テッベ錯体の製造方法

申请号 JP2016551949 申请日 2015-09-18 公开(公告)号 JPWO2016052279A1 公开(公告)日 2017-07-27
申请人 株式会社クラレ; 发明人 真二 波多江; 真二 波多江; 修一 須永; 修一 須永; 辻 智啓; 智啓 辻;
摘要 ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムとを、25℃における溶媒1gに対するテッベ錯体の 溶解度 が0.5mmol/g以下である溶媒の存在下で反応させることを特徴とする、高収率で、高純度及び高活性の、保存安定性に優れる、テッベ錯体の製造方法に関する。
权利要求

ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムとを、25℃における溶媒1gに対するテッベ錯体の溶解度が0.5mmol/g以下である溶媒の存在下で反応させることを特徴とする、テッベ錯体の製造方法。前記溶媒が炭素数3〜20の脂肪族炭化素である、請求項1に記載のテッベ錯体の製造方法。炭素数3〜20の脂肪族炭化水素が、炭素数3〜20の直鎖状脂肪族炭化水素及び炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のテッベ錯体の製造方法。ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対するトリメチルアルミニウムの仕込量が1〜20分子である、請求項1〜3のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。前記溶媒に対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度として0.1〜2.5mmol/gである、請求項1〜4のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムの反応温度が0〜125℃である、請求項1〜5のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムの反応時間が1〜200時間である、請求項1〜6のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。前記反応によって得られた反応液から析出する固体状態のテッベ錯体を濾過又はデカンテーションによって回収する工程を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。

说明书全文

本発明は、テッベ錯体の製造方法に関し、詳しくは、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムを反応させることによって、高純度なテッベ錯体を工業的有利に製造する方法に関する。

ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2)1分子に対して、トリメチルアルミニウム(AlMe3)2分子を、トルエン溶媒中で反応させてなる溶液はテッベ(Tebbe)試薬と称されており、この溶液中のテッベ錯体(Cp2TiCH2AlClMe2、μ−クロロ−μ−メチレン−ビス(η5−シクロペンタジエル)チタニウムジメチルアルミニウム)(以下、単に「テッベ錯体」と称することもある)が触媒成分として有用であることが知られている(例えば非特許文献1〜5参照)。また、テッベ試薬から再結晶の操作を施すことによってテッベ錯体が単離できることも知られている(特許文献1及び非特許文献1〜2参照)。

テッベ試薬又はテッベ錯体は、共役ジエン重合体の共役ジエン部位の不飽和二重結合の素化(特許文献1〜5参照)や、カルボニル化合物のメチレン化反応等に有用であることが知られている。

高純度なテッベ錯体は、トルエン250mL中でビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド62g(0.25mol)とトリメチルアルミニウム48mL(0.25mol)を、室温で60時間反応させることによって純度80〜90%かつ収率49%で取得できることが報告されている。この粗生成物をトリメチルアルミニウムのトルエン溶液、続いてペンタンから再結晶することによって、元素分析の一致する赤橙色結晶状テッベ錯体が取得できることが報告されているが、当該テッベ錯体の収率は定かではない(非特許文献1参照)。 同様に、トルエン溶媒中でビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(0.1mol)とトリメチルアルミニウム(0.2mol)を室温で60時間反応し、揮発分を留去した残渣をトルエンから再結晶してテッベ錯体14g(0.049mol)を取得できることが開示されている。さらに、これをトリメチルアルミニウムを含むトルエン及びペンタンから再結晶することによって、1H−NMR分析で不純物が観測されない程度の純度を有する赤橙色結晶状テッベ錯体が9.5g(0.033mol)取得できることが開示されている(特許文献1参照)。

テッベ試薬中のテッベ錯体の形成速度は、二塩化チタノセンに対するトリメチルアルミニウム量、温度、時間、及び溶媒の誘電率によって変化することが知られている(非特許文献3参照)。さらに、テッベ試薬からテッベ錯体の結晶を析出させるための溶媒の種類によってテッベ錯体の純度が低下することが知られている(非特許文献2参照)。 テッベ試薬に含まれるテッベ錯体は空気や湿気に敏感であるうえ、仮に不活性ガス雰囲気下で保存していても分解することから、調製後速やかに使用することが好ましいことが報告されている(非特許文献4〜5参照)。また、テッベ錯体の単結晶であっても分解しやすいことが報告されている(非特許文献2参照)。

テッベ錯体の貯蔵安定性を高める方法として、テッベ錯体を含む溶液に対して炭素数が2以上の含酸素有機化合物、含窒素化合物及びその塩からなる化合物のうち少なくとも1種を共存させる方法が開示されており、2ヶ月間冷蔵保存した上記テッベ錯体を含む溶液を、スチレン/ブタジエン系ブロック重合体の水素化触媒に用いても触媒活性が殆ど変化しないことが開示されている(特許文献1参照)。

特開平09−278677号公報

米国特許5244980号明細書

米国特許5334566号明細書

特開平11−71426号公報

特開2000−95814号公報

ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)、第100巻、11号、1978年、3611〜3613頁

オルガノメタリックス(Organometallics)、第33巻、2014年、429〜432頁

オルガノメタリックス(Organometallics)、第3巻、2号、1984年、223〜230頁

テトラヘドロン(Tetrahedron)、第63巻、2007年、4825〜4864頁

テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters)、第52巻、2011年、3020〜3022頁

非特許文献1及び特許文献1には、高純度なテッベ錯体の製造方法が記載されているが、収率が低いという問題があった。 非特許文献3には、溶媒の誘電率がテッベ錯体の形成に影響すること、また、非特許文献2には、テッベ試薬からのテッベ錯体の単離に用いる溶媒により目的物の純度が変化することが記載されている。しかしながら、いずれの文献も高収率で高純度のテッベ錯体を取得する方法を開示したものではない。 非特許文献2、4、及び5に記載されているように、テッベ試薬は保存安定性が低く、長期間保存してなるテッベ試薬を用いる場合には、触媒活性の低下を補うために触媒使用量を増大する必要がある。共役ジエン重合体の共役ジエン部位の不飽和二重結合の水素化反応において、触媒使用量を増大する場合には、製品に含まれるチタン成分及びアルミニウム成分の増加を引き起こし、製品の黄変が促進されるという問題がある。

特許文献1には、テッベ試薬及びテッベ錯体は保存安定性が低く、触媒活性を維持する方法として、炭素数が2以上の含酸素有機化合物、含窒素化合物及びその塩等を共存させることによって2ヶ月間冷蔵保存後も水素化触媒活性が維持できることが示されている。しかしながら、微量の含酸素有機化合物等を添加することによって、溶媒回収が煩雑になるという問題がある。さらに、含酸素有機化合物等の添加によるテッベ錯体そのものの保存安定性は明らかではない。

