Solution-based method for producing a graphene nanoribbons

申请号 JP2014530831 申请日 2012-09-14 公开(公告)号 JP2014527020A 公开(公告)日 2014-10-09
申请人 ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ; 发明人 ツアー,ジェームズ・エム; ル,ウエイ; ジェノリオ,ボスジャン;
摘要 本発明は官能化したグラフェンナノリボンを調製する方法を提供する。 それらの方法は次の工程を含む:(1)多数のカーボンナノチューブ(CNTs)を非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露し、それによりCNTsを開くこと;および(2)開いたCNTsを求電子剤に曝露し、それにより官能化したグラフェンナノリボン(GNRs)を形成すること。 それらの方法はまた、開いたCNTsの上にある全ての反応性の種をクエンチする(抑止する)ために、開いたCNTsをプロトン性溶媒に曝露する工程も有してもよい。 さらなる方法は、以下の工程によって非官能化GNRsを調製することを含む:(1)多数のCNTsを非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露し、それによりCNTsを開くこと;および(2)開いたCNTsをプロトン性溶媒に曝露し、それにより非官能化GNRsを形成すること。
【選択図】図1
权利要求
  • 多数のカーボンナノチューブを非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露することによってカーボンナノチューブを開裂させること;
    開いたカーボンナノチューブを求電子剤に曝露させて、官能化したグラフェンナノリボンを形成させること;
    を含む、官能化したグラフェンナノリボンの調製方法。
  • 開いたカーボンナノチューブをプロトン性溶媒に曝露する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  • プロトン性溶媒が、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水、塩酸、硫酸、アンモニア、ジエチルアミン、ジアルキルアミン、モノアルキルアミン、ジアリールアミン、モノアリールアミン、モノアルキルモノアリールアミン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  • カーボンナノチューブが、それらの長手方向の軸に平行に開裂する、請求項1に記載の方法。
  • 室温にて行われる、請求項1に記載の方法。
  • カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、三層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、超短カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  • カーボンナノチューブが、多層カーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
  • アルカリ金属源が、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、これらの合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  • アルカリ金属源がカリウムを含む、請求項1に記載の方法。
  • 非プロトン性溶媒が、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、グリム、1,2-ジメトキシエタン、ジグリム、テトラグリム、アミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、ジメチルホルムアミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  • 求電子剤が、水、アルコール、有機ハロゲン化物、アルケン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化置換ベンジル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化フルオロアルキル、ハロゲン化ペルフルオロアルキル、アルデヒド、ケトン、メチルビニルケトン、エステル、スルホネートエステル、酸、酸塩化物、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物、カルボニル含有化合物、エノン、ニトリル、二酸化炭素、ハロゲン、モノマー、ビニルモノマー、開環モノマー、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、メタクリレート、1,4-ジメトキシ-2-ビニルベンゼン、メチルメタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、塩化トリメチルシリル、塩化tert-ブチルジメチルシリル、塩化トリフェニルシリル、エポキシド、二酸化炭素、二硫化炭素、tert-ブタノール、2-メチルプロペン、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  • 求電子剤が二酸化炭素を含む、請求項1に記載の方法。
  • 求電子剤がモノマーである、請求項1に記載の方法。
  • モノマーが、オレフィン、ビニルモノマー、スチレン、イソプレン、ブタジエン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、開環モノマー、エポキシド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
  • 開いたカーボンナノチューブにモノマーを添加して重合させ、それによりポリマーで官能化したグラフェンナノリボンを形成させる、請求項13に記載の方法。
  • 形成したグラフェンナノリボンが、端部が官能化したグラフェンナノリボンを含む、請求項1に記載の方法。
  • 形成したグラフェンナノリボンが、約0.1S/cmから約9000S/cmまでの範囲の導電率を有する、請求項1に記載の方法。
  • グラフェンナノリボンの1つ以上の層から官能基をデインターカレーションする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  • デインターカレーションが、形成したグラフェンナノリボンを加熱することによって生じる、請求項18に記載の方法。
  • 形成したグラフェンナノリボンから1つ以上のグラフェンの層を剥離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  • 剥離することが、グラフェンナノリボンをガスに曝露することを含み、そのガスが、二酸化炭素、窒素ガス、水素ガス、塩化水素、空気、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
  • 多数のカーボンナノチューブを非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露することによって、カーボンナノチューブを開裂させること;および 開いたカーボンナノチューブをプロトン性溶媒に曝露し、それにより非官能化グラフェンナノリボンを形成させること;
    を含む、グラフェンナノリボンの調製方法。
  • カーボンナノチューブが、それらの長手方向の軸に平行に開かれる、請求項22に記載の方法。
  • 室温において行われる、請求項22に記載の方法。
  • カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、三層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、超短カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
  • アルカリ金属源が、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、これらの合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
  • 非プロトン性溶媒が、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、グリム、1,2-ジメトキシエタン、ジグリム、テトラグリム、アミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、ジメチルホルムアミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
  • プロトン性溶媒が、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水、塩酸、硫酸、アンモニア、ジエチルアミン、ジアルキルアミン、モノアルキルアミン、ジアリールアミン、モノアリールアミン、モノアルキルモノアリールアミン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
  • 非官能化グラフェンナノリボンに求電子剤を添加する工程をさらに含み、求電子剤がグラフェンナノリボンを官能化する、請求項22に記載の方法。
  • 求電子剤が、水、アルコール、有機ハロゲン化物、アルケン、アルキン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化置換ベンジル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化フルオロアルキル、ハロゲン化ペルフルオロアルキル、アルデヒド、ケトン、メチルビニルケトン、エステル、スルホネートエステル、酸、酸塩化物、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物、カルボニル含有化合物、エノン、ニトリル、二酸化炭素、ハロゲン、モノマー、ビニルモノマー、開環モノマー、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、メタクリレート、1,4-ジメトキシ-2-ビニルベンゼン、メチルメタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、塩化トリメチルシリル、塩化tert-ブチルジメチルシリル、塩化トリフェニルシリル、エポキシド、二酸化炭素、二硫化炭素、tert-ブタノール、2-メチルプロペン、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
  • 求電子剤が二酸化炭素である、請求項29に記載の方法。
  • 求電子剤がモノマーである、請求項29に記載の方法。
  • モノマーが、オレフィン、ビニルモノマー、スチレン、イソプレン、ブタジエン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、開環モノマー、エポキシド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
  • グラフェンナノリボンにモノマーを添加して重合させ、それによりポリマーで官能化したグラフェンナノリボンが形成される、請求項32に記載の方法。
  • 求電子剤を添加することによって端部が官能化したグラフェンナノリボンが形成する、請求項29に記載の方法。
  • 形成したグラフェンナノリボンが、約0.1S/cmから約9000S/cmまでの範囲の導電率を有する、請求項22に記載の方法。
  • グラフェンナノリボンの1つ以上の層から官能基をデインターカレーションする工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
  • デインターカレーションが、形成したグラフェンナノリボンを加熱することによって生じる、請求項37に記載の方法。
  • 形成したグラフェンナノリボンから1つ以上のグラフェンの層を剥離する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
  • 剥離することが、グラフェンナノリボンをガスに曝露することを含み、そのガスは二酸化炭素、窒素ガス、水素ガス、塩化水素、空気、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
  • グラフェンナノリボンを含む複合材料であって、グラフェンナノリボンは端部が官能化されている、前記複合材料。
  • グラフェンナノリボンが、官能化されていない基部の面を含む、請求項41に記載の複合材料。
  • グラフェンナノリボンが、端部がポリマーで官能化されている、請求項41に記載の複合材料。
  • ポリマーが、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルビニルケトン、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリオール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項43に記載の複合材料。
  • グラフェンナノリボンが、アルキル基、アシル基、アリル性基、ベンジル基、ベンジル性基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能基で端部が官能化されている、請求項41に記載の複合材料。
  • 端部官能化グラフェンナノリボンが、アルキル官能化グラフェンナノリボン、ヘキサデシル化グラフェンナノリボン、オクチル化グラフェンナノリボン、ブチル化グラフェンナノリボン、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の複合材料。
  • 複合材料が、透明導電性ディスプレー、着氷防止回路、ガスバリヤー性複合材料、スクリーン、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの構成要素として用いられる、請求項41に記載の複合材料。
  • グラフェンナノリボンを含む繊維であって、グラフェンナノリボンは端部が官能化されている、前記繊維。
  • グラフェンナノリボンは官能化されていない基部の面を含む、請求項48に記載の繊維。
  • グラフェンナノリボンは端部がポリマーで官能化されている、請求項48に記載の繊維。
  • ポリマーが、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルビニルケトン、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリオール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項48に記載の繊維。
  • グラフェンナノリボンが、アルキル基、アシル基、アリル性基、ベンジル基、ベンジル性基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能基で端部が官能化されている、請求項48に記載の繊維。
  • 端部官能化グラフェンナノリボンが、アルキル官能化グラフェンナノリボン、ヘキサデシル化グラフェンナノリボン、オクチル化グラフェンナノリボン、ブチル化グラフェンナノリボン、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項48に記載の繊維。
  • 繊維が、透明導電性ディスプレー、着氷防止回路、ガスバリヤー性繊維、スクリーン、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの構成要素として用いられる、請求項48に記載の繊維。
  • 说明书全文

    関連出願についてのクロス・リファレンス
    [0001]本出願は米国仮特許出願61/534553号(2011年9月14日提出)の優先権を主張する。 本出願はPCT/US2010/038368号にも関連する。 これらの出願のそれぞれの全体が参考文献として本明細書に取り込まれる。

    [0002]グラフェンのナノリボンを製造する現在の方法は、効率、費用、収量および品質に関して多くの制限を有する。 例えば、現行の方法によればグラフェンナノリボンが少ない量で製造されるだろう。 さらに、製造されるグラフェンナノリボンは多数の欠陥、様々な溶媒や複合材料中での限られた分散度、および限られた導電性を有するだろう。 従って、最小限の欠陥、向上した分散性および向上した導電性を有するグラフェンナノリボンを効率的に製造するための新規な方法に対する必要性が存在する。 また、基部の面(basal planes)を中断することによる導電性の低下を伴うことなくグラフェンナノリボンの分散性を改善するために、端部を官能化したグラフェンナノリボンを得る必要性も存在する。

    [0003]幾つかの態様において、本開示は官能化したグラフェンナノリボンを調製する方法を提供する。 幾つかの態様において、それらの方法は次の工程を含む:(1)多数のカーボンナノチューブを非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露すること、このとき、その曝露によってカーボンナノチューブが開く;および(2)開いたカーボンナノチューブを求電子剤に曝露し、それにより官能化したグラフェンナノリボンを形成すること。 幾つかの態様において、それらの方法は、開いたカーボンナノチューブ上にある全ての反応性の種をクエンチする(抑止する)ために、開いたカーボンナノチューブをプロトン性溶媒に曝露し、それにより端部上にプロトン(すなわち、原子)を残す工程も有してもよい。

    [0004]本開示の追加の態様は、非官能化グラフェンナノリボンを調製する方法に関し、それらの方法は次の工程を含む:(1)多数のカーボンナノチューブを非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露し、それによりカーボンナノチューブを開くこと;および(2)開いたカーボンナノチューブをプロトン性溶媒に曝露し、それにより非官能化グラフェンナノリボンを形成すること。 幾つかの態様において、それらの方法は、形成したグラフェンナノリボンに求電子剤を添加することによって、求電子置換反応を介してグラフェンナノリボンを官能化する工程も有してもよい。

    [0005]幾つかの態様において、本開示の方法は室温において行ってもよい。 幾つかの態様において、本開示の方法においては、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、三層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、超短カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせのような、様々なタイプのカーボンナノチューブを利用することができる。 幾つかの態様において、本開示の方法においては多層カーボンナノチューブを利用することができる。

    [0006]カーボンナノチューブを開くために、様々なアルカリ金属源を用いることもできる。 幾つかの態様において、アルカリ金属源はリチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、これらの合金、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源はカリウムを含んでもよい。

    [0007]加えて、反応条件を最適化するために、本開示のアルカリ金属源を、様々な非プロトン性溶媒の存在下でカーボンナノチューブに曝露してもよい。 幾つかの態様において、非プロトン性溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、グリム、1,2-ジメトキシエタン、ジグリム、テトラグリム、アミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、ジメチルホルムアミド、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。

    [0008]同様に、全ての反応性の種をクエンチするために、開いたカーボンナノチューブを様々なプロトン性溶媒に曝露してもよい。 幾つかの態様において、プロトン性溶媒は、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水、塩酸、硫酸、アンモニア、ジエチルアミン、ジアルキルアミン、モノアルキルアミン、ジアリールアミン、モノアリールアミン、モノアルキルモノアリールアミン、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。

    [0009]さらに、官能化したグラフェンナノリボンを形成するために、様々な求電子剤を用いることができる。 幾つかの態様において、求電子剤は、水、アルコール、有機ハロゲン化物、アルケン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化置換ベンジル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化フルオロアルキル、ハロゲン化ペルフルオロアルキル、アルデヒド、ケトン、メチルビニルケトン、エステル、スルホネートエステル、酸、酸塩化物、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物、カルボニル含有化合物、エノン、ニトリル、二酸化炭素、ハロゲン、モノマー、ビニルモノマー、開環モノマー、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、メタクリレート、1,4-ジメトキシ-2-ビニルベンゼン、メチルメタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、塩化トリメチルシリル、塩化tert-ブチルジメチルシリル、塩化トリフェニルシリル、エポキシド、二酸化炭素、二硫化炭素、tert-ブタノール、2-メチルプロペン、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含んでもよい。

    [0010]様々な態様において、求電子剤を、パラジウム含有系、ニッケル含有系または鉄含有系のような遷移金属触媒と組み合わせてもよい。 幾つかの態様において、求電子剤を遷移金属触媒と組み合わせなくてもよい。

    [0011]幾つかの態様において、求電子剤はオレフィン、ビニルモノマー、スチレン、イソプレン、ブタジエン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、開環モノマー、エポキシド、およびこれらの組み合わせのような1種以上のモノマーを含んでもよい。 幾つかの態様において、モノマーをグラフェンナノリボンに添加したときに重合させ、それによりポリマー官能化グラフェンナノリボンを形成してもよい。

    [0012]幾つかの態様において、本開示の方法には、形成したグラフェンナノリボンの1つ以上の層から官能基をデインターカレーション(抜き取り)する工程も含まれてもよい。 幾つかの態様において、デインターカレーションは形成したグラフェンナノリボンを加熱することによって生じる。

    [0013]本開示のさらなる態様は、本開示の方法によって形成されるグラフェンナノリボンに関する。 幾つかの態様において、このグラフェンナノリボンは端部で官能化されていてもよい。 幾つかの態様において、グラフェンナノリボンはポリマーで官能化された(polymer-functionalized)グラフェンナノリボンを含んでもよい。 本開示のさらなる態様は、前述したグラフェンナノリボンを含むナノ複合材料、繊維、ディスプレーおよび回路に関する。

    [0014]本開示のグラフェンナノリボンは、良好な収量、最小限の欠陥、様々な複合材料や溶媒(例えば、有機溶媒)の中での向上した分散性およびグラフェンナノリボンの基部の面の中断を伴わない端部の官能化を含めた、様々な有利な特性を有するはずである。 本開示の方法に従って形成されるグラフェンナノリボンはまた、約0.1S/cmから約9000S/cmまでの範囲の導電率といったような、高い導電性を有するだろう。 従って、本開示のグラフェンナノリボンは多くの機械的および電気的な用途を見いだすことができる。

    [0015]図1は官能化および非官能化グラフェンナノリボン(GNRs)を製造するための様々な手順の体系を示す。

    [0016]図2はGNRsのその場での(in-situ)インターカレーション置換および選択的官能化のための提案される手順の体系を示す。 図2AはMWNTsの壁の間でのカリウムのインターカレーション(挿入)を例示する。 図2Bは多層カーボンナノチューブ(MWNTs)の分裂プロセスと活性なカルボアニオン性(炭素陰イオン性)の端部の形成を例示する(M=K

