【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えばp−キシレン等のベンジル化合物と酢酸等のカルボン酸とを反応させて、p−メチルベンジルアセテートやp−キシリレンジアセテート等のベンジルエステルを製造する際に、好適に用いられる酸化反応用触媒、および、その調製方法、並びに、上記ベンジルエステルの製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、p−メチルベンジルアセテートやp−キシリレンジアセテート等の芳香族エステル(ベンジルエステル)は、ポリエステル樹脂等の合成樹脂の原料や、香料や溶剤等の各種化学薬品、或いは、これら化学薬品の原料等として用いられている。 これら芳香族エステルの製造方法として、例えば、特開昭63−17 4950号公報には、パラジウム−ビスマス化合物および/またはパラジウム−鉛化合物を触媒として用いて、 p−キシレンと酢酸とを酸素の存在下で反応させることにより、p−メチルベンジルアセテートおよびp−キシリレンジアセテートを製造する方法が開示されている。 また、例えば、特開昭62−273927号公報には、 パラジウムおよびビスマスを含む触媒を用いて、p−キシレンと酢酸とを酸素の存在下で反応させることにより、p−キシリレンジアセテートを製造する方法が開示されている。 【0003】さらに、例えば、特開平8−231466 号公報には、パラジウムおよび金を担体に担持してなる触媒を用いて、p−キシレンと酢酸とを酸素の存在下で反応させることにより、p−キシリレンジアセテートを製造する方法が開示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭63−174950号公報や特開昭62−273927 号公報に記載されている触媒は、触媒活性が低く(触媒におけるパラジウム単位当たりの、単位時間当たりのターンオーバー数は15程度)、従って、生産効率を向上させるためには、反応基質であるp−キシレンに対して触媒を多量に用いなければならない。 つまり、貴金属であるパラジウムを多量に用いなければならない。 また、 反応時にパラジウムが反応液中に溶出することも考えられ、この場合には、触媒活性がさらに低下すると共に、 溶出したパラジウムを分離・回収する必要がある。 このため、上記の触媒は、工業的な製造方法に対して好適な触媒であるとは言い難い。 【0005】さらに、特開平8−231466号公報に記載されている触媒もまた、触媒活性が低く、従って、 生産効率を向上させるためには、反応基質であるp−キシレンに対して触媒を多量に用いなければならないので、工業的な製造方法に対して好適な触媒であるとは言い難い。 【0006】即ち、上記従来の触媒は、触媒活性が低く、工業的な製造方法に対して不適であり、それゆえ、 ベンジルエステルを効率的にかつ安価に製造することができないという問題点を有している。 【0007】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、例えばp−キシレン等のベンジル化合物と酢酸等のカルボン酸とを酸素の存在下で反応させて、p−メチルベンジルアセテートやp−キシリレンジアセテート等のベンジルエステルを工業的に製造する際に、好適に用いられる酸化反応用触媒、および、その調製方法、並びに、上記ベンジルエステルを効率的にかつ安価に製造する方法を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本願発明者等は、ベンジル化合物の酸化反応用触媒、およびその調製方法、並びにベンジルエステルの製造方法について鋭意検討した。 その結果、パラジウムと、金超微粒子と、周期表IIA 族、 IIIA族、VIA族、IIB族、VB族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素とを含む触媒が、酸素の存在下で、ベンジル化合物およびカルボン酸からベンジルエステルを得る反応に対して高い触媒活性を示すこと、つまり、該触媒が、ベンジルエステルを工業的に製造するのに好適であることを見い出した。 そして、該触媒を用いることにより、ベンジルエステルを、工業的に、効率的にかつ安価に製造することができることを確認して、本発明を完成させるに至った。 【0009】即ち、請求項1記載の発明の酸化反応用触媒は、上記の課題を解決するために、ベンジル化合物の酸化反応用触媒であって、パラジウムと、金超微粒子と、周期表IIA族、 IIIA族、VIA族、IIB族、VB 族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素とを含むことを特徴としている。 【0010】請求項2記載の発明の酸化反応用触媒は、 上記の課題を解決するために、請求項1記載の酸化反応用触媒において、上記群より選ばれる元素が、ビスマス、モリブデン、鉄、ニッケル、亜鉛、ランタン、アルカリ土類金属、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であることを特徴としている。 【0011】請求項3記載の発明の酸化反応用触媒は、 上記の課題を解決するために、請求項1または2記載の酸化反応用触媒において、上記金超微粒子が、担体に担持されていることを特徴としている。 【0012】また、請求項4記載の発明の酸化反応用触媒の調製方法は、上記の課題を解決するために、請求項1、2または3記載の酸化反応用触媒の調製方法であって、金化合物を150℃〜800℃で熱処理を行うことによって金超微粒子を得た後、該金超微粒子と、パラジウム化合物と、周期表IIA族、 IIIA族、VIA族、IIB 族、VB族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とを混合することを特徴としている。 【0013】請求項5記載の発明の酸化反応用触媒の調製方法は、上記の課題を解決するために、請求項1、2 または3記載の酸化反応用触媒の調製方法であって、金化合物およびパラジウム化合物を150℃〜800℃で熱処理を行うことによって金超微粒子およびパラジウムを含む混合物を得た後、該混合物と、周期表IIA族、II IA族、VIA族、IIB族、VB族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物とを混合することを特徴としている。 【0014】さらに、請求項6記載の発明のベンジルエステルの製造方法は、上記の課題を解決するために、ベンジル化合物およびカルボン酸を、酸素、並びに、パラジウムと、金超微粒子と、周期表IIA族、 IIIA族、VI A族、IIB族、VB族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素とを含む触媒の存在下で酸化反応させることを特徴としている。 