【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は新規ジチオペンタセン誘導体、その製法及び電子受容体としての該ジチオペンタセン誘導体から得られた電荷移動錯体(以下CT錯体と略す)及び電子供与体としての非置換又は置換フェロセン、カルコゲン化フルバレン又は芳香族窒素化合物に関する。 更に、本発明はその製造方法、プラスチックス材料及びそのような錯体を含む組成物、並びに好都合には、導電性フィルム、箔又は被覆の製造のための、導電体としてのCT錯体の用途に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】化合物ジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕〔1,4〕ジチイン−5,7,12,14−テトラオン(以下、DN DTと略す)は、MartinezらがChem. Research(S)、24 6-247P(1991)中に記載している。 室温で、DNDTは圧縮ペレットとして10 -11 S /cm の非常に低い導電率を有する。 更に,本化合物の製造方法は、K.Brass.と L. Koheler らによるBer.Deutsch.Chem.Ges.,55,2543-2 568(1992 ) に記載されているが、ジナフト〔2,3− b;2',3'−e〕〔1,4〕ジチイノン類及び−シアノイミン類は記載されていない。 【0003】電子供与体としてのテトラ−置換−ペンタセン−シアノイミン、テトラ−チオ−フルバレン、テトラ−置換−ペンタセン−シアノイミンの単結晶、アルカリ金属カチオン及びテトラアルカリアンモニウム塩を含む粉末状のCT錯体については、Sythetic Metals,41-4 3,2365-2375(1991) に記述されている。 しかし粉末材料では加工後それら粒子が重合体材料によりカプセル化され、従って、絶縁されるので重合体材料の導電率を増すには不適当である。 【0004】更に、L.millerらはChem. Mater.2,339-40 (1990)に、ナトリウム及びカリウムのようなアルカリ金属を有するラジカルカチオン塩の製造のための電子受容体としての5,7,12,14−ペンタセン−テトラシアノイミンについて記述している。 【0005】米国特許第5009812 号では、例えば電子供与体としての、テトラチオ基、テトラセレノ基又はテトラテルロテトラセン基及び電子受容体としての、ハロゲン又は酸素原子のCT錯体を含む静電処理された導電性重合体が開示されている。 【0006】電子受容体としてのテトラシアノキノジメタン(TCNQ)及び電子供与体としてのN−芳香族化合物とのCT錯体は、とりわけCDJager とAJBardらによりJ.Am.Chem.Soc.,102,No17,5435-5442(1980) 及び Russel MelbyによりJ.Can.Chem.,43,1448-1553(1965)に記載されている。 これらのCT錯体は必ずしも針状の結晶体ではなく、その結晶構造のために、針状結晶の網目構造の導電性箔の製造には適さない。 【0007】驚くべきことに、今6,13−ジチオペンタセン誘導体と非置換フェロセン若しくは特定の置換フェロセン(以下、フェロセン誘導体と略す)、フレバレン誘導体又はN−芳香族化合物とがCT錯体を形成し、 それらが結合剤及び針状結晶の存在下においてさえも予想以上に高い導電率を持ち、加工用機械等の金属部分に全く腐食作用を及ぼさないことが見出された。 更に出発原料が極性の少ない有機溶媒に溶解しやすく、その為にCT錯体の製造に非常な高温を要しない。 本発明のCT 錯体は、湿気と熱に対して驚く程に優れた安定性を有している。 さらに、このCT錯体は驚くほど微細な安定した針状結晶を形成し、その為に針状結晶の非常に細かい網目構造及び高い導電率を有するフィルム又は箔を得ることができる。 【0008】 【課題を解決するための手段】その特徴の一つとして、 本発明は式(I): 【0009】 【化6】 【0010】(式中、R置換基は同一であり、H又はC 1 −C 4アルキルであるか、又は隣接のR置換基は、一緒になって、−(CH 2 ) 3 −若しくは−(CH 2 ) 4 −であり;R 1はH又はC 1 −C 4アルキルであり;X 1は=N−CNであり、X 2 、X 3及びX 4は=O又は=N−CNである)で示される化合物に関する。 【0011】アルキルとして定義された、R及びR 1 は、メチル、エチル、n−若しくはイソプロピル又はn −、i−若しくはt−ブチルであってよい。 好ましいアルキル基はメチル及びエチルである。 本発明の好ましい実施態様において、R置換基はC 1 −C 4アルキルであり、R 1置換基はHであるか、又はR 1置換基はC 1 − C 4アルキルであり、R置換基はHである。 好ましくはR及びR 1はH、メチル又はエチルである。 本発明の特に好ましい実施態様において、R及びR 1はHである。 【0012】本発明の別の好ましい実施態様において、 X 1及びX 4は=N−CNであり、そしてX 2及びX 3 は=O又は=N−CNであるか、又はX 2及びX 3は= N−CNであり、そしてX 1及びX 4は=O又は=N− CNである。 最も好ましくはX 1 、X 2 、X 3及びX 4 は=N−CNである。 【0013】式(I)の好ましい化合物は,ジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕〔1,4〕ジチイン− 5,7,12,14−テトラシアノイミン、2,3, 9,1O−テトラメチルジナフト〔2,3−b;2', 3'−e〕〔1,4〕ジチイン−5,7,12,14− テトラシアノイミン及び2,9−ジメチルジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕〔1,4〕ジチイン− 5,7,12,14−テトラシアノイミンである。 【0014】他の特徴として、本発明は、式(I)で示される化合物の製造方法であって、式(Ia): 【0015】 【化7】 【0016】(式中、R及びR 1は上記と同義である) で示されるテトラオンを、不活性雰囲気中又は不活性溶媒中でTiCl 4及び〔(CH 3 ) 3 SiN〕 2 Cの等モル量と共に10ないし30時間加熱することを特徴とする方法に関する。 この方法において、DNDTは反応してジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕〔1, 4〕ジチン−5,7,12,14−シアノイミン(6, 13−ジチオペンタセンテトラシアノイミン)を形成する。 【0017】溶媒は好ましくはハロゲン化炭化水素、代表的にはジクロロメタン又はジクロロエタンである。 【0018】不活性雰囲気としてはアルゴンの使用が好ましい。 【0019】反応温度は0ないし1OO o Cの範囲であってよい。 【0020】“−オン”基当たり、少なくとも、1当量のTiCl 4及び1当量の〔(CH 3 ) 3 SiN〕 2 C が使用される。 それは過剰に使用される事が好ましく、 好都合には1ないし5倍、好ましくは1ないし3倍の過剰である。 【0021】6,13−ジチオ−5,7,12,14− テトラオン(ジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕 〔1,4〕ジチイン−5,7,12,14−テトラオン)の製法は既知であり、とりわけK.Brass.及びL.Kohl erらによりBer.Deutsch.Chem.Ges.55, 2543 (1992 )に記載された方法により実施することができる。 対応する置換テトラオン類は類似の方法により製造することができる。 【0022】 【化8】 【0023】式(I)で示される化合物は導電性の電荷移動錯体を形成するのに非常に適している。 