【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、コバルト含有触媒を用いて炭化水素を分子状酸素で接触酸化するための化学的方法に関する。 特に本発明は、コバルト含有触媒がコバルト含有分子ふるい物質からなる該方法に関する。 【0002】 【従来の技術】コバルト含有触媒を用いて炭化水素を分子状酸素で接触酸化する方法は、当該技術において公知である。 DE−A(独国特許出願公開公報)3,73 3,782号(ザクラディ・アセドヴェ社)は、均質触媒としてコバルトナフテネートを用いてシクロヘキサンを150〜200℃の温度にて加圧下で分子状酸素でシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンに酸化する方法を開示する。 JP−A(日本国特許出願公開公報)64 −294646号(三菱化成社)は、酸化マグネシウムあるいはMg−Al−ハイドロタルク石、MgO−Al 2 O 3又はMg 2+でイオン交換されたゼオライトの如き複酸化物からなりかつCoイオンで荷電された触媒の存在下でシクロヘキサンを分子状酸素でシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンに酸化する方法を開示する。 反応の温度と圧力は、それぞれ110〜180℃と100 Kg/cm 2未満である。 同様な酸化反応において、JP− A63−303936号は、カチオンがコバルトイオンで交換されている或るフィロケイ酸塩触媒の使用を開示する。 【0003】これらの方法は、コバルトイオンが少なくとも酸化反応後に反応液中に実質的に存在し、それから回収されねばならないという不利がある。 カチオン交換によって分子ふるい中に導入されたコバルトイオンは、 そのイオン交換物質の表面上に存在しそして主に静電力によりそれにゆるく付着されているにすぎない。 かかるコバルトイオンは酸化反応中容易に浸出されて反応生成物を汚染し、また分子ふるいの触媒活性は低減される。 事実、その場合現実の接触反応は溶解したコバルトイオンに因り得るのももっともである。 150〜200℃の範囲の反応温度も比較的高いと考えられ、何故ならかかる温度は比較的暗色の反応生成物を生じる傾向にあり得、また反応生成物の鎖長分解をもたらす傾向にあり得る故である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】多量の特に安価な炭化水素酸化生成物は、ポリアミド及びポリエステルへの更なる化学的加工のための並びに燃料改善剤としての価値ある生成物である。 それ故、安価な炭化水素出発物質を用いてかつ魅力的な経済的、環境的及び安全的条件下で操作する経済的に魅力的な工業的大量製造、即ち単純な装置を用いかつ該生成物のコストの有意的低減をもたらす方法が必要とされている。 従って、かなりの研究と開発の努力が、更なる改善酸化法のためになされてきた。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、コバルトイオンが分子ふるいの結晶格子中に実質的に組み込まれている分子ふるい物質であるコバルト含有触媒を用いて、炭化水素が分子状酸素の給源(特に、分子状酸素の給源として空気)で酸化される。 【0006】 【作用効果】かかる触媒物質を用いることにより、活性コバルトイオンは結晶格子中に充分に一体化されかつその中に多少永続的に固定されていることは明らかであろう。 従って、これらのイオンは酸化反応中も結晶格子中のそれらの位置を実質的に保ち、そのため触媒活性は認められ得る程度には低減されず、また反応生成物はコバルトイオンにより実質的には汚染されない。 本発明の好ましい態様では、コバルトイオンが実質的に三価である分子ふるい物質を用いて酸化反応が開始される。 しかしながら、本発明による方法を主に二価コバルトイオンを含有する分子ふるい物質を用いて開始することも全く可能であり、何故ならこれらのイオンはその場で三価コバルトイオンにたやすく酸化され得る故である。 二価コバルトイオンを含有する分子ふるい物質を用いる場合、それはその酸交換形態で用いられ得る。 