【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、騒音を低減化する吸音技術に関し、特に航空用、舶用、発電用ガスタービン等のターボ機械低周波数騒音の抑制や、プラント等の吸入・排気用大型ダクト内低周波数振動・騒音対策、空調、家電機器の低騒音化、建設現場等の作業空間、車内、客室等の移動空間の快適性向上に有効な吸音技術に関する。 【0002】 【従来の技術】一般の防音手段としては図6のAに例示したような遮音壁等による遮音方式と、インピーダンス不整合に基づく音の伝播妨害(反射防止)作用の共鳴型、或いは充填材との摩擦、開口部での損失によって熱エネルギーへの変換を促す抵抗型の吸音方式とがよく知られ慣用されている。 航空エンジンでは、図6のBに示したような通常ハニカム構造の吸音装置或いはバルク型吸音装置が主に用いられている。 前者は、ハニカム室の共鳴によるインピーダンス不整合と喉部を空気が通過する際の抵抗による減衰の二つを利用している。 適用周波数帯域を広げるために、体積の異なるハニカム室を小開口部で連結した二重或いは多重ハニカム構造の吸音装置が実用されている。 一般に、ハニカム構造の吸音装置は、強度上高温環境下での使用には不向きである。 後者は、入射した音波がバルク内部での摩擦によって減衰することを基本原理としていて、バルク内の充填率と周波数帯域の間に相関がある。 最近では、高温ジェットエンジン用にセラミクス系の耐熱材の適用が検討されている。 これらの吸音装置は、設計点で最適な騒音低減効果をもたらすように、ハニカム室体積、開口率、充填率、 設置面積等が選定される。 上記の吸音装置は、吸音する機能を有する反面、圧力損失、重量増加、設計点外での性能劣化を引き起こすという問題点がある。 ファン騒音に関しては、バイパス比の増加に応じてファン騒音周波数が下がる。 その結果、ハニカム室容積が増加し、エンジン重量の増加及び巡航時の圧力損失を蒙ることとなる。 ファン回転数の変化に応じた騒音周波数特性の変化にも追従できないため、従来の吸音装置には騒音低減量に限界がある。 ジェット騒音についても、まず、ミキサなどの混合促進装置で渦構造を小スケールにして低周波数音を高周波数音側に音域移動させて、該高周波音を吸音材或いは距離減衰をもって二段階で騒音低減する方法がある。 しかし、この方法では、ミキサ部で生ずる推力損失やエジェクタの重量増加が避けられず、ミキサの着脱機構を設けることはさらなる重量増加を引き起こすといった問題を伴う。 一般の低騒音問題、例えば大口径で長い配管内に生ずる共鳴等の低周波数音に対しては、既存の吸音材ではその設置容積のため、制限された空間に吸音材を施すことが困難となる。 分岐共鳴管を用いると、分岐管寸法が増大する上、設計点以外での性能劣化が著しい。 【0003】一方、孔を通って自由空間に噴出する噴流に低周波数の音波が当たると音のエネルギーが失われるという現象が起こることが最近の研究から明らにされ、 この現象は研究者の間で関心がもたれている。 いままでの研究において理論モデルによる予測では、小孔直径、 噴流流速、開口率、背後層厚さ、噴流への音波の入射角についての簡単なモデル化が試みられている。 しかしながら、吸音効果を試験した例は少なく、特に複雑な孔形状などを用いた場合の検証結果は殆ど見当たらない。 また、小孔を通過する噴流を取り巻く空力的、音響的性質を積極的に変化させることで、吸音性能を最適化する試みはいまだなされていない現状である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記したような消音技術における状況の中で、(1)離散周波数音、広帯域周波数音を含む低周波数音を既存の吸音ライニングと同程度に吸音するものであって、吸音ライニングに比べて設置容積を大幅に減らすことができ、(2) 燃焼器室内など高音圧、高温度環境下でも小孔形状の最適化によって、適合化機構無しでも空間内音響モードの成長を抑制でき、(3)基準周波数にして音響的設計点を5 