【0015】請求項7記載の発明のベンジルエステルの製造方法は、上記の課題を解決するために、請求項6記載のベンジルエステルの製造方法において、上記酸化反応を液相で行うことを特徴としている。 【0016】 【発明の実施の形態】本発明にかかるベンジル化合物の酸化反応用触媒(以下、単に触媒と記す)は、パラジウムと、金超微粒子と、周期表IIA族、 IIIA族、VIA 族、IIB族、VB族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素とを含む構成である。 また、本発明にかかる触媒の調製方法は、金化合物を150℃〜800℃で熱処理を行うことによって金超微粒子を得た後、該金超微粒子と、パラジウム化合物と、周期表IIA族、 IIIA族、VIA族、IIB族、VB 族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物(以下、第三化合物と記す)とを混合する方法、または、金化合物およびパラジウム化合物を150℃〜800℃で熱処理を行うことによって金超微粒子およびパラジウムを含む混合物を得た後、該混合物と、第三化合物とを混合する方法である。 尚、本発明において、「超微粒子」とは、ナノメートル(nm)サイズの粒子径を有する粒子を示す。 また、本発明において、「周期表VIII族の元素」には、パラジウムは含まれないこととする。 【0017】本発明にかかる触媒を調製する際に用いられるパラジウム化合物としては、具体的には、例えば、 金属パラジウム、酸化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、ヘキサクロロパラジウム酸アンモニウム、ヘキサクロロパラジウム酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム酸カリウム、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸カリウム、テトラブロモパラジウム酸カリウム、テトラシアノパラジウム酸カリウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、クロロカルボニルパラジウム、ジニトロサルファイトパラジウム酸カリウム、ジニトロジアミンパラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、cis-ジクロロジアミンパラジウム、trans-ジクロロジアミンパラジウム、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド、ジクロロ(エチレンジアミン)パラジウム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。 これらパラジウム化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。 上記例示のパラジウム化合物のうち、水に溶解する化合物がより好ましく、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、およびテトラアンミンパラジウム塩化物がより好ましく、酢酸パラジウム、およびテトラアンミンパラジウム塩化物が特に好ましい。 尚、パラジウム化合物は、水和物となっていてもよい。 【0018】本発明にかかる触媒を調製する際に用いられる金化合物は、水に溶解する化合物であればよい。 該金化合物としては、具体的には、例えば、テトラクロロ金(III) 酸「H〔AuCl 4 〕」、テトラクロロ金(II I) 酸ナトリウム「Na〔AuCl 4 〕」、ジシアノ金 (I) 酸カリウム「K〔Au(CN) 2 〕」、ジエチルアミン金(III) 三塩化物「(C 2 H 5 ) 2 NH・〔AuC l 3 〕」等の錯体;シアン化金(I) 「AuCN」;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。 これら金化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。 上記例示の金化合物のうち、テトラクロロ金(III) 酸が特に好ましい。 尚、金化合物は、 水和物となっていてもよい。 【0019】本発明にかかる触媒を調製する際に用いられる第三化合物は、周期表IIA族、IIIA族、VIA族、I IB族、VB族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいればよく、より好ましくは、ビスマス、モリブデン、鉄、ニッケル、亜鉛、ランタン、アルカリ土類金属、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいればよい。 【0020】該第三化合物としては、具体的には、例えば、酢酸ビスマス、酢酸酸化ビスマス、フッ化ビスマス、塩化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、硝酸ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、等のビスマス化合物;モリブデン酸、モリブデン酸ナトリウム、ホウ化モリブデン、塩化モリブデン、酸化モリブデン、リンモリブデン酸(モリブドリン酸)、ケイモリブデン酸(モリブドケイ酸)、酸化モリブデンアセチルアセトナート、 モリブデンヘキサカルボニル、等のモリブデン化合物; 硝酸鉄、硫酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄、酢酸鉄、 シュウ酸鉄、鉄アセチルアセトナート、等の鉄化合物; 酢酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、炭酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケル、 硫酸ニッケル、シアン化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、等のニッケル化合物;酢酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、等の亜鉛化合物;酢酸ランタン、シュウ酸ランタン、塩化ランタン、臭化ランタン、炭酸ランタン、酸化ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタン、 ランタンアセチルアセトナート、等のランタン化合物; アルカリ金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、酸化物、並びにアルカリ金属アセチルアセトナート、等のアルカリ金属化合物;アルカリ土類金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、酸化物、並びにアルカリ金属アセチルアセトナート、等のアルカリ土類金属化合物;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。 