【0024】他の特徴として、本発明は式(II): 【0025】 【化9】 【0026】(式中、 a)Aは式(I)の化合物又は式(I)の化合物の混合物のラジカルアニオンであり、そして b)p及びqは1であり、そしてBは式(III a)若しくは(III b): 【0027】 【化10】 【0028】(式中、R 2 、R 3 、R 4及びR 5は、互いに独立して、H、或は非置換又はC 1 −C 4アルキル、C 1 −C 4アルコキシ若しくはC 1 −C 4アルキルチオにより置換された、直鎖若しくは分岐したC 1 −C 18アルキル(Z 1 ) n −、フェニル−(Z 1 ) n −若しくはベンジル−(Z 1 ) n −であるか、又はR 2とR 3 及びR 4とR 5は、互いに独立して、それぞれ、非置換又はC 1 −C 4アルキル、C 1 −C 4アルコキシ若しくはC 1 −C 4アルキルチオにより置換された、トリメチレン、テトラメチレン、−Z 2 −(CH 2 )−Z 2 −、 −Z 2 −(CH 2 ) 2 −Z 2 −、−Z 1 −CH=CH− Z 1 −若しくは−CH=CH−CH=CH−であり、n は0又は1であり、Y 1及びY 2は、互いに独立して、 −S−又は−Se−であり、Z 1は−S−又は−Se− であり、Z 2は−O−、−S−又は−Se−であり、Z は−S−、−Se−又はNR 7 (ここで、R 7はH、C 1 −C 6アルキル、フェニル又はベンジルである)であり、そしてR 6はH、C 1 −C 4アルキル、フェニル又はベンジルである)で示される化合物の1価のラジカルカチオンであるか;又はBは非置換又はハロゲン、C 1 −C 4アルキル若しくはC 1 −C 4アルコキシ置換芳香族環を総計で1ないし5個含むN−芳香族化合物(ここでそれらの環の少なくとも一個の環は、少なくとも一個の−NR 8 −又は〔=N + R 8 −〕I - (式中、R 8はC 1 −C 4アルキル又はベンジルである)を含む)の1 価のラジカルカチオンであるか;或は c)p及びqは2であり、そしてBは上記のN−芳香族化合物の2価のラジカルカチオンであるか;又は d)pは2であり、qは1であり、そしてBは非置換のフェロセン若しくはFe(インデニル) 2 、或はC 1 − C 6アルキル、C 1 −C 6アルコキシ、C 1 −C 6ヒドロキシアルキル、アミノ−C 1 −C 6アルキル、第一級アミノ基中に1ないし12個の炭素原子及び第二級アミノ基中に2ないし12個の炭素原子を含む、第一級若しくは第二級アミノ−C 1 −C 6アルキル、NH 2 、1ないし12個の炭素原子を含む第一級アミノ又は2ないし12個の炭素原子を含む第二級アミノにより置換された、フェロセン若しくはFe(インデニル) 2である) で示される電荷移動錯体に関する。 【0029】R、R 1及びX 1ないしX 4は、上述と同じ好ましい意味を有する。 【0030】本発明の好ましい実施態様において、式(III )及び(III a)で示される化合物のY 1及びY 2は、−S−又は−Se−のいずれかであり、最も好ましくは−S−である。 【0031】式(III a)で示される化合物において、 R 2とR 3及びR 4とR 5は好ましくは同一であり、最も好ましくはR 2ないしR 5は同一である。 【0032】アルキル−(Z 1 ) n −として定義されるR 2ないしR 5は、好ましくはC 1 −C 12アルキル− (Z 1 ) n −、より好ましくはC 1 −C 8アルキル− (Z 1 ) n −、最も好ましくは、C 1 −C 4アルキル− (Z 1 ) n −である。 アルキルは、好ましくは直鎖のアルキルである。 典型的なアルキル基は、メチル、エチル、n−及びイソプロピル、n−、i−及びt−ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、 ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシルである。 メチル、エチル、n−及びイソプロピル並びにn−、i−及びt−ブチルが特に好ましい。 【0033】本発明の好ましい実施態様において、基アルキル−(Z 1 ) n −はメチル、エチル、n−及びイソプロピル、n−、i−及びt−ブチル、メチルチオ、メチルセレノ、エチルチオ並びにエチルセレノである。 【0034】C 1 −C 4アルキル、C 1 −C 4アルコキシ及びC 1 −C 4アルキルチオ置換基は、代表的にはメチル、エチル、n−及びイソプロピル、n−、i−及びt−ブル並びに対応するアルコキシ及びアルキルチオ基であってよい。 好ましい置換基はメチル、エチル、n− 及びイソプロピル、n−及びイソブチル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ並びにエチルチオである。 【0035】フェニル−(Z 1 ) n −又はベンジル− (Z 1 ) n −の代表例は、フェニル、ベンジル、フェニルチオ、フェニルセレノ、ベンジルチオ、ベンジルセレノ、メチルフェニル、メチルベンジル、エチルフェニル、n−又はi−プロピルフェニル、n−、i−又はt −ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジメチルベンジル、メトキシフェニル、メチルチオフェニル、メチルチオベンジル、メチルフェニルチオ及びメチルフェニルセレノである。 【0036】式(III b)において、R 6は好ましくはH又はC 1 −C 4アルキルである。 最も好ましいR 6はH、メチル又はエチルである。 【0037】式(III b)において、Zは好ましくは− S−又は−NR 7 −であり、最も好ましくは−NR 7 − である。 R 7は好ましくはH又はC 1 −C 4アルキル、 最も好ましくはH、メチル又はエチルである。 【0038】Z 1は好ましくは−S−であり、そしてZ 2は好ましくは−O−又は−S−である。 【0039】式(I)の化合物の好ましい下位群は、式(II)において、RはH、メチル又はエチル、最も好ましくはHであり、R 1はH又はメチル、最も好ましくはHであり、X 1ないしX 4が=N−CNであり、そして式(III a)及び(III b)において、R 2及びR 3並びにR 4及びR 5 、又はR 2ないしR 5は同一であってH、直鎖若しくは分岐したC 1 −C 8アルキル−(Z 1 ) n −、非置換若しくはC 1 −C 4アルキル−置換フェニル−(Z 1 ) n −又はベンジル−(Z 1 ) n −であるか、又はR 2とR 3及びR 4とR 5は、互いに独立してそれぞれ一緒になって、非置換又はC 1 −C 4アルキル−置換トリメチレン、テトラメチレン、−Z 2 −(C H 2 )−Z 2 −、−(CH 2 ) 2 −Z 2 −、−Z 1 −C H=CH−Z 1 −又は−CH=CH−CH=CH−であり、nは0又は1であり、Y 1及びY 2は−S−であり、Z 1は−S−であり、Z 2は−O−又は−S−であり、Zは−S−又はNR 7 (ここで、R 7はH又はC 1 −C 4アルキルである)であり、そしてR 6はH又はC 1 −C 4アルキルである化合物を含む。 【0040】式(II)の化合物の特に好ましい下位群は、式(I)において、R及びR 1はHであり、X 1ないしX 4は=N−CNであり、式(III a)及び(III b)において、R 2ないしR 5は同一であってH又は直鎖若しくは分岐したC 1 −C 4アルキル−(Z 1 ) n − であるか、又はR 2とR 3及びR 4とR 5は、それぞれ一緒になって、トリメチレン、テトラメチレン、−Z 2 −(CH 2 )−Z 2 −、−Z 2 −(CH 2 ) 2 −Z 2 −、−Z 1 −CH=CH−Z 1 −又は−CH=CH−C H=CH−であり、nは0又は1であり、Y 1及びY 2 は−S−であり、Z 1は−S−であり、Z 2は−O−又は−S−であり、Zは−S−又はNR 7 (ここで、R 7 はH又はC 1 −C 4アルキルである)であり、そしてR 6はH又はC 1 −C 4アルキルである化合物を含む。 【0041】式(II)のCT錯体の代表的例は、式(I I)において、Aが、6,13−ジチオ−5,12, 7,14−ペンタセンテトラシアノイミンであり、Bがテトラチオフルバレン、テトラメチルテトラチオフルバレン、テトラエチルテトラチオフルバレン、ジメチルジエチルテトラチオフルバレン、テトラ−n−プロピルテトラチオフルバレン、テトラ−n−ブチルテトラチオフルバレン、テトラ(メチルチオ)テトラチオフルバレン、テトラ(エチルチオ)テトラチオフルバレン、テトラ(n−プロピルチオ)テトラチオフルバレン、テトラ(n−ブチルチオ)テトラチオフルバレン、ジメチルジメチルチオテトラチオフルバレン、ジエチルジメチルチオテトラ−チオフルバレン、ジエチルチオジメチルチオテトラチオフルバレン及びテトラセレノフルバレンであるそれらである。 【0042】BがN−芳香族化合物のラジカルカチオンである場合に、芳香族環は炭化水素環又は一個若しくは2個の窒素原子を含む複素環である。 【0043】N−芳香族化合物Bは、好ましくは総計で1ないし3個の環、そして少なくとも一個のN−芳香族環を含む。 好ましい実施態様において、Bは1ないし3 個の環を含み、かつ一個が複素環であるか、又はBはビスN−複素芳香環である。 それらの環は好ましくは6員環である。 特に好ましいN−芳香族化合物は、ピリジン、ピリミジン、ピラジン及びフェナジンである。 【0044】本発明の特に好ましい実施態様において、 式(II)において、N−芳香族化合物としてのBは式(IVa)ないし(IVf): 【0045】 【化11】 【0046】(式中、C,C',D及びD'はHであるか、又はCとD及び/又はC'とD'は−CH=CH− CH=CH−であり、EはN又はCHであり、R 9は、 独立して、R 8と同じ意味を有し、そしてR 8はC 1 − C 4アルキル又はベンジルである)で示されるカチオンに対応する。 