本発明は、ペット用栄養補助食品製造の分野に関する。 本発明は特に、栄養補助食品、イヌの食生活における該栄養補助食品の利用、及び該栄養補助食品を製造する方法に関する。

ヒトの場合と同様に、糖尿病病態は、イヌやネコを含む、ヒトにとっての愛玩動物として生活するペットにとってますます一般的な健康問題となりつつある。

糖尿病には、真性糖尿病（ｍｅｌｌｉｔｕｓ）、尿崩症（ｉｎｓｉｐｉｄｕｓ）、妊娠糖尿病（ｇｅｓｔａｔｉｏｎａｌ）の三種類がある。 イヌの場合、真性糖尿病が最も多く、次いで妊娠糖尿病が多いが、ネコは真性糖尿病しか発症しないようである。 いずれの病態においても、動物は、補助なくしては血糖値を調節できなくなる。

妊娠糖尿病の場合、ホルモンの不均衡のために、妊娠している雌イヌが血糖の調節機能を失う。 一般的には、仔イヌの出産後、正常な調節機能が回復するが、病態が致命的になり得るため、雌イヌの妊娠中には病態の管理が必要とされる。 更に、妊娠糖尿病は、仔イヌの健康に多数の悪影響を及ぼす。

真性糖尿病は慢性の病態であり、イヌの場合にはヒトの１型糖尿病に相当するが、ネコの場合は２型糖尿病に相当する場合が最も多い。 動物の糖尿病の原因は不明であるが、文献で言及される、イヌ及びネコにおける真性糖尿病の原因として最も多いのは高脂肪食と内蔵の不健康により引き起こされる肥満と脂質異常症であり、自己免疫疾患を引き起こす。 これらの状態はヒトの糖尿病発症の主な要因としても報告されており、３つの種に共通する環境要因を示唆している。

糖尿病病態に関する多くの研究において、ヒトの代替としてイヌが使われてきた。 ヒト用には多くの経口薬が利用可能である一方、イヌやネコの糖尿病治療は一般的に、食事制限とヒトインスリンの皮下注射に限定され、これらは必ずしも日々の血糖値の改善につながっていない。

近年では、イヌにおける真性糖尿病の有病率が急増（１万匹あたり１９例から、１万匹あたり５０例）しており、全体の３分の１ものイヌがリスクを抱えていると推定されている。 当該疾患の治療は困難かつ高額であるため、リスクを低減する、及び／又は症状を軽減するいかなる方法も、イヌの飼い主達に対して大きな恩恵となる。

ネコにおける真性糖尿病の有病率は、１万匹あたり７４例と高いことが報告されているが、ネコは通常、重い症状が起きるまでは糖尿病と診断されることがないため、更に高い可能性もある。 ネコの場合、大半は２型糖尿病であるため、血糖値の調節とインスリン感受性の向上を補助できる治療が特に有用である。 また、多くの動物が、食事制限のみで治療可能である。

市販のペットフードは通常、糖尿病病態用の特定の治療を念頭に置いて調合されてはいないため、このような食事だけでは、動物における真性糖尿病発症のリスクを低減できるとは考えられない。 具体的には、市販のペットフードの多くに用いられている繊維源は、糖尿病リスクの低下には不適切であると考えられている。 また、「自然な」ペットフード製品に対する市場の需要が高まっている。

イヌの生理学的特徴は、多くの点でヒトの生理学的特徴と類似している。 イヌの主要な食物アレルギー及び不耐症としては、小麦、乳製品、大豆、及びオーツ麦（その他多くのうちの一部）に関するものが報告されている。 食物アレルギーは、イヌの全アレルギーのうち１０％を占めると考えられ、２０％のイヌが何らかのアレルギーを有すると推定されている。 ネコは、ヒトやイヌのような雑食というよりも完全な肉食に近いため、その生理学的特徴はそれほどヒトに近くないが、ネコも、イヌほどの割合ではないものの、食物アレルギーを有する。 それでも、小麦はネコにおいて、一般的なアレルゲンである。

したがって、食物アレルギーを有するペットの割合はかなり高く、内臓の不健康が動物の糖尿病の潜在的な原因である事実を併せみると、低アレルギー性の治療が好ましいであろう。 現在、ペット向けの食生活関連の療法には、高繊維食が含まれるが、この繊維は小麦及び／又はオーツ麦に由来するものが最も多い。 また、高繊維食の全てが血糖値の調節に有効なわけではないことも判明している。