【0021】これら第三化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。 上記例示の第三化合物のうち、ビスマス化合物、アルカリ金属化合物、およびアルカリ土類金属化合物がより好ましく、 酢酸ビスマス、酢酸酸化ビスマス、硝酸ビスマス、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸セシウム、硝酸カリウム、酢酸バリウム、および硝酸バリウムが特に好ましい。 尚、第三化合物は、水和物となっていてもよい。 【0022】本発明にかかる触媒の調製方法において、 金超微粒子を得る方法としては、具体的には、例えば、 金化合物と界面活性剤とを含む水溶液に担体を浸漬し、 担体上に金沈澱物を析出させた後、該担体を150℃〜 800℃で熱処理を行うことによって金沈澱物を固定化する方法を採用することができる。 また、本発明にかかる触媒の調製方法において、金超微粒子およびパラジウムを含む混合物を得る方法としては、具体的には、例えば、金化合物とパラジウム化合物と界面活性剤とを含む水溶液に担体を浸漬し、担体上に金沈澱物およびパラジウム沈澱物を析出させた後、該担体を150℃〜800 ℃で熱処理を行うことによって両沈澱物を固定化する方法を採用することができる。 つまり、金超微粒子は、担体に担持されていることがより好ましい。 【0023】上記の担体は、無機物であればよく、多孔質の無機物が好適である。 該担体としては、具体的には、例えば、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ・アルミナ、シリカ・チタニア、ゼオライト、シリカゲル、酸化マグネシウム(マグネシア)、シリカ・マグネシア、活性炭、粘土、ボーキサイト、珪藻土、軽石等が挙げられるが、特に限定されるものではない。 これら担体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。 本発明にかかる担体は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物を含んでいることがより好ましい。 本発明において、「酸化チタンを含む」とは、担体が酸化チタンを含んでなるか、或いは、酸化チタン以外の無機物からなる担体の表面(担体上)に酸化チタンが担持されていることを示す。 上記酸化チタンの結晶構造は、特に限定されるものではないが、非晶質またはアナターゼ型であることが望ましい。 尚、例えば酸化チタンや酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機物は、 水和物となっていてもよい。 【0024】さらに、担体の表面に酸化チタンが担持されている場合には、酸化チタンが、いわゆる島状構造をなすように分散された状態で、該表面に担持されていることが特に好ましい。 尚、酸化チタンは、いわゆるコーティング等の操作を行うことにより、担体の表面に担持させることもできる。 また、担体は、酸化チタン以外の無機物をさらに担持していてもよい。 【0025】担体の比表面積は、特に限定されるものではないが、50m 2 /g以上であることがより好ましい。 比表面積が50m 2 /g未満であると、固定化される金超微粒子の量が少なくなるおそれがある。 つまり、 触媒の活性が低下するおそれがある。 また、担体が成型体である場合において、該成型体の形状や大きさ、成形方法等は、特に限定されるものではない。 【0026】金化合物の使用量は、担体の種類や比表面積、形状、使用量等にもよるが、水溶液中の金化合物の濃度が0.01ミリモル/L〜10ミリモル/Lの範囲内となる量が好ましい。 上記の濃度が0.01ミリモル/Lよりも低いと、金沈澱物の析出量が乏しくなるので好ましくない。 濃度が10ミリモル/Lよりも高いと、 金が凝集し易くなるので析出する金沈澱物の粒子径、即ち、固定化すべき金粒子の粒子径が大きくなりすぎ、超微粒子が生成されないので好ましくない。 触媒が金超微粒子を含んでいない場合には、触媒活性が著しく低くなる。 【0027】上記の界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルスルホン酸およびその塩、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、長鎖アルキルカルボン酸およびその塩等のアニオン性界面活性剤;長鎖アルキル四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のノニオン性界面活性剤;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。 これら界面活性剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。 上記例示の界面活性剤のうち、アニオン性界面活性剤、およびノニオン性界面活性剤がより好ましく、アニオン性界面活性剤が特に好ましい。 また、アニオン性界面活性剤のうち、炭素数が8以上の長鎖アルキル(アリール)スルホン酸およびその塩、並びに、長鎖アルキル(アリール)カルボン酸およびその塩がより好ましい。 【0028】界面活性剤の使用量は、該界面活性剤や金化合物、パラジウム化合物、担体の種類、組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、水溶液中の界面活性剤の濃度が0.1ミリモル/L 〜10ミリモル/Lの範囲内となる量がより好ましい。 上記の濃度が0.1ミリモル/Lよりも低いと、界面活性剤を用いることにより得られる効果が乏しくなるおそれがある。 濃度を10ミリモル/Lよりも高くしても、 界面活性剤を上記の範囲内で用いた場合と比較して、更なる効果は殆ど期待できない。 また、金沈澱物(およびパラジウム沈澱物)を析出させた担体を洗浄する洗浄操作が煩雑となる。 【0029】上記の水溶液は、水に金化合物とパラジウム化合物(必要に応じて)と界面活性剤とを溶解させると共に、そのpHを調節することにより、容易に調製することができる。 水溶液のpHは、6〜10の範囲内に調節されていることが望ましい。 水溶液のpHを上記の範囲内に調節することにより、超微粒子状の金沈澱物が生成する。 尚、水溶液の調製方法は、特に限定されるものではない。 【0030】水溶液のpHを上記の範囲内に調節するには、アルカリ性を呈する化合物を適宜添加すればよい。 該化合物としては、具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられるが、特に限定されるものではない。 これら化合物は、固体状で添加してもよく、 水に溶解させた状態で添加してもよい。 【0031】上記の水溶液を攪拌しながら、担体を添加することにより、水溶液に担体を浸漬する。 