    またはNa

    )。 図2Cはアルキル基を用いるGNRsのその場での官能化とインターカレーションを例示する。 図2Dは官能化したGNRsのデインターカレーションを例示する。

    [0017]図3は様々な溶解度試験の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を示す。 これらのSEM画像は市販のMWNTsの分裂と官能化の形態および官能化したGNRsと初期のままの(pristine)MWNTsとの間の溶解度または分散度の写真上の相違(挿入図)を示す。 図3Aは初期のままのMitsui(三井)のMWNTsのSEM画像およびクロロホルム中の0.1mg/mLの懸濁液を示す。 図3BはNanotech Labs, Inc.(NTL)からの初期のままのMWNTsおよびクロロホルム中の0.1mg/mLの懸濁液を示す。 図3CはMitsuiのものを元とするヘキサデシル化GNRs(HD-GNRs)およびクロロホルム中の0.1mg/mLの安定した懸濁液を示す。 図3DはNTLのものを元とするHD-GNRsおよびクロロホルム中の0.1mg/mLの安定した懸濁液を示す。

    [0018]図4は0.1重量%の出発原料のMWNTs(図4A)および0.1重量%の官能化HD-GNRs(図4B)の溶解度の比較を示す。 これらの画像は、市販のMWNTsは超音波洗浄器を用いる短時間の音波処理の後に有機溶媒中で非分散性であることを示す。 しかし、HD-GNRsは短時間の音波処理の後に有機溶媒中で良好に分散する。

    [0019]図5はHD-GNRsの様々なSEM画像を示す。 図5AはMitsuiのものを元とする官能化HD-GNRsのSEM画像を示す。 図5BはNTLのものを元とする官能化HD-GNRsの光学顕微鏡写真を示す。

    [0020]図6はHD-GNRで製作したデバイスおよび関連する導電率の測定結果を示す。 図6AはNTLのMWNTsを元とするHD-GNR積層体から製造されたデバイスのSEM画像を示す。 デバイスにおけるPt電極も示されている。 図6Bは異なる熱処理を行った後の電気的特性の変化を示し、調製されたままのHD-GNRsと比較している。

    [0021]図7は導電率の測定のためのデバイスにおいて用いられる単一のHD-GNRの幅を示すSEM画像である。

    [0022]図8は導電率の測定のためのデバイスにおいて用いられる単一のHD-GNRの原子間顕微鏡(AFM)の画像(図8A)および分布のプロット(図8B)を示す。 AFMの画像は、1〜10Ωcmのリンでn型にドープしたSiチップ(Veeco, MPP-11100-140)を用いてタッピングモードで操作するDigital InstrumentsのナノスコープIIIaを用いて得られた。

    [0023]図9はMWNTsとHD-GNRsについての様々な導電率の測定結果を示す。 図9Aは四点プローブセルを用いることによる出発原料であるMWNTsと官能化HD-GNRsのバルク導電率の統計的な表示を示す。 各々のサンプルについて5個のペレットを用意した。 ペレットは13mmの直径を有するペレットダイを用いてプレスされた。 100mgのサンプルをダイの中に装填し、8トン(8T)の圧力を30秒間加えてプレスした。 次いで、固まったペレットを図9Bに示す四点プローブセルの中に装填した。 次いで、電流と電位を測定した。

    [0024]図10はHD基による端部の官能化の仮定の度合いの計算値を示す(上)。 長さと幅はSEM画像から見積もられた(下)。 端部の炭素だけが官能化されたという仮定が行われた。

    [0025]図11は様々なGNRsについて発生したガスの分析(EGA)に関するデータを示す。 様々な色はアルカンのフラグメント(断片)に相当するm/zを有するフラグメントを表す。 黒色と金色の曲線はそれぞれ、官能化GNRsと初期のままのMWNTsについてのサーモグラフィ解析(TGA)の分布を表す。 灰色の長方形はそれぞれ領域I、領域IIおよび領域IIIを表す。 HD-GNRs(図11A)、オクチル化-GNRs(O-GNRs)(図11B)およびブチル化-GNRs(B-GNRs)(図11C)のTGA-MSが示されている。

    [0026]図12は水素を末端基とするGNRs(H-GNRs)についてのEGAを示す。 色は、アルカンのフラグメントに相当するm/z 15(赤)、29(橙)、43(黄)および71(シアン)を有するフラグメントを表す。 黒色の曲線はH-GNRsのTGAの分布を表す。

    [0027]図13は様々なGNRsとMWNTsについての粉末回折パターンを示す。 図13Aは調製したままのインターカレーションしたHD-GNRsと熱処理したHD-GNRsの比較を示し、これにおいてはデインターカレーションが観察される。 図13Bは官能化HD-GNRs、O-GNRs、B-GNRs、GNRsおよびMWNTsの比較を示す。 21.8°、25.3°、35.9°、42.4°、44.4°、51.8°、56.8°および58.4°のピークは低濃度のヨウ化カリウム(KI)の不純物に相当する。

    [0028]図14は熱処理したHD-GNRsのTGAの分布を示す。 曲線は様々な温度において熱処理したHD-GNRsの損失重量を表す。 青色の曲線:HD-GNRsは240℃まで加熱され、次いで、240℃で保持せずに室温まで冷却された;生成物は部分的にデインターカレーションされた。 緑色の曲線:HD-GNRsは240℃において2時間加熱された;生成物は完全にデインターカレーションされた。 橙色の曲線:HD-GNRsは530℃において2時間加熱された;生成物は完全にデインターカレーションされ、そして部分的に非官能化された。 赤色の曲線:HD-GNRsは900℃において20分間加熱された;生成物は完全にデインターカレーションされ、そして完全に非官能化された。

    [0029]図15は240℃以下で1分未満加熱されたサンプルおよび240℃において2時間加熱されたサンプルの粉末回折パターンを示す。

    [0030]図16は質的および量的にインターカラント(挿入物質)を決定するための対照実験のガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を示す。 図16Aは高真空下で1時間にわたって150℃で加熱されたHD-GNRsから(0℃で)捕捉された凝縮物のGCプロット(紫色の曲線)である。 凝縮含有物の濃度は次の通りであった:45.1%のドトリアコンタン、35.1%のヘキサデカン、13.4%の1-ヨードヘキサデカンおよび6.4%のヘキサデセン。 その他の少量の成分は無視した。 図16Bは対照の反応のGCプロット(濃紺色)である。 生成物の濃度は次の通りであった:59.6%のドトリアコンタン、20.8%のヘキサデセンおよび19.6%のヘキサデカン。 過剰な1-ヨードヘキサデカン(主要な成分)とその他の少量の成分は、パーセントを計算するときに無視した。 図16Cはヘキサデカンの標準のGCプロット(暗紅色)である。 図16Dは1-ヨードヘキサデカンの標準のGCプロット(緑色)である。

    [0031]図17は固相核磁気共鳴(SS NMR)の画像である。 官能化されてインターカレーションされたHD-GNRs(赤色の曲線)および900℃で20分間加熱した後に非官能化されてデインターカレーションされたHD-GNRs(青色の曲線)についての交差偏光実験が示されている。 官能化されてインターカレーションされたHD-GNRs(黒色の曲線)についての交差偏光双極性デフェージング(dipolar dephasing)の実験も示されている。

    [0032]図18は熱処理したHD-GNRsを調製されたままのGNRサンプルと比較するラマンスペクトルを示す。

    [0033]図19はヘキサデカンを用いる対照の反応の生成物のX線回折(XRD)パターンを示し、26.2°の2θにおいてかなり明白な回折ラインを示している。 この回折ラインは(002)の信号に相当し、またH-GNRsまたはMWNTsのディフラクトグラム(X線回折データ)に類似していて、これは、1-ヨードヘキサデカンの代わりにヘキサデカンが用いられるとき、インターカレーションが生じないことを意味する。

    [0034]図20はヘキサデカンを用いる対照の反応の生成物のTGA曲線である。

    [0035]図21はポリマー官能化GNRs(PF-GNRs)のワンポット合成についての反応体系を示す。 図21Aは、テトラヒドロフラン(THF)で安定化したカリウムナフタレニド(青色の点)でMWNTsがインターカレーションされる工程を示す。 図21Bは、MWNTsの中へのTHF安定化カリウムイオンのインターカレーションによって生じた拡張によってMWNTsの壁が長手方向に開くことを示す(M

    =K

    )。 図21Cは、開いたMWNTsにモノマー(例えば、スチレン)が付加することを示す。 モノマーはMWNTsのさらなる分裂と剥離を助長する(R:ポリスチレン)。 図21Dは、開いたMWNTsに付加したモノマーの重合化と、それに続いてクエンチ(抑止)を行うことによってPF-GNRsが形成することを示す。 明快にするために、共役構造における二重結合は省略されている。

    [0036]図22は、カリウムナフタレニドで処理し、次いで、スチレンを付加したMWNTsの典型的なSEM画像を示す。 SEMの下でPF-GNRsを容易に同定することができる。 それらの幅は数百nmの範囲である。 GNRsの最上部にある非晶質物質はポリスチレンである。

    [0037]図23はMitsuiのMWNTsのSEM画像を示す。 低倍率(図23A)および高倍率(図23B)のSEM画像が示されている。 球形のナノ粒子は非晶質炭素の副生物である。 アルゴン雰囲気の下での2800℃における熱アニールによって、MWNTsの構造団結性が改善され、また多環芳香族炭化水素と鉄のナノ粒子が除去された。 MWNTsの平均の直径は81±5nmである。 平均の長さは8.19±1.7μmである。

    [0038]図24はPF-GNRsの追加の画像を示す。 図24AはMWNTsのPF-GNRsへの転化を示すSEM画像であり、この転化はMitsuiのMWNTsをカリウムナフタレニドを用いて液相でインターカレーションし、次いでスチレンを添加することによって行われる。 図24Bは多層(5層)のPF-GNRsの端部構造の透過型電子顕微鏡(TEM)の画像である。

    [0039]図25は、MitsuiのMWNTsをカリウムナフタレニドで処理し、次いでイソプレンを添加することによって得られたもののSEM画像である。 リボン状の構造はPF-GNRsを示すようである(点線で強調されている)。 もっと薄い剥離されたMWNTsも認められる(実線で強調されている)。 サンプルはクロロホルムで抽出される前に画像化されたので、非晶質ポリマーの領域と球形の非晶質炭素を観察することができる。

    [0040]図26はPF-GNRsに関連するデータを示す。 図26AはPF-GNRsとMWNTsが熱崩壊する間の気相の3D(三次元)熱天秤質量分析スペクトル(TG-MS)を示す。 様々な色は様々なm/zを有するガス生成物を表し、ここでmはガス生成物の質量であり、zは電荷である。 黒色と金色の曲線はそれぞれ、PF-GNRsとMWNTsのTGA分布に相当する。 図26BはPF-GNRsとMWNTsのラマンスペクトルを示す。 インターカレーションとそれに続く重合によって生じたMWNTsの分裂のために、PF-GNRsに不規則な構造または欠陥が導入された。 図26CはGNRsのX線光電子分光分析(XPS)の結果を示す。 挿入図はGNRsの高分解能XPSC1sスペクトルであり、GNRsが酸化されていないことを示している。

    [0041]図27はPF-GNRsにおいてポリマーで官能化された炭素原子の計算値を示す。

    [0042]図28はスチレンでクエンチしたMWNTsをカリウムの蒸気で処理したものの様々な特性に関するデータを示す。 図28Aはフラスコ内でのスチレンの重合を示し、カリウムの蒸気で処理したMWNTsによって開始したものである。 図28Bは分裂したMWNTsの典型的なSEM画像を示す。 MWNTsの大部分が分裂している。 画像中でリボン状の構造を確認することができる。 図28CはPF-GNRsとMWNTsについてのTG-MSの結果の3Dプロットを示す。 様々な色は様々なm/zを有するガス生成物を表し、ここでmはガス生成物の質量であり、zは電荷である。 黒色と金色の曲線はそれぞれ、PF-GNRsとMWNTsのTGA分布に相当する。

    [0043]図29はMWNTsとPF-GNRsの追加のSEM画像を示す。 図29Aは、MitsuiのMWNTsをカリウムの蒸気で処理し、次いでイソプレンを添加することによって得られたもののSEM画像を示す。 大部分のMWNTsは開いている。 しかし、それらはGNRsが形成するように十分に剥離されてはいない。 リボン状の構造とポリマーの副生物によって橋渡しされた分裂したMWNTsを観察することができる。 強調された部分は、PF-GNRの上で部分的に剥離されたMWNTを表している。 図29Bはレース状の炭素の格子の上に載っている単離したPF-GNRのTEM画像を示す。 図29Cは多重積層PF-GNRsの端部の構造のTEM画像を示す。

    [0044]図30はNTLのMWNTsのSEM画像を示す。 図30Aは低倍率のSEM画像である。 図30Bは高倍率のSEM画像である。 図30Cは、液相でインターカレーションし、次いでスチレンを添加した後のNTLのMWNTsのSEM画像である。 NTLのMWNTsは分裂しているが、しかし完全に平らになってはいないことが示されている。

    [0045]図31はベイチューブス(Baytubes)のSEM画像を示す。 図31Aは初期のままのベイチューブスのSEM画像である。 図31Bは液相でインターカレーションし、次いで重合した後のベイチューブスのSEM画像である。 画像は、インターカレーションとそれに続く重合によってベイチューブスが分裂していることを示している。 しかし、大部分のベイチューブスは損なわれていない。

    [0046]図32は三つの異なるMWNTsのスペクトルフィンガープリントを示す。 図32AはMitsuiのMWNTs、NTLのMWNTsおよびベイチューブスのXRDパターンを示す。 d

    002はブラッグの式:λ=2d・sinθに従って計算された。 ここで、λはCuKαについて1.54オングストロームである。 図32BはMitsuiのMWNTs、NTLのMWNTsおよびベイチューブスのラマンスペクトルを示す。 ベイチューブスは最も高いI

    /I

    を有し、これが最も欠陥のある黒鉛構造であることを示す。 同様に存在するのは、不規則な構造によって生じたG+D帯域の組み合わせであり、これはMitsuiのMWNTsまたはNTLのMWNTsにおいては観察されない。

    [0047]図33はスチレンで処理したアルカリ金属でインターカレーションしたMWNTsの典型的なSEM画像を示す。 図33Aはナトリウムナフタレニドで処理し、次いでスチレンで処理したMWNTsのSEM画像である。 図33Bはリチウムナフタレニドで処理し、次いでスチレンで処理したMWNTsのSEM画像である。

    [0048]図34はカルボキシル官能化GNRs(GNR-(COOH)n)のSEM画像を示す。 図34Aにおけるスケールバーは5μmである。 図34Bにおけるスケールバーは2μmである。

    [0049]図35はGNR-(COOH)nのTEM画像を示す。 図35Aにおけるスケールバーは200nmである。 図35Bにおけるスケールバーは10nmである。

    [0050]図36はGNR-(COOH)nのラマンスペクトルを示す。 励起レーザーの波長は514nmである。

    [0051]以上の概括的な説明と以下の詳細な説明は両者とも例証的なものであって説明上のものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するものではない、ということが理解されるべきである。 本願明細書において、特に示さない限り、単数形の語を用いているときは複数形を含み、単数形の語は「少なくとも一つのもの」であることを意味し、そして「または」を用いているときは「および/または」を意味する。 さらに、「含む」という用語を用いるとき、限定的ではない。 また、「要素」または「構成要素」といった用語は、特に示さない限り、一つのユニットからなる要素または構成要素と一つよりも多いユニットからなる要素または構成要素の両方を包含する。

    [0052]本明細書で用いられている各節の表題は構成上の目的のものであって、説明されている主題を限定するものと解釈されるべきではない。 (これらに限定されるのではないが)特許、特許出願、記事、著作および論文を含めて本明細書中で挙げられている全ての文献または文献の一部は、それらの全体が何らかの目的でここに参考文献として明白に取り込まれる。 包含される一つ以上の文献や同様の資料が本願における用語の定義と矛盾するやり方でその用語を定義している場合、本願に従うものである。

