新規なカルコゲン含有有機化合物およびその用途

申请号 JP2014500745 申请日 2013-02-20 公开(公告)号 JPWO2013125599A1 公开(公告)日 2015-07-30
申请人 Jnc株式会社; Jnc株式会社; 发明人 純一 竹谷; 純一 竹谷; 岡本 敏宏; 敏宏 岡本; 太宇人 中西; 太宇人 中西;
摘要 [課題]合成が容易であり、化学的安定性に優れ、半導体特性(高いキャリア移動度)を有し、かつ溶媒に対する高い溶解性を有する有機化合物を提供する。[解決手段]式(1)または式(2)で表される化合物。[式(1)中、Xは酸素、硫黄またはセレンであり;nは0または1であり;R1〜R3は 水 素、フッ素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリル等であり、ただし、Xがセレンの場合を除き、全てのR1〜R3が同時に水素であることはなく、また、Xが硫黄であり、かつ全てのR1が同時にブチルであることはない。式(2)中、Xは酸素、硫黄またはセレンであり;nは0または1であり;R1〜R2は水素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリル等であり;ただし、全てのR1〜R2が同時に水素であることはない。]
权利要求

式(1)で表される化合物。 [式(1)中、 Xは、酸素、硫黄またはセレンであり; 2つあるnは、それぞれ独立に0または1であり; R1〜R3は、それぞれ独立に素、フッ素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルであり、前記アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよく; ただし、Xがセレンの場合を除き、全てのR1〜R3が同時に水素であることはなく、また、Xが硫黄であり、かつ全てのR1が同時にブチルであることはない。]式(1)において、要件(A)および(B)が満たされる、請求項1に記載の化合物: (A)全てのR1〜R2が水素であること。 (B)Xがセレンの場合を除き、全てのR3が同一の原子または基であることはないこと。式(1−1)または式(1−2)で表される、請求項2に記載の化合物。 [式(1−1)および式(1−2)中、 Xおよびnは、それぞれ式(1)中の同一記号と同義であり; 2つあるR3は、それぞれ独立にフッ素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルであり、前記アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも一つの水素はハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよい。]式(1−1)および式(1−2)中のR3が、炭素数4〜15のアルキル、フェニル、フリルおよびチエニルから選択される同一の基である、請求項3に記載の化合物。式(2)で表される化合物。 [式(2)中、 Xは、酸素、硫黄またはセレンであり; 2つあるnは、それぞれ独立に0または1であり; R1〜R2は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルであり、前記アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよく; ただし、全てのR1〜R2が同時に水素であることはない。]式(2)において、全てのR2が水素である、請求項5に記載の化合物。式(2−1)で表される、請求項6に記載の化合物。 [式(2−1)中、 Xおよびnは、それぞれ式(2)中の同一記号と同義であり; 2つあるR1は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルであり、前記アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよい。]式(2−1)中のR1が、炭素数6〜15のアルキル、フェニル、フリル、チエニルおよびチアゾリルから選択される同一の基である、請求項7に記載の化合物。式(11)で表される化合物をカップリングさせて、式(12)で表される化合物を得る工程;式(12)で表される化合物のメトキシを脱保護させて、式(13)で表される化合物を得る工程;式(13)で表される化合物とN,N−ジアルキルチオカルバモイルクロリドまたはN,N−ジアルキルセレノカルバモイルクロリドとを反応させて、式(14)で表される化合物を得る工程;および式(14)で表される化合物を加熱することにより、式(15)で表される化合物を得る工程を有する、請求項1に記載の化合物(ただし、X=硫黄またはセレン)の製造方法。 [式(11)〜(15)中、Xは硫黄またはセレンであり、nおよびR1〜R3はそれぞれ式(1)中の同一記号と同義であり、Meはメチルであり、式(14)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキルである。]式(11)で表される化合物をカップリングさせて、式(12)で表される化合物を得る工程;式(12)で表される化合物のメトキシを脱保護させて、式(13)で表される化合物を得る工程;式(13)で表される化合物とトリフルオロメタンスルホニルクロリドまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物とを反応させて、式(16)で表される化合物を得る工程;式(16)で表される化合物をボラン類とカップリングすることにより、式(17)で表されるボロン酸エステルを得る工程;式(17)で表されるボロン酸エステルを臭化銅で臭素化して、式(18)で表される化合物を得る工程;および式(18)で表される化合物をリチオ化した後、塩化セレンと反応させることにより、式(15)で表される化合物を得る工程を有する、請求項1に記載の化合物(ただし、X=セレン)の製造方法。 [式(11)〜(13)および式(15)〜(18)中、Xはセレンであり、nおよびR1〜R3はそれぞれ式(1)中の同一記号と同義であり、Meはメチルであり、式(17)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキルである。]式(11)で表される化合物をカップリングさせて、式(12)で表される化合物を得る工程;式(12)で表される化合物のメトキシを脱保護させて、式(13)で表される化合物を得る工程:および式(13)で表される化合物をゼオライト触媒下、加熱脱水することにより、式(15)で表される化合物を得る工程を有する、請求項1に記載の化合物(ただし、X=酸素)の製造方法。 [式(11)〜(13)および(15)中、Xは酸素であり、nおよびR1〜R3はそれぞれ式(1)中の同一記号と同義であり、Meはメチルである。]式(27)で表される化合物を臭素化して、式(28)で表される化合物を得る工程;および式(28)で表される化合物とクロスカップリング反応剤とを反応させて、式(29)で表される化合物を得る工程を有する、請求項7に記載の化合物の製造方法。 [式(27)〜(29)中、X、nおよびR1はそれぞれ式(2−1)中の同一記号と同義である。]請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物からなる有機半導体材料。請求項13に記載の有機半導体材料を含む有機半導体膜。基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極および有機半導体層を有する有機電界効果トランジスタであって、前記有機半導体層が請求項14に記載の有機半導体膜で構成される有機電界効果トランジスタ。

说明书全文

本発明は、新規なカルコゲン含有有機化合物およびその用途に関する。さらに詳しくは、新規なカルコゲン含有有機化合物およびその製造方法、前記有機化合物からなる有機半導体材料、前記有機半導体材料を含む有機半導体膜、ならびに前記有機半導体膜を有する有機電界効果トランジスタ(FET)に関する。

近年、半導体特性を有する有機化合物が注目されている。その中でも、ペンタセンおよびテトラセン等のポリアセン化合物は、その高いキャリア移動度から、有機半導体材料として古くから知られている。なお、本明細書において、「キャリア移動度」は、電子移動度および正孔移動度を含む広義の意味で用いる。

しかしながら、公知のポリアセン化合物は、溶媒に対する溶解性が低いため、塗布法または印刷法等による膜形成が困難である。したがって、製造コストのかかる蒸着プロセスで半導体特性を有する素子(以下「素子」ともいう。)を作製せざるを得ない。さらに、公知のポリアセン化合物は、耐酸化性等の化学的安定性にも問題があり、産業上の実用性という観点では難しい材料である。

そこで、溶解性や化学的安定性を改善するために、アセン骨格に種々の置換基を導入した化合物が検討されている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。さらに、アセン骨格の一部に硫黄やセレン等のカルコゲンを導入した化合物、例えば、ジベンゾチエノチオフェン(BTBT)やジナフトチエノチオフェン(DNTT)等も既に検討されている(例えば、特許文献2〜3参照)。

上記特許文献によると、上記化合物において、高いキャリア移動度を維持しつつ、化学的安定性を改善することに成功している。しかしながら、これらは直線型でかつ対称性が高い分子構造を有するため、アルキル基等の置換基を導入しても溶解性が必ずしも充分ではない等の問題を抱えている。また、上記化合物は、分子構造の複雑化に伴い、高価な原料や環境への負荷が高い反応剤を用い、かつ多段階の合成を経て、ようやく合成することができる。

このように、これまでに半導体特性を有する有機化合物が種々開発されている。しかしながら、化学的安定性に優れ、溶媒に対する高い溶解性を有し、かつ高いキャリア移動度を有する有機化合物(例えば、溶液の状態で塗布または印刷することが可能であり、トランジスタ作製等の広範な用途に適用可能な材料である。)の開発は、未だ充分になされていない。

そこで、直線型よりも対称性の低い非直線型分子を基本骨格とする有機半導体材料が、近年注目されている。具体的には、ジナフトフラン、ジナフトチオフェン、ジアントラフランおよびジアントラチオフェン等のV字型あるいはU字型の構造を有する化合物が挙げられる。これらの基本骨格(無置換体)は既に公知である(例えば、特許文献4〜5、非特許文献2〜6参照)。しかしながら、これらの化合物は、化学的および熱的安定性に優れているものの、溶媒に対する溶解性に乏しいという問題がある。

また、上記骨格に置換基を導入した化合物も、既に数例開示されている(例えば、特許文献6および非特許文献7参照)。特許文献6には、アルキル基やフェニル基が4〜12個導入されたジナフトチオフェン誘導体、およびこの誘導体を含む有機膜に言及されている。しかしながら、前記誘導体の合成例は全く開示されておらず、いわゆる当業者が前記誘導体の製造方法を理解し得る程度の記載もなく、前記誘導体が特許文献6に開示されているとは実質的にいえない。また、前記誘導体の溶媒に対する溶解性、前記誘導体を含む溶液の塗布性、前記誘導体の半導体特性も何ら検証されておらず、置換基導入による効果も不明である。加えて、アルキル基やフェニル基が1〜3個導入されたジナフトチオフェン誘導体については、化合物自体何ら開示されていない。さらに、非特許文献7には、下記式で表されるジアントラチオフェン誘導体が開示されているが、同様に半導体特性は何ら検証されていない。

(式中、Buはブチルである。)

国際公開第2005/80304号パンフレット

国際公開第2006/77888号パンフレット

国際公開第2008/50726号パンフレット

特表2008−545729号公報

国際公開第2010/36765号パンフレット

特開2007−197400号公報

Journal of the American Chemical Society, 2001年,123巻,9482頁

Bulletin des Societes Chimiques Belges, 1956年,65巻,874頁

Journal of the Chemical Society, 1959年,1670頁

Journal of the Chemical Society, 1928年,1148頁

Chemische Berichte, 1880年,13巻,1725頁

Org Lett, 2012年,14巻,78頁

Org Lett, 2009年,11巻,3702頁

合成が容易であり、化学的安定性に優れ、半導体特性(高いキャリア移動度)を有し、かつ溶媒に対する高い溶解性を有する有機化合物は、当該有機化合物を含む溶液を用いることによって、塗布法または印刷法等の方法で膜形成が可能となることから、その利用価値が非常に大きい。

すなわち本発明の課題は、合成が容易であり、化学的安定性に優れ、半導体特性(高いキャリア移動度)を有し、かつ溶媒に対する高い溶解性を有する有機化合物、前記有機化合物の製造方法、前記有機化合物からなる有機半導体材料、前記有機半導体材料を含む有機半導体膜、ならびに前記有機半導体膜を有する有機電界効果トランジスタ(FET)を提供することにある。

本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成を有する新規なカルコゲン含有有機化合物によって、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。

すなわち本発明は、以下の[1]〜[15]に関する。

[1]式(1)で表される化合物。

[式(1)中、Xは、酸素、硫黄またはセレンであり;2つあるnは、それぞれ独立に0または1であり;R1〜R3は、それぞれ独立に素、フッ素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルであり、前記アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよく;ただし、Xがセレンの場合を除き、全てのR1〜R3が同時に水素であることはなく、また、Xが硫黄であり、かつ全てのR1が同時にブチルであることはない。]

[2]式(1)において、要件(A)および(B)が満たされる、前記[1]に記載の化合物:(A)全てのR1〜R2が水素であること。(B)Xがセレンの場合を除き、全てのR3が同一の原子または基であることはないこと。 [3]式(1−1)または式(1−2)で表される、前記[2]に記載の化合物。