浸漬された担体は、攪拌されることにより、水溶液中に分散・懸濁されると共に、その表面、即ち、担体上に金沈澱物(およびパラジウム沈澱物)が析出する。 金沈澱物としては、具体的には、例えば、金水酸化物、金超微粒子等が挙げられる。 該金沈澱物は、比較的狭い粒子径分布を有している。 尚、担持方法は、特に限定されるものではなく、沈澱法、イオン交換法、含浸法、沈着法等の種々の方法を採用することができる。 【0032】担体上に金沈澱物を析出させる際の析出温度は、30℃〜80℃程度が好適である。 また、析出時間は、10分間〜3時間程度で充分である。 尚、必要に応じて、析出する金沈澱物の粒子径が大きくなりすぎない程度において、析出操作を繰り返し行うことによって、担体上に析出させる金沈澱物の析出量を増加させることもできる。 【0033】上記の操作により、金沈澱物(およびパラジウム沈澱物)が、担体表面に効率的に析出され、金沈澱物固定化物が得られる。 上記の方法によれば、水溶液が界面活性剤を含んでいるので、例えば、担体が成型体である場合、或いは、担体表面の等電位点が比較的低い場合等においても、該担体上に金沈澱物を従来よりも多く析出させることができる。 金沈澱物固定化物における金の含有量は、多い方が望ましいが、0.01重量%〜 20重量%の範囲内が好適であり、0.1重量%〜5重量%の範囲内がより好適である。 尚、金沈澱物固定化物は、必要に応じて水洗し、その表面に付着している界面活性剤を除去してもよい。 【0034】そして、上記の金沈澱物固定化物を、15 0℃〜800℃で熱処理を行うことにより、より具体的には、金沈澱物固定化物を、空気中で150℃〜800 ℃、より好ましくは300℃〜800℃に加熱し、焼成することにより、金超微粒子、または、金超微粒子およびパラジウムを含む混合物(以下、金超微粒子固定化物と記す)が得られる。 尚、金沈澱物が金水酸化物である場合には、加熱によって分解されて金超微粒子となる。 【0035】焼成方法は、特に限定されるものではない。 例えば、焼成雰囲気は、特に限定されるものではなく、空気中であってもよく、窒素ガスやヘリウムガス、 アルゴンガス等の不活性ガス中であってもよく、或いは、水素ガス等の還元性ガス中であってもよい。 また、 加熱時間は、加熱温度に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。 焼成することにより、金超微粒子が担体表面に強固に固定化され、金超微粒子固定化物が調製される。 尚、金超微粒子固定化物を得る方法は、 上記例示の方法にのみ限定されるものではない。 【0036】金超微粒子固定化物がパラジウムを含んでいない場合には、該金超微粒子固定化物と、パラジウム化合物と、第三化合物とを混合することにより、本発明にかかる触媒が調製される。 金超微粒子固定化物がパラジウムを含んでいる場合には、該金超微粒子固定化物と、第三化合物とを混合することにより、本発明にかかる触媒が調製される。 尚、金超微粒子固定化物がパラジウムを含んでいる場合においても、必要に応じて、パラジウム化合物を混合することができる。 【0037】金超微粒子固定化物、パラジウム化合物、 および第三化合物の混合方法、並びに混合順序は、特に限定されるものではない。 また、ベンジルエステルを製造する際に、原料であるベンジル化合物およびカルボン酸と共に、上記金超微粒子固定化物、パラジウム化合物、および第三化合物を反応装置に仕込むこともできる。 つまり、ベンジルエステルの製造時に、これら固定化物や化合物を反応装置内で混合することにより、本発明にかかる触媒を調製することもできる。 【0038】上記の方法によって調製された触媒、つまり、本発明にかかる触媒は、パラジウムと、金超微粒子と、周期表IIA族、 IIIA族、VIA族、IIB族、VB 族、VIII族、およびアルカリ金属からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素(以下、第三金属成分と記す) とを含んでいる。 【0039】パラジウムと、金超微粒子と、第三金属成分との比、即ち、触媒の組成は、特に限定されるものではないが、触媒に占めるパラジウムの割合は、0.00 1重量%〜10重量%の範囲内がより好ましく、0.1 重量%〜2重量%の範囲内がさらに好ましい。 触媒に占める金超微粒子の割合は、0.001重量%〜10重量%の範囲内がより好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲内がさらに好ましい。 触媒に占める第三金属成分の割合は、0.0001重量%〜10重量%の範囲内がより好ましく、0.001重量%〜2重量%の範囲内がさらに好ましい。 パラジウムや金超微粒子が上記割合よりも少ない場合には、触媒活性が低くなるので好ましくない。 パラジウムや金超微粒子が上記割合よりも多い場合には、触媒の製造コストが高くなり、このためベンジルエステルを安価に製造することができなくなる。 【0040】従って、上記パラジウム化合物、金化合物、および第三化合物は、触媒の組成が上記範囲内となるような割合で以て使用すればよい。 上記の調製方法によって得られる触媒は、触媒活性が高く、ベンジル化合物の酸化反応に好適に使用される。 【0041】本発明にかかるベンジルエステルの製造方法において原料として用いられるベンジル化合物は、分子内にベンジル基を有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。 また、ベンジル化合物は、本発明にかかる酸化反応に対して不活性な官能基を有していてもよい。 該ベンジル化合物としては、例えば、下記一般式(1) 【0042】 【化1】 【0043】(式中、R 1 、R 2はそれぞれ独立して、 水素原子またはアルキル基を示し、Xは水素原子、アルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、 アミノ基、アミド基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボキシル基、アリールカルボキシル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボキシアルキル基、アリールカルボキシアルキル基を示し、nはXの個数を示す1〜5の整数である)で表される化合物が挙げられる。 