    [0053]グラフェンナノリボン(GNRs)は独特な電気的、機械的および熱的な性質を示す。 GNRsをナノスケールおよびマイクロスケールのレベルで製造するための幾つかのリソグラフィ(平版印刷)手順、化学的手順および合成手順が報告されている。 高温、低温または酸化/還元の実施手順のいずれかを用いることによって巨視的な(肉眼で見える)量のGNRsを調製することもできる。 最初の二つの方法は多くのエネルギー投入量を必要とし、従って、過剰なコストが生じる。 三つ目の方法は限定された導電性を有する欠陥の多いGNRsをもたらし、特に様々な材料の中に組み込まれた場合にそうである。

    [0054]さらに、GNRsを様々な複合材料の中に分散させることは多くの制限を受ける。 例えば、ポリマーとグラフェンのナノ複合材料は主に、還元した酸化グラフェンを様々なポリマーのマトリックスと混合することによって調製される。 そのような化学的に転化されたグラフェンは、それらの残留酸素を含む基のために、ポリマーのマトリックスの中に良好に分散させることができる。 しかし、化学的な還元を行った後であっても、グラフェンの共役構造を完全に回復させることはできないので、ポリマーの導電性をそれほど改善することはできない。

    [0055]さらに、酸化を行う間に導入される欠陥のために、グラフェンの補強を完全に実現することはできない。 例えば、グラフェンの基部の面にある欠陥または穴は、亀裂の開始のための起点として作用しうる。 さらに、酸化グラフェンの還元を行う間に大量のガスが発生して、ガスの流れによって複合材料が弱くなることがある。

    [0056]従って、費用対効果が高いGNRsを製造するための改良された方法を開発する必要性が存在する。 さらに、実質的に欠陥の無いGNRsを製造するための必要性が存在する。 また、様々な溶媒や複合材料の中で導電性かつ分散性のGNRsを製造するための必要性も存在する。

    [0057]特に、本開示は官能化GNRsおよび非官能化GNRsを製造するための様々な方法を提供する。 本開示のさらなる態様は、形成されたGNRs、およびそれらの形成されたGNRsを含む複合材料、繊維、ディスプレーおよび回路に関する。

    [0058] GNRsを製造する方法
    [0059]GNRsを製造する方法の様々な態様が図1に示されている。 例えば、図1のパネルIに示された幾つかの態様において、本開示は非官能化GNRsを製造する方法を提示している。 このような方法は、概して言えば、次の工程を含む:(1)多数のカーボンナノチューブを非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露し、それによりカーボンナノチューブを長手方向に開くこと;および(2)開いたカーボンナノチューブをプロトン性溶媒に曝露し、それにより全ての反応性の種をクエンチ(抑止)し、そして非官能化GNRs(すなわち、端部にプロトンを有するGNRs)を形成すること。

    [0060]本開示のさらなる態様は、図1のパネルIとIIに示されるように、多段階法によって官能化GNRsを製造する方法に関する。 このような方法は、概して言えば、次の工程を含む:(1)多数のカーボンナノチューブを非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露し、それによりカーボンナノチューブを開くこと;(2)開いたカーボンナノチューブをプロトン性溶媒に曝露し、それにより全ての反応性の種をクエンチし、そして非官能化GNRsを形成すること;および(3)GNRsを1種以上の求電子剤に曝露することによって、求電子置換反応を介してGNRsを官能化すること。 幾つかの態様において、官能化の工程はルイス酸のような促進剤の存在下で行ってもよい。

    [0061]本開示のさらなる態様は、その場の反応(in situ reaction)または「ワンポット」反応によって官能化したGNRsを製造する方法に関し、このとき、同じ反応条件の下でGNRsが生成し、そして官能化される。 このような方法の態様は図1のパネルIとIIIに示される。 このような方法は、概して言えば、次の工程を含む:(1)多数のカーボンナノチューブを非プロトン性溶媒の存在下でアルカリ金属源に曝露し、それによりカーボンナノチューブを開くこと;および(2)開いたカーボンナノチューブを求電子剤に曝露し、それにより官能化したグラフェンナノリボンを形成すること。 幾つかの態様において、この方法は、全ての残りの反応種をクエンチするために、官能化したGNRsをプロトン性溶媒に曝露する追加の工程を含んでもよい。

    [0062]ここでさらに詳細に説明するように、本開示の方法は多くの変形を有していてもよい。 例えば、様々なカーボンナノチューブ、アルカリ金属源、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒および求電子剤を、本開示の様々な態様において用いてもよい。

    [0063] カーボンナノチューブ
    [0064]本開示のグラフェンナノリボンは様々なカーボンナノチューブから得ることができる。 幾つかの態様において、そのカーボンナノチューブには、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、三層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、超短カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つが含まれる。 幾つかの態様において、カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブを含む。

    [0065]さらに、用いられるカーボンナノチューブは様々な状態のものであってよい。 例えば、幾つかの態様において、カーボンナノチューブは初期のままの(pristine)形態または官能化されていない形態のものであってよい。 幾つかの態様において、カーボンナノチューブは、カルボキシル基、アルキル基、エステル、アリール基、ポリマー、その他同種類のもののような、1種以上の官能基で官能化されていてもよい。

    [0066] アルカリ金属源
    [0067]アルカリ金属源とは一般に、元素の周期表の1族からの金属のような、1種以上のアルカリ金属を含む化合物を指す。 幾つかの態様において、アルカリ金属源にはリチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、これらの合金、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つが含まれてもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源はカリウムを含んでもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源はナトリウム/カリウム(Na/K)合金、カリウムナフタレニド、ナトリウムナフタレニド、リチウムナフタレニド、カリウムとナフタレンの混合物、およびこれらの組み合わせを含んでもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属はカリウムまたはカリウムとその他の金属の混合物である。

    [0068]本開示のアルカリ金属源は様々な状態でカーボンナノチューブに対して用いることができる。 幾つかの態様において、アルカリ金属源は蒸気またはガスの状態であってもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源は液体の状態であってもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源はガスと液体の状態であってもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源は溶融したアルカリ金属を含んでもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源はアルカリ金属の蒸気を含んでもよい。 幾つかの態様において、そのアルカリ金属の蒸気は溶融したアルカリ金属から生成されてもよい。

    [0069]理論に拘束されるのではないが、アルカリ金属源はカーボンナノチューブと反応し、そしてそれを開くことによって、グラフェンナノリボンの形成を促進すると考えられる。 例えば、図2と図21を参照されたい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源はカーボンナノチューブを長手方向に開くか、またはこれを分裂させるだろう。 例えば、図2Aと図21Bを参照されたい。

    [0070]幾つかの態様において、アルカリ金属源はカーボンナノチューブの間にインターカレーション(侵入)して、それらが長手方向に開くことに影響を及ぼす。 やはり理論に拘束されるのではないが、様々な溶媒で安定化したアルカリ金属源のカーボンナノチューブの中へのインターカレーションは、カーボンナノチューブの層の間のd間隔の拡張をもたらし、それによりカーボンナノチューブを部分的に開かせると考えられる。

    [0071]幾つかの態様において、カーボンナノチューブは、それらの長手方向の軸に平行な部位から開く。 幾つかの態様において、カーボンナノチューブが長手方向に開くことは、カーボンナノチューブの側壁に沿って、長手方向の軸と交差するのではなく軸に平行に、真っ直ぐな結合が開くプロセスを含んでもよい。 幾つかの態様において、カーボンナノチューブが長手方向に開くことは、カーボンナノチューブが主としてらせん状に開くことを含んでもよく、この場合も、長手方向の軸と交差するのではなく軸に平行に開く。

    [0072]幾つかの態様において、カーボンナノチューブがアルカリ金属源によって開くことは、加熱することによって促進されてもよい。 例えば、幾つかの態様において、カーボンナノチューブが開くことをアルカリ金属源によって促進するために、約100℃〜400℃に加熱して反応を行ってもよい。 幾つかの態様において、開くことを室温において行ってもよい。

    [0073]さらに、本開示のアルカリ金属源は、様々な相互作用を介してカーボンナノチューブおよびGNRsと結びついてもよい。 そのような相互作用には、共有結合性相互作用、非共有結合性の結びつき、およびイオン性相互作用が含まれるだろう。 例えば、幾つかの態様において、求電子剤またはプロトン性溶媒が添加される前に、開いたカーボンナノチューブにアルカリ金属源が共有結合またはイオン結合してもよい。 幾つかの態様において、開いたカーボンナノチューブまたは形成されたグラフェンナノリボンの端部にアルカリ金属源が共有結合またはイオン結合してもよい。 幾つかの態様において、開いたカーボンナノチューブまたは形成されたグラフェンナノリボンの端部と基部面の両方にアルカリ金属源が共有結合またはイオン結合してもよい。 幾つかの態様において、アルカリ金属源を用いることにより、開いたカーボンナノチューブまたは形成されたグラフェンナノリボンの上に活性なカルボアニオン性(炭素陰イオン性)の部分が形成されてもよい。 例えば、図2Bを参照されたい。

    [0074] 非プロトン性溶媒
    [0075]本開示のアルカリ金属源は、非プロトン性溶媒のような様々な溶媒の存在下でカーボンナノチューブに適用してもよい。 非プロトン性溶媒とは一般に、酸性水素を含まない溶媒を指す。 理論に拘束されるのではないが、非プロトン性溶媒を用いると、これが非還元性の雰囲気を与え、ひいては反応性のアルカリ種の形成を促進することによって、アルカリ金属源によってカーボンナノチューブが開くことが促進されると考えられる。

    [0076]様々な非プロトン性溶媒を本開示の方法において用いることができる。 幾つかの態様において、非プロトン性溶媒としては、(これらに限定されるのではないが)ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、グリム、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム、テトラグリム、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、ジメチルホルムアミド、およびこれらの組み合わせがある。 幾つかの態様において、非プロトン性溶媒には極性非プロトン性溶媒、エーテル性溶媒、アミン、または反応性のアルカリ種の形成を促進することのできるその他の溶媒が含まれてもよい。

    [0077]本開示の非プロトン性溶媒は様々な状態になっていてもよい。 幾つかの態様において、非プロトン性溶媒は無水の形態、ガス抜きされた形態、またはこれらの形態を組み合わせたものであってもよい。 幾つかの態様において、非プロトン性溶媒は無水かつガス抜きされた形態であってもよい。

    [0078] プロトン性溶媒
    [0079]カーボンナノチューブがアルカリ金属源によって開いた後、それらを1種以上のプロトン性溶媒に曝露してもよい。 プロトン性溶媒とは一般に、1つ以上の解離性の水素原子を含む溶媒を指す。 幾つかの態様において、本開示のプロトン性溶媒は約35以下のpKaを有していてもよい。 理論に拘束されるのではないが、プロトン性溶媒は形成されたグラフェンナノリボン上にある全ての反応性の種をクエンチすることができると考えられる。

    [0080]幾つかの態様において、プロトン性溶媒としては、(これらに限定されるのではないが)ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水、塩酸、硫酸、アンモニア、ジエチルアミン、ジアルキルアミン、モノアルキルアミン、ジアリールアミン、モノアリールアミン、モノアルキルモノアリールアミン、およびこれらの組み合わせがある。 幾つかの態様において、プロトン性溶媒にはメタノールのような極性プロトン性溶媒が含まれてもよい。

    [0081]幾つかの態様において、プロトン性溶媒は1つ以上のR NH基、1つ以上のRNH 基、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。 幾つかの態様において、R基にはアルキル基、アリール基、またはこれらの組み合わせが含まれてもよい。 さらなるプロトン性溶媒も考えられる。

    [0082]幾つかの態様において、プロトン性溶媒へのカーボンナノチューブの曝露は、カーボンナノチューブをアルカリ金属源に曝露している間に行ってもよく、あるいは曝露した後に行ってもよい。 例えば、図1におけるパネルIを参照されたい。 幾つかの態様において、プロトン性溶媒へのカーボンナノチューブの曝露は、開いたカーボンナノチューブを1種以上の求電子剤に曝露している間に行ってもよく、あるいは曝露した後に行ってもよい。 例えば、図1におけるパネルIIIを参照されたい。

    [0083] 求電子剤
    [0084]求電子剤とは一般に、電子過剰中心と反応することのできる化合物を指す。 幾つかの態様において、アルカリ金属で処理されたカーボンナノチューブは求電子剤とその場で(in situ)反応し、それにより官能化したグラフェンナノリボンを形成するだろう。 例えば、図1におけるパネルIIIを参照されたい。 幾つかの態様において、すでに形成されたグラフェンナノリボンは求電子置換反応を介して求電子剤と反応し、それにより官能化したグラフェンナノリボンを形成するだろう。 例えば、図1におけるパネルIIを参照されたい。 幾つかの態様において、求電子剤は過剰なアルカリ金属源をクエンチし、そして様々な官能基(例えば、ハロゲンまたは水素のような有機官能基)でグラフェンナノリボンを官能化するだろう。 幾つかの態様において、求電子剤は、グラフェンナノリボン上のアルカリ金属源を官能基で置換することによってグラフェンナノリボンを官能化するだろう。

    [0085]グラフェンナノリボンを官能化するために、様々な求電子剤を用いることができる。 幾つかの態様において、求電子剤としては、(これらに限定されるのではないが)水、アルコール、有機ハロゲン化物、およびそれらの合成等価体、アルケン、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化置換ベンジル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化フルオロアルキル、ハロゲン化ペルフルオロアルキル、アルデヒド、ケトン、メチルビニルケトン、エステル、スルホネートエステル、酸、酸塩化物、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物、カルボニル含有化合物、エノン、ニトリル、二酸化炭素、ハロゲン、モノマー、ビニルモノマー、開環モノマー、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、メタクリレート、1,4-ジメトキシ-2-ビニルベンゼン、メチルメタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、塩化トリメチルシリル、塩化tert-ブチルジメチルシリル、塩化トリフェニルシリル、エポキシド、二酸化炭素、二硫化炭素、tert-ブタノール、2-メチルプロペン、C60、C70、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素、およびこれらの組み合わせがある。

    [0086]様々な態様において、求電子剤を、パラジウム含有系、ニッケル含有系または鉄含有系のような遷移金属触媒と組み合わせてもよい。 遷移金属触媒と組み合わせることのできる典型的な求電子剤としては、(これらに限定されるのではないが)ハロゲン化アリール、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、およびこれらの組み合わせがある。 幾つかの態様において、求電子剤を遷移金属触媒と組み合わせなくてもよい。

    [0087]幾つかの態様において、求電子剤はハロアルカンやヨードアルカンのようなアルカンを含んでもよい。 幾つかの態様において、求電子剤は1-ヨードヘキサデカン、1-ヨードオクタンおよび1-ヨードブタンのようなヨードアルカンを含んでもよい。

    [0088]幾つかの態様において、求電子剤はハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル、カルボニル含有化合物、エポキシド、その他同種類のもののような1種以上の分極化中性分子を含んでもよい。 幾つかの態様において、求電子剤はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、スチレン、ジエン、その他同種類のもののような1種以上の分極性中性分子を含んでもよい。

    [0089]幾つかの態様において、求電子剤は、例えばアルコールまたは水のような、プロトンの供与体であってもよい。 他の態様において、求電子剤は、有機ハロゲン化物(例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化置換ベンジル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニルまたはハロゲン化ペルフルオロアルキル)または有機ハロゲン化物(例えば、スルホネートエステル)の合成等価体であってもよい。 さらに他の態様において、求電子剤は、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)、二酸化炭素、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトン、エノンまたはニトリルであってもよい。 幾つかの態様において、求電子剤は二酸化炭素である。

    [0090]幾つかの態様において、求電子剤はモノマーであってもよい。 幾つかの態様において、モノマーには、オレフィン、ビニルモノマー、スチレン、イソプレン、ブタジエン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレートまたはエチルアクリレート)、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレートまたはエチルメタクリレート)、開環モノマー(例えば、ラクトンまたはラクタム)、エポキシド、およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1種が含まれてもよい。

