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抗IgE抗体

阅读:942发布:2020-05-14

专利汇可以提供抗IgE抗体专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且本発明は、例えば、IgEによって引き起こされる障害(アレルギー応答、又はある特定の自己免疫応答など)、特に、IgEとFcεRI受容体との相互作用によって引き起こされる障害の処置における使用のための、IgEを標的とする改良された抗IgE 抗体 及び 抗原 結合剤、並びにその組成物の分野に関する。特に、本発明は、オマリズマブ(Xolair(登録商標))の新規変異体と関連する改良されたIgE抗体及び抗原結合剤に関する。本発明の改良された抗IgE抗体及び抗原結合剤は、IgEに対する改良された親和性及び/又はIgEのCε2ドメインとの改良された相互作用及び/又はIgE上の改良された改変エピトープ(例えば、IgEのCε2ドメインをさらに含む)及び/又は薬学的に関連する濃度で、例えばFcεRI受容体からIgEを解離させる能 力 を有してもよい。一側面では、IgEが標的化される(例えば、遊離IgE及び/又はFcεRI受容体と複合体化したIgE)、IgE媒介性障害のための改良された処置又は新規処置が開示される。,下面是抗IgE抗体专利的具体信息内容。

抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、配列番号108の参照において、ヒトIgEのCε3ドメインの残基T373、W374、S375、R376、A377、S378、G379、P381、Q417、C418、R419、T421、P426、R427、A428、ならびにCε2ドメインの残基D278及びT281を含むエピトープと接触する、抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEのCε3ドメインの残基K380をさらに含むエピトープと接触する、請求項1に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEのCε3ドメインの残基M430をさらに含むエピトープと接触する、請求項1又は2に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEのCε2ドメインの残基D276をさらに含むエピトープと接触する、請求項1から3に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEのCε2ドメインの残基V277をさらに含むエピトープと接触する、請求項1から4に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEのCε2ドメインの残基L279をさらに含むエピトープと接触する、請求項1から5に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEのCε2ドメインの残基S280をさらに含むエピトープと接触する、請求項1から6に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEのCε2ドメインの残基A282(及び/又はT298)をさらに含むエピトープと接触する、請求項1から7に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。Cε3ドメインとCε2ドメインとがヒトIgEの異なる鎖上にある、請求項1から8に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。エピトープに特異的である、請求項1から9に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、任意に請求項1から10に記載のものであり、 配列番号18であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H3を含む重鎖可変領域と配列番号29であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L1を含む軽鎖可変領域とを含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号32から選択されるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L3をさらに含み、1、2、3、4、5、6、7個以上のアミノ酸置換を有して前記抗IgE抗体又は抗原結合剤とヒトIgEのCε2ドメインとの相互作用が強化されている、 抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、配列番号129を参照して、S60、S63、S76、S77、及び/又はQ79位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、請求項11に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S60位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、請求項11又は12に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S60位(Kabat)において、M、R、K、N、Q又はTに変異される、請求項11から13に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S60位(Kabat)において、Mに変異される、請求項11から14に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S63位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、請求項11から15に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S63位(Kabat)において、W又はYに変異される、請求項11から16に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S63位(Kabat)において、Yに変異される、請求項11から17に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S76位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、請求項11から18に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S76位(Kabat)において、Nに変異される、請求項11から19に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S77位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、請求項11から20に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S77位(Kabat)において、R又はKに変異される、請求項11から21に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S77位(Kabat)において、Rに変異される、請求項11から22に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S79位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、請求項11から23に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S79位(Kabat)において、R又はKに変異される、請求項11から24に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、Q79位(Kabat)において、Rに変異される、請求項11から25に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。変異したFR−L3領域のアミノ酸配列が、配列番号43〜49、60〜83、131又は138から選択される、請求項11から26に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、ヒトIgEに対するその親和性(より低いKD)を改善するためにS67位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つにさらに変異される、請求項11から26に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域が、S67位(Kabat)において、M、E又はDに変異される、請求項28に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。変異したFR−L3領域のアミノ酸配列が、配列番号53〜59、84〜107、131又は138から選択される、請求項29に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。配列番号18であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H3を含む重鎖可変領域と配列番号29であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L1を含む軽鎖可変領域とを含み、任意に請求項1から30に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、軽鎖可変領域が、抗IgE抗体又は抗原結合剤と、ヒトIgEのCε2ドメインとの相互作用を強化するための1、2、3、4、5、6、7個以上のアミノ酸置換を有する配列番号28であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L1をさらに含む、上記抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L1領域が、配列番号20を参照して、G16及び/又はR18位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、請求項31に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域が、配列番号31であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L2をさらに含む、請求項11から32に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。CDR−L2領域が、ヒトIgEに対するその親和性(より低いKD)を改善するために、配列番号129を参照して、S52位(Kabat)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、請求項33に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。CDR−L2領域が、S52位(Kabat)において、E、D、Q又はRに変異される、請求項34に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。CDR−L2領域が、S52位(Kabat)において、D(好ましくは)又はEに変異される、請求項35に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。変異したCDR−L2領域のアミノ酸配列が、配列番号50又は配列番号51から選択される、請求項34から36に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号14であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H1をさらに含む、請求項11から37に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号16であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H2をさらに含む、請求項11から38に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域が、配列番号33であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L3をさらに含む、請求項11から39に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号13であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−H1をさらに含む、請求項11から40に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号15であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−H2をさらに含む、請求項11から41に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号17であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−H3をさらに含む、請求項11から42に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号19であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−H4をさらに含む、請求項11から43に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域が、配列番号30であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L2をさらに含む、請求項11から44に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域が、配列番号34であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L4をさらに含む、請求項11から45に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域VLが、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む、配列番号35、配列番号132、又は配列番号134、又は配列番号139又は配列番号141、又は配列番号145〜146、又は配列番号158〜159から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項11から46に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域VHが、配列番号1であるアミノ酸配列を有する、請求項11から47に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖定常領域をさらに含む、請求項11から48に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖定常領域がカッパ定常領域である、請求項49に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖定常領域がL154P変異(Kabat)を有する、請求項49又は50に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域VL−CLが、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む、配列番号39、又は配列番号41、又は配列番号117、又は配列番号119、又は配列番号125、又は配列番号127又は配列番号136、又は配列番号143から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項49から51に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖定常領域CH1をさらに含む、請求項11から52に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域及び重鎖定常領域VH−CH1が、配列番号5であるアミノ酸配列を有する、請求項53に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖Fc領域、Fcをさらに含む、請求項11から54に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FcがヒトIgG1又はヒトIgG4に由来する、請求項55に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域、重鎖定常領域及び重鎖Fc領域、VH−CH1−Fcが、配列番号9であるアミノ酸配列を有する、請求項55又は56に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。配列番号18であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H3を含む重鎖可変領域と、配列番号29であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L1を含む軽鎖可変領域とを含む抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、 a.軽鎖可変領域が、配列番号32であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L3をさらに含み、FR−L3領域が、ヒトIgEに対する抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤の親和性(より低いKD)を改善するために、S67位(Kabat、配列番号129を参照して)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される;及び/又は b.軽鎖可変領域が、配列番号31であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L2をさらに含み、CDR−L2領域が、ヒトIgEに対する抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤の親和性(より低いKD)を改善するために、S52位(Kabat、配列番号129を参照して)において、他の天然アミノ酸の1つに変異される、 上記抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域がS67位においてM、E又はDに変異される、請求項58に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FR−L3領域がS67位(Kabat)においてMに変異される、請求項59に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。変異したFR−L3領域のアミノ酸配列が、配列番号52〜59、84〜107、131又は138から選択される、請求項60に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。CDR−L2領域が、S52位(Kabat)においてE、D、Q又はRに変異される、請求項58から61に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。CDR−L2領域が、S52位(Kabat)においてD又はEに変異される、請求項62に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。CDR−L2領域が、S52位(Kabat)においてDに変異される、請求項63に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。変異したCDR−L2領域のアミノ酸配列が、配列番号50(好ましくは)又は配列番号51から選択される、請求項63又は64に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号14であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H1をさらに含む、請求項58から65に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号16であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H2をさらに含む、請求項58から66に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域が、配列番号33であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L3をさらに含む、請求項58から67に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号13であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−H1をさらに含む、請求項58から68に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号15であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−H2をさらに含む、請求項58から69に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号17であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−H3をさらに含む、請求項58から70に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域が、配列番号19であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−H4をさらに含む、請求項58から71に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域が、配列番号30であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L2をさらに含む、請求項58から72に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域が、配列番号34であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L4をさらに含む、請求項58から73に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域VLが、連続的なFR−L1、CDR−L1、FR−L2、CDR−L2、FR−L3、CDR−L3及びFR−L4領域を含み、配列番号20であるアミノ酸配列を有し、ただし前記CDR−L2領域は配列番号50又は配列番号51から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項58から74に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域VLが、連続的なFR−L1、CDR−L1、FR−L2、CDR−L2、FR−L3、CDR−L3及びFR−L4領域を含み、配列番号20であるアミノ酸配列を有し、ただし前記FR−L3領域は配列番号52であるアミノ酸配列を有する、請求項58から74に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域VLが、連続的なFR−L1、CDR−L1、FR−L2、CDR−L2、FR−L3、CDR−L3及びFR−L4領域を含み、配列番号20であるアミノ酸配列を有し、ただし前記CDR−L2領域は配列番号50又は配列番号51から選択されるアミノ酸配列を有し、前記FR−L3領域は配列番号52、131又は138から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項58から74に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域VHが、配列番号1であるアミノ酸配列を有する、請求項58から77に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖定常領域をさらに含む、請求項58から78に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖定常領域がカッパ定常領域である、請求項79に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域VL−CLが、配列番号24であるアミノ酸配列を有し、ただし前記CDR−L2領域が配列番号50又は配列番号51から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項79又は80に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域VL−CLが、配列番号24であるアミノ酸配列を有し、ただし前記FR−L3領域が配列番号52であるアミノ酸配列を有する、請求項79又は80に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域VL−CLが、配列番号24であるアミノ酸配列を有し、ただし前記CDR−L2領域は配列番号50又は配列番号51から選択されるアミノ酸配列を有し、前記FR−L3領域は配列番号52、131又は138から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項79又は80に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。以下を含む、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、 a.前記重鎖可変領域は、配列番号14であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号16であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号18であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号29であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号50であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号33であるアミノ酸配列を有するCDR−L3及び配列番号131若しくは138であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FW−L3を含むか;又は b.前記重鎖可変領域は、配列番号1であるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号132若しくは139から選択されるアミノ酸配列。軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域VL−CLが、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む配列番号137又は145から選択されるアミノ酸配列を有する、軽鎖定常領域をさらに含む、請求項84に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖定常領域CH1をさらに含む、請求項58から85に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域及び重鎖定常領域VH−CH1が、配列番号5であるアミノ酸配列を有する、請求項86に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖Fc領域、Fcをさらに含む、請求項58から87に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。FcがヒトIgG1又はヒトIgG4に由来する、請求項88に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域、重鎖定常領域及び重鎖Fc領域VH−CH1−Fcが、配列番号9であるアミノ酸配列を有する、請求88又は89に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。完全長重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子、又はその断片からなる群から選択される、請求項1から90に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。Fab断片、改変されたFab’断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv、scFv、scab、ダイアボディ、二特異的抗体、トリアボディ、FabFv、Fab−Fv−Fv、トリボディ、又は(Fab−Fv)2−Fcからなる群から選択される、請求項1から91に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒト血清アルブミンなどの、血清担体タンパク質に結合するscFvに直接的に、又はリンカーを介して結合されるFab断片である、請求項92に記載の抗IgE抗体。scFvが重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、好ましくは配列番号151を有するリンカーを介して連結され、 前記重鎖可変領域は、配列番号152であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号153であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号154であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号155であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号156であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号157であるアミノ酸配列を有するCDR−L3を含む、 請求項93に記載の抗IgE抗体。scFvが、配列番号150であるアミノ酸配列を有する、請求項93又は94に記載の抗IgE抗体。Fab断片が重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、以下を含む請求項93又は94に記載の抗IgE抗体: a.前記重鎖可変領域は、配列番号14であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号16であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号18であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号29であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号50であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号33であるアミノ酸配列を有するCDR−L3及び配列番号131若しくは138であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FW−L3を含むか;又は b.前記重鎖可変領域は、配列番号1であるアミノ酸配列を含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号132若しくは139から選択されるアミノ酸配列を含む。Fab断片が重鎖定常領域と軽鎖定常領域とをさらに含み、重鎖可変領域及び重鎖定常領域VL−CH1が、配列番号5であるアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域VL−CLが、配列番号136又は143から選択されるアミノ酸配列を有し、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む、請求項96に記載の抗IgE抗体。scFvが、配列番号149であるアミノ酸配列を有するリンカーを介してFab断片のCH1に連結される、請求項93又は97に記載の抗IgE抗体。重鎖可変領域及び重鎖定常領域、リンカー及びscFvが、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む配列番号147であるアミノ酸配列を有する、請求項93又は98に記載の抗IgE抗体。エフェクター又はリポーター分子がそれに結合した、請求項1から99に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、グリコシル化される、及び/又はデンプン、アルブミン、及びポリエチレングリコール(PEG)から選択されるポリマーにコンジュゲートされる、請求項1から100に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ポリマーが5〜50kDaの範囲の分子量を有するPEGである、請求項101に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。ヒト化される、請求項1から102に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。請求項1から103に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤の重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列。請求項104に記載の1つ又は2つ以上のDNA配列を含むクローニング又は発現ベクター。配列番号36、配列番号38、配列番号40、又は配列番号42、又は配列番号133、又は配列番号135、又は配列番号137、又は配列番号140、又は配列番号142、又は配列番号144から選択される1つ又は2つ以上のDNA配列を含むクローニング又は発現ベクター。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12又は配列番号148から選択される1つ又は2つ以上のDNA配列をさらに含む、請求項106に記載のクローニング又は発現ベクター。請求項105から107に記載の1つ又は2つ以上のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12又は配列番号148から選択される1つ又は2つ以上のDNA配列を含む1つ又は2つ以上のクローニング又は発現ベクターをさらに含む、請求項108に記載の宿主細胞。請求項108又は109に記載の宿主細胞を培養すること、及び抗IgE抗体又は抗原結合剤を単離することを含む、請求項1から94に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤の製造のための方法。1つ又は2つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と共に、請求項1から103に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤を含む医薬組成物。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、希釈剤1mLあたり50〜200mg、好ましくは、150mgの用量で存在する、請求項111に記載の医薬組成物。賦形剤がL−アルギニンを含む、請求項111又は112に記載の医薬組成物。賦形剤がL−ヒスチジンを含む、請求項111から113に記載の医薬組成物。賦形剤がポリソルベート20を含む、請求項111から114に記載の医薬組成物。希釈剤がである、請求項111から115に記載の医薬組成物。組成物がその皮下投与のための滅菌注射筒内に担持される、請求項111から116に記載の医薬組成物。組成物が75〜600mgの抗IgE抗体又は抗原結合剤の総用量を含有する、請求項111から117に記載の医薬組成物。抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤と一緒に、又は抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤との別々の同時投与のために他の活性成分をさらに含む、請求項111から118に記載の医薬組成物。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、アレルギーに基づく特異的免疫療法と別々に同時投与される、請求項119に記載の医薬組成物。薬剤としての使用のための、請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項102から111に記載の組成物。疾患の処置又は防止における使用のための請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項102から111に記載の組成物。ヒトIgEとFcεRIとの複合体と関連する障害の処置又は防止における使用のための請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項102から111に記載の組成物。ヒトIgEとFcεRIとの複合体の解離及び抗IgE抗体又は抗原結合剤によるヒトIgEの結合による障害の処置又は防止における使用のための請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項102から111に記載の組成物。請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項111から120に記載の使用のための組成物であって、以下のうちの1つ又は2つ以上の処置又は防止における使用のためのもの: アレルギー;アレルギー性喘息;重症喘息;中等度の喘息;慢性自発性蕁麻疹;慢性特発性蕁麻疹;通年性アレルギー性鼻炎;季節性アレルギー性鼻炎;急性喘息増悪;急性気管支痙攣;喘息重積状態;高IgE症候群;アレルギー性気管支アスペルギルス症;アナフィラキシー反応の防止;食物アレルギー;アトピー性皮膚炎;アレルギー性鼻炎;蜂毒過敏症;特発性アナフィラキシー;ピーナッツアレルギー;ラテックスアレルギー;炎症性皮膚疾患;蕁麻疹(日光、寒冷誘導性、局所熱誘導性、及び/若しくは遅発性圧誘導性);皮膚肥満細胞症;全身性肥満細胞症;好酸球関連胃腸障害;水疱性類天疱瘡;間質性膀胱炎;鼻ポリープ;特発性血管性浮腫;又は非アレルギー性喘息。ヒト対象における疾患の処置又は防止のための方法であって、対象に、請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項111から120に記載の組成物の有効量を投与することを含む、方法。ヒトIgEとFcεRIとの複合体と関連する障害の処置又は防止のための請求項126に記載の方法。処置又は防止が、ヒトIgEとFcεRIとの複合体の解離及び抗IgE抗体又は抗原結合剤によるヒトIgEの結合を介するものである、請求項126又は127に記載の方法。請求項126から128に記載の方法であって、以下のうちのうちの1つ又は2つ以上の処置又は防止のためのもの: アレルギー;アレルギー性喘息;重症喘息;中等度の喘息;慢性自発性蕁麻疹;慢性特発性蕁麻疹;通年性アレルギー性鼻炎;季節性アレルギー性鼻炎;急性喘息増悪;急性気管支痙攣;喘息重積状態;高IgE症候群;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症;アナフィラキシー反応の防止;食物アレルギー;アトピー性皮膚炎;アレルギー性鼻炎;蜂毒過敏症;特発性アナフィラキシー;ピーナッツアレルギー;ラテックスアレルギー;炎症性皮膚疾患;蕁麻疹(日光、寒冷誘導性、局所熱誘導性、及び/若しくは遅発性圧誘導性);皮膚肥満細胞症;全身性肥満細胞症;好酸球関連胃腸障害;水疱性類天疱瘡;間質性膀胱炎;鼻ポリープ;特発性血管性浮腫;又は非アレルギー性喘息。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、7、3、1、0.66、0.5又は0.3μM未満の濃度(又はピーク血清濃度)でFcεRIからヒトIgEを解離させることができる、請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項111から120に記載の組成物、又は請求項121から125に記載の使用のための抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は組成物、又は請求項126から129に記載の方法。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、オマリズマブ(又はその代わりに、オマリズマブFab)よりも低い濃度(又はピーク血清濃度)でFcεRIからヒトIgEを解離させることができる、請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項111から120に記載の組成物、又は請求項121から125に記載の使用のための抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は組成物、又は請求項126から129に記載の方法。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、オマリズマブ(又はその代わりに、オマリズマブFab)よりも高い、FcεRIからのヒトIgEの解離率(%)が可能な、請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項111から120に記載の組成物、又は請求項121から125に記載の使用のための抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は組成物、又は請求項126から129に記載の方法。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、オマリズマブ(又はその代わりに、オマリズマブFab)についてよりも高い、FcεRIからのヒトIgEの見かけの解離速度に効果的であることが可能な、請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項111から120に記載の組成物、又は請求項121から125に記載の使用のための抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は組成物、又は請求項126から129に記載の方法。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、オマリズマブ(又はその代わりに、オマリズマブFab)のものよりも少なくとも10%低い、ヒトIgEに対する改善された親和性(KD)(例えば、IgE−Fcを使用する)を有する、請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項111から120に記載の組成物、又は請求項121から125に記載の使用のための抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は組成物、又は請求項126から129に記載の方法。抗IgE抗体又は抗原結合剤が、オマリズマブ又はオマリズマブFabではない、請求項1から103に記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項111から120に記載の組成物、又は請求項121から125に記載の使用のための抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は組成物、又は請求項126から129に記載の方法。遊離のヒトIgE及びFcεRIに結合したヒトIgEに結合する、抗体又は抗原結合剤であって、抗体又は抗原結合剤が、FcεRIに結合したヒトIgEに結合し、IgEのコンフォメーションを変化させ、前記コンフォメーションにあるFcεRIに結合したヒトIgEが、抗体又は抗原結合剤の非存在下におけるよりも弱いFcεRIに対する結合親和性を有し、FcεRIに結合したヒトIgEがFcεRIから解離する、上記抗体又は抗原結合剤。コンフォメーションにあるFcεRIに結合したヒトIgEが、抗体又は抗原結合剤に対するよりも低い、オマリズマブ又はその断片に対する結合親和性を有する、請求項136に記載の抗体又は抗原結合剤。請求項1から103、130から135のいずれかに記載の抗体である、請求項136又は137に記載の抗体又は抗原結合剤。薬剤としての使用のための、請求項136から138に記載の抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEとFcεRIとの複合体と関連する障害の処置又は防止における使用のための請求項136から138に記載の抗体又は抗原結合剤。ヒトIgEとFcεRIとの複合体の解離及び抗体又は抗原結合剤によるヒトIgEの結合を介する障害の処置又は防止における使用のための、請求項136から138に記載の抗体又は抗原結合剤。請求項136から138に記載の使用のための抗体又は抗原結合剤であって、以下のうちのうちの1つ又は2つ以上の処置又は防止のためのもの: アレルギー;アレルギー性喘息;重症喘息;中等度の喘息;慢性自発性蕁麻疹;慢性特発性蕁麻疹;通年性アレルギー性鼻炎;季節性アレルギー性鼻炎;急性喘息増悪;急性気管支痙攣;喘息重積状態;高IgE症候群;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症;アナフィラキシー反応の防止;食物アレルギー;アトピー性皮膚炎;アレルギー性鼻炎;蜂毒過敏症;特発性アナフィラキシー;ピーナッツアレルギー;ラテックスアレルギー;炎症性皮膚疾患;蕁麻疹(日光、寒冷誘導性、局所熱誘導性、及び/若しくは遅発性圧誘導性);皮膚肥満細胞症;全身性肥満細胞症;好酸球関連胃腸障害;水疱性類天疱瘡;間質性膀胱炎;鼻ポリープ;特発性血管性浮腫;又は非アレルギー性喘息。ヒト対象における疾患の処置又は防止のための方法であって、対象に、有効量の請求項136から138に記載の抗体又は抗原結合剤を投与することを含む、上記方法。ヒトIgEとFcεRIとの複合体と関連する障害の処置又は防止のための、請求項143に記載の方法。処置又は防止が、ヒトIgEとFcεRIとの複合体の解離及び抗体又は抗原結合剤によるヒトIgEの結合を介するものである、請求項143又は144に記載の方法。請求項143から145に記載の方法であって、以下のうちの1つ又は2つ以上の処置又は防止のためのもの: アレルギー;アレルギー性喘息;重症喘息;中等度の喘息;慢性自発性蕁麻疹;慢性特発性蕁麻疹;通年性アレルギー性鼻炎;季節性アレルギー性鼻炎;急性喘息増悪;急性気管支痙攣;喘息重積状態;高IgE症候群;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症;アナフィラキシー反応の防止;食物アレルギー;アトピー性皮膚炎;アレルギー性鼻炎;蜂毒過敏症;特発性アナフィラキシー;ピーナッツアレルギー;ラテックスアレルギー;炎症性皮膚疾患;蕁麻疹(日光、寒冷誘導性、局所熱誘導性、及び/若しくは遅発性圧誘導性);皮膚肥満細胞症;全身性肥満細胞症;好酸球関連胃腸障害;水疱性類天疱瘡;間質性膀胱炎;鼻ポリープ;特発性血管性浮腫;又は非アレルギー性喘息。請求項1から103又は130から138に記載の抗体又は抗原結合剤を選択するための方法であって、 a.試験抗体又は抗原結合剤と、ヒトFcεRIに結合したヒトIgEを含む試料とを接触させるステップ; b.ヒトFcεRIからのヒトIgEの解離に関する、試験抗体又は抗原結合剤の解離定数を測定するステップ; c.ステップb)で測定された解離定数と、ヒトFcεRIからのヒトIgEの解離に関するオマリズマブ又はその断片の解離定数とを比較するステップ; d.前記抗体又は抗原結合剤が、オマリズマブ又はその断片よりも速く、FcεRIからIgEを解離させる場合、前記抗体又は抗原結合剤を選択するステップ を含む、上記方法。請求項1から103又は130から138に記載の抗体又は抗原結合剤を選択するための方法であって、以下を含むもの: a.試験抗体又は抗原結合剤と、ヒトFcεRIに結合したヒトIgEを含む試料とを接触させるステップ; b.ヒトFcεRIからのヒトIgEに関する、試験抗体又は抗原結合剤の結合親和性を測定するステップ; c.ステップb)で測定された結合親和性と、ヒトFcεRIに対するヒトIgEの結合親和性とを比較するステップ; d.前記抗体又は抗原結合剤が、FcεRIに対するIgEよりも高い、IgEに対する結合親和性を有する場合、前記抗体又は抗原結合剤を選択するステップ。請求項147又は148に記載の方法であって以下を含むもの: 選択された抗体又は抗原結合剤が、IgEに対して、FcεRIに結合させたまま、安定化されたコンフォメーションにあるIgEに以下のコンフォメーションを取らせる: a.オマリズマブ若しくはその断片の存在下でFcεRIに結合したIgEよりも速くFcεRIから解離する;及び/又は b.FcεRIに対するよりも高い、抗体又は抗原結合剤に対する結合親和性を有する。以下を含む、抗IgE抗体又は抗原結合剤: a.配列番号1を含む重鎖可変領域と、 i.配列番号109;若しくは ii.配列番号113;若しくは iii.配列番号121;若しくは iv.配列番号132;若しくは v.配列番号139 を含む軽鎖可変領域;又は b.配列番号5と、 i.S77及びS79がQで置き換えられた、配列番号24; ii.配列番号117;若しくは iii.配列番号125;若しくは iv.配列番号136;若しくは v.配列番号143。抗体又は抗原結合剤が、以下を含むエピトープに対して、接触するか又は接触し、特異的であり、前記エピトープは以下を含む、請求項150に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤: 配列番号108を参照して、ヒトIgEのCε3ドメインの残基T373、W374、S375、R376、A377、S378、G379、P381、Q417、C418、R419、T421、P426、R427、A428並びにCε2ドメインの残基D278及びT281。第1のポリペプチドに結合する抗体又は抗原結合剤であって、該第1のポリペプチドは第2のポリペプチド(受容体など)への結合によりその生理学的応答を惹起し、 該抗体又は抗原結合剤は、遊離及び結合した前記第1のポリペプチドの両方に結合して第1のポリペプチドのコンフォメーションを安定化することができ、該第1のポリペプチドは安定化されたコンフォメーションにおいて第2のポリペプチドに対する結合親和性が該抗体又は抗原結合剤の存在下において該抗体又は抗原結合剤の非存在下におけるより低く、 該抗体又は抗原結合剤は、第1のポリペプチドの第2のポリペプチドからのより迅速な解離を誘発する、上記抗体又は抗原結合剤。

抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、配列番号108の参照において、ヒトIgEのCε3ドメインの残基T373、W374、S375、R376、A377、S378、G379、P381、Q417、C418、R419、T421、P426、R427、A428、ならびにCε2ドメインの残基D278及びT281を含むエピトープと接触し、任意にヒトIgEのCε3ドメインの残基K380をさらに含むエピトープ及び/又はヒトIgEのCε3ドメインの残基M430をさらに含むエピトープと接触する抗IgE抗体又は抗原結合剤。以下のヒトIgEのCε2ドメインの残基をさらに含むエピトープと接触する請求項1に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤:D276、V277、L279、S280、A282(及び/又はT298)。Cε3ドメインとCε2ドメインとがヒトIgEの異なる鎖上にある、請求項1又は2に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、任意に請求項1から3に記載のいずれかに記載のものであり、 重鎖可変領域として、相補性決定領域である、配列番号14であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号16であるアミノ酸配列を有するCDR−H2、配列番号18であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、及び 軽鎖可変領域として、相補性決定領域である、配列番号29であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号50又は51であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号33であるアミノ酸配列を有するCDR−L3を含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号32から選択されるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L3をさらに含み、1、2、3、4、5、6、7個以上のアミノ酸置換を有して前記抗IgE抗体又は抗原結合剤とヒトIgEのCε2ドメインとの相互作用が強化されていて; a.前記FR−L3領域はS60位(Kabat)においてM、R、K、N、Q又はTに変異されていて; b.前記FR−L3領域はS67位(Kabat)においてMに変異されていて; c.前記FR−L3領域はS77位(Kabat)においてRに変異されていて;さらに d.前記FR−L3領域はQ79位(Kabat)においてRに変異されているもの。重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み以下のとおりである、抗IgE抗体又は抗原結合剤: a.前記重鎖可変領域は、配列番号14であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号16であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号18であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号29であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号50であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号33であるアミノ酸配列を有するCDR−L3及び配列番号131若しくは138であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FW−L3を含むか;又は b.前記重鎖可変領域は、配列番号1であるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、配列番号132若しくは139から選択されるアミノ酸配列。軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域VL−CLが、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む配列番号137又は145から選択されるアミノ酸配列を有する、軽鎖定常領域をさらに含む、請求項5に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖定常領域CH1をさらに含む、請求項5又は6に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。重鎖可変領域及び重鎖定常領域VH−CH1が、配列番号5であるアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤。請求項1から8のいずれかに記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、以下からなる群から選択されるもの: Fab断片、改変されたFab’断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv、scFv、scab、ダイアボディ、二特異的抗体、トリアボディ、FabFv、Fab−Fv−Fv、トリボディ、又は(Fab−Fv)2−Fc。ヒト血清アルブミンなどの、血清担体タンパク質に結合するscFvに直接的に、又はリンカーを介して結合されるFab断片である、請求項9に記載の抗IgE抗体。請求項10に記載の抗IgE抗体であって、scFvが重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、好ましくは配列番号151を有するリンカーを介して連結され、 前記重鎖可変領域は、配列番号152であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号153であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号154であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、及び 前記軽鎖可変領域は、配列番号155であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号156であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号157であるアミノ酸配列を有するCDR−L3を含むもの。請求項10又は11に記載の抗IgE抗体であって、Fab断片が重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、以下であるもの: a.前記重鎖可変領域は、配列番号14であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号16であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号18であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号29であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号50であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号33であるアミノ酸配列を有するCDR−L3及び配列番号131若しくは138であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FW−L3を含むか;又は b.前記重鎖可変領域は、配列番号1であるアミノ酸配列を含み、 前記軽鎖可変領域は、配列番号132若しくは139から選択されるアミノ酸配列を含む。請求項1から12のいずれかに記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤の重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA。以下を含むクローニング又は発現ベクターであって、 配列番号36、配列番号38、配列番号40、又は配列番号42、又は配列番号133、又は配列番号135、又は配列番号137、又は配列番号140、又は配列番号142、又は配列番号144から選択される1つ又は2つ以上の核酸配列を有するDNA、 任意にさらに以下を含むもの: 配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12又は配列番号148から選択される1つ又は2つ以上の核酸配列を有するDNA。請求項1から14のいずれかに記載の抗IgE抗体又は抗原結合剤を、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物。薬剤としての使用のための、請求項1から15のいずれかに記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項15に記載の組成物。請求項1から12のいずれかに記載の抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤、又は請求項15に記載の組成物であって、以下のうちの1つ又は2つ以上の処置又は防止における使用のためのもの: アレルギー;アレルギー性喘息;重症喘息;中等度の喘息;慢性自発性蕁麻疹;慢性特発性蕁麻疹;通年性アレルギー性鼻炎;季節性アレルギー性鼻炎;急性喘息増悪;急性気管支痙攣;喘息重積状態;高IgE症候群;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症;アナフィラキシー反応の防止;食物アレルギー;アトピー性皮膚炎;アレルギー性鼻炎;蜂毒過敏症;特発性アナフィラキシー;ピーナッツアレルギー;ラテックスアレルギー;炎症性皮膚疾患;蕁麻疹(日光、寒冷誘導性、局所熱誘導性、及び/若しくは遅発性圧誘導性);皮膚肥満細胞症;全身性肥満細胞症;好酸球関連胃腸障害;水疱性類天疱瘡;間質性膀胱炎;鼻ポリープ;特発性血管性浮腫;又は非アレルギー性喘息。

