The method of producing an organic transition metal complex compound and the metathesis catalyst

申请号 JP2007540971 申请日 2006-10-17 公开(公告)号 JP4944787B2 公开(公告)日 2012-06-06
申请人 三井化学株式会社; 发明人 祐一 大川; 貴志 落合; 忠弘 須永;
摘要
权利要求
  • 塩基性化合物の存在下で、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物に、(B)プロトン供与性を有する化合物を接触させることによって、前記(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物中の電子吸引性の原子団を、前記(B)プロトン供与性を有する化合物に由来する電子吸引性の原子団に変換する工程を含 み、
    前記(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物が、メタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する化合物またはその前駆体であるとともに、モリブデン、タングステン、オスミウムおよびバナジウムからなる群から選ばれる1種の遷移金属を含む有機遷移金属錯体化合物であり、
    前記(B)プロトン供与性を有する化合物が、アルコールおよびチオールから選ばれる少なくとも1種以上である、
    (C)有機遷移金属錯体化合物の製造方法。
  • 請求項 1に記載の有機遷移金属錯体化合物の製造方法を用いる、メタセシス触媒の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、有機遷移金属錯体化合物の製造方法およびその方法で製造されるメタセシス触媒ならびに該メタセシス触媒を用いて重合して得られる開環メタセシス重合体およびその重合体の製造方法に関する。

    一般的に、有機遷移金属錯体化合物は、酸素、、プロトン供与性を有する化合物の影響を受け易い。 有機遷移金属錯体化合物の種類によっては、酸素、水、プロトン供与性を有する化合物と接触すると、酸化分解、加水分解や脱離分解などによって分解する。

    シクロペンタジエニル、アルコキシ、カルボキシル等の電子供与性の強い原子団を有する有機遷移金属錯体化合物を合成するためには、プロトン供与性を有する化合物を、プロトン供与性を持たないアルキルアルカリ金属塩に変換して、より電子供与性の強い原子団の反応試薬として用いることが多い。 しかし、この方法で有機遷移金属錯体化合物を製造すると、アルカリ金属の強いカチオン性のため、有機遷移金属錯体化合物の所望の部位と反応せずに有機遷移金属錯体化合物を分解させたり、副反応が起こったりして、所望の有機遷移金属錯体化合物が得られない場合がある。 また、アルカリ金属イオンと対アニオン原子団の種類によって配位子交換の反応性が異なるため、製造できる有機遷移金属錯体化合物が制限され、これらの理由から、分解反応や副反応を起こさない有機遷移金属錯体化合物の製造方法の改良が望まれている。

    一方、シクロペンタジエニルなどの炭化水素系の配位子を有する有機遷移金属メタロセン錯体化合物においては、Jordanらによって、従来の方法で用いられていたシクロペンタジエンとブチルリチウムなどの有機金属化合物や水素化アルカリ金属化合物を反応させて得られるシクロペンタジエニル金属塩と遷移金属塩化物との合成反応を行うことなく、特定のプロトン供与性のシクロペンタジエンと遷移金属ジメチルアミド化合物を接触することによってアルカリ金属塩を使わずに有機遷移金属メタロセン錯体化合物を合成する方法が報告されている。 この合成方法ではアルカリ金属塩による有機遷移金属メタロセン錯体化合物合成時の副反応を抑えることができるが、高温で長時間の反応条件を必要とし、製造コストが高い(特許文献1、2および非特許文献1参照)。

    近年、タングステンあるいはモリブデンを中心金属とするメタセシス触媒を用いることで開環メタセシス重合を始めとする各種メタセシス反応が進行することをSchrockらが報告している(非特許文献2、3および4参照)。 これらのメタセシス触媒はアルコキシ等の、より電子供与性の強い原子団を有する有機遷移金属アルキリデン錯体化合物であり、アルコール等のプロトン供与性を有する化合物とナトリウム、リチウム、カリウムまたはそれらの水素化金属化合物、さらにブチルリチウムなどの有機金属化合物と接触させて得られるアルキルアルカリ金属塩を、電子吸引性原子団であるハロゲンまたはトリフラートを配位子として有する有機遷移金属錯体化合物に接触させ、より電子供与性の強いアルコキシ等に交換して合成しており、この際、副生物としてはハロゲン化アルカリ金属またはトリフラートアルカリ金属塩が生成する。

    従って、製造されたメタセシス触媒には反応試薬である過剰なアルキルアルカリ金属塩が残留することになり、これらの副生物や反応試薬が残留したメタセシス触媒を用いてメタセシス反応を行うと、副生物や反応試薬の強いイオン性のため、副生物や反応試薬がアニオン重合の重合開始剤となって反応基質を重合したり、メタセシス反応の活性種と配位子交換反応を起こしてメタセシス触媒を変質したり、分解したりすることがある。 また、メタセシス反応によって製造された製品中に金属が残留すると、製品の物性や色調に悪影響を与える場合がある。

    メタセシス重合反応では重合後に主鎖に形成される不飽和結合を水素添加反応により飽和結合に変換することが一般的である。 この際、生成物中にメタセシス触媒合成反応由来のアルカリ金属塩、すなわち、副生物や反応試薬が混入していると、副生物や反応試薬が水素添加反応触媒と反応して変質したり分解したりして正常な水素添加反応を阻害する場合がある。

    従来のメタセシス触媒の合成法ではイオン性の高いアルカリ金属を用いるために種々の問題点が存在しており、アルカリ金属を用いないメタセシス触媒製造法の開発が望まれている。

    国際公開第95/32979号パンフレット

    米国特許5597935号明細書

    Gary M. Diamond他1名、「Synthesis of Group 4 Metal rac-(EBI)M(NR2)2 Complexes by Amine Elimination. Scope and Limitations」、Organometallics、15、4030〜4037(1996) Richard R. Schrock、「Living Ring-Opening Metathesis Polymerization Catalyzed by Well-Characterized Transition-Metal Alkylidene Complexes」、Acc.Chem.Res.、23、158(1990) RR Schrock他13名、「Further Studies of Imido Alkylidene Complexes of Tungsten, Well-Characterized Olefin Metathesis Catalysts with Controllable」、Organometallics、9、2262(1990) Richard R. Schrock他5名、「Synthesis of Molybdenum Imido Alkyidene Complexes and Some Reactions Involving Acyclic Olefins」、J.Am.Chem.Soc.、112, 3875(1990)

    本発明は、プロトン供与性を有する化合物を金属塩とすることなく、塩基性化合物の存在下で電子供与性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物を工業的または経済的に有利に合成する製造方法およびその方法で製造されるメタセシス触媒、さらに、該メタセシス触媒を用いて重合して得られる開環メタセシス重合体とその重合体の製造方法を提供するものである。

    本発明者は、前述の課題を解決するため鋭意検討した結果、任意の塩基性化合物の存在下において、任意の電子吸引性原子団を有する有機遷移金属錯体化合物に任意のプロトン供与性を有する化合物を接触させることによって、任意の電子吸引性原子団を有する有機遷移金属錯体化合物中の電子吸引性原子団を、任意のプロトン供与性を有する化合物に由来する、より電子供与性の強い電子吸引性原子団に変換する新規な有機遷移金属錯体化合物の製造方法および、その方法で製造して得られるアルカリ金属の含有量が低減されたメタセシス触媒、さらに、該メタセシス触媒を用いて環状オレフィンを重合して得られる開環メタセシス重合体とその重合体の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。

    すなわち本発明は、
    [1]塩基性化合物の存在下で、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物に、(B)プロトン供与性を有する化合物を接触させることによって、前記(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物中の電子吸引性の原子団を、前記(B)プロトン供与性を有する化合物に由来する電子吸引性の原子団に変換する工程を含み、前記(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物が、メタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する化合物またはその前駆体であるとともに、モリブデン、タングステン、オスミウムおよびバナジウムからなる群から選ばれる1種の遷移金属を含む有機遷移金属錯体化合物であり、前記(B)プロトン供与性を有する化合物が、アルコールおよびチオールから選ばれる少なくとも1種以上である、 (C)有機遷移金属錯体化合物の製造方法

    ][1 ]に記載の有機遷移金属錯体化合物の製造方法を用いる、メタセシス触媒の製造方法である。

    本発明の有機遷移金属錯体化合物の製造方法により、該有機遷移金属錯体化合物の製造を工業的にかつ経済的に効率よく行うことが可能である。
    また、本発明の有機遷移金属錯体化合物の製造方法で合成して得られるメタセシス触媒は、アルカリ金属の含有量が低減されるため、該触媒を用いて重合された開環メタセシス重合体は、事前にアルカリ金属を除去することなく水素添加反応を行なうことができる。
    さらに、その開環メタセシス重合体またはその水素添加物は、たとえばアルカリ金属の含有量に厳しい制限のある電子材料などの用途にも好適に使用することができ、工業的に極めて価値がある。

    上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。

    実施例で得られた有機遷移金属錯体化合物の

    1 H−NMRスペクトルを示す図である。

    以下、本発明に係る有機遷移金属錯体化合物の製造方法およびその方法によって製造して得られるメタセシス触媒、さらに、該メタセシス触媒を用いて環状オレフィンを重合して得られる開環メタセシス重合体とその重合体の製造方法に関して具体的に説明する。

    本発明に係る有機遷移金属錯体化合物の製造方法は、
    塩基性化合物の存在下で、
    (A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物に、
    (B)プロトン供与性を有する化合物を接触させることによって、
    (A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物中の電子吸引性の原子団を、(B)プロトン供与性を有する化合物に由来する電子吸引性の原子団に変換することにより、(C)有機遷移金属錯体化合物を得る工程を含む。 任意の塩基性化合物の存在下において、任意の電子吸引性原子団を有する有機遷移金属錯体化合物に任意のプロトン供与性を有する化合物を接触させることによって、任意の電子吸引性原子団を、より電子供与性の強い原子団に変換することができる。

    以下、本発明で用いられる各成分について、具体例を用いて説明するが、本発明は以下の例示化合物に限定されるものではない。 また、本発明において、各成分について、例示化合物を単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。

    また、本明細書において、特に断りのない場合、Meはメチル基、 i Prはiso−プロピル基、 t Buはtert−ブチル基、Phはフェニル基、Adはアダマンチル基を示す。 また、PMe 3はトリメチルホスフィン、P(OMe) 3はトリメトキシホスフィンを示す。 また、dmeは1,2−ジメトキシエタンを示し、thfはテトラヒドロフランを示す。