[式(1−1)および式(1−2)中、Xおよびnは、それぞれ式(1)中の同一記号と同義であり;2つあるR3は、それぞれ独立にフッ素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルであり、前記アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも一つの水素はハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよい。] [4]式(1−1)および式(1−2)中のR3が、炭素数4〜15のアルキル、フェニル、フリルおよびチエニルから選択される同一の基である、前記[3]に記載の化合物。

[5]式(2)で表される化合物。

[式(2)中、Xは、酸素、硫黄またはセレンであり;2つあるnは、それぞれ独立に0または1であり;R1〜R2は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルであり、前記アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよく;ただし、全てのR1〜R2が同時に水素であることはない。]

[6]式(2)において、全てのR2が水素である、前記[5]に記載の化合物。 [7]式(2−1)で表される、前記[6]に記載の化合物。

[式(2−1)中、Xおよびnは、それぞれ式(2)中の同一記号と同義であり;2つあるR1は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルであり、前記アルキル中の少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素はハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよい。]

[8]式(2−1)中のR1が、炭素数6〜15のアルキル、フェニル、フリル、チエニルおよびチアゾリルから選択される同一の基である、前記[7]に記載の化合物。

[9]式(11)で表される化合物をカップリングさせて、式(12)で表される化合物を得る工程;式(12)で表される化合物のメトキシを脱保護させて、式(13)で表される化合物を得る工程;式(13)で表される化合物とN,N−ジアルキルチオカルバモイルクロリドまたはN,N−ジアルキルセレノカルバモイルクロリドとを反応させて、式(14)で表される化合物を得る工程;および式(14)で表される化合物を加熱することにより、式(15)で表される化合物を得る工程を有する、前記[1]に記載の化合物(ただし、X=硫黄またはセレン)の製造方法。

[式(11)〜(15)中、Xは硫黄またはセレンであり、nおよびR1〜R3はそれぞれ式(1)中の同一記号と同義であり、Meはメチルであり、式(14)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキルである。]

[10]式(11)で表される化合物をカップリングさせて、式(12)で表される化合物を得る工程;式(12)で表される化合物のメトキシを脱保護させて、式(13)で表される化合物を得る工程;式(13)で表される化合物とトリフルオロメタンスルホニルクロリドまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物とを反応させて、式(16)で表される化合物を得る工程;式(16)で表される化合物をボラン類とカップリングすることにより、式(17)で表されるボロン酸エステルを得る工程;式(17)で表されるボロン酸エステルを臭化銅で臭素化して、式(18)で表される化合物を得る工程;および式(18)で表される化合物をリチオ化した後、塩化セレンと反応させることにより、式(15)で表される化合物を得る工程を有する、前記[1]に記載の化合物(ただし、X=セレン)の製造方法。

[式(11)〜(13)および式(15)〜(18)中、Xはセレンであり、nおよびR1〜R3はそれぞれ式(1)中の同一記号と同義であり、Meはメチルであり、式(17)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキルである。]

[11]式(11)で表される化合物をカップリングさせて、式(12)で表される化合物を得る工程;式(12)で表される化合物のメトキシを脱保護させて、式(13)で表される化合物を得る工程:および式(13)で表される化合物をゼオライト触媒下、加熱脱水することにより、式(15)で表される化合物を得る工程を有する、前記[1]に記載の化合物(ただし、X=酸素)の製造方法。

[式(11)〜(13)および(15)中、Xは酸素であり、nおよびR1〜R3はそれぞれ式(1)中の同一記号と同義であり、Meはメチルである。]

[12]式(27)で表される化合物を臭素化して、式(28)で表される化合物を得る工程;および式(28)で表される化合物とクロスカップリング反応剤とを反応させて、式(29)で表される化合物を得る工程を有する、前記[7]に記載の化合物の製造方法。

[式(27)〜(29)中、X、nおよびR1はそれぞれ式(2−1)中の同一記号と同義である。]

[13]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の化合物からなる有機半導体材料。 [14]前記[13]に記載の有機半導体材料を含む有機半導体膜。 [15]基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極および有機半導体層を有する有機電界効果トランジスタであって、前記有機半導体層が前記[14]に記載の有機半導体膜で構成される有機電界効果トランジスタ。

本発明によれば、合成が容易であり、化学的安定性に優れ、半導体特性(高いキャリア移動度)を有し、かつ溶媒に対する高い溶解性を有する有機化合物、前記有機化合物の製造方法、前記有機化合物からなる有機半導体材料、前記有機半導体材料を含む有機半導体膜、ならびに前記有機半導体膜を有する有機電界効果トランジスタ(FET)を提供することができる。

図1は、(a)ボトムゲート−トップコンタクト型,(b)ボトムゲート−ボトムコンタクト型、(c)トップゲート−トップコンタクト型,(d)トップゲート−ボトムコンタクト型の有機電界効果トランジスタ(FET)の断面図である。

図2は、エッジキャスト法による製膜の概略を示す図である。

図3は、ギャップキャスト法による製膜の概略を示す図である。

図4は、実施例7で合成した化合物のFET特性を示す図である。

図5は、合成化合物(溶液)のUV−Vis吸収スペクトルである。

図6は、合成化合物(膜)のUV−Vis吸収スペクトルである。

以下、本発明について詳細に説明する。 〔カルコゲン含有有機化合物〕 本発明のカルコゲン含有有機化合物は、式(1)または式(2)で表される化合物であり、カルコゲンの架橋部分(−X−)を屈曲点としてベンゼン環が両翼に連なった、V字型(式(1))またはU字型(式(2))の構造を持ち、ベンゼン環上の任意の位置に置換基を有する。なお、本明細書において、「置換基」とは、水素以外の原子または基を意味する。

以下、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」ともいい、式(2)で表される化合物を「化合物(2)」ともいい、化合物(1)および化合物(2)を総称して「本発明の化合物」ともいう。また、その他の式(i)で表される化合物も「化合物(i)」(iは式番号である。)ともいう。

式(1)中、各記号の意味は以下のとおりである: Xは、酸素、硫黄またはセレンであり、本発明の化合物が高いキャリア移動度を示すことから、酸素または硫黄が好ましく、硫黄が特に好ましい。 2つあるnは、それぞれ独立に0または1であり、好ましくは0である。

R1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素、フッ素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル(フラン環)、チエニル(チオフェン環)またはチアゾリル(チアゾール環)である。前記アルキル中の少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよい。前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンおよび炭素数1〜10(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3)のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよい。なお、R1、R2およびR3の規定における「それぞれ独立に」とは、R1、R2およびR3が相互に同一でも異なってもよいだけでなく、複数あるR1が相互に同一でも異なってもよく、複数あるR2が相互に同一でも異なってもよく、複数あるR3が相互に同一でも異なってもよいことを意味する。

式(1)においてnがいずれも0の場合は、12位と13位の炭素に結合した原子または基は同一であることが好ましく、また、1位と11位、2位と10位、3位と9位、4位と8位、5位と7位の炭素に結合した原子または基も、同様に、それぞれ同一であることが好ましい。

式(1)においてnがいずれも1の場合は、15位と16位の炭素に結合した原子または基は同一であることが好ましく、また、14位と17位、1位と13位、2位と12位、3位と11位、4位と10位、5位と9位、6位と8位の炭素に結合した原子または基も、同様に、それぞれ同一であることが好ましい。

ただし、Xがセレンの場合を除き、全てのR1〜R3が同時に水素であることはない。 また、Xが硫黄であり、かつ全てのR1が同時にブチルであることはない。

式(1)において、要件(A)および(B)が満たされることが好ましい。 (A)全てのR1〜R2が水素であること。 (B)Xがセレンの場合を除き、全てのR3が同一の原子または基であることはないこと。

式(2)中、各記号の意味は以下のとおりである: Xは、酸素、硫黄またはセレンである。 2つあるnは、それぞれ独立に0または1であり、好ましくは0である。

R1およびR2は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル(フラン環)、チエニル(チオフェン環)またはチアゾリル(チアゾール環)である。前記アルキル中の少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよい。前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンおよび炭素数1〜10(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3)のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよい。なお、R1およびR2の規定における「それぞれ独立に」とは、R1およびR2が相互に同一でも異なってもよいだけでなく、複数あるR1が相互に同一でも異なってもよく、複数あるR2が相互に同一でも異なってもよいことを意味する。 ただし、全てのR1〜R2が同時に水素であることはない。

式(2)においてnがいずれも0の場合は、1位と13位の炭素に結合した原子または基は同一であることが好ましく、また、2位と12位、3位と11位、4位と10位、5位と9位、6位と8位の炭素に結合した原子または基も、同様に、それぞれ同一であることが好ましい。

式(2)においてnがいずれも1の場合は、1位と15位の炭素に結合した原子または基は同一であることが好ましく、また、2位と14位、3位と13位、4位と12位、5位と11位、6位と10位、7位と9位、16位と17位の炭素に結合した原子または基も、同様に、それぞれ同一であることが好ましい。

式(2)において、全てのR2が水素であることが好ましい。

式(1)〜(2)中、R1〜R3として列挙される炭素数1〜20のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ウンデシルおよびオクタデシルが挙げられる。アルキルの炭素数は、本発明の化合物の溶媒への高い溶解性と、分子間の電子雲の重なりやすさとの両立の点から、好ましくは4〜15であり、より好ましくは4〜12であり、特に好ましくは6〜12である。アルキルは、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよく、結晶中における分子配列の観点から、直鎖状であることが好ましい。

前記アルキル中の少なくとも1つの水素をフッ素で置き換えてなる基としては、トリフルオロメチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルおよびパーフルオロデシル等のアルキル中の全ての水素がフッ素に置き換えられた基;トリフルオロエチル、1H,1H−パーフルオロヘキシル、1H,1H−パーフルオロオクチルおよび1H,1H−パーフルオロデシル等の芳香環に直結した炭素に結合した水素のみがフッ素に置き換えられておらず、他の全ての水素がフッ素に置き換えられた基が挙げられる。

式(1)〜(2)中、R1〜R3として列挙されるアリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル(例:1−ナフチル、2−ナフチル)、フルオレニル(例:2−フルオレニル)およびビフェニルが挙げられる。アリールの炭素数は、好ましくは6〜14であり、より好ましくは6〜10である。これらの中でも、フェニルが特に好ましい。 式(1)〜(2)中、R1〜R3として列挙されるピリジルとしては、例えば、2−ピリジル、3−ピリジルおよび4−ピリジルが挙げられる。

前記アリールの環上の少なくとも1つの水素を炭素数1〜10のアルキルで置き換えてなる基としては、例えば、トリルおよびキシリルが挙げられる。前記アリールの環上の少なくとも1つの水素をハロゲンで置き換えてなる基としては、例えば、p−フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、p−クロロフェニルおよびペンタクロロフェニルが挙げられる。

式(1)〜(2)中、R1〜R3として列挙されるフリルは、例えば、2−フリル、3−フリルであり;チエニルは、例えば、2−チエニルおよび3−チエニルであり;チアゾリルは、例えば、2−チアゾリルである。

アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよい。ハロゲンとしては、例えば、塩素、臭素およびフッ素が挙げられ、好ましくはフッ素である。

本発明の化合物(1)の中でも、有機半導体分子の高密度な集合化の観点から、二置換誘導体、すなわち、式(1−1)または式(1−2)で表される化合物が好ましく、高いキャリア移動度を示すことから、式(1−1)で表される化合物が特に好ましい。

式(1−1)および式(1−2)中、Xおよびnは、それぞれ式(1)中の同一記号と同義である。2つあるR3は、それぞれ独立にフッ素、炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルである。前記アルキル中の少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよい。前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも一つの水素は、ハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよい。これらの置換基の具体例および好適例は、式(1)〜(2)の説明にて上述したとおりである。

