロスファエラ・クプリナ(Metallosphaera cuprina)、メタロスファエラ・セヅラ(Metallosphaera sedula)、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)およびブレビバチルス・ラテロスポルス(Brevibacillus laterosporus)からなる群から選択される種由来の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素を使用する。かかる細菌の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素に関する例は、メタロスファエラ・クプリナ(Metallosphaera cuprina)(Uniprot F4FZ85)、メタロスファエラ・セヅラ(Metallosphaera sedula)(Uniprot A4YI89、Teufel et al., J. Bacteriol. 191 (2009), 4572-4581)、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)(Uniprot F9VNG3)およびブレビバチルス・ラテロスポルス(Brevibacillus laterosporus)(Uniprot F7TTZ1)由来の酵素である。これらの酵素に関するアミノ酸およびヌクレオチド配列は、入手可能である。対応するアミノ酸配列に関する例を、配列番号1から4において提供し、ここで、配列番号1がM.クプリナ(M. cuprina)の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素のアミノ酸配列であり、配列番号2がM.セヅラ(M. sedula)の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素のアミノ酸配列であり、配列番号3がS.トコダイイ(S. tokodaii)の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素のアミノ酸配列であり、配列番号4がブレビバチルス・ラテロスポルス(Brevibacillus laterosporus)の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素のアミノ酸配列である。

好ましい実施形態では、本発明の方法において用いる3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素は、配列番号1から4の任意の1つに示されるアミノ酸配列を有するかまたは配列番号1から4のいずれかと少なくともx%相同であるアミノ酸配列を示し、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒する活性を有し、ここで、xは、30と100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。

添付の実施例に示すように、種々の生物由来の種々の試験した3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素は、基質として4−ヒドロキシ−2−ブタノンを使用し、それを3−ブテン−2−オンに変換することが可能であることが見出された。したがって、原則として任意の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素を本発明による方法において用いることができる。しかしながら、本発明の方法において4−ヒドロキシ−2−ブタノンを3−ブテン−2−オンに変換するために3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素だけでなく、上記の構造的および機能的類似性を示す酵素、すなわち上記の項目(b)から(f)で列挙した酵素も用いることが可能である。

したがって、本発明による方法の別の実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(EC4.2.1.55)の使用によって達成される。3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(EC4.2.1.55)は、以下の反応を触媒する:

この反応は、マイケル脱離に相当する。3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素は、リアーゼ、特にヒドロリアーゼのファミリーに属し、これは、炭素−酸素結合を切断する。この酵素クラスの系統名は、(3R)−3−ヒドロキシブタノイルCoAヒドロリアーゼ(クロトノイルCoA形成)である。他の慣用名は、D−3−ヒドロキシブチリルコエンザイムA脱水酵素、D−3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素、エノイルコエンザイムA加水酵素、および(3R)−3−ヒドロキシブタノイルCoAヒドロリアーゼを含む。この酵素は、ブタン酸代謝に関与する。このクラスに属し、3−ヒドロキシブチリルコエンザイムAからクロトニル−コエンザイムAへの上記で示した変換を触媒する酵素は、例えばラット(ドブネズミ(Rattus norvegicus))、ロドスピリラム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)およびアシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)に存在することが報告されている。かかる酵素に関するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、例えばアエロパイラム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)に関して決定された。原則として、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒することができる任意の3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素(EC4.2.1.55)を本発明の文脈で使用することができる。本発明の好ましい実施形態では、古細菌由来の3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素、好ましくはスルホロブス属(Sulfolobus)およびアシディアヌス属(Acidianus)からなる群から選択される属の古細菌由来の、最も好ましくはS.アシドカルダリウス(S. acidocaldarius)およびアシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)からなる群から選択される種由来の3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素を使用する。かかる細菌の3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素に関する例は、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)(Uniprot Q4J8D5)由来のおよびアシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)((Uniprot F4B9R3)由来の酵素である。対応するアミノ酸配列に関する例を、配列番号5および6において提供し、ここで、配列番号5がスルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)の3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素のアミノ酸配列であり、配列番号6がアシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)の3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素のアミノ酸配列である。

好ましい実施形態では、本発明の方法において用いる3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素は、配列番号5または6に示されるアミノ酸配列を有するかまたは配列番号5または6と少なくともx%相同であるアミノ酸配列を示し、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒する活性を有し、ここで、xは、30と100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。

本発明による方法の別の実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.17)の使用によって達成される。エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.17)は、以下の反応を触媒する:

エノイルCoA加水酵素は、通常、アシルCoA上の第2と第3炭素間の二重結合を水和する酵素である。しかしながら、それを使用して、逆方向の反応を触媒することもできる。クロトナーゼとしても既知であるこの酵素は、天然に、脂肪酸を代謝して、アセチルCoAとエネルギーの両方を産生することに関与する。このクラスに属する酵素は、例えば、ラット(ドブネズミ(Rattus norvegicus))、ヒト(ホモ・サピエンス(Homo sapiens))、マウス(ハツカネズミ(Mus musculus))、イノシシ(wild boar)(イノシシ(Sus scrofa))、ウシ(Bos taurus)、大腸菌(E. coli)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)およびクロストリジウム・アミノブチリクム(Clostridium aminobutyricum)に存在することが報告されている。かかる酵素に関するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、例えばラット、ヒトおよび枯草菌(Bacillus subtilis)に関して決定された。原則として、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒することができる任意のエノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.17)を本発明の文脈で使用することができる。

本発明による方法の別の実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.59)の使用によって達成される。3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.59)は、以下の反応を触媒する:

この酵素は、リアーゼ、特にヒドロリアーゼのファミリーに属し、これは、炭素−酸素結合を切断する。この酵素クラスの系統名は、(3R)−3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]ヒドロリアーゼ(オクタ−2−エノイル−[アシルキャリアータンパク質]形成)である。他の慣用名は、D−3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素、D−3−ヒドロキシオクタノイル−アシルキャリアータンパク質脱水酵素、βヒドロキシオクタノイル−アシルキャリアータンパク質デヒドラーゼ、βヒドロキシオクタノイルチオエステル脱水酵素、βヒドロキシオクタノイル−ACP−デヒドラーゼ、および(3R)−3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]ヒドロリアーゼを含む。3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素は、例えば、大腸菌(E. coli)(Mizugaki et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 33 (1968), 520-527)に存在することが報告されている。原則として、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒することができる任意の3−ヒドロキシオクタノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素を本発明の文脈で使用することができる。好ましい実施形態では、大腸菌(E. coli)由来の酵素を、本発明による方法において使用する。

本発明による方法の別の実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、クロトノイル−[アシルキャリアータンパク質]加水酵素(EC4.2.1.58)の使用によって達成される。クロトノイル−[アシルキャリアータンパク質]加水酵素(EC4.2.1.58)は、以下の反応を触媒する:

この酵素は、リアーゼ、特にヒドロリアーゼのファミリーに属し、これは、炭素−酸素結合を切断する。

他の慣用名は、(3R)−3−ヒドロキシブタノイル−[アシルキャリアータンパク質]ヒドロリアーゼ、βヒドロキシブチリルアシルキャリアータンパク質脱水酵素、βヒドロキシブチリルアシルキャリアータンパク質(ACP)脱水酵素、βヒドロキシブチリルアシルキャリアータンパク質脱水酵素、エノイルアシルキャリアータンパク質加水酵素、クロトニルアシルキャリアータンパク質加水酵素、3−ヒドロキシブチリルアシルキャリアータンパク質脱水酵素、βヒドロキシブチリルアシルキャリアー、およびタンパク質脱水酵素を含む。この酵素は、脂肪酸生合成に関与する。クロトノイル−[アシルキャリアータンパク質]加水酵素は、例えば、大腸菌(E. coli)およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に存在することが報告されている。原則として、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒することができる任意のクロトノイル−[アシルキャリアータンパク質]加水酵素を、本発明の文脈で使用することができる。好ましい実施形態では、大腸菌(E. coli)由来の酵素を、本発明による方法において使用する。

本発明による方法の別の実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、3−ヒドロキシデカノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.60)の使用によって達成される。3−ヒドロキシデカノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.60)は、以下の反応を触媒する:

この酵素は、例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、大腸菌(E. coli)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)およびサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)に存在することが報告されている。原則として、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒することができる任意の3−ヒドロキシデカノイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素を、本発明の文脈で使用することができる。好ましい実施形態では、大腸菌(E. coli)由来の酵素を、本発明による方法において使用する。

本発明による方法の別の実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.61)の使用によって達成される。3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素(EC4.2.1.61)は、以下の反応を触媒する:

この酵素は、リアーゼ、特にヒドロリアーゼのファミリーに属し、これは、炭素−酸素結合を切断する。

他の慣用名は、D−3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素、βヒドロキシパルミトイル−アシルキャリアータンパク質脱水酵素、βヒドロキシパルミトイルチオエステル脱水酵素、βヒドロキシパルミチル−ACP脱水酵素、および(3R)−3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]ヒドロリアーゼを含む。3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素は、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、出芽酵母(S. cerevisiae)、分裂酵母(s.pombe)、コクリオボルス・カルボヌム(Cochliobolus carbonum)、ハツカネズミ(Mus musculus)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、ウシ(Bos taurus)、ニワトリ(Gallus gallus)およびホモ・サピエンス(Homo sapiens)に存在することが報告されている。原則として、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒することができる任意の3−ヒドロキシパルミトイル−[アシルキャリアータンパク質]脱水酵素を、本発明の文脈で使用することができる。

本発明による方法の別の実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、長鎖エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.74)の使用によって達成される。長鎖エノイルCoA加水酵素(EC4.2.1.74)は、以下の反応を触媒する:

この酵素は、リアーゼ、特にヒドロリアーゼのファミリーに属し、これは、炭素−酸素結合を切断する。この酵素クラスの系統名は、長鎖(3S)−3−ヒドロキシアシルCoAヒドロリアーゼである。この酵素は、長鎖エノイルコエンザイムA加水酵素とも称され、それは、ミトコンドリアにおける脂肪酸伸長および脂肪酸代謝に関与する。この酵素は、いくつかの生物、例えば、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(Wu et al., Org. Lett. 10 (2008), 2235-2238)、イノシシ(Sus scrofa)およびモルモット(Cavia porcellus)(Fong and Schulz, J. Biol. Chem. 252 (1977), 542-547; Schulz, Biol. Chem. 249 (1974), 2704-2709)に存在し、原則として、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒することができる任意の長鎖エノイルCoA加水酵素を、本発明の方法において用いることができる。

本発明による方法の別の実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換は、3−メチルグルタコニルCoA加水酵素(EC4.2.1.18)の使用によって達成される。3−メチルグルタコニルCoA加水酵素(EC4.2.1.18)は、以下の反応を触媒する:

