【0001】 2環式ジケトン塩の製造方法 本発明は2環式1,3−ジケトン塩の製造方法及び当該方法における新規な2環式エノールラクトン中間体の使用に関する。 【0002】 例えばビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンのような2環式1,3−ジケトンは例えばWO00/15615、WO00/37437、WO01/66522及びWO01/94339に記載されている通り、除草剤の製造における有益な中間体である。 【0003】 そのような1,3−ジケトンの製造については数多くの方法が知られている。 例えば、2環式1,3−ジケトンは対応する塩から既知の方法に従って得ることができる。 【0004】 そのような対応する塩から2環式1,3−ジケトンを製造する方法は、例えば、JP−10−265441に記載されている。 対応するナトリウム塩を経てビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンを商業的に製造するために、3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オンから得られる3−アセチル−シクロペンタンカルボン酸のアルキルエステルを出発物質として用いることは当該方法を過度に非経済的たらしめる、その例として、メタノール存在下で過亜硫酸を用いるような、酸及びアルコール存在下での酸化的開環は、結果として、望ましいアルキルエステルだけでなく、遊離の3−アセチルシクロペンタンカルボン酸をも生成するが、これは環化の前に付加反応段階中で対応するアルキルエステルに再変換される必要がある。 【0005】 したがって本発明の目的は、2環式1,3−ジケトン塩の新規な製造方法であって、高品質なこれらの塩を経済的に、高収率で製造することを可能とするものを提供することである。 【0006】 したがって本発明は以下の式(I): 【化6】
{式中、 R
1 、R 2 、R 3及びR 4はそれぞれ他から独立しており、水素、C 1 −C 4アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C 1 −C 4アルコキシ、C 1 −C 4アルコキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル又はシアノであり; A及びEはそれぞれ互いに独立しており、C
1 −C 4アルキレンであって、1回又は4回までC 1 −C 4アルキル基或いはハロゲン、ヒドロキシ、C 1 −C 4アルコキシ、C 1 −C 4アルコキシカルボニル又はシアノで置換されることができ、かつ、 M
+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又はアンモニウムイオンである。 } により表される化合物の製造方法であって、以下のステップ:
a)以下の式(II):
【化7】
{式中、R
1 、R 2 、R 3 、R 4 、A及びEは、式(I)に関して定義された通りである。 } により表される化合物を、酸化剤の存在下で反応させて以下の式(III):
【化8】
{式中、R
1 、R 2 、R 3 、R 4 、A及びEは式(I)に関して定義された通りである。 } により表される化合物を作り、そしてb)その後、塩基及び触媒量のシアン化物の存在下又はアルカリ金属アルコレート又はアルカリ土類金属アルコレート、或いは水酸化物の存在下で上記化合物を式(I)の塩に変換する、
を含む前記方法に関する。
【0007】
上記の置換基の定義中のアルキル基は直鎖又は分枝の、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル又はtert−ブチルであることができる。 アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ又はtert−ブトキシである。 アルコキシカルボニルは、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルであり;好ましくはメトキシカルボニル又はエトキシカルボニルである。
【0008】
アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又はアンモニウムイオンであるM
+は、例えば、そのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、トリエチルアンモニウム又はジイソプロピルエチルアンモニウムカチオンである。 【0009】
上記の2環式化合物の結合部分をより良く説明するには、式(I)の化合物は以下のようにあらわすこともできる。
【化9】
【0010】
式(II)のキラル化合物から製造されることのできる式(III)の化合物の中でキラル体は例えば以下の:
【化10】
のように生成することもできるので、本発明はまたそのようなすべてのキラル体、それらの製造方法及び式(I)のキラル化合物の製造におけるそれらの使用をも含む。
【0011】
式(I)の塩もまた以下に示すように互変体で生成する:
【化11】
【0012】
式(II)の化合物は周知であるか又は周知の方法により得ることができる。 例えば、R
1 、R 2 、R 3及びR 4が水素であり、AがメチレンでありそしてEがメチレンである式(II)の化合物の製造は、JP−10−265415に記載されている。 【0013】
本発明による方法は、特に式(I)の化合物の製造に好適であり、ここで、
a)R