式(1−1)および式(1−2)中、2つあるR3は、相互に同一でも異なってもよく、同一の置換基であることが好ましい。2つあるR3は、炭素数1〜20のアルキル、フェニル、フリルおよびチエニルから選択される同一の基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜20のアルキルであり、本発明の化合物が高いキャリア移動度を示すことから、さらに好ましくは炭素数4〜15のアルキル、特に好ましくは炭素数4〜12のアルキル、最も好ましくは炭素数6〜12のアルキルである。 本発明の化合物(1)の中でも、以下の式で表される化合物もまた、好ましい。

式中、nは、式(1)中の同一記号と同義である。

本発明の化合物(2)の中でも、有機半導体分子の高密度な集合化の観点から、二置換誘導体、すなわち、式(2−1)で表される化合物が好ましい。

式(2−1)中、Xおよびnは、それぞれ式(2)中の同一記号と同義である。2つあるR1は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル、アリール、ピリジル、フリル、チエニルまたはチアゾリルである。前記アルキル中の少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、前記アリール、ピリジル、フリル、チエニルおよびチアゾリルの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンおよび炭素数1〜10のアルキルから選択される少なくとも1種で置き換えられてもよい。これらの置換基の具体例および好適例は、式(1)〜(2)の説明にて上述したとおりである。

式(2−1)中、2つあるR1は、相互に同一でも異なってもよく、同一の置換基であることが好ましい。2つあるR1は、炭素数6〜15のアルキル、フェニル、フリル、チエニルおよびチアゾリルから選択される同一の基であることがより好ましい。

式(1−1)、式(1−2)、式(2−1)は、例えば、下記式である。

本発明の化合物は、その構造(非直線型かつカルコゲン架橋型の構造)および好ましくは置換基導入の効果により、溶媒に対して高い溶解性を示す。すなわち、後述する化合物の濃度で溶液を調製することができる。よって、本発明の化合物を含む溶液を基板上に塗布または印刷することが可能となり、簡便な製膜工程により本発明の化合物を含む有機半導体膜を製造することができる。例えば、印刷法を用いる膜形成は、常温かつ常圧下で行うことができ、また簡便かつ短時間で膜を形成できるので、高温かつ高圧下で行う蒸着法等の膜形成よりも、製造コスト等の点で有利である。したがって、本発明の化合物が有する優れた性質を損なうことなく、有機半導体膜および当該有機半導体膜を有する有機半導体素子を製造することができる。

本発明の化合物は、分子の屈曲部位に存在するカルコゲンにより、分子間相互作用が向上し、分子間でπ電子軌道の重なりが充分あるため、本発明の化合物およびこの化合物を含む有機半導体膜は、充分に高いキャリア移動度を示す。用途によってキャリア移動度の最適値は異なるが、有機半導体素子として使用する場合のキャリア移動度は、好ましくは0.5cm2/V・s以上、より好ましくは1.0cm2/V・s以上、特に好ましくは5.0cm2/V・s以上である。キャリア移動度の上限値は特に限定されないが、例えば、50.0cm2/V・s程度である。なお、キャリア移動度は、例えば、本発明の化合物の0.2質量%濃度o−キシレン溶液、0.2質量%濃度1,2−ジクロロエタン溶液、または0.2質量%濃度o−ジクロロベンゼン溶液を用いて形成された有機半導体膜について測定され、その製膜方法および測定方法の詳細(例:エッジキャスト法、ギャップキャスト法)は、実施例に記載したとおりである。

本発明の化合物は、キャリア移動度が高いという性質に加えて、トランジスタのゲート電圧によるドレイン電流のオン/オフ比が高いという、有機半導体材料として優れた性質を有する。

また、本発明の化合物は、耐酸化性等の化学的安定性に優れている。 また、本発明の化合物は、後述するように、有機合成化学的に実施容易な反応を用いて短工程で合成できることから、工業的に製造可能であって、実用性に富む有機半導体材料として用いることができる。 以上より、本発明の化合物は、有機半導体材料として好適に用いられる。

以下、本発明の化合物の具体例を示す。 X=酸素の化合物(1)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。

X=硫黄の化合物(1)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。

X=セレンの化合物(1)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。

X=酸素の化合物(2)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。

X=硫黄の化合物(2)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。

X=セレンの化合物(2)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。

〔化合物(1)および化合物(2)の製造方法〕 本発明の化合物(1)または化合物(2)(X=硫黄またはセレン)の製造方法は、式(11)または式(21)で表される化合物をカップリングさせて、式(12)または式(22)で表される化合物を得る工程1A;式(12)または式(22)で表される化合物のメトキシを脱保護させて、式(13)または式(23)で表される化合物を得る工程2A;式(13)または式(23)で表される化合物とN,N−ジアルキルチオカルバモイルクロリドまたはN,N−ジアルキルセレノカルバモイルクロリドとを反応させて、式(14)または式(24)で表される化合物を得る工程3A;および式(14)または式(24)で表される化合物を加熱することにより、式(15)または式(25)で表される化合物を得る工程4Aを有する。

本発明の化合物(1)または化合物(2)(X=酸素)の製造方法は、上記工程1A;上記工程2A:および式(13)または式(23)で表される化合物をゼオライト触媒下、加熱脱水することにより、式(15)または式(26)で表される化合物を得る工程3A’を有する。

式(11)〜(15)において、R1〜R3およびnは、それぞれ式(1)中の同一記号と同義であり;式(21)〜(26)において、R1〜R2およびnは、それぞれ式(2)中の同一記号と同義であり;Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキルである。また、反応式中、Meはメチルであり、n−Buはノルマルブチルであり、Etはエチルであり、Pyはピリジンであるが、これらは一例であって、各反応に用いる試薬はこれらに限定されるものではない。

以下の各工程では、溶液の状態で反応を行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン等のハロゲン化溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を用いることが好ましい。また、有機金属化合物を化合物(11)または(21)の溶液に添加する際には、ヘキサン等の有機溶媒の溶液として添加することが好ましい。

また、各工程間において、得られた化合物(粗生成物)の精製を適宜行ってもよい。精製方法としては、例えば、カラムクロマトグラフィーや再結晶による方法が挙げられる。

〈工程1A〉(ホモカップリング) 工程1Aでは、有機金属化合物の存在下、化合物(11)をホモカップリングさせ、あるいは化合物(21)をホモカップリングさせる。工程1Aの反応温度(例:溶液の温度)は、通常0〜60℃、好ましくは0℃〜室温であり;反応時間は、通常2〜14時間であり;反応は、常圧下で通常行われる。なお、室温とは23℃程度の温度環境を意味する。

有機金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウムおよびs−ブチルリチウムが挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機金属化合物の使用量は、化合物(11)または(21)1molに対して、通常1.05〜2.10molである。

〈工程2A〉(脱保護) 工程2Aでは、脱保護剤の存在下、化合物(12)または(22)のメトキシの脱保護を行う。工程2Aの反応温度(例:溶液の温度)は、通常−78℃〜室温、好ましくは0℃〜室温であり;反応時間は、通常1〜2時間であり;反応は、常圧下で通常行われる。

脱保護剤としては、例えば、三臭化ホウ素および塩化アルミニウムが挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。脱保護剤の使用量は、化合物(12)または(22)1molに対して、通常2.0〜2.4molである。

〈工程3A〉 工程3Aでは、塩基の存在下、化合物(13)または(23)と、N,N−ジアルキルチオカルバモイルクロリドまたはN,N−ジアルキルセレノカルバモイルクロリドとを反応させる。工程3Aの反応温度(例:溶液の加熱温度)は、通常60〜80℃であり;反応時間は、通常10〜48時間であり;反応は、常圧下で通常行われる。

N,N−ジアルキルチオカルバモイルクロリドおよびN,N−ジアルキルセレノカルバモイルクロリドにおける2つあるアルキルの炭素数は、それぞれ独立に1〜3であり、好ましくは1〜2である。

N,N−ジアルキルチオカルバモイルクロリドとしては、例えば、N,N−ジメチルチオカルバモイルクロリドおよびN,N−ジエチルチオカルバモイルクロリドが挙げられる。N,N−ジアルキルセレノカルバモイルクロリドとしては、例えば、N,N−ジメチルセレノカルバモイルクロリドおよびN,N−ジエチルセレノカルバモイルクロリドが挙げられる。N,N−ジアルキルチオカルバモイルクロリドまたはN,N−ジアルキルセレノカルバモイルクロリドの使用量は、化合物(13)または(23)1molに対して、通常3.0〜4.0molである。

塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジンおよび水素化ナトリウムが挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。塩基の使用量は、化合物(13)または(23)1molに対して、トリエチルアミンを通常1.1〜5.0mol、好ましくは1.5〜2.5mol、ピリジンを通常5〜30mol、好ましくは10〜20molである。

〈工程4A〉(環化) 工程4Aでは、化合物(14)または(24)を加熱し、環化を行うことで、本発明の化合物である化合物(15)または(25)を得る。工程4Aの加熱温度は、通常300〜310℃であり;反応時間は、通常4〜6時間である。

〈工程3A’〉(脱水環化) 工程3A’では、化合物(13)または(23)の溶液に、ゼオライトを加え、脱水・環化を行うことで、本発明の化合物である化合物(15)または(26)を得る。工程3A’の加熱温度(例:溶液の加熱温度)は、通常160〜180℃であり;反応時間は、通常8〜20時間、好ましくは10〜16時間であり;反応は、常圧下で通常行われる。

以上の製造方法のほか、本発明の化合物(2−1)は、公知の方法で合成した無置換の式(27)で表される化合物を、臭素化して、続いて公知のクロスカップリング反応によって臭素部分に所望の置換基を導入することで、製造することができる。クロスカップリング反応により所望の置換基を導入する方法は、特に二置換体の合成に有用である。

具体的には、本発明の化合物(2−1)の製造方法は、式(27)で表される化合物を臭素化して、式(28)で表される化合物を得る工程1B;および式(28)で表される化合物とクロスカップリング反応剤とを反応させて(クロスカップリング反応を行うことで)、式(29)で表される化合物を得る工程2Bを有する。

式(27)〜(29)中、X、nおよびR1はそれぞれ式(2−1)中の同一記号と同義である。

〈工程1B〉(臭素化) 工程1Bでは、化合物(27)の5位および9位(n=0の場合)、6位および10位(n=1の場合)を臭素化する。臭素の使用量は、化合物(27)1molに対して、通常2.0〜2.2molである。

工程1Bの加熱温度(例:溶液または懸濁液の加熱温度)は、通常室温〜100℃、好ましくは80〜100℃であり;反応時間は、通常4〜10時間、好ましくは4〜8時間であり;反応は、常圧下で通常行われる。

工程1Bでは、溶液または懸濁液の状態で化合物(27)の臭素化を行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、酢酸、クロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を用いることが好ましい。

また、工程1Bと工程2Bとの間において、得られた化合物(粗生成物)の精製を適宜行ってもよい。精製方法としては、例えば、カラムクロマトグラフィーや再結晶による方法が挙げられる。

化合物(28)、すなわち式(2−1’)で表される化合物は、化合物(29)、すなわち式(2−1)で表される化合物の合成に用いられる原料化合物として、好適である。

式(2−1’)中、Xは、酸素、硫黄またはセレンであり;2つあるnは、それぞれ独立に0または1である。

〈工程2B〉(クロスカップリング) 工程2Bでは、公知のクロスカップリング反応、例えば、鈴木カップリング、スティルカップリング、根岸カップリング、玉尾カップリング、およびこれらから派生した反応によって、化合物(28)の臭素部分を置換基R1に変換する。R1は、式(2−1)中の同一記号と同義である。

工程2Bでは、溶液または懸濁液の状態で化合物(28)のクロスカップリングを行うことが好ましい。溶媒としては、クロスカップリングの反応形態によって異なるが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエンおよびジエチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を用いることが好ましい。

