【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は半金属基質の接触アルキル化によってアルキル化した有機半金属化合物、特に有機シランを高収率で生産する方法に関する。 アルキル化したクロロシラン類は有機合成反応において種々の用途を有する。 抗生物質、カルバペネム類、プロスタグラジン類等の薬物の製造におけるt−ブチルジメチルクロロシランの保護剤、特にOH−プロテクターとしての使用は周知である。 【0002】t−ブチルマグネシウムクロライドとジクロロメチルシランとの反応はM. タカミザワらによって米国特許第4593112号明細書に開示され、70% の収率でt−ブチルクロロシランを得ている。 後者の生成物をメチルマグネシウムクロライドで処理してt−ブチルジメチルシラン(98%)とし、これを塩素化して85%の収率でt−ブチルジメチルクロロシランを得る。 この多段工程反応の総括収率は低い(58%)。 【0003】THF中シアン化銅(I)の存在下にt− ブチルマグネシウムクロライドとジメチルジクロロシランとを反応させて74%の収率でt−ブチルジメチルクロロシランを得ることがA. シラハタ、Tetrahe dron Letters,30(46),6393− 6394(1989)に開示されている。 この収率は低く、高価な溶媒が用いられている。 【0004】イソプロピルマグネシウムクロライドとトリメチルクロロシランとの反応によってイソプロピルトリメチルシランを与える反応(収率は記載されていない)がA. シラハタによって米国特許第4818474 号明細書に開示されている。 このイソプロピルトリメチルシランの塩素化はα−クロロ−α,α−ジメチルトリメチルシランへの転位を引き起こす(収率は与えられていない)。 後者の化合物を塩化アルミニウムで処理することによって目的とするt−ブチルジメチルクロロシランが得られた。 この場合も低い総括収率での多段工程反応であることが明らかである(高価な溶媒)。 【0005】本発明は炭化水素溶媒中での一定の触媒もしくはプロト触媒(protocatalysts)の存在下に、炭化水素溶媒中で半金属基質をアルキル化することによってアルキル化した半金属化合物を高収率で生産する方法を提供する。 これらの方法はイソプロピル、t−ブチル、2−エチルヘキシル基等の嵩高いか高度に封鎖された(hindered)アルキル基が関与するアルキル化に特に有用である。 【0006】アルキルリチウム化合物を用いるアルキル−ハロゲン交換によってアルキル化される半金属基質はクロロシラン類である。 これらの反応は次の反応経路によって例示することができる。 ここでRはアルキル基であり、R1 、R 2及びR 3は水素、ハロゲン及び種々の炭素含有化合物から独立に選ばれる。 【0007】本発明の1つの面はアルキルリチウム化合物とクロロシランもしくはアルキル置換したクロロシランとを、反応体または反応混合物それ自体に加えた少量の一定の有機物質の存在下で反応させて、アルキル化したクロロシランを生産するための改良された方法を提供する。 これらの有機物質は反応を大巾に促進し、2分〜 7時間の時間内に約95%の程度でより完結した反応をもたらす。 この反応は炭化水素溶媒中で行われる。 これらの有機物質は触媒、またはプロト触媒、すなわち本発明の反応体のいずれかと反応して触媒に変わる物質と呼ぶことができる。 これらがどう呼ばれようと、これらの有機物質はより短い時間内でのより完全な反応をもたらし、また驚くべきほどに減少した副反応による不純物しかもたらさない。 【0008】本発明の実施に際しもっとも有用な触媒及 び/または触媒前駆体は下式の化合物である: (RR 1 R 2 M a ) y A(R 3 ) x (式中、R、R 1 及びR 2 は水素、ハロゲン、炭素数1 −13のアルキルまたはアルケニル基から独立に選ば れ、M a はケイ素、炭素、ゲルマニウム及びスズから選 ばれるIV族元素であり、Aは酸素、イオウ、窒素及び リンから選ばれ、x+yはAの原子価に等しく、x及び yは0−3の値を独立に有することができる)。 