ルテニウム錯体の製造方法

申请号 JP2016076564 申请日 2016-09-09 公开(公告)号 JPWO2017056916A1 公开(公告)日 2018-07-19
申请人 高砂香料工業株式会社; 发明人 中山 裕治;
摘要 本発明は、ルテニウム二核錯体(2 A )と化合物(3 A )を第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させることにより、ルテニウム錯体(1 A )を効率的に製造する方法に関する。また、ルテニウム二核錯体(4 A )に対して第1級アルコールと塩基を作用させることによっても、ルテニウム錯体(1 A )を効率的に製造することが出来る。 【化1】 (式中、実線、三重線、破線、C、H、N、O、P、Ru、X、AH及びR 1 〜R 12 は明細書中に定義された意味を有する)
权利要求

下記一般式(2A)で表されるルテニウム二核錯体と下記一般式(3A)で表される化合物とを第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(1A)で表される[ビス(2−ホスフィノエチル)アミン]カルボニルハロヒドリドルテニウム(II)の製造方法。 [式(2A)中、実線は単結合、破線は配位結合を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオン、AHは置換基を有してもよい芳香族炭化素を表す。] [式(3A)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。] [式(1A)中、実線は単結合、三重線は三重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。]第1級アルコールが、下記一般式(5)で表されるアルコールであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。 [式(5)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子を表す。R13は水素原子又は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい含酸素脂肪族複素環基及び置換基を有してもよい含酸素ヘテロアリール基から構成される群より選択される基を表す。]AHがアルキル基を有してもよいベンゼンであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。Xが塩化物イオンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12がいずれも水素原子であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。R1、R2、R3及びR4が各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基及び置換基を有してもよいアリール基から構成される群より選択される基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。下記一般式(4A)で表されるルテニウム二核錯体に対して、第1級アルコール及び塩基を作用させることを特徴とする、下記一般式(1A)で表される[ビス(2−ホスフィノエチル)アミン]カルボニルハロヒドリドルテニウム(II)の製造方法。 [式(4A)中、実線は単結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。] [式(1A)中、実線は単結合、三重線は三重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。]第1級アルコールが、下記一般式(5)で表されるアルコールであることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。 [式(5)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子を表す。R13は水素原子又は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい含酸素脂肪族複素環基及び置換基を有してもよい含酸素ヘテロアリール基から構成される群より選択される基を表す。]Xが塩化物イオンであることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の製造方法。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12がいずれも水素原子であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。R1、R2、R3及びR4が各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基及び置換基を有してもよいアリール基から構成される群より選択される基であることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法。

说明书全文

本発明は、素添加反応において優れた触媒活性を示すルテニウム錯体の一種である、[ビス(2−ホスフィノエチル)アミン]カルボニルハロヒドリドルテニウム(II)の製造方法に関する。

ルテニウム錯体の一種である、{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)[Ru−MACHO(登録商標)、以下同様]は、ケトン類、エステル類及びラクトン類といった、様々なカルボニル化合物の水素添加反応において極めて優れた触媒活性を示し、高効率的にアルコール類を与えることが報告されている(特許文献1)。

このルテニウム錯体の製造方法は、下記反応式(Eq.1)に示すように、ルテニウム源であるカルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)[RuHCl(CO)(PPh3)3]と、配位子であるビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミンとをトルエン中で反応させるというものである。

しかしながら、前記製造方法は、ルテニウム源の原子効率が非常に低く(17.3質量%)、反応後に除去困難なトリフェニルホスフィン(PPh3)が3当量副生する上、得られたRu−MACHOが異性体混合物となってしまう、といった数々の問題点を有していた(非特許文献1)。

前記異性体混合物をn−ヘキサン及びエタノールで洗浄することで、Ru−MACHOを単一異性体として単離可能ではあるが、その際に収率が85%から55%へと低下してしまう点も問題となっていた(特許文献1)。

国際公開第2011/048727号

Wataru Kuriyama, Takaji Matsumoto, Osamu Ogata, Yasunori Ino, Kunimori Aoki, Shigeru Tanaka, Kenya Ishida, Tohru Kobayashi, Noboru Sayo, and Takao Saito, Org. Proc. Res. Dev. 2012, 16, 166-171.

本発明は前記の現状に鑑み為されたものである。即ち、本発明は、優れた水素添加反応用触媒であるRu−MACHO及びその類縁体を、原子効率に優れたルテニウム源を用いて、除去困難な不純物を副生させることなく、単一異性体として収率良くかつ簡便に製造する手段を提供することを目的とする。

本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記Eq.2に示すように、原子効率に優れたジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマーをルテニウム源として、第1級アルコール及び塩基の存在下で配位子であるビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミンと反応させることにより、Ru−MACHOが効率的に得られることを見出した。

また、下記Eq.3に示すように、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマーとビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミンを反応させることによって容易に得られる、ジクロロ{[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマーに対して、第1級アルコール及び塩基を作用させることによっても、同様にしてRu−MACHOが得られることを見出した。

以下、Eq.2及びEq.3により本反応の簡略化した概略を示すが、本発明は本概略によって何ら限定されるものではない。

Eq.2及びEq.3に示す反応では、ルテニウム源の原子効率が高く(≧44.6質量%)、副生成物は濾過や水洗で除去容易な炭化水素及び塩のみである上、Ru−MACHOが収率を損なうことなく単一異性体として得られるため、従来法の有していた数々の問題点を解決可能であることを見出し、これらの知見から本発明を完成するに至った。