【0044】ベンジル化合物としては、より具体的には、例えば、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、 sec−ブチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の、 アルキルベンゼン;キシレン、エチルトルエン、n−プロピルトルエン、イソプロピルトルエン、n−ブチルトルエン、 sec−ブチルトルエン等の、o−,m−,p− ジアルキルベンゼン;4,4'−ジメチルビフェニル等のアリール置換アルキルベンゼン;クレゾール等の、o −,m−,p−ヒドロキシ置換アルキルベンゼン;クロロトルエン等の、o−,m−,p−ハロゲン置換アルキルベンゼン;o−,m−,p−ニトロトルエン等のニトロ基置換アルキルベンゼン;メチルアニリン等の、o −,m−,p−アミノ基置換アルキルベンゼン;メチルベンズアミド等の、o−,m−,p−アミド基置換アルキルベンゼン;メチルアニソール等の、o−,m−,p −アルキルオキシ置換アルキルベンゼン;フェノキシトルエン等の、o−,m−,p−アリールオキシ置換アルキルベンゼン;酢酸トリル、プロピオン酸トリル、ブタン酸トリル、安息香酸トリル等の、o−,m−,p−カルボキシ置換アルキルベンゼン(カルボン酸トリルエステル);メチルアセトフェノン、メチルベンゾフェノン等の、o−,m−,p−カルボニル置換アルキルベンゼン;メチルベンジルアセテート等の、o−,m−,p− カルボキシアルキル置換アルキルベンゼン;等が挙げられる。 上記例示のベンジル化合物のうち、アルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、および、カルボキシアルキル置換アルキルベンゼンがより好ましく、o−,m−, p−キシレン、および、o−,m−,p−メチルベンジルアセテートが特に好ましい。 【0045】尚、本発明にかかるベンジル化合物には、 前記一般式(1)中におけるベンゼン環(ベンジル基) の代わりに、縮合環や複素環を有する化合物、具体的には、例えば、メチルナフタレンやジメチルピリジン等の化合物も含まれることとする。 【0046】本発明にかかるベンジルエステルの製造方法において原料として用いられるカルボン酸としては、 モノカルボン酸が好適であり、具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等の脂肪族カルボン酸;安息香酸等の芳香族カルボン酸;が挙げられるが、特に限定されるものではない。 上記例示のカルボン酸のうち、 酢酸、およびプロピオン酸がより好ましく、酢酸が特に好ましい。 【0047】ベンジル化合物が有するベンジル基に対するカルボン酸のモル比は、化学量論比よりも大きければよく、特に限定されるものではないが、等倍モル〜20 倍モルの範囲内がより好ましい。 上記のモル比が等倍モル未満であると、カルボン酸が不足することになるので、ベンジルエステルを効率的に製造することができなくなる場合がある。 一方、20倍モルを越えるモル比でカルボン酸を用いても、上記のモル比で用いた場合と比較して、収率等の更なる向上は殆ど期待できない。 また、カルボン酸を多量に用いることになるので、反応装置や、過剰のカルボン酸を回収するための回収装置の大型化を招来すると共に、回収コストを含む製造コストが嵩む場合がある。 【0048】上記のベンジル化合物およびカルボン酸を、前記触媒の存在下で酸化反応させることにより、ベンジルエステルが得られる。 該酸化反応は、酸素ガス(分子状酸素)の存在下、液相若しくは気相で行われる。 つまり、本発明においては、酸化反応を液相若しくは気相で行うことができるが、液相で行うことがより好ましい。 酸素ガスは、窒素ガスやヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスによって希釈されていてもよい。 また、酸素含有ガスとして空気を用いることもできる。 酸素ガスの反応系への供給方法は、特に限定されるものではない。 【0049】上記酸化反応の形態は、連続式、回分式、 半回分式の何れであってもよく、特に限定されるものではない。 触媒は、反応形態として例えば回分式を採用する場合には、反応装置に原料と共に一括して仕込めばよく、また、反応形態として例えば連続式を採用する場合には、反応装置に予め充填しておくか、或いは、反応装置に原料と共に連続的に仕込めばよい。 従って、触媒は、固定床、流動床、懸濁床の何れの形態で使用してもよい。 【0050】ベンジル化合物に対する触媒の使用量は、 ベンジル化合物およびカルボン酸の種類や組み合わせ、 触媒の組成、反応条件等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。 【0051】反応温度や反応圧力、反応時間等の反応条件は、ベンジル化合物およびカルボン酸の種類や組み合わせ、触媒の組成等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、反応温度は80℃〜200℃の範囲内が好適である。 反応温度が80℃未満である場合には、反応速度が遅くなりすぎ、ベンジルエステルを効率的に製造することができなくなるおそれがある。 一方、反応温度が200℃を越える場合には、燃焼を含めた副反応が起こり易くなるので、ベンジルエステルを効率的に製造することができなくなるおそれがある。 また、カルボン酸による反応装置の腐食を招来するおそれもある。 【0052】反応圧力は、減圧、常圧(大気圧)、加圧の何れであってもよいが、酸化反応に酸素ガス(希釈されていない酸素ガス)を用いる場合には常圧〜50kg /cm 2 (ゲージ圧)の範囲内が好適であり、酸化反応に空気を用いる場合には常圧〜100kg/cm 2 (ゲージ圧)の範囲内が好適である。 100kg/cm 2を越える反応圧力は、反応設備等の工業的な観点から好ましくない。 【0053】酸化反応は、上記反応条件下においてベンジル化合物および/またはカルボン酸が液体状である場合には、特に溶媒を用いる必要が無いが、両者を均一に混合することができない場合や、反応が激しい場合には、反応に対して不活性な溶媒を用いて希釈することができる。 【0054】本発明にかかる製造方法によって得られるベンジルエステルである、例えばp−メチルベンジルアセテートやp−キシリレンジアセテートは、ポリエステル樹脂等の合成樹脂の原料や、香料や溶剤等の各種化学薬品、或いは、これら化学薬品の原料等として好適な化合物である。 尚、ベンジルエステルを分離・精製する方法は、特に限定されるものではない。 【0055】また、例えば、p−キシリレンジアセテートを加水分解して得られるp−キシリレングリコールは、合成繊維や合成樹脂、可塑剤等の原料として、或いは、ポリウレタンや炭素繊維等との複合材料を形成する際の原料として好適な化合物であり、特に、耐熱性高分子の原料として有用である。 尚、ベンジルエステルを加水分解する方法は、特に限定されるものではない。 【0056】 【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。 尚、実施例に記載の「ターンオーバー数」(TOF)とは、触媒の生産性を表す尺度であり、下記式 【0057】 【数1】 【0058】により定義される。 【0059】〔実施例1〕酸化チタン(II)アセチルアセトナート1.97gを含むメチルアルコール溶液700 mlに、酸化ケイ素(商品名・シリカQ−10,富士シリシア化学株式会社製)60gを浸漬した後、エバポレータを用いてメチルアルコールを留去した。 