以後、 触媒またはプロト触媒と称するこれらの物質はビスヒド ロカルビルエーテル類、ビスシリルエーテル類、トリス ヒドロカルビルアミン類、ヒドロカルビルシリルアミン 類、トリス有機シリルアミン類、トリス有機ゲルミルホ スフィン類等を包含する。 式IIIの化合物のいくつか の例は次の如くである: 【0009】 a. クロロシラン類とアルコールもしく は金属アルコキシドとの反応によって生成するヒドロカ ルビルシリル及びビスシリルエーテル類、例えばクロロ ジメチルイソプロポキシシラン、t−ブチルジメチルイ ソプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラ ン、ジクロロメチルイソプロポキシシラン、ヘキサメチ ルジシロキサン等。 【0010】 b. 例えば環状及び非環状エーテル、対 称的及び非対称的ジアルキル、ジアリール及びアルキル アリールエーテル等のヒドロカルビルエーテル、これら は、限定されないが、ジメチルエーテル、ジエチルエー テル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン 及びテトラヒドロピラン、アニソール、メチル−t− ブ チルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジアミルエー テル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジ−n−オクチルエ ーテル、ジフェニルエーテル等を包含する。 他の有用な エーテルはグリコールエーテルタイプであり、例えばエ チレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレ ングリコール等のモノ及びジメチル、エチル及びブチル エーテルが挙げられる。 アセタール(1,1−エーテ ル)、例えばジメトキシメタン、ジエトキシメタンも有 用である。 これらの中で好ましいのはジエチルエーテ ル、ジ−n−オクチルエーテル、メチルt−ブチルエー テル等のジアルキルエーテルであり、もっとも好ましい のはメチルt−ブチルエーテルである。 【0011】 アルキルリチウムに対しエーテルの化学量 論量もしくはそれより大なる量の使用がクロロシラン類 をはじめとするいくつかの異なる基質に対するアルキル リチウムの反応性を実質上高めることが知られている が、触媒量の、すなわちアルキルリチウムの1モルあた り0.05モルより少ない程度の使用は知られていな い。 これらのエーテルの存在が反応に与える速度の向上 は全く予期せざることである。 アルキルリチウムに対し THF、n−オクチルエーテル等のエーテルの1モル% という少量の使用で200倍という高い向上率が得られ た(表1参照)。 他方、かかる反応におけるこれらのエ ーテルの化学量論量もしくはそれより大なる量の使用が 目的とする生成物の収率を劇的に減少させることが見い 出された(表2参照)。 従ってエーテルのかかる量はさ けるべきである。 【0012】 c. 例えば環状及び非環状3級アミン等 のトリスヒドロキシカルビルアミン類、具体的にはトリ エチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N, N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメ チルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、N −メチルアニリン等。 同様な3級ホスフィンも有用であ る。 【0013】 有機半金属化合物を生産するのに用いられ る触媒及び/または触媒前駆体は種々の方法で用いるこ とができる。 例えば、触媒または触媒前駆体は以下のよ うに 加えることができる: (a)反応混合物に直接、 (b)アルキルリチウム試薬に、または (c)クロロシラン試薬に。 【0014】 本発明の方法に有用な溶媒としては炭素数 4−8の飽和脂肪族炭化水素、炭素数6−9の飽和脂環 式炭化水素、炭素数6−9の芳香族炭化水素等の液状炭 化水素が好ましく、具体的には、限定されないが、ペン タン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、クメン、 トリエン等が挙げられる。 