即ち本発明は、以下の[1]〜[11]を含むものである。 [1]下記一般式(2A)で表されるルテニウム二核錯体と下記一般式(3A)で表される化合物とを第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(1A)で表される[ビス(2−ホスフィノエチル)アミン]カルボニルハロヒドリドルテニウム(II)の製造方法。

[式(2A)中、実線は単結合、破線は配位結合を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオン、AHは置換基を有してもよい芳香族炭化水素を表す。]

[式(3A)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。]

[式(1A)中、実線は単結合、三重線は三重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。] [2]第1級アルコールが、下記一般式(5)で表されるアルコールであることを特徴とする、前記[1]に記載の製造方法。

[式(5)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子を表す。R13は水素原子又は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい含酸素脂肪族複素環基及び置換基を有してもよい含酸素ヘテロアリール基から構成される群より選択される基を表す。] [3]AHがアルキル基を有してもよいベンゼンであることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の製造方法。 [4]Xが塩化物イオンであることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の製造方法。 [5]R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12がいずれも水素原子であることを特徴とする、前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の製造方法。 [6]R1、R2、R3及びR4が各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基及び置換基を有してもよいアリール基から構成される群より選択される基であることを特徴とする、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の製造方法。 [7]下記一般式(4A)で表されるルテニウム二核錯体に対して、第1級アルコール及び塩基を作用させることを特徴とする、下記一般式(1A)で表される[ビス(2−ホスフィノエチル)アミン]カルボニルハロヒドリドルテニウム(II)の製造方法。

[式(4A)中、実線は単結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。]

[式(1A)中、実線は単結合、三重線は三重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。] [8]第1級アルコールが、下記一般式(5)で表されるアルコールであることを特徴とする、前記[7]に記載の製造方法。

[式(5)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子を表す。R13は水素原子又は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい含酸素脂肪族複素環基及び置換基を有してもよい含酸素ヘテロアリール基から構成される群より選択される基を表す。] [9]Xが塩化物イオンであることを特徴とする、前記[7]又は[8]に記載の製造方法。 [10]R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12がいずれも水素原子であることを特徴とする、前記[7]〜[9]のいずれか1つに記載の製造方法。 [11]R1、R2、R3及びR4が各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基及び置換基を有してもよいアリール基から構成される群より選択される基であることを特徴とする、前記[7]〜[10]のいずれか1つに記載の製造方法。

本発明の製造方法によれば、優れた水素添加反応用触媒であるRu−MACHOをはじめとした、前記一般式(1A)で表される[ビス(2−ホスフィノエチル)アミン]カルボニルハロヒドリドルテニウム(II)[以下、本発明のルテニウム錯体(1A)と称す。]を、原子効率に優れたルテニウム源である前記一般式(2A)で表されるルテニウム二核錯体[以下、ルテニウム二核錯体(2A)と称す。]と、前記一般式(3A)で表される化合物[以下、化合物(3A)と称す。]から、除去困難な不純物の副生を伴うことなく単一異性体として簡便に高収率で製造することが可能である。

更に、本発明の製造方法によれば、ルテニウム二核錯体(2A)と化合物(3A)から容易に得られる、前記一般式(4A)で表されるルテニウム二核錯体[以下、ルテニウム二核錯体(4A)と称す。]からも同様にして本発明のルテニウム錯体(1A)を効率的に製造することが可能である。

以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。まず、本発明のルテニウム錯体(1A)について説明する。前記一般式(1A)中、実線は単結合、三重線は三重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子、Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。ハロゲン化物イオンとしては、具体的には、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン等が挙げられ、好ましい具体例としては塩化物イオン等が挙げられる。

R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表し、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基及び置換基を有してもよいアリール基を表す。

アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数1〜30のアルキル基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n—ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブタン−3−イル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、2−メチルペンタン−4−イル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブタン−3−イル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基等が挙げられる。

シクロアルキル基としては、単環状でも多環状でもよい、例えば炭素数3〜30のシクロアルキル基、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。具体的には、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基及び2−アダマンチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはシクロヘキシル基等が挙げられる。

アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、例えば炭素数2〜20のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜14のアルケニル基、より好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基が挙げられる。具体的には、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、アリル基、1−シクロヘキセニル基、1−スチリル基及び2−スチリル基等が挙げられる。

アリール基としては、例えば炭素数6〜18のアリール基、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。具体的には、例えばフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはフェニル基等が挙げられる。

ヘテロアリール基としては、例えば酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれるヘテロ原子を1〜2個有する5〜6員環の芳香族複素環及び、該芳香族複素環が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環芳香族複素環由来のヘテロアリール基が挙げられる。具体的には、例えば2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ベンゾフリル基、3−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基及び3−ベンゾチエニル基等が挙げられる。

アラルキル基としては、例えば前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子が前記アリール基によって置換されることで形成する直鎖状又は分岐状のアラルキル基及び、前記シクロアルキル基が前記アリール基によって縮環されることで形成する多環状のアラルキル基が挙げられる。具体的には、例えばベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−インダニル基、2−インダニル基及び9−フルオレニル基等が挙げられる。

R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。このような環の具体例としては、例えばホスホラン環、ホスホール環、ホスフィナン環及びホスフィニン環等が挙げられる。