0%外れた場合にも小孔直径以上の波長を持つ低周波数音源の騒音特性の変化に追従して吸音性能を維持でき、 (4)吸音パネルに見られる可動装置による重量増加、駆動用電気エネルギー消費、圧力損失など、主システムの運転機能への影響を最小限とすることができる消音技術を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明の微細噴流制御式吸音システムは、騒音が伝播する空間の一部を覆う、多数の小孔が形成された隔壁と、該小孔を貫通して微細な気体流を空間内部若しくは空間外部へ流通させる手段とを備え、気体を流通させることによって前記隔壁近傍空間に微細噴流を発生させ騒音を解消させる吸音システムにおいて、前記小孔の形状、噴流噴出或いは流入角度、 噴流流量、隔壁背後層の厚さ、隔壁背後層に流入する気流角度のいずれか又はこれらの組合せを選択する。 また、吸音効果を高めるために、騒音空間に誤差センサを設置し、該誤差センサの出力が最小となるように、小孔の形状、噴流噴出或いは流入角度、噴流流量、隔壁背後層の厚さ、隔壁背後層に流入する気流角度のいずれか又はこれらの組合せを調節する適応化制御機構を備えるようにし、小孔の形状としては、隔壁開口断面において、 任意形状が選択できると共に、必要に応じて開口前後縁に微小突起物があってもよく、また、隔壁厚み方向には多層段、テーパー、空洞、突起物が形成されたものが選択でき、これらのいずれか又は組み合わせの選択使用が可能である。 【0006】また、本発明の微細噴流制御式吸音システムは、周波数帯域毎に最適な吸音効果が得られる異なる開口率、等価直径、小孔形状と噴流速度等を持つ隔壁部を複数準備し、騒音周波数に応じてこれらを適宜組み合わせて使用したり、適応化制御機構として小孔付近或いは隔壁の一部に圧電性素子、形状記憶合金などの機能性材料を埋め込んだ構成とし、外部からの制御信号に応じて、小孔の形状を微変させることにより、噴流が発生するせん断渦の剥離現象を制御し、吸音帯域や吸音量を調整するようにした。 更に、多数の小孔が形成された隔壁を多層に設置すると共に個々の隔壁を移動させる手段を備え、小孔同士の相対的位置関係をずらすことにより吸音特性を向上させる。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明は、航空用、舶用、発電用ガスタービン等のターボ機械低周波数騒音の抑制に有効な吸音技術として、孔を通って自由空間に噴出する噴流に低周波数の音波が当たると音のエネルギーが失われるという現象を適用することに想到したのであるが、理論モデルによる予測では、小孔直径、噴流流速、開口率、 背後層厚さ、噴流への音波の入射角についての簡単なモデル化が試みられているものの、いまだこの現象を利用した吸音システムに関する試験例は少なく、特に複雑な孔形状などを用いた場合の検証結果は殆ど見当たらない。 そもそもこの現象のメカニズムは、完全に解析しきれているわけではないが、非定常変化する音波と定常的な微細噴流の干渉の結果、音の一部が流れに変換されるものと解される。 そこで、本発明者は小孔を通過する噴流に影響を与える物理的(空気力学的、音響学的等)状況を多様に変化させることで、吸音性能を最適化する試みに着手したものである。 【0008】本発明では小孔を通過する噴流に影響を与える物理的状況としては、小孔形状、噴流流速、開口率、背後層厚さ、噴流への音波の入射角等を念頭において、検証した。 以下に、本発明の微細噴流制御式吸音システムの概念図を図1に示し、説明する。 騒音源となるエンジンナセル内面(図5A参照)、燃焼室壁面(図5B 参照)、ダクト配管内面、エンジン排気コーン表面等の一部を小孔付き隔壁6とする。 これら、隔壁で囲まれる空間は、円柱、球、非円形柱、多角形など任意の面からなる三次元空間であってよく、小孔付き隔壁はこれらの面の全部或いは一部分でもよい。 