【0015】 すべての反応は不活性雰囲気下で行わなけ ればならない。 望まれる場合にはより高いかより低い圧 力を用いることも可能であるが、反応は大気圧下で行う のが好都合であり、好ましい。 もっともより高い圧力下 では溶媒としてプロパンやブタンを使用できる。 反応温 度は0−50℃に亘ることができ、好ましくは20−4 0℃の範囲である。 この好ましい温度範囲は反応中に生 じる不純物の量を制御するのに役立つ。 本発明の触媒及 びプロト触媒を用いる場合には、反応は十分に発熱的な ので、触媒不使用の反応では通常必要とされる熱の供給 は不要である。 【0016】 炭化水素溶媒反応媒体中で用いる触媒のモ ルパーセントは、用いるもしくは生成するアルキルリチ ウムに基づいて、一般に0.01−10モル%、好まし くは0.02−3.0モル%の範囲であり、約1モル% がもっとも好ましい。 この低いパーセンテージの使用に おいては、触媒の金属誘導体とクロロシランとの反応に よって生じる副生物が目的とする最終生産物中に殆ども しくは全く見られないので、最終生産物の回収及び精製 上有利である。 【0017】 表1に示される如く、半金属基質のアルキ ル化に触媒作用を及ぼすのにより好ましい触媒または触 媒前駆体は脂肪族エーテルである。 【0018】 反応体の相互比率は化学量論量にかなり近 くすることができ、一般的には必要 とされるアルキルリ チウムに対しクロロシランの約3モル%以下の過剰とす ればよい。 これは触媒を使用しない反応において必要と される5モル%と比較し得る。 反応生産物の総括濃度は 望まれるほど高くできるか、一般的には約1−2モル濃 度の程度である。 【0019】 本発明の触媒または触媒前駆体のいくつか は、半金属基質との反応速度を、該プロセスがバッチ反 応器のみならず連続反応器によっても行える程度にま で、促進する(表1参照)。 本発明の好ましい触媒を用 いて得られる生産物の収率は一般に少なくとも90%以 上であり、嵩高いアルキルリチウム化合物とクロロシラ ンとを反応させる場合には90−100%である。 さら に、後者の場合の反応の生産物の蒸留による回収率もよ り高い(90−100%)。 これは生成する不純物(副 生物)がより少なく、必要とされるクロロシラン反応体 がより少ないからである。 蒸留された生産物の純度は9 9%以上(99+%)である。 【0020】 本発明の方法において有用なシランは単純 なクロロシランSiCl x H 4−x (式中、xは1−4 の整数である)、例えばSiCl 4 、SiClH 3 、S iCl 2 H 2 等、アルキルクロロシランR x SiCl y 及び混合タイプR x SiCl y H z (式中、Rは炭素数 1−4の低級アルキル基であるが好ましくはメチル及び エチルであり、xは1−3の値を有し、y及びzは各々 1もしくは2の値を有し、y+zは2もしくは3に等し く、x+y+zはケイ素の原子価に等しい)、例えばR SiCl 3 、R 2 SiCl 2 、R 3 SiCl、R 2 Si ClHであることができる。 【0021】 有機半金属基質との反応において有用な有 機リチウム化合物は式RLi(式中、Rは炭素数3−1 2のアルキル基である)を有し、具体的には、限定され ないが、イソブチルリチウム、sec−ブチルリチウ ム、tert−ブチルリチウム、ネオペンチルリチウ ム、2−エチルヘキシルリチウム、n−ヘキシルリチウ ム、n−オクチルリチウム、イソプロピルリチウム等を 包含する。 好ましくは、アルキルリチウム化合物は炭素 数3−6を有し、もっとも好ましくはイソプロピル リチ ウム、tert−ブチルリチウム、イソブチルリチウム 及びsec−ブチルリチウムから選ばれる。 【0022】 本発明方法によって生産される最終生成物 は、限定されないが、式R 1 SiCl 3 、(R 1 ) 2 S i(Cl) 2 、RR 1 SiCl 2 、R 2 R 1 SiCl、 R 3 R 1 Si、R 1 SiH 3 、RR 1 SiClH、(R 1 ) 2 SiClH等(式中、Rは炭素数1−4を有し、 R 1 は炭素数3−12を有する)によって表わされる化 合物を包含する。 