1 、R 2 、R 3及びR 4はそれぞれ他から独立しており、ハロゲン又はC 1 −C 4アルキルであり、A及びEは互いに他から独立しており、C 1 −C 2アルキレンであって、1回又は4回までC 1 −C 4アルキル基で置換されることができ、かつ、M +はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又はアンモニウムイオンであり; b)R
1及びR 2はそれぞれ互いに独立した水素又はメチルであり; c)R
3及びR 4はそれぞれ互いに独立した水素又はメチルであり; d)Aは1回又は2回メチル基又はエチレンにより置換されることのできるメチレンであり;
e)Eは1回又は2回金属基で置換されることのできるメチレンであり;及び/又はf)M
+はナトリウム、トリエチルアンモニウム又はジイソプロピルエチルアンモニウムカチオンである。 【0014】
本発明による方法は、R
1 、R 2 、R 3及びR 4が水素であり、Aがメチレン、Eがメチレンで、そしてM +がナトリウム、トリエチルアンモニウム又はジイソプロピルエチルアンモニウムカチオンである式(I)の化合物の製造にさらに特に好適である。 【0015】
反応ステップa): ケトンはペルオキソ酸、例えば過酢酸、m−塩化過安息香酸又は三フッ化過酢酸、過酸化水素或いは触媒量の二酸化セレンの存在下での過酸化水素のような酸化剤の存在下でアルキルエステルに酸化され、新たに挿入された酸素基に炭素原子が転位する。 そのような反応はBaeyer−Villiger転位として一般に知られている。 化学的著作の専門家にとっては、多様な立体的、構造的及び電子的効果並びに環のひずみによる効果がカルボニル基の隣位に挿入される酸素原子の位置を決定することもまた周知である。 結果として、本発明による式(II)のひずんだ環の2環式エキソメチレンケトンであって、ここで【化12】
R
1 、R 2 、R 3 、R 4 、A及びEが式(I)に関して定義された通りであるものにおいては、酸素基はカルボニル基とエキソメチレン基との間に高いレベルの選択性を持って位置することができ、それによって式(III)の2環式エノールラクトンであって、 【化13】
単離可能であり、安定でそして工業的過程のために大いに有利である、蒸留可能なものが得られることが可能である。
【0016】
例えばビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンのようないくつかの式(III)の化合物には上記の方法は経済的及び環境学的に特別に有利であり、なぜなら出発物質は石油化学の原材料であって、付加反応、水の除去を伴う濃縮反応、そして原則として過酸化水素を酸化剤として使用することによって毒性のある廃棄物を生成せずに効果的に式(III)の製品に至るからである。
【化14】
反応ステップa)においては、式(II)の化合物から式(III)の化合物への変換のための好適な酸化剤は有機ペルオキソ酸であって、そのようなものには、過酢酸、トリフルオロ過酢酸、過蟻酸、過プロピオン酸、過安息香酸、m−塩化過安息香酸又はモノ−過オキシフタル酸、過酸化水素或いは触媒量の二酸化セレンの存在下での過酸化水素があり、適宜、付加的な量の塩基が加えられる。
【0017】
反応a)による反応は好ましくは、塩基の存在下、不活性溶媒中で温度−20℃から50℃、特に−15℃から+15℃で行なわれる。 好適な溶媒は、例えば、ジロロメタン、ジクロロエタン、酢酸、無水酢酸及びそれらの混合物、例えばジシクロロメタンと酢酸又は酢酸と無水酢酸である、を含む。 好適な塩基は、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、酸化バリウム、リン酸水素カリウム及びリン酸二水素カリウムを含み、酢酸中で過酸化水素を使用する場合には特に酢酸ナトリウム3水和物である。 塩基は0.1〜約6等量、好ましくは1〜3等量で使用される。 触媒量の二酸化セレンが用いられる場合には、好ましくは二酸化セレンはおよそ0.0001〜1%の非常に少量で使用される。
【0018】
反応ステップa)における酸化剤は、化学量論的所要量より少なく、又は等モルで、或いは1.4等量よりやや多い量まで使用することができる。 酸化剤は好ましくは、化学量論的所要量よりも少ない量で使用される。 式(III)の化合物がさらに酸化された結果としての選択性の損失を防止するために、40%〜85%の変換率までの酸化、特に50%〜70%が好ましく、未反応の出発物質がリサイクルされる。 慣用方法によって過剰の酸化剤の分解及び抽出作業が行なわれた後、式(II)の出発物質は低沸点の蒸留分の形態で有利に回収される。 そのような方法は式(I)の化合物の工業的規模の製造及び2環式1,3−ジケトンの製造におけるそれらのさらなる使用において特に有利であり、それは得られた製品が高いレベルの純度を有し、ほとんど残渣がなく、そして、それらが液体であるために、良好な輸送特性(例えばパイプを通じて輸送されうる)を有する。 蒸留残渣は式(I)の塩の製造に直接的に用いられることができ、又は必要な場合、例えば式(I)の塩との直接反応による純粋の2環式1,3−ジケトン誘導体の製造のためには、蒸留によって90〜99%の濃度まで濃縮されることができる。
【0019】
方法のステップb): いくつかの6−メチレンテトラヒドロピラン−2−オンが例えばナトリウムメタノレートのような塩の存在下、無水ベンゼン中で加温することにより直接的に1,3−シクロヘキサンジオンに変換されることが可能である。 4,4−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン及び4−フェニルシクロヘキサン−1,3−ジオンの製造のためのそのような方法が