したがって、本発明の目的は、糖尿病病態のリスクを有するイヌ及びネコの食生活への食物繊維の提供を改善し、従来技術において、特定された不利益を改善することである。

本発明の一の側面によれば、サトウキビから抽出される食物繊維材料を、糖尿病病態の影響を改善するために調合される愛玩動物用食品の製造において、利用する方法が提供される。

好ましくは、当該サトウキビ繊維は、サトウキビ材料が１以上の湿式拡散ステップを経ることで、残存繊維材料から糖を分離する工程と、前記残存繊維材料が高速低温または短曝露時間乾燥プロセスを経ることで、前記残存繊維製品の保水性を向上させる工程と、を含むプロセスを通じて調製される。

上述の方法でサトウキビから抽出された食物繊維材料を用いることには、数多くの利点がある。 まず、当該繊維源についてはこれまでに愛玩動物におけるアレルギー性の副作用が報告されたことがない。 また、当該繊維源は、その他の繊維源よりも内臓粘膜の健康を改善させることが示されている。 これは、可溶性及び不溶性繊維の両方の利点を含むとともに、他の製品に比べて自然の食品により近い繊維含有率を有する。 また、これは鉄分等の微量栄養素をより多く含み、抗酸化物質の保護能力を有する。

サトウキビ等、イネ科の植物から分離された繊維は、ペットフードにおける最も一般的な２種類の繊維源である小麦ふすま及びセルロースパルプのような不完全（全植物繊維でない）繊維に比べて、いくつかの有益な性質を有する。

サトウキビ由来の繊維は、植物性食品に見られる全食物繊維と同様の、真のリグニン（ｌｉｇｎｏｓｅ）と、ヘミセルロースと、セルロースとの組み合わせである。 更に、サトウキビ繊維はほぼ全体が不溶性繊維として分類されるが、高い水結合能（重量で８〜１０倍）及びプロバイオティック効果を有し、可溶性繊維の多くの性質をも有している。 不溶性繊維は血糖値に対する効果がほとんど、もしくは全くないことが知られているが、適切に調製された場合、サトウキビ繊維は、食後の血糖値に対して大きな恩恵を有し得ることが観察されている。 これは、繊維中のヘミセルロース画分が、消化中に放出される可溶性成分を有することと、適切に調製された場合、繊維が多くの生物活性分子を保持することと、の組み合わせによるものと考えられる。

更に、当該繊維材料は、本明細書内に記載のプロセスを通じて調製された場合、繊維中の生物活性分子の保持により、繊維は糖尿病のイヌ及びネコに対する機能を高レベルに保持する傾向がある。 当該繊維材料は更に、イヌ及びネコの大部分におけるこの欠乏に対処するための適切な食物繊維量を提供する。

本発明はさらに、具体的には糖尿病病態の動物の飼い主が、特に、比較的利用しやすい形態の適切な種類の繊維が与えられた場合に、それぞれの方法で欠乏に対処することを可能にする、より柔軟な製品形態の開発を可能にする。 飼い主は、ペットの口に合う高繊維食を作り出す上で、食品製造会社に依存する必要がなくなる。

湿式抽出ステップは、相対的に低せん断の条件下で行われる拡散抽出であることが好ましい。 湿式抽出ステップの最適温度は、２５℃〜７０℃の範囲内である。

本発明の別の側面によれば、愛玩動物の糖尿病の影響を改善するために調合される食品であって、サトウキビから抽出される食物繊維材料を含有する食品が提供され、該食物繊維材料は上記の工程により調製されていることが好ましい。

本発明の別の側面によれば、愛玩動物におけるイヌ糖尿病の影響の治療方法であって、該愛玩動物に、サトウキビから抽出される食物繊維材料が添加された食品を投与することによる治療方法が提供され、該食物繊維材料は上記の工程により調製されていることが好ましい。

ここで、本発明の好適な実施形態を、具体的かつ非限定的な例によって、説明する。

本発明は、生物活性分子の破壊が最小限となるような形で、サトウキビから製造された分離食物繊維（ｄｉｅｔａｒｙ ｆｉｂｒｅ ｉｓｏｌａｔｅ）の性質を活用する。

サトウキビから繊維材料を調製する方法は、参照により本明細書に援用されるＫＦＳＵ Ｐｔｙ ＬｔｄによるＷＩＰＯ特許文献第ＷＯ２０１１／０３５３８１号に記載のものと大筋で同様である。 ただし、本発明のプロセスは、次の特徴を不可欠に有するものとして定義され得る：
１． サトウキビの破砕工程、
２． 繊維の機能の低下や、生物活性の大きな損失を生じることなく、糖画分を含むその他のサトウキビ画分から繊維を分離する、比較的「穏やかな」水抽出ステージ、
３． 繊維の機能の低下を最低限に抑え、かつ、保持された微量栄養素の生物活性を最大化する比較的穏やかな乾燥工程。

