Suppressing methods and compositions of the 5α- reductase activity

申请号 JP50328694 申请日 1993-04-30 公开(公告)号 JPH08501771A 公开(公告)日 1996-02-27
申请人 アーチ・デヴェロップメント・コーポレイション; 发明人 リャオ,シューツン; リャン,テーミン;
摘要 (57)【要約】 本明細書において、飽和および不飽和 脂肪酸 類、その誘導体と合成類縁物質を含む新規クラスの抗アンドロゲン化合物類、その合成方法、およびアンドロゲン活性に起因する疾患の治療へのこれらの化合物の使用を開示する。 さらにまた、抗アンドロゲン活性があることがこれまで分からなかった公知の化合物の、アンドロゲン活性に起因する疾患の治療における使用も開示する。
权利要求
  • 【特許請求の範囲】 1. 図17に示す一般式で表される脂肪酸であって、かつ、図18および表1に示す脂肪酸を除外し、前記一般式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、およびR 5はハロゲン原子、アルキル基、またはアリール基であり、R 6 、R 7 、R 8 、およびR 9はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基であり、"l"、"m"、 "n"、"p"、"q"および"r"は0またはその他の整数であり、さらに、Xは炭素、硫黄、酸素、またはNH基である脂肪酸。 2. 前記脂肪酸の炭素原子のいずれかに付着しているR 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、 R 6 、R 7 、R 8 、R 9および水素が、一個、二個または三個のハロゲン原子によって置換されている請求項1に記載の脂肪酸。 3. 前記水素またはハロゲン原子がフッ素を含む請求項2に記載の脂肪酸。 4. 前記ハロゲンが水素またはフッ素を含む請求項1に記載の脂肪酸。 5. 前記アルキル基がメチル基、エチル基またはプロピル基である請求項1 に記載の脂肪酸。 6. アルキル基またはヒドロキシル基のうちいずれかの水素がアルキル基またはアリール基で置換されている請求項1に記載の脂肪酸。 7. 図17に示すX−結合が脂肪酸の炭素鎖のうち二つの炭素の間に存在している請求項1に記載の脂肪酸。 8. 脂肪酸が cis立体異性体からなる請求項1に記載の脂肪酸。 9. 脂肪酸が trans立体異性体からなる請求項1に記載の脂肪酸。 10. 加水分解すると請求項1に記載のカルボキシル脂肪酸を生成するアシル化物。 11. 加水分解すると請求項1に記載のカルボキシル脂肪酸を生成するエステル。 12. 請求項1に記載の脂肪酸の酸化産物類および代謝産物類。 13. 標的器官または組織を脂肪酸化合物で治療することを含む5α−レダクターゼ活性の制御方法。 14. 前記脂肪酸が請求項1に記載の脂肪酸である請求項13に記載の方法。 15. 前記脂肪酸が表1に示す化合物である請求項13に記載の方法。 16. 前記脂肪酸が、図17(a)の脂肪酸を含む図1〜11または17〜19または表1のいずれかに示された化合物であって、式中R 1 、R 2 、R 3 、R 4およびR 5がおのおの水素原子である請求項13に記載の方法。 17. 前記標的器官が前立腺である請求項13に記載の方法。 18. 前記標的器官が皮膚である請求項13に記載の方法。 19. 標的組織が頭皮である請求項13に記載の方法。 20. 頭皮が男性型禿頭症をもつヒトの頭皮である請求項19に記載の方法。 21. 標的組織がさらに癌細胞である請求項13に記載の方法。 22. 疾患組織または器官を脂肪酸で治療することを含む癌の治療方法。 23. 前記脂肪酸が請求項1に記載の脂肪酸である請求項22に記載の方法。 24. 前記脂肪酸が表1に示される化合物である請求項22に記載の方法。 25. 前記脂肪酸が図1〜11または17〜19または表1のいずれかに示される化合物であって、図17(a)の脂肪酸を含み、式中R 1 、R 2 、R 3 、R 4およびR 5がおのおの水素原子である請求項22に記載の方法。 26. 前記の癌が前立腺癌である請求項22に記載の方法。 27. (a) 脂肪酸と製薬上許容し得る担体とからなる医薬組成物を調製すること、および (b) 男性型禿頭症、アクネ、またはその他のアンドロゲン依存性皮膚疾患を持つヒト男性患者に前記組成物を投与することよりなる男性型禿頭症、アクネ、またはその他のアンドロゲン依存性皮膚疾患の治療方法。 28. 前記脂肪酸が請求項1に記載の脂肪酸である請求項27に記載の方法。 29. 前記脂肪酸が表1に示される化合物である請求項27に記載の方法。 30. 前記脂肪酸が、図1〜11または17〜19または表1のいずれかに示される化合物であって、図17(a)の脂肪酸を含み、式中R 1 、R 2 、R 3 、R 4およびR 5がおのおの水素原子である請求項27に記載の方法。 31. 前記担体が局所投与用の軟膏、ローション、ゲル、トニック、またはクリームである請求項27に記載の方法。 32. 前記担体が経皮パッチである請求項27に記載の方法。 33. 前記担体が注射に好適な担体である請求項27に記載の方法。 34. 前記組成物が経口投与用のタブレット、液剤、またはカプセルである請求項27に記載の方法。 35. 前記組成物がさらに防止剤を含有している請求項27に記載の方法。 36. 前記組成物がさらに酸化防止剤を含有している請求項35に記載の方法。 37. 前記組成物がリポソームを用いて投与される請求項27に記載の方法。 38. 前記組成物が免疫手段を用いて投与される請求項27に記載の方法。 39. 式中R 1 、R 2 、R 3 、R 4およびR 5がおのおの水素原子である図17(a)の脂肪酸を含む、請求項1、表1、または図1〜11または17〜19の脂肪酸のうちの一種と、製薬上許容し得る溶媒、希釈剤、補助剤、防止剤、および担体とを含有してなる医薬組成物。 40. 式中R 1 、R 2 、R 3 、R 4およびR 5がおのおの水素原子である図17(a)の脂肪酸を含む、請求項1、表1、または図1〜11または17〜19の脂肪酸のうちの一種と、製薬上許容し得る溶媒、希釈剤、補助剤、防止剤、および担体とを含有してなる化粧品組成物。 41. (a)脂肪酸成分とリポソームとを結合させること、 (b) リポソームと製薬上許容し得る担体とを結合させること、および (c) リポソームを標的細胞または器官に投与することよりなる、脂肪酸成分を標的細胞または器官に伝達する方法。 42. 前記リポソームを免疫手段を用いて投与する請求項41に記載の方法。 43. 動物または植物の脂質から得るか、あるいは動物または植物の器官から溶媒で抽出して得る5α−レダクターゼの抑制剤を含有する組成物。 44. (a) 被検者のアンドロゲン活性過多の結果産生された産物の量を測定すること、 (b) 前記被検者に請求項39の医薬組成物を投与すること、および (c) 前記医薬組成物の投与後に産生されたアンドロゲン活性過多の前記産物の量を測定することよりなる、アンドロゲン活性過多に起因する疾患の診断方法。 45. アンドロゲン活性過多に関連した前記疾患が、5α−レダクターゼ活性の不適切な制御に起因している請求項44に記載の方法。 46. 前記医薬組成物が5α−レダクターゼ活性を抑制する請求項45に記載の方法。 47. (a) 前記サンプル中のアンドロゲン活性産物の濃度を測定すること、 (b) 式中R 1 、R 2 、R 3 、R 4およびR 5がおのおの水素原子である図17(a )の脂肪酸を含む、請求項1、表1、または図1〜11または17〜19の脂肪酸によって、前記サンプルを処理すること、および (c) ステップ(b)の処理後、前記サンプル中のアンドロゲン活性産物の濃度を測定することよりなる、サンプル中のアンドロゲン活性の制御要因の分析方法。 48. 前記サンプルが組織サンプルであり、また前記サンプル中の前記因子を定位することができる検出マーカーによって前記脂肪酸に標識を付する請求項47に記載の方法。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】 発明の名称 5α−レダクターゼ活性を抑制する方法および組成物背景技術 クロス・リファレンスおよび関連出願本出願は1992年5月27日付けで出願されたアメリカ合衆国特許出願番号第07/8 89,589号の一部継続出願である。 この合衆国出願番号第07/889,589号の出願に開示された内容は、引用することによって本出願の一部とする。 1. 技術分野本発明は、5α−レダクターゼの活性を調整することによって、アンドロゲンその他ステロイドホルモン類の作用を制御する化合物、組成物および方法に関する。 さらに詳しくは、本発明は、これらの化合物を用いて、細胞や器官における過剰なアンドロゲンの作用に起因する疾患を治療することに関する。 2. 関連技術 A. ステロイドホルモン類とそれらの受容体類 ステロイドホルモン類には主要なクラスが6つあるが、アンドロゲン類はそのうちの1つである。 ステロイドホルモン類は、標的器官の選択細胞中の特定の受容体タンパク類と複合体を形成する[Jensen et al.,Proc. Nat'l Acad. Sci. (USA),59:632(1968); Liao,Intl. Rev. Cytology 41:87(1975); Gorski eta l.,Ann. Rev. Physiol. 42:17(1976)]。 ステロイド受容体類は、遺伝子の発現を制御することのできる転写因子の上科(a superfamily of transcription fac tors)に分類される。 また、この機能は、特定のホルモンリガンドと適当な受容体との結合に対する依存性がある[Evans,Science 240:889(1989); Beato,Ce ll 56:335(1989); O'Malley,Mol. Endocrinol. 4:363(1990)]。 受容体類に対するステロイドホルモン類の特異性や親和性の研究によって、ステロイドの構造と受容体の構造の関係、および「競合抗アンドロゲン類(competi tive antiandrogens)」を含む多くの抗ホルモン類の生物活性、標的器官の特異性、および作用機序が深く理解されるようになった。 本明細書においては、「競合抗アンドロゲン類」とは、受容体類と相互作用し、活性アンドロゲン類の受容体結合を競合的に防止する抗アンドロゲン類であると定義する[Fang and Liao ,Mol.Pharmacol. 5:428(1969); Liao et al.,J. Biol.Chem. 248:6154(1983); Liao et al.,Endocrinology 94:1205(1974); Chang and Liao,J. Steroid Biochem. 27:123(1987); Liao et al.,J. Steroid Biochem. 34:41 (1989)]。 ただし、抗アンドロゲン活性を有するいくつかの化合物は、異なる機序によって作用するかもしれないことを念頭におかなくてはならない。 B. アンドロゲン作用 アンドロゲンは、こう丸で産生され、陰茎、陰嚢、前立線、精嚢、副こう丸や、精管を始めとする男性生殖器官の分化を刺激する。 思春期が始まるとアンドロゲンの産生が増加して、これらの組織の成長を促進する。 