    [0091]様々な態様において、ポリマー官能化グラフェンナノリボン(PF-GNRs)およびポリマー/グラフェンナノリボン複合材料を形成するために、モノマーの求電子剤を用いることができる。 特に、アルカリ金属源で処理された開いたカーボンナノチューブまたはグラフェンナノリボンに曝露すると、モノマーの求電子剤は重合することができることが証明された。 例えば、図21を参照されたい。 例えば、その場での(in situ)反応により、アルカリ金属源はカーボンナノチューブを開き、それと同時に、モノマー求電子剤の重合を開始させることができる。 さらに、重合は、ラジカル重合やアニオン重合を含めた様々な機構によって起こると考えられる。

    [0092]幾つかの態様において、求電子剤はエポキシド(例えば、酸化エチレン)、ラクトンまたはラクタムのような開環モノマーを含んでもよい。 幾つかの態様において、求電子剤はビニルモノマーを含んでもよい。 ビニルモノマーは、アルカリ金属源を添加する前に、添加している間に、または添加した後に、カーボンナノチューブに加えることができる。 理論に拘束されるのではないが、ビニルモノマーは、形成したグラフェンナノリボンにモノマーが結合したときに重合のために利用できる遊離ビニル基を有すると考えられる。

    [0093]追加の求電子剤の使用も考えられる。 例えば、求電子剤は、アルカリ金属の有機金属化合物と反応することができて官能生成物にカルボアニオン(炭素陰イオン)を与えることのできる任意の試剤を含んでもよい。 さらに特定される態様において、求電子剤は、グラフェンナノリボンからアルカリ金属を取り除き、そして官能化したグラフェンナノリボンに多数の官能基を導入するものであってもよい。 幾つかの態様において、求電子剤は、求電子芳香族置換条件の下でカリウムインターカレーション化合物をクエンチすることによって、溶媒中の求電子剤または不飽和炭化水素と反応してもよい。

    [0094]幾つかの態様において、特に求電子置換反応によって求電子剤が付加される場合に、その付加は、ハロゲン化、臭素化、アルキル化、tert-ブチル化(例えば、tert-ブタノールまたはイソブチレンの使用によるもの)およびその他の類似の反応によって生じるかもしれない。 幾つかの態様において、そのような求電子置換反応は、塩化アルミニウムまたは塩化亜鉛のような1種以上のルイス酸によって、あるいは硫酸やトリフルオロ酢酸のような1種以上のブレンステッド酸を用いて、促進することができる。

    [0095] 剥離(exfoliation)
    [0096]様々な態様において、本開示の方法によって形成されるグラフェンナノリボンは追加の処理を受けることができる。 例えば、幾つかの態様において、形成されたグラフェンナノリボンを剥離の工程に供して、それにより、形成されたグラフェンナノリボンから1つ以上のグラフェンの層を除去してもよい。 幾つかの態様において、剥離によって単一の層のGNRs、数層(すなわち、2〜10の層)のGNRs、または多層(すなわち、約50の層)のGNRsが形成されてもよい。

    [0097]幾つかの態様において、剥離は、ブレンステッド超酸、ルイス超酸および複合ブレンステッド-ルイス超酸のような超酸溶媒にグラフェンナノリボンを曝露することによって行うことができる。 幾つかの態様において、超酸には、(これらに限定されるのではないが)過塩素酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロアルカンスルホン酸、五フッ化アンチモン、五フッ化ヒ素、発煙硫酸、およびこれらの組み合わせが含まれてもよい。 幾つかの態様において、超酸はクロロスルホン酸であってもよい。 幾つかの態様において、剥離はグラフェンナノリボンを濃硫酸のような強酸に曝露することによって行ってもよい。

    [0098]幾つかの態様において、剥離の工程はグラフェンナノリボンをガスに曝露することを含んでもよい。 幾つかの態様において、そのガスには揮発性のガスが含まれてもよい。 幾つかの態様において、そのガスには、(これらに限定されるのではないが)二酸化炭素、窒素ガス、水素ガス、ペンタン、塩化水素、空気、ジアゾニウム化合物の反応によって得られるガス、およびこれらの組み合わせが含まれてもよい。 幾つかの態様において、ガスは二酸化炭素であり、例えば塩(例えばNa CO )から得られる二酸化炭素またはドライアイスである。 幾つかの態様において、ガスは塩化水素であり、例えば塩化ナトリウムおよび硫酸から生成する塩化水素である。 幾つかの態様において、ガスは窒素ガスであり、例えば液体窒素から得られる窒素ガスである。

    [0099] インターカレーション
    [00100]幾つかの態様において、本開示の方法はインターカレーション(挿入)の工程を含んでもよい。 幾つかの態様において、インターカレーションは、形成したグラフェンナノリボンの層の間に様々な分子がインターカレーションされるときに起こる。 例えば、幾つかの態様において、インターカレーションされるアルカリ金属(例えば、カリウム)と求電子剤(例えば、1-ヨードアルカン)がグラフェンのシートの間に配置される。 副生物(例えば、KI)は追い出され、一方、新たに形成される官能基(例えば、アルカン、アルケンおよびアルキル基)がグラフェンシートの間の位置を占める。

    [00101] 脱官能化
    [00102]幾つかの態様において、本開示の形成したグラフェンナノリボンは脱官能化(defunctionalization)の工程を受けてもよく、これにおいて、形成したグラフェンナノリボン上の官能基は除去される。 幾つかの態様において、脱官能化の工程は熱による脱官能化プロセスを含んでもよい。 幾つかの態様において、熱による脱官能化プロセスはグラフェンナノリボンを約100℃から約900℃までの範囲の温度で加熱することを含んでもよい。

    [00103] デインターカレーション(脱インターカレーション)
    [00104]幾つかの態様において、本開示の形成したグラフェンナノリボンはデインターカレーション(抜き取り)の工程を受けてもよく、これにおいて、インターカレーションされた官能基は形成したグラフェンの層の間から除去される。 例えば、図2Dを参照されたい。 幾つかの態様において、デインターカレーションはGNRsを高温で加熱することによって生じるだろう。 幾つかの態様において、その加熱は約100℃から約900℃まで、または約240℃から約900℃まで、または約530℃から約900℃までの範囲の温度で行ってもよい。 幾つかの態様において、デインターカレーションの工程は約20分から約12時間あたりの範囲で持続してもよい。

    [00105] 反応条件
    [00106]本開示の方法は様々な反応条件の下で行うことができる。 例えば、幾つかの態様において、本開示の方法は真空または不活性雰囲気の下で行ってもよい。 幾つかの態様において、本開示の方法は不活性ガス(例えば、Ar、H 、その他同種類のもの)の定常流の下にある雰囲気のような、不活性雰囲気の中で行ってもよい。 幾つかの態様において、本開示の方法は酸化剤が存在しない中で行ってもよい。 幾つかの態様において、出発生成物は、酸素を除去するために複数回の凍結融解ポンプサイクルを受けてもよい。

    [00107]本開示の方法は様々な温度で行うことができる。 例えば、幾つかの態様において、本開示の方法は室温で行ってもよい。 幾つかの態様において、本開示の方法は約50℃から約500℃まで、または約250℃から約300℃までの範囲の温度で行ってもよい。

    [00108]幾つかの態様において、形成したグラフェンナノリボンを、ろ過、遠心分離、予想される不純物を除去するのに適した溶媒を用いる洗浄、乾燥、およびその他の類似の方法のような様々な追加の工程によって単離または精製してもよい。

    [00109] 得られるグラフェンナノリボンおよび複合材料
    [00110]本開示の追加の態様は、本開示の方法によって形成されるグラフェンナノリボンに関する。 本開示のさらなる態様は、そのようなグラフェンナノリボンを含む複合材料、繊維、ディスプレーおよび回路に関する。 幾つかの態様において、本開示の方法は、欠陥が無く、そして官能化したグラフェンナノリボンを製造するために用いることができる。

    [00111]幾つかの態様において、グラフェンナノリボンは基部の面(basal planes)ではなく端部でのみ官能化されていてもよい(すなわち、端部官能化されている)。 幾つかの態様において、端部官能化GNRsには、(これらに限定されるのではないが)ヘキサデシル化GNRs(HD-GNRs)、オクチル化GNRs(O-GNRs)およびブチル化GNRs(B-GNRs)などのアルキル官能化GNRsが含まれてもよい。 幾つかの態様において、端部官能化GNRsにはポリマーで官能化されたGNRsが含まれてもよい。

    [00112]幾つかの態様において、本開示の方法によって形成されるGNRsは、単一の層のもの、数層(例えば、2〜10の層)のもの、または多層(例えば、10よりも多く50までの層)のものであってもよい。 幾つかの態様において、GNRsはアルカンのような様々な官能基でインターカレーションされていてもよい。

    [00113]さらに特定される態様において、本開示はグラフェンナノリボンを含む複合材料または繊維に関する。 幾つかの態様において、そのグラフェンナノリボンは端部が官能化されている。 幾つかの態様において、端部官能化グラフェンナノリボンは官能化されていない基部の面を含む。

    [00114]幾つかの態様において、複合材料および繊維におけるグラフェンナノリボンは、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルビニルケトン、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリオール、およびこれらの組み合わせのようなポリマーで端部が官能化されている。

    [00115]幾つかの態様において、複合材料および繊維におけるグラフェンナノリボンは、アルキル基、アシル基、アリル性基(allylic groups)、ベンジル基、ベンジル性基、アルケニル基、アリール基、アルキニル基、フルオロアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アルデヒド、ケトン、メチルビニルケトン、エステル、スルホネートエステル、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン、およびこれらの組み合わせのような、1種以上の官能基で端部が官能化されている。 さらに特定される態様において、端部官能化グラフェンナノリボンには、アルキル官能化グラフェンナノリボン、ヘキサデシル化グラフェンナノリボン、オクチル化グラフェンナノリボン、ブチル化グラフェンナノリボン、およびこれらの組み合わせが含まれてもよい。

    [00116]幾つかの態様において、本開示の複合材料および繊維は様々なデバイスの構成要素として用いることができる。 典型的なデバイスとしては、(これらに限定されるのではないが)透明導電性ディスプレー、着氷防止回路、ガスバリヤー性複合材料、スクリーン、およびこれらの組み合わせがある。

    [00117] 用途と利点
    [00118]本開示の方法は、良好な収量、最小限の欠陥、および様々な複合材料、ポリマー、プラスチック、ゴム、エラストマーおよび溶媒(例えば、有機溶媒)の中での向上した分散性を含めた、様々な有利な特性を有するグラフェンナノリボンを製造するために用いることができる。 さらに、本開示のグラフェンナノリボンを製造するために用いられる出発生成物は入手しやすくて安価であるから、本開示の方法は費用対効果の高いやり方でグラフェンナノリボンを製造するために用いることができる。

    [00119]本開示の方法に従って形成されるグラフェンナノリボンは高い導電性も有するだろう。 例えば、幾つかの態様において、このグラフェンナノリボンは約0.1S/cmから約9000S/cmまでの範囲の導電率を有するだろう。 幾つかの態様において、グラフェンナノリボンの導電率は約4300S/cmであろう。 幾つかの態様において、グラフェンナノリボンの導電率は約8000S/cmであろう。

    [00120]上述の有利な特性に鑑みて、本開示のグラフェンナノリボンは多くの機械的および電気的な用途を見いだすことができる。 例えば、最小限の欠陥により、本開示のグラフェンナノリボンは、例えばポリマー複合材料のような機械的強度を必要とする用途のために特に有利であるかもしれない。 幾つかの態様において、本開示のポリマー官能化グラフェンナノリボンは、プラスチック複合材料、ゴム複合材料およびエラストマー複合材料の中に組み込むことができる。 そのような態様において、ポリマーのストランドの大部分または全てがGNRに共有結合したものは、最終製品の機械的特性をかなり高めることができる。

    [00121]幾つかの態様において、本開示のグラフェンナノリボンは、炭素繊維、ガス分離または微粒子の除去のための膜フィルター、有機および無機複合材料のための補強用充填材、およびポリマーのマトリックスのバリヤー性を改善するための添加材料の構成要素として用いてもよい。 さらに特定される態様において、本開示のグラフェンナノリボンは、(例えば、ガスタンクやガスのための配管における)ガスバリヤー性を改善するために用いてもよい。 さらに、本開示のグラフェンナノリボンは、導電性フィルム、半導電性フィルム、タッチスクリーンディスプレー、着氷防止回路、電池、電気活性物質、コンデンサー、太陽電池、およびリチウムイオン電池またはリチウムポリマー電池のためのカソード材料の先駆物質として用いてもよい。

    [00122]幾つかの態様において、本開示のグラフェンナノリボンは傷の手当における用途を見いだすこともできる。 例えば、幾つかの態様において、本開示のグラフェンナノリボンは少なくとも1種の抗微生物剤と合体または結合させることができる。 そのような合体したグラフェンナノリボン組成物は傷の包帯の一部分として用いることができ、それにより感染の抑制を有利に改善し、臭気を制御し、または親油性の毒素が傷に侵入するのを抑制する。 例えば、非限定的な態様において、少なくとも1種の抗微生物剤と合体または結合したグラフェンナノリボンを通常のガーゼに含めてもよい。

    [00123] 追加の態様
    [00124]ここで、本開示のさらに特定した態様およびそれらの態様について裏づけを与える実験結果について言及する。 しかし、以下の開示は例示することだけを目的としていて、いかなる形でも権利請求する主題の範囲を限定することを意図してはいないことを、出願人は特筆する。

    [00125] 実施例1. 非官能化グラフェンナノリボンの調製
    [00126]本実施例においては、図1のパネルIに例示する手順の体系に従って非官能化グラフェンナノリボン(GNRs)を製造するための典型的な実施要綱を提示する。 本実施例において、無水かつガス抜きした極性非プロトン性溶媒、好ましくは1,2-ジメトキシエタンまたはテトラヒドロフランの中に多層カーボンナノチューブ(MWNTs)を分散させる。 次いで、その混合物にカリウム/ナフタレン混合物またはナトリウム/カリウム合金を添加する。 続いて、室温で数時間または数日間、攪拌する。 次いで、過剰量のプロトン性溶媒(好ましくはメタノール)を添加する。 次いで、形成されたグラフェンナノリボンを、ろ過、遠心分離またはその他の適当な分離方法によって単離させる。 それと共に、予想される不純物を除去するのに適した溶媒で洗浄する。 次いで、生成物を乾燥させる。

    [00127] 実施例2. 実施例1からのグラフェンナノリボンの官能化
    [00128]本実施例においては、図1のパネルIIに例示する手順の体系に従って、実施例1からのグラフェンナノリボンを官能化するための典型的な実施要綱を提示する。 実施例1から得られる非官能化グラフェンナノリボンを、酸と求電子剤の混合物(好ましくはトリフルオロ酢酸とtert-ブタノールまたは2-メチルプロペン)の中に分散させる。 次いで、混合物を沸騰温度において攪拌する。 次に、官能化したグラフェンナノリボンを、ろ過、遠心分離またはその他の適当な分離方法によって単離させる。 それと共に、予想される不純物を除去するのに適した溶媒で洗浄する。 次いで、生成物を乾燥させる。

    [00129] 実施例3. 官能化グラフェンナノリボンのその場での調製
    [00130]本実施例においては、図1のパネルIおよびIIIに例示する手順の体系に従って、その場での反応(すなわち、「ワンポット」反応)によって官能化したグラフェンナノリボンを調製するための典型的な実施要綱を提示する。 無水かつガス抜きした極性非プロトン性溶媒、好ましくは1,2-ジメトキシエタンまたはテトラヒドロフランの中にMWNTsを分散させる。 次いで、カリウム/ナフタレンまたはナトリウム/カリウム合金の混合物を添加する。 続いて、混合物を室温で数時間または3日間、攪拌する。 次いで、過剰量の求電子剤を添加する。 次いで、混合物をさらに数時間または1日間、攪拌する。 次いで、過剰量のプロトン性溶媒(好ましくはメタノール)を添加する。 次に、官能化したグラフェンナノリボンを、ろ過、遠心分離またはその他の適当な方法によって単離させる。 それと共に、予想される不純物を除去するのに適した溶媒で洗浄する。 次いで、生成物を乾燥させる。

