新規なルテニウム錯体ならびにメタノールおよびジオールの製造方法

申请号 JP2015537109 申请日 2013-03-22 公开(公告)号 JP6190886B2 公开(公告)日 2017-08-30
申请人 上海 インスティテュート オブ オーガニック ケミストリー、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ; SHANGHAI INSTITUTE OF ORGANIC CHEMISTRY, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES; 发明人 ディン,クイリン; ハン,ツァオビン;
摘要
权利要求

メタノールおよびジオールを製造する方法であって、素ガスの雰囲気下、有機溶媒および塩基の存在下でルテニウム錯体(V)を作用させて、環状カーボネートまたはポリカーボネートに以下のような反応を行い、メタノールおよびジオールを得ることを特徴とする、前記方法。 (構造式IおよびIIIにおいて、 n = 0〜20、m = 2〜1000000であり、 R1、R2、R3、R4、R5、R6は、独立に水素、C1〜C20のアルキル基、C4〜C24のアリール基、C5〜C25のアリールアルキル基、-(C1〜C8)アルキレン-OR7、-(C1〜C8)アルキレン-SR8または-(C1〜C8)アルキレン-NR9R10から選ばれ、 R5、R6は、さらに、独立に炭素原子4〜10個のシクロアルキル基から選ばれてもよく、 ここで、R7、R8、R9、R10は、独立にC1〜C10のアルキル基、C4〜C24のアリール基またはC5〜C25のアリールアルキル基から選ばれ、R9、R10は、さらに、窒素原子と連結していっしょに環状アミン基を形成してもよく、 n = 0の場合、R1とR3が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよく、 n ≧ 1の場合、R1とR5、R3とR6が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよく、 構造式IIおよびIVにおいて、 R1’、R2’、R3’、R4’、R5’、R6’は、独立に水素、C1〜C20のアルキル基、C4〜C24のアリール基、C5〜C25のアリールアルキル基、-(C1〜C8)アルキレン-OR7’、-(C1〜C8)アルキレン-SR8’または-(C1〜C8)アルキレン-NR9’R10’から選ばれ、 R5’、R6’は、さらに、独立に炭素原子4〜10個のシクロアルキル基から選ばれてもよく、 ここで、R7’、R8’、R9’、R10’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C4〜C24のアリール基またはC5〜C25のアリールアルキル基から選ばれ、R9’、R10’は、さらに、窒素原子と連結していっしょに環状アミン基を形成してもよく、 n = 0の場合、R1’とR3’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよく、 n ≧ 1の場合、R1’とR5’、R3’とR6’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよく、 ルテニウム錯体(V)は、一般構造式Vを有し、 Ru(L)XYY’ (V) 式Vにおいて、 Xは、一酸化炭素、トリフェニルホスフィン、ピリジン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシドであり、 Y、Y'は、独立にヒドリドイオン、水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンおよびBH4-、BH3CN-、BH(Et)3-、BH(sec-Bu)3-、AlH4-またはAlH2(OCH2CH2CH3)2-から選ばれ、 ここで、Lは、一般構造式VIで表される三座二リンアミン配位子であり、 一般式VIにおいて、n = 0〜3であり、 R0は、Hであり、 R1’’、R2’’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C4〜C24のアリール基またはアダマンチル基から選ばれ、ここで、前記アリール基は、無置換または置換のアリール基を含み、 R3’’、R4’’、R5’’、R6’’、R7’’、R8’’ は、独立に水素、C1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基またはC4〜C36のアリール基から選ばれ、 n = 0の場合、R3’’とR7’’およびR4’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよく、 n ≧ 1の場合、R3’’とR5’’、R4’’とR6’’、R5’’とR7’’およびR6’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。)ルテニウム錯体Vが、構造式1aで表されることを特徴とする請求項1に記載の方法。環状カーボネートまたはポリカーボネートとルテニウム錯体のモル比が、100〜1000000:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。塩基が、アルコールのアルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属水酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。塩基とルテニウム錯体のモル比が、1〜100:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。反応の温度が60〜180℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。反応の反応時間が0.1〜1000時間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。反応における水素ガスの圧が1〜100大気圧であることを特徴とする請求項1に記載の方法。請求項1に記載の方法に用いるための以下の構造式1c、1dまたは1eで表されるルテニウム錯体触媒。 (tBuはt−ブチルを示し、CyはC3〜C10のシクロアルキル基を示し、Adはアダマンチルを示す。)重水素化メタノールおよび重水素化ジオールを製造する方法であって、水素ガスH2の代わりに重水素ガスD2を使用し、請求項1〜8のいずれかに記載の方法を実施し、重水素化メタノールおよび重水素化ジオールを得ることを特徴とする前記方法。アルコールを製造する方法であって、有機溶媒において、式Vで表されるルテニウム錯体(V)および塩基の存在下で、カーボネートを水素化還元し、アルコールを得ることを特徴とする前記方法。 Ru(L)XYY’ (V) (式Vにおいて、 Xは、一酸化炭素、トリフェニルホスフィン、ピリジン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシドであり、 Y、Y'は、独立にヒドリドイオン、水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンおよびBH4-、BH3CN-、BH(Et)3-、BH(sec-Bu)3-、AlH4-、AlH2(OCH2CH2CH3)2-から選ばれ、 ここで、Lは、一般構造式VIで表される三座二リンアミン配位子であり、 一般式VIにおいて、n = 0〜3であり、 R0は、Hであり、 R1’’、R2’’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C4〜C24のアリール基、アダマンチル基から選ばれ、ここで、前記アリール基は、無置換または置換のアリール基であり、 R3’’、R4’’、R5’’、R6’’、R7’’、R8’’ は、独立に水素、C1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C4〜C36のアリール基から選ばれ、 n = 0の場合、R3’’とR7’’およびR4’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよく、 n ≧ 1の場合、R3’’とR5’’、R4’’とR6’’、R5’’とR7’’およびR6’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。)

说明书全文

本発明は、有機合成の分野に関する。より具体的に、本発明は、ルテニウム錯体を触媒として使用してメタノールおよびジオールを製造する方法に関する。

メタノールは、最も簡単で、最も安全で、最も保存・輸送しやすい液体の酸素含有炭化素化合物の燃料で、石油の代わりになれる重要な化工原料でもあり、例えばメタノールトゥオレフィン(MTO)、メタノールトゥプロピレン(MTP)、メタノールトゥアロマティクス(MTA)のような様々な製品を合成することができる。重要なエネルギー媒体として、メタノールは、ポスト石油・天然ガス時代で石油・石炭・天然ガス資源の日々減少によるエネルギー問題に対応する有効な解決ルートである[Olah, G. A., Geoppert, A. & Surya Prakash, G. K. Beyond Oil and Gas: The Methanol Economy, Wiley-VCH, 2006.]。近年、メタノールの生産規模は、素早く拡大しているが(2010年は中国だけで生産量3800万トン)、これらの生産プロセスは、いずれも石炭、天然ガスや石油などを原料とするもので、化石燃料資源が日々尽き果て、且つ再生しにくいという問題に直面している。