アンドロゲンは精子形成になくてはならぬものであり、また骨格筋の成長と骨の生成を促進する。 中枢神経系では、リビドを刺激し、ゴナドトロピン分泌のフィードバック阻害を行う。 皮膚においては脂腺やアポクリン汗腺を大きく育て、わきのした領域や恥骨領域の軟毛および髭を粗い長い硬毛に変える。 また、声帯を厚くして声の調子を下げる。 さらにまた、造血を盛んにする。 医療用としてアンドロゲンが、例えば性機能の低下や貧血の治療に使用されていることはよく知られている[Synder,An n.Rev. Med. 35:207(1984); Mooradian et al.,Endocrine Rev. 8:l (1987)] 。 また、運動選手の間で、実績を挙げようとしてアンドロゲンが乱用されることもよく知られている[Straus and Yesalis,Annu. Rev. Med. 42:499(1991)]。 さらにまた、アンドロゲンは前立腺の良性肥大(BPH)[Wilson,Am J. Med. 68:745(1980)],前立腺癌[Huggins and Hodges,Cancer Res. 1:293(1940)] 、禿頭[Hamilton,Am. J. Anat. 71:451 (1942)]、アクネ[Pochi,Annu. Rev . Med. 41:187(1990)]、多毛および脂漏[Hammerstein et al.,J. Steroid Bi ochem. 19:591 (1983); Moguilewsky and Bouton,J. Steroid Biochem. 31:69 9(1988)]の発現を促すことでも知られている。 アメリカ合衆国においては、年齢50才以上の男性の約70%にBPHの病理所見がある[Carter and Coffey,The Pros tate 16:39-48(1990)]。 また、前立腺癌は、合衆国の男性の癌死の中で二番目に多い[Silverberg and Lubera,Cancer Statistics,40:9(1990); Gittes,Ne w England J. Medicine 324:236(1991)]。 男性型禿頭症は、遺伝的に素質のある男性では十代で始まり、年齢30才の白人男性の30%、年齢40才の白人男性の40% 、年齢50才の白人男性の50%に存在していると推定されている。 アクネは、医師によって治療される最も普遍的な皮膚疾患であって[Pochi,Ann. Rev. Med. 41 :187(1990)]、十代の男女の少なくとも85%がこの疾患にかかっている。 女性の多毛は、アンドロゲン作用が過多であることを示す一つの徴候である[Ehrmann and Rosenfield,J. Clin. Endocrinol. Metab. 71:1(1990)]。 女性の主たるアンドロゲン供給源は、卵巣および副腎である。 C. テストステロンの作用と5α−ジヒドロテストステロン(DHT)の作用の差異 男性の血液中を循環する主要なアンドロゲンはテストステロンである。 血液中のテストステロンの約98%は血清タンパクと結合しており(性ステロイドと結合するグロブリンに結合親和が高く、アルブミンとは結合親和力が低い)、僅か1−2%が遊離テストステロンである[Liao and Fang,Vitamins and Hormones 27 :17(1969)]。 アルブミンと結び付いているテストステロン(アルブミンとテストステロンとの結合は可逆的である。)および遊離テストステロンは、生物学的利用能があると考えられており、両者合わせて総テストステロンの約50%を占める。 テストステロンは、明らかに拡散によって標的細胞に入る。 前立腺、精嚢、皮膚、 その他の標的器官において、アンドロゲンは、NADPH依存性の5α-レダクターゼによって活性のより高い代謝産物であるDHTに転換する。 その後、DHTは、標的器官内でアンドロゲン受容体(AR)と結合する[Anderson and Liao,Nature 219:27 7(1968); Bruchovsky and Wilson,J. Biol. Chem. 243:2012(1968); Liao,Int .Rev. Cytology 41:87(1975)]。 DHT-受容体複合体は、ゲノムの特定部分と相互作用して、遺伝子活性を制御する[Liao et al.,J. Steroid Biochem. 34:41(1 989)]。 テストステロンは、同一のARと結合すると考えられるが、親和力はDHT よりも低い。 筋肉、こう丸などの組織では5α−レダクターゼの活性は低く、テストステロンの方が活性の高いアンドロゲンである可能性もある。 これまでにも、異なるアンドロゲン反応性組織においてテストステロンの活性はDHTの活性と同じではないと言われてきたが、5α−レダクターゼ欠失患者が発見されてからこのことが一層強く主張されるようになった。 5α-レダクターゼが欠失している男性は、女性のような外部生殖器を持って生まれる。 思春期になると、テストステロンの血漿濃度は正常値か、上昇したとしても僅かである。 筋肉の成長は促進され、陰茎は大きく、声は太くなり、女性に対するリビドも現れてくる。 しかしながら、前立腺は触診不能であり、体毛が少なく、アクネや禿頭が現れてこない。 5α−レダクターゼが欠失している女性には臨床症状がない[Imperato-McGinIey,Trend Genet 2:130(1986)]。 5α−レダクターゼ欠失患者が発見されてから、5α−レダクターゼの抑制剤があれば前立腺癌、BPH、アクネ、禿頭、および女性の多毛の治療に有用であろうと言われるようになった。 臨床観察や動物実験の結果、精子形成、リビドの維持、性行動、およびゴナドトロピン分泌のフィードバック阻害には、テストステロンをDHTに転換する必要がないことが示唆されている[Brooks et al.,Proc.So c.Exp. Biol. Med. 169:67(1982); Blohm et al.,Endocrinology 119:959(198 6); George etal.,Endocrinology 119:959(1989)]。 これは、テストステロンとDHT の両方の作用をなくしてしまう他のホルモン療法と対照的である。 5α−レダクターゼ抑制剤によりアンドロゲン依存性の皮膚疾患、および前立腺疾患を治療すると、現在のホルモン療法よりも副作用が少ないことが期待される。 現在のホルモン療法としては、去勢、エストロゲン療法、ルプロライド(Lu prolide)などの過度活性ゴナドトロピン放出ホルモンの大量投与、およびARがテストステロンやDHTと結合するのを阻害するフルタマイド(flutamide)、シプロテロンアセテート(cyproterone acetate)およびスピロノラクトン(spirono lactone)などの競合抗アンドロゲン類の使用などが挙げられる。 しかしながら、「競合抗アンドロゲン類」はアンドロゲンによるゴナドトロピン分泌のフィードバック阻害を遮断するため、競合抗アンドロゲン本来の長期持続効果が発揮できなくなる。 このためゴナドトロピンの分泌が上昇し、それにつれてこう丸のテストステロン分泌が増加する。 このようにして、高濃度のテストステロンが抗アンドロゲン類の作用を抑圧してしまう。 D. 5α−レダクターゼの生物学的重要性 BPH、アクネ、男性型禿頭、および女性の特発性多毛を始めとするいくつかのアンドロゲン依存性病理状態は、過度のDHTに起因している。 BPH前立腺の存在下では、5α−レダクターゼ活性とDHT濃度が、正常な前立腺を持つ患者よりも高くなることが証明されている[Isaacs,J. Clin. Endocrinol. Metab. 56:139(1 983);Siiteri and Wilson,J. Clinical Invest. 49:1737(1970)]。 また、頭皮毛包の5α−レダクターゼ活性は、禿げていないヒトよりも禿頭のヒトの方が高いことが報告されている[Schweikert and Wilson,Clin. Endocrinol. Metab. 38:811(1974)]。 これを一人の皮膚について見ると、禿げている部位は毛がはえている部位よりも5α−レダクターゼ活性が高いとの所見がある[Bingham and Shaw J. Endocr .57:111 (1973)]。 何人かの特発性多毛の女性は、循環テストステロン濃度が正常値であるが、多毛部位では多毛でない女性よりも5α−レダクターゼ活性が高い[Serafini and Lobo,Fert Steril 43:74(1985)]。 アクネができた皮膚でも、5α−レダクターゼ活性が増大することが報告されている[Sansone and Reis ner,J. Invest. Dermat. 56:366(1971)]。 BPHや上記の皮膚状態の発現にDHTが重要な役割を果たしているとの主張は、遺伝学上の証拠からも裏付けられている。 5α−レダクターゼ欠失が遺伝である男性では、思春期になっても前立線が小さく、触診不能である。 アクネが出ず、はえぎわが一時的に後退し、禿げることがない。 祖父、父親、兄弟と比較すると髭が乏しく、体毛が少ない。 E. ステロイド系5α−レダクターゼ抑制剤 これまでに開発された5α−レダクターゼ抑制剤の中で最も強力なものは、 ステロイド類とその誘導体である。 このうち、4-アザステロイダル化合物類(Me rckCo.)が最も広く研究されている[Liang et al.,J. Steroid Chem. 19:385 (1983); Rasmusson et al.,J. Med. Chem. 29:2298(1986)]。 これらの抑制剤は、17βの位置に大きな官能基を一個有する3−オキソ−4−アザ−5αステロイド類であり、酵素の結合部位をテストステロンと可逆的に競合する作用を行う。 上記の化合物類のA環配座(A-ring conformation)は、3-オキソ-△ 4 -ステロイド類の5α-還元(5α-reduction)の推定上の3−エノール転移状態と近似していると考えられる。 5α−レダクターゼ抑制剤の典型例は、17β−N,N−ジエチルカルバモイル−4−メチル−4−アザ−5α−アンドロスタン−3−オン(4−MA)であり、該物質は、生体内において5α−レダクターゼの抑制剤として行動する。 去勢していない雄ラットまたは去勢している雄ラットにテストステロンプロピオネートを投与した後、この抑制剤を与えると前立腺におけるDHT の濃度が低下する。 また、4−MAは、去勢した雄ラットの前立線がテストステロンに誘発されて成長するのを抑制したが、 DHTを投与したラットではこの効果は遥かに小さかった[Brooks et al.,Endocri nology 109:830(1981)]。 イヌを4-MAで治療すると、前立線の大きさが小さくなる[Brooks et al.,TheP rostate 3:35(1982); Wenderoth and George,Endocrinology,113:569(1983)] 。 ヒト男性型禿頭の霊長類モデルであるベニガオサル(stumptail macaque)の頭皮に4−MAを局所投与することにより、このサルの思春期に通常は起こる禿頭を防止した[Rittmaster et al.,J. Clin. Endocrinol. Metab. 65:188(1987) ]。 これらの結果から、ラットとイヌの前立線の成長と、ベニガオサルの禿頭の発現は、DHT依存性であることが示唆される。 