本発明は、高収率で、高純度及び高活性の、保存安定性に優れたテッベ錯体の製造方法を提供することを課題とする。

本発明者らは、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムとを、特定の溶媒の存在下で反応させることによって、高収率で、高純度のテッベ錯体を製造することができること、当該テッベ錯体の溶液(以下、単に「触媒液」と称することもある)は添加剤を加えることなく長期保存が可能であること、また当該テッベ錯体のチタン1原子当たりの共役ジエン重合体の共役ジエン部位の不飽和二重結合の水素化反応における触媒活性は、従来のテッベ試薬に比べて高いことを見出し、本発明を完成させるに至った。

すなわち本発明は、以下の[1]〜[8]を提供する。 [1]ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムとを、25℃における溶媒1gに対するテッベ錯体の溶解度が0.5mmol/g以下である溶媒の存在下で反応させることを特徴とする、テッベ錯体の製造方法。 [2]前記溶媒が炭素数3〜20の脂肪族炭化水素である、上記[1]に記載のテッベ錯体の製造方法。 [3]炭素数3〜20の脂肪族炭化水素が、炭素数3〜20の直鎖状脂肪族炭化水素及び炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素から選ばれる1種以上である、上記[1]又は[2]に記載のテッベ錯体の製造方法。 [4]ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対するトリメチルアルミニウムの仕込量が1〜20分子である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。 [5]前記溶媒に対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度として0.1〜2.5mmol/gである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。 [6]ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムの反応温度が0〜125℃である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。 [7]ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムの反応時間が1〜200時間である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。 [8]前記反応によって得られた反応液から析出する固体状態のテッベ錯体を濾過又はデカンテーションによって回収する工程を有する、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のテッベ錯体の製造方法。

本発明によれば、高収率で、高純度及び高活性の、保存安定性に優れたテッベ錯体の製造方法を提供することができる。すなわち、純度90%以上のテッベ錯体を収率70%以上で製造できるテッベ錯体の製造方法を提供することができる。当該発明によって製造できるテッベ錯体は、従来のテッベ試薬に比べてチタン1原子当たりの触媒活性が高いことから触媒使用量を低減することが可能である。さらに、炭素数が2以上の含酸素有機化合物若しくは含窒素化合物又はその塩からなる化合物を共存させることなく不活性ガス雰囲気下で120日以上も安定に保存することが可能であり、工業的価値が高い。

本発明は、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムとを、25℃における溶媒1gに対するテッベ錯体の溶解度が0.5mmol/g以下である溶媒の存在下で反応させることを特徴とする、テッベ錯体の製造方法である。

本発明の製造方法で用いられるビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2)とトリメチルアルミニウム(AlMe3)の原料は、テッベ錯体を分解するような水、アルコール等のヒドロキシ化合物、ケトン等が除去されていることが好ましい。また、前記原料は、不活性ガスとしての窒素、ヘリウム、又はアルゴンによって酸素が除去されていることが好ましい。本発明に係る全ての操作は、不活性ガスとしての窒素、ヘリウム、又はアルゴン雰囲気下で実施されることが好ましい。なお、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド及びトリメチルアルミニウムは市販品を用いることができ、通常は95%以上、好ましくは98%以上の純度であるものを工業的に入手できる。これらの純度を満たす場合、反応における副生成物を抑制できることに起因して、テッベ錯体の収率及び純度が高い。

ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムの反応に供する原料として、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドは均一溶液、懸濁液、固体状態であってもよく、トリメチルアルミニウムは溶媒で希釈されていてもよい。混合の手順に特に制限はないが、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの懸濁液にトリメチルアルミニウムを供給して反応させる方法、トリメチルアルミニウム希釈液に対してビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの懸濁液を供給して反応させる方法が操作上簡便であることから好ましい。

ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムとを反応させるために用いる溶媒は、テッベ錯体及びトリメチルアルミニウムと実質的に反応しない溶媒であり、25℃における当該溶媒1gに対するテッベ錯体の溶解度が0.5mmol/g以下である。当該溶解度は、高収率で、高純度及び高活性の、保存安定性に優れるテッベ錯体を得る観点から、好ましくは0.1〜0.4mmol/g、より好ましくは0.15〜0.3mmol/g、更に好ましくは0.2〜0.25mmol/gである。 なお、25℃における溶媒1gに対するテッベ錯体の溶解度は、実施例に記載のとおり、テッベ錯体に溶媒を加えて溶液を調製し、当該溶液を用いてチタン原子濃度を原子吸光分析により測定することで算出したものである。

本発明の製造方法に係る溶媒は、高収率で、高純度及び高活性の、保存安定性に優れるテッベ錯体を得る観点から、好ましくは炭素数3〜20の脂肪族炭化水素、より好ましくは炭素数5〜8の脂肪族炭化水素、更に好ましくは炭素数6又は7の脂肪族炭化水素、より更に好ましくは炭素数6の脂肪族炭化水素である。 炭素数3〜20の脂肪族炭化水素としては、直鎖状、分岐状、脂環式のいずれであってもよく、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素であってもよい。

炭素数3〜20の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、n−デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン等が挙げられる。

炭素数3〜20の分岐状の飽和脂肪族炭化水素としては、イソブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2−エチルヘキサン、3−エチルヘキサン、3−エチル−2−メチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、3−エチルヘプタン、4−エチルヘプタン、2,3−ジメチルヘプタン、2,4−ジメチルヘプタン、2,5−ジメチルヘプタン、2,6−ジメチルヘプタン、2,3,4−トリメチルヘキサン、2,3,5−トリメチルヘキサン、3−エチル−2−メチルヘキサン、3−エチル−3−メチルヘキサン、3−エチル−4−メチルヘキサン、3−エチル−5−メチルヘキサン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、5−メチルノナン、3−エチルオクタン、4−エチルオクタン、5−エチルオクタン、2,3−ジメチルオクタン、2,4−ジメチルオクタン、2,5−ジメチルオクタン、2,6−ジメチルオクタン、2,7−ジメチルオクタン、2,2−ジメチルオクタン、3,3−ジメチルオクタン、3,4−ジメチルオクタン、3,5−ジメチルオクタン、4,4−ジメチルオクタン、4,5−ジメチルオクタン、5,5−ジメチルオクタン、2,3,4−トリメチルヘプタン、2,3,5−トリメチルヘプタン、2,3,6−トリメチルヘプタン、2,2,3−トリメチルヘプタン、2,2,4−トリメチルヘプタン、2,2,5−トリメチルヘプタン、2,2,6−トリメチルヘプタン、3,3,4−トリメチルヘプタン、3,3,5−トリメチルヘプタン、3,3,6−トリメチルヘプタン、2,4,5−トリメチルヘプタン、2,4,6−トリメチルヘプタン、2,5,6−トリメチルヘプタン、3−エチル−3−メチルヘプタン、3−エチル−4−メチルヘプタン、3−エチル−5−メチルヘプタン、3−エチル−6−メチルヘプタン、4−エチル−4−メチルヘプタン、4−エチル−5−メチルヘプタン、3−プロピルヘプタン、3−イソプロピルヘプタン等が挙げられる。