この酵素は、いくつかの生物、特に細菌、植物および動物に存在する。酵素は、例えば、プチダ菌(Pseudomonas putida)、アシネトバクター属種(Acinetobacter sp.)(SwissProt受託番号Q3HW12)、ニチニチソウ(Catharanthus roseus)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)(SwissProt受託番号Q13825)、ウシ(Bos taurus)およびヒツジ(Ovis aries)に関して報告されており、原則として、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換を触媒することができる任意の3−メチルグルタコニルCoA加水酵素を、本発明の方法において用いることができる。「3−メチルグルタコニルCoA加水酵素」という用語は、ミキソコッカス・ザンサス(Myxococcus xanthus)由来の、好ましくはDK1622株由来の遺伝子LiuC(Li et al., Angew. Chem. Int. Ed. 52 (2013), p. 1304-1308; Uniprot番号Q1D5Y4)によってコードされる酵素も包含する。この酵素のアミノ酸配列を、配列番号25に示す。この遺伝子は、3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素として注釈を付けられたが、Li et al.(上記引用文中)は、その天然の基質が3−ヒドロキシメチルグルタリルCoAであることを示した。特に好ましい実施形態では、配列番号25に示されるアミノ酸または配列番号25と少なくともx%相同であるアミノ酸配列を含み、3−メチルグルタコニルCoA加水酵素/3−ヒドロキシメチルグルタリルCoA脱水酵素の活性を有し、4−ヒドロキシ−2−ブタノンを3−ブテン−2−オンに変換する活性を示す任意のタンパク質を本発明による方法において用いることができ、ここで、xは、30と100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。

上記のように、3−ブテン−2−オンに変換される4−ヒドロキシ−2−ブタノンは、アセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換によって提供することができる。したがって、本発明は、上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素を利用することによる4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの酵素的変換を含む、3−ブテン−2−オンの製造のための方法であって、アセトアセチルCoA還元酵素を利用することによるアセトアセチルCoAから前記4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換をさらに含む、3−ブテン−2−オンの製造のための方法にも関する。

アセトアセチルCoA還元酵素を利用することによるアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換は、(1)アセトアセチルCoAからアセトアセトアルデヒドへの酵素的変換および(2)アセトアセトアルデヒドから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへのその後の酵素的変換を含む、2つのステップの変換によって達成することができる。

第1のステップは、以下のスキームに従って起こり得る:

第2のステップは、以下のスキームに従って起こり得る:

原則として、かかる変換を触媒することができる任意の酵素を用いることができる。対応する酵素に関する例は、ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(EC1.1.1.34)または短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素である。

したがって、本発明による方法の一実施形態では、アセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの変換は、ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(EC1.1.1.34)を用いることによって達成される。この酵素は、通常、以下の反応を触媒する

このクラスに属し、上記で示した変換を触媒する酵素は、全ての界の生物、すなわち植物、動物、真菌、細菌などに存在し、文献において広範に報告されている。かかる酵素に関するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、多数の生物、特に細菌性生物に関して決定された。原則として、アセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの変換を触媒することができる任意のヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(EC1.1.1.34)を、本発明の文脈で使用することができる。

代わりにまたは加えて、アセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの上記の変換は、短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素と称される酵素を使用することによっても達成することができる。本発明の文脈における「短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素」または「短鎖脱水素酵素/還元酵素(SDR)」という用語は、以下の特色によって特徴付けられる酵素を指す: 1.それらは、脂肪酸アシルCoAが脂肪アルコールに還元される2つのステップの反応を触媒する。 2.それらは、8から20個の炭素原子の脂肪族鎖を含有するアシルCoAに関する基質特異性を示す。

好ましくはかかる酵素は、それらの一次構造、すなわちアミノ酸配列における特異的なモチーフを示す、すなわち、NADP(H)結合に関する2つの特異的なグリシンモチーフを示すという特色によってさらに特徴付けられる。

短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素または短鎖脱水素酵素/還元酵素(SDR)は、酵素のファミリーを構成し、その大部分は、NADまたはNADP依存性酸化還元酵素であることが既知である(Jornvall H. et al., Biochemistry 34 (1995), 6003-6013)。最近、マリノバクター・アクアエオレイ(Marinobacter aquaeolei)VT8由来の新規な細菌のNADP依存性還元酵素が特徴付けられた(Willis et al., Biochemistry 50 (2011), 10550-10558)。この酵素は、脂肪酸アシルCoA基質から対応する脂肪アルコールへの4電子還元を触媒する。

脂肪酸アシルCoAから脂肪アルコールへの酵素的変換は、以下のスキームに従って、アルデヒド中間体を通して起こる:

この酵素は、長さが8から20の炭素にわたる脂肪酸アシルCoA基質(飽和と不飽和の両方)および脂肪アルデヒド基質に及ぼす活性を示す。特徴的に、このファミリーのタンパク質は、2つのNAD(P)(H)結合モチーフを有し、これらは、保存配列GXGX(1〜2X)G(Willis et al., Biochemistry 50 (2011), 10550-10558;Jornvall H. et al., Biochemistry 34 (1995), 6003-6013)を有する。GTGFIGである第1のパターンは、N末端付近で同定され、GXXXGXGである第2のサイン配列は、残基384〜390の間に位置する。

原則として、任意の「短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素」または「短鎖脱水素酵素/還元酵素(SDR)」を、本発明による方法において適用することができる。

好ましくは、短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素は、海洋細菌由来の、好ましくはマリノバクター属(Marinobacter)またはハヘラ属(Hahella)由来の、さらにより好ましくはマリノバクター・アクアエオレイ(Marinobacter aquaeolei)種、より好ましくはマリノバクター・アクアエオレイ(Marinobacter aquaeolei)VT8、マリノバクター・マンガノキシダンス(Marinobacter manganoxydans)、マリノバクター・アルギコラ(Marinobacter algicola)、マリノバクター属種(Marinobacter sp.)ELB17またはハヘラ・チェジュエンシス(Hahella chejuensis)由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素である。かかる酵素の例は、マリノバクター・アクアエオレイ(Marinobacter aquaeolei)VT8(Uniprot受託番号A1U3L3;Willis et al., Biochemistry 50 (2011), 10550-10558)由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素、マリノバクター・マンガノキシダンス(Marinobacter manganoxydans)(Uniprot受託番号G6YQS9)由来の短鎖脱水素酵素、マリノバクター・アルギコラ(Marinobacter algicola)(Uniprot受託番号A6EUH6)由来の短鎖脱水素酵素、マリノバクター属種(Marinobacter sp.)ELB17(Uniprot受託番号A3JCC5)由来の短鎖脱水素酵素およびハヘラ・チェジュエンシス(Hahella chejuensis)(Uniprot受託番号Q2SCE0)由来の短鎖脱水素酵素である。

マリノバクター・アクアエオレイ(Marinobacter aquaeolei)VT8由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号7に示す。マリノバクター・マンガノキシダンス(Marinobacter manganoxydans)由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号8に示す。マリノバクター属種(Marinobacter sp.)ELB17由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号9に示す。マリノバクター・アルギコラ(Marinobacter algicola)由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号10に示す。ハヘラ・チェジュエンシス(Hahella chejuensis)由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号11に示す。マリノバクター属種(Marinobacter sp.)Bss20148由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号20に示す。マリノバクター・アドハエレンス(Marinobacter adhaerens)(HP15株)由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号21に示す。マリノバクター・サントリニエンシス(Marinobacter santoriniensis)NKSG1由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号22に示す。マリノバクター・リポリティカス(Marinobacter lipolyticus)SM19由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号23に示す。マリノバクター・ハイドロカーボノクラスティカス(Marinobacter hydrocarbonoclasticus)ATCC49840由来の短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の配列を、配列番号24に示す。特に好ましい実施形態では、配列番号7から11および配列番号20から24の任意の1つに示されるアミノ酸配列または配列番号7から11および配列番号20から24のいずれかに少なくともx%相同であるアミノ酸配列を示し、短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の活性、すなわち、アセトアセチルCoAを4−ヒドロキシ−2−ブタノンに変換する活性を有する任意のタンパク質を本発明による方法において用いることができ、ここで、xは、30と100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。

添付の実施例から明白であるように、種々の生物由来の種々の試験した短鎖脱水素酵素/還元酵素タンパク質が、基質としてアセトアセチルCoAを使用し、それを4−ヒドロキシ−2−ブタノンに変換することが可能であることが見出された。

本発明は、アセトアセチルCoAが4−ヒドロキシ−2−ブタノンに変換され、次いでこれが3−ブテン−2−オンにさらに変換され、アセトアセチルCoAを酵素的に提供するステップをさらに含む、本明細書で上に記載の方法にも関する。これは、2分子のアセチルCoAから1分子のアセトアセチルCoAへの酵素的変換によって達成することができる。かかる方法は、例えば、WO2013/057194に既に報告されている。したがって、本発明によれば、アセチルCoAは、例えば、以下の反応によって、アセトアセチルCoAに変換することができる:

この反応は、EC2.3.1.9に分類されるアセチルCoA C−アセチルトランスフェラーゼと称される酵素によって触媒される。このクラスに属し、2分子のアセチルCoAからアセトアセチルCoAおよびCoAへの上記で示した変換を触媒する酵素は、全ての界の生物、すなわち植物、動物、真菌、細菌などに存在し、文献において広範に報告されている。かかる酵素に関するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、ほんの数例を挙げれば、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、大腸菌(E. coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)およびカンジダ属(Candida)などの、いろいろな生物に関して決定された。原則として、任意のアセチルCoA C−アセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)を、本発明の文脈で使用することができる。

代わりに、アセトアセチルCoAの提供を、以下の反応によって、アセチルCoAおよびマロニルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換によっても達成することができる。 アセチルCoA+マロニルCoA→アセトアセチルCoA+CoA+CO2

この反応は、アセトアセチルCoAシンターゼ(EC2.3.1.194)と称される酵素によって触媒される。この酵素をコードする遺伝子は、土壌単離されたグラム陽性ストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)CL190株におけるテルペノイド製造に関するメバロン酸経路遺伝子クラスターにおいて同定された(Okamura et al., PNAS USA 107 (2010), 11265-11270, 2010)。さらに、アセトアセチルCoA製造のためにこの酵素を使用する生合成経路が、大腸菌(E. coli)において最近開発された(Matsumoto K et al., Biosci. Biotechnol. Biochem, 75 (2011), 364-366)。

したがって、好ましい実施形態では、アセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換をさらに含む本発明の方法では、アセチルCoAから前記アセトアセチルCoAへの酵素的変換は、アセチルCoAがアセトアセチルCoAに直接的に変換される単一の酵素反応からなる。好ましくは、アセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換は、上記のアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)を利用することによって達成される。

別の好ましい実施形態では、アセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換をさらに含む本発明の方法では、アセチルCoAから前記アセトアセチルCoAへの酵素的変換は、 (i)アセチルCoAをマロニルCoAに酵素的に変換するステップ;および (ii)マロニルCoAおよびアセチルCoAをアセトアセチルCoAに酵素的に変換するステップ の2つの酵素的ステップを含む。