クロスカップリング反応に用いるクロスカップリング反応剤(置換基R1を導入するための化合物)、触媒、および反応条件(例:温度、時間)としては、クロスカップリングの反応形態によって異なり、特に限定されない。

以下、具体例を示す。 クロスカップリング反応剤としては、例えば、トリブチル(2−チエニル)スズ、トリブチル(2−フリル)スズおよびトリブチル(2−チアゾリル)スズ等のR1−SnR3(式中、R1はチエニル、フリルまたはチアゾリルであり、Rはブチル等のアルキルである。);R1−MgX(式中、R1は炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜14のアリール、またはピリジルであり、Xは臭素等のハロゲンである。);R1−B(OH)2(式中、R1は炭素数6〜14のアリール、またはピリジルである。);R1−ZnX(式中、R1は炭素数6〜14のアリール、またはピリジルである。)が挙げられる。クロスカップリング反応剤の使用量は、化合物(28)1molに対して、通常1.1〜4.0mol、好ましくは2.0〜3.0molである。

触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体等のパラジウム触媒、ならびに[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド等のニッケル触媒が挙げられる。

工程2Bの反応温度(例:溶液または懸濁液の温度)は、通常0〜140℃、好ましくは室温〜140℃であり;反応時間は、通常10分〜24時間、好ましくは1〜24時間であり;反応は、常圧下で通常行われる。反応温度はカップリングの種類により異なり,例えば、スティルカップリングにおいては80〜140℃、玉尾カップリングにおいては0℃〜室温,鈴木カップリングにおいては80〜110℃である。

また、本発明の化合物(1)(X=セレン)は、以下の方法によって製造することもできる。具体的には、この方法は、上記工程1A;上記工程2A;式(13)で表される化合物とトリフルオロメタンスルホニルクロリドまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物とを反応させて、式(16)で表される化合物を得る工程5A;式(16)で表される化合物をボラン類とカップリングすることにより、式(17)で表されるボロン酸エステルを得る工程6A;式(17)で表されるボロン酸エステルを臭化銅で臭素化して、式(18)で表される化合物を得る工程7A;および式(18)で表される化合物をリチオ化した後、塩化セレンと反応させることにより、式(15)で表される化合物を得る工程8Aを有する。

式(11)〜(13)および式(15)〜(18)中、Xはセレンであり、nおよびR1〜R3はそれぞれ式(1)中の同一記号と同義であり、Meはメチルであり、式(17)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキルである。

以下の各工程5A〜8Aでは、溶液の状態で反応を行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン等のハロゲン化溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール等のアルコール系溶媒;からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を用いることが好ましい。

〈工程5A〉 工程5Aでは、化合物(13)とトリフルオロメタンスルホニルクロリドまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物とを反応させて、化合物(16)を得る。工程5Aの反応温度(例:溶液の温度)は、通常0〜30℃であり;反応時間は、通常2〜24時間である。

トリフルオロメタンスルホニルクロリドまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物の使用量は、化合物(13)1molに対して、通常2.0〜5.0molである。

工程5Aは、塩基の存在下で行うことができる。塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンが挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。塩基の使用量は、化合物(13)1molに対して、通常0.1〜10.0molである。

〈工程6A〉 工程6Aでは、化合物(16)をボラン類とカップリングすることにより、ボロン酸エステル(17)を得る。工程6Aの反応温度(例:溶液の温度)は、通常20〜150℃であり;反応時間は、通常3〜24時間である。

ボラン類としては、例えば、下記式で表される化合物、具体的には4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランが挙げられる。ボラン類の使用量は、化合物(16)1molに対して、通常2.0〜5.0molである。

式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキルである。

この反応では、触媒を用いることができる。例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体等のパラジウム触媒、ならびに[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド等のニッケル触媒が挙げられる。

工程6Aは、塩基の存在下で行うことができる。塩基としては、例えば、トリエチルアミンが挙げられる。塩基の使用量は、化合物(16)1molに対して、通常2.0〜10.0molである。

〈工程7A〉 工程7Aでは、ボロン酸エステル(17)を臭化銅で臭素化して、化合物(18)を得る。工程7Aの反応温度(例:溶液の温度)は、通常0〜200℃であり;反応時間は、通常6〜30時間である。臭化銅の使用量は、ボロン酸エステル(17)1molに対して、通常2.0〜10.0molである。

〈工程8A〉 工程8Aでは、化合物(18)をリチオ化した後、塩化セレンと反応させることにより、化合物(15)を得る。工程8Aの反応温度(例:溶液の温度)は、通常−80〜30℃であり;反応時間は、通常1〜5時間である。

リチオ化剤としては、例えば、t−ブチルリチウムが挙げられる。リチオ化剤の使用量は、化合物(18)1molに対して、通常2.0〜5.0molである。塩化セレンの使用量は、化合物(18)1molに対して、通常1.0〜1.5molである。

なお、以上の本発明の化合物の製造方法において、本発明の化合物は、溶媒に対して高い溶解性を示すため、カラムクロマトグラフィーや再結晶等の簡易な方法によって、合成後の化合物の粗生成物を容易に精製することができる。

〔有機半導体膜等の膜〕 本発明の膜(例:有機半導体膜)は、本発明の化合物、すなわち化合物(1)および化合物(2)から選択される少なくとも1種を含む。本発明の化合物は、溶媒に対して高い溶解性を示すため、これらを溶媒に溶解させた溶液(以下「有機半導体溶液」ともいう。)を、基板上に塗布または印刷することで、表面均一性に優れた膜(例:有機半導体膜)を形成することができる。

有機半導体溶液の調製に使用される溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、乳酸エチル、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、アセトニトリル、アセトン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ブチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド等の有機溶媒;水;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。

有機半導体溶液中の本発明の化合物の濃度は、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。本発明の化合物は、溶媒に対して高い溶解性を示すため、高濃度溶液を調製することができる。ここで、本発明の化合物の高濃度溶液とは、有機半導体溶液中の当該化合物濃度が0.1質量%以上である溶液をいう。

本発明の化合物の溶媒に対する優れた溶解性により、種々の濃度の有機半導体溶液を調製することができるので、得られる膜の結晶化度を変化させることができる。膜の結晶化度が変化すると、結晶化度に影響されるキャリア移動度も変化する。したがって、本発明では、結晶から非晶質までの広い範囲での結晶性を容易に調整でき、有機半導体膜の厚さおよびキャリア移動度といった、必要な素子特性を安定して再現できる。

また、本発明の化合物と高分子化合物とを含有する樹脂組成物を用いて製膜してもよい。前記樹脂組成物における高分子化合物の含有量は、通常1〜99質量%、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%である。また、前記樹脂組成物における溶媒の含有量は、本発明の化合物および高分子化合物の含有量が上記範囲であり、かつ前記樹脂組成物が製膜に適した粘度を有するよう、適宜設定される。

高分子化合物としては、例えば、熱可塑性高分子および熱硬化性高分子が挙げられる。具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセチレン、ポリピロールおよびポリアリレンビニレンが挙げられる。また、前記高分子化合物として、導電性高分子を用いてもよい。導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンが挙げられる。

本発明の膜の厚さは、所望の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、有機半導体素子に使用される有機半導体膜の厚さは、好ましくは10〜1,000nm、より好ましくは10〜200nmである。

本発明の膜の製造方法としては、種々の方法が挙げられる。 塗布法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法およびブレード法が挙げられる。また、本発明者らが開発した、塗布法に分類される、実施例にて後述するエッジキャスト法およびギャップキャスト法も有効である。

印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、平版印刷、凹版印刷および凸版印刷が挙げられる。印刷法の中でも、本発明の化合物の溶液をそのままインクとして用いたプリンタにより行うインクジェット印刷は、簡易な方法であるため好ましい。 上記方法以外の製膜法、例えば蒸着法を用いて製膜を行っても差し支えはない。

製膜時の温度は特に限定されず、通常室温〜200℃、好ましくは50〜150℃である。ここでの温度は、例えば、塗布法や印刷法では、有機半導体溶液の加熱温度であり、雰囲気の温度であり、製膜に使用される基板の加熱温度である。また、前記溶液温度、雰囲気温度、基板温度はお互いに異なる温度であってもかまわない。上記の溶液を使用しない製膜法、例えば蒸着法では、製膜に使用される基板の加熱温度を意味する。

有機半導体膜を有機半導体素子の一部としてそのまま使用する際には、印刷法によりパターニングを行うことが好ましく、さらに印刷法において、本発明の化合物の高濃度溶液を用いることが好ましい。高濃度溶液を用いれば、インクジェット印刷、マスク印刷、スクリーン印刷およびオフセット印刷等を活用できる。また、印刷法による有機半導体膜の製造は、加熱や真空プロセスの必要性がなく流れ作業によって製造できるので、低コスト化および工程変更への対応性を増すことに寄与する。また、印刷法による有機半導体膜の製造は、素子の回路の単純化、製造効率の向上、および素子の低廉化・軽量化に寄与する。以上の観点から、溶媒への高い溶解性を示す本発明の化合物は優れている。

〔有機半導体素子〕 本発明の有機半導体素子は、上記有機半導体膜および電極を有する。具体的には、上記有機半導体膜と、他の半導体特性を有する素子とを組み合わせることによって、有機半導体素子とすることができる。他の半導体特性を有する素子としては、例えば、整流素子、スイッチング動作を行うサイリスタ、トライアックおよびダイアックが挙げられる。

本発明の有機半導体素子は、表示素子としても用いることができ、特にすべての部材を有機化合物で構成した表示素子が有用である。

表示素子としては、例えば、フレキシブルな、シート状表示装置(例:電子ペーパー、ICカードタグ)、液晶表示素子およびエレクトロルミネッセンス(EL)素子が挙げられる。これらの表示素子は、可撓性を示す高分子から形成される絶縁基板上に、本発明の有機半導体膜と、この膜を機能させる構成要素を含む1つ以上の層とを形成することで作製することができる。このような方法で作製された表示素子は、可撓性を有しているため、衣類のポケットや財布等に入れて持ち運ぶことができる。

表示素子としては、例えば、固有識別符号応答装置を挙げることもできる。固有識別符号応答装置は、特定周波数または特定符号を持つ電磁波に反応し、固有識別符号を含む電磁波を返答する装置である。固有識別符号応答装置は、再利用可能な乗車券または会員証、代金の決済手段、荷物または商品の識別用シール、荷札または切手の役割、および会社または行政サービス等において、書類または個人を識別する手段として用いられる。

固有識別符号応答装置は、ガラス基板または可撓性を示す高分子から形成される絶縁基板上に、信号に同調して受信するための空中線と、受信電で動作し、識別信号を返信する本発明の有機半導体素子とを有する。

〈有機電界効果トランジスタ(FET)〉 本発明の有機半導体素子の例としては、有機電界効果トランジスタ(FET)が挙げられる。本発明の有機FETは、液晶表示素子およびエレクトロルミネッセンス(EL)素子と組み合わせても用いることができる。

本発明の有機FETは、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極および有機半導体層を有し、前記有機半導体層が本発明の有機半導体膜からなる。また、本発明の有機FETは、キャリアの注入効率を上げるために、キャリア注入層を有してもよい。

有機FETにおいて、ゲート電極に印加する電圧を制御することによって、ゲート絶縁膜上の有機半導体層界面にキャリアを誘起し、ソース電極およびドレイン電極に流れる電流を制御し、スイッチング動作を行う。

有機FETにおいて、ドレイン電圧およびゲート電圧を変化させながらソース・ドレイン電極間の電流を測定することで得られる、ドレイン電流/ゲート電圧曲線から、キャリア移動度を求めることができる。さらに、ゲート電圧によるドレイン電流のオン/オフ動作を観測することもできる。