R1〜R4におけるアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基、並びに、R1及びR2またはR3及びR4が互いに結合して形成する環が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルコキシ基及びハロゲノ基等が挙げられる。これらの置換基の内、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基は、前記R1〜R4の説明において詳述した基と同様である。

ハロゲノアルキル基としては、例えば前記アルキル基上の少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子によって置換された基が挙げられる。具体的には、例えばトリフルオロメチル基及びn−ノナフルオロブチル基等が挙げられる。

アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基等が挙げられる。

ハロゲノ基としては、具体的には、例えばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基等が挙げられ、好ましくはフルオロ基等が挙げられる。

R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は各々独立して水素原子又は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基から構成される群より選択される基を表し、好ましくは水素原子を表す。R5〜R12におけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基は、前記R1〜R4の説明において詳述した基と同様である。また、R5〜R12は互いに結合して環を形成してもよい。

本発明のルテニウム錯体(1A)の好ましい形態としては、下記一般式(1B)で表されるルテニウム錯体が挙げられる。

式(1B)中、実線は単結合、三重線は三重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Clは塩化物イオンを表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。

本発明のルテニウム錯体(1A)の好ましい具体例としては、下記構造式に示す{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(Ru−MACHO)(1B−1)、{ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(1B−2)、{ビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(1B−3)、{ビス[2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(1B−4)及び{ビス[2−(ジ−1−アダマンチルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(1B−5)等が挙げられる。特に好ましい具体例としては{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(Ru−MACHO)(1B−1)及び{ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(1B−2)等が挙げられる。

次に、本発明のルテニウム錯体(1A)のルテニウム源となる、ルテニウム二核錯体(2A)について説明する。前記一般式(2A)中、実線は単結合、破線は配位結合を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。ハロゲン化物イオンとしては、具体的には、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン等が挙げられ、好ましい具体例としては塩化物イオン等が挙げられる。

AHは置換基を有してもよい芳香族炭化水素を表す。芳香族炭化水素としては、例えば炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。具体的には、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン及びフェナントレンが挙げられ、好ましい具体例としてはベンゼンが挙げられる。

これらの芳香族炭化水素が有してもよい置換基としては、好ましくはアルキル基が挙げられる。アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n—ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブタン−3−イル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、2−メチルペンタン−4−イル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基及び2,2−ジメチルブタン−3−イル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはメチル基及び2−プロピル基等が挙げられる。

ルテニウム二核錯体(2A)の好ましい形態としては、下記一般式(2B)で表されるルテニウム二核錯体が挙げられる。

式(2B)中、実線は単結合、二重線は二重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Clは塩化物イオン、Ruは2価ルテニウムイオンを表す。R14、R15、R16、R17、R18及びR19は各々独立して水素原子又はアルキル基を表す。R14〜R19におけるアルキル基は、前記芳香族炭化水素が有してもよい置換基として詳述したアルキル基と同様である。

ルテニウム二核錯体(2A)の好ましい具体例としては、下記構造式に示すジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−1)、ジクロロ(ベンゼン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−2)、ジクロロ(メシチレン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−3)、ジクロロ(ヘキサメチルベンゼン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−4)及びジヨード(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー(2A−1)等が挙げられる。製造上の観点より特に好ましい具体例としては、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−1)等が挙げられる。

次に、本発明のルテニウム錯体(1A)の配位子となる、化合物(3A)について説明する。前記一般式(3A)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、本発明のルテニウム錯体(1A)の説明において詳述したものと全く同様である。

化合物(3A)の好ましい形態としては、下記一般式(3B)で表される化合物が挙げられる。

式(3B)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。

化合物(3A)の好ましい具体例としては、下記構造式に示すビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(3B−1)、ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン(3B−2)、ビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン(3B−3)、ビス[2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エチル]アミン(3B−4)及びビス[2−(ジ−1−アダマンチルホスフィノ)エチル]アミン(3B−5)等が挙げられる。本発明のルテニウム錯体(1A)の触媒活性の観点より特に好ましい具体例としては、ビス[(2−ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(3B−1)及びビス[(2−ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン(3B−2)等が挙げられる。

化合物(3A)の中には、空気に対して不安定な化合物や、高粘度液状物質となるため計量が困難な化合物もあることから、化合物(3A)にブレンステッド酸を作用させ、化合物(3A)を対応する塩に誘導することで安定性や結晶性を向上させてもよい。このようなブレンステッド酸は、化合物(3A)の塩を与えうる酸であれば特に限定されるものではないが、例えば過塩素酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、ハロゲン化水素酸及びスルホン酸等が挙げられ、好ましくはハロゲン化水素酸が挙げられる。

ハロゲン化水素酸としては、具体的には、例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸等が挙げられ、好ましい具体例としては塩酸等が挙げられる。

スルホン酸としては、具体的には、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及び10−カンファースルホン酸等が挙げられる。

化合物(3A)の塩の特に好ましい具体例としては、下記構造式に示すビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン塩酸塩(3B−1_HCl)等が挙げられる。

なお、化合物(3A)の塩を本発明のルテニウム錯体(1A)の製造に用いる際には、反応系外で化合物(3A)の塩に後述する塩基を作用させ、化合物(3A)を遊離させた後にルテニウム二核錯体(2A)と反応させてもよく、反応系内で化合物(3A)の塩に後述する塩基を作用させ、化合物(3A)を遊離させながらルテニウム二核錯体(2A)と反応させてもよい。