    本発明において、塩基性化合物とは、配位する非共有電子対をもった分子またはプロトン受容体であり、たとえば、塩基性有機化合物である。 また、塩基性化合物が、アルカリ金属を含まないことが好ましい。
    有機塩基性化合物の具体例として、アンモニア、メチルアミン等の一級アミン類;
    ジフェニルアミン等の二級アミン類;
    トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、等の三級アミン類;および1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ピリジン、ルチジン等の含窒素複素環類;等の窒素含有塩基性有機化合物;ならびにホスフィン等のリン含有塩基性有機化合物が挙げられる。

    これらの中で、特にトリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、ルチジンおよび1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンが好ましい。 さらに、これらの塩基性化合物は、2種類以上を任意の割合で使用してもよい。

    また、電子吸引性とは、電気陰性が強いことである。 また、電子吸引性の原子団とは、電気陰性が強い原子団であり、ハロゲン、ハロゲンを含有するアルキルまたはアリ−ルスルホナート、アルキルまたはアリ−ルスルホナート、ハロゲンを含有するホスフェート、ハロゲンを含有するアルキルまたはアリ−ルカルボキシレートおよび、アルキルまたはアリ−ルカルボキシレート等が挙げられる。 電子吸引性の原子団として、さらに具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメタンスルホナートすなわちトリフラート、トルエンスルホナート、ヘキサフルオロホスフェートおよびトリフルオロアセテート等を例示することができ、これらの中で、特に、塩素、トリフルオロメタンスルホナートおよびトルエンスルホナートが好ましい。 また、これらを2種類以上混在させて用いてもよい。

    本発明における(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物は、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物中の電子吸引性の原子団より電子供与性の強い、(B)プロトン供与性を有する化合物に由来する電子吸引性の原子団で置換することができる電子吸引性の原子団を、少なくとも1つ以上有する化合物である。 さらに、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物は、電子吸引性の原子団に加えて、いかなる配位子を有していてもよく、単原子または多原子の中性、陽イオン性、または陰イオン性の原子団を含有する配位子が挙げられる。

    また、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物は、メタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する有機遷移金属錯体化合物またはその前駆体である。

    メタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する有機遷移金属錯体化合物とは、電子吸引性原子団を有する有機遷移金属錯体化合物が、遷移中心金属原子とα位の炭素との間で2価または3価の遊離原子価をもつ2重結合または3重結合を形成して結合しているメタルアルキリデンまたはメタルカルベン、または遷移金属−炭素間に3重結合をもつメタルアルキリジンまたはメタルカルバインを有する有機遷移金属錯体化合物である。

    また、メタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する有機遷移金属錯体化合物の前駆体とは、そのものは遷移中心金属原子とα位の炭素との間で2価または3価の遊離原子価をもつ2重結合または3重結合を形成していないが、触媒としてアルキル化などの処理を施した後、加熱や有機金属試薬と接触させることによって、メタルアルキリデンやメタルアルキリジンを形成させられる有機金属錯体化合物である。

    メタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する有機遷移金属錯体化合物として、たとえば、W(=CH t Bu)(=N−2,6−Me 263 )(dme)Cl 2 、W(=CH t Bu)(=N−2,6− i Pr 263 )Cl 2 (dme)、W(=CHCH=CPh 2 )(O)Cl 2 (thf)、W(=CHCH=CPh 2 )(=N−2,6− i Pr 263 )Cl 2 (PMe 3 )、W(=CHCH=CPh 2 )(=N−2,6− i Pr 263 )Cl 2 [P(OMe) 3 ]、W(=CHCH=CMePh)(=N−2,6−Me 263 )Cl 2 (PMe 32 、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6−Me 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)、Mo(=CH t Bu)(=N−2,6−Me 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)、Mo(=CHCMe 3 )(=N−2,6−Cl 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)、Mo(=CHSiMe 3 )(=N−Ad)(OSO 2 CF 32 (dme) 、M o(=CHSiMe 3 )(=N−2,6−Me 263 )(OCMe 2 CF 32 (PMe 3 )、W(≡C t Bu)(O t Bu) 2 (OSO 2 CF 32 (dme)、W(≡C t Bu)(dme)Cl 3 、W(NH−2,6− i Pr 263 )(≡C t Bu)(dme)Cl 2 、W (≡C t Bu)(O t Bu) 3などが挙げられる。

    メタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する有機遷移金属錯体化合物の前駆体として、W(=N−2,6−Me 263 )Cl 4 、[Et 4 N][W(≡C t Bu)Cl 4 ]、W(=N−2,6−Me 263 )(CH 2 t Bu) 2 Cl 2 (thf) 2 、Mo(=N−2,6− i Pr 263 )Cl 4 (thf) 2 、Os(=N−2,6− i Pr 263 )(CH 2 t Bu) 2 Cl 2 、Os(=N−2,6− i Pr 263 )Cl 4 、V(=N−2,6−Me 263 )Cl 3 、V(=N−2,6−Me 263 )(NR 2 )Cl 2等が挙げられる。

    本発明において、(B)プロトン供与性を有する化合物は、プロトンを供与できる化合物であればいずれでもよいが、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物に塩基性化合物の存在下で接触させることによって、そのプロトンを脱離させ、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物中の電子吸引性原子団を、(B)プロトン供与性を有する化合物に由来する、より強い電子供与性を有する原子団に置換することができる化合物である。 すなわち、(B)プロトン供与性を有する化合物に由来する電子吸引性の原子団の電子供与性は、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属化合物中の、電子吸引性の原子団の電子供与性より強い。

    なお、本発明において、(B)プロトン供与性を有する化合物は、塩基性化合物と同じ化合物であってもよいし、異なる化合物であってもよい。
    (B)プロトン供与性を有する化合物として、具体的には、tert−ブチルアルコール(2−メチル−2−プロパノール)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノ−ル、パーフルオロ−tert−ブチルアルコール、フェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2,6−ジクロロフェノール、2,2'−ビフェノール、3,3'−ジ−tert−ブチル−5,5',6,6'−テトラメチル−2,2'−ジヒドロキシビフェニル等のアルコール
    −メチル−2−プロパンチオール、ベンゾチオール、4−tert−ブチルチオフェノール等のチオール;
    等が挙げられる B)プロトン供与性を有する化合物アルコールおよびチオールから選ばれる少なくとも1種以上であるである。 アルコールは、アルコール性水酸基を含むものであってもフェノール性水酸基を含むものであってもよい。

    また、(B)プロトン供与性を有する化合物がアルコールおよびチオールから選ばれる少なくとも1種以上であって、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物が、メタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する有機遷移金属錯体化合物であ

    また、(B)プロトン供与性を有する化合物は、1プロトンでも2プロトン以上の多官能性であってもよく、これらの化合物は、ハロゲン、ケイ素、シアノ、エーテル、エステル等を共に含有してもよい。 また、これらの化合物は、単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。

    本発明における(C)有機遷移金属錯体化合物は、周期律表(長周期型)第5、第6族または第8族の遷移金属原子からなる有機遷移金属錯体化合物である。 このような遷移金属原子としてバナジウム、モリブデン、タングステンおよびオスミウムが挙げられ、好ましくは、モリブデンまたはタングステンである。

    (C)有機遷移金属錯体化合物として、たとえば、アルキリデン錯体化合物、アルキリジン錯体化合物、フィッシャー型カルベン錯体化合物、メタロセン錯体化合物およびポストメタロセン錯体化合物等が挙げられる。

    さらに、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物が、特にメタルアルキリデンまたはメタルアルキリジンを有する有機遷移金属錯体化合物である場合、(C)有機遷移金属錯体化合物は、メタセシス重合、開環メタセシス反応、閉環メタセシス反応または交叉メタセシス反応などの触媒または触媒の前駆体として好適に使用することができる。

    本発明において、塩基性化合物の存在下で、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物に(B)プロトン供与性を有する化合物を接触させる時の各成分の使用量は、たとえば以下のようにする。
    まず、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物1モルに対する(B)プロトン供与性を有する化合物の使用量を、たとえば0.1モル以上、好ましくは0.2モル以上とする。 また、(A)電子吸引性の原子団を有する有機遷移金属錯体化合物1モルに対する(B)プロトン供与性を有する化合物の使用量を、たとえば100モル以下、好ましくは10モル以下とする。
    また、(B)プロトン供与性を有する化合物1モルに対する塩基性化合物の使用量は、たとえば0.1モル以上、好ましくは0.2モル以上とする。 また、(B)プロトン供与性を有する化合物1モルに対する塩基性化合物の使用量は、たとえば100モル以下、好ましくは10モル以下とする。 ただし、塩基性化合物が溶媒を兼ねる場合はこの限りではない。

    さらに、(A)電子吸引性原子団を有する有機遷移金属錯体化合物と(B)プロトン供与性を有する化合物との接触形態に特に制限はなく、無溶媒での接触、有機溶媒中での懸濁接触、これらの媒体中での均一溶液接触および、気相中での接触等のいずれであってもよい。
    有機溶媒を使用する場合、その具体例として、ペンタン、ヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素;
    ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル;
    ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;およびピリジン、ピペリジン等の塩基性化合物が挙げられる。 これらは、単独あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。

    さらに、これらを接触させる温度は、たとえば−100℃以上、好ましくは−80℃以上である。 また、接触温度は、たとえば200℃以下、好ましくは100℃以下である。
    また、接触は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、接触させる圧は、たとえば常圧以上である。 また、接触させる圧力は、たとえば10MPa以下、好ましくは1.0MPa以下である。
    また、接触させる時間は、たとえば0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1時間以上とする。 接触時間は、たとえば1ヶ月以下、好ましくは200時間以下、さらに好ましくは50時間以下とする。

    また、本発明の製造方法により得られる(C)有機遷移金属錯体化合物は、必要に応じて単離または分離して精製してもよい。 この精製は、一般的な蒸留、抽出、分液、濃縮、析出、再結晶、ろ過、洗浄または乾燥などの公知の方法から適宜、組合せて行うことができる。 また、これらの操作温度は−100〜300℃程度であり、圧力は1×10 -6 〜10MPa程度であり、それぞれの方法に適した条件を選択することができる。