一方、ジオール系化合物も、重要な用途を有する燃料と工業原料で、例えば、1,2-エチレングリコールは、非常に重要な化工原料と溶媒で、ポリエステル繊維、フィルム、樹脂およびエンジン冷却材などの面で幅広く応用されている。従来のプロセスでは、エチレンオキシドの加水分解によって1,2-エチレングリコールを生産するが、多くの副産物が生じ、直接製品の品質に影響する。この問題に対し、英国シェル石油社は、OMEGAという新しいプロセス、即ち、まず、エチレンオキシドを二酸化炭素と作用させて環状炭酸エチレンを形成し、後者は触媒の作用下で加水分解し、二酸化炭素を放出しながら、1,2-エチレングリコールが得られるプロセスを開発した[http://en.wikipedia.org/wiki/OMEGA_process#cite_note-0.]。OMEGAプロセスは、99%の選択性で1,2-エチレングリコールが得られるが、このプロセスの1つの不足の点は、二酸化炭素が有効に利用されず、反応終了後再び放出されて環境に戻ることである。

二酸化炭素は、環境を影響する温室効果ガスでもあり、尽き果てることのない低価で、安全で且つ再生可能な炭素源でもある[Carbon Dioxide as Chemical Feedstock, (Ed.: M. Aresta), Wiley-VCH, Weinheim, 2010)]。二酸化炭素の接触水素化によるメタノールの生産は、メタノール経済を実現させる重要なルートである。この反応は、熱学的に可能ではあるが、炭素-酸素の二重結合は高度に不活性であるため、二酸化炭素の直接還元は通常非常に困難で、現在、工業上と学界での大きなチャレンジである。現在、この反応に関し、少量の非均相触媒系が報告されたが、よくある欠点は、反応は厳しい高温高圧(250℃、50 atm)の条件で行う必要があるだけでなく、効率と選択性も高くないことである[W. Wang, S. P. Wang, X. B. Ma, J. L. Gong, Chem. Soc. Rev. 2011, 40, 3703-3727]。

一方、現在、均相触媒系で水素ガスを水素源として直接二酸化炭素を水素化してメタノールにするのも2つ報告しかないが、この2つの方法は触媒効率が共に低い(触媒の最高転化数≦221)[C. A. Huff, M. S. Sanford, J. Am. Chem. Soc. 2011,133, 18122-18125], [S. Wesselbaum, T. vom Stein, J. Klankermayer, W. Leitner, Angew. Chem., Int. Ed. 2012, 51, 7499-7502]。このように、今まで、二酸化炭素を接触水素化してメタノールにする実用的な触媒プロセスはまだない。一方、2011年にMilsteinらは、ルテニウムの錯体を均相触媒として炭酸ジメチルを接触水素化してメタノールを合成する方法を報告した[E. Balaraman, C. Gunanathan, J. Zhang, L. J. W. Shimon, D. Milstein, Nature Chem. 2011,3, 609-614]。

既存技術では、炭酸ジメチルは、環状の炭酸エチレンとメタノールのエステル交換反応によって製造される(Aresta, M. (ed.) Carbon Dioxide as Chemical Feedstock (Wiley-VCH, 2010)。しかし、炭酸ジメチルの市場価格はメタノールよりも顕著に高いため、この触媒系はもちろん実用性と経済価値がない。また、本分野の技術者に熟知のように、金属錯体を触媒とする場合、使用される配位子は得られる錯体の触媒活性に大きく影響する。言い換えれば、錯体の構造の微小な変化でも、得られる金属錯体は触媒活性がなくなることもある。

以上のように、本分野では、高い転化効率を有し、且つ優れた経済性を有する、穏やかな条件下で直接または間接に二酸化炭素をメタノールに転化させる方法が切望されている。また、既存技術では、ポリカーボネート材料の分解は加水分解によるもので、分解産物はジオールおよび二酸化炭素で、その二酸化炭素は再び環境に放出されるため、本分野では、穏やかな条件下でポリカーボネートを水素化還元によって分解させる方法も切望されている。

本発明の目的は、穏やかな条件で環状カーボネートを使用してメタノールおよびジオールを製造する方法、ならびにポリカーボネートを水素化還元して分解させる方法を提供する。

第一では、本発明は、メタノールおよびジオールを製造する方法であって、水素ガスの雰囲気において、触媒の作用下で、環状カーボネートまたはポリカーボネートに以下のような反応を行い、メタノールおよびジオールを得ることを含む、前記方法を提供する。

構造式IおよびIIIにおいて、 n = 0〜20、m = 2〜1000000である。 R1、R2、R3、R4、R5、R6は、独立に水素、C1〜C20のアルキル基、C4〜C24のアリール基、C5〜C25のアリールアルキル基、-(C1〜C8)-OR7、-(C1〜C8)-SR8または-(C1〜C8)-NR9R10から選ばれてもよい。

R5、R6は、さらに、独立に炭素原子4〜10個のシクロアルキル基から選ばれてもよい。 ここで、R7、R8、R9、R10は、独立にC1〜C10のアルキル基、C4〜C24のアリール基またはC5〜C25のアリールアルキル基から選ばれ、R9、R10は、さらに、窒素原子と連結していっしょに環状アミン基を形成してもよい。 n = 0の場合、R1とR3が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 n ≧ 1の場合、R1とR5、R3とR6が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。

構造式IIおよびIVにおいて、 R1’、R2’、R3’、R4’、R5’、R6’は、独立に水素、C1〜C20のアルキル基、C4〜C24のアリール基、C5〜C25のアリールアルキル基、-(C1〜C8)-OR7’、-(C1〜C8)-SR8’または-(C1〜C8)-NR9’R10’から選ばれてもよい。

R5’、R6’は、さらに、独立に炭素原子4〜10個のシクロアルキル基から選ばれてもよい。 ここで、R7’、R8’、R9’、R10’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C4〜C24のアリール基またはC5〜C25のアリールアルキル基から選ばれ、R9’、R10’は、さらに、窒素原子と連結していっしょに環状アミン基を形成してもよい。 n = 0の場合、R1’とR3’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 n ≧ 1の場合、R1’とR5’、R3’とR6’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。