他方、ラットの脳下垂体の培養基を用いて、テストステロンがDHTに転換するのを4−MAによって完全に阻害する実験が行われた。 その結果、この阻害が、 テストステロンによるLHの放出抑制に影響を与えないことが証明され、この系ではテストステロンが直接作用していることが示唆された[Liang et al.,Endocr inology 115:2311 (1984)]。 他の効果的な抑制剤として、プロスカー(Proscar)(Merck Co.)(finaste ride,MK−906,すなわち、17β−N−t−ブチルカルバモイル−4−アザ−5α -アンドロスト−1−エン−3−オン)がある。 この抑制剤は、ラットの前立線A Rに対して顕著な親和力をもっていない。 良性前立腺肥大患者を対象とする臨床実験において、プロスカーはDHTの血漿濃度を低下させ、前立腺を縮小して、排尿を改善した[Vermeulen etal.,The Prostate 14:45(1989); Rittmaster et a l.,J. Androl. 10:259(1989); Gormley et al.,J. Clin. Endocrinol. Metab . 70:1136(1990); Imperato-McGinIey et al.,J. Clin. Endocrinol. Metab. 7 0:777(1990)]。 また、ベニガオザルにプロスカーを経口で0.5mg/日を、単独投与、またはこれと2%ミノキジル(2%minoxidil)の局所投与とを併用したところ、血清中のDHT濃度が低下し、 さらにミノキジルの局所投与を併用することによって、毛の再生が促進されて、 禿の進行から毛の再生へと逆転した[Diani et al.,J. Clin. Endocr. and Met ab. 74:345(1992)]。 ミノキジルとプロスカーの効果は、付加的であった。 5α-レダクターゼを抑制することが立証されている他のステロイド化合物としては、4-アンドロスタン-3-オン-17β-カルボン酸[Voigt et al.,J. Biol. Chem. 260:4890(1985)]、4-ジアゾ-21-ヒドロキシメチル-プレグナン-3-オン[ BIohm et al.,Biochem. Biophy. Res. Commun. 95:273(1989)]および3-カルボキシA環アリールステロイド類[Brandt et al.,J. Steroid Biochem. Mol. Bio l. 37:575(1990)]が挙げられる。 F. 脂肪酸類と脂質類の生物学的効果 5α−レダクターゼ抑制剤によってアンドロゲン依存性の皮膚疾患や前立線疾患を治療すると、アンドロゲン作用をすべて無差別的に抑制してしまうホルモン療法よりも副作用が少ない。 したがって、いろいろな種類の5α−レダクターゼ抑制剤があることが望ましい。 本発明は、天然および合成脂肪酸類、特に多不飽和脂肪酸類とそれらの誘導体類を、治療剤としての目的で5α−レダクターゼ抑制剤として使用することに関する。 多不飽和脂肪酸類は、皮膚炎、腎臓壊死、不妊および心臓血管疾患として現れる脂肪酸欠失の影響を治し、[Harold and Kinsella,Am. J. Clin. Nutr. 43:5 66 (1986); Phillipson et al.,Eng. J. Med. 312:1210(1985); Ziboh and Mil ler,Annu. Rev. Nutr. 10:433(1990)]、さらにまた抗腫瘍活性を有する[Begi n,Proc. Nutrition Soc. 49:261 (1990); Karmali et al.,J. Natl. CancerIn st. 73:457(1984)]。 不飽和脂肪酸類の多くは、哺乳動物の生体膜の必須構成成分であり、典型的にはトリグリセライド類やホスホリピド類のアシル化されたものである[Lands,Ann. Rev. Biochem. 34:313(1965)]。 アラキドン酸は、プロスタグランジン類やロイコトリエン類の生合成の特定先駆物質の役割を果たしている[Needleman et al.,Ann. Rev. Biochem. 55:69(1 986)]。 これらの不飽和脂肪酸の代謝産物は、炎症の媒介物質となる。 これまで、不飽和必須脂肪酸類が、アクネに影響する食事要因であるとされてきたが、この説を支持する確実な論議も現れなかったし、またこの説に基づく治療方法が成功したこともなかった[Downing et al.,J. Am. Acad. Dermatology 14:221(19 86)]。 ヒトによっては、合成樹脂類似物質やAR結合競合抗アンドロゲン類を用いてアクネの改善効果が得られることもあった。 これらの抗アクネ剤は、臨床上の改善と平行して、皮脂中のリノール酸の割合を上昇させる[Wright,Prostagl andins,Leukotrienes and Essential Fatty Acids 38:229(1989)]。 G. 脂肪酸類と脂質類の生化学的効果 膜関連の酵素のいくつか(例えば、5'−ヌクレオチダーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ)は、食事中の脂肪の多不飽和脂肪酸分に影響されて、細胞膜の物理化学的特性を変化させることが証明されている[Zuniga et al.,Nutr. 119 :152(1989); Szepsesi et al. Nutr. 119:161 (1989)]。 培養基中の各種の異なる不飽和脂肪酸によって、ラットの心室筋細胞の種々の型のホスホリパーゼが各々調整される[Nalboone et al.,Lipids 25:301 (1990)]。 加えて、大脳皮質のスライス[Baba et al.,J. Neurochem. 42:192(1984)]、または網膜そのまま[Tesoriere et al.,J. Neurochem. 51:704(1988)]を不飽和脂肪酸類で処理すると、アデニルシクラーゼ活性が上昇する。 しかしながら、無細胞系で酵素に対する遊離脂肪酸の作用機序を解明しようとする研究はほとんどなされてこなかった。 いくつかのシス不飽和脂肪酸50μMで、プロテインキナーゼC活性を刺激すること[Dell and Severson,Biochem. J . 258:171 (1989); Khan et al.,Febs Letter 292:98(1991)]、および、アンドロゲン類、エストロゲン類、グルココルチコイド類およびプロゲスチン類の受容体にステロイドが結合するのを抑制すること[Vallette et al.,J. Steroid Bioc hem. 263:3639(1988); Kato,J. Steroid Biochem. 34:219(1989)]が証明されているにすぎなかった。 不飽和脂肪酸類が、動物あるいはヒトの生体内でステロイド受容体とステロイドホルモン類との結合に対して影響を与えるとの立証はまだなされていない。 α、β、およびωの位置でフツ素化された脂肪酸類[Gershan and Parmegiani ,J. Med. Chem. 10:186(1967); Pattison and Buchanan,Biochem,J. 92:100 (1964); Gent and Ho,Biochemistry 17:3023(1978)]およびω‐オレイン酸[T osaki and Hearse,Basic Res. Cardiol. 83:158(1988)]は、植物および微生物中で確認され、化学合成されてきた。 これらのフツ素化された酸類の多くには毒性がある。 フッ素化された脂肪酸類のうちあるものを分解すると、フッ化酢酸が生成する。 このフッ化酢酸をフッ化クエン酸塩に取り入れると、アコニターゼ作用(aconitase action)を阻害することができる。 これにより、クエン酸回路と細胞エネルギー産生を抑制することができる[Hall,New Phytol. 71:855(1972) ]。 フッ素化された脂肪酸類は、生物系における脂肪酸の分解、代謝、輸送の研究[Stoll et al.,J. Lipids Res. 32:843(1991)]、およびタンパク質と脂質の相互作用や膜の機能の生物物理学的研究[Gent et al.,Biophys. J. 33:211 (l981)]に役立つことが多い。 ビオチンは、主要なカルボキシラーゼ類の補因子であり、脂肪酸類の秩序正しい産生と代謝のために必要な物質である。 ビオチン欠失に起因する脱毛症は、患者にビオチンを投与することにより完治することができる。 また、頭皮毛髪の成長を始めとするビオチン依存性の皮膚状態に対しては、不飽和脂肪酸類を経口投与あるいは皮膚に塗布することにより改善することができる[Munnich et al., Lancet 2:1080(1980); Mock et al.,J. Pediatrics 106:762(1985)]。 男性型脱毛症においては、脂肪酸を投与して欠失している脂肪酸類を補充することにより効果が発揮されることは明らかであって、アンドロゲン作用の制御によるものではない。 発明の要旨本発明は、脂肪酸類とその誘導体を用いて5α‐レダクターゼ活性を調整し、 標的器官および細胞のアンドロゲン活性を制御することに関する。 さらに詳しくは、新規または公知の脂肪酸類およびその関連化合物を用いて、標的細胞中で活性アンドロゲンの生成と存在を阻害することによりアンドロゲン活性を抑制することに関する。 この発明は、アンドロゲン活性過度に起因する前立線肥大、前立線癌、多毛症、アクネ、男性型禿頭症、脂漏、その他の疾患の治療に有用である。 本発明の化合物は、飽和および不飽和脂肪酸の各種異性体、天然および合成類縁物質、脂肪酸およびその代謝産物と酸化産物を生成する誘導体を含む。 これらの脂肪酸類は、5α‐レダクターゼを抑制することによりアンドロゲン類のトランスフォーメーションに影響する。 その結果、(a)標的器官に対するDHTの供給を制限して、DHT依存性のアンドロゲン作用を抑止したり、あるいは(b)テストステロンや、DHTの他のアンドロゲン性先駆物質が代謝によって喪失するのを防止し、テストステロンやその他のDHT先駆物質に依存するホルモン作用を促進あるいは維持することができる。 また、5α‐レダクターゼは他のステロイド類を基質として使うので、これらの化合物は、他の3‐オキソ-△ 4 -ステロイド類の形質転換や活性化を制御し、 したがって他のステロイドホルモン類の生物機能を同じ機序によってコントロールすることができる。 本発明の合成脂肪酸類縁物質はユニークな化合物であり、 生体内、試験管内のいずれにおいても比較的に安定で、容易に代謝したり、分解したり、あるいは脂質構造物やその他の誘導体に組み入れられることはない。 脂肪酸類がフッ素化、アルキル化、および閉環することによって、このような安定性が与えられる。 これらの合成化合物は、治療用薬剤として所望の効果と器官特異性を持ち、しかも著しい副作用のないことが期待される。 本発明の公知のおよび新規の化合物は、本発明の一以上の化合物を含有する医薬組成物を治療上有効な用量で、場合によっては他の治療剤や担体と併用したり、もしくは天然製品または合成製品の剤形で使用するものであり、各種疾患の治療に好適である。 対象とする疾患としては、アンドロゲン活性過多に起因する症状、例えば男性型禿頭症、女性の多毛症、アクネ、BPH、および前立線癌が挙げられる。 