说明书全文

本発明は、例えば、IgEによって引き起こされる障害(アレルギー応答、又はある特定の自己免疫応答など)、特に、IgEとFcεRI受容体との相互作用によって引き起こされる障害の処置における使用のための、IgEを標的とする改良された抗IgE抗体及び抗原結合剤、並びにその組成物の分野にある。特に、本発明は、オマリズマブ(Xolair(登録商標))の新規変異体と関連する改良された抗IgE抗体及び抗原結合剤に関する。本発明の改良された抗IgE抗体及び抗原結合剤は、IgEに対する改良された親和性及び/又はIgEのCε2ドメインとの改良された相互作用及び/又はIgE上の改良された改変エピトープ(例えば、IgEのCε2ドメインをさらに含む)及び/又は薬学的に関連する濃度でFcεRI受容体からIgEを解離させる能を有してもよい。一側面では、IgEが標的化される(例えば、遊離IgE及び/又はFcεRI受容体と複合体化したIgE)、IgE媒介性障害の改良された処置又は新規処置が開示される。 発明の背景

IgEは、喘息、食物アレルギー、1型過敏症及び広い範囲で罹患する家族性副鼻腔炎などのアレルギー応答を媒介する免疫グロブリンファミリーのメンバーである。IgEは、B細胞によって分泌され、その表面上に発現される。B細胞により合成されたIgEは、短い膜結合領域により成熟IgE配列に連結された膜貫通ドメインによってB細胞膜中に固定される。IgEはまた、低親和性IgE受容体(FcεRII)に対するそのFc領域を介してB細胞(並びに単球、好酸球及び血小板)にも結合する。哺乳動物のアレルゲンへの曝露の際に、アレルゲンに結合するIgEを合成するB細胞がクローン増幅される。このIgEは、順に、それがB細胞に(FcεRIIを介して)結合しているB細胞によって、並びに肥満細胞及び好塩基球の表面上に認められるいわゆる高親和性受容体(FcεRI)を介して肥満細胞及び好塩基球によって循環中に放出される。そのような肥満細胞及び好塩基球は、それによって、アレルゲンに対して感作される。アレルゲンに対する次の曝露は、これらの細胞上でFcεRIを架橋し、かくして、臨床過敏症及びアナフィラキシーの原因となるヒスタミン及び他の因子の放出を活性化する。

オマリズマブ(Xolair(登録商標))は、ヒト免疫グロブリンE(IgE)[Cε3ドメイン]に選択的に結合する組換えDNA由来ヒト化IgG1κモノクローナル抗体である。この抗体は、約149kDの分子量を有する。Xolair(登録商標)は、抗生物質ゲンタマイシンを含有する栄養培地中でのチャイニーズハムスター卵巣細胞懸濁培養によって産生される。Xolair(登録商標)は、注射用滅菌(SWFI)、USPを用いて(又は、その代わりに、滅菌注射筒中の液体製剤として)再構成され、皮下(SC)注射として投与される単回使用バイアル中に含有される、滅菌された、白色の、保存剤を含有しない、凍結乾燥粉末である[EP602126(及びそれに基づくSPC/GB06/005);WO93/04173;US6267958(及びこの特許に基づくXolair(登録商標)PTE);WO97/04807;WO97/04801;Presta et al.(1993)J.Immunol.151:2623〜2632を参照されたい]。

オマリズマブは、通年性空気アレルゲンに対する皮膚試験陽性又はin vitroでの反応性を示す患者における中程度から重度の持続型喘息並びに吸入コルチコステロイドによって十分に制御されない症状の処置について現在指示されている(Xolair(登録商標)の処方情報から)。

オマリズマブに関する問題は、1)それが遊離IgEを標的化するが、薬学的に関連する用量でIgE/FcεRI複合体の病原性種を標的化しない(又は効率的に標的化しない);2)おそらくIgE/FcεRI複合体の病原性種が標的化されないため、「Xolair処置が有効性を示すためには(Xolair(登録商標)150mg溶液−Summary of Product Characteristics 2014)、又は実際に、Xolair(登録商標)が特定の患者について作用するかどうか、若しくは異なる処置が必要であるかどうかを確立するためには、少なくとも12〜16週間」かかる;3)それが、高レベルのIgEを示す患者のためのものではない(例えば、患者における高レベルの遊離IgEを考慮すると、IgE/FcεRI複合体の病原性種が標的化されず、時間と共に消失しないため);4)「オマリズマブ(Xolair(登録商標)150mg溶液 Summary of Product Characteristics 2014)を摂取する場合、アナフィラキシー及びアナフィラキシーショックを包含する、I型局所又は全身反応が起こることがある」;5)IgEに対するその親和性が、特に良好ではない(約2nM)ということである。

本発明の課題は、これらの問題の1つ又は2つ以上を改善するための新規抗体を同定することである。 さらなる課題は、新規エピトープに対する抗体(オマリズマブと比較してIgE Cε2相互作用が増大した)、並びに/又は親和性が改良された、及び/若しくはIgE/FcεRI複合体を解離させる能力が改良された、オマリズマブの新規変異体に基づく抗体を同定することである。

本発明のさらなる課題は、IgEと関連する障害、特に、IgE/FcεRIの複合体と関連する障害、例えば、アレルギー障害の処置のための新規化合物、方法、及び組成物を同定することである。 発明の概要

本発明の一側面では、ヒトIgEのCε3ドメインの残基T373、W374、S375、R376、A377、S378、G379、P381、Q417、C418、R419、T421、P426、R427、A428並びにCε2ドメインの残基D278及びT281を含むエピトープと接触する、抗IgE抗体又は抗原結合剤が提供される。さらなる態様では、エピトープは、ヒトIgEのCε3ドメインの残基K380及び/若しくはM430の1つ若しくは2つ以上並びに/又はヒトIgEのCε2ドメインの残基D276、V277、L279、S280、A282及び/若しくはT298の1つ若しくは2つ以上をさらに含んでもよい。

本発明は、有意な相互作用が変異領域中のIgE Cε2ドメインに関して観察された、改良された抗体(オマリズマブに基づく)と、IgE−Fcとの相互作用を初めて示す、例1の結晶構造の観察に基づくものである。これは、オマリズマブ及び/又はオマリズマブFabと比較して、抗IgE抗体又は抗原結合剤の改良された機能特性をもたらし得る。例えば、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、7、3、1、0.66、0.5又は0.3μM未満の濃度(又はピーク血清濃度)で、FcεRIからヒトIgEを解離させることができる(例えば、例2に記載の方法によって実行される)。例えば、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、オマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabと比較して、ヒトIgEに対する改良された/より強力な親和性(低いKD)(例えば、IgE−Fcを使用する)(例えば、例6に記載の方法によって実行される);並びに/又はオマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabと比較して、IgE/FcεRI複合体を解離させる改良された能力(ability)(例えば、例2に記載の方法によって決定される);並びに/又はオマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabよりも低い濃度(若しくはピーク血清濃度)でFcεRIからヒトIgEを解離させる能力(capability)(例えば、例2に記載の方法によって決定される)を有してもよい。改良されたKDとは、オマリズマブ及び/又はオマリズマブFabのものよりも少なくとも5、10、20、30、40、又は50%低いことを意味する。本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤のKDは、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、又は0.3nM未満であってよい。FcεRIからヒトIgEを解離させる改良された能力(ability)又は能力(capability)とは、オマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabより少なくとも5、10、20、30、40、50、若しくは100%改善されること(例えば、例2及び例7に記載されるような解離率(%)及び/若しくはIgE/FcεRI複合体の見かけの解離速度を測定する場合)、並びに/又はオマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabが解離を達成しない濃度での解離の達成を意味する。

疑いを避けるために、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、オマリズマブ又はオマリズマブFabではない。

一態様では、エピトープは、複合体化したIgE−Fc/抗IgE抗体又は抗原結合剤の結晶構造中の、抗IgE抗体又は抗原結合剤の4又は5Å以内のIgE残基を決定することによって、結晶学的に(例えば、例1に記載のように)決定される。使用されるIgE−Fcは、配列番号108のものとしてであってよい(追加のN265Q&N371Q変異を有する)。

一態様では、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、特定の結合部位で、エピトープのCε3ドメインとCε2ドメイン部分とがヒトIgEの異なる鎖上にあるエピトープと接触する。IgEは、それぞれ、Cε3ドメインとCε2ドメインとを有するFcドメイン中に2つの鎖を有する。 一態様では、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、特定の結合部位で、エピトープのCε3ドメインとCε2ドメイン部分とがヒトIgEの同じ鎖上にあるエピトープと接触する。

疑いを避けるために、本発明の2つの抗IgE抗体又は抗原結合剤は、ヒトIgEに結合することができるが、これらのうちの一方だけが、Cε3及びCε2ドメインを含む本発明のエピトープとの相互作用を必要とする(他方は、例えば、他のCε3ドメインとだけ相互作用することができる)。

一態様では(任意に、本発明の第1の側面の特徴をさらに採用する)、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、ヒトIgEのCε3ドメインの残基T373、W374、S375、R376、A377、S378、G379、P381、Q417、C418、R419、T421、P426、R427、A428並びにCε2ドメインの残基D278及びT281を含む前記エピトープに特異的である。任意に、前記エピトープは、ヒトIgEのCε3ドメインの残基K380及び/若しくはM430の1つ若しくは2つ以上並びに/又はヒトIgEのCε2ドメインの残基D276、V277、L279、S280、A282及び/若しくはT298の1つ若しくは2つ以上をさらに含んでもよい。疑いを避けるために、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、それが一般にヒトIgEよりもむしろ前記エピトープを含む特異的なヒトIgE構造を認識し、これに結合する場合、前記エピトープに特異的である。

さらなる側面では(任意に、本発明の第1の側面の特徴をさらに採用する)、配列番号18であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−H3を含む重鎖可変領域と、配列番号29であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−L1を含む軽鎖可変領域とを含み、軽鎖可変領域が、抗IgE抗体又は抗原結合剤と、ヒトIgEのCε2ドメインとの相互作用を強化する1、2、3、4、5、6、7個以上のアミノ酸置換を有する配列番号32から選択されるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−L3をさらに含む、抗IgE抗体又は抗原結合剤が提供される。

さらなる側面では(任意に、本発明の前記側面の特徴をさらに採用する)、配列番号18であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−H3を含む重鎖可変領域と、配列番号29であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−L1を含む軽鎖可変領域とを含み、軽鎖可変領域が、抗IgE抗体又は抗原結合剤と、ヒトIgEのCε2ドメインとの相互作用を強化する1、2、3、4、5、6、7個以上のアミノ酸置換を有する配列番号28であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−L1をさらに含む、抗IgE抗体又は抗原結合剤が提供される。

CDR−H3及びCDR−L1領域が、IgE Cε3領域上に、抗IgE抗体又は抗原結合剤を固定し、配向させる場合(オマリズマブのように)、FR−L3及び/又はFR−L1配列に対する変化(単数又は複数)は、ヒトIgEのCε2ドメインとのより強力な相互作用を可能にする。オマリズマブ又はオマリズマブFabと比較した変異体のより強力な相互作用を、親和性測定[より低いKD](例えば、例6に記載の方法によって実行される)及び/又はIgE/FcεRI複合体の改良された解離の特徴(例えば、例2に記載の方法によって決定される)によって評価することができる。

抗IgE抗体又は抗原結合剤と、ヒトIgEのCε2ドメインとのより強力な相互作用を、オマリズマブ及び/又はオマリズマブFabと比較した、抗IgE抗体又は抗原結合剤の改良された機能特性によって特徴付けることができる。例えば、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、7、3、1、0.66、0.5又は0.3μM未満の濃度(又はピーク血清濃度)でFcεRIからヒトIgEを解離させることができる(例えば、例2に記載の方法によって実行される)。例えば、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、オマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabと比較して、ヒトIgEに対する改良された/より強力な親和性(低いKD)(例えば、IgE−Fcを使用する)(例えば、例6に記載の方法によって実行される);並びに/又はオマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabと比較して、IgE/FcεRI複合体を解離させる改良された能力(ability)(例えば、例2に記載の方法によって決定される);並びに/又はオマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabよりも低い濃度(若しくはピーク血清濃度)でFcεRIからヒトIgEを解離させる能力(capability)(例えば、例2に記載の方法によって決定される)を有してもよい。改良されたKDとは、オマリズマブ及び/又はオマリズマブFabのものよりも少なくとも5、10、20、30、40、又は50%低いことを意味する。本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤のKDは、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、又は0.3nM未満であってよい。FcεRIからヒトIgEを解離させる改良された能力(ability)又は能力(capability)とは、オマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabより少なくとも5、10、20、30、40、50、若しくは100%改善されること(例えば、例2及び例7に記載されるような解離率(%)及び/若しくはIgE/FcεRI複合体の見かけの解離速度を測定する場合)、並びに/又はオマリズマブ及び/若しくはオマリズマブFabが解離を達成しない濃度での解離の達成を意味する。

疑いを避けるために、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、オマリズマブ、又はオマリズマブFabではない。 一態様では、FR−L3領域は、配列番号129を参照して、S60、S63、S76、S77、及び/又はQ79位(Kabat)の1つ又は2つ以上で、他の天然アミノ酸の1つに変異される。

例えば、FR−L3領域を、S60位(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つ、例えば、M、R、K、N、Q又はT、特に、Mに変異させてもよい。 例えば、FR−L3領域を、S63位(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つ、例えば、W又はY、特に、Yに変異させてもよい。 例えば、FR−L3領域を、S76位(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つ、特に、Nに変異させてもよい。 例えば、FR−L3領域を、S77位(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つ、例えば、R又はK、特に、Rに変異させてもよい。

例えば、FR−L3領域を、Q79位(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つ、例えば、R又はK、特に、Rに変異させてもよい。 例えば、FR−L1領域を、配列番号20を参照して、G16及び/又はR18(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つに変異させてもよい。 ある特定の態様では、抗IgE抗体又は抗原結合剤の変異したFR−L3領域のアミノ酸配列は、配列番号43〜49、60〜83、131又は138から選択される。

さらなる態様では、FR−L3領域は、ヒトIgEに対するその親和性(より低いKD)を改良するために、配列番号129を参照して、S67位(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つにさらに変異される。この場合、変異は、IgEのCε3ドメインに関して、抗IgE抗体又は抗原結合剤の相互作用を強化していてもよい。例えば、FR−L3領域を、S67位(Kabat)で、M(特に)、E、又はDに変異させてもよい。ある特定の態様では、抗IgE抗体又は抗原結合剤の変異したFR−L3領域のアミノ酸配列は、配列番号53〜59、84〜107、131又は138から選択される。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号31であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−L2をさらに含む軽鎖可変領域を有してもよい。

一態様では、CDR−L2領域は、ヒトIgEに対するその親和性(より低いKD)を改良するために、S52位(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つに変異される。この場合、変異は、IgEのCε3ドメインに関して、抗IgE抗体又は抗原結合剤の相互作用を強化していてもよい。例えば、CDR−L2領域を、配列番号129を参照して、S52位(Kabat)で、D(特に)、E、Q又はRに変異させてもよい。ある特定の態様では、変異したCDR−L2領域のアミノ酸配列は、配列番号50又は配列番号51から選択される。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号14であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−H1をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号16であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−H2をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号33であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−L3をさらに含む軽鎖可変領域を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号13であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−H1をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号15であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−H2をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号17であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−H3をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号19であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−H4をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号30であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−L2をさらに含む軽鎖可変領域を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号34であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−L4をさらに含む軽鎖可変領域を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号35、配列番号132又は配列番号134又は配列番号141又は配列番号144又は配列番号145又は配列番号158又は配列番号159から選択されるアミノ酸配列を有する、軽鎖可変領域VLを有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号1であるアミノ酸配列を有する、重鎖可変領域VHを有してもよい。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、軽鎖定常領域をさらに含んでもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、カッパ定常領域である軽鎖定常領域を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、L154P(Kabat)変異を有する軽鎖定常領域を有してもよい。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む、配列番号39、又は配列番号41、又は配列番号117、又は配列番号119、又は配列番号125、又は配列番号127、又は配列番号136、又は配列番号143から選択されるアミノ酸配列を有する、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域VL−CLを有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、重鎖定常領域CH1をさらに含んでもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号5であるアミノ酸配列を有する、重鎖可変領域と重鎖定常領域VH−CH1を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、重鎖Fc領域、Fcをさらに含んでもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、ヒトIgG1又はヒトIgG4に由来するFcを有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号9であるアミノ酸配列を有する、重鎖可変領域、重鎖定常領域及び重鎖Fc領域、VH−CH1−Fcを有してもよい。

本発明のさらなる側面では、配列番号18であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−H3を含む重鎖可変領域と、配列番号29であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−L1を含む軽鎖可変領域とを含む抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、 a.軽鎖可変領域が、配列番号32であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FR−L3をさらに含み、FR−L3領域が、ヒトIgEに対する抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤の親和性(より低いKD)を改良するために、配列番号129を参照して、S67位(Kabat)で、他の天然アミノ酸の1つに変異される;及び/又は b.軽鎖可変領域が、配列番号31であるアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L2をさらに含み、CDR−L2領域が、ヒトIgEに対する抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤の親和性(より低いKD)を改良するために、配列番号129を参照して、S52位(Kabat)で他の天然アミノ酸の1つに変異される、 上記抗IgE抗体又は抗原結合剤が提供される。

本発明者らは、これらの変異のいずれか、又は両方が、ヒトIgEに対する、オマリズマブ又はオマリズマブFabに基づく、抗IgE抗体又は抗原結合剤の親和性(改良された、又はより低いKD)を驚くほど改良し得ることをここで見出した(例えば、IgE−Fcを使用する)(例えば、例6に記載の方法によって実行される)。特に、親和性の改良は、オマリズマブ及び/又はオマリズマブFabと比較してのものである。変異は、IgEのCε3ドメインとの相互作用を改良することができる。改良された、又はより低いKDとは、オマリズマブ及び/又はオマリズマブFabのものよりも少なくとも5、10、20、30、40、又は50%低いことを意味する。本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤のKDは、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、又は0.3nM未満であってよい。

例えば、FR−L3領域を、配列番号129を参照して、S67位(Kabat)で、M(特に)、E、又はDに変異させてもよい。 ある特定の態様では、抗IgE抗体又は抗原結合剤の変異したFR−L3領域のアミノ酸配列は、配列番号52〜59、84〜107、131又は138から選択される。

例えば、CDR−L2領域を、配列番号129を参照して、S52位(Kabat)で、D(特に)、E、Q又はRに変異させてもよい。 ある特定の態様では、抗IgE抗体又は抗原結合剤の変異したCDR−L2領域のアミノ酸配列は、配列番号50(特に)又は配列番号51から選択される。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号14であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−H1をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。

抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号16であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−H2をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号33であるアミノ酸配列を有する、相補性決定領域CDR−L3をさらに含む軽鎖可変領域を有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号13であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−H1をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号15であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−H2をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。

抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号17であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−H3をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号19であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−H4をさらに含む重鎖可変領域を有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号30であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−L2をさらに含む軽鎖可変領域を有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号34であるアミノ酸配列を有する、フレームワーク領域FR−L4をさらに含む軽鎖可変領域を有してもよい。

抗IgE抗体又は抗原結合剤は、CDR−L2領域が配列番号50(特に)又は配列番号51から選択されるアミノ酸配列を有すること以外は、連続するFR−L1、CDR−L1、FR−L2、CDR−L2、FR−L3、CDR−L3、及びFR−L4領域を含み、配列番号20であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、FR−L3領域が配列番号52であるアミノ酸配列を有すること以外は、連続するFR−L1、CDR−L1、FR−L2、CDR−L2、FR−L3、CDR−L3、及びFR−L4領域を含み、配列番号20であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを有してもよい。

抗IgE抗体又は抗原結合剤は、CDR−L2領域が配列番号50(特に)又は配列番号51から選択されるアミノ酸配列を有し、FR−L3領域が配列番号52、131又は138から選択されるアミノ酸配列を有すること以外は、連続するFR−L1、CDR−L1、FR−L2、CDR−L2、FR−L3、CDR−L3、及びFR−L4領域を含み、配列番号20であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域VLを有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号1であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域VHを有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、軽鎖定常領域をさらに含んでもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、カッパ定常領域である軽鎖定常領域を有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、CDR−L2領域が配列番号50(特に)又は配列番号51から選択されるアミノ酸配列を有すること以外は、配列番号24であるアミノ酸配列を有する、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域VL−CLを有してもよい。

抗IgE抗体又は抗原結合剤は、FR−L3領域が配列番号52であるアミノ酸配列を有すること以外は、配列番号24であるアミノ酸配列を有する、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域VL−CLを有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、CDR−L2領域が配列番号50(特に)又は配列番号51から選択されるアミノ酸配列を有し、FR−L3領域が配列番号52、131又は138から選択されるアミノ酸配列を有すること以外は、配列番号24であるアミノ酸配列を有する、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域VL−CLを有してもよい。

さらなる側面では、本発明は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む抗IgE抗体又は抗原結合剤であって、 a.重鎖可変領域が、配列番号14であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号16であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号18であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号29であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号50であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号33であるアミノ酸配列を有するCDR−L3及び配列番号131若しくは138であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FW−L3を含む;又は b.重鎖可変領域が、配列番号1であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号132若しくは139から選択されるアミノ酸配列を含む、 上記抗IgE抗体又は抗原結合剤を提供する。

一態様では、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域VL−CLが、配列番号136又は143から選択されるアミノ酸配列を有し、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む、軽鎖定常領域をさらに含んでもよい。 本明細書に記載の全ての態様において、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、重鎖定常領域CH1をさらに含んでもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号5であるアミノ酸配列を有する、重鎖可変領域と重鎖定常領域VH−CH1を有してもよい。

抗IgE抗体又は抗原結合剤は、重鎖Fc領域、Fcをさらに含んでもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、ヒトIgG1又はヒトIgG4に由来するFcを有してもよい。 抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号9であるアミノ酸配列を有する、重鎖可変領域、重鎖定常領域及び重鎖Fc領域VH−CH1−Fcを有してもよい。 本発明の全側面の抗IgE抗体又は抗原結合剤を、全長重鎖及び軽鎖、又はその断片を有する完全な抗体分子からなる群から選択することができる。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤を、Fab断片、改変されたFab’断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv、scFv、scab、ダイアボディ、二特異的抗体、トリアボディ、FabFv、Fab−Fv−Fv、トリボディ、又は(Fab−Fv)2−Fcからなる群から選択することができる。理論によって束縛されるものではないが、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、それが複数よりもむしろただ1つの抗IgE抗原結合部位を有する場合、それと関連するアナフィラキシーの低いリスクを有してもよい。 一態様では、抗IgE抗体は、ヒト血清アルブミンなどの、血清担体タンパク質に結合するscFvに、直接的に、又はリンカーを介して連結されるFab断片である。

一態様では、scFvは、重鎖可変領域が配列番号152であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号153であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号154であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、軽鎖可変領域が配列番号155であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号156であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号157であるアミノ酸配列を有するCDR−L3を含む、好ましくは配列番号151を有するリンカーを介して連結された、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含んでもよい。

一態様では、scFvは、配列番号150であるアミノ酸配列を有する。1つの好ましい態様では、Fab断片は、 a.重鎖可変領域が、配列番号14であるアミノ酸配列を有するCDR−H1、配列番号16であるアミノ酸配列を有するCDR−H2及び配列番号18であるアミノ酸配列を有するCDR−H3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号29であるアミノ酸配列を有するCDR−L1、配列番号50であるアミノ酸配列を有するCDR−L2、配列番号33であるアミノ酸配列を有するCDR−L3及び配列番号131若しくは138であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域FW−L3を含む;又は b.重鎖可変領域が、配列番号1であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が、配列番号132若しくは139から選択されるアミノ酸配列を含む、 重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。

別の態様では、Fab断片は、重鎖可変領域と重鎖定常領域VL−CH1が、配列番号5であるアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域VL−CLが配列番号136又は143から選択されるアミノ酸配列を有し、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む、重鎖定常領域と軽鎖定常領域とをさらに含む。 別の態様では、scFvは、配列番号149であるアミノ酸配列を有するリンカーを介してFab断片のCH1に連結される。 一態様では、重鎖可変領域及び重鎖定常領域、リンカー及びscFvは、任意に、配列番号160であるアミノ酸配列を有するシグナル配列を含む、配列番号147であるアミノ酸配列を有する。

1つの他の態様では、配列番号147を有するscFvに連結されたFab断片の重鎖は、配列番号136又は143を有する軽鎖可変及び定常領域と対形成する。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、それに結合するエフェクター又はリポーター分子を有してもよい。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤を、グリコシル化する(例えば、Fcドメイン内で)、並びに/又はデンプン、アルブミン、及びポリエチレングリコール(PEG)から選択されるポリマーにコンジュゲートすることができる。一態様では、コンジュゲートされるPEGは、5〜50kDaの範囲の分子量を有してもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤をヒト化することができる。

本発明のさらなる側面は、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤の重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列に関する。さらに、本発明の1つ又は2つ以上のDNA配列を含むクローニング又は発現ベクターが提供される。例えば、クローニング又は発現ベクターは、配列番号36、配列番号38、配列番号40、又は配列番号42、又は配列番号133、又は配列番号135、又は配列番号137、又は配列番号140、又は配列番号142、又は配列番号144から選択される1つ又は2つ以上のDNA配列を含んでもよく、任意に、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12又は配列番号148から選択される1つ又は2つ以上のDNA配列をさらに含んでもよい。

本発明のさらなる側面は、本発明の1つ又は2つ以上のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞である。本発明の宿主細胞は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12又は配列番号148から選択される1つ又は2つ以上のDNA配列を含む1つ又は2つ以上のクローニング又は発現ベクターを任意でさらに含んでもよい。 本発明の宿主細胞を培養すること、及び抗IgE抗体又は抗原結合剤を単離することを含む、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤の製造のためのプロセスも提供される。

さらなる側面は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と共に、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤を含む医薬組成物に関する。好適には、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、希釈剤1mLあたり50〜200、好ましくは、約、又は正確に150mgの用量で存在する。ある特定の態様では、賦形剤は、L−アルギニン、L−ヒスチジンの一方又は両方を含む。賦形剤は、ポリソルベート20を別々に、又は一緒に含んでもよい。希釈剤は、水又は水性等張溶液であってもよい。 本発明の医薬組成物を、皮下投与前の再構成のために粉末として滅菌バイアル内に、又はその即時的な皮下投与のために滅菌注射筒内に担持させることができる。 本発明の医薬組成物は、75〜600mg、例えば、約又は正確に100又は150mgの総用量の抗IgE抗体又は抗原結合剤を含有してもよい。

本発明の医薬組成物は、抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤と一緒に含有されるか、又は抗IgE抗体、若しくは抗原結合剤との別々の同時投与のための他の活性成分をさらに含んでもよい。例えば、本発明の医薬組成物を、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤が、アレルゲンと別々に同時投与される(が、同時包装してもよい)、アレルギーに基づく特異的免疫療法の文脈で使用することができる。かくして、本発明の医薬組成物は、患者が、治療的アレルゲンとして7、6、5、4、3、2、又は1日前(又は同日)に、本発明の医薬組成物を受容する、アレルギーに基づく特異的免疫療法における使用のためのものであってよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤、又は組成物は、薬剤としての使用のためのものであってもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤、又は組成物は、疾患の処置又は防止における使用のためのものであってもよい。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤、又は組成物は、ヒトIgEとFcεRIとの複合体と関連する障害の処置又は防止における使用のためのものであってもよい。 本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤、又は組成物は、ヒトIgEとFcεRIとの複合体の解離及び抗IgE抗体又は抗原結合剤によるヒトIgEの結合による障害の処置又は防止における使用のためのものであってもよい。

本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤、又は組成物は、アレルギー;アレルギー性喘息;重症喘息;中等度の喘息;慢性自発性蕁麻疹;慢性特発性蕁麻疹;通年性アレルギー性鼻炎;季節性アレルギー性鼻炎;急性喘息増悪;急性気管支痙攣;喘息重積状態;高IgE症候群;アレルギー性気管支アスペルギルス症;アナフィラキシー反応の防止;食物アレルギー;アトピー性皮膚炎;アレルギー性鼻炎;蜂毒過敏症;特発性アナフィラキシー;ピーナッツアレルギー;ラテックスアレルギー;炎症性皮膚疾患;蕁麻疹(日光、寒冷誘導性、局所熱誘導性、及び/若しくは遅発性圧誘導性);皮膚肥満細胞症;全身性肥満細胞症;好酸球関連胃腸障害;水疱性類天疱瘡;間質性膀胱炎;鼻ポリープ;特発性血管性浮腫;又は非アレルギー性喘息のうちの1つ又は2つ以上の処置又は防止における使用のためのものであってもよい。

対象に、有効量の本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤、又は組成物を投与することを含む、ヒト対象における疾患の処置又は防止のための方法がさらに提供される。この方法は、ヒトIgEとFcεRIとの複合体と関連する障害の処置又は防止のためのものであってもよい。本発明の方法は、ヒトIgEとFcεRIとの複合体の解離及び本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤によるヒトIgEの結合により、疾患を処置又は防止することができる。

