本発明は、手首等ユーザの身体の一部の周りに装着するよう構成された可撓性携帯用電子デバイスに関する。

スマートカード等の携帯用電子デバイスが公知である。これらのスマートカードは通常、少なくとも情報を生成できる電子アセンブリを含む。電子アセンブリは複数の構成部品から形成され、これら構成部品はスマートカードの平面内で互いに隣接して配設され、スマートカードにある形状及び高い機械的耐性をもたらすプラスチック材料に埋め込まれている。殆どの場合、これらスマートカードは薄く、通常の使用条件において大きな屈曲角度にさらされることがないものと考えられている。従って、スマートカードの本体に封入された電子構成部品は、殆ど変形しないか又は全く変形せず、構成部品とスマートカードを形成するプラスチック材料との間の接続の均質性に関するリスクは存在しない。

例えばユーザの手首に巻き付けるために可撓性携帯用電子デバイスが大きな屈曲角度にさらされることになる場合には、状況は大きく異なる。このような可撓性携帯用電子デバイス、例えば腕時計は、情報を生成し、必要に応じて表示もするための電子アセンブリを含み、この電子アセンブリは液晶表示デバイス等の情報表示デバイス、携帯用電子デバイスの適切な動作に必要な集積及び個別構成部品を支持する可撓性プリント回路、及び電力バッテリで形成される。これら様々な電子構成部品は一般に、幅広かつ平坦な要素の形態を取り、他の構成要素の上に重ねて配設される。これらはエラストマ等の可塑性材料でオーバー成形され、これによって携帯用電子デバイスに厚さ及び機械的耐性が付与される。

携帯用電子デバイスを巻き付ける際、情報を処理するための電子アセンブリの形態の様々な電子構成部品の曲率半径は、複数の構成部品の積層体内の各構成部品の配置に応じて変化することは明らかである。曲率半径が小さくなると、対応する構成部品の巻き付け角度は大きくなる。従って、構成部品の配置及び長さによって異なる巻き付け長さが観察され得る。しかしながら、様々な電子構成部品が例えばその全表面にわたって接着されている場合、このような長さの違いを電子構成部品の弾性によって補償しなければならず、また接着は高い剪断応力に耐えるものでなければならない。電子構成部品の弾性が不十分である場合又は接着がこのような応力に耐えられない場合、携帯用電子デバイスは、デバイスの破壊につながるねじれ又は層間剥離を起こしやすい。

本発明の目的は、極めて小さい曲率半径で、かつ情報を処理するための電子アセンブリを形成する電子構成部品のねじれ又は層間剥離のいかなるリスクもなく、ユーザの身体の一部の周りに巻き付けることができる可撓性携帯用電子デバイスを提供することによって、上述の及びその他の欠点を克服することである。

従って本発明は、情報を生成できる可撓性携帯用電子デバイスに関し、上記可撓性携帯用電子デバイスはユーザの身体の一部に固定できるよう配設される可撓性本体を含み、この可撓性本体は下側可撓性バンド及び上側可撓性バンドを含み、また上記可撓性携帯用電子デバイスは情報を処理するための電子アセンブリを含み、この情報を処理するための電子アセンブリは実質的に平坦な表面を有する少なくとも1つの第1の電子構成部品を含み、上記第1の電子構成部品は可撓性本体の下側可撓性バンドと上側可撓性バンドとの間に格納され、上記可撓性携帯用電子デバイスは、上記第1の電子構成部品がその表面の一部分のみにおいて、上側又は下側可撓性バンドの一方に対して機械的に保持されることを特徴とする。

本発明の補足的な特徴によると、情報を処理するための電子アセンブリは実質的に平坦な表面を有する第2の電子構成部品を含み、この第2の電子構成部品は実質的に第1の電子構成部品の下側に配設され、またこの第2の構成部品はその表面の一部分のみにおいて、第1の電子構成部品に対して機械的に保持される。

本発明の別の特徴によると、情報を処理するための電子アセンブリは実質的に平坦な表面を有する第2の電子構成部品を含み、この第2の構成部品は実質的に第1の電子構成部品の延長部分に配設され、またこの第2の構成部品は、弾性コネクタを用いて第1の電子構成部品に接続される。