好適な実施形態において、前記触媒は、VIIIB族の遷移金属の化合物である。 好適な実施形態において、前記VIIIB族の遷移金属は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、IrまたはPtから選ばれる。 もう一つの好適な実施形態において、前記方法は、有機溶媒および塩基の存在下で以下のような反応を行うことを含む。

ここで、構造式I、II、IIIおよびIVで表される化合物は、請求項1で定義される通りで、ルテニウム錯体Vは、一般構造式Vを有する。 Ru(L)XYY’ (V) 式Vにおいて、 Xは、一酸化炭素、トリフェニルホスフィン、ピリジン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシドである。 Y、Y'は、独立にヒドリドイオン、水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンおよびBH4-、BH3CN-、BH(Et)3-、BH(sec-Bu)3-、AlH4-またはAlH2(OCH2CH2CH3)2-から選ばれる。

ここで、Lは、一般構造式VIで表される三座二リンアミン配位子である。

一般式VIにおいて、n = 0〜3である。 R0は、Hである。

R1’’、R2’’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C4〜C24のアリール基またはアダマンチル基から選ばれ、ここで、前記アリール基は、無置換または置換のアリール基を含む。 R3’’、R4’’、R5’’、R6’’、R7’’、R8’’ は、独立に水素、C1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基またはC4〜C36のアリール基から選ばれる。 n = 0の場合、R3’’とR7’’およびR4’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 n ≧ 1の場合、R3’’とR5’’、R4’’とR6’’、R5’’とR7’’およびR6’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。

さらに好適な実施形態において、前記ルテニウム錯体Vは、構造式1aで表される。

ほかの好適な実施形態において、前記ルテニウム錯体は、構造式1b〜1eで表される。

具体的な実施形態において、前記環状カーボネートまたはポリカーボネートとルテニウム錯体のモル比は、100〜1000000:1である。

好適な実施形態において、前記環状カーボネートまたはポリカーボネートとルテニウム錯体のモル比は、1000〜100000、より好ましくは10000〜100000である。 具体的な実施形態において、前記塩基は、アルコールのアルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属水酸化物である。

好適な実施形態において、前記塩基は、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムエポキシド、または炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。 さらに好適な実施形態において、前記塩基は、カリウム-t-ブトキシドである。 具体的な実施形態において、前記ルテニウム錯体は中性の条件で環状カーボネートの水素化を触媒し、メタノールおよび相応のジオールを得る。 具体的な実施形態において、前記塩基とルテニウム錯体のモル比は、1〜100:1である。

好適な実施形態において、前記塩基とルテニウム錯体のモル比は、1〜20:1、より好ましくは1〜5:1である。 さらに好適な実施形態において、前記塩基とルテニウム錯体のモル比は、1:1である。 具体的な実施形態において、前記反応の温度は60〜180℃である。

好適な実施形態において、前記反応の温度は80〜150℃、より好ましくは80〜140℃である。 具体的な実施形態において、前記反応の反応時間は0.1〜1000時間である。 好適な実施形態において、前記反応の反応時間は0.5〜100時間、より好ましくは1〜72時間である。 具体的な実施形態において、前記反応における水素ガスの圧力は1〜100大気圧である。 好適な実施形態において、前記反応における水素ガスの圧力は5〜60大気圧、より好ましくは50大気圧である。

好適な実施形態において、前記不活性溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノールである。 さらに好適な実施形態において、前記不活性溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはトルエンである。

第二では、本発明は、式Vで表されるルテニウム錯体を提供する。 Ru(L)XYY’ (V) 式Vにおいて、 Xは、一酸化炭素、トリフェニルホスフィン、ピリジン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシドである。 Y、Y'は、独立にヒドリドイオン、水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンおよびBH4-、BH3CN-、BH(Et)3-、BH(sec-Bu)3-、AlH4-、AlH2(OCH2CH2CH3)2-から選ばれる。

ここで、Lは、構造式VIで表される三座二リンアミン配位子である。

一般式VIにおいて、n = 0〜3である。 R0は、Hである。 R1’’、R2’’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C4〜C24のアリール基、アダマンチル基から選ばれ、ここで、前記アリール基は、無置換または置換のアリール基である。

R3’’、R4’’、R5’’、R6’’、R7’’、R8’’ は、独立に水素、C1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、またはC4〜C36のアリール基から選ばれる。 n = 0の場合、R3’’とR7’’およびR4’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 n ≧ 1の場合、R3’’とR5’’、R4’’とR6’’、R5’’とR7’’およびR6’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 ここで、R3’’、R4’’、R5’’、R6’’、R7’’およびR8’’がいずれもHの場合、R2’’はフェニル基ではない。

具体的な実施形態において、前記ルテニウム錯体は、構造式1b、1c、1dおよび1eで表される。

好適な実施形態において、前記ルテニウム錯体は、カーボネートを水素化還元することに使用される。 さらに好適な実施形態において、前記ルテニウム錯体は、環状カーボネートまたはポリカーボネートを水素化還元してメタノールおよびジオールを製造することに使用される。

第三では、本発明は、重水素化メタノールおよび重水素化ジオールを製造する方法であって、水素ガスH2の代わりに重水素ガスD2を使用し、本発明の第二に記載の方法を実施し、重水素化メタノールおよび重水素化ジオールを得る、前記方法を提供する。

第四では、本発明は、アルコールを製造する方法であって、有機溶媒において、式Vで表されるルテニウム錯体(V)および塩基の存在下で、カーボネートを水素化還元し、アルコールを得ることを含む、前記方法を提供する。 Ru(L)XYY’ (V) 式Vにおいて、 Xは、一酸化炭素、トリフェニルホスフィン、ピリジン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシドである。 Y、Y'は、独立にヒドリドイオン、水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンおよびBH4-、BH3CN-、BH(Et)3-、BH(sec-Bu)3-、AlH4-、AlH2(OCH2CH2CH3)2-から選ばれる。

ここで、Lは、一般構造式VIで表される三座二リンアミン配位子である。

一般式VIにおいて、n = 0〜3である。 R0は、Hである。 R1’’、R2’’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C4〜C24のアリール基、アダマンチル基から選ばれ、ここで、前記アリール基は、無置換または置換のアリール基である。