一般に、有機FETの構造は、ボトムゲート型構造およびトップゲート型構造に大別され、これらは、さらにトップコンタクト構造およびボトムコンタクト構造に分類される。

有機FETとしては、基板上にゲート電極が形成され、さらにゲート絶縁膜および有機半導体層がこの順で形成された態様をボトムゲート型と呼び;基板上に有機半導体層、ゲート絶縁膜およびゲート電極がこの順で形成された構造をトップゲート型と呼ぶ。

また、有機FETとしては、ソース電極およびドレイン電極が有機半導体層の下部(基板側)に配置される態様をボトムコンタクト型FETと呼び;ソース電極およびドレイン電極が有機半導体層の上部(有機半導体層を挟んで基板と反対側)に配置される態様をトップコンタクト型FETと呼ぶ。ソース電極およびドレイン電極と有機半導体層との間のキャリア注入の観点からは、トップコンタクト型構造が、ボトムコンタクト型構造よりも有機FET特性が優れることが多い。

図1に、それぞれ,(a)ボトムゲート−トップコンタクト型,(b)ボトムゲート−ボトムコンタクト型、(c)トップゲート−トップコンタクト型,(d)トップゲート−ボトムコンタクト型の有機FETの断面図を示す。ただし、本発明の有機FETは、上記で例示した有機FET構造に限定されず、公知の有機FET構造を有していてもよい。また、縦型の有機FET構造を採用してもよい。

基板としては、種々の基板が挙げられる。具体的には、ガラス基板、金、銅および銀等の金属基板、結晶性シリコン基板、アモルファスシリコン基板、トリアセチルセルロース基板、ノルボルネン基板、ポリエチレンテレフタレート基板等のポリエステル基板、ポリビニル基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板が挙げられる。

ゲート電極の材料としては、例えば、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、In、Ni、Nd、Cr、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ハイドープ等のシリコン、錫酸化物、酸化インジウムおよびインジウム錫化合物(Indium Tin Oxide:ITO)等の無機材料;導電性高分子等の有機材料が挙げられる。ただし、導電性高分子は、不純物添加により導電性を向上させる処理がされていても構わない。

ゲート絶縁膜の材料としては、例えば、SiO2、SiN、Al2O3およびTa2O5等の無機材料;ポリイミドおよびポリカーボネート等の高分子材料が挙げられる。

ゲート絶縁膜および基板の表面は、公知のシランカップリング剤、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、デシルトリエトキシシラン(DTS)、オクタデシルトリエトキシシラン(ODSE)等のアルキル基を有するシランカップリング剤、あるいはトリエトキシトリデカフルオロオクチルシラン(F−SAM)等のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤を用いて表面処理を行うことができる。HMDS、OTS、DTS、ODSE、F−SAM等を用いた適切な表面処理を行うと、一般に、有機FET層を構成する結晶粒径の増大、結晶性の向上、分子配向の向上等が見られる。結果として、キャリア移動度およびオン/オフ比が向上し、閾値電圧が低下する傾向がある。

ソース電極およびドレイン電極の材料としては、ゲート電極と同種の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同一であっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。

キャリア注入層は、キャリアの注入効率を高めるために必要に応じて、ソース電極およびドレイン電極と、有機半導体層とのいずれにも接する形で設けられる。キャリア注入層は、例えば、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT−CN)および酸化モリブデン等を用いて製膜される。

以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。合成化合物の物性値の測定方法は、以下のとおりである。

融点は、メトラー社製Toledo MP70自動融点測定システムを用いて測定した。 1H−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルは、日本電子(株)製ECA-600、およびECS400スペクトロメーターを用いて測定した。 元素分析には、(株)ジェイ・サイエンス・ラボ製JM10 MICRO CORDERを用いた。 質量分析には、日本電子(株)製JMS-T100LC APCI/ESI質量分析計、およびブルカーダルトニクス社製ultraflex III TOF/TOFを用いた。 なお、以下の実施例の表題化合物において、アルキルはいずれも直鎖状基である。

[実施例1] 2,10−ジデシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]フランの合成

(第1工程) 7,7’−ジデシル−3,3’−ジメトキシ−2,2’−ビナフタレンの合成

2−デシル−6−メトキシナフタレン(11.4g、38.1mmol)のテトラヒドロフラン溶液(153mL)に、0℃でn−ブチルリチウム(1.62Mヘキサン溶液、47mL、76.14mmol)を10mL/分の速度で滴下した。0℃で一時間撹拌した後、シアン化銅(3.43g、38.3mmol)を加えた。温度を室温に戻し、1時間撹拌した後、0℃でテトラメチルベンゾキノン(デュロキノン;12.5g、76.3mmol)を加えた。温度を室温に戻し、2時間撹拌した後、1N塩酸を加えて中和した。酢酸エチルで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=7:3(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体の表題化合物(7.47g、12.6mmol、66%)を得た。

融点: 65.5-66.5 ℃. 1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H, CH3), 1.26-1.35 (m, 28H, (CH2)3), 1.69 (quin, J = 6.8 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.74 (t, J = 7.6 Hz, 4H, ArCH2), 3.86 (s, 6H, OCH3), 7.19 (s, 2H, ArH), 7.30 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.55 (s, 2H, ArH), 7.68 (s, 2H, ArH), 7.70 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 14.3, 22.9, 29.48, 29.51, 29.7, 29.80 (two carbons), 31.7, 32.1, 36.1, 55.8, 105.3, 126.3, 126.4, 127.9, 129.0, 129.9, 130.1, 132.8, 138.3, 155.9. TOF HRMS (APCI): Calcd for C42H59O2 [M+H] 595.4515, found, 595.4509. Anal. Calcd for C42H58O2: C, 84.79; H, 9.83. Found: C, 84.73; H, 9.56.

(第2工程) 7,7’−ジデシル−2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジオールの合成

7,7’−ジデシル−3,3’−ジメトキシ−2,2’−ビナフタレン(1.49g、2.50mmol)のジクロロメタン溶液(DCM;10mL)に、0℃で三臭化ホウ素(1.0Mジクロロメタン溶液、5.50mL、5.50mmol)を2mL/分の速度で滴下した。温度を室温に戻し、一時間撹拌した後、反応溶液を氷水に加えた。酢酸エチルで有機層を抽出した後、食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体の表題化合物(1.38g、2.43mmol、97%)を得た。

融点: 108.5-109.5 ℃. 1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 0.88 (t, J = 6.4 Hz, 6H, CH3), 1.26-1.35 (m, 28H), 1.72 (m, 4H), 2.76 (t, J = 7.6 Hz, 4H, ArCH2), 5.63 (s, 2H, OH), 7.34 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.39 (s, 2H, ArH), 7.58 (s, 2H, ArH), 7.69 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.79 (s, 2H, ArH).

(第3工程) 2,10−ジデシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]フランの合成

7,7’−ジデシル−2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジオール(1.19g、2.10mmol)のo−ジクロロベンゼン溶液(ODCB;42mL)に、ゼオライトTosoh HSZ-360HUA(357mg)を加え、160℃で16時間撹拌した。温度を室温に戻し、セライト濾過し、ゼオライトを濾分した。この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンとジクロロメタンとの混合溶媒(ヘキサン:ジクロロメタン=8:2(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体の表題化合物(1.13g、2.06mmol、98%)を得た。

融点: 175-176 ℃. 1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 0.89 (t, J = 6.4 Hz, 6H, CH3), 1.26-1.40 (m, 28H, (CH2)3), 1.75 (quin, J = 6.8 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.82 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 7.40 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.81 (s, 2H, ArH), 7.83 (s, 2H, ArH), 7.88 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.43 (s, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CDCl2CDCl2): δ 14.4, 22.9, 29.5, 29.6, 29.70, 29.77, 29.79, 31.5, 32.0, 36.1, 106.5, 119.6, 125.1, 126.8, 127.6, 128.3, 130.3, 132.0, 139.3, 155.4. TOF HRMS (APCI): Calcd for C40H53O [M+H] 549.4096, Found 549.4093. Anal. Calcd for C40H52O: C, 87.37; H, 9.72. Found: C, 87.61; H, 9.50.

[実施例2] 2,10−ジデシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

(第1工程) O,O’−(7,7’−ジデシル−2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジイル)ビス(ジメチルカルバモチオエート)の合成

7,7’−ジデシル−2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジオール(2.0g、3.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液(THF;21mL)に、トリエチルアミン(1.1mL)、ピリジン(2.8mL)、N,N−ジメチルチオカルバモイルクロリド(1.38g、10.5mmol)を加え、65℃で20時間撹拌した。この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色液体の表題化合物(1.90g、2.57mmol、73%)を得た。

1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 0.88 (t, J = 6.0 Hz, 6H, CH3), 1.26-1.35 (m, 28H), 1.68 (m, 4H), 2.76 (t, J = 7.8 Hz, 4H, ArCH2), 2.99 (s, 6H, NCH3), 3.15 (s, 6H, NCH3), 7.35 (d, J = 7.8 Hz, 2H, ArH), 7.59 (s, 2H, ArH), 7.60 (s, 2H, ArH), 7.77 (d, J = 7.8 Hz, 2H, ArH), 7.88 (s, 2H, ArH).

(第2工程) 2,10−ジデシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

O,O’−(7,7’−ジデシル−2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジイル)ビス(ジメチルカルバモチオエート)(1.90g、2.57mmol)をパイレックチューブに封管し、300℃で4時間加熱した。温度を室温に戻した後、トルエンと2−プロパノールとの混合溶媒(トルエン:2−プロパノール=8:2(体積比))による熱再結晶により、淡黄色固体の表題化合物(1.01g、1.79mmol、70%)を得た。

融点: 122-123 ℃. 1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 0.88 (t, J = 7.2 Hz, 6H, CH3), 1.26-1.40 (m, 28H, (CH2)3), 1.75 (quin, J = 6.8 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.83 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 7.39 (d, J = 8.0 Hz, 2H, ArH), 7.81 (s, 2H, ArH), 7.82 (d, J = 8.0 Hz, 2H, ArH), 8.17 (s, 2H, ArH), 8.64 (s, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 14.3, 22.9, 29.52, 29.54, 29.74, 29.81 (two carbons), 31.5, 32.1, 36.3, 120.0, 120.3, 126.8, 126.9, 128.2, 131.3, 131.9, 134.9, 137.3, 140.0. TOF HRMS (APCI): Calcd for C40H53S [M+H] 565.3868, found 565.3876. Anal. Calcd for C40H52S: C, 85.05; H, 9.28. Found: C, 85.26; H, 9.30.

[実施例3] 3,9−ジデシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]フランの合成

実施例1において、出発原料を6,6’−ジデシル−3,3’−ジメトキシ−2,2’−ビナフタレンに変更したこと以外は実施例1に準拠して、白色固体の表題化合物(収率:94%)を得た。物性値を以下に示す。

融点: 216-217 ℃. 1H NMR (600 MHz, CDCl2CDCl2): δ 0.82 (t, J = 6.6 Hz, 6H, CH3), 1.22-1.36 (m, 28H, (CH2)3), 1.68 (quin, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.75 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 7.31 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.67 (s, 2H, ArH), 7.75 (s, 2H, ArH), 7.90 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.40 (s, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CDCl2CDCl2, 100℃): δ 14.0, 22.6, 29.3, 29.4, 29.51, 29.59 (two carbons), 31.1, 31.9, 36.2, 106.1, 119.6, 124.6, 126.1, 126.3, 128.3, 128.9, 134.1, 141.2, 156.2. TOF HRMS (APCI): Calcd for C40H53O [M+H] 549.4096, found 549.4095. Anal. Calcd for C40H52O: C, 87.37; H, 9.72. Found: C, 87.61; H, 9.50.