炭素数3〜20の飽和脂環式炭化水素としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン又はこれらのもので炭素数1〜5のアルキル置換基を有するものが挙げられる。 また、上記の直鎖状及び分岐状の飽和脂肪族炭化水素並びに飽和脂環式炭化水素の炭素−炭素単結合の一部が不飽和二重結合になった炭素数3〜20の不飽和脂肪族炭化水素も使用することができる。 炭素数3〜20の不飽和脂肪族炭化水素としては、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、1−ノネン、2−ノネン、1−デセン、2−デセン、1−ウンデセン等の炭素数3〜20のアルケン;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン及びシクロオクテン等の炭素数3〜20のシクロアルケンが挙げられる。

また、上記の炭素数3〜20の脂肪族炭化水素は、これらの水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されたものも使用できる。さらに、これらの炭素数3〜20の脂肪族炭化水素は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素から選ばれる2種以上を併用する場合には、前記テッベ錯体の溶解度は、混合溶媒としての溶解度で表される。 常圧における沸点が10℃以上の溶媒を用いる場合には反応系を加圧する必要がないことから経済的であり、一方、常圧における沸点が125℃以下の溶媒を用いる場合には溶媒の除去の熱源をスチームとできることから経済的であり、このような溶媒として炭素数5〜8の脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。とりわけ、工業的に入手容易であり、かつ、溶媒の溶媒回収使用に際して変質しにくい炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素としてペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等を使用することが好ましい。

反応に際してビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの全てが溶媒に溶解している必要はなく、溶媒に対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度として0.1〜2.5mmol/gの範囲であることが好ましく、0.5〜1.5mmol/gの範囲であることがより好ましい。この範囲であれば、良好な攪拌状態を維持した状態でテッベ錯体を選択的に析出させることができるため、テッベ錯体の収率及び純度が高い。 ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対するトリメチルアルミニウムの仕込量は、1〜20分子の範囲であることが好ましく、2〜5分子の範囲であることがより好ましい。この範囲であれば、テッベ錯体の収率が高いうえ、トリメチルアルミニウムの使用量を低減することができる。 反応を好適に実施するためにはトリメチルアルミニウム(沸点125℃)と副生成物であるクロロジメチルアルミニウム(沸点126〜127℃)を液相に存在せしめるような温度と圧の条件が好ましい。 反応温度は0〜125℃が好ましく、10〜50℃がより好ましい。この範囲であれば、反応時間を短縮することができ、また、高収率でテッベ錯体を得ることができる。 反応は水分及び酸素を除去してなる窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行えばよく、その圧力に制限はないが、副生するメタンガスを除去する目的で圧力を常圧〜0.5MPaGにすることが好ましく、所望に応じて系内の不活性ガスを新鮮な不活性ガスに置換してもよい。 反応時間はテッベ錯体の収率が最大となるように制御すればよく、1〜200時間の範囲が好ましく、24〜100時間の範囲がより好ましい。この範囲であれば高収率にテッベ錯体を得ることができる。

本発明の製造方法は、ジャケット付き完全混合型反応器を用いて実施することができる。反応器の材質は、鉄、ステンレス鋼、ハステロイC、チタン等であってもよく、これら反応器の内壁がグラスライニングされたものも使用できる。反応器に起因する金属イオンの目的物への混入を回避する点で内壁がグラスライニングされたものを用いることが好ましい。 本発明の製造方法は回分式(半連続式を含む)及び流通連続式の2種の形態から選択できるうえ、場合によっては、これら完全混合型反応器を2〜3基直列に接続して流通連続式で実施することもできる。テッベ錯体の製造を1つの反応器で実施することが設備の簡素化に繋がることから、回分式(半連続式を含む)で実施することが好ましい。

得られた反応液には、固体状態のテッベ錯体が含まれており、反応液に濾過若しくはデカンテーション等の分離操作を施すことによって不純物を含む溶液とテッベ錯体を分離することができる。本発明の製造方法は、高収率で、高純度及び高活性の、保存安定性に優れるテッベ錯体を得る観点から、反応によって得られた反応液から析出する固体状態のテッベ錯体を濾過又はデカンテーションによって回収する工程を有することが好ましい。なおテッベ錯体を回収する工程において、濾過及びデカンテーションを適宜組み合わせてもよく、例えば反応液内に存在する固体状態のテッベ錯体をまず沈降させてデカンテーションによって不純物を含む上澄み液を除去し、引き続いて濾過を行ってもよい。 また、テッベ錯体の収率を高める目的で反応液を濃縮してもよい。濃縮はテッベ錯体の調製に用いるのと同様の反応器を用いて実施することもできれば、薄膜型濃縮器等も使用できる。高温で濃縮する場合にはテッベ錯体の熱分解に伴い収率が低下することから、反応温度以下の条件で濃縮することが好ましい。濃縮温度は10〜125℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。濃縮圧力は0.001〜0.100MPaG(ゲージ圧を意味する。以下同様)が好ましく、0.003〜0.020MPaGの範囲がより好ましい。この範囲であれば、テッベ錯体の分解を抑制できるうえ、濃縮時間を短縮でき、収率が高い。 テッベ錯体の収率を高める目的で反応液に晶析操作を施すことが好ましい。晶析温度は、−10〜20℃の範囲にすることが好ましく、0〜10℃にすることがより好ましい。晶析時間は、30分以上であることが好ましく、1〜2時間であることがより好ましい。 晶析操作を施してなる反応液に濾過又はデカンテーションを施すことによって不純物を含む溶液とテッベ錯体を分離することができる。 テッベ錯体の純度を高める目的で、分離したテッベ錯体を炭化水素溶媒で洗浄してもよい。洗浄に用いる炭化水素溶媒の誘電率は、1.0〜5.0の範囲であるものが好ましい。さらに、炭化水素溶媒の温度は、−10〜20℃の範囲であることが好ましく、0〜10℃の範囲であることがより好ましい。これら炭化水素溶媒を使用することによって、収率を損なうことなく、純度を高めることができる。 本発明の製造方法で得られるテッベ錯体は、テッベ錯体に対してチタン原子濃度として0.1〜2.5mmol/gの範囲、より好ましくは0.5〜1.5mmol/gとなるように、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒を加え、0〜125℃の範囲、より好ましくは10〜50℃の範囲でテッベ錯体を溶解させ、所望に応じて、晶析、洗浄操作を施すことによって純度を高めてもよい。