好ましくは、アセチルCoAからマロニルCoAへの酵素的変換は、アセチルCoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.2)の使用によって達成される。この酵素は、以下の反応を触媒する: アセチルCoA+ATP+CO2→マロニルCoA+ADP

好ましくは、マロニルCoAおよびアセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換は、アセトアセチルCoAシンターゼ(EC2.3.1.194)の使用によって達成される。

原則として、任意のアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)、アセチルCoAカルボキシラーゼ(EC6.4.1.2)および/またはアセトアセチルCoAシンターゼ(EC2.3.1.194)を、本発明による方法において適用することができる。

本明細書に記載の任意の方法に従って製造された3−ブテン−2−オンを、3−ブテン−2−オールにさらに変換することができ、これはそれ自体、以下にさらに記載する1,3−ブタジエンの製造に関する基質として役立ち得る。したがって、上記の本発明による方法は、3−ブテン−2−オン還元酵素を利用することによる、製造された3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換のステップをさらに含むことができる。3−ブテン−2−オン還元酵素として働くことができる酵素は、例えば、短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素、特に海洋細菌由来のものなどの、EC1.1.1に分類される酵素またはそれらの特徴によりEC.1.1.1に分類することができる酵素である。

原則として、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換を触媒することができる、EC1.1.1に分類される任意の可能な酵素を、本発明による方法において用いることができる。好ましい酵素の例は、EC1.1.1.1に分類されるアルコール脱水素酵素、EC1.1.1.2に分類されるアルコール脱水素酵素(NADP+)およびEC1.1.1.54に分類されるアリルアルコール脱水素酵素、ならびにカルボニル還元酵素(EC1.1.1.184)などのアルコール脱水素酵素である。

アルコール脱水素酵素は、多くの生物に存在し、アルコールとアルデヒドまたはケトン間の相互変換を促進する脱水素酵素の一群である酵素である。好ましい一実施形態では、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する3−ブテン−2−オン還元酵素は、アルコール脱水素酵素(EC1.1.1.1)である。原則として、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換を触媒することができる、EC1.1.1.1に分類される任意のアルコール脱水素酵素を本発明による方法において用いることができる。アルコール脱水素酵素(EC1.1.1.1)は、多くの生物に存在し、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの還元(NAD+からNADH)でアルコールとアルデヒドまたはケトン間の相互変換を促進する脱水素酵素の一群である。ヒトおよび多くの他の動物では、それらは、さもなければ有毒であるアルコールを分解するのに役立ち、それらはまた様々な代謝物の生合成中の有用なアルデヒド、ケトン、またはアルコール基の生成に関与する。酵母、植物、および多くの細菌では、いくつかのアルコール脱水素酵素は、発酵の一部として逆の反応を触媒して、NAD+の一定の供給を保証する。このクラスに属し、上記で示した変換を触媒する酵素は、全ての界の生物、すなわち植物、動物、真菌、細菌などに存在し、文献において広範に報告されている。例えば、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、ハツカネズミ(Mus musculus)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ロドバクター・ルバー(Rhodobacter ruber)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、およびセイヨウアブラナ(Brassica napus)由来の酵素が、同定され、特徴付けられた。かかる酵素に関するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、多数の生物、特に細菌性生物に関して決定された。原則として、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換を触媒することができる任意のアルコール脱水素酵素(EC1.1.1.1)を、本発明の文脈で使用することができる。実に、実施例において例証するように、種々の生物由来の種々の試験したアルコール脱水素酵素が、基質として3−ブテン−2−オンを使用し、それを3−ブテン−2−オールに変換することが可能であることが見出された。

別の実施形態では、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する3−ブテン−2−オン還元酵素は、アルコール脱水素酵素(NADP+)(EC1.1.1.2)である。原則として、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換を触媒することができる、EC1.1.1.2に分類される任意のアルコール脱水素酵素(NADP+)を、本発明による方法において用いることができる。

アルコール脱水素酵素(NADP+)(EC1.1.1.2)は、多くの生物に存在し、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの還元(NADP+からNADPH)でアルコールとアルデヒドまたはケトン間の相互変換を促進する脱水素酵素の一群である。このクラスに属し、上記で示した変換を触媒する酵素は、全ての界の生物、すなわち植物、動物、真菌、細菌などに存在し、文献において広範に報告されている。例えば、ウシ(Bos taurus)、ハツカネズミ(Mus musculus)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、大腸菌(Escherichia coli)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)由来の酵素が、同定され、特徴付けられた。かかる酵素に関するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、多数の生物に関して決定された。原則として、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換を触媒することができる任意のアルコール脱水素酵素(NADP+)(EC1.1.1.2)を、本発明の文脈で使用することができる。実施例に示すように、アルコール脱水素酵素(NADP+)が、基質として3−ブテン−2−オンを使用し、それを3−ブテン−2−オールに変換することが可能であることが見出された。

好ましい実施形態では、本発明による方法において用いるアルコール脱水素酵素は、細菌起源のものである。より好ましくは、それは、ロドコッカス属(Rhodococcus)、サーモアナエロビウム属(Thermoanaerobium)またはラクトバチルス属(Lactobacillus)の細菌由来の、さらにより好ましくは、ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)種、サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)種、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)種またはラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)種由来のアルコール脱水素酵素である。

特に好ましい実施形態では、アルコール脱水素酵素は、ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)(Uniprot Q8KLT9;Karabec et al., Chem. Commun. 46 (2010), 6314-6316)由来の第2級アルコール脱水素酵素、サーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobacter brockii)(サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii))(Uniprot P14941;Keinan et al., J. Am. Chem. Soc. 108 (1986), 162-169)由来のアルコール脱水素酵素、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(Uniprot Q84EX5;Schlieben et al., J. Mol. Biol. 349 (2005), 801-813)由来のR特異的アルコール脱水素酵素、ラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)(Uniprot B5AXN9;Chen et al., Appl. Biochem. Biotechnol. 160 (2010), 19-29)由来のNADH依存性(S)特異的アルコール脱水素酵素またはラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(Uniprot C2D0H5)由来のNADH依存性(S)特異的アルコール脱水素酵素である。

ラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)(Uniprot Q6WVP7;Bradshaw et al., J. Org. Chem. 57 (1992), 1532-1536)由来のNADPH依存性R特異的アルコール脱水素酵素も好ましい。

上記の酵素に関するアミノ酸およびヌクレオチド配列は、入手可能である。対応するアミノ酸配列に関する例を、配列番号12から17において提供し、ここで、配列番号12がロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)由来の第2級アルコール脱水素酵素のアミノ酸配列であり、配列番号13がサーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobacter brockii)(サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii))(Uniprot P14941)由来のアルコール脱水素酵素のアミノ酸配列であり、配列番号14がラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(Uniprot Q84EX5)由来のR特異的アルコール脱水素酵素のアミノ酸配列であり、配列番号15がラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)(Uniprot B5AXN9)由来のNADH依存性(S)特異的アルコール脱水素酵素のアミノ酸配列であり、配列番号16がラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)(Uniprot C2D0H5)由来のNADH依存性(S)特異的アルコール脱水素酵素のアミノ酸配列である。

配列番号17は、ラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)(Uniprot Q6WVP7)由来のNADPH依存性R特異的アルコール脱水素酵素のアミノ酸配列である。

特に好ましい実施形態では、配列番号12から17の任意の1つに示されるアミノ酸配列または配列番号12から17のいずれかに少なくともx%相同であるアミノ酸配列を示し、3−ブテン−2−オンを3−ブテン−2−オールに変換する活性を有する任意のタンパク質を本発明による方法において用いることができ、ここで、xは、30と100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。

別の好ましい実施形態では、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換は、アリルアルコール脱水素酵素(EC1.1.1.54)を用いることによって達成される。アリルアルコール脱水素酵素(EC1.1.1.54)は、以下の反応を触媒する:

原則として、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換を触媒することができる、EC1.1.1.54に分類される任意のアリルアルコール脱水素酵素を、本発明による方法において用いることができる。この酵素は、酸化還元酵素のファミリー、特にアクセプターとしてNAD+またはNADP+を有するドナーのCH−OH基に作用するものに属する。この酵素クラスの系統名は、アリルアルコール:NADP+酸化還元酵素としばしば称される。このクラスに属し、上記で示した変換を触媒する酵素は、様々な生物に存在することが報告され、文献において報告されている。例えば、プチダ菌(Pseudomonas putida)および大腸菌(Escherichia coli)由来の酵素が、同定され、特徴付けられた。原則として、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換を触媒することができる任意のアリルアルコール脱水素酵素(EC1.1.1.54)を、本発明の文脈で使用することができる。

別の好ましい実施形態では、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する3−ブテン−2−オン還元酵素は、カルボニル還元酵素(EC1.1.1.184)である。

カルボニル還元酵素(EC1.1.1.184)は、以下の反応を触媒する:

この酵素は、酸化還元酵素のファミリー、特にアクセプターとしてNAD+またはNADP+を有するドナーのCH−OH基に作用するものに属する。この酵素クラスの系統名は、第2級アルコール:NADP+酸化還元酵素である。他の慣用名は、アルデヒド還元酵素1、プロスタグランジン9−ケト還元酵素、生体異物ケトン還元酵素、NADPH依存性カルボニル還元酵素、ALR3、カルボニル還元酵素、非特異的NADPH依存性カルボニル還元酵素、アルデヒド還元酵素1、およびカルボニル還元酵素(NADPH)を含む。この酵素は、アラキドン酸代謝に関与し、NADPH依存性様式でNOを分解する手段としてS−ニトロソグルタチオンを異化することが示された。このクラスに属し、上記で示した変換を触媒する酵素は、多くの生物に存在することが報告され、文献において広範に報告されている。例えば、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)およびカンジダ・マグノリアエ(Candida magnoliae)由来の酵素が、同定され、特徴付けられた。原則として、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒することができる任意のカルボニル還元酵素を、本発明の文脈で使用することができる。添付の実施例から明白であるように、カルボニル還元酵素が、補助因子としてのNADPHの存在下で3−ブテン−2−オンへの還元活性を示すことが見出された。

好ましい実施形態では、本発明による方法において用いるカルボニル還元酵素は、哺乳類由来、好ましくはげっ歯類由来、さらにより好ましくはクマネズミ(Rattus)属のげっ歯類由来、最も好ましくはドブネズミ(Rattus norvegicus)由来である。かかる酵素に関する例は、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(Uniprot B2GV72;Okamoto et al., IUBMB Life 48 (1999), 543-547)由来のカルボニル還元酵素である。カルボニル還元酵素に関するアミノ酸およびヌクレオチド配列は、入手可能である。配列番号18は、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(Uniprot B2GV72)由来のカルボニル還元酵素のアミノ酸配列である。

