【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、航空機用ターボファンエンジンファンダクトの逆推力装置とカウルとに関し、 特に、内側及び外側ダクト壁が単一アセンブリとして構成されていると共に、半径方向に延在している側壁によって結合されてカウルを形成する分岐ファンダクトに関する。 【0002】 【従来の技術】航空機ターボファンエンジンには通例、 ファンバイパスダクトが設けられており、ファンバイパスダクトはファンによって圧縮された空気の大部分を通し、又、このファンバイパスダクトには通例ファンノズルが含まれており、ファンノズルはファン圧縮バイパス空気により推力を発生する。 残りの空気はコアエンジンを通り、そこで作動流体として用いられ、ファン用動力の発生を助ける。 外側カウルがファンダクトを囲んでおり、又、内側カウリングがコアエンジン空洞を囲んでおり、2つの部分、即ち前部と後部とに分かれている。 前部はコアエンジンカウルと呼び得るもので、エンジンのタービン部のほぼ端まで後方に延在している。 半径方向内側及び外側カウル間にファンダクトが存在しており、 ファンダクトはその出口にファンノズルを含んでいる。 【0003】流れの剥離を防ぐように設計されていると共に、圧力損失及び流れ損失を最小にするような空気力学的形状を有している空力的にきれいなファンダクト、 即ち滑らかなファンダクトが、航空機の効率的な運用に重要である。 典型的なファンダクトの製造にはアルミニウム板金が用いられ、このアルミニウム板金は軽量であると共に、ファンダクト及びその壁、特にノズル壁の空力形状の形成に適するものである。 この板金製造は通例リベットを用いて達成され、その製造物はしばしば、剛性のために最小限のフレーム構造体に取り付けられている。 【0004】ターボファンエンジンはしばしば、「分岐ファンダクト逆推力装置(Bifurcated Fan Duct Thrust Reverser)」と題したジョンストン(Johnston)等の1 970年11月24日付の米国特許番号第354179 4号に記載されているような外側カウル内に装着された逆推力装置を有している。 この引例は本発明と同じ譲受人(本出願人)に譲渡されたもので、参照によりここに包含される。 ジョンストンは、ファンダクトを囲んでいるファンケーシングに逆推力装置を剛着する必要のあることがコアエンジンへのアクセスを困難にすることに注目している。 このため、ジョンストンは、互いにほぼ鏡像である2つの半円形ファンダクトを有している分岐ファンダクトを開示している。 各半ダクトは半径方向に相隔たっている概して弧状の内壁と外壁とを有しており、 内外両壁は、それらの周方向端において半径方向に延在している側壁にリベット、溶接等により連結されている。 【0005】コアエンジンカウリングは2つの軸方向に延在している部分を備えており、第1の部分はファンダクトの内壁であり、そして第2の部分、即ち後部は後ろ側カウル又はコアエンジンカウルである。 ファンカウリングは軸方向に延在している2つの部分を備えており、 後部は分岐ファンダクトの外壁である。 外壁は、作動機構と、転向静翼列と、引込み閉塞ドアとを含んでいるファン逆推力装置を内蔵しているファン逆推力装置カウルである。 【0006】従来のファンダクトアセンブリは、リベットを用いてダクトのぬれ空力表面を形成している板金を取り付けることにより製造されている。 この種の構造は幾つかの固有の欠点を有している。 こうした設計は元来重く、そして製造アセンブリにおいて使用されるアルミニウムが、ダクトをエンジンの熱から保護し且つ火災を防止するための絶縁ブランケットと熱障壁とを必要とする。 その結果、エンジンの重量が更に増加すると共に、 コアエンジンへのアクセスが更に困難になる。 【0007】ファンダクト壁の表面からファンバイパス空気流へ突入しているリベット頭部によって、流れ損失及び圧力損失が生じ、エンジンの燃料効率を減らす。 幾つかの部分を組み合わせて製造したダクトは、本発明によるような複合材料で形成した単一の連続ダクトより重く且つ剛性が低い。 本発明の目的に応じて用いる複合という用語は、樹脂材料、例えば、エポキシ(Epox y)、PMR−15、BMI、PEEU等に埋め込まれた繊維、例えば、炭素、シリカ、金属、金属酸化物又はセラミック繊維を含有している材料を意味する。 特に使用されるのは繊維織物であり、これは樹脂含浸後、オートクレーブ法又はプレス成形により硬化されて比較的均質の硬質物を形成する。 好適実施例で用いられる複合材は、PMR−15ポリイミド樹脂含浸黒鉛織物で、これは織物と共にテープを含んでいる。 この材料の説明は、 『プラスチックス・エンジニアリング(Plastics Engin eering)』1990年1月号における「高温複合材用P MR−15プリプレグの加工(Processing of PMR-15 P repregs for HighTemperature Composites)」と題したメル カニズ(Mel Kaniz)による論文に記載されており、この引例は参照によりここに包含される。 