本発明の方法は、アレルギー;アレルギー性喘息;重症喘息;中等度の喘息;慢性自発性蕁麻疹;慢性特発性蕁麻疹;通年性アレルギー性鼻炎;季節性アレルギー性鼻炎;急性喘息増悪;急性気管支痙攣;喘息重積状態;高IgE症候群;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症;アナフィラキシー反応の防止;食物アレルギー;アトピー性皮膚炎;アレルギー性鼻炎;蜂毒過敏症;特発性アナフィラキシー;ピーナッツアレルギー;ラテックスアレルギー;炎症性皮膚疾患;蕁麻疹(日光、寒冷誘導性、局所熱誘導性、及び/若しくは遅発性圧誘導性);皮膚肥満細胞症;全身性肥満細胞症;好酸球関連胃腸障害;水疱性類天疱瘡;間質性膀胱炎;鼻ポリープ;特発性血管性浮腫;又は非アレルギー性喘息のうちの1つ又は2つ以上の処置又は防止のためのものであってもよい。

本発明において、ポリペプチドが第2のポリペプチド(受容体など)への結合のためその生理学的応答を惹起する第1のポリペプチドに対する抗体又は抗原結合剤が、遊離及び結合した第1のポリペプチドの両方に結合し、そのような第1のポリペプチドのコンフォメーションを安定化することができることが解明された。そのような安定化されたコンフォメーションは、抗体又は抗原結合剤の非存在下におけるよりも弱い第2のポリペプチドに対する結合親和性を有し、したがって、第2のポリペプチドからの第1のポリペプチドのより迅速な解離を誘発する。

これに関して、本発明は、遊離及びFcεRI結合ヒトIgEに結合し、IgEのコンフォメーションを安定化することができる、抗体又は抗原結合剤に関するさらなる側面を提供する。IgEがそのようなコンフォメーションにある場合、それは、抗体又は抗原結合剤の非存在下におけるよりも弱いFcεRIに対する結合親和性を有し、そこで、ヒトIgEに結合したFcεRIは、FcεRIから解離する。任意に、IgEがそのようなコンフォメーションにある場合、IgEは、本発明の抗体又は抗原結合剤よりも低い、オマリズマブ又はその断片に対する結合親和性を有する。例えば、抗体又は抗原結合剤は、本明細書に記載の抗体である。

さらなる側面では、本発明は、本明細書に記載のそのような抗体又は抗原結合剤を選択するためのプロセスに関する。このプロセスは、 a.試験抗体又は抗原結合剤と、ヒトFcεRIに結合したヒトIgEを含む試料とを接触させるステップ; b.ヒトFcεRIからのヒトIgEの解離に関する試験抗体又は抗原結合剤の解離定数を測定するステップ; c.ステップb)で測定された解離定数と、ヒトFcεRIからのヒトIgEの解離に関するオマリズマブ又はその断片の解離定数とを比較するステップ; d.抗体又は抗原結合剤がオマリズマブ又はその断片よりも速くFcεRIからIgEを解離させる場合、前記抗体又は抗原結合剤を選択するステップ を含む。

或いは、本発明による抗体又は抗原結合剤を選択するためのプロセスは、 a.試験抗体又は抗原結合剤と、ヒトFcεRIに結合したヒトIgEを含む試料とを接触させるステップ; b.ヒトFcεRIに由来するヒトIgEに対する試験抗体又は抗原結合剤の結合親和性を測定するステップ; c.ステップb)で測定された結合親和性と、FcεRIに対するヒトIgEの結合親和性とを比較するステップ; d.抗体又は抗原結合剤が、FcεRIに対するIgEよりも、IgEに対する高い結合親和性を有する場合、前記抗体又は抗原結合剤を選択するステップ を含む。

任意に、選択される抗体又は抗原結合剤は、FcεRIに依然として結合しながら、IgEに、安定化されたコンフォメーションのIgEが、オマリズマブ若しくはその断片の存在下でFcεRIに結合したIgEよりも速くFcεRIから解離してもよい;及び/又はFcεRIに対するよりも高い、抗体若しくは抗原結合剤に対する結合親和性を有してもよい前記コンフォメーションを採用させる。

最後の側面では、本発明は、 a.配列番号1を含む重鎖可変領域と、 i.配列番号109;若しくは ii.配列番号113;若しくは iii.配列番号121;若しくは iv.配列番号132;若しくは v.配列番号139 を含む軽鎖可変領域と;又は b.配列番号5と、 i.S77及びS79がQで置き換えられた、配列番号24; ii.配列番号117;若しくは iii.配列番号125;若しくは iv.配列番号136;若しくは v.配列番号143 とを含む、特異的抗体又は抗原結合剤に関する。

本発明のこの最後の側面の一態様では、抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号108を参照して、ヒトIgEのCε3ドメインの残基T373、W374、S375、R376、A377、S378、G379、P381、Q417、C418、R419、T421、P426、R427、A428並びにCε2ドメインの残基D278及びT281を含むエピトープと接触する、又は接触し、これに特異的である。

参考文献及び配列番号は、図面に言及する例に見出される。

オマリズマブFab3が3つの点変異を含有することを示す図である。オマリズマブFab3はオマリズマブに由来し、抗原結合CDRに対して遠位に3つの点変異を含有し、そのうちの2つはV

Lドメインフレームワーク領域中にあり(Ser81Arg、Gln83Arg)、1つはCκドメイン中にある(Leu158Pro)。重鎖及び軽鎖は、それぞれ、白色及び青色に着色されている。Fabの向きを示すために、変異した残基は赤色に、CRDL1は緑色に着色されている。

オマリズマブFab3と複合体を形成したIgE−Fcの全体的構造を示す図である。(A)オマリズマブFab3は、2:1の化学量論比でIgE−Fcに結合する。Fab

1(緑色)は、専らCε3ドメインを介して、IgE−Fc鎖B(ピンク色)と係合する。Fab

2(青色)は、Cε3ドメインを介してIgE−Fc鎖A(黄色)と相互作用し、IgE−Fc鎖B(ピンク色)に由来するCε2ドメインとの弱い相互作用を形成する。(B)2つのFabは、Fcε3−4領域の約2フォールドアクシスで偽対称性複合体を形成する。明確性のため、Cε2ドメインは示されない。(C)IgE−Fcは、オマリズマブFab3複合体中で非対称的に湾曲している。鎖B(ピンク色)に由来するCε2ドメインはFab

2(青色)と接触する。

オマリズマブFab3とIgE−Fcとの境界面を示す図である。オマリズマブFab3 Fab

2(それぞれ、緑色及び黄色に着色される重鎖及び軽鎖)と、IgE−Fcに由来するCε3ドメイン(ピンク色)との境界面が示される。オマリズマブFab3及びCε3ドメイン残基標識は、それぞれ、青色及び黒色に着色される。境界面は、水素結合及びファンデルワールス相互作用を含む。境界面の顕著な特徴は、Arg419(Cε3ドメイン)とPhe103(オマリズマブFab3 CDRH3)とのカチオン−π相互作用である。Phe103側鎖は、Thr373、Trp374、Ser375、Gln417及びArg419(Cε3ドメイン)によって作られるポケットに大部分が埋没している。

オマリズマブFab3及びDARPin E2_79が重複境界面に結合することを示す図である。オマリズマブFab3とDARPin E2_79

20は両方とも、Cε3ドメインに結合する。オマリズマブFab3境界面の一部のみを形成するIgE−Fc残基は橙色に着色されるが、Cε3−Cε4リンカーの一部を包含するDARPin E2_79境界面の一部のみを形成するものは青色に着色される。Arg419及びMet430を包含する、ピンク色に着色されるIgE−Fc残基は、オマリズマブFab3とDARPin E2_79の両方の境界面に共通である。

IgE−Fcにおけるコンフォメーションの可撓性を示す図である。(A)その鋭い非対称性湾曲を示す遊離IgE−Fc

8の側面図。(B)遊離IgE−Fcの前面図((A)に示された図から反時計回りに90°回転)。(C)部分的に湾曲したコンフォメーションを示す、オマリズマブFab3複合体中のIgE−Fcの側面図。(D)オマリズマブFab3複合体中のIgE−Fcの前面図((C)に示された図から反時計回りに90°回転)。(E)抗IgE−Fc Fab(オマリズマブFab3)

16により捕捉された完全に伸長したIgE−Fcの側面図。(F)伸長したIgE−Fcの前面図((E)に示された図から反時計回りに90°回転)。

IgE−Fcにおけるコンフォメーションの可撓性を示す図である。IgE−Fcの可撓性、及び湾曲したコンフォメーションから完全に伸長したコンフォメーションへの脱湾曲化は、分子力学によって以前に探査された

16。IgE−Fcの脱湾曲化は、以前に探査された

16ように、自由エネルギー表面として表される。(A)オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体の結晶構造中に捕捉されたIgE−Fcの伸長したコンフォメーション

16。(B)オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体の結晶構造中で観察された部分的に湾曲したIgE−Fcコンフォメーション。(C)遊離IgE−Fc

7、8の湾曲したコンフォメーション。IgE−Fcの湾曲したコンフォメーションは、最も低いエネルギーボウル(basin)を占有するが、オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体中で観察された部分的に湾曲したコンフォメーションは、明確に異なるエネルギーボウル(B)を占有する。

IgE−FcとFcεRIとの相互作用の破壊を示す図である。オマリズマブFab3複合体において、Cε3ドメインは、IgE−Fcについてこれまでのところ報告されている最も開いたコンフォメーションを採り、FcεRIαとの係合を不可能にする。FcεRIα

8と複合体を形成したIgE−Fcの構造は黄色に着色され、受容体係合の2つのサブ部位が示される。IgE−Fcと複合体を形成したオマリズマブFab3の構造は、Cε4ドメイン上に重なり、Cε3ドメインは青色に着色される。2つの構造中のHis424及びPro426の位置を、Cε3ドメインにより採用される異なる位置を強調するために示す。

IgE−FcとCD23との相互作用の破壊を示す図である。(A)オマリズマブFab3とCD23の両方の境界面に共通であるCε3ドメイン残基はピンク色に着色される。(B)オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体及びCD23/Fcε3−4複合体

11に由来するCε3ドメイン(暗灰色)の重ね合わせは、CD23(黄色)とオマリズマブFab3(ピンク色)との衝突を示す。

オマリズマブFab3とIgE−Fcとの相互作用試験を示す図である。(A)C末端Hisタグにより捕捉されたオマリズマブFab3のIgE−Fcへの結合;オマリズマブFab3を、以下の濃度:100nM(黒色)、50nM(赤色)、25nM(緑色)、12.5nM(青色)、6.2nM(シアン色)、3.1nM(紫色)、1.6nM(マゼンタ色)及び0.8nM(暗赤色)でIgE−Fc上に流した。標準的な二重参照法を使用した

36;それぞれの濃度を2回実行した。(B)第2のオマリズマブFab3結合部位の結合を、SPRサンドイッチ結合実験を使用して特徴付けた。IgE−Fcを、オマリズマブFab3表面上に捕捉させた後、第2のオマリズマブFab3分子を、1000nM(黒色)、500nM(赤色)、250nM(緑色)、125nM(青色)、62.5nM(シアン色)、31.2nM(紫色)、15.6nM(マゼンタ色)、7.8nM(暗赤色)及び0nM(ネイビー色)の濃度で、IgE−Fc/オマリズマブFab3複合体に添加した。(C)C末端Hisタグにより捕捉されたIgE−Fc(赤色)及びFcεRIαへの結合によって捕捉されたIgE−Fc(青色)に結合するオマリズマブFab3の能力の比較;それぞれについて、1000nMの最高濃度を用いて、2倍希釈系列を試験した。差込図は、オマリズマブFab3が、IgE−Fc/FcεRIα複合体に依然として結合するが、B

max値が低いことを示す。(D)オマリズマブFab3の濃度を増加させることにより媒介されるIgE−Fc/FcεRIα複合体の加速された解離。固定されたFcεRIα上にIgE−Fcを捕捉した後、以下の濃度:5000nM(マゼンタ色)、1000nM(紫色)、200nM(シアン色)、40nM(青色)、8nM(緑色)、1.6nM(赤色)及び0nM(黒色)でオマリズマブFab3に結合させることによって、1:1のIgE−Fc/FcεRIα複合体を最初に確立した。差込図は、加速された解離プロセスの拡大図を示す。全ての濃度を2回実行した。2つの部位間のアロステリック伝達を最小化するために5℃で行った、第2のオマリズマブFab3結合部位(図4B)を特徴付けるものを除いて、全ての結合実験を25℃で実施した。

直接結合、競合実験及び加速された解離の分析を示す図である。固定されたオマリズマブFab3(A)、オマリズマブFab(B)、及びインタクトなオマリズマブ(C)への直接結合を、IgE−Fcについて測定した。Fab又はインタクト抗体を、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用して低密度で共有的に固定した;IgE−Fcを、100nMの最高濃度を用いる2倍希釈系列を使用して、様々な濃度でこれらの表面上に流した。全ての濃度を2回実行した。(D)IgE−Fcに関するオマリズマブFab3とαγ−融合タンパク質との間のTR−FRET競合結合実験。テルビウム標識されたαγ−融合タンパク質と、Alexa Fluor 647標識されたIgE−Fcとの結合を、阻害剤として増加する濃度の未標識オマリズマブFab3:0μM(黒色)、2.5nM(青色)、5nM(緑色)、10nM(マゼンタ色)、20nM(赤色)を用いて測定した。阻害剤として、オマリズマブFabは、IgE−Fcとαγ−融合タンパク質との相互作用の見かけのK

DとB

maxの両方に影響し、これは、いくらかのアロステリック阻害特性を示している。(E)それぞれ、5μMの濃度での、インタクトなオマリズマブ(黒色)、オマリズマブFab(赤色)又はオマリズマブFab3(青色)により媒介されたIgE−Fc/sFcεRIα複合体の加速された解離の比較。

代表的な電子密度マップを示す図である。1.1σで等高線を示された、2Fo−Fc電子密度マップの立体図を、鎖A Cε3ドメインの一部、及びAsn394で共有的にN結合したオリゴ糖部分について示す。

固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの解離のBiacoreセンサーグラムを示す図である。解離を、泳動バッファー(実線)又はIgE結合パートナー(他の全てのセンサーグラム)の存在下でモニタリングした。アッセイは、アッセイ方法(1)例2に記載のように実施された。

固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの解離のBiacoreセンサーグラムを示す図である。解離を、対照上清(実線)又はIgE結合パートナー(他の全てのセンサーグラム)の存在下でモニタリングした。アッセイは、アッセイ方法(2)例2に記載のように実施された。

RBL−SX38細胞の表面からのAlexa488標識されたIgE−Fcの解離の分析を示す図である。測定された結合データをt=0で100%に標準化し、解離データを、時間の関数として、結合したままのIgE−Fcの割合の変化としてプロットした。

72時間のPCAモデルにおける治療用量の野生型オマリズマブFab及びオマリズマブFab3の効果の分析を示す図である。

野生型ヒトIgE−Fc配列の残基224〜547(配列番号108に示される)を示す図であり、残基224と547を太字で示す。番号付けは、Dorrington及びBennich(1978)Immunol.Rev.41:3〜25によるものであり、ここで、L253後のL(Leu;ロイシン)はL235aとして番号付けられ(囲み)、その後の残基はC254である。残りの残基は、さらなる付加なしに連続的に番号付けられる。エピトープ残基は、星印(

*)で示される。発明の詳細な説明

本明細書における抗体アミノ酸の番号付けは、抗体の連続的アミノ酸配列(例えば、配列番号1のVH配列と、配列番号20若しくは配列番号129のVL配列とを含むオマリズマブ)−いわゆる、「pdb」番号付けに由来するか、又は一般的なKabatの番号付けスキームを使用してもよい。VH又はVL配列の共通の免疫グロブリン部分(CDR−相補性決定領域、又はFR−フレームワーク領域)が記載される場合、それらは標準的な順序で連結される(VH=FR−H1.CDR−H1.FR−H2.CDR−H2.FR−H3.CDR−H3.FR−H4;VL=FR−L1.CDR−L1.FR−L2.CDR−L2.FR−L3.CDR−L3.FR−L4)。オマリズマブについては、VH(配列番号1)部分の「pdb」番号付けは、FR−H1(アミノ酸1〜25)、CDR−H1(26〜36)、FR−H2(37〜50)、CDR−H2(51〜66)、FR−H3(67〜98)、CDR−H3(99〜110)、FR−H4(111〜121)であるが、Kabatの番号付けは、FR−H1(アミノ酸1〜25)、CDR−H1(26〜35)、FR−H2(36〜49)、CDR−H2(50〜65)、FR−H3(66〜94)、CDR−H3(95〜102)、FR−H4(103〜113)である。オマリズマブについては、VL(配列番号20)部分の「pdb」番号付けは、FR−L1(アミノ酸1〜23)、CDR−L1(24〜38)、FR−L2(39〜53)、CDR−L2(54〜60)、FR−L3(61〜92)、CDR−L3(93〜101)、FR−L4(102〜111)であるが、Kabatの番号付けは、FR−L1(アミノ酸1〜23)、CDR−L1(24〜34)、FR−L2(35〜49)、CDR−L2(50〜56)、FR−L3(57〜88)、CDR−L3(89〜97)、FR−L4(98〜107)である。

IgE抗体の番号付けは、Dorrington & Bennich(1978)Immunol.Rev.41:3〜25により報告された通りである。かくして、本発明において使用されるIgE−Fcポリペプチド(配列番号108を参照されたい)は、V224−K547に由来する(C225A変異を包含する)。図16に示されるように、以下の番号付けは、Dorrington and Bennich(1978)Immunol.Rev.41:3〜25に記載の通りであり、ここで、253位の後のL(Leu、ロイシン)は、L253aと番号付けられ、残りの残基はC254などとしてL253aから連続的に番号付けられる。結晶学的実験において、以下の変異もIgE−Fc中に挿入して、グリコシル化パターンを単純化した:N265Q & N371Q。IgE−FcのCε2領域は、一般的には、配列S226−D330を占有することが受け入れられる。本明細書のIgEに対する参照は、ヒトIgEに対する参照(及びその逆)であってもよく、また、本明細書に記載のアッセイ及び方法の文脈においてIgE−Fcに対する参照を構成してもよい。完全長ヒトIgE抗体のFabアームの配列は、結晶構造中には存在しないため、この説明には包含されない。

「オマリズマブ」に対する本明細書における参照は、市販のXolair(登録商標)製品;又は配列番号1であるVHアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20であるVLアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG完全長抗体又は配列番号5であるVH−CH1アミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号24であるVL−CLアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG完全長抗体又は配列番号9であるVH−CH1−Fcアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号24であるVL−CLアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG完全長抗体に対する参照である。「オマリズマブFab」に対する参照は、配列番号1であるVHアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20であるVLアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むFab断片;又は(特に)配列番号5であるVH−CH1アミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号24であるVL−CLアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むFab断片に対する参照である。

一般的定義 別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業界における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似する、又は等価である方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を本明細書に記載する。本明細書に記載される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定を意図するものではない。

文脈によって別途要求されない限り、単数形の用語は、複数形を包含し、複数形の用語は単数形を包含する。本出願において、「又は」の使用は、別途記述しない限り、「及び/又は」を意味する。さらに、用語「包含する(including)」、並びに「包含する(includes」及び「包含される(included)」などの他の形態の使用は、限定ではない。また、「要素(element)」又は「成分(component)」などの用語は、別途具体的に記述しない限り、1つの単位を含む要素及び成分と、1より多いサブ単位を含む要素及び成分との両方を包含する。

一般的には、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸化学及びハイブリダイゼーションと関連して使用される命名法、及びその技術は、当業界で周知且つ一般的に使用されるものである。本発明の方法及び技術は、当業界で周知であり、別途指摘しない限り、本明細書を通して引用及び考察される様々な一般的な、及びより具体的な参考文献に記載された従来の方法に従って一般的に実施される。酵素反応及び精製技術を、当業界で一般的に達成されるか、又は本明細書に記載されるように、製造業者の明細書に従って実行することができる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、並びに医薬品化学及び製薬化学と関連して使用される命名法、並びにその実験手順及び技術は、当業界で周知且つ一般的に使用されるものである。化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化、及び送達、並びに患者の処置のための標準的な技術が使用される。 本発明をより容易に理解することができるように、選択された用語を以下に定義する。

本明細書で使用される用語「宿主」は、典型的には、特に、ヒト又はヒト化フレームワークがアクセプター構造として使用される場合、ヒト対象を指す。別の宿主が処置される場合、抗体又は抗原結合剤をその宿主に対して調整して、拒絶を回避する、又はより適合性の高いものにする必要があり得ることが、当業者によって理解される。本発明においてCDRを使用する方法及び所望の送達のためにそれらを適切なフレームワーク又はペプチド配列中に操作する方法及び様々な宿主のために機能させる方法が公知である。他の宿主は、他の哺乳動物又は脊椎動物種を包含してもよい。したがって、用語「宿主」は、或いは、抗体又は抗原結合剤が、必要に応じて、宿主との適合性のために好適に設計された、マウス、サル、イヌ、ブタ、ウサギ、家畜化されたブタ類(ブタ及びイノシシ)、反芻動物、ウマ類、家禽類、ネコ類、ネズミ類、ウシ類、イヌ類などの動物を指してもよい。

本明細書で使用される用語「ポリペプチド」とは、アミノ酸の任意のポリマー鎖を指す。用語「ペプチド」及び「タンパク質」は、用語ポリペプチドと互換的に使用され、アミノ酸のポリマー鎖も指す。用語「ポリペプチド」は、天然又は人工のタンパク質、タンパク質断片、及びタンパク質配列のポリペプチド類似体を包含する。ポリペプチドは、モノマー又はポリマーであってもよい。

本明細書で使用される用語「回収すること」とは、例えば、当業界で周知のタンパク質精製技術を使用する単離により、ポリペプチドなどの化学種が、天然に会合する成分を実質的に含まないようにするプロセスを指す。

本明細書で使用される用語「特異的結合」又は「特異的に結合すること」は、抗体、タンパク質、又はペプチドと、第2の化学種との相互作用を参照して、その相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、以下に定義される「抗原決定基」又は「エピトープ」)の存在に依存することを意味する;例えば、抗体は、タンパク質全体よりもむしろ、特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」及び抗体を含む反応における、エピトープA(又は遊離の、未標識のA)を含む分子の存在は、抗体に結合する標識されたAの量を減少させるであろう。本明細書で本発明のエピトープに言及する場合、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤は、前記エピトープに特異的である。

本明細書で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含む任意の免疫グロブリン(Ig)分子、又はそれをIgEに特異的に結合させるIg分子のエピトープ結合特徴の少なくともいくらかの部分を保持する、その任意の機能性断片、変異体、バリアント、若しくは誘導体を指す。そのような変異体、バリアント、又は誘導体抗体形式は、当業界で公知であり、以下に記載される。その非限定的態様は、以下に考察される。抗体は、それが分子(又はエピトープ)と特異的に反応することによってその分子(又はエピトープ)を抗体に結合させることができる場合、それは分子(又はエピトープ)に「結合することができる」と言われる。

本明細書で使用される「モノクローナル抗体」は、異なる抗体の混合物を含む「ポリクローナル」抗体調製物とは対照的に、共通の重鎖及び共通の軽鎖アミノ酸配列を共有する抗体分子の調製物、又はIg分子の少なくとも軽鎖エピトープ結合特徴を保持するその任意の機能性断片、変異体、バリアント、若しくは誘導体を指すことが意図される。モノクローナル抗体を、ファージ、細菌、酵母又はリボソームディスプレイのようないくつかの公知の技術、並びにハイブリドーマ由来抗体(例えば、標準的なKohler及びMilsteinのハイブリドーマ法((1975)Nature 256:495〜497)などの、ハイブリドーマ技術により調製されたハイブリドーマによって分泌される抗体)により例示される古典的方法によって生成することができる。

完全長抗体では、それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと省略される)と、重鎖定常領域(CH)とを含む。重鎖定常領域は、4個のドメイン−CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3(重鎖γ、α及びδ)、又はCH1、CH2、CH3、及びCH4(重鎖μ及びε)のいずれかを含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと省略される)と、軽鎖定常領域(CL)とを含む。軽鎖定常領域は、1個のドメイン、CLを含む。VH及びVL領域を、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変領域にさらに細分することができる。それぞれのVH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された、3個のCDRと4個のFRとを含む。免疫グロブリン分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスのものであってもよい。

本明細書で使用される用語「抗原結合剤」とは、抗原(例えば、IgE)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ若しくは2つ以上の断片若しくは部分、又は抗原に対する所望の結合能力を保持する抗体断片の合成改変体を指す。抗体の抗原結合機能を、完全長抗体又はその改変体の断片又はある特定の部分によって実行することができることが示されている。態様は、2つ以上の異なる抗原又は抗原のいくつかのエピトープ若しくは不連続エピトープ領域に特異的に結合し得る二特異的、二重特異的及び多特異的形式を包含する。抗原結合剤の非限定例としては、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)単一可変ドメインを含むdAb断片(参照により本明細書に組み込まれるWard et al.,(1989)Nature 341:544〜546、Winter et al.,PCT公開WO90/05144 A1);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、(vii)特性が免疫グロブリンであるものなどの抗体断片の融合物、例えば、ダイアボディ、scab、二特異的抗体、トリアボディ、Fab−Fv、Fab−Fv−Fv、トリボディ、(Fab−Fv)2−Fc、並びに(viii)CDR又はフィブロネクチン若しくはロイシンジッパーなどの非免疫グロブリンフレームワーク上に移植された抗体ループなどの抗体部分(本明細書に組み込まれるBinz et al.(2005)Nat.Biotech.23:1257〜1268を参照されたい)が挙げられる。さらに、Fv断片の2個のドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらを、組換え又は他の方法を使用して、それらを、VL及びVH領域が対形成して、一価分子(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423〜426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883を参照されたい)を形成する単一タンパク質鎖として作られるのを可能にする合成又は天然のリンカーによって連結することができる。そのような単鎖抗体もまた、抗原結合剤の用語の範囲内に包含されることが意図される。ダイアボディなどの他の形態の単鎖抗体も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2個ドメイン間で対形成させるには短すぎるリンカーを使用することによって、そのドメインに別の鎖の相補的ドメインと強制的に対形成させ、2個の抗原結合部位を作出する二価の二特異的抗体である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444〜6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121〜1123を参照されたい)。そのような抗体結合部分は、当業界で公知である(Kontermann and Dubel eds.,Antibody Engineering(2001)Springer−Verlag.New York.790pp.(ISBN3−540−41354−5))。

本明細書で使用される用語「抗体構築物」とは、リンカーポリペプチド又は免疫グロブリン定常ドメインに連結された1つ又は2つ以上の本発明の抗原結合部分を含むポリペプチドを指す。リンカーポリペプチドは、ペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸残基を含み、1つ又は2つ以上の抗原結合部分を連結するために使用される。そのようなリンカーポリペプチドは、当業界で周知である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444〜6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121〜1123を参照されたい)。免疫グロブリン定常ドメインとは、重鎖又は軽鎖定常ドメイン、例えば、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgM定常ドメインを指す。重鎖及び軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は、当業界で公知である。Ig重鎖γ1定常領域並びにIg軽鎖λ及びκ鎖の非限定例は、それぞれ、表8及び表6に提供される。

さらに、抗体又はその抗原結合部分は、抗体又は抗体部分と、1つ又は2つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有的又は非共有的会合により形成される、より大きな免疫接着分子の一部であってもよい。そのような免疫接着分子の例としては、テトラマーscFv分子を作るためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93〜101)並びに二価及びビオチン化scFv分子を作るためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047〜1058)が挙げられる。Fab及びF(ab’)2断片などの抗体部分を、全抗体(whole antibody)の、それぞれ、パパイン又はペプシン消化などの従来の技術を使用して、全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分及び免疫接着分子を、本明細書に記載のように、標準的な組換えDNA技術を使用して取得することができる。

本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、IgEに特異的に結合する単離された抗体は、IgE以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、例えば、ヒトIgEに特異的に結合する単離された抗体は、他の種に由来するIgE分子などの他の抗原に対する交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。

用語「CDR移植抗体」とは、ある種に由来する重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVLの1つ又は2つ以上のCDR領域の配列が、1つ又は2つ以上のヒトCDR(例えば、CDR3)がマウスCDR配列で置き換えられたヒト重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体などの、別の種のCDR配列で置き換えられる抗体を指す。

用語「Kabatの番号付け」、「Kabat定義」及び「Kabat標識化」は、本明細書では互換的に使用される。当業界で認識されるこれらの用語は、抗体又はその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域中の他のアミノ酸残基よりも可変性(すなわち、超可変性)であるアミノ酸残基を番号付けるシステムを指す(Kabat et al.(1971)Ann.NY Acad,Sci.190:382〜391及びKabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242)。重鎖可変領域については、超可変領域は、Kabatの番号付けシステムによるアミノ酸位置31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)及び残基95〜102(CDR−H3)の範囲である。しかしながら、Chothiaによれば(Chothia et al.(1987)J.Mol.Biol.,196,901〜917(1987))、CDR−H1に相当するループは、残基26から残基32までに及ぶ。かくして、別途指摘しない限り、本明細書で使用される「CDR−H1」は、Kabatの番号付けシステムと、Chothiaのトポロジーループ定義との組合せにより記載される通り、残基26〜35を指すことが意図される。軽鎖可変領域については、超可変領域は、CDRL1についてはアミノ酸位置24〜34、CDRL2についてはアミノ酸位置50〜56、及びCDRL3についてはアミノ酸位置89〜97の範囲である。

本明細書で使用される用語「アクセプター」及び「アクセプター抗体」とは、1つ又は2つ以上のフレームワーク領域のアミノ酸配列の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は100%を提供する、又はコードする抗体又は核酸配列を指す。一部の態様では、用語「アクセプター」は、定常領域(単数又は複数)を提供する、又はコードする抗体アミノ酸又は核酸配列を指す。さらに別の態様では、用語「アクセプター」は、1つ又は2つ以上のフレームワーク領域と定常領域(単数又は複数)とを提供する、又はコードする抗体アミノ酸又は核酸配列を指す。特定の態様では、用語「アクセプター」は、1つ又は2つ以上のフレームワーク領域のアミノ酸配列の少なくとも80%、好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は100%を提供する、又はコードするヒト抗体アミノ酸又は核酸配列を指す。この態様によれば、アクセプターは、ヒト抗体の1つ又は2つ以上の特定部分に存在しない少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも10個のアミノ酸残基を含有してもよい。アクセプターフレームワーク領域及び/又はアクセプター定常領域(単数又は複数)を、例えば、生殖系列抗体遺伝子、成熟抗体遺伝子、機能的抗体(例えば、当業界で周知の抗体、開発中の抗体又は市販の抗体)から誘導又は取得することができる。