小孔付き隔壁の背後層7内に二次空気導入口又は導出口10を設けて、外部から任意の流量の二次空気を一様に導入または導出できる構造とする。 噴流を騒音空間に導入することも騒音空間から導出することもほぼ同じ音響効果をもたらすので、以後本明細書では両形態を代表させ導入の形態のみを記載する。 二次空気口から背後層7の空間に直接二次空気を導入しないで多孔質材9を充填した層を介して導入する構造とすれば、二次空気口からの空気流は多孔質材9内に拡散され、広域に渡り一様性を保つことができる。 二次空気は、圧縮機抽気など外部の空気源13から得ることとし、流量調整弁12を制御することで二次空気流量、即ち噴流マッハ数を任意に調整することができる。 隔壁に入射する音波の反射率及び吸音率を最適に調整するには、小孔形状と形状に呼応する噴流速度の最適化が必要となる。 図2のAに隔壁6の小孔4近傍における噴流5 と発生する渦22及び入射音波15と反射音波16との関係を模式的に示してある。 小孔の一方から他方へ気体が流れる噴流5が存在すると、下流側開口部で境界層が剥離して渦22が発生する。 図中隔壁6の上部では吸い込み現象が下部では吹出し現象がおこっており、これがそれぞれの入射音波15に影響を与え、反射波16となる。 【0009】さて、小孔形状に関しては、噴流に影響を与える物理的(空気力学的、音響学的等)状況を多様に変化させる形態として、隔壁開口断面について、例えば図2のBに例示したような円形、軸対称非円形(楕円)、多角形など任意形状とすることができるが、隔壁厚み方向には図3のAに示すように、多層段状24、テーパー状25、空洞状26、突起物付き空洞状27に形成されたものを想到し検証した。 また、図示していないが開口前後縁に微小突起物がある形態とすることで噴流の状態、 渦の発生形態を変えることも可能である。 これらを選択組み合わせて噴流が生成される際の剥離渦のスケールを広範囲に分布させ、吸音帯域を増加することができる。 噴流速度については、与えられた開口率に対して反射率を極小にする速度域が存在し、小孔が円柱状で隔壁厚さが無限に小さい場合に、見かけの通過マッハ数が開口率の約20乃至30%少ない場合が最適となるとの知見を得た。 この他、小孔の等価直径、噴流噴出角度、背後層の厚さも吸音率や吸音帯域に影響することが確認された。 そこで本発明者は、上記のパラメータを最適に組み合わせ既存の吸音材と共存させることにより、従来の吸音材単体に比べて吸音率がはるかに優れたシステムの実現を目指した。 【0010】また、騒音源の特性の変化に合せて吸音特性を推移させるには、小電力、小型のアクチュエータを用いて上記の小孔形状等を変化させつつ、それに呼応して噴流速度を調整する適応化制御機構2を付加することが有効であるとの知見を得た。 小孔形状等を変化させる手段としては、図3Bの28に示すような小孔部分を形成する円筒状部材として圧電性素子や形状記憶合金といった機能性材料素子28を隔壁6に嵌め込むことに想到した。 この機能性材料素子28に印加電圧又は温度変化を与えることで図3Bの29に示すように中心軸が傾斜する変形をもたらしたり、30に示すように孔直径が等価に伸縮する変形、31に示すように孔直径がテーパー状に伸縮して絞り込み/拡大形態の変形、32に示すように孔直径を任意設計形状(この例は楕円)になる変形を実現させることが可能である。 また、多数の小孔が形成された隔壁を多層に設置すると共に個々の隔壁を移動させる手段を備え、隔壁を小孔中心軸に対して垂直方向に微動させることにより吸音特性が向上することが確認できた。 この隔壁間相対位置微動は、隔壁を多層にして、小孔同士の相対的位置関係をずらして渦の干渉を軸対象モードからずらし、吸音帯域を増やすことを狙うものである。 