    本発明の製造方法は、たとえば、下記一般式(1)で示されるメタセシス触媒の製造方法として好適に用いられる。 また、本発明において、(C)有機遷移金属錯体化合物が、メタセシス触媒であってもよい。

    上記一般式(1)において、R 1は、アルキル、アリール、置換アリールから選ばれ、特に炭素原子数4以上30以下、さらに炭素原子数4以上20以下のアルキル、アリール、置換アリールが好ましい。 具体的には、tert−ブチル、フェニル、4−tert−ブチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルメチル、1−ナフチル、2,6−ジクロロフェニル、4−フルオロ−2,6−ジメチルフェニル、アダマンチル等が好ましく例示される。

    また、上記一般式(1)において、R 2およびR 3は、水素、アルキル、アリール、置換アリール、アルキルシリル、アルケニルから選ばれ、これらは同じであっても異なっていてもよく、特に、水素および炭素原子数4以上20以下のアルキル、アリール、置換アリール、アルキルシリル、アルケニルが好ましく、具体的には、水素、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、2−フェニル−2−プロピル、フェニル、1−ナフチル、トリメチルシリル、2,2−ジメチルビニル、2−メチル−2−フェニルビニル、2,2−ジフェニルビニル等が好ましく例示される。

    また、上記一般式(1)において、R 4は、アルキル、ハロゲン化アルキル、アリール、置換アリールから選ばれ、特に、炭素原子数4以上20以下のアルキル、ハロゲン化アルキル、アリール、置換アリールが好ましく、具体的には、イソプロピル、パーフルオロプロピル、tert−ブチル、パーフルオロ−n−ブチル、1,1,1−トリフルオロ−2−メチル−2−プロピル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロピル、パーフルオロ−tert−ブチル、フェニル、1−ナフチル、2,6−ジイソプロピルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2,2'−ビフェニル等が好ましく例示される。

    また、上記一般式(1)において、Nは窒素原子であり、Qは酸素または硫黄原子である。
    また、Eは、エーテル、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、アルコキシホスフィン、ピリジン、アルキルアミン、アルキリデンアミンから選ばれる配位性の分子である。 Eとして、具体的には、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメトキシホスフィン、ピリジン、ルチジン、トリエチルアミン、プロピリデンアミン等が好ましく例示される。

    上記一般式(1)において、Mは、周期律表(長周期型)第5、第6族または第8族の遷移金属原子である。 遷移金属原子として、たとえば、バナジウム、モリブデン、タングステンおよびオスミウムが挙げられ、好ましくは、モリブデンおよびタングステンである。 また、Mが、バナジウム、モリブデン、タングステンおよびオスミウムからなる群から選ばれる1種であって、mが1または2であり、nが0または1であってもよい。

    また、上記一般式(1)において、mは1以上3以下の整数、好ましくは1または2であり、mが2または3の場合、R 4は互いに結合してもよく、具体的には、3,3'−ジ−tert−ブチル−5,5',6,6'−テトラメチル−2,2'−ビフェニル等が例示される。 また、nは0以上2以下の整数であり、好ましくは0または1である。

    上記一般式(1)のメタセシス触媒として、メタセシス反応および重合を行うことができる触媒であれば限定はされないが、たとえば、W(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)(O t Bu) 2 、W(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)(OCMe 2 CF 32 、W(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)[OCMe(CF 322 、W(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)[OC(CF 332などを含むW(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 、W(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)(S t Bu) 2などを含むW(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 、W(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 、W(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 、W(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 P(R 113 、W(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 P(R 113 、W(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 P(R 113 、W(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 P(R 113 、W(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )(O−2,6−Cl 2632 (Py)などを含むW(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 Py、W(=N−2,6−R 5663 )(=CHR )(SR 92 Py、W(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 Py、W(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 Py(ただし、R 5 、R 6は、H、 i Pr、Me、 t Buなどのアルキル基、OMeなどのアルコキシ基またはハロゲン、R 7t Bu、CMe 2 Ph、CH=CMe 2 、CH=CMePh、CH=CPh 2 、Ph、SiMe 3などのアルキル基、アリール基、ケイ素残基、R 8 Bu、CMe 2 CF 3 、CMe(CF 32 、C(CF 33 、C 65 、2− t BuC 64 、2− t Bu−4,5−Me 26 H、2,6−Cl 263などのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、R 9t Bu、CMe 2 CF 3 、CMe(CF 32 、C(CF 33 、Ph、2− t BuC 64 、2− t Bu−4,5−Me 26 Hなどのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、R 10t Bu、アダマンチルなどのアルキル基、R 11は、H、Meなどのアルキル基、OMeなどのアルコキシ基またはPhなどのアリール基であり、Pyは、ピリジン、ルチジンなどのピリジン誘導体またはトリエチルアミン、プロピリデンアミンなどのアミン誘導体、Meはメチル基、 i Prはiso−プロピル基、 t Buはtert−ブチル基、OMeはメトキシ基、Phはフェニル基を示す。 )等のタングステン系アルキリデン触媒;
    Mo(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)(O t Bu) 2 、Mo(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)(OCMe 2 CF 32 、Mo(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)[OCMe(CF 322 、Mo(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)[OC(CF 332 、Mo(=N−2,6−Me 263 )(=CH t Bu)[OC(CF 332 、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6−Me 263 )[OC(CF 332 、Mo(=N−2,6− i Pr 263 )(=CH t Bu)(S t Bu) 2 、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OC(CF 332などを含むMo(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )(S t Bu) 2などを含むMo(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 、Mo(=CHSiMe 3 )(=N−Ad)(O−2,6− i Pr 2632などを含むMo(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 、Mo(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 、Mo(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 P(R 113 、Mo(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 P(R 113 、Mo(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 P(R 113 、Mo(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 P(R 113 、Mo(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 Py、Mo(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 Py、Mo(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 Py、Mo(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 Py(ただし、R 5 、R 6は、H、 i Pr、Me、 t Buなどのアルキル基、OMeなどのアルコキシ基またはハロゲン、R 7t Bu、CMe 2 Ph、CH=CMe 2 、CH=CMePh、CH=CPh 2 、Ph、SiMe 3などのアルキル基、アリール基、ケイ素残基、R 8t Bu、CMe 2 CF 3 、CMe(CF 32 、C(CF 33 、C 65 、2− t BuC 64 、2− t Bu−4,5−Me 262などのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基であり、二つのR 8が互いに結合していてもよい。 R 9t Bu、CMe 2 CF 3 、CMe(CF 32 、C(CF 33 、Ph、2− t BuC 64 、2− t Bu−4,5−Me 262などのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基であり、二つのR 9が互いに結合していてもよい。 R 10t Bu、アダマンチルなどのアルキル基、R 11は、H、Meなどのアルキル基、OMeなどのアルコキシ基またはPhなどのアリール基であり、Pyは、ピリジン、ルチジンなどのピリジン誘導体またはトリエチルアミン、プロピリデンアミンなどのアミン誘導体、Meはメチル基、 i Prはiso−プロピル基、 t Buはtert−ブチル基、OMeはメトキシ基、Phはフェニル基を示す。 )等のモリブデン系アルキリデン触媒;
    V(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 8 )、V(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 9 )、V(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 、V(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 9 )、V(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 8 )P(R 113 、V(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 9 )P(R 113 、V(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 8 )P(R 113 、V(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 9 )P(R 113 、V(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 8 )Py、V(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 Py、V(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 8 )Py、V(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 Py(ただし、R 5 、R 6は、H、 i Pr、Me、 t Buなどのアルキル基、OMeなどのアルコキシ基またはハロゲン、R 7t Bu、CMe 2 Ph、CH=CMe 2 、CH=CMePh、CH=CPh 2 、Ph、SiMe 3などのアルキル基、アリール基、ケイ素残基、R 8t Bu、CMe 2 CF 3 、CMe(CF 32 、C(CF 33 、C 65 、2− t BuC 64 、2− t Bu−4,5−Me 26 Hなどのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、R 9t Bu、CMe 2 CF 3 、CMe(CF 32 、C(CF 33 、Ph、2− t BuC 64 、2− t Bu−4,5−Me 26 Hなどのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、R 10t Bu、アダマンチルなどのアルキル基、R 11は、H、Meなどのアルキル基、OMeなどのアルコキシ基またはPhなどのアリール基であり、Pyは、ピリジン、ルチジンなどのピリジン誘導体またはトリエチルアミン、プロピリデンアミンなどのアミン誘導体、Meはメチル基、 i Prはiso−プロピル基、 t Buはtert−ブチル基、OMeはメトキシ基、Phはフェニル基を示す。)等のバナジウム系アルキリデン触媒; および
    Os(=N−2,6−Me 263 )(CH 2 t Bu) 2 (O t Bu) 2等を含むOs(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 、Os(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 、Os(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 、Mo(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 、Os(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 P(R 113 、Os(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 P(R 113 、Os(=N−R 10 )(=CHR 7 )(OR 82 P(R 113 、Os(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 P(R 113 、Os(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(OR 82 Py、Os(=N−2,6−R 5663 )(=CHR 7 )(SR 92 Py、Os(=N−R 6 )(=CHR 7 )(OR 82 Py、Os(=N−R 10 )(=CHR 7 )(SR 92 Py(ただし、R 5 、R 6は、H、 i Pr、Me、 t Buなどのアルキル基、OMeなどのアルコキシ基またはハロゲン、R 7t Bu、CMe 2 Ph、CH=CMe 2 、CH=CMePh、CH=CPh 2 、Ph、SiMe 3などのアルキル基、アリール基、ケイ素残基、R 8t Bu、CMe 2 CF 3 、CMe(CF 32 、C(CF 33 、C 65 、2− t BuC 64 、2− t Bu−4,5−Me 26 Hなどのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、R 9t Bu、CMe 2 CF 3 、CMe(CF 32 、C(CF 33 、Ph、2− t BuC 64 、2− t Bu−4,5−Me 26 Hなどのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、R 10t Bu、アダマンチルなどのアルキル基、R 11は、H、Meなどのアルキル基、OMeなどのアルコキシ基またはPhなどのアリール基であり、Pyは、ピリジン、ルチジンなどのピリジン誘導体またはトリエチルアミン、プロピリデンアミンなどのアミン誘導体、Meはメチル基、 i Prはiso−プロピル基、 t Buはtert−ブチル基、OMeはメトキシ基、Phはフェニル基を示す。)等のオスミウム系アルキリデン触媒を挙げることができる。