本発明の製造方法により得られるテッベ錯体は、不活性ガス存在下であれば固体状態又は溶液状態のいずれの状態で保存してもよい。当該溶液調製に用いる溶媒は、テッベ錯体と実質的に反応しない溶媒であれば特に制限はなく、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドとトリメチルアルミニウムの反応に用いる溶媒を使用することもできる。溶液調製に用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、エチル−n−プロピルエーテル、ジn−プロピルエーテル、n−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジn−オクチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル等の非環状モノエーテル;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジイソプロポキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、1,2−ジフェノキシプロパン、1,3−ジメトキシプロパン、1,3−ジエトキシプロパン、1,3−ジイソプロポキシプロパン、1,3−ジブトキシプロパン、1,3−ジフェノキシプロパン、シクロペンチルメチルエーテル等の非環状ジエーテル;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジブチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリブチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリブチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラブチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラブチレングリコールジエチルエーテル等の非環状ポリエーテル;等も使用できる。さらに、これらの溶媒は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。

テッベ錯体の溶液(触媒液)を調製する溶媒としては、保存中にテッベ錯体が析出せず、操作性が良好である観点から、25℃における溶媒1gに対するテッベ錯体の溶解度が0.5mmol/gを超える溶媒を用いることが好ましい。25℃における溶媒1gに対するテッベ錯体の溶解度が0.5mmol/gを超える溶媒としては、芳香族炭化水素、エーテル化合物を使用することが好ましい。このように調製されてなるテッベ錯体の溶液(触媒液)は、遮光されてなる容器に不活性ガス下30℃以下の範囲で保存されることが好ましい。

本発明の製造方法により得られるテッベ錯体は、特に芳香族ビニル/共役ジエンブロック重合体の共役ジエン部位の不飽和二重結合の水素化触媒として有用である。また、本発明の製造方法で得られるテッべ錯体を用いて前記のように触媒液を調製し、遮光されてなる容器に不活性ガス下30℃以下の範囲で保存すると、4ヶ月を経過してもテッベ錯体の水素化触媒活性は殆ど変化せず、保存安定性に極めて優れる。

以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例等により何ら限定されるものではない。

実施例及び比較例で使用したテッベ試薬及びテッベ錯体の分析方法について、以下に説明する。

<テッベ錯体の収率> テッベ試薬又はテッベ錯体を含む溶液(触媒液)中のチタン原子モル濃度は、これらの湿式分解物を偏向ゼーマン原子吸光分光光度計(株式会社日立製作所製 Z−2000型)により分析することで定量した。 触媒液質量と原子吸光分析から求めた触媒液中のチタン原子モル濃度より、取得した触媒液中のチタン原子総モル量を算出した。 チタン原子仕込みモル量に対する、取得触媒液中のチタン原子総モル量の割合を収率(%)と定義し、下記数式(1)によって算出した。なお、式中の各量は(モル)である。

<純度の分析方法> 触媒液中に存在するチタン化合物は、下記の構造を有するチタン化合物I−1〜I−6の混合物である。

触媒液0.3gを脱水した重ベンゼン−d60.3gで希釈した溶液を用いて1H−NMR測定を行い[核磁気共鳴装置:日本電子株式会社製、JNM−ECS400]、ケミカルシフトからチタン化合物I−1〜I−5の構造を帰属し、ベンゼンに対する相対ピーク面積値から触媒液1gに含まれるチタン化合物I−1〜I−5の構造を形成するチタン原子のモル量を算出した。

チタン化合物I−6は常磁性核種であるため1H−NMRのピーク面積値から正確に定量することは困難であった。従って、原子吸光分析から定量できる触媒液1gに含まれるチタン原子モル量から、1H−NMR分析から定量できるチタン化合物I−1〜I−5のモル量を差し引いてなるモル量を、チタン化合物I−6のモル量として算出した。 原子吸光分析及び1H−NMR分析から触媒液1gに含まれるチタン化合物I−1〜I−6のモル量が上述の如く明らかとなり、チタン1原子に対するアルミニウム原子比としてのAl/Ti比を算出した。

触媒液中のチタン原子総モル量に対する、本発明に係る金属錯体であるテッベ錯体としてのチタン化合物I−4のチタン原子のモル量の割合を純度(%)と定義し、下記数式(2)によって算出した。なお、式中の各量は(モル)である。

<テッベ錯体の溶解度の測定> テッベ錯体の溶媒に対する溶解度は、下記の調製例1で得られたテッベ錯体1gに各種溶媒4mlを加え、25℃で1時間攪拌後の溶液を0.2μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、当該濾過液を前記偏向ゼーマン原子吸光分光光度計を用いて原子吸光分析し、チタン原子濃度を測定することにより行った。

[調製例1](試験用テッベ錯体の調製) 温度計及び回転子を備え減圧乾燥後に内部をアルゴンで置換した容量200mLの三つ口フラスコに、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2、和光純薬工業株式会社製)25.00g(100.40mmol)及びヘキサン20.00gを加え、25±2℃で30分攪拌した。次いで、トリメチルアルミニウムのヘキサン溶液(東京化成株式会社製)150.0mL(トリメチルアルミニウムとして201.6mmol)を10分かけて加え、25±3℃で60時間反応させた。得られた反応液を、氷水で5℃まで冷却し1時間かけて結晶を十分に析出させた。不純物を含む反応液をアルゴン(Ar)雰囲気下で、デカンテーションにて取り除いた。得られた茶褐色結晶にヘキサン200mlを加え、氷水で冷却しながら30分撹拌し、残存した未反応トリメチルアルミニウム、副生するクロロジメチルアルミニウムを除去した。得られた茶褐色結晶にトルエンを加えた後、27℃まで加温して30分撹拌して結晶を完全に溶解した後、濾過によって不溶物を除去した。 得られた溶液の1H−NMR分析によってチタン化合物I−4の濃度を確認した後、10mmHg(1.33kPa)、30℃で濃縮し、チタン原子濃度で2.5〜2.6質量%に調整してテッベ錯体の触媒液a1(以下、単に「触媒液a1」と称する)を得た。 触媒液a1を0℃で100時間保存して茶褐色結晶b1を析出せしめ、上澄み液をデカンテーションで除き、10mmHg(1.33kPa)の減圧下で30℃に加温することによって溶媒成分の殆どを除去し、アルゴンによって系内圧力を常圧にせしめた。なお、取得した茶褐色結晶b1は9.94gであり、当該結晶b1を各種溶媒に対する溶解度の確認に用いた。

茶褐色結晶b1 0.30gをトルエン1.74gに溶解せしめ原子吸光分析した結果、この溶液はチタン原子を2.50質量%(濃度は0.522mmol/g)含有していた。茶褐色結晶b1 0.30g中に含まれるチタン原子は1.06mmolであり、茶褐色結晶b1の全質量が9.94gであったことから茶褐色結晶b1にはチタン原子が35.121mmol含まれていた。一方、触媒液a1の製造に用いたビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2、和光純薬工業株式会社製)は、25.00g(100.400mmol)であることから収率は34.98%であった。 茶褐色結晶b1 0.30gをトルエン1.74gに溶解せしめ、1時間以内に、この溶液0.3gの1H−NMR測定を行った。チタン化合物I−1、I−3、I−5、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.022mmol/gであった。チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークがδ8.49ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.11ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.500mmol/gであった。1H−NMR分析と原子吸光分析の結果から得られたチタン化合物I−6の濃度は0.001mmol/g未満であった。チタン化合物I−1〜I−6の濃度から、茶褐色結晶b1は、純度95.8%のテッベ錯体であり、Al/Ti比は0.958であった。