そこで、本発明ではこれらの知見に基いて、吸音部に入射してくる音波15を検出する検出センサ17と、吸音部を通過した音波16を検出する誤差センサ18を騒音場内に設置し、これらにより、場の騒音を検出してその出力をコントローラ19に導き、多入力多出力適応制御アルゴリズムを用いて、前記した小孔部分の機能性材料素子28、噴流流量制御弁12や、隔壁間相対位置微動装置21に制御信号 20を送出し、誤差センサの出力が最小となるように逐次、適応フィルタ係数を更新させる構成を採用した。 すなわち、検出センサ17は騒音に含まれる主な成分、各成分の周波数帯、各成分の音圧レベルを検出し、低減すべき成分を選択する。 ここでは噴流導入方向の制御29、小孔等価直径の制御30、中心軸形状の制御31、小孔断面形状の制御32と、多層隔壁を小孔中心軸に対して垂直方向に微動させる適応化制御機構が機能し、その結果を誤差センサ18が検知するのでその値が最小となるように調整量が決められる。 本発明のシステムにおける消音作用を整理すると、次のようにまとめられる。 (1)噴流通過に伴う隔壁の低周波数音反射率の極小化作用、これは換言すれば音響エネルギーを渦生成時の流体力学的エネルギーに変換する作用である。 (2)小孔内部外部の形状工夫による吸音率増大作用。 (3)小孔周囲の構造、流体、音響条件を調整することによる吸音特性の可変作用。 【0011】 【実施例1】図4のAに、航空エンジンの吸入側及び燃焼器に搭載した騒音吸収器の実施例を示す。 吸入側では、ナセル内面に小孔を空けて、噴流を通過させる。 離着陸時にファンや圧縮機から放出される騒音を吸収するが、巡航時には噴流を止めて抽気空気の無駄を省くようにする。 同様に、エンジン排気側では、コーン部に小孔を設け、超音速ジェット推進の場合には、エジェクタ内部にも小孔を設ける。 吸気側と同じく離着陸時のみ作動する。 燃焼器内部では、図に示すように二次空気の一部を一次ライナに通気するか、一次ライナ内の圧力変動を利用して小孔板単体で自立動作させる。 いずれの場合にも、補助動力装置或いは圧縮機を用いて、微小噴流群をナセル内へ流入あるいは壁面側へ吸入させる。 小孔形状としては、図3Aの24段差状若しくは25テーパー状を採用すると、前縁剥離した渦が再付着する効果があり、噴流速度と合せて最適設計することで吸音帯域を広げることができる。 他に、前縁と後縁の間に設けた浅底キャビティや突起物付きキャビティも同様である。 キャビティと同様に、孔空板を多層にしたり、透過直径の異なる板を重ねたり、孔中心位置をずらす態様も有効である。 断面の形状としては、非円形や多角形にすることで複数のスケールの渦を励起し、吸音帯域を広げる効果が見込まれる。 適応化制御機構として用いる場合には、小孔を含む板は、圧電性材料或いは機能性材料を使って・小孔の形状、透過直径、噴流方向を可変にする。 エンジンの運転状態に応じて騒音周波数特性が変化するので、これに呼応して、噴流流量を加えたこれらのパラメータを変化させて最適の吸音効果を得る。 可変量の制御に当たっては、エンジン内外に設置された誤差センサを使って放射される騒音レベルを常時計測し、制御用のコンピュータにデータを送る。 誤差信号を得たコンピュータは、機能性材料を変形させたり隔壁駆動装置や流量調整弁を制御して、最終的に誤差信号が最小となるようにパラメータを調節する。 なお、噴流の駆動には空気源が必要となるが、エンジンでは圧縮機の抽気を用いる。 開口率は1〜 20%、噴流の最適マッハ数は0.01〜0.15と小さいため抽気量は僅かである。 【0012】 【発明の効果】本発明の微細噴流制御式吸音システムは、騒音が伝播する空間の一部を覆う、多数の小孔が形成された隔壁と、該小孔を貫通して微細な気体流を前記空間内部若しくは空間外部へ流通させる手段とを備え、 気体を流通させることによって前記隔壁近傍空間に微細噴流を発生させ騒音を解消させる吸音システムにおいて、前記小孔の形状、噴流噴出或いは流入角度、噴流流量、隔壁背後層の厚さ、隔壁背後層に流入する気流角度のいずれか又はこれらの組合せからなるものであるから、吸音ライニングに比べて設置容積を大幅に減らして吸音効果を得ることが出来る。 