特に好ましい実施形態では、配列番号18に示されるアミノ酸配列または配列番号18のいずれかに少なくともx%相同であるアミノ酸配列を示し、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換を触媒する活性を有する任意のタンパク質を本発明による方法において用いることができ、ここで、xは、30と100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。

代わりに、別の態様では、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する3−ブテン−2−オン還元酵素は、短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素とすることができる。これらの酵素、すなわち、短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素、特に海洋細菌由来の脂肪酸アシルCoA還元酵素は、上に既に記載し、特に好ましい実施形態に関して、上に説明したものと同じものがここにもあてはまる。

実施例では、短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素を3−ブテン−2−オンを3−ブテン−2−オールに変換するために用いることができることが示される。本発明による方法の好ましい実施形態では、細菌から、好ましくは海洋細菌から、好ましくはマリノバクター属(Marinobacter)またはハヘラ属(Hahella)から、最も好ましくはハヘラ・チェジュエンシス(Hahella chejuensis)種から生じる酵素を用いる。特に好ましい実施形態では、用いる酵素は、Uniprot Q2SCEOに示されるアミノ酸配列を示すものである。

本明細書で上に記載の方法によって製造された3−ブテン−2−オールは、特に酵素的変換を経由して、すなわちアルケノール脱水酵素を利用することによって、1,3−ブタジエンにさらに変換することができる。したがって、本発明は、1,3−ブタジエンの製造のための方法であって、 (a)本明細書で上に記載の本発明の方法に従って3−ブテン−2−オールを製造するステップ、および (b)このように製造された3−ブテン−2−オールを1,3−ブタジエンに酵素的に変換するステップ を含む、1,3−ブタジエンの製造のための方法にも関する。

3−ブテン−2−オールを1,3−ブタジエンに変換することが可能である酵素は、本文脈においてアルケノール脱水酵素と称される。

本発明による方法において用いるアルケノール脱水酵素の例は、「リナロール脱水酵素−異性化酵素」と命名され、カステラニエラ・デフラグランス(Castellaniella defragrans)(以前はアルカリゲネス・デフラグランス(Alcaligenes defragrans))65Phen株において同定された酵素である(Brodkorb et al., J. Biol. Chem. 285 (2010), 30436-30442)。リナロール脱水酵素−異性化酵素は、モノテルペンの嫌気性分解に関与する二元機能酵素である。天然酵素は、160kDaの分子量を有することが見出され、40kDaのサブユニットのホモ四量体であると想定されている。この酵素は、熱学的推進力に依存してin vitroで2つの反応を両方向に触媒する。一方では、酵素は、第1級アリルアルコールであるゲラニオールから、第3級アリルアルコールモチーフを有するその立体異性体リナロールへの異性化を触媒する。他方では、酵素は、第3級アルコールであるリナロールから、共役ジエンモチーフを有する分子である対応する非環式モノテルペンβミルセンへの水の脱離(脱水)を触媒する。カステラニエラ・デフラグランス(Castellaniella defragrans)では、タンパク質は、膜を通しての輸送の後に切断される周辺細胞質位置に関するシグナルペプチドを有する前駆体タンパク質として発現される。酵素は、EC4.2.1.127に分類される。リナロール脱水酵素−異性化酵素は、嫌気性条件下で以下の反応を触媒する能力を有する: リナロール <=> ミルセン+H2O

この活性は、例えば、Brodkorb et al.(上記引用文中)に報告されているアッセイで測定することができる。かかるアッセイでは、バイアルを35℃で予熱し、無酸素性タンパク質溶液をバイアル中に移し、DTTを2mMまで加える。反応混合物をブチルセプタムで密封し、ヘッドスペースをCO2/N2(10/90(v/v))でフラッシュする。反応を、異なる濃度のリナロールを加えることによって開始し、35℃でインキュベートする。リナロールからミルセンへの変換は、例えばガスクロマトグラフィーにより、ミルセンの生成を調査することによって評価する。

好ましい実施形態では、リナロール脱水酵素−異性化酵素は、嫌気性条件下でゲラニオールからリナロールへの異性化を触媒する可能性も有する: ゲラニオール<=>リナロール

この活性は、例えば、Brodkorb et al.(上記引用文中)に報告されているアッセイで測定することができる。かかるアッセイでは、バイアルを35℃で予熱し、無酸素性タンパク質溶液をバイアル中に移し、DTTを2mMまで加える。反応混合物をブチルセプタムで密封し、ヘッドスペースをCO2/N2(10/90(v/v))でフラッシュする。反応を、異なる濃度のゲラニオールを加えることによって開始し、35℃でインキュベートする。ゲラニオールからリナロールへの変換は、例えばガスクロマトグラフィーにより、ミルセンの生成、すなわち酵素によって触媒される第2の反応の生成物を調査することによって評価する。

ゲラニオール、リナロールおよびミルセンは、それぞれ、アリルアルコールおよび炭化水素のクラスに属する、植物によって産生される非環式C10−テルペノイドである。Luddecke and Harder (Z. Naturforsch. 66c (2011), 409-412)は、リナロール脱水酵素−異性化酵素の高い基質特異性に関して報告した。リナロール脱水酵素−異性化酵素がブタ−3−エン−2−オールに作用し、それをブタジエンに変換することができることが示された。

本発明による方法において用いることができる一連のアルケノール脱水酵素の例を、配列番号19において提供する。アルケノール脱水酵素に関する配列は、受託番号E1XUJ2の下でUniProtKB/TrEMBLデータベースにおいても入手することができる。これらの配列は、リナロール脱水酵素−異性化酵素に分類されるアルケノール脱水酵素を表す。好ましい実施形態では、本発明による方法は、配列番号19に示されるアミノ酸配列または配列番号19と少なくともx%同一である配列を含み、3−ブテン−2−オールから1,3−ブタジエンへの変換を触媒することができるアルケノール脱水酵素を利用し、ここで、xは、30と100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。

したがって、本発明において使用する「アルケノール脱水酵素」という用語は、特に、配列番号19との上記の程度の配列同一性を示し、3−ブテン−2−オールから1,3−ブタジエンへの変換を触媒することができる酵素を指す。配列番号19の配列または対応するコードヌクレオチド配列を使用することによって、当業者は、上記の変換を触媒することができるさらなるアルケノール脱水酵素を同定することが可能である。

最後に、本発明は、4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素を利用することによる4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの酵素的変換および3−ブテン−2−オン還元酵素を利用することによる3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を含む、3−ブテン−2−オールの製造のための方法にも関する。4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素は、本明細書で上に記載の特異的な酵素に特に限定されず、この変換を触媒することができる任意の可能な酵素とすることができる。好ましい実施形態では、4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素は、上記の酵素である。さらに、3−ブテン−2−オン還元酵素を利用することによって3−ブテン−2−オンを3−ブテン−2−オールに変換する酵素は、特異的な酵素に特に限定されず、好ましい実施形態では、本発明の第4の態様の文脈における上記の酵素とすることができる。

アミノ酸またはヌクレオチド配列に関して「相同性」を参照する場合、配列同一性が好ましくは参照される。配列同一性の程度は、好ましくはCLUSTALなどの適したコンピューターアルゴリズムを使用して、当技術分野でよく知られている方法に従って決定することができる。

Clustal分析方法を使用して、特定の配列が参照配列と、例えば、少なくとも60%同一であるかどうかを決定する場合、デフォルト設定を使用することができるまたは設定は、好ましくは以下の通りである:アミノ酸配列の比較に関して、マトリックス:blosum30;オープンギャップペナルティ:10.0;延長ギャップペナルティ:0.05;遅延発散:40;ギャップ分離距離:8。ヌクレオチド配列比較に関して、延長ギャップペナルティは、好ましくは5.0に設定する。

好ましい実施形態では、ClustalW2をアミノ酸配列の比較に使用する。対比較/アラインメントの場合、以下の設定を好ましくは選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.1。多重比較/アラインメントの場合、以下の設定を好ましくは選択する:タンパク質重量マトリックス:BLOSUM62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.2;ギャップ距離:5;エンドギャップなし。

好ましくは、同一性の程度は、配列の完全な長さにわたって計算する。比較される配列が同じ長さを有さない場合、同一性の程度は、より長い配列における残基と同一であるより短い配列における残基の百分率を指すかまたはより短い配列における残基と同一であるより長い配列における残基の百分率を指す。好ましくは、それは、より長い配列における残基と同一であるより短い配列における残基の百分率を指す。

本発明による方法は、in vitroまたはin vivoで行うことができる。in vitro反応は、細胞を用いない反応、すなわち無細胞反応であることが理解される。したがって、in vitroは、好ましくは無細胞系においてを意味する。「in vitro」という用語は、一実施形態では、単離された酵素(または要求される可能性がある補助因子を任意選択で含む酵素系)の存在下を意味する。一実施形態では、方法において用いる酵素は、精製された形で使用する。

方法をin vitroで行うために、反応に関する基質および酵素を、酵素が活性であり、酵素的変換が起こるのを可能にする条件(緩衝液、温度、補助基質、補助因子など)下でインキュベートする。反応を、それぞれの生成物を生成するのに十分な時間、進行させる。それぞれの生成物の生成は、おそらく質量分析検出に連結したガスクロマトグラフィーなどの、当技術分野で既知の方法によって決定することができる。

酵素は、酵素反応が起こることを可能にする任意の適した形態とすることができる。それらは、精製または部分精製することができるか、または粗細胞抽出物もしくは部分精製された抽出物の形態とすることができる。酵素を適したキャリアーに固定化することも可能である。好ましい実施形態では、本発明によるかかるin vitro反応において用いる酵素の少なくとも1つは、非天然発生の酵素、例えば、それ自体天然に起こらない酵素の変異体である。かかる変異体は、例えば、特に、分子生物学的方法によって調製された突然変異体を含み、これらは、より高い酵素活性、より高い基質特異性、より高い温度耐性などの改善された特性を示す。

本発明による方法の一実施形態では、かかるin vitro方法において使用する基質は、上記の酵素の使用によって3−ブテン−2−オンに変換される4−ヒドロキシ−2−ブタノンである。別の実施形態では、かかるin vitro方法において使用する基質は、上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノンに最初に変換され、次いで上記の3−ブテン−2−オンにさらに変換されるアセトアセチルCoAである。別の実施形態では、かかるin vitro方法において使用する基質は、上記のアセトアセチルCoAに最初に変換され、次いで上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノンに変換され、次いで上記の3−ブテン−2−オンにさらに変換されるアセチルCoAである。