    また、(C)有機遷移金属錯体化合物として、メタセシス触媒の前駆体としての有機遷移金属錯体と助触媒としてのルイス酸との組み合せからなるメタセシス触媒も挙げられる。 たとえば、W(=N−2,6−Me 263 )(O t Bu) 2 Cl 2などを含むW(=N−2,6−Me 263 )(thf)(O t Bu) 22 、Mo(=N−2,6− i Pr 263 )(thf)(O t Bu) 22 、V(=N−2,6−Me 263 )[OC(CF 33 ]Cl 2などを含むV(=N−2,6−Me 263 )(O t Bu)X 2 、Os(=N−2,6− i Pr 263 )(O t Bu) 22 、W(=N−2,6−Me 263 )(thf)(O t Bu) 22 、Mo(=N−2,6− i Pr 263 )(thf)(O t Bu) 22 、V(=N−2,6−Me 263 )(PR 3 )(O t Bu)R 2 、Os(=N−2,6− i Pr 263 )(O t Bu) 22等の有機遷移金属錯体化合物とトリメチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミノキサン等の有機アルミニウム化合物、テトラメチル錫等の有機錫化合物等の助触媒が挙げられる。 ただし、上記式中のi Prはiso−プロピル基を示し、 t Buはtert−ブチル基を示し、Rはアルキル基、Xはハロゲン、thfはテトラヒドロフランを示す。 さらに、これらの開環メタセシス重合触媒は、単独または、二種以上を組み合わせて用いてもよい。

    また、本発明の(C)有機遷移金属錯体化合物の製造方法においては、塩基性化合物および(B)プロトン供与性を有する化合物を用いて(A)電子吸引性原子団を有する有機遷移金属錯体化合物の電子吸引性原子団を、より電子供与性の強い原子団に変換することができる。 この方法では、プロトン供与性を有する化合物をアルカリ金属塩とする必要がないため、アルカリ金属を含む化合物を用いずに(C)有機遷移金属錯体化合物を得ることができる。 このため、(C)有機遷移金属錯体化合物中のアルカリ金属の濃度を低減させることができる。

    たとえば上記一般式(1)で表わされるメタセシス触媒において、アルカリ金属の含有量が、たとえば10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下であってもよい。

    また、メタセシス触媒中のアルカリ金属の含有量は、たとえば0ppm以上とする。 また、アルカリ金属の含有量は、アルカリ金属の影響による副反応の発生をさらに確実に抑制する観点で、少ない方が好ましく、本発明の目的を損なわない範囲で含まれていてもよいが、たとえば0.001ppm程度含まれていてもよい。

    ここで、従来の製造方法で得られるメタセシス触媒においては、メタセシス触媒中のアルカリ金属はアルカリ金属塩として含有されているため、アルカリ金属の含有量が多すぎると、上述したように、メタセシス重合反応時に反応基質と副反応がおこり、生成するポリマー物性に影響を与える可能性が高くなる。 また、アルカリ金属含有量が多すぎるメタセシス触媒を用いて生成したポリマーの水素添加反応を行うと、ポリマー中に残留するアルカリ金属塩が水素添加触媒と反応して変質したり分解したりして正常な水素添加反応を阻害する可能性が高くなる。

    メタセシス触媒中のアルカリ金属濃度を上記範囲とすることにより、メタセシス重合反応時や、その後の水素添加時における生成物の品質の低下をさらに確実に抑制することができる。

    なお、本発明において、アルカリ金属とは、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのことであり、アルカリ金属の含有量とは、メタセシス触媒中の上記アルカリ金属の合計量である。

    また、アルカリ金属を含む化合物を用いずに上記一般式(1)で表わされるメタセシス触媒を得ることができるため、メタセシス触媒中に、不可避的に含まれるものを除きアルカリ金属が実質的に含まれないようにすることも可能となる。 具体的には、メタセシス触媒中のアルカリ金属濃度を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)における検出限界未満、さらに具体的には10ppb未満とすることができる。 これにより、メタセシス重合反応時や、その後の水素添加時における生成物の品質の低下をより一層確実に防ぐことができる。

    次に、上記一般式(1)に示したメタセシス触媒を用いるメタセシス重合体およびその製造方法について説明する。
    本発明において、開環メタセシス重合体は、上記一般式(1)に示したメタセシス触媒の存在下において、環状オレフィンを重合して得られる。
    また、本発明における開環メタセシス重合体の製造方法は、上記一般式(1)に示したメタセシス触媒の存在下において、環状オレフィンを重合する工程を含む。

    たとえば、本発明において、上記一般式(1)に示したメタセシス触媒を用いて下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される環状オレフィンを重合し、開環メタセシス重合体を得ることができる。 また、メタセシス触媒の前駆体としての上記の有機遷移金属錯体と助触媒としてのルイス酸との組み合せからなるメタセシス触媒を用いることもできる。

    (上記一般式(2)中、R 12 〜R 15は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン、炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、酸無水物、シアノ基、およびケイ素含有基からなる群から選択される基であり、R 12 〜R 15が互いに結合して環構造を形成していてもよい。X 1は、−O−、−S−、−NR 16 −、−PR 16 −、および−CR 16 2 −から(R 16は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す。)選ばれ、同一でも異なってもよい。pは0または1以上3以下の整数を表す。)

    (上記一般式(3)中、R 17 〜R 18は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン、炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、酸無水物、シアノ基、およびケイ素含有基からなる群から選択される基であり、R 17 〜R 18が互いに結合して環構造を形成していてもよい。X 2は、−O−、−S−、−NR 19 −、−PR 19 −、および−CR 19 2 −から(R 19は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す。)選ばれ、同一でも異なってもよい。qは0または1以上3以下の整数を表す。)

    本発明において、メタセシス触媒を用いて重合される上記一般式(2)または上記一般式(3)で表される環状オレフィンとして、pまたはqが0であるビシクロヘプトエンの誘導体、pまたはqが1であるテトラシクロドデセンの誘導体、pまたはqが2であるヘキサシクロヘプタデセンの誘導体、pまたはqが3であるオクタシクロドコセンの誘導体等が挙げられる。

    以下、上記一般式(2)および(3)をさらに具体的に説明する。
    まず、上記一般式(2)を説明する。

    上記一般式(2)におけるR 12 〜R 15として、さらに具体的には、以下のものが挙げられる。
    12 〜R 15として、たとえば水素が挙げられる。
    また、炭素原子数1以上20以下のアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、メンチルなどが挙げられる。
    炭素原子数6以上20以下のアリール基として、フェニル、ナフチル、メチルなどのアルキル置換アリールが挙げられる。
    ハロゲンとして、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子などが挙げられる。
    炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基として、フルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチルなどが挙げられる。
    さらに、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基として、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、メントキシ等が挙げられる。
    炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基として、メトキシメチル、メトキシエチル、tert−ブトキシメチル、tert−ブトキシエチル、メトキシメントール、メチルグルコース等のアルコキシ糖類等が挙げられる。
    炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基として、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、1−メチルシクロペンチルオキシカルボニル、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル、1−エチルノルボニルオキシカルボニル、1−エチルアダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、テトラヒドロピラン−2−イルオキシカルボニル、テトラヒドロフラン−2−イルオキシカルボニル、1−エトキシエトキシカルボニル、1−ブトキシエトキシカルボニル等が挙げられる。
    炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基として、フェノキシカルボニル等が挙げられる。
    また、ヒドロキシ基が挙げられる。
    炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基として、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシヘキシル、メントールや、グルコース等の糖類を含むヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
    酸無水物として、無水カルボン酸等が挙げられる。
    シアノ基として、ニトリル、シアノメチルまたはシアノエチル等の炭素原子数1以上20以下のシアノ基等が挙げられる。
    また、ケイ素含有基として、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、トリイソブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリペンチルシリル、トリヘキシルシリル等の炭素原子数3以上20以下のトリアルキルシリル基;
    トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、トリプロピルシリルオキシ、トリイソプロピルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、トリイソブチルシリルオキシ、トリ−tert−ブチルシリルオキシ、トリペンチルシリルオキシ、トリヘキシルシリルオキシ等の炭素原子数3以上20以下のトリアルキルシリルオキシ基;
    トリメチルシリルオキシカルボニル、トリエチルシリルオキシカルボニル、トリプロピルシリルオキシカルボニル、トリブチルシリルオキシカルボニル、トリイソブチルシリルオキシカルボニル、トリ−tert−ブチルシリルオキシカルボニル、トリペンチルシリルオキシカルボニル、トリヘキシルシリルオキシカルボニル等の炭素原子数3以上20以下のトリアルキルシリルオキシカルボニル基等が挙げられる。

    また、上記一般式(2)において、R 12 〜R 15が互いに結合して環構造を形成していてもよく、たとえば、シクロヘキシル環を形成できる環状のアルキル構造、ラクトン環を形成できる環状のエステル構造やフェニルマレイミド環を形成できる環状のイミド構造、無水カルボン酸を形成できる酸無水物構造などが挙げられる。

    上記一般式(2)において、さらに、X 1は−O−、−S−、−NR 16 −、−PR 16 −、および−CR 16 2 −から選ばれる。 ただし、R 16は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す。 pは0または1以上3以下の整数であり、好ましくは0または1である。 またpが1以上3以下の整数の場合、X 1は同一でも異なってもよい。 −NR 16 −、−PR 16 −、および−CR 16 2 −のR 16として、水素、炭素原子数1以上20以下のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、またはメンチルのアルキル基が具体例として挙げられる。

    本発明における上記一般式(2)の具体例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを基本骨格としてのビシクロヘプトエン類;
    テトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンを基本骨格としてのテトラシクロドデセン類;
    ヘキサシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−4−ヘプタデセンを基本骨格としてのヘキサシクロヘプタデセン類;
    オクタシクロ[8.8.0.1 2,9 .1 4,7 .1 11,18 .1 13,16 .0 3,8 .0 12,17 ]−5−ドコセンを基本骨格としてのオクタシクロドコセン類の環状オレフィンが挙げられる。