また、基準周波数にして音響的設計点を50%外れた場合にも小孔直径以上の波長を持つ低周波数音源の騒音特性の変化に追従して吸音性能を維持でき、吸音パネルに見られる可動装置による重量増加、駆動用電気エネルギー消費、圧力損失など、主システムの運転機能への影響を最小限とすることができる。 【0013】小孔の形状としては、隔壁開口断面において、任意形状が選択できると共に、隔壁厚み方向には多層段、テーパー、空洞、突起物が形成されたものが選択でき、これらのいずれか又は組み合わせの選択使用が可能である本発明の微細噴流制御式吸音システムでは、燃焼器室内など高音圧、高温度環境下でも小孔形状の最適化によって、適合化制御機構無しでも空間内音響モードの成長を抑制できる。 また、本発明の微細噴流制御式吸音システムは、騒音空間に誤差センサを設置し、該誤差センサの出力が最小となるように、小孔の形状、噴流噴出或いは流入角度、噴流流量、隔壁背後層の厚さ、隔壁背後層に流入する気流角度のいずれか又はこれらの組合せを調節する適応化制御機構を備えたることにより、より効果的に吸音ができる。 周波数帯域に対応させて最適な吸音の得られる開口率、等価直径、小孔形状と噴流速度の隔壁部を複数配備し、騒音周波数に応じて適宜組み合わせて使用することにより、広い周波数帯域の騒音の吸音に効果的に対応が出来る。 適応化制御機構は、小孔付近或いは隔壁の一部に圧電性素子、形状記憶合金などの機能性材料を埋め込んだ構成とし、外部からの制御信号に応じて、前記小孔の形状を微変させることにより、 噴流が発生するせん断渦を制御し、吸音帯域や吸音量を調整して、広い周波数帯域の騒音の吸音に更に効果的に対応が出来る。 本発明の微細噴流制御式吸音システムは、多数の小孔が形成された隔壁を多層に設置すると共に個々の隔壁を移動させる手段を備え、小孔同士の相対的位置関係をずらすことにより吸音特性を向上させることができる。 【0014】因みに本発明の効果を確認した実験結果を図5に示す。 図のDに示した直径2.3mmの小孔を横方向 4.5mm縦方向4.2mm間隔に96個配設した試験片(隔壁)で管内空間を仕切って噴流を通過させた時に、該試験片の上流・下流からの音響入射して管内32点で音を検出し、 各点での相関計数を求めてから試験片での反射率R、透過率Tを測定したものである。 図のABCに示したグラフは横軸が音響入力の周波数値であり、縦軸がAでは音響エネルギーの反射率、Bでは音響エネルギーの透過率、そしてCでは吸音率に対応するエネルギー損失(E L)である。 Mは小孔を通過する空気の見かけの最高マッハ数(実際にはこれよりも20%近く大きい)である。 小孔部分での反射係数、透過係数、エネルギー損失係数を計測した結果である。 エネルギー損失(EL)係数は1から反射係数Rと透過係数Tを減じた数値とした。 噴流なし(M=0.0)のときに比べM=0.085のときの吸音率はあがり、さらにM=0.20,0.30,0.40のときの吸音率は上昇している。 噴流の存在によって、吸音率が上昇していることが確認できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る微細噴流制御式吸音システムの基本構成を示す図である。 【図2】Aは小孔近傍の状況説明図であり、Bは小孔断面形状の例を示す図である。 【図3】Aは隔壁厚み方向の小孔断面形状例の図であり、Bは機能性材料による可変孔形状の例を示す図である。 【図4】Aはターボファンエンジンや送風機の低周波音抑制のために本発明のシステムを設置した例を示す図であり、Bは燃焼器内燃焼振動を抑制するため本発明のシステムを設置した例を示す図である。 【図5】本発明のシステムによる吸音効果を確認した試験結果を示す図である。 【図6】従来の防音技術を説明する図である。 