本発明によるin vitro方法は、ワンポット反応で行うことができる、すなわち基質を、それぞれ、3−ブテン−2−オン、3−ブテン−2−オールまたは1,3−ブタジエンへの変換に必要な上記の酵素と1つの反応混合物中で組み合わせ、反応をそれぞれの生成物を生成するのに十分な時間、進行させておく。代わりに、方法は、1つまたは複数の酵素的ステップを連続的に実施することによって、すなわち、最初に基質を1つまたは複数の酵素と混合し、中間体まで反応を進行させ、次いで1つまたは複数のさらなる酵素を加えて、この中間体をさらに中間体またはブタジエンに変換することによって行うこともできる。

本発明によるin vitro方法は、生成物、好ましくは反応から脱気する気体の生成物、特に1,3−ブタジエンを回収するステップ、すなわち培養物から生成物を、または気体の生成物の場合、例えば、培養物から脱気する生成物を回収するステップをさらに含むことができる。したがって、一実施形態では、方法は、ブタジエンなどの気体の生成物を気体の形態で反応中に回収するためのシステムの存在下で行う。

実際に、1,3−ブタジエンは、室温および大気圧で気体状態をとる。したがって、本発明による方法は、工業規模で行う場合、常に非常に高価であるステップである、反応混合物からの生成物の抽出を必ずしも必要としない。ブタジエンの排出および保管ならびに他の気体物質からのその可能性のあるその後の物理的分離およびその化学的変換は、当業者に既知の任意の方法に従って行うことができる。例えば、ブタジエンは、低温でのCO2の濃縮によりCO2から分離することができる。CO2は、極性溶媒、例えばエタノールアミンによって除去することもできる。さらに、それを疎水性膜上での吸着によって単離することができる。

別の実施形態では、本発明による方法は、本発明の方法の1つに従って3−ブテン−2−オンを製造するために必要である上記の酵素の少なくとも1つを産生する生物、好ましくは微生物の存在下での培養で行う。さらに、別の実施形態では、本発明による方法は、本発明の方法の1つに従って3−ブテン−2−オールを製造するために必要である上記の酵素の少なくとも1つを産生する生物、好ましくは微生物の存在下での培養で行う。さらに、別の実施形態では、本発明による方法は、本発明の方法の1つに従って1,3−ブタジエンを製造するために必要である上記の酵素の少なくとも1つを産生する生物、好ましくは微生物の存在下での培養で行う。

したがって、本発明のかかる実施形態では、上記の説明で特定した酵素の少なくとも1つを産生する生物、好ましくは微生物を使用する。1つまたは複数の必要な酵素を天然に産生する(微)生物を使用すること、およびかかる(微)生物をそれが天然に発現しない酵素も発現するように遺伝的に改変することが可能である。

必要な酵素活性の1つを天然に発現する(微)生物を使用する場合、この活性が(微)生物において過剰発現するようにかかる(微)生物を改変することが可能である。これは、例えば、対応する遺伝子のプロモーター領域に、その遺伝子のより高い発現を保証するプロモーターをもたらすように突然変異を引き起こすことによって達成することができる。代わりに、より高い活性を示す酵素をもたらすように、そのような遺伝子を突然変異させることも可能である。

上記の酵素的変換を達成するために必要である酵素を発現する(微)生物を使用することによって、酵素を分離または精製する必要なしに、本発明による方法を培地において直接的に行うことが可能である。

一実施形態では、本発明による方法において用いる生物は、1つまたは複数の上記の酵素をコードする1つまたは複数の外来性の核酸分子を含有するように遺伝的に改変された生物、好ましくは微生物である。この文脈における「外来性の」という用語は、その核酸分子が前記生物/微生物に天然に存在しないことを意味する。これは、それが生物/微生物に同じ構造でまたは同じ位置に存在しないことを意味する。好ましい一実施形態では、外来性の核酸分子は、プロモーターおよびそれぞれの酵素をコードするコード配列を含む組換え分子であり、ここで、コード配列のプロモーターが駆動する発現は、コード配列に関して異種性である。この文脈における異種性は、プロモーターが、前記コード配列の発現を天然に駆動するプロモーターではなく、異なるコード配列の発現を天然に駆動するプロモーターである、すなわち、それは、別の遺伝子由来である、または合成プロモーターもしくはキメラプロモーターであることを意味する。好ましくは、プロモーターは、生物/微生物に異種性であるプロモーター、すなわちそれぞれの生物/微生物に天然に存在しないプロモーターである。さらにより好ましくは、プロモーターは、誘導性プロモーターである。生物、特に微生物の種々の型における発現を駆動するためのプロモーターは、当業者によく知られている。

さらなる実施形態では、核酸分子は、コードされる酵素が生物/微生物に内在性ではない、すなわちそれが遺伝的に改変されていない場合、生物/微生物によって天然に発現されないという点で、生物/微生物に外来性である。言い換えると、コードされる酵素は、生物/微生物に関して異種性である。外来性の核酸分子は、染色体外の形態で、例えばプラスミドとして、または染色体に安定に組み込まれて生物/微生物に存在することができる。安定な組込みが好ましい。したがって、遺伝的改変は、例えば、酵素をコードする対応する遺伝子を染色体中に組み込むこと、またはプロモーターおよびコード配列が好ましくは種々の生物から生じる、酵素コード配列の上流にあるプロモーターを含有するプラスミドから酵素を発現させること、または当業者に既知である任意の他の方法にあり得る。

遺伝的に改変された生物は、天然に存在しない、すなわち、天然に見出すことができない、外来性の核酸分子の導入により天然発生の生物とは実質的に異なる生物である。かかる非天然発生の生物を、in vivoで行う本発明による方法において好ましくは用いる。

本発明において使用する生物は、原核生物または真核生物とすることができ、好ましくは、それらは、細菌、酵母、真菌またはカビなどの微生物、または植物細胞もしくは動物細胞である。特定の実施形態では、微生物は、細菌であり、好ましくは大腸菌(Escherichia)属またはバチルス(Bacillus)属の、さらにより好ましくは大腸菌(Escherichia coli)種または枯草菌(Bacillus subtilis)種の細菌である。

サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)などの好極限性細菌、またはクロストリジウム(Clostridiae)科の嫌気性細菌を用いることも可能である。

一実施形態では、微生物は、真菌、より好ましくは酵母菌(Saccharomyces)属、分裂酵母(Schizosaccharomyces)属、コウジカビ(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、ピキア(Pichia)属またはクルイベロミセス(Kluyveromyces)属の、さらにより好ましくは出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)種、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)種、クロコウジカビ(Aspergillus niger)種、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)種、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)種の、またはクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)種の真菌である。

別の実施形態では、本発明による方法は、上記の酵素的変換を達成するために必要である酵素を少なくとも発現する光合成微生物を利用する。好ましくは、微生物は、光合成細菌、または微細藻類である。さらなる実施形態では、微生物は、藻類、より好ましくはけい藻類に属する藻類である。

別の実施形態では、いわゆるウッド−リュングデール経路を経由してCO(またはCO2+H2)を変換してアセチルCoAを製造することが可能である、酢酸を産生する細菌の群に属する微生物を使用することが可能である(Kopke et al.; PNAS 10 (2010), 13087-13092)。かかる微生物を使用する発酵プロセスは、合成ガス発酵として既知である。C.リュングデール(C. ljungdahlii)、C.アセチクム(C. aceticum)、アセトバクテリウム・ウッディイ(Acetobacterium woodii)、C.オートエタノゲナム(C. autoethanogenum)、およびC.カルボキシデビロン(C. carboxydeviron)などの絶対的好中温嫌気性菌が、合成ガス発酵においてしばしば使用されている(Munasingheet et al.; Bioresource Technology 101 (2010), 5013-5022)。

本発明による方法では、種々の(微)生物が上記の種々の酵素を発現する、(微)生物の組合せを使用することも考えられる。

別の実施形態では、本発明による方法は、上記の酵素的変換を達成するために必要である酵素の少なくとも1つを発現する多細胞生物を利用する。かかる生物に関する例は、植物または動物である。

特定の実施形態では、本発明による方法は、標準的な培養条件(細菌の好気性増殖を可能にする発酵槽において、1atmで30〜37℃)または非標準的な条件(例えば、好熱性生物の培養条件に相当するより高い温度)で微生物を培養することに関与する。

さらなる実施形態では、本発明の方法は、微好気性条件下で行う。これは、注入する空気の量を、ブタジエンを含有する気体状排出物中の残留酸素濃度を最小化するように制限していることを意味する。

別の実施形態では、本発明による方法は、培養物から、または反応から脱気する1,3−ブタジエンのような気体の生成物の場合、培養物排ガスから生成物を回収するステップをさらに含む。したがって、好ましい実施形態では、方法は、生成物、例えば、1,3−ブタジエンなどの気体の生成物を、気体の形態で反応中に回収するためのシステムの存在下で行う。

実際に、1,3−ブタジエンは、室温および大気圧で気体状態をとる。したがって、本発明による方法は、工業規模で行う場合、常に非常に高価であるステップである、液体培地からのブタジエンの抽出を必ずしも必要としない。ブタジエンの排出および保管ならびにその可能性のあるその後の物理的分離および化学的変換は、当業者に既知であり、上で記載した任意の方法に従って行うことができる。

特定の実施形態では、方法は、気相中に存在している、ブタジエンなどの気体の生成物を検出することも含む。空気または別の気体の環境における、例えば、ブタジエンの存在は、たとえ少量であっても、様々な技法を使用することによって、特に赤外または水素炎イオン化検出を有するガスクロマトグラフィーシステムを使用することによって、または質量分析法と連結することによって、検出することができる。

本発明による方法を、それぞれの酵素活性を提供する生物/微生物を使用することによってin vivoで行う場合、生物、好ましくは微生物を、酵素反応の発生を可能にする適した培養条件下で培養する。特定の培養条件は、用いる特定の生物/微生物に依存するが、当業者によく知られている。培養条件は、それらがそれぞれの反応に関する酵素をコードする遺伝子の発現を可能にするように、一般的に選択される。化学誘導物質または温度シフトによる遺伝子発現の誘導などの、培養の特定の段階での特定の遺伝子の発現を改善および微調整するための多様な方法が当業者に既知である。

別の実施形態では、本発明の方法は、(細胞)培養物の形態で、好ましくは液体細胞培養物の形態でそれぞれの酵素活性または活性を有する生物、好ましくは微生物を提供するステップ、それぞれの酵素の発現を可能にする適した条件下で発酵槽(バイオリアクターともしばしば称される)において生物、好ましくは微生物を培養するその後のステップを含み、本明細書で上に記載の本発明の方法の酵素的変換を達成するステップをさらに含む。適した発酵槽またはバイオリアクターデバイスおよび発酵条件は、当業者に既知である。バイオリアクターまたは発酵槽は、生物学的に活性な環境を支持する当技術分野で既知の任意の製作されたまたは設計されたデバイスまたはシステムを指す。したがって、バイオリアクターまたは発酵槽は、生物、好ましくは微生物および/または生化学的に活性な物質、すなわち、かかる生物または上記の酵素を保有する生物由来の上記の酵素に関与する、本発明の方法のような化学的/生化学的プロセスが行われる容器とすることができる。バイオリアクターまたは発酵槽において、このプロセスは、好気性または嫌気性のいずれかであってよい。これらのバイオリアクターは、通例円柱状であり、サイズがリットルから立方メートルにわたることができ、しばしばステンレススチールでできている。この点で、理論に縛られることなく、発酵槽またはバイオリアクターは、全て当技術分野で一般的に既知である、例えば、バッチ培養、フィードバッチ培養、灌流培養またはケモスタット培養で生物、好ましくは微生物を培養するのに適した様式で設計されていてよい。