本発明によって製造し得る化合物は、 限定されないが、t−ブチルジメチルクロロシラン、メ チルトリ−n−オクチルシラン、ジ−t−ブチルシラ ン、ジ−t−ブチルジクロロシラン、メチル−tert −ブチルクロロシラン等の化合物を包含する。 圧力や攪 拌の特別の条件は本発明方法を実施するのに必要とされ ない。 すべての反応は不活性雰囲気下で行うべきであ る。 【0023】 以下の実施例は本発明をさらに説明する。 他に注記がない場合には、温度はセ氏度であり、反応 は、清潔で注意深く乾燥した器具を用いて、大気圧下及 びアルゴン雰囲気下で行った。 転換の反応速度は単純ガ スクロマトグラフ分析(sinply gas chr omatographic analysis)と称せ られるガス−液体クロマトグラフィー(GLC)分析に よって少量の反応混合物試料を分析することによって監 視した。 【0024】 実施例1 1モルパーセントのTHFを用いるt−ブチルジメチル クロロシラン(TBDMCS)の合成 還流冷却器、攪拌手段を備えた反応器に(アルゴン下 に)ジメチルジクロロシラン(DMDCS)131.9 g(1.02モル)、ペンタン100ml及びテトラヒ ドロフラン(THF)0.813g(11.2ミリモ ル)を入れた。 次に、ペンタン中の15.96wt%t −ブチルリチウム401g(1.00モル)を添加漏斗 に入れた。 反応器へのt−ブチルリチウムの滴下により 反応を17.9℃の温度で開始した。 反応は発熱的で直 ちに白色沈殿が生成した。 徐々の供給 の12分後に反応 温度は27.6℃に達し、全t−ブチルリチウム供給の 約15%を加えた40分後には反応は一定の還流(4 0.2℃)に達した。 t−ブチルリチウムの残りを供給 する間(2時間55分)、外部からの加熱なしに反応混 合物は還流下に保たれた。 t−ブチルリチウム供給の終 了5分後に採取した試料のGC分析はジメチルジクロロ シランのt−ブチルジメチルクロロシランへの変換率が 97.4%であることを示した。 還流が終了した事実も 反応の終了を示しており、t−ブチルリチウム供給の終 了後、反応温度は直ちに低下し始めた。 反応混合物をさ らに数時間攪拌した。 【0025】 反応混合物をガラスフィルター漏斗に移 し、濾過した。 固体濾過残渣をペンタン50mlずつで 4回洗浄し、主濾液と合した。 20分で合計465.6 gの澄明な濾液を得た。 濾液の分別蒸留によって合計で 128.7gのt−ブチルジメチルクロロシランを得 た。 回収収率は用いたt−ブチルリチウムに基づいて8 5.4%であり、蒸留した生産物の純度は98.9%で あった。 ガスクロマトグラフ分析によるとジメチルジク ロロシランのt−ブチルジメチルクロロシランへの変換 率は3時間後で100%であったが、これはt−ブチル リチウム供給速度とほぼ等しかった。 【0026】 実施例2 1モルパーセントのジ−n−ヘキシルエーテルを用いる TBDMCSの合成 ジ−n−ヘキシルエーテル2.23g(11.3ミリモ ル)、ジメチルジクロロシラン124.0g(0.96 0モル)及びペンタン150mlを反応器に入れ、1 5.19wt% t−ブチルリチウム397.9g (0.944モル)を添加漏斗に入れたことを除いて実 施例1を繰り返した。 濾過した最終生産物の分別蒸留に よって129.3gのt−ブチルジメチルクロロシラン を得たが、このことは用いたt−ブチルリチウムに基づ く回収収率が90.9%であることを示す。 ガスクロマ トグラフ分析によるとジメチルジクロロシランのt−ブ チルジメチルクロロシランへの変換率は4時間前で10 0%であった。 この場合も、変換は急速でt−ブチルリ チウム供給速度(3時間21分)にほとんど等しかっ た。 蒸留生産物の純度は99.6%であった。 【0027】 実施例3 触媒スクリーニング手順 この触媒スクリーニングまたは評価手順は触媒を用いな いt−ブチルジメチルクロロシラン合成を行うことを含 んでいた。 ジクロロジメチルシランからt−ブチルジメ チルクロロシランへの変換速度をGLC分析により求め るために反応混合物から試料を同期的に採取した。 分析 後、各試料に少量の(通常t−ブチルリチウムに基づき 1−3モル%の)可能性のある触媒または触媒前駆体を 加えた。 