適合材料及び定義に関する他の情報は、ASMインタナショナル(ASM INTERNATIONAL)による『エンジニアリング・マテリアルズ・ハンドブック(Engineering Materials Hand book)』1987年〜1989年版又はその後の版に記載されており、これも参照によりここに包含される。 【0008】 【発明の概要】本発明は、航空機用ターボファン型ガスタービンエンジンにおいて、概してファンカウルとコアエンジンカウルとの間に画成されているファンダクトに関する。 本発明は、ファンダクトにおける空気流損失が極めて少ない滑らかなファン空気流をもたらし、又、コアエンジンへのアクセスを容易にする頑強な軽量耐火性コアエンジンカウルを提供する。 【0009】本発明は、分岐ファンバイパスダクトにおいて用いられる一体内側カウリングを提供する。 一体内側カウリングはファンダクト内側カウルとコアカウルとを一体にしたものと、半径方向に延在している分岐用側壁とを有している。 側壁は実質的にファンダクトの端まで延在していると共に、内側カウリングは実質的にコアエンジンタービン部の端まで延在している。 内側カウリングは好ましくは複合材料、特に黒鉛/PMR−15 (PMR−15含浸黒鉛)で作られる。 側壁は外側カウルに機械的に取り付けられるように設計されており、外側カウルは好適実施例では、ファン逆推力装置を含んでいるファン逆推力装置カウルである。 こうして形成されているファンダクトアセンブリは、ターボファン取り付けパイロンに枢着されていると共に、エンジンの両側で鏡像形ファンダクトアセンブリを枢動的に開くことによりコアエンジンにアクセスするための適当な係止装置を含んでいる。 【0010】本発明は、比較的滑らかな表面上をファンバイパス空気が流れるようにし、従って、ファンダクト空気流損失が減るので、ターボファンエンジンの燃料効率が高まる。 内側カウリングの一体構造は、ファンダクト内側カウルとコアカウルとを一体化するので、修理及び整備のためのコアエンジンへのアクセスを容易にし、 従って、エンジンの整備がし易くなり、エンジンの運転費が少なくなる。 複合構造は従来のカウル設計より軽量であり、これも又、エンジンの燃料効率を高める。 複合構造体は比較的製造し易く、そして十分な耐火性を有するので、防火材料層を追加する必要をなくする。 【0011】一体のコアカウルと側壁とは、前部と後部とを有している二体コアカウルを包含している従来の設計より頑強である。 この特徴は比較的強力であり、所望に応じてカウルによる荷重分担を可能にする。 カウリング及び側壁の分岐連続一体構造は、エンジン及びエンジン構成部の剛性及び耐久性を高める。 この剛性改善によりロータ先端間隙の制御が改善され、従って、エンジンの設計及び運転に当たり、ロータ先端と、同先端が密封係合しているエンジン静止部分との間の間隙の公差を比較的狭くすることができる。 この利点は燃料効率を高め、エンジン及びエンジン構成部の寿命を長くする。 【0012】本発明の上述及び他の特徴は、添付図面と関連する以下の詳述から更に明らかとなろう。 【0013】 【実施例の記載】本発明は特に、例えば、本発明の譲受人(本出願人)であるゼネラル・エレクトリック社によるGE CF6、CFM、及び間もなく製造されるGE 90シリーズのエンジンのような型のファンジェットエンジンに関する。 図1には、ファン12を有しているファンジェットエンジン10が示されており、ファン12 は空気を圧縮して、内側ファンケース16と外側ファンケース18との間に設けられているファンバイパスダクト14と、コアエンジン流路13の前部に配置されているブースタ120とに送給する。 ファン空気はバイパスダクト14から、概略的に22で示すファンノズルを通って排出される。 ファンノズル22はスロート24を有している。 ブースタ120は従来の低圧タービン123 によって駆動される低圧ロータ122の上で、ファン1 2と共に回転して空気を更に圧縮し、次いでこの空気はコアエンジン126の従来のコアエンジン圧縮機124 に導かれる。 【0014】ファン支柱51を介してパイロン60によって機翼(図示せず)に装着されているファンフレーム50がロータの前方軸受支持を成しており、パイロン6 0は面外にあるので点線で示されている。 又、タービンフレーム70がロータの後方軸受支持を成している。 コアエンジン126は概して、コアエンジンカウルとも呼ばれる環状内側カウル38によって囲まれたコアエンジン空洞39内に配置されている。 【0015】分岐ファンダクト逆推力装置アセンブリ3 0が環状外側カウル34と、環状内側カウル38と、カウル34及び38の周方向端部において両カウル間に半径方向に延在している分岐用側壁40とを含んでおり、 側壁40は一つだけ図示されており、これは面外にあるので点線で示されている。 