【0047】R 8は好ましくはエチル又はメチルである。 【0048】式(II)において、N−芳香族化合物B は、代表的にはN−メチル−及びN−エチルピリジニウム;N−メチル−及びN−エチルピラジニウム;N−メチル−及びN−エチルキノリウム;N−メチル−及びN −エチルフタラジニウム;N−メチル−及びN−エチルイソキノリウム;N−メチル−及びN−エチルベンゾピラジニウム;4,4'−ジメチル−、4,4'−ジエチル−及び4−メチル−4'−エチルビピリジニウム;N −メチル−及びN−エチルアクリジニウム;N−メチル−及びN−エチルフェナジニウム;2,2'−ジメチル−、2,2'−ジエチル−及び2−メチル−2'−エチルビピリジニウム;N−メチル−及びN−エチルフェナジニウム;2,2'−ジメチル−、2,2'−ジエチル−及び2−メチル−2'−エチルビピリジニウム;N− メチル−及びN−エチルピリダジニウム;5,10−ジメチル−、5,10−ジエチル−及び5−メチル−10 −エチル−5,10−ジヒドロフェナジニウムのカチオンであってよい。 【0049】式(I)の化合物は、好ましくは6,13 −ジチオ−5、7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン(ジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕 〔1,4〕ジチイン−5,7,12,14−テトラシアノイミン)(それは純粋な形態であるか、又は混合物の総重量に基づいて、1個又は2個のシアノイミン基が酸素原子で置き換えられている式(I)の化合物10重量%までを含む)である。 式(II)の特に好ましいCT錯体は、6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン及びBとしての、N−メチルピラジニウム、N−エチルピラジニウム又は5−メチル− 10−エチル−5,1O−ジヒドロフェナジニウムから得られたそれらである。 【0050】式(II)において、フェロセン誘導体としてのBは、代表的にはFe〔R 10 〕 2 (式中、R 10はシクロペンタジエニル又はインデニル(それはC 1 −C 6 アルキル、C 1 −C 6アルコキシ、C 1 −C 6ヒドロキシアルキル、アミノ−C 1 −C 6アルキル、第一級アミノ基中に1ないし12個の炭素原子及び第二級アミノ基中に2ないし12個の炭素原子を含む、第一級又は第二級アミノ−C 1 −C 6アルキル、NH 2 、1ないし12 個の炭素原子を含む第一級アミノ又は2ないし12個の炭素原子を含む第二級アミノよりなる群からそれぞれ選ばれた1ないし5個又は1ないし7個の置換基を有する)であってよい。 【0051】アルキルは直鎖又は分岐型であってよく、 好ましくは1ないし4個の炭素原子を含む。 代表的例はメチル、エチル、n−又はイソプロピル、n−、iso −又はt−ブチル、ペンチル及びヘキシルである。 アルキルは好ましくはエチル、最も好ましくはメチルである。 【0052】アルコキシは直鎖又は分岐型であってよく、好ましくは1ないし4個の炭素原子を含む。 代表的例はメトキシ、エトキシ、n−又はイソプロポキシ、n −、i−又はt−ブトキシ、ペントキシ又はヘキソシキである。 アルコキシは好ましくはエトキシ、最も好ましくはメトキシである。 【0053】ヒドロキシアルキルは直鎖又は分岐型であってよく、好ましくは1ないし4個の炭素原子を含む。 代表的例は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ−n−プロピル又はヒドロキシイソプロピル、 ヒドロキシ−n−、i−又はt−ブチル、ヒドロキシペンチル及びヒドロキシヘキシルである。 ヒドロキシアルキルは好ましくはヒドロキシエチル、最も好ましくはヒドロキシメチルである。 【0054】アミノアルキルは直鎖又は分岐型であってよく、好ましくは1ないし4個の炭素原子を含む。 代表的例はアミノメチル、アミノエチル、n−、i−又はt −アミノブチル、アミノペンチル又はアミノヘキシルである。 アミノアルキルは好ましくはアミノエチル、最も好ましくはアミノメチルである。 【0055】第一級及び第二級アミノアルキルは直鎖又は分岐型であってよく、好ましくは1ないし4個の炭素原子を含む。 第一級アミノは、好ましくは1個のC 1 − C 6アルキル、最も好ましくはC 1 −C 4アルキルを含み、第二級アミノは好ましくは2個のC 1 −C 6アルキル、最も好ましくは一個のC 1 −C 4アルキルを含む。 特に好ましいアルキル基はメチル及びエチル基であり、 このようなアミノアルキル基の代表例はメチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、 メチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル若しくはジエチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチル、ジエチルアミノペンチル及びジメチルアミノヘキシルである。 好ましいアミノアルキル基はメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、メチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、エメチルアミノメチル及びジエチルアミノメチルである。 【0056】第一級アミノは、好ましくは1ないし6個の炭素原子を含み、第二級アミノは好ましくは2ないし6個の炭素原子を含む。 第一級及び第二級アミノは好ましくはC 1 −C 4アルキル、代表的にはメチル、エチル、n−若しくはイソプロピル又はn−、i−若しくはt−ブチルである。 代表例はメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、n−及びイソプロピルアミノ、ジ−n−及びジイソプロピルアミノ、n −、i−及びt−ブチルアミノ並びにジ−n−及びジイソブチルアミノである。 【0057】本発明の好ましい実施態様において、R 10 はC 1 −C 4アルキルで置換されている、シクロペンタジエニル又はインデニルである。 最も好まししくはR 10 はメチル−置換のシクロペンタジエニル又はインデニルである。 【0058】Bの代表例は、フェロセン及びFe(イデンデニル) 2であり、式(II)中のフェロセン誘導体としてジメチル−、テトラメチル−、ヘキサメチル−、オクタメチル−及びデカメチルフェロセンである。 好ましい式(II)のCT錯体は、そ6,13−ジチオ−5, 7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン及びB としての、非置換フェロセン、又はジメチル、テトラメチル、ヘキサメチル、オクタメチル若しくはデカメチルフェロセンからのそれらである。 【0059】更に別の特徴として、本発明は式(II)のCT錯体の製造方法であって、 a)Bが非置換フェロセン、フェロセン誘導体又はフルバレン誘導体である場合に、不活性有機溶媒中でフェロセン、フェロセン誘導体又はフルバレン誘導体Bの等モル量及び式(I)の6,13−ジチオペンタセン誘導体の等モル量を反応(等モルとはフェロセン又はフェロセン誘導体Bの約1当量が式(I)の6,13−ジチオペンタセン誘導体の2当量が反応し2:1の錯体を形成する事を意味するか、又はは式(III a)若しくは式(II I b)のフルバレン若しくはフルバレン誘導体の約1当量が式(I)の6,13−ジチオペンタセン誘導体の約1当量と反応して1:1の錯体を形成することを意味する)させるか、又は、 b)BがN−芳香族化合物である場合に、不活性有機溶媒中でBとしての中性の5,10−ジヒドロフェナジン誘導体若しくはそのヨード塩又はN−芳香族化合物の1 当量と、式(I)の6,13−ジチオペンタセン誘導体の少なくとも1当量を反応させることを特徴とする方法に関する。 しかしながら、過剰のジチオペンタセン誘導体を使用するのが有利である。 【0060】フェロセン及びフルバレン誘導体は公知であり、あるものは商業的に入手することができ、公知の標準の方法により製造することができる。 【0061】N−芳香族化合物は塩又は塩基として公知であり、あるものは商業的に入手することができ、公知の標準の方法により製造することができる。 中性塩B及びヨウ化アルキルの反応が所望のヨード塩を与える。 これらの誘導体の製法はL.Russell Melby によりCan.J.Ch em.Vol,43,1488-1453 (1965)に記載されている。 【0062】このCT錯体の製造のための本発明の方法は、好都合には上昇した温度、代表的には、室温から1 50 O Cまでの範囲で実施される。 