得られた固形物を120℃で12時間乾燥させた後、空気中で60 0℃、3時間、焼成することにより、担体としての酸化ケイ素担持酸化チタンを得た。 該担体における酸化チタンの担持量は、1重量%であった。 【0060】次に、金化合物としてのテトラクロロ金(I II) 酸・4水和物0.21gを水200mlに溶解し、 60℃に加温した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.5に調節した。 次いで、該水溶液に、界面活性剤としてのラウリン酸ナトリウム0.28gを添加して溶解させた。 これにより、テトラクロロ金(III) 酸水溶液を調製した。 得られた水溶液に、60℃で、上記の酸化ケイ素担持酸化チタン5gを添加し、同温度で30 分間攪拌して該酸化ケイ素担持酸化チタンを懸濁させると共に、その表面に金沈澱物を固定化した。 【0061】その後、懸濁液を濾過し、濾残、即ち、金沈澱物固定化物を水洗して120℃で8時間、乾燥させた。 次いで、該金沈澱物固定化物を、空気中で400 ℃、3時間、焼成することにより、金超微粒子固定化物としての酸化ケイ素担持酸化チタン担持金を得た。 酸化ケイ素担持酸化チタン担持金の調製前後における水溶液を蛍光X線分析した結果、該酸化ケイ素担持酸化チタン担持金における金の担持量は、0.7重量%であった。 【0062】次に、上記酸化ケイ素担持酸化チタン担持金を含む触媒を用いて、ベンジル化合物の酸化反応を行った。 即ち、得られた酸化ケイ素担持酸化チタン担持金2.0g(金含有量0.0711ミリモル)、パラジウム化合物としての酢酸パラジウム(和光純薬工業株式会社製)0.0084g(パラジウム含有量0.0374 ミリモル)、ビスマス化合物(第三化合物)としての酢酸酸化ビスマス(和光純薬工業株式会社製)0.02g (ビスマス含有量0.0704ミリモル)、および、アルカリ金属化合物(第三化合物)としての酢酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)0.2g(カリウム含有量2.0377ミリモル)を、100mlの回転式オートクレーブに仕込んだ。 つまり、オートクレーブ内で上記化合物等を混合することにより、本発明にかかる触媒を調製した。 【0063】続いて、該オートクレーブに、ベンジル化合物としてのp−キシレン5.0gと、カルボン酸としての酢酸24.0gとを仕込んで密封した。 次いで、オートクレーブ内に酸素ガスを充填して、内部を10kg /cm 2 (ゲージ圧)に加圧した後、オートクレーブを140℃に加熱し、700rpmで攪拌しながら2.5 時間、酸化反応させた。 尚、反応中においては、酸素ガスが消費されることによってオートクレーブの内圧が徐々に低下したが、酸素ガスの補充は行わなかった。 【0064】反応終了後、内容物を取り出して触媒を除去した後、反応液の組成をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。 その結果、該反応液には、ベンジルエステルとしてのp−メチルベンジルアセテートが2.37 g、p−キシリレンジアセテートが1.62g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は30.6モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は15.5モル%であった。 また、上記の結果から、触媒におけるパラジウム単位当たりの、単位時間当たりのターンオーバー数が、320であることが判った。 触媒組成および結果を表1・3に示す。 【0065】〔実施例2〕テトラクロロ金(III) 酸・4 水和物0.104gを水200mlに溶解した後、実施例1と同様にして、テトラクロロ金(III) 酸水溶液を調製した。 次いで、酸化ケイ素担持酸化チタンに代えて担体としての酸化チタン(商品名・XT25376,ノートン株式会社製)5gを用いて、実施例1と同様にして、金超微粒子固定化物としての酸化チタン担持金を得た。 酸化チタン担持金の調製前後における水溶液を蛍光X線分析した結果、該酸化チタン担持金における金の担持量は、0.9重量%であった。 【0066】次に、上記酸化チタン担持金2.0gを用いると共に、酢酸パラジウムの使用量を0.0042g に変更した以外は、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが1.97g、 p−キシリレンジアセテートが1.19g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は2 5.5モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は11.4モル%であった。 また、ターンオーバー数は488であった。 触媒組成および結果を表1・3に示す。 【0067】〔実施例3〕テトラクロロ金(III) 酸・4 水和物0.104gを水200mlに溶解した後、実施例1と同様にして、テトラクロロ金(III) 酸水溶液を調製した。 次いで、酸化ケイ素担持酸化チタンに代えて担体としてのチタノシリケート(TS−1)5gを用いて、実施例1と同様にして、金超微粒子固定化物としてのチタノシリケート担持金を得た。 チタノシリケート担持金の調製前後における水溶液を蛍光X線分析した結果、該チタノシリケート担持金における金の担持量は、 0.6重量%であった。 【0068】次に、上記チタノシリケート担持金2.0 gを用いると共に、酢酸パラジウムの使用量を0.00 42gに変更した以外は、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、 該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが1.1 5g、p−キシリレンジアセテートが0.64g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は14.9モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は6.1モル%であった。 また、ターンオーバー数は273であった。 触媒組成および結果を表1・3に示す。 【0069】〔実施例4〕テトラクロロ金(III) 酸・4 水和物0.11gを水200mlに溶解し、60℃に加温した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8. 5に調節した。 次いで、該水溶液に、パラジウム化合物としてのテトラアンミンパラジウムジクロライド0.0 13gと、ラウリン酸ナトリウム0.14gとを添加して溶解させた。 これにより、テトラクロロ金(III) 酸水溶液を調製した。 