[実施例4] 3,9−ジブチルジナフト[2,3-b:2',3'-d]フランの合成

実施例1において、出発原料を6,6’−ジブチル−3,3’−ジメトキシ−2,2’−ビナフタレンに変更したこと以外は実施例1に準拠して、白色固体の表題化合物(収率:97%)を得た。物性値を以下に示す。

融点: 264.0-265.0 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.98 (t, J = 7.2 Hz, 6H, CH3), 1.43 (sext, J = 7.2 Hz, 4H, CH2CH3), 1.74 (quin, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.83 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 2H, ArH), 7.73 (s, 2H, ArH), 7.80 (s, 2H, ArH), 7.95 (d, J = 8.0 Hz, 2H, ArH), 8.44 (s, 2H, ArH).

[実施例5] 3,9−ジヘキシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]フランの合成

実施例1において、出発原料を6,6’−ジヘキシル−3,3’−ジメトキシ−2,2’−ビナフタレンに変更したこと以外は実施例1に準拠して、白色固体の表題化合物(収率:88%)を得た。物性値を以下に示す。

融点: 198.7-199.1 ℃. 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.91 (t, J = 7.2 Hz, 6H, CH3), 1.33-1.43 (m, 12H, (CH2)3), 1.75 (quin, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.82 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 7.34 (d, J = 7.8 Hz, 2H, ArH), 7.73 (s, 2H, ArH), 7.80 (s, 2H, ArH), 7.95 (d, J = 7.8 Hz, 2H, ArH), 8.45 (s, 2H, ArH). TOF HRMS (APCI): Calcd for C32H37O [M+H] 437.2844, found 437.2837. Anal. Calcd for C32H36O: C, 88.03; H, 8.31. Found: C, 88.06; H, 8.26.

[実施例6] 3,9−ジデシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

(第1工程) O,O’−(6,6’−ジデシル−2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジイル)ビス(ジメチルカルバモチオエート)の合成

6,6’−ジデシル−2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジオール(1.02g、1.80mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10.9mL)に、トリエチルアミン(0.56mL)、ピリジン(1.5mL)、N,N−ジメチルチオカルバモイルクロリド(890mg、7.20mmol)を加え、65℃で20時間撹拌した。この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=8:2(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色液体の表題化合物(1.00g、1.35mmol、75%)を得た。

1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 0.89 (t, J = 6.0 Hz, 6H, CH3), 1.26-1.39 (m, 28H, (CH2)3), 1.68 (quin, J = 6.8 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.77 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 3.00 (s, 6H, NCH3), 3.17 (s, 6H, NCH3), 7.32 (d, J = 7.8 Hz, 2H, ArH), 7.56 (s, 2H, ArH), 7.61 (s, 2H, ArH), 7.75 (d, J = 7.8 Hz, 2H, ArH), 7.90 (s, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 14.3, 22.8, 29.47, 29.56, 29.69, 29.73, 29.76, 31.5, 32.0, 36.3, 38.5, 43.2, 120.4, 126.0, 127.6, 127.9, 129.4, 129.9, 131.1, 133.4, 141.4, 149.9 187.4. TOF HRMS (APCI+): Calcd for C46H65N2O2S2 [M+H] 741.4487, Found 741.4487. Anal. Calcd for C46H64N2O2S2: C, 74.55; H, 8.70; N, 3.78. Found: C, 74.68; H, 8.61; N, 3.70.

(第2工程) 3,9−ジデシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

O,O’−(6,6’−ジデシル−2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジイル)ビス(ジメチルカルバモチオエート)(751mg、1.01mmol)をパイレックチューブに封管し、300℃で4時間加熱した。温度を室温に戻した後、ヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=95:5(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色固体の表題化合物(440mg、0.779mmol、77%)を得た。

融点: 182-183 ℃ (TG-DTA). 1H NMR (600 MHz, CD3Cl): δ 0.88 (t, J = 6.6 Hz, 6H, CH3), 1.26-1.40 (m, 28H, (CH2)3), 1.74 (quin, J = 7.8 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.82 (t, J = 7.8 Hz, 4H, ArCH2), 7.37 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.66 (s, 2H, ArH), 7.96 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.13 (s, 2H, ArH), 8.65 (s, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 14.3, 22.9, 29.51, 29.54, 29.73, 29.78, 29.80, 31.5, 32.1, 36.4, 120.0, 120.2, 125.4, 127.2, 128.4, 129.6, 133.5, 134.2, 138.2, 141.2. TOF HRMS (APCI+): Calcd for C40H53S [M+H] 565.3868, Found 565.3864. Anal. Calcd for C40H52S: C, 85.05; H, 9.28. Found: C, 84.84; H, 9.31.

[実施例7] 3,9−ジヘキシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

実施例6において、出発原料のデシルをヘキシルに変更したこと以外は実施例6に準拠して、淡黄色固体の表題化合物(収率:72%)を得た。物性値を以下に示す。

融点: 202.0-202.4 ℃. 1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 0.88 (t, J = 7.8 Hz, 6H, CH3), 1.27-1.40 (m, 20H, (CH2)3)), 1.74 (quin, J = 7.8 Hz, 2H, ArCH2CH2), 2.82 (t, J = 7.8 Hz, 4H, ArCH2), 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.66 (s, 2H, ArH), 7.96 (d, J = 8.6 Hz, 2H, ArH), 8.14 (s, 2H, ArH), 8.65 (s, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 14.3, 22.8, 29.2, 31.4, 31.9, 36.4, 120.0, 120.2, 125.4, 127.2, 128.4, 129.7, 133.6, 134.3, 138.3, 141.2. TOF HRMS (APCI+): Calcd for C32H37S [M+H] 453.2616, found 453.2615. Anal. Calcd for C32H36S: C, 84.90; H, 8.02. Found: C, 85.09; H, 8.02.

[実施例8] 3,9−ジオクチルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

実施例6において、出発原料のデシルをオクチルに変更したこと以外は実施例6に準拠して、淡黄色固体の表題化合物(収率:73%)を得た。物性値を以下に示す。

融点: 193.7-194.8 ℃. 1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 0.88 (t, J = 7.2 Hz, 6H, CH3), 1.27-1.38 (m, 20H, (CH2)5), 1.73 (quin, J = 7.8 Hz, 2H, ArCH2CH2), 2.81 (t, J = 7.8 Hz, 4H, ArCH2), 7.37 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.66 (s, 2H, ArH), 7.96 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.13 (s, 2H, ArH), 8.65 (s, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CDCl3): δ 14.1, 22.7, 29.3, 29.4, 29.5, 31.3, 31.9, 36.3, 119.9, 120.0, 125.3, 127.0, 128.2, 129.7, 133.5, 134.2, 138.2, 141.1. TOF HRMS (APCI+): Calcd for C36H45S [M+H] 509.3242, found 509.3242. Anal. Calcd for C36H44S: C, 84.98; H, 8.72. Found: C, 85.15; H, 8.69.

[実施例9] 3,9−ジブチルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

実施例6において、出発原料のデシルをブチルに変更したこと以外は実施例6に準拠して、淡黄色固体の表題化合物(収率:81%)を得た。物性値を以下に示す。

1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.97 (t, J = 7.2 Hz, 6H, CH3), 1.43 (sext, J = 7.2 Hz, 4H, CH2CH3), 1.75 (quin, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.82 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.66 (s, 2H, ArH), 7.96 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.13 (s, 2H, ArH), 8.64 (s, 2H, ArH).

[実施例10] 3,9−ジペンチルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

実施例6において、出発原料のデシルをペンチルに変更したこと以外は実施例6に準拠して、淡黄色固体の表題化合物(収率:73%)を得た。物性値を以下に示す。

1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.92 (t, J = 6.4 Hz, 6H, CH3), 1.37-1.41 (m, 8H, (CH2)2), 1.75 (quin, J = 7.6 Hz, 2H, ArCH2CH2), 2.82 (t, J = 7.6 Hz, 4H, ArCH2), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 2H, ArH), 7.66 (s, 2H, ArH), 7.96 (d, J = 8.0 Hz, 2H, ArH), 8.13 (s, 2H, ArH), 8.65 (s, 2H, ArH).

[実施例11] 3,9−ジヘプチルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

実施例6において、出発原料のデシルをヘプチルに変更したこと以外は実施例6に準拠して、淡黄色固体の表題化合物(収率:75%)を得た。物性値を以下に示す。

1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.90 (t, J = 6.4 Hz, 6H, CH3), 1.27-1.40 (m, 16H, (CH2)4), 1.77 (quin, J = 7.2 Hz, 2H, ArCH2CH2), 2.82 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 2H, ArH), 7.66 (s, 2H, ArH), 7.96 (d, J = 8.0 Hz, 2H, ArH), 8.13 (s, 2H, ArH), 8.65 (s, 2H, ArH).

[実施例12] 3,9−ジドデシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

実施例6において、出発原料のデシルをドデシルに変更したこと以外は実施例6に準拠して、淡黄色固体の表題化合物(収率:83%)を得た。物性値を以下に示す。

1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 0.88 (t, J = 7.2 Hz, 6H, CH3), 1.27-1.38 (m, 36H, (CH2)9), 1.73 (quin, J = 7.8 Hz, 2H, ArCH2CH2), 2.81 (t, J = 7.8 Hz, 4H, ArCH2), 7.36 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.66 (s, 2H, ArH), 7.96 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.14 (s, 2H, ArH), 8.65 (s, 2H, ArH). TOF HRMS (APCI+): Calcd for C44H60S [M+H] 621.4494, found 621.4493.

[実施例13] ジナフト[2,3-b:2',3'-d]セレノフェンの合成 (第1工程) [2,2'-ビナフタレン]-3,3'-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナト)の合成

[2,2'-ビナフタレン]-3,3'-ジオール(2.86g、10.0mmol)の脱水ジクロロメタン溶液(50mL)に、0℃でピリジン(2.98mL、37.0mmol)を加えた後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf2O;3.69mL、22.0mmol)を滴下した。室温で8時間撹拌した後、0℃でピリジン(2.98mL、37.0mmol)を加えた後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(3.69mL、22.0mmol)を滴下した。室温で4時間撹拌した後、水を加えて反応を停止した。酢酸エチルで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=90:10〜70:30(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体(2.92g、2.07mmol)を得た。収率:53%。 1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.62-7.68 (m, 4H, ArH), 7.92 (s, 2H, ArH), 7.94-7.97 (m, 4H, ArH), 8.04 (s, 2H, ArH).

(第2工程) 3,3'-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラニル)-2,2'-ビナフタレンの合成

[2,2'-ビナフタレン]-3,3'-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナト)(1.49g、2.70mmol)の脱水1,4-ジオキサン溶液(13.5mL)に、トリエチルアミン(2.26mL、16.2mmol)、1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド(PdCl2(dppf)-ジクロロメタン錯体(132mg、0.162mmol)、および4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.17mL、8.10mmol)を室温で加えた。昇温し、12時間加熱還流した後、水を加えて反応を停止した。酢酸エチルで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=7:3〜4:6(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体(983mg、1.94mmol)を得た。収率:72%。 1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 1.08 (s, 24H, CH3), 7.48 (dd, J = 8.4Hz, 8.4Hz, 2H, ArH), 7.51 (dd, J = 8.4Hz, 8.4Hz, 2H, ArH), 7.79 (s, 2H, ArH), 7.82 (d, J = 8.4Hz, ArH), 7.92 (d, J = 8.4Hz, ArH), 8.27 (s, 2H, ArH).

(第3工程) 3,3'-ジブロモ-2,2'-ビナフタレンの合成

3,3'-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラニル)-2,2'-ビナフタレン(861mg、1.70mmol)の脱水1,4-ジオキサン溶液(21.3mL)にメタノール(8.5mL)、水(4.3mL)、臭化銅(II)(2.28g、10.2mmol)を室温で加えた。加熱還流し、26時間撹拌した後、室温に戻し反応を停止した。水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=95:5〜85:15(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体(441mg、10.7mmol)を得た。収率:63%。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.53-7.59 (m, 4H, ArH), 7.81 (s, 2H, ArH), 7.83-7.87 (m, 4H, ArH), 8.22 (s, 2H, ArH).