本発明の医薬組成物は、公知の脂肪酸類または本発明の化合物を含有し、経口、注射、その他の手段、例えば局所用クリーム、ローション、ヘアートニック、 頭皮用剤、塗布用経皮パッチなどによって、局所経路あるいは体内経路で、単独もしくは他の薬剤、添加剤または医薬化合物と併用して投与することができる。 これらの化合物のあるものはステロイドの代謝を制御する作用があり、したがって、正常のまたは変異したホルモン受容体の機能に影響を与えることが期待されている。 したがって、これらの組成物は、アンドロゲン、およびその他のホルモン感受性または非感受性の疾患または腫瘍の治療に有用であると思われる。 また、本発明の化合物は、ホルモンと抗ホルモンの作用機序の研究に重要であると期待されている。 図面の簡単な説明図1は、実施例1の化合物2〜6の合成を示す概略図である。 図2は、実施例1の化合物4〜9の合成を示す概略図である。 図3は、実施例1の化合物12〜15の合成を示す概略図である。 図4は、実施例1の化合物17および化合物19〜21の合成を示す概略図である。 図5は、実施例1の化合物23〜27の合成を示す概略図である。 図6は、実施例1の化合物28および29の合成を示す概略図である。 図7は、実施例1の化合物32および化合物34〜36の合成を示す概略図である。 図8は、実施例1の化合物38および化合物40〜42の合成を示す概略図である。 図9は、実施例1の化合物43から実施例1の化合物44および45を合成することを示す概略図である。 図10は、実施例1の化合物46から実施例1の化合物47を合成することを示す概略図である。 図11は、図8の方法を用いて製造した実施例1の化合物48〜50の構造を示す図である。 図12は、セファデックスG‐50カラムクロマトグラフィを使用して、ラット肝臓のミクロゾーム抽出液から5α‐レダクターゼ抑制剤の分画を行ったことを示す図である。 5α‐レダクダーゼは、[ 3 H]4‐MA‐結合検定(閉じている丸) によって検定した。 図中、各々の分画の280nmにおける吸収を示している(開いている丸)。 ほとんどの抑制活性は分画No. 19〜No. 29と結びついていた。 。 図13は、ラット肝臓ミクロゾーム中の5α−レダクターゼ活性に対するオレイン酸(C18:1,cis-9)(c-9)、リノール酸(C18:2,cis-9,12)(c-9,12)、 エライジン酸(C18:1,trans-9)(t-9)、およびリノールエライジン酸(linol elaidic acid)(Cl8:2,trans-9,12)(t-9,12)の効果を[ 3 H]4−MA結合検定(左)、または酵素検定(右)で測定した結果を示す図である。 括弧内の略語は、炭素鎖中の炭素原子数、cisまたはtrans二重結合の数と位置、および図中に示した略語を示している。 ラット肝臓ミクロゾームの量は、結合検定では10μ gプロテイン、酵素検定では2μgプロテインであった。 脂質の不存在下では、[ 3 H]4−MA結合検定の対照値は30618±975dpmであった。 酵素検定の対照値は、 テストステロン0.5μMを基質として用いて、15分当りの生成される5α‐DHTが9 .0±0.9nmolであった。 対照値を活性100%とした。 図14は、ラット肝臓ミクロゾーム(5μgプロテイン)と[ 3 H]4‐MAとが結合するのをγ‐リノレン酸により抑制する経過時間を示す図である。 γ‐リノレン酸の濃度は5μMであった。 図15は、無処理ラット肝臓ミクロゾーム(左側の数字)と洗剤で可溶化したラット肝臓ミクロゾーム(右側の数字)中の5α‐レダクターゼと、[ 3 H]4‐MAとの結合が、γ−リノレン酸によって抑制されることを示す図である。 [ 3 H]4‐ MA結合検定は、γ‐リノレン酸10μMの不存在下(対照)および存在下で、ミクロゾームプロティンの量を変えて行った。 図16は、NADPH(左側)とテストステロン(右側)の各種濃度中における、γ −リノレン酸による5α‐レダクターゼ活性の抑制を示す図である。 γ‐リノレン酸の濃度を図中に示す。 図17は、本明細書の開示内容の一部である化合物の一般式を示す図である。 式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 、R 8またはR 9は、素、フッ素その他のハロゲン元素、もしくはメチル基、エチル基、プロピル基その他のアルキル基またはアリール基である。一個または二個のフツ素その他のハロゲン元素によって、炭素原子のいずれかに付着している水素を置換することができる。 "l"、"m"、"n"、" p"、"q"、"r"および"t"は、それぞれ別個に0または1〜約50、好ましくは1〜 約30の整数である。分子に付着しているアルキル基またはアリール基およびフッ素その他のハロゲン元素は、不飽和二重結合を酸化するか、あるいはα、βまたはωを酸化することによって分解を防止することができる。これら脂肪酸の酸化産物と代謝産物も5α‐レダクターゼ活性を制御することが期待できるので、本発明の一部とする。また、‐CH基と‐OH基は、置換された形(‐CRおよび/または‐OR)をとっても良い。ここで、式中、‐Rはアルキル基またはアリール基である。また、アシル化物類とエステル類も、加水分解すると、示されたカルボン酸を生成することができるため、本発明の一部とする。 'X'は、炭素、硫黄、酸素、あるいは‐NH‐である。このX‐結合は、炭素2と鎖末端の炭素を結合することにのみ限定されない。炭素鎖のどの炭素二個を結合させるものであっても良い。図18は、従来より他者によって説明されている脂肪酸類を示す図である。この脂肪酸類も5α‐レダクターゼ活性の制御に使用することができる。図19は、脂肪酸類のフッ素化された、および環状化された誘導体の例を示す図である。これら誘導体は本開示の一部である。 好ましい実施態様の詳細な説明以下、本発明の根拠と実施とを実施例により説明する。これらの実施例の多くはアンドロゲンとアンドロゲン受容体(AR)の作用に関するものであるが、5α ‐レダクターゼに依存性があり、または5α‐レダクターゼによって制御される他のステロイドホルモン類の作用にも適用することができる。実施例1 脂肪酸類縁物質と関連分子の合成 A. β‐フルオロ脂肪酸類の合成 リノレン酸のβ-フルオロ酸類縁物質は、比較的簡単な方法で合成することができる。適当な16-炭素酸1(図1)を出発原料として、イソペンチル水素化ホウ素(isopentyl boron hydride)を用いた還元によりアルデヒド2を得、次いでレフォルマトスキー反応を実施し、亜鉛とブロモ酢酸エチル(ethyl bromoace tate)を用いて、2からβ-ヒドロキシアセテート3を得る。室温でジクロロメタンにニクロム酸ピリジニウム(pyridinium dichromate in dichloromethane a t room temperature)を溶解した溶液を用いて、3からβ‐ケトエステル4を得る。室温で塩化メチレンに三フッ化ジエチルアミノサルファー(diethylaminosu lfer trifluoride)(DAST)を溶解した溶液を用いて、4からジフルオロエステル5を得る。 DASTは、アルデヒド類、ケトン類、およびアルコール類に室温で非常に選択的なフッ素化試薬である。エステル基の塩基性加水分解を行って、遊離酸6を得る。また別法として、塩化チオニルと反応させて(図2)、1から酸塩化物7を生成させることができる。マロン酸とアセトンの反応から生成されるメルドラム酸(Meldrum's acid)と7を反応させると、化合物8が生成する。化合物8の開環と脱カルボキシルを行うと、β‐ケト酸9が生成する。 β‐ケト酸9から連続反応により、化合物4と5、および前述の目的とする化合物6が生成する。 B. 6員環リノレン酸類似物の合成 リノレン酸には、1)三つのcis二重結合、および2)カルボン酸基と言う二種類の重要な基が存在する。これら二種類の重要な基を持ち、しかもリノレン酸の活性を保持する分子を設計することができる。その例は、化合物15と21であり、合成経路は図3と4に示されている。 1,3−ヘクサンジオン10を出発原料として、10のエノレートアニオン(enol ate anion)を形成し、続いて6-ブロモカプロン酸エチル(ethyl 6-bromocapro ate)11と反応させて、化合物12を生成させる。水素化ホウ素ナトリウム(sodiu m borohydride)を用いて還元して、化合物13を得る。 13と無水トリフルオロメチルスルホン酸を反応させて、ジトリフルオロメチルスルホン酸塩(ジトリフラート)(ditrifluoromethylsulfonate)(ditriflate)14を得る。 1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−5−エン(1,5-diazabicyclo [5,4,0] und ec-5-ene)(DBU)を用いてトリフラートの二重脱離を行って、化合物14を目的とするリノレン酸類似物15に転換させることができる。エステル基の酵素加水分解を行って、遊離酸を得たり、遊離酸を生体内で生成することができる。もう一つのリノレン酸類似物として化合物21があり、図4にその合成を示している。シクロヘキサノン16を出発原料として、ピリジニウムブロミドパーブロミド(pyridinium bromide perbromide)との反応によって、ジブロモケトン17を得る。 17とグリニヤール試薬18とを反応させて、ジブロモヒドロキシルエステル19を得る。 DASTを用いて室温で19をフッ素化することにより、化合物20を得る。この化合物20を室温でDBUと共に攪拌してHBrの二重脱離を行ない、目的とするリノレン酸類似物21を得る。ここでも、エステル基を化学的に除去するか、あるいは生体内で酵素加水分解することによって、遊離酸を得ることができる。 C. Cl7環リノレン酸類縁物質の合成 リノレン酸の環状類縁物質は、β‐酸化へき開に対して強く抵抗する。したがって、この環状類縁物質はリノレン酸そのものよりも生体内で安定である。この環状化合物の一クラスの例として化合物27が挙げられる。この化合物27は、二重結合一個と、欠くことができないカルボン酸基とを持つ17‐員の炭化水素環である。化合物17までの合成経路を図5で説明する。チベトン22を出発原料とし、トリメチルシリルシアニドと反応させて、シリル化シアノヒドリン23を生成する。シアノヒドリンを塩化スズ(II)と塩酸で還元してα-ヒドロキシ酸24に転換する。 24をエステル化して、化合物25を得る。この化合物25をDASTとの反応によりα ‐フルオロエステル26に変えて、さらにエステル基をれつ開して遊離酸27を得る。また、フルオロエステル26を対立臭素化(allelic bromination)して、化合物28(図6)を得る。化合物28とDBUを反応させて二重脱離を行い、恐らくはcis 異性体とtrans異性体の混合物と思われるトリ‐エン29を得る。フルオロエステル26からさらにまた、接触水素化によりC17‐飽和環状化合物を得ることもできる(図示せず)。 D. C16環リノレン酸類縁物質およびヘテロ原子を置換した16員環リノレン酸類縁物質の合成 このクラスの化合物を合成する際の出発原料は、3‐ヘキセンジアール30(図7)である。 30を化合物31(ブチロラクトンから6工程で調製される。)およびトリフェニルホスフィンと反応させると、ウィッティヒ生成物32(Wittig produ ct)になる。 32をアルデヒド33(シクロヘキセンから4工程で調製される。)と反応させると化合物34となり、さらにこれからケタール保護基を取り除くと化合物35になる。