J. Gen. Chem. USSR, 1964, 34, 3509に記載されている。 【0020】
今段、その方法は方法のステップb)による式(III)のエノールラクトンの式(I)のひずんだ環の2環式1,3−ジケトン塩への変換に非常に有利に適用されうることが発見された。
【0021】
その目的のために、式(III)の化合物は溶媒中の少なくとも触媒量のアルカリ金属アルコレートイオン及びアルカリ土類金属アルコレートイオンの存在下で反応させられる。 アルカリ金属アルコレート及びアルカリ土類金属アルコレートはその反応中で触媒量又は化学量論的所要量で使用されることが可能である。 触媒量が使用された場合には、さらに塩基を加えることが必要である。 追加の塩基は化学量論的所要量又は過剰に加えられることができる。 わずかに過剰な化学量論的所要量を使用することがさらに有利である。 追加の塩基の例として、無機塩基、例えば炭酸カリウムのような炭酸塩、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのような水酸化物、例えば酸化バリウムのような酸化物、そして例えば水素化ナトリウムのような水素化物がある。 触媒量のアルカリ金属アルコレート及びアルカリ土類金属アルコレートは0.0001%〜25%、好ましくは1%〜10%であると理解されている。
【0022】
本発明による方法の好ましい実施例において、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコレート、その中でも特にリチウム、ナトリウム及びカリウムのものは追加の塩基なしに、触媒量又は過剰に、しかし好ましくは触媒量で使用される。
【0023】
好適なアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコレートはリチウム、ナトリウム及びカリウムのものであり、特にメタノレート及びエタノレートである。 特に好適なアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコレートはナトリウムメタノレート、ナトリウムエタノレート、ナトリウムイソプロパノレート、ナトリウムn−ブタノレート、カリウムtert−ブタノレート、ナトリウムペンタノレート、ナトリウムtert−ペンタノレート、ナトリウムアミレート及びナトリウム2−メトキシエタノレートであり、;ナトリウムメタノレートはより特別に好適である。 無水水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムは同様に好適である。
【0024】
変換のための好適な溶媒はトルエン、キシレン、クロロベンゼン、メチルナフタレン或いはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アミルアルコール、のようなアルコール、或いはテトラヒドロフラン又はジオキサン、或いはプロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン又はジメチルスルホキシドのような中性溶媒、或いは2−メチル−5エチルピリジンなど、或いはそのような溶媒の混合物、例えばトルエン及びジメチルホルムアミド又はトルエン及びN−メチルピロリドン、である。
【0025】
反応ステップb)において、トルエン及び追加溶媒としてジメチルホルムアミド又はN−メチルピロリドンの使用が特に好ましいとされており、なぜなら、それによって式(I)の化合物が特に有利に反応混合物から沈澱し、結果としてさらなる塩基触媒性の2次反応が実質的に防止されるからである。
【0026】
反応ステップb)において、溶媒が使用されるが、その量は塩、好ましくはナトリウム塩、が容易に結晶化可能な形態で反応溶媒及び反応混合物から、容易に撹拌可能なままであるにもかかわらず沈澱する量である。 式(III)の化合物から式(I)の化合物への変換において、M
+はアルカリ金属イオン、好ましくはナトリウムカチオンであり、特にトルエン及び約1〜15%のジメチルホルムアミド又は約1〜15%のN−メチルピロリドンの混合物が有利であり、トルエン中約3〜8%のジメチルホルムアミドの混合物が特に好適である。 【0027】
溶媒によって、変換は約0℃から沸点までの温度で行なわれ、無水条件下ではさらに有利である。 特に有利な変法においては、メタノール中のナトリウムメタノレートを塩基として使用し、トルエン中で80℃から沸点までの温度で変換が行なわれ、その中で放出されたメタノールは2次反応を防ぐために継続的に蒸留により除かれる。
【0028】
特に、トルエンと約1〜15%のジメチルホルムアミドの混合物中約30%メタノール性の溶液の形態のナトリウムメタノレートが最初のチャージとして使用されることができ、結果として、加熱するとまずはじめにメタノールがカラム上部の温度約105〜110℃のところで蒸留により除かれ、そしてそれから放出されたメタノールがさらなる蒸留によって反応混合物から持続的に除かれ、そのことによって式(I)の塩が純粋で容易に撹拌可能な結晶として反応混合物から沈澱するように、少量のトルエンに溶解した式(III)の化合物が滴下して加えられる。
【0029】
アルコレートアニオンを触媒として用いて変換が行なわれた場合、対応するアルコレート生成性カチオンも式(I)のエノレートの沈澱のための塩基として使用されることが有利である。 好適な量のアルカリ金属アルコレートは1.0〜2.5等量、特に1.0〜約1.5等量である。 塩基としての1.0001〜1.1等量のナトリウムメタノレートが特に好ましい。
【0030】