新規なCT錯体を単離するために、反応混合物を冷却し、沈殿した結晶を濾過により単離し、それを洗浄及び/又は再結晶により精製することができる。 【0063】適切な溶媒は、代表的には非極性又は極性非プロトン性有機溶媒であり、それらは単独又は少なくとも2種の溶媒の混合物で用いてよい。 代表例はエーテル類(アニソール、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチル又はジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチル又はジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロゲン化炭化水素類(メチレンクロリド、クロロホルム、1,2−ジクロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン)、カルボキシレート類又はラクトン類(エチルアセテート、メチルプロピオナート、エチルベンゾエート、2−メトキシエチルアセテート、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ピバロラクトン)、カルボキシアミド類又はラクタム類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、 テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、 γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン、N−アセチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド)、スルホン類(ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、トリメチレンスルホン、テトラメチレンスルホン)、第3級アミン類(N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン)、置換ベンゼン類(ベンゾニトリル、 クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4− トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル)及び脂肪族又は脂環式炭化水素類(石油エーテル、 ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン)である。 適切な溶媒は又芳香脂肪族エーテル類であり、例えばメチル又はエチルフェニルエーテルである。 【0064】BがN−芳香族化合物である場合には極性溶媒が好ましく、その理由は化合物Bのヨード塩がこれらの条件下で優れた溶解性を持つ事にある。 好ましい極性溶媒は、代表的にはジメチルホルムアミド及びγ−ブチロラクタムである。 【0065】本発明の方法により得られるCT錯体は高純度で得ることができ、濾過後に溶媒で洗浄するだけでよい。 通常、それらは暗色ないし黒色の針状結晶として得られ、圧縮ペレットは10 -4 S/cmを超える導電率を有する。 従って、それらは導電体として用いるのにすぐれた適応性を有している。 本発明のCT錯体を重合体材料中に混合することにより、このCT錯体の種類及び添加量に依存して導電性又は静電防止処理された重合体を得ることができ、これらのCT錯体は針状結晶の網目構造として重合体のマトリックス中に存在している。 重合体マトリックス中のCT錯体の濃度に依存して、針状結晶の非常に細かい網目構造を得ることができる。 【0066】更に別の特徴として、本発明はa)熱硬化性、熱可塑性又は構造的に架橋された重合体、及びb) 重合体マトリックス中で針状結晶の網目構造の形態での式(II)のCT錯体を含む組成物に関する。 【0067】新規な組成物は、該組成物に基づいて、 0.01ないし30重量%、好ましくは0.01ないし20重量%、特に好ましくは0.01ないしから10重量%、最も好ましくは0.1ないし5重量%の濃度でこのCT錯体を含んでいてもよい。 【0068】熱可塑性重合体は、好都合には以下の重合体、共重合体又はこれらの重合体の混合物から選択されてよい。 【0069】1. モノオレフィン及びジオレフィンの重合体、例えばポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリイソブト−1−エン、ポリメチルペント−1−エン、ポリイソプレン又はポリブタジエン、並びにシクロオレフィン重合体、例えばシクロペンテン又はノルボレン、ポリエチレン(非架橋又は架橋し得る)、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDP E)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、分岐型低密度ポリエチレン(BLDPE)。 【0070】2. 上記1)で述べた重合体の混合物、例えばポリプロピレンとポリイソブチレン、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物(例えばPP/HDPE、P P/LDPE)及び異種ポリエチレンの混合物(例えばLDPE/HDPE) 【0071】3. モノオレフィンとジオレフィンとの相互の共重合体又はビニル単量体との共重合体、例えばエチレン/プロピレン共重合体、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びそれと低密度ポリエチレン(LDP E)の混合物、プロピレン/ブタ−1−エン共重合体、 エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/エチルペンテン共重合体、エチレン/ヘプテン共重合体、エチレン/ オクテン共重合体、プロピレン/イソブチレン共重合体、エチレン/ブタ−1−エン共重合体、プロピレン/ ブタジエン共重合体、イソブチレン/イソプレン共重合体、エチレン/アルキル−アクリラート共重合体、エチレン/アルキル−メタクリラート共重合体、エチレン/ ビニルアセテート又はエチレン/酢酸共重合体及びそれらの塩(アイオノマー)、並びにエチレンとプロピレン及びジエンとの三元共重合体、例えばヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデン−ノルボルネン;及びそのような重合体の相互の混合物及び上記1)で述べた重合体との混合物、例えばポリプロピレン/エチレン−プロピレン共重合体、LDPE/エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)、LDPE/エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、LLDPE/EVA、L LDPE/EAA及びポリアルキレン/一酸化炭素の交互若しくはランダム共重合体及びそれと他の重合体との混合物、例えばポリアミド。 【0072】3a. その水素化改質物を含む(例えばC 5 −C 9 )炭化水素樹脂(例えば粘着付与材)及びポリアルキレンと殿粉の混合物。 【0073】4. ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)。 【0074】5. スチレン又はα−メチルスチレン及びジエン又はアクリル酸誘導体との共重合体、例えばスチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/アルキルメタクリレート、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/ブタジエン/アルキルアクリレート、 スチレン/ブタジエン/アルキルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル/メチルアクリルレート;スチレン共重合体と他の重合体とからの高耐衝撃性の混合物、例えばポリアクリレート、ジエン重合体又はエチレン/プロピレン/ジエン三元重合体からのもの;スチレンのブロック共重合体、例えばスチレン/ブタジエン/ スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン。 