抽出工程は、比較的中性のｐＨで行われる水分散抽出であることが好ましい。 更に、乾燥工程は、日本のＴｅｎｓｅｉ（ｗｗｗ．ｔｅｎｓｅｉ−ｊ．ｃｏｍ）が販売するような低温のボルテックスドライヤーで達成され得る高速ボルテックス乾燥であることが好ましい。

イヌ及びネコの消化器系の健康な機能のために、適切な食物繊維が重要であることは理解されている。 更に、食物繊維の量が、ヒトにおける糖尿病病態の進行の可能性に影響することも知られている。 また、市販のイヌ向け食品では、食物繊維が不足している、効果的でないことが判明している繊維源を用いている、及び／又は、小麦やオーツ麦といった、イヌにおいてアレルギーや不耐性を引き起こす繊維源を用いていると考えられている。

本発明は、糖尿病病態の発症のリスクを低下させることを目的とした、ドッグフード又はイヌ向け食生活の調合におけるサトウキビ繊維の利用法を提供する。 本発明により調製された場合、当該繊維源と、これを含有する食品は、その他の繊維源及び食品に比べ、以下を含む多くの利点を有する：
・比較的低アレルギー性である、
・可溶性繊維の性質と不溶性繊維の性質とを、食事による摂取において、有益な比率で含有する、
・その他の繊維源よりも高程度に血糖値と腸内の健康に好影響を与える多くの生物活性分子を含有する、
・化学変性デンプン等のその他の繊維源による繊維と異なり、化学薬品を使わない方法で調製可能で、かつ、有害な微量元素を含まない、及び・サトウキビの「モラセス」成分に含まれる微量栄養素と活性分子を保持する方法で調製可能である。

また、イヌの食生活における繊維が過多であると、便秘、下痢、腹部膨満を含む複数の副作用が起こり得ることが知られている。 繊維製品を栄養補助食品として動物の食生活に追加する一の実施形態においては、飼い主は、動物のその他の食生活を変更する必要がなく、動物による食物繊維の摂取量をより容易に調節可能である。

また、当該栄養補助食品は、多くの飼い主にとってますます重要性を増している、自然食品として分類される。

本発明の実施形態は、それぞれ利用者にとって複数の利点を有する、多くの形態を取ってよい。

本明細書において・用語「キャリア」は、サトウキビ繊維と組み合わせて、個人による繊維摂取を容易にすることのできる口当たりの良い材料を指すのに用いられる。 キャリアは、タンパク質又はその他の栄養素を含有してよく、果汁、プリン、ソース、ヨーグルトを含むがこれらに限定されない。
・用語「不活性フィラー」は、包装又は摂取を容易にするために、サトウキビ繊維の嵩を増すために用いられる任意の製品を指す。 不活性フィラーは、口当たり、又は可溶性／不溶性繊維の比率を改善するために、調味材料又は栄養素、及び他の天然の繊維源を含み得る。
・用語「ペレット」は、当該繊維の、任意の乾燥形態を指し、乾燥錠剤、粒状のふりかけ、利用者により選択される媒質に追加可能な圧縮粉末、おやつ又は他の食品への追加として用い得る押出飼料、犬向けのおやつとして広く入手可能なものと同様の型押しジャーキー状のおやつ、が含まれるがこれらに限定されない。
・用語「調味材料」は、ドッグフードに添加することで、動物が当該フードを摂取する欲求を促進する固体又は液体状の口当たりの良い材料を指し、例えば動物の肝の抽出物、分解物、肉汁、ピューレ、その他の臓物等の、タンパク質又はその他の栄養素を含み得る。
以下の全ての例は、任意で、ステビア等、追加のビタミン及び生物活性分子と共に配合されてよい。 最終製品にも「自然」という記述を維持できるよう、追加の栄養素は自然原料から得られるものであることが好ましい。

実施例１
この例において、活性繊維（ａｃｔｉｖｅ ｆｉｂｅｒ）０．５ｇが、調味媒体及び／又はキャリアに加えられ、加圧によりペレットにされる。 各ペレットは、動物の１日あたりの繊維必要量の５０％を提供し、また、一食ごとの血糖値（体重５ｋｇあたり）の調節を補助する。 飼い主は、動物に適宜摂取させるよう指示される。 動物がその他の種類の繊維食療法を行っている場合、当該ペレットは、その他の食品と併用して、動物の食生活が繊維過多になるリスクを低下させることが可能である。 ただし、動物に他の繊維が与えられていない場合には、投与量を倍にしても悪影響はない。 当該ペレットは、他の食品と混合して動物に与えるか、主食を与える直前又は直後におやつとして与えられ得る。