触媒不使用反応に対する相対変換速度を求める ため、これらの試料もGLCによって周期的に分析し た。 このようにして、通常4つまたは5つの候補触媒化 合物を1日に評価できた。 【0028】 実施例1の反応器に比べわずかに小さいが 同様に装備した反応器にペンタン中の12.7wt% t−ブチルリチウム50ml(0.066モル)及びジ クロロジメチルシラン9.6g(0.074モル)を入 れた。 反応中反応体を連続攪拌したが加熱はしなかっ た。 25分後、反応混合物2mlを、予め乾燥し、アル ゴンパージした、ゴム隔膜でふたをした5ml血清びん に、注射器によって、移した。 GLC分析のためびんか ら1μlの溶液を取り出し、ついでびんの内容物にマイ クロリッター注射器によって潜在的触媒(0.07ミリ モル水)を加えた。 血清びんの内容物をGLCによって 時々分析して変換速度に対する添加物の影響を求めた。 種々の炭化水素溶媒反応媒体及び候補触媒もしくはプロ ト触媒を用いてこの操作を何度も繰り返した。 各反応を GLCによって監視し、触媒を使用しない反応と比較し た。 【0029】 触媒スクリーニングの結果は非触媒反応に 対する相対変換速度として計算した。 これらのデータ及 び評価した化合物を表1に示す。 【0030】 実施例4 触媒としてジ−n−ヘキシルエーテル(0.05モル %)を用いるt−ブチルトリクロロシランの合成 実施例1の反応器と同様に装備した反応器に四塩化ケイ 素603.3g(3.55モル)及びヘキサン150m lを入れた。 ついで、ペンタン中のt−ブチルリチウム 1258g(3.47モル)を添加漏斗に入れた。 反応 器へt−ブチルリチウムを徐々に添加することによって 反応を室温(23.8℃)で開始させた。 四塩化ケイ素 の水分含量により温度が急激に29.6℃まで上昇した が、その後降下し始めた。 t−ブチルリチウムのさらな る添加によって温度は上昇しなかったが、このことは反 応が遅いことを示している。 t−ブチルリチウムを継続 的に加えながら、反応混合物を53.7℃(還流)に加 熱した。 次の時間の間加熱を続けたが、その時点で全t −ブチルリチウム仕込みの約11%が供給されていた。 還流を維持するために加熱を必要とすることによって示 される如く、高められた温度でも反応速度は依然として 遅かった。 t−ブチルリチウム供給及び加熱を止め、還 流(50.8℃)よりちょっと低くなるまで反応混合物 を放冷した。 【0031】 ついで、反応器内容物にジ−n−ヘキシル エーテル(DHE)0.4ml(1.5ミリモル)を加 えた。 反応混合物温度は速やかに上昇して還流温度(5 1.5℃)になり、還流はさらに27分続いた。 さらに 9時間49分かけて残りのt−ブチルリチウムを供給し た(滴下)。 この間、反応速度はt−ブチルリチウム供 給速度に殆ど等しく、また還流を支えるのに加熱を必要 としなかった。 しかしながら、t−ブチルリチウム供給 を止めると温度は急激に低下し、還流は低下した。 より 速い反応速度は少量(用いたt−ブチルリチウムに基づ いて0.043モル%)のDHE触媒に帰することがで きる。 反応混合物を放冷し、攪拌なしに一夜放置した。 反応混合物をガラス濾過漏斗に移し、濾過して固体の塩 化リチウムを除いた。 ペンタン100mlずつで固体濾 過残渣を洗浄し、洗液を主濾液と合した。 8分間で合計 1811.9gの澄明な濾液が得られた。 分別蒸留によ って合計631.6gのt−ブチルトリクロロシランが 得られた。 回収(単離)収率は用いたt−ブチルリチウ ム量に基づいて95%であり、蒸留生産物の純度は9 9.7%であった。 【0032】 比較例 A. 触媒を用いないt−ブチルジメチルクロロシラン 合成 触媒を用いない比較実験も行った。 実施例1の反応器と 同様に装備した反応器に(アルゴン下)DMDCS 5 4.9g(0.425モル)及びペンタン75mlを入 れた。 ついで、ペンタン中t−ブチルリチウムの20. 7wt%溶液124.8g(0.403モル)を添加漏 斗に入れた。 反応器の内容物を36℃に予め加熱し、t −ブチルリチウムの徐々の添加を開始した。 反応温度を 38と41℃の間に維持するため加熱をさらに7時間続 けた。 