乾燥ジメチオキシエタン(dimethyoxyethane)に塩化チタン(III )とリチウムを入れた混合物中で、35とカルボニルを結合させて、化合物36を得る。化合物31を適宜修飾して得た化合物を用い、図7の方法により環系にヘテロ原子を挿入する。例えば、31への先駆物質から化合物37を得ることができる。化合物37と化合物30を反応させると化合物38が生成され、さらにこれから数工程後では化合物41となる。この化合物41は、DBUの存在下で攪拌すると閉環することができる。エステル基を加水分解すると酸42が生成される(図8)。同様にして、硫黄あるいは酸素を置換した環化合物45と47を生成することができる(図9および10)。 E. ヘテロ原子を置換した17員環リノレン酸類縁物質の合成 図8で概略を説明した化学を利用すると、5炭素アルデヒド39を6炭素同族体33で置換するだけで化合物48、49および50(図11)を生成することができる。 F. cis二重結合の間にCF 2基を有する多不飽和脂肪酸の合成 cis二重結合の間のメチレン基の一つをCF 2基一個で置換して不飽和脂肪酸を合成する一般的方法がある[Kwok et al.,J. Am. Chem. Soc. 109:3684 (1987)] 。この方法の例として、10,10-ジフルオロアラキドン酸類(化合物51)および1 1,11-ジフルオロ‐γ‐リノレン酸(図11の化合物52)の調製方法が挙げられる。 G. 図1〜11の化合物の化学名 1.すべての酸 2.対応するアルデヒド 3. 3‐ヒドロキシ酸エチルエステル 4. 3‐ケト酸エチルエステル 5. 3,3‐ジフルオロ酸エチルエステル 6. 3,3‐ジフルオロ酸 7.すべての酸塩化物 8.メルドラム酸付加物(Meldrum's acid adduct) 9. 3‐ケト酸 10. 1,3‐シクロヘキサンジオン 11. 6‐ブロモヘキサン酸エチル 12. 6‐(2,6‐シクロヘキサンジオン‐イル)ヘキサン酸エチル 13. 6‐(2,6‐ジヒドロキシシクロ‐ヘキサニル)ヘキサン酸エチル 14. 6‐[2,6‐ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)シクロヘキサニル]ヘキサン酸エチル 15. 6‐(シクロヘックス‐2,5‐ジエニル)ヘキサン酸エチル(Ethyl 6‐(cyclhex‐2,5‐dienyl)hexanoate) 16.シクロヘキサノン 17. 2,6‐ジブロモシクロヘキサノン 18. 6‐マグネシウムブロモ‐ヘキサン酸エチル 19. 6‐(1‐ジヒドロキシ‐2,6‐ジブロモ‐シクロヘキシル)ヘキサン酸エチル 20. 6‐(1‐フルオロ‐2,6‐ジブロモ‐シクロヘキシル)ヘキサン酸エチル 21. 6‐(1‐フルオロ‐シクロヘックス‐2,5‐ジエニル)ヘキサン酸エチル 22.シベトン(civetone) 23.シベトントリメチルシリル‐シアノヒドリン 24. 1‐ヒドロキシシクロヘプト‐9‐エン‐1‐カルボン酸 25. 1‐ヒドロキシシクロヘプト9‐エン‐1‐カルボン酸エチルエステル 26. 1‐フルオロシクロヘプト‐9‐エン‐1‐カルボン酸エチルエステル(Ethy1‐fluorocyclohept‐9‐ene‐1‐carboxylate) 27. 1‐フルオロシクロヘプト‐9‐エン‐1‐カルボン酸エチル(Ethyl 1‐fluoocyclohept‐9‐ene‐1‐carboxylic acid) 28. 1‐フルオロ‐8,11‐ジブロモシクロヘプト‐9‐エン‐1‐カルボン酸エチルエステル 29. 1‐フルオロシクロヘプト‐7,9,11‐トリエン‐1‐カルボン酸エチル 30. 3‐ヘキセンジアール 31. t‐ブチル‐6‐ブロモ‐3‐ケトヘックス‐アノエートレゾルシノールケタール 32. t‐ブチル‐3‐ケト‐ドデック‐6,9‐ジエン‐12‐カルボックスアルデヒドエートレゾルシノールケタール(Tert‐butyl 3‐keto‐dodec‐ 6,9‐dien‐12‐carboxaldehydoate resorcinol ketal) 33. 6,6‐ジメトキシヘキサナール 34. t‐ブチル‐3‐ケト‐18,18‐ジメトキシオクタデック‐6,9 ,12‐トリエノートレゾルシノールケタール(Tert‐butyl 3‐keto‐18,18‐ dimethoxyotadec‐6,9,12‐trienoate resorcinol ketal) 35. t‐ブチル‐3‐ケトオクタデカ‐6,9,12‐トリエン‐18‐カルボックス‐アデヒドエート 36. 2‐(1‐シクロヘキサデック‐1,8,11,14‐テトラエニル)酢酸(2‐(1‐Cyclhexadec‐1,8,11,14‐tetraenyl)acetic acid) 37. t‐ブチル‐6‐ブロモ‐3‐N‐フタル‐アミドヘキサノエート 38. t‐ブチル‐3‐N‐フタルアミド‐ドデック‐6,9‐ジエン‐12‐ カルボックスアルデヒドエート 39. 5,5‐ジメトキシペンタナール 40. t‐ブチル‐3‐N‐フタルアミド‐18,18‐ジメトキシオクタデック‐6,9,12トリエノエート 41. t‐ブチル‐3‐ケト‐18‐ブロモ‐オクタデカ‐6,9,12‐トリエノエート 42. 2‐(2‐アザシクロヘクサデック‐8,11,14‐トリエニル)酢酸 43. t‐ブチル‐3‐チオ‐18‐ブロモ‐オクタデカ‐6,9,12‐トリエノエート 44. t‐ブチル‐3‐スルフヒドリル‐18‐ブロモオクタデカ‐6,9,12 ‐トリエノート 45. 2‐(2‐チアシクロヘキサデック‐8,11,14‐トリエニル)酢酸 46. t‐ブチル‐3‐ヒドロキシ‐18‐ブロモ‐オクタデカ‐6,9,12‐ トリエノエート 47. 2‐(2‐オキサシクロヘキサデック‐8,11,14‐トリエニル)酢酸 48. 2‐(2‐オキサシクロヘプタデック‐9,12,15‐トリエニル)酢酸 49. 2‐(2‐アザシクロヘプタデック‐9,12,15−トリエニル)酢酸 50. 2‐(2‐チアシクロヘプタデック‐9,12,15‐トリエニル)酢酸 51. 10,10‐ジフルオローアラキドン酸 52. 11,11‐ジフルオロ‐γ‐リノレン酸実施例 2 ミクロソーム脂質および動物器官と植物産物の有機溶媒抽出物による5α‐レダ クターゼ活性の抑制哺乳動物の細胞では、5α‐レダクターゼが、小胞体膜や、隣接する核膜を含む細胞内膜と、非常に密接に結び付いている。これまでに、活性5α‐レダクターゼを可溶化したり、精製しようとする試みが行われたが成功したものはなかった。したがって、5α‐レダクターゼ活性の検定は、NADPHの存在下で全細胞またはミクロソームと核の標本(microsomal and nuclear preparations)とによりテストステロンが5α‐DHTに変わって行く転換率を測定することによって行われた(酵素検定)。これとは別の方法として、レダクダーゼと結合しようとしてテストステロンと激しく競合する[ 3 H]4‐MAなどの強力な放射能抑制剤がNA DPH依存性の非共有結合をして行くのを追跡することによっても、5α‐レダクターゼの精度が高い検定結果を得ることができる([ 3 H]4‐MA結合検定)。各種の器官あるいは実験動物から採取したミクロソーム標本を用いて上記二つの検定結果を比較すると、両者の相関度は極めて高い[Liang et al.,Endocrinolog y 112:1460(1983)]。ラット肝臓のミクロソーム分画を酢酸で可溶化した後メタノールと混合することにより、ミクロソームタンパクのうち80%以上を沈澱物として取り除くことができた。この方法により、5α‐レダクターゼ活性は完全に不活性化した。つまり、溶解性分画には、(酵素検定あるいは[ 3 H]4‐MA結合検定により測定して)ラット肝臓ミクロソームの5α‐レダクターゼ活性を抑制する化合物が含有されていたが、沈澱分画にはこの化合物は含有されていなかった。図12に示す通り、メタノール溶解性分画をセファデックスG‐50カラムクロマトグラフィで解析した結果では、空隙容量に溶出しているプロテインのピーク主要部分から抑制活性(inhi bitoryactivity)が離れていることが認められた。抑制活性はまた、ラット肝臓ミクロソームの塩化メチレン抽出物中にも認められ、抑制剤の一部は脂質類であることが示唆された。さらにまた、ウシ肝臓、ウシ腎臓、ヒト胎盤、ラットとヒトの前立線、イーストと植物(コーン、ピーナッツ、オリーブその他植物)油の有機溶媒抽出物中にも抑制活性が認められ、抑制剤は各種の動物器官、植物生成物および微生物中にも存在することが示唆された。実施例 3 3 H]4‐MA結合検定を用いた純粋脂類による5α‐レダクターゼ活性の抑制3 H]4‐MAとラット肝臓ミクロソームとの結合に影響を与える各種脂質類の性能を試験した結果では、表1に示す通り一部の不飽和脂肪酸しか抑制力を持っていない。上記の試験を行った脂質類の中、抑制力の高いものは炭素鎖を14〜22 個と二重結合を1〜6個とを持っている脂肪酸である。高い抑制活性のためには、二重結合一個の存在が必要である。一般に、飽和脂肪酸類は対応する不飽和脂肪酸ほど抑制活性が高くはない。 [ 3 H]4‐MA結合検定では、cis配置に二重結合をもつ化合物のみが低濃度でも活性であったが(<10μM)、trans異性体は高濃度(>0.2mM)でも不活性であった。しかしながら、実施例4で示すように、酵素検定によるレダクターゼ活性分析では、trans異性体は活性な抑制剤であった。 [ 3 H]4‐MA結合検定で次の組合せの脂肪酸を用いて比較すると、脂肪酸のcis異性体とtrans異性体との効果の差が明らかになる。すなわち、オレイン酸(C18:1,cis‐9)とエライジン酸(C18:1,trans‐9)、およびリノール酸( C18:2,cis‐9,12)とリノールエライジン酸(linolelaidic acid)(C18:2, trans‐9,12)である。実験結果を表1に示すが、 この表でも二重結合の数と位置が効力に影響したことを証明している。 [ 3 H]4 ‐MA結合検定において、C18脂肪酸の抑制効力を高いものから低いものへの順序で挙げると次の通りである。 γ‐リノレン酸(cis‐6,9,12)>cis‐6,9 ,12,15‐オクタデカ‐テトラエノイックアシド(cis‐6,9,12,15‐octad eca‐tetraenoic acid)>α‐リノレン酸(cis‐9,12,15)>リノール酸(c is‐9,12)>オレイン酸(cis‐9)>ペトロセリン酸(cis‐6)。エルカ酸(C22:1,cis‐13)は不活性であったが、cis‐4,7,10,13,16,19‐ドコサヘキサエン酸(cis‐4,7,10,13,16,19‐docosahexaenoic acid)は強力な抑制剤であった。ウンデシレン酸(C11:1,10)およびネルボン酸(C24:1, cis‐15)もまた不活性であった。抑制力があるこれらの不飽和脂肪酸類のメチルエステルやアルコール類縁物質は、不活性であるか、活性があっても僅かであるので、遊離カルボキシル基が重要である。プロスタグランジンE2、F2aと12は活性ではなかったが、プロスタグランジンA1、A2、B1、B2、D2、E1およびF1aは0.2mMの濃度でやや活性であった。カロテン類、レチナール類およびレチノイン酸もまた不活性であった。ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、3‐ジオレイン(3 ‐diolein)、レチノール、13‐cis‐レチノイン酸、および13‐cis‐レチノールは僅かに刺激性があった。