本明細書で使用される用語「CDR」とは、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖のそれぞれの可変領域中には3個のCDRが存在し、重鎖CDRについてはCDRH1、CDRH2及びCDRH3と指定され、軽鎖CDRについてはCDRL1、CDRL2及びCDRL3と指定されている。本明細書で使用される用語「CDRセット」とは、抗原に結合することができる単一の可変領域中に存在する3個のCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムに従って異なるように定義されている。Kabatにより記載されたシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)及び(1991))は、抗体の任意の可変領域に適用可能な明白な残基番号付けシステムを提供するだけでなく、3個のCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRを、KabatのCDRと呼んでもよい。Chothia及び共同研究者(Chothia & Lesk,J.Mol.Biol.196:901〜917(1987)及びChothia et al.,Nature 342:877〜883(1989))は、KabatのCDR内のある特定のサブ部分が、アミノ酸配列のレベルで高い多様性を有するにも拘わらず、ほぼ同一のペプチド骨格コンフォメーションを採用することを見出した。これらのサブ部分は、L1、L2及びL3又はH1、H2及びH3と指定されたが、ここで、「L」及び「H」は、それぞれ、軽鎖及び重鎖領域を指定する。これらの領域を、KabatのCDRと重複する境界を有する、ChothiaのCDRと呼んでもよい。KabatのCDRと重複するCDRを定義する他の境界は、Padlan(FASEB J.9:133〜139(1995)及びMacCallum(J Mol Biol 262(5):732〜45(1996))によって記載されている。さらに他のCDR境界定義は、上記のシステムの1つに厳密に従わなくてもよいが、それにも拘わらず、KabatのCDRと重複するが、特定の残基若しくは残基群又はさらにはCDR全体が抗原結合に有意に影響しないという予測又は実験的知見を考慮して、それらを短縮するか、又は伸長させることができる。本明細書で使用される方法は、これらのシステムのいずれかに従って定義されるCDRを使用してもよいが、好ましい態様は、Kabat若しくはChothia、又はその組合せの定義されたCDRを使用する。

本明細書で使用される用語「標準」残基とは、Chothia et al.(J.Mol.Biol.196:901〜907(1987);Chothia et al.,J.Mol.Biol.227:799(1992)、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)によって定義された特定の標準的なCDR構造を定義するCDR又はフレームワーク中の残基を指す。Chothia et al.によれば、多くの抗体のCDRの重要部分は、アミノ酸配列のレベルでの高い多様性にも拘わらず、ほぼ同一のペプチド骨格コンフォメーションを有する。それぞれの標準構造は、ループを形成するアミノ酸残基の連続するセグメントに関する主としてペプチド骨格ねじれのセットを特定する。

本明細書で使用される用語「ドナー」及び「ドナー抗体」とは、1つ又は2つ以上のCDRを提供する抗体を指す。好ましい態様では、ドナー抗体は、フレームワーク領域が得られる、又は誘導される抗体とは異なる種に由来する抗体である。ヒト化抗体の文脈では、用語「ドナー抗体」とは、1つ又は2つ以上のCDRを提供する非ヒト抗体を指す。

本明細書で使用される用語「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」とは、CDRを除く可変領域の残りの配列を指す。CDR配列の正確な定義を異なるシステムによって決定することができるため、フレームワーク配列の意味は、それに応じて異なる解釈に付される。6個のCDR(軽鎖のCDR−L1、−L2及び−L3並びに重鎖のCDR−H1、−H2及び−H3)はまた、軽鎖及び重鎖上のフレームワーク領域を、各鎖上の4つのサブ領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に分割し、CDR1はFR1とFR2の間に、CDR2はFR2とFR3の間に、及びCDR3はFR3とFR4の間に位置する。特定のサブ領域をFR1、FR2、FR3又はFR4として特定しないが、他者によって呼ばれるフレームワーク領域は、単一の天然の免疫グロブリン鎖の可変領域内の組み合わせたFRを表す。本明細書で使用される場合、FRは、4つのサブ領域の1つを表し、FR(複数)は、フレームワーク領域を構成する4つのサブ領域のうちの2つ以上を表す。

本明細書で使用される用語「生殖系列抗体遺伝子」又は「遺伝子断片」とは、特定の免疫グロブリンの発現のために遺伝子再配置及び変異をもたらす成熟プロセスを受けていない非リンパ系細胞によりコードされる免疫グロブリン配列を指す。例えば、Shapiro et al.,Crit.Rev.Immunol.22(3):183〜200(2002);Marchalonis et al.,Adv Exp Med Biol.484:13〜30(2001)を参照されたい。本発明の様々な態様により提供される利点の1つは、生殖系列抗体遺伝子が、成熟抗体遺伝子よりも、その種における個体に特徴的な必須アミノ酸配列構造を保存する可能性が高く、したがって、その種において治療的に使用された場合に外来起源に由来すると認識される可能性が低いという認識を利用するものである。

本明細書で使用される用語「重要」残基とは、抗体、特に、ヒト化抗体の結合特異性及び/又は親和性により多く影響する可変領域内のある特定の残基を指す。重要残基としては、限定されるものではないが、以下のうちの1つ又は2つ以上:CDRに隣接する残基、潜在的なグリコシル化部位(N−又はO−グリコシル化部位であってもよい)、稀な残基、抗原と相互作用することができる残基、CDRと相互作用することができる残基、標準的な残基、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の接触残基、Vernierゾーン内の残基、及び可変重鎖CDR1のChothiaの定義と、第1の重鎖フレームワークのKabatの定義との間で重複する領域中の残基が挙げられる。

用語「ヒト化抗体」は、一般的には、非ヒト種(例えば、ウサギ、マウスなど)に由来する重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部が、より「ヒトのように」、すなわち、ヒト生殖系列可変配列とより類似するように変化している抗体を指す。1つの型のヒト化抗体は、ヒトCDR配列が、対応する非ヒトCDR配列を置き換えるために非ヒトVH及びVL配列中に導入された、CDR移植抗体である。別の型のヒト化抗体は、少なくとも1つの非ヒトCDRが、ヒトフレームワーク中に挿入された、CDR移植抗体である。後者は、典型的には、本発明の焦点である。

特に、本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」は、目的の抗原に免疫特異的に結合し、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレームワーク(FR)領域と、実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)とを含む抗体又はそのバリアント、誘導体、類似体若しくは断片である。本明細書で使用される場合、CDRの文脈における用語「実質的に」とは、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも50、55、60、65、70、75又は80%、好ましくは、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRを指す。一態様では、ヒト化抗体は、非ヒト抗体CDRと比較して1つ又は2つ以上(例えば、1、2、3又は4つ)のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失を有するCDR領域を有する。さらに、非ヒトCDRを、公知の技術を使用して、より「ヒトのように」又はヒト身体と適合するように操作することができる。ヒト化抗体は、CDR領域の全部又は実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのものに一致し(すなわち、ドナー抗体)、フレームワーク領域の全部又は実質的に全部がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)c、Fv)の実質的に全部を含む。好ましくは、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含む。一部の態様では、ヒト化抗体は、軽鎖並びに重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含有する。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3、又はCH1、CH2、CH3、及びCH4を包含してもよい。一部の態様では、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含有する。一部の態様では、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含有する。特定の態様では、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖のみを含有する。本明細書で考察される一部の変異は一般的には「ヒト」でなくてもよいが、これらのものは「ヒト化」されていない本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤にとって不十分である。

ヒト化抗体を、IgY、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを包含する任意のクラスの免疫グロブリン、並びに限定されるものではないが、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を包含する任意のアイソタイプから選択することができる。ヒト化抗体は、1より多いクラス又はアイソタイプに由来する配列を含んでもよく、特定の定常ドメインを選択して、当業界で周知の技術を使用して所望のエフェクター機能を最適化することができる。

ヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域は、親配列と正確に一致する必要はなく、例えば、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークを、その部位のCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークのいずれかと正確に一致しないように、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失によって変異誘発することができる。しかしながら、好ましい態様では、そのような変異は広範囲に及ばないであろう。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも50、55、60、65、70、75又は80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、98%又は99%が、親FR及びCDR配列のものと一致するであろう。一態様では、1つ又は2つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失が、親FR及びCDR配列と比較して(例えば、オマリズマブ又はオマリズマブFab配列と比較して)ヒト化抗体中に存在してもよい。本明細書で使用される用語「コンセンサスフレームワーク」とは、コンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク領域を指す。本明細書で使用される用語「コンセンサス免疫グロブリン配列」とは、関連する免疫グロブリン配列のファミリー中に最も頻繁に存在するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,Germany 1987)を参照されたい)。免疫グロブリンファミリーにおいて、コンセンサス配列中の各位置は、ファミリー中にその位置で最も頻繁に存在するアミノ酸によって占められる。2つのアミノ酸が同等に頻繁に存在する場合、いずれかをコンセンサス配列中に包含させることができる。

本明細書で使用される場合、「Vernier」ゾーンとは、CDR構造を調整し、Foote及びWinter(1992,J.Mol.Biol.224:487〜499、参照により本明細書に組み込まれる)により記載されたように抗原に対する適合を微調整することができるフレームワーク残基のサブセットを指す。Vernierゾーン残基は、CDRの下にある層を形成し、CDRの構造及び抗体の親和性に影響し得る。

本明細書で使用される用語「中和」とは、本明細書に記載の発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤がIgEタンパク質に特異的に結合する場合の、IgEの生物活性の中和を指す。中和は、前記抗体のIgEへの結合の異なる様式の結果であってもよい。好ましくは、中和抗体は、IgEへの結合は、IgEの生物活性の中和をもたらす抗体である。好ましくは、中和結合タンパク質は、IgEに結合し、IgEの生物活性を少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、80%、85%、又はそれ以上低下させる。中和抗体によるIgEの生物活性の中和を、本明細書に記載のIgE生物活性の1つ又は2つ以上の指標を測定することによって評価することができる。

本明細書で使用される「中和モノクローナル抗体」は、IgEへの結合の際に、IgEの生物活性を部分的又は完全に阻害するか、又は減少させることができる、抗体分子の調製物を指すことが意図される。 本明細書で使用される用語「減弱」、「減弱させる」などは、血清IgEレベルの上昇により引き起こされる症状又は状態の重症度の低下又は減少を指す。

用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、免疫グロブリン又はT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のポリペプチド決定基を包含する。ある特定の態様では、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、又はスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面基を包含し、ある特定の態様では、特定の三次元構造特性、及び/又は特定の電荷特性を有してもよい。エピトープは、抗体により結合される抗原の領域である。ある特定の態様では、抗体は、それがタンパク質及び/又は高分子の複雑な混合物中のその標的抗原を優先的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われる。

本明細書で使用される用語「kon」は、当業界で公知のように抗体/抗原複合体を形成する、抗体の抗原への結合に関する結合速度定数を指すことが意図される。 本明細書で使用される用語「koff」は、当業界で公知のように抗体/抗原複合体からの抗体の解離に関する解離速度定数を指すことが意図される。 本明細書で使用される用語「kd」又は「kD」は、当業界で公知のように特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を指すことが意図される。

免疫学的結合相互作用の強度、又は親和性を、相互作用の解離定数(kD又はkd)を単位として表すことができ、kdが小さいほど、親和性が大きい、又は高いことを表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性を、当業界で周知の方法を使用して定量することができる。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成及び解離の速度を測定することを含み、これらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方向の速度に同等に影響する幾何学的パラメータに依存する。かくして、「結合速度定数」(「kon」)と、「解離速度定数」(「koff」)とを、濃度の算出並びに結合及び解離の実際の速度によって決定することができる(Nature 361:186〜87(1993))。koff/konの比は、親和性とは関連しない全パラメータの取り消しを可能にし、解離定数kdに等しい。Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem 59:439〜473。

用語「抗体コンジュゲート」は、治療剤又は細胞傷害剤などの第2の化学部分に化学的に連結された、抗体又は抗体断片又はその結合部分などの結合タンパク質を指す。本明細書で使用される用語「薬剤」は、化合物、化合物の混合物、生体高分子、又は生体物質から作製された抽出物を指す。

本明細書で使用される用語「結晶」及び「結晶化された」とは、結晶の形態で存在する抗体又はその抗原結合部分を指す。結晶は、固体状態の物質の1形態であり、アモルファス固体状態又は液体結晶状態などの他の形態とは異なる。結晶は、原子、イオン、分子(例えば、抗体などのタンパク質)、又は分子集合体(例えば、抗原/抗体複合体)の規則的な、反復する三次元アレイから構成される。これらの三次元アレイは、当業界でよく理解される特定の数的関係に従って配置される。結晶中で反復される基本単位、又は構成要素は、非対称単位と呼ばれる。所与の明確に定義された結晶学的対称に従う配置にある非対称単位の反復は、結晶の「単位格子」を提供する。全ての三次元における規則的変換による単位格子の反復は、結晶を提供する。Giege,R.and Ducruix,A.Barrett、「核酸及びタンパク質の結晶化、実際の手法(Crystallization of Nucleic Acids and Proteins, a Practical Approach)」、2nd ea.,pp.20 1〜16,Oxford University Press,New York,N.Y.,(1999)を参照されたい。

本明細書に記載される用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのいずれかの2個以上のヌクレオチドのポリマー形態又はいずれかの型のヌクレオチドの改変された形態を意味する。この用語は、一本鎖及び二本鎖形態のDNAを包含するが、好ましくは、二本鎖DNAである。

本明細書で使用される用語「単離されたポリヌクレオチド」は、その起源のため、「単離されたポリヌクレオチド」が、「単離されたポリヌクレオチド」が自然に見られる;それが自然に連結していないポリヌクレオチドに作動可能に連結される;又はより大きい配列の一部として自然に存在しないポリヌクレオチドの全部又は一部と結合していないポリヌクレオチド(例えば、ゲノム、cDNA、若しくは合成起源、又はそのいくつかの組合せの)を意味する。

本明細書で使用される用語「ベクター」は、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことが意図される。1つの型のベクターは、さらなるDNA断片をライゲートすることができる環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の型のベクターは、さらなるDNA断片をウイルスゲノム中にライゲートすることができるウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)を、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、それによって、それは宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に、「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態にあることが多い。本明細書では、プラスミドが最も一般的に使用される形態のベクターであるため、「プラスミド」及び「ベクター」を互換的に使用することができる。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの、そのような他の形態の発現ベクターを包含することが意図される。

用語「作動可能に連結された」とは、記載される成分が、その意図される様式で機能するのを可能にする関係にある並置(juxtaposition)を指す。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と適合する条件下で達成されるような様式でライゲートされる。「作動可能に連結された」配列は、目的の遺伝子と連続する発現制御配列と、目的の遺伝子を制御するためにトランスに、又は遠くで作用する発現制御配列との両方を包含する。本明細書で使用される用語「発現制御配列」とは、それらがライゲートされるコード配列の発現及びプロセッシングを行うのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセッシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;並びに必要に応じて、タンパク質分泌を増強する配列を包含する。そのような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なる;原核生物では、そのような制御配列は、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を包含する;真核生物では、一般に、そのような制御配列は、プロモーター及び転写終結配列を包含する。用語「制御配列」は、その存在が発現及びプロセッシングにとって必須である成分を包含することが意図され、その存在が有利であるさらなる成分、例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列をさらに包含してもよい。

本明細書で定義される「形質転換」とは、外因性DNAが宿主細胞に進入する任意のプロセスを指す。形質転換は、当業界で周知の様々な方法を使用して自然又は人工条件下で起こり得る。形質転換は、原核又は真核宿主細胞中への外来核酸配列の挿入のための任意の公知の方法に依拠してもよい。この方法は、形質転換される宿主細胞に基づいて選択され、限定されるものではないが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポフェクション、及び粒子ボンバードメントを包含してもよい。そのような「形質転換された」細胞は、挿入されたDNAが、自己複製性プラスミドとして、又は宿主染色体の一部として複製することができる安定に形質転換された細胞を包含する。それらはまた、限られた時間にわたって、挿入されたDNA又はRNAを一過的に発現する細胞も包含する。

本明細書で使用される用語「組換え宿主細胞」(又は単に、「宿主細胞」)は、外因性DNAが導入された細胞を指すことが意図される。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されることが理解されるべきである。ある特定の改変が、変異又は環境的影響のためその後の世代に生じ得るため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一でなくてもよいが、本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に依然として包含される。好ましくは、宿主細胞は、任意の生物界から選択される原核及び真核細胞を包含する。好ましい真核細胞は、原生生物、真菌植物及び動物細胞を包含する。最も好ましくは、宿主細胞は、限定されるものではないが、原核細胞系である大腸菌(E.coli);哺乳動物細胞系CHO、HEK293及びCOS;昆虫細胞系Sf9;並びに真菌細胞サッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)を包含する。

標準的な技術を、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、及び組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用することができる。酵素反応及び精製技術を、製造業者の明細書に従って、又は当業界で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載のように実施することができる。前記技術及び手順を、一般的には、当業界で周知であり、本明細書を通して引用及び考察される様々な一般的且つより具体的な参考文献に記載されたような従来の方法に従って実施することができる。例えば、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたい。

本明細書で使用される用語「有効量」とは、障害又はその1つ若しくは2つ以上の症状の重症度及び/若しくは持続期間を軽減する、若しくは改善する、障害の進行を防止する、障害の退縮を引き起こす、障害と関連する1つ若しくは2つ以上の症状の再発、発達、開始若しくは進行を防止する、障害を検出する、又は別の療法(例えば、予防剤若しくは治療剤)の予防若しくは治療効果(単数又は複数)を増強若しくは改善するのに十分なものである療法の量を指す。

本明細書に提供されるヒトIgEタンパク質の特定の領域又はエピトープマッピングを、本発明によって提供される抗体のいずれか1つと共に当業界で公知の任意の好適なエピトープマッピング法によって同定することができる。そのような方法の例は、抗体によって認識されるエピトープの配列を含有する抗体に特異的に結合することができる最小の断片を用いて、本発明の抗体への結合についてIgEに由来する様々な長さのペプチドをスクリーニングすることを包含する。IgEペプチドを、合成的に、又はIgEタンパク質のタンパク質分解的消化によって生成することができる。抗体に結合するペプチドを、例えば、質量分析によって同定することができる。別の例では、NMR分光法又はX線結晶解析を使用して、本発明の抗体により結合されるエピトープを同定することができる。IgEの構造及び本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤が結合するIgE上のエピトープを決定するためには、結晶化及びX線結晶解析技術が好ましい。

本発明における使用のための抗体を、例えば、Babcook,J.et al.,1996, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843〜7848l;WO92/02551;WO2004/051268及び国際特許出願WO2004/106377により記載された方法により、特異的抗体の産生のために選択された単一のリンパ球から生成された免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングし、発現させることによる単一リンパ球抗体法を使用して生成することができる。抗体のためのスクリーニングを、ヒトIgEへの結合を測定するためのアッセイ及び/又はIgEがその天然の受容体に結合するのを遮断する能力を測定するためのアッセイを使用して実施することができる。結合アッセイの例は、ELISAである。

ヒト化抗体(CDR移植抗体を包含する)は、非ヒト種(例えば、ウサギ又はマウス)に由来する1つ又は2つ以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域とを有する抗体分子である(例えば、米国特許第5,585,089号;WO91/09967を参照されたい)。CDR全体よりもむしろ、CDRの特異性決定残基を導入することだけが必要であることが理解されるであろう(例えば、Kashmiri et al.,2005,Methods,36,25〜34を参照されたい)。ヒト化抗体は、任意に、CDRが誘導された非ヒト種から誘導される1つ又は2つ以上のフレームワーク残基をさらに含んでもよい。後者は、ドナー残基と呼ばれることが多い。本発明の抗体分子は、好適には、2nM未満の結合親和性(KD)を有する。単離された天然若しくは組換えIgE又は好適な融合タンパク質/ポリペプチドを使用する、本明細書の例(例6を参照されたい)に記載されるような、BIAcoreを包含する、当業界で公知の任意の好適な方法を使用して、親和性を測定することができる。

当業者であれば、従来の技術、例えば、Scatchard et al.(Ann.KY.Acad.Sci.51:660〜672(1949))により記載されたものを使用して、又はBIAcoreなどのシステムを使用する表面プラズモン共鳴(SPR)により、本発明の抗体又は抗原結合剤の親和性、並びに結合剤(抗体など)が結合を阻害する程度を決定することができる。表面プラズモン共鳴については、標的分子を固相上に固定し、フローセルと共に泳動する移動相中のリガンドに曝露する。固定された標的へのリガンド結合が起こる場合、部分屈折率が変化し、SPR角の変化をもたらし、反射した光の強度の変化を検出することにより、リアルタイムでモニタリングすることができる。SPRシグナルの変化の速度を分析して、結合反応の結合相及び解離相に関する見かけの速度定数を得ることができる。これらの値の比は、見かけの平衡定数(親和性)を与える(例えば、Wolff et al,Cancer Res.53:2560〜65(1993)を参照されたい)。

本発明により提供される抗体の親和性を、当業界で公知の任意の好適な方法を使用して変化させることができることが理解されるであろう。したがって、本発明は、IgEに対する改善された親和性を有する、本発明の抗体分子のバリアントにも関する。そのようなバリアントを、CDRの変異(Yang et al.,J.Mol.Biol.,254,392〜403,1995)、鎖シャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology,10,779〜783,1992)、大腸菌の変異株の使用(Low et al.,J.Mol.Biol.,250,359〜368,1996)、DNAシャッフリング(Patten et al.,Curr.Opin.Biotechnol.,8,724〜733,1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al.,J.Mol.Biol.,256,77〜88,1996)及びセクシャルPCR(Crameri et al.,Nature,391,288〜291,1998)を包含するいくつかの親和性成熟プロトコールによって取得することができる。Vaughan et al.(上掲)は、親和性成熟のこれらの方法を考察している。

ヒト化抗体及び抗原結合剤 本発明の一側面では、ヒト化抗IgEモノクローナル抗体及び抗原結合剤が本明細書で提供される。ヒト化抗体は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワーク中に移植されたドナー抗体(例えば、マウス又はウサギモノクローナル抗体などの非ヒト抗体)に由来する1つ又は2つ以上のCDR(必要に応じて、1つ又は2つ以上の改変されたCDRを包含する)を含有する抗体である。概説については、Vaughan et al,Nature Biotechnology,16,535〜539,1998を参照されたい。

一態様では、CDR全体を導入するよりもむしろ、上記のCDRのいずれか1つに由来する1つ又は2つ以上の特異性決定残基だけをヒト抗体フレームワークに導入する(例えば、Kashmiri et al.,2005,Methods,36,25〜34を参照されたい)。一態様では、本明細書に記載の1つ又は2つ以上のCDRに由来する特異性決定残基だけを、ヒト抗体フレームワークに導入する。別の態様では、本明細書に記載のそれぞれのCDRに由来する特異性決定残基だけを、ヒト抗体フレームワークに導入する。 CDR又は特異性決定残基を移植する場合、マウス、ウサギ、霊長類及びヒトフレームワーク領域を包含する、CDRが誘導されるドナー抗体のクラス/型を考慮した任意の好適なアクセプター可変領域フレームワーク配列を使用することができる。

好適には、本発明によるヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域並びに本明細書に具体的に提供される1つ又は2つ以上のCDRを含む可変ドメインを有する。かくして、一態様では、可変ドメインがヒトアクセプターフレームワーク領域(本明細書に記載の任意の変異を有する)と、非ヒトドナーCDRとを含むヒトIgEに結合するヒト化モノクローナル抗体が提供される。

CDR移植抗体の構築は、一般的には、マウスモノクローナル抗体のCDRが、長いオリゴヌクレオチドを使用する部位特異的変異誘発によりヒト免疫グロブリンの可変ドメインのフレームワーク領域上に移植されるプロセスを開示し、本明細書に組み込まれる欧州特許出願EP−A−0239400に記載されている。CDRは、抗体の抗原結合特異性を決定付け、可変ドメインのフレームワーク領域上に担持される比較的短いペプチド配列である。

CDR移植によるモノクローナル抗体のヒト化に関する最初期の研究は、NPなどの合成抗原を認識するモノクローナル抗体に関して実行された。しかしながら、リゾチームを認識するマウスモノクローナル抗体及びヒトT細胞上の抗原を認識するラットモノクローナル抗体を、CDR移植によってヒト化した例が、それぞれ、Verhoeyen et al.(Science,239,1534〜1536,1988)及びRiechmann et al(Nature,332,323〜324,1988)に記載されている。抗体ヒト化は、マウス、ラット、ヤギ、又はウサギ抗体などの非ヒト抗体のCDRを、「類似する」ヒトフレームワーク(アクセプター)上に移植すること、及びドナーモノクローナル抗体から手動で選択され、元のCDRコンフォメーションを維持するためにヒトアクセプターフレームワーク中に組み込まれる最小数の重要フレームワーク残基(復帰変異)を選択することによって達成される。そのような方法は、当業界で公知であり、本明細書に組み込まれる、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、Padlan,Molecular Immunology 28(4/5):489〜498(1991);Studnicka et al.,Protein Engineering 7(6):805〜814(1994);Roguska. et al.,PNAS 91:969〜973(1994);PCT公開WO91/09967、PCT/:US98/16280、US96/18978、US91/09630、US91/05939、US94/01234、GB89/01334、GB91/01134、GB92/01755;WO90/14443、WO90/14424、WO90/14430、EP229246、EP592,106;EP519,596、EP239,400、米国特許第5,565,332号、第5,723,323号、第5,976,862号、第5,824,514号、第5,817,483号、第5,814,476号、第5,763,192号、第5,723,323号、第5,766,886号、第5,714,352号、第6,204,023号、第6,180,370号、第5,693,762号、第5,530,101号、第5,585,089号、第5,225,539号、第4,816,567号に記載されたものを包含する。

ヒト可変重鎖及び軽鎖生殖系列サブファミリー分類を、Kabatの生殖系列サブグループ指定から誘導することができる:特定のVH配列については、VH1、VH2、VH3、VH4、VH5、VH6若しくはVH7並びにフレームワーク4のための特定の可変重鎖連結群については、JH1、JH2、JH3、JH4、JH5、及びJH6;フレームワーク1、2及び3のための特定のVLカッパ配列については、VK1、VK2、VK3、VK4、VK5若しくはVK6並びにフレームワーク4のための特定のカッパ連結群については、JK1、JK2、JK3、JK4若しくはJK5;又はフレームワーク1、2及び3のための特定のVLラムダ配列については、VL1、VL2、VL3、VL4、VL5、VL6、VL7、VL8、VL9若しくはVL10並びにフレームワーク4のための特定のラムダ連結群については、JL1、JL2、JL3若しくはJL7。

存在する場合、本発明の抗体分子の定常領域ドメインを、抗体分子の提唱された機能、特に、必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択することができる。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特定の態様では、抗体分子が治療的使用を意図され、抗体エフェクター機能が必要とされる場合、特に、IgG1及びIgG3アイソタイプの、ヒトIgG定常領域ドメインを使用することができる。或いは、抗体分子が治療目的を意図され、抗体エフェクター機能が必要とされない場合、IgG2及びIgG4アイソタイプを使用することができる。これらの定常領域ドメインの配列バリアントを使用することもできることが理解されるであろう。例えば、Angal et al.,Molecular Immunology,1993,30(1),105〜108に記載されたように、241位のセリンがプロリンに変化したIgG4分子を使用することができる。また、抗体が様々な翻訳後修飾を受けてもよいことも当業者によって理解されるであろう。これらの修飾の型及び程度は、抗体を発現させるのに使用される宿主細胞系並びに培養条件に依存することが多い。そのような修飾は、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化及びアスパラギン脱アミド化の変化を包含してもよい。よくある修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用に起因するカルボキシ末端塩基性残基(リシン又はアルギニンなど)の喪失である(Harris,RJ.Journal of Chromatography 705:129〜134,1995に記載されている)。したがって、抗体重鎖のC末端リシンは存在しなくてもよい。

CDR及びヒトフレームワーク改変 Riechmann et al.,は、CDRのみの導入(Kabat(Kabat et al.(上掲)及びWu et. al.,J.Exp.Med.,132,211〜250,1970)により定義されたもの)では、CDR移植産物において満足のいく抗原結合活性を提供するには十分ではないことを見出した。いくつかのフレームワーク残基が、ドナーフレームワーク領域のものに対応するように、それらを変化させる必要があることが見出された。どのフレームワーク残基を変化させる必要があるかを選択するための提唱された基準は、本明細書に組み込まれる国際特許出願WO90/07861に記載されている。

ヒト可変ドメインフレームワークが、CDRが起源とする非ヒト可変フレームワークと同じか、又は類似するコンフォメーションを採用する場合、非ヒトCDRの、ヒト可変ドメインフレームワークへの置換は、十中八九、CDRの正確な空間定位の保持をもたらす。これは、フレームワーク配列が、CDRが誘導された非ヒト可変フレームワークドメインと高い程度の配列同一性を示すヒト抗体に由来するヒト可変ドメインを取得することによって達成される。上記のように、重鎖及び軽鎖可変フレームワーク領域を、同じか、又は異なるヒト抗体配列から誘導することができる。ヒト抗体配列は、天然に存在するヒト抗体の配列であってよいか、又はいくつかのヒト抗体のコンセンサス配列であってもよい。Kettleborough et al,Protein Engineering 4:773(1991);Kolbinger et al.,Protein Engineering 6:971(1993)及びCarter et al,WO92/22653を参照されたい。

非ヒトドナー免疫グロブリン及び適切なヒトアクセプター免疫グロブリンの相補性決定領域を同定したら、次のステップは、もしあれば、得られるヒト化抗体の特性を最適化するために置換すべきであるこれらの成分に由来する残基を決定することである。一般に、非ヒト残基の導入はヒトにおいてヒト抗ドナー抗体(HADA)応答を惹起する抗体のリスクを増大させるため、ヒトアミノ酸残基の、非ヒトアミノ酸残基による置換を最小化するべきである。免疫応答を決定する当業界で認識された方法を実行して、特定の宿主において、又は臨床試験中にHADA応答をモニタリングすることができる。ヒト化抗体を投与された宿主に、前記療法の投与の開始時に、及びそれを通して、免疫原性評価を与えることができる。HADA応答は、例えば、表面プラズモン共鳴技術(BIACORE)及び/又は固相ELISA分析を包含する、当業者には公知の方法を使用して、宿主に由来する血清試料中の、ヒト化治療試薬に対する抗体を検出することによって測定される。