    [00131]上述した実施例において、用いられる化学物質はかなり安価である。 さらに、それら化学物質は容易に再生利用できるか、あるいは安全に処分するのに適した非毒性の生成物に転化することができる。 加えて、グラフェンナノリボンの単離と精製は、真空と不活性雰囲気の装置を必要とするかもしれない。 例えば、Na/K合金は水と高度に反応性であり、また空気に晒されたときに発火するかもしれない。 従って、Na/K合金は特別に用心して(好ましくはグローブボックスの中で)扱わなければならない。 1グラム程度の少ない量で発火または爆発する危険性がある。 さらなる実施要綱と条件はPCT/US2010/038368号に開示されている。

    [00132] 実施例4. グラフェンナノリボン積層体のその場でのインターカレーション置換と選択的な官能化
    [00133]本実施例は、市販のカーボンナノチューブから可溶性のGNRsを調製するための、費用対効果が高くて工業的に規模の拡大が可能なその場での(in-situ)官能化の手順を提示する。 官能化した生成物の物理的特性を、SEM、発生したガスの分析、X線回折、固体13 CNMR、ラマン分光分析、およびGC-MS分析法を用いて測定した。 塊状の物質における電気的特性の比較的高い保持性が観察された。 さらに、インターカレーションしたカリウムのハロアルカンとの置換が得られた。 カーボンナノチューブは共有結合性の官能化が可能であるが、sp 混成炭素原子のsp 混成原子への転化によって、それらの導電性が劇的に低下する。 しかし、端部が官能化されるGNRsはそれらの強度の官能化が可能であり、一方、基部の面はそのままに保たれる。

    [00134]グラフェンは、その最適な電気的、機械的および熱的特性により、かなり有望な安定した2D(二次元)物質である。 例えば、グラフェンは電子デバイスのための構成要素となりうる。 豊富な炭素とその低い毒性は、超コンデンサー、リチウムイオン電池、太陽電池および触媒のようなエネルギー関連デバイスにおいてグラフェンを適用するための研究を科学界が行うためのさらなる推進力となる。 しかし、それらの将来的な用途にグラフェンとその誘導体を使用することを実現するためには、a)高品質のグラフェン系ナノ材料の塊状物としての調製、およびb)これらの材料の官能化とデバイスへの組み込み、という2つの重要な問題を解決する必要がある。

    [00135]2004年にグラフェンが発見されて以来、グラフェンナノ材料を生成するために多くの様々な方法が開発されてきた。 これらの方法はボトムアップの方法とトップダウンの方法に分けることができる。 ボトムアップの方法には化学気相析出(CVD)による成長と有機合成が含まれる。 両者の方法は高品質で比較的に低欠陥の材料を実現することができる。 しかし、これらの方法は大規模化と加工処理が困難である。 一方、規模の拡大が可能なトップダウンの方法があり、これにおいては出発物質として黒鉛またはカーボンナノチューブ(CNTs)が用いられる。 大量のグラフェンの最も一般的な製造方法は、酸化した黒鉛の剥離と、それに続く、さらに高度に結合した物質を製造するための還元または高温アニールによるものである。 この方法の欠点は、グラフェンの基部面の不可逆的な損傷とその結果としての低い導電性である。

    [00136]様々なインターカレーションと熱膨張の技術を用いて、高品質の単層ないし数層のグラフェンが大量に得られた。 物理的性質を変化させ、そして欠陥を最少にする場合、トップダウンの方法のための黒鉛先駆物質によって本質的に支配される材料の形状も考慮しなければならない。

    [00137]グラフェンの幅と端部が材料の電子的性質を決定するのに重要な役割を果たすことが報告された。 CNTsは明確なグラフェンナノリボン(GNRs)を大量に製造するための公知の先駆物質である。 現在までに、合理的な収量を伴う幾つかの解決法が報告されている。 機械的に加工するのに有利な高い炭素アスペクト比のために、GNRsは、エネルギー関連デバイス、触媒、透明なタッチスクリーン、炭素繊維紡糸、導電性ポリマー複合材料の形成、および低損失高誘電率複合材料における用途のための有望な候補である。 用途について論じるとき、加工が可能なGNRsを大量に入手することが望ましく、その理由は特に、大部分の用途において良好に分散した溶液または懸濁液を調製することを要するからである。 初期のままのグラフェン物質は分散させるのが極めて困難であり、従って、官能化することが一般に必要である。

    [00138]黒鉛またはMWNTsのような層状の炭素物質は、それらの十分にπ共役化した芳香族系のために、安定している。 従って、従来の有機合成方法は特定の反応に限定される。 グラフェンをベースとする物質に近い関連化学物質である多環芳香族炭化水素(PAHs)は、求電子置換反応、求核反応、遊離基反応、付加反応、還元、酸化および再配置を受けやすい。 これらの反応の全てを、グラフェンの官能化のために用いることができる。 しかし、現在のグラフェンについての文献の報告は、大部分が酸化、水素化および還元による官能化方法に限定されている。 これらの方法によれば一般に、溶解度や分散性のような望ましい物理的性質を有する生成物が得られる。 これらの場合における官能化の度合いは比較的高く、その理由の大部分は、基部の面が官能化されるからである。 しかし、基部面の官能化は、π共役が乱されるために、抑制された導電性が必然的にもたらされる。 選択的な端部の官能化が、この問題に対する解決策かもしれない。 しかし、端部の官能化は、例えばGNRsにおいて、基部面の炭素に対する端部の炭素の高い比率を有する物質において物理的性質に影響を及ぼすに過ぎないように思える。

    [00139]本実施例において、出願人は、市販の多層カーボンナノチューブ(MWNTs)の壁の間でのカリウムのインターカレーションによって壁が長手方向に分裂し、そしてリボンに活性なカルボアニオン性(炭素陰イオン性)の端部を与える、という仮定についてさらに調査する。 従って、基部面と比較しての端部の高い反応性により、所望の求電子剤を伴うGNRsの端部が好ましい形で官能化されるだろう。 選択的な官能化により、導電性を犠牲にすることなく改善された溶解性がもたらされるだろう。 さらに出願人は、インターカレーションされた金属をハロアルカンで置換し、その場合、そのハロアルカンは最終的に官能化されるGNRsにおけるインターカレーション物質として用いられることについて調査した。

    [00140] 結果と検討
    [00141]端部のその場での選択的な官能化についての反応手順を図2に示す。 最初の工程において、市販のMWNTs(Nanotech Labs, Inc.(NTL)またはMitsui & Co.)をNa/K合金を用いて1,2-ジメトキシエタン(DME)の中で数日間にわたって処理した。 K(Naではない)は、上記の条件を用いてグラフェンのギャラリー(回廊状の部分)の中に容易にインターカレーションすることができ、そして黒鉛の薄片の中に良好にインターカレーションすることができるので、KはMWNTsの層の間にインターカレーションしたと出願人は考える。 出願人の先の研究によって、壁は膨張しやすいので、Kのインターカレーションに伴って壁の部分的な長手方向の割れが生じることが示された。 用いた条件の下で、端部の原子は還元されたカルボアニオンの形態にあり、従って、求電子剤の攻撃に対して非常に反応性で影響を受けやすいはずであると考えられる。 この還元性の分裂は、反応混合物の色が黒茶色または褐色から微細に分散した緑色または赤色の懸濁液に変化することで視覚化することができる。

    [00142]次の工程はその場での(in-situ)官能化である。 反応混合物にヨードアルカン(1-ヨードヘキサデカン、1-ヨードオクタンおよび1-ヨードブタン)を添加し、これはおそらくGNRsの端部の活性な部位と反応する。 反応が進むと、緑色または赤色が消える。 プロトンで官能化したGNRs(H-GNRs)を生成させるために、出願人は反応混合物をメタノールでクエンチした。 KC または段階1にできるだけ近い化学式を有するインターカレーションした化合物を得るために、過剰なNa/Kを用いた。 従って、ヨードアルカンを過剰に添加する必要があった。 これにより、反応溶液の中だけではなく、MWNTsの壁の間でも副反応が生じる。 副生物はアルカン、アルケン、およびアルカンの二量体を含む。

    [00143]図3に示すように、走査型電子顕微鏡(SEM)の画像は、MWNTsがGNRsに高い収率で分裂することを示している。 残っている全ての活性種をクエンチするために、出願人は反応混合物をメタノールで処理した。

    [00144]0.45μmのPTFE膜を用いてろ過することによって、粗物質(crude materials)であるヘキサデシル化GNRs(HD-GNRs)、オクチル化GNRs(O-GNRs)およびブチル化GNRs(B-GNRs)を捕集した。 ろ過ケークを有機溶媒と水を用いて洗浄した。 次いで、GNRsをソックスレー抽出に供し、それにより、物理吸着した不純物の大部分を除去した。

    [00145]分析を行う前に、生成物の全てを60℃で24時間にわたって真空中(約10 −2トル)で乾燥させた。 出願人の知っているかぎりでは、MWNTsを官能化GNR積層体に転化させるための、同様に効率の良いその場でのワンポット法は、これまでに報告されていない。 この合成の効率と大規模化の可能性は、その方法をさらに魅力的なものにする。

    [00146] GNRsの溶解性
    [00147]初期のままの黒鉛系物質の溶解性は一般に低いことが知られている。 塊状物を対象とする場合、物質を分散させることは非常に重要である。 溶解性を調査するために、出願人はHD-GNRsに焦点を当てた。 HD-GNRsは、簡単な超音波洗浄器を用いる短時間の音波処理の後に、クロロホルム中での溶解性と分散性において改善を示す。 図3において、出発物質としてのMWNTsをHD-GNRsと比較した場合、その差は明らかである。 HD-GNRsはクロロホルム中で数週間にわたって安定した分散性を示すが、一方、MWNTsは同じ条件を用いて分散させることはできない。

    [00148]出願人はまた、HD-GNRsとMWNTsについて様々な溶媒中で0.1mg/mLの濃度で溶解度の試験を行った。 図4を参照されたい。 HD-GNRsは2-プロパノール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘキサンおよびクロロベンゼンなどの一般的な有機溶媒中で良好に分散することができる。 1時間後、HD-GNRsはヘキサンとジエチルエーテルの中で沈降したが、他の溶媒中では分散したままであった。 四日間保存した結果、クロロホルムとクロロベンゼンにおける場合を除いて、全ての懸濁液において沈降が生じた。 クロロホルムとクロロベンゼンにおいては、数週間にわたって良好に分散したままであった。

    [00149]SiO /Si基板上のドロップキャストしたHD-GNRsの低倍率のSEM画像と光学顕微鏡画像は、これが良好に分散した材料であることを示す。 図5を参照されたい。 しかし、出発物質としてのMWNTsは、試験した全ての溶媒において1時間未満で沈降を示した。 従って、HD-GNRsは、有機物の分散性が重要である場合の用途に対する良好な候補である。

    [00150] GNRsの導電性
    [00151]官能化したGNRsにおける望ましい特性は導電性の保持であり、特にそれらが透明な電極あるいは超コンデンサー、リチウムイオン電池および太陽電池のようなエネルギー関連デバイスにおいて用いられる場合にそうである。 出願人は、石版印刷法を用いてGNR積層体の両端に20nmの厚さのPtコンタクト(接続点)を付着させることによって、単一のHD-GNRデバイスを製作した。 図6Aを参照されたい。 このデバイスにおいて用いられたHD-GNR積層体は、7.9μmの長さ、約300nmの幅(図7)および約30nmの厚さを有していた。 厚さは原子間力顕微鏡(AFM)の画像から見積もられた。 図8を参照されたい。 調製されたままの状態で、単一のリボンのデバイスは、式1によって測定して、600S/cmの導電率を示した。

    [00152]導電率を計算するために用いられたデータを表1にまとめる。

    [00153]デバイスを300℃でアニールすると、導電率はほぼ6倍の3540S/cmに増大した。 理論に拘束されるのではないが、調製されたままのサンプルと300℃でアニールしたサンプルとの間でこのような導電率の差が生じるのには、少なくとも2つの理由があると考えられる。 導電率は、部分的には電極とGNR積層体との間のコンタクトが改善されたために増大したかもしれない。 しかし、Ptコンタクトを伴うグラフェン物質についての以前の研究は、炭素をPtで十分に濡らすことによって低い障壁のコンタクトがもたらされることを示している。 従って、主な原因は、グラフェンのギャラリー(回廊状の部分)からの炭化水素のデインターカレーションのためのようである(しかし、必ずしも脱官能化によるのではない)。

    [00154]インターカレーションされたグラフェンのギャラリーは、アルカンが公知の絶縁体であるから、電気的に互いに分離している。 デインターカレーションによってグラフェンの層どうしの相互作用は回復する。 HD-GNRsを300℃で2時間加熱した対照の実験によって、アニールした後のそれらのクロロホルム中での溶解度は調製したままのHD-GNRsと同等であることが示された。 後者の結果は、HD官能基が300℃までの温度においてそのまま保たれることが支持されることを表す。 デバイスをさらに900℃まで加熱すると、この温度においてHD官能基はGNRsから切り離されると予想されるのであるが、導電率は4260S/cmに増大した。 この小さな増大は、端部の官能化によってグラフェンの基部面の導電性は実質的に妨げられないことを示しているかもしれない。 官能化HD-GNRsの導電率は、黒鉛(200〜8300S/cm)、CNTs(1000〜100000S/cm)およびGNRs(約800S/cm)
    といった、初期のままの物質について以前に文献で報告された値と同等であり、従って、さらなる研究のために興味深い。

    [00155]調製したままのサンプルの塊状のものの導電率も、式2に従って、プレスしたペレットについての四点プローブによる測定を用いて測定した。

    [00156]同様に、145〜175S/cmの範囲の比較的高い導電率が観察され、これは出発原料であるMWNTsの導電率よりも2.5倍しか小さくない。 図9を参照されたい。

    [00157] GNRsについての発生したガスの分析(EGA)
    [00158]インターカレーションと対比して端部の官能化を確認することは、特に端部以外の炭素に対して端部の炭素の度合いが低いと予想されるために、現在でもやりがいのあることである。 250nmの幅と2.7μmの長さの寸法(図7に示すように、SEM画像から見積もった寸法)を有する平均的なGNRs積層体は、GNRsの中でわずかに0.05原子%の端部の炭素を有するはずである(図10)。 端部の炭素の全てが官能化された場合、官能基は総重量でHD-GNRsに対して1重量%となり、O-GNRsについて検討した場合は0.5重量%、そしてB-GNRsについて検討した場合は0.25重量%となるだろう。

    [00159]予想される官能化の度合いは低いので、出願人は、熱による影響を受けた生成物を検出するために四重極質量分析計(QMS)と組み合わせた熱重量分析(TGA)を用いた。 QMSの感度により、アルキル化グラフェンナノリボン(A-GNRs)の量的な性質について何らかの洞察が得られるはずである。 HD-GNRsのTGAは、40℃と900℃の間の範囲で37%の総重量損失を示し、これは予想される値の1%よりもはるかに多い(図11A)。

    [00160]参照の化合物であるヘキサデカンは特殊なフラグメント(断片)のパターンを有し、m/z=57、43、71、85、29および99において強度が低下する多数のフラグメントを有する。 同様のパターンはオクタンのm/z=43、57、29、85、71、およびブタンのm/z=43、29、15、57についても予想される。 これらのフラグメントはTGAを行う間に発生したガスの中でも見いだされ、このことは、A-GNRsのサンプルの中にアルキル基が存在することを示す(図11)。

    [00161]しかし、HD-GNRの熱分解生成物からの排ガスの中にアルキル基が存在する三つの異なる温度範囲が存在する(図11A)。 第一は154℃と374℃の間の範囲(領域I)であり、ここでの重量損失は26%である。 第二の範囲は400℃と474℃の間であり、重量損失は2%である(領域II)。 480℃と612℃の間の第三の範囲は2%の重量損失を示す(領域III)。