    また、上記一般式(2)に記載のR 12 〜R 15の置換基として、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン、炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、酸無水物またはシアノ基から選ばれた置換基を有する環状オレフィンであり、X 1が−O−、−S−、−NR 16 −、−PR 16 −、および−CR 16 2 −から(R 16は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す)選ばれ、上記のうち、ビシクロヘプトエン類のメチレン(−CH 2 −)をメチルメチレン(−CH(メチル)−)に代えた7−メチルビシクロヘプトエン類、メチレン(−CH 2 −)を7−オキサに代えた7−オキサビシクロヘプトエン類、メチレン(−CH 2 −)をチア(−S−)に代えて7−チアビシクロヘプトエン類、メチレン(−CH 2 −)をアザ(−NH−)、メチルアザ(−N(メチル)−)に代えて7−アザビシクロヘプトエン類、7−メチル−7−アザビシクロヘプトエン類、メチレン(−CH 2 −)をホスファ(−PH−)、メチルホスファ(−P(メチル)−)に代えて7−ホスファビシクロヘプトエン類、7−メチル−7−ホスファビシクロヘプトエン類などが例示できる。

    また、R 12 〜R 15が互いに結合して環構造を形成していてもよく、たとえば、シクロヘキシル環を形成できる環状のアルキル構造として、1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンなどが挙げられ、ラクトン環を形成できる環状のエステル構造として、たとえば、4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−8−デセン−3−オンまたは4,10−ジオキサ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−8−デセン−3−オンなどが挙げられ、フェニルマレイミド環を環状のイミド構造として、たとえば、4−シクロヘキシル−4−アザ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−8−デセン−3,5−ジオン、4−シクロヘキシルー4−アザ−10−オキサ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−8−デセン−3,5−ジオンなどが挙げられ、さらに、無水カルボン酸を形成できる酸無水物構造として、たとえば、4−オキサートリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−8−デセン−3,5−ジオンまたは4,10−ジオキサ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−8−デセン−3,5−ジオン、4−オキサ−10−チア−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−8−デセン−3,5−ジオンなどが挙げられる。

    さらに、テトラシクロドデセン類、ヘキサシクロヘプタデセン類、またはオクタシクロドコセン類もビシクロヘプトエン類と同様に、たとえば、これらのX 1のメチレンをメチルメチレン((−CH(メチル)−)に代えてメチルテトラシクロドデセン類、メチルヘキサシクロヘプタデセン類、またはメチルオクタシクロドコセン類、メチレンをオキサ(−O−)に代えてオキサテトラシクロドデセン類、オキサヘキサシクロヘプタデセン類、またはオキサオクタシクロドコセン類、メチレンをチア(−S−)に代えてチアテトラシクロドデセン類、チアヘキサシクロヘプタデセン類、またはチアオクタシクロドコセン類、アザ(−NH−)またはメチルアザ(−N(メチル)−)に代えてアザテトラシクロドデセン類またはメチルアザテトラシクロドデセン類、アザヘキサシクロヘプタデセン類またはメチルアザヘキサシクロヘプタデセン類、アザヘキサシクロヘプタデセン類またはメチルアザヘキサシクロヘプタデセン類、さらに、ホスファ(−PH−)、またはメチルホスファ(−P(メチル)−)に代えてホスファテトラシクロドデセン類、メチルホスファテトラシクロドデセン類を挙げることができ、X 1は同一でも異なってもよい。

    次に、上記一般式(3)をさらに具体的に説明する。
    上記一般式(3)におけるR 17 〜R 18として、さらに具体的には、以下のものが挙げられる。
    17 〜R 18として、たとえば水素が挙げられる。
    また、炭素原子数1以上20以下のアルキル基として、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、メンチルなどが挙げられる。
    炭素原子数6以上20以下のアリール基として、たとえば、フェニル、ナフチル、またはメチルなどのアルキル置換アリールなどが挙げられる。
    ハロゲンとして、塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子などが挙げられる。
    炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基として、たとえば、フルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチルなどが挙げられる。
    さらに、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基として、たとえば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、メントキシなどが挙げられる。
    炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基として、たとえば、メトキシメチル、メトキシエチル、tert−ブトキシメチル、tert−ブトキシエチル、メトキシメントール、メチルグルコース等のアルコキシ糖類などが挙げられる。
    炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基として、たとえば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、1−メチルシクロペンチルオキシカルボニル、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル、1−エチルノルボニルオキシカルボニル、1−エチルアダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、テトラヒドロピラン−2−イルオキシカルボニル、テトラヒドロフラン−2−イルオキシカルボニル、1−エトキシエトキシカルボニル、1−ブトキシエトキシカルボニルなどが挙げられる。
    炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基として、たとえば、フェノキシカルボニルなどが挙げられる。
    また、ヒドロキシ基が挙げられる。
    炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基として、たとえば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシヘキシルまたはメントール等や、グルコース等の糖類を含むヒドロキシアルキル基が挙げられる。
    さらに、酸無水物として、たとえば、無水カルボン酸などが挙げられる。
    シアノ基として、たとえば、ニトリル、シアノメチルまたはシアノエチル等の炭素原子数1以上20以下のシアノ基が挙げられる。
    また、ケイ素含有基として、たとえば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、トリイソブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリペンチルシリル、トリヘキシルシリル等の炭素原子数3以上20以下のトリアルキルシリル基;
    トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、トリプロピルシリルオキシ、トリイソプロピルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、トリイソブチルシリルオキシ、トリ−tert−ブチルシリルオキシ、トリペンチルシリルオキシ、トリヘキシルシリルオキシ等の炭素原子数3以上20以下のトリアルキルシリルオキシ基;
    トリメチルシリルオキシカルボニル、トリエチルシリルオキシカルボニル、トリプロピルシリルオキシカルボニル、トリブチルシリルオキシカルボニル、トリイソブチルシリルオキシカルボニル、トリ−tert−ブチルシリルオキシカルボニル、トリペンチルシリルオキシカルボニル、トリヘキシルシリルオキシカルボニル等の炭素原子数3以上20以下のトリアルキルシリルオキシカルボニル基が挙げられる。

    また、R 17 〜R 18が互いに結合して環構造を形成していてもよく、たとえば、シクロヘキシル環を形成できる環状のアルキル構造、ラクトン環を形成できる環状のエステル構造やフェニルマレイミド環を形成できる環状のイミド構造、無水カルボン酸を形成できる酸無水物構造などが挙げられる。

    上記一般式(3)において、さらに、X 2は−O−、−S−、−NR 19 −、−PR 19 −、および−CR 19 2 −から選ばれる。 ただし、R 19は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す。 qは0または1以上3以下の整数であり、好ましくは0または1であり、またqが1以上3以下の整数の場合、X 2は同一でも異なってもよい。 −NR 19 −、−PR 19 −、または−CR 19 2 −のR 19として、たとえば、水素、炭素原子数1以上20以下のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、またはメンチルのアルキル基が挙げられる。 X 2は、好ましくは−O−、−S−または−CH 2 −である。

    本発明における上記一般式(3)の具体例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンを基本骨格としてのビシクロヘプタジエン類;
    テトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3,7−ドデカジエンを基本骨格としてのテトラシクロドデセジエン類;
    ヘキサシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−4,11−ヘプタデカジエンを基本骨格としてのヘキサシクロヘプタデカジエン類;
    オクタシクロ[8.8.0.1 2,9 .1 4,7 .1 11,18 .1 13,16 .0 3,8 .0 12,17 ]−5,14−ドコセジエンを基本骨格としてのオクタシクロドコカジエン類の環状オレフィンが挙げられる。

    また、上記一般式(3)に記載のR 17 〜R 18の置換基として、水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン、炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、酸無水物またはシアノ基から選ばれた置換基を有する環状オレフィンであり、X 2が−O−、−S−、−NR 19 −、−PR 19 −、および−CR 19 2 −から(R 19は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す)選ばれ、上記のうち、ビシクロヘプタジエン類のメチレン(−CH 2 −)をメチルメチレン(−CH(メチル)−)に代えた7−メチルビシクロヘプタジエン類、メチレン(−CH 2 −)を7−オキサに代えた7−オキサビシクロヘプタジエン類、メチレン(−CH 2 −)をチア(−S−)に代えて7−チアビシクロヘプタジエン類、メチレン(−CH 2 −)をアザ(−NH−)、メチルアザ(−N(メチル)−)に代えて7−アザビシクロヘプタジエン類、7−メチル−7−アザビシクロヘプタジエン類、メチレン(−CH 2 −)をホスファ(−PH−)、メチルホスファ(−P(メチル)−)に代えて7−ホスファビシクロヘプタジエン類、7−メチル−7−ホスファビシクロヘプタジエン類などが例示できる。

    また、R 17 〜R 18が互いに結合して環構造を形成していてもよく、たとえば、シクロヘキシル環を形成できる環状のアルキル構造として、1,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンなどが挙げられ、ラクトン環を形成できる環状のエステル構造として、たとえば、4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−2,8−デカジエン−3−オンまたは4,10−ジオキサートリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−2,8−デカジエン−3−オンなどが挙げられ、フェニルマレイミド環を環状のイミド構造として、たとえば、4−シクロヘキシル−4−アザ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−2,8−デカジエン−3,5−ジオン、4−シクロヘキシル−4−アザ−10−オキサ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−2,8−デカジエン−3,5−ジオンなどが挙げられ、さらに、無水カルボン酸を形成できる酸無水物構造として、たとえば、4−オキサートリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−2,8−デカジエン−3,5−ジオンまたは4,10−ジオキサ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−2,8−デカジエン−3,5−ジオン、4−オキサ−10−チア−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−2,8−デカジエン−3,5−ジオンなどが挙げられる。