R3’’、R4’’、R5’’、R6’’、R7’’、R8’’ は、独立に水素、C1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、C4〜C36のアリール基から選ばれる。 n = 0の場合、R3’’とR7’’およびR4’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 n ≧ 1の場合、R3’’とR5’’、R4’’とR6’’、R5’’とR7’’およびR6’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。

もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上述の各技術特徴および下述(例えば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好ましい技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。

具体的な実施形態 本発明者は、幅広く且つ深く研究したところ、意外に、ルテニウムと三座二リンアミンPNPペンチ状配位子からなる錯体を触媒として使用し、水素ガスを水素源として環状カーボネートに対して水素化還元反応を行うと、効率的に且つ高選択的にメタノールおよび1,2-エチレングリコールおよびその誘導体を得ることができることを見出し、間接に二酸化炭素からメタノールへの化学的転化を実現させた。本発明者は、さらに、本発明の触媒を使用すると、ポリカーボネートを効率的に触媒してメタノールおよびジオールを得ることができることを初めて見出し、廃棄されるポリカーボネート系材料からジオールおよびメタノールを回収することができる。また、本発明者は、本発明の触媒は効率的に環状カーボネートの重水素化還元を触媒することができることを見出し、重水素化メタノールおよび重水素化ジオールを製造することができる。これに基づき、本発明を完成させた。

用語の定義 本発明において、「C1〜C10のアルキル基」は、直鎖または分岐鎖の10個以下の炭素原子を含有するアルキル基を表し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、t-ヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基やイソオクチル基がある。類似的に、「C1〜C10のアルコキシ基」は、酸素原子が以上で定義されるアルキル基と連結したものを表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などがある。

本発明において、「アリール基」は、芳香族環構造の性質を有する置換基を表し、例えばフェニル基、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、キノリニル基、インドリル基がある。本発明において、アリール基は、無置換または置換のアリール基を含み、ここで、置換とは1つまたは複数の置換基を有することで、代表的な置換基は、上述のアルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子やニトロ基などを含むが、これらに限定されない。代表的なアリール基は、電子供与性および/または電子求引性置換基を有するアリール基を含み、例えばp-トリル基、p-メトキシフェニル基、p-クロロフェニル基などがある。類似的に、「アリールアルキル基」は、アリール基とアルキル基が連結した置換基を表し、例えばフェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などがある。

ジオール ここで用いられるように、用語「ジオール」は「ジヒドロキシ化合物」と入れ替えて使用することができ、2つの末端に位置するヒドロキシ基を有する化合物である。本分野の一般技術者に理解されるように、具体的な実施形態において、ヒドロキシ基と連結する具体的な基によって、前記用語はアルコール、フェノールなどの化合物を含んでもよい。 ほかの実施形態において、本発明の「ジオール」は、末端に位置する2つのヒドロキシ基を含有する(本発明の方法によって接触分解して形成することができる。)以外、任意にほかの箇所に位置するヒドロキシ基を含有してもよい。

転化効率 ここで用いられる用語「転化効率」(効率と呼ぶこともある)とは、化学反応における消耗された反応物の量と最初に仕込んだ当該反応物の総量の百分率である。本発明における反応に対し、環状カーボネートの水素化反応を例とすると、転化率は、特定の条件下である反応時間内で、消耗された環状カーボネートのモル数と最初に仕込んだ環状カーボネート総量のモル数の比で、百分率で表される。

転化数 ここで用いられる用語「転化数」とは、ある時間内で、転化された反応物のモル数と触媒のモル数の比である。本発明の反応において、環状カーボネートの水素化反応を例とすると、転化数は、特定の条件下である反応時間内で、消耗された環状カーボネートのモル数と触媒のモル数の比である。 本発明の反応において、転化率および転化数は、ガスクロマトグラフィーによって、p-キシレンを内部標準として検量線法でカーボネートを測定して算出されたものである。即ち、p-キシレンを内部標準として、カーボネート、メタノールおよびジオールに対し、ガスクロマトグラムで、ピーク面積とp-キシレンのピーク面積の比を検量線とする。反応系におけるピーク面積の比率を測定することで、反応系におけるカーボネート、メタノールおよびジオールの含有量を知る。

カーボネート ここで用いられる用語「カーボネート」は、直鎖カーボネート(即ち、非環状で非重合のカーボネート、例えば炭酸ジメチル)、環状カーボネート、ポリカーボネートを含む。具体的に、本発明の環状カーボネートおよびポリカーボネートは、それぞれ式Iおよび式IIで表される。

式Iにおいて、 n = 0〜20、m = 2〜1000000である。 R1、R2、R3、R4、R5、R6は、独立に水素、C1〜C20のアルキル基、C4〜C24のアリール基、C5〜C25のアリールアルキル基、-(C1〜C8)-OR7、-(C1〜C8)-SR8または-(C1〜C8)-NR9R10から選ばれる。

R5、R6は、さらに、独立に炭素原子4〜10個の環状置換基でもよい。 R7、R8、R9、R10は、独立にC1〜C10のアルキル基、C4〜C24のアリール基またはC5〜C25のアリールアルキル基から選ばれる。 R9、R10は、さらに、窒素原子と連結していっしょに環状アミン基を形成してもよい。 n = 0の場合、R1とR3が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 n ≧ 1の場合、R1とR5、R3とR6が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。

式IIにおいて、 R1’、R2’、R3’、R4’、R5’、R6’は、独立に水素、C1〜C20のアルキル基、C4〜C24のアリール基、C5〜C25のアリールアルキル基、-(C1〜C8)-OR7’、-(C1〜C8)-SR8’または-(C1〜C8)-NR9’R10’から選ばれてもよい。 R5’、R6’は、さらに、独立に炭素原子4〜10個のシクロアルキル基から選ばれてもよい。 ここで、R7’、R8’、R9’、R10’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C4〜C24のアリール基、またはC5〜C25のアリールアルキル基から選ばれ、R9’、R10’は、さらに、窒素原子と連結していっしょに環状アミン基を形成してもよい。 n = 0の場合、R1’とR3’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 n ≧ 1の場合、R1’とR5’、R3’とR6’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。

本分野の技術者に周知のように、環状カーボネートは、重要な化工原料および溶媒で、二酸化炭素とエポキシ化合物から反応して大規模に生産することができ、例えば、二酸化炭素とエチレンオキシドから炭酸エチレンを製造する過程はすでに工業化が実現した。環状カーボネートの接触水素化は、二酸化炭素の間接の有効利用を実現するだけでなく、メタノールおよび1,2-エチレングリコールなどの重要な燃料および工業原料が得られるため、重要な応用価値がある。