    脂質類の実験濃度は0.01〜0.2mMであった。 実験は各々二回繰り返し、一部については代表的な結果となるまで反復した。 抑制率10%以下の化合物は不活性( NA)とした。 a)カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、 ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸(tr icosanoicacid)およびリグノセン酸(lignocenic acid)を含む飽和脂肪族脂肪酸、 (b)ステアリン酸メチルエステル、S-ステアロイルCoA、パルミチン酸メチルエステル、S-パルミトイルCoA、cis-9-テトラデセノール、およびアラキドニルアルコールを含む脂肪アシルエステル類およびアルコール類、ならびにc)α -およびβ-カロテン類、レチノイン酸、9-cis-レチナール、レチナール、および13-cis-レチナールを含むビタミンA関連化合物は、200μM濃度でも著しい効果が認められなかった。 脂肪族脂質類の一部にこのような高い濃度で抑制活性を示したものがあったが、対応する不飽和脂肪酸類の抑制活性よりは著しく低いものであった(抑制率は次の括弧内に示す。)。 ミリストレン酸メチルエステル( mirystoleic acid methyl ester)(27%)、γ-リノレン酸メチルエステル(32 %)、cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘクサエノール(51%)。 レチノール、13-cisレチノイン酸および13-cis-レチノールは200μMで刺激率58%であったが、40μMでは刺激も、抑制も認められなかった。 有効な脂肪酸類のIC50(50 %を抑制するのに必要な濃度)は次の通りであった。 γ-リノレン酸(10μM)、 オクタデカテトラエン酸(octadecatetraenoic acid)(57μM)、γ-リノレン酸(60μM)、アラキドン酸(65μM)、パルミトレイン酸(108μM)、リノール酸(117μM)、およびオレイン酸(128μM)。 #数字記号は、分子中の炭素原子と二重結合の数を示している。 括弧内の数字は、cisあるいはtrans体の二重結合の位置(カルボキシル基末端から数えて)を示している。 実施例 4