    [00162]ここで説明したように、領域Iはアルカンのデインターカレーションに相当する。 領域IIとIIIは共有結合したアルキル基に相当し、大部分はヘキサデシルのようである。 領域IIについての温度間隔は、様々な炭素の基体に共有結合で付加した有機成分について前に報告したものと一致する。 質量分析計の検出限界は100原子質量単位以下である。 従って、ヘキサデシル成分に相当する分子イオンは検出することができなかった。 領域IIにおいて存在するフラグメントのm/z29、15、43、57、85および71は、ヘキサデシル基の熱開裂によるフラグメンテーション(分解)が最も起こりやすいようであることを示している。 領域IIIにおいて存在する主要なフラグメントはメチル基とエチル基(m/z15、29)であり、これらはグラフェンの基体に直接結合していたヘキサデシル基の残りのものであるかもしれない。 O-GNRsとB-GNRsについて同様の結果が得られ(図11Aおよび図11C)、領域Iについてそれぞれ、139℃と293℃の間で7重量%の損失および121℃と247℃の間で4重量%の損失を出願人は観察した。 O-GNRsについて448℃と526℃の間の領域IIは1重量%の損失を示し、一方、526℃と628℃の間の領域IIIは1.3重量%の損失を有していた。 B-GNRsは、328℃と453℃の間の領域IIについて1.3重量%の損失を示し、そして453℃と636℃の間の領域IIIについて1.7重量%の損失を示す。 このデータおよび領域IIとIIIは同じ官能基に相当するがしかし異なるフラグメンテーション温度を有するという仮定に従えば、官能化の度合いはHD-GNRsについて4.6%、O-GNRsについて2.3%、そしてB-GNRsについて3%である。

    [00163]溶媒と活性なGNRsとの間の反応を除外するために、メタノールでクエンチしたGNRs、すなわち水素を末端基としたGNRs(H-GNRs)のEGAも行った。 TGA-MS分析によって、400℃と600℃の間のメチルのフラグメントであるm/z15以外の全てのフラグメントが存在しないことを確認した(図12)。 メチルのフラグメントは、炭素が水素を末端基としているかあるいは少量のメタノールからのものであると予想される欠陥と端部における連続的な開裂を伴う再配置の結果であるかもしれない。

    [00164] HD-GNRsのX線粉末回折(XRD)分析
    [00165]領域Iにおけるデインターカレーションの直接の証明を行うために、240℃、530℃および900℃の温度で加熱処理したHD-GNRsを調製した。 次いで、サンプルのXRDディフラクトグラム(回折データ)を記録し、分析した(図12A)。 240℃で2時間にわたって加熱したサンプルについての総重量損失は26%であり、これは図13Aにおける領域Iでの重量損失に相当する。 530℃で2時間にわたって加熱したサンプルについて、重量損失は32%であり、そして900℃で20分にわたって加熱したサンプルについて、重量損失は39%であった。 熱処理したHD-GNRsのサンプルについてのTGAの分布を図14に示す。

    [00166]調製したままのサンプルについてのXRDディフラクトグラムは12.0°と24.2°の2θ角において顕著な回折ラインを含み、これらはそれぞれ、段階1のインターカレーション化合物の(001)および(002)の信号に相当する。 計算したc軸の反復距離(Ic)は0.738nmであり、これはインターカラント(挿入物質)の層を挟み込む2つの炭素層の間の典型的な間隔(ds)である。 図13Aからわかるように、12.0°と24.2°の信号の両方が240℃で加熱した後に消失する。 代わって、黒鉛の(002)の信号に相当する26.2°の2θ角における新たな回折ラインが現れる。

    [00167]240℃まで加熱して、次に室温まで冷却したサンプルは、十分にインターカレーションした調製したままのサンプルと240℃で2時間にわたって加熱したサンプルとの間の中間状態であると考えることができる。 240℃まで加熱する間の重量損失は約12%であった(図14)。 加熱してから冷却したサンプルは24.2°の信号と26.2°の信号の両方を約1:2の比率で含む(図15)。 興味深いことに、そのサンプルにおいて中間段階の化合物は何も検出されなかった。

    [00168]このような結果は黒鉛のインターカレーション化合物(GICs)については予想外である。 この場合、黒鉛は徐々にインターカレーションし、次いで、徐々にデインターカレーションし、全ての段階が連続的に進行する。 そうではなく、出願人は、段階1であるGICとインターカレーションされていない黒鉛のGNRsの2つの段階だけを検出した。 理論に拘束されるのではないが、混合段階は異なるGNRsから由来することを、出願人は提示する。 個々のGNRsは迅速かつ完全にデインターカレーションするようである。 従って、観察された「混合段階」は、完全にインターカレーションされ、そして完全にデインターカレーションされた個々のGNR積層体の混合であると予想される。

    [00169]530℃と900℃の温度で加熱されるサンプルは完全にデインターカレーションされ、そしてH-GNRsまたは出発物質であるMWNTsと同じディフラクトグラム(回折データ)を与える(図13B)。 領域IにおけるO-GNRsとB-GNRsについて7%と4%の重量損失も観察したので、調製されたままのサンプルについてもXRDディフラクトグラムを記録した。 しかし、O-GNRsはHD-GNRsと類似するインターカレーション化合物を示し、そのグラフェン層の間のIc間隔は0.731nmである。 興味深いことに、B-GNRsは、そのディフラクトグラムがH-GNRsまたはMWNTsと同一なので、インターカレーションを何ら示さない(図13B)。

    [00170]理論に拘束されるのではないが、上述の観察結果の理由はインターカラントのサイズにあるかもしれないと考えられる。 HD-GNRsの場合、それは少なくとも16〜32の炭素鎖であると予想される(後者は二量体生成物である)。 O-GNRsについては、その間隔は0.731nmの約半分であろう。 B-GNRsについては、その間隔は0.731nmの約4分の1であろう。 ヘキサデカンとオクタンは高沸点の液体であり、一方、ドトリアコンタンは固体である。 他方において、ブタンはかなり揮発性のガスのようであり、移動しやすいために安定したGICを形成する。 HD-GNRsについて、提案される主要なインターカラントはドトリアコンタンであるが、しかし他のものも排除できない。

    [00171]先に検討したように、HD-GNRsの合成は副生物をもたらし、これらもインターカラントである可能性がある。 2つの対照の実験により、ドトリアコンタンは実際に主要な成分であることの証拠が得られた。 第一の対照の実験において、DME中のNa/Kの分散液の中に1-ヨードヘキサデカンを添加した。 ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)によって、反応混合物の中で少量の成分としての1-ヘキサデセンとヘキサデカン(それぞれ21%と19%)および主要な成分としてのドトリアコンタン(60%)の存在が示された。

    [00172]調製したままのHD-GNRsを用いた別の実験を行った。 HD-GNRsを真空中にて150℃で加熱した。 0℃に冷却した指形冷却器を装置に接続することにより、放出された生成物を捕捉した。 収集した蒸気のGC-MSを用いての分析によっても、主要な成分としてドトリアコンタン(45%)が示された。 検出されたその他の成分は1-ヘキサデセン(6%)、ヘキサデカン(35%)および出発物質としての1-ヨードヘキサデカン(13%、図16に示すように、GC-MS分析について)であった。

    [00173] HD-GNRsの固相 13 C核磁気共鳴分光分析(SSNMR)
    [00174]インターカラントの特性をさらに調査するために、2つのタイプのマジック角回転(MAS)NMRの実験を行った。 HD-GNRsのかなり高い導電性のために深刻なプローブの回転の問題が生じ、このために有用な H- 13 Cの交差偏光(CP)と直接の13 Cパルススペクトルを得ることが最初に妨げられた。 しかし、サンプルをシリカの中に分散させることにより(黒鉛3013 Cスペクトルを得るために前に用いた方法)、10重量%のHD-GNRsと90重量%のシリカのサンプルに13 Cと Hのチャンネルを適切に同調させることができた。

    [00175]加熱されない物質のCPスペクトルにおいて(図17、赤色のスペクトル)、2つの広くて重なった帯域が明らかである。 約90ppmを中心とする帯域は次の幾つかのタイプの炭素からのものであると考えられる:グラフェンのシートのsp C-H炭素、グラフェンのシートsp 炭素、これらはシートの端部上または端部の近傍あるいは共有結合したヘキサデシル基またはインターカレーションしたアルカンの近傍にあり、従って、交差偏光することができる、そして共有結合したヘキサデシル基とインターカレーションした副生物(例えば、ヘキサデカン、1-ヘキサデセンおよびドトリアコンタン)の中のメチレン炭素からの信号のダウンフィールドテール(downfield tail)からのもの。 約90ppmを中心とする帯域は異常に広くて遮蔽されているが、これはシリカの中に分散した黒鉛の直接の13 Cパルススペクトルにおいて検出された炭素からの信号である。 約90ppmを中心とする帯域が広いことは、少なくとも一部においては、グラフェンのシートにおける磁気感受性の異方性をMASによって完全には除去できないことが原因であるかもしれず、一方、遮蔽については、極めて大きな濃縮した芳香族環系における多数のグラフェン炭素の遮蔽テンソルのδ 33成分の反磁性シフトによるものかもしれない。 この広帯域化と遮蔽は、酸化黒鉛が着実に減少し、そしてますます黒鉛のようになることが観察されることを思い起こさせる。

    [00176]図17における約0ppmを中心とする帯域は、上で示したメチレンの炭素およびグラフェンのシートのsp 炭素からの信号のアップフィールドテール(upfield tail)からのものであると考えられる。 約0ppmを中心とする帯域も異常に遮蔽されていて、これは、共有結合したヘキサデシル基またはインターカレーションしたアルカンがグラフェンのシートの間に挟みこまれていて、従って、グラフェンのシートの中で非局在化した電子(π電子の環状電流)から生じる大きな反磁性感受性を受ける場合に予想されるものであろう。 実際に、端部にドデシル基を有する無煙炭において、劇的な遮蔽効果は少ないがしかしずっと良好な解像度が観察される。

    [00177]それに対して、[12]-パラシクロファンや様々な1,n-ジオキサ[n](2,7)ピレネオファンのような分子における芳香環の上にあるように拘束されるメチレン鎖における中央のメチレン炭素は、極めて小さな環状電流の遮蔽効果だけを受ける。 HD-GNRsにおけるメチル炭素からのずっと弱い信号は認めることができない。

    [00178]加熱されていない物質(図17、黒色のスペクトル)についての双極性デフェージング(dipolar dephasing)の実験における50μsのデフェージング期間は約90ppmを中心とする帯域をかなり弱め、そして約0ppmを中心とする帯域を完全に消失させる。 このデフェージング期間は、第四炭素の信号が最小に減衰するのと共にCHおよびCH の信号が消失するように設定されるので、基本的な(赤色の)CPスペクトルにおけるより小さな遮蔽帯域はグラフェンのシートのsp C-H炭素と様々なメチレン炭素からの信号のダウンフィールドテールからかなりの寄与を受け、一方、基本的なCPスペクトルにおけるより大きな遮蔽帯域は様々なメチレン炭素とグラフェンのシートのsp C-H炭素からの信号のアップフィールドテールと一致する。 共有結合したヘキサデシル基とインターカレーションしたアルカンの比較的に不動性の性質によって、それに相応して強い H- 13 Cの双極子−双極子相互作用が生じ、両者はこれらのメチレン基が交差偏光し(赤色のスペクトル)、次いでその信号が急速に衰退する(黒色のスペクトル)のを可能にする。 デフェージングの実験における約90ppmを中心とする極めて弱い信号は、弱く交差偏光したグラフェンのシートのsp 炭素からの減衰した信号の結果かもしれない。

    [00179]加熱した物質のCPスペクトル(図17、青色のスペクトル)は、ノイズを超える信号を何も示さない。 導電率、TGAおよびXRDの結果からわかるように、この温度における脱官能化とデインターカレーションは十分である。 共有結合したヘキサデシル基またはインターカレーションしたアルカンは残っていないので、NMR信号は何も検出されない。 加熱していない物質のスペクトル(赤色のスペクトル)において信号を発生させるためのこれらヘキサデシル基とアルカンの重要性は明らかである。

    [00180] HD-GNRsのラマン分光分析
    [00181]調製したままのサンプルのラマンスペクトルは、加熱したサンプルと比較してかなり増大している(図18)。 これは、インターカレーション化合物の形成を支持するさらなる論拠である。 幾つかの化学種は黒鉛の中にインターカレーションされるとき、あるいはグラフェンの表面上に単に物理吸着されるとき、ラマンスペクトルが増大することが知られている。 しかし、Gピークの青色シフトは何も検出されない。 このことは、HD-GNRsにおけるインターカラントは炭素に対して中性であり、炭素の層を満たさないことを示唆する。 調製したままのサンプルのスペクトルは、約1360cm −1における極めて高い強度のDピークと約2950cm −1におけるG+D'ピークを含む。 このことは、分裂とインターカレーションによって系の中にかなりの不規則性が誘起されたことを示唆する。 大部分の公知のGIC化合物について、インターカレーションによってはD帯域の出現を招かないので、このような結果は予想外である。 加熱するのに伴ってD帯域は次第に低下し、最後はインターカレーションされていない分裂したGNRsと同じ大きさになる。 D/G比は不規則さの尺度であると考えられる。 これが低下するという事実は、インターカラントが除去されるときにインターカラントが減少することによって不規則さが生じることを示唆する。 元のMWNTsとGNRsの両者における2Dピークは単一のローレンツ形をとり、このことはABの積層がないことを示す。 MWNTにおける層(壁)は異なるキラリティーを有するので、これは全く当然のことである。 それらは分裂した後にもそれらの構造を保持する。 従って、GNRにおける層はある程度の単層の特徴を有する。

    [00182]理論に拘束されるのではないが、出願人は、グラフェンのシートの間でインターカレーションしたKと1-ヨードアルカンの反応が起こるときにだけインターカレーションが可能であると仮定する。 副生物のKIは押出され、一方、新たに形成されるアルカンとアルケン(および共有結合したアルキル基)がシートの間でそれらの位置を占める。 このプロセスに対しては、「置換によって駆動されるインターカレーション」という言葉が導入される。 後者の仮説を部分的に確認するために、出願人は対照の実験を行い、このとき1-ヨードヘキサデカンの代わりにヘキサデカンを用いた。 同じ反応条件の下でインターカレーションは観察されず、このことはXRDによって確認されたが(図19)、このとき26.2°の2θ角において(002)の信号が観察され、これはインターカレーションされていない物質に相当する。 この結果はTGAによっても確認され(図20)、このとき出願人は、室温と800℃の間の領域において約2%の重量損失を観察した。

    [00183] 要約
    [00184]本実施例において、その場で(in-situ)官能化したGNRs積層体への市販のMWNTsの高い歩留まりの転化が、還元的方法によって達成された。 長いアルキル鎖を含むGNRsはアルコール、ケトン、エーテルおよびアルカンのような有機溶媒の中で良好に分散しうる。 特に安定した分散液はクロロホルムまたはクロロベンゼンにおいて生成する。 HD-GNRsは比較的高いGNRの導電率ならびに塊状物質の導電率を示す。 基部の面の共役π系の中断を最小限にすることによって、単一のデインターカレーションされたHD-GNRについての約3540S/cmの導電率が達成された。 従って、官能化を好ましくはグラフェンの端部で行うことを出願人は提案する。 端部の官能化の概念は、単一および塊状の官能化した物質のEGA、向上した溶解度、および比較的に高い導電率によって部分的に裏づけられた。 HD-GNRsおよびO-GNRsについて、インターカレーションされた加数(addends)の置換が観察され、そして入念に調査された。 TGA-MSによって、140℃と300℃の間の温度におけるアルカンとアルケンのデインターカレーションが示された。 調製されたままのサンプルについての段階1のインターカレーション化合物が、XRDによって明らかにされた。 興味深いことに、中間段階の化合物は何も検出されなかった。 ドトリアコンタンがHD-GNRsにおける主要なインターカラント化合物であることが、GC-MSによって示された。 さらに、HD-GNRsの固相13 C核磁気共鳴スペクトルは共有結合したヘキサデシル基およびインターカレーションされたアルカンにおけるメチレン炭素の存在と一致したが、それは、加熱することによってサンプルがデインターカレーションおよび脱官能化された後に、メチレン炭素に基づく信号は異常に遮蔽され、そして消失するからである。 同様に、調製されたままのサンプルについてのラマン分光分析によって、インターカレーション化合物が示された。 インターカレーションされたHD-GNRsを約300℃まで熱処理することによって完全にデインターカレーションされることが、XRDおよびラマン分光分析によって明らかになった。 しかし、デインターカレーションされたHD-GNRsは有機溶媒の中でなおも可溶性であるので、共有結合した官能基はその温度(約300℃)において安定であり、依然として高い溶解性を提供する。