得られた水溶液に、60℃で、実施例1で得た酸化ケイ素担持酸化チタン5gを添加し、同温度で1時間攪拌して該酸化ケイ素担持酸化チタンを懸濁させると共に、その表面にパラジウム沈澱物および金沈澱物を固定化した。 【0070】その後、懸濁液を濾過し、濾残、即ち、パラジウム・金沈澱物固定化物を水洗して120℃で8時間、乾燥させた。 次いで、該パラジウム・金沈澱物固定化物を、空気中で400℃、3時間、焼成することにより、金超微粒子固定化物としての酸化ケイ素担持酸化チタン担持パラジウム・金を得た。 酸化ケイ素担持酸化チタン担持パラジウム・金の調製前後における水溶液を蛍光X線分析した結果、該酸化ケイ素担持酸化チタン担持パラジウム・金におけるパラジウムの担持量は0.1重量%であり、金の担持量は0.35重量%であった。 【0071】次に、得られた酸化ケイ素担持酸化チタン担持パラジウム・金4.0g(パラジウム含有量0.0 376ミリモル、金含有量0.0711ミリモル)、酢酸酸化ビスマス(和光純薬工業株式会社製)0.02 g、および、酢酸カリウム(和光純薬工業株式会社製) 0.2gを、100mlの回転式オートクレーブに仕込んだ。 つまり、オートクレーブ内で上記化合物等を混合することにより、本発明にかかる触媒を調製した。 【0072】続いて、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが1.92 g、p−キシリレンジアセテートが1.21g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は24.8モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は11.5モル%であった。 また、ターンオーバー数は245であった。 触媒組成および結果を表1・3に示す。 【0073】〔実施例5〕酢酸酸化ビスマスに代えて、 モリブデン化合物(第三化合物)としてのモリブデン酸0.023g(モリブデン含有量0.0704ミリモル)を用いた以外は、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが0.15 g、p−キシリレンジアセテートが0.10g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は1.9モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は1.0モル%であった。 また、ターンオーバー数は20であった。 触媒組成および結果を表1・3に示す。 【0074】〔実施例6〕酢酸酸化ビスマスに代えて、 鉄化合物(第三化合物)としての硝酸鉄0.022g (鉄含有量0.0704ミリモル)を用いた以外は、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが0.22g、p−キシリレンジアセテートが0.16g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は2.8モル%であり、p− キシリレンジアセテートの収率は1.5モル%であった。 また、ターンオーバー数は29であった。 触媒組成および結果を表1・3に示す。 【0075】〔実施例7〕p−キシレンに代えて、ベンジル化合物としてのトルエン4.3gを用いた以外は、 実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、ベンジルエステルとしての酢酸ベンジルが4.9g含まれていた。 従って、酢酸ベンジルの収率は69.3モル%であった。 また、ターンオーバー数は345であった。 触媒組成および結果を表1・3に示す。 【0076】〔実施例8〕p−キシレンに代えて、ベンジル化合物としてのp−メチルベンジルアセテート5. 0gを用いると共に、反応時間を3.0時間に変更した以外は、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、 反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、ベンジルエステルとしてのp−キシリレンジアセテートが0.50g含まれていた。 従って、p−キシリレンジアセテートの収率は7.3モル%であった。 また、ターンオーバー数は24であった。 触媒組成および結果を表1 ・3に示す。 【0077】〔実施例9〕酢酸に代えて、カルボン酸としてのプロピオン酸29.6gを用いると共に、反応時間を7.0時間に変更した以外は、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、ベンジルエステルとしてのp− メチルベンジルプロピオネートが1.92g、p−キシリレンジプロピオネートが1.32g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルプロピオネートの収率は2 2.9モル%であり、p−キシリレンジプロピオネートの収率は11.2モル%であった。 また、ターンオーバー数は81であった。 触媒組成および結果を表2・3に示す。 【0078】〔実施例10〕酢酸パラジウムの使用量を0.0005g(パラジウム含有量0.0023ミリモル)に変更すると共に、反応時間を5.0時間に変更した以外は、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、p−メチルベンジルアセテートの収率は8.0モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は5.0モル%であった。 また、ターンオーバー数は753であった。 触媒組成および結果を表2・3に示す。 【0079】〔実施例11〕テトラアンミンパラジウムジクロライドの添加量を0.062gに変更すると共に、酸化ケイ素担持酸化チタンに代えて、酸化チタン(担体)5gを用いた以外は、実施例4と同様にして、 金超微粒子固定化物としての酸化チタン担持パラジウム・金を得た。 酸化チタン担持パラジウム・金の調製前後における水溶液を蛍光X線分析した結果、該酸化チタン担持パラジウム・金におけるパラジウムの担持量は0. 5重量%であり、金の担持量は1.0重量%であった。 【0080】次に、得られた酸化チタン担持パラジウム・金1.0g(パラジウム含有量0.047ミリモル、 金含有量0.051ミリモル)、および、ランタン化合物(第三化合物)としての酢酸ランタン(III) ・1.5 水和物0.02g(ランタン含有量0.0583ミリモル)を、100mlの回転式オートクレーブに仕込んだ。 つまり、オートクレーブ内で上記化合物等を混合することにより、本発明にかかる触媒を調製した。 