[試験例1] テッベ錯体の溶媒に対する溶解度は、調製例1の方法で得られたテッベ錯体1gに各種溶媒4mlを加え、25℃で1時間攪拌後の溶液を0.2μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、当該濾過液を前記偏向ゼーマン原子吸光分光光度計を用いて原子吸光分析し、チタン原子濃度を測定することにより行った。 各種溶媒に対する溶解度を確認するに際して全ての操作は25℃に設定された室内で実施した。グローブボックスを用いて、アルゴン雰囲気下でナスフラスコ20mlに、調製例1の方法で得られたテッベ錯体の茶褐色結晶b1 1.0gを計り取り、回転子、脱水ヘキサン4mlを加え、25℃で1時間攪拌した。その後、静置した後、0.2μmのメンブランフィルターを用いて濾過してなるテッベ錯体を含む濾過液1.0gを原子吸光分析し、テッベ錯体の溶解度を測定した。濾過液はチタン原子を1.05質量%(濃度は0.22mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.22mmol/gであった。 また、1H−NMR測定の測定により、チタン化合物I−1〜I−6に帰属できるピークの観測を行った。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークはδ1.13ppm(3H,s)に、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークは5.97ppm(10H,s)に観測できた。また、チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークはδ8.49ppm(2H,s)に、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークはδ5.85ppm(10H,s)に、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークはδ−0.11ppm(6H,s)に観測することができた。よって、上記チタン原子濃度は、チタン化合物I−2とチタン化合物I−4の構造を有する混合物として換算したものである。

[試験例2] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにヘプタン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を1.01質量%(濃度は0.21mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.21mmol/gであった。

[試験例3] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにドデカン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を0.57質量%(濃度は0.12mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.12mmol/gであった。

[試験例4] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりに2−メチルペンタン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を1.01質量%(濃度は0.21mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.21mmol/gであった。

[試験例5] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりに2−ヘキセン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を1.29質量%(濃度は0.27mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.27mmol/gであった。

[試験例6] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにシクロヘキサン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を2.15質量%(濃度は0.45mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.45mmol/gであった。

[比較試験例1] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにベンゼン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を5.65質量%(濃度は1.18mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は1.18mmol/gであった。

[比較試験例2] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにトルエン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を4.45質量%(濃度は0.93mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.93mmol/gであった。

[比較試験例3] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにp−キシレン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を4.50質量%(濃度は0.94mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.94mmol/gであった。

[比較試験例4] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにジイソプロピルエーテル4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を2.87質量%(濃度は0.60mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は0.60mmol/gであった。

[比較試験例5] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにシクロペンチルメチルエーテル4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を6.17質量%(濃度は1.29mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は1.29mmol/gであった。

[比較試験例6] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりに1,4−ジオキサン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を6.84質量%(濃度は1.43mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は1.43mmol/gであった。

[比較試験例7] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりにテトラヒドロフラン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を8.19質量%(濃度は1.71mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は1.71mmol/gであった。

[比較試験例8] 試験例1において、ヘキサン4mlの代わりに塩化メチレン4mlを用いる以外は同様の操作を施した。濾過液はチタン原子を7.13質量%(濃度は1.49mmol/g)含有し、テッベ錯体の溶解度は1.49mmol/gであった。

試験例1〜6によれば、脂肪族炭化水素であって、直鎖状、分岐状、脂環式、又は炭素−炭素単結合の一部が不飽和二重結合になったものにおいて25℃における溶媒1gに対するチタン原子濃度、すなわちテッベ錯体の溶解度が0.5mmol/g以下であり、これらの溶媒が本発明のテッベ錯体の製造方法に用いることができることは明らかである。 比較試験例1〜8によれば、芳香族炭化水素、エーテル化合物において25℃における当該溶媒1gに対するチタン原子濃度、すなわちテッベ錯体の溶解度が0.5mmol/gを超えており、これらの溶媒がテッベ錯体を触媒液として保存するのに好適であることが明らかである。

[実施例1] 温度計及び回転子を備え減圧乾燥後に内部をアルゴンで置換した容量200mLの三つ口フラスコに、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2、和光純薬工業株式会社製)25.00g(100.40mmol)及びヘキサン20.00gを加え、25±2℃で30分攪拌した。次いで、トリメチルアルミニウムのヘキサン溶液(東京化成株式会社製)150.0mL[トリメチルアルミニウムとして201.6mmolであり、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対して2分子である]を10分かけて加え、ヘキサンに対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度で0.951mmol/gとなる条件下で、25±3℃で60時間反応させた。得られた反応液を、氷水で5℃まで冷却し1時間かけて結晶を十分に析出させた。不純物を含む反応液をAr雰囲気下のもと、デカンテーションにて取り除いた。得られた茶褐色結晶にヘキサン200mlを加え、氷水で冷却しながら30分撹拌し、残存した未反応トリメチルアルミニウム、副生するクロロジメチルアルミニウムを除去した。得られた茶褐色結晶にトルエンを加えた後、27℃まで加温して30分撹拌して結晶を完全に溶解した後、濾過によって不溶物を除去した。 得られた溶液の1H−NMR分析によってチタン化合物I−4の濃度を確認した後、10mmHg(1.33kPa)、30℃で濃縮し、チタン原子濃度で2.5〜2.6質量%に調整して触媒液1(以下、単に「触媒液1」と称する)を得た。なお、反応開始から濃度調整終了までの総所要時間は約64時間であった。 原子吸光分析の結果、触媒液1はチタン原子を2.57質量%(濃度は0.537mmol/g)含有しており、触媒液1の全質量が142.17gであったことから、収率は76.0%であった。 濃度調整の終了時から1時間以内に触媒液1の1H−NMR分析を行った結果、チタン化合物I−1、I−3、I−5、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.027mmol/gであった。チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークがδ8.49ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.11ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.503mmol/gであった。1H−NMR分析と原子吸光分析の結果から得られたチタン化合物I−6の濃度は0.007mmol/gであった。チタン化合物I−1〜I−6の濃度から、純度は93.7%であり、Al/Ti比は0.950であった。