    さらに、テトラシクロドデカジエン類、ヘキサシクロヘプタデカジエン類、またはオクタシクロドコカジエン類もビシクロヘプタジエン類と同様に、たとえば、これらのX 2のメチレンをメチルメチレン((−CH(メチル)−)に代えてメチルテトラシクロドデカジエン類、メチルヘキサシクロヘプタデカジエン類、またはメチルオクタシクロドコカジエン類、メチレンをオキサ(−O−)に代えてオキサテトラシクロドデカジエン類、オキサヘキサシクロヘプタデカジエン類、またはオキサオクタシクロドコカジエン類、メチレンをチア(−S−)に代えてチアテトラシクロドデカジエン類、チアヘキサシクロヘプタデカジエン類、またはチアオクタシクロドコカジエン類、アザ(−NH−)またはメチルアザ(−N(メチル)−)に代えてアザテトラシクロドデカジエン類またはメチルアザテトラシクロドデカジエン類、アザヘキサシクロヘプタデカジエン類またはメチルアザヘキサシクロヘプタデカジエン類、アザヘキサシクロヘプタデカジエン類またはメチルアザヘキサシクロヘプタデカジエン類、さらに、ホスファ(−PH−)、またはメチルホスファ(−P(メチル)−)に代えてホスファテトラシクロドデカジエン類、メチルホスファテトラシクロドデカジエン類を挙げることができ、X 2は同一でも異なってもよい。

    さらに、重合に用いられるその他の環状オレフィンとして、たとえば、ジシクロペンタジエン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロオレフィン類;
    シクロヘキサ−1,4−ジエン、シクロヘキサ−1,3−ジエン、シクロオクタ−1,5−ジエン、シクロオクタ−1,4−ジエン、シクロオクタ−1,3−ジエン等のシクロジエン類;
    シクロオクタ−1,3,5−トリエン、シクロオクタ−1,3,6−トリエン等のシクロトリエン類等が挙げられる。

    本発明において、開環メタセシス重合体は、上記一般式(2)、上記一般式(3)およびシクロオレフィン類、シクロジエン類、またはシクロトリエン類などの環状オレフィンのうち、少なくとも1種類の環状オレフィンを重合したもの、または、これらのうち少なくとも2種類の環状オレフィンと共重合したものであってもよい。

    また、上記一般式(1)で表されるメタセシス触媒を用いる重合において環状オレフィン以外のモノマーとして、アセチレンとその誘導体およびジアセチレン誘導体を単独または環状オレフィンと共重合してもよく、さらに、メタセシス触媒の前駆体としての上記の有機遷移金属錯体と助触媒としてのルイス酸との組み合せからなるメタセシス触媒を用いることもできる。

    本発明の上記一般式(1)で表されるメタセシス触媒を用いた重合において、環状オレフィンとメタセシス触媒のモル比は、バナジウム、モリブデン、タングステンおよびオスミウムの触媒1モルに対して、環状オレフィンがモル比でたとえば2以上、好ましくは10以上である。 また、環状オレフィンとメタセシス触媒のモル比は、上記触媒1モルに対して、たとえば30,000以下、好ましくは20,000以下である。

    また、メタセシス触媒の前駆体としての上記の有機遷移金属錯体と助触媒としてのルイス酸との組み合せからなるメタセシス触媒を用いた重合において、有機遷移金属錯体1モルに対して環状オレフィンがモル比でたとえば2以上、好ましくは10以上である。 また、有機遷移金属錯体1モルに対して環状オレフィンがモル比でたとえば10,000以下、好ましくは5,000以下である。
    また、助触媒としての有機金属化合物が、有機遷移金属錯体1モルに対して、モル比でたとえば0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上である。 また、助触媒としての有機金属化合物が、有機遷移金属錯体1モルに対して、モル比でたとえば100以下であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。

    また、本発明においてメタセシス触媒による環状オレフィンの重合は無溶媒でも溶媒を使用して重合を行ってもよい。 このとき、使用する溶媒として、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンまたはジオキサン等のエーテル類;
    ベンゼン、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼン等の芳香族炭化水素;
    ペンタン、ヘキサンまたはヘプタン等の脂肪族炭化水素;
    シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンまたはデカリン等の脂肪族環状炭化水素;
    またはメチレンジクロライド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンまたはトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられ、これらの2種類以上を併用してもよい。

    さらに、本発明において触媒効率を高めたり、環状オレフィンと触媒のモル比を制御することによって所望の分子量、分子量分布の重合体を得るために連鎖移動剤としてオレフィン類やジエン類の共存下で重合することができる。
    連鎖移動剤として用いられるオレフィンとして、たとえば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等のα−オレフィンが挙げられ、さらに、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン等のケイ素含有オレフィンが挙げられ、また、ジエンとして、1、4−ペンタジエン、1、5−ヘキサジエン、1、6−ヘプタジエン等の非共役系ジエンが挙げられる。 さらに、これらオレフィンまたはジエンはそれぞれ単独または2種類以上を併用してもよい。

    本発明において共存させるオレフィンまたはジエンの使用量については、オレフィンまたはジエンが、環状オレフィン1モルに対してモル比で、たとえば0.001以上、好ましくは0.01以上である。 また、オレフィンまたはジエンが、環状オレフィン1モルに対してモル比で、たとえば1000以下、好ましくは100以下である。
    また、オレフィンまたはジエンが、メタセシス触媒の1当量に対して、たとえば0.01当量以上、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは1当量以上である。 また、オレフィンまたはジエンが、メタセシス触媒の1当量に対して、たとえば10,000当量以下、好ましくは1000当量以下、より好ましくは500当量以下である。

    メタセシス触媒による環状オレフィンの重合では、環状オレフィンの反応性および重合溶媒ヘの溶解性によっても異なるが、環状オレフィンの溶媒重合濃度は0.1〜100モル/L程度の範囲が好ましく、通常−30〜150℃程度の反応温度で1分〜10時間程度反応させ、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類等の失活剤で反応を停止し、開環メタセシス重合体溶液を得ることができる。

    次に、環状オレフィンを重合して得られる開環メタセシス重合体の具体例を示す。
    上記一般式(2)または上記一般式(3)で表される環状オレフィンを重合して得られる開環メタセシス重合体の繰り返し単位は、下記一般式(4)または下記一般式(5)で表される。

    (上記一般式(4)中、R 12 〜R 15は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン、炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、酸無水物、シアノ基、およびケイ素含有基からなる群から選択される基であり、R 12 〜R 15が互いに結合して環構造を形成していてもよい。X 1は−O−、−S−、−NR 16 −、−PR 16 −、および−CR 16 2 −から選ばれ、同一でも異なってもよい。ただし、R 16は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す。pは0または1以上3以下の整数を表す。)

    (上記一般式(5)中、R 17 〜R 18は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン、炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、酸無水物、シアノ基、およびケイ素含有基からなる群から選択される基であり、R 17 〜R 18が互いに結合して環構造を形成していてもよい。X 2は−O−、−S−、−NR 19 −、−PR 19 −、および−CR 19 2 −から(R 19は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す)選ばれ、同一でも異なってもよい。qは0または1以上3以下の整数を表す。)

    本発明における開環メタセシス重合体の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、たとえば2,000以上、好ましくは5,000以上である。 また、上述のMwは、たとえば1,000,000以下、好ましくは300,000以下である。

    また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上5.0以下である。

    さらに、本発明の開環メタセシス重合体は、メタセシス触媒にアルカリ金属塩が含まれないため、アルカリ金属を除去する工程操作を行わずに重合反応液を直接、開環メタセシス重合体の主鎖二重結合に水素添加できる。 このとき、水素添加触媒の存在下で、水素添加率(ポリマーに含まれる二重結合の数と水素添加した二重結合の数との比の百分率)が好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下となる割合で、水素を添加する。

    この水素添加物の紫外線領域の波長に対する光透過性は、開環メタセシス重合体の主鎖二重結合を水素で添加し、任意の割合で飽和結合にすることで制御することができる。 また、水素添加することによって酸化に対する安定性が増し、用途に応じてこれらの主鎖二重結合を減らすことにより、耐候性、熱安定性を向上し開環メタセシス重合体を実用上より使用しやすくすることができる。

    上記一般式(4)または上記一般式(5)で表される開環メタセシス重合体の水素添加物は、下記一般式(6)または一般式(7)で表される。

    (上記一般式(6)中、R 12 〜R 15は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン、炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、酸無水物、シアノ基、およびケイ素含有基からなる群から選択される基であり、R 12 〜R 15が互いに結合して環構造を形成していてもよい。X 1は−O−、−S−、−NR 16 −、−PR 16 −、および−CR 16 2 −から(R 16は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す)選ばれ、同一でも異なってもよい。pは0または1以上3以下の整数を表す。)
    または、

    (上記一般式(7)中、R 17 〜R 18は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、ハロゲン、炭素原子数1以上20以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシアルキル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数6以上20以下のアリールオキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、酸無水物、シアノ基、およびケイ素含有基からなる群から選択される基であり、R 17 〜R 18が互いに結合して環構造を形成していてもよい。X 2は−O−、−S−、−NR 19 −、−PR 19 −、および−CR 19 2 −から(R 19は水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す)選ばれ、同一でも異なってもよい。qは0または1以上3以下の整数を表す。)

    本発明における開環メタセシス重合体水素添加物の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上である。 また上述のMwは、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは300,000以下である。

    また、開環メタセシス重合体水素添加物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上である。 また、(Mw/Mn)は、好ましくは5.0以下である。

    本発明の開環メタセシス重合体の水素添加反応には、公知の水素添加触媒を使用することができる。
    開環メタセシス重合体の主鎖二重結合部分を水素添加する水素添加触媒の具体例として、不均一系触媒では、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ケイソウ土、合成ゼオライト等の担体に担持させた担持型金属触媒等が挙げられる。 また、均一系触媒では、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムクロリド、酢酸ロジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。

    さらに、均一系触媒の具体例として、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)オスミウム、ジクロロヒドリドビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、トリクロロニトロシルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロビス(アセトニトリル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロビス(テトラヒドロフラン)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリド(トルエン)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドニトロシルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリエチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルジフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリジメチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリo−トリルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(ジクロロエチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(ジクロロフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィト)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィト)ルテニウム等が挙げられる。

    また、これら均一系触媒とアミン化合物を併用してもよい。
    アミン化合物の具体例として、メチルアミン、エチルアミン、アニリン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノシクロブタン等の一級アミン化合物;
    ジメチルアミン、メチルイソプロピルアミン、N−メチルアニリン等の二級アミン化合物;
    トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、γ−ピコリン等の三級アミン化合物等を挙げることができる。 このうち、好ましくは三級アミン化合物が用いられ、特にトリエチルアミンを用いた場合が水素添加率の向上が著しい。 また、これらの均一系触媒またはアミン化合物は、それぞれ2種以上任意の割合で併用することもできる。