【0081】続いて、p−キシレンの使用量を10.0 gに、酢酸の使用量を12.0gに各々変更すると共に、反応時間を1.0時間に変更した以外は、実施例1 と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが0.47g、p−キシリレンジアセテートが0.35g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は3.05モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は1.66モル%であった。 また、ターンオーバー数は128であった。 触媒組成および結果を表2・3に示す。 【0082】〔実施例12〕酢酸ランタン(III) ・1. 5水和物に代えて、亜鉛化合物(第三化合物)としての酢酸亜鉛(II)・2水和物0.02g(亜鉛含有量0.0 993ミリモル)を用いた以外は、実施例11と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが0.53g、p−キシリレンジアセテートが0.3 6g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は3.44モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は1.74モル%であった。 また、ターンオーバー数は139であった。 触媒組成および結果を表2・3に示す。 【0083】〔実施例13〕酢酸ランタン(III) ・1. 5水和物に代えて、ニッケル化合物(第三化合物)としての酢酸ニッケル(II)・4水和物0.02g(ニッケル含有量0.0804ミリモル)を用いた以外は、実施例11と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが0.50g、p−キシリレンジアセテートが0.34g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は3.22モル%であり、p− キシリレンジアセテートの収率は1.63モル%であった。 また、ターンオーバー数は130であった。 触媒組成および結果を表2・3に示す。 【0084】〔実施例14〕酢酸ランタン(III) ・1. 5水和物に代えて、アルカリ土類金属化合物(第三化合物)としての酢酸バリウム(II)・1水和物0.02g (バリウム含有量0.0731ミリモル)を用いた以外は、実施例11と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p− メチルベンジルアセテートが0.60g、p−キシリレンジアセテートが0.43g含まれていた。 従って、p −メチルベンジルアセテートの収率は3.89モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は2.04モル%であった。 また、ターンオーバー数は160であった。 触媒組成および結果を表2・3に示す。 【0085】〔実施例15〕酢酸ランタン(III) ・1. 5水和物に代えて、アルカリ金属化合物(第三化合物) としての酢酸カリウム0.20g(カリウム含有量2. 0377ミリモル)を用いた以外は、実施例11と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートが0.44g、p−キシリレンジアセテートが0.39g含まれていた。 従って、p−メチルベンジルアセテートの収率は2.85モル%であり、p−キシリレンジアセテートの収率は1.86モル%であった。 また、ターンオーバー数は132であった。 触媒組成および結果を表2・3に示す。 【0086】〔比較例1〕テトラクロロ金(III) 酸・4 水和物0.11gを水200mlに溶解した後、該水溶液に、実施例1で得た酸化ケイ素担持酸化チタン5gを添加した。 次いで、この混合物を加熱して水分を蒸発乾固させることにより、酸化ケイ素担持酸化チタンの表面に金沈澱物を含浸法で以て固定化した。 但し、該金沈澱物は、超微粒子とはなっていない。 得られた比較用の酸化ケイ素担持酸化チタン担持金における金の担持量は、 1.0重量%であった。 【0087】次に、得られた比較用の酸化ケイ素担持酸化チタン担持金2.0g(金含有量0.1015ミリモル)、酢酸パラジウム0.0084g、酢酸酸化ビスマス0.02g、および、酢酸カリウム0.2gを、10 0mlの回転式オートクレーブに仕込んだ。 つまり、オートクレーブ内で上記化合物等を混合することにより、 比較用触媒を調製した。 【0088】続いて、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートおよびp−キシリレンジアセテートが殆ど含まれていなかった。 即ち、比較用触媒には、触媒活性が殆ど無いことが判った。 触媒組成および結果を表2・3に示す。 【0089】〔比較例2〕酢酸酸化ビスマスおよび酢酸カリウムを用いない以外は、実施例1と同様の反応条件で酸化反応を行い、反応液の組成を分析した。 つまり、 第三金属成分を含まない比較用触媒を用いて、酸化反応を行った。 その結果、該反応液には、p−メチルベンジルアセテートおよびp−キシリレンジアセテートが殆ど含まれていなかった。 即ち、比較用触媒には、触媒活性が殆ど無いことが判った。 触媒組成および結果を表2・ 3に示す。 【0090】 【表1】 【0091】 【表2】 【0092】 【表3】 【0093】 【発明の効果】本発明の酸化反応用触媒は、従来の触媒よりも高い活性を示し、工業的な製造方法に対して好適に用いることができる。 これにより、例えばp−キシレン等のベンジル化合物と酢酸等のカルボン酸とを反応させて、p−メチルベンジルアセテートやp−キシリレンジアセテート等のベンジルエステルを製造する際に、好適に用いることができる酸化反応用触媒を提供することができるという効果を奏する。 【0094】また、本発明の酸化反応用触媒の調製方法によれば、従来の触媒よりも高い活性を示す酸化反応用触媒を調製することができる。 これにより、例えばp− キシレン等のベンジル化合物と酢酸等のカルボン酸とを反応させて、p−メチルベンジルアセテートやp−キシリレンジアセテート等のベンジルエステルを製造する際に、好適に用いることができる酸化反応用触媒を調製することができるという効果を奏する。 【0095】さらに、本発明のベンジルエステルの製造方法によれば、ベンジルエステルを、工業的に、効率的にかつ安価に製造することができるという効果を奏する。 例えば、ベンジル化合物としてp−キシレンを用いた場合には、ベンジルエステルとしてのp−メチルベンジルアセテートやp−キシリレンジアセテートを、工業的に、効率的にかつ安価に製造することができる。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 (72)発明者 飯田 俊哉 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 (72)発明者 林 利生 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 |