    酵素検定法を用いた純粋脂質類による5α-レダクターゼの抑制脂肪酸類の抑制効果の測定を酵素検定によって行なったところ、酵素源としてラットの肝臓ミクロソーム、前立腺ミクロソームのいずれを使用しても、飽和脂肪酸類や、cis不飽和脂肪酸類の相対効力は、[

    3 H]4-MA結合検定によって測定した結果と一致した(表1)。 しかしながら、[

    3 H]4-MA結合検定では、trans 異性体であるエライジン酸(Cl8:1,trans-9)とリノールエライジン酸(C18:2 ,trans-9, 12)の抑制力はcis異性体であるオレイン酸(C18:1,cis-9)とリノール酸(C1 8:2,cis-9,12)よりはるかに劣っている(表1および図13左側)。 ところが、前立腺ミクロソームまたは肝臓ミクロソームのどちらを使用しても、酵素検定では両異性体の効力は同等である(図13右側)。 したがって、trans異性体は異なる機序によって5α-レダクターゼを抑制するものと考えられる。 実施例 5

    γ-リノレン酸による5α-レダクターゼ抑制の速度論実験酵素検定、[

    3 H]4-MA結合検定(図14)のいずれにおいても、γ-リノレン酸をミクロソーム酵素標本に混合後一分以内に抑制が観察された。 しかも、ラット肝臓ミクロソームを無処理でそのまま用いた場合、洗剤(ポリオキシエチレンエーテル)によって可溶化したものを用いた場合のいずれにおいても観察可能であった(図15)。 タンパク濃度を2μgから20μgまで上昇させるにつれて、γ-リノレン酸10μMによる抑制力は、無処理ミクロソームを用いた場合は93%から52 %に、可溶化ミクロソームを用いた場合は96%から88%に低下した。 まず、[

    3 H]4-MAをNADPHの存在下でミクロゾームと結合するままに放置し、 続いてγ-リノレン酸を最終濃度が10μMとなるまで添加したところ、ミクロソームに結合した[

    3 H]4-MAの約60%が2分以内にミクロソームから解離した。 残ったミクロソーム結合[

    3 H]4-MAは遥かにゆっくりした速度で、その後60分かけて解離した。 γ-リノレン酸による抑制が可逆的であるか否かを判定する目的で、ミクロソームをγ-リノレン酸と共にインキュベートした後、再び単離して遊離γ-リノレン酸を取り除いた。 この実験結果では、抑制が部分的に逆転されるにすぎないことが立証された(抑制率78%から63%に低下)。 γ-リノレン酸がミクロソーム、および/またはレダクターゼ活性に不可欠な不可逆的に不活性化された化合物と固く結合していた可能性もある。 酵素検定、[

    3 H]4-MA結合検定のいずれの場合においても、NADPHやテストステロンの濃度を増すことによって抑制を阻害することはできなかった(図6)。 γ -リノレン酸はミクロソームレダクターゼと結合するために、テストステロンやN ADPHと競合するとは考えられなかった。 データを二重逆数プロット(double rec iprocal plots)した結果では、γ-リノレン酸5μMはNADPHの名目的Km値(2.0 から3.1μMに)とテストステロンの名目的Km値(2.4から4.5μMに)を上昇させ、タンパク質1mg当りおよび15分当りの5α-DHT生成量のVmaxを7.5から2.8pmol に低下させたことを示していた。 γ-リノレン酸5μMおよび10μMでは、[

    3 H] 4-MAの名目的Ki値を13μMからそれぞれ20μMと40μMに上昇させ、最大結合力を0.56pmol/10μgタンパク質からそれぞれ0.45pmol/10μgタンパク質と0.40pmol /10μgタンパク質に低下させた。 実施例 6

    上記以外のミクロソーム酵素類に対するγ-リノレン酸の効果 γ-リノレン酸の効果の特異性を判定する目的をもって、上記以外のミクロソームレダクターゼ活性およびステロイドを基質として用いるミクロソーム酵素に対する、γ-リノレン酸の効果の実験を行った。 γ-リノレン酸は濃度10〜40μM において、NADH、メナジオンレダクターゼまたはUDP-グルクロン酸、5α-DHTグルクロノシルトランスフェラーゼの活性に影響しなかった。 哺乳動物の5α-レダクターゼは、細胞膜に結合している酵素である。 膜類の脂質マトリックスを摂動すると、非特異的にレダクターゼ活性に影響を与えることができる。 特定の配置を持つ不飽和脂肪酸類のみが特定的な検定において5α −レダクターゼの有効な抑制剤であると判定され、同じく実験対象となった他の二つのミクロソーム酵素には影響がなかったことから、抑制が選択的であることが示唆される。 実施例 7

    ヒト肝臓ミクロソームおよびヒト前立腺癌細胞の

    5α-レダクターゼ活性に対するγ-リノレン酸による抑制 γ-リノレン酸はまた、ヒト肝臓ミクロソームへの[

    3 H]4-MAのNADPH依存性結合を、ラット肝臓ミクロソームで行った実験と同程度に抑制した。 また、培養基中において、γ-リノレン酸は、ヒト前立腺癌細胞による[

    3 H]テストステロンの5α-還元に選択的な影響を与えた。 表2では、アンドロゲンに感受性を有するLNCaP細胞[Horszewicz et al.,Cancer Res.43:1809(1983)]、およびアンドロゲンに感受性を有しないPC-3細胞[Kaighn et al.,Invest.Urol.17:16 (1979)]の両方において、γ-リノレン酸は濃度5μM〜50μMで[

    3 H]テストステロンの5α-還元を抑制したことを示している。 しかしながら、γ-リノレン酸は、テストステロンが4-アンドロスタンジオンに代謝するのには影響せず、1 7β-ステロイドデハイドロゲナーゼが不飽和脂肪酸に感受性を持たなかったことを示唆している。 ステアリン酸(5〜20μM)は、培養基中でPC-3細胞の5α- レダクターゼまたは17β-ステロイドデハイドロゲナーゼに影響しなかった。 培養基中において特異的な5α-レダクターゼ抑制が、無処理でそのまま使用した前立腺細胞に観察された。 このことは、脂肪酸類を外部から与えても、細胞内に進入し、小胞体または核膜と結び付いている5α-レダクターゼそのものの位置で抑制作用を発揮できたことを示唆している。 したがって、本発明の化合物は外用薬、例えば局所に塗布して疾患器官の過剰なアンドロゲン作用をコントロールする軟膏またはクリームとして用いることができることが期待される。 PC-3細胞によって4-アンドロスタンジオンと5α-DHTが生成した。 この対照値はそれぞれ、400,851±9,507dpmおよび12,183±74dpmであった。 LNCaPによって5α-DHTが生成したが、この対照値は4,569±505dpmであった。 LNCaPの使用時には4-アンドロスタンジオンの生成は検出されなかった。 γ-リノレン酸およびステアリン酸の実験濃度では、2時間のインキュベーション中、細胞の形態に観察し得る変化を認めなかった。 前立腺癌細胞中のγ-リノレン酸のIC