次に、本発明のルテニウム錯体(1A)の合成中間体となる、ルテニウム二核錯体(4A)について説明する。前記一般式(4A)中、実線は単結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子、Ruは2価ルテニウムイオン、Xはハロゲン化物イオンを表す。

ハロゲン化物イオンとしては、具体的には、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン等が挙げられ、好ましい具体例としては塩化物イオン等が挙げられる。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、本発明のルテニウム錯体(1A)の説明において詳述したものと全く同様である。

ルテニウム二核錯体(4A)の好ましい形態としては、下記一般式(4B)で表されるルテニウム二核錯体が挙げられる。

式(4B)中、実線は単結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。Ruは2価ルテニウムイオン、Clは塩化物イオンを表す。R1、R2、R3及びR4は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R1及びR2、R3及びR4は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。

ルテニウム二核錯体(4A)の特に好ましい具体例としては、下記構造式に示すジクロロ{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマー(4B−1)及びジクロロ{ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマー(4B−2)等が挙げられる。

このルテニウム二核錯体(4A)は、ルテニウム二核錯体(2A)に対して化合物(3A)を溶媒中で反応させることで容易に製造可能である。このようにして得られたルテニウム二核錯体(4A)は、単離精製を行った後に第1級アルコール及び塩基を作用させて本発明のルテニウム錯体(1A)へ変換してもよく、単離精製を行うことなく第1級アルコール及び塩基を作用させて本発明のルテニウム錯体(1A)に変換してもよい。

次に、本発明の製造方法における第1級アルコールについて詳細に説明する。まず、本発明の製造方法における第1級アルコールとは、分子内に少なくとも1つのヒドロキシメチル基を有し、一般式R−CH2−OH(式中、実線は単結合を表す。CH2はメチレン基、OHは水酸基、Rは水素原子又は置換基を表す。)で表される化合物を表す。

本発明のルテニウム錯体(1A)は、ルテニウム二核錯体(2A)と化合物(3A)を、第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させることにより容易に製造することが出来る。また、本発明のルテニウム錯体(1A)は、ルテニウム二核錯体(4A)に第1級アルコール及び塩基を作用させることによっても、容易に製造することが出来る。

第1級アルコール及び塩基はいずれも、本発明のルテニウム錯体(1A)における2価ルテニウムイオン(Ru)に対して、ヒドリド配位子(H)及びカルボニル配位子(C≡O)を導入するために必須の化合物である。本発明の製造方法において、第1級アルコール及び塩基が必須であることを説明するため、2価ルテニウムイオンに対するヒドリド配位子及びカルボニル配位子の導入について、下記Eq.4にて推定反応機構の概略を示す。

すなわち、ルテニウム二核錯体(2A)と化合物(3A)を第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させると、まずルテニウムアルコキシド中間体(Int−1)が生じると考えられる(Step1)。なお、ルテニウム二核錯体(4A)に第1級アルコールと塩基を作用させることによっても、中間体としてInt−1が生成すると考えられる。次いで、β−ヒドリド脱離(Step2)によってInt−1からルテニウムヒドリド中間体(Int−2)が生じ、次いで脱カルボニル反応(Step3)が起こってInt−2から本発明のルテニウム錯体(1A)が生成すると推測される。なお、本発明は本概略によって何ら限定されるものではない。

推定反応機構の概略(Eq.4)からわかるように、2価ルテニウムイオンに対するヒドリド配位子とカルボニル配位子の導入においては、任意の第1級アルコールが使用可能である。しかしながら本反応では、第1級アルコールに由来する一般式R−H(式中、実線は単結合を表す。Hは水素原子、Rは水素原子又は置換基を表す。)で表される化合物が副生し、この副生成物の2価ルテニウムイオンに対する配位能が高い場合や、塩基に対する安定性が低い場合には、この副生成物は本発明のルテニウム錯体(1A)の収率及び純度に悪影響を及ぼしうる。このような観点から、第1級アルコールの好ましい形態としては、前記一般式(5)で表されるアルコール[以下、アルコール(5)と称す。]が挙げられる。

前記一般式(5)中、実線は単結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子を表す。R13は水素原子又は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい含酸素脂肪族複素環基及び置換基を有してもよい含酸素ヘテロアリール基から構成される群より選択される基を表し、好ましくは水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。

アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数1〜19のアルキル基、好ましくは炭素数1〜14のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜9のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n—ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブタン−3−イル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、2−メチルペンタン−4−イル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブタン−3−イル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基及びn−ノニル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはn−プロピル基等が挙げられる。

シクロアルキル基としては、単環状でも多環状でもよい、例えば炭素数3〜19のシクロアルキル基、好ましくは炭素数3〜14のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3〜6のシクロアルキル基が挙げられる。具体的には、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。

アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、例えば炭素数2〜14のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。具体的には、例えばビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、アリル基及び1−シクロヘキセニル基等が挙げられる。

アリール基としては、例えば炭素数6〜18のアリール基、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。具体的には、例えばフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が挙げられる。

含酸素脂肪族複素環基としては、例えばヘテロ原子として酸素原子を1〜2個含む5〜6員環の脂肪族複素環基が挙げられる。具体的には、例えばテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−3−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−3−イル基、テトラヒドロピラン−4−イル基、1,3−ジオキサン−2−イル基及び1,4−ジオキサン−2−イル基等が挙げられる。