    本発明における開環メタセシス重合体を水素添加する上記公知の水素添加触媒を使用する場合、開環メタセシス重合体と水素添加触媒の使用量は、公知の水素添加触媒が、開環メタセシス重合体に対して、たとえば5ppm以上、好ましくは100ppm以上である。 また、公知の水素添加触媒が、開環メタセシス重合体に対して、たとえば50,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下である。

    また、均一系触媒とアミン化合物からなる水素添加触媒を使用する場合は、均一系触媒が開環メタセシス重合体に対して、たとえば5ppm以上、好ましくは10ppm以上、特に好ましくは50ppm以上である。 また、均一系触媒が開環メタセシス重合体に対して、たとえば50,000ppm以下、好ましくは10,000ppm以下、特に好ましくは1,000ppm以下である。

    また、アミン化合物は、使用する均一系触媒1当量に対して、たとえば0.1当量以上、好ましくは0.5当量以上、特に好ましくは1当量以上である。 また、アミン化合物は、使用する均一系触媒1当量に対して、たとえば1,000当量以下、好ましくは500当量以下、特に好ましくは100当量以下である。

    均一系触媒とアミン化合物からなる水素添加触媒は、予め均一系触媒とアミン化合物とを接触処理したものを用いることも可能であるが、均一系触媒とアミン化合物とを予め接触処理することなく、それぞれ直接反応系に添加してもよい。

    開環メタセシス重合体の水素添加反応において用いられる溶媒として開環メタセシス重合体を溶解し溶媒自体が水素添加されないものであればどのようなものでもよく、たとえば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル類;
    ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;
    ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;
    シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族環状炭化水素;
    メチレンジクロリド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。

    開環メタセシス重合体の水素添加反応において、水素圧力は、通常、常圧以上、好ましくは0.5MPa以上、特に好ましくは2MPa以上とする。 また、水素圧力は、通常30MPa以下、好ましくは20MPa以下、特に好ましくは15MPa以下の範囲で行われる。
    水素添加反応の反応温度は、通常0℃以上、室温以上、特に好ましくは50℃以上とする。 また、反応温度は、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、特に好ましくは200℃以下とする。
    また、望まれる水素添加率によってこれらの条件や反応時間を設定することができる。

    開環メタセシス重合体の水素添加反応の終了後、公知の方法により重合体に残存する開環メタセシス触媒または水素添加触媒を除去することができる。 また、開環メタセシス重合体水素添加物溶液から重合体水素添加物の回収法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。 たとえば、撹拌下の貧溶媒中に反応溶液を排出し重合体水素添加物を凝固させ濾過法、遠心分離法、デカンテーション法等により回収する方法、反応溶液中にスチームを吹き込んで重合体水素添加物を析出させるスチームストリッピング法、反応溶液から溶媒を加熱等により直接除去する方法等が挙げられる。

    本発明のメタセシス触媒は環状オレフィンの重合以外にアセチレン類のアルキン重合や二重結合や三重結合を有する有機化合物の閉環メタセシス反応、クロスメタセシス反応等の有機合成反応の反応触媒として用いる場合も、重合反応と同様に副反応を起こすことなくメタセシス反応を行うことができる。 これらのメタセシス反応は、無溶媒または有機溶媒中での懸濁重合または溶液重合であってもよく、また、温度、圧力、時間および濃度などの反応条件に特に制限はない。

    本発明の有機遷移金属錯体化合物の製造方法によれば、該有機遷移金属錯体化合物を工業的にかつ経済的に効率よく製造することが可能である。 本発明における有機遷移金属錯体化合物は、たとえば、アルキリデン錯体化合物、アルキリジン錯体化合物、フィッシャー型カルベン錯体化合物、メタロセン錯体化合物および、ポストメタロセン錯体化合物等として使用可能であり、さらに有機合成反応の触媒としても使用することができる。

    また、本発明の有機遷移金属錯体化合物の製造方法で合成して得られるメタセシス触媒は、アルカリ金属の含有量を低減させることができ、たとえば、アルカリ金属の含有量を10ppm以下とすることもできる。 該触媒を用いて重合された環状オレフィン等の開環メタセシス重合体は、たとえば事前にアルカリ金属を除去することなく水素添加反応を行なうことができ、さらに、その開環メタセシス重合体または水素添加物は、たとえばアルカリ金属含有量に厳しい制限のある電子材料用途などにも好適に使用することができ、工業的に極めて価値がある。

    以下に実施例を示してさらに本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。

    なお、以下の実施例および比較例において、得られた有機遷移金属錯体化合物は、重水素化ベンゼンに溶解し、270MHzまたは500MHzの1 H−NMRを用いて分析した。
    また、アルカリ金属の含有量は誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により定量した。 なお、アルカリ金属の検出限界は10ppbである。
    重合体または重合体水素添加物の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、重合して得られた開環メタセシス重合体およびその水素添加物の粉末をテトラヒドロフランに溶解し、検出器として、日本分光製830−RI、カラムとして、Shodexk−804,803,802.5を使用し、ポリスチレンスタンダードによって分子量を較正した。
    また、重合体のガラス転移温度(Tg)は島津製作所社製DSC−50を用い、測定試料を窒素下で10℃/分の昇温速度で測定を行った。

    [実施例1]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)(1.00g)を入れ、ジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.27g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、パーフルオロ−tert−ブチルアルコール(0.63g)を撹拌しながら滴下した。 3時間後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで、黄色の固体1.09gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OC(CF 3 ) 32の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [比較例1]
    実施例1において窒素下でパーフルオロ−tert−ブチルアルコール(5.0g)とn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液13.2ml)から合成し、精製したパーフルオロ−tert−ブトキシリチウム(0.64g)をトリエチルアミン(0.27g)とパーフルオロ−tert−ブチルアルコール(0.63g)の代わりに用いたこと以外は実施例1に準じて行った。 得られた固体は黒ずんでいて、出発物質のモリブデン錯体と分解生成物が混合していた。 また、得られた固体から、リチウムが230ppm検出された。 さらに、得られた固体を−30℃に冷却したペンタン5mlで2回洗浄した後も、リチウムが100ppm以上検出された。

    [比較例2]
    実施例1においてトリエチルアミンを用いなかったこと以外は実施例1に準じて行った。 得られた固体は出発原料のモリブデン錯体とアルキリデンを消失した分解生成物の混合物であった。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例2]
    実施例1においてパーフルオロ−tert−ブチルアルコールに代えて1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール(0.48g)を用いたこと以外は実施例1に準じて行い、黄色の固体を0.95g得た。 この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [比較例3]
    実施例2において窒素下で1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール(5.0g)とn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液18.9ml)から合成し、精製した1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチルプロポキシリチウム(0.50g)をトリエチルアミン(0.27g)と1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール(0.48g)の代わりに用いたこと以外は実施例2に準じて行い、黄色の固体0.74gを得た。

    この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322の生成を確認した。 また、得られた固体からリチウムが200ppm検出された。

    [実施例3]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)(1.00g)を入れ、約10mlのジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.27g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、2−メチル−2−プロパンチオール(0.24g)を撹拌しながら滴下した。 室温で3時間撹拌後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで赤褐色の固体を得た。 この固体のNMRスペクトルからMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )(S t Bu) 2の生成を確認した。 また、得られた固体の1 H−NMRスペクトルを図1に示す。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [比較例4]
    実施例3において窒素下で2−メチル−2−プロパンチオール(5.0g)と水素化カリウム(2.2g)から合成し、精製した2−メチル−2−プロポチオキシカリウム(0.34g)をトリエチルアミン(0.27g)と2−メチル−2−プロパンチオール(0.24g)の代わりに用いたこと以外は実施例3に準じて行った。 得られた固体は出発原料のモリブデン錯体と分解生成物の混合物であった。 また、得られた固体からカリウムが300ppm検出された。

    [実施例4]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにMo(=CH t Bu)(=N−2,6−Me 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)(1.00g)を入れ、ジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.32g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、2−メチル−2−プロパノール(0.23g)を撹拌しながら滴下した。 3時間後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄色の固体0.65gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHCMe 3 )(=N−2,6−Me 263 )(O t Bu) 2の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例5]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6−Me 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)(1.00g)を入れ、ジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.30g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、パーフルオロ−tert−ブチルアルコール(0.67g)を撹拌しながら滴下した。 16時間後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄色の固体1.02gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6−Me 263 )[OC(CF 332の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例6]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにMo(=CHSiMe 3 )(=N−Ad)(OSO 2 CF 32 (dme)(1.00g)を入れ、ジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.29g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、2,6−ジイソプロピルフェノール(0.50g)を撹拌しながら滴下した。 3時間後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄色の固体0.91gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHSiMe 3 )(=N−Ad)(O−2,6− i Pr 2632の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。 なお、Adはアダマンチル基を示す。

    [実施例7]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにMo(=CHCMe 3 )(=N−2,6−Cl 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)(1.00g)を入れ、ジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.30g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、3,3'−ジ−tert−ブチル−5,5',6,6'−テトラメチル−2,2'−ジヒドロキシビフェニル(0.51g)を撹拌しながら滴下した。 3時間後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄色の固体1.00gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、下記化学式(8)で表わされる化合物の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例8]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにW(=CHCH=CMePh)(=N−2,6−Me 263 )Cl 2 (PMe 32 (1.00g)を入れ、約10mlのジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.37g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、2−メチル−2−プロパノール(0.26g)を撹拌しながら滴下した。 室温で3時間撹拌後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄褐色の固体0.90gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、W(=CHCH=CMePh)(=N−2,6−Me 263 )(O t Bu) 2 PMe 3の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例9]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにW(=CH t Bu)(=N−2,6− i Pr 263 )Cl 2 (dme)(1.00g)を入れ、約10mlのジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.36g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール(0.63g)を撹拌しながら滴下した。 室温で3時間撹拌後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄色の固体0.88gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、W(=CH t Bu)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例10]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにW(=N−2,6−Me 263 )Cl 4 (thf)(1.00g)を入れ、約10mlのジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.40g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、2−メチル−2−プロパノ−ル(0.30g)を撹拌しながら滴下した。 室温で3時間撹拌後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄色の固体0.95gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、W(=N−2,6−Me 263 )(O t Bu) 2 Cl 2の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例11]
    窒素下で50mlのナス型フラスコに[Et 4 N][W(≡C t Bu)Cl 4 ](1.00g)を入れ、約10mlのジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.40g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、2−メチル−2−プロパノール(0.29g)を撹拌しながら滴下した。 室温で3時間撹拌後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄白色の固体を得た。 この固体のNMRスペクトルから、W(≡C t Bu)(O t Bu) 3の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例12]
    窒素下でテトラシクロ[4.4.0.1 2.5 .1 7.10 ]−3−ドデセン(10.00g)と1,5−ヘキサジエン(50mg)を乾燥テトラヒドロフラン(60ml)に溶解し、室温で撹拌した。 そこに、実施例2で合成したMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322 (47mg)を乾燥テトラヒドロフラン(2ml)に溶解させた溶液を加え、室温で撹拌した。 1時間後にノルマルブチルアルデヒド(18.5mg、0.25mmol)を乾燥テトラヒドロフランに溶解させた溶液を加え、反応を停止した。 反応溶液を0.1gとり、 1 H−NMRにて反応率を測定したところ、重合反応は100%進行していた。 さらに反応溶液を1gとり、メタノールに加えて開環メタセシス重合体を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより白色粉末状の開環メタセシス重合体を得た。 この開環メタセシス重合体のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)は20100、分子量分布(Mw/Mn)は1.52であった。