培地は、それぞれの生物または微生物を培養するのに適した任意の培地とすることができる。

上記のように、本発明によるかかる方法は、培地および/または発酵排ガスから生成された生成物を回収するステップも含むことができる。

別の実施形態では、本発明による方法において用いる生物は、植物である。原則として、任意の可能な植物、すなわち単子葉植物または双子葉植物を使用することができる。農業的に有意義な規模で栽培でき、大量のバイオマスを製造することを可能にする植物を使用することが好ましい。例は、ドクムギ属(Lolium)のような草類、ライムギ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、キビ、トウモロコシのような穀類、ジャガイモのような他のデンプン貯蔵植物またはサトウキビもしくはサトウダイコンのような糖貯蔵植物である。タバコの、またはトマト、コショウ、キュウリ、ナスなどの野菜植物の使用も考えられる。別の可能性は、ナタネ、オリーブなどの油貯蔵植物の使用である。樹木、特に、ユーカリ、ポプラまたはゴムの木(パラゴムノキ(Hevea brasiliensis))などの成長の早い樹木の使用も考えられる。

上記のように、上記の酵素的変換を達成するために必要である少なくとも1つの酵素をコードする核酸分子を含有するように遺伝的に改変された(微)生物を、本発明による方法において使用することが可能である。上記の酵素をコードするかかる核酸分子を、単独でまたはベクターの一部として使用することができる。核酸分子は、核酸分子中に含まれるポリヌクレオチドに作動可能に連結している発現制御配列をさらに含むことができる。本明細書全体を通して使用する「機能的に連結している」または「作動可能に連結している」という用語は、発現が発現制御配列と適合する条件下で達成されるような、1つまたは複数の発現制御配列と発現されるポリヌクレオチドにおけるコード領域間の連結を表す。

発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの異種性DNA配列の転写を含む。真菌および細菌における発現を保証する調節エレメントは、当業者によく知られている。それらは、プロモーター、エンハンサー、終止シグナル、ターゲティングシグナルなどを包含する。例を、ベクターに関する説明と関連して以下でさらに提供する。

核酸分子に関連した使用のためのプロモーターは、その起源および/または発現される遺伝子に関して相同または異種性であってよい。適したプロモーターは、例えばそれ自体を構成的発現するプロモーターである。しかしながら、外的影響によって決定される時点でのみ活性化されるプロモーターも使用することができる。人工的および/または化学的誘導性プロモーターを、この文脈において使用することができる。

ベクターは、ベクターに含有される前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結している発現制御配列をさらに含むことができる。これらの発現制御配列は、細菌または真菌における翻訳可能なRNAの転写および合成を保証するように適合させることができる。

さらに、分子生物学において通常である方法によって、ポリヌクレオチドに種々の変異を挿入して(例えばSambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USAを参照されたい)、改変された生物学的特性をおそらく有するポリペプチドの合成をもたらすことが可能である。点変異の導入は、例えば、アミノ酸配列の改変が、生物活性またはポリペプチドの調節に影響を及ぼす位置で考えられる。

さらに、改変された基質または生成物特異性を有する突然変異体を調製することができる。好ましくは、かかる突然変異体は、増加した活性を示す。さらに、上で定義した酵素をコードするポリヌクレオチド中への変異の導入は、遺伝子発現速度および/または前記ポリヌクレオチドによってコードされる酵素の活性を最適化することを可能にする。

細菌または真菌を遺伝的に改変するために、上記で定義した酵素またはこれらの分子の一部をコードするポリヌクレオチドを、DNA配列の組換えによる変異誘発または配列改変を可能にするプラスミドに導入することができる。標準的な方法(Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USAを参照されたい)により、塩基交換を行うか、または天然もしくは合成配列を付加することができる。DNA断片を、アダプターおよびリンカーを断片に適用することによって、互いに接続することができる。さらに、適した制限部位を提供するまたは過剰なDNAまたは制限部位を除去する工業的手段を使用することができる。挿入、欠失または置換が可能である場合、in vitro変異誘発、「プライマー修復」、制限またはライゲーションを使用することができる。一般に、配列分析、制限分析ならびに生化学および分子生物学の他の方法を、分析方法として行う。

上記の活性のいずれかを有するポリペプチドの生成をもたらすために、(微)生物中に導入されたポリヌクレオチドを発現させる。種々の発現系の概要は、例えば、Methods in Enzymology 153 (1987), 385-516、Bitter et al. (Methods in Enzymology 153 (1987), 516-544)およびSawers et al. (Applied Microbiology and Biotechnology 46 (1996), 1-9)、Billman-Jacobe (Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 500-4)、Hockney (Trends in Biotechnology 12 (1994), 456-463)、Griffiths et al., (Methods in Molecular Biology 75 (1997), 427-440)に含まれている。酵母発現系の概要は、例えば、Hensing et al. (Antonie van Leuwenhoek 67 (1995), 261-279)、Bussineau et al. (Developments in Biological Standardization 83 (1994), 13-19)、Gellissen et al. (Antonie van Leuwenhoek 62 (1992), 79-93、Fleer (Current Opinion in Biotechnology 3 (1992), 486-496)、Vedvick (Current Opinion in Biotechnology 2 (1991), 742-745)およびBuckholz (Bio/Technology 9 (1991), 1067-1072)によって提供されている。

発現ベクターは、文献において広く報告されている。概して、それらは、選択マーカー遺伝子および選択された宿主における複製を保証する複製起点だけでなく、細菌またはウイルスプロモーター、および大部分の場合、転写に関する終止シグナルも含有する。一般的に、プロモーターと終止シグナルの間に、コードDNA配列の挿入を可能にする少なくとも1つの制限部位またはポリリンカーがある。それが選択された宿主生物において活性である場合、対応する遺伝子の転写を天然に制御するDNA配列を、プロモーター配列として使用することができる。しかしながら、この配列は、他のプロモーター配列と交換することもできる。遺伝子の構成的発現を保証するプロモーターおよび遺伝子の発現の計画的な制御を可能にする誘導性プロモーターを使用することが可能である。これらの特性を有する細菌およびウイルスプロモーター配列が、文献において詳細に報告されている。微生物(例えば大腸菌(E. coli)、出芽酵母(S. cerevisiae))における発現に関する調節配列は、文献において十分に報告されている。下流配列の特に高い発現を可能にするプロモーターは、例えば、T7プロモーター(Studier et al., Methods in Enzymology 185 (1990), 60-89)、lacUV5、trp、trp−lacUV5(DeBoer et al., in Rodriguez and Chamberlin (Eds), Promoters, Structure and Function; Praeger, New York, (1982)、462-481;DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983), 21-25)、lp1、rac(Boros et al., Gene 42 (1986), 97-100)である。誘導性プロモーターは、好ましくはポリペプチドの合成に使用する。これらのプロモーターは、構成的プロモーターがもたらすよりも高いポリペプチド収率をしばしばもたらす。最適量のポリペプチドを得るために、2段階のプロセスがしばしば使用される。最初に、宿主細胞を、比較的高い細胞密度まで最適条件下で培養する。第2のステップでは、転写を、使用するプロモーターの型に依存して誘導する。この点で、ラクトースまたはIPTG(=イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)によって誘導することができるtacプロモーターが特に適している(deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983), 21-25)。転写に関する終止シグナルも、文献において報告されている。

本発明によるポリヌクレオチドまたはベクターでの宿主細胞の形質転換は、例えばSambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USA;Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990に報告されている、標準的な方法によって行うことができる。宿主細胞を、特にpH値、温度、塩濃度、通気、抗生物質、ビタミン、微量元素などに関して、使用する特定の宿主細胞の必要条件を満たす栄養培地において培養する。

本発明は、4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの変換および3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの変換に必要な上記の酵素を発現することができる生物、好ましくは微生物にも関する。したがって、本発明は、 (i)上記で定義した4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素、および (ii)上記で定義した3−ブテン−2−オン還元酵素 を発現する生物または微生物に関する。

好ましい実施形態では、上記の生物は、3−ブテン−2−オン還元酵素が (a)カルボニル還元酵素(EC1.1.1.184)、 (b)アルコール脱水素酵素、または (c)上記で定義した短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素 である生物である。

さらなる態様では、生物は、上記で定義したアルケノール脱水酵素をさらに発現する生物である。

さらなる態様では、生物は、 (i)アセトアセチルCoA還元酵素;または (ii)アセトアセチルCoA還元酵素および上記で定義したアセチルCoAをアセトアセチルCoAに変換することが可能である酵素 をさらに発現する生物である。

生物が発現する酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法に関連して上で説明したものと同じことがあてはまる。

一実施形態では、本発明による生物は、それが上記の酵素の少なくとも1つをコードする少なくとも1つの核酸分子の導入により、遺伝的に改変されているという意味で、組換え生物である。好ましくはかかる核酸分子は、生物に関して異種性であり、これは、その核酸分子が前記生物に天然に存在しないことを意味する。したがって、本発明による生物は、好ましくは、外来性の核酸分子の導入により天然発生の生物とは異なる非天然発生の生物である。

微生物は、好ましくは細菌、酵母または真菌である。別の好ましい実施形態では、生物は、植物または非ヒト動物である。他の好ましい実施形態に関して、本発明による方法に関連して上で説明したものと同じことがあてはまる。

本発明は、本発明による生物、ならびに任意選択で、アセトアセチルCoA、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ブテン−2−オンおよび/または3−ブテン−2−オールを含む組成物にも関する。

したがって、本発明は、好ましい実施形態では、本発明の方法に従って3−ブテン−2−オンを製造するために必要である上記の酵素の少なくとも1つを産生する生物、好ましくは微生物を含む組成物に関する。任意選択で、かかる組成物は、アセトアセチルCoAおよび/または4−ヒドロキシ−2−ブタノンをさらに含む。さらに、別の実施形態では、本発明は、本発明の方法に従って3−ブテン−2−オールを製造するために必要である上記の酵素の少なくとも1つを産生する生物、好ましくは微生物を含む組成物に関する。任意選択で、かかる組成物は、アセトアセチルCoA、4−ヒドロキシ−2−ブタノンおよび/または3−ブテン−2−オンをさらに含む。さらに、別の実施形態では、本発明は、本発明の方法に従って1,3−ブタジエンを製造するために必要である上記の酵素の少なくとも1つを産生する生物、好ましくは微生物を含む組成物に関する。任意選択で、かかる組成物は、アセトアセチルCoA、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ブテン−2−オンおよび/または3−ブテン−2−オールをさらに含む。