含酸素ヘテロアリール基としては、フラン及びベンゾフラン由来のヘテロアリール基が挙げられる。具体的には、例えば2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフリル基及び3−ベンゾフリル基等が挙げられる。

R13におけるアルキル基及びシクロアルキル基が有してもよい置換基としては、例えばアルケニル基、アリール基、含酸素脂肪族複素環基、含酸素へテロアリール基、水酸基、アルコキシ基及びアリールオキシ基等が挙げられ、好ましくはアルコキシ基が挙げられる。これらの基の内、アルケニル基、アリール基、含酸素脂肪族複素環基及び含酸素へテロアリール基は、前記R13の説明において詳述した基と同様である。

アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基等が挙げられ、好ましい具体例としてはメトキシ基が挙げられる。

アリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜18のアリールオキシ基、好ましくは炭素数6〜14のアリールオキシ基、より好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられる。具体的には、例えばフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基及び2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。

R13におけるアルケニル基、アリール基及び含酸素ヘテロアリール基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、含酸素脂肪族複素環基、含酸素へテロアリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基等が挙げられる。これらの基の内、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、含酸素脂肪族複素環基及び含酸素へテロアリール基は、前記R13の説明において詳述した基と同様である。また、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、前記R13におけるアルキル基及びシクロアルキル基が有してもよい置換基の説明において詳述した基と同様である。

R13における含酸素脂肪族複素環基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、含酸素脂肪族複素環基、含酸素へテロアリール基、水酸基、アルコキシ基及びアリールオキシ基等が挙げられる。これらの基の内、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、含酸素脂肪族複素環基及び含酸素へテロアリール基は、前記R13の説明において詳述した基と同様である。また、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、前記R13におけるアルキル基及びシクロアルキル基が有してもよい置換基の説明において詳述した基と同様である。

アルコール(5)の特に好ましい具体例としては、1−ブタノール及び3−メトキシ−1−ブタノール等が挙げられる。

次に、本発明の製造方法において、前記第1級アルコールと共に用いられる塩基について詳細に説明する。塩基としては、前記第1級アルコール共存下にて、推定反応機構の概略(Eq.4)におけるルテニウムアルコキシド中間体(Int−1)を与えうる塩基であれば特に限定されるものではないが、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属アルコキシド及びアミジン類等が挙げられ、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド及びアミジン類等が挙げられる。

アルカリ金属水酸化物としては、具体的には、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられ、好ましい具体例としては水酸化ナトリウムが挙げられる。

アルカリ土類金属水酸化物としては、具体的には、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム及び水酸化バリウム等が挙げられる。

アルカリ金属炭酸塩としては、具体的には、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等が挙げられる。

アルカリ金属リン酸塩としては、具体的には、例えばリン酸3ナトリウム及びリン酸3カリウム等が挙げられる。

アルカリ金属アルコキシドとしては、例えばアルカリ金属第1級アルコキシド、アルカリ金属第2級アルコキシド及びアルカリ金属第3級アルコキシドが挙げられる。具体的には、例えばリチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウム2−プロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、リチウムtert−ペントキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム2−プロポキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ペントキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド及びカリウムtert−ペントキシド等が挙げられ、好ましい具体例としてはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド及びナトリウムtert−ブトキシドが挙げられる。

アミジン類としては、具体的には、例えば1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等が挙げられ、好ましい具体例としては1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等が挙げられる。

また、前記第1級アルコールと反応して、対応するアルカリ金属第1級アルコキシドを与える化合物も塩基の等価体として使用可能である。このような塩基等価体としては、例えばアルカリ金属、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水素化物、有機リチウム化合物及びアルカリ金属アミド等が挙げられ、好ましくはアルカリ金属水素化物等が挙げられる。

アルカリ金属としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。

アルカリ金属酸化物としては、具体的には、例えば酸化リチウム、酸化ナトリウム及び酸化カリウム等が挙げられる。

アルカリ金属水素化物としては、具体的には、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム及び水素化カリウム等が挙げられ、好ましい具体例としては水素化ナトリウムが挙げられる。

有機リチウム化合物としては、具体的には、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、2−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、sec−ブチルリチウム及びtert−ブチルリチウム等が挙げられる。

アルカリ金属アミドとしては、具体的には、例えばリチウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド及びカリウムビス(トリメチルシリル)アミド等が挙げられる。

これらの塩基及び塩基等価体の使用量は特に限定されるものではないが、ルテニウム二核錯体(2A)及びルテニウム二核錯体(4A)に対して通常1〜15当量、好ましくは1.2〜10当量、より好ましくは1.5〜5当量の範囲から適宜選択される。なお、これらの塩基及び塩基等価体は、先述した化合物(3A)の塩から化合物(3A)を遊離させるために用いてもよい。

本発明の製造方法は溶媒の存在下で実施することが好ましい。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば特に制限は無いが、例えば脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、第2級アルコール、第3級アルコール、エーテル類、アミド類、スルホキシド類及び水等が挙げられる。

脂肪族炭化水素としては、具体的には、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、シクロヘキサン及びデカリン等が挙げられる。

芳香族炭化水素としては、具体的には、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサメチルベンゼン、p−シメン及び1,4−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。