これらの特徴により、本発明は可撓性携帯用電子デバイスを提供し、ここで情報を処理するための電子構成部品は、上記構成部品の表面の一部のみにおいて、互いに対して又は可撓性本体の上側若しくは下側可撓性バンドに対して機械的に保持される。従って、情報を処理するための電子構成部品は、本発明の可撓性携帯用電子デバイスを形成する可塑性材料にほぼ接続されないか又は接続されず、これによってねじれ又は層間剥離のリスクを無視できる。更に、情報を処理するための電子構成部品はその弾性変形性能を維持しており、これによってこれら電子構成部品は互いに対して摺動でき、並びにその巻き付け角度を増大させることができ、及び携帯用電子デバイスの屈曲による応力を吸収できる。

本発明の他の特徴及び利点は、本発明による可撓性携帯用電子デバイスの1つの実施形態に関する以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。この例は、添付の図面を参照して単なる非限定的な例として挙げたものである。

図1は、静止位置にある本発明による可撓性携帯用電子デバイスの、長手方向断面図である。

図2は、屈曲位置にある可撓性携帯用電子デバイスを示す、図1と同様の図である。

本発明は、可撓性携帯用電子デバイスを提供することからなる一般的発明概念に由来し、ここで、情報を処理するための電子構成部品は、上記構成部品の表面の一部分のみを介して、互いに対して又は携帯用電子デバイスの可撓性本体の可撓性バンドのうちの1つに対して機械的に保持される。携帯用電子デバイスを屈曲させて例えばユーザの手首の輪郭に適合させる場合、電子構成部品はその弾性変形性能、及び互いに対する摺動運動において巻き付き角度を増大させる能力を維持する。実際、電子構成部品を互いに対して又は携帯用電子デバイスの可撓性本体に対して機械的に保持する表面は小さく、これにより、電子構成部品と可撓性本体を形成する可塑性材料との間の均質な接続に対するリスクは存在せず、電子構成部品のねじれ又は層間剥離のリスクは事実上完全に排除される。

本発明によると、「機械的保持」とは特に、第1の電子構成部品の表面の一部分のみにおける、第2の電子構成部品に対する、又は本発明の可撓性携帯用電子デバイスの可撓性本体の可撓性バンドのうちの1つに対する、接着剤による接着を意味する。本発明の範囲内では、例えば溶接、特に熱溶着等のその他の固定技術も想定できる。また、フックを用いて、2つの電子構成部品を互いに対して又は可撓性本体の可撓性バンドのうちの1つに対して機械的に保持することも想定できる。

本特許出願に添付された図1、2は、本発明の可撓性携帯用電子デバイスの長手方向断面図であり、それぞれ静止位置にある場合と、例えば手首等ユーザの身体の一部の輪郭に適合させるための屈曲位置にある場合とを示す。

全体を通して一般参照符号1で示す本発明による携帯用電子デバイスは、可撓性である。携帯用電子デバイス1は可撓性本体2を含み、これは実質的にはバンド又はブレスレットの形状を有し、下側可撓性バンド4及び上側可撓性バンド6で形成される。下側可撓性バンド4はエラストマ等のいずれの可塑性材料から作製できる。上側可撓性バンド6は下側可撓性バンド4に固定された不浸透性可塑性フィルムの形態を取る。上側可撓性バンド6は、接着又は熱溶着等のいずれの適切な手段で下側可撓性バンド4に固定してよい。

携帯用電子デバイス1の機能は、少なくとも情報を処理できることであり、好ましい実施例では情報を処理及び表示できることである。よって携帯用電子デバイス1は、情報を処理するための電子アセンブリ8を含み、これは上側可撓性バンド6の、下側可撓性バンド4が固定される側に設置される。この目的のために、下側可撓性バンド4はその全長のうちの1点において、情報の生成及び表示のための電子アセンブリ8が配設されたハウジング10を有する。

図示した実施例では、情報の生成及び表示のための電子アセンブリ8は電子構成部品の積層体を含み、第1の電子構成部品は液晶セル等の表示デバイス12であり、その下側には表示デバイス12のバックライトとして機能する光導体14が配設される。このアセンブリは、特にタイムベース等、携帯用電子デバイス1の適切な動作に必要な様々な集積及び個別構成部品(図示せず)が設置された可撓性プリント回路16を備える。光導体14の下側に配設される可撓性プリント回路16は、表示デバイス12、光導体14及び充電式アキュムレータ18に、複数のコネクタ20を用いて接続される。可撓性プリント回路16の下側においてハウジング10の底部に配設される充電式アキュムレータ18は、少なくとも1つの太陽電池22で給電され、この太陽電池22は有利にはブレスレットのストランド24のうちの1つに格納される。