[実施例2] 温度計及び回転子を備え減圧乾燥後に内部をアルゴンで置換した容量200mLの三つ口フラスコに、トリメチルアルミニウムのヘキサン溶液(東京化成株式会社製)150.0mL[トリメチルアルミニウムとして201.6mmolであり、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対して2分子である]を加えた。続いて、アルゴン気流下で粉末ロートを用いて固体状のビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2、和光純薬工業株式会社製)25.00g(100.40mmol)を加えた。ヘキサンに対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度で1.174mmol/gとなる条件下で、25±3℃で60時間反応させた。得られた反応液を、氷水で5℃まで冷却し1時間かけて結晶を十分に析出させた。不純物を含む反応液をAr雰囲気下のもと、デカンテーションにて取り除いた。得られた茶褐色結晶にヘキサン200mlを加え、氷水で冷却しながら30分撹拌し、残存した未反応トリメチルアルミニウム、副生するクロロジメチルアルミニウムを除去した。得られた茶褐色結晶にトルエンを加えた後、27℃まで加温して30分撹拌して結晶を完全に溶解した後、濾過によって不溶物を除去した。 得られた溶液の1H−NMR分析によってチタン化合物I−4の濃度を確認した後、10mmHg(1.33kPa)、30℃で濃縮し、チタン原子濃度で2.5〜2.6質量%に調整して触媒液2(以下、単に「触媒液2」と称する)を得た。なお、反応開始から濃度調整終了までの総所要時間は約64時間であった。 原子吸光分析の結果、触媒液2はチタン原子を2.57質量%(濃度は0.537mmol/g)含有しており、触媒液2の全質量が150.67gであったことから、収率は80.6%であった。 濃度調整の終了時から1時間以内に触媒液2の1H−NMR分析を行った結果、チタン化合物I−1、I−3、I−5、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.032mmol/gであった。チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークがδ8.49ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.11ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.493mmol/gであった。1H−NMR分析と原子吸光分析の結果から得られたチタン化合物I−6の濃度は0.012mmol/gであった。チタン化合物I−1〜I−6の濃度から、純度は91.8%であり、Al/Ti比は0.940であった。

[実施例3] 温度計及び回転子を備え減圧乾燥後に内部をアルゴンで置換した容量200mLの三つ口フラスコに、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2、和光純薬工業株式会社製)25.00g(100.40mmol)及びヘキサン50.00gを加え、25±2℃で30分攪拌した。次いで、トリメチルアルミニウムのヘキサン溶液(東京化成株式会社製)150.0mL[トリメチルアルミニウムとして201.6mmolであり、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対して2分子である]を10分かけて加え、ヘキサンに対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度で0.741mmol/gとなる条件下で、25±3℃で60時間反応させた。得られた反応液を、氷水で5℃まで冷却し1時間かけて結晶を十分に析出させた。不純物を含む反応液をAr雰囲気下のもと、デカンテーションにて取り除いた。得られた茶褐色結晶にヘキサン200mlを加え、氷水で冷却しながら30分撹拌し、残存した未反応トリメチルアルミニウム、副生するクロロジメチルアルミニウムを除去した。得られた茶褐色結晶にトルエンを加えた後、27℃まで加温して30分撹拌して結晶を完全に溶解した後、濾過によって不溶物を除去した。 得られた溶液の1H−NMR分析によってチタン化合物I−4の濃度を確認した後、10mmHg(1.33kPa)、30℃で濃縮し、チタン原子濃度で2.5〜2.6質量%に調整して触媒液3(以下、単に「触媒液3」と称する)を得た。なお、反応開始から濃度調整終了までの総所要時間は約64時間であった。 原子吸光分析の結果、触媒液3はチタン原子を2.49質量%(濃度は0.520mmol/g)含有しており、触媒液3の全質量が137.69gであったことから、収率は71.3%であった。 濃度調整の終了時から1時間以内に触媒液3の1H−NMR分析を行った結果、チタン化合物I−1、I−3、I−5、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.031mmol/gであった。チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークがδ8.49ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.11ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.473mmol/gであった。1H−NMR分析と原子吸光分析の結果から得られたチタン化合物I−6の濃度は0.016mmol/gであった。チタン化合物I−1〜I−6の濃度から、純度は90.9%であり、Al/Ti比は0.940であった。

[比較例1] 温度計及び回転子を備え減圧乾燥後に内部をアルゴンで置換した容量500mLの三つ口フラスコに、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2、和光純薬工業株式会社製)5.00g(20.08mmol)及びヘキサン250.00gを加え、25±2℃で30分攪拌した。次いで、トリメチルアルミニウムのヘキサン溶液(東京化成株式会社製)29.5mL[トリメチルアルミニウムとして39.7mmolであり、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対して2分子である]を10分かけて加え、ヘキサンに対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度で0.075mmol/gとなる条件下で、25±3℃で60時間反応させた。得られた反応液を、10mmHg(1.33kPa)、30℃、1時間で濃縮し、未反応トリメチルアルミニウム、副生するクロロジメチルアルミニウム及びヘキサンを含有する混合物を約400mL留去した後、アルゴンで常圧に戻して残留液にトルエン約10mLを加え、30℃に加温し、30分撹拌して溶解することによって触媒液C1(以下、単に「触媒液C1」と称する)を得た。なお、反応開始から濃度調整終了までの総所要時間は約64時間であった。 濃度調製終了時から1時間以内に触媒液C1の1H−NMR分析を行った結果、チタン化合物I−1、I−3、I−4、I−5、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)観測された。 ヘキサンに対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量はチタン原子濃度で0.075mmol/gであり、チタン原子濃度が0.1mmol/g未満となる範囲ではチタン化合物I−4を含む触媒液は得られなかった。

[比較例2] 温度計及び回転子を備え減圧乾燥後に内部をアルゴンで置換した容量200mLの三つ口フラスコに、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2、和光純薬工業株式会社製)25.00g(100.40mmol)及びトルエン30.00gを加え、25±2℃で30分攪拌した。次いで、トリメチルアルミニウムのトルエン溶液(東京化成株式会社製)112.0mL[トリメチルアルミニウムとして201.6mmolであり、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対して2分子である]を10分かけて加え、トルエンに対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度で0.910mmol/gとなる条件下で、25±3℃で60時間反応させた。得られた反応液を10mmHg(1.33kPa)、30℃、1時間で濃縮し、未反応トリメチルアルミニウム、副生するクロロジメチルアルミニウム及びトルエンを含有する混合物を約134mL留去した後、アルゴンで常圧に戻して残留液にトルエン約50mLを加え、30℃に加温して濃縮残分を30分かけて溶解した。溶解液を0℃に冷却し、1時間撹拌したところ、茶褐色結晶が析出した。上澄み液をデカンテーションで除き、得られた茶褐色結晶8.50gにトルエン46.00gを加えて30℃に加温し、30分撹拌して溶解することによって触媒液C2(以下、単に「触媒液C2」と称する)を得た。なお、反応開始から濃度調整終了までの総所要時間は約64時間であった。 原子吸光分析の結果、触媒液C2はチタン原子を2.57質量%(濃度は0.537mmol/g)含有しており、触媒液C2の全質量が54.50gであったことから、収率は29.1%であった。 濃度調製終了時から1時間以内に触媒液C2の1H−NMR分析を行った結果、チタン化合物I−1、I−3、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.017mmol/gであった。チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークがδ8.49ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.11ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.496mmol/gであった。チタン化合物I−5のメチレン基に帰属できるピークがδ7.88ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.03ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.019mmol/gであった。1H−NMR分析と原子吸光分析の結果から得られたチタン化合物I−6の濃度は0.005mmol/gであった。チタン化合物I−1〜I−6の濃度から、純度は92.4%であり、Al/Ti比は0.968であった。