本発明の触媒 本発明の触媒は、一般構造式Vを有するルテニウム錯体である。当該ルテニウム錯体は、一般構造式がVIの三座二リンアミン配位子Lを含む。 Ru(L)XYY’ (V) 一般式Vにおいて、 Xは、独立に一酸化炭素、トリフェニルホスフィン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドから選ばれる。 Y、Y'は、独立にヒドリドイオン、水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンおよびBH4-、BH3CN-、BH(Et)3-、BH(sec-Bu)3-、AlH4-、またはAlH2(OCH2CH2CH3)2-から選ばれる。YおよびY'は、同一でも異なってもよい。

一般式Vに含まれる三座二リンアミン配位子Lの一般構造式VIは以下の通りである。

一般式VIにおいて、n = 0〜3である。 R0は、Hである。

R1’’、R2’’は、独立にC1〜C10のアルキル基、C3〜C10のアリール基、C4〜C24のアリールアルキル基、またはアダマンチル基から選ばれる。 R3’’、R4’’、R5’’、R6’’、R7’’、R8’’ は、独立に水素、C1〜C10のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C1〜C10のアルコキシ基、またはC4〜C36のアリール基から選ばれる。 n = 0の場合、R3’’とR7’’およびR4’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。 n ≧ 1の場合、R3’’とR5’’、R4’’とR6’’、R5’’とR7’’およびR6’’とR8’’が連結して脂肪族環状基または芳香族環を形成してもよい。

具体的な実施形態において、本発明の触媒、即ち、ルテニウム錯体は、以下の構造式1a〜1eで表される。

本発明の触媒の製造方法 本発明のルテニウム触媒は、以下の方法で製造することができる。 不活性ガス、例えば窒素ガスまたはアルゴンガスの雰囲気において、60〜120℃で、1当量のルテニウム金属前駆体、例えば[RuHCl(CO)(PPh3)3]、[RuH2(CO)(PPh3)3]、RuCl2(PPh3)3、[RuCl2(C6H6)]2、[RuHCl(PPh3)3]、Ru(DMSO)4Cl2、[Ru(cod)Cl2]、[Ru(nbd)Cl2]を1〜1.2当量の三座二リンアミン配位子と溶媒で0.5〜20 h反応させて製造する。ここで、前記DMSOはジメチルスルホキシド、codは1,5-シクロオクタジエン、nbdはノルボルナジエンを表す。

本発明の触媒の応用 本発明の触媒、即ち、ルテニウム錯体は、穏やかな条件で、環状カーボネート、ポリカーボネートおよび直鎖カーボネートを含むカーボネートを水素化還元してメタノールおよび相応のほかのアルコール類またはジオールにすることに使用することができるため、二酸化炭素を間接にメタノールにし、相応のジオールを得ることができる。本発明のルテニウム錯体によるカーボネートの水素化還元は、高い転化効率を有するだけでなく、優れた経済性および操作便利性を有する。

本発明のメタノールおよびジオールの製造方法 本発明は、接触水素化によってメタノールおよび1,2-エチレングリコールならびにほかのジオール類誘導体を製造するオリジナルな方法を提供する。本発明の方法は、ルテニウムと配位子からなる錯体を触媒として使用し、水素ガスを水素源として環状カーボネートまたはポリカーボネートに対して水素化還元反応を行うと、効率的に且つ高選択的にメタノールおよび1,2-エチレングリコールおよびその誘導体を得る。

具体的な実施形態において、本発明の方法は、水素ガスの雰囲気において、有機溶媒で、ルテニウム錯体(V)および塩基の存在下で、環状カーボネート(一般式I)またはポリカーボネート(一般式II)に対して以下のような水素化還元反応を行うことで、メタノールおよび相応のジオールIIIまたはIVを得る。

以上の反応式で示される各置換基およびルテニウム錯体は、上述のように定義される。

具体的な実施形態において、以上の反応で以下の構造式1a〜1eで表されるルテニウム錯体が使用される。

本発明の方法で使用できる塩基は、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムエポキシドのようなアルコールのアルカリ金属塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物を含む。好適な実施形態において、塩基としてアルコールのアルカリ金属塩を使用し、より好ましくは塩基がカリウム-t-ブトキシドである。

具体的な実施形態において、前記環状カーボネートまたはポリカーボネートとルテニウム錯体のモル比は、100〜1000000:1である。好適な実施形態において、前記環状カーボネートまたはポリカーボネートとルテニウム錯体のモル比は、1000〜100000、より好ましくは10000〜1000001000〜100000である。

具体的な実施形態において、前記塩基とルテニウム錯体のモル比は、1〜100:1である。 具体的な実施形態において、前記塩基とルテニウム錯体のモル比は、1〜20:1、より好ましくは1〜5:1である。 さらに好適な実施形態において、前記塩基とルテニウム錯体のモル比は、1:1である。

具体的な実施形態において、前記反応の温度は60〜180℃でもよい。好適な実施形態において、前記反応の温度は80〜150℃、より好ましくは80〜140℃である。 具体的な実施形態において、前記反応の反応時間は0.1〜1000 hである。好適な実施形態において、前記反応の反応時間は0.5〜100時間、より好ましくは1〜72時間である。 具体的な実施形態において、前記反応における水素ガスの圧力は1〜100大気圧である。 好適な実施形態において、前記反応における水素ガスの圧力は5〜60大気圧、より好ましくは10〜50大気圧である。

本発明の方法で使用できる有機溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノールなどを含む。好適な実施形態において、本発明の方法でテトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類やトルエンなどの溶媒が使用される。 また、本発明の開示および本分野の既存技術に基づき、本分野の一般技術者には、直鎖のカーボネート、即ち、非環状で非重合のカーボネートを原料として水素化反応を行うと、相応にメタノールおよびほかの一価アルコールを製造することができることが容易にわかる。

本発明の重水素化メタノールおよび重水素化ジオールの製造方法 本発明に係るメタノールおよびジオールを製造する方法に従い、本発明者は、さらに水素ガスの代わりに重水素ガスを使用し、環状カーボネートを還元して重水素化メタノールおよび重水素化ジオールを生成することができた。 また、環状カーボネート、ポリカーボネートまたは一般のカーボネートを使用し、本分野の技術者は、適宜に対応して重水素化のほかの一価アルコールを製造することができる。