    [00185] 物質および方法
    [00186]特に示さない限り、乾燥したガラス器具の中でN 雰囲気の下で反応を行なった。 試薬等級の1,2-ジメトキシエタンをArを用いてガス抜きし、N 雰囲気の中でナトリウムの上で環流し、そして新たに蒸留した。 その他の溶媒は、さらに蒸留を行うことなく用いた。 MitsuiのMWNTsをMitsui & Co. から得た(ロット番号:05072001K28)。 Nanotech Labs, Inc. からNTL-M等級のMWNTsを得た(5T10M10)。 その他の全ての市販の試薬は受け入れたままで用いた。 N グローブボックスの内部のバイヤルの中で液体のNa/K合金を調製したが、これは、溶融プロセスを促進するためにピンセットを用いて新たにカットしたK(1モル当量)とNa(0.22モル当量)のチャンクを一緒に押し込むことによって行った。 示した液体のNa/K合金の量は容積によるものである。

    [00187]Na/K合金を含めた全ての合成工程は、空気または水分を厳密に排除して不活性ガスの下で極度の注意を払って行うべきであり、常に適切な個人保護物(フード、爆風の遮蔽物、顔の遮蔽物、保護性および耐火性の衣服)を用い、そして着用すべきであることに留意されたい。 1-ヨードヘキサデカン、1-ヨードオクタンおよび1-ヨードブタンは全てSigma-Aldrichから得て、そしてさらなる精製を行わずに受け入れたままで用いた。 生成物を精製する際には会社内製の脱イオン水を用いた。

    [00188] 官能化GNR積層体の合成およびインターカレーション置換
    [00189]磁気攪拌棒を有していてオーブンで乾燥した250mLの丸底フラスコにMWNTs(100mg、8.3ミリモル)を加えた。 次いで、この容器をN グローブボックスに移し、そこに新たに蒸留した1,2-ジメトキシエタン(35mL)と液体のNa/K合金(0.29mL)を添加した。 次いで、この懸濁液が入ったフラスコを隔壁で封止し、そしてグローブボックスから取り出し、(超音波洗浄器Cole-Parmerモデル08849-00を用いる)短い5分間の超音波処理によって懸濁液を分散させ、それにより暗緑色ないし赤色の懸濁液を得た。 超音波処理を行った後、反応混合物を室温において3日間(450RPMで)激しく攪拌した。 次いで、反応後の懸濁液を、シリンジを用いて1-ヨードアルカン(8.75ミリモル)を添加することによってクエンチし、そして室温でさらに1日間攪拌した。 次いで、メタノール(20mL、500ミリモル)を添加して、それにより全ての余分なNa/K合金をクエンチした。 次いで、混合物を室温において10分間攪拌した。 精密検査のために、反応混合物を0.45μmの細孔サイズのPTFE膜に通してろ過した。 ろ過ケークをTHF(100mL)、i-PrOH(100mL)、H O(100mL)、i-PrOH(100mL)、THF(100mL)、Et O(10mL)を用いて連続して洗浄し、次いで、THFを用いてソックスレー抽出を3日間行い、そして生成物を(約10 −2ミリバールの)真空中で24時間にわたって乾燥させた。

    [00190] 電子顕微鏡検査
    [00191]サンプルをクロロベンゼンの中に分散させ、そして素早く分散させるために超音波洗浄器を用いて浴中で15分間にわたって音波処理した。 100nmのSiO /Si基板の上に滴を注ぎ、そしてFEI Quanta 400 ESEM FEG走査型電子顕微鏡とJEOL-6500電界放出顕微鏡の下で大面積低解像度画像を撮った。

    [00192] 導電率の測定
    [00193]500nmの厚さの熱SiO 層で覆った高度にドープしたSi基板の表面上にSEM(JEOL-6500顕微鏡)によって個々のGNRsを引き、標準的な電子ビームリソグラフィによって20nmの厚さのPtコンタクトをパターン形成することによって、HD-GNRデバイスの製作を行った。 プローブステーション(Desert Cryogenics TTプローブ6システム)を用いて真空下でチャンバの基礎圧力を10 −5トル未満として、電気輸送特性を試験した。 Agilent 4155C半導体パラメーター分析器によってIVデータを集めた。

    [00194] 発生ガスの分析(EGA)
    [00195]Netzsch 449 F3 Jupiter(登録商標)装置を用いて60mL/分の流量で流動するAr(5.0)の下で25℃から900℃までの温度範囲で、熱重量分析を行った。 10K/分の加熱速度を用いた。 アルミナ(Al )のルツボの中に約5mgのサンプルを置いた。 同時に、SEM Chenneltron検出器を伴ったMS 403C Aeolos(登録商標)を用いて、2×10 −5ミリバールのシステム圧力で質量分光分析を行った。 TG熱処理によって発生したガスを輸送毛管(220℃に加熱した石英、内径75μm)を通して質量分光分析器へ送った。 質量分光分析検出器の上限は100AMUであった。

    [00196] XRD
    [00197]Cu Kα放射線(λ=1.5418Å)を用いるRigaku D/Max 2550回折計を用いてX線粉末回折(XRD)を行った。 必要に応じて、得られたデータをJade 9ソフトウェアパッケージを用いて分析し、加工した。

    [00198] GC-MS
    [00199]Agilent 5973ネットワーク質量選択検出器につないだAgilent Technologies 6890NネットワークGC装置を用いてGC-MSを行った。

    [00200] SS 13 C NMR分光分析
    [00201]直径4mmの回転子のマジック角回転(MAS)に対するプローブを用いるBruker Avance 200分光分析器を用いて、50.3MHz 13 Cにおけるスペクトルを得た。 化学シフトは、176.46ppmに定めたグリシン中のカルボニル炭素と関係がある。 図17におけるサンプルの両方をシリカ中に分散させた(10重量%のサンプル、90重量%のシリカ)。 官能化してインターカレーションしたHD-GNRsの H- 13 CCPスペクトル(図17における赤色の曲線)についてのパラメーターは次の通りである:7.6kHzMAS(従って、全ての回転側帯域は中心帯域から+または−151ppmの倍数である)、90° Hパルス=2.4μs、接触時間=1ms(勾配した振幅のプロトンパルスを伴って)、FID=32.8ms(スピナル64の減結合を伴って)、緩和遅れ=5s、走査の数=40400、ラインの拡大=FIDの加工において用いる50Hz(1ppm)。 官能化してインターカレーションしたHD-GNRsの H- 13 CCP/双極性デフェージングスペクトル(図17における黒色の曲線)についてのパラメーターは次の通りである:上のものと同じであるが、ただし、中央の8.3-μs、180° 13 C再焦点パルスを伴う一対の25-μsデフェージング期間はFID収集(FID acquisition)の直前にあった。 900℃で20分間加熱した官能化してインターカレーションしたHD-GNRsの H- 13 CCPスペクトル(図17における青色の曲線)についてのパラメーターは、85000回の走査を行ったことを除いて、加熱しないサンプル(赤色の曲線)についてのものと同じである。 100%シリカ(対照のサンプル)の H- 13 CCPスペクトルについてのパラメーターは、55000回の走査を行ったことを除いて同じである。 信号は何ら検出されなかった。

    [00202] ラマン分光分析
    [00203]40倍のレンズを有するRenishow Raman RE01顕微鏡を用いてラマンスペクトルを得た。 励起を行うために514nmの波長のレーザーを用いた。

    [00204] 非官能化GNRs(H-GNRs)の合成
    [00205]磁気攪拌棒を有していてオーブンで乾燥した250mLの丸底フラスコにMWNTs(100mg、8.3ミリモル)を加えた。 次いで、この容器をN グローブボックスに移し、そこに新たに蒸留した1,2-ジメトキシエタン(35mL)と液体のNa/K合金(0.29mL)を添加した。 次いで、この懸濁液が入ったフラスコを隔壁で封止し、そしてグローブボックスから取り出し、短い5分間の超音波処理によって懸濁液を分散させ、それにより暗緑色ないし赤色の懸濁液を得た。 超音波処理を行った後、反応混合物を室温において3日間(450RPMで)激しく攪拌した。 次いで、反応後の懸濁液を、シリンジを用いてメタノール(20mL、500ミリモル)を添加することによってクエンチし、そして室温で10分間攪拌し続けた。 反応混合物を0.45μmの細孔サイズのPTFE膜に通してろ過した。 ろ過ケークをTHF(100mL)、i-PrOH(100mL)、H O(100mL)、i-PrOH(20mL)、THF(20mL)、Et O(10mL)を用いて連続して洗浄し、そして高真空下で乾燥させた。

    [00206] 1-ヨードヘキサデカンとMWNTsを含まないNa/Kとの対照の反応
    [00207]磁気攪拌棒を有していてオーブンで乾燥した5mLの丸底フラスコをN グローブボックスに移し、そこに新たに蒸留した1,2-ジメトキシエタン(DME、40mL)と液体のNa/K合金(0.057mL、1.29ミリモル)を添加した。 次いで、この懸濁液が入ったフラスコを隔壁で封止し、そしてグローブボックスから取り出し、5分間の超音波処理によって懸濁液を分散させ、それにより青色の懸濁液を得た。 超音波処理を行った後、反応混合物を室温において1時間(450RPMで)激しく攪拌した。 次いで、反応後の懸濁液を、1-ヨードヘキサデカン(1mL、2.56ミリモル)を添加することによってクエンチし、そして室温でさらに1日間攪拌した。 次いで、反応混合物をCH Cl を用いて蒸留し、そしてGC-MS分析を行った。

    [00208] ヘキサデカンとMWNTsを用いる対照の反応
    [00209]磁気攪拌棒を有していてオーブンで乾燥した100mLの丸底フラスコにMWNTs(100mg、8.33ミリモル)を加えた。 次いで、この容器をN グローブボックスに移し、そこに新たに蒸留した1,2-ジメトキシエタン(26mL)と液体のNa/K合金(0.13mL、3ミリモル)を添加した。 次いで、この懸濁液が入ったフラスコを隔壁で封止し、そしてグローブボックスから取り出し、短い5分間の超音波処理によって懸濁液を分散させ、それにより暗緑色ないし赤色の懸濁液を得た。 超音波処理を行った後、反応混合物を室温において3日間(450RPMで)激しく攪拌した。 次いで、反応後の懸濁液にシリンジを用いてヘキサデカン(0.6mL、3.34ミリモル)を添加し、そして室温でさらに1日間攪拌した。 次いで、MeOH(21mL)を添加することによって反応混合物をクエンチし、そして室温で10分間攪拌した。 精密検査のために、反応混合物を0.45μmの細孔サイズのPTFE膜に通してろ過した。 残った固形物をTHF(100mL)、i-PrOH(100mL)、H O(100mL)、i-PrOH(20mL)、THF(20mL)、Et O(10mL)を用いて連続して洗浄し、そして高真空下で乾燥させた。

    [00210] 実施例5. ポリマー官能化グラフェンナノリボンのワンポット合成
    [00211]本実施例においては、「ワンポット」合成でのポリマー官能化グラフェンナノリボン(PF-GNRs)の調製について説明する。 気相または液相の条件下でMWNTsをカリウムによってインターカレーションして、次いでビニルモノマーを添加することによって、PF-GNRsを形成した。 PF-GNRsの特徴づけを行うために、走査型電子顕微鏡検査、熱天秤質量分析およびX線光電子分光分析を用いた。 ここではまた、MWNTsの分裂、インターカラントの固有特性、および出発MWNTsの黒鉛化の度合いの間の相互関係についても調査した。

    [00212] 結果および検討
    [00213]この調査において用いたPF-GNRsのワンポット合成のための合成手順を図21に示す。 インターカレーションと分裂によって、MWNTsは負に帯電した重合高分子開始剤に転化された。 理論に拘束されるのではないが、分裂した管の端部にアリール陰イオンとそれらが関連する金属陽イオンが並ぶと考えられる。 第二に、負に帯電したGNRの端部とビニルモノマーとの間の不飽和炭化水素の陰イオン性重合によってPF-GNRsが生じる。

    [00214]PF-GNRsを製造するために、MWNTs、カリウム金属、ナフタレンおよびテトラヒドロフラン(THF)をシュレンク管の中に充填し、次いでこれを、酸素を除去するために3回の凍結融解ポンプサイクルに供した。 理論に拘束されるのではないが、溶媒で安定化したカリウム陽イオンがMWNTsの中へインターカレーションすることによってMWNT層の間のd間隔が拡張し、それによりMWNTsが部分的に分裂するのであろうと考えられる。 オレフィン(この場合には、例えばスチレンとイソプレン)が導入されるときに、MWNTsの側壁の裂け目は、さらなる分裂と剥離のための起点として役立つかもしれない。 ナノチューブの内側が重合化するために、MWNTsの分裂と剥離を生じさせるためには少量のオレフィンだけで十分であった。

    [00215]インターカレーションと重合化の後のMWNTsを画像化するために、走査型電子顕微鏡検査(SEM)を用いた。 数百nmの範囲の幅を有するPF-GNRsが図22〜25に明瞭に示されている。

    [00216]ポリスチレン鎖の存在を量的に確認し、モノマー単位の量を見積り、そしてPF-GNRsが分解する温度間隔を測定するために、熱天秤質量分析(TG/MS)を用いた。 図26を参照されたい。 表面に物理吸着した成分の影響を排除するために、ソックスレー抽出器の中のクロロホルムによって全てのPF-GNRsを一週間にわたって抽出し、次いで、60℃で一晩乾燥させた。 熱重量分析(TGA)のサーモグラム(図26A)は、100℃と900℃の間の9%の総重量損失を伴う一段階プロセスを示している。 主要な分解は384℃と474℃の間で生じた。 MS分析とこれまでの所見によれば、これはポリスチレンの解重合が起こる範囲である。

    [00217]78、77、51および50の質量対電荷の比(m/z)を有する帯電した分子のフラグメントも認められた。 スチレンモノマー(予想される分解生成物)について明確な強度も認められた。 出発物質であるMWNTsを用いる対照の実験も行われ、このとき、重量損失は何ら認められなかった(図26Aにおけるオリーブ色の曲線)。 384℃と474℃の間の重量損失に基づいて、グラフェン物質のスチレンモノマー単位と炭素原子の間の比率は、1:135であった。 もしグラフェンナノリボンの端部の炭素の全てが官能化したとすれば、これらのデータは、3μm×150nmのリボンについての平均のポリマー鎖の長さが9単位であることを意味するであろう。 図27を参照されたい。

    [00218]GNRsの黒鉛構造の特徴づけを行うために、ラマン分光分析も用いられた。 MWNTsについての0.15からGNRsについての0.35までの、D帯域からG帯域にわたる強度の増大が認められた。 図26Bを参照されたい。 MWNTsが分裂したとき、顕著なDピークはグラフェン構造における不規則化の指標である。 また不規則構造は、GNRsにおける約2700cm −1でのG帯域と2D帯域ならびに結合モードのD+G帯域のわずかな広がり生じさせる。 しかし、インターカレーションした黒鉛構造体に相当するG帯域の分裂はラマンスペクトルにおいて認められず、このことは、GNRsの中に捕捉された残留のインターカラントまたは溶媒は無いことを意味する。 GNRsの表面の官能性を調査するために、X線光電子分光分析(XPS)を用いた。 図26Cにおけるサーベイスペクトルは、GNRsにおいて酸素が検出されなかったことを示す。 このことは図26Cの挿入図における高分解能XPSC1sスペクトルによってさらに確認され、これにおいて286eV(C−O)または287eV(C=O)に相当するピークは認められなかった。