    [比較例5]
    実施例12において、実施例2で合成したMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322のかわりに、比較例3で合成したMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322を用いた以外は実施例12に準じて行った。 反応停止後の反応溶液を0.1gとり、 1 H−NMRにて反応率を測定したところ、重合反応は98%であった。 さらに反応溶液を1gとり、メタノールに加えて開環メタセシス重合体を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより白色粉末状の開環メタセシス重合体を得た。 この開環メタセシス重合体のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)は23300、分子量分布(Mw/Mn)は1.70であった。

    [実施例13]
    実施例12で合成した反応溶液50.0gにRu(PPh 34 Cl 2 (5mg)とトリエチルアミン(1mg)を加え、水素圧10MPa、125℃で7時間水素添加反応を行った後、温度を室温まで戻し、ついで水素ガスを放出した。 この開環メタセシス重合体水素添加物溶液をメタノールに加えて開環メタセシス重合体水素添加物を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより白色粉末状の開環メタセシス重合体水素添加物7.7gを得た。 得られた開環メタセシス重合体水素添加物の1 H−NMRから算出した水素添加率は主鎖のオレフィンのプロトンに帰属するピークが認められず、その水素添加率は100%であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は29200、分子量分布(Mw/Mn)は1.60であった。

    [比較例6]
    実施例13において、実施例12で合成した反応溶液のかわりに、比較例5で合成した反応溶液を用いた以外は実施例13に準じて行った。 開環メタセシス重合体水素添加物溶液をメタノールに加えて開環メタセシス重合体水素添加物を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより白色粉末状の開環メタセシス重合体水素添加物6.9gを得た。 得られた開環メタセシス重合体水素添加物の1 H−NMRから算出した水素添加率は主鎖のオレフィンのプロトンに帰属するピークが認められ、その水素添加率は80%であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は32600、分子量分布(Mw/Mn)は2.01であった。

    [実施例14]
    実施例1におけるトリエチルアミン(0.27g)に代えてピリジン(0.22g)を使用したこと以外は実施例1に準じて行い、黄色の固体1.07gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OC(CF 332の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例15]
    実施例1におけるトリエチルアミン(0.27g)に代えて2,6−ジメチルピリジン(0.29g)を使用したこと以外は実施例1に準じて行い、黄色の固体1.08gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OC(CF 332の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例16]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにOs(=N−2,6− i Pr 263 )(CH 2 t Bu) 2 Cl 2 (1.00g)を入れ、約10mlのジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.37g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、2−メチル−2−プロパノ−ル(0.27g)を撹拌しながら滴下した。 室温で3時間撹拌後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄色の固体0.84gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、Os(=N−2,6− i Pr 263 )(CH 2 t Bu) 2 (O t Bu) 2の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例17]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにV(=N−2,6−Me 263 )Cl 3 (1.00g)を入れ、約10mlのジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でトリエチルアミン(0.37g)を入れた。 その後、−30℃に冷却し、パーフルオロ−tert−ブチルアルコール(0.86g)を撹拌しながら滴下した。 室温で3時間撹拌後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで黄色の固体1.08gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、V(=N−2,6−Me 263 )[OC(CF 33 ]Cl 2の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

    [実施例18]
    窒素雰囲気下で8−tert−ブチルオキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセン(15g)と4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]−8−デセン−3,5−ジオン(8.8g)を乾燥テトラヒドロフラン100mlに溶解し、1,5−ヘキサジエンを300mg加え、攪拌し、実施例5で合成したMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6−Me 263 )[OC(CF 332 (30mg)を乾燥テトラヒドロフラン(2ml)に溶解させた溶液を加え、室温で撹拌した。 その後、ブチルアルデヒド(7mg)を加え30分間攪拌した。 反応溶液を0.1gとり、 1 H−NMRにて反応率を測定したところ、重合反応は100%進行していた。 さらに反応溶液を1gとり、水に加えて開環メタセシス重合体を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより白色粉末状の開環メタセシス重合体を得た。 この開環メタセシス重合体のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)は14500、分子量分布(Mw/Mn)は1.68であり、Tgは155℃であった。

    [実施例19]
    実施例18で合成した反応溶液50.0gにRu(H)(CO)(PPh 33 Cl(4mg)とトリエチルアミン(1mg)を加え、水素圧10MPa、125℃で7時間水素添加反応を行った後、温度を室温まで戻し、ついで水素ガスを放出した。 この開環メタセシス重合体水素添加物溶液をメタノールに加えて開環メタセシス重合体水素添加物を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより粉末状の開環メタセシス重合体水素添加物12.0gを得た。 得られた開環メタセシス重合体水素添加物の1 H−NMRから算出した水素添加率は主鎖のオレフィンのプロトンに帰属するピークが認められず、その水素添加率は100%であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は20200、分子量分布(Mw/Mn)は1.75、Tgは125℃であった。

    [実施例20]
    窒素雰囲気下で5,5,6−トリフルオロ−6−(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(28.22g)と1,5−ヘキサジエン(80mg)の酢酸エチル(60ml)溶液に、実施例2で合成したMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322 (20mg)の酢酸エチル溶液(2ml)に溶解した溶液を加え、50℃で撹拌した。 36時間後にブチルアルデヒド(7mg)を溶液に加え、反応を停止した。 反応溶液を0.1gとり、 1 H−NMRにて反応率を測定したところ、重合反応は100%進行していた。 さらに反応溶液を1gとり、メタノールに加えて開環メタセシス重合体を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより粉末状の開環メタセシス重合体を得た。 この開環メタセシス重合体のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)は49300、分子量分布(Mw/Mn)は2.42、Tgは138℃であった。

    [実施例21]
    実施例20で合成した反応溶液50.0gをパラジウムカーボンによって160℃、水素圧10MPaで水素添加反応を行った後、温度を室温まで戻し、ついで水素ガスを放出した。 この開環メタセシス重合体水素添加物溶液をメタノールに加えることで、粉体状の開環メタセシス重合体水素添加物を得た。 得られたポリマーの水素添加率は100%、重量平均分子量(Mw)は53000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.64、Tgは107℃であった。

    [実施例22]
    窒素下で1,5−シクロオクタジエン(5.22g)のTHF(20ml)溶液に、実施例2で合成したMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322 (360mg)のTHF溶液(5ml)に溶解した溶液を加え、室温で撹拌した。 3時間後にブチルアルデヒド(120mg)を溶液に加え、反応を停止した。 反応溶液を0.1gとり、 1 H−NMRにて反応率を測定したところ、重合反応は100%進行していた。 さらに反応溶液を1gとり、メタノールに加えて開環メタセシス重合体を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより粉末状の開環メタセシス重合体を得た。 この開環メタセシス重合体のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)は74300、分子量分布(Mw/Mn)は1.54、Tgは−100℃であった。

    [実施例23]
    窒素雰囲気下で2,3−ビストリフルオロメチル−7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン(7.4g)のTHF(60ml)溶液に、実施例2で合成したMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )[OCMe(CF 322 (40mg)のTHF(2ml)に溶解した溶液を加え、室温で撹拌した。 40時間後にブチルアルデヒド(15mg)を溶液に加え、反応を停止した。 反応溶液を0.1gとり、 1 H−NMRにて反応率を測定したところ、重合反応は100%進行していた。 さらに反応溶液を1gとり、メタノールに加えて開環メタセシス重合体を沈殿させ、ろ別分離後真空乾燥を行うことにより粉末状の開環メタセシス重合体を得た。 この開環メタセシス重合体のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)は176000、分子量分布(Mw/Mn)は1.13、Tgは91℃であった。

    [実施例24]
    実施例23で合成した反応溶液50.0gをパラジウムカーボンによって130℃、水素圧9.5MPaで水素添加反応を行った後、温度を室温まで戻し、ついで水素ガスを放出した。 この開環メタセシス重合体水素添加物溶液をメタノールに加えることで、粉体状の開環メタセシス重合体水素添加物を得た。 得られたポリマーは主鎖二重結合と環内部二重結合とも水素添加されており、その水素添加率100%、重量平均分子量(Mw)は190000、分子量分布(Mw/Mn)は1.21、Tgは38℃であった。

    [実施例25]
    窒素下で50mlのナス型フラスコにMo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )(OSO 2 CF 32 (dme)(1.00g)を入れ、ジエチルエーテルに懸濁させて、室温、撹拌下でピリジン(Py)を0.33g入れた。 その後、−30℃に冷却し、2,6−ジクロロフェノール(2,6−Cl 263 OH)0.43gを撹拌しながら加えた。 3時間後、溶媒を除去し、ペンタンで抽出した後、ろ過、減圧乾固することで、黄色の固体0.46gを得た。 この固体のNMRスペクトルから、Mo(=CHCMe 2 Ph)(=N−2,6− i Pr 263 )(O−2,6−Cl 2632 (Py)の生成を確認した。 また、得られた固体からアルカリ金属は検出されなかった。

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