式(I)の化合物はさらなる変換又はその代わりに単離のために反応混合物中で直接的に使用されることが可能である。 式(I)の化合物は慣用手段に従って反応混合物から濾過によって単離されることができる。 式(I)の化合物を上述のように除草剤製造の中間体として働く、対応する中性の2環式1,3−ジケトンにさらに変換することも可能である。
【0031】
その目的のために、トルエンと少量のジメチルホルムアミド又はN−メチルピロリドンの混合物中のナトリウムメタノレートが用いられた場合、式(I)の化合物、特にそのナトリウム塩は濾過によって除かれ、水溶液中で酸、例えば塩酸、硫酸又は酢酸、を用いて中和され、結果として抽出剤、例えばエチル酢酸、tert−ブチルメチルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエタン又はクロロベンゼン、を用いて単離されることが可能であるか又は、ナトリウム塩を含む反応混合物は撹拌しながら、水性の酸、例えば2規定〜10規定の塩酸、を加えることによって直接的に中和され、そして、適宜、さらなる希釈液、例えば酢酸エチルを加えることで、中性の2環式1,3−ジケトンを得るために抽出されることが可能である。 中和は、pHコントロールをしながら行なわれるのが有利であり、得られた1,3−ジケトンは約2〜7のpH、特に約4〜6、の範囲において抽出される。
【0032】
本発明による上記方法の他の実施例においては、反応ステップb)において触媒量のシアン化物イオンが追加の塩基の存在下で使用される。 好適な塩基は3級アルキルアミンのような特に3級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(Huenig's base)、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン及びN−メチル−モルフォリン、である。 無水水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カリウムのような塩基もまた好適である。 シアン化物イオンの供給源としてアルカリ金属シアン化物、例えばシアン化ナトリウム又はシアン化カリウム、又はシアン化銅(I)、或いはアセトンシアノヒドリンのような有機シアノヒドリン、或いはトリメチルシリルシアナイドのようなトリアルキルシリルシアナイド、或いはテトラエチルアンモニウムシアナイドのような3級アンモニウム塩基が好ましくは用いられる。 本発明による方法の変法においては、使用されるアルカリ金属シアン化物の量は少量からわずかな過剰量までの範囲である。
特にトリエチルアミン又はHuenig's baseのような追加の塩基の1〜6等量、特に1.1〜約2.5等量の存在下で、シアン化物は0.1%〜約25%、好ましくは1%〜約15%、の量で使用される。
【0033】
本発明による方法のその実施例は好ましくはn−ヘプタン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、2−ブタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド又はN−メチルピロリドンのような不活性溶媒中、−5℃〜約+80℃の温度において、特に好ましくはアセトニトリル又はジクロロメタン中で約10℃〜約60℃の温度において行なわれる。
【0034】
反応ステップb)中の変換には、採用される溶媒により、場合によって、例えば塩化リチウム又は臭化リチウムのような付加剤、或いは例えば臭化テトラブチルアンモニウム又は特にシアン化テトラエチルアンモニウムのような相転換触媒、又は硫酸マグネシウム又は好適な分子ふるいのような乾燥剤が使用されるが、そのような付加剤は一般には必要でない。
【0035】
式(I)の化合物の製造方法の上記実施例において、式(I)の化合物は、上述のように単離され、又は例えば除草剤活性を有する化合物を生成するために、反応混合物中でさらなる反応のために直接的に用いられる。 そのようにして得られた式(I)のアンモニウム塩は、例えばシアン化カリウムが触媒として用いられた場合の式(I)のカリウム塩のような少量の固体を濾過で除いた後、蒸発という反応混合物の単純な濃縮によって、単離することができる。
【0036】
式(I)の化合物をさらに反応させて、対応する中性の2環式1,3−ジケトンであって上述のように除草剤製造の中間体として働くものを生成することも可能である。 その目的のためには、水と中和剤としての酸、例えば塩酸又は硫酸、を加えることにより、中性の2環式1,3−ジケトンを遊離し、pHを約2〜7、特に約4〜6の範囲でコントロールし、抽出剤、例えば酢酸エチル、tert−ブチルメチルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエタン又はクロロベンゼン、を用いてそれらを単離することができる。
【0037】
式(III)の化合物であって、
【化15】
ここでR
1 、R 2 、R 3 、R 4 、A及びEが式(I)に関して定義された通りであるものは、式(I)の化合物の製造において有益な中間体であり、そして特に本発明による現方法のために開発された。 本発明はしたがってこれらの化合物にも関する。 【0038】
式(III)の化合物であって式(I)の化合物の製造に特に有益なものは特に以下のものである。
a)R
1及びR 2はそれぞれ互いに独立した水素又はメチルであり; b)R
3及びR 4はそれぞれ互いに独立した水素又はメチルであり; c)Aは1回又は2回メチル基で置換されることができるメチレン、又はエチレンであり;
及び/又はd)Eは1回又は2回メチル基で置換されることができるメチレンである。