上記の組成物の好ましい実施形態に関して、本発明による方法に関連して上で説明したものと同じことがあてはまる。

本発明は、4−ヒドロキシ−2−ブタノンからの3−ブテン−2−オンの製造のための本明細書で上に記載の4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素の使用にも関する。

本発明は、アセトアセチルCoAからの3−ブテン−2−オンの製造のための、少なくとも1つの上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

本発明は、アセチルCoAからの3−ブテン−2−オンの製造のための、少なくとも1つの上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

3−ブテン−2−オンの製造のための使用に適用される酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法に関連して上で説明したものと同じことがあてはまる。

本発明は、4−ヒドロキシ−2−ブタノンからの3−ブテン−2−オールの製造のための、少なくとも1つの上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノン脱水を触媒する酵素と組み合わせた、少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

本発明は、アセトアセチルCoAからの3−ブテン−2−オールの製造のための、少なくとも1つの上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの脱水を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換を触媒する酵素と組み合わせた、少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

本発明は、アセチルCoAからの3−ブテン−2−オールの製造のための、少なくとも1つの上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの脱水を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換を触媒する酵素と組み合わせた、少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

3−ブテン−2−オンの製造のための使用に適用される酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法に関連して上で説明したものと同じことがあてはまる。

本発明は、3−ブテン−2−オンからの1,3−ブタジエンの製造のための、少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オールから1,3−ブタジエンへの酵素的変換を触媒する酵素および少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

本発明は、4−ヒドロキシ−2−ブタノンからの1,3−ブタジエンの製造のための、少なくとも1つの上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの脱水を触媒する酵素と組み合わせた、少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オールから1,3−ブタジエンへの酵素的変換を触媒する酵素および少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

本発明は、アセトアセチルCoAからの1,3−ブタジエンの製造のための、少なくとも1つの上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの脱水を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換を触媒する酵素と組み合わせた、少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オールから1,3−ブタジエンへの酵素的変換を触媒する酵素および少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

本発明は、アセチルCoAからの1,3−ブタジエンの製造のための、少なくとも1つの上記の4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの脱水を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換を触媒する酵素と組み合わせた、少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オールから1,3−ブタジエンへの酵素的変換を触媒する酵素および少なくとも1つの上記の3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的変換を触媒する酵素の組合せの使用にも関する。

1,3−ブタジエンの製造のための使用に適用される酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法に関連して上で説明したものと同じことがあてはまる。

本発明は、アセトアセチルCoAからの4−ヒドロキシ−2−ブタノンの製造のための、少なくとも1つの上記のアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換を触媒する酵素の使用にも関する。

本発明は、アセチルCoAからの4−ヒドロキシ−2−ブタノンの製造のための、少なくとも1つの上記のアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの酵素的変換を触媒する酵素および少なくとも1つの上記のアセチルCoAからアセトアセチルCoAへの酵素的変換のための酵素の組合せの使用にも関する。

4−ヒドロキシ−2−ブタノンの製造のための使用に適用される酵素の好ましい実施形態に関して、本発明による方法に関連して上で説明したものと同じことがあてはまる。

3−ブテン−2−オールを経由したアセチルCoAからの1,3−ブタジエン製造に関する人工的代謝経路を示す。

実施例3において概要を述べた、H.チェジュエンシス(H. chejuensis)由来の短鎖アルコール脱水素酵素様タンパク質でのアセトアセチルCoAの酵素触媒還元に関して得られたクロマトグラムを示す。アッセイを、32mMアセトアセチルCoAで行い、2時間インキュベートした。

実施例5において概要を述べた、S.トコダイイ(S. tokodaii)由来の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素での4−ヒドロキシ−2−ブタノンの酵素的脱水に関して得られたクロマトグラムを示す。アッセイを、100mM 4−ヒドロキシ−2−ブタノンで行い、24時間インキュベートした。

4−ヒドロキシ−2−ブタノンの酵素的脱水による3−ブテン−2−オン製造を示す。3−ブテン−2−オンの著しい製造が、いくつかの3−ヒドロキシアシルCoA脱水酵素に関して観察された。

実施例8において概要を述べた、サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)由来のアルコール脱水素酵素によって触媒された、3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの酵素的還元に関して得られたクロマトグラムを示す。アッセイを、20mM 3−ブテン−2−オンで行い、4時間インキュベートした。

80mM 3−ブテン−2−オールおよびリナロール脱水酵素−異性化酵素での、酵素的および酵素を含まないアッセイに関して22時間のインキュベーション後に得られたGC/FIDクロマトグラムを示す。

本発明の他の態様および利点を、以下の実施例において記載することになるが、これらは、限定のためではなく、例示の目的で提供する。

[実施例1] クローニング、酵素の発現および精製 遺伝子合成、クローニングおよび組換えタンパク質の発現 原核および真核生物のゲノムから推測される試験する酵素の配列を、オリゴヌクレオチド連結によって作製して、大腸菌(E. coli)のコドン使用頻度に適合させた(遺伝子は、GeneArt AGが商業的に合成した)。一続きの6ヒスチジンコドンを、メチオニン開始コドンの後ろに挿入して、精製のためのアフィニティータグを提供した。このように合成された遺伝子を、pET−25b(+)発現ベクターにおいてクローニングした(ベクターは、GeneArt AGが構築した)。

コンピテント大腸菌(E. coli)BL21(DE3)細胞(Novagen)を、標準的なヒートショック手順に従って、これらのベクターで形質転換した。形質転換細胞を37℃で6時間、ZYM−5052自己誘導培地(Studier FW, Prot. Exp. Pur. 41, (2005), 207-234)を使用して振とうしながら(160rpm)増殖させ、タンパク質発現を28℃または20℃で終夜(約16時間)継続した。細胞を、4℃、10.000rpmで20分間の遠心分離によって回収し、ペレットを−80℃で保管した。

タンパク質精製および濃縮 200mlの培養細胞からのペレットを氷上で解凍し、300mM NaCl、5mM MgCl2および1mM DTTを含有する、5mlのNa2HPO4 pH8に再懸濁した。20マイクロリットルのリゾナーゼ(lysonase)(Novagen)を加えた。細胞を、室温で10分インキュベートし、次いで氷へ20分間戻した。細胞溶解を3×15秒間の超音波処理によって完了した。次いで細菌の抽出物を、4℃、10.000rpmで20分間の遠心分離によって清澄化した。清澄化した細菌溶解物をPROTINO−1000 Ni−TEDカラム(Macherey−Nagel)に装填し、6−Hisタグを付けたタンパク質の吸着を可能にした。カラムを洗浄し、目的の酵素を、300mM NaCl、5mM MgCl2、1mM DTT、250mMイミダゾールを含有する、4mlの50mM Na2HPO4 pH8で溶出した。次いで溶出液を濃縮し、Amicon Ultra−4 10kDaろ過装置(Millipore)上で脱塩し、酵素を下流酵素活性アッセイに適合する緩衝液に再懸濁した。タンパク質濃度を、NanoDrop 1000分光光度計(Thermo Scientific)上での直接的なUV280nm測定によって定量化した。このように精製されたタンパク質の純度は、60%から90%まで異なっていた。

[実施例2] アセトアセチルCoA還元酵素活性の連続的分光光度アッセイ 短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素の遺伝子を合成し、対応する酵素を、実施例1に記載した手順に従って、さらに生成した。精製された酵素を、50mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5に再懸濁した。

アセトアセチルCoA還元酵素活性のアッセイに関する標準的な反応混合物は、50mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5中に5mMアセトアセチルCoA、100mM NaClおよび0.1〜0.4mM NADPHを含有した。各アッセイを、1mg/mlの酵素を加えることによって開始した。酵素を加えない、または基質を加えない対照アッセイを行った。反応を、37℃で行った。各試料を、NADPHの減少に関して、SpectraMax Plus384 UV/Visマイクロプレートリーダー(Molecular Device)上で340nmで継続的にモニターした。いくつかの酵素が、補助因子としてのNADPHでアセトアセチルCoA還元酵素活性を実証した(表1)。

次に、アセトアセチルCoAの酵素的還元の生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。

[実施例3] アセトアセチルCoAの酵素的還元の生成物のHPLCに基づく分析 酵素アッセイを、以下の条件下で行った: 50mMリン酸カリウムpH7.5 100mM NaCl 60mM NADPH 0〜32mMアセトアセチルCoA

アッセイを、150μlの反応混合物への150μgの精製された脱水素酵素/還元酵素の添加で開始した。インキュベーションを、37℃で振とうしながら0、0.5、1、2および4時間行った。反応を、65℃で5分間加熱することによって停止し、遠心分離し、120μlの清澄化した上清をきれいなバイアル中に移した。市販の4−ヒドロキシ−2−ブタノン(Sigma)を、参照として使用した。HPLC分析を、屈折計検出器およびカラム加熱モジュールを備えた1260 Inifinity LC System(Agilent)を使用して行った。10μlの試料を、1.5ml/minの移動相流速でZorbax SB−Aqカラム(250×4.6mm、5μm粒径、カラム温度75℃)上で分離した。移動相は、硫酸水溶液(8.4mM)からなった。これらの条件下での4−ヒドロキシ−2−ブタノンの保持時間は、3.2分であった。

HPLC分析は、4−ヒドロキシ−2−ブタノンがアセトアセチルCoAの酵素触媒還元によって形成されたことを示した。H.チェジュエンシス(H. chejuensis)由来の短鎖アルコール脱水素酵素様タンパク質で得られた典型的なクロマトグラムを図2に示す。

これらのデータは、短鎖脱水素酵素/還元酵素がアセトアセチルCoAから4−ヒドロキシ−2−ブタノンへの4電子還元を触媒することを示している。

[実施例4] アセトアセチルCoA還元の動態学的パラメーター 酵素アッセイを、100mM NaClおよび純粋な酵素(150μg)を含有する150μlリン酸カリウム(50mM、pH7.5)の総体積において行った。動態学的パラメーターを、可変の基質(0〜32mM)としてのアセトアセチルCoAで決定し、NADPH濃度を一定に保持した(60mM)。各アッセイに関して形成する4−ヒドロキシ−2−ブタノンの量を、実施例3に記載したHPLCに基づく手順を使用して測定した。

精製された短鎖脱水素酵素/脂肪酸アシルCoA還元酵素に関して得られた動態学的パラメーターを、表2に示す。

[実施例5] 4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの酵素触媒脱水 古細菌および細菌のゲノムから推測される3−ヒドロキシプロピオニルCoAおよび3−ヒドロキシブチリルCoA脱水酵素の配列を、実施例1に記載した手順に従って作製した。このように合成された遺伝子を、pET25b(+)発現ベクター(ベクターは、GeneArt AGが構築した)においてクローニングし、タンパク質を実施例1に記載した手順に従って生成した。