置換(本明細書では「変異」とも言う)のためのアミノ酸残基の選択は、部分的には、コンピュータモデリングによって決定される。免疫グロブリン分子の三次元画像を生成するためのコンピュータハードウェア及びソフトウェアは、本明細書に記載される。一般に、免疫グロブリン鎖又はそのドメインの解明された構造から出発して、分子モデルを生成する。モデリングされる鎖を、解明された三次元構造の鎖又はドメインとのアミノ酸配列類似性について比較し、最も高い配列類似性を示す鎖又はドメインを、分子モデルの構築のための出発点として選択する。少なくとも50%の配列同一性を有する鎖又はドメインをモデリングのために選択し、好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%又はそれ以上の配列同一性を有するものを、モデリングのために選択する。解明された出発構造を改変して、モデリングされる免疫グロブリン鎖又はドメイン中の実際のアミノ酸と、出発構造中のものとの差異を可能にする。次いで、改変された構造を、複合免疫グロブリンに集合させる。最後に、エネルギー最小化によって、また、全ての原子が、互いに適切な距離にあること、並びに結合の長さ及び角度が化学的に許容される限界の範囲内にあることを検証することによって、モデルを精緻化する。

置換のためのアミノ酸残基の選択を、部分的には、特定の位置のアミノ酸の特徴の検査、又は特定のアミノ酸の置換若しくは変異誘発の効果の経験的観察によって決定することもできる。例えば、アミノ酸が、ドナー可変領域フレームワーク残基と、選択されたヒト可変領域フレームワーク残基との間で異なる場合、通常、ヒトフレームワークアミノ酸を、アミノ酸が、 (1)抗原に直接的に非共有結合する、 (2)CDR領域に隣接する、 (3)そうでなければ、CDR領域と相互作用する(例えば、コンピュータモデリングによって決定された場合にCDR領域の約3〜6オングストローム以内にある)、又は (4)VL−VH境界面に関与する ことが合理的に予測される場合、ドナー抗体に由来する等価なフレームワークアミノ酸によって置換するべきである。

「抗原に直接的に非共有結合する」残基は、例えば、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などにより、確立された化学的な力に従って抗原上のアミノ酸と直接的に相互作用する良好な確率を有するフレームワーク領域中の位置のアミノ酸を包含する。CDR及びフレームワーク領域は、Kabat et al.又はChothia et al,上掲によって定義される。Kabat et al,上掲により定義されるフレームワーク残基が、Chothia et al,上掲により定義される構造ループ残基を構成する場合、ドナー抗体中に存在するアミノ酸を、ヒト化抗体中での置換のために選択することができる。「CDR領域に隣接する」残基は、ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列中の1つ又は2つ以上のCDRに直接隣接する位置、例えば、Kabatにより定義されるCDR、又はChothiaにより定義されるCDRに直接隣接する位置のアミノ酸残基を包含する(例えば、Chothia and Lesk 1MB 196:901(1987)を参照されたい)。これらのアミノ酸は、CDR中のアミノ酸と相互作用し、アクセプターから選択される場合、ドナーCDRを変形させ、親和性を減少させる可能性が特に高い。さらに、隣接アミノ酸は、抗原と直接相互作用してもよく(参照により本明細書に組み込まれるAmit et al,Science,233:747(1986))、ドナーからのこれらのアミノ酸の選択は、元の抗体における親和性を提供する全ての抗原接触を保持することが望ましい。本明細書に記載されるように、FR配列を置換/変異させて、IgEに対する本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤の親和性を改善する(及び/又はIgEのCε2上のその相互作用若しくはエピトープを延長させる)こともできる。

「そうでなければCDR領域と相互作用する」残基は、CDR領域をもたらすのに十分な空間定位にある二次構造分析によって決定されるものを包含する。一態様では、「そうでなければCDR領域と相互作用する」残基は、ドナー免疫グロブリンの三次元モデル(例えば、コンピュータにより生成されたモデル)を分析することによって同定される。典型的には、元のドナー抗体の三次元モデルは、CDRの外部のある特定のアミノ酸が、CDRに近く、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などによりCDR中のアミノ酸と相互作用する良好な確率を有することを示す。これらのアミノ酸位置で、アクセプター免疫グロブリンアミノ酸よりもむしろドナー免疫グロブリンアミノ酸を選択することができる。この基準によるアミノ酸は、一般に、CDR中のいくつかの原子の約3オングストローム単位(A)以内に側鎖原子を有し、上記に列挙されたものなどの、確立された化学的な力に従ってCDR原子と相互作用することができる原子を含有しなければならない。水素結合を形成し得る原子の場合、3Åは、その核の間で測定されるが、結合を形成しない原子については、3Åは、そのファンデルワールス表面間で測定される。したがって、後者の場合、核は、相互作用することができると考えられる原子については、約6Å(3A+ファンデルワールス半径の和)以内になければならない。多くの場合、核は、4又は5〜6Å間隔であろう。アミノ酸がCDRと相互作用することができるかどうかを決定する際に、構造の観点から、重鎖CDR2の最後の8個のアミノ酸はフレームワークの部分としてより多く振る舞うため、これらのアミノ酸をCDRの部分とは考えないことが好ましい。

CDR(又はFR)中のアミノ酸と相互作用することができるアミノ酸を、さらに別の方法で同定することができる。各フレームワークアミノ酸の溶媒接近表面積は、2つの方法で:(1)インタクトな抗体中で、及び(2)CDRが除去された抗体からなる仮説分子中で算出される。約10平方オングストローム以上のこれらの数字間の有意差は、溶媒へのフレームワークアミノ酸の接近が、CDRによって少なくとも一部遮断され、したがって、そのアミノ酸がCDRとの接触していることを示す。アミノ酸の溶媒接近表面積を、当業界で公知のアルゴリズム(例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれる、Connolly,J.Appl.Cryst.16:548(1983)及びLee and Richards,J.Mol.Biol.55:379(1971))を使用して、抗体の三次元モデルに基づいて算出することができる。フレームワークアミノ酸はまた、場合により、順にCDRと接触する別のフレームワークアミノ酸のコンフォメーションに影響することにより、CDRと間接的に相互作用してもよい。

フレームワーク中のいくつかの位置の特定のアミノ酸は、多くの抗体においてCDRと相互作用することができることが知られている(Chothia and Lesk,上掲、Chothia et al,上掲及びTramontano et al,J.Mol.Biol.215:175(1990)、全て参照により本明細書に組み込まれる)。注目すべきことに,軽鎖の2、48、64及び71位並びに重鎖の71及び94位のアミノ酸(Kabatによる番号付け)は、多くの抗体においてCDRと相互作用することができることが知られている。軽鎖中の35位並びに重鎖中の93及び103位のアミノ酸も、CDRと相互作用する可能性が高い。これらの全ての番号付けられた位置で、アクセプターアミノ酸よりもむしろドナーアミノ酸の選択(それらが異なる場合)がヒト化免疫グロブリン中で行われることが好ましい。他方、軽鎖の最初の5アミノ酸などの、CDR領域と相互作用することができるある特定の残基は、ヒト化免疫グロブリン中の親和性を失うことなくアクセプター免疫グロブリンから選択されることもある。

「VL−VH境界面に関与する」残基又は「パッキング残基」は、例えば、Novotny and Haber,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:4592〜66(1985)又はChothia et al,上掲によって定義されたVLとVHとの境界面にある残基を包含する。一般に、通常ではないパッキング残基を、それらがヒトフレームワーク中にあるものと異なる場合、ヒト化抗体中で保持するべきである。

一般に、上記の基準を満たす1つ又は2つ以上のアミノ酸が置換される。一部の態様では、上記の基準を満たすアミノ酸の全部又は多くが置換される。場合により、特定のアミノ酸が上記の基準を満たすかどうか、また、一方がその特定の置換を有し、他方が有さない代替的なバリアント免疫グロブリンが産生されるかどうかに関するいくらかの不明確性がある。そのように産生された代替的なバリアント免疫グロブリンを、所望の活性について本明細書に記載のアッセイのいずれかにおいて試験し、好ましい免疫グロブリンを選択することができる。

通常、ヒト化抗体中のCDR領域は実質的に同一であり、より通常は、ドナー抗体の対応するCDR領域と同一である。通常は望ましいものではないが、得られるヒト化免疫グロブリンの結合親和性に検知できるほどに影響することなく、CDR残基の1つ又は2つ以上の保存的アミノ酸置換を作ることができる場合もある。保存的又は類似的置換は、例えば、イソロイシン又はバリンに置換されるロイシンなどの組合せが意図される。互いに置換することができることが多い他のアミノ酸としては、限定されるものではないが、 フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸); リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸); アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸); アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);並びに、 システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸) が挙げられる。

置換のためのさらなる候補は、その位置でヒト免疫グロブリンにとって通常ではない、又は「稀」であるアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸を、ドナー抗体の等価な位置に由来する、又はより典型的なヒト免疫グロブリンの等価な位置に由来するアミノ酸で置換することができる。例えば、アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域中のアミノ酸がその位置にとって稀であり、ドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸がヒト免疫グロブリン配列中のその位置にとって共通である場合;又は他のヒト配列と比較して、アクセプター免疫グロブリン中のアミノ酸がその位置にとって稀であり、ドナー免疫グロブリン中の対応するアミノ酸も稀である場合、置換が望ましい。これらの基準は、ヒトフレームワーク中の標準でないアミノ酸が抗体構造を破壊しないことを確保するのに役立つ。さらに、異常なヒトアクセプターアミノ酸を、ヒト抗体にとって偶然に典型的であるドナー抗体に由来するアミノ酸で置き換えることにより、ヒト化抗体の免疫原性を低くすることができる。

本明細書で使用される用語「稀」とは、配列の代表試料中の配列の約20%未満であるが、通常は約10%未満でその位置に存在するアミノ酸を示し、本明細書で使用される用語「共通」とは、代表試料中の配列の約25%を超えるが、通常は、約50%を超えて存在するアミノ酸を示す。例えば、全てのヒト軽鎖及び重鎖可変領域配列は、それぞれ、互いに特に相同であり、ある特定の重要な位置に同じアミノ酸を有する配列の「サブグループ」にグループ化される(Kabat et al,上掲)。ヒトアクセプター配列中のアミノ酸がヒト配列間で「稀」又は「共通」であるかどうかを決定する場合、アクセプター配列と同じサブグループ中のこれらのヒト配列のみを考慮することが好ましいことが多い。

置換のためのさらなる候補は、稀な、又は通常でないドナーフレームワーク残基に対応するアクセプターフレームワーク残基である。稀な、又は通常でないドナーフレームワーク残基は、その位置でドナー抗体にとって稀であるか、又は通常ではない(本明細書に定義される)ものである。ドナー抗体については、サブグループを、Kabatに従って決定し、コンセンサスとは異なる残基位置を同定することができる。これらのドナー特異的差異は、活性を増強する、ドナー配列中の体細胞変異を示し得る。結合に影響すると予測される通常でない残基は保持されるが、結合にとって重要ではないと予測される残基を置換することができる。

置換のためのさらなる候補は、アクセプターフレームワーク領域中に存在する非生殖系列残基である。例えば、アクセプター抗体鎖(すなわち、ドナー抗体鎖と有意な配列同一性を有するヒト抗体鎖)を、生殖系列抗体鎖(同様に、ドナー抗体と有意な配列同一性を有する)と整列させる場合、アクセプター鎖フレームワークと生殖系列鎖フレームワークとの間で一致しない残基を、生殖系列配列に由来する対応する残基と置換することができる。

上記で考察された特定のアミノ酸置換以外に、ヒト化免疫グロブリンのフレームワーク領域は、それらが誘導されたヒト抗体のフレームワーク領域と通常は実質的に同一であり、より通常は、同一である(本発明のために本明細書に記載のものを除く)。勿論、フレームワーク領域中の多くのアミノ酸は、抗体の特異性又は親和性にほとんど寄与しないか、又は直接寄与しない。かくして、フレームワーク残基の多くの個々の保存的置換は、得られるヒト化免疫グロブリンの特異性又は親和性の検知できる変化なしに許容され得る。かくして、一態様では、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列又はそのような配列のコンセンサスに対して少なくとも65、75又は85%の配列類似性又は同一性を有する。別の態様では、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列又はそのような配列のコンセンサスに対して少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは96%、97%、98%、又は99%の配列類似性又は同一性を有する。一般に、しかしながら、そのような置換は望ましくない(本明細書に記載のものを除く)。

本明細書で使用される場合、同一性及び類似性の程度を、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York, 1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M., and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、Sequence Analysis Primer,Gribskov,M. and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、NCBIから入手可能なBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403〜410;Gish,W. & States,D.J.1993,Nature Genet.3:266〜272. Madden,T.L. et al.,1996,Meth. Enzymol.266:131〜141;Altschul,S.F. et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389〜3402;Zhang,J. & Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649〜656に記載のように容易に算出することができる。

参照により本明細書に組み込まれる、Vaughan et al.(Nature Biotechnology,16,535〜539,1998)を包含する、CDR移植抗体を考察するいくつかの概説が公開されている。

本発明の抗IgE抗体は、例えば、WO2007/024715に開示されたDVD−Ig分子、又はWO2011/030107に記載されたいわゆる(FabFv)2Fcのように、さらなる追加の結合ドメインを包含してもよい。かくして、本明細書で使用される抗体は、二価、三価又は四価完全長抗体を包含する。

抗原結合剤 抗原結合剤として、単鎖抗体(すなわち、完全長重鎖及び軽鎖);Fab、改変Fab、Fab’、改変Fab’、F(ab’)2、Fv、Fab−Fv、Fab−dsFv、例えば、WO2001090190に記載された単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、二価、三価又は四価抗体、Bis−scFv、ダイアボディ、トリボディ、トリアボディ、テトラボディ及び上記のいずれかのエピトープ−抗原結合剤(例えば、Holliger and Hudson,2005,Nature Biotech.23(9):1126〜1136;Adair and Lawson,2005,Drug Design Reviews−Online 2(3),209〜217を参照されたい)が挙げられる。これらの抗体断片を作出し、製造するための方法は、当業界で周知である(例えば、Verma et al.,1998,Journal of Immunological Methods,216,165〜181を参照されたい)。Fab−Fv形式は、WO2009/040562に初めて開示され、そのジスルフィド安定化バージョンであるFab−dsFvは、WO2010/035012に初めて開示された。本発明における使用のための他の抗体断片としては、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170、及びWO2005/003171に記載されたFab及びFab’断片が挙げられる。多価抗体は、多特異性、例えば、二特異性を含んでもよいか、又は単一特異性であってもよい(例えば、WO92/22583及びWO05/113605を参照されたい)。後者の1つのそのような例は、WO92/22583に記載されたTri−Fab(又はTFM)である。

典型的なFab’分子は、重鎖が可変領域VH、定常ドメインCH1及び天然の、又は改変されたヒンジ領域を含み、軽鎖が可変領域VL及び定常ドメインCLを含む、重鎖と軽鎖の対を含む。

一態様では、F(ab’)2を作出するために本開示によるFab’のダイマーが提供され、例えば、ダイマー化は、本明細書に記載の天然ヒンジ配列、若しくはその誘導体、又は合成ヒンジ配列を介するものであってよい。 抗体結合ドメインは、一般的には、3個は重鎖に由来し、3個は軽鎖に由来する6個のCDRを含むであろう。一態様では、CDRは、フレームワーク中にあり、一緒になって可変領域を形成する。かくして、一態様では、抗原結合剤は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含むIgEに特異的な結合ドメインを包含する。

IgEに結合する抗体の能力を有意に変化させることなく、上記又は下記に記載される本発明により提供されるCDR又は他の配列(例えば、可変ドメイン)に対して、1つ又は2つ以上(例えば、1、2、3又は4つ)のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失を加えることができることが理解されよう。当業者であれば、例えば、本明細書、特に、例に記載の方法を使用することにより、任意のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失の効果を容易に試験することができる。

一態様では、本発明の抗IgE抗体又は抗原結合剤の、IgEに対する結合親和性(KD)が、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、又は0.3nM未満となるように、本発明により提供される抗体又は断片において使用されるCDR又はフレームワーク領域に対して、1つ又は2つ以上(例えば、1、2、3又は4つ)のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失を加えることができる。一態様では、KDを、例えば、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、又は0.3nM未満に低下させるために、CDR、フレームワーク領域、又はその両方に対して改変が加えられた改変されたヒト化抗体が提供される。 本発明の抗体断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、ダイアボディ、scFAb、dFv、単一ドメイン軽鎖抗体、dsFv、CDRを含むペプチドなどが挙げられる。

Fabは、IgGをプロテアーゼであるパパインで処理すること(H鎖の224位のアミノ酸残基で切断される)によって得られる断片のうち、H鎖のN末端側の約半分と、L鎖全体が、ジスルフィド結合を介して一緒に結合された、約50,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体断片である。 IgEと特異的に反応する本発明のヒト化CDR移植抗体を、プロテアーゼであるパパインで処理することによって、本発明のFabを取得することができる。また、抗体のFabをコードするDNAを、原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクター中に挿入すること、及びそのベクターを、原核生物又は真核生物に導入して、Fabを発現させることによって、Fabを産生することもできる。

F(ab’)2は、IgGをプロテアーゼであるペプシンで処理することによって得られる断片のうち、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合したFabよりもわずかに大きい、約100,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体断片である。

IgEと特異的に反応するヒトCDR移植抗体を、プロテアーゼ、ペプシンで処理することによって、本発明のF(ab’)2を取得することができる。また、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を介して、以下に記載されるFab’を結合させることによって、F(ab’)2を産生することができる。 Fab’は、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる、約50,000の分子量及び抗原結合活性を有する抗体断片である。

IgEと特異的に反応するF(ab’)2を、還元剤であるジチオトレイトールで処理することによって、本発明のFab’を取得することができる。また、IgEと特異的に反応する本発明のヒトCDR移植抗体のFab’をコードするDNAを、原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクター中に挿入すること、及びそのベクターを、原核生物又は真核生物に導入して、Fab’を発現させることによって、本発明のFab’を産生することもできる。 scFvは、1個の鎖のVHと1個の鎖のVLとが、12個以上の残基の適切なペプチドリンカー(P)を使用して連結され、抗原結合活性を有する、VH−P−VL又はVL−P−VHポリペプチドである。

本発明のIgEと特異的に反応するヒトCDR移植抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得すること、scFvをコードするDNAを構築すること、そのDNAを、原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクター中に挿入すること、次いで、発現ベクターを、原核生物又は真核生物に導入して、scFvを発現させることによって、本発明のscFvを産生することができる。

本発明のFab断片を、直接的に、又はリンカーを介して、scFvに連結することができる。本明細書で使用される「単鎖可変断片」又は「scFv」とは、VHとVL可変ドメインの間のペプチドリンカー、例えば、配列番号151であるアミノ酸配列を有するペプチドリンカーによって安定化される単鎖可変断片を指す。Fab断片への連結は、化学的コンジュゲーションであってもよいが、最も好ましくは、翻訳融合物、すなわち、それぞれの配列が発現ベクターによって配列中でコードされる遺伝子融合物である。したがって、リンカーは、典型的には、本明細書に記載のアミノ酸リンカーである。Fab断片に連結された本発明のscFvは、in vivoでの抗体融合タンパク質の半減期を延長させるために、血清担体タンパク質に結合することができる。そのような方法での半減期の延長は、IgE結合とは無関係であり、有利であり得る。

本明細書で使用される「血清担体タンパク質」とは、scFvが結合し得る任意の好適な血漿担体タンパク質を指し、一例では、血清担体タンパク質は、チロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1−酸糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノゲン及びアルブミン、又はそのいずれかの断片から選択される。典型的には、scFvは、アルブミン、好ましくは、ヒト血清アルブミンに結合する。 任意の好適なアルブミン結合scFvを、本発明の抗体融合タンパク質中に組み込むことができる。好適なアルブミン結合ドメインは、当業界で以前に記載されている。 ダイアボディは、同じか、又は異なる抗原結合特異性を有するscFv’がダイマーを形成し、同じ抗原に対する二価抗原結合活性又は異なる抗原に対する2つの特異的抗原結合活性を有する抗体断片である。

IgEと特異的に反応する抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得すること、3〜10個の残基のポリペプチドリンカーを有するscFvをコードするDNAを構築すること、そのDNAを、原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクター中に挿入すること、次いで、発現ベクターを、原核生物又は真核生物に導入して、ダイアボディを発現させることによって、本発明のダイアボディ、例えば、IgEと特異的に反応する二価ダイアボディを産生することができる。 dsFvは、VH及びVLのそれぞれの1個のアミノ酸残基が、システイン残基間のジスルフィド結合によってシステイン残基で置換されたポリペプチドを結合させることによって得られる。システイン残基で置換されるアミノ酸残基を、Reiter et al.(Protein Engineering,7,697(1994))によって示された方法による抗体の三次元構造評価に基づいて選択することができる。

本発明のIgEと特異的に反応するヒトCDR移植抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得すること、dsFvをコードするDNAを構築すること、そのDNAを原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクター中に挿入すること、次いで、発現ベクターを、原核生物又は真核生物に導入して、dsFvを発現させることによって、本発明のdsFvを産生することができる。 CDRを含むペプチドは、H鎖及びL鎖CDRの少なくとも1つの領域を包含させることによって構成される。複数のCDRを、直接的に、又は適切なペプチドリンカーを介して結合させることができる。

IgEと特異的に反応するヒトCDR移植抗体のVH及びVLのCDRをコードするcDNAを取得すること、CDRをコードするDNAを構築すること、そのDNAを原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクター中に挿入すること、次いで、発現ベクターを、原核生物又は真核生物に導入して、ペプチドを発現させることによって、本発明のCDRを含むペプチドを産生することができる。また、CDRを含むペプチドを、Fmoc法(フルオレニルメトキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法により産生することができる。 本発明の抗体は、放射性同位体、タンパク質、薬剤などが本発明の抗体に化学的又は遺伝的にコンジュゲートされた抗体誘導体を包含する。

放射性同位体、タンパク質又は薬剤を、IgEと特異的に反応する抗体若しくは抗体断片のH鎖若しくはL鎖のN末端若しくはC末端側に、抗体若しくは抗体断片の適切な置換基若しくは側鎖に、又は抗体若しくは抗体断片中の糖鎖に化学的にコンジュゲートすることによって、本発明の抗体誘導体を産生することができる(Antibody Engineering Handbook, edited by Osamu Kanemitsu, published by Chijin Shokan(1994))。

また、IgEと特異的に反応する本発明の抗体又は抗体断片をコードするDNAを、結合されるタンパク質をコードする他のDNAと連結すること、そのDNAを発現ベクターに挿入すること、及び発現ベクターを宿主細胞に導入することによって、それを遺伝的に産生することができる。 放射性同位体としては、131I、125Iなどが挙げられ、それを、例えば、クロラミンT法によって抗体にコンジュゲートすることができる。

薬剤は、好ましくは、低分子量化合物である。例としては、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル、メトトレキサート)、抗生物質(例えば、ダウノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン)、ホルモン薬(例えば、タモキシフェン、デキサメタゾン)などの抗がん剤(Clinical Oncology, edited by Japanese Society of Clinical Oncology,published by Cancer and Chemotherapy(1996));ステロイド剤(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン)、非ステロイド薬(例えば、アスピリン、インドメタシン)、免疫調節剤(例えば、アウロチオマラート、ペニシラミン)、免疫抑制剤(例えば、シクロホスファミド、アザチオプリン)及び抗ヒスタミン剤(例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、クレマスチン)などの抗炎症剤(Inflammation and Anti−inflammatory Therapy,Ishiyaku Shuppan(1982))などが挙げられる。ダウノマイシンを抗体にコンジュゲートさせるための方法としては、ダウノマイシンと抗体のアミノ基とを、グルタルアルデヒドを介してコンジュゲートする方法、ダウノマイシンのアミノ基と、抗体のカルボキシル基とを、水溶性カルボジイミドを介してコンジュゲートする方法などが挙げられる。

また、がん細胞を直接的に阻害するために、リシン、ジフテリア毒素などの毒素を使用することができる。例えば、抗体又は抗体断片をコードするcDNAを、タンパク質をコードする他のcDNAに連結すること、融合抗体をコードするDNAを構築すること、そのDNAを、原核生物のための発現ベクター又は真核生物のための発現ベクター中に挿入すること、次いで、それを、原核生物又は真核生物に導入して、融合抗体を発現させることによって、タンパク質との融合抗体を産生することができる。

全体が本明細書に組み込まれる、Binz et al.,(2005)Nat.Biotech.23:1257〜1268に記載のような、フィブロネクチン又はロイシンジッパーなどの非Igフレームワーク上に移植された、結合剤の融合物、例えば、免疫グロブリン様断片と、ダイアボディ、scAb、二特異的断片、トリアボディ、Fab−Fv−Fv、Fab−Fv、トリボディ、(Fab−Fv)2−Fcなどの薬剤、及びCDR又はCDRを包含する抗体ループなどの抗体断片又は部分を包含する抗体断片又は抗原結合剤が本明細書でさらに企図される。

コンジュゲートされた抗IgEモノクローナル抗体及び抗原結合剤 必要に応じて、本発明における使用のための抗体又は抗原結合剤を、1つ又は2つ以上のエフェクター分子にコンジュゲートさせることができる。エフェクター分子は、本発明の抗体に結合させることができる単一の部分を形成するために連結された単一のエフェクター分子又は2つ以上のそのような分子を含んでもよいことが理解されるであろう。エフェクター分子に連結された抗体断片を取得することが望ましい場合、抗体断片が直接的に、又はカップリング剤を介してエフェクター分子に連結される標準的な化学的手順又は組換えDNA手順によって、これを調製することができる。そのようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートさせるための技術は、当業界で周知である(Hellstrom et al.,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,Robinson et al.,eds.,1987,pp.623〜53;Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.,62:119〜58及びDubowchik et al.,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67〜123を参照されたい)。特定の化学的手順としては、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03/031581に記載のものが挙げられる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、連結を、組換えDNA手順を使用して、例えば、WO86/01533及びEP0392745に記載のように達成することができる。

本明細書で使用されるフェクタ−分子という用語は、例えば、抗新生物剤、薬物、毒素、生物活性タンパク質、例えば、酵素、他の抗体又は抗体断片、抗原結合剤、合成(PEGを包含する)又は天然ポリマー、核酸及びその断片、例えば、DNA、RNA及びその断片、放射性核種、特に、放射性ヨウ素、放射性同位体、キレートされた金属、ナノ粒子及び蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出することができる化合物などのリポーター基を包含する。

エフェクター分子の例は、細胞にとって有害である(例えば、殺傷する)任意の薬剤を包含する細胞毒素又は細胞傷害剤を包含してもよい。例としては、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド、スポンギスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステルリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにその類似体又は相同体が挙げられる。

エフェクター分子としては、限定されるものではないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、並びに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)も挙げられる。

他のエフェクター分子は、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレート化放射性核種;又は限定されるものではないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物を包含してもよい。

他のエフェクター分子としては、タンパク質、ペプチド及び酵素が挙げられる。目的の酵素としては、限定されるものではないが、タンパク質分解酵素、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが挙げられる。目的のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドとしては、限定されるものではないが、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、若しくはジフテリア毒素などの毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子若しくは組織プラスミノゲン活性化因子などのタンパク質、血栓剤若しくは抗血管新生剤、例えば、アンギオスタチン若しくはエンドスタチン、又はリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)若しくは他の増殖因子及び免疫グロブリンなどの生物応答改変剤が挙げられる。

他のエフェクター分子は、例えば、診断において有用な検出可能物質を包含してもよい。検出可能物質としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、ポジトロン放出金属(ポジトロン放出断層撮影における使用のため)、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。診断剤としての使用のために抗体にコンジュゲートさせることができる金属イオンについては、一般的には米国特許第4,741,900号を参照されたい。好適な酵素としては、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;好適な補欠分子族としては、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが挙げられる;好適な蛍光材料としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンが挙げられる;好適な発光物質としては、ルミノールが挙げられる;好適な生物発光物質としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられる;並びに好適な放射性核種としては、125I、131I、111In及び99Tcが挙げられる。

別の例では、エフェクター分子は、in vivoでの抗体の半減期を増加させる、及び/又は抗体の免疫原性を減少させる、及び/又は上皮バリアを通る免疫系への抗体の送達を増強することができる。この型の好適なエフェクター分子の例としては、WO05/117984に記載されたものなどのポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質又はアルブミン結合化合物が挙げられる。 一態様では、IgE又は抗ヒトIgE抗体とは無関係であるエフェクター分子により提供される半減期が有利である。

エフェクター分子がポリマーである場合、それは、一般的には、合成又は天然ポリマー、例えば、置換されていてもよい直鎖若しくは分枝鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー又は分枝状若しくは非分枝状多糖、例えば、ホモ−若しくはヘテロ−多糖であってもよい。 上記の合成ポリマー上に存在してもよい特定の任意の置換基としては、1つ又は2つ以上のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基が挙げられる。

合成ポリマーの特定例としては、置換されていてもよい直鎖又は分枝鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に、置換されていてもよいポリ(エチレングリコール)、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体が挙げられる。 特定の天然ポリマーとしては、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はその誘導体が挙げられる。 一態様では、ポリマーは、ヒト血清アルブミン又はその断片などの、アルブミン又はその断片である。一態様では、ポリマーはPEG分子である。

コンジュゲートに関して本明細書で使用される「誘導体」は、反応性誘導体、例えば、マレイミドなどのチオール選択性反応基を包含することが意図される。反応基を、直接的に、又はリンカーセグメントを介してポリマーに連結することができる。そのような基の残基は、一部の例では、抗体断片とポリマーとの間の連結基として生成物の一部を形成することが理解されるであろう。

天然又は合成ポリマーのサイズを必要に応じて変化させてもよいが、一般的には、500Da〜50000Da、例えば、5000〜40000Da、例えば、20000〜40000Daの平均分子量の範囲にあるであろう。ポリマーのサイズは、特に、生成物の意図される使用、例えば、腫瘍などのある特定の組織に局在化する能力又は長い循環半減期に基づいて選択することができる(概説については、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531〜545を参照されたい)。かくして、例えば、腫瘍の処置における使用のために、例えば、生成物が循環を離脱し、組織に浸透することを意図される場合、例えば、約5000Daの分子量を有する、低分子量ポリマーを使用することが有利であり得る。生成物が循環中に残存する適用については、例えば、20000Da〜40000Daの範囲の分子量を有する、より高分子量のポリマーを使用することが有利であり得る。

好適なポリマーとしては、ポリ(エチレングリコール)などの又は、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)若しくはその誘導体、特に、約15000Da〜約40000Daの範囲の分子量を有する、ポリアルキレンポリマーが挙げられる。

一例では、本発明における使用のための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合される。1つの特定の例では、抗体は、抗体断片であり、PEG分子を、抗体断片中に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば、任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を介して結合させることができる。そのようなアミノ酸は、抗体断片中に天然に存在してもよいか、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第5,219,996号;米国特許第5,667,425号;WO98/25971、WO2008/038024を参照されたい)を使用して断片中に操作することができる。一例では、本発明の抗体分子は、改変が、エフェクター分子の結合を可能にする1つ又は2つ以上のアミノ酸のその重鎖のC末端への付加である改変されたFab断片である。好適には、追加のアミノ酸は、エフェクター分子を結合させることができる1つ又は2つ以上のシステイン残基を含有する改変されたヒンジ領域を形成する。複数の部位を使用して、2つ以上のPEG分子を結合させることができる。