第2級アルコールとしては、具体的には、例えば2−プロパノール及びシクロヘキサノール等が挙げられる。

第3級アルコールとしては、具体的には、例えばtert−ブタノール及び2−メチル−2−ブタノール等が挙げられる。

エーテル類としては、具体的には、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等が挙げられる。

アミド類としては、具体的には、例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。

スルホキシド類としては、具体的には、例えばジメチルスルホキシド等が挙げられる。

これらの溶媒は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。

本発明の製造方法においては、前記第1級アルコールを反応剤のみならず溶媒として兼用することが好ましい。溶媒として用いられる前記第1級アルコールの好ましい形態としては、前記アルコール(5)の中でも常温常圧にて液体状であるものが挙げられ、好ましい具体例としては1−ブタノール及び3−メトキシ−1−ブタノール等が挙げられる。

本発明の製造方法は不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。不活性ガスとしては、具体的には、例えばアルゴンガス及び窒素ガス等が挙げられ、好ましい具体例としては窒素ガスが挙げられる。

また反応温度は、通常0〜300℃、好ましくは25〜250℃、より好ましくは50〜200℃の範囲から適宜選択される。本発明の製造方法は常圧で実施することが好ましいが、反応温度を調整するために加圧条件又は減圧条件で実施してもよい。反応時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜12時間、より好ましくは10分〜6時間の範囲から適宜選択される。

下記Eq.5に示すように、この製造方法を用いて、前記一般式(2B)で表されるルテニウム二核錯体と前記一般式(3B)で表される化合物を、第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させることで、前記一般式(1B)で表されるルテニウム錯体を、本発明のルテニウム錯体(1A)と同様にして製造することが出来る。

また、前記一般式(4B)で表されるルテニウム二核錯体に、第1級アルコール及び塩基を作用させることで、前記一般式(1B)で表されるルテニウム錯体を、本発明のルテニウム錯体(1A)と同様にして製造することが出来る。

このようにして得られた本発明のルテニウム錯体(1A)は、必要に応じて後処理、単離及び精製を行うことができる。後処理の方法としては、例えば、濃縮、溶媒置換、水洗、抽出、濾過及び晶析等が挙げられ、これらを単独で或いは併用して行うことができる。単離及び精製の方法としては、例えば吸着剤による脱色、カラムクロマトグラフィー及び再結晶等が挙げられ、これらを単独で又は併用して行うことができる。

また、本発明の製造方法によって得られた本発明のルテニウム錯体(1A)は純度に優れていることから、水素添加反応をはじめとする種々の触媒的有機化学変換反応において好適に使用可能である。

以下に、本発明の製造方法について、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。実施例中において、物性の測定に用いた装置及び条件は次の通りである。

1)プロトン核磁気共鳴分光法(1H NMR):400MR DD2型装置(共鳴周波数:400MHz、アジレント社製)重溶媒:重塩化メチレン(CD2Cl2)内部標準物質:残留ジクロロメタン(5.32ppm、tripletピーク)2)リン31核磁気共鳴分光法(31P NMR):400MR DD2型装置(共鳴周波数:161MHz、アジレント社製)外部標準物質:重水中リン酸(0ppm、singletピーク)

実施例1−1〜1−4は、ルテニウム二核錯体(2A)と化合物(3A)を第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させることによる、本発明のルテニウム錯体(1A)の製造方法に関する。また、実施例2−1〜2−6は、ルテニウム二核錯体(4A)に対して第1級アルコール及び塩基を作用させることによる、本発明のルテニウム錯体(1A)の製造方法に関する。また、実施例3−1〜3−3及び実施例4は、ルテニウム二核錯体(4A)の粗生成物に対して第1級アルコール及び塩基を作用させることによる、本発明のルテニウム錯体(1A)の製造方法に関する。なお各実施例において、基質及び溶媒等の仕込みは窒素気流下で、反応は窒素雰囲気下で、後処理、単離及び精製は空気中で実施した。

(実施例1−1)ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−1)とビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(3B−1)を第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させることによる、{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(Ru−MACHO)(1B−1)の製造 下記Eq.6に反応式を示す。

(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、クライゼン蒸留装置、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、3−メトキシ−1−ブタノール(沸点:157℃、60mL)、ナトリウムメトキシド(NaOMe)(純度:99.1質量%、1.53g、28.08mmol、4.3当量)及びビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン塩酸塩(3B−1_HCl)(6.56g、13.71mmol、2.1当量)を順次仕込んだ。 得られた白色懸濁液を室温で30分攪拌することで、塩化ナトリウムの析出を伴いながら中和反応が進行し、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(3B−1)(2.1当量)及びNaOMe(2.2当量)の混合物が白色懸濁液として得られた。 この懸濁液に、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−1)(4.0g、6.53mmol、1.0当量)を加え、得られた橙色懸濁液を、クライゼン蒸留装置を用いて低沸点化合物を留去しながら、還流下で1時間攪拌した。

(後処理・単離・精製)反応後に得られた薄褐色懸濁液を、氷水浴を用いて5℃に冷却して吸引濾過した後、得られた結晶をメタノール、水及びメタノールで順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として6.07g得られた。単離収率は76.6%であった。

1H NMR(400MHz,CD2Cl2):δ=7.86−7.75(m,8H),7.45−7.38(m,12H),3.89(br t,1H),3.53−3.36(m,2H)3.05−2.95(m,2H),2.62−2.44(m,4H),−15.2(t,J=19.6Hz,1H).31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=52.8(d,J=6.0Hz,2P).