[比較例3] 温度計及び回転子を備え減圧乾燥後に内部をアルゴンで置換した容量100mLの三つ口フラスコに、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド(Cp2TiCl2、和光純薬工業株式会社製)7.90g(31.7mmol)及びトルエン21.50gを加え、25±2℃で30分攪拌した。次いで、トリメチルアルミニウムのトルエン溶液(東京化成株式会社製)35.0mL[トリメチルアルミニウムとして63.0mmolであり、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド1分子に対して2分子である]を10分かけて加え、トルエンに対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度で0.681mmol/gとなる条件下で、25±3℃で60時間反応させて触媒液C3(以下、単に「触媒液C3」と称する)を得た。反応開始から終了までの総所要時間は約60時間であった。 原子吸光分析の結果、触媒液C3はチタン原子を2.60質量%(濃度は0.543mmol/g)含有しており、触媒液C3の全質量が57.2gであったことから、収率は98.0%であった。 反応終了時から1時間以内に触媒液C3の1H−NMR分析を行った結果、チタン化合物I−1、I−5、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.064mmol/gであった。チタン化合物I−3のメチル基に帰属できるピークがδ3.26ppm(6H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.012mmol/gであった。チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークがδ8.49ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.11ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.304mmol/gであった。1H−NMR分析と原子吸光分析の結果から得られたチタン化合物I−6の濃度は0.163mmol/gであった。チタン化合物I−1〜I−6の濃度から、純度は56.0%であった。また、薬液仕込み量からAl/Ti比は2.00であった。

表2に実施例1〜3及び比較例1〜3の結果を示す。

実施例1〜3によれば、ヘキサンに対するビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリドの仕込量がチタン原子濃度として0.741〜1.174mmol/gの範囲において、純度90%以上のテッベ錯体を収率70%以上で取得でき、広いチタン原子濃度範囲において本発明が好適に実施できることが明らかである。比較例1によれば、チタン原子濃度が0.1mmol/g未満である0.075mmol/gの場合にはもはや目的物が取得できないことが明らかである。 一方、一般的な高純度テッベ錯体の製造方法である比較例2に比べて、本発明の実施例1〜3は収率及び純度のバランスに優れている。また、テッベ試薬の従来の製造方法である比較例3に比べて、実施例1〜3は純度が高い。

[実施例4] 実施例1の反応時間60時間の代わりに反応時間を44時間とする以外は実施例1と同様の操作を施し、触媒液4(以下、単に「触媒液4」と称する)を得た。反応開始から濃度調整終了までの総所要時間は約48時間であった。 原子吸光分析の結果、触媒液4はチタン原子を2.57質量%(濃度は0.537mmol/g)含有しており、触媒液4の全質量が137.49gであったことから、収率は73.5%であった。 濃度調整の終了時から1時間以内に触媒液4の1H−NMR分析を行った結果、チタン化合物I−1、I−3、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.027mmol/gであった。チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークがδ8.49ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.11ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.500mmol/gであった。チタン化合物I−5のメチレン基に帰属できるピークがδ7.88ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、ジメチルアルミニウム基に帰属できるピークがδ−0.03ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.005mmol/gであった。1H−NMR分析と原子吸光分析の結果から得られたチタン化合物I−6の濃度は0.005mmol/gであった。チタン化合物I−1〜I−6の濃度から、純度は93.1%であり、Al/Ti比は0.950であった。 濃度調整が終了した時点を保存時間0時間として、液中のチタン化合物I−1〜I−6の成分を実施例1と同じ方法で分析し、遮光下、Ar雰囲気下、8±2℃で保存した場合の各成分の経時変化を確認した。結果を表3に示す。

[比較例4] 比較例2のトルエン使用量30gの代わりに8gとし、反応時間60時間の代わりに反応時間を46時間とする以外は比較例2と同様の操作を施し、触媒液C4(以下、単に「触媒液C4」と称する)を得た。反応開始から濃度調整終了までの総所要時間は約48時間であった。 原子吸光分析の結果、触媒液C4はチタン原子を2.94質量%(濃度は0.615mmol/g)含有しており、収率は98.0%であった。 濃度調整の終了時から1時間以内に触媒液C4の1H−NMR分析を行った結果、チタン化合物I−3、I−5、及びI−6に帰属できるピークは観測できなかった。チタン化合物I−1のシクロペンタジエニル環に帰属できるピークが6.04ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.005mmol/gであった。チタン化合物I−2のメチル基に帰属できるピークがδ1.13ppm(3H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークが5.97ppm(10H,s)に観測でき、濃度は0.035mmol/gであった。チタン化合物I−4のメチレン基に帰属できるピークがδ8.49ppm(2H,s)、シクロペンタジエニル環に帰属できるピークがδ5.85ppm(10H,s)、メチルアルミニウムクロライド基に帰属できるピークがδ−0.11ppm(6H,s)に観測でき、濃度は0.455mmol/gであった。1H−NMR分析と原子吸光分析の結果から得られたチタン化合物I−6の濃度は0.120mmol/gであった。チタン化合物I−1〜I−6の濃度から、純度は74.0%であった。また、薬液仕込み量からAl/Ti比は2.00であった。 濃度調整が終了した時点を保存時間0時間として、液中のチタン化合物I−1〜I−6の成分を実施例1と同じ方法で分析し、遮光下、Ar雰囲気下、8±2℃で保存した場合の各成分の経時変化を確認した。結果を表3に示す。

実施例4の触媒液4、及び比較例4の触媒液C4に含まれる目的物であるチタン化合物I−4の濃度は、保存時間0日間において、ともに0.455〜0.500mmol/gの範囲であって同程度である。しかしながら、実施例4は比較例4に比べ、遮光下、アルゴン雰囲気下、8±2℃で保存した際のテッベ錯体溶液中の組成変化が殆ど無く、保存安定性に優れることがわかる。