精製された脱水酵素を、4−ヒドロキシ−2−ブタノンを脱水するそれらの能力に関して評価した。

試験する酵素反応を、37℃で以下の条件下で行った: 50mMトリス−HCl pH7.5 20mM MgCl2 100mM 4−ヒドロキシ−2−ブタノン 反応体積は、0.4mlであった。

各アッセイを、4mg/mlの最終濃度での特異的な酵素の添加で開始した。酵素を加えない、または基質を加えない対照アッセイを行った。試験管を37℃で振とうしながら23時間インキュベートした。反応生成物を等体積の酢酸エチルで抽出し、次いでHPLCによって分析した。市販の3−ブテン−2−オン(Sigma)を参照として使用した。HPLC分析を、カラム加熱モジュールおよび屈折計およびUV検出器を備えた1260 Inifinity LC System(Agilent)を使用して行った。10μlの試料を、1.5ml/minの移動相流速でZorbax SB−Aqカラム(250×4.6mm、5μm粒径、カラム温度30℃)上で分離した。移動相は、8.4mM硫酸を含有する98:2(v/v)H2O/アセトニトリルからなった。これらの条件下での3−ブテン−2−オンの保持時間は、5.4分であった。

S.トコダイイ(S. tokodaii)由来の3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素に関して得られた典型的なクロマトグラムの例を、図3に示す。3−ブテン−2−オンの著しい製造が、いくつかの3−ヒドロキシアシルCoA脱水酵素での酵素アッセイにおいて観察された(図4)。

[実施例6] 4−ヒドロキシ−2−ブタノンから3−ブテン−2−オンへの脱水の動態学的パラメーター 反応の動態学的パラメーターを、以下の条件下でスルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)由来の精製された組換え3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素に関して決定した: 100mMトリス−HCl pH7.5 20mM MgCl2 0〜300mM 4−ヒドロキシ−2−ブタノン 4mg/ml 3−ヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素S.トコダイイ(S. tokodaii)

試験管を、37℃で振とうしながら0、20、60、120および180分間インキュベートした。3−ブテン−2−オンの形成を、実施例4に記載した手順に従って、市販の3−ブテン−2−オンを使用して定量化した。

S.トコダイイ(S. tokodaii)由来のヒドロキシプロピオニルCoA脱水酵素は、0.4Mよりも高いKMおよび7.5×10−3s−1のkcatを有することが見出された。

[実施例7] 基質として3−ブテン−2−オンおよび補助因子としてNADPHを使用した、還元酵素の回収物のスクリーニング 真核および原核生物にわたる還元酵素/アルコール脱水素酵素の代表をコードする10の遺伝子のセットを構築し、試験して、3−ブテン−2−オンからの3−ブテン−2−オール製造に関する潜在的な候補を同定した。遺伝子を合成し、次いで対応する酵素を実施例1に記載した手順に従って生成した。

還元酵素アッセイに関して、120μlの総体積で50mMトリス−HCl pH7.5、0.4mM NADPH、50mM NaCl、20mM 3−ブテン−2−オンおよび0.001〜1mg/ml酵素を含有する反応混合物を使用し、反応を37℃で20分間行った。サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)由来のアルコール脱水素酵素およびハヘラ・チェジュエンシス(Hahella chejuensis)由来の短鎖アルコール脱水素酵素様タンパク質でのアッセイを、トリス−HCl緩衝液の代わりに50mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5において行った。酵素、基質および補助因子の陰性対照反応を同時に行った。各試料を、NADPHの減少に関して、SpectraMax Plus384 UV/Visマイクロプレートリーダー(Molecular Device)上で340nmで継続的にモニターした。いくつかの酵素が、基質としての3−ブテン−2−オンおよび補助因子としてのNADPHで還元酵素活性を実証した(表3)。

[実施例8] サーモアナエロビウム・ブロッキイ(Thermoanaerobium brockii)由来のアルコール脱水素酵素による3−ブテン−2−オンの酵素触媒還元のHPLCに基づく分析 試験する酵素反応を、37℃で以下の条件下で行った: 50mMトリス−HCl pH7.5 50mM NaCl 1mM DTT 40mM NADPH 0.1mM ZnCl2 0〜40mM 3−ブテン−2−オン Th.ブロッキイ(Th. brockii)由来の1mg/mlアルコール脱水素酵素 反応体積は、200μlであった。

分析物を、37℃で振とうしながら様々な期間(0、20、40、60、120および240分)インキュベートした。反応を、65℃で5分間加熱することによって停止し、反応混合物を遠心分離し、150μlの清澄化した上清をきれいなバイアル中に移した。次いで反応生成物を等体積の酢酸エチルで抽出した。150μlの上部酢酸エチル相をHPLC分析のためにきれいなバイアル中に移した。市販の3−ブテン−2−オール(Sigma)を参照として使用した。HPLC分析を、カラム加熱モジュールおよび屈折計およびUV検出器を備えた1260 Inifinity LC System(Agilent)を使用して行った。10μlの試料を1.5ml/minの移動相流速でZorbax SB−Aqカラム(250×4.6mm、5μm粒径、カラム温度30℃)上で分離した。移動相は、8.4mM硫酸を含有する98:2(v/v)H2O/アセトニトリルからなった。これらの条件下での3−ブテン−2−オールおよび3−ブテン−2−オンの保持時間は、それぞれ、3.9および5.4分であった。

3−ブテン−2−オールの著しく、再現可能な製造が、酵素アッセイにおいて観察された。典型的なクロマトグラムの例を、図5に示す。これらのデータは、3−ブテン−2−オンの還元を、補助因子としてのNADPHの存在下でアルコール脱水素酵素を使用して達成し、3−ブテン−2−オールの製造をもたらすことができることを示している。

Th.ブロッキイ(Th. brockii)由来の第2級アルコール脱水素酵素は、100mMのKMおよび少なくとも0.5s−1のkcatを有することが見出された。

[実施例9] ラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)由来のR特異的アルコール脱水素酵素による3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの還元の動態学的パラメーター 試験する酵素反応を、37℃で以下の条件下で行った: 50mMトリス−HCl pH7.5 50mM NaCl 1mM DTT 40mM NADPH 0〜40mM 3−ブテン−2−オン L.ケフィリ(L. kefiri)由来の1mg/mlアルコール脱水素酵素。 反応体積は、200μlであった。

分析物を、37℃で振とうしながら0、10、20、40、60および120分間インキュベートした。3−ブテン−2−オールの形成を、実施例8に記載したプロトコールに従って定量化した。ラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)由来のR特異的アルコール脱水素酵素は、19mMのKMおよび4s−1のkcatを有することが見出された。

[実施例10] ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)由来の第2級アルコール脱水素酵素による3−ブテン−2−オンから3−ブテン−2−オールへの還元の動態学的パラメーター 試験する酵素反応を、37℃で以下の条件下で行った: 50mMトリス−HCl pH7.5 50mM NaCl 1mM DTT 40mM NADPH 0〜40mM 3−ブテン−2−オン R.ルーバー(R. ruber)由来の1mg/mlアルコール脱水素酵素。 反応体積は、200μlであった。

分析物を、37℃で振とうしながら0、10、20、40、60および120分間インキュベートした。3−ブテン−2−オールの形成を、実施例8に記載したプロトコールに従って定量化した。ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)由来の第2級アルコール脱水素酵素は、180mMのKMおよび少なくとも0.03s−1のkcatを有することが見出された。

[実施例11] リナロール脱水酵素−異性化酵素に関する遺伝子の大腸菌(E. coli)におけるクローニングおよび発現 クローニングおよび細菌培養 カステラニエラ・デフラグランス(Castellaniella defragrans)(以前はアルカリゲネス・デフラグランス(Alcaligenes defragrans))のゲノムから推測されるリナロール脱水酵素−異性化酵素の配列を、オリゴヌクレオチド連結によって作製して、大腸菌(E. coli)のコドン使用頻度に適合した。一続きの6ヒスチジンコドンを、メチオニン開始コドンの後ろに挿入して、精製のためのアフィニティータグを提供した。このように合成された遺伝子を、pET25b(+)発現ベクターにおいてクローニングした(ベクターは、GeneArt AGが構築した)。コンピテント大腸菌(E. coli)BL21(DE3)細胞(Novagen)を、ヒートショック手順に従ってこのベクターで形質転換した。陰性対照として、大腸菌(E. coli)BL21(DE3)株を空のベクターで形質転換した。形質転換細胞を、37℃で6時間、ZYM−5052自己誘導培地(Studier FW, Prot. Exp. Pur. 41 (2005), 207-234)上で振とうしながら(160rpm)増殖させ、タンパク質発現を18℃で終夜(約12時間)継続した。細胞を、4℃、10.000rpmで20分間の遠心分離によって回収し、ペレットを−80℃で凍結させた。

細胞溶解物の調製 100mlの培養細胞からのペレットを氷上で解凍し、4mlの50mMトリス−HCl pH7.5に再懸濁した。次いで10μlのリゾナーゼ(Novagen)を加えた。細胞を室温で10分間インキュベートし、次いで氷へ20分間戻した。タンパク質濃度をBradford法(Biorad)を使用して決定した。

[実施例12] 3−ブテン−2−オールからの1,3−ブタジエン製造 酵素アッセイを以下の条件下で行った: 50mMトリスHCl pH7.5 2mM D,L−ジチオスレイトール 0〜80mM 3−ブテン−2−オール pHを7.5に調整した。

組換えリナロール脱水酵素−異性化酵素を含有する0.25mlの細胞溶解物を、0.5mlの反応混合物に加えた。空のベクターで形質転換した大腸菌(E. coli)細胞の溶解物を含有する酵素を含まない対照反応を同時に行った。分析物を、振とうしながら2mlの密封されたガラスバイアル(Interchim)において37℃で1〜22時間インキュベートした。1,3−ブタジエン製造を、GC/FID手順によって分析した。次いでこの目的のために、1mlのヘッドスペース相を回収し、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフVarian 450−GC中に注入した。窒素を1.5ml/minの流速でキャリアーガスとして使用した。揮発性化合物を、130℃での等温モードを使用してRt−Alumina Bond/Na2SO4カラム(Restek)上でクロマトグラフ的に分離した。酵素反応生成物を、1,3−ブタジエン標準(Sigma)との比較によって同定した。これらのGC条件下で、ブタジエンに関する保持時間は、7.6分であった。1,3−ブタジエンの著しい製造がリナロール脱水酵素−異性化酵素での酵素アッセイにおいて観察された。ブタジエンシグナルは、酵素を含まない対照アッセイにおいて観察されなかった(図6)。この変換に関する代謝回転数は、酵素活性部位当たり約10−4s−1基質分子に達した。

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