外側カウル34は又、並進カウル及び転向静翼列32によって示される従来の逆推力装置を内蔵しており、この装置は閉塞ドア33を用いるもので、ドア33は内側カウル38に枢着された抗力リンク119に助けられて展開する。 【0016】本発明によれば、総体的に37で示されている分岐ファンダクト装置が設けられており、この分岐ファンダクト装置は一体内側カウル38と側壁40とを有しており、内側カウル38は概してファンフレーム5 0とタービンフレーム70との間に軸方向に延在している。 内側カウル38の後端52は、好ましくは、コアエンジン空洞通気口で終わっており、この通気口を部分的に形成している。 側壁40は概して内側カウル38の前端からファンダクト14の端部まで軸方向に延在している。 【0017】図2(A) は本発明の好適実施例の詳細図であって、図示の分岐ファンダクト装置37は、一体内側カウル38と、側壁40と、周方向に配置されている補強リング48とを含んでいるカウリングを有している。 このカウリングは好適実施例では、複合材料から形成されており、好ましい複合材料は黒鉛繊維とPMR−15 とから成るもので、ここでは黒鉛/PMR−15で表される。 リンク開口110が形成されており、そしてリンケージボックス121が開口110の周りに接合されており、図1に示す抗力リンク119の枢着に役立つ。 総体的に80で示される騒音減衰処理手段を、多孔セルのセクタの形態のものとして、内側カウル38の内側に接合し得る。 【0018】図2(B) は内側カウル38の構造を更に明示している。 内側カウル38は内側スキン82から形成されており、このスキンは黒鉛/PMR−15で作られていると共に、内側カウル38の接合組立ての前に硬化される。 内側スキン82は窪み84を含んでおり、従来の騒音減衰用ハニコムセル層88を受け入れている。 P MR−15で作られていると共に内側カウル38の接合による組立ての前に硬化された外側スキン90に、従来の多孔92が予め形成されており、ハニコムセル層88 と共に騒音処理手段80となる。 詳細については図2 (C) を参照されたい。 【0019】補強リング48はz形であるが、他の適当な形状のものでもよく、黒鉛/PMR−15で作られており、内側カウル38の接合組立ての前に硬化される。 内側スキン82と、外側スキン90と、騒音減衰用ハニコムセル層88と、補強リング48とを組み合わせて内側カウル38を形成するための接合工程は、単一の接合用取り付け具を用いて、これらすべての要素を保持することにより同時に行われる。 【0020】分岐ファンダクト装置37には、外側カウル34を側壁40に相互の境界に沿って取り付けて、枢動自在な一体の分岐ファンダクト逆推力装置カウルとコアカウルとを形成する手段を設け得る。 又、図3に更に明示されているように、前述のジョンストンの米国特許に示されている枢動手段と類似のものを設け得る。 図3 はパイロン60にヒンジ止めされていると共に、ファン逆推力装置外側カウル34と一体内側カウル38と側壁40とによって形成されている右側の分岐形ファン逆推力装置ダクトアセンブリ200a及び左側の分岐形ファン逆推力装置ダクトアセンブリ200bとをそれぞれ持ち上げることにより、コアエンジン空洞39に容易にアクセスできることを示している。 分岐形ファン逆推力装置ダクトアセンブリ200a及び200bを枢着すると共に係止する装置及び方法は、当該技術において公知であり、例えば、前述のジョンストンの米国特許に示されているものがある。 【0021】以上、本発明の原理を説明するために、本発明の好適実施例及び代替実施例を詳述したが、本発明の範囲内で実施例の様々な改変が可能であることを理解されたい。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の好適実施例による一体コアカウルと側壁とを有している内側カウリングを備えた一体分岐ファンダクトを有しているファンジェットエンジンの断面図である。 【図2】内側カウリング及び側壁の構成を示す図であって、図2(A) は図1に示す内側カウリング及び側壁の斜視図、図2(B) は図1に示す内側カウリング及び側壁の断面図であって図2(A) の切断平面2A−2Aに沿って切った図、及び図2(C)は図1に示す内側カウリングの一部分の分解断面図である。 【図3】図1におけるエンジンの斜視図であって、内側カウリングが開いている一体分岐ファンダクトを示すと共に、コアエンジン空洞へのアクセスが容易であることを示す図である。 【符号の説明】 10 ファンジェットエンジン 12 ファン 14 バイパスダクト 22 ファンノズル 30 分岐ファンダクト逆推力装置アセンブリ 34 外側カウル 37 分岐ファンダクト装置 38 内側カウル 40 分岐用側壁 48 補強リング 50 ファンフレーム 70 タービンフレーム 80 騒音減衰処理手段 82 内側スキン 84 窪み 88 ハニコムセル層 90 外側スキン 92 多孔 200a、200b 分岐形ファン逆推力装置ダクトアセンブリ |