【0075】6. スチレン又はα−メチルスチレンのグラフト共重合体、例えばポリブタジエン上のスチレン、 ポリブタジエン−スチレン又はポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体上のスチレン、ポリブタジエン上のスチレン及びアクリロニトリル(若しくはメタクリロニトリル)、ポリブタジエン上のスチレン及びマレイン酸無水物若しくはマレイミド、ポリブタジエン上のスチレン、アクリロニトリル及びマレイン酸無水物若しくはマレイミド、ポリブタジエン上のスチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレート、ポリブタジエン上のスチレン及びアルキルアクリレート若しくはメタクリルレート、エチレン/プロピレン/ジエン・三元共重合体上のスチレン及びアクリロニトリル、ポリアクリレート若しくはポリメタクリレート上のスチレン及びアクリロニトリル、アクリレート/ブタジエン共重合体上のスチレン及びアクリロニトリル、並びに5)で述べた共重合体及びそれの混合物、例えばABS、MBS、ASA又はAES重合体として知られる共重合体混合物。 【0076】7. 含ハロゲン重合体、例えばポリクロロプレン、塩素化ゴム、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、エチレン及び塩素化エチレンの共重合体、エピクロロヒドリンの単独−及び共重合体、塩素化ビニル化合物の重合体、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、並びにその共重合体、例えば塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニル/ビニルアセテート又は塩化ビニリデン/酢酸ビニルの共重合体。 【0077】8. α,β−不飽和酸及びその誘導体から誘導された重合体、例えばブチルアクリレート、ポリアクリルアミド又はポリアクリロニトリルで衝撃−改質されたポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリメチルメタクリレート。 【0078】9.8)で述べた単量体の相互又は他の不飽和単量体との共重合体、例えばアクリロニトリル/ブタジエン、アクリロニトリル/アルキルアクリレート、 アクリロニトリル/アルコキシアルキルアクリルレート若しくはアクリロニトリル/ハロゲン化ビニル共重合体又はアクリロニトリル/アルキルメタクリレート/ブタジエン三元共重合体。 【0079】10. 不飽和アルコールとアミン又はそのアシル誘導体若しくはそのアセタールから誘導された重合体、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルステアリレート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルマレエート、ポリビニルブチラール、 ポリアリルフタレート又はポリビニルメラミン;並びに上記1)で述べたオレフィンとのそれらの共重合体。 【0080】11. 環状エーテルの単独重合体及び共重合体、例えばポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレン、又はビス(グリシジル)エーテルとその共重合体。 【0081】12. ポリアセタール、例えばポリオキシメチレン及びコモノマーとしてエチレンオキシドを含むそれらのポリオキシメチレン;熱可塑性ポリウレタン、 アクリレート又はMBSにより改質されたポリアセタール。 【0082】13. ポリフェニレンオキシド及びポリフェニレンスルフィド並びにスチレン重合体又はポリアミドとのその混合物。 【0083】14. 一方がポリエーテル、ポリエステル又は末端水酸基のブタジエン及び他方が脂肪族又は芳香族ポリイソシアネート、並びにその前駆体から誘導されるポリウレタン。 【0084】15. ジアミンとジカルボン酸及び/又はアミノカルボン酸若しくは相当するラクタムから誘導されるポリアミド及びコポリアミド、例えばポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、6/10、6/ 9、6/12、4/6、12/12、ポリアミド11、 ポリアミド12、m−キシレンジアミン及びアジピン酸の縮合により得られた芳香族ポリアミド、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸及び/又はテレフタル酸及び場合により改質剤としてのグラフトエラストマーから調製されたポリアミド、例えばポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド又はポリ−m−フェニレンイソフタルアミド;及びまたポリオレフィン、 オレフィン共重合体、イオノマー又は化学的に結合若しくはグラフトしたエラストマーとの、又はポリエーテルとの、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール若しくはポリテトラメチレングリコールとの、上記のポリアミドとの共重合体;EPDM若しくはABSで改質されたポリアミド又はコポリアミド;及び加工中に縮合させたポリアミド(RIMポリアミド系)。 【0085】16. ポリ尿素、ポリイミド、ポリアミド−イミド及びポリベンズイミダゾール。 【0086】17. ジカルボン酸とジオール及び/又はヒドロキシカルボン酸若しくは相当するラクタムから誘導されたポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリ〔2, 2,−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〕テレフタレート及びポリヒドロキシベンゾエート、並びにヒドロキシ末端ポリエーテルから誘導されたブロック共重合体エステル及びポリカーボネート若しくはMBSで改質されたポリエステル。 【0087】18. ポリカーボネート及びポリエステルカーボネート。 【0088】19. ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン。 【0089】20. ジグリシジル化合物のポリエーテル、代表的にはジグリシジルエーテル及びジオール、例えばビスフェノールA及びビスフェノーAのジグリシルエーテル。 【0090】21. 天然の重合体、例えばセルロース、 ゴム、ゼラチン及び化学的に改質されたその同族誘導体、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート及びセルロースブチレート、又はセルロースエーテル、例えばメチルセルロース、ロジン(rosin )及びそれらの誘導体。 【0091】22. 上述の重合体の配合物(polyblend )、例えばPP/EPDM、ポリアミド/EPDM若しくはABS、PVC/EVA、PVC/ABS、PV C/MBS、PC/ABS、PBTP/ABS、PC/ ASA、PC/PBT、PVC/CPE、PVC/アクリレート、POM/熱可塑性PUR、PC/熱可塑性P UR、POM/アクリレート、POM/MBS、PPE /HIPS、PPE/PA66と共重合体、PA/HD PE、PA/PP、PA/PPO。 【0092】好ましい熱可塑性重合体はポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテル、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリイミド及びポリビニルカルバゾールである。 【0093】熱硬化性及び構造的に架橋された重合体は、代表的には以下の重合体である。 【0094】1. 一方においてアルデヒド及び他方においてフェノール、尿素又はメラミンから誘導された架橋された重合体、例えばフェノール/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂。 【0095】2. 乾燥性又は非乾燥性アルキド樹脂。 【0096】3. 飽和又は不飽和ジカルボン酸と多価アルコール並びに架橋剤としてのビニル化合物及びまた低可撚性のハロゲン含有改質剤のコポリエステルから誘導された不飽和ポリエステル樹脂。 【0097】4. 置換アクリル酸エステルから誘導された架橋し得るアクリル樹脂、例えばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート又はポリエステルアクリレート。 【0098】5. メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート又はエポキシ樹脂で架橋された、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂又はアクリレート樹脂。 【0099】6. ポリジエンから誘導されたゴム、例えばブタジエン又はイソプレン;シリコンゴム。 【0100】7. エポキシ樹脂から、例えばポリグリシジルエーテルから、又は脂環式ジエポキシドから誘導され、架橋剤として硬化剤を含んでいてもよく、又は硬化促進剤を使用して熱的に又は照射により架橋されたエポキシ樹脂。 【0101】そのような架橋された重合体の中で、架橋されたエポキシ樹脂は、ポリエポキシとして分子中に平均して2個のエポキシ基を含むグリシジル化合物から誘導された架橋されたエポキシ樹脂が好ましい。 