なお、従来の製造方法で副生する配位異性体[δ=55.4(d,J=6.1Hz,2P)]は全く観測されなかった。

(実施例1−2)塩基としてナトリウムエトキシドを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりにナトリウムエトキシド(NaOEt)(純度:98.0質量%、1.95g、28.08mmol、4.3当量)を用いる以外、実施例1−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として5.15g得られた。単離収率は65.0%であった。

(実施例1−3)塩基としてナトリウムtert−ブトキシドを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりにナトリウムtert−ブトキシド(NaOtBu)(純度:99.1質量%、2.72g、28.08mmol、4.3当量)を用いる以外、実施例1−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として5.94g得られた。単離収率は74.9%であった。

(実施例1−4)第1級アルコールとして1−ブタノールを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 3−メトキシ−1−ブタノールの代わりに1−ブタノール(沸点:117℃、60mL)を用いる以外、実施例1−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として5.94g得られた。単離収率は74.9%であった。

実施例1−1〜1〜4の結果を以下の表1にまとめる。

表1に示すように、ルテニウム二核錯体(2A)の一種である2B−1と、化合物(3A)の一種である3B−1を、第1級アルコール及び塩基の存在下で反応させることにより、本発明のルテニウム錯体(1A)の一種であるRu−MACHO(1B−1)が良好な収率かつ単一異性体として得られた。また、本反応の副生成物はいずれも、反応液を濾過した後にメタノール及び水で洗浄することで容易に除去可能であった。

(実施例2−1)ジクロロ{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマー(4B−1)に第1級アルコール及び塩基を作用させることによる、{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(Ru−MACHO)(1B−1)の製造 下記Eq.7に反応式を示す。

第1工程:ジクロロ{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマー(4B−1)の製造

(仕込み・反応)200mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、3−メトキシ−1−ブタノール(沸点:157℃、100mL)、NaOMe(純度:99.1質量%、2.4g、43.6mmol、2.15当量)及びビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン塩酸塩(3B−1_HCl)(21.3g、44.6mmol、2.2当量)を順次仕込んだ。 得られた白色懸濁液を室温で30分攪拌することで、塩化ナトリウムの析出を伴いながら中和反応が進行し、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(3B−1)(2.15当量)の3−メトキシ−1−ブタノール溶液が白色懸濁液として得られた。 この懸濁液に、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−1)(4.0g、6.53mmol、1.0当量)を加え、得られた赤色懸濁液を還流下で1時間攪拌した。

(後処理・単離・精製)反応後に得られた橙色懸濁液を、氷水浴を用いて5℃に冷却して吸引濾過した後、得られた結晶をメタノール、水及びメタノールで順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(4B−1)が橙色粉末として24.1g得られた。単離収率は96.8%であった。

1H NMR(400MHz,CD2Cl2):7.82−7.73(m,8H),7.12−7.02(m,20H),6.87(t,J=7.2Hz,4H),6.78−6.69(m,10H),3.48−3.32(m,4H),2.98−2.81(m,4H),2.79−2.66(m,4H),2.22−2.08(m,4H).31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=64.2(s,4P).

第2工程:{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(Ru−MACHO)(1B−1)の製造

(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、クライゼン蒸留装置、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、3−メトキシ−1−ブタノール(沸点:157℃、30mL)、NaOMe(純度:99.1質量%、391mg、7.17mmol、2.2当量)及び第1工程で得られたジクロロ{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマー(4B−1)(4.0g、3.26mmol、1.0当量)を順次仕込み、得られた橙色懸濁液を、クライゼン蒸留装置を用いて低沸点化合物を留去しながら、還流下で1時間攪拌した。

(後処理・単離・精製)反応後に得られた薄褐色懸濁液を、氷水浴を用いて5℃に冷却して吸引濾過した後、得られた結晶をメタノール、水及びメタノールで順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として3.35g得られた。単離収率は84.6%であった。本化合物のNMR測定結果は、実施例1−1で得られたものと完全に一致した。

(実施例2−2)塩基として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)(1.07mL、7.17mmol、2.2当量)を用いる以外、実施例2−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として3.46g得られた。単離収率は87.4%であった。

(実施例2−3)塩基として水酸化ナトリウムを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりに水酸化ナトリウム(NaOH)(287mg、7.17mmol、2.2当量)を用いる以外、実施例2−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として2.60g得られた。単離収率は65.7%であった。

(実施例2−4)塩基としてナトリウムエトキシドを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりにNaOEt(純度:98.0質量%、498mg、7.17mmol、2.2当量)を用いる以外、実施例2−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として3.39g得られた。単離収率は85.6%であった。

(実施例2−5)塩基としてナトリウムtert−ブトキシドを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりにNaOtBu(純度:99.1質量%、695mg、7.17mmol、2.2当量)を用いる以外、実施例2−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として3.24g得られた。単離収率は81.9%であった。

(実施例2−6)塩基等価体として水素化ナトリウムを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりに水素化ナトリウム(NaH)(純度:60.2質量%、286mg、7.17mmol、2.2当量)を用いる以外、実施例2−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として3.40g得られた。単離収率は85.9%であった。

実施例2−1〜2−6の結果を以下の表2にまとめる。

表2に示すように、ルテニウム二核錯体(4A)の一種である4B−1に対して、第1級アルコール及び塩基を作用させることにより、本発明のルテニウム錯体(1A)の一種であるRu−MACHO(1B−1)が良好な収率かつ単一異性体として得られた。また、本反応の副生成物はいずれも、反応液を濾過した後にメタノール及び水で洗浄することで容易に除去可能であった。