本発明の主な利点は以下の通りである。 1.環状カーボネートは、エポキシ化合物と二酸化炭素の反応によって簡単に工業的に大規模で製造することができるため、本発明の方法は、環状カーボネートを接触水素化してメタノールおよびジオールを生成し、間接に二酸化炭素をメタノールに転化する目的を実現させ、得られるジオールも非常に価値のある燃料および化工原料である。 2.本発明の方法は、廃棄されるポリカーボネート系材料から効率的に且つ高い選択性でポリカーボネート材料を接触水素化してメタノールおよびジオールを生成することができ、ポリカーボネートを加水分解する方法よりも高い原子経済性を有する。 3.本発明の方法は、廃棄材料が生じず、経済的で環境にやさしい持続可能な発展の技術要求に応えることができる。 4.本発明の方法は、操作が簡単で、穏やかな条件で行うことができ、コストが低い。 5.本発明の方法は、重水素化メタノールおよび重水素化ジオールの製造にも使用することができる。

以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、もちろん、本発明はこれらの具体的な実例に限定されない。以下の実施例において、示されていない具体的な実験条件は、通常、本分野の技術者に熟知の通常の操作条件、あるいはメーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。

実施例1: 触媒のルテニウム錯体1aの製造

不活性ガス、例えば窒素ガスまたはアルゴンガスの雰囲気において、100 mLのシュレンク管にHCl・HN(CH2CH2PPh2)2 (1.20 g、 2.51 mmol)、トルエン (20 mL)および15%水酸化ナトリウム水溶液(10 mL)を入れた。反応混合物を室温で固体が完全に溶解するまで撹拌した。不活性の雰囲気において、有機相を取り出し、且つ蒸留水で2回清浄した(2×5 mL)。合併された水相をトルエンで2回抽出した(2×10 mL)。すべての有機相を合併した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過で乾燥剤を除去した後、真空減圧で溶媒を除去して遊離の二リンアミン配位子の粗製産物を得た。この粗製産物をトルエン(18 mL)に溶解させ、RuHCl(CO)(PPh3)3 (2.28 g、2.39 mmol)をいれ、2時間還流して反応させた。反応系を室温に冷却した後、ヘキサン(10 mL)を入れた。析出した沈澱物をろ過し、且つヘキサンで洗浄した。真空乾燥して収率97%で1.42 gのルテニウム錯体1aを得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.80-7.70 (m, 8H), 7.52-7.16 (m, 12H), 4.36 (br s, 1H), 3.38-3.25 (m, 2H), 2.82-2.76 (m, 2H), 2.45-2.35 (m, 4H), -15.41 (t, J = 19.6 Hz, 1H) ppm; 31P NMR (161.9 MHz, CDCl3) δ 52.6 (d, J = 18.1 Hz) ppm; HRMS (MALDI) m/z calcd. for C29H28NOP296Ru: 564.0717, Found: 564.0699 [M-H2-Cl]+, IR (film) 1972, 1904 cm-1.)

実施例2:触媒のルテニウム錯体1bの製造

HN(CH2CH2PiPr2)2 (217 mg、0.710 mmol)およびRuHCl(CO)(PPh3)3 (644 mg、0.676 mmol)をトルエン(4 mL)に溶解させ、加熱して5時間還流させた。反応液を室温に冷却した後、ヘキサン(6 mL)を入れた。析出した固体をろ過し、吸引乾燥して収率90%で288 mgのルテニウム錯体1bを得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.50-3.39 (m, 1H), 3.31-3.26 (m, 2H), 2.77-2.65 (m, 2H), 2.35-2.09 (m, 6H), 1.86-1.74 (m, 2H), 1.60-1.44 (m, 6H), 1.34-1.08 (m, 18H), -16.30 (t, J = 19.2 Hz, 0.12H), -16.54 (t, J = 18.0 Hz, 0.88H) ppm; 31P NMR (161.9 MHz, CDCl3) δ 74.6 (s, br) ppm; HRMS (MALDI) m/z calcd. for C17H38NOP296Ru: 430.1499, Found: 430.1502 [M-Cl]+; IR (film) 1973, 1960, 1910 cm-1.

実施例3:触媒のルテニウム錯体1cの製造

実施例2の操作工程に従い、HN(CH2CH2PiPr2)2の代わりにHN(CH2CH2PtBu2)2を使用し、収率85%でルテニウム錯体1cを得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.44 (br s, 1H), 3.52-3.37 (m, 0.9H), 3.31-3.19 (m, 2.1H), 3.06-2.91 (m, 2.1H), 2.81-2.69 (m, 0.9H), 2.46-2.14 (m, 4H), 1.77-1.25 (m, 36H), -16.03 (t, J = 19.4 Hz, 0.6), -22.32 (t, J = 18.4 Hz, 0.4 H) ppm; 31P NMR (161.9 MHz, CDCl3) δ 89.0 (d, J = 9.1 Hz), 87.6 (s) ppm; HRMS (MALDI) m/z calcd. for C21H46NOP296Ru: 486.2125, Found: 486.2120 [M-Cl]+; IR (film) 1897 cm-1.

実施例4:触媒のルテニウム錯体1dの製造

実施例2の操作工程に従い、HN(CH2CH2PiPr2)2の代わりにHN(CH2CH2PCy2)2を使用し、収率98%でルテニウム錯体1dを得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.85-2.80 (m, 4H), 2.53-1.15 (m, 48H), -16.59 (br s, 1H) ppm; 31P NMR (161.9 MHz, CDCl3) δ 65.2 (s), 47.6 (s) ppm; HRMS (MALDI) m/z calcd. for C29H54NOP296Ru: 590.2751, Found: 590.2730 [M-Cl]+; IR (film) 1910 cm-1.

実施例5:触媒のルテニウム錯体1eの製造

実施例2の操作工程に従い、HN(CH2CH2PiPr2)2の代わりにHN(CH2CH2PAd2)2を使用し、収率92%でルテニウム錯体1eを得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.49 (br s, 1H), 3.69-3.52 (m, 2H), 2.59-1.60 (m, 66H), -26.05 (t, J = 15.6 Hz, 1H) ppm; 31P NMR (161.9 MHz, CDCl3) δ 84.4 (d, J = 9.2 Hz) ppm; HRMS (MALDI) m/z calcd. for C45H70NOP296Ru: 798.4003, Found: 798.3985 [M-Cl]+; IR (film) 1914 cm-1.