【0007】「“ゼオライトの科学と技術の新発展(Ne w developments in Zeolite Science and Technology)" (編者ワイ・ムラカマミ(Y. Murakamami), エイ・リジマ(A. Lijima )及びジェイ・ダブリュー・ワード(J. W. Ward)), 界面科学と触媒現象に関する研究(Stud. Surf. Sci. Catal.),第28巻,エルセヴィア,トーキョー,1986,第103〜111頁」及び「ジェイ・ エム・ベネット(JM Bennett )及びビー・ケイ・マーキューズ(BK Marcuse), “ゼオライト物質科学の技術革新(Innovation in zeolite material science)" (編者ピー・ジェイ・グロベット(PJ Grobet) 等),シリーズ:界面科学と触媒現象に関する研究(St udies on surface science and catalysis),第37 巻,エルセヴィア,アムステルダム,1988,第26 9頁以下」に定義されているような構造型5,31,3 6,37,40及び/又は50のコバルト含有アルミノホスフェート系分子ふるい物質を用いることが推奨される。 次のクラス即ちCo含有MeAPO(US−A(米国特許公報)4,567,029号においてCoAPO と記載されているようなもの)、Co含有MeAPSO (EP−A(欧州特許出願公開公報)161,489号においてCoAPSOと記載されているようなもの)、 Co含有XAPO(US−A4,952,384号においてFeTiCoAPOと記載されているようなもの)、Co含有SENAPO(EP−A158,350 号に記載されているようなもの)、からなるクラスの分子ふるいを酸化反応に用いることが特に推奨される。 【0008】CoAPO−5分子ふるい物質及び同様なコバルトアルミノホスフェート種が、本発明による酸化反応において非常に有用である。 CoAPO−5及び同様な分子ふるい並びにそれらの製造方法は、US−A (米国特許公報)4,567,029号(ユニオン・カーバイド・コーポレーション)特に実施例89〜92に記載されている。 好ましくは、酸化反応に用いられる分子ふるいは鋳型不含でありそして例えばカ焼された形態にある。 輸送問題を最少にするため、酸化される炭化水素の吸着のために充分大きな孔直径を有する分子ふるい物質を用いることも推奨される。 それ故、シクロヘキサンの場合少なくとも0.65nmの孔直径が推奨され、一方直鎖状炭化水素の酸化に対しては少なくとも0.38 nmの孔直径を有する分子ふるいが推奨される。 より一般的には本発明は、格子中に0.1〜10重量%のコバルトを含有する分子ふるい物質の使用からなる。 更に、酸化されるべき炭化水素の量を基準として計算して0.5 〜25重量パーセント好ましくは1〜10重量パーセントの範囲の量のコバルト含有分子ふるい物質を特に回分的酸化法において用いることが好ましい。 連続法の場合、用いられる分子ふるい物質の量はかなり低くてもよい。 【0009】周囲温度ないし200℃一層好ましくは8 0〜140℃の温度及び5000kPaまで一層好ましくは100〜2000kPaの反応圧にて酸化を行うことが好ましい。 空気が、本方法に用いるための分子状酸素の最も好都合な給源である。 しかしながら、希釈による比較的低い酸素分圧もしくは濃縮による比較的高い酸素分圧あるいは純粋な酸素も用いられ得る。 酸素分圧は、特定の反応生成物への酸化を指向するように用いられ得る。 本発明によれば、種々の炭化水素が酸化され得、特に本方法はアルカン及びシクロアルカンからなるクラスの炭化水素(本方法を妨害しない基により置換されていてもよい。)を酸化するのに有用である。 好ましいアルカンは、1〜10個の炭素原子一層好ましくは3 〜6個の炭素原子を有する。 好ましいシクロアルカンは3〜8個の炭素原子を有する。 酸化生成物は、アルコール、アルデヒド、ケトン及びカルボン酸からなる。 酸化は非分解的であり、即ち元の炭素鎖長は主として保持される。 例えば好ましい出発物質であるシクロヘキサンが酸化される場合、反応生成物は主にシクロヘキサノール、シクロヘキサノン及びアジピン酸から成り、しかしてシクロヘキサノールのエステル化生成物としてシクロヘキシルアセテートが例えば酢酸が酸化中存在する場合存在し得る。 