(実施例3−1)ジクロロ{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマー(4B−1)粗生成物に第1級アルコール及び塩基を作用させることによる、{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(Ru−MACHO)(1B−1)の製造 下記Eq.8に反応式を示す。

(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、クライゼン蒸留装置、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、3−メトキシ−1−ブタノール(沸点:157℃、60mL)、NaOMe(純度:99.1質量%、730mg、13.39mmol、2.05当量)及びビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン塩酸塩(3B−1_HCl)(6.56g、13.71mmol、2.1当量)を順次仕込んだ。 得られた白色懸濁液を室温で30分攪拌することで、塩化ナトリウムの析出を伴いながら中和反応が進行し、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(3B−1)(2.05当量)の3−メトキシ−1−ブタノール溶液が白色懸濁液として得られた。 この懸濁液に、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−1)(4.0g、6.53mmol、1.0当量)を加え、得られた赤色懸濁液を還流下で1時間攪拌した後に室温にまで冷却することで、ジクロロ{ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマー(4B−1)粗生成物が橙色懸濁液として得られた。 この懸濁液に、NaOMe(純度:99.1質量%、801mg、14.69mmol、2.25当量)を加え、クライゼン蒸留装置を用いて低沸点化合物を留去しながら、還流下で1時間攪拌した。

(後処理・単離・精製)反応後に得られた薄褐色懸濁液を、氷水浴を用いて5℃に冷却して吸引濾過した後、得られた結晶をメタノール、水及びメタノールで順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として6.38g得られた。単離収率は80.5%であった。本化合物のNMR測定結果は、実施例1−1で得られたものと完全に一致した。

(実施例3−2)塩基としてナトリウムエトキシドを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりにNaOEt(純度:98.0質量%、930mg、13.39mmol、2.05当量(3B−1_HCl中和用)/1.02g、14.69mmol、2.25当量(1B−1製造用))を用いる以外、実施例3−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として6.42g得られた。単離収率は81.0%であった。

(実施例3−3)塩基としてナトリウムtert−ブトキシドを用いたRu−MACHO(1B−1)の製造 NaOMeの代わりにNaOtBu(純度:99.1質量%、1.30g、13.39mmol、2.05当量(3B−1_HCl中和用))/1.42g、14.69mmol、2.25当量(1B−1製造用)を用いる以外、実施例3−1と全く同様の操作を行うことで、表題化合物(1B−1)が薄黄色粉末として6.56g得られた。単離収率は82.7%であった。

実施例3−1〜3−3の結果を以下の表3にまとめる。

表3に示すように、ルテニウム二核錯体(4A)の一種である4B−1を単離精製することなしに、第1級アルコール及び塩基を作用させることによっても、本発明のルテニウム錯体(1A)の一種であるRu−MACHO(1B−1)が良好な収率かつ単一異性体として得られた。また、本反応の副生成物はいずれも、反応液を濾過した後にメタノール及び水で洗浄することで容易に除去可能であった。

(実施例4){ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(1B−2)の製造 下記Eq.9に反応式を示す。

(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーバー、冷却管、クライゼン蒸留装置、温度計及び三方コックを取り付けて内部を窒素置換し、3−メトキシ−1−ブタノール(沸点:157℃、20mL)、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー(2B−1)(1.0g、1.63mmol、1.0当量)及びビス[(2−ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン(3B−2)(1.59g、3.42mmol、2.1当量)を順次仕込んだ。 得られた赤色懸濁液を還流下で1時間攪拌した後に室温にまで冷却することで、ジクロロ{ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)ダイマー(4B−2)粗生成物が赤橙色懸濁液として得られた。この懸濁液に、NaOEt(249mg、3.59mmol、2.2当量)を加え、クライゼン蒸留装置を用いて低沸点化合物を留去しながら、還流下で1時間攪拌した。

(後処理・単離・精製)反応後に得られた薄褐色懸濁液を、氷水浴を用いて5℃に冷却して吸引濾過した後、得られた結晶をメタノール、水及びメタノールで順次洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物(1B−2)がクリーム色粉末として1.60g得られた。単離収率は77.8%であった。

1H NMR(400MHz,CD2Cl2):δ=3.42(t,J=12.0Hz,1H),3.28−3.12(m,2H),2.42−2.16(m,8H),2.04−1.18(m,42H),−16.38(t,J=18.4Hz,1H).31P NMR(161MHz,CD2Cl2):δ=65.2(d,J=15.9Hz,2P).

この場合も、NMR分析において対応する配位異性体は全く観測されなかった。

実施例4の結果から、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(3B−1)に代えてビス[(2−ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン(3B−2)を用いても、対応する{ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン}カルボニルクロロヒドリドルテニウム(II)(1B−2)が単一異性体として収率良く得られることがわかった。

本発明の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更及び修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2015年9月30日付けで出願された日本特許出願(特願2015−193552)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用される全ての参照は全体として取り込まれる。

本発明の製造方法によって、水素添加反応用触媒として有用な本発明のルテニウム錯体(1A)が、原子効率・副生成物除去・純度の観点より、従来の製造方法と比較して大幅に効率良く製造可能になった。従って、本発明のルテニウム錯体(1A)を触媒として用いた、ケトン類、エステル類及びラクトン類の水素添加反応によるアルコール類の製造もまた効率的に実施可能となった。

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