好適には、PEG分子を、抗体断片中に位置する少なくとも1個のシステイン残基のチオール基を介して共有的に連結する。改変された抗体断片に結合されるそれぞれのポリマー分子を、断片中に位置するシステイン残基の硫黄原子に共有的に連結することができる。共有的連結は、一般的には、ジスルフィド結合、又は特に、硫黄−炭素結合であろう。チオール基を、適切に活性化されたエフェクター分子の結合点として使用する場合、例えば、マレイミド及びシステイン誘導体などのチオール選択的誘導体を使用することができる。活性化されたポリマーを、上記のポリマー改変抗体断片の調製における出発材料として使用することができる。

活性化されたポリマーは、α−ハロカルボン酸又はエステル、例えば、ヨードアセタミド、イミド、例えば、マレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドなどのチオール反応基を含有する任意のポリマーであってもよい。そのような出発材料を、商業的に取得する(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.,Huntsville,AL,USAから)か、又は従来の化学的手順を使用して商業的に入手可能な出発材料から調製することができる。特定のPEG分子としては、20Kメトキシ−PEG−アミン(Nektar、以前はShearwater;Rapp Polymere;及びSunBioから取得可能)及びM−PEG−SPA(Nektar、以前はShearwaterから取得可能)が挙げられる。

一態様では、抗体は、PEG化された、すなわち、例えば、EP0948544又はEP1090037に開示された方法[「ポリ(エチレングリコール)の化学、生物技術及び生物医学的適用(Poly(ethylenglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications)」、1992,J.Milton Harris(ed),Plenum Press, New York、「ポリ(エチレングリコール)の化学及び生物学的適用(Poly(ethylenglycol)Chemistry and Biological Applications)」、1997,J.Milton Harris and S.Zalipsky(eds),American Chemical Society, Washington DC及び「生物医学のためのバイオコンジュゲーションタンパク質カップリング技術(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)」、1998,M.Aslam and A.Dent,Grove Publishers,New York;Chapman,A.2002,Advanced Drug Delivery Reviews 2002,54:531〜545も参照されたい]に従って、PEG(ポリ(エチレングリコール))がそれに結合している改変されたFab断片、Fab’断片又はdiFabである。一例では、PEGは、ヒンジ領域中のシステインに結合される。一例では、PEGにより改変されたFab断片は、改変されたヒンジ領域中の単一のチオール基に共有的に連結されたマレイミド基を有する。リシン残基を、マレイミド基に共有的に連結することができ、リシン残基上のアミン基のそれぞれを、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーに結合させることができる。Fab断片に結合されるPEGの総分子量は、したがって、約40,000Daであってよい。

特定のPEG分子としては、PEG2MAL40K(Nektar、以前はShearwaterから取得可能)としても知られる、N,N’−ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)MW20,000の2−[3−(N−マレイミド)プロピオンアミド]エチルアミドで改変されたリシンが挙げられる。

PEGリンカーの代替的な供給源としては、GL2−400MA3(ここで、下記の構造中のmは5である)及びGL2−400MA(ここで、mは2である)及びnが約450である、

を供給するNOFが挙げられる。すなわち、それぞれのPEGは、約20,000Daである。

かくして、一態様では、PEGは、SUNBRIGHT GL2−400MA3として知られる、2,3−ビス(メチルポリオキシエチレン−オキシ)−1−{[3−(6−マレイミド−1−オキソヘキシル)アミノ]プロピルオキシ}ヘキサン(2分枝PEG、−CH2)3NHCO(CH2)5−MAL、Mw40,000である。

以下の型のさらに代替的なPEGエフェクター分子:

は、Dr Reddy,NOF及びJenkemから入手可能である。

一態様では、鎖中のアミノ酸226の、又はその近く、例えば、重鎖のアミノ酸226(連続的番号付けによる)のシステインアミノ酸残基を介して結合した、PEG化された(例えば、本明細書に記載のPEGを用いる)本発明の抗体が提供される。 一態様では、本開示は、1つ又は2つ以上のPEGポリマー、例えば、40kDaのポリマー又は複数のポリマーなどの1つ又は2つのポリマーを含むFab’PEG分子を提供する。

本開示によるFab’−PEG分子は、それらがFc断片とは無関係の半減期を有する点で特に有利であり得る。一例では、本発明は、抗体又はその抗原結合剤がIgEに結合するFcとは無関係である半減期を有する治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合剤を投与することを含む、ヒトIgE生物活性をモジュレートすることにより改善される疾患を処置する方法を提供する。 一態様では、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子などのポリマーにコンジュゲートされたFab’が提供される。 一態様では、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子などのポリマーにコンジュゲートされたscFvが提供される。 一態様では、抗体又は断片は、例えば、半減期を増加させるために、デンプン分子にコンジュゲートされる。米国特許第8,017,739号に記載された、デンプンをタンパク質にコンジュゲートする方法は、参照により本明細書に組み込まれる。

ポリヌクレオチド 本発明はまた、本発明の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列も提供する。好適には、DNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードする。本発明のDNA配列は、例えば、化学的プロセッシング、cDNA、ゲノムDNA又はその任意の組合せにより産生された合成DNAを含んでもよい。

本発明の抗体分子をコードするDNA配列を、当業者には周知の方法によって取得することができる。例えば、抗体重鎖及び軽鎖の一部又は全部をコードするDNA配列を、必要に応じて決定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成することができる。 アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者には広く入手可能であり、その既知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成することができる。 分子生物学の標準的な技術を使用して、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製することができる。所望のDNA配列を、オリゴヌクレオチド合成技術を使用して、完全に、又は部分的に合成することができる。必要に応じて、部位特異的変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用してもよい。

本発明はまた、本発明の1つ又は2つ以上のDNA配列を含むクローニング又は発現ベクターに関する。したがって、本発明の抗体をコードする1つ又は2つ以上のDNA配列を含むクローニング又は発現ベクターが提供される。好適には、クローニング又は発現ベクターは、それぞれ、本発明の抗体分子の軽鎖及び重鎖と、好適なシグナル配列とをコードする2つのDNA配列を含む。一例では、ベクターは、重鎖と軽鎖との間に遺伝子間配列を含む(WO03/048208を参照されたい)。

ベクターを構築することができる一般的方法、トランスフェクション方法及び培養方法は、当業者には周知である。これに関しては、Current Protocols in Molecular Biology,1999,F.M.Ausubel(ed),Wiley Interscience,New York及びCold Spring Harbour Publishingにより製造されるManiatis Manualを参照されたい。

抗IgE抗体又はその断片を発現する宿主細胞 また、本発明の抗体をコードする1つ又は2つ以上のDNA配列を含む1つ又は2つ以上のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために、任意の好適な宿主細胞/ベクター系を使用することができる。細菌、例えば、大腸菌、及び他の微生物系を使用するか、又は真核生物、例えば、哺乳動物の宿主細胞発現系を使用することもできる。好適な哺乳動物宿主細胞としては、CHO、ミエローマ又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。

本発明における使用のための好適な型のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、DHFR選択マーカーと共に使用することができる、CHO−DG44細胞及びCHO−DXB11細胞などの、dhfr−CHO細胞を包含するCHO及びCHO−K1細胞又はグルタミン合成酵素選択マーカーと共に使用することができるCHOK1−SV細胞を包含してもよい。抗体を発現させる際に使用するための他の細胞型としては、リンパ球細胞系、例えば、NSOミエローマ細胞及びSP2細胞、COS細胞が挙げられる。他の好適な細胞は、当業界で公知である、ヒト胚性腎(hek)線維芽細胞、例えば、hek293F及びExpiHek細胞を包含してもよい。 CHOは、オマリズマブの産生のための標準的な宿主であることを考慮すれば、これが本発明の完全長Abにとって好ましい(本発明の抗体を考慮する一態様では、オマリズマブの標準的なグリコシル化パターン)[WO2013/181577も参照されたい]。

抗IgE抗体又はその断片の産生 本発明はまた、本発明の抗体分子をコードするDNAからのタンパク質の発現をもたらすのに好適な条件下で本発明のベクターを含有する宿主細胞を培養すること、及び抗体分子を単離することを含む、本発明による抗体分子の産生のためのプロセスも提供する。 抗体分子は、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含んでもよく、その場合、重鎖又は軽鎖ポリペプチドコード配列のみを、宿主細胞をトランスフェクトするために使用することが必要である。重鎖と軽鎖の両方を含む生成物の産生のためには、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクターと、重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターとの2つのベクターを細胞系にトランスフェクトすることができる。或いは、軽鎖及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を包含する単一のベクターを使用してもよい。

宿主細胞を培養する、及び抗体又はその断片を発現させる、後者を単離する、及び任意に、それを精製して、単離された抗体又は断片を提供するためのプロセスが提供される。一態様では、プロセスは、エフェクター分子を単離された抗体又は断片にコンジュゲートするステップ、例えば、特に、本明細書に記載のPEGポリマーにコンジュゲートするステップをさらに含む。 一態様では、不純物がカラム上に保持され、抗体が溶出されるような非結合様式で陰イオン交換クロマトグラフィーを実施するステップを含む、抗体(特に、本発明による抗体又は断片)を精製するためのプロセスが提供される。 一態様では、精製は、プロテインAカラム上での親和性捕捉、次いで、滴定を使用する。一態様では、精製は、プロテインGカラム上での親和性捕捉、次いで、HPLC滴定を使用する。一態様では、精製は、IgEカラム上での親和性捕捉、次いで、滴定を使用する。 一態様では、精製は、アルブミン融合物又はコンジュゲート分子の精製のためにシバクロンブルー又は類似のものを使用する。

前記プロセスにおける使用のための好適なイオン交換樹脂としては、Q.FF樹脂(GE−Healthcareにより供給される)が挙げられる。このステップは、例えば、約8のpHで実施してもよい。

前記プロセスは、例えば、4.5などの、約4〜5のpHで実施される、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用する初期捕捉ステップをさらに含んでもよい。陽イオン交換クロマトグラフィーは、例えば、CaptoS樹脂又はSPセファロースFF(GE−Healthcareにより供給される)などの樹脂を使用してもよい。次いで、抗体又は断片を、例えば、200mMの濃度の塩化ナトリウムなどのイオン性塩溶液を使用して樹脂から溶出させることができる。 かくして、クロマトグラフィーステップ又は複数のステップは、必要に応じて、1つ又は2つ以上の洗浄ステップを包含してもよい。 また、精製プロセスは、透析濾過ステップ又はHPLC濾過ステップなどの、1つ又は2つ以上の濾過ステップを含んでもよい。

かくして、一態様では、内毒素及び/又は宿主細胞タンパク質又はDNAから実質的に精製された、特に、それを含まない、又は実質的に含まない、精製された抗IgE抗体又は断片、例えば、ヒト化抗体又は断片、特に、本発明による抗体又は断片が提供される。 上記で使用された、から精製されたとは、91、92、93、94、95、96、97、98、99%w/w又はそれより純粋などの、少なくとも90%の純度を指すことが意図される。 内毒素を実質的に含まないとは、一般的には、抗体生成物1mgあたり1EU又は生成物1mgあたり1EU未満、例えば0.5若しくは0.1EUなどの内毒素含量を指すことが意図される。 宿主細胞タンパク質又はDNAを実質的に含まないとは、一般的には、抗体生成物1mgあたり400μg又は必要に応じて、1mgあたり100μgなど400μg未満若しくはそれ未満、特に、1mgあたり20μg未満などの宿主細胞タンパク質及び/若しくはDNA含量を指すことが意図される。

医薬組成物 本発明の抗体は病状の処置及び/又は予防において有用であるため、本発明は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体と共に、本発明の抗体又は抗原結合剤を含む医薬又は診断組成物も提供する。したがって、薬剤の製造のための本発明の抗体又は抗原結合剤の使用が提供される。組成物は、通常、薬学的に許容される担体を包含する滅菌された医薬組成物の一部として通常は供給されるであろう。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。

本発明はまた、本発明の抗体又は抗原結合剤を、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体と一緒に添加及び混合することを含む、医薬又は診断組成物の調製のためのプロセスも提供する。 抗体又は抗原結合剤は、医薬若しくは診断組成物中の唯一の活性成分であってもよく、又は他の抗体成分若しくは非抗体成分、例えば、ステロイド若しくは他の薬物分子、特に、半減期がIgE結合とは無関係である薬物分子を包含する他の活性分子を伴ってもよい。

医薬組成物は、好適には、治療有効量の本発明の抗体又は抗原結合剤を含む。本明細書で使用される用語「治療有効量」とは、標的となる疾患若しくは状態を処置する、改善する、若しくは防止する、又は検出可能な治療若しくは防止効果を示すのに必要とされる治療剤の量を指す。任意の開示された抗体又は抗原結合剤について、治療有効量を、最初に、細胞培養アッセイ又は動物モデル、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ若しくは霊長類において見積もることができる。動物モデルを使用して、適切な濃度範囲及び投与経路を決定することもできる。次いで、そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定することができる。

ヒト対象のための正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の全体的な健康、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組合せ(単数又は複数)、療法に対する反応感度及び許容性/応答に依存するであろう。この量は、日常的な実験によって決定することができ、医師の判断の範囲内にある。一般に、治療有効量は、0.01mg/kg〜500mg/kg、例えば、0.1mg/kg〜200mg/kg、例えば、100mg/kgであろう。医薬組成物を、用量あたり所定量の本発明の活性薬剤を含有する単位剤形中で都合良く提供することができる。 本開示による抗体又は抗原結合剤の治療用量は、in vivoで明白な毒性効果を示さない。 有利には、in vivoでのIgE活性のレベルを、本開示による抗体又は結合剤の連続用量の投与によって適切に低下したレベルに維持することができる。 組成物を患者に個別に投与するか、又は他の薬剤、薬物又はホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続的に、又は別々に)投与することができる。

医薬組成物はまた、抗体又は抗原結合剤の投与のための薬学的に許容される担体を含有してもよい。担体は、それ自体、組成物を受ける個体にとって有害な抗体の産生を誘導するべきではなく、毒性であるべきではない。好適な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子などの、大きく、ゆっくりと代謝される高分子であってよい。 薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などの鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩などの有機酸の塩を使用することができる。

治療組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体をさらに含有してもよい。さらに、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質が、そのような組成物中に存在してもよい。そのような担体により、医薬組成物を、患者による摂取のために、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液として製剤化することができる。

投与のための好ましい形態としては、例えば、注射又は輸注による、例えば、ボーラス注射又は連続輸注による非経口投与にとって好適な形態が挙げられる。生成物が注射又は輸注のためのものである場合、それは油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又は乳濁液の形態を取ってもよく、懸濁剤、保存剤、安定剤及び/又は分散剤などの調合剤を含有してもよい。或いは、抗体分子は、適切な滅菌液体と共に使用する前の再構成のために、乾燥形態にあってもよい。 一度製剤化されたら、本発明の組成物を、対象に直接投与することができる。処置される対象は、動物であってもよい。しかしながら、組成物はヒト対象への投与に適合するのが好ましい。

本発明の医薬組成物を、限定されるものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下、脳室内、経真皮、経皮(例えば、WO98/20734を参照されたい)、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸経路を包含する任意数の経路によって投与することができる。皮下噴射器を使用して、本発明の医薬組成物を投与することもできる。典型的には、治療組成物を、液体溶液又は懸濁液として、注射剤として調製することができる。注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液にとって好適な固体形態を調製することもできる。

組成物の直接送達は、一般的には、注射により、皮下的(特に)、腹腔内的、静脈内的若しくは筋肉内的に達成されるか、又は組織の間質腔に送達されるであろう。組成物を、病変に投与することもできる。用量処置は、単回用量スケジュール又は複数回用量スケジュールであってもよい。

組成物中の活性成分は抗体分子であることが理解される。そのようなものとして、それは消化管における分解を受けやすいであろう。かくして、組成物が消化管を使用する経路によって投与される場合、組成物は、抗体を分解から保護するが、それが消化管から吸収されたら抗体を放出する薬剤を含有する必要がある。 薬学的に許容される担体の完全な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,N.J.1991)で入手可能である。

構造−機能特性 本発明の一側面では、抗体又は抗原結合剤は、遊離の、及びFcεRIに結合したヒトIgEに結合する。本発明の抗体(又は抗原結合剤)がFcεRIに結合したヒトIgEに結合する場合、それはIgEのコンフォメーションを安定化する。そのような安定化されたコンフォメーションでは、IgEは、本発明の抗体又は抗原結合剤の非存在下よりも弱い、FcεRI又はオマリズマブ(又はその断片)に対する結合親和性を有し、FcεRIに結合したヒトIgEは、FcεRIから解離する。好ましくは、IgEは、FcεRIからの解離時に、本明細書に記載の抗体又は抗原結合剤に結合したままである。本明細書の以後(例えば、例1及び図2)に示されるように、本発明の抗体又は抗原結合剤は、オマリズマブに結合した場合にIgEが有するコンフォメーションとは異なるコンフォメーションでIgEに結合する。

理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明の抗体は、IgEに部分的に湾曲したコンフォメーション(図2C及び図5C&D)を採用させ、したがって、遊離又はFcεRIに結合したIgE構造から脱湾曲化している。そのような脱湾曲化は、IgEがFcεRIに結合するか、又はそれへの結合を保持する能力を損なわせる。例のセクションに示されるように、本発明の抗体はFcεRIへの結合についてIgE上の結合部位と競合するため、抗体はFcεRIに結合したIgEと複合体を形成することができ、FcεRIに結合した場合、IgEの構造を変化させ、FcεRIからそれを解離させると考えられる。これらの特性を有する本発明による抗体は、 a.配列番号1を含む重鎖可変領域と、 i.配列番号109;若しくは ii.配列番号113;若しくは iii.配列番号121;若しくは iv.配列番号132;若しくは v.配列番号139 を含む軽鎖可変領域と;又は b.配列番号5と、 i.S77及びS79がQで置き換えられた、配列番号24; ii.配列番号117;若しくは iii.配列番号125;若しくは iv.配列番号136;若しくは v.配列番号143 とを含む抗体又は抗原結合剤などの、本明細書に記載のものである。

そのような特性を有する抗IgE抗体又は抗原結合剤は、配列番号108を参照して、ヒトIgEのCε3ドメインのT373、W374、S375、R376、A377、S378、G379、P381、Q417、C418、R419、P426、R427、A428残基並びにCε2ドメインのD278及びT281残基を含むエピトープに接触するか、又は接触し、特異的である。

本発明の抗体は、いくつかの位置に、メチオニン残基を有する。メチオニン残基の酸化は、中でも最も一般的なタンパク質分解経路である。メチオニン残基が配列番号20を参照してS64及びS71位に導入された本発明の抗体は、抗体がIgE−Fc:sFcRIα複合体の解離を促進する能力に影響することなく、完全な酸化を受け得る。

したがって、本発明はまた、配列番号1であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、CDR−L2が配列番号50であるアミノ酸配列を有し、FW−L3が配列番号131又は138であるアミノ酸配列を有することを除いて、配列番号20であるアミノ酸配列を有し、配列番号20を参照して、64及び/又は71位のメチオニン残基が酸化された、CDR−L2及びFW−L3を含む軽鎖可変領域とを含む、抗IgE抗体又は抗原結合剤も提供する。

本発明はまた、配列番号1であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号132又は139であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含み、配列番号132又は139を参照して、64及び/又は71位のメチオニン残基が酸化された、抗IgE抗体又は抗原結合剤も提供する。 本発明の抗体中のさらなるメチオニン残基を、抗体がIgE−Fc:sFcRIα複合体の解離を促進する能力に影響することなく酸化することができる。ここで、本発明を、添付の図面に例示される態様を参照して、例によってさらに説明する。

(例1) IgE−Fcに結合した治療的抗IgE抗体オマリズマブの変異体の構造はその作用機構を示す 要約 免疫グロブリンE並びに受容体FcεRI及びCD23とのその相互作用は、アレルギー疾患において中心的な役割を果たしている。臨床的に認可された治療抗体であるオマリズマブは、肥満細胞及び好塩基球の活性化を防止する、IgEとFcεRIとの相互作用を阻害し、CD23へのIgE結合を遮断する。本発明者らは、オマリズマブ由来FabとIgE−Fcとの2:1の複合体の結晶構造を解明し、1つのFabがそれぞれのCε3ドメインに結合した(しかし、Fabのうちの1つのみがCε2ドメインに結合した)。遊離IgE−Fcは溶液中で主として鋭く湾曲するが、複合体中では、それは部分的に湾曲するに過ぎず、FcεRIとの相互作用を不可能にする;CD23結合は、それぞれのCε3ドメイン上の結合部位の重複のため立体的に阻害される。溶液状態の相互作用分析は、両方の受容体相互作用の阻害に関するオルトステリック及びアロステリックな基礎を証明し、構造と一緒に、オマリズマブ(特に、記載されたオマリズマブ変異体)が、IgEの内在する力学及びアロステリック能力を利用して、FcεRIからの受容体に結合したIgEの解離を促進することができる方法を示す。

はじめに 免疫グロブリンE(IgE)抗体は、アレルギー疾患において重要な役割を果たし、そのFabアームを介してアレルゲンに結合し、Fc領域のための受容体に結合することによってそのエフェクター機能を発現する1。2つの主要なIgE受容体は、それぞれ、高親和性及び低親和性受容体と一般的に呼ばれる、FcεRI及びCD23/FcεRIIである。肥満細胞及び好塩基球上で、IgEは、そのような細胞が予め結合したIgEで感作され、IgE/FcεRI複合体を架橋し、即時反応を惹起するためにアレルゲンの存在のみを必要とする程度に固く(約10−10M−1のKD)、FcεRIに結合する。CD23は、ホモトリマーであり、かくして、それぞれのIgE結合性C型レクチン様「頭部」ドメインの本質的に低い親和性(約10−7M−1のKD)を、免疫複合体中の凝集したIgEに結合する場合、IgEに対するFcεRIのものとほぼ一致するアビディティ効果によって増強することができる2。B細胞上に発現されるCD23は、IgEの調節に関与し、気道及び腸上皮細胞上での発現は、IgE/アレルゲン複合体のトランスサイトーシスを媒介する1、2。FcεRI及びCD23は両方とも、一定範囲の抗原提示細胞上でも発現される。かくして、IgE−受容体相互作用は、アレルギー応答の複数の側面に関与し、IgEは治療的介入のための長年の標的である3

IgEのFc領域は、3個のドメイン:Cε2、Cε3及びCε4のジスルフィド結合ダイマーを含む。キメラIgEの初期のFRET試験4、5、及びIgE−FcのX線溶液散乱試験6は、コンパクトな湾曲した構造を示し、IgE−Fcの結晶構造は後に、鋭く非対称的に湾曲したコンフォメーションを示したが、(Cε2)2ドメイン対は、Cε3及びCε4ドメイン上で折り返った7。(Cε2)2ドメイン対の部分的2フォールドアクシスと、Fcε3−4(Cε3及びCε4ドメインのみを含む領域)のものとの間の角度と定義される湾曲は、受容体のIgE結合α鎖の可溶性細胞外ドメインであるsFcεRIαに結合したIgE−Fcの結晶構造においてさらにより鋭くなる(62°から54°)ことがわかった8。N及びC末端標識されたIgE−Fcを用いる最近のFRET試験により、sFcεRIα結合の際のこの増強された湾曲が確認された9

FcεRI結合部位は、Cε2−近位領域中の両方のCε3ドメインに広がるが8、10、Cε2ドメインは直接関与しない;両方の鎖の係合は、1:1の結合化学量論の原因となる。対照的に、2つのCD23分子は、一方はそれぞれの鎖中で、他方では、Cε3ドメインのCε4−近位末端で、IgE−Fcに結合する11、12、13。CD23結合はまた、IgE−Fcのコンフォメーション変化を引き起こすが14、湾曲に有意に影響するものではない9。しかしながら、遊離IgE−Fcと比較して、CD23の可溶性頭部ドメイン(sCD23)と複合体を形成したCε3ドメインの相対的に「閉じた」配置は、FcεRI結合にとって必要とされるこれらのドメインのより「開いた」配置と適合しない。これは、FcεRI及びCD23結合の相互排除を部分的に説明するものであるが11、12、部分的コンフォメーション変化及びコンフォメーション力学の改変などの他の因子15もまた、2つの受容体結合部位間のアロステリックな連絡に寄与する可能性がある2

より極端な程度のIgE−Fcの可撓性が、aεFabと呼ばれる、抗IgE−Fc Fabとの複合体の研究により最近発見された16。2つのaεFab分子は、それぞれのCε3ドメイン上で一方が、(Cε2)2ドメイン及びFcε3−4領域の部分2フォールドアクシスが実質的に一致する完全に伸長したコンフォメーションを捕捉する対称様式でIgE−Fcに結合した。遊離IgE−Fcの分子力学的シミュレーションと共に、溶液中での複合体形成の分析により、(Cε2)2ドメイン対が、他方のFcε3−4領域の一方の側から「フリップする」ことができることが示唆された16。この抗IgE抗体により安定化されるIgE−Fcコンフォメーションは、FcεRI結合と適合せず、その阻害活性を説明する。

オマリズマブは、治療的使用について認可されている抗IgEモノクローナルIgG1抗体(Xolair(登録商標)、Novartis)である17。それは、遊離IgEに結合し、FcεRIとCD23結合の両方を阻害する;結合部位は、ペプチド阻害及び分子モデリングによってCε3ドメインにマッピングされているが18、19、その作用機構は不明である。しかしながら、FRET標識されたIgE−Fcへの結合は、わずかな程度の脱湾曲化9及びかくして、直接的阻害よりもむしろアロステリックの可能性を示した。

最近、予め形成されたIgE/FcεRI複合体を活発に破壊するある型の阻害剤が発見された:設計アンキリン反復タンパク質(Designed Ankyrin Repeat Protein(DARPin))が、受容体に結合したIgEのCε3ドメインに結合し、FcεRIからのその解離を促進することがわかった20。操作されたジスルフィド結合により拘束されたDARPin E2_79とFcε3−4分子との2:1複合体の結晶構造は、結合部位の性質及び位置を示したが、その作用機構は不明のままであった。オマリズマブはFcεRIに結合したIgEの解離を同様に容易にすることができるが、治療的使用において達成されるものよりも実質的に高い非常に高濃度でのみであることがその後報告された21、22

本発明者らはここで、IgE−Fcと、新しい抗体断片、抗原(IgE−Fc)結合相補性決定領域(CDR)から遠位である3点変異を含有するオマリズマブに由来するFab(オマリズマブFab3)との複合体の結晶構造を報告する。変異は、配列番号125を参照して、S81R、Q83R及びL158P(又は配列番号129を参照して、S77R、Q79R及びL154P)である。複合体の構造は、オマリズマブの作用機構を示し、溶液試験は、この機構がIgEの内在する力学を利用することを証明する。

結果 大きな努力にも拘わらず、オマリズマブFabと複合体を形成したIgE−Fcに関する結晶化試験は、Fab断片のみの選択的結晶化をもたらした。他者は、この複合体を結晶化することに同様に失敗したと報告している23。したがって、本発明者らは、オマリズマブFab結晶構造において観察された好ましい結晶接触を破壊する目的で、2つはVLドメインフレームワーク領域中にあり(Ser81Arg、Gln83Arg)、1つはCκドメイン中にある(Leu158Pro)(配列番号125、PDB番号付け)(図1)、3点変異を有する、オマリズマブに由来するFabである新規抗体を設計した(結果は他の場所に報告される)。本発明者らは、このオマリズマブ由来Fabを「オマリズマブFab3」と呼ぶ。

IgE−Fc/オマリズマブFab3複合体の全体構造 本発明者らは、IgE−Fcと、オマリズマブFab3との複合体の結晶構造を、3.7Åの解像度で決定した(図2A)。2つのオマリズマブFab3分子(Fab1及びFab2)が、それぞれのFabが1つのCε3ドメインと係合する、非対称性の部分的に湾曲したIgE−Fc分子に結合する(図2B&C)。Fab1はIgE−Fc鎖BのCε3ドメインと係合するが、Fab2はIgE−Fc鎖AのCε3ドメインと係合する。複合体におけるIgE−Fcの部分的に湾曲したコンフォメーションのため、Fab2の軽鎖はまた、IgE−Fc鎖Bに由来するCε2ドメインとの小さい相互作用を形成する(この相互作用に関する詳細についてはこの例の後部を参照されたい)。

IgE−FcとオマリズマブFab3との境界面 それぞれのオマリズマブFab3分子は、Cε3ドメインの露出した面の一方の端部と係合する(C、C’、F及びG鎖、並びにFcεRI受容体結合FGループの基部)。オマリズマブFab3の重鎖と軽鎖の両方が関与し、前者は約715Å2の界面面積に約60%寄与する(図2&3)。

2つの境界面間でわずかに異なる、オマリズマブFab3重鎖(配列番号5)接触は、以下のようにまとめることができる:Gly32及びTyr33(CDRH1)は、Ala377及びSer378(Cε3)とファンデルワールス相互作用を形成する(配列番号108及び図16に示されるIgE−Fc配列)が、Tyr54(CDRH2)はGly379−Pro381(Cε3)と接触する。CDRH3残基は、最大の接触面積に寄与し、未結合のFab構造と比較した場合、複合体形成時に有意なコンフォメーション変化を受ける(非公開の結果、19、23)。CDRH3残基Ser100、His101、Tyr102及びTrp106は全て、Ser375−Gly379、Gln417及びArg419(Cε3)を包含するCε3ドメイン残基とファンデルワールス相互作用を形成する。しかしながら、境界面のこの部分の最も驚くべき特徴は、Phe103(CDRH3)との相互作用である。Phe103は、Thr373、Trp374主鎖、Ser375、Gln417及びArg419(Cε3)によって作られるポケット中に大部分が埋没し、Arg419とのカチオン/πスタッキング相互作用を形成する(図3)。

Arg419(Cε3)はまた、オマリズマブFab3軽鎖(配列番号125)との相互作用においても重要な役割を果たす(図3)。Arg419(Cε3)は、Try31(CDRL1)及びAsp32(CDRL1)主鎖カルボニル酸素原子の水素結合距離内にあり、さらに、Asp32、Asp34及びTyr36側鎖と接触する(Tyr36のヒドロキシル基と水素結合を形成する)。Asp32はまた、Thr373及びThr421(Cε3)とファンデルワールス相互作用を形成する。対照的に、2つのCDRL2残基のみが、境界面に寄与する:Tyr53(CDRL2)はGln417(Cε3)と接触し、Tyr53とTyr57は両方ともMet430(Cε3)とファンデルワールス相互作用を形成する;Tyr57もまたMet430骨格と水素結合を形成する。重鎖相互作用に関しては、Fab1とFab2に関する軽鎖接触においてわずかな差異がある。