特に適切なグリシジル化合物はヘテロ原子(例えばイオウ、好ましくは酸素若しくは窒素)に結合した2個のグリシジル基、β−メチルグリシジル基又は2,3−エポキシシクロペンチル基、特にビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、多価脂肪族アルコールのジグリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオール、又はポリアルキレングリコール、例えばポリプロピレングリコール、脂環式ポリオールのジグリシジルエーテル、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、多価フェノールのジグリシジルルエーテル、例えばレゾルシノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ジオメタン)、2,2−ビス(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジブロモフェニル)プロパン、1,3− ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、上述の二価アルコール又は二価フェノールのビス(β−メチルグリシジル)エーテル、ジカルボン酸、例えばフタル酸、テトラフタル酸、Δ 4 −テトラヒドロフタル酸及びヘキサヒドロフタル酸のジカルボン酸のジグリシジルエステル、 2個の窒素原子を含む第一級アミン、アミド及び複素環窒素塩基のN,N−ジグリシジル誘導体、及びジ第二級ジアミド及びジアミンのN,N'−ジグリシジル誘導体、例えばN,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジル−p−アミノフェニルメチルエーテル、N,N'−ジメチル− N,N'−ジグリシジルビス(p−アミノフェニル)メタン、N',N”−ジグリシジル−N−フェニル−イソシアヌラート;N,N'−ジグリシジルエチレン尿素; N,N'−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、N,N'−ジグリシジル−5−イソプロピル−ヒダントイン、N,N−メチレンビス−(N',N'−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン)、1,3− ビス(N−グリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン)−2−ヒドロキシプロパン;N,N'−ジグリシジル−5,5−ジメチル−6−イソプロピル−5,6−ジヒドロウラシル、トリグリシジルイソシアヌラートを含むそれらである。 【0102】エポキシ樹脂の好ましい群は、グリシジル化されたノボラック、ヒダントイン、アミノフェノール、ビスフェノ−ル及び芳香族ジアミン又は脂環式エポキシ化合物である。 特に好ましいエポキシ樹脂はグリシジル化されたクレゾールノボラック、ビスフェノールA 若しくはビスフェノールFジグリシジルエーテル、ヒダントイン−N,N'−ビスグリシド、p−アミノフェノールトリグリシド、ジアミノジフェニルメタンテトラグリシド、ビニルシクロヘキサンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート又はその混合物を含む。 【0103】更に適切なエポキシ樹脂は、そのようなエポキシ化合物とエポキシ硬化剤との予め反応させた付加物、例えばビスフェノールAとビスフェノールAのジグリシジルエーテルの付加物、又は2個の末端カルボキシル基を有するオリゴエステルとエポキシドを予め反応させた付加物である。 【0104】エポキシ樹脂の適切な硬化剤は、酸性又は塩基性化合物である。 適切な硬化剤の代表例は、多価フェノール(レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)又はフェノール−ホルムアルデヒド樹脂;多塩基カルボン酸及びその無水物、例えばフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、3,6−エンドメチレン−テトラヒドロフタル酸無水物、4−メチル−3,6−エンドメチレン−テトラヒドロフタル酸無水物(メチルナデイック無水物)、3,4,5,6,7,7−ヘキサクロロエンドメチレン−テトラヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、アジピン酸無水物、トリメチルアジピン酸無水物、 セバシン酸無水物、マレイン酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ピロメリト酸二無水物、トリメリト酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、又はそのような無水物の混合物である。 【0105】好ましい硬化剤の群はノボラック及びポリカルボン酸無水物を含む。 【0106】また、エポキシ樹脂は硬化促進剤又は熱硬化触媒単独でさらに硬化させることができる。 硬化促進剤及び触媒の例は、3−エチル−4−メチルイミダゾール、トリメチルアンモニウムフェノラート;モノ−又はポリフェノール(フェノール、ジオメタン、サリチル酸);ホウ素トリフロリド及び有機化合物とのその錯体、例えばホウ素トリフロリドエーテル錯体又はホウ素トリフロリドアミン錯体(BF 3 /モノエチルアミン錯体);リン酸又は亜リン酸トリフェニルである。 【0107】硬化促進剤及び触媒はエポキシ樹脂に基づいて通常0.1ないし10重量%で添加される。 エポキシ樹脂の硬化剤は通常エポキシ基又は硬化剤の官能基に基づいて等モル量で用いられる。 【0108】加工特性、機械的、電気的、熱的特性、表面特性及び光安定性を増大させるためのさらなる添加剤をこの新規な配合物に混合することができる。 このような添加剤の例は、微細粒子状の充填材、補強充填材、可塑剤、潤滑剤及び離型剤、付着促進剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱及び光安定剤、色素並びに染料である。 【0109】本発明の好ましい実施態様において、新規な組成物は成形品、フィルム、箔、繊維又は基材の少なくとも一つの表面上の被覆物に形成されている。 【0110】更に他の特徴として、本発明は新規な組成物の製造方法であって、(a)熱可塑重合体中へ式(I I)のCT錯体を混練するか、(b)熱硬化性又は構造的に架橋し得る重合体成分の少なくとも1種と式(II) のCT錯体を混練し、次いでこの混練物を他の任意の成分と共に重合させて熱硬化性又は構造的に架橋された重合体とするか、又は(c)式(I)の化合物、及びフェロセン若しくはフェロセン誘導体B、Bとしての式(II I a)若しくは(III b)のフルバレン誘導体、Bとしての5,10−ジヒドロフェナジン誘導体若しくはそのヨード塩、又はN−芳香族化合物Bのヨード塩を、熱可塑性重合体又は熱硬化性若しくは構造上架橋し得る重合体成分の少なくとも1種と共に有機溶媒中に溶解し、その溶液をフェロセン若しくはフェロセン誘導体B、Bとしての式(III a)若しくは(III b)のフルバレン誘導体、Bとしての5,10−ジヒドロフェナジン誘導体若しくはそのヨード塩又はN−芳香族化合物Bのヨード塩、及び式(I)の化合物の溶液を有する、さらなる任意の、熱硬化性若しくは構造上架橋し得る重合体成分と共に混合し、そしてその溶媒を除去し、硬化し得る混合物を熱硬化性又は構造上架橋された重合体に重合させることを特徴とする方法に関する。 本方法は成形工程と組み合わせることができる。 【0111】この新規な組成物はプラスチックス技術において公知の方法で製造することができる。 重合体成形技術において、代表的には、注型、圧縮成形、射出成形及び押出しであり、CT錯体それ自体は熱可塑重合体又は熱硬化性プラスチック成分の少なくとも1種に加え、 懸濁液を形成させるか、又は別々にそれぞれの成分(例えばエポキシ樹脂及び硬化剤)に加え、溶液又は懸濁液を形成させることができ、成形した後に、CT錯体は冷却により針状結晶の形態で結晶化及び沈殿し、針状結晶は重合体のマトリックス中で網目構造を形成している。 【0112】本発明の特に好ましい実施態様において、 新規な組成物はフィルム若しくは箔又は基材の少なくとも一つの表面上の被覆物の形態である。 このような実施態様は、好都合には不活性溶媒中で熱可塑重合体又は若しくは熱硬化重合体若しくは構造上架橋される重合体の出発原料の少なくとも1種を式(II)のCT錯体と共に懸濁及び/又は溶解するか、又は熱可塑重合体又は熱硬化重合体若しくは構造上架橋される重合体の出発原料の少なくとも1種を式(I)の化合物、及びフェロセン若しくはフェロセン誘導体B、フルバレン誘導体B又はN −芳香族化合物Bのヨード塩と共に溶解し、次いでこの溶液又は懸濁液をフェロセン若しくはフェロセン誘導体B、フルバレン誘導体B又は芳香族化合物Bのヨード塩及び式(I)の化合物と共に混合し、続いてこの混合物を公知の被覆技術により予め加熱されていてもよい基材上に塗布し、溶媒を加熱により除去して架橋し得る混合物を完全に硬化させることができる。 