実施例6:ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸エチレンの水素化反応によるメタノールおよびエチレングリコールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (17.4 mg、0.0286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、炭酸エチレン(2.52 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、0.5時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィー(p-キシレンを内部標準とし、カーボネート、メタノールおよびジオールに対し、ガスクロマトグラムで、ピーク面積とp-キシレンのピーク面積の比で検量線を作成し、反応系におけるピーク面積の比率を測定することによって、反応終了後の反応系の混合物に含まれるカーボネート、メタノールおよびジオールの質量を知る検量線法を使用した。)によって測定したところ、反応の転化率が>99%であった。メタノールおよびエチレングリコールの収率はいずれも99%であった。

実施例7:ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸エチレンの水素化反応によるメタノールおよびエチレングリコールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (1.7 mg、0.00286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(0.32 mg、0.00286 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(5 mL)、テトラヒドロフラン(15 mL)、炭酸エチレン(2.52 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、48時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が>99%であった。メタノールおよびエチレングリコールの収率はいずれも99%であった。

実施例8:ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸エチレンの水素化反応によるメタノールおよびエチレングリコールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (0.17 mg、0.000286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(0.032 mg、0.000286 mmol)を含有するテトラヒドロフラン溶液(2 mL)、テトラヒドロフラン(18 mL)、炭酸エチレン(2.52 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、60 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、72時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が89%であった。メタノールおよびエチレングリコールの収率はそれぞれ84%および87%であった。

実施例9:ルテニウム錯体1bが触媒する炭酸エチレンの水素化反応によるメタノールおよびエチレングリコールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1b (13.5 mg、0.0286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、炭酸エチレン(2.52 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、0.5時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が74%であった。メタノールおよびエチレングリコールの収率はそれぞれ45%および74%であった。

実施例10:ルテニウム錯体1dが触媒する炭酸エチレンの水素化反応によるメタノールおよびエチレングリコールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1d (18.0 mg、0.0286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、炭酸エチレン(2.52 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、0.5時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が76%であった。メタノールおよびエチレングリコールの収率はそれぞれ48%および76%であった。

実施例11:ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸プロピレンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (3.5 mg、0.057 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(0.5 mg、0.057 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、炭酸プロピレン(2.92 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、10時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。メタノールおよびグリコールの収率はいずれも99%であった。

実施例12:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4-エチル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン(3.32 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、10時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が>99%であった。メタノールおよびグリコールの収率はそれぞれ99%および96%であった。

実施例13:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4-ブチル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4-ブチル-1,3-ジオキサン-2-オン(4.12 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、4時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。ジオールの分離収率が99%であった。

実施例14:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4-フェニル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4-フェニル-1,3-ジオキサン-2-オン(4.69 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、4時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。ジオールの分離収率が99%であった。

実施例15:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4-ベンジル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4-ベンジル-1,3-ジオキサン-2-オン(5.09 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、4時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。ジオールの分離収率が98%であった。

実施例16:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4-メトキシメチル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4-メトキシメチル-1,3-ジオキサン-2-オン(3.78 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、4時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。ジオールの分離収率が99%であった。

実施例17:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4-ベンジルオキシメチル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4-ベンジルオキシメチル-1,3-ジオキサン-2-オン(5.94 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、4時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。ジオールの分離収率が97%であった。

実施例18:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4,5-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4,5-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン(3.32 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、10時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。ジオールの分離収率が98%であった。

実施例19:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4,4-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4,4-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン(3.32 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、12時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。ジオールの分離収率が97%であった。

実施例20:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの4,4,5,5-テトラメチル-1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (17.4 mg、0.0286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4,4,5,5-テトラメチル-1,3-ジオキサン-2-オン(4.12 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、20時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が95%であった。ジオールの分離収率が96%であった。

実施例21:ルテニウム錯体1aが触媒する環状カーボネートの1,3-ジオキサン-2-オンの水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (8.7 mg、0.0143 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(1.6 mg、0.0143 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、1,3-ジオキサン-2-オン(2.92 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、2時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が>99%であった。メタノールおよびジオールの収率はそれぞれ99%および99%であった。

実施例22:ルテニウム錯体1aが触媒するポリプロピレンカーボネートの分解水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (15.8 mg、0.0260 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(2.9 mg、0.0260 mmol)、テトラヒドロフラン(25 mL)、ポリプロピレンカーボネート[Mw = 100,698 (Mw/Mn = 1.77)、炭酸エステル結合>99%](2.69 g、26.0 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、24時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が>99%であった。メタノールおよびジオールの収率はそれぞれ99%および99%であった。

実施例23:ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸エチレンの重水素化反応による重水素化メタノールおよび重水素化エチレングリコールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (17.4 mg、0.0286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、炭酸エチレン(2.52 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの重水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、0.5時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の重水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が>99%であった。メタノールの収率が99%で、メチル基における重水素原子の含有量が87%であった(メタノールを安息香酸メチルにして核磁気共鳴法によって測定した。)。エチレングリコールの収率が99%で、炭素原子における重水素の含有量が49%であった(エチレングリコールをエチレングリコールジベンゾエートにして核磁気共鳴法によって測定した。)。

実施例24:ルテニウム錯体1aが触媒するテトラメチル炭酸エチレンの重水素化反応による重水素化メタノールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (17.4 mg、0.0286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、4,4,5,5-テトラメチル-1,3-ジオキサン-2-オン(4.12 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの重水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、24時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の重水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が>99%であった。メタノールの収率が99%で、メチル基における重水素原子の含有量が>99%であった(メタノールを安息香酸メチルにして核磁気共鳴法によって測定した。)。

実施例25:ルテニウム錯体1cおよび1eが触媒する炭酸エチレンの水素化反応によるメタノールおよびエチレングリコールの製造 実施例6と同様の流れを使用し、ルテニウム錯体1cおよび1eで炭酸エチレンの水素化反応を触媒してメタノールおよびエチレングリコールを製造した。上述実施例と同様のガスクロマトグラフィーによって測定したところ、ルテニウム錯体1cおよび1eで炭酸エチレンの水素化反応を触媒してメタノールおよびエチレングリコールを製造した場合、同等の転化率および収率を得た。

実施例26: ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸ジメチルの水素化反応によるメタノールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (17.4 mg、0.0286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)、テトラヒドロフラン(10 mL)、炭酸ジメチル(2.57 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、10時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、炭酸ジメチルの転化率が95%で、メタノールの収率が94%であった。

実施例27:[P(N-Me)P]ペンチ状配位子およびルテニウムからなる錯体1a'が触媒する炭酸プロピレンの水素化反応 実施例1-5と類似の工程を使用し、構造式1a'で表されるルテニウム錯体を製造した。

RuHCl(CO)[(Ph2PCH2CH2)2NMe] (1a’):収率が98%で、浅黄色固体であった。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.90-7.65 (m, 8H), 7.48-6.79 (m, 12H), 4.01-3.90 (m, 0.6H), 3.21-2.72 (m, 7.4H), 2.53 (s, 2H), 2.35 (s, 1H), -14.16 (t, J = 19.6 Hz, 0.3H), -14.75 (t, J = 19.6 Hz, 0.7H) ppm; 31P NMR (161.9 MHz, CDCl3) δ 54.4 (s), 49.5 (d, J = 6.3 Hz) ppm; HRMS (MALDI) m/z calcd. for [C30H30NOP296Ru]+: 578.0873, Found:578.0863 [M-H2-Cl]+; IR (film) 1975, 1903 cm-1.