フォーマット(pdb/Kabat/Chothia)におけるオマリズマブFab3番号付けにおけるCDR接触残基 重鎖配列:配列番号5;軽鎖配列:配列番号125 CDRH1:Ser(31/31/31)、Gly(32/32/31a)、Tyr(33/33/32) CDRH2:Thy(54/53/53) CDRH3:Ser(100/96/96)、His(101/97/97)、Tyr(102/98/98)、Phe(103/99/99)、Trp(106/101B/101B) CDRL1:Asp(30/27C/30)、Tyr(31/27D/30A)、Asp(32/28/30B)、Gly(33/29/30C)、Asp(34/30/30D)、Tyr(36/32/32) CDRL2:Tyr(53/49/49)、Ser(56/52/52)、Tyr(57/53/53)、Ser(60/56/56) CDRL1及びCDRH3は相互作用に関与するほとんどの残基を有し、したがって、オマリズマブがIgE−Fcに対してどのように結合し、自身を適応させるかを特徴付ける。CDRL3はIgE−Fcへの結合には関与しない。

他の抗IgE複合体とのオマリズマブFab3境界面の比較 オマリズマブFab3のCε3ドメイン上の結合部位及び最近記載されたDARPin E2_7920は重なり合い(図4)、それぞれ、約715Å2及び約753Å2の類似するサイズを有する。2つの境界面間で共有されるCε3ドメイン残基は、Ser375−Gly379、Gln417、Arg419、Arg427及びMet430を包含し、オマリズマブFab3は受容体結合Cε3FGループとより緊密な接触を形成するが、DARPin E2_79境界面はCε3−4ドメインリンカーを包含するように反対方向に伸長する。

オマリズマブFab3とDARPin E2_79との重なり合う結合部位は、完全に伸長したコンフォメーション中にIgE−Fcを捕捉した、オマリズマブFab3について最近記載された境界面とは顕著に異なる16(図5)。オマリズマブFab3界面面積は、約1400Å2で、オマリズマブFab3とDARPin E2_79の約2倍であるだけでなく、オマリズマブFab3はCε3中のArg393上に中心がある部位でIgE−Fcと係合し、また、Cε2ドメイン及びCε2−Cε3リンカー中の残基と接触する16。Fcε3−4との2:1の複合体中の、別の抗IgE抗体Fab、MEDI4212の結晶構造は、Cε3ドメイン内での抗体係合のためのさらに別の部位を示し、この1つはAsn394にN結合オリゴ糖部分を含む24

IgE−Fcは、オマリズマブFab3に結合した場合、部分的に湾曲したコンフォメーションを採用する IgE−Fcは、溶液中では主として湾曲しており5、6、9、25、26、27、28、遊離IgE−Fcの結晶構造は、(Cε2)2ドメイン対がCε3及びCε4ドメイン上で折り返され(図5A&B)、一方の鎖(鎖B)のCε2ドメインが他方(鎖A)のCε4ドメインと接触する、大きく湾曲した(62°)、非対称のコンフォメーションを示した7、8。IgE−Fcは、FcεRIα係合時にさらにより大きく湾曲するようになり(54°)8、9、関連するコンフォメーション変化は、鎖BのCε3ドメインから遠い、固い単位として、(Cε2)2ドメイン対と共に、鎖AのCε3ドメインの回転を含む8

IgE−Fcが完全に伸長した、直鎖状のコンフォメーションを採用するオマリズマブFab3複合体16とは対照的に、IgE−Fcは、オマリズマブがIgE−Fcの脱湾曲化を引き起こすことを示した初期のFRET試験9と一致して、オマリズマブFab3複合体中で部分的に湾曲したコンフォメーションを採用する(図2C及び図5C&D)。Fab1が結合する部位は、遊離の、大きく湾曲したIgE−Fc中で露出するが、Fab2により占有される部位を接近可能にするためには、90°をちょうど超える、IgE−Fcのさらなる脱湾曲化が必要である。オマリズマブFab3複合体中のIgE−Fcのこの脱湾曲化は、ほぼ対称性のFcε3−4領域を作る、両方のCε3ドメインの開口と関連する(図2B)。(Cε2)2ドメイン対は、各鎖に由来するCε3とCε4ドメインの間に位置し、鎖Aに由来するCε3ドメインと最早それほど密接に関連しない。

伸びた構造へのIgE−Fcの脱湾曲化を調査する最近の分子力学的シミュレーションにおいて、遊離IgE−Fcの結晶構造中で観察される大きく湾曲したコンフォメーションは最も低いエネルギーボウルを占有するが、部分的に湾曲したIgE−Fcコンフォメーションに対応する、別の異なる明確に定義されたエネルギーボウルが観察されることがわかった16。オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体中のIgE−Fcにより採用される部分的に湾曲したコンフォメーションは、この特定のエネルギーボウルを占有する(図6)。

Cε3ドメインはオマリズマブFab3/IgE−Fc複合体中で顕著に開いたコンフォメーションを採用する IgE−Fc及びFcε3−4サブ断片の結晶構造において、Cε3ドメインは、その2つの主要な受容体であるFcεRI及びCD238、11、12、14へのIgEの結合のアロステリックな調節と関連する特性である、一定範囲の異なる方向を採用する7、8、10、11、13、14、16、24、29。Fcε3−4領域について観察される様々なコンフォメーションを記載するために、Cε3ドメイン間の距離と、Cε4ドメインに関するその位置との両方が使用されてきた29(これらの測定値に関する完全な記載はこの例の後部に提供される)。オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体において、Cε3ドメインは、IgE−Fc又はFcε3−4を含有する任意の他の結晶構造におけるよりも、互いに、また、Cε4ドメインから離れたところに位置し、かくして、これまでのところ観察された最も開いたコンフォメーションを採用する(図5);このコンフォメーションは、FcεRIに結合したIgE−Fcに関するコンフォメーションよりも有意に開いている(図7)。

FcεRI及びCD23受容体結合に対するオマリズマブFab3の効果 オマリズマブは、IgE−FcとFcεRIとの相互作用を阻害するだけでなく、IgE−FcとCD23との相互作用も阻害する30。後者と一致して、オマリズマブFab3/IgE−Fc及びCD23/Fcε3−4複合体の比較11により、Fcε3−4上のCD23係合の両方の部位でのオマリズマブFab3とCD23との衝突が示される。さらに、Cε3ドメイン残基Arg376、Ser378及びLys380は、オマリズマブFab3とCD23結合の両方に関与する11、31

IgEへのCD23結合とは対照的に、FcεRIαは、両方のCε3ドメインにわたって結合する。しかしながら、オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体において、Cε3ドメインは、両方の鎖の同時的係合を可能にするには開きすぎているコンフォメーションを採用する(図8)。さらに、オマリズマブFab3/IgE−FcとsFcεRIα/IgE−Fc複合体とを、順にそれぞれのCε3ドメイン上で重ね合わせた場合、いずれの場合も立体的衝突の可能性が生じる。鎖AのCε3ドメイン上で重ね合わせた場合、オマリズマブFab3 Fab2は、FcεRIα複合体中の(Cε2)2ドメイン対と衝突し、オマリズマブFab3複合体に由来するCε2−Cε3リンカーはFcεRIαと衝突する可能性がある。鎖BのCε3ドメイン上で重ね合わせた場合、オマリズマブFab3 Fab1とCε2−Cε3リンカー(オマリズマブFab3複合体の)との間で、FcεRIαと衝突する可能性があるが、Fab1及びFcεRIαの結合部位は実際には重ならない。

しかしながら、オマリズマブFab3 CDRL1残基は、FcεRIαに結合するCε3ドメインFGループにすぐ隣接して位置する。鎖B中のこのループは、Cε3中のPro426がFcεRIαの2個のトリプトファン残基間を包む、疎水性「プロリンサンドイッチ」相互作用に寄与する。Asp32(CDRL1)はThr421に接触し、Gly33(CDRL1)はPro426、Arg427及びAla428に接触し、Asp34(CDRL1)はArg427及びAla428に接触する。これらの相互作用は、Cε3ドメインFGループの位置を変化させ、さらに、IgEのFcεRIへの結合を損なわせる。最近、オマリズマブのFcεRIα結合IgEへの結合が報告された21、32が、オマリズマブが、sFcεRIα8及びオマリズマブFab3との複合体中のIgE−Fcの静的結晶構造に基づいてFcεRI結合IgEとどのように係合するかを見るのは困難である。したがって、本発明者らは、オマリズマブFab3のIgE−Fcへの結合を試験し、オマリズマブFab3とIgE−Fc/FcεRI複合体との相互作用を特徴付けた。本発明者らの結果は、オマリズマブの作用機構に関する洞察を提供する。

溶液中でのオマリズマブFab3とIgE−Fcとの相互作用 本発明者らは、表面上にオマリズマブFab3を直接固定し、IgE−Fcに結合させること、又はSPRセンサー表面上でオマリズマブFab3をHisタグ付きの捕捉されたIgE−Fcに結合させることにより、2つの異なる方法でIgE−Fc/オマリズマブFab3相互作用を特徴付けた。C末端Hisタグ付きIgE−Fc構築物を、抗Hisタグ抗体(GE Healthcare)を使用して捕捉し、オマリズマブFab3、インタクトなオマリズマブ及びオマリズマブFabの結合特性を比較した。驚くべきことではないが、競合結合実験において、3つ全ての分子が、同じ結合部位について競合し、広く類似する結合親和性を示した(データは示さない)。オマリズマブFab3構築物は、オマリズマブFab3及びインタクトなオマリズマブと比較してわずかに高い親和性を示す(図8A〜C)。結晶構造と一致して、2個のオマリズマブFab3分子が、IgE−Fcに結合する:結合は、明らかに二相性であり、低いリガンド濃度では高い親和性(約1nM)相互作用が観察されより高い濃度では第2の(より弱い)結合部位(約30nM)が観察される(図9A)。

サンドイッチSPR実験により、2つのIgE−Fc/オマリズマブFab3結合部位を別々に特徴付けることができる。この手法を使用して、オマリズマブFab3を、センサー表面上に共有的に固定し、IgE−Fcをこの表面上に流した。低濃度では、これらの条件下で、高親和性部位が相互作用を支配し、結合曲線を、単相相互作用動力学によって説明することができる(約1nMのKD、約1.2x106M−1s−1のkon、約8x10−4s−1のkoff)。次いで、SPRバイオセンサー表面上に捕捉された、この1:1のIgE−Fc/オマリズマブFab3複合体を使用して、結合が第1のものよりも有意に弱い(約30nMのKD、約2x105M−1s−1のkon、約6x10−3s−1のkoff)、第2のオマリズマブFab3分子の結合を測定することができる(図9B)。

オマリズマブFab3とFcεRIα結合部位との競合及びオマリズマブFab3/IgE−Fc/FcεRIα複合体の形成 本発明者らは次に、オマリズマブFab3がIgE−FcとFcεRIαとの相互作用に影響する能力を調査した。溶液競合結合実験において、増大する濃度のオマリズマブFab3は、IgE−FcのFcεRIαへの結合を阻害した(図8D)。機構的には、オマリズマブFab3は、利用可能な結合部位の数(Bmax)と、IgE−Fc/FcεRIα相互作用の見かけのKDとの両方に影響する;これは混合阻害機構の特徴である33。Bmax値の減少は、アロステリックな阻害プロセスを示し、相互作用の見かけの親和性の低下は、共有の結合部位に関する直接的な競合と最も一般的に関連する(すなわち、オルトステリックな阻害)が、いくつかのアロステリック阻害剤についても見ることができる。結晶構造中に観察される結合部位を考慮すると、オマリズマブFab3は、オルトステリック機構とアロステリック機構の両方を使用して、FcεRIへのIgE−Fc結合を阻害する可能性が高い。

オマリズマブとFcεRIα結合部位との競合は、多くの刊行物に記載されているが、同一の(又は重複する)結合部位に関する直接的競合と常に解釈されている。この解釈は、オマリズマブが細胞上のIgE−FcεRI複合体に結合することができない理由を説明するためによく使用されてきた。しかしながら、本発明者らは、オマリズマブFab3が、FcεRIαに予め結合したIgE−Fcに高い親和性で結合することができることを観察した(図9C、差込図)。オマリズマブ/IgE−Fc/FcεRI複合体の存在は、他の研究21、32によって暗示されているが、この複合体は以前には実験的に特徴付けられていなかった。データは、IgE−FcのFcεRIαへの結合は、オマリズマブFab3のIgE−Fcに対する親和性を有意に変化させなかったが、それは、FcεRIαに結合したIgE−Fc分子の集団中のオマリズマブFab3のための利用可能な結合部位の数を顕著に変化させたことを示す。本発明者らは、抗Hisタグ抗体により捕捉されたIgE−Fc分子のKD及びBmax結合値を、sFcεRIαにより捕捉されたものと比較し、FcεRIαに結合したIgE−Fcが、予想通り、2:1の化学量論と一致する結合レベルを示した、Hisタグで捕捉されたIgE−Fcと比較して、10%未満のオマリズマブFab3結合部位を有することを見出した(図9C)。したがって、FcεRIαとオマリズマブ結合部位は重なるため、オマリズマブは肥満細胞に結合したIgEに結合しないと一般的に推定されているが、そうではない。その代わりに、FcεRIαはIgE−Fcに対してアロステリックに作用し、異なるIgE−Fcコンフォメーションの動的平衡を変化させ16、FcεRIαに結合したIgE−Fc分子の集団中のオマリズマブ結合部位の数の実質的な減少をもたらす。

IgE−Fc/FcεRIα複合体のオマリズマブFab3により媒介される解離の促進の機構 Kim et al.20は、DARPin E2_79が、IgE−FcεRIの予め形成された複合体の分解を促進することができると報告した。この観察をフォローアップするために、Eggel et al.21は、オマリズマブもFcεRIからのIgEの解離を促進することができることを後に示した。これらの観察と同様、本発明者らは、オマリズマブFab3がIgE−Fc/FcεRIα複合体に結合した場合、それがFcεRIαからのIgE−Fcの解離を促進すること(図9D)、及びオマリズマブFab3が、オマリズマブFab3よりも効率的に、また、インタクトなオマリズマブよりもはるかにより効率的にこれを行うことを見出した(図10E)。1つのFabはIgE−Fc/FcεRIα複合体と係合するが、FcεRIαからのIgE−Fcの解離を促進しない。驚くべきことに、解離の促進は、第2の結合部位(すなわち、低親和性部位)の占有後にのみ起こると考えられる。(オマリズマブFab3)2/IgE−Fc/FcεRIα四分子複合体は、IgE−Fc/FcεRIα解離のためのエネルギー障壁を顕著に減少させ、この、そうでなければ非常に安定な複合体の急速な解離をもたらすような方法でIgE−Fcのエネルギーランドスケープを変化させなければならない。

オマリズマブFab3軽鎖とCε2ドメインとの相互作用の詳細 オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体において、1つのCε2ドメインは、2つの変異した残基(Ser81Arg及びGln83Arg)と約260Å2の小さい相互作用(オマリズマブFab3とCε3ドメインとの間の約715Å2の平均相互作用面積と比較して)を形成する。Pro158とIgE−Fcとの間には接触はない。

Fab2軽鎖に由来するArg81側鎖(オマリズマブFab3中の変異した残基の1つ;(配列番号125、PDB番号付け))は、鎖B(配列番号108)に由来するCε2ドメインに由来するVal277及びAsp278に対して包む。Ser80(オマリズマブFab3)は、Asp278、Leu279及びThr281(Cε2ドメイン)に対して包むが、Ser64(オマリズマブFab3)は、Asp276及びAsp278に対して包む。Ser64及びSer80は、オマリズマブ及びオマリズマブFab3において同一である。

オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体において、Arg83(オマリズマブFab3中の変異した残基の1つ)は、Asp278(Cε2ドメイン)側鎖における障害のため、Cε2ドメインと見かけ上接触しない。しかしながら、Asp278側鎖が正しく並べられた場合、水素結合又は塩架橋がArg83とAsp278との間で形成する可能性がある。

オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体間の結晶学的に決定された接触 結晶構造における4Å以内の抗体と抗原との接触は、典型的には、エピトープ/パラトープ境界面を示す。 オマリズマブFab3重鎖及び軽鎖CDRの4Å以内のIgE−Fc残基は、以下のエピトープを規定する: T373、W374、S375、R376、A377、S378、G379、P381、Q417、C418、R419、P426、R427、A428(鎖A上)。

さらに、オマリズマブFab3軽鎖FR1及びFR3残基の4Å以内のIgE−Fc残基は、エピトープを、 D278、T281(鎖B上−Cε2ドメイン)[例5に記載される分子力学シミュレーション中に示されるように、抗体のR18、S64、S80及びR81、さらに、R83と接触する]まで伸長させる。 結晶構造における5Å以内の抗体と抗原との接触はまた、抗体/抗原境界面を規定する際に有用である。 オマリズマブFab3重鎖及び軽鎖CDRの5Å以内のさらなるIgE−Fc残基は、K380、M430(鎖A上)である。

さらに、オマリズマブFab3軽鎖FR1及びFR3残基の5Å以内のさらなるIgE−Fc残基は、D276、V277、L279、S280、A282(鎖B上−Cε2ドメイン)[FR1のG16及び位FR3のR65とさらに接触する]である。

オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体におけるCε3ドメインの向きの分析 Cε4ドメインに関するCε3ドメインの位置を分析するための1つの方法において、一方の鎖に由来するCε3ドメインに由来するAsn394 Cα原子と、他方の鎖のCε4ドメインに由来するLys497 Cα原子との原子間距離が、Cε3ドメインの「開口性」を記述するために使用されている29。Val336 Cα間の原子間距離は、「揺れ」、又はCε3ドメインが互いにどれぐらい近いかを記述するために使用されている29

Cε3ドメインが開いたコンフォメーションを採用する、FcεRIに結合したIgE−Fc、及びFcεRIに結合したFcε3−4について、「開口性」の値は、23.5〜28.4Åの範囲であるが、「揺れ」値は、平均で23.3Åである8、10。オマリズマブFab3/IgE−Fc複合体に関する対応する値は、「開口性」については平均で29.5Å及び「揺れ」については29.4Åである。オマリズマブFab3複合体では、Cε3ドメインは、これまで記載されたように、最も開いたコンフォメーション(互いに最も離れている)を採用する。

考察 本発明者らは、治療用抗IgE抗体オマリズマブに由来するIgE−FcとFab断片との複合体の、3.7Åの解像度での構造を報告する;本発明者らは、抗原結合部位に対して遠位のフレームワーク領域中に3点変異を含有する、このFab断片を、オマリズマブFab3と呼ぶ。この構造は、1つが2つのCε3ドメインのそれぞれに結合した(しかし、ただ1つのFabがCε2ドメインに結合した)、IgE−Fcと複合体を形成した2つもオマリズマブFab3分子を示し、FcεRIとCD23の両方へのIgEの結合を阻害するオマリズマブの能力に関する説明を提供する。IgE−Fcはまた、遊離IgE−Fcと比較してわずかな脱湾曲化を示した、FRETで標識されたIgE−Fcを使用する本発明者らの初期の試験と一致して、オマリズマブFab3複合体中で部分的に湾曲したコンフォメーションを採用することも見出される9

IgE−Fcは、溶液中では主として湾曲しており5、6、9、25、26、27、28、遊離IgE−Fcの結晶構造中で、(Cε2)2ドメイン対は、Cε3及びCε4ドメインに対して折り返される7、8。最近、IgE−Fcのコンフォメーション可撓性の本発明者らの理解は、本発明者らが、抗IgE−Fc Fab(aεFab)との複合体中で捕捉された、完全に伸長したコンフォメーションの構造を解明した場合、大いに増強された16。大きく湾曲したコンフォメーションから伸長したコンフォメーションへのIgE−Fcの脱湾曲化を調査する分子力学シミュレーションにより、部分的に湾曲したコンフォメーションに対応するエネルギーボウルが示された(図6)。(Cε2)2ドメイン対とFcε3−4ドメインとの間の湾曲が約90°である、ここで報告されるオマリズマブFab3/IgE−Fc複合体は、このシミュレーションにおいて異なるエネルギーボウルに対応する16。興味深いことに、オマリズマブFab3結合部位の位置は、完全に伸長したコンフォメーションへのさらなる脱湾曲化を不可能にせず、したがって、IgE−Fcは、オマリズマブと複合体を形成した場合であっても、コンフォメーションの実質的な変化を受け得る。

Cε3及びCε4ドメインと比較した(Cε2)2ドメイン対の湾曲に加えて、様々なIgE−Fc、Fcε3−4及び受容体複合体の構造は、Cε3ドメインが閉じたものから開いたものまでの相対的な向きの範囲を採用し得ることを証明した7、8、10、11、13、14、16、24、29。Cε3ドメインの開口及び閉口は、IgE−Fcにおける受容体結合のアロステリックな調節に寄与する11、12:CD23複合体中では、それらは相対的に閉じている11、13、14が、FcεRI複合体中では、それらはより開いている8、10。CD23/Fcε3−4及びオマリズマブFab3/IgE−Fc複合体の構造の比較は、CD23とオマリズマブの部位が重なることを示し、競合結合実験は、オマリズマブによるCD23へのIgE結合の阻害が直接にオルトステリックであることを示す。

しかしながら、FcεRI結合の阻害は、より複雑である。オマリズマブFab3複合体中では、Cε3ドメインは、任意の以前の構造において見られたものよりも開いたコンフォメーションを採用し、非常にそうなので、1つがそれぞれCε3ドメインを含む、IgE−FcとFcεRIとの相互作用の2つのサブ部位は同時に係合することができない。この阻害への別の寄与は、Cε3中の受容体結合FGループに対するオマリズマブFab3(Fab1)分子の近い位置の結果であり、FcεRIαの接触残基のコンフォメーションに直接影響し得る。最後に、IgE−Fc上のオマリズマブFab3とFcεRIα結合エピトープが厳密に重ならないとしても、2つが同時に結合した場合、立体的衝突の可能性がある。かくして、結晶構造は、オマリズマブの阻害機構は、主としてアロステリックであるが、オルトステリック成分の可能性もあることを示唆する。

SPR試験により、本発明者らは、2つのオマリズマブFab3結合部位の動力学及び親和性を評価することができた。2つの親和性は顕著に異なり、約1nM及び約30nMのKD値を示し、前者は、より速い結合速度定数(約2x105M−1s−1と比較して約2x106M−1s−1のkon)及びわずかに遅い解離速度定数(約6x10−3s−1と比較して約2x10−3s−1のkoff)と関連する。より高い親和性相互作用は、湾曲したIgE−Fc分子への妨げられない接近を有するFab1の結合に対応するが、より低い親和性及びより遅い結合速度はFab2に対応すると推測される、但し、本発明者らはこれに関して明確にすることができない。

オマリズマブFab3によるFcεRIαへのIgE−Fc結合の阻害の機構を調査するためのさらなるSPR実験により、FcεRIαと複合体形成した場合に、IgE−Fc上のオマリズマブFab3の利用可能な部位の数の減少(Bmaxの減少)が示された。オマリズマブによるFcεRIへのIgE結合の阻害は、重複部位に関する直接的競合に関して頻繁に解釈されてきたが、オマリズマブが受容体に結合したIgEに結合することができるという報告があった21、32。本発明者らは、オマリズマブFab3がFcεRIαに既に結合して3分子複合体を形成する場合、それがIgE−Fcに結合する能力をここに直接証明した。IgE−FcのFcεRIαへの予備結合の効果は、IgE−Fc上のオマリズマブFab3結合部位の数を、遊離IgE−Fcにおいて利用可能なものの10%未満に減少させることである;この効果は、アロステリックな調節だけに起因するものであり得る。

オマリズマブFab3と、IgE−Fc/FcεRI複合体との相互作用の性質は、解離の促進機構における洞察を提供する。この現象は、DAPRinについて初めて報告され、次いで、オマリズマブについて報告された20、21が、後者は治療的に使用される濃度よりも実質的に高い濃度22であり、ここで、オマリズマブFab断片について示される。本発明者らはさらに、解離が第2の(低親和性)オマリズマブFab3分子の最初の結合後にのみ起こることを証明する。換言すれば、解離の有意な促進を起こすためには、四分子複合体−(オマリズマブFab3)2/IgE−Fc/FcεRIαを形成させなければならない。

オマリズマブFab3、IgE−Fc及びsFcεRIαに関する本発明者らの観察に基づいて、本発明者らは、オマリズマブ、IgE及びFcεRIに関して起こる以下の機構を想定する:IgEはFcεRIに結合し、これらの条件下で、これらの結合したIgE分子の小集団は、オマリズマブ分子が結合することができるコンフォメーションを採用する;第2のオマリズマブ分子が結合してテトラマー複合体を形成する時、IgEのエネルギーランドスケープは、FcεRIとの相互作用が不安定化するように変化し、FcεRIからのIgEの急速な解離が起こる。この機構を理解するための鍵は、IgEに関するエネルギーランドスケープの複雑性、及び動的平衡中に存在する異なるコンフォメーション状態の理解である。

オマリズマブの阻害活性は、IgEの固有の可撓性及び、少なくとも解離の促進プロセスについて、IgE/FcεRI複合体の力学を利用すると考えられる。IgEは、Cε2ドメインの存在及びCε3ドメインのユニークでコンフォメーション的に力学的な、モルテングロビュール様特徴を包含する、他の抗体アイソタイプと比較したいくつかの通常ではない構造特性を有する34。同時に、これらの特性は、CD23とFcεRIの同時的係合を防止するアロステリックな連絡経路を作る;これは、トリマーCD23分子によるFcεRIに結合したIgEの架橋によるアレルゲンとは無関係な肥満細胞活性化を回避するには必須である12。IgEの力学と関連する他の機能的な利点は、膜結合IgE B細胞受容体について提唱されている16。オマリズマブがIgE/FcεRI相互作用の阻害に関する予想されるオルトステリックな機構を使用しないという観察は、それがまた、遮断抗体としてのその能力と、肥満細胞に結合したIgEの架橋を回避するその能力との両方において、IgEの通常ではない力学的特性を活用することを示している。最後に、オマリズマブは、その受容体との複合体中に存在する場合であっても、IgEのアロステリックで固有の可撓性を使用することにより、治療的に使用されるものよりも高い濃度21にも拘わらず、FcεRIからIgEを活発に解離させることができる。

方法 クローニング、タンパク質発現及び精製。オマリズマブヒトIgG1Fab及びオマリズマブFab3を、16に記載のようにクローニングし、発現させ、精製した。IgE−Fcを、以前に記載35のように生成した。IgE−Fcは、配列番号108に記載のものであった(Dorrington & Bennich(1978)Immunol.Rev.41:3〜25に記載のV224−K547であるが、グリコシル化パターンを単純化するためにIgE−Fcに挿入された以下の変異:N265Q & N371Qを有する)。オマリズマブを、Novartis Europharm Limitedから購入した。2:1のオマリズマブFab3/IgE−Fc複合体を、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、25mM Tris−HClpH7.5、20mM NaCl及び0.05%(w/v)NaN3中に溶出させ、23mg/mLに濃縮した。

表面プラズモン共鳴。SPR実験を、Biacore T200機器(GE Healthcare)上で実行した。アミンカップリングプロトコール(GE Healthcare)を使用し、300共鳴単位未満のカップリング密度を用いてタンパク質を共有的にカップリングするか、又は抗Hisセンサー表面を使用してHisタグ付タンパク質を捕捉することにより、特異的表面を調製した。Hisタグ付リガンドを捕捉するために、抗Hisタグモノクローナル抗体を使用し、製造業者の指示書(Biacore His Capture Kit、GE Healthcare)に従って固定した。結合実験においては、典型的には180〜240sの結合時間を使用し、解離成分を少なくとも500sにわたってモニタリングした。20mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、及び0.005%(v/v)サーファクタントP−20(GE Healthcare)の泳動バッファー中、25μL/min−1の流量で注入を実施した。ほとんどの実験測定を25℃で実施した;いくつかのサンドイッチ結合実験を5℃で行って、解離促進現象を最小化した。標準的な二重参照データ減算法を使用し36、Originソフトウェア(OriginLab)を使用して動的適合を実施した。

TR−FRET。100mM重炭酸ナトリウム、50mM NaCl、pH9.3中の4mg/mLのタンパク質を、5倍モル過剰のテルビウムキレートイソチオシアナート(Invitrogen)と反応させることにより、IgE−Fcをドナーフルオロフォアで標識した。撹拌しながら室温で3hインキュベートした後、PBS(20mMリン酸緩衝生理食塩水、150mM NaCl、pH7.4)中に透析することによって、過剰の未反応のフルオロフォアを除去した。室温で1h、3mg/mlのタンパク質を、2.5倍モル過剰のAlexa Fluor 647スクシンイミジルエステル(Invitrogen)と反応させることによって、sFcεRIα−IgG4−Fc融合タンパク質(α−γ)37をアクセプターフルオロフォアで標識した。PBS中に透析することによって、過剰のフルオロフォアを除去した。

1nMのテルビウムで標識されたIgE−Fc及び0〜20nMのAlexa Fluor 647で標識されたsFcεRIα−IgG4−Fcを、一定範囲の濃度のオマリズマブFab3と競合させることにより、TR−FRET阻害アッセイを実施した。希釈剤としてLanthascreenバッファー(Invitrogen)を使用して、384ウェルのhi−base白色プレート(Greiner BioOne)中でアッセイを行った。プレートを、室温で一晩静置してインキュベートし、Artemisプレートリーダー(Berthold Technologies)によって読み取った。次いで、TR−FRET比を、620nmでのドナーの放出で除算した665nmでのアクセプターの放出に10,000を乗算したものとして、各ウェルについて算出した。

結晶化。400μmまでの長さの、長方形の形態を有する結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を使用して18℃で成長させた。容器は、50μLの4%(w/v)PEG8000及び0.03Mフッ化ナトリウムを含有し、液滴は100nLのタンパク質及び300nLの容器を含有していた。最適化における大きな努力にも拘わらず、結晶の回折品質を、この試験のために使用したものを超えてさらに改善することはできなかった。結晶は、典型的には、数日後に成長し始め、その液滴中に溶解することが多かったが、凍結防止剤として上手く使用される4M TMAO(トリメチルアミンN−オキシド)中で安定化することができた。

データ収集及びプロセッシング。Diamond Light Source(Harwell、UK)にてビーム線I02及びI03でデータを収集した。xia2パッケージ39中に実装されたXDS38を使用して、積分を実施した。結晶は非等方的に回折し、複数の結晶に由来するデータを統合した。CCP4スイート40、41に由来するAIMLESSを用いてデータを3.7Åの解像度にスケーリングした後、UCLA Diffraction Anisotropy Server42を使用して3.7Å(a*)、3.9Å(b*)及び4.2Å(c*)の解像限界まで切り捨てた。Matthews係数の算出は、非対称ユニット中の単一の2:1のオマリズマブFab3/IgE−Fc複合体(約170kDaの分子量)について、約62%の溶媒含量を示した。