(第4工程) ジナフト[2,3-b:2',3'-d]セレノフェンの合成

セレン(7.9mg、0.100mmol)に塩化スルフリル(13.4mg、0.100mmol)を加え5分間室温で撹拌した後、脱水テトラヒドロフラン溶液(0.2mL)を加えた。室温で1時間撹拌し赤色溶液のセレニウムジクロリドを調製した。3,3'-ジブロモ-2,2'-ビナフタレン(41.2mg、0.100mmol)の脱水テトラヒドロフラン溶液(0.50mL)に−78℃でt-ブチルリチウム(1.65Mペンタン溶液、0.242mL、0.4mmol)を滴下した。20分撹拌した後、調製したセレニウムジクロリドを−78℃で加え室温に昇温し2時間撹拌した。水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=95:5〜90:10(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、ゲル浸透クロマトグラフィーで精製することで淡黄色固体(18.2mg、0.0673mmol)を得た。収率:67%。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.51-7.57 (m, 4H, ArH), 7.86-7.90 (m, 2H, ArH), 8.02-8.06 (m, 2H, ArH), 7.81 (s, 2H, ArH), 8.28 (s, 2H, ArH), 8.71 (s, 2H, ArH).

[実施例14] 3,9-ジヘキシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]セレノフェンの合成 (第1工程) 6,6'-ジヘキシル-[2,2'-ビナフタレン]-3,3'-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナト)の合成

6,6'-ジヘキシル- [2,2'-ビナフタレン]-3,3'-ジオール(16.8g、37.0mmol)の脱水ジクロロメタン溶液(148mL)に、0℃でトリエチルアミン(30.9mL、222mmol)とN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP;633mg、5.18mmol)を加えた後、0℃でトリフルオロメタンスルホン酸無水物(18.6mL、111mmol)の脱水ジクロロメタン溶液(50mL)を滴下した。室温で12時間撹拌した後、水を加えて反応を停止した。酢酸エチルで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=98:2〜90:10(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体(21.8g、30.3mmol)を得た。収率:82%。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.93 (t, J = 6.8 Hz, 6H, CH3), 1.32-1.43 (m, 12H, (CH2)3), 1.75 (quin, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.83 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2), 7.47 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.71 (s, 2H, ArH), 7.83 (s, 2H, ArH), 7.85 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.97 (s, 2H, ArH).

(第2工程) 2,2'-(6,6'-ジヘキシル-[2,2'-ビナフタレン]-3,3'-ジイル)ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン)の合成

6,6'-ジヘキシル-[2,2'-ビナフタレン]-3,3'-ジイルビス(トリフルオロメタンスルホナト)(12.9g、18.0mmol)の脱水1,4-ジオキサン溶液(90mL)に、トリエチルアミン(15.1mL、108mmol)、1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン錯体(588mg、0.720mmol)、および4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(7.84mL、54.0mmol)を室温で加えた。昇温し、14時間加熱還流した後、水を加えて反応を停止した。酢酸エチルで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=8:2〜7:4(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体(8.99g、13.3mmol)を得た。収率:74%。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.90 (t, J = 6.8 Hz, 6H, CH3), 1.08 (s, 24H, CH3), 1.31-1.43 (m, 12H, (CH2)3), 1.71 (quin, J = 7.6 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.79 (t, J = 7.6 Hz, 4H, ArCH2), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.67 (s, 2H, ArH), 7.72 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH),7.73 (s, 2H, ArH), 8.18 (s, 2H, ArH).

(第3工程) 3,3'-ジブロモ-6,6'-ジヘキシル-2,2'-ビナフタレンの合成

シールドチューブに2,2'-(6,6'-ジヘキシル-[2,2'-ビナフタレン]-3,3'-ジイル)ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン)(675mg、1.00mmol)のN-メチル-2-ピロリドン溶液(NMP;15mL)を調製し、メタノール(6mL)、水(6mL)、臭化銅(II)(1.34g、6.00mmol)を室温で加えた。150℃に加熱し、6時間撹拌した後、室温に戻し臭化銅(II)(670mg、3.00mmol)を加えた。150℃に加熱し、6時間撹拌した後、水を加え反応を停止した。酢酸エチルで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。粗生成物をヘキサンを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体(442mg、0.76mmol)を得た。収率:76%。 1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ0.91 (t, J = 6.6 Hz, 6H, CH3), 1.31-1.40 (m, 12H, (CH2)3), 1.72 (quin, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.79 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2),7.38 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.59 (s, 2H, ArH), 7.75-7.76 (m, 4H, ArH), 8.13 (s, 2H, ArH).

(第4工程) 3,9-ジヘキシルジナフト[2,3-b:2',3'-d]セレノフェンの合成

セレン(33.2mg、0.420mmol)に塩化スルフリル(34.0μL、0.420mmol)を加え10分間室温で撹拌した後、脱水テトラヒドロフラン溶液(1.05mL)を加えた。室温で1時間撹拌し赤色溶液のセレニウムジクロリドを調製した。3,3'-ジブロモ-6,6'-ジヘキシル-2,2'-ビナフタレン(232mg、0.400mmol)の脱水テトラヒドロフラン溶液(1.6mL)に−78℃でt-ブチルリチウム(1.65Mペンタン溶液、0.970mL、1.60mmol)を滴下した。−78℃で20分撹拌した後、調製したセレニウムジクロリドを−78℃で加え3時間かけて室温に昇温し2時間撹拌した。水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。粗生成物をジクロロメタンに溶解させ、貧溶媒としてメタノールを加え淡黄色固体(148mg、0.296mmol)を得た。収率:74%。 1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ0.90 (t, J = 6.6 Hz, 6H, CH3), 1.29-1.40 (m, 12H, (CH2)3), 1.72 (quin, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 2.81 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2),7.37 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.62 (s, 2H, ArH), 7.94 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.18 (s, 2H, ArH), 8.63 (s, 2H, ArH).

[実施例15] 5,9−ジ(2−チエニル)ジナフト[2,1-b:1',2'-d]フランの合成

(第1工程) 5,9−ジブロモジナフト[2,1-b:1',2'-d]フランの合成

ジナフト[2,1-b:1',2'-d]フラン(5.00g、18.6mmol)の酢酸(AcOH;100mL)懸濁液に、臭素(6.55g、41.0mmol)を加え、80℃で4時間撹拌した。温度を室温に戻した後、反応混合物を水酸化カリウム水溶液に加え、析出物をろ別し、トルエンで熱再結晶することで、白色固体の表題化合物(6.32g、80%)を得た。

1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 9.09 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.52 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.19 (s, 2H, ArH), 7.80 (dd, J = 7.8 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.71 (dd, J = 7.8 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH). ESI-MS [M+H] m/z = 425. Anal. Calcd for C20H10Br2O: C, 56.37; H, 2.37; Found: C, 56.50; H, 2.62.

(第2工程) 5,9−ジ(2−チエニル)ジナフト[2,1-b:1',2'-d]フランの合成

5,9−ジブロモジナフト[2,1-b:1',2'-d]フラン(426mg、1.00mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF;10mL)懸濁液に、トリブチル(2−チエニル)スズ(764mg、2.04mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(58mg、0.05mmol)を加え,130℃で10分間撹拌した。温度を室温に戻した後、反応溶液をフッ化カリウム水溶液に加え、析出した無機塩をろ別した。ろ液を水で洗い、トルエンで有機層を三回抽出した。あわせた有機層を水、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をクロロホルムに溶解させてシリカゲルを通した後、さらにクロロホルムを展開溶媒としてゲル濾過クロマトグラフィーを行うことで、黄色固体の表題化合物(355mg、82%)を得た。

1H NMR (600 MHz, CDCl2CDCl2): δ 9.15 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.92 (s, 2H, ArH), 7.76 (dd, J = 7.2 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.57 (dd, J = 7.2 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.48 (d, J = 4.8 Hz, 2H, thiophene), 7.33 (d, J = 3.6 Hz, 2H, thiophene), 7.23-7.21 (dd, J = 3.6 Hz, 4.8 Hz, 2H, thiophene). ESI-MS [M+H] m/z = 433. Anal. Calcd for C28H16OS2: C, 77.75; H, 3.73; Found: C, 77.53; H, 3.89.

[実施例16] 5,9−ジ(2−フリル)ジナフト[2,1-b:1',2'-d]フランの合成

5,9−ジブロモジナフト[2,1-b:1',2'-d]フラン(426mg、1.00mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)懸濁液に、トリブチル(2−フリル)スズ(742mg、2.08mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(58mg、0.05mmol)を加え、130℃で10分間撹拌した。温度を室温に戻した後、反応溶液をフッ化カリウム水溶液に加え、析出した無機塩をろ別した。ろ液を水で洗い、トルエンで有機層を三回抽出した。あわせた有機層を水、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をクロロホルムに溶解させてシリカゲルを通した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、再度最小量のクロロホルムに溶解させ、メタノールで再沈殿を行うことで、白色固体の表題化合物(318mg、80%)を得た。

1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 9.20 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.62 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.10 (s, 2H, ArH), 7.78 (dd, J = 7.2 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.70 (d, J = 1.2 Hz, 2H, furan), 7.64 (dd, J = 7.2 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH), 6.86 (d, J = 3.6 Hz, 2H, furan), 6.66 (d, J = 1.2 Hz, 3.6 Hz, 2H, furan). ESI-MS [M+H] m/z = 401.

[実施例17] 5,9−ジ(2−チアゾリル)ジナフト[2,1-b:1',2'-d]フランの合成

5,9−ジブロモジナフト[2,1-b:1',2'-d]フラン(426mg、1.00mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)懸濁液に、トリブチル(2−チアゾリル)スズ(775mg、2.07mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(58mg、0.05mmol)を加え、130℃で1時間撹拌した。温度を室温に戻した後、反応溶液をフッ化カリウム水溶液に加え、析出した無機塩をろ別した。ろ液を水で洗い、トルエンで有機層を三回抽出した。あわせた有機層を水、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンで洗い、ろ別することで、黄色固体の表題化合物(383mg、88%)を得た。

1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 9.23 (d, J = 9.0 Hz, 2H, ArH), 8.95 (d, J = 9.0 Hz, 2H, ArH), 8.20 (s, 2H, ArH), 8.12 (d, J = 4.2 Hz, 2H, thiazole), 7.82 (dd, J = 6.6 Hz, 9.0 Hz, 2H, ArH), 7.69 (dd, J = 6.6 Hz, 9.0 Hz, 2H, ArH), 7.57 (d, J = 4.2 Hz, thiazole). MALDI-TOF-MS (positive) m/z = 435. Anal. Calcd for C26H14N2OS2: C, 71.87; H, 3.25; N, 6.45; Found: C, 71.58; H, 3.31; N, 6.44.

[実施例18] 5,9−ジオクチルジナフト[2,1-b:1',2'-d]フランの合成

5,9−ジブロモジナフト[2,1-b:1',2'-d]フラン(951mg、2.23mmol)のテトラヒドロフラン(4.5mL)溶液に、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(36mg、0.045mmol)を加え、0℃で1.0Mオクチルマグネシウムブロミドのテトラヒドロフラン溶液(5.80mL、5.80mmol)を2mL/分の速度で滴下した。室温で24時間撹拌した後、塩酸で反応を停止した。トルエンで有機層を三回抽出した。あわせた有機層を水、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体の表題化合物(595mg、54%)を得た。

1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 9.17 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.26 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.72-7.70 (m, 4H, ArH), 7.61 (dd, J = 6.6 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH), 3.23 (t, J = 6.6 Hz, 4H, ArCH2CH2), 1.86 (quin, J = 6.6 Hz, 4H, ArCH2CH2), 1.53-1.48 (m, 4H, CH2CH2CH2), 1.43-1.37 (m, 4H, CH2CH2CH2), 1.35-1.25 (m, 12H, (CH2)3), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, 6H, CH3). MALDI-TOF-MS (positive) m/z = 492.