自己支持性フィルム及び箔は基材より被覆物を剥離するか又は押出すことにより得ることができる。 【0113】適切な基材の例は、ガラス、金属、プラスチックス、無機物及びセラミック材材料並びに木材及び紙である。 基材はあらゆる外形のものが可能であり、代表的には成形品、フィラメント、繊維、織物、棒、管、 リボン、板、厚板、ロール又はケーシングである 【0114】適切な被覆技術は、代表的には刷毛塗り、 回転塗り、ドクターコーティング、注型、スピンコーティング、カーテンコーティング及び噴霧である。 噴霧法は、一方において実質的に等方性で、非常に微細で均質な網目構造の非常に薄い均質層であり、他方において針状結晶の大きさ及び網目構造の目の幅が、懸濁液が噴霧された場合でも、液滴の大きさにより調節することができるので、特に好ましい。 【0115】重合体及び重合体出発原料のための適切な不活性溶媒は、代表的には極性溶媒、好ましくは、非プロトン性溶媒であり、それは単独又は少なくとも2種の溶媒の混合物としてして使用することができる。 このような溶媒の代表的例は、エーテル類(アニソール、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチル又はジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチル又はジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロゲン化炭化水素類(メチレンクロリド、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2、2− テトラクロロエタン)、カルボキシラート類及びラクトン類(エチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルベンゾエート、2−メトキシエチルアセテート、γ− ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ピバロラクトン)、カルボキシアミド類及びラクタム類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチル−ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン、N −アセチルピロリドン、N−メチル−カプロラクタム)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド)、スルホン類(ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、トリメチレンスルホン、テトラメチレンスルホン)、第三級アミン類(N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン)、置換ベンゼン類(ベンゾニトリル、クロロベンゼンベンゼン、o−ジクロロ−ベンゼン、1,2、4−トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、キシレン)及びニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル)である。 更に適切な溶媒は芳香脂肪族エーテル類、 例えばメチル又はエチルフェニルエーテル、並びにケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン及びメチルイソブチルケトンである。 式(II)の化合物及びN−芳香族化合物/ヨード塩Bの適切な溶媒は、既に上記に述べられている。 【0116】この被覆技術は、個々の成分を別々に溶解し、選択された方法による塗布の直前にそれらを混合することで好都合に行なうことができる。 しかしながら、 該成分の2種の溶液、例えば重合体溶液及びフェロセン若しくはフェロセン誘導体B、フルバレン誘導体B又はN−芳香族化合物/ヨード塩B及び式(I)の化合物の溶液、並びに式(I)の化合物及びフェロセン若しくはフェロセン誘導体B、フルバレン誘導体B若しくはN− 芳香族化合物/ヨード塩B、場合により重合体と一緒に、溶液を調製するか、又は全ての成分を一つの溶液中に混合することもできる。 最後に述べた方法において、 CT錯体は被覆する前に既に結晶化させることができる;しかし、これは所望の被覆の質に実質的に影響しない。 【0117】溶液は好ましくは加熱され、好都合には3 0ないし200℃に加熱される。 基材の加熱は有効であり、同時に溶媒の除去を促進することができ、それは通常50ないし150℃であるが、好ましくは50ないし100℃であり、被覆物が乾燥するまで実施される。 自己支持性フィルム又はシートを得るために、被覆物を剥したい場合には、基材を粘着防止剤で処理することができる。 【0118】別の被覆方法は、重合体又は熱硬化性重合体の出発原料の溶液中で針状結晶として得られているC T錯体を懸濁し、次いで、基材を被覆し、そして溶媒を除去した後に、場合により硬化させて熱硬化性重合体を形成させることを含む。 重合体粉末又は熱硬化性重合体の固体出発原料及びCT錯体からの乾燥粉末混合物を調製し、そしてそれらの混合物を基材の層に塗布又は静電塗装することもできる。 重合体マトリックス中の針状結晶の網目構造は、この別の方法においても又得ることができる。 【0119】溶媒中のCT錯体の懸濁液又は溶液を塗布し、その後溶媒を蒸発させることにより基材上にCT錯体の針状結晶の網目構造の純粋な層を生成させることもできる。 そのような層は導電率を増大させる目的で、好都合にはCu、Pt又はPdを用いて電気化学的に金属化することができる。 そのような純粋な層を重合体の被覆で保護すること又は重合体を引き続き純粋な層に被覆することは有用である。 【0120】この層の厚さは、被覆方法の選択に従い非常に広い範囲で変えることができる。 噴霧法により非常に薄い層を得ることができる一方で、刷毛塗り及び注型法を用れば厚い層も又可能となる。 層厚は、典型的には0.01ないし500μm 、好ましくは0.1ないし1 000μm 、最も好ましくは0.1ないし500μmである。 【0121】重合体の選択に従い、新規な組成物は不透明又は透明であり、顕著な電気的特性を有している。 従って、この被覆物及び成形品は、不均質材料に対しては達成が困難であるか、又は全く不可能である、予想外に優れた放電能力を有している。 従って、この組成物は構成物の静電遮蔽のための静電処理された成形品の部品の製造又は静電処理された成形品の製造に特に適している。 高い導電率はこの新規な組成物を導電体、例えば表示要素又は電子製品の電極、並びにコンデンサの電荷担体として使用することを可能にする。 この組成物はまた優れた機械的強度及び性能特性を有している。 この組成物は又比較的低温で製造することでき、それに加えて機械の金属部分の腐食を全く起こさないか、とるに足りない腐食しか起さないというさらなる利点を有する。 さらに、それらは熱及び/又は湿気の作用に対する安定性を有している。 【0122】本発明のさらなる目的は、導電体としての式(I)の新規なCT錯体としての用途;CT錯体の製造のための式(I)の新規な化合物の用途;導電体としての式(II)の新規なCT錯体の用途;部品の静電遮蔽のための静電防止処理された成形品の部品又は静電防止処理された成形品としての新規な組成物の用途;電極材料としての新規な組成物の用途;及びコンデンサの電荷担体としてフィルム又は箔中での新規な組成物の用途である。 【0123】ジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕 〔1,4〕ジチイン−5,7,12,14−テトラシアノイミン(6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン)は4つの可逆的な還元電位を有し、標準カラメル電極(SCE)を基準としてD MF中、1mol (C 4 H 9 )NBF 4 、50mV/Sでの測定では:+O. 322,+0.122,−0.390及び−0.600Vであった。 6,13−ジチオペンタセンテトラシアノイミンはTCNQ又は5,7,12,1 4−ペンタセンテトラシアノイミンと比べて特に強い電子受容体であり、広い範囲の供与体とCT錯体を形成することができる。 ジナフト−〔2,3−b;2',3' −e〕〔1,4〕ジチイン−5,7,12,14−テトラシアノイミンは本来室温において圧縮ペレットで3. 