実施例２
この例において、活性繊維は、ペーストの粘度を得られるように選択された調味材料及び不活性液体に混合される（液体３ｍｌに対して約０．５ｇ）。 当該ペーストは、簡便な分注機構（例えば滅菌注射器）を有する気密のメスシリンダーから分注される。 当該ペーストは、動物のフードに混合されるか、又は、食事の直前又は直後に、飼い主によって、直接口内に投与され得る。 当該投与方法は、肉塊又は臓物等の生の食品を覆うように用いられ得る、又は、飼い主の残飯に追加され得る、という追加の利点を有する。

実施例３
この例において、活性繊維は乾燥調味成分と不活性フィラーと混合されて利用しやすい顆粒を形成する。 当該混合物は、顆粒１杯が繊維投与量（０．５ｇ）に相当するよう配合され、動物の体重を基準に、適切な杯数がウェットフードに追加される。 当該投与方法は、顆粒が、フィラーの役割を果たす水と混合可能（これにより、各食事で摂取する食品の量を減らすことができる）であるため、減量用の食事に最適である。 この例は、飼い主が投与量の一部を容易に計量できるため、体重が５ｋｇ未満のイヌにおいて、さらに有用である。

実施例４
この例において、繊維材料は、グルテンフリー、または消化を助ける食品の市場を対象とする他の高繊維食品の製造者に、原料として供給される。 この例は、潜在的な食品製造業者／食品供給業者にいくつかの利点を提供する：
・当該繊維材料が、小麦又はオーツ麦繊維の代わりに用いられると、製品は低アレルギー性を謳うことができる。
・当該繊維材料は、食品における「完全自然」という売り文句の使用の裏付けとなる。
・当該繊維材料は、他の繊維源と比較して、付加的な健康効果を提供し、食品製造業者は、潜在的により多くの宣伝文句を創作できる。
上述のように調製されたサトウキビの保水力は、市販されているほとんどの繊維源よりもはるかに高い。 当該活性繊維を食品中に用いることで、製造者は、食品１ｋｇあたりのカロリー量を減らすことができる。 これは、製造者にとって、商業面での節約という結果をもたらし得る。

本発明によるペットフード製品及び方法は、化学薬品を使わない、低温の手順で調製されたサトウキビ由来の作物、特に全サトウキビ、の固有の性質を活用する。 これは、食品中の有益な栄養分及び生物活性分子を保持しつつ、簡便な利用を可能にする。

本製品及び方法は、一般的な繊維源に対してアレルギーや不耐性を持つ動物における潜在的な不耐性及び吸収不良の問題を排除することに貢献しつつ、少ない繊維摂取量に関連する複数の問題に対処し、また、糖尿病病態に対して好影響を及ぼす。 本製品はさらに、自然食品として分類され得る、つまりこれは、副作用をはじめとする、薬品治療に伴う問題の一部を有さない。

上掲の例のように、既存の食品形態に添加されることで、上述の繊維製品は、全ての食品に対して次のような効果を潜在的に提供する。
・食品中の繊維含有量を増加させる傾向がある、
・増量剤として用いられ得て、生産量を増加させる、
・ぱさついた剤形（グルテンフリー処方において、多く見られる）に水分を追加する、
・アレルゲンフリーである、及び・食品のグリセミック指数（ＧＩ）を低下させる傾向がある。

上掲の実施例４のとおり、別法において、当該繊維製品は、動物の通常の食生活と組み合わせて利用可能な、独立した添加物としても販売でき、この場合は以下の利点が提供される：
・利便性の観点から、一回分の分包、又は複数回分のパッケージのいずれの形態でも販売可能である、
・飲料、プリン、又は個包装として調製可能、
・消化器系が特に敏感な動物の必要に応じて投与量を変えることができる、
・消化促進のために、通常の食事と共に動物に投与可能である、
・他の自然食品製品と組み合わせて、動物の食事における消化器系の健康度を向上させることができる、及び・添加先の任意の食品のＧＩを低下させる傾向がある。

本栄養補助食品は、食品中の繊維含有量の増加、消化への好影響、血糖値の長期間にわたる調節、及び血中脂質の低下を含む複数の利益を、動物に提供する傾向がある。

当業者であれば、上述の実施形態は本発明を実施する唯一の方法ではないことを理解できるであろう。 その他の種類のペット動物向けの食事を含め、細部が異なるものの本発明の範囲に含まれるその他の実施形態が存在する。