この化合物の溶解度を評価した結果、室温下クロロホルムに381g/L(20.5wt%)、トルエンに137g/L(13.6wt%)溶解した。この化合物は、いずれの溶媒に対しても塗布プロセスに使用可能な高い溶解度を示すことが明らかとなった。

[実施例19] 5,9−ジドデシルジナフト[2,1-b:1',2'-d]フランの合成

5,9−ジブロモジナフト[2,1-b:1',2'-d]フラン(775mg、1.82mmol)のテトラヒドロフラン(3.6mL)溶液に、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(30mg、0.036mmol)を加え、0℃で1.0Mドデシルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液(4.73mL、4.73mmol)を2mL/分の速度で滴下した。室温で24時間撹拌した後、塩酸で反応を停止した。トルエンで有機層を三回抽出した。あわせた有機層を水、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤除去後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=9:1(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体の表題化合物(831mg、76%)を得た。

1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.17 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.26 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.72-7.70 (m, 4H, ArH), 7.61 (dd, J = 6.6 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH), 3.23 (t, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 1.86 (quin, J = 7.2 Hz, 4H, ArCH2CH2), 1.51-1.46 (m, 4H, CH2CH2CH2), 1.43-1.39 (m, 4H, CH2CH2CH2), 1.34-1.20 (m, 28H, (CH2)7), 0.89 (t, J = 8.0 Hz, 6H, CH3). MALDI-TOF-MS (positive) m/z = 604.

[実施例20] 5,9−ジフェニルジナフト[2,1-b:1',2'-d]フランの合成

5,9−ジブロモジナフト[2,1-b:1',2'-d]フラン(426mg、1.00mmol)のトルエン溶液(3mL)に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2dba3)クロロホルム錯体(52mg、0.05mmol)、2−ジシクロへキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−Phos;41mg、0.10mmol)、リン酸三カリウム(1.27g、6.00mmol)およびフェニルボロン酸(366mg、3.00mmol)を加え、110℃で90分間撹拌した。温度を室温に戻し、シリカゲルを通して無機物をろ別した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンとクロロホルムとの混合溶媒(ヘキサン:クロロホルム=4:1(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体の表題化合物(373mg、89%)を得た。

1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.25 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 8.11 (d, J = 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.83 (s, 2H, ArH), 7.77 (dd, J = 7.2 Hz, 8.4 Hz, 2H, ArH), 7.63-7.48 (m, 12H, ArH).

この化合物の溶解度を評価した結果、室温下クロロホルムに43g/L(2.8wt%)、トルエンに23g/L(2.6wt%)溶解した。この化合物は、いずれの溶媒に対しても塗布プロセスに使用可能な高い溶解度を示すことが明らかとなった。

[比較例1] ジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成 特許文献6の実施例に記載された表題化合物を、本発明の方法で合成した。

(第1工程) O,O’−(2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジイル)ビス(ジメチルカルバモチオエート)の合成

2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジオール(1.43g、5.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10.9mL)に、トリエチルアミン(5.32mL)、ピリジン(2.08mL)、N,N−ジメチルチオカルバモイルクロリド(2.47g、20.0mmol)を加え、65℃で44時間撹拌した。この溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒(ヘキサン:酢酸エチル=7:3(体積比))を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色固体の表題化合物1.79g、3.89mmol、78%)を得た。

融点: 230.5-231.0 ℃. 1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 3.00 (s, 6H, NCH3), 3.16 (s, 6H, NCH3), 7.46-7.52 (m, 4H, ArH), 7.54 (s, 2H, ArH), 7.84-7.88 (m, 4H, ArH), 7.98 (s, 2H, ArH). 13C NMR (150 MHz, CD3Cl): δ 38.5, 43.1, 120.9, 126.0, 126.6, 127.6, 128.0, 130.2, 131.3, 133.2, 149.8, 187.2. TOF HRMS (APCI): Calcd for C26H25N2S2O2 [M+H] 461.1357, found, 461.1349.

(第2工程) ジナフト[2,3-b:2',3'-d]チオフェンの合成

O,O’−(2,2’−ビナフタレン−3,3’−ジイル)ビス(ジメチルカルバモチオエート)(691mg、1.50mmol)をパイレックチューブに封管し、300℃で4時間加熱した。温度を室温に戻した後、トルエンと2−プロパノールとの混合溶媒(トルエン:2−プロパノール=8:2(体積比))による熱再結晶により、淡黄色固体の表題化合物(310mg、1.09mmol、73%)を得た。

融点: 282-283 ℃. 1H NMR (600 MHz, CDCl2CDCl2): δ 7.49-7.56 (m, 4H, ArH), 7.87 (d, J = 7.2 Hz, 2H, ArH), 8.03 (d, J = 7.2 Hz, 2H, ArH), 8.19 (s, 2H, ArH), 8.66 (s, 2H, ArH). MS (APCI+): 285 (M+H). Anal. Calcd for C20H12S: C, 84.47; H, 4.25. Found: C, 84.89; H, 4.43.

〔化学的安定性の評価〕 実施例3で合成した化合物を0.6951mg秤量し、グローブボックス内でメスフラスコを用いて、脱気したベンゾニトリル(25ml)に溶かした(溶液濃度:4.92×10-5 M)。この調整した溶液を蓋付きのUVセルに入れ、直ちにUV−Visスペクトル(使用装置:日本分光(株)製、Jasco V-570 spectrometer)を測定した。引き続き、大気下で蓋の開け閉めを数回繰り返し、溶液と空気中の酸素とを接触させた。その後、3時間、24時間、72時間後同様に測定した結果を図5に示す。その結果、72時間放置した溶液でもスペクトルに変化は見られなかった。

また、実施例3で合成した化合物を真空蒸着して形成された厚さ100nmの膜を、大気中に一週間放置した。その間、経時的にUV−Visスペクトル(使用装置:日本分光(株)製、Jasco V-570 spectrometer)を測定した結果を図6に示す。その結果、一週間放置した膜でもスペクトルに変化は見られなかった。 以上より、実施例3で合成した化合物が化学的に安定であることが明らかとなった。

〔有機トランジスタ素子の作製および特性評価〕 〈エッジキャスト法〉 本発明者らが開発した塗布法(エッジキャスト法;Appl. Phys. Exp. 2, 111501 (2009))に準拠し、製膜およびボトムゲート−トップコンタクト型有機FETの作製を行った。本法の概念図を、図2に示す。

シリコン基板(株式会社フジミファインテクノロジー社製)に対してデシルトリエトキシシラン(DTS)により表面処理を行い、熱酸化シリコン絶縁膜(膜厚500nm)付きシリコン基板(以下「基板」ともいう。)を得た。基板上に、溶液保持用のシリコン基板の欠片(以下「溶液保持構造」ともいう。)を置いた。基板を傾けながら、実施例で合成したカルコゲン含有有機化合物のo−キシレン溶液または1,2−ジクロロエタン溶液(カルコゲン含有有機化合物の濃度:0.2質量%)(有機半導体溶液)を、120℃で溶液保持構造のエッジに垂らした。溶媒の蒸発とともに結晶が成長しながら基板に貼り付き、数分で結晶成長が完了した。この状態で60〜100℃のアルゴン雰囲気下一夜(11時間)放置し、結晶膜を完全に乾燥した(膜厚:30〜150nm)。得られた結晶膜上にステンレス製の金属マスクを通してテトラフルオロテトラシアノキノジメタンのキャリア注入層(膜厚1nm)、続いて金のソース電極およびドレイン電極(同30nm)を真空蒸着して、チャネル長100μm、チャネル幅1mmを形成し、ボトムゲート−トップコンタクト型有機FETを作製した。作製した素子について、半導体パラメータアナライザー(型番「keithley 4200」、ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、キャリア移動度およびオン/オフ比の測定を行った。

〈ギャップキャスト法〉 本発明者らが開発した塗布法(ギャップキャスト法;Adv. Mater. 23, 1626 (2011).)に準拠し、製膜およびボトムゲート−トップコンタクト型有機FETの素子作製を行った。本法の概念図を図3に示す。

上記〈エッジキャスト法〉で用いた表面処理済みの基板上にスペーサーを置き、その上に、F−SAMで表面処理したシリコン基板を溶液保持板として基板上に重ねて、楔形のすき間を形成した。これをホットプレート上で120℃に加熱し、温度安定後、実施例で合成したカルコゲン含有有機化合物のo−ジクロロベンゼン溶液(カルコゲン含有有機化合物の濃度:0.2質量%)(有機半導体溶液)を楔形のすき間に注入した。溶液は楔形のすき間に保持され、溶媒の蒸発とともに結晶が成長する。溶媒蒸発後、この状態で60〜100℃のアルゴン雰囲気下一夜(11時間)放置し、結晶膜を完全に乾燥した(膜厚:150〜250nm)。この後は上記〈エッジキャスト法〉と同様に素子を作製し、FET特性評価を行った。

以上の有機トランジスタ素子の作製および特性評価を、実施例で得られた化合物について行った。評価結果を表1に示す。また、実施例7で合成した化合物のFET特性を図4に示す。図4によれば、実施例7で合成した化合物は、10〜11cm2/vsの高いキャリア移動度を示すことが確認された。

一方、比較例1の化合物においては、高品質の2次元状の結晶膜が溶液プロセスでは作成できず、上記塗布法による製膜は困難であった。その結果、比較例1の化合物については、上記塗布法による有機トランジスタ素子の作製および特性評価はできなかった。

〈蒸着法によるFET特性の比較〉 比較例1のカルコゲン含有有機化合物については、塗布法による素子作製が不可能であったため、実施例6および比較例1のカルコゲン含有有機化合物について蒸着法で素子を作製し、FET特性の比較を行った。

上述の熱酸化シリコン絶縁膜(膜厚500nm)付きシリコン基板に対して、アセトンおよび2−プロパノールで各5分超音波洗浄を行い、続いてUVオゾン処理を30分間行った。洗浄処理した基板表面にDTSの自己組織化単分子膜を蒸気法で製膜した後、カルコゲン含有有機化合物を蒸着速度0.4〜0.6Å/sで真空蒸着し、膜厚が75nmの有機半導体層を形成した。次いで、ステンレス製の金属マスクを通してテトラフルオロテトラシアノキノジメタンのキャリア注入層(膜厚1nm)、続いて金のソース電極およびドレイン電極(同30nm)を真空蒸着して、チャネル長100μm、チャネル幅1mmを形成し、ボトムゲート−トップコンタクト型有機FETを作製した。

作製した素子について、半導体パラメータアナライザー(型番「keithley 4200」、ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、キャリア移動度およびオン/オフ比の測定を行った。その結果、実施例6の有機半導体材料を有機半導体層の形成に用いた場合は、キャリア移動度は5.5cm2/V・s、オン/オフ比は107であった。一方、比較例1の有機半導体材料を有機半導体層の形成に用いた場合は、キャリア移動度は0.4cm2/V・s、オン/オフ比は106であった。

以上の結果から、各実施例で合成した有機半導体材料は、比較例で合成した有機半導体材料よりも、(1)溶媒に対する溶解性に優れること、(2)製膜方法によらず、本質的に高いキャリア移動度を示すこと、が明らかとなった。

10…ソース電極、20…ドレイン電極、30…ゲート電極、40…有機半導体層、50…ゲート絶縁膜、60…基板、70…キャリア注入層、80…結晶膜、90…有機半導体溶液、100…溶液保持構造、110…スペーサ−、120…溶液保持板

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