【0010】本発明はまた、増大されたオクタン価を有する再処方ガソリン用の配合添加剤として有用なナフサ酸素化物の製造を可能にする。 酸化反応中促進剤としての酸を用いることが、より好都合な処理にとってしばしば好ましい。 無機酸例えばリン酸及びカルボン酸(随意に塩素化又はフッ素化されている。)が用いられ得る。 低級(C 1 〜C 6 )のカルボン酸特に酢酸が好ましい。 好ましい酸は、炭化水素基質と混和性でありかつ本方法の条件下で酸化抵抗性である。 酸化反応が第1工程において実質的にアルコールの生成を越えるように進行しないことが所望される場合、ホウ酸、あるいは安定なエステルを生成する粗大なカルボン酸が用いられ得る。 本発明による方法は、断続的に又は回分的に、半連続的に(例えばカスケード法)もしくは連続的に、好ましくは、適当な反応器中のコバルト含有分子ふるい物質の流動化床に分子状酸素の存在下で酸化されるべき炭化水素を通すことにより行われ得る。 この方法は触媒床の長期使用を可能にし、しかして触媒床は真の不均質触媒として機能し、何故ならコバルトイオンは、酸化中及びその後において分子ふるいの結晶格子中に捕捉されたままである故である。 この方法はまた、コバルトで触媒される酸化反応のためにこれまで知られている方法よりも汚染度が低い反応生成物をもたらす。 触媒の再生は、洗浄又はカ焼により容易に達成され得る。 【0011】 【実施例】 例1 40ml(31.13g)のシクロヘキサン及び10ml (10.5g)の酢酸からなる混合物を、500ml容量のテフロン内張りオートクレーブに移した。 次いで、モル酸化物比で〔0.08CoO・0.99Al 2 O 3・ 1P 2 O 5 〕と表され得る無水組成を有しかつ1.9% (w.w.)のCoを含有ししかも前もって550℃にて2時間カ焼された5gのCoAPO−5を添加した。 該オートクレーブに空気(21容量%の酸素を含有する。)を6.5×10 5 Paの圧力まで装入し、そしてスラリーの連続的かくはん下373 o Kの温度にて反応を遂行した。 3時間後オートクレーブを冷却し、そして固体触媒を濾過により液体から分離した。 この液体は、 4.1gの酢酸シクロヘキサノールエステル、2gのシクロヘキサノン、0.1gのアジピン酸、及び0.9g のシクロヘキサンから誘導された他の酸素化物(分解生成物(例えばn−ペンチルアセテート及びn−ブチルアセテート)を含む。)を含有していることがわかった。 気相は、0.6容量%の残留酸素を含有していることがわかった。 反応後該触媒を調べたところ、結晶化度も組成も両方ともシクロヘキサンの酸化により影響されていなかったこと、並びに該触媒はその活性を保持していたことがわかった。 その結果、コバルトは液相中に全く浸出していなかった。 【0012】比較実験 モル酸化物比で表して〔0.21SiO 2・1Al 2 O 3・0.88P 2 O 5 〕の無水組成を有しかつ酢酸コバルト水溶液での孔容積含浸及びそれに続く乾燥により2.6%(w.w.)のコバルトが含有せしめられた鋳型不含SAPO−5を触媒として用いて、上記の例1における処理操作を繰り返した。 生成混合物は、0.9g の酢酸シクロヘキサノールエステル、0.75gのシクロヘキサノン、0.1gのアジピン酸、及び1.1gのシクロヘキサンから誘導された他の酸素化物(分解生成物を含む。)を含有していることがわかった。 反応後、 該触媒は、液体反応生成物中への浸出及び溶解に因り、 わずか0.2%(w.w.)のコバルトしか含有していなかった。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 5識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 49/403 A 6917−4H 51/215 55/14 7306−4H // C07B 61/00 300 (72)発明者 ベテイーナ・クロウシヤー−クツアルネツ キー オランダ国 1031 シー・エム アムステ ルダム、バトホイスウエヒ 3 (72)発明者 ヴイレミナ・ゲラルダ・マリア・ホーゲル フオルスト オランダ国 1031 シー・エム アムステ ルダム、バトホイスウエヒ 3 |