構造決定、モデルの構築及び改良。検索モデルとしてPDBエントリー2wqr8及び1.9Å解像度のオマリズマブFab構造(非公開の結果)に由来するタンパク質原子を使用して、CCP4スイート40に由来するPHASER43及びMOLREP44との分子置き換えにより、構造を解明した。改良を、最初にREFMAC45を用いて、後にPHENIX46を用いて実施し、Coot47における手動のモデル構築と交代した。モデルの品質を、MolProbity48、POLYGON49、及びPHENIXグラフィックインタフェース50内の他の検証ツールを用いて評価した。データプロセッシング及び改良統計値を表1に提示する。電子密度マップの領域を図11に示す。境界面を、PISA51を用いて分析し、PyMOL52を用いて図面を調製した。

参考文献

(例2) Biacoreによる固定されたsFcεRIαに由来するIgE−Fcの解離促進の測定 Biacore技術は、標識化を必要とすることなく生体分子間の相互作用を測定するものである。リガンドと呼ばれる、一方の相互作用物質は、センサー表面に直接固定されるか、又はそれに捕捉されるが、分析物と呼ばれる、他方は捕捉された表面上、溶液中で流動する。センサーは、分析物がリガンドに結合する時及び分析物がリガンドから解離する時のセンサー表面での質量の変化を検出する。これらのものは、結合及び解離プロセスの両方に対応する。解離促進アッセイでは、sFcεRIαはリガンドであり、センサー表面に固定される。IgE−Fcは分析物であり、sFcεRIαによって捕捉される。sFcεRIαからのIgE−Fcの解離は、センサー表面上を流動するバッファー又はセンサー表面上を流動するIgE結合パートナーの溶液を用いてモニタリングされる。この方法の詳細は、以下の通りである:

機器:Biacore 3000、GE Healthcare AB、Uppsala、Sweden。 センサーチップ:CM5。カタログ番号BR100399。 BIAnormalising溶液:70%(w/w)グリセロール。BIAmaintenance Kitの一部。カタログ番号BR100651。BIAmaintenance Kitを4℃で保存した。

アミンカップリングキット:カタログ番号BR100633。エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)を蒸留水中で75mg/mLにし、200μLアリコート中、−70℃で保存した。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を、蒸留水中で11.5mg/mLにし、200μLアリコート中、−70℃で保存した。エタノールアミンヒドロクロリド−NaOH pH8.5を4℃で保存した。

sFcεRIαの酸化のための試薬。カルボヒドラジド(SigmaAldrich、カタログ番号C11006)を蒸留水中で5mMにした。ナトリウムシアノボロヒドリド(SigmaAldrich、カタログ番号156159)を、酢酸ナトリウム(BDH、カタログ番号S1104−500GM)100mM pH=4中、100mMにした。m−過ヨウ素酸ナトリウム(SigmaAldrich、カタログ番号S−1878)を、酢酸ナトリウム(BDH、カタログ番号S1104−500GM)100mM pH=5.5中、50mMにした。 sFcεRIαを、pH5.5、0.1M酢酸ナトリウム中で1mg/mlに希釈した。次いで、4μlの過ヨウ素酸ナトリウム(50mM、1/50希釈)を、200μlの1mg/mlのsFcεRIα溶液に添加した。混合物を氷上に20min静置した。固定化の前に、sFcεRIαの溶液を、10mM酢酸ナトリウム(GE Healthcare、カタログ番号BR100669)、pH=4.0で7μg/mlに希釈した。

バッファー:泳動バッファーは、HBS−EP(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%サーファクタントP20、10xストック溶液から再構成)である:カタログ番号BR100669。固定化バッファーは、酢酸塩4.0(10mM酢酸ナトリウムpH4.0である)である。カタログ番号BR100349。バッファーを4℃で保存した。 リガンド:sFcεRIαは、ヒト高親和性IgE受容体のアルファ鎖の細胞外部分である。CHO細胞中で組換えタンパク質として発現させ、精製した。

分析物:IgE−Fcは、ヒトIgEのFc部分であり、CHO細胞中で組換えタンパク質として発現させ、精製した。C225A変異を担持する野生型ヒトIgE−Fc(Dorrington & Bennich(1978)Immunol.Rev.41:3〜25による番号V224−K547を含むCε2−Cε4ドメイン)を使用した(配列番号108)。

変異体の命名法: ・オマリズマブFab1:S81R、Q83R[Kabatの番号付けによるS77R、Q79R](S77及びS79がQで置き換えられた配列番号24としての可変領域軽鎖+カッパ定常領域:配列番号5としての可変領域重鎖+CH1定常領域) ・オマリズマブFab2:L158P[Kabatの番号付けによるL154P](配列番号113としての可変領域軽鎖+カッパ定常領域;配列番号5としての可変領域重鎖+CH1定常領域) ・オマリズマブFab3:S81R、Q83R、L158P[Kabatの番号付けによるS77R、Q79R、L154P](配列番号121としての可変領域軽鎖;配列番号5としての可変領域重鎖+CH1定常領域)。

IgE結合パートナー(1):完全長オマリズマブ(Novartis);CHO細胞中で発現され、精製されたオマリズマブの組換えFab断片。

IgE結合パートナー(2):HEK−293細胞中で発現され、培養上清としてアッセイされた、オマリズマブの組換えFab断片、及びその変異体。培養上清を、分析の前に10倍濃縮した。

アッセイ方法(1):約500応答単位(RU)のレベルでのアルデヒドカップリングにより、センサー表面にsFcεRIαをカップリングさせた。HBS−EPバッファーを、30μL/minの流量で泳動バッファーとして使用した。IgE−Fcを、HBS−EP中で10nMに希釈し、290秒間にわたって固定されたsFcεRIα上に注入した後、それぞれ690秒の期間、泳動バッファーの、又は泳動バッファー中に希釈されたIgE結合パートナーの3回の注入を行った。IgE−Fcの捕捉レベルは約90RUであった。10mMグリシン−HCl、pH2.5の2回の60秒間の注入により、表面を再生させた。固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの解離の量を、初期結合量の関数として算出し、解離速度を、固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの喪失の量として算出し、経過時間の関数として初期結合量について標準化した。

アッセイ方法(2):約2000応答単位(RU)のレベルでのアルデヒドカップリングにより、センサー表面にsFcεRIαをカップリングさせた。HBS−EPバッファーを、30μL/minの流量で泳動バッファーとして使用した。IgE−Fcを、HBS−EP中で10nMに希釈し、180秒間にわたって固定されたsFcεRIα上に注入した後、泳動バッファーの、又は泳動バッファー中に希釈されたIgE結合パートナーの180秒の期間の1回の注入を行った。IgE−Fcの捕捉レベルは約275RUであった。10mMグリシン−HCl、pH2.5の2回の60秒間の注入により、表面を再生させた。固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの解離の量を、初期結合量の関数として算出し、解離速度を、固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの喪失の量として算出し、経過時間の関数として初期結合量について標準化した。

さらなる変異誘発を実施して、Fab3において記載されたものの他に、sFcεRIαからのIgE−Fcの解離を促進するさらなる変異を同定することができるかどうかを決定した。これにより、Fab3の文脈で、sFcεRIαからのIgEの解離をさらに増加させることができるS64M変異(配列番号20を参照して)が得られた。これらのデータを、図13及び表3に記載する。

結論: まとめると、これらのデータは、変異形態のオマリズマブFabが、固定形態の高親和性IgE受容体FcεRIからのIgEの解離を促進することができることを示している。これを可能にする軽鎖中の変異としては、必ずしも限定されるものではないが、配列番号24を参照したS64M、S81R、Q83R及びL158Pが挙げられ、配列番号39が得られる。

(例3) フローサイトメトリーによるFcεRIからのIgE−Fcの解離の促進の測定 機器:FACSCanto II フローサイトメーター(Becton Dickinson)。

細胞系:ヒトFcεRIを発現するRBL−SX38細胞を、10%ウシ胎仔血清、2mM GlutaMAX及び500μg/mLゲネチシン(Life Technologies)を添加した最少必須培地中で培養した。アッセイの当日、細胞をPBS中で洗浄し、剥離するまでアキュターゼ中でインキュベートした後、培養培地中、1x106細胞/mLで再懸濁した。全てのサブ配列インキュベーションステップを、培養培地中で実施した。

アッセイ方法:1x106細胞/mLのRBL−SX38細胞を、37℃で1時間、5nMのAlexa−488標識されたIgE−Fcと共にインキュベートした。細胞を培養培地中で2回洗浄して、未結合のIgE−488を除去した後、培養培地中に1x106細胞/mLで懸濁したか、又は100μg/mLのIgE結合剤を培養培地中で希釈した。次いで、細胞を、一定に回転させながら37℃でインキュベートした。それぞれの時点で、0.5x105個の細胞を取り出し、氷冷PBS中で洗浄した後、PBS中の1%パラホルムアルデヒド中に、4℃で16時間再懸濁することによって固定した。細胞に結合したAlexa−488蛍光の量を、FACSCanto IIフローサイトメーターを使用して決定した。

フローサイトメトリー:固定した細胞を、FACSバッファー(PBS、pH7.4中の0.1%w/v BSA、0.01%w/v NaN3)中で2回洗浄し、200μLのFACSバッファー中に再懸濁した。標準的な方法を使用してFACSCanto IIサイトメーター上でフローサイトメトリーを実施し、インタクトな細胞に結合したAlexa−488の幾何平均蛍光強度を、FlowJoソフトウェアを使用して算出した。Alexa−488で標識されたIgE−Fcの解離速度を、細胞培地中の細胞を、過剰の未標識のIgE−Fcと共に、又はIgE結合剤の存在下でインキュベートする結果としての時間の関数としての幾何平均蛍光強度の変化として算出した。

変異体の命名法: ・オマリズマブFab1:S81R、Q83R[Kabatの番号付けによるS77R、Q79R](S77及びS79がQで置き換えられた配列番号24としての可変領域軽鎖+カッパ定常領域:配列番号5としての可変領域重鎖+CH1定常領域) ・オマリズマブFab2:L158P[Kabatの番号付けによるL154P](配列番号113としての可変領域軽鎖+カッパ定常領域;配列番号5としての可変領域重鎖+CH1定常領域) ・オマリズマブFab3:S81R、Q83R、L158P[Kabatの番号付けによるS77R、Q79R、L154P](配列番号121としての可変領域軽鎖+カッパ定常領域;配列番号5としての可変領域重鎖+CH1定常領域)。

結論: まとめると、これらのデータは、変異型のオマリズマブFabが、細胞表面上に発現される、高親和性IgE受容体FcεRIからのIgEの解離を促進することができることを示す。これを可能にする軽鎖中の変異としては、必ずしも限定されるものではないが、S81R、Q83R及びL158Pが挙げられる。

(例4) オマリズマブFab3が72時間のPCAモデルにおいて治療的に投与された場合、野生型オマリズマブFabより優れた効能を有することの証明 7.5μLの6.68mg/mLストックを1992.5μLのPBSに添加することにより、25μg/mLのヒト抗DNP−IgEの溶液を調製した。この溶液の20μL注射液は、500ng用量のIgEを与える。動物(hIgER Tgマウス)の脇腹の毛を剃った後、0日目の2pmにそれぞれの脇腹にi.d.注射した。20μLのPBSを、陰性対照として各動物の左脇腹に注射した。抗NDP−IgE(20μL)を、右脇腹に注射した。合計40匹のマウスに注射した。野生型オマリズマブFab又はオマリズマブFab3(S81R、Q83R、L158P変異[Kabatの番号付けによるS77R、Q79R、L154P]を有する)による処置を、IgEの18時間後(8am)に開始した。2群のマウス(n=8匹/群)は、野生型オマリズマブFab又はオマリズマブFab3のいずれかの100mg/kg s.c.を受けた。さらなる群の8匹のマウスは、PBS s.c.を受けた。マウスに、10時間後(6pm)に上記のように再度投与した。また、この時点、IgEの28時間後で、さらに2群(n=8匹/群)に、100mg/kg scの野生型オマリズマブFab又はオマリズマブFab3を投与した。全ての群に、8am、6pm及び再度、実験の最終日の8amに再投与した。i.d投与の72時間後(2pm)に、全ての動物に、100μLの1mg/mL DNP−HSA、100IU/mlのヘパリン中で作られた2.5%w/vのエバンスブルーをi.v.注射した。1時間後、動物を、スケジュール1の方法によって殺傷した。i.d注射部位の周囲の脇腹から皮膚を除去し、パンチ生検を取った。皮膚試料を、700μLのホルムアミド中に入れ、55℃で一晩消化した。消化後、100μLx2の液体を各試料から取り出し、96ウェルのELISAプレート中に入れた。次いで、620nmで吸光度を測定した。

結論: これらのデータは、高親和性IgE受容体FcεRIからのIgEの解離を促進することができる変異型のオマリズマブFabが、野生型オマリズマブFabと比較した場合、統計的に有意な様式で受動的皮膚アナフィラキシーを軽減することもできる(反応部位からのエバンスブルー色素の漏出の阻害により示される)ことを示す。これを可能にする軽鎖中の変異としては、必ずしも限定されるものではないが、配列番号24を参照してS81R、Q83R及びL158Pが挙げられ、配列番号39をもたらす。

(例5) IgE Fcと複合体を形成したオマリズマブFab3の分子力学的シミュレーション 方法: IgE Fc領域と複合体を形成したオマリズマブFab3の結晶構造(例1を参照)を、分子操作環境(MOE)2014.0901(1)中で、Amber 14(2)を使用する分子力学(MD)シミュレーションの前に、いくつかの残基中の失われる側鎖及びCε2とCε3ドメイン間の失われるループを完成させることによって調製した。複合体構造を、水素添加し、ボックスのいずかの端部からタンパク質原子まで10Å伸びたトランケートされた8面体ボックス中の0.15M NaCl塩溶質を使用するTIP3P明確水モデルを使用して溶媒和させた。システムを、Amber ff12B及びオリゴ糖GLYCAM_06j−1(3)力場を使用して設定し、クーロン力及びファンデルワールス相互作用及びグリッドベース近隣リストのために設定された10.0Åのカットオフで50,000ステップについて共役勾配法により最小化した。その後、システムを、一定容量、125psで0〜300Kに徐々に加熱した後、全ての溶質の重原子上での拘束と共にNPTアンサンブル中、2.25nsで平衡化させた(調和力拘束は5.0である)。静電学については、本発明者らは、デフォルトのフーリエ空間及び許容性設定を用いてクーロン力相互作用について8.0Åのカットオフを有する四次PMEを使用した。温度を、1.0psの時間定数を用いてそれぞれタンパク質及び溶媒に適用される弱いカップリングアルゴリズムを用いて制御し、圧力を、1.0psの時間定数及び4.46x10−5bar−1の圧縮率を用いる全システムに適用される等方性Berensonバロスタットを用いて制御した。最後に、いかなる制限もない1000nsの生成シミュレーションを、平衡化のために同じパラメータを使用して行った。GPUインフラストラクチャ上で4fsの時間ステップを可能にするために、タンパク質及び糖の水素質量を、ParmEd(4)を使用して3.024ダルトンに再分配したが、それらが結合する原子の質量を、総質量を未変化のままにするために必要とされる量で調整した。抗体軽鎖中のR81及びR83を、それぞれ、野生型セリン及びアスパラギンに実際に変異させることにより、IgE Fc領域と複合体を形成した野生型オマリズマブFabの構造を、IgE Fcとのオマリズマブ変異体3の結晶複合体構造からモデル化した。MDシミュレーションを、変異体3に関するものと同じ設定プロトコールを使用して行った。

AmberTolls cpptrajモジュール(7)を、IgE Fcと複合体を形成したオマリズマブFab3とオマリズマブFabの両方に関するMD軌道のクラスター分析のために使用した。各クラスター間の平均結合距離が2.0Å未満である階層的凝縮型アルゴリズムを採用した。フレーム間の距離を、抗体軽鎖V領域残基中のCα原子間の最良適合配位RMSDにより算出した。クラスタリングを、10フレーム毎のみについて行い、他のフレームは全て、それらがクラスタリング後にクラスターの質量中心にどれぐらい近いかに基づいてクラスターに添加した。

参考文献

結果: オマリズマブFab3の軽鎖中のS81R及びQ83R変異がIgEとの相互作用にどのように影響するかを試験するために、1マイクロ秒の分子力学的シミュレーションを、それぞれ、IgE Fc構造と複合体を形成したオマリズマブFab及びオマリズマブFab3について実施した。軌道スナップショットをクラスター化し、上2つの多いクラスター中心構造を分析したところ、両クラスターにおいて、変異体3中の2個のアルギニン変異が、それぞれ、隣接するIgE Cε2ドメイン中の残基D278及びS280と強い水素結合ネットワークを形成することを明確に示している。軌道の視覚的検査は、R81−S280及びR83−D278の対合相互作用が、シミュレーション中に非常に保存されており、安定であり、したがって、結晶構造中の開示されたより近いCε3ドメインに対する湾曲していないCε2コンフォメーションは、抗体架橋によって凍結されることを確認する。興味深いことに、二重のアルギニン変異はオマリズマブFab3の結晶構造中のCε2 D278及びS280に空間的に隣接するが、MDシミュレーションにおいて示唆されたように直接的な水素結合は存在しない。オマリズマブFabについては、予想通り、変異体3中に認められるような水素結合ネットワークは、上2つのクラスター中心構造中では失われている。視覚的な軌道検査により、Cε2ドメインは抗体軽鎖フレームワークにあまり係留されないようになり、かくして、より近いCε3ドメインに対するその相対位置は、オマリズマブFab3のそれよりも可変性であることが示される。これに加えて、同じ複合体中のオマリズマブFab3とIgE−Fcとの境界面を、オマリズマブFab3中の軽鎖位置S56、S64及びS71(配列番号113を参照する)を変異させて、IgE−Fcに対するオマリズマブの親和性を増加させ、かくして、上記に詳述されたS81R及びQ38R変異について見られると予測される効果を増強すると予測する、IOTA分析(IOTAはタンパク質境界面又は結合部位での所与の接触原子型の確率を決定するための統計的な潜在的手段である)にかけた。

結論: まとめると、MDシミュレーションは、S81R及びQ38R変異が、Cε2中の隣接するD278及びS280との直接的な静電相互作用及び水素結合相互作用による抗体へのIgE Cε2ドメインの局在化を容易にし、Cε2の湾曲していないコンフォメーションを閉じ込めることによってIgE可塑性Fcに影響するという仮説を提唱する。これは、S64M変異及びS56(D、E、Q、又はRに変化)及びS71(D、E又はMに変化)が類似する効果を有すると予測する統計的方法と組合わされる。

(例6) BiacoreによるIgE−Fcに対する抗IgE Fabの親和性の測定 Biacore技術は、標識化を必要とすることなく生体分子間の相互作用を測定するものである。リガンドと呼ばれる、一方の相互作用因子は、センサー表面上に直接固定されるか、又はそれに捕捉されるが、分析物と呼ばれる他方は、捕捉された表面上を溶液中で流動する。センサーは、分析物がリガンドに結合する時及び分析物がリガンドから解離する時にセンサー表面での質量の変化を検出する。これらは、結合プロセス及び解離プロセスの両方に対応する。動的アッセイでは、抗IgE Fabはリガンドであり、センサー表面に捕捉される。IgE−Fcは分析物であり、抗IgE Fabによって捕捉される。捕捉された抗IgE FabからのIgE−Fcの結合及び解離は、センサー表面を流動するIgE−Fc(結合相)又はセンサー表面を流動するバッファー(解離相)を用いてモニタリングされる。この方法の詳細は、以下の通りである: 機器:Biacore 3000、GE Healthcare AB、Uppsala、Sweden センサーチップ:CM5。カタログ番号BR100399。 BIAnormalising溶液:70%(w/w)グリセロール。BIAmaintenanceキットの一部。カタログ番号BR100651。BIAmaintenanceキットは、4℃で保存した。

アミンカップリングキット:カタログ番号BR100633。エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)を蒸留水中で75mg/mLにし、−70℃にて200μLアリコート中で保存した。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を蒸留水中で11.5mg/mLにし、−70℃にて200μLアリコート中で保存した。エタノールアミンヒドロクロリド−NaOH pH8.5を4℃で保存した。

バッファー:泳動バッファーは、HBS−EP(10xストック溶液から再構成、10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%サーファクタントP20)である:カタログ番号BR100669。固定化バッファーは、酢酸塩4.0(10mM酢酸ナトリウムpH4.0である)である。カタログ番号BR100349。バッファーを4℃で保存した。

リガンド:抗IgE Fabがリガンドであった。これらのものを、HEK293細胞中で組換えタンパク質として一過的に発現させ、さらに精製することなく使用した。

分析物:IgE−Fcは、ヒトIgEのFc部分であり、CHO細胞中で組換えタンパク質として発現させ、精製した。C225A変異を担持する野生型ヒトIgE−Fc(Dorrington & Bennich(1978)Immunol.Rev.41:3〜25による番号V224−K547を含むCε2−Cε4ドメイン)を使用した(配列番号108)。

ヤギ抗ヒトIgG1(Fab2断片特異的)のFab2断片(Jackson Immunolabs、カタログ番号109−006−097)を、標準的な方法を使用するアミンカップリングによりセンサー表面に固定した。抗IgE Fabを泳動バッファー(HBS−EP)中に希釈し、約200共鳴単位を表面に捕捉させた。IgE−Fcを泳動バッファー中に希釈し、2nM〜125pMの連続希釈系列を、捕捉された抗IgE Fab上に通過させた。結合相は180秒間であり、解離相は300秒間であった。センサー表面を、40mM HClへの60秒間の曝露、次いで、10mM NaOHへの60秒間の曝露、次いで、40mM HClへのさらに60秒間の曝露により再生した。全ての結合データを、標準的な手順に従ってBiaEvaluationソフトウェアを使用する二重参照によりプロセッシングした。

結論: これらのデータは、変異型のオマリズマブFabがIgE−Fcに対するオマリズマブFabの親和性を増加させることができることを示している。親和性の改善に関する変異の最良の組合せは、S56Dと組み合わせたS71Mである。この親和性の増加は、原理的には、FabのIgE−Fcからの解離速度の低下によって引き起こされる。非変異型オマリズマブFabと比較した抗体とIgE−Fc Cε2との相互作用の改善を考慮すると、オマリズマブFab1(S81R、Q83R変異[Kabatの番号付けによるS77R、Q79R]を有する)及びFab3(S81R、Q83R、L158P変異[Kabatの番号付けによるS77R、Q79R、L154P]を有する、配列番号125を参照)の親和性も改善される。

(例7) Biacoreによる固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの解離の促進の測定 sFcεRIαからのIgE−Fcの解離の際の抗IgE Fabの効果を、例2に概略された方法(アッセイ方法2)を使用して測定した。全ての抗IgE Fabを、HEK−29s Fab中で発現させ、標準的な方法により精製し、モル吸光係数計算値を使用して280nmでの吸光度により定量した。このアッセイでは、IgE−Fcの濃度は2nMであり、解離時間は200秒であった。固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの解離の量を、初期結合量の関数として算出し、解離速度を、固定されたsFcεRIαからのIgE−Fcの喪失の量として算出し、経過時間の関数として初期結合量について標準化した。

S80N(pdb番号付け)は、Cε2 IgEのD278と相互作用すると考えられ、S67W/Y(pdb番号付け)は、Cε2 IgEのT298と相互作用すると考えられる。

結論: これらのデータは、変異型のオマリズマブFabが、固定された形態の高親和性IgE受容体FcεRIからのIgEの解離を促進することができることを示している。これを可能にする軽鎖(配列番号20)中の変異としては、必ずしも限定されるものではないが、S56、S64、S67、S71、S80、S81、Q83&L158位(Kabatの番号付けによる、それぞれ、S52、S60、S63、S67、S76、S77、Q79&L154位)での変異が挙げられる。

(例8) 変異型オマリズマブFabの強制的酸化) 抗IgE Fab試料を、強制的酸化レジメンにかけて、IgE−Fcに対するFabの親和性及びIgE−Fc:sFcεRIα複合体の解離を促進する能力に対する、軽鎖可変領域中のメチオニンの酸化の効果を確認した。変異型オマリズマブFabを、室温で最大14日間、0.1%及び1%(v/v)過酸化水素と共にインキュベートした。インキュベーション後、試料をPBS pH7.4にバッファー交換し戻し、吸光係数計算値を使用して280nmでの吸光度により濃度を決定した。軽鎖可変領域メチオニンの酸化量を決定するための質量分析を、変性条件下での材料の還元及びアルキル化、次いで、トリプシン消化(37℃で180分間の50μg/mLのトリプシン、次いで、TFAによるクエンチ)、次いで、Thermo Orbitrap Q Exactive Plus質量分析計を使用するLC−MSによる分析により実施した。酸化したメチオニンのパーセンテージを、合成時にメチオニン酸化がないという前提と比較して算出し、4℃で保持した参照材料と比較する。

結論: これらのデータは、重要な軽鎖メチオニン(M64及びM71)が本質的に完全に酸化された変異型オマリズマブFabを生成することができることを示している。これらのデータに基づいて、1日目、3日目及び7日目の試料に由来する材料をプールし、これを使用して、IgE−Fcに対する変異型オマリズマブFabの親和性に対するメチオニン酸化の影響及びIgE−Fc:sFcεRIα複合体の解離を促進する能力を決定した。

(例9) FRETによるsFcεRIαからのIgE−Fcの解離の促進の測定) sFcεRIαからのIgE−Fcの解離の際の抗IgE Fabの効果を、均一FRETアッセイにおいて測定した。全ての抗IgE Fabを、HEK−293細胞中で発現させ、標準的な方法により精製し、モル吸光法計算値を使用して280nmでの吸光度により定量した。FRETアッセイは、ドナーとしてTb標識されたIgE−Fcを使用し、アクセプターとしてAlexa488標識されたsFcεRIαを使用した。両試薬を混合し、1nMの最終アッセイ濃度で、室温で60分間平衡化させた。抗IgE Fabを、500nMの最終アッセイ濃度で混合物に添加し、800分間にわたって20分毎に蛍光を読み取った(330nmで励起、495及び520nmで放出)。蛍光放出を、時間の関数としてプロットし、sFcεRIαからのIgE−Fcの解離速度を、複合体の半減期として算出した。これらのデータを、表10及び表11に報告する。

結論: これらのデータは、変異型のオマリズマブが、野生型配列よりも速い速度でsFcεRIαからIgE−Fcを解離させることができることを示している。特に、これを可能にする軽鎖中の変異(配列番号20を参照する)としては、必ずしも限定されるものではないが、S64及びS67位での変異が挙げられる。さらに、メチオニン(M64及びM71、配列番号20)の酸化は、IgE−Fc:sFcεRIα複合体の解離を促進するFabの能力に対する有意な効果がない。

本明細書を、本発明の態様を参照して説明してきた。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更を加えることができることを理解できる。したがって、本明細書は、限定的な意味よりもむしろ例示と見なされるべきであり、全てのそのような改変が本発明の範囲内に包含されることが意図される。

配列番号1〜2:<223>V領域 配列番号3〜4:<223>シグナル配列を含むV領域 配列番号5〜6:<223>V領域+ガンマ1CH1定常領域 配列番号7〜8:<223>シグナル配列を含む、V領域+ガンマ1CH1定常領域 配列番号9〜10:<223>V領域+ガンマ1完全長定常領域 配列番号11〜12:<223>シグナル配列を含む、V領域+ガンマ1完全長定常領域 配列番号20〜21:<223>V領域軽鎖 配列番号22〜23:<223>シグナル配列を含むV領域軽鎖 配列番号24:<223>V領域軽鎖+カッパ定常領域 配列番号25:<223>V領域+カッパ定常領域 配列番号26〜27:<223>シグナル配列を含む、V領域+カッパ定常領域 配列番号35〜36:<223>S60M_S77R_Q79R_V領域 配列番号37〜38:<223>シグナル配列を含むS60M_S77R_Q79R_V領域 配列番号39〜41:<223>S60M_S77R_Q79R_V領域+L154Pを包含するカッパ定常領域 配列番号42:<223>シグナル配列を含む、S60M_S77R_Q79R_V領域+L154Pを包含するカッパ定常領域 配列番号108:<223>野生型ヒトIgE−Fc(Dorrington & Bennich (1978)による番号V224−K547を有するCE2−CE4ドメイン) 配列番号109:<223>S77R_Q79R_V領域(Fab1) 配列番号110:<223>77R_Q79R_V領域(Fab1) 配列番号111〜112:<223>シグナル配列を含むS77R_Q79R_V領域(Fab1) 配列番号113〜114:<223>Fab2_V領域 配列番号115〜116:<223>シグナル配列を含むFab2_V領域 配列番号117〜118:<223>Fab2_V領域+L154Pを包含するカッパ定常領域 配列番号119〜120:<223>シグナル配列を含む、Fab2_V領域+L154Pを包含するカッパ定常領域 配列番号121〜122:<223>Fab3_S77R_Q79R_V領域 配列番号123〜124:<223>シグナル配列を含む、Fab3_S77R_Q79R_V領域 配列番号125〜126:<223>Fab3_S77R_Q79R_V領域+L154Pを包含するカッパ定常領域 配列番号127〜128:<223>シグナル配列を含む、Fab3_S77R_Q79R_V領域+L154Pを包含するカッパ定常領域 配列番号129〜130:<223>オマリズマブ_V領域 配列番号132〜133:<223>S60M_S52D_S67M_S77R_Q79R_V領域 配列番号134〜135:<223>シグナル配列を含む、S60M_S52D_S67M_S77R_Q79R_V領域 配列番号136〜137:<223>S60M_S52D_S67M_S77R_Q79R_V領域+カッパ定常領域 配列番号139〜140:<223>S60R_S52D_S67M_S77R_Q79R_V領域 配列番号141〜142:<223>シグナル配列を含む、S60R_S52D_S67M_S77R_Q79R_V領域 配列番号143〜144:<223>S60R_S52D_S67M_S77R_Q79R_V領域+カッパ定常領域 配列番号145:<223>S60K_S52D_S67M_S77R_Q79R_V領域 配列番号146:<223>S60Q_S52D_S67M_S77R_Q79R_V領域 配列番号147〜148:<223>シグナル配列を含む、V領域+ガンマ1CH1定常領域+リンカー+CA645 gL4gH5 scFv 配列番号149:<223>CH1とCA645 gL4gH5 scFvとの間のリンカー 配列番号151:<223>CA645 gH5と、scFv内のCA645 gL4との間のリンカー 配列番号158:<223>S60M_S52D_S67M_S77R_Q79R_S63W_S76N_V領域 配列番号159:<223>S60M_S52D_S67M_S77R_Q79R_S63Y_S76N_V領域 配列番号160:<223>シグナル配列

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