    50値(実験用)は10±5μMであった。 実施例 8

    脂肪酸類とホスホリピド類を産生する上記以外の脂質類有効な不飽和脂肪酸類の多くは、哺乳動物の脂質類の天然成分である。 アシル化不飽和脂肪酸が、哺乳動物のトリグリセライド類とホスホリピド類中の総脂肪酸の約50%を占めている。 無細胞検定においてこれらの複合酸(conjugated aci ds)に抑制力があるとは認められていないが、細胞中でリパーゼによってこれらの脂質類から遊離酸類が産生[Lands,Ann. Rev. Biochem. 34:313(1965)]され、5α-レダクターゼが抑制される。 DHTは皮脂の産生を刺激し、アクネを促進するが、頭皮脂質のリノール酸含有量は正常人より重篤なアクネ患者の方が低いとの所見があことは注目に値する[Morello et al.,Invest. Derm. 66:319(19 76)]。 5α-レダクターゼを抑制できる脂肪酸類を投与して、この病理状態を逆転することが期待されている。 これまでに、一部のホスホリピドが5α-レダクターゼ活性を刺激する効果を有することが報告されている[Ichihara and Tanaka,Biochem. Biophys. Res. Comm. 149:482(1981);Cooke and Robaire, J. Biol. Chem. 260:7489(1985 )]。 さらに、本発明者らはL-α-ホスファチジルコリンとL-α-ホスファチジルーエタノールアミンとが5α-レダクターゼを刺激するとの所見を得ている。 ホスホリピド類が5α-レダクターゼの配座に影響している可能性もある。 このホスホリピドの刺激を不飽和脂肪酸類が阻害するのか否かは、不明である。 従来、レチノイン酸はヒト前立腺癌細胞PC-3の5α-レダクターゼを抑制し、PC−3内部では細胞ホモジネートを抑制することが報告されていた[Halgunset et al., J. Steroi d Biochem. 28:731(1983)]。 しかも、この抑制がNADPHと競合することが立証された。 しかしながら、本発明者らは40〜200μMのレチノイン酸でラット肝臓ミクロソームレダクターゼを処理して検定しても、5α-レダクターゼ活性に対する何らの効果も認められなかったことを見い出している。 実施例 9

    脂肪酸類が5α-レダクターゼを抑制する機序 γ-リノレン酸は可溶化されたミクロソーム中で5α-レダクターゼを抑制することができる。 したがって、γ-リノレン酸による抑制は、小胞体膜の固有構造に厳格には依存性を持っていないことが考えられる。 脂肪酸抑制剤の作用が、レダクターゼとのおよび/またはレダクターゼ活性に重要な他の成分との相互作用にあるのか否かは、まだ分かっていない。 抑制力がある脂肪酸類が相互作用によって、内因性の他の抑制剤または脂質類の効力を高めていることも考えられる。 これまでに提案されている5α-レダクターゼ(E)の反応機序[Brandt et a l.,J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 37:575(1990)]は、次のステップから成り立っている。 +テストステロン(T) +H

    + NADPH+E←---→[NADPH-E]←-(a)-→[NADPH-ET]---→ [NADP

    + -E-DHT]---(b)---→DHT+[NADP

    + -E]---→NADP

    + +E 実験対象となった脂肪酸の二つのtrans異性体、エライジン酸とリノエライジン酸が[

    3 H]4-MA結合検定では顕著な抑制作用を認められなかったのに、酵素検定ではcis異性体、オレイン酸とリノレン酸と同等に効力があると判定されていることは興味をそそられる。 cis不飽和脂肪酸類は[NADPH-ET]の形成(ステップa)を抑制し、trans異性体は三重複合体の形成(ステップb)後のステップに作用することも考えられる。 また、ステップaとステップbの両方を抑制できるステロイド抑制剤が発見されている[Liang and Heiss, J. Biol. Chem. 256 :7998(1981);Liang et al.,Endocrinology 115:2311 (1984); Liang et al. ,J.Biol.Chem.260:4890(1985); Brandt et al.,J.Steroid Biochem.Mol.Biol .37:575(1990)]。 実施例10

    動物のアンドロゲン作用に対する多不飽和脂肪酸類およびその他の化合物類の効

    果:特にハムスター側腹部器官モデルに関連してアンドロゲン欠失動物に薬剤を投与し、雄の副生殖器官(例えば、前立線、精嚢、または鶏のとさか)の成長に対する効果を測定することによって、動物の体内における各種薬剤のアンドロゲン活性と抗アンドロゲン活性を見積ることができる[Liao and Fang,Vitamins and Hormones 27:17(1969)]。 この種の化合物の皮膚細胞あるいは脂腺に対する効果を評価する上で特に有用な他の器官は、ハムスターの側腹部器官である[Frost and Gomez,Adv. Biol. Skin. 12:403 (19 72)]。 側腹部器官は脂腺からなっていて、アンドロゲンに反応性を持つ組織である。 典型的な実験対象部位は、ゴールデンハムスターの背部である。 正常ハムスターと去勢ハムスターとを用いて実験を行う。 実験薬剤(各種濃度によるγ−リノレン酸およびその他の薬剤)を単独、あるいはアンドロゲンと併用して、完全食または必須脂肪酸を除いてある食餌を与えているハムスターに塗布する。 成獣の雄ハムスターの側腹部器官は、雌または雄の幼獣よりも色が濃く、サイズも大きい。 雄の成獣を去勢するとこれらの腺は退行し、アンドロゲンを投与するとその成長が促進される。 実験薬剤は二つの器官のうち、一つのみに局所的に塗布する。 一匹の動物で治療をした器官と未治療の器官を比較することにより、 実験薬剤が局所的に活性を有するのみであるのか、全身的な効力を有するものなのであるかを判定することができる。 実施例11

    ベニガオザルの抜け毛と発毛に対する多不飽和脂肪酸類およびその他の化合物類

    の局所的効果ベニガオザルは、ヒトのアンドロゲン性脱毛症に似たパターンで禿頭になる。 この禿頭のプロセスは思春期直後に始まる(年齢約4才)。 これは雄雌両性のベニガオザルのほとんど100%に起こり、しかもアンドロゲン依存性である。 したがって、ヒトのアンドロゲン性脱毛症の有用な動物モデルである。 雄のベニガオザル(年齢4才)を一群3〜5匹づつに分ける。 頭皮の前頭部と後頭部のうち、一つの領域の境界を明確に定めて、例えば入墨でマークする。 マークした領域の毛髪はそり落とす。 実験薬剤は各種の用量と各種の組合せにより溶液を調製し、そり落とした領域に一日一回ないし二回均等に塗布する。 対照動物には同量の溶媒(例えば、エタノールその他の有機溶媒、またはクリーム)を投与する。 このマークした領域は4〜6週間毎にそり落し、そった毛髪の重量を計量する。 治療期間は6週間ないし2年間である。 4-MA(17-N,N-ジエチルカルバモイル-4-メチル-4-アザ-5-アンドロスタン-3-オン)は、5α-レダクターゼ抑制剤であり、この動物の禿頭を防止することで知られている。 この4 −MAを正の対照薬剤として実験に使用する。 頭皮の生検材料(4mmのパンチ)は、治療開始時と終了時に採取する。 標本により5α-レダクターゼ活性を分析し、組織検査を行って脱毛症の有無を判定する。 実施例12

    ラットの皮膚に対する多不飽和脂肪酸類およびその他の化合物類の局所的効果ラットモデルもまた、有用な皮膚の動物モデルである。 ラットの脂腺では、ヒトと同様に(ハムスター側腹部器官モデルとは異なる。)、皮脂脂質が滑面小胞体(smooth endoplasmic reticulum)(SER)により中間細胞(intermediate ce lls)中で合成される。 SERの体積密度を電子顕微鏡で観察すると、アンドロゲン依存性であることが分かる[Moguilewsky and Bouton,J.Steroid Biochem.31:6 99(1988)]。 アンドロゲン作用が退化すると、この密度が減少する。 したがって、実験化合物をラットに全身投与あるいは局所投与して、SERの体積密度を減少させる性能を測定することによって実験薬剤を評価することもできる。 実施例13

    多毛症、および皮脂過多やアクネなどの皮膚疾患に対する多不飽和脂肪酸類およ

    びその他の化合物類の局所的効果実験薬剤の局所的抗アンドロゲン活性は、ハムスター側腹部器官検定あるいはラット検定によって評価することができる。 しかしながら、動物モデルは必ずしもヒトの状況に類似するとは限らないので、薬剤の効果はヒトによって試験しなければならない[Moguilewsky and Bouton,J. Steriod Biochem. 31:699(1988) ]。 ヒトの治療に理想的な薬剤は、局所的に活性ではあるが、特に若い男性の症例では全身的な抗アンドロゲン活性を示さない薬剤である。 実験薬剤をボランティアまたは患者に局所投与し、前額部の皮脂分泌を測定して効果を分析する。 実施例14

    抗アンドロゲン化合物としての多不飽和脂肪酸類の伝達方法と使用方法多不飽和脂肪酸類は、局所投与または全身投与による抗アンドロゲン剤として使用することができる。 この目的の製剤には、担体、防止剤、酸化防止剤(ビタミンCまたはEなど)、およびその他の医薬用あるいは薬理用薬剤が含有されている。 さらにまた、これらの脂肪酸類は分子を認識して薬剤を標的部位に送り届ける伝達システムによって使用されることが期待されている。 この伝達システムの中には、リポソーム法または免疫手段を含む。

    ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 庁内整理番号 FI A61K 7/48 9271−4C 9/127 ACV L 9455−4C ADA T 9455−4C 31/19 AEJ 9455−4C 31/38 ADN 9454−4C 31/557 ADU 9454−4C C07C 57/03 57/26 57/30 57/46 57/52 C07D 331/00 9455−4C // A61K 47/42 E 7433−4C C07D 209/48 225/02 7019−4C 313/00 9360−4C 317/64 9454−4C 337/00 9455−4C C12N 9/99 9152−4B G01N 33/74 8310−2J C07M 9:00

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