    [00219]反応性のGNR陰イオンによって開始する重合についてさらに調査するために、MWNTsを350℃において24時間にわたってカリウムの蒸気で処理した。 生成物をグローブボックス内の丸底フラスコに移し、そしてスチレンを滴下して添加した。 反応混合物を室温において24時間保持し、次いで、60℃に一晩保持して重合を完了させた。 カリウムでインターカレーションしたMWNTsはフラスコの中で綿毛状でランダムに分布した。 スチレンモノマーを添加すると、図28Aに示すように、黒色の中心部を有するプラスチックビーズが得られ、これはMWNTsの上にポリスチレンが成長したことを示す。

    [00220]MWNTsが分裂した後、幾つかのリボン状の構造が確認された。 図28Bを参照されたい。 図29に追加の画像を示す。 液相のインターカレーションとそれに続くモノマーの添加と比較して、カリウムの蒸気で処理したMWNTsをクエンチしても、分裂したMWNTsのさらなる剥離は起きなかった。 図28CにおけるTGAは、重量損失が22%であり、これは液相のインターカレーションで処理したMWNTsの重量損失よりも4倍多いことを示す。 さらに、陰イオン重合から放出された熱によってスチレンの重合が開始するかもしれず、それにより、インターカレーションしたMWNTsによって消費されるモノマーの量が減少すると考えられる。 従って、MWNTsの液相のインターカレーションとそれに続くモノマーの添加によれば、カリウムの蒸気で処理したMWNTsをモノマーでクエンチするよりも多くの官能化GNRsが生成する。

    [00221]本発明の実施要綱の適応性を調査するために、他の2つのMWNTsであるNanoTechLabsのMWNTs(NTL MWNTs)とBayerのMWNTs(Baytubes)も、それらの結果をMitsuiのMWNTsからの結果と比較するための反応条件に供した。 液相のインターカレーションとそれに続く重合を行うと、NTLMWNTsは分裂したが、しかしそれ以上平らにはならずにGNRsは形成されなかった。 図30を参照されたい。 BaytubesのMWNTsの大部分はそのまま残ったが、幾つかの部分的に平らになったGNRsを確認することができた。 図31を参照されたい。

    [00222]理論に拘束されるのではないが、ナフタレンのラジカル陰イオンから黒鉛構造体への電荷の移動はホスト物質(寄主物質)の電子状態によって支配されると考えられる。 ホスト物質が高度に結晶質である場合、価電子帯と伝導帯の重なり合いは、共役グラフェンの面において2つのキャリヤーである電子と正孔をもたらすだろう。 従って、インターカレーションが行われる間に、正孔の濃度の埋め合わせをするために、電子はカリウムナフタレニドからホストへと移動し、次いでグラフェンの伝導帯に入ることができる。 従って、明確な黒鉛インターカレーション化合物(GICs)を、高度に結晶化したホストから得ることができる。 結晶化の度合いが低い物質については、組織化されていないインターカレーション構造体が観察され、その理由は、黒鉛構造体が中断されるために伝導帯と価電子帯の間の重なり合いが無いためである。

    [00223]GICsの剥離に関する以前の研究によって、明確なインターカレーション構造体を形成することは、重合によって促進するMWNTsの剥離により剥離されたGNRsを製造するための必要条件であることが示唆されている。 MWNTsのホスト物質の構造上の特徴とMWNTsの分裂および剥離との間の重要な関連性についてはあまり調査されていないが、Mordkovichらがカーボンナノチューブの中にカリウム金属をインターカレーションすることによって巻物のカーボンナノチューブについて調査した事実がある(Carbon, 1996, 34, 1301−1303)。

    [00224]黒鉛化の度合いは、2つの黒鉛層の間の面間隔dから、式3に従って計算することができる:

    [00225]式3において、gは黒鉛化の度合い、0.3440(nm)は完全な非黒鉛化炭素の層間隔、0.3354(nm)は理想的な黒鉛結晶のd間隔、そしてd 002 (nm)は黒鉛物質の(002)面に対応する層間隔であり、これはX線回折(XRD)データから導かれる。 MitsuiのMWNTsとNTLのMWNTsについてのgは0.58であり、これはBayerのMWNTs(g=0.23)についてのgよりも大きい。 図32Aを参照されたい。 このような結果は、黒鉛化が高いほど炭素のホスト物質の剥離が容易であることを示す。

    [00226]MWNTsの分裂または剥離を終わらせるsp 炭素または欠陥によって生じる何らかの不規則な構造の存在は、XRDパターンからは確定できないかもしれない。 従って、D帯域とG帯域の強度の比率を計算することによってホスト物質における不規則構造の度合いを識別するために、ラマン分光分析を用いた。 結晶質のG帯域に対する不規則性誘起D帯域の相対強度I /I は、MitsuiのMWNTsについて0.15、NTLのMWNTsについて0.27、そしてBaytubesについて0.92である。 図32Bを参照されたい。

    [00227]グラフェンの面上の欠陥部位は、明確なインターカレーション構造体の形成には有利ではなかった。 従って、高度に欠陥性のBaytubesのインターカレーションによる完全な剥離は、もっと困難である。 このことはカリウムナフタレニドを用いるMWNTsの還元性のアルキル化についての最近の研究によって確証されていて、それにおいては、高度に欠陥性のMWNTs(I /I >1)の外表面がデカン酸で官能化された。 SEM画像においてリボン状の構造は認められなかった。 NTLのMWNTsには欠陥が少ないけれども、長大な分裂した管を平らにするには、さらなる処理を必要とするかもしれない。 従って、NTLのMWNTsの大部分のものは、完全に平らになるのではなく、分裂して積層したままとなった。 MWNTsを分裂させて剥離させることができるかどうかを予測するために用いることのできる構造上の閾値(すなわち、gまたはI /I についての臨界値)を正確に確定することは、努力を必要とするかもしれない。 しかし、炭素のホスト物質の黒鉛化の度合いが高いほど(あるいは炭素のホスト物質の欠陥性の度合いが低いほど)、インターカレーションによるMWNTsの剥離がより容易になるかもしれないと考えられる。

    [00228]開始のカーボンナノチューブの黒鉛化の度合いと同様に、アルカリ金属のイオン化の可能性と原子サイズも、インターカレーションとその後の剥離において積極的な役割を演じる。 GICsを製造するためにナトリウムナフタレニドとリチウムナフタレニドが用いられ、またそれらは陰イオン性の重合のための開始剤として一般的に用いられるので、官能化したGNRsを製造するための、MWNTsの中への溶媒で安定化したナトリウムとリチウムのインターカレーションについて調査した。 おそらく、ナトリウムナフタレニド(またはリチウムナフタレニド)はMWNTsを高分子開始剤に変えることもできて、従って、不飽和炭化水素の重合を開始させる。 このことを確かめるために、MWNTs、ナトリウム(またはリチウム)およびナフタレンをTHFの中に分散させた。 次いで、この混合物を、酸素を除去するために3回の凍結融解ポンプサイクルに供した。 その後、スチレンを添加した。

    [00229]反応生成物のSEM画像を図33に示す。 いずれの反応生成物も、著しい数の剥離したMWNTsを含んでいなかった。 実際に、図33におけるSEM画像によって示すように、大部分のMWNTsは損なわれていなかった。

    [00230] 結論
    [00231]高品質の官能化GNRsの湿式の化学的調製は、ワンポット合成において、重合によって促進するMWNTsの剥離によって達成された。 その場で(in-situ)官能化したGNRsは、TG/MS、SEM、TEMおよびラマン分光分析によって調査された。 カリウムの蒸気で処理し、次いでイソプレンを添加して得たMWNTsと比較して、MWNTsの液相でのインターカレーションとそれに続く重合は、官能化GNRsを形成するためにMWNTsを剥離するのにより効率的であり、また端部に結合したポリマーは少なかった。 ホスト物質の構造上の特徴(黒鉛化の度合い、およびD帯域からG帯域にわたる強度)と剥離の効率との間の相互関係も実証された。 官能化したGNRsまたは分裂した管は、ポリマーを強化するのに用いることができるかもしれない。 電気活性ポリマーでのGNRsの官能化は、生み出されるであろう有利な相互作用に基づいて、ナノエレクトロニクスにおけるさらなる進歩に寄与するかもしれない。

    [00232] 材料および方法
    [00233]MWNTsは、Mitsui & Co.(ロット番号、05072001K28)、NanoTechLabs, Inc.(ロット番号、#5T10M10)およびBayer Materials Science(ロット番号、C720P)によって提供された。 これらのMWNTsを、受け入れたまま使用した。 THFを水酸化カリウムで数日間処理し、ガス抜きし、そして窒素雰囲気の下でナトリウム箔によって新たに蒸留した。 スチレンを中性のアルミナカラムに通し、次いで、使用する前にガス抜きした。 イソプレンを窒素雰囲気の下で蒸留した。 特に明示しない限り、全ての化学物質はSigma-Aldrichから購入した。

    [00234]Netzsch 449 F3 Jupiter(登録商標)装置を用いて60mL/分の流量で流動するAr(99.999%)の下で25℃から900℃までの温度範囲で、TGMS測定を行った。 10℃/分の加熱速度を用いた。 アルミナ(Al )のルツボの中に約5mgのサンプルを置いた。 同時に、二次電子倍増管Chenneltron検出器を伴ったMS 403C Aeolos(登録商標)を用いて、2×10 −5ミリバールのシステム圧力でMSを行った。 TG熱処理によって発生したガスを、220℃に加熱した75μmの内径を有する石英製の輸送毛管を用いてMS検出器へ送った。 MS検出器の上限は100AMUであった。 514.5nmのレーザーを用いるRenishaw Raman RE01顕微鏡を用いてラマン分光分析を行った。 軟浴音波処理(Cole-Parmer, EW-08849-00)を用いてPF-GNRsをオルト-ジクロロベンゼンの中に分散させた。 懸濁液を、500nmの厚さのSiO 層を有するSiチップの上にドロップキャストした。 溶媒を加熱して蒸発させた。 次いで、JEOL-6500電界放出顕微鏡と2100F電界放出電子銃透過型電子顕微鏡を用いてサンプルを画像化した。

    [00235]PF-GNRsを調製するために、0.1gのアルカリ金属(Li、NaまたはK)、0.256gのナフタレンおよび50mgのMWNTs(MitsuiのMWNTs、NTLのMWNTsまたはBaytubes)を、オーブンで乾燥した100mLのシュレンク管の中に加えた。 50mLのTHFを添加した。 シュレンク管を隔壁で封止した。 次いで、酸素を除去するために懸濁液を3回の凍結融解ポンプサイクルに供した。 反応混合物を室温で3日間にわたって攪拌した。 ドライアイス/アセトン浴の中で冷却しながら、20mLのモノマー(スチレンまたはイソプレン)を液滴として添加した。 混合物を室温でさらに1日間攪拌した。 次に、反応混合物を20mLの無水エタノールによってクエンチした。 灰色の沈殿物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の膜(0.45μm)に通してろ過し、次いで、結合していないポリマーを除去するために、ソックスレー抽出器の中の沸騰しているクロロホルムによって一週間にわたって抽出を行った。 最終生成物(55mgのPF-GNRs)をPTFE膜(0.45μm)の上に捕集し、そしてTHF(3×100mL)、エタノール(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、アセトン(50mL)およびエーテル(50mL)で洗浄した。 次いで、この洗浄した生成物を真空オーブンの中で60℃で一晩乾燥させた。

    [00236] 気相のインターカレーションによるPF-GNRsの合成
    [00237]カリウムでインターカレーションしたMWNTsの製造の詳細は、実施例4において見いだすことができる。 カリウムでインターカレーションしたMWNTsを入れた密封した反応容器を、グローブボックスの中で開けた。 インターカレーションしたナノチューブを50mlの丸底フラスコの中に移し、次いで、20mLのスチレンモノマーを液滴として添加した。 反応混合物をグローブボックスから取り出し、室温で24時間保持し、次いで、重合を完了させるために60℃で一晩置いた。 ポリスチレンとPF-GNRsの混合物をクロロホルム中に溶解させ、そしてエタノールによって沈殿させた。 ろ過した後、灰色のプラスチックの塊りを小さな断片に切断し、そしてソックスレー抽出器を用いてクロロホルムによって一週間にわたって抽出を行った。 最後に、PTFE膜(0.45μm)の上に黒色の固形物を捕集した。 生成物をTHF(3×100mL)、エタノール(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、アセトン(50mL)およびエーテル(50mL)で洗浄した。 次いで、この生成物を真空オーブンの中で60℃で一晩乾燥させた。

    [00238]あるいは、PF-GNRsをワンポット合成で調製することができる。 これは、MWNTsとカリウムの塊りをきつく密閉したシュレンク管の中で350℃で24時間にわたって加熱することと、次にスチレンまたはイソプレンを窒素の下で室温においてコックの栓を通して液滴として添加することを含んでいてもよい。

    [00239] 実施例6. K/Na合金とドライアイスによるMWNTsの開放
    [00240]本実施例において、出願人は、ジメチルエーテル(DME)の存在下でK/Na合金によってMWNTsを開いた。 次いで、この開いたMWNTsをCO を用いて官能化し、それによりカルボキシル官能化GNRs(GNR-(COOH) )を形成した。 この反応を下記の体系で例示する。

    [00241]特に、出願人は、ジメトキシエタン(DME、120mL)の中でMWNTs(600mg、MWCNTsとも言う)をインターカレーションするためにK/Na合金(0.9mL)を用いた。 次いで、CO の固体形態であるドライアイス(約0.5kg)を用いて反応をクエンチした。 最後に、生成物をイソプロパノール(IPA、100mL)、H O(100mL)およびエチルエーテル(Et O、100mL)で洗浄した。 用いたMWNTsはMitsuiのMWNTsであった。 得られた生成物はGNR-(COOH) であった。

    [00242]SEM(図34)、TEM(図35)およびラマン(図36)によって生成物の特徴づけを行った。 SEMの画像は、生成物は大部分がリボン構造であることを示していて、これは高い開放効率(unzipping efficiency)を示す。 図34AおよびBを参照されたい。

    [00243]TEMのサンプルを調製する際に、出願人は、界面活性剤を添加し、そして溶液をプローブ音波処理器の中で10分間にわたって音波処理することによって、生成物をH Oの中に分散させた。 TEM画像は、GNR-(COOH) 生成物は完全に開放されていて、3〜5の層を有することを示していた。 例えば、図35AおよびBを参照されたい。

    [00244]ラマンスペクトルは、Dピークが存在することを示していた。 図36を参照されたい。 さらに、ラマンスペクトルは、Dピーク対Gピークの比率が1:3であることを示していた。 ラマンスペクトルは514nmの励起レーザーを用いた。

    [00245]理論に拘束されるのではないが、MWNTsを開放して剥離するのにドライアイスが重要な役割を演じた、と出願人は考えている。 室温において、ドライアイスは容易に昇華することができ、それにより十分な量のCO ガスを生成する。 KをインターカレーションしたMWNTsをドライアイスでクエンチすると、KはCO と反応し、それによりMWNTsの官能化がなされた。 それと同時に、このプロセスで形成された発生ガスはGNRsが数層に剥離するのを促進した。

    [00246]これは、ガスを介してのGNRsの剥離を出願人が実証した最初のことである。 従って、GNR積層体を数層のグラフェンナノリボンに剥離し、あるいはさらにはグラフェンナノリボンの個々の層に剥離するのを促進するために、CO またはその他の揮発性成分または揮発性ガスを用いることができると考えられる。

    [00247] さらに詳しく説明しなくても、当業者であれば、本明細書の説明を用いて本発明を最大限に利用することができると考える。 ここで説明した態様は例示のものであると解釈され、この開示の残りのものをいかなるやり方でも制限しないと解釈されるべきである。 好ましい態様が示され、そして説明されたが、それらの多くの変形や修正が、本発明の精神と教示から逸脱することなく当業者によって成され得る。 従って、保護の範囲は上で示した記載によっては制限されず、それは特許請求の範囲によってのみ制限され、その保護の範囲には特許請求の範囲の主題の全ての同等物も含まれる。 ここで挙げた全ての特許、特許出願および刊行物の開示は、本明細書で示したものと一致してそれを補足する手順上の詳細またはその他の詳細を提供する限り、本明細書に参考文献として取り込まれる。

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