<触媒活性の評価> 実施例1及び比較例3で得られたテッベ錯体の触媒液を用いて、下記に示すスチレン/ブタジエン系重合体の水素化反応により、テッベ錯体の触媒活性を評価し、保存安定性を確認した。 [製造例1] 温度計、電気ヒーター、電磁誘導攪拌装置及びサンプリング口を備えた容量10Lのハステロイ(登録商標)製オートクレーブの内部を窒素ガスで置換した後、シクロヘキサン5291.0g及びsec−ブチルリチウムの1.33mmol/gシクロヘキサン溶液2.529g(sec−ブチルリチウムとして3.364mmol)を加え500rpmで攪拌しながら30分かけて50℃に昇温した。 次いで、スチレン99.1g(951.33mmol)をオートクレーブ内に一括添加し、窒素ガスで0.3MPaG(ゲージ圧、以下同様)に昇圧して液温53±3℃で1時間反応させた。続いてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの0.29mmol/gシクロヘキサン溶液5.248g(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとして1.535mmol)をオートクレーブ内に加え、さらにブタジエン389.4g(7198.1mmol)を10分かけてオートクレーブ内に添加し、窒素ガスで0.4MPaGに昇圧して液温53±3℃で3時間反応させた。続いてスチレン99.1g(951.33mmol)を一括添加し、窒素ガスで0.5MPaGに昇圧し、液温53±3℃で1.5時間反応させることにより、リビング重合体を含有する反応混合液を得た。 当該反応混合液への窒素ガス圧力を0.1MPaGに低下させてから水素ガスで1.0MPaGに昇圧して液温53±3℃で1時間処理することで、重合体Aを含む溶液(以下、単に「重合体溶液A」と称する)5886.3gを得た。 重合体溶液A中の重合体A濃度は重合体Aが587.5gであることから9.98質量%、リチウム原子濃度はsec−ブチルリチウムの使用量より0.5256mmol/kg、重合体A中のブタジエン単位含有量はブタジエン及びスチレンの使用量から66.3質量%であった。

重合体溶液A 5gにアセトン5gを加え、さらに適宜メタノールを加えて重合体Aを析出させて回収し、60℃で1時間乾燥することで重合体Aを取得した。重合体Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、単に「GPC」と称する)測定により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnを、1H−NMR分析により共役ジエンの結合様式(1,2−結合単位、1,4−結合単位)の含有割合を求めた。各測定条件は以下のとおりである。

[GPC分析] 装置:東ソー株式会社製、HLC−8320GPC EcoSECシステム 試料:重合体5mgをテトラヒドロフラン10mLに溶解させた溶液 試料注入量:1μL カラム:東ソー株式会社製TSKgel SuperHZ4000(内径4.6mm×長さ150mm) カラム温度:40℃ 溶離液:テトラヒドロフラン 溶離液流量:1.0mL/分 検出器:UV検出器(検出波長254nm) 検量線:標準ポリスチレンにより作成

[1H−NMR分析] 装置:ブルカー・バイオスピン株式会社製、AVANCEIII 600USPlus 試料:重合体50mgを重クロロホルム1.0gに溶解させた溶液 基準物質:テトラメチルシラン 測定温度:32℃(305K) 積算回数:256回

重合体に含まれる共役ジエンの総モル量に対する、分岐状態の結合様式の割合[ビニル化度(%)]を下記数式(3)によって算出した。

GPC分析より、重合体Aの重量平均分子量Mwは303100、分子量分布Mw/Mnは1.06であった。1H−NMR分析より、ブタジエンの1,2−結合単位2Hに帰属できるピークδ4.8〜5.1ppm、ブタジエンの1,4−結合単位2Hに帰属できるピークδ5.2〜5.5ppmの面積値から、重合体Aのビニル化度は38.5%であった。

[評価例1] 温度計、電気ヒーター、電磁誘導攪拌装置、水素供給口、重合体溶液Aの供給口、ガラス製10mL耐圧瓶及びサンプリング口を備えた容量3LのSUS316製オートクレーブの内部を水素ガスで置換した。重合体溶液A750g(重合体Aを73.866g含有)を水素ガスを用いて圧送した後、攪拌500rpm、約20分で75℃に昇温した。ここに、数平均分子量1700〜3200ポリメチルヒドロシロキサンをシクロヘキサン(シグマ−アルドリッチ社製)でケイ素原子含有量として0.0742mmol/gに希釈した溶液15.684g(ケイ素原子として1.164mmol)を加えて水素ガスで0.8MPaGに昇圧し、続いてガラス製10mL耐圧瓶から8±2℃で5日間保存してなる触媒液1をシクロヘキサンでチタン原子として2.89×10−4mmol/gに希釈した溶液15.950g(チタン原子として4.61×10−3mmol)を水素ガスで圧送(1.0MPaG)して供給し、オートクレーブ内圧が1.0MPaGを維持するように水素を供給しながら、液温を75±2℃の範囲に制御して水素化反応を行った。

水素化反応の進行状況を次のようにして分析した。すなわち触媒液1を反応系内に供給終了した時点を反応開始0時間とし、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、7時間、9時間経過した各々で、反応液5gをサンプリングしてアセトン5g及び適宜メタノールを加えて水素化反応中の重合体Aを析出させて回収し、うち50mgを1gの重クロロホルムに溶解させた溶液の1H−NMRスペクトルを重合体Aの測定と同様にして測定し、ブタジエンに基づく1,2−結合単位に帰属できるδ4.8〜5.1ppm、同じく1,4−結合単位に帰属できるδ5.2〜5.5ppmのピーク積分値から、水素化されていない炭素−炭素二重結合量を定量した。重合体A 1kgあたりの、反応前の共役ジエン総モル量に対する、水素化反応で消費された共役ジエン総モル量の割合を水素化率(%)と定義し、下記数式(4)によって算出した。水素化率の経時変化を表4に示す。なお、スチレンの芳香環に結合した水素原子に帰属できるδ6.2〜7.5ppmのピーク積分値の変化も同時に観察したが、変化は見られなかった。

[評価例2] 評価例1において8±2℃で5日間保存してなる触媒液1の代わりに8±2℃で120日間保存してなる触媒液1を用いる以外、評価例1と同様の操作を行った。水素化率を表4に示す。

[比較評価例1] 評価例1において、8±2℃で5日間保存してなる触媒液1の代わりに8±2℃で2日間保存してなる触媒液C3をシクロヘキサンでチタン原子として2.89×10−4mmol/gに希釈した溶液を15.95g(チタン原子として4.62×10−3mmol)使用した以外は評価例1と同様の操作を行った。水素化率を表4に示す。

評価例1〜2から、本発明の製造方法で得られるテッベ錯体は、保存安定性に優れており、触媒液1の水素化触媒活性は保存120日後も変化しなかったことがわかる。また、評価例1〜2と比較評価例1から、従来のテッベ試薬(C3)を用いた場合と比べると、チタン1原子当たりの水素化触媒活性は触媒液1が高いことがわかる。

本発明により、高収率で、高純度のテッベ錯体を工業的有利に製造できる。さらに、本発明の製造方法で得られるテッベ錯体の溶液は安定剤等の添加剤を加えることなく長期保存が可能であるうえ、従来のテッベ試薬に比べてチタン1原子当たりの触媒活性が高いことから触媒使用量を低減可能であり、工業的価値が高い。すなわち、本発明によって純度90%以上のテッベ錯体を収率70%以上で製造できる。当該発明によって製造できるテッベ錯体は従来のテッベ試薬に比べてチタン1原子当たりの触媒活性が高いことから触媒使用量を低減することが可能である。さらに、炭素数が2以上の含酸素有機化合物若しくは含窒素化合物又はその塩からなる化合物を共存させることなく不活性ガス雰囲気下で120日以上も安定に保存できる。

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