【0039】
式(I)の製造における中間体として、R
1 、R 2 、R 3及びR 4が水素であり、AがメチレンでEがメチレンである式(III)の化合物があり、特に好適である。 好ましい式(III)の化合物を以下の表に挙げる: 【0040】
表1:式( III) の化合物: 【化16】
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
本発明による方法は、以下の製造実施例においてさらに詳細に例解する:
【0046】
実施例P1:4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンの3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オンからの製造(Comp.No.1.001): 【化17】
a)400mlのジクロロメタン中の98.7g(0.81mol)の3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オンと32.9g(0.24mol)の酢酸ナトリウム3水和物を反応容器への最初のチャージとして用いる。 そして温度管理下で(CO
2 /アセトン浴)、230gの酢酸中32%過酢酸(0.97mol)を2.5時間の間に撹拌しながら−8℃〜−10℃の温度で滴下により加える。 反応混合物をその後さらに1時間、−8℃で撹拌する。 そして、200gの氷、次いで100mlの水に溶解した20g(0.16mol)の亜硫酸ナトリウムを加える。 有機相を分離除去し、水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、液体残渣の形態で濃縮し、93%含量の81.9gの4メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンを68.2%の収率で得た。 【化18】
【0047】
b)反応容器中で400mlの塩化メチレンに95.2gの3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オンを溶解し;32.6gの酢酸ナトリウム3水和物を加え、混合物を−10℃の温度まで冷却する。 −8℃〜−10℃の温度で撹拌しつつ、199mlの36〜40%過酢酸を2.40時間の間に加え、反応混合物を−10℃でさらに2時間撹拌する。 その後、反応混合物を400gの氷/水混合物に加え、有機相を分離除去し、100gの氷と100mlの15%亜硫酸ナトリウム混合物で処理した。 そして有機相を100mlの25%炭酸ナトリウム溶液で、その後100mlの水で洗浄する。 併合水相は200ml塩化メチレンで洗浄する。 併合有機相をその後50℃の温浴でロータリーエバポレーターを用いて濃縮する。 残った液体を53パスカルでカラムで分留に供し、40〜45℃の温度で27gの3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(出発物質)、55〜60℃の温度で、60gの4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンが得られ、これは使用された出発物質に基いて55.7%の収率、77.8%の選択性(反応した出発物質に基いて)に対応する。
【0048】
実施例P2:3−メチレン−ビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オンからの4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.2]ノナン−2−オン(Comp.No.1.070): 【化19】
実施例1に示された方法と同様に、955mg(7mmol)の3−メチレン−ビシクロ[2.2.2]オクタン−2−オンを1.64g(8.4mmol)の32%過酢酸と、286mg[21mmol]の酢酸ナトリウム3水和物の存在下で反応させる。 1gの4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.2]ノナン−2−オンを単離する。 ヘキサン中10%の酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した後、純粋の4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.2]ノナン−2−オンを油の形態で得る。
【化20】
実施例P3:4−ヒドロキシビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンのトリエチルアンモニウム塩の4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンからの製造: 【化21】
2.76g(20mmol)の4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンを、2.23g(20mmol)のトリエチルアミン及び0.13g(2mmol)の青酸カリウムの存在下で2.5時間、55℃に加熱する。 濁った反応混合物をHyflo(商標)上で濾過し、乾燥するまで蒸発させる。 4−ヒドロキシビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンのトリエチルアンモニウム塩を樹脂質の吸湿性の産物の形態で得る。
【0049】
実施例P4:4−ヒドロキシ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンのエチルジイソプロピルアンモニウム塩の4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンからの製造: 【化22】