実施例11と類似の工程を使用し、構造式1a'で表されるルテニウム錯体で炭酸プロピレンの接触水素化反応を行ったところ、メタノールおよびプロピレングリコールがなかったため、構造式1a'で表されるルテニウム錯体は活性がない。 構造式1a'からわかるように、構造式1aで表されるルテニウム錯体と非常に類似で、違いは構造式1aではNと結合するのはHで、構造式1a'ではNと結合するのはメチル基であることだけである。従って、本実施例の結論によって、金属触媒の分野において、配位子の構造によって得られる金属錯体が異なる触媒活性を有するという共通の認識がさらに証明された。

実施例28: 異なる塩基使用量によるルテニウム錯体1aが触媒する炭酸プロピレンの水素化反応に対する影響 実施例11と類似の工程を使用し、ルテニウム錯体1aを触媒とし、異なる塩基とルテニウム錯体1aのモル比の使用量および下述反応条件で、炭酸プロピレンの接触水素化を行い、100℃で2時間反応させ、反応結果を下述表に示す。

上述表において、炭酸プロピレンは28.6 mmolで、炭酸プロピレンの転化率、ジオールおよびメタノールの収率はいずれもガスクロマトグラフィーによってp-キシレンを内部標準として測定した。 上述表で示される反応結果から、塩基がない場合、ルテニウム錯体1aだけでは反応が生じなかったことがわかる。塩基の使用量は、反応効果にある程度の影響があり、使用量がルテニウム錯体の1〜2倍のモル当量の場合、効果が最も良く、好ましい。

実施例29:ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸プロピレンのトルエンにおける水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (1.8 mg、0.028 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(0.25 mg、0.028 mmol)、トルエン(20 mL)、炭酸プロピレン(2.92 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを100℃の油浴で加熱して撹拌し、10時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、原料の転化率が99%であった。メタノールおよびジオールの収率はいずれも99%であった。

実施例30:ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸プロピレンのジオキサンにおける水素化反応 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (1.8 mg、0.028 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(0.25 mg、0.028 mmol)、ジオキサン(20 mL)、炭酸プロピレン(2.92 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを100℃の油浴で加熱して撹拌し、10時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、原料の転化率が99%であった。メタノールおよびジオールの収率はいずれも99%であった。

実施例31: 異なる温度におけるルテニウム錯体1aが触媒する炭酸プロピレンの水素化反応 実施例11と類似の工程を使用し、ルテニウム錯体1aを触媒とし、異なる反応温度で、炭酸プロピレンの接触水素化を行い、反応結果を下述表に示す。

上述表において、炭酸プロピレンは28.6 mmolで、炭酸プロピレンの転化率、ジオールおよびメタノールの収率はいずれもガスクロマトグラフィーによってp-キシレンを内部標準として測定した。 上述表で示される反応結果から、異なる反応温度で、炭酸プロピレンが完全に転化するに必要な時間も異なることがわかる。比較的に高温では、反応物が比較的に短時間で完全に転化する。

実施例32: 異なる水素ガスの圧力におけるルテニウム錯体1aが触媒する炭酸プロピレンの水素化反応 実施例11と類似の工程を使用し、ルテニウム錯体1aを触媒とし、異なる水素ガスの圧力で、炭酸プロピレンの接触水素化を行い、100℃で2時間反応させ、反応結果を下述表に示す。

上述表において、炭酸プロピレンは28.6 mmolで、炭酸プロピレンの転化率、ジオールおよびメタノールの収率はいずれもガスクロマトグラフィーによってp-キシレンを内部標準として測定した。 上述表で示される反応結果から、ほかの反応条件が同様の場合、同じ反応時間内で、水素ガスの圧力を上げるのは、ルテニウム1aが触媒する炭酸プロピレンの水素化の加速に有利であることがわかる。

実施例33: ルテニウム錯体1aが触媒する炭酸ジフェニルの水素化反応によるメタノールおよびフェノールの製造 グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにルテニウム錯体1a (17.4 mg、0.0286 mmol)、カリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)、テトラヒドロフラン(10 mL)、炭酸ジフェニル(0.61 g、2.86 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、10時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、炭酸ジフェニルの転化率が100%で、メタノールの収率が95%で、フェノールの収率が99%であった。 従って、本実施例によって、この反応系でも有効にフェノール類で形成される炭酸ジエステルの水素化反応を触媒することによって、メタノールおよび相応のフェノール類産物を得ることができることが示された。

実施例34: 中性の条件におけるルテニウム錯体が触媒する炭酸プロピレンの水素化反応 不活性ガスの雰囲気において、ルテニウム錯体1a (17.4 mg、0.0286 mmol)とカリウム-t-ブトキシド(3.2 mg、0.0286 mmol)をテトラヒドロフラン(10 mL)で混合し、室温で30分間撹拌した後、減圧で溶媒を吸引乾燥し、さらにベンゼン(20 mL)を入れ、室温で10分間撹拌した後、ろ過し、ろ液を吸引乾燥して新しいルテニウム錯体を得た。グローブボックスにおいて、125 mLのオートクレーブにこの中性のルテニウム錯体、テトラヒドロフラン(20 mL)、炭酸プロピレン(2.92 g、28.6 mmol)を入れた。オートクレーブを封じた後、グローブボックスから出し、50 atmの水素ガスを導入した。オートクレーブを140℃の油浴で加熱して撹拌し、10時間反応させた。オートクレーブを氷水浴で1.5時間冷却した後、ゆっくり過剰の水素ガスを放出した。p-キシレンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーによって測定したところ、反応の転化率が99%であった。メタノールおよびジオールの収率はいずれも99%であった。 従って、本実施例によって、適切なルテニウム錯体は中性の条件でも有効に環状カーボネートの水素化反応を触媒し、且つメタノールおよび相応のジオールを得ることができることが示された。

各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。

QQ群二维码
意见反馈