【符号の説明】 1 微細噴流発生装置 11 二次空気2 適応化制御機構 12 噴流流量調整弁3 騒音が伝播する空間 13 二次空気源4 小孔 14 主流5 噴流 15 吸音部入射音波6 隔壁 16 吸音部通過音波7 背後層 17 検出センサ8 背後層剛体壁 18 誤差センサ9 多孔質材 19 コントローラ10 二次空気導入口 20 制御信号 ───────────────────────────────────────────────────── 【手続補正書】 【提出日】平成14年4月23日(2002.4.2 3) 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書【補正対象項目名】0011 【補正方法】変更【補正内容】 【0011】 【実施例1】図4のAに、航空エンジンの吸入側及び燃焼器に搭載した騒音吸収器の実施例を示す。 吸入側では、ナセル内面に小孔を空けて、噴流を通過させる。 離着陸時にファンや圧縮機から放出される騒音を吸収するが、巡航時には噴流を止めて抽気空気の無駄を省くようにする。 同様に、エンジン排気側では、コーン部に小孔を設け、超音速ジェット推進の場合には、エジェクタ内部にも小孔を設ける。 吸気側と同じく離着陸時のみ作動する。 燃焼器内部では、図に示すように二次空気の一部を一次ライナに通気するか、一次ライナ内の圧力変動を利用して小孔板単体で自立動作させる。 いずれの場合にも、補助動力装置或いは圧縮機を用いて、微小噴流群をナセル内へ流入あるいは壁面側へ吸入させる。 小孔形状としては、図3Aの24段差状若しくは25テーパー状を採用すると、前縁剥離した渦が再付着する効果があり、噴流速度と合せて最適設計することで吸音帯域を広げることができる。 他に、前縁と後縁の間に設けた浅底キャビティや突起物付きキャビティも同様である。 キャビティと同様に、孔空板を多層にしたり、透過直径の異なる板を重ねたり、孔中心位置をずらす態様も有効である。 断面の形状としては、非円形や多角形にすることで複数のスケールの渦を励起し、吸音帯域を広げる効果が見込まれる。 適応化制御機構として用いる場合には、小孔を含む板は、圧電性材料或いは機能性材料を使って・小孔の形状、 等価直径 、噴流方向を可変にする。 エンジンの運転状態に応じて騒音周波数特性が変化するので、これに呼応して、噴流流量を加えたこれらのパラメータを変化させて最適の吸音効果を得る。 可変量の制御に当たっては、エンジン内外に設置された誤差センサを使って放射される騒音レベルを常時計測し、制御用のコンピュータにデータを送る。 誤差信号を得たコンピュータは、機能性材料を変形させたり隔壁駆動装置や流量調整弁を制御して、最終的に誤差信号が最小となるようにパラメータを調節する。 なお、噴流の駆動には空気源が必要となるが、エンジンでは圧縮機の抽気を用いる。 開口率は1〜 20%、噴流の最適マッハ数は0.01〜0.15と小さいため抽気量は僅かである。 【手続補正2】 【補正対象書類名】明細書【補正対象項目名】0014 【補正方法】変更【補正内容】 【0014】因みに本発明の効果を確認した実験結果を図5に示す。 図のDに示した直径2.3mmの小孔を横方向 4.5mm縦方向4.2mm間隔に96個配設した試験片(隔壁)で管内空間を仕切って噴流を通過させた時に、該試験片の上流・下流からの音響入射して管内32点で音を検出し、 各点での相関係数を求めてから試験片での反射率R、透過率Tを測定したものである。 図のABCに示したグラフは横軸が音響入力の周波数値であり、縦軸がAでは音響エネルギーの反射率、Bでは音響エネルギーの透過率、そしてCでは吸音率に対応するエネルギー損失(E L)である。 Mは小孔を通過する空気の見かけの最高マッハ数(実際にはこれよりも20%近く大きい)である。 小孔部分での反射係数、透過係数、エネルギー損失係数を計測した結果である。 エネルギー損失(EL)係数は1から反射係数Rと透過係数Tを減じた数値とした。 噴流なし(M=0.0)のときに比べM=0.085のときの吸音率はあがり、さらにM=0.20,0.30,0.40のときの吸音率は上昇している。 噴流の存在によって、吸音率が上昇していることが確認できる。 |