3・10 -7 S/cmの導電率を有している。 【0124】 【実施例】下記の実施例は本発明をさらに詳細に説明するものである。 【0125】A)受容体分子の製造 例A1:6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン(ジナフト〔2,3−b; 2',3'−e〕〔1,4〕ジチイン−5,7,12, 14−テトラシアノイミン)の製造 アルゴン雰囲気下に、TiCl 4 2.52g (13.2 8mmol)を、ジクロロメタン50ml中のDNDT0.5 g (1.33mmol)の懸濁液に滴下により加えた。 1時間攪拌した後、ビス(トリメチルシリルカルボジイミド)〔(CH 3 ) 3 SiN〕 2 C)2.97g (15. 94mmol)を加えた。 反応混合物をアルゴン雰囲気下で2O時間還流し、暗赤色の懸濁液を得た。 混合物を冷却し、氷50g に注ぎ、ジクロロメタン100mlで抽出した。 有機層を分離し、Na 2 SO 4上で乾燥して濾過した。 溶媒を留去し、暗緑色の残留物(0.08g )を得た。 水性懸濁液を濾過し、暗緑色の残留物0.58g を得た。 その二つを合わせ、アニソール200ml中で15 分間還流した。 暗赤色溶液を濾過し、室温まで冷却すると、黒色の微細針状結晶が形成した。 針状結晶を濾過により単離し、ペンタンで洗浄して表題化合物37Omgを得た。 【0126】元素分析:測定値(計算値)C 24 H 8 N 8 S 2・ 1.2 アニソール:C64.31(64.61);H (3.02(2.95); N18.44(18.6 0);S10.93(10.60). 【0127】例A2:2,3,9,10−テトラメチルジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕〔1,4〕ジチイン−5,7,12,14−テトラシアノイミンの製造 アルゴン雰囲気下に、TiCl 4 2.52 g(13. 28mmol)を、ジクロロメタン50ml中の2,3,9, 10−テトラメチルジナフト〔2,3−b;2',3' −e〕〔1,4〕ジチイン−5,7,12,14−テトラオン0.58g(1.33mmol)の懸濁液に加えた。 15分間攪拌した後に、(CH 3 ) 3 SiN〕 2 C2. 97g (15.94mol )を加えた。 反応混合物をアルゴン雰囲気下で16時間還流した。 冷却した後に氷10 0mlに注ぎ、ジクロロメタン100mlで抽出した。 有機層を分離し、Na 2 SO 4上で乾燥して濾過した。 溶媒を蒸留で除去して暗緑色の残留物(0.4g )を得た。 水性懸濁液を濾過し、暗緑色の残留物0.35g を得た。 その二つの固体部分を合わせ、還流させたアニソール300ml中に15分間かけて溶解した。 暗赤色溶液を濾過し、室温まで冷却した。 それにジエチルエーテルを加え、黒色針状結晶を沈殿させた。 針状結晶を濾過により単離し、ペンタンで洗浄して0.25g の表題化合物0.25g を得た。 【0128】元素分析:測定値(計算値)C 28 H 16 N 8 S 2 ・0.5アニソール:C63.60(64.92);H3.56(3.47); N18.30 (19.23);S11.07(11.00). 【0129】例A3:2,9−ジメチルジナフト〔2, 3−b;2',3'−e〕〔1,4〕ジチイン−5, 7,12,14−テトラシアノイミンの製造 アルゴン雰囲気下に、TiCl 4 8.82g (46.4 8mmol)を、ジクロロメタン100ml中の2,9−ジメチルジナフト〔2,3−b;2',3'−e〕〔1, 4〕ジチイン−5,7,12,14−テトラオン1.8 8g (4.65mmol)の懸濁液に加えた。 15分間の攪拌の後に、(CH 3 ) 3 SiN〕 2 C10.40g (5 5.78mmol)を加えた。 反応混合物をアルゴン雰囲気下に16時間還流した。 この混合物を冷却し、氷100 mlに注ぎ、ジクロロメタン100mlで抽出した。 有機層を分離し、Na 2 SO 4上で乾燥して濾過した。 溶媒を蒸留で除去し、暗緑色の残留物(1.66g )を得た。 残留物をトリクロロベンゼン300mlに溶解し、溶液を濾過し室温まで冷却した。 ジエチルエーテルを加えると褐色の針状結晶が沈殿した。 この針状結晶を濾過し、ペンタンで洗浄して表題化合物0.75g を得た。 【0130】元素分析:測定値(計算値)C 26 H 12 N 8 S 2 エーテル:C61.94(62.62);H3.02(3.47); N19.75(20.2 8);S11.60(11.60). ジクロロメタン中0.1M Bu 4 N BF 4中50mV/sで測定された交流電圧:+0.32 7;+0.0075;−0.375V (SCE基準)。 【0131】B)CT錯体の製造 例B1:ヘキサメチルフェロセン及び6、13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミンからのCT錯体の製造 6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン100mg(0.212mmol)のアニソール50ml中の150℃の高温溶液に、ヘキサメチル・ フェロセン28.6mg(0.106mmol)のアニソール5ml中の同様な高温溶液を加えた。 得られた溶液を冷却し、CT錯体を濾過により単離した。 沈殿した暗褐色の針状結晶をペンタンで洗浄し、高真空下で乾燥して標題化合物66mgを得た。 圧縮ペレットでの導電率は0.3 5S/cm(4点法により測定)であった。 【0132】mp214℃。 元素分析:測定値(計算値)C 64 H 38 N 16 S 4 Fe:C63.05(63.26);H3.34(3.15); N1 8.08(18.44);S10.69(10.55);Fe4.08(4.60) 。 【0133】例B2:ジメチルフェロセン及び6,13 −ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミンからのCT錯体の製造 6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン100mg(0.212mmol)のアニソール50ml中の150℃の高温溶液に、ジメチルフェロセン23mg(0.106mmol)のアニソール5ml中の同様な高温溶液を加えた。 得られた溶液を冷却し、CT錯体を濾過により単離した。 沈殿した暗褐色の針状結晶針をペンタンで洗浄し、高真空下で乾燥して標題化合物6 6mgを得た。 圧縮ペレットでの導電率は1.17S/cmであった。 【0134】mp192℃。 元素分析:測定値(計算値)C 60 H 30 N 16 S 4 Fe :C62.38(62.17);H2.76(2.61); N1 8.05(19.33);S10.95(11.07);Fe4.87(4.82) 。 【0135】例B3:テトラメチルテトラチオフルバレン及び6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミンからのCT錯体の製造 6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン100mg(0.212mmol)のアニソール50ml中の150℃の高温溶液に、テトラメチルテトラチオフルバレン43mg(0.212mmol)のアニソール5ml中の同様な高温溶液を加えた。 得られた溶液を冷却し、CT錯体を濾過により単離した。 沈殿した暗褐色の針状結晶をペンタンで洗浄し、高真空下で乾燥して標題化合物93mgを得た。 圧縮ペレットでの導電率は0.20S/cmであった。 【0136】mp229℃。 元素分析:測定値(計算値)C 30 H 12 N 8 S 6 +0.5 アニソール:C53.61(55.05);H2.1 6(2.21); N14.97(15.33);S27.21(26.32)。 【0137】例B4:テトラメチルテトラチオフルバレン及び6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミンからのCT錯体の製造 6,13−ジチオ−5,7,12,14−ペンタセンテトラシアノイミン100mg(0.212mmol)のアニソール50ml中の150℃の高温溶液に、テトラメチルテトラチオフルバレン55mg(0.212mmol)のアニソール5ml中の同様な高温溶液を加えた。 得られた溶液を冷却し、CT錯体を濾過により単離した。 沈殿した黒色の針状結晶をペンタンで洗浄し、高真空下で乾燥して標題化合物87mgを得た。 圧縮ペレットでの導電率は1. 04S/cmであった。 【0138】mp229℃。 元素分析:測定値(計算値)C 30 H 12 N 8 S 6 +0.5 アニソール:C58.10(58.65);H2.7 7(2.56); N17.21(17.79);S20.81(20.36)。 |