以下の説明では、機械的保持領域を図1において円で囲まれた縦線付き領域で示していることに留意されたい。

情報の生成及び表示のための電子アセンブリ8は、以下のように組み立てられる。まず液晶表示セル12をその上側表面26全体にわたって、光学的に透明な接着剤即ち「OCA」を用いて、上側可撓性バンド6の下側表面に対して接着する。表示品質のために、液晶表示セル12の上側表面26が、これを覆う上側可撓性バンド6と密に接着していなければならないことは明らかであろう。

本発明によると、続く組み立てステップは、プリント回路16の表面の一部分のみを光導体14の背面に接着することである。図において縦線を付けた接着領域は、図において円で囲まれ、文字Aで表されている。可撓性プリント回路16が実質的に平坦な表面を有するほぼ矩形の電子構成部品であるとすると、可撓性プリント回路16は、その表面のうち一方のみにおいて、ブレスレットの長手方向対称軸を横断するように接着されることは明らかであろう。その結果、携帯用電子デバイス1を例えばユーザの手首に適合させるために屈曲させる際、光導体14に対して摺動運動させることにより、可撓性プリント回路16を弾性変形させてその巻き付き角度を変更することができる。

同様に、充電式アキュムレータ18を、その表面の一部分のみにおいて、可撓性プリント回路16の背面に対して接着する。図において縦線を付けた接着領域は、図において円で囲まれ、文字Bで表されている。可撓性プリント回路16を参照して上述したように、充電式アキュムレータ18がほぼ矩形の平坦な電子構成部品である場合、図示した実施例から、充電式アキュムレータ18はその片側のみにおいて、ブレスレットの長手方向対称軸を横断するように接着されることがわかる。充電式アキュムレータ18はその表面のごく一部のみで接着されるため、携帯用電子デバイス1を例えばユーザの手首の周りに巻き付ける際、プリント回路16に対して摺動運動させることにより、充電式アキュムレータ18を弾性変形させてその巻き付き角度を偏向することができる。より具体的には、図2は充電式アキュムレータ18の1つの端部を示し、これは携帯用電子デバイス1の静止位置において可撓性プリント回路16と位置合わせされており、携帯用電子デバイス1の屈曲位置において光導体14の端部に対して長さd1だけ移動する。

最後に、太陽電池22を上側可撓性バンド6の下側表面に局所的に接着する。図において縦線を付けた接着領域は、図において円で囲まれ、文字Cで表されている。図示した実施例から、太陽電池22は、その片側のみにおいて、携帯用電子デバイス1の長手方向対称軸を横断するように接着される、ほぼ矩形の実質的に平坦な電子構成部品であることがわかる。その結果、携帯用電子デバイス1を例えばユーザの手首に適合させるために屈曲させる際、太陽電池22と携帯用電子デバイス1を形成する材料との間の接続の完全性に対するリスクは存在しない。対照的に、携帯用電子デバイス1を屈曲させる際、太陽電池22を自由に弾性変形させて、その巻き付き弧部を長さd2だけ変更することができる。

最後に、図示した実施例から、太陽電池22及び可撓性プリント回路16は、携帯用電子デバイス1の長手方向に順次配設され、太陽電池22は可撓性プリント回路16よりも若干高い位置に配設されることがわかる。携帯用電子デバイス1を屈曲させて例えばユーザの身体の一部に固定する際、太陽電池22と可撓性プリント回路16との間の弧の長さの変動を考慮するために、太陽電池22及び可撓性プリント回路16を、弾性を有する電気的コネクタ28によって互いに接続する。携帯用電子デバイス1を屈曲させる際、電気的コネクタ28は弾性変形によって、可撓性プリント回路16及び太陽電池22の弧の長さの変動を吸収する。

本発明は上述の実施形態に制限されるものではないこと、並びに添付の請求項で定義する本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて、当業者は様々な単純な改変及び変形を想定できることは言うまでもない。特に本発明によると、機械的保持を典型的には接着、溶接若しくは熱溶着による、又はクリップ型のフックを用いた固定によって達成できる。

1 携帯用電子デバイス 2 可撓性本体 4 下側可撓性バンド 6 上側可撓性バンド 8 電子アセンブリ 10 ハウジング 12 表示デバイス 14 光導体 16 可撓性プリント回路 18 充電式アキュムレータ 20 コネクタ 22 太陽電池 24 ストランド 26 12の上側表面 28 電気的コネクタ