実施例P3と同様に、1.38g(10mmol)の4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンを1.29g(10mmol)のHuenig's base及び10mlアセトニトリル中0.13gの青酸カリウムの存在下で12時間の間、撹拌する。 固体成分(カリウム塩)を濾過し、濾液を蒸発乾固し、4−ヒドロキシビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンのエチルジイソプロピルアンモニウム塩を樹脂の形態で得る。
【0050】
実施例P5:4−ヒドロキシビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2オンのナトリウム塩の製造: 【化23】
110℃の温度において、12.1g(0.22mol)のナトリウムメタノレートの30%メタノール溶液を190mlのトルエン及び10mlのジメチルホルムアミド溶液中へ滴下して加え、メタノールを蒸留により持続的に除去する。 そして、結果としてできたけん濁液に、30分の間メタノールの蒸留による除去を継続しながら、20mlトルエンに溶解した20.7g(0.15mol)の4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンを滴下して加える。 沸点でさらに2時間撹拌した後、反応混合物を静置して冷却し、沈澱物を濾過除去し、トルエンで洗浄する。
【0051】
実施例P6:実施例P5によるナトリウム塩のビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンへの変換: 【化24】
上で得られた4−ヒドロキシビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンのナトリウム塩を300mlの氷水中に導入し、濃塩酸を用いてpH3に調整すると、固体の形態で沈澱する中性のビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンを酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸留によって約50mlまで濃縮する。 15.2g(73.3%)の沈澱物は、純粋なビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンであって融点が128〜129℃である。
【0052】
実施例P7:4−ヒドロキシビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンの単離を伴わないビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンへの直接変換 40mlのジメチルスルホキシド中の4.27g(79mmol)のナトリウムメタノレートを反応容器中で出発物質として用いる。 20mlのジメチルスルホキシド中の7.2g(52mmol)の4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンを2.5時間の間に25〜35℃の間の温度において、撹拌しながら上記溶液に加える。 さらに0.5時間後、反応混合物を200mlの水で希釈し、100mlの酢酸エチルで2回抽出する。 併合相を100mlの水で洗浄する。 その後水相を併合し、約35mlの2規定塩酸を用いてpH3に調整し、400mlの酢酸エチルを毎回用いて4回抽出する。 併合有機相を水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥、濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮する。 残った茶色の固体をシリカゲルで濾過し、93%含量の、81.4%の収率に対応する6.3g(46mmol)のビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンであって融点、129〜130℃のものを得る。
【0053】
実施例P8:4−ヒドロキシビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−2−オンのトリエチルアンモニウム塩の単離を伴わないビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンへの直接変換: 実施例P3と同様に、2.76g(20mmol)の4−メチレン−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2−オンを2.23g(22mmol)のトリエチルアミン及び10mlのアセトニトリル中0.13g(2mmol)の青酸カリウムの存在下で室温で15時間撹拌する。 混合物を、さらに30分間55℃に加熱し、そして水に溶解させ、中性の成分を酢酸エチルを用いてpH10で除去する。 pH2に酸性化された水相を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸留によって濃縮すると、融点129〜130℃の2.05g(74.3%)の純粋なビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンが得られる。
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