反応中は反応混合物を連続的に攪拌した。 t−ブ チルリチウムの添加は2時間23分で終了した。 さらに 141時間攪拌下加熱することなく反応を続けた。 時々 試料を取ってGC分析に付すことにより反応を監視し た。 【0033】 反応混合物をガラス濾過漏斗に移し、濾過 した。 固体濾過残渣をペンタン100mlずつで2回洗 浄した。 GLC分析はt−ブチルジメチルクロロシラン の95.6%収率を示した。 ガスクロマトグラフ分析に よるとジメチルジクロロシランのt−ブチルジメチルク ロロシランへの変換率は70時間で90%であり、14 8時間で100%であった。 【0034】 B−D. 大量のエーテルを用いるt−ブ チルジメチルクロロシラン合成 大量(エーテル/t−ブチルリチウム モル比範囲=1 −3.6)のエーテルを用いることを除き、実施例3を 数回繰り返した。 用いた試薬及び結果を表2に示す。 各 実験における濾過残渣は収率低下の原因となるケイ素ポ リマーを含有していた。 かくの如く、化学量論量以上の エーテルの使用はTBSCLの収率を大巾に低下させ、 他方、触媒量のエーテルの使用は予期せざることにより 高い収率をもたらし、また反応を大巾に促進した。 【0035】 E. 触媒を用いないt−ブチルトリクロ ロシラン合成 触媒を用いないt−ブチルトリクロロシランの比較合成 を行った。 実施例1の反応器と同様に装備した反応器に (アルゴン下)四塩化ケイ素181.98g(1.07 モル)及びヘキサン200mlを入れた。 ついで、添加 漏斗にペンタン中t−ブチルリチウムの20.3wt% 溶液328g(1.04モル)を入れた。 反応器の攪拌 した内容物にt−ブチルリチウム75mlを加えること により反応を開始した。 2時間での温度のほんのわずか な上昇(24.0℃から25.7℃)及び塩化リチウム が殆どもしくは全く出現しないことによって示される如 く、反応は非常に遅かった。 ついで反応器内容物を還流 (57.3℃)に加熱したところ、反応混合物は塩化リ チウムにより徐々に濁り始めた。 このことは少なくとも ある程度反応が起こったことを示す。 残余のt−ブチル リチウム溶液を3時間2分かけて添加し、その間定常的 な還流下に反応温度を保つべく加熱した。 反応混合物を さらに数時間加熱(還流)し、ついで週末に亘って攪拌 放置した。 反応混合物の活性炭素リチウム分析はこの時 点でt−ブチルリチウムが残存していないことを示し た。 【0036】 反応混合物をガラスフィルター漏斗に移 し、濾過して固体塩化リチウムを除去した。 濾過によっ て合計638.3gの澄明な淡黄色溶液を得た。 濾液を 分別蒸留してt−ブチルトリクロロシラン124.3g (0.649モル)を得た。 回収収率は用いたt−ブチ ルリチウムの量に基づいて62.4%であった。 主カッ トの純度は98.9%であった。 【0037】 本発明を実施するのに有用な炭化水素は液 状の脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素である。 これら は、限定されないが、イソペンタン、ペンタン、ヘキサ ン、シクロヘキサン、ヘプタン、2−エチルヘキサン、 オクタン及びこれらの混合物を包含する。 【0038】 【発明の効果】 アルキルリチウム化合物とクロロシラン 類との反応によってクロロシラン類をアルキル化する方 法において、本文中に示すエーテル類をはじめとする種 々の触 媒またはプロト触媒の触媒量での存在下に、該反 応を行うことにより、収率を向上させ、かつ反応時間を 大巾に短縮することができる。 【0039】 【表1】 【0040】 【表2】 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ボブ トロイ ドーバー アメリカ合衆国ノース カロライナ州 28086 キングス マウンティン ロン グ ブランチ ロード 214 (72)発明者 コンラド ウィリアム カミンスキー アメリカ合衆国ノース カロライナ州 28054 ガストニア イーストウッド ドライブ 516 (72)発明者 ジョン フランシス エンジェル アメリカ合衆国ノース カロライナ州 28012 ベルモント ピンクニィー ド ライブ 5024 |